(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】保護コーティングを有する電気部品を備えている複合ペイン
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20221003BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C03C27/12 M
C03C27/12 N
B60J1/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507736
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020070304
(87)【国際公開番号】W WO2021023497
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100186912
【氏名又は名称】松田 淳浩
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ エルマンジュ
(72)【発明者】
【氏名】クレマン ボットワ
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA04
4G061AA30
4G061BA02
4G061CB07
4G061CB14
4G061CB16
4G061CD02
4G061CD12
4G061CD18
4G061DA38
(57)【要約】
少なくとも一つの統合された電気部品(7)を有する複合ペイン(6)であって、前記複合ペイン(6)が、外側面(I)及び内側面(II)を有する外側ペイン(1)、並びに外側面(IV)及び内側面(III)を有する内側ペイン(2)を少なくとも備えており、前記外側ペイン(1)の前記内側面(II)と前記内側ペイン(2)の内側面(III)が、熱可塑性中間層(3)で結合されており、前記電気部品(7)が、前記外側ペイン(1)の前記内側面(II)と前記内側ペイン(2)の前記内側面(III)との間に統合されており、かつ、少なくとも一つの導電性トラック(8)によって電気的に接触しており、かつ、前記電気部品(7)の露出面の少なくとも一部分と、任意で、前記導電トラックの露出面の少なくとも一部分が、ポリマー保護コーティング(9)によって、連続的に被覆されている、複合ペイン(6)。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの統合された電気部品(7)を有する複合ペイン(6)であって、
前記複合ペイン(6)が、少なくとも
外側面(I)及び内側面(II)を有する外側ペイン(1)、並びに
外側面(IV)及び内側面(III)を有する内側ペイン(2)
を備えており、
前記外側ペイン(1)の前記内側面(II)と前記内側ペイン(2)の内側面(III)が、熱可塑性中間層(3)で結合されており、
前記電気部品(7)が、前記外側ペイン(1)の前記内側面(II)と前記内側ペイン(2)の前記内側面(III)との間に統合されており、かつ、少なくとも一つの導電性トラック(8)によって電気的に接触しており、かつ、
前記電気部品(7)の露出面の少なくとも一部分と、任意で、前記導電トラックの露出面の少なくとも一部分が、ポリマー保護コーティング(9)によって、連続的に被覆されている、
複合ペイン(6)。
【請求項2】
前記ポリマー保護コーティング(9)が、アモルファスフルオロポリマー、フッ素化ポリパラキシリレン、非フッ素化ポリパラキシリレン、ポリウレタン、ポリイミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、及び/又はそれらの混合物若しくはコポリマー、好ましくはアクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、及び/又はそれらの混合物若しくはコポリマーを含む、請求項1に記載の複合ペイン(6)。
【請求項3】
前記ポリマー保護コーティング(9)の厚さが、25μm~250μm、好ましくは25μm~100μm、最も好ましくは40μm~70μmである、請求項1又は2に記載の複合ペイン(6)。
【請求項4】
前記ポリマー保護コーティング(9)が、ウェットコーティングとして適用されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項5】
少なくとも一つの電気部品(7)及び/又は少なくとも一つの導電性トラック(8)が、前記外側ペイン(1)の前記内側面(II)又は前記内側ペイン(2)の前記内側面(III)に適用されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項6】
前記熱可塑性中間層(3)が、少なくとも一つの積層フィルム(4)を備えており、前記少なくとも一つの電気部品(7)及び/又は前記少なくとも一つの導電性トラック(8)が、前記少なくとも一つの積層フィルム(4)に適用されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項7】
前記熱可塑性中間層(3)が、少なくとも一つの積層フィルム(4)及び少なくとも一つのキャリアフォイル(10)を備えており、前記少なくとも一つの電気部品(7)及び/又は前記少なくとも一つの導電性トラック(8)が、前記キャリアフォイル(10)に適用されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項8】
