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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】複合体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20221003BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20221003BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20221003BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20221003BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20221003BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221003BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N15/113 Z ZNA
C07K7/08
C07K14/00
A61K47/64
A61P23/00
A61P25/14
A61P25/28
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507761
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 GB2020051891
(87)【国際公開番号】W WO2021028666
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】1911403.2
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】518160355
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(71)【出願人】
【識別番号】511244322
【氏名又は名称】アソシアシオン・アンスティテュ・ドゥ・ミオロジー
【氏名又は名称原語表記】ASSOCIATION INSTITUT DE MYOLOGIE
(71)【出願人】
【識別番号】507042442
【氏名又は名称】インサーム (インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル ヴァレラ
(72)【発明者】
【氏名】アシュリング ホーランド
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ラズ
(72)【発明者】
【氏名】ドニ フュルラン
(72)【発明者】
【氏名】アルノー クラン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ゲート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA15
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA15
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA19
4H045BA54
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA34
(57)【要約】
本発明は、治療用分子に結合した細胞透過性ペプチドキャリヤーから形成された複合体であって、ペプチドキャリヤーが特殊なドメインによって定義され、治療用分子がトリヌクレオチドリピートの形の核酸である複合体に係る。本発明は、さらに、治療法における、又は薬剤として、特に、トリプレットリピート病、例えば、筋強直性ジストロフィー(DM1)の治療における、このような複合体の使用に係る。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用分子に共有結合したペプチドキャリヤーを含んでなる複合体であって、
前記ペプチドキャリヤーは、アミノ酸残基40個以下の全長を有し、及び各々がアミノ酸残基少なくとも4個を含んでなるカチオン性ドメイン2個以上及び各々がアミノ酸残基少なくとも3個を含んでなる疎水性ドメイン1個以上を含んでなり、前記ペプチドキャリヤーは人工のアミノ酸残基を含有しておらず、及び
前記治療用分子は核酸を含んでなり、前記核酸は複数個のトリヌクレオチドリピートを含んでなることを特徴とする複合体。
【請求項2】
核酸は、GTC、CAG、GCC、GGC、CTT、及びCCGトリヌクレオチドリピートから選ばれるト複数個のトリヌクレオチドリピートを含んでなる請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
核酸が複数個のCAGリピートを含んでなる請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
核酸は、トリヌクレオチドリピート5~20個、好ましくは、トリヌクレオチドリピート5~10個、さらに好ましくは、トリヌクレオチドリピート7個を含んでなる請求項1~3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
核酸はトリヌクレオチドリピート伸長に結合する請求項1~4のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
ペプチドキャリヤーは天然のアミノ酸残基からなる請求項1~5のいずれかに記載の複合体。
【請求項7】
各カチオン性ドメインは、アミノ酸残基4~12個、好ましくは、アミノ酸残基4~7個の長さを有する請求項1~6のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
各カチオン性ドメインは、カチオン性アミノ酸少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%を含んでなる請求項1~7のいずれかに記載の複合体。
【請求項9】
各カチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、β-アラニン、ヒドロキシプロリン、及び/又はセリンの残基を含んでなり、好ましくは、各カチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、β-アラニン、ヒドロキシプロリン、及び/又はセリンの残基からなる請求項1~8のいずれかに記載の複合体。
【請求項10】
ペプチドキャリヤーは、カチオン性ドメイン2個を含んでなる請求項1~9のいずれかに記載の複合体。
【請求項11】
各カチオン性ドメインは、次の配列:RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR(配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、 BRB[Hyp]B(配列番号17)、R[Hyp]H[Hyp]HB(配列番号18)、R[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)又はその組み合わせから選ばれる1つの配列を含んでなり、好ましくは、各カチオン性ドメインは、次の配列:RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR(配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、 BRB[Hyp]B(配列番号17)、R[Hyp]H[Hyp]HB(配列番号18)、R[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)又はその組み合わせから選ばれる1つの配列からなる請求項1~10のいずれかに記載の複合体。
【請求項12】
各疎水性ドメインは、アミノ酸3~6個の長さを有し、好ましくは、各疎水性ドメインは、アミノ酸5個の長さを有する請求項1~11のいずれかに記載の複合体。
【請求項13】
各疎水性ドメインは、多数の疎水性アミノ酸残基を含んでなり、好ましくは、各疎水性ドメインは、疎水性アミノ酸少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%を含んでなる請求項1~12のいずれかに記載の複合体。
【請求項14】
各疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、プロリン、及びグルタミンの残基を含んでなり、好ましくは、各疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、プロリン、及び/又はグルタミンの残基からなる請求項1~13のいずれかに記載の複合体。
【請求項15】
ペプチドキャリヤーは、疎水性ドメイン1個を含んでなる請求項1~14のいずれかに記載の複合体。
【請求項16】
疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、次の配列:YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW, WWPWW(配列番号24)、WPWW(配列番号25)、WWPW(配列番号26)又はその組み合わせの1つを含んでなり、好ましくは、疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、次の配列:YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW, WWPWW(配列番号24)、WPWW(配列番号25)、WWPW(配列番号26)又はその組み合わせの1つからなる請求項1~15のいずれかに記載の複合体。
【請求項17】
ペプチドキャリヤーは、カチオン性ドメイン2個及び疎水性ドメイン1個からなり、好ましくは、ペプチドは、カチオン性アームドメイン2個が隣接する疎水性コアドメイン1個からなる請求項1~16のいずれかに記載の複合体。
【請求項18】
ペプチドキャリヤーは、次の配列:RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)、及びRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)の1つからなる請求項1~17のいずれかに記載の複合体。
【請求項19】
ペプチドキャリヤーは、リンカーによって、治療用分子に共有結合される請求項1~18のいずれかに記載の複合体。
【請求項20】
リンカーは、G、BC、XC、C、GGC、BBC、BXC、XBC、X、XX、B、BB、BX、XB、E、GABA、及びコハク酸から選ばれる請求項1~19のいずれかに記載の複合体。
【請求項21】
薬としての使用のための請求項1~20のいずれかに記載の複合体。
【請求項22】
トリプレットリピート病の予防又は治療における使用のための請求項1~20のいずれかに記載の複合体。
【請求項23】
トリプレットリピート病は、ポリグルタミン病又は非-ポリグルタミン病から選ばれる請求項20による使用のための複合体。
【請求項24】
トリプレットリピート病は、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)、HD(ハンチントン病)、HDL2(ハンチントン病様症候群2)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調症1型)、SCA2(脊髄小脳失調症2型)SCA3(脊髄小脳失調症3型又はマシャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調症6型)、SCA7(脊髄小脳失調症73型)、SCA17(脊髄小脳失調症17型)、HDL2(ハンチントン病様症候群2)、FRAXA(脆弱X症候群)、FXTAS(脆弱X関連振戦/失調症候群)、FRAXE(脆弱XE精神遅滞)、FRDA(フリードライヒ失調症)、DM1(筋強直性ジストロフィー1型)、SCA8(脊髄小脳失調症8型)、及びSCA12(脊髄小脳失調症12型)から選ばれる請求項22又は23に記載の使用のための複合体。
【請求項25】
トリプレットリピート病は筋強直性ジストロフィー1型(DM1)である請求項22~24のいずれかに記載の使用のための複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドキャリヤーと治療用分子との複合体に係り、前記ペプチドキャリヤーは特殊なドメインによって定義され、及び治療用分子はトリヌクレオチドリピート(三塩基反復配列)の形の核酸である。本発明は、さらに、治療法における、又は薬としての、特に、トリプレットリピート病、例えば、筋強直性ジストロフィー(DM1)の治療における、このような複合体の使用に係る。
【背景技術】
【0002】
核酸治療法は、ヒトのヘルスケアを変換する可能性を有するゲノム医療である。研究によれば、このような治療法は、広範囲の疾病分野にわたって用途を有することが示されている。特に、アンチセンスオリゴヌクレオチドに基づく方法のmRNAの発現を調節するための適用は、精密医療の最前線において、望ましい治療手段となっている。
【0003】
しかし、これらの有望なアンチセンス療法の開発は、不十分な細胞透過性及び乏しい分布特性によって妨げられていた。
【0004】
それ故、遺伝性疾患、例えば、深刻なトリプレットリピート病のための、より効果的な治療法を提供するために、アンチセンスオリゴヌクレオチドの送達を改善するとの強力か緊急の要求がある。
【0005】
トリプレットリピート病は、ゲノムDNA内における3個のヌクレオチドの特殊な配列のリピートの異常に多数の存在によって特徴づけられる、トリヌクレオチドリピート伸長としても知られる遺伝性疾患である。トリヌクレオチドリピート伸長は、特殊なタイプのマイクロサテライトリピートであり、しばしば、マイクロサテライト伸長としても知られている。典型的には、健常な対象では、認められるリピートの閾数があり、この数が過剰になると、疾患が発症する。閾数は、疾患と疾患遺伝子との間では異なる。これらの疾患では、リピートの数が疾患の重篤度を表すことも典型的である。一般に、リピートの数が多いことは、疾患のより重篤な状況を表示する。リピートの数は、疾患の発病年齢を予測するためにも使用され、リピートの数がより多ければ、早期発症型であることを表示する。
【0006】
現在、ヒトに影響を及ぼす14のトリプレットリピート病が知られている。これらの疾患は、いくつかの方法によって、例えば、トリプレットリピートが、遺伝において、どこに位置するか、それが、ORFをコードするタンパク質内、エクソン内、又は非翻訳領域内にあるかどうかによってグループ分けされる。或いは、疾患は、トリプレットリピートの配列によってグループ分けされる。多くのトリプレットリピート病では、トリプレットリピートは「CAG」であり、グルタミンをコード化し、疾患のこのグループは、ポリグルタミン病として一般的に知られている。しかし、他の配列を有するトリプレットリピートも知られており、非-ポリグルタミンリピート病としてグループ分けされる。
【0007】
非-グルタミンリピート病として知られる1つのトリプレットリピート病は、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)である。DM1は、DMPK遺伝子の3’UTR内に存在する「CTG」のトリヌクレオチドリピートによって引き起こされる。この遺伝子についてのリピートの正常な数は5~34リピートである。34リピートを超えると、疾患のいくつかの徴候が存在し、50リピートを超えると、疾患が発症する。
【0008】
DM1、及び他のトリプレットリピート病は、典型的には、筋神経系に影響を及ぼし、現在のところ、効果的な治療法はない。
【0009】
リピート領域に結合し、スプライシング又は翻訳を中断できるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用が、理論的に提案され、インビボで提示されているが、このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療法としての使用は、これら分子を、影響を受けた細胞へ送達することが困難であるため、可能ではなかった。これが、トリプレットリピート病を含む幅広い種類の遺伝性疾患についての状況である。
【0010】
送達媒体としてのウイルスの使用が提案されているが、それらの使用は、ウイルスのコートタンパク質の免疫毒性及び潜在的な発癌作用のため制限される。或いは、各種の非-ウイルス送達ベクターが開発されており、その中でも、ペプチドが、それらのサイズが小さいこと、標的特異性、及び大きいバイオカーゴの経毛細管性送達の能力のため、最高の有望性を示した。それらの細胞を透過する能力、又はバイオカーゴを運ぶ能力について、いくつかのペプチドが報告されている。
【0011】
ここ数年、細胞膜を通って効果的に運び、細胞核内のそれらのプレ-mRNAターゲットサイトに到達させることによって、オリゴヌクレオチドアナログの細胞送達を増強するために、細胞透過性ペプチドを、アンチセンスオリゴヌクレオチド(特に、電荷中性のホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)及びペプチド核酸(PNA))に接合している。特定のアルギニンリッチペプチド(P-PMOs又はペプチド-PMOsとして知られている)に接合されたPMO医薬は、効果的に、適切な細胞に透過できることが示されている。
【0012】
特に、中央の短い疎水性配列によって分離された2個のアルギニンリッチ配列からなるアルギニンリッチCPPsであるPNA/PMO内部移行ペプチド(Pips)が開発されている。これらの「Pip」ペプチドは、初めに、PNAカーゴへの付着によって、高レベルのエクソンスキッピングを維持する一方で、血清安定性を改善するためのものであった。さらに、これらのペプチドの誘導体はPMOsの複合体に指定され、これらは、マウスにおける全身投与後、DMDモデルにおいて、全身的骨格筋療法(重要なことには、心臓も含まれる)を導くことを示した。
【0013】
これらのキャリヤーは有効であるにもかかわらず、その治療応用は、それらの伴われる毒性によって妨げられていた。
【0014】
シングルアルギニンリッチドメイン、例えば、R6Glyを有する他のキャリヤーペプチドも生成されている。これらのペプチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドとのペプチド複合体(毒性が低減されている)を生成するために使用されているが、これらの複合体は、Pipペプチドと比較して、低い効力を示した。
【0015】
さらに、キャリヤーペプチドの開発のほとんど全てが、DMDの治療に関連するものである。疎水性のコアドメインを有するペプチドは、DMDとの関連で、特に活性であることが証明されている。このようなキャリヤーペプチドの、異なった原因及び異なった病理を有する他の神経筋疾患における使用については、未だ研究が行われていない。
【0016】
従って、現在利用できるキャリヤーペプチドが、特に、異なった病理を原因とする疾患でない遺伝性疾患、例えば、トリプレットリピート病の治療のための核酸治療薬との複合体における使用に適することは、未だ実証されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
