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特表2022-542922バイオエンジニアリング製剤、その調製および実施のためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】バイオエンジニアリング製剤、その調製および実施のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/44 20060101AFI20220930BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220930BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220930BHJP
   A61L 24/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20220930BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20220930BHJP
   A61L 24/08 20060101ALI20220930BHJP
   A61L 24/10 20060101ALI20220930BHJP
   A61L 24/04 20060101ALI20220930BHJP
   A61L 24/06 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61L27/44
A61L27/38 100
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/34
A61K47/32
A61L24/00 260
A61L27/52
A61L27/58
A61L24/00 310
A61L24/08
A61L24/10
A61L24/04 200
A61L24/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505409
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 IN2020050653
(87)【国際公開番号】W WO2021019562
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201941030371
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522033896
【氏名又は名称】パンドラム・テクノロジーズ・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Pandorum Technologies Private Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ボウミック,トゥヒン
(72)【発明者】
【氏名】チャンドル,アルン
(72)【発明者】
【氏名】セルバム,シバラム
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル,パリニタ
(72)【発明者】
【氏名】ベン トーマス,ミドゥン
(72)【発明者】
【氏名】エス,カマルナト
(72)【発明者】
【氏名】メノン,ディープト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB24
4C076CC50
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE36
4C076EE37
4C076FF67
4C076FF68
4C081AB21
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB04
4C081CA05
4C081CA18
4C081CC04
4C081CD02
4C081CD04
4C081CD081
4C081CD121
4C081CD34
4C081DA12
4C081EA11
(57)【要約】
本開示は、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含む、バイオエンジニアリング製剤を開示する。本開示はまた、幹細胞、もしくはエクソソーム、またはそれらの組み合わせを含むバイオエンジニアリング製剤を開示する。さらに、バイオエンジニアリング製剤を調製するためのプロセスもまた、そこで開示されている。さらに、a)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む、製剤もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含む、バイオエンジニアリング製剤。
【請求項2】
(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤であって、前記バイオエンジニアリング製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、バイオエンジニアリング製剤。
【請求項3】
前記修飾ヒアルロン酸が、10~48kDa、好ましくは12~35kDaの範囲の分子量を有する、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項4】
前記修飾コラーゲンペプチドが、前記製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にあり、前記修飾ヒアルロン酸が、前記バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にある、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項5】
前記修飾コラーゲンペプチドが、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択される、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項6】
前記修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択される、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項7】
前記製剤が、間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される少なくとも1種類の幹細胞をさらに含む、請求項1に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項8】
前記間葉系幹細胞が、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択される、請求項7に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項9】
前記幹細胞が、前記バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり10万~1,000万細胞の範囲で存在する、請求項7に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項10】
前記バイオエンジニアリング製剤が、角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームをさらに含む、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項11】
前記エクソソームが、前記バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり5億~250億エクソソームの範囲の濃度を有する、請求項10に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項12】
前記プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームが、角膜実質幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、請求項10に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項13】
前記修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸であり、前記修飾コラーゲンが、チオール化コラーゲンペプチドである、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項14】
前記製剤が、(i)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、および角膜輪部幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(ii)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、をさらに含む、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項15】
前記製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項16】
前記製剤が、インビトロ条件下で28日以内に最大50%の分解に対して耐性がある、請求項1または2に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項17】
請求項1に記載のバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスであって、前記プロセスが、
(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する前記修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する前記修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合を得ることと、
(b)前記予混合を光開始剤溶液と接触させて、前記バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む、プロセス。
【請求項18】
前記修飾コラーゲンペプチドが、前記製剤に関して20~250mg/mlの範囲の濃度を有し、前記修飾ヒアルロン酸が、前記バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの範囲の濃度を有する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記光開始剤溶液が、リン酸緩衝生理食塩水中に0.001~0.1mMエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミンを含み、前記光開始剤溶液が、前記バイオエンジニアリング製剤に関して0.5×~1×の範囲の量で存在する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記予混合を前記光開始剤溶液と接触させた後、50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光に、1~15分、好ましくは、2~8分間の範囲の期間曝露する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項21】
対象の角膜欠損を治療するための方法であって、前記方法が、
(a)請求項1~16のいずれか一項に記載のバイオエンジニアリング製剤を得ることと、
(b)角膜欠損の部位に適切な量の前記バイオエンジニアリング製剤を適用することと、
(c)対象の前記角膜欠損を治療するために、1~15分、好ましくは2~8分の範囲の期間、前記角膜欠損の前記部位の前記製剤上で50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射することと、を含む、方法。
【請求項22】
前記方法が、(i)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)適切な量の前記製剤を適用する前または後に、前記角膜欠損の前記部位での臨床的に承認された点眼製剤と、を含む溶液を適用することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む、製剤。
【請求項24】
前記臨床的に承認された点眼製剤が、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、およびアルギン酸からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
対象の角膜欠損を治療するための方法であって、前記方法が、
(a)(i)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む製剤を得ることと、
(b)対象の前記角膜欠損を治療するために、前記角膜欠損の部位に前記製剤を適用することと、を含む、方法。
【請求項26】
対象の角膜欠損を治療するのに使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のバイオエンジニアリング製剤。
【請求項27】
対象の角膜欠損を治療するのに使用するための、請求項23に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、生物学的ヒドロゲル製剤に関する。特に、本開示は、角膜用途のためのバイオエンジニアリング製剤に関する。本開示はまた、バイオエンジニアリング製剤を調製するためのプロセス、およびその適用を提供する。
【背景技術】
【0002】
角膜失明は世界で4番目に多い失明の原因であり、毎年世界中で推定150万人の新しい症例が報告されている。世界で約1,000万人が両側性角膜失明にかかっており、さらに2,300万人が片側性角膜失明にかかっている。角膜機能障害の主な原因としては、トラコーマ(角膜の瘢痕および血管新生を含む)、眼球外傷、角膜潰瘍、および単純ヘルペスウイルスによる感染症などが挙げられる(Corneal blindness:a global perspective.Whitcher JP,Srinivasan M,Upadhyay MP Bull World Health Organ.2001;79(3):214-21)。角膜疾患の主要な医学的治療のうちの1つとしては、角膜移植術(角膜移植)が挙げられる。しかしながら、角膜移植に関連する様々な合併症があり、(i)角膜移植術の患者が、器官(角膜)拒絶反応を経験すること、(ii)眼ヘルペスまたは真菌性角膜炎などの感染症による瘢痕、(iii)緑内障(眼内圧の上昇)、(iv)角膜形状の不規則な曲線によって引き起こされる視力の問題(視覚の鋭さ)、(v)角膜移植の剥離、(vi)生体組織の安全な摘出、保管、および輸送を取り巻く高コストおよび不便が挙げられる。
【0003】
角膜移植に関連する限界を見ると、科学者たちによって様々な努力がなされてきた。近年、角膜移植に関連する問題を解決するために、生体材料の使用および組織工学におけるレシピエント自身の細胞の組み込みが最も重要になっている。例えば、組織接着剤は、損傷後または角膜手術中に眼創傷を閉鎖するために広く使用されてきた。角膜手術では、それらは主に、手術後の穿孔を閉鎖するための無縫合の代替物として使用される。眼疾患を治療するために、様々な生体材料が文字通り報告されている。例えば、JP2014/129408Aは、処理したキトサン、修飾したキトサン、修飾処理したキトサン、またはそれらの混合物もしくは組み合わせを含む生体材料を開示し、少なくとも1つのキトサンは、処理したキトサン、修飾したキトサン、または修飾処理したキトサンである。生体材料を作製し、それを使用するための方法もまた、文書に開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の眼用接着剤は、重合が速く発熱し、生体適合性が低く、透明度が低く表面が粗く、取り扱いが難しく、滞留時間が短く、宿主の眼組織との一体性が低いなどの顕著な欠点に悩まされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、任意の副作用を回避する角膜疾患の治療に役立つ天然の角膜の特徴に一致する、効果的な、生体適合性および生分解性の架橋ヒドロゲル製剤を開発するという当該技術分野での長年の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0007】
本開示の別の態様では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。
【0008】
本開示の別の態様では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合を得ることと、(ii)予混合を光開始剤溶液と接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0009】
本開示の別の態様では、対象の角膜欠損を治療するための方法が提供され、上述の方法は、(a)本明細書に記載のバイオエンジニアリング製剤を得ることと、(b)角膜欠損の部位に適切な量のバイオエンジニアリング製剤を適用することと、(c)対象の角膜欠損を治療するために、1~15分、好ましくは2~8分の範囲の期間、角膜欠損の部位の製剤上で50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射することと、を含む。
【0010】
本開示の別の態様では、(a)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む製剤が提供される。
【0011】
本開示の別の態様では、対象の角膜欠損を治療するための方法が提供され、上述の方法は、(a)(i)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む製剤を得ることと、(b)対象の角膜欠損を治療するために、角膜欠損の部位に製剤を適用することと、を含む。
【0012】
本主題のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求を参照することにより、よりよく理解されるであろう。この要約は、簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供される。この要約は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を制限するために使用されることも意図されていない。
【0013】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の態様をさらに説明するために含まれている。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて図面を参照することによってよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)圧縮弾性率および(B)接着強度についての「33kDa」のHA-MA/RCP-SH(両方とも置換度(DoS)50%を有する)を含むバイオエンジニアリング製剤のスクリーニング結果のグラフ表示を示す。本開示の一実施形態による棒グラフ(平均±SD、n=3)。
図2】(A)圧縮弾性率および(B)接着強度についての10kDaのHA-MA/RCP-SH(両方とも置換度(DoS)30%を有する)を含むバイオエンジニアリング製剤のスクリーニング結果のグラフ表示を示す。本開示の一実施形態による棒グラフ(平均+/-SD、n=3)。
図3】(A)圧縮弾性率および(B)接着強度についての50kDaのHA-MA/RCP-SH(両方とも置換度(DoS)50%を有する)を含むバイオエンジニアリング製剤のスクリーニング結果のグラフ表示を示す。本開示の一実施形態による棒グラフ(平均±SD、n=3)。
図4】Gel-MAとの比較で示される1×PBSに関する「33kDa」のHA-MA/RCP-SH製剤(両方ともDoS 50%)に対する可視光透過率ベースのスクリーニングを示す。本開示の一実施形態による棒グラフ(平均+/-SD、n=3)。
図5】「33kDa」のHA-MA/RCP-SHおよびGel-MA(20%w/w、DoS>95%)製剤に対するエクスビボ破裂圧力試験を示す。棒グラフ(平均±SD、n=3)。本開示の一実施形態によれば、目標値は2.5kPaに設定される。
図6】本開示の一実施形態による、(A)成分が別々に再構成および混合されるバイオエンジニアリング製剤調製プロトコル、(B)成分が粉末形態で予混合されてから生理食塩水で再構成される予混合バイオエンジニアリング製剤調製プロトコルを示す。
図7】本開示の一実施形態による、周囲光におけるDoS 50%の「33kDa」のHA-MA/RCP-SH製剤の架橋反応速度を、(A)貯蔵弾性率G’および(B)複素粘度のプロットで示す。
図8】本開示の一実施形態による、100mW/cmの白色光での、予混合HA-MA/RCP-SH(mg/ml、DoS 50%)製剤の架橋反応速度のGel-MA(20%w/w、DoS>95%)の架橋反応速度との比較を示す。
