(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス生産システム
(51)【国際特許分類】
C12N 15/861 20060101AFI20221003BHJP
C12N 15/34 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N15/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507801
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2020014585
(87)【国際公開番号】W WO2021080377
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522050169
【氏名又は名称】ジェネンメド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ドンウ・リ
(57)【要約】
本発明は、ヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システム、これを用いたガットレスアデノウイルス生産方法、これを用いて生産されたガットレスアデノウイルス及び該ガットレスアデノウイルスの用途に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルパープラスミド、ゲノムプラスミド及びウイルスパッケージング細胞株を含む、ガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システム。
【請求項2】
前記ヘルパープラスミドは、感染性を有するウイルス粒子以外のものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項3】
前記ヘルパープラスミドは、感染性を有するウイルス粒子に転換されないものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項4】
前記ヘルパープラスミドは、ITRを含まないものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項5】
前記ヘルパープラスミドは、ITR及びΨパッケージング信号配列を含まないものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項6】
前記ヘルパープラスミドは、1個~5個のプラスミドで構成されるものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項7】
前記ゲノムプラスミドは、5’相同ストレッチ部位(homologous stretch)、3’相同ストレッチ部位(homologous stretch)、及び3’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)を含むものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項8】
前記ゲノムプラスミドは、抗生剤耐性遺伝子をさらに含むものである、請求項7に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項9】
前記ゲノムプラスミドは、Ori複製原点をさらに含むものである、請求項7に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項10】
前記ゲノムプラスミドは、スタッファーDNA(stuffer DNA;sDNA)をさらに含むものである、請求項7に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項11】
前記スタッファーDNAは、スキャフォールド/マトリックス付着要素(scaffold/matrix attachment element,SMAR)をさらに含むものである、請求項10に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項12】
前記ゲノムプラスミドは、GLAdのカプシド内にパッケージングされるGLAdゲノム部分を含んでいるものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項13】
前記ゲノムプラスミドは、GLAdを用いて発現させようとする導入遺伝子(transgene)及び導入遺伝子発現に必要な要素を含んでいる最終ゲノムプラスミドである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項14】
前記システムは、クローニングシャトルプラスミドをさらに含むものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項15】
前記クローニングシャトルプラスミドは、5’相同ストレッチ部位(homologous stretch)、5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψパッケージング信号配列、プロモーター、多重クローニング部位(multi-cloning site,MCS)、ポリ(A)信号配列、及び3’相同ストレッチ部位を含むものである、請求項14に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項16】
前記クローニングシャトルプラスミドは、イントロンをさらに含むものである、請求項15に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項17】
前記クローニングシャトルプラスミドは、抗生剤耐性遺伝子をさらに含むものである、請求項15に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項18】
前記クローニングシャトルプラスミドは、Ori複製原点をさらに含むものである、請求項15に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項19】
前記クローニングシャトルプラスミドは、GLAdを用いて発現させようとする導入遺伝子及び導入遺伝子発現に必要な要素を含むものである、請求項14に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項20】
前記ウイルスパッケージング細胞株は、アデノウイルスのE1領域に属するタンパク質を発現させる細胞株である、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項21】
前記システムは、pAd5pTP発現プラスミドをさらに含むものである、請求項1に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項22】
前記pAd5pTP発現プラスミドは、配列番号76の塩基配列を含んでいるものである、請求項21に記載のガットレスアデノウイルス生産システム。
【請求項23】
下記の段階を含むガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産方法:
最終ゲノムプラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる段階;及び
ヘルパープラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる段階。
【請求項24】
前記最終ゲノムプラスミドは、制限酵素で線形化されたものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項25】
前記形質感染は、カルシウムホスフェート沈殿法(calcium phosphate precipitation method)で行われる、請求項23に記載の生産方法。
【請求項26】
前記生産方法は、pAd5pTP発現プラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる段階をさらに含む、請求項23に記載の生産方法。
【請求項27】
前記ヘルパープラスミドは、感染性を有するウイルス粒子以外のものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項28】
前記ヘルパープラスミドは、感染性を有するウイルス粒子に転換されないものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項29】
前記ヘルパープラスミドは、ITRを含まないものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項30】
前記ヘルパープラスミドは、ITR及びΨパッケージング信号配列を含まないものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項31】
前記ヘルパープラスミドは、1個~5個のプラスミドで構成されるものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項32】
前記最終ゲノムプラスミドは、5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψパッケージング信号配列、プロモーター、イントロン、導入遺伝子(transgene)、ポリ(A)信号配列、スタッファーDNA(stuffer DNA;sDNA)、及び3’逆末端反復配列を含むものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項33】
前記最終ゲノムプラスミドは、抗生剤耐性遺伝子をさらに含むものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項34】
前記最終ゲノムプラスミドは、Ori複製原点をさらに含むものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項35】
前記スタッファーDNAは、スキャフォールド/マトリックス付着要素(scaffold/matrix attachment element,SMAR)をさらに含むものである、請求項32に記載の生産方法。
【請求項36】
前記最終ゲノムプラスミドは、GLAdのカプシド内にパッケージングされるGLAdゲノム部分を含んでいるものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項37】
前記最終ゲノムプラスミドは、GLAdを用いて発現させようとする導入遺伝子(transgene)及び導入遺伝子発現に必要な要素を含んでいるものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項38】
前記ウイルスパッケージング細胞株は、アデノウイルスのE1領域に属するタンパク質を発現させる細胞株である、請求項23に記載の生産方法。
【請求項39】
前記製造方法によって製造されたGLAdは、汚染物ウイルス種を含んでいないものである、請求項23に記載の生産方法。
【請求項40】
前記汚染物ウイルス種は、アデノウイルス又は複製可能アデノウイルス(replication-competent axdenovirus,RCA)である、請求項39に記載の生産方法。
【請求項41】
前記pAd5pTP発現プラスミドは、配列番号76の塩基配列を含んでいるものである、請求項26に記載の生産方法。
【請求項42】
5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψパッケージング信号配列、プロモーター、イントロン、導入遺伝子(transgene)、ポリ(A)信号配列、スタッファーDNA(stuffer DNA;sDNA)、及び3’逆末端反復配列を含む、ガットレスアデノウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システム、これを用いるガットレスアデノウイルス生産方法、これを用いて生産されたガットレスアデノウイルス、及び該ガットレスアデノウイルスの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療法(gene therapy)は、様々な先天性遺伝疾患に対して効果的な治療選択肢として浮上している。ヘルパー依存性アデノウイルス(helper-dependent adenovirus;以下、HDAd)とも知られているガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus;以下、GLAd)は、広範な細胞及び組織親和性(tropism)、高い感染力(infectivity)、導入遺伝子(transgene)に対する高い受容能力(cargo capacity)及び宿主遺伝体に挿入されない特性など、先天性遺伝疾患において遺伝子治療法の具現のための遺伝子伝達ベクターとして注目すべき多くの特性を有する。また、GLAdは、アデノウイルスから全ての遺伝子を除去した後に製造されるため、免疫原性(immunogenicity)が最小化し、宿主において導入遺伝子の長期発現を可能にする。
【0003】
しかしながら、GLAdを生産する際にヘルパーとして必ず使用しなければならない高免疫原性アデノウイルスが汚染物として残る問題から、GLAdは長い間、先天性遺伝疾患治療において臨床的に使用されずにいるのが実情である。
【0004】
欠陥遺伝子をそれに相応する正常遺伝子に代替することにより、この欠陥遺伝子の機能を正常に回復させる方式の遺伝子治療法は、レーバー先天性黒内障(Leber’s congenital amaurosis,LCA)及び脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,SMA)をはじめとする様々な先天性遺伝疾患に対して効果的な治療選択肢として浮上している。この種の遺伝子治療法は、正常機能を発揮する遺伝子を標的組織又は器官に伝達するために、ベクターと呼ばれる遺伝子伝達体を必要とする。
【0005】
先天性遺伝疾患治療のための遺伝子治療法は、生体外遺伝子伝達(ex vivo gene delivery)及び生体内遺伝子伝達(in vivo gene delivery)のような2種類の遺伝子伝達を考慮できる。生体外遺伝子伝達は、遺伝的に操作された細胞を用いる細胞治療剤ベースの接近法である。この接近法において、ベクターの安全性は、遺伝子操作細胞を患者の身体に移植する前の別の段階でモニタリングし続けることができる。これと対照的に、生体内遺伝子伝達は、治療用導入遺伝子(transgene)を、最終伝達位置である患者の組織又は器官に直接伝達する方式である。したがって、この接近法ではベクターの安全性が何よりも重要である。しかも、この接近法では、ベクターの安全性に加え、伝達された導入遺伝子の治療効能が長持ち可能なように、導入遺伝子の長期発現も保障される必要がある。
【0006】
現在、先天性遺伝疾患の臨床治療において最も広く用いられている生体内遺伝子伝達ベクターは、アデノ関連ウイルス(adeno-associated virus,AAV)である。AAVの安全性は、広範な臨床試験によって非常によく確立されている。AAVは、感染に対する広範囲の細胞及び組織親和性(tropism)を示し、様々な組織及び器官において導入遺伝子の長期発現を保障する。これらの特性から、AAVは、様々な先天性遺伝疾患治療において生体内遺伝子伝達ベクターとして非常に注目されてきている。それにも拘わらず、AAVは2つの注目すべき欠点があり、その第一は、挿入性突然変異(insertional mutagenesis)誘発可能性、その第二は、導入遺伝子に対する低い受容能力(packaging capacity)、である。AAVは、宿主細胞において主にエピソーム(episome)で存在するが、頻度は低いといっても宿主細胞の遺伝体に無作為に挿入されることがある。このような特性は、挿入性突然変異誘発に対する恐れを招く。AAVは、また、導入遺伝子受容能力(~4.5kb)が低いため、ハンチンチン(huntingtin,9.4kb)やジストロフィン(dystrophin,11kb)のような大きい遺伝子を伝達できず、1個のウイルス形態で複数個の遺伝子を一度に伝達することもできない。AAVが示しているこれらの特性は、理想的な生体内遺伝子伝達用ベクターとは、安全性が高く、大きい導入遺伝子受容能力を有する上に、宿主遺伝体に無作為に挿入されてはならないという点を指摘するとともに、こういうわけで、万一そのような全ての理想的な特性を有するベクターが存在することになれば、そのベクターは生体内遺伝子伝達においてずっと良い機会を提供するであろうと提案している。
【0007】
GLAdは、最後の世代(last-generation)のアデノウイルスとされてきている。GLAdは、アデノウイルスから全ての遺伝子を除去して製造されるため、アデノウイルスタンパク質が全く発現しない。このような構造的特性は、宿主における免疫反応を最小化し、宿主組織又は器官において導入遺伝子の長期発現を可能にする。また、GLAdは、感染において広範囲な細胞及び組織親和性と導入遺伝子伝達において高い形質導入効率を示す。実際に、GLAdは、様々な安全性面においてAAVと非常に似ている。しかしながら、宿主遺伝体への挿入及び導入遺伝子受容能力と関連しては、GLAdはむしろAAVよりも遥かに良好である長所を示す。すなわち、GLAdは、宿主遺伝体に挿入されないため、挿入性突然変異誘発に対する恐れが全くない。また、GLAdは、導入遺伝子受容能力(最大で36kb)が高いため、大きい遺伝子の他に、1個のウイルス形態で複数個の遺伝子を一度に伝達することも可能である。
【0008】
しかしながら、これらの明白な長所にもかかわらず、生産して使用されている現在のGLAdは、生産に関連した面でいずれかの問題点を抱いている。すなわち、GLAdは、アデノウイルス遺伝子が全て欠損しているため、組換えGLAdを製造するためには、GLAdパッケージング(packaging)に必要なアデノウイルスタンパク質を提供するヘルパーアデノウイルスを必ず使用しなければならない。既存GLAdの標準生産工程(standard production process)において、ヘルパーアデノウイルスはヘルパー機能を提供する上に、同時に、活発に複製するため、最終GLAd生産品には汚染物として残ってしまう。Cre-loxP作動原理に基づいてΨパッケージング信号配列(Ψ packaging signal)を除去することにより、汚染物であるヘルパーアデノウイルスを相当減少させることはできるが、完全に除去することは事実上極めて困難である。しかも、ヘルパーアデノウイルスは、ヘルパーアデノウイルスとパッケージング細胞に存在するE1領域間の相同組換えによって複製可能アデノウイルス(replication-competent adenovirus,RCA)を生成することもできる。全く所望しない汚染物であるこのようなヘルパーアデノウイルス及びRCAは、宿主に致命的な急性又は慢性の毒性を誘発することがある。しかも、これらの汚染物ウイルスから発現したウイルスタンパク質に対する宿主免疫反応は、組換えGLAdと汚染物ウイルスで共同感染された細胞を死滅させることがあり、これは、GLAdによって伝達された治療用導入遺伝子が十分に発現しない結果につながり得る。解決不可なこれらの問題点は、GLAdに対する安全性の恐れを触発させており、GLAdが持つ固有の特性及び相当な長所にもかかわらず、結局、臨床的使用には及ばない結果となってしまった。このため、GLAdにおいて、ヘルパーアデノウイルス及びRCA汚染物が発生することを防止する組換えGLAd生産システムを構築することは、実に極めて重要な課題であるといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ヘルパーアデノウイルスを使用しなくともガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)を生産できるヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス生産システム、これを用いたガットレスアデノウイルス生産方法、これを用いて生産されたガットレスアデノウイルス、及び該ガットレスアデノウイルスの用途に関する。
【0010】
具体的に、本発明において、GLAdパッケージング及び追加の増幅のためのヘルパー機能は、ウイルスパッケージングに必要なシス作用要素(cis-acting elements)が全て除去されたヘルパープラスミドによって提供される。全てのシス作用要素が除去された構造的特性のため、前記ヘルパープラスミドはアデノウイルスに転換されることが不可能である。
【0011】
本発明者は、前記ヘルパープラスミドを用いてアデノウイルス及びRCA汚染が全くない組換えGLAdの大量生産に成功した。このように生産された組換えGLAdは、様々な標的導入遺伝子を効率的に伝達したし、ハンチントン病(Huntingtons’s disease,HD)及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy,DMD)のような先天性遺伝病に対する治療可能性を示した。そこで、本発明のGLAd生産システムは、種々の先天性遺伝疾患治療においてGLAdベース遺伝子治療法がついに臨床に使用される道を開くものと期待される。
【0012】
したがって、本発明の目的はヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システムを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、ガットレスアデノウイルス生産方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、ガットレスアデノウイルスを提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、ガットレスアデノウイルスの用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システム、これを用いたガットレスアデノウイルス生産方法、これを用いて生産されたガットレスアデノウイルス、及び該ガットレスアデノウイルスの用途に関する。
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明の一態様は、ガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システムに関する。
