(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】切削インサート及びそのような切削インサートを有する工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/04 20060101AFI20220930BHJP
B23B 27/22 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B23B27/04
B23B27/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506550
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020072175
(87)【国際公開番号】W WO2021023835
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】102019121468.8
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503128054
【氏名又は名称】ハルトメタル-ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタインヒルバー, マルク
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー, ハンス
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046CC06
3C046JJ02
3C046JJ13
(57)【要約】
本発明は機械加工用の工具(16)用の切削インサート(10)に関する。切削インサート(10)は、溝入れ旋削用の溝入れ工具に特に適している。切削インサート(10)は、その切削領域(12)にチップブレーカの幾何学的形状を有し、これは、ウェブの機械加工と同様に、フルカットの機械加工と部分切削の機械加工の両方を可能にする。特に、切削領域(12)に設けられたチップ空洞(26)の形状及び負の面取り(28)の存在により、3つの異なる機械加工の全てにおいて非常に短い切り屑を製造することができるため、高いレベルの工程信頼性が確保され、長い工具寿命が可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工用工具(16)の切削インサート(10)であって、該切削インサート(10)は切削領域(12)内に、
直線状であって、切削領域(12)の長手方向(24)に直交して延びる主切れ刃(22)と、
全てが共通の面取り面(32)に配置される3つの部分領域(30a、30b、30c)を有し3つの部分領域の第1の部分領域(30a)が主切れ刃(22)の第1の端部(34a)に隣接して配置され、3つの部分領域の第2の部分領域(30b)が主切れ刃(22)の少なくとも大部分に沿って主切れ刃(22)に平行に延び、3つの部分領域の第3の部分領域(30c)が主切れ刃(22)の第2の端部(34b)に隣接して配置される面取り(28)と、
面取り(28)の第1の部分領域及び第3の部分領域(30a、30c)によって側方に区切られた凹部として構成され、主切れ刃(22)に対向する前端領域にて、面取り(28)の第2の部分領域(30b)によって区切られ、反対側の後端領域にて壁(40)にて区切られるチップ空洞(26)とを含み、
壁(40)を含むチップ空洞(26)は、主切れ刃(22)に直交して配向され、主切れ刃(22)の中心点を通る対称面(41)に対して鏡面対称に配置され、
壁(40)を含むチップ空洞(26)は、面取り面(32)の下方に配置され、面取り面(32)と交差せず、
壁(40)は、5つの壁領域(42、44、46、48、50)を含み、該壁領域(42、44、46、48、50)は、増分的な順序で順に互いに隣接しており、
5つの壁領域のうちの第1の壁領域(42)及び5つの壁領域のうちの第5の壁領域(50)は、対称面(41)に対して互いに鏡面対称であるように構成され、
5つの壁領域のうちの第2の壁領域(44)及び5つの壁領域のうちの第4の壁領域(48)は、対称面(41)に対して互いに鏡面対称であるように構成され、
5つの壁領域のうちの第3の壁領域(46)は、対称面(41)によって2つの鏡面対称の半体に分割され、
対称面(41)に直交して配向され、長手方向(24)に沿って延びる仮想面(64)と壁(40)との交差から生じる壁(40)の輪郭線(62)は、第1の壁領域(42)内に配置された第1の部分(52)と、第2の壁領域(44)内に配置された第2の部分(54)と、第3の壁領域(46)内に配置された第3の部分(56)と、第4の壁領域(48)内に配置された第4の部分(58)と、第5の壁領域(50)内に配置された第5の部分(60)とを有し、
第1の部分、第3の部分及び第5の部分(52、56、60)は夫々凹状であり、第2の部分及び第4の部分(54、58)は直線状又は凸状であり、
第1の部分(52)の少なくとも1つの点は、第2の部分、第3の部分、及び第4の部分(54、56、58)の全ての点よりも、主切れ刃(22)からの距離が短く、第2の部分及び第4の部分(54、58)上の全ての点は、第3の部分(56)上の全ての点よりも、主切れ刃(22)からの距離が短いことを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
第1の部分(52)上の全ての点は、第2の部分、第3の部分、及び第4の部分(54、56、58)上の全ての点よりも、主切れ刃(22)からの距離が短い、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
5つの部分(52、54、56、58、60)の夫々が連続的で区別可能な曲線を規定する、請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
5つの壁部分(42、44、46、48、50)が接線方向に互いに結合しない、請求項1乃至3の何れかに記載の切削インサート。
【請求項5】
第1の部分(52)が第3の部分(56)より大きく湾曲する、請求項1乃至4の何れかに記載の切削インサート。
【請求項6】
第3の部分(56)が輪郭線(62)の他の部分(52、54、58、60)と比較して最も長い、請求項1乃至5の何れかに記載の切削インサート。
【請求項7】
面取り(28)の第2の部分領域(30b)が主切れ刃(22)に直接隣接する、請求項1乃至6の何れかに記載の切削インサート。
【請求項8】
