(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(54)【発明の名称】包装用フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20221004BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20221004BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20221004BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20221004BHJP
C08J 7/048 20200101ALI20221004BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221004BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20221004BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B27/36 ZBP
C08L101/16
C08L67/02
C08L67/04
C08J7/048 CFD
B65D65/40 D BRQ
B65D65/42 A
B65D65/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507666
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020071976
(87)【国際公開番号】W WO2021023763
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】102019000014154
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592081988
【氏名又は名称】ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】バスティオリ,カティア
(72)【発明者】
【氏名】ゲスティ ガルシア,セバスティア
【テーマコード(参考)】
3E086
4F006
4F100
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD24
3E086BA15
3E086BA24
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4J200DA18
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4J200EA06
4J200EA07
4J200EA08
4J200EA11
4J200EA21
(57)【要約】
本発明は、連続相を構成するポリヒドロキシアルカノエートと不連続相を構成する脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルとの混合物からなる450MPa以上の弾性率を有する少なくとも1つの生分解性層(i)と、好ましくは気体及び液体に対するバリア効果を有することができる少なくとも1つのコーティング層(ii)とを備えるフィルムに関する。前記層(i)の表面は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定して10nm以上45nm以下の二乗平均平方根粗さSqを有する。このフィルムは食品包装用に特に適する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
450MPaより高い弾性率を有する少なくとも1つの生分解性層(i)と、少なくとも1つのコーティング層(ii)とを備えるバリアフィルムであって、層(i)は、連続相を構成するポリヒドロキシアルカノエートと不連続相を構成する脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルとを含み、更に、0.01~5wt%の2又は複数の官能基を有する架橋剤及び/又は鎖延長剤を含む混合物からなり、層(i)の表面は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定される10nm以上45nm以下の二乗平均平方根粗さSqにより特徴付けられる、バリアフィルム。
【請求項2】
前記混合物が、0.01~0.45wt%の2又は複数の官能基を有する架橋剤及び/又は鎖延長剤を含む、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
前記架橋剤及び/又は鎖延長剤が、イソシアネート、パーオキシド、カルボジイミド、イソシアヌレート、オキサゾリン、エポキシ、アンヒドリド又はジビニルエーテル基及びこれらの混合物を含む2又は複数の官能基を有する化合物から選択される、請求項1又は2に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
層(i)が、ASTMD882(23℃、相対湿度50%、Vo 50mm/分)に従って測定して150%以上400%以下の破断伸度(ε
b)値を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項5】
前記ポリヒドロキシアルカノエート層(i)が、以下:乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレート ポリエステル及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシアルカノエートが、少なくとも70重量%以上の、1又は2以上のポリ乳酸を含む、請求項5に記載のバリアフィルム。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステル層(i)が、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4ブチレンスクシネート-co-1,4ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンブラシレート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)からなる群より選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項8】
前記2又は複数の官能基を有する架橋剤及び/又は鎖延長剤が、パーオキシド基を有し、且つフィルム層(i)中に、層(i)を構成する全混合物の0.01~0.1重量%の量で含まれる、請求項1~7のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項9】
前記2又は複数の官能基を有する架橋剤及び/又は鎖延長剤が、エポキシ基を有し、且つフィルム層(i)中に、層(i)を構成する全混合物の0.05~0.3重量%の量で含まれる、請求項1~7のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項10】
前記コーティング層(ii)が、気体及び液体に対するバリア効果を有することができる、請求項1~9のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項11】
前記コーティング層(ii)が、前記層(i)に接する、天然及び/又は合成であり得る有機材料の第1の層と、前記第1の層を覆う金属材料の第2の層とを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項12】
ポリマー層(iii)(多層フィルム)をさらに備える請求項1~11のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項13】
前記層(iii)が、ポリヒドロキシアルカノエート、層(i)に含まれるものと同一又は異なる二酸-ジオールタイプの脂肪族/芳香族ポリエステル、110℃以下の融点を有し、好ましくは層(i)に含まれるものから選択される脂肪族ポリエステル、及びこれらの混合物から選択される1又は2以上のポリマーを含む、請求項12に記載のバリアフィルム。
【請求項14】
食品包装のための請求項1~13のいずれか1項に記載のバリアフィルムの使用。
【請求項15】
連続相としてポリヒドロキシアルカノエートを、不連続相として少なくとも1つの脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含む混合物からなる、450MPa以上の弾性率を有する生分解性フィルムの、バリア効果を有する包装材の製造のための使用。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載のバリアフィルムを含む包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、様々なタイプの包装、特に袋、フィルム、蓋などの一次食品包装の製造に使用するのに特に適したフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージの製造には、十分な加工性及び機械的ストレスへの耐性を確保する特性を有するフィルムが必要である。