【0019】
線形二本鎖DNAで構成されているアデノウイルスゲノム、特にアデノウイルス第5型のゲノムはよく特徴付けられている。例えば、E1、IX、E2、IVa2、E3、E4、L1、L2、L3、L4及びL5遺伝子の位置と関連して、アデノウイルスゲノムの全体構造において一般的な保存がある。アデノウイルスゲノムのそれぞれの末端部には、逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)として公知された配列を含み、これは、ウイルス複製のために必要である。5’末端に位置する5’ITRに続いては、アデノウイルスゲノムのパッケージング及びカプシド化(encapsidation)のために必要なシス作用要素であるΨパッケージング信号配列(Ψ packaging signal)が位置する。
【0020】
アデノウイルスゲノムの構造は、ウイルス遺伝子が宿主細胞形質導入後に発現する順序に基づいて記載される。より具体的に、ウイルス遺伝子は、転写がDNA複製の開始前に起きるか又は開始後に起きるかによって初期(E)又は後期(L)遺伝子と称される。感染の初期段階において、アデノウイルスは、宿主細胞内にE1、E2、E3及びE4遺伝子を発現させて、ウイルス複製のための宿主細胞の形質転換を誘導する。E1遺伝子はマスタースイッチであって、転写活性化剤として働き、初期及び後期遺伝子転写のいずれにも核心的に関与する。E2はDNA複製に関与し、E3は免疫調節に関与し、E4はウイルスmRNA代謝を調節する。
【0021】
アデノウイルスの基本的なゲノム構造は、次の通りである:
5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)-Ψパッケージング信号配列-E1-他の遺伝子-3’逆末端反復配列。
【0022】
ここで、一部の要素、例えば、5’ITR及び/又はΨパッケージング信号配列は、別の箇所に位置しているが、後で結合してもよい。このように結合させると、上の基本的なゲノム構造を再び作ることができる。一部の要素、例えば、E1の場合は、他の箇所に移され、アデノウイルスゲノムに戻ってこなくてもよい。すなわち、E1部分を他の細胞株に移し、この細胞株がE1タンパク質を発現させるようにすることにより、アデノウイルス生産細胞株としての活用が可能である。一部の要素、例えば、E3の場合は、アデノウイルス作製及び/又は生産には何ら影響も及ぼさず、完全に除去されることもある。
【0023】
本発明において、ガットレスアデノウイルス生産システムは、ヘルパープラスミド、ゲノムプラスミド及びウイルスパッケージング細胞株を含むものでよい。
【0024】
本発明において、ヘルパープラスミドは、E1及びE3部分の遺伝子以外のアデノウイルスの遺伝子を含むものでよいが、これに限定されない。すなわち、E1部分の遺伝子は、ウイルスパッケージング細胞株に含まれていればよく、E3部分の遺伝子は存在しなくてもウイルス製造には何ら問題もないので含まれていなくてもよい。ヘルパープラスミドは、GLAdを用いて発現させようとする導入遺伝子及び導入遺伝子発現に必要な要素を含む最終ゲノムプラスミドがウイルス化、すなわちGLAd化可能なようにアデノウイルスタンパク質を提供する。
【0025】
本発明において、ヘルパープラスミドは、ウイルスパッケージング細胞株が発現させているアデノウイルス遺伝子以外の、GLAd生産に必要な最小限のアデノウイルス遺伝子を含むものでよいが、これに限定されない。
【0026】
したがって、本発明の一具体例において、ヘルパープラスミドは、次のような構造的特性を有するものであってよい:
5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψパッケージング信号配列、E1及び3’逆末端反復配列を含まなく;
E1直後部分からE3直前部分、及びE3直後部分から3’逆末端反復配列直前部分までは含み;及び
選択的に、E3を含んでも、含まなくてもよい。
【0027】
上記のように、ヘルパープラスミドは、5’逆末端反復配列、Ψパッケージング信号配列、E1及び3’逆末端反復配列を含んでいない構造的特性により、ヘルパープラスミドはヘルパー機能だけを行うことができ、アデノウイルスへの転換は不可能である。すなわち、ヘルパープラスミドは、ウイルス生成に必須なシス作用要素を含んでいないので、アデノウイルスの遺伝子を含んでいるにもかかわらず感染性を有するアデノウイルス粒子への転換は不可能である。
【0028】
本発明において、ヘルパープラスミドは、感染性を有するウイルス粒子以外のものであってよい。
【0029】
本発明において、ヘルパープラスミドは、感染性を有するウイルス粒子に転換されないものであってよい。
【0030】
本発明において、ヘルパープラスミドは、ITRを含まないものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明において、ヘルパープラスミドは、ITR及びΨパッケージング信号配列を含まないものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明において、ヘルパープラスミドは、抗生剤耐性遺伝子をさらに含むものでよく、例えば、カナマイシン(Kanamycin)抵抗性遺伝子を含むものでよいが、これに限定されない。
【0033】
本発明において、ヘルパープラスミドは、Ori複製原点(Ori replication origin)をさらに含むものでよいが、これに限定されない。
【0034】
本発明において、ヘルパープラスミドは、少なくとも1個のプラスミド、例えば、1個~5個のプラスミドで構成されるものでよいが、これに限定されない。
【0035】
本発明において、ヘルパープラスミドは、pAdBest_dITRであってよいが、これに限定されない。
【0036】
本発明において、ゲノムプラスミドは、5’相同ストレッチ部位(homologous stretch)、3’相同ストレッチ部位(homologous stretch)及び3’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)を含むものでよい。
【0037】
本発明において、ゲノムプラスミドは、抗生剤耐性遺伝子をさらに含むものでよく、例えば、カナマイシン(Kanamycin)抵抗性遺伝子を含むものでよいが、これに限定されない。
【0038】
本発明において、ゲノムプラスミドは、Ori複製原点をさらに含むものでよいが、これに限定されない。
【0039】
本発明において、ゲノムプラスミドは、スタッファーDNA(stuffer DNA;sDNA)をさらに含むものでよい。
【0040】
本発明において、スタッファーDNAは、スキャフォールド/マトリックス付着要素(scaffold/matrix attachment element,SMAR)をさらに含むものでよいが、これに限定されない。
【0041】
本発明において、ゲノムプラスミドは、GLAdのカプシド内にパッケージングされるGLAdゲノム部分を含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0042】
本発明において、ゲノムプラスミドは、GLAdを用いて発現させようとする導入遺伝子(transgene)及び導入遺伝子発現に必要な要素を含んでいる最終ゲノムプラスミドであってよいが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明において、最終ゲノムプラスミドは、GLAdを用いて発現させようとする導入遺伝子及び導入遺伝子発現に必要な要素がクローニングシャトルプラスミドから移転されたものでよいが、これに限定されない。
【0044】
したがって、本発明において、ゲノムプラスミドは、GLAd生産に必要な全てのシス作用要素を有しながらも導入遺伝子及び導入遺伝子発現に必要な要素をさらに含む最終ゲノムプラスミドである、又は導入遺伝子及び導入遺伝子発現に必要な要素を含んでいないゲノムプラスミドであってよい。
【0045】
本発明において、最終ゲノムプラスミドは、GLAdゲノム部分に含まれない領域が制限酵素で線形化されたものでよいが、これに限定されない。
【0046】
本発明において、最終ゲノムプラスミドは、5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψパッケージング信号(Ψ packaging signal)配列、プロモーター、イントロン、導入遺伝子(transgene)、ポリ(A)信号(poly(A) signal)配列、スタッファーDNA(stuffer DNA;sDNA)及び3’逆末端反復配列を含むものでよい。
【0047】
本発明において、最終ゲノムプラスミドは、GLAdのカプシド内にパッケージングされるGLAdゲノム部分を含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0048】
本発明において、導入遺伝子は、少なくとも1個でよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明において、導入遺伝子は、特定遺伝子産物の発現を抑制する機能を有するものでもよいが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明において、導入遺伝子は、因子IX[factor IX、血友病B(hemophilia B)治療のためのR338L Padua突然変異体遺伝子]、グルコセレブロシダーゼ[glucocerebrosidase,GCR、ゴーシェ病(Gaucher’s disease)治療のための遺伝子]、ヘクソサミニダーゼA[hexosaminidase A,HEXA、テイザックス病(Tay-Sachs)の治療のための遺伝子]、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1[hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1,HPRT1、レッシュナイハン症候群(Lesch-Nyhan syndrome)の治療のための遺伝子]、イズロネート-2-スルファターゼ[iduronate-2-sulfatase,IDS、ハンター症候群(Hunter syndrome)の治療のための遺伝子]、メチル-CpG-結合タンパク質2[methyl-CpG-binding protein 2,MECP2、レット症候群(Rett syndrome)の治療のための遺伝子]、運動ニューロン1生存因子[survival of motor neuron 1,SMN1、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,SMA)治療のための遺伝子]、及びジストロフィン遺伝子[dystrophin gene、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy,DMD)の治療のための遺伝子]からなる群から選ばれる1種以上でよいが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明において、ゲノムプラスミドは、pGLAd又はpGLAd3でよいが、これに限定されるものではない。
【0052】
本発明において、システムは、クローニングシャトルプラスミドをさらに含むものでよいが、これに限定されない。
【0053】
本発明において、クローニングシャトルプラスミドは、5’相同ストレッチ部位(homologous stretch)、5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψパッケージング信号配列、プロモーター、多重クローニング部位(multi-cloning site,MCS)、ポリ(A)信号配列、及び3’相同ストレッチ部位を含むものでよいが、これに限定されない。
【0054】
本発明において、プロモーターは、CMVプロモーター又はニワトリベータ-アクチン(chicken β-actin)プロモーターでよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明において、クローニングシャトルプラスミドは、イントロンを含んでいるものでよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明において、イントロンは、ウサギベータ-グロビン(rabbit β-globin)遺伝子に由来したものでよいが、これに限定されない。
【0057】
本発明において、ポリ(A)信号配列は、SV40ポリ(A)信号配列でよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明において、クローニングシャトルプラスミドは、抗生剤耐性遺伝子をさらに含むものでよく、例えば、カナマイシン(Kanamycin)抵抗性遺伝子を含むものでよいが、これに限定されない。
【0059】
本発明において、クローニングシャトルプラスミドは、Ori複製原点をさらに含むものでよいが、これに限定されない。
【0060】
本発明において、クローニングシャトルプラスミドは、GLAdを用いて発現させようとする導入遺伝子及び導入遺伝子発現に必要な要素を含むものでよいが、これに限定されない。
【0061】
本発明において、導入遺伝子は、少なくとも1個であってよいが、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明において、導入遺伝子は、特定遺伝子産物の発現を抑制する機能を有するものでよいが、これに限定されない。
【0063】
本発明において、導入遺伝子は、多重クローニング(multi-cloning site)部位にクローニングされたものでよいが、これに限定されない。
【0064】
本発明において、導入遺伝子は、因子IX[factor IX、血友病B(hemophilia B)の治療のためのR338L Padua突然変異体遺伝子]、グルコセレブロシダーゼ[glucocerebrosidase,GCR、ゴーシェ病(Gaucher’s disease)の治療のための遺伝子]、ヘクソサミニダーゼA[hexosaminidase A,HEXA、テイザックス病(Tay-Sachs)の治療のための遺伝子]、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1[hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1,HPRT1、レッシュナイハン症候群(Lesch-Nyhan syndrome)の治療のための遺伝子]、イズロネート-2-スルファターゼ[iduronate-2-sulfatase,IDS、ハンター症候群(Hunter syndrome)の治療のための遺伝子]、メチル-CpG-結合タンパク質2[methyl-CpG-binding protein 2,MECP2、レット症候群(Rett syndrome)の治療のための遺伝子]、運動ニューロン1生存因子[survival of motor neuron 1,SMN1、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,SMA)の治療のための遺伝子]、及びジストロフィン遺伝子[dystrophin gene、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy,DMD)の治療のための遺伝子]からなる群から選ばれる1種以上でよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明において、クローニングシャトルプラスミドは、pBest又はpBest4でよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
本発明において、ウイルスパッケージング細胞株は、アデノウイルスのE1領域に属するタンパク質を発現させる細胞株でよく、例えば、HEK293又はHEK293Tでよいが、これに限定されるものではない。
【0067】
本発明において、システムは、pAd5pTP発現プラスミドをさらに含むものでよいが、これに限定されない。pAd5pTP発現プラスミドをさらに含む場合、GLAdの生産が顕著に増加する効果がある。
【0068】
本発明において、pAd5pTP発現プラスミドは、配列番号76の塩基配列を含んでいるものでよい。
【0069】
本発明の他の一態様は、下記の段階を含むガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産方法に関する。
最終ゲノムプラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染(transfect)させる段階;及び
ヘルパープラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる段階。
【0070】
本発明において、前記方法の最終ゲノムプラスミドは上述した通りであり、その記載を省略する。
【0071】
本発明において、最終ゲノムプラスミドは、制限酵素で線形化されたものでよいが、これに限定されない。
【0072】
本発明において、前記方法のヘルパープラスミドは上述した通りであり、その記載を省略する。
【0073】
本発明において、形質感染(transfection)は、カルシウムホスフェート沈殿法(calcium phosphate precipitation method)で行われてよいが、これに限定されない。
【0074】
本発明において、前記生産方法は、pAd5pTP発現プラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる段階をさらに含んでよい。前記段階をさらに含む場合、GLAdの生産が顕著に増加する効果がある。
【0075】
本発明において、pAd5pTP発現プラスミドは、配列番号76の塩基配列を含むものでよい。
【0076】
本発明において、最終ゲノムプラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる段階及びヘルパープラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる段階は、順序に関係なく行われてよく、例えば、同時に行われてもよいが、これに限定されない。
【0077】
本発明において、前記製造方法によって製造されたGLAdは、汚染物ウイルス種を含んでいないものでよい。
【0078】
本発明において、汚染物ウイルス種は、アデノウイルス又は複製可能アデノウイルス(replication-competent axdenovirus,RCA)でよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
本発明の一具体例において、本発明の生産方法は、次のように行われてよい:
導入遺伝子を含むクローニングシャトルプラスミドに含まれた導入遺伝子発現カセット(expression cassette)はゲノムプラスミドに移動して最終ゲノムプラスミドとなる。最終ゲノムプラスミドを制限酵素で線形化する。その後、線形化された最終ゲノムプラスミド及びヘルパープラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる。前記形質感染段階によってGLAdが生産される。
【0080】
本発明の他の具体例において、本発明の生産方法は、次のように行われてよい:
導入遺伝子を含むクローニングシャトルプラスミドに含まれた導入遺伝子発現カセット(expression cassette)は、ゲノムプラスミドに移動して最終ゲノムプラスミドとなる。最終ゲノムプラスミドを制限酵素で線形化する。その後、線形化された最終ゲノムプラスミド、ヘルパープラスミド及びpAd5pTP発現プラスミドをウイルスパッケージング細胞株に形質感染させる。前記形質感染段階によってGLAdが生産される。
【0081】
本発明のさらに他の具体例において、本発明の生産方法は、次のように行われてよい:
ウイルスパッケージング細胞株にヘルパープラスミドを形質感染させる。適当な時間が経過した後、導入遺伝子発現カセットを含むGLAdを、前記形質感染された細胞株にさらに感染させる。適当な時間が経過すると、GLAdが生産される。このとき、生産されるGLAdは、増幅する様相を示してよい。
【0082】
本発明のさらに他の具体例において、本発明の生産方法は、次のように行われてよい:
ウイルスパッケージング細胞株にヘルパープラスミド及びpAd5pTP発現プラスミドを形質感染させる。適当な時間が経過した後、導入遺伝子発現カセットを含むGLAdを、前記形質感染された細胞株にさらに感染させる。適当な時間が経過すると、GLAdが生産される。このとき、生産されるGLAdは、増幅する様相を示してよい。
【0083】
本発明の他の例は、下記の段階を含むクローニングシャトルプラスミドを製造する方法に関する。
pGT2プラスミドを鋳型とし、プライマーセットを用いてKanr~ColE1領域に該当する第1DNA断片を製造する段階;
第1DNA断片を制限酵素で切断する段階;
5’相同ストレッチ部位(homologous stretch)、5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψ5パッケージング信号配列、CMVプロモーター、多重クローニング部位(multi-cloning site,MCS)、SV40ポリ(A)信号配列、及び3’相同ストレッチ部位を含む第2DNA断片を製造する段階;
第2DNA断片を制限酵素で切断する段階;及び
制限酵素で切断された第1DNA断片と制限酵素で切断された第2DNA断片とを結合してpBestを製造する段階。
【0084】
本発明において、pGT2プラスミドは、配列番号63の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号63の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0085】
本発明において、第1DNA断片を製造する段階のプライマーセットは、配列番号1及び2の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0086】
本発明において、第1DNA断片を製造する段階は、PCRで行ってよいが、これに限定されない。
【0087】
