(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】HIV治療に有用な化合物
(51)【国際特許分類】
C07H 19/173 20060101AFI20221003BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221003BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20221003BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C07H19/173 CSP
A61P31/18
A61K31/7076
A61K9/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507749
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 IB2020057221
(87)【国際公開番号】W WO2021024114
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513110104
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、(ナンバー2)、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY (NO.2) LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】521396042
【氏名又は名称】ヴィーブ、ヘルスケア、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】VIIV HEALTHCARE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ビセンテ、サマノ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、テメルコフ
(72)【発明者】
【氏名】エミール、ジョハン、ベルジュイセン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL34
4C057LL42
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC35
4C076CC42
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA55
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、式(I)及び(II)の化合物、それらの塩、それらの医薬組成物、並びに対象におけるHIVを治療又は予防する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R
1は、
【化2】
であり、
Xは、NH
2、F及びClからなる群から選択され、
R
2は、-C(=O)-R
4であり、
R
4は、-(CH
2)
b-NH(C=O)-(C
1-C
10アルキル)、-(CH
2)
c-O-(CH
2CH
2O)
d-(C
1-C
14アルキル)、-(C
1-C
20)アルキレン-(C=O)-O-R
8及び
【化3】
からなる群から選択され、
bは、1~6の整数であり、
c及びdは、1~4から独立して選択される整数であり、
R
8は、Hであり、
R
3は、Hであり、
R
6及びR
7は、それぞれHである。]
又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
Xが、Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
4が、-(CH
2)
c-O-(CH
2CH
2O)
d-(C
1-C
14アルキル)であり、c及びdが、1~4から独立して選択される整数である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R
4が、-(CH
2)
b-NH(C=O)-(C
1-C
10アルキル)であり、bが、1~6の整数である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
R
4が、
【化4】
である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
式(II)の化合物:
【化5】
[式中、
R
1は、
【化6】
であり、
Xは、NH
2、F及びClからなる群から選択され、
R
2は、-C(=O)-R
4であり、
R
4は、-(CH
2)
b-NH(C=O)-(C
1-C
10アルキル)、-(CH
2)
c-O-(CH
2CH
2O)
d-(C
1-C
14アルキル)、-(C
1-C
20)アルキレン-(C=O)-O-R
8及び
【化7】
からなる群から選択され、
bは、1~6の整数であり、
c及びdは、1~4から独立して選択される整数であり、
R
8は、Hであり、
R
3は、Hであり、
R
6及びR
7は、それぞれHである。]
又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
下記化合物:
【表1】
からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項9】
非経口形態で存在する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
錠剤形態である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
対象におけるHIV感染症を治療する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
対象におけるHIV感染症を治療する方法であって、請求項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
HIV感染症を発症するリスクのある対象におけるHIV感染症を予防する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
HIV感染症を発症するリスクのある対象におけるHIV感染症を予防する方法であって、請求項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
HIV感染症の治療に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
HIV感染症の予防に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
HIV感染症を治療するための医薬の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項18】
HIV感染症を予防するための医薬の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、医薬組成物、及びHIVに感染した個体に関連するそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染は、後天性免疫不全症(AIDS)の発症を引き起こす。HIVの症例数は増え続けており、現在、世界中で推定3,500万人以上がHIV感染症に罹患している(例えば、http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S235230181630087X?via%3Dihub)。
【0003】
現在、抗レトロウイルス薬によるウイルス複製の長期抑制は、HIV-1感染症を治療するための唯一の選択肢である。実際、米国食品医薬品局は、6種の異なる阻害剤クラスに対して25種の薬剤を承認しており、患者の生存率及び生活の質を大幅に向上させることが示されている。しかしながら、複数の問題、例えば、以下に限定されないが、望ましくない薬物―薬物相互作用;薬物-食品相互作用;療法の不遵守;酵素標的の変異による薬剤耐性;及びHIV感染症によって引き起こされる免疫学的損傷に関連する炎症のために、追加の療法が依然として必要であると考えられている。
【0004】
現在、ほとんどすべてのHIV陽性患者は、高活性抗レトロウイルス療法(「HAART」)と呼ばれる抗レトロウイルス薬の組み合わせの治療レジメンにより治療されている。しかしながら、HAART療法は複雑になることが頻繁にあり、この理由は、異なる薬剤の組み合わせを患者にほぼ毎日投与して、薬剤耐性HIV-1バリアントの急速な出現を回避する必要があるためである。患者の生存に対するHAARTの好影響にもかかわらず、薬剤耐性は依然として発生する可能性があり、非感染者と比較して生存と生活の質は正常化されていない[Lohse Ann Intern Med 2007 146;87-95]。実際、いくつかの非AIDS性、例えば、心血管疾患、虚弱及び神経認知障害の罹患率及び死亡率は、HAARTにより抑制されているHIV感染対象で増加している[Deeks Annu Rev Med 2011;62:141-155]。非AIDS性罹患率/死亡率の発生頻度の増加は、HIV感染症によって引き起こされる免疫学的損傷に関連する全身性炎症の上昇との関連で発生し、HIV感染症によって引き起こされる免疫学的損傷に関連する全身性炎症の上昇により引き起こされる可能性がある[Hunt J Infect Dis 2014][Byakagwa J Infect Dis 2014][Tenorio J Infect Dis 2014]。
【0005】
現在の抗レトロウイルス療法(ART)は、HIV複製を効果的に抑制し、HIV感染者の健康状態を改善し得るが、個人内のHIVウイルスリザーバーを完全に排除することはできないと考えられている。HIVゲノムは、感染した個人のほとんどの免疫細胞内に潜伏し続け得、いつでも再活性化し得る。それにより、ARTの中断後、ウイルス複製は通常数週間以内に再開する。少数の個人では、このウイルスリザーバーのサイズが大幅に縮小され、ARTの停止時に、ウイルス複製のリバウンドが遅延する[Henrich TJ J Infect Dis 2013][Henrich TJ Ann Intern Med 2014]。あるケースでは、白血病の治療中にウイルスリザーバーが排除され、数年間の追跡調査中にウイルスのリバウンドは観察されなかった[Hutter G N Engl J Med 2009]。これらの例は、ウイルスリザーバーの減少又は排除が可能であり、ウイルスの寛解又は治癒につながり得る概念を示唆している。その結果、直接的な分子的手段によって、例えば、CRISPR/Cas9システムによるウイルスゲノムの切除によってウイルスリザーバーを排除する方法、又はART中に潜伏リザーバーの再活性化を誘導し、それにより、潜伏細胞を排除する方法が追求されてきた。潜伏リザーバーの誘導は、通常、潜伏感染細胞の直接的な死、又はウイルスが可視化された後の免疫系による誘導細胞の死滅のいずれかをもたらす。これはART中に実行されるために、生成されたウイルスゲノムは新しい細胞の感染を引き起こさないと考えられており、リザーバーのサイズを低下させ得る。
【0006】
HAART療法は複雑になることが頻繁にあり、この理由は、異なる薬剤の組み合わせを患者にほぼ毎日投与して、薬剤耐性HIV-1バリアントの急速な出現を回避する必要があるためである。患者の生存に対するHAARTの好影響にもかかわらず、薬剤耐性は依然として発生する可能性がある。
【0007】
現在のガイドラインでは、療法には3種の十分な有効薬剤を含めることが推奨されている。例えば、https://aidsinfo.nih.gov/guidelinesを参照されたい。通常、一次療法では、ウイルス酵素の逆転写酵素及びインテグラーゼを標的とする2~3種の薬剤を組み合わせる。抗レトロウイルス薬によるHIV-1感染患者の持続的な治療の成功には、承認された薬剤に対する耐性を生じたHIV株に対して有効である新規の改良された薬剤の継続的な開発を採用していると考えられている。例えば、3TC/FTCを含むレジメンに関する個人は、これらの薬剤に対する感受性を100分の1未満に低下させるM184V変異を選択する場合がある。例えば、https://hivdb.stanford.edu/dr-summary/resistance-notes/NRTIを参照されたい。
【0008】
変異の成立を予防することに対処し得る別の方法は、薬剤レジメンへの患者のアドヒアランスを高めることである。これを達成し得る方法の1つは、投与頻度を減少させることによる。非経口投与の場合には、溶解性を低下させ、間質液内の放出速度を制限するために、親油性の高い原薬を有することが有利であると考えられている。しかしながら、ほとんどの核酸系逆転写酵素阻害剤は親水性であるため、長時間作用型の非経口剤としての使用が制限される可能性がある。
【0009】
上記の欠点を有する可能性のある化合物に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0010】
一態様では、式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R
1は、
【化2】
であり、
Xは、NH
2、F及びClからなる群から選択され、
R
2は、-C(=O)-R
4であり、
R
4は、-(CH
2)
b-NH(C=O)-(C
1-C
10アルキル)、-(CH
2)
c-O-(CH
2CH
2O)
d-(C
1-C
14アルキル)、-(C
1-C
20)アルキレン-(C=O)-O-R
8及び
【化3】
からなる群から選択され、
bは、1~6の整数であり、
c及びdは、1~4から独立して選択される整数であり、
R
8は、Hであり、
R
3は、Hであり、
R
6及びR
7は、それぞれHである。]
又はその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0011】
別の態様では、式(II)の化合物:
【化4】
[式中、
R
1は、
【化5】
であり、
Xは、NH
2、F及びClからなる群から選択され、
R
2は、-C(=O)-R
4であり、
R
4は、-(CH
2)
b-NH(C=O)-(C
1-C
10アルキル)、-(CH
2)
c-O-(CH
2CH
2O)
d-(C
1-C
14アルキル)、-(C
1-C
20)アルキレン-(C=O)-O-R
8及び
【化6】
からなる群から選択され、
bは、1~6の整数であり、
c及びdは、1~4から独立して選択される整数であり、
R
8は、Hであり、
R
3は、Hであり、
R
6及びR
7は、それぞれHである。]
又はその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0012】
別の態様において、本発明は、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩と、賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、HIV感染症を発症するリスクのある対象におけるHIV感染症を治療又は予防する方法であって、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0014】
別の態様において、治療に使用するための、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0015】
別の態様において、HIV感染症の治療又は予防に使用するための、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0016】
別の態様において、HIV感染症を治療又は予防するための医薬の製造における式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩の使用が提供される。
【0017】
