(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ポリオレフィン含有ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 153/00 20060101AFI20221003BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221003BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C09J153/00
C09J11/06
C09J11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504717
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2020044163
(87)【国際公開番号】W WO2021021990
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313011456
【氏名又は名称】ボスティック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミニックス,ブライアン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,スティーブン,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】フー,ミャオ
(72)【発明者】
【氏名】シークリスト,キンブリー,イー.
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DM001
4J040JB01
4J040MA10
(57)【要約】
ホットメルト接着剤は、制御された立体エラーを有するポリマーのブレンドを使用し、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレンを含み、第1のブロックと第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である。ホットメルト接着剤は、剪断強度を損なうことなく、改善された剥離及び粘着特性を示し、逆も同様である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレンであって、前記第1のブロックの前記アイソタクチック指数と前記第2のブロックの前記アイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である、ステレオブロックポリプロピレンと、
(b)粘着付与樹脂又は可塑剤の少なくとも1つと、
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
前記ステレオブロックポリプロピレンは、約10%~約80%、好ましくは20%~約65%、より好ましくは30%~約55%、最も好ましくは32%~約50%の正味のアイソタクチック指数を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ステレオブロックポリプロピレンは、約4,000~約500,000ダルトン、好ましくは約8,000~約400,000ダルトン、より好ましくは約12,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約12,000~約275,000ダルトン、最も好ましくは約16,000~約250,000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のブロックの前記アイソタクチック指数は、約52%~75%、好ましくは約55%~約72%、最も好ましくは約60%~約70%であり、
前記第2のブロックの前記アイソタクチック指数は、約12%~約48%、好ましくは約15%~約45%、最も好ましくは約20%~約40%である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のブロックの前記アイソタクチック指数と前記第2のブロックの前記アイソタクチック指数の差は、少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%、最も好ましくは少なくとも約25%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ステレオステレオブロックポリプロピレンは、ジブロックポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ステレオブロックポリプロピレンは、トリブロックポリマーであり、前記第3のブロックは、約50%~95%のアイソタクチック指数を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ステレオブロックポリプロピレンは、ジブロックコポリマーであり、前記組成物は、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックと、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第3のブロックと、を含むステレオトリブロックポリプロピレンを更に含み、前記第1のブロックの前記アイソタクチック指数と前記第2のブロックの前記アイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%であり、前記第3のブロックの前記アイソタクチック指数と前記第2のブロックの前記アイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1のブロックは、約10モル%~約50モル%、好ましくは約18モル%~約40モル%、最も好ましくは約20モル%~約35モル%の前記ステレオブロックポリプロピレンを含み、かつ
前記第2のブロックは、約50モル%~約90モル%、好ましくは約60モル%~約82モル%、最も好ましくは約65モル%~約80モル%の前記ステレオブロックポリプロピレンを含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ステレオブロックポリプロピレンは、以下の式:
Tm=1.85×[mmmm]正味-12℃
(式中、[mmmm]正味は、前記ステレオブロックポリプロピレンの正味のアイソタクチック指数である)から計算される融点よりも少なくとも5℃高い融点を有し、かつ
前記ステレオブロックポリプロピレンは、DSCによって測定される、少なくとも75℃、好ましくは少なくとも約80℃、より好ましくは少なくとも約85℃、最も好ましくは少なくとも約90℃の融点を有する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の粘度は、163℃で約1,000cP~約500,000cP、好ましくは163℃で約2000cP~約250,000cP、より好ましくは163℃で約2000cP~約125,000cP、最も好ましくは163℃で約2,000cP~約100,000cPである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
約50℃~約150℃、好ましくは約55℃~約140℃、より好ましくは約60℃~約135℃、最も好ましくは約65℃~約130℃のリング及びボール軟化点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ステレオブロックポリプロピレンは、重量で約5%~約90%、好ましくは約10%~約70%、より好ましくは約15%~約50%、最も好ましくは約15%~約35%の量で存在し、
前記粘着付与樹脂は、重量で約0%~約70%、好ましくは約30%~70%、好ましくは約40%~60%、最も好ましくは約45%~約55%の量で存在し、かつ
前記可塑剤は、約10%~約50%、好ましくは約15%~約40%、最も好ましくは約20%~約35%の量で存在する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記粘着付与樹脂は、脂肪族及び脂環式炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体、水素化芳香族炭化水素樹脂、芳香族改質脂肪族又は脂環式樹脂及びこれらの水素化誘導体、ポリテルペン及びスチレン化ポリテルペン樹脂並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記可塑剤は、鉱物油、合成油、低分子量ポリマー、及び液体ポリブテンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