図9】本開示の一実施形態による、時間(エラーバーは、n=3サンプルの標準偏差を表す)に関するGel-MA(20%w/w、DoS>95%)と比較したDoS 50%の「33kDa」のHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤の膨潤プロファイルを示す。
図10】本開示の一実施形態による、時間に関して比較した「33kDa」のHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤(DoS 50%を含む)の生分解プロファイルを示す。
図11】本開示の一実施形態による、本開示のバイオエンジニアリング製剤を調製するための最適化されたプロトコルを示す。
図12】本開示の一実施形態による、インビトロで3日目および13日目の2Dカバースリップ、Gel-MA(20%、DoS>95%)、HA-MA/RCP-SH(mg/ml、DoS 50%)ヒドロゲル表面の初代ヒト角膜上皮細胞による上皮化を示す位相差顕微鏡画像を示す。(スケールバー=100μm)。
図13】本開示の一実施形態による、「バイオエンジニアリング角膜」HA-MA/RCP-SHヒドロゲル表面(mg/ml、DoS 50%)およびGel-MA(20%、DoS>95%)および2D培養表面で培養されたCLSCの細胞生存率研究を示す。(スケールバー=500μm)。
図14】本開示のヒドロゲル製剤およびGel-MA(20%、DoS>95%)にカプセル化されたCLSCの細胞生存率研究を示す。カバースリップ上の細胞を表面で培養した。A)およびB)は、異なるHA-MAおよびRCP-SH製剤(mg/ml、DoS 50%)、Gel-MAならびに2D表面で実施された実験を表す。C)は、40/125(mg/ml、DoS 50%)BCv1.2製剤について14日目にマークされた領域の拡大画像を示す。D)は、本開示の一実施形態による、BCv1.2ヒドロゲル内の生細胞の均一な分布を示す画像の層ごとの3D構造物を示す。(スケールバー=200μm)。
図15】本開示の一実施形態による、2D培養表面に関してヒドロゲル製剤にカプセル化されたCLSCによるCD90(赤色で表示)およびαSMA(緑色で表示)の発現を示す免疫蛍光研究を示す。スケールバー=100μm。
図16】ウサギモデルのインビボでのヒドロゲル製剤の前臨床試験を示す。本開示の一実施形態による、(A)シアノアクリレート接着剤による治療を受けているウサギの角膜、(B)は、本開示のヒドロゲル製剤を受けているウサギ角膜を示す。
図17】本開示の一実施形態による、幹細胞およびエクソソームを含むバイオエンジニアリング製剤を調製するための最適化されたプロトコルを示す。
図18】本開示の一実施形態による、IFNγ(A)、TNF-α(B)、IL-1β(C)、IL-6(D)、IL-10(E)およびVEGFA(F)について測定されたサイトカイン発現(転写産物)を示す。
図19】hBM-MSCエクソソームの血管新生活性を示す。抗血管新生アッセイでは、対照(A-B)とhBM-MSCエクソソーム(C-D)処理した内皮細胞との間で、管形成に有意差は観察されなかった。本開示の一実施形態によれば、血管新生促進アッセイでは、対照(E-F)とhBM-MSCエクソソーム(G-H)処理した内皮細胞との間で、管形成の有意差は観察されなかった。
図20】hBM-MSCから単離されたエクソソームの機能的特徴を示す。(A)複数の時点(0、12、24、48、72時間)にわたって観察された、ヒト角膜上皮細胞の単層上の創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)の時間経過を示す代表的な画像、(B)72時間でのヒト角膜上皮細胞の単層における創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)のパーセンテージの定量化。本開示の一実施形態によれば、画分F9およびcaptocore画分F9-CC(1μg)からのエクソソーム(4×10)は、強力な創傷治癒能力を示した。
図21】本開示のヒドロゲル製剤からのカプセル化されたエクソソームの放出を示す。生体高分子(HA/MA+RCP-SH)でカプセル化されたエクソソームの放出は、ウエスタンブロッティングによって定量化された。ヒドロゲルをエクソソームと混合し、PBS中で37℃、指示された時点でインキュベートした。上清を異なる時点で収集し、エクソソーム特異的マーカーCD63の発現について分析した。エクソソームの持続放出は、16日目から28日目までウエスタンブロットによって検出された。本開示の一実施形態による、Key:CMのエクソソーム:培養培地のエクソソーム、Encap.:ヒドロゲルカプセル化されたエクソソーム。
図22】本開示のヒドロゲル製剤中のカプセル化されたMSCの細胞生存率に対するエクソソームの影響を示す。エクソソームの存在下では、カプセル化されたMSCの細胞生存率は、対照としてのみ機能する細胞と比較して、5日目のHA/RCP(mg/ml、DoS 50%)ヒドロゲルでかなり高かった。G+C:細胞を含むヒドロゲル、GC Ex.CM:培養培地を介してエクソソームを受けている細胞カプセル化ゲル、GC Ex.Enc.:細胞およびエクソソームはゲルに一緒にカプセル化されている、GelMA:ゼラチンメタクリレート。本開示の一実施形態によれば、データは、n=3回複製を伴う平均±SEとして表される。
図23】(A)2D、(B)40/125 HA-MA/RCP-SHの表面、および(C)エクソソーム補足培地を含む40/125 HA-MA/RCP-SHの表面でのヒト皮膚線維芽細胞の培養を示す。本開示の一実施形態によれば、エクソソームは、すべての研究にわたって使用される濃度(4億エクソソーム/ml)で細胞に対して細胞毒性効果を有するように見えなかった。
図24】RAW264.7マクロファージ細胞に対するCLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来エクソソームの抗炎症効果を示す。RAW264.7マクロファージ細胞を4×10エクソソーム(1μg)で処理した後、LPSで4時間刺激した。本開示の一実施形態によれば、(A)IL-6、(B)IL-10、(C)TNF-αおよび(D)IL-1βについてELISAによって分泌されたサイトカインのレベルを定量化した。
図25】本開示の一実施形態による、CLSC-CM/セクレトームの血管新生活性を示す。
図26】RAW264.7マクロファージ細胞に対するCLSC-馴化培地/セクレトームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC馴化培地/セクレトームの抗炎症効果を示す。RAW264.7マクロファージ細胞を、50%の補充(50万BMMSCから収集)でCLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSCのいずれかから収集された馴化培地で処理した後、LPSで4時間刺激した。本開示の一実施形態によれば、(A)IL-6、(B)IL-10、(C)TNF-αおよび(D)IL-1βについてELISAによって分泌されたサイトカインのレベルも定量化した。
図27】CLSC、CLSC-CMでプライミングされたBMMSC、およびBMMSCセクレトームの創傷治癒活性の比較を示す。本開示の一実施形態による、(A)複数の時点(0、12、24、48時間)にわたって観察された、セクレトームの存在下(20万の供給源MSCに相当)でのヒト角膜上皮細胞の単層における創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)の時間経過を示す代表的な画像、(B)複数の時点(0、12、24、48、72時間)にわたって観察された、4×10エクソソームの存在下(20万の供給源MSCに相当)でのヒト角膜上皮細胞の単層における創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)の時間経過を示す代表的な画像。
図28】インビトロ神経支配アッセイの結果を示す。CLSC-エクソソームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSCエクソソームは、PC12細胞の神経支配(神経突起伸長)を4億エクソソーム/mlで促進する。細胞を陽性対照(B、H)として20ng/mlのNGFで処理した。(A-F)スケールバー:100μm、(G-L)スケールバー:50μmおよび100μm。黄色の矢印は、本開示の一実施形態による、神経突起伸長を示す。
図29】本開示の一実施形態による、BMMSC、CLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSCからの(A)エクソソームおよび(B-C)セクレトームにおけるNGFの分泌レベルを示す。
図30】CLSC-エクソソームおよびCLSC-CMでプライミングされたエクソソームの抗線維化効果を示す。ヒト皮膚線維芽細胞を、TGF-β(10ng/ml)で24時間線維化を誘導する前に、示したエクソソーム(4×10/ml)で4時間前処理した。本開示の一実施形態によれば、細胞を抗α-SMA抗体(緑色で示される)(線維症のマーカー)およびDAPI(核、青色で示される)で染色した。
図31】本開示の一実施形態による、CLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームおよびセクレトームの血管新生活性の特徴付け:(A)セクレトーム、(B)エクソソームのVEGFタンパク質レベル、および(C-D)セクレトーム、(E)エクソソームのsFLT1タンパク質レベルを示す。
図32】4時間でのヒト角膜上皮細胞による点眼製剤中のCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来エクソソームの細胞取り込みを示す。エクソソームをPKH26(赤色で示される)で標識し、4時間ライブイメージングが行われた。本開示の一実施形態によれば、エクソソームの取り込みは、試験されたすべての製剤で観察された。
図33】4時間でのヒト角膜上皮細胞による点眼製剤中のCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来エクソソームの細胞取り込みを示す。エクソソームをPKH26(赤色で示される)で標識し、細胞と4時間インキュベートした。本開示の一実施形態によれば、細胞を固定し、サイトケラチン-3(緑色で示される)およびDAPI(青色で示される)で標識した。
図34】点眼製剤の抗炎症活性を示す。RAW264.7細胞を、上記の示された臨床グレードHAの濃度(0.1~5%)で再構成されたエクソソーム(25%のCLSC-CMでプライミングされたBMMSC-エクソソーム)(4×10エクソソーム/ml)の存在下または非存在下でLPSで活性化した。上記のように、様々な濃度のHAは、CLSC-CMでプライミングされたエクソソームの抗炎症活性に影響を与えず、点眼製剤形式でのエクソソームの治療効果を保証する。本開示の一実施形態によれば、(A)IL-6、(B)IL-10、(C)TNF-αおよび(D)IL-1βの分泌を、前述のようにELISAによって定量化した。
図35】固有粘度を計算するためにレオメータから得られた代表的な生データを示す。本開示の一実施形態によれば、固有粘度は、0に近づく剪断速度での粘度として定義される。
図36】本開示の一実施形態による、Stanford Chemicalsから得られた「33kDa」HA原料のGPCデータを示す。
図37】本開示の一実施形態による、原料(Stanford Chemicals)に由来し、CreativePEG Worksによって誘導体化された「33kDa」HAメタクリレートのGPCデータを示す。
図38】本開示の一実施形態による、「33kDa」HA-MAの代表的なH-NMRデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当業者は、本開示が、具体的に記載されたもの以外の変更および修正の対象となることに気付くであろう。本開示は、そのようなすべての変更および修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個別にまたは集合的に言及または示されるそのようなすべてのステップ、特徴、組成物、および化合物、ならびにそのようなステップまたは特徴のいずれかまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含む。
【0016】
定義
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、本明細書で使用される特定の用語、および例がここに描かれている。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読み、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者に認識され、知られている意味を有するが、便宜上および完全を期すために、特定の用語およびそれらの意味を以下に示す。
【0017】
「a」、「an」および「the」という冠詞は、冠詞の文法的な対象の、1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0018】
「含む」および「含むこと」という用語は、追加の要素が含まれる場合があることを意味する包括的でオープンな意味で使用される。「のみからなる」と解釈されることを意図するものではない。
【0019】
本明細書全体を通じて、文脈上別の意味に解釈すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記述された要素もしくはステップ、または要素もしくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の要素もしくはステップ、または要素もしくはステップの群を除外するものではないことを理解されたい。
【0020】
「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」ことを意味するために使用される。「含む(including)」および「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」は交換可能に使用される。
【0021】
本文書の目的のために、「バイオエンジニアリング製剤」という用語は、異なる組成のポリマー混合物を指す。本開示では、「バイオエンジニアリング製剤」および「ヒドロゲル製剤」という用語は、交換可能に使用される。架橋プロセスは、光開始剤の添加後に開始するが、本開示に開示されるように、特定の強度の白色光の曝露後にのみ架橋が完了する。当業者は、分子量、置換度、圧縮弾性率、および引張強度などの特定のパラメータの試験は、ヒドロゲルのような架橋生成物でのみ可能であることを理解するであろう。分子量および程度または置換は、生体高分子の特性であり、同じ鎖を含む他の高分子とは異なる。
【0022】
ポリマーの置換度(DOS)は、塩基単位(縮合ポリマーの場合)またはモノマー単位(付加ポリマーの場合)ごとに結合した置換基の(平均)数である。
【0023】
本明細書で使用される「コラーゲン」および「コラーゲン配列由来ペプチド」という用語は、上述のポリペプチドおよびタンパク質配列の天然、合成、組換えおよび/または代替バージョンを含むために使用される。
【0024】
「修飾ヒアルロン酸」または「修飾コラーゲンペプチド」または「修飾コラーゲン」または「修飾シルク」または「修飾セルロース」または「ポリエチレングリコール」または「修飾ポリビニルアルコール」または「修飾アルギン酸」という用語は、それぞれの分子において可能な任意の種類の修飾を意味する。行われた特定の修飾は、提示された開示でカバーされている。例えば、修飾セルロースとは、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)などの修飾分子を意味することを目的とする。
【0025】
「間葉系幹細胞由来の馴化培地」または「MSC-CM」という用語は、MSCの増殖後に得られる培地を指す。このようにして得られた馴化培地は、分泌された細胞モジュレータおよび組織再生に重要な複数の因子を含む。このようにして得られた馴化培地はまた、セクレトーム、および治療目的に適用することができる前に馴化培地から精製する必要があるエクソソームを含む。本明細書に記載の拡張MSCを得るためのプロセスはまた、MSC-CMの形成につながり、したがって、単一のプロセスは、拡張MSCの集団ならびにMSC-CMの調達につながると言うことができる。「エクソソーム」という用語は、それらを分泌する生物学的細胞の構成物(タンパク質、DNA、およびRNAの観点から)を含有する細胞外小胞のタイプを指す。本明細書に記載の馴化培地から得られたエクソソームは、治療目的で使用される。
【0026】
「角膜実質幹細胞由来の馴化培地」または「CSSC-CM」という用語は、角膜実質幹細胞(CSSC)が増殖する培地を指す。本明細書に記載のCSSC-CMは、当該技術分野で知られている方法でCSSCを培養することによって、または本明細書に開示される方法に従ってCSSCを培養することによって得られる。角膜輪部幹細胞(CLSC)は、以前のPCT出願、PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されているように輪部リングから単離される。これらの細胞は、角膜実質幹細胞(CSSC)および輪部上皮幹細胞(LESC)の2つの亜集団に分けることができる。PCT出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623は、CSSC単離の方法を開示し、そこで使用されるプロトコルによるLESCを介したCSSC集団の濃縮を実証する。しかしながら、CSSC濃縮画分に残されたLESCの集団が少ない場合、これらの出願のすべての細胞型をカバーするために、同じものが「CLSC」と呼ばれる。したがって、そのようなCSSC濃縮集団に由来する馴化培地は、CSSC由来の馴化培地(CSSC-CM)として知られている。簡単にするために、CSSC-CMという用語は、LESCの少数の集団も存在する濃縮CSSCを培養することによって得られる馴化培地を表すためにも使用されることが理解される。
【0027】
本開示に記載される「ゼノフリー」という用語は、非ヒト動物に由来するいかなる生成物も含まない、本明細書に記載のプロセスを指す。ゼノフリーである方法は、臨床用途の妥当性のために重要な利点である。「スケーラブルな」という用語は、生産量を何倍にも増やす能力を指す。「対象」という用語は、本開示で言及されるような状態に苦しむヒト対象を指す。「治療有効量」という用語は、対象の状態を治療するために必要とされる組成物の量を指す。
【0028】
「培養培地」という用語は、MSCが培養される培地を指す。培養培地は、MSC基本培地を含み、MSC基本培地は、培養されているMSCに従って使用される。本開示で言及されるようなMSC基本培地は、商業的に調達された。本開示の目的のために、RoosterBioゼノフリー培地をBMMSCに使用した。
【0029】
「馴化培地」という用語は、肝細胞成長因子(HGF)、角膜実質細胞成長因子(KGF)、および可溶性フォーム様チロシンキナーゼ1(sFLT1)、色素上皮由来成長因子(PEDF)、トロンボスポンジンおよびmiR-10b、miR-21、miR-23a、miR-182、miR-181a、miR-145を含む様々な分子を含有するエクソソーム、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、sFLT1およびホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ホスホグルコムターゼ、エノラーゼ、CD73、CD63およびMMP9などの様々なタンパク質/成長因子などの細胞分泌因子が濃縮された培地を指す。馴化培地の組成物は、治療用途に利用することが意図される。「細胞モジュレータ」という用語は、ECM、成長因子、広範囲の小分子および高分子を含有するエクソソームカーゴ、自然界の多くのタンパク質または核酸などの様々な分泌因子を指す。これらのいくつかには、細胞応答を調節することができるマイクロRNA、mRNA、長鎖ノンコーディングRNA、脂質メディエータが含まれる。「エクソソーム」という用語は、自然界のタンパク質または核酸のカーゴ分子を含有する細胞分泌小胞を指し、抗炎症、抗線維化および再生特性などの臨床的に関心のある分子を伴う20~200nmの範囲を指すことが多い。
【0030】
「角膜欠損」または「角膜障害」という用語は、医療介入を必要とする角膜の問題を示すために交換可能に使用されてきた。介入は、本開示に記載されているように、損傷した角膜をバイオプリンティングされたレンチキュール(lenticule)で置き換える程度まで可能である。
【0031】
比率、濃度、量、およびその他の数値データは、本明細書では範囲形式で提示することができる。このような範囲形式は、単に便宜上および簡潔にするために使用され、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値およびサブ範囲が明示的に記載されているかのように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値またはサブ範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。
