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特表2022-543469ポリイソシアネートおよびその調製方法
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  • 特表-ポリイソシアネートおよびその調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ポリイソシアネートおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20221004BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20221004BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20221004BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20221004BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/76 014
C08G18/32 006
C09D175/04
C09J175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507661
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020072090
(87)【国際公開番号】W WO2021028300
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】201910738766.2
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】19201654.1
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】リ,ホンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】チュー, ヂョー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ピンボ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ユエフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ルイウェン
(72)【発明者】
【氏名】マレイカ,ロバート
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J034BA06
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CC03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034JA42
4J034QB19
4J034RA07
4J034RA08
4J038DG051
4J038DG131
4J038DG281
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA14
4J038MA15
4J038PC06
4J040EF051
4J040EF131
4J040EF301
4J040KA14
4J040KA23
4J040LA01
4J040MA08
(57)【要約】
本発明は、有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させることにより調製されたウレタン基含有ポリイソシアネート及びその調製方法、該ポリイソシアネートを含有する製品、並びにポリウレタン塗料及びポリウレタン接着剤におけるポリイソシアネート成分としてのそれらの使用に関する。ポリイソシアネートは以下の特性を有する:a.950±50の重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50の重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が、2~14であり;およびb.粘度が、2500mPa・s以下である。本発明のポリシアネートは、良好な貯蔵安定性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させることにより調製されるウレタン基含有ポリイソシアネートであって、前記有機ポリヒドロキシ化合物が、トリメチロールプロパンおよび任意の62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールを含有し、前記ポリイソシアネートは、以下の特性:
a. 950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が、2~14であること;および
b. 粘度が、2500mPa・s以下であること
を有し、
ここで、ポリイソシアネート成分およびその重量平均分子量は、DIN 55672-1:2016-03に従って、TOSOHからのHLC-8320 EcoSEC型ゲルクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標準および高性能ユニバーサルクロマトグラフィーカラム、4つのカラム(TSKgel G2000HXL、TSKgel G2500HXL、TSKgel G3000HXLおよびTSKgel G4000HXL、クロマトグラフィーカラム充填材料はスチレン-ジビニルベンゼン共重合体である)の群および示差屈折検出器を使用し、溶離剤としてTHFを使用し、流速1.0ml/分、圧力6.4MPaおよびカラム温度40℃で決定され、
およびポリイソシアネート成分の粘度は、DIN EN ISO 5:1994-10に従って、23℃でコーン/プレート測定装置を用いて測定される、前記ポリイソシアネート。
【請求項2】
前記950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が、3~13、好ましくは4~12、最も好ましくは6~12であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイソシアネート。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートの粘度が、2000mPa・s以下、好ましくは1800mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイソシアネート。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、以下の特徴:
c. 固形分が、50重量%以上90重量%以下であること;
d. 未反応の過剰のトルエンジイソシアネートの量が、0.5重量%以下であること;および
e. イソシアネート基の含有量が、13重量%~15重量%であること;
