(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ウォークアウェイ時間可視化方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507352
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 US2020044723
(87)【国際公開番号】W WO2021026062
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ・ヘルムート・デゲン
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ケンドリック
(72)【発明者】
【氏名】スコット・サルモン
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GE10
2G058HA04
(57)【要約】
診断検査室システムのステータス可視化方法。ステータス可視化方法は、システムコントローラにおいて、診断検査室システム内に含まれる分析器と、分析器により試料に対して実行予定の検査のタイプおよび検査の数に対する検査需要とを含むコンピュータ可読データを受けることを含み、分析器は、各々、消耗品および保守項目を含む。本方法は、システムコントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュールを介して、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を決定することをさらに含む。ウォークアウェイ時間推定を行う診断検査室システムが、他の態様と同様に開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断検査室システムのステータス可視化方法であって:
システムコントローラにおいて、診断検査室システム内に含まれる分析器の在庫と、分析器により試料に対して実行予定の検査のタイプおよび検査の数に対する検査需要とを含むコンピュータ可読データを受けることであって、
分析器は、各々、消耗品および保守項目を含むことと;
システムコントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュールを介して、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を決定することと
を含む、前記方法。
【請求項2】
分析器の各々についての推定ウォークアウェイ時間を表示することを含む、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項3】
診断検査室システムについての最低の推定ウォークアウェイ時間を決定することを含む、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項4】
診断検査室システムについての推定ウォークアウェイ時間を表示することを含む、請求項3に記載のステータス可視化方法。
【請求項5】
消耗品は、
検査特異的試薬、
バルク試薬、
キャリブレータ、
コンディショナ、
QC液、
希釈剤、
洗浄液、
ピペットチップ、および
反応容器
のうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項6】
保守項目は、
固体廃棄物を空にすること、および
液体廃棄物を空にすること
の群から選択された1つまたはそれ以上を含む、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項7】
試料に対して実行予定の検査のタイプおよび検査の数は、検査需要モジュールから提供される、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項8】
1つまたはそれ以上の分析器についての推定ウォークアウェイ時間を増加させるために選択可能な1つまたはそれ以上の追加の行動選択肢を提供することを含む、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項9】
1つまたはそれ以上の分析器についての推定ウォークアウェイ時間を増加させるために選択可能である追加の行動選択肢を識別することを含む、請求項8に記載のステータス可視化方法。
【請求項10】
追加の行動選択肢の完了を確認したとき、新たな推定ウォークアウェイ時間を提供することをさらに含む、請求項8に記載のステータス可視化方法。
【請求項11】
1つまたはそれ以上の追加の行動選択肢は、分析器の群について、消耗品のうちの同様のものまたは保守項目のうちの同様のものの群を含む、請求項8に記載のステータス可視化方法。
【請求項12】
消耗品の交換のための加算推定値と、保守項目の完了のための加算推定値とを、ウォークアウェイ項目データベースにおいて受けることを含む、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項13】
検査需要モジュールは、先行する期間にわたって行われた検査のタイプおよび検査の数の履歴記録に基づいて、検査需要をウォークアウェイ時間推定モジュールに提供する、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項14】
消耗品および/または保守項目のうちの少なくともいくつかのステータスは、分析器による検知によって提供される、請求項1に記載のステータス可視化方法。
【請求項15】
検知は、分析器から提供される検査カウントに基づく、請求項14に記載のステータス可視化方法。
【請求項16】
診断検査室の方法であって:
システムコントローラにおいて、診断検査室内に含まれる複数の分析器と、該複数の分析器により試料に対して実行予定の検査のタイプおよび検査の数に対する検査需要とに関するコンピュータ可読データを受けることであって、複数の分析器は、各々、消耗品および保守項目を含むことと;
システムコントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュールを介して、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を決定することと;
診断検査室についての推定ウォークアウェイ時間を表示することと;
診断検査室についての推定ウォークアウェイ時間を増加させるために選択可能である1つまたはそれ以上の追加の行動を識別することと
を含む、前記方法。
【請求項17】
診断検査室システムであって:
試料に対して検査を実行するように構成されている、診断検査室システム内に含まれる複数の分析器であって、該複数の分析器の各々は、検査を実行しているときに消費される消耗品と、分析器の継続動作のために実行予定の保守項目とを含む、複数の分析器と;
該複数の分析器に結合されたシステムコントローラであって、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、複数の分析器についての推定ウォークアウェイ時間を提供するように、システムコントローラで実行可能なウォークアウェイ時間推定モジュールを含む、システムコントローラと
を含む、前記診断検査室システム。
【請求項18】
分析器のステータス可視化方法であって:
分析器のコントローラにおいて、以前の期間にわたり分析器により試料に対して実行された検査のタイプおよび検査の数に対する履歴検査需要のコンピュータ可読データを受けることであって、分析器は消耗品および保守項目を含むことと;
コントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュールを介して、計画期間にわたる履歴検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を決定することと
を含む、前記方法。
【請求項19】
分析器であって:
該分析器のコントローラを含み、該コントローラは、
以前の期間にわたり分析器により試料に対して実行された検査のタイプおよび検査の数に対する履歴検査需要のコンピュータ可読データを受けるように構成された検査需要モジュールであって、分析器は、検査を実行しているときに消費される消耗品と分析器の継続動作のために実行予定の保守項目とをさらに含む、検査需要モジュールと;
計画期間にわたる履歴検査需要のデータから推定される検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を提供するように、コントローラで実行可能なウォークアウェイ時間推定モジュールと
を含む、前記分析器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月5日に出願した「PROACTIVE AND PREDICTIVE WALKAWAY TIME」と題する米国仮特許出願第62/882,724号に対する優先権を主張し、その出願の開示をすべての目的でその全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本開示は、1つまたはそれ以上の分析器を有する診断検査室の動作情報を提供する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
診断検査室は、検査室情報システム(LIS)から受けた検査オーダーを半自動的に処理する体外検査を行う医療機器(「分析器」)を含む。システムによっては、検査技師が、検査室のさまざまな分析器に生体試料を装填し、行う予定の検査を定義し、必要な検査材料(例えば、検査特異的試薬、バルク試薬、希釈剤、洗浄液、反応容器およびピペットチップ)を装填し、分析器で検査を実施することができる。各分析器で検査を開始した後、分析器が試料を処理して検査結果を自動的に生成する間、検査技師は、それらの分析器からしばらくの間離れて研究室内の他の仕事に集中することができる。検査技師が任意の特定の分析器から離れることができる時間の量は、その分析器についての「ウォークアウェイ時間」(WAT:walk-away time)と称される。しかしながら、任意の特定の分析器について、特に、検査需要が変化するとともに対処する必要がある項目が多いために多数の分析器を含む診断検査室内では、検査技師がWATを理解することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、分析器について、および多数の分析器を含む診断検査室についてWATの作動方法および理解を改善するという、満たされていない必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の実施形態によれば、診断検査室のステータス可視化方法を提供する。本方法は、システムコントローラにおいて、診断検査室内に含まれる分析器の在庫と、分析器により試料に対して実行予定の検査のタイプおよび検査の数に対する検査需要とを含むコンピュータ可読データを受けることであって、分析器は、各々、消耗品および保守項目を含むことと、システムコントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュールを介して、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を決定することとを含む。
【0006】
別の実施形態によれば、診断検査室の方法を提供する。本方法は、システムコントローラにおいて、診断検査室内に含まれる複数の分析器と、複数の分析器により試料に対して実行予定の検査のタイプおよび検査の数に対する検査需要とに関するコンピュータ可読データを受けることであって、複数の分析器は、各々、消耗品および保守項目を含むことと、システムコントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュールを介して、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を決定することと、診断検査室についての推定ウォークアウェイ時間を表示することと、診断検査室についての推定ウォークアウェイ時間を増加させるために選択可能である1つまたはそれ以上の追加の行動を識別することとを含む。
【0007】
さらなる態様では、診断検査室システムを提供する。診断検査室システムは、試料に対して検査を実行するように構成されている、診断検査室システム内に含まれる複数の分析器であって、複数の分析器の各々は、検査を実行しているときに消費される消耗品と分析器の継続動作のために実行予定の保守項目とを含む、複数の分析器と、複数の分析器に結合されたシステムコントローラであって、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、複数の分析器についての推定ウォークアウェイ時間を提供するように、システムコントローラで実行可能なウォークアウェイ時間推定モジュールを含むシステムコントローラとを含む。
【0008】
さらなる態様では、分析器のステータス可視化方法を提供する。ステータス可視化方法は、分析器のコントローラにおいて、分析器により試料に対して実行予定の検査のタイプおよび検査の数に対する履歴検査需要のコンピュータ可読データを受けることであって、分析器は消耗品および保守項目を含むことと、コントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュールを介して、履歴検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を決定することとを含む。
【0009】
さらなる態様では、分析器を提供する。分析器は、分析器のコントローラを含み、コントローラは、以前の期間にわたり分析器により試料に対して実行された検査のタイプおよび検査の数に対する履歴検査需要のコンピュータ可読データを受けるように構成された検査需要モジュールであって、分析器は、検査を実行しているときに消費される消耗品と、分析器の継続動作のために実行予定の保守項目とをさらに含む、検査需要モジュールと、計画期間にわたる履歴検査需要のデータから推定される検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間を提供するように、コントローラで実行可能なウォークアウェイ時間推定モジュールとを含む。
【0010】
本開示のさらに他の態様、構成および利点は、本発明を実施するために企図される最良の形態を含む、複数の実施形態例の以下の説明および例示から容易に明らかとなる。本開示は、他のおよび異なる実施形態も可能にすることができ、そのいくつかの詳細は、すべて本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな点で変更することができる。本開示は、特許請求の範囲内にあるすべての変更形態、均等物および代替形態を包含するように意図されている。
【0011】
以下に説明する図面は、例示を目的とするものであり、必ずしも原寸に比例して描かれていない。したがって、図面および説明は、限定的なものとしてではなく本質的に例示的なものとしてみなされるべきである。図面は、本発明の範囲を限定することは決して意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示によるウォークアウェイ時間(WAT)推定モジュールを含む診断検査室システムの概略ブロック図である。