良好な機械的特性は、特に食品包装においては、内容物を外的要因から保護し、食品を十分に保存して保存期間を延長する能力とも関連づけられなければならない。これら機能は、主に、液体及び酸素などの気体に対するバリア効果を有するフィルムを使用することで実現される。
フィルムのベースとなる素材の選択は、包装の透過性に直接影響するが、(例えば水蒸気及び酸素に対する)適切なバリア性を達成するために、包装フィルムを、コーティング層の塗布などの特殊な処理に付することができる。
【0003】
しかし、バリア効果の実効性は、コーティング層とフィルムの構成材料との十分な接着性に依存し、したがって、フィルムの表面特性により影響される。
同様に、包装用フィルムは、その表面特性に基づいて、高い又は低い効率性で、印刷及び加飾などの他の表面処理にも対応する。
包装分野では、機械的特性及びバリア性は、今や、一次利用を終えた後に環境中に廃棄物を蓄積することなく分解可能な生分解性材料を使用する必要性にも関連付けられている。
【0004】
食品包装用フィルムの製造に代表的に用いられる生分解性材料は、主に、ポリ乳酸をベースとしており、その剛性及び透明性は他の生分解性材料では実現できない。例えばWO 2011/123682 A1は、PLA製の二軸配向包装フィルムを開示する。より柔軟トな感触及びより静かな音を達成するために、このPLAフィルムは第2のポリエステルを含み、この第2のポリエステルは、二軸配向の結果、PLAベース層内で層状の内部層を形成する。
しかし、ポリ乳酸は、表面コーティング処理との接着が適切でなく、その結果、最終的な包装がバリア効果が損なわれるという限界がある。例えば、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂などの粘着性樹脂を使用する必要がある場合には、包装の全体の生分解性が損なわれることがある。
つまり、生分解性包装フィルムの製造業者は、良好な機械的特性及び生分解性を有するがバリア性が最適でないフィルムを使用するか、逆に機械的特性及び生分解性に関しては低い性能を容認して包装のバリア性を高めるかの選択を迫られる問題に直面する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、これら異なる要求をバランスよく満たすことができ、したがって良好な生分解性、良好な機械的特性(特に高弾性率)及び妥当なバリア性により特徴づけられるフィルムを開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の問題点を克服することを可能にするものである。実際、驚くべきことに、脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルが、特定量の架橋剤及び/又は鎖延長剤の存在下に、1又は2以上のポリヒドロキシアルカノエートからなる連続相に分散した生分解性フィルムは、気体及び液体に対するバリア効果を有するコーティング処理などの表面処理がなされることに特に適した接着特性を有することが見出されている。この組成及び450MPa以上の弾性率を有するフィルムは、1又は2以上のコーティング層と効果的に結合させることができ、(例えば食品用の)バリア効果を有する包装材としての使用に適切であり得る。
【0007】
したがって、本発明の目的は、連続相を構成するポリヒドロキシアルカノエートと不連続相を構成する脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルとを含み、更に0.01~5重量%の、2又は複数の官能基を有する架橋剤及び/又は鎖伸長剤を含む混合物からなる450MPa以上の弾性率を有する少なくとも1つの生分解性層(i)と、(好ましくは気体及び液体バリア効果を有することができる)少なくとも1つのコーティング層(ii)とを備えるフィルムである。前記層(i)の表面は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定して10nm以上45nm以下の二乗平均平方根粗さSqを有する。
【0008】
本発明はまた、連続相としてポリヒドロキシアルカノエートを、不連続相として少なくとも1つの脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含む混合物からなる、450MPa以上の弾性率を有する生分解性フィルムの、バリア効果を有する包装材の製造のための使用に関する。
一態様によれば、本発明によるフィルムの層(i)は、混合物の総重量に対して、10~49重量%、好ましくは20~45重量%、より好ましくは30~45重量%の脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルと、90~51重量%、好ましくは80~55重量%、より好ましくは70~55重量%のポリヒドロキシアルカノエートとの混合物を含む。
好ましくは、前記混合物は、前記脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルと、前記ポリヒドロキシアルカノエートと、任意成分としての架橋剤及び/又は鎖延長剤とからなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による包装用フィルムを、該フィルムを構成する個々の層(i)及び(ii)に言及しながら、より詳細に説明する。
【0010】
層(i)
本発明によるフィルムの層(i)に関して、これは、ポリヒドロキシアルカノエートを含む連続相を有する混合物からなる。
このポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは、乳酸ポリエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレート又はこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、連続相を構成するポリヒドロキシアルカノエートは、少なくとも70重量%の1以上の乳酸ポリエステルを含む。
【0011】
好ましい実施形態において、前記乳酸ポリエステルは、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリD-乳酸ステレオコンプレックス、50モル%以上の前記乳酸ポリエステルを含むコポリマー及びこれらの混合物からなる群より選択される。
特に好ましいのは、L-乳酸若しくはD-乳酸に由来する繰り返し単位又はそれらの組合せを少なくとも95重量%含み、50000以上の分子量Mw及び50~700Pa*s、好ましくは80~500Pa*sのせん断粘度(T=190℃、せん断速度=1000s-1、D=1mm、L/D=10のASTM規格D3835に従って測定)を有する乳酸ポリエステルである。
本発明による特に好ましい実施形態では、乳酸ポリエステルは、少なくとも95重量%のL-乳酸由来単位、≦5%のD-乳酸由来繰り返し単位を含み、135~175℃の範囲の融点、55~65℃の範囲のガラス転移温度(Tg)、1~50g/10分の範囲のMFR(190℃及び2.16kgのISO1133-1に従って測定)を有する。このような特性を有する乳酸ポリエステルの市販品の例は、IngeoTM Biopolymer製品4043D、3251D及び6202Dである。
本発明によるフィルム層(i)はまた、不連続相として少なくとも1つの脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステル(好ましくは脂肪族/芳香族ポリエステル)を含む。
【0012】
脂肪族/芳香族ポリエステルの場合、これは、好ましくは、以下のものを含む:
(a)全ジカルボン酸成分に対して、次のものを含むジカルボン酸成分:
a1)30~70モル%、好ましくは40~60モル%の、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸に由来する単位;
a2)70~30モル%、好ましくは60~40モル%の、少なくとも1つの飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する単位;
a3)0~5モル%の、少なくとも1つの不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する単位
(b)ジオール成分の合計に対して、次のものを含むジオール成分:
b1)95~100モル%、好ましくは97~100モル%の、少なくとも1つの飽和脂肪族ジオールに由来する単位;
b2)0~5モル%、好ましくは0~3モル%の、少なくとも1つの不飽和脂肪族ジオールに由来する単位。
【0013】
成分a1の芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、フタル酸型の芳香族ジカルボン酸、好ましくは、テレフタル酸又はイソフタル酸、より好ましくはテレフタル酸、及び、複素環式ジカルボン酸芳香族化合物、好ましくは2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、より好ましくは2,5-フランジカルボン酸、それらのエステル、塩並びにそれらの混合物から選択される。
