(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】産後症状及び障害の治療のためのケタミン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/135 20060101AFI20221005BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20221005BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20221005BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20221005BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20221005BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20221005BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20221005BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221005BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221005BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20221005BHJP
A61K 31/54 20060101ALI20221005BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20221005BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20221005BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20221005BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221005BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61K31/135
A61P15/00
A61P1/14
A61P25/20
A61P25/00
A61P3/02
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/06
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/195
A61K31/54
A61K31/5513
A61K31/517
A61P21/02
A61P29/00
A61K31/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564116
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 US2020045005
(87)【国際公開番号】W WO2021026232
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521468855
【氏名又は名称】ザ ケタミン リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフソン,フィリップ,エリフ
(72)【発明者】
【氏名】コール,ロブ
(72)【発明者】
【氏名】フィッポ,メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリース,ジュレーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
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4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、RPR、PPD、PPM、産後の鬱状態、並びに産褥期に関する診断未満の情動、心理、認知、精神、及び/又は身体症状を含む、産後の障害に特徴的な症状を含む、産褥期に関するものであるが、分娩後の期間の長さの観点からそのように定義される情動l症状のすべての形態の治療のための方法、組成物、及びキットを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産後関連症状の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩を、前記産後関連症状を治療するのに十分な量で、前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記産後関連症状は、不快気分、活動における興味又は喜びの低下、食欲の減少又は増加、問題のある睡眠又は睡眠過剰、不眠、精神運動性激越又は精神運動遅滞、疲労又は活力喪失、過敏性、無価値又は過剰な若しくは不適切な罪悪感といった感情、考える若しくは集中する能力の低下又は優柔不断、乳児と愛情を育むことができない、快感消失、不安、抑鬱及びより重度の状態では死について考えることが繰り返される、自殺念慮又は自殺未遂、並びに可能性として新生児又は配偶者及び親に向けられる怒り並びに攻撃的な感情及び行動並びにさまざまな程度の疲労、背部痛、乳房圧痛及び不快感、頭痛、並びに他の症状発現を含んでいてもよい、さらに存在してもよい種々の身体症状並びに不快気分、不安、及び外傷後ストレス障害を含め、悪化するかもしれない根底にある情動及び身体の問題から選択されるが、これらに限定されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記産後関連症状は、睡眠過剰、不眠、集中力の欠如、又は嗜眠である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記産後関連症状は、NSAID、コルチコステロイド、筋弛緩薬、抗うつ薬、又は他の精神病治療薬若しくは代替の薬物による治療に対して、治療抵抗性である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記対象における産後関連症状の発現後に治療を開始することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、毎日1回以上、隔日で1回以上、又は3日おきに1回以上、産後関連症状の存在及び/又は重症度に従って、投与される、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与は、1~10日間、毎日1回であり、その後、少なくとも2週間、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、前記対象に投与されない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記投与は、1~8日間、毎日1回であり、その後、少なくとも2週間、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、前記対象に投与されない、請求項1~5に記載の方法。
【請求項9】
前記ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、毎日及び/若しくは晩に1回以上又は産後関連症状の軽減のために患者の必要に関する頻度のプログラムにおいて、対象に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、10mg~200mgの平均1日用量のラセミケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、1mg~200mgの1用量以上のノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、10mg~200mgの平均1日用量の鏡像異性的に純粋なS-(+)-ノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、10mg~200mgの平均1日用量の鏡像異性的に純粋なR-(-)-ノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、10mg~200mgの平均1日用量のラセミノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、1mg~200mgの1用量以上の6-ヒドロキシノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、10mg~200mgの平均1日用量の異性体的に純粋な(2R,6R)-6-ヒドロキシノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、10mg~200mgの平均1日用量の異性体的に純粋な(2S,6S)-6-ヒドロキシノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項18】
前記投与は、経口、舌下、鼻腔内、筋肉内、静脈内、経皮、膣、及び直腸投与から選択されるルートによるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
筋弛緩薬を前記対象に併用投与することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記筋弛緩薬は、アフロクァロン、バクロフェン、カリソプロドール、クロルメザノン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルゾキサソゾン、シクロベンザプリン、クロナゼパム、ダントロレン、ジアゼパム、エペリゾン、イドロシラミド、イナベリソン、メフェネシン、メフェノキサロン、メトカルバモール、メタキサロン、塩化ミバクリウム、オルフェナドリン、フェンプロバメート、メシル酸プリジノール、キニーネ、テトラゼパム、チオコルチコシド、チザニジン、トルペリゾン、及びその薬学的に許容される塩から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
