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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電気音響共振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505449
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2020069907
(87)【国際公開番号】W WO2021023484
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】102019120942.0
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520142767
【氏名又は名称】アールエフ360・ヨーロップ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】ペルンパイントナー、マティアス
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA14
5J097AA21
5J097AA26
5J097BB02
5J097BB11
5J097DD04
5J097DD10
5J097DD28
5J097DD29
5J097FF05
5J097HA02
5J097KK01
5J097KK09
(57)【要約】
電気音響共振器は、圧電材料をもつ基板(3)と、基板(3)の上側(33)上のインターデジタル電極構造とを備える。電極構造は、各々がバスバー(20)と複数の指部(10)とをもつ第1の電極(1)と第2の電極(2)とを備える。両方の電極の指部は互いに嵌合する。2つのバスバー間の上側の領域は、2つの障壁領域(113)、2つのトラップ領域(112)、および1つのトラック領域(111)に細分され、トラップ領域は2つの障壁領域の間に配置され、トラック領域は2つのトラップ領域の間に配置される。少なくともいくつかの指部は各々、1つの障壁部分(13)と、2つのトラップ部分(12)と、1つのトラック部分(13)とを備え、障壁部分は、指部に割り当てられたバスバーに最も近い障壁領域と関連付けられ、トラップ部分は各々、トラップ領域の1つと関連付けられ、トラック部分はトラック領域と関連付けられる。指部は、弾性表面波のメインモードの速度がトラック領域内よりもトラップ領域内で小さいように構成される。各電極は、指部よりも短い複数のスタブ指部(30)を備える。各スタブ指部は、スタブ指部に割り当てられたバスバーに最も近い障壁領域のみと関連付けられる。電極は、障壁領域内のメインモードの速度がトラック領域内よりも大きいように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料をもつ基板(3)と、
前記基板(3)の上側(33)上のインターデジタル電極構造と、
を備え、
前記電極構造は、各々がバスバー(20)と複数の指部(10)とをもつ第1の電極(1)と第2の電極(2)とを備え、
両方の電極(1、2)の前記指部(10)は互いに嵌合し、
前記2つのバスバー(20)間の前記上側(33)の領域は、2つの障壁領域(113)、2つのトラップ領域(112)、および1つのトラック領域(111)に細分され、前記トラップ領域(112)は前記2つの障壁領域(113)の間に配置され、前記トラック領域(111)が前記2つのトラップ領域(112)の間に配置され、
少なくともいくつかの指部(10)が各々、1つの障壁部分(13)と、2つのトラップ部分(12)と、1つのトラック部分(13)とを備え、前記障壁部分(13)は、前記指部(10)に割り当てられた前記バスバー(30)に最も近い前記障壁領域(113)と関連付けられ、前記トラップ部分(12)は各々、前記トラップ領域(112)の1つと関連付けられ、前記トラック部分(11)は前記トラック領域(111)と関連付けられ、
前記指部(11)は、弾性表面波のメインモードの速度が前記トラック領域(111)内よりも前記トラップ領域(112)内で小さいように構成され、
各電極(1、2)は、前記指部(10)よりも短い複数のスタブ指部(30)を備え、
各スタブ指部(30)は、前記スタブ指部(30)に割り当てられた前記バスバー(20)に最も近い前記障壁領域(113)のみと関連付けられ、
前記電極(1、2)は、前記障壁領域(113)内の前記メインモードの速度が前記トラック領域(111)内よりも大きいように構成される、
