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▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】RU錯体を用いたイミンの水素化
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/38 20060101AFI20221005BHJP
   C07D 311/82 20060101ALI20221005BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
C07D213/38
C07D311/82
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559319
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2020071564
(87)【国際公開番号】W WO2021023627
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】19190783.1
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リオネル ソーダン
【テーマコード(参考)】
4C055
4H039
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA06
4C055BA27
4C055CA01
4C055DA01
4H039CA71
4H039CB30
(57)【要約】
本発明は、接触水素化の分野に関し、かつイミンを対応するアミンへ還元するための塩基不含水素化方法におけるルテニウム錯体の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子Hを使用して、式
【化1】
[式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は1~3個の酸素原子及び/又は1~2個の窒素原子及び/又は1個の硫黄原子もしくはハロゲン原子を任意に含むC~C15炭化水素基を表し、Rは、1~3個の酸素原子及び/又は1~2個の窒素原子及び/又は1個の硫黄もしくはハロゲン原子を任意に含むC~C15炭化水素基、水素原子、SOb’基、ORb’’基、又はPORb’ 基を表し、ここで、Rb’は、C~Cアルキル基、フェニル基又はトリル基を表し、かつRb’’は、水素原子、C~Cアルキル基、フェニル基又はトリル基を表し、又はR及びRは、一緒の場合に、C~C10アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示すが、但し、少なくとも1つのR、R又はRは、水素原子ではない]のC~C20の基質を対応するアミンに水素化により還元するための方法であって、
塩基の非存在下で、及び式
【化2】
[式中、nが0又は1である場合にmは0であり、nが0である場合にmは1であり、
PPは、C~C50の二座配位子を表し、その配位基は2つのホスフィノ基であり、
それぞれのPは、同時に又は独立して、C~C30の単座配位子を表し、
NNは、C~C20の二座配位子を表し、その配位原子は2個の窒素原子であり、かつ
それぞれのYは、同時に又は独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す]
の少なくとも1つの触媒又はプレ触媒の存在下で実施することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
、R及びRが、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基により置換されているC~C10直鎖アルキル基、C~C10直鎖アルケニル基、C~C10直鎖、分子鎖もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、C~C10直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルカジエニル基、C~Cアリール基、C~C複素環基又はC~C12アリールアルキル基を示すか、又はR及びRは、一緒の場合に、C~C10アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示すが、但し少なくとも1つのR、R又はRは水素原子ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が水素原子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
又はRが、ヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で任意に置換されているC~C複素環基を示し、かつもう一方が、それぞれヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で任意に置換されているC~C直鎖アルキル基、C~C直鎖アルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルカジエニル基、C~Cアリール基、C~C複素環基又はC~Cアリールアルキル基を示す、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
及びRが、互いに独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子1~3個を含むC3-6複素環基を示す、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒又はプレ触媒が、式
【化3】
[式中、PP、NN、Y及びnは請求項1において定義された意味と同様の意味を有する]のものである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
Yが、同時に又は独立して、水素原子又は塩素原子を示す、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
二座NN配位子が、式
【化4】
[式中、a及びa’は、同時に又は独立して、0又は1を示し、a’が0の場合に窒素原子は芳香族複素環の一部であり、
は、別々に、同時に又は独立して、水素原子、又は任意に置換されているC~C直鎖、分枝鎖又は環状アルキル基、又は任意に置換されているフェニル基又はベンジル基を示し、2つのRは、一緒になって、3~7個の原子を含み、かつ前記Rが結合する原子を含む飽和複素環を形成してよく、該複素環は任意に置換されており、
及びRは、別々に、同時に又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖、分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、R及び隣接するRは、一緒になって、5~8個の原子を含み、かつ該基R及びRが結合する原子を含み、及び任意に追加の窒素原子もしくは酸素原子を含む飽和又は不飽和複素環を形成してよく;2つのRは、一緒になって、5~8個の原子を有し、かつ該2つのR基に結合する炭素原子を含む飽和又は不飽和環を形成してよく、該環は、任意に1個の追加の窒素原子及び/又は酸素原子を含み、かつ
Qは、式
【化5】
[式中、pは1又は2であり、かつ
及びRは、同時に又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖、分枝鎖又は環状アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、2つの異なるR基及び/又はR基は、一緒になって、R基及び/又はR基に結合する原子を含み、かつ任意に1個又は2個の追加の窒素原子もしくは酸素原子を含む、任意に置換されたC~C飽和環を形成してよい]の基を示す]の化合物である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
aが0である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
