(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ラウンドトリップ遅延推定のための位相同期
(51)【国際特許分類】
H04L 7/033 20060101AFI20221004BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20221004BHJP
G01S 5/14 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
H04L7/033
H04W56/00
G01S5/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506671
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020041233
(87)【国際公開番号】W WO2021025820
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595020643
【氏名又は名称】クゥアルコム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【氏名又は名称】岡田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】ドロセンコ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハーディン、カール
(72)【発明者】
【氏名】バーク、ジョセフ・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ソリアガ、ジョセフ・ビナミラ
(72)【発明者】
【氏名】キング、ジャイ
【テーマコード(参考)】
5J062
5K047
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062BB05
5J062CC11
5J062DD23
5K047MM02
5K047MM11
5K047MM33
5K047MM38
5K047MM45
5K047MM46
5K047MM63
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
送信機(TX)位相ロックループ(PLL)および受信機(RX)PLLによってそれぞれ作り出されたTX波形とRX波形との間の位相変動が、たとえばラウンドトリップ時間(RTT)推定において、使用される処理遅延較正における誤差の発生源である。TX波形およびRX波形は、定常状態条件にある間に一定の位相遅延を有するが、過渡時間中に、たとえば、スタートアップまたはリセットにおいて、位相遅延は、180ほどだけ変動し得、これは、50MHzのベースバンド周波数において、10ナノ秒ほどのランダム遅延変動をもたらし、これは、RTTを使用する精細な位置推定のために望ましくない。TX波形とRX波形との間の位相遅延変動は、TX PLLおよびRX PLLの出力信号を使用して生成された位相補正信号を使用して、低減されるかまたは除去され得る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスネットワーク中のエンティティであって、前記エンティティはモバイルデバイスまたは基地局のうちの1つであり、
基準クロックから第1のクロック信号を受信し、送信機(TX)波形を生成するように構成された送信機(TX)位相ロックループ(PLL)と、
前記基準クロックから第2のクロック信号を受信し、受信機(RX)波形を生成するように構成された受信機(RX)位相ロックループ(PLL)と、
を備え、
前記送信機PLLおよび前記受信機PLLの一方または両方は、位相補正信号を受信することと、前記送信機PLLおよび前記受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、前記TX波形と前記RX波形とが同じ位相関係を有するように、前記位相補正信号に基づいて前記TX波形と前記RX波形との間の位相関係を調整することと、を行うように構成された、
エンティティ。
【請求項2】
前記基準クロックからの第3のクロック信号と、前記TX波形と、前記RX波形とを受信するように構成された位相整合推定回路をさらに備え、
前記位相整合推定回路は、前記TX波形と前記RX波形との間の前記位相関係を決定することと、前記基準クロックと前記TX波形との間の位相関係を作り出すために前記位相補正信号を生成することと、を行うように構成された、請求項1に記載のエンティティ。
【請求項3】
前記送信機PLL中の、送信機ループフィルタ、または送信機フィードバック分割器を制御する送信機ΣΔ変調器のうちの1つは、前記位相補正信号を受信し、前記TX波形における位相遅延を調整するように構成され、
前記受信機PLL中の、受信機ループフィルタ、または受信機フィードバック分割器を制御する受信機ΣΔ変調器のうちの1つは、前記位相補正信号を受信し、前記RX波形における位相遅延を調整するように構成された、請求項1に記載のエンティティ。
【請求項4】
デジタル基準サンプリングクロックから第3のクロック信号を受信するように構成された送信機デジタルアナログ変換器と、
前記デジタル基準サンプリングクロックから第4のクロック信号を受信するように構成された受信機アナログデジタル変換器と、
をさらに備え、
前記第1のクロック信号と前記第2のクロック信号との比が有理数である、請求項1に記載のエンティティ。
【請求項5】
前記送信機デジタルアナログ変換器によって受信される前記第3のクロック信号を作り出すために、前記デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をNで割る、前記デジタル基準サンプリングクロックに結合された第1の周波数分割器と、ここにおいて、Nが整数である、
前記受信機アナログデジタル変換器によって受信される前記第4のクロック信号を作り出すために、前記デジタル基準サンプリングクロックからの前記クロック信号をMで割る、前記デジタル基準サンプリングクロックに結合された第2の周波数分割器と、ここにおいて、Mが整数であり、比N/Mが有理数である、
をさらに備える、請求項4に記載のエンティティ。
【請求項6】
前記デジタルクロックは、前記位相補正信号を受信し、前記位相補正信号に基づいてデジタルクロック信号を作り出すように構成された、請求項4に記載のエンティティ。
【請求項7】
ワイヤレスネットワーク中のエンティティの較正の方法であって、前記エンティティがモバイルデバイスまたは基地局のうちの1つであり、
基準クロックからの第1のクロック信号を、送信機(TX)波形を生成する送信機(TX)位相ロックループ(PLL)に提供することと、
前記基準クロックからの第2のクロック信号を、受信機(RX)波形を生成する受信機(RX)PLLに提供することと、
前記送信機PLLおよび前記受信機PLLによって受信される位相補正信号を生成することと、
前記送信機PLLおよび前記受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、前記TX波形と前記RX波形とが同じ位相関係を有するように、前記位相補正信号に基づいて前記TX波形と前記RX波形との間の位相関係を調整することと、
を備える、方法。
【請求項8】
前記位相補正信号を生成することは、
前記基準クロックから第3のクロック信号を受信することと、
前記TX波形を受信することと、
前記RX波形を受信することと、
前記TX波形と前記RX波形との間の位相関係を決定することと、
前記TX波形と前記RX波形との間の前記位相関係に基づいて前記位相補正信号を生成することと、
を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記位相補正信号に基づいて前記TX波形と前記RX波形との間の前記位相関係を調整することは、
前記TX波形における位相遅延を変更するために、前記位相補正信号に基づいて、前記送信機PLL中の、送信機ループフィルタ、または送信機フィードバック分割器を制御する送信機ΣΔ変調器のうちの少なくとも1つを調整することと、
前記RX波形における位相遅延を変更するために、前記位相補正信号に基づいて、前記受信機PLL中の、受信機ループフィルタ、または受信機フィードバック分割器を制御する受信機ΣΔ変調器のうちの1つを調整することと、
を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
