(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】色純度が改善された発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20220930BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20220930BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20220930BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/58
H01L33/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506522
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2020071005
(87)【国際公開番号】W WO2021018784
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520445406
【氏名又は名称】プレッシー・セミコンダクターズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PLESSEY SEMICONDUCTORS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】メゾウアリ,サミル
(72)【発明者】
【氏名】シャノン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ストリブリー,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】アズィーズ,モフシン
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA22
5F142CE06
5F142CE15
5F142CG03
5F142CG05
5F142CG06
5F142CG23
5F142CG32
5F142DA14
5F142DA22
5F142DA36
5F142DA64
5F142DA73
5F142DB20
5F142EA34
5F142GA01
5F142HA05
(57)【要約】
色純度が改善された発光ダイオード。発光面からポンプ光波長を有するポンプ光を放射するように構成されたLED層を有する発光ダイオードが提供され、LED層は複数のIII族窒化物層を備える。容器層は、LED層の発光面に設けられ、容器面は、容器層を通ってLED層の発光面までの容器容積を画定する開口部を含む。色変換層は容器容積内に設けられ、色変換層は、ポンプ光を吸収し、ポンプ光波長よりも長い変換光波長の変換光を放射するように構成される。レンズは、開口部の上の容器面に設けられ、レンズは、レンズの色変換層とは反対側に凸面を有する。レンズの凸面上に設けられたポンプ光反射器積層体であって、第1の波長を中心とするポンプ光を反射するように構成された阻止帯域を有する、ポンプ光反射器積層体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードであって、
発光面からポンプ光波長を有するポンプ光を放射するように構成されたLED層であって、複数のIII族窒化物層を備えるLED層と、
前記LED層の前記発光面に設けられた容器層であって、前記容器層の前記発光面とは反対側に容器面を有し、前記容器面は、前記容器層を通って前記LED層の前記発光面までの容器容積を画定する開口部を含む、容器層と、
前記容器容積内に設けられた色変換層であって、ポンプ光を吸収し、前記ポンプ光波長よりも長い変換光波長の変換光を放射するように構成された色変換層と、
前記開口部の上の前記容器面に設けられたレンズであって、前記レンズの前記色変換層とは反対側に凸面を有するレンズと、
前記レンズの前記凸面に設けられ、第1の波長を中心とする前記ポンプ光を反射するように構成された阻止帯域を有するポンプ光反射器積層体であって、
前記レンズの前記凸面に設けられた第1の界面層であって、第1の厚さと第1の屈折率とを有し、前記第1の屈折率と前記第1の厚さとの積は、前記第1の波長の8分の1である、第1の界面層と、
複数の層であって、
第2の屈折率と第2の厚さとを有する低反射率層であって、前記第2の屈折率は前記第1の屈折率よりも低い、低反射率層と、
第3の厚さと前記第2の屈折率よりも高い第3の屈折率とを有する高反射率層と、の間で交互になっており、
前記低反射率層の各々についての前記第2の屈折率と前記第2の厚さとの積は、前記第1の波長の4分の1であり、前記高反射率層の各々についての前記第3の屈折率と前記第3の厚さとの積は、前記第1の波長の4分の1である、複数の層と、
前記複数の層のうちの低反射率層に設けられ、第4の屈折率と第4の厚さとを有し、前記第4の屈折率と前記第4の厚さとの積は、前記第1の波長の8分の1であり、前記第4の屈折率は前記第2の屈折率よりも大きい、第2の界面層と、を備える、ポンプ光反射器積層体と、を備える、発光ダイオード。
【請求項2】
前記容器層は、前記容器容積を画定する内側側壁を備え、前記容器容積を画定する前記内側側壁は、前記LED層の前記発光面に対して鋭角に傾斜し、反射材料を備える、請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記LED層と前記色変換層との間に設けられ、第2の波長を中心とする前記変換光を反射するように構成された阻止帯域を有する変換光反射器積層体をさらに備え、前記変換光反射器積層体は、
前記LED層の前記発光面に設けられた第3の界面層であって、第5の厚さと第5の屈折率とを有し、前記第5の厚さと前記第5の屈折率との積は、前記第2の波長の8分の1である、第3の界面層と、
複数の層であって、
第6の厚さと前記第5の屈折率よりも高い第6の屈折率とを有する変換光高反射率層と、
第7の屈折率と第7の厚さとを有し、前記第7の屈折率が前記第6の屈折率よりも低い変換光低反射率層との間で交互になっており、
前記変換光高反射率層の各々についての前記第6の屈折率と前記第6の厚さとの積は、前記第2の波長の4分の1であり、前記変換光低反射率層の各々についての前記第7の屈折率と前記第7の厚さとの積は、前記第2の波長の4分の1である、複数の層と、
前記複数の層のうちの変換光高反射率層に設けられ、第8の屈折率と第8の厚さとを有し、前記第8の屈折率と前記第8の厚さとの積は、前記第2の波長の8分の1であり、前記第8の屈折率は前記第6の屈折率よりも低い、第4の界面層と、を備える、請求項1または2に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記容器層の前記内側側壁に設けられた反射増強層をさらに備え、前記反射増強層は誘電体を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項5】
前記ポンプ光反射器積層体の上に設けられた反射防止層をさらに備え、前記反射防止層は、前記変換光波長の光の反射を低減するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項6】
前記ポンプ光反射器積層体の前記レンズとは反対側にレンズ界面層が設けられている、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項7】
前記色変換層は、量子ドットまたは蛍光体を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項8】
前記内側側壁は、前記LED層の前記発光面に対して少なくとも45°の角度を形成する、および/または
前記内側側壁は、前記LED層の前記発光面に対して85°以下の角度を形成する、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項9】
前記ポンプ光波長は、少なくとも440nmおよび/または480nm以下であってもよい、および/または
前記変換光波長は、少なくとも500nmおよび/または650nm以下であってもよい、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項10】
前記第1、第3、および/または第4の屈折率は少なくとも2である、および/または
前記第2の屈折率は1.8以下である、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項11】
前記容器層は、10
-8m
2以下の表面積を有する開口部を画定する、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項12】
前記第1の界面層の前記第1の屈折率、前記高反射率層の前記第3の屈折率、および前記第2の界面層の前記第4の屈折率は、同じである、および/または
前記第3の界面層の前記第5の屈折率、前記変換光低反射率層の前記第7の屈折率、および前記第4の界面層の前記第8の屈折率は、同じである、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項13】
前記ポンプ光反射器積層体の前記第1の波長(λ
0)、前記第2の屈折率(n
L)および前記第3の屈折率(n
H)は、前記ポンプ光波長よりも長い前記ポンプ光反射器積層体の上側阻止帯域波長(λ