前記輪郭線(62)の前記第1の部分(52)は、前記面取り(28)の前記第1の部分領域(30a)に直接隣接し、前記輪郭線(62)の前記第5の部分(60)は、前記面取り(28)の前記第3の部分領域(30c)に直接隣接する、請求項1乃至7の何れかに記載の切削インサート。
【請求項9】
前記チップ空洞(26)と前記面取り(28)の第1の部分領域(30a)との間の第1の境界線(72)が、上面視で、前記主切れ刃(22)に対して第1の角度αで延び、30°≦α≦90°である、請求項1乃至8の何れかに記載の切削インサート。
【請求項10】
複数の突起部(68)が、前記チップ空洞(26)内に配置され、前記チップ空洞(26)内に配置されたベース面(70)から上方に突出し、前記突起部(68)が、前記主切れ刃(22)に沿って一列に互いに平行に配置される、請求項1乃至9の何れかに記載の切削インサート。
【請求項11】
前記突起部(68)の数が奇数である、請求項10に記載の切削インサート。
【請求項12】
前記突起部(68)が面取り(28)の第2の部分領域(30b)に直接隣接する、請求項10又は11に記載の切削インサート。
【請求項13】
前記突起部(68)は各々面取り面(32)に位置する表面部分を有する、請求項10乃至12の何れかに記載の切削インサート。
【請求項14】
チップ空洞(26)は、対称面(41)に平行な任意の区間で凹状になるように構成される、請求項1乃至13の何れかに記載の切削インサート。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れかに記載の切削インサート(10)と、切削インサート(10)を受け入れるための少なくとも1つの切削インサート受け部(20)を備える工具ホルダ(18)とを有する、ワークピースを機械加工するための工具(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工用工具の切削インサートに関する。さらに本発明は、そのような切削インサートを有する工具、及び切削インサートを受け入れるための少なくとも1つの切削インサート受け部を有する工具ホルダにも関する。
【0002】
本発明に係る切削インサートは、回転による機械加工に使用され得る切削インサートが望ましい。特に、本発明に係る切削インサートは、プランジ旋削による機械加工に適している。
【背景技術】
【0003】
特にプランジ旋削のために開発された、先行技術から公知の切削インサートは、ドイツ公開公報100 42 692号に開示される。この切削インサートは、実際にはかなり有利であることが証明されたが、時間の経過とともに、改善の余地を与えるいくつかの不利な点が見出された。
【0004】
ドイツ公開公報100 42 692号から公知の切削インサートは、チップ形状のため、すなわち切削インサートの切削領域におけるすくい面の形態のため、切削インサートの主切れ刃の全幅に亘って工具がワークピースに突き込む、いわゆるフルカットにのみ適している。
【0005】
しかしながら、ドイツ公開公報100 42 692号から公知の切削インサートは、ワークピースが主切れ刃の一部だけで機械加工される部分切削にはあまり適していない。この切削インサートでは、部分切削を実際に作成することができるが、発生する切り屑の生成は、工具が主切れ刃の全幅又は全長に亘ってワークピースに突き込むフルカットよりも有利ではない。その理由は、特に切削領域の幾何学的形状の具体的な構成にある。
【0006】
ここでいう切削領域とは、切れ刃自体の領域だけでなく、ワークピースの加工中の切り屑形成に影響を及ぼす切削インサートの全領域である。切削領域は、主切れ刃と同様に、すくい面及び二次切れ刃部分も含む。
【0007】
例えば、ドイツ公開公報100 42 692号から判明している切削インサートでは、部分切削の機械加工において、チップが所望通りに破断しないことが判明している。比較的長いチップが形成される。これは、ワークピース及び/又は工具が比較的長い切り屑によって損傷され得るので、加工工程の信頼性に悪影響を及ぼす。
【0008】
従って、本発明の目的は、フルカットによるプランジ旋削だけでなく、部分切削によるプランジ旋削にも適している点で、より広い汎用性を有する切削インサートを提供することである。特に、切削インサートの切り屑を生成する特性は、主切れ刃全体がワークピースに接触する(フルカット)か、主切れ刃の一部だけがワークピースに接触する(部分切削)かにかかわらず向上させる必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、以下の特徴を有する請求項1の切削インサートにより達成される。
直線状であって、切削領域の長手方向に直交して延びる主切れ刃と、
全てが共通の面取り面に配置される3つの部分領域を有し3つの部分領域の第1の部分領域が主切れ刃の第1の端部に隣接して配置され、3つの部分領域の第2の部分領域が主切れ刃の少なくとも大部分に沿って主切れ刃に平行に延び、3つの部分領域の第3の部分領域が主切れ刃の第2の端部に隣接して配置される面取りと、
面取りの第1の部分領域及び第3の部分領域によって側方に区切られた凹部として構成され、主切れ刃に対向する前端領域にて、面取りの第2の部分領域によって区切られ、反対側の後端領域にて壁にて区切られるチップ空洞とを含み、
壁を含むチップ空洞は、主切れ刃に直交して配向され、主切れ刃の中心点を通る対称面に対して鏡面対称に配置され、
壁を含むチップ空洞は、面取り面の下方に配置されて、面取り面と交差せず、
壁は、5つの壁領域を含み、該壁領域は、増分的な順序で順に互いに隣接しており、5つの壁領域のうちの第1の壁領域及び5つの壁領域のうちの第5の壁領域は、対称面に対して互いに鏡面対称であるように構成され、5つの壁領域のうちの第2の壁領域及び5つの壁領域のうちの第4の壁領域は、対称面に対して互いに鏡面対称であるように構成され、5つの壁領域のうちの第3の壁領域は、対称面によって2つの鏡面対称の半体に分割され、
対称面に直交して配向され、長手方向に沿って延びる仮想面と壁との交差から生じる壁の輪郭線は、第1の壁領域内に配置された第1の部分と、第2の壁領域内に配置された第2の部分と、第3の壁領域内に配置された第3の部分と、第4の壁領域内に配置された第4の部分と、第5の壁領域内に配置された第5の部分とを有し、
第1の部分、第3の部分及び第5の部分は夫々凹状であり、第2の部分及び第4の部分は直線状又は凸状であり、
第1の部分の少なくとも1つの点は、第2の部分、第3の部分、及び第4の部分の全ての点よりも、主切れ刃からの距離が短く、第2の部分及び第4の部分上の全ての点は、第3の部分上の全ての点よりも、主切れ刃からの距離が短い。