電気音響共振器。
【請求項2】
前記トラップ領域(112)内の前記メインモードの速度は、前記トラック領域(111)内の前記メインモードの速度の高くとも99%および少なくとも93%である、
請求項1に記載の電気音響共振器。
【請求項3】
前記障壁領域(113)内の前記メインモードの前記速度は、前記トラック領域(111)内の前記メインモードの前記速度の高くとも110%および少なくとも101%である、
請求項1または2に記載の電気音響共振器。
【請求項4】
前記指部(10)の幅および/または高さは、前記トラック領域(111)内よりも前記トラップ領域(112)内で大きい、
請求項1から3のうちの1つに記載の電気音響共振器。
【請求項5】
前記スタブ指部(30)および/または前記指部(10)の前記障壁部分(13)は、前記指部(10)の前記トラック部分(11)よりも薄いおよび/または狭い、請求項1から4のうちの1つに記載の電気音響共振器。
【請求項6】
前記スタブ指部(30)は、前記指部(10)の前記障壁部分(13)よりも短い、請求項1から5のうちの1つに記載の電気音響共振器。
【請求項7】
前記スタブ指部(30)の幅および/または高さは、前記指部(10)の前記障壁部分(13)の幅および/または高さと同じである、請求項1から6のうちの1つに記載の電気音響共振器。
【請求項8】
前記トラップ部分(12)内の前記指部(10)の高さは、前記トラック部分(11)内と同じである、請求項1から7のうちの1つに記載の電気音響共振器。
【請求項9】
各電極(1、2)内で、前記指部(10)と前記スタブ指部(30)とが交互に並べられる、請求項1から8のうちの1つに記載の電気音響共振器。
【請求項10】
各スタブ指部(30)は、前記メインモードの伝搬方向に関して前記それぞれの他の電極(1、2)の指部(10)と同じ高さに配置される、請求項1から9のうちの1つに記載の電気音響共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電気音響共振器が記載される。
【背景技術】
【0002】
解決されるべき1つのタスクは、いくつかの疑似モードをもつ電気音響共振器を特定することである。
【発明の概要】
【0003】
少なくとも1つの実施形態によれば、電気音響共振器は、圧電材料(piezoelectric material)をもつ基板を備える。基板は、圧電材料から形成されてもよいし、圧電材料の層たとえば薄膜を備えてもよい。たとえば、圧電材料は、たとえばLiTaO3のようなリチウムタンタライト、またはたとえばLiNbO3のようなニオブ酸リチウム、またはAlNもしくは水晶である。
【0004】
少なくとも1つの実施形態によれば、電気音響共振器は、基板の上側上にインターデジタル電極(interdigital electrode)構造を備える。インターデジタル電極構造は、好ましくは、金属構造(metal structure)である。たとえば、電極構造(electrode structure)は、CuもしくはAlもしくはPtもしくはAgもしくはAuもしくはTiもしくはCrのような金属から、または化合物から、またはその金属合金から作製される。基板の上側は、好ましくは、圧電材料から形成される。インターデジタル電極構造は、温度補償、不動態化(passivation)、または他の追加の機能を提供するために、誘電材料たとえばSiO2またはSi34の追加の層で覆われてよい。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、電極構造は、各々がバスバー(busbar)と複数の指部(finger)とをもつ第1の電極と第2の電極とを備える。各電極の指部は、電極のバスバーによって電気的に接続される。電極は各々、単一材料からなってもよいし、層構造を有してもよい。指部は、好ましくは、割り当てられたバスバーと一体的に形成される。電極は、好ましくは、圧電材料と直接接触する、または、それらは絶縁材料の薄い層によって圧電材料から分離される。たとえば、各電極は、少なくとも10の、または少なくとも50の、または少なくとも100の指部を備える。
【0006】
