(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ワークピースの2つの歯部をハードフィニッシングするための方法、歯切削機、制御プログラム、ハードフィニッシング組み合わせツール、およびそれらのためのセンサ構成
(51)【国際特許分類】
B23F 23/08 20060101AFI20220930BHJP
B23F 19/05 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B23F23/08
B23F19/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506202
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020069772
(87)【国際公開番号】W WO2021018562
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】102019005405.9
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519171088
【氏名又は名称】グリーソン スイツァーランド アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロマン ミナス
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル ハンジーカー
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリン ラング
(72)【発明者】
【氏名】マーク ビュルキ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン リーデラー
(57)【要約】
ワークピースの2つの異なる歯部をハードフィニッシングするための方法であって、各加工プロセスの前に、加工プロセスのための正しいツール係合位置を設定するために、第1の歯部の第1の回転位置基準の第1の相対的回転角位置が、第1の加工のためにワークピースを保持およびクランプするワークピーススピンドルの軸回転位置に相対的に決定され、第2の歯部の第2の回転位置基準の第2の相対的回転角位置が、第2の加工のためにワークピースを保持およびクランプするワークピーススピンドルの軸回転位置に相対的に決定され、加工動作は、介在するクランピング変更なしに、第1および第2の回転位置基準がその基礎として互いに結合された状態で、同じワークピーススピンドル上で実行される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(4)に設けられた2つの異なる歯部(1、2)をハードフィニッシングするための方法であって、各加工プロセスの前に、前記加工プロセスのための正しいツール係合を設定するために、前記第1の歯部(1)の第1の回転位置基準(φ1)の第1の相対的回転角位置が、第1の加工のためにクランプされた前記ワークピースを保持およびクランプするワークピーススピンドルの軸回転位置に相対的に決定され、前記第2の歯部の第2の回転位置基準(φ2)の第2の相対的回転角位置が、第2の加工のためにクランプされた前記ワークピースを保持およびクランプするワークピーススピンドルの軸回転位置に相対的に決定され、
前記加工動作は、介在するクランピング変更なしに、前記第1および第2の回転位置基準がその基礎として互いに結合された状態で、前記同じワークピーススピンドル(108;208)上で実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記結合は、事前指定回転角(Δφ
0)による許容誤差(±δΔφ)内にある、前記第1の回転位置基準と前記第2の回転位置基準との回転角差(Δφ)からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の回転位置基準は、事前指定基準、特に歯部(2)の選択された基準歯(21)に割り当てられている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準歯の前記事前指定選択は、特に前記ワークピース自体に配置されたマーキング(3)によって決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
