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特表2022-543536温度制御下における顆粒球コロニー刺激因子の精製
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  • 特表-温度制御下における顆粒球コロニー刺激因子の精製 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】温度制御下における顆粒球コロニー刺激因子の精製
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/535 20060101AFI20221005BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20221005BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 15/22 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 15/12 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 15/42 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C07K14/535 ZNA
C07K1/18
A61K38/19
A61P7/00
B01D15/36
B01D15/22
B01D15/12
B01D15/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500904
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 US2020041060
(87)【国際公開番号】W WO2021007243
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/871,905
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518377997
【氏名又は名称】タンベックス バイオファーマ ユーエスエー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー レニー ホップ
【テーマコード(参考)】
4C084
4D017
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084BA44
4C084DA19
4C084MA17
4C084MA66
4C084ZA511
4C084ZA512
4D017AA09
4D017BA07
4D017CA13
4D017DA03
4D017DB02
4H045AA10
4H045AA40
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA11
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA21
4H045GA22
4H045GA23
4H045GA25
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書においては、特に、組成物、システム、及び顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を精製するための方法を提供する。本開示の方法及びシステムにより得られるGCSF、それを含む医薬組成物並びに疾患又は健康状態の治療又は予防を必要とする個体の疾患又は健康状態を治療及び/又は予防するための方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を精製するための方法であって、前記方法は、
GCSF含有試料を、前記試料中の前記GCSFに結合することができる陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)材料を備えるクロマトグラフィー用容器に負荷することであって、前記クロマトグラフィー用容器は、温度制御された囲いの中に配置されており、且つ前記クロマトグラフィー用容器の囲いの少なくとも一部の温度は、約7℃~約13℃に設定されていること、及び
前記GCSFを前記AEX材料から溶出緩衝液を用いて溶出することにより、前記精製されたGCSFを得ること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記GCSF含有試料は、前記クロマトグラフィー用容器に、温度制御された囲いの中に配置された流路を用いて負荷され、前記流路の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器の囲い及び前記流路の囲いの前記設定温度は等しい、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記クロマトグラフィー用容器の囲い及び前記流路ジャケットの囲いの前記設定温度は異なる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記クロマトグラフィー用容器の囲い及び前記流路の囲いの少なくとも1つの温度は約10℃に設定されている、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クロマトグラフィー用容器は、カラム、槽、充填床、流動床、カートリッジ、内封された膜、貯留器、チャンバ、コンテナ及び混合槽からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記流路は、チューブ、パイプ、バッグ、コンテナ、貯蔵タンク、混合槽又は他の流体案内手段である、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記GCSF試料を負荷する前に