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特表2022-543107接触システムおよび接触システムの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】接触システムおよび接触システムの使用
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/00 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
A61C17/00 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022506696
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2020071219
(87)【国際公開番号】W WO2021018871
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】102019211370.2
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522042876
【氏名又は名称】ガルボサージ デンタル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】GALVOSURGE DENTAL AG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ブロードベック,ウルス
(72)【発明者】
【氏名】エーベルレ,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】イェーネッケ,ベルント
(57)【要約】
ケーブルハーネス(4a)の絶縁シース(10)に埋め込まれた導電部材(14)の電気的な接触のための接触システム(20)は、特に簡潔でコスト効率の良い方法で、高い信頼性要件も満足するケーブルハーネス(4a)の電気的接触を可能にする。本発明によれば、これは、外筐(25)内にケーブルハーネス(4a)の一部を固定できるようにした接続端子モジュール(22)と、ケーブルハーネス(4a)の長手方向に対し側方から見て外筐(25)を横切って通されている複数の接触ピン(36)と、を備えることにより達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルハーネス(4a)の絶縁シース(10)に埋め込まれた導電部材(14)の電気的に接触のための、前記ケーブルハーネス(4a)の一部がその外筐(25)に固定可能である接続端子モジュール(22)と、前記ケーブルハーネス(4a)の長手方向に対して側方から見て、前記外筐(25)を横切り通過して案内されている複数の接触ピン(36)と、を備えた、
接触システム(20)。
【請求項2】
複数の前記接触ピン(36)が、互いに関して、一部区間で剥離されたケーブルハーネス(4a)がまっすぐに、好ましくは僅かにクランプされて接触ピン(36)の間を通るように、互いに離間して位置決めされている、請求項1に記載の接触システム(20)。
【請求項3】
バイオフィルムで汚染された構成部材、特にインプラント部材、を洗浄するための電解洗浄プロセスを実施するために設けられた処置システム(1)における、請求項1または2に記載の接触システム(20)の使用。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルハーネスの絶縁シースに埋め込まれた導電部材の電気的な接触のための接触システムに関する。本発明は更に、このような接触システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4からはそれぞれ、特にインプラント部材と共に使用するための、処置部材、並びに、歯科用インプラント部材を洗浄するための方法、が知られており、その公示内容をここに全面的に引用する(「参考文献の編入」)。インプラント部材のこのような洗浄は、骨物質内における挿入されたインプラントの保持を確実にするために、望まれるか又は必要とされるものである。組織および組織液により囲まれるインプラントの固体の表面には、細菌を含むバイオフィルムが形成され、それは最終的には慢性的で再発性の病変をもたらし得る。この発病形態は、インプラント周囲炎症(peri-implantitis)と呼ばれる。特に歯科分野では、歯周炎の場合と同様に、口腔内衛生の無視、歯科用インプラントの通常は微細な表面へのバイオフィルムの付着、および他の要因、の組み合わせが、インプラント周囲炎症の全像に対する原因となり、これは硬軟組織のストレスおよび破壊を増加させることを特徴としている。硬軟組織が後退する領域は、この場合、通常、バイオフィルムで覆われる。
【0003】
上述の特許文献に記載されている洗浄方法は、汚染を形成するバイオフィルムあるいはインプラント表面から出る病原菌を、殺菌しそして除去し、その際にインプラント表面を損傷しない、という考え方に基づいている。このために、イオン(陽イオンおよび/または陰イオン)が静電気力によってバイオフィルムを通って供給される、電解プロセスが行われる。これらのイオンは、インプラント表面で化学的または電気化学的に反応する。これらの反応により、新規物質の化合物が生成される、および/または、イオン自体および/またはこれらのイオンの一部が原子状態に移行する。さらに、追加的に、イオンが表面材料と反応する可能性もある(例えば酸化物層の形成または材料除去)。このプロセスは一方では生成した化学物質による殺菌作用を生じるが、他方では気泡を形成し、それはバイオフィルムを機械的に除去する作用もある。
【0004】