【0010】
本発明に係る切削インサートの特徴は、3つの部分に分かれ、少なくとも部分的にチップ空口周辺に伸びる上記の面取りである。また、面取りの3つの部分領域は全て、切削領域の長手方向に対して斜め上方に向けられた同一の面取り面内に配置されている。
【0011】
この配向のため、面取り面はチップ空洞と交差しない。面取り面は全体としてチップ空洞の上方にある。従って、面取りは、XY平面に対して負のすくい角で配向される。これはまた、負の面取りと呼ばれている。特に、主切れ刃の2つの端部に隣接する面取りの部分領域(第1の部分領域及び第3の部分領域)は、切削インサートの切削コーナーの安定性を確保する。また、面取りの第2の部分領域は、主切れ刃の長さの大部分に沿って延び、主切れ刃の安定化にも寄与する。従って、負の面取りは、その全長に亘って、又は切削インサートの全幅に亘って、主切れ刃を安定させる。
【0012】
本発明に係る切削インサートの更なる特徴は、記載した負の面取りに隣接するチップ空洞である。このチップ空洞内には、複数のすくい面が配置され、その幾何学的形状が切り屑形成に決定的である。チップ空洞の後部領域では、チップ空洞が壁によって区切られている。この壁には5つの壁領域があり、これらの壁領域は増分的な順序に直接隣接している。ここでいう「増分的な順序」とは、第1の壁領域に隣接する第2の壁領域、第2の壁領域に隣接する第3の壁領域、第3の壁領域に隣接する第4の壁領域、第4の壁領域に隣接する第5の壁領域を意味する。
【0013】
対称面に対するチップ空洞の鏡面対称性のために、中間の第3の壁領域は、対称性の仮想面によって、互いに鏡面対称な2つの等しいサイズの半体に分割される。第1の壁領域は第5の壁領域に対して鏡面対称であり、第2の壁領域は第4の壁領域に対して鏡面対称である。5つの全ての壁領域は、自由形式の面として構成されているのが好ましい。
【0014】
対称面に直交して配向され長手方向に沿って延びる仮想面と壁との交点から生じる壁の輪郭線は、次の性質を有する。この輪郭線の第1の部分、第3の部分、及び第5の部分は、夫々凹状となるように構成される。また、輪郭線の第2の部分及び第4の部分は、夫々直線状又は凸状となるように構成されている。輪郭線の第1の部分上の少なくとも1つの点は、輪郭線の第2の部分、第3の部分、及び第4の部分上の全ての点よりも、主切れ刃からの距離が小さい。チップ空洞の対称特性のため、輪郭線の第5の部分上の少なくとも1つの点は、輪郭線の第2の部分、第3の部分、及び第4の部分上の全ての点よりも、主切れ刃からの距離が短い。さらに、輪郭線の第2の部分及び第4の部分上の全ての点は、輪郭線の第3の部分上の全ての点よりも、主切れ刃からの距離が短い。
【0015】
換言すれば、又はより簡単に言えば、チップ空洞内の中央に配置された第3の壁領域は、主切れ刃から最も離れている。第3の壁領域の更に外側に位置し、第3の壁領域に隣接するチップ空洞の2つの第2の壁部分及び第4の壁部分は、第3の壁領域よりも主切れ刃に若干近接して配置される。しかしながら、2つの最外側の壁領域(第1及び第5の壁領域)は、主切れ刃に最も近い。既に述べたように、これらの距離関係は必ずしも壁領域全体に当てはまるわけではなく、少なくともこれらの壁領域の夫々1つの点に当てはまる。
【0016】
上述したチップ空洞の形状、特に上述した壁の形状は、上述した負の面取りと共に、本発明による切削インサートを用いたワークピースの機械加工中の切り屑形成特性を著しく改善することにつながる。
【0017】
本出願人による実験は、優れた切り屑形成の特性が、フルカットのための切削インサートの使用及び部分切削のための切削インサートの使用の両方において達成されることを示している。本発明による切削インサートでは、ワークピースに存在するウェブを主切れ刃の中央に配置された部分のみで加工するいわゆるウェブプランジ加工も可能である。
【0018】
前記ウェブプランジ加工は、上記の部分切削プランジ加工とは、以下の点が異なる。ウェブプランジ加工においてワークピースを機械加工するために使用される主切れ刃の一部が前記主切れ刃の中央領域に存在し、対称面に対して対称に配置されることが好ましく、然るに、部分切削プランジ加工においてワークピースを加工するために使用される主切れ刃の一部が、前記主切れ刃の一端から前記主切れ刃の中心と他端との間に存在することが好ましい任意の点に延びる。部分切削プランジ加工では、このようにして、切削インサートは、典型的には、チップ空洞の対称面に対して非対称に負荷が掛かる。
【0019】
フルカットでは、主切れ刃の全体がワークピースの加工に使用され、特に負の面取りの第1の部分領域及び第3の部分領域が切削コーナーの安定化に寄与する。これにより、長い耐用年数が可能となる。チップ空洞の後壁の中間部、即ち、第2の壁領域、第3の壁領域及び第4の壁領域は、フルカットにおいて、負荷が掛からないか、少なくとも最小限の負荷しか掛からない。従って、チップ空洞の後壁の第2の壁領域、第3の壁領域、及び第4の壁領域は、フルカットの機械加工中に、全く影響を及ぼさない、又は少なくともほんのわずかな影響しか及ぼさない。負の面取りの第1の部分領域及び第3の部分領域は、チップ空洞の後壁の第1の壁領域及び第5の壁領域とともに、フルカット時の切り屑のテーパリングに寄与する。従って、ワークピースから除去された切り屑は、機械加工溝から非常に容易に流れ出すことができる。これにより、小さなチップ空間カウントで螺旋状の切り屑の形成が可能となる。
【0020】
部分切削では、通常、切削インサートのコーナーの領域内に位置する負の面取りの領域の一部(即ち、面取りの第1の部分領域又は第3の部分領域のいずれか)に負荷が掛かる。負の面取りのこの1つの部分領域に加えて、部分切削では、チップ空洞の後壁の反対側の壁領域に負荷が掛かる。部分切削がなされる切削インサートの側面に応じて、部分切削における機能面は、例えば、チップ空洞の第4の壁領域とともに負の面取りの第1の部分領域、又は、他の側面において、チップ空洞の第4の壁領域とともに負の面取りの第2の部分領域である。チップ空洞の前記壁領域は、負の面取りの前記領域のバランスをとるのに役立つ。このように、長い螺旋状切り屑の形成も、部分切削により最小限に抑えられる。このように、部分切削でも、優れた切り屑の制御と長寿命化が達成できる。
【0021】