抗炎症剤を前記対象に併用投与することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗炎症剤は、NSAID及びコルチコステロイドから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗うつ薬又は他の精神病治療薬若しくは代替の薬物を前記対象に併用投与することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象は、産後気分及び不安障害(PMAD)、産後精神病(PPP)、産後抑鬱(PPD)、不安(PPA)、外傷後ストレス(PPPTSD)、強迫性障害(PPOCD)、又は産後双極性I及びII障害(PPBPD)を患っている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象は、母乳哺育中である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記投与後、前記対象は、子供が摂取するための母乳を、少なくとも6時間、しぼり出さない、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産後気分及び不安障害(PMAD)、産後精神病(PPP)、産後抑鬱(PPD)、不安(PPA)、外傷後ストレス(PPPTSD)、強迫性障害(PPOCD)、並びに産後双極性I及びII障害(PPBPD)、産褥期の診断未満の(sub-diagnostic)情動、心理、認知、精神、及び/又は身体症状並びに産後の前の生活からの障害及び情動的障害の再燃及び再発に特徴的な症状を含む、出産及びそのあとの状態に関する情動及び心理症状及び障害のすべての形態の治療のための方法、組成物、及びキットを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
産後気分及び不安障害(PMAD)は、女性の20%に影響を与える。産後気分及び不安障害(PMAD)は、産後といった状況の合併症第一位である。すべての文化、年齢、所得水準、及び人種の女性が、周産期気分及び不安障害を発症し得る。症状は、妊娠及び出産後の最初の12ヵ月の間、いつでも発現し得る。American College of Obstetrics and Gynecology(ACOG)は、女性にPMADについてのスクリーニングを受けるよう推奨している。
【0003】
PMADは、抑鬱、不安、双極型(bipolar phase)、強迫性、外傷後ストレス、及びさらに精神病を含む、一連の気分障害を包含する。産後精神病(PPP)は、まれであり、なりたての母親の1%にしか影響を与えないが、産後精神病(PPP)は、母親及び新生児にとって危険であり、すぐに治療をしなければならない。女性は、典型的に、赤ん坊の誕生後最初の数日で、PPPの症状を見せる。抑鬱(PPD)、不安(PPA)、外傷後ストレス(PPPTSD)、強迫性障害(PPOCD)、及び双極性(PPBPD)などのような他の障害は、典型的に、産後の初めの2週間後に及び出産後の最初の12ヵ月にわたっていつでも現れる。ケタミンの何十年間もの長期使用により、その安全性が確立されている。この方法において、投薬量は、麻酔に使用される投薬量よりもかなり低く、副作用は、極めてわずかである。
【0004】
産後の最初の2週間の間、80~90%の女性は、「産後の鬱状態」を経験する。産後の鬱状態の症状は、抑鬱及び不安に似ていることがあり、泣く、気分不安定、及びすぐに怒る、を含む。これらの症状は、出産後の体内のホルモン変化、睡眠不足、及び初めて母親になったことへの全般的な適応に起因すると考えられる。臨床的介入は、これらの症状に必要とされなくてもよい。伴う不安を低下させ、発散する援助的介入を望み、それから恩恵をうけるかもしれない女性及び女性の配偶者及び家族もいる。一般に、すべてのなりたての母親及びなりたての母親らのごく近くのつながりのある人や組織が、育児の過酷さに適応する間に、できる限りたくさんの実際的な支援を受けることが推奨される。
【0005】
出産又は分娩後の授乳におけるいかなる合併症もまた、PMADの一因となるかもしれない。粗末な住居、IPV、及び経済的ストレスなどのような複雑な心理社会的ストレッサーによって、PMADの危険性を増加させる女性もいる。気分障害の任意の病歴を有する女性もまた、ずっと以前のことであっても、PMADの危険性が増加している。PMADの原因に関する調査は、不確定なままであるが、最も適した作業仮説は、PMADを引き起こすのは、単なる女性の体内のホルモンの変化ではなく、もっと正確に言えば、これらのホルモン変化が、女性の脳化学に影響を与える過程であるように思われるというものである。調査により、SSRI、精神療法、支援グループ、又はこれらすべての治療法の組み合わせによるものかどうかにかかわらず、治療によって、女性がPMADから回復するのを助けることができることが実証されている。女性がPMADを患っている場合、産後ドゥーラ、哺乳相談、及び在宅支援並びに睡眠促進を含む実際的な支援もまた、必要である。
【0006】
最近、ブレキサノロン(商標名Zulresso)と呼ばれる、産後抑鬱の治療のために特に指示される第1の薬剤が、FDAによって発表された。あいにく、ブレキサノロンは、母乳哺育の中断を含め、その使用に多くの欠点を有する。ブレキサノロンは、医師の監視の下で医療施設において与えられなければならず、60時間(2.5日間)にわたって、静脈内に送達される。ブレキサノロンの研究により、薬剤が迅速で有効な結果を有することがわかった。産後抑鬱を有する約250人の女性の2つの治験は、60時間以内に、ブレキサノロンを受けた女性の50パーセントが、プラセボを受けた女性の25パーセントと比較して、もはや、臨床的に鬱病ではなかったことを示した。ブレキサノロンは、ブレキサノロンがGABA受容体に結合するように、抑鬱のための他の薬剤と異なる方法で作用する。しかし、ブレキサノロンがどのように作用するかは、なお不明である。ブレキサノロンを受けた女性の中には、過剰な鎮静状態及び突然の意識喪失を経験した人もいたので、この薬剤は、監視の下で投与される必要があり、したがって、これはその使用に対するもう一つのハンディキャップとなる。
【0007】
PMADのための治療は、精神療法、薬物(典型的にSSRI及び他の抗うつ薬)を含み、もっと最近では、マインドフルネスの実践、刺鍼術、及びヨガが追加された。治療選択肢の格差は、社会経済的な境界を挟んで最も強く現れる。民間の保険に入っている女性は、精神上のケア、支援グループ、及び個別の精神療法を、より利用することができる。貧困線以下で暮らし、公的保険を有する女性は、治療選択肢の利用がかなり制限される。ケタミンは、社会経済的な境界を横切る治療となり得、SSRIよりも恥辱及び副作用が少ない可能性がある。
【0008】
有色人種の社会において、SSRIには「中毒性がある」又は妊婦及びなりたての母親は「丸剤を服用する」べきでないといった考えがあることが広く報告されている。KAPは、ほとんどの場合、監視下の診療により、クリニック又は精神科の診療所といった環境で行われ、それほど恥辱を受けるものではなく、連日投与するものではないので、KAPは、より好ましい解決策を提供することができる。ケタミンの精神病治療上の調査は継続しており、そのうえ、抑鬱のための第一選択治療になりつつあるので、保険会社は、おそらく、より多くの費用を補償し、この治療選択肢を、必要とする人々に、より広く利用可能なものにするであろう。
【0009】
母乳哺育中の多くの女性はまた、産褥期に薬物を服用することに懐疑的でもあり、新生児及び乳児に対する影響は、正常な発達を保証するように、適切には定められていない。長期にわたる毎日の使用は、そのKAP様式におけるケタミンでのような一時的な短期使用とまったく異なる。ケタミンは、半減期が2時間半未満であり、母乳哺育は、ケタミンの有意な量への乳児の曝露を低下させるのに、短い時間しか中断され得ない。女性は、多くの場合、より重度の特徴を有するPMADを治療するのに十分でない行動的介入を好む傾向があるが、精神病治療薬を服用することに反対する感情が強い。KAPの短期といった特質及びKAPが母乳哺育を中断しないといった可能性は、行動的介入が十分でない場合に、KAPを、より現実的な選択肢にする。
【0010】
PPP及び深刻な自殺傾向といったまれな症例では、KAPとしてのケタミンは、非常に有効となり得る。現時点では、なりたての母親のための唯一の入院精神科病棟が、サウスカロライナ州にある。ベッドは6床あり、常に満床である。PPPのためのケタミン治療は、可能性として、助産所の産後病棟において並びに外来診察室及び診療所において提供され得る。PPPの治療は、一般に、現在に至るまで、最も有効な組み合わせとして、リチウム、抗精神病薬、及びトランキライザーからなっている。
【0011】
全体的に、多様な産後情動的障害は、不快気分、活動における興味又は喜びの低下、食欲の減少又は増加、問題のある睡眠又は睡眠過剰、不眠、精神運動性激越又は精神運動遅滞、疲労又は活力喪失、過敏性、無価値又は過剰な若しくは不適切な罪悪感といった感情、考える若しくは集中する能力の低下又は優柔不断、乳児と愛情を育むことができない、快感消失、不安、抑鬱及びより重度の状態では死について考えることが繰り返される、自殺念慮又は自殺未遂、並びに可能性として新生児又は配偶者及び親に向けられる怒り並びに攻撃的な感情及び行動を含んでいてもよい。種々の身体症状もまた、存在してもよい。これらは、さまざまな程度の疲労、背部痛、乳房圧痛及び不快感、頭痛、並びに他の症状発現を含む。根底にある情動及び身体の問題は、不快気分、不安、及び外傷後ストレス障害を含め、悪化するかもしれない。過去の双極性I及びII障害並びに抑鬱の増悪又は再燃が、生じるかもしれない。これらの障害の病歴を過去に有する女性は、PPD及びPPPの危険性がより大きい。配偶者間の、これまでの子供、親戚、及び友人との問題は、増すかもしれず、疎隔、亀裂を引き起こすことがあり、別居及び離婚の一因となることがある。
【0012】
