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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】連続波音分析器
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/024 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
G01N29/024
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504720
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2020044519
(87)【国際公開番号】W WO2021022168
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】16/529,576
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ティンズリー デムスター
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA01
2G047BC02
2G047BC14
2G047BC15
2G047EA11
2G047EA16
2G047GF05
2G047GF11
2G047GG29
(57)【要約】
ガス分析器は、導管を通る連続音響信号を使用して、導管内のガスの組成を決定する。送信用トランスデューサが、固定周波数で音波信号を送信し、第2のトランスデューサが、その音波信号を受信する。2つの信号の間の位相シフトは、ガスを通る音速に対応し、ガスの組成に関係する。これらの信号の電子バージョンは、固定周波数を低下させることによって、すなわち分周することによって処理されて、位相シフトの測定範囲を拡大し、拡大された範囲においてガスの組成を決定可能にする。このガス分析器は、オゾン発生システムにおいて、既知の組成のガス及び較正点のガスとして、空気から発生するガスの組成を決定するのに非常に適している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の組成及び音速の第1のガスから発生する1つ以上のガス用の分析器であって、各発生ガスは、変化した成分の濃度を有し、前記分析器は、
第1のトランスデューサであって、前記第1のトランスデューサ装置は、固定周波数信号源に応答して連続音波を送信する、第1のトランスデューサと、
前記第1のトランスデューサに音響的に接続される導管であって、前記導管は、前記第1のガス及び1つ以上の発生ガスのサンプルを選択的に受け入れて保持する、導管と、
前記第1のトランスデューサ装置に対向する前記導管に音響的に接続される第2のトランスデューサであって、前記第2のトランスデューサは、前記導管を通じて前記第1のトランスデューサから音波を受信し、受信した前記音波に応答して第2のトランスデューサの信号を生成する、第2のトランスデューサと、
固定周波数信号源信号及び前記第2のトランスデューサの信号を受信する処理装置であって、前記処理装置は、前記導管内のガスサンプルについて前記周波数源信号と前記第2のトランスデューサの信号の間の相対的位相シフトを決定し、前記相対的位相シフトは、あるガスサンプル中の音速と別のガスサンプル中の音速の差に対応し、前記処理装置は、受信した前記固定周波数源信号及び前記第2のトランスデューサの信号の周波数を低下させて前記相対的位相シフトの測定範囲を拡大する回路を含む、処理装置と、
既知の組成の前記第1のガスから、前記第1のガスから発生する前記1つ以上のガスの音速を決定し、かつ前記第1のガスから発生する1つ以上の発生ガスのサンプルの組成を基準として計算する計算装置と、
を備える、分析器。
【請求項2】
前記固定周波数源信号及び前記第2のトランスデューサの信号の周波数を低下させる前記回路はそれぞれ分周回路を備える、請求項1に記載の分析器。
【請求項3】
前記分周回路はデジタルカウンタ回路を備える、請求項2に記載の分析器。
【請求項4】
前記分周回路は、2の累乗の値を有する除数で分周する、請求項3に記載の分析器。
【請求項5】
前記分周回路は8で分周する、請求項4に記載の分析器。
【請求項6】
前記第1のガスは空気を含む、請求項1に記載の分析器。
【請求項7】
第1の発生ガスが、酸素濃度の増加した空気を含む、請求項6に記載の分析器。
【請求項8】
第2の発生ガスが、オゾン濃度の増加した空気を含む、請求項7に記載の分析器。
【請求項9】
前記デジタルカウンタは、前記位相シフトの前記測定範囲が拡大し、ガスの組成の計算範囲が増大するように調整されるベースラインを有する、請求項1に記載の分析器。
【請求項10】
前記計算装置は、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記濃度を計算する、請求項1に記載の分析器。
【請求項11】
前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記濃度は、主に前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の比率から計算される、請求項10に記載の分析器。
【請求項12】
分子に前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の決定された音速を、分母に100パーセントの前記変化した成分中の音速を有する比から、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の変化した前記成分の前記比率が計算される、請求項11に記載の分析器。
【請求項13】
前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記濃度の計算は、経験的補正因子を変更することを含む、請求項11に記載の分析器。
【請求項14】
前記導管は選択された温度に維持される、請求項1に記載の分析器。
【請求項15】
前記導管は耐オゾン性の管を有し、前記耐オゾン性の管は、前記導管に熱質量を提供する金属ブロックで囲まれる、請求項14に記載の分析器。
【請求項16】
前記耐オゾン性の管はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成され、前記金属ブロックはアルミニウムで形成される、請求項15に記載の分析器。
【請求項17】
前記導管は、前記第1のトランスデューサから前記第2のトランスデューサまでの経路長Lを有し、前記Lは、前記処理装置が前記相対的位相シフトを360度に制限するのか、それとも180度に制限するのかに応じて、それぞれ
L<λmin・λmax/(λmin-λmax) 又は L<1/2・λmin・λmax/(λmin-λmax)
という制約を、前記分周回路によって取り除かれ、ここでλminは前記第1のガス及び前記1つ以上のガスの最小波長、λmaxは前記第1のガス及び前記1つ以上のガスの最大波長である、請求項2に記載の分析器。
【請求項18】
前記導管は、前記処理装置が前記相対的位相シフトを360度に制限するのか、それとも180度に制限するのかに応じて、それぞれ