e)を提供する、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【数1】
【請求項14】
前記ポンプ光反射器および/または前記変換光反射器は、TiO
2およびSiO
2の層を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載のLED。
【請求項15】
発光ダイオードアレイであって、
複数のLEDを含むLED層であって、各LEDは発光面からポンプ光波長のポンプ光を放射するように構成され、各LEDは複数のIII族窒化物層を備える、LED層と、
前記LED層の前記発光面に設けられた容器層であって、前記容器層の前記発光面とは反対側に容器面を有し、前記容器面は、各々が前記容器層を通って前記LED層の前記発光面までの容器容積を画定する複数の開口部を含み、各開口部および容器容積は、前記LED層のそれぞれのLEDと位置合わせされている、容器層と、
容器容積内に選択的に設けられた色変換層であって、ポンプ光を吸収し、前記ポンプ光波長よりも長い第1の変換光波長の第1の変換光を放射するように構成された色変換層と、
色変換材料を含む前記容器容積への前記開口部の上の前記容器面に設けられたレンズであって、前記レンズの前記色変換層とは反対側に凸面を有するレンズと、
前記レンズの前記凸面に設けられ、第1の波長を中心とする前記ポンプ光を反射するように構成された阻止帯域を有するポンプ光反射器積層体であって、
前記レンズの凸面に設けられた第1の界面層であって、第1の厚さと第1の屈折率とを有し、前記第1の屈折率と前記第1の厚さとの積は、前記第1の波長の8分の1である、第1の界面層と、
複数の層であって、
第2の屈折率と第2の厚さとを有する低反射率層であって、前記第2の屈折率は前記第1の屈折率よりも低い、低反射率層と、
第3の厚さと前記第2の屈折率よりも高い第3の屈折率とを有する高反射率層と、の間で交互になっており、
前記低反射率層の各々についての前記第2の屈折率と前記第2の厚さとの積は、前記第1の波長の4分の1であり、前記高反射率層の各々についての前記第3の屈折率と前記第3の厚さとの積は、前記第1の波長の4分の1である、複数の層と、
前記複数の層のうちの低反射率層に設けられ、第4の屈折率と第4の厚さとを有し、前記第4の屈折率と前記第4の厚さとの積は、前記第1の波長の8分の1であり、前記第4の屈折率は前記第2の屈折率よりも長い、第2の界面層と、を備える、ポンプ光反射器積層体と、を備える、発光ダイオードアレイ。
【請求項16】
さらなる色変換層が前記複数の容器容積のうちのさらなる容器容積内に設けられ、前記さらなる色変換層は、ポンプ光を吸収し、前記第1の変換光波長よりも長い第2の変換光波長の第2の変換光を放射するように構成され、
前記さらなる容器容積の上にレンズが設けられ、前記レンズにポンプ光反射器積層体が設けられている、
請求項15に記載の発光ダイオードアレイ。
【請求項17】
前記色変換層と前記LED層の前記対応するLEDの前記発光面との間に設けられた少なくとも1つの変換光反射器積層体をさらに備え、前記変換光反射器積層体は、第2の波長を中心とする前記第1および/または第2の変換光を反射するように構成された阻止帯域を有し、前記変換光反射器積層体は、
前記LED層の前記発光面に設けられた第3の界面層であって、第5の厚さと第5の屈折率とを有し、前記第5の厚さと前記第5の屈折率との積は、前記第2の波長の8分の1である、第3の界面層と、
複数の層であって、
第6の厚さと前記第5の屈折率よりも高い第6の屈折率とを有する変換光高反射率層と、
第7の屈折率と第7の厚さとを有し、前記第7の屈折率が前記第6の屈折率よりも低い変換光低反射率層との間で交互になっており、
前記変換光高反射率層の各々についての前記第6の屈折率と前記第6の厚さとの積は、前記第2の波長の4分の1であり、前記変換光低反射率層の各々についての前記第7の屈折率と前記第7の厚さとの積は、前記第2の波長の4分の1である、複数の層と、
前記複数の層のうちの変換光高反射率層に設けられ、第8の屈折率と第8の厚さとを有し、前記第8の屈折率と前記第8の厚さとの積は、前記第2の波長の8分の1であり、前記第8の屈折率は前記第6の屈折率よりも低い、第4の界面層と、を備える、
請求項15または請求項16に記載の発光ダイオードアレイ。
【請求項18】
前記容器層は、前記容器容積を画定する複数の内側側壁を備え、前記容器容積を画定する前記内側側壁は、前記LED層の前記発光面に対して鋭角に傾斜し、反射材料を備える、請求項15から17のいずれか1項に記載のLEDアレイ。
【請求項19】
前記容器層の前記内側側壁に設けられた反射増強層をさらに備え、前記反射増強層は誘電体を備える、請求項18に記載のLEDアレイ。
【請求項20】
各ポンプ光反射器積層体の上に設けられた反射防止層をさらに備え、前記反射防止層は、前記第1の変換光波長および/または前記第2の変換光波長の光の反射を低減するように構成される、請求項15から19のいずれか1項に記載のLEDアレイ。
【請求項21】
各色変換層は量子ドットまたは蛍光体を備える、請求項15から20のいずれか1項に記載のLEDアレイ。
【請求項22】
前記内側側壁は、前記LED層の前記発光面に対して少なくとも30°の角度を形成する、および/または
前記内側側壁は、前記LED層の前記発光面に対して85°以下の角度を形成する、請求項15から21のいずれか1項に記載のLEDアレイ。
【請求項23】
前記ポンプ光波長は、少なくとも440nmおよび/または480nm以下であってもよい、および/または
前記第1の変換光波長は、少なくとも500nmおよび/または650nm以下であってもよい、および/または
前記第2の変換光波長は、少なくとも600nmおよび/または650nm以下であってもよい、請求項15から22のいずれか1項に記載のLEDアレイ。
【請求項24】
前記ポンプ光反射器積層体はSiO
2およびTiO
2の層を備える、請求項15から23のいずれか1項に記載のLEDアレイ。
【請求項25】
前記ポンプ光反射器積層体は、酸素を備える複数の層と、フッ素を備える複数の層とを備える、請求項15から23のいずれか1項に記載のLEDアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、発光ダイオード(LED)およびLEDアレイに関する。特に、本開示は、III族窒化物を含むLEDに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
マイクロLEDアレイは、一般に、100×100μm2以下のサイズを有するLEDのアレイとして定義される。マイクロLEDアレイは、スマートウォッチ、ヘッドウェアディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、カムコーダ、ビューファインダ、マルチサイト励起源、およびピコプロジェクタなどの様々なデバイスでの使用に適した自発光マイクロディスプレイ/プロジェクタである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マイクロLEDアレイの1つの既知の形態は、III族窒化物から形成された複数のLEDを備える。III族窒化物LEDは、活性発光領域にGaNおよびそのInNとAlNとの合金を含む無機半導体LEDである。III族窒化物LEDは、従来の大面積LED、例えば光発生層が有機化合物である有機発光ダイオード(OLED)よりも著しく高い電流密度で駆動することができ、より高い光出力密度を放射することができる。結果として、所与の方向における光源の単位面積当たりに放射される光の量として定義されるより高い輝度(明るさ)は、マイクロLEDを高い輝度を必要とする、高い輝度それから利益を得る用途に好適なものとする。例えば、高輝度から恩恵を受ける用途は、高輝度環境のディスプレイまたはプロジェクタを含み得る。さらに、III族窒化物マイクロLEDは、他の従来の大面積LEDと比較して、ワット当たりのルーメン(lm/W)で表される比較的高い発光効率を有することが知られている。III族窒化物マイクロLEDアレイの比較的高い発光効率は、他の光源と比較して電力使用を低減し、マイクロLEDを携帯用デバイスに特に適したものにする。
【0004】
多くの用途において、ある範囲の波長を有する光を出力することができるマイクロLEDアレイ(すなわち、カラーディスプレイ/プロジェクタ)を提供することが望ましい。例えば、多くのカラーディスプレイでは、共通の基板上に複数の画素を有するマイクロLEDアレイを提供することが望ましく、各画素は、例えば、赤色、緑色、および青色光の組み合わせを出力することができる。
【0005】
一般に、各々が異なる色の範囲を出力することができる複数の画素を備えるLEDカラーディスプレイを提供するための2つの主な手法がある。1つの手法は、アレイの各画素に複数のLEDを提供しようとするものであり、各LEDは異なる波長の光を放射するように配置される。
【0006】
別の手法は、アレイの各画素に蛍光体または量子ドットなどの1つまたは複数の色変換材料を提供することである。そのような色変換材料は、サブ画素の所望の色を提供するために、より高いエネルギーの光(ポンプ光)をより低いエネルギーの光(変換光)に変換することができる。
【0007】
色変換材料を使用することに関する1つの問題は、ポンプ光波長から変換光波長に光を効率的に変換し、次いで変換光のみを装置から抽出することが困難であることである。変換光を抽出する効率を低下させる1つの要因は、色変換材料(例えば量子ドット)も変換光を吸収し得ることである。
【0008】
