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特表2022-543004ヘッドアップディスプレイのための熱特性を有するスタックを備えている基材を含む材料
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  • 特表-ヘッドアップディスプレイのための熱特性を有するスタックを備えている基材を含む材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイのための熱特性を有するスタックを備えている基材を含む材料
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20220930BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20220930BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220930BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C03C17/36
B32B15/01 E
B32B9/00 A
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506285
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071192
(87)【国際公開番号】W WO2021018861
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】1908683
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100186912
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 淳浩
(72)【発明者】
【氏名】ヤエル ブロンステン
(72)【発明者】
【氏名】アモーリー パティシエ
(72)【発明者】
【氏名】グザビエ カイレ
【テーマコード(参考)】
3D344
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
4F100AA12
4F100AA12B
4F100AA12D
4F100AA25
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4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
4G059AA01
4G059AC04
4G059AC06
4G059AC11
4G059DA01
4G059DA06
4G059DA07
4G059DB02
4G059EA01
4G059EA07
4G059EA12
4G059EB04
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA14
(57)【要約】
本発明は、片面に薄層のスタックでコーティングされている透明基材を備えており、薄層のスタックが、前記面から交互に連続し、前記基材から始まって、銀に基づいているか、銀でできている四つの機能金属層、及び五つの誘電体コーティングを備えている材料であり、前記材料が、下記を特徴とする:
前記第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、前記第二機能層Ag2の物理的厚さEa2よりも薄く、0.60<Ea1/Ea2<0.90であり;前記第一機能層Ag1の物理的厚さEo1が、8.00≦Ea1≦13.00nmであり;前記第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、前記第三機能層Ag3の物理的厚さEa3よりも薄く、0.60<Ea1/Ea3<0.90であり;かつ、前記第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、前記第四機能層Ag4の物理的厚さEa4よりも薄く、0.60<Ea1/Ea4<0.90である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に薄層のスタックでコーティングされている透明基材を備えており、薄層のスタックが、前記面から交互に連続して下記を備えている材料であって、
-前記基材から始まって、第一機能層Ag1、第二機能層Ag2、第三機能層Ag3、及び第四機能層Ag4で表され、物理的厚さが、それぞれ、Ea1、Ea2、Ea3、及びEa4であり、銀に基づいているか、銀でできている、四つの機能金属層、並びに、
-前記基材の前記面から始まって、M1、M2、M3、M4、及びM5で表され、光学的厚さが、それぞれ、Eo1、Eo2、Eo3、Eo4、及びEo5であり、各誘電体コーティングそれぞれが、誘電体層又は誘電体の層アセンブリを備えていることによって、それぞれの機能金属層が、二つの誘電体コーティングの間に配置されている、五つの誘電体コーティング、かつ、
下記を特徴とする、材料:
-前記第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、前記第二機能層Ag2の物理的厚さEa2よりも薄く、0.60<Ea1/Ea2<0.90、又は0.70≦Ea1/Ea2≦0.85であり;
-前記第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、8.00≦Ea1≦13.00nm、又は9.00≦Ea1≦12.00nmであり;
-前記第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、前記第三機能層Ag3の物理的厚さEa3よりも薄く、0.60<Ea1/Ea3<0.90、又は0.70≦Ea1/Ea3≦0.85であり;かつ、
