(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】制御装置、インバータ、インバータおよび電気機械を有するアセンブリ、ならびにインバータを動作させる方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20220930BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220930BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506231
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020071115
(87)【国際公開番号】W WO2021018827
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】102019120438.0
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521219051
【氏名又は名称】ヴァレオ、シーメンス、イーオートモーティブ、ジャーマニー、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALEO SIEMENS EAUTOMOTIVE GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】パナヨティス、マンツァナス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、キューブリヒ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、デュルバウム
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、ブッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、パベレック
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン、ハセノール
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド、ホフマン
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB02
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE50
5H505EE55
5H505HA05
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505JJ28
5H505JJ29
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL38
5H770AA02
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA02
5H770HA02Y
5H770HA07Z
(57)【要約】
電気機械(3)へ給電するインバータ(2)用の制御装置(8)であって、この制御装置(8)は、インバータ(2)のスイッチング素子(12)を駆動するために搬送波周波数でパルス幅変調されたスイッチング信号(15)を供給するよう構成され、この制御装置(8)は、少なくとも1つの動作範囲(22、23)内で搬送波周波数を、この動作範囲内で最大搬送波周波数が指定される最大搬送波周波数動作点と比べて搬送波周波数がその少なくとも1つの動作範囲(22、23)内で低下するように、電気機械(3)の回転速度およびトルクにより規定される動作点を記述する動作点情報に応じて特定するよう構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(3)へ給電するインバータ(2)用の制御装置(8)であって、前記制御装置(8)は、前記インバータ(2)のスイッチング素子(12)を駆動するために搬送波周波数でパルス幅変調されたスイッチング信号(15)を供給するよう構成され、
前記制御装置(8)は、少なくとも1つの動作範囲(22、23)内で前記搬送波周波数を、前記動作範囲(22、23)内で最大搬送波周波数が指定される最大搬送波周波数動作点と比べて前記搬送波周波数が前記少なくとも1つの動作範囲(22、23)内で低下するように、前記電気機械(3)の回転速度およびトルクにより規定される動作点を記述する動作点情報に応じて特定するよう構成されることを特徴とする、
制御装置(8)。
【請求項2】