安定剤又は酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
ワックスを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記ワックスは、約0.1重量%~約20重量%の量で存在する、請求項17の組成物。
【請求項19】
エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン-1、ポリブテン-1/エチレンポリマー、及びスチレンブロックコポリマーからなる群から選択される補助ポリマーを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記ステレオブロックポリプロピレンは、A-B-A-B-Aのパターンのペンタブロックコポリマーであり、Aは、前記第1のブロックであり、Bは、前記第2のブロックである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物を溶融状態で第1の基材に塗布する工程を含む、ラミネートを作製する方法。
【請求項22】
前記ラミネートは、テープ又はラベルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第2の基材を前記接着剤組成物と接触させることによって前記第2の基材を前記第1の基材に接合することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の基材は、ポリエチレンフィルムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の基材は、不織布層である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項21~25のいずれか一項に記載の方法によって作製されたラミネート。
【請求項27】
(a)約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレンであって、前記第1のブロックの前記アイソタクチック指数と前記第2のブロックの前記アイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である、ステレオブロックポリプロピレンと、
(b)粘着付与樹脂又は可塑剤の少なくとも1つと、
を含む、ホットメルト接着剤組成物であって、
(1)第1のポリエチレン層と第2のポリエチレン層の間に5gsmの追加物を適用した場合の、25℃でエージングした後の少なくとも0.5ポンドの力の90°での剥離強度、(2)毎分12インチの速度で100ニュートンのロードセルを装備したInstron 5500R引張り試験フレームを使用して、3ミルの接着剤の厚さでステンレス鋼にポリエチレンループスレッドを適用した場合の、少なくとも1ポンドの力の初期ループタックと少なくとも1ポンドの力のエージングされたループタック、並びに(3)1キログラムの重りを使用して、研磨されたステンレス鋼とポリエチレンテレフタレートの間に適用された場合の、23℃で少なくとも500分の剪断値を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で、前記ステレオブロックポリプロピレン、並びに前記粘着付与樹脂及び前記可塑剤の前記少なくとも1つは存在する、
ホットメルト接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月1日付けで出願された米国仮特許出願第62/881,462号の優先権を、米国特許法第119条(e)の下において主張するものである。
【0002】
本発明は、ポリマー主鎖の2つ以上の別個のセグメントが根本の熱機械的特性に影響を与える異なるアイソタクチック指数値を有する、ステレオブロックポリプロピレンポリマーに基づくホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ホットメルト接着剤は、典型的には、周囲温度で固体の塊として存在し、熱を加えることで流動性の液体に変換できる。これらの接着剤は、紙製品、製本、包装材料、ドアパネルなどの自動車部品、航空宇宙用途、電化製品、テープ及びラベル、不織布基材を含む衛生用品など、多種多様な用途に有用である。一部のホットメルト接着剤は、様々な基材の接着が必要になることが多い様々な使い捨て製品の製造に特に有用である。具体的な用途には、使い捨ておむつ、病院用パッド、女性用生理ナプキン、パンティシールド、外科用ドレープ及び成人用失禁ブリーフなどが含まれ、これらはまとめて使い捨て不織布衛生製品として知られている。
【0004】
これらの用途のほとんどでは、ホットメルト接着剤は、その溶融状態に加熱され、次いで、第1の基材と多くの場合に呼ばれる基材に塗布される。テープ又はラベルの調製には、多くの場合、第1の基材のみが使用される。他の用途では、第2の基材と多くの場合に呼ばれる第2の基材が、ひいては瞬時に第1の基材と接触させられ、第1の基材に対して圧縮される。接着剤は冷却すると固化し、強力な接着を形成する。ホットメルト接着剤の主な利点は、水系又は溶媒系の接着剤の場合のような液体の担体がないことであり、これにより溶媒の除去に関連する費用のかかるプロセスが排除される。
【0005】
多くの用途では、ホットメルト接着剤は、ピストン又はギアポンプ装置を使用して、薄い膜又はビーズの形態で基材に直接押し出されることが多い。この場合、基材は、圧力下でホットダイと密接に接触する。溶融したホットメルト材料が塗布ノズルを通ってスムーズに流れるようにするには、ダイの温度を接着剤の融点よりも十分に高く維持する必要がある。ほとんどの用途、特に食品包装及び使い捨て不織布衛生用品の製造にて直面する用途では、薄いゲージ(gauge)のプラスチックフィルムなどの繊細で熱に弱い基材の接着を、多くの場合伴う。これにより、ホットメルト接着剤用途のコーティング温度に上限が課せられる。多くの用途では、今日の市販のホットメルトは、典型的には、コーティング温度が200℃未満、好ましくは150℃未満になるように配合され、基材の燃焼又は歪みを回避する。
【0006】
直接コーティングに加えて、ホットメルト接着剤を圧縮空気の助けを借りて離れた場所から基材にスプレーコーティングすることができるいくつかの間接的又は非接触のコーティング方法も開発されている。これらの非接触のコーティング技術には、従来のスパイラルスプレー、Omega(商標)Surewrap(商標)、及び様々な形態のメルトブロー法が含まれる。しかしながら、間接的な方法では、許容できるコーティングパターンを得るために塗布温度で、通常は2,000~30,000mPa.sの範囲、好ましくは2,000~15,000mPa.sの範囲で、接着剤の粘度が十分に低くなければならない必要がある。他の多くの物理的要因、特に接着剤のレオロジー特性が、ホットメルトの噴霧性を決定する際に作用する。市販のホットメルト製品の大部分は、スプレー用途には適していない。噴霧性を予測するための受け入れられた理論モデル又はガイドラインは存在せず、塗布装置を用いて経験的に決定する必要がある。
【0007】
ホットメルト接着剤は、典型的には、ポリマー、可塑剤、粘着付与樹脂、及び酸化防止剤のパッケージからなる有機材料である。また、ワックス、充填剤、着色剤、及びUV吸収剤などの他の成分を使用して、接着特性を変更する、又は特別な属性を提供することができる。これらの有機成分は、接着剤のコーティング条件下で熱劣化する傾向がある。例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)トリブロックコポリマーに基づいた広く使用されている市販のホットメルト接着剤は、175℃で24時間曝されると、元の値から約50%の粘度の低下を被る可能性がある。スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)系のホットメルトは、同様の条件下で架橋することにより問題を引き起こす場合がある。架橋は、粘度の劇的な増加をもたらす可能性があり、最終的には、三次元ポリマーネットワークの形成によって接着剤を流動不能にする場合がある。粘度の変化は、多くの場合、炭化、ゲル化、及び溶融材料の上部でのスキンの形成を伴う。劣化は、必然的に接着の特性と性能の悪化につながる。更に、装置の損傷を引き起こす可能性もある。劣化の速度は、温度に依存し、温度が高いほど、劣化が速くなる。従って、接着剤のコーティング温度を下げると、劣化を遅らせることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリエチレン及びポリプロピレン基材などの低エネルギー基材を接着するために使用される場合を含め、粘着特性と剪断特性が改善され、エージング後も安定しているホットメルト接着剤を開発することが望ましい。