-前記第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、前記第四機能層Ag4の物理的厚さEa4よりも薄く、0.60<Ea1/Ea4<0.90、又は0.70≦Ea1/Ea4≦0.85である。
【請求項2】
下記である、請求項1に記載の材料:
-前記第一誘電体コーティングM1の光学的厚さEo1が、前記第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2よりも薄く、0.40<Eo1/Eo2<0.90、又は0.45≦Eo1/Eo2≦0.85であり;
-前記第一誘電体コーティングM1の光学的厚さEo1が、前記第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3よりも薄く、0.40<Eo1/Eo3<0.90、又は0.45≦Eo1/Eo3≦0.85であり;かつ、
-前記第一誘電体コーティングM1の光学的厚さEo1が、前記第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4よりも薄く、0.35<Eo1/Eo4<0.90、又は0.45≦Eo1/Eo4≦0.85であり;かつ、
-前記第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5が、0.50<Eo1/Eo5<1.50、又は0.60≦Eo1/Eo5≦1.30を満たす。
【請求項3】
下記である、請求項1又は2に記載の材料:
-前記第二機能層Ag2の物理的厚さEa2が、0.80<Ea2/Ea3<1.20、又は0.90≦Ea2/Ea3≦1.10を満たし;かつ、
-前記第二機能層Ag2の物理的厚さEa2が、0.80<Ea2/Ea4<1.20、又は0.90≦Ea2/Ea4≦1.10を満たす。
【請求項4】
前記第三機能層Ag3の物理的厚さEa3が、0.80<Ea3/Ea4<1.20、又は0.90≦Ea3/Ea4≦1.10を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
各誘電体コーティングM1、M2、M3、M4、及びM5が、波長550nmでの屈折率が2.2以上である高屈折率誘電体層を備えており、かつ、好ましくは、各誘電体コーティングM1、M2、M3、M4、及びM5が、ケイ素及びジルコニウムの窒化物に基づく高屈折率誘電体バリア層を備えている、請求項1~4のいずれ一項に記載の材料。
【請求項6】
前記高屈折率誘電体層の光学的厚さが、それが配置されている誘電体コーティングの光学的厚さの25%~70%の間で構成されている、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
下記である、請求項1~6のいずれか一項に記載の材料:
-前記第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2が、前記第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3に近いか、あるいは、等しく、0.80<Eo2/Eo3<1.20、又は0.90≦Eo2/Eo3≦1.10を満たし;
-前記第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2が、前記第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4に近いか、あるいは、等しく、0.80<Eo2/Eo4<1.20、又は0.90≦Eo2/Eo4≦1.10を満たし;かつ、
-前記第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2が、前記第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5よりも厚く、1.30<Eo2/Eo5<2.00、又は1.40≦Eo2/Eo5≦1.90である。
【請求項8】
下記である、請求項1~7のいずれか一項に記載の材料:
-前記第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3が、前記第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4に近いか、あるいは、等しく、0.80<Eo3/Eo4<1.20、又は0.90≦Eo3/Eo4≦1.10を満たし;かつ、
-前記第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3が、前記第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5よりも厚く、1.20<Eo3/Eo5<2.00、又は1.30≦Eo3/Eo5≦1.90である。
【請求項9】
前記第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4は、前記第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5よりも厚く、1.20<Eo4/Eo5<2.10、又は1.30≦Eo4/Eo5≦1.90である、請求項1~8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の材料を備えているグレージングであって、前記グレージングが、好ましくは、積層ガラスの形態であり、特にHUDプロジェクタ用の積層グレージングである、グレージング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、グレージング等、透明基材を備えている材料に関するものであり、透明基材は、いくつかの機能層を備えている薄層のスタックでコーティングされており、機能層は、太陽光放射及び/又は赤外線放射に影響を与えることができる。本発明は、また、これらの材料を備えているグレージングに関するものであり、そして、断熱及び/又は太陽光保護グレージングを製造するための、そのような材料の使用に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、所謂「太陽光制御」乗物グレージングを製造するための、そのような材料に関するものであり、「太陽光制御」乗物グレージングは、空調負荷の低減、及び/又は、乗物の客室内を必要以上に過熱することの回避を可能にしつつ、所謂「ヘッドアップ」ディスプレイ又はHUDを可能にする。
