(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】肝損傷予防、改善、または治療用組成物、および肝損傷予防、改善、または治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20220930BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220930BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220930BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220930BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220930BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220930BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220930BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61K35/741 ZNA
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P3/10
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/18
A23L33/135
C12N1/20 E
C12N1/20 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506047
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2020010097
(87)【国際公開番号】W WO2021020923
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0092689
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0087105
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0094922
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0095361
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520106231
【氏名又は名称】コバイオラブス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コ,クァン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヒュン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジルジェ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ボ-ラム
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD85
4B018ME14
4B065AA01X
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4C076CC16
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4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC55
4C087CA09
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZB21
(57)【要約】
本発明は肝損傷、例えば非アルコール性脂肪肝予防、改善、または治療用組成物に関するものであって、さらに詳しくは、ルミノコッカス属菌株を含む肝損傷予防または治療用組成物に関するものである。
【選択図】
図1c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を含む、肝損傷の予防、改善、または治療用薬学的または食品組成物。
【請求項2】
前記肝損傷は下記(1)~(5)のうちの1種以上の特性を有することである、請求項1に記載の組成物:
(1)血中ALT濃度が増加する、
(2)血中AST濃度が増加する、
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度が減少する、
(4)線維性遺伝子発現量が増加する、および
(5)体重に対する肝重量比率が増加する。
【請求項3】
前記肝損傷は、脂肪肝、肝炎、肝線維化、および肝硬変からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記非アルコール性脂肪肝は、非肥満性非アルコール性脂肪肝である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記非アルコール性脂肪肝は、肥満性非アルコール性脂肪肝である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記非アルコール性脂肪肝は、糖尿病性非アルコール性脂肪肝である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、下記(1)~(5)のうちの1種以上を特徴とするものである、請求項1に記載の組成物:
(1)血中ALT濃度の減少、
(2)血中AST濃度の減少、
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度の増加、
(4)線維性遺伝子発現量の減少、および
(5)体重に対する肝重量比率の減少。
【請求項9】
前記二次胆汁酸は、deoxycholic acid(DCA)、lithocholic acid(LCA)、およびursodeoxycholic acid(UDCA)からなる群より選択された1種以上である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記線維性遺伝子は、Col1a1、Timp1、およびα-SMAからなる群より選択された1種以上である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、インスリン非依存的に肝損傷を改善または治療するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、インスリン抵抗性を有する対象に投与されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、インスリン抵抗性を有する対象に投与されて下記(1)~(3)のうちの1種以上を特徴とするものである、請求項1に記載の組成物:
(1)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて高い、血中ALT数値減少率、
(2)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて高い、血中AST数値減少率、
(3)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて高い、体重に対する肝重量比率(liver ratio)の減少率。
【請求項14】
前記組成物は、線維症マーカ遺伝子が過発現された対象に投与されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記線維症マーカ遺伝子は、Col1a1、Timp1、およびα-SMAからなる群より選択された1種以上である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ルミノコッカス属菌株は、ルミノコッカスフェシス(Ruminococcus faecis)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記ルミノコッカス属菌株は、寄託番号KCTC5757を有するルミノコッカスフェシス(Ruminococcus faecis)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記菌株は、炭素源の濃度5~30%(w/v)、窒素源の濃度50~90%(w/v)、ミネラルの濃度5~15%(w/v)、およびアミノ酸の濃度0.1~10%(w/v)である培養培地で培養8時間以後に成長を持続するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は、凍結乾燥保護剤を追加的に含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記凍結乾燥保護剤は、ショ糖、リン酸カルシウム、アルギニン、塩化ナトリウム、果糖、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、およびトレハロースからなる群より選択された1種以上を含むものである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
5~30%(w/v)濃度の炭素源および50~90%(w/v)濃度の窒素源を含む、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養用組成物であって、
前記炭素源は、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、糖蜜、およびガラクトースからなる群より選択された1種以上であり、