出願人らは、ケタミンが、PMAD、PPP、PPD、PPA、PPPTSD、PPOCD、及びPPBPDなどのような産後関連障害に特徴的な症状を含む産後症状及び障害を回復させるのに有用となり得ることを発見した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、産後関連情動症状の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩を、産後関連症状を治療するのに十分な量で、対象に投与することを含む方法を特徴とする。産後関連症状は、不快気分、活動における興味又は喜びの低下、食欲の減少又は増加、問題のある睡眠又は睡眠過剰、不眠、精神運動性激越又は精神運動遅滞、疲労又は活力喪失、過敏性、無価値又は過剰な若しくは不適切な罪悪感といった感情、考える若しくは集中する能力の低下又は優柔不断、乳児と愛情を育むことができない、快感消失、不安、抑鬱及びより重度の状態では死について考えることが繰り返される、自殺念慮又は自殺未遂、並びに可能性として新生児又は配偶者及び親に向けられる怒り並びに攻撃的な感情及び行動並びにさまざまな程度の疲労、背部痛、乳房圧痛及び不快感、頭痛、並びに他の症状発現を含んでいてもよい、さらに存在してもよい種々の身体症状並びに不快気分、不安、及び外傷後ストレス障害を含め、悪化するかもしれない根底にある情動及び身体の問題から選択することができる又はを含むことが一般論として述べられるが、これらに限定されない。
【0014】
関連する態様において、本発明は、産後症状の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩を、産後症状を治療するのに十分な量で、対象に投与することを含む方法を特徴とする。特定の実施形態において、方法は、不快気分、活動における興味又は喜びの低下、食欲の減少又は増加、問題のある睡眠又は睡眠過剰、不眠、精神運動性激越又は精神運動遅滞、疲労又は活力喪失、過敏性、無価値又は過剰な若しくは不適切な罪悪感といった感情、考える若しくは集中する能力の低下又は優柔不断、乳児と愛情を育むことができない、快感消失、不安、抑鬱及びより重度の状態では死について考えることが繰り返される、自殺念慮又は自殺未遂、並びに可能性として新生児又は配偶者及び親に向けられる怒り並びに攻撃的な感情及び行動並びにさまざまな程度の疲労、背部痛、乳房圧痛及び不快感、頭痛、並びに他の症状発現を含んでいてもよい、さらに存在してもよい種々の身体症状並びに不快気分、不安、及び外傷後ストレス障害を含め、悪化するかもしれない根底にある情動及び身体の問題を回復させるが、これらに限定されない。
【0015】
関連する態様において、本発明は、産後症状の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩を、産後症状を治療するのに十分な量で、対象に投与することを含む方法を特徴とする。特定の実施形態において、方法は、不快気分、活動における興味又は喜びの低下、食欲の減少又は増加、問題のある睡眠又は睡眠過剰、不眠、精神運動性激越又は精神運動遅滞、疲労又は活力喪失、過敏性、無価値又は過剰な若しくは不適切な罪悪感といった感情、考える若しくは集中する能力の低下又は優柔不断、乳児と愛情を育むことができない、快感消失、不安、抑鬱及びより重度の状態では死について考えることが繰り返される、自殺念慮又は自殺未遂、並びに可能性として新生児又は配偶者及び親に向けられる怒り並びに攻撃的な感情及び行動並びにさまざまな程度の疲労、背部痛、乳房圧痛及び不快感、頭痛、並びに他の症状発現を含んでいてもよい、さらに存在してもよい種々の身体症状並びに不快気分、不安、及び外傷後ストレス障害を含め、悪化するかもしれない根底にある情動及び身体の問題を回復させるが、これらに限定されない。
【0016】
上記方法のいずれかの一実施形態において、方法は、対象における産後関連症状の発現後に治療を開始することを含むことができる。
【0017】
上記方法のいずれかにおいて、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、毎日1回以上、隔日で1回以上、若しくは3日おきに1回以上又は産後関連症状の存在及び/若しくは重症度に従って、投与される。たとえば、1~10日間(たとえば2~8日、2~7日、2~6日間又は2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、若しくは10日間)、毎日1回又は2回とすることができ、その後、少なくとも1又は2週間、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、対象に投与されない。特定の実施形態において、毎日1回以上又は1~8日間、間欠的に投与され、その後、少なくとも1又は2週間、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、対象に投与されない。特定の実施形態において、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、晩にのみ対象に投与される。特定の実施形態において、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、晩に毎日1回以上、対象に投与される。特定の実施形態において、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、昼間に1回以上、対象に投与される。特定の実施形態において、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、毎日及び/又は晩に1回以上、対象に投与される。
【0018】
関連する態様において、本発明は、子宮内膜症の治療を、それを必要とする対象において行うための方法であって、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩を、子宮内膜症を治療するのに十分な量で、対象に投与することを含む方法を特徴とする。特定の実施形態において、方法は、対象における情動的敏感性、記憶の低下、知的障害、気分変動、不快気分、不安、過敏性、若しくは幸福の低下を回復させる;頭痛、痙攣、背部痛、関節痛、若しくは乳房圧痛などのような対象における身体の問題を回復させる;及び/又は対象における睡眠過剰、不眠、集中力の欠如、若しくは嗜眠を回復させる。一実施形態において、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、毎日1回以上、隔日で1回以上、若しくは3日おきに1回以上又は子宮内膜症の症状を治療するために、必要に応じて毎日1回以上、投与される。特定の実施形態において、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、日中及び/又は晩に、対象に投与される。ある特定の実施形態において、子宮内膜症は、NSAID、コルチコステロイド、筋弛緩薬、又は抗うつ薬による治療に対して、治療抵抗性である。
【0019】
上記方法のいずれかの特定の実施形態において、方法は、1mg~500mg(たとえば10mg~200mg、25mg~150mg、又は35mg~125mg)の平均1日用量のケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。たとえば、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量の鏡像異性的に純粋なS-(+)-ケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含むことができる。特定の実施形態において、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量の鏡像異性的に純粋なR-(-)-ケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量のラセミケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。
【0020】
上記方法のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、1mg~500mg(たとえば10mg~200mg、25mg~150mg、又は35mg~125mg)の1用量以上のノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。たとえば、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量の鏡像異性的に純粋なS-(+)-ノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含むことができる。特定の実施形態において、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量の鏡像異性的に純粋なR-(-)-ノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量のラセミノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。
【0021】
上記方法のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、1mg~500mg(たとえば10mg~200mg、25mg~150mg、又は35mg~125mg)の1用量以上の6-ヒドロキシノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。たとえば、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量の異性体的に純粋な(2R,6R)-6-ヒドロキシノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含むことができる。特定の実施形態において、方法は、10mg~200mg(たとえば30±20mg、60±20mg、90±20mg、又は150±50mg)の平均1日用量の異性体的に純粋な(2S,6S)-6-ヒドロキシノルケタミン又はその薬学的に許容される塩を、対象に投与することを含む。
