(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】磁気回路制御のロータ、オルタ、制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02K 19/24 20060101AFI20220930BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20220930BHJP
H02K 7/106 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H02K19/24 A
H02K21/14 G
H02K7/106
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506376
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 CN2020095349
(87)【国際公開番号】W WO2021139086
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】202010024512.7
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522040078
【氏名又は名称】広東机電職業技術学院
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】房 毅卓
(72)【発明者】
【氏名】李 章宏
【テーマコード(参考)】
5H607
5H619
5H621
【Fターム(参考)】
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB21
5H607CC03
5H607DD02
5H607DD16
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE18
5H607FF22
5H607FF24
5H619BB02
5H619BB13
5H619BB18
5H619PP02
5H619PP08
5H621AA03
5H621BB07
5H621PP03
5H621PP10
(57)【要約】
本発明は、磁気回路制御のロータ、オルタ、制御システム及び制御方法を開示する。ここでロータは、ロータシャフトと、ロータシャフトに取り付けられたセットのポールコアであって、各々のポールコアが複数の爪を有し、一対のポールコアの複数の爪が複数の隙間を形成し、軸方向に隣り合う2つの隙間には緩衝部材が設けられ、緩衝部材がエアギャップの厚さよりも小さい第1厚さを有する第1緩衝部材とエアギャップの厚さよりも大きい第2の厚さを有する第2緩衝部材を含むように構成されたセットのポールコアと、永磁リングと、ロータシャフトに同期して爪を回転させ、かつ爪のロータシャフトに沿った独立回転を許容するロック機構と、一対のポールコアのいずれか一方を外部駆動力によって制動可能な制動機構とを含む。本発明は、オルタのロータの一対のポールコアの爪の相対位置を制御して一対のポールコアの主磁路がステータコアを流れるかを制御し、永磁型オルタの動作状態を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に所定の厚さのエアギャップを介してステータが設けられた磁気回路制御のロータであって、
ロータシャフトと、
前記ロータシャフトに取り付けられた一対のポールコアであって、各々の前記ポールコアが、軸方向に延び軸方向に並ぶ複数の爪を有し、前記一対のポールコアの複数の爪が、軸方向に並ぶ複数の隙間を形成するように軸方向に交互に嵌め込み、軸方向に隣り合う2つの隙間には、爪に取り付けられた厚さの異なる緩衝部材が設けられ、前記緩衝部材がエアギャップの厚さよりも小さい第1の厚さを有する第1緩衝部材とエアギャップの厚さよりも大きい第2の厚さを有する第2緩衝部材を含むように構成された一対のポールコアと、
前記一対のポールコアの間に設けられた永磁リングと、
前記ロータシャフトに同期して爪を回転させ、かつ爪の前記ロータシャフトに沿った独立回転を許容するロック機構と、
前記一対のポールコアのいずれか一方を外部駆動力によって制動可能な制動機構とを含むことを特徴とする磁気回路制御のロータ。
【請求項2】
前記一対のポールコアは、左ポールコアと右ポールコアを含み、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材は、それぞれ、前記左ポールコアの爪の両側に取り付けられ、