この過程の殺菌作用は種々の効果に基づいている。一方では、電圧の印加により、イオンがバイオフィルム自体から(細菌からも)陽極または陰極に送られる。これにより細菌やウイルスを殺すことができる。さらにイオンは、バイオフィルムを通過する間に、生化学的な反応を起こし得て、これは同様に、細菌および/またはウイルスを殺すことができる。殺菌の別の可能性は、インプラント表面に新たに形成された物質の化合物が、抗菌性のおよび/または抗ウイルス性のおよび/または抗真菌性の効果を有することにある。もちろんこれはイオンが原子状態に移行するときにも起こり得る。
【0005】
上記の特許文献に記載されている処置部材は、この洗浄方法を挿入された歯科用インプラントに直接、すなわち好ましくはポスト部材が患者の口内の骨内にある間に、実行するように、独特に設計されている。このために、処置部材は挿入されたポスト部材に直接接続され、次いで、電流を受けたときに所望の電解プロセスの基礎となり得る適切な処置液を、挿入されたポスト部材のすぐ近くで、近隣の骨物質の罹患した空間領域にまいて、電流を印加するようにされる。したがってこの処置部材を使用するためには、挿入されたポスト部材との機械的および電気的接触の両方を確立することが必要である。そのためには、上記の特許文献に記載されている処置部材の構成では、ポスト部材に固定する目的で、歯科用インプラントの補填器具および場合によってはそのアバットメントも一時的に取り外す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願公開2014/075755A1号公報
【特許文献2】国際特許出願公開2014/122187A1号公報
【特許文献3】国際特許出願公開2014/122188A1号公報
【特許文献4】国際特許出願公開2016/023998A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、特に簡単にかつ費用対効果の高い方法で、上述の処置システムへの使用を意図したケーブルハーネスの高い信頼性要件をも満足する電気的接触を、可能にする、上述したタイプの接触システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、ケーブルハーネスの一部を外筐内に固定できるようにした接続端子モジュールと、ケーブルハーネスの長手方向に対して側面から外筐を横方向に貫通する複数の接触ピンと、を備えることによって解決される。
【0009】
本発明の有利な実施形態は従属請求項の対象である。本発明のさらなるおよび/または代替的な有利な実施態様並びにそれ自体発明と見なすことのできる実施態様は、図面の説明から導き出すことができる。
【0010】
本発明は、まさに上述したタイプの処置システムで使用される場合に、ケーブルハーネスは、特に簡単に保持されかつ特に特別な訓練を受けていないユーザでも容易に使用できる手段を用いて、接触可能であるべきである、という考察に基づいている。この場合しかしながらまさに医療分野での用途では接触の信頼性に関する通常の比較的高い要求を依然として満たすために、接触システムは取り扱いが容易でありながら特にフォールトトレラント性を有するように設計すべきである。これを可能にするために、ケーブルハーネス内の導電部材は接触ピンによって接触され、これらの接触ピンは、ケーブルハーネスの長手方向を横切るそれらの長手方向、ひいてはその中に導かれる導電部材との「クロッシングケーブルガイド(英:crossing cable guide、独:kreuzende Leitungsfuehrung)」の様態で整列されている。このようにして、信頼性の高い接触は、一方の接触ピンと他方の関連する導電部材との間に接触点をその都度形成することによって達成することができ、その際、ケーブルハーネスまたは接触ピンの正確な位置決めは、その都度それらの長手方向から見て、必要ではない。
【0011】
有利には、さらに接触ピン同士は以下のように互いに距離を置いて配置されている、すなわち、部分的に剥ぎ取られたケーブルハーネスがまっすぐに、特に好ましくはわずかにクランプされた状態で、接触ピン間に通されるように、互いに距離を置いて配置されている。従って、一方では、接触ピンによる二重機能の態様で、実際の電気的接触に加えて、接続端子モジュールの外筐内でのケーブルハーネス部分の機械的固定も、行うことができるか、または少なくとも補助することができる。他方では、これによりそれぞれの接触ピンと割り当てられた導電部材との間に、格別に密接な接触がもたらされ、その結果、電気的接続の信頼性がより一層増大する。
【0012】
非常に格別に有利には、この接触システムは、上述したタイプの処置システムにおいて使用される。
【0013】
以下に本発明の実施例が図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、バイオフィルムで汚染された部材を洗浄するための処置システムを示す。
図2図2は、図1の処置システムの接続チューブを斜視図で示す。
図3図3は、図2の接続チューブを長手断面図で示す。
図4図4は、図2の接続チューブを2つのバリエーションでの短手断面図で示す。
図5図5は、図1の処置システムの接触システムを側面図で示す。
図6図6は、図5の接触システムの接続端子モジュールを接続された接続チューブとともに側面図で示す。
図7図7は、図6の接続端子モジュールを平面図で示す。
図8図8は、図6の接続端子モジュールを斜視図で示す。
図9図9は、図6の接続端子モジュールを分割された筐体半部を用いて異なる図で示す。
図10図10は、図6の接続端子モジュールを長手断面図で示す。
図11図11は、図10からの拡大断面図を示す。
図12図12は、電気接触を形成するための構成要素を示す。
図13図13は、図1の処置システムの処置ヘッドを長手断面図で示す。
図14図14は、図13の処置ヘッドを接続された接続チューブとともに長手断面図で示す。
図15図15は、図13の処置ヘッドの外筐を2つの斜視図で示す。
図16図16は、図13の処置ヘッドの接続ピンを斜視図で示す。
図17図17は、絶縁体を示す。
図18図18は、図17の絶縁体に装着された図16の接続ピンを斜視図で示す。
図19図19は、図17の絶縁体に装着された図16の接続ピンを長手断面図で示す。
【0015】
