(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】蛍光染料を含有する再帰反射フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/124 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
G02B5/124
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507702
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 US2020042216
(87)【国際公開番号】W WO2021025838
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514100751
【氏名又は名称】アベリー・デニソン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハニントン,マイケル・イー
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,ニパ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,グアン-シュエ
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042EA04
2H042EA13
2H042EA14
2H042EA17
2H042EA20
(57)【要約】
本発明は、輝度係数を改善し再帰反射性を維持しつつ、産業標準(例えば、米国、欧州、中国及びブラジル)に沿って色空間内に位置する特定の領域に色の読み取り値(例えば、色度座標)を移動させる少量の蛍光染料を含有する1つ以上の層(又はコーティング層)を含む再帰反射フィルムを提供する。前記再帰反射フィルムの1つ以上の層(又はコーティング層)は、層の総重量に対して、0.0001重量%~0.05重量%の蛍光染料を含有し、CIE色度座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)によって規定された色空間に位置する色の読み取り値を示す。また、前記再帰反射フィルムは、高輝度及び再帰反射性の良好なバランスを達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の再帰反射プリズム要素を有するプリズム層と、
フィルムが光を再帰反射するようにプリズム層に合致する金属コーティングを含む反射層と、
反射層上方の1つ以上の層と、を含む再帰反射フィルムであって、
前記プリズム層又は前記反射層上方の1つ以上の層は、層の総重量に対して0.0001重量%~0.05重量%の蛍光染料を含有する、再帰反射フィルム。
【請求項2】
前記プリズム層又は前記反射層上方の1つ以上の層は、層の総重量に対して約0.001重量%~0.01重量%の蛍光染料を含有する、請求項1に記載の再帰反射フィルム。
【請求項3】
前記プリズム層及び前記反射層上方の1つ以上の層は、フィルムの光学経路にある、請求項1又は2に記載の再帰反射フィルム。
【請求項4】
前記反射層下方に1つ以上の層をさらに含む、請求項1~3の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項5】
前記反射層下方の1つ以上の層は、光学経路にない、請求項1~4の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項6】
選択的な保護層、プリズム層、反射層、接着層、及びライナーを含む、請求項1~5の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項7】
選択的な保護層、プリズム層、反射層、接着層、及びライナーを含んで、上方から下方に順次配列される、請求項6に記載の再帰反射フィルム。
【請求項8】
前記保護層は、透明である、請求項6又は7に記載の再帰反射フィルム。
【請求項9】
前記保護層は、蛍光染料を含有する、請求項6~8の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項10】
前記保護層は、UV吸収層を含む、請求項6~9の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項11】
前記反射層は、1つ以上のアルミニウム、クロム、又は銀を含む、請求項1~10の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項12】
前記反射層は、不透明である、請求項1~11の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項13】
CIE1931標準測色システムによって規定されるとき、前記フィルムの輝度係数は、少なくとも15である、請求項1~12の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項14】
ASTM E 810-03(2013)に沿ってテストされるとき、前記再帰反射フィルムの平均再帰反射性は、少なくとも350cd・lx
-1・m
-2である、請求項1~13の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項15】
以下の座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)によって規定された領域内において、色度座標(x,y)を有する、請求項1~14の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項16】
前記反射層上方の1つ以上の層は、蛍光染料を含有するコーティング層である、請求項1~15の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項17】
前記コーティング層は、プリズム層と反射層との間に挟まれる、請求項16に記載の再帰反射フィルム。
【請求項18】
複数の再帰反射プリズム要素を有するプリズム層と、
フィルムが光を再帰反射するようにプリズム層に合致する反射層と、
前記反射層上方の1つ以上の層と、を含む再帰反射フィルムであって、
前記反射層上方の1つ以上の層は、
組成物の総重量に対して40重量%~60重量%の有機溶剤と、
組成物の総重量に対して10重量%~40重量%の芳香族炭化水素と、
組成物の総重量に対して10重量%~40重量%の衝撃改質アクリルと、
蛍光染料を含有する蛍光染料パッケージとを含有するコーティング組成物を含み、
前記蛍光染料は、組成物の総乾燥重量に対して0.0001重量%~0.05重量%で存在する、再帰反射フィルム。
【請求項19】
前記蛍光染料パッケージは、染料パッケージの総重量に対して90重量%~99.8重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、
染料パッケージの総重量に対して0.50重量%~3重量%の蛍光染料とを含む、請求項18に記載の再帰反射フィルム。
【請求項20】
前記蛍光染料は、蛍光黄緑色染料であり、前記蛍光黄緑色染料は、染料パッケージの総重量に対して1.0重量%~1.5重量%の量で提供される、請求項19に記載の再帰反射フィルム。
【請求項21】
前記蛍光染料は、染料パッケージの総重量に対して80重量%~98重量%の衝撃改質アクリルと、染料パッケージの総重量に対して1重量%~10重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、
染料パッケージの総重量に対して0.01重量%~1重量%の蛍光染料とを含む、請求項18に記載の再帰反射フィルム。
【請求項22】
前記蛍光染料は、蛍光橙色染料であり、前記蛍光橙色染料は、染料パッケージの総重量に対して0.10重量%~0.20重量%の量で提供される、請求項21に記載の再帰反射フィルム。
【請求項23】
前記コーティング組成物は、再帰反射フィルムのプリズム層に塗布される、請求項18~22の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項24】
CIE1931標準測色システムによって規定されるとき、前記再帰反射フィルムの輝度係数は、少なくとも15である、請求項18~23の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項25】
ASTM E 810-03(2013)に沿ってテストされるとき、前記再帰反射フィルムの平均再帰反射性は、少なくとも350cd・lx
-1・m
-2である、請求項18~24の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項26】
