(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】関節軟骨欠損症の処置用の材料を得るための、軟骨細胞および軟骨のin vitro培養の方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20220930BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20220930BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220930BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/077
A61L27/36 120
A61L27/38 112
A61L27/38 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533249
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071826
(87)【国際公開番号】W WO2021023718
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522045763
【氏名又は名称】アーテック・エスペー・ズ オ.オ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ヤロス,スラウォミール
(72)【発明者】
【氏名】ソビエライ,グジェゴシ
(72)【発明者】
【氏名】バルセレク,ジュリタ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BB15
4B065BB18
4B065BB19
4B065BC11
4B065CA44
4C081AB02
4C081AB05
4C081CD34
4C081DA01
(57)【要約】
本発明は、ヒトまたは動物の軟骨などの組織、特に損傷組織を処置するための新規な方法に関する。より具体的には、本発明は、損傷組織、例えば任意の軟骨損傷、特に外傷性または変性の軟骨損傷の結果としての損傷組織を処置するための材料を得るための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨組織移植片をin vitroで製造する方法において、以下の特徴:
i)各々が少なくとも1つの辺縁を有する、少なくとも第1のおよび第2の軟骨組織の断片を用意するステップ、
ii)第1の断片の少なくとも1つの辺縁が第2の断片の少なくとも1つの辺縁から1cm以下または未満の間隔をあけられるように、培養培地に前記断片を置くステップ、
iii)軟骨細胞の懸濁液を前記断片に添加するステップ、および
iv)前記断片および軟骨細胞を細胞培養条件下で培養するステップ
を特徴とする、軟骨組織移植片をin vitroで製造する方法。
【請求項2】
前記断片の辺縁が、接する分かれ目に沿って互いに接触しており、好ましくは、接触の接する分かれ目が、少なくとも0.1cm、より好ましくは少なくとも0.5cmの長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養培地が、1種または複数種の塩、アミノ酸、さらなる構成成分、例えば、ガラクトース、デキストラン硫酸、スペミジン(spemidine)、ベータ-グリセロールホスファト(beta-glycerolphosphat)およびアデニン、ならびに緩衝液を含有する培地を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記培地が、例えば、ヒトおよび/または仔ウシの血清、好ましくはFBSに含まれる増殖因子をさらに含み、好ましくは、前記培地が血清を含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記培養培地が、IGFおよび/またはTGF、好ましくは最低限0.01%のIGF、0.01%のTGFを含む、請求項1から4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(iii)で軟骨細胞の懸濁液を添加する前に、ステップ(ii)の後で、前記断片が少なくとも14日間前記培養培地中で培養される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(iii)で、前記軟骨細胞が、培養培地のml当たり、少なくとも4,000、好ましくは4,000~40,000、好ましくは10,000~40,000、最も好ましくは20,000~40,000軟骨細胞の最終濃度まで前記培養培地に添加される、請求項1から6に記載の方法。
【請求項8】
前記軟骨細胞の懸濁液が、酵素消化によって、好ましくはプロテアーゼを用いる消化によって得られる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記軟骨細胞が、懸濁される前に接着単層で培養される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
培養温度は35~38℃の間、好ましくは37℃であり、および/またはCO
2濃度は4~6%の間、好ましくは5%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の断片の1つの辺縁が第2の断片の1つの辺縁に対して形状において相補的である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
組織の修復を必要とする患者における組織の修復に使用するための、請求項1から11のいずれかに記載の方法によって取得可能な組織移植片であって、好ましくは修復されようとする組織は損傷組織であり、より好ましくは損傷した軟骨組織である、組織移植片。
【請求項13】
疾患を有する患者の損傷組織の処置に使用するための、請求項1から11のいずれかに記載の方法によって取得可能な組織移植片であって、前記疾患が、関節疾患、例えば、変形性関節症、関節リウマチ、脊椎関節炎、若年性突発性関節炎、ループス、痛風、および滑液包炎を含む、組織移植片。
【請求項14】
前記処置が、欠損部位における前記組織の移植を含む、請求項13に記載の組織移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の軟骨などの組織、特に損傷組織を処置するための新規な方法に関する。より具体的には、本発明は、損傷組織、例えば任意の軟骨損傷、特に外傷性または変性の軟骨損傷の結果としての損傷組織を処置するための材料を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変形性関節症(OA)は、進行性の不可逆的な関節軟骨の損失に起因する、関節痛および機能障害を特徴とする変性関節疾患である。変形性関節症は、米国の人口における障害の、心血管、脳血管および呼吸器の疾患に次ぐ5番目に大きな原因である。主なOAの危険因子は加齢である。肥満症、関節損傷、激しい身体活動、例えば競技スポーツなどの付加的因子もある。
【0003】
OAと診断された症例数は多くの国で依然として増加しており、例えば米国では、1995年~2005年に新規症例が約600万件増加した(Lawrence RC、Felson DT、Helmick CGら、Estimates of the prevalence of arthritis and other rheumatic conditions in the United States.Part II.Arthritis Rheum.2008;58(1):26~35;Lawrence RC、Helmick CG、Arnett FCら、Estimates of the prevalence of arthritis and selected musculoskeletal disorders in the United States.Arthritis Rheum.1998;41:778~799)。同時に、一般集団において、変性疾患およびリウマチ性疾患に罹患している人数が増加している。2030年までに、米国で変性疾患と診断される症例数は6700万例、すなわち成人人口の25%に達し、そのうち2500万例、すなわち成人人口の9.3%が運動制限を経験することになると予想される(Hootman JM、Helmick CG.、Projections of U.S.prevalence of arthritis and associated activity limitations.Arthritis Rheum.2006;54:226~229)。このような傾向の結果として、クオリティ・オブ・ライフの点でマイナス影響のレベルが高まり、医療制度の費用が大幅に増加する。
【0004】
特に膝関節、股関節、肩関節および足関節に関する広範な変性関節病変の外科的な処置を受ける患者のほぼ全員に、軟骨性関節表面の破壊が単一部位に制限される期間があり、その後、全身性の関節病変へと進行する。これが、変性過程が関節にゆっくりと広がる原因である。MRIおよび関節鏡検査などの専門性の高い診断ツールを患者が利用しやすくなるとともに、炎症性の病巣の検出に要する時間が短くなった。現在、変形性関節症は、X線像で見ることができる放射線学的な変化のレベルで診断されることはなく、通常、関節のかなりの部分に及び、関節置換術による処置を必要とされる。しかしながら、小から中程度の関節軟骨損傷を処置するための適切なツールがないため、患者は依然として関節形成術の回避を期待することができない。このため、次の段階の処置は部分的または表面の関節形成術であり、これは残念ながら、繰り返し手術を行わずに完全回復を保証することはできない。
【0005】
全内部人工器官は、依然として患者の易動性、身体適合性の問題を解決せず、術後合併症を防止しない。内部人工器官の置換後の患者の身体能力は、3カ月間にわたって著しく低下し、患者が完全な能力を取り戻すことは稀である。痛みの減少の程度および手術した手足の機能の改善によって測定される患者の満足度のレベルは多岐にわたる。関節形成術の主な術後の問題には、痛みのレベル、手足の機能、および手術それ自体の影響の受け入れが含まれる。関節切除術は関節の決定的な破壊を意味し、次の段階はより一層広範な組織の切除およびより一層大きな移植片の移植のみであり得、通常、2回目または3回目の手術後に永久的な障害に至る。
【0006】
関節治療において新たに開発された方法の1つは、自家培養軟骨細胞移植(ACI)であり、これは、関節の未損傷部分から患者の軟骨の断片を採取し、軟骨細胞を単離し、それらをin vitroで増殖し、次いで軟骨細胞懸濁液を軟骨損傷部位に移植するものである。
【0007】
しかしながら、現在利用可能な方法では、適切な構造および天然の組織によく似ている生物学的特徴を伴う組織を得ることは不可能である。
コラーゲンマトリックスに支持された軟骨細胞の移植を含む利用可能な方法は、処置および回復が長期間に及ぶことを伴う。そのような方法は、失敗する確率が50%を超えて高く、行き詰まることが多い。その理由として、欠損は、均質な組織で置換されず、組織の成分で部分的にしか置換されないという事実がある。その手技の対価はきわめて高い。治療の費用便益比は患者にとって有利とは思われない。
【0008】
自家移植に使用するためのin vitro軟骨細胞培養の既知の方法、すなわち、培養での細胞増殖、および懸濁培養物の関節への投与は、関節の修復を保証せず、従来の外科的方法と比較して、コストが高く、有効性が限られている。in vivoでの組織の再構築は困難である。したがって、既知の方法は、主に軽損傷の処置に適用可能である。本発明は上記の問題に対処する。
【0009】
利用可能な軟骨細胞培養物では、増殖した細胞が変化して軟骨組織になることは不可能である。これは、細胞間結合を作り出すことが困難であるからである。細胞間結合には、時間、細胞の栄養にとって理想的な条件、および機械的制限が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の理由のため、新規で有効な治療の解決策が求められる。本発明者らは、細胞培養に基づく、より具体的には自家軟骨細胞移植など、細胞培養から得られる材料の移植の分野における効率的な方法を見出した。特に本発明は、軟骨細胞のin vitro培養の方法を提供し、この方法は、疾患の初期段階で上記の移植の方法に使用することができ、それ故、手術の必要性のリスクを減少させ、したがって術後合併症が減少し、さらに、発見された方法は、先行技術の方法と比較して、医療制度への負担を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、軟骨組織移植片をin vitroで製造する方法において、以下の特徴:
i)各々が少なくとも1つの辺縁を有する、少なくとも第1のおよび第2の軟骨組織の断片を用意するステップ、
ii)第1の断片の少なくとも1つの辺縁が第2の断片の少なくとも1つの辺縁から1cm以下または未満の間隔をあけられるように、培養培地に断片を置くステップ、
iii)軟骨細胞の懸濁液を断片に添加するステップ、および
iv)断片および軟骨細胞を細胞培養条件下で培養するステップ
