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▶ ユニバーシティ オブ ピッツバーグ − オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】自家胸腺組織の移植
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/26 20150101AFI20220930BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220930BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61K35/26
A61P9/00
A61P21/04
A61P35/00
A61P37/08
A61P37/00
A61P21/00
A61P31/00
A61P31/12
A61P7/00
A61P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507407
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 US2020044940
(87)【国際公開番号】W WO2021026195
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/882,887
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506339556
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】University of Pittsburgh - Of the Commonwealth System of Higher Education
【住所又は居所原語表記】1st Floor Gardner Steel Conference Center,130 Thackeray Avenue,Pittsburgh,PA 15260(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラガッセ, エリック
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB42
4C087BB64
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA94
4C087ZB02
4C087ZB05
4C087ZB13
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
(57)【要約】
本開示は、胸腺機能の保護または修復を必要とする被験体の胸腺機能を保護または修復するための方法およびキットを提供する。本明細書中に開示の方法およびキットは、自家胸腺組織を少なくとも1つの被験体のリンパ節内に送達させる工程を含む。1つの態様では、本開示は、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定の被験体の胸腺機能を保護または修復する方法を提供する。本発明は、例えば、胸腺機能の保護または修復を必要とする被験体の胸腺機能を保護または修復する方法であって、胸腺組織を少なくとも1つの前記被験体のリンパ節内に送達させる工程を含み、ここで、前記胸腺組織が前記被験体に対して自家である、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腺機能の保護または修復を必要とする被験体の胸腺機能を保護または修復する方法であって、胸腺組織を少なくとも1つの前記被験体のリンパ節内に送達させる工程を含み、ここで、前記胸腺組織が前記被験体に対して自家である、方法。
【請求項2】
前記被験体が先天性心臓欠陥を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体が、開心術を受けていたか、開心術を受ける予定である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が新生児または乳児であった時に胸腺摘出術を行った、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体がヒト被験体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体が、新生児または乳児である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記被験体が、小児、青年、または成人である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体が、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記胸腺組織を胸腺摘出術中の被験体から得る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記胸腺組織を胸腺摘出術前の被験体から得る、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記胸腺組織が、切り刻まれた胸腺切片である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記胸腺組織を、前記送達させる工程の前にex vivoで培養する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記胸腺組織を、前記送達させる工程の前に少なくとも24時間ex vivoで培養する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記胸腺組織を、針によって前記被験体のリンパ節内に送達させる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記胸腺組織を、前記胸腺摘出術中に前記リンパ節内に送達させる、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記胸腺組織を、前記胸腺摘出術後に前記リンパ節内に送達させる、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記胸腺組織が、前記胸腺摘出術後のリンパ節内への送達前に低温保存されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記低温保存された胸腺組織を、リンパ節内に、前記胸腺摘出術から約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約2ヶ月後、約4ヶ月後、約6ヶ月後、約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、約5年後、約10年後、約15年後、約20年後、またはそれを超えた期間の後に送達させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記胸腺組織の量が、前記被験体の胸腺機能を修復するのに有効な量である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記胸腺組織の量が、前記リンパ節中で拡大するのに有効な量であり、ここで、前記拡大した胸腺組織が前記被験体の胸腺機能を修復する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記胸腺組織の量が、少なくとも約0.1グラムである、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記胸腺組織の量が、約20グラムまでである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記胸腺組織のサイズが、少なくとも約0.1cmである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記胸腺組織のサイズが、約20cmまでである、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記胸腺組織を、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の前記被験体のリンパ節内に送達させる、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体の総胸腺重量の少なくとも約1/3を、少なくとも1つの前記被験体のリンパ節内に送達させる、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
被験体の胸腺機能を保護または修復するためのキットであって、胸腺組織および少なくとも1つの前記被験体のリンパ節への前記胸腺組織の送達のためのツールを含み、ここで、前記胸腺組織が前記被験体に対して自家である、キット。
【請求項28】
前記キットは溶液をさらに含み、ここで、前記胸腺組織が前記溶液中に提供される、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記溶液が、薬学的に許容され得る賦形剤、薬学的に許容され得る希釈剤、または薬学的に許容され得る担体を含む、請求項27または28に記載のキット。
【請求項30】
前記胸腺組織の量が、前記被験体の胸腺機能を修復するのに有効な量である、請求項27~29のいずれか1項に記載のキット。
【請求項31】
前記胸腺組織の量が、前記リンパ節中で拡大するのに有効な量であり、ここで、前記拡大した胸腺組織が前記被験体の胸腺機能を修復する、請求項27~30のいずれか1項に記載のキット。
【請求項32】
指示書をさらに含み、ここで、指示が、前記少なくとも1つの被験体のリンパ節への前記胸腺組織の送達を含む、請求項27~31のいずれか1項に記載のキット。
【請求項33】
前記指示が、前記被験体の総胸腺重量の少なくとも約1/3の、前記少なくとも1つの被験体のリンパ節内への送達を含む、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記胸腺組織の送達のためのツールが、低侵襲手技に必要な針およびツールを含む、請求項27~33のいずれか1項に記載のキット。
【請求項35】
前記胸腺組織が、低温保存された胸腺組織である、請求項27~34のいずれか1項に記載のキット。
【請求項36】
前記被験体が、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定である、請求項27~35のいずれか1項に記載のキット。
【請求項37】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体中のT細胞であるCD45+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の後に少なくとも20%である、方法。
【請求項38】
前記T細胞であるCD45+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の後に少なくとも25%である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記T細胞であるCD45+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の後に少なくとも30%である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体中のT細胞であるCD45+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のT細胞であるCD45+末梢血球の頻度より少なくとも5%増加する、方法。
【請求項41】
前記T細胞であるCD45+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のT細胞であるCD45+末梢血球の頻度より少なくとも10%増加する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記T細胞であるCD45+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のT細胞であるCD45+末梢血球の頻度より少なくとも20%増加する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記T細胞であるCD45+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のT細胞であるCD45+末梢血球の頻度より少なくとも30%増加する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度と比較して少なくとも5%増加する、方法。
【請求項45】
前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度と比較して少なくとも10%増加する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度と比較して少なくとも20%増加する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のT細胞の濃度と比較して少なくとも30%増加する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の後に少なくとも20%である、方法。
【請求項49】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の後に少なくとも25%である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の後に少なくとも30%である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、送達させる工程の後に少なくとも40%である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の後に少なくとも50%である、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、送達前の前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度より少なくとも5%増加する、方法。
【請求項54】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度より少なくとも10%増加する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度より少なくとも20%増加する、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度より少なくとも30%増加する、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度より少なくとも40%増加する、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度が、前記送達させる工程の前の前記被験体中のナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度より少なくとも50%増加する、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度と比較して少なくとも5%増加する、方法。
【請求項60】