デジタル基準サンプリングクロックからの第3のクロック信号を送信機デジタルアナログ変換器に提供することと、
前記デジタル基準サンプリングクロックからの第4のクロック信号を受信機アナログデジタル変換器に提供することと、
をさらに備え、
前記第3のクロック信号と前記第4のクロック信号との比は有理数である、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をNで割ることによって、前記第3のクロック信号を生成することと、ここにおいて、Nが整数である、
前記デジタル基準サンプリングクロックからの前記クロック信号をMで割ることによって、前記第4のクロック信号を生成することと、ここにおいて、Mが整数であり、比N/Mが有理数である、
をさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記位相補正信号に基づいて、前記デジタル基準サンプリングクロックから前記クロック信号を作り出すことをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ワイヤレスネットワーク中のエンティティであって、前記エンティティがモバイルデバイスまたは基地局のうちの1つであり、
基準クロックからの第1のクロック信号を、送信機(TX)波形を生成する送信機(TX)位相ロックループ(PLL)に提供するための手段と、
前記基準クロックからの第2のクロック信号を、受信機(RX)波形を生成する受信機(RX)PLLに提供するための手段と、
前記送信機PLLおよび前記受信機PLLによって受信される位相補正信号を生成するための手段と、
前記送信機PLLおよび前記受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、前記TX波形と前記RX波形とが同じ位相関係を有するように、前記位相補正信号に基づいて前記TX波形と前記RX波形との間の位相関係を調整するための手段と、
を備える、エンティティ。
【請求項14】
前記位相補正信号を生成するための前記手段は、
前記基準クロックから第3のクロック信号を受信するための手段と、
前記TX波形を受信するための手段と、
前記RX波形を受信するための手段と、
前記TX波形と前記RX波形との間の位相関係を決定するための手段と、
前記TX波形と前記RX波形との間の前記位相関係に基づいて前記位相補正信号を生成するための手段と、
を備える、請求項13に記載のエンティティ。
【請求項15】
前記位相補正信号に基づいて前記TX波形と前記RX波形との間の前記位相関係を調整するための前記手段は、
前記TX波形における位相遅延を変更するために、前記位相補正信号に基づいて、前記送信機PLL中の、送信機ループフィルタ、または送信機フィードバック分割器を制御する送信機ΣΔ変調器のうちの少なくとも1つを調整するための手段と、
前記RX波形における位相遅延を変更するために、前記位相補正信号に基づいて、前記受信機PLL中の、受信機ループフィルタ、または受信機フィードバック分割器を制御する受信機ΣΔ変調器のうちの1つを調整するための手段と、
を備える、請求項13に記載のエンティティ。
【請求項16】
デジタル基準サンプリングクロックからの第3のクロック信号を送信機デジタルアナログ変換器に提供するための手段と、
前記デジタル基準サンプリングクロックからの第4のクロック信号を受信機アナログデジタル変換器に提供するための手段と、
をさらに備え、
前記第3のクロック信号と前記第4のクロック信号との比は有理数である、
請求項13に記載のエンティティ。
【請求項17】
前記デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をNで割ることによって、前記第3のクロック信号を生成するための手段と、ここにおいて、Nが整数である、
前記デジタル基準サンプリングクロックからの前記クロック信号をMで割ることによって、前記第4のクロック信号を生成するための手段と、ここにおいて、Mが整数であり、比N/Mが有理数である、
をさらに備える、請求項16に記載のエンティティ。
【請求項18】
前記位相補正信号に基づいて、前記デジタル基準サンプリングクロックからの前記クロック信号を作り出すための手段をさらに備える、請求項16に記載のエンティティ。
【請求項19】
その上に記憶されたプログラムコードを含む非一時的記憶媒体であって、前記プログラムコードは、ワイヤレスネットワーク中のエンティティ中の少なくとも1つのプロセッサを制御するように動作可能であり、前記エンティティはモバイルデバイスまたは基地局のうちの1つであり、
ここにおいて、第1のクロック信号が、基準クロックから、送信機(TX)波形を生成する送信機(TX)位相ロックループ(PLL)に提供され、第2のクロック信号が、前記基準クロックから、受信機(RX)波形を生成する受信機(RX)PLLに提供され、
前記送信機PLLおよび前記受信機PLLによって受信される位相補正信号を生成するためのプログラムコードと、
前記送信機PLLおよび前記受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、前記TX波形と前記RX波形とが同じ位相関係を有するように、前記位相補正信号に基づいて前記TX波形と前記RX波形との間の位相関係を調整するためのプログラムコードと、
を備える、非一時的記憶媒体。
【請求項20】
前記位相補正信号を生成するための前記プログラムコードは、
前記基準クロックから第3のクロック信号を受信するためのプログラムコードと、
前記TX波形を受信するためのプログラムコードと、
前記RX波形を受信するためのプログラムコードと、
前記TX波形と前記RX波形との間の位相関係を決定するためのプログラムコードと、
前記TX波形と前記RX波形との間の前記位相関係に基づいて前記位相補正信号を生成するためのプログラムコードと、
を備える、請求項19に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項21】
前記位相補正信号に基づいて前記TX波形と前記RX波形との間の前記位相関係を調整するための前記プログラムコードは、
前記TX波形における位相遅延を変更するために、前記位相補正信号に基づいて、前記送信機PLL中の、送信機ループフィルタ、または送信機フィードバック分割器を制御する送信機ΣΔ変調器のうちの少なくとも1つを調整するためのプログラムコードと、
前記RX波形における位相遅延を変更するために、前記位相補正信号に基づいて、前記受信機PLL中の、受信機ループフィルタ、または受信機フィードバック分割器を制御する受信機ΣΔ変調器のうちの1つを調整するためのプログラムコードと、
を備える、請求項19に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項22】
デジタル基準サンプリングクロックからの第3のクロック信号を送信機デジタルアナログ変換器に提供するためのプログラムコードと、
前記デジタル基準サンプリングクロックからの第4のクロック信号を受信機アナログデジタル変換器に提供するためのプログラムコードと、
をさらに備え、
前記第3のクロック信号と前記第4のクロック信号との比は有理数である、
請求項19に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項23】
前記デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をNで割ることによって、前記第3のクロック信号を生成するためのプログラムコードと、ここにおいて、Nが整数である、
前記デジタル基準サンプリングクロックからの前記クロック信号をMで割ることによって、前記第4のクロック信号を生成するためのプログラムコードと、ここにおいて、Mが整数であり、比N/Mが有理数である、
をさらに備える、請求項22に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項24】
前記位相補正信号に基づいて、前記デジタル基準サンプリングクロックからの前記クロック信号を作り出すためのプログラムコードをさらに備える、請求項22に記載の非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その両方が本出願の譲受人に譲渡され、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる、2019年8月8日に出願された「PHASE SYNCHRONIZATION FOR ROUND TRIP DELAY ESTIMATION」と題する米国仮出願第62/884,634号、および2019年11月13日に出願された「PHASE SYNCHRONIZATION FOR ROUND TRIP DELAY ESTIMATION」と題する米国非仮出願第16/683,162号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