さらに、色変換材料を使用する場合、LEDはポンプ光ではなく変換光のみを出力することが望ましい。ポンプ光がLEDから漏れると、LEDの色純度が低下する。LEDの色純度は、多くの用途、例えばディスプレイにおいて、LEDにとって重要なパラメータである。
【0009】
ポンプ光漏れを低減する1つの選択肢は、分布ブラッグ反射器を使用してポンプ光を反射することである。「Optical cross-talk reduction in a quantum dot-based full-colour micro-light-emitting-diode display by a lithographic-fabricated photoresist mold」、Photonics Research、第5巻、第5冊、2017年10月では、量子ドット(QD)の効率的な励起源としてUVマイクロLEDアレイが使用されている。サブ画素間の光クロストークを低減するために、単純なリソグラフィ方法およびフォトレジストを使用して、QDを追加するための開口部とクロストーク低減のための遮断壁とからなるモールドを製造する。分布ブラッグ反射器(DBR)がQDの上に設けられ、QDを通過するUV光を反射し、それによってQDの発光を増加させる。DBRはまた、ポンプ光がLEDを通過するのを防止することによってLEDの色純度を高めるように作用する。
【0010】
ポンプ光漏れをさらに低減するために、色変換材料が提供されるLEDの部分は、ポンプ光を吸収するように構成された材料で裏打ちされてもよい。Guan-Syun Chenらによる「Monolithic Red/Green/Blue Micro-LED with HBR and DBR structures」、IEEE Photonics Technology Letters、第30号、第3冊、2018年2月1日では、遮光能力を有するブラックマトリクスフォトレジストがマイクロLED上にスピンされる。ブラックマトリクスフォトレジストは、赤色または緑色量子ドットを含む青色マイクロLEDの側面から放射される青色光を遮断することができる。これにより、ブラックマトリクスフォトレジストによって、隣り合うLED間の青色光クロストークが低減される。しかし、各サブ画素の内壁に入射した可視光はすべて吸収されるため、変換効率が大幅に低下する。
【0011】
したがって、色純度と色変換材料を備えるLEDの効率とをさらに改善する必要がある。
【0012】
本発明の目的は、従来技術のLEDに関連する問題の少なくとも1つに対処する、または少なくとも、それに対する商業的に有用な代替物を提供する改善されたLEDを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
本発明者らは、色変換材料を備えるLEDの純度も向上させながら、色効率を改善し、各画素間のクロストークを遮断することが望ましいことを認識した。そのようなLEDの色純度および効率に影響を及ぼす要因には、LEDからのポンプ光漏れ、ポンプ光を変換する際の色変換材料の効率、および変換光を抽出する際のLEDの効率が含まれる。
【0014】
本発明者らは、「Optical cross-talk reduction in a quantum dot-based full-colour micro-light-emitting-diode display by a lithographic-fabricated photoresist mold」に開示されているDBRなどの従来のDBRが、色変換材料を有するLEDに適用された場合にいくつかの明確な欠点を有することを認識した。
図1aは、異なる入射角の範囲における従来のDBRの反射率の概略図を示す。通過帯域領域(すなわち、阻止帯域のいずれかの側)におけるDBRの反射率は阻止帯域における反射率よりも小さいが、反射率は依然として有意であることが理解されよう。
【0015】
図1aに示すように、DBRの入射角を変えると、通過帯域の反射率の高調波ピークのピーク波長がシフトする。
図1aに示すように、(法線に対して)入射角を0°と30°との間で変化させると、高調波ピークが可視光波帯のかなりの割合にわたってシフトする。
【0016】
色変換材料(例えば、量子ドット)によって出力された変換光は、色変換材料から全方向に出力される。したがって、DBRを組み込んだLEDの場合、DBRに入射する変換光のかなりの割合は、非ゼロ入射角を有する。これは、変換光波長(例えば、緑色光または赤色光)では低い反射率を有するが、ポンプ光波長(例えば、青色光)では高い反射率を有する反射器の設計にとって課題となる。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、LEDが提供される。LEDは、LED層と、容器層と、色変換層と、レンズと、ポンプ光反射器積層体とを備える。LED層は、発光面からポンプ光波長を有するポンプ光を放射するように構成され、LED層は、複数のIII族窒化物層を備える。容器層は、LED層の発光面に設けられている。容器層は、容器層の発光面とは反対側に容器面を有し、容器面は、容器層を通ってLED層の発光面までの容器容積を画定する開口部を含む。色変換層は容器容積内に設けられ、色変換層は、ポンプ光を吸収し、ポンプ光波長よりも長い変換光波長の変換光を放射するように構成される。レンズは、開口部の上の容器面に設けられる。レンズは、レンズの色変換層とは反対側に凸面を有する。レンズの凸面には、ポンプ光反射器積層体が設けられている。ポンプ光反射器積層体は、ポンプ光を反射するように構成された阻止帯域を有する。阻止帯域は、第1の波長を中心とする。ポンプ光反射器積層体は、
(i)レンズの凸面に設けられた第1の界面層であって、第1の厚さと第1の屈折率とを有し、第1の屈折率と第1の厚さとの積は、第1の波長の8分の1である、第1の界面層と、
(ii)第2の屈折率を有する低反射率層と第2の厚さとの間で交互になっている複数の層であって、第2の屈折率は第1の屈折率よりも低い、複数の層と、第3の厚さと第2の屈折率よりも高い第3の屈折率とを有する高反射率層であって、低反射率層の各々についての第2の屈折率と第2の厚さとの積は、第1の波長の4分の1であり、高反射率層の各々についての第3の屈折率と第3の厚さとの積は、第1の波長の4分の1である、高反射率層と、
(iii)複数の層のうちの低反射率層に設けられた第2の界面層であって、第4の屈折率と第4の厚さとを有し、第4の屈折率と第4の厚さとの積は、第1の波長の8分の1である、第2の界面層と、を備える。
【0018】
第1の態様によるポンプ光反射器積層体は、LED層が発生するポンプ光波長の光に対して高い反射率を有するように構成されている。反射器積層体はまた、色変換材料によって出力される変換光波長の光に対して低い反射率を有するように構成される。したがって、ポンプ光反射器積層体は、実質的にポンプ光波長程度の波長を有する光の帯域阻止フィルタであり、変換光を透過させる。当該技術分野で知られているDBRとは対照的に、ポンプ光反射器積層体の反射率は、その上側通過帯域に抑制された高調波ピークを有する。したがって、色変換材料によって出力される変換光の下側部分は、DBRと比較してポンプ光反射器積層体によって反射される。
【0019】
さらに、上側通過帯域におけるポンプ光反射器積層体の反射率は、光の入射角の変化に対する感度が著しく低い。例えば、第1の態様によるポンプ光反射器積層体は、0°から30°までおよびそれを超える入射角でポンプ光反射器積層体に入射する変換光に対して比較的低い(例えば10%未満)ままである反射率を有し得る。したがって、ポンプ光反射器積層体は、従来のDBRと比較して、異なる入射角の範囲を有する変換光の下側部分を反射する。
【0020】
本発明者らはまた、LEDに反射器を設けることに関連するさらなる問題が、45°を超える入射角で反射器に入射する光が、反射器とLEDとの間の界面で全内部反射されることであると認識した。上述したように、色変換材料は、一般に、変換光の一部を吸収する。したがって、変換光の内部反射は、LEDを出る変換光の割合を減少させるだけでなく、色変換材料によって吸収される変換光の割合も増加させる。これらの作用はいずれも、変換光を出力するためのLEDの効率を低下させる。
【0021】
第1の態様によるLEDは、レンズの凸面にポンプ光反射器積層体を設けることで、LEDが変換光を出力する効率をより高めることを目的とする。ポンプ光反射器積層体が凸面に設けられることで、平面上にポンプ光反射器積層体を設ける場合と比較して、45°を超える入射角でポンプ光反射器積層体に入射する変換光の割合が減少する。したがって、変換光の大部分は、内部反射ではなくポンプ光反射器積層体を透過する。
【0022】