前記窒素源は、酵母抽出物(yeast extract)、大豆ペプトン(soy peptone)、脱脂乳、トリプトン、カザミノ酸(Casamino acids)、ジャガイモペプトン(potato peptone)、エンドウ豆ペプトン(pea peptone)、小麦ペプトン(wheat peptone)、ソラマメペプトン(broadbean peptone)、パパイック大豆ペプトン(papaic soy peptone)、およびルピンペプトン(lupin peptone)からなる群より選択された1種以上である、培養用組成物。
【請求項22】
前記組成物は、ルミノコッカス属菌株の培養8時間以後の成長を促進するものである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は、ミネラル、アミノ酸、ビタミン、核酸、および無機塩類からなる群より選択された1種以上を追加的に含むものである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、ミネラルおよびアミノ酸を追加的に含み、
前記炭素源の濃度は5~30%(w/v)、
前記窒素源の濃度は50~90%(w/v)、
前記ミネラルの濃度は5~15%(w/v)、および
前記アミノ酸の濃度は0.1~10%(w/v)である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
請求項21~24のいずれか一項に記載の培養用組成物に、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を接種して培養する段階を含む、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養方法。
【請求項26】
前記培養方法は、前記菌株接種8時間以後の成長を促進することである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記培養は、静置培養、流加式培養、または回分式培養である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与する段階を含む、肝損傷予防、改善、または治療方法。
【請求項29】
前記対象は、下記(1)~(5)のうちの1種以上の特性を有するものである、請求項28に記載の方法:
(1)血中ALT濃度が増加した状態、
(2)血中AST濃度が増加した状態、
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度が減少した状態、
(4)線維性マーカ遺伝子が過発現された状態、
(5)体重に対する肝重量比率が増加した状態。
【請求項30】
前記対象は、インスリン抵抗性を有するものである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記対象は、2型糖尿病を有するものである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記肝損傷は、下記(1)~(5)のうちの1種以上の特性を有するものである、請求項28に記載の方法:
(1)血中ALT濃度が増加する、
(2)血中AST濃度が増加する、
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度が減少する、
(4)線維性遺伝子発現量が増加する、および
(5)体重に対する肝重量比率が増加する。
【請求項33】
前記肝損傷は、脂肪肝、肝炎、肝線維化、および肝硬変からなる群より選択された1種以上である、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記非アルコール性脂肪肝は、糖尿病性非アルコール性脂肪肝である、請求項34に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝損傷予防、改善、または治療用組成物、および肝損傷予防、改善、または治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪肝疾患(Nonalcoholic fatty liver disease、NAFLD)は、単純な脂肪症(steatosis)から、窮極的に進行性(advanced)線維症および肝硬変につながる攻撃的な組織形態である非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis)に至る代謝障害の肝疾患を特徴とする。NAFLDの世界有病率は大部分の疫学研究で24-30%と推定され、肥満および代謝症候群と平行に増加している。
【0003】
最近、増加された関心は、多様な代謝性疾患で腸内微生物叢(intestinal microbiota)の特定役割を確認し理解するのに焦点を合わせている。正常微生物叢に比べる腸内微生物叢の非正常的な変化を称する腸内微生物不均衡(Gut dysbiosis)は、良い短鎖脂肪酸(short-chain fatty acid、SCFA)生産バクテリアの減少、胆汁酸組成の変化、リポ多糖類(lipopolysaccharide、LPS)に対する免疫反応の活性化、エタノール生産バクテリアの過増殖によるエタノール生産増加、およびホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)のコリン(choline)およびトリメチルアミン(trimethylamine)への転換と関連されている。腸-肝軸(gut-liver axis)に影響を与える腸内マイクロバイオーム(gut microbiome)の変化は、NAFLDおよび肝硬変のような慢性肝疾患(chronic liver disease)および進行性(advanced)線維症の進行に寄与すると知られている。しかし、NAFLD疾病群で増加または減少した状態にある菌株を正常状態に減少または増加させてもNAFLDの改善または治療効果が必ずしも示されるのではない。その理由は、疾病群で現れた腸内マイクロバイオームの変化が疾患によって現れる生理学的変化による結果であることもあるためである。
【0004】
したがって、NAFLDの組織学的(histological)重症度如何を決定し、腸内マイクロバイオーム変化をよく規定して効果的なNAFLDの予防、治療、および診断方法が要望される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであって、肝損傷、例えば非アルコール性脂肪肝疾患の予防、改善または治療用組成物提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例は、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を含む、肝損傷の予防、改善、または治療用組成物に関するものである。
【0007】
本発明のまた他の一例は、炭素源および窒素源を含むルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養用組成物に関するものである。
【0008】
本発明のまた他の一例は、本発明による肝損傷の予防、改善、または治療用組成物をこれを必要とする対象に投与する段階を含む、肝損傷の予防、改善または治療方法に関するものである。
【0009】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0010】
本発明の一例は、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を含む、肝損傷の予防、改善または治療用組成物に関するものである。前記組成物は、薬学的組成物または食品組成物であってもよい。前記組成物は、酪酸(butyric acid)を追加的に含むものであってもよい。
【0011】
前記肝損傷は、脂肪肝、肝炎、肝線維化、および肝硬変からなる群より選択された1種以上であり得る。前記肝損傷は非アルコール性肝損傷であり得る。具体的に、前記肝炎は非アルコール性脂肪肝炎であり、前記脂肪肝は非アルコール性脂肪肝であり得る。前記非アルコール性脂肪肝は非肥満性非アルコール性脂肪肝、肥満性非アルコール性脂肪肝、または糖尿性非アルコール性脂肪肝であり得るが、これに制限されるわけではない。前記糖尿性非アルコール性脂肪肝は2型糖尿病に起因したものであり得る。
【0012】
2型糖尿病患者中の40%の確率で非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を有しており、非アルコール性脂肪肝を有している2型糖尿病患者の場合、2型糖尿病のない非アルコール性脂肪肝患者と比較して非アルコール性脂肪肝炎(80.2%vs.64.4%;p<0.001)および肝線維化の(40.3%vs.17.0%;p<0.001)有病率が高い。したがって、2型糖尿病のある非アルコール性脂肪肝患者のための治療剤の開発が必要であるのが実情である。2型糖尿病による肝損傷は2型糖尿病を有しない場合より予後が良くないため治療に困難があるが、本発明による組成物は2型糖尿病性肝損傷を治療することができる。
【0013】
前記組成物は、インスリン非依存的に肝損傷を予防、改善、または治療するものであり得る。本願実施形態でインスリン抵抗性を有する動物モデルを用いて本発明による組成物の肝損傷効果を確認してみた結果、肝損傷が顕著に改善され、よって、本発明による組成物はインスリン非依存的に肝損傷を改善および治療することを確認した。
【0014】
本発明による組成物は、肝損傷を有する対象に投与して、顕著に改善された肝損傷の治療効果を示す。前記肝損傷を有する対象は、下記(1)~(5)のうちの1種以上の特徴を有するものであり得る:
(1)血中ALT濃度が増加した状態、例えば、正常対照群の血中ALT濃度の1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上、2.5倍以上、2.6倍以上、2.7倍以上、2.8倍以上、2.9倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、または10倍以上である状態。
