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特表2022-542907害虫を制御又は低減するための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】害虫を制御又は低減するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/23 20200101AFI20220930BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20220930BHJP
   A01N 61/02 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A01N63/23
A01P7/02
A01N61/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505210
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2020071144
(87)【国際公開番号】W WO2021018841
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】19382646.8
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009893
【氏名又は名称】ヒプラ サイエンティフィック, エセ. エレ. ウ.
(71)【出願人】
【識別番号】522031663
【氏名又は名称】ウニベルシダ プブリカ デ ナバラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パジェス ボッシュ マルク
(72)【発明者】
【氏名】カバジェロ ムリージョ プリミティーヴォ
(72)【発明者】
【氏名】シトハ アルナウ マルタ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス ドゥラン ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ルシエンテス クルディ ハビエル
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC04
4H011BA06
4H011BB20
4H011BB21
4H011BC03
4H011BC19
4H011DA12
4H011DC05
4H011DH03
(57)【要約】
本発明は、ダニ侵襲を制御又は軽減する、例えば、デルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じる侵襲を制御及び軽減する方法、及びダニ侵襲の制御又は軽減、例えば、デルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じる侵襲の制御及び軽減のためのバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株の生芽胞を含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス・チューリンゲンシス(B.チューリンゲンシス)の少なくとも1種の株の細菌調製物を活性成分として含む、ダニ侵襲を制御又は軽減するのに適した医薬組成物又は殺生物剤組成物であって、前記細菌調製物が少なくとも前記B.チューリンゲンシスの1種の株の生芽胞を有効量含むことを特徴とする、医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項2】
前記細菌調製物が、デルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じるダニ侵襲を制御又は軽減するのに適したB.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株の生芽胞を有効量含む、請求項1に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項3】
前記B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、B.チューリンゲンシス亜種クルスターキよりも少ない量のB.チューリンゲンシスの非芽胞タンパク質を産生する株である、請求項1又は2に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項4】
前記B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき1.7mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの非芽胞タンパク質を産生する株である、請求項1又は2に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項5】
前記B.チューリンゲンシスの非芽胞タンパク質がデルタ(δ)-エンドトキシン、タンパク質Cry及びCyt、栄養生長期殺虫性タンパク質(Vip1、Vip2、Vip3及びVip4)、分泌殺虫性タンパク質(Sipタンパク質)、β-エキソトキシン(ツリンギエンシン)、コレステロール依存性細胞溶解素に関連するタンパク質(スフェリコリシン及びアルベオリシン)、エンハンシン様タンパク質(Belエンハンシンタンパク質)、ヘルパータンパク質(P19及びP20タンパク質)、又は非タンパク性β-エキソトキシン(Bt 41.9kDaタンパク質)からなる群より選択される、請求項3又は4に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項6】
前記細菌調製物が、前記組成物1ml当たり少なくとも1×10cfuの生芽胞の有効量を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項7】
殺虫剤、ダニ駆除剤、殺真菌剤、殺線虫剤、抗生物質、清浄剤、免疫原性物質、動物飼料、精油、鉱油、栄養補給食品、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス、多糖及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の更なる活性成分又は機能性成分を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項8】
前記更なる活性成分が鉱油であり、該鉱油が流動パラフィンである、請求項7に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項9】
前記バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、
a. 2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33034でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、
b. 2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、
c. 2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株GR-S5-8及びその変異株、
からなる群より選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項10】
医薬又は殺生物剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項11】
外部寄生虫ダニ侵襲の制御用及び/又は軽減用の、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項12】
外部寄生虫ダニによって引き起こされる疾患の予防及び/又は治療を必要とする動物において、その予防及び/又は治療に使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項13】
前記外部寄生虫ダニがデルマニサス属種、オルニトニサス属種、アルガス属種、アロプソロプトイデス・ガリ、ネオクネミドコプテス・ガリナエ、クネミドコプテス・ミュータンス、ラミノシオプテス・システィコラ、メグニニア・クビタリス、メグニニア・ギングリムラ、プテロリカス・オブタス、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス、コロンビフィラス・ポロニカ、デログリフス・エロンガテス、ガウドグリフス・ミノー、オトデクテス・シノチス、チェイレティエラ・ヤスグリ、デモデクス属種、ノトエドレス・カティ、チェイレティエラ属種、プソロプテス属種、コリオプテス属種、プソレルガテス・オビス、サルコプテス・スカビエイ、プソロビア・オビス、ライリエチア・アウリス及びバロア属種、並びにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項11又は12に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項14】
前記外部寄生虫ダニがデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)である、請求項13に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項15】
薬学的に許容可能なビヒクル及び/又は許容可能なアジュバントを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は請求項10~14のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
【請求項16】
薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって適用される、請求項10~15のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項17】
トリ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ及びミツバチ類から選択される動物に適用される、請求項10~15のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項18】
前記ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも25%の死滅率をもたらす、請求項11又は13又は14に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項19】
前記ダニの少なくとも25%の死滅率が、前記組成物を該ダニに適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる、請求項18に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を使用することを含む、媒介物においてダニ侵襲を制御及び/又は軽減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは獣医学的用途の方法、及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(Bt)株の生芽胞を含む組成物に関する。該方法及び組成物は、ダニ侵襲(infestations:外寄生)の予防及び治療、特に外部寄生虫によって生じるダニ侵襲の制御又は軽減、例えば、特にトリ類に影響を与えるデルマニサス・ガリナエ(Dermanyssus gallinae)(ワクモ(poultry red mite))によって生じる侵襲の制御及び軽減のためのものである。
【背景技術】
【0002】
ダニは小型無脊椎動物であり、殆どが自由生活性であるが、一部は寄生性である。動物に侵襲及び寄生するダニは、非ヒト動物において侵襲及び/又は感染を引き起こし、莫大な損失をもたらす。ダニは極めて多様であり、それらの分類は相当に複雑である。ダニ及びマダニは、例えば(昆虫綱の)昆虫とは別に分類される。しかしながら、ダニ及びマダニは、互いに完全に異なる生態を有する。
【0003】
動物のダニは、重大なタイプの皮膚疾患を引き起こし、一部のダニは他の器官に侵襲する。ダニは、皮膚の表層、角質層の死細胞の間(例えば、プソロプテス・オビス(Psoroptes ovis))、宿主の毛包(例えば、デモデクス属(Demodex))等の動物の身体の様々な部位に感染することがあり、又は短時間の摂食時に宿主に侵襲することもある(いわゆる吸血ダニ、例えばデルマニサス・ガリナエ)。鳥類の肺及び気嚢又は哺乳動物の肺に侵襲するように適応したダニもいる(例えば、シトジテス・ヌダス(Cytodites nudus))。
【0004】
外部寄生性ダニであるバロア・デストラクタ・アンデルソン及びトゥルーマン(Varroa destructor Anderson and Trueman)(旧名バロア・ヤコブソニ・アウデマンス(Varroa jacobsoni Oudemans))は、ミツバチ(アピス・メリフェラL(Apis mellifera L))の重要害虫である。この血リンパ摂食性(haemolymph-feeding)ダニは、成虫及び幼虫のハチを弱らせるだけでなく、バロア症におけるウイルス感染の媒介体及び誘導因子となり、世界中のハチ集団に重大な被害をもたらしている(非特許文献1)。深刻かつ世界的な侵襲を引き起こす別の重要な病原性の(pathological)ダニは、いわゆる「アカダニ」、「ワクモ」又はデルマニサス・ガリナエ(D.ガリナエ)である。アカダニ侵襲と関連する第1の悩みの種は、欧州において極めて高く、増え続けている、この疾患の有病率である。最近の疫学的検討により、欧州の農場の83%にD.ガリナエが侵襲していることが報告されている。この有病率はオランダ、ドイツ及びベルギーにおいては94%に達する。ワクモ侵襲は、裏庭又は有機農場から、より集約的なエンリッチドケージ又は畜舎システムまであらゆる生産様式に影響を与える。ワクモ侵襲の影響は、欧州において過去数十年で増大しており、更に増大することが予想されている。
【0005】
この増大に寄与する第1の要因の1つは、EU加盟国における産卵鶏飼育の畜舎システムの最近の変容である。卵の生産及び卵の取引に関する指令1999/74/ECにより、2012年から家禽類への従来のケージの使用が禁止された。この法律は、産卵鶏の福祉を改善することを目的とするものであるが、より複雑な環境を組み入れた畜舎システムへの移行をもたらし、この環境がダニの増殖に有利であり、アカダニ侵襲の問題を悪化させると考えられる。例えば、エンリッチドケージは、効果的な処理を回避するためのはるかに多くの隠れ場所をアカダニに与える。従来のケージシステム内で飼育された雌鶏におけるダニの侵襲率は、代替的なシステムと比較してはるかに低いことが記載されている。従来のケージが初めて禁止される前の2009年には(オーストリア及びドイツは、かかるケージを2010年以降禁止している)、欧州連合における産卵鶏畜舎システムの74.4%が依然として従来のケージであった。2013年に、全加盟国が従来のケージから主にエンリッチドケージ、畜舎システム及び放し飼いの畜舎システムへの変容プロセスを完了することができた。すなわち、2009年から4年以内に、産卵鶏の大多数がダニの増殖に不利なシステムから増殖に有利なシステムへと移されたことになる。
【0006】
今後アカダニ侵襲の増加に有利に働くと予想される別の環境因子は、気候温暖化である。異常気象事象である2003年夏の猛暑においては、アカダニの大量発生が多数の雌鶏の死滅に関与していた。
【0007】
最後に、安全性への懸念により国内市場から幾つかのダニ駆除剤化学製品が排除され、長期にわたって新たな効果的な制御方法がなかったことから、欧州におけるD.ガリナエ有病率が悪化した可能性がある。したがって、ダニ侵襲を制御又は軽減し、特にデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって引き起こされるダニ侵襲を制御又は軽減する方法及び組成物を提供する必要がある。
【0008】
この意味で、D.ガリナエの制御のための考え得る様々な戦略を説明した概説が、非特許文献2に記載されている。非特許文献2によると、幾つかのB.チューリンゲンシス株が鱗翅類及び一部の双翅類の害虫に対して殺虫活性を示した。しかしながら、同様に非特許文献2によると、脊椎動物におけるバチルス・チューリンゲンシス(B.チューリンゲンシス)の使用は、細胞レベルでのその毒性によって障害される。
