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特表2022-543318風力発電装置のローターブレード及びボート建造におけるコア材料としてのポリメチルメタクリレート硬質フォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】風力発電装置のローターブレード及びボート建造におけるコア材料としてのポリメチルメタクリレート硬質フォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEY
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507747
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020067571
(87)【国際公開番号】W WO2021023432
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】19190719.5
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リヒター
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ザイペル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンゼント マ ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】リサ ランゲル
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA48
4F074BA72
4F074BC12
4F074CC49Y
4F074CE15
4F074CE58
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA33
4F074DA45
4F074DA47
4F074DA54
4F074DA59
(57)【要約】
本発明は、風力発電装置のローターブレードにおける及びボート建造におけるサンドイッチ部材のコア材料としてのPMMA系硬質フォームの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規格ISO 6721-7に従うDMTA測定により決定して、110℃を上回るガラス転移温度Tgを有する、風力発電装置において及びボート建造において使用するためのサンドイッチ部材におけるポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法であって、発泡剤入りポリマー組成物を発泡させて、ASTM D3576に従って測定して、50~300μmの範囲内の平均気孔径を有するフォーム材料を得ることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記フォーム材料の樹脂吸収量が、VARIにより測定して、0.01~0.03g/cmであることを特徴とする、請求項1に記載のポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法。
【請求項3】
前記サンドイッチ部材の製造の際の前記樹脂の硬化を、110℃を上回る温度で、加熱又はモールド中での照射により実施することを特徴とする、請求項1に記載のポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂の硬化を電気加熱可能なモールド中で行うことを特徴とする、請求項3に記載のポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂の硬化を、赤外線を用いて実施することを特徴とする、請求項3に記載のポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法。
【請求項6】