同一のワークピースのバッチの最初の加工ワークピースに対して、および/または前記ツールのうちの少なくとも1つの交換もしくは研ぎ直し/プロファイリングの後の最初の加工ワークピースに対して、前記第1および/または第2の相対的回転角位置は、前記ワークピース歯部と前記ツールとの間のセンサ検出接触を介して決定され、前記ツール係合に適切な軸回転位置がそれから決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最初の加工ワークピースに続く前記ワークピースは、特に非接触センサによって、このワークピースに対して決定された前記第1および/または第2の相対的回転角位置に基づいて、前記ツール係合のための正しい軸回転位置に設定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記指定基準、特に前記選択された基準歯はまた、各ワークピースに対して識別され、この目的のために、特に前記マーキングの前記回転位置が、センサによって、特に非接触式に検出される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の相対的回転角位置の決定は、前記第1の歯部の加工が開始される前に実行され、逆もまた同様である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
特に前記歯部の形態の、前記ツール(101、102)のためのドレッシングツール(401、402)、特にダイヤモンドドレッシングホイールが、互いに相対的に固定された前記回転位置の結合を有して配置され、また、特に、前記第1および第2の歯部(1、2)と同じワークピーススピンドル(108)上に配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ワークピース(4)に設けられた2つの異なる歯部(1、2)をハードフィニッシングするための歯切削機(100;200)であって、ドライブによって前記ワークピースを回転させるための少なくとも1つのワークピーススピンドル(108;208)と、前記第1の歯部(1)をハードフィニッシングするために、前記同じドライブによって駆動される第1のハードフィニッシングツール(101;201)、および前記第2の歯部をハードフィニッシングするための第2のハードフィニッシングツール(102;202)を取り付けるためのツールヘッド(104;204)と、少なくとも2つの、特に非接触の、センサ(110、120)と、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するための制御命令を有する制御デバイス(99)とを有する、歯切削機(100;200)。
【請求項11】
前記ワークピース上に配置されたマーキング(3)を検出するための第3のセンサ(130)であって、前記回転位置基準のうちの1つに対する基準、特に前記ワークピースの事前指定歯を識別する第3のセンサ(130)を有する、請求項10に記載の歯切削機。
【請求項12】
特に互いに対して固定回転位置に結合され、特に前記ワークピーススピンドル(108)上に配置された、前記ハードフィニッシングツールのための研ぎ直しまたはプロファイリングデバイス(401,402)を有する、請求項10または11に記載の歯切削機。
【請求項13】
歯切削機の制御デバイスで実行されると、それを、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するように制御する制御命令を有する制御プログラム。
【請求項14】
ツールヘッド(104)内に、共用回転軸(C1)と、同じ回転固定クランピングを介しての共用結合とを有する、特に内歯ホーニングリング(101、102)の形態の、幾何学的に未規定の刃先を有する2つの歯付きハードフィニッシングツールを有するハードフィニッシング組み合わせツールであって、前記第1のハードフィニッシングツールは、ワークピースの第1の歯部をハードフィニッシングするように設計され、前記第2のハードフィニッシングツールは、それとは異なる前記ワークピースの第2の歯部をハードフィニッシングするように設計されている、ハードフィニッシング組み合わせツール。
【請求項15】
相互に回転固定された位置におけるハードスカイビングプロセスのための、同じ回転軸を有して結合された、特に外歯スカイビングホイール(201、202)の形態の、幾何学的に決定された刃先を備える2つのハードフィニッシングツールを有するハードフィニッシング組み合わせツールであって、第1のハードフィニッシングツールは、ワークピースの第1の歯部の前記ハードフィニッシングのために設計され、第2のハードフィニッシングツールは、それとは異なる前記ワークピースの第2の歯部の前記ハードフィニッシングのために設計されている、ハードフィニッシング組み合わせツール。
【請求項16】
2つの異なる歯部を有するワークピース(4)のハードフィニッシング中のセンタリング動作のためのセンサ構成であって、前記歯部のうちの第1のものの歯間隙を検出するための第1の、特に非接触の、センサ(110)と、前記第2の歯部の歯間隙を検出する、第2の、特に非接触の、センサ(120)と、前記第1および第2の歯部の回転位置基準の差のための基準の役割を果たす、前記ワークピース(4)上のマーキング(3)を検出するための第3のセンサ(130)と、を有するセンサ構成。
【請求項17】
前記センサのうちの2つ、特に3つは、規定され、互いに対して固定された位置関係に、特に運動機構を介して前記センサの作動位置に持ってくることができる同じ担体への、特にそれらの取り付けによって、配置されている、請求項16に記載のセンサ構成。
