(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】耐火性材料
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20220930BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220930BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B22/08 A
C04B14/42 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506597
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 CZ2020000032
(87)【国際公開番号】W WO2021023322
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522006650
【氏名又は名称】ファースト ポイント エー.エス.
【氏名又は名称原語表記】FIRST POINT A.S.
【住所又は居所原語表記】Brnenska 4404/65a, 69501 Hodonin (CZ)
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】チャンドヴァ,ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル,ペトル
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB02
4G112PA17
(57)【要約】
耐火性材料、特に水ガラスを含む耐火断熱材料はであって、34~49.9重量%の無機不燃性繊維と、50~65重量%のケイ酸塩水溶液と、0.1~1重量%の水ガラス安定剤とを含有するコンパウンドから構成され、一方、水ガラス硬化剤をさらに含有し、前記ケイ酸塩水溶液が1370~1400kg/m3の範囲の密度と、3.2~3.4の範囲のNa2Oに対するSiO2のモル比を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性材料、特に、34~49.9重量%の無機不燃性繊維と、50~65重量%のケイ酸塩水溶液と、0.1~1重量%の水ガラス安定剤とを含有し、水ガラス硬化剤をさらに含有し、前記ケイ酸塩水溶液が1370~1400kg/m
3の範囲の密度および3.2~3.4の範囲のNa
2Oに対するSiO
2のモル比を有するコンパウンドからなることを特徴とする水ガラスを含む耐火性断熱材料。
【請求項2】
前記無機不燃性繊維がガラス繊維であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性材料。
【請求項3】
前記無機不燃性繊維がバサルト繊維であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性材料。
【請求項4】
前記無機不燃物が6~12mmの長さを有することを特徴とする請求項1~3のうちの1項に記載の耐火性材料。
【請求項5】
前記ケイ酸塩水溶液がケイ酸ナトリウム水溶液であることを特徴とする、請求項1~4のうちの1項に記載の耐火性材料。
【請求項6】
前記水ガラス安定剤が親水性アルコキシアルキルアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1~5のうちの1項に記載の耐火性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火性断熱材料に関し、特に、水ガラスを含む耐火性断熱材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の技術から、多くのパネル状のクラッド材料が知られている。
【0003】
耐火性コーティングで処理された圧縮ミネラルウール製品が一般に使用されている。それらは断熱性、騒音及び火炎耐性の高い値を示すが、通常は非常にかさばり、その設置は困難な場合が多い。
【0004】
さらに、広範囲の耐火性パネルが知られており、これらは、充填剤として、発泡バーミキュライトまたはボールの形態のパーライトと、無機結合材とを含有する。それらは良好な断熱特性を有するが、十分な強度ではない。
【0005】
ポルトランドセメントまたはセメントと石灰とのコンパウンドを結合材として使用し、それに水和添加剤が添加されるセメント繊維パネルも知られており、充填剤は木材チップまたはミネラルウールである。欠点は、それらの重量が大きいこと、およびそれらが構造物または設備における充填剤として使用できないという事実である。
【0006】
さらに、酸化マグネシウムパネルも知られている。それらは、マグネシウム塩に加えて、充填剤としてガラス繊維および木材チップを含有する。それらの欠点は、その高い脆性およびより大きい重量、ならびに熱および火炎を反射する能力が低いことである。
【0007】
韓国特許文献KR101644957から、ガラスまたはバサルト繊維を含有するセメント繊維パネルが知られており、結合材はセメントおよびフェノール樹脂である。欠点は、パネルが耐火性、耐水性、さらに十分な可撓性もないことである。
【0008】
さらなる韓国特許文献KR101791409から、結合材が有機ポリマーである繊維状パネルが知られている。このパネルの欠点は、可燃性であることである。
【0009】