【0032】
当該技術分野で直面する問題を克服するために、本開示は、バイオエンジニアリング製剤の適切な架橋を促進し、角膜実質損失の非侵襲的で迅速かつ長期の修復に使用することができるポリマーの組み合わせを含むバイオエンジニアリング製剤を提供する。
【0033】
本開示は、修飾コラーゲンペプチドおよび修飾ヒアルロン酸の組み合わせを含むバイオエンジニアリング製剤を提供する。20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸との組み合わせの使用は、バイオエンジニアリング製剤の物理的および生体力学的特性を改善するのに役立つ。本開示のバイオエンジニアリング製剤は、光の存在下で光開始剤で架橋されて、角膜組織にしっかりと接着する透明な架橋ヒドロゲルを得る。さらに、バイオエンジニアリング製剤は、天然の角膜組織の特性と一致する物理的、機械的、および生物学的特性を備えているため、生体模倣である。例えば、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。さらに、バイオエンジニアリング製剤は、インビトロ条件下で28日以内に最大50%の分解に対して耐性がある。さらに、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、ヒト角膜上皮細胞の遊走および増殖を促進し、表面上皮化をサポートし、それによって、生体適合性および角膜模倣特性を確認する。
【0034】
本開示のバイオエンジニアリング製剤は、幹細胞、またはエクソソーム、またはそれらの組み合わせをさらに含み、バイオエンジニアリング製剤にカプセル化され、抗線維化、抗血管新生、抗炎症および再神経支配促進特性を示す。バイオエンジニアリング製剤にエクソソームを添加すると、免疫原性および腫瘍形成能の低さ、組織特異的なホーミング能力、塞栓形成のリスクの低さを含む、エクソソームの治療上の利点が高いため、様々な角膜損傷およびジストロフィに対処するのに役立つ。本開示のバイオエンジニアリング製剤はまた、角膜欠損の部位での幹細胞、もしくはエクソソーム、またはそれらの組み合わせの持続放出性をより長期間促進し、製剤の創傷治癒能力を増強するのに役立つ。本開示はまた、角膜欠損の部位に適切な量のバイオエンジニアリング製剤を適用することと、対象の角膜欠損を治療するために、1~15分、好ましくは2~8分の範囲の期間、角膜欠損の部位の製剤上で50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射することと、のステップを含む角膜欠損または角膜障害を治療する方法を提供する。角膜欠損の部位に透明度の高いバイオエンジニアリング製剤を適用すると、角膜の瘢痕のない創傷治癒を促進するのに役立つ。本開示のバイオエンジニアリング製剤は、上皮および角膜実質の損傷/感染(活性炎症)を伴う前角膜瘢痕、ステージ1神経栄養性角膜炎(NK)(持続性角膜上皮欠損)、ステージ2NK(滑らかで丸められたエッジを特徴とする大きな持続性上皮欠損)、ステージ3NK(深い角膜潰瘍、角膜実質融解、および無菌性前房蓄膿)、モーレン潰瘍、円錐角膜、および角膜穿孔などの角膜潰瘍を含むが、これらに限定されない角膜欠損または角膜疾患を治療するのに役立つ。本開示のバイオエンジニアリング製剤はまた、角膜実質が対象において損傷を受けている、角膜輪部損傷および角膜ジストロフィ(CD)、例えば格子状CD1型、顆粒状CD1型、および先天性角膜実質CDなどを治療するのに役立つ。さらに、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、上皮および角膜実質の両方が損なわれる、シュナイダーCDおよび格子状CD2型の潜在的な治療として機能する。
【0035】
本開示のバイオエンジニアリング製剤の使用に続いて、効率的な再上皮化を増強するだけでなく、損傷によって誘発された線維症および損傷を取り巻く炎症の回復を促進する、幹細胞、もしくはエクソソーム、またはそれらの組み合わせの一定期間にわたる持続放出を可能にするエクソソーム点眼薬を使用する術後ケアがある(ヒドロゲル適用後)。さらに、本開示は、(a)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む製剤を提供する。カプセル化されたエクソソームと臨床的に承認された点眼製剤を組み合わせることで、任意の炎症反応を抑制し、血管新生を伴わずに線維性瘢痕を徐々に治癒させることができる。
【0036】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が、本開示の実践または試験に使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。本明細書で言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
本開示は、例示のみを目的とすることが意図される、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。機能的に同等の生成物、組成物、および方法は、本明細書に記載されているように、明らかに本開示の範囲内にある。
【0038】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。本開示の別の実施形態では、25~75kDaの範囲の分子量を有し、25~70%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチド。本開示のさらに別の実施形態では、30~70kDaの範囲の分子量を有し、35~60%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチド。本開示の別の一実施形態では、40~60kDaの範囲の分子量を有し、40~55%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチド。
【0039】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。本開示の別の実施形態では、15~45kDaの範囲の分子量を有し、25~70%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸。本開示のさらに別の実施形態では、20~40kDaの範囲の分子量を有し、35~65%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸。本開示の別の一実施形態では、25~35kDaの範囲の分子量を有し、50~55%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸。
【0040】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。本開示のさらに別の実施形態では、第1のポリマーは、30~70kDaの範囲の分子量を有し、第2のポリマーは、30~37kDaの範囲の分子量を有している。
【0041】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、架橋されている。
【0042】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾ヒアルロン酸は、12~48kDaの範囲の分子量を有する。
【0043】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にある。本開示の別の実施形態では、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して30~220mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して25~75mg/mlの濃度範囲にある。本開示のさらに別の実施形態では、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して40~200mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して30~60mg/mlの濃度範囲にある。本開示の別の一実施形態では、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して50~175mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して32~50mg/mlの濃度範囲にある。
【0044】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、修飾ヒアルロン酸は、12~48kDaの範囲の分子量を有し、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にある。
【0045】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択される。本開示の別の実施形態では、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチドである。本開示のさらに別の実施形態では、修飾コラーゲンペプチドは、メタクリル化コラーゲンペプチドである。
【0046】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択される。本開示の別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸である。本開示のさらに別の実施形態では、修飾ヒアルロン酸は、チオール化ヒアルロン酸である。
【0047】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択される。
【0048】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択される。
【0049】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択される。
【0050】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択される。
【0051】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。本開示の別の実施形態では、幹細胞のうちの少なくとも1種類は、間葉系幹細胞である。本開示のさらに別の実施形態では、幹細胞のうちの少なくとも1種類は、角膜実質幹細胞である。本開示の別の一実施形態では、幹細胞のうちの少なくとも1種類は、角膜輪部幹細胞である。
【0052】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類であって、間葉系幹細胞が、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択される、幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0053】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0054】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類であって、間葉系幹細胞が、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択される、幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0055】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類であって、幹細胞が、10万~1,000万細胞の範囲で存在する、幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。本開示の別の実施形態では、幹細胞は、40万~900万細胞、または50万~700万細胞、または100万~500万細胞の範囲で存在する。
【0056】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類であって、幹細胞が、10万~1,000万細胞の範囲で存在する、幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0057】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類であって、間葉系幹細胞が、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択され、幹細胞が、10万~1,000万細胞の範囲で存在する、幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0058】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類であって、間葉系幹細胞が、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択され、幹細胞が、10万~1,000万細胞の範囲で存在する、幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0059】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0060】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0061】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームであって、エクソソームが、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり5億~250億エクソソームの範囲の濃度を有する、エクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。本開示の別の実施形態では、エクソソームは、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり10億~200億エクソソームの範囲の濃度を有する。本開示のさらに別の実施形態では、エクソソームは、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり50億~150億エクソソームの範囲の濃度を有する。本開示の別の一実施形態では、エクソソームは、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり70億~100億エクソソームの範囲の濃度を有する。
【0062】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームであって、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームが、角膜実質幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、エクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0063】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームであって、エクソソームが、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり5億~250億エクソソームの範囲の濃度を有し、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームが、角膜実質幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、エクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0064】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームであって、エクソソームが、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり5億~250億エクソソームの範囲の濃度を有する、エクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0065】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームであって、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームが、角膜実質幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、エクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0066】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームであって、エクソソームが、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり5億~250億エクソソームの範囲の濃度を有し、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームが、角膜実質幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである、エクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0067】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸であり、修飾コラーゲンが、チオール化コラーゲンペプチドである。
【0068】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸であり、修飾コラーゲンは、チオール化コラーゲンペプチドである。
【0069】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、および角膜輪部幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(d)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0070】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、および角膜輪部幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(d)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0071】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸であって、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にある、修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択され、間葉系幹細胞は、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択され、幹細胞は、10万~1,000万細胞の範囲で存在する。
【0072】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、修飾コラーゲンペプチドが、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸が、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドが、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾ヒアルロン酸が、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択される、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択され、間葉系幹細胞は、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択され、幹細胞は、10万~1,000万細胞の範囲で存在する。
【0073】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸であって、修飾コラーゲンペプチドが、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にある、修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択され、エクソソームは、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり5億~250億エクソソームの範囲の濃度を有し、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームは、角膜実質幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである。
