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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】多発性癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/10 20060101AFI20220930BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220930BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20220930BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20220930BHJP
【FI】
A61K38/10 ZNA
A61P35/00
A61P13/08
C12Q1/04
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022506174
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 US2020044209
(87)【国際公開番号】W WO2021022015
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】16/528,390
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517433430
【氏名又は名称】ナイモックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NYMOX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】777 Terrace Avenue Hasbrouck Heights,New Jersey 07604 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】アヴァーバック, ポール
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
4B065AA90X
4B065AC20
4B065CA46
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
(57)【要約】
実施形態は、治療有効量の孤立性癌腫瘍の壊死を誘導することができる薬学的に活性な成分を含む組成物を孤立性癌の病巣に投与することにより、多発性癌を治療する(その発生を予防するまたは低減させる)方法であって、投与が、多発性癌の発生、多発性癌のグレードおよび、器官または生物全体における多発性癌の進行(悪化)を低減させる、方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孤立性癌腫瘍を有する哺乳動物を同定する工程と、
治療有効量のフェキサポチドトリフルタート(FT)を含む組成物を孤立性癌に投与する工程と、
孤立性癌が位置していた器官全体において、多発性癌の発生を低減させ、多発性癌のグレードを低減させ、多発性癌の進行(悪化)を低減させる工程と
を含む、方法。
【請求項2】
組成物が、孤立性癌腫瘍への直接注射によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
孤立性癌腫瘍が、前立腺癌、扁平上皮頭頸部癌(HNSCC)、皮膚扁平上皮癌(皮膚SCC)、乳癌、肺の腺癌およびSCC、食道癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、黒色腫、脳癌、膵臓癌、卵巣癌、骨髄癌および白血病からなる群から選択される多発性癌の癌性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
孤立性癌腫瘍が、前立腺癌の癌性腫瘍である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前立腺全体におけるグリーソングレードの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約30%~約90%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約5%~約85%低減させる、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前立腺全体におけるグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約30%~約100%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約20%~約100%低減させる、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
従来の癌治療、および前立腺全体におけるグリーソングレードの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約50%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約90%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約35%~約85%低減させる、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
従来の癌治療、および前立腺全体におけるグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約70%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約60%~約100%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約50%~約100%低減させる、
請求項4に記載の方法。
【請求項9】
従来の癌治療、および低グレードの孤立性前立腺癌の病巣が位置していた前立腺葉におけるグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約65%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約65%~約100%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約60%~約100%低減させる、
請求項4に記載の方法。
【請求項10】
治療有効量のFTが、約2.5mg~約20mgの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療有効量のFTが、約2.5mg~約15mgの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
治療有効量のFTが、15mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
低グレードの孤立性前立腺癌腫瘍を有する哺乳動物を同定する工程と、
低グレードの孤立性前立腺癌腫瘍の壊死を誘導することができる治療有効量の薬学的に活性な成分を含む組成物を低グレードの孤立性前立腺癌腫瘍に投与する工程と、
前立腺全体において、多発性癌の発生を低減させ、多発性癌のグレードを低減させ、多発性癌の進行(悪化)を低減させる工程と
を含む、方法。
【請求項14】
薬学的に活性な成分が、ザイティガ(酢酸アビラテロン)、アパルタミド、アバジタキセル、カソデックス(ビカルタミド)、エリガードおよびリュープロン(酢酸リュープロリド)、アーリーダ(アパルタミド)、ファーマゴン(デガレリクス)、フルタミド、酢酸ゴセレリン、ジェブタナ(カバジタキセル)、塩酸ミトキサントロン、ニランドロン(ニルタミド)、プロベンジ(シプリューセル-T)、シプリューセル-T、タキソテール(ドセタキセル)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)ならびにそれらの混合物および組合せからなる群の少なくとも1つから選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年7月31日に出願された米国特許出願第16/528,390号の優先権を主張し、その主題は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.実施形態の分野
実施形態は、多発性癌に罹患した哺乳動物における多発性癌を治療する方法、より詳細には、腫瘍の壊死を誘導することができる薬学的に活性な成分および薬学的に許容される担体を含む組成物を単一の(孤立性)癌腫瘍に直接投与することにより、罹患器官もしくは生物全体における多発性癌の発達および進行を予防ならびに/または低減させる方法を含む。一実施形態において、薬学的に活性な成分はフェキサポチドトリフルタート(「FT」)であり、多発性癌は前立腺癌である。方法は、限定されるわけではないが、組成物を、筋肉内、経口、静脈内、腹腔内、前立腺内、大脳内(実質内)、脳室内、病巣内、眼内、動脈内、髄腔内、腫瘍内、鼻腔内、局所、経皮、皮下または皮内に、それを必要とする患者に投与することを含み、組成物の孤立性癌腫瘍への標的化投与は、多発性癌の発生、多発性癌のグレードおよび多発性癌の進行(悪化)を低減または予防する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
多くの医療的治療および処置は基本的に、有害なまたは不要な組織の除去または破壊を伴う。そのような治療の例には、癌性または前癌性の成長物の外科的除去、化学療法による転移性腫瘍の破壊、および腺性(例えば前立腺)過形成の低減が含まれる。他の例には、不要な顔毛の除去、疣贅の除去および不要な脂肪組織の除去が含まれる。
【0004】
有害なまたは不要な細胞および組織を破壊し、したがってそれらの除去を容易にするかまたはそれらの更なる成長を阻害する一方で、主に局所効果を有し全身毒性が最小限または皆無である、有効な組成物が求められている。侵襲的な外科的介入、放射線および/または化学療法、ならびに他の侵襲的な処置のための必要性を低減させる必要もある。
【0005】
有害なまたは不要な細胞および組織を破壊し、したがってそれらの除去を容易にするかまたはそれらの更なる成長を阻害する能力を有することが知られている薬剤は、2015年7月24日に出願された米国特許出願第14/808,713号(「良性前立腺過形成の患者に対する手術の必要性を低減させる方法」)、2015年1月27日に出願された米国特許出願第14/606,683号(「細胞の破壊または除去を必要とする疾患を治療する方法」)、2015年6月12日に出願された米国特許出願第14/738,551号(「望ましくない細胞増殖物の除去または破壊を必要とする疾患を治療するための配合組成物」)、米国特許出願公開第2007/0237780号(放棄済)、米国特許出願公開第2003/0054990号(現米国特許第7,172,893)、米国特許出願公開第2003/0096350号(現米国特許第6,924,266号)、米国特許出願公開第2003/0096756号(現米国特許第7,192,929号)、米国特許出願公開第2003/0109437号(現米国特許第7,241,738号)、米国特許出願公開第2003/0166569号(現米国特許第7,317,077号)、米国特許出願公開第2005/0032704号(現米国特許第7,408,021号)、および米国特許出願公開第2015/0148303号(現米国特許第9,243,035号)に開示されており、これらの開示内容は、それぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0006】
これらの文献に開示されている薬剤の一つに、フェキサポチドトリフルタート(FT)がある。FTは、前立腺細胞を低減させること、LUTSを改善または低減させること、および前立腺肥大を有する男性においてBPHを治療することが示されている。FTはまた、BPHを有する哺乳動物においてPPHを治療することによって、前立腺癌の発生を低減させるのに有用であるとして開示されており、ここで、FTを含有する組成物は、移行帯(中央)前立腺において哺乳動物に投与される。例えば、米国特許第10,183,058を参照されたい。この開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。FTはまた、低グレード低リスクの限局性(T1c)前立腺癌腫瘍の治療におけるFTの有効性を評価するための臨床試験の対象であり、ここで、治験は、治療後45日以内の限局性腫瘍の排除におけるFTの有効性を評価するために設計されている。