(2)血中AST濃度が増加した状態、例えば、正常対照群の血中AST濃度の1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上、2.5倍以上、2.6倍以上、2.7倍以上、2.8倍以上、2.9倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、または10倍以上である状態。
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度が減少した状態、例えば、正常対照群の盲腸内二次胆汁酸濃度の1倍未満、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、または0.1倍以下である状態。
(4)線維症マーカ遺伝子発現量が増加した状態、例えば、正常対照群の線維症マーカ遺伝子発現量の1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上、2.5倍以上、2.6倍以上、2.7倍以上、2.8倍以上、2.9倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、7.5倍以上、8倍以上、8.5倍以上、9倍以上、9.5倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、16倍以上、17倍以上、18倍以上、19倍以上、または20倍以上過発現された状態。前記線維症マーカ遺伝子は、Col1a1、Timp1、およびα-SMAからなる群より選択された1種以上のものであり得る。
(5)体重に対する肝重量比率が増加した状態、例えば、正常対照群の体重に対する肝重量比率の1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上、2.5倍以上、2.6倍以上、2.7倍以上、2.8倍以上、2.9倍以上、または3倍以上である状態。
【0015】
前記正常対照群は、肝損傷を有しない対照群を意味する。
【0016】
また、前記対象の肝損傷は、脂肪肝、肝炎、肝線維化、および肝硬変からなる群より選択された1種以上のものであり得る。前記肝損傷は、非アルコール性肝損傷であり得る。具体的に、前記肝炎は非アルコール性脂肪肝炎であり、前記脂肪肝は非アルコール性脂肪肝であり得る。前記非アルコール性脂肪肝は非肥満性非アルコール性脂肪肝、肥満性非アルコール性脂肪肝、または糖尿性非アルコール性脂肪肝であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0017】
本発明による組成物は糖尿病を有する対象に投与されるものであり、特に本発明による組成物はインスリン非依存的に肝損傷を予防、改善、または治療することができるので、2型糖尿病を有する対象に投与されるものであり得る。
【0018】
本願実施形態で2型糖尿病モデルを用いて本発明による組成物の肝損傷、例えば、非アルコール性脂肪肝治療効果を確認した結果、血中ALT濃度減少能、血中AST濃度減少能、体重に対する肝の比率減少能などの治療効果が、2型糖尿病を有しないモデルから示された治療効果に比べて顕著に優れており、これは本発明による組成物が2型糖尿病対象で特に優れた治療効果を有することを意味する。
【0019】
特に、2型糖尿病を有する対象での治療効果がさらに優れており、インスリン抵抗性差がルミノコッカスによる肝損傷改善または治療と関連する感受性差に重要な役割を果たした。
【0020】
本発明による組成物は、肝損傷を有する対象に投与されて下記(1)~(5)のうちの1種以上の特徴を発生させるものであり得る:
(1)血中ALT濃度の減少、例えば、前記組成物を投与した場合の血中ALT濃度が、前記組成物を投与していない対照群の血中ALT濃度100%を基準にして100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、80%以下、70%以下、65%以下、60%以下、59%以下、58%以下、50%以下、45%以下、または40%以下(一例として、
図1bで、MCDとルミノコッカスフェシス菌株を併用投与する場合、MCD単独投与した場合に比べて39.21%のALT数値を示した。)
(2)血中AST濃度の減少、例えば、前記組成物を投与した場合の血中AST濃度が、前記組成物を投与していない対照群の血中AST濃度100%を基準にして100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、80%以下、70%以下、65%以下、64%以下、63%以下、62%以下、61%以下、60%以下、または59%以下(一例として、
図1bで、MCDとルミノコッカスフェシス菌株を併用投与する場合、MCD単独投与した場合に比べて57.52%のAST数値を示した。)
(3)二次胆汁酸(例えば、盲腸(cecal)内二次胆汁酸)濃度の増加、例えば、前記組成物を投与した場合の二次胆汁酸濃度が、前記組成物を投与していない対照群の二次胆汁酸の濃度100%を基準にして100%超過、105%以上、110%以上、115%以上、120%以上、125%以上、130%以上、135%以上、140%以上、145%以上、150%以上、160%以上、170%以上、180%以上、190%以上、または200%以上(一例として、
図1iで、MCDとルミノコッカスフェシス菌株を併用投与する場合、MCD単独投与した場合に比べて217.50%のLCA濃度、143.37%のDCA濃度を示した。)
(4)線維性遺伝子発現量の減少、例えば、前記組成物を投与した場合の線維症関連遺伝子、例えば、Col1a1、Timp1、α-SMAのうちの1種以上の発現量が、前記組成物を投与していない対照群の発現量100%を基準にして100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、80%以下、78%以下、75%以下、70%以下、65%以下、または60%以下(一例として、
図1hで、MCDとルミノコッカスフェシス菌株を併用投与する場合、MCD単独投与した場合に比べて90.60%のCol1a1発現量、77.17%のα-SMA発現量、58.50%のTimp1発現量を示した。)
(5)体重に対する肝重量比率の減少、例えば、前記組成物を投与した場合の体重に対する肝重量比率が、前記組成物を投与していない対照群の体重に対する肝重量比率の100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、89%以下、88%以下、または87%以下(一例として、
図1gで、MCDとルミノコッカスフェシス菌株を併用投与する場合、MCD単独投与した場合に比べて86.27%のliver ratioを示した。)
【0021】
前記組成物を投与していない対照群は、同一な疾病を有するが、本発明による組成物を投与していない非投与群を意味する。
【0022】
前記二次胆汁酸は、deoxycholic acid(DCA)、lithocholic acid(LCA)、およびursodeoxycholic acid(UDCA)からなる群より選択された1種以上のものであり得る。
【0023】
前記線維性遺伝子は、Col1a1、Timp1、およびα-SMAからなる群より選択された1種以上のものであり得る。
【0024】
本発明による組成物は、肝損傷を有しインスリン抵抗性を有する対象(subject)、例えば、2型糖尿病性肝損傷を有する対象(subject)に投与されて下記(1)~(3)のうちの1種以上の特徴を発生させるものであり得る:
(1)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上、2.5倍以上、または2.6倍以上のALT数値減少率、
(2)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.1倍以上、または2.2倍以上のAST数値減少率、
(3)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、または10倍以上の体重に対する肝重量比率(liver ratio)の減少率。
【0025】
本発明で用語‘有効成分’とは、単独で目的とする活性を示すかまたはそれ自体は活性のない担体と共に活性を示すことができる成分を意味する。
【0026】
本発明で用語‘予防’は、疾病、障害または疾患の発病を抑制するか遅延を意味する。疾病、障害または疾患の発病が予定された期間の間抑制されるか遅延された場合、予防は完全なことと見なすことができる。
【0027】
本発明で用語‘治療’とは、特定疾病、障害および/または疾患または疾患による症状を部分的にまたは完全に軽減、改善、緩和、阻害または遅延させ、重症度を減少させるか、一つ以上の症状または特徴の発生を減少させることを意味する。
【0028】
本発明の薬学的組成物は、前記有効成分以外に追加的に同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上追加的に含むことができる。
【0029】
また、本発明による薬学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明確に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体を用いて製剤化することによって単位用量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造できる。本発明で用語‘担体’は、細胞または組織内への化合物の付加を容易にする化合物を意味し、用語‘薬学的に許容される’とは、生理学的に許容され人間に投与される時、通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似の反応を起こさない組成物をいう。
【0030】
前記薬学的に許容される担体は製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。
【0031】