【0009】
バチルス・チューリンゲンシスは好気性、芽胞形成性、グラム陽性かつ昆虫病原性の細菌である。B.チューリンゲンシス種は一般に、系統発生及び血清型別による特徴に基づいて分類される様々な亜種(B.チューリンゲンシス亜種クルスターキ(kurstaki)、B.チューリンゲンシス亜種アイザワイ(aizawai)等)の大きなファミリーからなる。
【0010】
B.チューリンゲンシスは、農業における即効性かつ宿主特異的な生物殺虫剤として既知である。
【0011】
現行の技術水準(例えば、最近の総説である非特許文献3を参照されたい)においては基本的に、B.チューリンゲンシスの毒性は、細菌によって産生される様々な毒素、昆虫及び他の無脊椎動物の標的化において重要な役割を果たすことが非特許文献3に記載されている毒素によるものと考えられている。上記毒素には、殺虫性Cryタンパク質、栄養生長期殺虫性タンパク質(vegetative insecticidal protein:Vip)毒素及び細胞毒素(Cyt)タンパク質が含まれる。
【0012】
B.チューリンゲンシスにおいて特定される毒素は、更新され続けている。例えば、www.lifesci.sussex.ac.uk/Home/Neil_Crickmore/Bt/を参照されたい。世界の様々な地域から単離されたB.チューリンゲンシス株において、様々な昆虫病原性タンパク毒素をコードする、900種を超える毒素遺伝子が特定され、特性評価されている。
【0013】
B.チューリンゲンシスは、上記の毒素に加えて、キチナーゼ(酵素タンパク質)及びメタロプロテイナーゼ等の同様に毒性作用を示す他の化合物を産生する。B.チューリンゲンシスは、熱安定性の二次代謝産物であるツリンギエンシン(Thu、ベータ-エキソトキシンすなわちβ-エキソトキシン)等の他の毒性化合物も分泌する。
【0014】
非特許文献4は、ワクモの幼虫に対するバチルス・チューリンゲンシス亜種クルスターキ(Btk)の効果を、接触バイオアッセイ法を用いることで評価している。非特許文献4は、市販品Dipel(商標)を研究に使用した。Dipel(商標)の製品ラベルによると、該製品の使用によって得られる殺虫活性は、B.チューリンゲンシス亜種クルスターキによって産生される、B.チューリンゲンシス亜種クルスターキの4つのタンパク質:Cry1Aa、Cry1Ab、Cry1Ac及びCry2毒素によるものである。Cry、Cyt及びVipタンパク質の含有量に基づいて、各株が鱗翅類、双翅類又は鞘翅類の害虫等の植食性昆虫(insect plants)、さらには植物及び動物の両方に存在するダニ及び線虫等の他の無脊椎動物に対して特異的に活性を有する可能性がある。
【0015】
このため、既に述べたように、B.チューリンゲンシスの生物活性は、主にツリンギエンシン、さらには副芽胞(parasporal)結晶タンパク質(又はδ-エンドトキシン)Cry毒素に起因する。これらのCryタンパク質は鱗翅類、鞘翅類及び双翅類等の広範な害虫に対して毒性を有する。この結晶は、B.チューリンゲンシスの全細胞タンパク質の約30%を占めると推定される(非特許文献5)。
【0016】
したがって、上で説明したように、文献においては主に、特に農業における害虫の処理のための先に述べた毒素の毒性に焦点が合わせられる。
【0017】
しかしながら、利用可能な動物のダニに対するB.チューリンゲンシスの効果に関する現行の技術水準の知識は乏しい。動物に対するB.チューリンゲンシスのダニ駆除活性についてはもちろん、動物のダニに対するB.チューリンゲンシス株の生物活性について報告しているin vitro及びin vivo研究は殆どない。
【0018】
現在、獣医学的慣行におけるダニ侵襲の制御のためのB.チューリンゲンシス製品は、世界市場においては承認されていない。ホキシム、アベルメクチン、ピレスロイド、アミトラズ及び他の化学物質等の合成ダニ駆除剤の使用による制御が依然として主流であり、耐性の問題及び治療の失敗が広く報告されている。したがって、家禽におけるD.ガリナエ等の動物生産におけるダニ侵襲の制御には、より安全かつより有効な制御対策が必要とされている。
【0019】
結論として、当該技術分野においては、動物又はヒトに害を及ぼすことなくダニ、特に家禽ダニを制御する問題に対する解決策を見出すことが依然として必要とされている。非ヒト動物における侵襲/害虫の大規模制御の代替手段としての、有害な化学農薬の代用物としての環境に優しい微生物殺ダニ剤の使用は、その問題に対する有利かつ新たな解決策を提供する。この点で、本願は、B.チューリンゲンシスが新規の有益な殺ダニ剤組成物の製造に適しており、非ヒト動物生産におけるこれらのタイプの侵襲/害虫の生物的防除にとって有望な代替手段となることを初めて示すものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Ball & Allen 1988
【非特許文献2】Chauve C. et al., 1998, The poultry red mite Dermanyssus gallinae (De Geer, 1778): current situation and future prospects for control. Vet. Parasitol. 79 (1998) 239-248
【非特許文献3】Zhen et al., Comparative genomics of Bacillus thuringiensis reveals a path to specialized exploitation of multiple invertebrate hosts, American Society for Microbiology, 2017, 8(4)
【非特許文献4】Torres, E.C. et al., 2018. Actividad acaricida de Bacillus thuringiensis sobre el acaro rojo de las aves, Dermanyssus gallinae. Rev. Vet 29 (2): 128-132, 2018
【非特許文献5】Den D.H. et al., 1984
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1に説明する5つの異なる配合物(配合物1~5)について24時間での平均ダニ死滅率を示す図である。横軸の異なる配合物についての24時間でのダニ死滅率の平均パーセンテージを縦軸に示す。
図2】実施例2に説明する3つの異なる配合物(配合物1~3)について24時間及び48時間での平均ダニ死滅率を示す図である。横軸の異なる配合物についての24時間及び48時間でのダニ死滅率の平均パーセンテージを縦軸に示す。
図3】実施例3に説明する9つの異なる群(群1~9)についての24時間及び48時間での平均ダニ死滅率を示す図である。横軸の9つの異なる群についての24時間及び48時間でのダニ死滅率の平均パーセンテージを縦軸に示す。
図4】実施例5に説明する6つの異なる配合物(配合物1~6)について24時間及び48時間での平均ダニ死滅率を示す図である。横軸の6つの異なる配合物についての24時間及び48時間でのダニ死滅率の平均パーセンテージを縦軸に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
他に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、出願時に本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。しかしながら、何らかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書に提示される定義が他のいかなる定義よりも優先される。さらに、文脈上他に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、同様に複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0023】
本開示において、「含む」("comprises," "comprising,")、「含有する(containing)」及び「有する(having)」等は、欧州及び米国の特許法においてそれらに付与された意味を有し、「含む」("includes," "including,")等を意味する場合がある。「から本質的になる」("consisting essentially of" or "consists essentially")は、同様に欧州及び米国の特許法において付与された意味を有し、この用語はオープンエンドであり、列挙されるものの基本的な又は新規の特性が列挙されるもの以外のものの存在によって変化しない限りにおいて、列挙されるもの以外のものの存在を許容するが、従来技術の実施形態は除外される。
【0024】
「接触する」とは、組成物と触れるか、組成物と結び付いているか又は組成物に近接していることを意味する。かかる組成物は、限定されるものではないが、薬浴(bathing)、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬及び/又は散布によって適用可能である。
【0025】
ダニ侵襲を「制御又は軽減する」、「制御又は軽減するのに適した」又は「制御又は軽減するために」とは、ダニの生存を阻害若しくは阻止するか、又はダニ集団の成長を低減する、遅らせる若しくは安定させることを意味する。本発明の文脈において、ダニは幼体発生(juvenile development)、幼虫期及び成虫期等の当業者に既知の生活環のあらゆる段階であり得る。
【0026】
「生物学的機能」とは、生物の任意の生理的又は行動的活動を意味する。例示的な生物学的機能としては、限定されるものではないが、生殖、呼吸、神経活動、運動が挙げられる。
【0027】
「有効量」とは、動物のダニ侵襲を予防又は治療するため、すなわち、動物及び/又はその環境(ケージ、敷地、媒介物等)での寄生生物数を改善若しくは低減するため、及び/又は動物でのダニ侵襲の発症を、例えばダニ集団を制御及び/又は軽減することによって全体的若しくは部分的に阻害するために、単回投与で又は一連の投与の一部として必要とされる有効量を意味する。有効量又は有効用量により、かかる疾患の治療又は予防のいずれかのために、動物における二次感染の重症度又は疾患の発生率を制御及び/又は低減することも可能である。この量は、被験体の健康状態を含む様々な要因によって異なり、当業者であれば容易に決定することができる。いずれにせよ、有効量は、好ましくは本発明の組成物の投与前及び投与後の両方の動物及び/又は媒介物上でのダニの数の観察又は検出によって容易に決定することができ、例えばダニ数は、最初の投与後に10%~100%、好ましくは50%超、より好ましくは70%超、より好ましくは80%超、更により好ましくは90%超、更により好ましくは95%超、更により好ましくは99%超低減する。有効量に影響を及ぼす要因として、例えば処理すべき寄生生物種及び寄生生物の発生段階、被害動物の種類(例えば、種及び品種)、年齢、大きさ、性別、食生活、活動及び状態、温度、湿度等の環境条件を挙げることができ、本発明による組成物の好ましい有効量は異なり得る。
【0028】
「侵襲」とは、害虫による部位へのコロニー形成又は生体への寄生を意味する。媒介物(細菌、ウイルス又は寄生生物等の感染因子で汚染された場合に新たな宿主へ疾患を伝播する可能性がある無生物)へのコロニー形成も本発明の文脈において包含される。害虫は、植物若しくは動物、ヒト若しくはヒトに関わるもの、家畜、又は人工物に侵襲し又は厄介である、動物、細菌、寄生生物、ウイルス、植物又は真菌を問わず、任意の生物である。害虫として(経済的重要性の順に)最も重要な動物群は、昆虫、ダニ、線虫及び腹足類である。かかる侵襲は、場合によっては、被験体又は宿主の感染を誘導し、健康状態を増悪及び/又は悪化させ、及び/又はかかる被験体において疾患を引き起こす恐れがある。D.ガリナエの侵襲と雌鶏の死滅率との間には関係が認められる(Cosoroaba I., 2001. Massive Dermanyssus gallinae invasion in battery-husbandry raised fowls. Rev. Med. Vet. Toulouse 152:89-96)。
【0029】
「ダニ」とは、哺乳動物、魚類、昆虫(例えばハチ)及びトリ類、特に家禽動物等の脊椎動物及び無脊椎動物に侵襲するクモ形類の寄生生物を意味する。商業的に重要な家禽ダニの例は、特にデルマニサス属種(Dermanyssus sp)、オルニトニサス属種(Ornithonyssus sp)、アロプソロプトイデス・ガリ(Allopsoroptoides galli)、ネオクネミドコプテス・ガリナエ(Neocnemidocoptes gallinae)、クネミドコプテス・ミュータンス(Knemidocoptes mutans)、ラミノシオプテス・システィコラ(Laminosioptes cysticola)、メグニニア・クビタリス(Megninia cubitalis)、メグニニア・ギングリムラ(Megninia ginglymura)、プテロリカス・オブタス(Pterolichus obtus)、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス(Syringophilus bipectinatus)、コロンビフィラス・ポロニカ(Columbiphilus polonica)、デログリフス・エロンガテス(Deroglyphus elongates)及びガウドグリフス・ミノー(Gaudoglyphus minor)である。
【0030】
本発明の文脈において、ダニは幼体発生、幼虫期及び成虫期等の当業者に既知の生活環のあらゆる段階であり得る。
【0031】
「デルマニサス・ガリナエ」は、「ワクモ」とも理解され、「ニワトリダニ」、「アカダニ」又は「鶏舎ダニ(roost mite)」としても知られる。これは、体長およそ1.5mmの小さな外部寄生性ダニであり、体色は摂食状態に応じて灰色から褐色/赤色まで様々である。ワクモは卵の他、幼虫、第一若虫、第二若虫及び成虫の4つの生活環段階を有する。幼虫は6本脚で孵化し、摂食しない。最初の脱皮後に、若虫期及び成虫の両方で8本の脚を有するようになる。第一若虫、第二若虫及び成虫の雌は、宿主の血液を常食とするが、雄は時折しか摂食しない。アカダニは宿主に寄生した後、2日~4日に1回、最大1時間という短時間の摂食を、常にというわけではないが通例、暗い間に行う。1回の幼虫期及び2回の若虫期を経た、卵から成虫までのデルマニサス・ガリナエの完全な発生は通例、2週間かけて生じる。デルマニサス・ガリナエの密度は、一般にケージシステムにおいて鳥1羽当たり50000匹のダニにまで達するが、深刻な場合には密度が鳥1羽当たり500000匹のダニに達することもある。D.ガリナエは年間を通して存在し得るが、最も高い密度は高温多湿の季節に生じる。D.ガリナエは世界中で見られ、特に温帯の温暖な地域において深刻である。D.ガリナエは、宿主において摂食を行うが、恒久的に寄生することはないため、一時的な節足動物と考えられる外部寄生性ダニであるが、成虫期間の大部分をかかる宿主の環境下で生息する。ダニは、摂食のためだけに宿主上に留まり、その後、付近の亀裂及び隙間に移動して産卵する。ダニは、バタリーケージ及び床面システムの両方に発生する。しかしながら、この問題は、ダニにとって好適な多数の隠れ場所の存在のために、動物福祉の懸念から欧州において確立された床面及び「エンリッチド」ケージシステムにより多く、広範に見られる。デルマニサス・ガリナエ等の一時的な寄生生物の制御は、それらが宿主動物及び環境の両方に見られることがあるため、特に困難である。
【0032】
「殺ダニ剤」とは、殺ダニ活性を有し、したがって、ダニの生物学的機能に対して有害作用を引き起こす作用物質を意味する。効果は、例えば殺卵、殺幼虫及び/又は殺成虫、又はそれらの組合せであり得る。
【0033】
「殺ダニ活性」とは、ダニ又は他のコナダニ類の成長、生殖又は生存を阻害、阻止、停止及び/又は低減する任意の活性を意味する。効果は、例えば殺卵、殺幼虫及び/又は殺成虫、又はそれらの組合せであり得る。
【0034】