これらの態様及びその他の態様は、本明細書に記載の本発明に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この出願を通じて、化合物、組成物及び方法に関連する様々な実施形態が参照される。記載されている様々な実施形態は、様々な例示的な例を提供することを意図しており、選択的な種の説明として解釈されるべきではない。むしろ、本明細書で提供される様々な実施形態の説明は、重複する範囲のものであり得ることに留意されたい。本明細書で論じられる実施形態は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0019】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解されたい。本明細書及び以下の特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるいくつかの用語が参照される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「式の化合物」及び「複数の式の化合物」等の用語は、本明細書で定義される化合物のそれぞれ及びすべて、すなわち式(I)~(II)の化合物を指すことを意図する。
【0021】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、以下の定義が適用される。
【0022】
「アルキル」は、例えば、1~25個の炭素、例えば、1~10個の炭素原子、及びいくつかの実施形態では、1~6個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族炭化水素基を指す。「(Cx-Cy)アルキル」は、x~y個の炭素原子を有するアルキル基を指す。「アルキル」という用語は、例として、直鎖及び分岐鎖のヒドロカルビル基、例えば、メチル(CH3-)、エチル(CH3CH2-)、n-プロピル(CH3CH2CH2-)、イソプロピル((CH3)2CH-)、n-ブチル(CH3CH2CH2CH2-)、イソブチル((CH3)2CHCH2-)、sec-ブチル((CH3)(CH3CH2)CH-)、t-ブチル((CH3)3C-)、n-ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2-)及びネオペンチル((CH3)3CCH2-)を含む。特定の実施形態において、アルキル基は、1個又は2個以上のヘテロ原子、例えば、Oを含み得る。本発明の目的のために、アルキルは、本明細書で定義されるアルキレン基を包含すると解釈され得る。
【0023】
「アルキレン」は、例えば、1~25個の炭素原子を有し得る二価の飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基には、分岐鎖及び直鎖のヒドロカルビル基が含まれる。例えば、「(C
1-C
6)アルキレン」は、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ジメチルエチレン、ペンチレン等を含むことを意味する。したがって、「プロピレン」という用語は、以下の構造:
【化7】
によって例示され得る。
【0024】
同様に、「ジメチルブチレン」という用語は、以下の3種の構造:
【化8】
p、又は
【化9】
のいずれか又はそれ以外の構造によって例示され得る。さらに、用語「(C
1-C
6)アルキレン」は、分岐鎖ヒドロカルビル基、例えば、シクロプロピルメチレン(以下の構造:
【化10】
によって例示され得る)を含むことを意味する。
【0025】
「アルケニル」は、例えば2~25個、例えば2~20個、例えば2~10個の炭素原子、いくつかの実施形態では2~6個の炭素原子又は2~4個の炭素原子を有し、少なくとも1個の不飽和ビニル部位(>C=C<)を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を指す。例えば、(Cx-Cy)アルケニルは、x~y個の炭素原子を有するアルケニル基を指し、例えば、エテニル、プロペニル、イソプロピレン、1,3-ブタジエニル等を含むことを意味する。ポリアルケニル置換基もまた、この定義に包含される。特定の実施形態において、アルケニル基は、1個又は2個以上のヘテロ原子、例えば、Oを含み得る。
【0026】
「アルキニル」は、少なくとも1個の三重結合を含む直鎖の一価炭化水素基又は分岐鎖の一価炭化水素基を指す。「アルキニル」という用語はまた、1個の三重結合及び1個の二重結合を有するそれらのヒドロカルビル基を含むことを意味する。例えば、(C2-C25)、(C2-C20)又は(C2-C6)アルキニルは、エチニル、プロピニル等を含むことを意味する。ポリアルキニル置換基もまた、この定義に包含される。特定の実施形態において、アルキニル基は、1個又は2個以上のヘテロ原子、例えば、Oを含み得る。
【0027】
「アルコキシ」は、アルキルが本明細書で定義される基である-O-アルキル、例えば、C1-C6アルコキシを指す。アルコキシには、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ及びn-ペントキシが含まれる。
【0028】
「AUC」は、薬剤投与後の時間に対する薬剤の血漿濃度(濃度の対数ではない)のプロット下の面積を指す。
【0029】
「EC50」は、最大の半分の反応を示す薬剤の濃度を指す。
【0030】
「IC50」は、薬剤の半数阻害濃度を指す。場合によっては、pIC50スケール(-logIC50)に変換されることもある。この場合には、値が高いほど、効力が指数関数的に高くなる。
【0031】
本明細書で使用される「化合物」、「複数の化合物」、「化学物質」及び「複数の化学物質」は、本明細書に記載の一般式に包含される化合物、それらの一般式の任意の下位一般式に包含される化合物、並びに一般式及び下位一般式内の化合物の任意の形態、例えば、化合物又は複数の化合物のラセミ体、立体異性体及び互変異性体を指す。
【0032】
「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素又は硫黄を意味し、任意の窒素の酸化形態、例えば、N(O){N+-O-}、任意の硫黄の酸化形態、例えば、S(O)及びS(O)2、並びに任意の塩基性窒素の四級化形態を含む。
【0033】
「多形性」とは、2種又は3種以上の明らかに異なる表現型が、ある種の同じ集団に存在し、複数の形態又はモルフが発生している場合を指す。そのように分類されるためには、モルフは同時に同じ生息地を占め、パンミクティック集団(ランダム交配する集団)に属している必要がある。
【0034】
「ラセミ体」は、エナンチオマーの混合物を指す。本発明の実施形態において、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、1種のエナンチオマーで鏡像異性的に富化され、言及されるすべてのキラル炭素は1つの配置である。一般に、鏡像異性的に富化された化合物又は塩への言及は、特定のエナンチオマーが、化合物又は塩のすべてのエナンチオマーの総重量の50重量%を超えることを示すことを意味する。
【0035】
化合物の「溶媒和物」又は「複数の溶媒和物」は、化学量論的量又は非化学量論的量の溶媒に結合している、上記で定義された化合物の溶媒和物を指す。化合物の溶媒和物には、化合物のすべての形態の溶媒和物が含まれる。特定の実施形態において、溶媒は、揮発性、非毒性及び/又は微量のヒトへの投与に許容可能である。適切な溶媒和物には水が含まれる。
【0036】
「立体異性体」又は「複数の立体異性体」は、1個又は2個以上の立体中心のキラリティーが異なる化合物を指す。立体異性体には、エナンチオマー及びジアステレオマーが含まれる。
【0037】
「互変異性体」とは、プロトンの位置が異なる化合物(例えば、エノール-ケト及びイミン-エナミン互変異性体)の選択的な形態、又は環-NH-部分及び環=N-部分の両方に接続している環原子を含むヘテロアリール群(例えば、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール及びテトラゾール)の互変形態を指す。
【0038】
「アトロプ異性体」という用語は、非対称軸から生じる立体異性体を指す。これは、十分に回転障壁が高い単結合に関する回転の制限に起因し得、安定した非相互変換ジアステレオマー又はエナンチオマー種の、最高で完全な単離及びそれ以下の単離を含む、異性体種の区別を可能にし得る。当業者は、コアに非対称的なRxを導入すると、アトロプ異性体の形成が可能であることを認識する。さらに、第2のキラル中心が、アトロプ異性体を有する所与の分子に導入されると、2個のキラル元素が一緒になって、ジアステレオマー及びエナンチオマーの立体化学種を生成し得る。Cx軸に関する置換に応じて、アトロプ異性体間の相互変換が可能である場合と不可能である場合があり、温度に依存する場合がある。いくつかの例において、アトロプ異性体は、室温で容易に相互変換し得、周囲条件下では分割することができない。その他の状況では、分割及び単離が可能であり得るが、相互変換が数秒から数時間、さらには数日又は数か月にわたって発生して、その結果、光学純度が時間の経過とともに測定可能に低下する場合がある。さらにその他の種は、周囲温度及び/又は高温下での相互変換が完全に制限され、その結果、分割及び単離が可能であり、安定な種を生じ得る。既知の場合、分割されたアトロプ異性体は、らせん構造の命名法を使用して命名された。この指定では、軸の前後で最も順位の高い2種の配位子のみが考慮される。手前の配位子1から奥の配位子1への回転順位が時計回りの場合には、配置はPであり、反時計回りの場合には、配置はMである。
【0039】
「薬学的に許容可能な塩」とは、当技術分野で周知の様々な有機及び無機の対イオンに由来する薬学的に許容可能な塩を指す。「薬学的に許容可能な塩」には、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及びテトラアルキルアンモニウム、並びに、分子が塩基性官能基を含む場合、有機酸又は無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩及びシュウ酸塩が含まれる。適切な塩には、P.Heinrich Stahl,Camille G.Wermuth(Eds.),Handbook of Pharmaceutical Salts Properties,Selection,and Use;2002に記載されている塩が含まれる。
【0040】
「患者」又は「対象」は、哺乳動物を指し、ヒト及びヒト以外の哺乳動物を含む。
【0041】
患者の病気を「治療すること」又は患者の病気の「治療」とは、1)疾患の素因がある患者若しくはまだ疾患の症状を示していない患者において疾患が発症するのを予防すること、2)疾患を防止すること、若しくは疾患の進行を停止させること、又は3)疾患を改善すること、若しくは疾患を軽減することを指す。
【0042】
芳香環、例えば、アリール又はヘテロアリール環を有する特定の化合物又は一般式が記載されている場合には、特定の芳香族化合物の二重結合の位置は、たとえそれらが化合物ごと又は式ごとに異なる位置に記載されているとしても、等価位置の混合である。例えば、以下の2個のピリジン環(A及びB)
【化11】
では、二重結合は異なる位置に描画されているが、それらは、同一の構造及び同一の化合物であることが知られている。
【0043】
本発明は、化合物に加えて、それらの薬学的に許容可能な塩を含む。したがって、「化合物又はその薬学的に許容可能な塩」の文脈における「又は」という用語は、1)化合物単独又はその薬学的に許容可能な塩(選択的)、又は2)化合物及びその薬学的に許容可能な塩(組み合わせ)のいずれかを指すことが理解される。
【0044】
特に明記しない限り、本明細書で明示的に定義されていない置換基の命名は、官能基の末端部分、次いで、接続点に向かって隣接する官能基に名前を付けることによって到達される。例えば、置換基「アリールアルキルオキシカルボニル」は、基(アリール)-(アルキル)-O-C(O)-を指す。「-C(Rx)2」等の語では、2個のRx基が同じであり得、或いは、Rxが2以上のアイデンティティ(identity)を有し得ると定義されている場合は異なり得ることを理解する必要がある。さらに、特定の置換基は、-RxRyとして記載され、ここで、「-」は、親分子に隣接する結合を示し、Ryは官能基の末端部分である。同様に、上記の定義は、許容されない置換パターン(例えば、5個のフルオロ基で置換されたメチル)を含むことを意図していないことが理解される。そのような許容されない置換パターンは、当業者によく知られている。
【0045】
一態様では、式(I)の化合物:
【化12】
[式中、
R
1は、
【化13】
であり、
Xは、NH
2、F及びClからなる群から選択され、
R
2は、-C(=O)-R
4であり、
R
4は、-(CH
2)
b-NH(C=O)-(C
1-C
10アルキル)、-(CH
2)
c-O-(CH
2CH
2O)
d-(C
1-C
14アルキル)、-(C
1-C
20)アルキレン-(C=O)-O-R
8及び
【化14】
からなる群から選択され、
bは、1~6の整数であり、
c及びdは、1~4から独立して選択される整数であり、
R
8は、Hであり、
R
3は、Hであり、
R
6及びR
7は、それぞれHである。]
又はその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0046】
別の態様では、式(II)の化合物:
【化15】
[式中、
R
1は、
【化16】
であり、
Xは、NH
2、F及びClからなる群から選択され、
R
2は、-C(=O)-R
4であり、
R
4は、-(CH
2)
b-NH(C=O)-(C
1-C
10アルキル)、-(CH
2)
c-O-(CH
2CH
2O)
d-(C
1-C
14アルキル)、-(C
1-C
20)アルキレン-(C=O)-O-R
8及び
【化17】
からなる群から選択され、
bは、1~6の整数であり、
c及びdは、1~4から独立して選択される整数であり、
R
8は、Hであり、
R
3は、Hであり、
R
6及びR
7は、それぞれHである。]
又はその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0047】
好ましくは、式(I)~(II)の実施形態において、XはFである。
【0048】
好ましくは、式(I)及び(II)の実施形態において、R4は、-(CH2)c-O-(CH2CH2O)d-(C1-C14アルキル)であり、c及びdは、1~4から独立して選択される整数である。さらに好ましくは、R4は、-(CH2)c-O-(CH2CH2O)d-(C1アルキル)であり、cは1であり、dは1又は2である。
【0049】
好ましくは、式(I)及び(II)の実施形態において、R4は、-(CH2)b-NH(C=O)-(C1-C10アルキル)であり、bは、1~6の整数である。さらに好ましくは、R4は、-(CH2)-NH(C=O)-(C6)アルキルである。
【0050】
好ましくは、式(I)及び(II)の実施形態において、R
4は、
【化18】
である。さらに好ましくは、式(I)及び(II)の実施形態において、R
4は、
【化19】
である。最も好ましくは、式(I)及び(II)の実施形態において、R
4は、
【化20】
である。
【0051】
好ましくは、式(Ia)及び(IIa)の実施形態において、R4は、-(C1-C20)アルキレン-(C=O)-O-R8であり、R8はHである。様々な好ましい実施形態において、R4は、-(C5-C20)アルキレン-(C=O)-OHである。
【0052】
本発明の別の態様において、本発明は、様々な別個の化合物を包含し得る。例として、そのような特定の化合物は、以下の(表1)の化合物及びそれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択可能である。
【0053】
【0054】