本発明において、第1DNA断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、SfiI制限酵素サイト及びXcmI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0088】
本発明において、第1DNA断片のSfiI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0089】
本発明において、第1DNA断片のXcmI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0090】
本発明において、第1DNA断片を制限酵素で切断する段階は、XcmI及びSfiI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0091】
本発明において、第2DNA断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、SfiI制限酵素サイト及びXcmI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0092】
本発明において、第2DNA断片のSfiI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0093】
本発明において、第2DNA断片のXcmI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0094】
本発明において、第2DNA断片を制限酵素で切断する段階は、XcmI及びSfiI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0095】
本発明において、pBestを製造する段階は、制限酵素で切断された第1DNA断片と制限酵素で切断された第2DNA断片とを結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0096】
本発明において、pBestは、配列番号64の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号64の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0097】
本発明のさらに他の例は、下記の段階を含むヘルパープラスミドの製造方法に関する。
【0098】
1.Ψ5-Left-Arm-2の製造
pGT2プラスミドを鋳型とし、プライマーセットを用いてΨ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を製造する段階;
Ψ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を制限酵素で切断する段階;
Ψ5ゲノムのBstZ17I~BamHI領域に該当する第3DNA断片を製造する段階;
制限酵素で切断されたΨ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分に、制限酵素で切断された第3DNA断片を結合して、Ψ5-Left-Arm-1を製造する段階;
Ψ5-Left-Arm-1を制限酵素で切断する段階;
Ψ5を鋳型とし、プライマーセットを用いて第4DNA断片を製造する段階;
第4DNA断片を制限酵素で切断する段階;及び
制限酵素で切断されたΨ5-Left-Arm-1に、制限酵素で切断された第4DNA断片を結合して、Ψ5-Left-Arm-2を製造する段階。
【0099】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を製造する段階におけるプライマーセットは、配列番号3及び4の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0100】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を製造する段階は、PCRで行ってよいが、これに限定されない。
【0101】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、BamHI制限酵素サイト及びBstZ17I制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0102】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分のBamHI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0103】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分のBstZ17I制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0104】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を制限酵素で切断する段階は、BamHI及びBstZ17I制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0105】
本発明において、Ψ5ゲノムのBstZ17I~BamHI領域に該当する第3DNA断片は、配列番号65の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号65の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0106】
本発明において、第3DNA断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、BamHI制限酵素サイト及びBstZ17I制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0107】
本発明において、第3DNA断片のBamHI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0108】
本発明において、第3DNA断片のBstZ17I制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0109】
本発明において、第3DNA断片を製造する段階は、BamHI及びBstZ17I制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0110】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1を製造する段階は、制限酵素で切断されたΨ5-Left-Arm-1のKanr~ColE1領域部分に、制限酵素で切断された第3DNA断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0111】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-1を制限酵素で切断する段階は、ClaI及びBstZ17I制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0112】
本発明において、第4DNA断片は、‘*’(asterisk)表示からBstZ17I制限酵素サイトに至るDNA断片(
図7のb)であってよい。
【0113】
本発明において、第4DNA断片を製造する段階におけるプライマーセットは、配列番号5及び6の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0114】
本発明において、第4DNA断片を製造する段階は、PCRで行ってよいが、これに限定されない。
【0115】
本発明において、第4DNA断片は、配列番号66の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号66の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0116】
本発明において、第4DNA断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、ClaI制限酵素サイト及びBstZ17I制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0117】
本発明において、第4DNA断片のClaI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0118】
本発明において、第4DNA断片のBstZ17I制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0119】
本発明において、第4DNA断片を制限酵素で切断する段階は、ClaI及びBstZ17I制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0120】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-2を製造する段階は、制限酵素で切断されたΨ5-Left-Arm-1に、制限酵素で切断された第4DNA断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0121】
本発明において、用語“Ψ5-Left-Arm-2”は、Ad5(アデノウイルス5型、GenBank AC_000008)の5’ITR及びΨパッケージング信号配列を含む部分が除去されたもので、詳細には、塩基配列の1~3133番目の塩基が除去されたものである。
【0122】
2.Ψ5-Right-Arm-2の製造
pGT2プラスミド、Ψ5-Left-Arm-1又はΨ5-Left-Arm-2を鋳型とし、プライマーセットを用いてΨ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を製造する段階;
Ψ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を制限酵素で切断する段階;
Ψ5ゲノムのBamHI~3’ITR領域に該当する第5DNA断片を製造する段階;
制限酵素で切断されたΨ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分に、制限酵素で切断された第5DNA断片を結合して、Ψ5-Right-Arm-1を製造する段階;
Ψ5-Right-Arm-1を制限酵素で切断する段階;
Ψ5を鋳型とし、プライマーセットを用いて第6DNA断片を製造する段階;
第6DNA断片を制限酵素で切断する段階;及び
制限酵素で切断された第Ψ5-Right-Arm-1に、制限酵素で切断された第6DNA断片を結合して、Ψ5-Right-Arm-2を製造する段階。
【0123】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を製造する段階におけるプライマーセットは、配列番号7及び8の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0124】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を製造する段階は、PCRで行ってよいが、これに限定されない。
【0125】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、PacI制限酵素サイト及びBamHI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0126】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分のPacI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0127】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分のBamHI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0128】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分を制限酵素で切断する段階は、BamHI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0129】
本発明において、Ψ5ゲノムのBamHI~3’ITR領域に該当する第5DNA断片は、配列番号67の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号67の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0130】
本発明において、Ψ5ゲノムのBamHI~3’ITR領域に該当する第5DNA断片を製造する段階は、Ψ5DNAをBamHI制限酵素で切断して行ってよいが、これに限定されない。
【0131】
本発明において、第5DNA断片のBamHI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0132】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1を製造する段階は、制限酵素で切断されたΨ5-Right-Arm-1のKanr~ColE1領域部分に、制限酵素で切断された第5DNA断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0133】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-1を制限酵素で切断する段階は、SpeI及びNdeI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0134】
本発明において、Ψ5を鋳型とし、プライマーセットを用いて第6DNA断片を製造する段階におけるプライマーセットは、配列番号9~12の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0135】
本発明において、第6DNA断片を製造する段階は、重複PCRで行ってよいが、これに限定されない。
【0136】
本発明において、第6DNA断片は、配列番号68の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号68の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0137】
本発明において、第6DNA断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、SpeI制限酵素サイト及びNdeI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0138】
本発明において、第6DNA断片のSpeI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0139】
本発明において、第6DNA断片のNdeI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0140】
本発明において、第6DNA断片を制限酵素で切断する段階は、SpeI及びNdeI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0141】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-2を製造する段階は、制限酵素で切断されたΨ5-Right-Arm-1に、制限酵素で切断された第6DNA断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0142】
本発明において、用語“Ψ5-Right-Arm-2”は、Ad5(アデノウイルス5型、GenBank AC_000008)塩基配列の27864~31000番目の塩基が除去され、部分的に残っていたE3領域(partially remaining E3region)が完全に欠失したものである。
【0143】
3.pAdBest製造
Ψ5-Right-Arm-2を制限酵素で切断する段階;
Ψ5-Left-Arm-2を制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階;及び
制限酵素で切断されたΨ5-Right-Arm-2に、制限酵素で切断されたΨ5-Left-Arm-2から分離した大きい断片を結合して、pAdBestを製造する段階。
【0144】
本発明において、Ψ5-Right-Arm-2を制限酵素で切断する段階は、ClaI及びBamHI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0145】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-2を制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階は、ClaI及びBamHI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0146】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-2をClaI及びBamHI制限酵素で切断して分離した大きい断片のDNAは、配列番号69の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号69の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0147】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-2を制限酵素で切断して分離した前記大きい断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、ClaI制限酵素サイト及びBamHI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0148】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-2を制限酵素で切断して分離した前記大きい断片のClaI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されるものではない。
【0149】
本発明において、Ψ5-Left-Arm-2を制限酵素で切断して分離した前記大きい断片のBamHI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されるものない。
【0150】
本発明において、pAdBestを製造する段階は、制限酵素で切断されたΨ5-Right_Arm-2にΨ5-Left_Arm-2を制限酵素で切断して分離した前記大きい断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0151】
4.pAdBest_dITR製造
pAdBestを制限酵素で切断して小さい断片を分離する段階;
pAdBestを制限酵素で切断して分離した小さい断片を、ClaI制限酵素サイト及びEcoRI制限酵素サイトを含むアダプターに結合して、pAdBest_EcoR_Claを製造する段階;
pAdBest_EcoR_Claを制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階;
pAdBestを鋳型とし、プライマーセットを用いて第7DNA断片を製造する段階;
第7DNA断片を制限酵素で切断する段階;
pAdBest_EcoR_Claを制限酵素で切断して分離した大きい断片に、制限酵素で切断された第7DNA断片を結合して、pAdBest_EcoR_Cla_dITRを製造する段階;
pAdBest_EcoR_Cla_dITRを制限酵素で切断する段階;
pAdBestを制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階;及び
制限酵素で切断されたpAdBest_EcoR_Cla_dITRに、pAdBestを制限酵素で切断して分離した大きい断片を結合して、pAdBest_dITRを製造する段階。
【0152】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して小さい断片を分離する段階は、ClaI及びEcoRI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0153】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して分離した前記小さい断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、ClaI制限酵素サイト及びEcoRI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0154】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して分離した前記小さい断片のClaI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0155】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して分離した小さい断片のEcoRI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0156】
本発明において、ClaI制限酵素サイト及びEcoRI制限酵素サイトを含むアダプターは、配列番号13及び14の塩基配列からなるアダプターでよいが、これに限定されるものではない。
【0157】
本発明において、pAdBest_EcoR_Claを製造する段階は、pAdBestを制限酵素で切断して分離した小さい断片に前記アダプターを結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0158】
本発明において、pAdBest_EcoR_Claを制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階は、AvrII及びRsrII制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0159】