全図において同一の部材には同じ符号が付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般に、歯科用インプラントシステムでは、特には2ピースインプラントシステムでも、場合によっては、別のタイプの医療用インプラントでも、挿入箇所の近傍の、特に顎に装填されたねじ山の領域内の、組織領域への細菌または病原菌の侵入によって、炎症や病巣が発生し得る、という問題がある。この種の、特にいわゆるインプラント周囲炎(peri-implantitis)の結果として発生する、炎症は、特にそれがより長期間にわたって発展し硬化するおそれがある場合には、挿入部位の領域における組織および骨の重大な障害を導き得る。適切な対策が施されていないと、これらの障害によって、インプラントシステム全体を元通りに骨から取り外し、骨の増強後に改めてインプラントシステムを装着しなおしたり、他の補填具と交換したり、しなければならなくなるおそれがある。インプラント周囲炎によって引き起こされるこの極めて望ましくない作用は、したがって、インプラントシステムの全喪失につながる可能性があり、その結果、たとえば、顎骨内の病変部を削り取りそしてインプラントシステムを新たに供給するなどの、外科的処置が必要となり得る。このような除去により、更に、骨の損失または他の組織物質の損失につながる可能性があり、極端な場合には、別のインプラントを新たに供給することがもはや不可能になることもある。インプラント周囲炎により引き起こされるこのような新たな供給の必要性は、インプラントシステムを最初に装填してから比較的長い期間後でも、例えば数年または数十年程度の期間が経過した後でも、生じる可能性がある。
【0017】
インプラント周囲炎に関連して観察される病原菌や細菌は、基本的には、インプラントの構成部材の内部に生息することができるが、通常は、周辺の組織や骨材料との接触領域、すなわち特にはねじ山の領域、における、顎骨に挿入される歯科用インプラントの表面に好んで直接付着する。この領域においては、組織または骨への根付きを特に促進させ、装填後の歯科用インプラントの治癒を補助するために、歯科用インプラントの表面には粗面化等が施されていてもよい。しかし本来インプラントシステムにとって好ましいとされている表面のこのような粗面化の領域においてまさに、病原菌や細菌の生息が増大するおそれがあり、粗さは存在する病原菌や細菌の所定の除去をより一層困難にする。
【0018】
したがって、始まりかけているあるいは既に発生しているインプラント周囲炎の場合に、既に装着されたインプラントシステムを保持したままで、有効に炎症の病巣を処置すること、及び、侵入した病原菌を殺すことおよび/または除去すること、ができるようにし、その結果、それに続いてねじ山の周囲領域に再び健全な組織または健全な骨物質を形成できるようにする、適切な対策についての緊急の要望が存在する。このため、望ましくは、病変部の病原菌や細菌を狙って死滅させることに加えて、それらの残留物や断片は確実に病変部から取り除かれなければならない、その結果、その後、病変部は再び健全な組織や骨材料で満たされ、歯科用インプラントの外表面と周囲の組織や骨材との間に再び緊密な接続を形成することができる。さらに、死滅細菌の有機残存物を含み細菌層によって形成されるバイオフィルムは確実に除去すべきである。
【0019】
この目的のために、すなわち歯科用インプラントの挿入領域内での病原菌または細菌の死滅および/または機械的な剥離のために、特にこれに続く死滅細菌の組織残留物および物質残留物の洗浄、除去および排出のために、図1に示す処置システム1が提供される。このシステムはその構成および基本的な実施に関してそれぞれ独立して発明であるとみなされる2つの基本概念に基づいている。このシステムは一方では、第1の設計理念として、場合によっては、特にねじ山領域における、歯科用インプラントの表面になおも付着している病原菌および/または細菌の残留物又は断片を、流れまたは衝撃流を適切に作用させることで歯科用インプラントの外表面から引き離し、その結果、それらをその後洗い流すことができるように、設計されている。このシステムは他方では追加的に、インプラントの装填領域に存在する病原菌または細菌を、人間の器官には適合するが殺菌性のある洗浄剤または消毒剤を狙って供給することにより、狙って死滅させるように、設計されている。
【0020】
図1に示す処置システム1は、それに応じて、バイオフィルムで汚染された構成部材の、特にインプラント部材の洗浄のために、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4で知られているような、電解洗浄コンセプトを有している。処置システム1は、したがって、処置を必要とする構成部材に、特定の適切に選択された処置液を作用させ、その後またはその際に、処置を必要とする構成部材を通る電流フローおよび処置液を作るように、設計されている。このために処置システム1は、処置ヘッド2を有しており、このヘッドは機械的に処置を必要とする構成部材に接続され得る、例えばこの部分に差し込まれ得る、ねじ込まれ得る、または押し付けられ得る、そして、このヘッドを介して、処置液が処置すべき構成部材へとまかれ得て、また同様に所望の電流フローへ調整するための電気接触も行われ得る。処置ヘッド2は、接続チューブ4を介して、媒体側で処置液用の貯槽6に接続されるとともに、電気的には所望の電流フローに調整するための電流源または電圧源として設けられた給電ユニット8に接続されている。
【0021】
この場合、処置システム1は、とりわけより容易で信頼性のある操作のために設計されている。これを特に支援するために、接続チューブ4は、処置ヘッド2の貯槽6との媒体接続と同様に処置ヘッド2の給電ユニット8との電気的接続のため、一体化された部品の形態で、設けられている。したがって、処置システム1を使用する際には、種々の異なる接続チューブ、接続ワイヤ等を作動させることや調整させることは、必要ない。
【0022】