前記フォーム材料が、DIN EN ISO 1183に従って測定して、30~500kg/mの密度を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項により製造されるサンドイッチ部材におけるポリメチルメタクリレート系硬質フォームの使用であって、前記フォームが、風力発電装置のローターブレードにおける又はボート建造におけるコア材料として、軽量構造において、包装材料として、衝突要素におけるエネルギー吸収体として、建築構造要素において、照明工学用途における拡散体として、家具組立において、車両製造において、航空工業において又は模型組立において使用されることを特徴とする、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規格ISO 6721-7に従うDMTA測定により決定して110℃を上回るガラス転移温度Tgを有する、風力発電装置及びボート建造において使用するためのサンドイッチ部材におけるポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法に関するものであって、発泡剤入りポリマー組成物を発泡させて、ASTM D3576に従って測定して50~300μmの範囲内の平均気孔径を有するフォーム材料を得ることにより特徴付けられている。
【背景技術】
【0002】
サンドイッチ複合材は、コア材料と、その上に置かれる外層とからなる。一般に、これらのサンドイッチ複合材は、少ない質量で高い部材剛性を有する点で優れている。この際に、該コア材料は、多様な要件を満たさなければならず、例えば、せん断力を伝達できるように、該外層と堅固に接合されていなければならない。さらに、該コア材料は、できるだけ低い密度を有するべきである。
【0003】
しばしば利用されるコア材料は、それらの低い密度に基づく硬質フォームである。
【0004】
該サンドイッチ複合材の製造には、通常、外層が該コア材料上に置かれ、かつ樹脂で含浸されるか、又は樹脂で含浸されたが、まだ硬化されない繊維材料が置かれる(プリプレグ)。第2工程において、ついで、該樹脂は、該外層中で硬化され、その際に該コア材料への結合も行われる。該硬化は、高めた温度及び圧力で行われて、該外層が欠陥不含で存在しており、かつ該外層の該コア材料への良好な結合を保証する。この際に、該外層の樹脂は、多様な機構により、該コア材料に接合される。該樹脂の該外層への付着/凝集又は化学結合となりうる。さらに、該硬化前に依然としてある程度の流動性を有する樹脂は、そのフォームコアの表面上の連続セル中でも流動することができ、ひいては該硬化後に、形状結合により外層とコア材料との接合をもたらすことができる(「かみ合い」)。
【0005】
該外層の硬化の際に使用される温度及び圧力が高ければ高いほど、通常の場合には該硬化がますます速く行われることができる。
【0006】
上記のサンドイッチ複合材は、風力発電装置の翼の組立並びにボート建造において幅広く使用される。これらの分野において使用されるコア材料は、主に、それらの低い密度に基づき硬質フォームである。殊に、これらの用途には、PVC及びPET系フォームが使用される。これらの例は、3A CompositesからのAirexC70.55(PVC)、AirexT10.100(PET)、GURITからのGPET115(PET)、DIABからのDivinicell H又はArmacellからのArmaFORM(PET)である。
【0007】
この際に重要であるのは、該部材の製造プロセスを可能にするために、ある程度の圧縮強さ及び耐熱変形性が達成されなければならないことである。同じベースポリマーからなるフォームの場合の機械的強さは、密度と共に低下するので、該フォームのベースポリマーに応じて、ある下限までの密度のみが使用できる。PET系フォームの場合に、この下限は、PVC系フォームの場合の約2倍の密度である。ここでは、PVC系フォームは、PETフォームに比べて明らかな利点を有する。これに反して、該コア材料のコストに関して、PETフォームは、PVCフォームに比べて利点を有する。
【0008】
該サンドイッチ複合材の最終的な部材質量のさらなる因子は、該フォームの樹脂吸収量である。樹脂吸収量は、該硬化前の該外層のなお液状の樹脂の、表面上の開気孔中への流入であると理解される。この樹脂吸収量は必要であり、それによって該外層の該コア材料への形状結合、ひいては良好な付着となる。良好な結合に必要な最小量の樹脂のみが、該フォームの最も上の開気孔によって吸収されることが有利である、それというのも、該樹脂は、その高い密度により、前記の最終的な部材の全質量にさもなければ不必要に寄与するからである。
【0009】
課題
上記のように、風力発電装置のローターブレードにおいて並びにボート建造において標準的に使用されるコア材料は、PVCもしくはPETをベースとする硬質フォームである。しかしながら、これらの硬質フォームは、部分的に明らかな欠点を有する。
【0010】
1つの欠点は、双方のフォームの場合に高い樹脂吸収量にある。これは不必要に多く樹脂がフォームにより吸収されることをまねき、このことは一方では、使用される樹脂による不必要に高いコストをまねき、他方では、最終的な部材質量を高める。
【0011】