前記再帰反射フィルムの色度座標(x,y)は、以下の座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)によって規定された領域内にある、請求項18~25の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【請求項27】
前記コーティング組成物は、10ミクロン~80ミクロン厚の層を形成する、請求項18~25の何れか1項に記載の再帰反射フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/882,647号の利益を主張し、その内容全体を本明細書に参照として含む。
【0002】
本発明は、一般に、再帰反射フィルム及びその製造方法に関する。特に、本発明は、最小の再帰反射性の基準を維持しつつ、所望の色空間内の色値(例えば、色度座標)を調整し、輝度係数を改善するために、特定量の蛍光染料を含有する1つ以上の層(又はコーティング層)を含む再帰反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
再帰反射フィルムは、昼間の高速道路に沿って移動する場合が多いトラック、バス及びセミトラクタートレーラーのみならず、距離及び高速道路標識(例えば、道路標識)の夜間の可視性を向上させるのに用いられる。例えば、トレーラーの端の周りに再帰反射フィルムのストリップを付着することにより、車両の近くにいる他の運転者が車両の存在だけでなく、車両の範囲を容易に認知することができる。このようなトラック及びその他の車両における再帰反射フィルムの使用は、夜間の衝突を防止し、高速道路の安全に寄与している。
【0004】
再帰反射フィルムは、薄層の金属フィルムでコーティングされ、金属化再帰反射フィルムを形成することができる。例えば、一部の再帰反射フィルムの構成において、金属層がプリズム層(prismatic layer)上にコーティングされ、金属化プリズム再帰反射フィルムを形成することができる。一般に、金属化再帰反射フィルムは、非金属化再帰反射フィルムよりも夜間の条件下においてより広い範囲の入射角にわたって優れた性能を維持する。反射のために、非金属化再帰反射フィルムは、内部全反射に完全に依存する。結果として、臨界角よりも小さい角度でプリズム面に衝突する光は、最小限にのみ反射されるであろう。一方、アルミニウムや銀等の鏡面物質の薄膜コーティングの適用によって再帰反射フィルムが金属化されるとき、相当な割合の入射光が入射角にかかわらず常に再帰反射されるであろう。要するに、より広い範囲の入射角にわたって、非金属化再帰反射シート材料に対する金属化のより高い再帰反射性は、ハーメチックシールが必要でないと共に、夜間の条件下において、より一貫してより明るい状態にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不幸にも、金属化再帰反射フィルムの現在知られている形態は、昼間の条件下において劣悪に機能する。これは、全世界の大半の交通法規が最小の昼間輝度係数を有するシート材料を要求するためで、主な短所である。非金属化再帰反射フィルムと異なり、金属化再帰反射材は、昼間の条件下で比較的暗く見え得る。昼間輝度のこのような短所により、本質的に夜間性能がより制限的な非金属化再帰反射材を用いている。
【0006】
このようなシート材料の夜間性能の長所を全て維持しながらも、輝度及び再帰反射性に関する交通法規が定める基準を順守する金属化再帰反射フィルムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本発明は、複数の再帰反射プリズム要素を有するプリズム層と、フィルムが光を再帰反射するようにプリズム層に合致する金属コーティングを含む反射層と、反射層上方の1つ以上の層と、を含む再帰反射フィルムに関し、前記プリズム層又は前記反射層上方の1つ以上の層は、層の総重量に対して0.0001重量%~0.05重量%の蛍光染料を含有する。一部の実施形態において、前記プリズム層又は前記反射層上方の1つ以上の層は、層の総重量に対して約0.001重量%~0.01重量%の蛍光染料を含有する。一部の実施形態において、前記プリズム層及び前記反射層上方の1つ以上の層は、フィルムの光学経路にある。一部の実施形態において、前記フィルムは、反射層下方に1つ以上の層をさらに含む。一部の実施形態において、前記反射層下方の1つ以上の層は、光学経路にない。一部の実施形態において、前記再帰反射フィルムは、選択的な保護層、プリズム層、反射層、接着層、及びライナーを含む。一部の実施形態において、前記再帰反射フィルムは、選択的な保護層、プリズム層、反射層、接着層、及びライナーを含んで、上方から下方に順次配列される。一部の実施形態において、前記保護層は、透明である。一部の実施形態において、前記保護層は、蛍光染料を含有する。一部の実施形態において、前記保護層は、UV吸収層を含む。一部の実施形態において、前記反射層は、1つ以上のアルミニウム、クロム、又は銀を含む。一部の実施形態において、前記反射層は、不透明である。一部の実施形態において、CIE1931標準測色システムによって規定されるとき、前記フィルムの輝度係数は、少なくとも15である。一部の実施形態において、ASTM E 810-03(2013)に沿ってテストされるとき、前記再帰反射フィルムの平均再帰反射性は、少なくとも350cd・lx-1・m-2である。一部の実施形態において、前記再帰反射フィルムは、以下の座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)によって規定された領域内において、色度座標(x,y)を有する。一部の実施形態において、前記反射層上方の1つ以上の層は、蛍光染料を含有するコーティング層である。一部の実施形態において、前記コーティング層は、プリズム層と反射層との間に挟まれる。
【0008】
一実施形態において、本発明は、複数の再帰反射プリズム要素を有するプリズム層と、フィルムが光を再帰反射するようにプリズム層に合致する反射層と、前記反射層上方の1つ以上の層と、を含む再帰反射フィルムに関し、前記反射層上方の1つ以上の層は、組成物の総重量に対して40重量%~60重量%の有機溶剤と、組成物の総重量に対して10重量%~40重量%の芳香族炭化水素と、組成物の総重量に対して10重量%~40重量%の衝撃改質アクリルと、蛍光染料を含有する蛍光染料パッケージとを含有するコーティング組成物を含み、前記蛍光染料は、組成物の総重量に対して0.0001重量%~0.05重量%で存在する。一部の実施形態において、前記蛍光染料パッケージは、染料パッケージの総重量に対して90重量%~99.8重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、染料パッケージの総重量に対して0.50重量%~3重量%の蛍光染料とを含む。一部の実施形態において、前記蛍光染料は、蛍光黄緑色染料であり、前記蛍光黄緑色染料は、染料パッケージの総重量に対して1.0重量%~1.5重量%の量で提供される。一部の実施形態において、前記蛍光染料は、染料パッケージの総重量に対して80重量%~98重量%の衝撃改質アクリルと、染料パッケージの総重量に対して1重量%~10重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、染料パッケージの総重量に対して0.01重量%~1重量%の蛍光染料とを含む。一部の実施形態において、前記蛍光染料は、蛍光橙色染料であり、前記蛍光橙色染料は、染料パッケージの総重量に対して0.10重量%~0.20重量%の量で提供される。一部の実施形態において、前記コーティング組成物は、再帰反射フィルムのプリズム層に塗布される。一部の実施形態において、CIE1931標準測色システムによって規定されるとき、前記再帰反射フィルムの輝度係数は、少なくとも15である。一部の実施形態において、ASTM E 810-03(2013)に沿ってテストされるとき、前記再帰反射フィルムの平均再帰反射性は、少なくとも350cd・lx-1・m-2である。一部の実施形態において、前記再帰反射フィルムの色度座標(x,y)は、以下の座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)によって規定された領域内にある。一部の実施形態において、前記コーティング組成物は、10ミクロン~80ミクロン厚の層を形成する。
【0009】
本発明を添付の図面を参照して以下で詳細に説明し、同一の図面符号は、同一の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の実施形態による再帰反射フィルムの断面図を示す。
【
図1B】本発明の実施形態による再帰反射フィルムの断面図を示す。
【