接続チューブ4は、図2では斜視図で示され、図3では長手断面で示され、また図4には2つの実施形態における横断面図で示され、それぞれが独立した発明であるとみなされる非常に好ましい短手断面輪郭(図4aおよび4b)を有する。一体構成部材としての上記実施形態においては、接続チューブ4は、基本的には、好適に選択されたチューブ材料からなる、特に好ましくはPVC、TPUまたはシリコーンからなる、シース10によって形成される。シース10はその内側に、処置液を貯槽6から処置ヘッド2に流すことができる、媒体流路12を有する。シース10には、追加的に、多数の、この実施例では2つの導電部材14が組み込まれている。接続チューブ4の意図された機能に鑑みて、シース材料の選択のための設計基準としては、特に好ましくは、一方では、媒体流路12内を搬送される媒体に対して十分に不活性であること(すなわち、シース材料が媒体と化学的にまたは他の方法で反応するかまたはそれによって侵されることが回避されるべきである)、そして、他方では、十分な絶縁性を有すること(すなわち、シース10が導電部材14に対して適切な電気絶縁マトリックスを形成するべきである)に基づいている。この実施例では、導電部材14は、例えば、銅製のおよび/またはアルミニウム製の、ワイヤ、ケーブルまたは撚り線は、シース10内へ鋳造されるか、あるいは、押出し成形で挿入される。しかし適切な絶縁を施せばそれらはシース10の外側に配置されていてもよい。電気的特性に関しては、接続チューブ4はしたがって、シース10内に多数の導電部材14が案内されているケーブルハーネス4a、と見なすことができる。
【0023】
一方の端部領域では、接続チューブ4のシース10は、各導電部材14のために、それぞれ1つの切欠部16を有しており、ここで各導電部材14はシース材料なしで保持されている。従って、各切欠部16の領域では、各導電部材14は絶縁されておらず、従って電気的に接触可能である。従って、以下の説明に示すように、各導電部材14のこれに対応する接触ピンとの電気的接続が、可能になる。
【0024】
それ自体発明であるとみなされる一実施形態によれば、接続チューブは、短手断面において、図4aに示す輪郭を有することができる。シース10は2つのほぼ平行な側面17を形成し、使用者はこれらをグリップ面として掴むことができる。側面17はそれらの第1の端部領域で丸みを帯びた輪郭部18を介して互いに接続されており、これに対し側面17同士を結ぶ第2の端部領域は角部またはエッジ19を形成する。このような輪郭の形成により、組立時には、または、使用者にとっても、触覚のみで、即ち感覚的にかつ接続チューブを目視する必要なしに、接続チューブ4およびその中に一体化された導電部材14の姿勢および方向を把握することや検知することが、特に容易且つ確実に可能となる。例えば、システム全体の組立時または作動時に導電部材14の所定の電気的極性を維持するためような、導電部材14の正しい個別の割り当ておよび取り扱いが重要である構成においては、このまたは類似の断面形状は、システムの使い勝手および信頼性を著しく高める。代替的な、同様に特に好ましい、実施形態では、接続チューブ4’のシース10は、図4bの断面図に示された形状も、有することができる。その際、接続チューブ4’またはその外側領域を形成するシース10は、楕円形またはより一般的には丸くない断面を有するように、設計されている。このようにして、組立時に、純粋に触覚的な方法で、すなわち単にグリップ感覚を介して、空間的配向に関する情報、従って例えば正しい設置位置に関する情報を得ることができることも、特に有利に達成される。
【0025】
上述のように一般にシース10によって囲まれた媒体流路12を有するチューブまたはケーブルハーネス4aとしての接続チューブ4、4’の構成であって、シース10内にまたはシース10に接して多数の導電部材14を配置されていること、および/または、上述の種類の処置システム1でそれを使用することは、それ自体発明であるとみなされる。図4aに示すような短手断面の輪郭は、さらにチューブ全般にとって、または導電線、ケーブルまたはケーブルハーネスに対しても、それ自体発明であるとみなされ、これらのすべての場合において、短手断面輪郭に基づく、空間的配向、及び、それに伴う例えば正しい極性又は配向の、触覚による検出が可能となる。
【0026】
導電部材14を給電ユニット8と電気的に接続するため、給電ユニットは接触システム20を備えている。この場合、導電部材14の接触は、その場合特に、一方では医療用途に必要かつ必須である信頼性に関して、また、他方では比較的簡単な操作性に関して、実施される。このため、図5に部分的に拡大して示されている接触システム20は、ケーブルハーネス4aの一部分を収容するために設けられた接続端子モジュール22、を含み、この接続端子モジュール22は、給電ユニット8に取り付けられた対応する接触ソケット24に、差し込み可能または挿入可能である。
【0027】
接続端子モジュール22は、以下により詳細に説明する構成に関して同様にそれ自体発明とみなされる。それは図6-11により詳細に示されており、そのうち図6および図7では接続チューブ4に接続した状態の側面図および平面図で示されており、図8では斜視図で示されており、図9では、その外筐25の分解図で示されており、図10および図11では縦断面で示されている。これらの図から分かるように、この実施例における接続端子モジュール22の外筐25は、一緒に差し込むことができる2つの筐体半部26、28によって形成され、接続チューブ4は、第1の筐体半部26を介して筐体内部に挿入され、その媒体流路12とともに筐体内部の第2の筐体半部28に配置されたチューブノズルまたはチューブソケット30に挿入されている。このように接続チューブ4は、その端部側の一部分を用いて、筐体半部26、28によって形成された接続端子モジュール22の外筐25内で固定されている。チューブノズル30は、チューブノズル30側で第2の筐体半部28を通って案内されており、筐体の外側にて供給チューブ32と接続されており、この供給チューブ32は供給チューブ32側でポンプ34を介して貯槽6に接続される。
【0028】