二座(NN)配位子が、エタン-1,2-ジアミン、N,N-ジメチルエタン-1,2-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン、1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジアミン、(1R,2R)-1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジアミン、シクロヘキサン-1,2-ジアミン、(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、プロパン-1,3-ジアミン及びピリジン-2-イルメタンアミンからなる群から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
二座配位子(PP)が、式
【化6】
[式中、R11及びR12は、別々の場合に、同時に又は独立して、任意に置換されているC~C直鎖アルキル基、任意に置換されているC~C分枝鎖又は環状アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、かつ
Q’は、
- 式
【化7】
[式中、p’は1、2、3又は4であり、かつ
5’及びR6’は、同時に又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、2個の別個のR6’及び/又はR5’は、一緒になって、R6’及び/又はR5’に結合する原子を含み、かつ任意に1個もしくは2個の追加の窒素原子もしくは酸素原子を含む任意に置換されているC~C飽和もしくは不飽和環を形成してよい]の基、又は
- それぞれ任意に置換されている、C10~C16メタロセンジイル、2,2’-ジフェニル、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイル、ベンゼンジイル、ナフタレンジイル、2,3-ビシクロ[2:2:1]ヘプテ-5-エンジイル、4,6-フェノキサジンジイル、4,5-(9,9-ジメチル)-キサンテンジイル、4,6-10H-フェノキサジンジイル、2,2’-(オキシビス(2,1-フェニレン))又はビス(フェン-2-イル)エーテル基
を示す]の化合物であってよい、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
11及びR12が、別々の場合に、同時に又は独立して、C~C分枝鎖又は環状アルキル基、又はC~C10芳香族基を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Q’が、それぞれ任意に置換されている、直鎖C~Cアルカンジイル基、1,2-もしくは1,1’-C10~C12メタロセンジイル、2,2’-ジフェニル、1,2-ベンゼンジイル、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイル、又は1,8-もしくは1,2-ナフタレンジイル、4,6-10H-フェノキサジンジイル、又は2,2’-(オキシビス(2,1-フェニレン))基を示す、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
(PP)配位子が、ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)メタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスファニル)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスファニル)エタン、1,3-ビス(ジイソプロピルホスファニル)プロパン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)プロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスファニル)プロパン、(2,3-ブタン-2,3-ジイル)ビスジフェニルホスファン、1,4-ビス(ジフェニルホスファニル)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスファニル)フェロセン、1,1’-ビス(ジイソプロピルホスファニル)フェロセン、1,1’-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)フェロセン、2,2’-ビス(ジフェニルホスファンイル)-1,1’-ビフェニル、2,2’-ビス(ジシクロヘキシルホスファンイル)-1,1’-ビフェニル、(オキシビス(2,1-フェニレン))ビス(ジフェニルホスファン)及び4,6-ビス(ジフェニルホスファニル)-10H-フェノキサジンからなる群から選択されてよい、請求項11から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
式(1)の錯体を、in situで直接生成する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒による水素化の分野に、より詳述すれば触媒量のルテニウム錯体の存在下でのイミンの対応するアミンへの塩基不含水素化に関する。
【0002】
背景技術
イミンの対応するアミンへの還元は、有機化学における基本の反応の1つであり、多数の化学プロセスにおいて使用される。かかる変換を達成するため、一般的に、2つの主なタイプのプロセスが公知である。かかるタイプのプロセスは、以下である:
a)シリル又は金属水素化物塩、例えばNaBHを使用するヒドリドプロセス、
b)分子水素を使用する水素化プロセス。
【0003】
実用的な観点から、少量の触媒(典型的に基質に対して10~1000ppm)を使用して、及び少量の溶媒の存在下で又は溶媒の非存在下でさえも操作できるため、水素化プロセスがより魅力的である。さらに、水素化プロセスは、反応性が高く高価なヒドリドを使用する必要がなく、かつ大量の水性廃棄物を生成しない。
【0004】
水素化プロセスの必須かつ特徴的な要素の1つは、還元を考慮して分子水素を活性化するために使用される触媒又は触媒系である。
【0005】
均一系触媒又は不均一系触媒を使用するイミンの接触水素化は、塩基並びに、ジアミン配位子及びホスフィン配位子を有するルテニウム錯体の存在下でのイミンの水素化が開示されている文献、例えば国際公開第02/08169号(WO 02/08169)、国際公開第03/097571号(WO 03/097571)又は欧州特許第2 623 509号明細書(EP 2 623 509)において広く記載されている。しかしながら、いくつかの基質、例えば少なくとも1つのヘテロ芳香族環又はさらに2つのヘテロ芳香族環を有するイミンは、まだ僅かにしか報告されていない困難な反応である。実際に、基質が有するさらなるヘテロ原子の存在は、基質として反応に対して有害である可能性があり、かつ得られた生成物は、金属中心に対してキレート化し、触媒系の作用の阻害又はヘテロ芳香族環の水素化の競合を生じうる。特に、国際公開第2008/125833号(WO 2008125833)、国際公開第2006/063178号(WO 2006063178)、及びZh. Org. Khim. 1965, 1, 1104-1108において報告されているチオフェンで置換されたイミンの水素化の例は、それぞれ、次の不均一系触媒、アダムス触媒、Pd/C及び七硫化レニウムを使用しているが、この種の基質に対する課題を示している。
【0006】
広範囲のイミン型の基質について有効なイミン基の水素化のための有用な均一触媒又は触媒系の開発は、依然として化学における重要な必要性を表している。
【0007】
本発明は、最も困難なイミン基質でさえも還元することを可能にする均一系ルテニウム触媒の存在下で前記水素化を実施することにより、前記問題に対する解決策を提供する。我々の知る限り、この方法は、決して報告されていない。
【0008】
発明の要旨
驚くべきことに、複素環基を含むイミンが、均一系触媒を使用して水素化条件下で、及び任意の添加物の非存在下で、特に塩基の非存在下で、容易に還元されうることを見出している。
【0009】
したがって、本発明の第一の目的は、分子Hを使用して、式
【化1】