L<nλmin・λmax/(λmin-λmax) 又は L<1/2・nλmin・λmax/(λmin-λmax)
である経路長Lを有し、nは分周回路の除数を含む、請求項17に記載の分析器:
【請求項19】
前記導管経路長Lは、前記第1のガスの波長の10倍を超える、請求項18に記載の分析器。
【請求項20】
前記導管経路長Lは、前記第1のガスの波長の30倍未満である、請求項19に記載の分析器。
【請求項21】
既知の組成及び音速の第1のガスから発生する1つ以上のガス用の分析器を作動させる方法であって、各発生ガスは、変化した成分の濃度を有し、前記方法は、
一度に前記第1のガス又は1つ以上の発生ガスのサンプルを保持する導管を通る固定周波数電気信号に応答して、第1のトランスデューサを用いて連続音波を送信するステップと、
導管を通って送信された音波を第2のトランスデューサによって受信し、受信した前記音波に応答して電気信号を生成するステップであって、受信した音波信号と送信された音波信号の間の位相シフトが、前記ガスサンプル中の音速に対応する、ステップと、
前記固定周波数電気信号及び前記受信した音波に応答して生成される電気信号を低周波数で処理するステップと、前記位相シフトの前記測定範囲を拡大して、前記導管内のガスサンプルについて前記周波数源信号と第2のトランスデューサの信号の間の相対的位相シフトを決定するステップであって、前記相対的位相シフトは、あるガスサンプル中の音速と別のガスサンプル中の音速の差に対応する、ステップと、
前記第1のガスの既知の音速から、並びに、前記第1のガスサンプル及び前記導管内の前記第1のガスから発生する1つ以上のガスの相対的位相シフトから、前記第1のガスから発生する1つ以上のガスの音速を決定するステップと、
前記第1のガスから発生する1つ以上のガスのガスサンプルの組成を基準として計算するステップと、
を備える、方法。
【請求項22】
前記処理するステップは、前記固定周波数電気信号及び前記受信した音波に応答して生成される前記電気信号の前記周波数を低下させるステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記周波数を低下させるステップは、前記周波数を、2の累乗の値を有する除数で分周するステップを備える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記周波数を低下させるステップは、前記周波数を8で分周するステップを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のガスは空気を含み、第1の発生ガスが、酸素濃度の増加した空気を含み、第2の発生ガスが、オゾン濃度の増加した空気を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記計算するステップは、1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記濃度を計算するステップを備える、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記変化した成分を計算するステップは、主に前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の比率から、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記濃度を計算するステップを備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記変化した成分を計算するステップは、分子に前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の決定された音速を、分母に100パーセントの前記変化した成分中の音速を有する比から、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の変化した前記成分の前記比率を計算するステップを備える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記変化した成分を計算するステップは、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記比率を、経験的補正因子を用いて変更するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記導管を選択された温度に維持するステップをさらに備える、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
空気中の音の波長の10倍を超える経路長を有する導管を提供するステップをさらに備える、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
既知の組成及び音速の第1のガスから発生する1つ以上のガスの組成を決定する方法であって、前記方法は、
導管を通じて固定周波数で連続音波を送信するステップであって、前記導管に入る音波と前記導管から出る音波の間の位相差が、導管内のガスの音速に対応する、ステップと、
前記導管に入りかつ低下した周波数で前記導管を出て前記位相シフトの測定範囲を拡大する前記連続音波に対応する電気信号を処理するステップと、
前記導管内のガスを、前記第1のガスと、前記1つ以上の発生ガスの間で変化させるステップと、
既知の組成の前記第1のガス及び前記1つ以上の発生ガスの相対的位相シフトから、既知の組成の前記第1のガスの音速と、前記第1のガスから発生する前記1つ以上のガスの音速を、拡大された範囲で決定するステップであって、前記相対的位相シフトは、あるガスサンプル中の音速と別のガスサンプル中の音速の差に対応する、ステップと、
前記第1のガスから発生する前記1つ以上のガスの組成を基準として計算するステップと、
を備える、方法。
【請求項33】
各発生ガスが最初に、前記第1のガスから変化した成分の濃度を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記処理するステップは、前記導管に入りかつ低下した周波数で前記導管を出て前記位相シフトの測定範囲を拡大する前記連続音波の前記周波数を低下させるステップを備える、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記周波数を低下させるステップは、前記周波数を、2の累乗の値を有する除数で分周するステップを備える、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記周波数低下ステップは、前記周波数を、8に等しい除数で分周するステップを備える、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のガスは空気を含み、第1の発生ガスが、酸素濃度の増加した空気を含み、第2の発生ガスが、オゾン濃度の増加した空気を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記計算するステップは、