ラウンドトリップ遅延推定のための位相同期に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]ワイヤレス通信システムは、第1世代アナログワイヤレス電話サービス(1G)、第2世代(2G)デジタルワイヤレス電話サービス(中間の2.5Gおよび2.75Gネットワークを含む)、第3世代(3G)高速データ、インターネット対応ワイヤレスサービスならびに第4世代(4G)サービス(たとえば、LTE(登録商標)またはWiMax(登録商標))を含む、様々な世代を通じて発展してきた。第5世代(5G)モバイル規格は、改善の中でも、より高いデータ転送速度と、より多い数の接続と、より良いカバレージとを必要とする。次世代モバイルネットワークアライアンスによる5G規格は、数万人のユーザの各々に数十メガビット毎秒のデータレートを提供し、オフィスフロア上の数十人の労働者に1ギガビット毎秒のデータレートを提供するように設計されている。
【0004】
[0003]ワイヤレス(たとえば5G)ネットワークにアクセスしているモバイルデバイスのロケーションを取得することは、たとえば、緊急呼、パーソナルナビゲーション、アセットトラッキング、友人または家族の位置を特定することなどを含む、多くの適用例にとって有用であり得る。測位方法の1つのタイプは、信号が、あるエンティティから別のエンティティ、たとえば、基地局からユーザ機器(UE)に、またはその逆に送られるためにかかる時間の長さ+リターン信号、たとえば、その信号の確認応答が受信されるためにかかる時間の長さである、ラウンドトリップ時間(RTT)である。時間遅延は、2つの通信エンドポイント間の経路のための伝搬時間を含み、これは2つの通信エンドポイント間の距離に比例する。時間遅延は、たとえば、信号を受信するための、信号を処理するための、および信号に応答するための、エンドポイント内での処理遅延をさらに含む。処理遅延は、正確な位置測定を取得するために、RTT測定値から較正される。より正確な位置推定を達成するために、処理遅延の較正を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
[0004]送信機(TX)位相ロックループ(PLL)および受信機(RX)PLLによってそれぞれ作り出されたTX波形とRX波形との間の位相遅延変動は、たとえばRTT)測定などの測位プロシージャにおいて、使用される処理遅延較正における誤差の発生源である。TX PLLとRX PLLとは、定常状態(steady state)条件にある間に一定の位相関係を有するが、過渡時間中に、たとえば、スタートアップまたはリセットにおいて、TX PLLとRX PLLとの間の位相関係は不確定であり、これは、50MHzのベースバンド波形周波数において、±10ナノ秒ほどのランダム遅延変動をもたらすことがあり、これは、RTTを使用する精細な位置推定のために望ましくない。TX波形とRX波形との間の位相遅延変動は、TX PLLおよびRX PLLの出力信号を使用して生成された位相補正信号(phase correction signal)を使用することによって、低減されるかまたは除去され得る。
【0006】
[0005]一実装形態では、ワイヤレスネットワーク中のエンティティは、エンティティがモバイルデバイスまたは基地局のうちの1つであり、基準クロックから第1のクロック信号を受信し、送信機(TX)波形を生成するように構成された送信機(TX)位相ロックループ(PLL)と、基準クロックから第2のクロック信号を受信し、受信機(RX)波形を生成するように構成された受信機(RX)位相ロックループ(PLL)とを含み、ここにおいて、送信機PLLおよび受信機PLLの一方または両方は、位相補正信号を受信することと、送信機PLLおよび受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、TX波形とRX波形とが同じ位相関係を有するように、位相補正信号に基づいてTX波形とRX波形との間の位相関係を調整することとを行うように構成される。
【0007】
[0006]一実装形態では、ワイヤレスネットワーク中のエンティティの較正の方法は、エンティティがモバイルデバイスまたは基地局のうちの1つであり、基準クロックからの第1のクロック信号を、送信機(TX)波形を生成する送信機(TX)位相ロックループ(PLL)に提供することと、基準クロックからの第2のクロック信号を、受信機(RX)波形を生成する受信機(RX)PLLに提供することと、送信機PLLおよび受信機PLLによって受信される位相補正信号を生成することと、送信機PLLおよび受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、TX波形とRX波形信号とが同じ位相関係を有するように、位相補正信号に基づいてTX波形とRX波形との間の位相関係を調整することとを含む。
【0008】
[0007]本明細書で開示される態様に関連する他の目的および利点は、添付の図面および発明を実施するための形態に基づいて当業者に明らかになるであろう。
【0009】
[0008]添付の図面は、本開示の様々な態様の説明を助けるために提示され、態様の限定ではなく、単に態様の例示のために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0009]ユーザ機器と基地局との間のラウンドトリップ時間(RTT)を決定するための簡略化された環境と例示的な技法とを示す図。
【
図2】[0010]第1のエンティティによって始動され、第2のエンティティによって受信される、ワイヤレスプローブ要求および応答中に生じるRTT測定内の例示的なタイミングを示す図。
【
図3】[0011]受信機(RX)位相ロックループ(PLL)および送信機(TX)PLLが定常状態条件を達成した後に、RX PLLおよびTX PLLによって作り出されたRXベースバンド信号およびTXベースバンド信号を示すタイミング図。
【
図4】[0012]RXアナログデジタル変換器(ADC)とTXデジタルアナログ変換器(DAC)との間の同期の欠如により生じ得る、サイクルスリップ誤差を示すグラフ。
【
図5】[0013]位相補正信号を受信するPLLを示す図。
【
図6】[0014]RX PLLとTX PLLと基準クロックとからの出力信号に基づく位相補正信号の生成を示す図。
【
図7】[0015]位相補正信号を使用するRX PLLおよびTX PLLにおける位相遅延補正を示すブロック図。
【
図8】[0016]デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号を使用するTX DACとRX ADCとの間の同期を示すブロック図。
【
図9】[0017]TX DACおよびRX ADCによって受信されるデジタルクロック信号とサンプルクロック信号とを示すタイミング図。
【
図10】[0018]位相補正信号を使用して制御されるデジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号を使用する、TX DACとRX ADCとの間の同期を示すブロック図。
【
図11】[0019]ワイヤレスネットワーク中のエンティティの較正の例示的な方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0020]ユーザ機器(UE)のラウンドトリップ時間(RTT)測位は、UEと基地局との間の推定距離を決定するために、二方向到着時間測定値(two-way time-of-arrival measurements)を使用する。これらの測定値は、たとえば、信号を受信するための、信号を処理するための、および信号に応答するための、エンドポイント内での処理遅延を含む。位置の正確な推定のために、処理遅延は、較正され、RTT測定値から削除される。処理遅延の較正のための技法、特に、UEまたは基地局内のハードウェアに起因する遅延のための技法が開示される。
【0012】
[0021]本開示の特定の態様を対象とする以下の説明および関連する図面において、これらの技法および他の態様が開示される。本開示の範囲から逸脱することなく、代替態様が考案され得る。さらに、本開示の関連する詳細を不明瞭にしないように、本開示のよく知られている要素については詳細に説明しないか、または省略する。