、前記AEX材料を、約30mM~約50mMのTrisを含み、且つpHが約7.0~約8.0である平衡化緩衝液で平衡化することを更に含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記平衡化緩衝液は、約40mMのTrisを含み、且つpHは約7.6である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記GCSFを溶出する前に、未結合又は弱く結合している夾雑物を除去するために、前記AEX材料を洗浄緩衝液で洗浄することを更に含む、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄緩衝液及び前記平衡化緩衝液は、同一の緩衝液組成を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記GCSF含有試料は、負荷緩衝液を含む、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記負荷緩衝液のpHは、約7.4~約8.0である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記GCSF試料の前記クロマトグラフィー用容器への負荷は、約1.5~約3.0mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶出緩衝液は、約30mM~60mMのTris、約30mM~80mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.4~約8.0である、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶出緩衝液は、約40mMのTris、約50mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.7である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記AEX材料からの前記GCSFの溶出は、約7.4~約8.2mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記AEX材料は、ジエチルアミノエチル(DEAE)イオン交換クロマトグラフィーを含む、請求項1~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記AEX材料は、DEAEセファロース(登録商標)樹脂を含む、請求項1~18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記DEAEセファロース(登録商標)樹脂は、DEAEセファロース(登録商標)ファストフロー樹脂を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記AEX材料のストリッピング及び/又はサニテーションの1又は複数の段階を更に含む、請求項1~20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記DEAEクロマトグラフィーは、全ての段階のための直線流速で操作される、請求項18~21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記直線流速は、約150cm/hrである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ストリッピング及びサニテーション段階の少なくとも1つは、50cm/hrで実施される、請求項21~23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記GCSFは、組換えヒトGCSF(hGCSF)又はその変異体である、請求項1~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記試料は、組換え真核細胞又は組換え原核細胞から得られたGCSFを含む、請求項1~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの追加の精製プロセスを更に含む、請求項1~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの追加の精製プロセスは、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、遠心分離、ダイアフィルトレーション及び限外濾過からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの追加の精製プロセスは、前記AEXクロマトグラフィープロセスの前に実施される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの追加の精製プロセスは、前記AEXクロマトグラフィープロセスの後に実施される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項31】
GCSFに結合することができる陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)材料を備えるクロマトグラフィー用容器を備える、GCSFを製造するためのシステムであって、前記クロマトグラフィー用容器は、温度制御された囲いで覆われており、前記クロマトグラフィー用容器の囲いの少なくとも一部の温度は、約7℃~約13℃に設定されている、システム。
【請求項32】
温度制御された囲いの中に配置された流路を更に含み、前記流路の囲いの少なくとも一部の温度は、約7℃~約13℃に設定されている、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
請求項1~30の何れか一項に記載の方法又は請求項31若しくは32に記載のシステムにより精製された顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)。
