(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(54)【発明の名称】R-T-B系永久磁石材料、原料組成物、製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20221004BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20221004BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20221004BHJP
B22F 9/04 20060101ALI20221004BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221004BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20221004BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F9/04 C
B22F9/04 D
B22F9/04 E
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F3/24 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513848
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2020100577
(87)【国際公開番号】W WO2021114648
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】201911253954.2
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】藍琴
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
(72)【発明者】
【氏名】陳大崑
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB08
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4K018KA45
4K018KA70
5E040AA04
5E040CA01
5E040NN01
5E062CD04
(57)【要約】
【課題】本発明は、R-T-B系永久磁石材料、原料組成物、製造方法、並びに応用を開示する。
【解決手段】R-T-B系永久磁石材料Iには、R、TおよびXが含まれ、それは、下の関係式を満たし、(1)(Fe+Co)/Bの原子比は、12.5~13.5であり、(2)B/Xの原子比は、2.7~4.1であることであり、Xは、Al、GaおよびCuのうちの一種または複数種であり、それは、R
2T
14B主相結晶粒と、隣接する2つのR
2T
14B主相結晶粒間の二粒子粒界相および希土類リッチ相とが含まれ、二粒子粒界相および前記希土類リッチ相は、組成がR
6T
13Xである相を含む。本発明におけるR-T-B系永久磁石材料Iには、R
6T
13X相が形成され、Hcj及び力学的性能の同時改善を実現することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B系永久磁石材料Iであって、
前記R-T-B系永久磁石材料Iには、R、TおよびXが含まれ、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、かつ、RはRHを含み、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
前記Tは、少なくともFeを含み、
前記Xは、Al、GaおよびCuのうちの一種または複数種であり、かつ、前記Xは、Alを含まなければならなく、
前記R-T-B系永久磁石材料Iは、以下の関係式を満たし、すなわち、
(1)(Fe+Co)/Bの原子比は、12.5~13.5であることと、
(2)B/Xの原子比は、2.7~4.1であることであり、
前記R-T-B系永久磁石材料Iには、R
2T
14B主相結晶粒と、隣接する2つのR
2T
14B主相結晶粒間の二粒子粒界相および希土類リッチ相とが含まれ、前記二粒子粒界相および前記希土類リッチ相は、組成がR
6T
13Xである相を含み、
好ましくは、前記Tは、FeおよびCoを含み、
好ましくは、前記R
6-T
13-X相において、Xは、AlおよびCuであり、
好ましくは、前記(Fe+Co)/Bの原子比は、12.8~13.39であり、例えば、12.5、12.86、12.88、12.89、12.9または13.9であり、
好ましくは、前記B/Xの原子比は、2.8~4であり、例えば、2.8、2.9、3.2、3.6、3.8、3.9または4である、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料I。
【請求項2】
前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:31.0~32.5wt.%、かつ前記RにはRHが含まれ、
Cu:0.20~0.50wt.%、
Al:0.40~0.80wt.%、
Ga:0~0.30wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
残部はFeおよび不可避的不純物であり、
好ましくは、前記RにはPr元素がさらに含まれ、
好ましくは、前記Rの含有量は、31.5~32.5wt.%の範囲であり、例えば、31wt.%、31.5wt.%、32wt.%、または32.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記RHの含有量は、0.8~2.2wt.%の範囲であり、例えば、0.8wt.%、1.5wt.%、または2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Cuの含有量は、0.2~0.4wt.%の範囲、または0.3~0.5wt.%の範囲であり、例えば、0.2wt.%、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%、0.45wt.%、または0.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Alの含有量は、0.4~0.6wt.%の範囲、または0.5~0.8wt.%の範囲であり、例えば、0.4wt.%、0.5wt.%、0.51wt.%、0.6wt.%、0.65wt.%、0.7wt.%、または0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Gaの含有量は、0wt.%または0.3wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Nbの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲、または0.12~0.25wt.%の範囲であり、例えば、0.1wt.%、0.12wt.%、0.15wt.%、0.2wt.%、または0.25wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲、または1~2wt.%の範囲であり、例えば、0.5wt.%、1wt.%、1.2wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Bの含有量は、0.97~1wt.%の範囲、または0.99~1.03wt.%の範囲であり、例えば、0.97wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%、1wt.%、または1.03wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料I。