前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度と比較して少なくとも10%増加する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度と比較して少なくとも20%増加する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度と比較して少なくとも30%増加する、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度と比較して少なくとも40%増加する、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度が、前記送達させる工程の前の前記被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度と比較して少なくとも50%増加する、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記ナイーブT細胞がCD45RA+CCR7+である、請求項48~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記ナイーブT細胞が、CD44-CD62L+またはそのヒト等価物である、請求項48~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
被験体中の1またはそれを超えるリンパ節内に少なくとも約7グラムの胸腺組織を送達させる工程を含む方法。
【請求項68】
少なくとも8グラムの胸腺組織を、前記被験体中の1またはそれを超えるリンパ節内に送達させる、請求項37~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも9グラムの胸腺組織を、前記被験体中の1またはそれを超えるリンパ節内に送達させる、請求項37~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
少なくとも10グラムの胸腺組織を、前記被験体中の1またはそれを超えるリンパ節内に送達させる、請求項37~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体が少なくとも40歳である、方法。
【請求項72】
前記被験体が少なくとも50歳である、請求項37~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記被験体が少なくとも55歳である、請求項37~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記被験体が少なくとも60歳である、請求項37~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記被験体が少なくとも65歳である、請求項37~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記被験体が少なくとも70歳である、請求項37~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
被験体のリンパ節内に胸腺組織を送達させる工程を含む方法であって、前記被験体の体重1キログラムあたり少なくとも50ミリグラムの胸腺組織を送達させる、方法。
【請求項78】
前記被験体の体重1キログラムあたり少なくとも100ミリグラムの胸腺組織を送達させる、請求項37~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記胸腺組織が低温保存されていた、請求項37~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記胸腺組織がex vivoで培養されていた、請求項37~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記胸腺組織を、前記被験体の胸腺機能を増大させるのに有効な量で送達させる、請求項37~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記胸腺組織を、前記リンパ節中で異所性胸腺組織を形成するのに有効な量で送達させる、請求項37~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記胸腺組織を、前記被験体におけるT細胞受容体密度レベルを増加させるのに有効な量で送達させる、請求項37~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記胸腺組織を単回用量で送達させる、請求項37~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記胸腺組織を、2回またはそれを超える用量で送達させる、請求項37~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記胸腺組織を単一のリンパ節に送達させる、請求項37~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記胸腺組織を2またはそれを超えるリンパ節に送達させる、請求項37~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記胸腺組織が切り刻まれた胸腺切片を含む、請求項37~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記胸腺組織を前記リンパ節に注射する、請求項37~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記胸腺組織を低侵襲手技の一部として前記リンパ節内に注射する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記被験体が新生児である、請求項37~70または77~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記被験体が乳児である、請求項37~70または77~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記被験体が小児である、請求項37~70または77~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記被験体が青年である、請求項37~70または77~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記被験体が成人である、請求項37~70または77~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記被験体が哺乳動物である、請求項37~70または77~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記被験体がヒトである、請求項37~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記被験体が胸腺摘出術を受けていた、請求項37~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記胸腺組織を前記胸腺摘出術中に得る、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記胸腺組織を前記胸腺摘出術中に前記リンパ節に送達させる、請求項98または請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記胸腺組織を前記胸腺摘出術後に前記リンパ節に送達させる、請求項98または請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記被験体が、胸腺に影響を及ぼす容態を有する、請求項37~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記胸腺に影響を及ぼす容態が、重症筋無力症、真性赤血球系無形成、低ガンマグロブリン血症、胸腺癌、胸腺腫、A型胸腺腫、B型胸腺腫、自己免疫疾患、T細胞媒介性自己免疫、T細胞リンパ球減少症、胸腺萎縮、加齢性胸腺萎縮、胸腺嚢胞、胸腺過形成、胸腺低形成、胸腺無形成、胸腺形成異常、重症複合型免疫不全、ネゼロフ症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群(Wiscott-Aldrich syndrome)ディジョージ症候群、再発性感染症、再発性ウイルス感染、免疫学的早期老化、または癌である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記胸腺組織が前記被験体に対して自家である、請求項37~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記胸腺組織が前記被験体に対して同種である、請求項37~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記胸腺組織のHLAが前記被験体と適合する、請求項37~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
免疫抑制レジメンを前記被験体に施す工程をさらに含む、請求項37~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記送達させる工程の後の前記被験体の末梢血のCD4T細胞:CD8T細胞比が約5:1と1:1との間である、請求項37~107のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
本出願は、2019年8月5日提出の米国仮出願第62/882,887号(その内容全体が本明細書に参照により援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
2.技術分野
本開示は、例えば、胸腺摘出術後に胸腺機能の保護または修復を必要とする被験体(例えば、ヒト被験体)の胸腺機能を保護または修復する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
3.背景
胸腺は、免疫系のリンパ系器官であり、T細胞を産生し、成熟させることができる。種々の胸腺関連障害を処置するために胸腺を外科的に除去する胸腺摘出手技がしばしば実施される。胸腺摘出は、重症筋無力症、胸腺腫、または胸腺の腫瘍を有する患者に有効な処置の選択肢であり得る。
【0004】
胸腺は胎児期および出生後早期に最も活動することが知られているので、そのサイズおよび活動は、出生後に低下し始め得る。胸腺摘出は、ある特定の小児(例えば、新生児および乳児)において先天性心臓欠陥の修復のために日常的に行われ得る。胸腺は心臓への経路を遮断するように胸骨下に存在し得るので、胸腺の部分的摘出または全摘を行うことにより、心臓および大血管への接近および可視化を容易にすることができる。米国では、毎年約20,000人の乳児が胸腺摘出を受けている。
【0005】
しかしながら、胸腺摘出は、T細胞成熟のための主な情報源が排除されると考えられており、重篤な長期にわたる臨床的影響(自己免疫疾患、癌、感染症、アトピー性疾患、および免疫学的早期老化など)を引き起こし得る。胸腺摘出が頻繁に実施されているにもかかわらず、胸腺摘出を受けた小児が利用できる十分に有効な処置は存在しない。
【0006】
したがって、胸腺摘出を行った被験体の胸腺機能の保護または修復に有効な処置が依然として必要である。本明細書中に開示の発明の対象は、かかる処置を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
4.発明の概要
本開示は、胸腺機能の保護または修復を必要とする被験体(例えば、ヒト被験体)の胸腺機能を保護または修復するための技術およびキットを提供する。本明細書中に開示の発明の対象は、少なくともその一部が、胸腺摘出を受けた小児、特に新生児および乳児が重篤な長期の臨床障害および臨床疾患(自己免疫疾患、癌、感染症、アトピー性疾患、および免疫学的早期老化が含まれる)を発症し得るという発見に基づく。
【0008】
1つの態様では、本開示は、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定の被験体の胸腺機能を保護または修復する方法を提供する。本方法は、胸腺組織を少なくとも1つの被験体のリンパ節内に送達させる工程を含み、ここで、前述の胸腺組織は前述の被験体に対して自家である。
【0009】
ある特定の実施形態では、被験体は、先天性心臓欠陥を有する。ある特定の実施形態では、被験体は、開心術を受けていたか、開心術を受ける予定である。
【0010】
ある特定の実施形態では、被験体は、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定である。非限定的な実施形態では、被験体が新生児または乳児であった時に胸腺摘出術を行った。
【0011】
ある特定の実施形態では、被験体はヒト被験体である。ある特定の実施形態では、被験体は、新生児または乳児である。ある特定の実施形態では、被験体は、小児、成人、または青年である。
【0012】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術中の被験体から得る。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術前の被験体から得る。
【0013】
ある特定の実施形態では、胸腺組織は、切り刻まれた胸腺切片である。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、送達前にex vivoで培養する。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、送達前に少なくとも24時間ex vivoで培養する。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、針によって被験体のリンパ節内に送達させる。
【0014】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、針によって被験体のリンパ節内に送達させる。
【0015】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術中にリンパ節内に送達させる。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術後にリンパ節内に送達させる。
【0016】
ある特定の実施形態では、胸腺組織は、リンパ節内への送達前に低温保存されている。ある特定の実施形態では、低温保存された胸腺組織を、胸腺摘出術後にリンパ節内に送達させる。ある特定の実施形態では、低温保存された胸腺組織を、リンパ節内に、胸腺摘出術から約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約2ヶ月後、約4ヶ月後、約6ヶ月後、約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、約5年後、約10年後、約15年後、約20年後、またはそれを超えた期間の後に送達させる。
【0017】
ある特定の実施形態では、胸腺組織の量は、被験体の胸腺機能を修復するのに有効な量である。ある特定の実施形態では、胸腺組織の量は、リンパ節中で拡大するのに有効な量であり、ここで、拡大した胸腺組織が被験体の胸腺機能を修復する。
【0018】
ある特定の実施形態では、胸腺組織の量は、少なくとも約0.1グラムである。ある特定の実施形態では、胸腺組織の量は、約20グラムまでである。ある特定の実施形態では、胸腺組織のサイズは、少なくとも約0.1cmである。ある特定の実施形態では、胸腺組織のサイズは、約20cmまでである。
【0019】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の被験体のリンパ節内に送達させる。ある特定の実施形態では、胸腺組織は、低温保存された胸腺組織である。非限定的な実施形態では、被験体の総胸腺重量の少なくとも約1/3を、少なくとも1つの被験体のリンパ節に送達させる。
【0020】
別の態様では、本開示は、被験体の胸腺機能を保護または修復するためのキットを提供する。キットは、胸腺組織および少なくとも1つの被験体のリンパ節への前述の胸腺組織の送達のためのツールを含み、ここで、前述の胸腺組織が前述の被験体に対して自家である。
【0021】
