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特表2022-542915エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための触媒及び方法
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  • 特表-エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための触媒及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための触媒及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/04 20060101AFI20220930BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220930BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220930BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20220930BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20220930BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20220930BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20220930BHJP
   C07C 51/353 20060101ALI20220930BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
B01J23/04 Z
B01J35/10 301G
B01J37/02 101D
B01J37/03 B
C07C69/54 Z
C07C67/343
C07C51/09
C07C51/353
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505294
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 GB2020051793
(87)【国際公開番号】W WO2021019224
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】1910754.9
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500460209
【氏名又は名称】ミツビシ ケミカル ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI CHEMICAL UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラナクルズ、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、デイビッド ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 和史
(72)【発明者】
【氏名】二宮 航
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA02C
4G169BA05B
4G169BA38
4G169BB04A
4G169BB06B
4G169BC01A
4G169BC01C
4G169BC03A
4G169BC05A
4G169BC06A
4G169BC06B
4G169BC10A
4G169BC10C
4G169BC16A
4G169BC16C
4G169BC50A
4G169BC50C
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC51C
4G169BC52A
4G169BC52C
4G169BD03A
4G169BD03C
4G169CB25
4G169CB75
4G169DA06
4G169EC02X
4G169EC03X
4G169EC04X
4G169EC05X
4G169EC06X
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169EC14X
4G169EC14Y
4G169EC15X
4G169EC15Y
4G169EC16X
4G169EC17X
4G169EC17Y
4G169EC20
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC02
4G169FC03
4H006AA02
4H006AC23
4H006BA04
4H006BA10
4H006BA55
4H006BA56
4H006KA31
4H039CA11
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、シリカ担体、修飾剤金属及び触媒であるアルカリ金属を含む触媒を開示する。シリカ担体は、2~50nmの範囲の平均孔径を有するメソポーラス孔径分布(少なくとも0.1cm/gの前記メソ細孔の細孔容積)、及び50nm超の平均孔径を有するマクロポーラス孔径分布(少なくとも0.1cm/gの前記マクロ細孔の細孔容積)を含むマルチモーダル孔径分布を有する。シリカ担体上の触媒であるアルカリ金属のレベルは、少なくとも2mol%である。修飾剤金属は、Mg、B、Al、Ti、Zr及びHfから選択される。本発明はまた、触媒を生成する方法、触媒の存在下でエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを生成する方法、及び触媒の存在下でエチレン性不飽和酸若しくはエステルを調製するための方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ担体、修飾剤金属及び触媒であるアルカリ金属、好ましくは、セシウムを含む触媒であって、
前記シリカ担体は、
a)2~50nmの範囲の平均孔径及び少なくとも0.1cm/gのメソ細孔の細孔容積を有するメソポーラス孔径分布;及び
b)50nm超の平均孔径及び少なくとも0.1cm/gのマクロ細孔の細孔容積を有するマクロポーラス孔径分布
を含むマルチモーダル孔径分布を有し、
前記シリカ担体上の触媒であるアルカリ金属のレベルは、少なくとも2mol%であり、
前記修飾剤金属は、Mg、B、Al、Ti、Zr及びHfから選択され、好ましくは、Ti、Zr及びHfから選択される、触媒。
【請求項2】
前記シリカ担体上の触媒であるアルカリ金属のレベルが、少なくとも3mol%、より好ましくは、少なくとも4mol%、最も好ましくは、少なくとも5mol%、特に、少なくとも6mol%及び/又は10mol%まで、より好ましくは、8mol%まで、最も好ましくは、6mol%までである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記担体中のシリカの量が、少なくとも50重量%、より典型的には、少なくとも80重量%、さらにより典型的には、少なくとも90重量%、最も典型的には、少なくとも95重量%、特に、約96又は97~100重量%である、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒粒子の平均メソ細孔容積が、窒素の取込みによって測定して、1cm/g未満、任意選択で、0.2~3cm/gの範囲、例えば、0.3~2.5cm/g、例えば、0.4~2cm/g、又は例えば、0.5~1.5cm/gの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒粒子の平均マクロ細孔容積が、水銀の取込みによって測定して、1cm/g未満、任意選択で、0.1~3cm/gの範囲、例えば、0.15~2.5cm/g、例えば、0.2~2cm/g、又は例えば、0.5~1.5cm/gの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒粒子のマクロ細孔:メソ細孔容積比が、0.03~15の範囲、任意選択で、0.4~4の範囲、より典型的には、0.5~2の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
タングステン及び/又はアンチモン及び/又はバナジウム及び/又はビスマス及び/又は3族の金属及び/又は10族の金属及び/又は13族の金属及び/又は14族の金属を実質的に非含有である、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
タングステン及び/又はアンチモン及び/又はバナジウム及び/又はビスマス及び/又はランタン及び/又はセリウム及び/又は白金及び/又はスズを実質的に非含有である、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記修飾剤金属が、前記シリカ担体表面上に吸着され、好ましくは、その上に化学吸着される吸着質である、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項10】
前記修飾剤金属が、修飾剤金属酸化物部分として存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
前記シリカ担体が、シリカゲル、より典型的には、キセロゲル、エーロゲル又はヒドロゲルの形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項12】
前記修飾剤金属が、共ゲルの形態で前記担体中に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項13】
存在する修飾剤金属のレベルが、7.6×10-2mol/molシリカまで、より好ましくは、5.9×10-2mol/molシリカまで、最も好ましくは、3.5×10-2mol/molシリカまでである、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項14】
修飾剤金属のレベルが、0.067×10-2~7.3×10-2mol/molシリカ、より好ましくは、0.13×10-2~5.7×10-2mol/molシリカ、最も好ましくは、0.2×10-2~3.5×10-2mol/molシリカである、請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項15】
存在する修飾剤金属のレベルが、少なくとも0.1×10-2mol/molシリカ、より好ましくは、少なくとも0.15×10-2mol/molシリカ、最も好ましくは、少なくとも0.25×10-2mol/molシリカである、請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項16】
前記シリカ担体が、か焼されたシリカ担体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒であるアルカリ金属が、カリウム、ルビジウム及びセシウム、適切には、ルビジウム及びセシウム、例えば、セシウムから選択される1種若しくは複数のアルカリ金属である、請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項18】
触媒であるアルカリ金属が、0.5~7.0mol/molの修飾剤金属、例えば、1.0~6.0mol/mol、例えば、1.5~5.0mol/molの修飾剤金属の範囲で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項19】
前記触媒であるアルカリ金属:修飾剤金属のモル比が、少なくとも1.4又は1.5:1であり、好ましくは、1.4~5:1、例えば、1.5~4.0:1、特に、1.5~3.6:1の範囲内である、請求項1~18のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項20】
平均表面積が典型的には、20~1000m/g、より典型的には、30~800m/g、最も典型的には、35~500m/gの範囲である、請求項1~19のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項21】
前記触媒の総金属含量が、少なくとも80重量%の本明細書に定義されているような触媒であるアルカリ金属、及び修飾剤金属であり、典型的には、前記触媒の総金属含量が、少なくとも85重量%の本明細書に定義されているような触媒であるアルカリ金属、及び修飾剤金属、より典型的には、少なくとも90重量%、さらにより典型的には、少なくとも95重量%、最も典型的には、少なくとも99重量%、特に、少なくとも99.5重量%、例えば、少なくとも99.9重量%である、請求項1~20のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の触媒を生成する方法であって、
(a)Mg、B、Al、Ti、Zr及びHfから選択される修飾剤金属を有するシリカ担体のために、修飾されたシリカを調製することと、
(b)修飾されたシリカ担体を触媒であるアルカリ金属で処理し、触媒を提供することと、
(c)ステップ(a)の前、ステップ(b)の前、又はステップ(b)の後に、マクロ細孔を前記シリカ担体中に導入することと
を含む、方法。
【請求項23】
前記修飾されたシリカが、メソ細孔を含むシリカゲル又は発熱性シリカである、請求項22に記載の触媒を生成する方法。
【請求項24】
前記マクロ細孔が、ハードテンプレート法、ソフトテンプレート法、結合剤技術又は他の技術によって導入される、請求項21~23のいずれか一項に記載の触媒を生成する方法。
【請求項25】
エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステル、典型的には、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを生成する方法であって、触媒の存在下で、及び任意選択でアルコールの存在下で、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルとを接触させるステップを含み、ここで、前記触媒は、請求項1~21のいずれか一項に記載されている、方法。
【請求項26】
エチレン性不飽和酸若しくはエステル、典型的には、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを調製する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載されている触媒の存在下で、及び任意選択でアルカノールの存在下で、式R-CH-COORのアルカン酸若しくはエステルと、下記で定義する式(I)のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの適切な源