図1C】本発明の実施形態による再帰反射フィルムの断面図を示す。
【
図1D】本発明の実施形態による再帰反射フィルムの断面図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による昼間の条件での再帰反射物品の4つのプレスアウトの写真である。
【
図3】本発明の実施形態によるフラッシュライトでの再帰反射物品の4つのプレスアウトの写真である。
【
図4】本発明の実施形態によるUV光での再帰反射物品の4つのプレスアウトの写真である。
【
図5】LCD色空間の好ましい部分と、顔料色素を含有するサンプルを表す色の読み取り値と、を示すCIE色度図である。
【
図6】LCD色空間の好ましい部分と、本発明の実施形態による蛍光染料を含有するサンプルを表す色の読み取り値と、を示すCIE色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一般に、特定層で特定量の蛍光染料と共に用いられるとき、性能特性の有利な組み合わせを提供する再帰反射フィルムに関する。具体的に、本発明は、フィルムの色相が所望の色空間の優先的な部分内にあるよう、1つ以上の層(又はコーティング層)に少量の蛍光染料(例えば、0.05重量%未満)を含む再帰反射フィルムに関する。驚くことに、少量の蛍光染料を含有する1つ以上の層(例えば、金属化プリズム層)を有する再帰反射フィルムが、輝度係数を改善し再帰反射性標準を順守すると共に、産業標準(例えば、米国、欧州、中国及びブラジル)に従うよう、色空間内に位置する特定の領域にフィルムの色の読み取り値(例えば、色度座標)を調整するということを見出した。
【0012】
一部の実施形態において、本明細書に記載された再帰反射フィルムを含む物品は、多様な標準化機構によって規定された色空間に位置する色の読み取り値を有する。例えば、再帰反射フィルムを含む物品は、CIE色度座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)内で色の読み取り値を有することができ、これは、世界全体の表色の大半を含み、最も小さい共通部分(the Least Common Denominator:LCD)の色空間として知られている。特に、本明細書に記載の再帰反射フィルムは、フィルムの色座標をLCD色空間の理想の領域(例えば、中央領域)に移動させるごく少量の蛍光染料(例えば、0.05重量%未満)を有する1つ以上の層(又はコーティング層)を有する。また、本明細書に記載の再帰反射フィルムは、再帰反射性を犠牲にすることなく、高輝度の良好なバランスを達成することができる。具体的に、再帰反射フィルムは、少なくとも15の輝度係数(明るさ又はキャップY)と、特定の表色(例えば、少なくとも350cd・lx-1・m-2)の要件を満たす最小の再帰反射性とを達成することができる。
【0013】
従来の再帰反射フィルムの場合、色空間の特定の領域内に入るよう色読み取りを制御することと、許容可能な輝度及び再帰反射性を達成することとの間には、微妙なバランスがある。例えば、多数の産業標準(例えば、中国、ブラジル、マレーシア、メキシコ、フランス、タイなど)は、特定の仕様における全ての入射角で最小の再帰反射性の要件を求めるが、特定の色空間、例えば、色座標内での色の読み取り値を有し、最小の輝度係数の要件にも従わなければならない。一般に、白色パターンは、金属化再帰反射フィルムに印刷されて輝度を向上させる。しかし、これは、再帰反射性を減少させる。また、パターンをツール類(tooling)にエッチングして再帰反射フィルムを作製し輝度を改善させることができる。しかし、これもまた、再帰反射性を減少させる。場合に応じて、仕様が最小の輝度15を求める場合、用いられたエンボス加工のツール及びプロセスは、0.8の標準偏差で14.0の平均輝度係数を得る。大半のサンプルは、標準要件を満たさず、輝度係数を高めるために、不透明な白色パータンがフィルム上に印刷される必要があり得る。これは、パターンで覆われた表面積に比例して再帰反射性を減少させるであろう。さらに、このような再帰反射フィルの色の読み取り値は、特定領域の外側にあり得る。よって、既存の再帰反射フィルムは、要求される色度座標を外れる色の読み取り値を有する、及び/又は、劣悪な輝度若しくは再帰反射性を有し得る。
【0014】
本発明者らは、少量の蛍光染料(例えば、0.05重量%未満)を含有する1つ以上の層(又はコーティング層)を有する再帰反射フィルムが、再帰反射性に対する最小の標準要件を満たすか超えると共に、印刷されたパターンを用いることなく輝度を増加させ、再帰反射フィルムの色値(例えば、色度座標)を所望の色空間の中央領域に移動させるということを見出した。具体的に、例えば、再帰反射フィルムの金属化プリズム層に特定量の蛍光染料を導入すると、再帰反射フィルムの輝度係数が増加し、色度座標がLCD色空間の特定領域(即ち、「x」、「y」色座標によって規定されたカラーボックスのプロット)に実質的に移動する。この規定されたLCD色空間内の色度座標を示す再帰反射フィルムは、物品の再帰反射性や外観への否定的な影響を最小化すると共に、大半の産業標準で一般に許容可能なものとして見なされ得る。
【0015】
また、1つ以上の層(又はコーティング層)に0.0001重量%~0.05重量%の特定量の蛍光染料を含有する再帰反射フィルムが、フィルムの外観(例えば、色)を変更/変化させることなく、上述の驚く結果を達成できるということを見出した。具体的に、本明細書に記載の再帰反射フィルムが適用された物品は、物品の外観への影響を最小化すると共に、規定されたカラーボックス内の色度座標を有し得る。また、蛍光染料は、物品の昼間輝度を向上させると共に、実質的に白色の外観を依然として維持する(例えば、ごく少量の蛍光染料/色は、目に見えないか、最小限見える)。例えば、白色の再帰反射フィルムを製造するための配合に黄緑色の蛍光染料を添加する場合、白色の再帰反射フィルムは、実質的に白色の外観を維持する。
【0016】
一部の実施形態において、蛍光染料は、再帰反射フィルムの1つ以上の層上にコーティングされてコーティング層を形成する配合に提供できる。一部の実施形態において、蛍光染料は、再帰反射フィルムにおいて、1つ以上の層を形成するための配合に提供できる。例えば、蛍光染料は、ポリマーマトリクスに混合されて共押出され、再帰反射フィルムのプリズム層を形成することができる。
【0017】
一部の実施形態において、再帰反射フィルムの1つ以上の層は、配合の総重量に対して、0.0001重量%~0.05重量%、例えば、0.0002重量%~0.03重量%、0.0004重量%~0.01重量%、0.0006重量%~0.008重量%、0.0008重量%~0.006重量%、0.001重量%~0.005重量%、又は0.002重量%~0.004重量%の範囲で蛍光染料を含有する。上限について、再帰反射フィルムの1つ以上の層は、配合の総重量に対して、0.05重量%未満、例えば、0.04重量%未満、0.02重量%未満、0.01重量%未満、0.008重量%未満、0.006重量%未満、又は0.005重量%未満の蛍光染料を含有する。下限について、再帰反射フィルムの1つ以上の層は、配合の総重量に対して、0.0001重量%超過、例えば、0.0002重量%超過、0.0004重量%超過、0.0005重量%超過、0.0006重量%超過、0.0008重量%超過、又は0.001重量%超過の蛍光染料を含有する。同じ量の蛍光染料が再帰反射フィルム上に1つ以上のコーティング層を形成するためのコーティングの配合に提供できる。
【0018】
(定義)
「CIE」は、測光及び測色に関する国際勧告事項を担当する機構であるCommission International de I’Eclairage(国際照明委員会)を意味する。
【0019】
「CIE色度ダイアグラム」又は「x,yダイアグラム」は、色度座標(x,y)で指定されたポイントが、当該技術分野で公知となっているCIEカラーマッチングシステムにおける色刺激の色度を示す二次元ダイアグラムを意味する。よって、フィルム又は物品の「色」(或いは「色度」又は「色度座標」)は、CIE1931標準測色システムを用いたCIE色度ダイアグラム上の1つ以上の色度座標(x,y)の面で表示されるポイント又は領域によって正確に測定又は指定できる。前記システムは、CIE標準光源D65及び0°/45°幾何学(表面法線軸(0°)と一致する方向に沿った照明、及び表面法線軸から45°方向に沿った検出)を用い、よって、一般的な昼間照明及び観察条件をシミュレーションする。特に明示しない限り、色を指定するためのこの規則は本明細書で順守される。
【0020】
「輝度係数」は、一般的な昼間照明及び観察条件下で、フィルム又は物品の認知される明るさの尺度である。本明細書において、この係数は、フィルム又は物品に対して公知となっているCIE三刺激値「Y」で表現される。輝度係数Yは、色刺激を明示する三原色の量を示す3つのCIE三刺激値(X,Y,Z)のうち二番目である。三刺激値は、上述のCIE標準光源D65及び0°/45°測定幾何学を用いて、サンプルから発する光のスペクトルパワー密度から算出できる。