キャリヤーペプチド技術の分野における挑戦は、効力と毒性とを切り離すものであった。本発明者らは、新たに、少なくともこの課題に対処するトリプレットリピート病の治療のための治療用核酸に共有結合した、特別な構造を有する改善されたキャリヤーペプチドを含んでなる複合体を同定し、合成し、及びテストした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、治療用分子に共有結合したペプチドキャリヤーを含んでなる複合体が提供され、ここで、ペプチドキャリヤーは、アミノ酸40個以下の全長を有し、及びカチオン性ドメイン2個以上(各々、アミノ酸残基少なくとも4個を含んでなる)及び疎水性ドメイン1個以上(各々、アミノ酸残基少なくとも3個を含んでなる)を含んでなり、ここで、ペプチドキャリヤーは、人工のアミノ酸残基を含有しておらず、及び治療用分子は核酸を含んでなり、核酸は複数個のトリヌクレオチドリピートを含んでなる。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、医薬としての使用のための、第1の態様による複合体が提供される。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、対象における疾患の治療法が提供され、前記方法は、第1の態様による複合体の有効な量を対象に投与することを含んでなる。
【0021】
本発明の第4の態様によれば、トリプレットリピート病の予防又は治療における使用のための、第1の態様による複合体が提供される。
【0022】
本発明の第5の態様によれば、対象におけるトリプレットリピート病の予防又は治療の方法が提供され、前記方法は、第1の態様による複合体の有効な量を対象に投与することを含んでなる。
【0023】
本発明の第6の態様によれば、第1の態様による複合体を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0024】
第2、3、4、又は5の態様の1具体例では、複合体は医薬組成物に配合される。
次に、本発明の更なる特徴及び具体例を、以下の見出し付きの節において記載する。他に明示的な注記がない限り、いずれかの特徴は、いずれかの互換性のある組み合わせにおいて、上記の態様と、又は他の特徴と組み合わされる。個々の特徴は、いずれかの特別な具体例に限定されない。ここで使用する節の見出しは、組織的な目的のものであり、記載の主題を限定するものとして理解されてはならない。
【0025】
全体を通して、「ペプチドキャリヤー」とは、ここに結合される分子を細胞に輸送するために適するペプチド、すなわち、細胞透過性ペプチドを意味する。用語「細胞透過性ペプチド」及び「ペプチドキャリヤー」及び「ペプチド」は、全体を通して、互換的に使用される。
【0026】
全体を通して、「X」は、いずれかの形の、人工的、合成的に生成されたアミノ酸、アミノヘキサン酸を意味する。
【0027】
全体を通して、「B」は、天然ではあるが、非遺伝子的にコードされたアミノ酸β-アラニンを意味する。
【0028】
全体を通して、「Ac」は、関連するペプチドのアセチル化を意味する。
【0029】
全体を通して、「Hyp」は、天然ではあるが、非遺伝子的にコードされたアミノ酸ヒドロキシプロリンを意味する。
【0030】
全体を通して、他の大文字は、許容されたアルファベットアミノ酸コードに従って、関連する遺伝子的にコードされたアミノ酸残基を意味する。
【0031】
ここでいう「人工の」アミノ酸又は残基は、天然には存在しない、いずれかのアミノ酸を意味し、合成のアミノ酸、修飾アミノ酸(例えば、糖にて修飾されたもの)、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、スペーサー、及び非-ペプチド結合したスペーサーを含む。疑義を回避するため、アミノヘキサン酸(X)は、人工のアミノ酸である。疑義を回避するため、β-アラニン(B)及びヒドロキシプロリン(Hyp)は天然のものであり、それ故、本発明の関連では、人工のアミノ酸ではなく、天然のアミノ酸である。人工のアミノ酸としては、例えば、6-アミノヘキサン酸(X)、テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(TIC)、1-(アミノ)シクロヘキサンカルボン酸(Cy)、及び3-アゼチジン-カルボン酸(Az)、11-アミノウンデカン酸が含まれる。人工のアミノ酸としては、例えば、アミノヘキサン酸(X)が含まれる。
【0032】
ここでいう「カチオン性」は、生理的pHにおいて、全体として負の電荷を有するアミノ酸又はアミノ酸のドメインを意味する。
【0033】
「アルギニンリッチ」又は「ヒスチジンリッチ」とは、カチオン性ドメインの少なくとも40%が前記残基でなることを意味する。
【0034】
ここでいう「疎水性」は、撥水性を有する又は水と混合しないアミノ酸又はアミノ酸のドメインを意味する
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、CTGリピート2600個を持つDM1患者の筋芽細胞における病原性核内フォーカスの数の減少、及びMBNL再分布を示す。種々のDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の各各所用量でのトランスフェクション後48時間では、筋芽細胞又は肝細胞の細胞生存率を減少させなかったとの結果を示す(10μMで示された)。
図2図2A、B、C、D、及びEは、従来のペプチドキャリヤーPip6a及びPip9b2にて形成された複合体と比べて、種々のDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体は、各種の濃度において、DMPK遺伝子内にリピート2600個を持つDM1患者に由来のDM1患者の筋芽細胞におけるMbnl-依存転写物のスプライシング欠損を是正することを示す。
図3図3A、B、C、及びDは、従来のペプチドキャリヤーPip6a及びPip9b2にて形成された複合体と比べて、種々のDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体は、各種の濃度において、DMPK遺伝子内にリピート2600個を持つDM1患者に由来のDM1患者の筋芽細胞におけるMbnl-依存転写物のスプライシング欠損を是正することを示す。
図4図4は、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の30mg/kgでの全身送達(IV、尾静脈)が、HSA-LRマウスの脾腹筋(gast.)及び大腿四頭筋(quad.)におけるMbnl-依存性転写物のスプライシング欠損を是正することを示す。clcn1エクソン7a、sercaエクソン22、及びmbnl1エクソン5(最も広く使用されているDM1バイオマーカー)のスプライシングのRT-PCR分析は、DPEP1及び3系複合体について、スプライシングの野生型レベルへの正常化を示す。ペプチド-PMO当たりHSA-LRマウス6匹のデータを、未処置のHSA-LRマウスと比べて、分散分析(ANOVA)及びTukey事後検定によって分析した。データは平均値±SEMである(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n.s.:有意でない)。
図5図5は、CTGリピート2600個を持つDM1患者の筋芽細胞を、各種用量の様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体にてトランスフェクトした後48時間での筋芽細胞の生存率を示す。DPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の濃度は、従来のペプチドキャリヤー:Pip6a及びPip9b2にて形成された複合体と比べて、筋芽細胞において細胞死を生じない治療レベルから数倍増大される。
図6図6は、CTGリピート2600個を持つDM1患者の肝細胞を、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体及び比較用複合体にてトランスフェクトした後48時間での肝細胞の生存率を示す。DPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の濃度は、従来のペプチドキャリヤー:Pip6a及びPip9b2にて形成された複合体と比べて、肝細胞において細胞死を生じない治療レベルから数倍増大される。
図7図7は、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の単回投与後(30mg/kg、n=6、IV、尾静脈)2週間でのHSA-LRマウスの脾腹筋における電気筋運動記録によるミオトニーの測定を示す。データは、未処置のHSA-LRマウス及びDPEP5.7との比較用複合体と比べて、ANOVA及びTukey事後検定によって分析した。データを、未処置のHSA-LRマウスと比べて、ANOVA及びTukey事後検定によって分析した。データは、平均値±SEMである(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n.s.:有意でない)。
図8図8は、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体を単回投与後(30mg/kg、n=6、IV、尾静脈)2週間でのHSA-LRマウスにおける図8及び10のデータに関する対応するミオトニーのグレード測定を示す。データを、未処置のHSA-LRマウス及びDPEP5.7を有する比較用複合体と比べて、対応のないStudent t検定によって分析した。データは、平均値±SEMである。
図9図9は、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体を単回投与後(30mg/kg、n=6、IV、尾静脈)2週間でのHSA-LRマウスの脾腹筋における電気筋運動記録によるミオトニーの測定を示す。データは、未処置のHSA-LRマウス及びDPEP5.7との比較用複合体と比べて、ANOVA及びTukey事後検定によって分析した。データを、未処置のHSA-LRマウスと比べて、ANOVA及びTukey事後検定によって分析した。データは、平均値±SEMである(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n.s.:有意でない)。
図10図10は、テストした個人毎に詳述したデータを示す。図10A、B、及びCは、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体のボーラスIV(尾静脈)注射投与されたC57BL6雌マウス(年齢8~10週、n=5/グループ)から、注射後Day7おいてに採取した血清において評価したALP、ALT、及びASTレベルを、食塩水と比較して示す。ALP、ALT、及びASTレベルは、ペプチドキャリヤーの従来のPipシリーズによって誘発された倍増と比較して、食塩水コントロール注入と同様であった。
図11図11Aは、標準曲線内に適合させるために希釈したサンプルによるELISA(R&D cat# MKM100)により測定した、C57BL6雌マウスへの様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の注射後Day2及びDay7で採取した血清及び尿において評価したKIM-1レベルを示す。尿中タンパク質濃度を説明するために、値を、尿中のクレアチニンレベルに規準化した(Harwell)。KIM-1レベルは、ペプチドキャリヤーの従来のPipシリーズによって誘発された倍増と比較して、食塩水コントロール注入と同様であった。図11B及びCは、C57BL6雌マウス(Harwell)への様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の注射後Day7で採取した血清において評価したBUN及びクレアチニンレベルを、食塩水と比べて示す。BUN及びクレアチニンレベルは、ペプチドキャリヤーの従来のPipシリーズによって誘発された倍増と比較して、食塩水コントロール注入と同様であった。
図12図12は、C57BL6雌マウスへの30mg/kgでの注射によるDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の投与後Day2、7、及び14で採取した尿において評価したKIM-1/クレアチニンレベルの比を、食塩水と比較して示す。クレアチニン及びKIM-1のレベルは、ペプチドキャリヤーの従来のPipシリーズによって誘発された倍増と比較して、食塩水コントロール注入と同様であった。
図13図13は、C57BL6雌マウスへの5mg/kg×6での注射によるDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の投与後、Day2及び7で採取した尿において評価したKIM-1/クレアチニンレベルの比を、食塩水と比較して示す。クレアチニン及びKIM-1のレベルは、ペプチドキャリヤーの従来のPipシリーズによって誘発された倍増と比較して、食塩水コントロール注入と同様であった。
図14図14A、B、C、及びDは、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体を、5、7.5、及び30mg/kgでC57BL6雌マウス(年齢8~12週、n=5/グループ)に注射によって投与した後の尿におけるナトリウム、カリウム、塩化物、尿素、クレアチニン、カルシウム、リン、グルコース、尿酸、マグネシウム、及びタンパク質のレベルを、食塩水と比較して示す。エラーバーはSEMを表示する。
図15図15は、DPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体治療後のHSA-LRマウスの体重を示す。単回用量30mg/kgを注射したHSA-LRマウス5匹の長期の体重は、食塩水を注射したHSA-LRマウス5匹と比較する場合、何らの有意の減少を示さなかった。
図16図16は、HSA-LRマウス(IV)において、複合体30mg/kg又はそのままのPMO3×200 mg/kgの投与の後2週間で、ELISAによって測定した様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の生体内分布送達分析を示す。DPEP1.9及びDPEP3.8複合体の生体内分布の評価は、DM1における臨床的罹患した組織への最適な送達であることが明らかにした。ジゴキシゲニン及びビオチンでラベルされたプローブを使用する特注のELISAアッセイによって、PMOを検出した。処置から2週間後、筋組織におけるPMOの濃度は、なお、>1nMであり、これに対して、そのままのPMOの注射後では、低いpMが検出された(DPEP-PMO複合体処置に対して、そのままのPMO処置のモル濃度の差異は>20倍であるにもかかわらず)(n=4)。データは、平均値±SEMとして表される。統計:Tukey事後検定を伴う一元配置ANOVA。
図17図17は、5mg/kgでの単回用量の投与後の血清において測定した様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の薬物動態特性を示す。特注ELISAを使用して血清中の濃度を定量して、濃度は、5mg/kgでのIV注射後5分で、500~800 nMに達し、1時間後には100 nMに、3時間後には10nMに低下した。処置後6時間では、濃度は~1nMであり、化合物の多くは既に排除又は目的の組織に送達されていた。
図18図18A、B、C、及びDは、様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体の全身送達が、HSA-LRマウスの脾腹筋におけるMbnl-依存転写物のスプライシング欠損を是正することを、より詳細に示す。Clcn1エクソン7a、Sercaエクソン22、Mbnl1エクソン5、及びLdb3エクソン11のスプライシングのRT-PCR分析は、30及び40mg/kgのDPEP1.9系複合物及びDPEP3.8系複合物により、スプライシングが野生型レベルへ正常化されることを示した。スプライシングの是正は、処置後少なくとも3か月間持続し、単回低用量(5及び7.5mg/kg)後でも有意であった(ボックスは、データの四分位への分配を示す;平均値を強調する;エラーバーは、上方及び下方の四分位外の変異性を示す;n=5/グループ)。
図19図19A、B、及びCは、DPEP3.8系複合体及びDPEP1.9系複合体の30又は40mg/kgの単回用量の投与後、HSA-LRマウスにおけるミオトニーのグレードが野生型レベルに是正される(4から0へ)ことを示す。この是正は、処置後少なくとも3か月は持続する(A)。用量が4回の注射で投与される(4×7.5mg/kg)際、ミオトニーは50%に低下され(B)、一方、用量が4×5mg/kgに減少されると、最後の注射後2週間で20~25%の低下が生ずる(C)(エラーバーはSEMを示す);(n=6、IV、尾静脈)。
図20図20は、HSA-LRマウス(年齢:8~12週、n=5/グループ)における様々なDPEP1/3-[CAG]7 PMO複合体のIV投与後2日間及び1週間での血清中及び尿中での毒性スクリーニングを示し、その結果は、HSA-LRマウスの表現型を正常化できる用量では、有意な変化がないことを示した。30mg/kg又は40mg/kgでのDPEP1.9、DPEP3.8、DPEP3.1、及びDPEP3.1bによる処置後でのみ、及び処置後第2日でのみ、食塩水処置したHSA-LRマウスと比べて、KIM1レベルにおいて、有意の変化が認められた(エラーバーはSEMを示す)。
図21図21は、DPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体5mg/kgの用量の4回投与、DPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体7.5mg/kgの用量の4回投与、DPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体7.5mg/kgの用量の単回投与、DPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体の30mg/kgの用量の単回投与、又はDPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体40mg/kgの用量の単回投与を含む各種の投与レジメンの第1回投与後の数週間にわたる、HSA-LRマウスにおけるDM1表現型(ミオトニー)の是正を示す。ミオトニーの減少は、何ら毒性と関連しない低用量(5~7.5mg/kg)のDPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体による処置後に達成される。
図22図22は、DPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体5mg/kgの用量の4回投与、DPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体7.5mg/kgの用量の4回投与、DPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体7.5mg/kgの用量の単回投与、又はDPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体40mg/kgの用量の単回投与を含む各種の投与レジメンの第1回投与後の数週間にわたる、HSA-LRマウスにおけるDM1表現型(ミオトニー)の是正を示す。ミオトニーの減少は、何ら毒性と関連しない低用量(5~7.5mg/kg)のDPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体による処置後に達成される。