これらの用途のためのPET及びPVCフォームのさらなる欠点は、該サンドイッチ複合材の製造方法における可能な加工温度が、約80℃に限定されていることである、それというのも、これらの温度を上回ると、該PET及びPVC硬質フォームの機械的性質は明らかに低下し、かつ高品質な製造プロセスをもはや不可能にするからである(該コア材料の変形)。
【0012】
したがって、課題は、上記の用途のためのコア材料であって、a)コスト及び質量を節約するためにより少ない樹脂吸収量を有し、並びにb)このコア材料が同時により高いプロセス温度も可能にする、コア材料を見出すことであった。
【0013】
解決手段
前記課題は、規格ISO 6721-7(2005年08月発行)に従うDMTA(動的機械熱分析)測定により決定して110℃を上回るガラス転移温度Tgを有する、風力発電装置及びボート建造において使用するためのサンドイッチ部材におけるポリメチルメタクリレート系硬質フォームの製造方法を提供することにより解決され、発泡剤入りポリマー組成物を発泡させて、ASTM D3576(2015年発行)に従って測定して50~300μmの範囲内の平均気孔径を有するフォーム材料を得ることにより特徴付けられる。
【0014】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)系硬質フォームが、競合系PET及びPVCフォームに比較して、少ない樹脂吸収量並びにより高いプロセス温度の上記の要件を満たすことが見出された。この際に特に驚くべきことは、該外層結合が、PMMAフォームの場合に明らかにより少ない樹脂吸収量にもかかわらず、極めて良好なことであった。
【0015】
VARI(バキュームアシストレジンインフュージョン)により測定して、0.03g/cm未満を有する少ない樹脂吸収量は、本発明による硬質フォームを、前記のPET及びPVCベースの競合系と区別する。
【0016】
本発明を用いて、50~300μmの範囲内の全ての気孔径及びDIN EN ISO 1183(2013年04月発行)に従って測定して、30~500kg/m、好ましくは250kg/m未満のフォームの密度を有するPMMA系フォームが提供される。
【0017】
PMMAフォームの適した製造方法は、該フォームの製造が、重合、例えば重合条件で非ガス状の発泡剤及び造核剤の存在下での、主にMMAを含有するモノマー混合物、及び/又は主に又は完全にMMAからなるポリマーと、主に又は完全にMMAから構成されるモノマー混合物とからなるシロップのスラブ重合により、行われ、例えば欧州特許出願公開第3277748号明細書(EP 3277748)に記載されている。第2工程において、こうして得られた、重合完了した発泡剤入りPMMAスラブは、ついで加熱により発泡され、その際に、該造核剤の添加により、小さくかつ均一な気孔が形成される。
【0018】
この方法は、殊に、該造核剤が、4~1000nmの直径を有する酸化ケイ素粒子を含むことにより特徴付けられている。この組成物は、その際に、0.01~2.0質量%、好ましくは0.2~1.5質量%の1種以上の開始剤、2~20質量%、好ましくは3~15質量%の1種以上の発泡剤、0.2~10質量%、好ましくは0.5~8質量%の、4~1000nm、好ましくは5~500nmの直径を有する酸化ケイ素粒子及び70~97.79質量%、好ましくは75~97.8質量%のポリマー形成性混合物を含有し、ここで、このポリマー形成性混合物は、少なくとも75mol%がメチルメタクリレート(MMA)及び/又はMMA繰返し単位からなり、かつ0~80質量%、好ましくは0~50質量%がポリマー及び/又はオリゴマーとして存在していてよい。この組成物は、最初に20℃~100℃、好ましくは30℃~70℃の温度で重合され、引き続き130℃~250℃、好ましくは150℃~230℃の温度で発泡される。挙げた成分に加えて、該組成物は、27.79質量%までのさらなる成分を含有していてよい。これらのさらなる成分の例は、殊に、MMA含有ポリマーではないさらなるポリマー成分、UV安定剤、充填剤及び顔料である。
【0019】
該酸化ケイ素粒子は、好ましくはSiO粒子である。しかしながら、これらの粒子が、厳密に1:2ではない化学量論的組成を有することも可能である。そして、殊に極めて小さい粒子の場合に、30%までの化学量論的組成からの偏差が存在していてよい。また、20%までのケイ素が、他の金属イオン、例えばアルミニウム等により置換されていてよい。本発明により重要であるのは、ケイ素の酸素に対する化学量論比が0.7~1.3:2であることと、該粒子中の非酸素原子は少なくとも80mol%がケイ素であることだけである。しかしながら、他の造核剤、例えばタルク、層状ケイ酸塩、グラフェン、酸化グラファイト、Al、不混和性のもしくは該モノマー混合物中に不溶のポリマー粒子等も使用することができる。該気孔径が、造核剤なしでも記載された範囲内である場合には、該造核剤を省くことができる。