チェコ特許文献CZ PV 2015-37から、マトリックスを形成するジオポリマー結合材の固体成分および液体成分からなり、充填剤の機能を有する補強構造をさらに含む耐火性ジオポリマー複合体が知られている。ジオポリマー結合材の固体成分は、メタカオリンおよび/または粉砕された高炉造粒スラグを35~60重量%の量で含有する原料からなり、ジオポリマー結合材の液体成分は、35~45重量%の量のケイ酸ナトリウムの水溶液からなる。充填剤として作用する固体成分は、1~20重量%の量のバサルト繊維材料および/または再生炭素繊維材料および/またはチョップドガラス繊維からなり、耐火性ジオポリマー複合体の最後の成分は1~2重量%の量の純アルミニウム粉末またはアルミニウムペーストである。メタカオリンおよび/または粉砕された高炉造粒スラグを含有する原料は、フライアッシュと2:1の最大可能比で混合することができる。この複合材料の欠点は製造が複雑であり、耐熱性が限られていることである。そのため、耐火性を有する材料として使用することができない。
【0010】
今日使用されている耐火性材料は、主として不燃性の条件を満たしている。それらは、石灰、セメント、および伝統的な充填剤、すなわち、鉱物繊維、木材、および紙の標準的な材料を使用する。これらのほとんどは重量が大きく、これらの混合物は建設または工業設備のための充填剤として適していない。多くの場合、それらは十分に低い熱伝導率を有しておらず、それは吸収性によって、結果として材料中の水分の存在によって増加させることができる。別の弱点は、それらの低い材料強度または可撓性である。それらは非可燃性材料であるが、しばしば、燃焼する火炎および熱を直接反射することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許第KR101644957号公報
【特許文献2】韓国特許第KR101791409号公報
【特許文献3】チェコ共和国特許出願明細書第CZ PV 2015-37号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の現在の技術から、現在の技術の主な欠点は、既知の材料が限定的な耐火性を有することであることが明らかである。
【0013】
本発明の目的は高い耐火性を有すると同時に、環境にやさしく、様々な種類の用途に容易に使用することができる材料の構築である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の欠点は大幅に取り除かれ、本発明の目的は耐火性材料、特に、水ガラスを含む耐火性断熱材料によって達成され、本発明によれば、34~49.9重量%の無機不燃性繊維と、50~65重量%のケイ酸塩水溶液と、0.1~1重量%の水ガラス安定剤とを含有するコンパウンドから構成され、一方、水ガラス硬化剤をさらに含有し、前記ケイ酸塩水溶液が1370~1400kg/m3の範囲の濃度および3.2~3.4の範囲のNa2Oに対するSiO2のモル比を有することを特徴とする。この耐火材料の利点は、熱安定性が高く、耐火性が高く、また、環境に優しく、健康に害を与えないことである。耐火性材料が水ガラス硬化剤を含有することは、さらに有利であり、水ガラス硬化剤はグリセロールモノアセテート~トリアセテートまたはその化合物であってもよい。その利点は、硬化速度を最適化することが可能であることである。得られる材料が固化後に部分的に可撓性であることも利点である。
【0015】
第1の変形例によれば、無機不燃性繊維がガラス繊維であると有利である。有利には、ガラス繊維はアルカリジルコニウムシリケート繊維である。これらの繊維は可撓性であり、強く、柔軟であり、低い熱伝導率を有し、耐熱性であり、化学的に耐性があり、アルカリ、酸および有機溶媒に対して耐性があり、高い吸音係数を有する。それらは不燃性である。それらは環境に優しく、健康に害がない。
【0016】
第2の変形例によれば、無機不燃性繊維がバサルト繊維であると有利である。これらの繊維は非常に可撓性があり、非常に強く柔軟であり、低い熱伝導率を有し、耐熱性が高く、水、アルカリ、酸および有機溶媒に対して化学的に耐性があり、高い吸音係数を有する。それらは不燃性である。それらは環境に優しく、健康に害がない。
【0017】
無機不燃性繊維は、6~12mmの長さを有すると有利である。
【0018】
最も有利な変形例では、ケイ酸塩水溶液はケイ酸ナトリウム水溶液である。
【0019】
水ガラス安定剤が親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩であることは、さらに有利である。
【0020】
本発明の耐火材料の主な利点は、不燃性が高く、1000℃を超える高い耐熱性を有し、耐火性であることである。硬化後、それはガラスの形態を有するので、それは十分に硬く、強く、耐水性であり、同時に蒸気透過性である。同時に、それは衝撃および圧力に対して耐性がある。耐火材料は様々な用途に容易に使用でき、自由な形状にすることができ、軽量で寸法安定性がある。また、金庫やセキュリティドアなどの他のセキュリティシステムにも使用することができる。他の利点は、断熱パネルや建具など固形の製品を作ることも可能であり、耐火性材料は液状として塗布もできる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例1
【0022】
耐火性断熱材料は、41重量%の無機不燃性繊維と、58.5重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、0.5重量%の水ガラス安定剤とを含有するコンパウンドから構成される。
【0023】
無機不燃性繊維は、6~12mmの長さを有するアルカリジルコニウムシリケートガラス繊維である。
【0024】
耐火性材料は、純粋な水ガラスに対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの化合物である水ガラス硬化剤をさらに含有する。
【0025】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩である。
