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特表2022-543454ククルビットウリルを使用する悪臭を低減するための方法
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  • 特表-ククルビットウリルを使用する悪臭を低減するための方法 図1
  • 特表-ククルビットウリルを使用する悪臭を低減するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ククルビットウリルを使用する悪臭を低減するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20221004BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221004BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61L9/01 K
C08L101/00
C08K5/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507578
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 GB2020051867
(87)【国際公開番号】W WO2021023989
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】1911194.7
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518290582
【氏名又は名称】アクドット・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ハウ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】チーズマン,ベンジャミン・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シーム,ティム・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ペダー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】エッセリン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コールストン,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】デ・ローイ,ヨハネス・ジェラルドゥス
【テーマコード(参考)】
4C180
4J002
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB09
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4C180CC17
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4C180EB03X
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4C180EB15X
4C180EB22Y
4C180EB23Y
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4C180EB29Y
4C180EB30Y
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4C180EB38Y
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4J002AA021
4J002AB001
4J002AB011
4J002AC001
4J002BB021
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4J002BD031
4J002BD141
4J002BD151
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4J002BF021
4J002BG041
4J002BG051
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4J002CC031
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4J002CC281
4J002CD001
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4J002CL001
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4J002CN031
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4J002EU006
4J002GB00
4J002GC00
(57)【要約】
本発明は、悪臭を低減するための方法、特に悪臭を低減するための方法であって、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された及び/又はそれによって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物を用意するステップを含み、悪臭源が外部にある、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪臭を低減するための方法であって、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された及び/又はそれによって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物を用意するステップを含み、悪臭源が外部にある、方法。
【請求項2】
ククルビットウリルが、ククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル、ククルビット[8]ウリル及びこれらの混合物からなる群のいずれか1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ククルビット[5]ウリルの濃度が、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0~約99重量%、とりわけ約0.1~約75重量%、とりわけ約0.5~約50重量%、とりわけ約1~約30重量%、とりわけ約1~約25重量%、とりわけ約1~約20重量%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ククルビット[6]ウリルの濃度が、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0.1~約99重量%、とりわけ約1~約75重量%、とりわけ約5~約60重量%、とりわけ約20~約55重量%、とりわけ約35~約55重量%である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ククルビット[7]ウリルの濃度が、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0.1~99重量%、とりわけ約5~約75重量%、とりわけ約10~約60重量%、とりわけ約20~約45重量%である、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ククルビット[7]ウリルの濃度が、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して45重量%未満である、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ククルビット[8]ウリルの濃度が、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0.1~99重量%、とりわけ約0.5~約75重量%、とりわけ約1~約30重量%、とりわけ約5~約25重量%、とりわけ約10~約20重量%である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
組成物中のククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル及びククルビット[8]ウリルの総濃度が、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して75重量%を超える、とりわけ約90重量%を超える、とりわけ約99重量%を超える、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して1~17重量%のククルビット[5]ウリル、30~50重量%のククルビット[6]ウリル、20~37重量%のククルビット[7]ウリル、10~27重量%のククルビット[8]ウリル、及び1重量%未満のククルビット[4]ウリル、ククルビット[9]ウリル、並びに/又はより高分子量のククルビットウリルを含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱可塑性媒体が、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレートホモ及びコポリマー、ポリメタクリレートホモ及びコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ポリアミド、ポリ(乳酸)、ポリ(ベンゾイミダゾール)、ポリカーボネート、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、多糖、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