【請求項3】
R-T-B系永久磁石材料IIであって、前記R-T-B系永久磁石材料IIには、R、TおよびXが含まれ、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、かつ、RはRHを含み、前記RHは、重希土類元素であり、
前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
前記Tは、少なくともFeを含み、
前記Xは、Al、GaおよびCuのうちの一種または複数種であり、かつ、前記Xは、Alを含まなければならなく、
前記R-T-B系永久磁石材料IIは、以下の関係式を満たし、すなわち、
(1)(Fe+Co)/Bの原子比は、12.5~13.7であることと、
(2)B/Xの原子比は、2.8~4.0であることであり、
好ましくは、前記Tは、FeおよびCoを含み、
好ましくは、前記(Fe+Co)/Bの原子比は、12.9~13であり、例えば、12.94、12.95、12.96、12.98、12.99または13であり、
好ましくは、前記B/Xの原子比は、2.9~3.9であり、例えば、3.2、3.6または3.8である、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料II。
【請求項4】
前記R-T-B系永久磁石材料IIは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32wt.%、かつ前記RにはRHが含まれ、
Cu:0.20~0.50wt.%、
Al:0.40~0.80wt.%、
Ga:0~0.30wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、
前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
残部はFeおよび不可避的不純物であり、
好ましくは、前記RにはPr元素がさらに含まれ、
好ましくは、前記Rの含有量は、31-32wt.%の範囲であり、例えば、31wt.%、31.5wt.%、または32wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記RHの含有量は、0.3~1.7wt.%の範囲であり、例えば、0.3wt.%、1wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Cuの含有量は、0.2~0.4wt.%の範囲、または0.3~0.5wt.%の範囲であり、例えば、0.2wt.%、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%、0.45wt.%、または0.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Alの含有量は、0.4~0.6wt.%の範囲、または0.5~0.8wt.%の範囲であり、例えば、0.4wt.%、0.5wt.%、0.51wt.%、0.6wt.%、0.65wt.%、0.7wt.%、または0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Gaの含有量は、0wt.%または0.3wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Nbの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲、または0.12~0.25wt.%の範囲であり、例えば、0.1wt.%、0.12wt.%、0.15wt.%、0.2wt.%、または0.25wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲、または1~2wt.%の範囲であり、例えば、0.5wt.%、1wt.%、1.2wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Bの含有量は、0.97~1wt.%の範囲、または0.99~1.03wt.%の範囲であり、例えば、0.97wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%、1wt.%、または1.03wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項3に記載のR-T-B系永久磁石材料II。
【請求項5】
R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物であって、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32wt.%、かつ前記RにはRHが含まれ、
Cu:0.20~0.50wt.%、
Al:0.40~0.80wt.%、
Ga:0~0.30wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、
前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
残部はFeおよび不可避的不純物であり、
好ましくは、前記Rの含有量は、31-32wt.%の範囲であり、例えば、31wt.%、31.5wt.%、または32wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
好ましくは、前記RHの含有量は、0.3~1.7wt.%の範囲であり、例えば、0.3wt.%、1wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Cuの含有量は、0.2~0.4wt.%の範囲、または0.3~0.5wt.%の範囲であり、例えば、0.2wt.%、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%、0.45wt.%、または0.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Alの含有量は、0.4~0.6wt.%の範囲、または0.5~0.8wt.%の範囲であり、例えば、0.4wt.%、0.5wt.%、0.51wt.%、0.6wt.%、0.65wt.%、0.7wt.%、または0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Gaの含有量は、0wt.%または0.3wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Nbの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲、または0.12~0.25wt.%の範囲であり、例えば、0.1wt.%、0.12wt.%、0.15wt.%、0.2wt.%、または0.25wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲、または1~2wt.%の範囲であり、例えば、0.5wt.%、1wt.%、1.2wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
好ましくは、前記Bの含有量は、0.97~1wt.%の範囲、または0.99~1.03wt.%の範囲であり、例えば、0.97wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%、1wt.%、または1.03wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物。
【請求項6】