また、本発明による薬学的組成物は、前記成分以外に、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などの添加剤を追加的に含むことができる。本発明において、前記薬学的組成物に含まれる添加剤の含量は特に限定されるのではなく、通常の製剤化に使用される含量範囲内で適切に調節できる。
【0032】
また、本発明による薬学的組成物は、経口用製剤に剤形化できる。前記経口用製剤の非制限的な例としては、錠剤、トローチ剤(troches)、ロゼンジ(lozenge)、水溶性懸濁液、油性懸濁液、調製粉末、顆粒、エマルジョン、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤などが挙げられる。本発明による薬学的組成物を経口投与用として製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンなどのような結合剤;ジカルシウムホスフェートなどのような賦形剤;とうもろこしデンプンまたはさつまいもデンプンなどのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムなどを使用することができ、甘味剤、芳香剤、シロップ剤なども使用することができる。さらに、カプセル剤の場合には前記で言及した物質以外にも脂肪油のような液体担体などを追加的に使用することができる。
【0033】
本発明で用語‘賦形剤’は、治療剤でない、ある物質を意味し、治療剤の伝達のための担体または媒体として用いられるかまたは薬学的組成物に追加されるものを意味する。これによって、取り扱いおよび貯蔵特性を改善するかまたは組成物の単位投与量形成を許容および促進させるようになる。
【0034】
本発明による薬学的組成物はそれぞれの使用目的に合うように通常の方法によって液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、エキス剤、エマルジョン、シロップ剤、エアゾールなどの経口剤形、滅菌注射用水の注射剤など多様な形態に剤形化して使用することができ、経口投与するか静脈内、腹腔内、皮下、直腸、局所投与などを含む多様な経路を通じて投与できる。本発明で用語‘経口投与’は、活性物質が消化されるように製造された物質、即ち、吸収のための胃腸器官に投与されることを意味する。
【0035】
本発明による薬学的組成物の好ましい投与量は患者の状態および体重、年齢、性別、健康状態、食餌体質特異性、製剤の性質、疾病の程度、組成物の投与時間、投与方法、投与期間または間隔、排泄率および薬物形態によってその範囲が多様であり、この分野通常の技術者によって適切に選択できる。
【0036】
本発明で用語‘薬学的組成物の有効投与量’は、特定の症状を治療するために十分な活性成分の組成物の量を意味する。これは薬学的組成物の製剤化方法、投与方式、投与時間および/または投与経路などによって多様になり、薬学的組成物の投与で達成しようとする反応の種類と程度、投与対象になる個体の種類、年齢、体重、一般的な健康状態、病気の症状や程度、性別、食餌、排泄、該当個体に同時または一時に共に使用される薬物その他の組成物の成分などをはじめとする様々な因子および医薬分野でよく知られた類似因子によって多様になり得るが、当該技術分野で通常の知識を有する者は目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定して処方することができる。
【0037】
本発明による薬学的組成物の投与は一日に1回投与でき、数回に分けて投与されてもよい。前記組成物は個別治療剤として投与するか他の治療剤と併用して投与でき、従来の治療剤とは順次的または同時に投与できる。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大効果を得ることができる量で投与することができる。
【0038】
例えば、本発明による組成物は、体重1kg当り0.001~10,000mg、0.001~5,000mg、0.001~1,000mg、0.001~500mg、0.001~300mg、0.001~100mg、0.001~50mg、0.001~30mg、0.001~10mg、0.001~5mg、0.001~1mg、0.001~0.5mg、0.001~0.1mg、0.001~0.05mg、0.001~0.01mg、0.01~10,000mg、0.01~5,000mg、0.01~1,000mg、0.01~500mg、0.01~300mg、0.01~100mg、0.01~50mg、0.01~30mg、0.01~10mg、0.01~5mg、0.01~1mg、0.01~0.5mg、0.01~0.1mg、0.01~0.05mg、0.1~10,000mg、0.1~5,000mg、0.1~1,000mg、0.1~500mg、0.1~300mg、0.1~200mg、0.1~100mg、0.1~50mg、0.1~30mg、0.1~10mg、0.1~5mg、0.1~1mg、0.1~0.5mg、1~10,000mg、1~5,000mg、1~1,000mg、1~500mg、1~300mg、1~200mg、1~100mg、1~50mg、1~10mg、1~5mg、10~10,000mg、10~5,000mg、10~1,000mg、10~500mg、10~300mg、10~200mg、10~100mg、10~50mg、10~40mg、10~30mg、10~20mg、100~10,000mg、100~5,000mg、100~1,000mg、100~500mg、100~300mg、または100~200mgの一日投与量で投与できるが、これに制限されるわけではない。一例として、本発明による組成物の一日投与量は、成人患者の経口投与基準にして0.001~10g/1日、0.001~5g/1日、0.01~10g/1日、または0.01~5g/1日であり得る。また、一日総投与量を分割して必要によって連続的または非連続的に投与することができる。
【0039】
本発明による組成物は、凍結乾燥保護剤を追加的に含むものであり得る。前記凍結乾燥保護剤は、単糖類、二糖類、多糖類、炭水化物、無機塩類、アミノ酸、ショ糖、リン酸カルシウム、アルギニン、塩化ナトリウム、果糖、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、およびトレハロースからなる群より選択された1種以上を含むものであり得る。
【0040】
前記ショ糖は100~300g/L、100~250g/L、100~200g/L、150~300g/L、150~250g/L、150~200g/L、200~300g/L、または200~250g/Lで凍結乾燥保護剤に添加でき、一例として200g/Lで添加できる。
【0041】
前記リン酸カルシウムは5~20g/L、5~15g/L、5~12g/L、5~11g/L、7~20g/L、7~15g/L、7~12g/L、7~11g/L、10~20g/L、10~15g/L、10~12g/L、または10~11g/Lの濃度で凍結乾燥保護剤に添加でき、一例として10.5g/Lで添加できる。
【0042】
前記アミノ酸は1~10g/L、1~8g/L、1~6g/L、1~5g/L、3~10g/L、3~8g/L、3~6g/L、3~5g/L、4~10g/L、4~8g/L、4~6g/L、または4~5g/Lの濃度で凍結乾燥保護剤に添加でき、一例として4g/Lで添加できる。
【0043】
前記塩化ナトリウムは0.1~5g/L、0.1~3g/L、0.1~1g/L、0.5~5g/L、0.5~3g/L、または0.5~1g/Lの濃度で凍結乾燥保護剤に添加でき、一例として0.8g/Lで添加できる。
【0044】
本発明によるルミノコッカス属菌株は、ルミノコッカスフェシス(Ruminococcus faecis)であり得る。一例として、前記ルミノコッカス属菌株は、寄託番号KCTC no.5757を有するルミノコッカスフェシスであり得る。本明細書で前記寄託番号KCTC no.5757を有するルミノコッカスフェシスは、ルミノコッカスフェシスKBL1028と表記できる。
【0045】
前記菌株は、炭素源の濃度5~30%(w/v)、窒素源の濃度50~90%(w/v)、ミネラルの濃度5~15%(w/v)、およびアミノ酸の濃度0.1~10%(w/v)である培養培地で培養8時間、培養9時間、培養10時間、培養11時間、培養12時間、培養13時間、または培養14時間以後に成長を持続するものであり得る。
【0046】
前記菌株は、表3による組成を有するFMK1028培地で培養効率に優れたものであり得る。例えば、前記菌株は、表3による組成を有するFMK1028培地で培養後吸光度が、YBHI培地、GAM培地、MRS培地、BL培地、およびRCM培地からなる群より選択された1種以上で培養後吸光度より高いことを特徴とすることができる。一例として、前記菌株は、表3による組成を有するFMK1028培地で14時間培養後単位体積当り生菌数が、YBHI培地で培養した場合の10倍、50倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、550倍、または600倍以上であり得る。
【0047】
本発明のまた他の一例は、炭素源および窒素源を含むルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養用組成物に関するものである。前記炭素源は、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、糖蜜、およびガラクトースからなる群より選択された1種以上のものであり得る。前記窒素源は、酵母抽出物(yeast extract)、大豆ペプトン(soy peptone)、脱脂乳、トリプトン、カザミノ酸(Casamino acids)、ジャガイモペプトン(potato peptone)、エンドウ豆ペプトン(pea peptone)、小麦ペプトン(wheat peptone)、ソラマメペプトン(broadbean peptone)、パパイック大豆ペプトン(papaic soy peptone)、およびルピンペプトン(lupin peptone)からなる群より選択された1種以上のものであり得る。