一実施形態において、本発明は、上記の表1に列挙された個々の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を包含する。
【0055】
様々な実施形態において、本明細書に記載の式(I)~(II)の化合物のいずれかのプロドラッグもまた、本発明の範囲内にある。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。さらなる実施形態において、化合物は、アモルファス形態で存在する。さらなる実施形態において、医薬組成物は錠剤形態である。さらなる実施形態において、医薬組成物は非経口形態である。さらなる実施形態において、化合物は、噴霧乾燥された分散液として存在する。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、対象におけるHIV感染症を治療する方法であって、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、対象におけるHIV感染症を治療する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、HIV感染症を発症するリスクのある対象におけるHIV感染症を予防する方法であって、式(I)~(II)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、HIV感染症を治療するための医薬の製造における、式(I)~(II)の化合物の使用が提供される。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、HIV感染症を予防するための医薬の製造における、式(I)~(II)の化合物の使用が提供される。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、HIV感染症の治療に使用するための、式(I)~(II)の化合物が提供される。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、HIV感染症の予防に使用するための、式(I)~(II)の化合物が提供される。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、HIV感染症を発症するリスクのある対象におけるHIV感染症を予防する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0065】
さらに、本発明の化合物は、特定の幾何学的又は立体異性形態で存在することができる。本発明は、本発明の範囲に含まれる化合物として、すべてのそのような化合物、例えば、シス-及びトランス-異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、それらのラセミ混合物、及びそれらのその他の混合物、例えば、エナンチオマー的若しくはジアステレオマー的に富化された混合物を企図する。追加の不斉炭素原子が、置換基、例えば、アルキル基中に存在してもよい。すべてのそのような異性体及びそれらの混合物は、本発明に含まれることが意図される。
【0066】
光学活性(R)-及び(S)-異性体並びにd及びl異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製され得、或いは、慣用の技術を使用して分割され得る。例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望まれる場合には、それは不斉合成によって、又はキラル補助剤による誘導体化によって調製され得る。後者の場合には、得られたジアステレオマー混合物は分離され、補助基は切断されて、純粋な所望のエナンチオマーが得られる。或いは、分子が、塩基性官能基、例えば、アミノ基又は酸性官能基、例えば、カルボキシル基を含有する場合には、適切な光学活性酸又は塩基を使用してジアステレオマー塩を形成させ、次いで、そうして形成されたジアステレオマーを当技術分野で公知の分別結晶法又はクロマトグラフィー手段によって分割し、次いで、純粋なエナンチオマーを回収することができる。さらに、エナンチオマー及びジアステレオマーの分離は、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーを使用して、場合により、化学的誘導体化(例えば、アミンからのカルバメートの形成)と組み合わせて、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーを使用して、達成されることが多い。
【0067】
本発明の別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物が提供され、ここで、化合物又は化合物の塩は、ヒトにおけるHIV感染症の治療に使用するための医薬の製造において使用される。
【0068】
本発明の別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物が提供され、ここで、化合物又は化合物の塩は、ヒトにおけるHIV感染症の予防に使用するための医薬の製造において使用される。
【0069】
一実施形態において、式(I)~(II)の化合物又はその塩を含む医薬製剤は、非経口投与に適合した製剤である。別の実施形態において、製剤は、長時間作用型の非経口製剤である。さらなる実施形態において、製剤はナノ粒子製剤である。
【0070】
本発明の化合物及びそれらの塩、溶媒和物又はその他の薬学的に許容可能な誘導体は、単独で、又はその他の治療薬と組み合わせて使用され得る。したがって、その他の実施形態において、対象におけるHIV感染症を治療及び/又は予防する方法は、式(I)~(II)の化合物の投与に加えて、HIVに対して有効な1種又は2種以上の追加の医薬品の投与をさらに含み得る。
【0071】
そのような実施形態において、HIVに対して有効な1種又は2種以上の追加の薬剤は、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、ラミブジン(lamivudine)、ザルシタビン(zalcitabine)、アバカビル(abacavir)、スタブジン(stavudine)、アデホビル(adefovir)、アデホビルジピボキシル(adefovir dipivoxil)、ホジブジン(fozivudine)、トドキシル(todoxil)、エムトリシタビン(emtricitabine)、アロブジン(alovudine)、アムドキソビル(amdoxovir)、エルブシタビン(elvucitabine)、ネビラピン(nevirapine)、デラビルジン(delavirdine)、エファビレンツ(efavirenz)、ロビリド(loviride)、イムノカル(immunocal)、オルチプラズ(oltipraz)、カプラビリン(capravirine)、レルシビリン(lersivirine)、GSK2248761、TMC-278、TMC-125、エトラビリン(etravirine)、サキナビル(saquinavir)、リトナビル(ritonavir)、インジナビル(indinavir)、ネルフィナビル(nelfinavir)、アンプレナビル(amprenavir)、ホスアンプレナビル(fosamprenavir)、ブレカナビル(brecanavir)、ダルナビル(darunavir)、アタザナビル(atazanavir)、チプラナビル(tipranavir)、パリナビル(palinavir)、ラシナビル(lasinavir)、エンフビルチド(enfuvirtide)、T-20、T-1249、PRO-542、PRO-140、TNX-355、BMS-806、BMS-663068、BMS-626529、5-へリックス(5-Helix)、ラルテグラビル(raltegravir)、エルビテグラビル(elvitegravir)、ドルテグラビル(dolutegravir)、カボテグラビル(cabotegravir)、ビクリビロク(vicriviroc)(Sch-C)、Sch-D、TAK779、マラビロク(maraviroc)、TAK449、ジダノシン(didanosine)、テノホビル(tenofovir)、ロピナビル(lopinavir)、及びダルナビル(darunavir)からなる群から選択される。
【0072】
したがって、式(I)~(II)の本発明の化合物と、任意のその他の1種又は2種以上の医薬有効成分とは、一緒に又は別個に投与されてもよく、別個に投与する場合には、投与は同時に又は任意の順序で順次に行ってもよい。本発明の式(I)~(II)の化合物及びその他の1種又は2種以上の医薬有効成分の量と、投与の相対的タイミングとは、所望の併用治療効果を達成するために選択される。式(I)~(II)の本発明の化合物及びそれらの塩、溶媒和物又はその他の薬学的に許容可能な誘導体と、その他の治療剤との組み合わせにおける投与は、(1)両方の化合物を含む単一の医薬組成物;又は(2)化合物のうちの1種をそれぞれ含む別個の医薬組成物の同時投与による組み合わせであってもよい。或いは、組み合わせは、別個に順次投与され得、一方の治療剤が最初に投与され、他方が2番目に投与されるか、又はその逆である。そのような順次投与は、時間的に近くてもよく、又は時間的に離れていてもよい。式(I)又は(II)の1種又は2種以上の化合物、それらの塩、及びその他の1種又は2種以上の医薬有効成分の量と、投与の相対的タイミングとは、所望の併用治療効果を達成するために選択される。
【0073】
さらに、式(I)~(II)の本発明の化合物は、HIVの予防又は治療に有用であり得る1種又は2種以上のその他の薬剤と組み合わせて使用され得る。このような薬剤の例には、以下の薬剤を含む:
核酸系逆転写酵素阻害剤、例えば、ジドブジン、ジダノシン、ラミブジン、ザルシタビン、アバカビル、スタブジン、アデホビル、アデホビルジピボキシル、ホジブジン、トドキシル、エムトリシタビン、アロブジン、アムドキソビル、エルブシタビン及び同様の薬剤;
非核酸系逆転写酵素阻害剤(例えば、抗酸化活性を有する薬剤、例えば、イムノカル、オルチプラズ等)、例えば、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、ロビリド、イムノカル、オルチプラズ、カプラビリン、レルシビリン、GSK2248761、TMC-278、TMC-125、エトラビリン及び同様の薬剤;
プロテアーゼ阻害剤、例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ホスアンプレナビル、ブレカナビル、ダルナビル、アタザナビル、チプラナビル、パリナビル、ラシナビル及び同様の薬剤;
侵入、吸着及び融合阻害剤、例えば、エンフビルチド(T-20)、T-1249、PRO-542、PRO-140、TNX-355、BMS-806、BMS-663068、BMS-626529、5-へリックス及び同様の薬剤;
インテグラーゼ阻害剤、例えば、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ビクテグラビル(bictegravir)、カボテグラビル及び同様の薬剤;
成熟阻害剤、例えば、PA-344及びPA-457、及び同様の薬剤;及び
CXCR4及び/又はCCR5阻害剤、例えば、ビクリビロク(vicriviroc)(Sch-C)、Sch-D、TAK779、マラビロク(UK427,857)、TAK449、並びにWO02/74769、PCT/US03/39644、PCT/US03/39975、PCT/US03/39619、PCT/US03/39618、PCT/US03/39740及びPCT/US03/39732に開示されている薬剤、並びに同様の薬剤。
【0074】
その他の組み合わせ、例えば、Gilead Sciencesによって市販されているBiktarvy(登録商標)(ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビル/アラフェナミド(Alafenamide))を本発明の化合物と併せて使用してもよい。
【0075】
本発明の化合物を、HIVの予防又は治療に有用な1種又は2種以上の薬剤と組み合わせて使用し得るさらなる例は、表2に見出される。
【表2】
【0076】
本発明の化合物とHIV薬剤との組み合わせの範囲は、上で挙げたものに限定されることなく、原則として、HIVの治療及び/又は予防に有用な任意の医薬組成物との任意の組み合わせを含む。上記のとおり、そのような組み合わせにおいて、本発明の化合物及びその他のHIV薬剤は、別個に又は一緒に投与されてもよい。さらに、1種の薬剤は、その他の1種又は2種以上の薬剤の投与の前、同時又は後であってもよい。
【0077】
本発明は、薬理的促進剤として有用な1種又は2種以上の薬剤と組み合わせて、且つ、HIVの予防又は治療のための追加の化合物を伴って又はそれを伴わずに使用され得る。そのような薬理的促進剤(又は薬物動態強化剤)の例には、限定されないが、リトナビル、GS-9350及びSPI-452が含まれる。
【0078】
リトナビルは、10-ヒドロキシ-2-メチル-5-(1-メチルエチル)-1-1[2-(1-メチルエチル)-4-チアゾリル]-3,6-ジオキソ-8,11-ビス(フェニルメチル)-2,4,7,12-テトラアザトリデカン-13-オン酸,5-チアゾリルメチルエステル,[5S-(5S*,8R*,10R*,11R*)]であり、ノービア(Norvir)としてAbbott Laboratories社(Abbott park,Illinois)から入手可能である。リトナビルは、HIV感染症治療のためのその他の抗レトロウイルス薬剤とともに適応とされるHIVプロテアーゼ阻害剤である。リトナビルはまた、P450媒介の薬物代謝及びP-糖タンパク質(Pgp)細胞輸送系を阻害し、それによって、生物体内での有効化合物の濃度上昇をもたらす。
【0079】
GS-9350は、薬理的促進剤としてGilead Sciences(Foster City California)によって開発された化合物である。
【0080】
SPI-452は、薬理的促進剤としてSequoia Pharmaceuticals(Gaithersburg,Maryland)によって開発された化合物である。
【0081】
本発明の一実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、リトナビルと組み合わせて使用される。一実施形態において、組み合わせは、経口固定用量の組み合わせである。別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、長時間作用型の非経口注射剤として調合され、リトナビルは、経口組成物として調合される。一実施形態において、長時間作用型の非経口注射剤として調合された式(I)~(II)の化合物と、経口組成物として調合されたリトナビルとを含むキットが提供される。別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、長時間作用型の非経口注射剤として調合され、リトナビルは、注射用組成物として調合される。一実施形態において、長時間作用型の非経口注射剤として調合された式(I)~(II)の化合物と、注射用組成物として調合されたリトナビルとを含むキットが提供される。
【0082】
本発明の別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、GS-9350と組み合わせて使用される。一実施形態において、組み合わせは、経口固定用量の組み合わせである。別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、長時間作用型の非経口注射剤として調合され、GS-9350は、経口組成物として調合される。一実施形態において、長時間作用型の非経口注射剤として調合された式(I)~(II)の化合物と、経口組成物として調合されたGS-9350とを含むキットが提供される。別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、長時間作用型の非経口注射剤として調合され、GS-9350は、注射用組成物として調合される。一実施形態において、長時間作用型の非経口注射剤として調合された式(I)~(II)の化合物と、注射用組成物として調合されたGS-9350とを含むキットが提供される。