【0013】
[0022]「例示的」および/または「例」という単語は、本明細書では「例、事例、または例示の働きをすること」を意味するために使用する。本明細書で「例示的」および/または「例」として説明されるいかなる態様も、必ずしも他の態様よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきであるとは限らない。同様に、「本開示の態様」という用語は、本開示のすべての態様が、説明される特徴、利点または動作モードを含むことを必要としない。
【0014】
[0023]本明細書ではUEとも呼ばれる、モバイルデバイスは、モバイルであり得るかまたは(たとえば、いくつかの時間において)固定であり得、無線アクセスネットワーク(RAN)と通信し得る。本明細書で使用される「UE」という用語は、「アクセス端末」または「AT」、「クライアントデバイス」、「ワイヤレスデバイス」、「加入者デバイス」、「加入者端末」、「加入者局」、「ユーザ端末」またはUT、「モバイル端末」、「移動局」、あるいはそれらの変形形態として互換的に呼ばれることがある。概して、UEは、RANを介してコアネットワークと通信することができ、コアネットワークを通して、UEは、インターネットなどの外部ネットワークおよび他のUEと接続され得る。もちろん、ワイヤードアクセスネットワーク、(たとえば、IEEE802.11などに基づく)WiFi(登録商標)ネットワークなどを介してなど、コアネットワークおよび/またはインターネットに接続する他の機構もUEのために可能である。UEは、限定はしないが、プリント回路(PC)カード、コンパクトフラッシュ(登録商標)デバイス、外部または内部モデム、ワイヤレスまたはワイヤラインフォン、スマートフォン、タブレット、トラッキングデバイス、アセットタグなどを含む、いくつかのタイプのデバイスのいずれかによって実施され得る。UEがそれを通してRANに信号を送ることができる通信リンクはアップリンクチャネル(たとえば、逆方向トラフィックチャネル、逆方向制御チャネル、アクセスチャネルなど)と呼ばれる。RANがそれを通してUEに信号を送ることができる通信リンクはダウンリンクまたは順方向リンクチャネル(たとえば、ページングチャネル、制御チャネル、ブロードキャストチャネル、順方向トラフィックチャネルなど)と呼ばれる。本明細書で使用されるトラフィックチャネル(TCH)という用語は、アップリンク/逆方向トラフィックチャネルまたはダウンリンク/順方向トラフィックチャネルのいずれかを指すことがある。
【0015】
[0024]
図1は、UE102と基地局110との間のラウンドトリップ時間(RTT)を決定するための簡略化された環境100と例示的な技法とを示す。UE102は、無線周波数(RF)信号と、RF信号の変調および情報パケットの交換のための規格化されたプロトコルとを使用して基地局110とワイヤレス通信し得る。交換された信号から様々なタイプの情報を抽出することと、ネットワークのレイアウト(すなわち、追加の基地局(図示せず)を含むネットワークジオメトリ)を利用することとによって、UE102の位置は、あらかじめ定義された基準座標系において決定され得る。たとえば、UE102と基地局110との間の決定されたRTTは、2つの通信エンドポイント間の距離に比例する。基地局110の既知の位置を使用して、UE102の位置は、基地局110を中心とする円(または球体)上にあると決定され得る。既知の位置を有する複数の基地局と同様の測定値を用いて、UE102の位置は、円(または球体)の交点に基づいて決定され得る。
【0016】
[0025]図示のように、UE102と基地局110との間のRTTを決定する段階1において、基地局110は、RTT測定信号(または、メッセージ)122をUE102に送信し得る。段階2において、UE102中のプロセッサ103が、RTT測定信号122を受信し、信号を処理して、応答メッセージが返されるべきであると決定する。段階3において、UE102は、RTT応答信号(またはメッセージ)124を基地局110に送信する。RTT測定信号122を送信することとRTT応答信号124を受信することとの間の総時間が、測定されたラウンドトリップ時間、すなわち、RTT測定値である。段階4において、ロケーションサーバ112は、基地局110からRTT測定信号122を送信することとRTT応答信号124を受信することとの間の時間に基づくRTT測定値を受信し得、UE102と基地局110との間の推定距離を決定するためにRTT測定値を使用し得る。ロケーションサーバ112は、いくつかの基地局からのUE102についての同様のRTT測定値を使用して、次いで、三辺測量(trilateration)など、知られている幾何学的技法を使用してUEの推定位置を決定し得る。
【0017】
[0026]UE102は、デバイス、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、モバイル端末、端末、移動局(MS)、セキュアユーザプレーンロケーション(SUPL:Secure User Plane Location)対応端末(SET:SUPL Enabled Terminal)を備え、および/またはそのように呼ばれるか、あるいは、何らかの他の名前で呼ばれることがある。その上、UE102は、セルフォン、スマートフォン、ラップトップ、タブレット、PDA、トラッキングデバイス、ナビゲーションデバイス、モノのインターネット(IoT)デバイス、あるいは何らかの他のポータブルデバイスまたは可動デバイスに対応し得る。一般に、必ずしもそうとは限らないが、UE102は、モバイル通信用グローバルシステム(GSM(登録商標))、符号分割多元接続(CDMA)、広帯域CDMA(WCDMA(登録商標))、LTE、高速パケットデータ(HRPD)、(Wi-Fi(登録商標)とも呼ばれる)IEEE802.11 WiFi、Bluetooth(登録商標)(BT)、ワールドワイドインターオペラビリティフォーマイクロウェーブアクセス(WiMAX(登録商標))、5G新無線(NR)を使用してなど、1つまたは複数の無線アクセス技術(RAT)を使用してワイヤレス通信をサポートし得る。UE102はまた、たとえばデジタル加入者回線(DSL)またはパケットケーブルを使用して他のネットワーク(たとえばインターネット)に接続し得るワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)を使用して、ワイヤレス通信をサポートし得る。これらのRATのうちの1つまたは複数の使用は、UE102が外部クライアントと通信することを可能にし、および/または外部クライアントがUE102に関するロケーション情報を受信することを可能にし得る。
【0018】
[0027]UE102のロケーションの推定値は、ロケーション、ロケーション推定値、ロケーションフィックス、フィックス、位置、位置推定値または位置フィックスと呼ばれることがあり、地理的なものであり、したがって、高度成分(たとえば、海抜高、地表高または地表深度、フロアレベルまたは地階レベル)を含むことも含まないこともあるUE102のロケーション座標(たとえば、緯度および経度)を提供し得る。代替的に、UE102のロケーションは、都市ロケーションとして(たとえば、郵便住所として、あるいは、特定の部屋またはフロアなど、建築物中の何らかの地点または小さいエリアの指定として)表され得る。UE102のロケーションはまた、ある確率または信頼性レベル(たとえば、67%、95%など)でUE102がそれの内部に位置することが予想される(地理的にまたは都市形態でのいずれかで定義される)エリアまたはボリュームとして表され得る。UE102のロケーションは、さらに、たとえば、地理的に、都市に関して、あるいは、マップ、フロアプランまたは建築物プラン上に示されたポイント、エリア、またはボリュームを参照することによって定義され得る既知のロケーションにある何らかの原点に対して定義された、距離および方向または相対X、Y(およびZ)座標を備える、相対ロケーションであり得る。本明細書に含まれている説明では、ロケーションという用語の使用は、別段に規定されていない限り、これらの変形態のいずれかを備え得る。UEのロケーションを算出するとき、局所的なx、y、および場合によってはz座標の値を求め、次いで、必要な場合、局所的な座標を(たとえば、緯度、経度、および平均海面の上または下の高度に対する)絶対的な座標に変換することが一般的である。
