(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(54)【発明の名称】懸濁液中の成分の有効性及び安定性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4166 20060101AFI20221004BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221004BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221004BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221004BHJP
A61P 17/12 20060101ALI20221004BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221004BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20221004BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221004BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221004BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221004BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221004BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221004BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221004BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221004BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20221004BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 3/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221004BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20221004BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20221004BHJP
A23L 5/30 20160101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61K9/10
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/12
A61P29/00
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/34
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/12
A61K31/085
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A61K31/015
A61K31/122
A61K31/05
A61K31/352
A61K31/7048
A61K31/37
A61K31/353
A61K8/49
A61Q1/10
A61Q5/00
A61Q1/00
A61Q3/00
A61Q11/00
A61Q13/00 100
A61Q19/00
A61Q17/04
A23L33/10
A23L5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507778
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 US2020045479
(87)【国際公開番号】W WO2021030212
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518040194
【氏名又は名称】ナノフェーズ テクノロジーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Nanophase Technologies Corporation
【住所又は居所原語表記】1319 Marquette Drive Romeoville, Illinois 60446 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】サーカス ハリー ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE05
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4C206NA05
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4C206ZA91
4C206ZB11
(57)【要約】
溶媒中に分散された、粒径が最大でも10μmの難溶解性の成分を含む組成物である。この成分は、溶媒中の成分の飽和限界を超える量で存在する。この組成物は、凍結融解サイクル試験に合格する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が最大でも10μmのアラントイン。
【請求項2】
溶媒中に分散された、粒径が最大でも10μmの難溶解性の成分を含む組成物であって、
前記成分が、前記溶媒中の前記成分の飽和限界を超える量で存在し、且つ
前記組成物が、凍結融解サイクル試験に合格する、前記組成物。
【請求項3】
難溶解性の成分の粒径を最大でも10μmに減少させること;及び
前記成分を溶媒に添加すること;
を含む、懸濁液を調製する方法であって、
前記成分が、前記溶媒中の前記成分の飽和限界を超える量で存在し、且つ
前記懸濁液が、凍結融解サイクル試験に合格する、前記方法。
【請求項4】
成分が、薬物活性物質、請求活性物質及びその組合せからなる群から選択される、請求項2又は3に記載の組成物又は方法。
【請求項5】