【0083】
本発明の一実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、SPI-452と組み合わせて使用される。一実施形態において、組み合わせは、経口固定用量の組み合わせである。別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、長時間作用型の非経口注射剤として調合され、SPI-452は、経口組成物として調合される。一実施形態において、長時間作用型の非経口注射剤として調合された式(I)~(II)の化合物と、経口組成物として調合されたSPI-452とを含むキットが提供される。別の実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、長時間作用型の非経口注射剤として調合され、SPI-452は、注射用組成物として調合される。一実施形態において、長時間作用型の非経口注射剤として調合された式(I)~(II)の化合物と、注射用組成物として調合されたSPI-452とを含むキットが提供される。
【0084】
本発明の一実施形態において、式(I)~(II)の化合物は、以前に出願されたPCT/CN2011/0013021(参照により本明細書に組み込まれる)に見出される化合物と組み合わせて使用される。
【0085】
上記のその他の治療薬は、本明細書に記載の化学物質と組み合わせて使用される場合には、例えば、米国医薬品便覧(PDR:Physicians' Desk Reference)に示された量で、又は当業者がその他の形で決定した量で使用され得る。
【0086】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を治療する方法であって、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含む、方法が提供される。
【0087】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を治療する方法であって、この方法が、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含み、上記ウイルスがHIVウイルスである、方法が提供される。いくつかの実施形態において、HIVウイルスは、HIV-1ウイルスである。
【0088】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を治療する方法であって、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含み、HIVウイルスに対して有効な治療有効量の1種又は2種以上の薬剤の投与をさらに含む、方法が提供される。
【0089】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を治療する方法であって、この方法が、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含み、且つ、HIVウイルスに対して有効な治療有効量の1種又は2種以上の薬剤の投与をさらに含み、HIVウイルスに対して有効な上記薬剤が、核酸系逆転写酵素阻害剤;非核酸系逆転写酵素阻害剤;プロテアーゼ阻害剤;侵入、吸着及び融合阻害剤;インテグラーゼ阻害剤;成熟阻害剤;CXCR4阻害剤;及びCCR5阻害剤から選択される、方法が提供される。
【0090】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を予防する方法であって、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含む、方法が提供される。
【0091】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を予防する方法であって、この方法が、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含み、上記ウイルスがHIVウイルスである、方法が提供される。いくつかの実施形態において、HIVウイルスは、HIV-1ウイルスである。
【0092】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を予防する方法であって、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含み、HIVウイルスに対して有効な治療有効量の1種又は2種以上の薬剤の投与をさらに含む、方法が提供される。
【0093】
本発明の別の実施形態では、レトロウイルスファミリーのウイルスのうち1種のウイルスによって少なくとも部分的に媒介される、哺乳動物におけるウイルス感染症を予防する方法であって、この方法が、上記ウイルス感染症と診断された哺乳動物、又は上記ウイルス感染症を発症するリスクを有する哺乳動物に、式(I)~(II)の化合物を投与することを含み、且つ、HIVウイルスに対して有効な治療有効量の1種又は2種以上の薬剤の投与をさらに含み、HIVウイルスに対して有効な上記薬剤が、核酸系逆転写酵素阻害剤;非核酸系逆転写酵素阻害剤;プロテアーゼ阻害剤;侵入、吸着及び融合阻害剤;インテグラーゼ阻害剤;成熟阻害剤;CXCR4阻害剤;及びCCR5阻害剤から選択される、方法が提供される。
【0094】
さらなる実施形態において、式(I)~(II)の本発明の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、上記の表1に記載の化合物の群から選択される。
【0095】
表1の化合物は、以下に記載される合成方法、一般スキーム及び実施例に従って合成された。
【0096】
別の実施形態において、薬学的に許容可能な希釈剤と、治療有効量の式(I)~(II)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩とを含む医薬組成物が提供される。
【0097】
特定の実施形態において、本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、表1に記載の化合物から選択される。
【0098】
本発明の化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で供給され得る。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、薬学的に許容可能な無機及び有機の酸及び塩基から調製される塩を指す。したがって、「化合物又はその薬学的に許容可能な塩」の文脈における「又は」という用語は、化合物又はその薬学的に許容可能な塩(選択的)、又は化合物及びその薬学的に許容可能な塩(組み合わせ)のいずれかを指すことが理解される。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激又はその他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触する使用に好適である化合物、材料、組成物及び剤型を指す。当業者は、式(I)~(II)の化合物の薬学的に許容可能な塩を調製することができることを理解する。これらの薬学的に許容可能な塩は、化合物の最終的な単離及び精製の間にin situで調製され得、或いは、遊離酸及び遊離塩基の形態の精製された化合物のそれぞれと、好適な塩基及び酸とを別個に反応させることによって調製され得る。
【0100】
本発明の化合物の例示的な薬学的に許容可能な酸塩は、以下の酸、例えば、限定するものではないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、硝酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、イソクエン酸、トリフルオロ酢酸、パモ酸、プロピオン酸、アントラニル酸、メシル酸、オキサル酢酸、オレイン酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、ニコチン酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、硫酸、サリチル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸から調製され得る。好ましい薬学的に許容可能な塩には、塩酸及びトリフルオロ酢酸の塩が含まれる。
【0101】
本発明の化合物の例示的な薬学的に許容可能な無機塩基塩には、金属イオンが含まれる。さらに好ましい金属イオンには、限定するものではないが、適切なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びその他の生理的に許容可能な金属イオンが含まれる。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、三価鉄塩、二価鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、三価マンガン塩、二価マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩等及びその通常の価数の塩が含まれる。例示的な塩基塩には、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及び亜鉛塩が含まれる。その他の例示的な塩基塩には、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩が含まれる。さらにその他の例示的な塩基塩には、例えば、水酸化物、炭酸塩、水素化物及びアルコキシド、例えば、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、NaH及びカリウム-t-ブトキシドが含まれる。
【0102】
薬学的に許容可能な有機非毒性塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミンの塩、例えば、一部には、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカイン;置換アミン、例えば、天然に存在する置換アミン;環状アミン;第4級アンモニウムカチオン;及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等が含まれる。
【0103】
上記の塩のすべては、本発明の対応する化合物から慣用の手段によって、当業者によって調製され得る。例えば、本発明の薬学的に許容可能な塩は、慣用の化学的方法により、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、そのような塩は、遊離酸又は塩基形態のこれらの化合物と、水若しくは有機溶媒中又はそれら2つの混合物中の化学量論量の適切な塩基又は酸とを反応させることによって、調製され得る。溶媒としては、一般に、非水性媒体、例えば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルが好ましい。塩は、溶液から析出させて、濾過により収集するか、又は溶媒の蒸発により回収してもよい。塩でのイオン化の程度は、完全にイオン化された塩からほとんどイオン化されていない塩まで様々であり得る。好適な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418(その記載は、好適な塩の一覧に関してのみ、参照により本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0104】
本発明の式(I)~(II)の化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態の両方で存在し得る。「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物と、1種又は2種以上の薬学的に許容可能な溶媒分子、例えば、エタノールとを含む。「水和物」という用語は、溶媒が水である場合に使用される。薬学的に許容可能な溶媒和物には、水和物、及び結晶化の溶媒が同位体で置換されていてもよい(例えば、D2O、d6-アセトン、d6-DMSO)その他の溶媒和物が挙げられる。
【0105】
1個又は2個以上の不斉炭素原子を含有する式(I)~(II)の化合物は、2種又は3種以上の立体異性体として存在することができる。式(I)~(II)の化合物が、アルケニル基、アルケニレン基又はシクロアルキル基を含む場合に、幾何シス/トランス(又はZ/E)異性体が可能である。化合物が、例えば、ケト基、オキシム基又は芳香族部分を含む場合に、互変異性性(「互変異性」)が生じ得る。単一の化合物が2以上の型の異性性を示し得ることになる。
【0106】
特許請求される本発明の化合物の範囲内に含まれるのは、式(I)~(II)の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体及び互変異性体形態、例えば、2以上の型の異性性を示す化合物、及びそれらの1種又は2種以上の混合物である。対イオンが光学的に活性である酸付加塩又は塩基付加塩、例えば、D-乳酸塩若しくはL-リジン、又はラセミ体、例えば、DL-酒石酸塩又はDL-アルギニンもまた含まれる。
【0107】
シス/トランス異性体は、当業者に周知の慣用の技術、例えば、クロマトグラフィー及び分別結晶法により分離され得る。
【0108】
別個のエナンチオマーの調製/単離のための慣用の技術としては、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は、ラセミ体(又は塩若しくは誘導体のラセミ体)の分割、例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用する分割が挙げられる。
【0109】
或いは、ラセミ体(又はラセミ前駆体)を、好適な光学的に活性な化合物、例えば、アルコールと、又は式(I)若しくは(II)の化合物が酸性若しくは塩基性部分を含む場合には、酸若しくは塩基、例えば、酒石酸若しくは1-フェニルエチルアミンと反応させてもよい。得られたジアステレオマー混合物を、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶法により分離し、ジアステレオ異性体の一方又は両方を、当業者に周知の手段によって対応する純粋な1種又は2種以上のエナンチオマーに変換してもよい。
【0110】
本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、不斉固定相を有する樹脂によるクロマトグラフィーであって、0~50%、典型的には2~20%のイソプロパノール、及び0~5%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含有する炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンからなる移動相とを使用するクロマトグラフィー、典型的にはHPLCを使用して、エナンチオマー的に富化された形態で得られてもよい。溶離液の濃縮によって、富化された混合物が得られる。
【0111】
立体異性体の混合物は、当業者に公知の慣用の技術によって分離してもよい[例えば、E L Elielによる「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley, New York, 1994)を参照されたい]。
【0112】
本発明は、1個又は2個以上の原子が、同じ原子番号であるが、天然で通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子により置き換えられている、式(I)~(II)のすべての薬学的に許容可能な同位体標識された化合物を含む。