熱硬化性媒体が、ポリウレタン、ポリ尿素ポリウレタンハイブリッド、加硫ゴム、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、フェノールホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン並びにエポキシ及びフェノール樹脂とベンゾオキサジンのハイブリッド、ポリイミド、ポリビスマレイミド、シアネートエステル樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
組成物が1つ以上のフレグランス分子をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
固体組成物が、単離フィルム、無生物表面に付着したコーティング、多孔質基材又は凝集体の形態である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
固体組成物が単離フィルムの形態である場合、組成物が、0.01~10%w/w、好ましくは0.1~7.5%w/w、より好ましくは0.5~5%w/w、より好ましくは0.7~3%w/wの1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
固体組成物が単離フィルムの形態である場合、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体が、フィルム厚以下のD90の粒子又は粒子の凝集体の形態である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
固体組成物がコーティングの形態である場合、組成物が10%w/w超、好ましくは25%w/w超、より好ましくは少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも75%w/wの1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上、並びに好ましくは95%w/w以下、より好ましくは98%w/w以下、最も好ましくは99%w/w以下の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上を含み、固体組成物が、少なくとも有効量のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含み、1つ以上のフレグランス分子をさらに含む、固体組成物。
【請求項18】
単離フィルム、無生物表面に付着したコーティング又は多孔質基材の形態である、請求項17に記載の固体組成物。
【請求項19】
固体組成物が単離フィルムの形態である場合、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体が、フィルム厚以下のD90の粒子の形態である、請求項17又は18に記載の固体組成物。
【請求項20】
熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体によって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物であって、固体組成物が無生物表面に付着したコーティング又は凝集体の形態である場合、組成物が10%w/w超、好ましくは25%w/w超、より好ましくは少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも75%w/wの1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上、並びに好ましくは95%w/w以下、より好ましくは98%w/w以下、最も好ましくは99%w/w以下の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上を含み、固体組成物が、少なくとも有効量の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む、固体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭を低減するための方法、特に悪臭を低減するための方法であって、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された及び/又はそれによって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物を用意するステップを含み、悪臭源が外部にある、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2017/141029(Aqdot Limited)は、湿潤環境において悪臭を打ち消すための、ククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル及びククルビット[8]ウリルから選択される、2種以上のククルビットウリルの混合物を含む組成物の使用を開示する。用語ククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル及びククルビット[8]ウリルは、各々5、6、7及び8つのグリコールウリル分子から形成されるククルビットウリル分子を意味する。組成物は、防腐剤、色素、顔料、金属イオン封鎖剤及び酸化防止剤から選択される添加剤を含み得、布などの基材に吸着させた形態を含む様々な形態で提供され得る。ククルビットウリルはまた、ランドリー、ホーム又はパーソナルケア用の消費者用製品などの製品に添加されてもよく、製品は、粉末又は顆粒、錠剤又は一回分単位、分散体、エマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、含水アルコール製品、ワイプ、スポンジ、エアロゾル又は液体ディスペンサー、クリーム、バルサム、艶出し剤、ワックスなどの形態である。消費者用製品は、数ある中でも、エアーフレッシュナー又は空気ろ過デバイスであり得る。
【0003】
WO2018/037209(Aqdot Limited)は、媒体中に懸濁されたククルビットウリル粒子を含む安定な懸濁組成物を開示する。媒体はワックスであり得る。組成物は、ポリビニルアルコールなどの多数のポリマーから選択される懸濁化剤をさらに含み得る。組成物は、界面活性剤、殺生物剤、粘性化剤、酸化防止剤、キレート化剤、湿潤剤、沈着剤、抑泡剤、フレグランス、溶媒、色素、顔料、制汗剤、及びコンディショニング剤からなる群から選択される添加剤をさらに含み得る。組成物は、ろうそくを含む上記に記載された消費者用製品の一部を形成し得、製品は、粉末又は顆粒、錠剤又は一回分単位、ワイプ、スポンジ、圧縮ガス、エアロゾル又は液体ディスペンサー、クリーム、バルサム、艶出し剤、ワックスなどの形態である。WO2018/037209の組成物はまた、キッチン若しくは浴室表面などの無生物表面、又は顆粒若しくはビーズの表面に塗布され得る。
【0004】
WO2016/185209(Aqdot Limited)は、硬化作用物質に複合体化されたククルビットウリルを含むエポキシ組成物を開示する。したがって、一例において、硬化剤1,4-ジアミノブタンを含む組成物は、ククルビット[8]ウリルと少なくとも部分的に複合体化され、ビスフェノールAジグリシジルエーテルは、ククルビット[8]ウリルを含まない比較組成物より貯蔵時の硬化速度が遅いことを示し、すなわち、より安定であった。
【0005】
米国特許出願第2018/0247632号(Henkel AG&Co.、KGAA)は、減衰用途、好ましくは消音用途に適切で、適用温度で揮発性有機化合物の放出が少ないホットメルト組成物であって、組成物が、ポリ-α-オレフィン、エラストマースチレンベースのコポリマー、粘着付与剤及び大環状分子を含む、ホットメルト組成物を開示する。大環状分子は、シクロデキストリン、カリックスアレーン及びククルビットウリルから選択され得る。一例において、C3/C2ポリ-α-オレフィン、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、アルキルフェノール樹脂(粘着付与剤)、グラファイト充填剤及びβ-シクロデキストリンを含む組成物が、「フォギング試験」において、β-シクロデキストリンを含まない比較組成物より少ない揮発性有機化合物を製品から100℃で放出したことが実証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、悪臭を低減するための方法であって、固体組成物を用意するステップを含み、悪臭源が外部にあり、特に固体組成物が、ククルビットウリル並びに/又はその誘導体及び/若しくは類似体を含み、固体組成物が、単離フィルム又は無生物表面に付着したコーティングの形態である、方法を提供することが依然として必要とされている。驚くべきことに、ククルビットウリルは、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁されているにもかかわらず、悪臭源が外部にある、悪臭を低減するその能力を保持することが観察された。さらに、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体の存在は、ククルビットウリル微粒子粉末のダスティングの技術的問題を低減又は排除する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、悪臭を低減するための方法であって、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された及び/又はそれによって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物を用意するステップを含み、悪臭源が外部にある、方法が提供される。