【0074】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にあり、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチド、およびメタクリル化コラーゲンペプチドからなる群から選択され、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸、およびチオール化ヒアルロン酸からなる群から選択され、エクソソームは、バイオエンジニアリング製剤の1ml当たり5億~250億エクソソームの範囲の濃度を有し、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソームは、角膜実質幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞に由来するエクソソームである。
【0075】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。
【0076】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、適切な条件下で28日以内に最大50%の分解に対して耐性がある。本開示の別の実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、最大で2%、または6%、または8%、または15%、または17%、または20%、25、または30%、35%、または40%、または45%、または48%に対して耐性があり得る。
【0077】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチドまたは修飾コラーゲンペプチド、コラーゲンまたは修飾コラーゲン、セルロースまたは修飾セルロースからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸または修飾ヒアルロン酸、ポリエチレングリコールまたは修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールまたは修飾ポリビニルアルコール、シルクまたは修飾シルク、ゼラチンまたは修飾ゼラチン、およびアルギン酸または修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。
【0078】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、バイオエンジニアリング製剤は、適切な条件下で28日以内に最大50%の分解に対して耐性がある。
【0079】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、少なくとも87%の透明度を有する。本開示の別の実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、88~100%、または90~98%、または92~96%の透明度を有する。
【0080】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、少なくとも20kPaの接着強度を有する。本開示の別の実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、21~99kPaの範囲の接着強度を有する。本開示の別の実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、25~90kPaの範囲の接着強度を有する。本開示のさらに別の実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、40~80kPaの範囲の接着強度を有する。本開示の別の一実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、50~70kPaの範囲の接着強度を有する。
【0081】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチドまたは修飾コラーゲンペプチド、コラーゲンまたは修飾コラーゲン、セルロースまたは修飾セルロースからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸または修飾ヒアルロン酸、ポリエチレングリコールまたは修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールまたは修飾ポリビニルアルコール、シルクまたは修飾シルク、ゼラチンまたは修飾ゼラチン、およびアルギン酸または修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、バイオエンジニアリング製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。本開示の別の実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、100~1300kPa、または100~1000kPa、または100~700kPa、または100~600kPa、または100~300kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。
【0082】
本開示の一実施形態では、コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有し、バイオエンジニアリング製剤は、適切な条件下で28日以内に最大50%の分解に対して耐性がある。本開示の別の実施形態では、バイオエンジニアリング製剤は、適切な条件下で、28日以内に最大40%、または30%、または20%、または10%の分解に対して耐性がある。
【0083】
本開示の一実施形態では、(a)20~60kDaの範囲の分子量を有し、40~60%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~50kDaの範囲の分子量を有し、40~60%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0084】
本開示の一実施形態では、(a)50kDaの分子量を有し、50%の置換度を有するチオール化コラーゲンペプチドと、(b)33kDaの範囲の分子量を有し、50%の範囲の置換度を有するメタクリル化ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0085】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0086】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、暗条件下でpH7で、35~45℃の範囲の温度でバイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含み、修飾コラーゲンペプチドは、バイオエンジニアリング製剤に関して20~250mg/mlの範囲の濃度を有し、修飾ヒアルロン酸は、組成物に関して20~80mg/mlの範囲の濃度を有する。
【0087】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含み、光開始剤溶液は、リン酸緩衝生理食塩水中に0.05~0.1mMエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミンを含み、光開始剤溶液は、バイオエンジニアリング製剤に関して0.5×~1×の範囲の量で存在する。本開示の別の実施形態では、光開始剤溶液は、リン酸緩衝生理食塩水中に0.07~0.09mMエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミンを含み、光開始剤溶液は、バイオエンジニアリング製剤に関して0.6×~0.9×の範囲の量で存在する。
【0088】
本開示の一実施形態では、本明細書に記載のバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合を光開始剤溶液と接触させた後、50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光に、1~15分、好ましくは、2~8分間の範囲の期間曝露して、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0089】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bを幹細胞のうちの少なくとも1種類と接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0090】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される幹細胞のうちの少なくとも1種類と、を含むバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bを幹細胞のうちの少なくとも1種類と接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含み、光開始剤溶液は、リン酸緩衝生理食塩水中に0.05~0.1mMエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミンを含み、光開始剤溶液は、バイオエンジニアリング製剤に関して0.5×~1×の範囲の量で存在する。
【0091】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、角膜輪部幹細胞、および人工多能性幹細胞からなる群から選択される少なくとも1種類の幹細胞と、を含むバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bを少なくとも1種類の幹細胞と接触させた後、50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光に、1~15分、好ましくは、2~8分間の範囲の期間曝露して、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。本開示の別の実施形態では、予混合Bを幹細胞のうちの少なくとも1種類と接触させた後、60~120mW/cmの範囲の強度を有する白色光に、1~10分、好ましくは、2~8分間の範囲の期間曝露する。本開示のさらに別の実施形態では、予混合Bを幹細胞のうちの少なくとも1種類と接触させた後、80~100mW/cmの範囲の強度を有する白色光に、2~8分間の範囲の期間曝露する。
【0092】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤を調製するためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bをエクソソームと接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0093】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤を調製するためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bをエクソソームと接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含み、光開始剤溶液は、リン酸緩衝生理食塩水中に0.05~0.1mMエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミンを含み、光開始剤溶液は、バイオエンジニアリング製剤に関して0.5×~1×の範囲の量で存在する。
【0094】
本開示の一実施形態では、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、(c)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤を調製するためのプロセスが提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bをエクソソームと接触させた後、50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光に、1~15分、好ましくは、2~8分間の範囲の期間曝露して、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0095】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、および角膜輪部幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(d)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、12~48kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bを幹細胞およびエクソソームと接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0096】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、および角膜輪部幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(d)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bを幹細胞およびエクソソームと接触させて、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含み、光開始剤溶液は、リン酸緩衝生理食塩水中に0.05~0.1mMエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミンを含み、光開始剤溶液は、バイオエンジニアリング製剤に関して0.5×~1×の範囲の量で存在する。
【0097】
本開示の一実施形態では、(a)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、(c)間葉系幹細胞、角膜実質幹細胞、および角膜輪部幹細胞からなる群から選択される幹細胞と、(d)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、を含むバイオエンジニアリング製剤が提供され、上述のプロセスは、(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドを、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸に接触させて、予混合Aを得ることと、(ii)予混合Aを光開始剤溶液と接触させて、予混合Bを得ることと、(iii)予混合Bを幹細胞およびエクソソームと接触させた後、50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光に、1~15分、好ましくは、2~8分間の範囲の期間曝露して、バイオエンジニアリング製剤を得ることと、を含む。
【0098】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損または角膜障害を治療するための方法が提供され、上述の方法は、(a)(i)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(ii)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含むバイオエンジニアリング製剤を得ることと、(b)角膜欠損の部位に適切な量のバイオエンジニアリング製剤を適用することと、(c)対象の角膜欠損を治療するために、対象の角膜欠損を治療するために、1~15分、好ましくは2~8分の範囲の期間、角膜欠損の部位の製剤上で50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射することと、を含む。本開示の別の実施形態では、対象の角膜欠損を治療するために、対象の角膜欠損を治療するために、5~10分、好ましくは2~8分の範囲の期間、角膜欠損の部位の製剤上で70~100mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射すること。
【0099】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損または角膜障害を治療するための方法が提供され、上述の方法は、(a)(i)コラーゲンペプチド、修飾コラーゲンペプチド、コラーゲン、および修飾コラーゲンからなる群から選択される第1のポリマーと、(b)ヒアルロン酸、修飾ヒアルロン酸、セルロース、修飾セルロース、ポリエチレングリコール、修飾ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、修飾ポリビニルアルコール、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、修飾ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シルク、修飾シルク、ゼラチン、修飾ゼラチン、アルギン酸、および修飾アルギン酸からなる群から選択される第2のポリマーであって、製剤が、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する、第2のポリマーと、を含むバイオエンジニアリング製剤を得ることと、(b)角膜欠損の部位に適切な量のバイオエンジニアリング製剤を適用することと、(c)対象の角膜欠損を治療するために、対象の角膜欠損を治療するために、1~15分、好ましくは2~8分の範囲の期間、角膜欠損の部位の製剤上で50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射することと、を含む。
【0100】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損または角膜障害を治療するための方法が提供され、上述の方法は、(a)本明細書に記載のバイオエンジニアリング製剤を得ることと、(b)角膜欠損の部位に適切な量のバイオエンジニアリング製剤を適用することと、(c)対象の角膜欠損を治療するために、対象の角膜欠損を治療するために、1~15分、好ましくは2~8分の範囲の期間、角膜欠損の部位の製剤上で50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射することと、を含み、上述の方法は、(i)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)適切な量の製剤を適用する前または後に、角膜欠損の部位での臨床的に承認された点眼製剤と、を含む溶液を適用することをさらに含む。
【0101】
本開示の一実施形態では、(a)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む製剤が提供され、点眼製剤は、0.1~0.25%のヒアルロン酸を含む。本開示の別の実施形態では、点眼製剤は、0.2~0.22%のヒアルロン酸を含む。
【0102】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損を治療するための方法が提供され、上述の方法は、(i)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(ii)臨床的に承認された点眼製剤であって、点眼製剤が、0.1~0.25%のヒアルロン酸を含む、臨床的に承認された点眼製剤と、を含む製剤を得ることと、(b)対象の角膜欠損を治療するために、角膜欠損の部位に製剤を適用することと、を含む。
【0103】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損を治療するのに使用するための、本明細書に記載のバイオエンジニアリング製剤が提供される。
【0104】
本開示の一実施形態では、対象の角膜欠損を治療するのに使用するための、本明細書に記載の製剤が提供される。
【0105】
主題は、特定の実施例およびその実装を参照してかなり詳細に説明されてきたが、他の実装が可能である。
【実施例
【0106】
ここで、本開示は、本開示の機能を説明することを意図し、本開示の範囲に対する制限を暗示することを限定的にとることを意図しない、実施例を用いて説明される。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、本開示の方法および組成物において使用することができるが、例示的な方法、デバイスおよび材料が本明細書に記載される。本開示は、特定の方法、および記載された実験条件に限定されず、そのような方法および条件が適用され得ることを理解されたい。
【0107】
材料および方法
幹細胞の供給源
本開示の目的のために、幹細胞の供給源には、ヒト骨髄(BM)、角膜輪部幹細胞(CLSC)、臍帯(UC)、ウォートンゼリー(WJ)、歯髄(DP)および脂肪組織(AD)などの供給源からの由来を含み、角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされたMSC(CLSC-CMでプライミングされたMSC)は、本明細書に記載の方法および細胞由来製品に使用することができる。幹細胞の種類の選択は、標的の適応および組織特異性による。