[式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は1~3個の酸素原子及び/又は1~2個の窒素原子及び/又は1個の硫黄もしくはハロゲン原子を任意に含むC~C15炭化水素基を表し、Rは、1~3個の酸素原子及び/又は1~2個の窒素原子及び/又は1個の硫黄もしくはハロゲン原子を任意に含むC~C15炭化水素基、水素原子、SOb’基、ORb’’基、又はPORb’ 基を表し、ここで、Rb’は、C~Cアルキル基、フェニル基又はトリル基を表し、かつRb’’は、水素原子、C~Cアルキル基、フェニル基又はトリル基を表し、又はR及びRは、一緒の場合に、C~C10アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示すが、但し、少なくとも1つのR、R又はRは、水素原子ではない]のC~C20の基質を対応するアミンに水素化により還元するためのプロセスであって、
塩基の非存在下で、及び式
【化2】
[式中、nが0又は1である場合にmは0であり、nが0である場合にmは1であり、
PPは、C~C50の二座配位子であり、その配位基は2つのホスフィノ基であり、
それぞれのPは、同時に又は独立して、C~C30の単座配位子を表し、
NNは、C~C20の二座配位子を表し、その配位原子は2個の窒素原子であり、かつ
それぞれのYは、同時に又は独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す]
の少なくとも1つの触媒又はプレ触媒の存在下で実施することを特徴とするプロセスである。
【0010】
発明の説明
本発明は、分子Hを使用して水素化することにより、イミン官能基を含むC~C20基質を対応するアミンに還元するための方法であって、二座ジホスフィン配位子又は少なくとも2つの単座ホスフィン配位子を有するルテニウム錯体の形での少なくとも1つの触媒又はプレ触媒の存在下で実施することを特徴とするプロセスに関する。
【0011】
前記プロセスは、均一系ルテニウム触媒を使用して、最も困難なチオフェンで置換されたイミンでさえも還元できる。さらに、該プロセスは、敏感な基質について特に興味深いものにする、酸性又は塩基性の添加物の非存在下で実施される。
【0012】
当業者によってよく理解されているように、「二座」に関して、前記配位子が、2つの原子(例えば2つのP)でRu金属に配位することが理解される。
【0013】
したがって、本発明の第一の目的は、分子Hを使用して、式
【化3】
[式中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は1~3個の酸素原子及び/又は1~2個の窒素原子及び/又は1個の硫黄もしくはハロゲン原子を任意に含むC~C15炭化水素基を表し、Rは、1~3個の酸素原子及び/又は1~2個の窒素原子及び/又は1個の硫黄もしくはハロゲン原子を任意に含むC~C15炭化水素基、水素原子、SOb’基、ORb’’基、又はPORb’ 基を表し、ここで、Rb’は、C~Cアルキル基、フェニル基又はトリル基を表し、かつRb’’は、水素原子、C~Cアルキル基、フェニル基又はトリル基を表し、又はR及びRは、一緒の場合に、C~C10アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示すが、但し、少なくとも1つのR、R又はRは、水素原子ではない]のC~C20の基質を対応するアミンに水素化により還元するためのプロセスであって、
塩基の非存在下で、及び式
【化4】
[式中、nが0又は1である場合にmは0であり、nが0である場合にmは1であり、
PPは、C~C50の二座配位子であり、その配位基は2つのホスフィノ基であり、
それぞれのPは、同時に又は独立して、C~C30の単座配位子を表し、
NNは、C~C20の二座配位子を表し、その配位原子は2個の窒素原子であり、かつ
それぞれのYは、同時に又は独立して、水素原子又はハロゲン原子を表す]
の少なくとも1つの触媒又はプレ触媒の存在下で実施することを特徴とするプロセスである。
【0014】
「…炭化水素基…」に関しては、該基が、水素原子及び炭素原子からなり、かつ脂肪族炭化水素、すなわち直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素(例えばアルキル基)、直鎖又は分枝鎖の不飽和炭化水素(例えばアルケニル基又はアルキニル基)、飽和環状炭化水素(例えば、シクロアルキル)もしくは不飽和環状炭化水素(例えばシクロアルケニル又はシクロアルキニル)の形であってよく、又は芳香族炭化水素、すなわちアリール基の形であってよく、又は前記タイプの基の混合物の形であってもよく、例えば特定の基は、1つのタイプのみに特定の制限が言及されていない限り、直鎖アルキル、分枝鎖アルケニル(例えば、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する分枝鎖アルケニル)、(ポリ)シクロアルキル及びアリール部分を含んでいてよいことを意味すると解される。同様に、本発明の全ての実施形態において、基が1を超えるタイプのトポロジー(例えば直鎖、環状又は分枝鎖)の形であってよく及び/又は飽和又は不飽和(例えばアルキル、芳香族又はアルケニル)であってよいと言及される場合に、前記トポロジーのいずれか1つを有するか又は前記で説明したような飽和もしくは不飽和である部分を含みうる基も意味する。同様に、本発明の全ての実施形態において、基が飽和又は不飽和(例えばアルキル)の1つのタイプの形である場合に、前記基が、トポロジー(例えば直鎖、環状又は分枝鎖)のいずれかのタイプであるか又は種々のトポロジーを有するいくつかの部分を有しうることを意味する。本発明の全ての実施形態において、炭化水素基がヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を任意に含みうると言及されている場合、炭化水素基の少なくとも1つの水素原子がヘテロ原子によって置換されていてよく、及び/又は炭化水素鎖の炭素原子がヘテロ原子に置換されて/置き換えられていてよく、すなわち炭化水素は、置換基として、又は鎖の一部として、官能基、例えばエーテル、チオール、アミン、エステル、アミドを含みうる。
【0015】
本明細書のプロセス、すなわち式(I)のイミンの水素化によって提供される対応するアミン(I-a)は、式
【化5】
[式中、R、R及びRは式(I)において定義したものと同様の意味を有する]のアミンである。
【0016】
本発明の前記実施形態のいずれか1つに従って、式(I)の化合物は、その立体異性体のいずれか1つの形で又はそれらの混合物としてであってよい。明確性の理由から、「その立体異性体のいずれか1つ又はそれらの混合物」の表現又は同様の表現に関しては、当業者によって理解される通常の意味、すなわち式(I)の化合物が、純粋であるか、又はエナンチオマーもしくはジアステレオマーの混合物の形であってよいことを意味する。
【0017】
本発明の前記実施形態のいずれか1つに従って、式(I)の前記化合物は、そのEもしくはZ異性体の形、又はそれらの混合物であってよく、例えば本発明は、同一の化学構造を有するが、しかしイミン二重結合の立体配置によって異なる、式(I)の化合物の1つ以上からなる物質の組成物を含む。特に、化合物(I)は、異性体E及びZからなる混合物の形であってよく、その際該異性体Eは、少なくとも0.5%の合計混合物、又はさらに少なくとも50%の合計混合物、又はさらに少なくとも75%の合計混合物(すなわち、75/25及び100/0で構成される混合物E/Z)を示す。
【0018】
本発明の前記実施形態のいずれか1つに従って、式(I)の化合物は、式(R)(R)C(=O)のカルボニル化合物と式RNHのアミンとの間の縮合によってin situで生じうる。
【0019】
本発明の前記実施形態のいずれか1つに従って、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意にヒドロキシル基、ハロゲン原子、C~Cアルキル基又はC~Cアルコキシ基により置換されている、C~C10アルキル基、アルケニル基、アルカンジエニル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリールアルキル基又はアリールアルキル基を示してよい。
【0020】
本発明の前記実施形態のいずれか1つに従って、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基又はC~Cアルコキシ基により置換されている、C~C10アルキル基、アルケニル基、アルカンジエニル基、アリール基、複素環基、又はアリールアルキル基を示してよい。
【0021】