【0007】
前立腺癌は、集団におけるその臨床的発生率と比較して極めて高い有病率を有する疾患として知られている。前立腺癌は、無症状での発症率が高く、無症候期間が長い。前立腺癌は、癌が存在するが、典型的な臨床または実験室検査によって検出されないことにより臨床前である間隔を、平均で7~14年間有する(Etzioniら,Am J Epidemiol.148巻、775~85頁(1998年);およびGulati,Rら,Cancer Epidemiol Biomarkers Prev;20巻(5),740~50頁(2011年)を参照されたい)。
【0008】
前立腺癌は、多くの場合、前立腺が、様々な不均一性の複数の腺癌病巣を含む多発性障害と考えられる。これは、癌を有効に治療することを困難にし、多くの場合、前立腺全摘除術をもたらし、これは勃起不全および尿失禁を含む男性に対する多くの生活を変える問題を引き起こす。しかしながら、一部の前立腺癌は、低グレード低リスクの限局性(T1c)前立腺癌と考えられ、これは、前立腺全摘除術検体の約20~約35%で報告されている。Mazzucchelliら,“Pathology of Prostate Cancer and Focal Therapy(‘Male Lumpectomy’),” Anticancer Research,29巻,5155~5162頁(2009年);Ibeawuchiら,“Genome-Wide Investigation of Multifocal and Unifocal Prostate Cancer - Are They Genetically Different?” Int. J. Mol. Sci.,14巻,11816~11829頁(2013年)。
【0009】
前立腺全摘除術の厳しさに起因して、最近の研究は、前立腺の一部が保存される局所療法に対して報告されているが、前立腺癌の局所療法および癌の進行の予防の有効性は不明確なままである。Quannら,“Current prostate biopsy protocols cannot reliably identify patients for focal therapy;…”, Int. J. Clin. Exp. Pathol.,3巻(4),401~407頁(2010年)。特異的な腫瘍を同定すること、標的化することおよび局所的に破壊することは、まだ実現されておらず(Mazzucchelliの5159)、これまでに、局所療法は、前立腺の大部分のアブレーション(例えば、葉全体または半アブレーション)を含む。したがって、孤立性腫瘍だけを標的化することによって低グレード低リスクの孤立性前立腺癌を治療することが、癌の発生、癌のグレードおよび前立腺全体にわたる癌の進行(悪化)を低減させるのに有効であろうことは、これまで、知られておらず、または期待されていなかった。結果として、FTが孤立性前立腺癌のみを治療することが評価された臨床試験は設計されておらず、前立腺全体の治療において有効であることは期待されなかった。
【0010】
前立腺癌の同定およびモニタリングにおいて使用される一般的な技術は、生検の評価と併せてPSAレベルを評価することである。前立腺の典型的な生検は、通常、前立腺を通して多数の試料を採取すること、およびグリーソンスコアを使用して組織を評価することを含む。グリーソンスコアは、顕微鏡下で癌細胞がどの程度異常に見えるかを測定し、細胞がどの程度早く成長および広がる可能性があるかの良好な指標である。グリーソンスコアは、生検された組織試料の最も大きな領域を構成する癌の2つのグレードを一緒に加算することによって算出され、多くの場合、合計スコア、例えば6と一緒に、2つの数字、例えば3+3として表される。一次パターンのグリーソンスコアが最初に列挙され、二次スコアが二番目に列挙される。3+4(合計7)のグリーソングレードを有する生検は、一次パターンが3を上回るので、4+3(合計7)のグリーソングレードを有する生検よりも重症度が低いと考えられる。したがって、臨床医は、腫瘍の重症度を評価する場合、合計グリーソンスコアだけでなく、一次および二次パターンの値も審査する。以下の表は、前立腺癌の群の分類および関連するリスクを提供する。
【表1】
【0011】
グリーソンスコアが≦6である低グレード低リスクの限局性(T1c)前立腺癌は、積極的監視(AS)が、治療の通常の過程である。これは、前立腺全摘除術を必要とする高リスクの癌(例えば、グリーソンスコア≧8)に非常によく成熟する場合があるが、多くはそうではないためである。上記で言及したように、外科的に除去された前立腺の最高で約35%が、低グレード低リスクの限局性(T1c)前立腺癌のみを有する。したがって、前立腺が外科的に除去されたが、まだ高リスクの癌性腫瘍を有していなかったこれらの患者は、前立腺全摘除術の手術の有害な効果を不必要に被っている。したがって、典型的な標準治療は、グリーソンスコアが7以上である場合、特に一次パターンが4である場合、修正的な処置が、前立腺の大部分の除去、化学療法もしくは放射線、または前立腺全摘除術のいずれかによってとられる。したがって、単一病巣の局所治療による低ならびに/または低および中間のリスク群の前立腺癌患者を治療する安全で有効な方法を発見することが望ましく、この場合に、治療は、前立腺全体にわたる癌の進行の改善、低減および/または予防に有効である。
【0012】
前立腺癌のように、他の癌も、本来は多発性であることが公知であり、孤立性腫瘍、または治療の正当な理由になるのに十分に重要ではない小さな癌性腫瘍が先行し、かつそれに関連する。そのような多発性癌は、限定されるわけではないが、以下のうちの1種以上:扁平上皮頭頸部癌(HNSCC)、皮膚扁平上皮癌(皮膚SCC)、乳癌、肺の腺癌およびSCC、食道癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、黒色腫、脳癌、膵臓癌、卵巣癌、骨髄癌および白血病を含む。
【0013】
前述の関連技術の説明を含む本記載全体を通して、本明細書に記載されたすべての公に入手可能な文書(すべての米国特許および公開特許出願を含む)は、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。前述の関連技術の説明は、如何なる形であれ、係属中の米国特許出願を含む上記文書のいずれかが本開示の先行技術であることを認めるものではない。更に、記載された製品、方法、および/または装置に関連する欠点についての本明細書における記載は、如何なるものであれ、実施形態を限定するものではない。実際、実施形態の態様は、記載された欠点による害を被ることなく、記載された製品、方法、および/または装置の特定の特徴を含んでもよい。
【発明の概要】
【0014】
多発性癌の進行もしくは発生を予防または低減させるための、新しい、毒性が低く、低頻度で、本質的に非侵襲的な治療に対する必要性が当技術分野に残されている。多発性癌の発生を低減させるそのような治療についての必要性も当技術分野に残されている。実施形態は、これらの必要性を満たす。
【0015】
本開示は、一部分において、孤立性癌腫瘍の壊死を誘導することができる薬学的に活性な成分を、腫瘍に投与することができるが、多発性癌の発生を低減させる、多発性癌のグレードを低減させる、および罹患器官または生物全体における多発性の進行(悪化)を低減させる予想外の効果を依然として有しているという発見を前提とする。そのような腫瘍の壊死を誘導することができる適切な薬学的に活性な成分は、例えば、フェキサポチドトリフルタート(FT)、アミノ酸配列Ile-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu-Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leuによって記載されるペプチド、ザイティガ(酢酸アビラテロン)、アパルタミド、アバジタキセル、カソデックス(ビカルタミド)、エリガードおよびリュープロン(酢酸リュープロリド)、アーリーダ(アパルタミド)、ファーマゴン(デガレリクス)、フルタミド、酢酸ゴセレリン、ジェブタナ(カバジタキセル)、塩酸ミトキサントロン、ニランドロン(ニルタミド)、プロベンジ(シプリューセル-T)、シプリューセル-T、タキソテール(ドセタキセル)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)ならびにそれらの混合物および組合せを含む。そのような投与は、数年の継続的な経過観察の後、多発性癌の発生を低減させる、多発性癌のグレードを低減させる、および罹患器官または生物全体における多発性の進行(悪化)を低減させるのに有効であることが予想外にも見出され、局所的な有効性に限定されなかった。したがって、実施形態は、そうでなければ、器官の大部分のアブレーション、化学療法、放射線または腺の完全な除去(例えば、前立腺全摘除術、結腸切除術、肺の除去または移植など)のようなより積極的な治療を経験したであろう多発性癌に罹患した多くの男性のクオリティオブライフを非常に改善することができる。
【0016】
一部の実施形態は、低グレード低リスクの限局性癌腫瘍の壊死を誘導することができる少なくとも一種の薬学的に活性な成分を含む治療有効量の組成物を哺乳動物に投与することにより、低グレードまたは低リスクの多発性癌(すなわち、前立腺癌について、グリーソンスコア≦6を有する)を有する哺乳動物において、多発性癌の発生を低減させる、多発性癌のグレードを低減させる、および多発性癌の進行(悪化)を低減させる方法に対する。方法は、治療有効量の組成物を単一の癌病巣(孤立性腫瘍)に投与すること、および器官または生物全体における1つ以上の新たな病巣を示す哺乳動物のパーセンテージを低減させることを含む。
【0017】
特定の実施形態において、方法は、治療有効量のFTを哺乳動物の前立腺中の単一の癌病巣(孤立性腫瘍)に投与すること、および前立腺全体におけるグリーソングレードの増加を伴う1つ以上の新たな病巣(グリーソンのアップグレードを伴う新たな孤立性)を示す哺乳動物のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約100%、または治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約30%~約90%、または治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約5%~約85%の量まで低減させることを含む。方法はまた、治療有効量の組成物を哺乳動物の前立腺中の単一の癌病巣(孤立性腫瘍)に投与すること、およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う前立腺全体における1つ以上の新たな病巣(グリーソンの一次パターン≧4を有する新たな孤立性)を示す哺乳動物のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約100%、または治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約30%~約100%、または治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約20%~約100%の量まで低減させることを含む。
【0018】
組成物は、筋肉内、経口、静脈内、腹腔内、大脳内(実質内)、脳室内、腫瘍内、病巣内、皮内、髄腔内、鼻腔内、眼内、動脈内、局所、経皮、エアロゾルを介して、注入、ボーラス注射、埋め込みデバイス、持続放出システムなどで投与することができる。
【0019】
別の実施形態において、組成物は、約2.0mg~約20mgの範囲の量で投与される、治療有効量のFTを含む。
【0020】
