IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウニヴェルシタ デリ ストゥーディ ディ ミラノービコッカの特許一覧

<>
  • 特表-リポソーム及びその使用 図1
  • 特表-リポソーム及びその使用 図2
  • 特表-リポソーム及びその使用 図3
  • 特表-リポソーム及びその使用 図4
  • 特表-リポソーム及びその使用 図5
  • 特表-リポソーム及びその使用 図6
  • 特表-リポソーム及びその使用 図7
  • 特表-リポソーム及びその使用 図8
  • 特表-リポソーム及びその使用 図9
  • 特表-リポソーム及びその使用 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】リポソーム及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20220930BHJP
   A61K 31/688 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220930BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220930BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K31/688 ZNA
A61K31/661
A61P3/00
A61P25/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P9/10 101
A61P25/28
A61P17/00
A61P35/00
A61P27/02
A61P9/00
A61P43/00 105
A61P3/10
A61P13/12
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/42
A61K31/575
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506577
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071683
(87)【国際公開番号】W WO2021019078
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】102019000013569
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517234413
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ デリ ストゥーディ ディ ミラノービコッカ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスカ・レ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・エルネスト・マッセリーニ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・アントニオ・エルコレ・サルディナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076CC01
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC27
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE41
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC50
4C084MA02
4C084MA24
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA151
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA451
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA961
4C084ZB151
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC211
4C084ZC351
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA11
4C086DA41
4C086DA42
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA24
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、脂質又は脂質混合物、ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピン、及びアポリポタンパク質Eを含む、アルツハイマー病ではないアミロイドーシスの治療又は予防に用いるリポソーム、並びに関連する医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 脂質又は脂質混合物、
- ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピン、並びに
- アポリポタンパク質E又はその断片
を含む、アミロイドーシスの治療及び/又は予防に用いるリポソームであって、前記アミロイドーシスが、アルツハイマー病ではなく、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、透析アミロイドーシス、好ましくはリウマチ性関節炎及び/又はアテローム性動脈硬化症を伴う反応性アミロイドーシス、脳アミロイドアンギオパチー、プリオン病、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(ヒト)、BSE又は「狂牛病」(ウシ)及びスクレイピー、フィンランド型アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシス、プロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、心房の老人性アミロイド、甲状腺LECT2アミロイドーシスの髄様癌、2型糖尿病、1型及び2型糖尿病患者の末期腎不全、並びに糖尿病性腎症からなる群から選択され、且つ前記脂質又は脂質混合物が、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びコレステロールからなる群から選択される、リポソーム。
【請求項2】
前記脂質が、スフィンゴミエリンとコレステロールとの、好ましくは1:1のモル比の混合物である、請求項1に記載の使用向けリポソーム。
【請求項3】
前記アポリポタンパク質Eが、アポリポタンパク質Eの2つのアイソフォームE2、E3のいずれか又はそれらの断片であり、好ましくは前記断片が、ApoEのアミノ酸配列100~200から選択され、更に好ましくはApoEのアミノ酸配列120~170内にあり、最も好ましくは、前記アポリポタンパク質Eが、配列141~150又はその二量体である、請求項1又は2に記載の使用向けリポソーム。
【請求項4】
前記アポリポタンパク質Eが、そのC末端に、システイン末端トリペプチドを含み、好ましくはトリペプチドCWG-であり、好ましくは前記アポリポタンパク質Eが、配列CWGLRKLRKRLLR又はその二量体を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項5】
前記リポソームが更に、少なくとも1つのPEG(ポリエチレングリコール)分子、PEO(ポリエチレンオキシド)分子、POE(ポリオキシエチレン)分子、PDO(ポリジオキサノン)分子又はそれらの混合物を含み、好ましくは前記PEG分子の平均分子量が、1kDa超であるが11kDa未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項6】
前記PEG分子が、メチルポリエチレングリコール-1,2-ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン複合体(MPEG-2000-DSPE)、モノメトキシポリエチレングリコール(MPEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコールスクシネート(MPEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルスクシネート(MPEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコールアミン(MPEG-NH2)、モノメトキシポリエチレングリコールトレシレート(MPEG-TRES)、及びモノメトキシポリエチレングリコールイミダゾリルカルボニル(MPEG-IM)、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の使用向けリポソーム。
【請求項7】
前記ホスファチジン酸が、1~20%のモル百分率、好ましくは1~10%、最も好ましくは5%のモル百分率で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項8】
前記アポリポタンパク質Eが、1~5%のモル百分率、好ましくは1~3%、最も好ましくは1.25%のモル百分率で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項9】
前記リポソームが、
- 46.25mol%のコレステロール
- 46.25mol%のスフィンゴミエリン
- 1.25~1.5mol%のmApoE結合mal-PEG-PE
- 1.25~1.0mol%のフリーmal-PEG-PE
- 5mol%のホスファチジン酸からなり、
フリーmal-PEG-PEの%とmAPOE結合mal-PEG-PEの%との合計が2.5%であり、mal-PEG-PEが、1,2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリ(エチレングリコール)-2000)]であり、且つmAPOEが配列番号1である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項10】