【請求項18】
前記センサのうちの2つまたは3つは、互いに相対的な所定の位置に、少なくとも1つの位置決め運動軸を介して動くことができ、特に、1つ以上のセンサが、例えば、スライド構成または旋回アームを介して動くことができるように構成されている、請求項16に記載のセンサ構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースの2つの異なる歯部をハードフィニッシングするための方法であって、各加工プロセスの前に、加工プロセスのための正しいツール係合位置を設定するために、第1の歯部の第1の回転位置基準の第1の相対的回転角位置が、第1の加工のためにワークピースを保持およびクランプするワークピーススピンドルの軸回転位置に相対的に決定され、第2の歯部の第2の回転位置基準の第2の相対的回転角位置が、第2の加工のためにワークピースを保持およびクランプするワークピーススピンドルの軸回転位置に相対的に決定される、方法に関する。
【0002】
そのような方法は、例えば、2つ以上の歯部を有するシャフト形態のワークピースについて知られている。しかしながら、恐らくは異なる直径の2つの作用歯車が、恐らくは非常に短いシャフトで互いに接続されている「ダンベル形状」のワークピースも存在する。そのようなワークピースでは、歯部のうちの一方の歯車本体が、他方の歯部の肩部を構成し、したがって、後者は、生成プロセスで加工することができず、そうでなければ、最も正確で経済的な方法になるであろう。そのような歯部は、例えば、大きいほうの(より大きい径の)歯部が、生成研削によってハードフィニッシングされるのに対し、小さいほうの歯部は、内歯ホーニングリングを用いてホーニングされるプロセスによって、ハードフィニッシングされる。
【0003】
ツールおよびワークピースの好適な回転位置が、加工動作ごとに必要とされる。回転位置は、典型的には、ワークピースバッチで加工される最初のワークピースに対して1回設定される。このためには、例として、ツールの歯が、ワークピース歯部の歯間隙に挿入され(第1のセンタリング)、まず、接線方向変位または相対的回転によって、ワークピースの左歯面と接触し、次いで、右歯面と接触し、接触状況の回転位置が記録され、ワークピース歯部の歯間隙の中心が、例として、ワークピーススピンドルの事前指定軸回転位置に対する、回転位置基準、またはこの回転位置基準の相対的回転角位置を平均化することによって計算される。これは、連続プロセスで起こることもあり得る。これは、例えば、第1の歯部の生成研削のための、周知の手法における手順である。同じワークピースバッチのさらなる歯部に対しては、この初期設定動作は、適切な係合を設定する目的では、もはや必要でなく、後続のワークピースを、最初に加工されたワークピースと同じ回転位置に持ってくるだけで十分である。このためには、やはり、歯間隙の中心(第1の回転位置基準)の位置を、ワークピーススピンドルの指定軸回転位置(ワークピーススピンドル基準)に持ってくるだけで十分である。歯間隙および歯間隙中心の位置自体は、例として、非接触の誘導センサによって決定することができる。
【0004】
ホーニングされる第2の歯部に対しては、例えば、ワークピースを研削機のワークピーススピンドルからクランプ解除し、ホーニング加工機のワークピーススピンドルにクランプし、ツール係合の設定(初期センタリング)をこの歯部に対して実行する。加えて、続くワークピースのセンタリング動作は、ホーニング加工機のワークピーススピンドル基準に相対的な歯間隙中心(第2の回転位置基準)を決定することによって実行される。
【0005】
複数の異なる歯部を有するワークピースを加工するためのあらゆる周知の方法が、長所と短所とを有する。
【0006】
本発明は、特に高精度要件に関して、そのような方法をさらに改善するという目的に基づく。
【0007】
この目的は、本発明によって、方法に関しては、冒頭に述べたタイプの方法のさらなる発展によって達成され、介在するクランピング変更なしに、第1および第2の回転位置基準がその基礎として互いに結合された状態で、加工が同じワークピーススピンドル上で行われることを実質的に特徴とし、第1および第2の歯部のハードフィニッシングプロセスの加工の方式は、特に同じであり、好ましくは、加工係合の点から、はすば歯車機構のものである。2つの歯部の回転軸は、ワークピーススピンドル軸と適合および一致する。
【0008】
本発明によるさらなる発展では、クランピングが維持されるので、その回転位置が一度決定および認識された、ワークピーススピンドル基準に対するワークピースの相対的回転位置が留保される。個々の歯部ごとのセンタリング動作はいずれにせよ必要であり、加工プロセスが開始されるワークピース歯部の特定の歯間隙は、ハードフィニッシングツールを用いた特定の加工動作では問題とならないので、これは通常、重要ではない。しかしながら、基本をなす結合された第1および第2の回転位置基準のさらなる発明の概念によれば、第2の歯部に対する第1の歯部の相対的回転位置が重要である限りにおいて、関連対称性が破られる。第1の歯部の任意の歯間隙を選択した場合、例えば、時計回り方向において、他方の歯部の最も近い歯間隙が、(それぞれの歯間隙中心に対して測定される)第1の歯部のこの歯間隙からの事前指定回転角距離を有する。この点に関して、結合が、事前指定回転角による許容誤差内である、第1の回転位置基準と第2の回転位置基準との回転角差からなる限り好ましい。