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記濃度を計算するステップを備える、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記変化した成分を計算するステップは、主に前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の比率から、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記濃度を計算するステップを備える、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記変化した成分を計算するステップは、分子に前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の決定された音速、分母に100パーセントの前記変化した成分中の音速を有する比から、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の変化した前記成分の前記比率を計算するステップを備える、請求項39に記載の方法
【請求項41】
前記変化した成分を計算するステップは、前記1つ以上の発生ガスの前記サンプル中の前記変化した成分の前記比率を、経験的補正因子を用いて変更するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記導管を選択された温度に維持するステップをさらに備える、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
空気中の音の波長の10倍を超える経路長を有する導管を提供するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス組成分析器、より詳細には、オゾン生成のためのガス組成分析器に関する。オゾンは、消毒及び水処理にしばしば使用される、高度に活性形態の酸素である。その特性のため、オゾンは、典型的には使用時に現場で生成される。
【背景技術】
【0002】
オゾンは多くの方法で発生させることができ、その1つは、放電を利用してプラズマを発生させる、酸素のイオン化による方法である。オゾンの濃度は、放電によって発生する場合、多くの要素(供給ガスの組成、供給ガスの流量、オゾン発生セルの温度、セルの寸法及び材料、並びにプラズマを生成するのに使用される電力を含むが、これらに限定されない)に依存する。オゾン生成に影響を及ぼす複数の要素が、オゾン生成を任意の精度で予測することを非常に困難にする。オゾン生成の制御又は情報を望む場合、オゾン生成を監視することが必要である又は望ましい。この目的のために、現場の分析器が必要である。
【0003】
ガス中のオゾン濃度を測定する分析器に、いくつかの異なる技術が利用可能である。これらの技術には、ガス中の紫外線吸収を利用することが含まれ、Oxidation Technologies, LLC(米国アイオワ州インウッド市)及びTeledyne API(米国カリフォルニア州サンディエゴ市)の製品等が判明している。この技術は効果的だが、発生コストが高い。さらに、オゾン発生セルへ向かう供給ガスの組成に関する情報が得られない。酸素濃度が増加している乾燥空気で構成され得る供給ガスの組成を知っていることが望ましい。放電式オゾン発生器は、酸素比率が高いと、より効果的に作動する。従って、酸素濃縮器を使用して、酸素を20.9%(大気)から90%を超える値まで増加させることもある。放電式オゾン発生器では、供給ガス中に存在する窒素の量が少ないと、効率が著しく向上するようである。しかし、供給ガスから窒素を除去し過ぎると、セルの効率が低下することが起こる可能性がある。このような酸素濃縮空気は、主成分が窒素、酸素、及び少量のアルゴンである。窒素濃度は、相補性によって酸素濃度から推定することができる。
【0004】
[発明が解決しようとする課題]
ガス中のオゾン濃度を推定するために音速を使用することは、特許文献1(米国特許第5,644,070号明細書〔Gibboney〕)に記載されている。供給ガスの温度、供給ガスの音速、オゾン発生器から出る時のガスの温度、及びオゾン発生器から出るときのガスの音速を測定すれば又は知っていれば、既知の経路長にわたって遅延を測定することによって、ガス中の音パルスの速度が決定される。オゾン濃度を推定するために、4つの測定した又は既知の変数が使用される。しかしながら、共振トランスデューサでは、パルスが、音パルスの到着の正確な判定を困難にする複数の周期で必ず構成されるので、パルスがいつ開始し、いつ終了するのか確かめることは困難である。さらなる欠点は、記載されているシステムが複雑なことである。音パルスは、比較的長い測定経路を必要とし、したがって比較的大きな体積を有する導管を必要とするため、必要なサンプルガスの体積が増加する。掃気ポンプはコストがかかり、供給ガスをオゾン発生セルに移動させるため又は出力ガスをセルから移動させるために使用される。これにより、測定システムが複雑になる。ポンプは、高濃度の腐食性のオゾンの存在下でも経時的に劣化しない材料で作製されなければならない。
【0005】
連続音波の音速は、2つのガス(それらのいずれもオゾンではない)の濃度の決定に役立てるために使用される。本発明者による特許文献2(米国特許第6,202,468号明細書)及び特許文献3(米国特許第6,520,001号明細書)では、その技術と別の技術を組み合わせたシステムを記載している。呼吸ガス中の酸素及び二酸化炭素の両方の濃度を決定するために、2つの別個のかつ無関係な物理パラメータである常磁性及び音速が測定されている。この場合、音のみを使用しても、どちらのガスの濃度も決定することはできない。
【0006】
したがって、オゾン発生セルへ向かう供給ガス中の酸素濃度及びセル出口におけるオゾン濃度の両方を測定することができる低コストの分析器が必要である。このような機器は、発生したオゾンの評価及び工程制御に使用することができる。例えば、所望のオゾン濃度を維持するように、機器の出力に基づいて酸素濃度を調整することができ、また所望のオゾン濃度を維持するように、機器の出力に基づいてセルの電力を制御することができる。これらの機能を両方とも取り扱う単一の低コストの分析器が便利であり、また経済的でもある。本発明の目的は、単一の信頼できる低コストの機器でどちらの機能も実行することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,644,070号明細書
【特許文献2】米国特許第6,202,468号明細書