平均サイズ<200nmを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項11】
PDI<0.2を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項12】
アミロイドタンパク質の凝集を低下させ、及び/又はアミロイドタンパク質の脱凝集を上昇させる、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用向けリポソーム。
【請求項13】
前記アミロイドタンパク質が、トランスサイレチン、β2マイクログロブリン、アミリン、アミロイド軽鎖、血清アミロイドAタンパク質、ゲルゾリン、システインC、ApoA1、フィブリノーゲンアルファ鎖、LYZ(リゾチーム、ムラミダーゼ又はN-アセチルムラミドグリカンヒドロラーゼとしても知られる)、OSMR(オンコスタチン-M特異的受容体サブユニットベータ、オンコスタチンM受容体としても知られる)、内在性膜タンパク質2B(ITM2B又はBRI2)、プロラクチン、LECT2タンパク質、ケラトエピセリン(トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導68kDa、TGFBIとしても知られる(当初はBIGH3、BIG-H3と呼ばれた))、カルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子及びプリオンタンパク質からなる群から選択される、請求項12に記載の使用向けリポソーム。
【請求項14】
アミロイドーシスの治療及び/又は予防に用いる、請求項1から13のいずれか一項に記載のリポソームを含む製剤であって、前記アミロイドーシスが、アルツハイマー病ではなく、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、透析アミロイドーシス、好ましくはリウマチ性関節炎及び/又はアテローム性動脈硬化症を伴う反応性アミロイドーシス、脳アミロイドアンギオパチー、プリオン病、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(ヒト)、BSE又は「狂牛病」(ウシ)及びスクレイピー、フィンランド型アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシス、プロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、心房の老人性アミロイド、甲状腺LECT2アミロイドーシスの髄様癌、2型糖尿病、1型及び2型糖尿病患者の末期腎不全、並びに糖尿病性腎症からなる群から選択される、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質又は脂質混合物、ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピン、及びアポリポタンパク質Eを含む、アルツハイマー病ではないアミロイドーシスの治療又は予防に用いるリポソーム並びに関連する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドーシスは、アミロイド線維として知られる異常タンパク質が組織中で蓄積する疾患群である[Chiti F、Dobson CM Annual Reviews of Biochemistry、2017年、86、27]。症状は、疾患の種類に依存し、頻繁には様々である。約30種の異なるアミロイドーシスが存在し、その各々は、特異的なタンパク質ミスフォールディングに起因する。遺伝性のものもあれば、後天性のものもある。アミロイドーシスは、限局型及び全身型に分類され、限局性アミロイドーシスは、唯一の体器官又は組織型にのみ影響を及ぼし、例えば、脳アミロイドアンギオパチーである。全身性アミロイドーシスは、2つ以上の体器官又は体系に影響を及ぼし、例えば、軽鎖(AL、抗体軽鎖に起因するアミロイドーシス)、炎症(AA、プロテインAに起因するアミロイドーシス)、透析(Aβ2M、β2マイクログロブリンに起因するアミロイドーシス)、並びに遺伝性及び老齢(ATTR、トランスサイレチンに起因するアミロイドーシス)である。アミロイド形成タンパク質は不均一な構造及び機能を有し、且つアミロイド関連疾患の原因は様々であるが、それらすべてのタンパク質は、アミロイド線維を形成し得る。治療をしないと、平均余命は6か月から4年の間であり、先進諸国では1,000人のうち約1人がアミロイドーシスで亡くなる。
【0003】
アミロイドーシスに対してはごく少数の治療、例えば、高用量化学療法、抗炎症薬(例えば、ステロイド、抗TNF)、及び免疫抑制剤が利用可能であるが、それらのいずれも疾患を完全には解消できない。遺伝性アミロイドーシスの場合、アミロイド形成タンパク質をコードする遺伝子の変異ゆえ、頻繁には、肝臓、腎臓又は心臓の移植が最後の選択肢である。
【0004】
βアミロイドペプチド(Aβ40)は、21番染色体上の遺伝子によってコードされる、はるかに大きいアミロイド前駆体タンパク質(APP)からの40残基のタンパク質分解産物である。大脳皮質及び軟髄膜中の細動脈及び/又は毛細血管の中膜及び外膜におけるAβ40の沈着が、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の主な病理学的特徴の1つである。CAAは、高齢者において脳出血を引き起こす(高血圧症に次ぐ)第2の理由であり、高齢者での非外傷性脳出血の15~40%を占め、30~50%の死亡率を伴う。時折、CAAは、脳虚血発作、認知障害及び脳血管炎として現れる。更に、CAAは一般的にアルツハイマー病(AD)において見出され、AD患者のほぼ80%はCAAを伴う。
【0005】
トランスサイレチン(TTR)は、肝臓又は脳脊髄液(CSF)中で産生される56kDaのホモ四量体でβシートに富むタンパク質である。TTRは、2つのアミロイドーシス、つまり、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)及び家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)と関連する。SSAは、野生型TTR(WT-TTR)で構成される凝集体の主に心臓内での広範囲沈着により引き起こされ、FAPは、100超の常染色体TTRバリアントで構成される凝集体の、末梢神経及び組織での沈着によって引き起こされる。
【0006】
β2マイクログロブリン(β2m)は、主要組織適合性複合体クラスIの軽鎖であり、99残基で構成され、ジスルフィド結合により共にロックされた2つのβシートからなる典型的βサンドイッチ構造に組織化されている。β2mのin vivo凝集が、長期間の血液透析を受ける患者に影響を及ぼす病理学的状態である透析アミロイドーシスの原因である。いずれの分子特性がβ2m凝集に影響を及ぼすのかを解明するために、多数のβ2m変異研究が行われた。例えば、β2マイクログロブリンのアミロイド形成バリアントであるD76Nは、該疾患の家族型と関連し、進行性大腸機能障害、並びに脾臓、肝臓、心臓、唾液腺及び神経における広範囲のアミロイド沈着を特徴とする[Valleix S.等、N Engl J Med.、2012年6月14日、366(24):2276~83頁]。ΔN6は、透析アミロイドーシスに冒された患者でのβ2-mアミロイド沈着の普遍的構成成分であり、全長β2-mの線維形成における種子(seed)として作用する能力ゆえ、この疾患の臨床経過を左右する重要な役割を有し得る[Esposito G.等、Protein Sci.、2000年5月、9(5):831~45頁]。
【0007】
血清アミロイドAタンパク質(SAA)は、アミロイド沈着として脾臓、肝臓及び腎臓のような器官に蓄積し、反応性アミロイドーシス又はアミロイドA(AA)アミロイドーシスと呼ばれる状態をもたらす。反応性アミロイドーシスは概して、慢性炎症、例えば、リウマチ性関節炎及びアテローム性動脈硬化症を誘導する別の状態を伴う。SAA沈着は、2型糖尿病においても観察された[Anderberg RJ等、Laboratory Investigation、2015年、95、250]。
【0008】
従って、アミロイドーシスを治療するための新規療法の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chiti F、Dobson CM Annual Reviews of Biochemistry、2017年、86、27
【非特許文献2】Valleix S.等、N Engl J Med.、2012年6月14日、366(24):2276~83頁
【非特許文献3】Esposito G.等、Protein Sci.、2000年5月、9(5):831~45頁
【非特許文献4】Anderberg RJ等、Laboratory Investigation、2015年、95、250
【非特許文献5】Gobbi M等、Biomaterials 2010年、31:6519~29頁
【非特許文献6】Wechalekar AD Lancet、2016年6月25日;387(10038):2641~2654頁、doi:10.1016/S0140-6736(15)01274-X
【非特許文献7】Ankarcrona M J Intern Med、2016年8月;280(2):177~202頁、doi:10.1111/joim.12506
【非特許文献8】Nuvolone M Expert Opin Ther Targets、2017年12月;21(12):1095~1110頁
【非特許文献9】Rang and Dale's Pharmacology、2015年
【非特許文献10】Verona G.等、2017年、Sci. Rep. 7、182~187頁
【非特許文献11】Verdone G.等、Protein Sci. 2002年、11、487~499頁
【非特許文献12】Zheng, J.S等、Nature Protocol 2013年、8、2483~2495頁
【非特許文献13】Wan, Q.、Danishefsky, S. J. Angew. Chem. Int. Ed. 2007年、46、9248~9252頁
【非特許文献14】Sheppard, R.等、J. Pept. Sci. 2003年、9、545