の1つ以上をさらに有し、上記の重量パーセント数の全ては、ポリイソシアネートの総重量が100重量%であることに基づくことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のポリイソシアネート。
【請求項5】
前記トリメチロールプロパンおよび前記任意の62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールの総重量が、前記有機ポリヒドロキシ化合物の総重量が100重量%であることに基づいて、99.7重量%~100重量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリイソシアネート。
【請求項6】
前記トリメチロールプロパンの前記62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールに対する重量比が、1:4~4:1、好ましくは3:7~3:1、最も好ましくは1:1~7:3であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のポリイソシアネート。
【請求項7】
前記62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンチレングリコール、ネオペンチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、2-エチルヘキシレングリコール、グリセロール及びペンタエリスリトールの1種以上であり、最も好ましくはジエチレングリコールであることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のポリイソシアネート。
【請求項8】
前記62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールがジエチレングリコールであり、トリメチロールプロパンのジエチレングリコールに対する重量比が、1:4~4:1、好ましくは3:7~3:1、最も好ましくは1:1~7:3であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のポリイソシアネート。
【請求項9】
前記系が、トルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物をさらに含有し、前記トルエンジイソシアネートの前記トルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物に対する重量比が、60:40以上、好ましくは90:10以上、最も好ましくは95:5以上であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のポリイソシアネート。
【請求項10】
前記トルエンジイソシアネートが、60:40~95:5、好ましくは65:35~90:10、最も好ましくは70:30~85:15の重量比の2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物であることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のポリイソシアネート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のポリイソシアネートの調製方法であって:
i. 有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させてプレポリマー反応混合物を製造し、反応温度が、85℃~120℃であり、反応時間が、1時間~24時間であること;
ii. 工程iで得られたプレポリマー反応混合物から分離することによって、未反応のトルエンジイソシアネートを除去すること;および
iii. 有機溶媒を加えて希釈し、ポリイソシアネートを製造すること
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記工程iにおいて、反応温度が、85℃~110℃、好ましくは90℃~98℃であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記工程iにおいて、反応時間が、1.2時間~7時間、好ましくは1.2時間~4時間であることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記系におけるイソシアネート基のヒドロキシ基に対する当量比が、3:1~20:1、好ましくは3.5:1~10:1、最も好ましくは3.8:1~8:1であることを特徴とする、請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載のポリイソシアネートを含有する製品。
【請求項16】
前記製品が、ポリウレタン塗料およびポリウレタン接着剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
ポリウレタン塗料におけるポリイソシアネート成分としての、請求項1~10のいずれかに記載のポリイソシアネートの使用。
【請求項18】
ポリウレタン接着剤におけるポリイソシアネート成分としての、請求項1~10のいずれかに記載のポリイソシアネートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させることにより調製されたウレタン基含有ポリイソシアネート、その調製方法、それを含有する製品、およびポリウレタン塗料中のポリイソシアネート成分としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリヒドロキシ化合物、特に、低分子量有機ポリヒドロキシ化合物およびトルエンジイソシアネート(TDI)から誘導されるウレタン基を有するポリイソシアネートは長い間よく知られており、例えば、DE 870 400、DE953 012およびDE 1 090 196に記載されているポリイソシアネートである。この種のポリイソシアネートは、ポリウレタン塗料(ポリウレタンコーティングとしても知られる)およびポリウレタン接着剤、特に、木材コーティングならびに接着剤の分野において非常に重要である。DE-PS 1090 186およびUS-PS 3,183,112は、ポリヒドロキシ化合物を5~10倍モル量のトルエンジイソシアネートと反応させ、続いて薄膜蒸発器中での分離によって過剰の出発ジイソシアネートを除去し、次いで対応する溶媒を添加することによる、市販のポリイソシアネート製品、例えば、Desmodur L75 EA、の調製を記載している。CN1793194Aは、ポリウレタン硬化剤中の遊離イソシアネートモノマーの分離技術も開示している。
【0003】
上記のポリイソシアネートの実際の使用において、いくつかの製品は、特により低い貯蔵温度で、ある期間の間、使用または貯蔵された後に、製品溶液中で凝集または固体沈殿さえ示すことがある。ある期間加熱および撹拌した後、凝集または固体沈殿さえも含む上記製品は、製品の品質および性能に影響を及ぼすことなく、再び透明な溶液に変化するが、追加の加熱処理操作は製品の使用の容易さに影響を及ぼし、したがって、貯蔵中の製品の凝集または固体沈殿さえも回避することはポリイソシアネート製造者にとって難題である。
【0004】
