(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】天然バニリン組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/24 20160101AFI20220930BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220930BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20220930BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220930BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20220930BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20220930BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20220930BHJP
A23K 20/111 20160101ALI20220930BHJP
【FI】
A23L27/24
A61K8/35
A61Q13/00 101
A61K47/10
A23L27/00 C
A23L27/20 F
A23L27/10 C
A23K20/111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505514
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2020071485
(87)【国際公開番号】W WO2021019001
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガレル, ローラン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B047
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB04
2B150AB20
2B150DA16
4B047LB07
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG06
4B047LG38
4C076DD40T
4C076FF52
4C083AC471
4C083AC472
4C083BB41
4C083CC01
4C083FF01
4C083KK02
(57)【要約】
本発明は、4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドから選択される少なくとも1種の化合物を含む天然バニリン組成物に関する。本発明は、本発明による天然バニリン組成物を得るための方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然バニリンを含み、且つ4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドから選択される少なくとも1種の化合物を更に含む組成物であって、90%以上の天然バニリン力価を示す、組成物。
【請求項2】
バニリルアルコール、バニリン酸、アセトバニロン、グアイアコール、及びビニルグアイアコールから選択される少なくとも1種の化合物、好ましくはバニリルアルコール、バニリン酸、及びアセトバニロンから選択される少なくとも1種の化合物を更に含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記天然バニリン力価が95%超、非常に好ましくは99%以上、更に好ましくは99.5%以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総重量に対する4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量が10000ppm以下且つ10ppm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の総重量に対する4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量が5000ppm以下且つ10ppm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
400ハーゼン以下、好ましくは200ハーゼン以下、より好ましくは100ハーゼン以下、非常に好ましくは50ハーゼン以下、更に好ましくは20ハーゼン以下の色を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
フェルラ酸を発酵させる工程(a)を含み、任意選択的には工程(a)の終わりに得られる天然バニリン組成物を精製する工程(b)も含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の天然バニリン組成物の調製方法。
【請求項8】
工程(b)が、任意選択的には技術的な補助剤の存在下で実施される、ワイプ膜式蒸発器又は流下液膜式蒸発器における蒸発の工程である、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が、液/液抽出又は超臨界CO
