(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】呼吸治療のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
A61M16/00 380
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506542
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 AU2020050773
(87)【国際公開番号】W WO2021016662
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェシャンブル,エチエンヌ
(57)【要約】
方法および装置(例えば、呼吸治療デバイスのコントローラ)は、前記デバイスからのガス流れの流量の推定を示す信号を生成する。この呼吸治療デバイスは、モータ作動型の送風機を含み得る。本方法は、1組のセンサによって生成された信号(前記モータの圧力および周波数の測定(例えば、速度)を含む)を前記コントローラにおいて受信することを含み得る。上記コントローラは混入空気密度関数を計算し、圧力および周波数の測定ならびに混入空気密度関数の関数に基づいて前記推定信号を生成するように構成され得る。上記混入空気密度関数は、さらなるセンサからの信号(例えば、雰囲気圧力、ガス温度および周囲相対湿度)を適用して、大気密度を計算し得る。次に、前記治療デバイスの制御動作は、前記推定された信号に基づき得、前記推定された信号は、流れセンサからの信号の精度の評価に適用され得る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸治療デバイスと関連付けられた呼吸可能なガスの流れの流量の推定値を示す信号を生成するコントローラの方法であって、前記呼吸治療デバイスは、モータ作動型の送風機を含み、
前記呼吸可能なガスの圧力の測定値を示す電子信号を圧力センサから前記コントローラが受信することと、
前記モータの速度の測定値を示す電子信号を速度センサから前記コントローラが受信することと、
混入空気密度関数を前記コントローラが計算することと、
前記呼吸可能なガスの流量の推定値を示す信号を流れ推定関数を用いて前記コントローラが生成することと、ここで、前記流れ推定関数は、(1)前記圧力の測定値を示す信号、(b)前記モータの速度の測定値を示す信号、および(c)前記混入空気密度関数の関数を含む、
を含む方法。
【請求項2】
前記混入空気密度関数は、大気密度値および大気密度基準値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混入空気密度関数は、前記大気密度値および前記大気密度基準値の第1の比率を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混入空気密度関数は、前記大気密度値および前記大気密度基準値の第2の比率を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記呼吸可能なガスの流量を推定することは、モータ力を計算することをさらに含み、前記呼吸可能なガスの流量の決定された推定値は、前記モータ力に基づく、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混入空気密度関数は、雰囲気圧力値、温度値および相対湿度値の関数を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混入空気密度関数を計算する酸素センサからの信号を評価することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値を示す電子信号を雰囲気圧力センサから前記コントローラが受信することと、ここで、前記雰囲気圧力値は、前記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値であり、
前記呼吸可能なガスのガス温度の測定値を示す電子信号をガス温度センサから前記コントローラが受信することと、ここで、ガスの前記温度値は、前記呼吸可能なガスのガス温度の測定値であり、
前記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定値を示す電子信号を周囲相対湿度センサから前記コントローラが受信することと、ここで、周囲の前記相対湿度値は、前記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定値である、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記雰囲気圧力値、前記温度値および前記相対湿度値の関数は、温度に応じた飽和蒸気圧力関数を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記温度に応じた飽和蒸気圧力関数は、
【数1】
によって規定され、
Temp
local_DegCは、前記温度値である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記雰囲気圧力値、前記温度値および前記相対湿度値の関数は、温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数は、(a)温度に従った前記飽和蒸気圧力関数の結果、および(b)前記相対湿度値を、
【数2】
のように乗算することによって規定され、
RH
localは、前記相対湿度値であり、
Psv(Temp
local_DegC)は、前記温度に応じた飽和蒸気圧力関数である、請求項9~10のうちいずれか1つに従属した場合における請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記雰囲気圧力値、前記温度値および前記相対湿度値の関数は、
【数3】
によって規定され、
P
0=103ヘクトパスカルであり、
T
0=15摂氏度または288.15ケルビン度であり、
【数4】
であり、
P
atm_localは、前記雰囲気圧力値であり、
【数5】
は、温度および相対湿度に応じた前記蒸気圧力関数であり、
Temp
local_DegKは、前記温度値である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流れ推定関数は、1組の周波数関数を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記1組の周波数関数は、第1の回転周波数関数を含み、前記第1の回転周波数関数は、前記モータの速度の測定値の関数および前記混入空気密度関数である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1組の周波数関数は、第2の回転周波数関数を含み、前記第2の回転周波数関数は、前記モータの速度の測定値の関数である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1組の周波数関数は、第3回転周波数関数を含み、前記第3回転周波数関数は、前記モータの速度の測定値の関数および前記混入空気密度関数である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の回転周波数関数は、
【数6】
によって規定され、
RPMは、前記モータの速度の測定値であり、
【数7】
は、前記混入空気密度関数であり、
C1およびC2は、経験的に導出された定数である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の回転周波数関数は、
【数8】
によって規定され、
RPMは、前記モータの速度の測定値であり、
C3、C4およびC5は、経験的に導出された定数である、請求項17~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の回転周波数関数は、
【数9】
によって規定され、
RPMは、前記モータの速度の測定値であり、
【数10】
は、前記混入空気密度関数であり、
C6、C7およびC8は、経験的に導出された定数である、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記流れ推定関数は、
【数11】
によって規定され、
Aは、前記第1の回転周波数関数であり、
Bは、前記第2の回転周波数関数であり、
Cは、前記第3の回転周波数関数であり、
Pres_measは、前記圧力センサからの前記呼吸可能なガスの圧力の測定値である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す電子信号を流量センサから前記コントローラが受信することと、
前記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す前記電子信号と前記呼吸可能なガスの流量の推定値を示す生成された信号とを前記コントローラが比較することと、
前記比較に基づいた前記流量センサの精度の評価を示す出力インジケータを前記コントローラが生成することと
をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記モータ作動型の送風機を作動させるための制御パラメータを前記出力インジケータに基づいて前記コントローラが変更することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記呼吸可能なガスの推定値を示す前記生成された信号に基づいて前記モータ作動型の送風機を作動させるために制御パラメータを前記コントローラが変更することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記制御パラメータは、圧力セットポイントおよび流量セットポイントのうちいずれか1つである、請求項23および24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
プロセッサ実行可能な命令が保存されたプロセッサ可読媒体であって、
前記プロセッサ実行可能な命令は、呼吸治療デバイス内のモータ作動型の送風機のプロセッサのコントローラによって実行されると、前記呼吸治療デバイスと関連付けられた呼吸可能なガスの流量の推定値を前記プロセッサに生成させ、当該プロセッサ実行可能な命令は、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法による動作を制御させる命令を含む、プロセッサ可読媒体。
【請求項27】
呼吸治療デバイスであって、
患者呼吸インターフェースに連結するように適合され、呼吸可能なガスの流れを含む呼吸治療を前記患者呼吸インターフェースを介して生成するように適合されるモータ作動型の送風機と、
前記呼吸可能なガスの圧力の測定値を示す電子信号を生成するように構成された圧力センサと、
前記モータの速度の測定値を示す電子信号を生成するように構成された速度センサと、
1つ以上のプロセッサを含み、前記モータ作動型の送風機、前記圧力センサおよび前記速度センサに連結されるコントローラと
を含み、
前記コントローラは、
前記呼吸可能なガスの圧力の測定値を示す電子信号を受信することと、
前記モータの速度の測定値を示す前記電子信号を受信することと、
混入空気密度関数を計算することと、
前記呼吸可能なガスの流量の推定値を流れ推定関数を用いて示す信号を生成すると、ここで、前記流れ推定関数は、(1)前記圧力の測定値を示す信号、(b)前記モータの速度の測定値を示す信号および(c)前記混入空気密度関数の関数を含む、
を行うように構成される、呼吸治療デバイス。
【請求項28】
前記混入空気密度関数は、大気密度値および大気密度基準値を含む、請求項27に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項29】
前記混入空気密度関数は、前記大気密度値および前記大気密度基準値の第1の比率を含む、請求項28に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項30】
前記混入空気密度関数は、前記大気密度値および前記大気密度基準値の第2の比率を含む、請求項29に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項31】
前記呼吸可能なガスの流量の推定値を決定するために、前記コントローラは、1つ以上のセンサ信号からのモータ力を計算するようにさらに構成され、前記呼吸可能なガスの流量の決定された推定値は、前記モータ力に基づく、請求項27~30のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項32】
前記混入空気密度関数は、雰囲気圧力値、温度値および相対湿度値の関数を含む、請求項27~31のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項33】
前記コントローラは、前記混入空気密度関数を計算する酸素センサからの信号を評価するようにさらに構成される、請求項32の呼吸治療デバイス。
【請求項34】
前記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値を示す電子信号を生成するように構成され、前記雰囲気圧力値は前記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値である、雰囲気圧力センサと、
前記呼吸可能なガスのガス温度の測定値を示す電子信号を生成するように構成され、ガス温度値は前記呼吸可能なガスのガス温度の測定値である、ガス温度センサと、
前記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定を示す電子信号を生成するように構成され、周囲相対湿度値が前記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定値である、周囲相対湿度センサと、と
をさらに含み、
前記コントローラは、
前記雰囲気圧力の測定値を示す前記電子信号と、
ガス温度の測定値を示す前記電子信号と、
周囲相対湿度の測定値を示す前記電子信号と
を受信するように構成される、請求項32~33のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項35】
前記雰囲気圧力値、前記温度値および前記相対湿度値の関数は、温度に応じた飽和蒸気圧力関数を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項36】
前記温度に応じた飽和蒸気圧力関数は、
【数12】
によって規定され、
Temp
local_DegCは、前記温度値である、請求項35に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項37】
前記雰囲気圧力値、前記温度値および前記相対湿度値の関数は、温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数を含む、請求項27~36のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項38】
前記温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数は、(a)温度に従った前記飽和蒸気圧力関数の結果、および(b)前記相対湿度値を、
【数13】
のように乗算することによって規定され、
RH
localは、前記相対湿度値であり、
Psv(Temp
local_DegC)は、前記温度に応じた飽和蒸気圧力関数である、請求項7~8のうちいずれか1つに従属した場合における請求項35に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項39】
前記雰囲気圧力値、前記温度値および前記相対湿度値の関数は、
【数14】
によって規定され、
P
0=103ヘクトパスカルであり、
T
0=15摂氏度または288.15ケルビン度であり、
【数15】
であり、
P
atm_localは、前記雰囲気圧力値であり、
【数16】
は、温度および相対湿度に応じた前記蒸気圧力関数であり、
Temp
local_DegKは、前記温度値である、請求項38に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項40】
前記流れ推定関数は、1組の周波数関数を含む、請求項27~39のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項41】
前記1組の周波数関数は、第1の回転周波数関数を含み、前記第1の回転周波数関数は、前記モータの速度の測定値の関数および前記混入空気密度関数である、請求項40の呼吸治療デバイス。
【請求項42】
前記1組の周波数関数は、第2の回転周波数関数を含み、前記第2の回転周波数関数は、上記モータの速度の測定値の関数である、請求項41に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項43】
前記1組の周波数関数は、第3の回転周波数関数を含み、前記第3の回転周波数関数は、前記モータの速度の測定値の関数および前記混入空気密度関数である、請求項42の呼吸治療デバイス。
【請求項44】
前記第1の回転周波数関数は、
【数17】
によって規定され、
RPMは、前記モータの速度の測定値であり、
【数18】
は、前記混入空気密度関数であり、
C1およびC2は、経験的に導出された定数である、請求項43に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項45】
前記第2の回転周波数関数は、
【数19】
によって規定され、
RPMは、前記モータの速度の測定値であり、
C3、C4およびC5は、経験的に導出された定数である、請求項43~44のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項46】
前記第3の回転周波数関数は、
【数20】
によって規定され、
RPMは、前記モータの速度の測定値であり、
【数21】
は、前記混入空気密度関数であり、
C6、C7およびC8は、経験的に導出された定数である、請求項43~45のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項47】
前記流れ推定関数は、
【数22】
によって規定され、
Aは、前記第1の回転周波数関数であり、
Bは、前記第2の回転周波数関数であり、
Cは、前記第3の回転周波数関数であり、
Pres_measは、前記圧力センサからの前記呼吸可能なガスの圧力の測定値である、請求項46に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項48】
前記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す電子信号を生成するように構成された流量センサをさらに含み、
前記コントローラは、
前記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す前記電子信号を受信することと、