【0113】
本発明の化合物が含有するのに好適な同位体の例としては、水素の同位体(例えば、2H及び3H)、炭素の同位体(例えば、11C、13C及び14C)、塩素の同位体(例えば、36Cl)、フッ素の同位体(例えば、18F)、ヨウ素の同位体(例えば、123I及び125I)、窒素の同位体(例えば、13N及び15N)、酸素の同位体(例えば、15O、17O及び18O)、リンの同位体(例えば、32P)及び硫黄の同位体(例えば、35S)が挙げられる。
【0114】
式(I)~(II)の特定の同位体標識された化合物、例えば、放射性同位体を組み込んだ化合物は、薬物及び/又は基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体トリチウム(すなわち、3H)及び炭素-14(すなわち、14C)は、その組み込みの容易性及び即時の検出手段を考慮すると、この目的にとって特に有用である。重同位体、例えば、重水素(すなわち、2H)による置換は、より高い代謝安定性から生じる特定の治療的利益、例えば、in vivoでの半減期の増大又は投与量要求の低減をもたらし得、したがって、いくつかの状況では好ましい可能性がある。
【0115】
式(I)~(II)の同位体標識された化合物は、一般に、当業者に公知の慣用の技術によって、又は従前から使用される非標識試薬の代わりに適切な同位体標識された試薬を使用する、本明細書に記載のプロセスに類似のプロセスによって、調製され得る。
【0116】
本発明の化合物は、プロドラッグとして投与されてもよい。一実施形態において、本発明の化合物は、例えば米国特許第7,339,053号に開示されている4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン(EFdA)のプロドラッグであり、これは以下の式の核酸系逆転写酵素阻害剤である。
【0117】
【0118】
プロドラッグは、物理化学的特性を調整し、複数の投与パラダイムを促進し、活性な親(EFdA)の薬物動態及び/又は薬力学的プロファイルを改善することができる点で有用である。より具体的には、EFdAの水溶解度は比較的高く、このことは、徐放性、長時間作用型の非経口投与にEFdAを不向きにしている。有利には、本発明のEFdAのプロドラッグの水溶解度は、実質的に低減され得、いくつかの場合には、本発明のEFdAのプロドラッグは、徐放性非経口投与様式を促進し得る。さらに、本発明のEFdAのプロドラッグはまた、EFdA自体の非経口投与時に生じるEFdAの局所的に高い濃度に関連する望ましくない注射部位反応を低減又は排除し得る。さらに、本発明のEFdAのプロドラッグはまた、いくつかの場合には、EFdAと比較して抗ウイルス持続性を増強させ得る。
【0119】
本明細書に記載の化学物質及び化学物質の組み合わせの投与は、類似する有用性を有する薬剤に関して許容可能な投与様式、例えば、限定するものではないが、経口、舌下、皮下、静脈内、鼻内、局所、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、経膣、直腸又は眼内のうちのいずれかを介する投与であり得る。いくつかの実施形態では、経口又は非経口投与が使用される。投与の例としては、限定するものではないが、経口の場合は7日ごとに1回、筋肉内の場合は8週間ごとに1回、又は皮下の場合は6か月ごとに1回が挙げられる。
【0120】
医薬組成物又は製剤としては、固体、半固体、液体及びエアロゾル剤型、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁液剤、坐剤、エアロゾル剤が挙げられる。化学物質はまた、所定の速度での長期投与及び/又は時限パルス投与のために、持続又は制御放出剤型、例えば、デポー注射、浸透圧ポンプ、丸剤、経皮(例えば電気輸送)パッチ等で投与され得る。特定の実施形態において、組成物は、正確な用量の単回投与にとって好適な単位剤型において提供される。
【0121】
本明細書に記載の化学物質は、単独で、又はより典型的には、慣用の医薬担体、賦形剤等(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム等)と組み合わせて投与され得る。所望の場合には、医薬組成物はまた、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤化剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤等(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミン等)も含むことができる。一般に、意図される投与様式に応じて、医薬組成物は、約0.005~95重量%;特定の実施形態では、約0.5~50重量%の化学物質を含む。そのような剤型を調製する実際の方法は、当業者には公知であるか、又は明らかである。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaを参照されたい。
【0122】
特定の実施形態において、組成物は、丸剤又は錠剤の形態をとり、したがって、組成物は、有効成分とともに、希釈剤、例えば、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム等;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム等;及び結合剤、例えば、デンプン、アカシアゴム、ポリビニルピロリジン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体等を含む。別の固体剤型では、粉末、マルメ(marume)、溶液又は懸濁液(例えば、炭酸プロピレン、植物油又はトリグリセリドによる)を、ゼラチンカプセル中に封入する。
【0123】
例えば、薬学的に投与可能な液体の組成物は、少なくとも1種の化学物質及び任意選択の医薬アジュバントを担体(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノール等)中に溶解させる、分散する等して、溶液又は懸濁液を形成させることによって、調製され得る。注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液として、エマルジョンとして、又は注射前の液体への溶解若しくは懸濁にとって好適な固体形態で、慣用の形態で調製され得る。そのような非経口組成物中に含まれる化学物質の割合は、その具体的な性質に加えて、化学物質の活性及び対象の必要性に大きく依存する。しかしながら、有効成分の割合は、溶液中で0.01%~10%で使用可能であり、組成物が上記割合にその後希釈される固体である場合には、有効成分の割合はより高くなる。特定の実施形態において、組成物は、溶液中に約0.2~2%の有効成分を含んでもよい。
【0124】
本明細書に記載の化学物質の医薬組成物はまた、ネブライザー用のエアロゾル若しくは溶液として、又は吹送用の超微粒粉末として、単独で、又は不活性担体、例えば、ラクトースと組み合わせて、気道に投与され得る。そのような場合には、医薬組成物の粒子の直径は、50μm未満、特定の実施形態では10μm未満である。
【0125】
一般に、提供される化学物質は、類似する有用性を有する薬剤のための許容可能な投与様式のうちのいずれかにより、治療上有効量で投与される。化学物質、すなわち、有効成分の実際の量は、多数の因子、例えば、処置される疾患の重症度、対象の年齢及び相対的健康状態、使用される化学物質の効力、投与経路、投与形態、及びその他の因子に依存する。薬物は、1日1回以上、例えば、1日1回又は2回投与可能である。
【0126】
一般に、化学物質は、以下の経路:経口投与、全身(例えば、経皮、鼻内又は坐剤による)投与又は非経口(例えば、筋肉内、静脈内又は皮下)投与のうちのいずれか1つにより医薬組成物として投与される。特定の実施形態では、苦痛の程度に応じて調整可能な便利な一日投与量レジメンによる経口投与を使用してもよい。組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体剤、散剤、持続放出製剤、溶液剤、懸濁液剤、エリキシル剤、エアロゾル剤又は任意のその他の適切な組成物の形態をとることができる。提供される化学物質を投与するための別の様式は、吸入である。
【0127】
製剤の選択は、様々な因子、例えば、薬物投与の様式及び薬物物質のバイオアベイラビリティに依存する。吸入による送達の場合、化学物質は、液体溶液、懸濁液、エアロゾル噴射剤又は乾燥粉末として調合され、投与用の好適なディスペンサーに充填され得る。いくつかの種類の医薬吸入デバイス:ネブライザー吸入器、定量吸入器(MDI)及びドライパウダー式吸入器(DPI)が存在する。ネブライザーデバイスは、治療剤(液体形態で調合される)を患者の気道に運搬するミストとして噴霧させる高速の空気流をもたらす。MDIは、典型的には、圧縮ガスとともに包装された製剤である。作動時に、デバイスは、圧縮ガスにより、一定量の治療剤を放出し、したがって、設定された量の薬剤を投与する信頼性の高い方法を提供する。DPIは、自由流動粉末の形態で治療剤を投薬し、自由流動粉末は、デバイスによって呼吸時に患者の吸気流中に分散させることができる。自由流動粉末を達成するために、治療剤は、賦形剤、例えば、ラクトースとともに調合される。一定量の治療剤は、カプセル形態で保存され、各回の作動により投薬される。
【0128】
近年、表面積を増大させること、すなわち、粒径を低下させることによってバイオアベイラビリティを増大させることができるという原理に基づいて、不十分なバイオアベイラビリティを示す薬物のための医薬組成物が開発された。例えば、米国特許第4,107,288号には、有効物質が高分子の架橋マトリックス上に担持された10~1,000nmのサイズ範囲の粒子を有する医薬製剤が記載されている。米国特許第5,145,684号には、薬物物質を表面改質剤の存在下でナノ粒子(平均粒径400nm)に粉砕し、次いで、液体媒体中に分散させて、顕著に高いバイオアベイラビリティを示す医薬製剤を得る、医薬製剤の製造が記載されている。
【0129】
組成物は、一般に、本明細書に記載の少なくとも1種の化学物質を、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて構成される。許容可能な賦形剤は、非毒性であり、投与を補助し、且つ、本明細書に記載の少なくとも1種の化学物質の治療利益に悪影響を与えない。そのような賦形剤は、任意の固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物の場合には、当業者にとって一般に利用可能である気体賦形剤であってもよい。
【0130】
固体医薬賦形剤には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク等が含まれる。液体及び半固体賦形剤は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール及び様々な油、例えば、石油、動物油、植物油又は合成由来の油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等から選択してもよい。注射用溶液剤のための液体担体には、水、生理食塩水、水性デキストロース及びグリコールが含まれる。
【0131】
圧縮ガスを使用して、本明細書に記載の化学物質をエアロゾル形態で分散させてもよい。この目的のために好適な不活性ガスは、窒素、二酸化炭素等である。その他の好適な医薬賦形剤及びその製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,E.W.Martin編(Mack Publishing Company, 第18版, 1990)に記載されている。
【0132】
組成物中の化学物質の量は、当業者によって使用される全範囲内で変動し得る。典型的には、組成物は、重量パーセント(wt%)基準で、総組成物を基準に約0.01~99.99wt%の本明細書に記載の少なくとも1種の化学物質を含み、残部は1種又は2種以上の好適な医薬賦形剤である。特定の実施形態において、本明細書に記載の少なくとも1種の化学物質は、約1~80wt%のレベルで存在する。
【0133】
様々な実施形態において、本発明の医薬組成物は、式(I)~(II)の化合物、それらの塩、及び上記の組み合わせを包含する。
【0134】
合成方法
合成方法は、以下の一般的な方法及び手順を使用して、容易に入手可能な出発材料を使用してもよい。典型的な又は好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が示されている場合、別段記載しない限り、その他のプロセス条件も使用可能であることが理解される。最適な反応条件は、使用される特定の反応物又は溶媒によって変動し得るが、そのような条件は、通常の最適化手順によって当業者によって決定され得る。
【0135】
さらに、本発明の方法は、ある官能基が望ましくない反応を受けるのを防止する保護基を使用可能である。様々な官能基に対して好適な保護基、並びに特定の官能基の保護及び脱保護に対して好適な条件は、当技術分野で周知である。例えば、多数の保護基が、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,第3版,Wiley,New York,1999及びそこで引用されている参考文献に記載されている。
【0136】
さらに、提供される化学物質は、1個又は2個以上のキラル中心を含んでいてもよく、そのような化合物は、純粋な立体異性体として、すなわち、別個のエナンチオマー若しくはジアステレオマーとして、又は立体異性体が富化された混合物として調製又は単離可能である。すべてのそのような立体異性体(及び富化された混合物)は、別段示さない限り本明細書の範囲内に包含される。純粋な立体異性体(又は富化された混合物)は、例えば当技術分野で周知の光学活性出発材料又は立体選択的試薬を使用して調製され得る。或いは、そのような化合物のラセミ混合物は、例えば、キラルカラムクロマトグラフィー、キラル分割剤等を使用して分離され得る。
【0137】
以下の反応についての出発材料は、一般に公知の化合物であるか、又は公知の手順若しくはその自明な変法によって調製可能である。例えば、出発材料の多くは、商業的供給元、例えば、Aldrich Chemical社(Milwaukee,Wisconsin,USA)、Bachem社(Torrance,California,USA)、Ernka-Chemce社又はSigma社(St.Louis,Missouri,USA)から入手可能である。その他の出発材料は、標準的な参考書、例えば、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,第1~15巻 (John Wiley and Sons, 1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,第1~5巻及び補遺 (Elsevier Science Publishers, 1989)、Organic Reactions,第1~40巻 (John Wiley and Sons, 1991)、March’s Advanced Organic Chemistry (John Wiley and Sons, 第4版)、及びLarock’s Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989)に記載の手順又はその自明な変法によって調製可能である。
【0138】
逆の内容が記載されていない限り、本明細書に記載の反応は、大気圧下で、一般に-78℃~200℃の温度範囲内で行ってもよい。さらに、実施例で使用されるか、又は別段の指定がある場合を除き、反応時間及び条件は、近似的なものであることが意図され、例えば、概ね大気圧下で、約-78℃~約110℃の温度範囲内で、約1~約24時間にわたって行い、反応は平均で約16時間である一晩にわたって行う。