両方の電極のバスバーは、互いに平行にまたは本質的に平行に走る。バスバーの主要な延長方向は、好ましくは、長手方向と平行に走る。上側と平行で長手方向に垂直な方向は、横断方向と定義される。電極の指部は、バスバーまで横断方向に延び、たとえば、各指部の主要な延長方向は、横断方向と平行に走る。好ましくは、指部のすべては、互いに平行にまたは本質的に平行に走る。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によれば、両方の電極の指部は互いに嵌合する。しかしながら、異なる電極の指部は、互いから電気的に絶縁される。言い換えると、電極は、インターデジタル電極である。両方の電極は一緒に、電気音響共振器のインターデジタル変換器を定義する。たとえば、電気音響共振器はSAW共振器である。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、2つのバスバー間の上側の領域は、2つの障壁領域、2つのトラップ領域、および1つのトラック領域に細分される。トラップ領域は、2つの障壁領域の間に配置され、トラック領域は、2つのトラップ領域の間に配置される。領域は、好ましくは各々、長手方向と平行な主要な延長方向をもつ、連続する、ストリップに似た領域である。横断方向に沿って、領域は、順々に並べられる。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくともいくつかの指部、好ましくはすべての指部は各々、1つの障壁部分と、2つのトラップ部分と、1つのトラック部分とを備える。障壁部分は、指部に割り当てられたバスバーに最も近い障壁領域と関連付けられる。トラップ部分は各々、トラップ領域の1つと関連付けられる。トラック部分は、トラック領域と関連付けられる。ここで、一部分は、基板の上側の平面図で、その部分が領域と重なる、好ましくはその領域と完全に重なる場合、その領域と関連付けられる。一部分と一領域との間の関連付けは、特に1対1である。バスバーは、バスバーが指部と同じ電極に属する場合、指部に割り当てられる。
【0010】
言い換えると、割り当てられたバスバーから始まって、少なくともいくつかの指部は各々、障壁部分を備え、その後に第1のトラップ部分が続き、その後にトラック部分が続き、その後に第2のトラップ部分が続く。第2のトラップ部分は、好ましくは、指部の、バスバーから遠い端を形成する。好ましくは、指部は各々、これらの4つの部分のみからなる。特に好ましくは、長手方向に沿った指部の広がりとして測定される、指部の幅は、各部分内で一定である。「一定」は、製作公差(manufacturing tolerance)内で一定であることを意味する。しかしながら、異なる部分では、指部の幅は異なってよい。好ましくは、上側に垂直な広がりとして測定される、指部の高さも、各部分内で一定であるが、異なる部分では異なってよい。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、指部は、弾性表面波のメインモードの速度がトラック領域内よりもトラップ領域内で小さいように構成される。弾性表面波は、基板の上側で伝搬する。メインモードは、長手方向に沿って伝搬し、ある分極(polarization)を有する、弾性表面波である。たとえば、メインモードは、レイリー弾性表面波である。好ましくは、トラップ領域内のメインモードの速度は、トラック領域内のメインモードの速度の高くとも99%または高くとも98%または高くとも97%である。追加的または代替的に、トラップ領域内のメインモードの速度は、トラック領域内のメインモードの速度の少なくとも93%または少なくとも94%または少なくとも95%である。
【0012】
意図された動作中、電気音響共振器は、求められた弾性表面波であるメインモードを生成する。共振器は、動作中、メインモードがトラック領域の内部で作成され、トラック領域の内部でトラップされるように構成される。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、各電極は、複数のスタブ(stub)指部を備える。スタブ指部は指部よりも短い、すなわち、スタブ指部は、指部よりも小さい長さを有する。指部/スタブ指部の、または指部の一部分の、長さは、横断方向に沿った広がりである。各電極は、少なくとも10の、または少なくとも50の、または少なくとも100のスタブ指部を備えてよい。
【0014】
スタブ指部は、割り当てられたバスバーの、指部と同じ側から延びる。これは、電極のスタブ指部および指部が、割り当てられたバスバーから他の電極のバスバーの方へ延びることを意味する。スタブ指部はすべて、製作公差の制限内で同じ形状を有してよい。同様に、異なる部分を備える指部はすべて、製作公差の制限内で同じ形状を有してよい。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、各スタブ指部は、スタブ指部に割り当てられたバスバーに最も近い障壁領域のみと関連付けられる。特に、スタブ指部は、トラップ領域およびトラック領域と重ならない。長手方向に垂直に測定される、障壁領域の幅は、好ましくは、割り当てられたスタブ指部の長さによって定義される。