前記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す前記電子信号と、前記呼吸可能なガスの流量の推定値を示す生成された信号とを比較することと、
前記比較に基づいた前記流量センサの精度の評価を示す出力インジケータを生成することと
を行うようにさらに構成される、請求項27~47のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項49】
前記コントローラは、前記出力インジケータに基づいて前記モータ作動型の送風機を作動させるための制御パラメータを変更するようにさらに構成される、請求項48に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項50】
前記コントローラは、前記呼吸可能なガスの推定値を示す前記生成された信号に基づいて前記モータ作動型の送風機を作動させるために制御パラメータを変更するようにさらに構成される、請求項48に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項51】
前記制御パラメータは、圧力セットポイントおよび流量セットポイントのうちいずれか1つである、請求項49および50のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【請求項52】
プロセッサ実行可能な命令が保存されたプロセッサ可読媒体をさらに含み、
前記プロセッサ実行可能な命令は、前記モータ作動型の送風機のコントローラの1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記呼吸可能なガスの流量の推定値を前記1つ以上のプロセッサに生成させ、当該プロセッサ実行可能な命令は、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法による動作を制御させる命令を含む、請求項27~51のいずれか一項に記載の呼吸治療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/880,533号(出願日2019年7月30日)の利益を主張する。本明細書中、同文献全体が本明細書に参照することにより組み込まれる。
【0002】
2 技術の背景
2.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連疾患のスクリーニング、診断、監視、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術は、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する(例えば、流れの推定(例えば、流れセンサの精度の評価、システム状態または呼吸状態の検出または動作もしくはその両方の制御のためのもの)において有用な方法およびデバイス)。このようなプロセスは、流れセンサまたは適切に動作している流れセンサが無い状態において実行され得る。
【背景技術】
【0003】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 ヒトの呼吸器系およびその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口は、患者の気道への入口を形成する。
【0004】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、伝導のための気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸領域と呼ぶ。「Respiratory Physiology」、John B.West著、Lippincott Williams & Wilkins、第9版、2011年発行を参照されたい。
【0005】
様々な呼吸器疾患が存在している。特定の疾患は、特定の症状(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0006】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の一形態であり、睡眠時の上通気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられる。睡眠時の異常に小さな上気道および舌領域における筋緊張の正常欠損、軟口蓋および後中咽頭壁の組み合わせに起因する。このような状態に起因して、罹患患者の呼吸停止が典型的には30~120秒にわたり、ときには一晩に200~300回も呼吸が停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候は一般的な疾患であり、特に中年の過体重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。米国特許第4,944,310号(Sullivan)を参照されたい。
【0007】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠呼吸障害である。CSRは、患者の呼吸調節器の疾患であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付けられる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によっては、CSRは、重症不眠、交感神経活動の増加、および後負荷の増加の原因となる、反復性睡眠覚醒を随伴する。米国特許第6,532,959号(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0008】
呼吸不全とは、呼吸疾患の総称であり、患者は、代謝活性が安静時を大きく上回った場合、自身の血液中のCO2のバランスをとるために充分な換気を行うことができなくなる。呼吸不全は、全ての以下の疾患を包含する。
【0009】
肥満低呼吸症候群(OHS)は、低換気の他の既知の原因がない場合、重症の肥満と覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状には、呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0010】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0011】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾病および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋力低下に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋肉障害は、以下の急速進行性と緩徐進行性とに区分され得る。(i)急速進行性障害:数ヶ月かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、数年内に死亡に繋がる(例えば、ティーンエージャーにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD))、(ii)可変性または緩徐進行性障害:数年かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、平均余命が若干低減するだけである(例えば、肢帯、顔面肩甲上腕型および筋強直性筋ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全症状としては、全身衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難などがある。
【0012】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症または脊柱後側弯症もしくはその両方は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症状としては、労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振などがある。
【0013】
このような状態を治療または改善するために、一定範囲の治療が用いられている。さらに、その他の点では健常な人も、呼吸器疾患の予防治療を有利に利用することができる。しかし、これらにおいては、複数の欠陥がある。
【0014】
2.2.2 療法
持続的気道陽圧(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用機構としては、例えば軟口蓋および舌を押して後口咽頭壁へ前進または後退させることにより、持続陽圧呼吸療法が空気スプリントとして機能し、これにより上気道の閉鎖を防止し得る。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が、治療の提供に用いられるデバイスについて、不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さのうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある。
【0015】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助または身体中の適切な酸素レベルの維持もしくはその両方を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0016】
患者に対し、特に睡眠状態または鎮静下もしくはその両方において非侵襲的換気が施された場合、OSAなどのように上気道の不安定性および崩壊に繋がる場合が多い。このような不安定性および崩壊が有る場合、換気装置から肺に実際に到達する圧力が低下またはさらには無効になるため、換気治療の有効性に妥協が生じる可能性がある。
【0017】
上気道は、ベース陽圧(本明細書中EPAPと呼ぶ)を維持することによって安定化され得、その結果換気支援が重畳される。EPAPが無効になった場合、上気道崩壊に繋がり、EPAPが過度になった場合、上気道が完全に安定化し得るものの、快適性に悪影響が生じ得、マスク漏洩が促進され得、あるいは心臓血管合併症に繋がり得る。悪い副作用を回避しつつ、睡眠状態、姿勢、鎮静レベルおよび疾病進行において上気道の安定性を全般的に維持するのに充分なEPAPを選択するタスク(EPAPタイトレーションとして知られるタスク)は、睡眠ポリグラフ(PSG)全体を研究した経験豊富な臨床医にとっても大きな困難である。適切にタイトレーションが行われたEPAPは、極値間のバランスであり、閉塞イベントを全て回避するものでは必ずしもない。NIVは世界的に使用が普及し続けているものの、EPAPタイトレーションについてのPSG研究の恩恵を利用しつつNIVを受けている患者はごく僅かである。より急性の環境においては、非侵襲的換気の有効性に対する睡眠および鎮静の効果の認識は、歴史的に限られている。
【0018】
そのため、NIV患者の上気道の状態変化に対して動的に応答してEPAPの自動調整(すなわち、「EPAP自動タイトレーション」の実行)を行うことが可能なNIV治療が、切実に必要とされている。
【0019】
2.2.3 治療システム
これらの治療は、治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾患を治療することなく診断するためにも用いられ得る。
【0020】
治療システムは、呼吸治療デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、およびデータ管理を含み得る。
【0021】
2.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻または口もしくはその両方へのマスク、口への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域とのシールを形成し得、これにより、療法実行のための雰囲気圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば雰囲気圧力に対して約10cmH2Oの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmH2Oの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
【0022】
2.2.3.2 呼吸治療(RPT)デバイス
空気圧生成器は、広範な用途(例えば、工業規模通気システム)において公知である。しかし、医療用途のための空気圧生成器は、より一般的な空気圧生成器(例えば、医療機器の信頼性要件、サイズ要件および重量要件)では満足できない特定の要件を有する。加えて、医療治療向けに設計されたデバイスであっても、快適性、ノイズ、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性のうち1つ以上に関連して欠陥を免れない場合がある。
【0023】
睡眠呼吸障害の治療に用いられる1つの公知のRPTデバイスとして、S9睡眠治療システム(製造元 ResMed Limited)がある。RPTデバイスの別の実施例として、人工呼吸器がある。人工呼吸器(例えば、成人および小児用人工呼吸器のResMed Stellar(登録商標)シリーズ)の場合、複数の状態(例を非限定的に挙げると、NMD、OHSおよびCOPD)の治療のための一定範囲のための患者のための侵襲的および非侵襲的な非依存的呼吸のための補助を提供し得る。
【0024】
ResMed Elisee(登録商標)150人工呼吸器、およびResMedVSIII(登録商標)人工呼吸器は、複数の状態の治療のための成人患者または小児用患者に適した侵襲的および非侵襲的な依存的呼吸の補助を提供し得る。これらの人工呼吸器により、単一または二重の肢回路を用いた容積通気モードおよび気圧通気モードが得られる。RPTデバイスは典型的には、圧力生成器(例えば、電動またはモータ作動型の送風機または圧縮ガスリザーバ)を含み、患者の気道へ空気流れを供給するように構成される。いくつかの場合において、患者の気道への空気流れ供給は、(例えば、圧力セットポイントに従ったコントローラの圧力制御ループまたは流量セットポイントに従ったコントローラの流量制御ループを用いて)陽圧において行われ得る。RPTデバイスの出口は、空気回路を介して上記したような患者インターフェースへ接続される。
【0025】
RPTデバイスは、例えば、高流量治療を提供するように構成された高流量治療デバイスを含み得る。この点について、いくつかの呼吸治療においては、(恐らくは正のベースライン圧力上に重畳された)吸気流量プロファイルの送達を目標継続期間にわたって行うことによる規定呼吸量の送達が、企図されている。他の場合において、患者の気道へのインターフェースが「開放」(シール解除)されており、調整ガスまたは高濃度ガスの流れによる呼吸治療は、患者自身の自発呼吸の補助としてのみ用いられ得る。一実施例において、高流量療法(HFT)とは、連続的な、加熱された、加湿された空気流れをシールされていないかまたは開口した患者インターフェースを通じて、呼吸サイクル全体にかけてほぼ一定に保持される「治療流量」で提供することである。治療流量は、患者のピーク吸気流量を超えるようにノミナル設定されている。HFTは、OSA、CSR、呼吸不全、COPDおよび他の呼吸障害の治療のために用いられている。1つの作用メカニズムとして、患者の解剖学的死腔から呼気されたCO2のフラッシングまたは押し流しが可能になるため、高流量の空気を気道入口へ提供すると、換気効率が向上する。そのため、HFTは、死腔治療(DST)と呼ばれる場合がある。他の恩恵を挙げると、(恐らくは分泌制御の恩恵による)暖かさおよび加湿の向上や、気道圧力の緩やかな上昇の可能性がある。一定の流量の代替例として、治療流量は、呼吸サイクルにわたって変動するプロファイルに追随し得る。
【0026】
2.2.3.3 加湿器
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。一定範囲の人工的加湿機器およびシステムが公知であるが、医療加湿器の特殊な要件を満たせていない。
【0027】
2.2.4 モニタリングシステム
一般に、スクリーニングおよび診断は、障害の兆候と症状によって疾患を特定することである。通常、スクリーニングは、患者の障害がさらなる調査を求める程であるかないかを示す真偽結果を出すいっぽう、診断は、臨床で実行可能な情報を出すことが多い。スクリーニングおよび診断は、一回性手続きになる傾向であることに反して、障害の経過をモニタリングすることは無限定に続けられる。いくつかのスクリーニングや診断システムは、スクリーニングや診断にのみ適合されているが、いくつかはモニタリングにも使用することができる。
【0028】
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断や監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な生体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのめには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。臨床専門家は、患者の診断または監視をPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。詳細には、これは、自宅内診断や監視には不向きである。
【0029】
自宅用のより簡便なスクリーニング、診断、監視システムは、鼻カニューレ、圧力センサ、処理デバイス、および記録手段を含む。鼻カニューレは、中空のオープンエンドの突起を含むデバイスである。これらの突起は、患者の呼吸との干渉を最小限にするように、患者の鼻孔中にほとんど非侵襲的に挿入されるように構成される。これらの中空の突起は、圧力変換器とY字型の管を介して流体連痛する。圧力変換器は、患者の鼻孔の入口における圧力(鼻圧力)を示すデータ信号を提供する。鼻圧力信号は、形状が鼻流量信号に類似しているため、鼻圧力信号は、密閉鼻マスクと有線接続している流量変換器によって発生された鼻流量信号の申し分のないプロキシであることが分かっている。処理デバイスは、圧力変換器からの鼻圧力信号の分析をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで行って、患者の状態の監視のためにSDBイベントの検出および分類を行うように構成され得る。スクリーニングまたは診断を行うためには、同様の分析が必要になり得るが、必ずしもリアルタイムまたはほぼリアルタイムでなくてよい。そのため、記録手段は、処理デバイスによってスクリーニングや診断目的のためにオフラインまたは「バッチ」分析を後に行えるようにするために、圧力変換器からの鼻圧力信号を記録するように構成される。
【0030】