成分の粒径が
a)最大でも5μm;
b)最大でも3μm;又は
c)最大でも1μm
である、請求項2又は4に記載の組成物。
【請求項6】
成分が、アラントイン、クエルセチン、クエルセチン二水和物、ルチン、多機能クルクミノイド添加剤及びそれらの誘導体、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロジフェルロイル-メタン、フェノール酸化防止剤、タンニン酸、エラグ酸、ラズベリーエラジタンニン、フラボノイド、イソフラボノイド、グラブリジン、フラバノール、カテキン、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、ジメチルメトキシクロマノール、カロテノイド、キサントフィル、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、及びレスベラトロールからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、請求項2~5のいずれかに記載の組成物又は方法。
【請求項7】
溶媒が、ヒト又は動物への局所適用に適した液体を含む、請求項2~6のいずれかに記載の組成物又は方法。
【請求項8】
溶媒が、水、保湿剤、炭化水素、アルコール、グリセリド、トリグリセリド、化粧液、植物油、直鎖状安息香酸アルキル、シリコーン、及びシリコーン油からなる群から選択される、請求項2~7のいずれかに記載の組成物又は方法。
【請求項9】
局所溶液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ヒドロゲル、フォーム、ペースト、チンキ剤、塗布剤、スプレー可能な液体又はエアゾールとして製剤化される、請求項2及び4~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
医薬、ベビー用製品、バス用製品、アイメイク、フレグランス製品、ヘアケア製品、メークアップ/化粧品、ネイルケア製品、口腔衛生製品、個人衛生製品、シェービング製品、スキンケア製品、日焼け用製品及び栄養補助食品からなる群から選択される製剤を含む、請求項2及び4~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
懸濁液が15~30℃で調製される、請求項3、4及び6~8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
減少させることが、成分の粒径を
a)最大でも5μm;
b)最大でも3μm;又は
c)最大でも1μm
に減少させることを含む、請求項3、4、6~8及び11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
減少させることが、圧搾することを含む、請求項3、4、6~8、11及び12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
懸濁液が過飽和ではない、請求項3、4、6~8及び11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
添加後に減少が起こる、請求項3、4、6~8及び11~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
成分がアラントインを含み、
溶媒が水を含み、かつ
前記アラントインが、少なくとも10.0wt%の量で存在する、請求項2~15のいずれかに記載の組成物又は方法。
【請求項17】
懸濁液が、長期的な凍結融解サイクル試験、皮膚感触試験、及び保存性試験の少なくとも1つに合格する、請求項3、4、6~8及び11~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
長期的な凍結融解サイクル試験、皮膚感触試験、及び保存性試験の少なくとも1つに合格する、請求項2、4~10及び16のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
平均粒径が、
a)最大でも5μm;
b)最大でも3μm;
c)最大でも1μm;又は
d)最大でも0.5μm
である、請求項1に記載のアラントイン。
【請求項20】
溶媒中に分散された請求項1又は19に記載のアラントインを含む懸濁液。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒト又は動物への使用を目的とする製品、例えば米国連邦食品医薬品化粧品法の下で規制されている製品は、しばしばモノグラフに含まれる薬物として米国食品医薬局(FDA,U.S. Food and Drug Administration)によって分類されている成分(有効成分又は「薬物活性物質」として知られている)、及び認められた有益な効果を提供するがモノグラフに含まれる薬物としてFDAによって分類されていない成分(不活性な成分又は「請求活性物質(claims actives)」として知られている)の組合せを含む。これらの製品は、通常有効量の薬物活性物質及び請求活性物質を標的部位に送達するために溶液として配合される。
【0002】
多くの薬物活性物質及び請求活性物質は、周囲温度及びヒト局所使用温度下での液体送達媒体中の溶解度が低い、又は限定されているので、溶液の配合は、製造方法を著しく複雑にする可能性がある。加えて、一部の薬物活性物質及び請求活性物質は、ヒト局所使用に適さない溶媒のみに溶解する。例えば、酸化防止剤、皮膚鎮静剤、美白剤及びビタミンなどのスキンケア成分は、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフランなどの溶媒にのみ意味のあるレベルで溶解する。
【0003】
製造業者らは、薬物活性物質及び請求活性物質の溶媒への溶解度を、これらの成分を高温で溶解させて確実に完全溶解させることにより、改善することができる。高温での溶液調製では、溶液中の薬物活性物質及び請求活性物質の濃度限界を製造業者らが考慮する必要がある。例えば、請求有効成分を、周囲温度における濃度限界より少ない量で高温溶液に加えることは、有効性に必要なレベルよりも低い濃度限界が課せられる可能性があり、これにより、請求活性物質が最終製品に所望の効果を提供することができなくなる。加えて、薬物活性物質及び請求活性物質が周囲濃度限界より高い最小有効濃度を有することは一般的である。この状況では、有効量の薬物活性物質及び請求活性物質を送達するために、製造業者らは、過飽和溶液を配合する必要がある。