【0003】
本発明は、さらに具体的には、グレージングを製造するための材料に関するものであり、そのグレージングでは、いくつかの金属機能層を備えている薄層のスタックを使用して、太陽光制御機能が果たされ、このスタックが、その厚さ全体にわたって低電気抵抗を示すことにより、乗物上で利用可能な電流を用いて、電流がスタックの厚さに対して横方向に流れると、そのスタックを加熱することができる。
【背景技術】
【0004】
グレージング、特に、積層グレージングは、透明基材を備えており、透明基材は、四つの金属機能層を備えている薄層のスタックでコーティングされており、四つの金属機能層は、それぞれが二つの誘電体コーティングの間に配置されており、このようなグレージングが提案されることにより、太陽光保護を改善し、かつ低シート抵抗を達成し、充分な光透過率も保持する。これらのスタックは、一般に、一連の堆積によって得られ、堆積は、スパッタリングによって行われ、スパッタリングは、任意で磁場によって支援される。
【0005】
従来技術の材料によって、充分に高い光透過率及び低シート抵抗値を得ることができる。先行技術、すなわち、国際特許出願番号WO2005/051858の実施例16によって、70.3%の光透過率及び1.03オーム/平方のシート抵抗を有している積層グレージングの製造を可能にする材料が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来から、少なくとも70%の光透過率を有していても、低シート抵抗、そして何よりも、内部反射を有している積層グレージングのニーズがあり、内部反射は、HUDディスプレイに対応するものである。
【0007】
三つの機能層を備えているスタックは複雑であるため、これらの特性を組み合わせて改善することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、四つの機能層の厚さを選択することにより、所望の特性を示すことができる材料を得ることが可能であることを知見した。
【0009】
本発明は、四つの金属機能層を備えているスタック(すなわち、正確に四つの、それ以上でもそれ以下でもない、金属機能層を備えているスタックの使用に基づいており、そのそれぞれの厚さは固有であり、キャリア基材から始まって、第二、第三、及び第四機能層は、それぞれ、第一機能層よりも厚いが、第一機能層の厚さの二倍未満である。
【0010】
本発明の第一主題は、請求項1に記載の材料である。この材料は、片面に薄層のスタックでコーティングされている透明基材を備えており、薄層のスタックは、前記面から交互に連続して下記を備えている:
-前記基材から始まって、第一機能層Ag1、第二機能層Ag2、第三機能層Ag3、及び第四機能層Ag4で表され、物理的厚さが、それぞれ、Ea1、Ea2、Ea3、及びEa4であり、銀に基づいているか、銀でできている、四つの機能金属層、並びに、
-前記基材の前記面から始まって、M1、M2、M3、M4、及びM5で表され、光学的厚さが、それぞれ、Eo1、Eo2、Eo3、Eo4、及びEo5であり、それぞれの誘電体コーティングが、誘電体層又は誘電体の層アセンブリを備えていることによって、それぞれの機能金属層が、二つの誘電体コーティングの間に配置されている、五つの誘電体コーティング。
【0011】
前記材料は、下記を特徴とする:
-第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、第二機能層Ag2の物理的厚さEa2よりも薄く、0.60<Ea1/Ea2<0.90、又は0.70≦Ea1/Ea2≦0.85、又は0.75≦Ea1/Ea2≦0.85であり;
-第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、8.00≦Ea1≦13.00nm、又は9.00≦Ea1≦12.00nmであり;
-第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、第三機能層Ag3の物理的厚さEa3よりも薄く、0.60<Ea1/Ea3<0.90、又は0.70≦Ea1/Ea3≦0.85、又は0.75≦Ea1/Ea3≦0.85であり;かつ、
-第一機能層Ag1の物理的厚さEa1が、第四機能層Ag4の物理的厚さEa4よりも薄く、0.60<Ea1/Ea4<0.90、又は0.70≦Ea1/Ea4≦0.85、又は0.75≦Ea1/Ea4≦0.85である。
【0012】
したがって、これにより、前述したように、所望の光学的及び熱的性能、透明性、並びに美的外観を達成することが可能である。
【0013】
この材料はHUDプロジェクタ用であり、特に、s-偏光HUDプロジェクタ用である。本材料は、s-偏光反射(L(Ri65°)<15.0)で、色の強度を減少させる;材料は、p-偏光反射で、色の強度を増加させない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適であるが非限定的である本発明の実施形態のいくつかは、相互に、代替又は追加として、下記のとおりである:
-第二機能層Ag2の幾何学的厚さEa2が、12.0~15.0nmであり;
-第三機能層Ag3の幾何学的厚さEa3が、13.0~16.0nmであり;
-第四機能層Ag4の幾何学的厚さEa4が、13.0~16.0nmであり;
-四つの機能層Ag1、Ag2、Ag3、及びAg4の累積幾何学的厚さが、45.0~65.0ナノメータ、好ましくは50.0~60.0ナノメータである。
【0015】
目標特性を達成するためには、下記が好ましい:
-第一誘電体コーティングM1の光学的厚さEo1が、第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2よりも薄く、0.40<Eo1/Eo2<0.90、又は0.45≦Eo1/Eo2≦0.85であり;
-第一誘電体コーティングM1の光学的厚さEo1が、第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3よりも薄く、0.40<Eo1/Eo3<0.90、又は0.45≦Eo1/Eo3≦0.85であり;かつ、
-第一誘電体コーティングM1の光学的厚さEo1が、第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4よりも薄く、0.35<Eo1/Eo4<0.90、又は0.45≦Eo1/Eo4≦0.85であり;かつ、
-第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5が、0.50<Eo1/Eo5<1.50、又は0.60≦Eo1/Eo5≦1.30を満たす。
【0016】
目標特性を達成するためには、下記が好ましい:
-第二機能層Ag2の物理的厚さEa2が、0.80<Ea2/Ea3<1.20、又は0.90≦Ea2/Ea3≦1.10、又は0.95≦Ea2/Ea3≦1.05を満たし;かつ、
-第二機能層Ag2の物理的厚さEa2が、0.80<Ea2/Ea4<1.20、又は0.90≦Ea2/Ea4≦1.10、又は0.95≦Ea2/Ea4≦1.05を満たす。
【0017】
さらに、第三機能層Ag3の物理的厚さEa3が、好ましくは、0.80<Ea3/Ea4<1.20、又は0.90≦Ea3/Ea4≦1.10、又は0.95≦Ea3/Ea4≦1.05を満たす。
【0018】
特に、所望の比色特性を達成するためには、好ましくは、各誘電体コーティングM1、M2、M3、M4、及びM5が、波長550nmでの屈折率が2.2以上である高屈折率誘電体層を備えていることが好ましく、そして、各誘電体コーティングM1、M2、M3、M4、及びM5が、高屈折率誘電体バリア層を備えており、高屈折率誘電体バリア層それぞれが、ケイ素及びジルコニウムの窒化物に基づいていることが好ましい。
【0019】
前記高屈折率誘電体層の光学的厚さが、好ましくは、それが配置されている誘電体コーティングの光学的厚さの20%~75%の間、あるいは、それが配置されている誘電体コーティングの光学的厚さの25%~70%の間で構成されている。
【0020】
下記のことが好ましいことがある:
-第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2が、第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3に近いか、あるいは、等しく、0.80<Eo2/Eo3<1.20、又は0.90≦Eo2/Eo3≦1.10を満たし;
-第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2が、第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4に近いか、あるいは、等しく、0.80<Eo2/Eo4<1.20、又は0.90≦Eo2/Eo4≦1.10を満たし;かつ、
-第二誘電体コーティングM2の光学的厚さEo2が、第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5よりも厚く、1.30<Eo2/Eo5<2.00、又は1.40≦Eo2/Eo5≦1.90である。
【0021】
下記は、特定の一変形である:
-第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3が、第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4に近いか、あるいは、等しく、0.80<Eo3/Eo4<1.20、又は0.90≦Eo3/Eo4≦1.10を満たし;かつ、
-第三誘電体コーティングM3の光学的厚さEo3が、第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5よりも厚く、1.20<Eo3/Eo5<2.00、又は1.30≦Eo3/Eo5≦1.90である。
【0022】
下記は、極めて特定の一変形である:
-第四誘電体コーティングM4の光学的厚さEo4は、第五誘電体コーティングM5の光学的厚さEo5よりも厚く、1.20<Eo4/Eo5<2.10、又は1.30≦Eo4/Eo5≦1.90である。
【0023】
銀に基づいている前記四つの機能金属層は、銀でできている機能金属層であってよい。
【0024】
スタックは、透明基材から始まって、下記を備えているか、下記からなる:
-好ましくは、バリア機能を有している少なくとも一つの誘電体層と、濡れ機能を有している一つの誘電体層とを備えている、第一誘電体コーティングM1、
-第一機能層Ag1、
-任意で、ブロッキング上層
-好ましくは、バリア機能を有している少なくとも一つの誘電体層と、濡れ機能を有している一つの誘電体層とを備えている、第二誘電体コーティングM2、
-第二機能層Ag2、
-任意で、ブロッキング上層
-好ましくは、バリア機能を有している少なくとも一つの誘電体層と、濡れ機能を有している一つの誘電体層とを備えている、第三誘電体コーティングM3、
-第三機能層Ag3
-任意で、ブロッキング上層
-好ましくは、バリア機能を有している少なくとも一つの誘電体層と、濡れ機能を有している一つの誘電体層とを備えている、第四誘電体コーティングM4、
-第四誘電体層Ag4
-任意で、ブロッキング上層
-好ましくは、バリア機能を有している少なくとも一つの誘電体層と、濡れ機能を有している一つの誘電体層とを備えている、第五誘電体コーティングM5。
【0025】
本発明は、また、上述した材料を少なくとも一つ備えているグレージングに関する。そのようなグレージングは、好ましくは、積層グレージングの形態である。
【0026】