【0020】
該ポリマー形成性混合物は、該MMAに加えて、25質量%までのさらなる成分を有していてよい。これらのさらなる成分は、MMAと共重合性のモノマー、連鎖移動剤及び/又は架橋剤を含んでいてよい。その際に、該MMA及び前記の共重合性のモノマーは、完全にモノマーとして使用することができる。該ポリマー形成性組成物は、殊に、0.5質量%までの架橋剤及び/又は1.5質量%までの連鎖移動剤を含有していてよい。
【0021】
しかしながら、本発明のより良好に取り扱われうる実施態様において、該MMA及び前記の共重合性のモノマーも、80質量%までの割合、好ましくは最大50質量%がポリマー及び/又はオリゴマーとして存在していてよい。モノマー及びポリマーもしくはオリゴマーからなる、そのようなシロップの利点は、これが、純粋なモノマー混合物よりも高い粘度を有し、ひいては該重合の際に放出される全エネルギー量が少ないことである。
【0022】
前記のMMAと共重合性のモノマーは、殊に、アクリレート、例えば殊にメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート又はn-ブチルアクリレートであってよい。アクリレートの共重合は、該フォームを殊に高い発泡温度で付加的に安定化させる、それというのも、これらの発泡温度は、純MMAの天井温度を上回りうるからである。安定化させるコモノマーが組み込まれない場合には、より短い発泡時間又は相応してより低い発泡温度を優先すべきである。
【0023】
適したコモノマーのさらなる例は、(メタ)アクリル酸、メタクリレート、例えばエチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリルアミド、アルキル基中に炭素原子1~12個を有するN-アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル基中に炭素原子1~4個を有するヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートであり、ここで該ポリエーテルは、200~5000の分子量を有していてよい。該コモノマーは、その際に、これらのコモノマー少なくとも2種の混合物として存在していてよい。これらのコモノマーが、n-ブチル(メタ)アクリレート及び/又はn-プロピル(メタ)アクリレートを含む場合には、全組成におけるこれらの割合は全部で3質量%を超えることはできない。架橋剤が使用される場合には、これらは、好ましくは、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート又はテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート又はこれらの架橋剤少なくとも2種を含有する混合物である。
【0024】
表記(メタ)アクリレートは、ここでは、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等、並びにアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート等、並びに双方の混合物を意味する。
【0025】
連鎖移動剤が使用される場合には、これらは、好ましくは、メルカプタン基1~5個を有する化合物、γ-テルピネン又はこれらの連鎖移動剤少なくとも2種の混合物である。特に好ましくは、該連鎖移動剤は、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、炭素原子2~12個を有するアルキルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコレート、γ-テルピネン又はこれらの連鎖移動剤少なくとも2種の混合物である。
【0026】
本発明の特に重要な態様は、前記の発泡されうる組成物中での該造核剤の使用である。従来技術に比べて新規な、PMMAフォームの製造の際の造核剤のこの使用は、特に小さくかつ均一で、並びに均一に分布された気孔を有するPMMAフォームが得られることを驚くべきことにもたらす。こうして得られる微気孔性は、多様な用途に大きく重要である。絶縁用途において、一般に、同じ密度及び同じセルガスの場合に、フォームの気孔径が低下するにつれてその絶縁作用は増加する。樹脂含浸された外層がフォームコア上へ置かれる軽量構造用途において、該フォームコアの少ない樹脂吸収量は、軽量化のために重要である。このために使用される独立セルフォームの気孔が微細であればあるほど、樹脂がよりいっそう少なく吸収されることができる。