ポンプ光反射器積層体は、事実上、帯域阻止フィルタである。したがって、ポンプ光反射器積層体は、実質的にすべての光がポンプ光反射器積層体によって反射される下側阻止帯域波長から上側阻止帯域波長までの波長の範囲にわたって阻止帯域を有する。阻止帯域は、上側阻止帯域波長および下側阻止帯域波長が中心波長から等距離になるように、中心波長(例えば、第1の波長)を中心とする。ポンプ光反射器積層体の阻止帯域は、ポンプ光波長が阻止帯域内に入るように構成され、それによってポンプ光がポンプ光反射器積層体によって反射されることを確実にする。阻止帯域の中心波長(第1の波長)は、ポンプ光波長とは異なり得ることが当業者には理解されよう。すなわち、いくつかの実施形態ではそうであり得るが、阻止帯域はポンプ光波長を中心としなくてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、容器層は、容器容積を画定する内側側壁を備え、容器容積を画定する内側側壁は、LED層の発光面に対して鋭角に傾斜し、反射材料を備える。容器層に反射側壁を設けることにより、側壁に入射する光の大部分が(光吸収側壁に対して)容器容積内に反射される。したがって、色変換材料から全方向に生成され得る変換光の大部分がLEDから抽出され得る。さらに、側壁は、光の大部分がポンプ光反射器積層体に向かって反射されるように傾斜している。傾斜した反射側壁を設けることにより、ポンプ光反射器積層体への変換された入射の割合が増加し、変換光は様々な入射角で入射する。上述したように、上側通過帯域におけるポンプ光反射器積層体の反射率は、光の入射角の変化に対する感度が著しく低い。したがって、傾斜した反射側壁とポンプ光反射器積層体との間には、LEDからの変換光の取り出し効率を高める相乗効果が存在し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、LEDは、容器層の内側側壁に設けられた反射増強層をさらに備え、反射増強層は誘電体を備える。例えば、反射増強層はSiO2を備えてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、LEDは、ポンプ光反射器積層体の上に設けられた反射防止層をさらに備え、反射防止層は、変換光波長の光の反射を低減するように構成される。いくつかの実施形態では、反射防止層は、ポンプ光反射器積層体の第2の界面層の屈折率よりも低い屈折率を有する材料を備える。いくつかの実施形態では、反射防止層は、第1の波長の4分の1の厚さを有する。LEDの変換光取り出し効率を高めるために、反射防止層が設けられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、LED層と色変換層との間に変換光反射器積層体を設けてもよい。変換光反射器積層体は、第2の波長を中心とする変換光を反射するように構成された阻止帯域を有し、変換光反射器積層体は、
(a)LED層の発光面に設けられた第3の界面層であって、第5の厚さと第5の屈折率とを有し、第5の厚さと第5の屈折率との積は、第2の波長の8分の1である、第3の界面層と、
(b)複数の層であって、
第6の厚さと第5の屈折率よりも高い第6の屈折率とを有する変換光高反射率層と、
第7の屈折率と第7の厚さとを有し、第7の屈折率が第6の屈折率よりも低い変換光低反射率層との間で交互になっており、
変換光高反射率層の各々についての第6の屈折率と第6の厚さとの積は、第2の波長の4分の1であり、変換光低反射率層の各々についての第7の屈折率と第7の厚さとの積は、第2の波長の4分の1である、複数の層と、
(c)複数の層のうちの変換光高反射率層に設けられた第4の界面層であって、第8の屈折率と第8の厚さとを有し、第8の屈折率と第8の厚さとの積は、第2の波長の8分の1であり、第8の屈折率は第6の屈折率よりも低い、第4の界面層と、を備える。
【0027】
上述のポンプ光反射器積層体を参照すると、変換光反射器積層体は、実際には変換光を反射するがポンプ光を透過するように構成された帯域阻止フィルタである。変換光反射器積層体は、LEDの変換光取り出し効率を高めるために、容器層の開口部(すなわち、ポンプ光反射器積層体への)に向けられる変換光の割合を増加させるために設けられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、ポンプ光反射器積層体のレンズとは反対側にレンズ界面層が設けられる。レンズ界面層は、ポンプ光反射器層の反対側にさらなる凸面を有することができる、すなわち、レンズ界面層は、レンズおよびポンプ光反射器の上部にさらなるレンズ形状を画定することができる。レンズ界面層は、レンズと組み合わせてレンズ超構造体と考えることができる。したがって、ポンプ光反射器積層体は、レンズ超構造体内に設けられると考えることができる。いくつかの実施形態では、反射防止層は、レンズ界面層のさらなる凸面上のポンプ光反射器層の上に設けられてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、色変換層は、量子ドットおよび/または蛍光体を備える。いくつかの実施形態では、容器容積の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%は色変換層によって充填されてもよい。いくつかの実施形態では、色変換層は、実質的に容器容積の中央領域に設けられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、内側側壁は、LED層の発光面に対して少なくとも30°の角度を形成する。したがって、内側側壁の傾斜を設けて、容器容積の開口部に反射される変換光の割合を増加させることができる。いくつかの実施形態では、内側側壁は、LED層の発光面に対して85°以下の角度を形成する。したがって、内側側壁の傾斜は、容器層の開口部のかなりの割合がLED層の発光面と整列するように設けられてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、ポンプ光波長は、少なくとも440nmおよび/または480nm以下であってもよい、および/または変換光波長は、少なくとも500nmおよび/または650nm以下であってもよい。したがって、第1の態様によるLEDは、青色ポンプ光を異なる色の光に変換するように構成されてもよい。例えば、LEDは、赤色または緑色の変換光を出力することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、容器層は、10-8m2以下の表面積を有する開口部を画定する。いくつかの実施形態では、容器層は、100μm×100μm未満の面積寸法を有する開口部を画定することができる。したがって、第1の態様によるLEDは、マイクロLEDであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポンプ光反射器および/または変換光反射器は、TiO2およびSiO2の層を含むことができる。したがって、ポンプ光反射器および/または変換光反射器は、ディスプレイ、マイクロLEDディスプレイなどの薄膜電子デバイスの製造に一般的に使用される薄膜堆積方法を使用して製造することができる。特に、ポンプ光反射器の層は、510nm~550nmの範囲(緑色LEDの場合)および600nm~630nmの範囲(赤色LEDの場合)の通過帯域における高調波反射を抑制するように構成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1、第3、および/または第4の屈折率は少なくとも2である。いくつかの実施形態では、第2の屈折率は1.8以下である。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の界面層の第1の屈折率、高反射率層の第3の屈折率、および第2の界面層の第4の屈折率は同じである。いくつかの実施形態では、第3の界面層の第5の屈折率、変換光低反射率層の第7の屈折率、および第4の界面層の第8の屈折率は同じである。したがって、ポンプ光反射器積層体および変換光反射器積層体の各々は、2つの異なる組成の交互層によって提供されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、ポンプ光反射器積層体の第1の波長(λ0)、第2の屈折率(nL)および第3の屈折率(nH)は、ポンプ光波長よりも長いポンプ光反射器積層体の上側阻止帯域波長(λe)を提供し、ここで、以下が成り立つ。
【0037】
【0038】
本開示の第2の態様によれば、発光ダイオード(LED)アレイが提供される。LEDアレイは、LED層と、容器層と、色変換層と、レンズと、ポンプ光反射器とを備える。LED層は複数のLEDを備え、各LEDは発光面からポンプ光波長のポンプ光を放射するように構成され、各LEDは複数のIII族窒化物層を備える。容器層は、LED層の発光面に設けられている。容器層は、容器層の発光面とは反対側に容器面を有する。容器面は、各々が容器層を通ってLED層の発光面までの容器容積を画定する複数の開口部を含み、各開口部および容器容積は、LED層のそれぞれのLEDと整列している。色変換層は容器容積内に選択的に設けられ、色変換層は、ポンプ光を吸収し、ポンプ光波長よりも長い変換光波長の変換光を放射するように構成される。レンズは、色変換材料を収容する容器容積への開口部の上の容器面に設けられ、レンズは、レンズの色変換層とは反対側に凸面を有する。レンズの凸面には、ポンプ光反射器積層体が設けられている。ポンプ光反射器積層体は、第1の波長を中心とするポンプ光を反射するように構成された阻止帯域を有する。ポンプ光反射器積層体は、
(1)レンズの凸面に設けられた第1の界面層であって、第1の厚さと第1の屈折率とを有し、第1の屈折率と第1の厚さとの積は、第1の波長の8分の1である、第1の界面層と、
(2)複数の層であって、
第2の屈折率と第2の厚さとを有し、第2の屈折率は第1の屈折率よりも低い、低反射率層と、
第3の厚さと第2の屈折率よりも高い第3の屈折率とを有する高反射率層との間で交互になっており、
低反射率層の各々についての第2の屈折率と第2の厚さとの積は、第1の波長の4分の1であり、高反射率層の各々についての第3の屈折率と第3の厚さとの積は、第1の波長の4分の1である、複数の層と、
