(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】直流電圧コンバータおよび直流電圧コンバータの動作方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
H02M3/28 A
H02M3/28 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507421
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020069198
(87)【国際公開番号】W WO2021023460
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】102019211692.2
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】キエンツラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】グディーニョ・カリサレス,エミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】リーデル,ヤン
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AA20
5H730AS01
5H730AS13
5H730BB27
5H730DD04
5H730DD16
5H730DD32
5H730EE13
5H730EE24
(57)【要約】
本発明は、直流電圧コンバータ、とりわけ位相シフトフルブリッジトポロジーを有する直流電圧コンバータのための回路構成および制御方法に関し、この場合、一次側での電圧が、二次側での電圧と直流電圧コンバータ内の変圧器の伝送比との積を下回る場合も、一次側から二次側へのエネルギー伝送が行われ得る。このようにして、例えば、直流電圧コンバータの一次側でのコンデンサが、安全な低い電圧レベルへと放電され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変圧器(T1)と、
電気的に、直流電圧コンバータ(1)の第1の端子(A1)と前記第1の変圧器(T1)の一次側との間に配置されている第1のフルブリッジ回路(10)と、
電気的に、前記直流電圧コンバータ(1)の第2の端子(A2)と前記第1の変圧器(T1)の二次側との間に配置されている第2のフルブリッジ回路(20)と、
第2の変圧器(T2)とを備えており、前記第2の変圧器(T2)の一次側が電気的に、前記第2のフルブリッジ回路(20)と前記直流電圧コンバータ(1)の前記第2の端子(A2)の第1の端子要素(A2-1)との間に配置されており、かつ前記第2の変圧器(T2)の二次側と、第1のスイッチング素子(S1)と、第1のダイオード(D1)とから成る直列回路が、前記直流電圧コンバータ(1)の前記第2の端子(A2)の前記第1の端子要素(A2-1)と第2の端子要素(A2-2)との間に配置されており、かつ前記第1のダイオード(D1)が、前記直流電圧コンバータ(1)の前記第2の端子(A2)の前記第1の端子要素(A2-1)と前記第2の端子要素(A2-2)との間で順方向に配置されている直流電圧コンバータ(1)。
【請求項2】
前記第1のスイッチング素子(S1)に並列に第2のダイオード(D2)が配置されており、かつ前記第2のダイオード(D2)が、前記第1のダイオード(D1)に逆並列に配置されている、請求項1に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項3】
前記第1のダイオード(D1)に並列に第2のスイッチング素子(S2)が配置されている、請求項1または2に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項4】
前記直流電圧コンバータ(1)の前記第1の端子(A1)が、第1の電圧源と電気的に結合するように構成されており、
前記直流電圧コンバータ(1)の前記第2の端子(A2)が、第2の電圧源と電気的に結合するように構成されており、かつ
前記第1の電圧源の電圧が前記第2の電圧源の電圧より大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項5】
前記直流電圧コンバータ(1)が、前記直流電圧コンバータ(1)の前記第1の端子(A1)から前記直流電圧コンバータ(1)の前記第2の端子(A2)の方向に電気エネルギーを伝送するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項6】