CN109824865Aは、貯蔵安定性のあるウレタン硬化剤を調製するためのプロセスを開示している。高分子量ポリマー成分は、貯蔵安定性の低下を引き起こすと考えられる。そこで、過剰のトルエンジイソシアネートがヒドロキシ化合物と反応した後、反応混合物に1~15のpKa値を有する有機酸を加え、次いで薄膜蒸発器により過剰のトルエンジイソシアネートモノマーを高温で分離する。添加された有機酸は、薄膜蒸発中の反応混合物中の遊離ヒドロキシル基と高反応性イソシアネート基との反応を促進し、調製された硬化剤の残留ヒドロキシル含有量を減少させ、硬化剤の貯蔵安定性を高めると考えられる。しかしながら、ジブチルホスフェートのような有機酸の添加は、プロセスの複雑さおよび原料コストを増加させるだけでなく、硬化剤の適用を制限する。例えば、このような硬化剤は、食品との接触には適さないかもしれない。
【0005】
CN1793194Aは、低分子量有機ポリヒドロキシン化合物に高分子量ポリエチレングリコール200をさらに加えることにより、硬化剤の貯蔵安定性を向上させる。高分子量ポリエチレングリコール200はトルエンジイソシアネートと反応して、より高い分子量を有する成分を形成し、粘度の増大およびイソシアネート基含有量の減少を引き起こし得て、それは産業用途にとって不利であることが、産業において一般に理解されている。さらに、原料成分の種類の増加は、プロセスの複雑さおよび原料コストを増加させる。
【0006】
したがって、原料成分およびプロセスの複雑さを増大させることなく、低粘度および良好な貯蔵安定性を有するポリイソシアネートの開発が、ポリウレタン産業において依然として緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 870 400
【特許文献2】DE953 012
【特許文献3】DE 1 090 196
【特許文献4】DE-PS 1090 186
【特許文献5】US-PS 3,183,112
【特許文献6】CN1793194A
【特許文献7】CN109824865A
【発明の概要】
【0008】
「硬化」という用語は、塗料または接着剤の液体状態から固体状態に変化するプロセスを指す。
【0009】
「接着剤」という用語は、硬化性および粘性化学成分を含む混合物を指し、バインダーおよび/またはシーラントおよび/またはグルーの同義語としても使用される。
【0010】
「ポリウレタン」という用語は、ポリウレタンウレアおよび/またはポリウレタンポリウレアおよび/またはポリウレアおよび/またはポリチオウレタンを意味する。
【0011】
「トルエンジイソシアネート」という用語は、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、および2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートとの混合物の総称を指す。
【0012】
本発明のポリイソシアネートは実際には溶液の形態であり、ここで、その溶媒は、当技術分野で公知のものであり得る。
【0013】
本発明の目的は、有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させて調製されたウレタン基含有ポリイソシアネート、その調製方法、それを含有する製品、およびポリウレタン塗料におけるポリイソシアネート成分としてのその使用を提供することである。
【0014】
本発明によれば、有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させることにより調製されたウレタン基含有ポリイソシアネートであって、前記有機ポリヒドロキシ化合物が、トリメチロールプロパンおよび任意の62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールを含有し:
a. 950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が、2~14であり、
b. 粘度が、2500mPa・s以下である
ことを特徴とする、ウレタン基含有ポリイソシアネートである。
【0015】
本発明の一態様によれば、ポリイソシアネートを調製するための方法であって、
i. 有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させてプレポリマー反応混合物を製造し、反応温度が85℃~120℃であり、反応時間が1時間~24時間であること;
ii. 工程iで得られたプレポリマー反応混合物から分離することによって、未反応のトルエンジイソシアネートを除去すること;および
iii 有機溶媒を加えて希釈し、ポリイソシアネートを製造すること;
を含む、ポリイソシアネートを調製するための方法が提供される。
【0016】
本発明の一態様によれば、上記ポリイソシアネートを含む製品が提供される。
【0017】
本発明の一態様によれば、ポリウレタン塗料におけるポリイソシアネート成分としての上記ポリイソシアネートの使用が提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、ポリウレタン接着剤におけるポリイソシアネート成分としての上記ポリイソシアネートの使用が提供される。
【0019】
本発明のウレタン基含有ポリイソシアネートは、有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させて調製され、イソシアネート基の含有量が高く、モノマートルエンジイソシアネートの含有量が少なく、粘度が低いだけでなく、長期間の保存において、凝集しにくいという、すなわち貯蔵安定性が良好であるという利点を有する。
【0020】
本発明のポリイソシアネートを含有するポリウレタン塗料、特に架橋剤として本発明のポリイソシアネートを含有する二成分ポリウレタン塗料、により形成された塗膜は、高い耐摩耗性を有し、様々な異なる基材への優れた接着性を有する。塗膜は硬質であるが、依然として弾性であり、塗膜は容易に変色しない。それで塗装された明るい色の木材の質感(texture)もまた、明らかに効果的であり得る。
【0021】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例5のポリイソシアネート5から得られたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)である。図1はまた、ポリイソシアネート5の、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比の計算を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートの系を反応させることにより調製されるウレタン基含有ポリイソシアネートであって、ここで、有機ポリヒドロキシ化合物がトリメチロールプロパンおよび任意の62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールを含有し、ポリイソシアネートが以下の特性:a.800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積と、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積との比が、2~14であること、およびb.粘度が、2500mPa・s以下であること、を有するウレタン基含有ポリイソシアネートを提供する。本発明はまた、上記ポリイソシアネートの調製方法、それを含有する製品、およびポリウレタン塗料および接着剤におけるポリイソシアネート成分としてのそれらの使用を提供する。