又は、前記第1緩衝部材又は前記第2緩衝部材は、前記左ポールコアの爪の片側に取り付けられ、前記第2緩衝部材又は前記第1緩衝部材は、前記右ポールコアの爪の片側に取り付けられ、
又は、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材は、それぞれ、前記右ポールコアの爪の両側に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の磁気回路制御のロータ。
【請求項3】
前記緩衝部材は、非磁性材料であることを特徴とする請求項1に記載の磁気回路制御のロータ。
【請求項4】
前記第2緩衝部材は、片サイドがポールコアに取り付けられ、第2の厚さよりも小さい第3の厚さを有する磁性材料がもう片サイドに設けられ、
所定の一個のポールコアが制動されると、前記磁性材料によって、前記第2緩衝部材の両側に位置する2つの爪が自身の磁場力で一体に連結し、所定の他方のポールコアが制動されると、前記第1緩衝部材は、前記第1緩衝部材の両側に位置する2つの爪が自身の磁場力で一体に連結することを許容することを特徴とする請求項3に記載の磁気回路制御のロータ。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記ポールコアと前記ロータシャフトとの間に設けられ、
前記ロック機構は、弾性部材と前記弾性部材の一端に設けられた係止体とを含み、
前記ロータシャフトには、前記弾性部材を収納する収納溝が設けられ、
前記ポールコアには、前記係止体に整合する係止溝が設けられ、
前記弾性部材は、前記係止溝に係止体が進入するように前記係止体に弾力を付与することを特徴とする請求項1に記載の磁気回路制御のロータ。
【請求項6】
前記弾性部材は、スプリング又は弾性ゴム又は弾性プレートであることを特徴とする請求項5に記載の磁気回路制御のロータ。
【請求項7】
前記制動機構は、ポールコアに設けられた摩擦板と、前記摩擦板に対応して設けられたブレーキシューとを含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気回路制御のロータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のロータを含むことを特徴とする磁気回路制御のオルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のオルタと、
前記オルタに接続されたバッテリと、
前記バッテリに接続されて前記バッテリの出力電圧を検出する電子制御ユニットと、
前記電子制御ユニットに接続され、所定のポールコアを制御するように、油圧、空気圧又は磁場吸引を含む方式で制動機構に駆動力を供給する駆動力供給部材とを含むことを特徴とする制御システム。
【請求項10】
オルタの2つのポールコアの相対位置を制御し、更にロータの磁場の主磁路がステータを流れるかを制御してオルタの動作状態を制御するステップを含むことを特徴とする磁気回路での制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気回路制御のロータ、オルタ、制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルタは自動車の重要部品の一つである。内燃機を用いた自動車用オルタは、エンジンからベルト伝動方式でエネルギー伝達を行うものが一般的である。エンジン運転中、オルタは常にエンジンと共に回転する。自動車の走行中、バッテリへの充電と車両電気系統へ電気を供給するのはオルタの主要な役割である。バッテリ充電完了後、オルタの発電が停止し、バッテリ放電電圧が設定値未満になるまでバッテリから車両電気系統へ電気を供給して、オルタが再び発電状態となる。
【0003】
自動車用ブラシレスオルタには、主として、自動車用ブラシレスオルタのレゾルバ給電型ブラシレスオルタと永磁型ブラシレスオルタとがある。現在、広く用いられている自動車用ブラシレスオルタは、レゾルバ給電型ブラシレスオルタである。レゾルバ部分がオルタのハウジング内の一部の空間を占有するが、オルタのロータの電磁石に給電するためには、レゾルバから出力される交流を整流する必要もある。このため、レゾルバ給電型ブラシレスオルタは、効率と比電力が共に比較的低い。
【0004】
現在、ごく少数の車種に使われている自動車用永磁ブラシレスオルタは、構造が簡単で、作業効率がいいという顕著な利点がある。しかしバッテリ充電完了後の段階(発電しない間)、電子スイッチユニット回路によってオルタとバッテリとの間の電流を遮断して(即ち、オルタが無負荷状態となる)バッテリへの充電を停止させる。オルタが無負荷状態になったときの出力電圧は負荷状態電圧でありエンジン回転スピードが偶然高すぎて瞬間的に数倍の正常出力電圧を超えることがある。電子スイッチユニット回路が故障発生してしまうと車両電気系統の多くの部品が瞬時に壊れる。この設計上の欠陥のため、自動車用永磁ブラシレスオルタは普及や応用はできない。