さらに、(例えば、治療制御または状態検出もしくはその両方の変更を行うかの決定において)呼吸治療時における呼吸状態を監視する際、患者呼吸流れの測定値を得ておくと有用であり得る。このような患者呼吸流れの測定値は、RPTの生成器の流れセンサによって提供された全流量信号から導出され得る。例えば、患者呼吸流れの測定値は、呼気治療設定または吸気治療設定を送達するタイミングの決定のために、患者の吸気から呼気への移行または呼気から吸気への移行の検出のために用いられ得る。同様に、測定された患者呼吸流れ信号は、患者の流れ制限、無呼吸、呼吸低下、他の呼吸関連または睡眠障害呼吸に関連する状態やイベントの検出のために用いられ得る。これらの検出されたイベントにより、患者の状態の評価が可能になり、これらの検出されたイベントは、例えば治療調整の実施(例えば、呼吸治療デバイスの制御において用いられる圧力制御パラメータ(例えば、圧力セットポイント)または流れ制御パラメータ(例えば、流れセットポイント)の変更)のための自動制御システム内において適用され得る。このような調整の例について、米国特許第5,704,345号および10,350,379号中の特許に例示がある。これらの目的のために、測定された流れ信号は、流れセンサ(例えば、差圧変換器または呼吸気流計)から導出され得る。
【0031】
既存の方法およびデバイスの向上、または新規の治療および検出方法およびデバイスの開発、もしくはその両方のために流れ信号を推定するためのさらなる方法およびデバイスの開発が、所望され得る。例えば、呼吸装置による高精度性能の確保のために、例えば流れセンサの故障またはシステム状態もしくはその両方または呼吸状態の検出を(例えば、流れセンサの不在時または適切に動作している流れセンサの不在時に)行うために、当該センサの使用前または使用時もしくはその両方におけるセンサ精度の監視または検出の方法を開発することが所望され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第6,532,959号明細書
【特許文献2】米国特許第5,704,345号明細書
【特許文献3】米国特許第10,350,379号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
3 技術の簡単な説明
【0034】
本技術は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、モニタリングや治療において用いられることができる医療機器の提供に関連し、これらの医療機器は、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0035】
本技術のいくつかのバージョンは、流れ生成器と関連付けられた呼吸可能なガスの流量の推定値を決定することを含み得る。
【0036】
本技術のいくつかのバージョンは、呼吸治療デバイスと関連付けられた呼吸可能なガスの流れの流量の推定値を示す信号を生成するコントローラの方法を含み得る。上記呼吸治療デバイスは、モータ作動型の送風機を含み得る。上記方法は、上記呼吸可能なガスの圧力の測定値を示す電子信号を圧力センサから上記コントローラにおいて受信することを含み得る。上記方法は、上記モータの速度の測定値を示す電子信号を速度センサから上記コントローラにおいて受信することを含み得る。上記方法は、混入空気密度関数を前記コントローラにおいて計算することを含み得る。上記方法は、上記呼吸可能なガスの流量の推定値を示す信号を流れ推定関数を用いて上記コントローラにおいて生成することを含み得る。上記流れ推定関数は、(1)上記圧力の測定値を示す信号、(b)上記モータの速度の測定値を示す信号および(c)上記混入空気密度関数の関数を含み得る。
【0037】
いくつかのバージョンにおいて、上記混入空気密度関数は、大気密度値および大気密度基準値を含み得る。混入空気密度関数は、上記大気密度値および上記大気密度基準値の第1の比率を含み得る。混入空気密度関数は、上記大気密度値および上記大気密度基準値の第2の比率を含み得る。上記方法において含まれ得ることとして、上記呼吸可能なガスの流量を推定することは、モータ力を計算することをさらに含み得、上記決定された呼吸可能なガスの流量の推定値は、上記モータ力に基づき得る。上記混入空気密度関数は、雰囲気圧力値、温度値および相対湿度値の関数を含み得る。
【0038】
いくつかのバージョンにおいて、上記方法は、上記混入空気密度関数を計算する酸素センサからの信号を評価することをさらに含み得る。上記方法は、上記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値を示す電子信号を雰囲気圧力センサから上記コントローラにおいて受信することであって、上記雰囲気圧力値は、上記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値であり得る、ことを含み得る。上記方法は、上記呼吸可能なガスのガス温度の測定値を示す電子信号をガス温度センサから上記コントローラにおいて受信することであって、上記ガス温度値は、上記呼吸可能なガスのガス温度の測定値であり得、上記方法は、上記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定値を示す電子信号を周囲相対湿度センサから上記コントローラにおいて受信することを含み得、上記周囲相対湿度値は、上記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定値であり得る、ことを含み得る。
【0039】
いくつかのバージョンにおいて、上記雰囲気圧力値、上記温度値および上記相対湿度値の関数は、温度に応じた飽和蒸気圧力関数を含み得る。上記温度に応じた飽和蒸気圧力関数は、下記によって規定され得る。
【0040】
【0041】
ここで、Templocal_DegCは、上記温度値であり得る。上記雰囲気圧力値、上記温度値および上記相対湿度値の関数は、温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数を含み得る。上記温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数は、(a)温度に応じた上記飽和蒸気圧力関数の結果と、(b)上記相対湿度値との乗算を以下のように行うことによって規定され得る。
【0042】
【0043】
ここで、RHlocalは、上記相対湿度値であり得、Psv(Templocal_DegC)は、上記温度に応じた飽和蒸気圧力関数であり得る。
【0044】
いくつかのバージョンにおいて、上記雰囲気圧力値、上記温度値および上記相対湿度値の関数は、下記によって規定され得る。
【0045】
【0046】
ここで、P
0=103ヘクトパスカルs、T
0=摂氏15度または絶対温度288.15度であり、
【数4】
P
atm_localは、上記雰囲気圧力値であり得、
【数5】
は、温度および相対湿度に応じた上記蒸気圧力関数であり得、Temp
local_DegKは、上記温度値であり得る。
【0047】
いくつかのバージョンにおいて、上記流れ推定関数は、1組の周波数関数を含み得る。上記1組の周波数関数は、第1の回転周波数関数を含み得、上記第1の回転周波数関数は、上記モータの速度の測定値の関数および上記混入空気密度関数である。上記1組の周波数関数は、第2の回転周波数関数を含み得、上記第2の回転周波数関数は、上記モータの速度の測定値の関数である。上記1組の周波数関数は、第3の回転周波数関数を含み得、上記第3の回転周波数関数は、上記モータの速度の測定値の関数および上記混入空気密度関数である。第1の回転周波数関数は、以下によって規定され得る。
【0048】
【0049】
RPMは、上記モータの速度の測定値であり得、
【数7】
は、上記混入空気密度関数であり得、C1およびC2は、経験的に導出された定数である。上記第2の回転周波数関数は、下記によって規定され得る。
【0050】
【0051】
RPMは、上記モータの速度の測定値であり得、C3、C4およびC5は、経験的に導出された定数である。いくつかのバージョンにおいて、上記第3の回転周波数関数は、下記によって規定され得る。
【0052】
【0053】
RPMは、上記モータの速度の測定値であり得、
【数10】
は、上記混入空気密度関数であり得、C6、C7およびC8は、経験的に導出された定数である。上記流れ推定関数は、下記によって規定され得る。
【0054】
【0055】
Aは、上記第1の回転周波数関数であり得、Bは、上記第2の回転周波数関数であり得、Cは、上記第3の回転周波数関数であり得、Pres_measは、上記圧力センサからの上記呼吸可能なガスの圧力の測定値であり得る。
【0056】
いくつかのバージョンにおいて、上記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す電子信号を流量センサから上記コントローラにおいて受信することを含み得る。上記方法は、上記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す上記電子信号と上記呼吸可能なガスの流量の推定値を示す生成された信号とを上記コントローラにおいて比較することを含み得る。上記方法は、上記比較に基づいた上記流量センサの精度の評価を示す出力インジケータを上記コントローラによって生成することを含み得る。上記方法は、上記モータ作動型の送風機を作動させるための制御パラメータを上記出力インジケータに基づいて上記コントローラによって変更することを含み得る。上記方法は、上記呼吸可能なガスの推定値を示す上記生成された信号に基づいて上記モータ作動型の送風機を作動させるために制御パラメータを前記コントローラによって変更することを含み得る。上記制御パラメータは、圧力セットポイントおよび流量セットポイントのうちいずれか1つであり得る。
【0057】
本技術のいくつかのバージョンは、プロセッサ実行可能な命令が保存されたプロセッサ可読媒体を含み得、前上記プロセッサ実行可能な命令は、呼吸治療デバイス内のモータ作動型の送風機のプロセッサのコントローラによって実行されると、前記呼吸治療デバイスと関連付けられた呼吸可能なガスの流量の推定値を前記プロセッサに生成させる。プロセッサ実行可能な命令は、本明細書中に記載の方法のうちいずれかに従って動作を制御させる命令を含み得る。
【0058】
本技術のいくつかのバージョンは、呼吸治療デバイスを含み得る。上記呼吸治療デバイスに含まれ得るモータ作動型の送風機は、患者呼吸インターフェースに連結するように適合され、呼吸治療を生成するように適合される。上記呼吸治療デバイスは、上記患者呼吸インターフェースを介した呼吸可能なガスの流れを含み得る。上記呼吸治療デバイスは、上記呼吸可能なガスの圧力の測定値を示す電子信号を生成するように構成された圧力センサを含み得る。上記呼吸治療デバイスは、上記モータの速度の測定値を示す電子信号を生成するように構成された速度センサを含み得る。上記呼吸治療デバイスに含まれ得るコントローラは、1つ以上のプロセッサを含み得、上記モータ作動型の送風機、上記圧力センサおよび上記速度センサに連結される。上記コントローラは、上記呼吸可能なガスの圧力の測定値を示す電子信号を受信するように構成され得る。上記コントローラは、上記モータの速度の測定値を示す上記電子信号を受信するように構成され得る。上記コントローラは、混入空気密度関数を計算するように構成され得る。上記コントローラは、上記呼吸可能なガスの流量の推定値を流れ推定関数を用いて示す信号を生成するように構成され得、上記流れ推定関数は、(1)上記圧力の測定値を示す信号、(b)上記モータの速度の測定値を示す信号および(c)上記混入空気密度関数の関数を含み得る。
【0059】
いくつかのバージョンにおいて、上記混入空気密度関数は、大気密度値および大気密度基準値を含み得る。混入空気密度関数は、上記大気密度値および上記大気密度基準値の第1の比率を含み得る。混入空気密度関数は、上記大気密度値および上記大気密度基準値の第2の比率を含み得る。31.上記呼吸治療デバイスのいくつかのバージョンにおいて、上記呼吸可能なガスの流量の推定値の決定のために、上記コントローラは、1つ以上のセンサ信号からのモータ力を計算するようにさらに構成され得、上記決定された上記呼吸可能なガスの流量の推定値は、上記モータ力に基づき得る。上記混入空気密度関数は、雰囲気圧力値、温度値および相対湿度値の関数を含み得る。上記コントローラは、上記混入空気密度関数を計算する酸素センサからの信号を評価するようにさらに構成され得る。
【0060】
いくつかのバージョンにおいて、上記呼吸治療デバイスは、上記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値を示す電子信号を生成するように構成された雰囲気圧力センサを含み得、上記雰囲気圧力値は、上記呼吸可能なガスの雰囲気圧力の測定値であり得る。上記呼吸治療デバイスは、上記呼吸可能なガスのガス温度の測定値を示す電子信号を生成するように構成されたガス温度センサを含み得、上記ガス温度値は、上記呼吸可能なガスのガス温度の測定値であり得る。上記呼吸治療デバイスは、周囲相対湿度センサ、上記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定値を示す電子信号を含み得、上記周囲相対湿度値は、上記呼吸可能なガスの周囲相対湿度の測定値であり得る。上記コントローラは、上記雰囲気圧力の測定値を示す電子信号を受信するように構成され得る。上記コントローラは、上記ガス温度の測定値を示す上記電子信号を受信するように構成され得る。上記コントローラは、周囲相対湿度の測定値を示す電子信号を受信するように構成され得る。
【0061】
いくつかのバージョンにおいて、上記雰囲気圧力値、上記温度値および上記相対湿度値の関数は、温度に応じた飽和蒸気圧力関数を含み得る。上記温度に応じた飽和蒸気圧力関数は、本明細書中に記載のように規定され得る。上記雰囲気圧力値、上記温度値および上記相対湿度値の関数は、温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数を含み得る。上記温度および相対湿度に応じた蒸気圧力関数は、(a)温度に応じた上記飽和蒸気圧力関数の結果と、(b)上記相対湿度値との乗算を本明細書に記載のように行うことによって規定され得る。上記雰囲気圧力値、上記温度値および上記相対湿度値の関数は、本明細書中に記載のように規定され得る。
【0062】
いくつかのバージョンにおいて、上記呼吸治療デバイスの上記流れ推定関数は、1組の周波数関数を含み得る。上記1組の周波数関数は、第1の回転周波数関数を含み得、上記第1の回転周波数関数は、上記モータの速度の測定値の関数および上記混入空気密度関数である。上記1組の周波数関数は、第2の回転周波数関数を含み得、上記第2の回転周波数関数は、上記モータの速度の測定値の関数である。上記1組の周波数関数は、第3の回転周波数関数を含み得、上記第3の回転周波数関数は、上記モータの速度の測定値の関数および上記混入空気密度関数である。上記第1の回転周波数関数は、本明細書中に記載のように規定され得る。上記第2の回転周波数関数は、本明細書中に記載のように規定され得る。上記第3の回転周波数関数は、本明細書中に記載のように規定され得る。上記流れ推定関数は、下記によって規定され得る。
【0063】
【0064】
Aは、上記第1の回転周波数関数であり得、Bは、上記第2の回転周波数関数であり得、Cは、上記第3の回転周波数関数であり得、Pres_measは、上記圧力センサからの上記呼吸可能なガスの圧力の測定値であり得る。
【0065】
いくつかのバージョンにおいて、上記呼吸治療デバイスは、上記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す電子信号を生成するように構成された流量センサをさらに含み得る。上記コントローラは、上記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す上記電子信号を受信するようにさらに構成され得る。上記コントローラは、上記呼吸可能なガスの流量の測定値を示す上記電子信号と、上記呼吸可能なガスの流量の推定値を示す生成された信号とを比較するようにさらに構成され得る。上記コントローラは、上記比較に基づいた上記流量センサの精度の評価を示す出力インジケータを生成するようにさらに構成され得る。上記コントローラは、上記出力インジケータに基づいて上記モータ作動型の送風機を作動させるための制御パラメータを変更するように、さらに構成され得る。上記コントローラは、上記呼吸可能なガスの推定値を示す上記生成された信号に基づいて上記モータ作動型の送風機を作動させるための制御パラメータを変更するように、さらに構成され得る。上記制御パラメータは、圧力セットポイントおよび流量セットポイントのうちいずれか1つであり得る。
【0066】
本技術のいくつかのバージョンは、本明細書中に記載のような呼吸治療デバイスを含み得、プロセッサ可読媒体をさらに含み得る。このプロセッサ可読媒体上には、プロセッサ実行可能な命令が保存される。プロセッサ実行可能な命令は、上記モータ作動型の送風機のコントローラの1つ以上のプロセッサによって実行されると、上記1つ以上のプロセッサに上記呼吸可能なガスの流量の推定値を生成させ、上記プロセッサ実行可能な命令は、本明細書中に記載の方法のいずれかよる、動作を制御せよとの命令を含む。
【0067】
本明細書中に記載される方法、システム、デバイスおよび装置により、プロセッサにおける機能(例えば、特定目的用コンピュータのプロセッサ、呼吸モニターやコントローラ(例えば、呼吸治療装置のコントローラ)の機能)の向上が可能になり得る。さらに、記載の方法、システム、デバイスおよび装置により、呼吸状態(例えば、睡眠障害呼吸)の自動管理、監視や治療の技術分野における向上が可能になる。この点について、本明細書中に記載の技術的方法によれば、呼吸流れや呼吸デバイスのガス流量の自動決定の信頼性の向上に関連する問題の対処が支援され得る。
【0068】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様または態様のうち多様な1つもしくはその両方を多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる態様または下位態様も構成し得る。
【0069】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
本技術を、添付図面中に非限定的に一実施例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む。
4.1 治療システム
【
図1】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、フルフェイスマスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動し得る。4.2 呼吸システムおよび顔の解剖学的構造
【
図2】
図2は、鼻および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸器系の概要を示す。4.3 患者インターフェース
【
図3】
図3は、本技術の1つの形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。4.4 RPTデバイス
【
図4A】本技術の一形態によるRPTデバイスを示す。
【