多くのホットメルト接着剤の塗布に必要な比較的低い粘度値では、多くの場合、剪断強度(凝集力)の低下を犠牲にして剥離又は粘着(接着)を改善する、或いは剥離又は粘着を犠牲にして剪断強度を改善する必要があると考えられている。剪断強度を損なうことなく改善された剥離又は粘着を示し、逆もまた同様である、低粘度で容易に塗布できるホットメルト接着剤を開発することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物は、(a)約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレン(この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である)と、(b)粘着付与樹脂又は可塑剤の少なくとも1つと、を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、ラミネートを作製するための方法は、本発明のホットメルト接着剤組成物を溶融状態で第1の基材に塗布する工程と、任意選択で、第2の基材を接着剤組成物と接触させることによって、第2の基材を第1の基材に接合する工程と、を含む。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物は、(a)約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレン(この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である)と、(b)粘着付与樹脂又は可塑剤の少なくとも1つと、を含み、この場合、第1のポリエチレン層と第2のポリエチレン層の間に5gsmの追加物(add-on)を適用した場合の、25℃でエージングした後の少なくとも0.5ポンドの力の90°での剥離強度、(2)毎分12インチの速度で100ニュートンのロードセルを装備したInstron 5500R引張り試験フレームを使用して、3ミルの接着剤の厚さでステンレス鋼にポリエチレンループスレッド(polyethylene looped thread)を適用した場合の、少なくとも1ポンドの力の初期ループタック(loop tack)と少なくとも1ポンドの力のエージングされたループタック、並びに(3)1キログラムの重りを使用して、研磨されたステンレス鋼とポリエチレンテレフタレートの間に適用された場合の、23℃で少なくとも500分の剪断値を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で、ステレオブロックポリプロピレン、並びに粘着付与樹脂及び可塑剤の少なくとも1つは存在する。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の図面及びその説明を検討することにより当業者には明らかであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物は、(a)約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレン(この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である)と、(b)粘着付与樹脂又は可塑剤の少なくとも1つと、を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、ステレオブロックポリプロピレンは、異なる立体規則性の少なくとも2つのブロックを有するプロピレンホモポリマーを意味する。立体規則性は、ペンダント側鎖基を有するポリマーの隣接するキラル中心の規則性の尺度である。より高い立体規則性の値は、より多くのキラル中心が同じタイプの配向を有することを示す。立体規則性のレベルは、結晶化度に影響を与え、結果、融点、引張り強度、溶解度等などの様々な材料特性に影響を与える。隣接するキラル中心(ダイアッド)の場合、2つの可能な配向が存在する:2つの中心が同じ配向を有するメソ(m)、及び配向が反対であるラセモ(r)。ランダムに配列されたペンダントメチル基を有するプロピレン-つまり、高レベルのメソ又はラセミダイアドを有する配列を持たないもの-は、アタクチックと記載される。側鎖メチル基の低レベルの秩序は、固体状態での効率的な充填を妨げ、アタクチックポリプロピレンを低融点にし一般的に可溶性にする。シンジオタクチックポリプロピレンでは、隣接するキラル中心は、反対の配向(0%m、100%r)を有し、アイソタクチックポリマーは、同じ配向(100%m、0%r)の隣接する中心を有する。これらのポリマーで観察されるより秩序だった性質により、固体状態で効率的に充填して、より高い融点とより低い溶解度を示す高密度に充填された、より結晶性の材料を生成することができる。しかしながら、これらの分類は、限定的な場合を表しており、実際には、シンジオタクチック及びアイソタクチックポリプロピレンにいくつかの「立体エラー(stereoerror)」が見られ、支配的な構造に応じて、これらは、分析的に決定されるメソ:ラセモの炭素のレベルでの立体規則性%によって説明される。
【0015】
各ブロックの立体規則性は、C-13核磁気共鳴を使用して決定され、文献(Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,2400及びその参考文献を参照)に記載されているようにペンタッドによって定義された、各ブロックのアイソタクチック指数に関して本明細書で定義される。立体規則性は、高分子内の隣接するキラル中心の相対的な立体化学を説明する。アイソタクチック指数は、平均して、同じ側の高分子主鎖(「メソ」炭素置換基)に存在するポリプロピレンのペンダントメチル基の炭素原子の量の数を定義する。本明細書で使用されるペンタッドによって測定されるアイソタクチック指数の場合、それは、ペンダントメチル基の炭素原子が全て、ポリプロピレン鎖のペンダントメチル基の総数に対して分子鎖の同じ側にある、5モノマー配列の数を指す。本明細書で使用される場合、ステレオブロックポリプロピレンの「正味のアイソタクチック指数」は、単にステレオブロックポリプロピレンを構成するブロックのアイソタクチック指数の加重平均である。例えば、ステレオブロックポリプロピレンが、アイソタクチック指数が60である25モル%の第1のブロック及びアイソタクチック指数が30である75モル%の第2のブロックからなるジブロックである場合、正味のアイソタクチック指数は37.5であり、これは、0.25×60と0.75×30の合計である。本発明による典型的なステレオブロックポリプロピレンは、米国特許第8,513,366号明細書に従って作製することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、ステレオブロックポリプロピレンは、約10%~約80%、好ましくは20%~約65%、より好ましくは30%~約55%、最も好ましくは32%~約50%の正味のアイソタクチック指数を有する。本発明の好ましい実施形態によれば、第1のブロックのアイソタクチック指数は、約52%~75%、好ましくは約55%~約72%、最も好ましくは約60%~約70%であり、第2のブロックのアイソタクチック指数は、約12%~約48%、好ましくは約15%~約45%、最も好ましくは約20%~約40%である。本発明の好ましい実施形態によれば、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%、最も好ましくは少なくとも約25%である。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、ステレオブロックポリプロピレンは、ジブロックポリマーである。本発明の別の実施形態によれば、ステレオブロックポリプロピレンは、トリブロックポリマーであり、第3のブロックは、第1のブロックと同様に、約50%~95%のアイソタクチック指数を有する。本発明の更に別の実施形態によれば、ステレオブロックポリプロピレンは、ジブロックコポリマーであり、組成物は、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックと、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第3のブロックと、を含むステレオトリブロックポリプロピレンを更に含み、この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%であり、第3のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である。本発明の別の実施形態によれば、ステレオブロックポリプロピレンは、A-B-A-B-Aのパターンのペンタブロックコポリマーであり、この場合、Aは、第1のブロックであり、Bは、第2のブロックである。