を特徴とする、軟骨組織移植片をin vitroで製造する方法を提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、組織の修復を必要とする患者における組織の修復に使用するための、第1の態様の方法によって取得可能な組織移植片に関する。
第3の態様において、本発明は、疾患を有する患者の損傷組織の処置に使用するための、第1の態様による方法によって取得可能な組織移植片に関する。
【0013】
以下に、本明細書に含まれる図面の内容が記載される。これに関連して、上記および/または下記の本発明の詳細な説明も参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】好ましい分かれ目および配置の例。
図1a)は直線形の分かれ目の図である。
図1b)は直線形の分かれ目の図である。
図1c)はアーチ型の分かれ目の図である。
図1d)は角のある、および幾何学的な組織断片、それらの組合せの図である。
【
図2】好ましくない欠片の配置の例-辺縁が、接する分かれ目の全長に沿って相補的でなく、組織の辺縁同士の間に広い空間がある。不利な点:空間を充填するのがより困難であり、機械的耐性が低い。
【
図3】培地1中の組織小片の培養の顕微鏡画像。4.5g/lグルコース、10%FBS、2mMグルタミンを含む培地1中の組織小片培養の顕微鏡画像-経時的な新たな組織形成の可視化。
図3Aは、培養第1日目の、長さ約1cmの接する分かれ目に沿って互いに可能な限り近接している2つの組織小片の断片の画像(培養ベースライン、1日目を記録した画像)である。2つの組織小片の接触面の間に明らかに可視の空き空間。
図3Bは、4.5g/lグルコース、10%FBSおよび2mMグルタミンを添加した培地1中での培養17日目の、約1cmの接する分かれ目に沿って互いに近接している2つの組織小片の断片、および2つの組織小片の接触面の間に形成された可視の組織の充填の画像である。
図3Cは、4.5g/lグルコース、10%FBSおよび2mMグルタミンを添加した培地1中での培養52日目の、約1cmの接する分かれ目に沿って互いに近接している2つの組織小片の断片、および2つの組織小片の接触面の間に形成された可視の組織の充填の画像である。
図3Dは、4.5g/lグルコース、10%FBSおよび2mMグルタミンを添加した培地1中での培養52日目の、約1cmの接する分かれ目に沿って互いに近接している2つの組織小片の断片、および2つの組織小片の接触面の間に形成された可視の組織の充填の画像である。培養開始から52日後に形成された新たな組織は、培養1日目に存在した2つの組織小片の接合部の空き空間を明らかに修復して跡を残している。組織小片断片の2つの接触面の一端の古い組織および新しい組織の色調が有意に揃っていることが見える。画像は10×倍率(A、B、C)および40×倍率(D)を使用して撮影。
【
図4】培地1と培地2との混合物中での組織小片の培養の顕微鏡画像。培地1と2との混合物中での組織小片培養の顕微鏡画像-経時的な新たな組織結合の形成の可視化。
図4Aは、培養1日目の、長さ0.6cmの分かれ目に沿って互いに可能な限り近接している2つの組織小片の断片の画像(培養ベースラインを記録した画像)である。2つの組織小片の接触面の間に明らかに可視の空き空間。
図4Bは、4.5g/lグルコース、10%FBS、2mMグルタミンならびに添加剤:0.01%の濃度のIGF-IおよびTGFを添加した培地1と培地2との混合物の中での培養19日目の、約0.6cmの分かれ目に沿って互いに近接している2つの組織小片の断片、および2つの組織小片の接触面の間に形成された可視の組織結合の画像である。近接する断片のうち1つの表面上および組織小片の断片の間の両方に、新たな組織が見られる。得られた結合は2つの接触面を互いに結合させる線維の性質を有する。画像は10×倍率を使用して撮影。
【
図5】培地1中での組織小片(小片第1および第2)の培養の顕微鏡画像。培地1中での組織小片培養(第1および第2)の顕微鏡画像-経時的な新たな組織結合の形成の可視化。
図5Aは、培養1日目の、長さ1cmの分かれ目に沿って互いに可能な限り近接している2つの組織小片(第1および第2)の断片の画像(培養ベースラインを記録した画像)である。プレートの端に最も近く位置する第1の組織小片と、隣接する組織小片との間に空き空間がある。第1の断片を、接する表面の辺縁でなだらかに切り、実験の次の段階で識別されるようにした(第1の小片断片は画像の下部である)。
図5Bは、4.5g/lグルコース、2%FBS、2mMグルタミンおよび0.01%の濃度のコンドロイチンを添加した培地1の中での培養27日目の、2つの組織小片(第1および第2)の断片および2つの組織小片の約1cm長の接触面の間に形成された可視の組織結合の画像である。
図5Cは、4.5g/lグルコース、2%FBS、2mMグルタミンおよび0.01%の濃度のコンドロイチンを添加した培地1の中での培養27日目の、2つの組織小片(第1および第2)の断片および2つの組織小片の約1cm長の接触面の間に形成された可視の組織結合の画像である。線維様の結合が組織小片の接触面の間に形成される。その後数日培養すると、新たな組織が組織小片の接触面の間に形成されて、2つの組織小片を持続的に結びつけることになる。同じタイプの結合が、第2の小片と第3の小片の間、および第3の小片と第4の小片の間にも、それぞれ観察された。画像[A、B]は10×倍率で、画像[C]は40×倍率で撮影。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明が下記に詳細に説明される前に、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコールおよび試薬は変動し得るため、本発明はこれらに限定されるものではないことを理解されるべきである。また当然のことながら、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。別段の定義がされていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0016】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」、Leuenberger,H.G.W、Nagel,B.およびKlbl,H.編(1995)、Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel、Switzerland)に記載されているとおりに、ならびに「Pharmaceutical Substances:Syntheses,Patents,Applications」Axel KleemannおよびJurgen Engel著、Thieme Medical Publishing、1999、「Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals」、Susan Budavariら編、CRC Press、1996、および米国薬局方(United States Pharmacopeia)-25/National Formulary-20、United States Pharmcopeial Convention,Inc.発行、Rockville Md.,2001に記載されているとおりに定義される。
【0017】
本明細書および続く特許請求の範囲を通して、文脈上、他の意味が要求されない限り、「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などの変形は、述べられた整数もしくはステップまたは整数群もしくはステップ群の組み入れを意味するが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数群もしくはステップ群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。以下の各節において、本発明の様々な態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、明らかに矛盾しない限り、任意の他の態様または態様群と組み合わされてもよい。特に、任意選択の、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、任意選択の、好ましいまたは有利であると示された任意の他の特徴または特徴群と組み合わされてもよい。
【0018】
以下に、本発明の諸要素が記載される。これらの要素は特定の実施形態とともに列挙される。しかし当然のことながら、これらの要素は、いかようにも、いくつでも組み合わされて、追加の実施形態を創出することができる。様々に記載される例および好ましい実施形態は、明示的に記載される実施形態のみに本発明を限定するものと解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載される実施形態を、開示されるおよび/または好ましいいくつもの要素と組み合わされる実施形態を支持し、包含するものと理解されるべきである。さらに、本願に記載されるすべての要素の任意の順列組合せは、文脈上否定されない限り、本願の記載によって開示されるものと考えられるべきである。
定義
以下に、本明細書で頻繁に使用される用語の定義がいくつか記載される。これらの用語は、本明細書の残部におけるその使用の各例において、それぞれ定義された意味および好ましい意味を有する。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、文脈上、明確に他の意味が示されていない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用される場合、「細胞培養」または「細胞培養条件」は、細胞の自然環境外の制御条件下で細胞が増殖させられるプロセスを指す。具体的には、多細胞真核生物由来の細胞、特に動物細胞の増殖を指す(以下の細胞の定義も参照されたい)。典型的な増殖条件は、35℃~38℃の間の温度、3~7%CO2、および80%超、好ましくは90~99%の相対湿度を含む。本発明の細胞培養は、細胞および組織を含んでもよい。「細胞培養培地」、「培養培地」または単純に「培地」という用語は、細胞および/または組織、特に多細胞真核生物由来の細胞、特に動物細胞および/または組織の、生存または増殖を支持するための液体またはゲルを指す。そのような培地は、そのような細胞および/または組織の生存または増殖を、少なくとも1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間または30日間支持するために必要なすべての栄養素を含む。「細胞培養培地組成物」という用語は、細胞培養培地が含む成分を指す。このような成分は、必ずしもすべてが栄養素であるわけではなく、他の目的、例えば、細胞培養条件、例えばpHまたは重量オスモル濃度を所望の範囲内に調整することなどに役立つものとすることができる。さらに、その成分は、必ずしもすべてが細胞の生存もしくは増殖または組換えタンパク質の製造を支持するために必要であるわけではなく、一部は、なくても済むが、それでも細胞の生存もしくは増殖または組換えタンパク質の製造を支持する培地を改善するものとすることができる。細胞培養培地組成物は、乾燥粉末組成物、液体組成物または固体(例えばゲルまたは寒天)組成物とすることができる。特定の実施形態では、組成物は滅菌であり、すなわち、すべての生命体および/または感染因子/複製因子、例えば、真菌、細菌、原生生物、寄生生物、ウイルス、異常型タンパク質、例えばプリオンなどを含まない。
【0020】
細胞培養の培地は、塩、アミノ酸、さらなる構成成分、例えば、ガラクトース、デキストラン硫酸、スペミジン(spemidine)、ベータ-グリセロールホスファト(beta-glycerolphosphat)およびアデニンなど、ならびに緩衝剤を含んでもよい。塩は、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、クエン酸鉄(III)アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、および塩化ナトリウムを含む群から選択されてもよい。アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、ペニシラミン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、アスパラギン酸、シトルリン、シスチン、グリシン、およびオルニチンを含む群から選択されてもよい。ビタミンは、L-アスコルベート、D-(+)ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、ミオイノシトール、ニコチンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、およびビタミンB12を含む群から選択されてもよい。さらなる構成成分は、デキストロース、グルタチオン、ヒポキサンチン、リポ酸、エタノールアミン、ウリジン、スペルミン、pluronic F68、プトレシン、チミジン、ピルビン酸ナトリウム、ガラクトース、デキストラン硫酸、スペルミジン、ベータ-グリセロールホスファト(beta-glycerolphosphat)、およびアデニン(adenin)を含む群から選択されてもよい。緩衝剤は、HEPES、MOPS、MES、BES、MOPSO、ACES、TAPS、ビシン、トリシンを含む群から選択されてもよい。さらに、培地は、例えば、ヒトおよび/または仔ウシの血清、好ましくはFBSに含まれる増殖因子を含んでもよい。あるいは、培地は血清を含まなくてもよい。