【請求項34】
請求項33に記載のGCSFを含む医薬組成物。
【請求項35】
前記医薬組成物は水性組成物、凍結乾燥物又は粉末である、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
疾患又は健康状態の治療又は予防を必要とする対象の疾患又は健康状態を治療又は予防するための方法であって、前記対象に、請求項33に記載のGCSF及び/又は請求項34若しくは35に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記疾患又は健康状態は、好中球減少症である、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月9日に出願された米国仮特許出願第62/871,905号明細書の優先権の利益を主張するものである。上に参照した出願の開示内容を、図面も含め、その全体を参照することにより本明細書に明示的に援用する。
【0002】
発明の分野
本開示は、全体として、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を精製するための、温度制御下における陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィープロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
バイオ医薬品の安全性を確保するため、規制当局は、ヒトに投与することが意図された組換えタンパク質に対し厳しい精製基準及び関連する品質特性(例えば、同一性(identity)、純度及び生物活性)を課している。タンパク質をベースとする治療用製品に要求される共通の基準は、目的の組換えタンパク質の凝集体、断片及び不活性変異体等の製品関連の夾雑物並びにクロマトグラフィー樹脂から浸出したリガンド、培養培地成分、宿主細胞タンパク質及び核酸、混入ウイルス並びに内毒素等のプロセス関連の夾雑物等の不純物を実質的に含まないことである。
【0004】
イオン交換クロマトグラフィー(IEC)は、タンパク質、ポリペプチド、核酸、ポリヌクレオチド及び他の生体分子の分離及び精製に最も一般的に使用されている技法の一つである。IECを使用する主な理由の一部は、その適応範囲の広さ、容量の大きさ及びシステムの効率の潜在的な高さにある。顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)に関しては、効率的であり、スケーラブルであり、且つ工業的に適用可能な、例えば、商業的製造規模で実施可能な精製プロセスを発展させることを目指して、GCSFの単離及び精製に関する研究が長年に亘り行われている。GCSFの精製及び調製にIECを適用することは、本分野を前進させる重要な一歩であった。GCSFの精製収率に影響を与える幾つかのクロマトグラフィーパラメータを詳細に調査したところ、移動相中の緩衝剤の濃度、pH値、チオールの対の濃度及び比率並びに移動相の流速等のパラメータが非常に重要であることが示された。一方、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)等の多くの既存のIEC操作においては、GCSFが低収率であり、及び/又は収率が安定しないことが観測されている。このように収率が低く及び/又は安定しないことは、GCSF製造プロセスのスケールアップの設計及び発展を図る上で最も困難な障壁の一部である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、費用対効果が高く、GCSFの回収率が高く且つ安定しており、及び大規模生産に適応可能な改良された製造方法に対する要求は依然として満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書においては、特に、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)タンパク質を精製及び/又は調製するための組成物、方法及びシステムを提供する。本開示の特定の態様及び実施形態は、高く且つ安定した収率でGCSFを得るために低温条件下で実施されるAEX手順を用いて、GCSFタンパク質の精製を最適化する新規な手法に関する。特に本発明者らは、ジャケット付きクロマトグラフィーカラムを使用し、ジャケットの少なくとも一部の温度を約7℃~約13℃に設定した結果、驚くべきことに、GCSF製品の収率が向上することを示した。この種の方法、システムにより得られるGCSF、それを含む医薬組成物並びに疾患又は健康状態の治療及び/又は予防を必要とする対象の疾患又は健康状態を治療及び/又は予防するための方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様においては、本明細書において、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を精製するための様々な方法であって、(a)試料中のGCSFと結合することができる陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)材料を含むクロマトグラフィー用容器(chromatography vessel)にGCSF含有試料を負荷することであって、クロマトグラフィー用容器は温度制御された囲い(enclosure)の中に配置されており、且つクロマトグラフィー用容器の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されていること、及び(b)AEX材料から溶出緩衝液を用いてGCSFを溶出することにより精製されたGCSFを得ること、を含む方法を提供する。
【0008】