R-T-B系永久磁石材料IIの製造方法であって、下記のステップを含み:請求項5に記載の前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結すればよい、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料IIの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により製造されたR-T-B系永久磁石材料II。
【請求項8】
R-T-B系永久磁石材料Iの製造方法であって、請求項3、4又は7のいずれかの1項に記載の前記R-T-B系永久磁石材料IIを粒界拡散処理すればよい、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料Iの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法により製造されたR-T-B系永久磁石材料I。
【請求項10】
R-T-B系永久磁石材料が電子部品としての応用であって、
前記R-T-B系永久磁石材料は請求項1、2または9のいずれかの1項に記載の前記R-T-B系永久磁石材料Iであり、および/または、
前記R-T-B系永久磁石材料は請求項3、4または7のいずれかの1項に記載の前記R-T-B系永久磁石材料IIである、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料が電子部品としての応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R-T-B系永久磁石材料、原料組成物、製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石材料は、電子部品をサポートするための重要な材料として開発され、開発の方向は、高磁気エネルギー積と高保磁力の方向に向かう。R-T-B系永久磁石材料(Rは希土類元素の少なくとも1つである)は、永久磁石の中で最高性能の磁石として知られ、ハードディスクドライブのボイスコイルモーター(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モーター、産業機器用モーターなどのさまざまなモーター及び家電製品に使用される。
【0003】
従来技術では、通常のBの含有量を有するネオジム鉄ホウ素は、R6-T13-X相を生成できず、磁気性能に劣る。類似の処方系を有することを前提として、ネオジム鉄ホウ素成分におけるBの含有量(Bの含有量は、約0.93wt.%以下である)を低減させ、Ga、Cu、Al、Si、Tiを添加して磁石中にR6-T13-X相(Xは、Ga、Cu、Al、Siなどを含む)を生成させることにより、磁石性能を向上させると、Bの含有量の低減により、磁石中にR2T17、TiBxなどの雑相が極めて形成され易くなり、磁石の力学的性能を低下させ、材料をより脆くして、加工および高速モータへの使用に不利となる。
【0004】
従って、R-T-B系永久磁石材料の磁気性能を確保しつつ、材料の力学的性能を低下させないR-T-B永久磁石材料が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術においてR6-T13-X相を生成することによりR-T-B系永久磁石材料の磁気特性を向上させる場合、磁性体の力学的性能が低下する欠陥を克服するために、R-T-B系永久磁石材料、原料組成物、製造方法、並びに応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術考案を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0007】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料Iが提供され、前記R-T-B系永久磁石材料Iには、R、TおよびXが含まれ、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、かつ、RはRHを含み、前記RHは、重希土類元素であり、
前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
前記Tは、少なくともFeを含み、
前記Xは、Al、GaおよびCuのうちの一種または複数種であり、かつ、前記Xは、Alを含まなければならなく、
前記R-T-B系永久磁石材料Iは、以下の関係式を満たし、すなわち、
(1)(Fe+Co)/Bの原子比は、12.5~13.5であることと、
(2)B/Xの原子比は、2.7~4.1であることであり、
前記R-T-B系永久磁石材料Iには、R2T14B主相結晶粒と、隣接する2つのR2T14B主相結晶粒間の二粒子粒界相および希土類リッチ相とが含まれ、前記二粒子粒界相および前記希土類リッチ相は、組成がR6T13Xである相を含む。
【0008】
本発明において、上記関係式(1)(2)が成り立つ根拠は以下の通りである。発明者は、R6-T13-X相の生成過程で、R6-T13-X相を含有する磁性体にBリッチX貧乏(XはAl、Ga及びCuのうちの一種または複数種であり、また前記Xは必ずAlを含むべきである。)領域が存在することを見出し、これから、BとXに一定の対応関係があり、B含有量が少ない場合、希土類の量が相対的に高く、Feの比例も変化すると推測された。したがって、本発明では、X含有量を高め、希土類の量を調整することにより、FeとBの比例を変化させることで、通常のB含有量のみでR6-T13-X相(XはAl、Ga及びCuのうちの一種または複数種である。)を形成させることができる。
【0009】
本発明において、前記Tは、FeおよびCoを含む。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記R6-T13-X相において、Xは、AlおよびCuであり、例えば、Ndが27.9at%であり、Dyが1.85at%であり、Feが64.25at%であり、Coが0.77at%であり、Alが4.63at%であり、Cuが0.42at%であり、at%とは、前記R-T-B系永久磁石材料における各元素の原子含有量が占める百分率を意味する。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記(Fe+Co)/Bの原子比は、12.8~13.39であり、例えば、12.5、12.86、12.88、12.89、12.9または13.9である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記B/Xの原子比は、2.8~4であり、例えば、2.8、2.9、3.2、3.6、3.8、3.9または4である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:31.0~32.5wt.%、かつ前記RにはRHが含まれ、
Cu:0.20~0.50wt.%、
Al:0.40~0.80wt.%、
Ga:0~0.30wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、
前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0014】
ここで、前記Rには、当技術分野における従来の希土類元素が含まれてもよく、例えば、Prが含まれる。
【0015】
ここで、前記Rの含有量は、31.5~32.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、31wt.%、31.5wt.%、32wt.%、または32.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0016】
ここで、前記RHの含有量は、0.8~2.2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.8wt.%、1.5wt.%、または2wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0017】