図23図23は、そのままのPMO(200 mg/kgの用量×3)、DPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体30mg/kg、DPEP3.8b-[CAG]7 PMO複合体30mg/kg、DPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体7.5mg/kg、及びDPEP3.8-[CAG]7 PMO複合体40mg/kgのHSA-LRマウスへのIV投与後2週間での、各種組織におけるPMO濃度(pM)を示す。両ペプチド(DPEP3.8及びDPEP3.8b)は、PMOを成功裏に筋肉に送達でき、骨格筋では>6nMの濃度に達する。
図24図24は、そのままのPMO(200 mg/kgの用量×3)、DPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体30mg/kg、DPEP1.9b-[CAG]7 PMO複合体30mg/kg、DPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体7.5mg/kg、及びDPEP1.9-[CAG]7 PMO複合体40mg/kgのHSA-LRマウスへのIV投与後2週間での、各種組織におけるPMO濃度(pM)を示す。両ペプチド(DPEP1.9及びDPEP1.9b)は、PMOを成功裏に筋肉に送達できる。DPEP1.9b-[CAG]7 PMOは、特に良好に横隔膜に到達する(30mg/kgの単回IV注射後2週間で>15nM)。
図25図25は、そのままのPMO(200 mg/kgの用量×3)、DPEP3.1-[CAG]7 PMO複合体30mg/kg、DPEP3.1a-[CAG]7 PMO複合体30mg/kg、及びDPEP3.1b-[CAG]7 PMO複合体30mg/kgのHSA-LRマウスへのIV投与後2週間での、各種組織におけるPMO濃度(pM)を示す。3種のペプチド(DPEP3.1、DPEP3.1a、及びDPEP3.1b)は、PMOを骨格筋及び心筋の両方に送達できた(>1nM)。
図26図26は、本発明の様々なペプチド-[CAG]7 PMO複合体を、異なる用量でHSA-LRマウスに全身IV投与した後の各種の時点で、尿中で測定したクレアチニンレベルに対するKIM-1の毒性学スクリーンを、食塩水と比べて示す。本発明のDPEPペプチド-[CAG]7 PMO複合体は、特にPip6a-[CAG]7 PMO複合体と比べて、より高い用量であっても、低い毒性を保持する。DPEP複合体は、DM1表現型を健康レベルに逆転できる用量レジメンを使用する場合、毒性バイオマーカーに影響を及ぼさない。
図27図27は、本発明のDPEP3.8を、異なる用量でHSA-LRマウスに全身IV投与した後の各種の時点で、尿中で測定したクレアチニンレベルに対するKIM-1の毒性学スクリーンを、そのままの[CAG]7 PMO及びPipペプチド-[CAG]7 PMOと比べて示す。本発明のDPEPペプチド-[CAG]7 PMO複合体は、特にPip6a-[CAG]7 PMO複合体と比べて、より高い用量であって、低い毒性を保持する。DPEP複合体は、DM1表現型を健康レベルに逆転できる用量レジメンを使用する場合、毒性バイオマーカーに影響を及ぼさない。
図28図28は、本発明のDPEP1.9を、異なる用量でHSA-LRマウスに全身IV投与した後の各種の時点で、尿中で測定したクレアチニンレベルに関連するKIM-1の毒性学スクリーンを、Pipペプチド-[CAG]7 PMOと比べて示す。本発明のDPEPペプチド-[CAG]7 PMO複合体は、特にPip6a-[CAG]7 PMO複合体と比べて、より高い用量であって、低い毒性を保持する。DPEP複合体は、DM1表現型を健康レベルに逆転できる用量レジメンを使用する場合、毒性バイオマーカーに影響を及ぼさない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、トリプレットリピート病の予防及び治療に適する核酸に、特別なペプチドキャリヤーを結合することにより、核酸が、ターゲット細胞に効果的に透過し及び結合して、罹患対象の遺伝子中に存在するトリヌクレオチドリピート伸長をターゲットとすることができるとの知見に基づくものである。この活性は、リピート伸長の転写物及び/又は細胞内に存在するタンパク質のレベルを低減し、これにより、細胞のスプライシング機構との病理学的相互作用をブロックし、スプライシングを正常化し、前記対象の生理的状態を改善する。
【0037】
有利には、ここに記載するペプチドキャリヤーは、治療用核酸が、分解に抵抗し、ターゲット細胞に透過し、ターゲットのトリヌクレオチドリピート伸長に達して、治療を提供できる能力を増大させると思われる。さらに、本発明の複合体は、公知のペプチドキャリヤーにて形成された複合体よりもかなり低い毒性を有する。それ故、複合体は、対象に対する非毒性を維持しつつ、トリプレットリピート病用の核酸治療薬の効果的な送達手段を提供する。
【0038】
発明者らは、これが、疎水性コアを有するいずれかのペプチドキャリヤーがDMD以外の神経筋疾患の治療において有効であることが示された最初であると確信している。従来の研究は、DMDを治療するため、治療薬の送達用にペプチドキャリヤーを使用することに焦点が合わされていた。トリプレットリピート病の病理と比べて、DMDの病理は全く異なる。特に、DMDは、炎症を含む活性な筋変性及び筋の交代及び補修を伴い、一方、トリプレットリピート病、例えば、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、明白な変性を持たない筋の機能障害を伴う。発明者らにより、ペプチドキャリヤーは、筋膜と相互作用して、治療用分子の効果的な送達を可能にし、それ故、それらが相互作用する膜のタイプは、退行性の筋と非退行性の筋との間、すなわち、DMDとトリプレットリピート病との間では、非常に異なる。変性疾患、例えば、DMDとは逆に、DM1では、筋膜は破壊されず、それ故、筋組織への複合体の透過は阻害され、達成は非常に困難であろうと予想されていた。しかし、ここに報告したデータに基づけば、ペプチドキャリヤーは、初めて、DM1を治療するため非退行性の筋への送達において有効であることが示されただけでなく、予想外にも、DMDよりもDM1について、より効果的に作用することが示された。
【0039】
ここに示したデータにおいて、本発明の複合体は、良好なレベルの効力及びトリプレットリピート病に罹患した重要なターゲット組織、例えば、脾腹筋及び大腿四頭骨格筋への送達を保持する。さらに、これらの複合体は、同一の複合体を使用する際、従来利用可能なキャリヤーペプチドと比べて、改良された効力を示す。本発明の複合体は、突然変異によるCUG伸長-DMPK転写物をターゲットとして、核内フォーカスの形成を防止し、これにより、核内RNAフォーカスによるMBNL1スプライシング因子の有害な隔離を防止し、その結果、多様な遺伝子及び筋の機能障害の原因であるMBNL1の機能的損失を緩和する。
【0040】
これは、ここでは、本発明の複合体の投与後の伸長を含有するDMPK転写物によって形成される核内フォーカスの数における減少、及び本発明の複合体の投与後の、遺伝子のスプライシングの是正(遺伝子は、典型的には、トリヌクレオチドリピート伸長転写物によって隔離されるMBNL1の有効性の減少のため、DM1において、ミススプライスされる)によって証明される。具体的には、ここで証明された複合体は、未処置の細胞/対象と比較して、clicn1エクソン7a及びmblnl1エクソン5を除外し及びsercaエクソン22を含む健康なコントロールに対して50~90%のスプライシング是正を示す。これは、さらに、DM1モデルにおいて示されるように(ここに記載の複合体の単回注入後であっても、マウスにおける筋緊張が正常化され、完全回復まで補正される)、トリプレットリピート病の生理的状態における改善によって証明される。
【0041】
驚くべきことには、発明者らは、複合体において使用されるペプチドキャリヤーが、治療用分子を、CUG突然変異との好ましい化学量論的相互作用を可能にするに十分な濃度で、核分画に及びDMPK転写物の核内凝集体に効果的に送達するとの知見を得た。
【0042】
同時に、本発明の複合体は、インビボで効果的に作用して、全身注入に続いて、生物化学マーカーの測定を介して観察されるように、臨床徴候の低減及び低毒性を示す。重大なことには、本発明の複合体は、同じ複合体における従来のキャリヤーペプチドと比べて、マウスへの同様の全身注入に続いて、驚くほど低減された毒性を示すことが証明された。ここで証明されるように、本発明の複合体は、治療上適切な用量の食塩水と比較して、毒性マーカーの有意の増大を全く生じず、細胞生存性を維持するのに対し、従来のペプチドキャリヤーを使用する複合体は著しい細胞死を示す。複合体がマウスに投与される際、マウスは、これまで利用可能なペプチドにて形成された複合体の投与後よりも、かなり早い迅速な回復時間を示す。
【0043】
従って、本発明の複合体は、ヒトにおけるトリプレットリピート病のための安全かつ効果的な治療法としての使用について改善された適合性を提供し、他では治療不可能であったこれらの深刻な疾患の治療用の手段を提供する。
【0044】
人工のアミノ酸
本発明は、人工のアミノ酸残基が存在しない、特別な構造を有するキャリヤーペプチドを含んでなる複合体に係る。
好適には、ペプチドはアミノヘキサン酸残基を含有しない。好適には、ペプチドは、いずれの形のアミノヘキサン酸残基を含有しない。好適には、ペプチドは、6-アミノヘキサン酸残基を含有しない。
好適には、ペプチドは、天然のアミノ酸残基のみ含有し、それ故、天然のアミノ酸残基からなる。
好適には、細胞透過性ペプチドにおいて一般的に使用される人工のアミノ酸、例えば、6-アミノヘキサン酸は、天然のアミノ酸によって交換される。好適には、細胞透過性ペプチドにおいて一般的に使用される人工のアミノ酸、例えば、6-アミノヘキサン酸は、β-アラニン、セリン、プロリン、アルギニン、及びヒスチジン又はヒドロキシプロリンから選ばれる天然のアミノ酸によって交換される。
1具体例では、アミノヘキサン酸はβ-アラニンによって交換される。好適には、6-アミノヘキサン酸はβ-アラニンによって交換される。
1具体例では、アミノヘキサン酸はヒスチジンによって交換される。好適には、6-アミノヘキサン酸はヒスチジンによって交換される。
1具体例では、アミノヘキサン酸はヒドロキシプロリンによって交換される。好適には、6-アミノヘキサン酸はヒドロキシプロリンによって交換される。
好適には、細胞透過性ペプチドにおいて一般的に使用される人工のアミノ酸、例えば、6-アミノヘキサン酸は、天然のアミノ酸によって交換される。好適には、細胞透過性ペプチドにおいて一般的に使用される人工のアミノ酸、例えば、6-アミノヘキサン酸は、β-アラニン、セリン、プロリン、アルギニン、及びヒスチジン又はヒドロキシプロリンのいずれかの組み合わせ、好適には、β-アラニン、ヒスチジン、及びヒドロキシプロリンのいずれかの組み合わせによって交換される。
1具体例では、ペプチドキャリヤーは、アミノ酸残基40個以下の全長を有し、ペプチドは、
カチオン性ドメイン2個以上(各々、少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでなる)、及び
疎水性ドメイン1個以上(各々、少なくとも3個のアミノ酸残基を含んでなる)
を含んでなり、カチオン性ドメインの少なくとも1個はヒスチジン残基を含んでなる。
好適には、少なくとも1個のカチオン性ドメインはヒスチジンリッチである。
好適には、「ヒスチジンリッチ」の意味は、カチオン性ドメインについて定義されたとおりである。
【0045】
カチオン性ドメイン
本発明は、特定の長さを有するカチオン性ドメイン少なくとも2個が存在する特別な構造を有する短鎖ペプチドキャリヤーを含んでなる複合体に係る。
【0046】
好適には、ペプチドは、カチオン性ドメイン4個以下、カチオン性ドメイン3個以下を含んでなる。
【0047】
好適には、ペプチドはカチオン性ドメイン2個を含んでなる
【0048】
先に定義したように、ペプチドは、それぞれ、アミノ酸残基少なくとも4個の長さを有するカチオン性ドメイン2個以上を含んでなる。
【0049】
好適には、各カチオン性ドメインは、アミノ酸残基4~12個の長さ、好適には、アミノ酸残基4~7個の長さを有する。
【0050】
好適には、各カチオン性ドメインは、アミノ酸残基4、5、6、又は7個の長さを有する。
【0051】
好適には、各カチオン性ドメインは同様の長さであり、好適には、カチオン性ドメインは同じ長さである。
【0052】
好適には、各カチオン性ドメインはカチオン性アミノ酸を含んでなり、極性又は非極性のアミノ酸も含有できる。
【0053】
非極性アミノ酸は、アラニン、β-アラニン、プロリン、グリシン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニンから選ばれる。好適には、非極性アミノ酸は電荷をもたない。
【0054】
極性アミノ酸は、セリン、アスパラギン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、アルギニン、スレオニン、チロシン、グルタミンから選ばれる。好適には、選ばれる極性アミノ酸は負の電荷をもたない。
【0055】
カチオン性アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、リジンから選ばれる。好適には、カチオン性アミノ酸は、生理的pHにおいて、正の電荷を有する。
【0056】
好適には、各アミノ酸は、アニオン性又は負に帯電したアミノ酸残基を含まない。
【0057】
好適には、各カチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、β-アラニン、ヒドロキシプロリン及び/又はセリンの残基を含んでなる。
【0058】
好適には、各カチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、β-アラニン、ヒドロキシプロリン及び/又はセリンの残基からなる。
【0059】
好適には、各カチオン性ドメインは、カチオン性アミノ酸少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%を含んでなる。
【0060】
好適には、各カチオン性ドメインは、大多数のカチオン性アミノ酸を含んでなる。好適には、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%のカチオン性アミノ酸を含んでなる。
【0061】
好適には、各カチオン性ドメインは、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、少なくとも10.0、少なくとも10.5、少なくとも11.0、少なくとも11.5、少なくとも12.0の等電点(pI)を有する。
【0062】
好適には、各カチオン性ドメインは、少なくとも10.0の等電点(pI)を有する。
【0063】
好適には、各カチオン性ドメインは、10.0~13.0の等電点(pI)を有する。
【0064】
1具体例では、各カチオン性ドメインは、10.4~12.5の等電点(pI)を有する。
【0065】
好適には、カチオン性ドメインの等電点は、生理的pHにおいて、当分野において利用できるいずれかの好適な手段によって、好適には、Lukasz Kozlowskiによって開発されたIPC(www.isoelectric.org)ウエブ系アルゴリズム(Biol Direct. 2016; 11: 55. DOI: 10.1186/s13062-016-0159-9 a)を使用することによって算定される。
【0066】
好適には、各カチオン性ドメインは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%のアルギニン及び/又はヒスチジン残基を含んでなる。
【0067】
好適には、各カチオン性ドメインは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%のアルギニン残基を含んでなる。
【0068】
好適には、各カチオン性ドメインは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%のヒスチジン残基を含んでなる。
【0069】
好適には、カチオン性ドメインは、ヒスチジン残基1~5個及びアルギニン残基1~5個を含んでなることができる。好適には、カチオン性ドメインは、アルギニン残基1~5個を含んでなることができる。好適には、カチオン性ドメインは、ヒスチジン残基1~5個を含んでなることができる。好適には、カチオン性ドメインは、合計ヒスチジン残基2~5個及びアルギニン残基3~5個を含んでなることができる。好適には、カチオン性ドメインは、アルギニン残基3~5個を含んでなることができる。好適には、カチオン性ドメインは、ヒスチジン残基2~5個を含んでなることができる。
【0070】
好適には、各カチオン性ドメインは、β-アラニン残基1個以上を含んでなる。好適には、各カチオン性ドメインは、β-アラニン残基合計2~5個、好適には、β-アラニン残基合計2又は3個を含んでなることができる。
【0071】
好適には、カチオン性ドメインは、ヒドロキシプロリン残基又はセリン残基1個以上を含んでなることができる。
【0072】
好適には、カチオン性ドメインは、ヒドロキシプロリン残基1~2個を含んでなることができる。
【0073】
好適には、カチオン性ドメインは、セリン残基1~2個を含んでなることができる。
【0074】
好適には、所定のカチオン性ドメインにおけるカチオン性アミノ酸の全てがヒスチジンであるか、或いは、好適には、所定のカチオン性ドメインにおけるカチオン性アミノ酸の全てがアルギニンであってもよい。
【0075】
好適には、ペプチドは、ヒスチジンリッチカチオン性ドメイン少なくとも1個を含んでなる。好適には、ペプチドは、アルギニンリッチカチオン性ドメイン少なくとも1個を含んでなる。
【0076】
好適には、ペプチドは、アルギニンリッチカチオン性ドメイン少なくとも1個及びヒスチジンリッチカチオン性ドメイン少なくとも1個を含んでなることができる。
【0077】
1具体例では、ペプチドは、アルギニンリッチカチオン性ドメイン2個を含んでなる。
【0078】
1具体例では、ペプチドは、ヒスチジンリッチカチオン性ドメイン2個を含んでなる。
【0079】
1具体例では、ペプチドは、2個のアルギニンリッチカチオン性ドメイン及びヒスチジンリッチカチオン性ドメインを含んでなる。
【0080】
1具体例では、ペプチドは、アルギニンリッチカチオン性ドメイン1個及びヒスチジンリッチカチオン性ドメイン1個を含んでなる。
【0081】
好適には、各カチオン性ドメインは、3個以下の隣接するアルギニン残基、好適には、2個以下の隣接するアルギニン残基を含んでなる。
【0082】
好適には、各カチオン性ドメインは、隣接するヒスチジン残基を含まない。
【0083】