別の実施形態において、方法は、治療有効量のFTを哺乳動物の前立腺中の単一の癌病巣(孤立性腫瘍)に投与すること、および従来の癌治療(手術、放射線または化学療法)を有し、グリーソングレードの増加を伴う前立腺全体における1つ以上の新たな病巣(グリーソンのアップグレードを伴う新たな孤立性)を示す哺乳動物のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約50%~約100%、または治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約90%、または治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約35%~約85%の量まで低減させることを含む。方法はまた、治療有効量のFTを哺乳動物の前立腺中の単一の癌病巣(孤立性腫瘍)に投与すること、および従来の癌治療(手術、放射線または化学療法)を有し、グリーソングレードの一次パターンの増加を伴う前立腺全体における1つ以上の新たな病巣(グリーソンの一次パターン≧4を有する新たな孤立性)を示す哺乳動物のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約70%~約100%、または治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約60%~約100%、または治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約50%~約100%の量まで低減させることを含む。
【0021】
前述の一般的な説明および後述の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものであり、特許請求される実施形態の更なる説明を提供することが意図されている。他の目的、利点および特徴が、以下の各実施形態の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列、ペプチド、組成物、活性物質など、および方法を閲読する前に、本発明は、特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、専ら特定の実施形態を説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の各実施形態の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0023】
本明細書で使用される用語および語句は、他に指示されない限り、以下に示すように定義される。本明細書を通して、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味に規定される場合を除き、複数の指示対象への言及を含む。したがって、例えば、「宿主細胞」への言及は、複数の宿主細胞を含み、「抗体」への言及は、1つまたは複数の抗体および当業者に知られているその均等物への言及である。
【0024】
本明細書に記載されるアミノ酸およびアミノ酸残基は、以下の表に示される一般に認められた1文字または3文字のコードに従って参照され得る。
【表2】
【0025】
「そのような腫瘍の壊死を誘導することができる適切な薬学的に活性な成分」という表現は、例えば、フェキサポチドトリフルタート(FT)、アミノ酸配列Ile-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu-Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leuによって記載されるペプチド、ザイティガ(酢酸アビラテロン)、アパルタミド、アバジタキセル、カソデックス(ビカルタミド)、エリガードおよびリュープロン(酢酸リュープロリド)、アーリーダ(アパルタミド)、ファーマゴン(デガレリクス)、フルタミド、酢酸ゴセレリン、ジェブタナ(カバジタキセル)、塩酸ミトキサントロン、ニランドロン(ニルタミド)、プロベンジ(シプリューセル-T)、シプリューセル-T、タキソテール(ドセタキセル)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)ならびにそれらの混合物および組合せを示す。本明細書で使用されるフェキサポチドトリフルタート(「FT」)は、以下のアミノ酸配列を有する17量体ペプチドを表す:Ile-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu-Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leu(SEQ ID NO.1)FTは米国特許第6,924,266号、第7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号、および第8,716,247号、ならびに、米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号、第2016/0361380号および第2016/0215031号明細書に開示されている。これらの特許および出願公開の開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
FTは以下の通り表される。
SEQ ID NO.1(配列番号1):IDQQVLSRIKLEIKRCLまたはIle-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu-Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leu
【0026】
「フラグメント」という用語は、タンパク質またはペプチドのアミノ酸配列の連続した部分配列からなり、スプライス変異体などの天然に存在するフラグメントおよび天然に存在するインビボプロテアーゼ活性から生じるフラグメントを含むタンパク質またはポリペプチドを指す。こうしたフラグメントは、アミノ末端、カルボキシ末端、および/または内部(天然スプライシングなどによる)で、一部切除(truncated)されていてもよい。こうしたフラグメントは、アミノ末端メチオニンを伴いまたは伴わずに調製されてもよい。「フラグメント」という用語は、直接またはリンカーを介して連結される、共通のまたは共通でない連続するアミノ酸配列を有する、同じタンパク質またはペプチド由来の同一または異なるフラグメントを含む。当業者は、本明細書に概説されたガイドラインおよび手順を用いて、過度の実験をすることなく、実施形態で使用するのに適したフラグメントを選択することができるであろう。
【0027】
「変異体」という用語は、本明細書記載のタンパク質またはペプチドのアミノ酸配列に比較した際、1以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入が存在している、タンパク質またはポリペプチドを指し、該用語には、こうして記載されるタンパク質またはペプチドの天然に存在するアレル変異体または選択的スプライシング変異体が含まれる。「変異体」という用語には、類似のまたは相同のアミノ酸(群)あるいは似ていないアミノ酸(群)による、ペプチド配列中の1つ以上のアミノ酸の置換が含まれる。どのアミノ酸を類似または相同と認定可能であるかに関する多くの基準がある。(Gunnar von Heijne、Sequence Analysis in Molecular Biology、123-39頁(Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク、1987年)。好ましい変異体には、1つ以上のアミノ酸位置でのアラニン置換が含まれる。他の好ましい置換には、タンパク質の全体の正味電荷、極性、または疎水性に対してほとんどまたはまったく影響しない、保存的置換が含まれる。保存的置換を、以下の表2に示す。
【表3】


表3は、アミノ酸置換の別のスキームを示す。
【表4】
【0028】
他の変異体は、より保存的でないアミノ酸置換からなることも可能であり、(a)例えばシートまたはらせんコンフォメーションとしての、置換領域のポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖の大きさの維持に対して、影響がより有意に異なる残基を選択することなどがある。一般的に、機能に対して、より有意な影響を有すると期待される置換は、(a)グリシンおよび/またはプロリンが別のアミノ酸に置換されるか、あるいは欠失されるかまたは挿入されるもの;(b)親水性残基、例えばセリルまたはスレオニルが、疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニルに対して(またはこれらによって)置換されるもの;(c)システイン残基が任意の他の残基に対して(またはこれらによって)置換されるもの;(d)電気的陽性側鎖を有する残基、例えばリジル、アルギニル、またはヒスチジルが、陰性電荷を有する残基、例えばグルタミルまたはアスパルチルに対して(またはこれらによって)置換されるもの;あるいは(e)大きな側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、こうした側鎖を持たないもの、例えばグリシンに対して(またはこれらによって)置換されるものである。他の変異体には、新規グリコシル化部位および/またはリン酸化部位を生成するように設計されたもの、あるいは存在するグリコシル化部位および/またはリン酸化部位を欠失させるように設計されたもののいずれかが含まれる。変異体には、グリコシル化部位、タンパク質分解的切断部位および/またはシステイン残基での少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる。変異体にはまた、リンカーペプチド上のタンパク質またはペプチド・アミノ酸配列の前または後に追加的なアミノ酸残基を含む、タンパク質およびペプチドも含まれる。例えば、ジスルフィド結合形成によるペプチドの環化を可能にするため、ペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端両方に、システイン残基を付加することも可能である。「変異体」という用語はまた、ペプチドの3’端または5’端のいずれかに隣接する、少なくとも1つから25個まで、またはそれより多い追加的なアミノ酸を持つペプチドのアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。
【0029】
「誘導体」という用語は、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの天然プロセスによるだけでなく、例えば1以上のポリエチレングリコール分子、糖、ホスフェート、および/または他のこうした分子が、野生型タンパク質またはペプチドに天然に付着していない場合に、こうした分子を付加するなどの、化学的修飾技術によって化学的に修飾されている、化学的修飾タンパク質またはポリペプチドを指す。誘導体には塩が含まれる。こうした化学的修飾は、基本的教科書に、そしてより詳細なモノグラフに、ならびに多量の研究文献によく記載され、そしてこれらは当業者に周知である。同じ種類の修飾が、所定のタンパク質またはポリペプチドのいくつかの部位に同じ度合いでまたは異なる度合いで存在してもよいことが認識されるであろう。また、所定のタンパク質またはポリペプチドが、多くの種類の修飾を含有してもよい。修飾は、タンパク質またはポリペプチドのどの部位で生じることも可能であり、そうした部位には、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシ末端が含まれる。修飾は、例えば、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAが媒介するアミノ酸のタンパク質への付加、例えば、アルギニル化ならびにユビキチン化を含む。例えばProteins--Structure And Molecular Properties,第2版,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,ニューヨーク(1993年)およびWold,F.,“Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects,”Posttranslational Covalent Modification Of Proteins中,1-12頁,B.C.Johnson監修,Academic Press,ニューヨーク(1983年);Seifterら,Meth.Enzymol.182:626-646(1990年)およびRattanら,“Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging,”Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48-62(1992年)を参照されたい。「誘導体」という用語には、分枝する、あるいは分枝して環状に、または分枝せずに環状になる、タンパク質またはポリペプチドを生じる化学的修飾が含まれる。環状、分枝および分枝環状タンパク質またはポリペプチドは、翻訳後天然プロセスから生じる可能性があり、そしてまた、完全に合成的な方法で作成することも可能である。