ここで、前記Cuの含有量は、0.2~0.4wt.%の範囲、または0.3~0.5wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.2wt.%、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%、0.45wt.%、または0.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0018】
ここで、前記Alの含有量は、0.4~0.6wt.%の範囲、または0.5~0.8wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.4wt.%、0.5wt.%、0.51wt.%、0.6wt.%、0.65wt.%、0.7wt.%、または0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0019】
ここで、前記Gaの含有量は、0wt.%または0.3wt.%の範囲であることが好ましく、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0020】
ここで、前記Nbの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲、または0.12~0.25wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.1wt.%、0.12wt.%、0.15wt.%、0.2wt.%、または0.25wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0021】
ここで、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲、または1~2wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.5wt.%、1wt.%、1.2wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0022】
ここで、前記Bの含有量は、0.97~1wt.%の範囲、または0.99~1.03wt.%の範囲であることが好ましく、例えば、0.97wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%、1wt.%、または1.03wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0023】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:31.0~32.5wt.%、
RH:0.8~2.2wt.%、
Cu:0.30~0.50wt.%、
Al:0.50~0.70wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0024】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:31.5~32.5wt.%、
RH:0.8~2.2wt.%、
Cu:0.2~0.4wt.%、
Al:0.4~0.6wt.%、
Ga:0~0.3wt.%
Nb:0.1~0.2wt.%、
Co:0.5~1.5wt.%、
B:0.97~1wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味し、前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0025】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:31wt.%、
Tb:0.8wt.%、
Cu:0.3wt.%、
Al:0.5wt.%、
Nb:0.1wt.%、
Co:0.5wt.%、
B:0.97wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0026】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:31wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.5wt.%、
Al:0.7wt.%、
Nb:0.25wt.%、
Co:0.5wt.%、
B:1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0027】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:32wt.%、
Dy:2wt.%、
Cu:0.4wt.%、
Al:0.6wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0028】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.35wt.%、
Al:0.51wt.%、
Nb:0.15wt.%、
Co:1.5wt.%、
B:1wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0029】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
Nd:32.5wt.%、
Dy:2wt.%、
Cu:0.45wt.%、
Al:0.65wt.%、
Nb:0.12wt.%、
Co:1.2wt.%、
B:0.98wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0030】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:32wt.%、
Dy:2wt.%、
Cu:0.2wt.%、
Al:0.6wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0031】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:32wt.%、
Dy:2wt.%、
Cu:0.5wt.%、
Al:0.4wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0032】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:32wt.%、
Dy:2wt.%、
Cu:0.2wt.%、
Al:0.8wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0033】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料Iは、質量百分率で下記の成分を含み、
PrNd:32wt.%、
Dy:2wt.%、
Cu:0.4wt.%、
Al:0.4wt.%、
Ga:0.3wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料Iにおける質量百分率を意味する。
【0034】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料IIがさらに提供され、前記R-T-B系永久磁石材料IIには、R、TおよびXが含まれ、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、かつ、RはRHを含み、前記RHは、重希土類元素であり、
前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
前記Tは、少なくともFeを含み、