【化1】

(式中、R5は、メチルであり、R6は、Hであり;
Xは、Oであり;
mは、1であり;
nは、1~20の任意の値である)、又はこれらの任意の混合物とを接触させることを含み;
式中、R1は、水素、又は1~12個、より適切には、1~8個、最も適切には、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3はまた、独立に、水素、又は1~12個、より適切には、1~8個、最も適切には、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり得る、方法。
【請求項27】
前記α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルが、アクリル酸若しくはエステル、例えば、(アルク)アクリル酸若しくはアルキル(アルク)アクリレート、典型的には(メタ)アクリル酸若しくは(メタ)アクリル酸アルキル、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはメタクリル酸アルキル、例えば、メタクリル酸(MAA)及びメタクリル酸メチル(MMA)である、請求項25又は26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモーダルシリカ触媒、並びにこのような触媒の存在下でのカルボン酸若しくはエステルとホルムアルデヒド又はその源、例えば、ジメトキシメタンとの縮合による、特に、このような触媒の存在下でのプロピオン酸又はそのアルキルエステル、例えば、プロピオン酸メチルとホルムアルデヒド又はその源との縮合による、エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステル、特に、α、β不飽和カルボン酸若しくはエステル、より特定すると、アクリル酸若しくはエステル、例えば、(アルク)アクリル酸又はアルキル(アルク)アクリレート、特に、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキル、例えば、メタクリル酸(MAA)及びメタクリル酸メチル(MMA)の生成のための方法に関する。したがって、本発明は特に、MAA及びMMAの生成に関する。本発明の触媒は、特定の修飾剤金属によって修飾されたマルチモーダルシリカ担体、及び触媒金属を組み込む。
【背景技術】
【0002】
上記のように、不飽和酸若しくはエステルは、カルボン酸若しくはエステルの反応によって作製し得、適切なカルボン酸若しくはエステルは、式R-CH-COORのアルカン酸(若しくはエステル)であり、式中、R及びRは、それぞれ独立に、アクリル化合物の当技術分野において公知の適切な置換基、例えば、水素又はアルキル基、特に、例えば、1~4個の炭素原子を含有する低級アルキル基である。このように、例えば、MAA若しくはそのアルキルエステル、特に、MMAは、反応順序1による、プロピオン酸、又は対応するアルキルエステル、例えば、プロピオン酸メチルと、メチレン源としてのホルムアルデヒドとの触媒反応によって作製し得る。
【0003】
順序1
-CH-COOR+HCHO------->R-CH(CHOH)-COOR
及び
-CH(CHOH)-COOR------>R-C(:CH)-COOR+H
反応順序1の一例は、反応順序2である。
【0004】
順序2
CH-CH-COOR+HCHO------->CH-CH(CHOH)-COOR
CH-CH(CHOH)-COOR------>CH-C(:CH)-COOR+H
上記の反応順序は典型的には、酸/塩基触媒を使用して、温度を上げた状態で、通常、250~400℃の範囲でもたらされる。所望の生成物がエステルである場合、反応は典型的には、エステルの加水分解によって対応する酸の形成を最小化するために、関連性のあるアルコールの存在下でもたらされる。また便宜のため、メタノールを伴うホルムアルデヒドの錯体の形態でホルムアルデヒドを導入することが望ましいことが多い。したがって、MMAの生成のために、触媒に供給される反応混合物は一般に、プロピオン酸メチル(MEP)、メタノール、ホルムアルデヒド及び水からなる。
【0005】
MMAについての公知の製造方法は、ホルムアルデヒドを使用したMMAへのMEPの触媒変換である。このための公知の触媒は、担体、例えば、シリカを組み込んでいるセシウム触媒である。
【0006】
特許文献1は、プロピオン酸若しくは対応するアルキルエステルの縮合による、α、β不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成における使用のための触媒について開示しており、ここで、触媒は、少なくとも1種の修飾剤成分が含浸された、アルカリ金属が添加されたシリカを含み、ここで、修飾剤成分は、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム及びハフニウム、好ましくは、ジルコニウム及び/又はアルミニウム及び/又はホウ素からなる群から選択され、アルカリ金属は、カリウム、ルビジウム又はセシウム、好ましくは、セシウムから選択される。
【0007】
特許文献2は、プロピオン酸若しくはプロピオン酸エステルの縮合、オレフィン重合、脱水、ヒドロキシル化及び異性化によるα、β不飽和カルボン酸の生成を含めた、アルドール縮合における使用のための触媒について開示しており、ここで、触媒は、触媒金属が含浸されたシリカ-金属ヒドロゲルを含み、ここで、ヒドロゲルの金属は、ジルコニウム、チタン、アルミニウム及び鉄、好ましくは、ジルコニウムからなる群から選択され、触媒金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、好ましくは、セシウムからなる群から選択される。
【0008】
これらの文献のいずれにも、マルチモーダルシリカ担体についての教示は提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第1999/52628号
【特許文献2】国際公開第2003/026795号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ある特定のマルチモーダルシリカ担体を含み、且つ触媒であるアルカリ金属を含有する触媒は、メチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとカルボン酸若しくはアルキルエステル、例えば、プロピオン酸メチルとの縮合、及びさらに、重質物(より低い相対揮発性の炭化水素副生成物)の低形成において高レベルの選択性を実現することを本発明者らは今や発見した。シリカ担体を含む触媒は、触媒金属のより高い充填においてでさえ高レベルの選択性を実現することを本発明者らはまた見出した。
【0011】
したがって、このようなシリカ担体を含み、且つ触媒金属を含有する触媒は、いくつかの利点、例えば、高レベルの選択性及び/又は重質物の低形成を実現する、対応する酸若しくはエステルとメチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとの縮合による、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のための著しく効率的な触媒である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によると、シリカ担体、修飾剤金属及び触媒であるアルカリ金属、好ましくは、セシウムを含む触媒を提供し、
ここで、シリカ担体は、
a)2~50nmの範囲の平均孔径を有するメソポーラス孔径分布(少なくとも0.1cm/gの前記メソ細孔の細孔容積);及び
b)50nm超の平均孔径を有するマクロポーラス孔径分布(少なくとも0.1cm/gの前記マクロ細孔の細孔容積)
を含むマルチモーダル孔径分布を有し、
シリカ担体上の触媒であるアルカリ金属のレベルは、少なくとも2mol%であり、
修飾剤金属は、Mg、B、Al、Ti、Zr及びHfから選択され、好ましくは、Ti、Zr及びHfから選択される。
【0013】
典型的には、担体は、少なくとも50重量%のシリカ、より典型的には、少なくとも80重量%、さらにより典型的には、少なくとも90重量%、最も典型的には、少なくとも95重量%、特に、約96又は97~100重量%である。
【0014】
好ましくは、シリカ担体上の触媒であるアルカリ金属のレベルは、少なくとも3mol%、より好ましくは、少なくとも4mol%、最も好ましくは、少なくとも5mol%、特に、少なくとも6mol%である。
【0015】
典型的には、シリカ担体上の触媒であるアルカリ金属のレベルは、10mol%まで、より典型的には、8mol%まで、最も典型的には、6mol%までである。
シリカ
シリカ担体は一般に、修飾されていても、又は修飾されていなくても、シリカゲル又は発熱性シリカ、典型的には、シリカゲル、より典型的には、キセロゲル、ヒドロゲル又はエーロゲルの形態である。シリカゲルは、例えば、本明細書において記述したゲル生成の当業者には公知の様々な技術のいずれかによって形成し得る。
【0016】
シリカゲルを調製するための方法は当技術分野で周知であり、いくつかのこのような方法は、The Chemistry of Silica:Solubility,Polymerisation,Colloid and Surface Properties and Biochemistry of Silica,by Ralph K Iler,1979,John Wiley and Sons Inc.,ISBN 0-471-02404-X及びその中の参考文献において記載されている。
【0017】
シリカ-修飾剤金属酸化物共ゲルを調製するための方法は当技術分野において公知であり、いくつかのこのような方法は、米国特許第5,069,816号明細書において、Bosman et al in J Catalysis Vol.148(1994)page 660及びMonros et al in J Materials Science Vol.28、(1993),page 5832によって記載されている。
【0018】
本発明のシリカは、本発明の特許請求された範囲内でメソポーラス含有量を有する。上記のように、適正なメソ多孔度を有するシリカはまた、ゲル、例えば、発熱性シリカへの代替の調製経路によって調製し得る。典型的な発熱性シリカの調製方法及び特性は、科学文献、例えば、Chapter 1“On the Silica Edge”in“The Surface Properties Of Silica”,edited by A.P.Legrand,1998,John Wiley&Sons,ISBN 0-471-95332-6”、及びChapter 5“Silica Gels And Powder”,in“The Chemistry Of Silica”,R.K.Iler,1979,John Wiley&Sons,ISBN 0-471-02404-Xに開示されている。
【0019】
本発明の任意の態様によるシリカ担持触媒の典型的な平均表面積は、Micromeritics Tristar3000表面積及び多孔度分析器を使用したB.E.T.多点法によって測定するように、20~1000m/g、より好ましくは、30~800m/g、最も好ましくは、35~500m/gの範囲内である。機器の性能をチェックするために使用した参照材料は、30.6m/g(+/-0.75m/g)の表面積、品番004-16833-00を有するMicromeriticsによって供給されたカーボンブラック粉末であり得る。
【0020】
担体のシリカ成分は典型的には、担体の80~100重量%、より典型的には、90~99.7重量%、最も典型的には、その93.2~99.6重量%を形成し得る。
本発明の触媒材料は多孔質であり、2~1000nm、より好ましくは、3~500nm、最も好ましくは、5~250nmの全体的な平均孔径を有するメソ細孔及びマクロ細孔のマルチモーダル組合せである。マクロ孔径(50nm超)は、NIST標準を使用した水銀圧入ポロシメトリーによって決定することができ、一方、77Kでの液体窒素を使用したBarrett-Joyner-Halenda(BJH)分析法を使用して、メソ細孔(2~50nm)の孔径を決定する。平均孔径は、孔径分布に対する細孔容積の細孔容積加重平均である。
【0021】
触媒粒子の平均細孔容積は、流体、例えば、水の取込みによって測定され得る。細孔容積は代わりに、77Kでの窒素吸着及び水銀ポロシメトリーの組合せによって測定することができる。Micromeritics TriStar表面積及び多孔度分析器を使用して、表面積測定の場合のように細孔容積を決定し、同じ標準を用いる。
【0022】
マルチモーダルシリカ
マルチモーダル分布は、2つ若しくはそれより多いモードを有する分布である。したがって、マルチモーダルという用語は、バイモーダル又はトリモーダルなどを含むことが理解される。マルチモーダル孔径分布について記載する本発明に関連して、材料の孔径の範囲は、2つ若しくはそれより多いユニモーダル孔径分布の混合であることを理解すべきである。したがって、マルチモーダル孔径分布を示す材料は、メソポーラス及びマイクロポーラス範囲に及ぶ単一のユニモーダル分布を含有するだけでなく、代わりに少なくとも2つの異なるモードを含有する。このようなモードは、完全に独立であり得るか、又は代わりに重複し得ることは可能である。
【0023】
触媒粒子の平均メソ細孔容積は、窒素の取込みによって測定して、1cm/g未満であり得るが、一般に、0.2~3cm/gの範囲、好ましくは、0.3~2.5cm/g、より好ましくは、0.4~2cm/g、最も好ましくは、0.5~1.5cm/gの範囲である。
【0024】
触媒粒子の平均マクロ細孔容積は、水銀の取込みによって測定して、1cm/g未満であり得るが、一般に、0.1~3cm/gの範囲、好ましくは、0.15~2.5cm/g、より好ましくは、0.2~2cm/g、最も好ましくは、0.2~1.5cm/gの範囲である。
【0025】
本発明の任意の態様による触媒粒子のマクロ細孔:メソ細孔容積比は、0.03~15の範囲、任意選択で、0.4~4の範囲、より典型的には、0.5~2の範囲である。
触媒中のミクロ細孔がまた存在し得る。
【0026】
本発明において、特許請求したようなシリカ担体の多孔度を制御することは、驚いたことに有利であることが見出されてきた。しかし、メソ細孔及びマクロ細孔の両方の容積、分布及び量を制御することはまた有益である。
【0027】