【0030】
「相同体」という用語は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位における類似性を比較するのに一般的に用いられる標準法によって決定されるように、ペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60%同一であるタンパク質を指す。2つのタンパク質の間の類似性または同一性の度合いは、限定されるわけではないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.監修,Oxford Unversity Press,ニューヨーク,1988年;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.監修,Academic Press,ニューヨーク,1993年;Computer Analysis of Sequence Data,第I部,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.監修,Humana Press,ニュージャージー州,1994年;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987年;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.監修,M Stockton Press,ニューヨーク,1991年;ならびにCarillo H.and Lipman,D.,SIAM,J.Applied Math.,48:1073(1988年)に記載されるものを含む、既知の方法によって、容易に計算可能である。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最大のマッチを生じさせるように設計される。同一性および類似性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに体系化されている。
【0031】
2つの配列間の同一性および類似性を決定する際に有用な好ましいコンピュータプログラム法には、限定されるわけではないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら,Nucleic Acids Research,12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA、Atschul,S.F.ら,J.Molec.Biol.,215:403-410(1990)が含まれる。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の供給源(BLAST Manual、Altschul、S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、Md.20894;Altschul、S.ら、J.Mol.Biol.、215:403-410(1990年))から公的に入手可能である。例えば、GAP(ウィスコンシン大学遺伝子コンピュータグループ、ウィスコンシン州マディソン)などのコンピュータアルゴリズムを用いて、パーセント配列同一性を決定しようとする2つのタンパク質またはポリペプチドを、各々のアミノ酸が最適にマッチするように並列させる(アルゴリズムに決定されるような「マッチしたスパン」)。
【0032】
ギャップオープニングペナルティ(平均対角の3倍として計算;「平均対角」は、用いる比較マトリックスの対角の平均であり;「対角」は、特定の比較マトリックスによる、各完全アミノ酸マッチに割り当てられたスコアまたは数字である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップオープニングペナルティの1/10)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較マトリックスを、アルゴリズムと組み合わせて用いる。標準比較マトリックス(PAM250比較マトリックスに関しては、Dayhoffら:Atlas of Protein Sequence and Structure,vol.5,supp.3を参照されたい;BLOSUM62比較マトリックスに関しては、Henikoffら,Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:10915-10919を参照されたい)もまた、アルゴリズムに使用可能である。次いで、アルゴリズムによってパーセント同一性が計算される。相同体は、場合によって、対応するタンパク質またはペプチドと比較した際、典型的には1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有するであろう。
【0033】
「融合タンパク質」という用語は、1つ以上のペプチドが、(これに限定されないが)抗体またはFabフラグメントもしくは短鎖Fvのような抗体フラグメント等のタンパク質に組換え融合しているまたは(共有結合および非共有結合を含めた)化学的に複合している(conjugated)タンパク質を意味する。「融合タンパク質」という用語は、更に、ペプチドの多量体(すなわち、二量体、三量体、四量体およびそれより多い多量体)を意味する。このような多量体は、1つのペプチドを含むホモマー多量体;2つ以上のペプチドを含むヘテロマー多量体;および少なくとも1つのペプチドおよび少なくとも1つの他のタンパク質を含むヘテロマー多量体を含む。このような多量体は、疎水性、親水性、イオン性および/または共有結合の会合、結合またはリンクの結果であってもよく、リンカー分子を用いた架橋結合によって形成されてもよく、または間接的に、例えば、リポソーム形成によって連結されていてもよい。
【0034】
「ペプチド模倣体(mimetic)」または「模倣体」という用語は、ペプチドまたはタンパク質の生物学的活性を模倣するが、もはや化学的性質はペプチド性でない、すなわちもはやペプチド結合(すなわちアミノ酸間のアミド結合)をまったく含有しない、生物学的活性化合物を指す。本明細書において、ペプチド模倣体という用語は、より広い意味で用いられ、事実上、もはや完全にペプチド性でない分子、例えば偽ペプチド、半ペプチドおよびペプトイドなどが含まれる。この、より広い意味でのペプチド模倣体の例(ペプチドの一部が、ペプチド結合を欠く構造と交換されている場合)を以下に記載する。完全な非ペプチドであれ、または部分的な非ペプチドであれ、各実施形態によるペプチド模倣体は、そのペプチド模倣体の基となるペプチドの活性基の三次元配置を緊密に真似る、反応性化学部分の空間的配置を提供する。活性部位の幾何学的形状がこのように類似である結果、ペプチド模倣体は、ペプチドの生物学的活性に似た、生物学的系に対する影響を有する。
【0035】
本発明の実施形態のペプチド模倣体は、好ましくは、三次元形状および生物学的活性両方において、本明細書記載のペプチドに実質的に類似である。当該技術分野に知られるペプチドを構造的に修飾してペプチド模倣体を生成する方法の例には、D-アミノ酸残基構造を導く、主鎖キラル中心の反転が含まれ、D-アミノ酸残基構造は、特にN末端で、不都合に影響を及ぼす活性を伴わずに、タンパク質分解的分解に対して、増進した安定性を導く。一例が、論文「Tritiated D-ala1-Peptide T Binding(トリチウム化D-ala1-ペプチドT結合)」、Smith C.S.ら、Drug Development Res.、15、371-379頁(1988年)に記載されている。第二の方法は、NからCの鎖間イミドおよびラクタムなどの、安定性のための環状構造の改変である(Edeら,Smith and Rivier(監修)“Peptides:Chemistry and Biology”,Escom,Leiden(1991年)中,268-270頁)。これの一例は、米国特許第4,457,489号(1985年)、Goldstein、G.らに開示されるものなどの、コンフォメーション的に制限されたチモペンチン様化合物で与えられており、前記特許の開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。第三の方法は、ペプチド内のペプチド結合を、タンパク質分解に耐性を与える偽ペプチド結合により置換することである。
【0036】
ペプチド構造および生物学的活性に概して影響を与えない、いくつかの偽ペプチド結合が記載されている。このアプローチの1つの例は、逆反転(retro-inverso)偽ペプチド結合で置換することである(“Biologically active retroinverso analogues of thymopentin”,Sisto A.ら,Rivier,J.E.and Marshall,G.R.(監修)“Peptides,Chemistry,Structure and Biology”,Escom,Leiden(1990年)中,722-773頁,およびDalpozzoら(1993年),Int.J.Peptide Protein Res.,41:561-566、本明細書に援用される)。この修飾に従って、ペプチドのアミノ酸配列は、1つ以上のペプチド結合が、逆反転偽ペプチド結合と交換されていることを除いて、上述のペプチドの配列と同一であってもよい。好ましくは、最もN末端のペプチド結合が置換されており、これはこうした置換が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して、耐性を与えるであろうためである。アミノ酸の化学基を類似構造の他の化学基で置換することによって更に修飾することもできる。生物学的活性をまったく損失させないか、またはほとんど損失させずに、酵素的切断に対する安定性を増進させることが知られる別の適切な偽ペプチド結合は、還元アイソスター偽ペプチド結合である(Couderら(1993年)、Int.J.Peptide Protein Res.、41:181-184、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。
【0037】
したがって、これらのペプチドのアミノ酸配列は、1つ以上のペプチド結合が、アイソスター偽ペプチド結合によって交換されていることを除いて、ペプチドの配列と同一であることも可能である。好ましくは、最もN末端のペプチド結合が置換されており、これはこうした置換が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して、耐性を与えるであろうためである。1つ以上の還元アイソスター偽ペプチド結合を有するペプチドの合成が当該技術分野において知られている(Couderら(1993年)、上記引用)。他の例は、ケトメチレンまたはメチルスルフィド結合の導入によるペプチド結合の置換などである。
【0038】
本明細書記載のペプチドのペプトイド誘導体は、生物学的活性に重要な構造的決定基を保持するが、ペプチド結合が取り除かれ、それによってタンパク質分解に対する耐性が与えられた、別の種類のペプチド模倣体に相当する(Simonら,1992年,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:9367-9371、本明細書にその全体が援用される)。ペプトイドは、N-置換グリシンのオリゴマーである。いくつかのN-アルキル基が記載されており、各々は天然アミノ酸の側鎖に対応する(Simonら(1992年)、上記引用)。ペプチドのアミノ酸の一部またはすべてを、交換されるアミノ酸に対応するN-置換グリシンと交換することが可能である。
【0039】
「ペプチド模倣体」または「模倣体」という用語にはまた、以下に定義するような、逆Dペプチドおよび鏡像異性体も含まれる。
【0040】
「逆Dペプチド」という用語は、ペプチドのL-アミノ酸配列に比較した際、逆の順に配置されたD-アミノ酸からなる、生物学的活性タンパク質またはペプチドを指す。したがって、L-アミノ酸ペプチドのカルボキシ末端残基は、D-アミノ酸ペプチドのアミノ末端になるなどである。例えば、ペプチドETESHは、Hdddddになり、ここで、Ed、Hd、Sd、およびTdは、それぞれ、L-アミノ酸、E、H、S、およびTに対応するD-アミノ酸である。
【0041】
「鏡像異性体」という用語は、あるペプチドのアミノ酸配列中の1つ以上のL-アミノ酸残基が、対応するD-アミノ酸残基で置き換えられている生物学的に活性なタンパク質またはペプチドを意味する。