【特許文献3】米国特許第6,520,001号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、既知の組成及び音速の第1のガスから発生する1つ以上のガス用の分析器を提供し、各発生ガスは、変化した成分の濃度を有する。分析器は、固定周波数信号源に応答して連続音波を送信する、第1のトランスデューサと、第1のトランスデューサに音響的に接続される導管であって、導管は、第1のガス及び1つ以上の発生ガスのサンプルを選択的に受け入れて保持する、導管と、第1のトランスデューサ装置に対向する導管に音響的に接続される第2のトランスデューサであって、第2のトランスデューサは、導管を通じて第1のトランスデューサから音波を受信し、受信した音波に応答して第2のトランスデューサの信号を生成する、第2のトランスデューサと、固定周波数信号源信号及び第2のトランスデューサの信号を受信する処理装置であって、処理装置は、導管内のガスサンプルについて周波数源信号と第2のトランスデューサの信号との間の相対的位相シフトを決定し、相対的位相シフトは、あるガスサンプル中の音速と別のガスサンプル中の音速の差に対応し、処理装置は、受信した固定周波数源信号及び第2のトランスデューサの信号の周波数を低下させて相対的位相シフトの測定範囲を拡大する回路を含む、処理装置と、既知の組成の第1のガスから、第1のガスから発生する1つ以上のガスの音速を決定し、かつ第1のガスから発生する1つ以上の発生ガスのサンプルの組成を基準として計算する計算装置と、を備える。
【0009】
本発明はまた、既知の組成及び音速の第1のガスから発生した1つ以上のガス用の分析器を作動させる方法を提供し、各発生ガスは、変化した成分の濃度を有する。この方法は、一度に第1のガス又は1つ以上の発生ガスのサンプルを保持する導管を通る固定周波数電気信号に応答して、第1のトランスデューサを用いて連続音波を送信するステップと、導管を通って送信された音波を第2のトランスデューサによって受信し、受信した音波に応答して電気信号を生成するステップであって、受信した音波信号と送信された音波信号の間の位相シフトが、ガスサンプル中の音速に対応する、ステップと、固定周波数電気信号及び受信した音波に応答して生成される電気信号を低周波数で処理するステップ、及び、位相シフトの測定範囲を拡大して、導管内のガスサンプルについて周波数源信号と第2のトランスデューサの信号の間の相対的位相シフトを決定するステップであって、相対的位相シフトは、あるガスサンプル中の音速と別のガスサンプル中の音速の差に対応する、ステップと、第1のガスの既知の音速から、並びに、第1のガスサンプル及び導管内の第1のガスから発生する1つ以上のガスの相対的位相シフトから、第1のガスから発生する1つ以上のガスの音速を決定するステップと、第1のガスから発生する1つ以上のガスのガスサンプルの組成を基準として計算するステップと、を備える。
【0010】
本発明はさらに、既知の組成及び音速の第1のガスから導出される1つ以上のガスの組成を決定する方法を提供する。この方法は、導管を通じて固定周波数で連続音波を送信するステップであって、導管に入る音波と導管から出る音波の間の位相差が、導管内のガスの音速に対応する、ステップと、導管に入りかつ低下した周波数で導管を出て位相シフトの測定範囲を拡大する連続音波に対応する電気信号を処理するステップと、導管内のガスを、第1のガスと、1つ以上の発生ガスの間で変化させるステップと、既知の組成の第1のガス及び1つ以上の発生ガスの相対的位相シフトから、既知の組成の第1のガスの音速と、第1のガスから発生する1つ以上のガスの音速を、拡大された範囲で決定するステップであって、相対的位相シフトは、あるガスサンプル中の音速と別のガスサンプル中の音速の差に対応する、ステップと、第1のガスから発生する1つ以上のガスの組成を基準として計算するステップと、を備える。
【0011】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討することで明らかになり、同種の参照指定は、図面全体にわたって同様の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態によるオゾン発生システムにおける分析器の一般的な構成を示す。
図2】ソーストランスデューサへ向かう固定周波数信号及び図1の分析器装置の受信用トランスデューサからの信号を示す。
図3】本発明の一実施形態に従って、ソーストランスデューサへ向かう図2の信号及び分析器装置の受信用トランスデューサからの図2の信号の周波数が低くなると、位相シフトの測定範囲がどのように拡大するかを示す。
図4図4Aは、図1の位相シフト検出器用の簡略化した回路を示す。図4Bは、例示的な送信用トランスデューサの信号及び受信用トランスデューサの信号、図4Aの位相シフト検出器からの出力信号、及び位相検出器の出力が図1のローパスフィルタを通過した後の信号を示す。図4Cは、異なる位相シフトに対するローパスフィルタの出力を示す。図4Dは、ベースライン調整用の異なる位相シフトに対するローパスフィルタの出力を示す。
図5】本発明の一実施形態によるオゾン発生システムの動作における分析器装置の動作のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に記載するように、本発明によれば、高解像度及び高精度でオゾン濃度を測定することができる。オゾン濃度は、供給ガスの酸素濃度に比較的依存せずにかつ温度に比較的依存せずに測定される。また、分析器の作成も、簡単で低コストである。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による連続音波分析器装置を伴うオゾン発生システムの一部を一般化した図を示す。図面は代表的なものであり、図面の要素は縮尺通りには描かれていないことに留意されたい。システムは、オゾン発生ブロック300と、トランスデューサ/バルブブロック400及びコントローラ/分析ブロック200によって形成される連続音波分析器装置100とを有する。オゾン発生ブロック300は、供給源(図示せず)から圧縮空気を受け取り、オゾンを含む発生ガスを工程、すなわちオゾンの特定の応用例に向けて送る。圧縮空気(ガスの流れは、図中の幅広の矢印によって示されている)は、発生ガスの酸素比率を増加させる濃縮器301によって受け取られる。濃縮器301は圧力スイング吸収装置であってもよく、濃縮器301からのガスはオゾン発生器302に、典型的には放電セルに渡される。オゾン発生器302から出力されたガスは、工程に送られたガス及びオゾンの圧力を制御する入口圧力調整器303に送られ、応用例は発生したオゾンを使用する。
【0015】
分析器装置100は、オゾン発生ブロック300の異なる位置におけるガスの相対的音速を決定し、トランスデューサ/バルブブロック400及びコントローラ/分析ブロック200を備える。トランスデューサ/バルブブロック400は、異なる位置からのガスサンプルを処理し、コントローラ/分析ブロック200は、トランスデューサ/バルブブロック400の動作を制御し、またトランスデューサ/バルブブロック400からの出力を分析する。トランスデューサ/バルブブロック400は、供給源から濃縮器301へ向かう圧縮空気を受け取る第1の入力バルブ403と、濃縮器301からオゾン発生装置302へ向かう出力ガスを受け取る第2の入力バルブ402と、及びオゾン発生装置302から入口圧力調整器303へ向かう出力ガスを受け取る第3の入力バルブ401とを有する。バルブ401~403の出力部は第1のトランスデューサ装置404に接続され、第1のトランスデューサ装置404の出力部はガス導管405に接続され、ガス導管405は第2のトランスデューサ装置406に接続される。トランスデューサ装置404は、導管405を通じて連続音波を受信用トランスデューサ装置406に送信し、導管405(及び送信用トランスデューサ装置404及び受信用トランスデューサ装置406)の中のガスによって音の相対速度を決定する。受信用トランスデューサ装置406のガス出力部は破壊装置407に接続され、破壊装置は、ガスを大気中に放出する前に、サンプリングガス中のオゾンを除去する。