前記直流電圧コンバータ(1)の前記第1の端子(A1)が、中間回路コンデンサ(CZ)と結合するように構成されており、かつ
前記直流電圧コンバータ(1)が、所定の電圧未満とするために前記中間回路コンデンサ(CZ)を放電させ、および/または前記直流電圧コンバータ(1)の一次側の電圧が所定の最小電圧より小さい場合であっても、二次側の負荷に、一次側のエネルギーを介して給電するように構成されており、前記所定の最小電圧が、前記変圧器(T1)の変圧比によって規定されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項7】
前記第1のフルブリッジ回路(10)が、それぞれ2つのスイッチング素子(11~14)を備えた2つのハーフブリッジを含んでおり、
前記第2のフルブリッジ回路(20)が、それぞれ2つのスイッチング素子(21~24)を備えた2つのハーフブリッジを含んでおり、
前記直流電圧コンバータ(1)が、前記第1のフルブリッジ回路(10)の前記スイッチング素子(11~14)と、前記第2のフルブリッジ回路(20)の前記スイッチング素子(21~24)と、前記第1のスイッチング素子(S1)とを制御するように構成された制御機構(30)をさらに含んでいる、請求項1から6のいずれか一項に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項8】
前記制御機構(30)が、第1のスイッチング素子間隔内では、前記第1のスイッチング素子(S1)を閉じ、かつ前記第1のフルブリッジ回路の前記スイッチング素子(11~14)を開き、ならびに第2のスイッチング素子間隔内では、前記第1のスイッチング素子(S1)を開き、かつそれぞれ前記第1のフルブリッジ回路(10)の一方の対角経路内の前記第1のスイッチング素子を閉じるように構成されている、請求項7に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項9】
前記制御機構(30)が、2つの連続している第2のスイッチの間隔内では、前記第1のフルブリッジ回路(10)内の異なる対角経路の前記スイッチング素子(11~14)を交互に開閉するように構成されている、請求項8に記載の直流電圧コンバータ(1)。
【請求項10】
位相シフトフルブリッジ直流電圧コンバータの制御方法(100)であって、
直列インダクタンスとして前記直流電圧コンバータの出力側に配置されている変圧器(T2)の二次側を充電するステップ(110)と、
前記変圧器(T2)の二次側に蓄えられた電気エネルギーを、前記変圧器(T2)の一次側を経由して放電(120)するステップとを有する制御方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流電圧コンバータに関する。本発明はさらに直流電圧コンバータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧コンバータは多数の分野で用いられている。例えば、直流電圧コンバータにより電気車両の高電圧ネットワークと低電圧ネットワークの間で電気エネルギーが伝送され得る。これについては、直流電圧コンバータの入力端子に印加されている直流電圧を、直流電圧コンバータによってさらなる直流電圧に変換することができ、この場合、直流電圧コンバータの入口での電圧の高さは、出口での電圧の高さとは相違し得る。とりわけ、例えばいわゆる位相シフトフルブリッジトポロジーが知られている。このような直流電圧コンバータは、固定の変圧比をもつ変圧器を含んでいる。この場合、調整可能な位相シフトを使って、出力電圧の可変の調整が可能である。これに関し、入力電圧と出力電圧の電圧比の限界は、なかでも直流電圧コンバータ内の変圧器の変圧比によって制限される。
【0003】
独国特許出願公開第102016200662号明細書は、電気車両の高電圧ネットワークと低電圧ネットワークの間で電気エネルギーを伝送するための双方向の直流電圧変換器を説明している。この場合、直流電圧変換器の逆方向での動作により、直流電圧変換器の一次側での中間回路コンデンサが、直流電圧変換器の二次側でのエネルギーによって充電され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、独立特許請求項の特徴を有する直流電圧変換器および直流電圧変換器の動作方法を開示している。さらなる実施形態は従属特許請求項の対象である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに応じて提供されるのは:
第1の変圧器と、第1のフルブリッジ回路と、第2のフルブリッジ回路と、第2の変圧器とを備えた直流電圧コンバータである。第1のフルブリッジ回路は電気的に、直流電圧コンバータの第1の端子と第1の変圧器の一次側との間に配置されている。第2のフルブリッジ回路は電気的に、直流電圧コンバータの第2の端子と第1の変圧器の二次側との間に配置されている。第2の変圧器の一次側は電気的に、第2のフルブリッジ回路と直流電圧コンバータの第2の端子の第1の端子要素との間に配置されている。さらに、この変圧器の二次側と、第1のスイッチング素子と、第1のダイオードとから成る直列回路が設けられている。この直列回路は電気的に、直流電圧コンバータの第2の端子の第1の端子要素と直流電圧コンバータの第2の端子の第2の端子要素との間に配置されている。これに関してはとりわけ、第1のダイオードは、直流電圧コンバータの第2の端子の第1の端子要素と第2の端子要素との間で順方向に配置されている。言い換えれば、第1のダイオードのアノードは、第2の端子のうち正極性をもつ端子要素の方を向いており、ダイオードのカソードは、負極性をもつ端子要素の方を向いている。
【0006】
さらに提供されるのは:
変圧器の二次側を充電するためのステップを有する、位相シフトフルブリッジ直流電圧コンバータの制御方法であり、この変圧器は、直列インダクタンスとして直流電圧コンバータの出力側に配置されている。この方法は、変圧器の二次側に蓄えられた電気エネルギーを、変圧器の一次側を経由して放電するためのステップをさらに含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基礎になっているのは、直流電圧変換器、とりわけ位相シフトフルブリッジトポロジーを有する直流電圧変換器は、一般的に、限られた電圧範囲内のエネルギー伝送だけを可能にするという知見である。この電圧範囲は、とりわけ位相シフトフルブリッジ直流電圧変換器の場合、変圧器の一次側と二次側の間の変圧比によって制限されている。一次側と二次側の間の変圧比がNの場合、一次側での電圧は、変圧比Nと二次側での電圧との積より大きくなければならない。
【0008】
したがって本発明のアイデアは、この知見を顧慮し、かつ、上述の制限を超えても一次側から二次側へのエネルギー伝送を可能にする、位相シフトフルブリッジ直流電圧コンバータのための拡張されたトポロジーを提供することである。本発明によるトポロジーは、とりわけ、一次側での入力電圧が変圧比と二次電圧の積に基づく上述の限界より小さい場合の一次側から二次側へのエネルギー伝送も可能にする。
【0009】
このために、二次側での単純な直列インダクタンスの代わりに変圧器が設けられている。これに関しては従来の直列インダクタンスに倣って、この追加的な変圧器の一次側は、直流電圧コンバータの二次側のフルブリッジと出力端子との間に接続され得る。それに加えてこの追加的な変圧器の二次側は、スイッチング素子および順方向に配置されたダイオードと一緒に、直流電圧コンバータの二次側の正端子と負端子の間の直列回路を構成する。スイッチング素子の閉鎖により、追加的な変圧器の二次側が充電され得る。スイッチング素子の開放により、エネルギーが追加的な変圧器の二次側から一次側へ伝送され、このときに、一次側での電圧が上述の制限未満に落ちる場合でさえ、直流電圧コンバータによる一次側から二次側へのエネルギー伝送を可能にする。
【0010】
このようにして例えば、一次側のコンデンサ、例えば中間回路コンデンサを、安全な電圧レベルとなるように放電することが可能である。したがって、このような中間回路コンデンサのための追加的な放電回路をなくすことができる。
【0011】
したがって、本発明によるトポロジーに相応した中間回路コンデンサの放電により、追加的な充電電圧のための手間ひいては費用も節減され得る。それだけでなく、中間回路コンデンサに蓄えられた電気エネルギーを少なくとも部分的には直流電圧変換器の二次側へ伝送することも可能である。よって中間回路コンデンサからのエネルギーは、完全に失われるのではなく、少なくとも部分的には直流電圧変換器の二次側で利用され得る。これによりシステム全体の効率も高まる。
【0012】
一実施形態によれば、第1のスイッチング素子に並列に第2のダイオードが配置されている。第2のダイオードは、とりわけ第1のダイオードに逆並列に配置されている。言い換えれば、第2のダイオードのカソードは、直流電圧変換器の第2の端子の正端子要素の方を向いている。例えば、第2のダイオードは第1のスイッチング素子のいわゆるボディダイオードであり得る。
【0013】
さらなる一実施形態によれば、第2のダイオードに並列に第2のスイッチング素子が配置されている。こうすることで、直流電圧コンバータの機能性がさらに追加的に上昇し得る。例えば、第2のスイッチング素子の適切な制御により、逆方向での、つまり直流電圧コンバータの二次側から一次側へのエネルギーの流れも実現され得る。
【0014】