【非特許文献15】Balducci C.等、J.Neurosci. 2014年、34:14022~31頁
【非特許文献16】Bana等、Nanomedecine 2013年、doi:10.1016/j.nano.2013.12.001
【非特許文献17】Stewart J.C.、Anal. Biochem. 1980年、104、10~14頁
【非特許文献18】Bana L.等、Nanomedicine. 2013年、10:1583~90頁
【非特許文献19】Mangione P.P.等、J. Biol Chem. 2018年、293、14192
【非特許文献20】Jakel L. Animal Models of Cerebral Amyloid Angiopathy Clin. Sci. 2017年 131:2469頁
【非特許文献21】Miao J. Am. J. Pathol. 2005年
【非特許文献22】Suzuki N等、1994年、High tissue content of soluble Abeta1-40 is linked to cerebral amyloid angiopathy Am. J. Pathol. 145:452
【非特許文献23】Herzig MC、Nat Neurosci. 2004年;7:954~60頁
【非特許文献24】Dickson,D.W.等、1988 Alzheimer's disease. A double-labeling immunohistochemical study of senile plaques. Am. J. Pathol. 132、86
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、驚くべきことに、ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピン、アポリポタンパク質E、並びに脂質又は脂質混合物を含むリポソームが、Aβ42とは異なるアミロイド形成タンパク質と相互作用することができ、線維へのその凝集を遅らせる若しくは妨げるか、又はその線維状凝集体の脱凝集を誘導するかのいずれかによって、その凝集に影響を及ぼし得ることが示された。驚くべきことに、該アミロイド形成タンパク質は、その生物学的機能又はそのアミノ酸配列に関して関連がない。
【0011】
本明細書で報告される結果は、本リポソームが、線維の秩序(order)及び幾何学的配列の低下を伴う線維の脱凝集を誘導することを示す。本発明のリポソームによって誘導されるより可用性種の形成を伴う、アミロイド凝集体の溶解又は減少は、それらのリポソームが、アミロイドーシスの薬物治療に適切であることを示す。
【0012】
更に、本明細書で報告される結果は、本発明のリポソームが、アミロイド形成タンパク質の非凝集状態から線維状態への移行を妨げる又は遅らせることも示し、本発明の主題であるリポソームが、初期段階のアミロイドーシスの薬物治療に適切であることを示す。
【0013】
特に、本発明のリポソームは、
i) TTRの凝集を60%阻害し、その脱凝集を完全に誘導する、
ii) β2マイクログロブリンの凝集を完全に阻害し、そのマイクログロブリン脱凝集を部分的に誘導する、
iii) Aβ40の凝集を完全に阻害し、その脱凝集を完全に誘導する、
iv) SAA1~76の凝集を完全に阻害し、その脱凝集を誘導する、
v) Aβ40、β2MΔN6、β2MD76N及びTTRの凝集体に結合する、
vi) CAAの動物モデルにおいてAβの血管沈着を低下させる。
【0014】
次いで、本発明のリポソームは、疾患の全段階におけるアミロイドーシスの治療及び/又は予防に特に適切である。
【0015】
従って、本発明は、
- 脂質又は脂質混合物、
- ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピン、並びに
- アポリポタンパク質E又はその断片
を含む、アミロイドーシスの治療及び/又は予防に用いるリポソームを提供し、ここで、該アミロイドーシスは、アルツハイマー病ではなく、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、透析アミロイドーシス、好ましくはリウマチ性関節炎及び/又はアテローム性動脈硬化症を伴う反応性アミロイドーシス、脳アミロイドアンギオパチー、プリオン病、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(ヒト)、BSE又は「狂牛病」(ウシ)及びスクレイピー、フィンランド型アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、家族性内臓アミロイドーシス(familial visceral amyloidosis)、原発性皮膚アミロイドーシス、プロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、心房の老人性アミロイド、甲状腺LECT2アミロイドーシスの髄様癌、2型糖尿病、1型及び2型糖尿病患者の末期腎不全、並びに糖尿病性腎症からなる群から選択され、且つ該脂質又は脂質混合物が、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びコレステロールからなる群から選択される。
【0016】
好ましくは、脂質が、スフィンゴミエリンとコレステロールとの、更に好ましくは1:1のモル比の混合物である。
【0017】
好ましくは、リポソームが、モノシアロテトラヘキソシルガングリオシド(GM1)を含まない。
【0018】
本明細書で使用する用語「ホスファチジン酸」は、2つの脂肪酸及び1つのリン酸基によりエステル化されたグリセロール骨格を有する分子、例えばジミリストイルホスファチジン酸を意味する。カルジオリピンは、公知の化合物であり、1,3-ビス(sn-3'-ホスファチジル)-sn-グリセロールとしても知られる。リポソーム中、ホスファチジン酸(又はカルジオリピン)は、好ましくは1~20%、更に好ましくは1~10%、最も好ましくは5%のモル量で存在する(リポソームを構成する全物質の全モル量に対して)。ホスファチジン酸又はカルジオリピンが両方とも存在する場合、前記の範囲は、両物質のモル量の合計と見なされ、両方が存在する場合、ホスファチジン酸とカルジオリピンとは、任意の相互比で使用できる。
【0019】
アポリポタンパク質E(ApoE)は、肝臓及び脳において高レベルで産生される、299アミノ酸を含有する34kDaの糖タンパク質である。ApoEは、その天然源から得て使用し得るか、又は意図的に合成し得る。用語「ApoE誘導体」は、E2、E3と表現される公知のApoEアイソフォームを含む。用語「ApoE誘導体」は更に、ApoEの断片、好ましくはアミノ酸配列100~200、更に好ましくは120~170に属するような断片を含み、好ましい断片は、ApoEのアミノ酸141~150で構成される断片(配列:(LRKLRKRLLR)-NH2、配列番号10)又はその二量体(配列:(LRKLRKRLLR)-(LRKLRKRLLR)-NH、配列番号11)である。好ましくは、ApoE又はその断片が、脂質への化学結合を支援する、システイン末端低分子ペプチド配列(最高で5アミノ酸)、例えばトリペプチドCWG-を含み、得られる断片の好ましい例は、CWG-(LRKLRKRLLR)-NH2(配列番号1、本明細書では「mApoE」)又はCWG-(LRKLRKRLLR)-(LRKLRKRLLR)-NH2(配列番号12、本明細書では「dApoE」)である。
【0020】
該ApoE又はその誘導体は、リポソーム膜の別の脂質成分との物理的混合物としてリポソーム中に存在し得る、又はそのような膜上に沈着し得る、又はその脂質に化学結合し得る、又はリポソーム内に含有され得る、又は既存のリポソームに添加され得る。好ましくは化学的に結合する。その場合、前記のApoEは、リンカー分子によって連結又は接続され得る。好ましいリンカーは、化合物1,2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリ(エチレングリコール)-2000)](本明細書では「mal-PEG-PE」と省略)である。最終的なリポソーム中では、ApoEが、好ましくは1~5%のモル量で存在する(リポソームを構成する全物質の全モル量に対して)。最終的なリポソームは更に、標準的リポソーム脂質を含む。それらの標準的リポソーム脂質が、リポソームの大部分を構成し、好ましくは90~98%のモル量を占める(リポソームを構成する全物質の全モル量に対して)。好ましい標準的リポソーム脂質は、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(ペグ化又は非ペグ化)及びコレステロールである。
【0021】
好ましい一実施形態では、アポリポタンパク質Eが、アポリポタンパク質Eの2つの公知のアイソフォームE2、E3及びそれらの断片を含み、該断片が、好ましくはApoEのアミノ酸配列100~200から選択され、更に好ましくはApoEのアミノ酸配列120~170内にあり、最も好ましくは、アポリポタンパク質Eが、配列141~150又はその二量体である。
【0022】
好ましくは、該アポリポタンパク質Eが、そのC末端に、システイン末端トリペプチドを含み、好ましくはトリペプチドCWG-であり、好ましくはアポリポタンパク質Eが、配列CWGLRKLRKRLLR又はその二量体を有する。
【0023】
好ましい一実施形態では、リポソームが更に、少なくとも1つのPEG(ポリエチレングリコール)分子、PEO(ポリエチレンオキシド)分子、POE(ポリオキシエチレン)分子、PDO(ポリジオキサノン)分子又はそれらの混合物を含み、好ましくはPEG分子の平均分子量が、1kDa超であるが11kDa未満である。
【0024】
好ましくは、PEG分子が、メチルポリエチレングリコール-1,2-ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン複合体(MPEG-2000-DSPE)、モノメトキシポリエチレングリコール(MPEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコールスクシネート(MPEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルスクシネート(MPEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコールアミン(MPEG-NH2)、モノメトキシポリエチレングリコールトレシレート(MPEG-TRES)、及びモノメトキシポリエチレングリコールイミダゾリルカルボニル(MPEG-IM)、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