本開示の方法を例示する非限定的な実施形態は、以下に示す1又は複数の特徴を含む。幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は、クロマトグラフィー用容器に、温度制御された囲いの中に配置された流路を用いて負荷され、この流路の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されている。幾つかの実施形態において、容器の囲い及び流路の囲いの設定温度は等しい。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路ジャケットの囲いの設定温度は異なる。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路の囲いの少なくとも1つの温度は約10℃に設定されている。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器は、カラム、槽(tank)、充填床、流動床、カートリッジ、内封された(encapsulated)膜、貯留器(reservoir)、チャンバ(chamber)、コンテナ(container)及び混合槽(mixing vessel)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、流路は、チューブ(tube)、パイプ(pipe)、バッグ(bag)、コンテナ、貯蔵タンク(storage tank)、混合槽又は他の流体案内手段(fluid conduction means)である。
【0009】
幾つかの実施形態において、本方法は、GCSF試料を負荷する前に、AEX材料を、約30mM~約50mMのTrisを含み、且つpHが約7.0~約8.0である平衡化緩衝液で平衡化することを更に含む。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約40mMのTrisを含み、且つpHは約7.6である。幾つかの実施形態において、本方法は、GCSFを溶出する前に、未結合又は弱く結合している夾雑物を除去するために、AEX材料を洗浄緩衝液で洗浄することを更に含む。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液及び平衡化緩衝液は、同一の緩衝液組成を有する。幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は負荷緩衝液を含む。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは約7.4~約8.0である。幾つかの実施形態において、GCSF試料のクロマトグラフィー用容器への負荷は、約1.5~約3.0mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。
【0010】
幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、約30mM~60mMのTris、約30mM~80mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.4~約8.0である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、約40mMのTris、約50mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.7である。幾つかの実施形態において、AEX材料からのGCSF溶出は、約7.4~約8.2mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、AEX材料は、ジエチルアミノエチル(DEAE)イオン交換クロマトグラフィーを含む。幾つかの実施形態において、AEX材料は、DEAEセファロース(Sepharose)(登録商標)樹脂を含む。幾つかの実施形態において、DEAEセファロース(登録商標)樹脂は、DEAEセファロース(登録商標)ファストフロー(Fast Flow)樹脂を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、本方法は、AEX材料のストリッピング(stripping)及び/又はサニテーション(sanitation)の1又は複数の段階を更に含む。幾つかの実施形態において、DEAEクロマトグラフィーは、全ての段階のための直線流速(linear flow rate)で実施される。幾つかの実施形態において、直線流速は約150cm/hrである。幾つかの実施形態において、ストリッピング及びサニテーション段階(stripping and sanitization phases)の少なくとも1つは50cm/hrで実施される。幾つかの実施形態において、GCSFは組換えヒトGCSF(hGCSF)又はその変異体である。幾つかの実施形態において、試料は、組換え真核細胞又は組換え原核細胞から得られたGCSFを含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示する方法は、少なくとも1つの追加の精製プロセスを更に含む。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、遠心分離、ダイアフィルトレーション及び限外濾過からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの前に実施される。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの後に実施される。
【0013】
他の態様においては、本明細書において、GCSFに結合することができる陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)材料を含むクロマトグラフィー用容器を含む、GCSFを製造するための様々なシステムであって、クロマトグラフィー用容器は、温度制御された囲いに覆われて(encased)おり、且つクロマトグラフィー用容器の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されている、システムを提供する。