【0026】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1390kg/m3であり、Na2Oに対するSiO2のモル比は3.3である。
【0027】
得られたコンパウンドをパネルの形態のシリコーン型に注ぎ、静置して硬化させ、製品は耐火性断熱パネルである。
【0028】
実施例2
【0029】
耐火性断熱材料は、41重量%の無機不燃性繊維と、58.5重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、0.5重量%の水ガラス安定剤とを含有するコンパウンドから構成される。
【0030】
無機不燃性繊維は、6~12mmの長さを有するバサルト繊維である。
【0031】
耐火性材料は、純粋な水ガラスに対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの化合物である水ガラス硬化剤をさらに含有する。
【0032】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩である。
【0033】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1370kg/m3であり、Na2Oに対するSiO2のモル比は3.2である。
【0034】
得られたコンパウンドを金庫室扉のキャビティに注ぎ、静置して効果させ、製品は耐火性金庫室扉である。
【0035】
実施例3
【0036】
耐火性断熱材料は、34重量%の無機不燃性繊維と、65重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、1重量%の水ガラス安定剤とを含有するコンパウンドから構成される。
【0037】
無機不燃性繊維は、6~12mmの長さを有するアルカリジルコニウムシリケートガラス繊維である。
【0038】
耐火性材料は、純粋な水ガラスに対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの化合物である水ガラス硬化剤をさらに含有する。
【0039】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩である。
【0040】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1,400kg/m3であり、Na2Oに対するSiO2のモル比は3.4である。
【0041】
得られたコンパウンドをパネルの形態のシリコーン型に注ぎ、静置して硬化させ、製品は耐火性断熱パネルである。
【0042】
実施例4
【0043】
耐火性断熱材料は、34重量%の無機不燃性繊維と、65重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、1重量%の水ガラス安定剤とを含有するコンパウンドから構成される。
【0044】
無機不燃性繊維は、6~12mmの長さを有するバサルト繊維である。
【0045】
耐火材料は、純粋な水ガラスに対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの化合物である水ガラス硬化剤をさらに含有する。
【0046】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩である。
【0047】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1390kg/m3であり、Na2Oに対するSiO2のモル比は3.3である。
【0048】
得られたコンパウンドを、金庫室カバー壁のキャビティに注ぎ、静置して硬化させ、製品は金庫室ケージである。
【0049】
実施例5
【0050】
耐火性断熱材料は、49.9重量%の無機不燃性繊維と、50重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、0.1重量%の水ガラス安定剤とを含有するコンパウンドから構成される。
【0051】
無機不燃性繊維は、6~12mmの長さを有するアルカリジルコニウムシリケートガラス繊維である。
【0052】
耐火材料は、純粋な水ガラスに対して0.5~5重量%の濃度で、7:3の体積部の比で純グリセロールジアセテート/トリアセテートの化合物である水ガラス硬化剤をさらに含有する。
【0053】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩である。
【0054】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1390kg/m3であり、Na2Oに対するSiO2のモル比は3.3である。
【0055】
得られたコンパウンドをパネルの形態のシリコーン型に注ぎ、静置して硬化させ、製品は耐火性断熱パネルである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明による耐火性材料は、建築・産業分野において幅広い用途を有する一方で、別々の断熱製品を作るために用いることができるだけでなく、様々な空間を複雑な形状で埋めるためにも用いることができる。例えば、熱源からの壁の断熱、ソフィットの下の天井の断熱、焼き付け面やオーブンのための断熱層、暖炉やストーブの断熱、熱遮蔽のために、ドア、ゲート、ケーブル、パイプやケーブルトレイの周りの耐火シール、耐荷構造物の耐火保護のために使用することが有利である。それらは、例えば耐薬品性マットの製造のための化学的保護として使用することもできる。それはまた、金庫室壁充填物のようなセキュリティシステムでの使用にも有利である。
【国際調査報告】