好適には、各カチオン性ドメインは、アルギニン残基、ヒスチジン残基、及び/又はβ-アラニン残基を含んでなる。好適には、各カチオン性ドメインは、大多数のアルギニン残基、ヒスチジン残基、及び/又はβ-アラニン残基を含んでなる。好適には、各カチオン性ドメインにおけるアミノ酸残基の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%が、アルギニン残基、ヒスチジン残基、及び/又はβ-アラニン残基である。
【0084】
1具体例では、ペプチドは、アルギニン残基及びβ-アラニン残基を含んでなる第1のカチオン性ドメイン、及びアルギニン残基及びβ-アラニン残基を含んでなる第2のカチオン性ドメインを含んでなる。
【0085】
1具体例では、ペプチドは、アルギニン残基及びβ-アラニン残基を含んでなる第1のカチオン性ドメイン、及びヒスチジン残基、β-アラニン残基、及び任意にアルギニン残基を含んでなる第2のカチオン性ドメインを含んでなる。
【0086】
1具体例では、ペプチドは、アルギニン残基及びβ-アラニン残基からなる第1のカチオン性ドメイン、及びヒスチジン残基及びβ-アラニン残基からなる第2のカチオン性ドメインを含んでなる。
【0087】
1具体例では、ペプチドは、アルギニン残基及びβ-アラニン残基からなる第1のカチオン性ドメイン、及びアルギニン残基及びβ-アラニン残基からなる第2のカチオン性ドメインを含んでなる。
【0088】
1具体例では、ペプチドは、アルギニン残基及びβ-アラニン残基からなる第1のカチオン性ドメイン、及びアルギニン残基、ヒスチジン残基、及びβ-アラニン残基からなる第2のカチオン性ドメインを含んでなる。
【0089】
好適には、ペプチドは、カチオン性ドメイン少なくとも2個を含んでなり、好適には、これらのカチオン性ドメインは、ペプチドのアームを形成する。好適には、カチオン性ドメインは、ペプチドのN-及びC-末端に配置される。それ故、好適には、カチオン性ドメインは、カチオン性アームドメインとして知られる。
【0090】
1具体例では、ペプチドはカチオン性ドメイン2個を含んでなり、1個はペプチドのN-末端に配置され、1個はペプチドのC-末端に配置される。好適には、ペプチドのいずれかの末端である。好適には、他の基、例えば、末端修飾基、リンカー、及び/又は治療用分子を除き、ペプチドのN-末端及びC-末端には、更なるアミノ酸又はドメインは存在しない。疑義を回避するため、このような他の基は、ここに記載の「ペプチド」に加えて存在できる。それ故、好適には、各カチオン性ドメインは、ペプチドの末端を形成する。好適には、これは、ここに記載するように、更なるリンカー基の存在を排除しない。
【0091】
好適には、ペプチドは、カチオン性ドメイン4個以下を含んでなることができる。好適には、ペプチドはカチオン性ドメイン2個を含んでなる。
【0092】
1具体例では、ペプチドは、ともにアルギニンリッチである2個のカチオン性ドメインを含んでなる。
【0093】
1具体例では、ペプチドは、アルギニンリッチである1個のカチオン性ドメインを含ん
でなる。
【0094】
1具体例では、ペプチドは、アルギニンリッチ及びヒスチジンリッチである2個のカチオン性ドメインを含んでなる。
【0095】
1具体例では、ペプチドは、アルギニンリッチであるカチオン性ドメイン1個及びヒスチジンリッチであるカチオン性ドメイン1個を含んでなる。
【0096】
好適には、カチオン性ドメインは、R、H、B、RR、HH、BB、RH、HR、RB、BR、HB、BH、RBR、RBB、BRR、BBR、BRB、RBH、RHB、HRB、BRH、HRR、RRH、HRH、HBB、BBH、RHR、BHB、HBH、又はそのいずれかの組み合わせの中から選ばれるアミノ酸ユニットを含んでなる。
【0097】
好適には、カチオン性ドメインは、セリン残基、プロリン残基、及び/又はヒドロキシプロリン残基も含むことができる。好適には、カチオン性ドメインは、さらに、RP、PR、RPR、RRP、PRR、PRP、Hyp;R[Hyp]R、RR[Hyp]、[Hyp]RR、[Hyp]R[Hyp]、[Hyp][Hyp]R、R[Hyp][Hyp]、SB、BS、又はそのいずれかの組み合わせ、又は上述のアミノ酸ユニットとのいずれかの組み合わせの中から選ばれるアミノ酸ユニットを含んでなることができる。
【0098】
好適には、各カチオン性ドメインは、次の配列;RBRRBRR (配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR (配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、BRB[Hyp]B(配列番号17)、R[Hyp]H[Hyp]HB(配列番号18)、R[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)、又はそのいずれかの組み合わせのいずれかを含んでなる。
【0099】
好適には、各カチオン性ドメインは、次の配列;RBRRBRR (配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR (配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、BRB[Hyp]B、R[Hyp]H[Hyp]HB、R[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)、又はそのいずれかの組み合わせのいずれかからなる。
【0100】
好適には、各カチオン性ドメインは、次の配列;RBRRBRR (配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRRBR(配列番号4)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)の1つからなる。
【0101】
好適には、ペプチドにおける各カチオン性ドメインは、同一又は異なるものである。好適には、ペプチドにおける各カチオン性ドメインは異なるものである。
【0102】
疎水性ドメイン
本発明は、特定の長さを有する疎水性ドメイン少なくとも1個が存在する特別な構造を有する短鎖ペプチドキャリヤーを含んでなる複合体に係る。
【0103】
好適には、ペプチドは、3個以下の疎水性ドメイン、2個以下の疎水性ドメインを含んでなる。
【0104】
好適には、ペプチドは、疎水性ドメイン1個を含んでなる。
【0105】
先に定義したように、ペプチドは、疎水性ドメイン1個以上(各々、アミノ酸残基少なくとも3個の長さを有する)を含んでなる。
【0106】
好適には、各カチオン性ドメインは、アミノ酸3~6個の長さを有する。好適には、各疎水性ドメインは、アミノ酸5個の長さを有する。
【0107】
好適には、各疎水性ドメインは、非極性、極性、及び疎水性のアミノ酸残基を含むことができる。
【0108】
疎水性アミノ酸残基は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、及びトリプトファンから選ばれる。
【0109】
非極性アミノ酸残基は、プロリン、グリシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンから選ばれる。
【0110】
極性アミノ酸残基は、セリン、アスパラギン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、アルギニン、トレオニン、チロシン、グルタミンから選ばれる。
【0111】
好適には、疎水性ドメインは、親水性アミノ酸残基を含有しない。
【0112】
好適には、各疎水性ドメインは、大多数の疎水性アミノ酸残基を含んでなる。好適には、各疎水性ドメインは、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%の疎水性アミノ酸残基を含んでなる。好適には、各疎水性ドメインは疎水性アミノ酸残基からなる。
【0113】
好適には、各疎水性ドメインは、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.8、少なくとも1.0、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3の疎水性を有する。
【0114】
好適には、各疎水性ドメインは、少なくとも0.3、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.45の疎水性を有する。
【0115】
好適には、各疎水性ドメインは、少なくとも1.2、少なくとも1.25、少なくとも1.3、少なくとも1.35の疎水性を有する。
【0116】
好適には、各疎水性ドメインは、0.4~1.4の疎水性を有する。
【0117】
1具体例では、各疎水性ドメインは、0.45~0.48の疎水性を有する。
1具体例では、各疎水性ドメインは、1.27~1.39の疎水性を有する。
【0118】
好適には、疎水性は、White及びWimley:W.C. Wimley及びS.H. White, 「膜界面におけるタンパク質の疎水性スケールを実験的に測定した」Nature Struct Biol 3: 842 (1996) によって測定される。
【0119】
好適には、各疎水性ドメインは、疎水性アミノ酸残基少なくとも3個、少なくとも4個を含んでなる。
【0120】
好適には、各疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、プロリン、及びグルタミンの残基を含んでなる。好適には、各疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、プロリン、及び/又はグルタミンの残基からなる。
【0121】
1具体例では、各疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、及び/又はグルタミンの残基からなる。
【0122】
1具体例では、各疎水性ドメインは、トリプトファン、及び/又はプロリンの残基からなる。
【0123】
好適には、ペプチドは、疎水性ドメイン1個を含んでなる。好適には、疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、ペプチドの中央に配置される。それ故、好適には、疎水性ドメインは、コア疎水性ドメインとして知られる。好適には、疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、アームドメインによっていずれかの側部に置かれる。好適には、アームドメインは、カチオン性ドメイン1個以上及びさらに疎水性ドメイン1個以上を含んでなることができる。好適には、各アームドメインは、カチオン性ドメインを含んでなる。
【0124】
1具体例では、ペプチドは、コア疎水性ドメインの側部に位置する2つのアームを含んでなり、各アームドメインはカチオン性ドメインを含んでなる。
【0125】
1具体例では、ペプチドは、コア疎水性ドメインの側部に位置する2つのアームからなる。
【0126】
好適には、疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、次の配列:YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW, WWPWW(配列番号24)、WPWW (配列番号25)、WWPW (配列番号26)、又はそのいずれかの組み合わせの1つを含んでなる。
【0127】
好適には、疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、次の配列:YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW, WWPWW(配列番号24)、WPWW (配列番号25)、WWPW (配列番号26)、又はそのいずれかの組み合わせの1つからなる。
【0128】
好適には、疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、次の配列:FQILY(配列番号21)、WWW, WWPWW(配列番号24)の1つからなる。
【0129】
好適には、疎水性ドメイン又は各疎水性ドメインは、FQILY(配列番号21)からなる。
【0130】
好適には、各疎水性ドメインは、同一の配列又は異なる配列を有することができる。
【0131】
ペプチドキャリヤー
本発明は、医学的状態の治療において、トリヌクレオチドリピート製の治療用分子の輸送に使用されるペプチドキャリヤーを含んでなる複合体に係る。
【0132】
ペプチドは、隣接する単一分子である配列を有し、それ故、ペプチドのドメインは、隣接している。好適には、ペプチドは、N-末端及びC-末端の間で、直線的に配置された数個のドメインを含んでなる。好適には、ドメインは、上記のカチオン性ドメイン及び疎水性ドメインから選ばれる。好適には、ペプチドは、カチオン性ドメイン及び疎水性ドメインからなる(ドメインは上記の定義のとおりである)
【0133】
各ドメインは、上記の適切な項で記載したとおりの共通した配列の特徴を有するが、各ドメインの正確な配列は、変更及び修飾可能である。このように、各ドメインについて、さまざまな配列が可能である。各可能なドメイン配列の組み合わせにより、さまざまなペプチドの構造が形成され、各構造は本発明の一部を形成する。ペプチドの構造の特徴を下記に記載する。
【0134】
好適には、疎水性ドメインは、いずれかのドメイン2個を分離する。好適には、各疎水性ドメインは、カチオン性ドメインによって、そのいずれかの側部に配置される。
【0135】
カチオン性ドメインは、他のカチオン性ドメインとは隣接しない。
1具体例では、ペプチドは、疎水性ドメイン1個を含んでなり、次の配置:
[カチオン性ドメイン]-[疎水性ドメイン]-[カチオン性ドメイン]
のように、その側部にカチオン性ドメイン2個が位置している。
【0136】
それ故、好適には、疎水性ドメインは、コアドメインとして知られ、各カチオン性ドメインは、アームドメインとして知られる。好適には、疎水性コアドメインは、そのいずれかの側部にカチオン性アームドメインを配置する。
【0137】
1具体例では、ペプチドは、カチオン性ドメイン2個及び疎水性ドメイン1個からなる。
【0138】
1具体例では、ペプチドは、カチオン性アームドメイン2個が側部に位置する疎水性ドメイン1個からなる。
【0139】
1具体例では、ペプチドは、各々が、RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR(配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、BRB[Hyp]B(配列番号17)、R[Hyp]H[Hyp]HB(配列番号18)、及びR[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)から選ばれる配列を含んでなるカチオン性アームドメイン2個が側部に位置する、YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW, WWPWW(配列番号24)、WPWW(配列番号25)、及びWWPW(配列番号26)から選ばれる配列を含んでなる疎水性コアドメイン1個からなる。
【0140】
1具体例では、ペプチドは、各々が、RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRRBR(配列番号4)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、及びRBHBH(配列番号8)から選ばれる配列を含んでなるカチオン性アームドメイン2個が側部に位置する、FQILY(配列番号21)、WWW, WWPWW(配列番号24)から選ばれる配列を含んでなる疎水性コアドメイン1個からなる。
【0141】
1具体例では、ペプチドは、各々が、RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRRBR(配列番号4)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、及びRBHBH(配列番号8)から選ばれる配列を含んでなるカチオン性アームドメイン2個が側部に位置する、FQILY(配列番号21)の配列を含んでなる疎水性コアドメイン1個からなる。
【0142】
いずれかのこのような具体例において、更なる基、例えば、リンカー、末端修飾、及び/又は治療用分子が存在できる。
【0143】
好適には、ペプチドは、N-末端修飾される。
【0144】
好適には、ペプチドは、N-アセチル化、N-メチル化、N-トリフルオロアセチル化、N-トリフルオロメチルスルホニル化、又はN-メチルスルホニル化される。好適には、ペプチドは、N-アセチル化される。
【0145】
任意に、ペプチドのN-末端は、修飾されなくてもよい
【0146】
1具体例では、ペプチドは、N-アセチル化される。
【0147】
好適には、ペプチドは、カルボキシ-、チオアシド-、アミノオキシ-、ヒドラジノ-、チオエステル-、アジド、歪アルキン、歪アルケン、アルデヒド-、チオール、又はアロアセチル基から選ばれるC-末端修飾を含む。
【0148】
有利には、C-末端又はN-末端の修飾は、ペプチドの治療用分子への結合手段を提供する。
【0149】
従って、C-末端修飾又はN-末端修飾はリンカーを含んでなり、及び逆も同様である。好適には、C-末端修飾又はN-末端修飾はリンカーからなり、及び逆も同様である。好適なリンカーは、ここに又は他の場所に記載する。
【0150】
好適には、ペプチドはC-末端カルボキシル基を含んでなる。
【0151】
好適には、C-末端カルボキシル基は、グリシン、β-アラニン、グルタミン酸、又はγ-アミノ酪酸の残基によって提供される。
【0152】
1具体例では、C-末端カルボキシル基は、β-アラニン残基によって提供される。
【0153】
好適には、C-末端残基はリンカーである。好適には、C-末端β-アラニン残基はリンカーである。
【0154】
それ故、好適には、各カチオン性ドメインは、さらに、N又はC-末端修飾を含んでなることができる。好適には、カチオン性ドメインは、C-末端にC-末端修飾を含んでなる。好適には、カチオン性ドメインは、N-末端にN-末端修飾を含んでなる。好適には、カチオン性ドメインは、C-末端にリンカー基を含んでなり、好適には、カチオン性ドメインは、C-末端にC-末端β-アラニンを含んでなる。好適には、カチオン性ドメインは、N-末端でN-アセチル化される。
【0155】
本発明のペプチドは、全長アミノ酸残基40個以下を有するものとして定義される。それ故、ペプチドは、オリゴペプチドとみなされる。
【0156】
好適には、ペプチドは、アミノ酸残基3~30個、好適には、アミノ酸残基5~25個、アミノ酸残基10~25個、アミノ酸残基13~23個、アミノ酸残基15~20個の全長を有する。
【0157】
好適には、ペプチドは、アミノ酸残基少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも15個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個の全長を有する。
【0158】
好適には、ペプチドは細胞に透過できる。従って、ペプチドは細胞透過性ペプチドとみなされる。
【0159】
好適には、ペプチドは治療用分子への付着用である。好適には、ペプチドは、治療用分子をターゲット細胞に輸送するためものである。好適には、ペプチドは、治療用分子をターゲット細胞へ送達するためのものである。それ故、ペプチドは、ペプチドキャリヤーとみなされる。