【0021】
「再帰反射」は、多様な入射角にわたる照明源の方向に入射光の相当部分をリターンさせるフィルム又は物品の表面を意味する。表面が再帰反射される程度は、再帰反射係数(「RA」)又は単純に再帰反射性として言及される。再帰反射性は、1平方メートル当たり1ルクス当たりのカンデラの単位(cd・lx-1・m-2)で示され、特に明示しない限り、-4°の入射角及び0.2°の視野角で測定される。
【0022】
「LCDカラーボックス」は、以下の色度座標によって規定される領域内の色を意味する。
【0023】
【0024】
(再帰反射フィルム)
一部の実施形態において、再帰反射フィルムの1つ以上の層は、ポリマーマトリクスに分散された特定量の蛍光染料を含有し得る。再帰反射フィルムの1つ以上の層は、ごく少量の蛍光染料(又は蛍光染料の混合物)及びポリマーを含む混合物を押し出して、再帰反射フィルムの1つ以上の層を形成することで製造できる。再帰反射性について明示された最小値(例えば、少なくとも200又は350cd・lx-1・m-2)及び特定レベルの昼間明るさ(例えば、少なくとも15の輝度係数)を全て示す再帰反射フィルムを得ることができる好ましい蛍光染料、レベル及び組み合わせが開示されている。例えば、本明細書に記載の再帰反射フィルムは、ブラジル、中国、タイ、及び米国で規定されている標準を満たすことができる。かかる向上した性能に関する蛍光染料の量は、 LCD色空間全体の一部である特定の優先的な色空間に該当する傾向がある。特に、LCD色空間内における優先的な領域は、CIE色度座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)、及び(0.295,0.325)によって規定され、これは、全世界の大半の表色を含む。
【0025】
特に、白色の再帰反射物品の場合、押出中の再帰反射フィルムの1つ以上の層を形成するための配合に対して特定濃度の蛍光染料を添加することにより、反射率や外観を維持しつつ、(例えば、カラーボックスによって規定される)色相及び輝度が全て有利に改善されるということを見出した。特に、再帰反射フィルムの1つ以上のコーティング層における特定量の蛍光染料は、昼間輝度(CapY)を高め、白色の外観を維持するために、x値とy値をLCDカラーボックスの色度座標に移動させる。
【0026】
再帰反射フィルムは、多様な構成を有することができる。一部の実施形態において、再帰反射フィルムは、保護層、反射層、プリズム層、接着層、及び離型ライナーを含む。前記層は、任意の順に配列できる。再帰反射フィルムは、例えば、上方から下方に、保護層、プリズム層、反射層、接着層、及び離型ライナーを含み得る。この実施形態において、保護層は、最表層(即ち、観測者に最も近い層)であって、プリズム層の前に位置する。よって、保護層は、光がプリズム層に到達し得るよう、透明及び/又は半透明でなければならず、好ましくは非常に透明である。
【0027】
一部の実施形態において、光学経路にある再帰反射フィルムの層のうち任意の1つは、特定量の蛍光染料を含有する。例えば、選択的な保護層、プリズム層、又は光学経路のコーティング層は、特定量の蛍光染料を含有し得る。一部の実施形態において、最外層(例えば、保護層)は、蛍光染料を含有し得る。一部の実施形態において、最外層はプリズム層である。一部の実施形態において、プリズム層(例えば、金属化プリズム層)は、蛍光染料を含有し得る。一部の実施形態において、プリズム層の表面にエンボス加工された薄層が蛍光染料を含有し得る。
【0028】
一部の実施形態において、再帰反射フィルムの1つ以上の層は、配合の総重量に対して、0.0001重量%~0.05重量%、例えば、0.0002重量%~0.05重量%、0.0004重量%~0.04重量%、0.0005重量%~0.04重量%、0.0006重量%~0.03重量%、0.0008重量%~0.02重量%、0.001重量%~0.01重量%、又は0.002重量%~0.005重量%の範囲の蛍光染料を含有する。上限について、再帰反射フィルムの1つ以上の層は、配合の総重量に対して、0.05重量%未満、例えば、0.04重量%未満、0.03重量%未満、0.02重量%未満、0.01重量%未満、0.009重量%未満、又は0.008重量%未満の蛍光染料を含有する。下限について、再帰反射フィルムの1つ以上の層は、配合の総重量に対して、0.0001重量%超過、例えば、0.0002重量%超過、0.0004重量%超過、0.0005重量%超過、0.0006重量%超過、0.0008重量%超過、又は0.001重量%超過の蛍光染料を含有する。一部の実施形態において、コーティング組成物は、上述の量の蛍光染料を含有する再帰反射フィルムの1つ以上の層に塗布できる。
【0029】
図1A~
図1Dは、蛍光染料を含有する1つ以上の層(
図1A~
図1C)及び蛍光染料を含有するコーティング層(
図1D)を有する再帰反射フィルム100の多様な実施形態を示す。
図1A~
図1Dの各実施形態は、選択的な保護層110、プリズム層120、反射層130(又は金属層)、接着層140、及び離型ライナー150を含む再帰反射フィルム100を示す。一部の実施形態において、再帰反射フィルム100は、プリズム層120上方に1つ以上の層を含み得る。例えば、再帰反射フィルム100は、プリズム層120上方に、印刷層、UV抵抗層、コーティング層、又はこれらの組み合わせを含み得る。一部の実施形態において、
図1C及び
図1Dに示すように、プリズム層120は、(例えば、プリズム層の上方に層がない)最外層であり得る。
【0030】
図1A及び
図1Bは、保護層110、プリズム層120、反射層130、接着層140、及び離型ライナー150を含む再帰反射フィルム100の構成を示す。一部の実施形態において、保護層110及びプリズム層120は、光学経路にある。一部の実施形態において、5つ以上の層が光学経路にあり得る。上述のように、再帰反射フィルム100の任意の層は、蛍光染料を含有することができる。例えば、
図1Aは、保護層110が蛍光染料を含有する実施形態を示し、
図1Bは、プリズム層120が蛍光染料を含有する実施形態を示す。
【0031】
図1Cは、保護層110を含んでいない再帰反射フィルム100を示す。この実施形態において、プリズム層120は、最外層であり、蛍光染料を含有する。同様に、
図1Dに示す再帰反射フィルム100は、保護層110を含んでいない。この実施形態において、蛍光染料を含有するコーティング組成物は、プリズム層120の表面上の(例えば、プリズム層120と反射層130との間の)薄層として塗布される。
図1Dは、再帰反射フィルム100の任意の層に蛍光染料を含有していない実施形態を示す。その代わりに、蛍光染料を含有するコーティング組成物が、光学経路の再帰反射フィルム100の層に塗布される。例えば、コーティング層は、プリズム層120のエンボス加工面上の薄層として塗布できる。
【0032】
保護層110は、天候、摩耗、剥離、高温及び/又は降雨酸性度に対して、他の層(特に、プリズム層)の完全性を保護するよう構成される。一部の実施形態において、コーティングが保護層に塗布される。保護層110は、ビニル又はポリウレタン等の熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性ポリマーから形成できる。一部の実施形態において、保護層110は、UV吸収層であり得る。一部の実施形態において、UV吸収層は、UV添加剤を含有するポリマー樹脂を含み得る。一部の実施形態において、UV吸収層は、UV添加剤を含有するアクリル樹脂を含み得る。UV吸収層の実施形態は、米国特許第6,514,594号、第6,972,147号、及び第5,387,458号にさらに説明されており、その内容全体を本明細書に含む。
【0033】
一部の実施形態において、保護層110は、透明且つ無色であるが、必要に応じて、前記層は透明に着色され得る。一部の実施形態において、保護層110は、アクリル等のプラスチック材料からなるが、他の好適な材料、例えば、ポリカーボネート、(線状又は分岐状)ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、スチレン無水マレイン酸共重合体、スチレンアクリロニトリル共重合体、エチレンメタクリル酸のナトリウム又は亜鉛塩系イオノマー、ポリメチルメタクリレート、セルロース、フルオロプラスチック、アクリルポリマー及び共重合体、ポリアクリロニトリル、並びにエチレン酢酸ビニル共重合体からなり得る。この群には、エチレンメタクリル酸、エチレンメチルアクリレート、エチレンアクリル酸及びエチレンエチルアクリレート等のアクリレートが含まれる。
【0034】