【0139】
「溶媒」、「有機溶媒」及び「不活性溶媒」という用語はそれぞれ、それとともに記載されている反応の条件下で不活性である溶媒を意味し、上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラニル(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(又はジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、N-メチルピロリドン(「NMP」)、ピリジン等が挙げられる。
【0140】
本明細書に記載の化学物質及び中間体の単離及び精製は、所望の場合、任意の好適な分離又は精製手順、例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、又はこれらの手順の組み合わせによって行うことができる。好適な分離及び単離手順の具体的な説明は、以下の本明細書の実施例を参照することで得られる。しかしながら、その他の同等な分離又は単離手順もまた使用可能である。
【0141】
所望の場合、(R)-及び(S)-異性体は、当業者に公知の方法によって、例えば、分離可能(例えば、結晶化により分離可能)であるジアステレオ異性体の塩又は錯体の形成によって;分離可能(例えば、結晶化、ガス液体クロマトグラフィー又は液体クロマトグラフィーにより分離可能)であるジアステレオ異性体の誘導体の形成を介して;一方のエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応(例えば、酵素的酸化又は還元)及びそれに続く修飾されたエナンチオマーと修飾されていないエナンチオマーとの分離によって;又は、キラル環境(例えば、キラル支持体、例えば、結合キラル配位子を有するシリカによるキラル環境、又はキラル溶媒存在下のキラル環境)におけるガス液体クロマトグラフィー又は液体クロマトグラフィーによって、分割可能である。或いは、光学活性な試薬、基質、触媒若しくは溶媒を使用する不斉合成により、又は不斉変換によって一方のエナンチオマーを他方のエナンチオマーに変換することにより、特定のエナンチオマーを合成することができる。
【実施例】
【0142】
実施例及び一般合成
以下の実施例及び予測的な合成方法は、上記の発明を製造及び使用する方法をより完全に説明するのに役立つ。これは決して本発明の真の範囲を限定するのに役立つのではなく、むしろ例示目的で提示されることが理解される。別段指定しない限り、以下の略語は、以下の意味を有する。略語が定義されていない場合、それはその一般に受け入れられている意味を有する。
【0143】
aq.=水性
μL=マイクロリットル
μM=マイクロモル
NMR=核磁気共鳴
Boc=tert-ブトキシカルボニル
br=ブロード
Cbz=ベンジルオキシカルボニル
d=ダブレット
℃=摂氏
DCM=ジクロロメタン
dd=ダブルダブレット
DIEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP=N,N-ジメチルアミノピリジン
DMEM=ダルベッコ改変イーグル培地
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EDC=N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩
EtOAc=酢酸エチル
g=グラム
h又はhr=時間
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
Hz=ヘルツ
IU=国際単位
IC50=50%阻害濃度
J=カップリング定数(Hz)
LCMS=液体クロマトグラフィー質量分析
m=マルチプレット
M=モル濃度
M+H+=質量スペクトルの親ピーク+H+
mg=ミリグラム
min=分
mL=ミリリットル
mM=ミリモル濃度
mmol=ミリモル
MMTr=モノメトキシトリチル
MS=質量スペクトル
MTBE=メチルtert-ブチルエーテル
nM=ナノモル濃度
PE=石油エーテル
ppm=百万分率
q.s.=十分量
s=シングレット
RT=室温
sat.=飽和
t=トリプレット
TBDMS=tert-ブチルジメチルシリル
TBDPS=tert-ブチルジフェニルシリル
TEA=トリエチルアミン
THF=テトラヒドロフラン
TMS=トリメチルシリル
【0144】
さらに、本発明の様々な化合物が、作製され得、一実施形態では、以下のスキーム1~2に記載の一般合成経路によって作製され得る。
【0145】
【0146】
式中、R4は、本明細書で定義され、R’は、(C1-C14)アルキルである。
【0147】
【0148】
式中、R’’は、(C1-C20)アルキルである。
【0149】
式中、
Ac=アセチル
AcO=アセテート
AcOH=酢酸
Boc=t-ブトキシカルボニル
DCM=ジクロロメタン
DIEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP=N,N-ジメチルアミノピリジン
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
EDC=1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
HATU=1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
MeCN=アセトニトリル
MeOH=メタノール
NaBH4=水素化ホウ素ナトリウム
NaOMe=ナトリウムメトキシド
Ph=フェニル
TBAF=テトラ-n-ブチルフッ化アンモニウム
TBDMS=tert-ブチルジメチルシリル
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
であり、X基及びR基は、上記で定義されている。
【0150】
機器の説明
1H NMRスペクトルは、Varian分光計又はBruker分光計で記録された。化学シフトは、百万分率(ppm、δ単位)で表される。カップリング定数はヘルツ(Hz)の単位である。分割パターンは見かけの多重度を表し、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、quint(クインテット)、m(マルチプレット)、br(ブロード)として表記される。
【0151】
分析用低分解能LCMSを取得するための代表的な機器及び条件を以下に記載する。
【0152】
機器:
SQ検出器を備えたWaters Acquity UPLC-MSシステム
【0153】
MS条件:
スキャンモード:交互のポジティブ/ネガティブエレクトロスプレー
スキャン範囲:125~1200amu
スキャン時間:150ミリ秒
スキャン間遅延:50ミリ秒
【0154】
LC条件:
UPLC分析は、Phenomenex Kinetex 1.7μm 2.1×50mm XB-C18カラムで40℃で実施された。
【0155】
PLNO(ニードルオーバーフィルによるパーシャルループ(partial loop with needle overfill))注入モードを使用して、0.2μLのサンプルを注入した。
【0156】
使用した勾配は以下のとおりである。
移動相A:水+0.2%v/v ギ酸
移動相B:アセトニトリル+0.15%v/v ギ酸
【0157】
【0158】
UV検出は、40Hzにおける210~350nmスキャンからの合計吸光度シグナルによって提供された。
【0159】
実施例1:10-(((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)-10-オキソデカン酸
【化24】
【0160】
【0161】
工程A:1-((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル)10-(tert-ブチル)デカンジオエート
10-(tert-ブトキシ)-10-オキソデカン酸(292mg、1.13mmol)のDMF(4mL)溶液に、DMAP(551mg、4.51mmol)、次いで、EDC(865mg、4.51mmol)を加えた。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-オール(500mg、0.94mmol)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。LCMSは完全な反応を示した。反応混合物を水(10mL)でクエンチし、EA(3×5mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブライン(10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物を分取TLC(シリカゲル、20:1 DCM/MeOH)に供して、所望の生成物(130mg、17%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C42H54FN5O6Si: 771. Found: 772 (M+1)+.
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 8.27 (s, 1H), 7.87 (br, 2H), 7.58 (t, J = 12 Hz, 4H), 7.48 - 7.31 (m, 6H), 6.36 (t, J = 12 Hz, 1H), 5.85 (t, J = 12 Hz, 1H), 3.92 (d, J = 9 Hz, 1H), 3.75 (d, J = 9 Hz, 1H), 3.71 (s, 1H), 3.22 - 3.14 (m, 1H), 2.63 - 2.54 (m, 1H), 2.38 (t, J = 15 Hz, 2H), 2.15 (t, J = 15 Hz, 2H), 1.58 (t, J = 15 Hz, 2H), 1.46 (t, J = 12 Hz, 2H), 1.37 (s, 9H), 1.29 - 1.20 (m, 8H), 0.95 (s, 9H).
【0162】
工程B:1-((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)10-(tert-ブチル)デカンジオエート
1-((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル)10-(tert-ブチル)デカンジオエート(400mg、0.52mmol)をTHF(4mL)に溶解させ、TBAF(0.52mL、0.52mmol、1NのTHF溶液)を加え、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。LCMSは完全な反応を示した。反応混合物を真空下で直接濃縮し、水(20mL)でクエンチし、EA(3×10mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。混合物を分取TLC(シリカゲル、20:1 DCM/MeOH)に供して、不純な表題化合物(180mg、97%)を白色固体として得た。この物質をRP-HPLC精製に供して、所望の生成物(100mg、33%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C26H36FN5O6: 533. Found: 534 (M+1)+.
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.94 (s, 1H), 6.38 - 6.15 (m, 3H), 5.78 (d, J = 6 Hz, 1H), 4.06 - 3.91 (m, 2H), 3.22 - 3.13 (m, 1H), 2.63 (s, 1H), 2.52 - 2.39 (m, 3H), 2.20 (t, J = 15 Hz, 2H), 1.68 (t, J = 15 Hz, 2H), 1.57 (t, J = 12 Hz, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.36 - 1.23 (m, 8H).
【0163】
工程C:10-(((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)-10-オキソデカン酸
1-((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)10-(tert-ブチル)デカンジオエート(95mg、0.178mmol)をDCM(12mL)に溶解させ、TFA(1.2mL)を加え、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。LCMSは完全な反応を示した。反応混合物をNaHCO3水溶液でクエンチし、真空下で濃縮した。次いで、残留物を濾過し、DMFでリンスし、濾液を減圧濃縮した。残留物をRP-HPLC(C18、MeCN/水、0.05% TFA)によって精製して、所望の生成物(49mg、57%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C22H28FN5O6: 477. Found: 478 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.28 (s, 1H), 6.42 (t, J = 16 Hz, 1H), 5.72 - 5.69 (m, 1H), 3.90 - 3.80 (m, 2H), 3.15 (s, 1H), 3.04 - 2.97 (m, 1H), 2.63 - 2.58 (m, 1H), 2.43 (t, J = 16 Hz, 2H), 2.27 (t, J = 12 Hz, 2H), 1.69 - 1.56 (m, 4H), 1.40 - 1.31 (m, 8H).
【0164】
実施例2:20-(((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)-20-オキソイコサン酸
【化26】
【0165】
工程Aで10-(tert-ブトキシ)-10-オキソデカン酸の代わりに20-(tert-ブトキシ)-20-オキソイコサン酸を使用して、10-(((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)-10-オキソデカン酸の合成のために本明細書に記載されるように、表題化合物を調製した。
LCMS (ESI) m/z calcd for C32H48FN5O6: 617. Found: 618 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.26 (s, 1H), 6.42 (t, J = 16.0 Hz, 1H), 5.71 - 5.69 (m, 1H), 3.89 - 3.80 (m, 2H), 3.14 (s, 1H), 3.06 - 2.96 (m, 1H), 2.63 - 2.57 (m, 1H), 2.43 (t, J = 16.0 Hz, 2H), 2.27 (t, J = 12.0 Hz, 2H), 1.71 - 1.65 (m, 2H), 1.64 - 1.57 (m, 2H), 1.39 - 1.28 (m, 28H).
【0166】
実施例3:14-(((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)-14-オキソテトラデカン酸
【化27】
【0167】
工程Aで10-(tert-ブトキシ)-10-オキソデカン酸の代わりに14-(tert-ブトキシ)-14-オキソテトラデカン酸を使用して、10-(((2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル)オキシ)-10-オキソデカン酸の合成のために本明細書に記載されるように、表題化合物を調製した。
LCMS (ESI) m/z calcd for C26H36FN5O6: 533. Found: 534(M+1)+.