前記電気部品(7)が、70μm~700μm、好ましくは100μm~500μmの厚さを有している、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項9】
前記少なくとも一つの電気部品(7)が、LED、ダイオード、抵抗器、コンデンサー、トランジスタ、集積回路、光電子デバイス、インダクタ、センサー、ディスプレイ、LDCデバイス、PDLCデバイス、アンテナ、圧電素子、及び水素素子の群から選ばれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項10】
前記導電性トラック(8)が、ペースト、ソリッドリボン、バスバー、ワイヤ、及び/又は導電性薄コーティングとして実装されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項11】
前記導電性トラック(8)が、銅、銀、グラファイト、グラフェン、金、アルミニウム、タングステン、錫、亜鉛、及び/又はそれらの混合物若しくは合金を含有している、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)。
【請求項12】
少なくとも下記のステップを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合ペイン(6)の製造方法:
a)外側ペイン(1)、内側ペイン(2)、少なくとも一つの積層フィルム(4)、及び任意のキャリアフォイル(10)を提供し、少なくとも一つの導電性トラック(8)及び少なくとも一つの電気部品(7)を、前記外側ペイン(1)、前記内側ペイン(2)、前記積層フィルム(4)、又は前記キャリアフォイル(10)に適用すること、
b)前記少なくとも一つの電気部品(7)の少なくとも一部分と、任意で、前記少なくとも一つの導電性トラック(8)の少なくとも一部分とを、ポリマー保護コーティング(9)でコーティングすること、
c)前記外側ペイン(1)、前記積層フィルム(4)、任意の前記キャリアフォイル(10)、及び前記内側ペイン(2)を少なくとも備えるスタックを配置して、前記少なくとも一つの積層フィルム(4)及び前記キャリアフォイル(10)を、任意の並びで配置可能にすること、
d)前記外側ペイン(1)と前記内側ペイン(2)を積層によって組み合わせ、熱可塑性中間層(3)を、前記外側ペイン(1)と前記内側ペイン(2)の間に形成すること。
【請求項13】
前記ポリマー保護コーティング(9)を、ブラシコーティング、機械での選択的コーティング、ディスペンシング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレー、又は粘着テープの接着、好ましくはスプレーによって適用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの電気部品(7)及び前記少なくとも一つの導電性トラック(7)を、前記積層フィルム(4)又は前記キャリアフォイル(10)に適用し、かつ、ステップb)を、ステップa)の前又は最中に実行する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
自動車グレージング、好ましくは乗物のウインドシールドとしての、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合ペインの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護コーティングを有する少なくとも一つの電気部品を備えている複合ペイン、その製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用グレージングには、ヒーター機能又はアンテナ機能のための導電性構造が装備されていることがよくある。導電性構造は、例えば、ガラス表面に銀含有ペーストを印刷し、続いてそのペーストを焼き付けることにより、ガラスペインに適用されていてよい。これらの導電性構造は、バスバーにはんだ付けされた電気コネクタによって、オンボード電子機器に接続されている。現代の自動車用グレージングでは、エンドユーザーによって望まれている機能を実装するために、幅広い分野の異なる電子部品が必要であり、LEDの電子部品は、抵抗器、コンデンサー、オプトエレクトロニクスデバイス、センサー、及びアンテナである。
【0003】
自動車用途のための複合ペインは、主としてウインドシールドとして使用されており、ウインドシールドは、熱可塑性中間層で積層されている、外側ガラスペインと内側ガラスペインを備えている。熱可塑性中間層は、ガラスペインを互いに結合しており、さまざまな電子部品を装備することもできる。
【0004】
WO2017/097536は、フォトダイオードを備えている光センサーを有する複合ペインを開示しており、フォトダイオードは、熱可塑性中間層内に統合されており、熱可塑性中間層は、複合ペインの外側ペインと内側ペインを積層している。
【0005】
WO2016/116372では、電気デバイスを制御するための静電容量性領域を備えているタッチセンサーを有する複合ペイン、例えば、光学的に切り替え可能なグレージングが開示されている。静電容量センサーは、キャリアフォイル上に構造化された導電層を備えている。キャリアフォイルは、二つの積層フィルムの間に挿入されており、熱可塑性中間層を形成している。
【0006】
自動車用グレージングの魅力的なデザインが、顧客から望まれており、そのデザインは、グレージングが、透明な領域を最大限に備えている。したがって、実装された電気部品とそれらを隠すために使用される黒プリントは、グレージングの魅力的な視覚的外観を妨げてはならない。このことから、電気部品と導電性トラックのサイズと間隔を最小限にしつつ、短絡のリスクを抑制する必要がある。