【0022】
上記方法のいずれかの特定の実施形態において、投与は、経口、舌下、鼻腔内、筋肉内、静脈内、経皮、膣、及び直腸投与から選択されるルート又は本明細書において記載される任意の投与ルートによるものである。
【0023】
上記方法のいずれかの特定の実施形態において、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、対象への投与に際して、対象において無感覚症をもたらさない量で又は剤形(たとえば徐放性剤形)で投与される。
【0024】
本発明の方法は、第2の治療剤の併用を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、方法は、筋弛緩薬を対象に併用投与することをさらに含む。筋弛緩薬は、アフロクァロン、バクロフェン、カリソプロドール、クロルメザノン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルゾキサソゾン(chlorzoxasozone)、シクロベンザプリン、クロナゼパム、ダントロレン、ジアゼパム、エペリゾン、イドロシラミド、イナベリソン、メフェネシン、メフェノキサロン、メトカルバモール、メタキサロン、塩化ミバクリウム、オルフェナドリン、フェンプロバメート、メシル酸プリジノール、キニーネ、テトラゼパム、チオコルチコシド、チザニジン、トルペリゾン、及びその薬学的に許容される塩から選択することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、方法は、その種々の形態をしたイブプロフェン及びその種々の形態をしたナプロキセンを含むNSAID並びにコルチコステロイドなどのような抗炎症剤を、対象に併用投与することをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、方法は、フルオキセチン又は本明細書において記載される他の抗うつ薬を、対象に併用投与することをさらに含む。
【0028】
上記方法のいずれかのある実施形態において、治療されている対象は、産後気分及び不安障害(PMAD)、産後精神病(PPP)、産後抑鬱(PPD)、不安(PPA)、外傷後ストレス(PPPTSD)、強迫性障害(PPOCD)、又は産後双極性I及びII障害(PPBPD)を患っている。
【0029】
上記方法のいずれかの実施形態において、対象は、母乳哺育している(たとえば哺乳中の母親)である。ある実施形態において、投与後、対象は、たとえば、母乳中のケタミン及び/又はケタミン代謝産物への母乳哺育中の子供の曝露を低下させるために、子供が摂取するための母乳を、少なくとも6時間、12時間、18時間、又は24時間、しぼり出さない。ケタミンを受けた後に少なくとも6時間経過した後、母乳哺育の乳児は、ケタミン及びその活性代謝産物ノルケタミンの極めてわずかな量にしか曝露されないであろう。母乳は、6時間、12時間、18時間、又は24時間廃棄され、母乳哺育は、その後、再開することができる。
【0030】
本明細書において使用されるように、「平均1日用量」という用語は、所定の投薬計画のために対象に投与されるケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩の平均の量を指す。たとえば、隔日で投与される100mgのケタミンの単一の用量は、平均1日用量が50mgとなる。15mgの用量のケタミンが1日2回投与される投与計画について、平均1日用量は、30mgとなる。
【0031】
「コルチコステロイド」によって、水素添加されたシクロペンタノペルヒドロフェナントレン環系を特徴とする任意の天然に存在する化合物又は合成化合物を意味する。天然に存在するコルチコステロイドは、一般に、副腎皮質によって産生される。合成コルチコステロイドは、ハロゲン化されてもよい。例示的なコルチコステロイドは、本明細書において記載される。
【0032】
本明細書において使用されるように、「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の最終的な単離及び精製の間に現場で又は別途、適した有機酸若しくは無機酸と遊離塩基官能基を反応させることによって、調製することができる本発明の活性化合物の塩を指す。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、及び酒石酸塩を含む。
【0033】
薬剤の「治療有効量」又は「十分な量」は、薬剤について所望される活性を実証するのに有効な量である。本発明によれば、ケタミンの治療有効量は、産後関連症状の症状を緩和する、すなわち、著しく低下させるのに有効な量である。
【0034】
本明細書において使用されるように、「治療する」という用語は、治療の目的のために医薬組成物を投与することを指す。「疾患を治療する」又は「治療上の処置」のために使用することは、対象の状態を改善する又は安定化するために、すでに状態を患っている対象に治療を施すことを指す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、産後関連症状を治療するための方法を初めて提供する。本発明の組成物は、本明細書において記載されるように、短時間作用性、速放性、長時間作用性、又は徐放性となるように設計されてもよい。したがって、医薬製剤はまた、放出制御用に又は緩効性用に製剤化されてもよい。
【0036】
ケタミンは、安価で、容易に入手可能な薬剤であり、有害な副作用は軽微である。したがって、本発明は、過重な負担を負わされている医療制度に対する補助的な削減を企図する。この作用薬の舌下投与は、速やかで、薬剤の急速な作用を可能にし、医師の監視下で、医学的に訓練されていない専門従事者によって;MD又は他の医療上認可された専門従事者によって容易に果たされ、自宅で行うプログラムにおいて、厳重な監視の下で、安全に投与されてもよい。筋肉内(IM)投与は、本明細書において記載されるように、症状を回復させるための速効性の方法である。投与の他のいかなる方法も、本発明から除外されない。
【0037】
ケタミンを含有する舌下ロゼンジ(トローチ)又は経口溶解錠剤を送達するためのキャリアを含むパッケージが、本明細書において企図される。ケタミンの経口(頬側、舌下)粘膜吸収は、乱用の害をほとんど引き起こさないケタミンを投与するための確実な方法である。産後関連症状の軽減をもたらすように設計された特定のレベルの麻酔域下の投薬量を使用することは、単独で又はこの徴候に対する他の作用薬と合わせられたケタミンを投与するための、この方法及び可能性として鼻腔内製剤などのような任意の他の方法の目標である。
【0038】
自宅での使用のために提供される場合の本発明のさらなる利点は、患者が、必要に応じて、用量対効果に基づいて、ケタミンを投与することができることである。したがって、投与の頻度は、厳重な医師の監視と共に、患者が部分的に制御する。しかしながら、それぞれの投与の用量が比較的低いこと及び舌下投与ルートは、とりわけ複数のロゼンジを同時に使用することが難しいので、乱用の可能性を低下させるであろう。本発明のさらにもう一つの特定の利点は、ケタミンの舌下投与が、非侵襲性であり、数分以内に効果の速やかな出現をもたらすことである。頻度の制御及び処方の分量は、完全に、医師の医学的見解の下にある。
【0039】
ケタミンの何十年間もの長期使用は、本出願について企図される投薬量をはるかに上回る投薬量で、ヒトへの使用に対するその安全性を確立した。しかしながら、哺乳中のケタミンの薬物動態は、まだ実証されていない。母乳哺育されている乳児におけるその安全性に関する報告書があるが、これらのことは、実際の科学的な評価によって、まだ立証されていない。この特許及び示される使用に伴い、母乳中のケタミンの存在についてのプロファイルを明らかにする試験を行う。母乳哺育中の女性に、母乳中にケタミンが実際に存在することを認識させることは、本研究の意図するところである。乳児にとってのその安全性を判断することはできないが、発明者らの意図は、母乳哺育されている乳児のケタミンへの曝露を最小限にすることである。
【0040】
精神療法のプロセスにおけるケタミンの適用は、産後症状及び障害の治療の成功に不可欠である。女性は、支援、配偶者及び支援システムが関与する、治療という避難所に入っているという感覚を必要とする。女性を病人に仕立てた(medicalized)状況において薬剤として用いられるケタミンは、いくつかの利点を有利に有していてもよく、本発明の構想から除外されないが、それは、多様な産後症状及び障害に対するケタミンの投与の好ましい方法ではない。
【0041】
上記のように、本発明は、産後関連症状を治療するための種々の方法及び組成物に関する。投与の代替のルートは、ケタミンの鼻腔内投与を含むことができる。舌下ルートは、乱用の可能性が低いので、好ましいが、この方法のための鼻腔内調製物が、投与のための適切な安全対策と共に企図されてもよい。このような治療は、単独で投与されてもよい又は本明細書において記載される他の療法を補足してもよい。IMによる投与の方法は、有利に、支持及び/又は第一選択として、舌下法と共に、産後関連症状のこの治療において使用される原則的な方法とされてもよい。
【0042】
ケタミン及びノルケタミン
本発明の方法は、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩の投与を含む。
【0043】
【0044】
本明細書において使用されるように、「ケタミン」という用語は、そのラセミ(R/S)形態をした、そのR-(-)の鏡像異性的に純粋な形態をした、又はそのS-(+)の鏡像異性的に純粋な形態をしたケタミンを含む。
【0045】
本明細書において使用されるように、「ノルケタミン」という用語は、そのラセミ(R/S)形態をした、そのR-(-)の鏡像異性的に純粋な形態をした、又はそのS-(+)の鏡像異性的に純粋な形態をしたノルケタミンを含む。
【0046】
本明細書において使用されるように、「鏡像異性的に純粋な」は、実質的に単一の異性体からなる(すなわち、逆の異性体が実質的にない)、好ましくは、90%、92%、95%、98%、99%、又は100%(w/w)の単一の異性体からなる組成物を指す。たとえば、本発明の方法が、鏡像異性的に純粋なR-(-)-ケタミンの投与を含む場合、投与される医薬組成物は、少なくとも95%(w/w)のS-(+)-ケタミン及び5%(w/w)未満のR-(-)-ケタミンを含むことができる。