【0008】
本明細書では、用語「悪臭」は、日常生活で頻繁に遭遇する不快又は不要な臭気を意味し、様々な起源を有する。典型的な悪臭は、制御されていない工業活動から、消毒剤を含む洗浄剤から、発汗及び排出などのヒト及びペットの身体から、キッチン(食品及び飲料を含むが、これらに限定されない)から及び食品加工から、タバコの煙から、並びにカビから発する臭気を含む。人間にとって最も煩わしい悪臭のうちのいくつかは、汗、糞便、尿、濡れたペット、調理の臭気、特にニンニク、キャベツ、魚及び玉ねぎなどである。悪臭は、消費者用製品、例えば石けん、洗剤、シャンプー及びコンディショナー中に存在する脂肪酸及び脂肪酸誘導体から発することもある。特に望ましくない悪臭の他の例は、脱毛クリーム(硫黄化合物)により発生する悪臭である。これらの悪臭は全て、特に刺激が強い。
【0009】
低減されるべき悪臭は、悪臭発生分子の混合物により発生し得る。悪臭は、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物により低減される。
【0010】
悪臭の低減は、悪臭発生分子と1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体との複合体化により達成される。
本明細書では、用語「固体」は、最大少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも120℃の温度で固体、且つ熱可塑性ポリマーでは少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも120℃のガラス転移温度を有する固体を意味する。
【0011】
本明細書の文脈において、用語「によって結合された」は、本発明の文脈において、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体が、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体によって一緒に結合されるが、必ずしもそこに懸濁されるわけではないことを意味する。したがって、一実施形態において、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体は、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体から突出してもよい。別の実施形態において、典型的には粒子の形態の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体は、一緒に凝集した粒子の形態である。
【0012】
本明細書では、用語「外部」は、固体組成物の外部を意味する。したがって、固体組成物自体は悪臭源ではない。
本発明の第2の態様において、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された及び/又はそれによって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含み、1つ以上のフレグランス分子をさらに含む、固体組成物が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様において、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体によって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物であって、固体組成物が無生物表面に付着したコーティング又は凝集体の形態である場合、組成物が10%w/w超、好ましくは25%w/w超、より好ましくは少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも75%w/wの1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上、並びに好ましくは95%w/w以下、より好ましくは98%w/w以下、最も好ましくは99%w/w以下の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上を含み、固体組成物が、少なくとも有効量の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む、固体組成物が提供される。
【0014】
本発明を、以下に示す図面を参照しながら記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】対照(ボール紙若しくはスポンジ基材、又はn-酪酸)と比較したn-酪酸濃度の低下(R)(%)対混合(非置換)ククルビットウリルの質量(g)を示す図である(PVOH=ポリビニルアルコール、LMW=低分子量、HMW=高分子量、CB=ククルビットウリル、紙=ボール紙)。
図2】混合(非置換)ククルビットウリルの質量で割った、対照(ボール紙若しくはスポンジ基材、又はn-酪酸)と比較したn-酪酸濃度の低下(R)(%/g)対混合(非置換)ククルビットウリルの質量(g)を示す図である(PVOH=ポリビニルアルコール、LMW=低分子量、HMW=高分子量、CB=ククルビットウリル、紙=ボール紙)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一態様において、悪臭を低減するための方法であって、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された及び/又はそれによって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物を用意するステップを含み、悪臭源が外部にある、方法が提供される。
【0017】
本発明の第1、第2及び第3の態様の固体組成物を調製するために、典型的には熱可塑性及び/又は1つ以上の熱硬化性ポリマー前駆体のペレット又は微粒子粉末が、微粒子粉末又は凝集粒子の形態の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と、室温(典型的には20~25℃)で大気圧で混合される。一実施形態において、シクロヘキサン又は水などの液体溶媒又は担体は、顔料などの任意選択の賦形剤、タルク又は珪藻土などの充填剤、分散剤、接着促進剤及び殺生物剤と一緒に添加されて、それにより液体コーティング又は塗料を形成することができ、これは次に無生物表面に塗布される。熱硬化性前駆体は、他の熱硬化性ポリマー前駆体を架橋して、それによりネットワークを形成するために添加される架橋剤を含む。代替的には、熱可塑性及び/又は1つ以上の熱硬化性ポリマー前駆体と1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体は、液体溶媒又は担体中で別個に調製された後、その後組み合わされて、液体コーティング又は塗料を形成する。一実施形態において、1つ以上の架橋剤と他の熱硬化性ポリマー前駆体は別個に調製された後、その後組み合わされて、液体コーティング又は塗料を形成する。コーティング又は塗料は、適用温度で液体でなければならず、噴霧、刷毛塗り、圧延、浸漬又はロール・ツー・ロールコーティングを含むがこれらに限定されない、任意の適当な方法により無生物表面に塗布され得る。次に、液体溶媒又は担体は、室温又は昇温(室温を上回る)のいずれかで大気圧で蒸発させて、それにより本発明の固体組成物を製造する。典型的には、1つ以上の熱硬化性ポリマー前駆体を硬化するためには、昇温、又は紫外線若しくは電子ビームなどの照射が必要である。
【0018】
本明細書では、用語「液体」は、5℃以上、及び400℃、300℃、250℃、200℃、150℃以下、より好ましくは100℃以下の温度で液体を意味する。
別の実施形態において、本発明の第1、第2及び第3の態様の固体組成物の調製は、液体溶媒又は担体を伴わない。この実施形態において、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と混合した熱可塑性及び/又は1つ以上の熱硬化性ポリマー前駆体の混合物は、例えば粉末コーティング若しくは流動床技術を使用して、静電気力により、無生物表面にコーティングされてもよく、又は例えば単離フィルムを形成するための所望の最終形状を提供するためにダイスに通してもよい。1つ以上の熱硬化性ポリマー前駆体を硬化し、熱可塑性ポリマー媒体に基づくか熱硬化性ポリマー媒体に基づくかにかかわらず、任意の表面コーティングを縮合させるために、又は混合物をダイスにより加工するためには、昇温(室温を上回る)が必要である。熱可塑性ポリマーでは、昇温は、少なくともガラス転移温度を上回らなければならず、好ましくはポリマーの溶融温度を上回らなければならない。固体組成物が単離フィルムの形態である場合、フィルムはその後、無生物表面に積層されていてもよい。