【
図2】本開示による、検査に使用される消耗品と連続検査を可能にするために行われる保守項目とを含む、代表的な分析器の概略図である。
【
図3】本開示によるWAT項目入力画面の概略図例である。
【
図4】本開示による、診断検査室システムの分析器についてのWATステータスおよび行動画面の概略図例である。
【
図5】本開示による、追加の行動が選択されているとともにその選択の確認を提供している、診断検査室システムの分析器についてのWATステータスおよび行動画面の概略図例である。
【
図6】本開示による、追加の群行動が選択されている、診断検査室システムの分析器についての群行動画面の概略図例である。
【
図7】本開示による、履歴検査需要情報を考慮するウォークアウェイ時間(WAT)推定モジュールを含む分析器の概略ブロック図である。
【
図8】本開示による診断検査室のステータス可視化方法のフローチャートである。
【
図9】本開示による分析器のステータス可視化方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多数の分析器を含む大型の診断検査室システムでは、可能な限り効率を向上させることが望ましい。診断検査室にいくつかの分析器と場合によっては他の支持モジュール(例えば、試料ハンドラ)とが含まれる場合、1人またはさらには少人数の検査技師が、いくつかの検査停止を行うことなく、効率的にすべての消耗品を交換するとともに必要な保守項目すべてを実施することは、著しい難題である。したがって、第1の実施形態によれば、それらの分析器および支持モジュールの各々に対してWATを決定し、場合により、診断検査室システム全体についての最小のWATもまた決定する方法が提供される。WATが検査技師に可視である場合、検査技師は、分析器の生産性およびターンアラウンド時間に悪影響を及ぼすことなく、診断検査室における他の仕事に集中することができる。WATを知ることにより、診断検査室プロセス全体の生産性および効率が向上し、作業停止を最小限にすることができる。
【0014】
各分析器および支持モジュールについてのWATは、提供される試料と指示されたかつ/または予期される検査、消耗品の充填レベル、ならびに分析器または支持モジュールの保守項目の完了またはステータス(例えば、液体廃棄物および/または固体廃棄物を空にすること)を含む、いくつかの要素によって決まる。各分析器または支持モジュールに対して、WATは、技師が分析器またはモジュールに最後に物理的に触れた時点で開始する。分析器または支持モジュールが作動中である間、検査技師が再び、すなわち、例えば、1つまたはそれ以上の消耗品を再装填もしくは補充するため、かつ/または保守項目を実施する(例えば、固体廃棄物を空にする)ために、分析器または支持モジュールとインタラクトしなければならなくなる(ゼロ分)まで、WATは常に減少する。
【0015】
本開示によれば、分析器についての「推定WAT」という用語は、検査停止を回避するために技師が分析器と再びインタフェースしなければならなくなるまで経過する可能性がある時間の量として定義される。理論的には、分析器または支持モジュールについての推定WATは、(装填された試料の数、割り当てられた検査の数、消耗品の充填レベル、廃棄物のレベル等を含む)分析器または支持モジュールの現状態に関連する特性によって定義することができる。したがって、1つの態様では、分析器および/または支持モジュールの1つまたはそれ以上に対して、推定WATは、検査技師に可視であり得る(例えば、表示される)。さらに、診断検査室システムの最小推定WATも決定することができる。この診断検査室システムについての最小推定WATを表示することができる。
【0016】
さらに、本開示の別の態様では、分析器および/または診断検査室システム全体についての推定WATを知ることにより、推定WATを増加させるためにとることができる追加の行動選択肢を識別することができる。追加の行動選択肢は、全体として検査室の分析器および/または支持モジュールの現ステータスに基づくことができる。各分析器について、または推定WATを延長するために選択肢を提供することができ、各選択肢について、その行動選択肢を達成することにより推定WATをどれほど増加させることができるかの推定値を提供することができる。さらに、検査技師が完了予定の行動選択肢を選択すると、本システムは、技師に対して、行動選択肢の完了を確認するように促すことができる。
【0017】
さらに、いくつかの実施形態では、分析器および/または検査室システム全体についての推定WATは、需要推定値に基づくことができる。需要推定値は、現計画期間と同様の過去の特定の期間に指示された検査の構成および数等、履歴記録データに基づくことができる。例えば、選択することができる検査メニューが5~10検査等と限られている診断検査室システムでは、履歴期間にわたって行われた検査の数およびタイプの内訳の適切な推定値を使用して、同じかまたは同様の検査メニューを有する後の計画期間における同様の期間に対して需要を推定することができる。
【0018】
診断検査室のステータス可視化方法、分析器のステータス可視化方法、ならびにWAT推定モジュールを含む診断検査室分析器およびシステムについて説明する本開示のこれらおよび他の構成もしくは利点について、本明細書の
図1~
図9を参照して説明する。
【0019】
本開示の1つまたはそれ以上の実施形態によれば、
図1を参照して図示および記載するように、複数の分析器104
1~104
nを含む診断検査室システム100が提供される。分析器104
1~104
nは、臨床化学分析器、イムノアッセイ分析器、体外分析器、血液学分析器、分子分析器等、任意の在庫消費診断分析器であり得る。これらの分析器104
1~104
nは、以下に記載するようなものであり得る。
【0020】
本明細書で用いる場合の体外分析器は、人体から採取された血液、尿、唾液等の試料に対して検査を行うように適用された任意の分析器を広義に意味する。体外分析器は、特定の物質もしくは分析物(ナトリウムもしくはコレステロール等)の濃度を測定するか、または、遺伝子変異もしくは感染症に対する免疫反応等の特定のマーカもしくはマーカのセットの有無を検出するものであり、疾患の治療、処置または予防に役立つように人の全体的な健康状態をモニタリングするために使用することができる。体外分析器は、肝炎、HIV、臨床化学、凝固または他の血液の特性もしくは成分、尿の特性、妊娠、血糖値、コレステロール、癌診断、人類遺伝学、組織型判定、乱用薬物または治療薬の存在等に対する検査を行うことができる。
【0021】
本明細書で用いる場合の臨床化学分析器は、血清、血漿、尿、唾液または痰、脳脊髄液等の試料に対してアッセイを実施して、疾患に関連する分析物または薬物に関連する化学成分の存在を検出するように適用された分析器を意味する。分析物としては、一般に、酵素、基質、電解質および特定のタンパク質が挙げられる。薬物としては、乱用薬および/または治療薬を挙げることができる。一般的な臨床化学検査としては、グルコース、ヘモグロビンA1c、ナトリウム、カリウム、塩化物、リチウム、リン、カルシウム、コレステロール(HDL、LDL)、トリグリセリド、C反応性タンパク質、ビリルビン、リパーゼ、総タンパク質、鉄、マグネシウム、クレアチニンキナーゼ、尿素窒素、甲状腺刺激ホルモン等の濃度の検査が挙げられる。他の臨床化学検査を実施することができる。
【0022】