本発明の意味するところにおいて、誘電体コーティングは、好ましくは、吸収剤、金属、又は窒化された層を全く含まない。
【0027】
本明細書に示されている全ての光特性は、欧州規格EN410に記載されている原理及び方法に従って得られ、欧州規格EN410は、自動車産業用のガラスに使用されるグレージングの光及び太陽光特性の決定に関連する。
【0028】
従来、屈折率は、550nmの波長で測定されていた。光透過率TL及び光反射率RLは、以下の指示に従って、視野が2°の光源A、あるいは、10°のオブザーバーを用いた光源D65の下で測定される。
【0029】
特に断りがない限り、本文書で言及されている厚さは、物理的、若しくは実在的、若しくは幾何学的であり、誘電体層の場合はEp、機能性金属層の場合はEaで表され、ナノメートルで表される。層、あるいは、層アセンブリの光学的厚さEoは、検討中の層の物理的厚さに、550nmの波長での屈折率(n)を乗じたもの:Eo=n550×Ep、あるいは、層アセンブリについて、これらの層の光学的厚さの合計、として定義される。屈折率は無次元値であるため、光学的厚さの単位は、物理的厚さの単位と同じであると考えてよい。本明細書では、特に断りのない限り、厚さの単位は、ナノメートルである。誘電体コーティングが幾つかの誘電体層で構成されている場合、誘電体コーティングの光学的厚さは、誘電体コーティングを構成する異なる誘電体層の光学的厚さの合計に相当する。
【0030】
本明細書では、本発明の基材は、水平に配置されているものとする。薄層のスタックは、基材の上方に堆積されており、基材と接触している。「上方」と「下方」、及び、「上部」と「下部」の表現の意味は、方向について、考慮すべきである。特に断りのない限り、「上方」および「下方」という表現は、二つの層及び/又はコーティングが、必ずしも、互いに接触して配置されていることを意味するものではない。層が別の層又はコーティングと「接触して」堆積されることが特定されている場合、これは、これらの二つの層(あるいは、層とコーティング)の間に、一つ(または複数)の層を挿入できないことを意味する。
【0031】
本発明の目的のために、機能層又は誘電体コーティングのラベル「第一」、「第二」、「第三」、「第四」、及び「第五」は、スタックを保持する基材から始めて、同じ機能を有している層又はコーティングを参照して、定義する。例えば、基材に最も近い機能層は第一機能層であり、基材から離れる次の機能層は第二機能層であり、以下同様である。
【0032】
好ましくは、スタックは、磁場アシストスパッタリング(マグネトロンプロセス)によって堆積されている。この有利な実施形態によれば、スタックのすべての層は、磁場アシストスパッタリングによって堆積されている。
【0033】
本発明のスタックには、ブロッキング層が存在している。それらは、従来、上部反射防止コーティングの堆積中、及び/又は高温熱処理中に発生し得る損傷から、機能層を保護する役割を有しており、高温熱処理は、アニーリング、曲げ及び/又は強化型である。
【0034】
ブロッキングレイヤーは、例えば、金属若しくは合金に基づいている金属層、金属窒化物層、金属酸化物層、並びに金属酸窒化物層から選択され、金属酸窒化物層は、およびチタン、ニッケル、クロム、およびニオブから選択される一つ以上の元素から選択され、これらは、例えば、Ti、TiN、TiO、Nb、NbN、Ni、NiN、Cr、CrN、NiCr若しくはNiCrN、又はNbNO若しくはNiCrOである。
【0035】
そのような層の幾何学的厚さは、数ナノメートルのオーダーであり、一般的には5ナノメートル未満であり、ほとんどの場合、およそナノメートル又はナノメートル未満でさえある。
【0036】
これらのブロッキング層が、金属、窒化物、又は酸窒化物の形で堆積されている場合、これらの層は、部分的に、あるいは、完全に酸化し、その酸化は、それらの厚さ及びそれらを構成する層の性質に応じて酸化し、その酸化は、例えば、次層の堆積中か、その下の層との接触で起こる。
【0037】
本発明の有利な実施形態によれば、誘電体コーティングは、下記条件の一つ以上を満たす:
-誘電体コーティングは、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、スズ、又は亜鉛から選択される一つ以上の元素の酸化物又は窒化物に基づいている少なくとも一つの誘電体層を備えており、及び/又は
-少なくとも一つの誘電体コーティングが、バリア機能を有している少なくとも一つの誘電体層を備えており、及び/又は
-それぞれの誘電体コーティングが、バリア機能を有している少なくとも一つの誘電体層を備えており、及び/又は
-バリア機能を有する誘電体層が、SiO及びAl又はそれらの混合物のような酸化物、窒化ケイ素Si及びAlN又はそれらの混合物、並びに酸窒化物SiO及びAlO又はそれらの混合物から選択されるケイ素及び/又はアルミニウムの化合物に基づいており、及び/又は
-バリア機能を有している誘電体層が、ケイ素及び/又はアルミニウムの化合物に基づいており、任意で、アルミニウム、ハフニウム、及びジルコニウムのような一つ以上の他元素を含有しており、及び/又は
-少なくとも一つの誘電体コーティングが、安定化機能を有している少なくとも一つの誘電体層を備えており、及び/又は
-それぞれの誘電体コーティングが、安定化機能を有している少なくとも一つの誘電体層を備えており、及び/又は
-安定化機能を有している誘電体層が、好ましくは、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、又はそれらの少なくとも二つの混合物から選択される酸化物に基づいており、及び/又は
-安定化機能を有している誘電体層が、好ましくは、結晶性酸化物、特に酸化亜鉛に基づいており、任意で、アルミニウム等の少なくとも一つの他元素を用いて任意にドープされており、及び/又は
-それぞれの機能層は、誘電体コーティングの上方にあり、誘電体コーティングの上部は、安定化機能を有している誘電体層であり、好ましくは、酸化亜鉛に基づいており、及び/又は、それぞれの機能層は、誘電体コーティングの下方にあり、誘電体コーティングの下部は、安定化機能を有している誘電体層であり、好ましくは、酸化亜鉛に基づいている。