【0005】
オルタの動作原理はロータ回転によって、ロータの磁場がステータコアを通って磁路を形成し、ロータの回転に伴ってステータ巻線の磁束量が周期的に変化してステータ巻線に交流電流が発生する。
【0006】
現在の自動車用永磁オルタのロータの左右のポールコア(即ち、左右の磁極)の相対位置は、固定されており、左右のポールコア(磁極)の隙間はロータとステータとの間の隙間よりもはるかに大きいため、ロータの磁界の主磁路は必ずステータコアを通る。また、エンジンとオルタとの間の動力伝達をベルトで連結しているのでエンジン運転中、オルタは、ベルトにより常時運転される。このためオルタは常に発電状態にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つ目の目的は磁気回路制御のロータを通じてロータの磁場の主磁路がステータを流れるかを制御し、永磁オルタの動作を制御することである。
【0008】
本発明の2つ目の目的は磁気回路制御のオルタが提供できることである。
【0009】
本発明の3つ目の目的は制御システムを提供することである。
【0010】
本発明の4つ目の目的は制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に対し、本発明は、以下の技術手段を用いる。
外周に所定の厚さのエアギャップを介在してステータが設けられた磁気回路制御のロータであって、ロータシャフトと前記ロータシャフトに取り付けられた一対のポールコアであって、各々の前記ポールコアが、軸方向に延び軸方向に並ぶ複数の爪を有し、前記一対のポールコアの複数の爪が、軸方向に並ぶ複数の隙間を形成するように軸方向に交互に嵌め込み、軸方向に隣り合う2つの隙間には、爪に取り付けられた厚さの異なる緩衝部材(ダンパー)が設けられ、前記緩衝部材が、エアギャップの厚さよりも小さい第1の厚さを有する第1緩衝部材と、エアギャップの厚さよりも大きい第2の厚さを有する第2緩衝部材を含むように構成された一対のポールコアと前記一対のポールコアの間に設けられた永磁リングと、前記ロータシャフトに同期して爪を回転させ、かつ爪の前記ロータシャフトに沿った独立回転を許容するロック機構と前記一対のポールコアのいずれか一方を外部駆動力によって制動可能な制動機構とを含む。
【0012】
最適な技術案として前記一対のポールコアは、左ポールコアと右ポールコアを含み、前記第1緩衝部材と第2緩衝部材はそれぞれ前記左ポールコアの爪の両側に取り付けられ、又は、前記第1緩衝部材又は第2緩衝部材は前記左ポールコアの爪の片側に取り付けられ、前記第2緩衝部材又は第1緩衝部材は前記右ポールコアの爪の片側に取り付けられ、又は、前記第1緩衝部材及び第2緩衝部材それぞれ前記右ポールコアの爪の両側に取り付けられる。
【0013】
最適な技術案として、前記緩衝部材は非磁性材料である。
【0014】
好適な技術手段として、前記第2緩衝部材は、一端が爪に取り付けられ、第2の厚さよりも小さい第3の厚さを有する磁性材料が他端に設けられ、所定の一方のポールコアが制動されると、前記磁性材料によって、前記第2緩衝部材の両側に位置する2つの爪が自身の磁場力で一体に連結し、所定の他方のポールコアが制動されると、前記第1緩衝部材は、前記第1緩衝部材の両側に位置する2つの爪が自身の磁場力で一体に連結することを許容する。
【0015】
好適な技術手段として、前記ロック機構は、前記ポールコアと前記ロータシャフトとの間に設けられ、前記ロック機構は、弾性部材と前記弾性部材の一端に設けられた係止体とを含み、前記ロータシャフトには、前記弾性部材を収納する収納溝が設けられ、前記ポールコアには、前記係止体に整合する係止溝が設けられ、前記弾性部材は、前記係止溝に係止体が進入するように前記係止体に弾力を付与する。
【0016】
最適な技術案として、前記弾性部品は、スプリング又は弾性ゴム又は弾性プレートである。
【0017】
好適な技術手段として、前記制動機構は、ポールコアに設けられた摩擦板と、前記摩擦板に対応して設けられたブレーキシューとを含む。
【0018】
磁気回路制御のオルタであって、上記ロータを含む。
【0019】
制御システムであって、上記オルタと、前記オルタに接続されたバッテリと、前記バッテリに接続されて前記バッテリの出力電圧を検出する電子制御ユニットと前記電子制御ユニットに接続され、所定のポールコアを制御するように、油圧、空気圧又は磁場吸引を含む方式で制動機構に駆動力を供給する駆動力供給部材とを含む。