有利なことには、本発明の上記の態様の触媒のマルチモーダルシリカ担体がメソ細孔及びマクロ細孔を含むとき、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成の間の、高い反応選択性及び/又は低い重質物形成が見出されてきた。
【0028】
当業者に公知の種々の異なる方法を使用して、さもなければメソポーラスシリカであるものにおいてマクロ細孔を形成し得る。適切な技術は、ハード及びソフト鋳型方法論並びに結合剤技術を含む。材料中にマクロ細孔を生じさせるのに使用することができる多数の適切な技術が存在する。概説“Hierarchically porous materials:synthesis strategies and structure design”,Yang et al,Chem.Soc.Rev.,2017,46,481は、下記を含めた、材料において多孔度を作製するための、特に、マクロ細孔についての多数の方法論を列挙している。
【0029】
・界面活性剤テンプレート法
・コロイド結晶テンプレート法
・マクロポーラスポリマーテンプレート法
・生体模倣プロセス
・超臨界流体
・エマルジョンテンプレート法
・凍結乾燥
・呼気像
・選択的浸出
・相分離
・沸石化プロセス
・レプリカ作成
・ゾル-ゲル制御
・後処理
・自己形成
・凝固
一実施形態では、マクロ細孔は、ハードテンプレート法によって生成される。さらなる実施形態では、マクロ細孔は、ソフトテンプレート法によって生成される。別のさらなる実施形態では、マクロ細孔は、結合剤技術によって生成される。
【0030】
「ハード」テンプレート法とは、必要とされるマクロ細孔と同様のサイズの寸法の固体不溶性粒子の使用を含み、これは前駆体液体中に組み込まれて、シリカゲルを作製するために使用される二相固体/液体スラリーを形成し得る。固体不溶性粒子は、別個の相として残り、これはこのように得られたシリカゲルから高温での不活性雰囲気又は酸化雰囲気における、例えば、熱分解又はか焼によって除去することができる。このタイプの技術の文献例は、下記を含む。
【0031】
“Multiphased assembly of macroporous silica particles”,Journal Of Non-Crystalline Solids 285(2001)71-78,C.J.Brinker et alは、マクロ多孔度を生じさせるためのハード鋳型として使用される、マクロポーラスシリカを生じさせるためのポリマーラテックス球、特に、ポリスチレンビーズの使用を開示している;
“Impact of Macroporosity on Catalytic Upgrading of Fast Pyrolysis Bio-Oil by Esterification over Silica Sulfonic Acids”,ChemSusChem.2017,10,3506-3511,K.Wilson et alは、概ね200nmのマクロ細孔直径を有するマクロポーラスシリカを生じさせる、スチレン及びジビニルベンゼンからのエマルジョンポリマーに由来するハード鋳型の使用について詳述している;
“Synthesis of three-dimensionally ordered macroporous silica spheres by evaporation-induced assembling template process”,Materials Letters 109(2013)257-260,Yang et al-この技術は、ポリスチレン球の「骨格」を構築し、シリカ前駆体を注入し、次いで、ポリスチレン球鋳型をか焼によって除去し、マクロポーラスシリカを生じさせたという点で、上記の方法の一変型である。
【0032】
「ソフト」テンプレート法とは、単一の液相、又は二相液体/液体エマルジョンとして前駆体液体、例えば、シリカ中に組み込まれ、次いで、シリカゲルを作製するために使用される、可溶性又は不溶性液体の使用を含む。マクロ細孔は、液体除去によって、例えば、高温での不活性雰囲気又は酸化雰囲気における熱分解又はか焼によって、このように得られたシリカゲル中で形成される。このタイプの技術の文献例は、下記を含む。
【0033】
可溶性液体アプローチ-“Effects of aging and solvent exchange on pore structure of silica gels with interconnected macropores”,Journal of Non-Crystalline Solids 189,1995,66-76,Takahashi et al-これは、ポリマー溶液をシリカゾル前駆体中に混合し、前駆体をゲル化し、ゲル化のプロセスにおいて、シリカゲル及びポリマー、この特定の参照文献の場合、ポリアクリル酸への相分離を受ける、本発明者らの特許出願における実施例において使用された技術について記載している。次いで、このように得られた二相固体を「熱処理」し、マクロポーラスシリカを生じさせる;
可溶性液体アプローチ-“Synthesis and Textural Characterization of Mesoporous and Meso-/Macroporous Silica Monoliths Obtained by Spinodal Decomposition”,Inorganics 2016,4,9,Galarneau et al。これは、シリカゾル前駆体中のポリエチレンオキシドを使用し、ポリマー及びシリカ前駆体相の混合単相溶液が分離するにつれ、マクロポーラスシリカを生じさせる;
二相液体/液体エマルジョン、特に、シリカ前駆体内の界面活性剤のミセル-“Ordered nanoporous silica with periodic 30-60nm pores as an effective support for gold nanoparticle catalysts with enhanced lifetime”,J Am Chem Soc.2010,132,9596-7,Fan et al-この論文は、ゲル化シリカ材料内でミセルを形成する特定のテンプレートポリマー/界面活性剤混合物の使用について記載しており、これは次いで、特定されていない熱プロセスによって除去して、一連のメソ細孔及びマクロ細孔を有するシリカを生じさせることができる。
【0034】
「結合剤技術」とは、少なくともメソポーラスシリカ粉末及び任意選択で水と共に組み込まれ、次いで固形体へと形成され、それに続いて除去されて、マクロポーラスネットワークを有するシリカ体を形成する、1種若しくは複数の結合剤化合物の使用を含む。当初のシリカ粉末は、メソポーラスであり得るか、又はマクロ細孔を含み得る。シリカ粉末は、シリカゲル又は発熱性シリカから形成し得る。結合剤がこのように得られた固体シリカから適切な技術、例えば、酸化雰囲気において高温にて熱分解/か焼によって、又は溶媒抽出によって除去されるとき、結合剤から生じるマクロ細孔が形成される。シリカ粉末及び結合剤は、押出によって固形体へと形成し得る。生成された孔径は、例えば、シリカ粒子:水:結合剤の比によって決定し得る。第2の結合剤は、このプロセスにおいて使用し得るか、又は使用し得ない。
【0035】
シリカへの代わりの担体化学的性質を有するマクロポーラス触媒体の調製における結合剤又は形成剤の使用の2つの例は、下記の参照文献において見出すことができる。
米国特許第5137855号明細書(W.R.Grace&Co)は、異なるマクロ多孔度レベル及び改善された触媒性能を有する異なるチタニア担持触媒押出物を生じさせる、異なる量の可燃性結合剤の使用について開示している。
【0036】
米国特許第10022702号明細書(IFP Energies Nouvelles)は、粉末の凝固、それに続く乾燥及びか焼によって調製されるアルミナ触媒粒子の調製における異なる量の液体又は固体細孔形成剤の使用について開示している。
【0037】
上記の技術に加えて、結合剤を使用しない触媒体を形成するための他の技術がまた利用可能である。
結合剤を含み得るか、又は含み得ない触媒体を形成するための典型的な方法は、“Manual of Methods and Procedures for Catalyst Characterisation”,Pure and Applied Chemistry,Vol.67,1257-1306,1995,J.Haber,J.H.Block,and B.Delmonにおいて見出すことができる。これらは、液体中の粉末をベースとする懸濁液の噴霧乾燥、熱い不混和性油(「油滴」)中に導入されたゾル又はゲルからのビーズの形成、結合剤材料を任意選択で含む異なるサイズの粉末のミックスの顆粒化、結合剤材料を任意選択で含む異なるサイズの粉末のミックスの成形、及び結合剤材料を任意選択で含む異なるサイズの粉末のペーストの押出を含む。
【0038】
本発明の第2の態様によると、
(a)シリカをMg、B、Al、Ti、Zr及びHfから選択される修飾剤金属で修飾することによって修飾されたシリカを調製することと、
(b)修飾されたシリカを触媒であるアルカリ金属で処理することと、
(c)ステップ(a)の前、ステップ(b)の前、又はステップ(b)の後に、マクロ細孔をシリカ中に導入することと
を含む、本明細書における態様のいずれかによる触媒を生成する方法を提供する。
【0039】
好ましくは、シリカは、少なくともメソ細孔を含むシリカゲル又は発熱性シリカである。
好ましくは、マクロ細孔は、ハードテンプレート法、ソフトテンプレート法、結合剤又は本明細書に示したような他の技術によってシリカゲル中に導入される。
【0040】
マクロ細孔は、シリカ、修飾されたシリカ、又は触媒であるアルカリ金属で処理された修飾されたシリカ中に導入し得る。
シリカは、ステップ(c)におけるマクロ細孔の導入の前に、マクロポーラス範囲及びメソポーラス範囲で細孔を有し得ることを認識されたい。
【0041】
典型的には、シリカは、適切な技術によるマクロ細孔の導入の前に粉末形態である。シリカ粉末の適切な処理は、必要に応じて、望ましい組成及びレオロジーの多相性微粒子状混合物を生じさせる、粉末状シリカへの加工助剤、液体及び結合剤の添加を含み得る;
これらに限定されないが、押出、凝固、顆粒化及び成形を含めた方法論による、これらに限定されないが、円筒、タブレット、押出物及び構造化された押出物を含めたシリカ体又は粒子の形成;
適正な量の本明細書に示したようなメソ多孔度及びマクロ多孔度を有するシリカ含有多孔質担体を生じさせる、形成された粉体又は粒子のそれに続く熱加工。
【0042】
触媒であるアルカリ金属
総じて本明細書において、触媒であるアルカリ金属は、触媒の修飾されたシリカ担体表面上に吸着される吸着質である。吸着質は、修飾されたシリカ担体表面上へと化学吸着又は物理吸着し得、典型的には、その上に化学吸着される。
【0043】
認識されるように、触媒であるアルカリ金属は、本明細書において、修飾剤金属以外の金属である。好ましくは、触媒であるアルカリ金属は、1種若しくは複数のアルカリ金属から選択し得る。典型的には、触媒であるアルカリ金属は、セシウム、カリウム又はルビジウム、より好ましくは、セシウムから選択される。
【0044】
適切には、触媒であるアルカリ金属は、少なくとも1mol/100(ケイ素+任意の修飾剤金属)mol、より好ましくは、少なくとも1.5mol/100(ケイ素+任意の修飾剤金属)mol、最も好ましくは、少なくとも2mol/100(ケイ素+任意の修飾剤金属)mol、より好ましくは、少なくとも3mol/100(ケイ素+任意の修飾剤金属)mol、最も好ましくは、少なくとも3.5mol/100(ケイ素+任意の修飾剤金属)molのレベルで触媒中に存在し得る。触媒であるアルカリ金属のレベルは、触媒中の10mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molまで、より好ましくは、触媒中の6mol又は7.5mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molまで、最も好ましくは、5mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molまでであり得る。
【0045】
好ましくは、触媒中の触媒であるアルカリ金属のレベルは、触媒中の1~10mol/100(ケイ素+修飾剤金属)mol、より好ましくは、2~8mol/100(ケイ素+修飾剤金属)mol、最も好ましくは、2.5~6mol/100(ケイ素+修飾剤金属)molの範囲である。
【0046】
代わりに、触媒は、触媒中の1~22重量%、より好ましくは、4~18重量%、最も好ましくは、5~13重量%の範囲の重量%の触媒であるアルカリ金属を有し得る。
したがって、触媒であるアルカリ金属:修飾剤金属のモル比は典型的には、少なくとも1.4又は1.5:1であり、好ましくは、これは、1.4~5:1、例えば、1.5~4.0:1、特に、1.5~3.6:1の範囲である。総じて本明細書において、触媒であるアルカリ金属は、修飾剤金属を中和するのに必要とされるものを超えている。
【0047】
好ましくは、触媒であるアルカリ金属は、0.5~7.0mol/molの修飾剤金属(存在する場合)、より好ましくは、1.0~6.0mol/mol、最も好ましくは、1.5~5.0mol/molの修飾剤金属の範囲で存在する。
【0048】
特に逆の記載がない限り、触媒中のアルカリ金属又はアルカリ金属の量は、アルカリ金属イオンに関し、塩に関さない。
適切には、触媒であるアルカリ金属は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、含浸又は吸着、共ゲル化又は触媒金属による蒸着によってシリカ担体中に組み込み得る。
【0049】
触媒中の触媒金属のレベルは、mol%又は重量%であろうと、適正な試料採取及びこのような試料の平均をとることによって決定し得る。典型的には、特定の触媒バッチの5~10の試料を採取し、アルカリ金属レベルを、例えば、XRF、原子吸光分析、中性子活性化分析、イオン結合プラズマ質量分析法(ICPMS)又はイオン結合プラズマ原子発光分光器(ICPAES)によって決定及び平均する。
【0050】
シリカ担体の修飾-修飾剤金属
本発明のシリカは、修飾剤金属酸化物及びシリカの共ゲルとして、又はシリカ表面上に吸着された修飾剤金属を有する修飾されたシリカとして提供し得る。
【0051】
典型的には、修飾剤金属は、シリカゲル担体表面上に吸着される。典型的には、前記修飾剤金属は、修飾されたシリカゲル担体表面上に金属酸化物部分の形態で存在する。修飾剤金属酸化物は、シリカのマトリックス及びその表面に亘り分布し得る。
【0052】
典型的には、修飾されたシリカゲルは、適切な吸着反応によって生成される。関連性のある修飾剤金属部分を有する修飾されたシリカゲルを形成させる、シリカゲル、例えば、シリカキセロゲルへの関連性のある金属化合物の吸着は適切な技術である。
【0053】