2による抽出を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ヒトの食品及び動物の食餌の分野における、製薬における、風味料としての、又は化粧品、香水、及び洗剤産業における香料としての、請求項1~6のいずれか一項に記載の天然バニリン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月30日出願の仏国特許第1908643号の優先権を主張するものであり、その内容は、参照により完全に援用される。
【0002】
本発明は、4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドから選択される少なくとも1種の化合物を含む天然バニリン組成物に関する。本発明は、本発明による天然バニリン組成物を得るための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
バニリン、すなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドは、当業者に公知の様々な方法によって、特に以下の3つの経路によって得ることができる。
- 特に、発酵基質からバニリンへの生物学的変換を可能にすることができる微生物の培養を含む、生物工学的プロセスに基づく「天然」経路。発酵基質がフェルラ酸であるそのような方法は、特に、欧州特許第0885968号明細書から既知である。使用されるフェルラ酸は、特に米ぬか又はトウモロコシふすまに由来する複数の起源を持つ場合がある。
- 微生物が関与しない、グアイアコールから出発する従来の化学反応を含む「合成」経路。この方法によって、合成バニリンと呼ばれるバニリンが調製される。
- 最後に、バニリンは、バニリンがオイゲノール又はリグニンから得られる「バイオベース」と表現される経路によって調製することもできる。特に、米国特許第2745796号明細書及び独国特許第1132113号明細書、並びにInternational Journal of Biology and Biotechnology,2004,Vol.1,No.4,pp 535-537中のAzadbakhtらによる「Preparation of lignin from wood dust as vanillin source and comparison of different extraction methods」という表題の論文を挙げることができる。
【0004】
「天然経路」がバニリンの工業的製造に使用される場合、天然バニリンの官能特性に影響を与え得る多数の副生成物が形成する複数の副反応が起きる可能性がある。その副生成物の1つの化学合成は、特に欧州特許第2763947号明細書に記載されている。結果として、正確な特性を有する天然バニリン組成物の調製は、特に色又は官能特性の点で複雑である。本発明は、既知且つ制御された含有量の副生成物を有する天然バニリン組成物の効率的且つ制御された調製を目的とする。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の第1の主題は、天然バニリンを含み、且つ4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドから選択される少なくとも1種の化合物を更に含む組成物に関する。
【0006】
別の態様は、フェルラ酸を発酵させる工程(a)を含み、任意選択的には工程(a)の終わりに得られる天然バニリン組成物を精製する工程(b)も含む、本発明による天然バニリン組成物の調製方法に関する。
【0007】
最後に、本発明は、ヒトの食品及び動物の食餌の分野における、製薬における、風味料としての、又は化粧品、香水、及び洗剤産業における香料としての、天然バニリン組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明との関係において、及び別段の指示がない限り、「…と…との間」という表現は境界を含む。別段の指示がない限り、パーセンテージ及びppmは、重量パーセンテージ及び重量ppmである。
【0009】
本発明との関係において、及び別段の指示がない限り、「ppm」という用語は「百万分率」を意味する。この単位は、重量による比率:1ppm=1mg/kgを表す。
【0010】
本発明との関係において、及び別段の指示がない限り、「天然バニリン」という表現は、規則(EC)1334/2008の第9.2条(c)による風味付与物質、すなわち植物、動物、若しくは微生物起源の物質から、材料そのままの状態で、又はヒトが消費するために1つ以上の従来の食品調製プロセスによってそれらを処理した後に、物理的、酵素的、若しくは微生物学的プロセスにより得られる風味付与物質を表し得る。天然風味付与物質は、天然に存在し天然に同定されている物質に相当する。他の国又は地域で施行されている規制によって与えられる定義も適用される場合がある。好ましくは、本発明による「天然バニリン」という用語は、発酵基質のバニリンへの変換を可能にすることができる微生物の培養を含む生物工学的プロセスによって得られるバニリンを意味する。本発明によれば、微生物は、野生型であってもよく、或いは特にバニリンの収率を改善するために、又は副生成物の形成を防止するために、遺伝子組み換えされていてもよい。非常に好ましくは、これは欧州特許第0885968号明細書に記載されているような、フェルラ酸の発酵のためのプロセスであってよい。フェルラ酸は、任意の起源のものであってよく、特に米ぬか、ビートパルプ、小麦ふすま、バガス、サトウキビ、又はトウモロコシ、特にデンプン工場又はニシュタマリゼーションユニットからの、特にトウモロコシふすま又はトウモロコシ繊維由来であってよい。
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、天然バニリンを含み、且つ4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドから選択される少なくとも1種の化合物を更に含む組成物に関する。