【0020】
磁気回路制御の制御方法において、オルタの2つのポールコアの相対位置を制御し、更にロータの磁場の主磁路がステータを流れるかを制御してオルタの動作状態を制御する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有効的効果としてオルタロータのポールコアの爪の相対位置を制御してオルタの動作状態を制御する。オルタのロータのポールコア(即ち、左右の磁極)の相対位置を制御し、更にポールコアの主磁路がステータコアを流れるかを制御し、永磁オルタの動作状態を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施例、ロータ分解構造図である。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施例、ロータ側面構造図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施例、ロック機構図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施例、緩衝部材の取付位置図である。
【
図5】
図5は、本発明の1つの実施例、制御システムの原理図である。
【
図6】
図6は、本発明の1つの実施例、制御システムの制御プロセスのフロー図である。
【
図7】
図7は、本発明の別の実施例、ロータの分解構造(組む前)のイメージ図である。
【
図8】
図8は、本発明の別の実施例、ロータの側面構造(組んだ後)のイメージ図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の実施例、ロック機構のイメージ図である。
【
図10】
図10は、本発明の別の実施例、緩衝部材の取付位置のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、構造、特徴、及び効果などをより良く理解するために、添付及び具体的な実施方法を参照しながら本発明を更に説明する。
【0024】
本発明の1つの実施例のオルタはロータと、ロータの外周に所定の厚さのエアギャップを介して設けられたステータ(図示せず)とを含む。
【0025】
図1、
図2、
図3、
図7、
図8、
図9に示すように、ロータは、ロータシャフト8と、ロータシャフト8に取り付けられた一対のポールコア1,3と、前記一対のポールコア1,3の間に設けられた永磁リング2とロータシャフト8に同期してポールコア1,3を回転させかつポールコア1,3のロータシャフト8に沿った独立回転を許容するロック機構と一対のポールコア1,3のいずれかを外部駆動力によって制動可能な制動機構とを含む。
【0026】
ロータシャフト8は、外部動力により回転駆動され、例えば(図示ない)エンジンがベルト伝送でロータシャフト8を回転させる。
【0027】
各々のポールコア1又は3は、軸方向に延び軸方向に並ぶ複数の爪11,12を有し、一対のポールコア1,3の複数の爪11,12は、軸方向に並ぶ複数の隙間を形成するように軸方向に交互に嵌め込み、軸方向に隣り合う2つの隙間には、爪11及び/又は12に取り付けられた厚さの異なる緩衝部材が設けられ、緩衝部材は、第1の厚さを有する第1緩衝部材1-1と、第2の厚さを有する第2緩衝部材1-2とを含む。第1の厚さはエアギャップの厚さよりも小さく、第2の厚さはエアギャップの厚さよりも大きい。
【0028】
ロット機構がポールコア1,3の独立回転を許容するため、制動機構は、ロータシャフト8が制動されることなく、いずれかのポールコア1,3を制動することができる。所定の一個のポールコア1又は3が制動されると、別のポールコア3又は1は、ロータシャフト8に追従して回転し、吸引力により2つのポールコア1,3の爪11,12が最終的に結合される。しかし、隙間に緩衝部材を設けることにより、結合された爪11,12間の距離は、緩衝部材によって所定の距離に保たれ、緩衝部材の厚さは、結合された爪11,12間の距離となる。制動されるポールコア1,3によっては、爪11,12同士が第1緩衝部材1-1を介して結合されてもよいし第2緩衝部材1-2を介して結合されてもよい。
【0029】
第1の厚さはエアギャップよりも小さい所定の厚さを有し、主磁路がステータコアを通らないようにすることができる。また、第2の厚さはエアギャップよりも大きい所定の厚さを有し、主磁路がステータコアを通るようにすることができる。このため、爪11,12間に第1緩衝部材1-1があると主磁路がステータコアを通らないためオルタはアイドリング状態(発電しない)となる。爪11,12間に第2緩衝部材1-2があると、主磁路がステータコアを通るため、オルタは発電状態となる。従って、ポールコア1,3のいずれかを選択的に制動することにより、主磁路がステータコアを流れるかどうかを制御し、永磁オルタの運転状態を制御する。