【0108】
不死化した成体幹細胞株(非ウイルス性の不死化したMSC細胞株)の供給源:
1.テロメラーゼ化されたヒト骨髄由来間葉系幹細胞株(BM-MSC/TERT277)は、hTERT遺伝子を保有するプラスミドの非ウイルス遺伝子導入により海綿骨(胸骨)から単離された間葉系幹細胞から開発された。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼを選択マーカーとして使用し、ジェネテシンサルフェートを添加することにより、陽性にトランスフェクトされた細胞を選択した。細胞株は、成長遅延または複製老化の兆候を示すことなく、25を超える集団倍加のために継続的に培養された。
2.テロメラーゼ化されたヒトウォートンゼリー由来の間葉系幹細胞株(WJ-MSC/TERT273)は、一次組織の脱凝集からhTERTの非ウイルス導入までのゼノフリー条件下で樹立された。
【0109】
細胞株は、細胞型特異的マーカーならびに(i)典型的な間葉形態、(ii)CD73、CD90およびCD105などの典型的な間葉幹細胞マーカーの発現、(iii)脂肪細胞、軟骨細胞、造骨細胞への分化能、および(iv)血管新生および抗炎症活性を有する細胞外小胞の産生などの機能の発現を維持しながら、無制限の成長を特徴とした。
【0110】
幹細胞および/または細胞由来生成物の培養方法
本開示は、細胞の産生のために細胞を培養するためのプロセス、ならびに肝臓、肺、膵臓、腎臓、角膜、心臓、および脳などの組織/器官の炎症または線維化を含む様々な疾患の再生治療を含むがこれに限定されない、セクレトーム、エクソソーム、細胞外マトリックス成分(ECM)および医学的に関心のある他の細胞由来成分などの細胞由来生成物を開示する。
【0111】
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BMMSC)またはヒトドナー由来角膜輪部幹細胞(CLSC)などの様々な供給源からの角膜実質/幹細胞を、3つの異なる方法、すなわち、2次元の2D、3次元(3D)ミクロスフェアベースおよび3Dスフェロイド培養でゼノフリー条件下で培養した。これらの培養物からの馴化培地は、セクレトームおよびエクソソーム画分について特徴付けられ、治療的に有益な成分が同定された。骨髄由来間葉系幹細胞(BMMSC)もしくはヒトドナー由来角膜輪部幹細胞(CLSC)を培養するか、またはCLSC-CMでプライミングされたMSCを得るための詳細なプロセスは、ゼノフリー条件下でのすなわち2D、3Dミクロスフェアベースおよび3Dスフェロイド培養の3つの異なる方法によって、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されている。
【0112】
バイオエンジニアリング製剤に使用される成分の供給源
バイオエンジニアリング製剤であるチオール化ヒアルロン酸(HA-MA)およびチオール化組換えコラーゲンペプチド(RCP-SH)の2つの主要なポリマーを、それぞれCreative PEG works,Fujifilmから調達した。
【0113】
実施例1
バイオエンジニアリング製剤
本実施例は、2つの主要な成分-修飾ヒアルロン酸および修飾コラーゲンペプチドを含むバイオエンジニアリング製剤を開示する。特に、本開示において、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸(HA-MA)であるのに対して、修飾コラーゲンペプチドは、メタクリレート化組換えコラーゲンペプチド(コラーゲンタイプIベースのペプチドまたはRCP)(RCP-MA)、またはチオール化組換えコラーゲンペプチド(RCP-SH)である。前述の成分とは別に、バイオエンジニアリング製剤はまた、白色光への短時間曝露で成分を光架橋することができる光開始剤溶液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液PBS溶液中の0.001~0.1mMのエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミン)を含む。バイオエンジニアリング製剤は、角膜組織にしっかりと接着する固体で透明なヒドロゲルであり、角膜実質欠損の非侵襲的で迅速かつ長期的な修復に使用することができる。
【0114】
本開示の目的のために、バイオエンジニアリング製剤の物理的特性は、天然の角膜の物理的特性を模倣するように調整された。バイオエンジニアリング製剤の特性が天然の角膜の特性に匹敵することを確認するために、以下の一連のパラメータ:i.100~300kPaの範囲の圧縮弾性率、ii.接着強度:>20kPa、iii.透明度-目標値:>87%、iv.エクスビボ破裂圧力:>2.5kPa(ヒトの眼の公称眼圧)、v.可使時間、vi.架橋反応速度、vii.膨潤プロファイル:<35%、viii.生体適合性-インビトロ研究、およびix.安全性および有効性-ウサギモデルのインビボ研究を分析した。バイオエンジニアリング製剤およびヒドロゲル製剤という用語は、交換可能に使用される。
【0115】
バイオエンジニアリング製剤の物理的特性が評価された前述のパラメータの詳細な分析を以下に提供する。
【0116】
(A)圧縮弾性率および接着強度
HA-MA分子量の増減が圧縮弾性率および接着強度に及ぼす影響を確認するために、HA-MAの分子量を変化させたバイオエンジニアリング製剤をスクリーニングした。HA-MAの分子量を変化させることによって、3つのバイオエンジニアリング製剤のスクリーニングを行った。HA-MAの分子量は、本開示のバイオエンジニアリング製剤の物理的、機械的、および他の機能的特性にアクセスするための重要なパラメータのうちの1つである。したがって、3つのバイオエンジニアリング製剤のスクリーニングは、33kDAのHA-MA、10kDAのHA-MA、50kDaのHA-MA、RCP-SH/RCP-MAを使用して行われた。すべての実施例において、「33kDa」のHA-MAおよびRCP-SHヒドロゲル製剤は、33kDaのHA-MAおよび50kDaのRCP-SHを指し、濃度は、本明細書に記載の実験に従って変化し得る。
【0117】
「33kDa」のHA-MAおよびRCP-SHヒドロゲル製剤での実験
スクリーニングの最初のセットは、「33kDa」のHA-MA、RCP-MA、およびRCP-SH製剤で開始され、置換度は50%であった。本実施例で使用されるRCP-SHは、50kDaの分子量のものである。図1Aおよび1Bに示すように、HA-MA 100mg/mlを使用して(すなわち、RCP-MA/RCP-SHを使用せずに)作製した単一成分ヒドロゲルの圧縮弾性率および接着強度は、2つの成分ヒドロゲルより低いことが見出され、-MAまたは-SH基の添加により分子間架橋を増加させ、ヒドロゲルの物理的特性に大きな影響を与えることを示唆している。エオシンを光開始剤として使用した場合、RCP-MA(125および250mg/ml)を使用した単一成分溶液(本明細書に記載の単一成分はHA-MAまたはRCP-SHを含まない)は、白色光への曝露後にゲル化しなかった。同様に、RCP-SH(125および250mg/ml)溶液も、光開始剤としてのリボフラビンの存在下で青色光に曝露してもゲルを形成しなかった。RCP-MAおよびRCP-SHの濃度を一定(125mg/ml)に保ち、HA-MAの濃度を変化させて(10~100mg/ml)、HA-MAの濃度の増加に伴い、ヒドロゲルの圧縮弾性率も増加する。10mg/ml HA-MAを含むヒドロゲル製剤は、圧縮弾性率の低い値を示したのに対して、50mg/ml以上を含む製剤は、機械的強度の目標値範囲(約300kPa)よりも高い圧縮弾性率の値を示した。35または40mg/ml HA-MAを含むヒドロゲル製剤の圧縮弾性率は、必要な範囲(100~300kPa)であることが見出された。さらに、圧縮弾性率がRCP-SH濃度に正比例することも見出された。RCP-MAの圧縮弾性率をRCP-SHと比較した場合、同じ濃度のHA-MAについて、RCP-SHを有するヒドロゲルの圧縮弾性率は、同じ量のRCP-MAを含むヒドロゲルよりも高いことが見出された。図1Aから、ヒドロゲル製剤(分子量「33kDa」および濃度「40mg/ml」のHAならびに「125mg/ml」のRCP-SHを含む)の圧縮弾性率がGel-MA(社内)よりも高いこともまた観察することができる。
【0118】
図1Bを参照すると、ヒドロゲル製剤の接着強度は、HA-MA濃度の増加とともに増加した。接着強度に顕著な変化を示さなかったRCP-SHの増加の効果をさらに評価した。しかしながら、本開示のヒドロゲル製剤の接着強度は、Gel-MA(社内)と同等であった。
【0119】
上記の観察から、分子量「33kDa」および濃度「40mg/ml」のHA-MAならびに125mg/mlのRCP-SHを含むヒドロゲル製剤が所望の圧縮弾性率および接着強度値を示したことが推測でき、本開示の実用的製剤を確認するためにさらにスクリーニングされた。
【0120】
「10kDa」のHA-MA、RCP-SHヒドロゲル製剤での実験
「33kDa」のHA-MA製剤のスクリーニング後、HA-MA分子量の増減が圧縮弾性率および接着強度に及ぼす影響を確認することが必要であった。HA-MA濃度の変化は接着強度に大きな影響を与えないように思われたため、RCP-SHの濃度を変化させてさらにスクリーニングを実施した。図2Aおよび2Bに示すように、スクリーニング研究は、30%の置換度を含む「10kDa」のHA-MA、RCP-MA、およびRCP-SH製剤を使用して行われた。図2に示すスクリーニング研究では、10kDaの分子量、HA-MAの濃度150mg/mlを含むヒドロゲル製剤では、RCP-SH濃度の増加に伴って圧縮弾性率および接着強度が増加することが明らかになる。さらに、ヒドロゲル製剤の圧縮弾性率は、20%w/vのGel-MAの報告値よりも4~7.5倍高いことが観察できる(Shirzaei Sani E,Kheirkhah A,Rana D,Sun Z,Foulsham W,Sheikhi A,Khademhosseini A,Dana R,Annabi N.Sutureless repair of corneal injuries using naturally derived bioadhesive hydrogels.Sci Adv.2019 Mar 20;5(3):eaav1281.doi:10.1126/sciadv.aav1281)(図2A)。同様に、ヒドロゲルの接着強度は、Gel-MAおよびフィブリン接着剤の報告値よりも>2.0倍高かった(Nasim Annabi,Suzanne M.Mithieux,Pinar Zorlutuna,Gulden Camci-Unal,Anthony S.Weiss,and Ali Khademhosseini.Engineered cell-laden human protein-based elastomer.Biomaterials.2013 Jul;34(22):5496-5505.doi:10.1016/j.biomaterials.2013.03.076)(図2B)。10kDaの製剤で得られた値も、「33kDa」の製剤よりも顕著に大きかった。しかしながら、10kDaのHA-MAの達成可能な最高濃度のHA-MAは150mg/mlであり、それを超えると溶液は非常に粘稠になり、ピペット/ニードルチップをブロックした。さらに、150mg/mlの濃度のHA-MAの存在は、ヒドロゲル製剤を非常に不安定にし、HA-MA溶液の150mg/ml濃度の溶液は、光開始剤の有無にかかわらず、周囲光で自己架橋を開始した。したがって、図2Aおよび2Bから、「33kDa」の所望の分子量でのHA-MAの存在とともに、ヒドロゲル製剤中のHA-MAの濃度が20~80mg/mlの範囲であることが、本開示の安定で、粘性があり、生体適合性のあるヒドロゲル製剤を得るために非常に重要であることが推測できる。開示された範囲(20~80mg/ml)からHA-MAの濃度が逸脱すると、ヒドロゲル製剤を非常に粘稠で不安定にする。
【0121】
「50kDa」HA-MA、RCP-SHヒドロゲル製剤での実験
分子量、HA-MAの濃度、およびRCP-SHの濃度の影響を確立した後、分子量50kDaのHA-MAを含むヒドロゲル製剤を圧縮性および接着強度についてスクリーニングすることにより、HA-MA分子量の増加の影響をさらに試験した。50kDaのヒドロゲル製剤は、75mg/mlのHA-MAおよび125mg/mlのRCP-SHで構成された。50kDaのHA-MAを含むヒドロゲル製剤のスクリーニング結果を図3Aおよび図3Bに示す。50kDaのHA-MAを含むヒドロゲル製剤は、1379.8kDaの圧縮弾性率(図3A)、および70kPaの接着強度(図3B)を示したが、分子量50kDaの75mg/mlのHA-MAおよび125mg/mlの濃度のRCP-SHを含有するヒドロゲル製剤は粘度があまりに高いため、成分を均一に混合するためにボルテックスミキサーまたは他の機器を使用する必要があった。したがって、分子量50kDaのHA-MAを含むヒドロゲル製剤は、さらにスクリーニングされなかった。
【0122】
「10kDaのHA-MA」、RCP-SH製剤および「50kDa」のHA-MA、RCP-SHヒドロゲル製剤よりも「33kDa」のHA-MA、RCP-SHを選択する理由
全体として、図1~3から推測することができるように、10kDaのHA-MAを含むヒドロゲル製剤は、150mg/mlの高濃度でも低粘度であったが、それらの不安定性(光開始剤の不在下での自己架橋の傾向)のために、臨床医は、上述の製剤を取り扱うのが困難であると感じるかもしれない。同様に、50kDaのHA-MA製剤は非常に粘性が高く、濃度を増加させると取り扱いが難しく、達成可能な最高の弾性率および接着強度における制限につながった。対照的に、「33kDa」のHA-MA製剤は、様々な製剤の中で安定性および取り扱いのバランスを提供した。したがって、「33kDa」のHA-MA/RCP-SH製剤が、破裂圧力および可使時間研究によるさらなる特性評価のために選択された。
【0123】
(B)透明度
様々な濃度のHA-MAおよびRCP-SHを含む33kDaのHA-MA/RCP-SH製剤を、透明度についてスクリーニングした。透過率の値は、生理食塩水をブランクとして使用して、350~750nmの範囲でサンプルの吸光度を記録することによって得られた。ランベルトベールの法則を使用して、得られた吸光度(A)値を透過率(%T)に変換した。ランベルトベールの法則による、%T=10(2-吸光度)(Wang et al.,2015.Biomacromolecules 2014,15,9,3421-3428.https://doi.org/10.1021/bm500969dに記載されているプロトコルによる)
【0124】
この目的のために、33kDaのHA-MA/RCP-SH製剤の透過率(%)をGel-MA(20%)と比較した。図4に示すように、成分に関係なく、すべてのヒドロゲル製剤、それらの分子量および比率は、1×PBSと比較して約80%の透過率を示した。特に、35mg/ml以上の濃度のHA-MAを含む製剤は、光透過率>87%を示した。
【0125】
(C)エクスビボ破裂圧力
図5は、「33kDa」のHA-MA/RCP-SHおよびGel-MA(20%w/v、DoS>95%)製剤で試験されたエクスビボ破裂圧力を示す。図5から、製剤中に存在するHA-MAおよびRCP-SHの濃度の変化に応じてエクスビボ破裂圧力が変化したことを観察することができる。しかしながら、統計的に(α=0.05)、値に有意な違いはなかった。それにもかかわらず、バイオエンジニアリング製剤によって維持される破裂圧力は、眼圧(IOP)よりも顕著に高かった。図5に示すように、30mg/mlのHA-MAおよび125mg/mlのRCP-SHを有するバイオエンジニアリング製剤のIOP値は、天然角膜のIOP(約2.5kPa)の2倍であった。さらに、40mg/mlのHA-MAおよび125mg/mlのRCP-SHを有するバイオエンジニアリング製剤のIOP値は、天然の角膜のIOPよりも10~13倍高かったことを観察することができる。さらに、75mg/ml以上の濃度のHA-MAを有するバイオエンジニアリング製剤のエクスビボ破裂圧力値は、市販の接着剤(フィブリン接着剤、21.7kPa)または以前に報告された角膜接着剤(Gel-MA 20%w/v、DoS>95%、30.1kPa)のエクスビボ破裂圧力値よりも顕著に高かった。
【0126】
(D)可使時間
この実施例は、本開示のヒドロゲル製剤に添加することができる光開始剤の濃度の重要性を強調している。エオシンのような光開始剤の添加により、チオール-エン架橋プロセスが加速された。さらに、エオシンを介した光の開始は、白色光の存在下で活性化された。ヒドロゲル接着剤を2分で架橋するには高強度の白色光が必要であるが、周囲光が架橋プロセスを開始する可能性があるため、角膜欠損に適用するプロセスで臨床医が製剤を取り扱うのを困難にする。
【0127】
図6Aは、成分の溶液(125mg/mlの33kDaのHA-MA、150mg/mlのRCP-SH、および1×光開始剤)を別々に再構成および混合することによって調製されたヒドロゲル製剤を示す。図7Aから、ヒドロゲル製剤は、周囲光への約5分間の曝露後に、貯蔵弾性率および複素粘度の一定の増加を示したことが観察することができる。対照的に、成分(125mg/mlの33kDaのHA-MA、150mg/mlのRCP-SH、および1×光開始剤)を含む同じヒドロゲル製剤は、図6Bに示すように予混合プロトコルを使用して調製し、成分は粉末形態で予混合され、次いで生理食塩水で再構成された。図7Bから、ヒドロゲル製剤はt=0でより高い貯蔵弾性率および複素粘度を有していたことを観察することができる。さらに、貯蔵弾性率および複素粘度の値は、周囲光に曝露されてから2分以内に着実に増加し始めた(図7)。
【0128】
さらに、図7Aを参照すると、使用されるプロトコルに関係なく、0.5倍の濃度の光開始剤で調製されたすべてのヒドロゲル製剤は、最大20分間、いかなる架橋なしで安定したままであった。全体として、図6および7から、光開始剤の濃度を半分に減らすと、ヒドロゲル製剤の可使時間が顕著に増加したことを推測することができる。ヒドロゲル製剤の可使時間の増加は、臨床医に十分な時間を与え、スタッフが角膜欠損の部位で製剤を調製および適用するのを助けるであろう。
【0129】
(E)架橋反応速度
図8は、33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤の架橋反応速度(30mg/mlのHA-MA/125mg/mlのRCP-SH、40mg/mlのHA-MA/125mg/mlのRCP-SH、50mg/mlのHA-MA/125mg/mlのRCP-SH、50%の置換度を有する)の20%w/vのGel-MA製剤の架橋反応速度との比較を示す。図8に示す架橋反応速度データは、HA-MA/RCP-SHシステムの架橋反応の完了に直接関係する貯蔵弾性率が5分以内に平衡に達したのに対して、Gel-MA製剤は15~30分後でも平衡に達しなかったことを実証した。さらに、HA-MA/RCP-SH製剤は、単一成分のGel-MA製剤と比較して貯蔵弾性率が100倍増加することを実証した。したがって、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、周知のメタクリレートゼラチン(Gel-MA)ヒドロゲルよりも好ましい。
【0130】
(F)膨潤プロファイル
膨潤の研究は、33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤を1×PBSで48時間インキュベートすることによって実施された。図9は、異なるポリマー濃度の33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤の膨潤プロファイルと、Gel-MA製剤の膨潤プロファイルとの比較を示す。図9に示す膨潤研究の結果は、33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤が4時間以内に平衡に達したのに対して、Gel-MA製剤は24時間まで平衡に達しなかったことを実証した。さらに、33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤は、Gel-MA製剤と比較して、非常に制御された膨潤を実証し、Gel-MA製剤は、最初は高い水分摂取量を示し、次いで72時間の期間まで水分摂取量が増加し続けた。本開示のヒドロゲル製剤の膨潤速度は、ポリマー濃度の増加とともに減少した。35mg/ml以上の濃度のHA-MAを有するヒドロゲル製剤は、他の製剤よりも約50%少ない膨潤を実証した。したがって、膨潤プロファイルがより少ない本開示のヒドロゲル製剤は、治療用途などにとってより好ましい。
【0131】
(G)生分解
一定体積のヒドロゲルを調製し、凍結乾燥し、秤量した(Wi)。次いで、複製ヒドロゲルをPBSまたは生理食塩水(pH約7.4)中で37℃でインキュベートし、オービタルシェーカで振とうする。特定の時点で、ヒドロゲルを取り出し、凍結乾燥し、秤量した(Wd)。次いで、質量損失は、重量損失または分解(%)=(Wi-Wd)/Wi×100として計算した(Li 2006,Biomaterials https://dx.doi.org/10.1016%2Fj.biomaterials.2005.07.019)。
【0132】