【化1】
【0012】
特定の態様によれば、本発明による組成物は、4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドを含有する。
【0013】
好ましい態様によれば、本発明による組成物は、バニリルアルコール、バニリン酸、アセトバニロン、グアイアコール、及びビニルグアイアコールから選択される少なくとも1種の化合物を更に含有する。例えば、本発明による組成物は、アセトバニロン及び/又はビニルグアイアコールを含み得る。
【化2】
【0014】
好ましくは、本発明による組成物は、バニリルアルコール、バニリン酸、及びアセトバニロンから選択される少なくとも1種の化合物を更に含み得る。
【0015】
有利には、本発明による組成物は、90%以上、好ましくは95%超、非常に好ましくは99%以上の天然バニリン力価を示す。特定の態様によれば、天然バニリン力価は99.5%以上である。
【0016】
好ましい態様によれば、組成物の総重量に対する4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量は、10000ppm以下、好ましくは8000ppm以下、より好ましくは7000ppm以下、非常に好ましくは5000ppm以下である。
【0017】
別の好ましい態様によれば、組成物の総重量に対する4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量は、10ppm以上、好ましくは200ppm以上、より好ましくは500ppm以上、非常に好ましくは100ppm以上である。
【0018】
有利には、組成物の総重量に対する4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量は、600ppm~2500ppmである。
【0019】
好ましい態様によれば、組成物の総重量に対する4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量は、5000ppm以下、好ましくは2500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、非常に好ましくは900ppm以下である。
【0020】
別の好ましい態様によれば、組成物の総重量に対する4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量は、10ppm以上、好ましくは100ppm以上、より好ましくは200ppm以上、非常に好ましくは300ppm以上である。
【0021】
有利には、組成物の総重量に対する4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドの重量含有量は、400ppm~800ppmである。
【0022】
本発明によれば、組成物の総重量に対するバニリルアルコールの重量含有量は、4000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、非常に好ましくは1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下、非常に好ましくは500ppm以下である。本発明によれば、組成物の総重量に対するバニリルアルコールの重量含有量は、1ppm以上、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、非常に好ましくは20ppm以上である。
【0023】
有利には、組成物の総重量に対するバニリルアルコールの重量含有量は、50ppm~250ppmである。
【0024】
本発明によれば、組成物の総重量に対するバニリン酸の重量含有量は、1000ppm以下、好ましくは700ppm以下、より好ましくは500ppm以下、非常に好ましくは200ppm以下である。本発明によれば、組成物の総重量に対するバニリン酸の重量含有量は、1ppm以上、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、非常に好ましくは20ppm以上である。
【0025】
有利には、組成物の総重量に対するバニリン酸の重量含有量は、50ppm~100ppmである。
【0026】
本発明によれば、組成物の総重量に対するアセトバニロンの重量含有量は、1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下、非常に好ましくは500ppm以下である。本発明によれば、組成物の総重量に対するアセトバニロンの重量含有量は、0.1ppm以上、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、非常に好ましくは20ppm以上である。
【0027】
有利には、組成物の総重量に対するアセトバニロンの重量含有量は、50ppm~400ppmである。
【0028】
本発明によれば、組成物の総重量に対するグアイアコールの重量含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、非常に好ましくは20ppm以下である。本発明によれば、組成物の総重量に対するグアイアコールの重量含有量は、0.01ppm以上、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、非常に好ましくは10ppm以上である。本発明の別の代替形態によれば、バニリン組成物はグアイアコールを含まない。