ある特定の実施形態では、キットは溶液をさらに含み、ここで、胸腺組織は溶液中に提供される。ある特定の実施形態では、溶液は、薬学的に許容され得る賦形剤、薬学的に許容され得る希釈剤、または薬学的に許容され得る担体を含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、胸腺組織の量は、被験体の胸腺機能を修復するのに有効な量である。ある特定の実施形態では、胸腺組織の量は、リンパ節中で拡大するのに有効な量であり、ここで、拡大した胸腺組織が被験体の胸腺機能を修復する。
【0023】
ある特定の実施形態では、キットは、少なくとも1つの被験体のリンパ節への胸腺組織の送達を含む指示書をさらに含む。非限定的な実施形態では、指示は、被験体の総胸腺重量の少なくとも約1/3の、少なくとも1つの被験体のリンパ節内への送達を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、胸腺組織の送達のためのツールは、低侵襲手技に必要な針およびツールを含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、被験体は、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定である。
5.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1A~1Cは、回収および移植された野生型新産仔胸腺を説明している。図1Aは、本開示の移植のために使用されたBALB/c野生型新産仔胸腺の重量の棒グラフを示す。図1Bは、本開示の1/4葉、1/2葉、または1葉の胸腺、または全胸腺を移植したBALB/cヌードマウス数の棒グラフを示す。図1Cは、本開示のmgで表示した各用量の胸腺を移植したBALB/cヌードマウス数を示す棒グラフである。
図1B】同上。
図1C】同上。
図2A図2A~2Eは、移植4ヶ月後の末梢血T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。図2Aは、本開示の非移植(UnTx)BALB/cヌードマウス、胸腺移植(Tx)BALB/cヌードマウス、およびBALB/c野生型マウスにおけるCD3+T細胞の百分率のフローサイトメトリーのドットプロットを示す。細胞を最初にシングレット、その後に生細胞、CD45+細胞、最後にCD3発現についてゲーティングした。図2Bは、本開示のCD3+であるCD45+細胞の百分率の平均を用いた散布図を示す。図2Cは、本開示のCD4+であるCD3+細胞の百分率の平均を用いた散布図を示す。図2Dは、本開示のCD8+であるCD3+細胞の百分率の平均を用いた散布図を示す。図2Eは、本開示の胸腺を移植したBALB/cヌードマウスにおけるCD3+T細胞であるCD45+細胞の百分率の平均およびSEMを用いた散布図を示す。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図2E】同上。
図3A図3A~3Bは、移植5ヶ月後の末梢血T細胞のフローサイトメトリー分析を示す。図3Aは、本開示の1/4葉、1/2葉、1葉、または2葉の胸腺を移植したBALB/cヌードマウスにおけるCD3+T細胞であるCD45+細胞の百分率の平均および標準偏差を用いた棒グラフを示す。図3Bは、図3AにあるようなマウスにおけるTCR-Vβバリアントを発現するT細胞の百分率の棒グラフを示す。BALB/c野生型マウスは、正の対照(CNTRL)を示す。
図3B】同上。
図4A図4A~4Bは、胸腺組織断片の移植6ヶ月後のリンパ節の重量を示す。図4Aは、本開示の胸腺の葉を移植されたBALB/cヌードマウスにおけるリンパ節(LN)の重量の平均を用いた散布図を示す。図4Bは、本開示の胸腺を移植したBALB/cヌードマウスにおけるリンパ節(LN)の重量の平均およびSEMを用いた散布図を示す。
図4B】同上。
図5A図5A~5Hは、本開示のエフェクター/エフェクターメモリーT細胞(CD4+CD3+CD44+CD62L-)および(CD8+CD3+CD44+CD62L-);セントラルメモリーT細胞(CD4+CD3+CD44+CD62L+)および(CD8+CD3+CD44+CD62L+);活性化されたエフェクターT細胞(CD4+CD3+CD44-CD62L-)および(CD8+CD3+CD44-CD62L-);ナイーブT細胞(CD4+CD3+CD44-CD62L+)および(CD8+CD3+CD44-CD62L+)についてフローサイトメトリーを使用したゲーティングアプローチを示すフローサイトメトリーのドットプロットを示す。図5Aは、前方散乱ゲート対側方散乱ゲートを示す。図5Bは、単一細胞についてのゲートを示す。図5Cは、生細胞についてのゲートを示す。図5Dは、CD45+細胞についてのゲートを示す。図5Eは、CD3+細胞についてのゲートを示す。図5Fは、CD4+細胞およびCD8+細胞についてのゲートを示す。図5Gは、ナイーブ細胞、活性化されたエフェクター細胞、エフェクターメモリー細胞、およびセントラルメモリー細胞についてのCD4+細胞のゲーティングを示す。図5Hは、ナイーブ細胞、活性化されたエフェクター細胞、エフェクターメモリー細胞、およびセントラルメモリー細胞についてのCD8+細胞のゲーティングを示す。
図5B】同上。
図5C】同上。
図5D】同上。
図5E】同上。
図5F】同上。
図5G】同上。
図5H】同上。
図6A図6A~6Eは、成体マウスおよび高齢マウスのリンパ節内への胸腺組織断片の移植から7週間後の末梢血T細胞サブセットのフローサイトメトリー分析を示す。図6Aは、本開示の1/4胸腺葉を移植した(Tx)か移植していない成体または老齢のC57BL/6J雌マウスにおけるCD4+のナイーブT細胞、エフェクターT細胞、およびエフェクターメモリーT細胞、およびセントラルメモリーのT細胞の亜集団のフローサイトメトリーのドットプロットを示す。図6B~6Eは、本開示の1/4胸腺葉を移植したか移植していない成体または老齢のC57BL/6J雌および雄マウスにおける活性化されたCD4+T細胞エフェクター(図6B)、CD4+エフェクターメモリーT細胞(図6C)、CD4+セントラルメモリーT細胞(図6D)、およびCD4+ナイーブT細胞(図6E)であるCD4+T細胞の百分率の平均およびSEMを用いた散布図を示す。
図6B】同上。
図6C】同上。
図6D】同上。
図6E】同上。
【発明を実施するための形態】
【0027】
6.詳細な説明
本開示の非限定的な実施形態を、本明細書および実施例によって説明する。本開示を制限するためではなく明確にするために、詳細な説明を以下の小節に分けている:
6.1 定義;
6.2 処置方法;および
6.3 キット。
【0028】
6.1 定義
本明細書中で使用した用語は、一般に、当該分野、本開示の発明の対象の文脈内、および各用語が使用される特定の文脈において通常の意味を有する。ある特定の用語を、開示の発明の対象の組成物および方法ならびにこれらの作製方法および用途を説明する上での実施者に対するさらなる指針を提供するために、以下または本明細書中の他所で考察している。
【0029】
本明細書中で使用される場合、単語「a」または「an」は、特許請求の範囲中および/または本明細書中で用語「comprising」と併せて使用される場合、「1」を意味し得るが、「1またはそれを超える」、「少なくとも1つ」、および「1または1を超える」の意味とも一致する。なおさらには、用語「有する(having)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、および「含む(comprising)」は、相互に置き替えることができ、当業者は、これらの用語が非制限の用語であることを認識している。
【0030】
用語「約」または「およそ」は、当業者によって決定された特定の値についての許容され得る誤差範囲内であることを意味し、この誤差範囲は、値が測定または決定される方法(すなわち、測定系の限界)に一部依存するであろう。例えば、「約」は、当該分野の実務に従って3または3を超える標準偏差内であることを意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくはさらに1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的な系またはプロセスに関して、この用語は、値の一桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0031】
本明細書中の「個体」または「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)などの脊椎動物である。哺乳動物には、ヒト、非ヒト霊長類、家畜、競技用動物、げっ歯類、および愛玩動物が含まれるが、これらに限定されない。非ヒト動物被験体の非限定的な例には、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットなど);ウサギ;イヌ;ネコ;ヒツジ;ブタ;ヤギ;ウシ;ウマ;および非ヒト霊長類(類人猿およびサルなど)が含まれる。
【0032】
成人ヒト被験体は、少なくとも約18歳に到達している被験体である。成体非ヒト被験体は、性的成熟に到達している被験体である。ある特定の実施形態では、新生児は、最長で約1ヶ月に到達しているヒト被験体である。ある特定の実施形態では、乳児は、約1ヶ月と約2歳との間の年齢に到達しているヒト被験体である。ある特定の実施形態では、小児は、約2歳と約12歳との間の年齢に到達しているヒト被験体である。ある特定の実施形態では、青年は、約12歳と約18歳との間の年齢に到達しているヒト被験体である。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「疾患」は、細胞、組織、または器官の通常の機能が損傷を受けているか、妨害を受けている任意の容態または障害を指す。
【0034】
物質の「有効量」は、この用語が本明細書中で使用される場合、有益であるか望ましい結果(臨床結果が含まれる)を得るのに十分な量であり、そのようなものとして、「有効量」は、この用語が適用される状況に依存する。有効量を、1回または複数回で投与することができる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、また、当該分野において十分に理解されているように、「処置」は、臨床結果を含む有益な結果または所望の結果を得るためのアプローチである。この主題の目的を果たすために、有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、1またはそれを超える兆候または症状の軽減もしくは回復、疾患の程度の低下、安定化された(すなわち、悪化していてない)疾患状態、疾患の防止、疾患の進行の遅延もしくは減速、ならびに/または疾患状態の回復もしくは緩和が挙げられるがこれらに限定されない。減少は、合併症または症状の重症度の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%の減少であり得る。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予想される生存期間と比較した生存期間の延長を意味し得る。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の発明の対象を、被験体(例えば、ヒト被験体、新生児、乳児、小児、青年、または成人)における胸腺機能を修復するために使用する。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の発明の対象を、被験体中の循環T細胞(例えば、末梢血中のナイーブT細胞)のレベルを増加させるために使用する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、任意の濃度範囲、百分率の範囲、比の範囲、または整数の範囲は、別段の指示がない限り、列挙した範囲内の任意の整数の値が含まれ、適切な場合、その分数(整数の1/10および1/100など)が含まれると理解されるものとする。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容され得る」は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当なベネフィット/リスク比に見合う過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに被験体(例えば、ヒト被験体または非ヒト動物)の組織と接触させて用いるのに適切な化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すことができる。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容され得る賦形剤」は、身体の器官または一部への発明の対象となる化合物、材料、または細胞の運搬または輸送に関与する薬学的に許容され得る材料、組成物、またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、担体、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルク マグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒をカプセル化する材料などを指すことができる。各賦形剤は、製剤の他の成分(例えば、移植されるべき細胞)と適合し、かつ被験体に有害でないという意味で「許容され得」なければならない。
【0039】
6.2 処置方法
本開示は、胸腺機能の保護または修復を必要とする被験体を保護または修復する方法を提供する。方法は、被験体の胸腺機能を保護、増加、または修復するために少なくとも1つの被験体のリンパ節内に胸腺組織(例えば、自家胸腺組織)を送達させる工程を含む。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法は、胸腺摘出術の短期または長期の臨床的影響(自己免疫疾患、癌、感染症、アトピー性疾患、免疫学的早期老化、またはその組み合わせなど)を予防または軽減することができる。
【0040】
6.2.1 胸腺組織
ある特定の実施形態では、被験体は、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定である。ある特定の実施形態では、被験体内に送達される自家胸腺組織を、胸腺摘出術中の被験体から得る。ある特定の実施形態では、被験体内に送達される自家胸腺組織を、胸腺摘出術前の被験体から得る。ある特定の実施形態では、被験体が新生児、乳児、または小児である時に胸腺摘出術を行った。
【0041】
いくつかの実施形態では、被験体に送達される胸腺組織は、自家ではない(例えば、同種である)。いくつかの実施形態では、胸腺組織は、被験体と1またはそれを超えるヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子が適合する(例えば、1、2、3、4、5、または6つのHLA対立遺伝子の一方または両方のコピーが適合する)ドナーに由来する。胸腺組織は、被験体とHLAが部分的に適合するか、HLAが完全に適合するか、ハプロタイプが一致するドナーに由来し得る。移植片拒絶の可能性を低下させるために、被験体に免疫抑制レジメンを施すことができる。免疫抑制レジメンの一部として投与することができる薬物の非限定的な例には、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)、CD28-B7の阻害剤(例えば、CTLA4-Ig)、CD40-CD40Lの阻害剤(例えば、MR1)、ステロイド(コルチコステロイド、デキサメタゾン、およびプレドニゾンなど)、Cox-1阻害剤およびCox-2阻害剤、マクロライド系抗生物質(ラパマイシンおよびタクロリムスなど)、シクロスポリン、アザチオプリン、Atgam、サイモグロブリン、OKT3、バシリキシマブ、ソルメドロール、ダクリズマブ、ミコフェノール酸モフェチル、プログラフ、およびB細胞、T細胞、および/または他の先天性免疫活性を限定、軽減、または抑制する他の物質が含まれる。免疫抑制レジメンは、所望の効果を達成するために投与される1つの薬物または適切な薬物の任意の組み合わせを含むことができる。
【0042】