前記Xは、Al、GaおよびCuのうちの一種または複数種であり、かつ、前記Xは、Alを含まなければならなく、
前記R-T-B系永久磁石材料IIは、以下の関係式を満たし、すなわち、
(1)(Fe+Co)/Bの原子比は、12.5~13.7であることと、
(2)B/Xの原子比は、2.8~4.0であることである。
【0035】
本発明において、好ましくは、前記Tは、FeおよびCoを含む。
【0036】
本発明において、好ましくは、前記(Fe+Co)/Bの原子比は、12.9~13であり、例えば、12.94、12.95、12.96、12.98、12.99または13である。
【0037】
本発明において、好ましくは、前記B/Xの原子比は、2.9~3.9であり、例えば、3.2、3.6または3.8である。
【0038】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32wt.%、かつ前記RにはRHが含まれ、
Cu:0.20~0.50wt.%、
Al:0.40~0.80wt.%、
Ga:0~0.30wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、
前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0039】
ここで、前記Rには、当技術分野における従来の希土類元素が含まれてもよく、例えば、Prが含まれる。
【0040】
ここで、好ましくは、前記Rの含有量は、31-32wt.%の範囲であり、例えば、31wt.%、31.5wt.%、または32wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0041】
ここで、好ましくは、前記RHの含有量は、0.3~1.7wt.%の範囲であり、例えば、0.3wt.%、1wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0042】
ここで、好ましくは、前記Cuの含有量は、0.2~0.4wt.%の範囲、または0.3~0.5wt.%の範囲であり、例えば、0.2wt.%、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%、0.45wt.%、または0.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0043】
ここで、好ましくは、前記Alの含有量は、0.4~0.6wt.%の範囲、または0.5~0.8wt.%の範囲であり、例えば、0.4wt.%、0.5wt.%、0.51wt.%、0.6wt.%、0.65wt.%、0.7wt.%、または0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0044】
ここで、好ましくは、前記Gaの含有量は、0wt.%または0.3wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0045】
ここで、好ましくは、前記Nbの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲、または0.12~0.25wt.%の範囲であり、例えば、0.1wt.%、0.12wt.%、0.15wt.%、0.2wt.%、または0.25wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0046】
ここで、好ましくは、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲、または1~2wt.%の範囲であり、例えば、0.5wt.%、1wt.%、1.2wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0047】
ここで、好ましくは、前記Bの含有量は、0.97~1wt.%の範囲、または0.99~1.03wt.%の範囲であり、例えば、0.97wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%、1wt.%、または1.03wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0048】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
R:30.5~32wt.%、
RH:0.3~1.7wt.%、
Cu:0.30~0.50wt.%、
Al:0.50~0.70wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0049】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
R:31~32wt.%、
RH:0.3~1wt.%、
Cu:0.2~0.4wt.%、
Al:0.4~0.6wt.%、
Ga:0~0.3wt.%、
Nb:0.1~0.2wt.%、
Co:0.5~1.5wt.%、
B:0.97~1wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味し、前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0050】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:30.5wt.%、
Tb:0.3wt.%、
Cu:0.3wt.%、
Al:0.5wt.%、
Nb:0.1wt.%、
Co:0.5wt.%、
B:0.97wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0051】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:30.5wt.%、
Dy:1wt.%、
Cu:0.5wt.%、
Al:0.7wt.%、
Nb:0.25wt.%、
Co:0.5wt.%、
B:1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0052】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.4wt.%、
Al:0.6wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0053】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:31wt.%、
Dy:1wt.%、
Cu:0.35wt.%、
Al:0.51wt.%、
Nb:0.15wt.%、
Co:1.5wt.%、
B:1wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0054】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
Nd:32wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.45wt.%、
Al:0.65wt.%、
Nb:0.12wt.%、
Co:1.2wt.%、
B:0.98wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0055】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.2wt.%、
Al:0.6wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0056】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.5wt.%、