【0016】
概して、既知の組成の第1のガス(通常、大気)について基準位相が読み取られ、次いで未知の第2及び第3のガスが導入され、位相シフトの対応する変化を起こし、位相シフトのこれらの変化及び第1のガスの既知の音速から、第2及び第3のガスの音速が計算される。
【0017】
オゾンは腐食性が高く、オゾンと接触する構成要素の選択には注意が払われる。トランスデューサ装置404及び406はアルミニウムから形成され、このアルミニウムは酸化アルミニウムの強靭なコーティングを形成し、導管405は、オゾンに耐えるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管から形成される。また導管405は、導管内のガスの温度を所望の温度に維持するように温度制御され、導管の温度を安定させるために比較的大きな熱質量(thermal mass)を有する。好ましくは、導管405の長さLは、デバイスに良好な感度を与え、かつ定在波によるアーチファクトを防ぐのに十分長く、さらに、体積を小さくし、製造に便利であり、かつ位相シフトの測定を明確に行うのに十分短い。感度及び定在波の観点から、他の経路長を使用することもできるが、好ましい経路長Lは波長約24個分であり得る。しかし、経路長が波長約24個分だと、音速がガスの組成の変化とともに変化するにつれて、位相シフトが過度に変化するため、読み取り値が曖昧になる可能性がある。例えば、空気を酸素に置き換えることによる位相シフトは、約0.9波長分になる。空気をオゾンと酸素の混合物に置き換えることによる位相シフトは、2波長分にもなり得る。分周を利用してこの問題を緩和する方法が本発明の特徴であり、以下に記載する。この方法は、位相検出器からの曖昧な結果を心配することなく、上述の要素の所望の妥協点に基づいて経路長を選択することを可能にする。
【0018】
分析器装置100のコントローラブロック200は、トランスデューサ/バルブブロック400内の第1のトランスデューサ装置404を駆動する発振器装置201を有する。第1のカウンタ205は、制御装置208からの制御信号及び発振器201からの駆動信号を受信する。コントローラブロック200内の増幅器202は、第2のトランスデューサ装置406の電気出力を受信する。増幅器202の出力は、比較器203によって受信され、比較器203は、増幅された信号を方形波に整形する。比較器の出力は第2のカウンタ204に送信され、カウンタ204は、制御装置208からの制御信号も受信する。カウンタ204及び205の出力は、両方とも位相検出器206に送信され、位相検出器の出力は、ローパスフィルタ207を通って制御装置208に送信される。
【0019】
本発明は、ガス中のオゾン濃度を決定するために、ガス中の音速を利用する。オゾンの分子量は酸素に比べて高いため、オゾン中の音は、酸素中の音よりもかなり遅い。同様に、酸素の平均分子量は空気と比べて高いため、酸素中の音は、空気中の音よりも遅い。2つの成分しか持たないガスでは、各成分の音速が他の成分の音速と異なっていれば、ガスを通る音の測定速度は、2つの成分の比率によって特徴づけられる。このことは、成分自体が2つ以上のガスの混合物を含む場合であっても当てはまる。このことについての議論は、前述の特許文献2及び特許文献3で見ることができる。
【0020】
ガス中の音速は、導入される最初のガスの既知の特性、及びそれに対応する位相シフトの変化により分かる。この変化は、波が後続のガスとともに受信用トランスデューサに移動するにつれて、ソーストランスデューサから発生する連続音波が受ける。図2は、送信用トランスデューサ404からの音波列を、信号及び信号を処理する回路のデジタルな性質を示す一連の方形波として示す。アナログな信号及び回路を使用してもよい。波の立ち上がりエッジは実線の垂直バーとして示され、読者の理解を助けるための基準点として役立つ。同様に、第2のトランスデューサ406によって受信される別の一連の方形波が、第2のトランスデューサ405によって受信される各音波の実線バーの立ち上がりエッジとともに示される。矢印は、ソーストランスデューサ404から受信用トランスデューサ405に移動する特定の波面の時間間隔を反映する位相シフトを示す。時間間隔が長いほど又はガス媒質を通る音波の速度が遅いほど位相シフトが大きくなることは、明らかなはずである。
【0021】
シフト量を確実に決定するという連続波の性質のために、位相シフトは、制限範囲内に保たれるべきである。例えば、位相シフトがxであるのか、それともx+i*360°(iは整数)であるのかを判定することは困難である。したがって、この例では、360°未満の位相シフトのみが行われるべきである。しかし、このことは、決定できる速度範囲を厳しく制限する。制限される位相範囲は、位相シフトを決定するために使用される回路にも依存し、回路は、位相シフトを、0°~180°等のようにさらに制限する可能性もあることに留意されたい。いずれにせよ、本発明は、以下に記載するように、決定できる速度範囲を拡大する。
【0022】
ソーストランスデューサが固定周波数で駆動される間、ソース信号の周波数は、処理のために下げられる。図3は、66%の周波数の低下、別の言い方をすれば、3本の垂直バーのうちの2本を削除することによって周波数を3分周した、例示的な低下を示す。削除は、実線のバー(立ち上がりエッジを示す)を閉じたバーで置き換えることによって示される。周波数の低下に伴い、決定できる位相シフトの範囲(したがって音速の範囲)が、それに応じて拡大する。すなわち、位相の制限が0~360°であると仮定すると、周波数を3だけ低下させることにより、位相シフトの範囲を3だけ拡大することができ、これによりその範囲を0~1080°に拡大する。周波数を低下させることで、位相シフト測定の範囲は比例的に増加し、短い経路長の導管という欠点なしに高精度で測定を行うことが可能になる。典型的には、短い経路長では、導管内の定在波又は定在波の残留が原因で、信号アーチファクトが起こる可能性がある。周波数の低下は、これらの問題を回避する。
【0023】
図4Aにおける電子回路の単純な表示は、前述の位相シフトの測定を示す。2つの方形波データストリームは、Aが送信用トランスデューサ(図1の404)の信号を示し、Bが受信用トランスデューサ(図1の406)の信号を示す。これらのデータストリームは、排他的論理和(Exclusive-OR)の論理ゲート(位相検出器206の回路の一部)に入力される。ゲートの出力Cはローパスフィルタ(図1の207)に入力され、ローパスフィルタは出力Dを有する。図4Bは、A信号、B信号、及び排他的論理和ゲートの出力のC信号の関係を示す。位相検出器206には、排他的論理和ゲートの他に、否定排他的論理和ゲートも使用し得る。
【0024】
