(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】屈折率分布型レンズに基づく通信システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/06 20060101AFI20220930BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20220930BHJP
H01Q 9/30 20060101ALI20220930BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20220930BHJP
H01Q 5/321 20150101ALI20220930BHJP
G01S 3/04 20060101ALI20220930BHJP
G01S 3/20 20060101ALI20220930BHJP
G01S 13/74 20060101ALI20220930BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01Q19/06
H01Q21/24
H01Q9/30
H01Q1/38
H01Q5/321
G01S3/04 C
G01S3/20
G01S13/74
G01S7/03 212
G01S7/03 230
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506417
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 US2020044016
(87)【国際公開番号】W WO2021021895
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522040780
【氏名又は名称】ルーンウェーブ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Lunewave Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100221556
【氏名又は名称】金田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】シン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジアン
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BB09
5J020BC04
5J020BC08
5J021AA08
5J021AB06
5J021FA31
5J046AB04
5J046AB06
5J046BA01
5J070AB01
5J070AB17
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC11
5J070AD05
5J070AD14
5J070AG07
5J070AH04
5J070BC05
(57)【要約】
屈折率分布型レンズと、第1の複数のアンテナ素子と、制御システムと、を含む通信システムが提供される。特に、第1の複数のアンテナ素子は、屈折率分布型レンズの表面に平行な第1の表面に配置される。さらに、第1の複数のアンテナ素子は、エンドユーザ装置からの信号の受信に応答して、第1の複数のアンテナ信号を生成するように構成される。制御システムは、第1の複数のアンテナ素子から第1の複数のアンテナ信号を受信し、第1の複数のアンテナ素子に関連付けられた所定のアンテナ信号値のセットに基づいて、エンドユーザ信号に関連付けられたエンドユーザ方向を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率分布型レンズと、
前記屈折率分布型レンズの表面に平行な第1の表面に配置され、エンドユーザ装置からの信号の受信に応答して、第1の複数のアンテナ信号を生成するように構成された第1の複数のアンテナ素子と、
前記第1の複数のアンテナ素子から前記第1の複数のアンテナ信号を受信し、前記第1の複数のアンテナ素子に関連付けられた所定のアンテナ信号値のセットに基づいて、エンドユーザ信号に関連付けられたエンドユーザ方向を決定するように構成された制御システムと、
備える通信システム。
【請求項2】
前記所定のアンテナ信号値のセットは、複数の電圧信号値のサブセットを含み、前記複数の電圧信号値のサブセットは、複数の所定のエンドユーザ信号方向を示す、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記エンドユーザ方向を決定するために、前記制御システムは、
前記第1の複数のアンテナ信号と前記複数の電圧信号値のサブセットとの間の複数の相関値を算出する相関アルゴリズム及び/又は圧縮検出アルゴリズムを実行し、
算出された複数の相関値に基づいて、前記複数の所定のエンドユーザ信号方向から前記エンドユーザ方向を選択する
ように構成される、請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御システムは、制御信号を生成し、
前記第1の複数のアンテナ素子は、前記制御信号に基づいて参照信号を生成し、前記参照信号を立体角で走査するように構成され、
前記エンドユーザ装置は、前記参照信号の受信に応答して前記エンドユーザ信号を生成するように構成される、
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記参照信号は、パルス化信号又は周波数変調信号を含み、
前記制御システムは、前記参照信号の送信の第1の時刻と、前記エンドユーザ信号からの信号の受信の第2の時刻と、の間の時間差に基づいて、前記通信システムと前記エンドユーザ装置との間のエンドユーザ距離を決定するように構成される、
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御システムは、第2の複数の制御信号を生成し、前記エンドユーザ方向と前記エンドユーザ距離とに基づいて、前記第1の複数のアンテナ素子の動作を制御するように構成される、請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記複数のアンテナ素子は、前記屈折率分布型レンズの方位角平面内及び/又は前記屈折率分布型レンズの仰角のセクターの中に配置される、請求項1~6のいずれかに記載の通信システム。
【請求項8】
第1の屈折率分布型レンズは、前記屈折率分布型レンズの表面から第1の距離に第1の偏波を有する第1のビームを集中させ、かつ、前記屈折率分布型レンズの表面から第2の距離に第2の偏波を有する第2のビームを集中させるように構成された複屈折材料を含む、請求項1~7のいずれかに記載の通信システム。
【請求項9】
前記第1の表面は、前記屈折率分布型レンズの表面から前記第1の距離に位置し、
前記第1の複数のアンテナ素子は、前記第1の偏波を有する放射を生成するように構成される、