図4B】本技術の一形態に従ったRPTデバイスの空気回路の概略図である。上流と下流の方向が示されている。
【
図4C】本技術の一態様に従ったRPTデバイスの電気部品の概略図である。
【
図4D】
図4Dは、本技術の1つの形態によるRPTデバイス中において実行されるアルゴリズムの概略図である。4.5 加湿器
【
図5A】
図5Aは、本技術の一形態による加湿器の等角図である。
【
図5B】
図5Bは、本技術の一形態による加湿器の等角図であり、加湿器リザーバ5110を加湿器リザーバドック5130から除去した様子を示す。4.6 呼吸波形
【
図6A】睡眠時のヒトの呼吸流量波形の典型的なモデルを示す。水平軸は時間であり、垂直軸は呼吸流量である。パラメータ値は変動し得るため、典型的な呼吸は、おおよそ、一回換気量、Vt、0.5L、吸気時間、Ti、1.6秒、ピーク吸気流量、Qピーク、0.4L/秒、呼気時間、Te、2.4s、ピーク呼気流量、Qピーク、-0.5L/秒の値を持ち得る。呼吸の全持続時間Ttotは約4秒である。人間は典型的には、1分あたり呼吸を約15回行い(BPM)、換気Ventは約7.5L/分である。典型的なデューティサイクルであるTiのTtotに対する比率は、約40%である。
【
図6B】呼吸流量波形のスケーリングされた吸気部分を示す。ここで、患者は、「古典的な平坦性」の吸気流れ制限の一例を経験している。
【
図6C】呼吸流量波形のスケーリングされた吸気部分を示す。ここで、患者は、「椅子形の」(晩期の平坦性の)の吸気流れ制限の一例を経験している。
【
図6D】呼吸流量波形のスケーリングされた吸気部分を示す。ここで、患者は、「逆椅子形の」(早期の平坦性の)吸気流れ制限の例を経験している。
【
図6E】呼吸流量波形のスケーリングされた吸気部分を示す。ここで、患者は、「M字型の」吸気流れ制限の例を経験している。
【
図6F】呼吸流量波形のスケーリングされた吸気部分を示す。ここで、患者は、大きく「M字型の」吸気流れ制限の例を経験している。4.7 流量信号推定
【
図7】流量を推定する信号の生成の実行において(例えば、本明細書中により詳細に記載される方法によって)用いられ得る方法、システムを示す例示的図である。
【
図8A】入力信号(例えば、ガス圧力信号、モータ速度信号および計算された混入空気密度関数)に基づいて流量推定信号を生成するためのプロセスを示す例示的フローチャートである。
【
図8B】例えば
図7の例中の流量推定信号を生成するために混入空気密度関数を生成するためのプロセスを示す例示的フローチャートである。
【
図8C】呼吸装置(例えば、RPTデバイス)において例えば
図7のシステムを用いて流量推定信号を用いるための例示的プロセスである。
【
図9A】流れセンサによって測定された流量信号と、多様な高度において例示的RPTデバイスのファンカーブを用いた生成された流量推定信号との比較を示すグラフを含む。
【
図9B】流れセンサによって測定された流量信号と、多様な高度において例示的RPTデバイスのファンカーブを用いた生成された流量推定信号との比較を示すグラフを含む。
【
図10A】流れセンサによって測定された流量信号と、多様な高度において例示的RPTデバイスの使用時において生成された流量推定信号との双方の比較を示すグラフを含む。
【
図10B】流れセンサによって測定された流量信号と、多様な高度において例示的RPTデバイスの使用時において生成された流量推定信号との双方の比較を示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0071】
5 本技術の実施例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の実施例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の実施例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0072】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性、特徴を共有し得る多様な実施例に関連して提供される。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの実施例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成し得る。
【0073】
5.1 治療法
一形態において、本技術は、呼吸器疾患の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧における空気、または高流量の空気を送達するステップを含む。
【0074】
本技術の特定の実施例において、陽圧または高流量における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0075】
5.2 治療システム
一形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、加圧空気を患者インターフェース3000への空気回路4170を介して患者1000へ送達するRPTデバイス4000を含み得る。いくつかのバージョンにおいて、RPTデバイスは、高流量治療デバイスであり得、制御された空気流量の患者への(開口状態の患者インターフェース(例えば、カニューレ)を通じた)送達を典型的な吸気流量よりも概して高い速度において行う。
【0076】
5.3 患者インターフェース
本技術の一態様による非侵襲的患者インターフェース3000は、シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気部3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700の機能態様を含む。いくつかの形態において、機能態様が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能態様を提供し得る。使用時において、シール形成構造3100は、気道への陽圧での空気送達を促進するように、患者の気道の入口を包囲するように配置される。他の患者インターフェースデバイスが、RPTによって提供される治療の種類に応じて用いられ得る。
【0077】
5.4 RPTデバイス
本技術の一態様によるRPTデバイス4000は、機械コンポーネントおよび空気圧式コンポーネント4100、電気コンポーネント4200を含み、1つ以上のアルゴリズム4300を実行するように構成される。RPTデバイスは、外部ハウジング4010を持ち得る。外部ハウジング4010は、上部4012および下部4014の2つの部分によって形成される。さらに、外部ハウジング4010は、1つ以上のパネル(単数または複数)4015を含み得る。RPTデバイス4000は、RPTデバイス4000の1つ以上の内部コンポーネントを支持するシャーシ4016を含む。RPTデバイス4000は、ハンドル4018を含み得る。
【0078】
空気圧RPTデバイス4000の空気圧経路は、1つ以上の空気回路アイテム(例えば、入口空気フィルタ4112、入口マフラー4122、空気を陽圧で送達することが可能な圧力生成器4140(例えば、送風機4142)、出口マフラー4124)ならびに1つ以上の変換器4270(例えば、圧力センサ4272および流量センサ4274)を含み得る。
【0079】
空気経路アイテムのうち1つ以上は、空気圧式ブロック4020と呼ばれる取り外し可能な一体構造内に配置され得る。空気圧ブロック4020は、外部ハウジング4010内に配置され得る。一形態において、空気圧ブロック4020は、シャーシ4016によって支持されるかまたはシャーシ4016の一部として形成される。
【0080】
RPTデバイス4000は、電源4210、1つ以上の入力デバイス4220、中央コントローラ4230、治療デバイスコントローラ4240、圧力生成器4140、1つ以上の保護回路4250、メモリ4260、変換器4270、データ通信インターフェース4280、および1つ以上の出力デバイス4290を有することができる。電気部品4200は、シングルプリント回路基板アセンブリ(PCBA)4202上に取り付けられ得る。一代替形態において、RPTデバイス4000は、1つよりも多くのPCBA4202を含み得る。
【0081】
5.4.1 RPTデバイス機械および空気圧式コンポーネント
RPTデバイスは、以下のコンポーネントのうち1つ以上を一体ユニット中に含み得る。一代替形態において、以下のコンポーネントのうち1つ以上が、それぞれの別個のユニットとして配置され得る。
【0082】
5.4.1.1 空気フィルタ(単数または複数)
本技術の一形態によるRPTデバイスは、空気フィルタ4110または複数の空気フィルタ4110を含み得る。
【0083】
一形態において、入口空気フィルタ4112は、圧力生成器4140の空気圧経路上流の始まり部に配置される。
【0084】
一形態において、出口空気フィルタ4114(例えば抗菌ファクタ)は、空気圧ブロック4020の出口と、患者インターフェース3000との間に配置される。
【0085】
5.4.1.2 マフラー(複数)
本技術の一形態において、入口マフラー4122は、空気圧経路内において圧力生成器4140の上方に配置される。
【0086】
本技術の一形態において、出口マフラー4124は、空気圧経路内において圧力生成器4140と患者インターフェース3000との間に配置される。
【0087】
5.4.1.3 圧力生成器
本技術の一形態において、空気の流れまたは送達を陽圧において生成する圧力生成器4140は、制御可能な送風機4142である。例えば、送風機4142は、ボリュート内に収容された1つ以上のインペラを備えたブラシレスDCモータ4144を含み得る。送風機は、空気供給の送達を例えば約120リットル/分までの速度で、約4cmH2O~約20cmH2Oの範囲の陽圧で、または他の形態において約30cmH2Oまで行うことができる。送風機については、米国特許第7,866,944号、米国特許第8,638、014号、米国特許第8,636,479号およびPCT特許出願公開WO2013/020167の特許または特許出願のうちいずれか1つに記載があり得る。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0088】
圧力生成器4140は、治療デバイスコントローラ4240の制御下にある。
【0089】
他の形態において、圧力生成器4140は、ピストン駆動ポンプ、高圧源(例えば、加圧空気リザーバ)へ接続された圧力調節器、またはベローズであり得る。
【0090】
5.4.1.4 変換器(単数または複数)
変換器は、RPTデバイスの内部に設けてもよいし、あるいはRPTデバイスの外部に設けてもよい。外部変換器は、例えば空気回路上に配置してもよいし、あるいは空気回路の一部を形成してもよい(例えば、患者インターフェース)。外部変換器は、非接触センサの形態をとり得る(例えば、データRPTデバイスを送るかまたは移動させるドップラーレーダー移動センサ)。
【0091】
本技術の一形態において、1つ以上の変換器4270が、圧力生成器4140の上流または下流もしくはその両方に配置され得る。1つ以上の変換器4270は、特性(例えば、空気圧経路中の当該ポイントにおける流量、圧力または温度)を測定するように、構築および配置され得る。
【0092】
本技術の一形態において、1つ以上の変換器4270は、患者インターフェース3000の近隣に配置され得る。
【0093】
一形態において、変換器4270からの信号が、(例えば、ローパス、ハイパスまたはバンドパスフィルタリングによって)フィルタリングされ得る。
【0094】
5.4.1.4.1 流量センサ
本技術による流量センサ4274は、差圧変換器(例えば、SENSIRIONからのSDP600シリーズ差圧変換器)に基づき得る。いくつかのバージョンにおいて、本技術は、流量センサ無しで実行され得る(例えば、流量推定信号が他のセンサ信号(すなわち、流量センサ信号ではないもの)に基づいて生成される場合)。
【0095】
一形態において、流量(例えば、流量センサ4274からの合計流量Qt、またはその推定値もしくはその両方)を表す信号が、中央コントローラ4230によって受信され得る。
【0096】
5.4.1.4.2 圧力センサ
本技術による圧力センサ4272は、空気圧経路と流体連通して配置され得る。よって、圧力センサ4272は、空気圧経路内のガスの圧力特性(例えば、RPTの送風機によって生成された圧力)を測定する。適切な圧力変換器の一実施例として、HONEYWELL ASDXシリーズからのセンサがある。別の適切な圧力変換器として、GENERAL ELECTRICからのNPAシリーズからのセンサがある。
【0097】
1つの形態において、圧力センサ4272からの信号は、中央コントローラ4230によって受信される。
【0098】
5.4.1.4.3 モータ速度変換器
本技術の一形態において、モータ4144または送風機4142もしくはその両方の回転速度を決定するために、モータ速度変換器4276またはセンサが用いられ得る。モータ速度変換器4276からのモータ速度信号は、治療装置コントローラ4240へ提供され得る。モータ速度変換器4276は、例えば速度センサであり得る(例えば、ホール効果センサ)。
【0099】
5.4.1.4.4 ガス温度センサ
本技術のいくつかのバージョンにおいて、ガス温度センサ4275である。いくつかのこのような実行において、ガス温度センサは、(温度および流量信号を生成し得るが独立型温度センサまたは他の温度感知デバイスであり得る)別のセンサ(例えば、Sensirion SDP-872流れセンサ)(例えば、熱線センサ)のコンポーネントであり得る。このようなセンサにより、RPTの空気圧経路のガス中においてまたはRPTの空気圧経路のガスに関連して測定されたガス(空気)温度を示す信号(例えば、電子)が生成され得る。このような測定値は、RPTの空気圧流路の周囲にあるガスも示し得る。このようなセンサは、例えばRPTのPCB上に配置され得る。このセンサは、感知された温度をアナログ信号またはデジタルもしくはその両方の信号中に生成し得、(サンプルされた信号またはこのようなセンサ信号もしくはその両方からの温度値を含むメモリを介して)コントローラ4230のプロセッサによってアクセスされ得る。
【0100】
5.4.1.4.5 雰囲気圧力センサ
本技術のいくつかのバージョンにおいて、雰囲気圧力センサ4277である。例えば、RPTの雰囲気圧力センサ(例えば、RPTのPCB上のもの)は、雰囲気圧力(すなわち、RPTの空気圧流路の外部の圧力)を測定するように構成される。このセンサは、感知された雰囲気圧力をアナログ信号またはデジタル信号もしくはその両方中に生成し得、コントローラ4230のプロセッサによって(サンプルされた信号またはこのようなセンサ信号もしくはその両方からの雰囲気圧力値を含むメモリを介して)アクセスされ得る。
【0101】
5.4.1.4.6 周囲相対湿度センサ
本技術のいくつかのバージョンにおいて、周囲相対湿度センサ4279である。例えば、RPTの相対湿度センサ(例えば、RPTの上のもの)は、周囲相対湿度(すなわち、RPTの空気圧流路の外部の相対湿度)を測定するように構成される。上記センサは、感知された相対湿度をアナログ信号またはデジタル信号もしくはその両方中に生成し得、コントローラ4230のプロセッサによって(サンプルされた信号または相対湿度値(例えば、このようなセンサ信号からのパーセンテージ値)もしくはその両方を含むメモリを介して)アクセスされ得る。
【0102】
5.4.1.4.7 酸素センサ
本技術のいくつかのバージョンは、1つ以上の酸素センサを任意選択的に含み得る(例えば、酸素センサ信号7021を生成するためのもの)。これらの酸素センサは、RPTなどの装置の空気圧経路を通過するガスの酸素濃度を決定するように適合される。実行において、呼吸導管を通過するガスの酸素濃度の推定値は、酸素センサ7023を用いて行われる。酸素センサは、ガス中の酸素濃度を測定するように構成されたデバイスである。酸素センサの例を非限定的に挙げると、超音波酸素センサ、電気酸素センサ、化学酸素センサ、および光学酸素センサがある。1つの実行において、酸素センサ7023は、超音波エミッタおよび超音波受信器を含む超音波酸素センサであり得る。
【0103】
5.4.1.4.8 他のモータパラメータセンサ(複数可)
本技術のいくつかのバージョンは、他のモータパラメータ信号(複数可)7021(例えば、モータ電流、モータ電圧およびモータ力の少なくとも1つ)の決定または感知を行う1つ以上のセンサまたは回路要素を任意選択的に含み得る。例えば、1つ以上のセンス抵抗(複数可)が、送風機のモータへ供給される電流または電圧もしくはその両方の測定のために用いられ得る。いくつかのバージョンにおいて、例えば測定された電流および既知のまたは測定された電圧を用いて、モータの瞬時電力が(例えば装置の中央コントローラにより)計算され得る(例えば、電流X電圧=電力)。
【0104】
5.4.1.5 アンチスピルバック弁
本技術の一形態において、アンチスピルバック弁が、加湿器5000と、空気圧ブロック4020との間に配置され得る。アンチスピルバック弁は、水が加湿器5000から上流に(例えば、送風機のモータ4144へ)流れる危険性を低減させるように、構築および配置される。
【0105】
5.4.1.6 空気回路
本技術の一態様による空気回路4170は導管または管であり、使用時において空気流れが2つのコンポーネント(例えば、空気圧ブロック4020および患者インターフェース3000)間に移動するように、構築および配置される。
【0106】
詳細には、空気回路4170は、空気圧式ブロックの出口および患者インターフェースと流体接続し得る。空気回路は、空気送達管と呼ばれ得る。いくつかの場合において、吸気および呼気のための回路の別個の肢があり得る。他の場合において、単一の肢が用いられる。
【0107】
いくつかの形態において、空気回路4170は、(例えば空気温度の維持または上昇のために)空気回路中の空気を加熱するように構成された1つ以上の加熱要素を含み得る。加熱要素は、加熱ワイヤ回路の形態をとり得、1つ以上の変換器(例えば、温度センサ)を含み得る。一形態において、加熱ワイヤ回路は、空気回路4170の軸周囲にらせん状に巻かれ得る。加熱要素は、コントローラ(例えば、中央コントローラ4230または加湿器コントローラ5250)と連通し得る。加熱ワイヤ回路を含む空気回路4170の一実施例について、米国特許出願第US/2011/0023874号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0108】
5.4.1.7 酸素送達
本技術の一形態において、補充用酸素4180が、空気圧経路における1つ以上のポイント(例えば、空気圧ブロック4020の上流)、空気回路4170または患者インターフェース3000もしくはその両方へ送達され得る。
【0109】
5.4.2 RPTデバイス電気コンポーネント
5.4.2.1 電源
電源4210は、RPTデバイス4000の外部ハウジング4010の内部または外部に配置され得る。
【0110】
本技術の一形態において、電源4210は、RPTデバイス4000にのみ電力を供給する。本技術の別の形態において、電源4210から、電力がRPTデバイス4000および加湿器5000双方へ提供される。