【0042】
本明細書中で用いられる「組成物」は、挙げられたペプチドまたはアミノ酸配列、および場合によっては付加的な活性剤を含有するいずれかの組成物を広く意味する。その組成物は、乾燥配合物、水溶液または滅菌組成物を含むことができる。ペプチドを含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。それらプローブは、凍結乾燥された形で貯蔵することができ、また、炭水化物などの安定剤と会合させることができる。ハイブリダイゼーションの場合、プローブは、塩類、例えば、NaCl;界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);および他の成分、例えば、デンハート液、粉乳、サケ精子DNA等を含有する水溶液中に配置することができる。
【0043】
「低グレードの前立腺癌」という表現は、生検によって検出された≦6または3+3の最も高いグリーソングレードを有する、前立腺組織、すなわち、単一病巣または複数の病巣の生検を表す前立腺癌を示す。多くの場合、前立腺から多数の試料を採取する生検処置が、腺全体から試料採取せず、そのため検出されなかった他の病巣が存在する場合があることが理解されるであろう。「低グレードの孤立性前立腺癌」という表現は、≦6または3+3のグリーソングレードを有する単一の癌病巣を示す。「前立腺癌の進行」という表現は、典型的には、任意の単一の病巣におけるより高いグリーソングレードを示すが(一緒に採取されたすべての生検における最も高いグレードがグレードである)、生検におけるより多くの量の癌(すなわち、例えばそれが50%を超える場合、所与の生検の病巣における癌のより高いパーセンテージ;または、癌について陽性のより多くの病巣)も示す。例えば、患者が、1時点で5%の腫瘍を有する1つの陽性コア試料から、後の時点で40%の腫瘍をそれぞれ有する5つのコアを有するものに進んだ場合(すべて同じグリーソングレード)、これは、「グリーソングレードの進行」ではないであろうが、進行と考えられるであろう。他方で、「グリーソングレードの進行」は、患者が、40%の腫瘍をそれぞれ有するグレード6の4つのコアから進行し、その後、5%の腫瘍を有する1つのみの陽性コアであるが、グリーソングレード7を有していた場合に存在し、その結果、進行は、「グリーソングレードの進行」と考えられるであろう。
【0044】
「生検」に言及する場合、当業者は、典型的な生検が、複数の「四半部」試料、通常、少なくとも10または12の、腺のすべての領域の試料採取(左および右;それぞれについて頂部、中央および底部;ならびにそれぞれについて中間および側面、ならびにLおよびRの推移)からなること、したがって14ゾーンに等しいことを認識するだろう。したがって、「生検する」または「生検」への言及は、同時の10~15生検を示し、それぞれ別々に報告される。
【0045】
本明細書を通して、「多発性癌」という表現は、前立腺癌、扁平上皮頭頸部癌(HNSCC)、皮膚扁平上皮癌(皮膚SCC)、乳癌、肺の腺癌およびSCC、食道癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、黒色腫、脳癌、膵臓癌、卵巣癌、骨髄癌および白血病から選択される1種以上の癌を示す。本明細書を通して、「予防」という用語またはその変形は、すべての場合において、必ずしも完全な予防を意味しないが、代わりに、積極的監視などの対象と比較して、多発性癌の発達または発生を予防することを指す。例えば、孤立性癌または低グレード低リスクの癌を有する患者群の60%が、治療なしで(または対照で治療した)多発性癌を36カ月の期間にわたって発達させたと仮定すると、実施形態に従って治療された場合、20%のみが、36カ月の期間にわたって多発性癌を発達させた。したがって、本明細書に記載される治療は、実施形態に従って治療されなかった場合にそうでなければ多発性癌を発達させたであろう多数の患者の多発性癌の発達からの予防において有効であろう。
【0046】
付加的な活性剤が組成物とともに使用される実施形態では、「活性剤」という表現は、不要な細胞増殖物および/または組織増殖物を除去することができる任意の薬剤を示すために使用される。適切な活性剤には、(i)抗癌活性剤(アルキル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、RNA/DNA代謝拮抗剤、および抗有糸分裂剤など)、(ii)良性成長物を治療するための活性剤、例えば、抗ニキビおよび抗疣贅活性剤、(iii)抗アンドロゲン化合物(酢酸シプロテロン(1α,2β-メチレン-6-クロロ-17α-アセトキシ-6-デヒドロプロゲステロン)タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤)、(iv)アルファ1-アドレナリン受容体遮断薬(タムスロシン、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、ブナゾシン、インドラミン、アルフゾシン、シロドシン)、(v)5α-レダクターゼ阻害剤(フィナステリド、デュタステリド)、(vi)ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤(タダラフィル)およびそれらの組合せ、が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0047】
一部の実施形態は、低グレード低リスクの限局性前立腺癌腫瘍の壊死を誘導することができる少なくとも一種の薬学的に活性な成分を含む組成物を低グレード低リスクの限局性前立腺癌に投与し、かつ最初に孤立性腫瘍が位置し、治療された前立腺全体において、前立腺癌の発生を低減させ、前立腺癌のグレードを低減させ、前立腺癌の進行(悪化)を低減させる方法に対する。そのような腫瘍の壊死を誘導することができる適切な薬学的に活性な成分は、例えば、フェキサポチドトリフルタート(FT)、アミノ酸配列Ile-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu-Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leuによって記載されるペプチド、ザイティガ(酢酸アビラテロン)、アパルタミド、アバジタキセル、カソデックス(ビカルタミド)、エリガードおよびリュープロン(酢酸リュープロリド)、アーリーダ(アパルタミド)、ファーマゴン(デガレリクス)、フルタミド、酢酸ゴセレリン、ジェブタナ(カバジタキセル)、塩酸ミトキサントロン、ニランドロン(ニルタミド)、プロベンジ(シプリューセル-T)、シプリューセル-T、タキソテール(ドセタキセル)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)ならびにそれらの混合物および組合せを含む。ある実施形態において、組成物は2回以上投与される。したがって、実施形態は、組成物を、典型的に治療されないであろう哺乳動物に投与することにより、非侵襲的な方法で、前立腺癌の発生、グレードおよび進行を低減させる方法を提供する。一般に、グリーソングレード≦6を有する低グレードの孤立性または多発性前立腺癌を有する哺乳動物が、積極的監視(AS)を受けるか、または治療を受けないことが許容される。例えば、Ahmedら,“Do Low-Grade and Low-Volume Prostate Cancers Bear the Hallmarks of Malignancy,” www.thelancet.com/oncology,13巻,e509~e517頁(2012年)を参照されたい。
【0048】
本発明者は、予想外にも、そのような組成物の多発性癌の単一の病巣への投与が、多発性癌の発生、癌のグレード、および器官または生体全体における癌の進行を有意に低減させたことを発見した。したがって、実施形態の方法は、器官の除去もしくは移植、または更に病巣のアブレーション、切除、化学療法もしくは放射線と比較して、多発性癌を低減させる非侵襲的な方法を提供する。積極的監視でさえも、複数および反復的な前立腺の生検ならびに評価を必要とし、医療システムに大きな負荷をかける。したがって、本明細書に記載される方法は、非侵襲的な方法で、多発性癌の発生、出現および進行を遅らせるのに有用である。
【0049】
前立腺癌に関して、既刊文献とは対照的に、本発明の組成物で治療された哺乳動物は、多発性前立腺癌の発生の劇的な減少、多発性グリーソンスコアの増加の劇的な減少、および前立腺全体における多発性前立腺癌の進行の劇的な減少を示した。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う前立腺全体の多発性癌(増加したグリーソングレードを有する前立腺全体における1つ以上の新たな病巣を有する患者)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約50%~約90%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う前立腺全体の多発性癌を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約30%~約90%、もしくは約45%~約90%、もしくは約47%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う前立腺全体の多発性癌を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約5%~約85%、もしくは約10%~約70%、もしくは約12%~約65%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0050】
実施形態の方法は、グリーソングレードの一次パターン≧4を有する前立腺全体の多発性癌(グリーソングレードの一次パターンの増加を伴う前立腺全体における1つ以上の新たな病巣を有する患者)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソングレードの一次パターン≧4を有する前立腺全体の多発性癌を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約30%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソングレードの一次パターン≧4を有する前立腺全体の多発性癌を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、20%~約100%、もしくは約50%~約100%、もしくは約60%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0051】
実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う病巣が最初に治療された葉(または半前立腺)における多発性前立腺癌(増加したグリーソングレードを有する治療された葉または半前立腺における1つ以上の新たな病巣を有する患者)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約50%~約90%、もしくは約60%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う半前立腺の多発性癌を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約90%、もしくは約50%~約85%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う半前立腺の多発性癌を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約15%~約80%、もしくは約15%~約75%、もしくは約16%~約72%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0052】