動作範囲(22)は、その回転速度に対して絶対値で指定可能な最大トルクが存在する全負荷動作点を前記最大搬送波周波数動作点として有し、かつ、前記動作範囲(22)は部分負荷動作までおよび、前記制御装置は、前記最大搬送波周波数動作点からの距離が増えるにつれて前記搬送波周波数を低下させるよう構成される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記全負荷動作点の前記回転速度は、基本回転速度での動作(20)から電力制限動作(21)、または弱め界磁動作への遷移を表すコーナー動作点(19)における前記回転速度から最大40パーセント、特に最大30パーセント外れている、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
動作範囲(23)は上側トルク限界(24a)および下側トルク限界(24b)により制限されるトルク間隔内に存在し、かつ、前記制御装置は、前記回転速度が特に前記トルクとは無関係に低下するにつれて、前記動作範囲(23)内で前記搬送波周波数を低下させるよう構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記動作範囲(22、23)は重なることなく規定される、および/または、指定可能な搬送波周波数は前記動作範囲(22、23)が互いに接合される境界で連続的に続く、請求項2に従属する場合に、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの動作範囲(22、23)に対して重なることなく規定され、回転速度閾値(26)を上回る動作点を含む更なる動作範囲(25)内で、前記搬送波周波数を固定値で指定するよう構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
指定された、または指定可能な最小値を下回る前記搬送波周波数を特定しないよう構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
搬送波周波数値を回転速度値とトルク値のペアへ割り当てる特性マップから前記搬送波周波数を選択する、または、
前記搬送波周波数を前記動作点に応じて特定することが可能な解析的演算仕様書を用いて前記搬送波周波数を特定する、
よう構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
更新された動作点情報を受信し次第、ならびに/または、
指定された、もしくは指定可能な期間が経過した後、および/もしくは、
前記電気機械(3)の電気的期間が完了した後、および/もしくは、
各スイッチング信号(15)の期間が完了した後、
のそれぞれの場合に、更新された搬送波周波数を特定するよう構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
入力において受信したトルク情報から、および/もしくは、入力において受信した回転速度情報(17)から、および/もしくは、入力において受信した、前記電気機械(3)へ給電する相電流を記述する電流情報(16)に応じて、前記動作点情報を特定するよう構成される、ならびに/または、前記スイッチング信号(15)を特定する制御プロセスと関連して前記動作点情報を推定するよう構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
DCリンクコンデンサ(6)と、
スイッチング素子(12)であって前記DCリンクコンデンサ(6)へ印加されるDCリンク電圧(27)を前記スイッチング素子(12)を駆動するスイッチング信号(15)に応じて単相または多相のAC電圧へ変換するために相互接続されたスイッチング素子(12)と、
請求項1~10のいずれか一項に記載の制御装置(8)と、
を含む、インバータ(2)。
【請求項12】
請求項11に記載のインバータ(2)と、前記AC電圧を用いて作動可能な電気機械(3)と、を有するアセンブリ(1)。
【請求項13】
前記搬送波周波数の前記特定は前記アセンブリ(1)の動作中に、
【数1】
または、
【数2】
または、
【数3】
の関係を表し、
f
PWMは特定される前記搬送波周波数を表し、
f
PWM,maxは最大搬送波周波数を表し、
f
PWM,minは搬送波周波数の最小値を表し、
【数4】
は前記トルクおよび前記回転速度により決まる前記最大搬送波周波数での前記DCリンク電圧(27)のピークバレー値を表し、
u
DC,pp,maxは、前記DCリンク電圧(27)の前記ピークバレー値の指定された最大値を表し、
f
rotは前記回転速度を表し、
f
rot,maxは最大回転速度を表す、
請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
電気機械(3)へ給電するためにインバータ(2)を動作させる方法であって、制御装置(8)により実行される以下のステップ、すなわち、