(3)複数の層のうちの低反射率層に設けられた第2の界面層であって、第4の屈折率と第4の厚さとを有し、第4の屈折率と第4の厚さとの積は、第1の波長の8分の1であり、第4の屈折率は第2の屈折率よりも長い、第2の界面層と、を備える。
【0039】
したがって、複数のLEDを含むLEDアレイを設けることができる。アレイ内のLEDの少なくとも1つは、本発明の第1の態様に記載されているように、ポンプ光反射器を有するレンズによって覆われた色変換層を含む。したがって、第1の態様によるLEDアレイは、色変換層を有するLED、および/または色変換層を含まないLEDの選択的使用によって、異なる波長(色)の範囲を有する光を出力することができる。したがって、LEDアレイは、ポンプ光波長および/または第1の変換光波長を有する光を出力することができる。重要なことに、LEDアレイは、少なくとも第1の態様について上述した理由から、改善された効率および色純度で第1の変換光波長の光を出力することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、さらなる色変換層が複数の容器容積のうちのさらなる容器容積内に設けられ、さらなる色変換層は、ポンプ光波長のポンプ光を吸収し、第1の変換光波長よりも長い第2の変換光波長の変換光を放射するように構成される。いくつかの実施形態では、レンズがさらなる容器容積の上に設けられ、ポンプ光反射器積層体がレンズの上に設けられる。
【0041】
したがって、LEDアレイは、それぞれの容器容積内に設けられた異なる色変換層を有する複数のLEDを含むことができる。例えば、第1の色変換層は第1の容器容積内に設けられてもよく、第2の色変換層は第2の容器容積内に設けられてもよい。第1および第2の色変換層は、ポンプ光を変換光の異なる波長、例えばそれぞれ緑色および赤色に変換するように構成されてもよい。したがって、第2の態様によるLEDアレイは、LEDディスプレイの1つまたは複数の画素を提供することができ、各画素は、赤色、緑色、および青色光(青色光はポンプ光である)を出力するLEDを含む。
【0042】
図1bは、DCI-P3色空間規格の一例を示す。LEDアレイのディスプレイ用途では、DCI-P3色空間規格に準拠するLEDアレイ内に複数のLEDを設けることが望ましい。DCI-P3に準拠するために、色変換層は、例えば、量子ドットを備えてもよい。したがって、第1の色変換層は、532nmの波長を有する変換光を生成するように構成されてもよく、第2の色変換層は、625nmの波長を有する変換光を生成するように構成されてもよい。第1および第2の色変換材料は、それぞれ第1および第2の色変換材料について40nmおよび50nmのスペクトル幅(半値全幅)を有してもよい。ポンプ光(青色サブ画素を提供する)は、20nmのスペクトル幅を有する455nmのピーク波長を有してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、色変換層とLED層の対応するLEDの発光面との間に少なくとも1つの変換光反射器積層体が設けられる。変換光反射器積層体は、第2の波長を中心とする第1および/または第2の変換光を反射するように構成された阻止帯域を有する。変換光反射器積層体は、
(x)LED層の発光面に設けられた第3の界面層であって、第5の厚さと第5の屈折率とを有し、第5の厚さと第5の屈折率との積は、第2の波長の8分の1である、第3の界面層と、
(y)複数の層であって、
第6の厚さと第5の屈折率よりも高い第6の屈折率とを有する変換光高反射率層と、
第7の屈折率と第7の厚さとを有し、第7の屈折率が第6の屈折率よりも低い変換光低反射率層との間で交互になっており、
変換光高反射率層の各々についての第6の屈折率と第6の厚さとの積は、第2の波長の4分の1であり、変換光低反射率層の各々についての第7の屈折率と第7の厚さとの積は、第2の波長の4分の1である、複数の層と、
(z)複数の層のうちの変換光高反射率層に設けられた第4の界面層であって、第8の屈折率と第8の厚さとを有し、第8の屈折率と第8の厚さとの積は、第2の波長の8分の1であり、第8の屈折率は第6の屈折率よりも低い、第4の界面層と、を備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、容器層は、容器容積を画定する複数の内側側壁を備え、容器容積を画定する内側側壁は、LED層の発光面に対して鋭角に傾斜し、反射材料を備える。したがって、LEDアレイの各LEDの容器容積は、各LEDから取り出される光の量を増加させるように構成されてもよい。
【0045】
本発明の第1の態様の任意選択の特徴は、本発明の第2の態様、特に色変換層を組み込んだLEDアレイのLEDにも適用できることが理解されよう。
【0046】
図面の簡単な説明
本開示は、以下の非限定的な図に関連して説明される。本開示のさらなる利点は、図面と併せて考慮するとき、詳細な説明を参照することによって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1a】異なる入射角の範囲に対する分布ブラッグ反射器の反射率のグラフである。
【
図1b】DCI-P3規格のRGB色空間図である。
【
図2】本開示の一実施形態によるLEDアレイの図である。
【
図3】本開示のさらなる実施形態によるLEDアレイの図である。
【
図4a】本開示の一実施形態による色変換領域の中心におけるLEDサブ画素の光線追跡図である。
【
図4b】本開示の一実施形態による色変換領域の縁部におけるLEDサブ画素の光線追跡図である。
【
図5】赤色、緑色、および青色LEDを備えるLEDアレイの斜視図である。
【
図6】本開示の一実施形態によるLEDの容器層の図である。
【
図8】本開示の一実施形態による反射器積層体の図である。
【
図9】中央阻止帯域波長および上側阻止帯域波長を示す反射器積層体の反射率のグラフである。
【
図10】反射防止層を含む反射器積層体の反射率のグラフである。
【
図11】本開示のさらなる実施形態によるLEDアレイの図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
本開示の一実施形態によれば、LEDアレイ10が提供される。LEDアレイは3つのLEDを含み、各LEDは異なる波長の光を出力するように構成される。LEDの少なくとも1つは、色変換材料を含む。したがって、LEDアレイ10はまた、本開示の一実施形態によるLEDを含む。
【0049】
図2は、本開示の一実施形態によるLEDアレイ10の図である。
図2に示すLEDアレイは、緑色LED100、赤色LED200、および青色LED300を備える。
【0050】
LEDアレイ10は、光発生層20を備える。光発生層20は、半導体接合のアレイを含み、各半導体接合は、ポンプ光を出力するように構成される。したがって、光発生層20は、ポンプ光LED21、22、23のアレイであると考えることができる。
図2の実施形態では、ポンプ光LED21、22、23のアレイの各々は、III族窒化物を備える。ポンプ光LED21、22、23の各々は、n型半導体層(図示せず)と、複数の量子井戸(図示せず)を含む活性層と、p型半導体層(図示せず)とを含む。例えば、光発生層20は、基板上にポンプ光LEDのアレイをモノリシックに形成し、続いて基板を除去して光発生層20の発光面24を露出させることによって提供されてもよい。ポンプ光LED21、22、23のモノリシックアレイの製造は、少なくとも英国特許第181109.6号明細書にさらに記載されている。
【0051】
もちろん、他の実施形態では、ポンプ光LEDのアレイに透明接点を設けて、光発生層20の発光面24を発光面24の基板とは反対側に設けることができる。すなわち、光発生層20の発光面24は、光発生層20の任意の主面であってもよい。
【0052】
図2に示す光発生層20は、3つのポンプ光LEDを含む。各ポンプ光LED21、22、23は、ポンプ光波長の光を出力するように構成されている。例えば、
図2の実施形態では、ポンプ光の波長は青色可視光に対応し得る。いくつかの実施形態では、ポンプ光の波長は、少なくとも440nmおよび/または470nm以下であり得る。特に、ポンプ光の波長は、少なくとも450nm、および/または460nm以下であり得る。本開示では、LEDが波長を有する光を出力すると説明される場合、前記波長は、最も高い強度(ピーク強度)を有するLEDによって出力される光の波長であると考えられる。当該技術分野で知られているように、ポンプ光の波長は、ポンプ光LED21、22、23の活性層に存在する多重量子井戸によって決定され得る。
【0053】
図2に示すように、LEDアレイ10は、容器層30を含む。容器層30は、光発生層20の発光面上に設けられている。容器層30は、光発生層20の発光面24上に複数の容器容積31、32、33を画定する複数の内側側壁34を含む。各容器容積は、容器層を介して(すなわち、容器層30の厚さを介して)提供される。したがって、各容器容積31、32、33は、容器層の容器面35の開口部から発光面24を通って延在する。
【0054】
各容器容積31、32、33は、光発生層20のポンプ光LED21、22、23と位置合わせされる。容器層の内側側壁34は、容器容積31、32、33がポンプ光LEDとほぼ位置合わせされるように、ポンプ光LEDの各々を取り囲むことができる。いくつかの実施形態では、容器層30の内側側壁34は、各容器容積31、32、33の中心を各ポンプ光LED21、22、23の中心と位置合わせするように構成されてもよい。
【0055】