【0018】
本発明で使用されるステレオブロックポリプロピレンの分子量は、既知の方法で、用途に応じて、広範囲に渡って変動し得る。好ましくは、ステレオブロックポリプロピレンは、約4,000~約500,000ダルトン、好ましくは約8,000~約400,000ダルトン、より好ましくは約12,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約12,000~約275,000ダルトン、最も好ましくは約16,000~約250,000ダルトンの重量平均分子量を有する。分子量データは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定された。試料は、トリクロロベンゼンにて約1.0mg/mLで作製された。試料は、145℃で約2時間加熱して調製し、注入前にろ過しなかった。試験は145℃で実行された。モル質量値(Mn、Mw、Mz)は、ポリスチレン標準に対して計算され、標準偏差が5%未満の3回の注入の平均である。
【0019】
ステレオブロックポリプロピレンの第1のブロックと第2のブロックの相対量は、既知の方法で、用途に応じて、広範囲に渡って変動し得る。好ましくは、第1のブロックは、約10モル%~約50モル%、好ましくは約18モル%~約40モル%、最も好ましくは約20モル%~約35モル%のステレオブロックポリプロピレンを含む。好ましくは、第2のブロックは、約50モル%~約90モル%、好ましくは約60モル%~約82モル%、最も好ましくは約65モル%~約80モル%のステレオブロックポリプロピレンを含む。
【0020】
本発明の実施形態による接着剤は、同じ剥離又は粘着でより良好な剪断性能(逆もまた同様)を提供することが見出された。これは、本発明の剪断性能対剥離又は粘着性能の曲線を、既知の接着剤の同様の曲線と比較することによって実証することができる。別の言い方をすれば、文献(Polym.Chem.,2011,2,2155)で報告されているデータから、単一サイト触媒システムで生成された主にアイソタクチックポリプロピレンの融点は、以下の式に基づいて求めることができる:
Tm=1.85×[mmmm]正味-12℃
(式中、[mmmm]正味は、ステレオブロックポリプロピレンの正味のアイソタクチック指数である)。
【0021】
しかしながら、本発明の実施形態による接着剤は、上記の式から計算された融点よりも少なくとも5℃高く、好ましくは7℃高く、最も好ましくは10℃高い融点を有する。本発明の実施形態によれば、本発明の接着剤に使用されるステレオブロックポリプロピレンは、少なくとも75℃、好ましくは少なくとも約80℃、より好ましくは少なくとも約85℃、最も好ましくは少なくとも約90℃の融点を有する。本明細書に記載される融点及びガラス転移温度は、ASTM E-794-01による示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定されるが、使用されたスキャン温度が毎分10℃ではなく毎分20℃であるという試験の変更が1つある。
【0022】
本発明の接着剤の粘度は、既知の方法で、用途に応じて、広範囲に渡って変動し得る。本発明による接着材料の粘度は、一般に、加工されてその基材に塗布されるのに適切な塗布温度での粘度でなければならない。低い塗布温度で比較的低粘度の接着剤は、標準的なホットメルト接着剤装置で処理し、塗布温度で目的のパターンと結果として適切な接着性能を達成する必要がある。本発明の好ましい実施形態によれば、組成物の粘度は、163℃で約1,000cP~約500,000cP、好ましくは163℃で約2,000cP~約250,000cP、より好ましくは163℃で約2,000cP~約125,000cP、最も好ましくは163℃で約2,000cP~約100,000cPである。本明細書に記載の接着剤組成物の粘度は、ASTM D3236によって測定される。
【0023】
本発明の接着剤の軟化点は、既知の方法で、用途に応じて、広範囲に渡って変動し得る。本発明の好ましい実施形態によれば、接着剤組成物のリング及びボール軟化点は、約50℃~約150℃、好ましくは約55℃~約140℃、より好ましくは約60℃~約135℃、最も好ましくは約65℃~約130℃である。リング及びボール軟化点は、ASTM E-28に記載されている方法に従って、自動化されたHerzogユニットを使用して本明細書で決定された。
【0024】
上記のように、本発明の接着剤組成物は、ステレオブロックポリプロピレンと、粘着付与樹脂及び可塑剤の少なくとも1つとを含む。本発明の実施形態によれば、ステレオブロックポリプロピレンは、重量で約5%~約90%、好ましくは約10%~約70%、より好ましくは約15%~約50%、最も好ましくは約15%~約35%の量で存在し、粘着付与樹脂は、重量で約0%~約70%、好ましくは約30%~70%、好ましくは約40%~60%、最も好ましくは約45%~約55重量%の量で存在し、可塑剤は、約10%~約50%、好ましくは約15%~約40%、最も好ましくは約20%~約35%の量で存在する。
【0025】
また、本発明のホットメルト接着剤組成物の実施形態は、粘着付与樹脂(本明細書では「粘着付与剤」とも呼ばれる)を含む。本記載で定義されるように、粘着付与剤は、分子又は高分子であり得、一般に、通常のポリマーと比較して、最終的なホットメルト接着剤組成物の接着性を一般に高める、天然源から、又は化学プロセス又はこれらの組み合わせからの、化学化合物、又はかなり低分子量のポリマーである。代表的な樹脂には、C5/C9炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、ロジン、ロジンエステル、天然テルペンなどが含まれる。より具体的には、有用な粘着付与樹脂には、任意の適合性のある樹脂又はこれらの混合物が含まれ、例えば、(1)ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン、及び重合化ロジンを含む天然及び改質ロジン、(2)淡いウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合化ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、及びロジンのフェノール改質ペンタエリスリトールエステルを含む、天然及び改質ロジンのグリセロール及びペンタエリスリトールエステル、(3)スチレン/テルペン及びアルファメチルスチレン/テルペンなどの、天然テルペンのコポリマー及びターポリマー、(4)一般に、適度な低温でのフリーデルクラフツ触媒の存在下でのピネンとして知られる二環式モノテルペンなどの、テルペン炭化水素の重合から得られるポリテルペン樹脂、また水素化ポリテルペン樹脂も含まれる、(5)例えば、酸性媒体中での二環式テルペンとフェノールとの縮合から得られる樹脂生成物などの、フェノール改質テルペン樹脂及びその水素化誘導体、(6)主にオレフィン及びジオレフィンからなるモノマーの重合から得られる脂肪族石油炭化水素樹脂、また水素化脂肪族石油炭化水素樹脂も含まれる、並びに(7)環式石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体が含まれる。いくつかの配合物には、上記の粘着付与樹脂の2つ以上の混合物が必要となる場合がある。また、環式又は非環式C5樹脂及び芳香族改質非環式又は環式樹脂も含まれる。
【0026】
本発明の実施形態では、粘着付与剤が含まれ、脂肪族及び脂環式炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体、水素化芳香族炭化水素樹脂、芳香族改質脂肪族又は脂環式樹脂及びこれらの水素化誘導体、ポリテルペン及びスチレン化ポリテルペン樹脂並びにこれらの混合物からなる群から選択される。本発明の別の実施形態では、粘着付与剤は、C5脂肪族炭化水素樹脂、水素化C5樹脂、水素化C9樹脂、水素化DCPD樹脂及び芳香族改質DCPD樹脂からなる群から選択される。
【0027】