好ましくは、ホスファチジン酸が、1~20%のモル百分率、好ましくは1~10%、最も好ましくは5%のモル百分率で存在する。
【0026】
更に好ましくは、アポリポタンパク質Eが、1~5%のモル百分率、好ましくは1~3%、最も好ましくは1.25%のモル百分率で存在する。
【0027】
好ましい一実施形態では、該リポソームが、
- 46.25mol%のコレステロール
- 46.25mol%のスフィンゴミエリン
- 1.25~1.5mol%のmApoE結合mal-PEG-PE
- 1.25~1.0mol%のフリーmal-PEG-PE
- 5mol%のホスファチジン酸
からなり、ここで、フリーmal-PEG-PEの%とmApoE結合mal-PEG-PEの%との合計は2.5%である。
【0028】
好ましくは、本発明のリポソームが、平均サイズ<200nmを有する。
【0029】
更に好ましくは、リポソームが、PDI<0.2、好ましくは<0.1を有する。
【0030】
リポソーム多分散性(PDI)は、当該分野で公知の任意の方法、例えば動的光散乱法(DLS)により測定し得て、90度の固定角で散乱した光の強度自己相関関数から得られた。相関関数は、2キュムラント展開(two-cumulant expansion)を用いて解析した。各測定は、29.7V/cmの電界下で行った[Gobbi M等、Biomaterials 2010年、31:6519~29頁]。
【0031】
好ましい一実施形態では、リポソームを伴わないアミロイドタンパク質の凝集と比べて、リポソームが、アミロイドタンパク質の凝集を低下させ、及び/又はアミロイドタンパク質の脱凝集を上昇させる。
【0032】
好ましくは、アミロイドタンパク質が、トランスサイレチン、β2マイクログロブリン、アミロイド軽鎖、血清アミロイドAタンパク質、膵島アミロイドペプチド、ゲルゾリン、システインC、ApoA1、フィブリノーゲンアルファ鎖、LYZ(リゾチーム、ムラミダーゼ又はN-アセチルムラミドグリカンヒドロラーゼとしても知られる)、OSMR(オンコスタチン-M特異的受容体サブユニットベータ、オンコスタチンM受容体としても知られる)、内在性膜タンパク質2B(ITM2B又はBRI2)、プロラクチン、LECT2タンパク質、ケラトエピセリン(トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導68kDa、TGFBIとしても知られる(当初はBIGH3、BIG-H3と呼ばれた))、カルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子及びプリオンタンパク質からなる群から選択される。
【0033】
好ましい一実施形態では、アミロイドーシスが、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、透析アミロイドーシス、好ましくはリウマチ性関節炎及び/又はアテローム性動脈硬化症を伴う反応性アミロイドーシス、脳アミロイドアンギオパチー、プリオン病、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(ヒト)、BSE又は「狂牛病」(ウシ)及びスクレイピー、フィンランド型アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシス、プロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、心房の老人性アミロイド、甲状腺LECT2アミロイドーシスの髄様癌、2型糖尿病、1型及び2型糖尿病患者の末期腎不全、並びに糖尿病性腎症からなる群から選択される。
【0034】
本発明は更に、アミロイドーシスの治療及び/又は予防に用いる、前記の請求項のいずれか一項に記載のリポソームを含む製剤を提供し、ここで、該アミロイドーシスが、アルツハイマー病ではなく、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、透析アミロイドーシス、好ましくはリウマチ性関節炎及び/又はアテローム性動脈硬化症を伴う反応性アミロイドーシス、脳アミロイドアンギオパチー、プリオン病、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(ヒト)、BSE又は「狂牛病」(ウシ)及びスクレイピー、フィンランド型アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシス、プロラクチノーマ、家族性角膜アミロイドーシス、心房の老人性アミロイド、甲状腺LECT2アミロイドーシスの髄様癌、2型糖尿病、1型及び2型糖尿病患者の末期腎不全、並びに糖尿病性腎症からなる群から選択される。
【0035】
好ましくは、本発明のリポソームを、当業者には公知の、アミロイドーシスの既存の治療又は治療介入、例えば、化学療法剤(例えば高用量メルファラン)、幹細胞移植、ステロイド、エプロジセート、肝移植、パチシラン、及び参照により組み込まれている、例えばWechalekar AD Lancet、2016年6月25日;387(10038):2641~2654頁、doi:10.1016/S0140-6736(15)01274-X;Ankarcrona M J Intern Med、2016年8月;280(2):177~202頁、doi:10.1111/joim.12506;Nuvolone M Expert Opin Ther Targets、2017年12月;21(12):1095~1110頁に記載されるものと組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明では、アミロイドーシスが、アルツハイマー病以外のすべてのアミロイドーシスを含む。
【0037】
アミロイドーシスは、アミロイド線維として知られる異常タンパク質が組織中で蓄積する疾患群である。症状は、その種類に依存し、頻繁には様々である。その症状は、下痢、体重減少、疲労感、舌肥大、出血、しびれ、立ちくらみ(feeling faint with standing)、脚のむくみ、又は脾臓肥大を含み得る。
【0038】
アミロイドーシスの症状は幅広く、アミロイド蓄積の部位による。腎臓及び心臓が、関与する最も一般的な器官である。
【0039】
腎臓でのアミロイド沈着は、タンパク質をろ過及び捕捉する、腎臓の能力の低下に起因するネフローゼ症候群を引き起こし得る。該ネフローゼ症候群は、腎損傷の2つの生化学的マーカであるクレアチニン及び血中尿素の濃度の上昇と共に又は上昇を伴わずに起こる。AAアミロイドーシスでは、患者の91~96%において腎臓が関与しており、症状は、尿中のタンパク質からネフローゼ症候群及びまれには慢性腎疾患にまで至る。
【0040】
心臓でのアミロイド沈着は、拡張不全及び収縮不全の両方を引き起こし得る。心電図の変化があり得て、低電位及び伝導障害、例えば、房室ブロック又は洞結節機能不全を示す。心エコー検査中、心臓は、正常収縮機能から軽度に低下した収縮機能までを有する拘束型充満波形(restrictive filling pattern)を示す。AAアミロイドーシスは、通常は心臓に危害を与えない。
【0041】
アミロイドーシスの人は、感覚性ニューロパチー及び自律神経性ニューロパチーを発現し得る。感覚性ニューロパチーは、対称的なパターンで発現し、遠位から近位へと進行する。自律神経性ニューロパチーは、起立性低血圧として現れ得るが、非特異的消化器症状、例えば、便秘、吐き気又は早期満腹感と共に徐々に顕在化する場合もある。
【0042】
肝臓でのアミロイドタンパク質の蓄積は、肝損傷の2つのバイオマーカである、血清のアミノトランスフェラーゼ及びアルカリホスファターゼの上昇をもたらし得て、それは、約3分の1の人で認められる。肝肥大が一般的である。それに対して、脾臓肥大はまれであり、5%の人で起こる。血液塗抹標本上でのハウエル・ジョリー小体の存在を引き起こす脾機能不全は、アミロイドーシスの人の24%において起こる。吸収不良はALアミロイドーシスの8.5%、及びAAアミロイドーシスの2.4%において認められる。観察された吸収不良に関して提案された一機構は、腸絨毛(食物の吸収に利用可能な腸面積を増大させる指状の突起部)の先端でのアミロイド沈着が、絨毛の機能性を蝕み始め、スプルー様画像を示すことである。
【0043】
まれな展開は、アミロイド紫斑病であり、「メガネ血腫」と呼ばれる目の周りの紫斑を伴う出血しやすい体質で、血管中でのアミロイド沈着、並びにアミロイドに結合するとその機能を失う2つの凝固タンパク質、トロンビン及び第X因子の活性の低下により引き起こされる。
【0044】
組織中でのアミロイド沈着は、構造の肥大を引き起こし得る。ALアミロイドーシスの人の20%は、肥大した舌を有し、閉塞性睡眠時無呼吸、嚥下困難及び味覚異常をもたらし得る。舌肥大は、ATTR又はAAアミロイドーシスでは生じない。肩の肥大「ショルダーパッドサイン」は、滑膜腔でのアミロイド沈着に起因する。咽喉でのアミロイドの沈着は、嗄声を引き起こし得る。Aβ2MGアミロイドーシス(血液透析アミロイドーシス)は、滑膜組織中で沈着しやすく、滑膜組織の慢性炎症を引き起こし、手根管症候群を繰り返しもたらし得る。
【0045】
甲状腺及び副腎の両方とも浸潤し得る。アミロイドーシスを有する個体の10~20%が甲状腺機能低下症を有すると推定される。副腎の浸潤は、その、起立性低血圧及び低血中ナトリウム濃度の症状が、自律神経性ニューロパチー及び心不全に起因し得ることを考えると、認識することがより困難であり得る。
【0046】
アミロイド沈着は、糖尿病患者の膵臓において生じる。膵アミロイドの主要成分は、膵島アミロイドポリペプチド又はアミリンとして知られる37アミノ酸残基のペプチドである。そのペプチドは、B細胞内の分泌顆粒中にインスリンと共に貯蔵され、インスリンと共分泌される(Rang and Dale's Pharmacology、2015年)。
【0047】