【0024】
ポリイソシアネート
950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比は、好ましくは3~13、さらに好ましくは4~12、最も好ましくは6~12である。
【0025】
本発明のポリイソシアネート成分およびその重量平均分子量は、DIN 55672-1:2016-03に従って、TOSOHからのHLC-8320 EcoSEC型ゲルクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標準および高性能ユニバーサルクロマトグラフィーカラム、4つのカラム(TSKgel G2000HXL、TSKgel G2500HXL、TSKgel G3000HXLおよびTSKgel G4000HXL、クロマトグラフィーカラム充填材料はスチレン-ジビニルベンゼン共重合体である)の群および示差屈折検出器を使用し、溶離剤としてTHFを使用し、流速1.0ml/分、圧力6.4MPaおよびカラム温度40℃で決定される。
【0026】
ポリイソシアネートの粘度は、好ましくは2000mPa・s以下であり、最も好ましくは1800mPa・s以下である。粘度は、DIN EN ISO 5:1994-10に従って、23℃でコーン/プレート測定装置を用いて測定される。
【0027】
好ましくは、ポリイソシアネートの粘度が、2000mPa・s以下であり、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が、4~12である。
【0028】
最も好ましくは、ポリイソシアネートの粘度が、1800mPa・s以下であり、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が、6~12である。
【0029】
ポリイソシアネートは、好ましくは以下の特徴の1つ以上をさらに有する:
c. 固形分が50重量%以上90重量%以下であること;
d. 未反応の過剰のトルエンジイソシアネートの量が、0.5重量%以下であること、および
e イソシアネート基の含有量が、13重量%~15重量%であること;
上記の重量パーセント数の全ては、ポリイソシアネートの総重量が100重量%であることに基づく。
【0030】
ポリイソシアネートの固形分は、ポリイソシアネートの全重量が100重量%であることに基づいて、好ましくは60重量%~80重量%、さらに好ましくは70重量%~77重量%、最も好ましくは73重量%~77重量%である。
【0031】
固形分(不揮発分とも呼ばれる)は、120℃の乾燥温度、2時間の乾燥時間、75mmの試験容器直径、および2.00+/-0.02gの試料重量を使用して、DIN EN ISO 3251に従って決定される。
【0032】
ポリイソシアネートの未反応の過剰のトルエンジイソシアネートの量は、ポリイソシアネートの総重量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0.4重量%以下である。
【0033】
未反応の過剰のトルエンジイソシアネートの含量は、内部標準を使用して、DIN EN ISO 10283:2007-11に従ってガスクロマトグラフィーにより決定される。
【0034】
本発明のポリイソシアネートは、低レベルの未反応の過剰のトルエンジイソシアネートを含有し、これは、職業衛生、特に手動操作における職業衛生を改善し、本発明のポリイソシアネートの適用分野を拡張する。
【0035】
GPCからの分析結果は、本発明のポリイソシアネート中に複数のポリイソシアネート成分が同時に存在することを示し、特定の成分は、使用された有機ポリヒドロキシ化合物およびトルエンジイソシアネート(TDI)含有量に依存する。とりわけ、主成分は、系中の単一の有機ポリヒドロキシ化合物を、その官能価に対応するTDI分子と反応させることにより形成され;その主成分に加えて、系中の2つ以上の有機ポリヒドロキシ化合物をTDIおよび主成分と反応させ続けることによって形成されるより高分子量の成分が含まれる。驚くべきことに、我々は、単一の有機ポリヒドロキシ化合物をその官能価に対応するTDI分子と反応させることにより形成される成分のGPCピークの高分子量側にショルダーピークが時々現れることを見出し、そして驚くべきことに、そのショルダーピークはまた、ポリイソシアネートのイソシアネート基含量を増加させ、そしてポリイソシアネートの粘度を著しく増加させることなくポリイソシアネートの貯蔵安定性を改善することに寄与することを見出した。特に、トリメチロールプロパンとTDIとの反応により形成されるポリイソシアネートについては、GPCにおける950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量(Mw)を有する成分ピークの積分面積の比が、ポリイソシアネート製品の貯蔵安定性に影響を与える。
【0036】
トルエンジイソシアネート
トルエンジイソシアネートは、好ましくは2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートとの混合物であり、2,4-トルエンジイソシアネート対2,6-トルエンジイソシアネートの重量比は、60:40~95:5、好ましくは65:35~90:10、最も好ましくは70:30~85:15である。
【0037】
トルエンジイソシアネートは、好ましくは気相ホスゲン化によって調製される。
【0038】
2-クロロ-6-イソシナト-メチルシクロヘキサジエン(CIMCH)は、異なる比率でTDI中に存在し得る3つの二重結合異性体の形態であり得る。これらは、例えば、TDI製造において、使用されるTDA中に含まれるI-アミノ-2-メチル-シクロヘキセノンから形成され、これは次に、TDAの製造において、TDAの部分核水素化およびアミノ官能基の水による置換によってジニトロトルエン(DNT)から形成することができる。また、ケト官能基は、トルエンのニトロ化によるDNTの製造において酸化攻撃によって既に比例的に導入されており、最初にニトロクレゾールが形成され、その後の水素化において上記のI-アミノ-メチル-2-シクロヘキセノンを形成することができることも可能である。
【0039】
トルエンジイソシアネートは、5重量ppm未満、好ましくは3重量ppm未満の2-クロロ-6-イソシアネート-メチルシクロヘキサジエン(CIMCH)の含有量を有する。このようなTDIグレードは、例えば、EP I 413 571 B1に記載されているように、隔壁蒸留塔の手段による蒸留によって、予備濃縮された粗TDI溶液から2-クロロ-6-イソシアナト-メチルシクロヘキサジエンを意図的に除去することによって得ることができる。しかし、特に好ましくは、TDAの気相ホスゲン化によって製造され、2-クロロ-6-イソシアナト-メチルシクロヘキサジエンの含有量が1ppm検知限界未満であるトルエンジイソシアネートである。このようなグレードのトルエンジイソシアネートは、例えば、中国のCovestro Deutschland AGのCaojing生産拠点から入手可能である。