【0038】
好ましくは、それぞれの誘電体コーティングは、一つ以上の誘電体層のみからなる。このことから、光の透過を低下させないためには、誘電体コーティングに吸収層がないことが好ましい。
【0039】
本発明のスタックは、バリア機能を有している誘電体層を備えていてよい。「バリア機能を有している誘電体層」という表現は、周囲雰囲気又は透明基材から機能層への水及び酸素の高温拡散に対するバリアを形成することができる材料でできている層を意味すると理解される。したがって、バリア機能を有している誘電体層の構成材料は、それらの光学特性が変化するような高温で、化学的又は構造的変化をしてはならない。バリア機能を有している一つ以上の層がまた、好ましくは選択することによって、それらは、機能層の構成材料に対するバリアを形成することができる材料でできている。したがって、バリア機能を有している誘電体層は、スタックが過度に大きな光学的を変化することなしに、アニーリング、強化又は曲げ型の熱処理を受けることが可能になる。
【0040】
本発明のスタックは、安定化機能を有している誘電体層を備えていてよい。本発明の目的のため、「安定化」という用語は、層の性質を選択することによって、機能層とその層との間の界面が安定化することを意味する。この安定化は、機能層が、それを構成する層への接着の強化をもたらし、実際には、機能層は、その構成材料の移動を回避するであろう。
【0041】
安定化機能を有している一つ以上の誘電体層は、機能層と直接接触しているか、あるいは、ブロッキング層によって分離されている
【0042】
好ましくは、機能層の下方に位置する各誘電体コーティングの最終誘電体層は、安定化機能を有している誘電体層である。これは、機能層の下方に、例えば酸化亜鉛に基づいている、安定化機能を有している層があると、銀ベースの機能層の接着と結晶化を促進し、高温での品質と安定性を向上させることから、機能層の下方に、例えば酸化亜鉛に基づいている、安定化機能を有している層があることは、有利であるためである。
【0043】
また、例えば酸化亜鉛に基づく安定化機能を有している層を、機能層の上方に設けることによって、その接着性を高め、基材と反対側のスタック面で、拡散を最適に回避するのに有利である。
【0044】
したがって、安定化機能を有している一つ以上の誘電体層は、少なくとも一つの機能層又はそれぞれ機能層の上方又は下方に、それらと直接接触しているか、あるいは、ブロッキング層によって分離されて見出すことができる。
【0045】
有利には、バリア機能を有している各誘電体層は、安定化機能を有している少なくとも一つの誘電体層によって、機能層から分離されている。安定化機能を有している、この誘電体層は、少なくとも4nmの厚さ、特に4~18nmの間の厚さ、さらには8~15nmの厚さを有していてよい
【0046】
本発明の透明基材は、好ましくは、ガラス製など剛性がある無機材料でできているか、又はポリマーに基づいている有機材料(又はポリマー製)である。
【0047】
剛性がある、あるいは、可撓性がある、本発明の透明有機基材はまた、ポリマーでできていてよい。本発明に好適なポリマーとしては、特に、下記が挙げられる:
-ポリエチレン;
-ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;
-ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート;
-ポリカーボネート;
-ポリウレタン;
-ポリアミド;
-ポリイミド;
-フルオロエステル等のフルオロポリマー、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、又はフッ素化エチレン-プロピレン(FEP)コポリマー;
-光架橋性及び/又は光重合性樹脂、例えば、チオレン、ポリウレタン、ウレタンアクリレート、又はポリエステルアクリレート樹脂;並びに
-ポリチオウレタン。
【0048】
基材は、好ましくは、ガラス板である。
【0049】
基材は、好ましくは、透明、無色(そのとき、それは、透明又は非常に透明なガラスである)、又は着色され、例えば、青色、灰色、又は青銅色である。ガラスは、好ましくは、ソーダ石灰シリカタイプであるが、ホウケイ酸塩又はアルミノホウケイ酸塩タイプのガラスであってもよい。
【0050】
基材は、有利には、1m以上、あるいは2m以上、さらにあるいは3m以上の少なくとも一つの寸法を有する。基材の厚さは、一般に0.6mm~2.1mmの間であってよい。基材は、平らであってもよいし、湾曲していてもよい。
【0051】
材料、すなわちスタックでコーティングされている基材は、例えば、レーザー又は火炎アニーリング等のフラッシュアニーリングによるアニーリング、強化及び/又は曲げ等の高温熱処理を施してよい。熱処理の温度は、400℃より高く、好ましくは450℃より高く、さらには500℃より高い。このことから、スタックでコーティングされている基材は、湾曲及び/又は強化することができる。
【0052】
本発明のグレージングは、好ましくは積層グレージングの形態であり、特にHUDプロジェクタ用の積層グレージングである。積層グレージングは、第一基材/シート/第二基材型の少なくとも一つの構造を備えている。薄層スタックは、基材の一つの面の少なくとも一つに配置されている。スタックは、シート、好ましくはポリマーと接触している第一の基材の面上にあってよい。
【0053】
本発明のグレージングは、積層グレージングとして使用され、好ましくは、下記の光学的特性を有している:
-70%以上の光透過率、
-a <0.0、
-外部反射及び内部反射が、それぞれ15%以下
-a Re<0.0、-12.0≦b Re<0.0、
-a Ri<0.0、-15.0≦b Ri<0.0、及び