まれに、アミロイドの集積物が、質量効果(mass effect)を引き起こし得る、アミロイドの巨視的塊(macroscopic lump)であるアミロイドーマと分類されるに十分な大きさに成長し得る。
【0048】
約30種の異なるアミロイドーシスが存在し、その各々は、特異的なタンパク質ミスフォールディングに起因する。遺伝性のものもあれば、後天性のものもある。アミロイドーシスは、限局型及び全身型に分類される。全身性疾患の4つの最も一般的な型は、軽鎖(AL)、炎症(AA)、透析(Aβ2M)、並びに遺伝性及び老齢(ATTR)である。
【0049】
より一般的な型のアミロイドの簡単な説明:
【0050】
【表1A】
【0051】
【表1B】
【0052】
2010年の時点で、8つの封入体に加えて、27個のヒト線維タンパク質及び9個の動物線維タンパク質が分類された。
【0053】
古くからの臨床分類法は、アミロイドーシスを全身性又は限局性と呼ぶ。
【0054】
全身性アミロイドーシスは、2つ以上の体器官又は体系に影響を及ぼす。その例は、AL、AA及びAβ2mである。
【0055】
限局性アミロイドーシスは、唯一の体器官又は体系に影響を及ぼす。その例は、Aβ、IAPP、心房性ナトリウム利尿因子(限局性心房性アミロイドーシスにおいて)、及びカルシトニン(甲状腺の髄様癌において)。
【0056】
別の分類は、原発性又は続発性である。原発性アミロイドーシスは、免疫細胞機能障害を伴う疾患、例えば、多発性骨髄腫又は別の免疫細胞悪液質から生じる。続発性(反応性)アミロイドーシスは、他の慢性の炎症性疾患又は組織破壊性疾患の合併症として生じる。その例は、反応性全身性アミロイドーシス及び続発性皮膚アミロイドーシスである。
【0057】
更に、アミロイドが沈着する組織に基づいて、間葉(中胚葉由来の器官)又は実質(外胚葉若しくは内胚葉由来の器官)に区分される。
【0058】
前記のリポソームは、本明細書で示されるように、in vivoアミロイド沈着に対してそれ自体完全に効果的である。選択肢として、前記のリポソームはその上、更なる活性剤を含み得て、企図される治療に有用でもあり得る。そのような場合、本発明のリポソームは、薬物及び薬物担体の二重機能を果たす。
【0059】
本発明の更なる主題は、1つ又は複数の薬学上許容される賦形剤、及び場合により更なる活性剤と共に前記のリポソームを含む医薬組成物である。賦形剤の種類及び量は、選択される剤形の機能に関して選択される。適切な剤形は、液体系、例えば、溶液、注入液、懸濁液;半固体系、例えば、コロイド、ゲル、ペースト又はクリーム;固体系、例えば、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、ペレット、マイクロ顆粒、ミニ錠、マイクロカプセル、マイクロペレット、座薬等々である。前記の系の各々は、当該分野では公知である技術を使用して、正常放出性、遅延放出性又は加速放出性(accelerated release)用に適切に製剤化され得る。
【0060】
リポソームは、特に、in vivoでのアミロイドの沈着又は凝集の阻害(即ち、予防、低下又は除去;除去が好ましい)において有効である。この活性は、前記の疾患を患う患者、又は前記の疾患を発現する恐れがある患者において有用である。
【0061】
従って、本発明は、前記の疾患を患う患者、又は前記の疾患を発現する恐れがある患者において、in vivoでのアミロイドタンパク質の沈着又は凝集の阻害を目的とする、前記のリポソーム又は医薬組成物の投与を特徴とする治療方法及び医学的利用を含む。
【0062】
本発明は更に、ApoE又はその誘導体を、ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピンを含有するリポソーム中に含むこと、それらの成分が、線維及びプラークへのアミロイドペプチドの凝集の阻害において相乗的に協力し、且つ既存の凝集体の脱凝集を刺激するという予期されなかった発見からの利点を利用することを特徴とする、アミロイドタンパク質沈着の低下の増強を提供するin vitro法を含む。前記の治療は、前記のリポソーム/医薬組成物を、必要とする患者に、適切な用量単位(dose unit)で任意の適切な投与経路を介して送達する工程により行い得る。適切な用量単位は、平均70kgの患者に対して全脂質1~15mmoleに含まれる。医薬品の全身分布を可能にするあらゆる投与経路(経腸、非経口)が考えられる。可能な投与経路の例は、経口、静脈内、筋肉内、吸入、気管内、腹腔内、バッカル、舌下、点鼻、皮下、経皮、経粘膜である。本発明では、中枢神経系(即ち、血液脳関門を越えて位置する領域)への直接的な投与経路は、本リポソームに関しては全く必要ない。なぜなら、本リポソームは有利には、単純な全身投与を介して、CNS中で有効であるからである。治療の観点からすると、本リポソームでの治療が、全身投与を介して、中程度の用量で副作用を免れた低毒性活性剤を用いて、アミロイドプラークの大幅なin vivo低減を得させることが主として重要である。従って、行うのが簡単で、安価な調製工程を含み、アミロイドタンパク質沈着の形成に従属する疾患の治療及び予防に有用である、長い間待望されていたin vivoで効果的な治療が提供される。
【0063】
本発明を、以下の図面と関連する非限定的な例を用いて例証する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、様々なタンパク質:Amyposome比でのAβ40のin vitro凝集の阻害を示す。(A)ThT蛍光の経時変化。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図2】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、様々なタンパク質:Amyposome比でのAβ40線維のin vitro脱凝集の誘導を示す。(A)ThT蛍光の経時変化。(B)AFM雲母表面上に播種してAFMにより撮像した10μlの25μMアミロイドβ40線維。(C)AFM雲母表面上に播種して、Amyposomeと1:50(M:M)の比率で3日間インキュベートし、AFMにより撮像した10μlの25μMアミロイドβ40線維。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図3】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、様々なタンパク質:Amyposome比でのTTRのin vitro凝集の阻害を示す。(A)ThT蛍光の経時変化。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図4】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、様々なタンパク質:Amyposome比でのTTR線維のin vitro脱凝集の誘導を示す。(A)ThT蛍光の経時変化。(B)雲母表面上に播種してAFMにより撮像した10μLの40μM TTR線維。(C)AFM雲母表面上に播種して、Amyposomeと1:50(M:M)の比率で3日間インキュベートし、AFMにより撮像した10μLの40μM TTR線維。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図5】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、様々なタンパク質:Amyposome比でのin vitro β2マイクログロブリン凝集の阻害を示す。(A)D76Nバリアントに対するThT蛍光の経時変化。(B)ΔN6バリアントに対するThT蛍光の経時変化。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図6】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、様々なタンパク質:Amyposome比でのβ2マイクログロブリン線維のin vitro脱凝集の誘導を示す。(A)D76Nバリアントに対するThT蛍光の経時変化。(B)ΔN6バリアントに対するThT蛍光の経時変化。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図7】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、様々なタンパク質:Amyposome比でのSAA(1~76)線維のin vitro凝集の阻害を示す。(A)ThT蛍光の経時変化。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図8】チオフラビンT蛍光分光法により調査した、1:50のタンパク質:Amyposome比でのSAA(1~76)線維のin vitro脱凝集の誘導を示す。(A)ThT蛍光の経時変化。a.u.=蛍光強度の任意単位。
図9】ここではナノリポソーム(NL)と示されるAmyposomeの、タンパク質凝集体に対する特異的結合を示すSPRセンサグラムである。特異的結合は、空表面で測定した非特異的結合及びPBS単独で観察されたバルク効果を差し引くことにより、未処理センサグラムから得られた。この二重正規化後には、本明細書で比較タンパク質として使用したウシ血清アルブミン(BSA)でコートした表面上では特異的結合が検出できなかったのに対して、別のタンパク質の凝集体上では、測定可能且つ濃度依存性の結合シグナルが観察されたことに留意。NLは、t=0からt=180sまでの3分間注入した(垂直点線により示す)。次いで、解離相を評価するために、泳動用緩衝液(PBST)を、t=180sから流した。NLの濃度は、露出したPA(ホスファチジン酸)のμMとして示す。
図10】脳アミロイドアンギオパチーTg-SwDIマウスの脳内での血管Aβに対するAmyposome処理の効果を示す。処理の終了時に、マウスを殺処分し、脳を、Aβ可視化用のウサギ抗Aβ抗体で免疫染色した。PBSで処理した対照マウス(パネルA、C、E)及びAmyposomeで処理したマウスの代表的な脳切片。スケールバー=100μm(A、B、C、D)、20μm(E、F)。
【発明を実施するための形態】
【0065】
材料及び方法