【0047】
ケタミンラセミ体は、主に、全身麻酔の誘発及び維持のために使用される。鏡像異性的に純粋なS-(+)-ケタミン(別名エスケタミン)は、商標名KETANEST(登録商標)の下で、医療用に入手可能であり、IV(静脈内)又はIM(筋肉内)投与される。鏡像異性的に純粋なR-(-)-ケタミンはまた、アルケタミンとしても知られている。ケタミンは、投与のルートに従う速度で、インビボにおいて、脱メチル化を通して、ノルケタミンに代謝的に変換される。麻酔における使用について、S-(+)-ケタミンは、R-(-)-ケタミンの二倍強力であることが報告され、ノルケタミンは、ケタミンの1/3の効力を有することが報告された(C.S.T.Aun,Br.J.Anaesthesia 83:29-41(1999))。
【0048】
本明細書において使用されるように、「6-ヒドロキシノルケタミン」という用語は、その2R,6R;2S,6S;2S,6R;及び2R,6Sの異性体的に純粋な形態のいずれかをした6-ヒドロキシノルケタミンを含む(下記に示される)。
【0049】
【0050】
本明細書において使用されるように、「異性体的に純粋な」は、実質的に単一のジアステレオマーからなる(すなわち、他の異性体が実質的にない)、好ましくは、90%、92%、95%、98%、99%、又は100%(w/w)の単一の異性体からなる組成物を指す。たとえば、本発明の方法が、異性体的に純粋な(2R,6R)-6-ヒドロキシノルケタミンの投与を含む場合、投与される医薬組成物は、少なくとも95%(w/w)の(2R,6R)-6-ヒドロキシノルケタミン及び5%(w/w)未満の6-ヒドロキシノルケタミンの他の異性体を含むことができる。その代わりに、本発明の方法は、異性体的に純粋な(2S,6S)-6-ヒドロキシノルケタミンの投与を含み、投与される医薬組成物は、少なくとも95%(w/w)の(2S,6S)-6-ヒドロキシノルケタミン及び5%(w/w)未満の6-ヒドロキシノルケタミンの他の異性体を含むことができる。
【0051】
医薬組成物の製剤
ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩(活性化合物)の投与は、産後状態及び症状の軽減をもたらす任意の適した手段によるものであってもよい。活性物質は、任意の適したキャリア物質中に任意の適切な量で含有されてもよく、一般に、組成物の総重量の1~95重量%の量で存在する。組成物は、舌下、頬側、経口、非経口(たとえば静脈内、筋肉内)、鼻腔内、経皮、膣、又は直腸投与ルートに適した剤形で提供されてもよい。したがって、組成物は、たとえば、錠剤、カプセル、丸剤、粉剤、粒状体、懸濁剤、エマルション、水剤、ヒドロゲルを含むゲル、ペースト、軟膏、クリーム、硬膏、水薬、浸透圧送達デバイス、坐薬、浣腸剤、注射剤、スプレー剤、又はエアロゾルの形態をしていてもよい。医薬組成物は、従来の製薬業務に従って製剤化されてもよい(たとえばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照されたい)。
【0052】
本発明による医薬組成物は、実質的に投与の直後に又は投与後の任意のあらかじめ決められた時間若しくは任意の時間に、活性化合物を放出するように製剤化されてもよい。後者のタイプの組成物は、一般に、放出制御製剤として知られており、これらには、(i)長時間にわたって体内で実質的に一定の濃度の活性化合物を生じさせる製剤;(ii)あらかじめ決められた時間遅れてから、長時間にわたって体内で実質的に一定の濃度の活性化合物を生じさせる製剤;及び(iii)体内で比較的一定で有効な活性化合物のレベルを維持し、同時に、活性化合物の血漿レベルにおける高下(鋸歯状動態パターン)と関連する望ましくない副作用を最小限にすることによって、あらかじめ決められた時間、活性化合物の作用を保持する製剤を含む。
【0053】
放出制御製剤の形態をした活性化合物の投与は、治療レベルの単独の又は第2の作用薬と組み合わせた活性化合物が、悪心などのような望ましくない副作用を起こす場合、とりわけ好ましい。
【0054】
多くの戦略のいずれも、当該の活性化合物の放出制御を達成するために、遂行することができる。一実施例において、放出制御は、たとえば、種々のタイプの放出制御組成物及びコーティングを含む、種々の製剤パラメーター及び成分の適切な選択によって達成される。したがって、薬剤は、適切な賦形剤により、投与に際して、制御方式で活性化合物を放出する医薬組成物に製剤化される。例として、単一又は複数単位の錠剤又はカプセル組成物、油剤、懸濁剤、エマルション、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子、パッチ、及びリポソームを含む。
【0055】
舌下及び頬側剤形
舌下用の剤形は、フィルム、ストリップ、ロゼンジ、及び経口で溶解する錠剤の形態をしていてもよい。経口で溶解する錠剤(ODT)は、全体を飲み込むのではなく、舌で溶解するように設計された又は舌下若しくは粘膜投与のために舌下若しくは頬側粘膜上で溶解するように設計された医薬剤形を指す。その代わりに、剤形は、ロゼンジ(5~10分間、経過するうちに溶解するロゼンジとしてよりゆっくりとした投与のための)又は急速に溶解するフィルム(2分未満の経過のうちに溶解する)とすることができる。活性化合物は、口(すなわち頬側又は舌下)内での吸収を介して投与される。製剤賦形剤は、食用で、薬学的に許容されるものであり、フィルム、ストリップ、ロゼンジ、及び経口で溶解する錠剤の調製のための、当技術分野において知られている賦形剤を使用している。たとえば、フィルムは、舌、口蓋組織、又は頬側口腔で急速に溶解し、液体と接触した時に溶解を介して体循環に活性化合物を送達する親水性ポリマーを使用して、典型的に調製される。
【0056】
経口使用のための固形剤形
経口使用のための剤形は、無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含有する錠剤を含む。これらの賦形剤は、たとえば、不活性希釈剤又は増量剤(たとえばスクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(たとえば、結晶セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギナート、又はアルギン酸);結合剤(たとえばスクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化でんぷん、結晶セルロース、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はポリエチレングリコール);並びに潤滑剤、流動化剤、及び粘着防止剤(たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水添植物油、又はタルク)であってもよい。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、香味料、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤、及びその他同種のものとすることができる。
【0057】
錠剤は、コーティングされなくてもよい又は錠剤は、任意選択で、胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させるために、既知の技術によってコーティングされてもよく、それによって、より長い期間にわたって作用の持続をもたらしてもよい。コーティングは、あらかじめ決められたパターンで活性化合物を放出するように適合させてもよい(たとえば、放出制御製剤を実現するために)又はコーティングは、胃を過ぎるまで活性化合物を放出しないように適合させてもよい(腸溶コーティング)。コーティングは、糖衣、フィルムコーティング(たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレート共重合体、ポリエチレングリコール、及び/若しくはポリビニルピロリドンをベースとする)、又は腸溶コーティング(たとえばメタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、シェラック、及び/若しくはエチルセルロースをベースとする)であってもよい。さらに、たとえばモノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリルなどのような時間遅延物質もまた、用いられてもよい。
【0058】
固形錠剤組成物は、望ましくない化学変化から組成物を保護するように適合させたコーティングを含んでいてもよい(たとえば、活性化合物の放出前の化学分解)。コーティングは、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、前掲において記載されるものと同様の方式で、固形剤形上に適用されてもよい。
【0059】
組み合わせ療法について、2つの薬剤は、錠剤において一緒に混合されてもよい又は分けられてもよい。一実施例において、第1の薬剤は、錠剤の内側に含有され、第2の薬剤は、外側にあり、第2の薬剤の実質的な部分は、第1の薬剤の放出より前に放出される。
【0060】
経口使用のための剤形はまた、咀嚼錠として又は活性化合物が不活性固体希釈剤(たとえばジャガイモデンプン、ラクトース、結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、若しくはカオリン)と混合される硬ゼラチンカプセルとして又は活性化合物が水又は油性媒体、たとえばピーナッツ油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして、提示されてもよい。粉剤及び粒状体は、上記の錠剤及びカプセルのところで述べられる成分を使用して、従来の方式で、たとえばミキサー、流動層装置、又はスプレー乾燥設備を使用して、調製されてもよい。
【0061】
放出制御経口剤形