【0004】
過飽和溶液は、不安定であり、薬物活性物質及び請求活性物質の制御できない沈殿を生ずる可能性があるので、問題がある。成分の沈殿は、しばしば大きな肉眼で見える結晶の形成をもたらす。目に見える結晶を含有する製品は、消費者に審美的に受け入れられず、最終製品の売り上げを減らすことになる。より大きい結晶は、適用中に消費者がそれらを感じてしまうことから、重大な問題である。10μmよりも大きい結晶は、粗粒子として消費者が知覚するが、100μmよりも大きい結晶は、「ガラスの破片」として知覚され、適用すると刺激性が強い可能性がある。
【0005】
薬物活性物質及び請求活性物質の沈殿も、最終製品の有効性を低下させるので、問題である。より大きい結晶は、製剤中の成分が標的部位に送達されるのを物理的に妨げる可能性がある。例えば、日焼け止めなどの紫外線(UV,ultraviolet)光保護剤では、溶液から沈殿した結晶は、UV保護を提供する薬物活性物質が皮膚に分布するのを物理的に妨げることになる。この結果、「ブレイクスルー火傷」として知られている現象をもたらし、十分なUV保護がない皮膚の部分で紅斑又は日焼けを引き起こし得る。
【0006】
いくつかの他の条件は、配合成分の沈殿をもたらし得る。成分の沈殿は、製剤中の水性系成分の溶解度が生理学的pH範囲で低いが、溶解度が生理学的pH範囲外で高い場合に起こる可能性がある。加えて、保管及び輸送中の温度変動、例えば凍結融解条件は、製剤中の成分の沈殿及び大きな結晶形成をもたらし得る。
【0007】
いくつかの薬物活性物質及び請求活性物質は、それらの溶解度により製造業者らはそれらの調製中に過飽和溶液の形成を強いられるので、特に製剤からの沈殿の影響を受けやすい。製剤から沈殿しやすい成分のよく知られている例は、アラントイン(別名(2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)尿素、5-ウレイドヒダントイン又はグリオキシルジウレイド)であり、これは、その皮膚のコンディショニング、保湿、皮膚の鎮静、創傷治癒、角質溶解、皮膚の柔軟化/平滑化、抗炎症性及び抗刺激性のために、多種多様な製品に使用されている(Igile, G. O. et al., "Rapid method for the identification and quantification of allantoin in body creams and lotions for regulatory activities", International Journal of Current Microbiology and Applied Sciences, Vol. 3, No. 7, pp. 552-557 (2014))。FDAは、0.5~2%の量で製剤中に存在する場合、皮膚保護剤としてのアラントインの使用を認可している(21 CFR 347.10(a))。しかしながら、アラントインの溶解限度は、25℃において水中で0.5%であり、これにより、製造業者らは、FDAモノグラフで指定された全濃度範囲にわたって皮膚保護剤としてアラントインを含む製剤を調製することができなくなる。アラントインの溶解度が限定されていると、製造業者らは、FDAに許可されているよりも少ないアラントインを使用するか、又はそれらの有効性を損なう可能性のある安定性に問題のありがちな製品を製造するかの選択を強いられる。
【0008】
沈殿の問題点を経験することが知られている他の成分には、クエルセチン、クエルセチン二水和物、ルチン、多機能クルクミノイド添加剤及びそれらの誘導体(クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン及びテトラヒドロジフェルロイル-メタンを含む)、フェノール酸化防止剤(ポリフェノール、例えばタンニン酸、エラグ酸及びラズベリーエラジタンニンを含む)、フラボノイド、イソフラボノイド、例えばグラブリジン、フラバノール(カテキン、例えば没食子酸エピガロカテキン(EGCG,epigallocatechin gallate)を含む)、ジメチルメトキシクロマノール及びカロテノイド(キサントフィル、アスタキサンチン、ゼアキサンチン及びルテインを含む)が含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Igile, G. O. et al., "Rapid method for the identification and quantification of allantoin in body creams and lotions for regulatory activities", International Journal of Current Microbiology and Applied Sciences, Vol. 3, No. 7, pp. 552-557 (2014)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、溶媒中に分散された、粒径が最大でも10μmの難溶解性の成分を含む組成物である。この成分は、溶媒中の成分の飽和限界を超える量で存在する。この組成物は、凍結融解サイクル試験に合格する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、難溶解性の成分の粒径を最大でも10μmに減少させること、及びこの成分を溶媒に加えることを含む、懸濁液を調製する方法である。この成分は、溶媒中の成分の飽和限界を超える量で存在する。この懸濁液は、凍結融解サイクル試験に合格する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、平均粒径が最大でも10μmのアラントインである。
【0013】
定義
用語「粒径」は、特に記載がない限り、光学顕微鏡、電子顕微鏡によって観察した、又は静的光散乱によって決定された、粒子の平均直径を意味する。粒径は、数若しくは体積によって、又は数加重若しくは体積加重分布として表すことができる。
【0014】
用語「難溶解性」は、25℃における所与の溶媒中の溶解限度が最大でも2.0%の成分を意味する。
【0015】
用語「懸濁液」は、未溶解の粒子を含む組成物を意味する。
【0016】