【0009】
第1および第2の歯部は、特にモジュール、ねじれ角、歯幅、および/または歯部直径の点で、互いに異なるので、そのような回転角差は、ワークピース軸の投影面内の(または互いからの規定スペースの)、例えば、隣接する、どの2つの歯間隙が選択されるかに依存する。この目的のために、第1および第2の回転位置基準は、好ましくは、事前指定基準、特に歯部の選択された基準歯に割り当てられる。特定の実施形態では、例えば、第1または第2の歯部からの基準歯が選択され、時計回り方向でこの歯に隣接する歯間隙、つまりその歯間隙中心が、回転位置基準として選択され、ここでも、ワークピース回転軸の法平面に投影して見ると、他方の歯部の最も近い歯間隙(歯間隙中心)が選択される。歯間隙中心の代わりに、歯中心またはそれらの交雑組み合わせを使用できることは、言うまでもない。さらに、基準歯への割り当ては、基準歯を使用する、規定の追跡可能な方式で決定することができる別の歯または歯間隙を使用して設計できることは、言うまでもない。例えば、第1の回転位置基準はまた、基準歯から時計回りで7番目の歯であり得、第2の回転位置基準は、基準歯に対して反時計回りで、他方の歯部の3番目の歯間隙であり得る。
【0010】
例として(そして典型的には)ワークピーススピンドルの回転中のゼロ交差によって示され、ワークピーススピンドル上の回転エンコーダによって検出される、ワークピーススピンドルの軸回転位置は、原則として、自由に選択することができ、それぞれのワークピース歯部上の回転位置基準に対する相対的回転角位置のみが重要である。基準を実装するため、ならびに第1の回転位置基準と第2の回転位置基準との回転角差をとるのに所望される回転角を維持するために、ワークピーススピンドル基準の絶対位置は、差がとられるという事実の故に、重要ではなく、その存在だけが重要である。これは、方法を実行する機械の制御デバイスが、加工動作のためにワークピースが動かされる回転位置と、基準、例えば、選択された基準歯がこの回転位置に位置することを知っていることを意味する。
【0011】
方法の特に好ましい実施形態では、この基準、したがって特に基準歯の所定の選択は、特にワークピース自体に配置された、マーキングによって決定される。考えられる最も単純なケースでは、センサによって検出することができるマーキング、つまり、光学センサの場合、任意の文字、刻印など、またはさらには、例えば、他方のより大きな歯部のホイール本体の、単純な穴によって、歯部の歯の、回転角に対して、おおよそ歯中心に、マーキングが設けられ得る。後者は、中央センサに類似の方式で非接触センサによって検出することができるので、特に有利であると見なされる。
【0012】
冒頭で既に説明したように、本発明による方法では、所与のツールを使用する加工係合のために第1のワークピースの回転位置を規定して、特に上記で説明した基準決定によって規定された回転位置基準のために、ワークピーススピンドル基準に相対的なそれらの位置における、第1および第2の歯部の回転位置基準を記録することも好ましい。請求項5に記載のこの構成は、ツールが交換または再プロファイリングされたときに再度実行することができる。
【0013】
したがって、この構成は、同じワークピースバッチの後続のワークピースにはもはや必要でなく、むしろ、ツール係合に適切な軸回転位置は、特に非接触センサによって、このワークピースに対して決定された第1または第2の相対的回転角位置を使用してもたらすことができる。
【0014】
この文脈では、指定基準、特に選択された基準歯がワークピースごとに識別される場合にも、この目的のために、特にマーキングの回転位置が、特に非接触式に、センサよって検出されることが好ましい。このようにして、コントローラは、第1および第2の歯部について歯間隙がどこにあるかだけでなく、順守する必要のある2つの回転位置基準の回転角差の指定のための基準として有効な、例えば、第1および第2の歯部の特定の歯間隙がどこに位置するかも知る。
【0015】
特に好ましい実施形態では、第2の回転位置基準/第2の相対的回転角位置は、第1の歯部の加工が開始される前に決定され、逆もまた同様である。基準および/または基準歯の識別はまた、好ましくは、歯部のうちの一方の加工が開始される前に実行される。これは、機械コントローラが、加工係合に適切な回転位置を設定するために使用することができる情報を有することを意味する。これは、許容誤差範囲が、個々の加工動作ごとに存在し、その範囲で、コントローラが加工動作のためのワークピーススピンドルの最終回転位置を選択することができるからである。
【0016】