Al:0.4wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0057】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.2wt.%、
Al:0.8wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0058】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIは、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.4wt.%、
Al:0.4wt.%、
Ga:0.3wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIにおける質量百分率を意味する。
【0059】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物がさらに提供され、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32wt.%、かつ前記RにはRHが含まれ、
Cu:0.20~0.50wt.%、
Al:0.40~0.80wt.%、
Ga:0~0.30wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、
前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、
前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、
残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0060】
本発明において、前記Rには、本分野における通常の希土類元素、例えばPrがさらに含まれていてもよい。
【0061】
本発明において、好ましくは、前記Rの含有量は、31-32wt.%の範囲であり、例えば、31wt.%、31.5wt.%、または32wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0062】
本発明において、好ましくは、前記RHの含有量は、0.3~1.7wt.%の範囲であり、例えば、0.3wt.%、1wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0063】
本発明において、好ましくは、前記Cuの含有量は、0.2~0.4wt.%の範囲、または0.3~0.5wt.%の範囲であり、例えば、0.2wt.%、0.3wt.%、0.35wt.%、0.4wt.%、0.45wt.%、または0.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0064】
本発明において、好ましくは、前記Alの含有量は、0.4~0.6wt.%の範囲、または0.5~0.8wt.%の範囲であり、例えば、0.4wt.%、0.5wt.%、0.51wt.%、0.6wt.%、0.65wt.%、0.7wt.%、または0.8wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0065】
本発明において、好ましくは、前記Gaの含有量は、0wt.%または0.3wt.%の範囲であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0066】
本発明において、好ましくは、前記Nbの含有量は、0.1~0.2wt.%の範囲、または0.12~0.25wt.%の範囲であり、例えば、0.1wt.%、0.12wt.%、0.15wt.%、0.2wt.%、または0.25wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0067】
本発明において、好ましくは、前記Coの含有量は、0.5~1.5wt.%の範囲、または1~2wt.%の範囲であり、例えば、0.5wt.%、1wt.%、1.2wt.%、または1.5wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0068】
本発明において、好ましくは、前記Bの含有量は、0.97~1wt.%の範囲、または0.99~1.03wt.%の範囲であり、例えば、0.97wt.%、0.98wt.%、0.99wt.%、1wt.%、または1.03wt.%であり、wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0069】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
R:30.5~32wt.%、
RH:0.3~1.7wt.%、
Cu:0.30~0.50wt.%、
Al:0.50~0.70wt.%、
Nb:0.10~0.25wt.%、
Co:0.5~2.0wt.%、
B:0.97~1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0070】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
R:31~32wt.%、
RH:0.3~1wt.%、
Cu:0.2~0.4wt.%、
Al:0.4~0.6wt.%、
Ga:0~0.3wt.%、
Nb:0.1~0.2wt.%、
Co:0.5~1.5wt.%、
B:0.97~1wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味し、前記Rは、少なくともNdを含む希土類元素であり、前記RHは、重希土類元素であり、前記RHは、少なくともDyおよび/またはTbを含み、残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0071】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:30.5wt.%、
Tb:0.3wt.%、
Cu:0.3wt.%、
Al:0.5wt.%、
Nb:0.1wt.%、
Co:0.5wt.%、
B:0.97wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0072】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:30.5wt.%、
Dy:1wt.%、
Cu:0.5wt.%、
Al:0.7wt.%、
Nb:0.25wt.%、
Co:0.5wt.%、
B:1.03wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0073】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.4wt.%、
Al:0.6wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0074】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:31wt.%、
Dy:1wt.%、
Cu:0.35wt.%、
Al:0.51wt.%、
Nb:0.15wt.%、
Co:1.5wt.%、
B:1wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0075】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
Nd:32wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.45wt.%、
Al:0.65wt.%、
Nb:0.12wt.%、
Co:1.2wt.%、