【0027】
酸化ケイ素粒子が使用される場合に、造核剤なしのベース配合物をベースとするフォームと比較して、明らかに微気孔性のフォームが達成されうることが驚くべきことに見出された。こうして、例えば、AEROSIL OX50(EVONIK Industries AG社製)を用いて、極めて微気孔性のフォームを得ることができる。驚くべきことに、さらに、潜在的に造核作用もある他の添加剤、例えばタルク粉末等を用いては、そのような効果が達成されなかったことが見出された。反対に、タルクの使用により、発泡はむしろ困難になり、かつ極めて不均質なフォームが得られた。Al粒子(EVONIK Industries AG社のAEROXIDE ALU C)の使用も、成果を生じなかった、それというのも、発泡はここでは不可能であったからである。このことは、単独で、PMMAフォームのここで示された製造方法における任意の粒子の導入が、所望の程度の気孔改善をもたらすのではなくて、むしろ驚くべきことに、まず酸化ケイ素粒子のみがそのために適しているように思われることを示す。
【0028】
さらに、本発明により製造されるPMMAフォームは、驚くべきことに高い強さ及び同時に驚くべきことに低い脆性を有し、したがって、例えば軽量構造において使用することができる。さらに、その良好な材料特性に基づき、これまでの知識によればその流動性もしくは発泡性に有利に作用するが、しかしながら同時に該PMMAフォームの機械的性質、殊に強さに、不利な影響を及ぼす、可塑剤、例えばより長鎖のアルキル(メタ)アクリレート又はフタレートの使用を省くことができる。
【0029】
殊に適した発泡剤は、tert-ブタノール、n-ヘプタン、MTBE、メチルエチルケトン、炭素原子1~4個を有するアルコール、水、メチラール、尿素、イソプロピル(メタ)アクリレート及び/又はtert-ブチル(メタ)アクリレートである。その際、イソプロピル(メタ)アクリレート及び/又はtert-ブチル(メタ)アクリレートの使用の際に、これらは同時に、挙げたモノマー組成物の成分であり、かつ最初に、該重合の際に形成されるポリマー中へ全部又は一部で重合導入される。該発泡の際に、引き続き、プロペンもしくはイソブテンが脱離しながら、該ポリマー中に(メタ)アクリル酸繰返し単位が形成される。特別な実施態様において、大きな割合のこれらのモノマーから又は完全にこれらのモノマーから製造されたポリマーも使用することができる。発泡剤を放出する、そのような重合導入できるかもしくは重合されたコモノマーの使用により、例えば、特に小さくかつ規則的な気孔を得ることが可能である。
【0030】
特に適した発泡剤は、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、tert-ブタノール、イソプロパノール、tert-ブチルメチルエーテル及びポリ(tert-ブチル(メタ)アクリレート)である。
【0031】
該重合は、好ましくは、成形容器中で、殊に2枚のプレート、例えばガラスプレートの間のチャンバ重合の形で、行われる。それは、例えば最も単純な場合に長方形の槽であってよい。そのような槽中での重合により、後で、厚さが該槽の充填レベルもしくはプレート間隔により決定されたプレートが得られる。しかしながら、さらにまた、より複雑な形も容器として考えられる。好ましくは、該重合は30~70℃の温度で行われる。その際に、開始剤として、一般に公知のラジカル開始剤、例えば過酸化物又はアゾ開始剤に加えて、レドックス系又はUV開始剤も使用することができる。その際、40℃未満の重合温度は、殊にこれらのレドックス系及びUV開始剤に該当する。該UV開始剤は、相応するUV光での照射により開始されるのに対して、該レドックス開始剤は、二成分系を含み、それらの開始は、双方の成分及び該モノマーの混合により行われる。
【0032】
該発泡は、引き続き、同じ容器中で行うことができ、ここで、その体積増加は、この場合に一方向、該容器の開いた側に、限定される。しかしながら、重合される材料は、露出して発泡されることもできる。好ましくは、該発泡はオーブン中で行われる。選択的に、該発泡を、赤外線、殊に0.78~2.20μm、好ましくは1.20~1.40μmの波長を有する赤外線での照射により引き起こすことも可能である。さらなる選択肢は、マイクロ波での発泡である。異なる方法、例えば赤外線、マイクロ波及び/又はオーブン中での加熱の組合せも考えられる。
【0033】
