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特表2022-542968抗原特異的T細胞バンク及びそれを製造する方法並びにそれを治療に使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】抗原特異的T細胞バンク及びそれを製造する方法並びにそれを治療に使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20220930BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220930BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220930BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220930BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220930BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220930BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220930BHJP
   C40B 40/02 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C12Q1/68
A61K35/17 Z
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 121
C12Q1/02
C12N5/0783
C12N1/00 T
C12Q1/04
C40B40/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506160
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 US2020044080
(87)【国際公開番号】W WO2021021937
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/880,006
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/887,802
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/054,161
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ ヴァルデス、フアン フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】リーン、アン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ツァンノウ、イフィゲネイア
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B065AA94X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BA21
4B065BA25
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087BB44
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】抗原特異的細胞バンク及びそれを製造する方法、及びそれを治療の為に使用する方法を提供する。
【解決手段】本開示の実施形態には、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクの構築に使用するための適切なドナーを同定および選択する方法;抗原特異的T細胞株のドナーミニバンク;ならびにそのようなミニバンクの複数から成るドナーバンクが含まれる。本開示は、そのようなドナーミニバンク又はドナーバンクからの少なくとも1つの抗原特異的T細胞株を患者(例えば、移植手順において移植ドナーから移植物を受け取った人)に投与することを含む疾患又は状態を治療する方法、並びに特定の患者に対してドナーミニバンク内の最良のHLA適合抗原特異的T細胞株を選択するための方法を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクの構築において使用するのに適したドナーを同定する方法であって、前記方法は、
(a)第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者と比較する工程;
(b)工程(a)における比較に基づいて、前記第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のHLAアレルが適合する前記第1のドナープール由来のドナーと定義される第1の最適合ドナーを決定する工程;
(c)前記第1のドナーミニバンクに含めるために前記第1の最適合ドナーを選択する工程;
(d)前記第1のドナープールから前記第1の最適合ドナーを除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーを除く前記第1のドナープール由来の前記第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程;
(e)前記第1の複数の見込み患者から、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く前記第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得る工程;および
(f)工程(d)および(e)に従って、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者を用いて、工程(a)~(e)をさらに1回以上反復する工程であって、ここで、工程(c)に従って追加の最適合ドナーが選択されるたびに、工程(d)に従ってそれぞれのドナープールからその追加の最適合ドナーが除去され;次の最適合ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、工程(e)に従ってそれぞれの複数の見込み患者から次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者が除去され;それにより、前記第1のドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数が、前記方法の各サイクル後に1ずつ増加し、それにより、前記選択された最適合ドナーとのHLA適合に従って前記方法の各サイクル後に前記患者集団内の前記複数の見込み患者の数が減少し;前記第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージが前記複数の見込み患者に残るまで、または前記ドナープールにドナーが残らなくなるまで、工程(a)~(e)を反復する、工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程(a)~(e)が、前記第1の見込み患者集団の5%以下が前記複数の見込み患者に残るまで工程(f)に従って繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のドナーミニバンクが、10人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する1つ以上の抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のドナーミニバンクが、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する1つ以上の抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を提供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)および(e)からの前記2つ以上のアレルが、少なくとも2つのHLAクラスIアレル;少なくとも2つのHLAクラスIIアレル;または少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のドナープールが、少なくとも10人のドナーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の見込み患者集団が、少なくとも100人の患者を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の見込み患者集団が、全世界もしくは全米の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の65歳以上の個体の同種異系HSCT集団;および/または全世界もしくは全米の5歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の見込み患者集団が、米国の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクで構成されたドナーバンクの構築において使用するのに適したドナーを同定する方法であって、前記方法は、
A)請求項1に記載の方法に示された全工程を行い、それにより、第1のミニバンクを構築する工程;および
B)請求項1に記載の方法に示されたように工程(a)~(f)の第2ラウンドを1回以上反復して、1つ以上の第2のミニバンクを構築する工程であって、ここで、前記方法の各第2ラウンドを開始する前に、前記方法は、
(i)新しいドナープールを作製する工程であって、前記新しいドナープールは、
ia.先の各サイクルの工程(d)に従って前記方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから除去された任意の最適合ドナーを差し引いた前記第1のドナープール;
ib.前記第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団;または
ic.iaとibとの組み合わせ
を含む、工程;および
(ii)先の各サイクルの工程(e)に従って前記方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから以前に除去されたすべての見込み患者を戻すことによって、前記第1の見込み患者集団から前記第1の複数の見込み患者を再構築する工程
を含む、方法。
【請求項11】
前記方法の各ラウンドについて、工程(f)に従って、前記第1の見込み患者集団の5%以下が前記複数の見込み患者に残るまで工程(a)~(e)を繰り返し、ゆえに、各ドナーミニバンクが、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する少なくとも1つの抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を前記1人以上の最適合ドナーの間に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各ドナーミニバンクが、10人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する少なくとも1つの抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を前記抗原特異的T細胞株の間に含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
各ドナーミニバンクが、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する少なくとも1つの抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を前記抗原特異的T細胞株の間に提供する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)および(e)からの前記2つ以上のアレルが、少なくとも2つのHLAクラスIアレル;少なくとも2つのHLAクラスIIアレル;または少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のドナープールが、少なくとも10人のドナーを含む、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の見込み患者集団が、少なくとも100人の患者を含む、請求項10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の見込み患者集団が、全世界もしくは全米の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の65歳以上の個体の同種異系HSCT集団;および/または全世界もしくは全米の5歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項10~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の見込み患者集団が、米国の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項10~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ドナーバンクに含まれる各ドナーから血液を収集する工程または前記ドナーバンクに含まれる各ドナーから収集された血液を手に入れる工程をさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ドナーバンクに含まれる各ドナーから単核球(MNC)を収集する工程または前記ドナーバンクに含まれる各ドナーから収集されたMNCを手に入れる工程をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記MNCが、末梢血単核球(PBMC)を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記MNCを単離する工程または単離された前記MNCを手に入れる工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記PBMCを単離する工程または単離された前記PBMCを手に入れる工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記単離が、フィコール勾配または密度勾配によって行われる、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞を培養する工程または前記細胞を凍結保存する工程をさらに含む、請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
培養中の前記細胞を好適な培養条件下で1つ以上の抗原と接触させて、抗原特異的T細胞を刺激し、拡大する工程をさらに含み、ここで、必要に応じて、前記1つ以上の抗原は、(i)1つ以上のウイルス抗原、(ii)1つ以上の腫瘍関連抗原;または(ii)(i)と(ii)との組み合わせを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法であって、前記方法は、
(a)第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを第1の複数の各見込み患者と比較する工程;
(b)工程(a)における比較に基づいて、前記第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のアレルが適合する第1のドナープール由来のドナーと定義される第1の最適合ドナーを決定する工程;
(c)前記第1のドナーミニバンクに含めるために前記第1の最適合ドナーを選択する工程;
(d)前記第1のドナープールから前記第1の最適合ドナーを除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーを除く前記第1のドナープール由来の前記第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程;
(e)前記第1の複数の見込み患者から、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く前記第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得る工程;
(f)工程(d)および(e)に従って、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者を用いて、工程(a)~(e)をさらに1回以上反復する工程であって、ここで、工程(c)に従って追加の最適合ドナーが選択されるたびに、その最適合ドナーが、工程(d)に従ってそれぞれのドナープールから除去され;次の最適合ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、工程(e)に従ってそれぞれの複数の見込み患者から次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者が除去され;それにより、前記ドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数が、前記方法の各サイクル後に1ずつ増加し、それにより、前記選択された最適合ドナーとのHLA適合に従って前記方法の各サイクル後に前記患者集団内の前記複数の見込み患者の数が減少し;前記第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージが前記複数の見込み患者に残るまで、または前記ドナープールにドナーが残らなくなるまで、工程(a)~(e)を反復する、工程;
(g)前記ドナーミニバンクに含まれるそれぞれの各ドナーから得られた血液からMNCを単離するか、または前記血液から単離されたMNCを手に入れる工程;
(h)前記MNCを培養する工程;
(i)培養中の前記MNCを1つ以上の抗原または1つ以上の抗原由来の1つ以上のエピトープと好適な培養条件下で接触させて、前記それぞれの各ドナーのMNC由来の抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を刺激し、拡大し;それにより、複数の抗原特異的T細胞株を作製する工程であって、前記抗原特異的T細胞株の各々は、それぞれの各ドナーのMNCに由来する抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を含み、工程(g)~(i)の前記MNCは、必要に応じてPBMCである、工程;および
(j)必要に応じて、前記複数の抗原特異的T細胞株を凍結保存する工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記方法の各ラウンドについて、工程(f)に従って、前記第1の見込み患者集団の5%以下が前記複数の見込み患者に残るまで工程(a)~(e)を繰り返し、ゆえに、各ドナーミニバンクが、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する少なくとも1つの同種異系抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を前記1人以上の最適合ドナーの間に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ドナーミニバンクが、10人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する1つ以上の同種異系抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を前記抗原特異的T細胞株の間に含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記ドナーミニバンクが、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み、前記第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて前記患者のHLAタイプに適合する1つ以上の同種異系抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を前記抗原特異的T細胞株の間に含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項31】
工程(b)および(e)からの前記2つ以上のアレルが、少なくとも2つのHLAクラスIアレル;少なくとも2つのHLAクラスIIアレル;または少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含む、請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のドナープールが、少なくとも10人のドナーを含む、請求項27~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の見込み患者集団が、少なくとも100人の患者を含む、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の見込み患者集団が、全世界もしくは全米の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の65歳以上の個体の同種異系HSCT集団;および/または全世界もしくは全米の5歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の見込み患者集団が、米国の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記培養工程が、気体透過性の培養表面を備える容器において行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記容器が、気体透過性の部分を備える注入バッグ、または剛性容器である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記容器が、GRexバイオリアクターである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記PBMCを1つ以上のサイトカインの存在下において培養する工程を含む、請求項27~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記サイトカインは、IL4、IL7、またはIL4およびIL7を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記サイトカインは、IL4およびIL7を含むが、IL2を含まない、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記MNC、必要に応じてPBMCが、(i)ホールタンパク質、(ii)各抗原の一部もしくは配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックス、または(iii)(i)と(ii)との組み合わせの形態の1つ以上の抗原の存在下において培養される、請求項27~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記MNC、必要に応じてPBMCが、複数のペプミックスの存在下において培養され、各ペプミックスは、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含む、請求項27~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
各抗原が、腫瘍関連抗原である、請求項27~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの抗原が、ウイルス抗原であり、少なくとも1つの抗原が、腫瘍関連抗原である、請求項27~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
各抗原が、ウイルス抗原である、請求項27~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記MNC、必要に応じてPBMCを少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み、各ペプミックスは、抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含む、請求項27~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記MNC、必要に応じてPBMCを複数のペプミックスの存在下において培養する工程を含み、ここで、各ペプミックスは、前記複数のペプミックス内のその他の各ペプミックスによってカバーされる抗原とは異なる少なくとも1つの抗原をカバーし、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の異なる抗原が、前記複数のペプミックスによってカバーされる、請求項27~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも2つの異なるウイルス由来の少なくとも1つの抗原が、前記複数のペプミックスによってカバーされる、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルス抗原が、EBV、CMV、アデノウイルス、BK、JCウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、ムンプス、麻疹、ヒトメタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、メルケル細胞ウイルス、単純ヘルペスウイルス、HBV、HCV、HPV、HIV、HTLV1、HHV8および西ナイルウイルス、ジカウイルス、エボラから選択されるウイルスに由来する、請求項45~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つのペプミックスが、以下のウイルス:RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)の各々由来の抗原をカバーする、請求項45~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記インフルエンザ抗原が、インフルエンザA抗原であるNP1、MP1およびそれらの組み合わせから選択され;前記RSV抗原が、N、Fおよびそれらの組み合わせから選択され;前記hMPV抗原が、F、N、M2-1、Mおよびそれらの組み合わせから選択され;前記PIV抗原が、M、HN、N、Fおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
前記PBMCが、インフルエンザA抗原であるNP1およびMP1;RSV抗原であるNおよびF;hMPV抗原であるF、N、M2-1およびM;ならびにPIV抗原であるM、HN、NおよびFを網羅するペプミックスの存在下において培養される、請求項50~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1つのペプミックスが、以下の各ウイルスEBV、CMV、アデノウイルス、BK、HHV6の各々由来の抗原をカバーする、請求項45~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記EBV抗原が、LMP2、EBNA1、BZLF1およびそれらの組み合わせから選択され;前記CMV抗原が、IE1、pp65およびそれらの組み合わせから選択され;前記アデノウイルス抗原が、ヘキソン、ペントンおよびそれらの組み合わせから選択され;前記BKウイルス抗原が、VP1、ラージTおよびそれらの組み合わせから選択され;前記HHV6抗原が、U90、U11、U14およびそれらの組み合わせから選択される、請求項50または54に記載の方法。
【請求項56】
前記PBMCが、EBV抗原であるLMP2、EBNA1およびBZLF1;CMV抗原であるIE1およびpp65;アデノウイルス抗原であるヘキソンおよびペントン;BKウイルス抗原であるVP1およびラージT;ならびにHHV6抗原であるU90、U11およびU14を網羅するペプミックスの存在下において培養される、請求項50、54または55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
HBV由来の少なくとも1つの抗原が、前記複数のペプミックスによってカバーされる、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記HBV抗原が、HBVコア抗原、HBV表面抗原、またはHBVコア抗原およびHBV表面抗原である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
HHV8由来の少なくとも1つの抗原が、前記複数のペプミックスによってカバーされる、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記HHV8抗原が、LANA-1(ORF3);LANA-2(vIRF3、K10.5);vCYC(ORF72);RTA(ORF50);vFLIP(ORF71);Kaposin(ORF12、K12);gB(ORF8);MIR1(K3);SSB(ORF6);TS(ORF70)およびそれらの組み合わせから選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
コロナウイルス由来の少なくとも1つの抗原が、前記複数のペプミックスによってカバーされる、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記コロナウイルスが、α-コロナウイルス(α-CoV)である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記コロナウイルスが、β-コロナウイルス(β-CoV)である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記β-CoVが、SARS-CoV、SARS-CoV2、MERS-CoV、HCoV-HKU1およびHCoV-OC43から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV2である、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記SARS-CoV2抗原が、nsp1;nsp3;nsp4;nsp5;nsp6;nsp7a、nsp8、nsp10;nsp12;nsp13;nsp14;nsp15;およびnsp16からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記SARS-CoV2抗原が、スパイク(S);エンベロープタンパク質(E);マトリックスタンパク質(M);およびヌクレオカプシドタンパク質(N)からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
前記SARS-CoV2抗原が、SARS-CoV-2(AP3A);SARS-CoV-2(NS7);SARS-CoV-2(NS8);SARS-CoV-2(ORF10);SARS-CoV-2(ORF9B);およびSARS-CoV-2(Y14)からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む、請求項65~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記ペプミックスが、15merのペプチドを含む、請求項42~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記抗原を網羅する前記ペプミックス中のペプチドが、順に11アミノ酸重複する、請求項42~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記抗原特異的T細胞を拡大する工程をさらに含む、請求項27~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記抗原特異的T細胞を抗原特異的細胞傷害性について試験する工程をさらに含む、請求項27~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
請求項27~72のいずれか1項に記載の方法を介して作製される、抗原特異的T細胞株のミニバンク。
【請求項74】
請求項73に記載のミニバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含む、疾患または状態を処置する方法。
【請求項75】
前記患者への前記抗原特異的T細胞株の投与に対する唯一の基準が、前記患者が、前記抗原特異的T細胞株の製造において使用されるMNC、必要に応じてPBMCを単離してきたドナーと少なくとも2つのHLAアレルを共有していることである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記疾患が、ウイルス感染症である、請求項74または75に記載の方法。
【請求項77】
前記疾患が、癌である、請求項74または75に記載の方法。
【請求項78】
患者が、免疫無防備状態である、請求項74~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記患者が、前記疾患もしくは状態または別の疾患もしくは状態を処置するために前記患者が受けた処置に起因して免疫無防備状態である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記患者が、年齢に起因して免疫無防備状態である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記特許が、低年齢または高齢に起因して免疫無防備状態である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記状態が、免疫不全である、請求項74に記載の方法。
【請求項83】
前記免疫不全が、原発性免疫不全である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記患者が、移植治療を必要としている、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
請求項1~26のいずれか1項に記載の方法を介して選択された複数のドナーに由来する抗原特異的T細胞株のミニバンク。
【請求項86】
請求項1~26のいずれか1項に記載の方法を介して選択された複数のドナーに由来する複数のミニバンクを含む、抗原特異的T細胞株のバンク。
【請求項87】
移植手技において移植ドナーから移植材料を受け取った患者に同種異系T細胞治療において投与するために、第1の抗原特異的T細胞株を請求項73もしくは85に記載のミニバンクまたは請求項86に記載のバンクに含まれるミニバンクから選択する方法であって、前記方法は、
(a)前記患者のHLAタイプと前記移植ドナーのHLAタイプとを比較して、前記患者と前記移植ドナーとに共通している共有HLAアレルの第1セットを特定する工程;
(b)前記共有HLAアレルの第1セットを、請求項73または85に記載のミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーまたは請求項74に記載のバンクに含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーのHLAタイプと比較して、前記共有HLAアレルの第1セットと1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定する工程;
(c)工程(b)において特定されたHLAアレルの数に基づいて1次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、Xという任意数値スコアを割り当て;7つの共有アレルには、Xの7/8である数値スコアX1を割り当て;6つの共有アレルには、Xの6/8である数値スコアX2を割り当てるなどする、工程;
(d)前記患者のHLAタイプと、請求項73もしくは85に記載のミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するかまたは請求項86に記載のバンクに含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較して、前記患者とそれぞれの各T細胞株ドナーとに共通している共有HLAアレルの1つ以上の追加セットを特定する工程;
(e)T細胞株と前記患者との間で共通している工程(d)において特定された共有HLAアレルの数に基づいて、それぞれの各T細胞株に2次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、この請求項の工程(c)において定義されたXの50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、4)を割り当て;7つの共有アレルには、この請求項の工程(c)において定義されたX1の50%というスコア(すなわち、X=8である場合、3.5)を割り当て;6つの共有アレルには、この請求項の工程(c)において定義されたX2の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、3)を割り当てるなどする、工程;
(f)請求項73もしくは85に記載のミニバンク内または請求項86に記載のバンクに含まれるミニバンク内の各抗原特異的T細胞株に対して、前記1次スコアと前記2次スコアとを合算する工程;および
(g)工程(f)で最高スコアを有する抗原特異的T細胞株を前記患者への投与のために選択する工程
を含む、方法。
【請求項88】
前記移植材料が、幹細胞、実質臓器および/または骨髄を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
請求項87に記載の工程(g)において選択された前記第1の抗原特異的T細胞株を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項87または88に記載の方法。
【請求項90】
X=8である、請求項87に記載の方法。
【請求項91】
前記投与が、ウイルス感染症または腫瘍を処置するための投与である、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
前記投与が、移植前の原発性免疫不全に対する投与である、請求項89または90に記載の方法。
【請求項93】
第2の抗原特異的T細胞株を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項87~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株と同じミニバンクから選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株を得たミニバンクとは異なるミニバンクから選択される、請求項93または94に記載の方法。
【請求項96】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株以外の、前記ドナーバンクに残っているすべての抗原特異的T細胞株を用いて、請求項87に記載の方法を反復することによって選択される、請求項93~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクで構成されたドナーバンクを構築する方法であって、前記方法は、
A)請求項27に記載の方法に示された工程(a)~(j)を行い、それにより、第1のミニバンクを構築する工程;
B)請求項27に記載の方法に示されたように工程(a)~(j)の第2ラウンドを1回以上反復して、1つ以上の第2のミニバンクを構築する工程であって、ここで、前記方法の各第2ラウンドを開始する前に、前記方法は、
(1)新しいドナープールを作製する工程であって、前記新しいドナープールは、
a.先の各サイクルの工程(d)に従って前記方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから除去された任意の最適合ドナーを差し引いた前記第1のドナープール;
b.前記第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団;または
c.aとbとの組み合わせ
を含む、工程;および
(2)先の各サイクルの工程(e)に従って前記方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから以前に除去されたすべての見込み患者を戻すことによって、前記第1の見込み患者集団から前記第1の複数の見込み患者を再構築する工程
を含む、工程
を含み;
C)工程(g)~(j)は、必要に応じて、前記方法の各ラウンドの後に行われてもよいし、前記方法の工程A)の後の任意の時点において行われてもよい、
方法。
【請求項98】
前記培養が、気体透過性の培養表面を備える容器において行われる、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記容器が、気体透過性の部分を備える注入バッグ、または剛性容器である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記容器が、GRexバイオリアクターである、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
前記MNC、必要に応じてPBMCを1つ以上のサイトカインの存在下において培養する工程を含む、請求項97~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記サイトカインは、IL4、IL7、またはIL4およびIL7を含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記サイトカインは、IL4およびIL7を含むが、IL2を含まない、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記MNC、必要に応じてPBMCが、(i)ホールタンパク質、(ii)各抗原の一部もしくは配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックス、または(iii)(i)と(ii)との組み合わせの形態の1つ以上の抗原の存在下において培養される、請求項97~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記MNC、必要に応じてPBMCが、複数のペプミックスの存在下において培養され、各ペプミックスは、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含む、請求項97~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
各抗原が、腫瘍関連抗原である、請求項97~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
少なくとも1つの抗原が、ウイルス抗原であり、少なくとも1つの抗原が、腫瘍関連抗原である、請求項97~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
各抗原が、ウイルス抗原である、請求項97~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記MNC、必要に応じてPBMCを少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み、各ペプミックスは、抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含む、請求項97~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記MNC、必要に応じてPBMCを複数のペプミックスの存在下において培養する工程を含み、ここで、各ペプミックスは、前記複数のペプミックス内のその他の各ペプミックスによってカバーされる抗原とは異なる少なくとも1つの抗原をカバーし、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の異なる抗原が、前記複数のペプミックスによってカバーされる、請求項97~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
少なくとも2つの異なるウイルス由来の少なくとも1つの抗原が、前記複数のペプミックスによってカバーされる、請求項97~110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記ウイルス抗原が、EBV、CMV、アデノウイルス、BK、JCウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、ムンプス、麻疹、ヒトメタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、メルケル細胞ウイルス、単純ヘルペスウイルス、HBV、HCV、HPV、HIV、HTLV1、HHV8、ジカウイルス、エボラおよび西ナイルウイルスから選択されるウイルスに由来する、請求項97~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
少なくとも1つのペプミックスが、以下のウイルス:RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)の各々由来の抗原をカバーする、請求項107~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記インフルエンザ抗原が、インフルエンザA抗原であるNP1、MP1およびそれらの組み合わせから選択され;前記RSV抗原が、N、Fおよびそれらの組み合わせから選択され;前記hMPV抗原が、F、N、M2-1、Mおよびそれらの組み合わせから選択され;前記PIV抗原が、M、HN、N、Fおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
前記MNC、必要に応じてPBMCが、インフルエンザA抗原であるNP1およびMP1;RSV抗原であるNおよびF;hMPV抗原であるF、N、M2-1およびM;ならびにPIV抗原であるM、HN、NおよびFを網羅するペプミックスの存在下において培養される、請求項112~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
少なくとも1つのペプミックスが、以下のウイルスEBV、CMV、アデノウイルス、BK、HHV6の各々由来の抗原をカバーする、請求項107~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記EBV抗原が、LMP2、EBNA1、BZLF1およびそれらの組み合わせから選択され;前記CMV抗原が、IE1、pp65およびそれらの組み合わせから選択され;前記アデノウイルス抗原が、ヘキソン、ペントンおよびそれらの組み合わせから選択され;前記BKウイルス抗原が、VP1、ラージTおよびそれらの組み合わせから選択され;前記HHV6抗原が、U90、U11、U14およびそれらの組み合わせから選択される、請求項112または116に記載の方法。
【請求項118】
前記MNC、必要に応じてPBMCが、EBV抗原であるLMP2、EBNA1およびBZLF1;CMV抗原であるIE1およびpp65;アデノウイルス抗原であるヘキソンおよびペントン;BKウイルス抗原であるVP1およびラージT;ならびにHHV6抗原であるU90、U11およびU14を網羅するペプミックスの存在下において培養される、請求項112、116または117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
少なくとも1つの抗原が、HBVに由来する、請求項97~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記HBV抗原が、HBVコア抗原、HBV表面抗原、またはHBVコア抗原およびHBV表面抗原である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
少なくとも1つの抗原が、HHV8に由来する、請求項97~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
前記HHV8抗原が、LANA-1(ORF3);LANA-2(vIRF3、K10.5);vCYC(ORF72);RTA(ORF50);vFLIP(ORF71);Kaposin(ORF12、K12);gB(ORF8);MIR1(K3);SSB(ORF6);TS(ORF70)およびそれらの組み合わせから選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
少なくとも1つの抗原が、コロナウイルスに由来する、請求項97~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記コロナウイルスが、α-コロナウイルス(α-CoV)である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記コロナウイルスが、β-コロナウイルス(β-CoV)である、請求項123に記載の方法。
【請求項126】
前記β-CoVが、SARS-CoV、SARS-CoV2、MERS-CoV、HCoV-HKU1およびHCoV-OC43から選択される、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV2である、請求項123に記載の方法。
【請求項128】
前記SARS-CoV2抗原が、nsp1;nsp3;nsp4;nsp5;nsp6;nsp7a、nsp8、nsp10;nsp12;nsp13;nsp14;nsp15;およびnsp16からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記SARS-CoV2抗原が、スパイク(S);エンベロープタンパク質(E);マトリックスタンパク質(M);およびヌクレオカプシドタンパク質(N)からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む、請求項127または128に記載の方法。
【請求項130】
前記SARS-CoV2抗原が、SARS-CoV-2(AP3A);SARS-CoV-2(NS7);SARS-CoV-2(NS8);SARS-CoV-2(ORF10);SARS-CoV-2(ORF9B);およびSARS-CoV-2(Y14)からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む、請求項127~129のいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