主切れ刃の中央に配置された部分をワークピースの機械加工に用いるウェブプランジ加工では、切り屑の形成はチップ空洞の後壁の中央に配置された第3の壁領域に実質的に影響される。すでに述べたように、他の壁領域と比較して、これは主切れ刃から最も離れており、凹状になるように構成されている。こうして、除去された切り屑はウェブプランジ加工において片側まで巻き上がり、従ってテーパとなり、それは次いで、切り屑の破損を促進し、長い螺旋状の切り屑を防止する。負の面取りの第2の部分領域は、主切れ刃の大部分に沿って延び、ウェブプランジ加工中の主切れ刃の安定化にも寄与し、従って、過負荷に起因する主切れ刃の損傷を回避する。
【0022】
このように切削インサートの切削領域の発明に係る構成は、切削インサートがフルカット、部分切削又はウェブプランジ加工の何れに使用されるか否かにかかわらず、非常に良好な切り屑の形成特性につながる。
【0023】
従って、上記の目的は完全に達成される。
【0024】
本発明の改良例によれば、第1の部分上の全ての点は、第2の部分、第3の部分及び第4の部分上の全ての点よりも主切れ刃からの距離が小さい。
【0025】
つまり、チップ空洞全体の後壁の第1の壁領域は、チップ空洞の後壁の第2の壁領域、第3の壁領域及び第4の壁領域よりも主切れ刃に近い位置に配置される。チップ空洞のこの対称性のため、これは第5の壁領域にも当てはまる。従って、後者の改良例では、輪郭線の第5の部分上の全ての点も、輪郭線の第2の部分、第3の部分、及び第4の部分上の全ての点よりも、主切れ刃からの距離が小さくなる。
【0026】
従って、後者の改良例では、外側に最も遠くに配置された壁領域(第1の壁領域及び第5の壁領域)は、主切れ刃からの距離が最小であり、中央に配置された壁領域(第3の壁領域)は、主切れ刃からの距離が最大である。間にある壁領域(第2の壁領域及び第4の壁領域)の距離は夫々、第3の壁領域と主切れ刃との間の距離よりも短いが、主切れ刃からの2つの最も外側の壁領域(第1の壁領域及び第5の壁領域)の距離よりも長い。
【0027】
さらなる改良例によれば、輪郭線の5つの部分は、夫々連続的で区別可能な曲線を規定する。
【0028】
このように、輪郭線の個々の部分は、夫々ねじれず、中断しない。また、個々の壁領域はねじれないことが望ましい。
【0029】
しかし、5つの壁部分が互いに接線方向に結合しないのが好ましい。個々の壁領域間、即ち、ある壁の領域から隣の領域への移行時には、ねじれ又は縁が生じる可能性がある。従って、個々の壁領域は、チップ空洞の内側にて互いに明確に分かれていることが望ましい。これは、また、機械加工工程の安定性に寄与し、本発明による切削インサートを用いる機械加工から生じる切り屑形成の特性を改善する。
【0030】
さらなる改良例によれば、輪郭線の第3の部分が、輪郭線の他の部分と比較して最も長くなっている。
【0031】
従って、中央に配置された第3の壁領域は、チップ空洞の後壁の最大部分を構成することが好ましい。これは特にウェブプランジ加工時に有利である。
【0032】
さらなる改良例によれば、前記負の面取りの第2の部分領域は、前記主切れ刃に直接隣接していることが好ましい。
【0033】
これにより、主切れ刃への負荷を軽減し、全体的な安定性に積極的に貢献している。
【0034】
さらなる改良例によれば、輪郭線の第1の部分は、負の面取りの第1の部分領域に直接隣接する。同様に、この改良例において、輪郭線の第5の部分は、負の面取りの第3の部分領域に直接隣接する。
【0035】
従って、この改良例では、チップ空洞の第1の壁領域が負の面取りの第1の部分領域に直接隣接し、かつ、チップ空洞の第5の壁領域が負の面取りの第3の部分領域に直接隣接する。負の面取りの第1の部分領域及び第3の部分領域は、夫々平面として構成されることが望ましい。
【0036】
さらなる改良例によれば、負の面取りの第1の部分領域とチップ空洞との第1の境界線が、上面視で、主切れ刃に対して第1の角度αで延び、30°≦α≦90°であることを特徴とする。これに対応して、チップ空洞と負の面取りの第2の部分領域との第2の境界線は、上面視で、主切れ刃に対して第2の角度α2で延び、α2はαの反対角である。
【0037】
さらなる改良例によれば、複数の突起部がチップ空洞内に配列されて、チップ空洞内に配列されたベース面から上方に突出しており、前記突起部は、主切れ刃に沿って一列に互いに平行に配列されている。
【0038】
個々の突起部の間には各々相対的な凹部が生じる。ワークピースの機械加工中、主たる切り屑流れは、このように個々の突起部の間の中間空間で行われる。それにより切り屑は側方に圧縮される。この予備変形は切り屑がチップ空洞の後壁に到達する前でさえ、切り屑の硬化を引き起こす。それゆえ、切り屑がチップ空洞の後壁に到達すると、切り屑は比較的容易に破断し、これもまた、できるだけ短い切り屑を望ましく生成することに寄与する。
【0039】
突起部の数は、奇数であるのが好ましい。例えば、3個、5個、7個又は9個の突起部を主切れ刃に沿って設けてもよい。突起部は、主切れ刃に沿って互いに等しい距離に配置され、それと平行して並列されるのが好ましい。
【0040】
さらなる改良例によれば、突起部は、主切れ刃に平行して、また主切れ刃の大部分に沿って延びる負の面取りの第2の部分に直接隣接する。特に好ましくは、突起部は各々、面取り内に位置する表面部分を有する。
【0041】
負の面取りは、主切れ刃の中心領域の個々の突起部に結合し、即ち直接且つ接線方向に結合するのが好ましい。これにより、突起部故に、ワークピースから除去される切り屑に加えられる圧縮効果を増大させる。これにより、切り屑切断の早期化、ひいては極力短い切り屑の形成にも寄与する。
【0042】
さらなる改良例によれば、チップ空洞は、対称面に平行な任意の断面において凹状となるように構成される。対称面に平行な断面において、第1の壁領域及び第5の壁領域は、第2の壁領域及び第4の壁領域よりも大きく湾曲していることが好ましい。対称面と平行する区間では、しかしながら、第2の壁領域及び第4の壁領域は、中心に配置された第3の壁領域よりも大きく曲線を示すことが望ましい。長手方向の断面で見た各壁領域の曲率は、望ましくは壁領域の外側からさらに内側に向かう壁領域まで減少する。
【0043】
上記の特徴及び以下に説明するような特徴は、所与の組合せだけでなく、本発明の範囲を離れることなく単独又は他の組合せにおいても使用することができることが理解されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の例示的な実施形態は図面で示され、以下の記載において、より詳細に説明される。図面は以下を示す。
【
図1】本発明に係る切削インサートの第1の実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明に係る切削インサートが使用され得る工具の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図3】