本発明において、pAdBest_EcoR_Claを制限酵素で切断して分離した大きい断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、AvrII制限酵素サイト及びRsrII制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0160】
本発明において、pAdBest_EcoR_Claを制限酵素で切断して分離した大きい断片のAvrII制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0161】
本発明において、pAdBest_EcoR_Claを制限酵素で切断して分離した大きい断片のRsrII制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されるものではない。
【0162】
本発明において、第7DNA断片を製造する段階におけるプライマーセットは、配列番号15~18の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0163】
本発明において、第7DNA断片を製造する段階は、重複PCR(overlapping PCR)で行ってよいが、これに限定されない。
【0164】
本発明において、第7DNA断片は、配列番号70の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号70の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0165】
本発明において、第7DNA断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、AvrII制限酵素サイト及びRsrII制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0166】
本発明において、第7DNA断片を制限酵素で切断する段階は、AvrII及びRsrII制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0167】
本発明において、第7DNA断片のAvrII制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0168】
本発明において、第7DNA断片のRsrII制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0169】
本発明において、pAdBest_EcoR_Cla_dITRを製造する段階は、pAdBest_EcoR_Claを制限酵素で切断して分離した大きい断片に、制限酵素で切断された第7DNA断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0170】
本発明において、pAdBest_EcoR_Cla_dITRを制限酵素で切断する段階は、ClaI及びEcoRI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0171】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階は、ClaI及びEcoRI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0172】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して分離した大きい断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、ClaI制限酵素サイト及びEcoRI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0173】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して分離した大きい断片のClaI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0174】
本発明において、pAdBestを制限酵素で切断して分離した大きい断片のEcoRI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0175】
本発明において、pAdBest_ITRを製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBest_EcoR_Cla_dITRにpAdBestを制限酵素で切断して分離した大きい断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0176】
本発明において、pAdBest_dITRは、配列番号71の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号71の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0177】
本発明のさらに他の例は、下記の段階を含むゲノムプラスミド製造方法に関する。
pAdBestプラスミドを鋳型とし、プライマーセットを用いて第8DNA断片を製造する段階;
第8DNA断片を制限酵素で切断する段階;
制限酵素で切断された第8DNA断片にアダプターを結合してpAdBestGL1を製造する段階;
pAdBestGL1に存在する制限酵素サイトを除去してpAdBestGL1_dClaを製造する段階;
pAdBestGL1及びpAdBestGL1_dClaのそれぞれを制限酵素で切断する段階;
制限酵素で切断されたpAdBestGL1及びpAdBestGL1_dClaのそれぞれにアダプターを結合してpAdBestGL2_wtCla及びpAdBestGL2を製造する段階;
pAdBestGL2を制限酵素で切断する段階;
制限酵素で切断されたpAdBestGL2と制限酵素で切断されたラムダファージDNAを混合してpAdBestGL3を製造する段階;
pAdBestGL3を制限酵素で切断する段階;
制限酵素で切断されたpAdBestGL3にアダプターを結合してpAdBestGL4_3Hを製造する段階;
制限酵素で切断されたpAdBestGL3にアダプターを結合してpAdBestGL4_5Hを製造する段階;
pAdBestGL4_3Hに存在する制限酵素サイトを除去してpAdBestGL4_3H_2dClaを製造する段階;
pAdBestGL4_5Hに存在する制限酵素サイトを除去してpAdBestGL4_5H_dClaを製造する段階;
pAdBestGL4_3H_2dClaを制限酵素で切断する段階;
pAdBestGL4_5H_dClaを制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階;
制限酵素で切断されたpAdBestGL4_3H_2dClaに、pAdBestGL4_5H_dClaを制限酵素で切断して分離した大きい断片を結合して、pAdBestGL5を製造する段階;
pAdBestGL2_wtClaを制限酵素で切断する段階;
pAdBestGL5を制限酵素で切断する段階;
制限酵素で切断されたpAdBestGL2_wtClaと制限酵素で切断されたpAdBestGL5を混合してpAdBestGLを製造する段階;
pAdBestGLを制限酵素で切断する段階;
スキャフォールド/マトリックス付着要素(scaffold/matrix attachment,SMAR element)を製造する段階;
スキャフォールド/マトリックス付着要素を制限酵素で切断する段階;及び
制限酵素で切断されたpAdBestGLに、制限酵素で切断されたスキャフォールド/マトリックス付着要素を結合して、pGLAdを製造する段階。
【0178】
本発明において、第8DNA断片を製造する段階におけるプライマーセットは、配列番号19及び20の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0179】
本発明において、第8DNA断片を製造する段階は、PCRで行ってよいが、これに限定されない。
【0180】
本発明において、第8DNA断片は、配列番号72の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号72の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0181】
本発明において、第8DNA断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、SacI制限酵素サイト及びAscI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0182】
本発明において、第8DNA断片を制限酵素で切断する段階は、SacI及びAscI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0183】
本発明において、第8DNA断片のSacI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0184】
本発明において、第8DNA断片のAscI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0185】
本発明において、pAdBestGL1を製造する段階におけるアダプターは、配列番号21及び22の塩基配列からなるアダプターでよいが、これに限定されるものではない。
【0186】
本発明において、pAdBestGL1を製造する段階は、制限酵素で切断された第8DNA断片に前記アダプターを結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0187】
本発明において、pAdBestGL1に存在する制限酵素サイトを除去してpAdBestGL1_dClaを製造する段階で除去する制限酵素サイトは、ClaI制限酵素サイトでよいが、これに限定されるものではない。
【0188】
本発明において、pAdBestGL1_dClaを製造する段階は、pAdBestGL1をClaI制限酵素で切断し、クレノウで隙間を埋めた後、自己結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0189】
本発明において、pAdBestGL1及びpAdBestGL1_dClaのそれぞれを制限酵素で切断する段階は、SacI及びAvrII制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0190】
本発明において、pAdBestGL2_wtCla及びpAdBestGL2を製造する段階におけるアダプターは、配列番号23及び24の塩基配列からなるアダプター(
図8のb)でよいが、これに限定されない。
【0191】
本発明において、pAdBestGL2_wtCla及びpAdBestGL2を製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBestGL1及びpAdBestGL1_dClaのそれぞれに前記アダプターを結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0192】
本発明において、pAdBestGL2を制限酵素で切断する段階は、HpaI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0193】
本発明において、制限酵素で切断されたラムダファージDNAは、HindIII制限酵素で切断されたラムダファージDNAでよいが、これに限定されるものではない。
【0194】
本発明において、pAdBestGL3を製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBestGL2と制限酵素で切断されたラムダファージDNAを混合し、試験管内相同アニーリング(in vitro homologous annealing,iHoA)を用いて行ってよいが、これに限定されない。
【0195】
本発明において、pAdBestGL3を制限酵素で切断する段階は、SacI及びApaI制限酵素、又はApaI及びAvrII制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0196】
本発明において、pAdBestGL4_3Hを製造する段階で制限酵素で切断されたpAdBestGL3は、SacI及びApaI制限酵素で切断されたpAdBestGL3でよいが、これに限定されるものではない。
【0197】
本発明において、pAdBestGL4_3Hを製造する段階におけるアダプターは、配列番号25及び26の塩基配列からなるアダプター(
図8のd)でよいが、これに限定されるものではない。
【0198】
本発明において、pAdBestGL4_3Hを製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBestGL3に前記アダプターを結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0199】
本発明において、pAdBestGL4_5Hを製造する段階で制限酵素で切断されたpAdBestGL3は、ApaI及びAvrII制限酵素で切断されたpAdBestGL3でよいが、これに限定されるものではない。
【0200】
本発明において、pAdBestGL4_5Hを製造する段階におけるアダプターは、配列番号27及び28の塩基配列からなるアダプター(
図8のe)でよいが、これに限定されるものではない。
【0201】
本発明において、pAdBestGL4_5Hを製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBestGL3に前記アダプターを結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0202】
本発明において、pAdBestGL4_3Hに存在する制限酵素サイトを除去してpAdBestGL4_3H_2dClaを製造する段階で除去する制限酵素サイトは、ClaI制限酵素サイトでよいが、これに限定されるものではない。
【0203】
本発明において、pAdBestGL4_3H_2dClaを製造する段階は、pAdBestGL4_3HをClaI制限酵素で切断し、クレノウで隙間を埋めた後に自己結合して、Dam-/-細菌性細胞(Dam-/-bacterial cells)に形質転換させる段階;結果物であるpAdBestGL4_3H_dClaをClaI制限酵素で再び切断する段階;クレノウで隙間を埋める段階;及び、自己結合(self-ligation)させる段階;を含んでよい。
【0204】
本発明において、pAdBestGL4_5Hに存在する制限酵素サイトを除去してpAdBestGL4_5H_dClaを製造する段階で除去する制限酵素サイトは、ClaI制限酵素サイトでよいが、これに限定されない。
【0205】
本発明において、pAdBestGL4_5H_dClaを製造する段階は、pAdBestGL4_5HをClaI制限酵素で切断し、クレノウで隙間を埋めた後に自己結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0206】
本発明において、pAdBestGL4_3H_2dClaを制限酵素で切断する段階は、SacI及びApaI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0207】
本発明において、pAdBestGL4_5H_dClaを制限酵素で切断して大きい断片を分離する段階は、SacI及びApaI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0208】
本発明において、pAdBestGL4_5H_dClaを制限酵素で切断して分離した前記大きい断片は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、SacI制限酵素サイト及びApaI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0209】
本発明において、pAdBestGL4_5H_dClaを制限酵素で切断して分離した大きい断片のSacI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0210】
本発明において、pAdBestGL4_5H_dClaを制限酵素で切断して分離した大きい断片のApaI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0211】
本発明において、pAdBestGL5を製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBestGL4_3H_2dClaにpAdBestGL4_5H_dClaを制限酵素で切断して分離した大きい断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0212】
本発明において、pAdBestGL2_wtClaを制限酵素で切断する段階は、HpaI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0213】
本発明において、pAdBestGL5を制限酵素で切断する段階は、SacI及びAvrII制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0214】
本発明において、pAdBestGLを製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBestGL2_wtClaと制限酵素で切断されたpAdBestGL5を混合してiHoAを用いて行ってよいが、これに限定されない。
【0215】
本発明において、pAdBestGLを制限酵素で切断する段階は、ApaI及びNsiI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0216】
本発明において、スキャフォールド/マトリックス付着要素を製造する段階におけるプライマーセットは、配列番号29及び30の塩基配列からなるプライマーセットでよいが、これに限定されるものではない。
【0217】
本発明において、スキャフォールド/マトリックス付着要素を製造する段階は、PCRで行ってよいが、これに限定されない。
【0218】
本発明において、スキャフォールド/マトリックス付着要素は、制限酵素サイトを含んでいるものでよく、例えば、ApaI制限酵素サイト及びNsiI制限酵素サイトを含んでいるものでよいが、これに限定されない。
【0219】
本発明において、スキャフォールド/マトリックス付着要素を制限酵素で切断する段階は、ApaI及びNsiI制限酵素で行ってよいが、これに限定されない。
【0220】
本発明において、スキャフォールド/マトリックス付着要素のApaI制限酵素サイトは、5’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0221】
本発明において、スキャフォールド/マトリックス付着要素のNsiI制限酵素サイトは、3’末端に位置していてよいが、これに限定されない。
【0222】
本発明において、pGLAdを製造する段階は、制限酵素で切断されたpAdBestGLに、制限酵素で切断されたスキャフォールド/マトリックス断片を結合して行ってよいが、これに限定されない。
【0223】
本発明において、pGLAdは、配列番号73の塩基配列を含むものでよく、例えば、配列番号73の塩基配列からなるものでよいが、これに限定されない。
【0224】
本発明のさらに他の例は、下記の構成を含むガットレスアデノウイルスに関する:
5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψパッケージング信号配列、プロモーター、イントロン、導入遺伝子(transgene)、ポリ(A)信号配列、スタッファーDNA(stuffer DNA;sDNA)及び3’逆末端反復配列。
【0225】
本発明において、プロモーターは、CMVプロモーター又はニワトリベータ-アクチン(chicken β-actin)プロモーターでよいが、これに限定されるものではない。
【0226】
本発明において、イントロンは、ウサギベータ-グロビン(rabbit β-globin)遺伝子に由来するものでよいが、これに限定されない。
【0227】
本発明において、ポリ(A)信号配列は、SV40ポリ(A)信号配列でよいが、これに限定されるものではない。
【0228】
本発明において、スタッファーDNAは、スキャフォールド/マトリックス付着要素(scaffold/matrix attachment element,SMAR)をさらに含むものでよいが、これに限定されない。
【0229】
本発明において、導入遺伝子は、少なくとも1個であってよいが、これに限定されるものではない。
【0230】
本発明において、導入遺伝子は、特定遺伝子産物の発現を抑制する機能を有するものでよいが、これに限定されない。
【0231】
本発明において、導入遺伝子は、因子IX[factor IX、血友病B(hemophilia B)の治療のためのR338L Padua突然変異体遺伝子]、グルコセレブロシダーゼ[glucocerebrosidase,GCR、ゴーシェ病(Gaucher’s disease)の治療のための遺伝子]、ヘクソサミニダーゼA[hexosaminidase A,HEXA、テイザックス病(Tay-Sachs)の治療のための遺伝子]、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1[hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1,HPRT1、レッシュナイハン症候群(Lesch-Nyhan syndrome)の治療のための遺伝子]、イズロネート-2-スルファターゼ[iduronate-2-sulfatase,IDS、ハンター症候群(Hunter syndrome)の治療のための遺伝子]、メチル-CpG-結合タンパク質2[methyl-CpG-binding protein 2,MECP2、レット症候群(Rett syndrome)の治療のための遺伝子]、運動ニューロン1生存因子[survival of motor neuron 1,SMN1、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,SMA)の治療のための遺伝子]、及びジストロフィン遺伝子[dystrophin gene、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy,DMD)の治療のための遺伝子]からなる群から選ばれる1種以上でよいが、これに限定されるものではない。