経口使用のための放出制御組成物は、たとえば、活性薬剤物質の溶解及び/又は拡散を制御することによって活性化合物を放出するように、構成されてもよい。
【0062】
溶解又は拡散放出制御は、化合物の錠剤、カプセル、ペレット、若しくは粒状体製剤の適切なコーティングによって又は化合物を適切なマトリックスの中に組み込むことによって、実現することができる。放出制御コーティングは、1つ以上の上記に述べられるコーティング物質並びに/又はたとえばシェラック、蜜ろう、グリコワックス(glycowax)、カスターワックス、カルナウバろう、ステアリルアルコールモノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリル、グリセロールパルミトステアレート、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、酢酸酪酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸、メタアクリル酸メチル、2-ヒドキシメタアクリレート、メタクリル酸ヒドロゲル、1,3ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート、及び/若しくはポリエチレングリコールを含んでいてもよい。放出制御マトリックス製剤では、マトリックス物質はまた、たとえば水化メチルセルロース、カルナウバろう、及びステアリルアルコール、カルボポール934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリン、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、並びに/又はハロゲン化フルオロカーボンを含んでいてもよい。
【0063】
主張される組み合わせの1つ以上の化合物を含有する放出制御組成物はまた、浮揚性の錠剤又はカプセルの形態をしていてもよい(すなわち、経口投与に際して、一定期間、胃内容物の上に浮く錠剤又はカプセル)。化合物の浮揚性の錠剤製剤は、賦形剤及びヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのような20~75%w/wの親水コロイドとの薬剤の混合物を造粒することによって、調製することができる。得られた顆粒は、次いで、圧縮して、錠剤にすることができる。胃液との接触の際に、錠剤は、その表面のまわりに、実質的に水不浸透性のゲル状のバリアを形成する。このゲル状のバリアは、1未満の密度を維持するのに貢献し、それによって、錠剤が胃液中で浮揚性の状態を維持することを可能にする。
【0064】
経口投与のための液体
加水による水性懸濁剤の調製に適した粉剤、分散性の粉剤、又は顆粒は、経口投与に好都合な剤形である。懸濁剤としての製剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1つ以上の防腐剤との混合物中の活性化合物をもたらす。適した分散剤又は湿潤剤は、たとえば、天然に存在するホスファチド(たとえばレシチン又は脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、若しくは脂肪酸に由来する部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物)並びにヘキシトール又はヘキシトール無水物(たとえばステアリン酸ポリオキシエチレン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びその他同種のもの)である。適した懸濁化剤は、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、及びその他同種のものである。
【0065】
非経口組成物
医薬組成物はまた、注射、注入、又は移植(静脈内、筋肉内、皮下、又はその他同種のもの)によって、従来の無毒性の薬学的に許容されるキャリア及び補助薬を含有する剤形、製剤で、又は適した送達デバイス若しくは移植片を介して、非経口投与されてもよい。このような組成物の製剤及び調製は、医薬製剤の当業者によく知られている。剤形は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、前掲において見つけることができる。
【0066】
非経口使用のための組成物は、単位剤形で(たとえば、単一用量のアンプルで)又は数回の用量を含有し、適した防腐剤が追加されてもよいバイアルで提供されてもよい(下記を参照されたい)。組成物は、水剤、懸濁剤、エマルション、注入デバイス、若しくは移植のための送達デバイスの形態をしていてもよい又は組成物は、使用の前に水又は別の適したビヒクルで還元される乾燥粉剤として提示されてもよい。活性化合物の他に、組成物は、適した非経口で許容されるキャリア及び/又は賦形剤を含んでいてもよい。活性薬剤は、放出制御のために、マイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム、又はその他同種のものの中に組み込まれてもよい。さらに、組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、及び/又は分散剤を含んでいてもよい。
【0067】
上記に示されるように、本発明による医薬組成物は、滅菌注射に適した形態をしていてもよい。このような組成物を調製するために、適した活性化合物は、非経口で許容される液体ビヒクル中に溶解される又は懸濁される。用いられてもよい許容されるビヒクル及び溶媒には、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウムの追加によって適したpHに調整された水、又は適したバッファー、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、及び等張食塩水が含まれる。水性製剤はまた、1つ以上の防腐剤(たとえばp-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、又はn-プロピル)を含有してもよい。
【0068】
放出制御非経口組成物
放出制御非経口組成物は、水性懸濁剤、マイクロスフェア、マイクロカプセル、磁気マイクロスフェア、油剤、油懸濁剤、又はエマルションの形態をしていてもよい。その代わりに、活性薬剤は、生体適合性キャリア、リポソーム、ナノ粒子、移植片、又は注入デバイス中に組み込まれてもよい。
【0069】
マイクロスフェア及び/又はマイクロカプセルの調製に使用するための物質は、たとえば、ポリガラクチン(polygalactin)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)、及びポリ(乳酸)などのような生分解性/生体内分解性(bioerodible)ポリマーである。放出制御非経口製剤を製剤化する場合に使用されてもよい生体適合性キャリアは、炭水化物(たとえばデキストラン)、タンパク質(たとえばアルブミン)、リポタンパク質、又は抗体である。移植片に使用するための物質は、非生物分解性(たとえばポリジメチルシロキサン)又は生分解性(たとえばポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、若しくはポリ(オルトエステル))とすることができる。
【0070】
直腸組成物
直腸適用について、組成物に適した剤形は、坐薬(エマルション又は懸濁剤タイプ)及び直腸ゼラチンカプセル(水剤又は懸濁剤)を含む。典型的な坐薬製剤において、活性化合物は、カカオバター、エステル型脂肪酸、グリセリンゼラチン、並びにポリエチレングリコール及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのような種々の水溶性又は分散性基剤などのような適切な薬学的に許容される坐薬基剤と組み合わせられる。種々の添加剤、エンハンサー、又は界面活性剤が、組み込まれてもよい。
【0071】
膣組成物
膣適用について、組成物に適した剤形は、坐薬(エマルション又は懸濁剤タイプ)及び膣ゼラチンカプセル(水剤又は懸濁剤)を含む。典型的な坐薬製剤において、活性化合物は、カカオバター、エステル型脂肪酸、グリセリンゼラチン、並びにポリエチレングリコール及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのような種々の水溶性又は分散性基剤などのような適切な薬学的に許容される坐薬基剤と組み合わせられる。種々の添加剤、エンハンサー、又は界面活性剤が、組み込まれてもよい。
【0072】
鼻腔内及び吸入組成物
吸入による投与について、典型的な剤形は、鼻スプレー剤及びエアロゾルを含む。典型的な経鼻製剤において、活性化合物は、適したビヒクル中に溶解される又は分散される。薬学的に許容されるビヒクル及び賦形剤(並びに希釈剤、エンハンサー、香味料、及び防腐剤などのような、組成物中に存在する他の薬学的に許容される物質)は、医薬品を製剤化する当業者によって理解される方式で、従来の製薬業務に従って選択される。
【0073】
経皮的及び局所組成物
医薬組成物はまた、マイクロスフェア及びリポソームを含む、従来より無毒性の許容される医薬のキャリア及び賦形剤を含有する剤形又は製剤において、経皮的吸収のために皮膚に局所投与されてもよい。剤形は、クリーム、軟膏、ローション、リニメント、ゲル、ヒドロゲル、水剤、懸濁剤、スティック、スプレー剤、ペースト、硬膏、及び他の種類の経皮ドラッグデリバリーシステムを含む。薬学的に許容されるキャリア又は賦形剤は、乳化剤、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、湿潤剤、浸透促進剤、キレート剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、香料、及び皮膚保護剤を含んでいてもよい。
【0074】