【0030】
一対のポールコア1、3は左ポールコア1と右ポールコア3である。左ポールコア1は、左爪11を有し、右ポールコア3は、右爪12を有する。実施例によっては、第1緩衝部材1-1及び第2緩衝部材1-2は、左ポールコア1の爪の両側(即ち、左爪11の両側)にそれぞれ取り付けられてもよい。又は、第1緩衝部1-1又は第2緩衝部材1-2は、左ポールコア1の爪の片側(即ち左爪11の片側)に取り付け、第2緩衝部材1-2又は第1緩衝部材1-1は、右ポールコア3の爪の片側(即ち右爪12の片側)に取り付けてもよい。又は第1緩衝部材1-1及び第2緩衝部材1-2は、それぞれ右ポールコア3の爪の両側(即ち右爪12の両側)に取り付けられてもよい。
【0031】
いくつかの実施例では、緩衝部材は非磁性材料である。たとえばプラスチック、ゴムなど。非磁性材料を使うことにより、左右のポールコア1,3の結合時の磁気抵抗が大きくなり、両者間の磁界相互作用力が小さくなり、制動による両者の分離が容易になる。
【0032】
いくつかの実施例では、第2緩衝部材1-2は、片サイドが爪に取り付けられ、鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性材料1-3が違うサイドに設けられる。第2緩衝部材1-2は、その厚さが厚いので磁性材料1-3を設けて爪に磁性材料1-3を吸引させることにより、左右の爪11,12の結合をより確実にすることができる。磁性材料1-3は、第2の厚さよりも小さい第3の厚さを有する。即ち、磁性材料1-3は、薄くて、例えば鉄片である。このように、爪と磁性材料1-3との間の吸引力が比較的に小さく、制動による両者の分離を容易にする。
【0033】
一部の実施例では、所定の1つのポールコア1又は3が制動されると、磁性材料1-3によって、第2緩衝部材1-2の両側の2つの爪11,12は、自身の磁場力の作用によって一体に連結する。即ち、磁性材料1-3は補助吸引の役割を果たし、2つの爪11,12は、主に自身の磁場力によって互いに引き合う。所定のもう1つのポールコア3又は1が制動されると、第1緩衝部材1-1は、第1緩衝部材1-1の両側の2つの爪11,12が自身の磁場力作用によって一体的に連結することを許容する。第1緩衝部材1-1の両側の2つの爪11,12同士が自身によって互いに吸着できるように、第1緩衝部材1-1は、薄い厚さが要求される。従って、第1緩衝部材1-1は、膜のような緩衝材であることが好ましい。
【0034】
図3は、ポールコア1,3のロック機構を示す。ロック機構は、ポールコア1,3とロータシャウト8との間に設けられる。ロック機構は、弾性部材9と弾性部材9の一端に設けられた係止体10とを含み、ロータシャフト8には、弾性部材9を収納する収納溝13が設けられる。ポールコア1,3には、係止体10に整合する係止溝14が設けられ、係止溝14は、円周方向に分布し、弾性部材9は、係止溝14に係止体10が進入ように係止体10に弾力を付与する。弾性部材9は、スプリング、弾性ゴム、弾性プレート、又は弾性力を付与できる他の物体である。係止体10は、鋼球、鉄球、その他適宜の構造を有するものである。
【0035】
一方のポールコア1又は3が制動されると、そのポールコア1又は3は、ロータシャフト8に対して回転する。その間にポールコア1又は3が係止体10を押し下げ、同時に弾性部材9が圧縮され、その際にポールコア1又は3は、ロータシャフト8に拘束されずに回転することができる。駆動力がなくなると、弾性部材9の弾性力により係止体10が跳ね上がり、再び係止溝に係入する。このときポールコア1,3はロータシャフト8とともに回転する。
【0036】
制動機構は、ポールコアに設けられた摩擦板と、摩擦板に対応して設けられたブレーキシューとを含む。ブレーキシューは、外部駆動力により摩擦板と接触して摩擦することにより、対応するポールコアを制動することができる。左ポールコア1に位置するのが左摩擦板6であり、右ポールコア3に位置するのが右摩擦板4であり、左摩擦板6に対応するのが左ブレーキシュー7であり、右摩擦板4に対応するのが右ブレーキシュー5である。
【0037】
図4は、左ポールコア1の爪の両側に第1緩衝部材1-1及び第2緩衝部材1-2をそれぞれ取り付けた実施例を示す。この実施例では、第1緩衝部材1-1は、左爪11の上側に取り付けられ、第2緩衝部材1-2は、右爪12の下側に取り付けられている。もちろん、他の実施例では、第1緩衝部材1-1と第2緩衝部材1-2の取付位置は、互いに交換されてもよい。