請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記屈折率分布型レンズの表面に平行な第2の表面に配置された第2の複数のアンテナ素子を更に備え、
前記第2の表面は、前記屈折率分布型レンズの表面から前記第2の距離に位置する、
請求項9に記載の通信システム。
【請求項11】
前記第2の複数のアンテナ素子は、前記第2の偏波を有する放射を生成するように構成される、請求項10に記載の通信システム。
【請求項12】
前記第1の複数のアンテナ素子の第1のアンテナ素子は、第1の方向を有し、
前記第2の複数のアンテナ素子の第2のアンテナ素子は、第2の方向を有する、
請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記制御システムは、
コントローラと、
1以上の制御副信号を生成するように構成された第3の複数の制御回路と、を備え、
前記制御信号は、前記1以上の制御副信号を含み、
前記コントローラは、前記1以上の制御副信号の振幅及び/又は位相を決定する、
請求項4に記載の通信システム。
【請求項14】
前記第1の複数のアンテナ素子は、特性帯域幅を有し、
前記コントローラは、前記1以上の制御副信号の動作帯域幅を決定するように構成され、
前記動作帯域幅は、前記特性帯域幅の中にある、
請求項13に記載の通信システム。
【請求項15】
前記第1の複数のアンテナ素子は、特性帯域幅を有し、
前記コントローラは、前記第1の複数のアンテナ素子の放射部を再構成することによって、前記特性帯域幅を変化させるように構成される、
請求項13に記載の通信システム。
【請求項16】
前記第1の複数のアンテナ素子は、再構成可能なアンテナである、請求項15に記載の通信システム。
【請求項17】
前記再構成可能なアンテナは、画素化されプリントされたモノポールである、請求項16に記載の通信システム。
【請求項18】
前記第1の複数のアンテナ素子と前記第3の複数の制御回路とを電気的に接続するように構成されたスイッチマトリクスを更に備え、
前記スイッチマトリクスは、前記第1の複数のアンテナ素子の第1のアンテナ素子を、第1の時間期間において前記第3の複数の制御回路の第1の制御回路に接続し、第2の時間期間において前記第3の複数の制御回路の第2の制御回路に接続するよう構成される、
請求項13に記載の通信システム。
【請求項19】
前記制御システムは、第2の制御信号を生成し、
前記第1の複数のアンテナ素子は、前記第2の制御信号に基づいて前記エンドユーザ装置に向けられた通信信号を生成する、
請求項4に記載の通信システム。
【請求項20】
前記制御システムは、更に、
干渉信号に関連する干渉方向を決定し、
再構成信号を生成するように構成され、
前記第1の複数のアンテナ素子は、前記再構成信号に基づいて、前記干渉方向に沿った方向を向いたヌルビームを生成するように構成される、
請求項19に記載の通信システム。
【請求項21】
前記屈折率分布型レンズは、ルネベルグレンズを含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項22】
屈折率分布型レンズと、前記屈折率分布型レンズの表面に平行な第1の表面に配置された第1の複数のアンテナ素子と、制御システムと、を備える通信システムを提供するステップと、
前記複数のアンテナ素子によって、エンドユーザ装置からの信号の受信に応答して、第1の複数のアンテナ信号を生成するステップと、
前記制御システムによって、前記第1の複数のアンテナ素子から前記第1の複数のアンテナ信号を受信するステップと、
前記制御システムによって、前記第1の複数のアンテナ素子に関連付けられた所定のアンテナ信号値のセットに基づいて、エンドユーザ信号に関連付けられたエンドユーザ方向を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記所定のアンテナ信号値のセットは、複数の電圧信号値のサブセットを含み、前記複数の電圧信号値のサブセットは、複数の所定のエンドユーザ信号方向を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記制御システムによって、前記第1の複数のアンテナ信号と前記複数の電圧信号値のサブセットとの間の複数の相関値を算出する相関アルゴリズム及び/又は圧縮検出アルゴリズムを実行するステップと、
前記制御システムによって、算出された複数の相関値に基づいて、前記複数の所定のエンドユーザ信号方向から前記エンドユーザ方向を選択するステップと、
を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記制御システムによって、制御信号を生成するステップと、
前記第1の複数のアンテナ素子によって、前記制御信号に基づいて参照信号を生成し、前記参照信号を立体角で走査するステップと、を更に含み、
前記エンドユーザ装置は、前記参照信号の受信に応答して前記エンドユーザ信号を生成するように構成される、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記制御システムによって、前記参照信号の送信の第1の時刻と、前記エンドユーザ信号からの信号の受信の第2の時刻と、の間の時間差に基づいて、前記通信システムと前記エンドユーザ装置との間のエンドユーザ距離を決定するステップを更に含み、
前記参照信号は、パルス化信号又は周波数変調信号を含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記制御システムによって、第2の複数の制御信号を生成し、前記エンドユーザ方向と前記エンドユーザ距離とに基づいて、前記第1の複数のアンテナ素子の動作を制御するステップを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数のアンテナ素子は、前記屈折率分布型レンズの方位角平面内及び/又は前記屈折率分布型レンズの仰角のセクターの中に配置される、請求項22~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記屈折率分布型レンズによって、前記屈折率分布型レンズの表面から第1の距離に第1の偏波を有する第1のビームと、前記屈折率分布型レンズの表面から第2の距離に第2の偏波を有する第2のビームと、を集中させるステップを更に含み、
前記屈折率分布型レンズは、複屈折材料を含む、
請求項22~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記第1の複数のアンテナ素子によって、前記第1の偏波を有する放射を生成するステップを更に含み、
前記第1の表面は、前記屈折率分布型レンズの表面から前記第1の距離に位置する、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記通信システムは、前記屈折率分布型レンズの表面に平行な第2の表面に配置された第2の複数のアンテナ素子を更に備え、