該発泡並びに前もって行われる重合は、それぞれ複数の温度段階で行うことができる。該重合の際に、該温度を後で高めることにより、付加的にその転化率は増加し、かつその残存モノマー含有率はそれと共に低下しうる。該発泡の際に、該発泡温度を段階的に高めることにより、該気孔分布、該気孔径及び該気孔の数に影響を与えることができる。
【0034】
任意に、該方法は、該重合が、不完全にのみ、この場合に好ましくは少なくとも80%の転化率に、実施され、かつ最終的な重合完了が該発泡の際に行われるように実施することもできる。そのような方法は、発泡過程の開始時に、残留しているモノマーが可塑化効果を有し、完成したフォーム中で可塑化性化合物が残留しないであろうという利点を有する。そのため、そのような実施態様の場合に、該重合及び該発泡は部分的に、発泡温度で、同時に行われるであろう。
【0035】
本発明による方法に加えて、そのような方法により例えば製造できるPMMAフォームも、本発明の構成要素である。そのようなPMMAフォームは、その際に、このフォームの固体割合が、少なくとも75mol%のMMA繰返し単位を有する72~98質量%のポリマー、及び0.2~12.5質量%の酸化ケイ素粒子を有することにより特徴付けられている。さらに、該フォームは、DIN EN ISO 1183により測定して、25~250kg/m、好ましくは40~250kg/mの密度、及び500μm未満の平均気孔径を有する。好ましくは、全ての気孔径は500μm未満である。
【0036】
該気孔径は、規格ASTM D 3576に従って、この規格とは次の相違を伴い、決定される:まず、該PMMAフォームのナイフ切断面ではなく、その破壊端が観察される。さらに、その評価は比較的小さい気孔に基づき、光学顕微鏡によってではなく、SEM測定を通じて行われる。しかし、得られた画像からの該気孔径の計算は、その際に規格に従う。
【0037】
好ましいのは、該ポリマーが、MMAと、開始剤と、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート又はテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート及び/又はトリアリルイソシアヌレートから選択される1種以上の架橋剤と、1種以上の連鎖移動剤とから形成された、殊にPMMAフォームである。
【0038】
該PMMA系フォームは、VARIにより測定して、樹脂吸収量が0.03~0.06g/cmである典型的なPET及びPVCフォームに比較して、0.01~0.03g/cm、好ましくは0.02g/cmの樹脂吸収量を示す。
【0039】
同時に、その外層付着は優れている。これは驚くべきことである、それというのも、比較的小さい気孔及びそれに付随するフォームと硬化された樹脂との潜在的により劣悪な「かみ合い」に基づき、良好な外層付着は予測し得なかったからである。
【0040】
さらに、PMMA系フォームが、PVC及びPETフォームよりも高いガラス転移温度を有することが見出された。規格ISO 6721-7に従うDMTA測定により決定される、PMMA系フォームのガラス転移温度は、少なくとも110℃、好ましくは少なくとも130℃である。このことはさらにまた、硬化プロセスの際のより高い温度を可能にし、それによりプロセス時間は短縮され、ひいては費用対効果をより高くすることができる。サンドイッチ部材の製造の際の該樹脂の硬化が、110℃を超える、好ましくは120℃を超える温度で、実施することができることが見出された。これは、従来の発泡の場合に不可能である、それというのも、これらの温度ですでに分解及び/又は軟化が行われるからである。
【0041】
>110℃の温度での該サンドイッチ部材の製造の際の該樹脂の硬化は、モールドの加熱又は照射により行われる。
【0042】
該樹脂の硬化は、電気加熱可能なモールド中で又は流体(例えば蒸気)が貫流されるモールドを用いて、行うことができる。
【0043】
照射による該樹脂の硬化は、赤外線又はマイクロ波により行われる。
【0044】
さらに、本発明によるサンドイッチ部材を、高めた圧力下で製造することが可能である。その際に、プレス法又はオートクレーブ法が利用される。その際に、型中へ繊維層が挿入され、該フォームコアが載せられ、かつさらなる繊維層が載せられる。変法に応じて、≧1barの圧力が適用されるか又は真空が適用され、かつ該樹脂は注入されるかもしくは吸い込まれる。
【0045】
該ポリメチルメタクリレート系硬質フォームは、質量に関して特別な要件が課されるサンドイッチ材料において使用することができる。低下された樹脂吸収量は低質量をもたらし、このことは、こうして製造されたサンドイッチ材料が、低質量で良好な接合付着が要求されている用途に特に好適であることをもたらす。このことは、そのうえ、利用される樹脂の消費に関してより少ないコストをもたらす。さらに、調査されたPMMAフォームは、より高い耐熱変形性により、潜在的により高いプロセス温度、ひいてはプロセス時間節約を可能にする。