【0007】
US2012/0307337A1は、電気的に切り替え可能なSPDフィルムを備えている複合ペインを開示しており、SPDフィルムの周囲エッジは、エッジ材料としてのポリイミドフィルムによって固定されている。
【0008】
加熱可能な複合グレージングは、例えば、US2013/0092676A1に開示されており、これには、少なくとも二つのバスバーによって電気的に接続されている加熱可能なコーティングを有する複合ペインが記載されている。バスバーは、電圧源の極に接続するために設けられた給電線に電気的に接続されている。給電線として、箔導体を使用することができる。これらの箔導体は、例えば、錫メッキされた銅ストリップでできており、そのストリップは、キャリア材料に適用されており、そのキャリア材料は、プラスチックでできているか、あるいは、電気的な絶縁と安定化のために、両側に積層される。絶縁材料は、ポリイミドに基づくフィルムを含有する。
【0009】
US2018/0192477A1は、静電容量センサーを有する複合グレージングに向けられており、静電容量センサーは、導電層を有するキャリアフィルムによって形成されている。導電層は、接触領域、供給ライン領域、及び接続領域を有する静電容量性スイッチング領域を形成している。供給ライン領域は、接触領域を、接続領域に電気的に接続しており、接続領域は、センサー電子システムに電気的に接続されていてよい。接続領域は、箔導体に電気的に接続されており、箔導体は、複合ペインの底端を介して導かれていてよい。箔導体は銅箔でできていてよく、ポリイミド層で接続領域の外側が絶縁されていてよい。
【0010】
EP1688284A2には、加熱可能なウインドシールドが記載されており、ウインドシールドは、霜取り/曇り除去メカニズムを備えており、このメカニズムは、二つのバスバー間のウインドシールドを横切って延在している複数のワイヤによって形成されている。バスバーは、ウインドシールドから延在している電気コネクタを介して電源に接続されている。電気コネクタは、熱保護ポリイミドに基づくコーティングで覆われた導電性ワイヤである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、短絡のリスクが最小限に抑えられた、統合された電気部品を備えている複合ペインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的の解決策は、保護コーティングを有する電気部品を備えている複合ペイン、その製造方法、及びその使用であり、独立請求項1、12、及び15による。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の複合ペインは、外側ペイン及び内側ペインを備えている積層グレージングであり、外側ペイン及び内側ペインは、熱可塑性中間層によって互いに接着されている。外側ペイン及び内側ペインは、外側面及び内側面それぞれを備えている。内側ペインの外側面(「IV面」ともいう)は、内部空間に向いており、内部空間は、複合ペインによって周囲から分離されている。内側ペインの内側面(「III面」ともいう)は、外側ペインの内側面(「II面」ともいう)に向いており、それらは、熱可塑性中間層によって、互いに貼り合わされている。外側ペインの外側面(「I面」ともいう)は、周囲に向いている。複合ペインは、少なくとも一つの電気部品を備えており、電気部品は、複合ペイン内で、外側ペインの内側面と内側ペインの内側面の間に統合されている。したがって、電気部品は、電気部品が取り付けられている基材に応じて、少なくとも熱可塑性中間層によって、あるいは、熱可塑性中間層と少なくとも一つのペインによって包囲されている。電気部品は、少なくとも一つの導電性トラックに電気的に接続されており、それによって、電気部品の電力供給が確保されている。少なくとも一つの導電性トラックは、二つの対向する面を備えており、これらは、本質的に互いに平行であり、外側ペイン及び内側ペインの面に平行である。導電性トラックは、最終的に物質と物質の結合によって、下にある基材に結合されている。内側ペインの内側面では、外側ペインの内側面又は熱可塑性中間層の層が、下にある基材として機能することができる。導電性トラックの表面は、基材に結合されている表面と反対にあり、少なくとも一つの導電性トラックの露出面として定義される。これと同様に、電気部品はまた、二つの対向する表面を備えており、本質的に互いに平行であり、外側ペイン及び内側ペインの面に平行である。電気部品は、これらの対向する表面の一つによって下にある基材及び/又は最終的に物質と物質の結合によって導電性トラックに取り付けられている。内側ペインの内側面、外側ペインの内側面、又は熱可塑性中間層の層は、下にある基材として機能することができ、電気部品は通常、導電性トラックと同じ基材表面に取り付けられている。基材又は導電性トラックに結合されていない電気部品の表面は、電気部品の露出面として定義される。一般に、露出面は、結合面の反対側にある、電気部品の面である。これに加えて、下にある基材にしっかりと結合されていない結合面の副領域も、露出面を意味する。本発明によれば、電気部品の露出面の少なくとも一部分は、ポリマー保護コーティングによって完全に覆われている。電気部品のポリマー保護コーティングに加えて、任意で、導電性トラックの露出面の少なくとも一部分も、ポリマー保護コーティングによって完全に覆われている。