【0019】
[0028]基地局110は、次世代(NG)無線アクセスネットワーク(RAN)(NG-RAN)と第5世代(5G)コアネットワーク(5GC)とを備える5Gネットワークの一部であり得る。5Gネットワークは、新無線(NR)ネットワークと呼ばれることもあり、NG-RANは、5G RANまたはNR RANと呼ばれることがあり、5GCは、NGコアネットワーク(NGC)と呼ばれることがある。NG-RANおよび5GCの規格化は、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))において進行中である。基地局110は、NRノードBと呼ばれることがあり、gNBとも呼ばれる。基地局110は、3G、ロングタームエボリューション(LTE)など、他のタイプのネットワークの一部であり得、ノードB、発展型ノードB、eノードBなどと呼ばれることがある。
【0020】
[0029]RTT測定プロセス中に、RTT測定のための信号を受信および送信するためにUE102内の様々なハードウェア要素が必要である。たとえば、UE102は、受信機(RX)位相ロックループ(PLL)104および送信機(TX)PLL105、受信機(RX)アナログデジタル変換器(ADC)106および送信機(TX)デジタルアナログ変換器(DAC)107を含む。UE102は、1つまたは複数の基準クロック108、ならびに、RTT測定中にハードウェア遅延の適切な較正を保証するために使用され得る説明される他の必要なハードウェア要素をさらに含む。基地局110は、RTT測定のための信号を受信および送信するために同じまたは同様の構成要素を含み得る。
【0021】
[0030]
図1が、RTT測定のための1つの一般的な例示的なプロセスを提供するが、当技術分野でよく知られている他の同様のプロセスを使用して、RTT測定値が作り出され得ることを理解されたい。たとえば、基地局110自体が、RTT測定を使用してUE102までの推定距離を決定し得、RTT測定とは対照的に、ロケーションサーバ112までの推定距離を提供し得る。さらに、UE102は、基地局110とは対照的に、RTT測定を決定し得、たとえば、UE102は、段階1においてRTT測定信号122を送信し、段階3において基地局110からRTT応答信号124を受信するであろう。UE102は、RTT測定を使用してUE102と基地局110との間の推定距離を決定し得、UE102の推定位置を決定し得る。代替的に、UE102は、ロケーションサーバ112と通信し得、ロケーションサーバは、UE102の推定距離および/または推定位置を決定し得る。
【0022】
[0031]UE102と基地局110との間の距離を決定することは、それら2つの間の無線周波数(RF)信号の時間情報を活用することを伴う。段階3において遅延がない、すなわち、段階1においてRTT測定信号122を受信することと、RTT応答信号124を送信することとの間に遅延がないと仮定すると、信号を送ることと確認応答を受信することとの間の総時間は、信号の移動の時間に関係し、信号が見通し線(LOS:line of sight)であると仮定すると、信号速度、すなわち、光速で乗算することによって、エンティティ間の距離に容易に変換され得る。しかしながら、実際には、処理遅延は、UE102と基地局110の両方に存在し、これはRTT測定に影響を及ぼす。較正を通して、処理遅延は、UEの位置をより正確に推定するために、決定され、RTT測定から削除され得る。
【0023】
[0032]
図2は、第1のエンティティ202によって始動され、第2のエンティティ204によって受信される、ワイヤレスプローブ要求および応答中に生じる、RTT測定内の例示的なタイミングを示す図である。例として、第1のエンティティ202は、基地局110など、基地局であり得、第2のエンティティ204は、UE102など、UEであり得るが、所望される場合、第1のエンティティ202はUEであり得、第2のエンティティ204は基地局であり得る。一態様では、RTT応答は、確認応答パケット(ACK)の形態をとり得るが、任意のタイプの応答パケットが使用され得る。
【0024】
[0033]図示のように、第2のエンティティ204に関するRTTを測定するために、第1のエンティティ202は、第2のエンティティ204に有向プローブ要求(directed probe request)、たとえば、ダウンリンクRTT基準信号を送り、第1のエンティティ202タイムライン上に示されているようにプローブ要求パケットが送られた時間(タイムスタンプ)(tTX Packet)を記録し得る。第1のエンティティ202から第2のエンティティ204までの伝搬時間tpの後に、第2のエンティティ204は、パケットを受信することになる。第2のエンティティ204は、次いで、有向プローブ要求を処理し得、第2のエンティティ204タイムライン上に示されているように、いくらかの処理時間、たとえば、処理遅延の後に、第1のエンティティ202に確認応答(ACK)、たとえば、アップリンクRTT基準信号を返送し得る。第2の伝搬時間tpの後に、第1のエンティティ202は、第1のエンティティ202タイムライン上に示されているように、ACKパケットが受信された時間(タイムスタンプ)(tRX ACK)を記録し得る。ACKパケットを受信することとACKパケットにタイムスタンプを付けることとの間に、第1のエンティティ202においていくらかの処理遅延もあり得ることを理解されたい。第1のエンティティ202、あるいは第2のエンティティ204またはロケーションサーバなどの他のエンティティは、総RTTを時間差tRXACK-tTXPacketとして決定し得る。純RTT、すなわち、二方向伝搬時間(2*tp)は、総RTTと処理遅延との間の差に基づいて決定され得る。したがって、処理遅延を較正することは、重要である。
【0025】
[0034]
図2に示されているように、処理遅延は、第2のエンティティ204内のハードウェア(HW)によって引き起こされる遅延を含む。その上、矢印206によって示されているように、ハードウェアによって引き起こされる遅延量は、可変であり得る。第1のエンティティ202は、同様に、ハードウェアによって引き起こされる処理遅延を受ける。現在、ラウンドトリップ時間に基づく位置推定は、ハードウェア遅延の変動が無視できると見なされるほど十分に粗い。しかしながら、たとえば、FR2、FR4などのmmWaveキャリア周波数における広帯域波形に基づく5Gモバイル規格下で考えられているように、より正確な位置推定が所望される場合、たとえば、第2のエンティティ204と第1のエンティティ202の両方における、ハードウェア遅延の変動は、もはや無視できず、適切に較正または制御されなければならない。たとえば、5G Rel17 3GPP規格下で現在考えられている位置推定要件は、1ナノ秒以下の電気的遅延を推定するハードウェア較正プロシージャにつながる。
【0026】
[0035]ハードウェア遅延の変動の1つの原因は、UE102による信号の受信および送信のタイミングを制御する、
図1に示されているRX PLL104とTX PLL105と(または、基地局110における信号の受信および送信のタイミングを制御する同様の構成要素)の間の同期の欠如によるものである。
【0027】
[0036]
図3は、例として、RX PLL104およびTX PLL105によってそれぞれ作り出されたRXベースバンド信号とTXベースバンド信号とを示すタイミング図である。RXベースバンド信号とTXベースバンド信号とは、同じ周波数を有するものとして示されているが、それらが、異なる周波数を有し得ることを理解されたい。RX PLLおよびTX PLLが定常状態条件にあると、RXベースバンド波形およびTXベースバンド波形は固定の位相関係を有する。たとえば、RXベースバンド信号、すなわち、RX波形、およびTXベースバンド信号、すなわち、TX波形は、以下のように説明され得る。
【0028】
【0029】
[0037]RX信号とTX信号との間の位相差δΦは、差φRX-φTXである。この位相差δΦは、受信クロックと送信クロックとが不整合になる(misaligned)ことを引き起こし、したがって、RTT測定プロセス中のUE102におけるおよび基地局110におけるハードウェア遅延の1つの発生源である。
【0030】