【0111】
5.4.2.2 入力デバイス
本技術の一形態において、RPTデバイス4000は、人間がデバイスと相互作用を可能にするためのボタン、スイッチまたはダイヤルの形態をとる1つ以上の入力デバイス4220を含む。ボタン、スイッチまたはダイヤルは、タッチスクリーンを介してアクセスすることが可能な物理的デバイスまたはソフトウェアデバイスであり得る。ボタン、スイッチまたはダイヤルは、一形態において外部ハウジング4010に物理的に接続させてもよいし、あるいは、別の形態において中央コントローラ4230と電気接続された受信器と無線通信してもよい。
【0112】
一形態において、入力デバイス4220は、人間が値またはメニュー選択肢もしくはその両方を選択することを可能にするように、構築および配置され得る。
【0113】
5.4.2.3 中央コントローラ
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、RPTデバイス4000の制御に適した1つまたは複数のプロセッサである。
【0114】
適切なプロセッサは、ARM HoldingsからのARM(登録商標)Cortex(登録商標)-Mプロセッサに基づいたプロセッサであるx86INTELプロセッサを含み得る(例えば、ST マクロ電子からのS(登録商標)32シリーズのマイクロコントローラ)。本技術の特定の代替形態において、32ビットRISC CPU(例えば、ST MICRO電子SからのSTR9シリーズマクロコントローラ)または16ビットRISC CPU(例えば、TEXAS INSTRUMENTSによって製造されたマクロコントローラのMSP430ファミリーからのプロセッサ)も適切であり得る。
【0115】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、専用電子回路である。
【0116】
一形態において、中央コントローラ4230は、特定用途向け集積回路である。別の形態において、中央コントローラ4230は、個別電子コンポーネントを含む。
【0117】
中央コントローラ4230は、1つ以上の変換器4270、および1つ以上の入力デバイス4220から入力信号(単数または複数)を受信するように、構成され得る。
【0118】
中央コントローラ4230は、出力デバイス4290、療法デバイスコントローラ4240、データ通信インターフェース4280および加湿器コントローラ5250のうち1つ以上へ出力信号(単数または複数)を提供するように、構成され得る。
【0119】
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、本明細書中に記載の1つ以上の方法を具現するように、構成される(例えば、非一時的なコンピュータで読出可能な記録媒体のような(例えば、メモリ4260)中に記録されたコンピュータプログラムとして表現された1つ以上のアルゴリズム4300)。本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、RPTデバイス4000と一体化され得る。しかし、本技術のいくつかの形態において、いくつかの方法が、遠隔配置されたデバイスによって行われ得る。例えば、遠隔配置されたデバイスは、記録されたデータ(例えば、本明細書中に記載のセンサのうちいずれかからのもの)の分析により、人工呼吸器の制御設定を決定し得るか、または、呼吸関連イベントを検出し得る。
【0120】
5.4.2.4 時計
RPTデバイス4000は、中央コントローラ4230へ接続された時計4232を含み得る。
【0121】
5.4.2.5 治療デバイスコントローラ
本技術の一形態において、治療デバイスコントローラ4240は治療制御モジュール4330であり、中央コントローラ4230によって実行されるアルゴリズム4300の一部を形成する。
【0122】
本技術の一形態において、治療装置コントローラ4240は、専用モータ制御集積回路である。例えば、一形態において、ONSEMIによって製造されたMC33035ブラシレスDCモータコントローラが用いられる。
【0123】
5.4.2.6 保護回路
本技術による1つ以上の保護回路4250は、電気保護回路、温度または圧力もしくはその両方の安全回路を含み得る。
【0124】
5.4.2.7 メモリ
本技術の一形態によれば、RPTデバイス4000は、メモリ4260(例えば、不揮発性メモリ)を含む。いくつかの形態において、メモリ4260は、電池式スタティックRAMを含み得る。いくつかの形態において、メモリ4260は、揮発性RAMを含み得る。
【0125】
メモリ4260は、PCBA4202上に配置され得る。メモリ4260は、EEPROMまたはNANDフラッシュの形態をとり得る。
【0126】
追加的にまたは代替的に、RPTデバイス4000は、取り外し可能なメモリ4260(例えば、セキュアデジタル(SD)規格に従って作製されたメモリカード)を含む。
【0127】
本技術の一形態において、メモリ4260は、非一時的コンピュータで読出可能な記録媒体として機能する。この記録媒体上に、本明細書中に記載の1つ以上の方法を表現するコンピュータプログラム命令(例えば、1つ以上のアルゴリズム4300(例えば、本明細書でさらに詳しく説明している流量推定に関して記載された方法が含まれる))が記録される。メモリ4260は、本明細書中に記載の方法のうち1つ以上が(1つ以上のプロセッサによる命令として)実行された際に取得、収集、利用または生成されたデータのための揮発性または不揮発性記憶媒体としても機能し得る。
【0128】
5.4.2.8 データ通信システム
本技術の一形態において、データ通信インターフェース4280が設けられ、中央コントローラ4230へ接続される。データ通信インターフェース4280は、遠隔外部通信ネットワーク4282またはローカル外部通信ネットワーク4284もしくはその両方へ接続可能であり得る。遠隔外部通信ネットワーク4282は、遠隔外部デバイス4286へ接続可能であり得る。ローカル外部通信ネットワーク4284は、ローカル外部デバイス4288へ接続可能であり得る。
【0129】
一形態において、データ通信インターフェース4280は、中央コントローラ4230の一部である。別の形態において、データ通信インターフェース4280は、中央コントローラ4230と別個であり、集積回路またはプロセッサを含み得る。
【0130】
一形態において、遠隔外部通信ネットワーク4282はインターネットである。データ通信インターフェース4280は、インターネットへ接続するために、(例えば、イーサネットまたは光ファイバーを介して)有線通信を用得るかまたは無線プロトコル(例えば、CDMA、GSM、LTE)を用い得る。
【0131】
一形態において、ローカル外部通信ネットワーク4284は、1つ以上の通信規格(例えば、ブルートゥース(登録商標)またはコンシューマー赤外線プロトコル)を用いる。
【0132】
一形態において、遠隔外部デバイス4286は、1つ以上のコンピュータ(例えば、ネットワーク化コンピュータのクラスタ)である。一形態において、遠隔外部デバイス4286は、物理的コンピュータではなく仮想コンピュータであり得る。いずれの場合も、このような遠隔外部デバイス4286は、適切に権限を付与された人間(例えば、臨床医)からのアクセスが可能であり得る。
【0133】
ローカル外部デバイス4288は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレットまたはリモートコントロールであり得る。
【0134】
5.4.2.9 任意選択のディスプレイ、警報を含む出力デバイス
本技術による出力デバイス4290は、視覚、音声および触覚ユニットのうち1つ以上の形態をとり得る。視覚ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイであり得る。
【0135】
5.4.2.9.1 ディスプレイドライバ
ディスプレイドライバ4292は、ディスプレイ4294上へ表示されるべき文字、記号または画像を入力として受信し、ディスプレイ4294にこれらの文字、記号または画像を表示させるコマンドへ変換する。
【0136】
5.4.2.9.2 ディスプレイ
ディスプレイ4294は、ディスプレイドライバ4292から受信されたコマンドに応答して、文字、記号または画像を視覚的に表示するように構成される。例えば、ディスプレイ4294は8セグメントディスプレイであり得、その場合、ディスプレイドライバ4292は、各文字または記号(例えば、数字「0」)を、特定の文字または記号を表示するために各8個のセグメントを活性化させるべきかを示す8個の論理信号へ変換する。
【0137】
5.4.3 RPTデバイスアルゴリズム
5.4.3.1 事前処理モジュール
本技術の一形態による事前処理モジュール4310は、変換器4270(例えば流量センサ4274または圧力センサ4272)からの信号を入力として受信し、1つ以上の出力値を計算するための1つ以上のプロセスステップを行う。これらの出力値は、別のモジュール(例えば、治療エンジンモジュール4320)への入力として用いられる。
【0138】
本技術の一形態において、出力値は、インターフェースまたはマスク圧力Pm、呼吸流量Qrおよび漏洩流量Qlを含む。
【0139】
本技術の多様な形態において、事前処理モジュール4310は、圧力補償4312、通気流量推定4314、漏洩流量推定4316、流量信号推定4317および呼吸流量推定4318のアルゴリズムのうち1つ以上を含む。
【0140】
5.4.3.1.1 圧力補償
本技術の一形態において、圧力補償アルゴリズム4312は、空気圧ブロックの出口の近位の空気圧経路中の圧力を示す信号を入力として受信する。圧力補償アルゴリズム4312は、圧力低下を空気回路4170を通じて推定し、患者インターフェース3000中の推定圧力Pmを出力として提供する。
【0141】
5.4.3.1.2 通気流量の推定
本技術の一形態において、通気流量推定アルゴリズム4314は、患者インターフェース3000中の推定圧力Pmを入力として受信し、患者インターフェース3000中の通気孔3400からの空気の通気流量Qvを推定する。
【0142】
5.4.3.1.3 漏洩流量の推定
本技術の一形態において、漏洩流量推定アルゴリズム4316は、全体流量Qtおよび通気流量Qvを入力として受信し、漏洩流量の推定値Qlを出力として提供する。一形態において、漏洩流量推定アルゴリズム4316は、いくつかの呼吸サイクル(例えば、約10秒)を含むくらいに充分に長い期間にわたって全体流量Qtと通気流量Qvとの間の差平均を計算することにより、漏洩流量Qlを推定する。
【0143】
一形態において、漏洩流量推定アルゴリズム4316は、漏洩流量Qlを出力として提供し、漏洩コンダクタンスを計算することおよび漏洩流量Qlを漏洩コンダクタンスおよび圧力Pmの関数となるように決定することにより、患者インターフェース3000中の全体流量Qt、通気流量Qv、および推定圧力Pmを入力として受信する。漏洩コンダクタンスは、全体流量Qtと通気流量Qvとの間の差に等しいローパスフィルタされた非通気流量の商と、圧力Pmのローパスフィルタされた平方根として計算され、ローパスフィルタ時定数は、いくつかの呼吸サイクル(例えば、約10秒)を含むだけの充分な値を有する。漏洩流量Qlは、漏洩コンダクタンスの積および圧力Pmの関数として推定され得る。
【0144】
5.4.3.1.4 呼吸流量推定
本技術の一形態において、呼吸流量推定アルゴリズム4318は、全体流量Qt、通気流量Qvおよび漏洩流量Qlを入力として受信し、通気流量Qvおよび推定漏洩流量Qlを全体流量Qtから減算することにより、患者への空気呼吸流量Qrを推定する。
【0145】
5.4.3.1.5 流量信号推定
本技術の一形態において、流量信号は、(例えば全流量Qt、通気部流量Qvおよび漏洩流量Qlの推定を生成するための)流量信号推定アルゴリズム4317によって推定され得、患者の空気の呼吸流量Qrの推定値を(通気部流量Qvおよび推定された漏洩流量Qlを推定された全流量Qtから減算することにより)さらに行う。このような流量信号推定プロセスについて、本明細書中さらに詳細に説明する。このような流量信号推定は、(例えば流れセンサの動作において故障が検出された場合に)流れセンサからの流量信号の代わりに用いられ得る。同様に、このような流量信号推定は、流れセンサの動作において故障を検出するためまたは他の場合に流量センサの精度を本明細書中により詳細に記載のように評価するために用いられ得る。
【0146】
5.4.3.2 治療エンジンモジュール
本技術の一形態において、治療エンジンモジュール4320は、患者インターフェース3000中の圧力Pmおよび患者への空気呼吸流量Qr(例えば、流量推定信号から誘導されたもの)のうち1つ以上を入力として受信し、1つ以上の治療パラメータを出力として提供する。
【0147】
本技術の一形態において、治療パラメータは、治療圧力Ptである。
【0148】
多様な形態において、治療エンジンモジュール4320は、フェーズ決定4321、波形決定4322、換気決定4323、吸気流量制限検出4324、無呼吸検出4325、吸気M字検出4326、気道開通性決定4327、典型的な最近の換気決定4328、および治療パラメータ決定4329のアルゴリズムのうち1つ以上を含む。
【0149】
5.4.3.2.1 フェーズ決定
本技術の一形態において、フェーズ決定アルゴリズム4321は、呼吸流量Qrを示す信号を入力として受信し、患者1000の現在の呼吸サイクルのフェーズを出力Φとして提供する。
【0150】
いくつかの形態において、離散フェーズ決定として知られるフェーズ出力Φは、離散変数である。離散フェーズ決定の一具現例により、吸気または呼気の値を持つ二値フェーズ出力Φが得られる。この値は、自発吸気および呼気それぞれの開始が検出された際に例えば0回転および0.5回転の値としてそれぞれ表される。「トリガ」および「サイクル」するRPTデバイス4000は、離散フェーズ決定を有効に行う。なぜならば、トリガ点およびサイクル瞬間は、フェーズが呼気から吸気へおよび吸気から呼気へそれぞれ変化する瞬間であるからである。二値フェーズ決定の一具現例において、フェーズ出力Φは、呼吸流量Qrが「トリガ閾値」を超える(これによりRPTデバイス4000をトリガして「自発呼吸」を送達する)ときに離散値0(吸気を示す)を有し、呼吸流量Qrが「サイクル閾値」を下回る(これによりRPTデバイス4000を「自発サイクリングさせる」)ときに0.5回転の離散値(呼気を示す)を有するように、決定される。いくつかのこのような実行において、トリガおよびサイクル閾値は、トリガおよびサイクル閾値関数のそれぞれに従った呼吸時において、時間と共に変化し得る。このような関数について、特許協力条約特許出願第PCT/AU2005/000895号(ResMed LimitedへWO2006/000017として公開)中に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0151】
いくつかのこのような実行態様において、最終トリガインスタントの後の「無反応期間」(「Timin」として示す)内においてはサイクリングが回避され得、最終トリガインスタント後のインタバル(「Timax」として示す)内においては自発的サイクリングの不在を発生させる必要がある。TiminおよびTimaxの値は、RPTデバイス4000の設定であり、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードされるかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力により設定され得る。
【0152】
他の形態において、連続フェーズ決定として知られるフェーズ出力Φは連続する変数であり、例えば0回転~1回転または0~2πラジアンの間で変動する。連続フェーズ決定を行うRPTデバイス4000は、連続フェーズが0回転および0.5回転それぞれに到達したときに、トリガおよびサイクルし得る。連続フェーズ決定の一具現例において、吸気時間Tiおよび呼気時間Teは、先ず呼吸流量Qrから推定される。その後、フェーズΦは、先行トリガ瞬間から経過した吸気時間Tiの割合の半分または0.5回転に先行サイクル瞬間から経過した呼気時間Teの割合を加算した値(これらのうち、より直近のもの)として決定される。
【0153】
(以下に述べる)換気治療に適したいくつかの具現例において、フェーズ決定アルゴリズム4321は、例えば無呼吸時において呼吸流量Qrが有意ではない場合であってもトリガされるように構成される。その結果、RPTデバイス4000は、患者1000から自発呼吸努力が無い場合、「バックアップ呼吸」を送達させる。このような自発/タイミング付き(ST)モードとして知られる形態において、フェーズ決定アルゴリズム4321は、「バックアップレート」Rbを利用し得る。バックアップレートRbは、RPTデバイス4000の設定であり、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードされるかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力により設定され得る。
【0154】
フェーズ決定アルゴリズム4321(離散的または連続的なもの)は、タイミング付きバックアップとして知られる態様でバックアップレートRbを用いて、STモードを具現し得る。タイミング付きバックアップは、以下のように具現され得る。すなわち、フェーズ決定アルゴリズム4321は、例えば上記したように呼吸流量Qrをトリガ閾値と比較することにより、自発呼吸努力に起因する吸気開始を検出しようとする。持続期間がバックアップレートRb(バックアップタイミング閾値と呼ばれるインタバル、Tbackup)の逆数または逆に等しい最終トリガ瞬間後の一定インタバル以内に自発呼吸の開始が検出されなかった場合、フェーズ決定アルゴリズム4321は、フェーズ出力Φを0値へと設定し、これにより、RPTデバイス4000をトリガしてバックアップ呼吸を送達する。その後、フェーズ決定アルゴリズム4321は、例えば上記したように呼吸流量Qrをサイクル閾値と比較することにより、自発呼気の開始を検出しようとする。バックアップ呼吸のサイクル閾値は、自発的呼吸のサイクル閾値と異なり得る。自発的呼吸と同様に、バックアップ呼吸時の自発的サイクリングは、最終トリガインスタント後の継続期間Timinの「無反応期間」内に回避され得る。
【0155】
自発呼吸と同様に、バックアップ呼吸時に最終トリガ瞬間後のTimax秒以内に自発呼気の開始が検出されなかった場合、フェーズ決定アルゴリズム4321は、フェーズ出力Φを0.5値へと設定し、これにより、RPTデバイス4000をサイクリングする。その後、フェーズ決定アルゴリズム4321は、上記したように呼吸流量Qrをトリガ閾値と比較することにより自発吸気の開始を検出しようとする。
【0156】
5.4.3.2.2 波形決定
本技術の一形態において、波形決定アルゴリズム4322は、患者の呼吸サイクル全体を通じてほぼ一定の治療圧力を提供する。
【0157】
本技術の他の形態において、波形決定アルゴリズム4322は、圧力生成器4140を制御して、波形テンプレートに従って患者呼吸サイクルのフェーズ全体を通じて変動する治療圧力Ptを提供させる。