完全に覆われているとは、適用領域内で中断することなく連続的にコーティングが形成されていることを意味する。ポリマー保護コーティングの適用が特に有利であるのは、導電性部分の間隔をはるかに近くすることができ、ポリマー保護コーティングの絶縁特性によって短絡が回避されるためである。そして、電気部品の露出面及び任意の導電性トラックは、環境ストレス並びに化学的及び腐食性の攻撃から保護されている。これにより、環境要因による性能の低下は、少なくとも最小限に抑えられる。ポリマー保護コーティングは、部品の重量にほとんど影響を与えない。驚くべきことに、本発明者らは、複合ペイン内の電気部品の積層が、ポリマー保護コーティングの適用によって改善されることを知見した。ポリマー保護コーティングは、電気部品の密封体を形成しており、これは、電気部品に隣接して、空気が取り込まれ、その空気が残留することを回避する。これと比較して、ポリマー保護コーティングがなくても、電気部品と隣接する構造物の間のキャビティが、積層プロセス中に、熱可塑性中間層の材料によって充填されなければならない。これは可能でないことが多く、複合ペインの内部で、封入空気につながる。
【0014】
好ましくは、複合ペインは、乗物グレージングであり、乗物内部と乗物周囲を分離するためのものである。乗物グレージングとしての複合ペインは、ウインドウペインとして用いられ、それは、車体のウインドウ開口部に挿入されていてよい。内側ペインは、車体に取り付けられたときに、乗物内部に向かって配向しているペインである。外側ペインは、組み立て後に、環境に直接接触しているペインとして定義される。
【0015】
有利な実施形態では、ポリマー保護コーティングは、少なくとも、電気部品の露出面の全領域内に適用されている。これにより、電気部品は、より接近した導体間隔を備えることができ、これにより、小型の電気部品を可能にする。そうであっても、代わりに、当業者は、いくつかの特定の部品、例えば光源を、コーティングせずに残すことができる。
【0016】
好ましくは、ポリマー保護コーティングは、アモルファスフルオロポリマー、フッ素化ポリパラキシリレン、非フッ素化ポリパラキシリレン、ポリウレタン、ポリイミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、及び/又はそれらの混合物若しくはコポリマーを含む。これらのポリマーは、ポリマー基材及び/又はガラス基材への接着に関して好適であり、溶液又は分散液としての用途に好適であり、このことから、取り扱いが容易である。
【0017】
好ましくは、ポリマー保護コーティングは無色透明であり、これは、コーティング領域の観点から有利であり、コーティング領域は、グレージングの透明な視野領域にまで延在する可能性がある。アモルファスフルオロポリマー、ポリパラキシリレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂は、それぞれ、透明なポリマー組成物として入手可能である。
【0018】
最も好ましくは、ポリマー保護コーティングは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、及び/又はそれらの混合物若しくはコポリマーを含む。これらの材料は、熱可塑性中間層で一般的に使用されるラミネートフィルムとの良好な適合性を示している。アクリル樹脂は、優れた電気絶縁性、耐湿性を示し、環境面で許容できる溶剤を使用して処理することができる。エポキシ樹脂は、高い接着性、非常に優れた耐薬品性、及び優れた耐水性を示す。ポリウレタンは、化学薬品、溶剤、湿気に対しても優れた耐性を示し、耐摩耗性がある。また、揮発性有機化合物(VOC)を含まず、紫外線で硬化するウレタンアクリレート配合剤が利用できるため、処理時間の短縮につながる。アクリル酸ウレタンに基づくコーティングは、耐湿性及び耐薬品性も備えている。
【0019】
ポリマー保護コーティングの厚さは、25μm~250μmの間、好ましくは25μm~100μmの間、最も好ましくは40μm~70μmの間である。これらの範囲内で、一方では連続層を達成することができ、他方では電気部品の厚さがあまり増加しないことを確かなものにする。
【0020】
好適には、ポリマー保護コーティングは、ウェットコーティングとして適用されてきた。ウェットコーティングは、電気部品と下にある基材との間に小さな空洞を入れることによって、電気部品のほぼ完全な被覆を確かなものにするため、これは有利である。このことは、電気部品が、物質と物質の結合によって、結合面の第一副領域で、下にある導電性トラックに取り付けられており、結合面の別のサブ領域で、露出面のままである場合に重要である。この露出面は、可能性のある様々な被覆手段に到達できない一方で、液体が空洞には容易に入ることができる。
【0021】
ウェットコーティングは、ポリマー保護コーティングのポリマー成分と、これに加えて、ポリマー保護コーティングの硬化中に蒸発する少なくとも一つの溶媒とを含む。さらに、一つ以上の添加剤が存在していてもよい。好適な溶媒及び添加剤は、当業者に周知である。溶媒として、例えば酢酸プロピルとアセトンが使用され、それらは、例えば、アクリルコーティングの場合、合成樹脂に対して良好な溶解性を有している。また、酢酸プロピルは、生物学的に分解可能である。例えば、ポリウレタンコーティングの場合、テトラヒドロフラン、キシレン、及び/又はエチルベンゼンが、溶媒の好適な例である。コーティングの処理と用途によっては、ウェットコーティングに添加剤が含まれていてもよい場合があり、例えば、スプレーコーティング用途の推進剤として、1,1,1,2-テトラフルオロエタンがある。他の有用な添加剤は、紫外線蛍光トレーサーであってよく、これは、連続コーティング用途で、品質管理を簡素化する。