本明細書で用いる場合のイムノアッセイ分析器は、免疫反応を用いて生体試料中の特定の成分を検出または定量化するために使用される化学検査を行うように適用された分析器を意味する。イムノアッセイ分析器は、抗体および精製抗原を試薬として使用することから生じる、高感度かつ高特異度である。イムノアッセイ分析器は、抗体-抗原複合体の形成を測定し、インジケータ反応を介してそうした複合体を検出する。高感度は、測定された生成物の増幅をもたらすインジケータシステム(例えば、酵素標識)を使用することにより達成される。イムノアッセイは、定性的(陽性もしくは陰性)または定量的(測定量)があり得る。定量的イムノアッセイ分析器は、インジケータ反応によって生成される信号を測定する。
【0023】
イムノアッセイ分析器は、分析物を測定する(または、定性アッセイでは、検出する)ことができる。イムノアッセイは、他のより安価な検査では正確に決定することができない非常に低い濃度で存在する分析物を測定するための方法である。一般的な使用には、薬物、ホルモン、特定のタンパク質、腫瘍マーカおよび心臓損傷のマーカの測定、または骨髄炎患者の脳脊髄液(CSF)中のヘモフィルス属、クリプトコッカス属、ストレプトコッカス属の有機体における抗原等、感染性病原体の抗原および抗体を検出することが含まれる。イムノアッセイ分析器はまた、B型肝炎ウイルスおよびクラミジアトラコマティス等、培養が困難である有機体に関連する抗原と共に、ウイルス性肝炎、HIVおよびライム病で産生される抗体を検出するためにも使用される。
【0024】
本明細書で用いる場合の血液学分析器は、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、ヘモグロビン濃度、および血小板数、ヘマトクリット量、白血球百分率、赤血球分布幅、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量等を含むことができる、全血球計算(CBCパネル)等、血液に関する検査を行うように適用された分析器を意味する。
【0025】
本明細書で用いる場合の分子分析器は、DNA、RNA、タンパク質および/または脂質の操作および分析を伴う、分子生物学、生化学、遺伝学および生物物理学における分子生物学方法を行うように適用された分析器を意味する。特に、分子生物学分析器は、ゲノムおよびプロテオームにおける生物学的マーカを分析するために使用され、感染症を検出するため、腫瘍学において、ヒト白血球抗原タイピング、凝固、およびファーマコゲノミクス(例えば、効果的な療法を提供することができる薬物の遺伝子予測)において使用することができる。
【0026】
診断検査室システム100は、分析器1041~104nとして上記タイプの任意の数および組合せの分析器を含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、診断検査室システム100は、試料を分析器1041~104nに移動するために使用することができる試料移動装置106を含むことができる。
【0027】
特に、診断検査室システム100は、多数の分析器1041~104nを含むことができ、ここでnは整数である。分析器1041~104nの数は、1つ、2つ以上、4つ以上、7つ以上、11個以上、21個以上、51個以上、101個以上、またはさらにはいくつかの実施形態では201個以上であり得る。いくつかの実施形態では、自動化トラック等の1つまたはそれ以上の試料移動装置106を使用して、検査予定の試料をさまざまな分析器1041~104nに輸送することができる。試料移動装置106は、採血管(図示せず)等、試料を含む試料容器を、分析器1041~104nの各々との間で、かつ診断検査室システム100内の他の場所との間で輸送するように構成することができる。試料容器には、各々、タイムスタンプ、試料識別、要求された検査、患者識別等の識別情報を含むことができる1つまたはそれ以上のラベルを与えることができる。ラベルは、例えばバーコードを含むことができ、かつ/または、ラベルに英数字情報を印刷することができる。識別情報は、診断検査室システム100の周囲のさまざまな場所で機械可読とすることができ、それにより、システムにおける試料の場所を常に知ることができる。試料移動装置106は、レール付きトラック(例えば、モノレールまたはマルチレール)等の自動化トラック、コンベヤベルトの集まり、コンベヤチェーン、可動プラットフォーム、または他の任意の好適なタイプの搬送機構であり得る。自動化トラックは、円形であるか、または別の好適な形状を有することができ、閉じたトラック(例えば、エンドレストラック)とすることができ、1つまたはそれ以上の分析器(例えば、分析器1041~104nのうちの1つまたはそれ以上)が上に位置している1つまたはそれ以上の支線または支流を有することができる。キャリアは、試料移動装置106の一部とすることができ、試料移動装置106上で動作し、試料容器内の試料を試料移動装置106の搬送経路上のさまざまな場所へ送達することができる。
【0028】
診断検査室システム100は、
図1に示すように、システムコントローラ110をさらに含み、システムコントローラ110は、診断審査室システム100のステータス可視化方法を実行し、出力として、診断検査室システム100についてのかつ/または診断検査室システム100内の分析器104
1~104
nのうちの1つまたはそれ以上またはすべてについての推定ウォークアウェイ時間(WAT)121を提供するように構成されかつ動作可能である。保守項目の対象となる場合、試料移動装置106は、計算することができる推定WATも含むことができる。
【0029】
診断検査室システム100内の分析器1041~104nの各々は、試料に対して検査を実施するように構成されており、検査の各々は、各分析器について確立された検査のメニューから選択することができる。分析器の各々についての検査メニューは異なる可能性がある。需要の高い検査に対する等、検査のうちのいくつかは、同じであり得る。複数の分析器1041~104nの各々は、検査メニューから選択される検査を実施するときに消費される消耗品105を含む。さらに、複数の分析器1041~104nの各々は、分析器1041~104nの継続動作を可能にするために実施される保守項目107を含む。
【0030】
各分析器1041~104nのための消耗品105は、限定されないが、分析器1041~104nで検査を実施することの一部として消費される任意の材料または装置を含むことができる。例えば、消耗品105は、限定されないが、検査特異的試薬、バルク試薬、キャリブレータ、コンディショナ、コントロール液(QC液)、希釈剤、洗浄液、ピペットチップおよび反応容器のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。複数の分析器1041~104nの各々に関連する保守項目107は、固体廃棄物および/または液体廃棄物を空にすることを含むことができる。他の保守項目が達成されるようにスケジュールされている場合は、それらも含めることができる。
【0031】
診断検査室システム100は、好適な通信ネットワーク109を介して等、複数の分析器1041~104nに結合されるシステムコントローラ110をさらに含むことができる。通信ネットワーク109は、システムコントローラ110とそれぞれの複数の分析器1041~104nとの間の電子データ通信を可能にする任意の好適な通信ネットワークであり得る。診断検査室システム100は、好適な通信ネットワーク109を介して等、システムコントローラ110と1つまたはそれ以上の試料移動装置106との間の通信をさらに含むことができる。
【0032】