前記ペプミックスが、15merのペプチドを含む、請求項104~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
前記抗原を網羅する前記ペプミックス中のペプチドが、順に11アミノ酸重複する、請求項104~132のいずれか1項に記載の方法。
【請求項133】
前記抗原特異的T細胞を拡大する工程をさらに含む、請求項97~132のいずれか1項に記載の方法。
【請求項134】
前記抗原特異的T細胞株を抗原特異的細胞傷害性について試験する工程をさらに含む、請求項97~133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクを含むドナーバンクであって、前記ドナーバンクは、請求項97~134のいずれか1項に記載の方法を介して作製される、ドナーバンク。
【請求項136】
疾患または状態を処置する方法であって、請求項135に記載のドナーバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項137】
前記患者への前記抗原特異的T細胞株の投与に対する唯一の基準が、前記患者が、少なくとも2つのHLAアレルを、前記T細胞株の製造において使用されるMNC、必要に応じてPBMCを単離してきたドナーと共有していることである、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記疾患が、ウイルス感染症である、請求項136または137に記載の方法。
【請求項139】
前記疾患が、癌である、請求項136または137に記載の方法。
【請求項140】
患者が、免疫無防備状態である、請求項136~139のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
前記患者が、前記疾患もしくは状態または別の疾患もしくは状態を処置するために前記患者が受けた処置に起因して免疫無防備状態である、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記患者が、年齢に起因して免疫無防備状態である、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
前記特許が、低年齢または高齢に起因して免疫無防備状態である、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記状態が、免疫不全である、請求項136に記載の方法。
【請求項145】
前記免疫不全が、原発性免疫不全である、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記患者が、移植治療を必要としている、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
移植手技において移植ドナーから移植材料を受け取った患者に同種異系T細胞治療において投与するために、第1の抗原特異的T細胞株を請求項135に記載のドナーバンクから選択する方法であって、前記方法は、
(a)前記患者のHLAタイプと前記移植ドナーのHLAタイプとを比較して、前記患者と前記移植ドナーとに共通している共有HLAアレルの第1セットを特定する工程;
(b)前記共有HLAアレルの第1セットを、請求項135に記載のドナーバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する前記各ドナーのHLAタイプと比較して、前記共有HLAアレルの第1セットと1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定する工程;
(c)工程(b)において特定されたHLAアレルの数に基づいて1次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、8というスコアを割り当て、7つの共有アレルには、7というスコアを割り当てるなどする、工程;
(d)前記患者のHLAタイプと、請求項135に記載のドナーバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較して、前記患者とそれぞれの各T細胞株ドナーとに共通している共有HLAアレルの1つ以上の追加セットを特定する工程;
(e)T細胞株と前記患者との間で共通している工程(d)において特定された共有HLAアレルの数に基づいて、それぞれの各T細胞株に2次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、8の50%、すなわち4というスコアを割り当て;7つの共有アレルには、7の50%、すなわち3.5というスコアを割り当てるなどする、工程;
(f)請求項135に記載のバンク内の各抗原特異的T細胞株に対して、前記1次スコアと前記2次スコアとを合算する工程;および
(g)工程(f)で最高スコアを有する第1の抗原特異的T細胞株を前記患者への投与のために選択する工程
を含む、方法。
【請求項148】
前記移植材料が、幹細胞、実質臓器および/または骨髄を含む、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
請求項123に記載の工程(g)において選択された第1の抗原特異的T細胞株を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項147または148に記載の方法。
【請求項150】
投与がGVHDをもたらさない、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記投与が、ウイルス感染症または腫瘍を処置するための投与である、請求項149または150に記載の方法。
【請求項152】
前記投与が、移植前の原発性免疫不全に対する投与である、請求項149または150に記載の方法。
【請求項153】
第2の抗原特異的T細胞株を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項149~152のいずれか1項に記載の方法。
【請求項154】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株と同じドナーバンクから選択される、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株とは異なるドナーミニバンクから選択される、請求項153または154に記載の方法。
【請求項156】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株以外の、前記ドナーバンク内の残りのすべてのT細胞株を用いて請求項123に記載の方法を反復することによって選択される、請求項153~155のいずれか1項に記載の方法。
【請求項157】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株が処置有効性を示した後に前記患者に投与される、請求項93~96および153~156のいずれか1項に記載の方法。
【請求項158】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株が処置有効性を示さなかった後に前記患者に投与される、請求項93~96および153~156のいずれか1項に記載の方法。
【請求項159】
前記処置有効性が、ウイルス感染症に対するものである、請求項157または158に記載の方法。
【請求項160】
前記処置有効性が、(i)感染のウイルス血症の消失、(ii)感染のウイルス尿症の消失、および/または(iii)前記患者由来のサンプル中のウイルス量の消失に基づいて計測され、ここで、前記サンプルは、必要に応じて、前記抗原特異的T細胞株の投与後の、前記患者由来の組織サンプル、前記患者由来の体液サンプル、前記患者由来の脳脊髄液(CSF)、前記患者由来のBAL、前記患者由来の便、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記処置有効性が、前記患者の末梢血中の検出可能なウイルス量をモニタリングすることによって計測される、請求項159または160のいずれか1項に記載の方法。
【請求項162】
前記処置有効性が、(i)肉眼的血尿の消失;CTCAE-PROまたは患者および/もしくは臨床医が報告するアウトカムを調べる類似の評価ツールによって計測される出血性膀胱炎症状の低減を含む、請求項159~161のいずれか1項に記載の方法。
【請求項163】
前記処置有効性が、癌に対するものである、請求項157または158に記載の方法。
【請求項164】
前記処置有効性が、前記抗原特異的T細胞株の投与後の腫瘍サイズの減少に基づいて計測される、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
前記処置有効性が、前記患者の末梢血/血清中の検出可能な疾患負荷および/もしくは腫瘍溶解のマーカーをモニタリングすること、画像診断を介して腫瘍の状態をモニタリングすること、またはそれらの組み合わせによって計測される、請求項163または164のいずれか1項に記載の方法。
【請求項166】
前記第2の抗原特異的T細胞株が、前記第1の抗原特異的T細胞株が有害臨床反応をもたらした後に前記患者に投与される、請求項93~96および153~165のいずれか1項に記載の方法。
【請求項167】
前記有害臨床反応が、移植片対宿主病(GVHD)、サイトカイン放出症候群などの炎症反応を含む、請求項166に記載の方法。
【請求項168】
炎症反応が、(i)発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、疲労、悪心、嘔吐、関節痛から選択される全身症状;(ii)低血圧を含む血管症状;(iii)不整脈を含む心臓症状;(iv)呼吸困難;(v)腎不全および尿毒症を含む腎症状;ならびに(vi)凝固障害および血球貪食性リンパ組織球症様症候群を含む検査症状から選択される1つ以上の症状または徴候を観察することによって検出される、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
抗原特異的T細胞の第1のドナーミニバンクの構築において使用するのに適したドナーを同定する方法であって、前記方法は、
(a)第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを決定するかまたは決定されている、工程;
(b)第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者のHLAタイプを決定するかまたは決定されている、工程;
(c)第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプと、第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者のHLAタイプとを比較する工程;
(d)工程(c)における比較に基づいて、前記第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のアレルが適合する前記第1のドナープール由来のドナーと定義される第1の最適合ドナーを決定する工程;
(e)第1のドナーミニバンクに含めるために前記第1の最適合ドナーを選択する工程;
(f)前記第1のドナープールから前記第1の最適合ドナーを除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーを除く前記第1のドナープール由来の前記第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程;
(g)前記第1の複数の見込み患者から、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く前記第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得る工程;および
(h)工程(f)および(g)に従って、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者を用いて、工程(c)~(g)をさらに1回以上反復する工程であって、ここで、追加の最適合ドナーが、工程(e)に従って選択されるたびに、その最適合ドナーが、工程(f)に従ってそれぞれのドナープールから除去され;次の最適合ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、工程(g)に従って次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者がそれぞれの複数の見込み患者から除去され;それにより、前記第1のドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数が、前記方法の各サイクル後に1ずつ増加し、それにより、前記選択された最適合ドナーとのHLA適合に従って前記方法の各サイクル後に前記患者集団内の前記複数の見込み患者の数が減少し;前記第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージが前記複数の見込み患者に残るまで、または前記ドナープールにドナーが残らなくなるまで、工程(c)~(g)を反復する、工程
を含む、方法。
【請求項170】
抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法であって、前記方法は、
(a)第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを決定するかまたは決定されている、工程;
(b)第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者のHLAタイプを決定するかまたは決定されている、工程;
(c)前記第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを前記第1の複数の各見込み患者と比較する工程;
(d)工程(c)における比較に基づいて、前記第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のアレルが適合する前記第1のドナープール由来のドナーと定義される第1の最適合ドナーを決定する工程;
(e)前記第1のドナーミニバンクに含めるために前記第1の最適合ドナーを選択する工程;
(f)前記第1のドナープールから前記第1の最適合ドナーを除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーを除く前記第1のドナープール由来の前記第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程;
(g)前記第1の複数の見込み患者から、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去し、それにより、前記第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く前記第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得る工程;
(h)工程(f)および(g)に従って、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者を用いて、工程(c)~(g)をさらに1回以上反復する工程であって、ここで、追加の最適合ドナーが、工程(e)に従って選択されるたびに、その最適合ドナーが、工程(f)に従ってそれぞれのドナープールから除去され;次の最適合ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、工程(g)に従って次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者がそれぞれの複数の見込み患者から除去され;それにより、前記ドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数が、前記方法の各サイクル後に1ずつ増加し、それにより、前記選択された最適合ドナーとのHLA適合に従って前記方法の各サイクル後に前記患者集団内の前記複数の見込み患者の数が減少し;前記第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージが前記複数の見込み患者に残るまで、または前記ドナープールにドナーが残らなくなるまで、工程(c)~(g)を反復する、工程;
(i)前記ドナーミニバンクに含まれるそれぞれの各ドナーから得られた血液からMNCを単離するか、または前記血液から単離されたMNCを手に入れる工程;
(j)前記MNCを培養する工程;
(k)培養中の前記MNCを1つ以上の抗原または1つ以上の抗原由来の1つ以上のエピトープと好適な培養条件下で接触させて、前記それぞれの各ドナーのMNC由来の抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を刺激し、拡大し;それにより、複数の抗原特異的T細胞株を作製する工程であって、前記抗原特異的T細胞株の各々は、それぞれの各ドナーのMNCに由来する抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を含み、工程(i)~(k)の前記MNCは、必要に応じてPBMCである、工程;および
(l)必要に応じて、前記複数の抗原特異的T細胞株を凍結保存する工程
を含む、方法。
【請求項171】
比較される前記HLAタイプが、HLAアレルであるHLA A、HLA B、DRB1およびDQB1を含む、請求項87~96および147~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項172】
比較される前記HLAタイプが、HLAアレルであるHLA A、HLA B、DRB1およびDQB1からなる、請求項87~96および147~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項173】
前記方法が、まず第1に、前記ミニバンク内の各細胞株を前記患者のHLAタイプと比較し、次いで第2に、前記ミニバンク内の各細胞株を前記移植ドナーのHLAタイプと比較し、適合する細胞株の順位階層を確立するために用いられる総スコアを生成する、請求項87~96、147~168および171~172のいずれか1項に記載の方法。
【請求項174】
細胞株が、前記患者および前記移植ドナーと2つ以上のHLAアレルにおいて適合する場合、前記細胞株は、患者への注入に好適であると見なされる、請求項87~96、147~168および171~173のいずれか1項に記載の方法。
【請求項175】
移植手技において移植ドナー由来の臓器移植材料を受け取った患者に同種異系T細胞治療において投与するために、ドナーミニバンクから第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法であって、前記方法は、
(a)前記移植ドナーのHLAタイプと、前記ドナーバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較して、前記移植ドナーと1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定する工程;
(b)工程(a)において特定された共有HLAアレルの数に基づいて1次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、Xという任意数値スコアを割り当て;7つの共有アレルには、Xの7/8である数値スコアX1を割り当て;6つの共有アレルには、Xの6/8である数値スコアX2を割り当て、5つの共有アレルには、Xの5/8である数値スコアX3を割り当て、4つの共有アレルには、Xの4/8である数値スコアX4を割り当て、3つの共有アレルには、Xの3/8である数値スコアX5を割り当て、2つの共有アレルには、Xの2/8である数値スコアX6を割り当て、1つの共有アレルには、Xの1/8である数値スコアX7を割り当てる、工程;
(c)前記患者のHLAタイプと、前記ドナーバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較して、前記患者と1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定する工程;
(d)工程(c)において特定された共有HLAアレルの数に基づいて2次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、Xという任意数値スコアを割り当て;7つの共有アレルには、Xの7/8である数値スコアX1を割り当て;6つの共有アレルには、Xの6/8である数値スコアX2を割り当て、5つの共有アレルには、Xの5/8である数値スコアX3を割り当て、4つの共有アレルには、Xの4/8である数値スコアX4を割り当て、3つの共有アレルには、Xの3/8である数値スコアX5を割り当て、2つの共有アレルには、Xの2/8である数値スコアX6を割り当て、1つの共有アレルには、Xの1/8である数値スコアX7を割り当て;前記2次数値スコアは、必要に応じて前記1次スコアより低く重み付けされる、工程
を含む、方法。
【請求項176】
前記実質臓器が腎臓であり、前記2次数値スコアには前記1次数値スコアの25%の重みが付けられる、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
移植手技において移植ドナーから骨髄移植を受けた患者に同種異系T細胞治療において投与するために、第1の抗原特異的T細胞株を請求項61もしくは73に記載のミニバンクまたは請求項74に記載のバンクに含まれるミニバンクから選択する方法であって、前記方法は、
(a)前記患者のHLAタイプと、前記移植ドナーのHLAタイプとを比較して、前記患者と前記移植ドナーとに共通している共有HLAアレルの第1セットを特定する工程;
(b)前記共有HLAアレルの第1セットを、請求項61または73に記載のミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーまたは請求項74に記載のバンクに含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーのHLAタイプと比較して、前記共有HLAアレルの第1セットと1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定する工程;
(c)工程(b)において特定されたHLAアレルの数に基づいて1次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、Xという任意数値スコアを割り当て;7つの共有アレルには、Xの7/8である数値スコアX1を割り当て;6つの共有アレルには、Xの6/8である数値スコアX2を割り当てるなどする、工程;
(d)前記患者のHLAタイプと、請求項61もしくは73に記載のミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するかまたは請求項74に記載のバンクに含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較して、前記患者とそれぞれの各T細胞株ドナーとに共通している共有HLAアレルの1つ以上の追加セットを特定する工程;
(e)T細胞株と前記患者との間で共通している工程(d)において特定された共有HLAアレルの数に基づいて、それぞれの各T細胞株に2次数値スコアを割り当てる工程であって、ここで、8つの共有アレルの完全一致には、Xの任意数値スコアを割り当て;7つの共有アレルには、Xの7/8である数値スコアX1を割り当て;6つの共有アレルには、Xの6/8である数値スコアX2を割り当て、5つの共有アレルには、Xの5/8である数値スコアX3を割り当て、4つの共有アレルには、Xの4/8である数値スコアX4を割り当て、3つの共有アレルには、Xの3/8である数値スコアX5を割り当て、2つの共有アレルには、Xの2/8である数値スコアX6を割り当て、1つの共有アレルには、Xの1/8である数値スコアX7を割り当て;前記2次数値スコアは、前記1次スコアより低く重み付けされる、工程
(f)請求項61もしくは73に記載のミニバンク内または請求項74に記載のバンクに含まれるミニバンク内の各抗原特異的T細胞株に対して、前記1次スコアと前記2次スコアとを合算する工程;および
(g)工程(f)で最高スコアを有する抗原特異的T細胞株を前記患者への投与のために選択する工程
を含む、方法。
【請求項178】
前記2次数値スコアに前記1次数値スコアの50%の重みが付けられる、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
複数の異なるドナーに由来する複数の抗原特異的T細胞株を含むミニバンクであって、ここで、各ドナーのHLAタイプは、少なくとも1つのHLAアレルにおいて異なり、各ドナーのHLAタイプは、前記複数の異なるドナーが集合的に、見込み患者集団内の可能な限り多くの患者と少なくとも2つのアレルにおいて適合することが確実なものとなるように選択される、ミニバンク。
【請求項180】
30人以下の異なるドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含む、請求項179に記載のミニバンク。
【請求項181】
4~30人の異なるドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含む、請求項179に記載のミニバンク。
【請求項182】
4、5、6、7、8、9または10人の異なるドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含む、請求項179に記載のミニバンク。
【請求項183】
前記ドナーが集合的に、前記見込み患者集団の少なくとも95%と少なくとも2つのアレルにおいて適合する、請求項179~182のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項184】
前記2つ以上のアレルが、少なくとも2つのHLAクラスIアレル;少なくとも2つのHLAクラスIIアレル;または少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含む、請求項179~183のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項185】
前記見込み患者集団が、少なくとも100人の患者を含む、請求項179~184のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項186】
前記見込み患者集団が、全世界もしくは全米の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の65歳以上の個体の同種異系HSCT集団;および/または全世界もしくは全米の5歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項179~185のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項187】
前記見込み患者集団が、米国の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項179~185のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項188】
各抗原特異的T細胞株が、ポリクローナルである、請求項179~187のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項189】
各抗原特異的T細胞株が、同じ標的抗原を対象としている、請求項179~188のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項190】
各抗原特異的T細胞株が、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球を含む、請求項179~189のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項191】
各抗原特異的T細胞株が、αβT細胞レセプターを発現しているT細胞を含む、請求項179~190のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項192】
各抗原特異的T細胞株が、MHC拘束性Tリンパ球を含む、請求項179~191のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項193】
各抗原特異的T細胞株が、少なくとも1つの腫瘍関連抗原を標的とする、請求項179~192のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項194】
各抗原特異的T細胞株が、少なくとも1つのウイルス抗原を標的とする、請求項179~192のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項195】
各抗原特異的T細胞株が、少なくとも1つのウイルス抗原および少なくとも1つの腫瘍関連抗原を標的とする、請求項179~192のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項196】
前記抗原特異的T細胞株によって標的とされる各抗原が、ウイルス抗原である、請求項179~192のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項197】
少なくとも2つの異なるウイルス由来の少なくとも1つの抗原が、各抗原特異的T細胞株によって標的とされる、請求項179~196のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項198】
前記抗原特異的T細胞株が、EBV、CMV、アデノウイルス、BK、JCウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、ムンプス、麻疹、ヒトメタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、メルケル細胞ウイルス、単純ヘルペスウイルス、HPV、HBV、HIV、HTLV1、HHV8、ジカウイルス、エボラおよび西ナイルウイルスから選択されるウイルス由来の少なくとも1つのウイルス抗原を標的とする、請求項179~197のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項199】
前記抗原特異的T細胞株が、以下のウイルス:RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)の各々由来の少なくとも1つのウイルス抗原を標的とする、請求項179~198のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項200】
前記インフルエンザ抗原が、インフルエンザA抗原であるNP1、MP1およびそれらの組み合わせから選択され;前記RSV抗原が、N、Fおよびそれらの組み合わせから選択され;前記hMPV抗原が、F、N、M2-1、Mおよびそれらの組み合わせから選択され;前記PIV抗原が、M、HN、N、Fおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項198または199に記載のミニバンク。
【請求項201】
前記インフルエンザA抗原が、NP1およびMP1であり;前記RSV抗原が、NおよびFであり;前記hMPV抗原が、F、N、M2-1およびMであり;前記PIV抗原が、M、HN、NおよびFである、請求項198~199のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項202】
前記抗原特異的T細胞株が、以下のウイルス:EBV、CMV、アデノウイルス、BK、HHV6の各々由来の少なくとも1つのウイルス抗原を標的とする、請求項179~198のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項203】
前記EBV抗原が、LMP2、EBNA1、BZLF1およびそれらの組み合わせから選択され;前記CMV抗原が、IE1、pp65およびそれらの組み合わせから選択され;前記アデノウイルス抗原が、ヘキソン、ペントンおよびそれらの組み合わせから選択され;前記BKウイルス抗原が、VP1、ラージTおよびそれらの組み合わせから選択され;前記HHV6抗原が、U90、U11、U14およびそれらの組み合わせから選択される、請求項198または202に記載のミニバンク。
【請求項204】
前記EBV抗原が、LMP2、EBNA1およびBZLF1であり;前記CMV抗原が、IE1およびpp65であり;前記アデノウイルス抗原が、ヘキソンおよびペントンであり;前記BKウイルス抗原が、VP1およびラージTであり;前記HHV6抗原が、U90、U11およびU14である、請求項198または202~203に記載のミニバンク。
【請求項205】
前記抗原特異的T細胞株が、HBV由来の少なくとも1つのウイルス抗原を標的とする、請求項179~198のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項206】
前記抗原特異的T細胞株が、HBVコア抗原;HBV表面抗原、またはHBVコア抗原およびHBV表面抗原の各々を標的とする、請求項205に記載のミニバンク。
【請求項207】
前記抗原特異的T細胞株が、HHV8由来の少なくとも1つのウイルス抗原を標的とする、請求項179~198のいずれか1項に記載のミニバンク。
【請求項208】
前記抗原特異的T細胞株が、LANA-1(ORF3);LANA-2(vIRF3、K10.5);vCYC(ORF72);RTA(ORF50);vFLIP(ORF71);Kaposin(ORF12、K12);gB(ORF8);MIR1(K3);SSB(ORF6);TS(ORF70)およびそれらの組み合わせから選択されるHHV8抗原を標的とする、請求項207に記載のミニバンク。
【請求項209】
前記抗原特異的T細胞株が、LANA-1(ORF3);LANA-2(vIRF3、K10.5);vCYC(ORF72);RTA(ORF50);vFLIP(ORF71);Kaposin(ORF12、K12);gB(ORF8);MIR1(K3);SSB(ORF6);TS(ORF70)から選択される少なくとも2つのHHV8抗原を標的とする、請求項207に記載のミニバンク。
【請求項210】
前記抗原特異的T細胞株、HBVコア抗原;HBV表面抗原、またはHBVコア抗原およびHBV表面抗原の各々、請求項205に記載のミニバンク。
【請求項211】
複数の異なるドナーに由来する複数の抗原特異的T細胞株を含むユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品であって、ここで、各ドナーのHLAタイプは、少なくとも1つのHLAアレルにおいて異なり、各ドナーのHLAタイプは、前記複数の異なるドナーが集合的に、見込み患者集団内の可能な限り多くの患者と少なくとも2つのアレルにおいて適合することが確実なものとなるように選択される、ユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
各々が個別の細胞株として別々に作製された前記複数の抗原特異的T細胞株のプールを含む、請求項211に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項212】
前記複数の抗原特異的T細胞株が集合的に、前記見込み患者集団の>95%と少なくとも2つのアレルにおいて適合する少なくとも1つの抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を互いに対して備える、請求項211または212に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項213】
5つ以下の抗原特異的T細胞株を含む、請求項211~213のいずれか1項に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項214】
10個以下の抗原特異的T細胞株を含む、請求項211~213のいずれか1項に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項215】
前記複数の抗原特異的T細胞株の中の各細胞株が、少なくとも2つのHLAクラスIアレル;少なくとも2つのHLAクラスIIアレル;または少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含む、請求項211~215のいずれか1項に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項216】
前記第1の見込み患者集団が、少なくとも100人の患者を含む、請求項211~216のいずれか1項に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項217】
前記第1の見込み患者集団が、全世界もしくは全米の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団;全世界もしくは全米の65歳以上の個体の同種異系HSCT集団;および/または全世界もしくは全米の5歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項211~216のいずれか1項に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項218】
前記第1の見込み患者集団が、米国の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団を含む、請求項211~216のいずれか1項に記載のユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【請求項219】
請求項179~210のいずれか1項に記載のミニバンクに含まれるすべての前記抗原特異的T細胞株のプールを含む、ユニバーサル抗原特異的T細胞治療製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月29日に出願された米国仮出願第62/880,006号、2019年8月16日に出願された米国仮出願第62/887,802号、及び2020年7月20日に出願された米国仮出願第63/054,161号の優先権を主張し、これらの出願はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学、及び医学の分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ウイルス感染は、様々な疾患の治療法として選択される同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後の罹患率と死亡率の重大な原因である。しかし、移植後においても、移植片対宿主病(GVHD)、原疾患の再発、ウイルス感染症は、依然として罹患率と死亡率の主要な原因である。ウイルス性病原体に関連する感染症には、CMV、BKウイルス(BKV)、及びアデノウイルス(AdV)などがあるが、これらに限定されるものではない。ウイルス感染は、同種移植片のレシピエントの大部分で検出される。一部のウイルスには抗ウイルス剤が使用されているが、必ずしも有効ではなく、新しい治療法の必要性が強調されている。これらのウイルス感染症を治療する一つの戦略は、養子免疫療法、例えば、ドナー由来のウイルス特異的T細胞の少なくとも輸注を含む養子T細胞移植である。このアプローチでは、ドナーから細胞を抽出し、生体外でウイルス特異的集団を拡大し、最後に、T細胞産物を幹細胞移植のレシピエントに注入することができる。同様のアプローチで、腫瘍関連抗原に特異性を持つT細胞を養子移入して、がんを治療することも可能である。
【0004】
養子免疫療法は、疾患特異的細胞や操作されたT細胞(抗原特異的T細胞、キメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞など)を個体に移植・注入し、疾患関連細胞を認識・標的化し、破壊することを目的とした治療法である。養子免疫療法は、がん、移植後リンパ増殖性疾患、感染症(ウイルスなどの病原体感染症)、自己免疫疾患など、多くの疾患や障害の治療法として期待されている。例えば、Adv、EBV、CMV、BK、HHV6を標的とするin vitroで増幅したドナー由来および第三者のウイルス特異的T細胞は、ウイルス感染症を有する幹細胞移植患者に養子移入しても安全であることが示されている。ウイルス特異的T細胞は、Adv、EBV、CMV、BK、HHV6に対する抗ウイルス免疫を再構成し、病変の除去に有効であり、生体内でかなりの拡大性を示すことがわかった。
【0005】
養子免疫療法には、主に2つのタイプがある。自己免疫療法は、患者からT細胞のような細胞(例えば、抗原特異的T細胞)を分離、生産、および/または拡大し、必要に応じてその同じ患者に再投与するために患者から採取した細胞を保存することを含む。同種免疫療法は、患者と健康なドナーの2人が関与する。T細胞(例えば、抗原特異的T細胞)などの細胞は、健康なドナーから分離され、その後、いくつかのHLAアレルに基づくヒト白血球抗原(HLA)タイプが一致する(または部分的に一致する)患者への投与用に製造、および/または拡大、保管される。HLAは、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)とも呼ばれる。HLA分子は、臓器移植のためのマッチングや、ウイルスに対する適応免疫反応において重要な役割を担っている移植免疫学において重要な役割を担っている。HLAクラスI分子はCD8+ T細胞にウイルスペプチドを提示し、HLAクラスII分子はCD4+ T細胞にウイルスペプチドを提示する。
【0006】
Allo-HSCTは、様々な悪性および非悪性の血液疾患に対して治癒的であるが、T細胞免疫不全の期間があり、患者はサイトメガロウイルス、アデノウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス6およびBKウイルスなどの一連のウイルスに対して脆弱な状態にある。いくつかの研究により、養子的に移植された同種T細胞が共通のHLAアレルを介して抗ウイルス活性を持つことが確認されており、T細胞の抗ウイルス反応におけるHLA相互作用の重要な役割が強調されている。同種幹細胞移植のドナーは、血縁者(通常、HLAが厳密に適合した同胞またはHLAが半分適合したハプロアイデンティカル・ドナー(例えば、子供のための親ドナー))または非血縁者(血縁者以外のドナーでHLAの適合度が非常に近いことが判明したドナー)でなければならない。しばしば、患者がドナーと高度にHLAが一致した場合でも、レシピエントは移植片対宿主病(GVHD)を軽減するために免疫抑制剤を必要とする。
【0007】
移植片対宿主病(GVHD)は、同種移植に特有の炎症性疾患である。移植された白血球または再構成された白血球によるレシピエントの組織に対する攻撃である。これは、ドナーとレシピエントがHLA同一であっても、免疫系が細胞/組織間の他の相違を認識することができるため、起こり得る。急性GVHDは通常、移植後3ヵ月以内に起こり、皮膚、腸、肝臓を侵すことがある。プレドニゾンのようなコルチコステロイドが標準的な治療法である。
【0008】
慢性GVHDは同種移植の後にも発症することがあり、晩期合併症の主な原因となっている。炎症に加えて、慢性GVHDは、線維症、又は強皮症と同様の瘢痕組織の発生、又は他の自己免疫疾患を引き起こし、機能障害や長期の免疫抑制療法の必要性を引き起こす可能性がある。GVHDは通常、T細胞が宿主のMHC上に提示された外来ペプチドに反応する際に介在する。したがって、養子T細胞療法の使用は、しばしば、MHCの不一致によって課される障壁によって制限される。本開示は、これらの障壁に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、抗原特異的T細胞株などの細胞治療製品を含むドナーミニバンクを開発するための方法を含む。本開示は、見込み患者の大部分と適合する様々なHLA(ヒト白血球抗原)アレル型を有する少なくとも1つのドナープールから1人以上の適切なドナーを同定するための方法を含む。いくつかの実施形態では、見込み患者は、同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けたことがある。いくつかの実施形態では、見込み患者は、抑制された免疫を有するか、又は免疫不全に陥っている。様々な実施形態において、本開示における方法は、免疫不全である患者のT細胞免疫の回復に関係する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示の方法における1つ以上の適切なドナーの同定は、複数の細胞療法製品を含む第1のドナーミニバンクの構築に関する。いくつかの実施形態では、第1のドナーミニバンクは、抗原特異的T細胞株を含む。いくつかの実施形態では、本開示における方法は、ドナー選択方法を含む。いくつかの実施形態では、ドナー選択方法は、(a)第1のドナープールからの第1の複数の潜在ドナーの各々のHLA型を、第1の見込み患者集団からの第1の複数の見込み患者の各々と比較すること、(b)上記ステップ(a)における比較に基づいて、第1の最大適合ドナーを決定することを含み、ここで、第1の最大適合ドナーは、第1の複数の見込み患者における最大数の患者と2以上のHLAアレル一致を有する第1のドナープールからのドナーとして定義することができ、(c)第1のドナーミニバンクに含めるために第1の最大適合ドナーを選択し、(d)第1のドナープールから第1の最大適合ドナーを除去することを含む。ここで、上記ステップ(d)は、第1ドナープールから第1最大マッチドナーを除く第1複数のドナー候補の各々からなる第2ドナープールを生成し得る;(e)第1複数の見込み患者から、第1最大マッチドナーと2以上のアレル一致を有する各見込み患者を除去し、ここで上記ステップ(e)は、第1最大マッチドナーと2以上のアレル一致を有する各見込み患者以外の第1複数の見込み患者の各々からなる第2複数の見込み患者を生成することを含み、ここで、第1複数の見込み患者から、第1最大マッチドナーを除く第1複数のドナー候補の各々のアレルを有する見込みのあるドナーのみを除去し、ここで、上記ステップ(e)は、第1複数のドナー候補から、第1最大マッチドナーのアレルを有する見込みのあるドナーのみを除去することを含む。そして、(f)前述のステップ(d)および(e)に従って既に除去されていない全てのドナーおよび見込み患者を用いて、前述のステップ(a)~(e)を1回以上追加で繰り返すステップと、を含む。いくつかの実施形態では、追加の最大適合ドナーが前述のステップ(c)に従って選択されるたびに、その追加の最大適合ドナーは、前述のステップ(d)に従って、それぞれのドナープールから除去される。いくつかの実施形態では、後続の最大一致ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、その後続の最大一致ドナーと2以上のアレル一致を有する各見込み患者が、前述のステップ(e)に従って、それぞれの複数の見込み患者から除去される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、方法の各サイクルに続いて、第1のドナーミニバンク内の選択された最大一致ドナーの数を順次1ずつ増加させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、方法の各サイクルに続いて、患者集団における複数の見込み患者の数を、選択された最大一致ドナーへのそれらのHLA一致に従って減少させることができる。他の実施形態では、前述のステップ(a)~(e)は、第1の見込み患者集団の所望の割合が複数の見込み患者集団に残るまで繰り返すことができる。他の実施形態では、前述のステップ(a)~(e)は、ドナープールにドナーが残らなくなるまで繰り返すことができる。
【0011】
本開示は、本明細書に記載の方法の前述のステップ(a)~(e)が、第1の見込み患者集団の5%以下が複数の見込み患者の中に残るまで、前述のステップ(f)に従って循環され得ることを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第1のドナーミニバンクは、10人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第1のドナーミニバンクは、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2のドナーに由来する抗原特異的T細胞株から構成されることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第1のドナーミニバンクは、第1の見込み患者集団の95%超に、少なくとも2つのHLAアレル上で患者のHLA型に一致する1つ以上の抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA変動性を含むことができる。他の実施形態では、本明細書に記載の第1のドナーミニバンクは、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株から構成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第1のドナーミニバンクは、第1の見込み患者集団の95%超に、少なくとも2つのHLAアレル上の患者のHLA型に一致する1つ以上の抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA変動性を提供することができる。いくつかの実施形態では、前述のステップ(b)及び(e)からの2つ以上のアレルは、少なくとも2つのHLAクラスIアレルを含むことができる。いくつかの実施形態では、前述のステップ(b)及び(e)からの2つ以上のアレルは、少なくとも2つのHLAクラスIIアレルから構成され得る。いくつかの実施形態では、前述のステップ(b)及び(e)からの2つ以上のアレルは、少なくとも1つのHLAクラスIアレル及び少なくとも1つのHLAクラスIIアレルから構成され得る。いくつかの実施形態では、前述のステップ(b)及び(e)からの2つ以上のアレルは、HLAアレルHLA A、HLA B、DRB1、及びDQB1を含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示で使用される第1のドナープールは、少なくとも10人のドナーを含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示で提供される第1の見込み患者集団は、少なくとも100人の患者から構成され得る。いくつかの実施形態では、第1の見込み患者集団は、全世界の同種造血幹細胞移植(HSCT)集団全体を構成することができる。いくつかの実施形態では、第1の見込み患者集団は、米国の同種造血幹細胞移植集団の全体を構成することができる。いくつかの実施形態では、第1の見込み患者集団は、世界的なウェブアドレスbioinformatics.bethematchclinical.orgで利用できる全米骨髄バンク(NMDP)データベースに含まれる全ての患者を構成することができる。いくつかの実施形態では、第1の見込み患者集団は、世界的なウェブアドレス:ebmt.org/ebmt-patient-registryで利用可能な欧州血液骨髄移植学会(EBMT)データベースに含まれる全ての患者から構成され得る。いくつかの実施形態では、全世界の同種造血幹細胞移植集団全体は、16歳以下の小児を含むことができる。いくつかの実施形態では、米国の同種造血幹細胞移植集団全体は、16歳以下の小児を含むことができる。いくつかの実施形態では、全世界の同種造血幹細胞移植集団全体は、65歳以上の個人を含むことができる。いくつかの実施形態では、米国の同種造血幹細胞移植集団全体は、65歳以上の個人を含むことができる。いくつかの実施形態では、全世界の同種造血幹細胞移植集団全体は、5歳以下の小児を含むことができる。いくつかの実施形態では、米国の同種造血幹細胞移植集団全体は、年齢5歳以下の小児を含むことができる。