選択的な保護層110を含む実施形態において、プリズム層120が保護層110の下方に位置し得る。プリズム層120は、その上側にエンボス加工、鋳造、モールド加工、又はその他形成された複数の再帰反射要素を有する。再帰反射要素は、単一コーナー又は頂点で会う3つの相互垂直面を各々有する一連のキューブコーナー要素(即ち、プリズム構造)を含むことができる。一部の実施形態において、各々の再帰反射要素の総キューブ面積は、マイクロプリズム要素及び/又はマイクロキューブと見なされ得る約1mm2以下であり得る。本発明の再帰反射フィルム100は、マイクロキューブ及び/又はより大きなキューブコーナー要素の使用を考慮する。典型的な再帰反射フィルム又はシートの例は、米国特許第5,122,902号、6,155,689号、7,445,347号、及び米国公開公報2008/0212181号に開示されている。公報、特許及び特許出願は、本発明の全体にわたって言及される。本明細書で引用する全ての参照文献は、本明細書に参照として含む。
【0035】
通常、プリズム層120は、第1平面及び第2平面を有するシート材料から形成される。再帰反射要素は、シート材料の第1面にエンボス加工、鋳造、又はモールド加工によって形成され、前記要素は、特定の深さでシート材料内に延びる。よって、プリズム層120は、要素形成方法(例えば、エンボス加工、鋳造、モールド加工)と両立可能で、透明/半透明な(好ましくは非常に透明な)材料からなる。好適な材料は、例えば、アクリル又はポリカーボネートを含む。保護層110の下面及び/又はプリズム層120の上面は、透明性のない(即ち、半透明又は不透明)パターンで選択的にプレプリントできる。
【0036】
プリズム層120は、保護層と同じプラスチック材料から構成できる。即ち、保護層をアクリルで構成すると仮定するとき、プリズム層もアクリルで構成できるか、又は異なるプラスチック材料で構成できる。例えば、保護層をPVCで構成する場合、プリズム層はポリカーボネート又はアクリルで構成できる。
【0037】
また、再帰反射フィルム100は、反射層130(例えば、金属化層)又はアルミニウム等の金属で構成される金属コーティングを含むが、他の好適な金属、例えば、銀又はクロムを用いることができる。一部の実施形態において、反射層130は、気相蒸着によってプリズム層のプリズム要素に金属化コーティングとして塗布されるが、反射層130は、スパッタリング、プラズマコーティング、真空金属化等のような他の方法によって塗布できる。反射層130は、プリズム要素に非常に良好に接着され、プリズム要素によって提供された表面に合致する。一部の実施形態において、プリズム層120は、保護層110の下方に置かれ、反射層130は、プリズム要素の下方に置かれている。
【0038】
一部の実施形態において、反射層130は、キューブコーナー要素の露出面上方に気相蒸着されたり或いは塗布された反射性金属(例えば、銀、アルミニウム、金、銅)の層を含むことができる。代案として、前記層は、反射性金属のフレークが埋め込まれたバインダー層を含むことができる。
【0039】
反射層130の厚さは、プリズム層120よりも著しく小さい。例えば、反射層130は、0.02μm(約0.0008mils)~0.125μm(約0.005mils)の範囲の厚さを有することができる。反射層130は、本質的に不透明であり得る(即ち、透明でも半透明でもない)、並びに/又は3.0%未満、2.5%未満、2.0%未満、及び/若しくは1.0%未満の可視光透過率を有することができる。
【0040】
接着層140は、アクリル系接着剤又はエマルジョン系接着剤を含むことができる。接着剤は、熱活性化、溶剤活性化、又は(好ましい場合が多い)感圧性であり得る。接着剤は、永久的である(即ち、貼り付けられた媒体は、目立つ損傷がなければ除去できない)及び/又は除去可能である(しかし、一般にナンバープレートの状況では永久的である)。いずれの場合であっても、接着層140は、フィルムを基材に接着させる機能的な目的を提供する。しかし、本発明において、他の基板接着の技術が共に可能であり、考慮される。例えば、基材は、フィルム接着の目的のためにその前面に接着層140を含むか、基材とフィルムの接着ステップが行われる位置に接着剤が塗布できる。さらに、熱接着又は機械的付着等の非接着技術を用いて、フィルムを基材に接着させることができる。このような場合、フィルムは接着層140を含む必要がないかもしれない(他の空間充填媒体が必要な場合があり得る)。
【0041】
離型ライナー150は、離型剤(例えば、ポリエチレン又はシリコーン)でコーティングされるキャリアウェブ(例えば、紙又はポリエステル)を含むことができる。離型ライナー150の機能は、物品の組立中に基材とフィルムの接着ステップが行われるよう接着層140を覆うこと、及び/又は接着層140の形成中にキャリア層として作用することである。いずれの場合であっても、フィルム100が接着層140を含まない場合は、離型ライナー150を含まないことがある。また、接着層140が組立前の保護及び/又はキャリア媒体が必要でない場合、離型ライナー150はフィルムの構成から省略し得る。いずれの場合であっても、フィルム100が離型ライナー150を含む場合、通常、フィルムが再帰反射物品に組み込まれる前に除去されるであろう。
【0042】
本発明による再帰反射物品及び/又は再帰反射フィルムは、高い再帰反射性を達成することができる(例えば、1平方メートル(m2)当たり1ルクス(lx)当たりのカンデラ(cd)の単位(cd・lx-1・m-2)で測定される)。具体的に、例えば、視野角0.2°、入射角-4°で900cd・lx-1・m-2~1300cd・lx-1・m-2の範囲の再帰反射性を得ることができる。入射角θは、入射光方向と、物品の反射面に垂直(説明されている実施形態においては水平)な線との間の角度である。視野角αは、入射光方向と出射光方向との間の角度である。
【0043】
(再帰反射フィルムのコーティング層)
一部の実施形態において、コーティング組成物は、上述の性能特性を達成するために、再帰反射フィルムの1つ以上の層上にコーティングできる(又はコーティング層が印刷できる)。例えば、特定量の蛍光染料を含有するコーティング組成物が光学経路にある再帰反射フィルムの層に塗布できる。コーティング組成物は、再帰反射フィルムの再帰反射性及び外観への影響を最小化すると共に、輝度係数を増加させ、色座標を理想の領域(例えば、カラーボックス)内に移動させる少量の蛍光染料を含有する。
【0044】
一部の実施形態において、前記コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して、0.0001重量%~0.05重量%の範囲の蛍光染料を含有する。再帰反射フィルムの1つ以上の層に対する配合と非常に同様に、同じ量の蛍光染料(例えば、0.01重量%未満)が上述の性能特性を達成するということを見出した。一部の実施形態において、コーティング組成物は、蛍光黄緑色染料又は蛍光橙色染料を含有する。驚くことに、特定範囲の蛍光染料を含有するコーティング組成物は、1.5~5の範囲の輝度係数を増加させ、色値をLCDボックスの理想の領域に移動させるということを見出した。蛍光染料を含有するコーティング組成物は、再帰反射フィルムの1つ以上の層上に直接コーティングできる。一部の実施形態において、コーティング組成物は、再帰反射フィルムの任意の層に、例えば、最上層、底層として塗布されるか、又はこれらの層の間に挟まれる。
【0045】
一部の実施形態において、前記コーティング層の厚さは、10ミクロン~80ミクロン、例えば、12.5ミクロン~76ミクロン、15ミクロン~63ミクロン、18ミクロン~57ミクロン、20ミクロン~50ミクロン、25ミクロン~46ミクロン、又は30ミクロン~43ミクロンの範囲であり得る。上限について、コーティング組成物のコーティング厚は、76ミクロン未満、例えば、71ミクロン未満、66ミクロン未満、61ミクロン未満、56ミクロン未満、又は50ミクロン未満である。下限について、コーティング組成物のコーティング重量は、12.5ミクロン超過、例えば、15ミクロン超過、18ミクロン超過、20ミクロン超過、23ミクロン超過、又は25ミクロン超過である。しかし、与えられたフィルム厚及び蛍光染料組成物に対する、より高い蛍光染料の負荷率は、物品の輝度係数を減少させる傾向があるので、できるだけ低い重量百分率の蛍光染料で所望の色特性を達成することが好ましい。また、適切な蛍光染料の負荷率は、蛍光染料が負荷されるフィルムの厚さに応じて変わり得る。
【0046】