図示するように、システムコントローラ110は、各分析器、試料移動装置106について、かつ/または診断検査室システム100についてWATを推定するために使用される、プログラミング命令および他の情報/データを受けて記憶するように構成されたメモリ113(例えば、RAM、ROM、他のメモリデバイスまたはそれらの組合せ)を含む。システムコントローラ110は、プログラミング命令を実行するように構成されたプロセッサ116(例えば、CPU、マイクロプロセッサまたは他の同様の処理デバイス)も含むことができる。システムコントローラ110は、通信インタフェース118をさらに含むことができ、通信インタフェース118により、システムコントローラ110は、検査室情報システム(LIS)108と、試料移動装置106と、さまざまなセンサ、バーコードリーダ、ロボット機構、試料容器装填および/または取出し領域、(例えば、溶血、黄疸、脂肪血症(HIL)、もしくは気泡、血餅、泡等の他のアーチファクトのスクリーニングのため等、自動遠心分離機および試料プレスクリーニングモジュールを含むことができる)前処理ステーション、キャップ取外し装置、アリコート装置等の1つまたはそれ以上の他の構成要素111と、分析器1041~104nとに結合されるとともにそれらと電子通信することを可能にでき、それにより、それらの間でデータおよび/または情報を通信することができる。いくつかの実施形態では、通信インタフェース118は、通信ネットワーク109での通信を可能にすることができる。通信インタフェース118は、通信チャネル1471~147nを介してさまざまな分析器1041~104nとインタフェースするとともに通信することができる。
【0033】
通信チャネル1471~147nは、システムコントローラ110と各分析器1041~104nに関連するさまざまなワークステーションまたはコンピュータとの間のデータ通信を可能にする通信ネットワーク109の一部であり得る。通信ネットワーク109は、いくつかの実施形態では、例えば、システムコントローラ100がクラウドベースのサーバ等として動作可能であり得るインターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、電力線通信(PLC)ネットワーク等を含むことができる。システムコントローラ110は、オペレータインタフェース112を含むことができ、オペレータインタフェース112は、1つのWAT推定または複数のWAT推定を実施するために使用されるさまざまな動作モジュールに関連する、検査技師114等のオペレータからの入力データを受けるように構成することができる。システムコントローラ100がクラウドベースである場合、オペレータインタフェース112は、データ入力をローカルに提供するとともにクラウドサーバから推定WAT121を受けるために使用することができる、ワークステーション、タブレット、ローカルコンピュータまたはサーバ等のシステムコンポーネントを含むことができる。オペレータインタフェース112は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、またはデータ入力および命令のための他の操作デバイスを含むことができる。
【0034】
システムコントローラ110は、ウォークアウェイ時間推定モジュール115をさらに含むことができ、ウォークアウェイ時間推定モジュール115は、分析器1041~104nのうちの1つまたはそれ以上についての推定WAT121、分析器1041~104nの各々についての推定WAT121、および/または診断検査室システム100全体についての最小WATを提供するように、メモリ113に記憶され、システムコントローラ100のプロセッサ116で実行可能なプログラミングコードから構成されている。各事例における推定WATは、検査需要と共に、消耗品105および保守項目107の各々のステータスに基づく。
【0035】
本明細書に記載する本診断検査室システム100および方法では、試料の数および各試料に対する要求された検査に関する情報等、診断検査室システム100内で発生している作業負荷(需要)に関する詳細は、検査需要モジュール117から入手可能であり得る。検査需要モジュール117は、
1)検査技師114からの入力、
2)1つまたはそれ以上の分析器1041~104nから受けた入力、
3)LIS108からの入力、および/または
4)検査需要の履歴記録からの入力
を受け、それらに基づいて推定検査需要を生成することができる。
【0036】
より詳細には、検査需要モジュール117は、選択された計画期間にわたる推定検査需要を予測することができる。検査需要推定は、検査技師114によって入力された検査情報に基づくことができ、この検査情報は、分析器1041~104nについての検査メニューにおける各検査選択肢から実施される複数の検査に関して日々の検査の構成に関する検査技師114の知識に基づく、検査需要の推定値であり得る。さらに、検査情報は、分析器1041~104nによって行われる予定の実際の検査実施に基づく検査需要の推定値であり得る。さらに、検査情報は、半シフト、シフトまたはそれより長い期間等、計画期間にわたって行われる予定の検査等、LIS108から受けた実際の検査オーダデータに基づく、検査需要の推定値であり得る。いくつかの実施形態では、検査情報は、シフト、日、週、月等、過去の適切に同様の期間にわたる分析器1041~104nの各々からのデータ等、記憶された履歴データに基づく検査需要の推定値であり得る。
【0037】
推定WATを決定するために使用される検査需要推定は、検査需要推定が限られた時間枠(例えば、計画期間)のみを考慮するように、より大きいデータセットのサブセットであり得る。計画期間は、WAT推定が実行される期間であり、ユーザ選択可能であり得る。概して、WAT推定は、WAT推定モジュール115により、入手可能な検査情報の時間長よりも短いかまたはそれに等しい計画期間にわたって実行される。
【0038】
図2に示すように、分析器104
1~104
nの各々(代表的な例として示す分析器1-104
1)は、1つまたはそれ以上の検査特異的試薬225を含む試薬パックを保持するように構成および適用されている、何らかのタイプの試薬パックホルダを含むかまたはそれに関連することができる。他の試薬包装を使用することができる。試薬パックホルダは、特定のタイプの分析器に適した構成を有することができる。各試薬パックホルダは、試薬パックを受けるように構成されている複数の取付空間を含むことができる。取付空間は、試薬パックを受けるように設計された任意の好適な構成を有することができ、スロット、凹部もしくは溝、または他の任意の好適な取付構造であり得る。取付空間の上に装填することができるさまざまなタイプの試薬パックがある可能性があり、それらは、その中に、それらのすべてのリザーバにおける同じ試薬等、1つの検査特異的試薬、または任意の数の検査特異的試薬もしくは他の液体を有することができる。いくつかの試薬パックは、補助的な試薬を含むことができ、それもまた、本明細書では検査特異的試薬とみなされる。各分析器104
1~104
nに配置される予定の検査特異的試薬225の数およびタイプの組合せは、本明細書に開示するように、検査需要の推定値、すなわち、計画期間にわたって行われる予定の各検査の数の推定値によって決定される。
【0039】
図示する分析器1-1041は、バルク試薬226、各検査タイプに特異的であり得るキャリブレータ228、コンディショナ230、および同様に各検査タイプに特異的であり得るQC液232、希釈剤234、洗浄液236、ピペットチップ238、および反応容器240(例えば、キュベット、カートリッジまたはウェルプレート)のうちの1つまたはそれ以上等、消耗品105を含むかまたはそれに関連することができる。他の消耗品105としては、1種またはそれ以上のアレルゲン、反応トリガ物質、検出チップ、緩衝液、および/またはいくつかの分析器で使用される磁性粒子(ビーズ)もしくは他のコーティングされたビーズの懸濁液を挙げることができる。これらのタイプの消耗品105は、オペレータ114により必要に応じて充填される。消耗品105のいずれを最初に補充する必要があるかとともに、特定の分析器または全体として診断検査室システムについてのWATを知ることは、検査技師114が、連続動作を確実にするとともに作業停止を回避するために、非常に有用である。