少なくとも1つの動作範囲(22、23)内で前記インバータ(2)を駆動するパルス幅変調されたスイッチング信号(15)の搬送波周波数を、前記動作範囲内で最大搬送波周波数が指定される最大搬送波周波数動作点と比べて前記搬送波周波数が前記少なくとも1つの動作範囲(22、23)内で低下するように、前記電気機械(3)の回転速度およびトルクにより規定される動作点を記述する動作点情報に応じて特定するステップと、
前記インバータ(2)のスイッチング素子(12)用の前記スイッチング信号(15)を供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、コンピュータにより実行された場合に、前記制御装置(8)により実行される、請求項14に記載の方法の前記ステップを前記コンピュータプログラムに実行させるコマンドを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機械へ給電するインバータ用の制御装置に関し、この制御装置は、インバータのスイッチング素子を駆動するために搬送波周波数でパルス幅変調されたスイッチング信号を供給するよう構成される。
【0002】
本発明はさらに、インバータ、インバータおよび電気機械を有するアセンブリ、ならびにインバータを動作させる方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気駆動車両の重要性が高まることで、そのような応用分野向けのインバータおよび関連する制御装置が産業界の開発努力の中心となっている。インバータのスイッチング素子を駆動するために一定の搬送波周波数でパルス幅変調されたスイッチング信号を供給するタイプの制御装置は既知である。
【0004】
そのようなスイッチング動作の過程で必然的にスイッチング損失が生じる。前記スイッチング損失はインバータまたはインバータおよび電気機械を有するアセンブリの全体的な効率に強い影響を及ぼし、これはスイッチング損失が全損失のかなりの割合を占めるからである。それと同時に、インバータは、自身のDCリンクコンデンサにおけるDCリンク電圧の最大ピークバレー値を超えないように動作させる必要があり、これは、インバータのDCリンクコンデンサはその容量に関して、ひいては設置スペース、重量、およびコストに関しても許容される最大ピークバレー値に対して設計されているからである。
【発明の概要】
【0005】
それゆえ、本発明は、インバータのDCリンクコンデンサの静電容量をその過程で増加させることなくインバータをより効率的に動作させるという目的に基づいている。
【0006】
本発明によれば、この目的は、最初に述べたタイプの制御装置により実現され、この制御装置は、少なくとも1つの動作範囲内で搬送波周波数を、この動作範囲内で最大搬送波周波数が指定される最大搬送波周波数動作点と比べて搬送波周波数がその少なくとも1つの動作範囲内で低下するように、電気機械の回転速度およびトルクにより規定される動作点を記述する動作点情報に応じて特定するよう構成される。
【0007】
本発明は、インバータのDCリンクコンデンサにおけるDCリンク電圧のピークバレー値が通常は顕著な最大値を有し、搬送波周波数の低下により一方ではピークバレー値の上昇を引き起こし、他方ではスイッチング動作中のスイッチング素子のスイッチング損失を減少させる、という知見に基づいている。最大搬送波周波数動作点をそのようなピークバレー値の最大値へ割り当てることができるので、最大値を超えるより低いピークバレー値により、動作点に応じた方法で搬送波周波数を低下させることでスイッチング損失を低くするための範囲がもたらされる。有利なことに、このようにDCリンクコンデンサの静電容量を増やす必要なしに、結果としてインバータをより効率的に動作させることが可能となる。
【0008】
本発明に係る制御装置では、動作範囲は、その回転速度に対して絶対値で指定可能な最大トルクが存在する全負荷動作点を最大搬送波周波数動作点として有し、かつ、この動作範囲が部分負荷動作まで及ぶ場合が好ましく、制御装置は、最大搬送波周波数動作点からの距離が増えるにつれて搬送波周波数を低下させるよう構成される。この動作範囲は第1動作範囲と呼ぶこともできる。最大搬送波周波数動作点は、各回転速度値に対して供給可能な正または負の最大トルクが存在する全負荷線の一つまたはそれぞれの上で見つけることができると認められている。このように、部分負荷動作において、つまり、各回転速度に対して絶対値で全負荷線上よりも低いトルク値を伴う動作において、効率を改善することができる。
【0009】
全負荷動作点の回転速度は、有利なことに、基本回転速度での動作から電力制限動作、または弱め界磁動作への遷移を表すコーナー動作点における回転速度から最大40パーセント、特に最大30パーセント外れている。
【0010】