(乾燥時の)再帰反射フィルム上のコーティング組成物の厚さは、0.5ミクロン~20ミクロン、例えば、0.8ミクロン~18ミクロン、1ミクロン~16ミクロン、2ミクロン~14ミクロン、3ミクロン~12ミクロン、4ミクロン~10ミクロン、又は6ミクロン~8ミクロンの範囲である。上限について、コーティング組成物の厚さは、20ミクロン未満、例えば、18ミクロン未満、16ミクロン未満、14ミクロン未満、12ミクロン未満、10ミクロン未満、又は8ミクロン未満である。下限について、コーティング組成物の厚さは、0.5ミクロン超過、例えば、0.6ミクロン、0.8ミクロン超過、1ミクロン超過、2ミクロン超過、4ミクロン超過、又は6ミクロン超過である。再帰反射フィルムは、従来の顔料配合に比べて非常に小さい厚さで向上した輝度及び理想の色座標を達成可能であるので、金属化白色物品の反射率や外観への悪影響を防止することができる。
【0047】
(蛍光染料)
上述の量の任意の好適な蛍光染料を再帰反射物品の製造配合に用いることができる。一部の実施形態において、蛍光染料は、ベンゾキサンテン、ベンゾチアジン、ペリレンイミド、チオキサンテン、チオインジゴイド、ナフタルイミドクマリン、又はこれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態において、蛍光染料は、蛍光黄緑色、蛍光橙色、蛍光黄色、又はこれらの組み合わせを含み得る。異なる着色特性を有する染料を組み合わせることは、特定の産業の要求を満たすよう調整された色相を有する物品の生産に有用であり得る。
【0048】
市販の蛍光染料は、DayGlo Color Corporation社製の「Lumofast Yellow 3G」という商品名で入手可能な黄緑色染料であるベンゾキサンテン染料を含有し得る。蛍光染料の重量負荷は、特定の最終用途に対する所望の色強度及びシート厚に応じて変わり得る。一般に、例えば、再帰反射物品は、物品の再帰反射機能が著しく損傷しないよう、前記蛍光染料が十分な透明度を有することを求める。
【0049】
本発明の物品を製造するための配合に使用できる蛍光染料のまた別の種類は、ベンゾチアジン染料である。市販のベンゾチアジン染料は、DayGlo Color Corporationから入手可能なHuron Yellow D-417を含む。前記配合における前記染料の組み合わせにより、再帰反射物品に対する産業標準内の範囲に良好に含まれる色度値が生成される。他の蛍光染料は、蛍光橙色及び/又は蛍光赤色を含む。例えば、これに関して用いられるチオキサンテン染料は、DayGlo Color Corporationから入手可能なMarigold Orange D-315である。他の好適な蛍光染料は、BASFから入手可能なペリレンイミドであるLumogen F Orange 240及びLumogen F Red 300、並びにBASFから入手可能なLumogen F Yellow170を各々含む。他の染料としては、ペリレンエステル及びチオインジゴイド染料が含まれる。
【0050】
任意の好適なポリマーを再帰反射物品を製造するための配合に用いることができる。ポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂から形成されるポリマー、ポリアリレート、コポリエステルカーボネート、共重合体、及びこれらの組み合わせを含む。
【0051】
一部の実施形態において、蛍光染料は、(例えば、蛍光染料及びその他溶剤を含む)染料パッケージとしてコーティング組成物に供給される。例えば、染料パッケージは、アクリル樹脂及びUV添加剤を含み得る。一部の実施形態において、アクリル樹脂は、衝撃改質アクリルである。一部の実施形態において、染料パッケージは、蛍光黄緑色染料、衝撃改質アクリル及びUV添加剤を含む。この実施例において、染料パッケージは、蛍光染料パッケージの総重量に対して、90重量%~99.8重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、0.50重量%~3重量%の蛍光黄緑色染料とを含み得る。他の実施形態において、染料パッケージは、蛍光染料パッケージの総重量に対して、80重量%~98重量%の衝撃改質アクリルと、1重量%~10重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、0.01重量%~1重量%の蛍光橙色染料とを含む。
【0052】
再帰反射フィルム上に前記染料パッケージをコーティングする工程は、多様であり得る。一部の実施形態において、染料パッケージは、コーティング組成物に到達するために、有機溶剤、芳香族炭化水素、衝撃改質アクリル、又はこれらの組み合わせと混合され得る。例えば、染料パッケージは、メチルエチルケトン(例えば、有機溶剤)、トルエン(例えば、芳香族炭化水素)、及びUV添加剤を有する衝撃改質アクリルと混合できる。次いで、前記コーティングは、Meyer Rod等を用いて金属化白色物品に塗布される。
【0053】
一部の実施形態において、コーティング組成物は、ポリメチルメタクリレート等のアクリルポリマー、PVC及びビニルアクリル共重合体等のビニルポリマー、又は脂肪族ポリエーテルウレタン等のポリウレタンを含む各種の熱可塑性ポリマーを含み得る。一部の態様において、コーティング組成物は、衝撃改質ポリメチルメタクリレート(PMMA)(例えば、PlexiglasTMアクリルDR、MI-7(Rohm&Haas)、PerspexTMアクリルHI-7(ICI)、又はこれらの混合物)、ビニルアクリル配合(メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート)共重合体及びPVCホモポリマー)又はポリウレタンを含み得る。
【0054】
一部の実施形態において、脂肪族ポリウレタンコーティングは、ポリマーコーティングされた紙鋳造シート上又はポリマー鋳造シート上にウレタンを鋳造することによって製造される。鋳造シート製品は、当業界に公知となっており、ニューヨーク州PulaskiのFelix Schoeller Technical Papers、マサチューセッツ州のS.D. Warren of Newton Center及びオハイオ州のIvex Corporation of Troy等の会社から供給される。ウレタンコーティングは、例えば、カーテンコーティング、スロットダイコーティング、リバースロールコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、オフセットグラビアコーティング、メイヤーロッドコーティング等の標準コーティング方法によって鋳造シート上にコーティングされる。
【0055】
再帰反射フィルムは、前面と、前記前面と反対側の後面とを有する。前面は、実質的に滑らかであり得る。本明細書で用いているように、「実質的に滑らか」という用語は、空隙部、突出部、溝部、又は隆起部等の質感が完全に又はほとんど無い外面を意味する。表面は、製造中に意図しない微細な凹部や突出部又はその他の欠陥を有し得るが、実質的には滑らかであると見なされる。一部の実施形態において、前面は実質的に平面である。しかし、代案として、前面は、その形状の少なくとも一部に対して、湾曲又は非平面形状を有し得ることが理解される。再帰反射フィルムの材料は多様であり得る。例えば、再帰反射フィルムの材料は、ポリマー等の透明なプラスチック材料であり得る。前記材料は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアリレート、スチレンアクリロニトリル共重合体、ウレタン、アクリル酸エステル、セルロースエステル、エチレン系不飽和ニトライト、硬質エポキシアクリレート、アクリル等を含むが、これらに限定されない多様なポリマーから選択することができ、アクリル及びポリカーボネートポリマーが好ましい。一部の実施形態において、再帰反射フィルムはアクリルを含む。
【0056】
(特性)
一部の実施形態において、上述の量の蛍光染料を含有する1つ以上の層を有する再帰反射フィルムは、CIE1931標準測色システム又はASTM E308(2017)によって規定されるとき、15~50、例えば、16~48、18~45、20~42、22~40、24~38、26~36、28~34、又は30~32の範囲の輝度係数を示した。上限について、再帰反射フィルムは、CIE1931標準測色システム又はASTM E308(2017)によって規定されるとき、50未満、例えば、48未満、46未満、44未満、42未満、40未満、又は38未満の輝度係数を示した。下限について、再帰反射フィルムは、CIE1931標準測色システム又はASTM E308(2017)によって規定されるとき、15超過、例えば、16超過、18超過、20超過、22超過、24超過、25超過、28超過、30超過、32超過、又は35超過の輝度係数を示した。
【0057】