図1に示される本発明に係る切削インサートの第1の例示的な実施形態を上から見た平面図である。
【
図4】
図1に示される本発明に係る切削インサートの第1の例示的な実施形態の側面図である。
【
図8】さらなる幾何学的関係が明らかにされている、
図5からの切削インサートの図である。
【
図9】さらなる幾何学的関係が明らかにされている、
図6からの切削インサートの図である。
【
図10】さらなる幾何学的関係が明らかにされている、
図7からの切削インサートの図である。
【
図11】
図5及び
図8に示されるものと同様に、本発明に係る上からの平面図における切削ンサートの第2の例示的な実施形態を示す。
【
図12】
図6及び
図9に例示されているのと同様に、本発明に係る断面図における切削インサートの第2の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に係る切削インサートの第1の実施形態を、
図1に斜視図として示す。切削インサートは全体として符号10で指定される。
【0046】
その前端において、切削インサート10は、ワークピースの機械加工中にワークピースに少なくとも部分的に接触する切削領域12を有する。従って、この切削領域12の形状は、切り屑の形成、即ちワークピースから除去される切り屑を形成するのに必要である。
【0047】
後方領域において、切削インサート10はクランプ部14を有する。このクランプ部14は、切削インサート10を工具ホルダにクランプする役割を果たす。クランプ部14は、ウェブ又はバーとして構成され、望ましくは多角的又はプリズム形の断面を有する。
【0048】
図2は、本発明に係る切削インサート10が使用され得る例示的な工具16を示す。
図2に示す工具16は、旋削工具として構成されている。この旋削工具16は、プランジ旋削又は溝入れ加工に特に適している。しかしながら、
図2に示された工具は、本発明に係る切削インサート10が使用され得る複数の工具の恣意的な例にすぎないことが理解される。
【0049】
図2に示す工具16は、その後方領域において実質的にバーとして構成された工具ホルダ18を有し、その前端領域に切削インサート10を受け入れる役割を果たす切削インサート受け部20を有する。切削インサート受け部20は、
図2に示す例示的な実施形態において、切削インサート受け部20に切削インサート10を固定するために、それ以上の固定手段が必要とされないように、自己クランプするように構成されている。しかしながら、複数のさらなる公知の工具ホルダでは、切削インサート10を切削インサート受け部20にクランプするために、例えばクランプねじのようなさらなる固定手段が使用される。これも、本発明の範囲から離れることなく、本発明に係る工具16と併せて原則として可能であることが理解される。
【0050】
図3乃至
図10は、
図1に示された第1の実施形態に係る本発明に係る切削インサート10の更なる図を示している。特に
図3から明らかなように、その前面端部には、切削インサート10は、直線状となるように構成された主切れ刃22を有する。主切れ刃22は、切削領域12の長手方向に直交して延びる。この長手方向を
図3及び
図4に点線で示し、符号24を付す。
【0051】
さらに、切削領域12において、切削インサート10は、チップ空洞26を有する。このチップ空洞26は、凹み又は材料凹部として構成されている。それは、切削領域12の大部分の幅に亘って延びるのが好ましい。
【0052】
さらに、切削領域12では、面取り28が設けられており、その方向性のため、取引においても負の面取りとして知られている。面取り28は、3つの部分領域30a-30cに分割される。面取り28の3つの部分領域30a-30cはすべて、共通の平面上に配置される。この平面はここでは「面取り面」と呼ばれている。面取り面は、
図7に点線で示され、符号32を伴う。面取り面32は、切削領域12の長手方向24に対して鋭角に配向される。この角度は負のすくい角を形成するので、面取り28は、既に述べたように、一般に負の面取りとしても記述される。
【0053】
負のすくい角のために、面取り面32は、チップ空洞26を越えて上方に突出する。このようにチップ空洞26は、面取り面32の下方に配置され、それによりチップ空洞26と面取り面32は交差していない。
【0054】
面取り28は、チップ空洞26を少なくとも部分的に囲んでいる。面取り28は、主切れ刃22の全長に沿って延びていることが好ましい。面取り28の第1の部分領域30aは、主切れ刃22の第1の端部34aに隣接している。面取り28の第3の部分領域30cは、主切れ刃22の対向端部34bに隣接している。2つの部分領域30a、30cは、切削領域12の2つの前面コーナー領域を形成する平担面として構成される。
【0055】
前方に向かって、2つの部分領域30a、30cが主切れ刃22によって区切られている。側面に対して、2つの部分領域30a、30cは、まず、チップ空洞26によって夫々の内部で区切られ、夫々の外部において、二次切れ刃36a、36bによって区切られている。2つの前記二次切れ刃36a、36bは、切削領域12の側方の外端部を形成している。二次切れ刃36a、36bは、夫々半径38a、38bを介して主切れ刃22の端部34a、34bに接続されている。半径38a、38bの代わりに、二次切れ刃36a、36bと主切れ刃との間の遷移として面取りを設けることもできる。
【0056】
面取り28の第2の部分領域30bは、第1の部分領域30aと第3の部分領域30cの間を延びる。この面取り28の第2の部分領域30bは、主切れ刃22の少なくとも大部分に沿って延び、主切れ刃22と平行に延びる。好ましくは、面取り28の第2の部分領域30bは、主切れ刃22に直接隣接する。この第2の部分領域30bも、部分領域30a、30cにより形成される2つの平坦面と同じ1つの面取り面32に配置される平坦面として構成されている。
【0057】
主切れ刃22に対向するその前端では、チップ空洞26は、面取り28の第2の部分領域30bによって区切られている。その反対側の後端では、チップ空洞26は壁40によって区切られている。この壁40は、長手方向24で見て、チップ空洞26の後方領域を形成する。壁40は、切削領域12の幅の過半数(50%以上)を超えることが望ましい。
【0058】
全体として、チップ空洞26は、対称面41に対して鏡面対称となるように構成されている。この対称面41は、
図3において点線として示され、