容器層30は、容器面35を含む。容器面35は、容器層30の光発生層20とは反対側に設けられた容器層30の面である。容器面35は、容器容積31、32、33の各々に1つずつ、複数の開口部を画定する。したがって、容器面35の開口部は、容器層30の内側側壁34によって画定される。容器層30の開口部は、様々な異なる形状で設けられてもよい。例えば、開口部は、楕円形、長方形、六角形、または実際には不規則または正多角形の任意の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、開口部の形状はポンプ光LEDの形状に対応するが、他の実施形態では、開口部の形状はポンプ光LED21、22、23の形状(平面図で)と異なっていてもよい。開口部の形状に応じて、各容器容積31、32、33は、1つまたは複数の内側側壁34によって画定されてもよい。例えば、楕円形の開口部の場合、単一の連続した内側側壁が容器容積を画定することができる。
図5は、本開示の一実施形態によるLEDアレイの斜視図である。
図5の実施形態では、各LEDは、長方形の輪郭を有する容器容積を含む。容器面35は、各々が長方形(正方形)の形状を有する複数(9つ)の開口部を画定する。長方形の開口部の場合、4つの内側側壁34が容器容積を画定することができ、以降同様である。
【0056】
図3は、本開示のさらなる実施形態によるLEDアレイの図である。
図3に示すLEDアレイは、緑色LED100、赤色LED200、および青色LED300を備える。いくつかの実施形態では、容器面35上の各LEDの開口部は、特性寸法D
0を有する。特性寸法D
0は、開口部の最大径である。例えば、円形開口部の場合、D
0は開口部の直径である。正方形の開口部の場合、D
0は対角の角から角までの距離である。いくつかの実施形態では、各レンズは、レンズの直径に基づく特性寸法D
1を有する。例えば、
図3において、レンズは半球形状を有する。半球レンズの直径は特性寸法D
1である。いくつかの実施形態では、0.1D
1≦D
0≦0.8D
1である。特に、開口部D
0の特性寸法は、LEDから効率的に光を取り出すために、レンズD
1の特性寸法の約50%であってもよい。
【0057】
図4aおよび
図4bは、半球レンズを有する
図3のLEDアレイのLEDについての光線追跡図を示す。
図4aに示すように、容器面の開口部の中心からの放射光の光線追跡図は、すべての出現する光線がレンズの界面に垂直入射することを示す。
図4bは、すべての光線が30°より小さいレンズ界面との入射角を有する、容器面の開口部の縁部から放射される光線をさらに示す。
【0058】
図5は、赤色、緑色、および青色LED(すなわち、RGBアレイ)を備えるLEDアレイの斜視図である。LEDアレイは9個のLEDを備え、そのうち3個のLEDは青色LEDであり、3個のLEDは赤色LEDであり、3個のLEDは緑色LEDである。LEDは、正方形敷き詰めアレイとして配置されている。他の実施形態では、他の配置、例えば六角形に敷き詰められたアレイが提供されてもよい。
【0059】
図6は、本開示の一実施形態によるLEDの容器層30の一部の図を示す。
図6に示すように、容器層30の内側側壁34は、光発生層20に対して傾斜している(すなわち、内側側壁34は、表面に対して垂直ではない)。
図6に示すように、内側側壁34は、発光面24と内側側壁34との間で鋭角に傾斜している。したがって、内側側壁34は、容器面35における容器容積31、32、33の開口部が、発光面24との界面における容器容積31、32、33の表面積よりも大きい表面積を有するように傾斜していてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、各容器容積31、32、33の側壁は、少なくとも35°の角度αで傾斜していてもよい。少なくとも35°の角度を設けることにより、各容器容積は、LEDアレイの画素ピッチが過剰にならないように表面積を有することができる。いくつかの実施形態では、各容器容積31、32、33の側壁は、85°以下の角度αで傾斜していてもよい。
図6に示す実施形態では、内側側壁34は、80°の角度αで傾斜している。いくつかの実施形態では、内側側壁に85°以下または60°以下の角度を設けることにより、変換光のより大きな割合が容器容積31、32、33の開口部に向けられ得るため、LEDの光学効率を高めることができる。
【0061】
容器層30は、反射材料を備えることができる。反射材料は、反射性の内側側壁34を有する容器層30を形成するために提供されてもよい。したがって、反射材料は、容器層30の外層として提供されてもよい。容器層30に反射性の内側側壁34を設けることにより、側壁に入射する光の大部分が(光吸収側壁に対して)容器容積内に反射される。したがって、色変換材料から全方向に生成され得る変換光の大部分がLEDから抽出され得る。反射材料は、薄膜金属、例えばAlまたはAGであってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、例えば
図6に示すように、LEDは、容器層30の内側側壁に設けられた反射増強層36をさらに備え、反射増強層36は誘電体を備える。例えば、反射増強層36は、SiO
2を備えてもよい。反射増強層36は、少なくとも容器層30の内側側壁34に設けられてもよい。反射増強層36は、変換光波長の約4分の1(25%)である、内側側壁34に垂直な厚さを有することができる。
【0063】
図2に示すように、容器容積31、32の少なくとも1つは、色変換層41を選択的に含むことができる。
図2の実施形態において、第1の(緑色)容器容積31は、第1の(緑色)色変換層41を含む。第2の(赤色)容器容積32は、第2の(赤色)色変換層42を含む。各色変換層は、ポンプ光を異なる波長の変換光に変換するように構成される。例えば、第1の色変換層41は、ポンプ光を緑色可視光に変換するように構成されてもよく、第2の色変換42層は、ポンプ光を赤色可視光に変換するように構成されてもよい。このように、色変換層は、少なくとも440nmおよび/または480nm以下の波長を有するポンプ光を変換するように構成されてもよく、第1の色変換層41は、ポンプ光を少なくとも500nmおよび/または550nm以下の波長を有する変換光に変換してもよい。第2の色変換層42は、ポンプ光を少なくとも600nmおよび/または650nm以下の波長を有する変換光に変換してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、色変換層41、42は量子ドットを備えてもよい。いくつかの実施形態では、色変換層41、42は蛍光体を備えてもよい。いくつかの実施形態では、色変換層41、42は、蛍光体と量子ドットとの組み合わせを備えてもよい。表面積が1mm2を超える容器容積を有するLEDおよびLEDアレイの場合、蛍光体の粒径が大きいほど有利であり得る。表面積が1mm2未満の容器容積を有するLEDおよびLEDアレイの場合、例えばマイクロLEDの場合、粒径が小さいため、量子ドットを備える色変換層を使用することが有利であり得る。量子ドットを含む色変換材料は当業者に公知である。色変換層として使用するのに適した量子ドットのさらなる詳細は、少なくともGuan-Syun Chenらによる「monolithic Red/Green/Blue Micro-LEDs with HBR and DBR structures」に見出すことができる。
【0065】
図2に示すように、色変換層41、42は、容器容積21、22にわたって延在してもよい。容器容積21、22は、色変換層によって少なくとも部分的に充填される。
【0066】
図2に示すように、LEDアレイ10の容器容積33の少なくとも1つは、色変換層を含まなくてもよい。したがって、LEDアレイ内のいくつかのLEDは、未充填の容器容積を通してポンプ光を出力することができる。例えば、ポンプ光が青色可視光である場合、容器容積は、青色LED300を提供するために色変換層を含まなくてもよい。
【0067】
図2に示すように、開口部の上の容器面35にレンズ51が設けられて第1の色変換層41を覆っている。レンズ51は、レンズの第1の色変換層41とは反対側に凸面を有する。レンズは、LEDと外部環境との間の界面で全内部反射される変換光の量を低減するために設けられる。
【0068】
レンズは、光学的に透明な材料を備えてもよい。例えば、レンズは、シリコン、SiO2、または他の誘電材料を備えることができる。レンズは、例えば、「Micro Resist Technology」社製のOrmoclear(RTM)などのUV硬化性ハイブリッドポリマー材料を用いたインプリントリソグラフィを使用して製造することができる。レンズは、樹脂を使用して印刷することもできる。
【0069】
図2に示すように、レンズ51、52は、色変換層41、42を含む容器容積31、32の各々の上に設けられてもよい。いくつかの実施形態では、各容器容積31、32、33の上にレンズ51、52、53を設けることができる。
【0070】
図2に示すように、LED100、200、300の種類ごとのレンズは、曲率半径が異なる凸面を有していてもよい。
図2に示すように、青色LED300用のレンズ53は、色変換層41、42を含む赤色および緑色LEDよりも大きい半径曲率を有する。青色LED300の曲率半径は、青色光LED300が光発生層20からポンプ光のみを出力するので、大きくすることができる。このように、青色LEDによって出力されるポンプ光は、変換光を出力するLEDと比較して、入射角に対して異なる光強度分布を有することができる。例えば、青色LED300によって出力されたポンプ光のより大きな割合は、色変換層41、42の変換光と比較して、発光面24に垂直な方向に進むことができる。したがって、色変換層を含まない容器容積のレンズ53の曲率半径は、それらのLEDの全内部反射をさらに低減するために増加させることができる。