[0038]TX波形とRX波形との間の位相差δΦは、RX PLLおよびTX PLLが定常状態条件にあるままである限り、一定のままであることになる。しかしながら、RX PLL、TX PLL、またはその両方の過渡時間(transient time)中に、位相差δΦは、一定のままでなく、次の過渡時間が生じるまでTX波形とRX波形との間の得られた位相差δΦをロックするPLLの定常状態条件が生じるまで、±180°ほどだけ変化し得る。50MHzのベースバンド周波数において、そのような不確実性は、±10ナノ秒ほどだけランダム遅延変動をもたらすことがある。RX PLLとTX PLLのうちの1つまたは複数が、たとえば、スタートアップまたはリセットにおける、過渡時間を経るときはいつでも、ベースバンド波形間の位相差δΦが変化することになる。したがって、TX波形とRX波形との間の位相差δΦによって引き起こされるハードウェア遅延は、可変であり、処理遅延較正における誤差の発生源である。
【0031】
[0039]したがって、RTT測定における処理遅延を正確に決定し、削除するために、RX PLLおよびTX PLLの位相較正が、RX波形とTX波形との間の可変位相差δΦに対処するために望ましい。
【0032】
[0040]RTT測定中のハードウェア遅延の別の発生源は、
図1に示されている、RX ADC106とTX DAC107との間の同期の欠如によるものである。RX ADC106とTX DAC107との間の同期の欠如は、サイクルスリップ誤差を生じる。RTT測定における処理遅延を正確に決定し、削除するために、RX ADC106とTX DAC107と(または、基地局110中の同様の構成要素)の間の同期の欠如に対処することが、望ましい。
【0033】
[0041]
図4は、例として、
図1に示されているRX ADC106とTX DAC107との間の同期の欠如により生じ得るサイクルスリップ誤差を示すグラフである。RX ADC106とTX DAC107との間のサイクルスリップは、これらのシステムが不合理なサンプリングクロック比において非同期的に動作することによるものである。たとえば、RX ADC106のN個のクロックサイクルごとに、TX DAC107のM個のクロックサイクルがあり得る。周波数ドリフトおよび不合理なクロック比により、時々、RX ADC106のN個のサイクルごとにTX DAC107のM+1個のサイクルまたはM-1個のサイクルがあることになり、その結果、ロケーション測位誤差を作り出すことになるサイクルスリップ誤差を生じる。
【0034】
[0042]
図5は、
図1中のUE102に示されているRX PLL104またはTX PLL105であり得、あるいは
図1中の基地局110における同様のRX PLLまたはTX PLLであり得る、PLL500を示す図である。PLL500は、デジタル制御水晶発振器(DCXO)であり得る基準クロック(REFCLK)502からクロック信号を受信する。クロック信号は、基準分割器504によって割られる。PLL500は、時間デジタル変換器(TDC)であり得る位相周波数検出器(PFD)506を含む。また、PFD506は、フィードバック分割器(feedback divider)516からフィードバック信号を受信し、基準クロックとフィードバック信号との間の時間間隔、たとえば、誤差を表す出力信号を提供する。ローパスフィルタとして動作し得るデジタルループフィルタ508が、PFD506から出力信号を受信する。デジタルループフィルタ508の出力は、デジタル制御発振器(DCO)モデル510回路によって受信され、DCOモデル510回路は、デジタルアナログ変換器(DAC)512と出力信号VCOを作り出す電圧制御発振器(VCO)514とを含むものとして示されている。DCOモデル510からの出力信号VCOはまた、フィードバック分割器516によって割られ、フィードバックループ中のPFD506に提供される。フィードバック分割器516は、周波数制御ワード(FCW)に応答してΣΔ変調器518によって制御され得る。
【0035】
[0043]デジタルおよび分数PLLが、所望の出力周波数を選択するために、たとえば、基準分割器504およびフィードバック分割器516において、様々な分割率(divider ratio)を使用する。分割率は、プログラム可能であり、精細な周波数分解能を提供するために、ΣΔ変調器518など、ΣΔ変調器によって駆動される。しかしながら、PLLのためにすべてのチャネル中心周波数およびループフィルタ帯域幅についての位相遅延を較正することは、実際的でない。したがって、シングルポイント較正が望ましい。一定であり、たとえば、スタートアップまたはリセットにおける、過渡時間の後にさえ変動しない位相差δΦを達成するために、複数のPLL間の位相同期が使用され得る。
【0036】
[0044]PLL500など、デジタルPLL内の多くの信号遅延は、パワーアップ状態中など、過渡時間中に、予測可能であり、不確実性または変動の対象でない。たとえば、PFD506は、受信された基準クロックに常に整合された位相で、信号を出力する。デジタルループフィルタ508からのフィルタ遅延は、固定であり、予測可能である。フィードバック分割器516によって作り出された位相遅延は、分割率とともに変動し、これは知られている。しかしながら、DCOモデル510からの位相遅延は、DAC512の初期状態とともに変動し、したがって、PLLの信号遅延における不確実性の発生源である。
【0037】
[0045]
図5に示されているように、位相補正信号が、デジタルループフィルタ508および/またはΣΔ変調器518に提供され得る。位相補正信号は、PLL500によって作り出された出力VCOの位相が、別のPLLによって作り出された出力VCOに対して一定であることを保証するために使用され得る。位相補正信号は、必要に応じて遅延を導入するためにデジタルループフィルタ508の応答を変更する。遅延は、たとえば、デジタルループフィルタの係数を再計算することによって、または追加の時間遅延をオン/オフに切り替えることによって導入され得る。位相補正信号が、ΣΔ変調器518に提供された場合、位相補正信号は、ΣΔ変調器518が、必要に応じて遅延を導入するためにフィードバック分割器516を調整することを引き起こし得る。
【0038】
[0046]
図6は、UE102中のまたは基地局110中のRX PLLおよびTX PLLに提供されるべき位相補正信号を生成する位相整合推定回路(phase match estimation circuit)600を示す図である。位相整合推定回路600は、基準クロックの2つのサンプリングされたバージョン間の位相遅延/時間遅延を決定し、たとえば、基準クロックは、RX PLLとTX PLLとによって同時にサンプリングされ、シングルポイント離散フーリエ変換(DFT)が計算される。
【0039】
[0047]図示のように、第1のアームでは、第1の差動ADCドライバ602が、基準クロック信号ならびにRX PLLからの出力信号VCOからの周波数サンプリング(Fs)を受信する。回転子回路(rotator circuit)604が、差動ADCドライバ602からの出力信号を回転させ、これは、次いで、平均化回路606を用いて平均化される。得られた信号は、入力Aとして位相推定回路620に提供される。位相整合推定回路600は、サンプリングされた基準クロックのDFTを計算するために、高速フーリエ変換(FFT)を使用し得る。重要なFFTビンが、基準クロック周波数に位置する。回転子回路604を用いてデータを回転させることによって、当該のビンは、DCまで移動される。平均化回路606は、周波数領域中のサンプリングされた基準クロックの振幅と位相との窓掛けされた平均(windowed average)を計算する。位相情報は、位相推定回路620中のADC(図示せず)のためにサンプリングクロックの位相遅延をキャプチャする。同様に、第2のアームでは、第2の差動ADCドライバ612が、基準クロック信号ならびにTX PLLからの出力信号VCOからの周波数サンプリング(Fs)を受信する。回転子回路614が、差動ADCドライバ612からの出力信号を回転させ、これは、次いで、平均化回路616を用いて平均化される。得られた信号は、入力Bとして位相推定回路620に提供される。位相推定回路620は、入力Aと入力Bとを受信し、2つの入力、AとBとの間の位相差を計算するために複素数除算(complex number division)を実施する。次いで、位相差情報は、2つのPLLに送られるべき位相補正信号を計算するために使用される。位相補正信号は、たとえば、PLLのデジタルループフィルタ508に適用される必要がある群遅延、または、たとえば、ΣΔ変調器518およびフィードバック分割器516における、デジタル分割器に適用されることを必要とされる時間遅延を計算することによって、位相差から導出され得る。
【0040】
[0048]