好ましい実施形態において、前記芳香族ジカルボン酸は次のものを含む:
- 1~99モル%、好ましくは5~95モル%、より好ましくは10~80モル%のテレフタル酸、そのエステル又は塩;
- 99~1モル%、好ましくは95~5モル%、より好ましくは90~20%の2,5-フランジカルボン酸、そのエステル又は塩。
【0014】
成分a2の飽和脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、C2-C24、好ましくはC4-C13、より好ましくはC4-C11の飽和ジカルボン酸、それらのC1-C24、好ましくはC1-C4のアルキルエステル、それらの塩及び混合物から選択される。好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、2-エチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシ酸及びそれらのC1-C24アルキルエステルから選択される。本発明による好ましい実施形態では、飽和脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びこれらの混合物を含む。
【0015】
成分a3の不飽和脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、イタコン酸、フマル酸、4-メチレンピメリン酸、3,4-ビス(メチレン)ノナン二酸、5-メチレンノナン二酸、それらのC1-C24、好ましくはC1-C4のアルキルエステル、それらの塩及び混合物から選択される。本発明による好ましい実施形態では、不飽和脂肪族ジカルボン酸は、少なくとも50モル%、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上のイタコン酸、そのC1-C24、好ましくはC1-C4エステルを含む混合物を含んでなる。より好ましくは、不飽和脂肪族ジカルボン酸はイタコン酸からなる。
【0016】
成分b1の飽和脂肪族ジオールに関して、これらは、好ましくは、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジエタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール、ジアルキレングリコール及びポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの分子量100~4000のポリアルキレングリコール並びにこれらの混合物から選択される。好ましくは、ジオール成分は、少なくとも50モル%の、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールから選択される1又は2以上のジオールを含む。より好ましくは、ジオール成分は、1,4-ブタンジオールを含むか、又は1,4-ブタンジオールからなる。
【0017】
成分b2の不飽和脂肪族ジオールに関して、これらは、好ましくは、シス-2-ブテン-1,4ジオール、トランス-2-ブテン-1,4ジオール、2-ブチン-1,4ジオール、シス-2-ペンテン-1,5-ジオール、トランス-2-ペンテン-1,5-ジオール、2-ペンチン-1,5-ジオール、シス-2-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス-2-ヘキセン-1,6-ジオール、2-ヘキセン-1,6-ジオール、シス-3-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス-3-ヘキセン-1,6-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオールから選択される。
【0018】
脂肪族ポリエステルの場合、これは、好ましくは、以下のものを含む:
(c)全ジカルボン酸成分に対して、次のものを含むジカルボン酸成分:
(c1)95~100モル%の、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸に由来する単位;
(c2)0~5モル%の、少なくとも1つの不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する単位;
(d)全ジオール成分に対して、次のものを含むジオール成分:
(d1)95~100モル%の、少なくとも1つの飽和脂肪族ジオールに由来する単位;
(d2)0~5モル%の、少なくとも1つの不飽和脂肪族ジオールに由来する単位。
【0019】
成分c1の飽和脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、飽和のC2-C24、好ましくはC4-C13、より好ましくはC4-C11ジカルボン酸、それらのC1-C24、好ましくはC1-C4アルキルエステル、それらの塩及び混合物から選択される。好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、2-エチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシ酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及びそれらのC1-C24アルキルエステルから選択される。
【0020】
成分c2の不飽和脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、イタコン酸、フマル酸、4-メチル-ピメリン酸、3,4-ビス(メチレン)ノナン二酸、5-メチレン-ノナン二酸、それらのC1-C24、好ましくはC1-C4アルキルエステル、それらの塩及び混合物から選択される。本発明による好ましい実施形態では、不飽和脂肪族ジカルボン酸は、少なくとも50モル%、好ましくは60モル%以上、好ましくは65モル%以上のイタコン酸、そのC1-C24、好ましくはC1-C4エステルを含む混合物を含んでなる。より好ましくは、不飽和脂肪族ジカルボン酸はイタコン酸からなる。
【0021】
成分d1の飽和脂肪族ジオールに関して、これらは、好ましくは、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール、ジアルキレングリコール及びポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの分子量100~4000のポリアルキレングリコール並びにこれらの混合物から選択される。ジオール成分は、好ましくは、少なくとも50モル%の、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールから選択される1又は2以上のジオールを含む。より好ましくは、ジオール成分は、1,4-ブタンジオールを含むか、又は1,4-ブタンジオールからなる。
【0022】
成分d2の不飽和脂肪族ジオールに関して、これらは、好ましくは、シス-2-ブテン-1,4-ジオール、トランス-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、シス-2-ペンテン-1,5-ジオール、トランス-2-ペンテン-1,5-ジオール、2-ペンチン-1,5-ジオール、シス-2-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス-2-ヘキセン-1,6-ジオール、2-ヘキセン-1,6-ジオール、シス-3-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス-3-ヘキセン-1,6-ジオールから選択される。
【0023】
特に好ましい実施形態では、本発明による層(i)の脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルは、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-co-アジペート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンブラシレート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンセバケート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-co-1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-co-1,4-ブチレンスクシネート-co-1,4-ブチレンテレフタレート)を含む群から選択される。
【0024】