前記第2の表面は、前記屈折率分布型レンズの表面から前記第2の距離に位置する、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の複数のアンテナ素子によって、前記第2の偏波を有する放射を生成するステップを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の複数のアンテナ素子の第1のアンテナ素子は、第1の方向を有し、
前記第2の複数のアンテナ素子の第2のアンテナ素子は、第2の方向を有する、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第3の複数の制御回路によって、1以上の制御副信号を生成するステップを更に含み、
前記制御システムは、前記第3の複数の制御回路と、コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記1以上の制御副信号の振幅及び/又は位相を決定する、
請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記コントローラによって、前記1以上の制御副信号の動作帯域幅を決定するステップを更に含み、
前記動作帯域幅は、前記第1の複数のアンテナ素子に関連付けられた特性帯域幅の中にある、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記コントローラによって、前記第1の複数のアンテナ素子の放射部を再構成することによって、特性帯域幅を変化させるステップを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の複数のアンテナ素子は、再構成可能なアンテナである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記再構成可能なアンテナは、画素化されプリントされたモノポールである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
スイッチマトリクスによって、前記第1の複数のアンテナ素子の第1のアンテナ素子を、第1の時間期間において前記第3の複数の制御回路の第1の制御回路に接続するステップと、
前記スイッチマトリクスによって、前記第1の複数のアンテナ素子の前記第1のアンテナ素子を、第2の時間期間において前記第3の複数の制御回路の第2の制御回路に接続するステップと、
を更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記制御システムによって、第2の制御信号を生成するステップと、
前記第1の複数のアンテナ素子によって、前記第2の制御信号に基づいて前記エンドユーザ装置に向けられた通信信号を生成するステップと、
を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記制御システムによって、干渉信号に関連する干渉方向を決定するステップと、
前記制御システムによって、再構成信号を生成するステップと、
前記第1の複数のアンテナ素子によって、前記再構成信号に基づいて、前記干渉方向に沿った方向を向いたヌルビームを生成するステップと、
を更に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記屈折率分布型レンズは、ルネベルグレンズを含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
この出願は、2019年7月30日に出願された米国仮出願第62/880,583号に対する優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的に、通信システムに関し、特に、屈折率分布型レンズに基づく再構成可能な通信システムに関する。
【背景技術】
【0003】
屈折率分布型(GRIN)の構成要素は、その屈折率nが空間的に連続的に変化することを示す電磁的構造体である。ルネベルグレンズは、その高い利得、広帯域の性質、及び複数のビームを形成する能力から、マルチビームトラッキングのための魅力的な屈折率分布型デバイスである。ルネベルグレンズの表面上の全ての点は、反対側から入射する平面波の焦点となる。ルネベルグレンズの誘電率分布は、次式により与えられる。
ここで、ε
rは誘電率であり、Rはレンズの半径であり、rは位置からレンズの中心までの距離である。
【0004】
現在の技術では、レンズのポリマと空気との間の充填率を制御することによって、3次元(「3D」)印刷されたルネブルグレンズ構造が構築される。レンズ構造の大部分は、典型的にはポリマでできているため、レンズのサイズが大きくなると、全体の重量が著しく増加する。さらに、現在の技術に関連する製造コストは、典型的には、レンズのサイズが大きくなると高くなる。
【0005】
したがって、新しいレンズ構造を有することが望ましいといえる。
【発明の概要】
【0006】
一態様によれば、本開示は、屈折率分布型レンズ(例えば、ルネベルグレンズ)と、第1の複数のアンテナ素子と、制御システムと、を含む通信システムを提供する。第1の複数のアンテナ素子は、ルネベルグレンズの表面に平行な第1の表面に配置される。さらに、第1の複数のアンテナ素子は、エンドユーザ装置からの信号の受信に応答して、第1の複数のアンテナ信号を生成するように構成されてもよい。制御システムは、第1の複数のアンテナ素子から第1の複数のアンテナ信号を受信し、第1の複数のアンテナ素子に関連付けられた所定のアンテナ信号値のセットに基づいて、エンドユーザ信号に関連付けられたエンドユーザ方向を決定するように構成される。
【0007】
さらに、所定のアンテナ信号値のセットは、複数の電圧信号値のサブセットを含み、複数の電圧信号値のサブセットは、複数の所定のエンドユーザ信号方向を示す。
【0008】
いくつかの態様では、エンドユーザ方向を決定するために、制御システムは、第1の複数のアンテナ信号と複数の電圧信号値のサブセットとの間の複数の相関値を算出する相関アルゴリズム及び/又は圧縮検出アルゴリズムを実行し、算出された複数の相関値に基づいて、複数の所定のエンドユーザ信号方向からエンドユーザ方向を選択するように構成される。さらに、制御システムは、制御信号を生成し、第1の複数のアンテナ素子は、制御信号に基づいて参照信号を生成し、参照信号を立体角で走査するように構成される。エンドユーザ装置は、参照信号の受信に応答してエンドユーザ信号を生成するように構成されてもよい。
【0009】
特に、参照信号は、パルス化信号又は周波数変調信号を含み、制御システムは、参照信号の送信の第1の時刻と、エンドユーザ信号からの信号の受信の第2の時刻と、の間の時間差に基づいて、通信システムとエンドユーザ装置との間のエンドユーザ距離を決定するように構成される。制御システムは、更に、第2の複数の制御信号を生成し、エンドユーザ方向とエンドユーザ距離とに基づいて、第1の複数のアンテナ素子の動作を制御するように構成される。
【0010】
更なる態様では、複数のアンテナ素子は、ルネベルグレンズの方位角平面内及び/又はルネベルグレンズの仰角のセクターの中に配置される第1のルネベルグレンズは、ルネベルグレンズの表面から第1の距離に第1の偏波を有する第1のビームを集中させ、かつ、ルネベルグレンズの表面から第2の距離に第2の偏波を有する第2のビームを集中させるように構成された複屈折材料を含む。第1の表面は、ルネベルグレンズの表面から第1の距離に位置し、第1の複数のアンテナ素子は、第1の偏波を有する放射を生成するように構成される。