図7は、UE102など、UE、または基地局110など、基地局中にあり得る、RX PLL702およびTX PLL704における位相遅延補正を示すブロック図を示す。図示のように、基準クロック706が、基準クロック信号を、RX PLL702およびTX PLL704、ならびに位相整合推定回路708に提供する。RX PLL702およびTX PLL704は、
図5に示されているPLL500と同様であり得る。RX PLL702およびTX PLL704の一方または両方が、位相整合推定回路708から位相補正信号を受信し、送信機PLLおよび受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、TX波形(TX VCO)とRX波形(RX VCO)とが同じ位相関係を有するように、位相補正信号に基づいてTX波形とRX波形との間の位相関係を調整し得る。
図7は、RX PLL702とTX PLL704の両方が、位相補正信号を受信し、それぞれ、RX VCO信号とTX VCO信号とを作り出すことを示す。位相整合推定回路708は、
図6に示されている位相整合推定回路600と同様であり得、基準クロック信号を受信することに加えて、本明細書で説明されるように、RX VCO信号とTX VCO信号とを受信し、位相補正信号を作り出し得る。
【0041】
[0049]位相整合推定回路708を使用して、RX PLL702およびTX PLL704によって作り出されたRX VCO信号およびTX VCO信号は、一定であり、たとえば、RX PLL702およびTX PLL704の一方または両方のスタートアップまたはリセットにおける、過渡時間の後にさえ変動しない、TX波形とRX波形との間の位相差δΦを有することを保証する。
【0042】
[0050]
図8は、UE102など、UE、または基地局110など、基地局中にあり得る、TX DAC802とRX ADC804との間の同期を示すブロック図である。従来、TX DACおよびRX ADCは、パワーダウン節約、たとえば、TXとRXの両方が待機中にオンであることが不要であることがある、TXがスパー(spurs)を回避するための可変サンプリングクロックの使用、TX DACクロックとRX ADCクロックとの間の異なる位相雑音要件などを含む、様々な理由で別個のクロックを使用する。しかしながら、
図8に示されているように、TX DAC802とRX ADC804とは両方とも、同じデジタル基準クロック806を使用する。TX DAC802は、サンプルクロックをNで割る分割器808をクロック信号が通過した後にクロック信号を受信し、RX ADC804は、サンプルクロックをMで割る第2の分割器810をクロック信号が通過した後にクロック信号を受信する。TXとRXのサンプリングクロック比(N/M)は、有理数である。サンプリングクロック比が有理数(N/M)である、TX DAC802とRX ADC804の両方について同じクロック806を使用することは、TX DAC802とRX ADC804のクロック同期が、
図4に示されているものなど、サイクルスリップ誤差を防ぐことを可能にする。
【0043】
[0051]
図9は、例として、デジタクロック信号CLK、ならびに、クロック信号が分割器808によってN、ここでN=2である、で割られた後に、TX DAC802によって受信されたサンプルクロック信号TX CLKと、クロック信号が分割器808によってM、ここでM=3である、で割られた後に、RX ADC804によって受信されたサンプルクロック信号RX CLKとを示すタイミング図を示している。わかり得るように、有理数であるサンプリングクロック比(N/M=2/3)の場合、TX DAC802についての2つのTX CLKサイクルごとに、RX ADC804についての厳密に3つのRX CLKサイクルがあり、それにより、サイクルスリップ誤差を回避する。
【0044】
[0052]
図10は、TX DAC802とRX ADC804との間のクロック同期の別の実装形態を示すブロック図である。
図10に示されているシステムは、指定された要素が同じであるように、
図8に示されているシステムと同様である。しかしながら、
図10に示されているように、デジタルクロック1006は、たとえば、
図6および
図7に示されているものなど、位相整合推定回路から位相補正信号を受信し得る。位相補正信号は、TX DAC802およびRX ADC804がTX PLL704およびRX PLL702によって作り出されたTX VCO信号およびRX VCO信号と整合されたクロック信号を受信するようにデジタルクロック1006を制御し、それにより、可変ハードウェア遅延の別の考えられる発生源をなくし得る。
【0045】
[0053]
図11は、ワイヤレスネットワーク中のエンティティの較正の例示的な方法1100を示し、エンティティは、UE102など、モバイルデバイス、または基地局110など、基地局のうちの1つである。ブロック1102において示されているように、第1のクロック信号が、基準クロックから、送信機(TX)波形を生成するTX位相ロックループ(PLL)、たとえば、TX PLL704に提供される。ブロック1104において、第2のクロック信号が、基準クロックから、受信機(RX)波形を生成するRX PLL、たとえば、RX PLL702に提供される。ブロック1106において、送信機PLLおよび受信機PLLによって受信される位相補正信号が生成される。ブロック1108において、送信機PLLおよび受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、TX波形とRX波形とが同じ位相関係を有するように、位相補正信号に基づいてTX波形とRX波形との間の位相関係が調整される。
【0046】
[0054]いくつかの実装形態では、位相補正信号は、基準クロックから第3のクロック信号を受信することと、TX波形を受信することと、RX波形を受信することと、TX波形とRX波形との間の位相関係を決定することと、TX波形とRX波形との間の位相関係に基づいて位相補正信号を生成することとによって生成され得る。
【0047】
[0055]いくつかの実装形態では、TX波形とRX波形との間の位相関係は、TX波形における位相遅延を変更するために位相補正信号に基づいて、送信機PLL中の、送信機ループフィルタ、または送信機フィードバック分割器を制御する送信機ΣΔ変調器のうちの少なくとも1つを調整することと、RX波形における位相遅延を変更するために位相補正信号に基づいて、受信機PLL中の、受信機ループフィルタ、または受信機フィードバック分割器を制御する受信機ΣΔ変調器のうちの1つを調整することとによって、位相補正信号に基づいて調整される。
【0048】
[0056]いくつかの実装形態では、方法は、デジタル基準サンプリングクロックからの第3のクロック信号を送信機デジタルアナログ変換器に提供することと、デジタル基準サンプリングクロックからの第4のクロック信号を受信機アナログデジタル変換器に提供することとをさらに含み得、ここにおいて、第3のクロック信号と第4のクロック信号との比が有理数である。たとえば、方法は、デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をNで割ることによって第3のクロック信号を生成することと、ここにおいて、Nが整数である、デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をMで割ることによって第4のクロック信号を生成することと、ここにおいて、Mが整数であり、ここにおいて、比N/Mが有理数である、をさらに含み得る。さらに、クロック信号は、位相補正信号に基づいてデジタル基準サンプリングクロックから作り出され得る。
【0049】
[0057]本明細書で説明される方法は、適用例に応じて様々な手段によって実装され得る。たとえば、これらの方法は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組合せで実装され得る。ハードウェア実装の場合、1つまたは複数のプロセッサは、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明される機能を実施するように設計された他の電子ユニット、またはそれらの組合せの内部に実装され得る。
【0050】