【0013】
本開示は、抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクからなるドナーバンクを構築する際に使用するための適切なドナーを同定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ドナーバンクを構築することは、本明細書に記載されるように、最初に第1のミニバンクを開発することを含み得る。いくつかの実施形態では、第1のミニバンクを開発することは、前述のステップ(a)~(f)の全てを実行することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるドナーバンクのための第1のミニバンクを開発することは、1つ以上の第2のラウンドを含む前述のステップ(a)~(f)を繰り返して、1つ以上の第2のミニバンクを構築することを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、バンクを構築するための各第2ラウンドを開始する前に、新しいドナー・プールを生成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の新しいドナープールは、第1のドナープールから、第1のラウンド及び任意の前の第2のラウンドから前述のステップ(d)の各前のサイクルに従って除去された任意の最大マッチドナーを差し引いたものから構成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の新たなドナープールは、第1のドナープールに含まれない潜在ドナーの全く新しい集団から構成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の新規ドナープールは、第1ドナープールから、第1ラウンド及び任意の先行する第2ラウンドからの前述のステップ(d)の各サイクルにしたがって除去された任意の最大マッチドナーと、第1ドナープールに含まれない潜在ドナーの全く新しい集団との組み合わせからなることが可能である。いくつかの実施形態では、本方法に記載のバンクを構築することは、本方法の第1ラウンド及び任意の先行する第2ラウンドから前述のステップ(e)の各先行サイクルに従って以前に除去された全ての見込み患者を戻すことにより、第1見込み患者集団から第1複数の見込み患者を再構成することを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のミニバンクを構築するための各ラウンドは、複数の見込み患者のうち第1の見込み患者の5%以下が残るまで、上記ステップ(a)~(e)を上記ステップ(f)に従って循環させることを含み得る。いくつかの実施形態では、各ドナーミニバンクは、少なくとも2つのHLAアレル上で患者のHLA型に適合する少なくとも1つの抗原特異的T細胞株を第1の見込み患者集団の95%超提供するために、1つまたは複数の最大適合ドナーの間の十分なHLA変動を含み得る。いくつかの実施形態では、結果として得られる各ドナーミニバンクは、10人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株から構成され得る。いくつかの実施形態では、各結果ドナーミニバンクは、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み得る。
いくつかの実施形態において、得られる各ドナーミニバンクは、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み得る。いくつかの実施形態において、前述の工程(b)および(e)からの2つ以上のアレルは、少なくとも2つのHLAクラスIIアレルを含み得る。他の実施形態において、前述の工程(b)および(e)からの2つ以上のアレルは、少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、ドナーバンクを構築するために用いられる第1のドナープールは、少なくとも10人のドナーを含み得る。いくつかの実施形態において、ドナーバンクを構築するために用いられる第1の見込み患者集団は、少なくとも100人の患者を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、全世界の同種異系HSCT集団を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、全米の同種異系HSCT集団を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、ワールドワイドウェブアドレスbioinformatics.bethematchclinical.orgにおいて利用可能なNational Marrow Donor Program(NMDP)データベースに含まれるすべての患者を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、ワールドワイドウェブアドレス:ebmt.org/ebmt-patient-registryにおいて利用可能なEuropean Society for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)データベースに含まれるすべての患者を含み得る。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、16歳以下の小児を含み得る。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、16歳以下の小児を含み得る。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、65歳以上の個体を含み得る。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、65歳以上の個体を含み得る。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、5歳以下の小児を含み得る。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、5歳以下の小児を含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、ドナーバンクに含まれる各ドナーから血液を収集する工程を含み得る。他の実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、ドナーバンクに含まれる各ドナーから収集した血液を手に入れる工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、ドナーバンクに含まれる各ドナーから単核球(MNC)を収集する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、ドナーバンクに含まれる各ドナーから収集したMNCを手に入れる工程を含み得る。いくつかの実施形態において、各ドナーからMNCを収集する工程は、MNCを単離する工程または単離されたMNCを手に入れる工程を含み得る。1つの実施形態において、MNCは、末梢血単核球(例えば、PBMC)を含む。1つの実施形態において、MNCは、血液アフェレーシス単核球を含む。いくつかの実施形態において、各ドナーからMNCを収集する工程は、PBMCを単離する工程または単離されたPBMCを手に入れる工程を含み得る。いくつかの実施形態において、MNCを単離する工程は、フィコール勾配によって行われ得る。いくつかの実施形態において、MNCを単離する工程は、密度勾配によって行われ得る。他の実施形態において、本明細書中に開示されるようなMNCを収集する工程は、その細胞を培養する工程を含み得る。他の実施形態において、本明細書中に開示されるようなMNCを収集する工程は、その細胞を凍結保存する工程を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、培養されたMNCまたは凍結保存されたMNCは、培養中の細胞を1つ以上の抗原と好適な培養条件下で接触させて、抗原特異的T細胞を刺激し、拡大することを含み得る。他の実施形態において、細胞と接触させる1つ以上の抗原は、1つ以上のウイルス抗原を含み得る。他の実施形態において、細胞と接触させる1つ以上の抗原は、1つ以上の腫瘍関連抗原を含み得る。いくつかの実施形態において、細胞と接触させる1つ以上の抗原は、1つ以上のウイルス抗原と1つ以上の腫瘍関連抗原との組み合わせを含み得る。
【0019】
本開示は、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプと第1の複数の各見込み患者のHLAタイプとを比較する工程(a)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、このパラグラフに記載されている方法の工程(a)における比較に基づいて、第1の最適合ドナーを決定する工程(b)を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の最適合ドナーは、第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のアレルが適合する第1のドナープール由来のドナーと定義され得る。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナーミニバンクに含めるために第1の最適合ドナーを選択する工程(c)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナープールから第1の最適合ドナーを除去する工程(d)を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法の工程(d)は、第1の最適合ドナーを除く第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程を含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、その方法は、第1の複数の見込み患者から、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去する工程(e)を含み得る。いくつかの実施形態において、このパラグラフに記載されているような工程(e)は、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得る工程を含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法は、本明細書中に開示されるような工程(d)および(e)に従って、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者を用いて、本明細書中に開示されるような工程(a)~(e)をさらに1回以上反復する工程を含み得る。いくつかの実施形態では、工程(c)に従って追加の最適合ドナーが選択されるたびに、その最適合ドナーは、工程(d)に従ってそれぞれのドナープールから除去される。いくつかの実施形態では、次の最適合ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、工程(e)に従って次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者がそれぞれの複数の見込み患者から除去される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、ドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数を、その方法の各サイクル後に1ずつ増加させ得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、選択された最適合ドナーとのHLA適合に従ってその方法の各サイクル後に患者集団内の複数の見込み患者の数を減少させ得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築するための工程(a)~(e)は、第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージが複数の見込み患者に残るまで反復され得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築するための工程(a)~(e)は、ドナープールにドナーが残らなくなるまで反復され得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、ドナーミニバンクに含まれるそれぞれの各ドナーから得られた血液からMNCを単離するか、またはその血液から単離されたMNCを手に入れる工程(g)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法の工程(h)は、それぞれの各ドナーから得られたMNCを培養する工程を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、培養中のMNCを1つ以上の抗原と好適な培養条件下で接触させて、それぞれの各ドナーのMNC由来の抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を刺激し、拡大する工程(i)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、培養中のMNCを1つ以上の抗原由来の1つ以上のエピトープと好適な培養条件下で接触させて、それぞれの各ドナーのMNC由来の抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を刺激し、拡大する工程(i)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、複数の抗原特異的T細胞株を作製する工程を含む。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の各々は、それぞれの各ドナーのMNCに由来する抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような工程(g)~(i)のMNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、上記方法の工程(j)は、複数の抗原特異的T細胞株を凍結保存する工程を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法は、工程(f)に従って、第1の見込み患者集団の5%以下が複数の見込み患者に残るまで工程(a)~(e)を繰り返す工程を含み得る。いくつかの実施形態において、各ドナーミニバンクは、第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて患者のHLAタイプに適合する少なくとも1つの抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を1人以上の最適合ドナーの間に含み得る。いくつかの実施形態において、得られる各ドナーミニバンクは、10人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み得る。いくつかの実施形態において、得られる各ドナーミニバンクは、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み得る。いくつかの実施形態において、工程(b)および(e)からの2つ以上のアレルは、少なくとも2つのHLAクラスIIアレルを含み得る。他の実施形態において、工程(b)および(e)からの2つ以上のアレルは、少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法において用いられる第1のドナープールは、少なくとも10人のドナーを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法において用いられる第1のドナープールは、少なくとも100人のドナーを含み得る。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、全世界の同種異系HSCT集団を含み得る。いくつかの実施形態において、上記方法において用いられる第1の見込み患者集団は、全米の同種異系HSCT集団を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、ワールドワイドウェブアドレスbioinformatics.bethematchclinical.orgにおいて利用可能なNational Marrow Donor Program(NMDP)データベースに含まれるすべての患者を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、ワールドワイドウェブアドレス:ebmt.org/ebmt-patient-registryにおいて利用可能なEuropean Society for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)データベースに含まれるすべての患者を含み得る。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、16歳以下の小児を含み得る。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、16歳以下の小児を含み得る。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、65歳以上の個体を含み得る。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、65歳以上の個体を含み得る。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、5歳以下の小児を含み得る。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、5歳以下の小児を含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、MNCの培養は、気体透過性の培養表面を備える容器において行われ得る。1つの実施形態において、その容器は、気体透過性の部分を備える注入バッグであり得る。1つの実施形態において、その容器は、剛性容器であり得る。1つの実施形態において、その容器は、GRexバイオリアクターであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築するためのPBMCを培養する工程は、1つ以上のサイトカインの存在下において行われ得る。1つの実施形態において、そのサイトカインには、IL4が含まれ得る。1つの実施形態において、そのサイトカインには、IL7が含まれ得る。1つの実施形態において、そのサイトカインには、IL4およびIL7が含まれ得る。1つの実施形態において、そのサイトカインには、IL4およびIL7が含まれ得るが、IL2は含まれない。
【0026】
抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法は、MNCを1つ以上の抗原の存在下において培養する工程を含み得る。1つの実施形態において、MNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原は、ホールタンパク質(whole protein)の形態であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原は、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックスの形態であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原は、ホールタンパク質の形態と、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックスの形態との組み合わせの形態であり得る。
【0027】
抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法は、MNCを複数のペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。1つの実施形態において、MNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、複数のペプミックス由来の各ペプミックスは、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築するための各抗原は、腫瘍関連抗原であり得る。いくつかの実施形態において、各抗原は、ウイルス抗原であり得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築するための少なくとも1つの抗原は、ウイルス抗原であり得、少なくとも1つの抗原は、腫瘍関連抗原であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のMNCを少なくとも2つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも3つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも4つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも5つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも6つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも7つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも8つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも9つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも10個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも11個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも12個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも13個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも14個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも15個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも16個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも17個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも18個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも19個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも20個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも20個を超える異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、MNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、各ペプミックスは、ある抗原の一部を網羅する一連の重複ペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、各ペプミックスは、ある抗原の配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のMNCを複数のペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、各ペプミックスは、複数のペプミックス中の他の各ペプミックスによってカバーされる抗原とは異なる少なくとも1つの抗原をカバーし得る。いくつかの実施形態において、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20個の異なる抗原が、複数のペプミックスによってカバーされ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも20個を超える異なる抗原が、複数のペプミックスによってカバーされ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なるウイルス由来の少なくとも1つの抗原が、複数のペプミックスによってカバーされ得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための方法において使用される抗原は、EBV(エプスタイン・バーウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、CMV(サイトメガロウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、アデノウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、BKウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、JC(John Cunninghamウイルス)ウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HHV6(ヘルペスウイルス6)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HHV8(ヘルペスウイルス8)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HBV(B型肝炎ウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、RSV(ヒト呼吸器合胞体ウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、インフルエンザ由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、パラインフルエンザ由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ボカウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、コロナウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、LCMV(リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ムンプス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、麻疹由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ヒトメタニューモウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、パルボウイルスB由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ロタウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、メルケル細胞ウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、単純ヘルペスウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HPV(ヒトパピローマウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HTLV1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、西ナイルウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ジカウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、エボラ由来であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのペプミックスが、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザおよびHMPV(ヒトメタニューモウイルス)の各々由来の抗原をカバーし得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるインフルエンザ抗原は、インフルエンザA抗原NP1であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるインフルエンザ抗原は、インフルエンザA MP1であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるインフルエンザ抗原は、インフルエンザA抗原であるNP1およびMP1であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるRSV抗原は、RSV Nタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるRSV抗原は、RSV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるRSV抗原は、RSV Nタンパク質およびRSV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Nタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV M2-1タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Mタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Fタンパク質とhMPV Nタンパク質とhMPV M2-1とhMPV Mタンパク質との組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Mタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV HNタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Nタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Mタンパク質とPIV HNタンパク質とPIV Nタンパク質とPIV Fタンパク質との組み合わせであり得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のPBMCを、インフルエンザA抗原NP1およびインフルエンザA抗原MP1を網羅するペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、RSV抗原NおよびRSV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Nを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原M2-1を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Mを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Mを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原HNを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Nを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のPBMCを、EBV、CMV、アデノウイルス、BKおよびHHV6の各々由来の抗原をカバーするペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのペプミックスが、EBV由来の抗原をカバーし得、少なくとも1つのペプミックスが、CMV由来の抗原をカバーし得、少なくとも1つのペプミックスが、アデノウイルス由来の抗原をカバーし得、少なくとも1つのペプミックスが、BK由来の抗原をカバーし得、少なくとも1つのペプミックスが、HHV6由来の抗原をカバーし得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、LMP2であり得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、EBNA1であり得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、BZLF1であり得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、CMV抗原の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、CMV抗原は、IE1由来であり得る。いくつかの実施形態において、CMV抗原は、pp65由来であり得る。いくつかの実施形態において、CMV抗原は、IE1とpp65との組み合わせ由来であり得る。いくつかの実施形態において、アデノウイルス抗原は、ヘキソン由来であり得る。いくつかの実施形態において、アデノウイルス抗原は、ペントン由来であり得る。いくつかの実施形態において、アデノウイルス抗原は、ヘキソンとペントンとの組み合わせ由来であり得る。いくつかの実施形態において、BKウイルス抗原は、VP1由来であり得る。いくつかの実施形態において、BKウイルス抗原は、ラージT由来であり得る。いくつかの実施形態において、BKウイルス抗原は、VP1とラージTとの組み合わせ由来であり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U90由来であり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U11由来であり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U14由来であり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U90とU11とU14との組み合わせ由来であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、EBV抗原であるLMP2を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、EBV抗原であるEBNA1を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、EBV抗原であるBZLF1を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、CMV抗原であるIE1を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、CMV抗原であるpp65を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、アデノウイルス抗原であるヘキソンを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、ペントンを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、BKウイルス抗原であるVP1を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、BKウイルス抗原であるラージTを網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、HHV6抗原であるU90を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、HHV6抗原であるU11を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、HHV6抗原であるU14を網羅するペプミックスの存在下においてPBMCを培養する工程を含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のPBMCを、コロナウイルス由来の抗原をカバーするペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、β-コロナウイルス(β-CoV)である。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、α-コロナウイルス(α-CoV)である。いくつかにおいて、β-CoVは、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoVHKUlおよびHCoV-OC43から選択される。いくつかの実施形態において、HCoV-E229およびHCoV-NL63から選択されるα-CoV。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、PBMCを複数のペプミックスライブラリーと培養する工程を含み得、各ペプミックスライブラリーは、SARS-CoV2抗原または1つ以上の追加のウイルス由来の抗原の全部もしくは一部を網羅する複数の重複ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、VSTは、複数のペプミックスライブラリーでプライミングされたDCなどのAPCとT細胞を接触させることによって作製され、各ペプミックスライブラリーは、ウイルス抗原の全部または一部を網羅する複数の重複ペプチドを含み、その複数のペプミックスライブラリーの少なくとも1つは、SARS-CoV2由来の第1の抗原を網羅し、その複数のペプミックスライブラリーの少なくとも1つの追加のペプミックスライブラリー(または1つの追加のペプミックスライブラリーの一部)は、それぞれ第2の抗原を網羅する。いくつかの実施形態において、VSTは、少なくとも1つのSARS-CoV2抗原をコードする少なくとも1つのDNAプラスミドまたはその一部および各第2の抗原をコードする少なくとも1つのDNAプラスミドまたはその一部でヌクレオフェクトされたDCなどのAPCとT細胞を接触させることによって作製される。いくつかの実施形態において、そのプラスミドは、少なくとも1つのSARS-CoV2抗原またはその一部、および少なくとも1つの追加の抗原またはその一部をコードする。いくつかの実施形態において、VSTは、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球を含む。いくつかの実施形態において、VSTは、αβT細胞レセプターを発現する。いくつかの実施形態において、VSTは、MHC拘束性である。いくつかの実施形態において、SARS-CoV2抗原は、nsp1;nsp3;nsp4;nsp5;nsp6;nsp7a、nsp8、nsp10;nsp12;nsp13;nsp14;nsp15;およびnsp16からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む。いくつかの実施形態において、SARS-CoV2抗原は、スパイク(S);エンベロープタンパク質(E);マトリックスタンパク質(M);およびヌクレオカプシドタンパク質(N)からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む。いくつかの実施形態において、SARS-CoV2抗原は、SARS-CoV-2(AP3A);SARS-CoV-2(NSS);SARS-CoV-2(ORFlO);SARS-CoV-2(ORF9B);およびSARS-CoV-2(Yl4)からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のPBMCを、1つ以上のSARS-CoV2抗原、ならびにPIV抗原M、PIV抗原HN、PIV抗原N、PIV抗原F、インフルエンザ抗原NPl、インフルエンザ抗原MPl、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原F、hMPV抗原NおよびAdV抗原ヘキソン、AdV抗原ペントンならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の追加の抗原をカバーするペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の抗原は、PIV抗原M、PIV抗原HN、PIV抗原N、PIV抗原F、インフルエンザ抗原NPl、インフルエンザ抗原MPl、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原F、hMPV抗原N、AdV抗原ヘキソン、AdV抗原ペントンおよびそれらの組み合わせを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のPBMCを、B型肝炎ウイルス(HBV)由来の抗原をカバーするペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、HBV抗原は、HBVコア抗原、HBV表面抗原、ならびにHBVコア抗原およびHBV表面抗原の各々から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、選択されたドナー由来のPBMCを、ヒトヘルペスウイルス-8(HHV-8)由来の抗原をカバーするペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、HHV-8抗原は、潜在性抗原を含む。いくつかの実施形態において、HHV-8抗原は、溶解性抗原を含む。いくつかの実施形態において、HHV-8抗原は、LANA-1(ORF3);LANA-2(vIRF3、K10.5);vCYC(ORF72);RTA(ORF50);vFLIP(ORF71);Kaposin(ORF12、K12);gB(ORF8);MIR1(K3);SSB(ORF6);TS(ORF70)およびそれらの組み合わせから選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株(例えば、VST)のドナーミニバンクを構築するための本明細書中に記載されるような方法は、抗原特異的T細胞株をIL-7とIL-4の両方の存在下においてエキソビボで培養する工程を含む。いくつかの実施形態において、VSTは、患者への投与の準備が整うように、9~18日以内の培養で十分に拡大されたものである。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスは、15merのペプチドを含み得る。1つの実施形態において、抗原を網羅するペプミックス中のペプチドは、順に11アミノ酸重複し得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクの構築は、抗原特異的T細胞を拡大することを含み得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクの構築は、抗原特異的T細胞を抗原特異的細胞傷害性について試験することを含み得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のミニバンクは、本明細書中に開示されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法を介して作製され得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のミニバンクは、本明細書中に記載されるような方法を介して選択された複数のドナーに由来し得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株のバンクは、本明細書中に記載されるような方法を介して選択された複数のドナーに由来する複数のミニバンクを含み得る。
【0039】
本開示は、本明細書中に記載されるようなミニバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与することによって疾患または状態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、患者に投与するために抗原特異的T細胞株を選択する場合の唯一の基準は、その患者が、抗原特異的T細胞株の製造において使用されるMNCを単離してきたドナーと少なくとも2つのHLAアレルを共有していることである。1つの実施形態において、MNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、処置される疾患は、ウイルス感染症またはウイルス関連疾患であり得る。いくつかの実施形態において、処置される疾患は、癌であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなミニバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株によって処置される患者は、免疫無防備状態であり得る。いくつかの実施形態において、それらの患者は、その疾患もしくは状態または別の疾患もしくは状態を処置するために患者が受けた処置に起因して免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、それらの患者は、年齢に起因して免疫無防備状態である。1つの実施形態において、患者は、低年齢に起因して免疫無防備状態である。1つの実施形態において、患者は、高齢に起因して免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、処置される状態は、免疫不全であり得る。1つの実施形態において、免疫不全は、原発性免疫不全である。いくつかの実施形態において、患者は、移植治療を必要としている。
【0041】
本開示は、本明細書中に記載されるようなミニバンクから、被験体に投与するための第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を含む。本開示は、本明細書中に記載されるようなバンクに含まれるミニバンクから第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を含む。いくつかの実施形態において、第1の抗原特異的T細胞株の選択は、移植手技において移植ドナーから移植材料(例えば、幹細胞)を受け取った患者に同種異系T細胞治療を施すための選択であり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法は、(a)患者のHLAタイプと移植ドナーまたは複数の移植ドナー(例えば、ダブル臍帯血移植の場合)のHLAタイプとを比較して、その患者と移植ドナーとに共通している共有HLAアレルの第1セットを特定する工程;(b)共有HLAアレルの第1セットを、本明細書中に記載されるようなミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーまたは本明細書中に記載されるようなバンクに含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーのHLAタイプと比較して、共有HLAアレルの第1セットと1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定する工程;(c)工程(b)において特定されたHLAアレルの数に基づいて1次数値スコアを割り当てる工程;(d)患者のHLAタイプと、本明細書中に記載されるようなミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するかまたは本明細書中に記載されるようなバンクに含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較して、患者とそれぞれの各T細胞株ドナーとに共通している共有HLAアレルの1つ以上の追加セットを特定する工程;(e)T細胞株と患者との間で共通している工程(d)において特定された共有HLAアレルの数に基づいて、それぞれの各T細胞株に2次数値スコアを割り当てる工程;および(f)本明細書中に記載されるようなミニバンク内の各抗原特異的T細胞株に対して、1次スコアと2次スコアとを合算する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、それらの方法は、このパラグラフの工程(f)から得たスコアが最も高い抗原特異的T細胞株を、患者に投与するために選択する工程(g)を含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、8つの共有アレルの完全一致には、1次スコアにおいてXという任意数値スコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、7つの共有アレルには、Xの7/8である数値スコアX1が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、6つの共有アレルには、Xの6/8である数値スコアX2が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、5つの共有アレルには、Xの5/8である数値スコアX3が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、4つの共有アレルには、Xの4/8である数値スコアX4が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、3つの共有アレルには、Xの3/8である数値スコアX5が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、2つの共有アレルには、Xの2/8である数値スコアX6が割り当てられ得る。1つの実施形態において、Xという任意数値スコアは、8に等しい。