また、本発明のホットメルト接着剤組成物の実施形態は、可塑剤を含む。本発明では、可塑剤を使用して、配合、塗布、及び最終使用の間の接着剤の挙動を制御することができる。本発明において有用な可塑剤成分は、鉱物系の油、石油系の油、液体樹脂、液体エラストマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、フタル酸及び安息香酸の可塑剤、並びにエポキシ化大豆油のいずれかから選択することができる。好ましくは、可塑剤は、鉱物油及び液体ポリブテンからなる群から選択され、更により好ましくは、芳香族炭素原子が30%未満の鉱物油から選択される。可塑剤は、熱可塑性ゴム及びその他の樹脂に添加して、完成した接着剤の押し出し性、柔軟性、作業性、及び伸縮性を向上させることができる典型的には有機組成物として広く定義されている。周囲温度又は塗布温度で流動し、本発明の組成物と適合性のある任意の材料が、有用であり得る。好ましくは、可塑剤は、約40℃を超える温度で揮発性が低い。最も一般的に使用される可塑剤は、主に炭化水素油であり、芳香族含有量が低く、パラフィン系又はナフテン系の性質を有する油である。油は、揮発性が低く、透明であり、色がほとんどなく、臭いが無視できることが好ましい。また、本発明は、オレフィンオリゴマー、低分子量ポリマー、合成炭化水素油、植物油及びこれらの誘導体、並びに同様の可塑化油を含み得る。また、固体可塑剤は、本発明に有用であり得る。このような可塑剤の例には、1,4-シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート、グリセリルトリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、及びジシルコヘキシルフタレートが含まれる。本明細書で上記のタイプの本発明に有用な適切なナフテン系鉱物油を有する石油系の油が好ましく、Nyplast(登録商標)の商標名でNynasから市販されている。適切な液体可塑剤には、Ineosが供給するIndopolシリーズの材料などのポリブテンが含まれる。必要に応じてまた、可塑剤のブレンドを使用して、最終用途の性能と最終特性を調整することができる。
【0028】
本発明の実施形態によれば、可塑剤が含まれ、鉱物油、合成油、低分子量ポリマー、及び液体ポリブテンからなる群から選択される。
【0029】
また、本発明のホットメルト接着剤は、約0.1重量%~約5重量%の量の安定剤又は酸化防止剤を含み得る。好ましくは、約0.1%~2%の安定剤又は抗酸化剤が、組成物に組み込まれる。本発明のホットメルト接着剤組成物に有用な安定剤は、上記のポリマーを保護するのを助け、これにより、接着剤システム全体を、接着剤の製造及び塗布の間にて並びに最終製品の周囲環境への通常の暴露にて通常起こる熱的及び酸化的劣化の影響から保護するのを助けるために組み込まれる。適用可能な安定剤の中には、硫黄及びリン含有フェノールなどのヒンダードフェノール及び多機能フェノールがある。ヒンダードアミンフェノールなどの酸化防止剤は、そのフェノール性ヒドロキシル基に近接して嵩高いラジカルも含むフェノール化合物として特徴付けることができ、好ましくある。特に、3級ブチル基は、一般に、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位の少なくとも1つでベンゼン環に対して置換されている。ヒドロキシル基の近傍にこれらの立体的に嵩高い置換されたラジカルが存在することは、その伸縮頻度及びそれに対応してその反応性を遅らせるのに役立ち、従って、この立体障害は、フェノール化合物にその安定化特性をもたらす。
【0030】
また、ポリオレフィン核剤が、本発明に存在し得る。本発明に適した核剤は、一般に、急速な結晶化を促進するためにポリオレフィン添加剤のパッケージで通常使用される清澄剤として知られている核剤の副部類(sub class)のものである。適切な材料には、Millikenが供給するMillad3988及びMillad NX8000などのジベンジリデンソルビトール誘導体、及びBASFが製造するIrgaclear Dが含まれる。他の適切な薬剤には、New Japan Chemical Companyが提供するNJ Star NU-100などの芳香族アミド系が含まれる。含まれる場合、核剤は、一般に、接着剤組成物中に、接着剤組成物の約0.05~5.0重量%、好ましくは約0.1~2.5重量%、最も好ましくは約0.2~1.0重量%の量で存在する。2つ以上の核剤のブレンドも使用することができる。例えば、核剤と、第1の核剤とは異なる第2の核剤とのブレンドを使用することもできる。必要に応じて、約0.05重量%~約5重量%の1つ以上の追加の核剤を、第1の核剤と一緒にブレンドすることができる。核剤は、粉末として、適切な可塑剤の一部のスラリーとして、又はMilliken NX-10などの適切なポリマーマスターバッチのマスターバッチの成分として直接使用することができる。ホットメルト接着剤のセットアップ速度及び接着特性を調整するために、米国特許出願公開第2015/0299526号明細書に記載されているものなどの核生成のパッケージを含めることもできる。
【0031】
特定の物理的特性を変更するために、他の任意の添加剤を本発明の接着剤組成物に組み込むことができることを理解されたい。これらには、例えば、紫外線(UV)吸収剤、ワックス、界面活性剤、不活性着色剤、二酸化チタン、蛍光剤及び充填剤などの材料が含まれ得る。典型的な充填剤には、タルク、炭酸カルシウム、粘土シリカ、雲母、ウォラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラスミクロスフェア、セラミックミクロスフェア、熱可塑性ミクロスフェア、バライト及び木粉が含まれ、60重量%まで、好ましくは1~50重量%の量で含まれ得る。
【0032】
本発明の一実施形態では、ホットメルト接着剤組成物は、ワックスを含まない。ワックスが含まれる本発明の実施形態では、ワックスは、20重量%まで、好ましくは0.1重量%~18重量%の量で含まれ得る。ワックスは、石油ワックス、低分子量ポリエチレン及びポリプロピレン、合成ワックス及びポリオレフィンワックス、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましい実施形態では、ワックスは、約400~約6,000g/モルの数平均分子量を有する低分子量ポリエチレンである。本発明の実施形態によれば、接着剤組成物は、更にワックスを含む。実施形態では、ワックスは、約0.1重量%~約20重量%の量で存在する。
【0033】
本発明の実施形態によれば、接着剤組成物は、補助ポリマーを更に含む。補助ポリマーは、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン-1、ポリブテン-1/エチレンポリマー、及びスチレンブロックコポリマーからなる群から選択することができる。
【0034】
本発明の実施形態では、ホットメルト接着剤組成物は、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレン(この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である)と、粘着付与樹脂及び可塑剤の少なくとも1つ又は粘着付与樹脂と可塑剤の両方と、を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなる。本発明の実施形態では、組成物は、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレンを含み(この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である)、他のポリマーを含まない。
【0035】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、当技術分野で知られている任意の技術を使用して配合することができる。混合手順の代表的な例は、ローターを備えたジャケット付き混合容器に全ての成分を入れ、その後、混合物の温度を120℃~230℃の範囲に上げて内容物を溶融することを伴う。この工程で使用される正確な温度は、特定の成分の融点に依存することを理解する必要がある。成分は、個別に又は特定の組み合わせで、攪拌下で容器に導入され、一貫した均一な混合物が形成されるまで混合が続けられる。
【0036】
本発明の一実施形態では、接着剤は、約180℃で従来のオーバーヘッドミキサーを使用して作製される。最初に、可塑剤、粘着付与剤、及び任意の酸化防止剤を、不活性のブランケットの下で所望の温度に加熱し、均一にするために攪拌を開始する。次いで、ステレオブロックポリプロピレンを添加する。混合が均一になり、ポリマーが溶融するまで、熱を加えながら混合を続ける。他の従来の方法を使用して、本発明のホットメルト接着剤を作製することができる。例えば、静的混合、一軸スクリュー押し出し、二軸スクリュー押し出し、及びニーディングを使用する方法を使用することができる。次いで、ホットメルト接着剤は、室温まで冷却され、保護スキンがその上に形成されたチャブ又は出荷及び使用のためのペレットに形成される。
【0037】