【0158】
本技術の一形態において、波形決定アルゴリズム4322は、波形テンプレートΠ(Φ)を提供する。波形テンプレートは、波形決定アルゴリズム4322によって用いられる予定のフェーズ決定アルゴリズム4321によって提供されるフェーズ値Φの変域について[0,1]の範囲内の値を有する。
【0159】
一形態において、離散的または連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は矩形波テンプレートであり、0.5回転までのフェーズ値に対して1の値を有し、0.5回転を超えるフェーズ値に対して0の値を有する。一形態において、連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は、2つの平滑に曲線状の部分を含む(すなわち、0.5回転までのフェーズ値に対して平滑に曲線状の(例えば、上昇コサインの)0から1への上昇、および0.5回転を超えるフェーズ値に対して1から0への平滑に曲線状の(例えば、指数関数的)低下)。
【0160】
本技術のいくつかの形態において、波形決定アルゴリズム4322は、RPTデバイス4000の設定に応じて、波形テンプレートΠ(Φ)を波形テンプレートのライブラリから選択する。ライブラリ中の各波形テンプレートΠ(Φ)は、フェーズ値Φに対するルックアップテーブル値Πとして提供され得る。他の形態において、波形決定アルゴリズム4322は、所定の関数形式(恐らくは、1つ以上のパラメータ(例えば、立上がり時間および下降時間)によってパラメータ化されたもの)を用いて、波形テンプレートΠ(Φ)を「オンザフライ」で計算する。関数形式のパラメータは、所定のものであってもよりし、あるいは患者1000の現在の状態に依存してもよい。
【0161】
吸気(Φ=0回転)または呼気(Φ=0.5回転)の離散二値フェーズに適した本技術のいくつかの形態において、波形決定アルゴリズム4322は、最も直近のトリガ瞬間から測定された離散フェーズΦおよび時間tの関数として、波形テンプレートΠを「オンザフライ」で計算する。1つのこのような形態において、波形決定アルゴリズム4322は、波形テンプレートΠ(Φ,t)を2つの部分(吸気および呼気)において以下のように計算する。
【数13】
【0162】
ここで、Πi(t)およびΠe(t)は、波形テンプレートΠ(Φ,t)の吸気部分および呼気部分である。
【0163】
1つのこのような形態において、波形テンプレートの吸気部分Πi(t)は、2つの連続的なセクションの0から1への平滑な上昇である。
・「時間スケール」として知られるパラメータの第1の半分の2/3までの直線的上昇、
・時間スケールの第2の半分について1までの放物線状の上昇。
【0164】
このような吸気部位Πi(t)の「上昇時間」は、Πi(t)が0.875の値まで上昇するのに必要な時間として規定され得る。
【0165】
波形テンプレートの呼気部分Πe(t)は、2つの連続的な放物セクションの1から0への平滑な下降であり、その曲点は時間スケールの25%~50%になる。このような呼気部位Πe(t)の「下降時間」は、Πe(t)が0.125の値まで下降するのに必要な時間として規定され得る。
【0166】
5.4.3.2.3 換気決定
本技術の一形態において、換気決定アルゴリズム4323は、呼吸流量Qr(これは、前述のように、推定流量信号から誘導され得る)を入力として受信し、現在の患者換気を示すVent測定値を決定する。
【0167】
いくつかの実行において、換気決定アルゴリズム4323は、Ventを呼吸流量信号Qrの絶対値の半分である「瞬間的換気」Vintとして計算する。
【0168】
いくつかの実行において、換気決定アルゴリズム4323は、瞬間的換気Vintをコーナ周波数がおよそ0.10Hzであるローパスフィルタ(例えば、4次ベッセルローパスフィルタ)によってフィルタリングすることにより、Ventを「超高速換気」VveryFastとして計算する。これは、およそ10秒の時定数に相当する。
【0169】
いくつかの実行において、換気決定アルゴリズム4323は、瞬間的換気Vintをコーナ周波数がおよそ0.05Hzであるローパスフィルタ(例えば、4次ベッセルローパスフィルタ)によってフィルタリングすることにより、Ventを「超高速換気」VveryFastとして計算する。これは、およそ20秒の時定数に相当する。
【0170】
本技術のいくつかの実行において、換気決定アルゴリズム4323は、Ventを肺胞換気の測定値として決定する。肺胞換気は、所与の時間における呼吸系のガス交換表面に実際に到達する実際の空気の量の測定値である。患者の呼吸系は、有意な「解剖学的死腔」(すなわち、ガス交換が発生しない容量)を含むため、肺胞換気は、呼吸流量Qr上に直接動作する上記計算によって生成される「グロス」換気値未満でありかつ患者の呼吸能力のより正確な測定値である。
【0171】
このような実行において、換気決定アルゴリズム4323は、瞬間的肺胞換気が呼吸流量Qrの絶対値のゼロまたは半分であると決定し得る。瞬間的肺胞換気がゼロとなる条件を以下に示す。
・ 呼吸流量が非負から負へ変化したとき、または
・ 呼吸流量が負から非負へ変化したとき、および
・ 呼吸流量Qrの整数の絶対値が患者の解剖学的死腔容量を下回る期間にわたって呼吸流量の符号が変化した後。
【0172】
患者の解剖学的デッドスペース体積は、RPTデバイス4000の設定であり得、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードされるかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力により設定され得る。
【0173】
いくつかのこのような実行において、換気決定アルゴリズム4323は、上記の各ローパスフィルタを用いて瞬間的肺胞換気をローパスフィルタリングすることにより、Ventを「超高速肺胞換気」または「高速肺胞換気」もしくはその両方として計算し得る。
【0174】
以下の記載において、「肺胞」という単語が省略されるが、治療エンジンモジュール4320のいくつかの実行中に存在しているものと仮定される。すなわち、下記の記載において「換気」および「一回換気量」について言及が有る場合、当該言及は、肺胞換気および肺胞一回換気量ならびに「グロスの」換気および一回換気量に適用され得る。
【0175】
5.4.3.2.4 吸気流量制限決定
本技術の1つの形態において、治療エンジンモジュール4320は、流れ制限の範囲(呼吸流量波形の吸気部分の部分的な上気道閉塞とも呼ばれる(本明細書中、「吸気波形」という略称で呼ぶ))を決定する1つ以上のアルゴリズムを実行する。一形態において、流量制限決定アルゴリズム4324は、呼吸流量信号Qr(これは、前述のように、推定流量信号から誘導され得る)を入力として受信し、各吸気波形が流量制限を示す範囲の測定値を出力として提供する。
【0176】
通常の吸気波形は、形状が正弦波に類似するように丸み付けされる(
図6Aを参照)。充分な上気道筋緊張(またはEPAP)が有れば、気道は、本質的に硬質管として機能し、内部において、呼吸努力(または外部換気支援)の増加に応答して流れが増加する。いくつかの状況(例えば、睡眠、鎮静)において、上気道は、例えば呼吸努力からまたはさらには付加された換気からの内部での低雰囲気圧力に応答して座屈可能であり得る。その結果、完全閉塞(無呼吸)または「流れ制限」として知られる現象に繋がり得る。「流れ制限」という用語は、呼吸努力が増加すると、気道が狭くなるだけであり、その結果、努力から独立して吸気流れが一定の値において制限される挙動(「スターリングレジスタ挙動」)を含む。そのため、吸気流量曲線は、平坦な形状になる(
図6Bを参照)。
【0177】
実際は、上気道挙動はもっと複雑であり、上気道に関連する吸気流れ制限およびさらにはより広範な外部換気支援の存在を示す多様な流れ形状が存在する(
図6C~
図6Fを参照)。そのため、流れ制限決定アルゴリズム4324は、以下の種類の吸気流れ制限、すなわち、「古典的な平坦性」(
図6Bを参照)、「椅子状」(
図6Cを参照)、および「逆椅子形」(
図6Dを参照)。(「M字形状」(
図6Eおよび
図6Fを参照)は、M字検出アルゴリズム4326を用いて別個に取り扱われる。)のうち1つ以上に応答し得る。
【0178】
5.4.3.2.5 M字形検出
本技術の一形態において、治療エンジン4320モジュールは、1つ以上のアルゴリズムを実行して、吸気波形内の「M字形」を検出する。一形態において、M字形検出アルゴリズム4326は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、各吸気波形がM字形を示す範囲を表す測定値を出力として提供する。
【0179】
一回換気量または他の呼吸方向の換気値のM字型の吸気波形のうち、典型的な最近の値をそれほど超えていないものは、流れ制限を示す。このような吸気波形は、相対的に急速な上昇および下降ならびに一時的下落または「ノッチ」を流れおよび中央において有し、一時的下落は流れ制限に起因する(
図6Eおよび
図6Fを参照)。一回換気量または呼吸方向の換気値が増加すると、このような波形は概して挙動的(すなわち、睡眠時の微小覚醒または吐息)になり、流れ制限を示さない。
【0180】
M字型の波形を検出するために、M字検出アルゴリズム4326は、広範にM字型である波形に対する吸気波形の類似性を決定する。
【0181】
5.4.3.2.6 無呼吸検出
本技術の一形態において、治療エンジンモジュール4320は、無呼吸検出アルゴリズム4325を実行して、無呼吸を検出する。
【0182】
一形態において、無呼吸検出アルゴリズム4325は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、検出された無呼吸の開始と終了を表す一連のイベントを出力として提供する。
【0183】
5.4.3.2.7 典型的な最近の換気決定
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、現在の換気Ventの測定値を入力としてとり、患者1000の典型的な最近の換気を表す値Vtypの決定のために、1つ以上の典型的な最近の換気決定アルゴリズム4328を実行する。
【0184】
典型的な最近の換気Vtypは、いくつかの所定の時間スケールにわたる複数の時間的瞬間にわたる現在の換気Ventの測定値が付近に分布する値であり、密集する傾向がある(すなわち、最近の履歴における現在の換気の測定値の中央傾向の測定値)。典型的な最近の換気決定アルゴリズム4328の一具現例において、最近の履歴は、数分のオーダーであるが、どんなも場合もチェーン・ストークス漸増サイクルおよび漸減サイクルの時間スケールよりも長くなければならない。典型的な最近の換気決定アルゴリズム4328は、中央傾向の多様な周知の測定値のいずれかを用いて、典型的な最近の換気Vtypを現在の換気Ventの測定値から決定し得る。1つのこのような測定値として、現在の換気Ventの測定値についてのローパスフィルタ出力であり、時定数が100秒に等しい。
【0185】
5.4.3.2.8 気道開通性決定
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、気道開通性の決定のために、気道開通性決定アルゴリズム4327を実行する。いくつかの具現例において、気道開通性決定アルゴリズム4327は、「閉鎖」もしくは「開放」のどちらかを返送するか、それに相当するブール値(例えば、閉鎖を示す「真」と開放を示す「偽」)を返送する。
【0186】
5.4.3.2.9 治療パラメータの決定
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、治療エンジンモジュール4320中のその他のアルゴリズムのうち1つ以上から返送された値を用いて、1つ以上の治療パラメータの決定のための1つ以上の治療パラメータ決定アルゴリズム4329を実行する。
【0187】
本技術の一形態において、治療パラメータは、瞬間治療圧力Ptである。この形態の一具現例において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、以下のように治療圧力Ptを決定する。
【数14】
ここで、Aは「圧力補助」の量であり、Π(Φ、t)は、フェーズの現在の値Φおよび時間のtにおける(0から1の範囲の)波形テンプレート値であり、P
0はベース圧力である。
【0188】
治療圧力Ptを正の振幅Aの方程式(1)を用いて決定してそれをRPTデバイス4000のコントローラ4230における設定点として適用することにより、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、患者1000の自発呼吸努力と同期して治療圧力Ptを振動させる。すなわち、上記した典型的な波形テンプレートΠ(Φ)に基づいて、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、吸気の開始時または吸気の最中に治療圧力Ptを増加させ、呼気開始時または呼気の最中に治療圧力Ptを低下させる。(非負)圧力支援Aは、振動の振幅である。
【0189】
波形決定アルゴリズム4322がルックアップテーブルとして波形テンプレートΠ(Φ)を提供する場合、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、フェーズ決定アルゴリズム4321から返送されたフェーズの現在の値Φに対して最近接ルックアップテーブル入力をロケートすることまたはフェーズの現在の値Φにまたがる2つの入力間の補間により、方程式(1)を適用する。
【0190】
圧力補助Aおよびベース圧力P0の値は、選択された呼吸圧力治療モードに応じて、治療パラメータ決定アルゴリズム4329によって決定され得る。
【0191】
5.4.3.3 治療制御モジュール
本技術の一態様による治療制御モジュール4330は、治療エンジンモジュール4320の治療パラメータ決定アルゴリズム4329からの治療パラメータを入力として受信し、これらの治療パラメータに従って圧力生成器4140から空気流れを送達させるように、圧力生成器を制御する。
【0192】
本技術の一形態において、治療パラメータは治療圧力Ptであり、治療制御モジュール4330は、患者インターフェース3000におけるマスク圧力Pmが治療圧力Ptに等しいか、もしくは患者インターフェースにおけるインターフェース流量Ftが治療流量TFtに等しい空気流れを圧力生成器4140から送達させるように、圧力生成器を制御する。
【0193】
5.4.3.4 故障状態の検出
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、故障状態の検出のための1つ以上の方法を実行する。1つ以上の方法によって検出された故障状態は、以下のうち少なくとも1つを含み得る。
・ 停電(電力無しまたは電力不足)
・ 変換器故障の検出
・ コンポーネントの存在を検出できない
・ 動作パラメータが推奨範囲から外れている(例えば、圧力、流量、温度、PaO2)
・ 検出可能な警告信号を生成するための試験警告の不履行。
・ 流れセンサからの流量信号と、流量信号推定4137のプロセスからの流量推定信号との有意な不等
【0194】
故障状態が検出されると、対応するアルゴリズム信号は、以下のうち1つ以上により、故障の存在を信号伝達する。
・ 可聴、視覚、動力学的(例えば、振動的)警告の開始
・ 外部デバイスへのメッセージ送信
・ インシデントのロギング
・ 本明細書中により詳細に記載のような制御パラメータの変更
【0195】
5.5 加湿器
本技術の一形態において、患者へ送達されるべき空気またはガスの絶対湿度を周囲空気に相対して変化させるための加湿器5000が提供される(例えば、
図5Aに示すようなもの)。典型的には、加湿器5000は、患者気道へ送達される前に空気流れの(周囲空気に相対する)絶対湿度を増加させかつ温度を増加させるために、用いられる。
【0196】
加湿器5000は、加湿器リザーバ5110と、空気流れを受容する加湿器入口5002と、加湿された空気流れを送達させるための加湿器出口5004とを含み得る。
図5Aおよび
図5Bに示すようないくつかの形態において、加湿器リザーバ5110の入口および出口はそれぞれ、加湿器入口5002および加湿器出口5004であり得る。加湿器5000は、加湿器ベース5006をさらに含み得る。加湿器ベース5006は、加湿器リザーバ5110を受容するように適合され得、加熱要素5240を含み得る。
【0197】
5.6 呼吸圧力治療モード
本技術の一形態における治療パラメータ決定アルゴリズム4329によって用いられる治療圧力方程式(1)中のパラメータAおよびP0の値に応じて、多様な呼吸圧力治療モードがRPTデバイス4000によって行われ得る。
【0198】
5.6.1 CPAP治療
いくつかの具現例において、圧力補助Aは等しくゼロであるため、治療圧力Ptは呼吸サイクル全体において同様にベース圧力P0に等しい。このような具現例は、CPAP治療の見出し下において主にグループ分けされる。このような具現例において、フェーズΦまたは波形テンプレートΠ(Φ)を決定するための治療エンジンモジュール4320は不要である。
【0199】
5.6.2 換気治療
他の具現例において、方程式(1)中の圧力補助Aの値は正であり得る。かかる具現例は換気治療として知られている。一定圧力補助換気治療として公知の換気治療のいくつかの形態において、圧力補助Aは、所定の値(例えば、10cmH2O)に固定される。所定値の圧力補助Aは、RPTデバイス4000の設定であり、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードされるかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力により設定され得る。いくつかのバージョンにおいて、圧力は双レベルであり得、例えば、より高い圧力が患者吸気時に送達され、より低い圧力が患者呼気時に送達される。
【0200】
圧力補助Aの値は、[Amin、Amax]として規定された範囲まで制限され得る。圧力補助制限AminおよびAmaxは、RPTデバイス4000の設定であり、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードされるかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力によって設定される。3cmH2Oの最小圧力補助Aminは、定常状態にある典型的な患者の呼吸動作全てを行うのに必要な圧力補助の50%のオーダーである。12cmH2Oの最大圧力補助Amaxは、典型的な患者の呼吸動作全てを行うのに必要な圧力補助のほぼ2倍であるため、患者が任意の努力を中断した際に患者の呼吸を支援するのに充分であるが、不快または危険になる値よりも低い。
【0201】
5.7 呼吸流量治療モード