【0043】
いくつかの実施形態において、2次スコアにおける8つの共有アレルの完全一致には、1次スコアの50%の重みが付けられた数値スコアが割り当てられ得る。したがって、直前のパラグラフの工程(c)において定義されたような1次スコアXが8である場合(すなわち、X=8である場合、4)。いくつかの実施形態において、7つの共有アレルには、直前のパラグラフの工程(c)において定義されたように、X1の50%(すなわち、X=8である場合、3.5)というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、6つの共有アレルには、直前のパラグラフの工程(c)において定義されたように、X2の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、3)が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、2つ以上の任意の数の共有アレルには、このパラグラフに記載されているように工程(e)に従うことによってスコアが割り当てられ得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、幹細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、実質臓器を含み得る。いくつかの実施形態において、実質臓器は、腎臓である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、骨髄を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、幹細胞、実質臓器および骨髄を含み得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、直前のパラグラフに記載されているように工程(g)において選択された第1の抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、患者への投与は、ウイルス感染症を処置するための投与であり得る。いくつかの実施形態において、患者への投与は、腫瘍を処置するための投与であり得る。いくつかの実施形態において、患者への投与は、移植前の原発性免疫不全に対する投与であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、第2の抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株と同じミニバンクから選択され得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が得られたミニバンクとは異なるミニバンクから選択され得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株以外のドナーバンクに残っているすべての抗原特異的T細胞株を用いて、本明細書中に記載されるようなミニバンクまたはバンクに含まれるミニバンクから第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を反復することによって選択され得る。
【0046】
本開示は、抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクで構成されたドナーバンクを構築する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法に示された工程(a)~(j)を行う工程A)を含み得る。いくつかの実施形態において、第1のミニバンクが構築される。いくつかの実施形態において、その方法は、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法に示された工程(a)~(j)を反復する工程B)を含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のミニバンクを構築するために、1回以上の第2ラウンドが行われ得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法の各第2ラウンドを開始する前に、新しいドナープールが作製され得る。いくつかの実施形態において、その新しいドナープールは、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから先の各サイクルの工程(d)に従って除去された任意の最適合ドナーを差し引いた第1のドナープールを含み得る。いくつかの実施形態において、その新しいドナープールは、第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団を含み得る。いくつかの実施形態において、その新しいドナープールは、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから先の各サイクルの工程(d)に従って除去された任意の最適合ドナーを差し引いた第1のドナープールを含む新しいドナープールと、第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団との組み合わせを含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記方法は、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法に示されている先の各サイクルの工程(e)に従って第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから以前に除去されたすべての見込み患者を戻すことによって第1の見込み患者集団由来の第1の複数の見込み患者を再構成する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法に示されている工程(g)~(j)は、必要に応じて、その方法の各ラウンド後に行われてもよいし、直前のパラグラフに記載されたように工程A)の後の任意の時点において行われてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、MNCの培養は、気体透過性の培養表面を備える容器において行われ得る。1つの実施形態において、その容器は、気体透過性の部分を備える注入バッグであり得る。1つの実施形態において、その容器は、剛性容器であり得る。1つの実施形態において、その容器は、GRexバイオリアクター(Wilson Wolf,St Paul,MN)であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築するためのMNCの培養は、1つ以上のサイトカインの存在下において行われ得る。1つの実施形態において、MNCは、PMBCであり得る。1つの実施形態において、サイトカインには、IL4が含まれ得る。1つの実施形態において、サイトカインには、IL7が含まれ得る。1つの実施形態において、サイトカインには、IL4およびIL7が含まれ得る。1つの実施形態において、サイトカインには、IL4およびIL7が含まれ得るが、IL2は含まれない。
【0049】
いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原は、ホールタンパク質の形態であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原は、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックスの形態であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原は、ホールタンパク質の形態と、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックスの形態との組み合わせの形態であり得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクで構成されたドナーバンクを構築するための方法は、MNCを複数のペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。1つの実施形態において、MNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、複数のペプミックス由来の各ペプミックスは、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含み得る。抗原は、樹状細胞上に提示され得る。抗原は、本明細書中に開示される方法を介して選択されたドナー由来のMNC(例えば、PBMC)と直接接触され得る。
【0050】
他の実施形態において、上記細胞と接触される各抗原は、腫瘍関連抗原を含み得る。他の実施形態において、各抗原は、ウイルス抗原であり得る。いくつかの実施形態において、上記細胞と接触される少なくとも1つの抗原は、ウイルス抗原であり得、上記細胞と接触される少なくとも1つの抗原は、腫瘍関連抗原であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクで構成されたドナーバンクを構築する方法は、MNCを少なくとも2つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも3つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも4つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも5つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも6つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも7つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも8つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも9つの異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも10個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも11個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも12個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも13個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも14個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも15個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも16個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも17個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも18個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも19個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも20個の異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを少なくとも20個を超える異なるペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、MNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、各ペプミックスは、ある抗原の一部を網羅する一連の重複ペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、各ペプミックスは、ある抗原の配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、MNCを複数のペプミックスの存在下において培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、各ペプミックスは、複数のペプミックス中の他の各ペプミックスによってカバーされる抗原とは異なる少なくとも1つの抗原をカバーし得る。いくつかの実施形態において、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20個の異なる抗原が、複数のペプミックスによってカバーされ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも20個を超える異なる抗原が、複数のペプミックスによってカバーされ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なるウイルス由来の少なくとも1つの抗原が、複数のペプミックスによってカバーされ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、EBV(エプスタイン・バーウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、CMV(サイトメガロウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、アデノウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、BKウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、JCウイルス(John Cunninghamウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HHV6(ヘルペスウイルス6)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、RSV(ヒト呼吸器合胞体ウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、インフルエンザ由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、パラインフルエンザ由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ボカウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、コロナウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、SARS-CoV2由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、LCMV(リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ムンプス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、麻疹由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ヒトメタニューモウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、パルボウイルスB由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ロタウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、メルケル細胞ウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、単純ヘルペスウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HPV(ヒトパピローマウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HTLV1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、HHV8(ヘルペスウイルス8)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、B型肝炎ウイルス(HBV)由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、西ナイルウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、ジカウイルス由来であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法において使用される抗原は、エボラ由来であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのペプミックスは、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザおよびHMPV(ヒトメタニューモウイルス)の各々由来の抗原をカバーし得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるインフルエンザ抗原は、インフルエンザA抗原NP1であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるインフルエンザ抗原は、インフルエンザA MP1であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるインフルエンザ抗原は、インフルエンザAインフルエンザA抗原NP1およびインフルエンザA MP1であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるRSV抗原は、RSV Nタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるRSV抗原は、RSV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるRSV抗原は、RSV Nタンパク質およびRSV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Nタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV M2-1タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Mタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるhMPV抗原は、hMPV Fタンパク質とhMPV Nタンパク質とhMPV M2-1とhMPV Mタンパク質との組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Mタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV HNタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Nタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Fタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスにおいて使用されるPIV抗原は、PIV Mタンパク質とPIV HNタンパク質とPIV Nタンパク質とPIV Fタンパク質との組み合わせであり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、インフルエンザA抗原NP1およびインフルエンザA抗原MP1を網羅するペプミックスの存在下においてMNCまたはPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、RSV抗原NおよびRSV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Nを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原M2-1を網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Mを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Mを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原HNを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Nを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、インフルエンザA抗原NP1およびインフルエンザA抗原MP1を網羅するペプミックスの存在下においてMNCまたはPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、RSV抗原NおよびRSV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Nを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原M2-1を網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、hMPV抗原Mを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Mを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原HNを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Nを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、PIV抗原Fを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような少なくとも1つのペプミックスは、EBV、CMV、アデノウイルス、BKおよびHHV6由来の抗原をカバーし得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、LMP2であり得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、EBNA1であり得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、BZLF1であり得る。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、LMP2、EBNA1およびBZLF1であり得る。いくつかの実施形態において、CMV抗原は、IE1であり得る。いくつかの実施形態において、CMV抗原は、pp65であり得る。いくつかの実施形態において、CMV抗原は、IE1およびpp65であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、アデノウイルス抗原は、ヘキソンであり得る。いくつかの実施形態において、アデノウイルス抗原は、ペントンであり得る。いくつかの実施形態において、アデノウイルス抗原は、ヘキソンおよびペントンであり得る。いくつかの実施形態において、BKウイルス抗原は、VP1であり得る。いくつかの実施形態において、BKウイルス抗原は、ラージTであり得る。いくつかの実施形態において、BKウイルス抗原は、VP1およびラージTであり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U90であり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U11であり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U14であり得る。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U90、U11およびU14であり得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、EBV抗原であるLMP2、EBV抗原であるEBNA1およびEBV抗原であるBZLF1を網羅するペプミックスの存在下においてMNCまたはPBMCを培養する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、CMV抗原IE1およびCMV抗原pp65を網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、アデノウイルス抗原であるヘキソンおよびアデノウイルス抗原であるペントンを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、BKウイルス抗原であるVP1およびラージTを網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、HHV6抗原であるU90、HHV6抗原であるU11およびHHV6抗原であるU14を網羅するペプミックスの存在下における培養を含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、HBVコア抗原、HBV表面抗原、ならびにHBVコア抗原およびHBV表面抗原の各々を網羅するペプミックスの存在下においてMNCまたはPBMCを培養する工程を含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、LANA-1(ORF3);LANA-2(vIRF3、K10.5);vCYC(ORF72);RTA(ORF50);vFLIP(ORF71);Kaposin(ORF12、K12);gB(ORF8);MIR1(K3);SSB(ORF6);TS(ORF70)およびそれらの組み合わせから選択されるHHV-8抗原を網羅するペプミックスの存在下においてMNCまたはPBMCを培養する工程を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなペプミックスは、15merのペプチドを含み得る。1つの実施形態において、抗原を網羅するペプミックス中のペプチドは、順に11アミノ酸重複し得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクの構築は、抗原特異的T細胞を拡大することを含み得る。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクの構築は、抗原特異的T細胞を抗原特異的細胞傷害性について試験することを含み得る。
【0063】
本開示は、抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクを含み得るドナーバンクを提供する。いくつかの実施形態において、そのドナーバンクは、抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクで構成されたドナーバンクを構築する方法を介して作製され得る。本開示は、本明細書中に記載されるようなドナーバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含む、疾患または状態を処置する方法を提供する。
【0064】
本開示は、本明細書中に記載されるようなドナーバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与することによって疾患または状態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、患者への抗原特異的T細胞株の投与に対する唯一の基準は、患者が、抗原特異的T細胞株の製造において使用されるMNCを単離してきたドナーと少なくとも2つのHLAアレルを共有していることである。1つの実施形態において、MNCは、PBMCであり得る。いくつかの実施形態において、処置される疾患は、ウイルス感染症であり得る。いくつかの実施形態において、処置される疾患は、癌であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなドナーバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株によって処置される患者は、免疫無防備状態であり得る。いくつかの実施形態において、それらの患者は、その疾患もしくは状態または別の疾患もしくは状態を処置するために患者が受けた処置に起因して免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、それらの患者は、年齢に起因して免疫無防備状態である。1つの実施形態において、患者は、低年齢に起因して免疫無防備状態である。1つの実施形態において、患者は、高齢に起因して免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、処置される状態は、免疫不全であり得る。1つの実施形態において、免疫不全は、原発性免疫不全である。いくつかの実施形態において、患者は、移植治療を必要としている。
【0066】
本開示は、移植手技において移植ドナーから移植材料を受け取った患者に同種異系T細胞治療を施すために、本明細書中に記載されるようなドナーバンクから第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、患者のHLAタイプと移植ドナーのHLAタイプとを比較して、その患者と移植ドナーとに共通している共有HLAアレルの第1セットを特定する工程(a)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、その共有HLAアレルの第1セットを、本明細書中に記載されるようなドナーバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーのHLAタイプと比較して、共有HLAアレルの第1セットと1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定する工程(b)を含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記方法は、工程(b)において特定されたHLAアレルの数に基づいて1次数値スコアを割り当てる工程(c)を含み得る。いくつかの実施形態において、8つの共有アレルの完全一致には、8というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、7つの共有アレルには、7というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、6つの共有アレルには、6というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、5つの共有アレルには、5というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、5つの共有アレルには、5というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、3つの共有アレルには、3というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、2つの共有アレルには、2というスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、患者のHLAタイプと、本明細書中に記載されるようなドナーバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較して、患者とそれぞれの各T細胞株ドナーとに共通している共有HLAアレルの1つ以上の追加セットを特定する工程(d)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、T細胞株と患者との間で共通している工程(d)において特定された共有HLAアレルの数に基づいて、それぞれの各T細胞株に2次数値スコアを割り当てる工程(e)を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、8つの共有アレルの完全一致には、工程(d)において特定されたXの50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、4)が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、7つの共有アレルには、工程(d)において特定されたX1の50%のスコア(すなわち、X=8である場合、3.5)が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、6つの共有アレルには、工程(d)において特定されたX2の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、3)が割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、2つ以上の任意の数の共有アレルには、工程(d)に従ってスコアが割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、本明細書中に記載されるようなバンク内の各抗原特異的T細胞株に対して、1次スコアと2次スコアとを合算する工程(f)を含み得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、工程(f)から得たスコアが最も高い第1の抗原特異的T細胞株を、患者に投与するために選択する工程(g)を含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、幹細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、実質臓器を含み得る。いくつかの実施形態において、実質臓器は、腎臓である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、骨髄を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような患者によって受け取られた移植材料は、幹細胞、実質臓器および骨髄を含み得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、第1の抗原特異的T細胞株をドナーバンクから選択する方法の工程(g)において選択された第1の抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、第1の抗原特異的T細胞株の投与は、移植片対宿主病(GVHD)をもたらさない。いくつかの実施形態において、第1の抗原特異的T細胞株の投与は、ウイルス感染症を処置するための投与であり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原特異的T細胞株の投与は、腫瘍を処置するための投与であり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原特異的T細胞株の投与は、移植前の原発性免疫不全に対する投与であり得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、第2の抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含み得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株と同じドナーバンクから選択され得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株とは異なるドナーミニバンクから選択され得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株以外のドナーバンクに残っているすべてのT細胞株を用いて、本明細書中に記載されるようなドナーバンクから第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を反復することによって選択され得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が処置有効性を示した後に、患者に投与され得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が処置有効性を示さなかった後に、患者に投与され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、ウイルス感染症に対するものであり得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者からの感染のウイルス血症の消失に基づいて計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者からの感染のウイルス尿症の消失(viruric resolution)に基づいて計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者由来のサンプル中のウイルス量の消失に基づいて計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、感染のウイルス血症の消失、感染のウイルス尿症の消失、および患者由来のサンプル中のウイルス量の消失に基づいて計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、抗原特異的T細胞株の投与後に計測され得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、サンプルは、患者由来の組織サンプルから選択され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、患者由来の体液サンプルから選択され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、患者由来の脳脊髄液(CSF)から選択され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、患者由来の気管支肺胞洗浄(BAL)から選択され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、患者由来の便から選択され得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、患者由来の組織サンプル、体液サンプル、CSF、BALおよび便から選択され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者の末梢血中の検出可能なウイルス量をモニタリングすることによって計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、肉眼的血尿の消失を含み得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、CTCAE-PROまたは患者および/もしくは臨床医が報告するアウトカムを調べる類似の評価ツールによって計測される出血性膀胱炎症状の低減を含み得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、癌に対するものである。いくつかの実施形態において、処置有効性は、抗原特異的T細胞株の投与後の腫瘍サイズの減少に基づいて計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、疾患負荷のマーカーをモニタリングすることによって計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者の末梢血/血清中の検出可能な腫瘍溶解をモニタリングすることによって計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者の末梢血/血清中の検出可能な疾患負荷および腫瘍溶解のマーカーをモニタリングすることによって計測され得る。いくつかの実施形態において、処置有効性は、画像診断を介して腫瘍の状態をモニタリングすることによって計測され得る。他の実施形態において、処置有効性は、患者の末梢血/血清中の検出可能な疾患負荷のマーカーと腫瘍溶解と、画像診断を介した腫瘍の状態との組み合わせをモニタリングすることによって計測され得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が有害臨床反応をもたらした後に患者に投与され得る。いくつかの実施形態において、有害臨床反応には、移植片対宿主病(GVHD)が含まれ得る。いくつかの実施形態において、有害臨床反応には、炎症反応が含まれ得る。1つの実施形態において、炎症反応には、サイトカイン放出症候群が含まれ得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、炎症反応は、1つ以上の症状または徴候を観察することによって検出され得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状または徴候には、全身症状が含まれ得る。いくつかの実施形態において、全身症状は、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、疲労、悪心、嘔吐または関節痛であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状または徴候には、低血圧を含む血管症状が含まれ得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状または徴候には、心臓症状が含まれ得る。1つの実施形態において、心臓症状は、不整脈である。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状または徴候には、呼吸困難が含まれ得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状または徴候には、腎症状が含まれ得る。1つの実施形態において、腎症状は、腎不全である。1つの実施形態において、腎症状は、尿毒症である。いくつかの実施形態において、1つ以上の症状または徴候には、検査症状(laboratory symptoms)が含まれ得る。1つの実施形態において、検査症状は、凝固障害および血球貪食性リンパ組織球症様症候群であり得る。
【0076】
本開示は、抗原特異的T細胞の第1のドナーミニバンクの構築において使用するのに適したドナーを同定する方法を提供する。本開示は、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを決定するかまたは決定されている工程(a)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者のHLAタイプを決定するかまたは決定されている工程(b)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプと、第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者のHLAタイプとを比較する工程(c)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、このパラグラフに記載されているような工程(d)における比較に基づいて、第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のアレルが適合する第1のドナープール由来のドナーと定義される第1の最適合ドナーを決定する工程(d)を含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記方法は、第1のドナーミニバンクに含めるために第1の最適合ドナーを選択する工程(e)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナープールから第1の最適合ドナーを除去し、それにより、第1の最適合ドナーを除く第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程(f)を含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、第1の複数の見込み患者から、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去する工程(g)を含み得る。いくつかの実施形態において、工程(g)は、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得ることを含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記方法は、工程(f)および(g)に従って、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者を用いて、工程(c)~(g)をさらに1回以上反復する工程(h)を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の最適合ドナーが、工程(e)に従って選択されるたびに、その最適合ドナーが、工程(f)に従ってそれぞれのドナープールから除去される。いくつかの実施形態において、次の最適合ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、工程(g)に従って次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者がそれぞれの複数の見込み患者から除去される。いくつかの実施形態において、工程(h)は、第1のドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数を、その方法の各サイクル後に1ずつ増加させる。いくつかの実施形態において、工程(h)は、選択された最適合ドナーとのHLA適合に従ってその方法の各サイクル後に患者集団内の複数の見込み患者の数を減少させることを含み得る。いくつかの実施形態において、工程(c)~(g)は、第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージが複数の見込み患者に残るまで反復され得る。いくつかの実施形態において、工程(c)~(g)は、ドナープールにドナーが残らなくなるまで反復され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、本開示は、パラインフルエンザウイルス3型(PIV-3)由来の少なくとも1つの第1の抗原および1つ以上の第2のウイルス由来の少なくとも1つの第2の抗原を含む複数のウイルス抗原を含むドナーミニバンクまたは複数のドナーミニバンクでできたドナーバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与することを提供する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの第2の抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの第2の抗原は、インフルエンザである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの第2の抗原は、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、難治性ウイルス感染症を有する患者において使用するためのドナーバンクの選択プロセスの全体的な概要を表している。略語:HLA:ヒト白血球抗原。HSCT:造血幹細胞移植。
【0081】
図2図2は、ドナー選択プロセスの一部を表している。各ドナーを患者集団と比較して、2アレルという最低閾値でのHLA適合に基づいて抗原特異的T細胞株によって患者の大部分に対応するドナーを特定する。
【0082】
図3図3は、ドナー選択プロセスの一部を表している。患者の大部分に対応するドナーは、(i)抗原特異的T細胞株作製の一次選考を通過し;(ii)全体のドナープールから除去され;(iii)このドナーによって対応されるすべての患者が、患者集団から除去される。
【0083】
図4図4は、ドナー選択プロセスの一部を表している。図2に記載されたのと同じ工程であって、残りの患者を最もカバーするドナーを特定し、次いで、その後の考慮からそのドナーと対応される患者の両方を除去する工程を反復する。
【0084】
図5図5は、ドナー選択プロセスの一部を表している。図3に記載されたのと同じ工程であって、残りの患者を最もカバーするドナーを特定し、次いで、その後の考慮からそのドナーと対応される患者の両方を除去する工程を反復する。
【0085】
図6図6は、ドナー選択プロセスの一部を表している。図2に記載されたのと同じ工程であって、残りの患者を最もカバーするドナーを特定し、次いで、その後の考慮からそのドナーと対応される患者の両方を除去する工程を反復する。
【0086】
図7図7は、ドナー選択プロセスの一部を表している。図3に記載されたのと同じ工程であって、残りの患者を最もカバーするドナーを特定し、次いで、その後の考慮からそのドナーと対応される患者の両方を除去する工程を反復する。
【0087】
図8図8は、ドナー選択プロセスの一部を表している。図2に記載されたのと同じ工程であって、残りの患者を最もカバーするドナーを特定し、次いで、その後の考慮からそのドナーと対応される患者の両方を除去する工程を反復する。
【0088】
図9図9は、ドナー選択プロセスの一部を表している。図3に記載されたのと同じ工程であって、残りの患者を最もカバーするドナーを特定し、次いで、その後の考慮からそのドナーと対応される患者の両方を除去する工程を反復する。
【0089】
図10図10は、患者の少なくとも95%をカバーする(患者mおよびkだけが適合しない)ミニバンク(ドナー2、3、5および6を含む)の作製を示している。
【0090】
図11図11は、抗原特異的T細胞株の製造の一般概念を示している。
【0091】