典型的には、修飾剤金属が吸着質として加えられるとき、これは単核若しくは二核の修飾剤金属化合物として加え得る。修飾剤金属部分の核性を制御することは、シリカ上の隣接する修飾剤金属部分の近傍を制御することを助けるため、驚いたことに有利であることが見出されてきた。
【0054】
典型的には、修飾剤金属化合物は錯体であり、化合物の配位圏における配位子は通常、吸着の前及び/又は後の、修飾剤金属のさらなるオリゴマー化、及び/又は錯体の核性のかなりの増加を防止するのに十分なサイズのものである。総じて、二量体への核性の増加は許容し得る。典型的には、修飾剤金属錯体は、1種若しくは複数の有機多座キレート配位子を有する有機錯体、又は代わりに核性を安定化するのに有効な立体的にかさ高い単座配位子を有する錯体である。
【0055】
典型的には、か焼の前又は後の、前記修飾剤金属の少なくとも25%は、単核若しくは二核の修飾剤部分の形態で担体上に存在する。したがって、典型的には、前記修飾剤金属の少なくとも25%は、単核若しくは二核の金属化合物に由来する修飾剤金属部分の形態で担体上に存在する。
【0056】
典型的には、単核若しくは二核の修飾剤金属は、溶液中の単核若しくは二核の修飾剤金属化合物としてシリカ担体と接触し、担体上への前記修飾剤金属の吸着がもたらされる。
典型的には、修飾剤金属化合物は、単核若しくは二核、例えば、単核である。
【0057】
有利なことには、修飾剤金属が本発明の上記の態様のマルチモーダルシリカ中に組み込まれるとき、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成の間の触媒表面の焼結の速度の低減が見出されてきた。修飾剤金属の添加は、焼結、及びメソ細孔表面積の喪失を防止する。メソ細孔の焼結を防止する修飾剤金属、及びマクロ細孔ネットワークの存在の組合せは、開放細孔構造の保存を可能とし、これは、触媒ペレットに亘る原料の拡散、並びに触媒ペレット内の触媒表面からの生成物及び副生成物の浸出を可能とし、これによって、望ましくないカップリング反応によって形成される「重い」副生成物の形成を低減させる。この有利な組合せは、生成物に対する改善された反応選択性をもたらす。典型的には、修飾剤金属は、ジルコニウム、ハフニウム及び/又はチタンから選択される。
【0058】
典型的には、金属化合物は、2種若しくはそれより多いキレート配位子、好ましくは、2、3若しくは4種のキレート配位子を含む錯体である。キレート配位子は、本明細書において、二座、三座、四座又は多座であり得る。しかし、化合物が、シリカ表面上に修飾剤金属を本明細書に示したように効果的に離間するのにまた有効であるかさ高い単座配位子を含むことがまた可能である。
【0059】
典型的には、金属錯体は、四配位、五配位、六配位、七配位、又は八配位である。
有利なことには、修飾剤金属化合物の配位圏における配位子のサイズ、例えば、キレート配位子のサイズは、修飾剤金属が、単純な対イオン、例えば、硝酸、酢酸又はオキシ硝酸を有する同じ修飾剤金属より分散していることをもたらす。より小さな金属塩吸着は、熱処理又はか焼に続いて修飾剤金属のクラスター形成をもたらし、これは、触媒の選択性を低下させ、触媒の焼結耐性を低下させることが見出されてきた。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、修飾剤金属は、触媒のシリカ担体表面上に吸着される吸着質である。吸着質は、その化合物としてシリカ担体表面上へと化学吸着又は物理吸着し得、典型的には、その上に化学吸着される。
【0061】
本明細書において適切なキレート配位子は、修飾剤金属原子と5員若しくは6員環を形成することができる酸素若しくは窒素原子を含有する孤立電子対を有する分子から任意選択で選択される不安定でない配位子であり得る。例は、ジオン、ジイミン、ジアミン、ジオール、ジカルボン酸若しくはその誘導体、例えば、エステル、又は2個の異なるこのような官能基を有する分子を含み、いずれの場合でも、2個若しくは3個の原子によって分離したそれぞれのN又はO及びN又はO原子を伴い、それによって、5員若しくは6員環が形成される。例は、ペンタン-2,4-ジオン、1~4個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールを有する3-オキソブタン酸のエステル、例えば、エチル3-オキソブタノエート、プロピル3-オキソブタノエート、イソプロピル3-オキソブタノエート、n-ブチル3-オキソブタノエート、t-ブチル3-オキソブタノエート、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ジアミノエタン、エタノールアミン、1,2-ジアミノ-1,1,2,2-テトラカルボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジオエート、2,4-ジヒドロキシ-1,5-ペンタンジオエート、1,2-ジヒドロキシルベンゼン-3-5-ジスルホネートの塩、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、シュウ酸及びその塩を含む。ペンタン-2,4-ジオン、ヘプタン-3,5-ジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、エチル3-オキソブタノエート及びt-ブチル3-オキソブタノエートが最も好ましい。例えば、全部で10個未満の炭素及び/又はヘテロ原子を有するより小さな二座キレート配位子は、小さな錯体が形成されることを可能とし、これは、より大きな配位子と比較して、より高い濃度がシリカの表面上に堆積することを可能とすることができる。したがって、本明細書において単核又は二核修飾剤金属カチオン源は、このようなより小さなキレート配位子、好ましくは、少なくとも1個のこのような配位子を有する修飾剤金属の錯体の形態でよい。このような化合物は、不安定な配位子、例えば、アルコール溶媒中の溶媒配位子、アルコキシド配位子、例えば、エトキシド又はプロポキシドなどを含み得る。
【0062】
キレート配位子は典型的には、不安定でない配位子である。不安定でない配位子とは、修飾剤金属へと配位され、且つシリカ表面上への修飾剤金属の吸着によって除去されない配位子を意味する。したがって、不安定でない配位子は典型的には、修飾剤金属によるシリカ表面の処理の前に、溶液中の修飾剤金属へと配位される。疑義を避けるために、不安定でない配位子は典型的には、修飾剤金属の吸着に続いてシリカ表面の適切な処理によって除去される。
【0063】
キレート配位子のサイズは、シリカ表面上で修飾剤金属原子を離間するために選択され、触媒生成の間のこれらの組合せを防止する。
代わりに、金属錯体のオリゴマー化を防止するかさ高い単座配位子を有する修飾剤金属錯体を使用することができる。前記錯体中で使用される典型的な配位子には、これらに限定されないが、適切な有機基を伴うアルコキシド、例えば、tert-ブトキシド又は2,6ジtert-ブチルフェノキシド、適切な有機基を伴うアミド、例えば、ジアルキルアミド(メチル、エチル並びに高級直鎖状及び分岐状アルキル基、並びにビス(トリメチルシリルアミド)錯体)、並びに適切な有機基を伴うアルキル配位子、例えば、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)配位子が含まれる。
【0064】
典型的には、シリカ担体は、単離されたシラノール基を有し、シリカ担体と修飾剤金属種とを接触させることによって、修飾剤金属は、前記シラノール基との反応によってシリカ担体の表面上へと吸着される。
【0065】
好ましくは、吸着又は共ゲル化された修飾剤金属カチオンは、修飾剤金属化合物によって互いに十分に離間しており、それに続く処理ステップ、例えば、触媒金属の含浸、又は任意選択で、それに続くか焼の間のそのオリゴマー化、より好ましくは、隣接する修飾剤金属カチオンとのその二量体化、三量体化又はオリゴマー化を実質的に防止する。
【0066】
典型的には、担体は、nm当たり>0.025のレベルで、より好ましくは、0.05からのレベルで、最も好ましくは、nm当たり0.1からの部分のレベルで前記修飾剤金属部分を含む。
【0067】
典型的には、修飾剤金属錯体中の修飾剤金属の少なくとも30%、例えば、少なくとも35%、より好ましくは、少なくとも40%、例えば、少なくとも45%、最も適切には、少なくとも50%、例えば、少なくとも55%、例えば、少なくとも60%若しくは65%、最も好ましくは、少なくとも70%、例えば、少なくとも75%若しくは80%、より典型的には、少なくとも85%、最も典型的には、少なくとも90%、特に、少なくとも95%は、錯体が担体と接触して、担体上への前記錯体の吸着がもたらされるとき、単核及び/又は二核修飾剤金属化合物である。したがって、シリカ表面上の単核及び/若しくは二核修飾剤金属のレベルは、このようなレベルであり得る。
【0068】
好ましくは、シリカ担体を、修飾剤金属による処理の前に、乾燥及び/又はか焼する。
したがって、化合物が担体と接触したときに溶液中にあり、担体上への吸着がもたらされるように、修飾剤金属は、カチオン源、より好ましくは、前記修飾剤金属の化合物の溶液として担体上へと組み込み得る。
【0069】
典型的には、前記溶液のための溶媒は、水、又は水以外である。
典型的には、溶媒は、有機溶媒、例えば、トルエン又はヘプタンであり、さらに、溶媒は、脂肪族又は芳香族溶媒であり得る。またさらに、溶媒は、塩素化溶媒、例えば、ジクロロメタンであり得る。より典型的には、溶媒は、典型的には、C1~C6アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノール、より典型的には、メタノール、エタノール又はプロパノールから選択される脂肪族アルコールである。
【0070】
適切な金属カチオン源の例は、本明細書において、無機及び有機の錯体、例えば、ジルコニウム(ペンタン-2,4-ジオン)、ジルコニウム(エチル3-オキソブタノエート)、ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン)、ジルコニウム(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオン)、ジルコニウム(プロポキシド)(ペンタン-2-3-ジオン)、ジルコニウム(プロポキシド)(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)(ジルコニウム(Ot-ブチル)(t-ブチル3-オキソブタノエート)、ジルコニウム(Ot-ブチル)(t-ブチル3-オキソブタノエート)及び金属塩、例えば、塩化ジルコニウム(IV)、炭酸ジルコニウム(IV)、過塩素酸ジルコニウム(IV)、硝酸ジルコニウム(IV)、オキシ硝酸ジルコニウム(IV)、オキシ硫酸ジルコニウム(IV)、乳酸ジルコニウム(IV)、四酢酸ジルコニウム(IV)及びオキシ塩化ジルコニウム(IV)を含む。
【0071】
本明細書において適切な金属カチオン源の例は、有機錯体、例えば、チタンテトラキス(メトキシド)、チタンテトラキス(エトキシド)、チタンテトラキス(n-プロポキシド)、チタンテトラキス(i-プロポキシド)、チタンテトラキス(n-ブトキシド)、チタンテトラキス(t-ブトキシド)、チタンテトラキス(2-エチルヘキシルオキシド)、チタンオキシドビス(アセチルアセトネート)、チタンオキシドビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、チタン(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジ-イソプロポキシド、チタンテトラキス(ジエチルアミド)、チタンテトラキス(エチルメチルアミド)、チタンテトラキス(ジメチルアミド)、チタンテトラキス(ネオペンチル)、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド及び金属塩、例えば、オキシ硫酸チタン(IV)、オキシ硝酸チタン(IV)、オキシ塩化チタン(IV)、塩化チタン(IV)、炭酸チタン(IV)、過塩素酸チタン(IV)、硝酸チタン(IV)、乳酸チタン(IV)、四酢酸チタン(IV)を含む。
【0072】
金属カチオン源は、有機錯体として提供し得る。
一実施形態では、金属カチオン源は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、又は2-ブタノールの1つ中の、ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート(ジルコニウム,テトラキス(2,4-ペンタンジオナト-O,O’))ジルコニウム(ヘプタン-3,5-ジオン)、ジルコニウム(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)、ジルコニウム(IV)エチル3-オキソブタノエート、ジルコニウム(IV)t-ブチル3-オキソブタノエート、又はジルコニウム(IV)i-プロピル3-オキソブタノエートの1つ若しくは複数の溶液として提供する。
【0073】
好ましくは、シリカ担体上への修飾剤金属の吸着の後、溶媒は、蒸発によって除去される。
任意選択で、修飾されたシリカ担体はか焼され、修飾された担体から配位子又は他の有機物が除去される。
【0074】
修飾剤金属が担体中に共ゲルの形態で存在するとき、修飾されたシリカ担体は、シリカ-修飾剤金属酸化物共ゲルである。そのような実施形態では、修飾剤金属は典型的には、シリカ-修飾剤金属酸化物構造に亘り均一な分散で組み込まれている。
【0075】
典型的には、修飾剤金属は、吸着質であろうと又は共ゲルであろうと、単核若しくは二核オキシド部分中に存在する。典型的には、修飾剤金属が吸着質として加えられるとき、これは単核若しくは二核の修飾剤金属化合物として加え得る。
【0076】
典型的には、修飾剤金属は、存在するとき、シリカ担体の表面に亘り均一に分散しているか、又はシリカ修飾剤金属酸化物構造に亘り均一に分散している。
疑義を避けるために、本発明による触媒のシリカ担体上の修飾剤金属は、修飾剤金属、例えば、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びハフニウムに関し、シリカには関さない。
【0077】
好ましくは、修飾されたシリカ又は触媒中に存在する修飾剤金属のレベルは、7.6×10-2mol/molまでのシリカ、より好ましくは、5.9×10-2mol/molまでのシリカ、最も好ましくは、3.5×10-2mol/molまでのシリカであり得る。典型的には、このような金属のレベルは、0.067×10-2~7.3×10-2mol/molのシリカ、より好ましくは、0.13×10-2~5.7×10-2mol/molのシリカ、最も好ましくは、0.2×10-2~3.5×10-2mol/molのシリカである。典型的には、存在する修飾剤金属のレベルは、少なくとも0.1×10-2mol/molのシリカ、より好ましくは、少なくとも0.15×10-2mol/molのシリカ、最も好ましくは、少なくとも0.25×10-2mol/molのシリカである。