ダニ侵襲を「予防する」、「予防するために」又は「予防」とは、限定されるものではないが、宿主に侵襲することが可能な成虫寄生生物及び/又は任意の発生段階/幼虫期を宿主への侵襲前に殺すか、又はダニが予め処理された動物に侵襲する際にダニを殺す若しくは阻害することによってダニ侵襲が或る部位において確立されるリスクを減少、低減若しくは改善すること、又はダニの子孫の発生を予防する、例えば産卵数及び/又は孵化率を低減することを意味する。さらに、害虫、好ましくはダニ侵襲によって引き起こされる有害作用に対して動物を予防及び/又は保護することを意味する。効果は、例えば殺卵、殺幼虫及び/又は殺成虫、又はそれらの組合せであり得る。効果は直接的に、すなわちダニを即座に若しくはしばらく経過してから、例えば卵を破壊することで殺すことによって現れることも、又は間接的に、例えば産卵数及び/又は孵化率を低減することによって現れることもある。
【0035】
ダニ侵襲を「治療する」、「治療するために」又は「治療」とは、限定されるものではないが、宿主に侵襲することが可能な成虫寄生生物及び/又は任意の発生段階/幼虫期を宿主への侵襲前に殺すか、又はダニが予め処理された動物に侵襲する際にダニを殺す若しくは阻害することによって或る部位におけるダニ集団の成長を抑制、制限、低減、安定化又は遅延させることを意味する。さらに、既存の症状、臨床兆候、障害、病態及び/又は疾患等の害虫、好ましくはダニ侵襲によって引き起こされる有害作用に対して動物を治療及び保護することを意味する。効果は、例えば殺卵、殺幼虫及び/又は殺成虫、又はそれらの組合せであり得る。効果は直接的に、すなわちダニを即座に若しくはしばらく経過してから、例えば卵を破壊することで殺すことによって現れることも、又は間接的に、例えば産卵数及び/又は孵化率を低減することによって現れることもある。
【0036】
「医薬」又は「医薬品」とは、広く認められているように、ヒトを含む動物における疾患を治癒、治療又は予防するために使用される任意の医薬組成物又は動物用組成物(薬剤、投薬又は単に薬物とも称される)を意味する。薬物は様々な方法で分類される。重要な区別の1つは、通常は化学合成によって得られる従来の小分子薬物と、限定されるものではないが、生きた又は死滅微生物、組換えタンパク質、ワクチン、治療に使用される血液製剤(IVIG等)、遺伝子療法、モノクローナル抗体及び細胞療法(例えば、幹細胞療法)を含む生物学的製剤又はバイオ医薬品との間のものである。本発明において、医薬は好ましくは動物用医薬であり、更により好ましくは、動物及び/又は媒介物における獣医学的用途の組成物である。
【0037】
「医薬組成物」とは、予防及び/又は治療用途の最終医薬品を調製することを意図した活性物質又は活性物質の組合せを意味する。本発明において、医薬又は医薬品は、好ましくは動物用医薬であり、更により好ましくは獣医学的用途の医薬組成物である。医薬組成物は、動物に直接的に適用しても、又は動物が存在する環境に間接的に適用してもよい。
【0038】
「薬学的に許容可能な」とは、生物学的に又は他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、又はかかる組成物の成分のいずれかと有害に相互作用することなく、本発明の組成物とともに材料を被験体に投与することができる。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能なビヒクル」という用語は、同義であり、有害作用なしに被験体及び/又は環境に投与することができる医薬組成物の活性物質を含めるためのビヒクルを指す。好適な薬学的に許容可能な担体としては、滅菌水、精製水、生理食塩水、グルコース、デキストロース又は緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されない。担体は、希釈剤、安定化剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、pH緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)、粘度添加剤等を含むが、これらに限定されない助剤を含んでいてもよい。
【0039】
「殺生物剤組成物」とは、化学的又は生物学的に言えば、任意の有害な生物を破壊、抑止、無害化するか又はそれに対して制御効果を発揮することを意図した化学物質、生物又は微生物を意味する。本発明の文脈において、殺生物剤組成物は、好ましくは生物、又は微生物等の生物、好ましくは細菌性微生物、より好ましくはバチルス・チューリンゲンシスによって自然に産生される化合物を指す。殺生物剤組成物は、ヒト若しくは動物の健康に有害であるか、又は天然産物若しくは製品に損傷を与える生物を制御するために使用される殺虫剤、消毒剤、保存料及び農薬を含む有害物質の多様な群を包含し得る。殺生物剤製品は、1種以上の殺生物活性物質を含有し、最終殺生物剤製品の有効性並びに所望のpH、粘度、色、香り等を保証する他の非活性共配合物(co-formulants)を含有していてもよい。殺生物剤組成物は、動物に直接的に適用しても、又は動物が存在する環境に間接的に適用してもよい。
【0040】
「細菌調製物」とは、当該技術分野で既知のように、細菌培養物、細菌培養物の一部又は後処理された細菌培養物を含む調製物を意味する。細菌調製物は、或る固有の株の細菌又は同じ細菌の2つ以上の株を含み得る。本発明において、細菌調製物は、バチルス・チューリンゲンシスの1種以上の種の細菌及びその亜種を含み得る。
【0041】
「活性成分」又は「活性物質」とは、生物学的に活性な医薬組成物又は殺生物剤組成物中の成分及び/又は物質を意味する。
【0042】
「アジュバント」又は「許容可能なアジュバント」とは、当該技術分野で既知のように、活性物質とともに投与され、免疫応答をより効果的なものとする免疫系の非特異的ではない刺激物と理解される。アジュバントの幾つかの例は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、ビタミンE、スクアラン、スクアレン、チョウセンニンジン、ザイモサン、グルカン、ジメチルアミノエチルデキストラン、デキストラン、非イオン性ブロックポリマー、モノホスホリルリピドA、植物油、サポニン、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、W/O、O/W、W/O/W型エマルション、及びそれらの混合物である。アジュバントは、有効性を高め、及び/又は除草剤、殺虫剤、殺真菌剤、殺ダニ剤、及び望ましくない害虫を制御若しくは排除する他の作用物質等の農薬及び/又は殺生物剤の標的生物に浸透するか、標的生物を標的化若しくは保護する能力を改善するために使用される成分(安定化剤、防腐剤及び/又は着色剤等)としても理解される。
【0043】
「被験体」とは、個体を意味する。一態様において、被験体は、ヒトを含む霊長類等の哺乳動物である。別の態様において、哺乳動物は、特にマーモセット、サル、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン及びテナガザル等の非ヒト霊長類である。「被験体」という用語は、ネコ、イヌ等の飼い慣らされた動物;家畜、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等;実験動物、例えばフェレット、チンチラ、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミ、モルモット等;及びトリ類、例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、キジ、ハト、コバト、オウム、コカトゥー、ガチョウ等も含む。被験体は、限定されるものではないが、魚類(例えばゼブラフィッシュ、キンギョ、ティラピア、サケ及びマス)、両生類及び爬虫類も含み得る。本明細書において使用される場合、「被験体」は、「患者」又は「宿主」又は「罹患被験体」と同じであり、これらの用語を区別なく使用することができる。
【0044】
本発明の文脈において、「トリ」、「トリ類」、「トリ被験体」又は「トリ宿主」という用語は、ダニ侵襲及び/又は感染、好ましくはD.ガリナエ感染又は侵襲の傾向がある又はそれを起こしやすい全てのトリ類を包含することが理解される。本発明に包含されるトリ類は、例えば家禽又は野鶏動物と総称されるものを含む。他の実施形態においては、これらの用語は、飼い慣らされた鳥類又は狩猟鳥類、例えばニワトリ、シチメンチョウ、キジ、ガチョウ及び/又はアヒル類を含むように広げられる。一実施形態においては、「トリ」、「トリ類」、「トリ被験体」又は「トリ宿主」という用語は、商業的に重要な又は飼育される鳥類、例えば家禽にまで及ぶ。
【0045】
「産卵鶏(laying hen)」又は「卵用鶏(layer)」とは、主に産卵のために飼育される成体の雌性ニワトリ(ガッルス・ドメスティクス(Gallus domesticus))を意味する。かかる卵は概して、ヒトの食品としての消費のために使用される。本発明における「産卵鶏」という用語は、将来の産卵鶏が孵化する卵を産むために飼育される種畜を含む。
【0046】
「ブロイラー」とは、食肉生産のために特別に繁殖及び飼育されたキジ類の飼い慣らされた野鶏を意味する。
【0047】
「動物が飼育される敷地」とは、動物がかかる敷地に恒久的又は一時的に収容され、かかる敷地に制限された時間で(放し飼いの雌鶏の畜舎のように一時的に)、又は産卵鶏の従来のケージ若しくはブロイラーの鶏舎のように恒久的にアクセスすることができる場所を意味する。
【0048】
本発明の文脈において、「非芽胞タンパク質」又は「非芽胞性タンパク質」という用語は、芽胞殻に囲まれず、概して外膜にも囲まれない、栄養型バチルス・チューリンゲンシス細胞によって合成される一連のタンパク質を指し、特に副芽胞結晶タンパク質を含む。外膜は、成熟芽胞の外層であり、芽胞とそれが相互作用する環境又は宿主との間の境界を画定する。病原体については、その相互作用には、芽胞と宿主の免疫系の細胞との最初の接点が含まれる。結晶タンパク質は通常、外膜の外側に位置するが、バチルス・チューリンゲンシスの一部の株については、外膜が結晶タンパク質を包み込み得る少数の事例がある。したがって、本発明の文脈において、副芽胞結晶タンパク質は、外膜の外側又は内側という位置とは無関係に、非芽胞タンパク質とみなされる。
【0049】
本発明の文脈において、「副芽胞結晶タンパク質」という用語は、栄養型バチルス・チューリンゲンシス細菌によって合成されるデルタ(δ)-エンドトキシンであるタンパク質Cry及びCytとして理解される。この群のタンパク質は、芽胞形成プロセスにおいて凝集し、結晶と同じタイプのタンパク質によって形成されるが、異なる立体配座の外被によって取り囲まれた結晶として知られる結晶封入体を形成する。結晶タンパク質又は封入体は、主にプロトキシンとして知られる単一又は複数のポリペプチドからなる。昆虫病原性バチルス・チューリンゲンシスの株は、1種以上の結晶封入体、すなわち副芽胞結晶タンパク質を形成する能力を有する。
【0050】
デルタ-エンドトキシンの完全リストは、例えばhttp://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/(Crickmore et al., 1998, 2016)で利用することができる。
【0051】
本発明の文脈において、「生細菌芽胞」という用語は、好ましい環境変化を受動的に検出し、発芽して、生理的に活性な栄養細胞を生成する能力を有するバチルス・チューリンゲンシス芽胞として理解される。これに対し、「生育不能芽胞」という用語は、条件が好ましい場合であっても発芽することができない芽胞を指す。生細菌芽胞の数は、生細胞数に基づく既知の1ml当たりのコロニー形成単位(CFU/ml)の手法等の標準的な微生物学的手法によって決定することができる(Goldman, Emanuel; Green, Lorrence H. Practical Handbook of Microbiology. 3rd Edition, published 4 June, 2015; Chapter 2. Quantification of Microorganisms. Page 19, Plate Count Method by Peter S. Lee, page 24. CRC Press, 1055 pages. ISBN 9781466587397)。コロニーの計数は通常、ペン及びクリックカウンターを用いて手動で行われる。代替的には、半自動(ソフトウェア)及び自動(ハードウェア+ソフトウェア)を用いることができる。
【0052】
本発明の文脈においては、農場から単離されたB.チューリンゲンシス(Bt)の生細菌芽胞が好ましく、家禽農場から単離されたBt生芽胞がより好ましく、ダニ侵襲の程度が低い又は高い家禽農場から単離されたBt生芽胞が更により好ましく、ダニ侵襲の程度が低いが、最終的にデルマニサス・ガリナエダニの高侵襲率をもたらす好ましい条件を有する家禽農場から単離されたBt生芽胞が最も好ましい。
【0053】
本発明の文脈において、B.チューリンゲンシスの「非結晶性(non-crystalliferous)」株という用語は、Cryタンパク質を欠いたゲノム(染色体及びプラスミドDNA)を有する株を意味する。Cryタンパク質の欠如は、InstaGene(商標) Matrixの使用等の標準方法を用いてB.チューリンゲンシス株からDNA抽出を行い、全ゲノムシークエンシングを行い、続いてhttp://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt(Crickmore et al., 1998, 2016)等のよく知られたゲノムデータベースにおいて、Cryタンパク質との任意の一致が存在するかを確かめることによって評定することができる。これらのデータベースには、完全なCry遺伝子又はCryタンパク質と部分的相同性を有する遺伝子が含まれる。B.チューリンゲンシスの非結晶性株は、これらの遺伝子(完全又は部分配列)に対してあらゆる程度の相同性でCry遺伝子が欠如している必要がある。したがって、非結晶性B.チューリンゲンシス株においては、これらのデータベースからいかなる結果(記載のCryタンパク質に対して完全又は部分的)も検索することはできない。
【0054】
B.チューリンゲンシス株の全ゲノムのシークエンシングは、IlluminaのHiSeqプラットホーム等の標準方法を用いて行うこともできる。配列は、CLC Genomic Workbench(CLC Bio,Denmark)等のソフトウェアツールを用いてアセンブルすることができる。リードを通常はトリミングにかけ、低品質リード及び30塩基対未満のリードという極端なものを除外する。結果として得られるリードをコンティグへとde novoアセンブルする。得られるコンティグは、参照配列とペアになり、少なくとも95%の同一性パーセンテージを有する、アラインメントされた配列の少なくとも95%のレクチャー(lectures)を含む。コンティグの構築後に、レクチャーを再びコンティグに割り当てる。得られるコンティグを、http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt(Crickmore et al., 1998, 2016)で利用可能なもの等のバチルス・チューリンゲンシス毒素のアミノ酸配列からなるデータベースを用いてBLAST(Altschul et al., 1990)で分析する。BLASTは、このデータベースの使用に限定されず、当業者に既知の他の利用可能なデータベースを含んでいてもよい。
【0055】
本発明の文脈において、「変異タンパク質」又は「変異毒素」という用語は、非サイレント変異を有する遺伝子によってコードされるタンパク質産物として理解される。変異タンパク質は、単一のアミノ酸変化(軽微ではあるが、多くの場合、疾患につながる大きな変化である)又は例えば未成熟終止コドンの導入後のC末端の切断による広範なアミノ酸変化を有し得る。
【0056】
説明
本発明の著者らは驚くべきことに、D.ガリナエダニ等のダニの死滅率に対する様々なバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株の活性が、副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質及び/又は上記Bt株によって産生される他の毒素の存在ではなく、主に有効量の細菌生芽胞の存在と関連があることを発見した。本発明者らの知る限りでは、かかる活性が、主に上記Bt株によって産生される副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質と関連するのではなく、生細菌芽胞と明らかに関連付けられるのは初めてである。
【0057】