図12図12は、抗原特異的T細胞株の製造のフローチャートを示している。
【0092】
図13図13は、IFN-γ ELISPOTアッセイを用いて評価したときのAdv、CMV、EBV、BKVおよびHHV6に対する抗原特異的T細胞株の効力を示している。
【0093】
図14図14は、Adv、CMV、EBV、BKVおよびHHV6に対して効力のある抗原特異的T細胞株と効力のない抗原特異的T細胞株とを区別するための効力閾値の定義を示している。
【0094】
図15図15は、効力のある抗原特異的T細胞株での処置に成功した20人のBK-HC患者における、抗原特異的T細胞株の効力と臨床的有用性との相関を示している。T細胞株の効力が無いことと、処置後の患者におけるBKウイルス濃度の上昇とが相関している。
【0095】
図16図16は、効力閾値を超える抗原特異的T細胞株の使用と、BKウイルスに対する臨床的有用性との相関関係を示しており、処置後にBKウイルスレベルが全体的に低下していることを示している。
【0096】
図17A】作製されたCMVST株の特色およびスクリーニングされた被験体との適合度。トリパンブルー排除法を用いた細胞数に基づいて20日間にわたって達成されたCMVSTのT細胞拡大(n=8)。
図17B】作製されたCMVST株の特色およびスクリーニングされた被験体との適合度。凍結保存の当日における拡大されたCMVST株の表現型(平均±SEM、n=8)。
図17C】作製されたCMVST株の特色およびスクリーニングされた被験体との適合度。IE1抗原およびpp65抗原を網羅するペプミックスでCMVSTを一晩刺激した後のIFN-γ ELISpotアッセイによって測定されたときの抗原特異的T細胞の頻度。結果は、プレーティングした2×10VSTあたりのスポット形成細胞(SFC)として報告されている。合計≧30SFC/2×10を有したCMVST株を陽性とみなした(n=8)。
図17D】作製されたCMVST株の特色およびスクリーニングされた被験体との適合度。スクリーニングされた患者のレシピエントHLAと臨床で使用するために特定されたCMVST株とで適合するHLA抗原の数(合計8つのうち)(n=29)。
【0097】
図18】サイトメガロウイルス(CMV)に感染した個々の患者における処置のアウトカム。CMVSTを注入する2週間前(-2週目に最も近いウイルス量レベル)、注入の直前(pre)および注入後(post)(2、4および6週目)の患者の血漿中CMVウイルス量(IU/mL)の描写。矢印は注入時点を示している。
【0098】
図19A】インビボにおけるCMV特異的T細胞の頻度。IE1およびpp65ウイルスペプミックスで一晩刺激した後のIFN-γ ELISpotアッセイによって計測したときの注入前(pre)および注入後(post)の末梢血中のCMVSTの頻度。結果は、投入した5×10細胞あたりのスポット形成細胞(SFC)(平均±SEM、n=10)として表現されている。
図19B】インビボにおけるCMV特異的T細胞の頻度。個々の患者における注入されたCMVSTの持続。CMVST株にしかないHLA抗原またはレシピエントとCMVST株とで共有されるHLA抗原に限定されるエピトープ特異的CMVペプチドで刺激した後のIFN-γ ELISpotアッセイによって計測したときの末梢血中のT細胞の頻度。
【0099】
図20A図20は、健康ドナーからのポリクローナルマルチ-R-VSTの作製例を示している。(A)は、マルチ-R-VST作製プロトコルの概略図を示している。
図20B図20は、健康ドナーからのポリクローナルマルチ-R-VSTの作製例を示している。(B)は、トリパンブルー排除法を用いた細胞数に基づいて10~13日間にわたって達成された拡大倍率を示している(n=12)。
図20C図20は、健康ドナーからのポリクローナルマルチ-R-VSTの作製例を示している。(C)は、拡大された細胞の表現型を示している(平均値±SEM、n=12)。
図20D図20は、健康ドナーからのポリクローナルマルチ-R-VSTの作製例を示している。(D)は、拡大された細胞の表現型を示している(平均値±SEM、n=12)。
【0100】
図21図21は、拡大されたCD4+T細胞集団内の制御性T細胞(Treg;CD4+CD25+FoxP3+)の検出が最小だったことを示している(平均値±SEM、n=8)。
【0101】
図22A図22は、マルチ-R-VSTの特異性および濃縮を示している。(A)は、各標的ウイルス由来の個々の刺激抗原に曝露した後の、拡大されたT細胞株内のウイルス反応性T細胞の特異性を示している。データは、平均値±SEM SFC/2×10として表されている(n=12)。
図22B図22は、マルチ-R-VSTの特異性および濃縮を示している。(B)は、特異性の濃縮倍率を表している(PBMC 対 マルチ-R-VST;n=12)。
図22C図22は、マルチ-R-VSTの特異性および濃縮を示している。(C)は、1人の代表的なドナーにおけるウイルス刺激後のCD4ヘルパーT細胞(上)およびCD8細胞傷害性T細胞(下)からのICSによって評価したときのIFNy産生を示している(ドットプロットはCD3+細胞についてゲーティングされたもの)。
図22D図22は、マルチ-R-VSTの特異性および濃縮を示している。(D)は、スクリーニングされた9人のドナーの要約結果を示している(平均値±SEM)。
【0102】
図23図23は、個々の刺激抗原(インフルエンザ、RSV、hMPVおよびPIV-3)に応答するドナー由来VST株の数を示している。
【0103】
図24図24は、各標的ウイルス由来のプールされた刺激抗原に滴定濃度で曝露した後の拡大されたT細胞株内のウイルス反応性T細胞の特異性を示している。データは、平均値±SEM SFC/2×10として表されている(n=7)。
【0104】
図25図25は、各標的ウイルス由来の個々の刺激抗原に曝露した後の健康ドナーの末梢血中のGARV特異的T細胞の頻度を示している。データは、平均値±SEM SFC/5×10として表されている(n=12)。
【0105】
図26図26は、末梢血GARV特異的前駆体が主にCD4+コンパートメント内に検出されることを示している。各標的ウイルス由来の個々の刺激抗原に曝露した後の健康ドナーの末梢血から単離され、磁気ソーティングされたCD4+およびCD8+T細胞集団内のGARV特異的T細胞の頻度がここに示されている。データは、平均値±SEM SFC/5×10として表されている(n=4)。
【0106】
図27A図27は、マルチ-R-VSTがポリクローナルであり、多機能であることを示している。(A)は、1人の代表的なドナーにおける、ICSによって評価したときのCD3+T細胞からのIFNyとTNFaとの二重産生を示している。
図27B図27は、マルチ-R-VSTがポリクローナルであり、多機能であることを示している。(B)は、スクリーニングされた9人のドナーの要約結果を示している(平均値±SEM)。
図27C図27は、マルチ-R-VSTがポリクローナルであり、多機能であることを示している。(C)は、マルチプレックスビーズアレイによって計測したときのマルチ-R-VSTのサイトカインプロファイルを示している。
図27D図27は、マルチ-R-VSTがポリクローナルであり、多機能であることを示している。(D)では、EllspotアッセイによってグランザイムBの産生を評価している。結果は、SFC/2×10投入VSTとして報告されている(平均値±SEM、n=9)。
【0107】
図28A図28は、マルチ-R-VSTが、ウイルスに感染した標的にもっぱら反応性であることを示している。(A)には、ペプミックスでパルスされた自己PHA芽球を標的とし(E:T 40:1;n=8)、負荷されていないPHA芽球をコントロールとして使用して、標準的な4時間のCr51放出アッセイによって評価したマルチ-R-VSTの細胞溶解能力が図示されている。結果は、特異的溶解のパーセンテージとして表されている(平均値±SEM)。
図28B図28は、マルチ-R-VSTが、ウイルスに感染した標的にもっぱら反応性であることを示している。(B)は、Cr51放出アッセイによって評価したとき、マルチ-R-VSTが、感染していない自己PHA芽球または同種異系PHA芽球に対して活性を示さないことを実証している。
【0108】
図29図29は、ペプミックスでパルスされた自己PHA芽球を標的とし(E:T 40:1、20:1、10:1、5:1)、負荷されていないPHA芽球をコントロールとして使用して、標準的な4時間のCr51放出アッセイによって評価したマルチ-R-VSTの細胞傷害活性を示している。結果は、特異的溶解のパーセンテージとして表されている(平均値±SEM、n=8)。
【0109】
図30A図30は、HSCTレシピエントの末梢血中のRSV特異的T細胞およびhMPV特異的T細胞の検出を示している。3つの感染症に関する2人のHSCTレシピエントから単離されたPBMCを、読出しとしてIFNy Ellspotを用いて感染ウイルスに対する特異性について試験した。(A)は、制御されたRSV関連URTIを有する2人の患者の結果を示しており、その制御は、内在性のRSV特異的T細胞の検出可能な増加と同時に起きていた。ALC:絶対リンパ球数。
図30B図30は、HSCTレシピエントの末梢血中のRSV特異的T細胞およびhMPV特異的T細胞の検出を示している。3つの感染症に関する2人のHSCTレシピエントから単離されたPBMCを、読出しとしてIFNy Ellspotを用いて感染ウイルスに対する特異性について試験した。(B)は、制御されたRSV関連URTIを有する2人の患者の結果を示しており、その制御は、内在性のRSV特異的T細胞の検出可能な増加と同時に起きていた。ALC:絶対リンパ球数。
図30C図30は、HSCTレシピエントの末梢血中のRSV特異的T細胞およびhMPV特異的T細胞の検出を示している。3つの感染症に関する2人のHSCTレシピエントから単離されたPBMCを、読出しとしてIFNy Ellspotを用いて感染ウイルスに対する特異性について試験した。(C)は、hMPV-LRTIのクリアランスおよび内在性のhMPV特異的T細胞の拡大を示している。ALC:絶対リンパ球数。
【0110】
図31A図31は、HSCTレシピエントの末梢血中のRSV特異的T細胞およびPIV3特異的T細胞の検出を示している。3つの感染症に関する3人のHSCTレシピエントから単離されたPBMCを、読出しとしてIFNy Ellspotを用いて感染ウイルスに対する特異性について試験した。(A)は、制御されたRSV関連およびPIV3関連のURTIおよびLRTIを有する2人の患者の結果を示しており、その制御は、内在性のウイルス特異的T細胞の検出可能な増加と同時に起きていた。ALC:絶対リンパ球数。
図31B図31は、HSCTレシピエントの末梢血中のRSV特異的T細胞およびPIV3特異的T細胞の検出を示している。3つの感染症に関する3人のHSCTレシピエントから単離されたPBMCを、読出しとしてIFNy Ellspotを用いて感染ウイルスに対する特異性について試験した。(B)は、制御されたRSV関連およびPIV3関連のURTIおよびLRTIを有する2人の患者の結果を示しており、その制御は、内在性のウイルス特異的T細胞の検出可能な増加と同時に起きていた。ALC:絶対リンパ球数。
図31C図31は、HSCTレシピエントの末梢血中のRSV特異的T細胞およびPIV3特異的T細胞の検出を示している。3つの感染症に関する3人のHSCTレシピエントから単離されたPBMCを、読出しとしてIFNy Ellspotを用いて感染ウイルスに対する特異性について試験した。(C)は、ウイルスに対してT細胞応答を開始しなかった、進行中のPIV3関連の重症URTIを有する患者の結果を示している。ALC:絶対リンパ球数。
【0111】
図32図32は、54人の見込み患者を用いたPOC研究において、臨床で使用するためのシミュレーションで特定されたViralym-M株のHLA適合を示している。
【0112】
図33図33は、Baylor’s Center for Cell and Gene Therapyにおいて>650人の同種異系HSCT患者集団全体を処置する際の、臨床で使用するためのシミュレーションで特定されたViralym-M株のHLA適合を示している。
【0113】
図34図34は、HLA不適合の標的に対する細胞傷害活性を計測することによって評価したとき、マルチウイルス特異的T細胞(Viralym-M細胞)のアロ反応性が無かったことを示している。
【0114】
図35図35は、奏効とHLAの適合度との関係を示している。CR:完全奏効;PR:部分奏効;NR:非応答者。
【0115】
図36図36は、臨床試験の患者集団全体にわたる、HLA-クラスI、II、またはクラスIとクラスIIの両方におけるHLA適合の程度を示している。
【0116】
図37図37は、HLA適合アレル(HLA-クラスI、II、またはクラスIとクラスIIの両方)に基づく12週目の奏効を示している。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明の詳細を下記の添付の説明に示す。本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、ここでは例証的な方法および材料を説明する。本発明の他の特徴、目的および利点は、この説明および請求項から明らかになるだろう。明細書および添付の請求項では、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、単数形は、複数形も含む。別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本明細書において引用されるすべての特許および刊行物は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
一般的な方法
【0118】
本発明の実施は、別段示されない限り、当該分野の技術範囲内である、細胞培養、分子生物学(組換え手法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の手法を用いる。そのような手法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,third edition(Sambrook et al.,2001)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(P.Herdewijn,ed.,2004);Animal Cell Culture(R.I.Freshney),ed.,1987);Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir & C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller & M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Manual of Clinical Laboratory Immunology(B.Detrick,N.R.Rose,and J.D.Folds eds.,2006);Immunochemical Protocols(J.Pound,ed.,2003);Lab Manual in Biochemistry:Immunology and Biotechnology(A.Nigam and A.Ayyagari,eds.2007);Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques(Ivan Lefkovits,ed.,1996);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane,eds.,1988)などの文献において十分に説明されている。
定義
【0119】
別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を説明する。本発明のために、以下の用語を下記で定義する。
【0120】
本明細書中で使用されるとき、語「a」または「an」の使用は、請求項および/または明細書において用語「~を含む」とともに使用されるとき、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味とも一致する。例としては、「エレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは1つより多いエレメントを意味する。本発明のいくつかの実施形態は、本発明の1つ以上のエレメント、方法工程および/または方法からなり得るかまたは本質的になり得る。本明細書中に記載される任意の方法または組成物が、本明細書中に記載される他の任意の方法または組成物に関して実行され得ることが企図される。
【0121】
ある数値の直前の用語「約」は、その数値の±0%~10%、±0%~10%、±0%~9%、±0%~8%、±0%~7%、±0%~6%、±0%~5%、±0%~4%、±0%~3%、±0%~2%、±0%~1%、±0%~1%未満、またはこれらの中の他の任意の値もしくは値の範囲を意味する。例えば、「約40」は、40の±0%~10%(すなわち、36~44)を意味する。
【0122】
用語「および/または」は、別段示されない限り、「および」または「または」のいずれかを意味するために本開示において使用される。
【0123】
本明細書全体にわたって、文脈が他のことを要求しない限り、語「~を含む(comprise)」、「~を含む(comprises)」および「~を含む(comprising)」は、記載の工程もしくはエレメントまたは工程群もしくはエレメント群を包含するが、他の任意の工程もしくはエレメントまたは工程群もしくはエレメント群を排除しないことを暗に示すと理解される。「~からなる」は、句「~からなる」の前に何が置かれたとしても、「~を含み、それらに限定される」ことを意味する。したがって、句「~からなる」は、列挙されたエレメントが、不可欠または必須であること、および他のエレメントが存在しない可能性があることを示す。「~から本質的になる」は、この句の前に列挙される任意のエレメント、および列挙されたエレメントについて本開示に明示される活性または作用を干渉しないまたはそれらに寄与しない他のエレメントに限定されるエレメントを含むことを意味する。したがって、句「~から本質的になる」は、列挙されたエレメントが、不可欠または必須であるが、他のエレメントは自由選択であり、それらが列挙されたエレメントの活性または作用に実質的に影響するか否かに応じて、存在してもよいか、または存在してはならないことを示す。
【0124】
用語「障害」は、疾患、状態または疾病を意味するために本開示において使用され、別段示されない限り、それらの用語と交換可能に使用される。
【0125】
「有効量」は、治療薬(例えば、本明細書中に開示される抗原特異的T細胞製品または抗原特異的T細胞株)に関連して使用されるとき、本明細書中に記載されるような被験体における疾患または障害を処置または予防するために有効な量である。
【0126】
用語「例えば(e.g.)」は、「例えば(for example)」を意味するために本明細書中で使用され、記載の工程もしくはエレメントまたは工程群もしくはエレメント群を包含するが、他の任意の工程もしくはエレメントまたは工程群もしくはエレメント群を排除しないことを暗に示すと理解される。
【0127】
「自由選択の」または「必要に応じて」は、その後に記載される事象または状況が起きるかもしれないし、起きないかもしれないこと、およびその説明にはその事象または状況が起きる場合および起きない場合が含まれることを意味する。
【0128】
本明細書中で使用される用語「腫瘍関連抗原」とは、腫瘍細胞上で産生/発現され、かつ宿主において免疫応答を引き起こす、抗原性物質のことを指す。
【0129】
例示的な腫瘍抗原としては、少なくとも以下が挙げられる:腸癌の場合の癌胎児抗原(CEA);卵巣癌の場合のCA-125;乳癌の場合のMUC-1または上皮性腫瘍抗原(ETA)またはCA15-3;悪性黒色腫の場合のチロシナーゼまたはメラノーマ関連抗原(MAGE);および種々のタイプの腫瘍の場合の、rasの異常産物であるp53;ヘパトーマ、卵巣癌または精巣癌の場合のアルファフェトプロテイン;精巣癌を有する男性の場合の、hCGのベータサブユニット;前立腺癌の場合の前立腺特異抗原;複数のミエローマおよび一部のリンパ腫の場合のベータ2ミクログロブリン;直腸結腸癌、胆管癌および膵癌の場合のCA19-9;肺癌および前立腺癌の場合のクロモグラニンA;メラノーマ、軟部組織肉腫ならびに乳癌、結腸癌および肺癌の場合のTA90。腫瘍抗原の例は、当該分野で、例えばCheever et al.,2009(その全体が参照により本明細書中に援用される)において、公知である。
【0130】
腫瘍抗原の具体例としては、例えば少なくともCEA、MHC、CTLA-4、gp100、メソテリン、PD-L1、TRP1、CD40、EGFP、Her2、TCRアルファ、trp2、TCR、MUC1、cdr2、ras、4-1BB、CT26、GITR、OX40、TGF-α.WT1、MUC1、LMP2、HPV E6 E7、EGFRvIII、HER-2/neu、MAGE A3、p53非変異体、NY-ESO-1、PSMA、GD2、Melan A/MART1、Ras変異体、gp100、p53変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr-abl、チロシナーゼ、サバイビン、PSA、hTERT、EphA2、PAP、ML-IAP、AFP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲンレセプター、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソテリン、PSCA、MAGE A1、sLe(a)、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6-AML、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン(Legumain)、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-β、MAD-CT-2およびFos関連抗原1が挙げられる。
【0131】
用語「ウイルス抗原」は、本明細書中で使用されるとき、天然におけるタンパク質である抗原のことを指し、ウイルス粒子と密接に関連する。具体的な実施形態において、ウイルス抗原は、コートタンパク質である。
【0132】
ウイルス抗原の具体例としては、EBV、CMV、アデノウイルス、BK、JCウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、ムンプス、麻疹、ヒトメタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、メルケル細胞ウイルス、単純ヘルペスウイルス、HPV、HBV、HIV、HTLV1、HHV8および西ナイルウイルス、ジカウイルス、エボラから選択されるウイルスが少なくとも挙げられる。
【0133】
用語「ウイルス特異的T細胞」または「VST」または「ウイルス特異的T細胞株」または「VST細胞株」は、被験体の外で拡大および/または製造された、かつ目的のウイルスに対して特異性および効力を有する、T細胞株、例えば、本明細書中に記載されるようなT細胞株のことを指すために本明細書中で交換可能に使用される。VSTは、いくつかの実施形態において、モノクローナルまたはオリゴクローナルであり得る。特定の実施形態において、VSTは、ポリクローナルである。本明細書中に記載されるとき、いくつかの実施形態では、あるウイルス抗原またはいくつかのウイルス抗原が、末梢血単核球中の天然のT細胞またはメモリーT細胞に対して提示され、それに応答して、それらのウイルス抗原に対して特異性を有する天然のCD4+および/またはCD8+T細胞集団が拡大する。例えば、好適なドナーから得られたPBMCのサンプル中のEBVに対するウイルス特異的T細胞は、EBV抗原(例えば、必要に応じてMHCによって提示される、EBV抗原由来のペプチドエピトープ)を認識(に結合)でき、これは、EBVに特異的なT細胞の拡大を引き起こし得る。別の例では、好適なドナーから得られたPBMCのサンプル中のBKウイルスに対するウイルス特異的T細胞、PBMCのサンプル中のアデノウイルスに対するウイルス特異的T細胞は、それぞれ、BKウイルス抗原およびアデノウイルス抗原(例えば、必要に応じてMHCによって提示される、それぞれ、BKウイルス抗原およびアデノウイルス抗原由来のペプチドエピトープ)を認識し、それらに結合でき、これは、BKウイルスに特異的なT細胞およびアデノウイルスに特異的なT細胞の拡大を引き起こし得る。
【0134】
本明細書中で使用されるとき、用語「細胞治療製品」とは、被験体の外で拡大および/または製造された細胞株、例えば、本明細書中に記載されるような細胞株のことを指す。例えば、用語「細胞治療製品」は、培養において作製された細胞株を包含する。その細胞株は、エフェクター細胞を含み得るか、またはエフェクター細胞から本質的になり得る。その細胞株は、NK細胞を含み得るか、またはNK細胞から本質的になり得る。その細胞株は、T細胞を含み得るか、またはT細胞から本質的になり得る。例えば、用語「細胞治療製品」は、培養において作製された抗原特異的T細胞株を包含する。そのような抗原特異的T細胞株には、場合によっては、メモリーT細胞の拡大集団、ナイーブT細胞を刺激することによって作製されたT細胞の拡大集団、および操作されたT細胞(例えば、キメラT細胞レセプターまたは組換えT細胞レセプター、共刺激レセプターなどのような外来性タンパク質を発現するCAR-T細胞およびT細胞)の拡大集団が含まれる。特に、用語「細胞治療製品」は、いくつかの実施形態において、ウイルス特異的T細胞株または腫瘍特異的T細胞株(例えば、TAA特異的T細胞株)を含む。その細胞株は、モノクローナルまたはオリゴクローナルであり得る。特定の実施形態において、その細胞株は、ポリクローナルである。そのようなポリクローナル細胞株は、いくつかの実施形態において、多様な抗原特異性を有する細胞(例えば、抗原特異的T細胞)の複数の拡大集団を含む。例えば、用語「細胞治療製品」に包含される細胞株の非限定的な1つの例としては、T細胞の複数の拡大クローン集団(それらの少なくとも2つが、異なるウイルス抗原に対して特異性を有する)を含むウイルス特異的T細胞のポリクローナル集団が挙げられる。そのようなポリクローナルなウイルス特異的T細胞は、当該分野で公知であり、WO2011028531、WO2013119947、WO2017049291およびPCT/US2020/024726(これらの各々はその全体が参照により本明細書中に援用される)をはじめとした本発明者らが出願した様々な特許出願に開示されている。
【0135】
本明細書中で使用される用語「ドナーミニバンク」は、そのドナーミニバンクが、標的患者集団内の規定のパーセンテージの患者に対して十分に適合する少なくとも1つの細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含むように、多様なドナープールから集合的に得られる複数の細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含む細胞バンクのことを指す。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書中に記載されるドナーミニバンクは、標的患者集団(例えば、同種異系の造血幹細胞移植レシピエントまたは免疫無防備状態の被験体)の少なくとも95%に対して少なくとも1つの十分に適合する細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含む。本明細書中で使用される用語「ドナーバンク」は、複数のドナーミニバンクのことを指す。様々な実施形態では、「ドナーバンク」に含めるためのいくつかの冗長でないミニバンクを作製して、確実に1人の見込み患者が2つ以上の十分に適合する細胞治療製品を利用できるようにすることが有益である。細胞バンクは、凍結保存され得る。凍結保存の方法は、当該分野で公知であり、例えば、-70℃での、例えば、アクセスが規制されている領域における気相の液体窒素中での、細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)の貯蔵が挙げられ得る。細胞治療製品の別個のアリコートが、複数の有効な液体窒素デュアーの中の容器(例えば、バイアル)において調製され、保存され得る。容器(例えば、バイアル)は、検索を可能にするユニークな識別番号でラベルされ得る。
【0136】
本明細書中で使用されるとき、用語「患者」または「被験体」は、ヒト、飼育動物および家畜ならびに動物園の動物、競技用動物およびペット動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラット、モルモットまたは非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ヒヒまたはアカゲザル))をはじめとした任意の哺乳動物のことを指すために交換可能に使用される。1つの好ましい哺乳動物は、成人、小児および高齢者を含むヒトである。
【0137】
本明細書中で使用されるとき、用語「潜在ドナー」とは、本明細書中に開示される細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞)によって標的とされる抗原に対して血清陽性である個体(例えば、健康個体)のことを指す。いくつかの実施形態において、ドナープールに含めるのに適格であるすべての潜在ドナーが、標的抗原についてプレスクリーニングされ、かつ/または標的抗原に対して血清陽性とみなされる。
【0138】
用語「標的患者集団」は、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞製品)を必要とする複数の患者(または交換可能に「被験体」)を説明するために使用される。いくつかの実施形態において、この用語は、全世界の同種異系HSCT集団を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、全米の同種異系HSCT集団を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、ワールドワイドウェブアドレスbioinformatics.bethematchclinical.orgにおいて利用可能なNational Marrow Donor Program(NMDP)データベースに含まれるすべての患者を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、ワールドワイドウェブアドレス:ebmt.org/ebmt-patient-registryにおいて利用可能なEuropean Society for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)データベースに含まれるすべての患者を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、全世界の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、全米の16歳以下の小児の同種異系HSCT集団を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、全世界の5歳以下の小児の同種異系HSCT集団を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、全米の5歳以下の小児の同種異系HSCT集団を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、全世界の65歳以上の個体の同種異系HSCT集団を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、全米の65歳以上の個体の同種異系HSCT集団を包含する。
【0139】
本明細書中で使用される用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、「処置」などは、別段示されない限り、そのような用語が適用される疾患、障害もしくは状態のプロセスまたはそのような疾患、障害もしくは状態の1つ以上の症状を逆転させる、軽減する、阻害する、あるいはその疾患、障害もしくは状態またはそのような疾患、障害もしくは状態の1つ以上の症状を予防することを指し、その症状もしくは合併症の発生を予防するための本明細書中に記載される組成物、薬学的組成物もしくは剤形のいずれかを投与すること、またはその症状もしくは合併症を軽減すること、またはその疾患、状態もしくは障害を無くすことを含む。場合によっては、処置は、治癒的または回復的である。
【0140】
いくつかの実施形態における用語「第三者」への本明細書中での言及は、ドナーと同じではない被験体(例えば、患者)を意味する。したがって、例えば、「第三者の抗原特異的T細胞製品」(例えば、第三者のVST製品)で被験体を処置するという言及は、その製品がドナー組織(例えば、ドナーの血液から単離されたPBMC)に由来すること、および被験体(例えば、患者)がドナーと同じ被験体ではないことを意味する。様々な実施形態において、同種異系細胞治療(例えば、同種異系抗原特異的T細胞治療)は、「第三者」細胞治療である。
【0141】
被験体に関する用語「予防する(prevent)」または「予防する(preventing)」とは、疾患または障害が被験体を苦しめないようにすることを指す。予防には、予防的処置が含まれる。例えば、予防は、ある被験体が疾患に苦しむ前に本明細書中に開示される化合物をその被験体に投与することを含み得、その投与は、被験体がその疾患に苦しめられないようにする。
【0142】
本明細書中で使用される用語「投与する(administering)」、「投与する(administer)」、「投与」などは、治療薬による処置を必要とする被験体にそのような作用物質を移す、送達する、導入するまたは輸送する任意の様式のことを指す。そのような様式としては、眼内投与、経口投与、局所投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮内投与、鼻腔内投与および皮下投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
用語「VST」は、ウイルス特異的T細胞を意味するために本明細書中で使用される。
【0144】
様々な実施形態において、用語「十分に適合する」は、所与の患者と所与の細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)とが、少なくとも2つのHLAアレルを共有する(すなわち少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合する)場合を説明するために、その患者および細胞治療製品に関して本明細書中で使用される。
【0145】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、この詳細な説明から当業者には本発明の趣旨および範囲内での様々な変更および改変が明らかになるので、その詳細な説明および具体例は、本開示の具体的な実施形態を示すが、単に例証として与えられることを理解するべきである。
【0146】
以下の議論は、本発明の様々な実施形態を対象にしている。用語「発明」は、任意の特定の実施形態のことを指すと意図されていないし、本開示の範囲を限定すると意図されていない。これらの実施形態のうちの1つ以上が好ましい場合もあるが、開示された実施形態は、請求項を含む本開示の範囲を限定するものとして解釈または使用されるべきでない。さらに、当業者であれば、以下の説明が広範な適用を有し、任意の実施形態の議論が、その実施形態を例示することだけを意味し、請求項を含む本開示の範囲がその実施形態に限定されることを暗示すると意図されていないことを理解するだろう。
概要
【0147】
本開示の実施形態は、複数の細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含むドナーミニバンクおよび複数のそのようなドナーミニバンクから構成されるドナーバンク、ならびに疾患または障害を処置するための養子免疫療法において使用するために、そのようなドナーミニバンク、ドナーバンク、およびそれらに含まれる細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を作製し、使用する(単独で、またはユニバーサル細胞治療製品として一緒に)方法を含む。
【0148】
特定の実施形態において、本開示は、確実に各ドナーミニバンクが、標的集団の所望のパーセンテージに対して少なくとも1つの十分に適合する細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含むように、ドナーミニバンクに含まれる細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)の構築において使用するための適切に多様なドナーセット(HLAタイピングに関して)を特定し、選択するための方法およびコンピュータ実装アルゴリズムを含む。本明細書中でさらに議論されるように、所与のミニバンク内の少なくとも1つの細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)に十分に適合する標的集団のパーセンテージは、そのミニバンクを構築するとき予め決定され得るパラメータであって、標的集団のHLAタイプおよびドナーミニバンクに含まれる細胞治療製品の数に基づき得るパラメータである。場合によっては、各ドナーミニバンクは、標的集団内の見込み患者の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%(これらの間のすべての範囲および部分的な範囲を含む)と十分に適合する少なくとも1つの細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含む。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法は、確実にドナーミニバンク内の少なくとも1つの細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)が所与の標的集団の95%以上と少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合するように、好適なドナー多様性(HLAタイピングに関して)を備えたそのようなドナーミニバンクの構築を可能にする。
【0149】
特定の実施形態において、そのようなドナーミニバンクに含まれるそのような細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)の作製において利用されるドナーは、標的患者集団の少なくとも95%が、ミニバンク内の少なくとも1つの細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)と2つ以上のHLAアレルにおいて適合するようにドナー間で十分なHLA多様性を確保するために、本明細書中に開示されるドナー選択方法を用いて慎重に選択される。本開示は、抗原特異的T細胞株(例えば、VST細胞株)などの、部分的にしかHLAが適合しない細胞治療が第三者において安全かつ有効であるという驚くべき発見に部分的に基づく。実際に、実施例1~3に示されるように、本発明者らの臨床試験では、わずか1つというHLAアレルしか適合しない被験体に投与されても、第三者のVSTが安全であり、有効であることが実証された(例えば、図35~37を参照のこと)。
【0150】
本開示は、ドナーミニバンク(および複数のそのようなドナーミニバンクを含むドナーバンク)を含み、そのドナーミニバンクは、本明細書中に開示されるドナー選択方法、ならびに疾患または障害を処置または予防するためにそのような細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株製品、例えば、VST製品を含む)を作製、投与および使用する方法を介して特定されたそのような好適な第三者供血者から回収された血液サンプルに由来するそのような細胞治療製品を含む。したがって、様々な実施形態において、そのようなドナーミニバンクは、本明細書中に開示されるドナー選択方法を用いて慎重に選択されたドナーから得られるサンプル(例えば、PBMCなどの単核球)に由来する複数の細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含み、そのための細胞治療製品は、標的患者集団の少なくとも95%が、ミニバンク内の少なくとも1つの細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)と2つ以上のHLAアレルにおいて適合するように、互いの間に十分なHLA多様性を備える。
【0151】
様々な実施形態において、本明細書中に開示されるドナーミニバンクに含まれる1つ以上の細胞治療製品が、本明細書中に開示される患者適合方法に基づいて、そのような治療を必要とする、十分に適合する被験体に投与される。いくつかの実施形態において、ドナーミニバンクに含まれる複数のそのような細胞治療製品は、本明細書中に開示される患者適合方法に基づいて、十分に適合する被験体に投与される。いくつかの実施形態では、ドナーミニバンクに含まれる複数のそのような細胞治療製品は、被験体のHLAタイプが既知であるか否かに関係なく、被験体に投与される。例えば、下記でさらに議論されるように、いくつかのそのような実施形態では、被験体には、ドナーミニバンクに含まれる各細胞治療製品が投与され得、そのミニバンクは、本明細書中に開示されるドナー選択方法を用いて慎重に選択されたドナーから得られたサンプル(例えば、PBMC)に由来する複数の細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を含むので、その細胞治療製品は、標的患者集団の少なくとも95%がそのミニバンク内の少なくとも1つの細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)と2つ以上のHLAアレルにおいて適合するように互いの間に十分なHLA多様性を備える。このように、ドナーミニバンクは、標的患者集団の>95%と適合性である(すなわち、十分に適合する)ユニバーサル細胞治療製品として働く。被験体に一緒に投与される複数の細胞治療製品は、連続的に投与されてもよいし、同時に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、複数の細胞治療製品は、合わせてプールされており、単一のユニバーサル細胞治療製品として被験体に投与される。ドナーミニバンクに含まれるそのような細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)のプールは、それを必要とする被験体への後の投与のために、細胞バンクに(例えば、凍結保存で)保存され得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されるドナーミニバンクの構築において利用されるドナーは、血清陽性についてプレスクリーニングされ、かつ/またはそれらのドナーは、健康である。本開示は、これらの抗原特異的T細胞株を、将来を見越して作製し、次いで凍結保存することで、感染ウイルスまたは複数のウイルスに対して実証できるほどの免疫活性を有する「既製品」としてすぐに利用できるようにする。
【0153】
本開示は、いくつかの実施形態において、ポリクローナルVSTが、製造プロセスにおいて生ウイルスの存在または組換えDNA技術を必要とすることなく作製され得ることを提供する。いくつかの実施形態では、T細胞集団を拡大し、ウイルス特異性について濃縮して、その結果、アロ反応性T細胞が減少する。本開示は、細胞治療(例えば、VST)ドナーバンクよびドナーミニバンクが、いくつかの実施形態において、同種異系HSCT患者集団(例えば、米国の同種異系HSCT患者集団)の>95%に対応できるようにデザインされ得ることも提供する。さらに、細胞治療(例えば、VST)ドナーバンクおよびドナーミニバンクは、ウイルス感染細胞に対して抗ウイルス効果を媒介するほど十分にHLAが適合している。例えば、十分にHLAが適合しているとは、少なくとも2つのアレルが適合していることを指す。本開示は、いくつかの実施形態において、被験体の幹細胞ドナーと部分的にだけ適合している細胞治療製品、例えばVSTを提供するが、そのような細胞治療製品(例えば、VST)は結果的に、幹細胞ドナーの細胞がレシピエント内で完全に再増殖する時点(この時点においてその細胞療法製品(例えばVST)は、再構成された患者の免疫系によって拒絶される)までしか循環しないと予想される。
【0154】
いくつかの実施形態において、VSTは、レシピエント内を最大1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間(これらの間のすべての範囲および部分的な範囲を含む)循環する。1つの実施形態において、VSTは、レシピエント内を最大12週間循環する。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクの構築において使用するのに適したドナーを同定する方法は、第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者と比較する工程(a)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような工程(a)における比較に基づいて、第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のHLAアレルが適合する第1のドナープール由来のドナーと定義される第1の最適合ドナーを決定する工程(図2)。いくつかの実施形態において、患者の大部分に対応するドナーは、(i)抗原特異的T細胞株作製の一次選考を通過し、(ii)全体のドナープールから除去され、(iii)このドナーによって対応されるすべての患者が、患者集団から除去される(図3)。いくつかの実施形態において、第1の最適合ドナーは、第1のドナーミニバンクのために選択される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、第1のドナープールから第1の最適合ドナーを除去し、それにより、第1の最適合ドナーを除く第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程(d)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような方法は、第1の複数の見込み患者から、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去し、それにより、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得る工程(e)を含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、第1のドナーミニバンクは、10人以下、9人以下、8人以下、7人以下、6人以下、5人以下、4人以下、3人以下または2人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含み、第1の見込み患者集団の>95%に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて患者のHLAタイプに適合する1つ以上の抗原特異的T細胞株を提供するのに十分なHLA多様性を備える。いくつかの実施形態において、第1のドナーミニバンクは、10人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含む。いくつかの実施形態において、第1のドナーミニバンクは、5人以下のドナーに由来する抗原特異的T細胞株を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、図4図10に示されているように、本方法は、工程(d)および(e)に従って、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者を用いて、本明細書中に記載されるような工程(a)~(e)をさらに少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも右回、少なくとも9回、少なくとも10回またはそれ以上反復する工程(f)を含む。いくつかの実施形態において、工程(a)~(e)は、第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージが複数の見込み患者に残るまで、またはドナープールにドナーが残らなくなるまで、反復される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような工程(a)~(e)は、第1の見込み患者集団の5%以下が複数の見込み患者に残るまで、工程(f)に従って繰り返される。図11に示されているように、選択されたドナーが、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%の見込み患者(これらの間のすべての範囲および部分的な範囲を含む)に相当し得るとき、第1のドナーミニバンクは完成となる。
【0158】
いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、少なくとも95人、少なくとも97人、少なくとも99人、少なくとも100人、少なくとも105人、少なくとも110人、少なくとも115人、少なくとも120人の患者を含む。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、少なくとも100人の患者を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるような工程(c)に従って追加の最適合ドナーが選択されるたびに、工程(d)に従ってそれぞれのドナープールからその追加の最適合ドナーが除去される。いくつかの実施形態では、次の最適合ドナーがそれぞれのドナープールから除去されるたびに、工程(e)に従ってそれぞれの複数の見込み患者から次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者が除去される。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるような工程(a)~(e)を反復することにより、第1のドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数が、上記方法の各サイクル後に1ずつ増加し、それにより、選択された最適合ドナーとのHLA適合に従って上記方法の各サイクル後に患者集団内の複数の見込み患者の数が減少する。いくつかの実施形態では、選択されたドナー集団が患者の少なくとも95%をカバーできたら、第1のドナーミニバンクは完成となる。いくつかの実施形態において、確実に各患者が複数の抗原特異的T細胞株の選択肢を有するように、本明細書中に記載されるのと同じストラテジーを用いて追加のミニバンクが構築され得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、上記の2つ以上のアレルは、少なくとも2つのHLAクラスIアレルを含む。いくつかの実施形態において、上記の2つ以上のアレルは、少なくとも2つのHLAクラスIIアレルを含む。いくつかの実施形態において、上記の2つ以上のアレルは、少なくとも1つのHLAクラスIアレルおよび少なくとも1つのHLAクラスIIアレルを含む。