【0016】
少なくとも1つの実施形態によれば、電極は、障壁領域内のメインモードの速度がトラック領域内よりも大きいように構成される。たとえば、障壁領域内のメインモードの速度は、トラック領域内のメインモードの速度の少なくとも101%または少なくとも102%または少なくとも104%または少なくとも106%である。追加的または代替的に、障壁領域内のメインモードの速度は、トラック領域内の速度の高くとも110%または高くとも109%または高くとも107%または高くとも105%である。
【0017】
障壁領域内の速度は、指部のピストンモード設計をもつがスタブ指部はもたない共振器と比較して、減少される。障壁領域内の速度の減少は、トラップ領域内の速度を増加させることを可能にし、このことは、望ましくないモードの抑制をさらに可能にする。
【0018】
少なくとも1つの実施形態では、電気音響共振器は、圧電材料をもつ基板と、基板の上側上のインターデジタル電極構造とを備える。電極構造は、各々がバスバーと複数の指部とをもつ第1の電極と第2の電極とを備える。両方の電極の指部は、互いに嵌合する。2つのバスバー間の上側の領域は、2つの障壁領域、2つのトラップ領域、および1つのトラック領域に細分され、トラップ領域は2つの障壁領域の間に配置され、トラック領域は2つのトラップ領域の間に配置される。少なくともいくつかの指部は各々、1つの障壁部分と、2つのトラップ部分と、1つのトラック部分とを備え、障壁部分は、指部に割り当てられたバスバーに最も近い障壁領域と関連付けられ、トラップ部分は各々、トラップ領域の1つと関連付けられ、トラック部分はトラック領域と関連付けられる。指部は、弾性表面波のメインモードの速度がトラック領域内よりもトラップ領域内で小さいように構成される。各電極は、指部よりも短い複数のスタブ指部を備える。各スタブ指部は、スタブ指部に割り当てられたバスバーに最も近い障壁領域のみと関連付けられる。電極は、障壁領域内のメインモードの速度がトラック領域内よりも大きいように構成される。
【0019】
電気音響共振器では、求められるメインモードの他に、いくつかの望ましくない(疑似spurious)モードが存在する。これらの望ましくないモードは、メインモード伝搬方向(=長手方向)に沿って伝搬せず、すべての可能な分極を有することがあるモード、ならびにメインモードと同じ伝搬方向をもつがメインモードとは異なる分極のモードである。一般に、すべての望ましくないモードの抑制を可能にする電極構造の設計を見つけることは可能でない。これは特に、高い電気音響結合および/またはメインモード間の小さい距離および異なるように分極された望ましくないモードをもつ材料システムに当てはまる。そのような共振器から構成されるSAWフィルタでは、残る望ましくないモードが、通過帯域の低下を、フィルタスカートでは、群遅延リップル、トリミング問題、および/または減少した耐電力性を引き起こすことがある。
【0020】
望ましくない横断モード(すなわち、長手方向に垂直な横断方向に沿ったゼロになることのない伝搬をもつモード)を抑制するために、電極の指部は、指部が障壁部分、2つのトラップ部分、およびトラック部分に細分される、いわゆるピストンモード設計とともに形成可能である。トラップ部分は、関連付けられたトラップ領域では、メインモードの速度がトラック領域内よりも小さいように設計されてよい。これは、たとえば、トラック部分と比較してトラップ部分の質量を増加させるために、トラップ部分内で金属ドットを使用することによって、実現可能である。しかしながら、これは、隣接する指部間のピッチが小さくなければならない高周波共振器にとって、問題がある可能性がある。生産方法は、多くの場合、極めて小さい構造上に金属ドットを置くのに十分なほど正確でない。
【0021】
本発明の発明者らは、電極内でスタブ指部を追加的に使用するアイデアを有した。スタブ指部は、トラップ領域の側面に位置する障壁領域内で長手方向に沿って伝搬する弾性表面波の速度を減少させることを可能にする。その結果、トラップ領域内の速度は、トラップ部分のための金属ドットの使用がまったく必要とされないことがあるようにスタブ指部のない場合と同じくらい小さい必要はない。このようにして、コストが節約され、ドットのアライメント精度および最小ドットサイズによる製作制限が回避される。