本発明の前記実施形態のいずれか1つに従って、R、R及びRは、互いに独立して、水素原子、それぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基により置換されているC~C10直鎖アルキル基、C~C10直鎖アルケニル基、C~C10直鎖、分子鎖もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、C~C10直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルカジエニル基、C~Cアリール基、C~C複素環基又はC~C12アリールアルキル基を示してよく、又はR及びRは、一緒の場合に、C~C10アルカンジイル基又はアルケンジイル基を示すが、但し少なくとも1つのR、R又はRは水素原子ではない。
「直鎖、分枝鎖又は環状アルキル、アルケニル又はアルカジエニル基」の表現又は同様の表現は、1つのタイプへの特定の制限が言及されていない限り、前記R、R及びRが、例えば直鎖アルキル基の形であってよく、又は前記タイプの基の混合物の形であってもよく、例えば特定のRは、分枝鎖アルケニル部分、(ポリ)環状アルキル部分及び直鎖アルキル部分を含みうることが示されている。同様に、本発明の以下の全ての実施形態において、基がアルケニル又はアルカジエニルとして挙げられている場合に、該基は、イミン基と共役しているもしくは共役していない、又はアルカジエニルの場合には、その2つの二重結合の間で共役しているもしくはしていない、1つ又は2つの炭素-炭素二重結合を含むことを意味する。同様に、本発明の以下の全ての実施形態において、基が1を超えるタイプのトポロジー(例えば直鎖、環状又は分枝鎖)の形である及び/又は不飽和(例えばアルキル又はアルケニル)の形であると言及されている場合には、前記で説明したように、前記トポロジーのいずれか1つを有するか又は不飽和の部分を含んでよい基も意味する。同様に、本発明の以下の全ての実施形態において、基が不飽和(例えばアルキル)の1つのタイプの形である場合に、前記基が、トポロジー(例えば直鎖、環状又は分枝鎖)のいずれかのタイプであるか又は種々のトポロジーを有するいくつかの部分を有しうることを意味する。
【0022】
「複素環」という用語又は同様の用語は、当該技術分野における通常の意味を有し、すなわち少なくとも1つのヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子又はイオン原子を含む環、例えば芳香族環である。複素環基の典型的な例は、アクリジン、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、又はキサンテンから誘導される基を含むが、これらに制限されない。
【0023】
「アリールアルキル」という用語は、当該技術分野において通常の意味を有し、すなわち1つの水素原子がアリール基で置換されている非環状アルキル基である。
【0024】
「ヘテロアリールアルキル」という用語は、当該技術分野において通常の意味を有し、すなわち1つの水素原子が複素環基で置換されている非環状アルキル基である。
【0025】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、基質は、最終生成物又は中間体として、製薬、農薬、フレーバー又は香料産業において有用であるアミンを提供するイミンである。特に好ましい基質は、最終生成物又は中間体としてフレーバー及びフレグランス産業において有用であるアミンを提供するイミンである。
【0026】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、基質は、式(I)のC~C15化合物である。
【0027】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、基質は、式
【化6】
[式中、R及びRは前記と同様の意味を有する]のものである。
【0028】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、R及びRは、互いに独立して、C~C直鎖アルキル基、C~C直鎖アルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルカジエニル基、又はそれぞれ任意にヒドロキシル基、ハロゲン原子、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で置換されているC~Cアリール基、C~C複素環基、C~Cヘテロアリールアルキル基又はC~Cアリールアルキル基を示しうる。本発明の実施形態のいずれか1つに従って、R及びRは、互いに独立して、C~C直鎖アルキル基、C~C直鎖アルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルカジエニル基、又はそれぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で置換されているC~Cアリール基、C~C複素環基、もしくはC~Cアリールアルキル基を示しうる。好ましくは、R及びRは、互いに独立して、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基、又はそれぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で置換されているC~Cアリール基、C~C複素環基、もしくはC~Cアリールアルキル基を示しうる。好ましくは、R及びRは、互いに独立して、それぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で置換されているC~Cアリール基、C~C複素環基、又はC~Cアリールアルキル基を示しうる。好ましくは、R又はRは、それぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で置換されているC~C複素環基を示してよく、かつもう一方が、C~C直鎖アルキル基、C~C直鎖アルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基もしくはアルケニル基、C~C直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルカジエニル基、又はそれぞれ任意にヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で置換されているC~Cアリール基、C~C複素環基、もしくはC~Cアリールアルキル基を示しうる。さらにより好ましくは、R及びRは、互いに独立して、ヒドロキシル基、C~Cアルキル基もしくはC~Cアルコキシ基で任意に置換されているC~C複素環基を示しうる。好ましくは、R及びRは、互いに独立して、1つ又は2つのC~Cアルキル基により任意に置換されている窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1~3個のヘテロ原子を含むC~C複素環基である。好ましくは、R及びRは、互いに独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含むC~C複素環基である。さらにより好ましくは、R及びRは、互いに独立して、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含むC~C複素環基である。さらにより好ましくは、R及びRは、互いに独立して、窒素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含むC~C複素環基である。
【0029】
前記実施形態のいずれか1つに従って、Rは、1個もしくは2個の窒素原子、1個の酸素原子及び1個の硫黄原子、又は1個の窒素原子及び1個の酸素原子を含む、C~Cアリール基、C~Cアリールアルキル基又はC~C複素環基を示す。好ましくは、Rは、フェニル基もしくはベンジル基、又は1個もしくは2個の窒素原子、1個の窒素原子及び1個の硫黄原子、又は1個の窒素原子及び1個の酸素原子を含むC~C複素環基を示す。好ましくは、Rはピラゾリル基である。
【0030】
前記実施形態のいずれか1つに従って、Rは、1個もしくは2個の硫黄原子、1個の酸素原子、1個の窒素原子、又は1個の窒素原子及び1個の硫黄原子を含むフェニル基又はC~C複素環基を示す。好ましくは、Rはチオフェニル基である。
【0031】