通常、制御アルゴリズムは、特に左右の側面の除去が対称化され、結果としてツールの摩耗さえも達成されるように、それ自体を許容誤差の真ん中に正確に位置決めすることを目的とする。しかしながら、方法の好ましい実施形態では、第1の回転位置基準と第2の回転位置基準との回転角差が許容誤差内の指定と一致するように、制約が手順に結合され、そして、この制約を考慮して、好ましくは両方の加工動作に対する許容誤差範囲内の位置の対称化に基づき、個々の許容誤差範囲における個々の加工プロセスの回転位置を決定する。
【0017】
簡略化した例として、両方の個々の許容誤差範囲は、(ピッチ円上で)+5μm~-5μmの許容値(数値は単なる例である)を有し、理想的なケースでは、正しい回転角差もまた、0μmに設定される。しかしながら、ハードニングから生じる変形の故に、0μmを維持しながら、一方の歯部に+2μmの値を選択すると、他方の歯部に対して補完的に制御が対称化され、制約を順守しつつ、0μmの代わりに-1μmが、+2μmの代わりに+1μmが選択される。このように、わずか数分角、例えば、±5分角以下、好ましくは±2分角以下、より好ましくは±1分角以下の回転角差に対する高感度の許容誤差についても、±40秒角以下、特に±25秒角以下、さらには±15秒角以下を達成することが可能であり、さもなければすでに完了していた一方の歯部の加工の故に相互調整の可能性がもはやなくなる前に、個々の加工プロセスの両方の許容誤差範囲を使用することができ、結合によってわかるので、もはやこの判定基準を満たすことができない不具合量を最小化することが可能である。
【0018】
好ましい実施形態では、ハードフィニッシングツールは、研ぎ直し/ドレッシングすることができ、ドレッシングツールは、この目的のために、特に、互いに相対的に固定された回転位置の結合により、第1および第2の歯部と同じワークピーススピンドル上に配置された、特に歯部、特にダイヤモンドドレッシングホイールの形態で提供される。ドレッシングツールの回転位置結合の故に、それらの歯の相対位置は、例えば、2つの内歯ホーニングリングのドレッシング後でさえ、留保される。ダイヤモンドドレッシングホイールの代わりに、薄歯ドレッシングホイールを使用することもでき、その係合は、追加の軸方向の機械の動きによって制御される。
【0019】
装置に関して、本発明は、必要なワークピースホルダおよびツールホルダと、回転軸および位置決め軸と、上記の態様のうちの1つによる方法を実行するための制御命令を有する制御デバイスとを有する、保護範囲内でそのようなワークピースをハードフィニッシングするための歯切削機を含む。
【0020】
そのような歯切削機は、好ましくは、2つの、特に3つのセンサを有し、それぞれの歯部の歯間隙を決定するために1つずつと、特に、マーキングの位置を検出するための第3のセンサとを有する。3つのセンサを有するそのようなセンサ構成もまた、保護範囲内で独立して含まれる。
【0021】
加えて、歯切削機には、ハードフィニッシングツールのための研ぎ直しまたはプロファイリングデバイスを装備することもできる。
【0022】
本発明はまた、第1の例では、好ましくは2つの結合された内歯ホーニングリングの形態の、幾何学的に未規定の刃先を有し、別の実施形態では、幾何学的に規定された刃先を有するツール、特に外歯スカイビングホイールの形態の、そのような方法を実行するのに好適なハードフィニッシング組み合わせツールを提供する。
【0023】
上記態様の方法により、例えば、電子ドライブトランスミッションにおける、特に遊星歯車用途で、角度同期のある段付き歯部を有するワークピースを、満足のいく精度レベルに、ハードフィニッシングすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明のさらなる特徴、詳細、および利点は、添付の図面を参照する以下の説明に見出すことができる。
【0025】
【
図1】2つの歯部を有するワークピースの斜視図である。
【
図2】ワークピース軸がそれに対して垂直な投影面における回転位置基準の概略図である。
【
図3】2つの内歯ホーニングリングを有するホーニング加工機の構造を示す。
【
図4】ホーニングリングおよびワークピース歯部に加えて、センサおよびドレッシングツールも示されている概略図である。
【
図6】2つのハードスカイビングホイールを有するハードフィニッシングツールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、ワークピース4が斜視図で示されている。ワークピース4は、シャフトを介して互いに接続され、それらの回転軸が同軸である、2つの歯部、より大きな(より大きな直径の)歯部1とより小さな(より小さな直径の)歯部2とを伴って荒仕上げされている。2つの歯部はまた、ワークピース4の2つの軸方向端部を形成している。ハードフィニッシングプロセスのために、ワークピース4は、ワークピーススピンドルにクランプされ、ワークピーススピンドルのワークピーススピンドル軸は、歯部の回転軸と同軸である。歯部1は、例えば、ホビングによって、歯部2は、成形またはスカイビングによって、生成することができるが、他の組み合わせも使用できた。本発明は、ハードフィニッシングの時点から始まる。