乳化剤の例は、天然に存在するガム(たとえばアラビアゴム又はトラガカントゴム)並びに天然に存在するホスファチド(たとえば大豆レシチン及びモノオレイン酸ソルビタン誘導体)である。酸化防止剤の例は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、ブチルヒドロキシアニソール、並びにシステインである。防腐剤の例は、p-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピルなどのようなパラベン及び塩化ベンザルコニウムである。湿潤剤の例は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、及び尿素である。浸透促進剤の例は、プロピレングリコール、DMSO、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン及びその誘導体、テトラヒドロフルフリルアルコール、並びにAZONETMである。キレート剤の例は、EDTAナトリウム、クエン酸、及びリン酸である。ゲル形成剤の例は、CARBOPOL(商標)、セルロース誘導体、ベントナイト、アルギナート、ゼラチン、及びポリビニルピロリドンである。軟膏基剤の例は、蜜ろう、パラフィン、パルミチン酸セチル、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(Span)、ポリエチレングリコール、及び脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシドとの間の縮合生成物(たとえばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEENTM))である。
【0075】
組成物は、直接の適用のために又は体の関連する開口部(たとえば直腸、尿道、膣、若しくは口といった開口部)の中への導入のために適合させてもよい。組成物は、包帯又はその代わりに硬膏、パッド、スポンジ、ストリップ、若しくは適した軟質物質の他の形態などのような、特殊なドラッグデリバリーデバイスによって適用されてもよい。
【0076】
投薬量
投与されるケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩の投薬量は、以下を含むいくつかの要因に従う:投与方法、治療される状態又は症状、状態又は症状の重症度、状態を治療するか予防するかどうか、並びに治療される人の年齢、体重、及び健康状態。そのうえ、特定の患者に関する薬理ゲノミクスの(治療薬の薬物動態学的、薬理学的、又は有効性プロファイルに対する遺伝子型の影響)情報が、使用される投薬量に影響してもよい。
【0077】
上記に記載されるように、活性化合物は、錠剤、カプセル、エリキシル、若しくはシロップの形態で経口投与されてもよい;又は坐薬の形態で膣若しくは直腸投与されてもよい。活性化合物の非経口投与は、たとえば、食塩水の形態で又はリポソームの中に組み込まれた化合物と共に、適切に実行される。活性化合物の舌下又は頬側投与は、フィルム、ストリップ、ロゼンジ、及び経口で溶解する錠剤の形態をしていてもよい。
【0078】
投与される量は、投与のルートに従って、対象の体重1kg当たり(mg/kg)約0.01mgの活性化合物~約5mg/kg(たとえば約0.05mg/kg~約1mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約1mg/kg~約3mg/kg、又は約2mg/kg~約5mg/kg)とすることができる。一般に、用量は、舌下投与について、約10mg/日~約200mg/日(たとえば、約25mg/日~約150mg/日又は約50mg/日~約200mg/日)の範囲にあるであろう。用量は、鼻腔内投与について、約5mg/日~約100mg/日(たとえば、約5mg/日~約50mg/日又は約25mg/日~約100mg/日)の範囲にあるであろう。用量は、静脈内投与について、約2mg/日~約75mg/日(たとえば、約2mg/日~約35mg/日又は約25mg/日~約75mg/日)の範囲にあるであろう。用量は、筋肉内投与について、約10mg/日~約75mg/日(たとえば、約10mg/日~約45mg/日又は約40mg/日~約75mg/日)の範囲にあるであろう。用量は、経皮投与について、約50mg/日~約250mg/日(たとえば、約50mg/日~約125mg/日又は約100mg/日~約250mg/日)の範囲にあるであろう。
【0079】
療法
本発明による療法は、自宅、医院、クリニック、病院の外来診療科、又は病院で提供されてもよい。医師が療法の効果を厳密に観察し、必要とされる任意の調整をなすことができるように、治療は、診察所で始められる。療法の期間は、治療されている産後関連症状のタイプ及び重症度、患者の年齢及び状態、患者の産後関連状態の病期及びタイプ、並びに患者が治療にどのように応答するかに従う。
【0080】
任意選択で、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、第2の作用薬(たとえば筋弛緩薬又は抗炎症剤)と組み合わせて投与される。組み合わせ療法については、組み合わせのそれぞれの構成成分の投薬量、頻度、及び投与様式は、別々に制御することができる。たとえば、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、本明細書において記載される投与計画において舌下に投与されてもよいが、第2の作用薬は、1日当たり1回、経口投与されてもよい。治療剤の組み合わせはまた、1回の投与により両方の活性物質を送達するように、一緒に製剤化されてもよい。
【0081】
筋弛緩薬
所望される場合、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、アフロクァロン、バクロフェン、カリソプロドール、クロルメザノン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルゾキサソゾン、シクロベンザプリン、クロナゼパム、ダントロレン、ジアゼパム、エペリゾン、イドロシラミド、イナベリソン、メフェネシン、メフェノキサロン、メトカルバモール、メタキサロン、塩化ミバクリウム、オルフェナドリン、フェンプロバメート、メシル酸プリジノール、キニーネ、テトラゼパム、チオコルチコシド、チザニジン、トルペリゾン、及びその薬学的に許容される塩などのような、1つ以上の筋弛緩薬と併せて投与されてもよい。2つ以上の筋弛緩薬を、同じ治療において投与することができる。この組み合わせは、対象が経験する主要な産後関連症状が痙攣を含む状況に、とりわけ有用となり得る。
【0082】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
所望される場合、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサラート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メロキシカム、オキサプロジン、スリンダク、及びトルメチンなどのような、1つ以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と併せて投与されてもよい。2つ以上のNSAIDを、同じ治療において投与することができる。この組み合わせは、対象が経験する主要な産後関連症状が身体の痛みである状況に、とりわけ有用となり得る。
【0083】
コルチコステロイド
所望される場合、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、1つ以上のコルチコステロイドと併せて投与されてもよい。適したコルチコステロイドは、11-アルファ,17-アルファ,21-トリヒドロキシプレグナ-4-エン-3,20-ジオン;11-ベータ,16-アルファ,17,21-テトラヒドロキシプレグナ-4-エン-3,20-ジオン;11-ベータ,16-アルファ,17,21-テトラヒドロキシプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン;11-ベータ,17-アルファ,21-トリヒドロキシ-6-アルファ-メチルプレグナ-4-エン-3,20-ジオン;11-デヒドロコルチコステロン;11-デオキシコルチゾール;11-ヒドロキシ-1,4-アンドロスタジエン-3,17-ジオン;11-ケトテストステロン;14-ヒドロキシアンドロスト-4-エン-3,6,17-トリオン;15,17-ジヒドロキシプロゲステロン;16-メチルヒドロコルチゾン;17,21-ジヒドロキシ-16-アルファ-メチルプレグナ-1,4,9(11)-トリエン-3,20-ジオン;17-アルファ-ヒドロキシプレグナ-4-エン-3,20-ジオン;17-アルファ-ヒドロキシプレグネノロン;17-ヒドロキシ-16-ベータ-メチル-5-ベータ-プレグナ-9(11)-エン-3,20-ジオン;17-ヒドロキシ-4,6,8(14)-プレグナトリエン-3,20-ジオン;17-ヒドロキシプレグナ-4,9(11)-ジエン-3,20-ジオン;18‐ヒドロキシコルチコステロン;18-ヒドロキシコルチゾン;18-オキソコルチゾル;21-デオキシアルドステロン;21-デオキシコルチゾン;2-デオキシエクジソン;2-メチルコルチゾン;3-デヒドロエクジソン;4-プレグネン-17-アルファ,20-ベータ,21-トリオール-3,11-ジオン;6,17,20-トリヒドロキシプレグナ-4-エン-3-オン;6-アルファ-ヒドロキシコルチゾール;6-アルファ-フルオロプレドニゾロン、6-アルファ-メチルプレドニゾロン、6-アルファ-メチルプレドニゾロン21-アセタート、6-アルファ-メチルプレドニゾロン21-ヘミコハク酸ナトリウム塩、6-ベータ-ヒドロキシコルチゾール、6-アルファ,9-アルファ-ジフルオロプレドニゾロン21-アセタート17-ブチラート、6-ヒドロキシコルチコステロン;6-ヒドロキシデキサメタゾン;6-ヒドロキシプレドニゾロン;9-フロオロコルチゾン;プロピオン酸アルクロメタゾン;アルドステロン;アルゲストン;アルファダーム(alphaderm);アマジノン;アムシノニド;アナゲストン;アンドロステンジオン;酢酸アネコルタブ;ベクロメタゾン;ジプロピオン酸ベクロメタゾン;ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物;ベタメサゾン17-バレレート;酢酸ベタメサゾンナトリウム;リン酸ベタメタゾンナトリウム;吉草酸ベタメタゾン;ボラステロン;ブデソニド;カルステロン;クロルマジノン;クロロプレドニゾン;クロロプレドニゾンアセタート;コレステロール;クロベタゾール;プロピオン酸クロベタゾール;クロベタゾン;クロコルトロン;ピバル酸クロコルトロン;クロゲストン;クロプレドノール;コルチコステロン;コルチゾール;酢酸コルチソル;酪酸コルチソル;シピオン酸コルチソル;オクタン酸コルチソル;コルチゾールリン酸ナトリウム;コルチゾールコハク酸ナトリウム;吉草酸コルチソル;コルチゾン;酢酸コルチゾン;コルトドキソン;ダツラオロン;デフラザコルト、21-デオキシコルチゾール、デヒドロエピアンドロステロン;デルマジノン;デオキシコルチコステロン;デプロドン;デシノロン;デソニド、デスオキシメタゾン;デキサフェン(dexafen);デキサメタゾン;21-酢酸デキサメタゾン;酢酸デキサメタゾン;デキサメタゾンリン酸ナトリウム;ジクロリゾン;ジフロラゾン;酢酸ジフロラゾン;ジフルコルトロン;ジヒドロエラテリシンa;ドモプレドナート;ドキシベタソール;エクジソン;エクジステロン;エンドリソン;エノキソロン;フルオシノロン;フルドロコルチゾン;酢酸フルドロコルチゾン;フルロゲストン;フルメタゾン;ピバル酸フルメタゾン;フルモキソニド;フルニソリド;フルオシノロン;フルオシノロンアセトニド;フルオシノニド;9-フロオロコルチゾン;フルオコルトロン;フルオロヒドロキシアンドロスタエンジオン;フルオロメトロン;酢酸フルオロメトロン;フルオキシメステロン;フルプレドニデン;フルプレドニゾロン;フルランドレノロン、フルチカゾン;プロピオン酸フルチカゾン;ホルメボロン;ホルメスタン;ホルモコータル;ゲストノロン;グリデリニン(glyderinine);ハルシノニド;ヒルカノシド(hyrcanoside);ハロメタゾン;ハロプレドン;ハロプロゲステロン;ヒドロコルチオゾンシピオネート(hydrocortiosone cypionate);ヒドロコルチゾン;21-酪酸ヒドロコルチゾン;アセポン酸ヒドロコルチゾン;酢酸ヒドロコルチゾン;酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン;酪酸ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾンシピオネート;ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン;酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン;リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム;コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム;吉草酸ヒドロコルチゾン;ヒドロキシプロゲステロン;イノコステロン;イソフルプレドン;酢酸イソフルプレドン;イソプレドニデン;メクロリソン;メコルトロン(mecortolon);メドロゲストン;メドロキシプロゲステロン;メドリゾン;メゲストロール;メゲストロールアセテート;メレンゲストロール;メプレドニゾン;メタンドロステノロン;メチルプレドニゾロン;アセポン酸メチルプレドニゾロン;酢酸メチルプレドニゾロン;ヘミコハク酸メチルプレドニゾロン;コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム;メチルテストステロン;メトリボロン;モメタゾン;フロ酸モメタゾン;フロ酸モメタゾン一水和物;ニゾン(nisone);ノメゲストロール;ノルゲストメト;ノルビニステロン;オキシメステロン;パラメサゾン;酢酸パラメタゾン;ポナステロン;プレドニソラメート;プレドニゾロン;21-ヘミコハク酸プレドニゾロン;酢酸プレドニゾロン;ファルネシル酸プレドニゾロン;ヘミコハク酸プレドニゾロン;プレドニゾロン-21(ベータ-D-グルクロニド);メタスルホ安息香酸プレドニゾロン;リン酸プレドニゾロンナトリウム;プレドニゾロンステアグラート;プレドニゾロンテブテート;テトラヒドロフタル酸プレドニゾロン;プレドニゾン;プレドニバール;プレドニリデン;プレグネノロン;プロシノニド;トラロニド;プロゲステロン;プロメゲストン;ラポンチステロン;リメキソロン;ロキシボロン;ルブロステロン;スチゾフィリン(stizophyllin);チキソコルトール;トプテロン;トリアムシノロン;トリアムシノロンアセトニド;21-パルミチン酸トリアムシノロンアセトニド;トリアムシノロンジアセタート;トリアムシノロンヘキサセトニド;トリメゲストン;ツルケステロン;及びワートマニンを含む。
【0084】
コルチコステロイドについての標準的な推奨投薬量は、たとえばMerck Manual of Diagnosis&Therapy(17th Ed.MH Beers et al.,Merck&Co.)及びPhysicians’ Desk Reference 2003(57th Ed.Medical Economics Staff et al.,Medical Economics Co.,2002)において提供される。一実施形態において、投与されるコルチコステロイドの投薬量は、本明細書において定義されるように、プレドニゾロンの投薬量と等価な投薬量である。たとえば、コルチコステロイドの低い投薬量は、プレドニゾロンの低い投薬量と等価な投薬量と考えられてもよい。2つ以上のコルチコステロイドを、同じ治療において投与することができる。この組み合わせは、対象が経験する主要な産後関連症状が腫れである状況に、とりわけ有用となり得る。
【0085】
抗うつ薬
所望される場合、ケタミン、ノルケタミン、6-ヒドロキシノルケタミン、又はその薬学的に許容される塩は、フルオキセチン、デュロキセチン、ブプロピオン、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、ロラゼパム、フルボキサミン、セルトラリン、デスベンラファキシン、ミルナシプラン、ベンラファキシン、アミトリプチリンノルトリプチリン、デシプラミン、アルプラゾラム、アゴメラチン、エトペリドン、又はフェネルジンなどのような、1つ以上の抗うつ薬と併せて投与されてもよい。2つ以上の抗うつ薬を、同じ治療において投与することができる。この組み合わせは、対象が経験する主要な産後関連症状が不安又は不快気分である状況に、とりわけ有用となり得る。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は、本明細書において記載される組成物及び方法をどのように使用し、作製し、評価するのかについて当業者らに説明するために示され、本発明の単なる例示であることが意図され、発明者らが発明者らの発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。
【0087】
実施例1.哺乳中の女性の母乳におけるケタミンの薬力学的効果(pharmacodynamics)
哺乳中の女性の母乳におけるケタミンの薬力学的効果についての研究を、実行した。母乳中のケタミンレベルを、長い間にわたって、哺乳中の対象において定量化した。4人の女性に、少なくとも1週間間隔で、2用量:0.5mg/kg及び1.0mg/kgの塩酸ケタミンを筋肉内注射した。母乳を、24時間、3時間間隔で、1人の対象において回収し、後の3人の対象は、最高12時間、3時間間隔で回収した。対象は、体重も民族的バックグラウンドも異なった。
【0088】
投与したケタミンの投薬量は、28mg~76mgの範囲にあった。乳サンプルは、ケタミン、活性代謝産物ノルケタミン(ケタミンの1/3の効力であることが推定される)、及び2つの不活性代謝産物の存在について分析した。0.5mg/kg用量を受けた対象について、9~12時間の回収期間に対象の母乳中のケタミンについて観察された範囲(期間中の搾乳の総量)は、0.09mg~1.66mgの範囲であった。1.0mg/kg用量を受けた対象について、9~12時間の回収期間に対象の母乳中のケタミンについて観察された範囲(期間中の搾乳の総量)は、1.067mg~6.22mgの範囲であった。最も高いケタミンレベル(6.22mg)は、76mgの用量の塩酸ケタミンの投与後に観察された。結果は、12時間の時点で、極めてわずかな量のケタミン及びその活性代謝産物ノルケタミンしか検出できないことを一貫して実証した。
【0089】
これらの結果は、PPDについて治療される哺乳中の女性において、任意の様式で、ケタミン投与後の12時間、母乳哺育を控えることにより、母乳哺育中の乳児に極めてわずかな量のケタミンしか送達されないであろうということを示す。この研究は、産後抑鬱及び他の産後情動障害におけるケタミン支援型精神療法(KAP)の使用を支持するものであり、乳児への曝露を予防するのに必要な母乳哺育の中断は、ほんの短い時間であり(たとえば少なくとも6時間、12時間、18時間、又は24時間)、母親と子供との間の健全な関係を維持するものである。産後情動障害の従来の治療が、抗うつ薬及び他の薬物の連続投与に依存しているので、KAPは、抑鬱及び他の情動障害のための非常に有効な治療を提供するのみならず、この適用において、現在の行動、場合によっては、より長い期間にわたって、発達に十分に影響を及ぼし得る薬剤の連続流入と関連する危険性に、乳児を曝露することもない。
【0090】
他の実施形態
本明細書において述べられた刊行物、特許、及び特許出願はすべて、あたかもそれぞれの独立した刊行物又は特許出願が、参照によって援用されるように詳細に且つ個々に示されるのと同じ程度まで、参照によって本明細書において援用される。
【0091】
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載したが、さらなる修飾が可能であること並びに本出願は、概して、本発明の原則に従って、当技術分野内の既知の又は通例の実施の範囲内に入り且つ上記に記載される本質的な特徴に適用されてもよいような本開示からの逸脱を含め、本発明の任意の変更、使用、又は適合を包含することが意図され、請求項の範囲に従うものであることが理解されるであろう。
【0092】
本出願は、参照によって本明細書において援用される、2019年8月5日に提出された米国仮特許出願第62/882,858号明細書の利益を主張する。
【0093】
他の実施形態は、請求項の範囲内にある。
【国際調査報告】