【0022】
スタブ指部のさらなる利点は、望ましくないモードの抑圧のために共振器を最適化するとき、それらがさらなる自由度を生じさせることである。実際、スタブ指部の幅および/または長さおよび/または高さを調整することによって、障壁領域内の弾性表面波の速度は調整可能であり、このようにして、横断伝搬方向をもつモードの抑制が最適化可能である。そのうえ、スタブ指部の設計を最適化することによって、望ましくない分極のモードもさらに抑制可能である。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によれば、指部の幅および/または高さは、トラック領域内よりもトラップ領域内で大きい。幅および/または高さを増加させることによって、トラップ領域内の指部の質量負荷は、トラック領域と比較して増加され、それにより、トラップ領域内のメインモードの速度は、トラック領域と比較して減少される。たとえば、各指部に対して、トラップ領域内の幅および/または高さは、トラック領域内の幅および/または高さの少なくとも105%または少なくとも110%または少なくとも130%または少なくとも150%である。追加的または代替的に、各指部に対して、トラップ領域内の幅および/または高さは、トラック領域内の幅および/または高さの高くとも250%または高くとも200%または高くとも150%である。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、スタブ指部および/または指部の障壁部分は、指部のトラック部分よりも薄いおよび/または狭い。たとえば、スタブ指部の、および/または障壁部分の、高さおよび/または幅は、トラック部分の高さおよび/または幅の高くとも90%または高くとも80%または高くとも70%である。追加的または代替的に、スタブ指部の、および/または障壁部分の、高さおよび/または幅は、トラック部分の高さおよび/または幅の少なくとも20%または少なくとも40%または少なくとも50%である。
【0025】
スタブ指部の、および/または指部の障壁部分の、幅および/または高さを減少させることによって、障壁領域内の質量負荷は、トラック領域と比較して減少可能であり、その結果、メインモードの速度は、トラック領域と比較して増加される。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、スタブ指部は、障壁部分よりも短い。たとえば、スタブ指部の長さは、指部の障壁部分の長さの高くとも80%または高くとも90%または高くとも95%である。追加的または代替的に、スタブ指部の長さは、障壁部分の長さの少なくとも70%または少なくとも80%である。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、スタブ指部の幅および/または高さは、指部の障壁部分の幅および/または高さと同じである。ここで、および以下では、2つの要素が同じ高さおよび/または幅および/または長さを有することは、要素が製作公差の制限内で同じ高さおよび/または幅および/または長さを有することを意味する。たとえば、高くとも10%または高くとも5%の偏差が発生する。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、トラップ領域内の指部の高さは、トラック領域内と同じである。この場合、トラップ部分内の指部の幅は、好ましくは、トラック部分内よりも大きい。好ましくは、スタブ指部の、および障壁部分内の指部の、高さも、トラック部分内と同じである。この場合、スタブ指部の、および/または障壁部分の、幅は、好ましくは、トラック部分内よりも小さい。
【0029】
十分に深いトラップ領域、すなわち低い速度のメインモードをもつトラップ領域は、一般に、増加した高さをもつトラップ部分を使用することによって、たとえば、金属ドットの使用によって、実現可能である。しかしながら、高周波共振器では、小さい構造サイズが必要とされる。したがって、金属ドットの適用が困難であることがある。しかしながら、本発明では、トラップ深度は、障壁領域内での減少したメインモード速度により、それほど深いように選定される必要はないので、トラップ部分は、トラック部分と同じ高さをもつように選定可能である。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、各電極内で、指部とスタブ指部とは、交互に並べられる。特に、各電極内で、指部の各ペアの間にスタブ指部があり、スタブ指部の各ペアの間に指部がある。