【0071】
図3の実施形態では、各LED100、200、300のレンズ51、52、53は同じである。
図3に示すように、レンズ51、52、53の曲率半径は、2D
0(すなわち、2倍)以下であってもよい。特に、レンズの曲率半径は、D
0以下であってもよい。
【0072】
緑色LED100用のレンズ51の凸面には、第1のポンプ光反射器積層体61が設けられている。同様に赤色LED200用のレンズ52の凸面上には、第2のポンプ光反射器積層体62が設けられている。したがって、第1および第2のポンプ光反射器積層体は、それぞれのレンズ51、52の凸面に一致してもよい。したがって、第1および第2のポンプ光反射器積層体61、62も凸面を有する。第1および第2のポンプ光反射器積層体61、62が凸面を有することで、45°より大きい入射角でポンプ光反射器積層体に入射する変換光の光量が、平坦面に比べて低減される。したがって、ポンプ光反射器積層体61、62によって全内部反射され得る変換光の割合を低減することができる。したがって、変換光のより大きな割合がポンプ光反射器積層体61、62を透過することができ、それによって緑色LED100および赤色LED200の取り出し効率を高めることができる。
【0073】
ポンプ光反射器積層体61、62の反射率を示すグラフを
図7に示す。ポンプ光反射器積層体61、62は、事実上、帯域阻止フィルタである。したがって、ポンプ光反射器積層体61、62は、実質的にすべての光がポンプ光反射器積層体によって反射される下側阻止帯域波長から上側阻止帯域波長(λ
e)までの波長の範囲にわたって阻止帯域を有する。阻止帯域は、上側阻止帯域波長(λ
e)および下側阻止帯域波長が中心波長から等距離にあるように、中心波長(λ
0)(例えば、第1の波長)を中心とする。下側阻止帯域波長よりも短い波長の場合、ポンプ光反射器積層体61、62は、光が一般にポンプ光反射器積層体を透過する下側通過帯域を有する。同様に、上側阻止帯域波長(λ
e)よりも長い波長の場合、ポンプ光反射器積層体61、62は、光が一般にポンプ光反射器積層体61、62を透過する上側通過帯域を有する。
【0074】
図7のポンプ光反射器積層体の図を
図8に示す。ポンプ光反射器積層体61は、第1の界面層と、複数の交互になった第1および第2の反射器層と、第2の界面層とを備える。
【0075】
複数の交互になった第1および第2の反射器層は、ポンプ光反射器積層体61の中央部分を形成する。第1の反射器層(H)は第1の屈折率(n
H)を有し、第2の反射器層(L)は第2の屈折率(n
L)を有する。第1の屈折率は、第2の屈折率よりも高い。いくつかの実施形態では、第1の屈折率は少なくとも2であり、第2の屈折率は1.8以下である。
図2の実施形態では、第1の反射器層はTiO
2(屈折率約2.6)を備え、第2の反射器層はSiO
2(屈折率約1.5)を備える。
【0076】
第1の反射器層(H)は第1の厚さ(tH)を有し、第2の反射器層(L)は第2の厚さ(tL)を有する。各反射器層の厚みは、それぞれ反射器層の主面の法線方向で測定した厚みである。
【0077】
ポンプ光反射器積層体61の反射率特性を調整してポンプ光を反射するために、第1および第2の反射器層の各々は、レンズの凸面の法線方向の厚み屈折率積が第1の波長(すなわち、阻止帯域の中心波長)の4分の1である。すなわち、第1の反射器層(H)の場合、第1の厚さ(tH)とnHとの積はλ0/4に等しい。同様に、第2の反射器層(L)の場合、第2の反射器層の第2の厚さ(tL)とnLとの積はλ0/4に等しい。
【0078】
一般に、H層は5nm~50nmの厚さを有する。L層は、10nm~100nmの厚さを有する。
【0079】
複数の第1の反射器層(H)および複数の第2の反射器層(L)は、ポンプ光反射器積層体の中央部分を形成するために、交互に積層されている。ポンプ光反射器積層体61の中央部分は、少なくとも3つの層から形成されてもよく、第2の反射器層(L)は中央部分の外層を形成する(すなわち、LHL構成)。いくつかの実施形態では、少なくとも5つの交互の層が設けられてもよい(LHLHL)。
図7に示す実施形態では、中央部分は17個の交互層(LHL....LHL)を備える。
【0080】
ポンプ光反射器積層体61、62の中央部分の両側には、第1および第2の界面層が設けられている。第1および第2の界面層の各々は、第1の反射器積層体と同じ材料を備えてもよい(すなわち、第1および第2の界面層は、第1の屈折率と同じ屈折率を有する)。第1および第2の界面層は、それぞれ第3および第4の屈折率(n3、n4)ならびにそれぞれ第3および第4の厚さ(t3、t4)を有することができる。第1および第2の界面層は、ポンプ光波長の8分の1(例えば、n3t3=λ0/8)に等しい厚さ屈折率積を有することができる。
【0081】
ポンプ光反射器積層体61、62の層(すなわち、第1および第2の反射器層ならびに第1および第2の界面層)が光の波長に依存する屈折率を有する場合、本開示の目的のための層の屈折率は、ポンプ光反射器積層体61、62の中心波長(λ0)における層の屈折率であると考えられる。
【0082】
一実施形態によるポンプ光反射器積層体61の反射率を
図7に示す。ポンプ光反射器積層体は、SiO
2とTiO
2との17個の交互層と、上記の説明によるTiO
2の2つの界面層とを含む(合計19個の層)。ポンプ光反射器積層体61の各層は、波長455nmのポンプ光を反射する厚さを有する。ポンプ光反射器積層体の中心波長λ
0は、420nmである。
図7は、3つの異なる入射角におけるポンプ光反射器積層体の反射率を示す。なお、
図7には、波長455nmのポンプ光LEDのスペクトルも併せて示している。
【0083】
図1aに示すDBRの反射率とは対照的に、
図7では、ポンプ光反射器積層体61の上側通過帯域では、反射率がDBRのものよりも低いことが分かる。特に、緑色から赤色の可視光スペクトルにおけるポンプ光反射器積層体61の反射率は、入射角が0°から30°の間で5%未満である。したがって、ポンプ光反射器積層体は、入射角にかかわらず、
図1aのDBRほど多くの変換光を反射しない。したがって、ポンプ光反射器積層体61、62を組み込んだ緑色LED100および赤色LED200は、
図1aに示すようなDBRと比較して、変換光をより効率的に取り出す。
【0084】
ポンプ光反射器積層体61の図を
図8に示す。ポンプ光反射器積層体61の各層の厚さは、ポンプ光反射器積層体のそれぞれの層の中心波長および屈折率で表される。
図7のポンプ光反射器積層体について、各層の厚みの値を表1に示す。表および
図7のポンプ光反射器積層体は、19個の層を備える。表1に示すように、ポンプ光反射器積層体は、TiO
2とSiO
2との交互層を含む。第1の反射器層および第1および第2の界面層は、そ各々波長420nmで屈折率が約2.60(すなわち、n
H=n
3=n
4=2.60で)のTiO
2を備える。第2の反射器層は、波長420nmで屈折率が約1.48(すなわち、n
L=1.48)のSiO
2を備える。
【0085】
【0086】
ポンプ光反射器積層体61は、中心波長が約420nm、上側阻止帯域波長が約522nmとなるように構成されている。したがって、
図7に示すように、
図7のポンプ光反射器積層体は、455nmの波長を有するポンプ光を反射する。いくつかの実施形態では、ポンプ光反射器積層体の中心波長は、ポンプ光波長よりも短い。
【0087】
ポンプ光反射器積層体は、ポンプ光反射器積層体の屈折率によって決定される上側阻止帯域波長λ
eを有してもよい。例えば、n
3=n
4=n
Hである
図7のポンプ光反射器積層体の場合、上側阻止帯域波長は、以下の式によって決定されてもよい。
【0088】
【0089】
図9は、中心波長λ
0および上側阻止帯域λ
eが示されている
図7のポンプ光反射器積層体の反射率を示す。上側阻止帯域は、反射率が95%減少する波長として計算される。例えば、式1によれば、n
H=2.60およびn
L=1.48、λ
0=420nmでは、λ
e=510nmとなる。
【0090】
いくつかの実施形態では、LEDアレイ10はまた、変換光反射器積層体71、72を組み込んでもよい。変換光反射器積層体71、72は、光発生層20のポンプ光LEDとLED100、200の色変換層41、42との間に設けられてもよい。変換光反射器積層体71、72を設けて、変換光をポンプ光反射器積層体に向けて反射することにより、容器容積から取り出される変換光の割合を増加させてもよい。変換光反射器積層体71、72はまた、光発生層で生成されたポンプ光を透過させるように構成され、ポンプ光を容器容積から反射させてLEDの全体効率を低下させないようにすることができる。したがって、変換光反射器積層体71、72はまた、ポンプ光を透過し、変換光を反射するように構成された帯域阻止フィルタの形態であってもよい。このように、変換光反射器積層体は、第2の波長を中心とする変換光を反射するように構成された阻止帯域を有する。いくつかの実施形態では、第2の波長は変換光波長に等しくてもよいが、他の実施形態では、変換光反射器積層体は、例えば、変換光波長が第2の波長とより低い阻止帯域波長との間になるように構成されてもよい。
【0091】
変換光反射器積層体71、72は、第3の界面層と、複数の交互になった第3および第4の反射器層と、第4の界面層とを備えてもよい。