制御装置が任意の符号のトルクを伴う動作点に対して搬送波周波数を指定するよう構成される場合、正のトルクに対して規定される第1動作範囲を提供することができて、負のトルクに対して規定される更なる第1動作範囲を提供することができる。
【0011】
本発明に係る制御装置では、動作範囲は上側トルク限界および下側トルク限界により制限されるトルク間隔内に存在し、かつ、制御装置は、回転速度が特にトルクとは無関係に低下するにつれて、動作範囲内で搬送波周波数を低下させるよう構成される場合が好ましい。この動作範囲は第2動作範囲と呼ぶこともできる。これにより、電気機械内での機械的振動をもたらしうる、望ましくないほど高い高調波ひずみ、特に高THD(全高調波ひずみ)値が搬送波周波数の回転速度に対する比率がより低いことで発生するのを防ぐことができる。
【0012】
制御装置が同じ符号のトルクを伴う動作点に対する搬送波周波数を指定するようにのみ構成される場合は、トルク限界は好ましくはゼロである。また、制御装置が任意の符号のトルクを伴う動作点に対する搬送波周波数を指定するよう構成される場合は、上側トルク限界は正でありえて、下側トルク限界は負でありうる。特に、一つまたはそれぞれのトルク限界の絶対値は、制御装置により指定することができる最大トルクの少なくとも5パーセントである。
【0013】
実装が特に容易な実施形態によれば、第2動作範囲はトルク限界により制限される。
【0014】
第1動作範囲および第2動作範囲は、典型的には重なることなく規定される。指定可能な搬送波周波数は、好ましくは第1動作範囲と第2動作範囲が互いに接合される境界で連続的に続く。
【0015】
任意選択で、本発明に係る制御装置は、少なくとも1つの動作範囲に対して重なることなく規定されて回転速度閾値を上回る動作点を含む更なる動作範囲内で、搬送波周波数を固定値で指定するよう構成することができる。この回転速度閾値を上回る回転速度において、スイッチング損失の低下は非常に弱いに過ぎず、その結果、動作点に応じた方法で搬送波周波数を選択する必要はない。回転速度閾値は、典型的には電力制限動作または弱め界磁動作において存在する。そして、搬送波周波数は、便宜上は与えられる最大搬送波周波数である。
【0016】
本発明に係る制御装置の有益な開発では、さらに、指定された、または指定可能な最小値を下回る搬送波周波数を特定しないように制御装置を構成することも可能である。こうすることで、低い値の回転速度およびトルクに対して搬送波周波数があまりに低くなって、電気機械の各相電流の周波数に対する搬送波周波数の比率が指定された最小比率を下回ってしまい、その結果、聴覚的に感知可能な望ましくない電気機械の振動が発生しかねないのを防ぐ。また、最小値が指定される動作点は、そこまでを更なる動作範囲とみなすこともできる。
【0017】
本発明に係る制御装置をほとんど苦労せずに実装できるようにするため、制御装置は、好ましくは搬送波周波数値を回転速度値とトルク値のペアへ割り当てる特性マップから搬送波周波数を選択するよう構成される。特性マップは、例えばルックアップテーブルにより実現可能である。制御装置は、典型的には特性マップが記憶される記憶部を含む。
【0018】
さらに、ペアと搬送波周波数値の少なくとも区分的に線形な割り当てを記述するための特性マップを提供することもできる。あるいは、特性マップが個別のペアにより規定され、個別のペアへ割り当てられる搬送波周波数値を特に線形で補間することで搬送波周波数を決定するよう制御装置を構成することも可能である。
【0019】
特性マップを使用する代わりの手段として、本発明に係る制御装置を、搬送波周波数を動作点に応じて特定することが可能な解析的演算仕様書を用いて搬送波周波数を特定するよう構成することができる。
【0020】
特性マップまたは演算仕様書は、例えばインバータおよび電気機械の特定の構成に対する測定またはシミュレーションにより、特定された可能性がある。
【0021】
また、本発明に係る制御装置は、更新された動作点情報を受信し次第、ならびに/または、指定された、もしくは指定可能な期間が経過した後、および/もしくは電気機械の電気的期間が完了した後、および/もしくは各スイッチング信号の期間が完了した後、のそれぞれの場合に、更新された搬送波周波数を特定するよう構成することもできる。したがって、それぞれの場合に、都合の良い時点で搬送波周波数を瞬時動作点へ適合させることができる。
【0022】
また、本発明に係る制御装置を、入力において受信したトルク情報から、および/もしくは、入力において受信した回転速度情報から、および/もしくは、入力において受信した、電気機械へ給電する相電流を記述する電流情報に応じて動作点情報を特定するよう構成する、ならびに/または、スイッチング信号を特定する制御プロセスと関連して動作点情報を推定するよう構成することも可能である。特に、トルクは電流情報から決定することができる。