【0014】
本開示のシステムを例示する非限定的な実施形態は、以下に示す1又は複数の特徴を含む。幾つかの実施形態において、このシステムは、温度制御された囲いの中に配置された流路を更に含み、この流路の囲いの少なくとも一部の温度は7℃~約13℃に設定されている。幾つかの実施形態において、容器の囲い及び流路の囲いの設定温度は等しい。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路ジャケットの囲いの設定温度は異なる。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路の囲いの少なくとも1つの温度は約10℃に設定されている。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器は、カラム、槽、充填床、流動床、カートリッジ、内封された膜、貯留器、チャンバ、コンテナ及び混合槽からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、流路は、チューブ、パイプ、バッグ、コンテナ、貯蔵タンク、混合槽又は他の流体案内手段である。
【0015】
幾つかの実施形態において、AEX材料は、GCSF試料を負荷する前に、約30mM~約50mMのTrisを含み、且つpHが約7.0~約8.0である平衡化緩衝液で平衡化される。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約40mMのTrisを含み、且つpHは約7.6である。幾つかの実施形態において、AEX材料は、GCSFを溶出する前に、未結合又は弱く結合している夾雑物を除去するために洗浄緩衝液で洗浄される。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液及び平衡化緩衝液は、同一の緩衝液組成を有する。幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は負荷緩衝液を含む。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは約7.4~約8.0である。幾つかの実施形態において、GCSF試料のクロマトグラフィー用容器への負荷は、約1.5~約3.0mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。
【0016】
本開示のシステムの幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、約30mM~60mMのTris、約30mM~80mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.4~約8.0である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、約40mMのTris、約50mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.7である。幾つかの実施形態において、AEX材料からのGCSFの溶出は、約7.4~約8.2mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、AEX材料は、ジエチルアミノエチル(DEAE)イオン交換クロマトグラフィーを含む。幾つかの実施形態において、AEX材料は、DEAEセファロース(登録商標)樹脂を含む。幾つかの実施形態において、DEAEセファロース(登録商標)樹脂は、DEAEセファロース(登録商標)ファストフロー樹脂を含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、本システムは、AEX材料のストリッピング及び/又はサニテーションのうちの1又は複数の段階を更に含む。幾つかの実施形態において、DEAEクロマトグラフィーは、全ての段階のための直線流速で実施される。幾つかの実施形態において、直線流速は約150cm/hrである。幾つかの実施形態において、ストリッピング及びサニテーション段階の少なくとも1つは50cm/hrで実施される。幾つかの実施形態において、GCSFは、組換えヒトGCSF(hGCSF)又はその変異体である。幾つかの実施形態において、試料は、組換え真核細胞又は組換え原核細胞から得られたGCSFを含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示するシステムは、少なくとも1つの追加の精製プロセスを更に含む。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、遠心分離、ダイアフィルトレーション及び限外濾過からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの前に実施される。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの後に実施される。
【0019】
他の態様において、本開示の幾つかの実施形態は、本明細書に開示する方法又は本明細書に開示するシステムにより精製された顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)に関する。関連態様において、本開示の幾つかの実施形態は、本明細書に開示するGCSFを含む医薬組成物に関する。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、水性組成物、凍結乾燥物又は粉末である。
【0020】
更なる他の態様において、本明細書においては、疾患又は健康状態の治療又は予防を必要とする対象の疾患又は健康状態を治療又は予防するための様々な方法であって、本明細書に開示するGCSF及び/又は本明細書に開示する医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。幾つかの実施形態において、疾患又は健康状態は、好中球減少症である。