本発明による層(i)の脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルはまた、有利には、少なくとも1つのヒドロキシ酸に由来する繰り返し単位を、ジカルボン酸成分の総モル数に対して0~49モル%、好ましくは0~30モル%の量で含み得る。好都合なヒドロキシ酸の例は、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、8-ヒドロキシヘプタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、乳酸又はラクチドである。ヒドロキシ酸は、そのまま又はプレポリマー/オリゴマーとして鎖中に挿入されてもよいし、予め二酸又はジオールと反応させてもよい。
【0025】
非末端官能基を含む2つの官能基を有する長い分子も、ジカルボン酸成分の総モル数に対して10モル%を超えない量で添加され得る。例は、ダイマー酸、リシノール酸及びエポキシ官能基を有する酸、並びに、分子量200~10000のポリオキシエチレンである。
ジアミン、アミノ酸又はアミノアルコールもまた、ジカルボン酸成分の総モル数に対して30モル%までの割合で存在し得る。
【0026】
本発明による層(i)の脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルの製造プロセスにおいて、有利には、分岐生成物を得るために、複数の官能基を有する1又は2以上の分子を、ジカルボン酸成分の総モル数に対して0.1~3モル%の量で添加し得る。これらの分子の例は、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、クエン酸、ジペンタエリスリトール、モノアンヒドロソルビトール、モノアンヒドロマンニトール、酸トリグリセリド、ポリグリセロールなどである。
前記脂肪族及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステル層(i)の分子量Mnは、好ましくは、≧20000、より好ましくは≧40000である。代わりに、分子量の多分散指数(Mw/Mn)に関して、これは、好ましくは1.5~10、より好ましくは1.6~5、さらに好ましくは1.8~2.7である。
【0027】
分子量Mn及びMwはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。測定は、40℃に保持したクロマトグラフィーシステムで、直列の2つのカラムのセット(粒径5μm及び3μmの混合ポロシティ)、屈折率検出器、溶離液としてクロロホルム(フロー0.5ml/分)及び参照標準としてポリスチレンを用いて行うことができる。
層(i)の脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族芳香族ポリエステルのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは500~1g/10分、より好ましくは100~3g/10分、更に好ましくは15~3g/10分である(標準規格ISO1133-1「Plastics - determination of the melt mass-flow rate (MFR) and melt volume flow rate (MVR) of thermoplastics - Part 1: Standard method」に従って190℃/2.16kgで測定)。
前記脂肪族及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステル層(i)の末端酸基の含有量は、好ましくは100meq/kg、より好ましくは60meq/kg以下、更に好ましくは40meq/kgである。
【0028】
末端酸基の含有量は、以下のように測定することができる。1.5~3gのポリエステルを、60mlのクロロホルムとともに100mlフラスコに入れる。ポリエステルを完全に溶解した後、25mlの2-プロパノールと、分析直前に1mlの脱イオン水を加える。こうして得られた溶液を、予め標準化したエタノール中NaOH溶液で滴定する。適切なインジケーター(例えば非水性溶媒中の酸-塩基滴定用ガラス電極)を用いて滴定終点を決定する。末端酸基の含有量を、エタノール中NaOH溶液の消費量から、次式に従って算出する:
【数1】
式中:
Veq = サンプル滴定終了点におけるエタノール中NaOH溶液の量(ml);
Vb = ブランク滴定の間にpH = 9.5に到達するために必要なエタノール中NaOH溶液の量(ml);
T = エタノール中NaOH溶液の濃度(モル/リットル);
P = サンプルの重量(グラム)。
【0029】
好ましくは、層(i)の前記脂肪族及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルは、0.3dl/gより大きい、好ましくは0.3~2dl/gの間、より好ましくは0.4~1.1dl/gの間の固有粘度(25℃で濃度0.2g/dlのCHCl3中の溶液に対してUbbelohde粘度計で測定)を有する。
層(i)の前記脂肪族及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルは、生分解性である。本発明による目的のためには、生分解性ポリマーは、EN13432に従う生分解性ポリマーを意味する。
層(i)の前記脂肪族及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルは、当該技術分野で公知のプロセスのいずれかにより合成することができる。特に、層(i)の前記脂肪族及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステルは、有利には、縮合重合反応によって得ることができる。
【0030】
合成プロセスは、有利には、適切な触媒の存在下で実施することができる。好適な触媒の例は、スタノイン酸誘導体などの有機金属スズ化合物、オルトブチルチタネートなどのチタン化合物、Al-トリイソプロピルなどのアルミニウム化合物、アンチモンと亜鉛とジルコニウムの化合物、及びこれらの混合物を含む。
ポリエステルの製造に有利に用いることができる合成プロセスの例は、国際出願WO 2016/050963に記載されている。
【0031】
本発明によるフィルム層(i)は、全混合物の0.01~5重量%、好ましくは0.01~4重量%、より好ましくは0.05~4重量%、さらに好ましくは0.1~3重量%の少なくとも架橋剤及び/又は鎖延長剤を含む。
本発明による前記架橋剤及び/又は鎖延長剤は、イソシアネート、パーオキサイド、カルボジイミド、イソシアヌレート、オキサゾリン、エポキシ、アンヒドリド又はジビニルエーテル基及びこれらの混合物を含む2又複数の官能基を有する化合物から選択される。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による生分解性フィルム層(i)は、全混合物に対して0.01~0.45重量%の、2又は複数の官能基を有する架橋剤及び/又は鎖延長剤を含む。この態様によれば、前記2又は複数の官能基を有する架橋剤及び/又は鎖伸長剤は、好ましくは、パーオキシド基又はエポキシ基を有する。
【0032】
前記架橋剤及び/又は鎖延長剤、好ましくはパーオキシド基又はエポキシ基を有する前記架橋剤及び/又は鎖延長剤は、層(i)を構成する混合物のレオロジーを向上させ、その表面特性に影響する。これら2又は複数の官能基を有する化合物、好ましくはパーオキシド基又はエポキシ基を有する化合物は、フィルム層(i)中に、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.35重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下の量で含有される。
【0033】
パーオキシド基を有する、2又は複数の官能基を有する化合物に関して、これらは、好ましくは、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、イソノナノイルパーオキシド、ジ-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α-(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサ-3-イン、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、3,6,9-トリメチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナン、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート及びこれらの混合物から選択される。
一態様によれば、これら2又は複数の官能基を有する化合物は、パーオキシド基を有し、好ましくは、層(i)を構成する全混合物の0.01~0.1重量%、より好ましくは0.01~0.05重量%の量でフィルム層(i)に含有される。
パーオキシド基を有するこれら化合物のラジカル作用機構により、ゲルをポリマーマトリクスに形成し得る。
【0034】
エポキシ基を有する化合物は、ゲル形成を最小化するため好ましい。