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、各スタブ指部は、メインモードの伝搬方向すなわち長手方向に関して、それぞれの他の電極の指部と同じ高さに配置される。これは、スタブ指部を通る中心線であって、横断方向に沿って延びる前記中心線も、他の電極の指部を通って走ることを意味する。好ましくは、スタブ指部の中心線は、同じ高さにある他の電極の指部の中心線でもある。好ましくは、同じ高さに配置された他の電極の指部までの各スタブ指部の距離は、2つのバスバー間の距離の高くとも10%または高くとも5%である。追加的または代替的に、同じ高さにある他の電極の指部までの各スタブ指部の距離は、高くとも0.5・λまたは高くとも0.4・λまたは高くとも0.3・λであり、ここで、λは、トラック領域内のメインモードの波長である。2つの物体間の距離は、本明細書では、2つの物体間の最も短い接続の長さと定義される。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、電気音響共振器は、RFフィルタの一部である。RFフィルタは、通信デバイス、たとえば携帯電話において使用されることがある。RFフィルタは、帯域フィルタであってよい。電気音響共振器の共振周波数は、たとえば、少なくとも0.4GHzまたは少なくとも2.5GHzまたは少なくとも6GHzまたは少なくとも8GHzである。
【0033】
電気音響共振器のさらなる好ましい実施形態および開発が、以下で図に関連して説明される。等しいまたは類似の要素ならびに等しい機能の要素は、図では同じ参照符号を用いて指定される。図および図に示される要素の比率は、一定の縮尺で示されると見なされない。むしろ、単一の要素、特に層は、より良い提示および/またはより良い理解のために、大きさに関して誇張されて示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ある図で電気音響共振器の例示的な実施形態を示す図。
図2】ある図で電気音響共振器の例示的な実施形態を示す図。
図3】ある図で電気音響共振器の例示的な実施形態を示す図。
図4】ある図で電気音響共振器の例示的な実施形態を示す図。
図5】電気音響共振器の特有の性質をグラフに基づいて示す図。
図6】電気音響共振器の特有の性質をグラフに基づいて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、電気音響共振器の第1の例示的な実施形態を平面図で示す。図2は、図1の電気音響共振器を、切断面AA’を通って切断したときの横断面図で示す。電気音響共振器は、圧電材料、たとえばLiNbO3をもつ基板3を備える。基板3は上側33を備え、上側33は、圧電材料から作製される。たとえば、基板3は、圧電材料の薄膜を備える。圧電材料の切断角度は、たとえば、(0°,38°,0°)である。切断角度(λ’,μ,θ)は、圧電材料の結晶軸に対する圧電材料の上表面の方位を定義するオイラー角度である。この定義は、国際規格IEC62276:2016に従うものである。
【0036】
基板の上側33上に、電極構造が適用される。電極構造は、金属から、たとえばCuから作製される。電極構造は、第1の電極1と、第2の電極2とを備える。両方の電極1、2は、バスバー20と、複数の指部10とを備える。バスバー20は両方とも、長手方向Lに沿って延びる。指部10は、横断方向Tに沿ってバスバー20に垂直に延び、横断方向Tは、長手方向Lに垂直である。
【0037】
バスバー20の間で、基板3の上側33は、2つの障壁領域113、2つのトラップ領域112、および1つのトラック領域111に細分される。領域111、112、113はすべて、長手方向Lに沿って主要な延長方向をもつストリップ状に形成される。領域111、112、113は、横断方向Tに沿って順々に並べられる。トラック領域111は、2つのトラップ領域112の間に配置される。2つのトラップ領域112およびトラック領域111は、2つの障壁領域113の間に配置される。障壁領域113は各々、バスバー20に隣接する。
【0038】
指部10は各々、障壁部分13を備え、障壁部分13は、割り当てられた電極のバスバー20に隣接する。バスバー20から離れる方向で、第1のトラップ部分12、トラック部分11、および第2のトラップ部分12は、各場合において、この順序で障壁部分13の下流に並べられる。障壁部分13は、割り当てられたバスバー20に隣接する障壁領域113と関連付けられる/重なる。トラップ部分12は、トラップ領域112と関連付けられ/重なり、トラック部分11は、トラック領域111と関連付けられる/重なる。