【0162】
いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、全世界の同種異系HSCT集団を含む。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、全米の同種異系HSCT集団を含む。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、ワールドワイドウェブアドレスbioinformatics.bethematchclinical.orgにおいて利用可能なNational Marrow Donor Program(NMDP)データベースに含まれるすべての患者を含む。いくつかの実施形態において、第1の見込み患者集団は、ワールドワイドウェブアドレス:ebmt.org/ebmt-patient-registryにおいて利用可能なEuropean Society for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)データベースに含まれるすべての患者を含む。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、代用物を使用することによって決定することができ、ここで、前記代用物のサンプルサイズは、十分大きく、米国の同種異系のHSCT集団の代表でもある。例として、Baylor College of Medicine(Houston,TX)における666人の同種異系のHSCTレシピエントが、全米の同種異系HSCT集団の好適な代用物であり得る。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、代用物を使用することによって決定することができ、ここで、前記代用物のサンプルサイズは、十分大きく、全世界の同種異系のHSCT集団の代表である。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、3歳以下、4歳以下、5歳以下、6歳以下、7歳以下、8歳以下、9歳以下、10歳以下、11歳以下、12歳以下、13歳以下、14歳以下、15歳以下、16歳以下、17歳以下の小児を含む。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、5歳以下の小児を含む。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、16歳以下の小児を含む。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、90歳以上の個体を含む。いくつかの実施形態において、全世界の同種異系HSCT集団は、65歳以上の個体を含む。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、3歳以下、4歳以下、5歳以下、6歳以下、7歳以下、8歳以下、9歳以下、10歳以下、11歳以下、12歳以下、13歳以下、14歳以下、15歳以下、16歳以下、17歳以下の小児を含む。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、5歳以下の小児を含む。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、16歳以下の小児を含む。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、90歳以上の個体を含む。いくつかの実施形態において、全米の同種異系HSCT集団は、65歳以上の個体を含む。
【0163】
いくつかの実施形態において、ドナーバンクは、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の第1のミニバンクを構築することによって作製され得る。いくつかの実施形態において、ドナーバンクの作製は、本明細書中に記載されるような第1のミニマンクを構築するすべての工程を反復することを含む。いくつかの実施形態において、ドナーバンクの作製は、1つ以上の第2のミニバンクを構築するための1回以上の第2ラウンドを含む。
【0164】
各第2ラウンドを始める前に、新しいドナープールが作製される。いくつかの実施形態において、その新しいドナープールは、上記方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから、第1のドナーミニバンクを構築する先の各サイクルの工程(d)に従って除去された任意の最適合ドナーを差し引いた第1のドナープールを含む。いくつかの実施形態において、新しいドナープールは、第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団を含む。例えば、新しいドナープールは、第1のドナープールとは全く異なる潜在ドナーを含み得る。いくつかの実施形態において、新しいドナープールは、上記方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから、第1のドナーミニバンクを構築する先の各サイクルの工程(d)に従って除去された任意の最適合ドナーを差し引いた第1のドナープールと、第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団との組み合わせを含み得る。例として、新しいドナープールは、第1のドナープール由来の3人のドナーおよび第1のドナープールに含まれない7人の新しいドナーを含み得る。
【0165】
いくつかの実施形態において、各第2ラウンドを始める前に、ドナーバンクを構築する方法は、第1の見込み患者集団から第1の複数の見込み患者を再構築する工程を含む。いくつかの実施形態において、再構築は、先の各サイクルの工程(e)(すなわち、第1の複数の見込み患者から、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去し、それにより、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者を得る工程)に従って上記方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから以前に除去されたすべての見込み患者を戻すことを含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株の第1のドナーミニバンクを構築する方法は、ドナーミニバンクに含まれるそれぞれの各ドナーから得られた血液からMNCを単離するか、またはその血液から単離されたMNCを手に入れる工程を含む。ドナーバンクに含まれる各ドナー由来の血液が、収集され得る。いくつかの実施形態では、ドナーバンクに含まれる各ドナー由来の収集された血液中の単核球(MNC)が回収される。MNCおよびPBMCは、当業者に公知の方法を用いることによって単離される。例として、密度遠心分離(勾配)(フィコール-パーク)が、PBMCを単離するため使用され得る。他の例では、回収されたばかりの血液を含む細胞調製チューブ(CPT)およびSepMateチューブが、PBMCを単離するために使用され得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、MNCは、PBMCである。例として、PBMCには、リンパ球、単球および樹状細胞が含まれ得る。例として、リンパ球には、T細胞、B細胞およびNK細胞が含まれ得る。いくつかの実施形態において、本明細書中で使用されるMNCは、培養または凍結保存される。いくつかの実施形態において、それらの細胞を培養または凍結保存するプロセスは、培養中の細胞を1つ以上の抗原と好適な培養条件下で接触させて、抗原特異的T細胞を刺激し、拡大することを含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原には、1つ以上のウイルス抗原が含まれ得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の抗原には、1つ以上の腫瘍関連抗原が含まれ得る。他の実施形態において、1つ以上の抗原には、1つ以上のウイルス抗原と1つ以上の腫瘍関連抗原との組み合わせが含まれ得る。例えば、培養または凍結保存されたMNCまたはPMBCを、1つのアデノウイルス、CTLA-4およびgp100と接触させ得る。他の実施形態において、各抗原は、腫瘍関連抗原である。他の実施形態において、各抗原は、ウイルス抗原である。他の実施形態では、少なくとも1つの抗原がウイルス抗原であり、少なくとも1つの抗原が腫瘍関連抗原である。
【0168】
いくつかの実施形態において、上記細胞を培養または凍結保存するプロセスは、培養中の細胞を1つ以上の抗原由来の1つ以上のエピトープと好適な培養条件下で接触させることを含み得る。いくつかの実施形態において、MNCまたはPBMCを1つ以上の抗原または1つ以上の抗原由来の1つ以上のエピトープと接触させることにより、それぞれの各ドナーのMNCまたはPMBC由来の抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を刺激し、拡大する。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞株は、凍結保存され得る。
【0169】
いくつかの実施形態において、上記の1つ以上の抗原は、ホールタンパク質の形態であり得る。いくつかの実施形態において、上記の1つ以上の抗原は、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックスであり得る。いくつかの実施形態において、上記の1つ以上の抗原は、ホールタンパク質と、各抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含むペプミックスとの組み合わせであり得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、PBMCまたはMNCの培養は、気体透過性の培養表面を備える容器において行われる。1つの実施形態において、その容器は、気体透過性の部分を備える注入バッグ、または剛性容器である。1つの実施形態において、その容器は、GRexバイオリアクターである。1つの実施形態において、その容器は、本明細書中に記載されるようなPBMCまたはMNCの培養に適した任意の容器、バイオリアクターなどであり得る。
【0171】
いくつかの実施形態において、PBMCまたはMNCは、1つ以上のサイトカインの存在下において培養される。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL4である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL7である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、IL4およびIL7である。いくつかの実施形態において、サイトカインにはIL4およびIL7が含まれるが、IL2は含まれない。いくつかの実施形態において、サイトカインは、本明細書中に記載されるようなPBMCまたはMNCの培養に適したサイトカインの任意の組み合わせであり得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、MNCまたはPBMCの培養は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の異なるペプミックスの存在下において行われ得る。複数のペプチドであるペプミックスは、ある抗原の一部または配列全体を網羅する一連の重複ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、MNCまたはPBMCは、複数のペプミックスの存在下において培養され得る。この場合、各ペプミックスは、複数のペプミックス中の他の各ペプミックスによってカバーされる抗原とは異なる少なくとも1つの抗原をカバーする。いくつかの実施形態では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の異なる抗原が、複数のペプミックスによってカバーされる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なるウイルス由来の少なくとも1つの抗原が、複数のペプミックスによってカバーされる。図11および図12は、抗原特異的T細胞株を構築する一般的なGMP製造プロトコルの例を示している。
【0173】
いくつかの実施形態において、ペプミックスは、15merのペプチドを含む。いくつかの実施形態において、ペプミックスは、本明細書中に記載されるような方法に適したペプチドを含む。いくつかの実施形態において、抗原を網羅するペプミックス中のペプチドは、順に8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸重複する。いくつかの実施形態において、抗原を網羅するペプミックス中のペプチドは、順に11アミノ酸重複する。
【0174】
いくつかの実施形態において、1つ以上のペプミックス中のウイルス抗原は、EBV、CMV、アデノウイルス、BK、JCウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、ムンプス、麻疹、ヒトメタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、メルケル細胞ウイルス、単純ヘルペスウイルス、HPV、HIV、HTLV1、HHV8および西ナイルウイルス、ジカウイルス、エボラから選択されるウイルスに由来する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのペプミックスは、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)由来の抗原をカバーする。いくつかの実施形態において、ウイルスは、任意の好適なウイルスであり得る。
【0175】
いくつかの実施形態において、インフルエンザ抗原は、インフルエンザA抗原NP1であり得る。いくつかの実施形態において、インフルエンザ抗原は、インフルエンザA抗原MP1であり得る。いくつかの実施形態において、インフルエンザ抗原は、NP1とMP1との組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、RSV抗原は、RSV Nであり得る。いくつかの実施形態において、RSV抗原は、RSV Fであり得る。いくつかの実施形態において、RSV抗原は、RSV NとFとの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、hMPV抗原は、Fであり得る。いくつかの実施形態において、hMPV抗原は、Nであり得る。いくつかの実施形態において、hMPV抗原は、M2-1であり得る。いくつかの実施形態において、hMPV抗原は、Mであり得る。いくつかの実施形態において、hMPV抗原は、FとNとM2-1とMとの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、PIV抗原は、Mであり得る。いくつかの実施形態において、PIV抗原は、HNであり得る。いくつかの実施形態において、PIV抗原は、Nであり得る。いくつかの実施形態において、PIV抗原は、Fであり得る。いくつかの実施形態において、PIV抗原は、MとHNとNとFとの組み合わせであり得る。
【0176】
他の実施形態において、少なくとも1つのペプミックスは、EBV、CMV、アデノウイルス、BKおよびHHV6由来の抗原をカバーする。いくつかの実施形態において、EBV抗原は、LMP2、EBNA1、BZLF1およびそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態において、CMV抗原は、IE1、pp65およびそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態において、アデノウイルス抗原は、ヘキソン、ペントンおよびそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態において、BKウイルス抗原は、VP1、ラージTおよびそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態において、HHV6抗原は、U90、U11、U14およびそれらの組み合わせに由来する。
【0177】
いくつかの実施形態において、PBMCまたはMNCは、インフルエンザA抗原NP1およびインフルエンザA抗原MP1、RSV抗原NおよびF、hMPV抗原F、N、M2-1およびM、ならびにPIV抗原M、HN、NおよびFを網羅するペプミックスの存在下において培養される。いくつかの実施形態において、PBMCまたはMNCは、EBV抗原LMP2、EBNA1およびBZLF1、CMV抗原IE1およびpp65、アデノウイルス抗原ヘキソンおよびペントン、BKウイルス抗原VP1およびラージT、ならびにHHV6抗原U90、U11およびU14を網羅するペプミックスの存在下において培養される。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞は、抗原特異的細胞傷害性について試験される。
【0178】
図13は、アデノウイルス、CMV、EBV、BKVおよびHHV6に対する抗原特異的T細胞株のそれぞれの効力を、効力閾値より低いネガティブコントロールと比べて示している。これらのT細胞は、特異的なT細胞株の合格と不合格とを区別するための閾値である>30SFC/2×10投入VSTによって指摘されるように、5つすべてのウイルスに特異的である。>30SFC/2×10投入VSTという効力閾値は、内部ネガティブコントロールとして働く、標的ウイルスの1つ以上について血清陰性の(血清学的スクリーニングに基づいて)ドナーから作製されたT細胞株を用いた実験データに基づいて確立された(図14)。
【0179】
本開示は、本明細書中に記載されるようなミニバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含む、疾患または状態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、患者への投与に対して抗原特異的T細胞株を認定することに対する唯一の基準は、患者が、抗原特異的T細胞株の製造において使用されたMNCまたはPBMCを単離してきたドナーと少なくとも2つのHLAアレルを共有していることである。いくつかの実施形態において、本開示は、所与の患者への投与のためにドナーミニバンクから最も適した細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を特定するための方法を含む。いくつかの実施形態において、その患者は、造血幹細胞移植を受けたことがある。いくつかのそのような実施形態において、患者への投与に対して抗原特異的T細胞株を認定することに対する唯一の基準は、患者および患者の造血幹細胞ドナーが、抗原特異的T細胞株の製造において使用されたMNCまたはPBMCを単離してきたドナーと少なくとも2つの適合HLAアレルを共有していることである。いくつかの実施形態において、本開示は、造血幹細胞移植を受けたことがある所与の患者と幹細胞ドナー(またはダブル臍帯血移植の場合は複数のドナー)との間の、細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)に対するHLA適合の全レベルに基づいて、そのHSCT患者への投与のためにドナーミニバンクから最も適した細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)を特定するための方法を含む。その方法は、コンピュータアルゴリズムを用いて行われ得る。その方法のいくつかの実施形態では、患者のHLAタイプが入手され、記録に残される。幹細胞ドナーのHLAタイプ(または「移植HLA」)が入手され、記録に残される。HLA情報を入手した後、患者のHLAタイプと移植HLAタイプとを比較し、共有HLAアレルを特定する(図1の工程1~3)。図1の工程4によって、ドナーミニバンクを構成する個々の株のHLAタイプのアクセスが可能になる。ドナーミニバンクに含まれるそれぞれの各細胞治療製品(例えば、抗原特異的T細胞株)のHLAタイプを、工程3において特定された共有HLAアレルと比較する。そのような各比較によって、共有HLAアレルの数に基づいて数値スコア(1次スコア)を割り当てる(図1の工程5)。ゆえに、共有するアレルが多いほど、スコアが高くなる。さらに、アルゴリズムは、感染組織に相当する工程1において特定されたような患者のHLAタイプと、ドナーミニバンク内のそれぞれの各細胞治療製品のHLAタイプを比較する。そのような各比較によって、共有HLAアレルの数に基づいて数値スコア(2次スコア)を割り当てる(図1の工程6)。ゆえに、共有するアレルが多いほど、スコアが高くなる。この2次スコアには、1次スコアの50%の重みが付けられる。次いで、細胞バンク内の各株に対する1次スコアと2次スコアとを合算する(図1の工程7)。次いで、上記のランキングに基づいてスコアが最も高いT細胞組成物を、患者の処置のために選択する(図1の工程8)。
【0180】
いくつかの実施形態において、処置される疾患は、ウイルス感染症である。いくつかの実施形態において、処置される疾患は、癌である。いくつかの実施形態において、処置される状態は、免疫不全である。いくつかの実施形態において、免疫不全は、原発性免疫不全である。
【0181】
いくつかの実施形態において、患者は、免疫無防備状態である。本明細書中で使用されるとき、免疫無防備状態は、免疫系が弱くなっていることを意味する。例えば、免疫無防備状態の患者は、感染症および他の疾患と戦う能力が低下している。いくつかの実施形態において、患者は、その疾患もしくは状態または別の疾患もしくは状態を処置するためにその患者が受けた処置に起因して免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、免疫無防備状態の原因は、年齢に起因する。1つの実施形態において、免疫無防備状態の原因は、低年齢に起因する。1つの実施形態において、免疫無防備状態の原因は、高齢に起因する。いくつかの実施形態において、患者は、移植治療を必要としている。
【0182】
本開示は、移植手技において移植ドナーから移植材料を受け取った患者に同種異系T細胞治療において投与するために、ミニバンクまたはドナーバンクに含まれるミニバンクから第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を提供する。1つの実施形態において、投与は、ウイルス感染症を処置するための投与である。1つの実施形態において、投与は、腫瘍を処置するための投与である。1つの実施形態において、投与は、ウイルス感染症および腫瘍を処置するための投与である。1つの実施形態において、投与は、移植前の原発性免疫不全に対する投与である。いくつかの実施形態において、移植材料には、幹細胞が含まれる。いくつかの実施形態において、移植材料には、実質臓器が含まれる。いくつかの実施形態において、移植材料には、骨髄が含まれる。いくつかの実施形態において、移植材料には、幹細胞、実質臓器および骨髄が含まれる。
【0183】
本明細書中に記載されるような方法は、HLAアレルの適合に従って数値スコアを割り当てることに基づく。いくつかの実施形態では、患者のHLAタイプと移植ドナーのHLAタイプとを比較して、その患者と移植ドナーとに共通する共有HLAアレルの第1セットが特定される。いくつかの実施形態において、患者と移植ドナーとに共通する共有HLAアレルの第1セットは、ミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーのHLAタイプと比較される。いくつかの実施形態において、患者と移植ドナーとに共通する共有HLAアレルの第1セットは、ドナーバンク含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーのHLAタイプと比較される。いくつかの実施形態において、その比較によって、共有HLAアレルの第1セットと1つ以上のHLAアレルを共有するT細胞株を特定することが可能になる。
【0184】
いくつかの実施形態では、特定された共有HLAアレルの数に基づいて1次数値スコアが割り当てられる。いくつかの実施形態において、8つの共有アレルの完全一致には、Xという任意数値スコアが割り当てられる。いくつかの実施形態において、Xは、8に等しい。いくつかの実施形態において、7つの共有アレルには、Xの7/8である数値スコアX1が割り当てられる。いくつかの実施形態において、6つの共有アレルには、Xの6/8である数値スコアX2が割り当てられる。いくつかの実施形態において、5つの共有アレルには、Xの5/8である数値スコアX3が割り当てられる。いくつかの実施形態において、4つの共有アレルには、Xの4/8である数値スコアX4が割り当てられる。いくつかの実施形態において、3つの共有アレルには、Xの3/8である数値スコアX5が割り当てられる。いくつかの実施形態において、2つの共有アレルには、Xの2/8である数値スコアX6が割り当てられる。いくつかの実施形態において、1つの共有アレルには、Xの1/8である数値スコアX7が割り当てられる。
【0185】
いくつかの実施形態では、患者とそれぞれの各T細胞株ドナーとに共通している共有HLAアレルの1つ以上の追加セットが特定される。いくつかの実施形態において、ミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するまたはドナーバンクに含まれるミニバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプと患者のHLAタイプとが比較される。
【0186】
いくつかの実施形態において、T細胞株と患者との間で共通する共有HLAアレルの数に基づいて、それぞれの各T細胞株に2次数値スコアが割り当てられる。いくつかの実施形態において、8つの共有アレルの完全一致には、1次スコアXの50%である2次数値スコアが割り当てられる。例えば、X=8である場合、2次数値スコアは4である。いくつかの実施形態において、7つの共有アレルには、X1の50%というスコア(すなわち、X=8である場合、3.5)を割り当てる。いくつかの実施形態において、6つの共有アレルには、X2の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、3)を割り当てる。いくつかの実施形態において、5つの共有アレルには、X3の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、2.5)を割り当てる。いくつかの実施形態において、4つの共有アレルには、X4の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、2)を割り当てる。いくつかの実施形態において、3つの共有アレルには、X5の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、1.5)を割り当てる。いくつかの実施形態において、2つの共有アレルには、X6の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、1)を割り当てる。いくつかの実施形態において、1つの共有アレルには、X7の50%である数値スコア(すなわち、X=8である場合、0.5)を割り当てる。
【0187】
いくつかの実施形態において、それぞれの各T細胞株に2次数値スコアが割り当てられ、ここで、その2次数値スコアは、1次スコアより低く重み付けされる。いくつかの実施形態において、2次数値スコアには、1次数値スコアの10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%の重みが付けられる。
【0188】
いくつかの実施形態において、本開示は、総合スコアが最も高い抗原特異的T細胞株を患者への投与のために選択することを提供する。いくつかの実施形態において、総合スコアが最も高い抗原特異的T細胞株が、患者に投与される第1の抗原特異的T細胞株である。いくつかの実施形態において、総合スコアは、ミニバンク内のまたはドナーバンクに含まれるミニバンク内の各抗原特異的T細胞株に対する1次スコアと2次スコアとを合算することによって計算される。
【0189】
いくつかの実施形態では、第2の抗原特異的T細胞株が、患者に投与される。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株と同じミニバンクから選択される。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が得られたミニバンクとは異なるミニバンクから選択される。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株以外のドナーバンクに残っているすべての抗原特異的T細胞株を用いて、本明細書中に記載されるような第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を反復することによって選択される。
【0190】
本開示は、抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクで構成されたドナーバンクを構築する方法を提供する。本明細書中で使用されるとき、「複数」は、抗原特異的T細胞株の1つより多いミニバンクを意味する。例えば、ドナーバンクは、2、3、4、5または6つのミニバンクを含み得る。いくつかの実施形態において、ドナーバンクの構築は、本明細書中に記載されるような第1のドナーミニバンクを構築するための工程および手順を含む。それらの工程および手順には、1回以上の第2ラウンドを行って、1つ以上の第2のミニバンクを構築することが含まれる。いくつかの実施形態において、その方法の各第2ラウンドを始める前に、その新しいドナープールが作製され得る。いくつかの実施形態において、その新しいドナープールは、本明細書中に開示されるような方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから除去された任意の最適合ドナーを差し引いた第1のドナープールを含む。いくつかの実施形態において、その新しいドナープールは、第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団を含む。いくつかの実施形態において、その新しいドナープールは、本明細書中に開示されるような方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから除去された任意の最適合ドナーを差し引いた第1のドナープールならびに第1のドナープールに含まれていない全く新しい潜在ドナー集団を含む。いくつかの実施形態において、新しいドナープールの作製は、本明細書中に記載されるような方法の第1ラウンドおよび先の任意の第2ラウンドから以前に除去されたすべての見込み患者を戻すことによって第1の見込み患者集団由来の第1の複数の見込み患者を再構築することを含む。いくつかの実施形態において、選択および除去の各ラウンドの後に、ドナーミニバンクに含まれるそれぞれの各ドナーから得られた血液からMNCが単離される。いくつかの実施形態において、そのMNCは、好適な培養条件下で1つ以上の抗原または1つ以上の抗原由来の1つ以上のエピトープとともに培養および接触される。いくつかの実施形態において、MNCは、刺激され、抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を拡大する。いくつかの実施形態では、複数のT細胞株が作製される。培養する方法、抗原を接触させる方法、およびペプミックスを調製する方法は、本明細書中に記載されるような第1のドナーミニバンクを構築するためのプロセスと同じである。
【0191】
本開示は、疾患または状態を処置する方法を提供し、その方法は、本明細書中に記載されるような抗原特異的T細胞株の複数のミニバンクを含むドナーバンク由来の1つ以上の好適な抗原特異的T細胞株を患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、本開示は、移植手技において移植ドナーから移植材料を受け取った患者に同種異系T細胞治療において投与するために、本明細書中に記載されるようなドナーバンクから第1の抗原特異的T細胞株を選択する方法を提供する。そのプロセスは、患者のHLAタイプと移植ドナーのHLAタイプとを比較して、その患者と移植ドナーとに共通している共有HLAアレルの第1セットを特定する工程、その共有HLAアレルの第1セットを、ドナーバンク内の抗原特異的T細胞株が由来する各ドナーのHLAタイプと比較する工程、HLAアレルの数に基づいて1次数値スコアを割り当てる工程、患者のHLAタイプと、ドナーバンク内の抗原特異的T細胞が由来するそれぞれの各ドナーのHLAタイプとを比較する工程、および共有HLAアレルの数に基づいてそれぞれの各T細胞株に2次数値スコアを割り当てる工程を含むが、これらに限定されない。次いで、1次スコアと2次スコアが最も高い第1の抗原特異的T細胞株が患者に投与される。
【0192】
いくつかの実施形態において、第1の抗原特異的T細胞株が、患者に投与するために選択される。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株が、患者に投与するために選択される。いくつかの実施形態において、その投与は、GVHDをもたらさない。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が処置有効性を示した後に患者に投与される。他の実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が処置有効性を示さなかった後に患者に投与される。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株が有害臨床反応をもたらした後に患者に投与される。その有害臨床反応には、移植片対宿主病(GVHD)、サイトカイン放出症候群などの炎症反応が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、第2の抗原特異的T細胞株は、第1の抗原特異的T細胞株の投与後の好適な時点において投与される。
【0193】
炎症反応は、(i)発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、疲労、悪心、嘔吐、関節痛から選択される全身症状;(ii)低血圧を含む血管症状;(iii)不整脈を含む心臓症状;(iv)呼吸困難;(v)腎不全および尿毒症を含む腎症状;ならびに(vi)凝固障害および血球貪食性リンパ組織球症様症候群を含む検査症状のうちの1つ以上の症状または徴候を観察することによって検出され得る。いくつかの実施形態において、炎症反応は、既知のまたは一般的な任意の徴候を観察することによって検出され得る。
【0194】
いくつかの実施形態において、処置有効性は、抗原特異的T細胞株の投与後に計測される。他の実施形態において、処置有効性は、感染のウイルス血症の消失に基づいて計測される。他の実施形態において、処置有効性は、感染のウイルス尿症の消失に基づいて計測される。他の実施形態において、処置有効性は、患者由来のサンプル中のウイルス量の消失に基づいて計測される。他の実施形態において、処置有効性は、感染のウイルス血症の消失、感染のウイルス尿症の消失および患者由来のサンプル中のウイルス量の消失に基づいて計測される。いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者の末梢血中の検出可能なウイルス量をモニタリングすることによって計測される。いくつかの実施形態において、処置有効性は、肉眼的血尿の消失を含む。いくつかの実施形態において、処置有効性は、CTCAE-PROまたは患者および/もしくは臨床医が報告するアウトカムを調べる類似の評価ツールによって計測されるような出血性膀胱炎症状の低減を含む。いくつかの実施形態において、処置有効性は、その処置が癌に対する処置であるとき、抗原特異的T細胞株の投与後の腫瘍サイズの減少に基づいて計測される。いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者の末梢血/血清中の検出可能な疾患負荷のマーカーをモニタリングすることによって計測される。いくつかの実施形態において、処置有効性は、患者の末梢血/血清中の検出可能な腫瘍溶解のマーカーをモニタリングすることによって計測される。いくつかの実施形態において、処置有効性は、画像診断を介して腫瘍の状況をモニタリングすることによって計測される。
【0195】
サンプルは、患者由来の組織サンプルから選択される。サンプルは、患者由来の体液サンプルから選択される。サンプルは、患者由来の脳脊髄液(CSF)から選択される。サンプルは、患者由来のBALから選択される。サンプルは、患者由来の便から選択される。
【0196】
本開示は、抗原特異的T細胞の第1のドナーミニバンクの構築において使用するのに適したドナーを同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを決定する工程または決定した状態である工程を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者のHLAタイプを決定する工程または決定した状態である工程を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプを第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者と比較する工程を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、第1の複数の見込み患者の中で最も多くの患者と2つ以上のHLAアレルが適合する第1のドナープール由来のドナーと定義される第1の最適合ドナーを決定する工程を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、第1のドナーミニバンクに含めるために第1の最適合ドナーを選択する工程を含む。
【0197】
いくつかの実施形態において、上記方法は、第1のドナープールから第1の最適合ドナーを除去し、それにより、第1の最適合ドナーを除く第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーからなる第2のドナープールを作製する工程を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、第1の複数の見込み患者から、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去する工程を含む。次いで、第1の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除く第1の複数の各見込み患者からなる第2の複数の見込み患者が得られる。いくつかの実施形態において、その方法は、まだ除去されていないすべてのドナーおよび見込み患者に対して、本明細書中に記載されるような工程およびプロセスを反復する工程(例えば、第1のドナープール由来の第1の複数の各潜在ドナーのHLAタイプと、第1の見込み患者集団由来の第1の複数の各見込み患者のHLAタイプとを比較する工程、最も適合するものを決定し、ドナーミニバンクのために選択する工程、第1のドナープールから第1の最適合ドナーおよび見込み患者を除去する工程)を含む。
【0198】
プロセスを反復する毎に、追加の最適合ドナーを選択することができ、その次の最適合ドナーと2つ以上のアレルが適合する各見込み患者を除去することができる。本明細書中に記載されるようなプロセスは、第1のドナーミニバンク内の選択された最適合ドナーの数を、その方法の各サイクル後に1ずつ増加させる。次いで、そのプロセスは、選択された最適合ドナーとのHLA適合に従ってその方法の各サイクル後に患者集団内の複数の見込み患者の数を減少させる。そのプロセスは、第1の見込み患者集団の所望のパーセンテージ(例えば、5%未満)が複数の見込み患者に残るまでまたはドナープールにドナーが残らなくなるまで反復される。いくつかの実施形態において、そのプロセスは、見込み患者の95%超が適合し、カバーされるまで反復される。
【0199】
ウイルス感染症は、同種異系造血幹細胞移植(アロHSCT)の後の罹患および死亡の重大な原因である。ウイルスの再活性化は、無形成の相対免疫不全または絶対免疫不全の間、およびアロHSCT後の免疫抑制療法中に起きる可能性が高い。サイトメガロウイルス(CMV)、BKウイルス(BKV)およびアデノウイルス(AdV)をはじめとしたウイルス病原体に関連する感染症は、アロHSCT後にますます問題になり、有意な罹患および死亡に関連する。
【0200】
一般的な感染症のうち、依然としてCMVが、同種異系造血幹細胞移植(HSCT)後の最も臨床的に有意な感染症である。Center for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)データは、CMV血清陽性のHSCTレシピエントの30%超において、移植後初期のCMVの再活性化が起き、その結果、大腸炎、網膜炎、肺臓炎および死亡がもたらされ得ることを示している。ガンシクロビル、バルガンシクロビル、レテルモビル、ホスカルネットおよびシドフォビルをはじめとした抗ウイルス剤は、予防的と治療的の両方で使用されているが、それらは必ずしも有効でなく、骨髄抑制、腎毒性および究極的には非再発死亡を含む有意な毒性と関連する。依然として免疫再構成が感染制御にとって最も重要であるので、エキソビボで拡大/単離されたCMV特異的T細胞(CMVST)の養子移入が、抗ウイルスの利点を提供する有効な手段として台頭してきた。
【0201】
CMVを標的とする初期の免疫療法は、幹細胞ドナー由来のT細胞製品に焦点が当てられ、20年を超える一連の学術的な第I/II相試験において、安全性と有効性の両方が証明された。しかしながら、その治療の個別性ならびにウイルス免疫ドナー(virus-immune donors)の必要性(ウイルス無感作である可能性が高いより若いドナーを用いる利点を考えると重要な課題)が、広く実施することを妨げる障害として現れてきた。したがって、より最近では、臨床で必要になる前に将来を見越して調製し、バンク化(banked)できる、部分的にHLAが適合する第三者由来のウイルス特異的T細胞(VST)が治療様式の1つとして研究されている。これらのVSTは、薬物抵抗性の感染症/疾患を有する150人を超えるHSCTレシピエントまたは臓器移植(SOT)レシピエントにおいて、エプスタイン・バーウイルス、CMV、アデノウイルス、HHV6およびBKウイルスを含む範囲のウイルスに対して完全かつ効果的であると証明されている。これらの研究により、重要な研究およびその後の商品化に向けて「既製」のウイルス特異的T細胞を前進させることへの関心が促され、残った疑問は、(i)多様な移植集団に対応するために必要な細胞株の数、および(ii)臨床的有用性を保証するための株選択の基準の確立に関するものだった。
【0202】
さらに、潜伏BKV(ポリオーマウイルス科のメンバー)の再活性化によって引き起こされる感染症の出現は、HSCT患者では重症の臨床疾患の原因となる。同種異系HSCT後のBKV感染の主な臨床症状は、出血性膀胱炎(BK-HC)である。これは、同種異系HSCTレシピエントの最大25%に起き、持続的な麻酔薬注入を必要とする重症のしばしば消耗性の腹痛を伴う肉眼的血尿として現れる。健康個体では、T細胞免疫が、ウイルスから防御する。アロHSCTレシピエントでは、強力な免疫抑制性レジメン(およびその後の関連する免疫低下)を使用すると、患者は重症のウイルス感染症にかかりやすくなる。
【0203】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザ、パラインフルエンザウイルス(PIV)およびヒトメタニューモウイルス(hMPV)をはじめとした市中感染の呼吸器系ウイルス(CARV)に起因する呼吸器系ウイルス感染症は、同種異系造血幹細胞移植(アロHSCT)レシピエントの最大40%において検出され、それらのレシピエントでは、それらのウイルスは、致死的であり得る細気管支炎および肺炎などの重度の疾患を引き起こす恐れがある。RSV誘発性の細気管支炎は、1歳未満の小児における入院の最も一般的な理由であるが、疾病管理センター(CDC)は、インフルエンザが毎年、世界中で最大3560万人が罹患し、140,000~710,000人が入院し、米国だけでもおよそ871億ドルの年間コストが疾患管理にかかり、12,000~56,000人が死亡していると推定している。
【0204】
本開示は、エキソビボで拡大された遺伝的に改変されていないウイルス特異的T細胞(VST)を投与することによってT細胞免疫の修復を提供して、移植患者自身の免疫系が回復するまでの期間にわたってウイルス感染症を制御し、症状を除去する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、VSTは、ウイルス由来のペプチドを提示している標的細胞上に発現された主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合する天然のT細胞レセプター(TCR)を介してウイルス感染細胞を認識し、殺滅する。
【0205】
いくつかの実施形態において、HLA部分適合の「既製」品として入手可能である、プレスクリーニングされた血清陽性の健康ドナーから獲得された末梢血単核球(PBMC)由来のVST。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるようなVSTは、少なくともEBV、CMV、AdV、BKVおよびHHV6に応答する。VSTは、HSCTが生着し、免疫系が再配置された後、患者が免疫能を回復するまでだけ循環するようにデザインされる。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書中に記載されるようなVSTおよび方法は、患者が移植を受けて、内在性の免疫応答を開始させることができるようになるまで、免疫無防備状態の患者にT細胞免疫を提供する「免疫学的な橋渡し治療」である。
【0206】
ウイルス抗原
【0207】
本開示のいくつかの実施形態において、作製される抗原特異的T細胞は、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症をはじめとした病原性の感染症を有するかまたは有するリスクがある個体に提供される。その個体は、免疫系に欠陥を有しているかもしれないし、有していないかもしれない。場合によっては、その個体は、器官移植または幹細胞移植(造血幹細胞移植を含む)の後のウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症を有するか、または癌を有するか、または例えば癌の処置に供されたことがある。場合によっては、その個体は、後天性免疫系不全の後の感染症を有する。
【0208】
上記個体における感染症は、任意の種類であり得るが、具体的な実施形態では、その感染症は、1つ以上のウイルスの結果である。病原性のウイルスは、任意の種類であり得るが、具体的な実施形態では、それは、以下の科のうちの1つに由来する:アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、レトロウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パポバウイルス科、ポリオーマウイルス科、ラブドウイルス科またはトガウイルス科。いくつかの実施形態において、ウイルスは、免疫優性の抗原または準優位な抗原を生成するか、または両方の種類を生成する。具体的な場合において、ウイルスは、EBV、CMV、アデノウイルス、BKウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、ムンプス、麻疹、メタニューモウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、西ナイルウイルス、スペインインフルエンザおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0209】
いくつかの態様において、感染症は、ある病原菌の結果であり、本発明は、任意のタイプの病原菌に適用可能である。例示的な病原菌としては、少なくともMycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Clostridium botulinum、Bacillus anthracis、Yersinia pestis、Rickettsia prowazekii、連鎖球菌属、シュードモナス属、シゲラ属、カンピロバクター属およびサルモネラ属が挙げられる。
【0210】
いくつかの態様において、感染症は、病原性真菌の結果であり、本発明は、任意のタイプの病原性真菌に適用可能である。例示的な病原性真菌としては、少なくともカンジダ属、アスペルギルス属、クリプトコッカス属、ヒストプラズマ属、ニューモシスチス属またはスタキボトリス属が挙げられる。いくつかの実施形態において、ウイルス抗原は、本開示に記載されるような使用に適した任意の抗原であり得る。
【0211】
腫瘍抗原
【0212】
癌の処置および/または予防のためにTAA特異的またはマルチTAA特異的な抗原特異的T細胞を使用する実施形態では、種々のTAAが標的とされ得る。腫瘍抗原は、宿主において免疫応答を引き起こす、腫瘍細胞において産生される物質である。本明細書中で使用されるとき、用語「腫瘍抗原」と「腫瘍関連抗原」と「TAA」とは交換可能に使用される。したがって、これらの用語は、腫瘍特異的抗原(腫瘍細胞上でのみ発現されている抗原であって、健康な細胞上では発現されていない抗原)と、腫瘍細胞上でアップレギュレート/過剰発現されていて、腫瘍細胞に特異的ではない腫瘍関連抗原の両方を包含する。
【0213】
例示的な腫瘍抗原としては、少なくとも以下が挙げられる:腸癌の場合の癌胎児抗原(CEA);卵巣癌の場合のCA-125;乳癌の場合のMUC-1または上皮性腫瘍抗原(ETA)またはCA15-3;悪性黒色腫の場合のチロシナーゼまたはメラノーマ関連抗原(MAGE);および種々のタイプの腫瘍の場合の、rasの異常産物であるp53;ヘパトーマ、卵巣癌または精巣癌の場合のアルファフェトプロテイン;精巣癌を有する男性の場合の、hCGのベータサブユニット;前立腺癌の場合の前立腺特異抗原;複数のミエローマおよび一部のリンパ腫の場合のベータ2ミクログロブリン;直腸結腸癌、胆管癌および膵癌の場合のCA19-9;肺癌および前立腺癌の場合のクロモグラニンA;メラノーマ、軟部組織肉腫ならびに乳癌、結腸癌および肺癌の場合のTA90。腫瘍抗原の例は、当該分野で、例えばCheever et al.,2009(その全体が参照により本明細書中に援用される)において、公知である。