「凍結融解サイクル試験」は、溶媒中に分散された少なくとも1つの成分の安定性の試験である。最初に、試験組成物は、少なくとも1つの成分を溶媒に加えることによって調製される。次に、試験組成物は、-20℃の冷凍庫に入れられる。6時間後、試験組成物は、冷凍庫から取り出され、室温(25℃)に戻される。次いで試験組成物は、裸眼での観察によって、及び光学顕微鏡を使用して40x~200xの倍率で試験組成物の試料を見ることによって、視覚的に分析される。裸眼で識別可能な結晶がなく、また光学顕微鏡下で見たときに少なくとも1つの側面で10ミクロン(10μm)よりも大きい粒子を試験組成物が含有していない場合、試験組成物は、凍結融解サイクル試験に合格すると考えられている。
【0017】
「長期的な(extended)凍結融解サイクル試験」は、溶媒中に分散された少なくとも1つの成分の安定性の試験である。最初に、試験組成物は、少なくとも1つの成分を溶媒に加えることによって調製される。次に、試験組成物は、-20℃の冷凍庫に入れられる。6時間後、試験組成物は、冷凍庫から取り出され、室温(25℃)に戻される。試験組成物は、さらに9回、-20℃の冷凍庫に6時間入れられ、室温に戻される。次いで試験組成物は、裸眼での観察によって、及び光学顕微鏡を使用して40x~200xの倍率で試験組成物の試料を見ることによって、視覚的に分析される。裸眼で識別可能な結晶がなく、また光学顕微鏡下で見たときに少なくとも1つの側面で10ミクロン(10μm)よりも大きい粒子を試験組成物が含有していない場合、試験組成物は、長期的な凍結融解サイクル試験に合格すると考えられている。
【0018】
「保存性試験」は、溶媒中に分散された少なくとも1つの成分を含有する組成物の長期安定性の試験である。最初に、試験組成物は、少なくとも1つの成分を溶媒に加えることによって調製される。次に、試験組成物は、25℃の制御された環境に入れられる。18カ月後、試験組成物は、制御された環境から取り出される。次いで試験組成物は、裸眼での観察によって、及び光学顕微鏡を使用して40x~200xの倍率で組成物の試料を見ることによって、視覚的に分析される。裸眼で識別可能な結晶がなく、また光学顕微鏡下で見たときに少なくとも1つの側面で10ミクロン(10μm)よりも大きい粒子を試験組成物が含有していない場合、試験組成物は、保存性試験に合格すると考えられている。
【0019】
「皮膚感触試験」は、局所使用のための、溶媒中に分散された少なくとも1つの成分を含有する組成物の適合性の試験である。最初に、試験組成物は、少なくとも1つの成分を溶媒に加えることによって調製される。次に、試験組成物は、ヒト試験者の皮膚に塗布される。試験組成物は、ヒト試験者が彼又は彼女の皮膚に試験組成物を塗布した後にいかなる固形物又は粗粒子も知覚しない場合、皮膚感触試験に合格すると考えられている。
【0020】
特に記載がない限り、全てのパーセント値(%)は、重量/重量パーセントである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、以下の図面及び説明を参照すればより良く理解することができる。
【
図1】アラントインの粒径を減少させることによって調製した10.0wt%アラントイン懸濁液及びアラントインの粒径を減少させずに調製した10.0wt%アラントイン溶液の写真である。
【
図2】アラントインの粒径を減少させることによって調製した1.52wt%アラントイン懸濁液及びアラントインの粒径を減少させずに調製した1.52wt%アラントイン溶液の写真である。
【
図3】1凍結融解サイクル後のアラントインの粒径を減少させることによって調製した10.0wt%アラントイン懸濁液及びアラントインの粒径を減少させずに調製した10.0wt%アラントイン溶液の写真である。
【
図4】1凍結融解サイクル後のアラントインの粒径を減少させることによって調製した1.52wt%アラントイン懸濁液及びアラントインの粒径を減少させずに調製した1.52wt%アラントイン溶液の写真である。
【
図5】1凍結融解サイクル後のアラントインの粒径を減少させずに調製した1.52wt%アラントイン溶液の40x倍率における光学顕微鏡像である。
【
図6】1凍結融解サイクル後のアラントインの粒径を減少させずに調製した1.52wt%アラントイン溶液の200x倍率における光学顕微鏡像である。
【
図7】1凍結融解サイクル後のアラントインの粒径を減少させることによって調製した1.52wt%アラントイン懸濁液の40x倍率における光学顕微鏡像である。
【
図8】1凍結融解サイクル後のアラントインの粒径を減少させることによって調製した1.52wt%アラントイン懸濁液の200x倍率における光学顕微鏡像である。
【
図9】0.3mm直径のイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して0.25L媒体ミル中3000RPMでアラントインの粒径を減少させることによって調製した脱イオン水中の20.0wt%アラントイン懸濁液の数加重粒径分布を例示する図である。
【
図10】0.3mm直径のイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して0.25L媒体ミル中3000RPMでアラントインの粒径を減少させることによって調製した脱イオン水中の20.0wt%アラントイン懸濁液の体積加重粒径分布を例示する図である。
【
図11】0.3mm直径のイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して0.25L媒体ミル中3000RPMでアラントインの粒径を減少させることによって調製したC12-C15安息香酸アルキル中の20.0wt%アラントイン懸濁液の数加重粒径分布を例示する図である。
【
図12】0.3mm直径のイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して0.25L媒体ミル中3000RPMでアラントインの粒径を減少させることによって調製したC12-C15安息香酸アルキル中の20.0wt%アラントイン懸濁液の体積加重粒径分布を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
製造業者らは、製剤からの薬物活性物質及び請求活性物質の沈殿を減らす又は防ぐために、既存の製造プロセスに種々の修正を試みてきた。送達システムの変更には、多孔質送達システム及びリポソーム送達システムの使用が含まれる。これらの変更は、通常高価であり、高度に複雑である。加えて、異なる送達システムの使用は、まだしばしば薬物活性物質及び請求活性物質の濃度が限定された製剤をもたらす。
【0023】