【0019】
単離フィルムを形成するために、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と混合した熱可塑性ポリマーの混合物が、水の蒸発に起因する得られた単離フィルムに出現する孔の数を減らすために、好ましくは10%w/w、7%w/w、5%w/w、2%w/w、1%w/w未満の水を含むことが観察された。
【0020】
凝集体の形態の本発明の第1、第2及び第3の態様の固体組成物の調製は、実施例3に記載される。
好ましくは、ククルビットウリルは、ククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル、ククルビット[8]ウリル及びこれらの混合物からなる群のいずれか1つから選択される。ククルビットウリルの誘導体は、1、2、3、4個又はそれ以上の置換グリコールウリル単位を有する構造である。置換ククルビットウリル化合物は、下記の構造:
【0021】
【化1】
【0022】
[式中、nは、4~20の整数であり、各グリコールウリル単位では、各Xは、O、S又はNRであり、-R及び-Rは、-H及び以下の置換されていてもよい基:-R、-OH、-OR、-COOH、-COOR、-NH、-NHR及び-N(Rからそれぞれ独立して選択され、ここで-Rは、C1~20アルキル、C6~20カルボアリール及びC5~20ヘテロアリールから独立して選択され、又は-R及び/若しくは-Rは、-N(Rであり、両方の-Rは、一緒になってC5~7複素環式環を形成し、又は-R及び-Rは一緒に、ウラシル骨格と一緒になってC6~8炭素環式環を形成する、C4~6アルキレンである]
により表され得る。
【0023】
一実施形態において、グリコールウリル単位のうちの1個は、置換グリコールウリル単位である。したがって、-R及び-Rは、グリコールウリル単位のうちのn-1個において、それぞれ独立して-Hである。一実施形態において、nは5、6、7、8、9、10、11又は12である。一実施態様において、nは5、6、7又は8である。一実施態様において、各XはOである。一実施形態において、各XはSである。一実施形態において、R及びRは、それぞれ独立してHである。
【0024】
一実施形態において、各単位では、R及びRの一方はHであり、他方は、-H及び以下の置換されていてもよい基-R、-OH、-OR、-COOH、-COOR、-NH、-NHR及び-N(Rから独立して選択される。一実施形態において、1個の単位では、R及びRの一方はHであり、他方は、-H及び以下の置換されていてもよい基-R、-OH、-OR、-COOH、-COOR、-NH、-NHR及び-N(Rから独立して選択される。この実施形態において、残りのグリコールウリル単位は、R及びRがそれぞれ独立してHであるようなものである。
【0025】
好ましくは、-Rは、C1~20アルキル、最も好ましくはC1~6アルキルである。C1~20アルキル基は、線状及び/又は飽和であり得る。各基-Rは、独立して非置換であっても、置換されていてもよい。好ましい置換基は、-R、-OH、-OR、-SH、-SR、-COOH、-COOR、-NH、-NHR及び-N(Rから選択され、ここで-Rは、C1~20アルキル、C6~20カルボアリール及びC5~20ヘテロアリールから選択される。置換基は、-COOH及び-COORから独立して選択され得る。
【0026】
一部の実施形態において、-Rは-Rと同一ではない。一部の実施形態において、-Rは、好ましくは非置換である。
-R及び/又は-Rが-OR、-NHR又は-N(Rである場合、-Rは、好ましくはC1~6アルキルである。一部の実施形態において、-Rは、置換基-OR、-NHR又は-N(Rで置換されている。各-RはC1~6アルキルであり、好ましくはそれ自体が置換されている。
【0027】
ククルビットウリルの変異体は、グリコールウリルに構造的に類似する、1個以上の反復単位を有する構造を含み得る。反復単位は、エチル尿素単位を含み得る。全ての単位がエチル尿素単位である場合、変異体は、ヘミククルビットウリル、例えば、ヘミククルビット[12]ウリル:
【0028】
【化2】
【0029】
である。
好ましくは、ククルビット[5]ウリルの濃度は、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0~約99重量%、とりわけ約0.1~約75重量%、とりわけ約0.5~約50重量%、とりわけ約1~約30重量%、とりわけ約1~約25重量%、とりわけ約1~約20重量%である。
【0030】
好ましくは、ククルビット[6]ウリルの濃度は、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0.1~約99重量%、とりわけ約1~約75重量%、とりわけ約5~約60重量%、とりわけ約20~約55重量%、とりわけ約35~約55重量%である。
【0031】
好ましくは、ククルビット[7]ウリルの濃度は、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0.1~99重量%、とりわけ約5~約75重量%、とりわけ約10~約60重量%、とりわけ約20~約45重量%である。
【0032】
好ましくは、ククルビット[7]ウリルの濃度は、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して45重量%未満である。
好ましくは、ククルビット[8]ウリルの濃度は、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して約0.1~99重量%、とりわけ約0.5~約75重量%、とりわけ約1~約30重量%、とりわけ約5~約25重量%、とりわけ約10~約20重量%である。
【0033】
好ましくは、組成物中のククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル及びククルビット[8]ウリルの総濃度は、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して75重量%を超える、とりわけ約90重量%を超える、とりわけ約99重量%を超える。
【0034】
好ましくは、組成物は、組成物中のククルビットウリルの総重量に対して1~17重量%のククルビット[5]ウリル、30~50重量%のククルビット[6]ウリル、20~37重量%のククルビット[7]ウリル、10~27重量%のククルビット[8]ウリル、及び1重量%未満のククルビット[4]ウリル、ククルビット[9]ウリル、並びに/又はより高分子量のククルビットウリルを含む。
【0035】
典型的な悪臭発生分子は、好ましくはアリルアミン;メチルアミン;エチルアミン;シクロブチルアミン(シクロブタンアミン、尿);シクロペンチルアミン(シクロペンタンアミン);シクロヘキシルアミン(シクロヘキサンアミン);シクロヘプチルアミン(シクロブタンアミン);イソプロピルアミン;ブチルアミン;ジブチルアミン(N-ブチル-1-ブタンアミン);ジメチルエタノールアミン(2-(ジメチルアミノ)エタノール);メチルエタノールアミン(2-(メチルアミノ)エタノール);ジエチルエタノールアミン(2-(ジエチルアミノ)エタノール);ジエチルアミン(N-メチルエタンアミン、生臭い);ジプロピルアミン(N-プロピル-1-プロパンアミン);ジイソプロピルアミン(N-イソプロピル-2-プロパンアミン)、ジメチルアセトアミド(N,N-ジメチルアセトアミド);エチルメチルアミン(N-メチルエタンアミン);エチルプロピルアミン(N-エチルプロパンアミド);トリメチルアミン(生臭い);トリエチルアミン(生臭い);エチレンジアミン(1,2-エタンジアミン、カビ臭い、アンモニア);プロピレンジアミン(1,3-プロパンジアミン);テトラメチレンジアミン(1,4-ブタンジアミン、プトレシン、嫌な);エチレンイミン(アジリジン、アンモニア);モルホリン(生臭い);エチルモルホリン(4-エチルモルホリン、酸っぱい);ピロリジン(精液);メチルエチルピリジン(2-エチル-3-メチルピリジン);ピリジン(焦げた、吐き気を催す);ビニルピリジン(4-ビニルピリジン、胸の悪くなる);スカトール(3-メチルインドール、糞便);インドール(糞便);カダベリン(ペンタン-1,5-ジアミン、腐敗);硫化水素(腐った卵);アリルジスルフィド(3-(アリルジスルファニル)-1-プロペン、ニンニク);エチルイソチオシアネート(イソチオシアナトエタン、刺激が強い、マスタード、ニンニク);アリルイソチオシアネート(3-イソチオシアナトプロパ-1-エン、硫黄);アリルメルカプタン(2-プロペン-1-チオール、ニンニク、硫黄);アリルスルフィド(3-(アリルスルファニル)-1-プロペン;硫黄);ジアリルスルフィド(3-(アリルスルファニル)-1-プロペン;硫黄);ジメチルジスルフィド((メチルスルファニル)エタン、不快な、ニンニク);ジメチルトリスルフィド(ジメチルトリスルファン、嫌な);ジエチルスルフィド((エチルスルファニル)エタン、硫黄);ブチルスルフィド(1-(ブチルスルファニル)ブタン、ニンニク、スミレ);ジエチルトリスルフィド(ジエチルトリスルファン、嫌な、ニンニク);エチルメチルジスルフィド((メチルスルファニル)エタン、硫黄);フェニルスルフィド(1、1'-スルファンジイルジベンゼン、硫黄);エチルメルカプタン(1-エタンチオール、硫黄);アミルメルカプタン(1-ペンタンチオール);イソアミルメルカプタン(3-メチルブタン-1-チオール、硫黄、タマネギ);ブチルメルカプタン(1-ブタンチオール、スカンク様);イソブチルメルカプタン(2-メチルプロパン-1-チオール、硫黄、マスタード);ドデシルメルカプタン(1-ドデカンチオール);二硫化炭素(メタンジチオン、不愉快な、甘い);ジメチルトリチオカーボネート(ジメチルカルボノトリチオエート);及びチオフェノールメルカプタンからなる群から選択される、窒素及び硫黄含有分子;