【0011】
更なる態様では、第2の複数のアンテナ素子が、ルネベルグレンズの表面に平行な第2の表面に配置される。第2の表面は、ルネベルグレンズの表面から第2の距離に位置する。第2の複数のアンテナ素子は、第2の偏波を有する放射を生成するように構成される。さらに、第1の複数のアンテナ素子の第1のアンテナ素子は、第1の方向を有し、第2の複数のアンテナ素子の第2のアンテナ素子は、第2の方向を有する。
【0012】
制御システムは、コントローラと、1以上の制御副信号を生成するように構成された第3の複数の制御回路と、を備えてもよい。制御信号は、1以上の制御副信号を含み、コントローラは、1以上の制御副信号の振幅及び/又は位相を決定するように構成される。
【0013】
いくつかの態様では、第1の複数のアンテナ素子は、特性帯域幅を有し、コントローラは、1以上の制御副信号の動作帯域幅を決定するように構成される。動作帯域幅は、特性帯域幅の中にある。
【0014】
他の態様では、第1の複数のアンテナ素子は、特性帯域幅を有し、コントローラは、第1の複数のアンテナ素子の放射部を再構成することによって、特性帯域幅を変化させるように構成される。第1の複数のアンテナ素子は、再構成可能なアンテナ(例えば、再構成可能な画素化されプリントされたモノポール(pixelated printed monopole))であってもよい。
【0015】
システムは、第1の複数のアンテナ素子と第3の複数の制御回路とを電気的に接続するように構成されたスイッチマトリクスを更に備えてもよい。スイッチマトリクスは、第1の複数のアンテナ素子の第1のアンテナ素子を、第1の時間期間において第3の複数の制御回路の第1の制御回路に接続し、第2の時間期間において第3の複数の制御回路の第2の制御回路に接続するよう構成される。
【0016】
更なる態様では、制御システムは、第2の制御信号を生成するように構成され、第1の複数のアンテナ素子は、第2の制御信号に基づいてエンドユーザ装置に向けられた通信信号を生成するように構成される。制御システムは、更に、干渉信号に関連する干渉方向を決定し、再構成信号を生成するように構成される。第1の複数のアンテナ素子は、再構成信号に基づいて、干渉方向に沿った方向を向いたヌルビームを生成するように構成される。
【0017】
他の態様によれば、本開示は、エンドユーザ方向を決定する方法を提供する。特に、本方法は、屈折率分布型レンズ(例えば、ルネベルグレンズ)と、ルネベルグレンズの表面に平行な第1の表面に配置された第1の複数のアンテナ素子と、制御システムと、を備える通信システムを提供することと、次いで、複数のアンテナ素子によって、エンドユーザ装置からの信号の受信に応答して、第1の複数のアンテナ信号を生成することと、を含む。制御システムは、第1の複数のアンテナ素子に関連付けられた所定のアンテナ信号値のセットに基づいて、エンドユーザ信号に関連付けられたエンドユーザ方向を決定する。
【0018】
特に、本発明は、上に列挙されたような通信システム要素の組合せに限定されず、本明細書に記載されたような要素の任意の組合せにより組み立てられてもよい。
【0019】
本発明の他の態様は、以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
特許ファイル又は出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含むこの特許又は特許出願の公報の写しは、請求及び必要な手数料を支払うことにより、庁によって提供される。
【0021】
本明細書の実施形態は、同様の参照数字が同一又は機能的に同様の要素を示す添付図面と併せて以下の説明を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0022】
【
図2】入射信号の到来方向(DOA)を決定する、例示的なルネベルグレンズに基づく通信システムを示す。
【
図3】DOA推定システムのための実験装置を示す。
【
図4A】
図3におけるDOA推定についての推定方向対実際の入射角の例示的なプロットを示す。
【
図4B】
図3のシステムについての測定角度誤差対実際の入射角の例示的なプロットを示す。
【
図5B】
図5Aの修正ルネベルグレンズの例示的な仰角放射パターンを示す。
【
図5C】
図5Aの修正ルネベルグレンズの例示的な水平放射パターンを示す。
【
図6A】圧縮検出(CS)アルゴリズムを使用した、-70度からの入射波の例示的な算出角度発見確率の結果を示す。
【
図6B】相関アルゴリズムを使用した、-70度からの入射波の例示的な算出角度発見結果を示す。
【
図7A】広帯域ビバルディアンテナの動作のシミュレーションのプロットを示す。
【
図7B】
図7Aに対応する反射損失のシミュレーションのプロットを示す。
【
図8A】1つのアンテナ素子及び複数のアンテナ素子についての例示的なシミュレーションされた放射パターンを示す。
【
図9】ルネブルグレンズに結合された例示的なビバルディアンテナ素子のアレイを示す。
【
図10】種々のアンテナ給電を伴うルネベルグレンズのシミュレーションされた放射パターンを示す。
【
図12】
図3のDOA推定システムの5個の隣接するアンテナ素子によって生成されるルネベルグレンズについての例示的な走査パターンを示す。
【
図13A】36個のアンテナ素子によって生成されたファンビームを示す。
【
図14A】36個のアンテナ素子によるヌルビームの形成を示す。
【
図15】異なる角度に向けられた4本のビームの同時生成を示す。
【
図16】例示的なスイッチングマトリクス構成を示す。
【
図17】他の例示的なスイッチングマトリクス構成を示す。
【
図18】更に他の例示的なスイッチング構成を示す。
【0023】
添付の図面は、必ずしも縮尺通りではなく、本開示の基本原理を例示する様々な好ましい特徴を幾分簡略化された表現を提示していることが理解されるべきである。例えば、特定の寸法、方向、位置、及び形状を含む、本明細書に記載されるような本開示の特定の設計特徴は、特定の意図された用途及び使用環境によって、部分的に決定される。
【0024】
図において、参照数字は、図面のいくつかの図を通して、本開示の同一又は同等の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するための用語であり、本発明を限定することを意図しない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形をも含むことが意図される。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を規定するが、1以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙項目のうちの1以上の任意の及び全ての組合せを含む。
【0026】