図10は、33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤(置換度50%)の生分解プロファイルを時間に関して比較したことを示す。
【0133】
図10を参照すると、ヒドロゲル製剤の分解速度は、HA-MAの濃度の増加とともに増加した。ヒドロゲル製剤の分解速度は、14日目まで安定していた。しかしながら、14日後、より高いポリマー内容物のヒドロゲル製剤(すなわち、40mg/mlの濃度のHA-MAおよび150mg/mlの濃度のRCP-SHを含むヒドロゲル製剤)は、28日目に最大52.87%および46.36%の分解の突然の増加を示した。したがって、図10から、33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤は、12時間以内に分解したGel-MAと比較して制御された分解を実証したと推測することができる(Gel-MAデータは示さず)。
【0134】
表1は、天然の角膜の物理的特性を模倣するように調整されたバイオエンジニアリング製剤の物理的特性の要約を提供する。
【表1】
【0135】
表1を参照すると、開示された範囲における成分、すなわち、HA-MA(修飾ヒアルロン酸)、RCP-SH(修飾コラーゲンペプチド)の存在は、天然の角膜の物理的特性を模倣するように調整することができる所望の物理的特性を示すヒドロゲル製剤を得るために重要であると結論付けることができる。これを考慮すると、製剤8にRCP-SHが存在しないと、ヒドロゲル製剤は非常に脆くなり、したがって、所望の物理的特性を示さない製剤8は、非作動製剤とみなされる。さらに、開示された濃度範囲(20~80mg/ml)外である100mg/mlの濃度でのHA-MAの存在は、製剤が、好ましくない非常に高い圧縮弾性率を有するため、製剤15を別の非作動製剤にする。表1から、開示された範囲でのHA-MAおよびRCP-SHの存在が、望ましい物理的特性のヒドロゲル製剤を得るために重要であることが推測できる。さらに、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、周知のGel-MAヒドロゲルよりも良好に機能することも観察することができる。したがって、製剤1~7および9~14は、本開示の作動製剤であり、製剤8、15~18は、非作動製剤である。
【0136】
実施例2
バイオエンジニアリング製剤を調製するプロセス
本実施例は、バイオエンジニアリング製剤を調製するための最適化されたプロセスについて説明する。製剤を調製するためのステップを図11に示し、以下にも説明する。
(i)凍結乾燥したバイオエンジニアリング角膜粉末を含むバイアルI(2~7.5mgの範囲の濃度を有する33kDaのHA-MAおよび5~15mg/mlの範囲の濃度を有するRCP-SHの組み合わせを含む)、および光開始剤溶液(100μl)を含むバイアルIIを、光から保護された根温(root temperature)(RT)に温めた。
(ii)針およびシリンジを使用して、バイアルIIからの光開始剤溶液を、光から保護されたバイアルIの内容物に移した。次いで、バイアルIを穏やかに回転させて、溶解を促進するために内容物が浸漬されていることを確認し、次いで暗条件下で37℃で30分間インキュベートした。
(iii)バイアルIの成分を完全に溶解して、最終的なプレヒドロゲル製剤が本質的に均質であることを確認した。
(iv)針およびシリンジを使用して、必要な体積を角膜欠損部位に投与し、プレヒドロゲル製剤を5分間白色光に曝露した。
(v)白色光への曝露後、欠損部位を生理食塩水で洗浄して、架橋ヒドロゲルを水和させた。
【0137】
バイオエンジニアリング製剤を使用した治療方法
角膜欠損の部位に投与されるバイオエンジニアリング製剤の体積は、角膜瘢痕の体積および臨床医の裁量に依存する。
【0138】
例えば、一定のサイズの瘢痕に推奨される、15%のヒドロゲルの膨潤を占める平均体積を以下の表2に示す。
【表2】
【0139】
最終的なバイオエンジニアリング製剤
20~75mg/mlの範囲の濃度を有し、分子量「33kDa」のHA-MA、および20~250mg/mlの範囲の濃度を有する分子量50kDaのRCP-SH、および0.5Xの濃度を有する光開始剤(エオシン)を含むバイオエンジニアリング製剤が、角膜欠損または角膜障害を治療するために臨床医が採用する図11に提供される最適化されたプロトコルとともに最終製剤として選択された。
【0140】
実施例3
バイオエンジニアリング製剤の生体適合性:インビトロ研究
説明されたバイオエンジニアリング製剤は、角膜組織の再生を誘発するためのそれらの適合性について評価された。最初に、ヒドロゲル表面上の輪部または角膜上皮細胞(LECまたはCEC)を使用した再上皮化能力が研究された。第二に、角膜実質再生を実証するために、角膜輪部幹細胞(CLSC)をヒドロゲル内にカプセル化し、それらの生存率、増殖能力、および表現型をインビトロで研究した。
【0141】
(i)再上皮化研究
本開示のヒドロゲル製剤(「33kDa」のHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤(75/125mg/mlおよび75/150mg/mlの濃度での33kDaのHA-MA/50kDaのRCP-SHを含む)の生体適合性を実証するために、一次ヒトCECを表面に播種して培養した。図12に示すように、ヒドロゲルの表面に接着して増殖した上皮細胞は、2週間の終わりまでにコンフルエントな単層を生成した。この観察結果は、陽性対照として使用された2Dカバースリップ表面およびGel-MA(20%w/v)ヒドロゲルに匹敵した。図12から、本開示のヒドロゲル製剤は、インビボでの角膜創傷治癒/再生を促進することができる角膜模倣バイオエンジニアリング材料として作用すると結論付けることができる。
【0142】
(ii)角膜実質再生:ヒドロゲル製剤へのCLSCのカプセル化
本実施例は、角膜障害を治療するためのヒドロゲル製剤および幹細胞の組み合わせの効果を実証する。この目的のために、CSSCなどの幹細胞はヒドロゲル製剤にカプセル化された。ヒドロゲルのCLSCへの適合性は、最終的にはヒドロゲルの角膜実質再生能力を示し、ヒドロゲル表面でCLSCを培養した後、カプセル化研究を行うことによって評価された。
【0143】
図13(A-H)は、ヒドロゲル表面で5日間培養した場合のCLSCの生存率評価を示す。結果から明らかなように、CLSCは急速な増殖を示し、5日以内にヒドロゲル表面を覆った。さらに、緑色に染色された細胞脂肪質によってマークされた生細胞集団は、ヒドロゲル製剤によって提供される培養環境が細胞の増殖に適合していることを示す。全体として、図13から、ヒドロゲル製剤表面での細胞増殖は、Gel-MAの20%での細胞増殖よりも高いのに対して(図13Cおよび図13G)、陽性対照として使用されたカバースリップ上の細胞と同様である(図13Dおよび図13H)ことを観察することができる。
【0144】
CLSCの生存率はまた、75/125mg/ml、75/150mg/mlおよび40/125mg/mlの比率でHA-MA(33kDa)/RCP-SH(50kDa)を含む33kDaのHA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤に細胞をカプセル化することで2週間評価された。図14に示すように、緑色に見えた細胞(生細胞に取り込まれたカルセイン-AM染色のため)は、約95%の細胞生存率を示した生細胞集団を表した。本開示のヒドロゲル製剤にカプセル化されたCLSCは、培養期間を通して生存可能であり、生存可能な集団は、2Dカバースリップに類似しており、Gel-MAよりも高かった(20%、DOS>95%)。図14Bは、HA-MA/RCP-SHを40/125mg/mlの比率で含むヒドロゲル製剤の14日目の拡大画像を示す。図14Cから、細胞の大部分が細長い形態になっていることを観察することができる。同様の種類の細長い形態は、2D表面で培養された細胞によっても示された。画像の約40層(最小)の3D再構成でも、ヒドロゲル製剤内の生細胞の均一な分布が確認された(図14D)。
【0145】
欠損部位での完全な組織再生のためには、角膜実質幹細胞がその表現型を維持し、徐々に分化した状態に到達しながら、創傷の瘢痕のない治癒を助けることが最も重要である。インビトロ条件では、この段階的な分化のプロセスは、細胞のライフサイクルの特定の段階に特異的なバイオマーカーの発現を確認することによって評価することができる。CD90は角膜実質幹細胞によって発現されるそのようなバイオマーカーの1つであるに対して、細胞によるαSMAの発現は角膜実質細胞または筋線維芽細胞への分化状態を反映する。図15は、2D培養表面に関してヒドロゲル製剤にカプセル化されたCLSCによるCD90(赤)およびαSMA(緑)の発現を示す免疫蛍光研究を示す。図15に示すように、本開示のヒドロゲル製剤(40/125mg/ml、および75/125mg/mlの比率のHA-MA/RCP-SHを含む、DoS 50%)で培養されたCLSCは、CD90の発現が良く、αSMAは発現しなかったことを示した。対照的に、2D表面で培養された細胞は、αSMAの顕著な発現を示し、それらの分化した表現型を示す。したがって、図15から、本開示のヒドロゲル製剤は、筋線維芽細胞の分化を抑制し、したがって、角膜組織の瘢痕のない創傷治癒をサポートする可能性があることが推測できる。
【0146】
実施例4
バイオエンジニアリング製剤の生体適合性:インビボ研究
インビボでの本開示のヒドロゲル製剤の安全性および有効性を実証するために、ヒドロゲル製剤(75/150mg/mlで存在する33kDaのHA-MA/50kDaのRCP-SH、両方ともDoS 50%を含む)を臨床的に関連する角膜損傷のウサギモデルに適用した。手短に言えば、ウサギに麻酔をかけ、角膜実質損傷をトレフィンブレードで導入し、角膜の中央領域に直径7mmおよび平均深さ250μmの創傷を作成した。手術後、ウサギは、角膜穿孔の標準治療に使用される臨床グレードの組織接着剤、シアノアクリレート接着剤、または本開示のヒドロゲル製剤のいずれかを受けた。
【0147】
図16は、インビボでのウサギモデルにおけるヒドロゲル製剤(本開示のバイオエンジニアリング製剤は、図16ではバイオエンジニアリング角膜v1.0と呼ばれる)の前臨床試験を示す。図16に示すように、シアノアクリレート接着剤による治療を受けているウサギの角膜は透明な角膜を実証しなかったのに対して、本開示のヒドロゲル製剤を受けているウサギの角膜は、2週間の終わりまでに角膜の透明性を示した。上皮治癒の指標であるフルオレセイン染色、および角膜の透明度を測定するための標準的な臨床評価方法であるデンシトメトリースキャンについても、同様の結果が観察された。シアノアクリレート接着剤治療を受けているウサギの角膜は、瘢痕組織の存在によるフルオレセインの貯留および重度の角膜混濁を実証したのに対して、本開示のヒドロゲル製剤を受けているウサギの角膜は、色素貯留の漸進的な減少を示し、2週間にわたって角膜の透明度および視力の漸進的な改善を実証した。
【0148】
図16から、ウサギの角膜の創傷にシアノアクリレート接着剤を適用すると(図16A)、角膜の腐食性の不規則な表面が生じ、不透明になり、血管を引き寄せる(赤い矢印で示される)ことを推測することができる。一方では、本開示のヒドロゲル製剤(図16B)の適用は、わずか2週間で、透明度の漸進的な増加、血管新生なし、および滑らかな表面を有する完全に治癒した上皮を示した。累積的に、これらの研究は、本開示のヒドロゲル製剤またはバイオエンジニアリング製剤が、角膜の瘢痕のない創傷治癒のための「バイオインストラクティブ」足場として機能することを実証する。
【0149】
実施例5
バイオエンジニアリング製剤およびエクソソーム/セクレトームの組み合わせ
前の実施例に記載されるようにヒドロゲル製剤は、エクソソーム/生理食塩水の直接適用と比較した場合に、長期間にわたってエクソソームの持続放出を促進するのに役立つカプセル化足場として機能する。ヒドロゲル製剤中のエクソソームの存在は、上皮および角膜実質の損傷/感染(活性炎症)を伴う前角膜瘢痕、ステージ1神経栄養性角膜炎(NK)(持続性角膜上皮欠損)、ステージ2NK(滑らかで丸められたエッジを特徴とする大きな持続性上皮欠損)、ステージ3NK(深い角膜潰瘍、角膜実質融解、および無菌性前房蓄膿)、モーレン潰瘍、円錐角膜、角膜穿孔などの角膜潰瘍などの重度の角膜欠損または角膜疾患を治療するための上述のヒドロゲル製剤の適用範囲を広げる。組み合わせ生成物(ヒドロゲル製剤+エクソソーム)は、MSC由来のエクソソーム/セクレトームおよびcGMPグレードの幹細胞を添加することで、ヒドロゲル成分の創傷治癒効果を高めるのに役立つ。
【0150】
MSCの治療効果は、エクソソームを含む細胞から分泌されるパラクリン因子に大部分は起因している。エクソソームは、細胞間のクロストークのメディエータとして機能するナノメートルサイズの膜結合細胞外小胞である。MSC由来のエクソソームは、成長因子、サイトカイン、脂質部分、miRNAおよび他のノンコーディングRNA(ncRNA)を含む核酸などのタンパク質を含有する。エクソソーム関連タンパク質のいくつかは、典型的には、治療用途で知られているが、創傷治癒に重要ないくつかのシグナル伝達経路(Akt、ERK、およびSTAT3)を活性化することが見出されているMSCエクソソームが含まれる。それらはまた、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子-1(IGF1)、神経成長因子(NGF)、角膜実質由来成長因子-1(SDF1)、上皮成長因子(EGF)、および線維芽細胞成長因子(FGF)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ホスホグルコムターゼ、エノラーゼ、sFLT1、ならびにmiR-10b、miR-21、miR-23a、miR-182、miR-181a、miR145、およびmiR-205を含むmiRNAを含む、多くの成長因子の発現を誘導する。
【0151】
本開示は、バイオエンジニアリング製剤および幹細胞由来のエクソソームの以下の組み合わせを提供する。
実施例1:バイオエンジニアリング製剤a:33kDaのHA-MA(33kDa)/RCP-SH(50kDa)(20~75/20~250、mg/ml、DoS 50%)+5億~250億BMMSC由来エクソソーム/ml
実施例2:バイオエンジニアリング製剤b:33kDaのHA-MA/50kDaのRCP-SH(20~75/20~250、mg/ml、DoS 50%)+5億~250億CLSC-エクソソーム/ml
実施例3:バイオエンジニアリング製剤c:33kDaのHA-MA(33kDa)/RCP-SH(50kDa)(20~75/20~250、mg/ml、DoS 50%)+5億~250億CLSC-CMでプライミングされたBMMSC-エクソソーム/ml。
【0152】
方法論:
(a)角膜輪部幹細胞(CLSC)、BMMSCのゼノフリー単離および培養:
ヒトドナーからのCLSC、BMMSC、CLSC-CMでプライミングされたBMMSCの単離および培養のためのゼノフリープロトコルは、本開示に完全に組み込まれる係属中の出願PCT/IN2020/050622、およびPCT/IN2020/050623に記載されている。
【0153】
(b)CLSC-CMまたはCSSC-CMでプライミングされたBMMSCを得るプロセス:
プライミングプロトコルは、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されている。
【0154】
(c)イオジキサノール密度勾配超遠心分離を使用した骨髄間葉系幹細胞BMMSC、CLSCからのエクソソームおよびセクレトームの精製のためのプロトコル:
エクソソームおよびセクレトームの精製のためのプロトコルは、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されている。
【0155】
(d)イオジキサノール密度勾配超遠心分離を使用したCLSCでプライミングされたBM-MSCからのエクソソームおよびセクレトームの精製のプロトコル:
イオジキサノール密度勾配超遠心分離を使用したCLSCでプライミングされたBM-MSCからのエクソソームおよびセクレトームの精製のためのプロトコルは、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されている。
【0156】
精製プロトコルの選択は、標的の適応および組織特異的である。例えば、イオジキサノール勾配超遠心分離のBMMSC+エクソソーム精製プロトコルとそれに続くCaptocore700カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーとの組み合わせは、エクソソーム調製物に混入する血管新生因子の量が少ないため、角膜などの無血管組織での出願に使用される(係属中の出願PCT出願第PCT/IN2020/050622号および同第PCT/IN2020/050623号に記載されており、これらは本開示に完全に組み込まれている)。Capto Core700は、リガンドで活性化されるコアおよび不活性シェルで構成されている。不活性シェルは、大きな分子(カットオフ約Mr700000)がシェルの細孔を通ってコアに入るのを排除する。これらの大きな分子はカラムフロースルーに集められ、小さな不純物は内部移行したリガンドに結合する。さらに、樹脂Captocore700は、リットル単位の容量までスケーラブルである。異なる純度のエクソソームは、標的の適応の特異性のために開発される。例えば、イオジキサノール密度勾配超遠心分離または30%スクロースクッション+Captocore700の組み合わせは、角膜などの無血管組織への適用に理想的な血管新生因子(例えば、VEGF)による汚染を最小限に抑えて、最高の純度を提供する(係属中の出願PCT出願第PCT/IN2020/050622号および同第PCT/IN2020/050623号に記載されており、これらは本開示に完全に組み込まれている)。
【0157】
(e)マイクロキャリア上でのMSCおよびCLSCのスケーラブルな培養:
3D培養物プロトコルは、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT出願第PCT/IN2020/050622号および同第PCT/IN2020/050623号に記載されている。
【0158】
ヒト骨髄由来幹細胞(BM-MSC)、ヒト角膜輪部幹細胞(CLSC)、およびCLSC馴化培地(CLSC-CM)でプライミングされたBM-MSC(CLSC-CM/BM-MSC)からエクソソームを精製するプロセスは、望ましい再生の可能性を有する。CLSCおよびCLSC-CMセクレトームの詳細な分泌プロファイル、ならびに角膜潰瘍および炎症状態を含む複数の疾患におけるその適用は、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されている。CLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSCにおけるHGF発現の増加およびVEGF発現の減少の機能的重要性(本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に提供されている)が、角膜用途に関して本開示において実証されている。
【0159】
さらに、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されているプロセスによって調製されたBMMSC由来のエクソソームは、血管新生を促進も阻害もしない。この結論をさらに裏付けるために、その全体が本開示の係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623で提供された結果は、エクソソーム精製プロトコル(密度勾配超遠心分離とそれに続くサイズ排除クロマトグラフィー(Captocore700)上述の係属中の出願で提供され、非常に低レベルのVEGFを含有する。したがって、同じプロトコル(その全体が本開示の係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に完全に記載されているような)を使用して調製されたCLSC-に由来するエクソソームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSCに由来するエクソソームが、血管新生促進活性も阻害しないことが企図され得る。
【0160】
プライミング幹細胞の重要性