[0058]ファームウェアおよび/またはソフトウェアを伴う実装形態の場合、方法は、本明細書で説明される別個の機能を実施するモジュール(たとえば、プロシージャ、関数など)を用いて実装され得る。命令を有形に実施するいかなる機械可読媒体も、本明細書で説明される方法を実装する際に使用され得る。たとえば、ソフトウェアコードは、メモリに記憶され、1つまたは複数のプロセッサによって実行され、1つまたは複数のプロセッサに、本明細書で開示される技法を実施するようにプログラムされた専用コンピュータとして動作させ得る。メモリは、1つまたはプロセッサ内に、または1つまたは複数のプロセッサの外部に実装され得る。本明細書で使用される「メモリ」という用語は、長期メモリ、短期メモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、または他のメモリのいずれかのタイプを指し、メモリの特定のタイプまたはメモリの数、あるいはメモリが記憶される媒体のタイプに限定されるべきではない。
【0051】
[0059]ファームウェアおよび/またはソフトウェアで実装される場合、実施される機能は、1つまたは複数の命令またはコードとして非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶され得る。記憶媒体の例は、データ構造で符号化されたコンピュータ可読媒体と、コンピュータプログラムで符号化されたコンピュータ可読媒体とを含む。コンピュータ可読媒体は、物理的コンピュータ記憶媒体を含む。記憶媒体は、コンピュータによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であり得る。限定ではなく例として、そのようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM(登録商標)、CD-ROMまたは他の光ディスク(disk)ストレージ、磁気ディスク(disk)ストレージ、半導体ストレージ、または他の記憶デバイス、あるいは、命令またはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用され得、コンピュータによってアクセスされ得る任意の他の媒体を備えることができ、本明細書で使用されるディスク(disk)およびディスク(disc)は、コンパクトディスク(disc)(CD)、レーザーディスク(登録商標)(disc)、光ディスク(disc)、デジタル多用途ディスク(disc)(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク(disk)およびBlu-ray(登録商標)ディスク(disc)を含み、ここで、ディスク(disk)は、通常、データを磁気的に再生し、ディスク(disc)は、データをレーザーで光学的に再生する。上記の組合せもコンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0052】
[0060]コンピュータ可読記憶媒体上での記憶に加えて、命令および/またはデータは、通信装置中に含まれる伝送媒体上の信号として与えられ得る。たとえば、装置は、命令およびデータを示す信号を有する送受信機を含み得る。命令およびデータは、非一時的コンピュータ可読媒体、たとえばメモリ上に記憶され、1つまたは複数のプロセッサに、本明細書で開示される技法を実施するようにプログラムされた専用コンピュータとして動作させるように構成される。すなわち、通信装置は、開示される機能を実施するための情報を示す信号をもつ伝送媒体を含む。第1の時間において、通信装置中に含まれる伝送媒体は、開示される機能を実施するための情報の第1の部分を含み得るが、第2の時間において、通信装置中に含まれる伝送媒体は、開示される機能を実施するための情報の第2の部分を含み得る。
【0053】
[0061]したがって、モバイルデバイスまたは基地局など、ワイヤレスネットワーク中のエンティティが、基準クロックからの第1のクロック信号を、送信機(TX)波形を生成するTX位相ロックループ(PLL)に提供するための手段を含み得、これは、たとえば、
図7に示されている、基準クロック706およびTX PLL704であり得る。基準クロックからの第2のクロック信号を、RX波形を生成する受信機PLLに提供するための手段が、
図7に示されている、たとえば、基準クロック706およびRX PLL702であり得る。送信機PLLおよび受信機PLLによって受信される位相補正信号を生成するための手段が、たとえば、
図6に示されている位相整合推定回路600または
図7に示されている位相整合推定回路708であり得る。送信機PLLおよび受信機PLLが定常状態条件を達成するたびに、TX波形とRX波形とが同じ位相関係を有するように、位相補正信号に基づいてTX波形とRX波形との間の位相関係を調整するための手段が、たとえば、
図5に示されているPLL500中のデジタルループフィルタ508および/またはΣΔ変調器518であり得る。
【0054】
[0062]いくつかの実装形態では、位相補正信号を生成するための手段は、基準クロックからの第3のクロック信号を受信するための手段と、これは、たとえば、
図6に示されている基準クロック(REFCLCK)であり得る、TX波形を受信するための手段と、これは、たとえば、
図6中のFs=Tx VCOであり得る、RX波形を受信するための手段と、これは、たとえば、
図6中のFs=Rx VCOであり得る、TX波形とRX波形との間の位相関係を決定するための手段と、これは、たとえば、
図6中の位相推定回路620であり得る、TX波形とRX波形との間の位相関係に基づいて位相補正信号を生成するための手段と、これは、たとえば、
図6中の位相推定回路620であり得る、を含み得る。
【0055】
[0063]いくつかの実装形態では、位相補正信号に基づいてTX波形とRX波形との間の位相関係を調整するための手段は、TX波形における位相遅延を変更するために位相補正信号に基づいて、送信機PLL中の、送信機ループフィルタ、または送信機フィードバック分割器を制御する送信機ΣΔ変調器のうちの少なくとも1つを調整するための手段と、これは、たとえば、
図5に示されているPLL500中のデジタルループフィルタ508および/またはΣΔ変調器518の位相補正信号入力であり得る、RX波形における位相遅延を変更するために位相補正信号に基づいて、受信機PLL中の、受信機ループフィルタ、または受信機フィードバック分割器を制御する受信機ΣΔ変調器のうちの1つを調整するための手段と、これは、たとえば、
図5に示されているPLL500中のデジタルループフィルタ508および/またはΣΔ変調器518の位相補正信号入力であり得る、を含み得る。
【0056】
[0064]いくつかの実装形態では、エンティティは、デジタル基準サンプリングクロックからの第4のクロック信号を送信機デジタルアナログ変換器に提供するための手段をさらに含み得、これは、たとえば、
図8に示されているデジタルクロック806とTX DAC802との間の接続であり得る。デジタル基準サンプリングクロックからの第5のクロック信号を受信機アナログデジタル変換器に提供するための手段が、たとえば、
図8に示されているデジタルクロック806とRX ADC804との間の接続であり得る。第4のクロック信号と第5のクロック信号との比は、有理数であり得る。一実装形態では、エンティティは、デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をNで割ることによって第4のクロック信号を生成するための手段と、ここにおいて、Nは整数である、これは、たとえば、
図8に示されている分割器808であり得る、デジタル基準サンプリングクロックからのクロック信号をMで割ることによって第5のクロック信号を生成するための手段と、ここにおいて、Mが整数であり、ここにおいて、比N/Mが有理数である、これは、たとえば、
図8に示されている分割器808であり得る、をさらに含み得る。
【0057】
[0065]一実装形態では、エンティティは、位相補正信号に基づいてデジタル基準サンプリングクロックからクロック信号を作り出すための手段、これは、たとえば、
図10に示されているデジタルクロック1006への位相補正信号入力であり得る、をさらに含み得る。上記の開示は本開示の例示的な態様を示しているが、添付の特許請求の範囲によって定義された本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更および修正が行われ得ることに留意されたい。本明細書で説明された本開示の態様による方法クレームの機能、ステップおよび/またはアクションは、特定の順序で実施される必要がない。さらに、本開示の要素は、単数形で説明または請求されていることがあるが、単数形に限定することが明示的に述べられていない限り、複数形が企図される。
【国際調査報告】