【0046】
該ポリメチルメタクリレート系硬質フォームは、耐候性の絶縁材料、サンドイッチ複合材用のコア材料として、軽量構造において、包装材料として、衝突要素におけるエネルギー吸収体として、建築構造要素において、照明工学用途における拡散体として、家具組立において、ボート建造において、車両製造において、航空工業において又は模型組立において、殊に風力発電装置におけるローターブレードにおけるコア材料として、適している。
【実施例
【0047】
樹脂吸収量
使用される材料:
PVCフォーム:3A Composites社、ツーク州シュタインハウゼン(スイス)からのAirex C70.55
PETフォーム:3A Composites社、ツーク州シュタインハウゼン(スイス)からのAirex T10.100
PMMAフォーム:Evonik Resource Efficiency GmbH社、ドイツからのROHACRYL55
該コア材料の樹脂吸収量は、VARI(バキュームアシストレジンインフュージョン)によって実験的に決定しなければならない。その測定のために、300×300mmの試料プレートの最小寸法が規定された。
【0048】
該インフュージョンの前に、該試料寸法及び試料質量は、該試料密度及び該単位面積質量を決定するために、±0.01mm及び±0.01gの測定精度に調節しなければならない。該樹脂の粘度は、該温度に著しく依存しているので、試験装置は、一定の条件を保証するために30℃に予熱される。該試験装置の気密性は真空試験により試験され、その際に、その注入口及び注出口はクランプ締めされ、かつ30min後に真空損失が制御される。
【0049】
さらに、該樹脂成分は、脱ガスされるべきである。このことは、該樹脂及び硬化剤を真空中で-0.8bar及び40℃で60min真空排気することにより行われる。その混合前に、双方の成分を室温に冷却しなければならず、そのために該反応は制御されて開始することができる。引き続き、-0.8bar及び40℃で10minの該樹脂系の第2の脱気が実施される。該試験装置の真空試験が完了している場合に、該インフュージョンを開始することができる。該樹脂が硬化されるまで、真空引きされるべきである。該インフュージョンの完了後に、該樹脂系は30℃で少なくとも18時間硬化されるべきである。
【0050】
最後に、ふちを直角に切って形を整え、ピールプライを取り去る。ドライフォームプレート及び注入されたフォームプレートの単位面積質量の差が、樹脂吸収量となる。
【0051】
該樹脂吸収量の得られた値は、次の表に示されている:
【表1】
【0052】
外層付着
規格試験であるドラムピール試験(DIN 53295)に従って、サンドイッチプレートを該外層の突出部で公知の試験装置中へ挟み込む。把持具を用いて、該外層は、突出部で把持され、一定の機械速度で該コア材料から取り去られる。そのために必要な力が記録される。これは、外層付着についての情報を与える。
【0053】
実施された実験において、該フォーム材料の破壊が起こった。接着層(樹脂層)中で凝集破壊が接着破壊(フォームコア及び外層の分離)の代わりに起こることは、良好な外層付着の指標である。
【0054】
こうして、PMMAフォームコアへの十分な外層付着が実証される。
【0055】
別の試験方法において、外層付着も測定される。
【0056】
フラットワイズ引張試験(ASTM C297)は、50×50mmの試験体から出発する。該試験体は、樹脂層のフォームコア及び上側及び下側の外層からなる。該試験体を、引張装置中へ挟み込む。一定の引張速度で、上部の保持具が引っ張られる。
【0057】
実施された実験において、該フォームコアの破壊まで引っ張られた。該外層の、該樹脂層上のコア材料からの剥離を検出することができなかった。
【0058】
こうして、十分な外層付着が実証される。
【0059】
該耐熱変形性の評価のためのガラス転移温度の測定
Tg値を、ISO 6721-7に従うDMTA測定により決定した。次の値が見出された:
【表2】
【0060】
高めた温度での硬化
該フォームコアに該外層を設け、エポキシ樹脂を注入する。密閉したモールド中で、該材料は110℃に加熱される。その架橋は、高めた温度により促進される。
【0061】
比較的短いサイクル時間が決定された。室温で実施された比較実験の場合に、その硬化時間は24hを上回っていた。その硬化プロセスは、ここでは110℃の温度で20minに短縮することができた。
【国際調査報告】