【0040】
成分2-クロロ-6-イソシアナト-メチルシクロヘキサジエンの明確な特性決定のために、2つの独立した分析法を用いた。ガスクロマトグラフィー技術の手段により、約80重量%の2,4含量を有する種々のトルエンジイソシアネートグレードを、二次成分スペクトルにおけるそれらの相違について試験した。その後のカップリングガスクロマトグラフィー-質量分析により、169g/molの分子量が、これまで未知の3つの化合物(2つの異性体を含むCIMCH)に割り当てられた。当業者に公知の方法で断片化からさらなる構造情報を得ることが可能であった。複雑な核共鳴分光法('H-NMR、'H-COSY、'H-、'HTOCSYおよび'H-、'C-HMBC)の手段により、以下に示す構造をm/z 169をもつ3つの成分に割り当てることができた。
【化1】
【0041】
目的を持った方法の開発により、Hewlett PackardからのHPシリーズ6890ガスクロマトグラフ中のMacherey-Nagel製のOptima 5 HTカラム(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を使用して、ガスクロマトグラフィー-分光法の手段によるCIMCHの異性体の検知限度を1重量ppmに設定することができた。
【0042】
トルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物
系は、トルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物をさらに含んでもよく、トルエンジイソシアネートのトルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物に対する重量比は、好ましくは60:40以上、さらに好ましくは90:10以上、最も好ましくは95:5以上である。
【0043】
系中のトルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物は、イソシアネート基を有するあらゆる他の化合物、例えば、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatic)または芳香族結合イソシアネート基を有するモノイソシアネート、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族結合イソシアネート基を有するジイソシアネート、トリイソシアネートおよび/またはより高い官能性のイソシアネート、ならびに上記のジイソシアネートおよびトリイソシアネートから誘導され、オリゴマー化、例えば三量化によって調製された変性イソシアネートであってもよい。
【0044】
脂肪族、脂環式、芳香脂肪族または芳香族結合イソシアネート基を有するモノイソシアネートは、好ましくは以下の1種以上である:ステアリルイソシアネートおよびナフチルイソシアネート。
【0045】
脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族結合イソシアネート基を有するジイソシアネートは、好ましくは以下の1種以上である:1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシナトシクロヘキサン、1,3-および1,4-ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシナトメチルシクロヘキサン(IMCI)、ジ(イソシナトメチル)ノルボルナン、2,4'-および4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン、ならびにそれより高い同族体、1,5-ジイソシアナトナフタレンおよびジプロピレングリコールジイソシアネート。
【0046】
トリイソシアネートおよび/またはより高い官能性のイソシアネートは、好ましくは以下の1種以上である:4-イソシアナトメチルオクタン-1,8-ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)およびウンデカン-1,6,11-トリイソシアネート。
【0047】
系中のトルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物は、最も好ましくは以下の1種以上である:1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、および上記のジイソシアネートから誘導され、オリゴマー化、例えば三量化によって調製された変性イソシアネート。
【0048】
系がトルエンジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートとは異なるイソシアネート化合物の両方を含む場合、未反応のモノマーイソシアネートの総量(すなわち、未反応の過剰のトルエンジイソシアネートの量とトルエンジイソシアネートとは異なる未反応の過剰のイソシアネート化合物の量との合計)は、ポリイソシアネートの総重量が100重量%であることに基づいて、好ましくは0.5重量%以下であり、さらに好ましくは0.4重量%以下である。
【0049】
未反応の過剰のモノマートルエンジイソシアネートの含量およびトルエンジイソシアネートとは異なる未反応の過剰のイソシアネート化合物の含量は、内部標準を用いてDIN EN ISO 10283:2007-11に従って、ガスクロマトグラフィーにより決定される。
【0050】
有機ポリヒドロキシ化合物
トリメチロールプロパンおよび任意の62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールの総重量は、有機ポリヒドロキシ化合物の総重量が100重量%であることに基づいて、好ましくは99.7重量%~100重量%、最も好ましくは100重量%である。
【0051】
トリメチロールプロパンの62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールに対する重量比は、好ましくは1:4~4:1、さらに好ましくは3:7~3:1、最も好ましくは1:1~7:3である。
【0052】
62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールは、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール(1,2-buylene glycol)、1,3-ブチレングリコール(1,3-buylene glycol)、1,4-ブチレングリコール(1,4-buylene glycol)、1,5-ペンチレングリコール、ネオ-ペンチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、2-エチルヘキシレングリコール、グリセロールおよびペンタエリスリトールの1種以上であり、最も好ましくはジエチレングリコールである。