【0160】
好適には、ペプチドキャリヤーは、細胞及び組織に、好適には、細胞の核に、好適には、筋組織に透過できる。
【0161】
好適には、ペプチドキャリヤーは、下記の配列から選ばれる:
RBRRBRRFQILYRBRBR (配列番号27)
RBRRBRRFQILYRBRR (配列番号28)
RBRRBRFQILYRRBRBR (配列番号29)
RBRBRFQILYRBRRBRR (配列番号30)
RBRRBRRYQFLIRBRBR (配列番号31)
RBRRBRRILFQYRBRBR (配列番号32)
RBRRBRFQILYRBRBR (配列番号33)
RBRRBFQILYRBRRBR (配列番号34)
RBRRBRFQILYBRBR (配列番号35)
RBRRBFQILYRBRBR (配列番号36)
RBRRBRRFQILYRBHBH (配列番号37)
RBRRBRRFQILYHBHBR (配列番号38)
RBRRBRRFQILYHBRBH (配列番号39)
RBRRBRRYQFLIRBHBH (配列番号40)
RBRRBRRILFQYRBHBH (配列番号41)
RBRHBHRFQILYRBRBR (配列番号42)
RBRBBHRFQILYRBHBH (配列番号43)
RBRRBRFQILYRBHBH (配列番号44)
RBRRBRFQILYHBHBH (配列番号45)
RBRRBHFQILYRBHBH (配列番号46)
HBRRBRFQILYRBHBH (配列番号47)
RBRRBFQILYRBHBH (配列番号48)
RBRRBRFQILYBHBH (配列番号49)
RBRRBRYQFLIHBHBH (配列番号50)
RBRRBRILFQYHBHBH (配列番号51)
RBRRBRRFQILYHBHBH (配列番号52)。
【0162】
好適には、ペプチドは、下記の付加的な配列から選ばれる:
RBRRBRFQILYBRBS (配列番号53)
RBRRBRFQILYBRB[Hyp] (配列番号54)
RBRRBRFQILYBR[Hyp]R (配列番号55)
RRBRRBRFQILYBRBR (配列番号56)
BRRBRRFQILYBRBR (配列番号57)
RBRRBRWWWBRBR (配列番号58)
RBRRBRWWPWWBRBR (配列番号59)
RBRRBRWPWWBRBR (配列番号60)
RBRRBRWWPWBRBR (配列番号61)
RBRRBRRWWWRBRBR (配列番号62)
RBRRBRRWWPWWRBRBR (配列番号63)
RBRRBRRWPWWRBRBR (配列番号64)
RBRRBRRWWPWRBRBR (配列番号65)
RBRRBRRFQILYBRBR (配列番号66)
RBRRBRRFQILYRBR (配列番号67)
BRBRBWWPWWRBRRBR (配列番号68)
RBRRBRRFQILYBHBH (配列番号69)
RBRRBRRFQIYRBHBH (配列番号70)
RBRRBRFQILYBRBH (配列番号71)
RBRRBRFQILYR[Hyp]H[Hyp]H (配列番号72)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILYRBHBH (配列番号73)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILYR[Hyp]H[Hyp]H (配列番号74)
RBRRBRWWWRBHBH (配列番号75)
RBRRBRWWPRBHBH (配列番号76)
RBRRBRPWWRBHBH (配列番号77)
RBRRBRWWPWWRBHBH (配列番号78)
RBRRBRWWPWRBHBH (配列番号79)
RBRRBRWPWWRBHBH (配列番号80)
RBRRBRRWWWRBHBH (配列番号81)
RBRRBRRWWPWWRBHBH (配列番号82)
RBRRBRRWPWWRBHBH (配列番号83)
RBRRBRRWWPWRBHBH (配列番号84)
RRBRRBRFQILYRBHBH (配列番号85)
BRRBRRFQILYRBHBH (配列番号86)
RRBRRBRFQILYBHBH (配列番号87)
BRRBRRFQILYBHBH (配列番号88)
RBRRBHRFQILYRBHBH (配列番号89)
RBRRBRFQILY[Hyp]R[Hyp]R (配列番号90)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILYBRBR (配列番号91)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILY[Hyp]R[Hyp]R (配列番号92)
RBRRBRWWWBRBR (配列番号 93)
RBRRBRWWPWWBRBR (配列番号94)。
【0163】
好適には、ペプチドは、下記の配列の1つからなる:
Suitably the peptide consists of one of the following sequences:
RBRRBRRFQILYRBRBR (配列番号27)
RBRRBRRYQFLIRBRBR (配列番号31)
RBRRBRRILFQYRBRBR (配列番号32)
RBRRBRFQILYBRBR (配列番号35)
RBRRBRRFQILYRBHBH (配列番号37)
RBRRBRRFQILYHBHBR (配列番号38)
RBRRBRFQILYRBHBH (配列番号44)。
【0164】
1具体例では、ペプチドは、下記の配列からなる:
RBRRBRFQILYBRBR (配列番号35)。
1具体例では、ペプチドは、下記の配列からなる:
RBRRBRRFQILYRBHBH (配列番号37)。
1具体例では、ペプチドは、下記の配列からなる:
RBRRBRFQILYRBHBH (配列番号44)。
【0165】
治療用分子
ペプチドキャリヤーは、本発明の複合体を提供するため、治療用分子に共有結合され、ここで、治療用分子は、複数個のトリヌクレオチドリピートを含んでなる核酸である。
【0166】
好適には、核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、PNA、PMO)、mRNA、gRNA(例えば、CRISPR/Cas9技術の使用において)、短鎖干渉RNA、マイクロRNA、及びアンタゴニストRNAから選ばれる。
【0167】
好適には、核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0168】
好適には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミデート・モルホリノ・オリゴヌクレオチド(PMO)である。
【0169】
或いは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾PMO又は他の電荷中性のアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、ペプチド核酸(PNA)、化学修飾されたPNA、例えば、γ-PNA(Bahal, Nat. Comm. 2016)、オリゴヌクレオチドホスホルアミデート(ホスフェートの非架橋酸素は、アミン又はアルキルアミン、例えば、国際公開第2016/028187号に記載されたもの)、又は部分的又は完全に電荷中和されたオリゴヌクレオチドである。
【0170】
好適には、核酸は、複数個のトリヌクレオチドリピートからなる。
【0171】
好適には、核酸は、いずれかのトリヌクレオチドリピートを含んでなる。好適には、核酸は、GTC、CAG、GCC、GGC、CTT、及びCCGリピートから選ばれるトリヌクレオチドリピートを含んでなる。好適には、核酸は、GTC、CAG、GCC、GGC、CTT、及びCCGリピートから選ばれるトリヌクレオチドリピートからなる。
【0172】
好適には、核酸は、CAGリピートを含んでなる。好適には、核酸は、CAGリピートからなる。
【0173】
1具体例では、核酸は、CAGリピートを含んでなるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。1具体例では、核酸は、CAGリピートからなるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0174】
好適には、核酸は、複数個のトリヌクレオチドリピートを含んでなるか、又はからなる。
【0175】
好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート少なくとも2個を含んでなるか、又はからなる。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート5~50個を含んでなるか、又はからなる。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート5~40個を含んでなるか、又はからなる。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート5~30個を含んでなるか、又はからなる。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート5~20個を含んでなるか、又はからなる。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート5~10個を含んでなるか、又はからなる。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート7個を含んでなるか、又はからなる。
【0176】
1具体例では、核酸はリピート7個を含んでなるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。1具体例では、核酸はリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。好適には、1具体例では、核酸は[CAG]7からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0177】
好適には、核酸は、マイクロサテライト領域、好適には、リピート伸長、好適には、トリヌクレオチドリピート伸長に相補的である。
【0178】
好適には、核酸はマイクロサテライト領域をターゲットとし、結合する。好適には、マイクロサテライト領域は、リピート伸長を含んでなり、好適には、トリヌクレオチドリピート伸長を含んでなる。
【0179】
いくつかの具体例では、リピート伸長は、高級なリピート、例えば、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ,ノナ、又はデカリピート伸長等(それぞれ、リピート当たり、ヌクレオチド4、5、6、7、8、9、又は10個を含んでなる)を含んでなることができる。
【0180】
それ故、いくつかの具体例では、治療用分子は、複数個のテトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ,ノナ、又はデカリピート伸長を含んでなる核酸である。それ故、いくつかの具体例では、治療用分子は、複数個のテトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ,ノナ、又はデカリピート伸長からなる核酸である。
【0181】
トリヌクレオチドリピート伸長を含んでなる核酸に係る記載は、高級なヌクレオチド伸長を含んでなる核酸に等しく当てはまる。
【0182】
好適には、核酸は、相補的マイクロサテライト領域、好適には、リピート伸長の相補的領域、好適には、トリヌクレオチドリピート伸長の相補的領域に結合する。
【0183】
好適には、マイクロサテライト領域は、DNA又はRNAに存在する。好適には、マイクロサテライト領域は、RNAに存在する。
【0184】
好適には、マイクロサテライト領域は、コード又は非コード配列に存在する。好適には、マイクロサテライト領域は、非コード配列、例えば、3’又は 5’UTRに存在する。好適には、マイクロサテライト領域は、非コード配列、例えば、3’UTRに存在する。
【0185】
好適には、核酸は、相補的トリヌクレオチドリピート伸長に結合するトリヌクレオチドリピートから形成される。
【0186】
好適には、核酸は、RNAにおける相補的トリヌクレオチドリピート伸長に結合するトリヌクレオチドリピートから形成される。
【0187】
好適には、核酸は、RNAの非コード配列における相補的トリヌクレオチドリピート伸長に結合するトリヌクレオチドリピートから形成される。
【0188】
好適には、核酸は、RNAの非翻訳配列における相補的トリヌクレオチドリピート伸長に結合するトリヌクレオチドリピートから形成される。
【0189】
1具体例では、核酸は、RNAの3’UTRにおける相補的トリヌクレオチドリピート伸長に結合するトリヌクレオチドリピートから形成される。
【0190】
任意に、水溶性を改善するために、ペプチドキャリヤーへの結合前に、核酸の一方の端部又は両端部にリシン残基が付加される。
【0191】
トリプレットリピート病
本発明の複合体は、好ましくは、トリプレットリピート病の予防又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0192】
好適には、トリヌクレオチドリピート病は、トリヌクレオチドリピート伸長に起因する遺伝性疾患であり、トリプレットリピート病としても知られている。
【0193】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は遺伝子に存在する。好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、ATN1、HTT、AR、ATXN1、ATXN2、ATXN3、CACNA1A、ATXN7、TBP、FMR1、AFF2、FXN、DMPK、SCA8、JPH3、及びPPP2R2Bから選ばれる遺伝子に存在する。
【0194】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、AR、SCA8、又はDMPK遺伝子に存在する。
【0195】
1具体例では、トリヌクレオチドリピート伸長はDMPK遺伝子に存在する。
【0196】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、CAG、CTG、CGG、CCG、GAA、TTC、及びGGCから選ばれるリピートから形成される。
【0197】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、リピートCAG又はCTGから形成される。
【0198】
1具体例では、トリヌクレオチドリピート伸長は、リピートCTGから形成される。
【0199】
典型的には、トリプレットリピート病は、特別な遺伝子において見られる特別なトリヌクレオチドリピート伸長の存在に起因する。典型的には、遺伝子に存在するトリヌクレオチドリピートの数は、健常な対象における同一の遺伝子に存在するトリヌクレオチドリピートの数よりも多い。
【0200】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、ATN1、HTT、AR、ATXN1、ATXN、ATXN3、CACNA1A、ATXN7、JPH3、及びTBPから選ばれる遺伝子におけるCAGリピートである。
【0201】
好適には、CAGリピートに起因するトリプレットリピート病は、「ポリグルタミン病」と名付けられている。それ故、好適には、トリプレットリピート病はポリグルタミン病である。好適には、ポリグルタミン病は、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)、HD(ハンチントン病)、HDL2(ハンチントン病様症候群2)、SBMA(球脊髄性筋萎縮症)、SCA1(脊髄小脳失調症1型)、SCA2(脊髄小脳失調症2型)SCA3(脊髄小脳失調症3型又はマシャド・ジョセフ病)、SCA6(脊髄小脳失調症6型)、SCA7(脊髄小脳失調症73型)、及びSCA17(脊髄小脳失調症17型)から選ばれる。
【0202】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、FMR1から選ばれる遺伝子におけるCGGリピートである。
【0203】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、AFF2から選ばれる遺伝子におけるCCGリピートである。
【0204】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、FXNから選ばれる遺伝子におけるGAAリピートである。
【0205】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、DMPK及びATXN8AFF2から選ばれる遺伝子におけるCTGリピートである。
【0206】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長は、JPH3から選ばれる遺伝子におけるGTCリピートである。
【0207】
好適には、CAGリピート以外のトリヌクレオチドリピートに起因するトリヌクレオチドリピート伸長は、「非-ポリグルタミン病」と名付けられる。それ故、好適には、トリプレットリピート病は非-ポリグルタミン病である。好適には、非-ポリグルタミン病は、HDL2(ハンチントン病様症候群2)、FRAXA(脆弱X症候群)、FXTAS(脆弱X関連振戦/失調症候群)、FRAXE(脆弱XE精神遅滞)、FRDA(フリードライヒ失調症)、DM1(筋強直性ジストロフィー1型)、SCA8(脊髄小脳失調症8型)、及びSCA12(脊髄小脳失調症12型)から選ばれる。
【0208】
好適には、トリプレットリピート病は、健常な対象と比べて、トリヌクレオチドリピートの数における増大、好適には、健常な対象における同一の遺伝子と比べて、遺伝子におけるトリヌクレオチドリピートの数における増大に起因する。好適には、トリヌクレオチドリピート伸長におけるトリヌクレオチドリピートの数は、健常な対象におけるトリヌクレオチドリピートの数と比べて増大する。
【0209】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数は、健常な対象におけるリピートの数の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50倍である。
【0210】
好適には、トリプレットリピート病は、健常な対象におけるリピートの数の少なくとも1.5倍のトリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数の増大に起因する。
【0211】
好適には、トリプレットリピート病は、健常な対象におけるリピートの数の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50倍のトリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数の増大に起因する。
【0212】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数は、健常な対象におけるリピートの数の1.5~15倍である。
【0213】
好適には、トリプレットリピート病は、健常な対象における存在するリピートの1.5~15倍のトリヌクレオチドリピート伸長に起因する。