【0023】
また、本発明が基づく目的は、DCリンクコンデンサと、複数のスイッチング素子であってDCリンクコンデンサへ印加されるDCリンク電圧をスイッチング素子を駆動するスイッチング信号に応じて単相または多相のAC電圧へ変換するために相互接続された複数のスイッチング素子と、本発明に係る制御装置とを含むインバータにより実現される。
【0024】
DCリンクコンデンサは、一つのコンデンサ要素により、または、並列および/または直列に相互接続された複数のコンデンサ要素により形成することができる。
【0025】
また、インバータは、アナログ測定信号を電流情報および/またはトルク情報および/または回転速度情報へ変換するよう構成されるアナログデジタル変換器も含みうる。
【0026】
また、本発明が基づく目的は、本発明に係るインバータと、AC電圧を用いて作動可能な電気機械とを有するアセンブリにより実現される。
【0027】
ここで、搬送波周波数の特定はアセンブリの動作中に以下の関係を表す場合が好ましく、
【0028】
【0029】
f
PWMは特定される搬送波周波数を表し、
f
PWM,maxは最大搬送波周波数を表し、
f
PWM,minは搬送波周波数の最小値を表し、
【数4】
はトルクおよび回転速度により決まる、最大搬送波周波数でのDCリンク電圧のピークバレー値を表し、
u
DC,pp,maxは、DCリンク電圧のピークバレー値の指定された最大値を表し、
f
rotは回転速度を表し、
f
rot,maxは最大回転速度を表す。
【0030】
本発明に係るアセンブリでは、DCリンク電圧のピークバレー値が極大値を有する動作点に対応する、各最大搬送波周波数動作点を提供することができる。
【0031】
また、本発明が基づく目的は、電気機械へ給電するためにインバータを動作させる方法により実現され、この方法は制御装置により実行される以下のステップ、すなわち、少なくとも1つの動作範囲内でインバータを駆動するパルス幅変調されたスイッチング信号の搬送波周波数を、この動作範囲内で最大搬送波周波数が指定される最大搬送波周波数動作点と比べて搬送波周波数がその少なくとも1つの動作範囲内で低下するように、電気機械の回転速度およびトルクにより規定される動作点を記述する動作点情報に応じて特定するステップと、インバータのスイッチング素子用のスイッチング信号を供給するステップと、を含む。
【0032】
そして、本発明が基づく目的はコンピュータプログラムによっても実現され、このコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行された場合に、制御装置により実行される本発明に係る方法のステップをこのプログラムに実行させるコマンドを含む。
【0033】
本発明に係る制御装置、本発明に係るインバータ、および本発明に係るアセンブリに関連する説明のすべては、本発明に係る方法および本発明に係るコンピュータプログラムへ同様に適用することができて、その結果、前述の利点を本発明に係る方法および本発明に係るコンピュータプログラムにより実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の更なる利点および詳細は以下に記載される例示の実施形態から、また図面に基づき生まれる。これらの図面は略図であり、
【0035】
【
図1】本発明に係るアセンブリの例示の実施形態のブロック図を本発明に係るインバータの例示の実施形態および本発明に係る制御装置の例示の実施形態と共に示す。
【
図2】
図1に示されるアセンブリの動作に関連する動作範囲が示された、トルク-回転速度のグラフを示す。
【
図3】先行技術に係るアセンブリに対するDCリンク電圧のピークバレー値が示された、トルク-回転速度のグラフを示す。
【
図4】本発明に係るアセンブリの更なる例示の実施形態を動作させる場合の搬送波周波数値が示された、トルク-回転速度のグラフを示す。
【
図5】本発明に係るアセンブリの更なる例示の実施形態のDCリンク電圧のピークバレー値が示された、トルク-回転速度のグラフを示す。
【
図6】本発明に係るアセンブリの更なる例示の実施形態でのスイッチング損失の
図3の先行技術と比べた低下率が示された、トルク-回転速度のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、インバータ2の例示の実施形態と、部分的に、または完全に電気的に駆動することができる車両を駆動するよう構成される電気機械3を含むアセンブリ1の例示の実施形態のブロック図である。アセンブリ1は、この場合は高電圧バッテリとして設計されるDC電源4をさらに含む。
【0037】
インバータ2は、この場合はEMCフィルタとして設計されるフィルタ装置5と、DCリンクコンデンサ6と、電源装置7と、制御装置8の例示の実施形態と、第1測定装置9と、第2測定装置10と、アナログデジタル変換装置11と、を含む。