【0214】
腫瘍抗原の具体例としては、例えば少なくともCEA、MHC、CTLA-4、gp100、メソテリン、PD-L1、TRP1、CD40、EGFP、Her2、TCRアルファ、trp2、TCR、MUC1、cdr2、ras、4-1BB、CT26、GITR、OX40、TGF-α.WT1、MUC1、LMP2、HPV E6 E7、EGFRvIII、HER-2/neu、MAGE A3、p53非変異体、NY-ESO-1、PSMA、GD2、Melan A/MART1、Ras変異体、gp100、p53変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr-abl、チロシナーゼ、サバイビン、PSA、hTERT、EphA2、PAP、ML-IAP、AFP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲンレセプター、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソテリン、PSCA、MAGE A1、sLe(a)、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6-AML、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-β、MAD-CT-2およびFos関連抗原1が挙げられる。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原は、本開示に記載されるような使用に適した任意の抗原であり得る。
【0215】
ペプミックスライブラリーの作製
【0216】
本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドのライブラリーがPBMCに提供されて、抗原特異的T細胞が最終的に作製される。そのライブラリーは、特定の場合において、同じ抗原の一部または全部を網羅するペプチドの混合物(「ペプミックス」)を含む。本発明において利用されるペプミックスは、ある特定の態様において、15アミノ酸長のペプチドであって、互いに11アミノ酸重複しているペプチドで構成されている、商業的に入手可能なペプチドライブラリー由来であり得る。場合によっては、それらは、合成的に作製され得る。例としては、JPT Technologies(Springfield,VA)製またはMiltenyi Biotec(Auburn,CA)製のものが挙げられる。特定の実施形態において、それらのペプチドは、例えば、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34もしくは35アミノ酸長またはそれ以上であり、具体的な実施形態において、例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34アミノ酸長の重複がある。
【0217】
いくつかの実施形態において、ペプミックスにおいて使用されるようなアミノ酸は、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99、少なくとも99.9%の純度(これらの間のすべての範囲および部分的な範囲を含む)を有する。いくつかの実施形態において、ペプミックスにおいて本明細書中で使用されるようなアミノ酸は、少なくとも90%の純度を有する。
【0218】
異なるペプチドの混合物は、任意の比の異なるペプチドを含み得るが、いくつかの実施形態において、特定の各ペプチドは、別の特定のペプチドと実質的に同じ数でその混合物中に存在する。広範な特異性を有するマルチウイルス抗原特異的T細胞用のペプミックスを調製および生成する方法は、US2018/0187152(この全体が参照により援用される)に記載されている。
【0219】
ポリクローナルなウイルス特異的T細胞組成物
【0220】
本開示は、臨床的に有意なウイルスに対する特異性を有する、血清陽性ドナー(例えば、本明細書中に開示されるドナー選択方法を介して選択されたドナー)から作製される、ポリクローナルなウイルス特異的T細胞組成物を含む。いくつかの実施形態において、臨床的に有意なウイルスとしては、EBV、CMV、AdV、BKVおよびHHV6が挙げられ得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、ウイルス抗原は、BKウイルス(VP1およびラージT)、AdV(ヘキソンおよびペントン)、CMV(IE1およびpp65)、EBV(LMP2、EBNA1、BZLF1)およびHHV6(U90、U11およびU14)由来の免疫原性抗原を網羅する。
【0221】
本開示は、抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞のポリクローナル集団は、複数のウイルス抗原を認識し得る。いくつかの実施形態において、複数のウイルス抗原は、パラインフルエンザウイルス3型(PIV-3)由来の少なくとも1つの第1の抗原を含み得る。いくつかの実施形態において、複数のウイルス抗原は、1つ以上の第2のウイルス由来の少なくとも1つの第2の抗原を含み得る。
【0222】
いくつかの実施形態において、ポリクローナルなウイルス特異的T細胞組成物は、任意の臨床的に有意なウイルスまたは臨床的に関連性のあるウイルスに対する特異性を有する。例えば、ポリクローナルなウイルス特異的T細胞組成物は、CMV、BKV、PIV3およびRSVをはじめとしたウイルス抗原を含み得る。
【0223】
いくつかの実施形態において、第1の抗原は、PIV-3抗原Mであり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原は、PIV-3抗原HNであり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原は、PIV-3抗原Nであり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原は、PIV-3抗原Fであり得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原は、PIV-3抗原M、PIV-3抗原HN、PIV-3抗原NおよびPIV-3抗原Fの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、1つの第1の抗原を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、2つの第1の抗原を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、3つの第1の抗原を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、4つの第1の抗原を含み得る。いくつかの実施形態において、その4つの第1の抗原には、PIV-3抗原M、PIV-3抗原HN、PIV-3抗原NおよびPIV-3抗原Fが含まれ得る。
【0224】
いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のウイルスは、インフルエンザであり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のウイルスは、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザおよびヒトメタニューモウイルスを含み得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のウイルスは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザおよびヒトメタニューモウイルスからなり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のウイルスは、本明細書中に記載されるような任意の好適なウイルスから選択され得る。
【0225】
いくつかの実施形態において、組成物は、2つまたは3つの第2のウイルスを含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、3つの第2のウイルスを含み得る。いくつかの実施形態において、その3つの第2のウイルスは、インフルエンザ、RSVおよびhMPVを含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、第2の各ウイルスにつき少なくとも2つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、1つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、2つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、3つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、4つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、5つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、6つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、7つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、8つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、9つの第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、10個の第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、11個の第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、12個の第2の抗原を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書中に記載されるような組成物に適し得る任意の数の第2の抗原を含む。
【0226】
いくつかの実施形態において、第2の抗原は、インフルエンザ抗原NP1であり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、インフルエンザ抗原MP1であり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、RSV抗原Nであり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、RSV抗原Fであり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原Mであり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原M2-1であり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原Fであり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原Nであり得る。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、インフルエンザ抗原NP1、インフルエンザ抗原MP1、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原FおよびhMPV抗原Nの任意の組み合わせであり得る。
【0227】
いくつかの実施形態において、第2の抗原は、インフルエンザ抗原NP1を含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、インフルエンザ抗原MP1を含む。いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、第2の抗原は、インフルエンザ抗原NP1とインフルエンザ抗原MP1の両方を含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、RSV抗原Nを含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、RSV抗原Fを含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、RSV抗原NとRSV抗原Fの両方を含む。
【0228】
いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原Mを含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原M2-1を含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原Fを含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原Nを含む。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、hMPV抗原MとhMPV抗原M2-1とhMPV抗原FとhMPV抗原Nとの組み合わせを含む。
【0229】
いくつかの実施形態において、第2の抗原は、インフルエンザ抗原NP1、インフルエンザ抗原MP1、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原F、hMPV抗原Nの各々を含む。いくつかの実施形態において、複数の抗原は、PIV-3抗原M、PIV-3抗原HN、PIV-3抗原N、PIV-3抗原F、インフルエンザ抗原NP1、インフルエンザ抗原MP1、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原FおよびhMPV抗原Nを含む。いくつかの実施形態において、複数の抗原は、PIV-3抗原M、PIV-3抗原HN、PIV-3抗原N、PIV-3抗原F、インフルエンザ抗原NP1、インフルエンザ抗原MP1、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原FおよびhMPV抗原Nからなる。いくつかの実施形態において、複数の抗原は、PIV-3抗原M、PIV-3抗原HN、PIV-3抗原N、PIV-3抗原F、インフルエンザ抗原NP1、インフルエンザ抗原MP1、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原FおよびhMPV抗原Nから本質的になる。いくつかの実施形態において、第2の抗原は、本明細書中に記載されるような組成物に適した任意の抗原を含み得る。
【0230】
いくつかの実施形態において、臨床的に有意なウイルスとしては、HHV8が挙げられ得るがこれに限定されない。いくつかの実施形態において、ウイルス抗原は、HHV8由来の免疫原性抗原を網羅する。いくつかの実施形態において、HHV8由来の抗原は、LANA-1(ORF3);LANA-2(vIRF3、K10.5);vCYC(ORF72);RTA(ORF50);vFLIP(ORF71);Kaposin(ORF12、K12);gB(ORF8);MIR1(K3);SSB(ORF6);TS(ORF70)およびそれらの組み合わせから選択される。
【0231】
いくつかの実施形態において、臨床的に有意なウイルスとしては、HBVが挙げられ得るがこれに限定されない。いくつかの実施形態において、ウイルス抗原は、HBV由来の免疫原性抗原を網羅する。いくつかの実施形態において、HBV由来の抗原は、(i)HBVコア抗原、(ii)HBV表面抗原、ならびに(iii)HBVコア抗原およびHBV表面抗原から選択される。
【0232】
いくつかの実施形態において、臨床的に有意なウイルスとしては、コロナウイルスが挙げられ得るがこれに限定されない。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、α-コロナウイルス(α-CoV)である。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、β-コロナウイルス(β-CoV)である。いくつかの実施形態において、β-CoVは、SARS-CoV、SARS-CoV2、MERS-CoV、HCoV-HKU1およびHCoV-OC43から選択される。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、SARS-CoV2である。いくつかの実施形態において、SARS-CoV2抗原は、(i)nsp1;nsp3;nsp4;nsp5;nsp6;nsp10;nsp12;nsp13;nsp14;nsp15;およびnsp16;(ii)スパイク(S);エンベロープタンパク質(E);マトリックスタンパク質(M);およびヌクレオカプシドタンパク質(N);ならびに(iii)SARS-CoV-2(AP3A);SARS-CoV-2(NS7);SARS-CoV-2(NS8);SARS-CoV-2(ORF10);SARS-CoV-2(ORF9B);およびSARS-CoV-2(Y14)からなる群より選択される1つ以上の抗原を含む。
【0233】
いくつかの実施形態において、組成物中の抗原特異的T細胞は、末梢血単核球(PBMC)を複数のペプミックスライブラリーと接触させることによって作製され得る。いくつかの実施形態において、各ペプミックスライブラリーは、ウイルス抗原の少なくとも一部を網羅する複数の重複ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、複数のペプミックスライブラリーのうちの少なくとも1つは、PIV-3由来の第1の抗原を網羅する。いくつかの実施形態において、複数のペプミックスライブラリーのうちの少なくとも1つの追加のペプミックスライブラリーは、第2の各抗原を網羅する。
【0234】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞は、少なくとも1つのDNAプラスミドでヌクレオフェクトされた樹状細胞(DC)とT細胞を接触させることによって作製され得る。いくつかの実施形態において、そのDNAプラスミドは、PIV-3抗原をコードし得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのDNAプラスミドは、第2の各抗原をコードする。いくつかの実施形態において、プラスミドは、少なくとも1つのPIV-3抗原および少なくとも1つの第2の抗原をコードする。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、αβT細胞レセプターを発現している抗原特異的T細胞を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、MHC拘束性の抗原特異的T細胞を含む。
【0235】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞は、IL-7とIL-4の両方の存在下においてエキソビボで培養され得る。いくつかの実施形態において、マルチウイルス抗原特異的T細胞は、培養の9日以内、10日以内、11日以内、12日以内、13日以内、14日以内、15日以内、16日以内、17日以内、18日以内、19日以内、20日以内(これらの間のすべての範囲および部分的な範囲を含む)に十分に拡大し、患者への投与の準備が整う。いくつかの実施形態において、マルチウイルス抗原特異的T細胞は、本明細書中に記載されるような組成物に適した任意の日数以内に十分に拡大した。
【0236】
本開示は、無視できるアロ反応性を示す抗原特異的T細胞を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、より活性化を示さない抗原特異的T細胞を含む組成物は、ある患者から収集された抗原特異的T細胞の細胞死を、同じ患者から収集された対応する抗原特異的T細胞の細胞死よりも誘導した。いくつかの実施形態において、その組成物は、IL-7とIL-4の両方の存在下において培養されない。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞を含む組成物は、70%を超える生存能を示す。
【0237】
いくつかの実施形態において、組成物は、培養中の少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、細菌および真菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、組成物は、培養中の少なくとも7日間、細菌および真菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、組成物は、1EU/ml未満、2EU/ml未満、3EU/ml未満、4EU/ml未満、5EU/ml未満、6EU/ml未満、7EU/ml未満、8EU/ml未満、9EU/ml未満、10EU/ml未満のエンドトキシンを示す。いくつかの実施形態において、組成物は、5EU/ml未満のエンドトキシンを示す。いくつかの実施形態において、組成物は、マイコプラズマに対して陰性である。
【0238】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を構築するために使用されるペプミックスは、化学的に合成される。いくつかの実施形態において、ペプミックスは、必要に応じて>10%、>20%、>30%、>40%、>50%、>60%、>70%、>80%、>90%(これらの間のすべての範囲および部分的な範囲を含む)純粋である。いくつかの実施形態において、ペプミックスは、必要に応じて>90%純粋である。
【0239】
いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞は、Th1に極性化している。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞は、ウイルス抗原を発現している標的細胞を溶解することができる。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞は、他の好適なタイプの、抗原を発現している標的細胞を溶解することができる。いくつかの実施形態において、組成物中の抗原特異的T細胞は、感染していない標的自己細胞を有意に溶解しない。いくつかの実施形態において、組成物中の抗原特異的T細胞は、感染していない同種異系の自己標的細胞を有意に溶解しない。
【0240】
本開示は、静脈内送達用に製剤化された任意の組成物を含む薬学的組成物(例えば、静脈内送達用に製剤化された本明細書中に記載されるドナーミニバンク由来の抗原特異的T細胞株を含む薬学的組成物)を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、培養中の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、細菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、組成物は、培養中の少なくとも7日間、細菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、組成物は、培養中の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、真菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、組成物は、培養中の少なくとも7日間、真菌に対して陰性である。
【0241】
本薬学的組成物は、1EU/ml未満、2EU/ml未満、3EU/ml未満、4EU/ml未満、5EU/ml未満、6EU/ml未満、7EU/ml未満、8EU/ml未満、9EU/ml未満または10EU/ml未満のエンドトキシンを示す。いくつかの実施形態において、本薬学的組成物は、マイコプラズマに対して陰性である。
【0242】
本開示は、標的細胞を溶解する方法を提供し、その方法は、標的細胞を、本明細書中に記載されるような組成物または薬学的組成物(例えば、本明細書中に記載されるドナーミニバンク由来の抗原特異的T細胞株または静脈内送達用に製剤化されたそのようなT細胞株を含む薬学的組成物)と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態において、標的細胞と組成物または薬学的組成物との接触は、被験体内のインビボで行われる。いくつかの実施形態において、標的細胞と組成物または薬学的組成物との接触は、被験体への抗原特異的T細胞の投与を介してインビボで行われる。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0243】
本開示は、ウイルス感染症を処置または予防する方法を提供し、その方法は、それを必要とする被験体に、本明細書中に記載されるような組成物または薬学的組成物(例えば、本明細書中に記載されるドナーミニバンク由来の抗原特異的T細胞株または静脈内送達用に製剤化されたそのようなT細胞株を含む薬学的組成物)を投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、投与される抗原特異的T細胞の量は、5×10~5×10抗原特異的T細胞/m、5×10~5×10抗原特異的T細胞/m、5×10~5×10抗原特異的T細胞/m、5×10~5×10抗原特異的T細胞/m、5×10~5×10抗原特異的T細胞/m(これらの間のすべての範囲および部分的な範囲を含む)の範囲である。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞が、被験体に投与される。いくつかの実施形態において、被験体は、免疫無防備状態である。いくつかの実施形態において、被験体は、急性骨髄性白血病を有する。いくつかの実施形態において、被験体は、急性リンパ芽球性白血病を有する。いくつかの実施形態において、被験体は、慢性肉芽腫症を有する。
【0244】
いくつかの実施形態において、被験体は、1つ以上の病状を有し得る。いくつかの実施形態において、被験体は、抗原特異的T細胞を投与される前に、強度軽減移植前治療とともに適合血縁ドナー移植を受ける。いくつかの実施形態において、被験体は、抗原特異的T細胞を投与される前に、骨髄破壊的移植前治療とともに適合非血縁ドナー移植を受ける。いくつかの実施形態において、被験体は、抗原特異的T細胞を投与される前に、強度軽減移植前治療とともにハプロタイプ一致の移植を受ける。いくつかの実施形態において、被験体は、抗原特異的T細胞を投与される前に、骨髄破壊的移植前治療とともに適合血縁ドナー移植を受ける。いくつかの実施形態において、被験体は、臓器移植を受けたことがある。いくつかの実施形態において、被験体は、化学療法を受けたことがある。いくつかの実施形態において、被験体は、HIVに感染している。いくつかの実施形態において、被験体は、遺伝性免疫不全を有する。いくつかの実施形態において、被験体は、同種異系幹細胞移植を受けたことがある。いくつかの実施形態において、被験体は、このパラグラフに記載されているような1つより多い病状を有する。いくつかの実施形態において、被験体は、このパラグラフに記載されているようなすべての病状を有する。
【0245】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に複数回投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に1回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に2回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に3回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に4回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に5回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に6回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に7回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に8回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に9回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に10回より多く投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、被験体に適した回数だけ被験体に投与される。
【0246】
いくつかの実施形態において、組成物の投与は、被験体のウイルス感染症を効果的に処置または予防する。いくつかの実施形態において、そのウイルス感染症は、パラインフルエンザウイルス3型である。いくつかの実施形態において、そのウイルス感染症は、呼吸器合胞体ウイルスである。いくつかの実施形態において、そのウイルス感染症は、インフルエンザである。いくつかの実施形態において、そのウイルス感染症は、ヒトメタニューモウイルスである。
【0247】
本開示は、複数のウイルス抗原を認識する抗原特異的T細胞のポリクローナル集団を含む組成物、およびそのような抗原特異的T細胞を含む複数の細胞株を含む本明細書中に記載されるようなドナーミニバンクを提供する。本開示は、複数のウイルス抗原が少なくとも1つの抗原を含むことを提供する。いくつかの実施形態において、その少なくとも1つの抗原は、パラインフルエンザウイルス3型(PIV-3)であり得る。いくつかの実施形態において、その少なくとも1つの抗原は、呼吸器合胞体ウイルスであり得る。いくつかの実施形態において、その少なくとも1つの抗原は、インフルエンザであり得る。いくつかの実施形態において、その少なくとも1つの抗原は、ヒトメタニューモウイルスであり得る。
【0248】
いくつかの実施形態において、本開示は、パラインフルエンザウイルス3型(PIV-3)呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザおよびヒトメタニューモウイルスの各々由来の少なくとも1つの抗原を含む複数のウイルス抗原を認識する抗原特異的T細胞のポリクローナル集団、ならびにそのような抗原特異的T細胞を含む複数の細胞株を含む本明細書中に記載されるようなドナーミニバンクを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、パラインフルエンザウイルス3型(PIV-3)呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザおよびヒトメタニューモウイルスの各々由来の少なくとも2つの抗原を含む複数のウイルス抗原を含む複数のウイルス抗原を認識する抗原特異的T細胞のポリクローナル集団、ならびにそのような抗原特異的T細胞を含む複数の細胞株を含む本明細書中に記載されるようなドナーミニバンクを提供する。
【0249】
いくつかの実施形態において、複数の抗原は、PIV-3抗原M、PIV-3抗原HN、PIV-3抗原N、PIV-3抗原F、インフルエンザ抗原NP1、インフルエンザ抗原MP1、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原FおよびhMPV抗原Nを含む。いくつかの実施形態において、複数の抗原は、PIV-3抗原M、PIV-3抗原HN、PIV-3抗原N、PIV-3抗原F、インフルエンザ抗原NP1、インフルエンザ抗原MP1、RSV抗原N、RSV抗原F、hMPV抗原M、hMPV抗原M2-1、hMPV抗原FおよびhMPV抗原Nのいずれかから選択され得る。
【0250】
いくつかの実施形態において、本開示は、静脈内送達用に製剤化された本明細書中に記載されるような組成物を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、細菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、真菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、培養中の少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、細菌または真菌に対して陰性である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような組成物は、培養中の少なくとも7日間、細菌または真菌に対して陰性である。
【0251】
いくつかの実施形態において、静脈内送達用に製剤化された薬学的組成物は、1EU/ml未満、2EU/ml未満、3EU/ml未満、4EU/ml未満、5EU/ml未満、6EU/ml未満、7EU/ml未満、8EU/ml未満、9EU/ml未満または10EU/ml未満のエンドトキシンを示す。いくつかの実施形態において、静脈内送達用に製剤化された薬学的組成物は、マイコプラズマに対して陰性である。
【実施例
【0252】
実施例1.CMV特異的VST(CMVST)のドナーバンクの構築
CMVST作製用のドナーの選択:臨床的に有効な株を同種異系HSCT患者集団の大部分に提供できることを確実なものとするために、本発明者らは、所与の患者集団用の細胞治療製品を作製するために所与のドナープールから最良のドナーになり得るドナーを選択するためのドナー選択アルゴリズムを開発した。概して米国と類似の多様な人種構成を有するヒューストン地方(Houston MethodistまたはTexas Children’s Hospital)において処置された666人の同種異系HSCTレシピエントのHLAタイプを解析した。次いで、これらのHSCTレシピエントのHLAを、多様で健康な適格のCMV血清陽性ドナーのプールのHLAタイプと比較した。最初の工程(図2、工程#1)において、全体のドナープール内の各健康ドナーのHLAタイプを、患者プール内の各患者のHLAタイプと個別に比較し、最も適合度の高いドナー(本明細書中で「最適合ドナー」とも呼ぶ)を、患者プール内の最も多くの患者と少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合するドナーであると特定した(図2、工程#2)。このドナーを全体のドナープールから除去し、また、このドナーによって対応される(すなわち、そのドナーと少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合する)すべての患者を、患者集団内の他の非適合患者から除去した。これにより、ドナープールは、ドナーが1人減り、非適合患者集団は、2つ以上のHLAアレルにおいて第1のドナーと適合する患者の数だけ患者が減った(図2、工程#3)。続いて、これらの工程を2回目、3回目などと、解析される患者集団内の患者の少なくとも95%をカバーする(すなわち、それらの患者の少なくとも95%と少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合する)ドナーのパネルが作製されるまで反復し(図10)、その都度、その時点において非適合患者集団内に残っている最も多くの患者と少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合する、残りのドナープール内のドナーを特定し、その後の考慮からそのドナーとそのドナーと適合するそれらのすべての患者の両方を除去した(図4~9)。その第1のドナーパネルを、ウイルス特異的T細胞の第1のミニバンクの構築において使用するために取っておいた。
【0253】
この時点において、第1のドナーミニバンクの構築において非適合患者集団から除去された患者のすべてを患者集団に再導入し(しかし、先に除去されたどのドナーも全体のドナー集団に再導入しなかった)、次いで、この手順を2回目として反復して、解析される患者集団内の患者の少なくとも95%をカバーする(すなわち、それらの患者の少なくとも95%と少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合する)第2のドナーパネルを特定し、それにより、第2のドナーミニバンクを作製した。これにより、患者は、別個のドナーミニバンクにおいて1人より多い十分に適合する潜在ドナーオプションが手に入ることが確実になった。このモデルを使用すれば、たった8人の十分に選択されたドナーで、少なくとも2つのHLA抗原において適合するT細胞製品が患者集団の>95%に提供され得ることが見出され;この場合、ドナープールをさらに大きくしても、適合数は有意に増加しなかった。次いで、この多様な同種異系HSCTレシピエント集団の≧95%に対してCMV活性が確認された、カバー度が好適なCMVST株(≧2の共有HLA抗原)を提供する目的で、これらの8人のドナーを選択した。
【0254】
第三者CMVSTバンクの調製:すべてのドナーに、IRBが承認したプロトコルについて書面によるインフォームドコンセントを行い、これらの全ドナーが血液バンクの適格基準を満たした。製造に向けて、末梢血の採血によって血液単位を回収し、フィコール勾配によってPBMCを単離した。10×10個のPBMCをG-Rex5バイオリアクター(Wilson Wolf,Minneapolis,MN)に播種し、800U/mlのIL4および20ng/mlのIL7(R&D Systems,Minneapolis,MN)およびIE1、pp65ペプミックス(2ng/ペプチド/ml)(JPT Peptide Technologies Berlin,Germany)を含むT細胞培地[Advanced RPMI 1640(HyClone Laboratories Inc.Logan,Utah)、45%Click’s(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)、2mM GlutaMAXTM]TM-I(Life Technologies Grand Island,NY)および10%ウシ胎児血清(Hyclone)]中で培養した。開始後9~12日目に、T細胞を収集し、計数し、G-Rex-100MにおいてIL4(800U/ml)およびIL7(20ng/ml)とともに、ペプミックスでパルスされた照射済みの自己PBMC[1:4エフェクター:ターゲット(E:T)-4×10CMVST:1.6×10照射PBMC/cm2]で再刺激した。培養の3~4日目に、細胞に200ng/mlのIL2(Prometheus Laboratories,San Diego,CA)を供給し、2回目の刺激の9~12日後に、T細胞を凍結保存に向けて収集した。凍結保存時に、各株を微生物学的に試験し、免疫表現型を決定し[CD3、CD4、CD8、CD14、CD16、CD19、CD25、CD27、CD28、CD45、CD45RA、CD56、CD62L CD69、CD83、HLA DRおよび7AAD(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)]、IFNγ酵素結合イムノスポット(ELISpot)アッセイによってウイルス特異性について評価した。IFNγ ELISpotアッセイによって計測した反応性細胞の頻度が、>30スポット形成細胞(SFC)/2×10投入ウイルス特異的T細胞だったとき、その細胞株を「反応性」と定義した。
【0255】
臨床試験デザイン:これは、食品医薬品局(FDA)のINDの下で行われ、Baylor College of Medicine Institutional Review Board(IRB)によって承認された、単一施設第I相試験(NCT02313857)だった。この試験は、ガンシクロビル、ホスカルネットまたはシドフォビルによる処置と定義される標準的治療にもかかわらずCMV感染症または少なくとも7日間持続していた疾患を有する同種異系HSCTレシピエントに対して門戸が開かれた試験だった。除外規準には、≧0.5mg/kgのプレドニゾン(または等価物)による処置、室内空気において酸素飽和が<90%の呼吸不全、他の制御されない感染症および≧グレードIIの活動性GVHDが含まれた。投与予定日の28日以内にATG、Campath、他のT細胞免疫抑制性モノクローナル抗体、またはドナーリンパ球注入(DLI)を投与された患者も、参加から除外した。まず患者に、好適なVST株(≧2個の共有HLA抗原を有する)の探索について同意を得て、利用可能であった場合、および患者が適格基準を満たした場合、それらの患者を本研究の処置部分に登録できた。各患者に、2×10個のHLA部分適合VST/m2の静脈内注入を1回行い、4週間後に2回目の注入を行い、その後隔週で追加の注入を行うオプションがあった。処置担当の医師の判断で、標準的な抗ウイルス薬剤による治療を行うことができた。
【0256】
安全性評価項目:このパイロット研究の主目的は、持続的なCMV感染症/疾患を有するHSCTレシピエントにおいてCMVSTの安全性を判断することだった。NCI Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE),バージョン4.Xによって毒性を段階分けした。安全性評価項目には、最後のCMVST投与の42日以内の急性GvHDグレードIII~IV、注入の24時間以内の注入関連毒性、または最後のCMVST投与の28日以内の、T細胞製品に関連し、かつ元々の悪性疾患または既存の併存症である既存の感染に起因し得ない、グレード3~5の造血系有害事象が含まれた。急性および慢性GVHDが存在した場合、標準的な臨床上の定義に従ってそれらを段階分けした。1,2本研究は、Dan L.Duncan Cancer Center Data Review Committeeがモニターした。
【0257】
アウトカムの評価:末梢血中のCMV量を、臨床検査改善修正法案(Clinical Laboratory Improvement Amendments)(CLIA)によって承認された研究室において定量的PCR(qPCR)によってモニターした。処置に対するウイルスの完全奏効(CR)は、qPCRによる検出閾値未満へのウイルス量の減少、ならびに組織疾患の臨床的徴候および症状(ベースライン時に存在した場合)の消失と定義された。部分奏効(PR)は、ベースラインからの少なくとも50%のウイルス量の減少と定義された。臨床応答およびウイルス学的応答は、CMVST注入後の6週目に割り当てられた。
【0258】
免疫モニタリング:ELISpot解析を使用して、CMV抗原およびCMVペプチドに応答してIFNγを分泌する循環T細胞の頻度を求めた。注入前ならびに注入後の1、2、3、4、6および12週目に臨床サンプルを回収した。ポジティブコントロールとして、PBMCをブドウ球菌エンテロトキシンB(1μg/ml)(Sigma-Aldrich Corporation,St Louis,MO)で刺激した。1000ng/ペプチド/mlに希釈したIE1およびpp65ペプミックス(JPT Technologies,Berlin,Germany)を使用して、注入後のドナー由来CMVSTを追跡した。利用可能であるとき、公知のエピトープを表しているペプチド(Genemed Synthesis Inc.,San Antonio,TX、1250ng/mlに希釈されたもの)もELISpotアッセイにおいて使用した。ELISpot解析に向けて、PBMCを5×10/mlでT細胞培地に再懸濁し、96ウェルELISpotプレートにプレーティングした。各条件を2つ組で行った。20時間のインキュベーションの後に、プレートを、先に記載されたように展開し、室温の暗所において一晩乾燥させ、次いで、定量のためにZellnet Consulting(New York,NY)に送った。インターフェロン-γスポット形成細胞(SFC)および投入した細胞の数をプロットし、各抗原に特異的なT細胞の頻度を特異的SFC/投入細胞数として表現した。
【0259】
統計解析:記述統計量を計算して、データを要約した。抗ウイルス応答を要約し、正確な95%二項信頼区間とともに奏効率を推定した。ウイルス量およびT細胞頻度のデータをプロットして、免疫応答のパターンを経時的に図示した。注入前と注入後のウイルス量およびT細胞頻度の変化の比較を、ウィルコクソン符号順位検定を用いて行った。SASシステム(Cary,NC)バージョン9.4およびRバージョン3.2.1を用いてデータを解析した。P値<0.05を統計学的に有意とみなした。
【0260】
結果
【0261】
第三者CMVSTバンク:CMVSTのバンクを、移植集団の多様なHLAプロファイルを代表するように選択された8人のCMV血清陽性ドナーから作製した(表1)。7.7×10PBMCという中央値(範囲4.6~8.8×10)が、1回の採血(425mlという中央値)から単離された。CMVSTを拡大するために、PBMCを、pp65およびIE1を網羅するペプミックスに、培養中の20日超にわたって曝露したところ、102±12という平均拡大倍率(図17A)が達成された。得られた細胞はほぼ例外なく、セントラルCD45RA-/62L+(58.5±4.8%)およびエフェクターCD45RA-/62L-(35.3±4.6%)メモリマーカーを発現する、CD4+(21.3±7.5%)サブセットとCD8+(74.7±7.8%)サブセットの両方を含むCD3+(99.3±0.4%)だった(図17B)。8つすべての株が、刺激性のCMV抗原に対して反応性だった(IE1 419±100SFC/2×10およびpp65 1069±230、図17C)。表1に細胞株の特色が要約されている。これらの8つの株のうち、6つの製品を、処置される10人の試験患者に投与した。
【0262】
スクリーニング:CMVに感染している29人の同種異系HSCTレシピエントが、主要BMT提供者から試験参加にまわされ、8つの株のバンクから、28例における注入に適した製品(最低2/8のHLA適合閾値)が特定された(96.6%;95%CI:82.2%~99.9%)。そのようなHLA適合製品の投与に関連する臨床的有用性を実証した以前の第三者試験において行われた遡及的解析に基づいて、2/8のHLA適合閾値を確立した。HLAクラスIの適合であるかクラスIIの適合であるかは、アウトカムに影響しないとみられた。注目すべきことに、本研究では、ほとんどの製品が≧4の抗原で適合した(図18D)。株が利用可能な28人の患者のうち、17人の患者が標準的な抗ウイルス処置に応答したこと、および1人の患者が最近のDLIに起因して不適格だったことを理由に、細胞を投与されなかった。
【0263】
処置患者の特色:持続的な感染に対して処置される10人の患者(小児n=7および成人n=3)の特色が表2に要約されており、それらの患者には、2人のアフリカ系アメリカ人レシピエント、3人のヒスパニック起源の白人患者および5人の非ヒスパニック系コーカサス人レシピエントが含まれた。それらの10人の患者のうちの3人は、確定されたウイルス関連疾患[CMV網膜炎(n=1)、CMV大腸炎が原因の下痢(n=2)]を有した。移植後46~365日目(中央値、133日目)に、CMVST(2~6/8のHLA抗原で適合)を投与した。7人の患者は、24日間という中央値(48日間という平均値;範囲14~211日間)にわたって、標準的な抗ウイルス処置に抵抗性の感染症を有し、それらの患者のうちの3人が、従来の抗ウイルス薬に対する抵抗性を付与する変異があるウイルスを有した。免疫療法の介入前に、これらの患者のうちの6人が、従来の抗ウイルス薬に関連する重症有害事象(SAE)を経験し、それには急性腎傷害(n=4)、ホスカルネット誘発性の腎細尿管症(n=1)および重症のホスカルネット関連膵炎(n=1)が含まれ、3例で、任意の従来の薬物によるさらなる処置が不可能になった。
【0264】
臨床上の安全性:すべての注入が良好な耐容性を示した。注入の8時間後に一過性の単発的な発熱を呈した1人の患者を除いて、即時型の毒性は観察されなかった。1人の患者が、体幹に軽度の斑状丘疹状皮疹を呈したが、これはウイルス性発疹を示唆するとみられ、局所処置または全身処置なしに数日以内に自然に消失した。サイトカイン放出症候群(CRS)または注入したCMVSTに関連する他の毒性の症例は観察されず、移植片不全、自己免疫性溶血性貧血または移植関連微小血管障害を発症した患者もいなかった。患者を、急性GvHDについて6週間追跡し、慢性GvHDについて12ヶ月間追跡した。患者と注入細胞との間でHLAが異なるにもかかわらず、急性GvHDの前病歴[グレードII(n=2)またはIII(n=1)]を有する3人の患者を含む患者で、処置後に再発性または新規の急性もしくは慢性のGvHDを発症した患者はいなかった(表3)。
【0265】
臨床応答:注入された10人すべての患者がCMVSTに応答し、7人がCRであり、3人がPRであり、6週目までに、100%の累積奏効率だった(95%CI:69.2~100.0%)。6週目における平均血漿ウイルス量の減少は、89.8%(+/-21.4%)だった。処置されたすべての患者の連続的なウイルス量計測値に基づくウイルス学的アウトカムが図18に要約されている。著しいことに、難治性感染症を有する患者だけでなく、組織疾患を有する3人の個体[CMV網膜炎(n=1)、CMV大腸炎が原因の下痢(n=2)]においても、臨床的有用性が達成された。
【0266】
8人の患者に、CMVSTの注入を1回行い、1人の患者(3976)には、注入を2回行い、1人(4201)には、CMVSTの注入を3回行った。患者3976は、6週目にCRを達成したが、10週目にウイルス量が増えて再発した。その患者に、1回目の注入の80日後に同じCMVST株で2回目の注入を行ったところ、持続的なCRがもたらされた。患者4201には、最初の投与の28日後に同じCMVSTの2回目の注入を行ったが応答しなかったので、2週間後に異なるCMVST株で3回目の注入を行ったところ、持続的なCRが達成された。これらの患者において達成された臨床応答およびウイルス学的応答は、10人の処置患者のうち8人においてウイルス反応性CMVSTの増加[注入前の平均値126±84SFCから443±178/5×10PBMCというピークに増加(p=0.023;図19A)]を伴った。
【0267】
T細胞の持続性:CMVST注入がこれらの患者において見られた防御作用に寄与したかを評価するため、およびこれらのHLA部分適合VSTのインビボ寿命を評価するために、注入される細胞株に限定されるHLA拘束性エピトープペプチドを用いて、注入前および注入後の患者PBMCにおけるCMVSTの特異性を調べた。確認された第三者起源の機能的T細胞が、HLA拘束性ペプチド試薬が利用可能であった5人の患者において検出され、これは最大12週間持続し;8人すべての患者において、患者とCMVST株との間で共有されるHLAアレルに限定される抗ウイルス応答(図19B)が観察された。したがって、注入されたCMVSTが、CMV感染を制御する抗ウイルス効果を誘導したと推測された。
【0268】