【0214】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数は、50以上、75以上、100以上、125以上、150以上、175以上、200以上、225以上、250以上である。
【0215】
好適には、トリプレットリピート病は、50以上、75以上、100以上、125以上、150以上、175以上、200以上、225以上、250以上のリピートを含んでなるトリヌクレオチドリピート伸長に起因する。
【0216】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数は50以上である。
【0217】
好適には、トリプレットリピート病は、50以上のリピートを含んでなるトリヌクレオチドリピート伸長に起因する。
【0218】
好適には、トリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数は50~250である。
【0219】
好適には、トリプレットリピート病は、50~250のリピートを含んでなるトリヌクレオチドリピート伸長に起因する。
【0220】
好適には、トリプレットリピート病は非-ポリグルタミン病である。
【0221】
好適には、トリプレットリピート病はDM1又はSCA8である。
【0222】
1具体例では、トリプレットリピート病はDM1である。
【0223】
1具体例では、トリプレットリピート病がDM1である場合、トリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数は50以上である。1具体例では、トリプレットリピート病がDM1である場合、トリヌクレオチドリピート伸長におけるCTGリピートの数は50以上である。1具体例では、トリプレットリピート病がDM1である場合、DMPK遺伝子のトリヌクレオチドリピート伸長におけるCTGリピートの数は50以上である。
【0224】
1具体例では、トリプレットリピート病がSCA8である場合、トリヌクレオチドリピート伸長におけるリピートの数は110~250である。1具体例では、トリプレットリピート病がSCA8である場合、トリヌクレオチドリピート伸長におけるCTGリピートの数は110~250である。1具体例では、トリプレットリピート病がSCA8である場合、ATXN8遺伝子のトリヌクレオチドリピート伸長におけるCTGリピートの数は110~250である。
【0225】
いくつかの具体例では、本発明の複合体は、好ましくは、ヌクレオチドリピート病の予防及び/又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0226】
好適には、ヌクレオチドリピート病は、ヌクレオチドリピート伸長(他に、リピート伸長又はマイクロサテライトリピート伸長として知られている)に起因する遺伝的疾患である。
【0227】
好適には、ヌクレオチドリピート病は、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ,ノナ、又はデカヌクレオチドのリピート伸長に起因する。
【0228】
好適には、ヌクレオチドリピート伸長は、先に検討したように、高級なリピート伸長、例えば、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ,ノナ、又はデカヌクレオチドリピート伸長である。
【0229】
それ故、好適には、本発明の複合体は、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ,ノナ、又はデカヌクレオチドリピート病の予防及び/又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0230】
好適には、ヌクレオチドリピート伸長は、テトラヌクレオチドリピートであり、好適には、テトラヌクレオチドリピートは、CCTGリピートである。
【0231】
それ故、好適には、本発明の複合体は、好ましくは、DM2(筋強直性ジストロフィー2型)の予防及び/又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0232】
好適には、ヌクレオチドリピート伸長は、ペンタヌクレオチドリピートであり、好適には、ペンタヌクレオチドリピートは、ATTCTリピートである。
【0233】
それ故、好適には、本発明の複合体は、好ましくは、SCA10(脊髄小脳失調症10型)の予防及び/又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0234】
それ故、好適には、本発明の複合体は、好ましくは、SCA31(脊髄小脳失調症31型)の予防及び/又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0235】
好適には、ヌクレオチドリピート伸長は、ヘキサヌクレオチドリピートであり、好適には、ヘキサヌクレオチドリピートは、GGCCTGリピート又はGGGGCCリピートである。
【0236】
それ故、好適には、本発明の複合体は、好ましくは、SCA36(脊髄小脳失調症36型)の予防及び/又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0237】
それ故、好適には、本発明の複合体は、好ましくは、C9ORF72-ALS(筋萎縮性側索硬化症)の予防及び/又は治療における薬としての使用のためのものである。
【0238】
トリプレットリピート病の治療に係る記載は、高級なヌクレオチドリピート病、例えば、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ,ノナ、又はデカヌクレオチドリピート病の治療に等しく当てはまる。
【0239】
共有結合
本発明の複合体に存在するペプチドキャリヤーは治療用分子に共有結合される。
【0240】
好適には、ペプチドキャリヤーは、C-末端又はN-末端において、治療用分子に共有結合される。好適には、ペプチドキャリヤーは、C-末端において、治療用分子に共有結合される。
【0241】
好適には、ペプチドキャリヤーは、必要であれば、リンカーを介して治療用分子に共有結合される。リンカーは、治療用分子からペプチド配列を分離するために、スペーサーとして機能する。
【0242】
リンカーは、好適な配列から選択される。
【0243】
好適には、リンカーは、ペプチドと治療用分子との間に存在する。好適には、リンカーは、ペプチド及び治療用分子に対する分離基である。従って、リンカーは、人工のアミノ酸残基を含んでなることができる。
【0244】
1具体例では、複合体は、リンカーを介して治療用分子に共有結合するペプチドキャリヤーを含んでなる。
【0245】
1具体例では、複合体は、次の構造:
[ペプチド]-[リンカー]-[治療用分子]
を含んでなる。
【0246】
1具体例では、複合体は、次の構造:
[ペプチド]-[リンカー]-[治療用分子]
からなる。
【0247】
好適には、本発明による複合体では、ここに収載するペプチドのいずれかが使用される。1具体例では、複合体は、配列RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)及びRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)から選ばれるペプチドキャリヤーを含んでなる。
【0248】
好適には、いずれかのケースでは、ペプチドは、上記したように、N-末端修飾を含んでなる。
【0249】
好適なリンカーとしては、例えば、ジスルフィド、チオエーテル又はチオール-マレイミド結合の形成を可能にするC-末端システイン、オキシムを形成する、ペプチド上での塩基性アミノ酸とのモルホリノ結合をクリック反応又は形成を可能にするC-末端アルデヒド、又はカルボキサミド結合を形成する、アミノ基に共有結合したペプチド上のカルボン酸部分が含まれる。
【0250】
好適には、リンカーは、アミノ酸1~5個の長さである。好適には、リンカーは、当分野で知られているいずれかのリンカーを含んでなる。
【0251】
好適には、リンカーは、次の配列:G、BC、XC、C、GGC、BBC、BXC、XBC、X、XX、B、BB、BX、XB、コハク酸、GABA、及びEから選ばれる。好適には、Xは6-アミノヘキサン酸である。
【0252】
好適には、リンカーは、ポリマー、例えば、PEGであってもよい。
【0253】
好適には、リンカーは、β-アラニン(B)、コハク酸(Succ)、GABA(Ab)、及びグルタミン酸(E)から選ばれる。
【0254】
1具体例では、β-アラニン(B)である。
【0255】
1具体例では、ペプチドキャリヤーは、カルボキサミド結合を介して治療用分子に結合される。
【0256】
複合体のリンカーは、ペプチドが結合する治療用分子の部分を形成してもよい。或いは、治療用分子の結合は、ペプチドキャリヤーのC-末端又はN-末端に直接結合されてもよい。好適には、このような具体例では、リンカーは不要である。
【0257】
或いは、ペプチドキャリヤーは、治療用分子に化学的に結合される。化学結合は、例えば、ジスルフィド、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、トリアゾール、アミド、カルボキサミド、尿素、チオ尿素、セミカルバジド、カルバジド、ヒドラジン、オキシム、ホスフェート、ホスホルアミデート、チオホスフェート、ボラノホスフェート、イミノホスフェート、又はチオール-マレイミド結合を介する。
【0258】
任意に、ペプチドキャリヤーへのジスルフィド結合を可能するため、治療用分子のN-末端においてシステインが付加され、或いは、N-末端は、ペプチドキャリヤーへのチオエーテル結合のためにブロモアセチル化される。
【0259】
1具体例では、複合体は、リンカーによって、CAGリピートを含んでなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合された、次の配列:RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)及びRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)から選ばれるペプチドキャリヤーを含んでなり、ここで、リンカーは、β-アラニン(B)、GABA(Ab)、及びグルタミン酸(E)から選ばれる。
【0260】
1具体例では、複合体は、リンカーによって、CAGリピートからなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合された、次の配列:RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)及びRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)から選ばれるペプチドキャリヤーを含んでなり、ここで、リンカーは、β-アラニン(B)、GABA(Ab)、及びグルタミン酸(E)から選ばれる。
【0261】
1具体例では、複合体は、リンカーによって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合された、次の配列:RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)及びRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)から選ばれるペプチドキャリヤーを含んでなり、ここで、リンカーは、β-アラニン(B)、GABA(Ab)、及びグルタミン酸(E)から選ばれる。
【0262】
1具体例では、複合体は、β-アラニン(B)によって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されたペプチドキャリヤーRBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)を含んでなる(DPEP1.9)。
【0263】
1具体例では、複合体は、グルタミン酸(E)によって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されたペプチドキャリヤーRBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)を含んでなる(DPEP1.9b)。1具体例では、この複合体は、横隔膜組織への浸透性が増大されている。好適には、横隔膜への浸透性の増大は、呼吸器系に影響を及ぼす筋疾患、例えば、筋強直性ジストロフィーの治療に有益である。
【0264】
1具体例では、複合体は、β-アラニン(B)によって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されたペプチドキャリヤーRBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)を含んでなる(DPEP3.1)。1具体例では、この複合体は、筋組織への浸透性が増大されている。好適には、筋への浸透性の増大は、筋疾患の治療に有益である。
【0265】
1具体例では、複合体は、グルタミン酸(E)によって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されたペプチドキャリヤーRBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)を含んでなる(DPEP3.1b)。1具体例では、この複合体は、筋組織への浸透性が増大されている。好適には、筋への浸透性の増大は、筋疾患の治療に有益である。
【0266】
1具体例では、複合体は、GABA(Ab)によって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されたペプチドキャリヤーRBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)を含んでなる(DPEP3.1a)。
【0267】
1具体例では、複合体は、β-アラニン(B)によって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されたペプチドキャリヤーRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)を含んでなる(DPEP3.8)。1具体例では、この複合体は、筋組織への浸透性が増大されている。好適には、筋への浸透性の増大は、筋疾患の治療に有益である。
【0268】
1具体例では、複合体は、グルタミン酸(E)によって、CAGリピート7個からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されたペプチドキャリヤーRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)を含んでなる(DPEP3.8b)。1具体例では、この複合体は、横隔膜組織への浸透性が増大されている。好適には、横隔膜への浸透性の増大は、呼吸器系に影響を及ぼす筋疾患、例えば、筋強直性ジストロフィーの治療に有益である。
【0269】
上記複合体は、N-末端において、アセチル化されてもよい。
【0270】
医薬組成物及び投与
本発明の複合体は、上記のように、医薬組成物に処方される。
【0271】
本発明の第6の態様によれば、医薬組成物は、本発明の複合体を含んでなる。
【0272】
好適には、医薬組成物は、さらに、1以上の薬学上許容される成分、例えば、1以上の希釈剤、アジュバント、又はキャリヤーを含んでなることができる。
【0273】
好適な薬学上許容される希釈剤、アジュバント、及びキャリヤーは当分野で公知である。
【0274】
ここで使用するように、表現「薬学上許容される」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激性、アレルギー応答、又は他の問題又は混乱なく、リスク・ベネフィット比に見合って、ヒト及び動物の組織との接触における使用に適するリガンド、物質、処方、及び/又は剤型をいう。
【0275】
ここで使用するように、表現「薬学上許容されるキャリヤー」とは、薬学上許容される物質、処方又はビヒクル、例えば、複合体を1つの器官又は身体の部分から他の器官又は身体の部分へ輸送又は移動に関わる、液体又は固体フィラー、希釈剤、溶媒又はカプセル化材料をいう。各ペプチドは、組成物の他の成分、例えば、ペプチド及び治療用分子と適合し、個々に有害でないとの意味で「許容される」ものでなければならない。
【0276】
凍結乾燥された組成物(元に戻され、投与される)も、本発明の組成物の範囲内である。
【0277】
薬学上許容されるキャリヤーは、例えば、賦形剤、ビヒクル、希釈剤、及びその組み合わせである。例えば、組成物が経口投与される場合、錠剤、カプセル剤、粉末、又はシロップとして処方され;又は非経口投与については、注射剤、点滴、又は坐剤として処方される。これらの組成物は、一般的方法によって調製され、必要であれば、活性化合物(すなわち、複合体)は、各種の一般的な添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味薬、溶解剤、懸濁助剤、乳化剤、コーティング剤、又はそれらの組み合わせと混合される。
【0278】
医学的用途に関して、ここに記載する疾患、障害、及び症状を緩和、仲介、防止、及び治療するために、本発明の医薬組成物は、さらに、追加の公知の治療剤、薬、化合物のプロドラッグへの修飾等を含むことができることが理解されなければならない。
【0279】
好適には、医薬組成物は、薬剤としての使用、好適には、複合体について記載したものと同様の薬剤としての使用のためのものである。複合体を使用する治療に関して記載した全ての特徴が、医薬組成物にも当てはまる。
【0280】
従って、本発明の更なる態様では、薬としての使用のための第6の態様による医薬組成物が提供される。更なる態様では、第6の態様による医薬組成物の有効量を対象に投与することを含んでなる、病状について、対象を予防又は治療する方法が提供される。
【0281】
好適には、医薬組成物は、トリプレットリピート病の予防又は治療における使用のためのものであり、及び好適には、予防又は治療法は、対象におけるトリプレットリピート病に関するものである。
【0282】
予防又は治療
本発明の複合体は、疾患、好ましくはトリプレットリピート病の予防又は治療用の薬として使用される。
【0283】
薬は、定義したように、医薬組成物の形である。
【0284】
病状の治療を必要とする対象の予防又は治療の方法も提供され、方法は、対象に、治療上有効な量の複合体を投与することを含んでなる。
【0285】
好適には、複合体は、トリプレットリピート病の予防又は治療における使用のためのものである。
【0286】
トリヌクレオチドリピート伸長を含んでなる適切な遺伝子及びトリプレットリピート病の詳細については、先に詳述した。
【0287】
或いは、複合体は、他のヌクレオチドリピート病の予防又は治療における使用のためのものである。このような高級なリピート伸長及びその結果として生ずるヌクレオチドリピート病の詳細について、先の詳述している。
【0288】
トリヌクレオチドリピートからなる核酸が、どのようにして、トリプレットリピート病を治療するように機能するかの特殊なメカニズムは、問題のトリプレットリピート病によって異なるであろう。好適には、核酸は、遺伝子又は転写物において、トリヌクレオチドリピート伸長に結合する。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート伸長を含んでなる転写物のレベルを低減する。好適には、核酸は、トリヌクレオチドリピート伸長の病理学的影響、及び従ってトリプレットリピート病を阻止する。他のヌクレオチドリピート病についても同様である。