-本書面の意味の範囲内で、L(Ri65°)<15.0。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の詳細および有利な特徴は、添付の図面を用いて示される、以下の非限定的な例から明らかになる。
図1図1は、本発明のスタック構造を示し、四つの機能金属層を備えており、この構造は、透明ガラス基材10に堆積されている。
図2図2は、図1と併せて、例1~4の四つの構成の詳細を示す。
図3図3は、光学的厚さEo又は物理的厚さEaの特定の比をまとめたものである。
図4図4は、アニーリング熱処理後のモノリシック構成でのシート抵抗及び光学特性を示す。
図5図5は、積層構成での光学特性を示す。
図6図6は、量X、Y、Zを、波長λの関数として、L、a、bに変換するために使用される参照白色を、ナノメートル単位で示す。
【0055】
図1では、読みやすくするために、さまざまな要素間の比率は、考慮されていない。
【0056】
図1に示したスタックは、基材10上に配置されており、機能性金属層40、80、120、及び160を四つのみ備えている。各機能層40、80、120、160は、二つの誘電体コーティング20、60、100、140、及び180の間に配置されていることによって、次のようになっている:
-基材10から始まって、第一機能層40が、誘電体コーティング20と60との間に配置されており、
-第二機能層80が、誘電体コーティング60と100との間に配置されており、
-第三機能層120が、誘電体コーティング100と140の間に配置されており、かつ
-第四機能層160が、誘電体コーティング140と180との間に配置されている。
【0057】
これらの誘電体コーティング20、60、100、140、180はそれぞれ、少なくとも一つの誘電体層24、27、28、62、64、66、67、68;102、104、106、107、108;142、144、146、147、148、182、186、及び187を備えている。
【0058】
スタックは、下記を備えていてもよい:
-それぞれが機能層の上に配置されており、機能層と接触している、ブロッキング上層50、90、130、及び170、
-それぞれが機能層の下に配置されており、機能層と接触している、ブロッキング下層(図示せず)、
-保護層(図示せず)、例えば、TiZrでできているか、ジルコニウムと酸化チタンでできており、前述の全層の上に配置されている、最終層。
【実施例
【0059】
I.基材の準備:スタック、堆積条件、及び熱処理
【0060】
以下に定義する薄層のスタックを、1.6mmの厚さの透明なソーダライムガラスでできている基板上に堆積する。
【0061】
実施例では、下記の層を、スパッタリング(所謂「マグネトロンカソードスパッタリング」)で堆積した:
-機能層40、80、120、及び160は、銀の層であり、100%のアルゴン又はクリプトンの雰囲気中で、3×10-3mbarに減圧し、金属ターゲットから堆積し、
-ブロッキング上層50、90、130、及び170は、ニッケルとクロム(NiCr)の合金でできている金属層であり、100%のアルゴンの雰囲気中で、3×10-3mbarに減圧し、80原子%のNiと20原子%のCrを含有する金属ターゲットから堆積し、
-誘電体層は下記の層である:
-中屈折率バリア層104、144、及び187は、それぞれ、アルミニウムでドープされた窒化ケイ素に基づいており(「Si」)、92重量%のシリコンと8重量%のアルミニウムのシリコンターゲットから、45%の窒素と55%のアルゴンの、窒素とアルゴンの雰囲気中で、3.2×10-3mbarに減圧して堆積し、
-高屈折率バリア層24、64、106、146、及び186は、それぞれ、シリコン及びジルコニウムの窒化物に基づいており(「SiZrN」)、83原子%のシリコンと17原子%のジルコニウムのシリコンターゲットから、45%の窒素と55%のアルゴンの、窒素とアルゴンの雰囲気中で、3.2×10-3mbarに減圧して堆積し、
-超高屈折率バリア層66は、シリコン及びジルコニウムの窒化物に基づいており(「SiZrN」)、73原子%のシリコンと27原子%のジルコニウムのシリコンターゲットから、45%の窒素と55%のアルゴンの、窒素とアルゴンの雰囲気中で、3.2×10-3mbarに減圧して堆積し、
-濡れ層28、68、108、及び148は、それぞれ、各金属機能層の下方に配置されており、そして、各金属機能層と接触しており、かつ、それぞれは、酸化亜鉛(「ZnO」)でできており、セラミックターゲットから、100%のアルゴン雰囲気中で、3×10-3mbarの圧力で堆積し、
-平滑化層27、67、107、及び147は、それぞれ、バリア層と濡れ層との間に配置されており、それぞれ、亜鉛とスズの混合酸化物(「SnZnO」)でできており、50重量%のスズと50重量%の亜鉛の金属ターゲットから、30%のアルゴンと70%の酸素の雰囲気で、3×10-3mbarに減圧して堆積し、
-安定化層62、102、142、及び182は、それぞれ、ブロッキング上層上に配置され、そして、ブロッキング上層と接触しており、かつ、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛(「ZnO」)でできており、セラミックターゲットから、100%のアルゴンの雰囲気中で、3×10-3mbarに減圧して堆積する。
【0062】
したがって、図2の表は、各誘電体層の材料と物理的厚さEp、各金属機能層のナノメートル単位の厚さEa、各誘電体コーティングの光学的厚さEo(ナノメートル単位)を、スタックを支えている基材の位置(表の一番下)に対応して、示している。
【0063】
列I1、I2、及びI3は、それぞれ、本発明の比率、好ましい比率、及びより好ましい比率を示している。
【0064】
II.「太陽光制御」及び比色性能品質
【0065】
図4の表は、650℃で5分間にわたりアニーリング処理し、大気(20℃)冷却した後、モノリシック状態で測定した主な光学特性を示す。
【0066】
これらのモノリシック構造に対して:
-Tは、2°のオブザーバーを使用して、光源Aの下で測定された、可視領域の光透過率(%)を示し;