図3において同じく印付けられた断面A-Aに対応する。対称面41は、主切れ刃22に対して直交して延び、主切れ刃22の両端部34a、34bから同じ距離を有する。従って、対称面41は、主切れ刃22の中心点を通る。
【0059】
チップ空洞26の対称特性のため、従って、壁40も対称面41に対して鏡面対称となるように構成される。壁40は5つの壁領域42、44、46、48、50を有し、増分順に順番に互いに隣接している。第1の壁領域42は、第5の壁領域50に対して鏡面対称となるように構成されている。これら2つの壁領域42、50は、夫々の壁40の外端領域を形成する。第2の壁領域44は、第1の壁領域42に隣接して配置される。これに対応して、第4の壁領域48は、第5の壁領域50に隣接して配置され、第2の壁領域44に対して鏡面対称に構成されている。第3の壁領域46は、第2の壁領域44と第4の壁領域48との間に配置されており、切削インサート10の幅方向、すなわち長手方向24に対して直交方向から見て、壁40の中間領域を形成している。好ましくは、この第3の壁領域46は、表面的には5つの壁領域42-50の中で最大である。第3の壁領域46は、対称面41によって、2つの等しいサイズの鏡面対称の半体に分割される。
【0060】
図6に図示されている輪郭線62は、以下の壁40の個々の壁領域42-50のより詳細な説明のために役立つ。この輪郭線62は、
図4に印付けされた断面B-Bに沿った断面から生じる。この断面B-Bは仮想面64に対応し、該仮想面64は対称面41に直交して配向され、切削領域12の長手方向24に平行に延びる。
【0061】
壁40の5つの壁領域42-50に対応して、輪郭線62も5つの部分52、54、56、58、60を有する。輪郭線62の第1の部分52は、仮想面64と第1の壁領域42との交差部から生じる。輪郭線62の第2の部分54は、仮想面64と第2の壁領域44との交差部から生じる。輪郭線62の第3の部分56は、仮想面64と第3の壁領域46との交差部から生じる。輪郭線62の第4の部分58は、仮想面64と第4の壁領域48との交差部から生じる。輪郭線62の第5の部分60は、仮想面64と第5の壁領域50との交差部から生じる。
【0062】
これに対応して、輪郭線62の5つの部分52-60は、壁領域42-50のように、増分順に順番に互いに隣接している。第1の部分52は、第5の部分60に対して鏡面対称となるように構成されている。第2の部分54は、第4の部分58と鏡面対称となるように構成されている。第3の部分56は、対称面41によって2つの等しいサイズの鏡面対称な半体に分割されて、輪郭線62の中間領域を形成し、該中間領域は、第2の部分54を第4の部分58に接続する。
【0063】
第1の部分、第3の部分及び第5の部分52、56、60は、夫々凹部となるように構成されている。第2の部分及び第4の部分54、58は、夫々直線状又は凸状になるように構成されている。
図6に示される第1の実施形態の断面図では、第2の部分及び第4の部分54、58が夫々直線状になるように構成されている。なお、
図12に示されるように、第2の実施形態に係る切削インサート10の図では、第2の部分54及び第4の部分58が夫々凸状になるように構成されている。さもなければ、
図11及び
図12に示された例示的な実施形態は、
図3-
図7に示される第1の例示的な実施形態と異なるものではない。
【0064】
壁40の第1の壁領域42及び第5の壁領域50は、他の壁領域44、46、48と比較して、主切れ刃22から最も短い距離を有している。いずれにせよ、輪郭線62の第1の部分上の少なくとも1つの点は、輪郭線62の第2の部分、第3の部分、及び第4の部分54、56、58上の全ての点よりも主切れ刃22からの距離が小さい。好ましくは、輪郭線62の第1の部分52上の全ての点は、輪郭線62の第2の部分、第3の部分、及び第4の部分54、56、58上の全ての点よりも主切れ刃22からの距離が小さい。
【0065】
チップ空洞26又は壁40の上記対称性のために、夫々第5の壁領域50又は第5の部分60に関しても同じ距離関係が当てはまることが理解される。
【0066】
第3の壁領域46は、主切れ刃22から最大の距離を有している。これに対応して、輪郭線62の第2の部分及び第4の部分54、58上の全ての点は、輪郭線62の第3の部分56上の全ての点よりも主切れ刃22からの距離が小さくなっている。
【0067】
輪郭線62の個々の部分52-60は、ねじれがないように夫々構成されていることが望ましい。従って、各部分52-60は連続的で区別可能な曲線を形成する。
【0068】
図5及び
図6に示す切削インサート10の第1の例示的実施形態によれば、壁40の5つの壁領域42-50は、接線方向に互いに合体しない。輪郭線62の個々の部分52-60の間では、各遷移点でひずみが生じている。しかし、
図11及び
図12に示された発明に係る切削インサート10の第2の実施形態に従って、このようなひずみは、第1の壁領域42と第2の壁領域44の間、及び第4の壁領域48と第5の壁領域50の間でのみ起こる。しかしながら、第2の実施形態に係る第2の壁領域44は、第3の壁領域46に接する形で合併する。同様に、第2の実施形態によれば、第3の壁領域46はまた接線的に第4の壁領域48に合体する。
【0069】
本発明に係る切削インサートのここで述べる双方の例示的な実施形態は、輪郭線62の第1の部分及び第5の部分52、60が、輪郭線62の中心に配置された第3の部分56よりも大きく湾曲するのが好ましいという特徴を共有する。同様に、示された両例示的な実施形態によれば、輪郭線62の中心に配置された第3の部分56が、5つの全ての部分52-60の中で比較的長い部分を形成することが好ましい。
【0070】
記載の導入部で既に説明したように、本発明による切削インサート10は、特に、チップ空洞26の記載された形態のために、また、負の面取り28の存在のために、フルカットのプランジ機械加工にも、また、部分切削のプランジ機械加工にも、また、上記ウェブプランジ加工にも適している。異なる機械加工変形例の意味を明確にするために、複数のヘルパー線66a-66dが
図11に示されている。
【0071】
ヘルパー線66bと66cは、部分切削中の切削インサート10の作業領域を示す。ここで、切削インサート10は、主切れ刃22の一部に沿ってのみ機械加工されるべきワークピースに接触する。ヘルパー線66bは、主切れ刃22の第2の端部34bを起点として、又は半径38bを起点として、主切れ刃22の両端部34a、34bの間にある主切れ刃22上の任意の点に延びる部分切削を示している。しかしながら、ヘルパー線66cは、主切れ刃22の両端34a、34bの間に配置された主切れ刃22上の任意の点に、第1の端部34a又は半径38aから始まって延びる部分切削を示している。このような部分切削には、主切れ刃22の全長の60%-80%が使用されるのが好ましい。