【0289】
それ故、好適には、複合体は対象の生理学的状態を改善する。
【0290】
例えば、複合体の治療用核酸は、トリプレットリピート病によるスプライシング欠損を是正できる。好適には、複合体の治療用核酸は、トリプレットリピート病の対象におけるスプライシングを正常化できる。
【0291】
好適には、複合体の治療用核酸は、DMPK遺伝子の転写物に結合できる。好適には、複合体の治療用核酸は、DMPK遺伝子の転写物に存在するリピート伸長に結合できる。好適には、複合体の治療用核酸は、DMPK遺伝子の転写物に存在するCUGリピート伸長に結合できる。
【0292】
それ故、好適には、複合体は、DMPK転写物のレベルを低減する。それ故、好適には、複合体は、CUGリピート伸長を有するDMPK複写物のレベルを低減する。
【0293】
それ故、好適には、複合体は核フォーカスの数を低減する。好適には、複合体は、細胞のスプライシング機構と相互作用する核内フォーカスを妨げる。好適には、複合体は、MBNL1と相互作用する核内フォーカスを妨げる。好適には、MBNL1を隔離する核内フォーカスを妨げる。
【0294】
好適には、これらの効果は、DM1の予防又は治療における使用に関する。
【0295】
好適には、複合体は、DM1の対象において、健常な対象と比較して、ミオトニーを10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、100%低減する。好適には、複合体は、DM1の対象において、ミオトニーを少なくとも50%低減する。好適には、複合体は、DM1の対象において、ミオトニーを50~100%低減する。
【0296】
好適には、複合体は、DM1の対象において、核内フォーカスを、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%減少させる。好適には、複合体は、DM1の対象において、核内フォーカスを少なくとも50%減少させる。好適には、複合体は、DM1の対象の筋芽細胞において、核内フォーカスを50~90%減少させる。
【0297】
好適には、複合体は、DM1の対象において、心伝導を、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%是正する。好適には、複合体は、DM1の対象において、心伝導を少なくとも10%改善する。好適には、複合体は、DM1の対象において、心伝導を10~50%改善する。
【0298】
好適には、複合体は、DM1の対象において、運動機能を、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%改善する。好適には、複合体は、DM1の対象において、運動機能を少なくとも10%改善する。好適には、複合体は、DM1の対象において、運動機能を10~50%改善する。
【0299】
好適には、複合体は、DM1の対象において、体重に対する筋力を、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%改善する。好適には、複合体は、DM1の対象において、体重に対する筋力を少なくとも10%改善する。好適には、複合体は、DM1の対象において、体重に対する筋力を10~50%改善する。
【0300】
好適には、処置を受ける対象は、動物又はヒトである。好適には、対象は、非ヒト哺乳類であってもよい。好適には、対象は雄又は雌である。
【0301】
好適には、処置を受ける対象は、各種の年齢である。好適には、処置を受ける対象は、0~40歳、好適には、0~30歳、好適には、0~25歳、好適には、0~20歳の年齢である。
【0302】
好適には、複合体は、例えば、髄内、髄腔内、心室内、硝子体内、経腸的、非経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、経鼻ルートによる対象への全身的投与用である。
【0303】
1具体例では、対象への静脈内投与用である。
【0304】
1具体例では、複合体は、注射による対象への静脈内投与用である。
【0305】
好適には、複合体は、「治療上有効な量」での対象への投与用であり、「治療上有効な量」とは、個々について利益を示すに十分である量を意味する。投与される実際の量、及び投与のルート及び時間経過は、処置を受ける疾患の性質及び重篤度に左右される。用量についての決定は、一般医又は他の医師の責務の範囲内である。技術及びプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins発行に見られる。
【0306】
例示的な用量は、0.01~50mg/kg、0.05~40mg/kg、0.1~30mg/kg、0.5~18mg/kg、1~16mg/kg、2~15mg/kg、5~10mg/kg、10~20mg/kg、12~18mg/kg、13~17mg/kgの範囲である。
【0307】
有利には、本発明の複合体の用量は、治療用核酸単独の場合に、いずれかの効果が認められるために必要な用量よりも一桁低い。
【0308】
好適には、本発明の複合体の投与後、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、1以上の毒性マーカーが有意に減少される。
【0309】
好適な毒性マーカーは、腎毒性のマーカーである。
【0310】
好適な毒性マーカーとしては、血清KIM-1、NGAL、BUN、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、アラニントランスフェラーゼ、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのレベルが含まれる。
【0311】
更なる好適な毒性マーカーとしては、尿中のナトリウム、カリウム、塩化物、尿素、クレアチニン、カルシウム、リン、グルコール、尿酸、マグネシウム、及びタンパク質のレベルが含まれる。
【0312】
好適には、KIM-1、NGAL、及びBUNの少なくとも1のレベルが、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、本発明の複合体の投与後に減少する。
【0313】
好適には、KIM-1、NGAL、及びBUNの各々のレベルが、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、本発明の複合体の投与後に減少する。
【0314】
好適には、マーカー又は各マーカーのレベルが、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、有意に減少する。
【0315】
好適には、マーカー又は各マーカーのレベルは、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、本発明の複合体の投与後、最大5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%減少する。
【0316】
有利には、複合体の毒性は、従来のペプチド及び複合体と比べて、有意に減少する。特に、KIM-1及びNGAL-1は、毒性マーカーであり、これらは、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、有意に、最大120倍減少する。
【0317】
好適には、複合体の長期毒性は無視できる程度である。好適には、複合体の長期毒作用はない。
【0318】
好適には、複合体は、対象において、ターゲットのトリヌクレオチドリピート伸長に対する意図する効果以外の、遺伝子伸長に対する顕著な効果を持たない。好適には、複合体は、対象において、遺伝子伸長に対する負の効果を持たない。
【0319】
好適には、本発明の複合体の投与後、細胞生存率は、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、有意に改善される。
【0320】
好適には、本発明の複合体の投与後、筋芽細胞及び肝細胞の生存率は、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、有意に改善される。好適には、本発明の複合体の投与後、筋芽細胞及び肝細胞の生存率は、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、最大5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%増大する。
好適には、本発明の複合体の投与後、回復時間が、現在利用可能なペプチドキャリヤーを使用する複合体と比べて、最大5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%減少する。
好適には、本発明の複合体の投与後、回復時間が、60分未満、50分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満、又は5分未満である。好適には、本発明の複合体の投与後、回復時間はない。
【0321】
核酸及び宿主
本発明のペプチドキャリヤーは、各種の標準的なタンパク質合成法、例えば、化学合成、半化学合成によって、又は発現システムの使用を介して生成される。
【0322】
従って、本発明は、複合体をコードするDNAを含んでなる又はからなるヌクレオチド配列、発現システム、例えば、発現又は発現の制御用の必要な配列を伴う前記配列を含んでなるベクター、及び前記は発現システムによって形質転換された宿主細胞及び宿主生物に係る。
【0323】
それ故、本発明による複合体をコードする核酸も提供される。
【0324】
好適には、核酸は、単離された又は精製された形で提供される。
【0325】
本発明による複合体をコードする核酸を含んでなるベクターも提供される。
【0326】
好適には、ベクターはプラスミドである。
【0327】
好適には、ベクターは、制御配列、例えば、本発明による複合体をコードする核酸に動作可能に結合されたプロモーターを含んでなる。好適には、発現ベクターは、好適な細胞、例えば、哺乳類、細菌、又は真菌の細胞にトランスフェクトされる際、複合体を発現できる。
【0328】
本発明の発現ベクターを含んでなる宿主細胞も提供される。
【0329】
発現ベクターは、本発明の核酸が挿入される宿主細胞に応じて選択される。宿主細胞のこのような形質転換は、一般的な技術、例えば、Sambrookら, [Sambrook, J., Russell, D. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, USA]に教示されたものを含む。好適なベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。好適なベクターとしては、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、及びウイルスが含まれる
【0330】
生成された複合体は、各種の好適な方法、例えば、沈殿又はクロマトグラフィー分離、例えば、親和性クロマトグラフィーによって、宿主細胞から単離され、精製される。
【0331】
好適なベクター、宿主、及び遺伝子組み換え技術は、当分野において公知である。
【0332】
本明細書では、用語「動作可能に結合された」は、選択されたヌクレオチド配列及び制御ヌクレオチド配列が、ヌクレオチドコード配列の発現を、制御配列のコントロール下に置くように、例えば、制御配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部又は全部を形成するヌクレオチドコード配列の転写を達成できるように共有結合されている状況を含む。適切であれば、生じた転写物は、ついで、所望の複合体に翻訳される。
【0333】
次に、添付の図面及び実施例を参照して、本発明を詳述する。
【0334】
この明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含んでなる」及び「含有する」及びその変形は、「含むが、限定されない」を意味するものであり、これらは、他の部分、添加剤、成分、整数又は工程を除外することを意図するものではない(及び除外しない)。この明細書及び特許請求の範囲を通して、単数は、他に要求されない限り、複数も含むものである。特に、不定冠詞を使用する場合、明細書は、他に要求されない限り、単一性とともに、複数性を含むものとして理解されなければならない。
【0335】
本発明の特殊な態様、具体例、又は実施例と併せて記載する特徴、整数、特性、化合物、化学部分及び基は、矛盾しない限り、ここに記載する他の態様、具体例又は実施例のいずれにも適用できるものであると理解されなければならない。この明細書(特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示する特徴の全て、及び/又は同様に開示された方法及びプロセスの工程の全ては、このような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが、相互に排他的である組み合わせを除き、いかようにも組み合わされる。
【0336】
本発明は、上述の具体例の詳細に限定されない。本発明は、この明細書(特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに、又は同様に開示されたいずれかの方法又はプロセスの工程のいずれかの新規な1つ又は新規な組み合わせに及ぶものである。読者の注目は、この出願に関連するこの明細書と同時に又はこれよりも先に提出された、又はこの明細書と一緒に縦覧に供される全ての論文及び文献に向けられるが、このような全ての論文及び文献の内容は、参照することによって、ここに組み込まれる。
【0337】
[実施例]
1.物質及び方法
P-PMOの合成及び調製
9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護L-アミノ酸、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBOP)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、及びFmoc-β-Ala-OH前負荷Wang樹脂(0.19又は0.46 mモル/g)をMerck(ホーエンブルン、ドイツ国)から得た。1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)をSigma-Aldrichから得た。HPLC級アセトニトリル、メタノール、及び合成級N-メチル-2-ピロリドン(NMP)をFisher Scientific(ラフバラー、英国)から得た。ペプチド合成級N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及びジエチルエーテルをVWR(レスターシャー、英国)から得た。ピペリジン及びトリフルオロ酢酸(TFA)をAlfa Aesar(ヘイシャム、英国)から得た。PMOをGene Tools Inc.(フィロマス、米国)から購入した。他に指摘しない限り、他の全ての試薬をSigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州、米国)から得た。Voyager DE Pro BioSpectrometryワークステーションを使用して、MALDI-TOF質量分析を行った。マトリックスとして、50%アセトニトリル水溶液中の10mg/mlαシアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸又はシナピン酸のストック溶液を使用した。エラーバーは±0.1%である。
【0338】
スクリーニング用のP-PMOペプチドの合成
a)ペプチド変異体ライブラリーの調製
Fmoc-β-Ala-OH前負荷Wang樹脂(0.19又は0.46 mモル/g、Merck Millipore)を使用し、Fmoc化学を適用し、製造者の推奨に従うことにより、Intavis Parallelペプチド合成装置を使用して10μモルのスケールで、又はCEM Liberty Blue(登録商標)ペプチド合成装置(バッキンガム、英国)を使用して100μモルのスケールで、ペプチドを調製した。Intavis Parallelペプチド合成装置を使用する合成のケースでは、PyBOP/NMMカップリング混合物によるダブルカップリング工程を使用し、続いて、各工程後に、無水酢酸カップリングを行った。CEM Liberty Blueペプチド合成装置を使用する合成については、アルギニンを除く全てのアミノ酸について、シングル標準カップリングを行った(アルギニンについては、ダブルカップリングによって実施した)。アルギニン残基を除き、カップリングを、75℃、マイクロ波電力60ワット、5分間で、1回行った(アルギニン残基については、それぞれ、カップリングを2回行った)。各脱保護反応を、マイクロ波電力35ワットで、75℃において2回、30秒間で1回行い、ついで、3分間行った。合成が完了した後、樹脂をDMFで洗浄し(3×50ml)、固相結合したペプチドのN-末端を、室温において、DIPEAの存在下、無水酢酸にてアセチル化した。N-末端のアセチル化後、ペプチド樹脂を、DMFにて(3×20ml)、及びDCMにて(3×20ml)洗浄した。トリフルオロ酢酸(TFA):H2O:トリイソプロピルシラン(TIPS)(95%:2.5%:2.5%;3~10ml)からなる開裂カクテルによる、室温における3時間の処置によって、ペプチドを固体支持体から開裂した。ペプチドの解放後、窒素散布によって、過剰のTFAを除去した。粗製のペプチドを、冷たいジエチルエーテルの追加(合成のスケールに応じて15~40ml)によって沈殿させ、3200 rpmで5分間遠心分離した。粗製のペプチドペレットを、冷たいジエチルエーテルにて洗浄し(3×15ml)、445-LC スケールアップモジュール及び440-LCフラクションコレクターを具備するVarian 940-LC HPLCシステムを使用するRP-HPLCによって精製した。0.1% TFA/H2OにおけるCH3CNの線状グラディエントを流量15ml/分で使用する、RP-C18カラム(10×250 mm、Phenomenex Jupiter)上でのセミ分取HPLCによって精製した。220 nm及び260 nmにおいて検出を行った。所望のペプチドを含有するフラクションを合わせ、凍結乾燥して、ペプチドを白色の固体として得た(収率については、表1を参照)。
【0339】
【表1】

【0340】
b)ペプチド-PMO複合体ライブラリーの合成