例示的な実施形態は、例示的なプロセスを実行するために複数のユニットを使用するように説明されるが、当該例示的なプロセスは、1又は複数のモジュールによって実行されてもよいことが理解される。さらに、コントローラ/制御ユニットという用語は、メモリ及びプロセッサを含むハードウェアデバイスを指すことが理解される。メモリは、モジュールを格納するように構成され、プロセッサは、以下で更に説明される1以上のプロセスを実行するために前記モジュールを実行するように具体的に構成される。
【0027】
さらに、本発明の制御ロジックは、プロセッサ、コントローラ/制御ユニット等によって実行される実行可能なプログラム命令を含むコンピュータ可読媒体上の非一時的なコンピュータ可読媒体として具現化されてもよい。コンピュータ可読媒体の例は、ROM、RAM、コンパクトディスク(CD)-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、フラッシュドライブ、スマートカード、及び光学式データ記憶装置を含むが、これらに限定されない。コンピュータ可読記録媒体は、例えばテレマティクスサーバ又はコントローラエリアネットワーク(CAN)によって、コンピュータ可読媒体が分散方式で格納及び実行されるように、ネットワーク結合コンピュータシステム内で分散されてもよい。
【0028】
特に記載されない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、用語「約」は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差内と理解される。「約」は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解され得る。文脈から明らかでない限り、本明細書で提供される全ての数値は、用語「約」によって修飾される。自律車両から高速無線データ送信にわたる様々な分野において、高速かつ効率的な通信システムの需要が高まっている。屈折率分布型レンズに基づく通信システムは、その表面の周りに配置された再構成可能なアンテナ素子を有する屈折率分布型レンズ(例えば、ルネベルグレンズ)の新規な特性を利用することによって、標的物体(例えば、エンドユーザ装置)の高速検出を可能とする。これらの通信システムは、広いファンビーム又は複数のビームを採用して複数のターゲットと同時通信し、ヌルビームを生成して干渉プロセスを軽減する。これは、スペクトル効率の向上及びデータ送信におけるエラーの低減を提供する。
【0029】
ある好ましい態様では、本発明は、部分的にメタライズされた薄膜、紐、糸、繊維又はワイヤに基づくメタマテリアルを用いた、中空で軽量、低コスト、及び高性能の3Dルネベルグレンズ構造を特徴とする。
【0030】
図1は、例示的な通信システム100の概略図を示す。通信システムは、ルネベルグレンズ104の表面上(又は周囲)に配置されたアンテナ素子102のアレイを含んでもよい。アンテナ素子102の動作は、アンテナ素子102と電気的に通信する制御システム106によって制御されてもよい。制御システム106は、アンテナ素子の動作を制御するように構成された複数の制御回路を含んでもよい。例えば、制御システム106は、アンテナ素子102に出射信号(例えば、約100MHzから約1THzまでの範囲の周波数を有する放射)を生成させるために、制御信号を送信することができる。制御信号は、様々な制御回路によって生成される複数の制御副信号を含んでもよい。所与の制御回路は、振幅、位相、及び周波数によって特徴付けられる制御副信号を生成してもよい。制御副信号の振幅、位相及び周波数は、制御副信号を受信するアンテナ素子によって放射される放射の振幅、位相及び周波数を決定してもよい。制御システムは、様々な制御副信号の振幅、位相、及び周波数を変化させることによって、出射信号の特性(例えば、周波数、振幅、指向性、同調性など)を決定してもよい。
【0031】
制御回路は、アンテナ素子による入射信号の検出に基づいて生成されるアンテナ信号をアンテナ素子から受信してもよい。制御システム106は、アンテナ信号に基づいて、入射信号の様々な特性(例えば、入射信号を生成する装置の指向性、距離など)を決定してもよい。入射信号の特性に基づいて、制御システムは、エンドユーザ装置との通信を改善(例えば、最適化)してもよい。いくつかの実施形態では、通信システムは、複数のアンテナ素子102を所与の制御回路に、又はその逆に電気的に結合し得るスイッチングマトリクス108を含んでもよい。スイッチングマトリクス108は、アンテナ素子102と制御回路との間の電気的結合を、時間の関数として変化させてもよい。
【0032】
さらに、無線通信システム(例えば、5G通信システム)において、ユーザ装置の位置を決定することによってユーザ装置を識別及び局在化することが望ましい。局在化は、装置からの入射信号の方向と、通信システムからの装置の距離と、を決定することによって達成され得る。ルネベルグレンズに基づく通信システムは、参照信号をユーザ装置に送信し、エンドユーザから戻ってくる参照信号(例えば、戻り参照信号)を受信してもよい。参照信号から、ユーザ装置の位置が決定されてもよい。
【0033】
したがって、
図2は、入射信号の到来方向(DOA)を決定するための例示的なルネベルグレンズに基づく通信システム200を示す。特に、通信システムは、ルネベルグレンズ202と、ルネベルグレンズの周囲に配置された複数の検出器204(例えば、アンテナ素子)と、を含んでもよい。ルネベルグレンズ202は、入射平面波をレンズと反対側の焦点に集中させてもよい。したがって、検出器204がレンズ202の周囲に分布されている場合、異なる検出器は、異なる電力レベルの検出器信号(例えば、出力電圧)を生成することになる。例えば、入射波に直接的に対向する検出器は、最も高い電力を有する検出器信号を生成し、他の検出器は、比較的低い電力を有する又は電力を有しない検出器信号を生成することになる。多数の検出器を分散配置し、それらの出力応答を解析することによって、入射波の方向を推定することができる。
【0034】
一実施形態では、相関アルゴリズムが、到来方向(DOA)推定に使用されてもよい。まず、ルネベルグレンズを光源から遠距離に置いて、0°から360°の(1°間隔の)異なる入射角で、全ての検出器の出力電圧が記録される。これらの異なる入射角における電圧値は、較正ファイルVcalとして保存されてもよい。較正ファイルは、入射信号の種々の方向に対応する複数の電圧値のアレイを含んでもよい。電圧値の各アレイは、ルネベルグレンズの周囲に配置された様々な検出器に対応する出力電圧値を含んでもよい。
【0035】
DOA測定の間、全ての検出器の出力電圧(V
signal)が測定され、較正ファイルと相関させてもよい。相関は、次の式を用いて算出されてもよい。
相関が最も大きい方向は、入射波の推定方向として決定されてもよい。
【0036】
さらに、入射信号源として、ダブルリッジホーンアンテナに接続された信号発生器(例えば、Agilent E8257C)を用いてもよい。入射信号について、約5.6GHzの動作周波数が選択されてもよい。この周波数において、検出器がピーク感度を有することがある。