本発見を支持する実験的証拠は、本明細書の実施例を通して見ることができる。この意味で、副芽胞結晶タンパク質を全く産生しない、2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下に寄託されたB.チューリンゲンシスの非結晶性株(GR-S5-8)が、芽胞及び副芽胞結晶タンパク質の両方を含有する配合物(配合物2)よりも高い83%の死滅率をもたらした(配合物3)ことが実施例1に示される。さらに、この実施例では、精製生芽胞を富化した実験用配合物4が、他の配合物と比べた活性の増大をもたらし、芽胞及び副芽胞結晶タンパク質の両方を含有する非精製配合物2と比較してより大幅なD.ガリナエ集団の減少を引き起こし(80%のダニ死滅率)、配合物2が67%のダニ死滅率をもたらすことが更に観察された。生芽胞を富化した精製配合物がダニの死滅率に対して、副芽胞結晶タンパク質を含有する組成物において観察されるよりも良好な活性を有することは確かに予期せぬものであった。加えて、生芽胞及び副芽胞結晶タンパク質を熱処理による不活性化に供したところ、ダニの死滅率は全く観察されなかった(配合物5)。すなわち、生芽胞が存在しない副芽胞結晶タンパク質は、ダニに対する活性を示さない。本発明者らの知る限りでは、抗D.ガリナエ活性等の抗ダニ活性が、Bt株によって産生される副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質の存在ではなく、生Bt芽胞と明らかに関連付けられるのは初めてである。
【0058】
さらに、実施例3に示されるように、組成物中に存在する生芽胞が少ないほど、実験用配合物による処理の24時間後及び48時間後の両方でD.ガリナエダニの死滅率が低いことが更に観察された。同様に、生芽胞の用量が高いほど、組成物の非芽胞タンパク質の含有量にかかわらず死滅率が高くなった。これらの結果から、抗ダニ活性を生じる上での生芽胞の役割が更に実証される。同様に、試験した全てのBt株が3.1×10個の生芽胞(CFU)/mlで配合した場合に顕著な死滅率を有していた。特に、寄託されたDSM 33035 Bt株であるDE2-S2-8は、より高度の抗ダニ活性を示し、処理の48時間後に66%の死滅率を示した(群9)。
【0059】
さらに、予期せぬことに、B.チューリンゲンシス調製物と鉱油との混合物は、B.チューリンゲンシス株の生存能力及びそれらの抗ダニ活性に対して悪影響を与えなかった。それどころか、実験用配合物の効果を大幅に増大させ、ダニ死滅率に対して相乗効果をもたらした。この意味で、実施例5に示されるように、鉱油及び3.1×10個の生芽胞(CFU)/mlを用いて調製した配合物3(群3)は、僅か48時間で90%を超えるダニ死滅率を達成した。鉱油調製物に混ぜたB.チューリンゲンシス配合物の混合物は、実験用配合物に使用されるB.チューリンゲンシス細菌の用量の低減を可能にすることが更に観察された。例えば、3.4×10個の生芽胞(CFU)/mlの用量を配合した鉱油調製物(群1)は、48時間で70.10%のダニ死滅率をもたらした。B.チューリンゲンシス配合物を鉱油と混合しない場合にも同様の死滅率が得られたが、この場合、3.1×10個の生芽胞(CFU)/mlの用量で配合していた(群5)。すなわち、実験用配合物に鉱油が存在することなく死滅率に対して同様の結果(68%)を達成するためには、はるかに高い用量が必要であった。
【0060】
このため、Bt調製物と鉱油との相乗効果が確認された。付加的な実験においては、FS Btサンプルと、1.25%等の非常に低いパーセンテージの鉱油を含むエマルションとの混合であっても、相乗効果が維持されることが観察された。
【0061】
これまでに与えられた結果により、本発明の第1の態様は、バチルス・チューリンゲンシス(B.チューリンゲンシス)の少なくとも1種の株の細菌調製物を活性成分として含む、ダニ侵襲を制御又は軽減するのに適した医薬組成物又は殺生物剤組成物であって、細菌調製物が少なくとも上記B.チューリンゲンシスの1種の株の生芽胞を有効量含むことを特徴とする、医薬組成物又は殺生物剤組成物に関する。細菌調製物は、組成物1ml当たり少なくとも1×10cfuの生芽胞、好ましくは組成物1ml当たり少なくとも1×10cfuの生芽胞、好ましくは組成物1ml当たり少なくとも1×10cfuの生芽胞、更に好ましくは組成物1ml当たり少なくとも1×10cfuの生芽胞の有効量を含むのが好ましい。より好ましくは、細菌調製物は、組成物1ml当たり少なくとも3×10cfuの生芽胞の有効量を含む。更により好ましくは、細菌調製物は、組成物1ml当たり少なくとも3×10cfuの生芽胞の有効量を含む。
【0062】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの好ましい実施形態においては、細菌調製物は、バチルス・チューリンゲンシス(B.チューリンゲンシス)の少なくとも1種の株の生芽胞を富化した精製配合物を有効量含む。かかる精製集団が、バチルス・チューリンゲンシス亜種クルスターキ(Btk)を含む本発明全体を通して特定された株のいずれかを含み得ることに留意されたい。特に、生芽胞の精製集団は、生芽胞が単離される細菌の粗集団よりも顕著に高い割合の生芽胞を含有する。例えば、精製手順は、粗集団に対して生芽胞の少なくとも5倍の増加、好ましくは少なくとも10倍の増加、より好ましくは少なくとも15倍の増加、最も好ましくは少なくとも20倍の増加、最適には少なくとも25倍の増加をもたらすはずである。
【0063】
したがって、本発明の精製集団は、上記のように天然に存在するよりも顕著に高いレベルの生芽胞を含有する。
【0064】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、細菌調製物は、デルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じるダニ侵襲を制御又は軽減するのに適したB.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株の生芽胞を有効量含む。
【0065】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、好ましくはデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じるダニ侵襲を制御又は軽減するのに適し、組成物1ml当たり、生芽胞よりも少ない量の副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質を産生する株である。B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、好ましくはデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じるダニ侵襲を制御又は軽減するのに適し、バチルス・チューリンゲンシス亜種クルスターキ(Btk)、亜種アイザワイ、亜種イスラエレンシス及び亜種モリソーニよりも少ない量の副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質を産生する株であるのが好ましい。より好ましくは、B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、好ましくはデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じるダニ侵襲を制御又は軽減するのに適し、1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき、自然発生微生物バチルス・チューリンゲンシス亜種クルスターキ(Btk)よりも少ないB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質を産生する株である。更により好ましくは、B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、好ましくはデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じるダニ侵襲を制御又は軽減するのに適し、1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき1.7mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質、好ましくは1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき1.5mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質、又は1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき1.3mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質、又は1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき0.8mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質、又は1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき0.5mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質、又は1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき0.3mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質、又は1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき0.1mg/ml未満のB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質を産生する株である。
【0066】
更により好ましくは、上記の段落に示すB.チューリンゲンシスの副芽胞結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質は、栄養型バチルス・チューリンゲンシス細菌によって合成されるタンパク質Cry及びCyt等のデルタ(δ)-エンドトキシンからなる群より選択される。これらの群のタンパク質は、芽胞形成プロセスにおいて凝集し、結晶と同じタイプのタンパク質によって形成されるが、異なる立体配座の外被によって取り囲まれた結晶として知られる結晶封入体を形成する。非限定的な非芽胞タンパク質の選択は、Cry(Cry1、Cry2、Cry3等)及びCyt(Cyt1、Cyt3等)ファミリータンパク質等のデルタ(δ)-エンドトキシン(デルタ-エンドトキシンの詳細なリストは、2019年7月時点で利用可能な以下のウェブサイトhttp://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/で利用することができる)(Crickmore et al., 1998, 2016);Vipファミリータンパク質(Vip1、Vip2、Vip3及びVip4)等の栄養生長期殺虫性タンパク質;Sipファミリータンパク質等の分泌殺虫性タンパク質;ツリンギエンシン等のβ-エキソトキシン、スフェリコリシン(sphaericolysins)及びアルベオリシン(alveolysins)等のコレステロール依存性細胞溶解素に関連するタンパク質;Belエンハンシン等のエンハンシン様タンパク質;P19及びP20タンパク質等のヘルパータンパク質、又はBt 41.9kDaタンパク質等の非タンパク性β-エキソトキシンである(Palma et al., 2014. Bacillus thuringiensis Toxins: An Overview of Their Biocidal Activity. Toxins 2014, 6, 3296-3325; doi:10.3390/toxins6123296)。
【0067】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、
2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたバチルス・チューリンゲンシス株及びその変異株、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33034でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、並びに、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、
からなる群より選択される。
【0068】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、医薬組成物又は殺生物剤組成物は、殺虫剤、ダニ駆除剤、殺真菌剤、殺線虫剤、抗生物質、清浄剤、免疫原性物質、動物飼料、精油、鉱油、栄養補給食品、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス、多糖及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の更なる活性成分又は機能性成分を更に含む。好ましくは、更なる活性成分は、トリ伝染性気管支炎ウイルス(IBv)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、アデノウイルス、産卵低下症候群ウイルス(EDS)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)、ニワトリ貧血ウイルス、トリ脳脊髄炎ウイルス、鶏痘ウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、アヒルペストウイルス、鳩痘ウイルス、マレク病ウイルス(MDV)、トリ白血病ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)、トリニューモウイルス、レオウイルス、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ属種(Salmonella sp.)、オルニソバクテリウム・リノトラケアレ(Ornithobacterium rhinotracheale)、ヘモフィラス・パラガリナルム(Haemophilus paragallinarum)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、エリジペロトリックス・ルジオパシアエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、エリシペラ属種(Erysipela sp.)、マイコプラズマ属種(Mycoplasma sp.)、クロストリジウム属種(Clostridium sp.)、アイメリア属種(Eimeria sp.)及びアスペルギルス属種(Aspergillus sp)からなる群より選択される微生物に由来する免疫原性物質である。
【0069】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、医薬組成物又は殺生物剤組成物は粉剤、散剤、粒剤、マイクロカプセル製剤、ローション、軟膏剤、ゲル、クリーム、ペースト、懸濁剤、原液、液剤及びエマルションからなる群より選択される剤型である。医薬組成物又は殺生物剤組成物は薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布による適用に適しているのが好ましい。
【0070】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの更に別の好ましい実施形態においては、組成物は、1種以上の薬学的に許容可能なビヒクル及び/又は1種以上の許容可能なアジュバントを更に含む。
【0071】
本発明の第2の態様は、医薬又は殺生物剤として使用される、本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかにおいて定義される医薬組成物又は殺生物剤組成物に関する。
【0072】
本発明の第3の態様は、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減に使用される、本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかにおいて定義される医薬組成物又は殺生物剤組成物に関する。