送達のための胸腺組織を、当該分野で公知の任意の適切な技術(例えば、Market et al.,Blood 102,1121-1130(2003)(その内容全体が本明細書に参照により援用される)に記載の技術が含まれるが、これらに限定されない)を使用して調製することができる。ある特定の実施形態では、被験体から採取された胸腺組織を、小断片に処理し(例えば、切り刻むかスライスし)、液体に再懸濁して、リンパ節内に送達させるための溶液を形成する。いくつかの実施形態では、胸腺断片を含む移植片は、機能的な異所性胸腺の生成において、単一細胞懸濁液の胸腺移植片より優れている。例えば、胸腺断片を含む移植片により、胸腺組織の植え付け量を増加させるか、循環T細胞の比率または数を増加させるか、循環ナイーブT細胞の比率または数を増加させるか、本明細書中に開示の他のパラメーターを有利にすることができる。溶液は、好ましくは、無菌であり得る。溶液は、製造および貯蔵の条件下で安定であることができ、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチロメサールなどを使用することによって細菌および真菌などの微生物に汚染されずに保存することができる。
【0043】
ある特定の実施形態では、溶液は、胸腺組織を構成する異なる細胞型を含む。ある特定の実施形態では、溶液は、薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、または担体をさらに含む。薬学的に許容され得る担体および希釈剤には、生理食塩液、緩衝液、溶媒、および/または分散媒が含まれる。本開示の方法と共に使用することができる薬学的に許容され得る賦形剤の非限定的な例には、以下が含まれる:糖(ラクトース、グルコース、およびスクロースなど);デンプン(トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなど);セルロース、およびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、および酢酸セルロースなど);トラガカント末;麦芽;ゼラチン;潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルクなど);カカオバターおよび坐剤用ワックス;油(ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油など);グリコール(プロピレングリコールなど);ポリオール(グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール(PEG)など);エステル(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);寒天;緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理食塩液;リンゲル液;エチルアルコール;pH調整緩衝液;ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ酸無水物;増量剤(ポリペプチドおよびアミノ酸など);血清成分(血清アルブミン、HDL、およびLDLなど);C2~C12アルコール(エタノールなど);および医薬製剤で使用される他の非毒性の適合物質。
【0044】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、処理して被験体内に送達させる前にex vivoで培養する。器官の培養のための当該分野で公知の任意の培養培地を、本開示の方法と共に使用することができる。ある特定の実施形態では、培地は、組織の生存能を維持するための栄養素、胸腺組織の微生物感染を予防するための少なくとも1つの抗生物質、および培地の適切なpH範囲を維持するための緩衝系を含む。ある特定の実施形態では、培地は、F12栄養混合物、25mM HEPES、2mM L-グルタミン、10%ウシ胎児血清、100ug/mL硫酸ストレプトマイシン、1ug/mLゲンタマイシン、および100ug/dLアンホテリシンBを含む。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、培地中で5%COインキュベーター中にて37℃で培養する。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺組織を処理するか、被験体内に送達させる前に、ex vivoで少なくとも約2時間、約4時間、約12時間、約24時間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約10日間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、もしくは約10週間、またはそれを超えて培養する。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、低温保存前、低温保存後、またはその組み合わせで培養する。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、処理および/または被験体内への送達前にex vivoで培養しない。
【0045】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、処理または被験体内への送達前に低温保存する。当該分野で公知の胸腺組織の任意の低温保存方法を、本明細書中に開示の方法(例えば、Jang et al.,Integr Med Res.2017 Mar;6(1):12-18(その内容全体が本明細書に参照により援用される)に開示の方法であるが、これに限定されない)と共に使用することができる。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、リンパ節内への送達前に少なくとも約12時間、約24時間、約2日間、約3日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約8ヶ月間、約10ヶ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、約20年間、またはそれを超える期間低温保存する。ある特定の実施形態では、低温保存された胸腺組織を、胸腺摘出術から長期間を経た後にリンパ節内に送達させる。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、処理および/または被験体内への送達前に低温保存しない。
【0046】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術中の被験体内に送達させる。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術後の被験体内に送達させる。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術から約10分後、約30分後、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約6時間後、約12時間後、約24時間後、約2日後、約3日後、約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約8ヶ月後、約10ヶ月後、約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、約5年後、約6年後、約7年後、約8年後、約9年後、約10年後、約15年後、約20年後、またはそれを超えた後に被験体内に送達させる。非限定的な実施形態では、胸腺組織を、胸腺摘出術の実施中に被験体内に送達させる。
【0047】
ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量は、被験体の胸腺機能を修復するのに有効な量である。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量は、被験体の胸腺機能を増大させるのに有効な量である。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量は、リンパ節中で拡大するのに有効な量であり、例えば、ここで、拡大した胸腺組織が被験体の胸腺機能を修復する。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量は、リンパ節内に植え付けるのに有効な量である。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量は、リンパ節中で異所性胸腺組織を形成するのに有効な量である。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量は、被験体中の循環T細胞(例えば、末梢血中のT細胞および/またはナイーブT細胞)のレベルを増加させるのに有効な量である。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量は、被験体における循環T細胞の密度を増加させる(例えば、TCRのレパートリーおよび認識される同種抗原を増加させる)のに有効な量である。有効量は、被験体の病歴、年齢、容態、性別、ならびに被験体における病状の重症度および型、ならびに他の薬学的に活性な作用因子の投与に応じて変動させることができる。
【0048】
ある特定の実施形態では、方法および系を、胸腺細胞または胸腺断片を被験体のリンパ節内に送達させるために使用し、それにより、胸腺の細胞または断片をリンパ節中に植え付けて異所性胸腺を産生することが可能である。ある特定の実施形態では、異所性胸腺は、被験体の胸腺機能を修復する(例えば、通常の健康な胸腺器官が果たすことができる1またはそれを超える機能を補足するか増強する)。例えば、制限されないが、異所性胸腺は、T細胞の成長、発生、成熟、および選択に関与するために身体の免疫調節に関与し得る。本開示の異所性胸腺の産生は、免疫系に機能障害を有する被験体(例えば、胸腺摘出術(例えば、胸腺の部分的または完全な除去)を受けている被験体における免疫系機能の増強または調整で使用することができる。
【0049】
ある特定の実施形態では、本開示は、新生児被験体または乳児被験体由来の胸腺組織の、前述の被験体自身のリンパ節内への移植に関する。いくつかの実施形態では、被験体は、胸腺組織を身体から得た時点またはその直後に(例えば、24時間以内、1週間以内、1ヶ月以内、または1年以内に)移植を受ける。これらの実施形態のうちのいくつかでは、被験体は、リンパ節内への移植を受ける時に新生児または乳児である。いくつかの実施形態では、被験体は、胸腺組織を被験体から除去してから複数年後に移植を受ける。例えば、被験体が新生児または乳児であった時に胸腺組織が被験体から除去されていたが、移植を受ける時には、被験体は成人、小児、または青年である。
【0050】
ある特定の実施形態では、新生児または乳児由来の自家胸腺組織の、被験体が新生児、乳児、または小児である時点での被験体のリンパ節内への移植を含む方法および系は、成人被験体内への胎児の胸腺組織または成人の胸腺組織の移植と比較して有利である。ある特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明の方法および系は、数ある利点のうちで特に、若年期の被験体(例えば、新生児、乳児、または小児)のリンパ節内に自家新生児胸腺組織を移植すると、移植された胸腺細胞に、生来の新生児胸腺が成長し発達する環境に類似の環境において成長および機能するための環境を提供することができるので、有利である。新産児哺乳動物(例えば、ヒト)は、出生直後の末梢性免疫系を制限することができ、末梢組織中に存在するTリンパ球はわずかである。したがって、生来の胸腺は、末梢性免疫系にリンパ球(例えば、ナイーブTリンパ球)を配置するために拡大し続ける必要があり得る。この初期の新生児の発生過程中に、生来の胸腺は、胸腺自体の発達ならびに発達と同時に成熟している被験体からの種々の影響(被験体のホルモン系および免疫系の発達が含まれる)に起因して、分子レベルおよび細胞レベルで劇的な変化を経験し得る。新生児胸腺組織の固有の分子および細胞の特徴が報告されている。例えば、胎児/新生児胸腺の発達中に生じるγ/δT細胞は、成人胸腺で発達することができないか、発達が低下し得る(Ito et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1989)86:631)。さらに、制御性T細胞(Treg)の別個の集団が周産期の胸腺中に産生される。これらの特定のTregは、自己寛容の維持に不可欠な役割を果たすことができ、分子プロフィールおよび活性化プロフィールに基づいて成人由来のTregと区別することができる(Yang et al.,Science.2015 May 1;348(6234):589-594)。別の例としては、新生児胸腺由来のCD4+T細胞は、成人胸腺由来細胞と異なる機能特性を有することができる(Becky Adkins,The Journal of Immunology,2003,171:5157-5164)。小児期早期における新生児胸腺のかかる固有の発達環境および変化は、他の発達段階では存在しないかもしれず、胸腺の構造的および機能的な成熟に依然として重要であり得る。結果として、本発明の方法および系は、被験体の生涯の他の段階(例えば、被験体が成人である時)で存在しないかもしれない発達環境を提供することができる。本明細書中に開示の方法および系は、数ある利点のうちで特に、新生児胸腺組織が胎児胸腺組織と比較して発達することができ、また、加齢性退化を経験していたかもしれない成人胸腺組織と比較して成長能力を有し得るので、有利であり得る。したがって、新生児胸腺組織は、被験体における免疫系(例えば、ナイーブTリンパ球)の発達および成熟を修復するのに十分な質量および機能を有する異所性胸腺組織に成長するためのより有利な機械を有し得る。
【0051】
ある特定の実施形態では、胸腺組織の拡大には、リンパ節中に異所性胸腺組織を産生するためのリンパ節中の胸腺組織の生着、増殖、分化、および/または成長が含まれる。産生された異所性胸腺組織は、生物学的に活性であり、かつ胸腺機能を有する。ある特定の実施形態では、胸腺組織は、最終的に産生された異所性組織の質量がリンパ節に送達される胸腺組織の元の質量より高くなるように、リンパ節中で拡大する。ある特定の実施形態では、最終的に産生された異所性組織の質量は、リンパ節に送達される胸腺組織の元の質量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍である。
【0052】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を受け取ったリンパ節中で血管新生が起こり得る(例えば、リンパ節内および異所性胸腺組織内に浸潤して脈管構造ネットワークを形成する血管が存在し得る)。ある特定の実施形態では、脈管構造ネットワークの浸潤により、異所性胸腺組織への血液供給の基礎を形成することができる。ある特定の実施形態では、脈管構造ネットワークの浸潤により、異所性胸腺組織を往復するT細胞の輸送を補助することができる。ある特定の実施形態では、リンパ循環系は、異所性組織によって産生された物質(例えば、T細胞)のための輸送チャネルとしての機能も果たす。したがって、リンパ系は、ある特定の実施形態では、身体の他の部分とのクロストークを介して、かかる物質を血液循環系に提供することができる。
【0053】
ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量(例えば、本明細書中に開示の有効量)は、少なくとも約0.1グラム、少なくとも約0.2グラム、少なくとも約0.3グラム、少なくとも約0.4グラム、少なくとも約0.5グラム、少なくとも約0.6グラム、少なくとも約0.7グラム、少なくとも約0.8グラム、少なくとも約0.9グラム、少なくとも約1グラム、少なくとも約1.5グラム、少なくとも約2グラム、少なくとも約2.5グラム、少なくとも約3グラム、少なくとも約4グラム、少なくとも約5グラム、少なくとも約6グラム、少なくとも約7グラム、少なくとも約8グラム、少なくとも約9グラム、または少なくとも約10グラムである。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量(例えば、本明細書中に開示の有効量)は、約5グラムまで、約10グラムまで、約15グラムまで、または約20グラムまでである。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達量(例えば、本明細書中に開示の有効量)は、約0.1グラム、約0.2グラム、約0.3グラム、約0.4グラム、約0.5グラム、約0.6グラム、約0.7グラム、約0.8グラム、約0.9グラム、約1グラム、約2グラム、約3グラム、約4グラム、約5グラム、約6グラム、約8グラム、約10グラム、約13グラム、約15グラム、約18グラム、約20グラム、またはそれを超える量である。重量を、処理前(例えば、胸腺組織を切り刻み、液体に添加して懸濁液を生成する前)に測定することができる。いくつかの実施形態では、重量を、処理後(例えば、胸腺組織を切り刻み、液体に添加して懸濁液を生成した後)に測定する。本明細書中に開示のように、前述の量の胸腺組織を、1つのリンパ節に送達させることができるか、2またはそれを超えるリンパ節の間で分割して送達させることができる。本明細書中に開示のように、前述の量の胸腺組織を、1回で投与するか、2回またはそれを超える回数に分割して任意の適切な期間に投与することができる。2回またはそれを超える回数の場合、前述の量は、2回またはそれを超える回数に分割した量(すなわち、1回あたりの量)の合計であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、胸腺組織を、被験体の体重と比較した量(例えば、本明細書中に開示の有効量)で被験体内に送達させる。例えば、胸腺組織を、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kg、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約15mg/kg、少なくとも約20mg/kg、少なくとも約25mg/kg、少なくとも約30mg/kg、少なくとも約40mg/kg、少なくとも約50mg/kg、少なくとも約60mg/kg、少なくとも約70mg/kg、少なくとも約80mg/kg、少なくとも約90mg/kg、少なくとも約100mg/kg、少なくとも約110mg/kg、少なくとも約120mg/kg、少なくとも約130mg/kg、少なくとも約140mg/kg、少なくとも約150mg/kg、少なくとも約160mg/kg、少なくとも約170mg/kg、少なくとも約180mg/kg、少なくとも約190mg/kg、少なくとも約200mg/kg、少なくとも約250mg/kg、少なくとも約500mg/kg、少なくとも約1000mg/kg、または少なくとも約1500mg/kgの量で被験体に送達させることができる。いくつかの実施形態では、胸腺組織を、最大で約1mg/kg、最大で約10mg/kg、最大で約20mg/kg、最大で約50mg/kg、最大で約100mg/kg、最大で約110mg/kg、最大で約120mg/kg、最大で約130mg/kg、最大で約140mg/kg、最大で約150mg/kg、最大で約160mg/kg、最大で約170mg/kg、最大で約180mg/kg、最大で約190mg/kg、最大で約200mg/kg、最大で約250mg/kg、最大で約500mg/kg、最大で約1000mg/kg、または最大で約1500mg/kgの量で被験体内に送達させる。いくつかの実施形態では、胸腺組織を、約0.001mg/kg、約0.005mg/kg、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約110mg/kg、約120mg/kg、約130mg/kg、約140mg/kg、約150mg/kg、約160mg/kg、約170mg/kg、約180mg/kg、約190mg/kg、約200mg/kg、約250mg/kg、約500mg/kg、約1000mg/kg、または約1500mg/kgである量で被験体内に送達させる。本明細書中に開示の有効量は、被験体の体重と比較した量であり得る。胸腺組織の量を、処理前(例えば、胸腺組織を切り刻み、液体に添加して懸濁液を生成する前)に測定することができる。本明細書中に開示のように、前述の量の胸腺組織を、1つのリンパ節に送達させることができるか、2またはそれを超えるリンパ節の間で分割して送達させることができる。本明細書中に開示のように、所与のサイズの胸腺組織を、1回で投与するか、2回またはそれを超える回数に分割して任意の適切な期間に投与することができる。2回またはそれを超える回数の場合、胸腺組織の量は、2回またはそれを超える回数に分割した量(すなわち、1回あたりの量)の合計であり得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達サイズは、少なくとも約0.1cm、少なくとも約0.2cm、少なくとも約0.3cm、少なくとも約0.4cm、少なくとも約0.5cm、少なくとも約0.6cm、少なくとも約0.7cm、少なくとも約0.8cm、少なくとも約0.9cm、少なくとも約1cm、少なくとも約1.5cm、少なくとも約2cm、少なくとも約2.5cm、または少なくとも約3cmである。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達サイズは、約5cmまで、約10cmまで、約15cmまで、または約20cmまでである。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達サイズは、約0.1cm、約0.2cm、約0.3cm、約0.4cm、約0.5cm、約0.6cm、約0.7cm、約0.8cm、約0.9cm、約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約8cm、約10cm、約13cm、約15cm、約18cm、約20cm、またはそれを超える。本明細書中に開示の有効量を、サイズで表すことができる。サイズを、処理前(例えば、胸腺組織を切り刻み、液体に添加して懸濁液を生成する前)に測定することができる。いくつかの実施形態では、サイズを、処理後(例えば、胸腺組織を切り刻み、液体に添加して懸濁液を生成した後)に測定する。本明細書中に開示のように、所与のサイズの胸腺組織を、1つのリンパ節に送達させることができるか、2またはそれを超えるリンパ節の間で分割して送達させることができる。本明細書中に開示のように、所与のサイズの胸腺組織を、1回で投与するか、2回またはそれを超える回数に分割して任意の適切な期間に投与することができる。2回またはそれを超える回数の場合、所与のサイズの胸腺組織は、2回またはそれを超える回数に分割した量(すなわち、1回あたりの量)の合計であり得る。
【0056】
ある特定の実施形態では、被験体内に送達される胸腺組織は、液体懸濁液の形態である。いくつかの実施形態では、被験体内への液体懸濁液の胸腺組織の送達体積は、少なくとも約0.1mL、少なくとも約0.2mL、少なくとも約0.3mL、少なくとも約0.4mL、少なくとも約0.5mL、少なくとも約0.6mL、少なくとも約0.7mL、少なくとも約0.8mL、少なくとも約0.9mL、少なくとも約1mL、少なくとも約1.5mL、少なくとも約2mL、少なくとも約2.5mL、少なくとも約3mL、少なくとも約4mL、少なくとも約5mL、少なくとも約6mL、少なくとも約7mL、少なくとも約8mL、少なくとも約9mL、または少なくとも約10mL(例えば、リンパ節あたりの体積、または2またはそれを超えるリンパ節への分割体積の総体積)である。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達体積は、約5mLまで、約10mLまで、約15mLまで、または約20mLまで(例えば、2またはそれを超えるリンパ節への送達のために分割される)である。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達体積は、リンパ節あたり約0.1mL、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1mL、約2mL、または約3mLである。ある特定の実施形態では、被験体内への胸腺組織の送達体積は、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約8mL、約10mL、約13mL、約15mL、約18mL、約20mL、またはそれを超える(2またはそれを超えるリンパ節への送達のために分割される)。本明細書中に開示のように、前述の体積を、1回で投与するか、2回またはそれを超える回数に分割して任意の適切な期間に投与することができる。2回またはそれを超える回数の場合、体積は、2回またはそれを超える回数に分割した体積(すなわち、1回あたりの体積)の合計であり得る。本明細書中に開示の有効量を、体積で表すことができる。
【0057】
被験体に、胸腺組織を、1回投与するか、2回またはそれを超える回数に分割して任意の適切な期間に投与することができる。一定の間隔または不規則な間隔で複数回に分けることができる。例えば、約半時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約16時間、約18時間、約24時間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約3週間、約4週間、約1ヶ月間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約2ヶ月間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約3ヶ月間、約16週間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約7ヶ月間、約8ヶ月間、約9ヶ月間、約10ヶ月間、約11ヶ月間、約12ヶ月間、約14ヶ月間、約16ヶ月間、約18ヶ月間、約20ヶ月間、約22ヶ月間、約24ヶ月間、約30ヶ月間、約36ヶ月間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、または約10年間で2回に分けることができる。いくつかの実施形態では、胸腺組織を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20回被験体に投与することができる。
【0058】
ある特定の実施形態では、開示の発明の対象は、被験体の血中循環T細胞数を増加させ、正常な免疫機能に修復することができる。非限定的な実施形態では、被験体の総胸腺重量の少なくとも約1/3を植え込んで、血中循環T細胞数を増加させ、正常な免疫に修復することができる。例えば、約3mgを超える胸腺の組織を、新産児胸腺の標準サイズが平均約8.5mgであるマウス被験体内に送達させることができる。ヒト被験体では、約7グラム(gr)、約8gr、約9gr、または約10grの胸腺の組織を、小児期胸腺の標準サイズが平均25grであるヒト被験体内に送達することができる。総胸腺重量は、新生児胸腺の標準重量であり得る。総胸腺重量は、乳児胸腺の標準重量であり得る。総胸腺重量は、小児胸腺の標準重量であり得る。総胸腺重量は、小児胸腺の標準重量であり得る。総胸腺重量は、成人胸腺の標準重量であり得る。いくつかの実施形態では、総胸腺重量は、被験体と類似の年齢の正常な(例えば、健康なまたは免疫適格性の)個体の総胸腺重量であり得る。いくつかの実施形態では、総胸腺重量は、被験体と年齢が異なる正常個体の総胸腺重量であり得る。
【0059】
ある特定の実施形態では、開示の発明の対象は、被験体の血中循環CD3+T細胞を増加させ、ナイーブT細胞集団を修復することができる。例えば、被験体は、メモリーT細胞集団の減少を伴ってナイーブT細胞を減少させ得るリンパ球減少症を罹患し得る。T細胞区分が量的に欠乏すると、ナイーブT細胞集団にも影響を及ぼし得る。開示の発明の対象は、血中循環CD3+T細胞の増加によってかかる被験体のナイーブT細胞集団を修復することができる。いくつかの実施形態では、開示の発明の対象は、被験体におけるT細胞の老化を軽減することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、被験体におけるT細胞であるCD45+末梢血球の頻度を、本明細書中に開示の組成物および方法によって増加または維持することができる。例えば、一部の例では、T細胞であるCD45+末梢血球の頻度は、本明細書中に開示のリンパ節への胸腺組織の送達後に、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、または少なくとも約70%であり得る。いくつかの実施形態では、T細胞であるCD45+末梢血球の頻度を、本明細書中に開示の胸腺組織の送達前、または胸腺組織を受けていない同等な被験体と比較して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、またはそれを超えて増加させることができる。例えば、T細胞であるCD45+末梢血球の頻度は、本明細書中に開示の胸腺組織の送達前に1%であり得、胸腺組織を送達させた後に10%増加させて頻度11%を達成することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、被験体の末梢血中のT細胞の濃度を、本明細書中に開示の組成物および方法によって増加させることができる。例えば、一部の例では、被験体の末梢血中のT細胞の濃度を、例えば、本明細書中に開示の胸腺組織の送達前、または胸腺組織を受けていない同等な被験体と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約10,000倍、またはそれを超えて増加させることができる。濃度を、例えば、立方ミリメートル、マイクロリットル、デシリットル、ミリリットル、またはリットルあたりの細胞数として表すことができる。
【0062】
T細胞の同定方法は、当該分野で公知である。いくつかの実施形態では、T細胞を、CD3+、CD3+CD4+、CD3+CD8+、CD3+CD4+CD45+、またはCD3+CD8+CD45+であることに基づいて同定する。
【0063】
いくつかの実施形態では、ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度を、本明細書中に開示の方法によって患者において増加させるか、維持することができる。例えば、一部の例では、ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度は、本明細書中に開示のリンパ節への胸腺組織に送達後に、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%であり得る。いくつかの実施形態では、ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度を、本明細書中に開示の胸腺組織の送達前、または胸腺組織を受けていない同等な被験体と比較して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、またはそれを超えて増加させることができる。例えば、ナイーブT細胞であるCD3+末梢血球の頻度は、本明細書中に開示の胸腺組織の送達前に1%であり得、胸腺組織を送達させた後に10%増加させて頻度11%を達成することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度を、本明細書中に開示の組成物および方法によって増加させることができる。例えば、一部の例では、被験体の末梢血中のナイーブT細胞の濃度を、例えば、本明細書中に開示の胸腺組織の送達前、または胸腺組織を受けていない同等な被験体と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約10,000倍、またはそれを超えて増加させることができる。濃度を、例えば、立方ミリメートル、マイクロリットル、デシリットル、ミリリットル、またはリットルあたりの細胞数として表すことができる。
【0065】