式(I)の基質の制限のない例は、N-フェニル-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミン、N-(1H-ピラゾール-5-イル)-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミン、N-(4-メトキシフェネチル)-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミン、N-ベンジル-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミン、N-ベンジル-1-(p-トリル)メタンイミン、N-ベンジル-1-(2-メトキシフェニル)メタンイミン又はN-(1H-ピラゾール-5-イル)-1-(p-トリル)メタンイミン、N-フェニル-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミン、N-ベンジル-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミン、N-フェニル-1-(p-トリル)メタンイミン、N-(4-メトキシフェニル)-1-フェニルメタンイミン、N-シクロヘキシル-1-(p-トリル)メタンイミン、N-(4-フルオロフェニル)-1-(p-トリル)メタンイミン、N-(4-メトキシフェニル)-1-(p-トリル)メタンイミン、N-(2,4-ジメチルフェニル)-1-(p-トリル)メタンイミン、N-(ピリジン-4-イルメチル)-1-(p-トリル)メタンイミン、1-(チオフェン-2-イル)-N-(チオフェン-2-イルメチル)メタンイミンを含む。
【0032】
本発明において、酸性又は塩基性の添加物の存在が避けられる。これは利点であり、それというのも、酸及び/又は塩基に敏感なイミンからのアミン生成の収率を著しく増加できるからである。したがって、本発明の実施形態のいずれか1つに従って、基質は、酸及び/又は塩基に敏感な化合物である。
【0033】
本発明の任意の実施形態に従って、本発明のプロセスは、塩基の非存在下で実施される。
【0034】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、ルテニウム錯体は、一般式
【化7】
[式中、nが0又は1である場合にmは0であり、nが0である場合にmは1であり、
PPは、配位基が2つのホスフィノ基であるC~C50二座配位子を示し、
Pは、C~C30単座配位子を示し、
NNは、配位基が2つのアミノ基であるC~C20二座配位子を示し、かつ
それぞれのYは、同時に又は独立して、水素原子、又はハロゲン原子を示す]
であってよい。
【0035】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、mは0であり、かつnは0又は1である。好ましくは、mは0であり、かつnは1である。
【0036】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、式(1)において、それぞれのYは、同時に又は独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示してよい。好ましくは、Yは、同時に又は独立して、水素原子又は塩素原子を示してよい。さらにより好ましくは、Yは、塩素原子を示してよい。
【0037】
本発明の実施形態いずれか1つにおいて、Pは、式PR のモノホスフィンを示し、式中、Rは、C~C12基、例えば任意に置換されている直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基、置換もしくは非置換のフェニル基、ジフェニル基、ナフチル基もしくはジナフチル基を示してよい。より詳述すれば、Rは、置換又は非置換のフェニル基、ジフェニル基、ナフチル基又はジナフチル基を示してよい。可能な置換基は、種々の基R~R12について以下に記載したものである。好ましくは、Pはトリフェニルホスフィンである。
【0038】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、二座NN配位子は、式
【化8】
[式中、a及びa’は、同時に又は独立して、0又は1を示し(a’が0の場合に窒素原子は芳香族複素環の一部である)、
は、別々に、同時に又は独立して、水素原子、又は任意に置換されているC~C直鎖、分枝鎖又は環状アルキル基、又は任意に置換されているフェニル基又はベンジル基を示し、2つのRは、一緒になって、3~7個の原子を含み、かつ前記Rが結合する原子を含む飽和複素環を形成してよく、該複素環は任意に置換されており、
及びRは、別々に、同時に又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖、分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、R及び隣接するRは、一緒になって、5~8個の原子を含み、かつ該基R及びRが結合する原子を含み、及び任意に追加の窒素原子もしくは酸素原子を含む飽和又は不飽和複素環を形成してよく;2つのRは、一緒になって、5~8個の原子を有し、かつ該2つのR基に結合する炭素原子を含む飽和又は不飽和環を形成してよく、該環は、任意に1個の追加の窒素原子及び/又は酸素原子を含み、かつ
Qは、式
【化9】
[式中、pは1又は2であり、かつ
及びRは、同時に又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖、分枝鎖又は環状アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、2つの異なるR基及び/又はR基は、一緒になって、R基及び/又はR基に結合する原子を含み、かつ任意に1個又は2個の追加の窒素原子もしくは酸素原子を含む、任意に置換されたC~C飽和環を形成してよい]の基を示す]の化合物である。
【0039】
一実施形態に従って、「芳香族基又は芳香族環」は、フェニル基又はナフチル基を意味する。
【0040】
前記したように、配位子(B)において、Ru原子に配位してよい原子は、R基を有する2個のN原子である。したがって、前記R、R、R、R、R又は任意の他の基が、ヘテロ原子、例えばN又はOを含む場合には、該ヘテロ原子は、配位していないことも理解される。
【0041】
、R、R、R、Rの可能な任意の置換基は、i)ハロゲン(特に前記置換基が芳香族部分上にある場合)、ii)C~Cアルコキシ、アルキル、アルケニル、又はiii)ベンジル基、又は縮合もしくは縮合していないフェニル基であって、1個、2個又は3個のハロゲン、C~Cアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、エステル基、スルホネート基、ハロ炭化水素又はペルハロ炭化水素基で任意に置換されているフェニル基の中から選択される、1個、2個、3個又は4個の基である。
【0042】
明確性の理由から、及び前記したように、本発明の実施形態のいずれか1つにおいて、式(B)の2個の基が一緒になって環を形成する場合に、該環は、単環基又は二環基であってよい。
【0043】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、それぞれのRは、同時に又は独立して、水素原子又はC~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を示す。好ましくは、Rは、同時に又は独立して、水素原子又はメチル基もしくはエチル基を示す。
【0044】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、少なくとも1つのRは水素原子を示し、又はさらに少なくとも2つのRは水素原子を示し、又はさらに4つのRは水素原子を示す。
【0045】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、R及びRは、別々になって、同時に又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているフェニル基を示し、R及び隣接するRは、一緒になって、5個又は6個の原子を含み、かつR及びRが結合する原子を含み、かつ任意に1個の追加の酸素原子を含む飽和又は不飽和の複素環を形成してよく、2個のRは、一緒になって、5個又は6個の原子を含み、かつR基又はR基が結合する原子を含む飽和又は不飽和の環を形成してよく、該環は、任意に置換されており、かつ任意に1個の追加の酸素原子を含む。