次いで、得られたホットメルト接着剤を、様々なコーティング技術を使用して基材に塗布することができる。例としては、ホットメルトスロットダイコーティング、ホットメルトホイールコーティング、ホットメルトローラーコーティング、メルトブローコーティング、及びスロット、スパイラルスプレー、及び弾性ストランドの接着に使用されるものなどのラッピングスプレー法などが挙げられる。スプレー技術は、数多くあり、接着剤スプレーパターンを形成する圧縮空気の助けを借りて又は助けを借りずに行うことができる。ホットメルト接着材料は、典型的には、ホースを介して基材における最終コーティング部位に溶融状態でポンプで送られる。接着剤配合物の軟化点を超える任意の塗布温度が適切である。
【0038】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、例えば、使い捨て不織布衛生用品、紙加工、可撓性包装、木工、カートン及びケースのシーリング、ラベリング及び他の組立て用途などの多くの用途で使用することができる。特に好ましい用途には、おむつ及び成人用失禁ブリーフの弾性アタッチメント、使い捨ておむつ及び女性用生理ナプキン構造物、おむつ及びナプキンコアの安定化、おむつの後板のラミネート、工業用フィルター材料変換、外科用ガウン及び外科用ドレープ組立て体が含まれる。本発明の接着剤は、おむつなどの衛生用品の構造用接着剤として特に有用であることが見出された。構造用接着剤は、典型的には、不織布層をポリエチレンフィルムに接着するために使用される。感圧用途。テープ及びラベル、パッドのアタッチメントなど。また、接着剤が単に基材を接着するだけでなく機能的な目的を果たさなければならない場合の弾性と伸縮性。
【0039】
また、本発明の接着剤は、様々な基材材料が関与する任意の用途で使用することができる。例としては、不織布材料及び高分子フィルムが挙げられる。任意の基材材料及び任意の基材形態を、それ自体の上に折りたたまれた単一の基材又は2つ以上の基材を一緒に接着するのに役立つ接着剤との可能な任意の組み合わせで使用することができる。基材は、複数の形態、例えば、繊維、フィルム、糸、ストリップ、リボン、テープ、コーティング、ホイル、シート、及びバンドであり得る。基材は、任意の既知の組成物、例えば、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、木材、ボール紙又は紙などのセルロースであり得る。バルク基材の機械的挙動は、剛性、塑性、又は弾性であり得る。上記のリストは、限定的又は包括的でないが、一般的な例としてのみ提供されている。
【0040】
本発明の一実施形態では、ラミネートを作製する方法は、本発明のホットメルト接着剤組成物を溶融状態で第1の基材に塗布する工程を含む。この実施形態では、ラミネートは、テープ又はラベルであり得、テープの裏打ち又はラベルの面として機能する第1の基材及び接着剤からなる。他の実施形態では、ラミネートを作製するための方法は、接着剤が完全に冷却される前に第2の基材を接着剤組成物と接触させることによって第2の基材を第1の基材に接合する工程を更に含む。接着剤を冷却すると、接着剤は、第1の基材を第2の基材に接着させる。接着剤が構造用接着剤としての使用に適している実施形態では、第1の基材は、ポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムであり得、第2の基材は、不織布の材料又は層であり得る。
【0041】
本発明の代替の実施形態では、接着剤は、スロット又はVスロットのアプリケーターヘッドなどのホットメルト塗布の直接接触法を使用して第1の基材に塗布される。或いは、接着剤は、スプレーアプリケーターなどの非接触のホットメルト法を使用して第1の基材に塗布することができる。
【0042】
また、本発明の接着剤は、様々な基材材料が(弾性ストランドと共に)含まれる任意の用途で使用することができる。例としては、不織布材料及び高分子フィルムが挙げられる。任意の基材材料及び任意の基材形態を、それ自体の上に折りたたまれた単一の基材と弾性ストランド又は弾性ストランドを一緒に挟む2つ以上の基材とを接着するのに役立つ接着剤との可能な任意の組み合わせで使用することができる。基材は、弾性ストランドと共に、複数の形態、例えば、繊維、フィルム、糸、ストリップ、リボン、テープ、コーティング、ホイル、シート、及びバンドであり得る。基材は、任意の既知の組成物、例えば、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、又はポリスチレンであり得る。上記のリストは、限定的又は包括的ではないが、一般的な例としてのみ提供されている。
【0043】
本発明の実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物は、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレン(この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である)と、粘着付与樹脂又は可塑剤の少なくとも1つと、を含み、この場合、(1)第1のポリエチレン層と第2のポリエチレン層の間に5gsmの追加物を適用した場合の、25℃でエージングした後の少なくとも0.5ポンドの力の90°での剥離強度、(2)毎分12インチの速度で100ニュートンのロードセルを装備したInstron 5500R引張り試験フレームを使用して、3ミルの接着剤の厚さでステンレス鋼にポリエチレンループスレッドを適用した場合の、少なくとも1ポンドの力の初期ループタックと少なくとも1ポンドの力のエージングされたループタック、並びに(3)1キログラムの重りを使用して、研磨されたステンレス鋼とポリエチレンテレフタレートの間に適用された場合の、23℃で少なくとも500分の剪断値を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で、ステレオブロックポリプロピレン、並びに粘着付与樹脂及び可塑剤の少なくとも1つは存在する。
【0044】
本発明の態様
態様1.(a)約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックとを含むステレオブロックポリプロピレン(この場合、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である)と、
(b)粘着付与樹脂又は可塑剤の少なくとも1つと、
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
態様2.ステレオブロックポリプロピレンは、約10%~約80%、好ましくは20%~約65%、より好ましくは30%~約55%、最も好ましくは32%~約50%の正味のアイソタクチック指数を有する、態様1の組成物。
態様3.ステレオブロックポリプロピレンは、約4,000~約500,000ダルトン、好ましくは約8,000~約400,000ダルトン、より好ましくは約12,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約12,000~約275,000ダルトン、最も好ましくは約16,000~約250,000ダルトンの重量平均分子量を有する、態様1又は2の組成物。
態様4.第1のブロックのアイソタクチック指数は、約52%~75%、好ましくは約55%~約72%、最も好ましくは約60%~約70%であり、第2のブロックのアイソタクチック指数は、約12%~約48%、好ましくは約15%~約45%、最も好ましくは約20%~約40%である、態様1~3のいずれかの組成物。
態様5.第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%、最も好ましくは少なくとも約25%である、態様1~4のいずれかの組成物。
態様6.ステレオステレオブロックポリプロピレンは、ジブロックポリマーである、態様1~5のいずれかの組成物。
態様7.ステレオブロックポリプロピレンは、トリブロックポリマーであり、第3のブロックは、約50%~95%のアイソタクチック指数を有する、態様1~5のいずれかの組成物。
態様8.ステレオブロックポリプロピレンは、ジブロックコポリマーであり、組成物は、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第1のブロックと、約5%~50%のアイソタクチック指数を有する第2のブロックと、約50%~約95%のアイソタクチック指数を有する第3のブロックと、を含むステレオトリブロックポリプロピレンを更に含み、第1のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%であり、第3のブロックのアイソタクチック指数と第2のブロックのアイソタクチック指数の差は、少なくとも約10%である、態様1~5のいずれかの組成物。