好ましくはソトロン及びノルソトロンからなる群から選択される、酸素含有5員環分子;
好ましくは酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、n-吉草酸、2-メチル-酪酸、3-メチル-2-ヘキサン酸及び3-メチル-3-ヒドロキシヘキサン酸からなる群から選択される、飽和及び不飽和アルキル及びヒドロキシアルキルカルボン酸;並びに
セドリルアセテート及びナフタレン
から選択され得る。
【0036】
好ましくは、熱可塑性媒体は、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレートホモ及びコポリマー、ポリメタクリレートホモ及びコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ポリアミド、ポリ(乳酸)、ポリ(ベンゾイミダゾール)、ポリカーボネート、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロース、多糖、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0037】
好ましくは、熱硬化性媒体は、ポリウレタン、ポリ尿素ポリウレタンハイブリッド、加硫ゴム、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、フェノールホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン並びにエポキシ及びフェノール樹脂とベンゾオキサジンのハイブリッド、ポリイミド、ポリビスマレイミド、シアネートエステル樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
有利には、組成物は1つ以上のフレグランス分子をさらに含む。
特に及び本発明の第2の態様において、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体中に懸濁された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含み、1つ以上のフレグランス分子をさらに含む、固体組成物が提供される。
【0039】
一般的なフレグランス分子は、アルコール、アルデヒド、ケトン、ラクトン及びO-複素環、エーテル、アセタール、ケタール、N-及びS-化合物、炭化水素及びテルペン、並びにエッセンシャルオイルを含む。典型的なフレグランス分子は、(Z)-4-ドデセナール(21944-98-9);1-オクテン-3-オール(3391-86-4);2,6-ノナジエノール(28069-72-9);2-イソブチル-3-メトキシピラジン(24683-00-9);2-ノネナール(2463-53-8);2-ウンデセナール(2463-77-6);trans-4-デセナール(65405-70-1);8-デセン-5-オリド(32764-98-0);9-デセノール(13019-22-2);アセトアルデヒド、フェネチルプロピルアセタール(7493-57-4);2,6,10-トリメチルウンデカ-9-エナール(141-13-9);10-ウンデセナール(112-45-8);2-メチルウンデカナール(110-41-8);アリルアミルグリコレート(67634-00-8);アリルヘキサノエート(123-68-2);アリルフェノキシアセテート(7493-74-5);α-アミルシンナムアルデヒド(122-40-7);α-ダマスコン(43052-87-5);3a,6,6,9a-テトラメチル-2,4,5,5a,7,8,9,9b-オクタヒドロ-1h-ベンゾ[e][1]ベンゾフラン(6790-58-5);2-ベンジリデンヘプタナール(122-40-7);1-(2-tert-ブチルシクロヘキシル)オキシブタン-2-オール(139504-68-0);アミルサリチレート(2050-08-0);アニスアルデヒドジエチルアセタール(2403-58-9);アニスアルデヒド(123-11-5);ベンズアルデヒド(100-52-5);ベンジルアセテート(140-11-4);β-ナフチルメチルエーテル(93-04-9);エチル6-(アセチルオキシ)ヘキサノエート(104986-28-9);β-ダマスコン(23726-92-3);β-イオノン(14901-07-6);4-t-ブチルベンゼンプロピオンアルデヒド(18127-01-0);8-メチル-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン(28940-11-6 35783-05-2);3-メチル-5-プロピルシクロヘキサ-2-エン-1-オン(3720-16-9);cis-3-ヘキセン-1-オール(928-96-1);cis-6-ノネナール(2277-19-2);シトラール(5392-40-5);シトロネラール(106-23-0);シトロネロール(106-22-9);シトロネリルオキシアセトアルデヒド(7492-67-3);ドデカンニトリル(2437-25-4);クマリン(91-64-5);2,6-ノナジエン-1-オール(7786-44-9);ダマセノン(23726-93-4);2-ペンチルシクロペンタノン(4819-67-4);δ-ダマスコン(57378-68-4);ジヒドロミルセノール(18479-58-8);ジメチルベンジルカルビニルアセテート(151-05-3);ジフェニルエーテル(101-84-8);4-(オクタヒドロ-4,7-メタノ-5h-インデン-5-イリデン)ブタナール(30168-23-1);1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセニル)ペンタ-4-エン-1-オン(56973-85-4);(z)-3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-1-シクロペンタ-3-エニル)ペンタ-4-エン-2-オール(67801-20-1);エチル2-メチルブチレート(7452-79-1);エチル2-メチルペンタノエート(39255-32-8);エチルブチレート(105-54-4);エチルn-エチルアントラニレート(38446-21-8);エチルtrans-2,cis-4-デカジエノエート(3025-30-7);エチルバニリン(121-32-4);エチルビニルケトン(1629-58-9);ユーカリプトール(470-82-6);オイゲノール(97-53-0);メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート(4707-47-5);ファルネセン(α及びβ)(502-61-4);フィクソリド(1506-02-1);トリシクロデセニルプロピオネート(68912-13-0);3-(3-プロパン-2-イルフェニル)ブタナール(125109-85-5);2-ブタン-2-イルシクロヘキサン-1-オン(14765-30-1);エチル2-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)アセテート(6413-10-1);γ-デカラクトン(706-14-9);γ-ウンデカラクトン(104-67-6);ゲラニルアセテート(105-87-3);3,7-ジメチルオクタ-6-エンニトリル(5146-66-7);ヘキシルサリチレート(6259-76-3);イソアミルアセテート(123-92-2);イソブチルアンゲレート(7779-81-9);イソブチル-キノリン(93-19-6);イソオイゲノール(97-54-1);イソメチル-α-イオノン(127-51-5);イソプロピルキノリン(137-79-5);トリシクロデセニルアセテート(5413-60-5);1-メチル-2-1,2,2-トリメチル-3-ビシクロ[3.1.0]ヘキサニル]メチル]シクロプロピル]メタノール(198404-98-7);l-カルボン(6485-40-1);(z)-3-ヘキセン-1-イルメチルカーボネート(67633-96-9);3-(4-tert-ブチルフェニル)ブタナール(80-54-6);リモネン(138-86-3、7705-14-8);リナロール(78-70-6);3-メチル-7-プロパン-2-イルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-5-カルバルデヒド(67845-30-1);2,6-ジメチルヘプタ-5-エナール(106-72-9);trans-2-ドデセナール(20407-84-5);メチルシンナメート(103-26-4);(4-プロパン-2-イルシクロヘキシル)メタノール(5502-75-0);メチル2-ヘプチンカーボネート(111-12-6);メチルヘキシルケトン(111-13-7);メチルオクチンカーボネート(111-80-8);6,6-ジメトキシ-2,5,5-トリメチルヘキサ-2-エン(67674-46-8);