【0073】
本発明の第4の態様は、好ましくは動物又は媒介物における外部寄生虫ダニによって生じるダニ侵襲の制御及び/又は軽減に使用される、本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかにおいて定義される医薬組成物又は殺生物剤組成物に関する。好ましくは、外部寄生虫ダニは、デルマニサス属種(Dermanyssus sp)、オルニトニサス属種(Ornithonyssus sp)、アルガス属種(Argus sp)、アロプソロプトイデス・ガリ(Allopsoroptoides galli)、ネオクネミドコプテス・ガリナエ(Neocnemidocoptes gallinae)、クネミドコプテス・ミュータンス(Knemidocoptes mutans)、ラミノシオプテス・システィコラ(Laminosioptes cysticola)、メグニニア・クビタリス(Megninia cubitalis)、メグニニア・ギングリムラ(Megninia ginglymura)、プテロリカス・オブタス(Pterolichus obtus)、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス(Syringophilus bipectinatus)、コロンビフィラス・ポロニカ(Columbiphilus polonica)、デログリフス・エロンガテス(Deroglyphus elongates)、ガウドグリフス・ミノー(Gaudoglyphus minor)、オトデクテス・シノチス(Otodectes cynotis)、チェイレティエラ・ヤスグリ(Cheyletiella yasguri)、デモデクス属種(Demodex sp.)、ノトエドレス・カティ(Notoederes cati)、チェイレティエラ属種(Cheyletiella sp.)、プソロプテス属種(Psoroptes sp.)、コリオプテス属種(Chorioptes sp.)、プソレルガテス・オビス(Psorergates ovis)、サルコプテス・スカビエイ(Sarcoptes scabiei)、プソロビア・オビス(Psorobia ovis)、ライリエチア・アウリス(Raillietia auris)及びバロア属種(Varroa sp.)、並びにそれらの組合せからなる群より選択される。より好ましくは、外部寄生虫ダニは、デルマニサス・ガリナエ(ワクモ)である。
【0074】
本発明の第4の態様の好ましい実施形態においては、動物は、トリ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ及びミツバチ類からなる群より選択される。トリ類は家禽であるのが好ましい。
【0075】
本発明の第4の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも25%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも25%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第4の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも40%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも40%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第4の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも50%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも50%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第4の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも60%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも60%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第4の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも70%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも70%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。
【0076】
本発明の第4の態様又はその好ましい実施形態のいずれかのまた別の好ましい実施形態においては、医薬組成物又は殺生物剤組成物を薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって適用する。
【0077】
本発明の第4の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、
2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株及びその変異株、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33034でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、並びに、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、
からなる群より選択される。
【0078】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかにおいて定義される医薬組成物又は殺生物剤組成物を使用することを含む、媒介物においてダニ侵襲を制御及び/又は軽減する方法に関するものであり、好ましくは、媒介物は動物が飼育される敷地内に位置し、より好ましくは、動物はトリ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ及びミツバチ類からなる群より選択される。
【0079】
本発明の第5の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも25%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも25%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第5の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも40%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも40%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第5の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも50%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも50%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第5の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも60%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも60%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第5の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも70%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも70%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第5の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、医薬組成物又は殺生物剤組成物は、動物が飼育される敷地内に位置する媒介物に適用される。
【0080】
本発明の第5の態様又はその好ましい実施形態のいずれかのまた別の好ましい実施形態においては、医薬組成物又は殺生物剤組成物を薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって適用する。
【0081】
本発明の第5の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、
2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株及びその変異株、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33034でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、並びに、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、
からなる群より選択される。
【0082】
本発明の第6の態様においては、本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかにおいて定義される医薬組成物又は殺生物剤組成物は、更なる活性成分を含み、該更なる活性成分は、精油又は鉱油である。好ましくは、上記組成物は、上記精油又は鉱油中に配合される。より好ましくは、更なる活性成分は鉱油であり、該鉱油は流動パラフィンである。
【0083】
本発明の第7の態様は、好ましくは動物又は媒介物におけるダニ侵襲の制御及び/又は軽減に使用される、本発明の第6の態様において定義される医薬組成物又は殺生物剤組成物に関する。好ましくは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減は、媒介物において行われ、媒介物は、好ましくは動物が飼育される敷地内に位置する。更に好ましくは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減は、動物において行われ、動物はトリ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ及びミツバチ類からなる群より選択される。トリ類は家禽であるのが好ましい。
【0084】
本発明の第7の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも25%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも25%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第7の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも40%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも40%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第7の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも50%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも50%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第7の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも60%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも60%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第7の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも70%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも70%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第7の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも80%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも80%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。本発明の第7の態様の別の好ましい実施形態においては、外部寄生虫ダニは、ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも90%の死滅率をもたらすように選択され、好ましくは、ダニの少なくとも90%の死滅率は、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる。
【0085】
本発明の第7の態様の代替的な実施形態においては、本発明は、外部寄生虫ダニによって引き起こされる疾患の予防及び/又は治療を必要とする動物において、その予防及び/又は治療に使用される、本発明の第1又は第6において定義される医薬組成物又は殺生物剤組成物に関する。好ましくは、疾患は、デルマニサス属種、オルニトニサス属種、アルガス属種、アロプソロプトイデス・ガリ、ネオクネミドコプテス・ガリナエ、クネミドコプテス・ミュータンス、ラミノシオプテス・システィコラ、メグニニア・クビタリス、メグニニア・ギングリムラ、プテロリカス・オブタス、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス、コロンビフィラス・ポロニカ、デログリフス・エロンガテス、ガウドグリフス・ミノー、オトデクテス・シノチス、チェイレティエラ・ヤスグリ、デモデクス属種、ノトエドレス・カティ、チェイレティエラ属種、プソロプテス属種、コリオプテス属種、プソレルガテス・オビス、サルコプテス・スカビエイ、プソロビア・オビス、ライリエチア・アウリス及びバロア属種、並びにそれらの組合せからなる群より選択される外部寄生虫ダニによって引き起こされる。更に好ましくは、ダニ侵襲の予防及び/又は治療は、動物において行われ、動物はトリ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ及びミツバチ類からなる群より選択される。トリ類は家禽であるのが好ましい。
【0086】
本発明の第7の態様又はその好ましい実施形態のいずれかのまた別の好ましい実施形態においては、医薬組成物又は殺生物剤組成物を薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって適用する。
【0087】
本発明の第7の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株は、
2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株及びその変異株、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33034でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、並びに、
2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株、
からなる群より選択される。
【0088】
本発明の第7の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態においては、ダニは外部寄生虫ダニである。好ましくは、外部寄生虫ダニは、デルマニサス属種、オルニトニサス属種、アルガス属種、アロプソロプトイデス・ガリ、ネオクネミドコプテス・ガリナエ、クネミドコプテス・ミュータンス、ラミノシオプテス・システィコラ、メグニニア・クビタリス、メグニニア・ギングリムラ、プテロリカス・オブタス、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス、コロンビフィラス・ポロニカ、デログリフス・エロンガテス、ガウドグリフス・ミノー、オトデクテス・シノチス、チェイレティエラ・ヤスグリ、デモデクス属種、ノトエドレス・カティ、チェイレティエラ属種、プソロプテス属種、コリオプテス属種、プソレルガテス・オビス、サルコプテス・スカビエイ、プソロビア・オビス、ライリエチア・アウリス及びバロア属種からなる群より選択される。より好ましくは、外部寄生虫ダニは、デルマニサス・ガリナエ(ワクモ)である。