以下の試薬は、Sigma-Aldrich社から購入した。アミロイド用の染料として使用したチオフラビンT(ThT、コードT3516-25G)、Sigma社グレードのコレステロール(Chol、コードC8667-5G)、脳スフィンゴミエリン(SM、コード860062P)、ジミリストイルホスファチジン酸(PA、コード830845P)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール-マレイミド(DSPE-PEG-MAL、コード880126P)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP、コード105228)、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF、コード10837091001)。他のすべての一般的な試薬、カラムの樹脂、溶媒、電気泳動用の試薬、及び合成酵素(synthese)も同じく、Sigma-Aldrich社から購入した。
【0066】
ペプチドCWGLRKLRKRLLR-NH2(mApoE、コード822594、配列番号1)は、KareBay Biochem社(NJ、米国)から購入した。質量分析グレードのトリプシンゴールドは、Promega社から購入した(コードV5280)。
【0067】
タンパク質
ヒトベータアミロイド(1~40):
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV(Aβ40、コードAS-24236、配列番号2)は、AnaSpect Inc.社から購入した。
【0068】
組換えTTRバリアントTTR_S52P:
MKHHHHH HPMSDYDIPT TENLYFE GAM GPTGTGESKC PLMVKVLDAV RGSPAINVAV HVFRKAADDT WEPFASGKTS EPGELHGLTT EEEFVEGIYK VEIDTKSYWK ALGISPFHEH
AEVVFTANDS GPRRYTIAAL LSPYSYSTTA VVTNPKE(配列番号3)
は、以前に記載されたように発現させ、精製した[Verona G.等、2017年、Sci. Rep. 7、182~187頁]。
【0069】
組換えβ2mバリアント:
β2m_D76N
MIQRTPKIQVYSRHPAENGKSNFLNCYVSGFHPSDIEVDLLKNGERIEKVEHSDLSFSKDWSFYLLYYTEFTPTEKNEYACRVNHVTLSQPKIVKWDRDM(配列番号4)及び
β2m_ΔN6
MIQVYSRHPAENGKSNFLNCYVSGFHPSDIEVDLLKNGERIEKVEH SDLSFSKDWSFYLLYYTEFTPTEKDEYACRVNHVTLS
QPKIVKWDRDM(配列番号5)
は、以前に記載されたように発現させ、精製した[Valleix S.等、Engl. J. Med.、2012年、366、2276~2283頁;Verdone G.等、Protein Sci. 2002年、11、487~499頁;Esposito G.等、Protein Sci. 2000年、9:831~45頁]。
【0070】
血清アミロイドAの切断型アミロイド形成、SAA(1~76):
RSFFSFLGEA FDGARDMWRA YSDMREANYI GSDKYFHARG NYDAAKRGPG GAWAAEAISDARENIQRFFG HGAEDS(配列番号6)は、以下のように、合成により得られた。
【0071】
簡単に言うと、3つのペプチド:
ペプチド1 H-RSFFSFLGEAFDG-NHNH2(断片1~13)(配列番号7)
ペプチド2 H-CRDMWRAYSDMREANYIGSDKYFHARGNYDA-NHNH2(断片14~44)(配列番号8)
ペプチド3 H-CKRGPG GAWAAEAISDARENIQRFFGHGAEDS-NH2(断片45~76)(配列番号9)
を、標準的なFmoc-SPPSにより合成した。各ペプチドを精製してから、完全タンパク質SAA(1~76)を得るために、ペプチドのヒドラジドベースネイティブ化学ライゲーション法を介して、3つの断片を順序どおりアセンブルした[Zheng, J.S等、Nature Protocol 2013年、8、2483~2495頁]。タンパク質配列中にシステイン残基が存在しないため、本発明者らは、2つのアラニン(14位及び45位)をCysで置換し、タンパク質の完全アセンブリ後に、Cys残基を脱硫化してAlaを復元した[Wan, Q.、Danishefsky, S. J. Angew. Chem. Int. Ed. 2007年、46、9248~9252頁]。
【0072】
ペプチドのアセンブリは、Biotage Syro IIペプチドシンセサイザを用いて行った[Sheppard, R.等、J. Pept. Sci. 2003年、9、545]。ペプチドの合成用のFmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)-アミノ酸は、Iris-Biotech社から入手した。他のすべての保護アミノ酸及びペプチド合成用試薬は、Sigma-Aldrich社から供給された。粗ペプチドは、Isolera Prime(Biotage社)装置を用いたRPフラッシュクロマトグラフィー又は分取RP-HPLCにより精製した。精製画分は、Agilent 6130 MSを搭載したAgilent 1200を用いて、HPLC-MSにより特徴づけた。
【0073】
クロマトグラフィー技術により3つのペプチドを精製したら、ペプチドヒドラジド1を、NaNO2酸化、並びにペプチド2及び4-メルカプトフェニル酢酸(MPPA)の存在下でのチオ開裂により、チオエステルに変換した。ライゲーションが完了した後、生成物を精製し、完全タンパク質SAA(1~76)を得るために、断片(1~44)及びペプチド3を含むライゲーション反応を繰り返した。Vydac C18カラム(10x250mm、10、300Å)を用いた分取HPLCにより、流速3.7mL/分、30分にわたる25~55%Bの勾配溶出で生成物を精製した。生成物の純度及び正しい組成は、HPLC-MS分析により確証した。
【0074】
Amyposome(登録商標)の調製及び特徴づけ
Amyposome(登録商標)(PA及びmApoEペプチドにより機能化された(外面に共有結合)、スフィンゴミエリン/コレステロールで構成されるリポソーム))は、記載されたように合成した[Balducci C.等、J.Neurosci. 2014年、34:14022~31頁、Bana等、Nanomedecine 2013年、doi:10.1016/j.nano.2013.12.001]。
【0075】
簡単に言うと、スフィンゴミエリンとコレステロールとを(1:1モル比)、クロロホルム/メタノール(2:1、v/v)中の2.5モル%のmal-PEG-PE(DSPE-malとも呼ばれる、Sigma Aldrich社、880126P-25MG)及び5モル%のホスファチジン酸(PA、Sigma Aldrich社、830845P)と混合し、窒素の緩流下に乾燥させてから、真空ポンプで3時間、微量の有機溶媒を除去した。得られる脂質フィルムを、150mM NaClを含有するリン酸緩衝液、pH7.4(PBS)中で再水和し、ボルテックスしてから、押出機を用いて、55℃で10回、20barの窒素圧下、2つのポリカーボネートフィルタ(細孔直径100nm)を通して押出した。サイズ排除クロマトグラフィーにより、PD-10カラム及び溶離液としてのPBSを使用して、可能な非取込み材料からリポソームを分離した。
【0076】
mApoEペプチドは、リポソームの外葉に存在する、mal-PEG-PEの部分とのみ反応するため、1.2:1のモル比の最終ペプチド:mal-PEG-PE(又はDSPE-PEG-MAL)が得られるように、mApoEペプチドをPBS中のリポソームに加えて、一晩室温でインキュベートして、mal-PEG-PE(又はDSPE-PEG-MAL)とチオエーテル結合を形成させた(全部の50~60%)。
【0077】
スフィンゴミエリン/コレステロールで構成され、PAで機能化され、ペプチドmApoEが共有結合したリポソーム(Amyposome(登録商標))を、PD-10カラムを使用して、未結合ペプチドから分離した。リポソームに対するペプチドのカップリングの収率は、インキュベーション混合物のトリプトファン蛍光強度(λex=280nm)、及びPD-10カラムから回収されたAmyposome(登録商標)のトリプトファン蛍光強度(λex=280nm)の測定により評価した。スペクトルは、Cary Eclipse分光蛍光光度計(Varian社)を使用して、300~450nmの間で記録した。リポソームに結合したペプチドの量は、基準としての、PBSに溶解した既知量のペプチドのトリプトファン(ペプチド中に存在する)蛍光強度から計算した。脂質回収は、Stewartアッセイにより測定した[Stewart J.C.、Anal. Biochem. 1980年、104、10~14頁]。
【0078】
好ましいリポソームは、以下の組成
46.25mol%のコレステロール
46.25mol%のスフィンゴミエリン
1.25~1.5mol%のmApoE結合mal-PEG-PE
1.25~1.0mol%のフリーmal-PEG-PE
5mol%のホスファチジン酸
を有し、ここで、フリーmal-PEG-PEの%とmApoE結合mal-PEG-PEの%との合計は2.5%である。
【0079】
更に好ましいリポソームは、以下の組成:
46.25mol%のコレステロール
46.25mol%のスフィンゴミエリン
2.5mol%のmal-PEG-PE
5mol%のホスファチジン酸
を有する。
【0080】
これらのリポソームは、表面が1.25mol%のmAPOEで機能化されている。
【0081】
リポソームサイズ、多分散指数(PDI)及びζ電位は、以前に記載されたように特徴づけた[Gobbi M等、Biomaterials 2010年;31:6519~29頁]。
【0082】
PA及びmApoEを含まないリポソーム(プレーン)を対照として使用した。
【0083】
凝集/脱凝集アッセイ
Amyposomeによる、タンパク質凝集の阻害又は前もって形成した凝集体の不安定化は、本質的には、記載されたように[Bana L.等、Nanomedicine. 2013年、10:1583~90頁]、βシート構造を含有するアミロイドを同定するチオフラビンT(ThT)蛍光アッセイを使用してモニターした。Wallac 1420 Victor2分光蛍光光度計(Perkin Elmer社)を用いて、蛍光(λecc=450nm;λem=480nm)を測定した。データは、Amyposome単独の蛍光から差し引いた。