【0072】
ヘルパー線66dは、ウェブプランジ加工中の例示的な作業領域を示している。名称が示すように、ウェブプランジ加工中、切削インサート10は、機械加工されるべきワークピース上に設けられたウェブを機械加工する。この機械加工は、対称面41に対称な主切れ刃22の中央領域で行われることが好ましい。機械加工されるべきウェブの幅に応じて、通常、主切れ刃22の全長の10%―60%がワークピースに係合する。
【0073】
フルカットでは、ヘルパー線66aによって示されるように、ワークピースから除去された切り屑の一部は、切削コーナーに配置された負の面取り28の部分領域30a及び30cの上を延びる。これらの部分領域30a、30cは切断コーナーを安定させる。負の面取り28の中央に配置された第2の部分領域30bは、主切れ刃22の中央領域を安定化する。フルカットでは、主切れ刃22の全体がワークピースの加工に用いられるが、特に負の面取り28の第1の部分領域及び第3の部分領域30a、30cは切削コーナーの安定化に寄与する。これにより、長い耐用年数が可能となる。チップ空洞26の後壁40の中部領域、すなわち、第2の壁領域、第3の壁領域及び第4の壁領域44、46、48は、フルカット中に負荷がかからないか、少なくとも最小限の負荷がかかるにすぎない。従って、チップ空洞26の後壁の第2の壁領域、第3の壁領域、及び第4の壁領域44、46、48は、フルカットの間、機械加工に何も影響を及ぼさない、又は少なくともほんのわずかな影響しか及ぼさない。
【0074】
しかしながら、ヘルパー線66bによって示されるように、部分切削中は、機能面として機能し、切り屑形成に実質的に影響を与えるのは、本質的に、負の面取り28の第3の部分領域30c及び第2の壁領域44である。ワークピースから除去されたチップの大部分は、これら2つの互いに対向する面30c、44の上を延びる。この場合にも、2つの面30c、44の形状ゆえに、側方への切り屑テーパを達成することができ、部分切削の機械加工時でも、短い螺旋状の切り屑を製造することができる。ヘルパー線66cが示すような部分切削の機械加工についても同様である。この場合、負の面取り288の第1の部分領域30a及び第4の壁領域48は、実質的に切り屑形成に影響を及ぼす互いに対向する機能面として作用する。
【0075】
ウェブプランジ加工の場合、例えばヘルパー線66dによって示されるように、特に壁40の中央部分、すなわち凹状に湾曲した第3の壁領域46が、切り屑形成又は切り屑生成に決定的である。特に、この場合、負の面取り28の第2の部分領域30bは、機械加工されるべきワークピースと係合している主切れ刃22の中心領域を安定させる。壁40の第3の壁領域46の凹曲率は、今度は、横方向のチップテーパを保証し、これは、比較的早期の切り屑の破損を可能にし、従って、ウェブプランジ加工でも、比較的短い切り屑の形成を保証する。
【0076】
切り屑形成をさらに向上させるために、本発明に係る切削インサート10の切削領域12には、複数の突起部68が設けられ得る。本例に係る切削インサート10のここに示される2つの実施例において、これら合計5個の突起部68がチップ空洞26に配置されている。突起部68は、主切れ刃22に沿って一列に互いに平行に配置されている。突起部68は、チップ空洞26内に配置されるベース面70から突出し、好ましくは、負の面取り28の第2の部分領域30bに隣接する平担面として構成される。
【0077】
突起部68の間には、比較的凹部又はチャネルに似た通路が形成される。従って、突起部68は、チップ空洞26の後壁40に到達する前に、切り屑の一種の予備変形を確実にする。これは、さらに改善された切り屑の破損、従ってより短い切り屑の形成に寄与する。しかしながら、本発明に係る切削インサート10は、突起部68を設けずに、本発明の範囲から離れることなく構成されてもよいことは理解される。
【0078】
突起部68が切削インサート10に設けられている限りにおいて、突起部68が負の面取り28の第2の部分領域30bに直接隣接していることが好ましい。特に好ましくは、各突起部68は、面取り面32に位置する表面部を有している。言い換えれば、突起部68は、望ましくは、負の面取り28の第2の部分領域30bに接して一体となる。これは、主切れ刃22の更なる安定化に寄与する。
【0079】
チップ空洞26の更なる好ましい寸法関係及び幾何学的構成について、
図8乃至
図10を参照して以下により詳細に説明する。
【0080】
チップ空洞26の幅d2は、好ましくは、切削領域12における切削インサート10の全幅d1の75%-95%である。なお、負の面取り28の第2の部分領域30bの幅d3は、ベース面70の幅に対応しており、切削領域12における切削インサート10の全幅d1の60%-90%に相当する。さらに、突起部68の幅d4は、幅d3の5%-12%であることが好ましい。従って、好ましくは、d1>d2≧d3>d4である。
【0081】
特に
図9から明らかなように、主切れ刃22が境界線72とともに囲む角度αは、30°-90°に達するのが好ましく、境界線72はチップ空洞26と面取り28の第1の部分領域30aとの間に延びる。面取り28の第3の部分領域30cとチップ空洞との間に延びる反対の境界線74は、対応する反対側の角度を主切れ刃22と取り囲むことが理解される。
【0082】
図9は、さらに、第2の部分54と第3の部分56との間の遷移点において、輪郭線62の第2の部分54に接触する接線76を示す。標記の接線78は、第3の部分56と第4の部分58との間の遷移点で、輪郭線62の第4の部分58に接する。接線76、78は点80で交差する。更に、
図9は、接線82及び84を示す。接線82は、第2の部分54と第3の部分56との間の遷移点において、輪郭線62の第3の部分56に接触する。接線84は、第3の部分56と第4の部分58との間の遷移点において、輪郭線62の第3の部分56に接触する。接線82、84は点86で交差している。この点86は、点80よりも主切れ刃22からの距離が大きい。
【0083】
さらに、
図10に示す長手方向の断面は、チップ空洞26が対称面41に平行な全ての部分において凹んだ曲率を有することが好ましいことを示している。第2の壁領域44及び第4の壁領域48は、第3の壁領域46よりも大きく曲がるのが好ましい。これは、とりわけ
図10に示すβ
1とβ
2によって、図示されている。また、第1の壁領域42及び第5の壁領域50は夫々、第2の壁領域44及び第4の壁領域48よりも大きく曲がることが好ましい(角度β