【0021】
「~を含まない」という用語は、ある種の構成成分(当技術分野の細胞培養培地の成分であることが多い)を欠く培地を指す。一般に、その用語は、これらの構成成分が故意に組成物の一部とされたわけではなく、例えば、培地、その容器、または培地もしくはその容器を取り扱うためのツールの取り扱いを原因とする汚染の可能性を含むという事実を指す。特に、その用語は、例えば現状技術の方法、例えばクロマトグラフィー、特に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される、測定可能な極微量のこれらの構成成分をすべて除外する。
【0022】
「血清」という用語は、電解質、抗体、抗原、ホルモンおよび外因性物質、ならびに血液中に含まれる他のすべての物質(血液細胞、凝固因子、および血液凝固または凝血に関与する他のすべてのタンパク質を除く)(但し、それらは血餅の一部を形成する)を含有する血液画分を指す。特に、その用語は、細胞培養の用途に通常使用される血清、例えば、雌ウシ、ニワトリ、ヤギ、ヒト、ヒツジ、ブタまたはウサギの各血清を指す。特に、その用語は、定義されていない細胞培養の構成成分(その組成物および/またはその構成成分の濃度が規定されていない、または不明である限りにおいて)を指す。このため、その除外は、本発明の、特に本明細書で特定される培地組成物の構成成分をいずれも(血清がこれらの構成成分の1つまたは複数を含有し得る場合でも)除外しない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「単層培養」とは、培養培地を含有するフラスコまたはペトリ皿の単一層で細胞が増殖させられるタイプの培養である。「懸濁培養」とは、細胞が培養培地の懸濁液の中に均等に分布するように維持されるタイプの培養である。「タンパク質」という用語は、1種または複数種のポリペプチドを含む生体分子を指す。ポリペプチドは、ペプチド結合により連結されたアミノ酸の、例えば少なくとも50、60、70、80、90または100アミノ酸長の、単一直鎖状ポリマー鎖である。
【0024】
本明細書で使用される場合、疾患または障害を「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、疾患または障害の「処置」または「治療」は、以下:(a)障害の重症度を低減すること、(b)処置される障害に特有の症状の発症を制限または予防すること、(c)処置される障害に特有の症状の悪化を抑制すること、(d)過去に障害のあった個体においてその障害の再発を制限または予防すること、および(e)過去に障害の症候を示していた個体において症状の再発を制限または予防すること、のうち1つまたは複数を達成することを意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「細胞」または「組織」は、動物またはヒトの細胞または組織とすることができる。動物の細胞または組織は、霊長類、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ハムスター、雌ウシ、昆虫などの細胞または組織とすることができる。細胞は、懸濁細胞または接着細胞とすることができる。懸濁細胞は、天然に懸濁状態で(すなわち表面に付着せずに)生存することができる細胞、または懸濁培養物中で生存することができるように、例えば、接着条件が可能にするよりも高い密度に増殖するように改変された細胞である。接着細胞は、組織培養プラスチックまたはマイクロキャリアなどの表面を必要とする細胞であり、これが細胞外マトリックス構成成分(コラーゲンおよびラミニンなど)とともにコーティングされて、接着性を高め、増殖および分化に必要な他のシグナルを出せるようにすることができる。一実施形態では、接着細胞は単層細胞である。例えば、細胞は、軟骨細胞、ハイブリドーマ細胞、初代上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、単球/マクロファージ、リンパ球、造血幹細胞、線維芽細胞、および肝細胞からなる群から選択される。より特定すると、細胞は、異種軟骨細胞、同種軟骨細胞および自家軟骨細胞からなる群から選択される軟骨細胞とすることができる。特に、細胞は自家軟骨細胞である。特に、組織は軟骨組織、より特定すると、硝子軟骨組織である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「組織断片」は、組織の片である。本発明の内容において、形状において互いに「相補的な」組織断片は、その形状のため、鍵と鍵穴と同様に、または換言するとパズルの片のように一緒になることができる断片を指す。「相補的な」形状は、平行である故に、特に首尾よく組み合わさる組織断片の辺縁を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「移植片」または「組織移植片」は、器官移植に使用される生物医学的組織である。それは、失った生物学的構造を置換するため、損傷した生物学的構造を支持するため、または現存の生物学的構造を増強するために製造される。身体に接触する移植片の表面は、チタン、シリコーン、またはアパタイトなどの生物医学的材料で作製され得る。本発明の一実施形態では、組織移植片は、細胞を組織とともに培養することによって得られた組織で作製され、その場合、細胞は好ましくは軟骨細胞であり、組織は好ましくは軟骨である。
本発明の態様および好ましい実施形態。
【0028】
以下に、本発明の様々な態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、明らかに矛盾しない限り、任意の他の態様または態様群と組み合わされてもよい。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された任意の他の特徴または特徴群と組み合わされてもよい。
【0029】
本発明に至る研究において、驚くべきことに、組織移植片は、in vitro方法によって製造されることが可能であることが示され、その方法は、軟骨および軟骨細胞の培養を含み、疾患の初期段階で移植の方法に効果的に使用することができ、それ故、手術の必要性のリスクを減少させ、したがって術後合併症が減少し、さらに、発見された方法は、先行技術の方法と比較して、医療制度への負担を低減する。第1の態様において、本発明は、軟骨組織移植片をin vitroで製造する方法において、以下の特徴:
i)各々が少なくとも1つの辺縁を有する少なくとも第1のおよび第2の軟骨組織の断片を用意するステップ、
ii)第1の断片の少なくとも1つの辺縁が第2の断片の少なくとも1つの辺縁から1cm以下または未満の間隔をあけられるように、培養培地に断片を置くステップ、
iii)軟骨細胞の懸濁液を断片に添加するステップ、および
iv)断片および軟骨細胞を細胞培養条件下で培養するステップ
を特徴とする、軟骨組織移植片をin vitroで製造する方法を提供する。
【0030】
軟骨組織の断片に関する「辺縁」という用語は、軟骨組織の断片の外側の境界を指す。辺縁は軟骨組織の天然の外側の境界としてもよく、または例えばメスで切って単離した結果の軟骨組織としてもよく、この場合、辺縁は人工的な辺縁である。辺縁は軟骨断片全体の周囲に存在するため、辺縁はその全長が天然起源のものであってもよい(この場合、「断片」は、実際は断片でなく、天然に存在するため、軟骨組織の片である)。あるいは、辺縁は、一部が天然起源で一部が人工起源であってもよく、または辺縁は全体が人工であってもよい。後者は、軟骨の断片が軟骨組織のより大きな片から切り出される場合に当てはまる。これは、外科的手技中に断片が軟骨組織のより大きな片から切り出される場合、または外科的切除後に軟骨のより大きな片が2つ以上の断片に切り分けられ得る場合に当てはまり得る。軟骨組織は、引き続き処置される患者から取り出してもよく(自家軟骨)、または軟骨組織は、異なる人物-ドナー-由来としてもよい(異種軟骨)。したがって、「辺縁」という用語は、本発明の内容において、軟骨組織の断片の辺縁の一部を指すためにも使用される。好ましくは、互いに近接して置かれる2つの断片の辺縁の一部は、対応する形状を有する。例えば、両者の辺縁の一部が直線であるか、または1つが内側にカーブし、他方が外側にカーブする。
【0031】
上記のように、「軟骨組織の断片」という用語は、天然に存在するため軟骨組織の片を指すことができ、または天然のものより小さいサイズに切られたものを指すこともできる。軟骨の断片は、その天然の厚み、好ましくは0.01mm~10mmの間、より好ましくは0.1~6mmの間の厚みを有していてもよい。一部の例では、天然の軟骨組織のより厚い片から、より薄い軟骨の切片に切ることが好ましい場合がある。そのような軟骨の断片は、好ましくは0.1mm~5mmの間、より好ましくは0.1~4mmの間、より好ましくは1~3mmの間の厚みを有する。断片の厚みは、断片の全体にわたって本質的に均一であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明の方法に使用することができる好ましい軟骨の供給源は、異種供給源または自家供給源、好ましくは自家である。好ましくは、供給源は任意の関節、より好ましくは処置される者の損傷した関節である。好ましくはその場合、組織供給源は健常な組織供給源である。
【0033】
ステップii)において、第1の断片の少なくとも1つの辺縁と第2の断片の少なくとも1つの辺縁との間の空間は、0.9cm、0.8cm、0.7cm、0.6cm、0.5cm、0.4cm、0.3cm、0.2cm、0.1cmである。好ましくは、空間は0.5cm以下、好ましくは0.1cm以下であり、好ましくは、空間はない。
【0034】
ステップiii)において、軟骨細胞は、異種軟骨細胞、同種軟骨細胞または自家軟骨細胞である。好ましくは、軟骨細胞は自家軟骨細胞である。
第1の態様の好ましい実施形態では、好ましくは断片の辺縁同士が互いに接触している場合、断片の辺縁は、接する分かれ目に沿って、好ましくは
図1に示される配置のうち1つの配置で接触している。好ましくは、接触の接する分かれ目は、少なくとも0.1cm、より好ましくは少なくとも0.5cm、より好ましくは少なくとも1cmの長さを有する。
【0035】
好ましい実施形態では、少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つの断片が、第1および第2の断片について上記に示されたように間隔をあけられる。このようにして、いくつかの断片からより大きい軟骨シートが生成されることが可能である。
【0036】
好ましい実施形態では、培地は、1種または複数種の塩、アミノ酸、さらなる構成成分、例えば、ガラクトース、デキストラン硫酸、スペミジン(spemidine)、ベータ-グリセロールホスファト(beta-glycerolphosphat)およびアデニンなど、ならびに緩衝剤を含む。
【0037】
塩は、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、クエン酸鉄(III)アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、および塩化ナトリウムを含む群から選択されてもよい。
【0038】
アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、ペニシラミン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、アスパラギン酸、シトルリン、シスチン、グリシン、およびオルニチンを含む群から選択されてもよい。
【0039】
ビタミンは、L-アスコルベート、D-(+)ビオチン、D-パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、ミオイノシトール、ニコチンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、およびビタミンB12を含む群から選択されてもよい。
【0040】
さらなる構成成分は、デキストロース、グルタチオン、ヒポキサンチン、リポ酸、エタノールアミン、ウリジン、スペルミン、pluronic F68、プトレシン、チミジン、ピルビン酸ナトリウム、ガラクトース、デキストラン硫酸、スペルミジン、ベータ-グリセロールホスファト(beta-glycerolphosphat)、およびアデニン(adenin)を含む群から選択されてもよい。
【0041】
緩衝剤は、HEPES、MOPS、MES、BES、MOPSO、ACES、TAPS、ビシン、およびトリシンを含む群から選択されてもよい。