図4Bは、ローパスフィルタ207の出力のD信号も示す。排他的論理和ゲートのほとんど変化している信号が、ローパスフィルタ207によってフィルタリングされて、出力信号の「平均」値を示す。例えば、A信号とB信号の位相が互いに完全にずれている(すなわち、位相差が180°である)場合、フィルタリングされた位相差(すなわち、位相シフト)、信号、出力Dは最大であり、A信号とB信号の位相が互いに完全に一致している(すなわち、位相差が0°である)場合、出力Dは最小である、すなわちゼロである。A信号とB信号の位相が「半分」ずれている、すなわち半分一致している場合、位相差は90°であり、出力Dは、最大値と最小値の中間、すなわち、最大値の半分である。図4Cは、この位相検出器の値である出力Dが、信号A及び信号Bの間の位相差とともにどのように変化するか示す。ここで位相差は、-540°未満の値~540°を超える値として示されている。マイナス及びプラスの値は、A信号又はB信号が、B信号又はA信号に先行するかどうかを示す。上記のように、A信号はB信号より遅れる。図4Cはさらに、なぜ位相シフトが制限範囲内にあるべきかをグラフで示す。この図では、出力Dの値から位相シフトを決定する際に曖昧を回避するために、位相シフトを180°の範囲内に制限すべきである。
【0025】
A信号及びB信号の周波数が低下すると、ローパスフィルタ207の出力Dが変化する。図4Dの例では、周波数を除数8(カウンタについてはN=8)で低下させるために、Aデジタル信号及びBデジタル信号のデータストリームにカウンタ(図1の205及び204)が挿入される。除数Nは任意であり、設計者の都合に合うように選択される。出力Dは、それに対応して拡大する。出力Dの周期は360°(図4Cに示す)ではなく、8倍大きい2880°である。すなわち、出力Dの信号は2880°毎に繰り返す。この例では、位相シフトが、2880°の半分である1440°の範囲に拡大している。これは、周波数が低下しない信号の制限である180°よりもはるかに大きな範囲である。
【0026】
したがって、フィルタリングされた位相シフトの信号である出力Dの拡大された範囲は、デジタルカウンタ、例えば図1のカウンタ205及び204によって容易に実現される。N=8の上記の例を使用して、A信号のデータストリーム用のカウンタがゼロにセットされ、次いで開始される。Aカウンタが特定の値、例えば1に達すると、次いでB信号のデータストリーム用のカウンタがゼロにセットされ、開始される。これは、N=8である場合の位相検出器の開始値が非負であることを保証する。したがって、出力Dは、0~0.125である(Dの最大出力が1.0であると仮定して)。0.125は1/8である。ここで、導管405(図1参照)内の異なるガスサンプルが原因で、A信号とB信号の間の位相差が増加する場合、出力Dも、最大値までの1260°(1440°*(1-(1/8))の範囲にわたって直線的に増加する。この場合も、カウンタの除数N及び位相シフト測定のそれに対応する拡大は任意であることに留意されたい。
【0027】
2つの周波数低下カウンタ205及び204は、位相を不確かにする。8で分周した上記の場合、2つのカウンタの計数関係に応じて、8つの位相関係があり得る。第1のカウンタ205がカウントNを有する場合、第2のカウンタ204は、(N+n)mod8の値の任意のカウントを有し得る。ここでnは、0~7の範囲の任意の整数に等しい。すべての波形が適切にカウントされる場合、その関係は無期限に維持される。数nを制御することにより、フルスケールの1/8の分解能でベースラインを調整する機会が与えられる。すぐ上の例では、受信用トランスデューサの信号は最初に、送信用トランスデューサの信号と「第2の」関係で、すなわち(N+n)mod8=1で始まる。(N+n)mod8=0となるようにnを制御することにより、位相の測定範囲が最大限まで拡大され、ガスの組成の決定が最大化するように、ベースラインが調整される。このことが、本発明の特徴である。
【0028】
上記の位相シフト検出のために、分析器装置100におけるコントローラブロック200の電子回路が、本発明の一実施形態に従って、デジタル回路によって実装される。発振器ブロック201は、固定周波数で信号を生成する。この実施形態では、その周波数は40KHzである。発振器ブロック信号は、送信用トランスデューサ404を駆動し、周波数を8で分周される、別の言い方をすれば、カウンタ205は、信号の周波数を8分の1に下げる又は低下させる。カウンタ205の出力は、位相検出器ブロック206によって受信される。
【0029】
受信用トランスデューサ206の出力は、増幅器202によって増幅された後、比較論理回路(ブロック203)によって方形波になるように処理される。カウンタ204は、信号周波数を8によって分周する。またカウンタ204の出力も、位相検出器ブロック206によって受信される。排他的論理和ゲート又は否定排他的論理和ゲートを操作することによって、位相検出器206の出力は、論理ゲートの2つのパワーレベルの間、例えば0~5ボルトで変化する。ローパスフィルタ207は、出力信号の交流成分を除去する。
【0030】
連続音波分析器装置100の制御は、コントローラ/分析ブロック200内の制御装置208によって行われる。この実施形態では、基本的に制御装置208は、メモリを有するプログラムされたマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラである。他の内容物のうち、メモリは、フィルタリングされた位相検出器206からの値を記憶する。装置208からの制御ラインは、バルブ401~403並びにカウンタ205及び204のそれぞれに延びている。また装置208は、ローパスフィルタ207の出力から位相シフトの値を受け取る。ディスプレイ209は、制御装置208に接続され、分析器装置100を操作するための視覚インタフェースを提供する。
【0031】
制御装置208の下で、位相シフトの範囲を拡大した分析器装置100は、複数のガス中の音速及びガスの組成を決定する。以下の記載はオゾン発生及び図1のシステムを参照しているが、分析器装置はそのように限定されるものとみなされるべきではない。簡潔に述べると、大気が導管に導入され、バルブが閉じられる。フィルタリングされた位相検出器の出力が読み取られ、大気について記録される。次いで、酸素富化空気である供給ガスが導管に導入され、バルブが閉じられる。フィルタリングされた位相検出器の出力が読み取られ、供給ガスについて記録される。最後に、オゾン含有ガスが導管に導入され、バルブが閉じられる。フィルタリングされた位相検出器の出力が読み取られ、オゾン含有ガスについて記録される。
【0032】
図5は、すぐ上に記載した動作の工程フローを示している。工程フローのステップは、ガスがA、Bとラベルを付けられ、最初のガスから発生するより多くのガスがこの工程フローに含まれ得ることを示すという点で、一般化されている。点線矢印501によって示すようにシステムが初期化された後、ステップ502が、インデックスバルブ#をゼロに初期化する。次いで、ステップ503によって、バルブ#により示されるバルブが開かれ、開いたバルブによって選択されるガスが導管内に送り込まれる。(図1のオゾン発生システムでは、インデックスバルブ#=0は403に対応し、インデックスバルブ#=1は402に対応し、インデックスバルブ#=2は401に対応する)。ステップ504はバルブを閉じる。ステップ505は、インデックスバルブ#がゼロか否か調べる。インデックスが0である場合、カウンタはリセットされ、ステップ507によって、フィルタリングされた位相検出器の出力値が読み取られて記録される。インデックスが0でない場合、ステップ505のテストはステップ507に進む。ステップ507の後、ステップ508によって、インデックスバルブ#が2に等しいかどうか調べられる。等しくなければ、次いでステップ509は、インデックスバルブ#を1だけ増加し、工程はステップ503に戻る。ステップは、インデックスバルブ#が2に等しくなるまで繰り返され、工程は、ステップ510によって終了する。