【0027】
これは、歯部1および2が、最終的な歯面の幾何学的形状に関して、歯部1、2が作成されたときに残っていた加工公差をまだ有し、ハードニングはまた、ハードニング変形を、したがって、わずかに変化した歯形状をもたらし得ることを意味する。ハードフィニッシングでは、歯部1、2に最終的な幾何学的形状を与えるために、残っている加工公差を、ハードニング変形とともに、取り除かねばならない。
【0028】
また、
図1には、歯部1のホイール本体に形成された穴3が見られる。
図2からより分かるように、穴3は、歯部2の歯21、すなわち例えば、マーキング3の回転位置に実質的に対応する回転位置にある歯21を識別するためのマーカーとしての役割を果たす。対応の正確さは、重要ではない。角度オフセットを設けることができ、反時計回りまたは時計回りの方向でその隣にある歯部2の歯を、マーキング3によって識別される歯21としてマークすることができる。マーキング3を使用して、歯間隙22、または歯、例えば、歯部1の歯12、もしくは大きいほうの歯部1の歯間隙をマークすることもできる。
【0029】
マーキング3に相対的に、この場合は歯部2の歯21の歯中心と隣の歯間隙22の歯間隙中心との、回転角φ2が存在し、回転角φ2は、この場合は、歯部2のモジュールに基づいて決定される。しかしながら、マーキングが異なる位置に存在する場合、角度値が事前に既知でない場合がある。マーキング3(および/またはその中心)によって決定される回転位置と、時計回り方向で歯部1の次の歯間隙12との間に角φ1が存在し、歯部2に対する歯部1の相対的回転位置が、2つの歯間隙中心22および12の回転角差Δφ=φ2-φ1により、マーキング3によって決定される基準に相対的に規定される。この角差Δφは、わずか5分角以下、好ましくは1分角以下、特に25秒角以下の非常に小さな許容誤差±δΔφ内で、ワークピース4に対する事前指定角差Δφ0に対応するはずである。
【0030】
以下では、
図1に示されたタイプのワークピース4がハードフィニッシュされるだけでなく、これらのワークピース4のより大きなワークピースバッチが存在することも想定される。このバッチは、歯部1、2の生成とハードニングプロセスとに関して同じ製造プロセスを経ているが、ハードニングプロセスは、製造プロセスの故にわずかに異なる加工公差分布を有する場合や、異なるハードニング変形を有する場合がある。
【0031】
ワークピースバッチのワークピース4は、ハードフィニッシングのために、(
図3の実施形態ではワークピーススピンドル回転軸C2を有する)ワークピーススピンドル上にクランプされ、歯部1および歯部2のハードフィニッシングが、介在するクランピング変更なしで、つまり同じワークピーススピンドル上で同じクランピングで、実行される。さらに、歯部1および歯部2のハードフィニッシングは、
図3の実施例では内歯ホーニングリングを用いたギアホーニング(シェービング)、または実施形態2(
図5)では外歯ハードスカイビングホイールを用いたハードスカイビングである、同じハードフィニッシング方法を使用して実行される。したがって、ハードフィニッシングは、好ましくは、加工された歯部の回転軸と加工ツールの回転軸とが交差軸角度にある、はすば歯車ユニットの加工係合において行われる。ツールについては、(異なる歯部1、2の故に)2つの異なる歯車切削ツールの相対的回転位置もまた、回転固定式に互いに結合されねばならず、これはタンデムツールと称されることがある。したがって、ワークピーススピンドル基準は、C2軸の指定軸位置である。
【0032】
以下の説明は、
図3および
図4による実施形態に基づいており、歯部1および2は、ホーニングヘッド104内にしっかりと固定された2つの内歯ホーニングリング101、102によってホーニングされる。
【0033】
図3に示された歯ホーニング加工機100のより詳細な説明は、そのような設計は当業者にすでに周知であるので、省略される。ギアホーニング加工機は、内歯ホーニングリングを用いてギアホーニングを実行できるために、加工機ベッド180と必要なキャリッジおよび加工機軸とを有することは、言うまでもない。
図3に示された実施形態では、ホーニングリング101および102の回転軸C1は、旋回軸A1によって、軸方向位置の点で固定されているワークピーススピンドル軸C2に対して交差軸角度に設定することができ、加工機はまた、旋回軸A1から線形的に独立し、好ましくは旋回軸A1およびワークピース軸C2の軸方向に垂直である旋回軸を有するさらなる旋回角B1を有する。これは、ひいては、ワークピーススピンドルの線形移動軸Z2に平行である。ホーニングヘッド104は、ワークピース軸(Z1軸)に平行に、およびワークピース軸Z2に対して(線形軸X1を通して)半径方向に変位可能である、ツール上の複合スライド161、162に取り付けられている。軸の交点に対して偏心している加工を考慮するために、典型的には歯痕修正またはそれに影響を与えるために使用することができるB1軸は、この場合、さらなる運動軸として使用することができる。あるいは、例えば、X1およびZ1に直交する、追加の線形軸Y1を設けてもよい。