【0089】
本発明の第7の態様又はその好ましい実施形態のいずれかのまた別の好ましい実施形態においては、組成物を薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって適用する。組成物を噴霧によって適用するのが好ましい。
【0090】
本発明を、以下の実施例に照らして更に示すが、実施例は本発明を例示するにすぎず、本発明を限定するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態及び好ましい実施形態の全ての可能な組合せを対象に含める。
【実施例
【0091】
実施例1:芽胞活性の評定。摂取によるバイオアッセイ
本実施例の目的は、摂取によって行われるバイオアッセイを用いて、デルマニサス・ガリナエダニに対する、異なる条件で配合した異なるバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株の活性を研究することであった。
【0092】
スペインにて単離されたバチルス・チューリンゲンシス(Bt)DSM 33173株(2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33173でブダペスト条約の下に寄託された株)及びB.チューリンゲンシスDSM 33175株(2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下に寄託された株)を本アッセイに使用した。DSM 33175株は、D.ガリナエの高侵襲率が記録された家禽農場にて特異的に単離された。DSM 33175株は、副芽胞結晶タンパク質をコードする遺伝子を有しないBt株である。したがって、活性バイオアッセイに含まれる株の1種は、非結晶性Bt株、特にDSM 33175株であった。一方、DSM 33173 Bt株は、芽胞及び副芽胞結晶タンパク質の両方を含有する株と特徴付けられた(標準方法を用いてBt DSM 33173株のゲノムをシークエンシングしたところ、Cry21及びCry55遺伝子が検出された)。
【0093】
Bt株が非結晶性株であるかを決定するために、当業者は一般常識を用いることができる。既知のように、B.チューリンゲンシスの非結晶性株は、Cryタンパク質を欠いたゲノム(染色体及びプラスミドDNA)を有する株である。Cryタンパク質の欠如は、InstaGene(商標) Matrixの使用等の標準方法を用いてB.チューリンゲンシス株からDNA抽出を行い、全ゲノムシークエンシングを行い、続いてhttp://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt(Crickmore et al., 1998, 2016)等のよく知られたゲノムデータベースにおいて、Cryタンパク質との任意の一致が存在するかを確かめることによって評定することができる。これらのデータベースには、完全なCry遺伝子又はCryタンパク質と部分的相同性を有する遺伝子が含まれる。B.チューリンゲンシスの非結晶性株は、これらの遺伝子に対してあらゆる程度の相同性でCry遺伝子が欠如している必要がある。したがって、非結晶性B.チューリンゲンシス株においては、これらのデータベースからいかなる結果(記載のCryタンパク質に対して完全又は部分的)も検索することはできない。
【0094】
B.チューリンゲンシス株の全ゲノムのシークエンシングは、IlluminaのHiSeqプラットホーム等の標準方法を用いて行うこともできる。配列は、CLC Genomic Workbench(CLC Bio,Denmark)等のソフトウェアツールを用いてアセンブルすることができる。リードを通常はトリミングにかけ、低品質リード及び30塩基対未満のリードという極端なものを除外する。結果として得られるリードをコンティグへとde novoアセンブルする。得られるコンティグは、参照配列とペアになり、少なくとも95%の同一性パーセンテージを有する、アラインメントされた配列の少なくとも95%のレクチャーを含む。コンティグの構築後に、レクチャーを再びコンティグに割り当てる。得られるコンティグを、http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt(Crickmore et al., 1998, 2016)で利用可能なもの等のバチルス・チューリンゲンシス毒素のアミノ酸配列からなるデータベースを用いてBLAST(Altschul et al., 1990)で分析する。BLASTは、このデータベースの使用に限定されず、当業者に既知の他の利用可能なデータベースを含んでいてもよい。
【0095】
本実施例においては、DSM 33173及びDSM 33175の両方の株の個々のコロニーを以下のように異なるエルレンマイヤーに接種した。コロニーを、80mlのCCY培地(Stewart, G. S. A., K. Johnstone, E. Hagelberg, and D. J. Ellar. 1981. Commitment of bacterial spores to germinate. Biochem. J. 198:101-106)の入った250mlのエルレンマイヤーにおいて28℃で72時間、インキュベーターシェーカーにて220rpmで撹拌しながら培養した。72時間後に、光学顕微鏡を1000倍で用いた目視検査によって芽胞形成を確かめ、芽胞が完全に形成されていることが確認された。この時点で、1M NaCl及び10mM EDTAを培養物に添加した。その後、培養物を4℃にて11200Gで10分間遠心分離した。ペレットを続いてMili-Q水で再懸濁し、上清を捨てた。再懸濁したペレットの2回目の遠心分離を4℃にて11200Gで10分間行った。上清を再び捨て、ペレットをMili-Q水で再懸濁した。再懸濁したペレットの3回目の遠心分離を4℃にて11200Gで10分間行い、得られた上清を再び捨て、ペレットを最後に1.5ml~1.8mlの最終容量までMili-Q水で再懸濁して、バイオアッセイ用のBtサンプルの最終懸濁液を得た(これをFS Btサンプルと名付けた)。
【0096】
次いで、Btサンプルの最終懸濁液に含まれる非芽胞タンパク質の含有量を定量した。この定量を行うために、FS Btサンプルを精製水で10倍希釈した後、均質化した。その後、pH11.3の炭酸緩衝液940ml、1Mジチオトレイトール(DTT)10μl及び10倍希釈したFS Btサンプル懸濁液50μlを1.5mlのエッペンドルフチューブに添加した。次いで、エッペンドルフチューブを37℃で2時間、インキュベーターシェーカーにて220rpmで撹拌しながらインキュベートした。この時点で、エッペンドルフチューブを13200Gで5分間遠心分離した。最後に、上清を用いて非芽胞タンパク質を定量した。定量は、Bradford, M. M. 1976. A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Anal. Biochem. 72:248-254に記載されるブラッドフォードタンパク質アッセイ等のタンパク質定量の標準的な手法によって行った。
【0097】
摂取バイオアッセイを行うために、以下の溶液:10mlのウシ胎仔血清(FBS)ホモジネート、50mgのD-グルコース、25mgのATP及び100μlの発色溶液(50mlとなるまでPBS中の35g/lキノリンイエローE-104、40g/lパテントブルーE-131)を予め調製し、これをFBS最終溶液と称した。
【0098】
続いて、FBS最終溶液を用いて以下の5つの異なる実験用配合物を調製した:
配合物1:陰性対照:同量の精製水と1:1(v/v)で混合したFBS最終溶液。
配合物2(Bt DSM 33173):B.チューリンゲンシス株DSM 33173の全非芽胞タンパク質の含有量が0.4mg/mlとなるように精製水で調整したBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)と1:1(v/v)で混合したFBS最終溶液。DSM 33173株のFS Btサンプルは、いかなる精製プロセスにも供しなかった。
配合物3(Bt DSM 33175):B.チューリンゲンシス株DSM 33175の全非芽胞タンパク質の含有量が0.4mg/mlとなるように精製水で調整したBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)と1:1(v/v)で混合したFBS最終溶液。DSM 33175のFS Btサンプルは、副芽胞結晶タンパク質を含有しなかった。
配合物4(DSM 33173、精製芽胞):DSM 33173株のBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)を更なる精製プロセスに供し、FS Btサンプルの生芽胞を富化した。精製工程のために、B.チューリンゲンシス最終懸濁液(FS Btサンプル)をpH9.0の炭酸緩衝溶液に可溶化した。可溶化後に懸濁液を遠心分離し、ペレットをMili-Q水で再懸濁した。次いで、可溶化タンパク質を含む上清を捨て、ペレットを残した。次いで、ペレットをB.チューリンゲンシス株DSM 33173の非芽胞タンパク質の含有量が0.4mg/mlとなるまで精製水で調整した。最後に、これをバイオアッセイのためにFBS最終溶液と1:1(v/v)で混合した。配合物4は、生芽胞の含有量が高かった。
配合物5(DSM 33173、熱処理):120℃で20分間熱処理し、B.チューリンゲンシス株DSM 33173の全非芽胞タンパク質の含有量が0.4mg/mlとなるように精製水で調整したBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)と1:1(v/v)で混合したFBS最終溶液。FS Btサンプルに対して行った熱処理は、結晶タンパク質等の非芽胞タンパク質と生芽胞との両方を不活性化するために行った。
【0099】
FBS最終溶液に含まれる発色溶液は、5つの実験用配合物のいずれかを摂食したダニを明確に特定するための指標として使用した。
【0100】
デルマニサス・ガリナエの成虫及び若虫サンプルは、デルマニサス・ガリナエダニの侵襲率が高い家禽(卵用鶏)農場から採集した。動いている健常なダニのみを本研究に選択した。ダニを50mlの換気容器において24℃~26℃で1週間、食物源に全く触れさせずに維持した。
【0101】
ダニをそれぞれ約20匹の5つの異なる群に分けた。各群に5つの異なる実験用配合物の1つを与えた。各群のダニを長さおよそ10cm、幅0.5cmのメタクリレートチューブに導入した。メタクリレートチューブの一方の端を、1mlのマイクロピペットカットチップ(cut tip)を取り付けた20μmメッシュを用いて密閉した。もう一方の端には、2×2cmの1日齢ニワトリ皮膚片を0.6mlの実験用配合物(1~5、各群に1つ)の入った1mlのマイクロピペットチップによって固定した。
【0102】
各群のダニを30℃及び80%~100%の高相対湿度で2時間放置し、実験用配合物を自由に摂取させた。その後、実験用配合物を摂取した着色ダニを選択した。次いで、一方の端を完全に密閉し、1mlのマイクロピペットカットチップを取り付けた20μmメッシュでもう一方の端を密閉した新たなメタクリレートチューブに着色ダニを導入した。
【0103】
5つの異なる実験用配合物の活性を、各群のダニの死滅率をモニタリングすることによって評定した。死滅率は、24時間後に実体顕微鏡を20倍~40倍で用いて確かめた。
【0104】
死滅率の結果を図1にまとめる。アッセイにより、結晶タンパク質を全く産生しない非結晶性株DSM 33175が、芽胞及び副芽胞結晶タンパク質の両方を含有する配合物(67%、群2)よりも高い83%の死滅率をもたらした(群3)ことから、芽胞が副芽胞結晶タンパク質に比べ、D.ガリナエダニの死滅率に対して明らかな活性を有することが実証された。
【0105】
さらに、精製生芽胞を富化した実験用配合物4(群4)が、他の配合物と比べた(特に配合物2と比べた)活性の増大をもたらし、芽胞及び副芽胞結晶タンパク質の両方を含有する非精製配合物2(群2)と比較してより大幅なD.ガリナエ集団の減少を引き起こし(80%のダニ死滅率)、配合物2が僅か67%のダニ死滅率をもたらすことが観察された。
【0106】
加えて、生芽胞及び副芽胞結晶タンパク質を熱処理による不活性化に供したところ、ダニの死滅率は全く観察されなかった(群5)。
【0107】
農業において殺虫剤として使用されるB.チューリンゲンシス株の毒性作用が結晶タンパク質によるものであることが従来技術により明らかに開示されていることを考慮し、本発明者らは、生芽胞を富化した精製配合物がダニの死滅率に対して、結晶タンパク質を含有する組成物において観察されるよりも良好な活性を有することを予想していなかったため、これらの結果は驚くべき、予期せぬものであるとみなされる。
【0108】
実施例2:プレートバイオアッセイでの芽胞活性の評定
ダニ死滅率に対する生芽胞の活性を実証するために、第2のアッセイを行った。今回は、実施例1において使用した摂取モデルの代わりに、寒天プレートバイオアッセイに基づく新たな実験モデルを用いた。プレートバイオアッセイは、今後の現場条件によりよく似ている。
【0109】
様々な実験用配合物をプレートバイオアッセイのために調製した。
【0110】
この目的で、7.5gのEuropean bacteriological agarを500mlのMili-Q水中で均質化した。得られた均質化寒天を121℃で20分間オートクレーブ処理した。次いで、プレート(ペトリ皿(例えば、Greiner bio-oneのペトリ皿、型番633181、蓋付き皿、外径93mm、有効容量15ml、最大容量80ml))1枚に25mlの寒天溶液を入れた。
【0111】
3つの異なる実験用配合物を以下のように調製した:
配合物1(非精製芽胞調製物):実施例1に記載されるBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)を、B.チューリンゲンシス株DSM 33173の非芽胞タンパク質の含有量が約2.5mg/mlとなるように精製水で調整した。
配合物2(精製芽胞調製物):実施例1に記載されるBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)を精製プロセスに供し、FS Btサンプルの生芽胞を富化した。精製工程のために、B.チューリンゲンシス最終懸濁液(FS Btサンプル)をpH9.0の炭酸緩衝溶液に可溶化した。可溶化後に懸濁液を遠心分離し、ペレットをMili-Q水で再懸濁した。次いで、上清を捨て、ペレットを残した。次いで、ペレットをB.チューリンゲンシス株DSM 33173の非芽胞タンパク質の含有量が約2.5mg/mlとなるまで精製水で調整した。
配合物3(陰性対照):Mili-Q水を陰性対照として使用した。
【0112】
50μl/プレートの上記の各実験用配合物(1~3)を寒天プレートに塗布した。
【0113】
デルマニサス・ガリナエの成虫及び若虫サンプルは、デルマニサス・ガリナエダニの侵襲率が高い家禽(卵用鶏)農場から採集した。動いている健常なダニのみを本研究に選択した。ダニを50mlの換気容器において24℃~26℃で1週間、食物源に全く触れさせずに維持した。ダニをそれぞれ約20匹の3つの異なる群に分けた。
【0114】
試験される実験用配合物(1~3)を用いて予め準備した寒天プレート上に各群のダニを置いた。
【0115】
ダニが逃げないように両面接着テープ(two face double-sided bonding tape)を用いてペトリ皿を密閉した。研究中、ペトリ皿を26℃及び70%の相対湿度で維持した。3つの異なる実験用配合物の活性を、各プレート群におけるダニの死滅率をモニタリングすることによって評定した。死滅率は、24時間後及び48時間後に実体顕微鏡を20倍~40倍で用いて確かめた。
【0116】
死滅率の結果を図2にまとめる。実施例2においてプレートバイオアッセイを用いて得られた結果は、先の実施例1において摂取バイオアッセイ実験モデルを用いて観察された効果を支持するものであった。
【0117】