図3は、DOA推定システムのための実験装置を示す。特に、10度離れた36個のアンテナ素子(例えば、検出器)が、ルネベルグレンズの表面に取り付けられている。送信ホーンからルネブルグレンズまでの距離は、較正用には3m、性能試験用には4mである(いずれも遠方界)。検出器には、8ミルのデュロイド基板に印刷されたモノポールアンテナによって給電されるゼロバイアスダイオード(SMS7630-061)が使用される。
【0037】
図4は、
図3におけるDOA推定についての推定方向対実際の入射角の例示的なプロットを示す。
図4Bは、
図3のシステムについての測定角度誤差対実際の入射角の例示的なプロットを示す。この36個の検出器ルネベルグレンズシステムを使用するこの相関アルゴリズムの誤差は、360°全てからの入射角について2°未満である。360度全ての入射角の平均誤差は0.14度である。検出器がレンズ表面上に3次元的に配置されていれば、より正確な3次元方向を検出できる可能性がある。
【0038】
参照信号(パルス信号、FMCW信号など)にDOA推定アルゴリズムを適用することによって、エンドユーザの方向情報が取得されてもよい。参照信号は、エンドユーザ装置の距離情報を取得するために使用されてもよい。例えば、距離情報は、参照信号の送信の第1の時刻とエンドユーザ信号の受信の第2の時刻との時間差を計算することによって決定されてもよい。他の実施態様では、距離は、パルス/FMCWレーダアルゴリズムを適用することによって完成されてもよい。エンドユーザの方向及び距離情報を用いて、基地局側からの出射ビームのパワー及びビームパターンが適応的に変更され、通信システムの効率を改善してもよい。
【0039】
いつくかの実施形態では、エンドユーザ装置からの入射信号の方向を推定するために、圧縮検出(CS)に基づくアルゴリズムが適用されてもよい。前述のDOA推定方法より前に、全ての検出器の出力電圧が、較正データとして0°から360°までの(1°間隔の)異なる入射角を用いて記録される。この較正データを投影の基礎として用いて、種々の方向から来る信号の確率を算出するために、圧縮検出アルゴリズム(例えば、TWISTアルゴリズム)が適用されてもよい。単純な相関アルゴリズムと比較して、CSアルゴリズムを用いるDOA推定は、種々の方向からの入射波の確率を提供することができる。
【0040】
図5Aは、例示的な修正ルネベルグレンズを示す。修正ルネベルグレンズは、球状ルネベルグレンズの形状を変えること(例えば、球状ルネベルグレンズにプレーナーカットを施すこと)、又はレンズ内の誘電特性分布を変えること、又はその両方を行うことによって作成されてもよい。修正ルネベルグレンズは、修正ルネベルグレンズに結合されたアンテナ素子の水平(x-y平面内)及び/又は垂直(x-z平面内)放射パターンを変化させてもよい。いくつかの実施形態では、修正ルネベルグレンズの放射パターンの幅は、対応する球状ルネベルグレンズ(例えば、放射パターンの中央ローブの幅)より広くてもよい。より広い中央ローブは、例えば、基地局がエンドユーザ装置の位置を特定しようとする場合に望ましい場合がある。
【0041】
修正ルネベルグレンズ502~510は、球状レンズに対してプレーナーカット(例えば、方位角[x-y]平面の上下両方のプレーナーカット)を施すことによって得られる。修正レンズ502は、方位角平面から7.5mmの距離に水平方向のプレーナーカットを施すことによって得られる。修正レンズ504は、方位角平面から10mmの距離に水平方向のプレーナーカットを施すことによって得られる。修正レンズ506は、一端において、方位角平面に対して10mmの高さを有し、径方向反対側の端部において、方位角平面に対して7.5mmの高さを有する。修正レンズ508は、一端において、方位角平面に対して15mmの高さを有し、径方向反対側の端部において、方位角平面に対して10mmの高さを有する。修正レンズ510は、一端において、方位角平面及び対して10mmの高さを有し、径方向反対側の端部において、方位角平面に対して5mmの高さを有する。
【0042】
図5Bは、修正ルネベルグレンズ502~510、及びそれからレンズ502~510が得られる球状ルネベルグレンズの例示的な仰角放射パターン(x-z平面における放射パターン)を示している。前述のように、修正ルネブルグレンズ502の中央ローブ520は、それから修正ルネブルグレンズ502が得られる球状ルネブルグレンズの中央ローブ522よりも広い。
図5Cは、修正ルネベルグレンズ502~510、及びそれからレンズ502~510が得られる球状ルネベルグレンズの例示的な水平放射パターン(x-y平面における放射パターン)を示している。
【0043】
図6Aは、CSアルゴリズムを使用した、-70度からの入射波の例示的な算出確率の結果を示している。
図6Bは、相関アルゴリズムを使用した、-70度からの入射波の例示的な算出角度発見結果を示している。CSに基づくアルゴリズムは、相関に基づくアルゴリズムよりも狭いビーム幅を有し、これは、相関に基づくアルゴリズムより精度が向上していることを示す。狭いビームは、全体的なスペクトル効率を改善するために、一点のエンドユーザとの通信に使用されてもよい。
【0044】
前述のように、制御システムは、アンテナ素子を動作させるための制御信号を生成してもよい。制御信号は、アンテナ素子の動作を変化(例えば、出射信号の偏波、周波数、方向、空間局在化などを変化)させてもよい。いくつかの実施形態では、動作のバリエーションは、制御副信号の振幅、位相、及び周波数を変化させること(「広帯域給電アプローチ」)を含んでもよい。他の実施態様では、動作のバリエーションは、アンテナ素子の特性を変更することによってアンテナ素子を再構成すること(「狭帯域給電アプローチ」)を含んでもよい。
【0045】
広帯域給電アプローチでは、各アンテナ素子は、広い特性周波数範囲(「特性帯域幅」)を有する放射を生成してもよく、制御システムは、アンテナ素子の動作帯域幅(例えば、特性帯域幅より狭い動作帯域幅)を選択してもよい。いくつかの実施形態では、動作帯域幅の選択は、デジタル共通モジュールによって実現されてもよい。
【0046】
広帯域給電アプローチは、いくつかの利点を有し得る。例えば、スイッチングデバイス及び/又は調整デバイスがないため、関連する損失、電力処理、非線形性及びバイアス回路の複雑さが防止され得る。第二に、ルネベルグレンズビームスイッチングの特有の特徴により、高周波数帯のグレーティングローブ及び相互結合など、従来の広帯域アレイに関連する標準的な困難な問題が防止される。
【0047】
さらに、
図7Aは、広帯域ビバルディアンテナの動作(例えば、広帯域給電アプローチに基づく動作)のシミュレーションのプロットを示す。
図7Bは、
図7Aに対応する反射損失のシミュレーションのプロットを示す。ビバルディアンテナは、約2~18GHzの範囲の特性周波数を有してもよい。シミュレーションは、異なる偏波(例えば、90度回転させた偏波)を有する放射間の干渉を含むHFSSモデルに基づいている。
図7Bに示した反射損失のシミュレーションは、満足な周波数特性を示している。
【0048】