【0029】
本発明によれば、組成物の総重量に対するビニルグアイアコールの重量含有量は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、非常に好ましくは20ppm以下である。本発明によれば、組成物の総重量に対するビニルグアイアコールの重量含有量は、0.01ppm以上、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、非常に好ましくは10ppm以上である。本発明の別の代替形態によれば、バニリン組成物はビニルグアイアコールを含まず、特にビニルグアイアコール含有量は液体クロマトグラフィー法の検出限界未満である。
【0030】
有利には、本発明による組成物は薄く着色されている。好ましくは、天然バニリン組成物は、400ハーゼン以下、好ましくは200ハーゼン以下、より好ましくは100ハーゼン以下、非常に好ましくは50ハーゼン以下、更に好ましくは20ハーゼン以下の色を有する。色は10重量%のエタノール溶液中で測定される。色の測定は、10mmの光路長のキュベットを使用して、Konica Minolta CM-5分光光度計を用いて行われる。
【0031】
本発明による天然バニリン組成物は、結晶形態であっても又はアモルファス形態であってもよく、好ましくは結晶形態であり得る。天然バニリン組成物は、粉末、結晶、ビーズ、プリル、又はフレークとして形成することができる。
【0032】
有利なことには、本発明による天然バニリン組成物は、特に視覚的外観、テクスチャー、味、又は芳香に関して適合性を有する官能プロファイルを有する。有利なことには、本発明による組成物は、調子外れの香調を示さない。特に、本発明による組成物の官能プロファイルは、鞘から抽出された天然バニリンの官能プロファイルと少なくとも同等である。
【0033】
本発明による天然バニリン組成物は、他の化合物を含むことができる。前記組成物中に存在するこれらの化合物は、天然バニリンを調製するためのプロセスに関連している。特に、全てを網羅するものではないが、4-(3-ヒドロキシ-4-メトキシベンジル)-2-メトキシフェノール、4,4’-メチレンビス(2-メトキシフェノール)、フェルラ酸、並びにバニリン二量体及び/又は三量体を挙げることができる。
【0034】
別の態様は、フェルラ酸を発酵させる工程(a)を含み、任意選択的には工程(a)の終わりに得られる粗製天然バニリン組成物を精製する工程(b)も含むことを特徴とする、本発明による天然バニリン組成物の調製方法に関する。
【0035】
工程(a):本発明によれば、方法の工程(a)は、粗製天然バニリン組成物を製造するためにフェルラ酸を発酵させる工程である。
【0036】
粗製天然バニリン組成物とは、フェルラ酸発酵工程の終わりに得られる組成物を指す。特に、粗製バニリン組成物は、水性発酵培地の処理後に得ることができる。例えば、発酵培地をバイオマスから分離し、次いで水相を適切な溶媒で抽出することができる。その結果、粗製天然バニリン組成物は、フェルラ酸発酵工程の最後に間接的に得ることができる。具体的には、天然バニリンの製造中に、天然バニリンと、不純物と、大量の溶媒、典型的には例えば酢酸エチルなどの食品グレードの溶媒とを含有する液体組成物が通常回収される。
【0037】
発酵は、欧州特許第0885968号明細書に示されている通りに行うことができる。発酵は、通常、水性培地中で行われる。
【0038】
好ましくは、工程(a)の終わりに、天然バニリンの重量濃度は、粗製天然バニリン組成物の重量に対して0.5%~60%、好ましくは5%~40%、更に好ましくは10%~35%である。
【0039】
工程(a)で使用される粗製天然バニリン組成物は、4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドから選択される少なくとも1種の化合物を含み得る。粗製バニリン組成物は、バニリルアルコール、バニリン酸、アセトバニロン、グアイアコール、及びビニルグアイアコールから選択される少なくとも1種の化合物を更に含み得る。
【0040】
工程(b):工程(b)は、工程(a)の終わりに得られた組成物を精製する任意選択的な工程である。1つの変形形態では、工程(b)は任意選択的ではない。
【0041】
通常、工程(b)は、欧州特許第2791098号明細書に記載されているような液-液抽出を含み得る。好ましくは、液-液抽出は、食品加工用途に適合する溶媒を使用して行われる。
【0042】
工程(b)は、少なくとも1つの結晶化工程も含み得る。別の代替形態によれば、精製工程は、超臨界CO2による抽出を含み得る。
【0043】
最後に、別の代替形態によれば、工程(b)は、欧州特許第2948424号明細書に記載されている粗製天然バニリンを蒸発させる工程、又は国際公開第2018/146210号パンフレットに記載されているストリッピング工程を含み得る。
【0044】
本発明の特定の態様によれば、工程(b)は、ワイプ膜式蒸発器又は流下液膜式蒸発器における蒸発の工程である。有利なことには、この工程は、工程(a)の終わりに得られた粗製天然バニリン組成物中に存在するバニリンよりも揮発性の低い化合物の除去を可能にする。揮発性の低い化合物は、好ましくは、バニリルアルコール、バニリン酸、アセトバニロン、及び重い化合物から選択される。
【0045】
「重い化合物」という用語は、検討される温度及び圧力条件下でバニリンよりも揮発性が低い化合物を指す。重い不純物の中でも、バニリンの二量体及び三量体(すなわちそれぞれ2つ又は3つのフェニル基を有する骨格を示す化合物)、及びフェルラ酸を挙げることができる。
【0046】