本発明者らは、実施例1に使用した摂取モデルの代わりに寒天プレートバイオアッセイに基づく実施例2において得られたより低い死滅率のパーセンテージが正常であると考える。プレートバイオアッセイは、今後の現場条件によりよく似ているが、摂取バイオアッセイを用いた場合、死滅率は常に高くなる。これは、摂取バイオアッセイにおいては、ダニが実験用配合物を摂取した後、配合物を摂取したダニのみを選択して生存率及び死滅率を確かめるためである。
【0118】
プレートバイオアッセイにより、精製芽胞調製物をベースとする配合物2(群2)が、非精製芽胞配合物をベースとする配合物1(群1)よりも高いダニ死滅率のパーセンテージをもたらし、48時間後にそれぞれ48.81%及び27.77%の死滅率が得られることが実証された。この場合も、本発明者らは驚くべきことに、副芽胞結晶タンパク質に富む組成物がダニの死滅率の点で生芽胞に富む精製組成物よりも劣っていることを見出した。
【0119】
実施例3:様々なBt組成物の用量応答に関する研究
本実施例は、異なる用量を用いた場合の生芽胞を含む様々なB.チューリンゲンシス(Bt)組成物の活性を確かめるために行った。
【0120】
デルマニサス・ガリナエの成虫及び若虫サンプルは、デルマニサス・ガリナエダニの侵襲率が高い家禽(卵用鶏)農場から採集した。用量/応答アッセイを行うために動いている健常なダニを選択した。アッセイは、寒天プレートバイオアッセイに基づくモデル(実施例2)を用いて行ったが、ペトリ皿(例えば、Greiner bio-oneのペトリ皿、型番633181、蓋付き皿、外径93mm、有効容量15ml、最大容量80ml)の代わりに細胞培養フラスコ(例えば、Falconフラスコ、型番353107、12.5cm、25ml、通気口付きスクリューキャップを備える)を使用した。細胞培養フラスコは、実施例2に記載されるようにEuropean bacteriological agarを用いて予め準備した。この場合、ペトリ皿1枚当たり25mlの代わりにフラスコ1本当たり11mlの寒天溶液を入れた。ダニは農場から採集し、それぞれ約20匹の9つの異なる群に分けた。
【0121】
本研究に使用したB.チューリンゲンシス株は、D.ガリナエの高侵襲率が検出されたスペインにある家禽農場にて単離されたBt株に相当する分離株であるGR-S5-8、同様にD.ガリナエの高侵襲率が検出されたスペインにある家禽農場にて単離されたBt株に相当する分離株であるGR-P14-3、及びD.ガリナエの低侵襲率が検出されたドイツにある家禽農場にて単離されたBt株に相当する分離株であるDE2-S2-8であった。GR-S5-8分離株は、上記のように2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTIFIC, S.L.U.によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturenにブダペスト条約の下に寄託されたDSM 33175株に相当する。また、DE2-S2-8 Bt分離株は、2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTIFIC, S.L.U.によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturenにアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下に寄託された。
【0122】
全てのB.チューリンゲンシス株を実施例1に記載のように成長させ、用量応答アッセイを行うためのBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)を得た。B.チューリンゲンシス最終懸濁液(FS Btサンプル)1ml当たりの生芽胞の数は、コロニー形成単位(CFU)/ml等の標準的な微生物学の手法によって決定した。
【0123】
補足すると、上記のように、本発明者らが、追求される効果が副芽胞結晶タンパク質ではなく、芽胞と関連するという実施例1及び2において説明した結果から、副芽胞結晶タンパク質(非芽胞タンパク質)の濃度を決定又は定量する代わりに、B.チューリンゲンシス最終懸濁液1ml当たりの生芽胞の数を決定することにしたと強調することが重要である。
【0124】
次いで、GR-S5-8及びGR-P14-3株のBtサンプルの最終懸濁液を、精製水を用いて調製物1ml当たりの生芽胞の4つの異なる一定用量(CFU/ml)に調整した。生芽胞の4つの一定用量は、調製物1ml当たり3.8×10個、1.1×10個、3.4×10個及び3.1×10個の生芽胞(CFU)とした。この異なる用量は、GR-P14-3株については群1~群4、GR-S5-8株については群5~群8にそれぞれ対応する。一方、B.チューリンゲンシス株DE2-S2-8のBtサンプルの最終懸濁液を、3.1×10個の生芽胞(CFU)/mlの用量に調整した。この一定用量は群9に対応する。
【0125】
異なる生芽胞/mlの用量に調整した様々なBt調製物50μlを細胞培養フラスコに導入した。研究中、フラスコを26℃及び70%の相対湿度に維持した。様々な芽胞の調製物の活性を、各フラスコ内のダニの死滅率をモニタリングすることによって評定した。死滅率は、24時間後及び48時間後に実体顕微鏡を20倍~40倍で用いて確かめた。
【0126】
結果を図3にまとめる。結果から、抗ダニ活性を生じる上での生芽胞の明確な役割が実証された。組成物中の生芽胞が少ないほど、実験用配合物による処理の24時間後及び48時間後の両方で、より低いD.ガリナエダニの死滅率が観察されることが観察された。同様に、生芽胞の用量が高いほど、組成物の非芽胞タンパク質の含有量にかかわらず、高い死滅率が観察された。
【0127】
さらに、試験した全てのBt株が、3.1×10個の生芽胞(CFU)/mlで配合した場合に顕著な死滅率を有していた。特に、寄託されたDSM 33035 Bt株であるDE2-S2-8は、より高度の抗ダニ活性を示し、処理の48時間後に66%の死滅率を示した(群9)。
【0128】
実施例4:ダニに対する様々なBt株の活性の比較アッセイ
本実施例においては、様々な種類の害虫に対する家禽農場にて単離された様々なB.チューリンゲンシス(Bt)株の活性を評定し、農業に使用される市販品から単離されたBt株と比較した。
【0129】
7つの異なるB.チューリンゲンシス株を比較アッセイに含めた。Bt株は、以下のとおりであった:
DE2-S2-8株(ドイツにおける低D.ガリナエ侵襲率の家禽農場にて単離、DSM 33035)、
DE1-S2-4株(ドイツにおける高D.ガリナエ侵襲率の家禽農場にて単離、DSM 33034)、
DE2-S1-1株(ドイツにおける低D.ガリナエ侵襲率の家禽農場にて単離)、
GR_P1_4株(スペインにおける高D.ガリナエ侵襲率の家禽農場にて単離)、
MA_S15_3株(スペインにおける低D.ガリナエ侵襲率の家禽農場にて単離)、
DE2-S3-4株(ドイツにおける低D.ガリナエ侵襲率の家禽農場にて単離)、及び、
B.チューリンゲンシス亜種クルスターキ株ABTS-351(農業害虫の様々な市販品に存在する株)。この場合、Valent BioScience LLC製の市販品bioMAX 32(商標)から単離した。
【0130】
7つ全てのBt株を実施例1に記載のように培養し、比較アッセイを行うためのBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)を得た。B.チューリンゲンシス最終懸濁液(FS Btサンプル)1ml当たりの生芽胞の数を、コロニー形成単位(CFU)/ml(Goldman, E.; Green, L.H. Practical Handbook of Microbiology. 3rd Edition, published 4 June, 2015; Chapter 2. Quantification of Microorganisms. Page 19, Plate Count Method by Peter S. Lee, page 24. CRC Press, 1055 pages. ISBN 9781466587397)等の標準的な微生物学の手法によって決定した。コロニーの計数は、ペン及びクリックカウンターを用いて手動で行った。
【0131】
デルマニサス・ガリナエの成虫及び若虫サンプルは、デルマニサス・ガリナエダニの侵襲率が高い家禽(卵用鶏)農場から採集した。比較アッセイを行うために動いている健常なダニを選択した。ダニを農場から採集し、それぞれ約20匹の7つの異なる群に分けた。実施例3に記載のフラスコバイオアッセイ(全て実施例2に記載されるようにEuropean bacteriological agarを用いて予め準備した)を用いてアッセイを行った。フラスコ1本当たり11mlの寒天溶液を入れた。
【0132】
特定株のそれぞれを用いて調製したBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)50μlを各群の細胞培養フラスコに導入した。特定株を実施例1に記載のように成長させ、精製水を用いて調製物1ml当たり3.1×10個の生芽胞(CFU)の含有量に調整した。非芽胞タンパク質の含有量を実施例1に記載のように更に決定した。
【0133】
研究中、フラスコを26℃及び70%の相対湿度で維持した。様々な芽胞調製物の活性を、各フラスコ内のダニの死滅率をモニタリングすることによって評定した。死滅率は、24時間後及び48時間後に実体顕微鏡を20倍~40倍で用いて確かめた。
【0134】
死滅率の結果を表1にまとめる。
【0135】
【表1】
【0136】
全ての調製物が48時間でダニの死滅率をもたらした。しかしながら、農業害虫の制御に使用されるBt市販品によって観察されたデルマニサス・ガリナエ等のダニの死滅率は、上述のように一般的な農業市販品に存在するB.チューリンゲンシス亜種クルスターキ株ABTS-351を含有する調製物を用いた場合に顕著に低下した。一方で、市販のBt亜種クルスターキ以外のBt株について、ダニの死滅率に対する活性は倍増した。B.チューリンゲンシス亜種アイザワイ(3.09mg/ml;21.33%の死滅率)、B.チューリンゲンシス亜種モリソーニ(1.24mg/ml;22.50%の死滅率)又はB.チューリンゲンシス亜種イスラエレンシス(0.91mg/ml;30.36%の死滅率)等の高い非芽胞タンパク質含有量を有する試験した他の調製物により、ダニの死滅率に対する活性との上述の関係が更に実証された。
【0137】
したがって、驚くべきことに、概してダニの高い死滅率をもたらすBt株が、調製物に含まれる生芽胞に対して産生される非芽胞タンパク質の量が少ないものであることが観察された。非芽胞タンパク質の含有量が高いほど、観察される活性は低くなる。
【0138】
実施例5:鉱油を含むBt組成物の活性
本実施例においては、鉱油を含むB.チューリンゲンシス組成物の活性を評定した。本研究のために、実施例1に記載のようにBt株DE2-S2-8(DSM 33035)をベースとしたBtサンプルの懸濁液(FS Btサンプル)を調製した。続いて、1ml当たり異なる量の生芽胞を含有し、鉱油を配合した及び配合しない6つの異なる配合物を以下のように調製した:
配合物1。DE2-S2-8株のFS Btサンプルを、20%(v/v)の鉱油(Marcol 52)、0.9%のポリソルベート80、0.65%のソルビタンモノオレエート及び2.4%のSimulsol 5100を含有する86.2%(v/v)のPBSエマルションと混合した。サンプルの最終含有量を3.4×10個の生芽胞(CFU)/mlに調整した。
配合物2。DE2-S2-8株のFS Btサンプルを、20%(v/v)の鉱油(Marcol 52)、0.9%のポリソルベート80、0.65%のソルビタンモノオレエート及び2.4%のSimulsol 5100を含有する86.2%(v/v)のPBSエマルションと混合した。サンプルの最終含有量を1.03×10個の生芽胞(CFU)/mlに調整した。
配合物3。DE2-S2-8株のFS Btサンプルを、20%(v/v)の鉱油(Marcol 52)、0.9%のポリソルベート80、0.65%のソルビタンモノオレエート及び2.4%のSimulsol 5100を含有する86.2%(v/v)のPBSエマルションと混合した。サンプルの最終含有量を3.10×10個の生芽胞(CFU)/mlの含有量に調整した。
配合物4。精製水を用いて1.03×10個の生芽胞(CFU)/mlの含有量に調整したDE2-S2-8株のFS Btサンプル。
配合物5。精製水を用いて3.10×10個の生芽胞(CFU)/mlの含有量に調整したDE2-S2-8株のFS Btサンプル。
配合物6。Mili-Q水の陰性対照を使用した。
【0139】
デルマニサス・ガリナエの成虫及び若虫サンプルは、デルマニサス・ガリナエダニの侵襲率が高い家禽(卵用鶏)農場から採集した。アッセイを行うために動いている健常なダニを選択した。ダニを農場から採集し、それぞれ約20匹の6つの異なる群に分けた。実施例3に記載のフラスコバイオアッセイ(全て実施例2に記載されるようにEuropean bacteriological agarを用いて予め準備した)を用いてアッセイを行った。フラスコ1本当たり11mlの寒天溶液を入れた。
【0140】
各配合物(1~5)を用いて調製したBtサンプルの最終懸濁液(FS Btサンプル)50μlを各群の細胞培養フラスコに導入した。群6には陰性対照として50μlのMili-Q水を与えた。研究中、フラスコを26℃及び70%の相対湿度で維持した。様々な配合物の活性を、各フラスコ内のダニの死滅率をモニタリングすることによって評定した。死滅率は、24時間後及び48時間後に実体顕微鏡を20倍~40倍で用いて確かめた。
【0141】
死滅率の結果を図4にまとめる。予期せぬことに、B.チューリンゲンシス調製物と鉱油との混合物は、B.チューリンゲンシス株の生存能力及びそれらの抗ダニ活性に対して悪影響を与えなかった。それどころか、実験用配合物の効果を大幅に増大させ、ダニ死滅率に対して相乗効果をもたらした。鉱油及び3.1×10個の生芽胞(CFU)/mlを用いて調製した配合物3(群3)は、僅か48時間で90%を超える優れたダニ死滅率を達成した。
【0142】
鉱油調製物に混ぜたB.チューリンゲンシス配合物の混合物は、実験用配合物に使用されるB.チューリンゲンシス細菌の用量の低減を可能にすることが更に観察された。例えば、3.4×10個の生芽胞(CFU)/mlの用量を配合した鉱油調製物(群1)は、48時間で70.10%のダニ死滅率をもたらした。B.チューリンゲンシス配合物を鉱油と混合しない場合にも同様の死滅率が得られたが、この場合、3.1×10個の生芽胞(CFU)/mlの用量で配合していた(群5)。すなわち、実験用配合物に鉱油が存在することなく死滅率に対して同様の結果(68%)を達成するためには、はるかに高い用量が必要であった。
【0143】
このため、本発明者らによりBt調製物と鉱油との相乗効果が確認された。付加的な実験においては、FS Btサンプルと、1.25%等の非常に低いパーセンテージの鉱油を含むエマルションとの混合であっても、相乗効果が維持されることが観察された。
【0144】
項(CLAUSES)
1. バチルス・チューリンゲンシス(B.チューリンゲンシス)の少なくとも1種の株の細菌調製物を活性成分として含む、ダニ侵襲を制御又は軽減するのに適した医薬組成物又は殺生物剤組成物であって、細菌調製物が少なくとも上記B.チューリンゲンシスの1種の株の生芽胞を有効量含むことを特徴とする、医薬組成物又は殺生物剤組成物。
2. 細菌調製物が、デルマニサス・ガリナエ(ワクモ)によって生じるダニ侵襲を制御又は軽減するのに適したB.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株の生芽胞を有効量含む、項1の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
3. B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株がB.チューリンゲンシス亜種クルスターキ、亜種アイザワイ、亜種イスラエレンシス(Israelensis)、亜種モリソーニ(Morrisoni)よりも少ない量の副芽胞結晶タンパク質等のB.チューリンゲンシスの非芽胞タンパク質を産生する株である、項1又は2の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