一部の実施形態において、上述の量の蛍光染料を含有する1つ以上の層を有する再帰反射フィルムは、350cd・lx-1・m-2~1500cd・lx-1・m-2、例えば、400cd・lx-1・m-2~1400cd・lx-1・m-2、500cd・lx-1・m-2~1300cd・lx-1・m-2、600cd・lx-1・m-2~1200cd・lx-1・m-2、700cd・lx-1・m-2~1100cd・lx-1・m-2、800cd・lx-1・m-2~1000cd・lx-1・m-2、又は900cd・lx-1・m-2~1300cd・lx-1・m-2の範囲の再帰反射性を有する。上限について、再帰反射フィルムは、1500cd・lx-1・m-2未満、例えば、1450cd・lx-1・m-2未満、1400cd・lx-1・m-2未満、1350cd・lx-1・m-2未満、cd・lx-1・m-2未満の再帰反射性を有する。下限について、再帰反射フィルムは、350cd・lx-1・m-2超過、例えば、400cd・lx-1・m-2超過、500cd・lx-1・m-2超過、600cd・lx-1・m-2超過、又は700cd・lx-1・m-2超過の再帰反射性を有する。一部の実施形態において、0.2°の視野角及び-4°の入射角で、900cd・lx-1・m-2~1300cd・lx-1・m-2の範囲の再帰反射性を有する再帰反射フィルムを得ることができる。
【0058】
前記の蛍光染料を含有する1つ以上の層を有する再帰反射フィルムは、産業的に適合する色度座標を有する順応性再帰反射物品を生成する。例えば、LCDカラーボックスは、CIE1931標準測色システムにより表2に規定する色度座標(x,y)の範囲に含まれるものと規定される。0.01重量%未満の蛍光染料を含有する再帰反射フィルム用配合が、LCDカラーボックスの理想の領域の色値を有するということを見出した。
【0059】
図2~
図4は、各々異なる照明条件下の少量の蛍光染料を含有する4つの円形プリズムプレスアウトで熱エンボス加工された物品の外観を示す。具体的に、
図2は、昼間の条件での物品の外観を示し、
図3は、フラッシュライトに反応する物品の外観を示し、
図4は、UV光での物品の外観を示す。各図面は、Avery Dennison社製のV6300B金属化白色Euro CTベース材料に組み込まれた4つのプリズム層のプレスアウト部202、204、206、208を示す。
【0060】
ポリマー混合物及び着色剤で小さなフィルムのプレスアウト部を作製するために、ポリマーペレットと色、例えば、蛍光染料を混合し、耐熱シート(カプトンシート等)の間に置いた後、これらが溶融して
図2~
図4に示す円盤状に平らになるまで、高圧で加熱された油圧プレスでの2つの金属板の間に位置する。一定の色の混合物を得るために、最初のプレスアウト部を冷却して小さいサイズに折り畳み、再度プレスアウトできる。この作業を色が一定になるまで繰り返すことができる。加熱された油圧プレスは、約6インチ×6インチの板を用いて、3インチ~4インチの円形プレスアウト部を作製する。
【0061】
図2~
図4において、再帰反射物品202、204、206、208の各々は、150ミクロンの透明アクリル層と、下記に挙げられる染料量及び厚さを含むアクリル樹脂の4つのプレスアウト部とを含む。再帰反射物品202は、約0.001重量%の黄緑色蛍光染料及び約76ミクロン厚のプリズム層を含む。再帰反射物品204は、0.003重量%の黄緑色蛍光染料及び約76ミクロン厚のプリズム層を含む。再帰反射物品206は、0.02重量%の黄緑色蛍光染料及び約76ミクロン厚のプリズム層を含む。再帰反射物品206は、0.02重量%の黄緑色蛍光染料及び約76ミクロン厚のプリズム層を含む。再帰反射物品202及び204は、少なくとも2の輝度増加をもたらし、カラーボックスの理想の領域に色座標を移動させるということを見出した。また、0.001重量%の黄緑色蛍光染料及び約76ミクロン厚のプリズム層を含むプリズム層配合の再帰反射物品204のフィルムは、人間の目でほとんど検出することができなかった。再帰反射物品206及び208が輝度を改善する反面、色座標はLCD色空間の外にあった。
【実施例】
【0062】
本発明は、以下の非制限的な実施例を考慮してさらに理解されるであろう。
顔料色素を含有するコーティング配合を用いて、比較例1~16を準備した。少量の衝撃改質アクリル樹脂(例えば、PLEXIGLAS(登録商標)の衝撃改質アクリル樹脂DR-101)を添加して顔料色素の濃度を減少させた後、50/50のメチルエチルケトン及びトルエンを含む溶液に溶解させた。比較例1~8は、顔料橙色(pigment orange:PIG ORG)ペレットを用い、比較例9~16は、顔料淡黄色(pigment lemon-yellow:PIG LMN YLW)ペレットを用いた。
【0063】
蛍光染料を含有するコーティング配合を用いて、実施例1~16を準備した。蛍光染料をペレットで提供し、少量の衝撃改質アクリル樹脂(例えば、PLEXIGLAS(登録商標)の衝撃改質アクリル樹脂DR-101)を添加して蛍光染料の濃度を減少させた。次いで、減少した濃度の蛍光染料を50/50のメチルエチルケトン及びトルエンを含む溶液に溶解させた。実施例1~8は、蛍光橙色(fluorescent orange:FO)ペレットを用い、実施例9~16は、蛍光黄緑色(fluorescent yellow-green:FYG)ペレットを用いた。
【0064】
3つの小さな円形領域は、Avery Dennison社製の白色V6300B Euro CTベースシート材料の各々のシート上に輪郭が描かれた。金属化白色Euro CTベースの背景色及び再帰反射性と、各シートに対して平均化された3つの読み取り値とを提供するために、各々の輪郭が描かれた円形領域の色及び再帰反射性の読み取り値を測定した。比較例1~16及び実施例1~16の配合を金属化白色Euro CTベース材料上にコーティングした。金属化白色Euro CTベースシートは、メイヤーロッドを用いて各々のコーティング配合で上面にコーティングされた。コーティング配合を約20ミクロン~約60ミクロンの範囲の多様な厚さでコーティングし、配合を乾燥させて各々の金属化白色Euro CTベースシートにコーティング層を形成した。
【0065】
表2は、金属化白色Euro CTベースのコーティングされていないサンプルの対照群を示す。各々の対照例に対して、顔料色素を含有するコーティング組成物で前記サンプルをコーティングする前に、色度座標(x,y)、輝度(Y)、及び視野角0.2°、入射角-4°での再帰反射性を測定した。
【0066】
【0067】
表3は、金属化白色Euro CTベースのコーティングされていないサンプルの対照群を示す。各々の実施例に対して、蛍光染料を含有するコーティング組成物で前記サンプルをコーティングする前に、色度座標(x,y)、輝度(Y)、及び視野角0.2°、入射角-4°での再帰反射性を測定した。
【0068】
【0069】
各々のサンプルに対して、コーティングされた金属化白色Euro CTベースシートの各々に対する3つの円形が描かれた領域で、色度座標(x,y)、輝度(Y)、及び視野角0.2°、入射角-4°での再帰反射性を測定し、表4及び5に提供したように平均化した。表4は、顔料色素でコーティングされたサンプルの結果を示す。
【0070】
【0071】
表4から分かるように、顔料色素は、再帰反射フィルムの色の読み取り値がLCDカラーボックスに移動した。しかし、顔料色素は輝度が減少した。例えば、橙色顔料は、テストした全てのサンプルに対して輝度係数が減少した。テストした2つの最も低い厚さにおいて、橙色顔料は、輝度係数が各々0.41及び1.14に減少した。また、淡黄色顔料は、薄膜サンプルの輝度係数が低減したが、厚さが35ミクロン以上のサンプルに対する輝度は上昇した。しかし、35ミクロン以上の厚さにおいて、輝度係数の最小限の増加のみで、再帰反射性が著しく低下した。テストした2つの最も低い厚さにおいて、淡黄色顔料は、輝度係数が各々0.03及び0.30に減少した。また、顔料色素は色の読み取り値がLCDカラーボックスに移動したが、色度座標はLCDカラーボックスの理想の領域になかった。
【0072】
橙色顔料のサンプルの場合、輝度係数が低くなり(暗くなり)、また、反射率が下がる傾向がある。蛍光橙色染料のサンプルと比較すると、輝度係数は高くなる(明るくなる)傾向があり、反射率は下がるが、損失は小さくなる傾向がある。淡黄色顔料のサンプルの場合、輝度係数は徐々に高くなり(明るくなり)、反射率は下がる傾向がある。蛍光黄緑色染料のサンプルと比較すると、輝度係数は高くなる(明るくなる)傾向があり、反射率は下がるが、損失は小さくなる傾向がある。
【0073】
【0074】
表5は、金属化白色Euro CTベース上に塗布された少量の蛍光染料を含有するコーティング配合が、再帰反射性を維持又は改善すると共に、色の読み取り値をLCDカラーボックス内に実質的に移動させ、輝度を改善したことを示す。驚くことに、0.05重量%未満の蛍光染料を含有するコーティング配合は、物品の色がLCDカラーボックスに移動し、輝度を改善するということを見出した。具体的に、蛍光橙色及び蛍光黄緑色を含む配合は、テストした全てのサンプルに対して輝度係数を増加させた。例えば、実施例1及び5で用いられた蛍光橙色は、LCDカラーボックスの中央領域内で色の読み取り値を有し、テストした最も低い2つの厚さにおいても、輝度係数が各々0.44及び0.91まで増加した。蛍光黄緑色は、テストした最も高い厚さにおいて、カラーボックスの外に移動したが、テストした最も低い2つの厚さにおいて、輝度係数が各々0.30及び0.70まで増加した。