その端部領域では、チューブノズル30に直接隣接し、また、外筐25内部に、接続チューブ4の切欠部16は位置決めされる。従ってこの個所で、接続チューブ4によって形成されたケーブルハーネス4aは、外側面を剥がされる、すなわち、シース10はそこで、導電部材14がこの領域で露出され、絶縁部を有さず従って電気的に接触可能であるまで、外側範囲が除去されているまたは薄くされている。この場合、導電部材14のこの露出領域と接触するために、例えばアール、円錐または斜面などの、接触に適した幾何学的形状を有する2つの適当な接触部材が設けられている。この実施例では、これらの接触部材は、ケーブルハーネス4aの長手方向側面から見て接続端子モジュール22の外筐25を横切って案内されている接触ピン36として、形成されている。この実施例では、これらの接触ピン36は接触ソケット24内に固定的に取り付けられており、給電ユニット8内で例えば電流源または電圧源などのそこに設けられた給電コンポーネントに、適切に接続されている。接触ピン36に対応して、筐体半部26、28は接触ピン36のための適当な貫通孔38を有する。このようにしてかつ上述の構成部材により、ケーブルハーネス内で媒体流路は電流導体から分離されるかまたは引き離される。
【0029】
したがって、接続チューブ4の端部領域を備えた接続端子モジュール22を接触ソケット24に挿入する場合、接触ピン36は貫通孔38へ導入され、これを通ってケーブルハーネス4aの長手方向に対して横方向に、筐体半部26、28によって形成される外筐25の内部へ突入する。そこで接触ピンは、接続チューブ4によって形成されたケーブルハーネス4aと接触することができる。このケーブルハーネスは接触ピン36を横切る方向に、これらの間に、外側に配置された剥き出しの導電部材14の各々が、それぞれ接触ピン36の一つの方に向けられているように、挿入される。その場合、接触ピン36は、互いに、以下のように離間して、さらには筐体内に以下のように位置決めして、配置されている、すなわち、接続チューブ4がその剥がれた端部部分で、まっすぐに、好適には若干クランプ状態で、接触ピン36の間に嵌まり、従ってそれぞれの接触ピン36と割り当てられた導電部材14との間に確実な電気的接触が形成されるように、配置されている。接触原理は図12の斜視図に明示されており、この図には、実施例において接触ソケット24に固定的に装着された接触ピン36及び端部側でそれらの間にある接続チューブ4のみが示されており、そのほかの部材は省略されている。この図からは、どのように接触ピン36がそれぞれ接続チューブ4のシース10内でそれらに割り当てられた切欠部16に係合し、その場合に内側に位置する各導電部材14と接触するか、が明らかにされる。
【0030】
接続チューブ4の端部側部分のこのような挿入状態において、接触ピン36は、ある程度の好ましくは弾性的な圧力を、接続チューブ4内に案内された導電部材14に、特にはこの領域での確実で安定した電気的接触を保証するために、及ぼす。しかしながら、チューブ材料の選択に基づいて、これは、導電部材14が接触の結果圧力に屈して内側にずれると、接触領域内のチューブの望ましくない圧縮をもたらすおそれがある。これは、一方では電気的接触を弱め、他方では、接続チューブ4の内側断面の望ましくない狭小化を招くおそれがあり、その結果、媒体の流れを損なう可能性がある。これを解消するために、接続チューブ4の媒体流路12は、それ自体発明の対象となる構成で、組み立て状態でチューブノズル30を収容する本来の端部領域に直接接するその端部領域に、図11、特に図11bの拡大図に見られるように、一体化された補強部材、好ましくは、金属、セラミック又は他の適切な材料からなる、内側チューブ39、を備えている。好ましくは比較的薄厚状に設計された内側チューブは、その際、特には端部に向いたその端面でチューブノズル30の端面に当接するように、端部側で媒体流路12内に位置決めされる。
【0031】
好ましくは、接続チューブ4は、図12に示す実施例にも示すように、その長手方向において接触ピン36の長手方向に対してほぼ垂直に、接触ピンの間に挿入される。一方では接触ピン36の長手方向と他方ではケーブルハーネス4a内の導電部材14の、ほぼ交差する位置合わせにより、接続チューブ4またはケーブルハーネス4aの長手方向での局所的な変位も、接触ピン36の長手方向における接続チューブ4の挿入深さの不正確さも、導電部材14のうちの1つと接触ピン36のうちの1つとの間のそれぞれの各接触点の形成を脅かさない又は阻害させないことを確実にする。従って、「交差する導電部材」のこのようなシステムは、最終組立の際の不正確さに特に敏感ではなく、従って特に信頼性が高く組立が容易である。
【0032】
代替的に、接触ピン36はもちろん接続端子モジュール22に固定的に接続されていてもよいが、その場合には、それに応じて対応的に適切に接触ソケット24における差込ソケットのような接触穴または受け穴を設けなければならないであろう。
【0033】
一般に接続端子モジュール22の接触ソケット24との組み合わせとして説明した接触システム20の構成であって、チューブまたはケーブルの外側シース領域に案内された導電部材14への電気的接触がこれらを横切る方向に、好ましくはこれらにほぼ垂直に、整列した接触ピン36を介して行われる構成、および/または、上述のタイプの処置システム1でのその使用は、それ自体発明とみなされる。
【0034】
特許文献1、特許文献2、特許文献3および/または特許文献4に記載されている構想によれば、処置システム1は、処置を必要とする構成部材の洗浄目的で使用される電流フローを使用される処置液の導電性を利用して、狙って、処置を必要とする表面を通過して送るように、設計されている。この場合、処置ヘッド2は一方では、電流が処置を必要とする構成部材に供給され、この部材が電極として使用され得るという設計理念に従って、構成されている。他方では対極または対電極を形成するために、処置ヘッド2を介して供給される処置液の導電性を利用することが企図されている。
【0035】