ルネベルグレンズ(ここで使用される直径12cmの例)に給電されるビバルディアンテナが設計されている。
図8Aは、(
図8Bに示す)1つのアンテナ素子及び(
図8Cに示す)複数のアンテナ素子についての例示的なシミュレーション放射パターンを示すこのシミュレーションは、HFSSモデルに基づいている。アンテナ素子のアレイに対する潜在的な閉塞及び干渉/相互結合効果を評価するために、レンズ赤道に沿って10度間隔で分布する36個のアンテナ素子アレイがモデル化される。
図8Aは、(
図8Bに示す)単一の給電素子と、(
図8Cに示す)1つの励起素子のみを有する36個の給電素子と、の両方について、期待される放射パターンが得られることを示している。これら2つの場合のメインビームは、レンズの反対側の給電による閉塞がないことを示す。さらに、任意の素子間のシミュレーションされた相互結合は、-15dB未満である。
【0049】
方位角及び仰角の両対象範囲を達成するために。ルネベルグレンズ用のビバルディアンテナ素子のアレイが適用されてもよい。
図9は、48個のビバルディアンテナ素子の、ルネベルグレンズとの例示的な使用を示している。
図10は、種々のアンテナ給電(antenna feeds)を伴うルネベルグレンズのシミュレーション放射パターンを示す。この図は、全ての視野(FOV)を覆う高指向性ビームが達成され得ること示している。
【0050】
狭帯域給電アプローチでは、広帯域の対象範囲を達成するために、調整可能な狭帯域アンテナ給電が使用されてもよい。このアプローチは、調整可能、及び/又は、スイッチング可能な特性を有する比較的狭帯域のアンテナ素子を利用する。このアプローチでは、アンテナ素子は、共通回路モジュールに対する要求の低減につながり得るバンドパスフィルタリングを提供する。また、調整可能な狭帯域アンテナは、小型であり、通信システム設計の小型化を可能としてもよい。アンテナ素子の種々の放射部を接続/再編成することによる「画素化された(pixelated)」周波数の再構成のためにMEMSスイッチが使用され、放射周波数の粗調整が行われてもよい。放射周波数の微調整は、半導体バラクタによって行われてもよい。一実施形態では、再構成可能な、画素化されプリントされたモノポールが、約2~4GHzの周波数動作を達成するために使用されてもよい。
【0051】
図11A-Bは、微調整用のバラクタと粗調整用の複数のMEMSスイッチとを搭載した2個のプリントされたモノポールを示す。これらのスイッチをオン/オフに調整することによって、モノポールの長さをリアルタイムで変化させることができる。
図11Aは、中心周波数が約2~約4GHzであり、瞬時帯域幅が約0.5GHzである2スイッチモノポールアンテナを示している。2~4GHzの連続動作は、(例えば、約0.5pF~約2.5pFの調整範囲を有する)直列接続されたバラクタを使用することによって可能となる。
図11Bは、約2~約4GHzの範囲の中心周波数を有し、約数百MHzの瞬時帯域幅を有する3スイッチモノポールアンテナを示す図である。3スイッチモノポールアンテナは、2スイッチモノポールアンテナと比較して、中心周波数をより細かく調整できる。
図11C及び
図11Dは、それぞれ、
図11A及び
図11Bの2スイッチアンテナ及び3スイッチアンテナの反射係数のプロットを示す。
【0052】
広帯域給電及び調整可能な狭帯域給電の両方の設計は、偏波調整を含むように拡張されてもよい。アンテナ素子放射の偏波は、水平偏波、垂直偏波、及び円偏波のうちの1つ又は重ね合わせを含むように変更されてもよい。一実施形態では、偏波調整は、2以上のアンテナ素子を互いに対して角度(例えば、90度)を付けて配向することによって達成されてもよい。単極双投(SPDT)MEMSスイッチが、所望の偏波を選択的に励起するために利用されてもよい。
【0053】
偏波多重化を達成するために複屈折レンズが使用されてもよい。複屈折レンズは、異なる偏波に対して異なる焦点位置(例えば、第1の偏波に対する第1の焦点距離、及び第2の偏波に対する第2の焦点距離)を有してもよい。第1の偏波を有する放射を生成する(又は受信する)アンテナ素子は、第1の焦点距離に配置されてもよく、第2の偏波を有する放射を生成する(又は受信する)アンテナ素子は、第2の焦点距離に配置されてもよい。第1及び第2焦点距離の位置は、ルネベルグレンズの表面の周囲の第1及び第2の表面(例えば、第1及び第2の同心球)にそれぞれ配置されてもよい。
【0054】
ルネベルグレンズの周囲に配置されたアンテナ素子のアレイは、既存のフェーズドアレイの問題(例えば、高価な移相器の使用、大きな走査角でのビーム変形、スキャンブラインドネス、グレーティングローブ等)なしに、広い周波数範囲にわたる出射ビームを任意の所望の方向へ走査することができる。ルネベルグレンズの周囲に複数のアンテナ素子(例えば、送信機、受信機など)を取り付けることによって、新規な電子走査アレイ構造を実現することができる(例えば、
図1参照)。スイッチのみに基づく給電方法を用いて離散的な走査方向を有する代わりに、複数のアンテナ素子の位相及び振幅は、(例えば、制御副信号によって)制御されてもよい。これは、より細かいビーム走査及び所望の放射パターンの生成につながり得る。全てのアンテナ素子が同時に動作する必要がある従来のフェーズドアレイとは異なり、前述の走査アレイ構造は、高い指向性ビーム走査を達成するために、アンテナ素子のサブセットが同時に放射することを要求する場合がある。これは、ルネベルグレンズの高利得性により達成され得る。例えば、(例えば、所望の放射パターンを使用する)2個の隣接するソース/検出器間の高指向性ビーム走査は、いくつかの近接する給電素子を励起することによって達成され得る。
【0055】
一実施形態では、12度の半電力ビーム幅(half power beam width、HPBW)ルネベルグレンズは、10度離れて配置されるアンテナ素子(例えば、水平面内で36素子)によって囲まれてもよい。この実施態様では、約3~5個の隣接するアンテナ素子を同時に駆動することによって、1度の精度を有するビーム走査が達成され得る。そのため、従来のアンテナアレイと比較して、制御回路(例えば、移相器)の数が少なくてもよい可能性がある。その結果、システムの複雑さ及びコストを削減することができる。ルネベルグレンズ構成は、出射ビームの超広帯域化、走査角の広い対象範囲、走査中のビーム形状変動の低減等の結果につながり得る。
【0056】
図12は、
図3のGRINレンズに基づく無線通信システムの5個の隣接するアンテナ素子によって生成されるルネベルグレンズの例示的な走査パターンを示している。前述のように、
図3のシステムは、10度ずつ離れた36個のアンテナ素子を含む。個々のアンテナ素子の励起は、方位角平面において10度だけシフトされた放射パターンの生成をもたらす場合がある(例えば、放射パターンの中心ローブは10度だけシフトされる)。例えば、放射パターンは、0,10,20,30....350度に向けられてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、放射パターン(例えば、放射パターンの中心ローブ)を任意の角度(例えば、1,2,3,4,...9度)に向けることが望ましい。これは、エンドユーザ装置が、ルネベルグレンズに基づく通信システムを有する基地局に対して任意の角度に配置される場合に望ましい場合がある。