実施形態の方法は、グリーソンの一次パターン≧4を有する病巣が最初に治療された葉(または半前立腺)における多発性前立腺癌(グリーソングレードの一次パターンの増加を伴う治療された葉または半前立腺における1つ以上の新たな病巣を有する患者)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンの一次パターン≧4を有する半前立腺の多発性癌を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約45%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う半前立腺の多発性癌(増加したグリーソングレードを有する前立腺全体における1つ以上の新たな病巣を有する患者)を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、45%~約100%、もしくは約60%~約100%、もしくは約70%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0053】
実施形態の方法は、従来の癌治療(手術、放射線または化学療法)を有し、グリーソングレードの増加を伴う前立腺全体における1つ以上の新たな病巣を示す哺乳動物のパーセンテージ(新たな多発性とグリーソンのアップグレードとを有する癌治療)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約100%、もしくは約55%~約90%、もしくは約60%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、前立腺全体における新たな多発性とグリーソンのアップグレードとを有する癌治療を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約90%、もしくは約45%~約90%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、前立腺全体における新たな多発性とグリーソンのアップグレードとを有する癌治療を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約35%~約85%、もしくは約40%~約85%、もしくは約48%~約84%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0054】
実施形態の方法は、従来の癌治療(手術、放射線または化学療法)を有し、グリーソングレードの一次パターン≧4を有する前立腺全体の多発性癌を示す(新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療)哺乳動物のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約70%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約60%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、50%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0055】
実施形態の方法は、従来の癌治療(手術、放射線または化学療法)を有し、グリーソンのアップグレードを伴う病巣が最初に治療された葉(または半前立腺)における多発性前立腺癌を有する哺乳動物のパーセンテージ(半前立腺における増加したグリーソングレードを有する新たな多発性を有する癌治療)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約50%~約90%、もしくは約60%~約75%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、半前立腺における増加したグリーソングレードを有する新たな多発性を有する癌治療を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約90%、もしくは約55%~約75%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、半前立腺における増加したグリーソングレードを有する新たな多発性を有する癌治療を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約15%~約80%、もしくは約35%~約75%、もしくは約40%~約75%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0056】
実施形態の方法は、従来の癌治療(手術、放射線または化学療法)を有し、グリーソンの一次パターン≧4を有する病巣が最初に治療された葉(または半前立腺)における多発性前立腺癌を有する哺乳動物のパーセンテージ(半前立腺における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約65%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、半前立腺における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約65%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、半前立腺における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、60%~約100%、もしくは約65%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0057】
実施形態は、低グレードの孤立性前立腺癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、FTを含む組成物を、単独でまたは付加的な活性剤の投与と組み合わせてのいずれかで、哺乳動物の前立腺に存在する単一の低グレード低リスクの前立腺癌病巣に1回または2回以上投与することを含む、方法を含む。方法は、限定されるわけではないが、組成物を、単独でまたは担体と併せてのいずれかで、筋肉内、経口、静脈内、腹腔内、大脳内(実質内)、脳室内、病巣内、眼内、動脈内、髄腔内、腫瘍内、鼻腔内、局所、経皮、皮下または皮内に投与することを含む。
【0058】
ヒト、マウス、ウサギ、イヌ、ヒツジおよび他の家畜、獣医、動物園の飼育係または野生動物保護職員による治療が行われるまたは治療可能な哺乳動物を含む、あらゆる哺乳動物に対して、本発明は有効である。好ましい哺乳動物としては、ヒト、ヒツジおよびイヌが挙げられる。本明細書では、「哺乳動物」という言葉と「患者」という言葉とは、互換的に使用される。
【0059】
FTの他のより小さなフラグメントを、これらのペプチドが同じまたは類似の生物活性を有するように選択し得ることが当業者には明らかであろう。当業者は、FTの他のフラグメントも、これらのペプチドが同じまたは類似の生物学的活性を有するように選択することができる。したがって、実施形態で使用される用語「FT」は、これらの他のフラグメントを包含する。一般に、各実施形態のペプチドは少なくとも4つのアミノ酸、好ましくは少なくとも5つのアミノ酸、更に好ましくは少なくとも6つのアミノ酸を有する。
【0060】
また、本発明の実施形態は、2つ以上のFT配列を連結してなるFTを含む組成物を付加的な活性剤とともに投与することを含む治療方法を包含する。FTが所望の生物学的活性を有する限り、2つ以上のFT配列も、所望の生物学的活性を有することになろう。
【0061】
本発明の実施形態に包含されるFTならびにそのフラグメント、変異体、誘導体、相同体、融合タンパク質および模倣体は、当業者に公知の方法を用いて製造できる。例えば、組換えDNA技術、タンパク質合成、ならびに、天然のペプチド、タンパク質、変異体、誘導体および相同体の分離等の方法を用いることができる。FTならびにそのフラグメント、変異体、誘導体、相同体、融合タンパク質および模倣体は、当業者に公知の方法を用いて他のペプチド、タンパク質ならびにそれらのフラグメント、変異体、誘導体および相同体から製造することができる。そのような方法は、ペプチドまたはタンパク質を切断してFTにするプロテアーゼの使用を含むが、これに限定されない。例えば、米国特許第6,924,266号、7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号および第8,716,247号広報、ならびに米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号、第2016/0361380号、および第2016/0215031号明細書に開示されている任意の方法を使用して、本明細書に記載のFTペプチドを調製することができる。これらの特許文献の開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0062】
一または複数の薬学的に活性な成分に加えて、付加的な活性剤を使用する場合には、当該付加的な活性剤として、以下から選択される1つ以上の活性剤を使用できる。(i)抗癌活性剤(アルキル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、RNA/DNA代謝拮抗剤、および有糸分裂阻害剤など)、(ii)良性増殖を治療するための活性剤、例えば、抗ニキビおよび抗疣贅活性剤(サリチル酸)、(iii)抗アンドロゲン化合物(酢酸シプロテロン(1α、2β-メチレン-6-クロロ-17α-アセトキシ-6-デヒドロプロゲステロン)タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤)、(iv)α1-アドレナリン受容体遮断薬(タムスロシン、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、ブナゾシン、インドラミン、アルフゾシン、シロドシン)、(v)5α-レダクターゼ阻害剤(フィナステリド、デュタステリド)、(vi)ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤(タダラフィル)およびそれらの組合せ。好ましくは、この付加的な薬剤は抗癌剤であり、詳細には前立腺癌の治療に有用な薬剤である。
【0063】
本明細書に記載される治療用組成物は、薬学的に許容される担体と混合された一定量の薬学的に活性な成分を含み得る。一部の代替的な実施形態において、追加的な活性剤を薬学的に活性な成分を有する同じ組成物に含ませて投与することができ、また他の各実施形態において、薬学的に活性な成分を含む組成物が注射として投与され、一方で追加的な活性剤が経口医薬品(ゲル、カプセル、錠剤、液体など)の形態で処方される。担体材料は、注射用の水、好ましくは哺乳動物への投与用溶液に通常含まれている他の材料を補充した水であり得る。通常、薬学的な活性な成分がFTのとき、FTは、生理学的に許容される1つ以上のキャリア、賦形剤または希釈剤と組み合わせて、精製されたFTペプチド(または化学的に合成されたFTペプチド)を含む組成物の形態で投与される。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンを混合した生理食塩水は適当な担体の例である。好ましくは、製品は適当な賦形剤(例えば、ショ糖)を用いて凍結乾燥物として処方される。所望であれば他の標準的担体、希釈剤、および賦形剤を含んでもよい。各実施形態の組成物は、当業者に公知の適当な範囲のpH値を有する緩衝液、例えばpH約7.0から8.5のトリス緩衝液、またはpH約4.0から5.5の酢酸緩衝液も含み得る。これに更にソルビトールまたはその適切な代替物が加わってもよい。
【0064】
経口投与用の固体剤形は、カプセル、錠剤、ピル、散剤および顆粒剤を含むが、これらに限定されない。そのような固体剤形の場合、付加的な活性剤、および/または薬学的に活性な成分は以下の少なくとも1つと混合され得る:(a)クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つ以上の不活性賦形剤(または担体);(b)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、およびケイ酸のような充填剤または増量剤;(c)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖およびアカシアのような結合剤;(d)グリセロールのような保湿剤;(e)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(f)パラフィンのような溶液凝固遅延剤;(g)第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(h)アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;(i)カオリンおよびベントナイトのような吸着剤;および(j)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物のような滑沢剤。カプセル、錠剤、およびピルの場合、剤形は緩衝剤も含み得る。