【0053】
62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールは、最も好ましくはジエチレングリコールであり、トリメチロールプロパンのジエチレングリコールに対する重量比は、好ましくは1:4~4:1、さらに好ましくは3:7~3:1、最も好ましくは1:1~7:3である。
【0054】
プロセス
本発明のポリイソシアネートの調製方法は以下を含む:
i. 有機ポリヒドロキシ化合物および過剰のトルエンジイソシアネートを含有する系を反応させてプレポリマー反応混合物を生成し、反応温度が85℃~120℃であり、反応時間が1時間~24時間であること;
ii. 工程iで得られたプレポリマー反応混合物から分離することによって、未反応のトルエンジイソシアネートを除去すること;および
iii. 有機溶媒を加えて希釈し、ポリイソシアネートを製造すること;
ここで、有機ポリヒドロキシ化合物は、トリメチロールプロパンおよび任意の62~146g/molの分子量を有する2~4価アルコールを含有し;ポリイソシアネートは、以下の特徴を有する:
a. 950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比は、2~14であり;および
b. 粘度は、2500mPa・s以下である。
【0055】
工程iにおいて、反応温度は、好ましくは85℃~110℃、最も好ましくは90℃~98℃である。
【0056】
工程iにおいて、反応時間は、好ましくは1.2時間~7時間、最も好ましくは1.2時間~4時間である。本発明の工程iにおける反応時間には、有機ポリヒドロキシ化合物とトルエンジイソシアネートとを混合する時間と、反応温度で系を反応させる時間とが含まれる。
【0057】
系のイソシアネート基のヒドロキシ基に対する当量比は、好ましくは3:1~20:1、さらに好ましくは3.5:1~10:1、最も好ましくは3.8:1~8:1である。
【0058】
工程iiの分離は、好ましくは蒸留である。
【0059】
好ましくは、具体的には工程iiにおいて、プレポリマー反応混合物を、真空で、100℃~180℃で、好ましくは120℃~170℃で薄膜蒸発器を通して蒸留して、未反応の過剰のトルエンジイソシアネートを除去して、半硬質から硬質の粗生成物を得る。
【0060】
具体的には、工程iiiにおいて、工程iiで得られた半硬質から硬質の粗生成物に有機溶媒を加えて希釈し、ポリイソシアネートを製造する。
【0061】
有機溶媒は、本産業において公知のもの、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸エチルグリコール(酢酸エチルグリコール)、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸メトキシプロピル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、N-メチルピロリドン、メチルエチルケトン、溶剤ナフサ、高度に置換された芳香族化合物(Solvent naphtha(登録商標)、Solvesso(登録商標)、Shellsol(登録商標)、Isopar(登録商標)、Nappar(登録商標)およびDiasol(登録商標)の商標で市販されているものなど)、ベンゼン同族体、テトラリン、デカリンおよび6個を超える炭素原子を有するアルカン、フタレート、スルホン酸塩およびリン酸塩などの従来の可塑剤、ならびにそのような希釈剤および溶媒の混合物でよい。さらなる好適な溶媒は、例えば、DE-A 4 428 107に記載されているような脂肪族ジイソシアネートをベースとしたポリイソシアネートであり、これはポリイソシアネートに揮発性溶媒および希釈剤を含ませないか、または揮発性溶媒および希釈剤をより少なく含有させる。
【0062】
有機溶媒は、ポリイソシアネートの固形分を50重量%~90重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらに好ましくは70重量%~77重量%、最も好ましくは73重量%~77重量%となることができるような量で添加されることが好ましい。
【0063】
この方法は、バッチ式または連続的に実施することができる。
【0064】
製品
製品は、好ましくはポリウレタン塗料およびポリウレタン接着剤からなる群から選択される。
【0065】
ポリウレタン塗料は、1成分ポリウレタン塗料または2成分ポリウレタン塗料でよい。
【0066】
2成分ポリウレタン塗料は、本発明のポリイソシアネートと、ポリウレタン塗料技術において知られている1種以上の以下のものを含むことができる:ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、および任意の低分子量ポリオール。
【0067】
2成分ポリウレタン塗料はまた、本発明のポリイソシアネートと、1種以上の以下のものを含んでもよい:ブロックトポリケチミンおよびオキサゾリジンのポリアミン。ここで、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する当量比は、0.8:1~3.0:1、好ましくは0.9:1~1.1:1である。
【0068】
2成分ポリウレタン塗料は、触媒をさらに含んでいてもよい。触媒は、ポリウレタン塗料の硬化を促進するために使用される。
【0069】
触媒は、当技術分野で知られているもの、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、N,N'-ジメチルピペラジンなどのアミン、または塩化第二鉄(III)、塩化亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸スズ(II)、ジブチルスズ(IV)ジラウレートまたはグリコール酸モリブデンなどの金属塩でよい。
【0070】
本発明のポリイソシアネートを含む1成分ポリウレタン塗料または2成分ポリウレタン塗料は、種々の異なる基材上に優れた接着特性を有する硬質でまだ弾性のある塗膜を形成することができる。また、塗膜は耐摩耗性が高く、変色しにくいという利点を有し、木製品の分野に適しており、特に、淡色木材を用いた木製品の分野に適している。
【実施例
【0071】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中の用語の定義が、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と矛盾する場合、本明細書中に記載される定義が優先する。
【0072】
特に断らない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表すすべての数は、「約」という用語によって修飾されると理解される。したがって、反対に示されない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、所望に応じて変化させることができる近似値である。
【0073】
本明細書で使用されるように、「および/または」は、言及された要素の1つまたは全てを指す。
【0074】