【0057】
図12は、10GHzの放射周波数において、1度離隔した角度に向けられた(例えば、1,2,3...9度の角度分離を有する)放射パターンを示す。これらの放射パターンは、36個のアンテナ素子のうちの5個のアンテナ素子による放射の振幅及び位相を制御することによって得られる。以上のように、アンテナ素子の放射の振幅及び位相は、制御システムによって制御できる。複数のアンテナ素子(例えば、5個以上のアンテナ素子)を励振することによって、複雑なビーム形状(例えば、ファンビーム)が生成されてもよい。
図13Aは、36個のアンテナ素子によって生成されたファンビームを示す。ファンビームは、90度のビーム幅を有する。
図13B及び
図13Cは、それぞれ、励起信号(例えば、制御副信号)の大きさ及び位相のプロットを示す。励起信号は、ファンビーム生成のために36個のアンテナ素子に印加される。広いファンビームは、広いエリア内の複数のターゲットとの通信、又は広いエリアを移動する標的との通信に使用されてもよい。
【0058】
アンテナ素子は、励起してビームヌル(例えば、ある角度における出射ビームの発生の抑制)を実現してもよい。
図14Aは、36個のアンテナ素子によるヌルビームの形成を示す。ヌルビームは、約30度から約70度にわたる約40度のビーム幅を有する。ヌルビームは、180度にわたって走査されてもよい。
図14B及び
図14Cは、ヌルビームの生成のために36個のアンテナ素子に印加される励起信号(例えば、制御副信号)の大きさ及び位相のプロットを示す。ヌルビームは、干渉緩和の目的で使用されてもよい。ある方向から来る強い干渉がある場合、その干渉を除去するためにヌルビームが適用されてもよい。また、アンテナ素子を励起して、複数のビームを同時に発生させることもできる。
図15は、異なる角度に向けられた4本のビームの同時生成を示している。
【0059】
ルネベルグレンズアレイに基づく通信システムは、各アンテナ素子の位相制御精度に依存する従来のフェーズドアレイ(例えば、半波長間隔のリニアアレイ)と比較して、高い位相誤差耐性を有する。アレイ素子の入力に様々な大きさ(各大きさについて平均値100)のランダム位相誤差を加えることにより、ビーム走査方向の誤差が推定され、従来の位相アレイの走査方向誤差がルネベルグレンズアレイのそれよりもはるかに大きい(例えば、約10倍)ことが示される。さらに、従来のフェーズドアレイでは、走査誤差は、位相誤差に応じて直線的に増加する一方で、ルネブルグレンズアレイでは、20度以下の位相誤差に対してほとんど影響がない。これにより、ルネベルグレンズに基づくアンテナ素子アレイの制御システム(例えば、アナログ又はデジタル制御回路)への性能要求が大幅に低減され得る。
【0060】
ルネベルグに基づく通信システムは、複数のアンテナ素子を所与の制御回路に接続するスイッチマトリクスを含んでもよい。スイッチマトリクスは、構成可能であってもよく、アンテナ素子と制御回路との間の接続を変化させてもよい。例えば、第1のアンテナ素子は、第1の時間期間に第1の制御回路に接続され、第2の時間期間に第2の制御回路に接続されてもよい。スイッチマトリクスは、制御システムの複雑化を抑制してもよい。例えば、デジタル/アナログ制御回路の数が低減されてもよい(例えば、アンテナ素子よりも制御回路が少ない)。スイッチマトリクスは、機械的な動作なしにアンテナ素子アレイを再構成可能にすることができる。これにより、走査速度、アンテナの寿命、及び通信システムの堅牢性を向上させることができる場合がある。
【0061】
スイッチマトリクスは、MEMSスイッチ、半導体スイッチ、又は他の相変化材料に基づくスイッチを含んでもよい。いくつかの実施形態では、4個の制御回路ユニットが4個のアンテナ素子に結合されてもよい。方位角平面における一次元360度の走査は、36個の素子によって達成されてもよい。方位角平面及び仰角平面における2次元の60度走査は、36個のアンテナ素子(例えば、6×6素子のアレイ)を用いて達成されてもよい。
【0062】
図16は、任意の制御回路(例えば、デジタルビームフォーマ)の出力がアレイの任意のアンテナ素子に配線されることを可能にし得る例示的なスイッチングマトリクス構成を示す。必要なSPDTスイッチの総数は、A×(n-1)に等しく、ここで、Aは回路ユニットの数であり、nはアンテナ素子の数である。4個の制御回路及び32個のアンテナ素子について、124個のSPDTスイッチが必要である。SPDTスイッチは、5段カスケードで配置されてもよい。このようなスイッチマトリクスの設計は、(1スイッチあたり0.5dBの損失と推定して)2.5dBの損失につながり得る。
【0063】
図16のスイッチマトリクス設計は、任意の制御回路を任意のアンテナ素子に配線できるため、非常に柔軟であり得る。いくつかの実施形態では、そのような柔軟性は必要ない場合があり、スイッチの数を減らすことと引き換えとされてもよい。これにより、スイッチマトリックスの複雑さを低減できる可能性がある。
図17は、他の例示的なスイッチングマトリクス構成を示す。この構成では、4個の制御回路を32個のアンテナ素子に接続するために28個のスイッチが必要である。SPDT(single-pole-double-throw switch)の代わりにSP4T(single-pole-four-throw switch)を使用することにより、スイッチの数をさらに減らすことができる。
【0064】
図18は、他の例示的なスイッチング構成を示す。この実施形態では、必要なSP4Tスイッチの総数は、(n-A)/3に等しく、ここで、Aは回路ユニットの数であり、nはアンテナ素子の数である。4個の制御回路と32個のアンテナ素子について、10個のSP4Tスイッチが必要です。
【0065】
スイッチングマトリクスのバイアス及び制御も、システムの実施形態の重要な要素になり得る。
図16~18のこれまでの設計例では、全てのスイッチに独立の(例えば、スイッチの選択用の)アドレス線が必要である。
図19は、所与のレベルの全てのスイッチが同一のアドレス線を共有し得る例示的なスイッチングマトリクス設計を示す。これは、スイッチの数と引き換えに達成されてもよい(例えば、総必要数は、(n-A)+(A-1)log2(n-A+1)である)。4個の制御回路と32個のアンテナ素子について、43個のSPDTスイッチが必要である。しかしながら、スイッチングマトリクスシステムでは、スイッチアドレスのためのデコーダは不要になるであろう。
【0066】
本開示の多くの特徴及び利点は、詳細な明細書から明らかであり、したがって、添付の請求の範囲によって、本開示の真の精神及び範囲内に入る本開示の全てのそのような特徴及び利点を含むことが意図される。さらに、多くの修正及び変形が当業者にとって容易に生じるため、本開示を図示及び説明された正確な構造及び動作に限定することは望ましくなく、したがって、本開示の範囲内に入る全ての適当な修正及び同等物が頼られ得る。
【国際調査報告】