さらに、培地は、例えば、ヒトおよび/または仔ウシの血清、好ましくはFBSに含まれる増殖因子を含んでもよい。あるいは、培地は血清を含まなくてもよい。好ましい実施形態では、培地は、インスリン増殖因子(IGF)、および/またはトランスフォーミング増殖因子(TGF)、ならびに任意選択により、コンドロイチンおよび/またはインスリンをさらに含む。好ましくは、培地は、少なくとも0.01wt%のIGF、および/または少なくとも0.01wt%のTGF、ならびに任意選択により、少なくとも0.01wt%のコンドロイチンおよび/または少なくとも0.1wt%のインスリンを含む。好ましくは、培地は、少なくとも0.01wt%のIGF、少なくとも0.01wt%のTGF、少なくとも0.01wt%のコンドロイチンおよび少なくとも0.1wt%のインスリンを含む。
【0042】
好ましい実施形態では、ステップ(iii)で軟骨細胞の懸濁液を添加する前に、ステップ(ii)の後で、断片は少なくとも14日間培養培地中で培養される。好ましくは、断片は、14~18日間、好ましくは18~25日間、好ましくは25~30日間、好ましくは30~42日間、および少なくとも5カ月まで培養される。
【0043】
好ましい実施形態では、第1の態様の方法のステップ(iii)で、軟骨細胞は、培養培地のml当たり、少なくとも4,000、好ましくは4,000~0,000、好ましくは10,000~40,000、好ましくは16,000~40,000軟骨細胞の最終濃度まで培養培地に添加される。好ましくは、第1の態様の方法のステップ(iii)で培養培地に添加される軟骨細胞の最終濃度は、培養培地のml当たり16,000軟骨細胞である。
【0044】
好ましい実施形態では、軟骨細胞の懸濁液は、酵素消化によって、好ましくはプロテアーゼを用いる消化によって得られる。好ましくは、酵素消化は、コラゲナーゼ、トリプシン、ヒアルロニダーゼ、および/またはトシルリシルクロロメタンを用いて、より好ましくはコラゲナーゼを用いて、より一層好ましくはコラゲナーゼIIを用いて実行される。
【0045】
好ましい実施形態では、軟骨細胞の懸濁液は、懸濁される前に接着単層で培養される。好ましくは、培養温度は35~38℃の間であり、および/またはCO2濃度は4~6%の間であり、より好ましくは、温度は37℃であり、CO2濃度は5%である。
【0046】
好ましい実施形態では、第1の断片の1つの辺縁は、第2の断片の1つの辺縁に対して相補的であり、例えば、鍵と鍵穴モデルと同様に、第1の断片の1つの辺縁は、第2の断片の1つの辺縁にフィットする。断片の形状は、楕円形、円形、正方形、長方形またはかさ高いものであってもよく、好ましくは、形状は楕円形である。断片の少なくとも1つの辺縁の形状は、カーブしているかまたは直線とすることができ、好ましくは直線である。
【0047】
第2の態様において本発明は、組織の修復を必要とする患者における組織の修復に使用するための、本発明の第1の態様による方法によって取得可能な組織移植片であって、好ましくは、修復されようとする組織は損傷組織であり、より好ましくは損傷した軟骨組織である、組織移植片を提供する。
【0048】
第3の態様において本発明は、疾患を有する患者の損傷組織の処置に使用するための、本発明の第1の態様による方法によって取得可能な組織移植片を提供する。好ましくは、疾患は、関節疾患、例えば、変形性関節症、関節リウマチ、脊椎関節炎、若年性突発性関節炎、ループス、痛風、および滑液包炎などを含む。好ましくは、疾患は変形性関節症である。
【0049】
好ましい実施形態では、処置は、欠損部位における組織移植片の移植を含む。換言すると、試験研究の結果、軟骨の状態の処置用の材料を得るために、硝子軟骨細胞培養の方法が開発された。培養に天然の組織断片を同時使用することを含む方法が開発され、天然の組織断片は、in vitroで組み合わされて、より大きい片および軟骨細胞懸濁液になり、これが接着剤として作用して組織断片を結合させる。
【0050】
したがって、軟骨細胞培養を行う方法を開発するために、適切に計画された実験的研究が行われ、とりわけ、様々な細胞密度、結合した断片の接触面の長さ、様々な種類の添加剤および培養培地が試験されて、容易に壊されない細胞間結合が作り出された。
【0051】
本発明によれば、細胞は、培養培地の表面、例えばプレートに接着している間に増殖し、分裂する。細胞は、表面から剥離されて継代されるときになって初めて懸濁状態にされ、培地に懸濁されると、組織を横溢させる(flood)ために使用される。
【0052】
本発明は、現状技術で知られている、マトリックス中に置かれた細胞の懸濁液または細胞よりも天然に近い形態で、軟骨組織を得ることが可能となるように、細胞および組織断片のin vitro培養を可能にする方法に関する。硝子軟骨の細胞および断片の培養はin vitroで行われ、組織の形態で得られた材料は、欠損部位に移植される。本発明は、患者の関節中の負担の少ないまたは負担のない場所から正常軟骨組織のより小さい断片を採取すること、および次にそれらを細胞/組織培養に好適な培地の中に置くことにあり、そこでは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3~10の組織断片-片を近接させて、すなわち、各断片の少なくとも1つの辺縁が別の断片の辺縁と接触するように、直接置くことによって、培養中に、より小さい断片が組み合わされて表面がより大きい小片になる。少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3~10の組織の断片の平行な辺縁は、その形状に従ってマッチングされ、それにより、マッチングされた辺縁が接触の分かれ目に沿って接合し合うことによって小片が結合することが可能になるが、その場合、断片または辺縁の全体が平行に配置される。
【0053】
本発明によれば、関節軟骨欠損症の処置用の材料を得るためにin vitro軟骨細胞培養を行う方法は、得られた硝子軟骨を少なくとも2つの組織断片に切り分けるステップ、および少なくとも2mMのグルタミン、少なくとも2%のFBS、少なくとも4.5g/lのグルコースを含有する培養培地の中で、培養プレート上にこれらの断片を隣同士に置くステップであって、断片同士が近くに配置された後に、少なくとも2つの組織断片の間の空間が可能な限り小さくなるように、かつ培養プレートの組織断片で充填された面積が可能な限り小さくなるように、組織断片が各断片の辺縁の少なくとも1つの分かれ目に沿ってマッチングされた形状を有している、断片を置くステップからなる。辺縁は、培養中に各断片が、別の断片と接触する少なくとも1つの分かれ目に沿って接合し合うように調整される。軟骨細胞懸濁液が培養に添加され、組織断片は軟骨細胞とともに培養される。培養培地は、所定の時間周期で、軟骨細胞を培養培地に添加することによって交換され、細胞は、組織断片が、別の断片と接触する分かれ目の少なくとも一部に接合するまで培養される。好ましくは、少なくとも2つの接合した組織断片の間の接する分かれ目は、最小限0.1cm、最も好ましくは少なくとも0.5cmである。好ましくは、組織断片は、楕円形様の形状を有するべきである。好ましくは、組織断片の形状は、培養中の組織断片が、接する分かれ目に沿って互いにきわめて緊密に接着するように選択される。
【0054】
好ましくは、培養培地は、最低限0.01%のIGFおよび/または0.01%のTGFおよび/または0.01%のコンドロイチンおよび/または最低限0.1%のインスリンの濃度で添加剤を含有する。好ましくは、培養培地は、55~75mg/lのピルビン酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム、2mM~4mMのグルタミン、2%~10%のFBS、および少なくとも4.5g/lのグルコースならびにエタノールアミンおよび/またはグルタチオンおよび/またはアスコルビン酸および/またはインスリンおよび/またはトランスフェリンおよび/または硫酸銅および/または塩化マンガンを含有する。
【0055】
好ましくは、軟骨細胞を添加する前に、組織断片それ自体が、好ましくは少なくとも14日間、培地中で培養され、その後、軟骨細胞が培養に添加される。好ましくは、軟骨細胞懸濁液は、培養培地の2.5ml当たり少なくとも40,000軟骨細胞が存在するような量で組織断片に添加される。好ましくは、接する区分の長さが0.1cm~1cmの2つの断片を培養するための軟骨細胞の最低濃度は、培地2.5ml当たり40,000軟骨細胞である。
【0056】
好ましくは、培養された軟骨細胞は酵素消化によって得られ、その後、必要な数の細胞が、接着培養の単層で軟骨細胞を培養することによって得られる。好ましくは、細胞は、37℃および5%CO2で培養される。
【0057】
試験研究中に、接合した辺縁に沿う最小の接する分かれ目、すなわち接する分かれ目は最小限0.1cmの長さでなければならないことが確立された。各辺縁は平行な分かれ目に沿ってより緊密に一緒になることができる。接する分かれ目は、組織小片の辺縁の断片でもよく、組織小片の辺縁全体でもよい。接合されることになる辺縁は、直線または丸みのあるものとするべきである。培養中に、小片は、同じドナーの組織から得られた軟骨細胞懸濁培養物を使用して組み合わされる。軟骨は、軟骨細胞および細胞外マトリックスを両方含有する。組織断片-小片の形状を、軟骨断片の接合した辺縁の間の空間が可能な限り小さくなるように選択することが重要であり、辺縁または辺縁の断片は、少なくとも0.1cmの長さの分かれ目に沿って互いに接触するべきである。小片-組織断片の接する辺縁の形状のマッチングは、軟骨細胞を添加する前に、遅くとも、培養プレート上の至近距離にそれらを置く段階で行われるべきである。
【0058】
このため、培養により、細胞だけでなく、硝子軟骨を得ることが可能になる。培養された組織小片の接合部では、得られた組織は機械的強度が弱い、または成熟度が低いという特徴があり得るが、得られた組織は、細胞間接合によってもたらされる堅実な構造の組織になる。
【0059】
本発明によれば、手順は以下を含む。
1.患者からの硝子軟骨の採取、
2.組織を適切な小片-断片に切り分ける、
3.一部の小片に酵素消化を行って軟骨細胞を得、細胞培養-軟骨細胞培養を樹立する、
4.残部の小片(消化されていない)を、培養培地-軟骨細胞が添加される組織断片の培養の中に置く、
5.培養中で適正な量の軟骨細胞を得た後に、組織と細胞断片とが組み合わされた培養の中で、さらに使用するための細胞が得られ、同時に細胞は消化されていない組織小片の結合を可能にする、
6.懸濁した軟骨細胞が、組織断片を含む培養プレートに添加される。
【0060】
懸濁細胞は、溝の中に位置して少なくとも2つの組織断片の最小限2つの辺縁の融合を支援し、および/または細胞は、細胞培養プレートに接着し、増殖し、軟骨断片が互いに融合するのを促進する因子を放出する。
【0061】
組み合わされた培養中に、消化されていない小片-培養の組織断片が、接合された辺縁の間の空間が可能な限り小さくなるように、すなわち、組織断片の接する辺縁同士が接合され得るように、接する分かれ目に沿って辺縁の形状を調整され、互いに近接して置かれる。
【0062】
断片-接する辺縁の形状を、互いに接触する軟骨の断片の辺縁の間の空間が可能な限り小さくなるように選択することが重要である。接する辺縁の形状のマッチングは、懸濁された軟骨細胞を添加する前に、遅くとも、培養プレート上の至近距離に断片を置く段階で行われるべきである。
【0063】
本発明は長期の試験研究の結果として開発された。実施例1~3は、損傷した関節軟骨の再構築用の硝子軟骨材料を得るために細胞を培養する試みを示す。
本発明は、調製の実施例および図面を使用して説明される。
図1は、接合する組織断片の原理を示し、A~Bは接する分かれ目を示し、Cは組織断片の形状を示す。
図2は、接合する組織断片の原理を示し、組織断片の不適切な形状を示す。
図3~5-顕微鏡画像。
【0064】
好ましくない結合の例は、すべての種類の弧-直線、および様々な角度を有する幾何学的な結合であり、その場合、断片間の空間が比較的広く、他方に対して平行な、小片の少なくとも0.1cmの長さの辺縁をもつ接する分かれ目がない。それらは
図2に示されている。
図2は、好ましくない欠片の配置の例を示す-辺縁が、接する分かれ目の全長に沿って相補的でなく、辺縁同士の間に広い空間がある。不利な点:空間を充填するのがより困難であり、機械的耐性が低い。
【実施例】
【0065】
実施例1
本発明による硝子軟骨組織断片のみを培養する試み
関節軟骨欠損症の処置用の材料を得るためにin vitro方法を使用して軟骨組織の均一な皮弁を作り出すために。最初に臨床材料を、ヒト成人から、膝関節の体重負荷が最も少ない部分から採取した硝子軟骨組織断片の形態で得た。組織は患者の身体的負荷の低い場所から採取される。この組織は健常であるべきである。したがって、採取した皮弁または軟骨の皮弁の形状は異なっていてもよい。1つまたは複数の軟骨断片を採取することができる。1つまたは複数の断片は、軟骨-骨の境界線を横切って、またはそれに沿って切ることによって、より小さな断片に分割することができる。関節軟骨の大きい断片を採取する場合には、次にそれを滅菌条件下でより小さい断片に切り分けた。
【0066】