製造業者らはまた、それらの安定性を改善するために配合成分の化学的な変更を試みてきた。薬物活性物質又は請求活性物質の化学的な変更には、これらの成分の化学誘導体を形成することが含まれる。しかしながら、誘導体化はしばしば有効性を損なう。例えば、酸化防止剤の誘導体化に使用可能な官能基は、概して有効性を付与するのと同じ官能基であり、複数の誘導体を形成することにより、抗酸化力を大幅に低下させるか又は消滅させることが示されている。
【0024】
懸濁液中の難溶解性の薬物活性物質及び請求活性物質は、オストワルド熟成を通して結晶成長を呈示することが認められた。オストワルド熟成は、溶液中の小さな粒子が溶解し、より大きな粒子に再堆積する、ゆるやかな熱力学的に駆動する自然のプロセスである。粒子の内圧はその半径に反比例するため、大きな粒子は小さな粒子よりも熱力学的に安定なので、オストワルド熱成は、自然発生的に起こる。この内圧差は、粒子の表面上の分子が、粒子の内部のより秩序だった粒子よりも安定性の低いことの結果として生じる。加えて、大きな粒子は、比表面積がより小さな粒子よりも小さく、それは所与の分布で小さな粒子よりも低くより安定なエネルギーをもたらす。これらの特性は、より小さな粒子を、より大きな粒子よりも速く溶解させ、分子を溶液からより大きな粒子上に堆積させる。時間が経つにつれて、溶液中の小さな粒子の断片は減少することになるが、溶液中の大きな粒子の断片は増加する。オストワルド熟成は、よく理解されているプロセスであり、オストワルド熟成による粒子成長は、懸濁液の十分な変数が既知の場合は計算することができる(例えば、van Westen, T. et al., "Effect of temperature cycling on Ostwald ripening", Crystal Growth & Design, Vol. 18, pp. 4952-4962 (2018)参照)。
【0025】
本発明は、溶媒中に分散された難溶解性の薬物活性物質及び請求活性物質の安定性を、これらの成分を物理的に変更してそれらの粒径を最大でも10μmに減少させることによって、改善する。薬物活性物質及び請求活性物質の粒径は、一般的な粉砕法を使用して中央粒径を最大でも10μmに減少させることによって減少させることができる。この粒径の減少は、ヒト皮膚で知覚され得るものの閾値未満のサイズの成分をもたらす。薬物活性物質及び請求活性物質の粒径を減少させると、これらの成分を、溶液を飽和させるのに必要な量よりも多い量で溶液に加えることができる。安定性の改善は、追加の安定化成分、例えば界面活性剤又は乳化剤を使用しないで達成することができる。
【0026】
懸濁液中の薬物活性物質及び請求活性物質の粒径を減少させることは、大きな粒子の成長を阻止することにより、それらの安定性を改善する。粒径が非常に小さい成分は、その成分を含有する懸濁液内で結晶化するための多数の核生成部位又は種晶を提供する。多くの核生成部位があると、より少ない粒子が大量に成長してより大きな結晶に発達するのではなく、多くの粒子が少量成長することになる。成分は、オストワルド熟成を通して粒子成長を呈示する場合があるが、オストワルド熟成を通して中央粒径が10μmを超える粒子の形成速度は、懸濁液中に成分を含有するほとんどの消費者製品の通常の貯蔵寿命よりも著しく長いことがわかっている。
【0027】
懸濁液中の薬物活性物質及び請求活性物質の粒径を減少させることは、それらの生物学的利用能も改善する。通常、固相の成分は、生物学的に利用可能ではないと考えられている。薬物活性物質及び請求活性物質の粒径を10μm未満に減少させることは、これらの成分の表面積を大幅に増加させる。薬物活性物質及び請求活性物質の表面積の増加により、これらの成分は、固相に存在する場合でも生物学的に利用可能になる。
【0028】
薬物活性物質及び請求活性物質の粒径を減少させることはまた、これらの成分をどのようにして製剤に加えることができるかの制限を取り除く。粒径を減少させた薬物活性物質及び請求活性物質は、溶液中に懸濁した微粒子として存在し、それらの固相への導入を可能にする。固相中の薬物活性物質及び請求活性物質の存在は、これらの成分の溶解度が通常限定されている製剤配合相(formulation phases)へのそれらの添加を可能にする。例えば、水相溶性成分は、乳濁液の油相並びに親油性調製物及び無水調製物にも加えることができる。したがって、溶液中の成分の安定性を改善する方法は、いかなるタイプの製剤にも適用することができる。
【0029】
懸濁液を調製する方法は、難溶解性の成分の粒径を最大でも10μmに減少させること、及び溶媒中の成分の飽和限界を超える量で成分を溶媒に加えることを含む。成分は、成分の粒径を減少させた後に溶媒に加えてもよい。或いは、成分の粒径は、成分を溶媒に加える前に減少させてもよい。
【0030】
懸濁液は、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃及び29℃を含む、15~30℃の周囲温度で調製することができる。好ましくは、懸濁液は、25℃で調製される。
【0031】
難溶解性の成分は、薬物活性、請求活性、又はその組合せであってもよい。好ましい成分には、25℃における溶媒への溶解度が最大でも1.0%のものが含まれる。より好ましい成分には、25℃における溶媒への溶解度が最大でも0.5%のものが含まれる。難溶解性の成分の例には、アラントイン(25℃における水への溶解限度0.5%)、クエルセチン(中性水への溶解性が極めて低い)、クエルセチン二水和物(中性水への溶解性が極めて低い)、ルチン(25℃における水への溶解限度0.013%)、多機能クルクミノイド添加剤及びそれらの誘導体(クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン及びテトラヒドロジフェルロイル-メタンを含む)、フェノール酸化防止剤(ポリフェノール、例えばタンニン酸、エラグ酸及びラズベリーエラジタンニンを含む)、フラボノイド、イソフラボノイド、例えばグラブリジン、フラバノール(カテキン、例えば没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を含む)、ジメチルメトキシクロマノール、カロテノイド(キサントフィル、アスタキサンチン、ゼアキサンチン及びルテインを含む)及びレスベラトロール(水への溶解度0.03g/L)が含まれる。
【0032】