【0084】
ThTは、水中では弱蛍光プローブであるが、凝集アミロイドタンパク質分子のスタックしたβシート中にインターカレートすると、その蛍光が増加する。従って、あるタンパク質の存在下での時間経過におけるThT蛍光の増加は、タンパク質凝集の程度の高まりに関するパラメータとして利用できる。
【0085】
他方で、凝集体内に捕捉されたThT分子が、脱凝集の結果として水中に放出されると蛍光が減少する。従って、蛍光の経時的な減少は、凝集の低下(又は「脱凝集の上昇」)に関するパラメータとして利用できる。
【0086】
タンパク質凝集に対するAmyposomeの可能な阻害効果をモニターするために、タンパク質の非凝集型を、10μMのThT及び様々な量のAmyposome(登録商標)と共に、Costar 96ウェル黒色プレートに直接に添加した。蛍光の変化は、その間、連続的にWallac 1420 Victor2分光蛍光光度計(Perkin Elmer社)を用いてモニターした。その代わりに、蛍光を連続的に追跡せずに、タンパク質の非凝集型を、様々な量のAmyposome(登録商標)と共に添加し、異なるインキュベーション時間において、試料の一定分量を採取し、10μMのThTを加えて、前記のように蛍光を測定した。
【0087】
タンパク質凝集体に対するAmyposomeの可能な不安定化効果を監視するために、タンパク質のプレ凝集型を、10μMのThT及び異なる量のAmyposome(登録商標)と共に添加して、蛍光の経時変化を前記のように追跡した。
【0088】
原子間力顕微鏡検査
材料及び方法において記載したように得られた一定分量10μlのアミロイド線維を、劈開したての雲母上に10分間接着させた。試料を、Milli-Q水200μLで3回洗浄して一晩風乾させた。AFMは、硬質シリコンカンチレバーを使用して、空中でのタッピングモードで行った(RTESP-Veeco、共振周波数は約300kHz、ばね定数は約40N/m)。AFM画像は、Nanowizard II(JPK Instruments社、ベルリン、ドイツ)を用いて、1Hzの走査速度で獲得した。0.5~1.0Hzの速度で試料を走査して画像を獲得し、各画像において512x512画素を収集し、JPKソフトウェアを使用して解析した。試料は、その均質性を確証するために網羅的に調べた。
【0089】
Aβ40用の凝集-脱凝集プロトコル
脱凝集型(disaggregated)Aβ40の調製。
凍結乾燥ペプチドは、密封ガラスバイアル中、-80℃で保管した。バイアルを開封する際に凝縮しないように、再懸濁前に各バイアルを室温へと30分間平衡化させた。テフロン(登録商標)プランジャ付きガラス製ガスタイトハミルトンシリンジを使用して、ペプチドの各バイアルを、100% HFIP中で1mMへと希釈し、RTで30分間、撹拌しながらインキュベートした。ドラフトチャンバ中でHFIPを蒸発させ、得られる透明ペプチドフィルムを、SpeedVac(Savant Instruments社)中の真空(6.7mtorr)下に乾燥させ、-20℃で乾燥保管した。タンパク質濃度が5mMの脱凝集型Aβ40溶液を得るために、DMSOを添加してペプチドフィルムを可溶化した。次いで、タンパク質凝集に対するAmyposome(登録商標)の効果を、ThTアッセイにより調査した。
【0090】
凝集型Aβ40の調製。
DMSO中の5mM Aβ40をPBSで25μMに希釈し、直ちに30秒間ボルテックスして37℃で7日間インキュベートすることにより、線維を調製した。
【0091】
次いで、タンパク質線維状凝集体に対するAmyposome(登録商標)の効果を、ThTアッセイにより調査した(前記の方法に記載したとおり)。
【0092】
TTR_S52P用の凝集-脱凝集プロトコル
加水分解的にタンパク質のアミロイド形成型を生成するために、組換えS52P_TTRを、PBS(150mM NaCl、pH7.4)200μl中の35μMの濃度で、1:50(w/w)の酵素:基質比でのトリプシンの存在下、Coster 96ウェル黒色プレート中、37℃でインキュベートした。タンパク質凝集に対するAmyposomeの作用をモニターする目的で、6時間のインキュベーション後に、トリプシン酵素活性を阻害するために1.5mMのPMSFを添加した。この条件下にタンパク質のアミロイド形成型が生成されるが、線維へのその凝集はまだ起こっていなかった。その後、Amyposomeを添加し、前記のように行われるThT蛍光アッセイにより、線維化プロセスを追跡した。
【0093】
脱凝集に対するAmyposomeの作用をモニターするために、S52P_TTRを、1:50(w/w)の酵素:基質比でのトリプシンの存在下にインキュベートして、タンパク質のアミロイド形成型を加水分解的に生成させた。24時間のインキュベーション後、線維形成がすでに起こった時点で、トリプシン酵素活性を阻害するために、1.5mMのPMSFを添加した。その後、Amyposomeを添加し、前記のように行われるThT蛍光アッセイにより、脱凝集プロセスを追跡した。
【0094】
β2マイクログロブリン(D76Nバリアント及びΔN6バリアント)用の凝集-脱凝集プロトコル
Amyposomeによるβ2マイクログロブリン凝集の阻害は、PBS 200μl中の40μM組換えβ2マイクログロブリンを、様々な量のAmyposomeの存在下に37℃でインキュベーションするThTアッセイにより調査した。
【0095】
タンパク質脱凝集に対するAmyposomeの効果をモニターするために、PBS中の40μM組換えβ2マイクログロブリンを、前もって絶えず撹拌しながら37℃でインキュベートして線維形成させた。24時間のインキュベーション後に、様々な量のAmyposomeの存在下にThT脱凝集アッセイを行った。
【0096】
統計解析
ThTアッセイのデータは、すべての試薬を含有するがアミロイドタンパク質を欠く標準試料のThTシグナルに対して正規化した。
【実施例
【0097】
(実施例1):Amyposome(登録商標)の特徴づけ
この実験で使用したAmyposomeのサイズは157±22.1nmであり、0.072の多分散指数(PDI)を有した(三つ組で測定した15の様々なバッチの平均値)。
【0098】
(実施例2):Aβ40用の凝集-脱凝集プロトコル
ThT蛍光の値から推論されるように、脱凝集型Abeta40をPBS中でインキュベートするとすぐに凝集が開始し、48時間後に最大値に達して、その後一定に保たれた。
【0099】
様々なタンパク質:Amyposome比でのAmyposomeの存在下に二相挙動が観察され、つまり、凝集の上昇が認められた初期段階(24時間)後に、凝集は経時的に絶えず低下し、1:50比の場合、4日後にはほぼ脱凝集型Abeta40のみが存在した。この結果を図1A及び図1Bで報告する。
【0100】
Aβ40の脱凝集に対するAmyposomeの作用を、前もって凝集させたAβ40の調製を用いて評価した。この結果を図2A及び図2Bで報告する。ペプチドの凝集型は、Amyposomeの不在下に少なくとも7日間安定であった。異なるタンパク質:Amyposome比でのAmyposomeの存在下に、プレーンリポソーム以外では、見たところ双曲型推移に従って線維が脱凝集した。Amyposomeの濃度を高めると脱凝集が上昇した。ペプチド:Amyposome比が1:50の場合、5日後には凝集体のわずか10%の残余が存在した。しかしながら、24時間後にすでに、凝集体の40%の残余が明らかであった。
【0101】
AFM画像(図2B)は、枝分かれしていない、若干湾曲した細長い線維鎖を示した。そのような細長い線維は、6nmの見かけの高さを示す。Amyposomeとの3時間のインキュベーション後、AFM観察は、線維の溶解に典型的である、線維断片によって構成される無秩序な小凝集体を示す(図2C)。
【0102】
これらの結果は、CAAの治療及び/又は予防用の本発明のリポソームの治療効果を裏付けるものである。
(実施例3):TTR_S52Pの凝集-脱凝集
TTRの凝集は、天然タンパク質からのペプチド断片の切断を触媒するトリプシンの添加によって誘発された[Mangione P.P.等、J. Biol Chem. 2018年、293、14192]。5時間後のトリプシン阻害剤の添加(続くAmyposomeの添加にあたりmApoEの起こり得る加水分解を防ぐために行った)は、凝集に影響を及ぼさず、凝集は、5時間後に開始し、7時間後に最大値に達し、その後一定に保たれた。
【0103】
Amyposomeは、凝集に対するその作用を調査するために、トリプシン阻害剤の直後にタンパク質に添加し、そのAmyposomeの存在下に凝集の低下を観察した。低下は、Amyposome量が多いと程度が高く、1:50のTTR:Amyposome比では、凝集が、Amyposomeの不在下でのタンパク質に対して40%であった。この結果を図3Aで報告する。
【0104】
TTRの脱凝集に対するAmyposomeの作用を、前もって凝集させたタンパク質の調製物を用いて評価した。凝集型のタンパク質は、少なくとも5時間安定であった。
【0105】
Amyposomeの存在下、線維は脱凝集した。Amyposomeの量が多いほど、タンパク質の脱凝集の程度が高く、TTR:Amyposomeの比率が1:50の場合、5時間後には凝集体のわずか5%の残余が観察された。この結果を図4で報告する。
【0106】
AFMにより撮像すると、TTR_S52Pは、短い線維の厚い層から出現する高さ4~7nmの、幾何学的秩序のある形態学的に典型的な成熟アミロイド線維を産生した(図4B)。Amyposomeとの3時間のインキュベーションの後、線維が大幅に低減し、線維の秩序及び幾何の変化を伴った(図4C)。これは、Amyposomeによって仲介される線維の溶解を実証する。
【0107】
これらの結果は、SSA及びFAPの治療及び/又は予防用の本発明のリポソームの治療効果を支援する。
【0108】
(実施例4):β2マイクログロブリンの凝集-脱凝集
タンパク質の2つのバリアント(D76N及びΔN6)を調査した。
【0109】