このために処置ヘッド2は、図13(拡大図)および図14に示すような構造を有している。図15a、図15bに2つの異なる斜視図で示されており、接続チューブ4の自由端が挿入されている、外筐40の内部には、一方では、第1の電極端子を、好ましくは陰極端子を形成するために接続ピン42が配置されている。図16に拡大して示された接続ピン42は、良好な導電性を有し、好ましくは金属から、特に好ましくはチタンから、製造されている。非常に格別に好ましくは、そして、生産コストを格別に低く抑える観点で、接続ピン42は、打ち抜かれ、曲げられ、および/または圧延された金属シートから、特に好ましくはチタンシートから、製造されている。外筐の内部で組み込み状態における「上端部」では、接続ピン42は、接続チューブ4の導電部材14の1つに接続されており、その結果、それは給電ユニット8に接続された接続チューブ4において直接電気的に制御可能である、かつ、電極的な接続を形成するために使用可能である。
【0036】
同様にそれ自体発明とみなされる特に好ましい実施形態では、接続ピン42は、特に好ましくはこの電気的接続を確立するために設けられた対応する導電部材14の端部44と組み合わせて、特に確実な電気的接触を保証するために、設計されている。そのため一方では、図13の断面図から良好に見られるように、導電部材の端部44は湾曲して設計されており、その結果、端部領域は接続ピン42の上端部に対して弾性的に当接することができる。さらに、接続ピン42は、その上部の端部領域に実施例においてはV字形に設計された凹部46を有し、この凹部には、端部44が、好ましくはクランプ方式で、押し込められ得る。
【0037】
その自由な、設置状態で「下方の」端部48においては、接続ピン42は、処置を必要とする部品にかぶせるために適した設計がなされている。特に好ましくは、処置システム1は、一般に装填された医療用インプラントの処置のために設けられる。この実施例では、処置システム1は、装填された歯科用インプラントの非常に格別に好ましい加工または調製のために狙いを定めて設計されている。従ってこの実施例における接続ピン42は、挿入された歯科用インプラントに装着するのに適するように設計されている。このピンが割り当てられた構成部品またはアバットメントに対する内部接続部を有する場合、自由端48は好ましくはこの内部接続部の寸法に適合されており、その結果、それは処置すべきインプラントに適切に挿入され得る。処置を必要とする部材との接続ピン42の特に確実な電気的接触を保証するために、接続ピン42はさらに、その自由端に、多数の曲げられた弾性片50を備えている。これらの弾性片は、適切な歯科用インプラントにかぶせると、これにインプラントとの密着した電気的接触をもたらす。
【0038】
接続ピン42は主に、処置を必要とする部材との、特に歯科用インプラントとの、電気的接続を確立するために設けられ、その結果、これを洗浄プロセスのための電極として使用することができる。従って、接続ピン42は、良好な導電性が例えば生物学的適合性等と並んで最も重要な設計基準と見なされるので、好ましくは金属製の、全体部として設計されていてもよい。しかしながら実施例では、接続ピン42が小さな管の様態の中空体として設計されている、特に好ましい実施形態が示されている。この中空体は、例えば予め適切に打ち抜かれた金属シートを丸めることによって、得ることができ、内部流路52を形成し、この内部流路52を通して処置液をその下にあるインプラントの内部空間に導入することができ、そこで洗浄目的で、例えばすすぎ液によるすすぎの形態で、使用することができる。さらに、このようにしてインプラントの内部領域でも洗浄を行うことができる。
【0039】
さらに図13に示すように、接続ピン42はそれを取り囲む絶縁体54内に配置されており、特にその中に挿入されている。図17に別個に示された絶縁体54は、好ましくは好適に選択されたプラスチックで、好ましくは射出成形によって、製造される。図18は、絶縁体54に挿入された接続ピン42を示す。
【0040】
絶縁体54は、特に図13から分かるように、処置ヘッド2の外筐40の内部で空洞56によって取り囲まれており、この空洞は処置ヘッド2に一体化された媒体流路58を介して接続チューブ4の媒体流路12に接続されている。したがって媒体流路58を介して、処置液は、接続チューブ4の媒体流路12から処置ヘッド2内の空洞56内に導入され得る。自由端および処置を必要とする部材へ向けられた、処置ヘッド2の「下部」領域において、空洞56は、拡がっており、中心に案内された接続ピン42およびそれを取り囲む絶縁体54の周りに、環状の流出面60を形成し、それを通って、供給された処置液が、流出し、処置を必要とする構成部材に流入することができる。
【0041】
電解処理コンセプトおよび洗浄コンセプトを実施するための対極または対電極を形成するために、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4から原理が知られているように、すでに言及したように、処置ヘッド2を介して空洞56内に供給され、そこから処置を必要とする構成部材へ供給される処置液の導電性が、利用される。これを可能にするために、空洞56には、電極62が配置されており、この電極62は接続チューブ4のもう一つの導電部材14と電気的に接続されている。電極62は基本的にリング状に設計されており、それが貫流する処置液により周りを流され強く濡らされるよう、空洞56内に配置される。従って、接続チューブ4が給電ユニット8に接続されると、処置液は空洞56内で、また従って流出面60に直接隣接する領域内でも、給電ユニット8を介して電気的に制御可能であり、電極的な接続を確立するために使用可能である。
【0042】
電極62は、一方ではその周囲を流れる処置液と特に良好な電気的接触を行うように設計されている。これは、それ自体発明とみなされる実施態様において、一方では電極62の形態によって達成されるか、少なくとも支援され、環状形状により既に原理的に、液体の均一かつ大面積の接触が可能になる。加えておよび好ましくは、電極62はまた、例えば縞形または波形のような、表面輪郭をも有する。このような構造は、表面に沿った液体の流路を、従って有効な接触面積を、増大させ、また場合によっては、液体の流れに乱流または渦流を生じさせることができ、それは表面との密接な接触をさらに促進する。さらに電極62と液体との間の格別に良好な電気的接触は、適切で特に好ましい材料の選択によっても、促進される。