【0232】
本発明において、前記ガットレスアデノウイルスは、既に詳述したヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス生産システムを用いて製造されたものでよいが、これに限定されない。
【0233】
本発明において、前記ガットレスアデノウイルスは、既に詳述したガットレスアデノウイルス生産方法を用いて製造されたものでよいが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0234】
本発明は、ヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システム、これを用いたガットレスアデノウイルス生産方法、これを用いて生産されたガットレスアデノウイルス、及び該ガットレスアデノウイルスの用途に関する。本発明のヘルパープラスミドベースのGLAd生産システムは、ヘルパープラスミド由来アデノウイルス及び複製可能アデノウイルス(replication-competent adenovirus;RCA)を発生することなく、単に組換えGLAdだけを生産し、前記生産システムによって製造された組換えGLAdは、導入遺伝子の大きさに関係なくそれらの遺伝子を効果的に伝達しており、ハンチントン病(Huntington’s disease,HD)及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy,DMD)のような先天性遺伝病に対する治療可能性を示した。したがって、本発明は、ヘルパープラスミドベースのGLAd生産システムがGLAdベース遺伝子治療法において新しいプラットホームになり得ることを提示する。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【
図1】本発明の一実施例であり、pAdBest_dITRヘルパープラスミド及びpGLAdゲノムプラスミドの製造、及びこれを用いたGLAdの生産を示す図である。 aは、最も広く使用されるヘルパーアデノウイルスの構造的特徴を示している。黒矢尻は、loxPサイトを示す。 bは、Ad5ゲノム構造及び転写単位を示している。E及びLはそれぞれ、初期遺伝子(early gene)及び後期遺伝子(late gene)を示す。矢印は、転写単位の方向を示す。 cは、Ad5、pAdBest_dITRヘルパープラスミド、pGLAdゲノムプラスミド及びGLAdゲノム構造の概略図を比較して示している。SMARは、スキャフォールド/マトリックス付着要素(scaffold/matrix attachment element)を示す。色相は、DNAバックボーン(backbone)の起源を示す。 dは、GLAd生産の概略図を示している。pAdBest_dITRヘルパープラスミド及びPacI制限酵素で線形化された組換えpGLAd_XゲノムプラスミドをHEK293T細胞に共同形質感染させることによって組換えGLAd.Xウイルスを生産した。 eは、GLAd.LacZウイルスで感染されたHEK293細胞のLacZ染色結果を示している。GLAd.LacZウイルスでHEK293細胞を感染させて48時間後に、細胞にLacZ染色を行った[上段:未処理対照群(白色点は、染色された細胞ではなくX-gal結晶である。);中段:10mlウイルス性培地のうち50ulが感染に使用された;下段:1mlウイルス性細胞溶解物のうち5ulが感染に使用された。]。
【
図2】本発明の一実施例であり、新しいゲノムプラスミドであるpGLAd3の製造及びこれを用いたGLAdの生産を示す図である。 aは、pGLAd及びpGLAd3ゲノムプラスミドとそれに相応するGLAdの概略図を比較して示している。色相は、DNAバックボーンの起源を示す。 bは、組換えGLAd3.LacZウイルスを生産する間に観察されたCPEを示している。pAdBest_dITRヘルパープラスミド及びPacI制限酵素で線形化されたpGLAd3_LacZゲノムプラスミドをHEK293T細胞に共同形質感染させて48時間後に、未処理対照群(左側)及び形質感染された細胞(右側)を顕微鏡で撮影した。 cは、GLAd3.LacZウイルスで感染されたHEK293細胞のLacZ染色結果を示している。GLAd3.LacZウイルスでHEK293細胞を感染させて48時間後に、細胞にLacZ染色を行った。左側の数字は、100mm培養皿で製造された1mlウイルス性細胞溶解物のうち、感染に使用された体積(0、5又は20ul)を示す。 dは、ヘルパーアデノウイルス、E1発現パッケージング細胞及びpAdBest_dITRヘルパープラスミドから確認された相同性領域部分を示している。相同組換えは、色付きのボックス領域で発生し得る。RCAが生成されるには、2箇所で相同組換えが発生しなければならず、そうしてこそ、E1がパッケージング細胞からヘルパーアデノウイルスに移動することができる。
【
図3】本発明の一実施例であり、GLAdの大量生産のためのワークフローである。 aは、既存GLAdの標準生産手続きに対する全過程を示している。pHDAd.LacZは、LacZ発現カセットを含んでいるGLAdゲノムプラスミドである。力価(titer)は、各増幅段階で生成される全体感染性GLAd粒子(BFUは、LacZ染色によって決定される。)を示す。 bは、シードGLAd(seed GLAd,P0)の収得(rescue)、連続増幅(P1~P3)及びGLAdの大量生産(規模によってP3、P4又はP5)に対する全過程を示している(詳細な内容は、材料及び実験方法参照)。力価(BFU)は、各増幅段階においてLacZ染色で算出した。
【
図4】本発明の一実施例であり、GLAd生産過程で生成されたアデノウイルス及びRCA汚染物分析を示す図である。 aは、100mm培養皿ではAd.LacZ(陽性対照群)を、そして150mm培養皿ではP3 GLAd3.LacZ(3×10
9BFU)(それの生産は
図3参照)を用いてHEK293細胞を順次の段階で感染させる過程を示している。上記の条件で、アデノウイルス及びRCAは増幅可能である。陽性対照群において、1個の感染性ウイルス粒子は、2回未満の増幅段階だけでも5×10
5の感染性ウイルス粒子に増幅された(1BFU->5×10
5BFU)。ベンゾナーゼ(Benzonase)は、P3 GLAd3.LacZの製造に持続して利用されるヘルパープラスミドを分解するために使用された(カプシド皮内にパッケージングされるウイルスDNAは、ベンゾナーゼに耐性を有する)。各増幅段階において、細胞を収集し、適当な方式で処理することによって、アデノウイルス及びRCAを細胞から放出させた。増幅最終段階では、細胞及び培養培地を全て収集し、適当な方式で処理した後、アデノウイルス及びRCAを分析した。 bは、
図4のaのサンプルに対するアデノウイルス及びRCAのPCR分析結果を示している。GLAdゲノム又はHEK293細胞には存在しないが、アデノウイルス及びRCAには共通に存在するfiber遺伝子のN末端DNAに対してPCRを行ってサンプルを分析した。Ad5 DNA(10pg)をPCRにおいて陽性対照群として用いた。Ad.LacZサンプルは、100倍希釈前又は後にPCRを行った(このように希釈すると、サンプルには単に500個のウイルス粒子だけが残る)。GLAd3.LacZサンプルは、さらに添加した(spiked)Ad5 DNA(10pg)の存在又は不在下にPCRで増幅された。矢尻は、標的PCR生成物(484bp)を示す。Mは、100bpサイズマーカーを意味する。 cは、
図4のaにおけると同様に、アデノウイルス及びRCAの増幅のためにP4 GLAd3.LacZ又はP5 GLAd3.LacZを用いてHEK293細胞を感染させた過程を示している。製造されたサンプルを用いてPCRを行い、その結果を
図4のdに示した。 dは、
図4のcのサンプルに対するアデノウイルス及びRCAのPCR分析結果を示している。サンプルに対するPCRは、上の
図4のbと同様に行った。
【
図5】本発明の一実施例であり、組換えGLAdによるハンチンチンmshR、コドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子、又はそれら2種類の発現を示す図である。 aは、全長ヒト成熟型ハンチンチンmRNA(full-length human mature huntingtin mRNA)の概略図及びmshRの位置を示している。数字1、2及び3はそれぞれ、mshR1、mshR2及びmshR3の標的位置を示す。 bは、mshRの鋳型配列(template)を示している。21NTsは、21ヌクレオチド長のセンス及びアンチセンス配列を示す。 cは、mshRを発現させる発現プラスミドを示している。BamHI及びEcoRI制限酵素サイトを用いて、このプラスミドに個別mshR(individual mshR、表21)をクローニングした。 dは、mshR発現プラスミドによって内因性ハンチンチン発現が抑制されることを示している。HEK293T細胞を未処理状態で置くか、或いは、pGT2、pGT2-mshR1、pGT2-mshR2又はpGT2-mshR3で形質感染させて48時間後に、細胞を収得してウェスタンブロッティングを行い、内因性ハンチンチン発現を分析した。HTTは、ハンチンチンを意味する。 eは、全長ヒト成熟型ハンチンチンmRNAの概略図及びmshRの位置を示している。上段の黒色及び下段の赤色の水平線はそれぞれ、天然(内因性)ハンチンチンmRNA及びコドン最適化されたハンチンチンmRNAを示す。数字は、mshR1、mshR2及びmshR3の標的位置を示す。mshR1及びmshR3の場合には、アミノ酸及び該当のコドンを示す。天然(内因性)ハンチンチンmRNA及びコドン最適化されたハンチンチンmRNAとの間で異なる配列として確認されたヌクレオチドは、灰色で強調表示した。 fは、mshR1、mshR3及びコドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子クローニングのためのpGLAd4ゲノムプラスミドを示している[正方向(right orientation)又は逆(R)方向(reverse orientation)]。 gは、ハンチンチンmshR及びコドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子を同時に伝達する組換えGLAdを示している。GLAd4.coHTT.HTTmshR1/3は、正方向のコドン最適化されたハンチンチン遺伝子を伝達する。総長(28.3kb)は、5’ITRから3’ITRまでの長さを意味する。 hは、組換えGLAdがmshR1/3及びコドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子を同時に伝達する場合に、それらがハンチンチン発現に及ぼす影響を示している。GLAd4.coHTT.HTTmshR1/3又はGLAd4.coHTT(R).HTTmshR1/3(逆方向のコドン最適化されたハンチンチン遺伝子)でHEK293T細胞を感染させて48時間後に細胞を収得し、ウェスタンブロッティングを行ってハンチンチン発現を分析した。HTTは、ハンチンチンを意味する。 iは、ハンチントン病(HD)において組換えGLAd4.coHTT.HTTmshR1/3の作用モデルを示す概略図を示している。wtHTT及びmtHTTはそれぞれ、野生型(wild-type)ハンチンチンmRNA及び突然変異(mutant)ハンチンチンmRNAを示す。coHTTは、コドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子から転写されたmRNAを示す。組換えGLAd4.coHTT.HTTmshR1/3は、mshR及びコドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子の両方をハンチントン病標的組織に同時に伝達する。
【
図6】本発明の一実施例であり、組換えGLAdが生体内(in vivo)にジストロフィン遺伝子を伝達することを示す図である。 aは、組換えGLAd4.Dysの概略図を示している。総長(27.7kb)は、5’ITRから3’ITRまでの長さを意味する。 bは、動物実験に対する時間経過(time frame)を示している。 cは、ジストロフィンノックアウトMDXマウスにおいてジストロフィン発現を検査した結果を示している。MDXマウスの腓腹筋(focal gastrocnemius muscle)にPBS又は50ulのGLAd4.Dysウイルス(4×10
10ウイルス粒子)を注射した。4週後、野生型対照群、PBSを注射したMDXマウス、又はGLAd4.Dysウイルスを注射したMDXマウスから筋肉組織を生検して免疫蛍光染色を行い、共焦点顕微鏡(confocal microscope)で分析した(倍率=200倍;スケールバー=20μm)。
【
図7】本発明の一実施例であり、pAdBest_dITRヘルパープラスミド及びpBestクローニングシャトルプラスミドの製造を示す図である。 aは、Ad5の誘導体であるΨ5を示す概略図である。E1及びE3において垂直点線は、該当の遺伝子の実際欠失位置を示す。唯一に存在するBamHI制限酵素サイトを共に示している。 b~eは、pAdBest_dITRヘルパープラスミドの製造過程を示す概略図である。詳細な内容は、材料及び実験方法から確認できる。 fは、pBestクローニングシャトルプラスミドの構成を示す概略図である。黒色及び灰色ボックスは、iHoAのための5’及び3’相同ストレッチ部位を示す。
【
図8】本発明の一実施例であり、pGLAdゲノムプラスミドの構築を示す図である。詳細な内容は、材料及び実験方法から確認できる。
【
図9】本発明の一実施例であり、組換えpGLAd_LacZの製造のためのiHoAの概略図である。 aは、黒色ボックスがPmeI制限酵素サイトを示し、矢尻がPmeI制限酵素サイトの切断部分を示す。PmeI制限酵素で切断したpBest_LacZをClaI制限酵素で切断したpGLAdと混合し、iHoAを行った。68bp及び49bpはそれぞれ、pBestとpGLAdとの間の5’及び3’相同ストレッチ部位を示す。 bは、iHoAの中間産物を示している。整列された二本鎖DNA(上、
図9のa)は、一本鎖DNAに変換された。この過程によりハイブリッドアニーリングが起こり、pBest_LacZに存在していた5’ITR、Ψパッケージング信号配列及びLacZ発現カセットがpGLAdゲノムプラスミドに移動した。 cは、iHoAの完了による最終結果物である。アニーリングされた鎖は、形質転換された細菌性細胞内で完全に修理されて復旧される。
【
図10】本発明の一実施例であり、組換えpGLAd_Xの製造においてiHoAの効率を示す図である。 aは、iHoA後に、アガープレートに形成された細菌性コロニーを示している。矢印は、潜在的に正しい組換えpGLAd_Xプラスミドを含んでいる、サイズの小さいコロニーを表示している。 bは、pGLAd_LacZの制限酵素地図を示す概略図である。E及びBはそれぞれ、EcoRI制限酵素及びBamHI制限酵素サイトを示す。数字は、該当の制限酵素サイトの位置を示す。 cは、コロニースクリーニング結果である。サイズの小さい5個のコロニーを選択した後、それらのそれぞれからプラスミドを精製した。それぞれのプラスミドをEcoRI制限酵素で切断した後、アガロースゲル上で分析した。Mは、ラムダHindIIIサイズマーカーである。 dは、さらに制限酵素を処理した結果である。クローン1及びクローン2をEcoRI制限酵素及びBamHI制限酵素を用いて同時に切断した。Mは、ラムダHindIIIサイズマーカーである。
【
図11】本発明の一実施例であり、iHoAが起こる相同ストレッチ部位に対する配列検証を示す図である。 aは、iHoAの最終結果物を示している。色付き矢尻は、シーケンシングプライマーを示す。黒矢尻は、iHoAを行うとき、pGLAdの線形化に用いられたClaI制限酵素サイト(ClaI制限酵素サイトである5’-ATCGAT-3’は、iHoA後に破壊される。)の開始ヌクレオチドを示す。矢印は、iHoAに用いられた相同ストレッチ部位の終了を示す。 b及びcは、シーケンシング結果である。相同ストレッチ部位との連結地点をボックスで示す。矢印及び矢尻は、
図11のaで説明したそれぞれに該当する位置を示す。
【
図12】本発明の一実施例であり、新しいゲノムプラスミドであるpGLAd3の製造を示す図である。 aは、マウスE-カドヘリンイントロン2領域(E-cadherin intron 2 region)を示す概略図である。垂直の黒色ボックスは、E-cadherin遺伝子のエクソン(exon)を示す。水平線は、プライマーセット(表20)を用いて獲得したPCR産物を示す。N、C及びF1~F5は、PCR産物の名称である。水平線上の数字は、PCR産物の長さを示す。 bは、pGLAd3の製造工程を示す概略図である。詳細な内容は、材料及び実験方法から確認できる。 cは、pBest4クローニングシャトルプラスミドの概略図である。黒色及び灰色ボックスは、iHoA実行のための5’及び3’相同ストレッチ部位を示す。MCSは、導入遺伝子の多重クローニング部位を示す。
【
図13】本発明の一実施例であり、GLAd生産に用いられる2種類のヘルパーが、アデノウイルス及びRCA汚染物の発生に及ぼす影響を示す図である。HEK293T又はHEK293パッケージング細胞において2種類のヘルパーを用いてGLAdを生産する概略図である。色付きのボックス領域で相同組換えが発生し得る。RCAは、複製可能アデノウイルス(replication-competent adenovirus)を意味する。
【
図14】本発明の一実施例であり、pGLAd3ゲノムプラスミドからpGLAd4ゲノムプラスミドへの変換を示す図である。pGLAd3には、2つのBssHII制限酵素サイトがある。pGLAd3をBssHII制限酵素で切断し、自己結合させた。この過程が成功的に行われると、星印で表示された部分が削除され、総長が26,597bpから16,392bpへと減少する。
【発明を実施するための形態】
【0236】
本発明は、ヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産システムに関する。
【実施例】
【0237】
以下、本発明を、下記の実施例を用いてより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0238】
材料及び実験方法
試薬、キット、実験用マウス及び通常のクローニング技術
あらゆる種類の制限酵素、クレノウ断片(Klenow fragment)及びHindIII制限酵素で切断されたラムダファージDNAは、ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs,マサチューセッツ、米国)から購入した。エニィヒュージョン(AnyFusion)及びPfu重合酵素は、ジェネンメド(Genenmed,ソウル、韓国)のものを使用した。Ad5の一種であるΨ5は、以前に報告されたことがあり、それを使用した。化学物質試薬は、シグマ(Sigma,ミズーリ、米国)から入手した。DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium )とウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum,FBS)はそれぞれ、ウェルジン(Welgene,キョンサンプクド、韓国)とセルセラ(CellSera、ニューサウスウエスト、オーストラリア)から購入した。化学的反応能細胞(chemically competent)であるXL-1 Blue及びDH10bは、RBC(タイペイ、台湾)から導入した。ヒトジストロフィン(dystrophin)遺伝子、コドン最適化された(codon-optimized)ヒトハンチンチン(huntingtin)遺伝子及びmshRsは、ジェンスクリプト(GenScript、ニュージャージー、米国)で合成された。重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)プライマー(primer)及び合成オリゴ(synthetic oligo)は、コスモジンテック(Cosmogenetech、ソウル、韓国)から入手した。ヌクレオチド配列分析もコスモジンテックで行われた。T-ブラントPCRクローニングキット(T-Blunt PCR cloning kit)とLaboPass Tissue Genomic DNA分離キットは、それぞれ、ソルジェント(SolGent、デジョン、韓国)とコスモジンテックから購入した。カラムクロマトグラフィーのためのQセファロースXL(Q Sepharose XL)及びキレート化セファロースFF樹脂(Chelating Sepharose FF resin)は、GEヘルスケア(GE Healthcare,イリノイ、米国)から購買した。ビバスピンターボ超微細濾過スピンカラム(Vivaspin Turbo ultrafiltration spin column、分画分子量(cut off):100kDa)は、サートリアス(Sartorius、ゲッティンゲン、ドイツ)から購入した。ベンゾナーゼ(Benzonase)は、メルク(Merck、ダルムシュタット、ドイツ)から入手した。ジストロフィン-ノックアウトMDX(Dystrophin-knockout MDX,C57BL/10ScSn-Dmdmdx/J)及び野生型(wild-type)マウス(C57BL/10J)は、ジャクソン研究所(Jackson Laboratory,メーン、米国)から購入した。ジストロフィン抗体(ab15277)及びハンチンチン抗体(sc-47757)はそれぞれ、Abcam(ケンブリッジ、英国)及びSanta Cruz Biotechnology(カリフォルニア、米国)から導入した。β-アクチン抗体(Abc-2002)は、アブクロン(AbClon,ソウル、韓国)から入手した。スーパーシグナルウェストピコ化学発光基質溶液(SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate solution)は、Fisher Scientific(ニューハンプシャー、米国)から購入した。HEK293T及びHEK293細胞は、ATCC(バージニア、米国)から入手した。DNA配列のクローニング及び操作には、一般に用いられる汎用DNA操作技術が適用された。