【0038】
電源装置7は、半導体スイッチング素子、例えばIGBTやパワーMOSFETとして設計される複数のスイッチング素子12を含む。スイッチング素子12はペアで相互接続されてハーフブリッジを形成する。ドライバ14は各スイッチング素子12の制御入力13の上流側に接続される。明確にするために、ここでは1つのスイッチング素子12と1つのドライバ14のみに参照符号が与えられている。ドライバ14は、電気機械3へ給電する出力電圧がハーフブリッジの各タップで利用可能となるように供給される、制御装置8からのパルス幅変調されたスイッチング信号15を受信する。それゆえ、電源装置7は、スイッチング信号15に応じて、DCリンクコンデンサ6により平滑化されるDCリンク電圧27をこの場合は三相を有するAC電圧に変換する。
【0039】
第1測定装置9は、相電流を取得して、第1測定装置9のアナログ測定信号をデジタル電流情報16へ変換するアナログデジタル変換装置11に測定信号を供給するよう構成される。第2測定装置10は、それに応じて電気機械3の回転速度を取得して、第2測定装置10のアナログ測定信号をデジタル回転速度情報17へ変換するアナログデジタル変換装置11に測定信号を供給するよう構成される。制御装置8は、電流情報16および回転速度情報17をその入力において受信する。
【0040】
電流情報16および回転速度情報17に基づいて、制御装置8は、電気機械3の回転速度およびトルクにより規定される動作点を記述する動作点情報を決定する。制御装置8は、パルス幅変調されたスイッチング信号15の搬送波周波数を特定するよう構成される。このために、制御装置8は、搬送波周波数値を回転速度値とトルク値のペアへ割り当てる特性マップが記憶される記憶部18を含む。制御装置8は、動作点情報に基づいて特性マップから対応する搬送波周波数値を選択する。
【0041】
図2は、
図1に示されるアセンブリを動作させる場合の動作範囲が示されたトルク-回転速度のグラフであり、トルクはMで、回転速度はf
rotで示されている。
【0042】
グラフは、回転速度値とトルク値のペアと搬送波周波数値の間の関連性を記述する特性マップを示す。まず、コーナー動作点19が
図2に示されており、この動作点は基本回転速度での動作20から電力制限動作21、または弱め界磁動作へ遷移する際の最大トルクの絶対値を表す。さらに、指定された搬送波周波数値の等値線が細かい破線を用いて示されている。
【0043】
第1動作範囲22は、この場合はコーナー動作点19に対応するがその代わりに全負荷線21a上のコーナー動作点19における回転速度から最大40パーセント外れることもある全負荷動作点から、電気機械3の部分負荷動作へと及ぶ。制御装置8は、最大搬送波周波数での全負荷動作点に対応する最大搬送波周波数動作点における搬送波周波数を第1動作範囲22内で指定して、全負荷動作点からの距離が増えるにつれてこの搬送波周波数を低下させるよう構成される。搬送波周波数値の動作点への割り当ては、ここではDCリンク電圧27のピークバレー値が第1動作範囲22全域で基本的に同一であるように選択される。
【0044】
したがって、電気機械3の部分負荷動作では、スイッチング素子12のスイッチング損失を、先行技術による固定された搬送波周波数での動作の場合よりも低くすることができるが、これは搬送波周波数を先行技術と比べて低下させているためである。DCリンクコンデンサ6は、どのような場合でも全負荷動作点におけるDCリンク電圧27のピークバレー値で動作するよう設計されるので、部分負荷動作でのスイッチング損失の低下は、DCリンクコンデンサ6の静電容量を増やす必要なしに、第1動作範囲内で実現される。
【0045】
第1動作範囲22では、以下が搬送波周波数に対して当てはまる。
【0046】
【0047】
ここで、
【数6】
は、トルクおよび回転速度により決まる、全負荷動作点f
PWM,maxにおける最大搬送波周波数でのDCリンク電圧のピークバレー値を示し、u
DC,pp,maxはピークバレー値の指定された最大値を示す。ここで、DCリンク電圧27のピークバレー値は、以下のように規定される。
【0048】
【0049】
ここで、uDC(t)は電気モータ期間にわたるDCリンク電圧27の時間プロファイルを示す。
【0050】
第2動作範囲23は、第1回転速度閾値24より上で、第1回転速度閾値24の上にある第2回転速度閾値26より下、そして上側トルク限界24aと下側トルク限界24bの間に動作点を含む。制御装置8は、垂直な等値線からわかるように、回転速度がトルクとは無関係に低下するにつれて、第2回転速度閾値26に対応する回転速度を伴う動作点24cである最大搬送波周波数値動作点と比べて搬送波周波数を第2動作範囲23内で低下させるよう構成される。これにより、電気機械3内での機械的振動をもたらしうる、望ましくないほど高い高調波ひずみ、特に高THD(全高調波ひずみ)値が発生するのを防ぐことができる。