本発明による混合物中で有利に用いることができるエポキシ基を有する2又は複数の官能基を有する化合物の例は、エポキシ化油に由来するすべてのポリエポキシド及び/又はスチレン-グリシジルエーテル-メチルメタクリレート及び/又はグリシジルエーテルメチルメタクリレートであり、好ましくは分子量1000~10000の範囲内で、分子当たりのエポキシド数1~30、好ましくは5~25の範囲内のものである。エポキシドは次を含む群より選択される:ジエチレングリコール ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール ジグリシジルエーテル、ポリグリシジルエーテル グリセロール、ポリグリシジルエーテル ジグリセロール、1,2-エポキシブタン、ポリグリシジルエーテル ポリグリセロール、イソプレンジポキシド及びシクロ脂肪族エポキシド、1,4-シクロヘキサンジメタノール ジグリシジルエーテル、2-メチルフェニルエーテル グリシジル2-メチルフェニルエーテル、プロポキシル化グリセロール、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリグリシジルソルビトール、グリセロール ジグリシジルエーテル、テトラグリシジル メタ-キシレンジアミンエーテル及びビスフェノールA-グリシジルエーテル並びにこれらの混合物。
1つの好ましい実施形態によれば、これら2又は複数の官能基を有する化合物は、エポキシ基を有し、層(i)を構成する全混合物の0.05~0.3重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%の量でフィルム層(i)に含有される。
【0035】
本発明の一態様によれば、前記架橋剤及び/又は鎖延長剤は、加水分解に対する安定性をさらに向上させ、カルボジイミド基を有する、2又は複数の官能基を有する化合物を含む。カルボジイミド基を有する2又は複数の官能基を有する化合物(これらは、本発明による混合物に好ましく用いられる)は、ポリ(シクロオクチレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-ジメチレンシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(エチレンカルボジイミド)、ポリ(ブチレンカルボジイミド)、ポリ(イソブチレンカルボジイミド)、ポリ(ノニレンカルボジイミド)、ポリ(ドデシレンカルボジイミド)、ポリ(ネオペンチレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-ジメチレンフェニレンカルボジイミド)、ポリ(2,2',6,6'-テトライソプロピルジフェニレンカルボジイミド)(Stabaxol(登録商標)D)、ポリ(2,4,6-トリイソプロピル-1,3-フェニレンカルボジイミド)(Stabaxol(登録商標)P-100)、ポリ(2,6-ジイソプロピル-1,3-フェニレンカルボジイミド)(Stabaxol(登録商標)P)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(4,4'-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)、ポリ(クメンカルボジイミド)、p-フェニレンビス(エチルカルボジイミド)、1,6-ヘキサメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,8-オクタメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,10-デカメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,12-ドデカメチレンビス(エチルカルボジイミド)及びこれらの混合物から選択される。
【0036】
一態様によれば、架橋剤及び/又は鎖延長剤は、イソシアネート基を含む2又は複数の官能基を有する少なくとも1つの化合物を含む。より好ましくは、架橋剤及び/又は鎖延長剤は、少なくとも25重量%の、イソシアネート基を含む2又は複数の官能基を有する1又は2以上の化合物を含む。特に好ましいものは、イソシアネート基を有する2又は複数の官能基を有する化合物と、エポキシ基を含む2又は複数の官能基を有する化合物との混合物であり、さらに好ましくは、少なくとも75重量%の、イソシアネート基を有する2又は複数の官能基を有する化合物を含む混合物である。
【0037】
イソシアネート基を含む2又は複数の官能基を有する化合物は、好ましくは、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレン-4-クロロジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4-ジフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3-メチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエステルジイソシアネート、2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、2,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキシルジイソシアネート、1-メチル-2,6-シクロヘキシルジイソシアネート、ビス-(シクロヘキシルイソシアネート)メタン、2,4,6-トルエントリイソシアネート、2,4,4-ジフェニルエーテルトリイソシアネート、ポリメチレン-ポリフェニル-ポリイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、3,3'-ジトリレン-4,4-ジイソシアネート、4,4'-メチレン-ビス-(2-メチルフェニルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート及びこれらの混合物から選択される。1つの好ましい実施形態では、イソシアネート基を含む化合物は、4,4-ジフェニルメタン-ジイソシアネートである。
【0038】
本発明の1つの好ましい実施形態において、層(i)を構成する混合物中に存在する架橋剤及び/又は鎖延長剤は、パーオキシ基を有し及び/又はエポキシ基、好ましくはスチレン-グリシジルエーテル-メチルメタクリレートタイプのエポキシ基を有し、及び/又はイソシアネート基、好ましくは4,4-ジフェニルメタン-ジイソシアネートを有し、及び/又はカルボジイミド基を有する化合物を含む。
本発明の1つの特に好ましい実施態様では、架橋剤及び/又は鎖延長剤は、スチレン-グリシジルエーテル-メチルメタクリレートタイプのエポキシ基を含む化合物を含む。
イソシアネート基、パーオキシド基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、オキサゾリン基、エポキシ基、アンヒドリド基又はジビニルエーテル基を有する2又は複数の官能基を有する化合物と合わせて、触媒も用いて当該反応性基の反応性を高めてもよい。ポリエポキシドの場合、脂肪酸の塩が好ましくは用いられ、さらに好ましくはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛が用いられる。
【0039】
本発明によるフィルム層(i)を構成する混合物はまた、任意付加的に、可塑剤、UV安定剤、滑剤、核剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、リグニン、有機酸、酸化防止剤、防黴剤、ワックス、プロセス助剤及びポリマー成分(好ましくは上記の脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族/芳香族ポリエステル以外のビニルポリマー及び二酸ジオールポリエステルを含む群から選択されるポリマー成分)を含んでなる群より選択される1又は2以上の添加剤を含有してもよい。
各添加剤は、混合物の全重量の好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満の量で存在する。
【0040】
本発明による利点の1つは、層(i)を構成する混合物が従来の材料と比較して顕著な加工性を有する結果、スリップ剤及び/又は離型剤のような添加物及び加工助剤の助けがなくても、容易なフィルム形成が可能であることに表される。
スリップ剤及び/又は離型剤は、例えば、オレアミド、エルカミド、エチレン-ビス-ステアリルアミドなどの生分解性脂肪酸アミド、グリセロールオレエート又はグリセロールステアレートなどの脂肪酸エステル、ステアレートなどの脂肪酸ケン化物、シリカ又はタルクなどの無機剤である。スリップ剤及び/又は離型剤の中でも、シリカが好ましい。
有利な一態様によれば、層(i)の混合物は、混合物の重量に対して0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下のスリップ剤及び/又は離型剤含有量を有する。さらに好ましくは、スリップ剤及び/又は離型剤は存在しない。このことにより、接着性を変化させ得る添加剤の表面への移行現象を制限することが可能になる。
【0041】