【0040】
再び
図2を参照すると、図示する分析器104
1は、1つまたはそれ以上の保守項目107を含むことができる。保守項目107は、例えば、固体廃棄物242を空にすること、および/または液体廃棄物244を空にすることを含むことができる。固体廃棄物242は、使用済みのピペットチップ238および/または使用済みの反応容器240を含むことができる。液体廃棄物244は、洗浄液236または検査に使用された他の液体等、使用済み検査液を含むことができる。
【0041】
消耗品105および保守項目107の各々の隣に、検知1~11が示されている。本明細書で用いる場合の「検知」は、消耗品105および/または保守項目107のいくつかまたはすべてについて、特定の消耗品105および/または保守項目107のステータスを決定することができるように、何らかの形態の測定またはカウントが提供されることを示す。例えば、1つの実施形態では、検知は、整数カウント等のカウントによって提供することができる。例えば、包装された1つの検査特異的試薬225を使用して、その特定の検査を20回行うことができる場合、1~20のカウントを発生させることができる。いくつの検査がすでに行われたかに基づいて、検査特異的試薬225の試薬パックまたは他の包装を交換することなく何回の検査を依然として行うことができるかのカウントを発生させることができる。したがって、分析器104
1についての推定検査需要と、特定の消耗品の特定のステータスとに基づいて、残りのカウントの数、その特定の検査を行うためにかかる時間、ならびに計画期間内の他のすべての検査、較正およびQC検査のオーダに基づいて、その検査特異的試薬225についてWAT推定値を計算することができる。したがって、その特定の検査特異的試薬225についてのWAT推定値を決定し、WATステータス画面(
図4参照)等に表示することができる。
【0042】
無線または有線通信チャネルであり得る通信チャネル1471によって示すように、分析器コントローラ245が、システムコントローラ110とさらに電子通信することができる。通信は、特定の検査特異的試薬225について行うことができる残りの検査のカウントであり得る。同様に、残りの液体の量を測定するための深さまたは高さセンサ等、好適な検知デバイスから検知を提供することができる。例えば、検査特異的試薬225、キャリブレータ228、コンディショナ230、QC液232または他の液体を吸引して分注するように構成されているピペットの一部として実装された容量性、レーザまたは他の距離測定センサに基づいて、深さを決定することができる。既知の開始高さまたは深さに基づいて、残りの液体の量を決定し、通信チャネル1471を介して通信することができる。固体廃棄物242または液体廃棄物244等の保守項目107の場合、ロードセル等を用いる等、満杯の割合を決定するために重量検知を提供することができる。固体廃棄物242または液体廃棄物244を空にすることが必要になる前に行うことができる検査の数のカウント等、他の形態の検知を使用することができる。場合により、ビーム遮断式センサを使用することができる。他の分析器1041~104nのうちのいくつかまたはすべてもまた、さまざまな消耗品105および保守項目107のステータスをシステムコントローラ110に通信することができる。分析器1041~104nのいくつかまたはすべての特定の分析器コントローラ245は、さまざまな消耗品105および保守項目107のステータスを記憶し、検知更新ごと、数回の検知更新ごと、各検査後、または一定期間後等、任意の好適なサンプリングレートでシステムコントローラ110に通信することができる。したがって、システムコントローラ110は、メモリ113に、WAT推定モジュール115によって推定WAT121を決定するためにアクセスすることができる分析器1041~104nのいくつかまたはすべてについて、消耗品105および保守項目107の各々のステータスの累積合計を記憶することができる。
【0043】
ここで
図3を参照すると、システムコントローラ110は、メモリ113に記憶されかつWAT推定モジュール115によってアクセス可能である、WAT項目データベース119を含むことができる。WAT項目データベース119は、分析器104
1~104
nのいくつかまたはすべてについて、各消耗品105および保守項目107に関連する特定の時間を含むことができる。例えば、分析器1について図示するように、WAT項目入力画面346は、さまざまな入力を有することができる多数の消耗品および保守項目107を含む。例えば、分析器1 104
1について、検査技師114、プログラマ、またはWAT推定方法をセットアップする他の人は、特定の消耗品105が持ちこたえる検査の数347、および/または特定の検査の各々を実施する時間に基づくことができる総WAT加算値348等、オペレータインタフェース112を介してさまざまな入力を入力することができる。特定の消耗品105を使用して行われるすべての検査が同じ長さを有する場合、WAT加算値348は容易に決定することができる。しかしながら、分析器(例えば、分析器1 104
1)についての検査メニューにおける特定の検査が異なる長さを有する場合、WAT加算値348は、計画期間にわたる特定の推定検査需要に基づいて適用可能な数の検査を実施するための時間の合計に基づいて計算することができる。このように、メニューにおける検査が異なる時間長を有する場合、検査需要により、総WAT加算値348の値が調整される。保守項目107について、同様の入力を行うことができる。図示するように、保守項目は重量に基づくが、同様に検査カウントに基づくことができる。分析器104
1~104
nのいくつかまたはすべてが、WAT項目入力画面346を含むことができる。
【0044】
したがって、WAT推定モジュール115は、
図4のWATステータスおよび行動画面450に示すような、分析器104
1~104
nのいくつかまたはすべてについての推定WATを計算および決定する。WATステータスおよび行動画面450は、最小の検査室システムWATである、最小WATを有する特定の分析器を表示することができる。図示する例では、分析器2 104
2が、16.0分WATを有し、したがって、診断検査室システム100についての最小の検査室システム推定WAT452を決定している。最小の検査室システム推定WAT452を有する分析器は、ブロック453にも表示することができる。分析器の各々は、WATステータスおよび行動画面450に表示することができ、それにより、検査技師114は、最小の検査室システム推定WAT452を延長するために行う行動を迅速に判断することができる。
【0045】
図5は、WATステータスおよび行動画面450を示し、そこでは、検査技師114等のユーザが、利用可能な行動選択肢のリスト454から追加の行動選択肢(希釈剤を追加(Add Diluent))を選択している。この選択は、追加の行動選択肢のリスト454から行うことができ、行動選択肢のうちの1つまたはそれ以上は、識別された分析器453について最小の検査室システム推定WAT452をもたらした行動選択肢であるものとして強調表示することができる。別の選択肢を代替として選択することができるが、これは、最小の検査室システム推定WAT452を押し上げない可能性がある。図示するように、埋められたリストから等、「希釈剤を追加」という行動選択肢が選択されると、最小の検査室システム推定WAT452に時間の量が追加される。このとき、別の消耗品105または保守項目107が制限項目となる可能性があるため、列挙されている全量が追加されない可能性がある。しかしながら、列挙されている追加分+120分は、その行動項目についての時間に追加され、そのため、計画期間についての検査需要に基づいて、「希釈剤を追加」はその時間の量について再検討する必要はない。