患者から材料を採取した直後に、生理的食塩水(0.90%NaCl)を充填した滅菌50mlチューブに、組織が溶液に完全に浸漬するように材料を移した。次いで軟骨を、様々な形状、および長さまたは幅または厚みが1cm未満のサイズの、薄い、最大3mmの厚みの切片に切った。
【0067】
得られた組織断片を、生理食塩水(0.90%NaCl)に完全に浸漬した状態で、滅菌50mlチューブに入れて細胞培養実験室に移した。組織の運搬は、滅菌条件下、2~8℃で行った。組織について実行したすべての操作は、層流条件下で行った。適正なサイズの小片を調製した後に、得られた材料を、最終組織皮弁を得るための出発基剤として役立てた。
【0068】
培養プレートの表面上に互いに対して適切に配置され、適切な条件および培養培地組成物で培養された、組織切片のマトリックス上に、関節軟骨欠損症の処置用の最終組織皮弁小片を形成させることにした。
【0069】
重要なステップは、組織切片の接する辺縁の形状を適切に調整することであった。接する辺縁に沿って組織断片を接合させることによって、組織断片は培養プレート上で互いに可能な限り近接させた。
【0070】
少なくとも1つの直線の分かれ目-長さ0.1~1cmの接する辺縁に沿って互いに接触する2~4つの組織断片を使用して、培養試験を行った。
上で述べたように、形状を、少なくとも2つの組織断片-小片の、接する辺縁-接合した辺縁に従ってマッチングした。最大の長さ/幅および断片-小片の最大数は、培養プレートのサイズに応じて決めた。
【0071】
採取したすべての組織小片から、培養プレートのウェルの表面に合う限り多くの(少なくとも2つの)小片を選択することが必要であった。前述の既に調製した小片システムが、近接する小片の辺縁同士のミスマッチが原因で使用することができなかった場合、患者から材料を採取した後に、それらを切り、所望の形状を与えた。
【0072】
予め採取し、調製した組織断片を主材料として、新たな組織断片の形成を計画した組織培養のこの段階で、最小限2つの組織断片を隣同士に置くことがきわめて重要であると仮定した。これらの断片は、接合された断片の接する辺縁が、可能な限り長く、近接する断片/断片群と形状が適合し、それにより、培養プレートの充填される空間が可能な限り小さくなるように配置されるべきである。この効果は、適切な形状の断片を採取することによる患者からの組織の採取の段階と、後の実験室のin vitroとの両方で達成することができる。辺縁の形状適合性-それらの隣同士の位置設定は、1つの組織断片の少なくとも1つの辺縁が他方の辺縁に接触するようにされ、このことは、軟骨断片の間の空き空間の体積を最小にするため、軟骨細胞懸濁液による辺縁間の領域の充填を確実に容易にし、かつ接合部位で新たに得られる組織断片の機械的耐性を確実に高める。
【0073】
培養中に、組織皮弁-小片-がその面積を増加させるかどうか、および辺縁間の空間が充填されるかどうかを観察した。およそ1mm×1.2cm×0.7cmの適合性の組織小片切片を、2.5mlの細胞培養培地2を充填した6ウェル滅菌細胞培養プレートのウェルに移した。この培地は、無水塩化カルシウム、硫酸銅五水和物、硫酸第一鉄七水和物、塩化マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、無水リン酸水素ナトリウム、硫酸亜鉛七水和物、L-アラニン、L-アルギニン塩酸塩、L-アスパラギン一水和物、L-アスパラギン酸、L-システイン塩酸塩、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン三塩酸塩一水和物、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン二塩基性二水和物、L-バリン、D-ビオチン、塩化コリン、葉酸、ミオイノシトール、ナイアシンアミド、D-パントテン酸(ヘミカルシウム)、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ビタミンB12、D-グルカンオゾン、ヒポキサンチン、リノレイン酸、フェノールレッド、プトレシン塩酸塩、一ナトリウムピルビン酸、チミジンに、1倍濃縮Glutamax添加剤溶液を加えたものを含有していた。細胞を37℃および5%CO2で7日間培養した。2つの組織断片の間の接合部、それらの生存率および増殖を、10×および40×の光学倍率を使用してモニターした。定期的に、後続の継代および培地交換の前に毎回、倒立光学顕微鏡を10×および40×の倍率で使用して、組織の変形:結合、生存率および増殖を観察した。培養培地および添加剤を週1回交換した。
【0074】
後続の毎回の培地交換には、
1)古い培地の除去
2)組織小片の切片の新たな培養プレートへの穏やかな移動
3)新鮮培地の添加
を含めた。
【0075】
培養中に、組織皮弁-小片-がその面積を増加させるかどうか、および辺縁間の空間が充填されるかどうかを観察した。組織断片の単独での培養(軟骨細胞懸濁液を含めずに)を本発明に従って進め、5カ月後に、1つのウェルに置いた軟骨組織断片のペアの間に結合は観察されなかった。古い組織の表面に新たな組織の増殖もなかった。
【0076】
実施例2
本発明による軟骨組織断片のみの培養の試み
培養手順は、実施例1に記載したものと同様とした。
【0077】
Glutamax添加剤の1倍濃縮溶液およびグルコース[4.5g/l]を添加した2.5mlの細胞培養培地2を充填した6ウェル滅菌細胞培養プレートの各ウェルに、適合性の組織小片を移した。
【0078】
5カ月間培養した後、1つのウェルに置いた軟骨組織断片のペアの間に結合は観察されなかった。古い組織の表面に新たな組織の増殖もなかった。
実施例3
本発明による軟骨組織断片のみの培養の試み
培養手順を、実施例1に記載したように行ったが、異なるのは、適合性の組織切片を、2.5mlの細胞培養培地1を充填した6ウェル滅菌細胞培養プレートに移したことであった。この培地は、無水塩化カルシウム、硝酸鉄、硝酸塩化カリウム、硫酸マグネシウム無水物、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム一塩基性一水和物、D-グルコース、L-アルギニン塩酸塩、L-シスチン二塩酸塩、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、二ナトリウムL-チロシン二水和物、L-バリン、D-パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、ならびにイノシトール、ナイアシンアミド、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩)および4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸ナトリウム塩を、高グルコース濃度[4.5g/l]で含有していた。
【0079】
5カ月間培養した後、1つのウェルに置いた軟骨組織断片のペアの間に結合は観察されなかった。古い組織の表面に新たな組織の増殖もなかった。
実施例4
本発明による方法の概要
関節軟骨欠損症の処置用の材料を得るためにin vitro方法を使用して軟骨組織の均一な皮弁を作り出すために。最初に臨床材料を、ヒト成人から、膝関節から採取した硝子軟骨組織断片の形態で得た。硝子軟骨は、好ましくは処置された関節(膝関節、股関節、足関節、肩関節または任意の他の関節とすることができる)から採取されるべきである。処置された関節が小さい、または硝子軟骨を抽出するのが困難な場合、別の関節から採取することができる。それは常に、体重負荷が最も少ない部位であるべきである。組織は患者の身体的負荷の低い場所から採取される。この組織は健常であるべきである。したがって、採取した皮弁または軟骨の皮弁の形状は異なっていてもよい。1つまたは複数の軟骨断片を採取することができる。1つまたは複数の断片は、軟骨-骨の境界線を横切って、またはそれに沿って切ることによって、より小さな断片に分割することができる。
【0080】
関節軟骨の大きい断片を採取する場合には、次にそれを滅菌条件下でより小さい断片に切り分けた。
患者から材料を採取した直後に、生理的食塩水(0.90%NaCl)を充填した滅菌50mlチューブに、組織が溶液に完全に浸漬するように材料を移した。次いで軟骨を、様々な形状、および長さ/幅が1cm未満のサイズの、薄い、最大3mmの小片に切った。(これは、最終組織小片を得るための主材料を形成することになる断片と、遊離軟骨細胞の形成を生じることになる断片との両方に適用される)。
【0081】
断片の好ましい厚み/長さ/幅:1mm×0.5cm×0.5cm、1mm×0.6cm×0.6cm、1mm×0.7cm0.7cm、1mm×0.8cm×0.8cm、1mm×0.9cm×0.9cm、1mm×1cm×1cm、2mm×1cm×1cm、3mm×1cm×1cm。得られたおよそ1mm×1cm×1cmの組織断片を、生理食塩水(0.90%NaCl)に完全に浸漬した状態で、滅菌50mlチューブに入れて細胞培養実験室に移した。組織の運搬は、滅菌条件下、2~8℃で行った。
【0082】
接合した皮弁小片の寸法および形状は問題ではない。少なくとも2つの組織断片の接する分かれ目に沿う、接合した辺縁の間の空間が可能な限り小さくなるように、辺縁が、少なくとも0.1cmの長さの接する分かれ目に沿って接合するように、皮弁小片を調製することが重要である。断片それ自体のサイズはまた、損傷のサイズおよび形状、ならびに「生物学的人工器官」を本発明による軟骨組織の再構成された断片の形態で得るために採取された健常な軟骨のサイズおよび形状にも依存する。接する分かれ目は、少なくとも0.1cmの長さとした。組織または細胞を使用して行ったすべての操作は、層流条件下で行った。好適なサイズの小片を調製した後に、すべての断片を2つの部分に分割した。そのうちの1つを使用して、軟骨細胞懸濁液、すなわち、組織断片を伴う細胞培養において、組織を構築する材料としての役目をする混合物を得た。他方は、組織皮弁小片を培養するための断片を構成し、再構成された組織の最終皮弁を得るための主材料を構成した。
【0083】
関節軟骨欠損症の処置用の最終組織皮弁小片を、下記の手順に従って得た。すなわち、整えた形状の組織切片を、培養プレートのウェルの表面上に互いに対して配置し、軟骨細胞懸濁液を使用して-「組織-細胞」培養で組み合わせた。
【0084】
1)組織断片のさらなる培養のための軟骨組織断片の調製。
重要な段階は、組織小片がその辺縁によって、培養プレート上で互いに可能な限り近接して位置することが可能になるような、当該組織小片の適切な選択である。組織断片は、少なくとも1つの直線形の区分に沿って互いに接触しなければならない。少なくとも2つの組織断片がなければならない。任意の形状の組織断片の最小の長さ:最小限0.1cm、好ましくは少なくとも0.5cm。任意の形状の組織断片の最小の幅:少なくとも0.1cm、好ましくは少なくとも0.5cm。組織の厚み:少なくとも1mm、および4mm以下。
【0085】
上記のように、形状は、少なくとも2つの組織断片-小片の接する辺縁-接する分かれ目に沿って接合した辺縁に従ってマッチングされる。この接合した辺縁の接する分かれ目の長さは、分かれ目が直線形か、またはカーブしているかにかかわらず、少なくとも0.1cmの長さ、好ましくは最小限0.5cmの長さであるべきである。なぜなら、この長さは接する線-接する分かれ目を指し、直線のことではないからである。断片-小片の最大の長さ/幅および最大数は、培養プレートのサイズおよび治療目的に依存する。
【0086】
採取したすべての組織小片から、培養プレートのウェルの表面に合う限り多くの(少なくとも2つの)小片を選択することが必要であった。前述の既に調製した小片システムが、近接する小片の辺縁同士のミスマッチが原因で使用することができなかった場合、患者から材料を採取した後に、それらを切り、所望の形状を与えた。
【0087】
予め採取し、調製した組織断片を主材料として、新たな組織断片の形成を計画した組織培養のこの段階で、最小限2つの組織断片を隣同士に置くことがきわめて重要であった。これらの断片は、接合された断片の接する辺縁が、可能な限り長く、少なくとも0.1cmであり、近接する断片/断片群と形状が適合して軟骨断片の間の空き空間を最小にし、それにより、培養プレートの充填される空間が可能な限り小さくなるように配置されるべきである。この効果は、適切な形状の断片を採取することによる患者からの組織の採取の段階と、後の実験室のin vitroとの両方で達成することができる。辺縁の形状適合性-それらの隣同士の位置設定は、1つの組織断片の少なくとも1つの辺縁またはその分かれ目が他方の組織断片の辺縁に接触するようにされ、このことは、軟骨断片の間の空き空間の体積を最小にするため、軟骨細胞懸濁液による辺縁間の領域の充填を確実に容易にし、かつ接合部位で新たに得られる組織断片の機械的耐性を確実に高める。考えられ得る辺縁形状の例およびそれらの接合の仕方が
図1に示されているが、例はすべての可能性の項目を網羅するわけではない。培養中に、近接する辺縁の分かれ目に沿って互いに直に近接している最低限2つの組織断片を得て結合させることが重要であり、その場合、直線の分かれ目およびカーブした分かれ目の両方のケースで、接する分かれ目の最小の長さは0.1cmである。この値は、断片または組織断片の辺縁全体の接する区分の長さに、その形状に関係なく適用される。