【0046】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、R及びRは、別々になって、同時に又は独立して、水素原子、C~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、又はフェニル基を示し、R及び隣接するRは、一緒になって、6個の原子を含み、かつR及びRが結合する原子を含む飽和又は芳香族の複素環を形成してよく、2個のRは、一緒になって、5個又は6個の原子を含み、かつ2個のR基が結合する原子を含む飽和又は不飽和の環を形成してよい。
【0047】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、前記Qは、式
【化10】
[式中、pは1又は2であり、かつ
及びRは、同時に又は独立して、水素原子、C~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているフェニル基を示す]の基を示す。
【0048】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、前記R及びRは、同時に又は独立して、水素原子、又はC~C直鎖アルキル基を示す。
【0049】
本発明の特定の実施形態に従って、前記Qは、式(i)の基であり、その際、式中、pは1又は2であり、Rは水素原子であり、かつRは前記で定義されたものである。
【0050】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、前記配位子NNは、式
【化11】
[式中、aは0又は1を示し、
それぞれのRは、同時に又は独立して、水素原子、又はC~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているベンジル基を示し、
及びRは、別々になって、同時又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖又は分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているフェニル基を示し、R及び隣接しているRは、一緒になって、6個の原子を含み、かつR及びRに結合する原子を含み、かつ任意に置換されている飽和複素環を形成してよく、2個のRは、一緒になって、5個~6個の原子を有し、R基に結合する炭素原子を含む飽和環を形成してよく、かつ
Qは、式
【化12】
[式中、pは1又は2であり、かつ
及びRは、同時に又は独立して、水素原子、C~C直鎖又は分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているフェニル基を示す]の基を示す]によって示される。
【0051】
前記実施形態の特定の態様に従って、式(B’)の前記配位子NNは、式中、aは0又は1を示し、
それぞれのRは、同時に又は独立して、水素原子又はC~Cアルキル基を示し、
及びRは、別々になって、同時又は独立して、水素原子を示し、5個~6個の原子を有し、かつR基に結合する炭素原子を含む飽和環を形成してよく、
Qは、式
【化13】
[式中、pは1又は2であり、かつ
及びRは、同時に又は独立して、水素原子、C~C直鎖アルキル基を示す]の基を示す。
【0052】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、前記配位子NNは、式
【化14】
[式中、Rは、水素原子又はC~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基を示し、
及びRは、別々になって、同時に又は独立して、水素原子、C~C直鎖又は分枝鎖アルキル基を示し、
HETは、1個、2個又は3個のC~C直鎖又は分枝鎖アルキル基により、又はベンジル基により任意に置換されている2-ピリジニル基、又は縮合又は非縮合のフェニル基もしくはインダニル基を示し、該基は、1個、2個又は3個のハロゲン、C~Cアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、エステル基又はスルホネート基により任意に置換されており、例えば2-ピリジル、2-キノリニル又はメチル-2-ピリジニルを示す]によって示される。
【0053】
式(B’’)の特定の実施形態に従って、Rは水素原子を示す。
【0054】
式(B’’)の特定の実施形態に従って、R及びRは,別々になって、同時に又は独立して、水素原子を示す。
【0055】
式(B’’)の特定の実施形態に従って、HETは、1個、2個又は3個のC~C直鎖又は分枝鎖アルキル基により任意に置換されている2-ピリジニル基、又は縮合もしくは非縮合フェニル基を示し、例えば2-ピリジル、2-キノリニル又はメチル-2-ピリジニルを示す。
【0056】
前記二座NN配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、式(B)、(B’)又は(B’’)のR、R、R、R又はRの可能な置換基は、1個又は2個のi)ハロゲン、ii)C~Cアルキル基もしくはアルコキシ基、又はiii)縮合もしくは非縮合フェニル基であり、該基は、1個、2個又は3個のハロゲン、C~Cアルキル基又はアルコキシ基により任意に置換されている。
【0057】
N-N配位子の限定されない例として、次の式(A):
【化15】
において挙げたものであってよく、ここで該化合物は、適宜、光学活性の形で又はラセミ型である。
【0058】
好ましくは、配位子(NN)は、エタン-1,2-ジアミン、N,N-ジメチルエタン-1,2-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン、1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジアミン、(1R,2R)-1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジアミン、シクロヘキサン-1,2-ジアミン、(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン、プロパン-1,3-ジアミン及びピリジン-2-イルメタンアミンからなる群から選択されてよい。さらにより好ましくは、配位子(NN)は、エタン-1,2-ジアミン及びピリジン-2-イルメタンアミンからなる群から選択されてよい。
【0059】
本発明の実施形態のいずれか1つに従って、二座配位子(PP)は、式
【化16】
[式中、R11及びR12は、別々の場合に、同時に又は独立して、任意に置換されているC~C直鎖アルキル基、任意に置換されているC~C分枝鎖又は環状アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、かつ
Q’は、
- 式
【化17】
[式中、p’は1、2、3又は4であり、かつ
5’及びR6’は、同時に又は独立して、水素原子、任意に置換されているC~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、又は任意に置換されているC~C10芳香族基を示し、2個の別個のR6’及び/又はR5’は、一緒になって、R6’及び/又はR5’に結合する原子を含み、かつ任意に1個もしくは2個の追加の窒素原子もしくは酸素原子を含む任意に置換されているC~C飽和もしくは不飽和環を形成してよい]の基、又は
- それぞれ任意に置換されている、C10~C16メタロセンジイル、2,2’-ジフェニル、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイル、ベンゼンジイル、ナフタレンジイル、2,3-ビシクロ[2:2:1]ヘプテ-5-エンジイル、4,6-フェノキサジンジイル、4,5-(9,9-ジメチル)-キサンテンジイル、4,6-10H-フェノキサジンジイル、2,2’-(オキシビス(2,1-フェニレン))又はビス(フェン-2-イル)エーテル基
を示す]の化合物であってよい。
【0060】
前記したように、本発明の特定の実施形態に従って、(PP)についての「芳香族基又は芳香族環」に関しては、フェニル又はナフチル誘導体も意味する。
【0061】
前記したように、前記配位子(C)において、Ru原子に配位してよい原子は、PR1112基のP原子である。したがって、前記R5’、R6’、R11、R12、Q’又は任意の他の基が、ヘテロ原子、例えばN又はOを含む場合には、該ヘテロ原子は、配位していないことも理解される。
【0062】
5’、R6’、R11及びR12の可能な任意の置換基は、1~5個のハロゲン(特に前記置換基が芳香族部分上にある場合に)であるか、又は1個、2個もしくは3個のi)C~C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、アルコキシ基、ハロ炭化水素基、ペルハロ炭化水素基、又はアミノ基、ii)、COOR[式中、RはC~C直鎖、分枝鎖又は環状アルキル基である]、iii)NO基、又はiv)ベンジル基、又は縮合もしくは縮合していないフェニル基であり、ここで該基は、1個、2個又は3個のハロゲン、C~Cアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、エステル基、スルホネート基、ハロ炭化水素又はペルハロ炭化水素基で任意に置換されている。「ハロ炭化水素又はペルハロ炭化水素」に関しては、例えばCF又はCClHのような基を意味する。
【0063】
明確性の理由から、及び前記したように、本発明の実施形態のいずれか1つにおいて、式(C)の2個の基が一緒になって環を形成する場合に、該環は、単環基又は二環基であってよい。
【0064】
前記二座PP配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、R11及びR12は、別々になって、同時に又は独立して、C~C分枝鎖又は環状アルキル基、又はC~C10芳香族基、又は任意に置換されている好ましくはフェニル基を示す。
【0065】
前記二座PP配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、R11及びR12は、それぞれ、同時に又は独立して、C~C分枝鎖もしくは環状アルキル基、又は任意に置換されているフェニル基を示す。好ましくは、R11及びR12は、それぞれ、同時に又は独立して、イソプロピル、シクロヘキシル又はフェニル基を示す。
【0066】
前記二座PP配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、Q’は、
- 式
【化18】
[式中、p’は1、2、3又は4であり、かつ
5’及びR6’は、同時に又は独立して、水素原子、C~C直鎖又は分枝鎖アルキル基、又はC~C10芳香族基、又は好ましくは任意に置換されているフェニル基を示し、2個の別個のR6’及び/又はR5’基は、一緒になって、R6’及び/又はR5’基に結合する原子を含む、任意に置換されているC~C飽和又は不飽和環を形成してよい]の基、
- それぞれ任意に置換されている、C10~C16メタロセンジイル、2,2’-ジフェニル、ベンゼンジイル、ナフタレンジイル、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイル、2,3-ビシクロ[2:2:1]ヘプテ-5-エンジイル、4,6-フェノキサジンジイル、4,5-(9,9-ジメチル)-キサンテンジイル、4,6-10H-フェノキサジンジイル、2,2’-(オキシビス(2,1-フェニレン))又はビス(フェン-2-イル)エーテル基
を示す。
【0067】
前記二座PP配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、Q’は、それぞれ任意に置換されている、直鎖C~Cアルカンジイル基、1,2-もしくは1,1’-C10~C12メタロセンジイル、2,2’-ジフェニル、1,2-ベンゼンジイル、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイル、又は1,8-もしくは1,2-ナフタレンジイル、4,6-10H-フェノキサジンジイル、又は2,2’-(オキシビス(2,1-フェニレン))基を示す。好ましくは、Q’は、直鎖C~Cアルカンジイル基、1,2-又は1,1’-C10~C12メタロセンジイル基を示す。
【0068】
本発明の特定の実施形態に従って、前記PP配位子は、式(C)の化合物であり、式中、R11及びR12は、同時に又は独立して、任意に置換されている、C~C分枝鎖もしくは環状アルキル基又はフェニル基を示し、
Q’は、任意に置換されているC~Cアルカンジイル基、C10~C12フェロセンジイル、2,2’-ジフェニル、1,1’-ビナフタレン-2,2’-ジイル、1,2-ベンゼンジイル又はナフタレンジイル基を示す。
【0069】
前記二座PP配位子の本発明の実施形態のいずれか1つに従って、前記配位子は、Q’、R11及びR12基の1個、2個又は3個が、飽和基(すなわちアルキル基又はアルカンジイル基)である。特に、Q’は、任意に置換されたC~Cアルカンジイル基を示し、及び/又はR11及びR12は、分枝鎖又は環状アルキル基を示す。
【0070】
前記R11及びR12の可能な置換基はR~Rについて前記で記載したものである。前記Q’の可能な置換基はQについて前記で記載したものである。
【0071】
PP配位子の制限のない例として、次の式(B):
【化19-1】
【化19-2】
において挙げたものであってよく、ここで、該化合物は、適宜、光学活性の形で又はラセミの形であり、かつPhは、フェニル基を示し、Cyは、C~Cシクロアルキル基を示し、i-Prはイソプロピル基を示す。前記ジホスフィンにおいて、Cy基をPh基に置き換えてもよく、逆であってもよいことも理解される。
【0072】
好ましい配位子(PP)は、ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)メタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスファニル)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスファニル)エタン、1,3-ビス(ジイソプロピルホスファニル)プロパン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)プロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスファニル)プロパン、(2,3-ブタン-2,3-ジイル)ビスジフェニルホスファン、1,4-ビス(ジフェニルホスファニル)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスファニル)フェロセン、1,1’-ビス(ジイソプロピルホスファニル)フェロセン、1,1’-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)フェロセン、2,2’-ビス(ジフェニルホスファンイル)-1,1’-ビフェニル、2,2’-ビス(ジシクロヘキシルホスファンイル)-1,1’-ビフェニル、(オキシビス(2,1-フェニレン))ビス(ジフェニルホスファン)及び4,6-ビス(ジフェニルホスファニル)-10H-フェノキサジンからなる群から選択されてよい。好ましくは、配位子(PP)は、1,2-ビス(ジフェニルホスファニル)エタン、1,3-ビス(ジイソプロピルホスファニル)プロパン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)プロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスファニル)プロパン、(2,3-ブタン-2,3-ジイル)ビスジフェニルホスファン、1,4-ビス(ジフェニルホスファニル)ブタン、(オキシビス(2,1-フェニレン))ビス(ジフェニルホスファン)、4,6-ビス(ジフェニルホスファニル)-10H-フェノキサジン又は1,1’-ビス(ジフェニルホスファニル)フェロセンであってよい。好ましくは、配位子(PP)は、1,2-ビス(ジフェニルホスファニル)エタン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスファニル)プロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスファニル)プロパン、(2,3-ブタン-2,3-ジイル)ビスジフェニルホスファン、(オキシビス(2,1-フェニレン))ビス(ジフェニルホスファン)、又は4,6-ビス(ジフェニルホスファニル)-10H-フェノキサジンであってよい。さらにより好ましくは、配位子(PP)は、1,2-ビス(ジフェニルホスファニル)エタンであってよい。
【0073】