【0038】
図4及び
図10より、矢印はロータシャフト8の回転方向である。左ポールコア1が瞬間的に制動されると左爪11の上側と右爪12の下側が結合し、両爪が異名磁極であるため、それらの間に吸引力が働き、この吸引力により両者の離脱が防止される。第1緩衝部材1-1は、ロータとステータとの間のエアギャップ(即ち、ロータとステータとの間の隙間)よりも十分小さいので、このとき、左右のポールコア1,3は、各々の爪11,12によって形成する主磁路がステータコアを通らない。駆動力がなくなるとロック機構により左右のポールコア1,3がロータシャフト8と同期して回転する。このとき左右のポールコア1,3の主磁路は、ステータコアを通らない。よって、オルタは、アイドリング状態(発電しない)となる。
【0039】
即ち、オルタのロータの左ポールコア1を瞬間的に制動して、オルタをアイドリング状態にすることができる。
【0040】
右ポールコア3が瞬間的に制動されると、左爪11の下側と右爪12の上側が結合し、磁性材料1~3によって右爪12に吸引されるため、この吸引力により両者の離脱が防止される。第2緩衝部材1-2は、ロータとステータとの間のエアギャップ(即ち、ロータとステータの隙間)よりも十分に厚いので、このとき、左右のポールコア1,3は、ステータコアを介して主磁路を形成する。駆動力がなくなると、ロック機構により左右のポールコア1,3がロータシャフト8と同期して回転する。このとき、主磁路は、ステータコアを通る。このため、オルタは発電状態にある。
【0041】
即ち、オルタのロータの右ポールコア3を瞬間的に制動して、オルタを発電状態にすることができる。
【0042】
本発明は、
図5に示すように、上記のオルタGENと、オルタGENに接続されたバッテリと、バッテリに接続された電子制御ユニットECUと、電子制御ユニットECUに接続された駆動力供給部材と、バッテリに接続された負荷Lと、バッテリに接続された絶縁ダイオードDとを含む制御システムを更に提供する。
【0043】
負荷Lは、車両電気系統のすべての負荷を示す。本実施例では、駆動力供給部材を電磁石とし、磁界吸引により制動機構に駆動力を与えて所定のポールコアを制動し、即ちブレーキシューを摩擦板に接触させて制動を行う。他の実施例では、駆動力は、油圧又は空気圧、又は他の適切な方法を用いて提供されてもよい。電磁石は、右爪3を制動するための第1制動電磁石M1と、左爪1を制動するための第2制動電磁石M2とを含む。
【0044】
絶縁ダイオードDのG端子は、発電機GENに接続され、B端子は、バッテリBATTに接続され、G端子とB端子には電子制御手段ECUが接続される。電子制御手段ECUは、絶縁ダイオードDの左端のG点の発電機GENの出力電圧と、その右端のB点のバッテリBATTの電圧信号を取り込んで現在のバッテリBATTの充電状況を判定し、電磁石を制御して左右のクローポール1,3の極歯結合状態を実現して発電機GENの動作状態を制御する。
【0045】
図6に示すように、オルタGENの動作状態制御は、主に3つの面がある。(右ポールコア3を制動してオルタGENを発電状態にし、左ポールコア1を制動してオルタGENをアイドリング状態にする例とする。)
(1)充電開始段階
エンジン起動完了後、電子制御ユニットECUは、第1制動電磁石M1に瞬間的に通電してオルタGENのロータの右ポールコア3を瞬間的に制動してオルタGENを発電状態にし、バッテリを充電する。充電段階が開始されると、電子制御ユニットECUは、絶縁ダイオードDの右端のB点の電位を検出することにより、バッテリの出力電圧を検出する。B点の電位がある所定値(好ましくは13.5Vであり14.5Vでもよいし、自動車電源システムの使用バッテリの仕様によって変化してもよい)以上になると充電開始段階が終了する。
(2)バッテリ放電の場合
充電開始段階が完了すると、電子制御手段ECUは、第2制動電磁石M2に瞬間的に通電して、発電機GENのロータの左クローポール1を瞬間的に制動して発電機GENをアイドリング状態にし、バッテリBATTを放電段階に移行させる。B点の電位がある所定値(本実施例では13.0V)以下になると、放電段階が終了する。
(3)二次充電段階
バッテリ放電完了すると、電子制御ユニットECUは、制動電磁石M1に瞬時に通電してオルタGENを発電状態にしてバッテリを充電する。B点の電位がある所定値(好ましくは13.5Vであり、14.5Vでもよいし、自動車電源システムの使用バッテリ仕様によっても変わる)以上になると、再びバッテリ放電段階に入る。このように、エンジンが停止するまで循環する。
【0046】