B:0.98wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0076】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.2wt.%、
Al:0.6wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0077】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.5wt.%、
Al:0.4wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0078】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.2wt.%、
Al:0.8wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0079】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物は、下記の成分を含み、
PrNd:31.5wt.%、
Dy:1.5wt.%、
Cu:0.4wt.%、
Al:0.4wt.%、
Ga:0.3wt.%、
Nb:0.2wt.%、
Co:1wt.%、
B:0.99wt.%、
wt.%とは、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物における質量百分率を意味する。
【0080】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料IIの製造方法は、下記のステップを含み:前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結すればよい。
【0081】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の溶融液を本分野における通常の方法で製造することができ、例えば、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬すれば良い。前記溶解炉の真空度は、5×10-2Paであってもよい。前記溶解製錬の温度は、1500℃以下であってもよい。
【0082】
本発明において、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造工程であることができ、例えば、Arガス雰囲気(例えば5.5×104PaのArガス雰囲気下)において、102℃/秒~104℃/秒の速度で冷却すればよい。
【0083】
本発明において、前記破砕の工程は、本分野における通常の破砕工程であることができ、例えば、水素吸収、脱水素、冷却処理を経ていればよい。
【0084】
ここで、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.15MPaの条件下で行うことができる。
【0085】
ここで、前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができる。
【0086】
本発明において、前記粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕工程であることができ、例えば、ジェットミル粉砕である。
【0087】
ここで、好ましくは、前記粉砕の工程は、酸化ガス含有量が100ppm以下の雰囲気下で行うことができる。
【0088】
前記酸化ガスは、酸素または水分の含有量を意味する。
【0089】
ここで、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.38MPaとすることができる。
【0090】
ここで、前記ジェットミル粉砕の時間は、3時間とすることができる。
【0091】
ここで、前記粉砕を行った後、本分野における通常の方法で潤滑剤を添加することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛を添加する。前記潤滑剤の添加量は、混合後の粉末重量の0.10~0.15%、例えば0.12%とすることができる。
【0092】
本発明において、前記成形の工程は、本分野における通常の成形工程であることができ、例えば、磁場成形法またはホットプレス熱間成形法である。
【0093】
本発明において、前記焼結の工程は、本分野における通常の焼結工程であることができ、例えば、真空条件下(例えば5×10-3Paの真空下)で、予熱、焼結、冷却を経ていればよい。
【0094】
ここで、前記予熱の温度は、300~600℃であってもよい。前記予熱の時間は、1~2hとすることができる。前記予熱は、300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間予熱することが好ましい。
【0095】
ここで、前記焼結の温度は、本分野における通常の焼結温度、例えば900℃~1100℃、さらには例えば1040℃とすることができる。
【0096】
ここで、前記焼結の時間は、本分野における通常の焼結時間、例えば2hとすることができる。
【0097】
ここで、前記冷却の前に、ガス圧が0.1MPaに達するようにArガスを導入することができる。
【0098】
本発明は、前記方法で製造されたR-T-B系永久磁石材料IIも提供する。
【0099】
本発明により提供されるR-T-B系永久磁石材料Iの製造方法は、前記R-T-B系永久磁石材料IIを粒界拡散処理すればよい。
【0100】
前記粒界拡散処理における重希土類元素には、Tbおよび/またはDyが含まれる。
【0101】
本発明において、前記粒界拡散処理は、本分野における通常の工程で処理を行うことができ、例えば、Dy蒸気拡散処理である。
【0102】
ここで、前記拡散熱処理の温度は、800~900℃、例えば850℃であってもよい。
【0103】
ここで、前記拡散熱処理の時間は、12~48h、例えば24hであってもよい。
【0104】
ここで、前記粒界拡散処理の後に、さらに熱処理を行うことができる。前記熱処理の温度は、450~550℃、例えば500℃とすることができる。前記熱処理の時間は、3hとすることができる。
【0105】
本発明は、前記方法で製造されたR-T-B系永久磁石材料Iも提供する。
【0106】
本発明は、R-T-B系永久磁石材料が電子部品としての応用も提供する。
【0107】
ここで、前記電子部品は、モーターにおける電子部品などの当技術分野の従来型であってもよい。
【0108】
ここで、前記R-T-B系永久磁石材料は、上記R-T-B系永久磁石材料Iおよび/またはR-T-B系永久磁石材料IIであってもよい。
【0109】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好適な実施例を得ることができる。
【0110】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0111】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
【0112】
(1)本発明の永久磁石材料は、力学的性能の維持が良好であり、すなわち、現在のB含有量の低い永久磁石体は、曲げ強さが270~300Mpaであるが、本発明の永久磁石材料の曲げ強さは370~402Mpaである。
【0113】
(2)本発明の永久磁石材料は、磁気特性が良好であり、すなわちBr≧13.20kGs、Hcj≧25.1kOeであり、BrおよびHcjの同期的向上を実現し、且つ最大エネルギー積(maximum energy product、BHmaxと略称)≧42.5MGOeである。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】
図1は、実施例5のFE-EPMA反射電子(後方散乱電子)画像である。
【
図2】