【0048】
本発明のまた他の一例は、炭素源および窒素源を含む、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養用組成物に関するものである。前記炭素源は5~30%(w/v)の濃度であり、前記窒素源は50~90%(w/v)の濃度であり得る。前記ルミノコッカス属菌株は前述の通りである。
【0049】
前記炭素源は、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、糖蜜、およびガラクトースからなる群より選択された1種以上を含むものであり得る。
【0050】
前記窒素源は、酵母抽出物(yeast extract)、大豆ペプトン(soy peptone)、脱脂乳、トリプトン、カザミノ酸(Casamino acids)、ジャガイモペプトン(potato peptone)、エンドウ豆ペプトン(pea peptone)、小麦ペプトン(wheat peptone)、ソラマメペプトン(broadbean peptone)、パパイック大豆ペプトン(papaic soy peptone)、およびルピンペプトン(lupin peptone)からなる群より選択された1種以上を含むものであり得る。
【0051】
前記ルミノコッカス属菌株の培養用組成物はルミノコッカス属菌株の培養8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、または14時間以後の成長を促進するものであり得る。
【0052】
前記ルミノコッカス属菌株の培養用組成物は、ミネラル、アミノ酸、ビタミン、核酸、および無機塩類からなる群より選択された1種以上を追加的に含むものであり得る。
【0053】
前記ミネラルは、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、および硫酸マンガンからなる群より選択された1種以上を含むものであり得る。
【0054】
前記アミノ酸は、L-システイン(L-cystein)、L-ロイシン(L-leucine)、L-イソロイシン(L-isoleucine)、L-バリン(L-Valine)、L-トリプトファン(l-tryptophan)、L-トレオニン(L-threonine)、L-フェニルアラニン(L-phenylalanine)、およびL-メチオニン(L-methionine)を含むものであり得る。
【0055】
前記炭素源の濃度は5~30%(w/v)、前記窒素源の濃度は50~90%(w/v)、前記ミネラルの濃度は5~15%(w/v)、および前記アミノ酸の濃度は0.1~10%(w/v)であり得る。
【0056】
本発明のまた他の一例は、本発明によるルミノコッカス属菌株の培養用組成物に、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を接種して培養する段階を含む、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養方法に関するものである。
【0057】
前記培養方法は、前記菌株接種8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、または14時間以後の成長を促進することであり得る。
【0058】
前記培養は静置培養、流加式培養、または回分式培養であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0059】
本発明のまた他の一例は、本発明による肝損傷予防、改善または治療用組成物をこれを必要とする対象(subject)に投与する段階を含む、肝損傷予防、改善または治療方法に関するものである。前記組成物は、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を含むものであり得る。前記肝損傷予防、改善または治療用組成物、前記ルミノコッカス属菌株などは前述の通りである。前記対象(subject)は肝損傷を有する対象であり、前記肝損傷を有する対象は前述の通りである。例えば、前記肝損傷を有する対象はインスリン抵抗性を有する対象であってもよく、一例として糖尿病を有する対象、具体的に2型糖尿病を有する対象であってもよい。
【発明の効果】
【0060】
本発明の予防または治療用薬学的組成物は、肝損傷、例えば非アルコール性脂肪肝疾患の治療に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1a】MCD食餌によって誘導された肝損傷動物モデルでルミノコッカスフェシス投与による肝損傷治療効果を調べてみるための実験過程を示した図である。
【
図1b】MCD食餌によって誘導された肝損傷動物モデルでルミノコッカスフェシス投与によるALTおよびAST測定結果を示した図である。
【
図1c】
図1c~1eは、MCD食餌によって誘導された肝損傷の組織学的深刻性がルミノコッカスフェシスを食べさせたマウスで有意に改善されたことを示した図である。
図1c:ルミノコッカスフェシス投与による肝組織が緩和されたことをH&E(上)、Sirius red(下)染色法を通じて示した図である。
【
図1d】
図1c~1eは、MCD食餌によって誘導された肝損傷の組織学的深刻性がルミノコッカスフェシスを食べさせたマウスで有意に改善されたことを示した図である。
図1d:ルミノコッカスフェシス投与で病理学的に緩和されたものをNAFLD activity scoreを用いて定量した図である。
【
図1e】
図1c~1eは、MCD食餌によって誘導された肝損傷の組織学的深刻性がルミノコッカスフェシスを食べさせたマウスで有意に改善されたことを示した図である。
図1e:ルミノコッカスフェシス投与によって緩和された肝中のコラーゲン分布を示した図である。
【
図1f】MCD食餌による体重変化を示した図である。
【
図1g】ルミノコッカスフェシス投与時(MCD+R.faecis)対照群投与マウス(MCD)と比較して体重内肝比率(liver ratio)を示した図である。
【
図1h】ルミノコッカスフェシス投与によって線維症発生および増殖のマーカが緩和されたことを示した図である。
【
図1i】MCD食餌によって減少した二次胆汁酸(DCAおよびLCA)の局所レベルがルミノコッカスフェシス処理によって増加したことを示した図である。
【
図2a】CDAHFD食餌によって誘導された肝損傷動物モデルでルミノコッカスフェシス投与による肝損傷治療効果を調べてみるための実験過程を示した図である。
【
図2b】CDAHFD食餌によって誘導された肝損傷動物モデルでルミノコッカスフェシス投与によってALTレベルが減少したことを示した図である。
【
図2c】CDAHFD食餌によって誘導された肝損傷動物モデルでルミノコッカスフェシス投与によってASTレベルが減少したことを示した図である。
【
図2d】CDAHFD食餌によって誘導された肝損傷動物モデルでルミノコッカスフェシス投与による体重に対する肝重量の比率を示した図である。
【
図3a】遺伝的レプチン-欠乏動物モデルでルミノコッカスフェシス投与による肝損傷治療効果を調べてみるための実験過程を示した図である。
【
図3b】遺伝的レプチン-欠乏動物モデルでルミノコッカスフェシス投与によってALTレベルが減少したことを示した図である。
【
図3c】遺伝的レプチン-欠乏動物モデルでルミノコッカスフェシス投与によってASTレベルが減少したことを示した図である。
【
図3d】遺伝的レプチン-欠乏動物モデルでルミノコッカスフェシス投与によって体重に対する肝重量の比率が減少したことを示した図である。
【
図3e】遺伝的レプチン-欠乏動物モデルでipGTTによって測定された血清空腹インスリン数値およびインスリン抵抗性を示した図である。
【
図4a】肝線維化疾患群でルミノコッカスブロミが有意に減少した状態であることを示した図である。
【
図4b】ルミノコッカスブロミ投与による体重内肝比率(liver ratio)数値を示した図である。
【
図4c】ルミノコッカスブロミ投与によるALT数値を示した図である。
【
図5a】YBHI培地、RCM培地、BL培地、MRS培地、GAM培地、またはFMK1028培地でルミノコッカスフェシスの培養性と細胞の形態を比較した結果を示した図である。
【
図5b】ルミノコッカスフェシスの成長曲線と単位体積当り生菌数を示した図である。
【
図5c】醗酵機で培養されたルミノコッカスフェシスの成長曲線と生菌数を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0063】
実施例1:実験動物を用いた肝損傷治療試験
(1)実験動物の準備
ルミノコッカスフェシス(Ruminococcus faecis、KCTC no.5757[JCM no.15917])を韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC、Jeollabuk-do、Republic of Korea)から分譲を受けてYBHI培地で嫌気性(anaerobic)条件下で培養し、24時間後に採取し、PBS(+0.5%システイン)を使用して2回洗浄した後、経口で給食した。実験動物として6週齢の雄C57BL/6Nマウス(Orient Bio、Gyeonggi-do、Republic of Korea)を大学ガイドラインによってソウル大学校の一般動物施設で飼育し、全ての動物実験はソウル大学校実験動物運営委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を受けた。
【0064】
MCD食餌によって誘導されたNAFLD動物モデル実験を行うために、マウスを標準食餌(standard chow diet)に適応させてから1週間後、ルミノコッカスフェシスの腸内定着のためにストレプトマイシン(streptomycin)を1g/L濃度で飲料水に処理して1週間給水した。以後5週間、マウスにメチオニンおよびコリン欠乏L-アミノ酸食餌(methionine and choline deficient L-amino acid diet、MCD)(Research diet、New Brunswick、NJ、USA;Cat.no.:A02082002B)を供給すると同時に、200μLのPBSに10