【0065】
経口投与用の液体剤形は、製薬学的に許容し得るエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルを含む。液体剤形は、活性化合物のほかに、当該技術分野で通常使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤を含み得る。乳化剤の例は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類、例えば綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、ソルビタンの脂肪酸エステル類、またはこれらの物質の混合物などである。
【0066】
そのような不活性希釈剤のほかに、該組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、風味料および着香料などのアジュバントを含むこともできる。
【0067】
本発明の組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の組成物とって所望の治療的応答を得るのに有効な量の薬学的に活性な成分および付加的な活性剤を得るために、変動し得る。したがって、選択される用量レベルは、所望の治療効果、投与経路、所望の治療期間、および他の要因によって決まる。
【0068】
ヒトを含む哺乳動物の場合、体表面積に基づいて有効量を投与できる。様々な大きさ、種の動物、およびヒトに関する用量の相互関係(mg/M2体表面に基づく)は、E.J.Freireichらによって、Cancer Chemother.Rep.、50(4):219(1966年)に報告されている。体表面積は、個体の身長および体重からおよそ決定できる(例えば、Scientific Tables、Geigy Pharmaceuticals、ニューヨーク州アーズリー、537-538頁(1970年)参照)。
【0069】
任意の特定の患者に対する特定の用量レベルは、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間および経路、投与薬物の効力、吸収および排出速度、他の薬物との組合せ、および治療される特定の疾患の重症度などの様々な要因によって異なるであろうことは理解されよう。
【0070】
実施形態による薬学的に活性な成分を含む組成物を投与する方法は、限定されるわけではないが、組成物を、筋肉内、経口、静脈内、腹腔内、大脳内(実質内)、脳室内、腫瘍内、病巣内、皮内、髄腔内、鼻腔内、眼内、動脈内、局所、経直腸、経腹膜、経皮、エアロゾルを介して、注入、ボーラス注射、埋め込みデバイス、持続放出システムなどで投与することを含む。例えば、米国特許第6,924,266号、7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号および第8,716,247号広報、ならびに米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号、第2016/0361380号、および第2016/0215031号明細書に開示されている任意の投与方法を使用することができる。
【0071】
FTの使用は好ましい実施形態である。組織培養遺伝学的アレイデータに基づけば、FTは、前立腺上皮細胞におけるカスパーゼ経路(カスパーゼ7、8、10、カスパーゼリクルートドメイン6、11、14、DIABLOの活性化)、腫瘍壊死因子経路(TNF1、TNFSF6、TNFSF8、TNFSF9、CD70リガンド、TNFRSF19L、TNFRSF25、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF6受容体の活性化)、およびBCL経路(BIK、HRK、BCL2L10、BCL3の活性化)をin vitroで刺激する新しい分子である。FTは、細胞膜の完全性の喪失、ミトコンドリアの代謝停止、RNAの枯渇、DNAの溶解と凝集、細胞の断片化と細胞の消失を選択的に引き起こす。アポトーシスの過程では、典型的な超微細構造の漸進性の変化として、膜の破壊と膨潤、徐々に深くなる核の浸潤、最終的には膜のブレブ形成、そして細胞死とアポトーシス小体への断片化が起こる。組織学的には、アポトーシスのマーカーが免疫組織化学的に陽性となる典型的なアポトーシスによる変化が、治療後数週間にわたって注射部位全体に認められる。
【0072】
FT has been extensively tested in patients with BPH.この化合物とプラセボ対照薬は、9回のヒト臨床試験において1700以上の手順で経直腸投与された。BPH患者を対象としたこれらの大規模な長期臨床試験では、FTは0.25mg/mlの濃度で投与された(2.5mgのFTは、体積比で前立腺の約15~20%に投与されたことになる)。例えば、Shore,et al.,“The potential for NX-1207 in benign prostatic hyperplasia:an update for clinicians,”Ther Adv.Chronic Dis.,2(6),377-383頁(2011)を参照のこと。したがって、FTを含む組成物が少なくとも2.5mgのFTを含み、単回投与で最高で25mgのFTの量で投与され得ることが好ましい。別の実施形態において、FTは、約2.5mg~約200mg、または約2.5mg~約15mgの範囲内の量で投与される。ある実施形態では、FTは、15mgの量で投与される。
【0073】
以下の実施例は本発明の各実施形態を説明するために提供する。しかしながら、各実施形態はこれらの実施例に記載されている特定の条件または詳細事項に限定されるものではないことが理解されるべきである。本明細書全体を通じて、米国特許を含む公的に入手可能な文献へのいずれかまたはすべての参照は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。特に、本発明の実施形態は、米国特許第6,924,266号、7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号および第8,716,247号広報、ならびに米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号、第2016/0361380号、および第2016/0215031号明細書に含まれる例を参照により明示的に組み込む。これらの文献の各々は、そこに明記されている特定のペプチドが、正常なげっ歯類の筋肉組織、皮下結合組織、真皮などの組織において、in vivoで細胞死を引き起こすための有効な薬剤であることを明らかにしている。
【実施例
【0074】
一連の臨床研究において、低グレードの前立腺癌(グリーソングレード≦6)を有する合計で146人の男性を、以下の方法で治療した。患者を、無作為化し、2.5mgのFTを含む組成物(n=49)もしくは15mgのFTを含む組成物(n=48)の経直腸前立腺内単回注射で治療するか、または対照の積極的監視に付した(n=49)。無作為化の45日後における最初の経過観察の生検後、対照の積極的監視群の18人の患者を、2.5mgのFTを受けた10人の患者および15mgのFTを受けた8人の患者における組成物の単回投与とクロスオーバーした。患者を、ベースライン、45日、18、36および48カ月での生検、ならびに6カ月毎にPSAによる泌尿器学的評価を含んで、5年間追跡した。グリーソングレードが増加した患者、または手術もしくは放射線治療介入を選択した患者を研究から除外し、依然として、データ分析に含めた。ベースラインの病巣の四半部および中央の腫瘍グレードならびに体積における正常な生検のパーセンテージを評価し、進行を、試料採取された前立腺全体および治療された前立腺葉について、グリーソングレードおよびグリーソングレードの一次パターンを含む臨床ならびに病理学的結果によって測定した。グリーソングレードの増加に関連する介入、および任意の従来の外科的介入(例えば、手術、放射線および/または化学療法)についての合計発生率を評価した。
【0075】
実施例1
この実施例は、前立腺全体における2つ以上の多くの新たな病巣を示した(すなわち、孤立性から多発性に進んだ)患者のパーセンテージを評価し、ここで、新たな病巣は、グリーソングレードの総スコアの増加を伴っていた(「グリーソンのアップグレードを伴う新たな多発性」)。経過観察の時間についての以下の表中のデータは、進行または悪化を示した患者のパーセンテージを表す。結果を、以下の表3に示す。
【表5】
【0076】
実施例1からの結果は、実施形態が、グリーソンのアップグレードを伴う前立腺全体の新たな多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約50%~約90%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う前立腺全体の新たな多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約30%~約90%、もしくは約45%~約90%、もしくは約47%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う前立腺全体の新たな多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約5%~約85%、もしくは約10%~約70%、もしくは約12%~約65%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0077】
実施例2
この実施例は、前立腺全体における2つ以上の多くの新たな病巣を示した(すなわち、孤立性から多発性に進んだ)患者のパーセンテージを評価し、ここで、新たな病巣は、グリーソンの一次パターン≧4の増加を伴っていた(「グリーソンの一次パターンの増加を伴う新たな多発性」)。結果を、以下の表4に示す。
【表6】
【0078】
実施例2からの結果は、実施形態が、グリーソンの一次パターンの増加を伴う前立腺全体の新たな多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、グリーソンの一次パターンの増加を伴う前立腺全体の多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約30%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソングレードの一次パターンの増加を伴う前立腺全体の多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、20%~約100%、もしくは約50%~約100%、もしくは約60%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0079】
実施例3
この実施例は、最初に孤立性腫瘍が治療された半前立腺において、2つ以上の多くの新たな病巣を示した(すなわち、孤立性から多発性に進んだ)患者のパーセンテージを評価し、ここで、新たな病巣は、グリーソングレードの総スコアの増加を伴っていた(「グリーソンのアップグレードを伴う半前立腺の多発性癌」)。結果を、以下の表5に示す。
【表7】
【0080】
実施例3からの結果は、実施形態が、グリーソンのアップグレードを伴う病巣が最初に治療された葉(または半前立腺)における多発性前立腺癌を有していた患者のパーセンテージ(増加したグリーソングレードを有する治療された葉または半前立腺における1つ以上の新たな病巣を有する患者)を、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約50%~約90%、もしくは約60%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う半前立腺の多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約90%、もしくは約50%~約85%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンのアップグレードを伴う半前立腺の多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約15%~約80%、もしくは約15%~約75%、もしくは約16%~約72%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0081】