【0078】
好ましくは、修飾剤金属のw/w%レベルは、金属によって決まるが、20w/w%までの修飾されたシリカ担体、より好ましくは、16w/w%まで、最も好ましくは、11w/w%までであり得る。典型的には、修飾剤金属のレベルは、0.02~20w/w%の修飾されたシリカ担体、より好ましくは、0.1~15w/w%、最も好ましくは、0.15~10w/w%である。典型的には、修飾剤金属のレベルは、少なくとも0.02w/w%、例えば、0.25w/w%の修飾されたシリカ担体、例えば、0.4w/w%、より典型的には、少なくとも0.5w/w%、最も典型的には、少なくとも0.75w/w%である。
【0079】
触媒/担体中の特定のタイプの金属酸化物のレベルは、XRF、原子吸光分析、中性子活性化分析、イオン結合プラズマ質量分析法(ICPMS)又はイオン結合プラズマ原子発光分光器(ICPAES)によって決定される。
【0080】
触媒
典型的には、本発明の触媒は、任意の適切な形態であり得る。典型的な実施形態は、別個の粒子の形態である。典型的には、使用において、触媒は、触媒の固定層の形態である。代わりに、触媒は、触媒の流動層の形態であり得る。さらなる代替物は、モノリス反応器である。
【0081】
触媒が固定層の形態で使用される場合、担持触媒は、典型的には、範囲1~10mmの最大及び最小寸法を有し、より好ましくは、2mm超、例えば、2.5mm超若しくは3mm超の平均寸法を伴う、顆粒、凝集体又は形状化された単位、例えば、ペレット成形、又は押出によって調製される球、円筒、環、サドル、星、ポリローブへと形成されることが望ましい。触媒はまた、他の形態、例えば、示したのと同じ寸法の粉末又は小さなビーズで有効である。触媒が流動層の形態で使用される場合、触媒粒子が10~500μm、好ましくは、20~200μm、最も好ましくは、20~100μmの範囲の最大及び最小の寸法を有することが望ましい。
【0082】
触媒金属及び修飾剤金属の量
触媒の総金属含量は、少なくとも80重量%の本明細書に定義されているような触媒であるアルカリ金属、及び修飾剤金属である。典型的には、触媒の総金属含量は、少なくとも85重量%の本明細書に定義されているような触媒であるアルカリ金属、及び修飾剤金属、より典型的には、少なくとも90重量%、さらにより典型的には、少なくとも95重量%、最も典型的には、少なくとも99重量%、特に、少なくとも99.5重量%、例えば、少なくとも99.9重量%である。
【0083】
タングステン/アンチモン/バナジウム/ビスマスの除外
本発明による触媒は、本明細書の上記に示したように、タングステン及び/又はアンチモン及び/又はバナジウム及び/又はビスマス及び/又は3族の金属及び/又は8族、9族若しくは10族の金属及び/又は13族の金属及び/又は14族の金属が実質的に非含有であり得るか、本質的に非含有であり得るか、又は完全に非含有であり得る。タングステン及び/又はアンチモン及び/又はバナジウム及び/又はビスマス及び/又は3族の金属及び/又は8族、9族若しくは10族の金属及び/又は13族の金属及び/又は14族の金属は、環境からの避けられない汚染のために微量で存在し得る。「実質的に非含有」とは、本発明者らは、1000百万分率(ppm)未満のタングステン及び/又はアンチモン及び/又はバナジウム及び/又はビスマス及び/又は3族の金属及び/又は8族、9族若しくは10族の金属及び/又は13族の金属及び/又は14族の金属を含有する触媒及び担体を指すことを意味する。「本質的に非含有」とは、本発明者らは、約100ppm未満のタングステン及び/又はアンチモン及び/又はバナジウム及び/又はビスマス及び/又は3族の金属及び/又は8族、9族若しくは10族の金属及び/又は13族の金属及び/又は14族の金属を含有する触媒及び担体を指すことを意味し、「完全に非含有」とは、本発明者らは、200ppb(10億分の1)未満のタングステン及び/又はアンチモン及び/又はバナジウム及び/又はビスマス及び/又は3族の金属及び/又は8族、9族若しくは10族の金属及び/又は13族の金属及び/又は14族の金属を含有する触媒を指すことを意味する。
【0084】
用語「3族の金属」によって、本発明者らは、金属Sc、Y、並びにランタニド及びアクチニドの前セットを含む。好ましくは、金属は、La又はCeから選択される。疑義を避けるために、3族の金属への言及は、本明細書において、最新のIUPAC命名法を指す。したがって、3族は、古い命名法スキームによる遷移金属群IIIB並びにランタニド及びアクチニドのブロックを含むと受け取るべきである。
【0085】
用語「8族、9族若しくは10族の金属」によって、本発明者らは、金属、例えば、Ni、Pd、Pt及びDsを含む。好ましくは、金属は、Ptである。疑義を避けるために、8族、9族若しくは10族の金属への言及は、本明細書において、最新のIUPAC命名法を指す。したがって、8族、9族若しくは10族は、古い命名法スキームによる遷移金属群VIIIを含むと受け取るべきである。
【0086】
用語「13族の金属」によって、本発明者らは、金属、例えば、B、Al、Ga、In及びTlを含む。好ましくは、金属は、Alである。疑義を避けるために、13族の金属への言及は、本明細書において、最新のIUPAC命名法を指す。したがって、13族は、古い命名法スキームによる典型元素III、3又はIIIAを含むと受け取るべきである。
【0087】
用語「14族の金属」によって、本発明者らは、金属、例えば、Ge、Sn及びPbを含む。好ましくは、金属は、Snである。疑義を避けるために、14族の金属への言及は、本明細書において、最新のIUPAC命名法を指す。したがって、14族は、古い命名法スキームによる典型元素IV、4又はIVAを含むと受け取るべきである。
【0088】
シラノール
シリカ担体上のシラノール基濃度は、か焼処理、化学的脱水又は他の適切な方法によって、修飾剤金属化合物による処理の前に減少し得る。
【0089】
必要とされるレベルで単離されたシラノール基を提供するためのシリカを処理する適切な方法はか焼による。しかし、他の技術、例えば、水温処理又は化学的脱水がまた可能である。米国特許第5583085号明細書は、アミン塩基の存在下での炭酸ジメチル又は二炭酸エチレンによるシリカの化学的脱水について教示している。米国特許第4357451号明細書及び米国特許第4308172号明細書は、SOClによる塩素化、それに続くH又はROHによる脱塩素、それに続く乾燥雰囲気中での酸素による化学的脱水について教示している。化学的脱水は、熱処理によって最小で0.7/nmに対してシラノールの100%までの除去を実現し得る。このように、場合によって、化学的脱水は、シラノール基対照についてのより多くのスコープを提供し得る。
【0090】
単離されたシラノールという用語(単一のシラノールとしてまた公知である)は、当技術分野で周知であり、ビシナル又はジェミナル又は内部シラノールからの群と区別される。単離されたシラノールの出現率を決定するための適切な方法は、表面感受性赤外分光法及びH NMR又は31Si NMRを含む。
【0091】
記述したように、シリカ担体は、修飾剤金属カチオン源による処理の前に乾燥又はか焼し得る。形成された修飾されたシリカは、従前に乾燥又はか焼されているかに関わりなく、触媒金属の添加の前に、乾燥又はか焼し得る。
【0092】
シリカは、修飾剤金属による処理の前にマルチモーダルゲルの形態であり得る。ゲルは、修飾の開始においてヒドロゲル、キセロゲル又はエーロゲルの形態であり得る。
マルチモーダルシリカ担体は、キセロゲル、ヒドロゲル又はエーロゲルであり得る。一実施形態では、シリカ担体は、キセロゲルである。
【0093】
全体的プロセス
触媒であるアルカリ金属は、任意の適切な手段によって修飾されたシリカに加え得ることを当業者は理解する。典型的には、修飾されたシリカ触媒を生成するために、シリカを触媒であるアルカリ金属と接触させる。
【0094】
典型的には、触媒を生成するために、シリカ担体を、触媒であるアルカリ金属、例えば、セシウムを含有する酸性、中性若しくはアルカリ性の水溶液と接触させ、より典型的には、触媒であるアルカリ金属は、触媒であるアルカリ金属の塩の形態であり、最も典型的には、シリカ担体を、触媒であるアルカリ金属及び塩基の塩の形態の、触媒であるアルカリ金属、例えば、セシウムを含有するアルカリ性水溶液と接触させる。代わりに、担体を、有機溶媒中の触媒であるアルカリ金属塩の水混和性溶液と接触させることができる。好ましい溶媒は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、好ましくは、メタノールである。最も好ましい溶媒は、メタノールである。最も好ましくは、触媒であるアルカリ金属は、メタノール中の塩溶液として加える。低レベルの水、典型的には、20容量%までを、溶液中に含有することができる。
【0095】
典型的には、触媒生成プロセスのこの段階の間の温度、接触時間及びpHの条件は、例えば、触媒であるアルカリ金属による、マルチモーダルシリカ担体の含浸を可能とし、マルチモーダルシリカ担持触媒を形成するものである。
【0096】
このステップのための温度の典型的な条件は、5~95℃、より典型的には、10~80℃、最も典型的には、20~70℃である。このステップについての温度は、少なくとも5℃、より典型的には、少なくとも10℃、最も典型的には、少なくとも20℃であり得る。
【0097】
このステップのための担体及び触媒金属含有溶液の間の典型的な接触時間は、0.05~48時間、より典型的には、0.1~24時間、最も典型的には、0.5~18時間であり得る。接触時間は、少なくとも0.05時間、より典型的には、少なくとも0.1時間、最も典型的には、少なくとも0.5時間であり得る。
【0098】
このステップのための触媒金属塩溶液の濃度は、触媒金属化合物の溶解限度、担体上の触媒金属の望ましい充填、並びに担体を含浸するのに使用される液体の量、触媒金属化合物のpH及び選択を含めた添加の方法を含めた多数の要因によって決まる。溶液中の濃度は、実験によって最良に決定される。
【0099】
触媒金属の組込みのための触媒であるアルカリ金属の適切な塩は通常、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、炭酸水素塩、塩化物、硝酸塩、水酸化物及び炭酸塩、より典型的には、水酸化物、酢酸塩又は炭酸塩、最も典型的には、水酸化物及び/又は炭酸塩からなる群の1つ若しくは複数から選択し得る。pHは、金属化合物を有するアンモニアを添加することによって、又は全ての場合において、単独で、組み合わせて、若しくは適当なカルボン酸と一緒に、適当な触媒金属化合物、例えば、ギ酸塩、炭酸塩、酢酸塩若しくは水酸化物、より好ましくは、水酸化物若しくは炭酸塩を使用することによって、含浸の間に制御することができる。好ましい範囲内のpHの制御は、満足できる吸着がもたらされるのに含浸の終わりにおいて最も重要である。最も典型的には、これらの塩は、塩のアルカリ性溶液を使用して組み込み得る。塩がそれ自体アルカリ性でない場合、適切な塩基、例えば、水酸化アンモニウムを加え得る。水酸化物塩は性質が塩基性であるため、特定の触媒金属、例えば、セシウムの水酸化物塩を有する上記の塩の1つ若しくは複数の混合物を好都合に調製し得る。
【0100】
本発明の触媒であるアルカリ金属、又は修飾剤金属は、任意の適切な手段によってシリカ担体に加え得ることを当業者は理解する。触媒金属及び/又は修飾剤金属は典型的には、担体上への金属の堆積の後で、か焼によって担体上へと固定し得る。
【0101】
通常、シリカ担体の乾燥は、例えば、乾燥ユニット又はオーブンにおいて当業者には公知の適当な方法によって達成される。
典型的には、触媒は、0.01~25w/w%の水、より典型的には、0.1~15w/w%の水、最も典型的には、0.5%~5.0w/w%の水を含有する。
【0102】
任意選択で、触媒金属を含有するシリカ担持触媒は、乾燥又はか焼されていてもよく、か焼のプロセスは、当業者には周知である。
場合によって、触媒金属の添加の前に、200~1000℃、より典型的には、300~800℃、最も典型的には、350~600℃での修飾段階から形成される担体をか焼することが必要であり得る。修飾段階から形成される担体の好ましいか焼において、温度は、少なくとも375℃、例えば、400℃である。か焼雰囲気は典型的には、二酸化炭素及び水として有機残基の除去をもたらすいくらかの酸素、適切には、1~30%の酸素、最も適切には、2~20%の酸素を含有すべきである。か焼時間は典型的には、0.01~100時間、適切には、0.5~40時間、最も適切には、1~24時間であり得る。触媒の好ましいか焼において、温度は、少なくとも450℃、より好ましくは、少なくとも475℃、最も好ましくは、少なくとも500℃、特に、少なくとも600℃、より特に、700℃超である。典型的には、か焼温度は、400~1000℃、より典型的には、500~900℃、最も典型的には、600~850℃の範囲である。か焼された担体、例えば、キセロゲル材料は、含浸のために適当な温度に冷却すべきである。
【0103】
媒活性金属の添加は、上で記載した方法によって行うことができるか、或いは例えば、水又は水以外の溶媒、例えば、アルコール、適切には、メタノール、エタノール、プロパノール若しくはイソプロパノールを使用した、又は単に十分な溶液をキセロゲル担体に加えて、キセロゲル担体の細孔を満たす初期湿潤法を使用した、触媒担体、例えば、キセロゲル担体を含浸するのに使用される任意の他の通常の方法によって行うことができる。この場合、より低い濃度の過剰な溶液を提供するよりむしろ、標的量の触媒活性金属をキセロゲル担体材料に導入するために、触媒活性金属の濃度を計算し得る。触媒活性金属の添加は、当技術分野において公知の任意の好ましい方法論を利用し得る。
【0104】
か焼の前の修飾されたシリカの乾燥は、20~200℃、より典型的には、30~180℃、最も典型的には、40~150℃の温度範囲で行い得る。か焼の前の修飾されたシリカの乾燥は、0.001~1.01バールの範囲の大気圧又は亜大気圧で行い得る。修飾されたシリカの乾燥はまた、固定層又は流動層において不活性ガス流下でもたらし得る。乾燥時間は、0.1~24時間、より典型的には、0.5~12時間、最も典型的には、1~6時間の範囲であり得る。
【0105】
より低い温度での減圧乾燥、又は不活性ガスを伴う流動層乾燥は、適切な技術である。
全体的特性
最終的な触媒中の修飾剤金属及び触媒であるアルカリ金属吸着質は通常、金属酸化物部分である。
【0106】