CLSC-CMを使用してhBM-MSCをプライミングすると、BM-MSCの表現型がよりCLSC様プロファイルに偏る。これは、調達が困難なヒトドナー角膜から新鮮なCLSCを単離する必要性を回避し、エクソソームバッチ産生におけるドナー間の変動を最小限に抑えるのに役立つ。さらに、BM-MSCの市販の供給源と比較した場合、CLSCの収量も非常に低い。したがって、CLSCのように振る舞うようにBM-MSCを再プログラミングするプロセスは、治療用エクソソームの産生に十分な細胞収量を提供する。係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623で提示された結果は、CLSC-CMでBMMSCをプライミングすると、HGFの分泌が増加し、BMMSCのVEGFおよびIL-6のレベルが低下することを実証する。本開示では、ドナー角膜当たり約0.5~1Mの幹細胞(CLSC)が単離され、これは3継代で4~6Mに拡張することができる。市販のBMMSCは、3継代で1Mから80~120Mに拡張することができる(RoosterBio Inc.)。ここで注目に値するのは、CLSCに対してBMMSCを使用することで、約20~30倍高い細胞収量が達成されたことである。しかしながら、CLSC(角膜に存在するMSC)は、BMMSCの使用では模倣できない角膜創傷治癒に非常に効果的であることが示されている。したがって、本開示では、BMMSCは、BMMSCをCLSC様幹細胞に再プログラムするために、CLSC馴化培地でプライミングされた。CLSC馴化培地でBMMSCをプライミングするプロセスは、CLSC様BMMSC細胞収量およびエクソソームを20~60倍高くするのに役立つ。CLSC-エクソソームを使用すると、眼当たり1~5億エクソソームの用量で8~10の角膜を治療できるのに対して、CLSC-CMでプライミングされたBMMSCに由来するエクソソームは、1人のドナー角膜から20~60倍、すなわち200~600人の患者を治療するのに役立つ。さらに、3Dスケーラブルな細胞増殖を採用することにより、細胞およびエクソソームの収量がさらに5~10倍増幅された。したがって、CLSC-CMプライミングプロセスを3D増殖法と組み合わせることにより、100~600倍高いエクソソーム収量が得られ、それによって、ドナー角膜当たり約1000~5000人の患者の治療が可能になる(本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623にも記載されている)。
【0161】
エクソソームおよび幹細胞を含むバイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセス
33kDAのHA-MA(33kDa)/RCP-SH(50kDa)およびエクソソーム(CLSC、BMMSC、CLSCS-CMでプライミングされたBMMSCに由来)を含むバイオエンジニアリング製剤またはヒドロゲル製剤を得るためのプロセスを以下に示す。
(i)凍結乾燥したバイオエンジニアリング角膜粉末を含むバイアルI(2~7.5mgの範囲の濃度を有する33kDaのHA-MAおよび5~15mg/mlの範囲の濃度を有するRCP-SHの組み合わせを含む)、および光開始剤溶液(100μl)を含むバイアルIIを、光から保護された根温RTに温めた。
(ii)針およびシリンジを使用して、バイアルIIからの光開始剤溶液を、光から保護されたバイアルIの内容物に移した。次いで、バイアルIを穏やかに回転させて、溶解を促進するために内容物が浸漬されていることを確認する。
(iii)バイアルIの成分が完全に溶解した後、凍結乾燥したエクソソームおよび細胞を最終的なプレヒドロゲル製剤と混合して、均質な溶液を得た。
(iv)針およびシリンジを使用して、必要な体積を角膜欠損部位に投与し、プレヒドロゲル製剤を5分間白色光に曝露した。
(v)白色光への曝露後、欠損部位を生理食塩水で洗浄して、架橋ヒドロゲルを水和させた。
【0162】
幹細胞およびエクソソームを含むヒドロゲル製剤を得るためのプロセスの概略図を図17に示す。
【0163】
結果
エクソソームは、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されているプロセスに従って精製および特徴付けられた。
【0164】
(A)実施例1:バイオエンジニアリング製剤a:HA-MA(33kDa)/RCP-SH(50kDa)(20~75/20~250、mg/ml、DoS 50%)+5億~250億BMMSC由来エクソソーム/ml
エクソソームは、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されているプロセスに従って精製および特徴付けられた。
【0165】
(i)BM-MSC由来のエクソソームおよびCLSC由来の馴化培地の抗炎症活性の特性評価
RAW264.7マクロファージ細胞を、12ウェルプレートに播種し、4×10エクソソーム(1μg)またはCLSCの馴化培地(25%、50%置換)(図18の灰色で示される)で一晩(16時間)前処理した後、リポ多糖(LPS)刺激を4時間行った。次いで、細胞を洗浄し、RNA抽出および定量化のために溶解した。IL-6、IFNγ、TNF-α、IL-1β、IL-10およびVEGFAなどのLPS誘導性サイトカインの転写レベルを、リアルタイムRT-PCRによって定量的に測定した。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hBM-MSC)由来のエクソソーム(画分9)およびcaptocore精製サブ画分F9-CC(プールした画分F9-2および3)は、LPS刺激に応答したマクロファージによる炎症反応を有意にブロックした(図18)。しかしながら、hBM-MSC由来のエクソソームは、VEGFA転写レベルに顕著な影響を及ぼさなかった。CLSCからの馴化培地はまた、用量依存的に炎症性サイトカインの発現を阻害した(完全培地をCLSC由来の馴化培地で25%および50%置換)。
【0166】
サイトカインの分泌タンパク質レベルは、図18(A-F)に示す転写産物発現データを補完するために、BMMSC-エクソソームで処理されたRAW264.7細胞から収集された上清でも測定された。IL-6、IL-1β、TNF-α、およびIFN-γのタンパク質レベル(それぞれ図18G-Jに示す)もBMMSCエクソソームによって顕著に抑制され、BMMSCエクソソームの阻害効果が転写レベルで起こり、最終的なタンパク質発現にも反映されたことを確認した。
【0167】
図18から、ヒトBMMSC由来のエクソソームおよびCLSC由来の馴化培地は、マクロファージにおける炎症性サイトカインの発現を阻害することを推測することができる。
【0168】
(ii)BM-MSC由来のエクソソームの血管新生活性の特性評価
(a)hBM-MSC由来のエクソソームの抗血管新生活性:
冠状動脈内皮細胞(CAEC)を、成長因子が減少したマトリゲル上の無血清増殖培地、4×10エクソソーム(1μg)でのVEGF補足培地+/-のいずれかに、24時間播種した。細胞をCell Tracker(商標)Green CMFDAで染色した。図19に示すように、対照(図19A-B)およびhBM-MSC由来のエクソソーム(図19C-D、)で処理した内皮細胞の間で管形成に有意差は観察されなかった。
【0169】
(b)hBM-MSC由来のエクソソームの血管新生促進活性:
CAECを、4×10エクソソーム(1μg)を含む成長因子が減少したマトリゲル上+/-上の無血清増殖培地(サプリメントなし)に24時間播種した。細胞をCell Tracker(商標)Green CMFDAで染色した。図19に示すように、対照(図19E-F)およびhBM-MSC由来のエクソソーム(図19G-H)で処理した内皮細胞の間で管形成に有意差は観察されなかった。
【0170】
(iii)hBM-MSC由来のエクソソームの創傷治癒効果
精製されたエクソソームの治療機能は、2D単層フォーマットのエクソソームの存在下または非存在下で、角膜上皮細胞によって示される創傷治癒の有効性を決定することによって特徴付けられた。細胞を平らな表面に播種し、単層全体にスクラッチ(創傷を模倣)を作成した。
【0171】
図20は、hBM-MSCから単離されたエクソソームの機能特性評価を示す。図20Aは、複数の時点(0、12、24、48、72時間)にわたって観察された、ヒト角膜上皮細胞の単層上の創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)の時間経過を示す代表的な画像を表す。図20Bは、72時間でのヒト角膜上皮細胞の単層における創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)のパーセンテージの定量化を表す。
【0172】
図20から、F9およびF9-CCのエクソソーム(captocore精製ステップからのプールしたサブ画分F9-2および3)は、ビヒクル単独の対照と比較した場合、優れた創傷治癒能力を示したことを観察することができる。
【0173】
(iv)カプセル化細胞の生存率およびエクソソーム放出アッセイに対するエクソソームの影響の実施例(バイオエンジニアリング製剤(33kDaのHA-MA/50kDaのRCP-SH(20~75/20~250、mg/ml、DoS 50%)+幹細胞+エクソソーム)
HA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤(30mg/mlのHA-MAおよび125mg/mlを含む)にカプセル化されたMSCの細胞生存率に対するエクソソームの影響を評価するために、MSCはエクソソームの存在下でカプセル化され、培養培地中に補充するかまたはヒドロゲル内の細胞と一緒にカプセル化されるかのいずれかである。細胞生存率は、特定の時点でCCK8アッセイを使用して評価された。図22は、エクソソームの存在下で、MSC、馴化培地中のMSC+エクソソームの組み合わせ、および本開示のヒドロゲル製剤にカプセル化されたMSCの細胞活性の間の比較を示す。本明細書のエクソソームには、CLSCに由来するエクソソーム、またはCLSC馴化培地に由来するエクソソーム、またはCLSC馴化培地でプライミングされたMSCに由来するエクソソームが含まれるが、これらに限定されないことが企図され得る。
【0174】
図22から、エクソソームの存在下で、カプセル化されたMSC(本開示のヒドロゲル製剤にカプセル化された)の細胞生存率は、MSCのみ(対照)と比較してかなり高かったことを観察することができる。この結果は、エクソソームがヒドロゲルマトリックス内にカプセル化された細胞の生存率を延長する能力を有することを実証する(図22)。さらに、図21から、本開示のヒドロゲル製剤にカプセル化されたエクソソームが着実に周囲の培地に放出され、検出可能なレベルが16日目以降に定量化されていることを観察することができる。
【0175】
図22は、ヒドロゲル製剤にカプセル化されたMSCの細胞生存率に対するエクソソームの影響を示す。図22から、エクソソーム(培養培地に補充した2.8×10粒子/ヒドロゲルまたはヒドロゲルにカプセル化)の存在下で、カプセル化されたMSC(20000細胞/20μlゲル)の細胞生存率が、細胞のみの対照と比較した5日目に、本開示のHA/RCP(40/125mg/ml、DoS 50%)ヒドロゲル製剤およびGel-MA(10%w/v、DoS 80%)ヒドロゲルでかなり高いことを確認することができる。G+Cは細胞を含むヒドロゲルを指し、GC Ex.CMは培養培地を介してエクソソームを受け取る細胞カプセル化ゲルを指し、GC Ex.Enc.は、ゲルに一緒にカプセル化された細胞およびエクソソームを指す。データは、n=3回複製で平均±SEとして表される。
【0176】
エクソソームの存在は、本開示のヒドロゲル製剤にカプセル化されたMSCの細胞生存率を高めるのに役立つことが図22から推測することができる。最高の細胞生存率は、ヒドロゲルに一緒にカプセル化された細胞およびエクソソームを含む本開示のヒドロゲルについて観察することができる。Gel-MAよりもさらに高いことが観察され、前述のように、Gel-MAは他のパラメータに関して望ましい結果を提供しない。
【0177】
(v)エクソソームの存在下でHA-MA/RCP-SH上で培養されたヒト皮膚線維芽細胞
ヒト皮膚線維芽細胞(5×10)を、4×10BMMSCエクソソームまたはPBS対照を補充した培養培地のヒドロゲル(40/125)の上に播種した(図23)。
【0178】
図23Aは、2D培養におけるヒト皮膚線維芽細胞の培養を示し、図23Bは、HA-MA/RCP-SHヒドロゲル製剤(40mg/mlの33kDaのHA-MAおよび125mg/mlの50kDaのRCP-SHを含む)の表面でのヒト皮膚線維芽細胞の培養を示し、図23Cは、エクソソーム補足培地を含むHA-MA/RCP-SH製剤(40mg/mlの33kDaのHA-MAおよび125mg/mlの50kDaのRCP-SHを含む)の表面でのヒト皮膚線維芽細胞の培養を示す。図23から、本開示のヒドロゲル製剤中のエクソソームの存在は、すべての研究で使用された濃度(4億エクソソーム/ml)で細胞に細胞毒性効果を及ぼさないように見えたことを観察することができる。
【0179】
(B)実施例2および3:バイオエンジニアリング製剤a:HA-MA(33kDa)/RCP-SH(50kDa)(20~75/20~250、mg/ml、DoS 50%)+5億~250億CLSC由来のエクソソーム/mlまたはCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソーム/ml
(i)CLSC由来のエクソソームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームの抗炎症活性
CLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSCの炎症プロファイルは、BMMSCとは興味深いことに異なっていた。CLSC由来のエクソソームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームは、活性化されたRAW264.7マクロファージにおける炎症性サイトカイン分泌を顕著に抑制した。しかしながら、BMMSC由来のエクソソームの効果は、CLSC系統のエクソソームよりも大きかった(図24)。
【0180】
さらに、ナイーブBMMSCと比較した場合、CLSC-CMでプライミングされたBMMSCにおけるHGFの分泌が増強された(結果は、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されている)。さらに、CLSC-CMでプライミングされたBMMSCは、VEGF分泌の低下も実証し、親CLSCに共通する血管新生プロファイルが低下した(結果は、本開示に完全に組み込まれている係属中の出願PCT/IN2020/050622およびPCT/IN2020/050623に記載されている)。したがって、抗炎症活性と、CLSC-CMプライムBMMSCエクソソームによって維持されるHGF/VEGFプロファイルとの組み合わせは、角膜欠損用にカスタマイズされた本開示のエクソソーム生成物(バイオエンジニアリング製剤+CLSC-CMでプライミングされたBMMSCエクソソーム)につながる。
【0181】
(C)CLSC馴化培地由来のセクレトーム/エクソソームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC馴化培地由来のセクレトーム/エクソソームの機能的特性評価
(i)CLSC馴化培地/セクレトームの血管新生活性
CAECを、CLSC馴化培地(CM)の有無にかかわらず、成長因子が減少したマトリゲル上の無血清増殖培地に24時間播種した。細胞をCell Tracker(商標)Green CMFDAで染色した。図25は、CLSC-CM/セクレトームの血管新生活性を示す。図25から、用量依存的にのみビヒクル(PBS、対照)と比較した場合、CLSC-CM/セクレトームが内皮細胞の管形成能力を顕著に破壊したことを観察することができる。
【0182】
(ii)CLSC馴化培地由来セクレトームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC馴化培地由来セクレトームの抗炎症活性
RAW264.7マクロファージは、BMMSC、CLSC、またはCLSC-CMでプライミングされたBMMSC(10%および25%)から収集された馴化培地由来のセクレトームの存在下または非存在下でLPSで活性化された。細胞を50%馴化培地を補充した増殖培地で一晩維持し、LPSで4時間活性化した。
【0183】
図26は、RAW264.7マクロファージ細胞に対するCLSC-馴化培地由来セクレトームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC馴化培地由来セクレトームの抗炎症効果を示す。RAW264.7マクロファージ細胞を、50%の補充(50万BMMSCから収集)でCLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSCのいずれかから収集された馴化培地で処理した後、LPSで4時間刺激した。(A)IL-6、(B)IL-10、(C)TNF-αおよび(D)IL-1βについてELISAによって分泌されたサイトカインのレベルも定量化した。
【0184】
図26から、3つの細胞型すべて(BMMSC、CLSC、またはCLSC-CMでプライミングされたBMMSC)のセクレトームが同等の抗炎症活性を示したことを観察することができる。
【0185】
(iii)BMMSC馴化培地、CLSC馴化培地由来セクレトームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC馴化培地由来セクレトームの創傷治癒活性
BMMSC、CLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC(25%および10%)から収集されたセクレトームの治療機能は、2D単層フォーマットのエクソソームの存在下または非存在下で、角膜上皮細胞によって示される創傷治癒の有効性を決定することによって特徴付けられた。細胞を平らな表面に播種し、単層全体にスクラッチ(創傷を模倣)を作成した。
【0186】
図27は、CLSC、CLSC-CMでプライミングされたBMMSC、およびBMMSCセクレトームの創傷治癒活性の比較を示す。(A)複数の時点(0、12、24、48時間)にわたって観察された、セクレトームの存在下(20万の供給源MSCに相当)でのヒト角膜上皮細胞の単層における創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)の時間経過を示す代表的な画像、(B)複数の時点(0、12、24、48、72時間)にわたって観察された、4×108エクソソームの存在下(20万の供給源MSCに相当)でのヒト角膜上皮細胞の単層における創傷閉鎖(2Dスクラッチアッセイ)の時間経過を示す代表的な画像。
【0187】
図27は、CLSC由来のセクレトームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のセクレトームが、BMMSC由来のセクレトームと比較した場合、創傷治癒アッセイでヒト角膜上皮細胞の遊走を促進するのに優れていることを明確に実証する。したがって、CLSC由来のセクレトームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のセクレトームは、ナイーブなBMMSC由来のセクレトームと比較して優れた創傷治癒能力を示すと推測することができる。
【0188】
(iv)優れた再神経支配活性
PC12は、ラット副腎髄質の褐色細胞腫に由来する浮遊細胞株であり、神経堤に胚性起源を有する。これらの細胞は、NGFで活性化された場合、ニューロンの表現型を獲得するために十分に確立されている。5×104/ml細胞をコラーゲンでコーティングされたウェルに播種し、一晩接着させた。細胞をNGF(陽性対照)(20ng/ml)または示されたエクソソームサンプル(図の凡例に記載されている用量)で治療し、24時間でライブイメージングした。図28は、インビトロ神経支配アッセイの結果を示す。図28から、インビトロ神経支配アッセイで神経突起伸長が誘導されることによって実証させるように、CSSC由来のエクソソームおよびCSSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームが神経支配を促進したことを観察することができる(図28C-E)。対照的に、PBS(図28A)およびBMMSCエクソソーム処理細胞(それぞれ図28F)では神経突起伸長形成は報告されなかった。組換えヒト神経成長因子(rhNGF)(20ng/ml)が陽性対照として含まれていた(図28B)。NGFは、神経支配アッセイで一般的に使用される標準的なニューロンの活性化/分化刺激である。
【0189】
さらに、神経支配アッセイの結果を検証するために、CLSC-CMでプライミングされたBMMSCによって分泌されたNGFのタンパク質レベルを、セクレトームおよびエクソソームの両方で、ELISAによって評価した。図29はNGFの分泌レベルを示す。図29を参照すると、CLSC-CMでプライミングされたBMMSCは、CLSCよりも低い濃度ではあるが、エクソソーム(図29A)およびセクレトーム(図29B)でNGFを分泌した。ウエスタンブロットによるセクレトームの分析もこの傾向を確認した(図29C)。
【0190】
したがって、図28および図29から、CLSC由来のエクソソームおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームは、PC12細胞の神経支配(神経突起伸長)を4億エクソソーム/mlで促進することを観察することができる。
【0191】
(v)CSSC-およびCSSC-CMでプライミングされたBMMSCエクソソームの優れた抗線維化活性
図30は、CLSC由来のエクソソームおよびCLSC-CMプライミングされた由来のエクソソームの抗線維化効果を示す。ヒト皮膚線維芽細胞を、TGF-β(10ng/ml)で24時間線維化を誘導する前に、示したエクソソーム(4×10/ml)で4時間前処理した。細胞を抗α-SMA抗体(緑色で示される)(線維症のマーカー)およびDAPI(核、青色で示される)で染色した。
【0192】