【0033】
記録された位相シフトの値から、制御装置208はデータを分析し、ガスの音速及び組成を決定する。比較手法が使用される。第1のガスの音速及び組成が既に知られている状態で、除湿された大気を基準として使用して、第1のガス(大気)から発生するガスの音速及び組成を決定する。特に、温度制御されている導管の設定温度における除湿された大気の音速が分かり、当該大気の音速を基準として使用して、測定された位相シフトから、第2のガス(酸素富化供給ガス)及び第3のガス(オゾン含有富化空気)の音速を計算する。
【0034】
ガスは、音速が小さい順に、すなわち、大気、酸素富化大気、変換されたオゾンを含有する酸素富化空気の順に処理される。富化空気は大気から発生し、オゾンが存在する空気は富化空気から発生する。各ガスは、それより前のガスよりも高密度であり、音速は、前のガス中の速度と比べて減少する。第1のガス(乾燥大気)は、その組成物が既知であるため、基準ガスとして扱われる。所与の温度におけるその音速も既知である。前述の特許文献1(Gibboney)に記載されている方法で温度を変化させることが可能だが、ガスの温度を設定温度に維持するほうが好ましい。図1に示すような温度制御されているガス導管は、ガスを設定温度に維持するのに有効であることが判明している。したがって、酸素富化空気及びオゾン含有空気中の音速を計算する際、全てのガスは同じ温度を有すると仮定される。誤差を最小にするために、熱質量を追加すること又は環境温度を制御することが望ましい。基準である第1のガス中で音速が最大である場合、酸素富化空気及びオゾン含有空気の位相シフトの範囲を拡大してこれらのガスの組成を調節するように、ベースラインを前述のように調整することができる。
【0035】
酸素富化空気中を伝播する音は、大気の場合よりも少し遅れて第2のトランスデューサに到達する。追加の遅延は、第1のトランスデューサと第2のトランスデューサの間の既知の導管の長さLと位相シフトを併用して測定される。これにより、酸素富化空気の音速を、大気の音速及び追加の位相シフトの関数として決定することができる。上記のように、位相シフトと遅延との間には、直接的な関係がある。特に、L=音の経路長、S0=既知の大気中の音速であり、大気の遅延D0は既知の量D0=(L/S0)である。酸素富化空気の遅延D1はD0+Dxであり、ここでDxは、酸素富化空気中の音速がより遅いことによる追加の遅延であり、酸素富化空気における追加の位相シフトから分かる。したがって、S1=L/D1=L/(D0+Dx)である。L、D0及びDxが既知である場合、S1が決まる。
【0036】
オゾン含有空気の音速は、同じ方法で測定される。S0=既知の大気中の音速、S1= 酸素富化空気中の音速、S2=オゾン含有空気中の音速である。オゾン含有空気の遅延D2はD0+Dzであり、ここでDzは、オゾン含有空気中の音速がより遅いことによる追加の遅延であり、オゾン含有空気における追加の位相シフトから分かる。したがって、S2=L/D2=L/(D0+Dz)である。L、D0及びDzが既知である場合、S2が決まる。
【0037】
20.9%の酸素組成を有する大気の音速S0は既知であり、100%酸素の音速も既知である。測定される酸素富化ガスの音速S1は、大気と100%酸素の2つのガスの混合物を示す酸素の比率のように、2つの既知の音速値の間になるはずである。この比率は、O2比率=(S1-S0)/(Sox-S0)と計算することができ、ここでSoxは100%酸素ガス中の音速である。この説明は、多くの複雑な要素を回避する。ガス中の音の理論速度は多くのモデルから計算することができ、これらのモデルは、ボルツマン定数、温度、分子の質量、断熱定数(議論中のすべてのガスについて同じであるわけではない)などを含む多くの要素を有するため、理論的な確かさを損わせる。幸いなことに、ある種の線形性の仮定が、関心領域において妥当な近似をもたらす。経験的スケーリングは、良好な結果をもたらす。
【0038】
したがって、O2の百分率=79.1x(O2比率xO2スケール)+20.9が非常に良い近似であることがわかった。なぜなら、このモデルはほぼ正確であり、かつ現実では小さな変動が発生するため、スケーリングファクタであるO2スケール(ほぼ1)は、O2比率に対して使用される。
【0039】
同様に、オゾン含有空気の場合、O3比率=O3スケールx3.329x(S1-S2)/(純オゾン中の音の計算速度)である。このようなガスの爆発的に不安定な性質のせいで、常温における音速を経験的に決定する方法がない可能性が高いため、純オゾン中の音速を計算する。使用される数は、分子量、温度、及び断熱定数に基づく計算による。O3スケールは、ほぼ1の値を有する経験的スケール調整である。
【0040】
1立方センチメートル当たりのオゾン量でオゾン濃度を決定するために、以下の式を利用することができる。1cm^3当たりのオゾンのグラム=O3比率×2142.8571
【0041】
補正因子は、ガス組成の測定における複雑さに起因する。オゾン発生は、あるガスの別のガスによる希釈に依存しない場合がある。例えば、1モルの酸素が放電オゾンセルを通過し、10%のO2がO3に変換される場合、O2からO3への変換により分子数が減少し、セルから出てくるオゾンは、0.0666...モルである。出てくる全酸素は0.9モルである。従って、全放出ガスは0.9666...モルであり、O3のモル百分率は6.9%である。しかし、音速は依然としてオゾン濃度と1対1の関係を有する。
【0042】
放電セルに入るガスが2つ以上の成分で構成される場合も、状況は同様である。例えば、セルに入るガスが、モル測定で90%のO2と10%のN2である場合、1モルのガスは、0.9モルのO2と0.1モルのN2で構成される。10%の酸素をO3に変換すると、出てくるガスは、0.06モルのO3と、0.81モルのO2と、 0.1モルのN2の、合計0.91モルである。O2のモル百分率は6.2%である。各ガスが、オゾン濃度の固有の関数である濃度を有し、したがってその濃度に対応する固有の音速を有するので、音速は依然として1対1の関係を有する。
【0043】
音速の変化は、ガス中のオゾン濃度の変化に依存する。オゾン発生システムにおいて、発生ガスがオゾン発生セルに送られる前に、通常、空気中の酸素含有量は増加する。したがって、発生セルに入るガス、及びセルに入った後のガスの組成を知るのがよい。例えば、空気は、78%のN2、21%のO2と、1%のアルゴンとみなすことができる。公示されている0℃での音速は、これらの各成分のガスをそれぞれ337m/s、316m/s、及び307m/sで通る。これらのガスの速度を、空気中のそれらの成分の比率に比例して平均することによって、空気中の音の全体的な速度が332m/sであることが分かった。この速度は、公開されている331m/sの速度に十分に匹敵する。0℃におけるオゾン中の音速の妥当な推定値は249m/sだが、高濃度のオゾンは不安定であるため、これはありそうもない直接測定値である。