β2マイクログロブリンのアミロイド形成バリアントであるD76Nは、該疾患の家族型と関連し、進行性大腸機能障害、並びに脾臓、肝臓、心臓、唾液腺及び神経における広範囲のアミロイド沈着を特徴とする。ΔN6は、透析アミロイドーシスに冒された患者でのβ2-mアミロイド沈着の普遍的構成成分であり、全長β2-mの線維形成における種子として作用する能力ゆえ、該疾患の臨床歴への影響において重要な役割を有し得る。
【0110】
D76Nの凝集は二相挙動に従い、つまり、10時間のインキュベーション後に凝集が開始し、19時間までゆっくりと上昇した後に急上昇し、21時間において最大値に達した後、一定に保たれた。他方で、ΔN6バリアントのキネティクスは、はるかに速く、インキュベーションすると凝集は直ちに始まり、2時間のうちに最大値に達した後、一定に保たれた(図5)。
【0111】
Amyposomeは、凝集に対するその作用を調査するために、タンパク質とインキュベートし、凝集の低下を観察した。低下は、Amyposome量が増加すると著しくなり、1:50のD76N:Amyposome比では、最終的な凝集の程度が、タンパク質単独に対して36%であった。ΔN6の場合、1:50のタンパク質:Amyposome比では、凝集の程度が、タンパク質単独に対して20%であった。この結果を図5A及び図5Bで報告する。
【0112】
β2マイクログロブリンの脱凝集に対するAmyposomeの作用を、前もって凝集させたタンパク質の調製を用いて評価した。
【0113】
D76Nの場合、凝集型のタンパク質は、少なくとも3日間安定であった。Amyposomeの存在下、蛍光の低下が認められ、インキュベーションの24時間から始まり、72時間まで絶えず低下した。この効果は、1:2のタンパク質:Amyposome比では明らかではなく、1:10比では最小であり、1:30比及び1:50比ではより強力且つ同等であり、3日後にはわずか15%の残余凝集体をもたらした。
【0114】
ΔN6の場合、蛍光の低下は、Amyposomeの存在下でのインキュベーション直後に始まり、キネティクスははるかに速く、蛍光は2時間後に最小値に達した。その効果は、Amyposomeの量が増えると上昇した。1:50比では、50%の残余凝集体が存在した。この結果を図6A及び図6Bで報告する。
【0115】
これらの結果は、進行性大腸機能障害、並びに脾臓、肝臓、心臓、唾液腺及び神経における広範囲のアミロイド沈着を特徴とする家族型の透析アミロイドーシスと散発型の透析アミロイドーシスとを含むすべての透析アミロイドーシスを含む、β2マイクログロブリンの蓄積又は沈着と関連するすべての疾患の治療及び/又は予防用の本発明のリポソームの治療効果を裏付けるものである。
【0116】
(実施例5):SAA(1~76)の凝集-脱凝集
SAA凝集は、インキュベーション48時間後に開始した。タンパク質にAmyposomeを添加し、その存在下、最終的な凝集の程度の著しい低下が認められた。低下は、Amyposome量が増加すると著しくなり、1:50のTTR:Amyposome比では、脱凝集型のみが存在した。その結果を図7で報告する。
【0117】
SAA(1~76)の脱凝集に対するAmyposomeの作用を、前もって凝集させたタンパク質の調製を用いて評価した。
【0118】
1:50の比率でのAmyposomeの存在下、凝集の程度が低下し、72時間のインキュベーションの後には、凝集体の30%の残余が認められた。その結果を図8で報告する。
【0119】
これらの結果は、リウマチ性関節炎、アテローム性動脈硬化症を伴いさえする反応性アミロイドーシスの治療及び/若しくは予防、又は1型及び2型糖尿病患者の末期腎不全、並びに糖尿病性腎症の治療及び/若しくは予防用の本発明のリポソームの治療効果を裏付けるものである。
【0120】
(実施例6): 表面プラズモン共鳴(SPR)による、4つの異なるアミロイド形成タンパク質の凝集体に対するAmyposomeの結合の評価
4つの異なるアミロイド形成タンパク質:アミロイドβ 1~40(Aβ1~40)、トランスサイレチン(TTR)、及びβ2マイクログロブリン(β2M)の2つの変異型:β2MD76N及びβ2MΔN6の凝集体に対するAmyposomeの結合特性を、SPRにより評価した。
【0121】
方法
固定化したAβ1~42線維に対する流動リポソームの結合を実証するために以前に使用されたのと同じデザインに従って(Gobbi等、2010年、Biomaterials 31:6519頁)、Amyposomeを、Amyposome表面上に露出したPAの様々な濃度(1.56、3.125、6.25、12.5、25μM)において、タンパク質凝集体(30μg/mL、酢酸緩衝液中、pH4)でコートしたチップ表面上を流した。ウシ血清アルブミンを陰性対照として使用した。センサグラム(共鳴単位(RU)で表すSPRシグナルの経時変化、図9)は、基線値0に対して正規化した。タンパク質凝集体を固定化させた表面で観察されたシグナルは、示したとおり、標準表面で観察された非特異的反応を差し引くことで補正した。適切である場合、会合速度定数及び解離速度定数(kon及びkoff)並びに平衡解離定数(KD)を得るために、ProteOn解析ソフトウェアを使用してセンサグラムをフィットさせた。
【0122】
結果
Amyposomeは、検査した最高濃度においてさえも、BSA(即ち、比較タンパク質)上での「特異的」結合シグナルを有さない。推定した(前記を参照)平衡解離定数(KD)は、以下のとおり:
Aβ1~40線維では0.12μM、
2つのβ2M凝集体に関する平均値は1.75μM、
TTR凝集体では14.2μM。
【0123】
KD値のこれらの差異は、主に解離速度定数における差異に起因し、会合速度定数は、顕著には異ならなかった。
【0124】
本SPRデータ(図9)は、Amyposomeが、Aβ1~40、β2MΔN6、β2MD76N及びTTRの凝集体に、濃度依存性に結合することを示す。この結合は特異的である。なぜなら、固定化BSAでは観察されなかったからである。
【0125】
(実施例7):脳アミロイドアンギオパチー(CAA)動物モデルでの血管aβに対するamyposomeによる処理の効果
材料
一般的な試薬及び免疫組織染色用試薬はMerck社から入手した。ウサギAβ一次抗体(カタログ番号71-5800、INVITROGEN社)及び抗ウサギ二次抗体(BA-1000、VINCI-BIOCHEM社)は、Thermo Fisher Scientific社から入手した。脳アミロイドアンギオパチーマウスモデルは、Jackson Laboratories社(カタログ番号ストック:7027C57BL/6-Tg(Thy1-APPSwDutIowa)BWevn/Mmjax)から入手した。
【0126】
脳アミロイドアンギオパチーの研究に使用したマウスモデル:Tg-SwDIマウス。
Amyposomeの効果を評価するために使用したモデルは、トリプルトランスジェニックC57/6-Tg(Thy1 APPSwDutIowa)BWevn/Mmjaxヘミ接合型1,2(Tg-SwDIマウス)である。このマウスモデルは、主として、CAAを研究するために設計された(Jakel L. Animal Models of Cerebral Amyloid Angiopathy Clin. Sci. 2017年 131:2469頁)。
【0127】
これらのマウスは、スウェーデン型変異(K670N/M671L)、オランダ型変異(APP E693Q)、アイオワ型変異(APP D694N)を含有するヒトAPP770を、マウスThy1プロモータの制御下に発現する。
【0128】
このモデルでは、Aβの線維状微小血管蓄積が、約3か月齢から開始する。12か月齢では、脳微小血管系の50%がAβ沈着を有し、24か月齢では85~90%に増加する。Aβ42と比べて高レベルのAβ40が、単離脳微小血管において測定された。実質中でのAβの蓄積はびまん性である(Miao J. Am. J. Pathol. 2005年)。
【0129】
これらマウスの特徴は、ヒトの脳アミロイドアンギオパチーを反映する。実際、CAAによって冒されたヒトの脳は、ごく少数の実質アミロイドプラークを示す一方で、血管Aβ沈着は、主にAβ40を含む(Suzuki N等、1994年、High tissue content of soluble Abeta1-40 is linked to cerebral amyloid angiopathy Am. J. Pathol. 145:452;Herzig MC、Nat Neurosci. 2004年;7:954~60頁)。注目に値するのは、ADにおける実質老人斑が、主としてAβ1~42からなることである(Dickson,D.W.等、1988 Alzheimer's disease. A double-labeling immunohistochemical study of senile plaques. Am. J. Pathol. 132、86)。
【0130】
CAAマウスモデルTg-SwDIでの血管Aベータに対するAmyposome処理の効果の評価
SwDIマウス(n=10、6か月齢)を、3回の腹腔内注射/週(1日おきに1回の注射)で、3週間にわたり処理した。各注射は、2.6mgのAmyposome/PBS 100Lを含有した。同じ治療計画に従ってPBS(100L/注射)で処理したSwDIマウス(n=10、6か月齢)を、対照として使用した。マウスを殺処分し、脳は、組織学調査用にパラホルムアルデヒド(4%)で後固定した。
【0131】
ウサギ抗Aベータ抗体を使用して血管Aβ沈着を調べた。この目的のために、クリオスタット脳切片(30μm)を、一次抗体(ウサギ抗Aβ、1:200、カタログ番号71-5800、INVITROGEN社)と共に室温で1時間インキュベートした。ビオチン標識抗ウサギ二次抗体(1:200;室温で1時間、カタログ番号BA-1000、VINCI-BIOCHEM社)とインキュベーション後、アビジン-ビオチンキット(PK4000、Vector Laboratories社)及びジアミノベンジジン(D8001、Sigma社、イタリア)を使用して、免疫染色した。
【0132】
図10に示すように、分析された全対照マウス(PBSで処理)において、Aβの血管沈着が明らかであった。Aβの血管沈着の減少が、Amyposomeで処理した全マウスにおいて明らかであった。対照対Amyposome処理マウスの代表的画像を図10で報告する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2022543084000001.app
【国際調査報告】