いくつかのバージョンにおいて、RPTは、例えば推定流れ信号による流れ制御ループと共に構成され得、「開口」(非密封)状態の患者の気道に対してインターフェースを用いて呼吸治療を提供する。呼吸治療は、患者自身の自発呼吸に対し、調整ガスまたはエンリッチガスの制御された流れを補給し得る。一実施例において、高流量療法(HFT)とは、シールされていないかまたは開口した患者インターフェースを通じて、呼吸サイクル全体にかけてほぼ一定に保持される「治療流量」で制御することである。治療流量は、患者のピーク吸気流量を超えるようにノミナル設定されている。一定の流量の代替例として、治療流量は、呼吸サイクルにわたって変動するプロファイルに追随し得る。
【0202】
5.8 流量信号推定
上記したように、コントローラまたはプロセッサ(例えば、RPTの1つ以上)は、
図4Dの流量信号推定4317のプロセスの実行により、流量信号推定を(例えば流量センサからの信号の利用無しに)行い得る。1つのこのような例示的流れ推定プロセスを、
図7の推定プロセス7002中に示す。図示のように、プロセスにおいて、流れ推定ユニット7004(例えば、上記したような制御論理またはプロセッサ制御命令を用いた中央コントローラまたはプロセッサのもの)が用いられ得、1組のセンサからの測定値を含み得る1組の入力信号7010から流量推定信号7008を導出する流れ推定関数を含む関数(複数可)を実行する。本例において、流量推定ユニット7004は、信号を受信し得(例えば、データ値へのアクセスをメモリまたはセンサもしくはその両方から直接的に行って)、流量推定信号7008を生成し得る。図示のように、入力信号は、送風機の動作と関連付けられるように、圧力7012(例えば、RPTの空気圧経路中の圧力センサ4272からのもの)を含み得る。入力信号は、RPTの送風機のモータと関連付けられ得るモータ速度7014(例えば、速度センサ4276からのもの)を含み得る。入力信号は、雰囲気圧力7016を含み得る(例えば、周囲圧力を測定するように構成され得る雰囲気圧力センサ4277からのもの)。入力信号は、RPTの空気圧経路内のガスと関連付けられ得るガス温度7018(例えば、ガス温度センサ4275からのもの)を含み得る。これらの入力信号は、RPTの空気圧経路の外部(例えば、周囲)のガスと関連付けられ得る周囲相対湿度7020(例えば、周囲相対湿度センサ4279からのもの)を含み得る。いくつかのバージョンにおいて、入力信号は、酸素センサ(例えば、酸素濃度7021)からの信号(複数可)またはモータパラメータセンサ(複数可)からの信号(複数可)(例えば、モータパラメータ7023)もしくはその両方も任意選択的に含み得る。これらの入力信号は、流量推定信号の同時生成を経時的に反復的に行うために、センサからリアルタイムまたはほぼリアルタイムで受信され得る。さらに、いくつかのバージョンにおいて、このような推定信号プロセスにおいて、メモリ内に保存された値からこのような信号全てのうち1つ以上が用いられ得る。
【0203】
いくつかの例において、流量推定ユニット7004は、
図8Aおよび
図8Bのフローチャート中に示すプロセスのうち1つ以上を実行し得る。さらに、流量推定ユニット7004は、治療エンジンや故障状態の検出4340のプロセスと共に動作して、
図8Cに示す方法を実行し得る。例えば、
図8Aに示すように、ステップまたはプロセス8002において、流量推定ユニット7004は、例えば1つ以上のセンサおよび任意選択的に上記した他の入力信号を用いて、入力信号(例えば、測定された雰囲気圧力信号および測定されたモータ速度信号)を受信し得る。ステップまたはプロセス8004において、流量推定ユニット7004は、混入空気密度関数を計算し得る。ステップまたはプロセス8006において、流量推定ユニット7004は、例えばガス圧力、モータ速度および混入空気密度関数を用いた流れ推定機能を用いて、流量推定信号7008を生成し得る。任意選択的に、例えば治療エンジンのプロセス、故障状態の検出エンジンおよび流れ推定ユニットに関連して、中央コントローラは、プロセスまたはステップ8008において、生成された流量推定信号や推定された信号の評価に基づいて出力インジケータを生成し得る。いくつかのバージョンにおいて、流量推定は、推定された流れ信号(例えば、Brydonへ付与された米国特許第6,237,593号(ResMed Limited)中に記載のもの)の生成のために、その他のモータパラメータ(例えば、モータ力)を用いて導出されてもよい。このような推定された流れ信号は、例えばシステムの流量が負であるとき(例えば、患者インターフェースから(例えば、患者から)流れ生成器送風機に向かって一方向に移動しているとき)に用いられ得る。
【0204】
いくつかのバージョンにおいて、酸素濃度(例えば、酸素センサからの信号を用いたもの)は、例えば感知されている呼吸可能なガスの濃度を考慮するように、推定流量の決定において評価され得る。例えば、システムの呼吸可能なガスのガス組成が周囲空気と異なるかまたは有意に異なる場合、上記ガスは、記載されるもの以外のものであり得る(例えば、ガスは、混入空気密度関数の導出のためのモデルにおいて用いられる周囲空気と異なる)ため、推定流れ信号の生成のための機能(複数可)は、この差またはアボートされた既存の機能の使用を考慮するように変更され得る。いくつかの例において、本明細書中において経験的モデルによって記載されるような複数の混入空気密度関数が、異なる濃度のガスがそれぞれ用いられる設計時において導出され得る。よって、いくつかのバージョンにおいて、酸素センサからの信号は、(ランタイムにおいて酸素センサによって測定されたガス濃度に応じて)適切な混入空気密度関数を複数の関数から選択するように機能し得、これにより、選択された関数(複数可)が(例えば、ファンカーブにより)類似のまたは同等のガス濃度を用いて経験的に事前に導出されるようにされる。
【0205】
よって、いくつかのバージョンにおいて、例えばシステムの流量が正である(例えば、流れ生成器送風機から患者インターフェースへ(例えば、患者および患者インターフェースの通気部へ)一方向に移動している)場合、流量推定機能の実行は、以下の式や関数に従って計算され得る。以下の式や関数は、圧力、速度および大気密度の関数である。
【数15】
【0206】
ここで、
Flow_estは、生成された流れ推定信号であり、
A、BおよびCはそれぞれ、例えば少なくとも回転周波数(例えば、測定されたモータ速度)の1組の関数の周波数関連関数であり、
Pressure_measは、送風機によって生成された圧力の測定値(例えば、RPTの空気圧経路内の圧力センサ4272によってとられたもの)である。
【0207】
1つのこのような例において、1組の回転周波数関数は、以下のように実行され得る。
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
ここで、
【0212】
r1、r2、r3、r4、r5、r6およびr7は、定数であり、
【0213】
RPMは、測定されたモータ速度(例えば、毎分あたりの回転数)であり、
【0214】
【数19】
および
【数20】
は、混入空気密度関数であるか、または、このような関数によって導出され得る。これらは、基準大気密度および局所的大気密度の比率を含み得、
図8Bの例示的プロセスに関連して本明細書中においてより詳細に説明するように計算され得る。流量推定信号の生成において実行されるような各このような比率は、密度補正係数とみなされ得る。基準大気密度は、モデル構築に必要なファンカーブが記録されたときに存在していた大気密度であり得る。密度補正係数(および詳細にはその局所的大気密度)は、1つ以上のファンカーブ(例えば、同一速度であるが本明細書中により詳細に述べるような多様な高さにおけるもの)の評価を例えばガス(例えば、周囲空気または他のもの)の特定の酸素濃度を用いて行うことにより、経験的に決定され得る。
【0215】
例示的実行において、回転周波数関連関数の定数(A、B、C)は、異なる高度においてファンカーブ(複数可)によって経験的に決定され得、(例えば、(例えば、2次多項式を用いた)圧力測定値、流量測定値およびRPM測定値)および多項式モデル化を少なくとも部分的に用いて)RPTの送風機の動作と関連付けられ得る。例えば、これらの値は、海面高度、2000m高度および3000m高度におけるファンカーブ(例えば、5000、10000、15000および20000RPMにおける)の比較を例えば気圧チャンバを用いて経験的に発見され得る。1つのこのような例において、このような定数は、それぞれ、0.00000001、0.00086500、0.00000000005、0.0000005119、0.0130975、0.000000038、0.000070756および0.281905000の値であり得る。しかし、このような定数値は、RPTデバイスの送風機の種類および構造に応じた異なる値であり得ることが理解される。さらに、これらの定数の値は、例えば、任意の特定の実行において所望されるような適切な桁数に近似化され得るかまたは他の態様で丸められ得る。
【0216】
上記したように、上記した流量推定ユニット7004は、基準大気密度値および局所的な決定された大気密度値を関連させ得る混入空気密度関数を用いる。このような関数は、1組のセンサ(例えば、ガス温度センサ4275、雰囲気圧力センサ4277および相対湿度センサ)からの測定信号(例えば、このような信号を示すメモリからのデータ)を用い得る。
【0217】
図8Aのプロセスまたはステップ8004のこのような機能を実行するための例示的プロセスを
図8B中に示す。プロセスまたはステップ8022において、中央コントローラまたはプロセッサは、ガス温度、雰囲気圧力および相対湿度を示す信号を受信し得る。プロセスまたはステップ8024において、中央コントローラまたはプロセッサは、飽和蒸気圧力関数(Psv)を温度に関連して計算し得、その際、測定された温度が用いられ得る。プロセスまたはステップ8026において、中央コントローラまたはプロセッサは、蒸気圧力関数(Pv)を例えば温度および相対湿度に関連して計算し得、その際、測定された相対湿度が用いられ得る。このような機能において、飽和蒸気圧力関数(Psv)が用いられ得るため、蒸気圧力関数(Pv)も、温度の関数となる。プロセスまたはステップ8026において、中央コントローラまたはプロセッサは、大気密度値を蒸気圧力関数(Pv)、飽和蒸気圧力関数(Psv)および雰囲気圧力信号に基づいて計算し得る。
【0218】
例えば、いくつかのバージョンにおいて、飽和蒸気圧力関数(Psv)は、以下のように実行され得る。
【数21】
【0219】
ここで、
【0220】
Psvは、飽和蒸気圧力関数によって生成された飽和蒸気圧力の値であり、
【0221】
eは、オイラー数またはこのような数を所望の桁数に近似する他の値であり、
【0222】
Templocal_DegCは、測定された温度である(例えば、摂氏度または他の適切な温度計量法に基づいたもの)。
【0223】
K1、K2、およびK3は、経験的に決定され得る定数であるが、いくつかのバージョンにおいて、それぞれ例えば6.1078、17.2693882および237.4である。これらの値は、例えば近似され得るかまたは他の態様で任意の適切な実行において所望されるような適切な桁数に丸められ得る。
【0224】
いくつかのバージョンにおいて、蒸気圧力関数(Pv)は、以下のように実行され得る。
【数22】
【0225】
ここで、
【0226】
Pvは、蒸気圧力関数によって生成された蒸気圧力の値であり、
【0227】
【数23】
は、測定された相対湿度(例えば、周囲相対湿度センサ4279からの信号からのもの)であり、パーセンテージであり得、
【0228】
Psvは、飽和蒸気圧力関数によって生成された飽和蒸気圧力の値である。
【0229】
いくつかのバージョンにおける局所的大気密度値の計算において、混入空気密度関数は、雰囲気圧力、ガス温度および相対湿度の関数であり、以下のように実行され得る。
【数24】
【0230】
ここで、
【0231】
【数25】
は、例えば上記比率の計算において用いられる局所的大気密度値であり、
【0232】
P0は、1013.0ヘクトパスカルであり、
【0233】
T0は、15.0摂氏度または288.15ケルビン度であり、
【0234】
【0235】
Patm_localは、例えば雰囲気圧力センサ4277によって生成された信号からの雰囲気圧力の測定値であり、
【0236】
Z1は、経験的に決定され得る定数であり、いくつかのバージョンにおいて、例えば0.3783または他のその近似値であり得る(例えば、任意の特定の実行において所望されるような所望の桁数に丸められたもの)。
【0237】
Templocal_DegKは、測定された温度であり(例えば、ケルビン度または他の適切な温度計量法のもの)、
【0238】
Pvは、蒸気圧力関数によって生成された蒸気圧力値である。
【0239】
このような生成された流量推定信号は、例えばデバイス診断(例えば、故障検出)のための多様な動作を行うために、コントローラ(例えば、中央コントローラ)またはプロセッサ(例えば、RPTデバイスのもの)によって実行され得る。さらに、推定信号は、流れセンサによって生成された流れ信号の評価の代わりにまたは流れセンサによって生成された流れ信号の評価に加えて制御や呼吸状態の検出のために生成され得る。このような自動動作の例は、
図8Aに関連して上記されかつ
図8Cの例においてより詳細に例示されるステップまたはプロセス8008に関連して考慮され得る。
【0240】
例えば、ステップまたはプロセス8030において、コントローラまたはプロセッサは、測定された流量信号を流れセンサ4274から任意選択的に受信し得る。ステップまたはプロセス8031において、コントローラまたはプロセッサは、流量推定信号7008を流量推定プロセス7002から受信し得る。ステップまたはプロセス8032において、コントローラまたはプロセッサは、流量推定信号7008を評価し得る。例えば、いくつかのバージョンにおいて、このような評価において、本明細書中に記載の方法のうちいずれかまたは流れセンサからの流量信号の分析に関連してかつ流量推定信号の使用の代わりに既知のものが用いられ得る。例えば、推定信号は、(例えばIPAPのトリガ、EPAPのサイクルのための患者呼気の開始、または本明細書中に記載のような相変数の決定のために)患者吸気の開始を決定するために評価され得る。いくつかのバージョンにおいて、流量推定信号は、測定された流量信号に関連して評価され得る。例えば、流量推定信号は、測定された流量信号の診断チェックとして用いられ得る。例えば、コントローラまたはプロセッサは、これら2つの信号を比較し得、この比較に基づいて、インジケータ(例えば、エラー、故障または故障無しのインジケータ)を生成し得る。1つのこのようなバージョンにおいて、信号に沿った異なる時間からの差または複数の差が(例えば1つ以上の閾値に関連して)有意である場合、コントローラまたはプロセッサは、故障信号を生成し得る。故障無しの差である場合、流れセンサにおいて故障が無いことの確認が得られ得、適切な信号が、例えば上記したような方法やプロセスのうちいずれかに対する入力信号として流れセンサに依存する動作を可能にするために生成され得る。
【0241】
任意選択的に、例えば動作の変更、動作の停止、エラーの警告またはアラーム(例えば、可聴型、視覚型または通信型のメッセージ)のトリガのために、プロセス8034からの出力(例えば、エラー信号または故障信号)は、呼吸装置(例えば、ステップまたはプロセス8036におけるRPTデバイス)の制御のために適用され得る。いくつかのこのような例において、このような出力は、例えば流れセンサの故障のエラーの表示または推定信号と測定信号との間の関係の表示のために、診断表示上に報告され得る。比較の表示例は、
図9および
図10のグラフに関連して考慮され得る。さらなる例示として、流れセンサの故障の表示により、RPTの動作モードは、流量信号への依存を抑制することができるように変更され得る。いくつかのこのような制御バージョンにおいて、このような活性化された流量推定の動作モードのRPTは、(測定された流量信号ではなく)流量推定信号を処理し得る。いくつかのこのようなバージョンにおいて、コントローラは、圧力サポート調整のための通気対象の制御の達成のための通気制御パラメータ(例えば、患者通気(例えば、1回換気量、毎分換気量)の測定値)を決定し得る。さらなる例として、呼吸速度および呼吸流れは、推定信号から決定され得る。さらに、圧力パラメータまたは流れ制御パラメータ(例えば、RPTのコントローラの圧力または流れ制御ループのためのもの)もしくはその両方が、流量推定信号に基づいて変更され得る。いくつかのこのようなバージョンにおいて、推定信号と、測定流量信号との間の検出された差は、流れセンサの較正のためにエラー信号として適用され得る。例えば、このような差またはエラーは、流量センサからの測定値の調節のために適用され得、これにより、較正、調節、測定がなされた流量信号が、本明細書中全体に記載のように、RPTのコントローラの制御プロセスのいずれかにおいて用いられ得る。このような較正プロセスは、RPTが使用セッション前に活性化された際に、治療セッション時または初期化もしくはその両方のプロセスにおいてデバイスによって定期的に行われ得る。
【0242】
流量推定信号を用いたコントローラプロセッサによる他の動作も、実行され得る。流れセンサ信号および他の場合の他の全ての計量法または特徴の代わりに、流れセンサ信号が入力として用いられ得ることが理解され得る。例えば、コンダクタンスベースの回路断線アラームが、(流れセンサ信号を用いてではなく)このような流れ推定信号を用いて実行され得る。よって、断線状態の検出の基盤として機能するコンダクタンスが、測定された圧力信号および推定流量信号(例えば、このような信号の値の比率)から計算され得る。さらに、いくつかのバージョンにおいて、流れ推定信号は、(例えば高流量治療デバイスとして構成されたRPTにおいて)流れ制御ループにおいて目標流量(例えば、治療流量)と共に用いられ得る。そのため、これは、流れセンサの提供の代替として機能し得る(すなわち、流れセンサは省略され得る)かまたは設けられた流れセンサにおける故障時におけるバックアップとして機能し得る。
【0243】
上記の方法によるこのような流量推定信号の精度は、
図9および
図10のグラフ中の測定された流量信号との比較と共に考慮され得る。
図9Aおよび
図9Bにおいて、RPTの送風機の速度について流れの測定値および推定値をプロットするファンカーブは、異なる高度において提示される。
図9Aは、高度2000メートルにおいて動作するデバイスのデータを示す。
図9Bは、高度3000メートルにおいて動作するデバイスのデータを示す。図示のように、推定された流れ曲線は、測定された流れ曲線に(RPTの送風機のファンカーブの速度範囲にわたって)近密に近似する。
【0244】
使用時において(ブリーザのシミュレーションを用いた)RPTを用いた類似の評価が、
図10に関連して考慮され得る。
図10Aおよび
図10Bにおいて、RPTデバイスのガス流れは、(ファンカーブではなく)呼吸コンポーネントを含む。これらのグラフは、異なる高度における呼吸関連動作時において、流れの測定値および流れの推定値をRPTデバイスの送風機の速度変化についてプロットする。
図10Aは、高度2000メートルにおいて動作するデバイスのデータを示す。
図10Bは、高度3000メートルにおいて動作するデバイスのデータを示す。図示のように、推定された流れ曲線は、RPTのデバイス送風機がシミュレート対象のユーザの呼吸努力に応答して調節する場合でも、流れの測定値に近密に近似する。