-a 及びb は、10°のオブザーバーを使用して、光源D65の下で、基材に対して垂直に測定された、Lシステムの透過a及びbの垂直入射(0°)での色を示し;
-Rは、スタックの側面で、10°のオブザーバーを使用して、光源Aの下で測定された、可視光線の光反射率(%)を示し;
-a Rc及びb Rcは、スタックの側面で、10°のオブザーバーを使用して、光源D65の下で、基材に対して垂直に測定された、Lシステムの反射a及びbの垂直入射(0°)での色を示し;
-Rは、スタックの反対側(基板10の下)で、2°のオブザーバーを使用して、光源Aの下で測定した、可視光線の光反射率(%)を示す;
-a Rg及びb Rgは、スタックの反対側で、10°のオブザーバーを使用して、光源D65の下で測定された、Lシステムの反射a及びbの垂直入射(0°)での色を示し;
-L Rc(60°)、a Rc(60°)、b Rc(60°)は、スタックの側面で、10°のオブザーバーを使用して、光源D65の法線に対して60°の入射角で測定された、Lシステムの層の側面反射での、強度L並びに色a及びbを示す。
【0067】
図5の表は、スタックのコーティングされた基材が、それぞれ、積層グレージングの一部を形成しているときの、主な光学特性を示し、積層グレージングは、1.6mmのガラス外側基板/0.76mmのPVB中間層シート/2.1mmのガラス外部基板の構造を有しており、スタックは、中間層シートに向けられた内部基板の面に配置されている。
【0068】
これらの積層グレージングに対して:
-Tは、2°のオブザーバーを使用して、光源Aの下で測定された、可視領域の光透過率(%)を示し、
-a 及びb は、10°のオブザーバーを使用して、光源D65の下で、基材に対して垂直に測定された、Lシステムの透過a及びbの垂直入射(0°)での色を示し;
-Rは、グレージングの最外面の側面で、2°のオブザーバーを使用して、光源Aで測定した、可視領域での光の反射率(%)を示し;
-a Re及びb Reは、最外面の側面で、10°のオブザーバーを使用して、光源D65の下で、グレージングに対して垂直に測定された、Lシステムの反射a及びbの垂直入射(0°)での色を示し;
-Rは、グレージングの内側面で、2°のオブザーバーを使用して、光源D65の下で測定された、可視領域での光反射率(%)を示し;
-a Ri及びb Riは、内側面で、10°のオブザーバーを用いて、光源D65の下で、基板に対して垂直に測定された、Lシステムの反射a及びbの垂直入射(0°)での色を示し;
-L(Re60°)、a(Re60°)、及びb(Re60°)は、グレージングの外側面で、2°のオブザーバーを使用して、光源D65の法線に対して60°の入射角で測定された、Lシステムの反射での色a及びbを示し;かつ
-L(Ri65°)、a(Ri65°)、及びb(Ri65°)は、法線に対して65°の入射角で測定された、Lシステムの反射における色a及びbを示す:積層グレージングでは、色L(Ri65°)、a(Ri65°)、b(Ri65°)が、s-偏光で、法線に対して65°の入射角で測定され、グレージングの内側面から始まる二番目の反射(最初の反射は、最内面で直接測定される)に対応する。この測定に使用される光源は、HUDプロジェクタに対応する(2°のオブザーバーで、光源D65に対応する参照白色を使用して、L、a、bに変換される量X、Y、Zを測定する);選択した光源を図6に示す。
【0069】
本発明で、同時に対象とされる値は、図4及び5の表の列I1に示されている。
【0070】
例1及び2は、本発明以外の比較例である。例3及び4は、本発明の実施例である。
【0071】
例1について、国際特許出願WO2005/051858の一般的な教示に従うのは、例1が、実質的に同一の厚さの四つの機能層を備えており、すべてが14.0nm±0.5nmのオーダーであるためである。したがって、図3の表の最初の三行に示されているように、第一機能層の厚さから他の各機能層の厚さは、1.00±0.05のオーダーである。これらの厚さが、厳密には同一ではないのは、この例1は、充分な低シート抵抗、すなわち、1平方あたり、0.70オーム以下のオーダーを達成しつつ、できるだけ最高の光透過率を達成するための最適化の対象であったためである。
【0072】
図4の表は、このモノリシック光透過率が73%であることを示しており、図5の表は、この積層光透過率が70%であることを示しており、これで十分である。
【0073】
しかし、この図5の表は、L(Ri65°)で表されるHUD画像の、反射における色の強度が、高すぎることを示している。このグレージングは、HUDシステムでの使用と互換性がない。
【0074】
例2は、別の一般的な教示に従い、非常に薄い第一機能層を備えており、次の三つは実質的に同一である。図3の表の最初の三行に示されているように、第一機能層の厚さから他の各機能層の厚さは、0.50±0.05のオーダーです。この例2も、できるだけ最高の光透過率を達成するための最適化の対象であったが、得られたシート抵抗は、満足のいくものではない:薄層のスタックを介してグレージングを効率的に電気加熱するには、設定された1平方あたり0.70オームの上限をはるかに超えている。
【0075】
さらに、図5の表は、積層光透過率が71%で十分であることを示しているが、L(Ri65°)で表されるHUD画像の反射における色の強度もまた、過剰に高い。
【0076】
それに加えて、図5の表は、内部反射の色が目標値から遠く離れており、a Riがゼロより遥かに高く、過剰に高く、b Riがゼロよりはるかに低く、過剰に低いことを示している。
【0077】
本発明によれば、三つの金属機能層を有するスタックを備えているグレージングを製造することが可能でき、積層構成において、光透過率が70%以上、a <0.0、外部反射率及び内部反射率の両方が15%以下、a Re<0.0、-12.0≦b Re<0.0、a Ri<0.0、-15.0≦b Ri<0.0、及びL(Ri65°)<15.0を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】