本発明の第3の態様によると、触媒の存在下で、及び任意選択でアルコールの存在下で、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルとを接触させるステップを含む、エチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステル、典型的には、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを生成する方法を提供し、ここで、触媒は、本明細書において定義した本発明の第1又は他の態様のいずれかによる。
【0107】
有利なことには、本明細書に定義されているようなシリカを含み、且つ触媒であるアルカリ金属を含有する触媒は、対応する酸若しくはエステルとメチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとの縮合による、α、βエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルの生成のために著しく効率的な触媒であることがまた見出されてきた。
【0108】
用語「その適切な源」とは、本発明の第3の態様のホルムアルデヒドに関して、遊離ホルムアルデヒドが、反応条件下で源からin situで形成し得るか、又は源が反応条件下で遊離ホルムアルデヒドの同等物として作用し得、例えば、源がホルムアルデヒドと同じ反応中間体を形成し得、その結果、同等の反応が起こることを意味する。
【0109】
ホルムアルデヒドの適切な源は、式(I)
【0110】
【化1】
【0111】
の化合物でよく、式中、R及びRは、C~C12炭化水素又はHから独立に選択され、Xは、Oであり、nは、1~100の整数であり、mは、1である。
典型的には、R及びRは、本明細書に定義されているようなC~C12アルキル、アルケニル若しくはアリール、又はH、より適切には、C~C10アルキル、又はH、最も適切には、C~Cアルキル又はH、特に、メチル又はHから独立に選択される。典型的には、nは、1~10、より適切には、1~5、特に、1~3の整数である。
【0112】
しかし、トリオキサンを含めたホルムアルデヒドの他の源を使用し得る。
したがって、ホルムアルデヒドの適切な源はまた、ホルムアルデヒドの源を提供し得る任意の平衡組成物を含む。このような例は、これらに限定されないが、ジメトキシメタン、トリオキサン、ポリオキシメチレンR-O-(CH-O)-R(式中、R及び/又はRは、アルキル基又は水素であり、i=1~100である)、パラホルムアルデヒド、ホルマリン(ホルムアルデヒド、メタノール、水)、並びに他の平衡組成物、例えば、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルの混合物を含む。
【0113】
ポリオキシメチレンは、ホルムアルデヒド及びメタノールの高級ホルマール又はヘミホルマールCH-O-(CH-O)-CH(「ホルマール-i」)又はCH-O-(CH-O)-H(「ヘミホルマール-i」)(式中、i=1~100であり、適切には、1~5、特に、1~3である)、或いは少なくとも1個の非メチル末端基を有する他のポリオキシメチレンである。したがって、ホルムアルデヒドの源はまた、式R31-O-(CH2-O-)32のポリオキシメチレンであり得、式中、R31及びR32は、同じ又は異なる基でよく、少なくとも1つは、C~C10アルキル基から選択され、例えば、R31=イソブチルであり、R32=メチルである。
【0114】
通常、ホルムアルデヒドの適切な源は、ジメトキシメタン、ホルムアルデヒド及びメタノールの低級ヘミホルマールCH-O-(CH-O)-H(式中、i=1~3である)、ホルマリン、又はホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物から選択される。
【0115】
典型的には、ホルマリンという用語は、25~65重量%:0.01~25重量%:25~70重量%の比のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。より典型的には、ホルマリンという用語は、30~60重量%:0.03~20重量%:35~60重量%の比のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。最も典型的には、ホルマリンという用語は、35~55重量%:0.05~18重量%:42~53重量%の比のホルムアルデヒド:メタノール:水の混合物を意味する。
【0116】
典型的には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、5重量%未満の水を含有する。より適切には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、1重量%未満の水を含有する。最も適切には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物は、0.1~0.5重量%の水を含有する。
【0117】
本発明の第4の態様によると、本発明の任意の態様による触媒の存在下で、及び任意選択でアルカノールの存在下で、式R-CH-COORのアルカン酸若しくはエステルと、下記で定義する式(I)のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの適切な源
【0118】
【化2】
【0119】
(式中、R5は、メチルであり、R6は、Hであり;
Xは、Oであり;
mは、1であり;
nは、1~20の任意の値である)、又はこれらの任意の混合物とを接触させることを含む、エチレン性不飽和酸若しくはエステルを調製するための方法を提供し;
式中、R1は、水素、又は1~12個、より適切には、1~8個、最も適切には、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3はまた、独立に、水素、又は1~12個、より適切には、1~8個、最も適切には、1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり得る。
【0120】
したがって、本発明による触媒は、メチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとカルボン酸若しくはアルキルエステル、例えば、プロピオン酸メチルとの縮合についての選択性における驚くべき改善を可能とし、エチレン性不飽和カルボン酸が形成されることを本発明者らは発見した。さらに、縮合反応の間の重質物の生成は、かなり驚くほどに低減する。
【0121】
したがって、そのために本発明の触媒が特に有利であることが見出されてきた1つの特定の方法は、MMAを生成する、メタノールの存在下でのホルムアルデヒドとプロピオン酸メチルとの縮合である。
【0122】
MMAの生成の場合、触媒は典型的には、ホルムアルデヒド、メタノール及びプロピオン酸メチルを含む混合物と接触する。
本発明の第3又は第4の態様のプロセスは、アクリル酸及びアルクアクリル酸並びにそれらのアルキルエステル、特に、アルクアクリル酸及びそのアルキルエステル、並びにまたメチレン置換ラクトンの生成のために特に適している。適切なメチレン置換ラクトンは、それぞれ、バレロラクトン及びブチロラクトンからの2-メチレンバレロラクトン及び2-メチレンブチロラクトンを含む。適切な(アルク)アクリル酸及びそれらのエステルは、典型的には、触媒の存在下でのその対応するアルカン酸若しくはエステルとメチレン源、例えば、ホルムアルデヒドとの反応からの、適切には、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル又はアクリル酸ブチル、より適切には、それぞれ、プロパン酸又はプロピオン酸メチルからのメタクリル酸又は特に、メタクリル酸メチル(MMA)の生成からの、(C0~8アルク)アクリル酸又はアルキル(C0~8アルク)アクリレートである。したがって、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸の生成において、式R-CH-COORの好ましいエステル若しくは酸は、それぞれ、プロピオン酸メチル若しくはプロピオン酸であり、好ましいアルカノールは、したがって、メタノールである。しかし、他のエチレン性不飽和酸若しくはエステルの生成において、好ましいアルカノール若しくは酸は異なることが理解されよう。
【0123】
本発明の反応は、バッチ反応又は連続的反応であり得る。
本発明の第3又は第4の態様の方法における温度及びゲージ圧の典型的な条件は、100℃~400℃、より好ましくは、200℃~375℃、最も好ましくは、275℃~360℃;及び/又は、0.001MPa~1MPa、より好ましくは、0.03MPa~0.5MPa、最も好ましくは、0.03MPa~0.3MPaである。触媒の存在下での反応物についての典型的な滞留時間は、0.1~300秒、より好ましくは、1~100秒、最も好ましくは、2~50秒、特に、3~30秒である。
【0124】
本発明における生成物の生成のプロセスにおいて使用される触媒の量は、必ずしも重大ではなく、その中において触媒が用いられるこのプロセスの実用性によって決定される。しかし、触媒の量は通常、生成物の最適な選択性及び収率、並びに操作の許容される温度をもたらすために選択される。それにも関わらず、触媒の最小量は、反応物の効率的な触媒表面の接触をもたらすように十分であるべきであることを当業者は認識する。さらに、反応物に対する触媒の量への上限は実際には存在しないが、実際にはこれは必要とされる接触時間及び/又は経済上の考慮がまた支配し得ることを当業者は認識する。
【0125】
本発明の第3又は第4の態様の方法における試薬の相対量は、広範な限度内で変化することができるが、通常、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルのモル比は、20:1~1:20、より適切には、5:1~1:15の範囲内である。最も好ましい比は、ホルムアルデヒドの形態、及びホルムアルデヒドがホルムアルデヒド種から遊離する触媒の能力によって決まる。このように、高度に反応性のホルムアルデヒド物質(ここで、R31O-(CH-O)32中のR31及びR32の1つ又は両方は、Hである)は、相対的に低い比を必要とし、典型的には、この場合、ホルムアルデヒド又はその適切な源とカルボン酸若しくはエステルのモル比は、1:1~1:9の範囲内である。R31及びR32のどちらも、Hでない場合、例えば、CHO-CH-OCH、又はトリオキサンにおけるように、より高い、典型的には、6:1~1:3が、最も好ましい。
【0126】
上記のように、ホルムアルデヒドの源によって、水がまた反応混合物中に存在し得る。ホルムアルデヒドの源によって、触媒作用の前にそこからの水のいくらか又は全てを除去することが必要であり得る。ホルムアルデヒドの源中のそれより低いレベルの水を維持することは、触媒効率及び/又はそれに続く生成物の精製に有利であり得る。反応器中の10モル%未満、より適切には、5モル%未満、最も適切には、2モル%未満での水が好ましい。
【0127】
アルコールと酸若しくはエステルのモル比は典型的には、20:1~1:20、好ましくは、10:1~1:10、最も好ましくは、5:1~1:5、例えば、1:1.5の範囲内である。しかし、最も好ましい比は、反応物中の触媒に供給される水の量、及び反応によって生成される量によって決まり、それゆえ、反応におけるアルコールと水全体の好ましいモル比は、少なくとも1:1、より好ましくは、少なくとも2:1である。
【0128】
第3又は第4の態様の試薬は、独立に又は従前の混合の後に反応器に供給し得、反応の方法は、連続的又はバッチであり得る。しかし、典型的には、連続的方法が使用される。
典型的には、本発明の第3又は第4の態様の方法は、反応物が気相中にあるときに行われる。
【0129】
またさらなる態様において、本発明は、本明細書における関連性のある態様のいずれかによる触媒を最初に生成するステップを含む、本明細書における関連性のある態様のいずれかによるエチレン性不飽和カルボン酸若しくはエステルを生成する方法に及ぶ。
【0130】
定義
用語「アルキル」は、本明細書において使用されるとき、他に特定しない限り、C~C12アルキルを意味し、メチル、エチル、エテニル、プロピル、プロペニルブチル、ブテニル、ペンチル、ペンテニル、ヘキシル、ヘキセニル及びヘプチル基を含み、典型的には、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル、より典型的には、メチルから選択される。他に特定しない限り、アルキル基は、十分な数の炭素原子が存在するとき、直鎖状又は分岐状、環状、非環状又は部分的環状/非環状であり得、非置換であるか、ハロ、シアノ、ニトロ、-OR19、-OC(O)R20、-C(O)R21、-C(O)OR22、-NR2324、-C(O)NR2526、-SR29、-C(O)SR30、-C(S)NR2728、非置換若しくは置換アリール、又は非置換若しくは置換Hetから選択される1個若しくは複数の置換基で置換若しくは終端し得、式中、R19~R30は、ここで及び総じて本明細書においてそれぞれ独立に、水素、ハロ、非置換若しくは置換アリール、又は非置換若しくは置換アルキルを表すか、或いは、R21の場合は、ハロ、ニトロ、シアノ及びアミノを表し、且つ/又は1個若しくは複数(典型的には、4個未満)の酸素、硫黄、ケイ素原子によって、又はsilano若しくはジアルキルシルコン基、又はこれらの混合物によって中断されている。典型的には、アルキル基は、非置換、典型的には、直鎖状であり、典型的には、飽和している。
【0131】
用語「アルケニル」は、その中の少なくとも1個の炭素-炭素結合が不飽和であることを除いては、上記の「アルキル」として理解すべきであり、したがって、この用語は、C~C12アルケニル基に関する。
【0132】
用語「アルク」などは、それとは反対の情報の非存在下で、「Cアルク」はアルキルで置換されていないことを意味することを除いて、「アルキル」の上記の定義に従うとみなすべきである。
【0133】
用語「アリール」は、本明細書において使用されるとき、5~10員、典型的には、5~8員の炭素環式芳香族又は偽芳香族基、例えば、フェニル、シクロペンタジエニル及びインデニルアニオン及びナフチルを含み、これらの基は、非置換であるか、或いは非置換若しくは置換アリール、アルキル(この基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)、Het(この基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、SR29、C(O)SR30又はC(S)NR2728(式中、R19~R30は、それぞれ独立に、水素、非置換若しくは置換アリール又はアルキル(このアルキル基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)を表すか、或いは、R21の場合は、ハロ、ニトロ、シアノ又はアミノを表す)から選択される1個若しくは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0134】
