(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(54)【発明の名称】高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20221004BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20221004BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20221004BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20221004BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221004BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20221004BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20221004BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F9/04 C
B22F9/04 D
B22F9/04 E
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F3/02 R
B22F3/24 B
H01F1/057 130
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510789
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 CN2020100582
(87)【国際公開番号】W WO2021128802
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201911348739.0
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】牟維国
(72)【発明者】
【氏名】謝志興
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】黄清芳
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB06
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4K018KA70
5E040AA04
5E040BD01
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5E040NN01
5E062CD04
5E062CF01
5E062CG02
5E062CG05
(57)【要約】
【課題】本発明は、高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石およびその製造方法を開示する。
【解決手段】高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、29.5~33.5%のR、0.985%以上のB、0.50%以上のAl、0.35%以上のCu、1%以上のRH、0.1~0.4%の高融点元素N、およびFeを含み、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、前記元素含有量の質量百分率は、(1)1<RH<0.11R<3.54B、2)0.12RH<A1という関係を満たす必要がある。本発明は、Al、RH、及び高融点金属元素を一定の割合で併用して添加することにより、高Cu磁石の強度不足の問題を効果的に解決しつつ、磁石材料の磁気特性を確保することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石であって、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.5~33.5%、
B:0.985%以上、
Al:0.50%以上、
Cu:0.35%以上、
RH:1%以上、
高融点元素N:0.1~0.4%、及びFe、
パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
ここで、元素含有量の質量百分率は、次の関係を満たす必要があり、
(1)1<RH<0.11R<3.54B、
(2)0.12RH<A1、
ここで、Cuは銅、Alはアルミニウム、RはプラセオジムPr及び/又はネオジムNd、Bはホウ素、RHはジスプロシウムDy及び/又はテルビウムTb、高融点金属元素NはニオブNb、ジルコニウムZr、チタンTiおよびハフニウムHfの一種または複数種、Feは鉄である、
ことを特徴とする高Cu高A1ネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項2】
高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石であって、下記の原料から作製され、前記原料は、下記の成分を含み、
R:29.5~33.5%、
B:0.985%以上、
Al:0.50%以上、
Cu:0.35%以上、
RH:1%以上、
高融点元素N:0.1~0.4%、及びFe、
パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
ここで、元素含有量の質量百分率は、次の関係を満たす必要があり、
(1)1<RH<0.11R<3.54B、
(2)0.12RH<A1、
ここで、Cuは銅、Alはアルミニウム、RはプラセオジムPr及び/又はネオジムNd、Bはホウ素、RHはジスプロシウムDy及び/又はテルビウムTb、高融点金属元素NはニオブNb、ジルコニウムZr、チタンTiおよびハフニウムHfの一種または複数種、Feは鉄である、