図2は、比較例3のFE-EPMA反射電子(後方散乱電子)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、又は商品仕様書に応じて選択される。
【0116】
実施例および比較例におけるR-T-B系永久磁石材料IIの原料成分を表1に示す。以下の表において、「/」は、その元素が添加されていないことを示す。「Br」は残留磁束密度(remanence)、「Hcj」は保磁力(intrinsic coercivity)であり、「BHmax」が最大エネルギー積(maximum energy product)であり、「BHH」はBHmaxとHcjの総和である。
【0117】
表1 R-T-B系永久磁石材料IIの原料組成物の成分と含有量(wt.%)
備考:Rは希土類の合計含有量を指し、具体的にはNd、PrNd、TbおよびDyの合計含有量を指す。
【0118】
表2 R-T-B系永久磁石材料IIの成分と含有量(wt.%)
備考:Rは希土類の合計含有量を指し、具体的にはNd、PrNd、TbおよびDyの合計含有量を指す。
【0119】
実施例2~9、および比較例1~7のR-T-B系焼結磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0120】
(1)溶解製錬の工程:表1に示す成分に従って、調製した原料をアルミナ製の坩堝に入れ、高周波真空誘導溶解炉において5×10-2Paの真空中で1500℃以下の温度で真空溶解製錬した。
【0121】
(2)鋳造の工程:真空溶解製錬した後の溶解炉にArガスを導入し、気圧を5.5万Paにした後に鋳造し、102℃/秒~104℃/秒の冷却速度で急冷合金を得る。
【0122】
(3)水素破砕工程:急冷合金を置く水素破砕用炉を室温で真空引きした後、純度99.9%の水素ガスを水素破砕用炉内に導入して水素ガス圧力を0.15MPaに維持する。水素吸収を十分に行った後、真空引きしながら昇温し、十分に脱水素する。その後、冷却し、水素破砕した粉末を取り出す。
【0123】
(4)ジェットミル工程:水素破砕した粉末を、酸化ガス含有量100ppm以下の窒素ガス雰囲気下及び粉砕室圧力0.38MPaの条件下で3時間のジェットミル粉砕し、微粉を得る。酸化ガスは、酸素または水分を指す。
【0124】
(5)ジェットミル粉砕した後の粉末にステアリン酸亜鉛を添加し、ステアリン酸亜鉛の添加量を混合後の粉末重量の0.12%として、Vブレンダーで十分に混合した。
【0125】
(6)磁場成形の工程:上記のステアリン酸亜鉛を添加した粉末を、直角配向型の磁場成形機を用いて、1.6Tの配向磁場中及び0.35ton/cm2の成形圧力で、一辺が25mmの立方体に一次成形し、一次成形後、0.2Tの磁場で減磁する。一次成形後の成形体を空気に触れさせないように、それをシールし、その後、二次成形機(静水圧成形機)を用いて、1.3ton/cm2の圧力で二次成形を行う。
【0126】
(7)焼結の工程:各成形体を焼結炉に搬送して焼結し、5×10-3Paの真空下かつ300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間を保持し、その後、1040℃の温度で2時間焼結してから、Arガスを導入して0.1MPaまでガス圧を到達させた後、室温まで冷却して、R-T-B系永久磁石材料IIを取得する。
【0127】
(8)粒界拡散処理の過程:金属Dy及びR-T-B系永久磁石材料IIを炉に入れ、金属Dyが高温蒸発するように高温下で加熱し、且つ外来の不活性希ガスの誘導下で磁性体の表面に沈積させ、粒界に沿って磁性体の内部に拡散させた。
【0128】
(9)熱処理の工程:焼結体を高純度のArガスにおいて500℃で3時間の熱処理を行った後、室温まで冷却して取り出して、R-T-B系永久磁石材料Iを取得する。
【0129】
実施例1のR-T-B系焼結磁石の製造方法は、以下の通りである。
【0130】
表1に示される成分、および実施例2の製造工程によって実施例1のR-T-B系焼結磁石を製造し、その相違点は、「粒界拡散工程において、磁石の表面にTb元素の金属をスパッタ付着させる。
【0131】
効果実施例
実施例1~9および比較例1~7で製造された、粒界拡散前の焼結磁石(すなわち、R-T-B系永久磁石材料IIである)と粒界拡散後の焼結磁石(R-T-B系永久磁石材料Iである)を含んでいるR-T-B系焼結磁石の磁気特性、力学的性能および成分をそれぞれに測定し、その磁性体の相組成をFE-EPMAで観察した。
【0132】
(1)R-T-B系永久磁石材料Iの各成分に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて測定し、ここで、R6T13X相はFE-EPMA試験により得られた。以下の表3に示すのは、成分検出の結果である。
【0133】
表3 R-T-B系永久磁石材料Iの成分と含有量(wt.%)
備考:Rは希土類の合計含有量を指し、具体的にはNd、PrNd、TbおよびDyの合計含有量を指す。
【0134】
(2)磁気特性の評価:中国計量院のNIM-10000H型BH大塊希土類永久磁石非破壊測定システムを用いて焼結磁石の磁気特性検出を行った。
【0135】
力学的性能:万能試験機設備で3点曲げ法を用いて測定した。試料のサイズは45mm×10mm×3mmであり、測定する曲げ強さは、破断面が磁場の配向方向に平行する破断強さであった。
【0136】
以下の表4は、磁気特性と力学的性能の検出の結果を示している。
【0137】
【0138】
表4から分かるように、
【0139】
(1)本願におけるR-T-B系永久磁石材料Iは、磁気特性が良好であり、すなわちBr≧13.20kGs、Hcj≧25.1kOeであり、BrおよびHcjの同期的向上を実現し、且つ最大エネルギー積≧42.5MGOeである(実施例1-9);
【0140】
2)本出願の配合によれば、RとAlの含有量を高めるにしろ、RとAlの含有量を低減するにしろ、いずれもR6T13X相を形成することができず、R-T-B系永久磁石材料Iの磁気特性と曲げ強さがすべて低下した(比較例1と比較例3);
【0141】
3)本出願の配合によれば、Bの含有量を通常の含有量に調整しても、仮に、他の成分の含有量が本出願に限定された範囲内にない場合、R6T13X相を生成することができず、R-T-B系永久磁石材料Iの磁気特性と曲げ強さがすべて低下した(比較例2);
【0142】
4)本出願の配合によれば、(Fe+Co)/Bの比の値及びB/Xの比の値が本出願に限定された範囲内にあることを確保できない場合、R6T13X相が生成したとしても、R-T-B系永久磁石材料Iの磁気特性と曲げ強さの同期的向上を実現できなかった(比較例4~7)。
【0143】
(3)FE-EPMAによる検出:焼結磁石の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)で検出した。まず、後方散乱画像を撮影した後、異なるコントラストの画像に対して定量分析を行い、相の組成を確定した。測定条件は、加速電圧が15kv、プローブビームが50nAであった。
【0144】
実施例5と比較例3で得られたR-T-B系永久磁石材料Iは、FE-EPMAによって検出され、その結果は、以下の表5、
図1および
図2に示す通りである。ここで、
【0145】
実施例5で製造して得られたR-T-B系永久磁石材料IのFE-EPMA後方散乱画像(
図1に示されたとおり)により、表5における定量分析結果と合わせれば分かるように、灰白色領域1はR
6-T
13-X相であり、RはNdとDyであり、Tは主にFeとCoであり、XはAlとCuであり、黒色領域2はR
2Fe
14B主相であり、明るい白色領域3はその他のRリッチ相であった。
【0146】
比較例3のFE-EPMA後方散乱画像の結果は、主に黒色領域の主相と明るい白色のRリッチ相であり、R
6-T
13-X相は検出されなかった(
図2に示されたとおり)。
【0147】
【国際調査報告】