ナイーブT細胞、本明細書中に開示の他のサブセット、および他の種(例えば、ヒト)の等価な集団を同定する方法は、当該分野で公知である。いくつかの実施形態では、ナイーブT細胞は、CD3+CD4+CD44-CD62L+またはCD3+CD8+CD44-CD62L+である。いくつかの実施形態では、ナイーブT細胞は、CD3+CD4+CD45RA+CCR7+、CD3+CD8+CD45RA+CCR7+、またはCD3+、CD4+、CD8+、CD45RA+、CCR7+、CD45RO-、およびCD27+の任意の組み合わせである。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物および方法を使用して、被験体におけるある特定のCD4T細胞:CD8T細胞比(例えば、循環総T細胞、循環総ナイーブT細胞、循環総エフェクターT細胞、循環総エフェクター/メモリーT細胞、循環総セントラルメモリーT細胞、またはその組み合わせのCD4:CD8比)を得ることができる。例えば、本明細書中に開示の組成物および方法によって得られるCD4:CD8比は、少なくとも約1:1、少なくとも約1.1:1、少なくとも約1.2:1、少なくとも約1.3:1、少なくとも約1.4:1、少なくとも約1.5:1、少なくとも約1.6:1、少なくとも約1.7:1、少なくとも約1.8:1、少なくとも約1.9:1、または少なくとも約2:1であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の組成物および方法によって得られるCD4:CD8比は、最大で約2:1、最大で約2.1:1、最大で約2.2:1、最大で約2.3:1、最大で約2.4:1、最大で約2.5:1、最大で約2.6:1、最大で約2.7:1、最大で約2.8:1、最大で約2.9:1、最大で約3:1、最大で約2.5:1、最大で約3:1、最大で約4:1、または最大で約5:1であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の組成物および方法によって得られるCD4:CD8比は約2:1である。
【0067】
本明細書中に開示のアウトカムに及ぼす本開示の組成物および方法の影響を、被験体のリンパ節への胸腺組織の送達後の任意の適切な時間で評価することができる。例えば、末梢血T細胞の数および/もしくは頻度、ナイーブ末梢血T細胞の濃度および/もしくは頻度、CD4:CD8比、リンパ節重量、リンパ節中の胸腺組織の拡大、または本明細書中に開示の任意の他のアウトカムに及ぼす影響を、被験体のリンパ節への胸腺組織の送達から約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約1ヶ月後、約5週間後、約6週間後、約7週間後、約8週間後、約2ヶ月後、約9週間後、約10週間後、約11週間後、約12週間後、約3ヶ月後、約16週間後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、約12ヶ月後、約14ヶ月後、約16ヶ月後、約18ヶ月後、約20ヶ月後、約22ヶ月後、約24ヶ月後、約30ヶ月後、約36ヶ月後、約4年後、約5年後、約6年後、約7年後、約8年後、約9年後、または約10年後に評価することができる。
【0068】
被験体の内部臓器に作用因子、材料、または細胞を送達させるための当該分野で公知の任意の方法を、本開示の発明の対象と共に使用することができる。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、針によって被験体のリンパ節に送達させる。ある特定の実施形態では、針は、微量注入針である。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法は、針を被験体のリンパ節に導入する工程を含む。低侵襲手技を超音波のガイド下で行い、この手技は、切開手術より身体への損傷が小さいという操作上の利点を有し得る。さらに、低侵襲手技は、切開手術よりも痛みを少なくし、入院期間を短くし、合併症を抑えることができる。ある特定の実施形態では、本発明で開示の方法を、低侵襲手技を用いて行う。ある特定の実施形態では、低侵襲手技を、超音波のガイド下で行う。使用することができる低侵襲手技の非限定的な例には、PCT特許出願番号PCT/US2020/027783号(その全体が本明細書に参照により援用される)に開示の手技が含まれる。
【0069】
6.2.2 リンパ節
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、少なくとも1箇所の被験体のリンパ節内に送達させる。ある特定の実施形態では、胸腺組織を、少なくとも2箇所、少なくとも3箇所、少なくとも4箇所、少なくとも5箇所、少なくとも6箇所、少なくとも5箇所、少なくとも7箇所、少なくとも8箇所、少なくとも9箇所、少なくとも10箇所、またはそれを超える被験体のリンパ節内に送達させる。非限定的な実施形態では、約0.05ml、約0.1ml、約0.5ml、約1ml、約2ml、または約3mlの胸腺組織を、リンパ節内に送達させることができる。
【0070】
本明細書中に開示の方法を使用して胸腺組織を送達させることができるリンパ節の非限定的な例には、腹部リンパ節、腹腔リンパ節、傍大動脈リンパ節、脾門リンパ節、肝門リンパ節、左胃リンパ節、右胃リンパ節、左胃大網(胃大網の)リンパ節、右胃大網(胃大網の)リンパ節、後腹膜リンパ節、幽門リンパ節(例えば、幽門上リンパ節、幽門下リンパ節、幽門後リンパ節)、膵リンパ節(例えば、上膵リンパ節、下膵リンパ節、脾線リンパ節 リンパ節)、脾リンパ節、肝リンパ節(例えば、胆嚢リンパ節、網嚢孔リンパ節、ウィンスロー孔)、膵十二指腸リンパ節(例えば、上膵十二指腸リンパ節、下膵十二指腸リンパ節)、上腸間膜リンパ節、回結腸リンパ節、盲腸前リンパ節、盲腸後リンパ節、虫垂リンパ節、結腸間膜リンパ節(例えば、結腸傍リンパ節、左結腸リンパ節、中結腸リンパ節、右結腸リンパ節、下腸間膜リンパ節、S状結腸リンパ節、上直腸リンパ節)、総腸骨リンパ節(例えば、内側総腸骨リンパ節、中間総腸骨リンパ節、外側総腸骨リンパ節、大動脈下総腸骨リンパ節、岬角総腸骨リンパ節)、および外腸骨リンパ節(例えば、内側外腸骨リンパ節、中間外腸骨リンパ節、外側外腸骨リンパ節、内側裂孔-大腿部リンパ節、中間裂孔-大腿部リンパ節、外側裂孔-大腿部リンパ節、腸骨動脈間外腸骨リンパ節、閉鎖孔-外部腸骨閉鎖リンパ節)が含まれる。
【0071】
ある特定の実施形態では、移植された胸腺組織が拡大する時にリンパ節が肥大することができることが重要であるため、腹膜腔に存在するリンパ節は、特に、例えば、リンパ節が動脈または大静脈と密接に関連していない場合に特に有用であり得る。
【0072】
6.2.3被験体
ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、胸腺摘出術を受けていた。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、胸腺摘出術を受けている間に胸腺組織を被験体のリンパ節内に送達させる。ある特定の実施形態では、被験体は、先天性心臓欠陥を有し、かつ開心術を受けていたか、開心術を受ける予定である。開心術は、重篤な先天性心臓欠陥の日常的な処置方法となっている。先天性心臓欠陥のための早期心臓外科的介入は、胸腺摘出(例えば、胸腺の部分的または完全な除去)を伴い得る。ある特定の実施形態では、被験体において開心術中に胸腺摘出を行った。ある特定の実施形態では、被験体が新生児であった時に胸腺摘出を行った。ある特定の実施形態では、被験体が乳児であった時に胸腺摘出を行った。ある特定の実施形態では、被験体が小児であった時に胸腺摘出を行った。ある特定の実施形態では、被験体が最長で1ヶ月、最長で2ヶ月、最長で3ヶ月、最長で4ヶ月、最長で5ヶ月、最長で6ヶ月、最長で8ヶ月、最長で10ヶ月、最長で1歳、または最長で2歳であった時に胸腺摘出を行った。ある特定の実施形態では、被験体が最長で1ヶ月であった時に胸腺摘出を行った。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物および方法によって処置すべき被験体は、胸腺に影響を及ぼす容態を有する。胸腺に影響を及ぼす容態の非限定的な例には、重症筋無力症、真性赤血球系無形成、低ガンマグロブリン血症、胸腺癌、胸腺腫、A型胸腺腫、B型胸腺腫、自己免疫疾患、T細胞媒介性自己免疫、T細胞リンパ球減少症、胸腺萎縮、加齢性胸腺萎縮、胸腺嚢胞、胸腺過形成、胸腺低形成、胸腺無形成、胸腺形成異常、重症複合型免疫不全、ネゼロフ症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群(Wiscott-Aldrich syndrome)ディジョージ症候群、再発性感染症、再発性ウイルス感染、免疫学的早期老化、および癌が含まれる。
【0074】
本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、任意の年齢であり得る。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、新生児、乳児、小児、青年、または成人である。
【0075】
ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、最長で約1ヶ月に到達しているヒト新生児である。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、約1ヶ月と約2歳との間に到達しているヒト乳児である。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、約2歳と約12歳との間に到達しているヒト小児である。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、約12歳と約18歳との間に到達しているヒト青年である。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、少なくとも約18歳に到達しているヒト成人である。ある特定の実施形態では、処置すべき被験体は、(例えば、加齢により胸腺機能が低下している)中高年のヒトである。
【0076】
ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、最長で約1ヶ月、最長で約3ヶ月、最長で約6ヶ月、最長で約1歳、最長で約2歳、最長で約3歳、最長で約4歳、最長で約5歳、最長で約6歳、最長で約7歳、最長で約8歳、最長で約9歳、最長で約10歳、最長で約11歳、最長で約12歳、最長で約13歳、最長で約14歳、最長で約15歳、最長で約16歳、最長で約17歳、最長で約18歳、または少なくとも18歳に到達しているヒト被験体である。
【0077】
ある特定の実施形態では、本明細書中に開示の方法によって処置すべき被験体は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1歳、少なくとも約2歳、少なくとも約3歳、少なくとも約4歳、少なくとも約5歳、少なくとも約6歳、少なくとも約7歳、少なくとも約8歳、少なくとも約9歳、少なくとも約10歳、少なくとも約11歳、少なくとも約12歳、少なくとも約13歳、少なくとも約14歳、少なくとも約15歳、少なくとも約16歳、少なくとも約17歳、少なくとも約18歳、少なくとも約25歳、少なくとも約30歳、少なくとも約35歳、少なくとも約40歳、少なくとも約45歳、少なくとも約50歳、少なくとも約55歳、少なくとも約60歳、少なくとも約65歳、少なくとも約70歳、または少なくとも約75歳に到達しているヒト被験体である。
【0078】
ある特定の実施形態では、胸腺組織を、被験体が新生児、乳児、または小児であった時に被験体から入手し、胸腺組織を低温保存し、その後に解凍して被験体に送達させた。ある特定の実施形態では、低温保存された胸腺組織を、胸腺摘出後に任意の年齢の被験体に送達させることができる。ある特定の実施形態では、被験体から得た胸腺組織を、複数のバイアル中で低温保存することができ、各バイアルは、被験体に送達させることができる単回用量の胸腺組織を含む。ある特定の実施形態では、低温保存された胸腺組織を、被験体の生涯にわたって複数回被験体に送達させる。
【0079】
6.3 キット
本開示は、被験体(例えば、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定である被験体)の胸腺機能の保護、修復、または増大のためのキットを提供する。ある特定の実施形態では、キットは、胸腺組織および被験体への前述の胸腺組織の送達のためのツールを含み、胸腺組織は被験体に対して自家である。ある特定の実施形態では、胸腺組織は、キットに含まれる溶液中に提供される。
【0080】
ある特定の実施形態では、溶液は、胸腺組織を構成する異なる細胞型を含む。ある特定の実施形態では、溶液は、薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、または担体をさらに含む。薬学的に許容され得る担体および希釈剤には、生理食塩液、緩衝液、溶媒、および/または分散媒が含まれる。本開示のキットと共に使用することができる薬学的に許容され得る賦形剤の非限定的な例には、糖(ラクトース、グルコース、およびスクロースなど);デンプン(トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなど);セルロース、およびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、および酢酸セルロースなど);トラガカント末;麦芽;ゼラチン;潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルクなど);カカオバターおよび坐剤用ワックス;油(ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油など);グリコール(プロピレングリコールなど);ポリオール(グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール(PEG)など);エステル(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);寒天;緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理食塩液;リンゲル液;エチルアルコール;pH調整緩衝液;ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ酸無水物;増量剤(ポリペプチドおよびアミノ酸など);血清成分(血清アルブミン、HDL、およびLDLなど);C2~C12アルコール(エタノールなど);および医薬製剤で使用される他の非毒性の適合物質が含まれる。
【0081】
ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織を低温保存する。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織を、約12時間、約24時間、約2日間、約3日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約8ヶ月間、約10ヶ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、約20年間、またはそれを超えて低温保存する。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織を、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、少なくとも約6年間、少なくとも約7年間、少なくとも約8年間、少なくとも約9年間、少なくとも約10年間、少なくとも約15年間、少なくとも約20年間、またはそれを超えて低温保存する。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織を、最長で約12時間、最長で約24時間、最長で約2日間、最長で約3日間、最長で約1週間、最長で約2週間、最長で約3週間、最長で約4週間、最長で約2ヶ月間、最長で約3ヶ月間、最長で約4ヶ月間、最長で約5ヶ月間、最長で約6ヶ月間、最長で約8ヶ月間、最長で約10ヶ月間、最長で約1年間、最長で約2年間、最長で約3年間、最長で約4年間、最長で約5年間、最長で約6年間、最長で約7年間、最長で約8年間、最長で約9年間、最長で約10年間、最長で約15年間、最長で約20年間、最長で約30年間、最長で約40年間、最長で約50年間、またはそれ未満の期間低温保存する。