ことを特徴とする高Cu高A1ネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項3】
前記Rの含有量は、29.5%~30.8%であり、例えば、前記Rの含有量は29.5%、29.8%、30%、30.2%、30.4%または30.8%であり、
及び/又は、前記Bの含有量は、0.985%~1.100%であり、好ましくは、前記Bの含有量は、0.985%~1%であり、例えば、前記Bの含有量は0.985%、0.99%または1%であり、
及び/又は、前記Alの含有量は、0.50%~1.25%であり、例えば、前記Alの含有量は0.5%、0.6%、0.8%または1.25%であり、
及び/又は、前記Cuの含有量は、0.35%~0.7%であり、好ましくは、前記Cuの含有量は、0.39%~0.6%であり、例えば、前記Cuの含有量は0.39%、0.4%、0.41%、0.42%、0.48%または0.6%であり、好ましくは、前記Cuの含有量は、0.35%≦Cu<0.5%、または0.5%<Cu<0.7%であり、
及び/又は、前記RHの含有量は、1.0%~2.5%であり、好ましくは、前記RHの含有量は、1.1%~2.3%であり、例えば、前記RHの含有量は1.1%、1.5%、1.7%、1.9%、2.1%、2.2%または2.3%であり、
及び/又は、前記高融点元素Nの含有量は、0.15%~0.35%であり、好ましくは、前記高融点元素Nの含有量は、0.2%~0.3%であり、例えば、前記高融点元素Nの含有量は0.2%、0.25%または0.3%であり、
及び/又は、前記Feの含有量は、100質量%に占める残部であり、好ましくは、前記Feの含有量は、64%~66%であり、
ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項4】
前記ネオジム鉄ホウ素磁石または前記ネオジム鉄ホウ素磁石の原料は、さらに、質量百分率で0.9wt.%~2wt.%のCoを含み、例えば、前記Coの含有量は1%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項5】
前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが1.7%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.8%であり、Dyが1.1%であり、Alが0.8%であり、Cuが0.6%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが1.7%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.48%であり、Coが1%であり、Zrが0.3%であり、Bが1%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Tbが1.1%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Zrが0.3%であり、Bが0.985%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.4%であり、Dyが1.5%であり、Alが1.25%であり、Cuが0.39%であり、Coが1%であり、Zrが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30%であり、Dyが2.2%であり、Alが0.8%であり、Cuが0.42%であり、Coが1%であり、Zrが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30%であり、Dyが2.3%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が29.8%であり、Dyが2.3%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが2.1%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが1.9%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.41%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが2.3%であり、Alが0.5%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.25%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
あるいは、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が29.5%であり、Dyが1.5%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.41%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法において、以下のステップを含み、
前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の原料に対して溶解製錬、水素解砕、ジェットミル粉砕、成形、焼結、時効処理を順次に実行すればよい、
ことを特徴とする高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法。
【請求項7】
前記溶解製錬は、急冷凝固鋳片法によりネオジム鉄ホウ素合金鋳片を得ることであり、
前記水素解砕は、水素吸蔵工程と脱水素工程を含み、ネオジム鉄ホウ素粉体を得、
前記水素吸蔵工程における水素圧は、0.067~0.098MPaであり、好ましくは0.08~0.085MPaであり、例えば0.081MPaであり、