【0034】
ワークピース回転軸C2は、従来通り、ドライブと回転エンコーダとを有し、それによって、ワークピーススピンドルの内部ゼロ交差など、事前指定基準位置に相対的なワークピーススピンドルの回転位置(回転軸基準)が、わかる。ツールスピンドルC1も、そのような回転エンコーダを有する。
【0035】
ハードフィニッシングを行うために、新しいワークピースをワークピーススピンドル上にクランプした場合、クランピング後、ワークピーススピンドル基準に相対的な、例えば、歯部2の歯間隙の位置は、通常、不明である。好ましくは非接触センサ(インデックスセンサ)、例えば、誘導センサによって、ワークピーススピンドルの基準に相対的な歯間隙の位置は、歯部2に、センサ120を、数個の歯間隙だけ通過させることによって決定することができる。ワークピーススピンドル軸とツール回転軸との相互角位置が、ホーニングリング102と歯部2との加工係合の初期構成によって初めて決定された場合(例えば、ツールを歯間隙内に下降させ、それを回転させて、接触時の回転位置を保持しながら、間隙の左側の歯面と右側の歯面とに接触させ、歯間隙中心を平均して計算することによる、従来の初期センタリング動作)、歯切削機100の機械コントローラ99は、ワークピーススピンドルが、加工動作のための正しい回転位置にあるために、それ自体の基準に対して動かされるべき回転位置を知っている。これらの方法は、それら自体、個々の歯部についてすでによく知られており、同様に、歯部1(およびホーニングリング101とのその加工係合)に対しても実行することができる。
【0036】
しかしながら、このタイプの個々の歯車を加工するとき、通常、どの歯間隙を加工位置に動かすかは問題ではない。しかしながら、この場合、回転角差Δφで表される、歯部2に対する歯部1の相対的回転位置は、マーキング3で提供される基準を用いて、非常に厳密な許容誤差内に固執する必要がある。この目的のために、回転角差Δφに対する基準の基礎を形成するために、第3のセンサ、例えば、非接触誘導センサもこの実施形態では設けられ、マーキング3の回転位置を検出する。これらの構成では、歯部2の歯間隙、マーキング3、および歯部1の歯間隙の回転位置を決定する3つの非接触センサ120、130、110が設けられる。センサ110、120、130は、(図示のように)共通支持アーム150を介して所定位置に固定するか、またはスライド/可動アームおよび/もしくはそれらの組み合わせを介して可動に構成することができる。支持アーム150は、格納可能でもよい。
【0037】
ホーニングリング101と102とは互いに相対的に回転することができず、歯部1は歯部2に相対的に回転することはできないので、ホーニングホイール1による歯部1への加工作業のために個々の加工プロセスに対して指定された個々の許容誤差内での作業を可能にするため、つまり、「マスターホイール」に相対的な個々の許容誤差内の加工回転位置に対して、初期設定からのマスターホイールのそれと比較して、ワークピーススピンドル基準に対する歯間隙中心の回転位置から出発するため、そして、このようにして、最終歯面幾何学的形状に相対的な、十分に除去可能な公差がいかなる場合も存在する(したがって、歯部1自体の製造許容誤差から始まる動きが行われる)ことを保証するために、すべての情報が利用可能である。同じことが、歯部2についても行われる必要があり、回転位置差Δφが指定許容誤差δΔφ内となるように、好ましくは両構成を互いに事前調整すべきである。
【0038】
説明の目的で大幅に簡略化された実施例を使用して、以下でその効果を論じる。「マスターホイール」、つまりワークピースバッチで最初に加工されるべきワークピースおよび/または再開された加工の最初のワークピースに対する設定は、角差Δφを維持しながら、ホーニングリング101、102を適切な回転係合位置に再プロファイリングした後に、構成されることは、言うまでもない。歯部2のハードニングが、歯間隙中心を時計回りに、歯部1については反時計回りに、シフトさせる傾向のある変形を引き起こしたと誇張して仮定すると、コントローラは、歯部1の第1の回転位置基準の相対的回転位置を、マスターホイールのそれに相対的なワークピースピーススピンドルの基準と比較して、マスターホイールのそれに相対的な、加工に適切な回転位置設定を決定し、理想的には、歯部1の許容誤差範囲の中心にあるように、例えば、-|δφ1|動かし、そして、同じアプローチで、歯部2に対して、+|δφ2|動かすことにより、補正を行う。しかしながら、このワークピースでは、歯部1に相対的な歯部2の回転角に、差Δφ*=φ2+|δφ2|-(φ1-|δφ1|)=Δφ+(|δφ1|+|δφ2|)が存在し、|δφ2|+|δφ1|>δΔφである場合、これは、もはや要件を満たさないワークピースとなる。
【0039】