【0021】
上述の概要は単なる例示であり、いかなる形でも限定を意図するものではない。本明細書に記載する好ましい実施形態及び特徴に加えて、本開示の更なる態様、実施形態、目的及び特徴は、図面及び詳細な説明及び特許請求の範囲から充分に明らかになるであろう。
【0022】
本明細書に記載する態様及び実施形態のそれぞれは、実施形態又は態様の文脈から明示的に又は明確に除外されていない限り、一緒に用いることができる。
【0023】
本明細書全体を通して、様々な特許、特許出願及び他の種類の刊行物(例えば、雑誌の論文、電子データベースの収録内容(entry)を参照する。本明細書に引用する全ての特許、特許出願及び他の刊行物を参照することにより、その開示全体をあらゆる目的のために本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本明細書に開示する方法の幾つかの実施形態に従う例示的な実験における、DEAE溶出ピーク全体に亘るGCSF製品の品質の分布をグラフで示したものである。この実験においては、280nmのODが0.5になった時点でDEAE樹脂からの体積0.5CVの画分の回収を開始し、ODが0.5に低下した時点で停止した。次いでこれらの画分を逆相(RP)で分析し、そして宿主細胞由来タンパク質含有量に関する分析を行った。
【0025】
開示の詳細な説明
本明細書においては、特に、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)タンパク質を精製及び/又は調製するための、組成物、方法及びシステムを提供する。本開示の特定の態様及び実施形態は、高く且つ安定した収率でGCSFを得るために、低温条件下で実施されるAEX手順を用いて、GCSFタンパク質の精製を最適化する新規な手法に関する。
【0026】
イオン交換クロマトグラフィー(IEC)においては、クロマトグラフィーカラムの温度がイオン交換反応の選択性及びカラムの効率に影響を及ぼし、したがってイオン分離の品質に影響を及ぼす因子であることが報告されている。例えば、古典的なIECでは、カラムの温度が無機イオンに対する選択性に影響を及ぼす因子であることが立証されている。後により詳細に説明するように、温度制御された囲いで覆われたクロマトグラフィー用容器等の温度制御されたクロマトグラフィー用容器を含むAEXの結合/溶出操作を組み入れ、この囲いを約7℃~約13℃の範囲の特定の温度に設定することにより、GCSF製品を高い及び/又は安定した収率で得ることが可能になり、したがって、GCSFの製造に好適に使用することができる。実施例において後述するように、温度制御下におけるDEAEクロマトグラフィープロセスで組換えhGCSFを調製するための様々なパラメータを、幾つかの頑健性試験を行うことにより評価及び最適化した。このパラメータには、(1)負荷濃度、(2)負荷液のpH、(3)負荷液の電気伝導率、(4)平衡化緩衝液のpH、(5)平衡化緩衝液の電気伝導率、(6)溶出緩衝液のpH、(7)溶出緩衝液の電気伝導率、(8)負荷液ジャケットの温度設定値及び(9)カラムジャケットの温度設定値が含まれる。これらの実験において、DEAEは、酸化性化学種、DNA及び大腸菌((エシェリヒア・コリ(E.coli))宿主細胞由来タンパク質(ECP)を低減する潜在能力を有するキャプチャークロマトグラフィーカラムとして機能する。本明細書に示す実験データは、特定のパラメータがGCSF製品の品質及び/又は収率に有意に影響することを示している。例えば、クロマトグラフィー用容器及び負荷液のジャケットの温度設定値は、両方共、最終GCSF製品の品質及び収率に有意に影響する主要工程パラメータ(KPP)であることが確認された(例えば、実施例3及び表13参照)。特に、クロマトグラフィー用容器のジャケット温度は、C3逆相HPLC分析により測定される製品関連の夾雑物に影響を及ぼし、且つCEX HPLC分析により測定されるGCSF最終製品の電荷不均一性にも影響を及ぼすことが判明した。更に、負荷液のジャケット温度は、最終GCSF製品の宿主細胞由来タンパク質含有量に影響を及ぼすことが判明した。
【0027】
後に更に説明するように、本明細書に開示するGCSFの調製方法は、高純度の、例えば、医薬品グレードまでの組換えGCSFを、品質、経済性及び規制上の要件を考慮した上で、工業規模で効果的に製造するプロセスを好適に提供することができる。本明細書においてはまた、本開示の幾つかの実施形態において、この種の方法により得られるGCSF、それを含む医薬組成物並びに疾患又は健康状態の治療又は予防を必要とする対象の疾患又は健康状態を治療及び/又は予防するための方法も提供する。
【0028】
定義
本明細書において使用する全ての技術用語、表記法及び他の科学用語又は専門用語は、別途定義されていない限り、本開示が関連する技術分野の当業者が通常理解している意味を有することが意図されている。場合によっては、通常理解されている意味を有する用語を、明確化のため及び/又は直ぐに参照できるように本明細書に定義し、この種の定義を本明細書に包含するが、これが必ずしも当該技術分野において一般に理解されているものとの実質的な差を表すと解釈されるべきではない。本明細書において記載又は参照する技法及び手順の多くは、当業者に充分に理解されており、従来の方法論を用いて一般に採用されているものである。
【0029】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに他のことが指示されていない限り、複数の指示対象も包含する。例えば、「細胞(a cell)」は、1個又はそれらの混合物を含む複数個の細胞を包含する。本明細書において、「A及び/又はB」を使用する場合、次に示す代替対象を全て包含する:「A」、「B」、「A又はB」並びに「A及びB」。
【0030】