9CFUが入るように懸濁したルミノコッカスフェシスまたは対照群PBS(sham)のうちの一つを200μLずつ毎日経口投与した(
図1a)。5週間の投与以後、マウスを安楽死させて生化学的分析、解剖学的分析、肝線維症発生および増殖のマーカ発現確認、および胆汁酸分析を行った。
【0065】
(2)生花化学的分析
血清アラニンアミノ基転移酵素(alanine aminotransferase、ALT)およびアスパラギン酸アミノ酸転移酵素(aspartate aminotransferase、AST)数値はFuji DRI-CHEM 3500i生化学分析機(FujiFilm、Tokyo、Japan)で測定した。ALTおよびAST測定結果を
図1bに示した。
【0066】
(3)解剖学的分析
安楽死後、肝試料を切除し10%ホルマリン溶液(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)に固定させた。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)およびシリウスレッド染色(Sirius red staining)は、ログワンバイオ融合研究財団(LOGONE Bio Convergence Research Foundation、Seoul、Republic of Korea)で行われた。染色された全体スライドイメージはPannoramic Viewer(3DHISTECH、Budapest、Hungary)を使用して分析された。コラーゲン比例面積(collagen proportionate area)を計算するために、グループ当り8個のイメージを無作為に選択しImageJソフトウェア(NIH、Bethesda、MD、USA;http://imagej.nih.gov/ij)を使用して分析した。
【0067】
また、体重に対する肝の比率は、5週間のルミノコッカスフェシスを投与したマウスの体重と肝の重量を測定した後、体重に対する肝の重量比率を計算した。マウスの体重測定結果を
図1fに示し、体重に対する肝の重量比率を
図1gに示した。
【0068】
(4)肝線維症発生および増殖のマーカ発現確認
肝サンプルの総RNAをeasy-spinTM Total RNA Extractionキット(iNtRON Biotechnology、Gyeonggi-do、Republic of Korea)を用いて抽出し、High Capacity RNA-to-cDNAキット(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を用いてcDNAに逆転写した。定量的PCRは、SYBRTM Green qPCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)およびApplied BiosystemsTM QuantStudioTM 6 Flex qPCRシステム(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を用いて行った。使用したプライマー配列は以下の通りであった。
【0069】
【0070】
(5)胆汁酸分析
マウスの盲腸を抽出した後、10倍の体積比に該当する80%メタノールを入れて混合した。胆汁酸抽出のために超音波紛砕機(sonicator)で3分間試料を破砕した後、4℃条件で24時間保管した。その後、遠心分離を通じて獲得した上清液に100%メタノール1mLを追加しbead beating機械を用いて15frequency、30分条件で2回目抽出を行った。胆汁酸が溶解されたメタノールは30℃、24時間条件で真空乾燥を通じて液体状物質を全て蒸発させ、残り固形物質を55%メタノールを用いて溶かした。抽出された胆汁酸を専用チューブに移して入れた後、Micromass(登録商標)Q-ToF質量分析機(Waters Technologies、Milford、MA、USA)を用いて測定した。
【0071】
(6)実験結果
ルミノコッカスフェシス投与時(MCD+R.faecis)、対照群投与マウス(MCD)と比較してALTおよびAST数値が減少した(
図1b)。
【0072】
解剖学的および組織学的分析結果で、MCD食餌によって誘導されたNAFLDの組織学的深刻性がルミノコッカスフェシスを食べさせたマウスで有意に改善された(
図1c~
図1e)。MCD食餌は既存の文献に知られた通り急激な体重低下を起こし、ルミノコッカスフェシス投与は体重に影響を与えなかった(
図1f)。しかし、ルミノコッカスフェシス投与時(MCD+R.faecis)、対照群投与マウス(MCD)と比較して体重内肝比率(liver ratio)が減少した(
図1g)。
【0073】
肝線維症発生および増殖のマーカ発現確認結果、肝線維症発生および増殖のマーカがルミノコッカスフェシス給食マウスで顕著に緩和された(Timp1、p=0.0018;α-SMA、p=0.0330)(
図1h)。
【0074】
生化学的および組織学的肝損傷マーカの変化と並行して、二次胆汁酸(DCAおよびLCA)の局所レベルもMCD食餌によって減少し、ルミノコッカスフェシス処理によって増加された(
図1i)。
【0075】
このような結果は、ルミノコッカスフェシスMCDダイエットマウスモデルで肝線維症に対する保護効果があるのを示す。
【0076】
実施例2:動物モデルを用いた肝損傷治療試験
非アルコール性脂肪肝による肝損傷に対するルミノコッカスフェシスの緩和効果を確認するために、体重減少を防止しインスリン抵抗性を示さないcholine-deficient、L-amino acid-defined、high-fat diet(CDAHFD)食餌マウスモデルを使用した。
【0077】
コリン(choline)は肝細胞中のトリグリセリド(triglyceride)をVLDLの形態に蓄積し排出させる役割を果たすが、CDAHFD食餌にはコリンが欠如していて高脂肪食餌によるトリグリセリドが肝細胞内に累積されて脂肪肝が誘導され、MCDモデルとは異なり、体重低下が発生せず肝線維化(fibrosis)がさらにひどく誘導される食餌モデルである。しかし、CDAHFDモデルはインスリン抵抗性が誘導されないと知られている。
【0078】
具体的に、
図2aに示されているように、C57BL/6Nマウスを標準食餌(standard chow diet)に適応してから1週間後、ルミノコッカスフェシスの腸内定着のために1週間ストレプトマイシン(streptomycin)(1g/L)を飲用水に溶かして食べさせた。その後8週間、コリン(choline)が欠如し脂肪60%の高脂肪が含まれているCDAHFD(choline-deficient、L-amino acid-defined、high-fat diet)飼料を食べさせ、200μLのPBSに10
9CFUが添加されるように懸濁したルミノコッカスフェシスまたは対照群PBS(sham)のうちの一つを200μLずつ毎日経口投与した。8週間の投与以後、マウスを安楽死させて血清生化学的分析および解剖学的分析を行った。生化学的分析としてALTおよびAST分析は前記実施例1と同様な方法で行い、体重に対する肝比率を前記実施例1と同様な方法で測定した。
【0079】
図2b~
図2dに示されているように、ルミノコッカスフェシス投与によってALTおよびASTレベルが減少し(
図2bおよび
図2c)、但し、体重に対する肝比率はルミノコッカスフェシス投与によって有意な差を示さなかった(
図2d)。これは、ルミノコッカスフェシスがCDAHFD飼料で誘導された非アルコール性脂肪肝損傷に対して治療効果を有することを意味し、但し、体重に対する肝比率が有意な差を示さないことは肝中に蓄積された脂肪が有意に減らなかったのを意味する。
【0080】
実施例3:遺伝的レプチン-欠乏モデルを用いた肝損傷治療試験
インスリン抵抗性を有する場合にもルミノコッカスフェシスによる非アルコール性脂肪肝治療効果が発生するかどうかを確認するために、インスリン抵抗性を有する自発的な糖尿病および脂肪肝を発生させる遺伝的レプチン欠乏(genetic leptin-deficient)(db/db)モデルを使用してルミノコッカスフェシスの非アルコール性脂肪肝治療効果を確認してみた。db/dbモデルの対照群としてdb/mを使用し、db alleleのheterozygoteに該当する。
【0081】
db/dbモデルはレプチン受容体(leptin receptor)に突然変異を有するモデルであって、肥満、インスリン抵抗性が誘導されて高血糖が示され、2型糖尿モデルとして多く使用される。db/dbモデルの場合には肝内脂肪症(steatosis)が速く誘導されると知られているが、脂肪肝炎(NASH)、肝線維化(fibrosis)は簡単に誘導されないと知られている。
【0082】
具体的に、
図3aに示されているように、db/dbモデルマウスを標準食餌(standard chow diet)に適応させてから1週間後、ルミノコッカスフェシスの腸内定着のために1週間ストレプトマイシン(streptomycin)(1g/L)を飲用水に溶かして処理した。その後5週間、普通食餌を給与すると同時に、200μLのPBSに10
9CFUが入るように懸濁したルミノコッカスフェシスまたは対照群PBS(sham)のうちの一つを200μLずつ毎日経口投与した。5週間の投与以後、マウスを安楽死させて生化学的分析および解剖学的分析を行った。生化学的分析としてALTおよびAST分析は前記実施例1と実質的に同様な方法で行い、体重に対する肝比率を前記実施例1と実質的に同様な方法で測定した。
【0083】