実施例4
この実施例は、最初に孤立性腫瘍が治療された半前立腺における2つ以上の多くの新たな病巣を示した(すなわち、孤立性から多発性に進んだ)患者のパーセンテージを評価し、ここで、新たな病巣は、グリーソングレードの一次パターン≧4の増加を伴っていた(「グリーソンの一次パターンの増加を伴う半前立腺の多発性癌」)。結果を、以下の表6に示す。
【表8】
【0082】
実施例4からの結果は、実施形態が、グリーソンの一次パターンの増加を伴う半前立腺の多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、グリーソンの一次パターンの増加を伴う半前立腺の多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約45%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、グリーソンの一次パターンの増加を伴う半前立腺の多発性癌を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、45%~約100%、もしくは約60%~約100%、もしくは約70%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0083】
実施例5
この実施例は、従来の癌治療(例えば、手術、放射線および/または化学療法)を有し、前立腺全体における2つ以上の多くの新たな病巣を示した(すなわち、孤立性から多発性に進んだ)患者のパーセンテージを評価し、ここで、新たな病巣は、グリーソングレードの総スコアの増加を伴っていた(「グリーソンのアップグレードを伴う新たな多発性を有する癌治療」)。結果を、以下の表7に示す。
【表9】
【0084】
実施例5からの結果は、実施形態が、前立腺全体におけるグリーソンのアップグレードを伴う新たな多発性を有する癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約100%、もしくは約55%~約90%、もしくは約60%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、前立腺全体におけるグリーソンのアップグレードを伴う新たな多発性を有する癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約90%、もしくは約45%~約90%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、前立腺全体におけるグリーソンのアップグレードを伴う新たな多発性を有する癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約35%~約85%、もしくは約40%~約85%、もしくは約48%~約84%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0085】
実施例6
この実施例は、従来の癌治療(例えば、手術、放射線および/または化学療法)を有し、前立腺全体における2つ以上の多くの新たな病巣を示した(すなわち、孤立性から多発性に進んだ)患者のパーセンテージを評価し、ここで、新たな病巣は、グリーソングレードの一次パターン≧4の増加を伴っていた(「新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンを有する癌治療」)。結果を、以下の表8に示す。
【表10】
【0086】
実施例6からの結果は、実施形態が、前立腺全体における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を有する患者のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、前立腺全体における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約60%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、前立腺全体における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、50%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約80%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0087】
実施例7
この実施例は、従来の癌治療(例えば、手術、放射線および/または化学療法)を有し、グリーソンのアップグレードを伴う病巣が最初に治療された葉(または半前立腺)における多発性前立腺癌を有していた患者のパーセンテージを評価した(半前立腺における増加したグリーソングレードを有する新たな多発性を有する癌治療)。結果を、以下の表9に示す。
【表11】
【0088】
実施例7からの結果は、実施形態が、半前立腺におけるグリーソンのアップグレードを伴う新たな多発性癌を有する癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約40%~約100%、もしくは約50%~約90%、もしくは約60%~約75%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、半前立腺における増加したグリーソングレードを有する新たな多発性を有する癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約50%~約90%、もしくは約55%~約75%、もしくは約50%~約80%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、半前立腺における増加したグリーソングレードを有する新たな多発性を有する癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約15%~約80%、もしくは約35%~約75%、もしくは約40%~約75%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0089】
実施例8
この実施例は、従来の癌治療(手術、放射線または化学療法)を有し、グリーソンの一次パターン≧4を有する病巣が最初に治療された葉(または半前立腺)における多発性前立腺癌を有する患者のパーセンテージを評価した(半前立腺における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療)。結果を、以下の表10に示す。
【表12】
【0090】
実施例8からの結果は、実施形態が、半前立腺におけるグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う新たな多発性癌を有する癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約65%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができることを明らかにしている。実施形態の方法は、半前立腺における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、約65%~約100%、もしくは約70%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。実施形態の方法は、半前立腺における新たな多発性およびグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う癌治療を有していた患者のパーセンテージを、治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視対照と比較して、60%~約100%、もしくは約65%~約100%、もしくは約75%~約100%、またはそれらの間の任意の値の量まで低減させることができる。
【0091】
前述の実施例からの結果は、多病巣癌の発生の低減、多病巣癌のグレードの低減、および最初に低グレードの腫瘍が位置し、治療された前立腺全体または半前立腺における多病巣癌の進行(悪化)の低減における、薬学的に活性な成分、特に、FTの予想外の優れた効果を説明する。当業者には、本発明の方法および組成物において、本発明の精神または範囲に反することなく多様な変更および変形が可能であることは明白であろう。
【配列表】
2022542973000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孤立性前立腺癌腫瘍を有する哺乳動物を同定する工程と、
治療有効量のフェキサポチドトリフルタート(FT)を含む組成物を孤立性前立腺腫瘍への直接注射によって哺乳動物に投与する工程と、
前立腺全体において、多発性癌の発生を低減させ、多発性癌のグレードを低減させ、多発性癌の進行(悪化)を低減させる工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前立腺全体におけるグリーソングレードの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約30%~約90%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約5%~約85%低減させる、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前立腺全体におけるグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約30%~約100%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約20%~約100%低減させる、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
従来の癌治療、および前立腺全体におけるグリーソングレードの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約50%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約40%~約90%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約35%~約85%低減させる、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
従来の癌治療、および前立腺全体におけるグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約70%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約60%~約100%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約50%~約100%低減させる、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
従来の癌治療、および低グレードの孤立性前立腺癌の病巣が位置していた前立腺葉におけるグリーソングレードの一次パターンの増加を伴う新たな多発性前立腺癌を、
a)治療の少なくとも18カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約65%~約100%低減させ、
b)治療の少なくとも36カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約65%~約100%低減させ、
c)治療の少なくとも48カ月後に測定された場合に、積極的監視と比較して、約60%~約100%低減させる、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
治療有効量のFTが、約2.5mg~約20mgの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
治療有効量のFTが、約2.5mg~約15mgの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
治療有効量のFTが、15mgである、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】