メチルサリチレート(119-36-8);ネロールオキシド(1786-08-9);オクタナール(124-13-0);1-ナフタレン-1-イルエタノン(941-98-0、93-08-3);(2r,4s)-2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン(59323-76-1);2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル(10461-98-0);2-メチル-4-メチリデン-6-フェニルオキサン(30310-41-9);2-シクロヘキシル-1,6-ヘプタジエン-3-オン(313973-37-4);フェニルエチルアルコール(60-12-8);2-フェノキシエタノール(122-99-6);3-(7,7-ジメチル-4-ビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-エニル)プロパナール(33885-51-7);(e)-3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール(107898-54-4);γ-ノナラクトン(104-61-0);p-トリルフェニルアセテート(101-94-0);(e)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-1-シクロペンタ-3-エニル)ブタ-2-エン-1-オール(28219-61-6);4-(p-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン(5471-51-2);4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エニル)オキサン(16409-43-1);m-(イソカンフィル-5)シクロヘキサノール(66068-84-6);trans-2,cis-6-ノナジエナール(557-48-2);trans-2-ヘキセナール(6728-26-3);trans-2-ヘキセニル2-メチルブチレート(94089-01-7);trans-アネトール(4180-23-8);2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-カルバルデヒド(68039-49-6);トリモフィックスO(144020-22-4 68610-78-6);ウンデカ-1,3,5-トリエン(16356-11-9);4-メチルデカ-3-エン-5-オール(81782-77-6);バニリン(121-33-5);デカヒドロスピロ(フラン-2(3h),5’-(4,7)メタノ(5h)インデン)(68480-11-5);及びノナ-2,6-ジエンニトリル(67019-89-0)から選択される。
【0040】
典型的には、固体組成物は、0.01~15%w/w、好ましくは0.01~10%w/w、最も好ましくは0.01~5%w/wの1つ以上のフレグランス分子を含み得る。
フレグランス分子を含む本発明の第1の態様の固体組成物及び本発明の第2の態様の固体組成物は、フレグランス分子がククルビットウリルと複合体化されるため、実質的に無臭なままである。しかし、フレグランス分子の脱複合体化、したがって放出は、ククルビットウリルと複合体化し、したがってフレグランス分子を置き換える悪臭発生分子の作用により達成され得る。したがって、固体組成物は、悪臭を低減するだけでなく、フレグランスも放出する。固体組成物の1つの利点は、フレグランス分子と悪臭分子との分子交換が、湿潤条件(室温で少なくとも40%の相対湿度)でも起こり得ることである。
【0041】
フレグランス分子の脱複合体化及び放出は、水分又は液体水への曝露、蒸発、熱及び分子交換によっても達成され得る。
一実施形態において、フレグランス分子の脱複合体化及び放出のトリガーは、周囲相対湿度の上昇により増加する水活性である。水活性は、水分子がククルビットウリルに結合し、フレグランス分子の一部を置き換えて空気中に放出しやすくなる程度まで増加し得る。固体組成物を水と接触させることは、水活性を増加させる別の手法である。
【0042】
別の実施形態において、フレグランス分子の脱複合体化及び放出のトリガーは、蒸発又は熱である。蒸発及び熱は、周知の蒸気圧の温度依存性により互いに関連している。蒸発と熱の相互作用が、フレグランス分子放出の駆動力であると考えられる場合、フレグランス分子の選択は、各フレグランス分子の蒸気圧を考慮することにより達成され得る。例えば、室温での徐放では、20℃で0.1mm Hgより高い蒸気圧を有するフレグランス分子が選択され得るが、熱誘導放出条件下では、例えば100℃又はそれ以上で、低い蒸気圧を有するフレグランス分子が良好な結果をもたらし得る。蒸発及び熱をトリガーと考えたとき、当業者は、創造の余地が残る蒸気圧及び臭気特性に関して、フレグランス分子の多様性を理解するであろう。
【0043】
別の実施形態において、フレグランス分子の脱複合体化及び放出のトリガーは、フレグランス分子の分子交換によって媒介される放出である。フレグランス分子とククルビットウリルとの複合体、特にフレグランス分子が酸素ヘテロ原子を含む複合体は一般に、ククルビットウリルと窒素含有若しくは硫黄含有分子との複合体、又はとりわけククルビットウリルとカチオン性分子との複合体と比較して弱いことが観察された。したがって、フレグランス分子の脱複合体化及び放出をトリガーする化合物は、金属イオン及び中性、カチオン性、双性、両性及び/又はカチオン性の窒素含有、硫黄含有及び/又は酸素含有物質から選択され得る。固体組成物とトリガー化合物との接触は、様々な手段により達成され得、例えば、本発明の固体組成物及びトリガー化合物は、粉末又は顆粒などの水分散性固体形態として供給され得、水に分散されると、トリガーを放出し、それによりフレグランス分子の脱複合体化及び放出を行う。代替的には、トリガー化合物のin-situ形成は、pH変化後に起こり得る。
【0044】
典型的なトリガー化合物は、スルホニウム誘導体及びS-複素環式物質、アミン及びポリアミン、並びにこれらの四級化形態;ポリエチレンイミン及び他のポリアルキレンイミン、並びにこれらの四級化形態などのイミン及びポリイミン;アミノアルキルジメチコンなどのアミノシリコーン;ヒドロキシアミン;約16~約22個の炭素原子、及び1~約4個の炭素原子の鎖長を有し、1個以上のヒドロキシル基を有していてもよい2~3個のアルキル部分、又は約1~約10個のエチレンオキシド部分を有するヒドロキシアルキル部分を含む1又は2個のアルキル鎖を有するアルキルアンモニウム界面活性剤などのカチオン性界面活性剤;オキサゾリン誘導体、ピペラジン誘導体、ピリジン、ビピリジン及びポリピリジン誘導体、アミノピリジニウム誘導体、シクラム誘導体、ピロール誘導体、イミダゾール誘導体など、及びこれらの混合物などのN-複素環式物質;前記N-複素環式物質を含む縮合多環式物質;並びにこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の第1及び第2の態様の固体組成物は、単離フィルム、無生物表面に付着したコーティング、多孔質基材又は凝集体の形態であり得る。無生物表面は、多孔質基材の形態であり得る。代替的には、多孔質基材自体は、1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と混合した熱可塑性及び/又は1つ以上の熱硬化性ポリマー前駆体の混合物を、液体状態である場合、空気、窒素又は二酸化炭素などのin-situ又はex-situのいずれかで発生した適切なガスで通気し、通気しながら冷却させることにより製造され得る。単離フィルムは、その後、無生物表面に積層されていてもよい。単離フィルムは、ゴミ箱ライナーの形態であり得るか、又はその一部を形成し得る。無生物表面は、固体組成物を支持するのに適切な任意の材料で形成され得、例えば無生物表面は、紙、木、プラスチック材料、石、セラミック、金属、織物及びプラスターであり得るが、これらに限定されない。より具体的には、無生物表面又は多孔質基材は、女性用衛生製品、オムツ、失禁パッド、生理用ナプキン、靴底又はエアフィルターなどのホーム又はパーソナルケア製品の一部を形成し得る。本明細書では、用語「多孔質」は、液体又はガスが、例えば基材を、その基材内の間隙を介して貫通できることを意味する。
【0046】
好ましくは、本発明の第1及び第2の態様の固体組成物が単離フィルムの形態である場合、組成物は、0.01~10%w/w、好ましくは0.1~7.5%w/w、より好ましくは0.5~5%w/w、より好ましくは0.7~3%w/wの1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む。
【0047】
好ましくは、本発明の第1の態様の固体組成物がコーティングの形態である場合、組成物は10%w/w超、好ましくは25%w/w超、より好ましくは少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも75%w/wの1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上、並びに好ましくは95%w/w以下、より好ましくは98%w/w以下、最も好ましくは99%w/w以下の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上を含み、固体組成物は、少なくとも有効量のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む。本明細書では、用語「有効」は、ククルビットウリルの量の文脈において、悪臭を低減するのに有効な量を意味する。