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 8.26 (s, 1H), 6.42 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 5.72 - 5.69 (m, 1H), 3.86 - 3.83 (m, 2H), 3.14 (s, 1H), 3.02 - 2.96 (m, 1H), 2.61 - 2.57 (m, 1H), 2.42 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 2.26 (t, J = 12.0 Hz, 2H), 1.71 - 1.64 (m, 2H), 1.61 - 1.55 (m, 2H), 1.39 - 1.20 (m, 16H).
【0168】
実施例4:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル2-(2-メトキシエトキシ)アセテート
【化28】
【0169】
【0170】
工程A:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル2-(2-メトキシエトキシ)アセテート
(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-オール(50mg、0.094mmol)の濁ったDCM(1.5mL)懸濁液を、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(0.021mL、0.188mmol)、DMAP(11.5mg、0.094mmol)、EDC(54.1mg、0.282mmol)、DIEA(0.082mL、0.47mmol)で処理し、溶液を室温で18時間撹拌した。反応物を追加の2-(2-メトキシエトキシ)酢酸(10μL)、DMAP(11mg)、EDC(32mg)、DIEA(50μL)で処理し、室温でさらに3日間撹拌した。反応物を濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、0-100% EtOAc/DCM)によって精製して、表題化合物(39.8mg、61%)を透明なフィルム状物質として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C33H38FN5O6Si: 647.3. Found: 648.5 (M+1)+.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.94 (s, 1H), 7.73 - 7.60 (m, 4H), 7.52 - 7.31 (m, 6H), 6.48 (dd, J = 6.0, 7.6 Hz, 1H), 5.97 - 5.73 (m, 3H), 4.27 (d, J = 0.7 Hz, 2H), 4.11 - 3.91 (m, 2H), 3.83 - 3.70 (m, 2H), 3.67 - 3.54 (m, 2H), 3.42 (s, 3H), 2.91 (td, J = 7.1, 14.2 Hz, 1H), 2.76 - 2.61 (m, 1H), 2.58 (s, 1H), 1.10 (s, 9H).
【0171】
工程B:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル2-(2-メトキシエトキシ)アセテート
(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル2-(2-メトキシエトキシ)アセテート(39.8mg、0.058mmol)の氷冷THF(1.2mL)溶液を、TBAF(1MのTHF溶液、0.092mL、0.092mmol)で処理し、0℃で33分間撹拌した。反応物をAcOH(約1mL)及び水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機溶液をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、0-20% MeOH/EtOAc)、次いで、分取RP-HPLC(C18、MeCN/水、0.1% ギ酸)による精製によって、表題化合物(12.7mg、51%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C17H20FN5O6: 409.1. Found: 410.3 (M+1)+.
1H NMR (400MHz, メタノール-d4) δ 8.25 (s, 1H), 6.44 (dd, J = 6.2, 7.9 Hz, 1H), 5.79 (dd, J = 3.2, 6.8 Hz, 1H), 4.41 - 4.16 (m, 2H), 3.99 - 3.79 (m, 2H), 3.79 - 3.71 (m, 2H), 3.65 - 3.53 (m, 2H), 3.38 (s, 3H), 3.18 (s, 1H), 3.14 - 2.95 (m, 1H), 2.64 (ddd, J = 3.2, 6.1, 14.0 Hz, 1H).
【0172】
実施例5:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)アセテート
【化30】
【0173】
工程Aで2-(2-メトキシエトキシ)酢酸の代わりに2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)酢酸を使用して、(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル2-(2-エトキシエトキシ)アセテートの合成のために本明細書に記載されるように、表題化合物を調製した。
LCMS (ESI) m/z calcd for C19H24FN5O7: 453.2. Found: 454.3 (M+1)+.
1H NMR (400MHz, メタノール-d4) δ 8.26 (s, 1H), 6.44 (dd, J = 6.2, 8.1 Hz, 1H), 5.79 (dd, J = 3.3, 6.7 Hz, 1H), 4.41 - 4.21 (m, 2H), 3.94 - 3.80 (m, 2H), 3.80 - 3.73 (m, 2H), 3.73 - 3.60 (m, 4H), 3.59 - 3.51 (m, 2H), 3.36 (s, 3H), 3.19 (s, 1H), 3.13 - 2.98 (m, 1H), 2.64 (ddd, J = 3.1, 6.2, 14.1 Hz, 1H).
【0174】
実施例6:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イルヘプタノイルグリシネート
【化31】
【0175】
【0176】
工程A:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル(tert-ブトキシカルボニル)グリシネート
(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-オール(50mg、0.094mmol)(N69198-30-1)のDCM(1.5mL)懸濁液を、(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(33.0mg、0.188mmol)、DMAP(11.5mg、0.094mmol)、EDC(54.1mg、0.282mmol)、DIEA(0.082mL、0.470mmol)で処理し、室温で2日間撹拌した。反応物を追加の(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(36mg)、DMAP(14mg)、EDC(60mg)、DIEA(100μL)で処理し、室温で2日間撹拌した。(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(17mg)、DMAP(10mg)、EDC(33mg)、DIEA(40μL)、DCM(0.5mL)の追加の分量を加え、室温で2日間撹拌した。反応物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、0-100% EtOAc/DCM)により精製して、(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル(tert-ブトキシカルボニル)グリシネート(38mg、58%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C35H41FN6O6Si: 688.3. Found: 687.6 (M+1)+.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.93 (s, 1H), 7.75 - 7.61 (m, 4H), 7.49 - 7.34 (m, 6H), 6.47 (dd, J = 6.1, 7.5 Hz, 1H), 5.94 - 5.74 (m, 3H), 5.03 (br s, 1H), 4.10 - 3.90 (m, 4H), 2.99 - 2.84 (m, 1H), 2.75 - 2.63 (m, 1H), 2.60 (s, 1H), 1.48 (s, 9H), 1.10 (s, 9H).
【0177】
工程B:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イルヘプタノイルグリシネート
(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル(tert-ブトキシカルボニル)グリシネート(38mg、0.055mmol)の、DCM(0.8mL)及びTFA(0.2mL)の溶液を室温で2時間撹拌した。ライトブルーの溶液をMeOHで希釈し、減圧濃縮乾固を行った。残留物をDMF(1mL)に溶解させ、溶液をヘプタン酸(0.023mL、0.165mmol)、DIEA(0.048mL、0.275mmol)、HATU(41.8mg、0.11mmol)で処理し、室温で1時間撹拌した。反応物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。合わせた有機物を1N HCl、飽和NaHCO3水溶液、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、0-100% EtOAc/DCM)による精製によって、(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イルヘプタノイルグリシネート(23mg、60%)を透明なフィルム状物質として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C37H45FN6O5Si: 700.3. Found: 701.6 (M+1)+.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.92 (s, 1H), 7.72 - 7.58 (m, 4H), 7.50 - 7.32 (m, 6H), 6.46 (dd, J = 6.2, 7.4 Hz, 1H), 6.05 - 5.76 (m, 4H), 4.27 - 4.08 (m, 2H), 4.08 - 3.90 (m, 2H), 2.95 (td, J = 7.0, 14.2 Hz, 1H), 2.70 (ddd, J = 3.6, 6.2, 13.8 Hz, 1H), 2.61 (s, 1H), 2.32 - 2.22 (m, 2H), 1.73 - 1.65 (m, 2H), 1.41 - 1.26 (m, 6H), 1.09 (s, 9H), 0.93 - 0.87 (m, 3H).
【0178】
工程C:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イルヘプタノイルグリシネート
(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イルヘプタノイルグリシネート(22mg、0.031mmol)(N69198-35-3)の氷冷THF(0.6mL)溶液を、TBAF(1MのTHF溶液、0.047mL、0.047mmol)で処理し、0℃で45分間撹拌した。反応物をAcOH(10滴)でクエンチし、水で希釈し、EtOAcで抽出した。EtOAc溶液を水、ブライン(5回)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、0-20% MeOH/EtOAc)、次いで、RP-HPLC(C18、MeCN/水 0.1% ギ酸)による精製によって、表題化合物(3.9mg、26%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C21H27FN6O5: 462.2. Found: 463.8 (M+1)+.
1H NMR (400MHz, メタノール-d4) δ 8.26 (s, 1H), 6.43 (dd, J = 6.4, 7.6 Hz, 1H), 5.75 (dd, J = 3.5, 6.8 Hz, 1H), 4.13 - 3.97 (m, 2H), 3.85 (q, J = 12.2 Hz, 2H), 3.13 (s, 1H), 3.03 (ddd, J = 6.9, 7.6, 14.1 Hz, 1H), 2.64 (ddd, J = 3.5, 6.2, 13.9 Hz, 1H), 2.28 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.64 (quin, J = 7.5 Hz, 2H), 1.46 - 1.24 (m, 6H), 0.99 - 0.81 (m, 3H).
【0179】
実施例7:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)グルタレート
【化33】
【0180】
【0181】
工程A:2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルジヘプタノエート
1,3-ジヒドロキシプロパン-2-オン(500mg、5.55mmol)のDCM(20mL)懸濁液に、ピリジン(0.940mL、11.6mmol)及び塩化ヘプタノイル(1.762mL、11.38mmol)を加え、混合物を周囲温度で18時間撹拌した。混合物をDCMで希釈し、水で洗浄した。有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、シリカゲル(EtOAc/ヘキサン、0-20%)で精製して、2-オキソプロパン-1,3-ジイルジヘプタノエート(1.17g、66%)をオフホワイトの固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C17H30O5: 314. Found: 315 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 4.77 (s, 4H), 2.45 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.61 - 1.77 (m, 4H), 1.23 - 1.43 (m, 12H), 0.85 - 0.99 (m, 6H).
【0182】
工程B:2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルジヘプタノエート
2-オキソプロパン-1,3-ジイルジヘプタノエート(500mg、1.59mmol)のTHF(10mL)溶液に、水(0.5mL)を加え、混合物を0℃に冷却し、次いで、NaBH4(36.1mg、0.954mmol)を加え、窒素雰囲気下、0℃で1時間撹拌を続け、次いで、周囲温度で1時間撹拌した。飽和NH4Cl/水を加え、混合物をEtOAcで抽出した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、シリカゲル(EtOAc/ヘキサン 0-100%)で精製して、2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルジヘプタノエート(487mg、64%)を透明な油として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 4.03 - 4.29 (m, 5H), 2.42 - 2.51 (m, 1H), 2.37 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.61 - 1.74 (m, 4H), 1.24 - 1.44 (m, 12H), 0.86 - 0.98 (m, 6H).
【0183】
工程C:5-((1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-5-オキソペンタン酸
2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルジヘプタノエート(160mg、0.506mmol)のDCM(1mL)/THF(1mL)/ピリジン(1mL)溶液に、DMAP(6.18mg、0.051mmol)、次いで、ジヒドロ-2H-ピラン-2,6(3H)-ジオン(115mg、1.01mmol)を加え、混合物を60℃で6.5時間加熱した。混合物をEtOAcで希釈し、1M HCl/水で洗浄した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、シリカゲル(MeOH/ジクロロメタン 0-5%)で精製して、5-((1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-5-オキソペンタン酸(190mg、87%)を透明な油として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C22H38O8: 430.3. Found: 431.3 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 5.21 - 5.35 (m, 1H), 4.28 - 4.42 (m, 2H), 4.09 - 4.25 (m, 2H), 2.40 - 2.53 (m, 4H), 2.27 - 2.38 (m, 4H), 1.99 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.51 - 1.73 (m, 4H), 1.25 - 1.43 (m, 12H), 0.85 - 0.98 (m, 6H).