1つの好ましい態様によれば、本発明による層(i)の混合物は、20~1g/10分、より好ましくは17~1.5g/10分、さらに好ましくは14~2g/10分のMFR値(上記ISO1133-1に従って190℃/2.16kgで測定)を有する。
本発明によるフィルム層(i)は、有利には、フィルム成形プロセス、好ましくはバブルフィルム成形、又はキャスト押出しプロセスによって得ることができる。バブル膜形成プロセスは、好ましくは、2~5のブローアップ比(BUR又は横延伸)値及び5~60の機械方向(MD)のドローダウン比(DDR又は縦延伸)値によって特徴づけられる。本発明の目的に関しては、DDRは押出機から押し出された溶融材料の引抜方向の伸びの測定値として定義され、BURはバブル径とダイ径との比として定義される。有利には、バブルブローの間、プロセスパラメータは、DDR/BUR値が1.5~18、好ましくは2.5~10の比を有するように設定される。
【0042】
フィルム層(i)は、好ましくはバブルブローフィルムである。
その製造後、フィルム層(i)は、好ましくは、フィルム形成プロセスと直列にも不連続的にも、さらなる延伸プロセスに供されない。前記延伸プロセスは、実際、フィルムの均一性、ひいてはコーティング層の均一性に影響を与え、そのためバリア効果を低下させ得る。
本発明の一態様によれば、フィルム層(i)は、主として一方向に配向したフィルム、すなわちその分子鎖が主として一方向(代表的には機械方向)に配向するフィルムである。
【0043】
本発明によるフィルム層(i)は、包装材の最終的な性能を高めるために1又は2以上の処理に付することもできる。
層(i)は、コーティング層(ii)の接着性を高め、剥離を防止するための活性化処理(例えば、プラズマ処理、コロナ処理又はプライミング処理などの表面張力を高める処理)に付され得る。
しかし、本発明による主な利点の1つは、まさに層(i)の表面特性にあり、これにより、マイルドな処理でさえ又は活性化処理がない場合でさえ、効果的な接着を達成することが可能となる。
【0044】
実際、本発明による層(i)の表面は、驚くべきことに、一般に使用されているPLAフィルムより大きな粗さを有する。当該技術分野では、粗さは、コーティング層の接着、ひいてはフィルムのバリア効果に負の影響を有すると考えられている。にもかかわらず、特定範囲の粗さを有する本発明のフィルムは、接着剤層を必要としなくとも、高度の接着性を示す。特に、面積10μm×10μmで原子間力顕微鏡(AFM)により測定した二乗平均平方根粗さ(Sq)は、有利には10nm以上、好ましくは15nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上であり、有利には45nm以下、35nm以下、好ましくは30nm以下である。好ましい範囲は10~45nmであり、最も好ましいのは15~30nmである。この測定値は、例えば、長さ225ミクロン、固有周波数190kHz、力定数48N/m、先端半径10nm以下のモノリシックシリコンマイクロレバー(カンチレバー)を用いて、256ポイント×256ラインの分解能にてタッピングモードで動作させて得られる。
【0045】
この二乗平均平方根粗さ値Sqは、次式に従って、平均線からの実プロファイル偏差の二乗平均平方根として算出される:
【数2】
式中、Nは考慮した領域(例えば10μm×10μm)における総取得数であり、rは各取得点における平均線からの実プロファイルの偏差である。
【0046】
したがって、平均粗さとは異なり、Sq値は、測定表面上で測定器が検出するピーク及びトラフの振幅にも影響され、このことにより、大きく又は小さく波打っている表面を区別することが可能となる。
本発明による層(i)の特徴的な起伏が、コーティング層(ii)の接着を容易にする効果を有すると考えられる。上記条件下でAFM分析を行う場合、この表面も、代表的には90nm以上、有利には95nm以上、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上、さらに好ましくは200nm以上である、平均線と比較した最大プロファイル高さ(最大ピーク)と最大プロファイル谷深さ(最大トラフ)とのSy差を示す。有利には、Sy値は300nm以下、好ましくは280nm以下である。
層(i)の厚さは、有利には120μm以下、より有利には80μm以下、好ましくは50μ以下、より好ましくは30μm以下である。この層の厚さは、マイクロメーター又は電子顕微鏡などの任意の適切な技術によって測定することができる。
【0047】
本発明によるフィルムは、層(i)の最適な機械的特性にも起因して、包装材の製造に応用することができる。
特に、本発明の層(i)を構成する混合物を用いて得られるフィルムは、有利には、ASTMD882(23℃、相対湿度50%、Vo 50mm/分)に従って測定して、400%以下、好ましくは350%以下の破断伸度(εb)値を有する。本発明による層(i)を構成する混合物を用いて得られるこのようなフィルムは、有利には、ASTMD882(23℃、相対湿度50%、Vo 50mm/分)に従って測定して、150%以上の破断(εb)値を有する。
【0048】
また、本発明による層(i)を構成する混合物を用いて得られるフィルムは、有利には、ASTM D882(23℃、相対湿度50%、Vo 50mm/分)に従って測定して、450MPa以上、好ましくは500MPa以上、より好ましくは1000MPa以上の弾性率(E)値を有する。1つの特に有利な態様によれば、本発明による層(i)は、1500MPa超、好ましくは1700MPa以上の弾性率(E)値を有する。
有利には、本発明によるフィルム層(i)を構成する混合物は、生分解性である。本発明による目的に関しては、「生分解性」は、EN13432による生分解性を意味する。
本発明による硬質フィルムの層(i)は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。
光学特性に関して、1つの好ましい実施形態によれば、本発明によるフィルムは、80%以上、より好ましくは90%以上の透過率値、65%以下、より好ましくは55%以下のヘイズ値、及び20%以上、より好ましくは40%以上の透明度(clarity)(ASTM規格D1003に従って測定)を有する。
【0049】
層(ii)
本発明によるバリアフィルムは、層(i)に隣接する少なくとも1つのコーティング層(ii)を含み、好ましくは、水蒸気を含む気体及び液体に対してバリア効果を有することができる。
このコーティング層(ii)は、無機材料(例えば、金属アルコキシド、酸化ケイ素)又は有機材料(例えば、タンパク質及び/若しくは多糖類の性質を有するか又は脂質ベースのポリマー及びバイオポリマー)を、場合により、混合物又は重なり合う層を形成するように組み合わせて、含み得る。
【0050】
本発明の1つの実施形態によれば、このコーティング層(ii)は、1又は2以上の無機材料からなる。
無機物の中で、銀、銅、金、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムチタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛などの金属並びにその酸化物及びアルコキシドを用い得る。
【0051】
本発明の別の1つの実施形態によれば、このコーティング層(ii)は、1又は2以上の有機材料からなる。
有機材料の中で、天然物質、例えば、異なる形態のセルロース(例えば、ナノ結晶形態-NCC-又はナノフィブリル化形態-NFC-)及びそれらの誘導体、キトサン、キチン、ペクチン、グルテン、カゼイン、ゼイン、異なる形態のデンプン及びその誘導体、ゼラチン、乳清タンパク質、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、アルギネート、並びにポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、アクリレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、有機シラン又はポリエチレングリコールなどの合成ポリマーを使用し得る。合成ポリマーの中で、加水分解度の異なる、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール及びポリビニルアルコール系ポリマーが好ましい。特に好ましい合成ポリマーは、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール及びそれらのコポリマーから選択される;さらに好ましくは、ポリビニルアルコールであり、有利には加水分解度が70~100%であるポリビニルアルコールである。
【0052】
コーティング層(ii)は、最終バリアの性能を向上させる目的で、ゼオライト、グラフェン、酸化グラフェン又はリン酸ジルコニウムなどのフィラーをさらに含むことができる。
本発明の別の1つの実施形態によれば、このコーティング層(ii)は、1又は2以上の有機材料と1又は2以上の無機材料との組合せからなる。
本実施形態によれば、前記コーティング層(ii)は、好ましくは、層(i)と接する(天然及び/又は合成であってもよい)有機材料の第1の層と、第1の層を覆う金属材料の第2の層とを含む。層(ii)のこの構成は、バリア効果を高める利点を有する。