【0022】
本発明を精緻化するのに好適なポリマーウェットコーティングは、例えばスプレー塗布のために、市販されている。
【0023】
本発明の一つの好ましい実施形態では、少なくとも一つの電気的構成要素及び/又は少なくとも一つの導電性トラックが、外側ペインの内側面又は内側ペインの内側面に適用されている。これは、例えば、電気部品を内側ペイン又は外側ペインの表面に直接適用しなければならない場合である。ガラス基材への直接適用は、例えば、導電性印刷ペーストを使用してガラス上に容易に印刷可能な導電性構造の場合に有利であり得る。さらに、当該技術で周知の様々な導電性コーティングがあり、これらは、物理蒸着、マグネトロンスパッタリング、及び同様の方法で、ガラス表面に容易に堆積することができる。例えば、そのようなコーティングの副領域が、導電体トラックとして使用されている場合、電気部品は、コーティングに取り付けられ、外側ペイン又は内側ペインの内側面に配置されていてよい。
【0024】
別の好ましい実施形態では、熱可塑性中間層は、少なくとも一つの積層フィルムを備えており、積層フィルムには、少なくとも一つの電気部品及び/又は少なくとも一つの導電性トラックが適用されている。熱可塑性中間層の積層フィルム上に電気部品を配置すると、プレハブ部品の程度が高まり、複合ペインの製造時間を短縮するのに役立つ。熱可塑性中間層の少なくとも一つの積層箔は、供給ラインに導電性トラック及び電気部品が既に装備されていてよい。グレージング製造ライン内では、すべての電気部品を含むプレハブの熱可塑性中間層を、全体として、一方のペインに配置し、他方のペインを覆い、積層して、複合ペインを生成する。これは、すべての電気部品が事前に組み立てられた熱可塑性中間層内で、予め組み立てられ、テストされているため、複合ペインの製造上の欠陥を最小限に抑えるためにも特に有利である。熱可塑性中間層は、電気部品の実施形態及びサイズに応じて、一つの積層フィルム又はいくつかの積層フィルムを含んでいてよい。電気部品と、グレージングの隣接しているペインとの間の接着を強化するために、ポリマー保護コーティングを備えている電気部品の露出面と、隣接する窓ガラスとの間に、少なくとも一つの第二積層フィルムが挿入されていてよい。それにもかかわらず、ポリマー保護コーティングを有する電気部品が、ガラスペインに直接隣接している場合(間に積層フィルムがない場合)でも、ポリマー保護コーティングにより、接着性がわずかに向上し、取り込まれる空気の量が減少する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、少なくとも一つの電気部品及び/又は少なくとも一つの導電性トラックが、キャリアフォイルに取り付けられており、キャリオアフォイルは、熱可塑性中間層のフォイルスタックに挿入されている。熱可塑性中間層は、少なくとも一つの積層フィルム及びキャリアフォイルを含んでおり、その上に、電気部品及び/又は少なくとも一つの導電性トラックが適用されている。積層フィルムがちょうど一つである場合には、キャリアフォイルを内側ペインの内側面又は外側ペインの内側面に隣接して配置されていなければならない。少なくとも二つの積層フィルムの場合、キャリアフォイルは、好ましくは、積層フィルムの間に挿入されている。部品のプレハブと接着に関しては、積層フィルムに取り付けられている電気部品について説明したのと同じ利点が適用される。
【0026】
電気部品が積層フィルムに直接取り付けられているか、あるいは、キャリアフォイルによって熱可塑性中間層のスタックに追加されているかは、電気部品自体の実施形態に依存する。すぐに使用できる部品として、さまざまな電気部品が市販されている。それらのいくつかは、電気部品を有するキャリアフォイルとしてすでに供給されている。この典型的な例は、センサー(例えば、キャリアフォイル上の、導電性薄膜コーティングを含むタッチセンサー)又はオプトエレクトロニクスデバイス(例えば、キャリアフォイルに適用されており、二つの表面電極間に活性層を含むPDLCデバイス)である。
【0027】
電気部品は、70μm~700μm、好ましくは100μm~500μmの厚さを有している。電気部品の厚さは、主として、電気部品の実施形態に依存し、実装される電気部品が周知になるとすぐに、当業者によって容易に導き出すことができる。
【0028】
少なくとも一つの電気部品は、LED(発光ダイオード)、ダイオード、抵抗器、コンデンサー、トランジスタ、集積回路、光電子デバイス、インダクタ、センサー、ディスプレイ、LCデバイス(液晶デバイス)、PDLCデバイス(ポリマー分散型液晶デバイス)、アンテナ、圧電素子、及び水晶素子のグループから選択される。
【0029】
導電性トラックは、ペースト、ソリッドリボン、バスバー、ワイヤ、及び/又は導電性薄コーティングとして実装されている。導電性トラックは、銅、銀、グラファイト、グラフェン、金、アルミニウム、タングステン、錫、亜鉛、及び/又はそれらの混合物若しくは合金を含有している。導電性トラックのそのような実施形態は、当該技術分野で周知である。
【0030】
ペーストとして実装される導電性トラックは、例えば、導電性銀ペーストで印刷され、その後、ベーキングステップが続行する。このような印刷用ペーストは市販されており、銀又は銀合金を多く含有し、例えば30~88重量%の銀を含有する。他の内容物は、有機結合剤、有機溶媒、及び任意の他の添加剤である。銀プリントの厚さは、ウェットプリントの厚さとして測定され、通常、25μm~100μmの間であり、好ましくは30μm~80μmの間である。