【0043】
有利には、電極62の表面は、良導電性の材料から、さらに好ましくは生理的に不活性で、人体に良好になじむ材料、特に好ましくは金、白金、マグネシウム、またはドープされたダイヤモンドから成る金属からも、作られる。この場合、電極62は中実体の形でそのような材料から完全に構成することができる、または、それは代替的に、コーティングされた担持体によっても形成することもでき、この場合、表面コーティングは、記載された材料のうちの1つからなる。
【0044】
しかし他方では、電極62は、処置ヘッド2の組立が比較的簡単になるように特に良好に設計されている。この場合の設計基準としては、簡単な組立という意味において、絶縁体54を備えた接続ピン42は、簡単に処置ヘッド2の下端部を介してその外筐40内に押し込むことができるべきであること、及び、挿入された接続ピン42はその組立後外筐側40内にあって比較的堅固な保持および良好な座を有するべきであること、が好ましい。両方の基準を等しく満たすことができるようにするために、電極62は有利には、それが弾性的にしなり、その内のり断面を一時的に広げることができるように、設計されている。
【0045】
この目的のために、電極62は、好ましい実施形態では、有孔リングまたはスナップリングとして、またはスリット付き管片の形態で、設計されていてもよい。この実施例では、電極62は、非常に格別に好ましい実施形態で、バネ又はコイルワイヤとして、示されている。このような構造形状は、一方では一時的な拡張の際の望ましい弾力性の利点を提供し、他方では表面は構造に応じて波状または縞状である。
【0046】
処置ヘッド2の構成によって以下のことが達成される、すなわち、処置および洗浄目的のために印加される電流が、処置を必要とする構成部材の細菌によって侵された表面ゾーンを通過し、そこから出て更に広域に直接的に、したがって特に他の身体組織等を介する「迂回」なしで、接触表面として機能する流出面60に流れることができることが、達成される。媒体流路12、58は、その中に導かれた導電性の処置液および対応する接続部材を含めて、この実施例においては、第2の導電部材であって、接続チューブ4内の本来の導電部材14への電流経路を形成する導電部材を、形成する。
【0047】
処置液を分配する際の過剰な漏れを回避または少なくとも減少させるために、流出面60の領域に、従って処置ヘッドの「自由」端部に、その開口領域を囲むスポンジが設けられている。
【0048】
この実施例では、接続ピン42の内部流路52に処置液を適用することも企図されている。この場合、一方では接続ピン42によって形成され、他方では処置液によって周りを流される電極62によって形成される、という2つの電極間の電気的な短絡の問題に対処するために、空洞56内に設置された絶縁体54は、その外側に、特に図17の拡大図に示すように、それ自体が発明とみなされる設計で、螺旋状のねじ山64を設けられる。絶縁体54が空洞56内に導入されると、このねじ山64は、空洞56の周囲の内壁と可能な限り同一平面上で接触する。それにより、ねじ山64は処置液のための延長された流路を形成するが、これは処置液がねじ山64を通って導かれ、螺旋状に絶縁体54の周りを流れなければならないからである。この人為的な流路の延長により、それに対応して空洞56内の処置液に関する電気経路も対応的に延長され、それに対応してその電気抵抗も増加する。このようにして「上方への」、すなわち接続ピン42への流入領域への、短絡流または誤流をできるだけ僅かに抑えることができるが、これはこの誤流が意図した洗浄効果には寄与しないからである。
【0049】
図18および図19には、接続ピン42と絶縁体54とから組み合わされたアンサンブル体が、斜視図(図18)および長手断面図(図19)で示されている。
【0050】
前述した構成および個々の部品、特に記載した種類の接続チューブ4、接続ピン42、周囲を取り囲むねじ山64を備えた絶縁体54、上記の設計基準を備えた電極62、処置ヘッド2の構成は、それぞれ個別に又は互いに組み合わせて、並びに、上記の構成の処置システム1においてそれぞれ個別にまたは互いに組み合わせでの、それらの使用は、それぞれ独立した発明とみなされる。
【0051】
処置システム1における使用を意図した処置液は、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4から既知の観点に関して適切に選択され、構成される。処置液の基本成分の選択および組成は、特に意図された作用効果、すなわち処置を必要とする表面の空間領域における電流の印加、を考慮して行われるが、その際、特にこの目的のために十分に高い電気伝導性が処置液中で保証されている。これは、特に処置液中の十分に高く選択されたイオン密度によって確保されるべきである。このためには、処置液の基本成分としては、金属塩が企図され、好ましくは水溶液中の金属塩が企図される。特に好ましくは、金属塩ギ酸ナトリウムを含む溶液が使用される。金属塩は電流輸送のためのイオンを提供し、更にそれぞれの電極反応後に生じる反応生成物も適切な生化学的効果を有することができる。十分に高い電気伝導率を狙って選択することによって、挿入されたインプラントに洗浄プロセスを実施する場合に、以下のことが保証される、すなわち、電流が処置液を通って、ひいては処置を必要とする部分および構成部材を通って、流れるが、患者の身体組織を通っては流れないこと、が保証され、その結果、軟組織、骨、血液および/または他の身体材料を通る望まれない電流による患者の危険が最小化され得る。処置液の電気伝導率は、この場合できるだけ血液、骨、軟組織、脂肪組織又は他の身体材料の電気伝導率の数倍であるべきである。
【0052】
従って、処置液の基本成分の選定と組成に関しては、特に以下の導電率値が考慮される(電気伝導率(導電率)σは通常の単位mS/cmで与えられる)。