好ましくは、本発明によるバリアフィルムの前記コーティング層(ii)は、金属並びにその酸化物及びアルコキシド、セルロース及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、キトサン、合成ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、アクリレート、有機シラン、ポリエチレングリコール)、並びにこれらの組合せから選択される1又は2以上の材料を含む。
【0053】
用語デンプンは、すべてのタイプのデンプン、特に次のもの:小麦粉、天然デンプン、加水分解デンプン、破壊デンプン、ゼラチン化デンプン、可塑化デンプン、熱可塑性デンプン、複合デンプンを含むバイオフィラー、又はこれらの混合物を包含する。容易に破壊することができ、高い初期分子量を有することができるデンプン(例えば、ジャガイモデンプン及びコーンスターチ)が特に有利である。デンプン及びセルロースは、そのままでも、化学的に改変された形態、例えばデンプン又はセルロースのエステル(好ましくは置換度0.2~2.5のもの)、ヒドロキシプロピル化デンプン、脂肪鎖で修飾したデンプン、又はセロファンの形態で存在してもよい。
破壊(された)デンプンとは、ここでは特許EP 0 118 240及びEP 0 327 505に含まれる教示を指し、偏光顕微鏡下でいわゆる「マルタ十字」及び位相差光顕微鏡下でいわゆる「ゴースト」を実質的に呈さないような方法で加工されたデンプンを意味する。
デンプンの破壊は、有利には、110℃~250℃、好ましくは130℃~220℃の間の温度で、好ましくは0.1MPa~7MPa、好ましくは0.3MPa~6MPaの間の圧力で押出プロセスによって行われ、好ましくは押出中に0.1kWh/kg以上の比エネルギーが提供される。
【0054】
デンプンの破壊は、好ましくは、デンプンの重量に対して1~40重量%の、水及び2~22の炭素原子を有するポリオールから選択される1又は2以上の可塑剤の存在下で行われる。水分に関して、これは、デンプンに天然に存在する水であってもよい。ポリオールの中で、1~20のヒドロキシ基を有し2~6の炭素原子を含むポリオール、それらのエーテル、チオエーテル並びに有機及び無機エステルが好ましい。ポリオールの例は、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ポリグリセロールエトキシレート、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1.3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、ソルビトールモノアセテート、ソルビトールジアセテート、ソルビトールモノエトキシレート、ソルビトールジエトキシレート、及びこれらの混合物である。1つの好ましい実施形態では、デンプンは、グリセロールの存在下、又はグリセロール(好ましくは1~90重量%のグリセロール)を含む可塑剤の混合物の存在下で破壊される。好ましくは、破壊デンプンは、デンプン重量に関して1~40重量%の、上記のものから選択される可塑剤を含む。破壊デンプンを含む組成物が特に好ましい。好ましくは、混合物中のデンプンは、粒子長軸を考慮して測定した算術平均直径が1μm以下未満、より好ましくは0.5μm以下である円形、楕円形又は他の楕円様の断面を有する粒子の形態で存在する。本発明の一態様によれば、層(ii)は、特許出願EP 2 758 465に記載の組成物のような、疎水性配列をインターカレートされた親水性基を含むポリマーとの複合化形態で破壊デンプンを含む。これら組成物は、水性分散液の形態で適用され得る;好ましくは、これら組成物は、該組成物の全重量に対して、
- 30~80%の破壊デンプン;
- 20~70%の、疎水性配列をインターカレートされた親水性基を含むポリマー;
- 0~25%の可塑剤;
- 0~20%の水
を含む。
【0055】
この態様によれば、複合体形態の破壊デンプンは、X線分光器において、下記の回折ピークの1又は2以上と関連付けることができる1又は2以上の結晶形状を有する破壊デンプンを意味する。
【表1】
【0056】
疎水性配列をインターカレートされた親水性基を含むポリマーに関しては、これらは、好ましくは、水に不溶である。このことが、本発明によるコーティング層(ii)の透水性を低下させる。
疎水性配列をインターカレートされた親水性基を含むポリマーに関して、これらは、有利には、
a.10~100%の加水分解度を有するポリビニルアルコール;
b.ビニルアルコール/酢酸ビニルブロックコポリマー;
c.乾燥形態及び水に乳化した形態のポリ酢酸ビニル;
d.ビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル又はこれらの混合物とのエチレンコポリマー;
e.6-6、6-9又は12脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリウレタン、脂肪族及び脂肪族/芳香族ポリエステル、ランダム又はブロックポリウレタン/ポリアミド、ポリウレタン/ポリエーテル、ポリウレタン/ポリエステル、ポリアミド/ポリエステル、ポリアミド/ポリエーテル、ポリエステル/ポリエーテル、ポリウレア/ポリエステル、ポリウレア/ポリエーテル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン/ウレタンコポリマー(ポリカプロラクトンブロックの分子量は300~3000である)
から選択される。
これらポリマーの混合物もまた用いてもよい。
【0057】
疎水性配列をインターカレートされた親水性基を含むポリマーのうち、好ましいものは、ビニルアルコール及び/又はアクリル酸とのエチレンコポリマー、加水分解度が10~100%のポリビニルアルコール、乾燥状態の及び水に乳化したポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール/酢酸ビニルブロックコポリマー、及びこれらの混合物である。
これらのうち、ポリビニルアルコール並びにビニルアルコール及びアクリル酸とのエチレンコポリマーが特に好ましい。
ビニルアルコールとのエチレンコポリマーの場合、これらは、好ましくは、20~50モル%のエチレン単位を含む。
アクリル酸とのエチレンコポリマーの場合、これらは、好ましくは、70~99重量%のエチレン単位を含む。
破壊され複合化されたデンプンをベースにするこの組成物は、好ましくは、水性分散液の形態で堆積される。
【0058】
上記の破壊され複合化されたデンプン組成物の特性の結果として、前記層(ii)は、(例えば飽和及び芳香族炭化水素化合物に対して)高いバリア性を示し、このことにより、食品分野の包装に特に有用とされる。
このコーティング層(ii)は、公知の技法、例えば塗装及び印刷産業で代表的に用いられる技法を用いてフィルム層(i)に適用され得る。
例えば、塗布は溶融状態で行われてもよい;或いは、コーティング層は、被覆プロセス、例えばブレード又はフィルムコーティングにおける場合と同様に、溶剤中の溶液又は分散液の形で被覆されるべき表面に移され、その後、溶剤を蒸発させてコーティング又はラッカーを固化させてもよい。後者の場合、有機溶媒又は水が代表的に用いられる。
その他の塗布方法としては、昇華(例えば、真空条件下での昇華)又は電磁気的プロセス処理により被覆されるべき材料の表面に移行させる方法が挙げられる。
【0059】
溶液又は溶媒分散液形態での前記塗布プロセスは、代表的には、基体の一方の側にコーティング層を堆積させる段階と、その基体を乾燥させる段階とを含む。
このプロセスは、有利には、堆積後に、堆積されたコーティング組成物の一部を基体から除去することを含み、このことにより、コーティング層の厚さを調整すること(レベリングとして知られる)ができる。
基体を乾燥させる段階に関しては、輻射システム(好ましくは、赤外線)、対流システム(好ましくは、ホットエア)若しくは接触システム(好ましくは、乾燥シリンダーを備える)又はこれらの任意の組合せを有利に用い得る。
好ましくは、本発明によるフィルムは、食品との接触に適する。
【0060】
本発明によるフィルムは、上記の第1の層(i)に隣接する少なくとも1つの追加のポリマー層(iii)を含む多層フィルムの形態をとり得る。
前記ポリマー層(iii)は、例えば、天然起源のポリマー(例えば、セルロース及びその誘導体)又は合成起源のポリマーを含む。
好ましくは、ポリマー層(iii)は、下記のものから選択される1又は2以上のポリマーを含むか、又は有利には当該1又は2以上のポリマーからなる:
- ポリヒドロキシアルカノエート、好ましくは、乳酸のポリエステル、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレート及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリヒドロキシアルカノエート;
- 層(i)の成分として上記したものと同一又は異なる、二酸ジオールタイプの脂肪族/芳香族ポリエステル;
- 脂肪族ポリエステル、好ましくは層(i)の成分として上記したものから選択され、110℃を超えない融点を有する脂肪族ポリエステル;