【0088】
図1は、組織断片の全体または組織断片-小片の辺縁を表し、形状がマッチしている辺縁同士を、接する分かれ目に沿って近づけることによるそれらの接合部を示す。
本発明によれば、平行に近接する辺縁-少なくとも2つの組織断片の接合部位の道筋を計画することによって、組織小片-組織断片の形状を調整することが重要である。この形状はすべての図面に存在し、そこには直線の辺縁がある。この形状は、一部が直線で、一部がある所でアーチ型であることも可能である。したがって、組織断片-小片は、任意の形状を有することができる。辺縁の道筋は、両方の組織断片がこれらの辺縁に沿って接合され得るように、接する分かれ目に沿って結合する組織断片の両方に適合性-平行であるべきである。辺縁の分かれ目、または少なくとも2つの組織断片の接合部で、接する分かれ目に沿って接合した組織断片の辺縁全体は、接する分かれ目と呼ばれる。
【0089】
原理は、接合した組織辺縁の接する分かれ目の長さ-接する分かれ目に沿った断片の辺縁の一部または全体の長さ-組織断片の接合部が、少なくとも0.1cmの長さ-接する分かれ目の長さであるべきだということである。
図1は、接する分かれ目の形状の例:A-直線形の分かれ目、B-アーチ型の分かれ目、および接合した組織断片の形状の例、C-角のあるおよび幾何学的な組織断片、それらの組合せを示す。
【0090】
好ましくない結合の例は、すべての種類の弧-直線、および様々な角度を有する幾何学的な結合であり、その場合、断片間の空間が比較的広く、他方に対して平行な、小片の少なくとも0.1cmの長さの辺縁をもつ接する分かれ目がない。それらは
図2に示されている。
図2は、好ましくない欠片の配置の例を示す-辺縁が、接する分かれ目の全長に沿って相補的でなく、辺縁同士の間に広い空間がある。不利な点:空間を充填するのがより困難であり、機械的耐性が低い。
【0091】
2)組織断片のみの前培養
上記のように、選択された、または適切にトリミングされた小片-組織断片-切片を1ウェル、6ウェルまたは12ウェルの滅菌細胞培養プレートに、ピンセットを使用して移した。選択された、または適切にトリミングされた組織小片を、10ml、2.5mlまたは1.25mlの、DMEMの商品名でも知られる、4.5g/lグルコースを伴う細胞培養培地1、またはF12の商品名で知られる、Glutamax添加剤の1倍濃縮溶液を添加した培地2、または培地1と培地2との1:1の比の混合物に2%、4%、5%または10%のFBS血清および2mM~4mMグルタミンを加えたものを予め充填した各ウェルに置いた。
【0092】
この実施例では、DMEMの商品名で知られる培養培地1を使用した。この培地は、無水塩化カルシウム、硝酸鉄水和物、塩化カリウム、硫酸マグネシウム無水物、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム一塩基性一水和物、D-グルコース、L-アルギニン塩酸塩、L-シスチン二塩酸塩、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、二ナトリウムL-チロシン二水和物、L-バリン、D-パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、i-イノシトール、ナイアシンアミド、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩および4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1ナトリウム塩-エタンスルホンにグルコースを添加したものを含有していた。
【0093】
この実施例では、培養培地2を使用した。この培地は、無水カルシウム、硫酸銅五水和物、硫酸第一鉄七水和物、塩化マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ナトリウム二塩基性無水物、硫酸亜鉛七水和物、L-アラニン、L-アルギニン塩酸塩、L-アスパラギン一水和物、L-アスパラギン酸、L-システイン塩酸塩、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシンL-ヒスチジン三塩酸塩一水和物、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン二塩基性二水和物、L-バリン、D-ビオチン、塩化コリン、葉酸、ミオイノシトール、ナイアシンアミド、D-パントテン酸(ヘミカルシウム))、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ビタミンB12、D-グルコース、ヒポキサンチン、リノレイン酸、フェノールレッド、プトレシン塩酸塩、一ナトリウムピルビン酸、チミジンに、1倍濃縮Glutamax添加剤溶液を添加したものを含有していた。
【0094】
この実施例では、両方の培地の1:1混合物の作用も確認した。
好ましくは、培地は、最低限4.0g/lのグルコース、好ましくは4.5g/lのグルコース、最低限10%のFBSおよび最低限2mMのグルタミンを含有する。
【0095】
好ましくは、培養培地は、55~75mg/lのピルビン酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム、2mM~4mMのグルタミン、2%~10%のFBS、ならびに少なくとも4.5g/lのグルコース、ならびにエタノールアミン、グルタチオン、アスコルビン酸、インスリン、トランスフェリン、硫酸銅、塩化マンガンを含有するべきである。
【0096】
実施例のとおり、サイズがおよそ1mm×1cm×1cmの最低限2つの組織皮弁小片を培養プレートの各ウェルに置き、それらの辺縁のうち1つに沿って、それらの最大の長さまたはそれらの辺縁の断片に沿って、少なくとも0.1cmの長さの接する分かれ目に沿って、それらが互いに接着するように配置した。接する分かれ目が0.1~0.5~1cmである2~4つの断片を使用して、複数の実験を行った。軟骨を、37℃および5%CO2で7日間インキュベートした。この期間の後に、顕微鏡観察を行い、培地を新鮮なものに交換した。この実験に使用した6ウェルプレートの場合、7日毎に毎回交換した新鮮培地の体積は2.5mlであった。倒立顕微鏡を使用して、組織小片の生存率、培養の微生物の純度、組織中に存在する細胞の分裂から生じる新たな細胞構造の出現の可能性を評価した。2つの組織断片の間の接合部、その組織断片の生存率および増殖を、10×および40×の光学倍率を使用してモニターした。
【0097】
十分な数の軟骨細胞が得られるまで組織断片を培養して(分離培養-接着培養)、増殖した軟骨細胞の懸濁液で組織断片を横溢させた。この実験では、培養は17日であった。この組織断片培養は一種のインキュベーションを要するものであり、組織断片を活性な状態に維持することを狙い、遊離軟骨細胞を伴う適切な培養中で既に行われている次のステップに備えた。
【0098】
3)軟骨細胞懸濁液の取得および軟骨細胞単独の初期接着培養
軟骨細胞を得て培養し、それを増殖させることは、既知の方法を使用して実行することができる。
【0099】
今後の新たな組織皮弁の主材料としての役目をする組織小片を選択した後に、軟骨細胞の単離のための残余の小片(すべての小片の重量の15%~50%を占める)を使用して、軟骨細胞懸濁液を得た。軟骨細胞を得ることにおいて、組織断片の形状は問題ではない。この目的のため、さらに、酵素消化用の組織を、メスを使用してより小さい片に切り分けた(3mm×3mm×3mm以下)。このようにして調製した材料をコラゲナーゼIIで処理した。
【0100】
得られた組織片を、15ml~50mlの体積の滅菌チューブに移した。この場合は50mlチューブとした。組織片を、1×濃縮のリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)で3回すすいだ。酵素消化時間および酵素の量を、組織断片の質量に合わせて、および反応後に適切な細胞生存率が得られるように調整した。この試験では、以下の組織対酵素の重量比範囲、1g:1mg、1g:2mg、1g:3mgおよび1g:4mgを使用した。消化反応は、DMEMの商品名で知られる培養培地1[以下を含有:無水塩化カルシウム、硝酸鉄水和物、塩化カリウム、硫酸マグネシウム無水物、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カリウム一塩基性一水和物、D-グルコース、L-アルギニン塩酸塩、L-シスチン二塩酸塩、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、二ナトリウムL-チロシン二水和物、L-バリン、D-パントテン酸カルシウム、塩化コリン、葉酸、i-イノシトール、ナイアシンアミド、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩)および4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンナトリウム塩1-エタンスルホンにグルコースを添加]、または培養培地2[以下を含有:無水カルシウム、硫酸銅五水和物、硫酸第一鉄七水和物、塩化マグネシウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、無水リン酸水素ナトリウム、硫酸亜鉛七水和物、L-アラニン、L-アルギニン塩酸塩、L-アスパラギン一水和物、L-アスパラギン酸、L-システイン塩酸塩、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシンL-ヒスチジン三塩酸塩一水和物、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リシン塩酸塩、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン二塩基性二水和物、L-バリン、D-ビオチン、塩化コリン、葉酸、ミオイノシトール、ナイアシンアミド、D-パントテン酸(ヘミカルシウム)、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、チアミン塩酸塩、ビタミンB12、D-グルコース、ヒポキサンチン、フェノールリノレイン酸レッド、プトレシン塩酸塩、一ナトリウムピルビン酸、チミジンに、1倍濃縮Glutamax添加剤溶液を添加]、または上記2つの培養培地を1:1の比で使用し、グルコースを添加した混合物の中で行った。
【0101】
組織を、適切な濃度のコラゲナーゼIIを含有する培地に、培地3ml:組織0.1g、または培地3ml:組織0.2g、または培地3ml:組織0.3g、または培地3ml:組織0.5g)の比で置いた。組織の質量(単位:グラム)は、使用した組織小片の質量からなる合計値である。小片を、合計で最大0.5gまで消化した。
【0102】
総重量0.5gの小片を消化した。消化は、細胞培養インキュベーター中、37℃、5%CO2で行った。組織が完全に消化されるまで、反応を最低限16時間行った。消化後、遊離軟骨細胞を含有する上清を取り出し、300×gにて室温で最低限10分間遠心分離した。得られた細胞沈殿物は、組織1gから30万ないし組織1gから150万の数の軟骨細胞を含有しており、これを1倍濃縮PBS中で3回すすいだ。消化を行う組織の量は、通常、平均で約0.1~0.2gである。最終的に、消化の観察ならびに定性的および定量的な査定のため、細胞沈殿物を、最低限1mlの、4.5g/lグルコースを伴う培地1、または1倍濃縮Glutamax添加剤溶液を添加した培地2、または2%もしくは4%もしくは5%もしくは10%のFBSおよび最低限2mMのグルタミン溶液を含有する培地1と培地2との1:1の比の混合物に再懸濁させた。消化後に、細胞が良好な生存率を示すかどうか(定性的評価)、および組織断片全体が消化されたかどうか(定量的評価)を評価した。消化後の細胞生存率(最低生存率80%を陽性として処理した)、細胞の形状および全般的状態(可視の核が丸いものは良好な状態の細胞として処理した)を定性的に評価した。生存率が80%以上の細胞を、25cm2または75cm2の培養瓶に、150,000細胞/2ml培地または200,000細胞/2ml培地または250,000細胞/2ml培地の密度で播種した。培養中、一日おきに、倒立光学顕微鏡を使用して細胞を観察して、増殖率を評価し、コンフルエントのレベルと緊密に関係する細胞継代の時期を決定した。培養培地を週2回交換した。細胞が適切なコンフルエント(最大85%)に到達すると、細胞を、0.05%(w/v)トリプシン/EDTAのPBS溶液2mlを用いて37℃で5分間トリプシン処理した。トリプシン処理の阻害は、グルコース4.5g/lを添加した培地1、または1倍濃縮Glutamax添加剤溶液を添加した培地2、または2%、4%、5%もしくは10%FBSを含有する培地1と培地2との1:1の比の混合物を、使用したトリプシン/EDTA溶液の体積の1倍、1.5倍または2倍の体積で添加することによって行った。細胞数および生存率は、標準手順に従って、顕微鏡およびトリパンブルー溶液を使用して決定した。
【0103】