成分の粒径は、粒径を10μm未満に減少させることができるいかなる粉砕法を使用しても減少させることができる。好ましくは、粉砕法は、粒径を5μm未満に減少させることができる。より好ましくは、粉砕法は、粒径を3μm未満に減少させることができる。最も好ましくは、粉砕法は、粒径を1μm未満に減少させることができる。好ましい粉砕法は、圧搾(milling)である。適した圧搾装置の例には、振動ミル、媒体ミル、ジェットミル及びハンマーミルが含まれる。
【0033】
粉砕は、好ましくはヒト局所適用に使用するのに適した液体担体中で実施される。液体担体は、溶媒であってもよい。好適な液体担体の例には、保湿剤、例えば水、グリセリン、プロパンジオール及びカプリリルグリコール;炭化水素、例えばスクアレン、イソデカン及びポリイソブタン;アルコール、例えばエタノール;グリセリド、例えばトリグリセリド及びカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド;化粧液、例えば直鎖状安息香酸アルキル、C12-C15安息香酸アルキル、安息香酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、ホホバエステル、ラウリン酸イソアミル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、サリチル酸ブチルオクチル、サリチル酸トリデシル及びシアバターエチルエステル;植物油及びシリコーンが含まれる。好ましい水性担体は、脱イオン水である。好ましい非水性液体担体は、C12-C15安息香酸アルキルである。
【0034】
粉砕パラメーターは、所望の最終粒径を得るために異なっていてもよい。可変粉砕パラメーターには、粉砕法の選択、粉砕の持続、加速(振動ミル用)、毎分回転数(媒体ミル用)、媒体のタイプ、媒体のサイズ及び媒体の体積パーセント値が含まれる。好ましい媒体には、直径0.3mm及び0.5mmのイットリア安定化ジルコニア媒体が含まれる。
【0035】
成分の粒径は、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3.0μm、3.1μm、3.2μm、3.3μm、3.4μm、3.5μm、3.6μm、3.7μm、3.8μm、3.9μm、4.0μm、4.1μm、4.2μm、4.3μm、4.4μm、4.5μm、4.6μm、4.7μm、4.8μm、4.9μm、5.0μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.5μm、8.0μm、8.5μm、9.0μm、9.5μm、9.6μm、9.7μm及び9.8μmを含む、0.1~9.9μmに減少させることができる。好ましくは、粒径は、最大でも5μmに減少させられ、より好ましくは、粒径は、最大でも3μmに減少させられ、最も好ましくは、粒径は、最大でも1μmに減少させられる。
【0036】
粒径を減少させた好ましい成分は、平均粒径が最大でも10μmのアラントインである。アラントインは、平均粒径が、0.1~5μm、0.1~3μm及び0.5~3μmを含む、0.1~9.9μmであってもよい。好ましくは、アラントインは、平均粒径が、最大でも5μm、最大でも3μm、最大でも1μm又は最大でも0.5μmである。懸濁液は、平均粒径が最大でも10μmのアラントインを溶媒に加えることによって形成することができる。
【0037】
粒子のサイズは、任意の適した粒径決定法を使用して決定することができる。適した粒径決定の例には、静的光散乱、光学顕微鏡及び電子顕微鏡が含まれる。静的光散乱は、数加重及び体積加重粒径分布を決定するのに使用することができる。光学顕微鏡は、体積又は数によって粒径を算出するのに使用することができる。
【0038】
粒径を減少させた薬物活性物質及び請求活性物質は、これらの成分を含有する溶液を飽和させるのに必要な量よりも多い量で組成物中に存在し得る。これは、所与の溶媒中の成分の溶解限度を参照することにより測定することができる。例えば、薬物活性物質及び請求活性物質は、それらの溶解限度の3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800又は900倍を含む、それらの溶解限度の2~1000倍で組成物中に存在し得る。
【0039】
薬物活性物質及び/又は請求活性物質の懸濁液は、1又は2以上の混合物に加えて、製剤を作成することができる。混合物は、溶液、懸濁液又はコロイド、例えば乳濁液、ゾル、フォーム又はゲルであってもよい。懸濁液中の成分の粒径を減少させると、溶液を、ヒト又は動物の局所使用に適したいかなる混合物にも加えることができる。例えば、懸濁液は、水中油乳濁液の連続相、油中水乳濁液の連続相、親油性調製物又は無水調製物に加えることができる。
【0040】
組成物は、溶媒中に分散された粒径が最大でも10μmの難溶解性の成分を含有していてもよい。成分は、溶媒中の成分の飽和限界を超える量で存在していてもよい。溶媒は、ヒト又は動物の局所使用に適したいかなる物質であってもよい。好ましくは、溶媒は、薬学的に許容される溶媒である。成分は、薬物活性、請求活性又はその組合せであってもよい。
【0041】
組成物の安定性は、組成物の長期安定性をモデル化する1又は2以上の試験にそれをかけることによって評価することができる。好ましくは、組成物は、凍結融解サイクル試験に合格する。より好ましくは、組成物は、長期的な凍結融解サイクル試験に合格する。好ましくは、組成物は、保存性試験に合格する。組成物の安定性はまた、医薬品規制調和国際会議(ICH,International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)などの独立した組織によって開発された1又は2以上の試験にそれをかけることによって評価することができる。好ましくは、組成物は、ICH加速安定性条件下での安定である。
【0042】
組成物は、好ましくはヒト又は動物の局所使用に適している。組成物は、ヒト試験者の皮膚にそれを適用することによって局所使用へのその適合性を判定するために評価してもよい。好ましくは、組成物は、皮膚感触試験に合格する。
【0043】