【0039】
指部10の他に、各電極1、2は、バスバー20から延びるスタブ指部30を備える。各電極1、2内で、1つのスタブ指部30が、指部10の各ペアの間に並べられる。スタブ指部30は、割り当てられたバスバー20に隣接する障壁領域113のみと関連付けられる/重なる。長手方向Lに対して、各スタブ指部30は、それぞれの他の電極の指部10と同じ高さにある。
【0040】
図1および図2に示される電気音響共振器の動作中、ある分極をもつ長手方向に沿って伝搬する、弾性表面波のメインモードが、生成される。メインモードは、本質的にトラック領域111内でトラップされる。指部10のトラップ部分12は、トラップ領域112内で、メインモードの速度が、トラック領域111と比較して減少されるように選定される。これは、トラック部分11よりも幅広くトラップ部分12を形成することによって実現され、その結果、トラック領域111と比較してトラップ領域112内で増加した質量負荷がもたらされる。しかしながら、トラック部分12内の指部10の高さは、トラック部分11内と同じであり(図2を参照されたい)、これは、指部10の生産に鑑みて有利である。
【0041】
スタブ指部30は、トラック部分11と比較して減少した幅とともに設計される。指部10の障壁部分13は、トラック部分11と同じ幅を有する。スタブ指部30の、および障壁部分13の、高さは、トラック部分11内と同じである。スタブ指部30の減少した幅により、障壁領域113内のメインモードの速度は、トラック領域111内よりも大きいが、スタブ指部30が使用されない場合と比較すると小さい。
【0042】
結果として生じる速度プロファイルが、図5のグラフに示される。x軸は、横断方向Tを表す。y軸は、メインモードの速度を表す。共振器の動作中、速度プロファイルは、図6のグラフに示されるメインモードの振幅のプロファイルをもたらす。ここでも、x軸は、横断方向Tを表す。y軸は、メインモードの振幅を表す。わかるように、電極構造の設計により、メインモード振幅はほとんど、トラック領域111内のほとんど平らな形状、およびトラップ領域112内の深い側面(steep flanks)とともに、方形形状を有する。メインモードのためのそのようなプロファイルがあれば、横断方向に伝搬する望ましくないモードは、ほとんど完全に抑制される。図5および図6では、以前の図で見えるトラック領域112と障壁領域113との間の小さい間隙領域は示されない。
【0043】
図3は、電気音響共振器の第2の例示的な実施形態を示す。共振器は、横断面図のみで示される。平面図は、たとえば、図1と同じであろう。図2の電気音響共振器とは対照的に、図3の電気音響共振器は、トラック部分11内よりもトラップ部分12内で大きい高さをもつ指部10を有する。これは、トラック領域112内のメインモードの速度をさらに減少させる助けとなる。増加した高さ12が、増加した幅の代わりに使用されてよい。そのうえ、障壁部分13内の指部10の高さは、トラック部分11内よりも小さくてよい。同様に、スタブ指部30の高さは、トラック部分11内の指部10の高さよりも小さくてよい。
【0044】
図4は、電気音響共振器の第3の例示的な実施形態を、ここで再び基板3の上側33上の平面図で示す。図4の電気音響共振器は、ここで障壁部分13内の指部10の幅がトラック部分11内の幅と比較して減少されるという点でも、図1の電気音響共振器とは異なる。このようにして、障壁領域113内のメインモードのための速度は、図1の場合と比較して増加される。
【0045】
図3および図4の電気音響共振器は、図5および図6に示される類似した特有の速度プロファイルおよび類似したメインモード振幅プロファイルを有する。
【0046】
本明細書において説明される本発明は、例示的な実施形態に関連した説明によって制限されない。むしろ、本発明は、任意の新しい特徴または特に特許請求項における特徴の任意の組合せを含む、特徴の任意の組合せそれ自体が、特許請求項または例示的な実施形態において明示的に述べられていない場合でも、前記特徴ならびに前記組合せを備える。
【0047】
符号の説明
1 第1の電極
2 第2の電極
3 基板
10 指部
11 トラック部分
12 トラップ部分
13 障壁部分
20 バスバー
30 スタブ指部
33 上側
111 トラック領域
112 トラップ領域
113 障壁領域
T 横断方向
L 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】