【0031】
バスバーは、たとえば、導電性の銀プリントとして、あるいは、平坦導電体として実装されており、下にある基材に取り付けられている。
【0032】
導電性薄コーティングは、好ましくは、透明な導電性層として設計される。導電性薄コーティングは、好ましくは、少なくとも金属、金属合金、又は透明導電性酸化物(TCO)を含有する。典型的には、本発明に関して好適な導電性コーティングは、例えば、銀、金、銅、ニッケル、クロム、タングステン、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムドープ若しくはアルミニウムドープ酸化亜鉛、及び/又はフッ素ドープ若しくはアンチモンドープ酸化スズを含有する。好ましくは、それらのコーティングは、10nm~2μm、特に好ましくは20nm~1μm、最も特に好ましくは30nm~500nmの厚さを有する。
【0033】
電気部品と少なくとも一つの導電性トラックは、互いに電気的に接続されている。導電性トラックと電気部品との間の電気的接続は、当業者に周知の手段によって確立されている。電気部品は、導電性接着剤によって導電性トラックにはんだ付け、溶接、又は接着されていてよく、好ましくは導電性接着剤によってはんだ付け又は接着されていてよい。
【0034】
少なくとも一つのキャリアフィルムは、好ましくは、少なくとも一つのポリマー、特に好ましくはポリエステルフィルム、最も好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含有している。これは、キャリアフィルム及び熱可塑性中間層の安定性の観点から特に有利である。しかし、キャリアフィルムは、他のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、プロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート樹脂、キャスティング樹脂、アクリレート、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニル、及び/又はエチレン-テトラフルオロエチレンを含有しているか、それらでできていてもよい。各キャリアフィルムの厚さは、好ましくは0.05mm~1mm、特に好ましくは0.1mm~0.2mmである。
【0035】
熱可塑性中間層は、例えば、単一の積層フィルムによって形成されていてよい。熱可塑性中間層は、二層、三層、又は多層フィルムスタックとして形成されていてもよく、個々の積層フィルムは同一又は異なる特性を有している。熱可塑性中間層は、隣接しているサイドエッジを有している異なる熱可塑性積層フィルムのセクションから形成されていてもよい。
【0036】
少なくとも一つの積層フィルムは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリアセテート樹脂、キャスティング樹脂、ポリアクリレート、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、ポリビニルフルオリド、および/またはエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマーからなる群から選択される熱可塑性物質から構築されているか、あるいは、これらの熱可塑性物質の少なくとも一つでできている。特に好ましくはPVBが使用されている。
【0037】
各積層フィルムの厚さは、好ましくは0.2mm~2mmの間、好ましくは0.3mm~1mmの間、例えば0.38mm、0.76mm、0.81mm、又は0.84mmである。
【0038】
熱可塑性中間層の積層フィルムは、着色されていてよく、UV及び/又はIR放射を吸収してもよく、及び/又は当該技術分野で周知の様々な機能性コーティングを備えていてもよい。
【0039】
いくつかの積層フィルムの場合、熱可塑性中間層の積層フィルムは、好ましくは、互いに空中配置されており、互いに積層されており、任意で、それらの積層フィルムの間にキャリアフォイルを有している。キャリアフォイルと重なる積層フィルムの領域は、キャリアフォイルを、取り付けられた電気部品とともに、ペインに結合する領域を形成している。積層フィルムが互いに直接接触しているペインの他の領域では、それらは、積層中に融合し、それによって、二つの元の層が識別できなくなり、代わりに一つの均質な中間層が存在する。
【0040】
本発明の複合ペインは、ウインドシールドとして有利に実装することができる。このようなウインドシールドは、上側エッジ及び下側エッジ、並びに上側エッジと下側エッジの間に延在している二つのサイドエッジを有している。「上側エッジ」とは、実装位置で上方になるよう意図されたエッジを意味する。「下側エッジ」とは、実装位置で下方になるよう意図されたエッジを意味する。「上側エッジ」は「ルーフエッジ」を、「下側エッジ」は「エンジンエッジ」を意味することが多い。
【0041】
ウインドシールドは中心視野を有しており、その光学的品質には、高い要件が課されている。中心視野は高い光透過率(典型的には70%以上)を有していなければならない。中心視野は、特に、当業者によって、視野B、視野領域B、又はゾーンBと呼ばれる視野である。視野Bとその技術的要件は、国連欧州経済委員会(UN/ECE)の規則No.43(ECE-R43、「セーフティグレージング材料とその車両設置の承認に関する統一規定」)に指定されている。そこでは、視野Bは付録18で定義されている。
【0042】
ウインドシールドは、好ましくは自動車用に、特に好ましくは乗用車用に提供される。