組成物は、種々の異なる用途に使用するために配合することができる。適した製剤の例には、医薬(薬及び薬剤又は薬物)、ベビー用製品(ローション、オイル、パウダー及びクリーム)、バス用製品(オイル、錠剤、塩、石鹸、洗浄剤及びバブルバス)、アイメイク(アイブロウペンシル、アイライナー、アイシャドウ、点眼剤、アイメイク落とし及びマスカラ)、フレグランス製品、ヘアケア製品(コンディショナー、ヘアスプレー/固定剤、ストレートナー、パーマネントウェーブ、リンス、シャンプー及びトニック)、メークアップ/化粧品(チーク、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、化粧下地及び紅)、ネイルケア製品(角質軟化剤、クリーム及びローション)、口腔衛生製品(歯磨剤/練り歯磨き、含漱剤及び呼気清涼剤)、個人衛生製品(脱臭剤及び潅注液)、シェービング製品(アフターシェーブ及びシェービングクリーム)、スキンケア製品(スキンクレンジングクリーム、ローション、リキッド及びパッド;フェイス及びネック用クリーム、ローション、パウダー及びスプレー;ボディ及びハンドクリーム、ローション、パウダー及びスプレー;足用パウダー及びスプレー;加湿剤;ナイトクリーム、ローション、パウダー及びスプレー;ペーストマスク/マッドパック;及び皮膚清涼剤)、日焼け用製品(日焼け止め;サンタンゲル、クリーム、リキッド及びスプレー;室内日焼け用調製物)及び栄養補助食品(ビタミン、ミネラル、タンパク質、アミノ酸、ボディビル用サプリメント、必須脂肪酸、天然物又はプロバイオティクスを含有する油、懸濁液及び他の液体;栄養飲料;栄養油サプリメント)が含まれる。好ましい製剤には、日焼け止め、スキンケア製品及び栄養/食事補助食品が含まれる。
【0044】
組成物は、その意図された投与経路に適したいかなる形態でも提供することができる。例えば、局所適用が意図される組成物は、局所懸濁液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ヒドロゲル、フォーム、ペースト、チンキ剤、塗布剤、スプレー可能な液体又はエアゾールとして提供することができる。
【0045】
組成物は、ヒト又は動物の摂取のために配合してもよい。消費される組成物は、溶媒中に分散された粒径が最大でも10μmの成分、例えば栄養補助食品又は食品添加物を含有していていもよい。
[実施例]
【実施例1】
【0046】
微粉砕されたアラントイン懸濁液とアラントイン水溶液の比較試験
10.0wt%アラントイン(DSM、(2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)尿素、CAS No.97-59-6)懸濁液を脱イオン水で調製した。懸濁液を、50体積パーセントで直径0.5mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して100Gの加速度で、振動ミルで3分間圧搾した。懸濁液を光学顕微鏡下で調べ、一次粒径は、体積により約3ミクロン(3μm)、数により1ミクロン(1μm)であると算出した。
【0047】
1.52wt%アラントイン(DSM、(2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)尿素、CAS No.97-59-6)懸濁液を脱イオン水で調製した。懸濁液を、50体積パーセントで直径0.5mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して100Gの加速度で、振動ミルで3分間圧搾した。懸濁液を光学顕微鏡下で調べ、一次粒径は、体積により約3ミクロン(3μm)、数により1ミクロン(1μm)であると算出した。
【0048】
比較溶液を、脱イオン水中10.0wt%及び1.52wt%アラントインで調製した。比較溶液を、約15分間、光混合下で80℃まで加熱した。製造業者の技術データシートは、安定な溶液は、この温度で分解なしで調製できることを指し示した。1.52wt%溶液は、完全な溶解を達成したが、10.0wt%溶液は、ほぼ完全な溶解を達成した。
【0049】
視覚分析
試料の写真を撮影した。
図1は、10.0wt%アラントイン懸濁液及び溶液の写真である。
図2は、1.52wt%アラントイン懸濁液及び溶液の写真である。
図1及び2で見られるように、圧搾した懸濁液は不透明に見え、溶液は透明に見えた。
【0050】
凍結融解サイクル試験
試料を凍結融解安定性及び挙動について試験した。懸濁液及び溶液を、-20℃で6時間冷凍庫に入れ、続いて室温に戻した。試料の写真を撮影した。
図3は、1凍結融解サイクル後の10.0wt%アラントイン懸濁液及び溶液の写真である。
図4は、1凍結融解サイクル後の1.52wt%アラントイン懸濁液及び溶液の写真である。
【0051】
アラントイン懸濁液は、1凍結融解サイクル後に均質なままであり、目に見える沈殿物の証拠を示さなかった。対照的に、アラントイン溶液は、沈殿の大きな断片を示し、溶液から沈降した著しく大きな結晶が含まれていた。結晶は、裸眼で識別可能であり、結晶は、おそらく30ミクロン(30μm)より大きかったことを指し示す。これらの結果は、懸濁液と溶液との両方の濃度で呈示された。
【0052】
1.52wt%アラントイン試料は、次いで光学顕微鏡を使用して調べた。
図5は、1凍結融解サイクル後の1.52wt%アラントイン溶液の40x倍率における光学顕微鏡像である。
図6は、1凍結融解サイクル後の1.52wt%アラントイン溶液の200x倍率における光学顕微鏡像を示している。
図5と
図6の両方とも、大きな結晶を示す。沈殿した結晶のほとんどは、少なくとも1つの向きで10ミクロン(10μm)よりも大きかった。かなりの数の結晶が、少なくとも1つの向きで30ミクロン(30μm)よりも大きかった。一部の粒子は、一部の倍率で視野寸法を超え、それは、これらの結晶が、少なくとも1つの向きで100ミクロン(100μm)よりも大きいことを指し示した。
【0053】
図7は、1凍結融解サイクル後の1.52wt%アラントイン懸濁液の40x倍率における光学顕微鏡像を示している。
図8は、1凍結融解サイクル後の1.52wt%アラントイン懸濁液の200x倍率における光学顕微鏡像を示している。
図7及び
図8は、凍結融解サイクルの結果として大きな粒子が形成されなかったことを示す。加えて、どちらの倍率でも、識別可能な粒子成長は観察されなかった。粒子成長がなかったことは、一次粒径が、体積により約3ミクロン(3μm)であり、数により1ミクロン(1μm)未満であることを指し示した。体積による粒径の上限値は、ヘグマングラインドゲージ上に懸濁液を引き出すことによって4ミクロン(4μm)未満であることが確認された。
【0054】
皮膚感触試験