用語「ハロ」は、本明細書において使用されるとき、クロロ、ブロモ、ヨード又はフルオロ基、典型的には、クロロ又はフルオロを意味する。
用語「Het」は、本明細書において使用されるとき、4~12員、典型的には、4~10員環系を含み、これらの環は、窒素、酸素、硫黄及びこれらの混合物から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子を含有し、これらの環は、二重結合を含有しないか、1個若しくは複数の二重結合を含有するか、又は性質が非芳香族、部分的に芳香族若しくは全体的に芳香族であり得る。環系は、単環式、二環式又は縮合であり得る。本明細書において同定される各「Het」基は、非置換であるか、或いはハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、アルキル(このアルキル基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)、-OR19、-OC(O)R20、-C(O)R21、-C(O)OR22、-N(R23)R24、-C(O)N(R25)R26、-SR29、-C(O)SR30又は-C(S)N(R27)R28(式中、R19~R30は、それぞれ独立に、水素、非置換若しくは置換アリール又はアルキル(このアルキル基は、本明細書に定義されているように、それ自体が非置換であるか、又は置換若しくは終端し得る)を表すか、或いは、R21の場合は、ハロ、ニトロ、アミノ又はシアノを表す)から選択される1個若しくは複数の置換基で置換されていてもよい。このように、用語「Het」は、任意選択で置換されているアゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリダジニル、モルホリニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピペリジニル、ピラゾリル及びピペラジニルなどの基を含む。Hetにおける置換は、Het環の炭素原子、又は適切な場合には、ヘテロ原子の1つ若しくは複数においてでよい。
【0135】
「Het」基はまた、Nオキシドの形態であり得る。
本発明の第3及び第4の態様の触媒反応における使用のための適切な任意選択のアルコールは、本明細書に定義されているようなアルキル、アリール、Het、ハロ、シアノ、ニトロ、OR19、OC(O)R20、C(O)R21、C(O)OR22、NR2324、C(O)NR2526、C(S)NR2728、SR29又はC(O)SR30から選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換し得る、アリールアルコールを含めたC~C30アルカノールから選択し得る。高度に好ましいアルカノールは、C~Cアルカノール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、イソ-ブタノール、t-ブチルアルコール、フェノール、n-ブタノール及びクロロカプリルアルコール、特に、メタノールである。モノアルカノールが最も好ましいが、典型的には、ジオクタオール、例えば、ジオール、トリオール、テトラオール及び糖から選択されるポリアルカノールをまた利用し得る。典型的には、このようなポリアルカノールは、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、1,2,4ブタントリオール、2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6トリヒドロキシヘキサン、ペンタエリスリトール、1,1,1トリ(ヒドロキシメチル)エタン、ナンノース、ソルベース、ガラクトース及び他の糖から選択される。好ましい糖は、スクロース、フルクトース及びグルコースを含む。特に好ましいアルカノールは、メタノール及びエタノールである。最も好ましいアルカノールは、メタノールである。アルコールの量は、重大ではない。通常、エステル化される基質の量を超える量が使用される。このように、アルコールは、また反応溶媒としての役割を果たし得るが、必要に応じて、別々又はさらなる溶媒をまた使用し得る。
【0136】
エイジングという用語は、例えば、特許出願国際公開第2009/003722号に記載されている。エイジングの一般的原理は、The Chemistry of Silica:Solubility,Polymerisation,Colloid and Surface Properties and Biochemistry of Silica:by Ralph K Iler,1979,John Wiley and Sons Inc.,ISBN 0-471-02404-X,pages 358-364に記載されている。この段階が行われる場合、ヒドロゲルを再び洗浄し、エイジングプロセスにおいて使用される材料を除去し、溶液を、触媒活性金属のための塩の選択によって決まる触媒活性金属の添加のための正しいpHにする。
【0137】
用語「含浸された」とは、本明細書において使用するように、溶液を作製するための溶媒に溶解した触媒であるアルカリ金属の添加を含み、これは溶液が前記キセロゲル又はエーロゲル内の空隙中に取り込まれるようにキセロゲル又はエーロゲルに加えられる。この用語はまた、ヒドロゲル液体を適切な溶媒と交換し、溶媒中の溶液として触媒であるアルカリ金属を加え、拡散によるヒドロゲル中への物質移動をもたらすことにまで及ぶ。
【0138】
シリカ担体は、担体形成の当業者には公知の様々な技術のいずれかによって、単核及び/又は二核修飾剤金属によって処理し得る。シリカ担体は、シリカ担体に亘り修飾剤金属が分散するような様式で、単核若しくは二核の修飾剤金属と接触し得る。典型的には、修飾剤金属は、シリカ担体の表面に亘り均一に分布し得る。好ましくは、修飾剤金属は、吸着によってシリカ担体に亘り分散している。
【0139】
用語「吸着」などは、本明細書において使用するように修飾剤金属又は触媒であるアルカリ金属に関して、シリカ担体との金属カチオン源の相互作用による、化学吸着又は物理吸着による、典型的には、化学吸着による、シリカ担体表面上への金属の組込みを意味する。典型的には、シリカ担体への修飾剤の添加は、有機金属錯体を形成させるシリカ担体上への金属カチオン源の吸着、及び有機金属錯体を金属酸化物部分へと変換する錯体の乾燥又はか焼のステップを含む。典型的にはしたがって、シリカ担体に亘る修飾剤若しくは触媒であるアルカリ金属のランダムな分布が存在する。
【0140】
本発明による修飾されたシリカ担体中の修飾剤金属及び修飾剤金属酸化物部分は、修飾剤金属に関し、ケイ素又はシリカに関しない。同様に、修飾剤金属は、本明細書において、触媒であるアルカリ金属と同じ金属ではない。
【0141】
特に逆の記載がない限り、触媒中の修飾剤若しくは触媒であるアルカリ金属又は修飾剤若しくは触媒であるアルカリ金属の量は、修飾剤若しくは触媒であるアルカリ金属イオンに関し、取り囲んでいる原子に関さない。
【0142】
用語「ゲル」は、本明細書において使用するように、また当業者には公知であるが、疑わしい場合には、その中を流体が分散している固体ネットワークと見なし得る。通常、ゲルは、その中で流体が分散しているポリマーネットワークである。共ゲルは、複数の最初の化合物/部分がポリマーネットワーク、通常、シリカ及び金属酸化物又は塩、例えばジルコニア中に組み込まれることを示すために使用される用語である。したがって、本明細書において共ゲル化は、共ゲルの形成を意味する。
【0143】
このように、ゲルは、固定しているゾルである。ヒドロゲルは、このように、流体が水である本明細書に定義されているようなゲルである。キセロゲルは、乾燥されて、流体が除去されたゲルである。エーロゲルは、流体が気体によって置き換えられており、したがって、キセロゲルと同じに縮む傾向がないゲルである。
【0144】
開始という用語は本明細書において、修飾されたシリカの形成の始まりを意味する。
用語「部分」は、金属に関して本明細書において使用するように、修飾された担体上の修飾剤金属の形態を言及するために使用される。修飾剤金属は通常、ネットワークの一部を形成するが、修飾剤金属は、シリカ基質上の別個の残基の形態である。単核という用語は、単一の金属中心を有することを意味し、シリカ上の部分の場合、単核残基の形態を有することを意味し、二核はそれに応じて解釈すべきである。
【0145】
シリカネットワークにおいて、修飾剤金属部分はシリカネットワークと関連し、したがって、単核若しくは二核部分という用語は、修飾剤金属及びその直接取り囲んでいる原子への言及であり、ネットワークのケイ素原子、又はネットワークと関連するがそれにも関わらず別々の通常は関連しない部分の一部を形成する他の修飾剤金属原子への言及ではないことを認識されたい。
【0146】
修飾剤金属の%は、このような原子の総数当たりの金属原子の数を指すため、本明細書において単位を有さない。部分は、非単核又は二核クラスターの形態をとり得るが、これらのクラスターは、修飾剤金属原子でまた構成されていることが理解されよう。
【0147】
用語「表面」は、シリカ担体に関して本明細書において使用するように、他に断りのない限り、シリカの細孔内、より特定すると、そのマクロ細孔及びメソ細孔内のシリカの表面を含む。
【0148】
本発明の実施形態は、添付の実施例及び図面を参照することによって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0149】
図1】選択した実施例についての水銀ポロシメトリーの結果を示す。
図2】選択した実施例についてのN吸着の結果を示す。
図3】選択した実施例についての水銀ポロシメトリーの結果を示す。
図4】選択した実施例についてのN吸着の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0150】
実験
吸着
実施例1~実施例4からの触媒は、N吸着、MICROMERITICS INSTRUMENT CORPORATION TriStar II3020によって、メソ細孔範囲である5~50nmにおいてそれらのメソ孔径分布について測定した。0.1~0.2gの試料を、専用の試料セル中に充填した。セルを空気流下で380℃に加熱し、この事前調整を少なくとも2時間行った。事前調整の後、試料を秤量し、設備を設定して、表面積決定を行った。試料のN吸着を-196℃にて行い、吸着-脱離等温線を得た。BET表面積及びBJHメソ孔径分布をそれらの等温線から計算した。
【0151】
水銀ポロシメトリー
実施例1~実施例4からの触媒を、MICROMERITICS INSTRUMENT CORPORATION Autopore IV9500機器を使用して水銀ポロシメトリーによって、50nmを超えるマクロ細孔範囲におけるそれらのマクロ細孔径分布について測定した。0.3~1gの乾燥した試料を、専用の試料セル中に充填した。セルを設備中に充填した。圧力を変化させることによって水銀(Hg)を試料中の触媒細孔中へと挿入し、マクロ細孔径分布を得た。
【0152】
シリカ担体の説明
実施例1(準備)(マクロ細孔を有さないシリカ)
シリカゲル試料は、市販の水ガラス、シリカ源として25.5~28.5重量%のSiO及び7.5~8.5重量%のNaOを含有するケイ酸ナトリウム溶液(EMD Millipore Corporation)を使用して調製した。
【0153】
69gの蒸留水及び53gの硝酸(65%HNO、Sigma Aldrich)をプラスチック製フラスコ中に入れ、溶液1を形成させた。80gの水ガラス及び73gの蒸留水を別々のフラスコ中に入れ、溶液2を形成させた。次いで、これらの2つの溶液を撹拌しながら混合した。この混合した溶液を、室温にて10~60分間保持した。溶液はゲル化を受け、シリカヒドロゲルへと変化した。シリカヒドロゲルを蒸留水によって数回洗浄した。次いで、シリカヒドロゲルを、温度制御した油浴において50℃にて24時間、塩基性溶液(0.1MのNH溶液)と接触させることによってエイジングさせた。エイジングプロセスの後、シリカヒドロゲルを50℃にて乾燥させ、次いで、管状炉中で600℃にて空気流(1l/分)下で3時間か焼した。か焼プロセスの後、シリカ担体を1~4mmの画分へとふるい分けした。ふるい分けの後、マクロ細孔を有さないシリカ担体を得た。
【0154】
実施例2(準備)(0.13μmのマクロ細孔直径を有するシリカ)
シリカは、10gのポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社からのポリアクリル酸、Mw=25000)を溶液1に加え、66gの65%硝酸を使用したことを除いて、実施例1において記載したように調製した。このように得られた加工したシリカ中のマクロ細孔直径は、Hgポロシメトリーによって得た。
【0155】
実施例3(準備)(0.20μmのマクロ細孔直径を有するシリカ)
シリカは、10gのポリアクリル酸を溶液1に加え、65gの65%硝酸を使用したことを除いて、実施例1において記載したように調製した。このように得られた加工したシリカ中のマクロ細孔直径は、Hgポロシメトリーによって得た。
【0156】
実施例4(準備)(0.88μmのマクロ細孔直径を有するシリカ)
シリカは、9.5gのポリアクリル酸を溶液1に加え、59gの65%硝酸を使用したことを除いて、実施例1において記載したように調製した。このように得られた加工したシリカ中のマクロ細孔直径は、Hgポロシメトリーによって得た。
【0157】
シリカ担体のZr修飾
実施例5(準備)(2.2重量%のZr、マクロ細孔を有さない)
1.57gのZr(acac)(97%アセチルアセトン酸ジルコニウム、Sigma Aldrich)を、25mlのメタノール(99.9%無水、Sigma Aldrich)に溶解した。別々のフラスコ中で、実施例1からの11.3gのシリカを秤量した。次いで、秤量したシリカを、Zr-錯体溶液に加えた。Zr-修飾されたシリカを、密封したフラスコ中で24時間静置した。これに続いて室温での乾燥ステップを行った。溶媒の全てが除去されると、Zr-修飾されたシリカ担体を、5℃/分の加熱勾配速度及び5時間の最終保持を伴って管状炉において空気流(1l/分)下で500℃にてか焼した。Zr-修飾された担体上のZr充填(重量%)は、イオン結合プラズマ質量分析法(ICPMS)又はイオン結合プラズマ原子発光分光器(ICPAES)分析によって決定した。
【0158】
実施例6(準備)(2.2重量%のZr、0.13μmのマクロ細孔直径を有する)
実施例2からのシリカを使用したこと以外は、実施例5において記載したような担体修飾を行った。さらに、25mlの代わりに50mlのメタノールを使用した。