db/dbマウスでipGTTによって測定された血清空腹インスリン数値は、Ultra Sensitive Mouse Insulin ELISAキット(Crystal Chem、Elk Grove Village、IL、USA)を使用して測定した。インスリン抵抗性を確認するための腹腔糖負荷検査はルミノコッカスフェシス投与3週目の時に行われ、16時間の水以外の食餌制限後、グリコース溶液を体重1kg当り1gグリコースが投与されるように腹腔に投与した。その後、定められた時間にAccu-Chek(登録商標)Performa血糖測定器(Roche Diagnostics、Risch-Rotkreuz、Switzerland)を用いて血糖を測定した。
【0084】
図3b~
図3dに示されているように、ルミノコッカスフェシス投与によってALTおよびASTレベルが減少し(
図3bおよび
図3c)、特に体重に対する肝比率も有意に減少した(
図3d)。それにもかかわらず、
図3eに示されているように、db/dbマウスでipGTTによって測定された血清空腹インスリン数値およびインスリン抵抗性はルミノコッカスフェシス処理によって影響を受けなかった。
【0085】
ルミノコッカスフェシスはインスリン抵抗性を有するdb/dbモデルでも非アルコール性脂肪肝治療効果を示し、このような結果はルミノコッカスフェシスがインスリン非依存的方式にNAFLD治療効果を有することを意味し、2型糖尿病患者の非アルコール性脂肪肝治療にも効果的に使用できるのを意味する。
【0086】
特に、インスリン抵抗性差による治療反応感受性を確認するために、db/dbモデルとそれに対する比較モデルとしてCDAHFDモデルを選択した。その理由は、CDAHFDモデルの場合、インスリン抵抗性なく非アルコール性脂肪肝疾患が誘導されるので、インスリン抵抗性が誘導されるdb/dbモデルと比較してインスリン抵抗性による治療効果を比較する時に適するためである。MCDモデルの場合、急激な体重低下をはじめとする身体機能の低下を引き起こすため、インスリン抵抗性差による治療反応の感受性を確認するための対照群として活用するには適しなかった。
【0087】
図3bに示されているように、ルミノコッカスフェシス投与によってALT数値が約42.98%減少し、
図3cに示されているようにAST数値が約41.00%減少し、
図3dに示されているように体重に対する肝重量比率が約9.43%減少した。これは、
図2bのCDAHFDモデルでALT数値が約16.40%減少したことに比べて約2.6倍以上のALT数値減少率を示し、
図2cのCDAHFDモデルでAST数値が約18.18%減少したことに比べて約2.2倍以上のAST数値減少率を示し、
図2dのCDAHFDモデルで体重に対する肝重量比率が有意に減少しなかったがインスリン抵抗性を有する動物モデルでは体重に対する肝重量比率が有意に減少した点を考慮してみた時、ルミノコッカスフェシスはインスリン抵抗性の差、または2型糖尿病発病有無の差による肝損傷改善または治療と関連する感受性差を有し、2型糖尿病対象で顕著に優れた治療効果を示すのを意味する。
【0088】
実施例4:ルミノコッカスブロミ(Ruminococcus bromii)の線維症治療効果
(1)非アルコール性脂肪肝疾患群で有意に減少したルミノコッカスブロミ
生体検査を通じてNAFLDを有していると立証された171人の対象者と31人のNAFLDを有しない対象者が含まれ、組織学的に(histologically)NAFLDを分類した。大便サンプルのDNAはQIAamp DNA Stool Mini Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を用いて抽出した。16S rRNA遺伝子のV4領域をターゲットにしたシークエンシング(sequencing)はMiSeq system(Illumina、San Diego、CA、USA)を用いて行い、シークエンシングデータの追加的な分析はQIIME
TMパイプライン(v1.8.0;http://qiime.org/)を用いて行った。
図4aに示されているように、ルミノコッカスブロミは肝線維化疾患群で有意に減少したことが確認された。
【0089】
(2)ルミノコッカスブロミの非アルコール性脂肪肝治療効果検証
その次に、非アルコール性脂肪肝疾患群で有意に減少したことが確認されたルミノコッカスブロミが非アルコール性脂肪肝治療効果を有するかどうかを確認してみた。
【0090】
具体的に、ルミノコッカスブロミ(Ruminococcus bromii、ATCC no.27255)をATCC(American Type Culture Collection、Manassas、VA、USA)から分譲を受けてmodified PYG培地で嫌気性(anaerobic)条件下で培養し、24時間後に採取し、PBS(+0.5%システイン)を使用して2回洗浄した後、経口で給食した。
【0091】
C57BL/6Nマウスを標準食餌(standard chow diet)で1週間環境適応後、ルミノコッカスブロミの腸内定着のために1週間ストレプトマイシン(streptomycin)(1g/L)を飲用水に溶かして食べさせた。その後5週間、マウスにメチオニンおよびコリン欠乏L-アミノ酸食餌(methionine and choline deficient L-amino acid diet、MCD)(Researchdiet、New Brunswick、NJ、USA;Cat.no.:A02082002B)を食べさせ、200μLのPBSに109CFUが入るように懸濁したルミノコッカスブロミまたは対照群PBS(sham)のうちの一つを200μLずつ毎日経口投与した。5週間の投与以後、マウスを安楽死させて生化学的分析を行った。生化学的分析としてALTおよびAST分析は前記実施例1と実質的に同様な方法で行い、体重に対する肝比率を前記実施例1と実質的に同様な方法で測定した。
【0092】
しかし、
図4b~
図4cに示されているように、ルミノコッカスブロミ投与時(MCD+R.bromii)、対照群投与マウス(MCD)と比較して体重内肝比率(liver ratio)とALT数値が全て有意な変化が示されなかった。
【0093】
ルミノコッカスブロミは非アルコール性脂肪肝治療効果を示さなかったが、これは非アルコール性脂肪肝疾患群で減少したことが確認された全ての菌株が非アルコール性脂肪肝治療効果を有するのではないことが分かり、特にルミノコッカスフェシスと同一な属(genus)に属する菌株であっても全て非アルコール性脂肪肝治療効果を有するのではなく、したがって非アルコール性治療効果はルミノコッカスフェシスの固有の効果であることが分かった。また、ルミノコッカスブロミは非アルコール性脂肪肝疾患群で有意に減少したが、これを投与しても非アルコール性脂肪肝治療効果を示さなくて、非アルコール性脂肪肝で減少した菌株の投与が治療に連結されると予測するのは難しかった。
【0094】
実施例5:ルミノコッカスフェシスの培養および生産
(1)最適培地探索
ルミノコッカスフェシス(寄託番号KCTC no.5757)の最適培地探索のために市販中のBactoTM brain heart infusion(BHI) Medium(BD、Franklin Lakes、NJ、USA)を含むYBHI培地と、市販中のDifcoTM Reinforced Clostridial Medium(RCM培地)(BD、Franklin Lakes、NJ、USA)、MB cell BL broth(BL培地)(Kisan Bio、Seoul、Repulic of Korea)、DifcoTM Lactobacilli MRS broth(MRS培地)(BD、Franklin Lakes、NJ、USA)、MB cell Gifu anaerobic medium(GAM培地)(Kisan Bio、Seoul、Repulic of Korea)と本発明で製造したFMK1028培地で培養性を確認した。最適培地選別のための培養性は、培養後吸光度増加とpH減少、そして顕微鏡検鏡で確認された細胞均質性を基準にして評価した。YBHI培地とFMK1028培地の組成はそれぞれ下記表2と表3に示した。
【0095】
【0096】
【0097】
最適培地探索に使用された培地は、全て滅菌前pHを6.8に調整した。YBHI培地で14時間培養されたルミノコッカスフェシス前培養液をそれぞれYBHI培地、RCM培地、BL培地、MRS培地、GAM培地、またはFMK1028培地に最終体積比で1%になるようにそれぞれ接種した。接種後嫌気条件、37℃で静置培養(standing culture)し、14時間後に培養液の600nmでの吸光度とpHを測定し細胞の形態を観察した。吸光度はOrion Aquamate 8000分光器(Thermo Scientific、Waltham、MA、USA)を使用して測定し、pHはSevenCompact pH/Ion meter(Mettler Toledo、Columbus、OH、USA)で測定した。細胞の形態は、Optinity KB-320光学顕微鏡(Korea Labtech、Gyeonggi-do、Republic of Korea)で観察した。
【0098】
図5aは、各培地でルミノコッカスフェシスの培養性と細胞の形態を比較した結果である。
図5aに示されているように、14時間培養後培養液の吸光度はFMK1028培地で最も高く、その次はYBHI培地、GAM培地、MRS培地、BL培地、RCM培地の順に高かった。培養後培養液のpHはFMK1028培地で最も低く、その次はBL培地、YBHI培地、MRS培地、RCM培地、GAM培地の順に低かった。顕微鏡で観察した結果は、FMK1028とGAM培地に由来した細胞の均質性が最も優れ、その次はYBHI培地で培養された細胞が優れた。
【0099】
総合的に、ルミノコッカスフェシスの培養性は、本発明で製造したFMK1028培地で最も優れた。
【0100】
(2)最適培地成長曲線および生菌数
ルミノコッカスフェシスの培養性が最も優れたFMK1028培地を用いて成長曲線と生菌数を測定した。対照群としてYBHI培地を使用した。
【0101】
YBHI培地で14時間培養されたルミノコッカスフェシス前培養液をYBHI培地とFMK1028培地に体積比で1%になるようにそれぞれ接種した。接種後嫌気条件、37℃で静置培養(standing culture)を14時間行い、培養液の600nmでの吸光度を測定して成長曲線で示した。