前記配位子は、当該技術分野において及び当業者により周知である標準の一般的な方法を適用することにより得られる。前記配位子NN又はPPの多くは市販されてさえいる。
【0074】
式(1)の錯体は、一般的に、文献(Lindner, E. & al. J. Organometallics Chemistry 2003, 665, 176-185 and Lemmon, I. C. Acc. Chem. Res. 2007, 40, 1291-1299を参照されたい)において報告されている、[Ru(Cl)(PPh]又は[(アレーン)RuClから出発するプロセスにおいて、それらを使用する前に製造及び単離される。
【0075】
前記のように、本発明のプロセスは、酸又は塩基の非存在下でルテニウム錯体を使用する、基質の水素化にある。典型的な方法は、基質とルテニウム錯体、及び任意に溶媒とを混合し、そして選択した圧力及び温度でかかる混合物を分子水素で処理することを含む。
【0076】
本プロセスの必須パラメータである本発明の錯体は、広範囲の濃度で反応媒体に添加されうる。制限のない例として、錯体の濃度値として、基質の量に対して、1ppm~10000ppmの範囲の濃度値を挙げられる。好ましくは、前記錯体の濃度は、10~5000ppmである。さらにより好ましくは、前記錯体の濃度は、100ppm~2500ppmである。錯体の最適濃度が、当業者に公知であるように、後の性質に、基質の性質及び品質に、もしある場合には使用される溶媒の性質に、反応温度に、及びプロセス中に使用されるHの圧力に、並びに所望の反応時間に依存することは言うまでもない。
【0077】
水素化を、溶媒の存在で又は溶媒の非存在下で実施してよい。溶媒が現実的な理由で要求又は使用される場合に、水素化反応において現行のあらゆる溶媒を本発明の目的のために使用してよい。制限のない例は、C~C10芳香族溶媒、例えばトルエン又はキシレン;C~C12炭化水素溶媒、例えばヘキサン又はシクロヘキサン;C~Cエーテル、例えばテトラヒドロフラン又はMTBE;C~C10エステル、例えば酢酸エチル;C~C塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン;C~C第一級又は第二級アルコール、例えばメタノール、イソプロパノール又はエタノール;C~C極性溶媒、例えばアセトン;又はそれらの混合物を含む。特に、前記溶媒は、プロトン性溶媒、例えばメタノール、イソプロパノール又はエタノールであってよい。溶媒の選択は、錯体及び基質の性質の作用であり、当業者は、水素化反応を最適化するためにそれぞれの場合に最も簡便な溶媒をうまく選択することができる。
【0078】
本発明の水素化プロセスにおいて、反応を、10Paから80×10Paの間(1~100bar)又は所望であればそれ以上であるH圧力で実施してよい。さらに、当業者は、触媒量の作用、及び溶媒中の基材の希釈の作用として圧力を調整することができる。例として、5~50×10Pa(5~50bar)の典型的な圧力を挙げられる。
【0079】
水素化を実施できる温度は、0℃~200℃、より好ましくは50℃~150℃の範囲である。もちろん、当業者は、出発生成物及び最終生成物の融点及び沸点の作用として好ましい温度、並びに反応又は変換の所望の時間を選択することもできる。
【0080】
実施例
本発明は、次の実施例によってさらに詳細に記載され、その際温度は摂氏度で示され、かつ略語は、技術において通常の意味を有する。
【0081】
以下で記載される全ての手法は、特に明記されない限り不活性雰囲気下で実施されている。水素化反応は、ステンレス鋼オートクレーブ中で実施した。Hガス(99.99990%)をそのまま使用した。NMRスペクトルを、特に明記されない限り、Bruker AM-400(400.1MHzでH、100.6MHzで13C{H}、及び161.9MHzで31P)分光計で記録し、通常、CDCl中で300Kで測定した。化学シフトはppmでリストされる。
【0082】
実施例1
錯体[Ru(Cl)(PP)(N1)]を使用するイミンの接触水素化:
基質として(E)-N-フェニル-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミンの接触水素化のための一般的な手法:
アルゴン下で、磁気撹拌棒を備えた75mlのステンレス鋼オートクレーブに、[Ru(Cl)(L1)(N1)(14.4mg、0.023mmol、0.2mol%)、イミン(1.8956g、10.02mmol)及びMeOH(10ml)を連続して充填した。オートクレーブを密閉し、水素(5×20bar)でパージし、そして水素(50bar)下に置いた。そして、オートクレーブを100℃で加熱し、その反応混合物を撹拌した。24時間後に、オートクレーブをRTまで冷却し換気した。そして、アリコート(0.1ml)を取り、MTBE(1ml)で希釈し、そしてGC(Chirasil Dex CB)によって分析した。
【0083】
表3の種々のジホスフィンでの結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
a) ジホスフィンは表3において記載したものを使用した。ジアミンは表4において記載したものを使用した。
b) 基質に対する錯体のppmでのモル比。
c) GC(Chirasil Dex CB)により測定した残りの出発物質の量に従って算出した変換率。
d) GC(Chirasil Dex CB)により測定した所望のアミン量。
【0085】
実施例2
錯体[Ru(Cl)(PP)(N2)]を使用するイミンの接触水素化:
基質として(E)-N-フェニル-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミンの接触水素化のための一般的な手法:
アルゴン下で、磁気撹拌棒を備えた75mlのステンレス鋼オートクレーブに、[Ru(Cl)(L1)(N2)(19.0mg、0.028mmol、0.2mol%)、イミン(1.8756g、10.02mmol)及びMeOH(10ml)を連続して充填した。オートクレーブを密閉し、水素(5×20bar)でパージし、そして水素(50bar)下に置いた。オートクレーブを100℃で加熱し、その反応混合物を撹拌した。24時間後に、オートクレーブをRTまで冷却し換気した。そして、アリコート(0.1ml)を取り、MTBE(1ml)で希釈し、そしてGC(Chirasil Dex CB)によって分析した。
【0086】
表3の種々のジホスフィンでの結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
a) ジホスフィンは表3において記載したものを使用した。ジアミンは表4において記載したものを使用した。
b) 基質に対する錯体のppmでのモル比。
c) GC(Chirasil Dex CB)により測定した残りの出発物質の量に従って算出した変換率。
d) GC(Chirasil Dex CB)により測定した所望のアミン量。
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
実施例3
錯体[Ru(Cl)(PP)(PPh)]を使用するイミンの接触水素化:
基質として(E)-N-フェニル-1-(チオフェン-2-イル)メタンイミンの接触水素化のための一般的な手法:
アルゴン下で、磁気撹拌棒を備えた75mlのステンレス鋼オートクレーブに、[Ru(Cl)(L3)(PPh)(19.7mg、0.020mmol、0.2mol%)、イミン(1.8868g、10.12mmol)及びMeOH(10ml)を連続して充填した。オートクレーブを密閉し、水素(5×20bar)でパージし、そして水素(50bar)下に置いた。オートクレーブを100℃で加熱し、その反応混合物を撹拌した。24時間後に、オートクレーブをRTまで冷却し換気した。そして、アリコート(0.1ml)を取り、MTBE(1ml)で希釈し、そしてGC(Chirasil Dex CB)によって分析した。
【0091】
表3の種々のジホスフィンでの結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
a) ジホスフィンは表3において記載したものを使用した。
b) 基質に対する錯体のppmでのモル比。
c) GC(Chirasil Dex CB)により測定した残りの出発物質の量に従って算出した変換率。
d) GC(Chirasil Dex CB)により測定した所望のアミン量。
【国際調査報告】