本明細書中で使用される場合、「以上(not lower than)」および「以下(not higher than)」は特に示されない限り、列挙された値自体を包含する。
【0075】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」および「含む(containing)」は、記載された要素のみの存在、および記載された要素に加えて他の記載されていない要素の存在を包含する。
【0076】
本発明の分析測定は特に断らない限り、23℃で行う。
【0077】
本発明のポリイソシアネート成分およびその重量平均分子量は、DIN 55672-1:2016-03に従って、TOSOHからのHLC-8320 EcoSEC型ゲルクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標準および高性能ユニバーサルクロマトグラフィーカラム、4つのカラム(TSKgel G2000HXL、TSKgel G2500HXL、TSKgel G3000HXLおよびTSKgel G4000HXL、クロマトグラフィーカラム充填材料はスチレン-ジビニルベンゼン共重合体である)の群および示差屈折検出器を使用し、溶離剤としてTHFを使用し、流速1.0ml/分、圧力6.4MPaおよびカラム温度40℃で決定される。
【0078】
イソシアネート基(NCO)含量は、DIN-EN ISO 11909:2007-05に従って滴定法で決定され、測定データは、遊離および潜在的に遊離のNCO含量を含む。
【0079】
ポリイソシアネートの貯蔵安定性試験:ポリイソシアネート試料を密封し、-5℃のフリーザー中で10週間貯蔵し、試料が透明または濁っているかどうかを見るために試料を冷光源で照射する。試料が透明である場合、貯蔵安定性は良好であると考えられ、試料が濁っている場合、貯蔵安定性は不良であると考えられる。
【0080】
原材料および試薬
DESMODUR(登録商標)T80:Covestro Polymer Co、Ltd.から市販されている、約80重量%の2,4-トルエンジイソシアネートおよび20重量%の2,6-トルエンジイソシアネートを含有するトルエンジイソシアネート。
【0081】
トリメチロールプロパン:Nantong Baichuan New Materials Co、Ltd.から市販されている。
【0082】
ジエチレングリコール:Yangzi Petrochemical-BASF Co、Ltd.から市販されている。
【0083】
酢酸エチル:Sigma Aldrich(Shanghai)Trading Co、Ltd.から市販されている。
【0084】
2-エチルヘキサノール:Sigma Aldrich(Shanghai)Trading Co、Ltd.から市販されている。
【0085】
Borchi(登録商標)Kat22:OMG Borchers GmbHから市販されている触媒。
【0086】
NACURE(登録商標)5076:King Industriesから市販されている停止剤。
【0087】
実施例および比較例
実施例1
800gのDESMODUR(登録商標)T80を1000mlの反応フラスコに予め添加した。フラスコを油浴中で98℃に加熱した。60分以内に、52gのトリメチロールプロパンと28gのジエチレングリコールからなるプレミックスポリオール混合物をフラスコに連続的に投入して反応を行った。98℃で3時間攪拌することにより反応を行って反応混合物を製造し、2段階薄膜蒸留(170℃/165℃、p≦0.5mbar)の手段によって反応混合物から過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去し、次いで酢酸エチルを添加してウレタン基含有ポリイソシアネート1を製造した。
【0088】
実施例2
800gのDESMODUR(登録商標)T80を1000mlの反応フラスコに予め添加した。フラスコを油浴中で95℃に加熱した。60分以内に、52gのトリメチロールプロパンと28gのジエチレングリコールからなるプレミックスポリオール混合物をフラスコに連続的に投入して反応を行った。95℃で2時間攪拌することにより反応を行って反応混合物を製造し、2段階薄膜蒸留(170℃/165℃、p≦0.5mbar)の手段によって反応混合物から過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去し、次いで酢酸エチルを添加してウレタン基含有ポリイソシアネート2を製造した。
【0089】
実施例3
1800gのDESMODUR(登録商標)T80を、2000mlのダブルジャケットガラス反応容器に予め添加した。容器を85℃に加熱した。250分以内に、166gのトリメチロールプロパンと89gのジエチレングリコールからなるプレミックスポリオール混合物を容器内に連続的に注入して反応を行った。反応中、反応熱は、加熱および冷却機能を有する熱循環器によって容器から安全に除去された。反応は等温で行った。反応は85℃で2時間撹拌して行い、反応混合物を製造した。その後、2段階薄膜蒸留(170℃/165℃、p≦0.5mbar)の手段により過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去した後、酢酸エチルを加えてウレタン基含有ポリイソシアネート3を製造した。
【0090】
実施例4
連続反応系は4つのカスケードジャケット反応器からなり、各反応器は400Lの容積を有する。4つのカスケード反応器を最初にDESMODUR(登録商標)T80を装入し、4つの反応器の反応温度をそれぞれ90℃、95℃、95℃および95℃に設定した。それぞれの反応器において、反応から放出された反応熱は、冷却および加熱温調系の手段によって安全に除去された。反応は等温で行った。反応の始めに、DESMODUR(登録商標)T80(室温)および有機ポリヒドロキシ化合物(60℃)を8.5:1の重量比率で連続的にカスケードの第1の反応器に投入し、反応器内部の温度を、ジャケットを介して90℃に維持した。有機ポリヒドロキシ化合物は、重量比が65:35であるトリメチロールプロパンとジエチレングリコールとの混合物であった。4つのカスケード反応器における平均滞留時間を約1.5時間に維持するために、全体の供給流量を制御した。2段階薄膜蒸留(170℃/160℃、p≦0.5mbar)の手段により過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去し、次いで酢酸エチルを添加してウレタン基含有ポリイソシアネート4を製造した。
【0091】
実施例5
連続反応系は4つのカスケードジャケット反応器からなり、各反応器は400Lの容積を有する。4つのカスケード反応器に最初にDESMODUR(登録商標)T80を装入し、4つの反応器の反応温度をそれぞれ90℃、95℃、95℃および95℃に設定した。それぞれの反応器において、反応から放出された反応熱は、冷却および加熱温調系の手段によって安全に除去された。反応は等温で行った。反応の始めに、DESMODUR(登録商標)T80(室温)および有機ポリヒドロキシ化合物(60℃)を8.7:1の重量比率で連続的にカスケードの第1の反応器に投入し、反応器内部の温度をジャケットを介して90℃に維持した。有機ポリヒドロキシ化合物は、重量比が65:35であるトリメチロールプロパンとジエチレングリコールとの混合物であった。4つのカスケード反応器における平均滞留時間を約1.2時間に維持するために、全体の供給流量を制御した。2段階薄膜蒸留(170℃/160℃、p≦0.5mbar)の手段により過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去し、次いで酢酸エチルを添加してウレタン基含有ポリイソシアネート5を製造した。