【0048】
無機顔料及び体質顔料は、粒状形態であり、当業者に周知である。無機顔料の例は、酸化鉄及び二酸化チタンであり、体質顔料の例は、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム及び硫酸カルシウムである。
【0049】
本発明の第1及び第2の態様の固体組成物が単離フィルムの形態である場合、1つ以上のククルビットウリル並びに/又はその誘導体及び/若しくは類似体は、好ましくはフィルム厚以下のD90(顕微鏡を用いて)の粒子又は粒子の凝集体の形態である。フィルム厚より大きなD90を有するこのような粒子又は粒子の凝集体は、フィルムの2つの対向面を架橋し、それによりフィルムを構造的に脆弱化させることが観察された。
【0050】
本発明の第3の態様において、熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマー媒体によって結合された1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む固体組成物であって、固体組成物が無生物表面に付着したコーティング又は凝集体の形態である場合、組成物が10%w/w超、好ましくは25%w/w超、より好ましくは少なくとも50%w/w、より好ましくは少なくとも75%w/wの1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上、並びに好ましくは95%w/w以下、より好ましくは98%w/w以下、最も好ましくは99%w/w以下の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体と任意選択でカーボンブラック及び/又は無機顔料及び/又は体質顔料のうちの1つ以上を含み、固体組成物が、少なくとも有効量の1つ以上のククルビットウリル並びにその誘導体及び/又は類似体を含む、固体組成物が提供される。
【0051】
下記に記載される実施例において、混合(非置換)ククルビットウリルへの言及は、WO2018/115822(Aqdot Limited)の実施例5~7のいずれか1つに記載される方法に従って調製される、ククルビットウリルの総重量に対して1~17重量%のククルビット[5]ウリル、30~50重量%のククルビット[6]ウリル、20~37重量%のククルビット[7]ウリル、10~27重量%のククルビット[8]ウリル、及び1重量%未満のククルビット[4]ウリル、ククルビット[9]ウリル、並びに/又はより高分子量のククルビットウリルを含む混合物への言及である。
【実施例
【0052】
実施例1:ククルビットウリルを含むフィルム
(a)試料調製
20%w/wの混合(非置換)ククルビットウリル(「ククルビットウリルマスターバッチ」)を含む、SABIC(グレード318B)から得、粉末状に粉砕した線状低密度ポリエチレン(LLDPE)のペレットを、ククルビットウリルとLLDPE粉末を高速混合し、続いて150℃の二軸スクリュー押出機に通すことにより調製した。生成したストランドをダイス、次にローラーに通して空冷した後、切断してペレットにした。ペレットを、100℃のコンベクションオーブンに入れて、吸湿を最小限に抑えた。
【0053】
3mの垂直なフィルム塔のホッパーに、適当な比の「ククルビットウリルマスターバッチ」ペレットとLLDPEペレットを充填し、混合物170℃で押し出した後、混合物を円形ダイスに通し、その後空気を混合物に導入して、フィルムをインフレーション成形することにより、LLDPEフィルムを該フィルム塔上に製造した。最大10%w/wの混合(非置換)ククルビットウリルを含有するフィルム(50%w/wの「ククルビットウリルマスターバッチ」と50%w/wのLLDPE)を、約35ミクロンのフィルム厚で製造した。
【0054】
(b)(悪)臭の低減:ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC-HS)
200mgのフィルム試料を、別の1.5mLバイアルに含有される臭気化合物と共に、20mLヘッドスペースバイアルの内部に入れた。臭気化合物を、15μL(マイクロリットル)の1.5%w/vのトリメチルアミン水溶液又は20μL(マイクロリットル)の1%w/vの酪酸水溶液のいずれかの形態で提供した。
【0055】
ヘッドスペースバイアルのヘッドスペースの悪臭濃度を、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC-HS)を使用して決定した。トリメチルアミンの濃度を、50℃のヘッドスペースオーブン内で30分間平衡化した試料を含む60mのCP-Volamineカラム(Agilent Technologies)を使用して決定した。酪酸の濃度を、90℃のヘッドスペースオーブン内で30分間平衡化した試料を含む60mのDB-ワックスカラム(Agilent Technologies)を使用して決定した。測定は全て三連で実施した。
【0056】
濃度を、各臭気化合物の特性保持時間で検出したクロマトグラフィーピーク面積を積分することにより決定した。臭気の低減を、各臭気化合物の臭気の低減でのフィルムの有効性の尺度として計算し、混合(非置換)ククルビットウリルを含むフィルムの存在下での各臭気化合物のピーク面積の、混合(非置換)ククルビットウリルを含まない対照LLDPEフィルムの存在下で記録された各臭気化合物のピーク面積に対する比として定義した。
【0057】
結果を表1に要約し、これは、混合(非置換)ククルビットウリルの濃度が0~10%w/w増加すると、混合(非置換)ククルビットウリルを含むフィルムが、トリメチルアミンと酪酸の両方の臭気を効果的に低減することを示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(c)(悪)臭の低減:感覚的性能
2つの5×5cmのトリメチルアミン充填ポリコットン(コットンとポリエステルの重ね組織)見本を、22.2μL(マイクロリットル)の水中45%w/vトリメチルアミンを各見本に添加することにより調製した。一方の見本を、長さ20cmのLLDPE(対照)フィルムチューブに入れ、他方を、2%w/w又は10%w/wいずれかの混合(非置換)ククルビットウリルを含む長さ20cmのLLDPEフィルムチューブに入れた。
【0060】
全フィルムチューブの末端を、ケーブルタイで密封し、各密封したチューブを、個々の10LのNalophan試料バッグに入れ、その後密封し、圧縮空気で膨張させ、20℃及び40~60%の相対湿度で1時間平衡化した。次に、Nalophanバッグのヘッドスペースを、盲検対比較試験において6人の訓練されたパネルが(悪)臭強度及びヘドニックトーンについて嗅いだ。
【0061】
臭気濃度と共に測定される臭気強度は、その検出閾値を上回る臭気の知覚強さである。臭気を、知覚できないから非常に強いまでの7段階の尺度(6極めて強い;5非常に強い;4強い;3明確;2弱い;1非常に弱い;0検出できない)で記載した。臭気は、同じ濃度で異なる知覚強度を有し得る。
【0062】
ヘドニックトーンは、濃度、強度及び頻度の増加と共に快適から不快に変化し得る臭気の快適性を測定する。分析は、臭気が不愉快なものになる濃度を決定し、9段階の快/不快尺度(+4極めて快適;+3非常に快適;+2快適;+1わずかに快適;0中立;-1やや不快;-2不快;-3非常に不快;-4極めて不快)で臭気を評価した。
【0063】
6人の訓練されたパネルは、様々なレベルのブタノールを含む1セットの嗅ぎ棒を使用し、欧州規格EN13725:空気質-動的嗅覚測定による臭気濃度の決定に従って臭気強さを広く評価する訓練を毎月受けた。各比較実験を三連で行った。
【0064】
結果を表2及び3に要約し、これは、2%w/wの混合(非置換)ククルビットウリルを含むLLDPEフィルムでは、2つのフィルム間の差が、反復1では有意性が低く(0.01<P<0.05)、反復2では非常に有意であり(P<0.005)、反復3では有意であった(0.005<P<0.01)ことを示す。Pは、両側t検定により計算されたように、結果がランダムに発生する確率であり、10%w/wの混合(非置換)ククルビットウリルを含むLLDPEフィルムでは、2つのフィルム間の差が、全3回の反復では非常に有意(P<0.005)であった。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
実施例2:平面又は多孔質支持体上の混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールのコーティング
ククルビットウリルは、悪臭を打ち消すのに有効な物質であることが示されており、エアロゾルとしての送達を可能にする液体形態(懸濁液)で用いられ得る。ククルビットウリルは、固体形態で有効であり得るが、単純な粉末として、ダスティング、吸入又は不要な沈着に関連する欠点があり得る。前述の欠点は、ククルビットウリルを基材に固定化することにより解決される。固定化は、ククルビットウリルと結合剤とを組み合わせ、得られた混合物をコーティングとして基材に塗布することにより達成され得る。他の物質は、コーティング中に含まれて、コート層の強化をもたらす又はコーティングの塗布を補助することができる。
【0068】
(a)試料調製