【0102】
生菌数測定のためにそれぞれの培地に接種されたルミノコッカスフェシスを14時間培養後、GAM培地を用いて十倍数連続希釈法(10-fold serial dilution)によって希釈し、その希釈液0.1mLを取ってGAM培地寒天(agar)平板に塗抹した後、嫌気条件、37℃で24時間培養した。培養後、30-300個程度のコロニーが形成された寒天平板のコロニーを計数して培養液の単位体積当り生菌数(CFU/mL)に換算した。測定された成長曲線と単位体積当り生菌数は
図5bに示した。
図5bに示されているように、ルミノコッカスフェシスは、対照群のYBHI培地で培養8時間後静止相に到達して吸光度2.55を示した。FMK1028培地で培養後8時間までYHBIと類似の成長曲線を示したが、培養後14時間まで持続成長して吸光度6.18を示した。14時間培養後単位体積当り生菌数を測定した結果、YBHI培地よりFMK1028培地で600倍高い生菌数が確認された。
【0103】
(3)醗酵機を用いた大量培養および原末化
ルミノコッカスフェシスの大量培養および原末化のために醗酵機を用いて培養細胞の回収時点を確認した。ルミノコッカスフェシス前培養液16mLを8LのFMK1028培地に接種後、醗酵機(Fermentec、Chungcheongbuk-do、Republic of Korea)を稼動して嫌気条件、37℃、250rpm条件で培養した。培養時間による成長曲線と生菌数を測定して
図5cに示した。
図5cは、醗酵機を稼動して培養したルミノコッカスフェシスの成長曲線と生菌数を示した結果である。
【0104】
図5cに示されているように、ルミノコッカスフェシスは、8時間培養後、静止相に到達して吸光度8.25と生菌数5.15×10
9CFU/mLを示した。静止相である培養後11時間には吸光度が減少して7.25を示し、生菌数も小幅減少して4.95×10
9CFU/mLを示した。
図5bで提示された静置培養結果とは異なり、醗酵機を用いた培養結果、静止相に到達する時間が8時間に短縮され、フラスコ回分培養時の14時間培養結果と比較時、静止相での吸光度(6.18→8.25)および生菌数(1.2×10
9CFU/mL→5.15×10
9CFU/mL)測定結果も向上したのを確認することができた。
【0105】
前記結果を根拠にして醗酵機を用いてルミノコッカスフェシスを大量培養した。培養後8時間に2236R高速遠心分離機(Labogene、LillerФd、Denmark)を用いて7,000rpm、40分条件で培養された細胞を回収した。回収された細胞は300mLビーカーに入れマグネチックバーと撹拌機を用いて凍結保護剤と重量比率1:1で20分間混合した。使用された凍結保護剤の組成は下記表4に示した。凍結保護剤と混合された細胞は-80℃超低温冷凍庫で24時間凍結させた後、72時間凍結乾燥後に細密粉砕して粉末化させた。
【0106】
【0107】
最終的に、醗酵機を用いた大量培養および原末化過程で測定された生菌数は下記表5に示した。
【0108】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を含む、肝損傷の予防、改善、または治療用薬学的または食品組成物。
【請求項2】
前記肝損傷は下記(1)~(5)のうちの1種以上の特性を有することである、請求項1に記載の組成物:
(1)血中ALT濃度が増加する、
(2)血中AST濃度が増加する、
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度が減少する、
(4)線維性遺伝子発現量が増加する、および
(5)体重に対する肝重量比率が増加する。
【請求項3】
前記肝損傷は、脂肪肝、肝炎、肝線維化、および肝硬変からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記非アルコール性脂肪肝は、糖尿病性非アルコール性脂肪肝である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、下記(1)~(5)のうちの1種以上を特徴とするものである、請求項1に記載の組成物:
(1)血中ALT濃度の減少、
(2)血中AST濃度の減少、
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度の増加、
(4)線維性遺伝子発現量の減少、および
(5)体重に対する肝重量比率の減少。
【請求項7】
前記二次胆汁酸は、deoxycholic acid(DCA)、lithocholic acid(LCA)、およびursodeoxycholic acid(UDCA)からなる群より選択された1種以上である
か、または前記線維性遺伝子は、Col1a1、Timp1、およびα-SMAからなる群より選択された1種以上である、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、インスリン非依存的に肝損傷を改善または治療するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、インスリン抵抗性を有する対象に投与されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、インスリン抵抗性を有する対象に投与されて下記(1)~(3)のうちの1種以上を特徴とするものである、請求項1に記載の組成物:
(1)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて高い、血中ALT数値減少率、
(2)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて高い、血中AST数値減少率、
(3)インスリン抵抗性を有しない対照群に比べて高い、体重に対する肝重量比率(liver ratio)の減少率。
【請求項11】
前記ルミノコッカス属菌株は、ルミノコッカスフェシス(Ruminococcus faecis)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記菌株は、炭素源の濃度5~30%(w/v)、窒素源の濃度50~90%(w/v)、ミネラルの濃度5~15%(w/v)、およびアミノ酸の濃度0.1~10%(w/v)である培養培地で培養8時間以後に成長を持続するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、凍結乾燥保護剤を追加的に含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記凍結乾燥保護剤は、ショ糖、リン酸カルシウム、アルギニン、塩化ナトリウム、果糖、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、およびトレハロースからなる群より選択された1種以上を含むものである、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
5~30%(w/v)濃度の炭素源および50~90%(w/v)濃度の窒素源を含む、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養用組成物であって、
前記炭素源は、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、糖蜜、およびガラクトースからなる群より選択された1種以上であり、
前記窒素源は、酵母抽出物(yeast extract)、大豆ペプトン(soy peptone)、脱脂乳、トリプトン、カザミノ酸(Casamino acids)、ジャガイモペプトン(potato peptone)、エンドウ豆ペプトン(pea peptone)、小麦ペプトン(wheat peptone)、ソラマメペプトン(broadbean peptone)、パパイック大豆ペプトン(papaic soy peptone)、およびルピンペプトン(lupin peptone)からなる群より選択された1種以上であ
り、
前記組成物は、ルミノコッカス属菌株の培養8時間以後の成長を促進するものである、培養用組成物。
【請求項16】
前記組成物は、ミネラル、アミノ酸、ビタミン、核酸、および無機塩類からなる群より選択された1種以上を追加的に含むものである、請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項
15~16のいずれか一項に記載の培養用組成物に、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株を接種して培養する段階を含む、ルミノコッカス属(Ruminococcus spp.)菌株の培養方法。
【請求項18】
前記培養方法は、前記菌株接種8時間以後の成長を促進することである、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記培養は、静置培養、流加式培養、または回分式培養である、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
対象における肝損傷
の予防、改善、または治療
のための医薬の製造における請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
前記対象は、下記(1)~(5)のうちの1種以上の特性を有するものである、請求項
20に記載の
使用:
(1)血中ALT濃度が増加した状態、
(2)血中AST濃度が増加した状態、
(3)盲腸内二次胆汁酸濃度が減少した状態、
(4)線維性マーカ遺伝子が過発現された状態、
(5)体重に対する肝重量比率が増加した状態。
【請求項22】
前記対象は、インスリン抵抗性を有するものである、請求項
20に記載の
使用。
【請求項23】
前記対象は、2型糖尿病を有するものである、請求項
20に記載の
使用。
【国際調査報告】