一実施形態によれば、直流電圧コンバータの第1の端子は、第1の電圧源と電気的に結合するように構成されており、かつ直流電圧コンバータの第2の端子は、第2の電圧源と電気的に結合するように構成されている。とりわけ、第1の電圧源の電圧、つまり直流電圧コンバータの第1の入力端子での電圧が、第2の端子での第2の電圧源の電圧より大きくすることができる。例えば、直流電圧コンバータの第1の端子は、高電圧ネットワーク、例えば電気車両の高電圧ネットワークと結合され得る。この場合には、直流電圧コンバータの第2の端子は、例えば低電圧ネットワーク、とりわけ電気車両の低電圧ネットワークと結合され得る。
【0015】
一実施形態によれば、直流電圧コンバータは、直流電圧コンバータの第1の端子から直流電圧コンバータの第2の端子の方向に電気エネルギーを伝送するように構成されている。直流電圧コンバータは、とりわけ、直流電圧コンバータの第1の端子での電圧が、第1の変圧器の伝送比と直流電圧コンバータの第2の端子での電圧との積より小さい場合に、電気エネルギーを第1の端子から第2の端子へ伝送するようにも構成され得る。
【0016】
一実施形態によれば、直流電圧コンバータの第1の端子は、中間回路コンデンサと結合するように構成されている。これに関し、直流電圧コンバータは中間回路コンデンサを放電するように構成され得る。直流電圧コンバータは、とりわけ中間回路コンデンサを所定の電圧閾値未満へと放電するように構成され得る。このようにして、中間回路コンデンサが放電されて安全で無害な電圧レベルへとされる。この場合、追加的な放電回路をなくすことができる。これに関し中間回路コンデンサは、とりわけ、第1の変圧器の変圧比と直流電圧コンバータの第2の端子での電圧との積より小さい電圧となるように放電され得る。
【0017】
それに加えてまたはその代わりに、直流電圧コンバータは、直流電圧コンバータ(1)の一次側の電圧が所定の最小電圧より小さい場合でさえ、二次側での負荷に、一次側でのエネルギーを介して給電するように構成され得る。この所定の最小電圧は、変圧器の変圧比によって設定される。最小電圧は、とりわけ二次側での電圧と変圧器の変圧比との積から判明し得る。
【0018】
一実施形態によれば、第2のフルブリッジ回路は、それぞれ2つのスイッチング素子を備えた2つのハーフブリッジを含んでいる。それだけでなく第1のフルブリッジ回路も、それぞれ2つのスイッチング素子を備えた2つのハーフブリッジを含み得る。これに関し直流電圧コンバータは、第1のフルブリッジ回路の、第2のフルブリッジ回路の、ならびに第1および場合によってはさらに第2のスイッチング素子のスイッチング素子を制御するように構成され得る。スイッチング素子の制御は、とりわけ例えば適切な制御機構を使って行われ得る。
【0019】
一実施形態によれば、直流電圧コンバータ、とりわけ直流電圧コンバータの制御機構は、第1のスイッチングの間隔内では、第1のスイッチング素子を閉じ、かつ第1のフルブリッジ回路のスイッチング素子を開くように構成され得る。それだけでなく第2のスイッチングの間隔内では、第1のスイッチング素子が開かれ、かつ第1のフルブリッジ回路の一方の対角経路内の2つのスイッチング素子がそれぞれ閉じられ得る。こうすることで、第1のスイッチングの間隔中は第2の変圧器の二次側が充電され得る。それに基づいて第2のスイッチングの間隔内では第2の変圧器の二次側から一次側へ電気エネルギーが伝送され得る。このようにして、直流電圧変換器の一次側での電圧が、伝送比と二次側での電圧との積より低く下がる場合でさえ、直流電圧変換器の一次側から直流電圧変換器の二次側へエネルギーが伝送され得る。
【0020】
一実施形態によれば、直流電圧変換器、とりわけ直流電圧変換器の制御機構は、2つの連続している第2のスイッチング間隔内では、それぞれ交互に、第1のフルブリッジ回路内の異なる対角経路のスイッチング素子を開閉するように構成され得る。このようにして、直流電圧変換器および直流電圧変換器内のスイッチング素子の対称的な制御が行われ得る。
【0021】
上記の形態および変形形態は、有意義であれば、任意に相互に組み合わされ得る。本発明のさらなる形態、変形形態、および実装は、上でまたは以下で例示的実施形態に関連して述べられている本発明の特徴の、明確には挙げられていない組合せも含む。とりわけ、当業者は本発明のそれぞれの基本形に対する改善または補充としての個々の態様も付け加えるであろう。
【0022】
以下に、本発明のさらなる特徴および利点を図に基づいて解説する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態による直流電圧コンバータの原理回路図の概略図である。
【
図2】一実施形態による直流電圧変換器内のスイッチング状態ならびに電圧および電流の推移に関するタイムチャートの概略図である。