軟骨細胞培養中に細胞の増殖および生存率を主にモニターした。85%コンフルエント、最低でも80%細胞生存率になるまで培養を継続した。この培養の目的は、組織断片が軟骨細胞と組み合わされた次なる培養、すなわち「組織の横溢(flooding)」に十分な数の細胞を増殖させることであった。この場合、軟骨細胞懸濁液は組織断片を接合させるための接着剤としての役目をする。細胞のうち一部は組織を「横溢させる(flood)」ために使用し、別の一部は、細胞材料が引き続き利用可能であるように、別の培養を樹立するために使用した。
【0104】
ポイントa)に記載した軟骨組織の片の間の結合の刺激に使用するための細胞を、継続の培養中に残した。
細胞の増殖を目的とする軟骨細胞の培養は、常に単層-接着培養で行われる。細胞がプレートの表面から剥離された後に、洗浄ステップおよび遠心分離ステップが行われるときに、細胞懸濁、ならびに標的緩衝剤中の軟骨細胞の懸濁、および組み合わされた培養中の皮弁組織小片の横溢を話題とする。
【0105】
4)組み合わされた培養-組織断片とポイント3による軟骨細胞懸濁液
約1mm×1cm×1cmのサイズの2つの組織小片が使用されることを想定すると、培養培地2.5mlを含有するウェルに最低限40,000軟骨細胞を添加することが重要である。接する区分の長さが0.1cmの2つの断片を培養するための軟骨細胞の最大濃度は培地2.5ml当たり8000軟骨細胞である。
【0106】
4.5g/lグルコースを伴う培地1、または1倍濃縮Glutamax添加剤溶液を添加した培地2、または1:1の比の上記の培地1および培地2に2%もしくは4%もしくは5%もしくは10%のFBSを加え、最低限2mMのグルタミンおよび最低限0.01%のIGF-1および/または最低限0.01%のTGF-β1および/または最低限0.01%のコンドロイチンおよび/または最低限0.1%のインスリンを加えたもので培養した軟骨組織小片を、消化後に培養から得られた軟骨細胞で「横溢」させた(生存率≧85%が最低)。
【0107】
培地は最低限4.5g/lのグルコース、最低限10%のFBSおよび最低限2mMのグルタミンを含有することが重要である。
好ましくは、培養培地は、55~75mg/lのピルビン酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム、2mM~4mMのグルタミン、2%~10%のFBS、および少なくとも4.5g/lのグルコース、ならびにエタノールアミン、グルタチオン、アスコルビン酸、インスリン、トランスフェリン、硫酸銅、塩化マンガン、ならびに最低限0.01%のIGF-1および/または最低限0.01%のTGFβ1および/または最低限0.01%のコンドロイチンおよび/または最低限0.1%のインスリンを含有するべきである。
【0108】
遠心分離後、ならびに上記の定量的および定性的な評価の前に、4.5g/lグルコースを伴う培地1、または1倍濃縮Glutamax添加剤溶液を添加した培地2、または1:1の比の培地1および培地2に、最低限40,000細胞に対して最低限500μlの体積で、細胞を懸濁させた。その後、これを最低限2つの組織断片を入れたウェルに添加した。培養培地は、55mg/l~75mg/lピルビン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、2mM~4mMグルタミン、2%~10%FBS、および4.5g/l~5.0g/lグルコースを含有することが重要である。
【0109】
組織断片と軟骨細胞とが組み合わされて得られた培養物を、細胞培養インキュベーター中、37℃、5%CO2にて、組織断片の間に新たな組織結合が得られるまで最低限12週間培養した。組織を毎回一定量の軟骨細胞を含有する懸濁液で「横溢させる」プロセスを週1回繰り返した。示された頻度での培地の交換は、組織培養において得られた経験により規定されたものであった。組織断片を6ウェルプレートの新たなウェルに穏やかに移した後に、軟骨細胞の添加を行った。培地もその時点で交換した。6ウェルプレートの場合、培地は、添加剤を含む最終体積を2.5mlとした。
【0110】
組織の変形:結合、生存率および増殖を、後続の細胞での組織の「横溢」の前に毎回、倒立光学顕微鏡を10×および40×倍率で使用して定期的に観察した。培養培地および添加剤を週1回交換した。
【0111】
後続の新たな軟骨細胞での「横溢」の度に、以下の処置を実行した。
1)古い培地の除去
2)組織切片の新たな培養プレートへの穏やかな移動
3)新鮮培地の添加
4)小片を細胞で横溢(上記の数の細胞、およびそれが懸濁される培地で-今般用意された新鮮培地の体積当たり)-上記のとおり。
【0112】
試験培養開始から数日後、軟骨組織に可視の変化が認められた。古い組織断片の間に新たな組織結合が確認された。数週間後、組織の古い片の間のギャップが新たな組織で充填され、過成長していた。軟骨小片および培養に定期的に供給された遊離軟骨細胞から形成された新たな組織の皮弁小片が得られた。初期の2つの組織小片から得られた1つの新たな組織皮弁小片は中央に「溝」を有しており、それは推定するところ、懸濁液の形態で培養に定期的に供給された軟骨細胞の関与により形成された新たな組織のものであった。組織皮弁は、約1mm×2.1cm×1cmであった。2本のピンセットを使用する必要はなく、損傷のリスクもなく、プレートのウェルから別の所へそれを移すことが可能であった。
図3に示すように、初期の組織小片の間の新たな結合は、古い組織と比較してわずかに薄い色を有していた-接する分かれ目を有する2つの組織断片を使用する、細胞-組織培養の、培養開始日(
図3A)、17日後(
図3B)および52日後(
図3C、D)の倒立顕微鏡法画像。
【0113】
上記のように、組織小片と細胞懸濁液とが組み合わされた培養である適切な培養の期間中ずっと、別の軟骨細胞の懸濁培養を同時に実行した。細胞懸濁培養は、組織小片を「横溢させる」ために使用される細胞材料の供給源の持続的な維持のために必要であった。観察を40×倍率で行った。
【0114】
図3は、4.5g/lグルコース、10%FBS、2mMグルタミンを伴う上記の培地1中の組織小片培養の顕微鏡画像-経時的な新たな組織形成の可視化を示す。A:培養第1日目の、長さ約1cmの接する分かれ目に沿って互いに可能な限り近接している2つの組織小片の断片の画像(培養ベースライン、1日目を記録した画像)。2つの組織小片の接触面の間に明らかに可視の空き空間。B:4.5g/lグルコース、10%FBSおよび2mMグルタミンを添加した培地1中での培養17日目の、約1cmの接する分かれ目に沿って互いに接着している2つの組織小片の断片、および2つの組織小片の接触面の間に形成された可視の組織の充填の画像。C、D:4.5g/lグルコース、10%FBSおよび2mMグルタミンを添加した培地1中での培養52日目の、約1cmの接する分かれ目に沿って互いに接着している2つの組織小片の断片、および2つの組織小片の接触面の間に形成された可視の組織の充填の画像。培養開始から52日後に形成された新たな組織は、培養1日目に存在した2つの組織小片の接合部の空き空間を明らかに修復して跡を残している。組織小片断片の2つの接触面の一端の古い組織および新しい組織の色調が有意に揃っていることが見える。画像は10×倍率(A、B、C)および40×倍率(D)を使用して撮影。
【0115】
実施例5
発明の適用の変形
培養は、ある程度変化させた次の条件で、実施例4に記載したように行われる。
【0116】
1)さらなる培養のための軟骨組織断片の取得。
楕円形の形状をした組織の8つの小片を得たが、各片を1つの側で切って、2つの近接する断片の間に最大の接触面積ができるようにした。得られた小片は薄く、約1mmの厚みしかなかった。それらは長さが約0.9cmおよび幅が約0.5~0.6cmであった。
【0117】
2)組織断片のみの前培養
上記のように、選択され、かつ適切にトリミングされた小片を、1ウェルまたは6ウェルの滅菌細胞培養プレートに、ピンセットを使用して移した。およその厚み1mm、長さ0.9cmおよび幅0.6cmの選択された2つの組織小片を、4.5g/lグルコース、10%FBS血清、55mg/lピルビン酸ナトリウムおよび2mMグルタミンを伴う2.5mlの培地1および培地2を予め充填したウェルに置いた。接する分かれ目は直線形であった。培地1および2は前の実施例に記載されている。
【0118】
培養プレートの3つのウェルに、1ウェル当たり2つの組織の小片を置き、長さが約0.6cmの各小片の1つの辺縁(接する辺縁)が、別の小片の辺縁に可能な限り緊密に接着するように配置した。これらは同じ試験の生物学的反復試験であった。軟骨を、37℃および5%CO2で7日間インキュベートした。培養培地を7日毎に交換し、毎回倒立顕微鏡を使用して、組織小片の生存率、培養の微生物の純度を評価し、組織中に存在する細胞の分裂から生じる新たな細胞構造の出現の可能性を分析した。10×および40×の光学倍率を使用した。観察は培地交換の前に行った。
【0119】
3)軟骨細胞懸濁液の取得および培養
他の2つの小片(サイズ:およそ1mm×0.9cm×0.5cm)は軟骨細胞の単離のためのものとし、それらは合計で、すべての小片の重量のおよそ25%を占めていた。この目的のため、さらに、酵素消化用の組織を、メスを使用してより小さい片に切り分けた(約2mm×2mm×2mmのサイズ)。このようにして調製した材料をコラゲナーゼIIで処理した。得られた組織片を、30ml滅菌チューブに移した。組織片を1×濃縮リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)で3回すすいだ。この試験では、以下の組織対酵素の重量比:1g:1mgを使用した。消化反応は、以下の条件下:4.5g/lグルコース(組織0.3g当たり培地3mlの比-すなわち2ml)を添加し、適切な量のコラゲナーゼII、すなわち0.2mgを含有する、培地1と培地2との混合物で行った。組織の質量(単位:グラム)は、使用した組織小片の質量の合計値とした。消化は、細胞培養インキュベーター中、37℃、5%CO2で行った。反応は終夜20時間行った。消化後、遊離軟骨細胞を含有する上清を回収し、300×gにて室温(21℃)で10分間遠心分離した。得られた軟骨細胞を含有する細胞沈殿物を、1倍濃縮PBS中で3回すすいだ。最後に、観察および定性的評価(主に、消化後の細胞生存率および細胞の状態の評価-例えば、形状を定期的に評価した)ならびに定量的な消化反応のために、4.5g/lグルコース、10%FBSおよび2mMグルタミンを添加した、培地1と培地2との混合物1ml中に細胞沈殿物を再懸濁させた。49万の生細胞を含有する生存率98%の軟骨細胞懸濁液が得られた。次いで、得られた細胞を10,000細胞/cm2の密度で播種した。細胞を6ウェルプレートおよび25cm2培養瓶に播種した。
【0120】
軟骨組織の片の間の結合の刺激に使用するための細胞を、継続の培養中に残した。
4)組み合わされた培養-組織断片と軟骨細胞懸濁液
この実施例のポイント2に記載され、4.5g/lグルコース、10%FBS、2mMグルタミン、55mg/lピルベートを添加した培地1と培地2との混合物の中で増殖させた軟骨組織小片を、消化後(85%~92%の範囲の生存率)の培養の結果として得られた軟骨細胞で「横溢」させた。遠心分離後、ならびに上記の定量的および定性的な評価(この実施例のポイント3)の前に、4.5g/lグルコースを添加した培地1と培地2との混合物、最終体積1000μlの中に細胞を懸濁させ、80,000細胞を含有する懸濁液を、2つの組織小片を入れた各ウェルに添加した。次に添加剤を添加した。この試験では、添加剤はIGF-1およびTGFであり、両添加剤についてウェル中の最終濃度は0.01%に達した。
【0121】
組織断片と軟骨細胞とが組み合わされて得られた培養物を、細胞培養インキュベーター中、37℃、5%CO2にて、組織断片の間に新たな組織結合が得られるまで5週間培養した。組織を、一定量の軟骨細胞(2つの組織小片を含有するウェルにつき培地2.5ml当たり80,000細胞)を含有する懸濁液で「横溢させる」プロセスを、毎週(7日毎に)繰り返した。組織の移動ならびに新鮮培地および軟骨細胞の添加の前に、組織小片を観察した(実施例4に記載したとおり)。組織断片を6ウェルプレートの新たなウェルに穏やかに移した後に、軟骨細胞の添加を行った。
【0122】
試験培養開始から7日後に、軟骨組織に可視の変化が認められた。
図4に示されるように、19日後、古い組織断片の間に組織結合が確認された-0.6cmの接する分かれ目を有する2つの組織断片を使用して、培養開始日(
図4A)および細胞-組織培養開始から19日後(
図4B)に撮影された倒立顕微鏡法画像。小片の間の新たな結合は、小片を結びつける線維のように見えた。5週間後、組織の古い片の間のギャップが新たな組織で充填され、過成長していた。2つの組織小片の接合部は新たな細胞結合で充填されていた。軟骨小片の間の新たな組織は一種の「瘢痕」の形態をとっていた。顕微鏡画像では、新たな組織は元の軟骨小片の組織より明るい。軟骨小片および培養に定期的に供給された遊離軟骨細胞から形成された新たな組織の皮弁小片が得られた。約1mm×1.8cm×0.6cmの新たな組織皮弁が得られた。
【0123】