【0082】
ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、少なくとも約0.1グラム、少なくとも約0.2グラム、少なくとも約0.3グラム、少なくとも約0.4グラム、少なくとも約0.5グラム、少なくとも約0.6グラム、少なくとも約0.7グラム、少なくとも約0.8グラム、少なくとも約0.9グラム、少なくとも約1グラム、少なくとも約1.5グラム、少なくとも約2グラム、少なくとも約2.5グラム、少なくとも約3グラム、少なくとも約4グラム、少なくとも約5グラム、少なくとも約6グラム、少なくとも約7グラム、少なくとも約8グラム、少なくとも約9グラム、または少なくとも約10グラムである。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、約5グラムまで、約10グラムまで、約15グラムまで、または約20グラムまでである。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、約0.1グラム、約0.2グラム、約0.3グラム、約0.4グラム、約0.5グラム、約0.6グラム、約0.7グラム、約0.8グラム、約0.9グラム、約1グラム、約2グラム、約3グラム、約4グラム、約5グラム、約6グラム、約8グラム、約10グラム、約13グラム、約15グラム、約18グラム、約20グラム、またはそれを超える。
【0083】
ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織のサイズは、少なくとも約0.1cm、少なくとも約0.2cm、少なくとも約0.3cm、少なくとも約0.4cm、少なくとも約0.5cm、少なくとも約0.6cm、少なくとも約0.7cm、少なくとも約0.8cm、少なくとも約0.9cm、少なくとも約1cm、少なくとも約1.5cm、少なくとも約2cm、少なくとも約2.5cm、少なくとも約3cm 少なくとも約4cm、または少なくとも約5cmである。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織のサイズは、約5cmまで、約10cmまで、約15cmまで、または約20cmまでである。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織のサイズは、約0.1cm、約0.2cm、約0.3cm、約0.4cm、約0.5cm、約0.6cm、約0.7cm、約0.8cm、約0.9cm、約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約8cm、約10cm、約13cm、約15cm、約18cm、約20cm、またはそれを超える。
【0084】
ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、被験体の胸腺機能を修復するのに有効な量である。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、リンパ節中で拡大するのに有効な量であり、ここで、拡大した胸腺組織が被験体の胸腺機能を修復する。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、被験体の胸腺機能を増大させるのに有効な量である。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、リンパ節内に植え付けるのに有効な量である。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、リンパ節中で異所性胸腺組織を形成するのに有効な量である。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、被験体中の循環T細胞(例えば、循環ナイーブT細胞)のレベルを増加させるのに有効な量である。ある特定の実施形態では、キット中に含まれる胸腺組織の量は、被験体における循環T細胞の密度を増加させる(例えば、TCRのレパートリーおよび認識される同種抗原を増加させる)のに有効な量である。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示のキットは、胸腺組織の採取、胸腺組織の処理、胸腺組織の貯蔵(例えば、低温保存)、胸腺組織の培養、胸腺組織の被験体への送達、またはその組み合わせに適切な成分を含むことができる。ある特定の実施形態では、キットは、胸腺組織を含まない。
【0086】
ある特定の実施形態では、キットは、胸腺組織を低温保存するのに必要な材料(例えば、試薬および/または容器)を含む。ある特定の実施形態では、キットは、約12時間、約24時間、約2日間、約3日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約8ヶ月間、約10ヶ月間、約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、約20年間、またはそれを超えて胸腺組織を低温保存することを目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間、少なくとも約6年間、少なくとも約7年間、少なくとも約8年間、少なくとも約9年間、少なくとも約10年間、少なくとも約15年間、少なくとも約20年間、またはそれを超えて胸腺組織を低温保存することを目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、最長で約12時間、最長で約24時間、最長で約2日間、最長で約3日間、最長で約1週間、最長で約2週間、最長で約3週間、最長で約4週間、最長で約2ヶ月間、最長で約3ヶ月間、最長で約4ヶ月間、最長で約5ヶ月間、最長で約6ヶ月間、最長で約8ヶ月間、最長で約10ヶ月間、最長で約1年間、最長で約2年間、最長で約3年間、最長で約4年間、最長で約5年間、最長で約6年間、最長で約7年間、最長で約8年間、最長で約9年間、最長で約10年間、最長で約15年間、最長で約20年間、最長で約30年間、最長で約40年間、最長で約50年間、またはそれ未満の期間胸腺組織を低温保存することを目的とする。
【0087】
ある特定の実施形態では、キットは、少なくとも約0.1グラム、少なくとも約0.2グラム、少なくとも約0.3グラム、少なくとも約0.4グラム、少なくとも約0.5グラム、少なくとも約0.6グラム、少なくとも約0.7グラム、少なくとも約0.8グラム、少なくとも約0.9グラム、少なくとも約1グラム、少なくとも約1.5グラム、少なくとも約2グラム、少なくとも約2.5グラム、少なくとも約3グラム、少なくとも約4グラム、少なくとも約5グラム、少なくとも約6グラム、少なくとも約7グラム、少なくとも約8グラム、少なくとも約9グラム、または少なくとも約10グラムの量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。
【0088】
ある特定の実施形態では、キットは、約5グラムまで、約10グラムまで、約15グラムまで、または約20グラムまでの量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、約0.1グラム、約0.2グラム、約0.3グラム、約0.4グラム、約0.5グラム、約0.6グラム、約0.7グラム、約0.8グラム、約0.9グラム、約1グラム、約2グラム、約3グラム、約4グラム、約5グラム、約6グラム、約8グラム、約10グラム、約13グラム、約15グラム、約18グラム、約20グラム、またはそれを超える量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。
【0089】
ある特定の実施形態では、キットは、少なくとも約0.1cm、少なくとも約0.2cm、少なくとも約0.3cm、少なくとも約0.4cm、少なくとも約0.5cm、少なくとも約0.6cm、少なくとも約0.7cm、少なくとも約0.8cm、少なくとも約0.9cm、少なくとも約1cm、少なくとも約1.5cm、少なくとも約2cm、少なくとも約2.5cm、少なくとも約3cm 少なくとも約4cm、または少なくとも約5cmのサイズの胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、約5cmまで、約10cmまで、約15cmまで、または約20cmまでのサイズを有する胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、約0.1cm、約0.2cm、約0.3cm、約0.4cm、約0.5cm、約0.6cm、約0.7cm、約0.8cm、約0.9cm、約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約8cm、約10cm、約13cm、約15cm、約18cm、約20cm、またはそれを超えるサイズを有する胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。
【0090】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも約0.1mL、少なくとも約0.2mL、少なくとも約0.3mL、少なくとも約0.4mL、少なくとも約0.5mL、少なくとも約0.6mL、少なくとも約0.7mL、少なくとも約0.8mL、少なくとも約0.9mL、少なくとも約1mL、少なくとも約1.5mL、少なくとも約2mL、少なくとも約2.5mL、少なくとも約3mL、少なくとも約4mL、少なくとも約5mL、少なくとも約6mL、少なくとも約7mL、少なくとも約8mL、少なくとも約9mL、または少なくとも約10mL(例えば、リンパ節あたりの体積、または2またはそれを超えるリンパ節への分割体積の総体積)の体積の胸腺組織を送達させることを目的とする。いくつかの実施形態では、キットは、約5mLまで、約10mLまで、約15mLまで、または約20mLまでの体積(例えば、2またはそれを超えるリンパ節への送達のために分割される)の胸腺組織を送達させることを目的とする。いくつかの実施形態では、キットは、リンパ節あたり約0.1mL、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1mL、約2mL、または約3mLの体積の胸腺組織を送達させることを目的とする。いくつかの実施形態では、キットは、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mL、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約8mL、約10mL、約13mL、約15mL、約18mL、約20mL、またはそれを超える体積の胸腺組織を、2またはそれを超えるリンパ節への送達のために分割して送達させることを目的とする。
【0091】
いくつかの実施形態では、キットは、被験体の体重と比較した量の胸腺組織(例えば、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kg、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約15mg/kg、少なくとも約20mg/kg、少なくとも約25mg/kg、少なくとも約30mg/kg、少なくとも約40mg/kg、少なくとも約50mg/kg、少なくとも約60mg/kg、少なくとも約70mg/kg、少なくとも約80mg/kg、少なくとも約90mg/kg、少なくとも約100mg/kg、少なくとも約110mg/kg、少なくとも約120mg/kg、少なくとも約130mg/kg、少なくとも約140mg/kg、少なくとも約150mg/kg、少なくとも約160mg/kg、少なくとも約170mg/kg、少なくとも約180mg/kg、少なくとも約190mg/kg、少なくとも約200mg/kg、少なくとも約250mg/kg、少なくとも約500mg/kg、少なくとも約1000mg/kg、または少なくとも約1500mg/kg)を被験体に送達させることを目的とする。いくつかの実施形態では、量は、最大で約1mg/kg、最大で約10mg/kg、最大で約20mg/kg、最大で約50mg/kg、最大で約100mg/kg、最大で約110mg/kg、最大で約120mg/kg、最大で約130mg/kg、最大で約140mg/kg、最大で約150mg/kg、最大で約160mg/kg、最大で約170mg/kg、最大で約180mg/kg、最大で約190mg/kg、最大で約200mg/kg、最大で約250mg/kg、最大で約500mg/kg、最大で約1000mg/kg、または最大で約1500mg/kgである。いくつかの実施形態では、量は、約0.001mg/kg、約0.005mg/kg、約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約110mg/kg、約120mg/kg、約130mg/kg、約140mg/kg、約150mg/kg、約160mg/kg、約170mg/kg、約180mg/kg、約190mg/kg、約200mg/kg、約250mg/kg、約500mg/kg、約1000mg/kg、または約1500mg/kgである。
【0092】
ある特定の実施形態では、キットは、被験体の胸腺機能を修復するのに有効な量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、例えば、拡大された胸腺組織が被験体の胸腺機能を修復する場合、リンパ節中で拡大するのに有効な量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、被験体の胸腺機能を増大させるのに有効な量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、リンパ節内に植え付けるのに有効な量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、リンパ節中で異所性胸腺組織を形成するのに有効な量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。ある特定の実施形態では、キットは、被験体における循環T細胞(例えば、循環ナイーブT細胞)のレベルを増加させるのに有効な量の胸腺組織の採取、処理、貯蔵、培養、および/または送達を目的とする。
【0093】
ある特定の実施形態では、キットは、胸腺摘出術を受けていたか、胸腺摘出術を受ける予定である被験体の胸腺機能の保護、増大、または修復のための指示書をさらに含む。ある特定の実施形態では、指示は、例えば、本明細書中(例えば、本開示の第6.2節中)に記載の方法を含む。
【0094】
被験体のリンパ節に胸腺組織を送達させるための当該分野で公知の任意の適切なツールを、本明細書中に開示のキットに含めることができる。胸腺組織の送達のためのツールの非限定的な例には、チューブ、シリンジ、針(例えば、微量注入用ガラス針)、低温保存に適切な容器、組織培養に適切な容器、および低侵襲手技に必要な任意のツールが含まれる。
【0095】
本開示の発明の対象およびそのある特定の利点を詳細に記載しているが、本開示の意図および範囲を逸脱することなく本明細書において種々の変化、置き換え、および変更が可能であると理解すべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書中に記載の過程、装置、製造物、および組成物、ならびに方法の特定の実施形態に制限されることを意図しない。当業者は本開示の発明の対象の開示から容易に認識するであろうが、本明細書中に記載の対応する実施形態と実質的に同一の機能を果たすか実質的に同一の結果が得られる既存のまたはその後に開発される過程、装置、製造物、組成物、または方法を、本開示の発明の対象にしたがって利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかる過程、装置、製造物、組成物、または方法の範囲内に含まれることが意図される。
【0096】
種々の特許、特許出願、刊行物、製品の指示書、プロトコール、および配列の受入番号が本出願の至るところに引用されており、その開示は、全ての目的のためにその全体が本明細書に参照により援用される。