【0184】
工程D:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-オール
(2R,3S)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-オール(100mg、0.341mmol)のDMF(0.75mL)懸濁液に、イミダゾール(98mg、1.432mmol)及びTBDMS-Cl(108mg、0.716mmol)を加え、混合物を周囲温度で1分間撹拌し、次いで、50℃で1時間撹拌した。さらにイミダゾール(98mg、1.432mmol)を加え、30分後にTBDMS-Cl(108mg、0.716mmol)を加えた。50℃で15分後、水を加え、混合物をEtOAcで抽出した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、シリカゲル(EtOAc/ヘキサン 0-100%)で精製して、表題化合物(32mg、23%)を透明なガラス状物質として得た。ビスシリル生成物である9-((2R,4S,5R)-4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-5-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-5-エチニルテトラヒドロフラン-2-イル)-2-フルオロ-9H-プリン-6-アミンもまた単離された(111mg、61%)。
(2R,3S)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-オールのデータ:
LCMS (ESI) m/z calcd for C18H26FN5O3Si: 407.2. Found: 408.5 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 6.42 (dd, J = 7.0, 5.1 Hz, 1H), 6.01 (br s, 2H), 4.75 (br d, J = 5.3 Hz, 1H), 3.99 - 4.13 (m, 1H), 3.92 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 2.79 - 2.91 (m, 1H), 2.73 - 2.78 (m, 1H), 2.66 (dt, J = 13.4, 6.8 Hz, 1H), 2.50 (br d, J = 5.7 Hz, 1H), 0.83 - 1.04 (m, 9H), 0.13 (d, J = 2.62 Hz, 6H).
【0185】
工程E:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)グルタレート
(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-オール(32mg、0.079ミリモル)のDCM(3mL)溶液に、5-((1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-5-オキソペンタン酸(67.6mg、0.157mmol)を加えた。次いで、DMAP(9.59mg、0.079mmol)、EDC(45.2mg、0.236mmol)及びDIEA(0.069mL、0.393mmol)を加え、濁った混合物を周囲温度で4.5時間撹拌した。混合物をDCMで希釈し、水で洗浄した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して粗製の(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)グルタレートを得た。この残留物をTHF(3mL)に溶解させ、溶液を酢酸(5.8μL、0.1mmol)及び1M TBAF/THF(0.1mL、0.1mmol)の溶液で処理し、混合物を0℃で18時間保存した。混合物を濃縮し、シリカゲル(EtOAc/ヘキサン、0-100%)で精製して、(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)グルタレート(38mg、収率68%)を粘着性の泡状物として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C34H48FN5O10: 705.3. Found: 706.5 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.86 (s, 1H), 6.36 (dd, J = 9.5, 5.5 Hz, H), 5.69 - 5.99 (m, 3H), 5.51 (dd, J = 11.7, 3.3 Hz, 1H), 5.18 - 5.37 (m, 1H), 4.35 (dd, J = 11.9, 4.3 Hz, 2H), 4.18 (dd, J = 11.9, 5.7 Hz, 2H), 4.02 - 4.11 (m, 1H), 3.88 - 4.00 (m, 1H), 3.24 (ddd, J = 13.8, 9.5, 6.2 Hz, 1H), 2.70 (s, 1H), 2.42 - 2.60 (m, 5H), 2.35 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.95 - 2.12 (m, 2H), 1.62 - 1.74 (m, 4H), 1.24 - 1.40 (m, 12H), 0.83 - 0.98 (m, 6H).
【0186】
実施例8:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(テトラデカノイルオキシ)プロパン-2-イル)グルタレート
【化35】
工程Aで塩化ヘプタノイルの代わりに塩化テトラデカノイルを使用して、(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(ヘプタノイルオキシ)プロパン-2-イル)グルタレートの合成のために本明細書に記載されるように、表題化合物を調製した。
LCMS (ESI) m/z calcd for C
48H
76FN
5O
10: 901.6. Found: 902.8 (M+1)
+.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.89 (s, 1H), 6.36 (dd, J = 9.3, 5.5 Hz, 1H), 6.01 - 6.34 (m, 2H), 5.82 (dd, J = 6.2, 1.43 Hz, 1H), 5.47 (br d, J = 10.5 Hz, 1H), 5.20 - 5.35 (m, 1H), 4.29 - 4.42 (m, 2H), 4.13 - 4.25 (m, 2H), 4.02 - 4.12 (m, 1H), 3.87 - 4.00 (m, 1H), 3.22 (ddd, J = 13.8, 9.4, 6.3 Hz, 1H), 2.70 (s, 1H), 2.41 - 2.57 (m, 5H), 2.28 - 2.39 (m, 4H), 2.03 (dq, J = 14.5, 7.2 Hz, 2H), 1.54 - 1.76 (m, 4H), 1.19 - 1.44 (m, 40H), 0.83 - 0.97 (m, 6H).
【0187】
実施例9:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(イソブチリルオキシ)プロパン-2-イル)サクシネート
【化36】
【0188】
【0189】
工程A:2-オキソプロパン-1,3-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)
1,3-ジヒドロキシプロパン-2-オン(30g、333mmol)のDCM(200mL)溶液を窒素下、0℃で撹拌しながら、そこに、DMAP(1.22g、9.99mmol)、ピリジン(81.0mL、999mmol)及び塩化イソブチリル(78.0g、733mmol)のDCM(100mL)溶液を30分間滴下した。反応混合物を0℃で一晩撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(100mL)でクエンチし、相を分離した。有機溶液をブライン(6×100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、5:1 石油エーテル/EtOAc)に供して、所望の生成物(34g、44%)を黄色の油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.77 (s, 4H), 2.60 - 2.81 (m, 2H), 1.18 - 1.25 (m, 12H).
【0190】
工程B:2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)
2-オキソプロパン-1,3-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)(10.0g、43.4mmol)のTHF(100mL)/水(10mL)溶液を0℃で撹拌しながら、そこにNaBH4(1.97g、52.1mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで、1mMのHCl水溶液(100mL)を加えることによりクエンチした。混合物をEtOAc(3×80mL)で抽出した。合わせたEtOAc抽出物をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮して、所望の生成物(9.0g、80%)を黄色の油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.81 - 4.73 (m, 4H), 2.56 - 2.71 (m, 2H), 1.18 - 1.25 (m, 12H).
【0191】
工程C:5-((1,3-ビス(イソブチリルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-5-オキソペンタン酸
2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)(10.0g、43.1mmol)を、DCM(30mL)/THF(30mL)/ピリジン(30mL)に溶解させた。得られた溶液に、ジヒドロフラン-2,5-ジオン(8.62g、86.0mmol)及びDMAP(0.53g、4.31mmol)を加えた。混合物を60℃で6.5時間撹拌した。LCMSは完全な反応を示した。反応混合物を1mMのHCl水溶液(80mL)でクエンチし、EtOAc(3×80mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、3:2 石油エーテル/EtOAc)に供して、表題化合物(13g、86%)を無色の油として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C15H24O8: 332. Found: 355 (M+Na)+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.27 - 5.36 (m, 1H), 3.96 - 4.49 (m, 4H), 2.44 - 2.80 (m, 6H), 1.17 - 1.21 (m, 12H).
【0192】
工程D:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(イソブチリルオキシ)プロパン-2-イル)サクシネート
4-((1,3-ビス(イソブチリルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(625mg、1.88mmol)をDMF(25mL)に溶解させ、溶液をDMAP(574mg、4.70mmol)、次いで、EDC(901mg、4.70mmol)で処理した。得られた混合物を室温で0.5時間撹拌した。次いで、(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-オール(500mg、0.940mmol)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。LCMSは完全な反応を示した。反応を水(100mL)でクエンチし、混合物をEtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1:1 EtOAc/石油エーテル)に供して、所望の生成物(550mg、64%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C43H52FN5O10Si: 845. Found: 846 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.96 (s, 1H), 7.69 -7.67 (m, 4H), 7.51 - 7.33 (m, 6H), 6.50 (dd, J = 7.6, 6.0 Hz, 1H), 6.04 - 5.76 (m, 3H), 5.36 - 5.31 (m, 1H), 4.47 - 4.27 (m, 2H), 4.24 - 4.14 (m, 2H), 4.07 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.96 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 2.94 - 2.87 (m, 1H), 2.86 - 2.39 (m, 8H), 1.20 - 1.17(m, 12H), 1.11 (s, 9H).
【0193】
工程E:(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(イソブチリルオキシ)プロパン-2-イル)サクシネート
(2R,3S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)-2-エチニルテトラヒドロフラン-3-イル(1,3-ビス(イソブチリルオキシ)プロパン-2-イル)サクシネート(600mg、0.71mmol)のTHF(15mL)溶液に、TBAF(0.7mL、0.7mmol、1NのTHF溶液)を加えた。反応混合物を15℃で5時間撹拌した。LCMSは完全な反応を示した。反応を水(80mL)でクエンチし、混合物をEtOAc(3×60mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をRP-HPLC精製(C18、移動相A:10mM 水性NH4NCO3+0.1% NH4OH、移動相B:MeCN;流速:25mL/min;勾配:15分間かけて40%Bから48%B)に供して、所望の生成物(108mg、25%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) m/z calcd for C27H34FN5O10: 607. Found: 608 (M+1)+.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.35 (s, 1H), 7.92 (br, s, 2H), 6.32 (dd, J = 7.6, 7.4 Hz, 1H), 5.60 - 5.56 (m, 2H), 5.26 - 5.21 (m, 1H), 4.28 - 4.41 (m, 4H), 3.72 - 3.57 (m, 3H), 3.03 - 2.96 (m, 1H), 2.73 - 2.61 (m, 4H), 2.60 - 2.49 (m, 3H), 1.07 (dd, J = 7.2, 0.8 Hz, 12H)
【0194】
抗HIV活性
PSVアッセイ
偽型ウイルス(PSV)アッセイを使用して、HIV阻害剤の効力を評価した。NL4-3プロウイルス[エンベロープのオープンリーディングフレーム(ORF)における変異、及びnef ORFの代わりにルシフェラーゼレポーター遺伝子を有する]を含むプラスミドと、様々なHIV gp160エンベロープクローンについてのORFを含むCMVプロモーター発現プラスミドとのコトランスフェクションによって、複製欠損ウイルスを生成した。回収したウイルスを少量のアリコートで、-80℃で保存し、ウイルスの力価を測定して、抗ウイルスアッセイのためのロバストなシグナル(robust signal)を生成した。
【0195】
HIV侵入のための主要な受容体であるヒトCD4と、HIV侵入に必要とされる共受容体であるヒトCXCR4又はヒトCCR5のいずれかとを発現するように安定して形質転換されたU373細胞を、感染の標的細胞として使用することによって、PSVアッセイを実施した。目的分子(HIVの低分子阻害剤、HIVの中和抗体、HIVの抗体-薬物複合体阻害剤、HIVのペプチド阻害剤、及び様々な対照を含むが、これらに限定されない)を、組織培養培地に希釈し、段階希釈によって希釈して、濃度の用量範囲を生成することができ、これを実施例1について実施した。この用量範囲をU373細胞に適用し、事前に作製された偽型ウイルスを添加した。培養の3日後に、生成されたルシフェラーゼシグナルの量を使用して、偽型ウイルス感染のレベルを示した。IC50、すなわち、PSV感染を、阻害剤を含有しない感染から50%低下させるのに必要な阻害剤の濃度を計算した。細胞毒性を測定するアッセイを並行して実施して、阻害剤について観察された抗ウイルス活性が、標的細胞の生存率の低下と区別可能であることを確かにした。各化合物について3~4倍の段階希釈を使用した10点用量反応曲線からIC50値を決定し、これは、>1000倍の濃度範囲に及ぶ。
【0196】
これらの値は、標準の4パラメーターロジスティック方程式:
【数1】
を使用して、モル化合物濃度に対してプロットされる。
【0197】
得られたデータを表3に示す。
【0198】
【国際調査報告】