【0239】
実施例1.pBestクローニングシャトルプラスミドの製造
Kanr~ColE1領域に該当するDNA断片は、pGT2プラスミド(配列番号63)を鋳型とし、下記表のプライマーセットを用いてPCRで確保した:
【0240】
【0241】
5’相同ストレッチ部位(homologous stretch)、5’逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR)、Ψ5パッケージング信号配列、CMVプロモーター、多重クローニング部位(multi-cloning site,MCS)、SV40ポリ(A)信号配列、及び3’相同ストレッチ部位を含むDNA断片(
図7のf)は、ジェンスクリプト(GenScript)で化学的に合成された。この合成DNAの5’末端にはSfiI制限酵素サイトが、3’末端にはXcmI制限酵素サイトが含まれている。pBestプラスミド(配列番号64)は、SfiI及びXcmI制限酵素サイトを用いて前記PCR生成物と合成DNAを共に結合させることによって製造された。
【0242】
実施例2.pAdBest_dITRヘルパープラスミドの製造
下記のプライマーセットを用いて、実施例1と同じ方法でPCR生成物を収得した:
【0243】
【0244】
PCR生成物(Kan~ColE1領域)をBamHI/BstZ17I制限酵素で切断し、Ψ5ゲノムのBstZ17I~BamHI領域に該当する断片(配列番号65)と結合させてΨ5-Left-Arm-1を製造した。次に、‘*’(asterisk)表示からBstZ17I制限酵素サイトに至るDNA断片(配列番号66)(
図7のa)を、下記のプライマーセットを用いてPCRで製造した後、Ψ5-Left-Arm-1に結合させて、Ψ5-Left-Arm-2を製造した。
【0245】
【0246】
Ψ5-Left-Arm-2は、Ad5(アデノウイルス5型、GenBank AC_000008)のヌクレオチド1~3133(5’ITR及びΨパッケージング信号配列を含む部分)に該当する部位が除去された状態である。
【0247】
Ψ5-Right-Arm-1(
図7のc)の製造においても、Kan
r~ColE1領域に該当するDNA断片は、下記のプライマーセットを用いてPCRで準備した:
【0248】
【0249】
PCR生成物をBamHI制限酵素で切断し、Ψ5ゲノムのBamHI~3’ITR領域に該当するDNA断片(配列番号67)と結合させた。
【0250】
アデノウイルスのゲノムサイズを減少させるために、SpeI(27082)制限酵素サイト及びNdeI(31089)制限酵素サイト、そして下記表5のプライマーセットを用い、Ad Ψ5を鋳型として重複PCR(overlapping PCR)を行うことにより、Ψ5ゲノムに部分的に残っていたE3領域(partially remaining E3 region)を完全に欠失させた。
【0251】
【0252】
これにより、Ψ5-Right-Arm-2には、Ad5のヌクレオチド27864~31000に該当する部分が欠失している。
【0253】
その後、Ψ5-Left-Arm-2からClaI~BamHI領域に該当するDNA(配列番号69)を分離してΨ5-Right-Arm-2に結合させることによってpAdBestを製造した(
図7のd)。
【0254】
pAdBestから3’ITRの除去は、次の段階によって行った:
pAdBestをClaI/EcoRI制限酵素で切断した後、小さい断片を分離し、ClaI制限酵素サイト及びEcoRI制限酵素サイトを含む下記のアダプターに接合してpAdBest_EcoR_Claを製造した。
【0255】
【0256】
次に、pAdBest_EcoR_ClaをAvrII/RsrII制限酵素で切断し、大きい断片を分離した。下記のプライマーセットを用い、pAdBestを鋳型として重複PCRを行った:
【0257】
【0258】
PCR生成物(配列番号70)をAvrII/RsrII制限酵素で切断し、これをAvrII/RsrII制限酵素で切断されたpAdBest_EcoR_Claの大きい断片と結合させた。このような過程により、pAdBestで3’ITRを完全に除去したpAdBest_EcoR_Cla_dITRを製造した。その後、pAdBestのClaI~EcoRI領域に該当する大きい断片を、pAdBest_EcoR_Cla_dITRの相応するサイトにさらに結合させ、pAdBest_dITR(配列番号71)を製造した(
図7のe)。
【0259】
実施例3.pGLAdゲノムプラスミドの製造
下記のプライマーセットを用いて、pAdBestを鋳型としてPCRを行った:
【0260】
【0261】
PCR生成物(配列番号72)をSacI/AscI制限酵素で切断した後、下記のアダプターに結合させてpAdBestGL1を製造した(
図8のa)。
【0262】
【0263】
pAdBestGL1に唯一に存在するClaI制限酵素サイト除去は、pAdBestGL1をClaI制限酵素で切断し、クレノウで隙間を埋めた後、自己結合させることによって実施され、この過程によりpAdBestGL1_dClaを製造した。pAdBestGL1及びpAdBestGL1_dClaのそれぞれをSacI/AvrII制限酵素で切断し、HpaI制限酵素サイトを含む下記のアダプター(HpaI-site-containing adaptor、
図8のb)に結合させ、pAdBestGL2_wtCla及びpAdBestGL2を製造した。
【0264】
【0265】
次に、HpaI制限酵素で切断されたpAdBestGL2を、HindIII制限酵素で切断されたラムダファージDNA(矢印、
図8のc)と混合し、試験管内相同アニーリング(in vitro homologous annealing,iHoA)を行ってpAdBestGL3を製造した。pAdBestGL3をSacI/ApaI制限酵素又はApaI/AvrII制限酵素で切断し、下記のSacI/ApaIアダプター(
図8のd)又は下記のApaI/AvrIIアダプター(
図8のe)に結合させて、pAdBestGL4_3H及びpAdBestGL4_5Hをそれぞれ製造した。
【0266】
【0267】
【0268】
pAdBestGL4_3H_2dClaは、pAdBestGL4_3Hに存在するClaI制限酵素サイトを連続して除去することによって製造されるが、具体的には、pAdBestGL4_3HをClaI制限酵素で切断し、クレノウで隙間を埋めた後に自己結合して、Dam-/-細菌性細胞(Dam-/-bacterial cells)に形質転換させた。結果物であるpAdBestGL4_3H_dClaをClaI制限酵素で再び切断し、クレノウで隙間を埋めた後、自己結合させることによって、pAdBestGL4_3H_2dClaを製造した。同様の方式で、pAdBestGL4_5H_dClaはpAdBestGL4_5HをClaI制限酵素で切断し、クレノウで隙間を埋めた後、自己結合して製造した。次に、pAdBestGL4_5H_dClaのSacI~ApaI領域に該当する断片(5’半分部)を、SacI/ApaI制限酵素で切断されたpAdBestGL4_3H_2dClaに移し、pAdBestGL5を製造した(
図8のf)。pAdBestGL(
図8のg)製造は、pAdBestGL2_wtClaをHpaI制限酵素で切断し、SacI/AvrII制限酵素で切断されたpAdBestGL5(
図8のf)と混合し、iHoAを行って製造した。その後、pAdBestGLをApaI/NsiI制限酵素で切断し、下記のプライマーセットを用いてPCRで準備したスキャフォールド/マトリックス付着要素(scaffold/matrix attachment,SMAR element)と結合させることによって、最終的にpGLAd(配列番号73)を製造した(
図8のh)。
【0269】
【0270】
実施例4.試験管内相同アニーリング(in vitro homologous annealing,iHoA)
iHoAは、エニィヒュージョン(AnyFusion)を用いて行った。全過程にはやや修正を加えたものの、メーカーの指示事項に従って実施した:55℃で10分間培養、室温で20分間さらに培養した。その後、培養混合物を化学的反応能細胞であるXL-1Blue又はDH10b細胞に形質転換させ、抗生剤を含むアガープレートに塗抹した。
【0271】
実施例5.GLAd.LacZ及びGLAd3.LacZウイルスの製造
pGLAd_LacZ又はpGLAd3_LacZプラスミド(10ug)をPacI制限酵素で線形化し、PacI活性を熱不活性化(heat-inactivation)させた。このPacI制限酵素で線形化されたpGLAd_LacZ又はpGLAd3_LacZゲノムプラスミドを、pAdBest_dITRヘルパープラスミド30ugと共に、100mm培養皿に培養されたHEK293T細胞にカルシウムホスフェート沈殿法(calcium phosphate precipitation method)を用いて共同形質感染させた。培養6時間後に、培養培地(10% FBS)を新しい培養培地(5% FBS)に交替した。48時間後に、形質感染細胞及び培地を回収し(この段階で、培地は‘ウイルス性培地’として保存された。)、細胞を1mlの新しい培養培地(5% FBS)に再懸濁し、凍結及び解凍過程を3回繰り返し行って粉砕した(透明な溶解物を‘ウイルス性細胞溶解物’と呼ぶ。)。ウイルス性細胞溶解物を収得してHEK293細胞を感染させた(組換えGLAd.LacZ及びGLA3.LAZウイルスは、GLAdウイルスだけではHEK293細胞において増幅されず、HEK293細胞内で溶解性細胞死滅が誘導できない。)。処理48時間後に、LacZ発現のために細胞を染色した。
【0272】
実施例6.LacZ染色
HEK293細胞から培養培地を除去し、細胞を室温で2分間新鮮な固定液[2%ホルムアルデヒド/メタノール(formaldehyde/methanol)及び0.1%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)を含むPBS]で固定した。細胞をPBSで2回丁寧に洗浄した後、染色溶液[1mg/ml X-gal、2mM塩化マグネシウム(magnesium chloride,MgCl2)、5mMフェリシアン化カリウム(potassium ferri-cyanide)及び5mMフェロシアン化カリウム(potassium ferro-cyanide)を含むPBS]でLacZ染色が十分になるまで37℃で培養した。
【0273】
実施例7.マウスの尻尾からゲノムDNAの精製
C57BL/6Jマウスの尻尾からのゲノムDNA精製は、LaboPass組織ゲノムDNA分離キットを用いて行った。全手続きにはやや修正を加えたものの、メーカーの指示事項に従って行った。簡単にいうと、マウスの尻尾組織(2×2mm切片)を、タンパク質分解酵素K(proteinase K)を含有する溶解緩衝液で完全に溶解されるまで培養した。このように処理された試料を100%エタノールと混合し、ミニスピンカラムに通過させた。カラムフィルターに吸着しているゲノムDNAを、2種類の洗浄緩衝液を用いて完全に洗浄し、蒸留水を用いて溶出させた。
【0274】
実施例8.pGLAd3ゲノムバックボーン(genome backbone)としてマウスE-カドヘリン(E-cadherin)イントロン2領域(intron 2 region)のクローニング
マウスの尻尾から精製したゲノムDNAを、PCRにおいて鋳型として用いた。プライマーセット及び配列は、表20に記載されている。F1、F2、F3、F4又はF5断片を確保するためのPCR増幅(95℃で30秒、60~65℃で30秒、72℃で4分)は、それぞれのプライマーセット及びPfu重合酵素(polymerase)を用いて45サイクル行われた。それぞれのPCR生成物は、T-ブラントPCRクローニングキットのT-Bluntベクターにクローニングされた。結果物であるT-F1、T-F2、T-F3、T-F4及びT-F5(
図12のb)が正しく作製されたかどうかは、シーケンシングを用いて検証した。
【0275】
実施例9.pGLAd3ゲノムプラスミドの製造
マウスの尻尾から精製したゲノムDNAをPCRの鋳型とし、プライマーセットN-F/N-R及びC-F/C-R(表20)を用いて重複PCR(95℃で30秒、62℃で30秒、72℃で60秒)を50サイクル行った。BspEI、XhoI及びNsiIと同じ制限酵素サイトを含むNC断片PCR生成物とSacI/AvrII制限酵素で切断されたpGLAd(
図12のb)との間にiHoAを行い、pGLAd_NCを製造した。その後、pGLAd_NCをNsiI/XhoI制限酵素で切断し、アニーリングされた合成Nsi-Xho断片(表20)を結合させ、後でF12345断片を受容する最終受容体となるpGLAd_NC_PUを製造した。これと並行して、T-F1_dPacは、PacI制限酵素で切断し、クレノウでブランティング(blunting)して自己結合することによって製造したが、このようにして、T-F1に唯一に存在するPacI制限酵素サイトを除去した。T-F2_SMARは、SfiI/SalI制限酵素で切断されたT-F2とSM-F/SMAR-Rプライマー(表20)、pGLAdを鋳型としてPCRで製造されたSMAR要素を結合させることによって製造した。その後、T-F12は、NotI/RsrII制限酵素で切断されたT-F1_dPac断片を、NotI/RsrII制限酵素で切断されたT-F2_SMARに移すことによって製造した。T-F34の製造は、PvuI制限酵素で切断し、クレノウでブランティング(blunting)して熱不活性化した後、PciI制限酵素で追加切断したT-F4断片を、SpeI制限酵素で切断し、クレノウでブランティングして熱不活性化後にPciI制限酵素でさらに切断したT-F3断片に移すことによって完成した。T-F345は、T-F5のMluI~XbaI領域に該当する断片を、SpeI/MluI制限酵素で切断されたT-F34と結合させることによって製造した(SpeI制限酵素部位は、XbaI制限酵素部位に結合させてよい。)。T-F12345は、T-F12のSalI~RsrII領域に該当する断片を、SalI/RsrII制限酵素で切断されたT-F345に移すことによって製造した。究極として、pGLAd3(配列番号74)の製造は、PstI制限酵素で切断されたpGLAd_NC_PUとXhoI制限酵素で切断されたT-F12345との間にiHoAを実施することによって完成した。製造手続きの全段階において、各生成物が正しく作製されたかどうかは、シーケンシングを用いて検証した。
【0276】
実施例10.pBest4クローニングシャトルプラスミドの製造
このプラスミドのpCAG部分は、下記のプライマーセットを用いてPCRで製造された後、AseI制限酵素及びBsaI制限酵素で切断することによって準備した。
【0277】
【0278】
β-グロビンイントロン領域も同様、下記のプライマーセットを用いてPCRで製造された後、BsaI制限酵素及びHindIII制限酵素で切断することによって準備した。
【0279】
【0280】
pBest4(配列番号75)シャトルプラスミドは、AseI/HindIII制限酵素で切断されたpBestを、上で準備されたそれらPCR生成物に結合させることによって製造された。
【0281】
実施例11.プラーク分析(Plaque assay)
100mm培養皿に培養されたHEK293細胞[80~90%の合流性(confluency)]にAd.LacZウイルス[陽性対照群として1世代アデノウイルス(adenovirus,Ad);1×103感染性ウイルス粒子]、GLAd3.LacZウイルス[1.12×107~1.80×107BFU(blue-forming units)]又はヘルパープラスミド単独で形質感染後に、準備したHEK293T細胞溶解物(表18)を処理した。24時間後に、培養培地を除去し、アガロース(0.3%)を含む12mlの滅菌された培養培地で丁寧に覆った後、10~15日間CO2培養器で培養した。希釈されたMTT溶液10mlを分取してアガロース層に添加し、5時間培養した。その後、照明箱上でウイルス性プラークを計数した。
【0282】
実施例12.pAd5pTP発現プラスミドの製造
アデノウイルス第5型(Adenovirus type5,Ad5)のpTP遺伝子は、Ad Ψ5DNAを鋳型とし、下記のプライマーセットを用いてPCRを行って確保した:
【0283】
【表16】
配列番号21の配列目録のボールド体部分は、HindIII制限酵素サイトである。
配列番号22の配列目録のボールド体部分は、EcoRI制限酵素サイトである。
【0284】
PCRは、40サイクル(95℃で30秒、60℃で30秒、72℃で120秒)行われた。pAd5pTP(配列番号76)発現プラスミドの製造は、PCR生成物を、HindIII制限酵素及びEcoRI制限酵素で切断し、pLV_VSVG_XLをHindIII制限酵素及びEcoRI制限酵素で切断して準備したpLV_XLプラスミドにクローニングすることで完成された。
【0285】
実施例13.組換えGLAdの大量生産
組換えGLAdの大量生産には、既存GLAdの生産に適用されて標準生産方法で提示されたことのある連続増幅方法を利用した。具体的に、10ugのpGLAd3_LacZ(PacI制限酵素で線形化した後に熱不活性化)、30ugのpAdBest_dITR及び2.5ugのpAd5pTPの混合物を、100mm培養皿に培養されたHEK293T細胞[50~70%合流性(confluency)]にカルシウムホスフェート沈殿法を用いて形質感染した。培養6時間後に、培養培地(10% FBS)を新しい培養培地(5% FBS)に交替した。48時間後に、形質感染された細胞を回収し、1mlの新しい培地(5% FBS)に再懸濁した後、凍結及び解凍サイクルを3回繰り返し行って粉砕し、GLAd3.LacZウイルス(P0段階GLAd)を収得した(rescue)。増幅の最初段階(P1)では、pAdBest_dITR 45ug及びpAd5pTP 3.75ugの混合物を、100mm培養皿に培養されたHEK293T細胞(50~70%合流性)にカルシウムホスフェート沈殿法を用いて形質感染した。培養6時間後に、培養培地(10% FBS)を、P0段階のGLAdを含む新しい培養培地(5% FBS)に交替した。48時間後に、形質感染された細胞及び培地を回収し(この段階で、培養培地を‘ウイルス性培地’として保存する。)、形質感染された細胞を1mlの新しい培養培地(5% FBS)に再懸濁した後、凍結及び解凍サイクルを3回繰り返し行って粉砕した(透明な溶解物を‘ウイルス性細胞溶解物’と呼ぶ。)。ウイルス性細胞溶解物を収得してウイルス性培地(総10ml)と混合し、次の段階の増幅(P2)のためにHEK293T細胞(10×150mm培養皿に培養)を感染させるのに使用した(
図3参照)。GLAdの生産規模は、追加の増幅(P3、P4、P5など)によって増やすことができる。それぞれの増幅段階の流れ図、収得されたウイルスの力価(titer)、必要な細胞培養皿の数、必要なヘルパープラスミド及びpAd5pTPプラスミドの量は、
図3に詳細に示した。
【0286】
実施例14.GLAd生産中に生成されたアデノウイルス及びRCA汚染物の増幅
GLAdと違い、アデノウイルス及びRCAは、HEK293細胞において自ら複製可能である。したがって、Ad.LacZ(陽性対照群)又はGLAd3.LacZ(P3,3×10
9BFU;P4又はP5,1×10
8BFU)がHEK293細胞を感染した後、GLAd3.LacZに存在可能な潜在的汚染物であるアデノウイルス及びRCAが1段階増幅(P4又はP5である場合)又は3段階増幅、陽性対照群である場合には殆ど2段階増幅によって複製されるように許容した。GLAd3.LacZのMOI(感染の多数性(multiplicity of infection))数値が高すぎてLacZが過発現すると、感染された細胞を死滅させることがあり、GLAd3.LacZ(P3,3×10
9BFU)の初期感染には2個の150mm細胞培養皿が使用された。ベンゾナーゼ(Benzonase)は、P3、P4又はP5 GLAd3.LacZの製造に使用し続くヘルパープラスミドを分解するために使用した(ヘルパープラスミドはPCRベースの分析に必要な標的遺伝子を含んでいる。ただし、ウイルスカプシド皮内にパッケージングされるウイルスDNAはベンゾナーゼに分解されない。)。ベンゾナーゼ処理がアデノウイルス及びRCAの感染性自体に影響を及ぼすかどうかを確認するために、ベンゾナーゼは陽性対照群(Ad.LacZ)に対しても処理した。各増幅段階では、HEK293細胞をそれに相応するウイルスで感染させた後、72時間後に収得した。これらの細胞を1ml(100mm培養皿の場合)又は2.5ml(150mm培養皿の場合)の体積で再懸濁し、凍結及び解凍サイクルを3回繰り返し行って粉砕した(粉砕された溶解物を‘ウイルス性細胞溶解物’と呼ぶ。)。各ウイルス性細胞溶解物を追加増幅に使用し、最終的に細胞溶解物及び培地を共に収得した。このような増幅過程において、細胞変性効果(cytopathic effect,CPE)は顕微鏡を用いて確認した(全手続きは、
図4のa及びcを参照)。
【0287】
実施例15.PCRを用いた汚染物アデノウイルス及びRCAの分析
HEK293細胞を用いた連続増幅(
図4のa及びc)の結果物として収得したサンプルを、まず、95℃で10分間熱処理した後[この段階を省略すると、HEK293細胞の内因性(endogenous)DNA分解酵素(DNase)が、分析のためにさらにサンプルに含めた(spiked)Ad5 DNAを分解する。]、PCR方法を用いて、GLAdゲノム又はHEK293細胞には存在しないが、アデノウイルス及びRCAには存在するfiber遺伝子のN末端DNAを分析した。PCRの陽性対照群としてはAd5 DNA(10pg、Ad Ψ5DNA)を用いた。Ad.LacZサンプルは、希釈前、又は500個のウイルス粒子だけが含まれるように100倍希釈した後、PCRを行った。GLAd3.LacZサンプルは、スパイクされた(spiked)Ad5 DNA(10pg)の存在又は不在下でPCRで増幅した。PCRは、Pfu重合酵素及び下記のプライマーセットを用いて40サイクル(95℃で30秒、60℃で30秒)行い、結果は、アガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)を用いて分析した(
図4のb及びd):
【0288】
【0289】
実施例16.pGLAd4ゲノムプラスミドの製造
pGLAd3には2個のBssHII制限酵素サイトがある(