【0092】
第3の界面層は、第5の屈折率(n5)および第5の厚さ(t5)を有することができる。
【0093】
複数の交互になった第3および第4の反射器層は、変換光反射器積層体の中央部分を形成する。第3の反射器層(H)は第6の屈折率n
6を有し、第4の反射器層(L)は第7の屈折率n
7を有する。第3の反射器層(H)は第6の厚さt
6を有し、第4の反射器層(L)は第7の厚さt
7を有する。第5および第7の屈折率は第6の屈折率よりも低い。いくつかの実施形態では、第6の屈折率は少なくとも2であり、第5および第7の屈折率は1.8以下である。
図7の実施形態では、第3の反射器層(H)はTiO
2(420nmで約2.60の屈折率)を備え、第4の反射器層(L)はSiO
2(420nmで約1.48の屈折率)を含む。
【0094】
変換光反射器積層体の反射率特性を調整して変換光を反射するために、第3および第4の反射器層の各々は、変換光反射器積層体の阻止帯域が変換光を反射するよう構成されるように、発光面24に垂直な方向に厚さ屈折率積を有する。例えば、いくつかの実施形態では、厚さ屈折率積は、それぞれの変換光層の変換光波長の4分の1に等しくなるように選択されてもよい。例えば、変換光層41がポンプ光を波長610nmを有する変換光に変換するように構成される実施形態では、第3の反射器層の各々は約58nmの厚さを有してもよく、第4の反射器層の各々は101nmの厚さを有してもよい。
【0095】
変換光反射器積層体71、72の層(すなわち、第3および第4の反射器層ならびに第3および第4の界面層)が光の波長に依存する屈折率を有する場合、本開示の目的のための層の屈折率は、変換光反射器積層体71、72の第2の波長(中心波長)における層の屈折率であると考えられる。
【0096】
複数の第4の反射器層(L)および複数の第3の反射器層(H)は、変換光反射器積層体の中央部分を形成するために交互に積層されている。変換光反射器積層体の中央部分は、少なくとも3つの層から形成されてもよく、第3の反射器層(H)は、中央部分の外層を形成する(すなわち、HLH構成)。いくつかの実施形態では、少なくとも5つの交互の層が設けられてもよい(HLHLH)。
図7に示す実施形態では、中央部分は19個の交互層(HLH....HLH)を備える。
【0097】
変換光反射器積層体の中央部分の両側には、第3および第4の界面層が設けられている。第3および第4の界面層の各々は、第3の反射器積層体と同じ材料を備えてもよい(すなわち、第3および第4の界面層は、第3の屈折率と同じ屈折率を有してもよい)。第3および第4の界面層は、中心波長の8分の1に等しい厚さ屈折率積を有することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、色変換層41、42のみを組み込んだLED用に変換光反射器積層体が提供されてもよい。あるいは、変換光反射器積層体は、光発生層のポンプ光LED21、22、23の各々を覆うように、発光面24の実質的にすべてにわたって設けられてもよい。変換光反射器積層体を発光面にわたって設けることにより、パターニング工程が低減された変換光反射器積層体を形成することが可能になり、それによってLEDアレイをより効率的に製造することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、ポンプ光反射器積層体61、62の上に反射防止層を設けてもよい。反射防止層は、ポンプ光反射器積層体の第2の界面層とLEDアレイ10の外部周囲(典型的には空気)との間の界面における変換光の反射を低減するように構成される。いくつかの実施形態では、反射防止層は、ポンプ光反射器積層体の第2の界面層の屈折率よりも低い屈折率を有する材料を備える。例えば、反射防止層は、1.6未満の屈折率を有する材料を備えてもよい。例えば、反射防止層はSiO2を備えてもよい。いくつかの実施形態では、反射防止層は、変換光波長の4分の1の厚さを有する。このように、反射防止層の厚さは、ポンプ光反射器積層体を透過した変換光の反射を低減するように構成されていてもよい。したがって、LEDの変換光取り出し効率をより高めるために、反射防止層を設けてもよい。
【0100】
図10に、上記のような反射防止層を組み込んだポンプ光反射器積層体の反射率のグラフを示す。
図10の例では、525nm~730nmの波長の反射を低減するように設計を最適化した。
【0101】
図11は、本開示によるLEDアレイ10のさらなる実施形態を示す。光発生層、容器層、および色変換層は、
図2の実施形態のそれぞれと実質的に同じである。
図11の実施形態では、レンズ51、52とレンズ界面層81、82との間にポンプ光反射器積層体61、62が設けられている。したがって、
図2の実施形態と同様に、ポンプ光反射器積層体61、62は、レンズ51、52の凸面に設けられている。レンズ界面層81、82は、ポンプ光反射器層61、62の反対側にさらなる凸面83、84を有することができる、すなわち、レンズ界面層は、レンズ51、52およびポンプ光反射器61、62の上にさらなるレンズ形状を画定することができる。レンズ界面層81、82は、レンズと組み合わせてレンズ超構造体と考えることができる。したがって、ポンプ光反射器積層体61、62は、レンズ超構造体内に設けられると考えることができる。いくつかの実施形態では、反射防止層91、92は、レンズ界面層81、82のさらなる凸面上のポンプ光反射器層61、62の上に設けられてもよい。
【0102】
次に、LEDアレイ10の形成方法について説明する。
まず、光発生層20を作製してもよい。光発生層20は、III族窒化物電子デバイスを製造するための任意の既知のプロセスを使用して製造することができる。例えば、光発生層20は、有機金属化学気相成長(MOCVD)、分子ビームエピタキシ(MBE)のうちの1つまたは複数を使用して製造することができる。光発生層を形成するための適切なプロセスのさらなる議論は、少なくとも英国特許第181109.6号明細書に見出すことができる。
【0103】
次に、変換光反射器積層体71、72、73を、光発生層20の発光面24上に形成することができる。変換光反射器積層体は、発光面24がポンプ光LED21、22、23のすべてを覆うように、発光面の実質的にすべてにわたって設けられてもよい。変換光反射器積層体71、72、73は、SiO2とTiO2との交互層から形成されてもよい。変換光反射器積層体71、72、73の層は、化学蒸着法、例えばEビーム蒸着または低温スパッタリング、または当技術分野における任意の他の既知の方法によって堆積されてもよい。
【0104】
次いで、容器層30は、容器層30の連続層の薄膜堆積によって形成することができる。次いで、容器容積31、32、33を画定するために、連続層を適切なマスクを使用してパターン化し、エッチングして連続層の一部を除去することができる。あるいは、容器層は、発光面24(または存在する場合には変換光反射器積層体71、72、73)の上にマスク層を堆積することによって形成されてもよく、マスク層は、容器容積31、32、33に対応する光発生層上の部分を選択的にマスクするように構成される。次いで、容器層30を、光発生層20(または変換光反射器積層体71、72、73)の露出部分上に堆積させることができる。
【0105】
容器容積31、32は、1つまたは複数の色変換層41、42で選択的に充填されてもよい。
【0106】
その後、レンズ51、52、53を容器容積31、32、33の上に形成することができる。レンズは、CVDプロセスを使用して堆積されるSiO2を備えてもよい。レンズ51、52、53の凸面は、上述のプロセスのいずれかによって形成することができる。
【0107】
次に、充填された容器容積31、32を覆うレンズ51、52の凸面にポンプ光反射器積層体61、62を形成することができる。ポンプ光反射器積層体51、52。いくつかの実施形態では、ポンプ光反射器積層体は、レンズ51、52、53の実質的にすべてにわたって形成されてもよく、その後、ポンプ光をフィルタリングする必要がないLED(例えば、充填されていない容器容積33を有するLED)からポンプ光反射器積層体が(例えば、エッチングによって)選択的に除去されるプロセスが続く。ポンプ光反射器積層体51、52は、SiO2とTiO2との交互層から形成されてもよい。ポンプ光反射器積層体61、62の層は、化学蒸着プロセス、例えばMOCVD、または当技術分野における任意の他の既知の方法によって堆積されてもよい。
【0108】
反射防止層は、ポンプ光反射器積層体61、62の上に形成されてもよい。反射防止層は、SiO2またはMGF2またはZrO2などの誘電体を備えることができる。したがって、反射防止層は、ポンプ光反射器積層体61、62を形成するために使用されるのと同様のプロセスを使用して、ポンプ光反射器積層体の上に形成されてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、レンズ界面層81、82は、ポンプ光反射器積層体61、62の上に形成されてもよい。レンズ界面層81、82は、レンズ51、52を形成するために使用されるのと同様のプロセスを使用して形成されてもよい。
【0110】
上記の開示によれば、LEDアレイ10を設けることができる。上記の開示は、色変換層を組み込んだLEDも提供することが理解されよう。
【0111】
したがって、本開示の実施形態によれば、変換光取り出し効率を高めつつ、ポンプ光漏れも低減するLEDまたはLEDアレイが提供される。
【国際調査報告】