【
図3】一実施形態による直流電圧変換器の動作方法の基礎になっているフローチャートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、一実施形態による直流電圧変換器1の基礎になっている原理回路図の概略図を示している。直流電圧変換器1は、例えば、第1の端子要素A1-1および第2の端子要素A1-2を備えた第1の端子A1を含んでいる。この第1の端子A1では、直流電圧変換器1が、例えば、電気車両の高電圧ネットワークなどのような電圧源と電気的に結合され得る。第1の端子A1は、例えば、適切な断路器により電圧源と接続され得るかまたは電圧源から断路され得る。それだけでなく、例えば、両方の端子要素A1-1とA1-2の間にコンデンサ、例えば中間回路コンデンサCZが配置され得る。
【0025】
直流電圧コンバータ1は第2の端子A2をさらに含んでおり、第2の端子A2も、第1の端子要素A2-1および第2の端子要素A2-2を有している。この第2の端子A2では、直流電圧コンバータ1がさらなる電圧源、例えば電気車両の低電圧ネットワークまたはその類似物と電気的に結合され得る。第1の端子要素A2-1と第2の端子要素A2-2の間にもコンデンサCが設けられ得る。
【0026】
それだけでなく、直流電圧コンバータ1は第1のフルブリッジ回路10を含んでいる。第1のフルブリッジ回路10は2つのハーフブリッジを含んでいる。これに関し第1のハーフブリッジは、2つのスイッチング素子11および12から成る直列回路を含んでおり、第2のハーフブリッジは、2つのスイッチング素子13および14から成る直列回路を含んでいる。直流電圧コンバータ1は第2のフルブリッジ回路20をさらに含んでいる。第2のフルブリッジ回路20も、それぞれ2つのスイッチング素子21~24を備えた2つのハーフブリッジを含み得る。第1のフルブリッジ回路10と第2のフルブリッジ回路20の間に第1の変圧器T1が設けられている。第1の変圧器T1の一次側は、一方の端子で第1のフルブリッジ回路10の第1のハーフブリッジの第1の結節点と接続している。第1の変圧器T1の一次側の第2の端子は、第1のフルブリッジ回路10の第2のハーフブリッジのさらなる結節点と接続している。これに倣って第1の変圧器T1の二次側の第1の端子は、第2のフルブリッジ回路20の第1のハーフブリッジの結節点と接続しており、第1の変圧器T1の二次側の第2の端子は、第2のフルブリッジ回路20の第2のハーフブリッジのさらなる結節点と接続している。
【0027】
この第1の変圧器T1の一次側と二次側の間の巻数比は、例えばNである。これに相応して、ここまで説明してきた回路構成により、追加的な手間なしで、第1の端子A1での電圧U_primが最低でも伝送比Nと第2の出力端子A2での電圧U1_sekとの積に相当している間は、電気エネルギーが第1の端子A1から第2の端子A2へ伝送され得る。
【0028】
第2のフルブリッジ回路20はさらに、直流電圧コンバータ1の第2の端子A2と結合している。これに関し、一方の端子要素、例えば第2の端子要素A2-2は、第2のフルブリッジ回路20と直接的に接続している。第2の端子A2のもう一方の端子要素、例えば第1の端子要素A2-1と第2のフルブリッジ回路20との間には、直列インダクタンスが設けられている。この直列インダクタンスは、例えば第2の変圧器T2によって実現され得る。この場合、第2の変圧器T2の一次側は、第2のフルブリッジ回路20と第2の端子A2の第1の端子要素A2-1との間に配置されている。それだけでなく第2の変圧器T2の二次側は、第1のスイッチング素子S1および第1のダイオードD1と一緒に、第2の端子A2の第1の端子要素A2-1と第2の端子要素A2-2の間に配置された直列回路を構成している。この第1のダイオードD1は順方向に配置されており、つまり第1のダイオードD1のカソードは負極性の方を向いており、第1のダイオードD1のアノードは正極性の方を向いている。とりわけ、第1のスイッチング素子S1は、第2の端子の第1の端子要素A2-1と第2の変圧器T2の二次側の第1の端子との間に配置されており、かつ第1のダイオードD1は、第2の端子A2の第2の端子要素A2-2と第2の変圧器T2の二次側の第2の端子との間に配置されている。
【0029】
さらに、第1のスイッチング素子S1に並列に第2のダイオードD2が設けられ得る。この第2のダイオードD2は、第1のダイオードD1に逆並列に配置でき、つまり第2のダイオードD2は遮断方向に配置されており、したがって第2のダイオードD2のカソードは、第2の端子A2での正極性の方を向いている。さらに、第1のダイオードD1に並列に第2のスイッチング素子S2が設けられ得る。
【0030】