図14)。pGLAd4(配列番号77)は、pGLAd3をBssHII制限酵素で切断した後、自己結合して製造されるが、こうすると、長さが26,597bp(pGLAd3)から16,392bp(pGLAd4)ほど減少する。完了後に、生成物が正しく作製されたかどうかは、BssHII制限酵素サイトシーケンシングを用いて検証した。
【0290】
実施例17.ハンチンチン(huntingtin)mshR発現プラスミドの製造
十分によく作動すると確認されたmshR発現用鋳型は、以前の他の論文に既に記述されたことがある。この鋳型の保存的配列及び構造的特徴に基づき、相応するDNAを合成し(表21)、BamHI制限酵素サイト及びEcoRI制限酵素サイトを用いてpGT2プラスミド(配列番号63)にクローニングした。
【0291】
実施例18.mshRによる内因性(endogenous)ハンチンチン発現のノックダウン(knockdown)
100mm培養皿に培養されたHEK293T細胞を、それぞれ、15ugのpGT2、pGT2-mshR1、pGT2-mshR2又はpGT2-mshR3で形質感染した。48時間後に、未処理対照群及び形質感染細胞を収得し、内因性ハンチンチン発現に対するウェスタンブロッティング(Western blotting)分析を行った。
【0292】
実施例19.ウェスタンブロッティング(Western blotting)
RIPA溶解緩衝液を用いて製造した全細胞溶解物(whole-cell lysate)を、SDSゲルから分子量によって分離した後、ニトロセルロース膜に移した。この膜を、室温で1時間、Blotto A溶液(TBST、5%牛乳)で遮断培養し、4℃で1次抗体(1:500~1:1,000)を含むBlotto B溶液(TBST、1%牛乳)に入れて一晩培養した。TBST[TBS、0.05% Tween-20;TBS(Tris-buffered saline):10mM Tris-Cl(pH8.0)、150mM塩化ナトリウム(NaCl)]で5分間1回洗浄した後、ニトロセルロース膜を、HRP接合2次抗体を含むBlotto B溶液(1:5,000~1:100,000)に入れて室温で2時間培養した。TBSTで5分ずつ2回洗浄した後、膜にスーパーシグナルウェストピコ化学発光基質溶液(SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate solution)を短時間処理し、生成されたイメージをバイオイメージングシステム(Bio Imaging System)で分析した。
【0293】
実施例20.pGLAd4_HTTmshR1/3の製造
pCMV、mshR及びBGHpA部分を含むHTTmshR1及びHTTmshR3(
図5のd)は、適切なプライマーセット(表22)とpGT2-mshR1又はpGT-mshR3を鋳型とし、PCRで準備した(
図5のc及びd)。pGLAd4_HTTmshR1/3の製造は、Acc65I制限酵素で切断されたpGLAd4にHTTmshR1を、そしてPciI制限酵素で切断されたpGLAd4にHTTmshR3を、iHoAでそれぞれ挿入することによって完成した(
図5のf)。その後、生成物が正しく作製されたかどうかは、Acc65I及びPciI制限酵素サイトの隣接領域シーケンシングで検証した。
【0294】
実施例21.pGLAd4_coHTT.HTTmshR1/3及びpGLAd4_coHTT(R).HTTmshR1/3の製造
Q22を含む全長(full-length)コドン最適化された合成ハンチンチン(huntingtin)遺伝子(9.4kb)をそれぞれ、異なる配列方向にpBest4シャトルプラスミドにクローニングした。既に確立した標準手続きに従い、PmeI制限酵素で切断されたpBest4_coHTT又はpBest4_coHTT(R)を、ClaI制限酵素で切断されたpGLAd4_HTTmshR1/3と共に混合し、iHoAを行った。このiHoA過程によってpGLAd4_coHTT.HTTmshR1/3(配列番号78)又はpGLAd4_coHTT(R).HTTmshR1/3が製造された。正しく製造されたかどうかは、シーケンシングで検証した。
【0295】
実施例22.組換えGLAd4.coHTT.HTTmshR1/3及びGLAd4.coHTT(R).HTTmshR1/3ウイルスの生産
組換えGLAd.LacZ及びGLAd3.LacZウイルスの生産に用いられた手続きを同一に適用して生産した。
【0296】
実施例23.組換えGLAd4.Dysウイルスの精製
組換えGLAd4.Dysウイルスは、
図3に示すように生産されたが、特に、P3から精製された。精製は、2種類のカラムベースのクロマトグラフィー方法を利用し、以前に報告された方法をやや変形して実施した。簡略にいうと、ウイルス性細胞溶解物及び収得した培養培地を混合し(P3)、ベンゾナーゼの処理後に濾過して、精製第1段階としてQセファロースカラムクロマトグラフィー(Q Sepharose column chromatography)を行った。洗浄後に、吸着されたウイルスを溶出し、緩衝液で希釈して亜鉛-キレートクロマトグラフィーカラム(Zn-chelated chromatography column)にローディングした。カラムを十分に洗浄した後、吸着されたウイルスを溶出した。製剤緩衝液(formulation buffer)への緩衝液変更及びウイルスの濃縮は、ビバスピンターボ超微細濾過スピンカラム(Vivaspin Turbo ultrafiltration spin column)を用いて同時に行った。製剤緩衝液については、既に記述した通りである。
【0297】
実施例24.GLAd4.Dysウイルス粒子の測定
精製された組換えGLAd4.Dysウイルスを、ウイルス溶解緩衝液[virus lysis buffer,0.1% SDS、10mM Tris-Cl(pH7.4)、1mM EDTA]を用いて連続して希釈し、軽く振盪しながら56℃で10分間培養した。次に、OD260を測定し、下記式を用いてウイルス粒子濃度を計算した:
[式]
ウイルス粒子(VP/ml)=OD260×ウイルス希釈因子(virus dilution factor)×(1.1×1012)
この計算において、ブランク溶液(blank solution)は、ウイルス溶解緩衝液及びウイルス製剤緩衝液(formulation buffer)の混合からなっている。吸光係数(extinction coefficient)は、既に確立されたものを用いた:
[吸光係数]
OD260 1単位=1.1×1012VP/ml
【0298】
実施例25.動物実験
全ての動物実験は、慶北大学校(大邱、大韓民国)の動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee,IAUCC)が承認した手続き(KNU2018-0134)にしたがって行った。8週齢雄野生型対照群マウス(C57BL/10J)及びジストロフィンノックアウトMDXマウス(dystrophin-knockout MDX mice,C57BL/10ScSn-Dmdmdx/J)を、12時間の明暗周期(cycle)下で飼育し、キョンブク大学校の大学動物施設規定に従って水は自由に提供した。MDXマウスの腓腹筋(focal gastrocnemius muscle)にPBS(n=3)又は50ulの組換えGLAd4.Dysウイルス(4×1010粒子)(n=3)を、筋肉内注射した。4週後、筋肉組織試料を生検して分析した。
【0299】
実施例26.免疫蛍光染色(Immunofluorescence staining)
ジストロフィン(dystrophin)に対する免疫蛍光染色は、以前に報告された方法をやや変形して実施した。採取された筋肉組織を、4% PFAを含むPBSで4℃で一晩固定した。次に、組織を、5%砂糖(sucrose)を含むPBSで4℃で6時間培養し、20%砂糖を含むPBSで4℃で一晩培養した。このように処理された組織をOCT混合物に埋め立て、液体窒素で冷却されたイソペンタン(isopentane)に浸漬して凍結させた後、零下70℃で保管した。4マイクロン(micron)厚の断面に切った後、10分間PBSに静置させた後、室温でPBST(0.1% Triton X-100を含むPBS)で10分ずつ3回洗浄した。組織切片を、10%ウマ血清を含むPBSTで4℃で一晩遮断培養し、ジストロフィン抗体(遮断培養緩衝液に1:100に希釈)と共に4℃で一晩培養した後、室温でPBSTで10分ずつ3回洗浄した。最後に、組織切片を4℃で一晩TRITC接合された2次抗体(遮断培養緩衝液に1:100に希釈)と共に培養し、室温でPBSTで10分ずつ3回洗浄した。染色された組織切片を、DAPIを含む封入剤(mounting medium)で覆った後、共焦点顕微鏡(confocal microscope)下で分析した。
【0300】
結果
pAdBest_dITRヘルパープラスミド及びpGLAdゲノムプラスミドの製造、並びにGLAd生産においてそれらの使用
現在、ヘルパーアデノウイルスとして最も広く用いられているのは、Ψパッケージング信号配列の両側にloxPサイトを含んでいるものである(
図1のa)。この構造的特性によって、相同組換え酵素であるCreを発現させるパッケージング細胞において、このヘルパーアデノウイルスは、アデノウイルスに対する汚染を下げながらも組換えGLAdを効率的に生産可能にする。ただし、このような精巧な生産システムにおいてすらヘルパーアデノウイルスの汚染を防ぐことは不可能である。しかも、このシステムにおいてRCAに関する綿密な分析がなされたことはないが、このシステムでは、ヘルパーアデノウイルスとパッケージング細胞との間に共通に存在するE1領域における相同組換えによってRCAが生成されることがある。このため、本発明者は、相同組換えに関与する領域を除去し、ヘルパーアデノウイルスをヘルパープラスミドに転換させると、GLAd製造においてアデノウイルス及びRCA汚染物が発生することを同時に防止できると仮定した。本発明者は、このような目標を達成するために、GLAdパッケージングに必要なウイルスタンパク質を供給しながらも、活性アデノウイルス粒子に転換されることは不可能なためRCAを生成させない、ヘルパープラスミドの製造を試みた。
【0301】
ヘルパーアデノウイルスを必要としない本発明者の組換えGLAd生産システムには、2つの独立したプラスミドが必要である。その一つは、GLAdパッケージングにおいてヘルパーの役割を担うヘルパープラスミドであり、もう一つは、GLAdゲノムとして役割を担うゲノムプラスミドである。
【0302】
本発明者は、ヘルパープラスミドとしてpAdBest_dITR(~31kb)を製造した(
図7)。このヘルパープラスミドは、重複転写単位(overlapping transcription units)及び単一プロモーターによって作られる複数の転写体(
図1のb)のような特性を考慮し、Ad5の誘導体(
図7のa)であるΨ5ゲノムを適切に加工することによって作製された。このヘルパープラスミドは、アデノウイルスパッケージング(packaging)に絶対的に必要なITRとΨパッケージング信号配列(
図1のc)を一切持っていない。このため、このヘルパープラスミドはヘルパーとしてのみ機能するだけで、活性アデノウイルス粒子への転換は不可能である。このヘルパープラスミド作製過程のうち、5’ITR及びΨパッケージング信号配列は、導入遺伝子のクローニングに用いられるシャトルプラスミドであるpBest(
図7のf)に移された。
【0303】
本発明者は、GLAdゲノムプラスミドとしてpGLAdを製造した(
図1のc)。このpGLAdは、ラムダファージ(lambda phage)に由来したスタッファーDNA(stuffer DNA、単純に長さを合わせる目的で用いられるDNA)からなっているが、ここには2個のAd5のITRのうち3’ITRだけが含まれている。スキャフォールドマトリックス付着要素(scaffold matrix attachment,SMAR)は、細胞内で導入遺伝子の発現を向上させながらGLAdゲノムを安定化する目的で追加された(全作製過程は
図8を参照)。
【0304】
一般に、pGLAdゲノムプラスミド(~27kb)のような大型プラスミドに導入遺伝子を挿入することは、時間がかかる他、成功することも難しい過程である。この過程を迅速で簡易に行うための目的で、pBest及びpGLAdプラスミドを製造しながらそれらのプラスミドに短い相同ストレッチ部位(homologous stretches)を追加した。実際に、それらの相同ストレッチ部位は、pBestからpGLAdに導入遺伝子発現カセット(cassette)を迅速に移動させることを可能にした。
【0305】
この過程に関して一例を挙げると、まず、LacZ遺伝子をpBestにクローニングした後、希少サイトを切断する制限酵素(rare-cutting enzyme)であるPmeIを用いて線形化された(
図9のa)。同時に、pGLAdも同様に、唯一の制限酵素サイトであるClaIサイトで切断されて線形化された。線形化されたそれらのpBest_LacZ及びpGLAdを混合し、二本鎖(double-stranded)DNAを一本鎖(single-stranded)DNAに転換できる核酸分解酵素(nuclease)であるエニィヒュージョン(AnyFusion)を処理すると、試験管内で線形化された相同領域が効率的にアニーリングされる(試験管内相同アニーリングに対する全過程を‘iHoA’という)(
図9のb)。試験管内でアニーリングされた相同ストレッチ部位の長さは十分な程度に安定性を提供するので、修理されていないこの状態でも細菌性細胞を形質転換させるには何ら問題がない。このような過程の結果物として作られた組換えpGLAd_LacZプラスミドは、ITR及びΨパッケージング信号配列を全て回復したし、ITRの外側の側面には、希少サイトを切断するPacI制限酵素サイト(rare-cutting PacI restriction sites)が位置している(
図9のc)。この全過程は、導入遺伝子発現カセットをpGLAdゲノムプラスミドに移動させる上で迅速で効率的である。なお、形質転換段階では、希望する正しいpGLAd_LacZプラスミドを含む細菌性細胞は、所望しない種類のプラスミドを含む細菌性細胞よりも顕著に小さいサイズのコロニーを形成するという点が観察された(
図10のa)。肉眼でも確認可能なこの特徴は、正しいクローン(clone)を見出すのに必要な選別過程を、非常に迅速に済ませるようにした(
図10のb~d)。この全過程を完了した後、作製された組換えpGLAd_LacZプラスミドの相同ストレッチ部位(homologous stretch)が連結された接合部をシーケンシングした。ヌクレオチドの配列は、相同ストレッチ部位と完壁に一致したが(
図11)、これは、iHoAが当初設計の通りに作動したことを意味する。
【0306】
pAdBest_dITRヘルパープラスミド及び組換えpGLAd_LacZゲノムプラスミドの作製を完成した後、本発明者は、この両プラスミドに基づく組換えGLAd生産システムが作動するかどうか試験した。HEK293T細胞を、pAdBest_dITRヘルパープラスミド及びPacI制限酵素処理で線形化されたpGLAd_LacZゲノムプラスミドで共同形質感染した(
図1のd及びe)。共同形質感染されたHEK293T細胞は、組換えGLAd.LacZウイルスを成功的に生産したが(
図1のe)、この結果は、組換えGLAdの生産に関連した全てのプラスミド及び工程が、当初設計の通りに完壁に作動したことを示す。
【0307】
新しいゲノムプラスミドであるpGLAd3の製造
興味深いことに、GLAdに使用されるスタッファーDNAの特性が導入遺伝子の発現に否定的な影響を及ぼすと報告されたことがある。論議の余地が完全に解消されたわけではないが、特に、ラムダファージに由来したスタッファーDNAがこのような特性を有することを示した。それにも拘わらず、本発明者がこの発明を始めた初期には、ラムダDNAをスタッファーとして使用するが、それは、プラスミド作製過程に対する設計が正しくなされたかを速かに確認し、ヘルパープラスミドベースのGLAd生産システムも、設計された通りに作動するかを優先的に確認する必要があったためである。上述したように、GLAd生産システムが設計通りに作動することがもう確実に確認されたので、本発明者は、ラムダスタッファーDNAが導入遺伝子の発現を減少させ得るとの恐れを解消する目的で、新しいスタッファーDNAを準備した。本発明者は、マウスE-カドヘリン(E-cadherin)イントロン2領域において複数個のゲノム断片をクローニングし(
図12のa)、新しいGLAdゲノムプラスミドとしてpGLAd3を製造した(
図2のa及び
図12のb)。本発明者は、さらに他のクローニングシャトルプラスミドであるpBest4(
図12のc)も製造したが、この新規のpBest4には強力なCAGプロモーター及びイントロンを追加することにより、性能をさらにアップグレードした。pBest及びpGLAdを用いる元来システムと同様に、LacZ遺伝子で試験されたpBest4及びpGLAd3ベースのこの新しいシステムも同様、細胞変性効果(cytopathic effect,CPE)(
図2のb)を示しながら組換えGLAd3.LacZウイルス(表18、
図2のb及びc)を効率的に生産したが、このような結果は、pCAG、イントロン、iHoA及びGLAdパッケージングのような要素、そしてGLAd作製に関連した全手続きが設計通りに正しく作動したことを示す。これとは極めて対照的に、pAdBest_dITRヘルパープラスミドで単独形質感染されたHEK293T細胞は、いかなるウイルス性粒子も生産できなかった(表18)。その上、本発明者の2種類-プラスミドベースの(two-plasmid-based)システムによって生産された組換えGLAdは、アデノウイルス又はRCAのような別のウイルスを一切含有していなかった(表18)。したがって、本発明者のヘルパープラスミドは、単にGLAdパッケージングのためのヘルパー機能のみを提供するだけで、活性ウイルス粒子に転換されることはない点か明らかである。さらに、このような結果は、本発明者のヘルパープラスミドはRCAを生成することがない点を意味するが(
図13)、これは、構造的特性(
図2のd)に起因する。
【0308】
GLAdの大量生産(large-scale production)
GLAd大量生産において、既に確立された最適化された標準生産方法は、一連の増幅過程を伴う(
図3のa)。GLAdは、ヘルパーアデノウイルスの存在下でのみ増幅可能なため、この標準生産方法では、増幅段階が進行する度に新しくヘルパーアデノウイルスを添加しなければならない。シードGLAd(seed GLAd)は、4~6回反復して増幅され、大量培養された細胞(~1×10
9細胞)を用いて最終的に増幅される。全増幅過程を通じて~1×10
12BFU[~1,000BFU/cell;BFUは、LacZ染色によって確認された青色形成単位(blue-forming units)を意味する。]程度は容易に生産可能である。このようにGLAdを比較的高い収率で得ることは、GLAdパッケージング及び増幅に必要なウイルスタンパク質を十分な量で供給する、自ら複製可能なヘルパーアデノウイルス(replicable helper adenovirus)を利用するためである。
【0309】
ヘルパープラスミドを用いてGLAdを大量生産しようとする試みにおいて、本発明者は、ヘルパープラスミドがGLAdパッケージング細胞内で自ら複製ができないにもかかわらず、GLAd大量生産に用いられる既存の標準増幅手続きを適用した。本発明者は、既にヘルパープラスミド及びPacI制限酵素で線形化されたGLAdゲノムプラスミドを同時に形質感染させ、シードGLAd(~2×107BFU/100mm培養皿)を生産できることを示したことがある(表18)。このシードGLAdは、ヘルパープラスミドによって容易に増幅されたし、増幅効率が最適化されていないにもかかわらず、増幅されるGLAdの量は、増幅段階に比例して増大した(データは示さない。)。
【0310】
他の研究者らが実施した以前の研究において、E1A、pTP及びIVa2のようなアデノウイルスタンパク質を個別に又は組み合わせてさらに発現させる場合に、アデノウイルス生産が増大するということが確認されたことがある。そこで、本発明者は、GLAd生産においても増幅効率を上げる目的で、それらのアデノウイルスタンパク質を個別に又は組み合わせて試験してみた。それらのうち、単に末端タンパク質前駆体(precursor terminal protein,pTP)だけが、さらに発現する場合に、最大4倍までGLAd生産量を増加させた(データは示さない。)。また、本発明者は、以前の実験に比べてより多量のヘルパープラスミド(100mm培養皿において30ugよりは45ug)を使用すると、GLAd生産においてより高い収率が得られることを確認した(P0ではそうでないが、P1及びそれ以降の増幅ではそうである;データは示さない。)。
【0311】
ヘルパーアデノウイルスを用いる既存の増幅手続きと類似に、それぞれの増幅段階において、pAdBest_dITRヘルパープラスミド及びpTP-発現プラスミドを共同にHEK293Tパッケージング細胞に形質感染させた。最適化により、本発明者はヘルパープラスミドを用いてGLAdを大量生産できる標準工程を成功的に確立した(
図3のb)。P3は、容易に5×10
10~1×10
11BFU(50~100BFU/cell)程度を生産するが、これは、自ら複製可能なヘルパーアデノウイルスを使用する既存の大量生産方法に比べて10~20倍程度しか低くない収率である(すなわち、自ら複製可能なヘルパーアデノウイルスを用いる既存の方法:ヘルパープラスミドを用いる新しい方法=1×10
11~2×10
11BFU:1×10
10BFU)。この計算によれば、P5は、1×10
11細胞から5×10
12~1×10
13BFU程度を生産すると予想される。
【0312】
GLAd生産中にアデノウイルス及びRCA汚染物の生成はない
GLAd生産においてアデノウイルス及びRCA汚染を防止することは、GLAdの臨床的適用を考慮する上で非常に重要な要素である。本発明者は、ヘルパープラスミド及びPacI制限酵素で線形化されたGLAdゲノムプラスミドを共同に形質感染させることによってGLAdを生産できるということ、及び3回にわたる独立したGLAd生産のうちいずれもアデノウイルス及び/又はRCAを含まないこと、を既に示したことがある(表18)。それにも拘わらず、本発明者は、規模面において十分に大きいことから、将来、臨床的に使用される可能性があるGLAdサンプル(P3、P4又はP5)において(
図3)アデノウイルスとRCAをより詳細に再び分析してみた。