図4は、培地1と2との混合物中での組織小片培養の顕微鏡画像-経時的な新たな組織結合の形成の可視化を表す。A:培養1日目の、長さ0.6cmの分かれ目に沿って互いに可能な限り近接している2つの組織小片の断片の画像(培養ベースラインを記録した画像)。2つの組織小片の接触面の間に明らかに可視の空き空間。B:4.5g/lグルコース、10%FBS、2mMグルタミンならびに添加剤:0.01%の濃度のIGF-IおよびTGFを添加した培地1と培地2との混合物中での培養19日目の、約0.6cmの分かれ目に沿って互いに接着している2つの組織小片の断片、および2つの組織小片の接触面の間に形成された可視の組織結合の画像。近接する断片のうち1つの表面上および組織小片の断片の間の両方に、新たな組織が見られる。得られた結合は2つの接触面を互いに結合させる線維の性質を有する。画像は10×倍率を使用して撮影。
【0124】
実施例6
発明の適用の変形
培養は実施例4および5に記載したように行われるが、以下の違いがある。
【0125】
1)さらなる培養のための軟骨組織断片の取得:
楕円形の形状をした10の組織小片を得たが、各皮弁を2つの側(最長の側)で切った。得られた小片は厚みが約3mmであった。それらは長さが約1cmおよび幅が約0.2cmであった。
【0126】
2)組織断片のみの前培養:
上記のように、選択され、かつ適切にトリミングされた小片を、1ウェルまたは6ウェルの滅菌細胞培養プレートに、ピンセットを使用して移した。厚み約3mm、長さ約1cm(断片の各々における接する表面の長さ、表面の形状は、ほぼ直線形で最大適合性の接触面となった)および幅約0.2cmの選択された4つの組織小片を、4.5g/lグルコース、2%FBS血清および2mMグルタミンを添加した培養培地1と2との混合物1.25mlを予め充填したウェルに置いた。
【0127】
各ペアの間の接する分かれ目は約1cmであった。
ウェル当たり4つの組織の小片を、12ウェル培養プレートの3つのウェルに置き、長さが約1cmの各小片の1つの辺縁(接する辺縁)が、別の小片の辺縁に可能な限り緊密に接着するように配置した。
【0128】
3)軟骨細胞懸濁液の取得および培養:
この試験では、以下の組織対酵素の重量比:1g:2mgを使用した。消化反応は、以下の条件下:4.5g/lグルコース(組織0.3g当たり培地3mlの比-すなわち2ml)を添加し、適切な量のコラゲナーゼII、すなわち0.4mgを含有する培地1と培地2との混合物で行った。反応は14時間行った。最後に、観察および定性的評価(主に、消化後の細胞生存率および細胞の状態の評価-例えば、形状を定期的に評価した)ならびに定量的な消化反応のために、4.5g/lグルコース、2%FBSおよび2mMグルタミンを添加した、培地1と培地2との混合物1ml中に細胞沈殿物を再懸濁させた。42万の生細胞を含有する生存率92%の軟骨細胞懸濁液が得られた。
【0129】
4)組み合わされた培養-組織断片と軟骨細胞懸濁液
この実施例のポイント2に記載され、4.5g/lグルコース、2%FBSおよび2mMグルタミンを添加した培地1と培地2との混合物の中で増殖させた軟骨組織小片を、消化後(85%~92%の範囲の生存率)の培養の結果として得られた軟骨細胞で「横溢」させた。80,000細胞/1.25ml培地を含有する適切な体積の懸濁液を、組織小片を入れたウェルに添加した。次に添加剤を添加した。この試験では、添加剤はコンドロイチンであり、ウェルの中の培地中の最終濃度は0.01%に達した。
【0130】
組織断片と軟骨細胞とが組み合わされて得られた培養物を、細胞培養インキュベーター中、37℃、5%CO2にて、使用された組織断片の間に新たな組織結合が得られるまで合計8週間インキュベートした。組織を、一定量の軟骨細胞(2つの組織小片を含有するウェル当たり80,000細胞)を含有する懸濁液で「横溢させる」プロセスを、毎週(7日毎に)繰り返した。組織の移動ならびに新鮮培地および軟骨細胞の添加の前に、組織小片を観察した(実施例4に記載したとおり)。組織断片を12ウェルプレートの新たなウェルに穏やかに移した後に、軟骨細胞の添加を行った。
【0131】
試験培養開始から14日後に、軟骨組織に可視の変化が認められた。
図5に示されるように、19日後、古い組織断片の間に組織結合が確認された-1cmの接する分かれ目を有する4つの組織断片を使用して、培養開始日(
図5A)および細胞-組織培養開始から7日後(
図5B、C)に撮影された倒立顕微鏡法画像。
【0132】
小片の間の新たな結合は、小片を結びつける線維のように見えた。7週間後、組織の古い片の間のギャップが新たな組織で充填され、過成長していた。2つの組織小片の接合部は新たな細胞結合で充填されていた。軟骨小片および培養に定期的に供給された遊離軟骨細胞から形成された新たな組織の皮弁小片が得られた。約3mm×1cm×0.8cmの新たな組織皮弁が得られた。
【0133】
図5は、培地1中での組織小片培養(第1および第2)の顕微鏡画像-経時的な新たな組織結合の形成の可視化を表す。A:培養1日目の、長さ1cmの分かれ目に沿って互いに可能な限り近接している2つの組織小片(第1および第2)の断片の画像(培養ベースラインを記録した画像)。プレートの端に最も近く位置する第1の組織小片と、隣接する組織小片との間に空き空間がある。第1の断片を、接する表面の辺縁でなだらかに切り、実験の次の段階で識別されるようにした(第1の小片断片は画像の下部である)。B、C:4.5g/lグルコース、2%FBS、2mMグルタミンおよび0.01%の濃度のコンドロイチンを添加した培地1の中での培養27日目の、2つの組織小片(第1および第2)の断片および2つの組織小片の約1cm長の接触面の間に形成された可視の組織結合の画像。線維様の結合が組織小片の接触面の間に形成される。その後数日培養すると、新たな組織が組織小片の接触面の間に形成されて、2つの組織小片を持続的に結びつけることになる。同じタイプの結合が、第2の小片と第3の小片の間、および第3の小片と第4の小片の間にも、それぞれ観察された。画像[A、B]は10×倍率で、画像[C]は40×倍率で撮影。
【0134】
実施例7
発明の適用の変形
培養は実施例5に記載したように行われるが、以下の違いがある。
【0135】
1)さらなる培養のための軟骨組織断片の取得:
5つの長方形の組織小片が得られた。得られた小片は厚みが約2mmであった。それらは長さが約0.5cmおよび幅が約0.4cmであった。
【0136】
2)組織断片のみの前培養:
上記のように、選択され、かつ適切にトリミングされた小片を、1ウェルまたは6ウェルの滅菌細胞培養プレートに、ピンセットを使用して移した。およその厚み2mm、長さ0.5cmおよび幅0.4cm(接触面の長さ)の選択された3つの組織小片を、4%FBS血清ピルベートおよび2mMグルタミンを伴う2.5mlの培養培地2を予め充填したウェルに置いた。上記の組織小片は形状が楕円形であり、3つの小片のうち2つは凸形の接触面を有し、1つの小片は2つの凹型の表面を有していた。すべての接触面は互いに適合性であった。すなわちそれらは互いに可能な限り近接していた。
【0137】
ウェル当たり3つの組織の小片を、6ウェル培養プレートの3つのウェルに置き、長さが約0.4cmの各小片の1つの辺縁(接する辺縁)が、別の小片の辺縁に可能な限り緊密に接着するように配置した。
【0138】
3)軟骨細胞懸濁液の取得および培養:
この試験では、以下の組織対酵素の重量比:1g:4mgを使用した。消化反応は、以下の条件下:4.5g/lグルコース(組織0.3g当たり培地6mlの比-すなわち4ml)を添加し、適切な量のコラゲナーゼII、すなわち0.8mgを含有する培地1と培地2との混合物で行った。反応は8時間行った。最後に、観察および定性的評価(主に、消化後の細胞生存率および細胞の状態の評価-例えば、形状を定期的に評価した)ならびに定量的な消化反応のために、4.5g/lグルコース、4%FBSおよび2mMグルタミンを添加した1mlの培地2の中に細胞沈殿物を再懸濁させた。32万の生細胞を含有する生存率86%の軟骨細胞懸濁液が得られた。
【0139】
4)組み合わされた培養-組織断片と軟骨細胞懸濁液
この実施例のポイント2に記載され、4.5g/lグルコース、4%FBSおよび2mMグルタミンを添加した培地2の中で増殖させた軟骨組織小片を、消化後(85%~92%の範囲の生存率)の培養の結果として得られた軟骨細胞で「横溢」させた。60,000細胞を含有する適切な体積の懸濁液を、組織小片を入れたウェルに添加した。次に添加剤を添加した。この試験では、添加剤はインスリンであり、ウェルの中の培地中の最終濃度は0.2%に達した。
【0140】
組織断片と軟骨細胞とが組み合わされて得られた培養物を、細胞培養インキュベーター中、37℃、5%CO2にて、組織断片の間に新たな組織結合が得られるまで11週間培養した。組織を、一定量の軟骨細胞(3つの組織小片を含有するウェル当たり60,000細胞)を含有する懸濁液で「横溢させる」プロセスを、毎週(7日毎に)繰り返した。組織の移動ならびに新鮮培地および軟骨細胞の添加の前に、組織小片を観察した(実施例4に記載したとおり)。組織断片を6ウェルプレートの新たなウェルに穏やかに移した後に、軟骨細胞の添加を行った。
【0141】
試験培養開始から21日後に、軟骨組織に可視の変化が認められた。43日後、すべての組織小片において、古い組織断片の間に、すなわち、第1および第2の小片の間、ならびに第2および第3の小片の間に、新たな組織結合が確認された。11週間後、組織の古い片の間のギャップが新たな組織で充填され、過成長していた。3つの組織小片の接合部は新たな細胞結合で充填されていた。軟骨小片および培養に定期的に供給された遊離軟骨細胞から形成された新たな組織の皮弁小片が得られた。約2mm×1.5cm×0.4cmの新たな組織皮弁が得られた。
【0142】
本発明は、以下の項目にさらに関する。
1.関節軟骨欠損症の処置用の材料を得るための、in vitro軟骨細胞培養の方法において、得られた得られた硝子軟骨を少なくとも2つの組織断片に切り分けるステップ、次いで、最低限2mMのグルタミン、最低限2%のFBSおよび最低限4.5g/lのグルコースを含有する培養培地の中で、培養プレート上に当該組織断片が隣同士に配置され、断片を近くに一緒に置いた後に2つの類似の組織断片の間の空間が可能な限り小さくなるように、かつ組織断片を含有する培養プレートの空間が可能な限り小さくなるように、当該組織断片の形状は各断片の少なくとも1つの辺縁の分かれ目に沿って調整されており、軟骨細胞懸濁液を培養に添加することにより、培養中に少なくとも1つの接する分かれ目に沿って断片を接合させるステップ、ならびに軟骨細胞を加えた組織断片の細胞培養を継続するステップ、培養培地を定期的に交換するステップ、ならびに軟骨細胞を培養培地に添加するステップを特徴とする方法。培養は、組織断片が少なくとも接する分かれ目に沿って接合部を形成するまで継続される。
【0143】
2.培養培地が、添加剤を、最低限0.01%のIGFおよび/または0.01%のTGFおよび/または0.01%のコンドロイチンおよび/または最低限0.1%のインスリンの濃度で含有することを特徴とする、項目1に記載の方法。
【0144】
3.培養培地が、55~75mg/lのピルビン酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム、2mM~4mMのグルタミン、2%~10%のFBS、および少なくとも4.5g/lのグルコースならびにエタノールアミンおよび/またはグルタチオンおよび/またはアスコルビン酸および/またはインスリンおよび/またはトランスフェリンおよび/または硫酸銅および/または塩化マンガンを含有することを特徴とする、項目1または2に記載の方法。
【0145】
4.軟骨細胞を培養に添加する前に、好ましくは少なくとも14日間、組織断片のみを培地中で培養するステップを特徴とする、項目1または2または3に記載の方法。
5.培養培地2.5ml当たり少なくとも40,000軟骨細胞が存在するような量で、軟骨細胞懸濁液を組織断片に添加するステップを特徴とする、項目1~4に記載の方法。
【0146】
6.接する区分の長さが0.1cm~1cmの2つの断片を培養するための軟骨細胞の最低濃度が、培地2.5ml当たり40,000軟骨細胞であることを特徴とする、項目1または4または5に記載の方法。
【0147】
7.培養された軟骨細胞を、酵素消化によって取得した後に、必要な数の細胞が、接着培養の単層で軟骨細胞を培養することによって得られることを特徴とする、項目1に記載の方法。
【0148】
8.37℃に上昇させた温度および5%CO2で細胞を培養するステップを特徴とする、項目1に記載の方法。
9.少なくとも2つの接合した組織断片の間の接する分かれ目が、最小限0.1cm、最も好ましくは少なくとも0.5cmであることを特徴とする、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
10.組織断片が、楕円形様の形状を有することを特徴とする、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
11.組織断片の形状が、培養中の組織断片が接する分かれ目に沿って互いにきわめて緊密に接着するように選択されることを特徴とする、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】