本発明は、磁気回路制御の制御方法を更に提供し、オルタの2つのポールコアの相対位置を制御し更にロータの磁場の主磁路がステータを流れるかを制御してオルタの動作状態を制御するステップを含む。
【0047】
以上の詳細説明は、本発明の割にいい実施例の説明に限る。本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。従って、本発明の明細書及び図面に記載された内容を用いた等価な技術的変化は本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0048】
(付記)
(付記1)
外周に所定の厚さのエアギャップを介してステータが設けられた磁気回路制御のロータであって、
ロータシャフトと、
前記ロータシャフトに取り付けられた一対のポールコアであって、各々の前記ポールコアが、軸方向に延び軸方向に並ぶ複数の爪を有し、前記一対のポールコアの複数の爪が、軸方向に並ぶ複数の隙間を形成するように軸方向に交互に嵌め込み、軸方向に隣り合う2つの隙間には、爪に取り付けられた厚さの異なる緩衝部材が設けられ、前記緩衝部材がエアギャップの厚さよりも小さい第1の厚さを有する第1緩衝部材とエアギャップの厚さよりも大きい第2の厚さを有する第2緩衝部材を含むように構成された一対のポールコアと、
前記一対のポールコアの間に設けられた永磁リングと、
前記ロータシャフトに同期して爪を回転させ、かつ爪の前記ロータシャフトに沿った独立回転を許容するロック機構と、
前記一対のポールコアのいずれか一方を外部駆動力によって制動可能な制動機構とを含むことを特徴とする磁気回路制御のロータ。
【0049】
(付記2)
前記一対のポールコアは、左ポールコアと右ポールコアを含み、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材は、それぞれ、前記左ポールコアの爪の両側に取り付けられ、
又は、前記第1緩衝部材又は前記第2緩衝部材は、前記左ポールコアの爪の片側に取り付けられ、前記第2緩衝部材又は前記第1緩衝部材は、前記右ポールコアの爪の片側に取り付けられ、
又は、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材は、それぞれ、前記右ポールコアの爪の両側に取り付けられることを特徴とする付記1に記載の磁気回路制御のロータ。
【0050】
(付記3)
前記緩衝部材は、非磁性材料であることを特徴とする付記1に記載の磁気回路制御のロータ。
【0051】
(付記4)
前記第2緩衝部材は、片サイドがポールコアに取り付けられ、第2の厚さよりも小さい第3の厚さを有する磁性材料がもう片サイドに設けられ、
所定の一個のポールコアが制動されると、前記磁性材料によって、前記第2緩衝部材の両側に位置する2つの爪が自身の磁場力で一体に連結し、所定の他方のポールコアが制動されると、前記第1緩衝部材は、前記第1緩衝部材の両側に位置する2つの爪が自身の磁場力で一体に連結することを許容することを特徴とする付記3に記載の磁気回路制御のロータ。
【0052】
(付記5)
前記ロック機構は、前記ポールコアと前記ロータシャフトとの間に設けられ、
前記ロック機構は、弾性部材と前記弾性部材の一端に設けられた係止体とを含み、
前記ロータシャフトには、前記弾性部材を収納する収納溝が設けられ、
前記ポールコアには、前記係止体に整合する係止溝が設けられ、
前記弾性部材は、前記係止溝に係止体が進入するように前記係止体に弾力を付与することを特徴とする付記1に記載の磁気回路制御のロータ。
【0053】
(付記6)
前記弾性部材は、スプリング又は弾性ゴム又は弾性プレートであることを特徴とする付記5に記載の磁気回路制御のロータ。
【0054】
(付記7)
前記制動機構は、ポールコアに設けられた摩擦板と、前記摩擦板に対応して設けられたブレーキシューとを含むことを特徴とする付記1に記載の磁気回路制御のロータ。
【0055】
(付記8)
付記1から7のいずれか一つに記載のロータを含むことを特徴とする磁気回路制御のオルタ。
【0056】
(付記9)
付記8に記載のオルタと、
前記オルタに接続されたバッテリと、
前記バッテリに接続されて前記バッテリの出力電圧を検出する電子制御ユニットと、
前記電子制御ユニットに接続され、所定のポールコアを制御するように、油圧、空気圧又は磁場吸引を含む方式で制動機構に駆動力を供給する駆動力供給部材とを含むことを特徴とする制御システム。
【0057】
(付記10)
オルタの2つのポールコアの相対位置を制御し、更にロータの磁場の主磁路がステータを流れるかを制御してオルタの動作状態を制御するステップを含むことを特徴とする磁気回路での制御方法。
【国際調査報告】