前記脱水素工程における温度は、480~530℃であり、より好ましくは500~510℃であり、例えば500℃であり、
前記ジェットミル粉砕は、前記ネオジム鉄ホウ素粉体をジェットミルに送り込んでジェットミル粉砕し解砕を続け、微粉を得ることであり、
前記ジェットミル粉砕におけるジェットミルの粉砕室内の酸素含有量は、50ppm以下であり、
前記ジェットミル粉砕における選別ホイールの回転数は、3500~4300rpm/minであり、好ましくは3900~4100rpm/minであり、例えば4000rpm/minであり、
前記成形は、1.8T以上の磁場強度と窒素ガス雰囲気下で行い、
前記成形の磁場強度は、好ましくは1.8~2.5Tであり、例えば1.9Tであり、
前記焼結の時間は、4~7hであり、好ましくは6hであり、
前記時効処理の温度は、460~520℃であり、好ましくは500℃であり、
前記時効処理の時間は、4~10hであり、好ましくは6hである、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ネオジム鉄ホウ素合金鋳片の平均厚さは、0.25~0.35mmであり、好ましくは0.28~0.3mmであり、例えば0.28mm、0.29mmまたは0.30mmであり、
及び/又は、前記微粉の粒径は、3.8~4.1μmであり、好ましくは3.9~4.0μmであり、例えば3.95μmであり、
及び/又は、前記焼結の温度は、1030~1080℃であり、好ましくは1040~1050℃であり、例えば1040℃または1050℃である、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
高Cu高A1ネオジム鉄ホウ素磁石であって、
主相と粒界相を含み、
前記主相の成分は、R
23-29RH
0.1~3.1Fe
66~73.5A1
0.45~1.53B
0.9~1.1であり、前記粒界相の成分は、R
35~48RH
0.5~5.9Fe
46~56.5A1
0.05~0.25N
1.5~6.2B
0.8~1.1Cu
6~15であり、
ここで、Cuは銅、Alはアルミニウム、RはプラセオジムPr及び/又はネオジムNd、Bはホウ素、RHはジスプロシウムDy及び/又はテルビウムTb、高融点金属元素NはニオブNb、ジルコニウムZr、チタンTiおよびハフニウムHfの一種または複数種、Feは鉄であり、
ここで、前記磁石に占める前記主相の質量比は、86~94wt.%であり、前記磁石に占める前記粒界相の質量比は、5~14wt.%であり、
好ましくは、前記主相の成分は、R
23-29RH
0.1~3.1Fe
65~71A1
0.45~1.53Co
1~2.5B
0.9~1.1であり、前記粒界相の成分は、R
35~48RH
0.5~5.9Fe
45~51A1
0.05~0.25N
1.5~6.2B
0.8~1.1Cu
6~15Co
1~5.5であり、
ここで、Coはコバルトである、
ことを特徴とする高Cu高A1ネオジム鉄ホウ素磁石。
【請求項10】
請求項1~5、9のいずれか1項に記載の高Cu高A1ネオジム鉄ホウ素磁石のモータへのモータロータマグネットとしての応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高Cu高Alネオジム鉄ホウ素(NdFeB)磁石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネオジム鉄ホウ素永久磁石材料は、優れた性能により、現在最も使用量が多い希土類永久磁石材料であり、電子、電気機械、医療機器、玩具、パッケージ、ハードウェア機械、宇宙航空などの分野で広く利用されており、永久磁石モータ、スピーカー、磁選機、コンピューターディスクドライブ、磁気共鳴イメージング装置や計器などが一般的である。
【0003】
ネオジム鉄ホウ素磁石にCu元素を添加することは、ネオジム鉄ホウ素磁石の保磁力を効果的に向上させることができるが、Cuの添加量が0.35wt.%以上を超えると、Cuの粒界への濃化により、磁石の焼結後にマイクロクラックが形成されて磁石の緻密性および強度が低下し、さらにネオジム鉄ホウ素磁石の磁気特性に影響を及ぼし、高Cuプロセスのネオジム鉄ホウ素磁石への利用可能性が制限される。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術においてCuの含有量を増やすことで焼結後のネオジム鉄ホウ素磁石の力学的性能が劣るという欠点を克服し、高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石及びその製造方法を提供することである。本発明は、Al、RH、及び高融点金属元素を一定数の配合で併用して添加することにより、高Cuネオジム鉄ホウ素磁石における機械的強度が低く、固有保磁力(intrinsic coercivity、単に「HcJ」という)が低いという問題を効果的に解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の技術考案を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0006】
本発明により提供される高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、質量百分率で下記の成分を含み、
R:29.5~33.5%、
B:0.985%以上、
Al:0.50%以上、
Cu:0.35%以上、
RH:1%以上、
高融点元素N:0.1~0.4%、及びFe、
パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
ここで、元素含有量の質量百分率は、次の関係を満たす必要があり、
(1)1<RH<0.11R<3.54B、
(2)0.12RH<A1、