【0044】
以下は、放電セルに入る酸素の濃度が異なる場合の事例である。最初の例では、ガスサンプルが、0.8モルのN2と0.2モルのO2で構成される近似空気であると仮定する。上記の計算に従えば、この混合物中の音速は332.80m/sである。次いで、このサンプルがオゾン発生セルを通過すると、O2の一部がO3に変換され、これによりガスの合計モル量が減少する。0.1モルのO2がO3に変換されると仮定すると、全出力は、N2が0.8モル、O2が0.1モル、及びO3が0.0667モルとなり、合計で0.967モルである。O3のモル百分率は6.9%である。ガス混合物中の音速は328.65m/sであり、音速の変化は-4.146m/sであり、比例的変化は-0.01245である。
【0045】
これに対して、ガスサンプルが1.0モルのO2から構成される、すなわちサンプルが全て酸素であると仮定すると、この混合物中の音速は、上記の計算に従って316m/sである。サンプルがオゾン発生セルを通過すると、O2の一部がO3に変換され、ガスの合計モル量が減少する。最後の場合と同様に、0.1モルのO2がO3に変換されると仮定する。合計出力は、O2が0.9モル、O3が0.0666モルとなり、合計で0.967モルである。O3のモル百分率は、前述のように6.9%である。ガス混合物中の音速は、311.28m/sである。音速の変化は-4.720m/sであり、比例的変化は-0.01493である。
【0046】
セルに入る供給ガス中の酸素の比率に対する音速の比例的変化は、空気よりも純粋な酸素の方が大きいことに留意すべきである。このことは、ヒューリスティック(heuristic)な方法で見ることができる。最初に窒素が多く存在する場合、オゾン含有ガス中の窒素の比率は、酸素がオゾンに変換されるにつれて増加する。増加した窒素は、比較的高い音速を有し、オゾンの比率が増加することによる音速の低下を弱める傾向がある。
【0047】
導管の経路長Lに戻る際、先に述べたような、導管の長さに対するいくつかの現実的制約を考慮すべきである。これらの制約は、測定されるガスの音速、動作周波数、及び位相シフトを測定又は検出する方法に依存する。各ガスに対して、対応する音速及び対応する波長が存在する。ガスには、最大波長λmaxのガスと、最小波長λminのガスが存在する。位相シフトを360度に制限しようとする場合、L/λmin-L/λmaxは1未満でなければならない。すなわち、以下の式の通りである。
【0048】
L/λmin-L/λmax<1
【0049】
この式は、導管内に含まれる波長の数の差が1未満であることに相当する。導管の長さを決定するために項を処理することによって、以下の式を得る。
【0050】
L<λmin・λmax/(λmin-λmax)
【0051】
同様に、位相シフトを180度に制限しようとする場合、L/λmin-L/λmaxは1/2未満でなければならない。すなわち、この場合、以下の式の通りである。
【0052】
L/λmin-L/λmax<1/2
【0053】
すなわち、L<1/2・λmin・λmax/(λmin-λmax)
【0054】
いくつかの例示的な数字がこれらの点を示す場合がある。分析器の周波数を40KHzに固定した場合、基準ガス(空気)の音速Srefが343m/s又はλref=0.858cmであり、かつ分析器内の他のガス(酸素強化空気及びオゾン)の音速の範囲ΔSが290m/sであると仮定すると、最大波長λmax(λref)は0.858cm、最小波長λminは0.725cmである。位相シフトを180度に制限しようとする場合、L((1/0.725)-(1/0.858))<1/2、すなわちL<2.339cmである。同様に、位相シフトを360度に制限しようとする場合、L<4.677cmである。これらの数字はそれぞれ、基準ガスの波長(λref)の2.726倍、及び基準ガスの波長(λref)の5.452倍に相当する。
【0055】
しかし、導管が非常に短いと、定在波によるアーチファクト、試験ガスの出入りに対する穴の音響寄与によるアーチファクト、音響信号に対する電気信号の位相関係が不確かなことによるアーチファクト、並びに電気的及び/又は音響的ノイズによるアーチファクトを引き起こす。これらの理由から、これらのアーチファクトを最小限に抑えるために、導管は、基準ガス中の音の波長の少なくとも10倍の長さを有することが望ましい。前の段落で記載したように、従来の位相検出器は、導管の長さに対して厳しい制約を課している。360度の位相シフト検出器の場合、導管の経路長Lは、基準ガスの波長の5.452倍以下にしかなれず、180度の位相シフト検出器の場合、経路長は、基準ガスの波長の2.726倍以下にしかなれない。
【0056】
しかしながら、前述の分周技術を特定の位相シフト検出方法に適用することによって、導管の経路長Lに対する制約を取り除くことができ、Lを長くすることができる。例えば、周波数をn(例えばn=8)で分周すると、波長の最大値及び最大長さLはそれぞれ、n=8倍にされる。すなわち、導管の経路長の上限は、以下の通りになる。
【0057】
位相シフト検出器がそれぞれ、360度であるかそれとも180度であるかに応じて、
L<n・λmin・λmax/(λmin-λmax) 又は L<1/2・n・λmin・λmax/(λmin-λmax)
【0058】
一方、分周技術を用いても、導管の経路長の上限は無限ではない。また、導管が長いと、信号減衰、サンプル体積の増大、及び場所をとる設計を含む問題を引き起こす。導管長Lを波長の約30倍に制限することが望ましく、この点では、長い経路長の欠点が深刻になり始める。
【0059】
好ましい実施形態では、基準ガス中の波長(λref)の約23倍に相当する導管の長さが選択される、すなわち、L=約23*0.858cmである。このことは、位相シフトが選択された180°の位相検出器の制限を超えるという状況を作り出すが、記載された分周技術を使用することにより、比較的長い信号経路という利点を維持する。
【0060】
記載された比較的単純で低コストのガス分析装置は、オゾン発生システム内のオゾン濃度を、高解像度かつ高精度で、並びに、供給ガス中の酸素濃度に比較的依存せずにかつ温度に比較的依存せずに測定する。さらに、オゾン発生に供給されるガス中の酸素濃度を正確に測定する。このことは、現場で及び使用時にオゾンを発生させる、安価で生産的な方法を提供する。
【0061】
本発明のこの記載は、例示及び説明のために提示する。網羅的であること、又は記載された厳密な形態に本発明を限定することは想定しておらず、上記の教示に照らして多くの修正及び変形が可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実用的な用途を最も良く説明するために選択され、説明された。この明細書により、当業者は、様々な実施形態において、特定の用途に適した様々な修正を加えて、本発明を最良に利用し、実施することができる。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
【国際調査報告】