4. B.チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、1ml当たり3.1×10個の生芽胞につき1.7mg/ml未満の副芽胞結晶タンパク質等のB.チューリンゲンシスの非芽胞タンパク質を産生する株である、項1又は2の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
5. B.チューリンゲンシスの非芽胞タンパク質がデルタ(δ)-エンドトキシン、タンパク質Cry及びCyt、栄養生長期殺虫性タンパク質(Vip1、Vip2、Vip3及びVip4)、分泌殺虫性タンパク質(Sipタンパク質)、β-エキソトキシン(ツリンギエンシン)、コレステロール依存性細胞溶解素に関連するタンパク質(スフェリコリシン及びアルベオリシン)、エンハンシン様タンパク質(Belエンハンシンタンパク質)、ヘルパータンパク質(P19及びP20タンパク質)、又は非タンパク性β-エキソトキシン(Bt 41.9kDaタンパク質)からなる群より選択される、項3又は4の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
6. 細菌調製物が、組成物1ml当たり少なくとも1×10cfuの生芽胞の有効量を含む、項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
7. 細菌調製物が、組成物1ml当たり少なくとも3×10cfuの生芽胞の有効量を含む、項6に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
8. 細菌調製物が、組成物1ml当たり少なくとも3×10cfuの生芽胞の有効量を含む、項6に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
9. 殺虫剤、ダニ駆除剤、殺真菌剤、殺線虫剤、抗生物質、清浄剤、免疫原性物質、動物飼料、精油、鉱油、栄養補給食品、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス、多糖及びそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種の更なる活性成分又は機能性成分を更に含む、項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
10. 更なる活性成分がIBv、NDV、アデノウイルス、EDS、IBDV、ニワトリ貧血ウイルス、トリ脳脊髄炎ウイルス、鶏痘ウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、アヒルペストウイルス、鳩痘ウイルス、MDV、トリ白血病ウイルス、ILTV、トリニューモウイルス、レオウイルス、エシェリキア・コリ、サルモネラ属種、オルニソバクテリウム・リノトラケアレ、ヘモフィラス・パラガリナルム、パスツレラ・ムルトシダ、エリジペロトリックス・ルジオパシアエ、エリシペラ属種、マイコプラズマ属種、クロストリジウム属種、アイメリア属種及びアスペルギルス属種からなる群より選択される微生物に由来する免疫原性物質である、項9に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
11. 粉剤、散剤、粒剤、マイクロカプセル製剤、ローション、軟膏剤、ゲル、クリーム、ペースト、懸濁剤、原液、液剤及びエマルションからなる群より選択される形態である、項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
12. 薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布による適用に適している、項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
13. 1種以上の薬学的に許容可能なビヒクル及び/又は1種以上の許容可能なアジュバントを更に含む、項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
14. バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33034でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株である、項1~13のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
15. バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株である、項1~13のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
16. バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株GR-S5-8及びその変異株である、項1~13のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
17. 医薬又は殺生物剤である、項1~16のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
18. ダニ侵襲の制御用及び/又は軽減用の、項1~16のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
19. 外部寄生虫ダニによって引き起こされる疾患の予防及び/又は治療を必要とする動物に対する、その予防用及び/又は治療用の、項1~16のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
20. 疾患が、デルマニサス属種、オルニトニサス属種、アルガス属種、アロプソロプトイデス・ガリ、ネオクネミドコプテス・ガリナエ、クネミドコプテス・ミュータンス、ラミノシオプテス・システィコラ、メグニニア・クビタリス、メグニニア・ギングリムラ、プテロリカス・オブタス、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス、コロンビフィラス・ポロニカ、デログリフス・エロンガテス、ガウドグリフス・ミノー、オトデクテス・シノチス、チェイレティエラ・ヤスグリ、デモデクス属種、ノトエドレス・カティ、チェイレティエラ属種、プソロプテス属種、コリオプテス属種、プソレルガテス・オビス、サルコプテス・スカビエイ、プソロビア・オビス、ライリエチア・アウリス及びバロア属種、並びにそれらの組合せからなる群より選択される外部寄生虫ダニによって引き起こされる、項19に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
21. 好ましくは動物又は媒介物における外部寄生虫ダニによって生じるダニ侵襲の制御用及び/又は軽減用の、項1~16のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
22. 外部寄生虫ダニがデルマニサス属種、オルニトニサス属種、アルガス属種、アロプソロプトイデス・ガリ、ネオクネミドコプテス・ガリナエ、クネミドコプテス・ミュータンス、ラミノシオプテス・システィコラ、メグニニア・クビタリス、メグニニア・ギングリムラ、プテロリカス・オブタス、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス、コロンビフィラス・ポロニカ、デログリフス・エロンガテス、ガウドグリフス・ミノー、オトデクテス・シノチス、チェイレティエラ・ヤスグリ、デモデクス属種、ノトエドレス・カティ、チェイレティエラ属種、プソロプテス属種、コリオプテス属種、プソレルガテス・オビス、サルコプテス・スカビエイ、プソロビア・オビス、ライリエチア・アウリス及びバロア属種、並びにそれらの組合せからなる群より選択される、項21に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
23. 外部寄生虫ダニがデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)である、項20又は22に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
24. ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも25%の死滅率をもたらす、項18又は21~23のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
25. ダニの少なくとも25%の死滅率が、組成物を上記ダニに適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる、項24に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
26. 薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって適用される、項17~25のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
27. バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33034でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株である、項17~26のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
28. バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、2019年2月21日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33035でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたB.チューリンゲンシス株及びその変異株である、項17~26のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
29. バチルス・チューリンゲンシスの少なくとも1種の株が、2019年6月20日付けでHIPRA SCIENTFIC, S.L.U.(Avda de La Selva 135,17170 Amer,Girona,Spain)によりLeibnitz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)にアクセッション番号DSM 33175でブダペスト条約の下にそれぞれ寄託されたバチルス・チューリンゲンシス(Bt)株GR-S5-8及びその変異株である、項17~26のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
30. 動物がトリ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ及びミツバチ類からなる群より選択される、項19~29のいずれか一項に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
31. トリ類が家禽である、項30に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
32. 項1~16のいずれか一項に記載の組成物を使用することを含む、媒介物においてダニ侵襲を制御及び/又は軽減する方法。
33. ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも25%の死滅率をもたらす、項32に記載の方法。
34. ダニの少なくとも25%の死滅率が、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる、項33に記載の方法。
35. 組成物が薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって適用されている、項32~34のいずれかに記載の方法。
36. 媒介物が、動物が飼育される敷地内に位置する、項32~35のいずれか一項に記載の方法。
37. 組成物が更なる活性成分を含み、該更なる活性成分が精油又は鉱油である、項1~16のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
38. 上記精油又は鉱油中に配合される、項37の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
39. 更なる活性成分が鉱油であり、好ましくは該鉱油が流動パラフィンである、項37又は38に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
40. 好ましくは動物又は媒介物におけるダニ侵襲の制御及び/又は軽減に使用される、項37~39のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
41. ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がダニの少なくとも50%の死滅率をもたらすように少なくとも1種の株が選択される、項37~40のいずれかに記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
42. ダニの少なくとも50%の死滅率が、組成物を上記ダニ及び/又は媒介物に適用し、及び/又はそれと接触させた瞬間から48時間以内に生じる、項41に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
43. 好ましくは上記ダニ又は媒介物に組成物を適用した瞬間から48時間以内のダニの少なくとも50%の死滅率が薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布によって達成される、項41又は42に記載の医薬組成物又は殺生物剤組成物。
44. ダニが外部寄生虫ダニである、項37~43のいずれかに記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
45. 外部寄生虫ダニがデルマニサス属種、オルニトニサス属種、アルガス属種、アロプソロプトイデス・ガリ、ネオクネミドコプテス・ガリナエ、クネミドコプテス・ミュータンス、ラミノシオプテス・システィコラ、メグニニア・クビタリス、メグニニア・ギングリムラ、プテロリカス・オブタス、シリンゴフィラス・ビペクトネイタス、コロンビフィラス・ポロニカ、デログリフス・エロンガテス、ガウドグリフス・ミノー、オトデクテス・シノチス、チェイレティエラ・ヤスグリ、デモデクス属種、ノトエドレス・カティ、チェイレティエラ属種、プソロプテス属種、コリオプテス属種、プソレルガテス・オビス、サルコプテス・スカビエイ、プソロビア・オビス、ライリエチア・アウリス及びバロア属種、並びにそれらの組合せからなる群より選択される、項44に記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
46. 外部寄生虫ダニがデルマニサス・ガリナエ(ワクモ)である、項45に記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
47. ダニ侵襲の制御及び/又は軽減がトリ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ及びミツバチ類からなる群より選択される動物において達成される、項37~46のいずれかに記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
48. トリ類が家禽である、項47に記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
49. 薬浴、噴霧、注入、塗布、噴射、浸漬又は散布による適用に適している、項37~48のいずれかに記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
50. 噴霧による適用に適している、項37~49のいずれかに記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
51. ダニ侵襲の制御及び/又は軽減が媒介物において達成され、媒介物が、動物が飼育される敷地内に位置する、項37~50のいずれかに記載の医薬組成物若しくは殺生物剤組成物又は使用のための医薬組成物若しくは殺生物剤組成物。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】