アラントイン懸濁液を皮膚感触について試験した。1凍結融解サイクル後に1.52wt%懸濁液及び10.0wt%懸濁液を皮膚に塗布した。どちらの懸濁液も皮膚感触試験で識別されるのに十分なサイズの結晶を発達させなかった。これらの結果は、光学顕微鏡によって決定された粒径と一致していた。皮膚感触試験は、両方のアラントイン懸濁液がともに化粧品調製物に適していることを指し示した。
【0055】
乾燥減量試験
2つの1.52wt%アラントイン溶液を、1凍結融解サイクルし、25℃に戻した後、105℃で乾燥減量(LOD,loss on drying)について試験した。透明な上清のLODは、0.25~0.35%のアラントイン濃度を指し示した。この濃度範囲は、融解サイクルからの初期溶解度と一致していた。濃度は、時間が経つにつれて25℃で0.5%の濃度限界に戻ると予測されていた。しかしながら、溶解の速度は、沈殿断片に表面積が小さい大きな結晶が含まれていたので、低下すると予測されていた。
【実施例2】
【0056】
微粉砕されたアラントイン懸濁液の凍結融解サイクル試験の繰り返し
実施例1に記載された1.52wt%アラントイン微粉砕懸濁液を、9回の追加の凍結融解サイクル(合計で10凍結融解サイクル)にかけた。次いで懸濁液を、光学顕微鏡を使用して調べた。識別可能な粒径成長は観察されなかった。
【0057】
これらの結果は、粒径を減少させた、溶媒へのその溶解限度を超えるレベルで存在する成分を含有する溶液が非常に安定しており、この高い安定性が安定化成分を使用しないで達成できることを指し示す。
【実施例3】
【0058】
20%水性アラントイン濃縮懸濁液の調製
20.0wt%アラントイン(DSM、(2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)尿素、CAS No.97-59-6)懸濁液を脱イオン水で調製した。懸濁液を、直径0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して3000RPMで、0.25L媒体ミルで圧搾した。得られた懸濁液の粒径分布は、HORIBA(登録商標)LA-960レーザー粒径分析器を使用して静的光散乱によって測定し、数加重平均粒径0.167ミクロン(0.167μm)及び体積加重平均粒径3.9ミクロン(3.9μm)を示した。
図9は、数加重粒径分布を示している。
図10は、体積加重粒径分布を示している。懸濁液の光学顕微鏡分析は、実施例1に記載された微粉砕されたアラントイン懸濁液と一致する粒径を指し示した。
【0059】
20.0wt%アラントイン懸濁液を、水相中0.7%の濃度で、水中油日焼け止め乳濁液の連続相に加えた。得られた製剤は、医薬品規制調和国際会議(ICH)加速度安定性条件下で安定であることが示された。
【0060】
これらの結果は、水性懸濁液が、アラントインの粒径を10μm未満に減少させた場合、その溶解限度を著しく超える濃度でアラントインを含有できることを指し示す。加えて、高濃度懸濁液は、溶液中で高い安定性を実証する。
【実施例4】
【0061】
20%非水性アラントイン濃縮懸濁液の調製
20.0wt%アラントイン(DSM、(2,5-ジオキソ-4-イミダゾリジニル)尿素、CAS No.97-59-6)懸濁液をC12-C15安息香酸アルキル(FINSOLV(登録商標)TN、Innospec社)で調製した。懸濁液を、直径0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して3000RPMで、0.25L媒体ミルで圧搾した。得られた懸濁液の粒径分布は、HORIBA(登録商標)LA-960レーザー粒径分析器を使用して静的光散乱によって測定し、数加重平均粒径0.195ミクロン(0.195μm)及び体積加重平均粒径3.0ミクロン(3.0μm)を示した。
図11は、数加重粒径分布を示している。
図12は、体積加重粒径分布を示している。懸濁液の光学顕微鏡分析は、実施例1に記載された微粉砕されたアラントイン懸濁液と一致する粒径を指し示した。
【0062】
20.0wt%アラントイン懸濁液を、水相中0.7%の濃度で、油中水日焼け止め乳濁液の連続相に加えた。得られた製剤は、医薬品規制調和国際会議(ICH)加速度安定性条件下で安定であることが示された。
【0063】
これらの結果は、非水性懸濁液が、アラントインの粒径を10μm未満に減少させた場合、その溶解限度を著しく超える濃度でアラントインを含有できることを指し示す。加えて、高濃度懸濁液は、溶液中で高い安定性を実証する。
【実施例5】
【0064】
生物学的利用能研究
脱イオン水中のアラントインの微粉砕された懸濁液と脱イオン水中のアラントインの比較溶液(微粉砕されていない)とを実施例1に記載されているように調製した。次いで微粉砕されたアラントイン懸濁液及び酸化亜鉛を含有する日焼け止めとアラントイン溶液及び酸化亜鉛を含有する日焼け止めを調製した。
【0065】
ヒト対象は、各日焼け止め剤を彼らの皮膚の別々の部分に塗布した。次いで彼らの皮膚を紫外線に曝露した。微粉砕されたアラントイン懸濁液を含む日焼け止め剤を受けた皮膚の部分は、アラントイン溶液を含有する日焼け止め剤を受けた皮膚の部分よりも少なく紅斑(発赤)を呈示した。これらの結果は、粉砕によってアラントインの粒径を減少させると、アラントインの生物学的利用能が増加したことを指し示す。
(参考文献)
1. Igile, G. O. et al., "Rapid method for the identification and quantification of allantoin in body creams and lotions for regulatory activities", International Journal of Current Microbiology and Applied Sciences, Vol. 3, No. 7, pp. 552-557 (2014).
2. Becker, L. C. et al., "Final report of the safety assessment of allantoin and its related complexes", International Journal of Toxicology, Vol. 29, Supplement 2, pp. 84S-97S (2010).
3. van Westen, T. et al., "Effect of temperature cycling on Ostwald ripening", Crystal Growth & Design, Vol. 18, pp. 4952-4962 (2018).
【国際調査報告】