ここで、Cuは銅、Alはアルミニウム、RはプラセオジムPr及び/又はネオジムNd、Bはホウ素、RHはジスプロシウムDy及び/又はテルビウムTb、高融点金属元素NはニオブNb、ジルコニウムZr、チタンTiおよびハフニウムHfの一種または複数種、Feは鉄であることを特徴とする。
【0007】
本発明により提供される高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、下記の原料から作製され、前記原料は、下記の成分を含み、
R:29.5~33.5%、
B:0.985%以上、
Al:0.50%以上、
Cu:0.35%以上、
RH:1%以上、
高融点元素N:0.1~0.4%、及びFe、
パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、
ここで、元素含有量の質量百分率は、次の関係を満たす必要があり、
(1)1<RH<0.11R<3.54B、
(2)0.12RH<A1、
ここで、Cuは銅、Alはアルミニウム、RはプラセオジムPr及び/又はネオジムNd、Bはホウ素、RHはジスプロシウムDy及び/又はテルビウムTb、高融点金属元素NはニオブNb、ジルコニウムZr、チタンTiおよびハフニウムHfの一種または複数種、Feは鉄であることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記Rの含有量は、29.5%~30.8%であり、例えば、前記Rの含有量は29.5%、29.8%、30%、30.2%、30.4%または30.8%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0009】
好ましくは、前記Bの含有量は、0.985%~1.100%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0010】
さらに好ましくは、前記Bの含有量は、0.985%~1%であり、例えば、前記Bの含有量は0.985%、0.99%または1%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0011】
好ましくは、前記Alの含有量は、0.50%~1.25%であり、例えば、前記Alの含有量は0.5%、0.6%、0.8%または1.25%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0012】
好ましくは、前記Cuの含有量は、0.35%~0.7%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0013】
さらに好ましくは、前記Cuの含有量は、0.39%~0.6%であり、例えば、前記Cuの含有量は0.39%、0.4%、0.41%、0.42%、0.48%または0.6%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0014】
さらに好ましくは、前記Cuの含有量は、0.35%≦Cu<0.5%、または0.5%<Cu<0.7%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0015】
好ましくは、前記RHの含有量は、1.0%~2.5%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0016】
さらに好ましくは、前記RHの含有量は、1.1%~2.3%であり、例えば、前記RHの含有量は1.1%、1.5%、1.7%、1.9%、2.1%、2.2%または2.3%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0017】
好ましくは、前記高融点元素Nの含有量は、0.15%~0.35%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0018】
さらに好ましくは、前記高融点元素Nの含有量は、0.2%~0.3%であり、例えば、前記高融点元素Nの含有量は0.2%、0.25%または0.3%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0019】
好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素磁石または前記ネオジム鉄ホウ素磁石の原料には、さらに、質量百分率で0.9wt.%~2wt.%のCoが含まれ、例えば、前記Coの含有量は1%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0020】
本発明において、前記Feの含有量は本分野の従来どおりである。
【0021】
好ましくは、前記Feの含有量は、100質量%に占める残部である。
【0022】
さらに好ましくは、前記Feの含有量は、64%~66%であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0023】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが1.7%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0024】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.8%であり、Dyが1.1%であり、Alが0.8%であり、Cuが0.6%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0025】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが1.7%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.48%であり、Coが1%であり、Zrが0.3%であり、Bが1%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0026】