【0092】
実施例6
連続反応系は4つのカスケードジャケット反応器からなり、各反応器は400Lの容積を有する。4つのカスケード反応器に最初にDESMODUR(登録商標)T80を装入し、4つの反応器の反応温度をそれぞれ85℃、90℃、90℃および90℃に設定した。それぞれの反応器において、反応から放出された反応熱は、冷却および加熱温調系の手段によって安全に除去された。反応は等温で行った。反応の始めに、DESMODUR(登録商標)T80(室温)および有機ポリヒドロキシ化合物(60℃)を8.7:1の重量比率で連続的にカスケードの第1の反応器に投入し、反応器内部の温度をジャケットを介して85℃に維持した。有機ポリヒドロキシ化合物は、重量比が65:35であるトリメチロールプロパンとジエチレングリコールとの混合物であった。4つのカスケード反応器における平均滞留時間を約1.5時間に維持するために、全体の供給流量を制御した。2段階薄膜蒸留(170℃/160℃、p≦0.5mbar)の手段により過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去した後、酢酸エチルを加えてウレタン基含有ポリイソシアネート6を製造した。
【0093】
実施例7
1700gのDESMODUR(登録商標)T80を、2000mlのダブルジャケットガラス反応容器に予め添加した。容器を85℃に加熱した。45分以内に、110gのトリメチロールプロパンと60gのジエチレングリコールからなるプレミックスポリオール混合物を容器内に連続的に注入して反応を行った。反応中、反応熱は、加熱および冷却機能を有する熱循環器によって容器から安全に除去された。反応は等温で行った。反応は85℃で2時間撹拌して行い、反応混合物を製造した。その後、2段階薄膜蒸留(135℃/130℃、p≦0.05mbar)の手段により、過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去した後、酢酸エチルを加えてウレタン基含有ポリイソシアネート7を製造した。
【0094】
比較例1
1700gのDESMODUR(登録商標)T80を、2000mlのダブルジャケットガラス反応容器に予め添加した。容器を80℃に加熱した。45分以内に、110gのトリメチルロールプロパンと60gのジエチレングリコールからなるプレミックスポリオール混合物を容器内に連続的に注入して反応を行った。反応中、反応熱は、加熱および冷却機能を有する熱循環器によって容器から安全に除去された。反応は等温で行った。反応は80℃で1時間撹拌して行い、反応混合物を製造した。次に、2段階薄膜蒸留(135℃/130℃;p≦0.05mbar)の手段により、過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去した後、酢酸エチルを加えてウレタン基含有比較ポリイソシアネート1を製造した。
【0095】
比較例2
1411gのDESMODUR(登録商標)T80を、2000mlのダブルジャケットガラス反応容器に予め添加した。容器を85℃に加熱した。60分以内に、91gのトリメチロールプロパンおよび49gのジエチレングリコールからなるプレミックスポリオール混合物を容器に連続的に投入して反応を実施した。反応中、反応熱は、加熱および冷却機能を有する熱循環器によって容器から安全に除去された。反応は等温で行った。反応は85℃で1時間撹拌して行い、反応混合物を製造した。得られた反応混合物を約98℃に加熱した。0.26gのBorchi(登録商標)Kat22溶液(2-エチルヘキサノール中、10重量%)を添加し、98℃で1時間撹拌することによって反応を行った。0.17gのNACURE(登録商標)5076を添加し、1時間撹拌した。次に、2段階薄膜蒸留(127℃/140℃;p≦0.05mbar)の手段により過剰なモノマートルエンジイソシアネートを除去し、次いで酢酸エチルを添加してウレタン基含有比較ポリイソシアネート2を製造した。
【0096】
ポリイソシアネートの仕様および貯蔵安定性試験結果
表1は、ポリイソシアネート1~7および比較ポリイソシアネート1~2についての仕様および貯蔵安定性試験結果を列挙する。
【表1】
【0097】
注:積分面積の比とは、ゲルクロマトグラフで測定したGPCにおいて、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比をいう。
【0098】
実施例1~7から、本発明のポリイソシアネートは、イソシアネート基の含有量が高く、モノマートルエンジイソシアネートの含有量が低く、粘度が低いだけでなく、良好な貯蔵安定性も有することがわかる。比較例1から、比較ポリイソシアネートのゲルクロマトグラムにおいて、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が、14より高い場合には、比較ポリイソシアネートの貯蔵安定性が低いことがわかる。比較例2から、Borchi(登録商標)Kat22溶液を添加して得られた比較ポリイソシアネートのGPCにおいて、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比率が、2未満であると、比較ポリイソシアネートの貯蔵安定性は向上するものの、比較ポリイソシアネートの粘度が2500mPa・sを超え、実用的な工業用途に不利であることが分かる。
【0099】
実施例2~6と実施例1および7とを比較すると、ポリイソシアネートの粘度が2000mPa・s以下であり、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比が4~12である場合、ポリイソシアネートは良好な貯蔵安定性を有し、工業的に所望の低粘度要件により一致する。実施例3~6に示すように、ポリイソシアネートの粘度が1800mPa・s以下であり、950±50g/molの重量平均分子量を有するショルダーピークの積分面積に対する800±50g/molの重量平均分子量を有する成分ピークの積分面積の比率が6~12である場合、ポリイソシアネートは良好な貯蔵安定性を有し、産業上より人気がある。
【0100】
本発明は、上記の特定の詳細に限定されず、および本発明は、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化されてもよいことは、当業者には明らかである。したがって、本出願に開示される実施例はすべての点から例示的かつ非限定的であると見なされるべきであり、したがって、本発明の範囲は、明細書ではなく特許請求の範囲によって示される。したがって、特許請求の範囲またはその均等物の意味および範囲内に入る限り、いかなる変更も本発明とみなされるべきである。
図1
【国際調査報告】