(マーキング3によって識別される、または別様に識別されるコンステレーションを参照して)歯部1および歯部2の回転位置基準を結合することにより、Δφ*(理論的に依然として可能である場合)が常にΔφ0の許容誤差内にあることに加えて、それぞれの個々の許容誤差は依然として順守されていることが保証されるが、個々の歯部1、2の個々の許容誤差の許容誤差範囲の最適な中心は、歯部1、2の個々の加工プロセスではもはや順守されない。
【0040】
第1の歯部が研削によって加工され、クランピングを変更した後に、他方の歯部が、例えば、ホーニングによって加工されるか、または逆の順序が使用される、そのようなワークピース4の従来の提供では、ハードフィニッシングはすでに行われており、実施されていない同一のワークピースのクランピングを無視すると、回転位置差Δφが許容誤差内にあることを保証するために使用することができる許容誤差範囲に関して、もはやいかなる余裕もない。
【0041】
図4の概略図には、ホーニングヘッド104内の回転位置結合されたホーニングホイール101および102と、センサ110、120、および130とが再び示されている。心押し台中心109およびダイヤモンドドレッシングホイール401、402もまた、ホーニングリング101、102をドレッシングするためにワークピーススピンドル108上に設けられている。
【0042】
歯部1のディスク本体の穴としてのマーキング3のタイプ、およびその回転位置のセンサベースの検出は、指定回転角差Δφの適用のための基準を決定するためのいくつかの選択肢のうちの1つにすぎないことは、言うまでもない(投影面内の任意の他の点において隣接する歯部1および2の2つの歯間隙の間の回転角差を考慮すると、原則として、これは、異なる歯部の故に、Δφ0から著しく異なるので、基準決定自体は好ましい)。
【0043】
例えば、上記のワークピーススピンドルを参照した歯部1の歯間隙の回転位置の検出と、ワークピーススピンドルを参照した歯部2の歯間隙の回転位置の検出とを使用して、1回だけ発生する歯部1および歯部2の2つの歯または歯間隙の特徴的なペアリングを識別すること、ならびにこの特徴的なペアリングが、角位置差Δφ‘を決定すること、およびそれぞれの加工動作のための回転位置の設定の制約としてそれを導入することも考えられる。
【0044】
第2の実施形態を
図5および
図6に示す。
図5に示されたハードスカイビング加工機200は、加工機ベッド280を有し、その片側に、ワークピーススピンドル270を有するワークピース台が配置されている。後者には、
図1に示されたワークピース4を受容するためのアダプタクランプ(図示せず)を装備することができる。逆側取り付け点の心押し台の構成は示されていない(
図4の心押し台中心109と同様)。
【0045】
ツール上には、半径方向Xに沿って動くことができ、その上で垂直キャリッジ262がワークピース軸に平行なZ方向に動くことができるメインスタンド261が設けられている。それは、交差軸角度を設定するために回転軸Aとともに回転可能な接線方向キャリッジ263(示されている回転位置AにおいてY方向)を担持している。ハードスカイビングヘッドは、接線方向キャリッジ263に取り付けられている。
図5では、加工機は、ハードスカイビングホイールを有する、ただ1つの単一ツールとともに示されているが、好ましくは、
図6に示されたタンデムツールが使用される。加工機200およびその軸方向の加工機の動きは、コントローラ299によって制御される。
【0046】
この場合、ハードフィニッシングは、歯部1および2をハードスカイビングするための2つのハードスカイビングホイール201および202からなる、
図6におおざっぱに概略的に示されている組み合わせツールの構造を有するハードスカイビング加工機で実行される。回転位置を決定するためのアプローチは、第1の実施形態を参照して説明した通りであるが、幾何学的に規定された刃先を用いた加工の故に、ハードフィニッシングのタイプは変わる。この場合も、2つのハードスカイビングホイール201、202は回転結合され、したがって、ツール上で同じである2つのハードスカイビングホイールの相対的回転位置設定が、バッチのすべてのワークピース4に通用する。この場合も、図示されていないが、好ましくは、第1および第2の回転位置基準ならびに基準(マーキング3)の回転位置を検出するための、例えば、支持構造を介してツールヘッドに取り付けられた、3つのセンサが設けられる。
【0047】
しかしながら、内歯スカイビングリング、つまりホーニングリング101、102と形状が類似しているが、幾何学的に規定された刃先を有するツールを使用することもできる。ハードスカイビングホイール201、202の形態に類似しているが、幾何学的に未規定の刃先を有する、外歯ホイールを用いた歯部ホーニングも考えられる。
【0048】
分かるように、本発明は、上記の実施形態に示された詳細に限定されない。むしろ、以下の特許請求の範囲の、ならびに上記説明および以下の特許請求の範囲の、個々の特徴は、その異なる実施形態において本発明を実施するために、個別におよび組み合わせて、不可欠であり得る。
【国際調査報告】