態様9.第1のブロックは、約10モル%~約50モル%、好ましくは約18モル%~約40モル%、最も好ましくは約20モル%~約35モル%のステレオブロックポリプロピレンを含み、第2のブロックは、約50モル%~約90モル%、好ましくは約60モル%~約82モル%、最も好ましくは約65モル%~約80モル%のステレオブロックポリプロピレンを含む、態様1~8のいずれかの組成物。
態様10.ステレオブロックポリプロピレンは、以下の式:
Tm=1.85×[mmmm]正味-12℃
(式中、[mmmm]正味は、ステレオブロックポリプロピレンの正味のアイソタクチック指数である)から計算される融点よりも少なくとも5℃高い融点を有し、ステレオブロックポリプロピレンは、DSCによって測定される、少なくとも75℃、好ましくは少なくとも約80℃、より好ましくは少なくとも約85℃、最も好ましくは少なくとも約90℃の融点を有する、態様1~9のいずれかの組成物。
態様11.163℃で約1,000cP~約500,000cP、好ましくは163℃で約2,000cP~約250,000cP、より好ましくは163℃で約2,000cP~約125,000cP、最も好ましくは163℃で約2,000cP~約100,000cPである、態様1~10のいずれかの組成物。
態様12.約50℃~約150℃、好ましくは約55℃~約140℃、より好ましくは約60℃~約135℃、最も好ましくは約65℃~約130℃のリング及びボール軟化点を有する、態様1~11のいずれかの組成物。
態様13.ステレオブロックポリプロピレンは、重量で約5%~約90%、好ましくは約10%~約70%、より好ましくは約15%~約50%、最も好ましくは約15%~約35%の量で存在し、粘着付与樹脂は、重量で約0%~約70%、好ましくは約30%~70%、好ましくは約40%~60%、最も好ましくは約45%~約55重量%の量で存在し、可塑剤は、約10%~約50%、好ましくは約15%~約40%、最も好ましくは約20%~約35%の量で存在する、態様1~12のいずれかの組成物。
態様14.粘着付与樹脂は、脂肪族及び脂環式炭化水素樹脂及びこれらの水素化誘導体、水素化芳香族炭化水素樹脂、芳香族改質脂肪族又は脂環式樹脂及びこれらの水素化誘導体、ポリテルペン及びスチレン化ポリテルペン樹脂並びにこれらの混合物からなる群から選択される、態様1~13のいずれかの組成物。
態様15.可塑剤は、鉱物油、合成油、低分子量ポリマー、及び液体ポリブテンからなる群から選択される、態様1~14のいずれかの組成物。
態様16.安定剤又は酸化防止剤を更に含む、態様1~15のいずれかの組成物。
態様17.ワックスを更に含む、態様1~16のいずれかの組成物。
態様18.ワックスは、約0.1重量%~約20重量%の量で存在する、態様17の組成物。
態様19.エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン-1、ポリブテン-1/エチレンポリマー、及びスチレンブロックコポリマーからなる群から選択される補助ポリマーを更に含む、態様1~18のいずれかの組成物。
態様20.ステレオブロックポリプロピレンは、A-B-A-B-Aのパターンのペンタブロックコポリマーであり、この場合、Aは、第1のブロックであり、Bは、第2のブロックである、態様1~5又は9~19のいずれかの組成物。
態様21.態様1~20のいずれかのホットメルト接着剤組成物を溶融状態で第1の基材に塗布する工程を含む、ラミネートを作製する方法。
態様22.ラミネートは、テープ又はラベルである、態様21の方法。
態様23.第2の基材を接着剤組成物と接触させることによって第2の基材を第1の基材に接合することを更に含む、態様21の方法。
態様24.第1の基材は、ポリエチレンフィルムである、態様21~23のいずれかに記載の方法。
態様25.第2の基材は、不織布層である、態様23又は24の方法。
態様26.態様21~25のいずれかの方法によって作製されたラミネート。
態様27.(1)第1のポリエチレン層と第2のポリエチレン層の間に5gsmの追加物を適用した場合の、25℃でエージングした後の少なくとも0.5ポンドの力の90°での剥離強度、(2)毎分12インチの速度で100ニュートンのロードセルを装備したInstron 5500R引張り試験フレームを使用して、3ミルの接着剤の厚さでステンレス鋼にポリエチレンループスレッドを適用した場合の、少なくとも1ポンドの力の初期ループタックと少なくとも1ポンドの力のエージングされたループタック、並びに(3)1キログラムの重りを使用して、研磨されたステンレス鋼とポリエチレンテレフタレートの間に適用された場合の、23℃で少なくとも500分の剪断値を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で、ステレオブロックポリプロピレン、並びに粘着付与樹脂及び可塑剤の少なくとも1つは存在する、態様1~20のいずれかの組成物。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態のいくつかの態様を実証しており、その限定として解釈されるべきではない。
【0046】
以下の実施例では、米国特許第8,513,366号明細書に記載されている一般的な方法に従って作製されたポリマーを表1にて使用した。この検討では、2つの本発明のステレオブロックプロピレンポリマーを使用した。以下に記載されている材料において、記載されているアイソタクチック指数(II)は、カーボン13-NMRを使用してmmmmペンタッドの濃度によって決定されるものである。最初の発明のステレオブロックポリマー(SBP1)は、65%のアイソタクチック指数を有する27重量%のポリプロピレン及び35%のアイソタクチック指数を有する73重量%のプロピレンを有するジブロック構造体を有する。SBP1は43%の正味のアイソタクチック指数を有し、この試料の立体エラーがポリマー鎖全体にランダムに配置されている場合、予測される融点Tmは、約67℃になる。SBP1のTmについて示差走査熱量測定(DSC)で測定された値は97℃であり、本発明のステレオブロックポリプロピレンによってもたらされる1つの重要な特性の変化を強調している。第2の本発明のステレオブロックポリマー、SBP2は、65%のアイソタクチック指数を有する12重量%のポリプロリエン端部ブロック、31%のアイソタクチック指数を有する72重量%のポリプロピレン中間部ブロック、及び、61%のアイソタクチック指数を有する16重量%の第2のポリプロピレン端部ブロックからなるトリブロックである。40%の正味のアイソタクチック指数を有するSBP2について予測される融点は、約62℃になる。SBP2についてDSCで測定されたTmは、94℃である。本発明の材料を使用して作製された接着剤の性能を、Idemitsuが製造し、L-MODU S600及びS901の商標名で販売されている市販のランダムステレオブロックポリプロピレンと比較した。ペンタッド13-CNMR分析によって決定されるL-MODUポリマーのアイソタクチック指数は52%であり、DSCで決定されたTmは76℃であることがわかり、これは、本発明のポリマーとは異なり、84℃の予測値とよく一致している。この検討で使用された本発明のポリマー及び比較のポリマーについての、Mw/Mnである多分散度指数(PDI)を含む物理的特性データを表1に要約する。
【0047】
【0048】
接着剤配合物
接着剤は、表2で示される配合を使用して、表1に列挙されている本発明のポリマーと比較のポリマーから作製した。酸化防止剤のパッケージと一緒に油と粘着付与剤を、窒素パージ下の約300mLステンレス鋼反応容器に加えた。次に、傾斜のついた羽根(pitched impeller)を備えたオーバーヘッドスターラーを使用して材料を200rpmで混合し、170℃に加熱した。温度に達し、油と粘着付与剤を完全に均一化した後、温度が150℃を下回らないような速度でポリマーをゆっくりと加えた。全てのポリマーを加えた後、混合物を177℃で更に30~60分間撹拌して、完全に組み込まれるようにした。使用されたポリマーの量は、生成された配合物に対して約20重量%であった。Idemitsu L-Modu S600ポリマーを含む試料は、20%のポリマーレベルで低粘度であると決定され、従って、材料間の大きな粘度差による性能の変化を排除するために、油を犠牲にしてポリマー含有量を34%に増やした。
【0049】
【0050】
使用した成分を表2に列挙する。Nyflex 222Bは、Nynas Corporationから入手可能な水素化ナフテンプロセスオイルである。Escorez 5400は、Exxon Mobil Chemicalから市販されている市販のジシクロペンタジエン粘着付与樹脂である。Irgafos 168は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート安定剤であり、多くの様々な供給業者から入手できる。Irganox 1010は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)安定剤であり、多くの様々な供給業者から入手できる。