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Tbが1.1%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Zrが0.3%であり、Bが0.985%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0027】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.4%であり、Dyが1.5%であり、Alが1.25%であり、Cuが0.39%であり、Coが1%であり、Zrが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0028】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30%であり、Dyが2.2%であり、Alが0.8%であり、Cuが0.42%であり、Coが1%であり、Zrが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0029】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30%であり、Dyが2.3%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0030】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が29.8%であり、Dyが2.3%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0031】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが2.1%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0032】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが1.9%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.41%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0033】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が30.2%であり、Dyが2.3%であり、Alが0.5%であり、Cuが0.4%であり、Coが1%であり、Nbが0.25%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0034】
本発明の一つの好ましい態様において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石は、Ndの含有量が29.5%であり、Dyが1.5%であり、Alが0.6%であり、Cuが0.41%であり、Coが1%であり、Nbが0.2%であり、Bが0.99%であり、Feが残部であり、ここで、パーセントとは、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味する。
【0035】
本発明はさらに、前記の高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法であって、以下のステップを含み、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の原料に対して溶解製錬、水素解砕(Hydrogen Decrepitation、水素化粉砕)、ジェットミル粉砕、成形、焼結、時効処理を順次実行すればよいことを特徴とする高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法を開示している。
【0036】
本発明において、前記高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の原料は、前述したように高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石の元素含有量質量百分率および元素含有量質量百分率の関係を満たす原料であることが当業者にとって明らかである。
【0037】
本発明において、前記溶解製錬は、本分野の従来どおりのものであってもよく、好ましくは、急冷凝固鋳片法(Strip Casting)を用いてネオジム鉄ホウ素合金鋳片を得る。
【0038】
ここで、前記ネオジム鉄ホウ素合金鋳片の平均厚さは、好ましくは0.25~0.35mmであり、より好ましくは0.28~0.3mmであり、例えば0.28mm、0.29mmまたは0.30mmである。
【0039】
本発明において、前記水素解砕は、本分野の従来どおりのものであってもよい。好ましくは、前記水素解砕は、水素吸蔵工程と脱水素工程を含み、前記ネオジム鉄ホウ素合金鋳片を水素解砕処理してネオジム鉄ホウ素粉体を得ることができる。
【0040】
ここで、前記水素吸蔵工程における水素圧は、好ましくは0.067~0.098MPaであり、より好ましくは0.08~0.085MPaであり、例えば0.081MPaである。
【0041】
ここで、前記脱水素工程における温度は、好ましくは480~530℃であり、より好ましくは500~510℃であり、例えば500℃である。
【0042】
本発明において、前記ジェットミル粉砕は、本分野の従来どおりのものであってもよく、好ましくは、前記ネオジム鉄ホウ素粉体をジェットミルに送り込んでジェットミル粉砕し解砕を続け、微粉を得る。
【0043】
ここで、前記微粉の粒径は、好ましくは3.8~4.1μmであり、より好ましくは3.9~4.0μmであり、例えば3.95μmである。
【0044】