【0051】
第2動作範囲23では、以下が搬送波周波数に対して当てはまる。
【0052】
【0053】
ここで、frotは回転速度を示し、frot,maxは最大回転速度または第2回転速度閾値26を示す。
【0054】
加えて、
図2は第2回転速度閾値26より上の動作点を含む、任意選択の第3動作範囲25を示す。制御装置8は、搬送波周波数を第3動作範囲25内で固定値で指定するよう構成される。この動作範囲は、第2動作範囲23内で提供される最高搬送波周波数値に対応する、またはその上に存在する。第3動作範囲25が提供されない場合は、第2回転速度閾値26は特性マップの最大回転速度に対応する。
【0055】
そして、制御装置8は、指定された最小値を下回る搬送波周波数を特定しないよう構成される。これに関しては第4動作範囲28が示されており、この中で最小値が指定される。
【0056】
要約すれば、第1動作範囲22、第2動作範囲23、および第4動作範囲28用の特性マップは以下の関係を表す。
【0057】
【0058】
制御装置8は、搬送波周波数を定期的に更新するよう構成される。この更新は、例えば更新された動作点情報を受信し次第、指定された、または指定可能な期間が経過した後、電気機械3の電気的期間が完了した後、または各スイッチング信号15の期間が完了した後に行われる。また、上述した更新イベントを組み合わせることも可能である。
【0059】
制御装置8の更なる例示の実施形態によれば、特性マップは個別のペアにより規定され、制御装置8は個別のペアへ割り当てられる搬送波周波数値を特に線形で補間することで搬送波周波数を特定するよう構成される。更なる例示の実施形態によれば、制御装置8は、特性マップに基づく代わりに搬送波周波数を動作点に応じて特定することが可能な解析的演算仕様書を用いて、搬送波周波数を特定するよう構成される。更なる例示の実施形態によれば、トルク情報は電流情報16を参照して特定されるのではなく、スイッチング信号15を特定する制御プロセスに関連して制御装置8により推定または測定される。
【0060】
図3は、先行技術に係るアセンブリに対するDCリンク電圧のピークバレー値が示された、トルク-回転速度のグラフである。ただし、このアセンブリを用いて、トルク-回転速度のグラフのすべての動作点に対して10kHz一定に指定される搬送波周波数が提供される。
【0061】
ピークバレー値は、等値線へ割り当てられるピークバレー値がボルトで与えられる等値線により
図3に示される。ここではコーナー動作点19に対してやや右へシフトされた動作点19aに対応する全負荷動作点からわかるように、全負荷動作点からの距離が増えるにつれて、ピークバレー値は基本的に継続的に減少する。先行技術に係るアセンブリの中間コンデンサはそれ自体が部分負荷動作に対して大きすぎると見なされ、一定の搬送波周波数であるために部分負荷動作においてかなりのスイッチング損失が発生する。
【0062】
図4は、アセンブリ1の更なる例示の実施形態を動作させる場合の搬送波周波数値が示された、トルク-回転速度のグラフである。この例示の実施形態は上述した例示の実施形態のうちの一つに対応し、また特性マップが負のトルク値に対して規定されている。ここで、全負荷動作点は、
図3の先行技術による例と同様に、コーナー動作点に対して右へシフトされた動作点19aに対応する。ここで、特性マップは実験的に、またはシミュレーションによって特定されており、以下の関係を示す。
【0063】
【0064】
これは2つの第1動作範囲22と第2動作範囲23をもたらし、後者は正の上側トルク限界24aと負の下側トルク限界24bの間の動作点を含む。第3動作範囲25および第4動作範囲28はこの例示の実施形態では提供されない。
【0065】
図5は、前述の例示の実施形態に係るアセンブリ1が動作中のDCリンク電圧27のピークバレー値が示された、トルク-回転速度のグラフである。ピークバレー値は、等値線へ割り当てられるピークバレー値がボルトで与えられる等値線により示される。
図3と比較すると、大幅に高いが、全負荷動作点におけるピークバレー値の最大値は超えないピークバレー値が部分負荷動作時に存在することがただちにわかる。しかし、
図3に従う、先行技術で使用される10kHzよりかなり低い搬送波周波数が
図4に従う部分負荷動作で使用されるので、スイッチング損失を大幅に減少させることができる。
【0066】
図6は、前述の例示の実施形態でのスイッチング損失の
図3の先行技術と比べた低下率が示される、トルク-回転速度のグラフである。これに関しては、スイッチング損失の低下は等値線上でパーセントで与えられる。動作効率は、搬送波周波数を動作に応じて特定することで大幅に改善されることがわかる。
【国際調査報告】