【0053】
皮膚: 0.03 - 0.1mS/cm
骨: 0.06 - 0.2mS/cm
脂肪組織: 0.20 - 1.0mS/cm
筋肉組織: 0.80 - 2.5mS/cm
血液: 約6.7mS/cm
その他の体液: 約15mS/cm
【0054】
患者に対するリスクポテンシャルを適切に低く保ち、電流を所望の領域に制限するために、導電率はそれゆえ通常の体液の導電率の少なくとも2倍、好ましくは5倍、特に好ましくは10倍であるべきであろう。従って処置液の導電率は、少なくとも30mS/cm、好ましくは少なくとも75mS/cm、特に好ましくは少なくとも150mS/cmの値を有するべきであろう。血液との比較では、これは、処置液の導電率が血液の導電率の好ましくは少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、特に好ましくは少なくとも約20倍であること、を意味する。測定結果は、このようにして選択された処置液を使用する場合、身体組織、血液、体液などがさらされる電圧は6V未満、好ましくは3V未満、特に好ましくは1.5V未満であること、を示している。従って患者が傷つくことを、電圧を低く抑えることに基づいて、確実に排除することができる。このような導電率を維持するためには、特に、処置液中およびこれを形成する基本成分中のイオン濃度を十分に高く選択するが、このためにはアルカリ液、酸、塩および/または他のイオン形成物質または化合物が使用され得る。
【0055】
処置液の基本成分の選択及び組成に際しては、特に、汚染されたインプラント表面の電解処置の、洗浄の又はバイオフィルム除去の効果は、可能な限り相補的に使用すべき幾つかの原因の組み合わせに基づくことが、考慮される。一方では、電流が電解質を通って流れると、好ましくは電極の領域に気体または気泡が形成されるが、これはバイオフィルムへの(物理的な)リフティング効果を有する。これらのガスの発生は、電極として機能するインプラント表面で、したがってこれとバイオフィルムとの間で、直接行われる。その際発生する気泡は、それらの成長速度とその最大値で、脱離プロセスに影響を及ぼす。
【0056】
インプラントを洗浄したり、バイオフィルムを除去したりする電解プロセスの効果の第2の理由は、電解で生じる物質や化合物が、インプラント表面へのバイオフィルムの実際の付着、すなわち接着や定着メカニズムに及ぼす分解、破壊、溶解効果、を挙げることができる。
【0057】
電解プロセスの洗浄または溶解効果の第3の理由は、インプラント材料の材料除去効果に基づくものであり、本来のインプラントの構成成分または粒子はその表面領域でそこから分離される。
【0058】
電解プロセスの洗浄または溶解効果の第4の理由は、金属インプラントの酸化物層の形成に基づき、当該金属インプラントはこれを許容する。この場合、金属母材の金属原子は、印加された電圧に基づき場合によっては既に存在する酸化物層に浸透し、電解質中の物質と反応する(大部分は酸素から金属酸化物形成)。酸化物層或いは機械的に安定な酸化物層を形成しない金属の場合には、非酸化物化合物も生じ得て(通常は塩)、それが溶液中に入る。
【0059】
処置液の形成のために使用される基本成分は、これらの効果を考慮して適切に選択され、互いに組み合わされる。さらに、基本的な設計目標として、有毒な作用、又は、その他の、患者を危うくしたり、患者を不快にさせたりする作用、が発生しないことを考慮すべきであり、その結果、処置液は、挿入された歯科用インプラント、すなわち患者の口内、での使用にも適している。この実施例では、基本成分として一方では少なくとも塩と他方では酸を好ましくは水で希釈したものが用いられるが、その選択および組成は特に上述の基準に基づいている。特に好ましくは、酸として、リン酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、炭酸、またはこれらの組合せが企図されている。代替としてまたはそれに加えて特に好ましくは、塩として、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、スズまたはカリウムの、ヨウ化物、塩化物、硝酸塩、炭酸塩または炭酸水素塩、および/または、塩化アンモニウム、窒化アンモニウムまたはヨウ化アンモニウム、または、それらの組み合わせが企図されている。非常に好ましくは金属塩として、ギ酸ナトリウムが企図されており、ギ酸ナトリウムはギ酸のナトリウム塩であり構成式Na(HCOO)を有する。
【0060】
処置システム1および特にその給電ユニット8および/またはそれに割り当てられた制御は、一方での処置液の供給と、他方での電流の印加が協調的に調整されるという意味で、協調したプロセス管理のために設計される。このために例えば、給電ユニット8を介して、接続チューブ4または貯槽6に割り当てられた処置液用のポンプ34の起動を、導電部材14の通電に連動して行うことが、企図され得る。これは、自動化することも、必要に応じてスイッチを介して手動で制御することもできる。手動で作動させることができるスイッチは、特に処置ヘッド2に直接配置されていてもよく、その結果、操作者は患者を治療する際にシステム制御にアクセスできる。
【符号の説明】
【0061】
1 処置システム
2 処置ヘッド
4、4’ 接続チューブ
4a ケーブルハーネス
6 貯槽
8 給電ユニット
10 シース
12 媒体流路
14 導電部材
16 切欠部
17 側面
18 輪郭
19 エッジ
20 接触システム
22 接続端子モジュール
24 接触ソケット
25 外筐
26、28 筐体半部
30 チューブノズル
32 供給チューブ
34 ポンプ
36 接触ピン
38 貫通孔
39 内管
40 外筐
42 接続ピン
44 端部
46 凹部
48 端部
50 弾性片
52 内管
54 絶縁体
56 空洞
58 媒体流路
60 流出面
62 電極
64 ねじ山


図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】