【実施例
【0097】
7.実施例
本開示の発明の対象は、以下の実施例を参照することによってより深く理解されるであろう。実施例は本開示の発明の対象の例示として提供され、本発明を決して制限しない。
【0098】
7.1 実施例1:ヌードマウスによる投薬量の研究
ヌードマウスは胸腺を欠くので、T細胞を産生することができない。その結果、ヌードマウスは免疫不全である。これらのマウスでは、腸間膜リンパ節に胸腺を移植することによって機能的な免疫系が得られる。ここでは、血中T細胞を再度存在させるために必要な胸腺組織の量、および十分な数の血中循環T細胞を得ることができるリンパ節内への胸腺組織の移植量についての問題に取り組んでいる。
【0099】
23匹の15週齢BALB/cヌードマウスを登録した(雌n=16;雄n=7)。21匹のマウスに、1/4葉~2葉のBALB/c野生型新産仔胸腺をマウスのリンパ節(2葉の胸腺=1個の全胸腺)に移植した。残りの2匹のマウスに、同一のドナーマウス由来の胸腺単一細胞懸濁液を移植した。移植すべき試料を、2リットルの12の異なる胸腺から回収し、試料の重量は平均8.5mgであった(6.2~11mgの範囲;図1A)。8匹のマウスに1/4葉の胸腺を移植し、6匹のマウスに1/2葉または全葉の胸腺のいずれかを移植し、1匹のマウスに胸腺全体(2葉)を移植した(図1B)。1/2葉の用量を使用する場合、組織を移植のために2片にさらに断片化した。1葉用量については、合計で4個の断片をリンパ節中に移植し、一方、2葉用量については、合計で8個の断片を移植した。ヌードマウスのリンパ節のサイズが小さく(平均で1mm3をわずかに超える)、組織断片の移植が困難であるため、このアプローチを採用した。図1Cは、動物内の胸腺断片の推定移植重量を示す。
【0100】
移植4ヶ月後に、20匹の生存マウスを、フローサイトメトリーによって血中のT細胞の存在について分析した。3匹の非移植BALB/cヌードマウス、および3匹のBALB/c野生型マウスを、それぞれ血中循環T細胞の負の対照および正の対照として使用した。フローサイトメトリー分析を使用して、図2Aは、異なる条件下でのCD3発現の代表的なドットプロットを示す。細胞を最初にシングレットについてゲーティングし、その後に生細胞、CD45+細胞、最後にCD3発現についてゲーティングした。文字はマウスIDを示す。各マウスについてのCD3+T細胞の百分率を図2Bに示し、ここで、円形ドットは雌を示し、四角のドットは雄を示す。少なくとも1/4葉またはそれを超える胸腺を移植した全ての群は、移植を受けていなかった対照と比較して、循環CD3+T細胞の比率が増加した。1/4葉または1/2葉の用量のいずれかを移植したマウスは、CD3+T細胞の百分率が類似していた(それぞれ、14.13±3.29および11.76±3.98;P=0.2634)。CD3+T細胞の百分率は、1葉の胸腺を移植した場合に半葉と比較してわずかに高かった(24.02±7.43;1/2葉群対1葉群についてP=0.0067)。2葉を移植した場合のCD3+T細胞の百分率は1葉の用量に類似しており、一方、胸腺細胞懸濁液を移植すると循環T細胞の頻度が有意に増加しなかった。組織の移植量と無関係に、正常なCD4/CD8比を得ることができた(図2Cおよび2D)。各ドットはマウスを示す。円形ドットは雌を示し、四角のドットは雄を示す。
【0101】
移植マウスにおけるCD3+T細胞の百分率は、移植された胸腺の組織の実重量(mg)と相関する。移植マウスを2群に分割し、一方の群は1mg超から3mg未満までの胸腺の組織を移植したマウスを含み、他の群は3mg超から7mg未満までの胸腺の組織を移植したマウスを含む。これらの2群間でCD3+血中T細胞の産生において統計的有意差があった(P=0.0002;図2E)。この分析では、マウスを、胸腺葉断片の代わりにマウスのリンパ節中に移植された胸腺の実重量(mg)に基づいてマウスを2群に分割した。***は、P値が0.001未満であることを示す。**は、P値が0.01未満であることを示す。nsは、「有意でない」(すなわち、P値が0.05を超える)ことを示す。
【0102】
これらの結果から、以下の2つの結論が示唆される:(1)移植されたマウスにおけるリンパ節中に移植された胸腺の組織の重量と循環T細胞の百分率との間に用量-応答が存在する。(2)野生型により近い循環T細胞(T細胞機能が改善された可能性がある)の数を増加させるためのリンパ節中の胸腺組織の移植重量には閾値が存在する。
【0103】
1ヶ月後、5匹の移植マウスにおける血中循環T細胞のT細胞受容体(TCR)Vβレパートリーを、15種類のバリアントに対して指向するモノクローナル抗体を使用したフローサイトメトリーによって分析した。この時点で得られたCD3+T細胞の百分率は、1ヶ月前に得た百分率に匹敵しており、唯一の例外として、胸腺全体を移植されたマウスのT細胞の百分率がわずかに増加した(図3A)。16の異なる測定値から平均を得た。移植マウスおよび1つの対照BALB/c野生型マウスの両方で9種のTCR-Vβバリアントが発現されることが同定された(図3B)。BALB/c野生型マウスを正の対照(CNTRL)として含めた。異なる条件の間で差は認められず(1元配置ANOVA P=0.9956)、これにより、リンパ節内に胸腺組織を送達させると、胸腺を欠くか、機能を欠く胸腺を有するレシピエントにおいて循環T細胞の多様性を増大させることができることが実証された。
【0104】
移植から6ヶ月半後に20匹のマウスの全てを屠殺した。図4Aは、単離したリンパ節の重量を示す。
【0105】
図2Bと同様に、1/4葉の胸腺を移植したリンパ節の重量は、1/2葉の胸腺を移植したリンパ節の重量に類似していた(それぞれ、13.49±7.65および18.33±7.03;P=0.2628;図4A)。各ドットはマウスを示す。円形ドットは雌を示し;四角のドットは雄を示す。リンパ節の重量は、1葉の胸腺を移植したときに有意に重かった(28.8±13.62;1/4葉群対1葉群についてP=0.0315)。図2E中のデータと同一の方法で、単離したリンパ節を、移植された胸腺の組織の重量(mg)に基づいて2群に分割した。この場合も、これらの2群の間に統計的に有意差があった(P=0.0428;図4B)。は、P値が00.5未満であることを示す。
【0106】
開示のデータは、移植されたマウスにおいて、リンパ節中に移植された胸腺の組織の重量と、屠殺時のリンパ節の重量と、血中循環T細胞数との間に関係があることを示唆している。これらの結果は、サイズが制限される被験体において、より高い血中循環T細胞レベル(例えば、正常に機能する胸腺を有する被験体の百分率に近い百分率)を得るために、より多くのリンパ節に移植することができることを示唆している。また、これらの結果は、このモデルにおいて雌の方が有効に胸腺移植後に新規のT細胞の産生することができることを示唆している。理論に拘束されることを望まないが、胸腺移植に関する性差は、このモデルにおける雌と雄の間のホルモンの差の結果であり得る。
【0107】
上記の結果は、胸腺の移植重量の増加がナイーブT細胞再構成レベルの増加に関連し得ることを示す。例えば、いくつかの実施形態では、総胸腺重量の少なくとも1/3を移植すると、総胸腺重量の1/3未満の移植と比較して、ナイーブT細胞の再構成レベルを増加させることができる。例えば、標準サイズが平均8.5mgの新産仔マウス胸腺のうちの3mg超とは、ヒト患者における標準サイズが25grの小児期胸腺のうちの9grより少し少ない量と解釈することができる。一部の例においてヒトリンパ節内に注射することができる最大体積がおよそ1mlであることを考慮すると、全部で9箇所のリンパ節の各リンパ節に(1リンパ節あたり1grの胸腺組織を)注射して完全な小児期胸腺の1/3を得ることができる。
【0108】
胸腺摘出により、T細胞リンパ球減少症(メモリーT細胞集団の増加を伴うナイーブT細胞の減少を特徴とする)を発症し得る。さらに、胸腺摘出を受けたある特定の患者(例えば、6ヶ月未満などの年少期に90%を超える胸腺が除去された患者)は、後年にT細胞区画が量的に欠乏し、これは主にナイーブT細胞集団に影響を及ぼす。
【0109】
本開示の組成物および方法によってこれらの患者に胸腺組織を自家移植した場合、血中循環CD3+T細胞を増加させることができ、特にナイーブT細胞集団を修復することができる。
【0110】
7.2 実施例2:老化野生型マウスの研究
この実施例では、低用量の胸腺(1/4葉の胸腺)をリンパ節中に移植すると、移植されたマウスの免疫機能を回復させることができるかどか、および雌と雄の間に何らかの相違があるかどうかについて検討する。
【0111】
32匹のC57BL/6Jマウス(雌16匹および雄16匹)を登録した。各マウス群については、成体マウス8匹(18週齢)および老齢マウス8匹(62週齢)から構成されていた。各群のマウスの半分に、1/4葉の胸腺を移植した。ドナー胸腺を、同腹仔由来のGFP+C57BL/6J新産仔マウスから単離した。胸腺移植の7週間後、32匹の全てのマウスを、フローサイトメトリーによってナイーブT細胞、エフェクターT細胞、およびメモリーT細胞について分析し、これらの亜集団におけるCD44およびCD62Lの発現の相違を調査した(図5A~5H)。ゲーティングストラテジーを図5A~5Hに提供する。図5Aは、前方散乱ゲート対側方散乱ゲートを示す。図5Bは、単一細胞についてのゲートを示す。図5Cは、生細胞についてのゲートを示す。図5Dは、CD45+細胞についてのゲートを示す。図5Eは、CD3+細胞についてのゲートを示す。図5Fは、CD4+細胞およびCD8+細胞についてのゲートを示す。図5Gは、ナイーブ細胞、活性化されたエフェクター細胞、エフェクターメモリー細胞、およびセントラルメモリー細胞についてのCD4+細胞のゲーティングを示す。図5Hは、ナイーブ細胞、活性化されたエフェクター細胞、エフェクターメモリー細胞、およびセントラルメモリー細胞についてのCD8+細胞のゲーティングを示す。
【0112】
ナイーブT細胞は胸腺中で継続的に生成されるが、マウスが老化して胸腺が退行するにつれて、CD4+およびCD8+の各ナイーブT細胞の比率が低下する。したがって、老齢動物における胸腺移植がナイーブT細胞集団を増加させることができるかどうかを試験した。
【0113】
老齢雌マウスは、成体雌マウスと比較してCD4+ナイーブT細胞の減少が統計的に有意に高かった(P<0.0001)(図6Aおよび6E)。これらのマウスにおいてCD4+ナイーブT細胞が減少すると、活性化されたCD4+T細胞エフェクター(P=0.0062)、CD4+エフェクター/メモリー(P<0.0001)、およびCD4+セントラルメモリーT細胞(P=0.0297)がそれに対応して有意に減少した(図6A~6D)。細胞を最初にシングレット、その後に生細胞、CD45+細胞、CD3+細胞、CD4+、最後にCD44発現およびCD62L発現についてゲーティングした(図5A~5H)。各ドットはマウスを示す。円形ドットは雌を示し;四角のドットは雄を示す。は、P値が0.05未満であることを示す。**は、P値が0.01未満であることを示す。***は、Pが0.001未満であることを示す。****は、P値が0.0001未満であることを示す。興味深いことに、老齢オスマウスは、成体雄マウスと比較して、これらの集団のいかなる有意な変化も示さなかった(図6B~6E)。
【0114】
老齢雌マウスにおけるCD4+ナイーブT細胞が非移植対応マウスと比較して胸腺移植後に有意に増加し(P=0.0127)、一方で、CD4+エフェクター/メモリーT細胞集団が有意に減少したことが重要である(P=0.0321)(図6A~6E)。また、非移植対応マウスと比較して、胸腺移植後の老齢雄マウスにおいてCD4+エフェクター/メモリーT細胞集団が有意に減少した(P=0.0112)(図6B~6E)。胸腺移植後の成体の雌マウスおよび雄マウスの両方においてCD4+亜集団の変化は認められなかった(図6B~6E)。
【0115】
これらの暫定的結果は、(1)老齢雌マウスは、このモデルにおける年齢を適合させた雄マウスよりナイーブT細胞の百分率が低いこと;(2)高齢雌マウスは、このモデルにおける年齢を適合させた雄マウスよりナイーブT細胞の低下がより顕著であること;および(3)老齢雌マウスにおいて、低用量の胸腺の移植によってCD4+ナイーブT細胞の百分率が増加する一方で、CD4+エフェクター/メモリーT細胞の比率が低下することを示す。
【0116】
7.3 実施例3:ヒト自家胸腺組織の移植
ヒトの新生児または乳児の被験体は、胸腺摘出を必要とする適応症(例えば、外科的矯正および手術の一部としての胸腺摘出を必要とする先天性心臓欠陥)を呈する。胸腺組織を手術中に回収し、無菌手技を使用して切断するか小断片に切り刻む。必要に応じて、本明細書中に開示のように、胸腺組織をex vivoで培養し、そして/または低温保存する。本明細書中に開示のように、胸腺組織断片を、適切な薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、または担体を含む溶液に懸濁し、(例えば、超音波のガイド下で低侵襲手技を使用して)被験体の1またはそれを超えるリンパ節内に注射する。1ヶ月後または数カ月後、被験体の末梢血試料を、末梢血T細胞および/またはナイーブT細胞のレベルが注射を受けていなかった同等な被験体と比較して高いかどうか、または、断片を注射される前の被験体のレベルと比較して高いかどうかを判定するために評価する。末梢血T細胞および/またはナイーブT細胞のレベルが依然として非常に低いと見なされる場合、十分な数の末梢血T細胞および/またはナイーブT細胞が得られるまでより多くの胸腺組織を移植することができる。
【0117】
7.4 実施例4:ヒト被験体への胸腺組織の移植
ヒト被験体は、胸腺機能に影響を及ぼす容態(例えば、加齢性胸腺萎縮)を呈する。適切なドナー(例えば、被験体とHLAが適合するインタクトな胸腺を有する死体ドナー)を同定する。胸腺組織をドナーから採取し、無菌手技を使用して切断するか小断片に切り刻む。必要に応じて、本明細書中に開示のように、胸腺組織をex vivoで培養し、そして/または低温保存する。本明細書中に開示のように、胸腺組織断片を、適切な薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、または担体を含む溶液に懸濁し、(例えば、超音波のガイド下で低侵襲手技を使用して)被験体の1またはそれを超えるリンパ節内に注射する。移植片の受け入れを改善するために、必要に応じて被験体に免疫抑制レジメンを施す。1ヶ月後または数カ月後、被験体の末梢血試料を、末梢血T細胞および/またはナイーブT細胞のレベルが注射を受けていなかった同等な被験体と比較して高いかどうか、または、断片を注射される前の被験体のレベルと比較して高いかどうかを判定するために評価する。末梢血T細胞および/またはナイーブT細胞のレベルが依然として非常に低いと見なされる場合、十分な数の末梢血T細胞および/またはナイーブT細胞が得られるまでより多くの胸腺組織を移植することができる。
【0118】
本開示の発明の対象およびその利点を詳細に記載しているが、本開示の意図および範囲を逸脱することなく本明細書において種々の変化、置き換え、および変更が可能であると理解すべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書中に記載の過程、装置、製造物、および組成物、ならびに方法の特定の実施形態に制限されることを意図しない。当業者は本開示の発明の対象の開示から容易に認識するであろうが、本明細書中に記載の対応する実施形態と実質的に同一の機能を果たすか実質的に同一の結果が得られる既存のまたはその後に開発される過程、装置、製造物、組成物、または方法を、本開示の発明の対象にしたがって利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかる過程、装置、製造物、組成物、または方法の範囲内に含まれることが意図される。
【0119】
種々の特許、特許出願、刊行物、製品の指示書、プロトコール、および配列の受入番号が本出願の至るところに引用されており、その開示は、全ての目的のためにその全体が本明細書に参照により援用される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
【国際調査報告】