ここで、前記ジェットミル粉砕におけるジェットミルの粉砕室内の酸素含有量は、好ましくは50ppm以下である。
【0045】
ここで、前記ジェットミル粉砕における選別ホイールの回転数は、好ましくは3500~4300rpm/minであり、より好ましくは3900~4100rpm/minであり、例えば4000rpm/minである。
【0046】
本発明において、前記成形は、本分野の従来どおりのものであってもよく、好ましくは、前記微粉は、一定の磁場強度で配向成形されてコンパクトが得られる。
【0047】
ここで、前記成形は、1.8T以上の磁場強度と窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0048】
ここで、前記成形は、1.8~2.5T、例えば1.9Tの磁場強度で行うことがより好ましい。
【0049】
本発明において、前記焼結は、本分野の従来どおりのものであってもよい。
【0050】
ここで、前記焼結の温度は、好ましくは1030~1080℃であり、より好ましくは1040℃~1050℃であり、例えば1040℃または1050℃である。
【0051】
ここで、前記焼結の時間は、好ましくは4~7時間であり、より好ましくは6hである。
【0052】
本発明において、前記時効処理は、本分野の従来どおりのものであってもよい。
【0053】
ここで、前記時効処理の温度は、好ましくは460~520℃であり、より好ましくは500℃である。
【0054】
ここで、前記時効処理の時間は、好ましくは4~10hであり、より好ましくは6hである。
【0055】
本発明はさらに、下記を特徴とする高Cu高A1ネオジム鉄ホウ素磁石を開示し、
主相と粒界相を含み、
前記主相の成分は、R23-29RH0.1~3.1Fe66~73.5A10.45~1.53B0.9~1.1であり、前記粒界相の成分は、R35~48RH0.5~5.9Fe46~56.5A10.05~0.25N1.5~6.2B0.8~1.1Cu6~15であり、
ここで、Cuは銅、Alはアルミニウム、RはプラセオジムPr及び/又はネオジムNd、Bはホウ素、RHはジスプロシウムDy及び/又はテルビウムTb、高融点金属元素NはニオブNb、ジルコニウムZr、チタンTiおよびハフニウムHfの一種または複数種、Feは鉄であり、
ここで、前記磁石に占める前記主相の質量比は、86~94wt.%であり、前記磁石に占める前記粒界相の質量比は、5~14wt.%であり、
好ましくは、前記主相の成分は、R23-29RH0.1~3.1Fe65~71A10.45~1.53Co1~2.5B0.9~1.1であり、前記粒界相の成分は、R35~48RH0.5~5.9Fe45~51A10.05~0.25N1.5~6.2B0.8~1.1Cu6~15Co1~5.5であり、
ここで、Coはコバルトである。
【0056】
本発明はさらに、前述のような高Cu高Alネオジム鉄ホウ素磁石のモータへのモータロータマグネットとしての応用を開示している。
【0057】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好適な実施例を得ることができる。
【0058】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0059】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
【0060】
本発明は、Al、RH、及び高融点金属元素を一定の割合で併用して添加することにより、高Cu磁石の強度不足の問題を効果的に解決しつつ、磁石材料の磁気特性を確保することができる。
【0061】
本発明のネオジム鉄ホウ素磁石は、Brが12.5kGsより大きく、HcJが23kOeより大きく、Hk/HcJが0.97より大きく、曲げ強度が430MPaより大きいという条件を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、実施例1におけるネオジム鉄ホウ素磁石のSEM画像である。
【
図2】
図2は、実施例1におけるネオジム鉄ホウ素磁石のEPMAスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、又は商品仕様書に応じて選択される。
【0064】
各実施例1~12および比較例13~24におけるネオジム鉄ホウ素磁石中の元素質量百分率を以下の表1に示す。以下の表において、wt.%は、元素の総量に占める元素の質量百分率を意味し、「/」は、その元素が添加されていないことを示す。「Br」は残留磁束密度(remanence)、「Hcj」は固有保磁力、「Hk/Hcj」は角型比(squareness ratio)である。
【0065】
表1 ネオジム鉄ホウ素磁石中の元素質量百分率
注:Ba1は残部を意味する。
【0066】
実施例1
ネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0067】
(1)溶解製錬:表1に示す各実施例及び比較例の元素質量百分率で、この元素質量百分率を満たす原料処方を調合した。原料を溶解製錬し、急冷凝固鋳片法によりネオジム鉄ホウ素合金鋳片を得た。
ネオジム鉄ホウ素合金鋳片の平均厚さは、0.28mmであった。
【0068】
(2)水素解砕:ネオジム鉄ホウ素合金鋳片の水素吸蔵工程における水素圧を0.081MPa、脱水素工程における温度を500℃として、ネオジム鉄ホウ素粉体を得た。
【0069】
(3)ジェットミル粉砕:前記ネオジム鉄ホウ素粉体をジェットミルに送り込んでジェットミル粉砕し解砕を続け、微粉を得た。
ジェットミルの粉砕室内の酸素含有量は、50ppm以下であった。
ジェットミル粉砕処理における選別ホイールの回転数は、4000rpm/minであった。
微粉の粒径は、3.95μmであった。
【0070】
(4)成形:微粉を一定の磁場強度で配向成形してコンパクトを得た。
成形は、1.9Tの磁場強度と窒素ガス雰囲気下で行った。
【0071】
(5)焼結