この実施形態は、工程(a)の終わりに得られた粗製天然バニリン組成物を精製することを可能にし、本発明による天然バニリン組成物の調製を可能にするという点で特に有利である。不純物の含有量は特によく制御されており、天然のバニリン組成物は非常に薄く着色されている。
【0047】
本発明による方法は、4-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)オキシ)-3-メトキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-5-メトキシベンズアルデヒドの含有量を制限することができる。
【0048】
更に、この実施形態は、同伴ガス及び/又は気化した液体の存在下でのストリッピングの工程を回避することを可能にする。そのため、このプロセスは、経済的に実行可能であるという産業的観点から興味深い。
【0049】
工程(b)が行われる伝熱流体の温度は、通常130℃以上、好ましくは145℃以上である。通常、伝熱流体の温度は、230℃以下、好ましくは180℃以下である。
【0050】
工程(b)が行われる圧力は、通常、0.4mbar以上、好ましくは1mbar以上である。通常、圧力は75mbar以下、好ましくは8mbar以下、より好ましくは4mbar以下である。
【0051】
有利には、工程(b)で使用される粗製天然バニリン組成物中の天然バニリンの重量濃度は、粗製天然バニリン組成物の総重量に対して10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、非常に好ましくは70%以上である。方法は、粗製天然バニリン組成物を濃縮する工程を含み得る。
【0052】
好ましい態様によれば、工程(b)は、少なくとも1つの技術的な補助剤、例えば流動化剤の存在下で実施される。したがって、本発明の特定の実施形態によれば、食品に関する規制によって認可された流動化剤を天然バニリンに添加することができる。流動化剤は、工程(b)の前、特に工程(a)と工程(b)の間に添加することができる。別の実施形態によれば、流動化剤は、工程(b)の間に添加することができる。
【0053】
流動化剤は、白色鉱物油、特に食品グレードの白色鉱物油、ポリエチレングリコール、特に平均分子量が200~3000g/mol、好ましくは600~1500g/molのポリエチレングリコール、又はヒマシ油から選択することができる。
【0054】
好ましくは、工程(b)は、不活性雰囲気下、特にアルゴン、窒素、又はそれらの混合物下で行われる。工程(b)は、低酸素空気の下で行われてもよい。通常、酸素含有量は1%以下である。
【0055】
蒸発器は、蒸発した天然バニリン組成物を含むガス流出物を回収することを可能にし、これはその後、本発明による天然バニリン組成物の凝縮物を回収するように凝縮される。
【0056】
有利には、天然バニリン力価は、90%以上、非常に好ましくは95%超、更に好ましくは99%以上である。特定の態様によれば、バニリン力価は99.5%以上である。
【0057】
有利なことに、天然バニリン精製工程(b)の最後に得られた天然バニリン凝縮物は、薄く着色されている。有利には、工程(b)の終わりに得られる天然バニリン凝縮物は、本発明による天然バニリン組成物である。
【0058】
有利なことには、工程(b)の終わりに得られるこの天然バニリン凝縮物は、適合性を有しており、且つ鞘から抽出された天然バニリン又は合成バニリンと少なくとも同等である官能特性を示す。
【0059】
特定の態様によれば、精製工程(b)はストリッピング工程を含まない。
【0060】
特定の態様によれば、本発明の方法は、流下液膜式蒸発器又はワイプ膜式蒸発器における蒸発の工程の前に、天然バニリン組成物を溶融することからなる工程を含まない。特定の態様によれば、天然バニリン組成物は、工程(a)と工程(b)との間に結晶化されない。
【0061】
この方法は、工程(b)の終わりに、好ましくは結晶化によって、より好ましくはFEMA GRASTMプログラムによって識別される溶媒中での結晶化によって得られる天然バニリン組成物を形成する任意選択的な工程(c)も含み得る。好ましい実施形態では、天然バニリン組成物は水から又は水/アルコール(特にエタノール)混合物から結晶化又は再結晶化される。
【0062】
本発明による方法は、連続運転又はバッチ式運転によって行うことができる。
【0063】
本発明は、本発明に従って記載された方法によって得ることができる天然バニリン組成物にも関する。
【0064】
最後に、本発明は、ヒトの食品及び動物の食餌の分野における、製薬における、風味料としての、又は化粧品、香水、及び洗剤産業における香料としての天然バニリン組成物の使用に関する。
【0065】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、それを限定しない。
【0066】
参照目的で本明細書に引用される特許、特許出願、及び刊行物の開示が、用語を不確実にするリスクがあるほどに本出願の説明と矛盾する場合には、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0067】
実施例1:粗製天然バニリン組成物は、欧州特許第0885968号明細書に記載されている手順に従って行われる発酵から調製される。溶媒の他に、粗製バニリン組成物は、表1に記載の化合物を含んでいた。
【0068】
【0069】
実施例2:欧州特許第0885968号明細書の方法に従って得られた粗製天然バニリン組成物を、ワイプ膜式蒸発器において、ヒマシ油の存在下での真空蒸発によって精製する。
【0070】
本発明による天然バニリン組成物の特性。
【0071】
【国際調査報告】