【0245】
5.9 用語集
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0246】
5.9.1 一般
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0247】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者またはRPTデバイスの空気圧経路の外側を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0248】
例えば、加湿器に対する雰囲気湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような雰囲気湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0249】
別の実施例において、雰囲気圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0250】
特定の形態において、雰囲気(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中の背景ノイズレベルとみなすことができる。雰囲気ノイズは、部屋の外の発生源から発生し得る。
【0251】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0252】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼気時において若干上昇し、吸気時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の兆候の検出に応答して増加され、部分的な上気道閉塞の通知の不在時において低減される)。
【0253】
患者:呼吸器疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0254】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の兆候の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0255】
5.9.2 呼吸サイクルの態様
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば10秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉鎖性無呼吸とは、患者の労作にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気の流れが許されないときに発生すると言われる。開放性無呼吸とは、気道が開放(開通)しているにも関わらず呼吸努力の低下または呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合無呼吸とは、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0256】
呼吸速度:患者の自発呼吸速度であり、通常は毎分あたりの呼吸回数で測定される。
【0257】
デューティサイクル、または吸気部分:吸気時間、Tiの合計呼吸時間、Ttotに対する比率。
【0258】
努力(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとしている人の自発呼吸によって行われる動きを指すと言われる。
【0259】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流れの開始から吸気流れの開始までの期間。
【0260】
流量制限:流量制限は、患者による労作の増大が流量の対応する増大を引き起こさない患者の呼吸における状況であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分において流れ制限が発生した場合、当該流れ制限は吸気流れ制限として記述され得る。呼吸サイクルの呼気部分において流量制限が発生した場合、当該流量制限は呼気流量制限と称することができる。
【0261】
流れが制限された吸気波形の種類:
(i)(古典的な)平坦形状:隆起の後に相対的に平坦な部分が続き、その次に下降が続く。
(ii)M字型:2つの局所的ピークが1つは早期部分に、1つが後部分にあり、これら2つのピーク間に相対的に平坦な部分が来る。
(iii)椅子形:単一の局所的なピークがあり、このピークは早期部分にあり、次に相対的に平坦な部分が続く。
(iv)逆椅子形:相対的に平坦な部分の次に単一の局所的なピークが続き、ピークは後部分に設けられる。
【0262】
呼吸低下:流れの中断ではなく、流れの低下を意味する。一形態において、閾値速度を下回った流れ低下が継続期間にわたって続いた場合、呼吸低下が発生したと言われる。呼吸努力の低下に起因して呼吸低下が検出された場合、中枢性呼吸低下が発生したと言われる。
【0263】
過呼吸:流れが通常の流量よりも高いレベルまで増加すること。
【0264】
低換気:低換気は、一定の時間スケールにわたって発生するガス交換の量が患者の現在の要求を下回った場合に発生すると言われている。
【0265】
過換気:過換気は、定の時間スケールにわたって発生するガス交換の量が患者の現在の要求を上回った場合に発生すると言われている。
【0266】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から呼気流れの開始までの期間が、呼吸サイクルの吸気部分としてとられる。
【0267】
開通性(気道):気道が開いている度合いまたは気道が開いている範囲。気道開通性とは、開口である。気道開通性の定量化は、例えば、開通性を示す値(1)と、閉鎖(閉塞)を示す値(0)で行われ得る。
【0268】
正の呼気終了時圧力(PEEP):肺中の雰囲気を越える圧力であり、呼気終了時に存在する。
【0269】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流量波形の吸気部分における流量最大値。
【0270】
呼吸気流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸気空気流量(Qr):これらの同義語は、RPTデバイスの呼吸空気流量の推定値を指すものとして理解され得、通常リットル/分で表される患者の実際の呼吸流量である「真の呼吸流量」または「真の呼吸気流量」と対照的に用いられる。
【0271】
一回換気量(Vt):通常の呼吸時の呼吸毎に余分な努力無しに吸気または呼気される空気の容量。この量は、より具体的には吸気一回換気量(Vi)または呼気一回換気量(Ve)として定義される。
【0272】
吸気時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続期間。
【0273】
呼気時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続期間。
【0274】
合計(呼吸)時間(Ttot):1つの呼吸流量波形の吸気部分の開始と次の呼吸流量波形の吸気部分の開始との間の合計継続期間。
【0275】
典型的な最近の換気:所定の時間スケールにわたる直近値が密集する傾向となる換気値(すなわち、換気の直近値の中心の傾向の度合い)。
【0276】
上気道閉塞(UAO):部分的な上気道閉塞および合計上気道閉塞両方を含む。これは、上気道中の圧力差が増加(スターリングレジスタ挙動)するにつれて流量がわずかに増加するかまたは低下し得る流量制限の状態と関連し得る。
【0277】
換気(Vent):患者の呼吸器系によって行われるガス交換の総量の測定値。換気の測定値は、単位時間あたりの吸気および呼気流のうち片方または双方を含み得る。1分あたりの体積として表される場合、この量は、「分換気」と呼ばれることが多い。分換気は、単に体積として付与されることもあり、1分あたりの体積として理解される。
【0278】
5.9.3 RPTデバイスパラメータ
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬間の量(または質量)。流量および換気量は、単位時間あたりに同じ規模の量または質量を持つが、流量は、かなり短時間にわたって測定される。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。符号付きの量として言及された場合、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに正であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。流量には、符号Qが付与される。「流量」を簡略的に「流れ」と呼ぶ場合もある。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。通気流量Qvは、呼気されたガスの流出を可能にするために通気孔から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムからの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系中に受容される空気の流量である。
【0279】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一実施例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の実施例において、漏洩は、周囲に対する旋回エルボーにおいて発生し得る。
【0280】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で測定され得る(例えば、cmH2O(水のセンチメートル)、g-f/cm2、およびヘクトパスカル(hPa))。1cmH2Oは、1g-f/cm2に等しく、およそ0.98hPaである。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmH2Oの単位で付与される。患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてマスク圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0281】
5.9.4 人工呼吸器の用語
バックアップレート:人工呼吸器のパラメータであり、(自発呼吸努力によってトリガされない場合に)人工呼吸器から患者へ送達される最小呼吸速度(典型的には、1分あたりの呼吸数)を確立させる。
【0282】
サイクリング:換気装置の吸気位相の終了。自発呼吸をしている患者へ人工呼吸器から呼吸を送達する場合、呼吸サイクルの吸気部分の終了時において、当該人工呼吸器は、呼吸送達を停止するようサイクルされると言われる。
【0283】
呼気の気道陽圧(EPAP):、人工呼吸器が所与の時期に達成しようとする所望のマスク圧力の生成のために、呼吸内において変化する圧力が付加される基本圧力。
【0284】
終了時呼気圧力(EEP):呼吸の呼気部分の終了時において人工呼吸器が達成しようとする所望のマスク圧力。圧力波形テンプレートΠ(Φ)が呼気終了時にゼロの値である(すなわち、Φ=1のときにΠ(Φ)=0である場合)、EEPはEPAPに等しい。
【0285】
吸息の気道陽圧(IPAP):呼吸の吸気部分時に人工呼吸器が達成しようとする最大の所望のマスク圧力。
【0286】
圧力補助:人工呼吸器吸気時における当該人工呼吸器呼気時における圧力増加を示す数であり、吸気時の最大値と、ベース圧力との間の圧力差を主に意味する(例えば、PS=IPAP-EPAP)。いくつかの文脈において、圧力補助とは、(人工呼吸器が実際に達成する差ではなく)人工呼吸器が達成しようとする差を意味する。
【0287】
サーボ人工呼吸器:患者換気を有しかつ目標換気を有する人工呼吸器であり、患者換気を目標換気に近づけるために圧力補助レベルを調節する。
【0288】
自発/タイミング(S/T):自発呼吸している患者の呼吸の開始を検出しようとする、人工呼吸器または他のデバイスのモード。しかし、デバイスが所定期間の間に呼吸を検出できない場合、デバイスは、呼吸送達を自動的に開始する。
【0289】
スイング:圧力補助に相当する用語。
【0290】
トリガリング:人工呼吸器が自発呼吸する患者へ空気の呼吸を送達する場合、患者自身が呼吸サイクルの呼吸部分を開始したとき、当該人工呼吸器が呼吸送達を行うようトリガされたと言う。
【0291】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
【0292】
5.9.5 呼吸器系の解剖学的構造
横隔膜:シート状の筋肉であり、胸郭下部上に延びる。横隔膜は、心臓、肺および肋骨を含む胸腔を腹腔から分離させる。横隔膜が収縮すると、胸腔の容量が増加し、肺中に空気が引き込まれる。
【0293】
喉頭:声帯ひだを収容する喉頭または発声器であり、咽頭の下部(下咽頭)を気管へ接続させる。
【0294】
肺:ヒトにおける呼吸臓器。肺の伝導性ゾーンは、気管、気管支、気管支、および終末細気管支を含む。呼吸ゾーンは、呼吸気管支、肺胞管および肺胞を含む。
【0295】
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央の鼻の上方および後方の空気が充填された大きな空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直フィンによって2つに分割される。鼻腔の側部には、鼻甲介(nasal conchae)(単数形「concha」)または鼻介骨と呼ばれる3つの水平伸長物がある。鼻腔の前方には鼻があり、後方は後鼻孔を介して鼻咽頭内に繋がる。
【0296】
咽頭:鼻腔の直接下側(下方)に配置されかつ食道および喉頭の上方に配置された咽喉の部分。咽頭は、従来から鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部分)、口咽頭(中咽頭)(咽頭の口部分)、および咽喉(下咽頭)の3つの部分へ区分される。
5.10 他の注意事項
【0297】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
【0298】
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0299】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として具現される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0300】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的な方法および材料が本明細書中に記載される。
【0301】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0302】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0303】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法や材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していないと認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0304】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0305】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0306】
本明細書中の技術について、特定の実施例を参照して述べてきたが、これらの実施例は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「第1の」および「第2の」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありその態様を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0307】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0308】
5.11 参照符号のリスト
患者:1000
患者インターフェース:3000
非侵襲的患者インターフェース:3000
シール形成構造:3100
プレナムチャンバ:3200
構造:3300
通気部:3400
接続ポート:3600
前額支持部:3700
RPTデバイス:4000
外部ハウジング:4010
上部:4012
部位:4014
パネル:4015
シャーシ:4016
ハンドル:4018
空気圧ブロック:4020
空気圧コンポーネント:4100
空気フィルタ:4110
入口空気フィルタ:4112
出口空気フィルタ:4114
入口マフラー:4122
出口マフラー:4124
圧力生成器:4140
制御可能な送風機:4142
モータ:4144
空気回路:4170
補充酸素:4180
電気部品:4200
プリント回路基板アセンブリ:4202
電源:4210
入力デバイス:4220
中央コントローラ:4230
時計:4232
治療デバイスコントローラ:4240
保護回路:4250
メモリ:4260
変換器:4270
圧力センサ:4272
流量センサ:4274
ガス温度センサ:4275
モータ速度変換器:4276
雰囲気圧力センサ:4277
周囲相対湿度センサ:4279
データ通信インターフェース:4280
遠隔外部通信ネットワーク:4282
ローカル外部通信ネットワーク:4284
遠隔外部デバイス:4286
ローカル外部デバイス:4288
出力デバイス:4290
ディスプレイドライバ:4292
ディスプレイ:4294
アルゴリズム:4300
事前処理モジュール:4310
圧力補償アルゴリズム:4312
通気流量の推定:4314
漏洩流量推定アルゴリズム:4316
流量信号推定:4317
呼吸流量推定アルゴリズム:4318
治療エンジンモジュール:4320
フェーズ決定アルゴリズム:4321
波形決定アルゴリズム:4322
換気決定アルゴリズム:4323
吸気流れ制限検出:4324
無呼吸検出アルゴリズム:4325
M字形検出アルゴリズム:4326
気道開通性決定アルゴリズム:4327
典型的な最近の換気決定:4328
治療パラメータ決定アルゴリズム:4329
治療制御モジュール:4330
加湿器:5000
加湿器入口:5002
加湿器出口:5004
加湿器ベース:5006
加湿器リザーバ:5110
加湿器リザーバドック:5130
加熱要素:5240
加湿器コントローラ:5250
推定プロセス:7002
流量推定ユニット:7004
流量推定信号:7008
入力信号:7010
圧力:7012
モータ速度:7014
雰囲気圧力:7016
ガス温度:7018
周囲相対湿度:7020
モータパラメータ:7021
酸素センサ信号:7023
ステップまたはプロセス:8002-34
【国際調査報告】