【0051】
全ての試料が溶融し均一になったら、溶融した接着剤を鋳型に流し込み、粘度並びにリング及びボール試験のための試料を得た。試験片をトリミングし、試験前に最低48時間、相対湿度50±5%及び23±2℃で調整した。
【0052】
粘度測定は、#10スピンドルを備えたCAP2000+粘度計で実施した。スピンドル速度を変動させて、フルスケールの読み取り値の10~90%の結果を得た。Herzog HRB754を使用して、接着剤について軟化点を決定した。物理試験データを表3に示す。示されているように、全ての試料は、温度の関数として同様の粘度値を有する。全体的な正味の立体規則性が低いにもかかわらず、本発明のジ及びトリステレオブロックポリプロピレン(それぞれ配合物Ex1及びEx2)で作製された試料は、リング及びボール軟化点(RSBP)によって測定されるように、より高い熱抵抗をもたらした。
【0053】
【0054】
接着性能のための試料は、ホットメルト接着剤コーターを使用して、接着剤を2ミル(0.002インチ)のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにスロットコーティングすることによって調製した。シリコーンコーティングされた剥離紙を接着剤フィルムに渡り置いた。コーティングされたフィルムの一部を、65℃及び80%相対湿度(RH)に設定された環境チャンバー内でエージングした。初期の(作製されたままの)コーティングされたフィルムとエージングされたコーティングされたフィルムの両方を、1×3インチのストリップに切断した。剥離紙を取り除き、2kgのハンドローラーを使用して、接着剤を研磨されたステンレス鋼(SS)パネルに接着した。これらの剪断試験片を、試験前に最低48時間、相対湿度50+/-5%及び23+/-2℃の条件でエージングした。次いで、試料を23℃で剪断固定具に入れ、1kgの重りをPETのストリップに取り付けた。表3に列挙された「剪断破壊」についての値は、重量の減少によって示される接着破壊までの時間を分単位で示している。
【0055】
表3に示されているように、配合L-MODU S600で作製された接着剤は、おそらく配合中のポリマー含有量が高いために、最も長い剪断抵抗を示した。L-MODU S901で作製された比較例2(CE2)と同様のレベルのポリマー充填量と配合粘度を有するにもかかわらず、Ex1のジブロック接着剤は、本発明の著しく高い初期剪断性能を示した。最も注目すべきことに、両方の本発明の接着剤(Ex1及びEx2)は、比較例(CE2)よりも著しく改善されたエージングされた剪断抵抗を示した。
【0056】
ループタック試験を、作製されたままのコーティングされた接着剤試料及びエージングされたコーティングされた接着剤試料で実行した。エージングのために、コーティングされたフィルム試料は、試験前に最低48時間、相対湿度50+/-5%及び23+/-2℃の条件で調整された。次いで、試料を1インチ×5インチのストリップに切断した。接着剤がループの外側になるようにストリップをループし、試料を12インチ/分の速度を用いて100Nロードセルを備えたInstron 5500R引張り試験フレームに配置した。ループタック試験を、きれいなステンレス鋼(SS)パネルで実行し、新しいループを各試験の個別のパネルのきれいな領域で使用した。PETフィルムの2つの接着剤の厚さ、1ミルと3ミルを試験した。本発明の配合物(Ex1及びEx2)の初期の試料及びエージングされた試料の両方が、1ミルの厚さで比較例2と同様の性能であった。しかしながら、3ミルでは、本発明の実施例(Ex1及びEx3)は、初期に及びエージング時に比較例2よりも大幅に高いループタック値を示した。比較例1、CE1は、より高いポリマー充填量を含み、高い剪断接着性能を示したが、ループタック試験でステンレス鋼に測定可能な接着をもたらさないことがわかった。
【0057】
エージングされた接着剤の粘着性能の更なる検討を、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)基材で行った。結果を以下の表3に列挙する。示されているように、ステレオブロックポリプロピレンを用いて生成された本発明の配合物(Ex1及びEx2)は、比較試料(CE1及びCE2)と比較して同等又は改善されたループタック性能を示した。
【0058】
剥離試験は、100Nロードセルを備えたInstron 5500R引張り試験フレームを使用して、12インチ/分の速度を使用して実施した。これらの試験では、シリコンライナーの上部シートを用いて2.0ミルのPETフィルムに1ミルの厚さで事前にコーティングされたエージングされた接着剤を、幅1インチ×長さ3インチのストリップに切断し、前の試験に従って調整した。ライナーを剥がして接着剤の約1インチを露出させた。露出した接着剤を様々な基材のきれいなパネルに配置し、次いで試料を2kgのローラーで転がして、接着剤をパネルに接着した。次いで、パネルをジグに配置し、表3に示されるように、90°と180°の剥離について剥離値を記録した。示されているように、本発明の配合物(Ex1及びEx2)は、ステンレス鋼(SS)、ポリエチレン(PE)、及びポリプロピレン(PP)基材において、比較例(CE1及びCE2)と比較して、より高い剥離接着強度を示している。
【0059】
剪断接着破壊温度(SAFT)試験は、剪断試験パネルと同様の方法で調製されたエージングされた接着剤試料で実行した。調整されたパネルを、パネルの温度を周囲温度から4°F/分で200°Fまで上昇させる強制空気オーブンに入れた。試験では1kgの重りを使用した。破壊時間は間接的に(remotely)記録され、表3に示されている。室温剪断試験の結果とまったく同様に、より高いポリマー充填量で調製されたCE1は、最も高いSAFT値を示した。しかしながら、本発明の配合物(CE1及びCE2)は、同様のポリマー充填量で作製された比較例(CE2)と比較して、高い熱剪断接着挙動を示した。
【0060】
上記の結果に示されているように、ステレオジブロックポリプロピレン及びステレオトリブロックポリプロピレンを含む本発明の接着剤(Ex1及びEx2)は、市販のランダム立体エラー類似体(CE1及びCE2)から生成された配合物と比較して実質的な利点をもたらす。同様の粘度で、本発明の接着剤は、はるかにバランスの取れた剪断及び剥離/粘着性能を示し、感圧接着剤を含む様々な用途に非常に適している。表3に示されるように、第1の比較例(CE1)は、ランダム立体エラーポリプロピレンを使用して高い剪断接着性能を示す接着剤を生成できることを示している。この剪断性能は、様々な基材に対するループタック及び剥離試験でCE1によって示される剥離及びループタックによって示されるように、感圧性を犠牲にしてもたらされる。第2の比較例(CE2)は、多数の基材に対して適度に良好な粘着値と剥離値を示しているが、それにもかかわらず、これは剪断接着性能の低下と全体的な熱抵抗の低下を伴う。本発明の配合物は、これらの固有の妥協点を打ち破り、剪断性能及び熱抵抗を損なうことなく、感圧接着剤用途に適している必要がある粘着を示す比較的低粘度の接着剤を生成することを可能にする。
【0061】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値との間の、それぞれの介在する値、及び介在する値の任意の組み合わせ又は副組み合わせ(sub-combination)が、列挙されている値の範囲内に包含されることが理解される。更に、本発明は、その構成要素の第1の範囲の下限及び第2の範囲の上限である構成要素の範囲を含む。
【0062】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で具体的に言及される全ての刊行物及び特許は、本発明に関連して使用される可能性のある刊行物で報告される化学物質、機器、統計分析及び方法論を説明及び開示することを含む全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる。本明細書で引用される全ての参考文献は、当業者のレベルを示すものとして解釈されるべきである。本明細書のいかなるものも、本発明が、効力(virtue)又は先行発明によってそのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0063】
特定の具体的な実施形態を参照して本明細書に例示及び説明されているが、それにもかかわらず、本発明は、示されている詳細に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の趣旨から逸脱することなく、特許請求の範囲の同等物の領域及び範囲内で詳細に様々な修正を行うことができる。
【国際調査報告】