焼結の温度は、1050℃であり、焼結の時間は、6hであった。
【0072】
(6)時効
時効処理の温度は、500℃であり、時効処理の時間は、6hであった。
【0073】
実施例5~12、比較例13~17の製造プロセスについて、選択した原料処方が異なること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例1の製造プロセスと同じである。
【0074】
実施例2
ネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0075】
選択した原料処方が異なること、及び工程(1)溶解製錬におけるネオジム鉄ホウ素合金鋳片の平均厚さが0.30mmであること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例1の製造プロセスと同じである。
【0076】
比較例18~21の製造プロセスについて、選択した原料処方が異なること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例2の製造プロセスと同じである。
【0077】
実施例3
ネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0078】
選択した原料処方が異なること、及び工程(5)焼結における焼結の温度が1040℃であること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例1のプロセスと同じである。
【0079】
実施例4
ネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0080】
選択した原料処方が異なること、及び工程(1)溶解製錬におけるネオジム鉄ホウ素合金鋳片の平均厚さが0.29mmであること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例1の製造プロセスと同じである。
【0081】
比較例22
ネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0082】
選択した原料処方が異なること、及び工程(1)溶解製錬におけるネオジム鉄ホウ素合金鋳片の平均厚さが0.38mmであること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例3の製造プロセスと同じである。
【0083】
比較例23
ネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0084】
選択した原料処方が異なること、及び工程(5)焼結における焼結の温度が1080℃であること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例3の製造プロセスと同じである。
【0085】
比較例24
ネオジム鉄ホウ素磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0086】
選択した原料処方が異なること、及び工程(3)ジェットミル粉砕における微粉の粒径が4.25μmであること以外、製造プロセスにおけるパラメータは実施例3の製造プロセスと同じである。
【0087】
効果実施例1
各実施例および比較例で得られたネオジム鉄ホウ素磁石の磁気特性および曲げ強度を測定し、下記の表2に示す。
【0088】
本発明の各実施例および比較例におけるBr、HcJおよびHk/HcJについては、中国計量院におけるNIM―62000型希土類永久磁石測定システムを用いて磁気特性の検出を行い、曲げ強度については、GB/T 14452―93(3点曲げ)基準で3点曲げ装置を使用して試験を行った。
【0089】
【0090】
本発明の実施例は、磁石材料の磁気特性を確保しつつ、高Cu磁石の強度不足の問題を効果的に解決できることがわかる。
【0091】
効果実施例2
一定量のCu、Al、Dy、Nbを併用して添加することで、磁石中の粒界相領域の大部分にCuやNbなどの高融点元素の濃化が存在すると同時に、粒界の重希土類元素Dy、Al元素が希薄な状態になっていることを見出した。より具体的には、粒界相にCuおよびNbなどの高融点元素の濃化が現れ、Cuおよび高融点元素濃化領域の粒界相中の存在は、結晶粒の焼結過程における異常成長を阻害し、磁石の焼結温度に対する感度を低下させ、焼結温度を高めるのに有利であり、焼結温度の上昇は、磁石の保磁力及び機械的強度の向上に有利である。また、粒界相でのA1およびDy元素の含有量は低く、AlおよびDyの粒界相での希薄化は、より多くのA1およびDyがネオジム鉄ホウ素磁石の主相と粒界相との相界面に存在することを意味し、相界面に存在するAlは、高温熱処理過程における粒界相の流動性を高めて、より安定な相界面を形成し、界面エネルギーを低下させることで、磁石の機械的強度を向上させることに寄与する。相界面に存在するDyは、相界面の結晶磁気異方性場を高め、磁石の保磁力を高めるのに有利である。
【0092】
実施例1を例にとると、SEM画像(
図1)から、実施例1の磁石はNd
2Fe
14B主相(符号1、灰色域)と粒界Ndリッチ相(符号2、銀白色域)からなることがわかる。実施例1のEPMAマイクロ分析を
図2に示す。
【0093】
【0094】
磁石主相の成分は、Nd25~28Dy0.1~2.1Fe65~71A10.55~1.2Co1~2.5B0.9~1.1であり、粒界相の成分は、Nd35~48Dy0.5~4.5Fe45~51A10.05~0.25Nb1.5~6B0.8~1.1Cu6~15Co1~5.5であり、そのうち、主相の占める割合は、88~93wt.%であり、粒界相の占める割合は、7~12wt.%である。
【0095】
以上が、本発明に係る高Cu含有磁石の機械的強度および保磁力は、Cu含有量が高いことによる劣化が生じない要因となっている。
【0096】
【国際調査報告】