トリプレットリピート配列用の、21塩基の長さを有するPMOアンチセンス配列(CAGCAGCAGCAGCAGCAGCAG(配列番号95))(或いは、[CAG]7として知られている)を使用した。CUG/CTG伸長リピート(5′-CAGCAGCAGCAGCAGCAGCAG-3′(配列番号95))をターゲットとするPMO配列をGene Tools LLCから購入した。本明細書の他の部位では、これを[CAG]7 PMOと称する。ペプチドを、PMOの3’-末端に、C-末端カルボキシル基を介して結合した。これを、DIPEA2.5当量の存在下、NMPにおいて、それぞれ、2.5当量及び2当量のPyBOP及びHOAtを使用して達成し、DMSOに溶解したPMOに対して2.5倍過剰量を使用した。一般に、ペプチド(2500 nモル)のN-メチルピロリドン(NMP、80μl)溶液に、PyBOP(0.3M NMP溶液19.2μl)、HOAt(0.3M NMP溶液16.7μl)、DIPEA(1.0ml)及びPMO(10mM DMSO溶液180μl)を添加した。混合物を、40℃において、2.5時間放置し、0.1%TFA水溶液(300μl)の添加によって、反応を停止した。この溶液を、改修Gilson HPLCシステムを使用するイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。20%CH3CNを含有するリン酸ナトリウム緩衝液(25mM、pH7.0)の線状グラディエントを使用するイオン交換カラム(Resource S4ml、GE Healthcare)上で、PMO-ペプチド複合体を精製した。カラムから複合体を溶離するために、塩化ナトリウム溶液(1M)を、流量4ml/分又は6ml/分で使用した。所望の化合物を含有するフラクションを合わせ、直ちに、脱塩した。ペプチド-PMO複合体からの過剰の塩の除去を、イオン交換後に集めたフラクションの、Amicon(登録商標)ultra-15 3K遠心フィルター装置を使用する濾過を介して行った。複合体を凍結乾燥し、MALDI-TOFによって分析した。複合体を滅菌水に溶解し、使用前に、0.22μm酢酸セルロース膜を介して濾過した。ペプチド-PMO複合体の濃度を、0.1N HCl溶液中、265 nmにおいて、複合体のモル吸収によって測定した(収率について、表2を参照)。
【表2】

【0341】
動物モデル及びASO注射
実験は、オックスフォード大学又は「Centre d’etudes fonctionnelles」(ソルボンヌ大学医学部)において、それぞれ、英国及びフランスの法律に従って行われた(倫理審査承認1760-2015091512001083v6)。HSA-LR又はC57BL/6マウスにおける静脈内注射を、尾静脈を介して、単回又は複数回投与によって行った。ペプチド-PMO-CAG7の5、7.5、12.5、30、又は40mg/kg及びPMOの12.5又は200 mg/kgを0.9%食塩水に希釈して、容積5~6μl/体重gとした。複数回の注射を2週間の間隔で実施した。第1回の注射後2週間で、ミオトニーを評価し、組織を採取した。長期間実験のため、注射後3か月で、組織を採取した。毒性測定のため、1週間後に組織を採取した。標準曲線内に適合するように希釈したサンプルを使用して、ELISAs(R&D cat# MKM100)によって、尿をテストした。尿中タンパク質濃度を説明するため、値を、尿中クレアチニンレベルに規準化した(Harwell)。
【0342】
In situミオトニー/筋弛緩の測定
脾腹筋の等尺性収縮特性をin situで研究した。ケタミン/キシラジン(それぞれ、80mg/kg及び15mg/kg)の溶液にて、マウスを麻酔した。膝及び足を、クランプ及びピンで固定した。脾腹筋の遠位腱を、サーボモーターシステム(305B、Dual-Mode Lever)のレバーアームに取り付けた。PowerLabシステム(4SP、 ADInstruments)及びソフトウェア(Chart 4、ADInstruments)を使用して、データを記録し、分析した。坐骨神経(近位は破壊されている)を、幅0.1msの過最大(10-V)矩形波パルスを使用する双極性銀電極によって刺激した。絶対的最大の等角体テタニック力(PO)を、電気刺激(周波数25~150 Hz、刺激列500 ms)に応答する等尺性収縮の間に測定した。ミオトニーを、PO測定後の筋弛緩の遅延として測定した。
【0343】
細胞培養及びペプチド-PMOでの処置
健常者又はCTGリピート2600個を有するDM1患者からの不死化した筋芽細胞を、20%FBS(Life technologies)、ゲンタマイシン(Life technologies)50μg/ml、フェチュイン25μg/ml、bFGF0.5ng/ml、EGF5ng/ml、及びデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)0.2μg/mlを補足した、M199:DMEMミックス(1:4;Life technologies)からなる増殖培地において培養した。密集細胞培養を、筋芽細胞用のインスリン(Sigma-Aldrich)5μg/mlを補足したDMEMに切り替えることによって、筋肉分化を誘発させた。処置のため、WT又はDM1細胞を、4日間、分化させた。ついで、培地を、ペプチド-PMO複合体を1、2、5、10、20、又は40μMの濃度で含有する新鮮な分化用培地と交換した。処置後48時間で、分析のため、細胞を採取した。ヒト肝細胞における40μMの濃度での又はヒト筋芽細胞における1、2、5、10、20、又は40μMの濃度でのペプチド-PMOのトランスフェクションの2日後に、蛍光ベースアッセイ(Promega)を使用して、細胞生存率を定量した。
【0344】
RNAの単離、RT-PCR及びqPCR分析
マウスの組織について:RNA抽出の前に、Fastprepシステム及びLysing Matrix Dチューブ(MP biomedicals)を使用して、TriReagent(Sigma-Aldrich)において、筋肉を破壊した。ヒトの細胞について:RNA抽出の前に、プロテイナーゼK緩衝液(NaCl 500 mM、Tris-HCl10mM(pH7.2)、MgCl21.5mM、EDTA10mM、2%SDS及びプロテイナーゼK0.5mg/ml)中、55℃において、45分間で、細胞を溶解させた。TriReagentを使用し、製造者のプロトコルに従って、全RNAを単離した。M-MLVファーズトストランド合成システム(Life Technologies)を使用して、製造者の使用説明書に従って、計20μlにおいて、 RNA1μgを逆転写した。続いて、基準プロトコルによる半定量的PCR分析(ReddyMix、 Thermo Scientific)において、cDNA調製物1μlを使用した。プライマーを表3に示す。
【0345】
【表3】

【0346】
PCR増幅を、各遺伝子について、増幅の線状範囲内で、25~35サイクルで実施した。PCR生成物を1.5~2%アガロースゲル上で分離し、エチジウムブロマイド染色し、ImageJソフトウェアにより定量した。エクソン封入の割合を、アイソフォームシグナルの総強度に対する封入の百分率として定量した。mRNAの発現を定量するため、製造者の使用説明書に従って、リアルタイムPCRを実施した。PCRサイクルは、15分の変性工程、続く、15秒間の94℃変性、20秒間の58℃アニーリング、及び20秒間の72℃伸長を含む50サイクルであった。
【0347】
蛍光in situハイブリダイゼーション/免疫蛍光法
Cy3-ラベル化2’OMe (CAG)7プローブ(Eurogentec)を使用し、既に記載された(6)ようにして、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)実験を行った。組み合わせたFISH-免疫蛍光法について、ウサギポリクロナール抗-MBNL1抗体、続く、二次Alexa Fluor 488-結合ヤギ抗-ウサギ(1:500, Life technologies)抗体によるFISHの最後の洗浄後に、蛍光免疫染色を行った。
【0348】
組織におけるオリゴヌクレオチド濃度のELISAに基づく測定
ジゴキシゲニン及びビオチンで二重ラベル化したホスホロチオエート結合(配列(5'->3')[DIG]C*T*G*C*T*G*C*TGCTGCT*G*C*T*G*C*T*G[BIO](配列番号96))を有するホスホロチオエートプローブを使用してPMOオリゴヌクレオチドの濃度を測定するために、特注のハイブリダイゼーション系ELISAを開発した。アッセイは、マウス血清及び細胞溶解物において、5~250 pM(R2>0.99)の線状検出範囲を有していた。処置したHSA-LRマウスから採取した8種の組織(脳、腎臓、肝臓、肺、心臓、横隔膜、脾腹筋、及び大腿四頭筋)におけるペプチド-PMO又はそのままのPMOの濃度を検出するためにプローブを使用した。
【0349】
結果
この研究において、発明者らは、特異的な構造を有するアルギニンリッチ細胞透過性ペプチドを使用したところ、このような[CAG]7モルホリノホスホロジアミデートオリゴマーに結合したペプチド(PMO)は、全身投与後、複合化されたPMO及びペプチドキャリヤー複合体戦略と比べて、DM1モデルHSA-LRマウスの横紋筋へのASOの送達を劇的に増大させることが示された。このように、病原性の伸長をターゲットとする本発明のペプチド-[CAG]7 PMOでなる複合体の低用量での処置は、DM1マウス(HSA-LR)において、スプライシング欠損及びミオトニーの両方を逆転するには十分であり、総体的な疾患-トランスクリプトームを正常化した。さらに、処置したDM1患者に由来する筋細胞(筋芽細胞)は、本発明のペプチド-[CAG]7 PMO複合体が、特異的に、変異CUGexp-DMPK転写物をターゲットとして、核内RNAフォーカスによるMBNL1スプライシング因子の有害な隔離、その結果、スプライシング欠損及び筋機能障害の原因となるMBNL1の機能的損害を抑止することを示した。
【0350】
発明者らの結果は、本発明のペプチド-[CAG]7 PMOが、分子レベル及び機能的レベルの両方で、高い効力及びDM1-関連表現型の持続性の是正を惹起することを証明しており、DM1における全身的矯正療法のために、これらペプチド-複合体を使用することを強く支持している。
【0351】
発明者らは、人工のアミノ酸、例えば、X基を含有しないペプチドキャリヤーを含んでなる複合体は、これまでの細胞透過性ペプチドよりも広い治療濃度域及び安全な毒性プロフィールを有し、それ故、DM1患者においてテストされる、より有望な候補を構成するとのデータを得た。いわゆる「DPEP1及びDPEP3」ペプチドの、これらの新たな世代は、病原性フォーカスの数を減少させること(図1)及びCAG7リピートアンチセンスオリゴヌクレオチドPMOに結合される際、インビトロでスプライシング欠損を是正すること(図2、3、4、及び19)において高い効力を示した。40μMで有意の細胞死(>50%)を生じた公知の「Pip」キャリヤーペプチド:Pip6a-PMO及びPip9b2-PMから形成された同様の比較用複合体とは逆に、テストした濃度は、いずれも、ヒト肝細胞における細胞生存率の低下を生じなかった(図7)。テストした濃度の多くは、ヒト筋芽細胞の細胞生存率における低下を生ぜず、低用量で細胞死を生じた公知の「Pip」キャリヤーペプチド:Pip6a-PMO及びPip9b2-PMから形成された同様の比較用複合体と比べて良好であった(図5及び6)。
【0352】
その後、発明者らは、HSA-LRマウスにおけるミオトニー及びスプライシングの変化を是正するために、これらの新規のペプチドが有効であるかどうかをテストした。このため、従来のペプチドキャリヤーDPEP 5.70と比べて、DPEP 1及び3シリーズ、DPEP1.9及びDPEP3.8のリーディングペプチドキャリヤーをテストした。発明者らは、DPEP3.8 及びDPEP1.9にて形成された両複合体の30mg/kgでの処置後2週間で、スプライシング欠損(図4)及びミオトニー(図8、9、及び10)が野生型レベルに是正されることを示すことができた。
【0353】
ペプチド-[CAG]7 PMO複合体の送達を提供するために、そのままのPMOに対するキャリヤーペプチドDPEP1.9及びDPEP3.8にて形成された複合体の生体内分布を、ELISAによって評価した。DM1における臨床的に影響を受けた組織、例えば、心臓及び脳におけるPMOの検出は、薬送達の開発には重要である。HAS-LRマウスにおいて、ペプチド-[CAG]7 PMO複合体の30mg/kgでの単回静脈内注射又はそのままのPMOの200 mg/kgでの3回の注射(計600 mg/kg)を実施した。注射後2週で、PMO検出のため、脾腹筋、大腿四頭筋、横隔膜、心臓、及び脳を分析した。複合化していないそのままの[CAG]7 PMOは、テストした全ての組織において、低レベル~検出不能レベルであったが、ペプチドキャリヤーDPEP1.9及びDPEP3.8に複合化した[CAG]7 PMOは、低用量(>20倍モル濃度)で注射されたにもかかわらず、高レベルで検出された。一般に、ペプチド-[CAG]7 PMO複合体は、30mg/kgの注射後2週で、大腿四頭筋、脾腹筋、及び横隔膜において1~4nMで、及び心臓において1nMで検出された(図17)。
【0354】
【表4】
【0355】
発明者らは、また、低用量(5mg/kg)でのペプチド-[CAG]7 PMO複合体の投与後、血清において測定して、本発明のペプチド-[CAG]7 PMO複合体の薬物動態を研究した。IV注射後5分で、血清中濃度は500~800 nMに達し、1時間後に100 nMに、3時間後に10nMに低下した。処置後6時間では、濃度は~1nMであり、化合物の大部分は既に消失するか、目的の組織に送達されていた(図18)。
野生型マウスにおける、DPEP3.8及びDPEP1.9のキャリヤーペプチドにて形成した複合体の予備的な毒性評価は、Pipシリーズから選ばれる現在利用可能なペプチドキャリヤーによって一般的に惹起される倍増と対照的に、ALP、ALT、AST、KIM-1、クレアチニン、BUN、及びNGALのレベルは、コントロールの食塩水注射と同様であることを示した。この予備的データにより、発明者らは、[CAG]7 PMOとともに、DPEPペプチドから形成された複合体は、インビボでのPip6aが、なお、広い治療濃度域を有するのと同じくらいに活性であることを示した(図11、12、及び21)。
加えて、DPEP3.8-[CAG]7から形成された複合体を30mg/kgの用量で単回注射投与したHSA-LRマウス5匹の体重は、食塩水を注射したHSA-LRマウス5匹と比較して、何らの有意の傾向を示さなかった(図16)。
さらに、DPEP系[CAG]7 PMO複合体の注射後のHSA-LRマウスの回復時間は、従来のペプチドキャリヤー、例えば、Pip6aにて形成された複合体の注射後もより短い(表5)。
【0356】
【表5】
【0357】
本発明の複合体の効力を、さらに詳細に評価したところ、スプライシング欠損及びミオトニーは、DPEPペプチド-[CAG]7 PMO複合体の投与後、少なくとも3か月間は野生型レベルに是正されるとの知見を得た(それぞれ、図19及び20)。また、7.5mg/kgの投与後、ミススプライシング及びミオトニーの50%の減少が測定された。
【0358】
とりわけ、従来のペプチドキャリヤーにて形成された複合体、例えば、Pip6a-[CAG]7 PMOは、>20mg/kgでは、マウスにおいて高い死亡率を生ずることなくしてはテストできず、これは、濃度が、何らの死亡を生ずることなく、5倍以上に増大される本発明の複合体と対照をなすものである。さらに、毒性スクリーニングでは、処置後2日で、Kim1レベルにおいて、用量30mg/kg以上の投与により、食塩水レベルからの変化が検出された(図21)。
【0359】
効力及び毒性についてのデータは、DPEP1及びDPEP3シリーズのキャリヤーペプチドにて形成された本発明の複合体は、特に、活性であり、DM1に罹患した個人における伸長したCTGリピートによるMBNL1の隔離を阻害し、低毒性を誘発することを示している。これらの複合体は、分子レベルでは、スプライシングの正常化、及び筋肉レベルでは、ミオトニーの野生型レベルへの是正の両方で、DM1表現型を完全に矯正することができる。これらの新規の複合体は、さらに、従来のペプチドキャリヤーにて形成された複合体よりも広い治療濃度域を有し、それ故、それらは臨床での現実化により近い。
【0360】
要約すれば、発明者らは、(1)ペプチド-[CAG]7 PMOが、MBNL1と核内変異CUGexp-RNAとの病原性相互作用を阻止し、RNA-スプライシングに関するダウンストリーム効果を救済すること;(2)ペプチド複合化アンチセンスオリゴヌクレオチドのアプローチにより、治療が、横隔膜における心臓のようなアクセス不可能な組織に送達されること;(3)高い効力を有するインビボでの治療を提供するペプチドキャリヤー技術の能力と組み合わされた、疾患の変異を直接的にターゲットとする[CAG]7 PMOの強力な効力は、治療を中止された後、数か月であっても、骨格筋DM1マウス(HSA-LR)におけるDM1表現型の野生型レベルへの強力な逆転に集中することを支持する強力な証拠を示した。これらの各証拠は、ペプチド-[CAG]7複合体が、DM1において、強力な疾患修飾効果を有しそうであることを強力に示唆する。
【0361】
実際、発明者らの実験は、HSA-LRマウスにおいて観察された効果が、DM1病理の悪化を防止するだけでなく、実際に疾患表現型の逆転を生じさせることを示している。伸長されたCUG-転写物は、既に、子犬において発現され、HSA-LRマウスは、年齢1か月までに現れる顕著なミオトニーを有している。本発明を支持する結果を生むために発明者らが使用した動物は、DM1の分子的及び機能的表現型が発症する時点を十分に超える少なくとも2か月及び7か月の年齢で処理した。
【0362】
結論
DPEPキャリヤーペプチド及び[CAG]7 PMOを含んでなる複合体(10μM)は、DM1患者及びコントロールの筋芽細胞における核内フォーカスの数を50%減少させることができる(細胞の生存率を減少させない用量において)。20μM又はより高い濃度において、有意の細胞死亡率(>50%)を誘発した他のキャリヤーペプチドにて形成された比較用複合体に対して、テストした濃度は、いずれも、細胞生存率の低下を生じなかった(1~40μM)。
DPEPキャリヤーペプチド及び[CAG]7 PMOを含んでなる複合体は、DM1における臨床的に罹患した組織への最適な送達を示す正の薬物動態及び生体内分布を示した。
DPEPキャリヤーペプチド及び[CAG]7 PMOを含んでなる複合体は、HSA-LRマウスにおいて、他のキャリヤーペプチドにて形成され比較用複合体12.5 mg/kgよりも毒性が低い用量(30mg/kg、IV)で、Clcn1エクソン7a、Sercaエクソン22、Mbnl1エクソン5、及びLdb3エクソン11における50~90%のスプライシングの是正を惹起する。RT-PCR分析も、DPEP1.9及びDPEP3.8を含んでなる複合体を30及び40mg/kgで使用することによる、スプライシングの野生型レベルへの正常化を示す。スプライシングの是正は、措置後少なくとも3か月間持続し、単回の低用量投与(5及び7.5mg/kg)後も顕著であった。
ミオトニー定量観察及び電気筋運動記録ミオトニー測定によれば、DPEPキャリヤーペプチド及び[CAG]7 PMOを含んでなる複合体は、40mg/kg又は30mg/kgの単回注射(IV)後、ミオトニーを野生型レベルに減少させた。DPEP3.8又はDPEP1.9を含んでなる複合体7.5mg/kgの4回の注射後では、適度なミオトニーの是正が生じた。
DPEPキャリヤーペプチド及び[CAG]7 PMOを含んでなる複合体は、30mg/kgで注射(IV)される際、野生型のマウスにおいて、他のキャリヤーペプチドにて形成された比較用複合体12.5 mg/kgの単回注射よりも短い無気力な時間を惹起した(>1時間)。腎機能のための尿生化学テスト及び血液分析は、≧30mg/kgの投与後、野生型マウスにおいて、食塩水との比較で何らの変化を示さず、HSA-LR Kim1レベル及び尿中タンパク質レベルにおける軽い変化を示した。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
2022543320000001.app
【国際調査報告】