【0043】
複合ペインの上側エッジ及びサイドエッジ若しくはすべてのサイドエッジは、好ましくは不透明なマスキングプリント(ブラックプリントとも呼ばれる)又は外側フレームによって、複合ペインを通して視界に隠されている。ウインドシールドは、典型的には、不透明なエナメルでできている周方向の周辺マスキングプリントを備えており、これは、特にウインドウの設置に使用される接着剤を視覚的に隠し、紫外線からそれを保護するのに役立つ。このような周辺マスキングプリントは、電気部品の必要な電気接続、あるいは、用途によっては電気部品自体を隠すためにも使用してよい。好ましくは、外側ペインと内側ペインの両方がマスキングプリントを有しており、それによって、両側からの透視が防止されている。
【0044】
外側ペインと内側ペインは、好ましくはガラス、特に好ましくはソーダライムガラスでできており、これはウインドウペインに通例である。しかし、ペインは、他のタイプのガラス、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、若しくはアルミノケイ酸塩ガラス、又は剛性のある透明なプラスチック、例えば、ポリカーボネート又はポリメチルメタクリレートできいていてもよい。ペインは透明であっても、あるいは、着色若しくは色付けされていてもよい。ウインドシールドは、中心視野で適切な光透過率を備えていなければならず、ECE-R43に従って、プライマリスルービジョンゾーンAで、少なくとも70%が好ましい。
【0045】
外側ペイン、内側ペイン、及び/又は熱可塑性中間層の積層フィルムは、それ自体が周知のさらに好適なコーティング、例えば、反射防止コーティング、焼付き防止コーティング、引っかき防止コーティング、光触媒コーティング、若しくは太陽光保護コーティング、又は低Eコーティングを有していてもよい。
【0046】
外側のペインと内側のペインの厚さは、大きく異なっていてもよく、それによって、個々のケースの要件に適合させることができる。外側ペイン及び内側ペインは、好ましくは0.5mm~5mmの厚さ、特に好ましくは1mm~3mmの厚さを有している。
【0047】
本発明はまた、本発明の複合ペインの製造方法を含み、少なくとも下記である:
a)外側ペイン、内側ペイン、少なくとも一つの積層フィルム、及び任意のキャリアフォイルを提供し、少なくとも一つの導電性トラック及び少なくとも一つの電気部品を、前記外側ペイン、前記内側ペイン、前記積層フィルム、又は前記キャリアフォイルに適用すること、
b)前記少なくとも一つの電気部品の少なくとも一部分と、任意で、前記少なくとも一つの導電性トラックの少なくとも一部分とを、ポリマー保護コーティングでコーティングすること、
c)前記外側ペイン、前記積層フィルム、任意の前記キャリアフォイル、及び前記内側ペインを少なくとも備えるスタックを配置して、前記少なくとも一つの積層フィルム及び前記キャリアフォイルを、任意の並びで配置可能にすること、及び
d)前記外側ペインと前記内側ペインを積層によって組み合わせ、前記外側ペインと前記内側ペインの間の熱可塑性中間層を形成し、複合ペインを得ること。
【0048】
導電性トラックと電気部品との電気的接続を、好ましくは、複合ペインの積層の前に行う。
【0049】
現有する任意の印刷、例えば、電気部品の電気的接続のための不透明なマスキング印刷又は印刷されているバスバーは、好ましくは、スクリーン印刷によって適用される。
【0050】
積層は、好ましくは、熱、真空、及び/又は圧力の作用下で行われる。それ自体が知られている方法、例えば、オートクレーブ法、真空バッグ法、真空リング法、カレンダー法、真空ラミネーター、又はそれらの組み合わせを、積層に使用することができる。
【0051】
ポリマー保護コーティングを、ブラシコーティング、機械による選択的コーティング、ディスペンス、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレー、又は粘着テープの接着によって適用する。好ましくは、ポリマー保護コーティングを、ウェットコーティングとして適用する。特に好ましくは、ポリマー保護コーティングを、スプレーによって適用する。これは、適用が容易であり、電気部品の周りの小さな空洞を埋めることができるため、有利である。
【0052】
好ましくは、少なくとも一つの電気部品及び少なくとも一つの導電性トラックを、積層フィルム又はキャリアフォイルに適用し、ステップb)を、ステップa)の前又は最中に実行する。すなわち、電気部品を有するキャリアフォイル又は積層フィルムを、事前に組み立てる。これにより、ステップa)の前に、すでに、熱可塑性中間層の完全なスタックを配置することができる。ステップc)では、プレハブの熱可塑性中間層全体を、外側ペインと内側ペインの間に配置でき、これによって、すべてのフォイルを個別に配置する場合と比較して、簡単に自動化できる。
【0053】
本発明はさらに、乗物グレージングとして、好ましくは乗物のウインドシールドとして、本発明の複合ペインの使用を含む。
【0054】
本発明を、図面及び例示的な実施形態を参照して詳細に説明する。図面は概略図であり、縮尺どおりではない。図面は本発明を制限するものではない。それらは、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】
図1Aは、本発明の複合ペイン6の上面図であり、熱可塑性中間層3が、電気部品7として、LEDを備えている。
【
図2A】
図2Aは、本発明の複合ペイン6の上面図を示しており、熱可塑性中間層3が、キャリアフォイル10に適用される電気部品7として、タッチセンサーを備えている。