及びそれらの混合物。
【0061】
本発明による多層フィルムは、当業者に公知の任意のプロセスに従って、例えば、共押出、ラッカー塗布/コーティング及びラミネーションの手段により製造することができる。
1つの好ましい実施形態では、本発明による多層フィルムは、層(i)及び(iii)を共押出しするプロセス、次いでコーティング層(ii)を塗布する段階により得てもよい。
好ましくは、前記共押出プロセスは、バブルフィルム形成プロセスと組み合わされる。
本発明による多層フィルムの製造のための装置及び具体的プロセス条件(例えば共押出及びフィルム成形のための装置及び具体的プロセス条件)は、製造しようとする多層フィルムの組成及び層数に依存する。
【0062】
本発明によるフィルムはまた、紙などの他の材料の層に接着されていてもよく、又は該層を積層されていてもよい。この場合、層(i)を、好ましくは押出コーティングにより当該材料に接着し後に、コーティング層(ii)を適用する。
本発明はまた、本発明によるフィルムを用いて得られる包装材、例えばバッグ(bag)、パッケージ(packaging)、裏当て/ライニング(lining)、キャップ(cap)又は蓋(lid)の形態の包装材に関する。
いくつかの実施形態を用いて本発明を説明するが、これらは、例示であり、本特許出願の保護範囲を限定するものではないと理解されるべきである。
【実施例】
【0063】
実施例
実施例1
層(i)
14.3kg/hのポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフタレート)(MFR 4.2g/10分(190℃;2.16kg)及び酸価42meq/kg)と、24.7kg/hのIngeo 3251Dポリ乳酸(「PLA」)(MFR 40g/10分(190℃;2.16kg)と、1.0kg/hの、10重量%のJoncryl ADR4368CS(スチレン-グリシジルエーテル-メタクリル酸メチルコポリマー)及び90%のIngeo 4043Dポリ乳酸(「PLA」)を含むマスターバッチとを下記条件で運転するOMC型二軸押出機に供給した:
スクリュー径(D)=58mm;
L/D=36;
回転スピード=140rpm;
熱プロフィール=60-150-180-210x4-180x2℃;
スループット=40kg/h;
10のうち8ゾーンで真空脱気。
【0064】
このようにして得られた造粒物は、11.4g/10分のMFR値(ISO規格1133-1「Plastics - determination of the melt mass-flow rate (MFR) and melt volume flow rate (MVR) of thermoplastics -Part 1: Standard method」に従って190℃;2.16kg)を有していた。
このようにして得られた造粒物を、120~200×3の熱プロフィールで64rpmにて動作する40mm径スクリュー(L/D 30)を備えるGhioldiモデルバブルフィルム装置に供給した。0.9mmギャップ及びL/D 12を有するフィルム形成ヘッドを200℃に設定した。フィルム形成は、ブロー比3.2及び延伸比11.7で行った。
こうして得られたフィルム(合計24ミクロン)を、次いで、機械的特性、特に引張強度(σb)、破断伸度(εb)、弾性率(E)、光学特性(透過率、ヘイズ及び透明度)及び粗さに関して特徴づけた。
【0065】
粗さ測定は、10μm×10μmの面積について、長さ225ミクロン、固有周波数190kHz、力定数48N/m、先端半径10nm以下のモノリシックシリコンマイクロレバー(カンチレバー)を用いて、256ポイント×256ラインの分解能にてタッピングモードで動作させたAFMにより行った。
【表2】
【0066】
層(ii)
下記条件で動作するOMCモデル二軸押出機に、19.8kg/hの天然コーンスターチ(12%の水を含む)、12.9kg/hの、加水分解度が84.2%~86.2%のポリビニルアルコール、2.8kg/hのグリセリン及び4.5kg/hの水を供給することにより複合化スターチベースのコーティング組成物を製造した:
スクリュー径(D)=58mm;
L/D=36;
回転スピード=140rpm;
熱プロフィール=145-170-200x4-150x2℃;
スループット=40kg/h;
10のうち8ゾーンで真空脱気。
20gの生成物を、80gの脱イオン水に加え、ロータ・ステータ分散装置(Ika Ultra-Turrax T25)により25000rpmにて15分間分散させた。この懸濁液を室温まで冷却した後、エアブラシにより層(i)の表面に12g/m2のコーティングを塗布した。
得られたフィルムは、目視で、層(i)と層(ii)との良好な密着を示しているようであった。
【0067】
得られたフィルムのバリア性は、酸素についてはASTM F2622-08に従って、二酸化炭素についてはASTM規格F2476-05に従って、23℃-50%相対湿度にて、Extrasolution Multiperm透過率計で行った透過率測定により決定し、表2に示した。
【表3】
コーティング層(ii)の塗布は、酸素及びCO2の透過率の顕著な低減を生じたことから、バリアフィルムが得られたものと理解できる。この効果により、2つの層(i)及び(ii)の間の良好な接着が確認される。
【0068】
比較例2
層(i)
Ingeo
TM Biopolymer 4043Dポリ乳酸(3g/10分に等しいMFR(190℃、2.16kg))を、120-190×3℃の熱プロフィールで64rpmにて動作する40mm径スクリュー(L/D 30)を備えるGhioldiモデルバブルフィルム形成装置に供給した。0.9mmギャップ及びL/D 12を有するフィルムヘッドを190℃に設定した。フィルム形成は、ブロー比3.2及び延伸比8.1で行った。
したがって、このようにして得られたフィルム(合計35ミクロン)を、機械的特性、特に引張強度(σ
b)、破断伸度(ε
b)及び弾性率(E)、光学特性(透過率、ヘイズ及び透明度)及び粗さに関して、実施例1と同様に特徴づけた。
【表4】
【0069】
表3から理解できるように、本発明による実施例1で得られた層(i)は、PLAのみをベースとする比較例2の層(i)に匹敵する機械的特性及び光学特性を有し、包装に好適である。特に、本発明による層(i)は、より高次の破断伸びを有し、このことは、より大きな靭性を有することを意味する。
同時に、本発明による層(i)は、平均線に対する二乗平均平方根粗さSq及び最大ピークと最大トラフとの差Syの両方に関して、より大きな粗さを有する。
比較例2におけるPLAのみの層(i)の表面粗さが低いことに起因して、コーティング層(ii)の適用によって、より貧弱な接着が生じた。
【0070】
比較例3
層(i)
16kg/hのポリ(ブチレンセバケート-co-ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフタレート)(MFR 5.7g/10分(190℃;2.16kg)及び酸価25meq/kg)と、24kg/hのIngeo 4043Dポリ乳酸(「PLA」)(MFR 3g/10分(190℃;2.16kg))とを下記条件で運転するOMC型二軸押出機に供給した。
スクリュー径(D)=58mm;
L/D=36;
回転スピード=140rpm;
熱プロフィール=50-180-200x5-160x2℃;
スループット=40kg/h;
10のうち8ゾーンで真空脱気。
このようにして得られた造粒物は、5.9g/10分のMFR値(ISO規格1133-1「Plastics - determination of the melt mass-flow rate (MFR) and melt volume flow rate (MVR) of thermoplastics -Part 1: Standard method」に従って190℃;2.16kg)を有していた。
【0071】
このようにして得られた造粒物を、120-145-180×2の熱プロフィールで64rpmにて動作する40mm径スクリュー(L/D 30)を備えるGhioldiモデルバブルフィルム装置に供給した。0.9mmギャップ及びL/D 12を有するフィルム形成ヘッドを180℃に設定した。フィルム形成は、ブロー比3.2及び延伸比12.5で行った。
したがって、このようにして得られたフィルム(合計24ミクロン)を、機械的特性、特に引張強度(σ
b)、破断伸度(ε
b)及び弾性率(E)、光学特性(透過率、ヘイズ及び透明度)及び粗さに関して、実施例1と同様に特徴づけた。
【表5】
【0072】
表4のデータは、本発明に従う実施例1のフィルム層(i)の混合物に類似する脂肪族-芳香族ポリエステル対PLAモル比を有するが、スチレン-グリシジルエーテル-メタクリル酸メチルコポリマーの不在下で製造した比較例3によるフィルム層(i)もまた、良好な機械的特性により特徴づけられるが、平均線に対する二乗平均平方根粗さSq及び最大ピークと最大トラフの差Syの両方に関して、遥かにより高い粗さを有することを示す(表1を参照)。
過剰な粗さ値は、コーティング層の均一性を損ない、バリア効果を低下させる。
【国際調査報告】