第2のフルブリッジ20のスイッチング素子21~24および第1のスイッチング素子S1および場合によってはさらに第1のフルブリッジ10のスイッチング素子11~14および/または第2のスイッチング素子S2が、例えば適切な制御機構30によって制御され得る。以下では、この場合の個々のスイッチング素子が制御される原理およびスイッチングシーケンスをさらに詳しく解説する。とりわけ、第1のスイッチング素子S1を的確に制御することで、前述の回路構成により、変圧器の変圧比Nと直流電圧コンバータ1の第2の端子A2での電圧U1_sekとの積より小さい電圧U_primが一次側での第1の端子A1に印加されている場合も、エネルギー伝送が行われ得る。
【0031】
図2は、一実施形態による直流電圧コンバータ1の制御方法のスイッチングパターンおよび電圧/電流推移の概略図を示している。以下に説明する制御方法により、とりわけ、直流電圧コンバータ1の一次側での電圧が変圧器の伝送比Nと二次側での電圧との積より小さい場合でさえ、直流電圧コンバータ1の一次側から直流電圧コンバータ1の二次側へ電気エネルギーを伝送することが可能である。
【0032】
時点t0とt1の間の第1の時間間隔内では、第2のフルブリッジ20のスイッチング素子21~24が開いており、場合によっては第1のフルブリッジ10のスイッチング素子11~14も開いている。さらに第1のスイッチング素子S1は閉じている。これにより、第1のスイッチング素子S1と、第2の変圧器T2の二次側と、第1のダイオードD1とを通って、電流I2_sekが、まずは上昇していく電流強度で流れる。
【0033】
時点t1では、第1のスイッチング素子S1が開かれる。さらに、第1のフルブリッジ回路10内で一方の対角支線のスイッチング素子11および14が閉じられる。この場合、第2の変圧器T2の二次側から第2の変圧器T2の一次側へエネルギーが伝送され、かつ第1の変圧器T1の二次側を通って電流が流れる。この場合に第1の変圧器の二次側で印加されている電圧U1_sekは、直流電圧コンバータ1の一次側から二次側へのエネルギー伝送を生じさせる。場合によっては、このために第2のフルブリッジ回路20の相応のスイッチング素子21および24が能動的に制御され得る。その代わりに電流は並列のボディダイオードを通って流れることもできる。
【0034】
時点t2では、第1のフルブリッジ回路10のスイッチング素子11~14および場合によっては第2のフルブリッジ回路20のスイッチング素子21~24が開かれる。さらに第1のスイッチング素子S1が閉じられ、第2の変圧器T2の二次側を通る新たな電流の流れが生じる。時点t3では、第1のスイッチング素子S1が改めて開かれる。時点t3ではさらに、第1のフルブリッジ回路10の第2の対角支線内のスイッチング素子12および13の閉鎖が行われる。それにより第2の変圧器T2の二次側が再び、第2の変圧器T2の一次側を経由して放電され、これで第1の変圧器T1の二次側では、逆の極性をもつ電圧U1_sekが印加されている。この時間間隔内でも、一次側から二次側へのエネルギー伝送が行われる。
【0035】
図3は、一実施形態による直流電圧コンバータの一次側から二次側へのエネルギー伝送のための方法100の基礎になっているフローチャートの概略図を示している。第1のステップ110では、第1のスイッチング素子S1の閉鎖により、第2の変圧器T2の二次側の充電が行われる。その後のステップ120では、第1のスイッチング素子の開放および第1のフルブリッジ回路10の一方の対角支線内のスイッチング素子の閉鎖により、第2の変圧器の二次側の放電が行われる。ステップ130では、第1のスイッチング素子S1の閉鎖により、第2の変圧器T2の二次側の新たな充電が行われる。最後にステップ140ではまた、第2の変圧器T2の二次側の放電が行われ、その際、第1のスイッチング素子S1は再び開いている。このとき、第1のフルブリッジ回路10の第2の対角支線内のスイッチング素子が閉じている。これに関しステップ120および140の間に、直流電圧コンバータ1の一次側から二次側へのエネルギー伝送が行われ得る。エネルギー伝送は、とりわけ、直流電圧コンバータ1の一次側での第1の端子A1での電圧が、伝送比と二次側の第2の端子での電圧との積より小さい場合も行われ得る。
【0036】
まとめると、本発明は、直流電圧コンバータ、とりわけ位相シフトフルブリッジトポロジーを有する直流電圧コンバータのための回路構成および制御方法に関し、この場合、一次側での電圧が、二次側での電圧と直流電圧コンバータ内の変圧器の伝送比との積を下回る場合も、一次側から二次側へのエネルギー伝送が行われ得る。このようにして、例えば、直流電圧コンバータの一次側でのコンデンサが、安全で低い電圧レベルへと放電され得る。
【国際調査報告】