図30から、CLSC由来のエクソソーム、CSSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソーム、またはBMMSC由来のエクソソームの存在下で、TGF-β(10ng/ml)を含むヒト皮膚線維芽細胞で線維症(α-SMA発現)が誘導されたことを観察することができる。CLSC-およびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームは、TGF-βが誘導するα-SMAの発現を阻害したが(図30C-E)、BMMSC由来のエクソソーム(ドナー200)は、α-SMAの誘導を阻害する効果はほとんどなかった(図30F)。10%CLSC-CMおよび25%CLSC-CMの両方のプライミングは、用量依存的にヒト皮膚線維芽細胞のα-SMA発現を阻害した(図30D-E)。
【0193】
(vi)CLSCおよびCLSC-CMでプライミングされた由来のエクソソームおよびセクレトームの血管新生活性の特性評価。
図31は、CLSCおよびCLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームおよびセクレトームの血管新生活性の特徴付けを示す。図31Aおよび31Bから、CLSCはBMMSCと比較して、セクレトームおよびエクソソームで発現するVEGFが少ないことを観察することができる。さらに、図31C図31Eから、CLSCはBMMSCよりもセクレトームおよびエクソソームでより多くのsFLT1(VEGFR1)を発現していることを観察することができる。sFLT1は、角膜幹細胞から分泌されることが報告されており、角膜の血管系構造に関与していることが示されている。したがって、図31から、CLSC-CMによるBMMSCのプライミングは、VEGF分泌を減少させ、セクレトームおよびエクソソームのsFLT1レベルを増加させることにより、BMMSCの血管新生の可能性を減少させる可能性があることを推測することができる。
【0194】
上記の結果は、幹細胞、またはエクソソーム、またはそれらの組み合わせが、本開示のヒドロゲル製剤にカプセル化されている場合にも適用されることが企図され得る。したがって、本開示のヒドロゲル製剤は、生体適合性であり、角膜模倣特性を示す。したがって、20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチド(RCP-SH/RCP-MA)と、10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸(HA-MA)との存在は、天然の角膜の特性を模倣するだけでなく、様々な角膜障害を治療するために角膜欠損の部位に適用することもできる本開示のバイオエンジニアリング製剤またはヒドロゲル製剤に到達するために不可欠である。さらに、本開示のヒドロゲル製剤中の幹細胞、またはエクソソーム、またはそれらの組み合わせの存在は、細胞生存率および細胞増殖を増強するのに役立ち、ヒドロゲル製剤の生体適合性および角膜模倣特性を確認する。図21および22に提示されたデータは、ヒドロゲル製剤に存在する場合にエクソソームが良好に機能するという概念実証を示す。したがって、本実施例に示されるようなエクソソームの特性は、エクソソームが本開示のヒドロゲル製剤(バイオエンジニアリング製剤)に存在する場合にも良好に保持されるであろう。
【0195】
本開示で提供される実施例は、分子量「10kDa」または「33kDa」または「50kDa」であり、濃度が35mg/ml、40mg/ml、75mg/mlの修飾ヒアルロン酸(HA-MA)と、分子量「50kDa」であり、濃度が125mg/ml、150mg/mlの修飾コラーゲンペプチド(RCP-SH)と、を含むヒドロゲル製剤を提供する。しかしながら、当業者は、異なる分子量、すなわち、20/30kDa、または40/55kDa、または50/60kDa、または80/70kDa、または90/80kDaを有し、20/125mg/ml、または25/125mg/ml、または30/125mg/ml、または50/125mg/ml、あるいは本開示に記載されている他の任意の開示された範囲の濃度を有するHA-MA/RCP-SHの組み合わせを使用することによって、所望の物理的および機能的特性を示す本開示のヒドロゲル製剤に到達することができることが企図され得る。さらに、前述の濃度または開示された範囲でHA-MA/RCP-SHの異なる組み合わせを有するヒドロゲル製剤に組み込まれた幹細胞、またはエクソソーム、またはそれらの組み合わせのカプセル化もまた、本明細書に例示されるのと同様の結果をもたらす。
【0196】
実施例6
点眼製剤
本開示はまた、点眼製剤を提供する。点眼製剤は、(a)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む。点眼製剤は、角膜の損傷および潰瘍を治療するのに役立つ。点眼製剤は、本開示のヒドロゲル製剤を受けている患者に対して、単独の治療オプションとして、またはアジュバント治療オプションとして投与される。投与量は、臨床医によって推奨および処方されたとおりになる。本開示のエクソソームの局所適用に使用することができる臨床的に承認された点眼製剤としては、(a)Tearhyl(登録商標)(ヒアルロン酸ナトリウム、0.1~0.3%溶液)、(b)Refresh Optive(登録商標)(カルボキシメチルセルロース、0.5%溶液)、(c)Systane Ultra(登録商標)(ポリエチレングリコール、MW400、0.4%溶液)、(d)Leader(登録商標)人工涙溶液(ポリビニルアルコール、1.4%溶液)、(e)Systane Balance(登録商標)(プロピレングリコール、0.6%溶液)、および(f)MIKELAN(登録商標)LA(アルギン酸ベース)が挙げられる。
【0197】
本開示では、エクソソーム(角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソーム)は、2つの適応症特異的アプローチで投与された。
【0198】
(i)点眼剤製剤:上記の点眼製剤は、選択された標準治療の治療効果を支援/強化するのに役立つ。それらは、以下に列挙された適応症:(a)表面的な角膜表面の擦過傷、(b)角膜上皮損傷、(c)ステージ1神経栄養性角膜炎(NK):持続性の角膜上皮欠損、(d)ドライアイのために投与される。
【0199】
(ii)液体角膜ヒドロゲルにカプセル化されたエクソソームとそれに続くエクソソーム点眼薬を使用した術後ケア(ヒドロゲル適用後):効率的な再上皮化を強化するだけでなく、損傷によって誘発された線維症および損傷を取り巻く炎症の回復を促進する、一定期間にわたるエクソソームの持続放出。カプセル化されたエクソソームとエクソソーム点眼薬を組み合わせることで、任意の炎症反応を抑制し、血管新生を伴わずに線維性瘢痕を徐々に治癒させることができる。それらは、以下に列挙された適応症:(a)上皮および角膜実質の損傷/感染(活性炎症)を伴う前角膜瘢痕、(b)ステージ1神経栄養性角膜炎(NK)(持続性角膜上皮欠損)、(c)ステージ2NK(滑らかで丸められたエッジを特徴とする大きな持続性上皮欠損)、(d)ステージ3NK(深い角膜潰瘍、角膜実質融解、および無菌性前房蓄膿)、(e)モーレン潰瘍、(f)円錐角膜、ならびに(g)角膜穿孔のために投与される。
【0200】
実施例:0.1~0.5%の臨床グレードのヒアルロン酸(HA)+4億エクソソーム/mlの25%CLSC-CMでプライミングされたBMMSCエクソソームを含有する点眼製剤。
(i)点眼製剤の細胞への取り込み
エクソソームを、メーカーの推奨に従ってPKH26で標識した。PBS(サンプル体積の50倍)中で100,000xgで2時間超遠心分離を繰り返すことにより、過剰な色素を除去した。0.1~5%HAおよび4×10エクソソーム/mlを含む点眼製剤を新たに調製し、ヒト角膜上皮細胞に添加し、37℃で4時間インキュベートした。細胞をライブで画像化し(図32)、固定後にサイトケラチン-3/DAPI(緑/DAPI)で免疫染色した(図33)。図33に示すように、エクソソーム(赤)は、様々な濃度の臨床グレードHAの存在下でも細胞(緑)に取り込まれ、HAとエクソソーム細胞の取り込みとの生体適合性を実証する。エクソソームの取り込みは、試験されたすべての製剤で観察された。しかしながら、HA1~5%のより高いHA濃度では、エクソソーム取り込みの減少が観察された(図33Eおよび33F)。したがって、開示された濃度範囲(0.1~0.5%)よりも高い濃度(1~5%)での臨床グレードHAの存在は、非実施例として機能する。したがって、HAとエクソソーム細胞の取り込みとの生体適合性を実証するためには、臨床グレードのHAが0.1~0.5%の範囲の濃度で存在することが重要である。
【0201】
(ii)点眼製剤の抗炎症活性
エクソソーム活性に対するHAの効果を評価するために、CLSC-CMでプライミングされたBMMSC由来のエクソソームの抗炎症活性を定量化した。図34に示すように、様々な濃度のHAの存在下でのエクソソームの抗炎症活性に有意差は観察されなかったため、HAが炎症反応の阻害におけるエクソソーム治療活性に悪影響を及ぼさなかったことを示唆している。さらに、HA単独ではマクロファージに対する抗炎症効果を誘発しないことも観察され、エクソソームが点眼製剤の重要な治療成分を形成することが確認された。
【0202】
実施例7
角膜疾患の治療方法
本開示はまた、角膜障害を治療する方法を提供する。角膜障害を治療する方法は、(a)本開示のバイオエンジニアリング製剤を得ることと、(b)角膜欠損の部位に適切な量のバイオエンジニアリング製剤を適用することと、(c)対象の角膜欠損を治療するために、1~15分、好ましくは2~8分の範囲の期間、角膜欠損の部位の製剤上で50~150mW/cmの範囲の強度を有する白色光を照射することと、のステップを含む。バイオエンジニアリング製剤中の幹細胞、またはエクソソーム、またはそれらの組み合わせの存在は、バイオエンジニアリング製剤の創傷治癒能力を増強するのに役立つ。
【0203】
さらに、本開示はまた、対象における角膜障害を治療する別の方法を提供する。この方法は、(a)(i)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームが得られる、エクソソームと、(ii)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む点眼製剤と、(b)対象の角膜欠損を治療するために、角膜欠損の部位に製剤を適用することと、のステップを含む。一定期間にわたるエクソソームの持続放出は、効率的な再上皮化を強化するだけでなく、損傷によって誘発された線維症および損傷を取り巻く炎症の回復を促進する。カプセル化されたエクソソームと点眼製剤を組み合わせることで、任意の炎症反応を抑制し、血管新生を伴わずに線維性瘢痕を徐々に治癒させることができる。
【0204】
実施例8
固有粘度に基づく分子量の計算
図35は、固有粘度を計算するためにレオメータから得られた代表的な生データを示す。固有粘度は、0に近づく剪断速度での粘度として定義される。
【0205】
固有粘度は、Mark-Houwinkの式(https://wiki.anton-paar.com/en/intrinsic-viscosity-determination/)を使用してモル質量と相関させることができる。
【0206】
I.V.=K(M^a)、K、aは、Mark-Houwink定数である。
【0207】
「33kDa」のHA MWの場合、定数Kおよびaは、それぞれ0.036および0.78である。(Practical aspects of Hyaluronan Based Medical Products”by J.W Kuo,Page 83)。
【0208】
これらの値に基づいて、「33kDa」HA-MAのMWは約12kDaと計算される。
【0209】
表3は、様々な手法に基づくHAおよびHA-MA誘導体の分子量推定を示す。
【表3】
【0210】
「33kDa」HA-メタクリレートの定義
Stanford Chemicalsによると、ヒアルロン酸(HA)原料の分子量は、固有粘度(i.v.)の測定値に基づいて33kDa(図36)であった。しかしながら、社内のGPCデータに基づくと、このHA原材料のMW範囲は48~148kDaであり、ピークMWは89kDaであることが見出された(図36)。
【0211】
「33kDa」原料は、CreativePEG Worksによってメタクリレート化され、HA-MAが生成された。社内GPCによるMW範囲は11~100kDaであり、ピークMWは44kDaであることが見出された(図37)。
【0212】
また、本開示で提供される固有粘度に基づく分子量の計算に基づいて、「33kDa」HA MAのMWは、約12kDaであることが見出された。したがって、「33kDaのHA-MA」という用語は、商業的に得られた分子の分子量を指し、研究の一部として、本開示はまた、分子量の計算が約12kDaであることを開示し、したがって、本開示では範囲が提供されている。当業者は、上記の分子を商業的に調達して実験を実施することができる。
【0213】
H-NMRデータからの置換度の計算
図38に、「33kDa」HA-MAの代表的なH-NMRデータを示す。置換度(DoS)は、約5.6および6.1ppmのプロトンピーク(メタクリレートプロトン)と約1.9ppmのピーク(HAのN-アセチルグルコサミン)の下の面積の比率を比較することによって決定された。(Seidlits,S.K.,et al.The effects of hyaluronic acid hydrogels with tunable mechanical properties on neural progenitor cell differentiation.Biomaterials,31,3930-3940(2010).https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2010.01.125))、Chandrasekharan A.,et al.In situ photocrosslinkable hyaluronic acid-based surgical glue with tunable mechanical properties and high adhesive strength.J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.2019,57,522-530.https://doi.org/10.1002/pola.29290)。
【0214】
したがって、DoS=[((ピーク下面積5.8ppm+ピーク下面積6.25ppm)/2)3]/2.07ppmのピーク下面積×100=[(4.057/2)3]/3.807×100=約160%。したがって、本開示における置換度(DoS)の50%としての言及は、ベンダーによって提供された情報によるものである。
【0215】
本開示の利点
本開示は、(a)20~80kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~100kDaの範囲の分子量を有し、20~75%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含む、バイオエンジニアリング製剤を提供する。特に、本開示は、(a)30~60kDaの範囲の分子量を有し、35~55%の範囲の置換度を有する修飾コラーゲンペプチドと、(b)10~48kDaの範囲の分子量を有し、33~55%の範囲の置換度を有する修飾ヒアルロン酸と、を含む、バイオエンジニアリング製剤を提供し、修飾コラーゲンペプチドは、チオール化コラーゲンペプチドが含まれるが、これに限定されず、修飾ヒアルロン酸は、メタクリル化コラーゲンペプチドが含まれるが、これに限定されない。修飾コラーゲンペプチドは、製剤に関して20~250mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、バイオエンジニアリング製剤に関して20~80mg/mlの濃度範囲にある。好ましくは、修飾コラーゲンペプチドは、製剤に関して20~150mg/mlの濃度範囲にあり、修飾ヒアルロン酸は、20~75mg/mlの濃度範囲にある。本開示はまた、バイオエンジニアリング製剤を得るためのプロセスを提供する。上述のプロセスでは、光開始剤溶液をバイオエンジニアリング製剤に添加した後、50~150mW/cmの範囲の白色光強度に、1~15分、好ましくは、2~8分間の範囲の時間曝露し、架橋ヒドロゲルを得るのに役立つ。光開始剤溶液は、リン酸緩衝生理食塩水中の0.001~0.1mMエオシンYおよび0.038%w/vトリエタノールアミンを含む。本開示は、幹細胞および/またはエクソソームをさらに含み、幹細胞は、ヒト骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織間葉系幹細胞、臍帯間葉系幹細胞、ウォートンゼリー間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、および角膜輪部幹細胞由来の馴化培地でプライミングされた間葉系幹細胞からなる群から選択され、エクソソームは、角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択される。表1に示されるように、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、100~1400kPa、好ましくは100~500kPaの範囲の圧縮弾性率を有する。さらに、バイオエンジニアリング製剤は、インビトロ条件下で28日以内に最大50%の分解に対して耐性がある。表1の結果は、バイオエンジニアリング製剤の物理的特性が天然の角膜の特徴的な特性と一致することを示し、それによって、バイオエンジニアリング製剤が生体模倣特性を示すことを実証する。さらに、図16に示すように、インビボ条件下でウサギの角膜創傷にバイオエンジニアリング製剤を適用すると、わずか2週間で透明度が徐々に向上し、血管新生がなく、上皮が完全に治癒し、表面が滑らかになったことを示した。これは、本開示のバイオエンジニアリング製剤が、角膜の瘢痕のない創傷治癒のための「バイオインストラクティブ」足場として機能することを示す。さらに、本開示は、(a)角膜実質幹細胞由来のエクソソーム、プライミングされた間葉系幹細胞由来のエクソソーム、およびナイーブ間葉系幹細胞由来のエクソソームからなる群から選択されるエクソソームと、(b)臨床的に承認された点眼製剤と、を含む製剤を提供する。さらに、角膜欠損を治療する方法も本明細書で提供される。また、バイオエンジニアリング製剤の使用、または角膜欠損を治療するための製剤も本明細書で提供される。
【0216】
全体として、バイオエンジニアリング製剤は、抗線維化、抗血管新生、抗炎症、および再神経支配促進を含む特性を包含する。さらに、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、生体模倣、生体適合性、および生分解性であるという望ましい特徴を有する架橋ヒドロゲルである。本開示はまた、バイオエンジニアリング製剤を調製するための便利で時間効率の良いプロセスを提供する。バイオエンジニアリング製剤はまた、瘢痕のない角膜治癒を促進し、それによって、本開示に記載されるようにバイオエンジニアリング製剤を使用して手順を実行した後、透明な角膜をもたらす。
【0217】
本開示のバイオエンジニアリング製剤は、上皮および角膜実質の損傷/感染(活性炎症)を伴う前角膜瘢痕、ステージ1神経栄養性角膜炎(NK)(持続性角膜上皮欠損)、ステージ2NK(滑らかで丸められたエッジを特徴とする大きな持続性上皮欠損)、ステージ3NK(深い角膜潰瘍、角膜実質融解、および無菌性前房蓄膿)、モーレン潰瘍、円錐角膜、角膜穿孔などの角膜潰瘍を含むが、これらに限定されない角膜欠損または角膜疾患を治療するのに役立つ。本開示のバイオエンジニアリング製剤はまた、角膜実質が対象において損傷を受けている、角膜輪部損傷および角膜ジストロフィ(CD)、例えば格子状CD1型、顆粒状CD1型、および先天性角膜実質CDなどを治療するのに役立つ。さらに、本開示のバイオエンジニアリング製剤は、上皮および角膜実質の両方が損なわれる、シュナイダーCDおよび格子状CD2型の潜在的な治療として機能する。本開示のバイオエンジニアリング製剤の使用に続いて、効率的な再上皮化を増強するだけでなく、損傷によって誘発された線維症および損傷を取り巻く炎症の回復を促進する、幹細胞、もしくはエクソソーム、またはそれらの組み合わせの一定期間にわたる持続放出を可能にするエクソソーム点眼薬を使用する術後ケアがある(ヒドロゲル適用後)。カプセル化されたエクソソームおよび製剤を組み合わせることで、任意の炎症反応を抑制し、血管新生を伴わずに線維性瘢痕を徐々に治癒させることができる。
図1A
図1B
図2
図3
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図14A
図14B
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図14D
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図27A
図27B
図28A-I】
図28J-L】
図29
図30
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図33
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図35
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図37
図38
【国際調査報告】