【
図3】
図3は、本発明の製造方法のフローチャートである。
【0056】
図1Aは、本発明による複合ペイン6の上面図を示しており、熱可塑性中間層3は、電気部品7として発光ダイオード(LED)を備えており、電気部品7は、導電性トラック8によって電気的に接触している。
図1Bには、交差線AA’に沿うセクションZ内の
図1Aの複合ペイン6の断面が示されている。複合ペイン6は、乗物ウインドスクリーンであり、外側面I及び内側面IIを有する外側ペイン1と、内側面III及び外側面IVを有する内側ペイン2とを備えている。外側ペイン1の内側面IIと内側ペイン2の内側面IIIは、熱可塑性中間層3によって互いに積層されている。熱可塑性中間層は、PVBの二つの積層フィルム4を備えており、それぞれ0.76mmの厚さを有している。外側ペイン1と内側ペイン2は、ソーダライムガラスで構成されており、外側ペイン1が2.1mm、内側ペイン2が1.6mmの厚さを有している。導電性トラック8は、積層フィルム4の一つの表面に印刷され、
図1Bより、一つの表面は、積層フィルム4で外側ペイン1に隣接しており、導電性トラックを担持する表面は、第二積層フィルム4に向けられている。導電性トラック8は、導電性銀含有ペーストを使用して印刷されている。電気部品7は、導電性接着剤(図示せず)を使用して導電性トラック8に取り付けられており、電気部品7は、導電性トラック8を介して電源(図示せず)に接続されていてよい。導電性トラック8の露出面は、ポリマー保護コーティング9内に埋め込まれている。電気部品7の露出面もポリマー保護コーティング9で覆われており、内側ペイン2の内面IIIに面している電気部品7の表面は除外されている。ポリマー保護コーティング9は、スプレーコーティングとして適用され、電気部品7のコーティングされていない表面は、コーティングプロセス中にマスクされる。ポリマー保護コーティング9がウェットコーティングとして適用されると、コーティングは、電気部品7の露出面に入ることができ、露出面は、電気部品7が取り付けられている下にある積層フィルム4に向けられている。ポリマー保護コーティング9は、アクリル樹脂を含み、約100μmのコーティング厚さで適用されている。
【0057】
図2Aは、本発明の複合ペイン6の上面図を示しており、熱可塑性中間層3が、キャリアフォイル10に適用される電気部品7として、タッチセンサーを備えている。
図2Bには、交差線BB’に沿うセクターX内の
図2Aの複合ペイン6の断面が示されている。複合ペイン6は、外側面I及び内側面IIを有する外側ペイン1と、内側面III及び外側面IVを有する内側ペイン2とを備えている乗物ウインドスクリーンである。外側ペイン1の内側面IIと内側ペイン2の内側面IIIは、熱可塑性中間層3によって互いに積層されている。熱可塑性中間層は、厚さ0.76mmのPVBでできている一つの積層フィルム4を含む。外側ペイン1と内側ペイン2は、ソーダライムガラスで構成されており、外側ペイン1が2.1mm、内側ペイン2が1.6mmの厚さを有している。電気部品7としてのタッチセンサーは、キャリアフォイル10に適用された導電性コーティングによって形成されている。導電性コーティングは、コーティングのない分離線によって構造化されており、センサーの静電容量性領域とセンサーの周囲領域を形成している。静電容量性領域は、タッチセンサーを操作するためのタッチパネルと、導電体を使用してセンサーをセンサー制御ユニットに接続するための供給領域を備えている。この場合、導電体経路8は、センサーの供給領域によって形成されている。タッチセンサーの分離線と詳細なパターンは、そのようなセンサーのレイアウトが当該技術で周知であるため、示されていない。キャリアフォイル10は、50μmの厚さのPETフィルムで構成されている。電気部品7は、内側ペイン2の内面IIIに向けられているのは、タッチセンサーが乗物内部(外側面IV)から操作されなければならないためである。ポリマー保護コーティング9は、スプレーコーティングによって電気部品7の導電性コーティングに適用されており、電気部品7の完全な露出面と、積層フィルム4が直接隣接する表面の一部は、ポリマー保護コーティング9で覆われている。ポリマー保護コーティング9は、25μmのコーティング厚さで適用されているエポキシ樹脂を含む。
【0058】
図3は、以下のステップを含む本発明の製造方法のフローチャートを示している:
【0059】
I 電気部品7及び/又は少なくとも一つの導電性トラック8を、積層フィルム4又はキャリアフォイル10に適用すること、
II 前記電気部品7の少なくとも一部分と、任意で、前記導電性トラック8の少なくとも一部分とを、ポリマー保護コーティング9でコーティングすること、
III 前記電気部品7及び/又は少なくとも一つの導電性トラック8を適用する前記キャリアフォイル10又は前記積層フィルム4を蓄積し、任意で、さらに、積層フィルム4とともにフォイルスタックを形成し、続いて熱可塑性中間層3を形成すること、
IV 熱可塑性中間層3のフォイルスタックを外側ペイン1又は内側ペイン2に配置し、フォイルスタックを内側ペイン2又は外側ペイン1で覆うこと、
V その配置をオートクレーブ処理して、複合ペイン6を形成すること。
【符号の説明】
【0060】
1 外側ペイン
2 内側ペイン
3 熱可塑性中間層
4 積層フィルム
6 複合ペイン
7 電気部品
8 導電性トラック
9 ポリマー保護コーティング
10 キャリアフォイル
I 外側ペインの外側面
II 外側ペインの内側面
III 内側ペインの内側面
IV 内側ペインの外側面
AA’、BB’ 交差線
Z、X セクター
【国際調査報告】