混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールを含有する水系懸濁液を、同等の質量の50%w/wの混合(非置換)ククルビットウリル水性スラリーと2.5%w/wのポリビニルアルコール水溶液とを組み合わせることにより調製した。得られた組成物は、水中1.25%w/wのポリビニルアルコール及び25%w/wの混合(非置換)ククルビットウリルを含んでいた。
【0069】
50%w/wの混合(非置換)ククルビットウリル水性スラリーを、水を粉末状の混合(非置換)ククルビットウリルに添加し、得られた混合物をガラス棒で撹拌することにより調製した。水中のポリビニルアルコール溶液を、ポリビニルアルコールの顆粒を撹拌しながら水に添加し、次に溶解が完了するまで混合物を90℃に加熱することにより調製した。2つのポリビニルアルコール試料を使用し、これらはいずれもSigma Aldrichから供給され、それぞれ加水分解度が88%であり、公称分子量が67kDa(Mowiol8-88)及び205kDa(Mowiol40-88)であり、それに対応して各々低MW及び高MWと称される。2.5%w/wのポリビニルアルコール溶液の1s-1及び20℃での粘度は、低MW及び高MW試料で各々3.2及び9.8mPa.sであった。
【0070】
1cm×5cmのボール紙見本を、浸漬により、手作業にて、混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールの水系懸濁液でコーティングし、次に45℃のオーブン内で一晩乾燥した。1cm×1cm×2cm片の人工スポンジを、混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールの水系懸濁液に浸すことにより充填し、過剰分を絞り出し、次に45℃のオーブン内で一晩乾燥した。混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールの水系懸濁液、したがって各基材試料上の混合(非置換)ククルビットウリルの量を質量で決定した。
【0071】
(b)(悪)臭の低減:ガスクロマトグラフィーヘッドスペース分析
4μL(マイクロリットル)のn-酪酸(モデル悪臭化合物)を、各支持体と一緒に20mLのヘッドスペースバイアルに添加した。悪臭濃度を、ガスクロマトグラフィーヘッドスペース分析(GC-HS)により測定した。分析は、90℃のヘッドスペースオーブン内で30分間平衡化した試料を含む60mのDB-ワックスカラム(Agilent Technologies)を使用した。10mLのヘッドスペースを分析のために抽出した。測定は全て三連で実施した。
【0072】
悪臭濃度を、n-酪酸の特性保持時間で検出したピーク面積を積分することにより決定した。悪臭の低減を、混合(非置換)ククルビットウリル含有基材の存在下での悪臭ピークの、対照試料(混合(非置換)ククルビットウリルなしの基材)の存在下で記録された悪臭ピークに対する比として計算した。
【0073】
i)ボール紙基材
結果を表4に提示し、これは、混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールのコーティングの非存在下での紙支持体と比較したn-酪酸濃度の低減率(R)に関して表している。悪臭の低減に対する混合(非置換)ククルビットウリルの効果を、ポリビニルアルコールありとなしの両方で決定した。様々なコーティングを比較するために、悪臭の低減Rを、各基材試料上の混合(非置換)ククルビットウリルの量で割った。
【0074】
【表4】
【0075】
ポリビニルアルコールありのコーティングされた形態で又は粉末としてのいずれかでの混合(非置換)ククルビットウリルの存在は、ヘッドスペースの悪臭濃度を著しく低減する。結合剤の存在及び非存在下での混合(非置換)ククルビットウリル1g当たりの悪臭の低減効率を得て、さらなる比較を提供する。
【0076】
ii)スポンジ基材
結果を表5に提示し、これは、混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールのコーティングの非存在下でのスポンジ支持体と比較したn-酪酸濃度の低減率(R)に関して表している。悪臭の低減に対する混合(非置換)ククルビットウリルの効果を、ポリビニルアルコールありとなしの両方で決定した。様々な試料を比較するために、悪臭の低減Rを、各試料上の混合(非置換)ククルビットウリルの量で割った。
【0077】
【表5】
【0078】
コーティングされた形態(ポリビニルアルコールあり)で又は水中懸濁液(ポリビニルアルコールなし)としてのいずれかの混合(非置換)ククルビットウリルの存在は、ヘッドスペースの悪臭濃度を約86%低減する。混合(非置換)ククルビットウリル1g当たりの悪臭の低減効率は、ポリビニルアルコールの存在及び非存在下で同様である。
【0079】
iii)基材なし
悪臭の低減実験を、基材の非存在下で、使用した混合(非置換)ククルビットウリルのレベルを最大1gに拡大して実施し、悪臭の低減結果を表6に要約した。表6のデータを、表4及び5のデータと、R(%)対混合(非置換)ククルビットウリルの質量(g)を示す図1において及びR/混合(非置換)ククルビットウリルの質量(%/g)対混合(非置換)ククルビットウリル(g)を示す図2においてグラフで比較する。
【0080】
図1を参照すると、基材なしでの混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコール(塗りつぶされた記号)は、ボール紙又はスポンジ基材上にコーティングされた遊離混合(非置換)ククルビットウリル又は混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールより悪臭の低減における効率がかなり低い。混合(非置換)ククルビットウリル及びポリビニルアルコールが基材上にコーティングされている場合、ポリビニルアルコールは、悪臭の低減に対する効果がないと思われる。
【0081】
図2を参照すると、ボール紙又はスポンジ基材上に固定化された混合(非置換)ククルビットウリルの悪臭の低減は、遊離混合(非置換)ククルビットウリル(基材なし)の悪臭の低減と区別がつかない。
【0082】
【表6】
【0083】
実施例2は、混合(非置換)ククルビットウリルが、悪臭性能効率を損なわずにボール紙又はスポンジ基材に拘束され得ることを実証する。
実施例3:ククルビットウリル凝集体
(a)試料調製
混合(非置換)ククルビットウリル凝集体を、入口温度100~130℃及び入口空気流60~130m/時の流動床噴霧造粒機実験ユニットGlattタイプで製造した。ポリビニルピロリドン(PVP Luvitex K30)及びポリビニルアルコール(PVOH Poval 4-88)を結合剤として使用した。混合(非置換)ククルビットウリル粉末を、予熱チャンバに導入し、水又は結合剤水溶液を、粉末に吹き付けて、直径1.0~3.15mmの混合(非置換)ククルビットウリル凝集体を形成した。ククルビットウリル凝集体の詳細を表7に要約する。
【0084】
【表7】
【0085】
混合(非置換)ククルビットウリルでコーティングされたガラスビーズを、入口温度100~130℃及び入口空気流80~120m/時の流動床噴霧造粒機実験ユニットGlattタイプで製造した。ガラスビーズ(Poraver、直径0.5~1mm又は1.0~2.0mm)を、混合(非置換)ククルビットウリルと1:1の質量比で、予熱チャンバに導入し、混合(非置換)ククルビットウリル及び結合剤(45%w/wの固体)の水性懸濁液を、ビーズに吹き付けた。ククルビットウリルでコーティングされたガラスビーズの詳細を表8に要約する。
【0086】
【表8】
【0087】
(b)(悪)臭の低減:ガスクロマトグラフィーヘッドスペース分析(GC-HS)
混合(非置換)ククルビットウリル凝集体及び混合(非置換)ククルビットウリルでコーティングされたビーズが望ましくない標的化合物を吸収する能力を、GC-HSにより決定した。
【0088】
モデル悪臭化合物は、n-酪酸、ベンゼン又はエチルベンゼンであった。4μL(マイクロリットル)の各悪臭化合物を、混合(非置換)ククルビットウリル凝集体又は混合(非置換)ククルビットウリルでコーティングされたビーズを含有する20mLのヘッドスペースバイアル内部の1.5mLのバイアルに入れた。悪臭化合物濃度を、ガスクロマトグラフィーヘッドスペース分析(GC-HS)により測定した。分析は、90℃(n-酪酸のみ)又は32℃(n-酪酸、ベンゼン及びエチルベンゼン)のヘッドスペースオーブン内で30分間平衡化した試料を含む60mのDB-ワックスカラム(Agilent Technologies)を使用した。10mLのヘッドスペースガスを分析のために抽出した。測定は全て三連で実施した。結果を表9~11に要約する。
【0089】
悪臭化合物濃度を、悪臭化合物の特性保持時間で検出したピーク面積を積分することにより決定した。低減を、混合(非置換)ククルビットウリル凝集体又は混合(非置換)ククルビットウリルでコーティングされたビーズの存在下での悪臭化合物ピークの、対照ピーク(ククルビットウリルなし)に対する比として計算した。試料を、(悪)臭化合物の混合(非置換)ククルビットウリルに対する1:10の質量比で一定量の混合(非置換)ククルビットウリルを使用して比較した。
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
混合(非置換)ククルビットウリル凝集体及び混合(非置換)ククルビットウリルでコーティングされたガラスビーズは、悪臭化合物を吸収する。吸収は温度範囲で起こる。
図1
図2
【国際調査報告】