【0046】
図示するように、検査技師114が行動項目のリスト454から行動項目を選択し、行動項目のリスト454からの選択された行動選択肢が完了すると、任意の好適な検知機構またはプロセスにより、消耗品105および/または保守項目107の新たなステータスを自動的に検知することができる。この場合、その項目についてのWATは、自動的に確認される。
【0047】
代替として、ポップアップウィンドウまたは他の好適なインタラクティブ確認選択等により、確認選択455を開始することができる。技師114は、行動項目のリスト454からの選択された行動選択肢を完了すると、確認選択455から「確認(CONFIRM)」を選択することができる。これにより、WAT推定モジュール115は、最小の検査室システム推定WAT452を再計算し、選択された行動項目(例えば、「希釈剤を追加」)についてのカウントまたは他の尺度を最大値に設定し、このとき、WAT推定モジュール115は、分析器についての検査において希釈剤が使用されるたびに、そのカウントダウンを続けることになる。さらに、「確認」選択が行われると、WAT推定モジュール115は、WATステータスおよび行動画面450において、このとき新たな最小の検査室システム推定WAT452を有する分析器を、ブロック453において識別することができる。さらに、WAT推定モジュール115は、このとき、分析器の行動項目のリスト454から、新たな最小の検査室システム推定WAT452をもたらしている次に対処する必要がある行動項目である行動項目を、強調表示するかまたは他の方法で識別することができる。
【0048】
図6は、検査技師114等のユーザが、利用可能な追加の群行動選択肢のリスト457から追加の群行動選択肢を選択することができる、群行動画面456を示す。選択は、追加の群行動選択肢のリスト457から行うことができ、群行動選択肢のうちの1つまたはそれ以上を、識別された分析器453についての最小の検査室システム推定WAT452をもたらした群行動選択肢であるものとして、強調表示するかまたは他の方法で示すことができる。ユーザは、強調表示された行動選択肢を選択することができ、その選択肢により、診断検査室システム100についての最小の検査室システム推定WAT452が延長されることになる。この場合、最初に補充が必要となるのが特定の消耗品105であったことを示す、群行動選択肢「すべてにバルク試薬を追加(Add Bulk Reagent To All)」が強調表示された。図示するように、この群行動選択肢を選択することにより、消耗品105であるバルク試薬に(+)280分が追加される。したがって、現需要に応じて、次に消耗品に対処することが必要になる時間が、推定量だけ延長される。ユーザ(例えば、検査技師114)が、選択された群行動選択肢がすべての分析器104
1~104
nについて完了したことを確認するために、この場合もまたポップアップまたは他のユーザ選択可能な確認項目を使用することができる。マウスによるクリックによるかまたはタッチスクリーンによる確認選択を選択することにより、ユーザが確認すると、これにより、WAT推定モジュール115は、最小の検査室システム推定WAT452を再計算し、選択された群行動選択肢(例えば、「すべてにバルク試薬を追加」)についてのカウントまたは他の尺度を最大値に設定し、このとき、WAT推定モジュール115は、バルク試薬が分析器についての検査で使用されるたびにそのカウントダウンを続けることになる。さらに、「確認」選択が行われると、WAT推定モジュール115は、WATステータスおよび行動画面450において、このとき新たな最小の検査室システム推定WAT452を有する分析器をブロック453において識別することができる。さらに、WAT推定モジュール115は、このとき、分析器の追加の群行動選択肢のリスト457から、新たな最小の検査室システム推定WAT452をもたらしている、次に対処する必要がある行動選択肢である新たな群行動選択肢を、強調表示するかまたは他の方法で識別することができる。
【0049】
図8は、本開示の1つまたはそれ以上の実施形態による診断検査室システム100のステータス可視化方法800のフローチャートを示す。ステータス可視化方法800は、例えば、システムコントローラ110または他の好適なコンピュータデバイス等、好適なシステムコントローラによって実行することができる。ステータス可視化方法800は、プロセスブロック802において、システムコントローラ(例えば、システムコントローラ110)において、診断検査室システム内に含まれる分析器(例えば、分析器104
1~104
n)の在庫と、分析器により試料に対して実施予定の検査のタイプおよび検査の数についての検査需要とを含むコンピュータ可読データを受けることを含むことができる。検査需要は、検査需要モジュール117から受けることができる。分析器(例えば、分析器104
1~104
n)は、各々、消耗品(例えば、消耗品105)および保守項目(例えば、保守項目107)を含む。
【0050】
方法800は、ブロック804において、システムコントローラ(例えば、システムコントローラ110)で実行しているウォークアウェイ時間推定モジュール(例えば、ウォークアウェイ時間推定モジュール115)を介して、検査需要と、消耗品および保守項目のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間(例えば、推定ウォークアウェイ時間121)を決定することを含む。消耗品(例えば、消耗品105)および保守項目(例えば、保守項目107)のステータスは、本明細書に記載するような検知によって提供することができる。検知は、検査カウントにより、または、液体の深さ、高さ、体積、圧力、近接性等の物理的測定値により、提供することができる。推定ウォークアウェイ時間121は、分析器1041~104nのすべてからの最小WATであり得る。
【0051】
方法800は、ブロック806において、分析器104
1~104
nについての推定WAT121を表示することを含むことができる。これは、1つの実施形態では、
図4におけるように分析器104
1~104
nの各々についてのWATを表示することを意味することができる。別の実施形態では、それは、
図4のWATステータスおよび行動画面450に示すように、最小の検査室システム推定WAT452を表示することを意味することができる。
【0052】
方法800は、ブロック808において、
図5に示すように、推定ウォークアウェイ時間(WAT)を増加させるために選択可能である1つまたはそれ以上の追加の行動を識別することをさらに含むことができる。
【0053】