【0075】
表4及び5の輝度や再帰反射性の変化を示す比較チャートから、橙色顔料色素のサンプルにおいて輝度係数が低くなる(例えば、暗くなる)傾向があり、反射率も下がる傾向があることは明らかであった。これに比べて、蛍光橙色染料のサンプルの場合、輝度係数は高くなる(例えば、明るくなる)傾向があり、再帰反射性の損失が最小化される。淡黄色顔料のサンプルの場合、輝度係数は徐々に高くなる(例えば、明るくなる)傾向があり、反射率は下がる傾向がある。これに比べて、蛍光黄緑色染料のサンプルの場合、輝度係数は高くなる(明るくなる)傾向があり、再帰反射性の損失は最小化される。驚くことに、蛍光橙色と蛍光黄緑色は、色の読み取り値(色度座標)がLCDカラーボックスのより中央領域に移動し、特に、蛍光橙色のサンプルの場合、再帰反射性の損失を最小化すると共に、輝度係数を大きく増加させた。
【0076】
図5及び
図6は、各々表4及び5の「x」値と「y」値を示す。コーティングされた再帰反射性シート材料の色座標(「x」,「y」)及び輝度係数(「Y」)の値を各々表2及び3に示し、
図5及び
図6に描く。また、目的の比較のために、対照群の顔料色素及び対照群の蛍光染料の「x」、「y」及び「Y」値を示す。これに関して特に興味深いのは、0.05重量%未満の蛍光染料を含有する再帰反射フィルムの「x」、「y」及び「Y」値の実質的な移動である。これは、輝度を増加しつつも、本明細書に記載された蛍光染料を含有するフィルムによって表示される色座標の相当な移動を示す。驚くことに、上述の量の蛍光染料を含有することも、金属化白色物品の白色の外観を維持した。
【0077】
以下の実施形態が考慮される。特徴及び実施形態の全ての組み合わせが考慮される。
実施形態1:複数の再帰反射プリズム要素を有するプリズム層と、フィルムが光を再帰反射するようにプリズム層に合致する金属コーティングを含む反射層と、反射層上方の1つ以上の層と、を含む再帰反射フィルムであって、前記プリズム層又は前記反射層上方の1つ以上の層は、層の総重量に対して0.0001重量%~0.05重量%の蛍光染料を含有する。
【0078】
実施形態2:実施形態1の実施形態において、前記プリズム層又は前記反射層上方の1つ以上の層は、層の総重量に対して約0.001重量%~0.01重量%の蛍光染料を含有する。
【0079】
実施形態3:実施形態1または2の実施形態において、前記プリズム層及び前記反射層上方の1つ以上の層は、フィルムの光学経路にある。
【0080】
実施形態4:実施形態1~3の実施形態において、前記反射層下方に1つ以上の層をさらに含む。
【0081】
実施形態5:実施形態1~4の実施形態において、前記反射層下方の1つ以上の層は、光学経路にない。
【0082】
実施形態6:実施形態1~5の実施形態において、前記再帰反射フィルムは、選択的な保護層、プリズム層、反射層、接着層、及びライナーを含む。
【0083】
実施形態7:実施形態6の実施形態において、前記再帰反射フィルムは、選択的な保護層、プリズム層、反射層、接着層、及びライナーを含んで、上方から下方に順次配列される。
【0084】
実施形態8:実施形態6又は7の実施形態において、前記保護層は、透明である。
実施形態9:実施形態6~8の実施形態において、前記保護層は、蛍光染料を含有する。
【0085】
実施形態10:実施形態6~9の実施形態において、前記保護層は、UV吸収層を含む。
【0086】
実施形態11:実施形態1~10の実施形態において、前記反射層は、1つ以上のアルミニウム、クロム、又は銀を含む。
【0087】
実施形態12:実施形態1~11の実施形態において、前記反射層は、不透明である。
実施形態13:実施形態1~12の実施形態において、CIE1931標準測色システムによって規定されるとき、前記フィルムの輝度係数は、少なくとも15である。
【0088】
実施形態14:実施形態1~13の実施形態において、ASTM E 810-03(2013)に沿ってテストされるとき、前記再帰反射フィルムの平均再帰反射性は、少なくとも350cd・lx-1・m-2である。
【0089】
実施形態15:実施形態1~14の実施形態において、前記再帰反射フィルムは、以下の座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)によって規定された領域内において、色度座標(x,y)を有する。
【0090】
実施形態16:実施形態1~15の実施形態において、前記反射層上方の1つ以上の層は、蛍光染料を含有するコーティング層である。
【0091】
実施形態17:実施形態16の実施形態において、前記コーティング層は、プリズム層と反射層との間に挟まれる。
【0092】
実施形態18:複数の再帰反射プリズム要素を有するプリズム層と、フィルムが光を再帰反射するようにプリズム層に合致する反射層と、前記反射層上方の1つ以上の層と、を含む再帰反射フィルムであって、前記反射層上方の1つ以上の層は、組成物の総重量に対して40重量%~60重量%の有機溶剤と、組成物の総重量に対して10重量%~40重量%の芳香族炭化水素と、組成物の総重量に対して10重量%~40重量%の衝撃改質アクリルと、蛍光染料を含有する蛍光染料パッケージとを含有するコーティング組成物を含み、前記蛍光染料は、組成物の総乾燥重量に対して0.0001重量%~0.05重量%で存在する。
【0093】
実施形態19:実施形態18の実施形態において、前記蛍光染料パッケージは、染料パッケージの総重量に対して90重量%~99.8重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、染料パッケージの総重量に対して0.50重量%~3重量%の蛍光染料とを含む。
【0094】
実施形態20:実施形態19の実施形態において、前記蛍光染料は、蛍光黄緑色染料であり、前記蛍光黄緑色染料は、染料パッケージの総重量に対して1.0重量%~1.5重量%の量で提供される。
【0095】
実施形態21:実施形態18の実施形態において、前記蛍光染料は、染料パッケージの総重量に対して80重量%~98重量%の衝撃改質アクリルと、染料パッケージの総重量に対して1重量%~10重量%のUV添加剤及び衝撃改質アクリルと、染料パッケージの総重量に対して0.01重量%~1重量%の蛍光染料とを含む。
【0096】
実施形態22:実施形態21の実施形態において、前記蛍光染料は、蛍光橙色染料であり、前記蛍光橙色染料は、染料パッケージの総重量に対して0.10重量%~0.20重量%の量で提供される。
【0097】
実施形態23:実施形態18~22の実施形態において、前記コーティング組成物は、再帰反射フィルムのプリズム層に塗布される。
【0098】
実施形態24:実施形態18~23の実施形態において、CIE1931標準測色システムによって規定されるとき、前記再帰反射フィルムの輝度係数は、少なくとも15である。
【0099】
実施形態25:実施形態18~24の実施形態において、ASTM E 810-03(2013)に沿ってテストされるとき、前記再帰反射フィルムの平均再帰反射性は、少なくとも350cd・lx-1・m-2である。
【0100】
実施形態26:実施形態18~25の実施形態において、前記再帰反射フィルムの色度座標(x,y)は、以下の座標(0.305,0.315)、(0.335,0.345)、(0.325,0.355)及び(0.295,0.325)によって規定された領域内にある。
【0101】
実施形態27:実施形態18~25の実施形態において、前記コーティング組成物は、10ミクロン~80ミクロン厚の層を形成する。
【0102】
本発明を詳細に説明したが、当業者にとって本発明の思想及び範囲内における修正が容易であることは明らかである。上述の考察、背景技術及び詳細な説明に関して、背景技術における関連知識や上述の参照文献の観点から、これらの開示内容全体を本明細書に参照として含む。また、本発明の態様及び多様な実施形態の部分、並びに以下及び/又は添付の請求範囲に引用される多様な特徴は、全体的に又は部分的に組み合わせ得るか、相互交換し得るということを理解すべきである。多様な実施形態に関する上述の説明において、他の実施形態を参照する実施形態が、当業者によって理解されるとき、他の実施形態と適切に組み合わせ得る。さらに、当業者は、上述の説明が単に例示であるだけで、本発明を制限する意図ではないことを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】