【0313】
陽性対照群として使用されたアデノウイルス(Ad.LacZ)は、HEK293細胞において効率的に増幅された(
図4のa)。ただ1個の感染性ウイルス粒子(1 infectious viral particle,1BFU)においても、完全に2回に至らない増幅段階によって~5×10
5BFUを生成した。この強力な増幅活性により、アデノウイルスは、肉眼でも容易に観察可能な深刻なCPEを誘発した。この結果は、GLAdサンプルに1個の感染性アデノウイルス(又はRCA)汚染物粒子でも存在すれば、数回の増幅段階だけで数え切れないほど多いウイルス粒子が生成し得ることを示唆する。そこで、本発明者は、3×10
9BFUを含むP3 GLAd3.LacZ(
図3)を分析した(
図4のa)。GLAd3.LacZをHEK293細胞に感染させた後、万一このサンプル内にアデノウイルス及びRCAが存在すると、それらが十分に生成され得るように3回にわたって増幅した。この増幅条件は、1 BFUが5×10
5BFU以上を生成するのに十分であるので、3番目の増幅段階ではHEK293細胞に深刻なCPEを招くことがある。しかし、このような増幅過程でCPEは全く観察されなかった。同様に、PCRベース分析でも何らアデノウイルス種(アデノウイルス及びRCA)も検出することができなかった(
図4のb)。本発明者のかかる一連の実験結果は、P3 GLAd(少なくとも3×10
9BFUを含む)サンプルが、アデノウイルス及び/又はRCA汚染物を含んでいないということを示す。
【0314】
さらに、本発明者は、P4及びP5 GLAd3.LacZサンプル(それぞれ1×10
8BFUを含んでいる)においてもアデノウイルス及びRCA汚染が存在するかを分析した。まず、先に示したように(
図3)、P3及びP4 GLAdを用いてそれぞれP4及びP5 GLAdを準備した。ベンゾナーゼ(Benzonase)は、ヘルパープラスミドは効果的に除去するが、カプシドで保護されるアデノウイルス又はRCAは除去できないものの、まず、ベンゾナーゼで前処理されたP4又はP5 GLAd(P4サンプルはP3から1回増幅して準備し、P5サンプルはP3から2回増幅して準備する。)をHEK293細胞に感染させ、さらに増幅することにより、潜在的に存在するかもしれないアデノウイルス及びRCAが増幅され得るようにした(
図4のc)。前のP3 GLAdから既に確認したように、P4及びP5からも、PCR分析でアデノウイルス種(アデノウイルス及びRCA)を検出することはできなかった(
図4のd)。本発明者が得た結果をまとめると、ヘルパープラスミドベースのGLAd生産システムは、不所望の汚染物であるアデノウイルス及び/又はRCAを一切生成させないということが明らかである。
【0315】
効率的な試験管内(in vitro)及び生体内(in vivo)遺伝子伝達ベクターとしての新しいGLAd
上に言及した全てのものが成功的に作動したので、次に、本発明者は、組換えGLAdが試験管内(in vitro)及び生体内(in vivo)で実際に遺伝子伝達をよく行うかどうか試験してみた。そのために、本発明者は、ハンチンチン(huntingtin,9.4kb)及びジストロフィン(dystrophin,11kb)を標的導入遺伝子として選定したが、その理由は、他のウイルスベクターはこのような長い遺伝子を伝達することが非常に難しく、また、遺伝子治療法がそれらの遺伝子と関連した疾患[ハンチントン病(Huntington disease,HD)及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy,DMD)]において治療選択肢として長い間追求されてきたためである。
【0316】
ウイルス粒子内によくパッケージングされるには、GLAdゲノムサイズは、5’ITRから3’ITRまでにおいて長さが元来ゲノムサイズの75%~105%に相当する、27kb~37.8kbの範囲に属さなければならない。したがって、本発明者は、長い遺伝子をpGLAd3ゲノムプラスミドに挿入する場合、ゲノム長がウイルスパッケージングの上限に近づく問題のため、まず、pGLAd3の長さを減らすためにpGLAd3をpGLAd4に転換した(
図14)。
【0317】
優性に遺伝するハンチントン病は、ハンチンチン遺伝子(huntingtin)においてポリ-CAG(グルタミンを指定するコドン)が反復して拡張することによって発病する致命的な退行性神経疾患である。ハンチントン病患者は、このような突然変異遺伝子1コピー(copy)を有し、そのため、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はRNAiによって突然変異ハンチンチン発現が抑制される場合に、疾病状態は改善され得る。重要なのは、ハンチンチンが成人神経細胞で果たす正常な機能はまだよく知られていないが、初期胚芽発達では必須であるという点である(ハンチンチンノックアウトマウスは胚芽段階で死亡する)。また、正常機能を有する野生型(wild-type)ハンチンチンの過発現は、突然変異ハンチンチンの細胞毒性を減少させることが見られた。このような結果は、ハンチンチン遺伝子だけを単独で伝達する方よりは、RNAi及びハンチンチン遺伝子を同時に伝達する方が、ハンチントン病治療と関連した治療効果評価において、より適切な組換えGLAdになり得ることを示唆する。
【0318】
RNAiの場合、本発明者は、ハンチンチン発現抑制のために、従来のshRNAの代わりにmiRNAベースshRNA(以下、mshRs)を選択したが、これは、ハンチンチンのノックダウンにおいてmshRがshRNAよりも個体に安全なものとして立証されたためである。本発明者は、以前の別の研究から確実に作動するものと既に確認された3個の標的サイト(
図5のa)を選択し、合成mshR(
図5のb、表21)及びpGT2プラスミド(
図5のc)を用いてmshR発現体を製造した。予想したとおり、それらの各発現体をHEK293T細胞に形質感染させた結果、内因性(endogenous)ハンチンチン発現が減少した(
図5のd)。したがって、適切なプライマーセット(表22)を用いたPCRを用いて、mshR1及びmshR3を発現させることができる2個のmshR発現カセットをpGLAd4ゲノムプラスミドに挿入した。ハンチンチン遺伝子の場合には、ポリ-CAG反復が、野生型及び突然変異ハンチンチン遺伝子において唯一の差異点であるということを考慮しなければならなかった。したがって、ノックダウン接近法は、内因性野生型及び突然変異ハンチンチンタンパク質の両方の発現を同時に減少させることができる。したがって、本発明者は、内因性野生型ハンチンチンの発現が減少することによって発生し得るいずれか不所望の毒性に対する心配を緩和する目的で、内因性野生型ハンチンチンの減少量を補充するべく、mshRがその発現に影響を及ぼさないようにコドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子を利用した(
図5のe)。本発明者は、iHoAを用いて、mshR1及びmshR3発現カセットが既に挿入されているpGLAd4ゲノムプラスミドに、異なる配列方向にコドン最適化された合成遺伝子発現カセットを成功的に挿入した(
図5のf)。続いて、組換えGLAd4.coHTT.HTTmshR1/3(
図5のg)及びGLAd4.coHTT(R).HTTmshR1/3ウイルスを生産した。
【0319】
GLAd4.coHTT.HTTmshR1/3ウイルスはハンチンチンを過発現させたのに対し、GLAd4.coHTT(R).HTTmshR1/3ウイルスは内因性ハンチンチンの発現を抑制した(
図5のh)。本発明者のこのような研究結果は、組換えGLAdがmshRとコドン最適化された合成ハンチンチン遺伝子(総長は、~13kb)を同時に細胞に伝達することに成功したことを示している(
図5のi)。この組換えGLAdは、ハンチントン病治療のための遺伝子治療法として利用可能な潜在性があり、現在、臨床適用のためのさらなる研究が行われている。
【0320】
本発明者は、ハンチンチン遺伝子のような長い遺伝子を伝達する組換えGLAdの他にも、因子IX[factor IX、血友病B(hemophilia B)の治療のためのR338L Padua突然変異体遺伝子]、グルコセレブロシダーゼ[glucocerebrosidase,GCR、ゴーシェ病(Gaucher’s disease)の治療のための遺伝子]、ヘクソサミニダーゼA[hexosaminidase A,HEXA、テイザックス病(Tay-Sachs)の治療のための遺伝子]、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1[hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1,HPRT1、レッシュナイハン症候群(Lesch-Nyhan syndrome)の治療のための遺伝子]、イズロネート-2-スルファターゼ[iduronate-2-sulfatase,IDS、ハンター症候群(Hunter syndrome)の治療のための遺伝子]、メチル-CpG-結合タンパク質2[methyl-CpG-binding protein 2,MECP2、レット症候群(Rett syndrome)の治療のための遺伝子]及び運動ニューロン1生存因子[survival of motor neuron 1,SMN1、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy,SMA)の治療のための遺伝子]のような、長さの短い導入遺伝子に対する組換えGLAdも成功的に構築した。これらの各組換えGLAdは試験管内で導入遺伝子を効率的に過発現させることが確認され(データは示さない。)、現在、それらの臨床適用可能性に対する検証を行っている。
【0321】
生体内研究は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy,DMD)の標的であるジストロフィン遺伝子(dystrophin gene,~11kb)を伝達する組換えGLAdを生産して実施した。まず、ヒトジストロフィン遺伝子をpBest4にクローニングし、iHoAを用いて組換えpGLAd4_Dysプラスミドを製造した後、組換えGLAd4.Dysウイルスを生産した(
図6のa)。その後、GLAd4.DysウイルスをジストロフィンノックアウトMDXマウス(dystrophin-knockout MDX mice)の腓腹筋(focal gastrocnemius muscle)に注射した。4週後(
図6のb)、注射部位の筋肉組織を生検し、ジストロフィン発現の有無を分析した(
図6のc)。これにより、組換えGLAd4.Dysウイルスが標的組織においてジストロフィンを発現させるという事実を明らかに確認できた。疾病状態に対する改善を確認することはできなかったが(ヒトと違い、MDXマウスは疾病の徴候を示さない。)、本発明者のこのような結果は、GLAd4.Dysウイルスが少なくとも4週間は標的組織においてジストロフィン発現を維持するという点を示す。
【0322】
考察
遺伝子治療法に使用される理想的な生体内(in vivo)遺伝子伝達ベクターは、宿主ゲノムに無作為に挿入されないこと(挿入突然変異誘発に対する恐れを払拭する。)、ウイルスタンパク質発現がないこと[ガットレス(gutless)ウイルスゲノムを必要とすることにより宿主免疫反応を最小限に下げる。]、広範囲な細胞及び組織親和性(tropism)を有すること、導入遺伝子伝達において高い形質導入効率を示すこと、及び如何なる導入遺伝子も伝達可能な程度の大きい受容能力を有すること、などのような特性を有するように推奨される。現在、利用可能な多くの遺伝子伝達ベクターのうち、GLAdは、実際にこのような推奨特性を全て有する唯一のベクターであるといえる。にもかかわらず、こういう特性を全て揃えたGLAdがいままで動物における研究にのみ使用され、臨床には使用されたことがないため臨床データが存在しないという点は、非常に驚くべきことである。予想を覆すこのような結果は、既存GLAdの生産工程においてパッケージング及び以降の増幅過程ではヘルパーとして必須であるが、生産工程の最後には汚染物として残るアデノウイルスと関連した安全性問題のためだと見なされる。GLAdの臨床的使用のために克服すべき更なる障害物は、既存GLAdの生産過程中に、又はヘルパーアデノウイルスの大量生産過程中に生成されるRCA汚染である。
【0323】
広く使用される複製不能1世代(replication-incompetent first-generation)アデノウイルスは免疫原性が非常に高いため(highly immunogenic)、宿主にとって細胞毒性を誘発することがある。したがって、このウイルスは、抗癌療法のための遺伝子伝達ベクターとして広く用いられているが、このような高い免疫原性は、免疫増強剤(adjuvant)としての機能を提供するので、このウイルスベクターによって伝達された抗癌遺伝子と協力する場合には、腫瘍組織をより効果的に除去できるわけである。これと対照的に、アデノウイルスは、遺伝子治療法、特に、長時間にわたって導入遺伝子発現を要求する遺伝疾患の治療では好ましくないことがあるが、これは、アデノウイルスに対する宿主の免疫反応が患者にとって導入遺伝子発現を下げたり短期に終わらせたりすることがあり、また、毒性も誘発することがあるためである。これらの点を勘案すると、既存の方式のうち技術的に最も優れているとされるヘルパーアデノウイルスベースGLAd生産システムにおいてすら、アデノウイルス汚染に対する最上の結果が0.01%、すなわち、全体1×1010のうち1×106の粒子が汚染物アデノウイルス粒子であるという点は、極めて注目する必要がある。
【0324】
安全性問題に関しては、複製不能である1世代アデノウイルス(GLAd生産に使用されるヘルパーアデノウイルスは、一般に1世代アデノウイルスである。)に比べてRCAがより危険である。E1が消失しており、HEK293及びHEK293T細胞のようなE1発現パッケージング細胞でのみ複製可能な1世代アデノウイルスとは違い、RCAは、感染後に何ら細胞でも自律で複製できる複製可能アデノウイルスであるためである。特に、免疫が抑制された(又は、免疫が弱化した)状態にある患者に、RCAで汚染された遺伝子治療剤を用いて遺伝子治療法を実施する場合に、RCAはその自体で容易に複製可能なため、患者に致命的な毒性を招くことがある。しかも、RCAから発現したE1タンパク質は、E1欠乏による複製不能であるアデノウイルスのE1欠乏を補完することにより、この複製不能アデノウイルスの強力な複製/増幅を支援することがある。このため、米国食品医薬局(Food and Drug Administration,FDA)はRCAを厳格に統制しており、臨床に使用されるアデノウイルス生産単位(batch)ごとにRCA粒子を定量することを要求し(GLAdにも同様の規定を適用すると見なされる。)、1回投与容量において3×1010アデノウイルス粒子につき1個以下に感染性RCAが維持されるように規定している。したがって、GLAdを治療目的で使用するには、治療目的のAAV生産標準手続きである3種類のプラスミドを用いた生産システムから立証されたように、ヘルパーアデノウイルスを新しいヘルパーに替え、アデノウイルス及びRCA汚染物に対する恐れが全くない新しいGLAd生産システムを構築しなければならないという点は明らかである。
【0325】
本発明において、発明者は、GLAd生産のための新規のヘルパープラスミドを初めて報告している。本発明者のヘルパープラスミドは、ウイルスパッケージングに必須に要求されるITR及びΨパッケージング信号配列を一切に含んでいない。また、ヘルパーアデノウイルスと違い、本発明者のヘルパープラスミドは、HEK293又はHEK293TのようなGLAdパッケージング細胞で発生し得る相同組換えと関連して、アデノウイルス5型(adenovirus type 5)の相同領域[ヌクレオチド3034~5015(1482bp)、GenBank AC_000008]部分を1個のみを含んでいる。このような構造的特性は、ヘルパープラスミドが感染性を持つウイルス粒子に転換される可能性を完全に除去する他、GLAd生産過程においてRCAの生成も根本的に遮断する。実際に、本発明者は、大量生産されたGLAdではもとより、連続増幅によって生産された後段階(high-passage)GLAdでもアデノウイルスやRCA汚染物を検出することができなかった。本発明者が得たこのような結果は、本発明者が完成した新規のヘルパープラスミドベースのGLAd生産システムは、アデノウイルス及びRCA汚染無しで標的組換えGLAdのみを生産することにより、それらの汚染物ウイルスから提起される安全性問題に対する恐れを顕著に減らし得ることを明確に示しているといえる。
【0326】
たとえ本発明者のヘルパープラスミドはGLAdパッケージング細胞において自ら複製することはできないとしても、相当な量の組換えGLAd生産に要求されるGLAdパッケージング及び追加の増幅に必要な、十分のレベルのヘルパー機能を提供するには問題がなさそうである。GLAdの大量生産において、本発明者のシステムが、既存のヘルパーアデノウイルスベースのシステムに比べて効率性にやや劣ることは事実である。それにも拘わらず、本発明者は、本発明者のシステムを用いてGLAdを大量生産するに何ら困難がなかった。治療用医薬品を開発するには、一般に、生産収率よりも安全性が遥かに重要である。このような点に鑑みると、本発明者のGLAdシステムが示している生産収率に関連してのやや不利な短所は、本発明者のGLAd生産システムが持つ様々な安全性に関連しての長所によって十分に打ち消されるといえる。
【0327】
本発明者の組換えGLAdは、種々の導入遺伝子を試験管内及び生体内に効率的に伝達した。実際に、本発明者のGLAdは、ハンチンチン遺伝子(9.4kb)、ジストロフィン遺伝子(11kb)、又はハンチンチン遺伝子及び2個のmshRを含む複合発現カセット(総長、~13kb)のような長い長さの遺伝子を効率的に伝達した。多くの研究において遺伝子伝達ベクターとしてAAVを用いたジストロフィン遺伝子伝達が試みられたが、それらの研究はいずれも、AAVのパッケージング容量を超える全長ジストロフィン遺伝子ではなく、それの小さいバージョンであるミニジストロフィン又はマイクロジストロフィン遺伝子にのみフォーカスしたものであった。ハンチンチン遺伝子及び2個のmshRを含む複合発現カセットをGLAdを用いて成功的に伝達したことは、ハンチントン病治療と関連して可能性ある治療法として試みられた初めての例示であるという点でその重要性はごく大きい。これらの例は、遺伝子伝達においてGLAd固有の特性、特に、長い長さの遺伝子伝達と関連した多能性(versatility)側面をよく示している。
【0328】
生体内(in vivo)に試みられる遺伝子治療法においてウイルスベクターを使用することは、諸刃の剣のようである。ウイルスベクターは導入遺伝子を相対的にごく効率的に伝達するが、反面、宿主にとって毒性を誘発することがある。AAV及びGLAdのようなガットレスウイルスベクターは、ゲノム骨格に如何なるウイルス遺伝子も含んでいないため、ウイルスタンパク質を発現させる他のウイルスベクターよりは遥かに安全である。それにも拘わらず、高容量で深刻な急性毒性を示したAAVから確認されたように、これらのベクターのカプシドタンパク質が誘発する毒性まで防ぐことはできない。しかし、免疫原性の高いアデノウイルス種で汚染されていないGLAdを利用するか、或いはGLAdベクターによって導入遺伝子が肝で発現するように(GLAd-based liver-directed transgene)バルーン閉塞カテーテル媒介手術(balloon occlusion catheter mediated intervention)のような安全な伝達技法を活用すれば、顕著に少ない量のGLAdを投与して済むので、ウイルスのカプシドタンパク質によって触発する毒性に対する恐れを相当減少させることはできるであろう。このバルーン閉塞カテーテル媒介手術は、非常に高い安全性を示しており、7年にわたる長期間に導入遺伝子発現を成功的に達成している。このような点を考慮して、ヘルパーアデノウイルス及びRCAの汚染と関連して、GLAd生産のための新しいプラットホームを初めて確立し、生体内遺伝子伝達用ベクターとしての卓越性を明らかにしたという側面で(表19)、本発明者が収めた成果は、その価値が十分に評価されるべきものといえる。
【0329】
結論的に、本発明者の研究結果が示しているのは、本発明者が完成したヘルパープラスミドベースのシステムが、アデノウイルス及びRCA汚染物がない組換えGLAdを効率的に生産できるという点である。最近になってはじめて、遺伝子治療法は、様々な先天性遺伝疾患治療においてこれまで充足できずにいたニーズに対して解決策を提示している。伝達ベクターに遺伝子を載せて生体内に伝達することによって遺伝病を治療しようとするこの類型の遺伝子治療法において、遺伝子伝達ベクターは実に中枢的な役割を担当する。どうか、本発明者が完成したヘルパープラスミド及びGLAd生産システムが、将来のGLAdベース遺伝子治療の成功的な開発に礎石となることを期する。
【0330】
【表18】
BFU青色形成単位(blue-forming units)、N/A 該当事項無し
a LacZ染色で決定される(BFU合計数)
b アデノウイルス及び/又はRCA
c プラーク分析(plaque assay)によって決定される
d 100mm培養皿に培養されたHEK293T細胞に形質感染される
e プラーク分析のための陽性対照群
【0331】
【表19】
N/A 該当事項無し
a 相対的活性
b ただし、その頻度は低い
【0332】
【0333】
【表21】
5’及び3’部分のボールド体で表示されたヌクレオチドは、それぞれ、BamHI制限酵素及びEcoRI制限酵素サイトに対する付着末端を表す。
【0334】
【表22】
下線のヌクレオチド配列は、pGLAd3ゲノムプラスミドと相同性を有する部分である。
【産業上の利用可能性】
【0335】
本発明は、ヘルパープラスミドベースのガットレスアデノウイルス(gutless adenovirus,GLAd)生産方法及びシステムに関する。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0283
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0283】
【表16】
配列番号
35の配列目録のボールド体部分は、HindIII制限酵素サイトである。
配列番号
36の配列目録のボールド体部分は、EcoRI制限酵素サイトである。
【国際調査報告】