上記の第I相試験では、少なくとも14日間のガンシクロビルおよび/またはホスカルネットによる処置を失敗していたまたは標準的な抗ウイルス薬剤を許容できなかった同種異系HSCTレシピエントにおけるCMV感染症/疾患を処置するために第三者CMVSTを投与した。注目すべき除外規準は、活動性GvHDを有する患者またはコルチコステロイドを中用量もしくは高用量で投与された患者だった。人種的かつ民族的に多様な同種異系HSCT患者集団を幅広くカバーするように、HLAプロファイルに基づいて慎重に選択されたたった8人の健康ドナーからCMVSTのバンクを作製した。実際に、試験参加についてスクリーニングされた29人の患者のうち、28人に対して好適な株(最低2つの共有HLA抗原閾値)(96.6%;95%CI:82.2~99.9%)が特定されたことから、十分に選択された小さな細胞バンクで幅広い患者をカバーできるという実現可能性が証明された。これらの28人の患者のうち、多様なバックグラウンドの10人(2人のアフリカ系アメリカ人、3人のヒスパニック起源の白人および5人の非ヒスパニック系コーカサス人)を処置したところ、全員が急性もしくは慢性GvHDまたは他の毒性を経験せずにウイルス学的有用性および臨床的有用性を達成した。6人が、従来の抗ウイルス薬に関係する急性腎傷害、腎細尿管症および膵炎をはじめとした重症有害事象を以前に経験していたので、これは注目すべきことであった。この第I相試験は、難治性CMV感染症を処置するための、慎重にデザインされた小さなドナーバンクを起源とする第三者のウイルス反応性T細胞の投与に関連する安全性および臨床的有用性を示す。
【0269】
CMVは、最近数十年において疾患の割合が低下しているにもかかわらず、依然として同種異系HSCT後の主な罹患原因のままであり;最近のCIBMTR報告では、9469人の患者[2003~2010年にAML(n=5310)、ALL(n=1883)、CML(n=1079)およびMDS(n=1197)のために移植された患者]から得たデータを調べたところ、CMVの再活性化が、4つすべての疾患カテゴリーの間で、より高い非再発死亡率ならびにより低い全生存率に関連した。さらに、2008~2013年に移植された208人の患者の最近の研究では、CMVが再活性化した患者において平均の入院期間が26日延長することが見出され、1つより多いCMV再活性化エピソードの発生が、同種異系HSCTのコストを25~30%上昇させた(p<0.0001)ことから、CMV管理の経済的負担が強調されることとなった。
【0270】
ホスカルネットおよびガンシクロビルは、HSCT後のCMV感染症を処置するために頻繁に使用されている。しかしながら、CMV網膜炎に対するガンシクロビルを除いて、その使用は適応外であり、両方の薬物が、有意な副作用、特に腎疾患および移植片抑制に関連する。サイトメガロウイルスDNAターミナーゼ複合体阻害剤であるレテルモビルは、予防的に使用されたとき、移植後のCMV感染/再活性化の発生率を低下させ6、2017年のFDA承認(成人HSCT患者におけるCMV予防のため)以来、高リスク患者においてますます使用されている。しかしながら、集学的なCMV Drug Development ForumのCMV Resistance Working Groupは、レテルモビルをより広範に予防的に使用すると、CMVのブレークスルー感染が起きた場合に、従来の抗ウイルス薬に抵抗性である生物の出現が増加すると予想している。実際に、レテルモビル抵抗性CMV株がますます報告されており、抵抗性疾患を有する患者の臨床成績は不良で、進行性の組織疾患および死亡に関連する。
【0271】
CMVSTは、本発明者らのグループなどが以前に報告したように、最初の再活性化と薬物抵抗性ウイルス株の両方を標的とする代替ストラテジーを提供する。実際に、本研究においてCMVSTで処置された患者の30%が、1つ以上の従来の抗ウイルス薬に抵抗性であると確認されたウイルス株に感染した。
【0272】
本研究の目標の1つは、処置にまわされる同種異系HSCTレシピエントの大部分をカバーするのに十分な多様性を有するCMV特異的T細胞バンクを調製することだった。したがって、>600人の同種異系HSCTレシピエントのHLAタイプを、将来を見越して、CMVSTを作製できる多様で健康な適格の(CMV血清陽性の)ドナーのプールと比較して、十分に適合する製品を患者に提供し得る最小のコホートを特定した。このモデルを用いて、十分に選択されたたった8人のドナーで、少なくとも2つのHLA抗原において適合するT細胞製品を患者集団の>95%に提供できることが見出された。ドナープールをさらに増加させても、適合数は有意に増加しない。臨床参加についてスクリーニングされた29人の患者のうち28人(96.5%)に対して好適な株が特定された本研究は、そのようなドナーバンクが同種異系HSCT患者集団の大部分に効果的に供給できるという理論を裏付ける。
【0273】
移植患者集団内の人種的および民族的多様性を米国の移植集団のそれと比較した(表4)。これにより、本発明者らの患者集団内の多様性が、米国集団よりもわずかに多様でないが類似していることが明らかになった。これは、本研究のために開発された小さな細胞バンクを、この国全体にわたって臨床で使用するのに広く適用できることを示唆している。単一のドナーコレクションから>2,000回注入するための細胞を作製するのに十分な材料を生成できることにより、移植センターにわたって、試験されたCMVSTをユニバーサルに使用することが、より実現可能になっている。したがって、「既製」の第三者のウイルス反応性T細胞の分散化分布モデルを想定することができ、細胞がオンデマンドで入手可能になることが確実になった。
【0274】
まとめると、上記データは、十分に選択されたたった8人の第三者ドナーから調製されたCMV反応性T細胞の十分に特徴付けられたバンクが、難治性CMV感染症を有する患者の大部分に、安全かつ有効な抗ウイルス活性を提供できる適切に適合した株を供給できることを示している。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
実施例2.呼吸器系ウイルス感染症を予防および処置するためのマルチウイルス特異的Tリンパ球の作製
【0275】
本発明者らのグループは以前に、インビトロで拡大されたウイルス特異的T細胞(VST)の養子移入によって、同種異系HSCTレシピエントにおいて潜伏ウイルス[エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、BKウイルス(BKV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)と溶菌ウイルス[アデノウイルス(AdV)]の両方に関連する感染症を安全かつ効果的に予防および処置できることを実証した。CARVに対する感受性が、基本的な細胞免疫不全に関連することから、本研究において本発明者らは、インフルエンザ、RSV、hMPVおよびPIV-3を含むようにVST療法の治療範囲を拡大することの実現可能性を探索した。
【0276】
本発明者らは、本発明者らの4つの標的ウイルスに由来する12個の免疫優性抗原に対して特異性を有するポリクローナル(CD4+およびCD8+)VSTの単一調製物を、GMP準拠の製造方法を用いて迅速に作製できる機構を説明した。刺激のために使用したウイルスタンパク質は、T細胞に対する免疫原性とそれらの配列保存の両方に基づいて選択した。拡大された細胞は、Th1に極性化しており、多機能であり、感染していない自己または同種異系の標的に対しては活性を示さずに、ウイルス抗原を発現している標的細胞に選択的に反応し、殺滅することができることから、ウイルス標的に対する選択性と臨床での使用に対する安全性の両方が証明された。
【0277】
本研究において、本発明者らは、健康ドナー由来のPBMCを、ある特定の標的ウイルス由来の免疫原性抗原[インフルエンザ-NP1およびMP1;RSV-NおよびF;hMPV-F、N、M2-1およびM;PIV3-M、HN、NおよびF]を網羅するペプミックス(重複ペプチドライブラリー)のカクテルに曝露した後、G-Rexにおいて活性化サイトカインの存在下で拡大した。10~13日間にわたって、本発明者らは、平均8.5倍の拡大を達成した(0.25×10PBMC/cm2から平均1.9±0.2×10細胞/cmへの増加;n=12)。
【0278】
手短に言えば、Baylor College of Medicine IRBが承認したプロトコル(H-7634、H-7666)を用いてインフォームドコンセントを受けた健康志願者およびHSCTレシピエントからPBMCを得て、それを使用してフィトヘマグルチニン(PHA)芽球およびマルチ-R-VSTを作製した。PHA芽球は、以前に報告したように作製し、インターロイキン2(IL2)(100U/mL;NIH,Bethesda,Maryland)(2日ごとに補充する)が補充されたVST培地[45%RPMI1640(HyClone Laboratories,Logan,Utah)、45%Click’s培地(Irvine Scientific,Santa Ana,California)、2mM GlutaMAX TM-I(Life Technologies,Grand Island,New York)および10%ヒトAB血清(Valley Biomedical,Winchester,Virginia)]中で培養した。
【0279】
マルチ-R-VSTの作製に向けて、ペプミックスを作製した。手短に言えば、インフルエンザA(NP1、MP1)、RSV(N、F)、hMPV(F、N、M2-1、M)(JPT Peptide Technologies,Berlin,Germany)およびPIV-3抗原(M、HN、N、F)(Genemed Synthesis,San Antonio,TX)を網羅するペプチドライブラリー(11aa重複する15mer)でPBMCを刺激した。凍結乾燥されたペプミックスをジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma-Aldrich)で再構成し、-80℃で保存した。マルチ-R-VSTの作製に向けて、PBMC(2.5×10)を、IL7(20ng/ml)、IL4(800U/ml)(R&D Systems,Minneapolis,MN)およびペプミックス(2ng/ペプチド/ml)が補充された100mlのVST培地が入ったG-Rex10(Wilson Wolf Manufacturing Corporation,St.Paul,MN)に移し、10~13日間、37℃、5%COにおいて培養した。
【0280】
次いで、CD3、CD25、CD28、CD45RO、CD279(PD-1)[Becton Dickinson(BO),Franklin Lakes,NJ]、CD4、CD8、CD16、CD62L、CD69(Beckman Coulter,Brea,CA)およびCD366(TIM-3)(Biolegend,San Diego,CA)に対するモノクローナル抗体で表面染色したマルチ-R-VSTに対してフローサイトメトリーを行った。細胞をGalliosTMFlow Cytometerにおいて取得し、Kaluza(登録商標)Flow Analysis Software(Beckman Coulter)で解析した。詳細には、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)(Sigma-Aldrich)中でペレットにし、次いで、抗体を飽和量(5μl)で加えた後、4℃で15分間インキュベーションした。続いて、細胞を洗浄し、300μlのPBSに再懸濁し、少なくとも20,000個の生細胞をGalliosTMFlow Cytometerにおいて取得し、Kaluza(登録商標)Flow Analysis Software(Beckman Coulter)で解析した。
【0281】
細胞内サイトカイン染色に向けて、マルチ-R-VSTを収集し、VST培地に再懸濁し(2×10/ml)、96ウェルプレートの1ウェルあたり200μLを加えた。細胞を、ブレフェルジンA(1μg/ml)、モネンシン(1μg/ml)、CD28およびCD49d(1μg/ml)(BD)とともに200ngの個々の試験ペプミックスまたはコントロールペプミックスと一晩インキュベートした。次に、VSTをPBSで洗浄し、ペレットにし、CD8およびCD3(5μ1/抗体/チューブ)で15分間、4℃にて表面染色し、次いで、洗浄し、ペレットにし、固定し、4℃の暗所において20分間、Cytofix/Cytoperm溶液(BD)で透過処理した。Perm/Wash Buffer(BD)で洗浄した後、細胞を4℃の暗所において30分間、10μLのIFNγ抗体およびTNFα抗体(BD)とインキュベートした。次いで、細胞をPerm/Wash Bufferで2回洗浄し、少なくとも50,000個の生細胞をGalliosTMFlow Cytometerにおいて取得し、Kaluza(登録商標)Flow Analysis Softwareで解析した。
【0282】
eBioscience FoxP3キット(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を製造者の指示書に従って用いて、FoxP3染色を行った。簡潔には、1×10個の細胞をCD3、CD4およびCD25抗体で表面染色し、次いで、洗浄し、1mlの固定/透過処理緩衝液に再懸濁し、4℃の暗所において1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を透過処理緩衝液に再懸濁し、5μLのアイソタイプ抗体またはFoxP3抗体(Clone PCH101)と4℃で30分間インキュベートし、次いで、洗浄し、GalliosTMFlow Cytometerにおいて取得した後、Kaluza(登録商標)Flow Analysis Softwareで解析した。
【0283】
酵素結合イムノスポット(ELIspot)スポット解析を用いて、IFNγおよびグランザイムBを分泌する細胞の頻度を定量化した。簡潔には、PBMC、磁気的に選択されたT細胞部分集団およびマルチ-R-VSTを、5×10または2×10細胞/mlでVST培地に再懸濁し、100μlの細胞を各ELIspotウェルに加えた。磁気ビーズおよびLS分離カラム(Miltenyi Biotec,GmbH)を製造者の指示書に従って用いて、細胞選択を行った。個々の刺激ペプミックス[NP1、MP1(インフルエンザ);N、F(RSV);F、N、M2-1、M(hMPV);M、HN、N、F(PIV-3)]またはコントロールペプミックス(サバイビン、WT1)による直接刺激(500ng/ペプチド/ml)の後、抗原特異的活性を計測した。ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)(1μg/ml)およびPHA(1μg/ml)を、それぞれPBMCおよびVSTに対するポジティブコントロールとして使用した。20時間のインキュベーションの後、プレートを先に記載されたように展開し、室温で一晩乾燥させ、次いで、定量のためにZellnet Consulting(New York)に送った。スポット形成細胞(SFC)および投入した細胞の数をプロットし、VSTに対する特異性閾値を≧30SFC/2×10投入細胞と定義した。
【0284】
マルチ-R-VSTサイトカインプロファイルを、MILLIPLEX High Sensitivity Human Cytokine Panel(Millipore,Billerica,MA)を用いて評価した。2×10個のVSTをペプミックス(NP1、MP1、N、F、F、N、M2-1、M、M、HN、NおよびF)(1μg/ml)で一晩刺激した。続いて、上清を回収し、2つ組のウェルにプレーティングし、抗体が固定化されたビーズとともに4℃で一晩インキュベートし、次いで、洗浄し、ビオチン化検出抗体とともに室温で1時間プレーティングした。最後に、ストレプトアビジン-フィコエリトリンを室温で30分間加えた。サンプルを洗浄し、xPONENTソフトウェアを用いてLuminex 200(XMAP Technology)において解析した。
【0285】
クロム放出アッセイを用いた。手短に言えば、標準的な4時間のクロム(Cr51)放出アッセイを使用し、自己抗原を負荷されたPHA芽球を標的として用いて(20ng/ペプミックス/1×10標的細胞)、マルチ-R-VSTの特異的細胞溶解活性を計測した。40:1、20:1、10:1および5:1というエフェクター:ターゲット(E:T)比を用いて、特異的溶解を解析した。特異的溶解のパーセンテージを計算した[(実験上の放出-自発的放出)/(最大放出-自発的放出)]×100。マルチ-R-VST株の自己反応性およびアロ反応性の能力を計測するために、自己PHA芽球および同種異系PHA芽球だけを標的として使用した。
【0286】
健康ドナー由来のポリクローナルなマルチ-R-VSTの作製
【0287】
インフルエンザ、RSV、hMPVおよびPIV-3に対して反応性の細胞の部分集団を含むVST特異的T細胞株を作製することの実現可能性を検討するために、本発明者らは、各標的ウイルス由来の免疫原性抗原[インフルエンザ-NP1およびMP1;RSV-NおよびF;hMPV-F、N、M2-1およびM;PIV-3-M、HN、NおよびF]を網羅する重複ペプチドライブラリーのプールを利用してPBMCを刺激した後、サイトカインが補充されたVST培地が入ったG-Rex10において培養した[図20A]。10~13日間にわたって、本発明者らは、平均8.5倍の細胞増加を達成した[図20B][0.25×10PBMC/cm2から平均値1.9±0.2×10細胞/cm2への増加(中央値:2.05×10、範囲:0.6~2.82×10細胞/cm2 n=12)。これはほぼ例外なく、CD3+T細胞(96.2±0.6%;平均値±SEM)、および細胞傷害性T細胞(CD8+;18.1±1.3%)とヘルパーT細胞(CD4+;74.4±1.7%)との混合物[図20C]からなり、CD4/CD25/FoxP3+染色によって評価したとき、制御性T細胞の増殖のエビデンスはなかった(図21)。
【0288】
さらに、拡大された細胞は、活性化マーカーCD25(50.2±3.8%)、CD69(52.8±6.3%)、CD28(85.8±2%)のアップレギュレーション、ならびにセントラルメモリーマーカー(CD45RO+/CD62L+:61.4±3%)およびエフェクターメモリーマーカー(CD45RO+/CD62L-:20.3±2.3%)の発現、ならびに最小のPD1(6.9±1.4%)またはTim3(13.5±2.3%)の表面発現によって証明されるように、エフェクター機能および長期メモリーと一致する表現型を示した(図20C~D]。
【0289】
マルチ-R-VSTの抗ウイルス特異性
【0290】
次に、拡大集団が抗原特異的であるかを判定するために、免疫原として個々の各刺激抗原を用いてIFNy Ellspotアッセイを行った。作製された12個の株がすべて、標的ウイルスのすべてに対して反応性であることが判明した[表1、図23]。図22Aには、各刺激抗原に対する活性の規模が要約されており、図24は、漸増濃度のウイルス抗原に対する本発明者らの拡大VSTの応答を示している。著しいことに、培養中の10~13日間にわたって、本発明者らは、14.6±4.3(PIV-3-HN)~50.4±9.9倍(RSV-N)というウイルス特異的T細胞の濃縮を達成した[図22B;ドナーPBMC内でのGARV反応性T細胞の前駆体頻度が図26および27に要約されている]。まとめると、これらのデータは、呼吸器系ウイルス特異的T細胞がメモリープールに存在し、GMP準拠の製造方法を用いてエキソビボで容易に増幅できることを示唆している。
【0291】
次に、ウイルス特異性が、CD4+T細胞サブセットまたはCD8+T細胞サブセットまたは両T細胞サブセットとともに含まれているのかを評価するために、CD4+およびCD8+IFNy産生細胞に対してゲーティングするICSを行った。図22Cは、4つすべてのウイルスに対する活性が両方のT細胞コンパートメントにおいて検出された、1人のドナーからの代表的な結果を示しており[(CD4+:インフルエンザ-5.28%;RSV-11%;hMPV-6.57%;PIV-3-3.37%)、(CD8+:インフルエンザ-2.26%;RSV-4.36%;hMPV-2.69%;PIV-3-2.16%)]、図22Dは、スクリーニングされた9人のドナーに対する要約結果を示しており、本発明者らのマルチ-R-VSTがポリクローナルであり、多特異的であることが確認された。
【0292】
マルチ-R-VSTの機能的特性
【0293】
複数の炎症促進性サイトカインの産生およびエフェクター分子の発現は、細胞溶解機能の増大およびインビボでのT細胞活性の改善と相関すると示されている。ゆえに、本発明者らは次に、抗原曝露後の本発明者らのマルチ-R-VSTのサイトカインプロファイルを調べた。図27に示されているように、Luminexアレイ[図27C-左のパネル]およびプロトタイプのTh2/抑制性サイトカインのベースラインレベル[図27C-右のパネル]によって計測したとき、IFNy産生細胞の大部分は、GM-CSFに加えて、TNFaも産生した[図27A-1人のドナーからの詳細なICS結果;9人のドナーに対する要約結果;図27B]。さらに、抗原刺激を行うと、本発明者らの細胞は、エフェクター分子のグランザイムBを産生したことから、これらの拡大された細胞の細胞溶解能力が示唆された[図27D、n=9]。まとめると、このデータから、本発明者らのマルチ-R-VSTの、Th1に極性化した多機能な特色が実証された。
【0294】
マルチ-R-VSTは細胞溶解性であり、ウイルス負荷標的を殺滅する
【0295】
これらの拡大した細胞の細胞溶解能力をインビトロで検討するために、マルチ-R-VSTを、ウイルスペプミックスで負荷された自己のCr51標識PHA芽球およびコントロールとして働く負荷されていないPHA芽球と共培養した。図28Aおよび図29に示されているように、ウイルス抗原を負荷された標的は、本発明者らの拡大されたマルチ-R-VSTによって特異的に認識され、溶解された(40:1 E:T-インフルエンザ:13±5%、RSV:36±8%、hMPV:26±7%、PIV-3:22±5%、n=8)。最後に、これらのVSTは、1回だけ刺激を受けていたが、HLA不適合のPHA芽球を標的として用いたとき、感染していないの自己標的に対する活性の証拠もなかったし、これらの細胞が同種異系HSCTレシピエントに投与される場合に考慮すべき重要な事柄であるアロ反応性(移植片対宿主の可能性)の証拠もなかった(図28B)。
【0296】
HSCTレシピエントにおけるCARV特異的T細胞の検出
【0297】
最後に、マルチ-R-VSTの潜在的な臨床的関連性を評価するために、活動性/最近のCARV感染症を有する同種異系HSCTレシピエントが、活動性のウイルスエピソード中/後に高レベルの反応性T細胞を示すかを検討した。図30Aは、強度軽減移植前治療とともに適合血縁ドナー(MRD)移植を受けた、急性骨髄性白血病(AML)を有する64歳男性である患者#1の結果を示している。この患者は、HSCTの9ヶ月後に重症のURTIを発症し、これは、PCR解析によってRSVに関係すると確かめられた。この患者は、感染時には何らの免疫抑制も受けていなかったが、感染の診断当日に肺の炎症を制御するためにプレドニゾンを投与した。
【0298】
4週間以内に、その患者の症状は、具体的な抗ウイルス処置なしに消失した。T細胞免疫がウイルスのクリアランスに寄与したかを評価するために、その患者の感染経過にわたってRSV特異的T細胞の循環頻度を解析した。感染の直前に、この患者は、RSV抗原NおよびFに対して非常に弱い応答しか示していなかった(6.5SFC/5×10PBMC)。しかしながら、ウイルス曝露の1ヶ月以内に、RSV特異的T細胞がインビボにおいて拡大し(527SFC/5×10PBMC)、図30Aに見られるように、反応性細胞が81倍増加し、その後ウイルスクリアランスと同時に減少した。著しいことに、観察されたRSV特異的応答は、リンパ球/CD4+数の全体的な増加を伴わなかったので、T細胞の拡大が、全般的な免疫再構成に起因するのではなく、ウイルスによって引き起こされたことが示唆される。同様に、骨髄破壊的移植前治療とともに適合非血縁ドナー(MUD)移植を受けた急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する23歳男性である患者#2も、漸減用量のタクロリムス投与中の、HSCTの5ヶ月後に重症のRSV関連URTIを発症した。この患者の感染は、リバビリンの投与と同時に1週間以内に症候が消失した。内因性の免疫もウイルスクリアランスにおいて役割を果たすかを検討するために、反応性のT細胞の数を経時的にモニターした。
【0299】
図30Bに見られるように、ウイルスクリアランスは、RSV特異的T細胞の循環頻度の上昇(ピークは93SFC/5×10PBMC)と同時に起き、この循環頻度はその後ベースラインレベルに戻った。当該患者は、その後の肺炎球菌性肺炎のために移植の7ヶ月後に入院し、同時に痰の中にhMPVが検出された(PCRによって)。この肺炎は、抗生物質で処置され、その後、hMPV特異的T細胞(F、N、M2-1およびMに対して反応性)の顕著な拡大(4SFCから70SFCのピークに増加した)と同時に疾患の消失およびウイルスのクリアランスが生じ、
【0300】
その後、ベースラインレベルに低下した(図30C)。この場合もまた、観察されたRSV特異的応答およびhMPV特異的応答は、リンパ球/CD4+数の全体的な増加と無関係だった。
【0301】
図31は、CARV感染症を発症した追加の3人のHSCTレシピエントの結果を示している。患者#3は、強度軽減移植前治療とともにハプロタイプ一致の移植を受けた、AMLを有する15歳女性であり、移植の5週間後のタクロリムス投与中にRSV誘発性のURTIおよびLRTIを発症した。この患者には、リバビリンが投与され、4週間以内に感染は消失した。RSV反応性T細胞を経時的にモニターしたところ、図31Aに見られるように、RSV特異的T細胞の頻度の急上昇(0から506SFC/5×10PBMCへ)と同時にウイルスクリアランスが起きた。同様に、骨髄破壊的移植前治療とともにMUD移植を受けたALLを有する10歳男性患者である患者#4は、タクロリムス投与中のHSCTの1ヶ月後に、PIV3に関係するURTIおよびLRTIを発症した。この患者の感染は、リバビリンの投与と同時に5週間以内に症候が消失した。
【0302】
内因性の免疫もウイルスのクリアランスにおいて役割を果たすかを検討するために、PIV3反応性のT細胞数を経時的にモニターした。図31Bに見られるように、ウイルスのクリアランスは、PIV3抗原M、HN、NおよびFに特異的なT細胞の循環頻度の上昇(ピークは38SFC/5×10PBMC)と同時に起き、この循環頻度はその後ベースラインレベルに戻った。最後に、骨髄破壊的移植前治療とともにMRD移植を受けた慢性肉芽腫症を有する3歳男性である患者#5を示す。この患者は、シクロスポリン投与中のHSCTの4ヶ月後に、PIV3に関係する重症のURTIを発症した。この患者は、リバビリンを投与されていたが(評価された最後の時点において)、疾患症状を示し続け、PIV3特異的T細胞を示さなかった(図31C)。まとめると、これらのデータは、免疫無防備状態患者におけるウイルス感染の制御におけるGARV特異的T細胞のインビボにおける関連性を示唆している。
【0303】
本発明者らは、エキソビボで拡大されたT細胞を使用して、臨床上問題になる複数の呼吸器系ウイルスを標的とする実現可能性を探索した。本発明者らは、免疫無防備状態の宿主における上気道・下気道感染症に関与する4つの季節性CARV[インフルエンザ、RSV、hMPVおよびPIV-3]に由来する合計12個の抗原に対して特異性を有するポリクローナルなCD4+およびCD8+T細胞を迅速に作製できることを示した。GMP準拠の方法を用いて作製されるこれらの広範なVSTは、Th1に極性化しており、刺激されると複数のエフェクターサイトカインを産生し、自己反応性またはアロ反応性なしに、ウイルスに感染した標的を殺滅した。最後に、活動性のCARV感染症の排除に成功した同種異系HSCTレシピエントの末梢血中に反応性T細胞集団が検出されたことから、そのようなマルチ-R-VSTの養子移入後の臨床的有用性の可能性が示唆される。
【0304】
CARVに関連する急性のURTIおよびLRTIは、公衆衛生上の大きな問題であり、低年齢小児、高齢者、および免疫系が抑制されているまたは損なわれている人が最もかかりやすい。これらの感染症は、咳、呼吸困難および喘鳴をはじめとした症状を伴い、二重/複数の併存感染症が一般的であり、5歳未満の小児では40%を超え得る頻度であり、罹患および入院のリスク上昇に関連する。免疫無防備状態の同種異系HSCTレシピエントのうち、最大40%が、軽度(鼻漏、咳および発熱を含む関連症状)から重度(細気管支炎および肺炎)まで様々であり得るCARV感染症を経験し、LRTIを有するレシピエントでは、関連死亡率が50%にも達する。治療法の選択肢は限られている。hMPVおよびPIV-3の場合、現在、承認された予防用ワクチンも治療用の抗ウイルス薬も無く、ヌクレオシドアナログRBVの適応外使用およびDAS-181(組換えシアリダーゼ融合タンパク質)の調査的使用の臨床的影響は限定的である。年1回の予防用インフルエンザワクチンは、同種異系HSCTレシピエントに対しては移植後少なくとも6ヶ月まで推奨されず(および強化化学療法または抗B細胞抗体のレシピエントでは除外される)、ノイラミニダーゼ阻害剤は、活動性感染症の処置に必ずしも有効ではない。
【0305】
RSVについては、エアロゾル化RBVが、乳児および小児における重症の細気管支炎を処置するためにFDAの承認を受けて
おり、また、URTIまたはLRTIを予防するため、およびHSCTレシピエントにおいてRSV肺炎を処置するために適応外使用されている。しかしながら、薬物送達のために必要な扱いにくい噴霧化デバイスおよび換気システム、ならびにかなりの関連コストのせいで、その普及には限界がある。例えば、2015年において、エアロゾル化RBVは、5日間が通常の処置コースで1日あたり29,953ドルのコストがかかる。したがって、承認済みの処置が無いことと、抗ウイルス剤が高コストであることから、本発明者らは養子移入T細胞を使用して、この患者集団においてCARV感染症を予防および/または処置する可能性を探索することにした。
【0306】
CARVのウイルス制御を媒介する際の機能的なT細胞免疫の中心的役割は、ごく最近になって注目を集めるようになった。例えば、RSV URTIを有する181人のHSCT患者の遡及研究によって、LRTIに進行し得る感染症を有する患者を特定する際の鍵となる決定因子としてリンパ球減少症(ALC≦100/mmと定義される)が報告されたが、RSV中和抗体レベルは、疾患の進行と有意に関連しなかった。さらに、RSV LRTIを処置された、HSCTを受けたまたは受けていない血液悪性腫瘍を有する154人の成人患者の最近の遡及的解析では、リンパ球減少症は、高死亡率と有意に関連した。これらの両研究が、インビボでの防御免疫の媒介における細胞性免疫の重要性を示唆している。
【0307】
本発明者らのグループは以前に、潜伏ウイルスであるCMV、EBV、BKV、HHV-6およびAdVをはじめとした一連の臨床上問題になるウイルスを処置するための、エキソビボで拡大されたVSTの実現可能性および臨床的有用性を実証した。本発明者らの最初の研究(および他の研究者らの研究)は、ドナー由来のT細胞株の安全性および活性を探索したが、より最近、本発明者らは「既製」のユニバーサルT細胞プラットフォームを開発した。これにより、5つすべてのウイルス(CMV、EBV、BKV、HHV-6、AdV)に特異的なVSTが、将来を見越して作製され、バンク化されたので、制御されていない感染症を有する免疫無防備状態の患者への投与に直ちに利用可能になることが確実になった。
【0308】
実際に、本発明者らの最近の第II相臨床試験では、従来の抗ウイルス剤に抵抗性であると判明していた合計45の感染を含む38人の患者にこれらのHLA部分適合VSTを投与したところ、有意な毒性無しに92%という全奏効率が達成された。養子移入されたT細胞を使用した臨床での成功というこの前例、ならびに一連のCARVに対して有効な治療が無いということから、本発明者らはすぐに、VST治療の治療範囲をHSCT後のインフルエンザ、RSV、hMPVおよびPIV-3感染症にまで広げる可能性を探索した。この文脈では、高リスク患者[例えば、低年齢(<5歳)および高齢者、免疫系が損なわれている患者]に周期的に予防的にVSTを投与するという選択肢も考慮され得る。
【0309】
あるいは、これらの細胞は、LRTへの進行を予防するために、従来の抗ウイルス薬剤が失敗に終わったURTIを有する患者において治療的に使用され得る。したがって、本発明者らが確立したGMP準拠のVST製造方法を用いて、本発明者らは、多様なハプロタイプを有する12人のドナー由来の、T細胞に対する免疫原性とそれらの配列保存の両方に基づいて選択された一連のGARV由来抗原[インフルエンザ-NP1およびMP1;RSV-NおよびF;hMPV-F、N、M2-1およびM;PIV-3-M、HN、NおよびF]に対して反応性であるVSTを作製することの実行可能性を実証した。拡大された細胞は、ポリクローナル(CD4+およびCD8+)であり、Th1に極性化しており、多機能であり、感染していない自己または同種異系の標的は逃れさせるがウイルス抗原を発現している標的は溶解することができたことから、臨床で使用するためのウイルス特異性と安全性の両方が証明された。
【0310】
最後に、これらの知見の臨床的有意性を評価するために、活動性のRSV、hMPVおよびPIV3感染症を有する5人の同種異系HSCTレシピエントの末梢血を調べた。これらの患者のうち4人が1~5週間以内にウイルスの制御に成功し、これは内因性の反応性T細胞の増幅と同時発生的であり、その後ウイルスがクリアランスされるとベースラインレベルに戻ったが、1人の患者は、感染ウイルスに対する免疫応答を開始せず、現在までに感染は排除されていない。このデータは、エキソビボで拡大された細胞の養子移入が、自身の細胞性免疫が欠けている患者において臨床的に有益であるはずであることを示唆している。
【0311】
結論として、本発明者らは、インフルエンザ、RSV、hMPVおよびPIV-3に対して特異性を有するポリクローナルマルチ呼吸器系(マルチ-R)VSTの単一の調製物を、GMP準拠の製造方法を用いて臨床的に妥当な数で迅速に作製することが実現可能であることを示した。このデータは、免疫無防備状態の患者においてCARV感染症を予防または処置するために養子移入されるマルチ-R-VSTの将来の臨床試験に対する理論的根拠を提供する。
実施例3.アロHSCT後の感染症を予防および処置するためのマルチウイルス特異的Tリンパ球のドナーミニバンクの作製
【0312】
健康個体では、T細胞免疫がBKVおよび他のウイルスから防御する。アロHSCTレシピエントでは、強力な免疫抑制性レジメン(およびその後の関連する免疫低下)を使用すると、患者は重症のウイルス感染症にかかりやすくなる。ゆえに、本発明者らのアプローチは、移植患者自身の免疫系が回復するまでの期間にわたってウイルス感染を制御するためおよび症状を無くすために、エキソビボで拡大された遺伝的に改変されていないウイルス特異的T細胞(VST)を投与することによってT細胞免疫を回復させることである。この目標を達成するために、本発明者らは将来を見越して、HLA部分適合の「既製」品として入手可能である、プレスクリーニングされた(21 CFR Part 1271,subpart Cによって義務づけられているような感染性物質および疾患の危険因子について)血清陽性の健康ドナー由来の末梢血単核球(PBMC)からVSTを製造した。
【0313】
本発明者らのVST製品の1つ(Viralym-M)は、5つのウイルス[EBV、CMV、AdV、BKVおよびヒトヘルペスウイルス6(HHV6)]に特異的である。本発明者らはまず、Viralym-M細胞株を作製するために、実施例1に記載されたようなドナーミニバンクを構築しようと試みた。本発明者らの目標は、処置にまわされた同種異系HSCTレシピエントの大部分をカバーするのに十分な多様性を有するミニバンクを作製することだった。したがって、上記の実施例におけるように、本発明者らはまず、米国の移植集団の人種的および民族的多様性を調べ、それをBaylor CCGTにおいて同種異系幹細胞移植を受けた患者と比較した(表4および表5)。これにより、Baylor CCGT患者集団内の多様性は、米国集団よりもわずかに多様ではないにしても類似していることが実証された。
【表5】
【0314】
実施例1に記載された本発明者らのドナー選択モデルを検証するために、本発明者らは、実施例1における方法に従って見込みドナーのHLAタイプを同種異系HSCTレシピエントと比較し、これにより、標的患者の>95%をカバーし得る冗長でない5つのドナーミニバンクに含めるための25人の個体(ミニバンク1つあたり5人のドナー)を特定するシミュレーションを行った。これらの5つのミンバンクを構築することによって、本発明者らは、各患者に対する冗長性を確保した(すなわち、各患者は、5つの各ミニバンクの中に好適な適合をおそらく有した)。
表6は、この方法に基づいてドナーミニバンクに含めるために特定されたViralym-MドナーのHLAタイプを示している。
【表6】
【0315】
シミュレートされた本発明者らのViralym-Mドナーバンク(表6)が、記載のカバー度を実際に提供し得るかを正式に評価するために、本発明者らはまず、このバンクが、少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合した効力のあるT細胞製品を用いる本発明者らのPOC第II相試験に登録された患者に対応する能力を評価した。図32に示されているように、本発明者らは実際に、少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合した製品で54人すべての患者(100%)に対応することができ、5±1つの共有アレルという平均値を達成した(範囲2~7/8の適合アレル)。さらに、この解析を本発明者らの>650人のBaylor CCGT同種異系HSCT患者集団全体にまで広げたときも、少なくとも2つのHLAアレルにおいて適合した製品ですべての見込み患者の100%に対応することができ、また、5±1つの共有アレルという平均値も達成した(範囲2~8/8の適合アレル)(図33)。
【0316】
まとめると、これらのデータは、本発明者らのドナーミニバンク(慎重に選択されたドナーから作製されたウイルス特異的T細胞株を含む)が、最低2つのHLAアレルにおいて適合した製品で米国の同種異系HSCT患者集団の少なくとも95%をカバーできることを裏付けた。
【0317】
Viralym-M製造プロセスは、本発明者らによってWO2013/119947に、およびTzannou et al.,J Clin Oncol.2017 Nov 1;35(31:3547-3557(これらの各々は、その全体が参照により本明細書中に援用され、図12に概説されている)に、先に記載されたとおりだった。簡潔には、血清陽性の健康ドナーからPBMCを単離し、250×10個のPBMCを、完全培地、Viralym M抗原をカバーするペプミックス(アデノウイルス、CMV、EBV、BKVおよびHHV6)、IL-4およびIL-7の存在下、G-Rex 100M培養システム(Wilson Wolf,Saint Paul,MN)において、およそ7~14日間、37℃、5%COで培養した(場合によっては培養時間がおよそ18日間まで延長し得る)。培養の後、Viralym M細胞株を収集し、洗浄し、品質管理の検査においてまたは治療薬として使用するまで液体窒素中で凍結保存するために分注した。
【0318】
図13は、アデノウイルス、CMV、EBV、BKVおよびHHV6に対する抗原特異的T細胞株のそれぞれの効力を、効力閾値未満のネガティブコントロールと比べて示している。これらのT細胞は、特異的なT細胞株の合格と不合格とを区別するための閾値である>30SFC/2×10投入VSTによって指摘されるように、5つすべてのウイルスに特異的である。>30SFC/2×10投入VSTという効力閾値は、内部ネガティブコントロールとして働く、標的ウイルスの1つ以上について血清陰性の(血清学的スクリーニングに基づいて)ドナーから生成されたT細胞株を用いた実験データに基づいて確立された(図14)。
【0319】
本発明者らは、処置抵抗性感染症を有する58人の同種異系HSCT患者にVSTを投与した第2相オープンラベル概念実証試験においてViralym-Mを評価した。本発明者らは、この試験をCHARMSと呼ぶ。この研究のデータは、(Tzannou et al,JCO,2017)に報告している。
【0320】
CHARMSは、優位性または有意性に対する統計的検出力が不足していたが、その主目的は、5つのウイルスに特異的なHLA部分適合マルチVST治療の実行可能性およびその投与の安全性を、持続的なウイルス再活性化またはウイルス感染を有するHSCT患者において判定することだった。患者は、標準的な抗ウイルス治療にもかかわらず、再発性であるか、再活性化されたかまたは持続的である、BKV、CMV、AdV、EBV、HHV-6および/またはJCV感染症を有した場合、任意のタイプの同種異系移植後に適格となった。
【0321】
マルチウイルス特異的T細胞(Viralym-M細胞)のアロ反応性の可能性を評価するために、本発明者らはまず、各ウイルス;Adv(ヘキソンおよびペントン)、CMV(IE1およびpp65)、EBV(LMP2、EBNA1、BZLF1)、BKウイルス(VP1およびラージT)およびHHV6(U90、U11およびU14)に由来する免疫原性抗原を網羅するペプチド混合物でPBMCを直接活性化した。次いで、IL4+7(図12に記載されているように)が補充されたT細胞培地が入ったG-Rexデバイスに細胞を移し、HLA不適合の標的に対する細胞傷害活性を評価した。図34に示されているように、これらの細胞は、最小の/検出不可能なアロ反応性しか示さなかったことから、HLA部分適合の「既製」品として投与したときのこれらの細胞の潜在的な安全性が裏付けられた。
【0322】
続いて、同種異系HSCT後の小児および成人における難治性ウイルス感染症を処置するために、部分的にHLAが適合するViralym-M細胞の安全性および臨床効果を探索した(Tzannou et al,JCO,2017)。
【0323】
すべての注入が良好な耐容性を示した。注入の24時間以内に一過性の発熱を呈した3人の患者およびリンパ節疼痛を呈した1人を除いて、急性毒性は観察されなかった。サイトカイン放出症候群(CRS)を発症した患者はいなかった。注入後の数週間において、1人の患者が、急速なステロイド漸減の後に反復性のグレードIII消化管(GI)GVHDを発症し、8人の患者が、反復性(n=4)または新規(n=4)のグレードI~II皮膚GVHDを発症したが、コルチコステロイドの局所処置(n=7)および漸減後の再開(n=1)を行うことによって消失した。
臨床効果:
【0324】
評価可能なデータを提供した52人の処置患者における60の感染症について、下記に要約されるように、Viralym-M注入後の6週目までの累積臨床奏効率は93%だった:
・BKV:持続的なウイルスBKV感染および組織疾患を処置するために、22人の患者にViralym-Mを投与した(20人がBK-出血性膀胱炎を有し、2人がBKV関連腎炎を有した)。20人すべてのBK-HC患者が、Viralym-Mを投与された後、臨床症状を消失させ、9人が完全奏効(CR)、11人が部分奏効(PR)で、6週間の累積奏効は100%だった。
・CMV:持続的CMVに対して20人の患者にViralym-Mを投与した。19人の患者が、Viralym-Mに応答し、7人がCR、12人がPR、1人が非応答者(NR)で、6週間の累積奏効率は95%だった。応答者には、大腸炎を有した3人の患者のうちの2人および脳炎を有した1人の患者が含まれた。
・AdV:持続的AdVに対して11人の患者にViralym-Mを投与し、注入によって、7人のCR、2人のPRおよび2人のNRがもたらされ、6週間の累積奏効率は81.8%だった。
・EBV:持続的EBVを処置するために、3人の患者にViralym-Mを投与した。2人の患者がウイルス学的CRを達成し、1人の患者がPRを達成した。
・HHV6:HHV6再活性化を処置するために、難治性脳炎を有する1人の患者を含む4人の患者にViralym-Mを投与したところ、3人の患者が、注入の6週間以内にPRを示した(脳炎を有した患者を含む)が、1人は処置に応答しなかった。
・二重感染:2つのウイルス感染に対して、8人の患者にViralym-Mを投与したところ、1回の注入後に、全体として12人のCRおよび4人のPRが認められた。すべての症例においてCMV、AdVおよびEBVが排除され、BKV HCを有したすべての患者が、臨床上の改善(n=3)または疾患の消失(n=2)を示し、HHV6脳炎を有した患者も臨床上の改善を示した。
【0325】
本発明者らは、臨床的有効性に関連するHLA適合の閾値が存在するかを判断するために、本発明者らの第I/II相Viralym-M研究から入手可能なデータを調べた。本発明者らの臨床試験において、臨床で使用された製品は、1/8(n=2)、2/8(n=10)、3/8(n=11)、4/8(n=14)、5/8(n=14)、6/8(n=4)または7/8(n=5)のHLAアレルにおいて適合した。臨床成績とHLA適合の程度との間に相関関係があるかを判定するために、患者を完全奏効(CR)、部分奏効(PR)および非応答者(NR)に区分したが、図35に要約されているように、結果から、HLA適合アレルの数に基づいてはアウトカムに差がなかったと示唆された。
【0326】
本発明者らは次に、HLAクラスIのみ、クラスIIのみまたはその両方の組み合わせにおいて適合する株の投与に基づいてアウトカムに差があったかを調べた。著しいことに、患者の大部分が、クラスIアレルとクラスIIアレルの両方において適合する株を投与されており(図36)、その結果から、この場合もまた、アウトカムはアレルの適合の程度に影響されなかったことが示唆された(図37)。
【0327】
さらに、重要なことには、CHARMS研究は、第2の株が高度に不適合であったとしても、1つより多い異なるVST製品(Viralym M)の投与が安全であり、効果があることを実証した。例えば、Tzannou(2017)の表2に報告されているように、数人の患者に2つの別個の細胞株の投与したところ、有益な応答があった:
【表7】
【0328】
さらに、下記の表8において改変されたTzannou(2017)の表A7に示されているように、少なくとも2つの細胞株の投与を受けたこれらの患者は、6週目までにaGVHDを、または処置の1年以内にcGVHDを全くまたはほとんど示さなかった。
【表8】
【0329】
したがって、この第I/II相のデータからのこれらの結果は、患者の>95%が≧2のHLAアレルにおいて適合した製品を投与され、それが臨床的有用性に関連したことを実証した。HLAクラスIにおける適合かクラスIIにおける適合かは、アウトカムに影響しないとみられ、細胞の安全性プロファイルに影響しなかったし、第2の株が非常に不適合だったときでさえ、所与の患者に1つより多い細胞株を投与することにも影響しなかった。
実施例4.ユニバーサル細胞治療製品
【0330】
上で論じられたように、株選択のための判定基準としてHLA適合(≧2アレル閾値)を用いて同種異系HSCTレシピエントに投与したとき、これらの細胞は、安全であることが判明し、本発明者らのPOC臨床試験(実施例3および臨床試験識別子NCT02108522)における5つすべての標的ウイルスに対して抗ウイルス活性を提供した。さらに、複数の異なる細胞株製品の注入は、その細胞株が高い不適合の程度を有したときでさえ、良好な耐容性を示した(例えば、2つのアレルにおいてしか適合しない第2の細胞株を注入された患者番号3755を参照のこと(対 5つのアレルにおいて適合する第1の株)。
【0331】
これらの結果は、アレルの適合の程度が様々である複数の細胞株を1人の患者に投与するリスクがほとんどないか全くないことを示唆している。これらの結果に基づいて、所与のドナーミニバンク内のすべての細胞株をプールすることによってユニバーサル細胞治療製品が調製される。各ミニバンクが、標的患者集団の>95%をカバーするので、そのようなユニバーサル細胞治療製品は、見込み患者の>95%に適合する細胞治療製品を含む。したがって、場合によっては、ユニバーサル細胞治療製品は、被験体のHLAタイプに関係なくそれを必要とする被験体に投与される。場合によっては、ユニバーサル細胞治療製品は、ユニバーサル細胞治療製品内の少なくとも1つの細胞株と少なくとも2つのアレルにおいてHLAが適合している、それを必要とする被験体に投与される。被験体は、HSCTレシピエントであり得る。
【0332】
場合によっては、ドナーミニバンク内の複数の細胞治療製品が被験体に連続的に投与される。例えば、1つの場合においては、ドナーミニバンク内のすべての細胞治療製品がそれを必要とする1人の被験体に投与される。
実施例5.患者をドナーミニバンク内の最適な細胞株とマッチさせる方法
【0333】
ドナーミニバンク内の考えられる最良の細胞治療製品が所与の患者に投与されるのを確実なものにするために、本発明者らは、図1に要約されているような、バンク化されたViralym-M細胞と(a)HSCT患者および(b)幹細胞ドナーとの間でHLA適合の総合レベルが最も高いものを選択する患者マッチアルゴリズムを開発した。詳細には、このアルゴリズムは、以下の段階的なプロセスを実行する:
工程:
1.当該患者のHLAタイプを含む文書を入手する;
2.幹細胞ドナーのHLAタイプ(以後「移植HLA」と呼ぶ)を含む文書を入手する;
3.患者のHLA(工程1)と移植HLA(工程2)のタイプを比較し、共有HLAアレルを特定する;
4.ドナーミニバンクを構成している個別の株(例えば、Viralym-M)のHLAタイプにアクセスする;
5.1次スコア:ミニバンク内の各細胞株(例えば、Viralym-M)のHLAタイプを工程3において特定された共有HLAアレルと比較する。共有HLAアレルの数に基づいて各比較に数値スコアを割り当てる;共有されるアレルが多いほど、スコアが高くなる;
6.2次スコア:ミニバンク内の各細胞株(例えば、Viralym-M)のHLAタイプを工程1において特定された患者HLA(感染組織に相当する)と比較する。共有HLAアレルの数に基づいて各比較にスコアを割り当てる。共有されるアレルが多いほど、スコアが高くなる。この2次スコアに1次スコアの50%の重みを付ける;
7.細胞バンク内の各株に対する1次スコア(工程5)および2次スコア(工程6)を合算する;
8.次いで、上記の順位(工程7)に基づいて、スコアが最も高い細胞株(例えば、Viralym-M)を当該患者の処置のために選択する。
【0334】
臨床で適用すると、このアプローチは、許容され得る安全性プロファイル(4例の新規のグレードI~II皮膚GVHDおよび1例のグレード3 GI GVHD発赤)ならびに感染および疾患の処置に対する概念証明を示し、現在までに処置された54人の患者において93%の奏効率が達成された。表9には、本発明者らの第I/II相臨床試験において第三者Viralym-M細胞で処置された54人すべての患者の安全性および臨床成績が要約されている。
【表9】
【0335】
このように、これらのデータは、本発明者らのミニバンク由来のViralym M製品が、本発明者らの患者適合アルゴリズムを用いて十分に適合する患者に投与されたとき、良好な耐容性を示し、有効であったことを実証している。
図1
図2
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図31-1】
図31-2】
図32
図33
図34
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図36
図37
【国際調査報告】