3参照)。従って、β
3>β
2>β
1が好ましい。
【0084】
主切れ刃22は、面取り面32に配置された面取り28と自由面88との間の遷移部に形成されている。この自由面88が切削インサート10の前端面を形成する。この面取り28は、自由面88に対して角度γだけ傾斜しており、ここでγ≧90°である。特にγ>90°が望ましい。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工用工具(16)の切削インサート(10)であって、該切削インサート(10)は切削領域(12)内に、
直線状であって、切削領域(12)の長手方向(24)に直交して延びる主切れ刃(22)と、
全てが共通の面取り面(32)に配置される3つの部分領域(30a、30b、30c)を有し3つの部分領域の第1の部分領域(30a)が主切れ刃(22)の第1の端部(34a)に隣接して配置され、3つの部分領域の第2の部分領域(30b)が主切れ刃(22)の少なくとも大部分に沿って主切れ刃(22)に平行に延び、3つの部分領域の第3の部分領域(30c)が主切れ刃(22)の第2の端部(34b)に隣接して配置される面取り(28)と、
面取り(28)の第1の部分領域及び第3の部分領域(30a、30c)によって側方に区切られた凹部として構成され、主切れ刃(22)に対向する前端領域にて、面取り(28)の第2の部分領域(30b)によって区切られ、反対側の後端領域にて壁(40)にて区切られるチップ空洞(26)とを含み、
壁(40)を含むチップ空洞(26)は、主切れ刃(22)に直交して配向され、主切れ刃(22)の中心点を通る対称面(41)に対して鏡面対称に配置され、
壁(40)を含むチップ空洞(26)は、面取り面(32)の下方に配置され、面取り面(32)と交差せず、
壁(40)は、5つの壁領域(42、44、46、48、50)を含み、該壁領域(42、44、46、48、50)は、増分的な順序で順に互いに隣接しており、
5つの壁領域のうちの第1の壁領域(42)及び5つの壁領域のうちの第5の壁領域(50)は、対称面(41)に対して互いに鏡面対称であるように構成され、
5つの壁領域のうちの第2の壁領域(44)及び5つの壁領域のうちの第4の壁領域(48)は、対称面(41)に対して互いに鏡面対称であるように構成され、
5つの壁領域のうちの第3の壁領域(46)は、対称面(41)によって2つの鏡面対称の半体に分割され、
対称面(41)に直交して配向され、長手方向(24)に沿って延びる仮想面(64)と壁(40)との交差から生じる壁(40)の輪郭線(62)は、第1の壁領域(42)内に配置された第1の部分(52)と、第2の壁領域(44)内に配置された第2の部分(54)と、第3の壁領域(46)内に配置された第3の部分(56)と、第4の壁領域(48)内に配置された第4の部分(58)と、第5の壁領域(50)内に配置された第5の部分(60)とを有し、
第1の部分、第3の部分及び第5の部分(52、56、60)は夫々凹状であり、第2の部分及び第4の部分(54、58)は直線状又は凸状であり、
第1の部分(52)の少なくとも1つの点は、第2の部分、第3の部分、及び第4の部分(54、56、58)の全ての点よりも、主切れ刃(22)からの距離が短く、第2の部分及び第4の部分(54、58)上の全ての点は、第3の部分(56)上の全ての点よりも、主切れ刃(22)からの距離が短いことを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
第1の部分(52)上の全ての点は、第2の部分、第3の部分、及び第4の部分(54、56、58)上の全ての点よりも、主切れ刃(22)からの距離が短い、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
5つの部分(52、54、56、58、60)の夫々が連続的で区別可能な曲線を規定する、請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
5つの壁部分(42、44、46、48、50)が接線方向に互いに結合しない、請求項1乃至3の何れかに記載の切削インサート。
【請求項5】
第1の部分(52)が第3の部分(56)より大きく湾曲する、請求項1乃至4の何れかに記載の切削インサート。
【請求項6】
輪郭線(62)の第3の部分(56)は、
第1の部分(52)、第2の部分(54)、第4の部分(58)及び第5の部分(60)よりも長い、請求項1乃至5の何れかに記載の切削インサート。
【請求項7】
面取り(28)の第2の部分領域(30b)が主切れ刃(22)に直接隣接する、請求項1乃至6の何れかに記載の切削インサート。
【請求項8】
前記輪郭線(62)の前記第1の部分(52)は、前記面取り(28)の前記第1の部分領域(30a)に直接隣接し、前記輪郭線(62)の前記第5の部分(60)は、前記面取り(28)の前記第3の部分領域(30c)に直接隣接する、請求項1乃至7の何れかに記載の切削インサート。
【請求項9】
前記チップ空洞(26)と前記面取り(28)の第1の部分領域(30a)との間の第1の境界線(72)が、上面視で、前記主切れ刃(22)に対して第1の角度αで延び、30°≦α≦90°である、請求項1乃至8の何れかに記載の切削インサート。
【請求項10】
複数の突起部(68)が、前記チップ空洞(26)内に配置され、前記チップ空洞(26)内に配置されたベース面(70)から上方に突出し、前記突起部(68)が、前記主切れ刃(22)に沿って一列に互いに平行に配置される、請求項1乃至9の何れかに記載の切削インサート。
【請求項11】
前記
複数の突起部(68)は、
奇数の突起部(68)を備える、請求項10に記載の切削インサート。
【請求項12】
前記突起部(68)が面取り(28)の第2の部分領域(30b)に直接隣接する、請求項10又は11に記載の切削インサート。
【請求項13】
前記突起部(68)は各々面取り面(32)に位置する表面部分を有する、請求項10乃至12の何れかに記載の切削インサート。
【請求項14】
チップ空洞(26)は、対称面(41)に平行な任意の区間で凹状になるように構成される、請求項1乃至13の何れかに記載の切削インサート。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れかに記載の切削インサート(10)と、切削インサート(10)を受け入れるための少なくとも1つの切削インサート受け部(20)を備える工具ホルダ(18)とを有する、ワークピースを機械加工するための工具(16)。
【国際調査報告】