図7は、試料に対する検査を実施するように構成されている分析器704の実施形態例を示す。分析器704は、分析器のタイプに応じて、装填ラック、ピペット、ピペットロボット、インキュベーション部材(例えば、インキュベーションリング)、試薬カルーセルまたはトレイ、吸引および分注ポンプならびに関連ハードウェア、キュベットローダ、ヒータ、化学発光用リーダ、蛍光用リーダ等、従来の検査構成要素120を含む。特に、分析器704は、分析器704についての推定ウォークアウェイ時間(WAT)721を生成および表示することができるWAT推定モジュール115を含む。特に、分析器704は、メモリ113に記憶されるとともにプロセッサ116において実行可能であり得るソフトウェアモジュールである、検査需要モジュール717およびWAT推定モジュール715を含むコントローラ710を含むことができる。検査需要モジュール717は、以前の期間にわたり分析器704(または、同じ検査メニューを有する別の分析器)によって試料に対して実施された検査のタイプおよび検査の数に対する履歴検査需要760のコンピュータ可読データを受けるように構成されている。こうした履歴検査需要760のコンピュータ可読データは、以前の期間にわたり検査が行われる際に記憶することができる。データ記憶の期間は、ユーザが、以前の期間と等しいかまたはそれよりも短い計画期間を選択することができるように、十分に長くなければならない。前述同様に、分析器704は、検査を実施するときに消費される消耗品105と、分析器704の継続動作のために実施予定の保守項目とを含む。ウォークアウェイ時間推定モジュール715は、選択された計画期間にわたる履歴検査需要760の以前記憶されたデータから推定された検査需要と共に、消耗品105および保守項目107のステータスに基づいて、分析器704についての推定ウォークアウェイ時間721を提供するように、コントローラ710において実行可能であり得る。
【0054】
上述したように、消耗品105および保守項目107のいくつかまたはすべては、特定の消耗品105のすべてを消耗しかつ/または保守項目107を行うためにかかる時間の量のWAT項目データベース119内のエントリを含むことができる。検知(図示する検知1~11)の各々の読出しは、特定の消耗品105および/または保守項目107のステータスに関する連続的な更新を提供することができる。尺度が、特定の消耗品105および/または保守項目107に対していくつの検査を行うことができるかである場合、検知は、検査カウントとして提供することができる。場合により、検知は、深さセンサ、高さセンサ、重量センサ、近接性センサ、または特定の消耗品105および/または保守項目107のステータスの検知を提供することができる他のセンサ等、任意の好適なセンサによって提供することができる。ステータスは、残量%、使用量%、補充前の行われた検査/可能な全検査の割合(例えば、144/150)、または他の好適なステータスインジケータ等、任意の有用な尺度で提供することができる。
【0055】
ウォークアウェイ時間推定モジュール715は、選択された計画期間にわたって行われるように推定された検査を使用することにより、分析器704についての推定WAT721を決定し、そこでは、各検査についての検査構成および検査時間は、履歴検査需要760のデータに実際に記録されている。しかしながら、選択された計画期間は、利用可能なデータの総量よりも小さい可能性がある。例えば、ユーザが、適用可能な計画期間として1日を選択し、1週間分のデータが利用可能である場合、ウォークアウェイ時間推定モジュール715は、需要推定値を提供するために同様の日(例えば、火曜日)を使用することができ、または場合により、履歴データのより長い期間にわたる検査の数および構成について平均することができる。計画期間は、シフト、1日、1週間または他の好適な時間等、任意の好適な期間とすることができ、ユーザ(例えば、検査技師)により選択可能であり得るか、または、固定期間であり得る。検査需要モジュール717から得られた計画期間にわたる推定検査数および検査構成と共に、WAT項目データベース719からの以前の入力、ならびに消耗品105および保守項目107の現ステータスに基づいて、消耗品105および保守項目107の各々についてWATを決定することができる。そして、WATの群から最小のWATを選択することにより、最小の推定WAT721が提供され、最小の推定WAT721を有する消耗品105または保守項目107が識別される。
【0056】
図9は、本開示の1つまたはそれ以上の実施形態による診断検査室システム100の分析器(例えば、分析器704)のステータス可視化方法900のフローチャートを示す。ステータス可視化方法900は、例えばコントローラ710等の好適なコントローラ、または他の好適なコンピュータデバイスによって実行することができる。ステータス可視化方法900は、分析器のコントローラにおいて、以前の期間にわたり(例えば、分析器704または同じ検査メニューを有する別の分析器により)試料に対して実施された検査のタイプおよび検査の数に対する履歴検査需要のコンピュータ可読データを受けることを含むことができ、そこでは、分析器は、消耗品および保守項目(例えば、消耗品105および保守項目107)を含む。
【0057】
方法900は、ブロック904において、コントローラで実行しているウォークアウェイ時間推定モジュール(例えば、ウォークアウェイ時間推定モジュール715)を介して、計画期間にわたる履歴検査需要と、消耗品および保守項目(例えば、消耗品105および保守項目107)のステータスとに基づいて、分析器についての推定ウォークアウェイ時間(例えば、推定ウォークアウェイ時間721)を決定することをさらに含む。
【0058】
方法900は、ブロック906において、分析器704についての推定WAT121を表示することを含むことができる。方法900は、ブロック908において、推定ウォークアウェイ時間(WAT)を増加させるために選択可能である1つまたはそれ以上の追加の行動を識別することをさらに含むことができる。
【0059】
選択された計画期間にわたる履歴検査需要は、メモリ113に記憶された履歴検査データ760に基づいて計画期間についての検査需要を提供することができる、検査需要モジュール717から提供することができる。例えば、計画期間が1日である場合、検査需要推定は、メモリ113に記憶された同様の1日に基づくことができる。計画期間が1週間である場合、検査需要推定は、メモリ113に記憶された同様の1週間に基づくことができる。場合により、選択された計画期間にわたる検査需要は、メモリ113に記憶されかつプロセッサ116で実行可能な検査需要モジュール717の訓練されたモデルから提供することができる。訓練されたモデルは、履歴データを含むとともに、特定の時期についての検査メニュー、インフルエンザに起因する秋から冬への需要の変化等、特定の期間にわたる特定の分析器または分析器群に特異的な作動方法または需要の変化、経時的ないくつかの検査タイプについての需要の高まりに起因する需要の変化、特定の複数の日における検査需要の変化等、特定の検査室のさまざまな事情もまた含むことができる。
【0060】
検査需要モジュール717は、過去のある期間を振り返ることができ、特定の検査室内の材料の平均消費量を使用して、計画期間にわたる今日の必要を予測することができる。検査室システムは、異なる曜日に異なる検査需要および検査の異なる構成を有する可能性があるため、過去6回の火曜日の平均等、複数の同様の日の平均のような、いくつかの特定の日を使用することも可能である。訓練されたモデルによっては、需要を推定する際に、インフルエンザの季節、アレルギーの季節、または特定の疾患の特異的な大流行等、検査室システムの外部にある要因を考慮することができる。検査需要に影響を与える可能性があるそれらの種類の要因は、年によって変化する可能性があるため、需要入力は、地域における等、いくつかの診断検査室システムにわたる平均、または、病院受入れ人員もしくはCDC報告からの疾患に関する情報、もしくは検査需要に影響を与える可能性がある他の補助的情報に関連する等、より大きいリアルタイムデータプールから得る必要がある場合がある。
【0061】
本開示は、さまざまな変更形態および代替形態が可能であるが、具体的な方法およびシステム実施形態を図面に例として示しており、本明細書で詳細に記載している。しかしながら、本明細書に開示した特定の方法およびシステムは、本開示を限定するように意図されておらず、逆に、特許請求の範囲内にあるすべての変更形態、均等物および代替形態を包含するように意図されていることを理解されたい。
【国際調査報告】