【0159】
実施例7(準備)(2.2重量%のZr、0.20μmのマクロ細孔直径を有する)
実施例3からのシリカを使用したこと以外は、実施例5において記載したような担体修飾を行った。さらに、25mlの代わりに50mlのメタノールを使用した。
【0160】
実施例8(準備)(2.2重量%のZr、0.88μmのマクロ細孔直径を有する)
実施例4からのシリカを使用したこと以外は、実施例5において記載したような担体修飾を行った。さらに、25mlの代わりに50mlのメタノールを使用した。
【0161】
修飾された担体のCs修飾
実施例9(比較例)(7.7重量%のCs、2.2重量%のZr、マクロ細孔を有さない)
0.329gのCsOH・HO(99.5%、Sigma Aldrich)を、グローブボックスにおいて量り分け、20mlのMeOH(Sigma Aldrichからの99.9%無水MeOH)溶媒に溶解した。実施例5からの3.1gの修飾されたシリカを、CsOH溶液に加えた。試料を密封したフラスコ中に24時間静置した。これに続いて室温での乾燥ステップを行った。このステップに続いて、触媒顆粒を乾燥炉中へと110~120℃にて入れ、16時間乾燥させた。
【0162】
実施例10(比較例)(9.6重量%のCs、2.2重量%のZr、マクロ細孔を有さない)
触媒は、0.419gのCsOH・HOを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0163】
実施例11(比較例)(11.4重量%のCs、2.2重量%のZr、マクロ細孔を有さない)
触媒は、0.509gのCsOH・HOを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0164】
実施例12(7.7重量%のCs、2.2重量%のZr、0.13μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、実施例6からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0165】
実施例13(9.6重量%のCs、2.2重量%のZr、0.13μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.419gのCsOH・HOを使用し、実施例6からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0166】
実施例14(11.4重量%のCs、2.2重量%のZr、0.13μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.509gのCsOH・HOを使用し、実施例6からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0167】
実施例15(7.7重量%のCs、2.2重量%のZr、0.20μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、実施例7からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0168】
実施例16(9.6重量%のCs、2.2重量%のZr、0.20μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.419gのCsOH・HOを使用し、実施例7からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0169】
実施例17(11.4重量%のCs、2.2重量%のZr、0.20μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.509gのCsOH・HOを使用し、実施例7からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0170】
実施例18(7.7重量%のCs、2.2重量%のZr、0.88μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、実施例8からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0171】
実施例19(9.6重量%のCs、2.2重量%のZr、0.88μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.419gのCsOH・HOを使用し、実施例8からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0172】
実施例20(11.4重量%のCs、2.2重量%のZr、0.88μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.509gのCsOH・HOを使用し、実施例8からの修飾されたシリカを使用したこと以外は、実施例9において記載したように調製した。
【0173】
シリカ-ジルコニア担体(共ゲル)の説明
実施例21(準備)(マクロ細孔を有さないシリカ-ジルコニア)
2.16gのオキシ硝酸ジルコニウム水和物(Sigma Aldrich)を、プラスチック製フラスコ中で69gの蒸留水及び59gの硝酸(65%HNO、Sigma Aldrich)に溶解し、溶液1を形成させた。80gの水ガラス及び73gの蒸留水を別々のフラスコ中で混合し、溶液2を形成させた。次いで、これらの2つの溶液を撹拌しながら混合した。この混合した溶液を室温にて10~60分間保持した。溶液はゲル化を受け、シリカ-ジルコニアヒドロゲル(共ゲル)へと変化した。シリカヒドロゲルを蒸留水によって数回洗浄した。次いで、温度制御した油浴において70℃にて塩基性溶液(1MのNH溶液)と接触させることによってシリカ-ジルコニアヒドロゲルをエイジングさせた。エイジングプロセスの後、シリカ-ジルコニアヒドロゲルを、50℃にて乾燥させ、管状炉において空気流(1l/分)下で600℃にて3時間か焼した。か焼プロセスの後、シリカ-ジルコニア担体を1~4mmにふるい分けした。ふるい分けの後、マクロ細孔を有さないシリカ-ジルコニア担体を得た。
【0174】
実施例22(準備)(0.42μmのマクロ細孔直径を有するシリカ-ジルコニア)
シリカ-ジルコニアは、10gのポリアクリル酸(ポリアクリル酸Mw=25000、和光純薬工業株式会社)を溶液1に加え、64gの65%硝酸を使用したことを除いて、実施例21において記載したように調製した。Hgポロシメトリーによってマクロ細孔直径を得た。
【0175】
実施例23(準備)(0.61μmのマクロ細孔直径を有するシリカ-ジルコニア)
シリカ-ジルコニアは、9.5gのポリアクリル酸(ポリアクリル酸Mw=25000、和光純薬工業株式会社)を溶液1に加え、53gの65%硝酸を使用したことを除いて、実施例21において記載したように調製した。Hgポロシメトリーによってマクロ細孔直径を得た。
【0176】
シリカ-ジルコニア担体のCs修飾
実施例24(比較例)(8.0重量%のCs、2.4重量%のZr、マクロ細孔を有さない)
0.341gのCsOH・HO(99.5%、Sigma Aldrich)を、グローブボックスにおいて量り分け、20mlのMeOH(Sigma Aldrichからの99.9%無水MeOH)溶媒に溶解した。実施例21からの3.1gのシリカ-ジルコニア担体を、CsOH溶液に加えた。試料を密封したフラスコ中で24時間静置した。これに続いて室温での乾燥ステップを行った。このステップに続いて、触媒顆粒を乾燥炉中に110~120℃にて入れ、16時間乾燥させた。
【0177】
実施例25(比較例)(9.5重量%のCs、2.4重量%のZr、マクロ細孔を有さない)
触媒は、0.411gのCsOH・HOを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0178】
実施例26(比較例)(11重量%のCs、2.4重量%のZr、マクロ細孔を有さない)
触媒は、0.484gのCsOH・HOを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0179】
実施例27(8.0重量%のCs、2.4重量%のZr、0.42μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、実施例22からのシリカ-ジルコニアを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0180】
実施例28(9.5重量%のCs、2.4重量%のZr、0.42μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.411gのCsOH・HOを使用し、実施例22からのシリカ-ジルコニアを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0181】
実施例29(11重量%のCs、2.4重量%のZr、0.42μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.484gのCsOH・HOを使用し、実施例22からのシリカ-ジルコニアを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0182】
実施例30(8.0重量%のCs、2.4重量%のZr、0.61μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、実施例23からのシリカ-ジルコニアを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0183】
実施例31(9.5重量%のCs、2.4重量%のZr、0.61μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.411gのCsOH・HOを使用し、実施例23からのシリカ-ジルコニアを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0184】
実施例32(11重量%のCs、2.4重量%のZr、0.61μmのマクロ細孔直径を有する)
触媒は、0.484gのCsOH・HOを使用し、実施例23からのシリカ-ジルコニアを使用したことを除いて、実施例24において記載したように調製した。
【0185】
実施例33(触媒性能試験)
実施例9~20及び実施例24~32からの触媒を、実験室規模のマイクロリアクター中のプロピオン酸メチル及びホルムアルデヒドの反応について試験した。このために、3gの触媒を、18mmのチューブ内径を有する固定床反応器中に充填した。反応器を350℃に加熱し、0.032ml/分でGilsonポンプによって供給された気化器からの、70重量%のプロピオン酸メチル、20重量%のメタノール、6重量%の水及び4重量%のホルムアルデヒドからなる気化した流れを供給することによって事前調整を行った。この事前調整を一晩続けた。事前調整の後、75.6重量%のプロピオン酸メチル、18.1重量%のメタノール、5.7重量%のホルムアルデヒド及び0.6重量%の水からなる供給流を、350℃にて設定した気化器へとGilsonポンプによってポンピングし、その後、触媒を含有する350℃に設定した加熱した反応器に供給した。反応器出口蒸気を冷却し、変化する蒸気/触媒の接触時間での変換を得るために、5つの異なる液体供給速度(0.64~0.032ml/分)で集めた試料と共に凝縮した。液体供給物及び凝縮した反応器前液体生成物を、DB1701カラムを有するShimadzu2010ガスクロマトグラフによって分析した。試料の組成を、それぞれのクロマトグラムから決定し、変化する接触時間における収率及び選択性を決定した。活性は、供給されたプロピオン酸メチル上で10%MMA+MAA収率を得るのに必要とされる接触時間(秒)の逆数として定義し、MMA+MAA収率グラフに対する接触時間への内挿によって決定した。次いで、この内挿した接触時間を使用して、10%MMA+MAA収率においてMMA+MAA選択性を得た。
【0186】
上記の実施例についての触媒性能データを、組成及び多孔度データと共に、下記の表1及び2において要約する。
マクロポーラスシリカ(実施例1~4)及びマクロポーラスシリカ-ジルコニア担体(実施例21~23)についての孔径分布データを図1~4において示す。図1及び3は、水銀ポロシメトリーによって得たマクロ細孔径分布であり、図2及び4は、N吸着BJH分析によって得たメソ孔径分布である。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
本明細書と関連して本明細書と同時に又は前に出願し、本明細書と共に公衆の便覧のために開かれている、全ての論文及び文献に対して注意が向けられ、全てのこのような論文及び文献の内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0190】
(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含めた)本明細書において開示されている特徴の全て、及び/又はこのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの全ては、このような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互排他的である組合せを除いて、任意の組合せで結合され得る。
【0191】
(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含めた)本明細書において開示した各特徴は、明示的に逆の記載がない限り、同じ、同等又は同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられ得る。このように、明示的に逆の記載がない限り、開示されている各特徴は、同等又は同様の特徴の一般的系列の単に一例である。
【0192】
本発明は、上記の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含めた)本明細書において開示されている好ましい、典型的な、若しくは任意選択の発明の特徴の任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せに、或いはこのように開示されている任意の方法又はプロセスの好ましい、典型的な若しくは任意選択の発明のステップの任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せに及ぶ。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】