本明細書においては、特定の値及び範囲を、数値の前に「約」という語を付記して示す。本明細書において、「約」という語は、その語に先行される正確な数に加えて、その語に先行される、該数に近い(near to)又は近似値(approximately)である数の文言をサポートするために使用する。一般に、「約」という語は、それが近似値であるという通常の意味を有する。近似の程度が文脈から他の形で明らかでない場合、「約」は、提示された値に対し前後10%の範囲内にあるか又は提示された値が最も近い有効数字に丸められた値であるかのいずれかを意味し、全ての場合において、提示された値が包含される。範囲が提示された場合は、境界値も包含される。
【0031】
本明細書に記載する本開示の態様及び実施形態は、「~を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」及び「基本的に~からなる(consisting essentially of)」態様及び実施形態を含むことが理解される。
【0032】
本明細書全体を通して与えられている最大値の数値限定は、いずれも、それぞれの低い方の数値限定が、そのような低い方の数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように、含まれることを意図している。本明細書全体を通して与えられている最小値の数値限定は、いずれも、それぞれの高い方の数値限定が、そのような高い方の数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように、含まれることとなる。本明細書全体を通して与えられている数値範囲は、いずれも、そのようなより広い数値範囲に含まれるあらゆるより狭い数値範囲が、そのようなより狭い数値範囲が本明細書に明示的に記載されているかのように、含まれることとなる。
【0033】
見出し、例えば、(a)、(b)、(i)等は、単に本明細書及び特許請求の範囲を読みやすくする目的で示されている。本明細書及び特許請求の範囲において使用する見出しは、ステップ又は構成要素を、アルファベット若しくは数字の順序又はそれらが提示されている順序で実施することを要求するものではない。
【0034】
顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)
顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)は、ヒトの好中球減少症の治療に広く使用されている多機能サイトカインである。GCSFは、主に骨髄間質の線維芽細胞及び内皮細胞並びに免疫担当細胞(例えば、単球、マクロファージ等)から産生される、造血性の細胞系列特異的なサイトカインである。GCSF受容体(GCSFR)は、サイトカイン及びヘマトポエチン受容体スーパーファミリーの一部であり、そしてGCSFRの変異は重度の先天的好中球減少症を引き起こす。GCSF/GCSFR結合の主な作用は、骨髄における好中球の分化、増殖、動員、生存及び走化性を刺激すること並びにそれらの血流中への放出を制御することである。これに加えて、(i)内皮細胞の増殖及び遊走、(ii)ノルエピネフリン再取り込みの低下、(iii)破骨細胞活性の亢進並びに(iv)骨芽細胞活性の低下を含む他の多くのGCSFの作用が報告されている。
【0035】
ヒト第17染色体上に位置するヒトGCSF遺伝子は、選択的スプライシングによって2種のタンパク質産物:177個のアミノ酸から構成されるアイソフォームA及び174個のアミノ酸から構成されるアイソフォームBをコードする。アイソフォームAは、アイソフォームBのLeu35の後に挿入されている追加の3つの残基(Val-Ser-Gln)を含む。アイソフォームBはアイソフォームAよりも生物活性及び安定性が高い。したがって、ヒト(h)GCSFのアイソフォームBが主としてクローニング及び発現の対象とされてきた。hGCSFは、その生物活性に不可欠な5個のシステイン残基及び2本の分子内ジスルフィド結合を有する18.8kDaの糖タンパク質である。大腸菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli))(E.coli)で産生される組換え(r)hGCSFは、天然のヒトタンパク質と類似の生物活性を有するが、N-末端メチオニン残基を有する点及びグリコシル化されていない点が異なっている。rhGCSFを大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli))で発現させると、多くの場合、封入体(IB)と呼ばれる不溶性の凝集体を形成する。既存の精製プロセスでは、こうした不溶性凝集体を、変性剤を含む緩衝液中で可溶化した後、一般には、再生ステップにより、変性された形態を適切な三次元構造を有する生物活性形態に変換する。
【0036】
GCSFの治療適応は、非好中球減少症患者の感染症、生殖医療、神経障害、急性心筋梗塞後の再生療法及び骨格筋の再生療法並びにC型肝炎治療等、幅広く報告されている。現在、GCSFは、骨髄移植又はがん化学療法後の造血能の回復を促進するために臨床的に使用されている。腫瘍学においては、GCSFは、特に、化学療法により誘発される好中球減少の一次予防に利用されているが、造血幹細胞移植に使用することもでき、その場合、一部の骨髄性白血病では単球への分化誘導が可能である。
【0037】
GCSFを精製するための方法
初期の報告では、大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli))等の組換え原核細胞内でのrhGCSFの発現量は、低~中程度(10~35%)であることが示されており、最終製品の収率は非常に低く、そして許容できるとは言い難いものであった。このような低い収率の原因は、生産性の悪い下流の処理技術、例えば、純度の低い封入体の単離、回収、ミスフォールディング、凝集体の形成並びにタンパク質リフォールディング操作及びクロマトグラフィープロセスの最適化されていない条件を含む、多くの要因であり得る。したがって、スケーラブルであり、費用対効果が高く、且つ安定性が高い、GCSFを高回収率で回収するための改良された製造方法が依然として必要とされている。
【0038】
本開示の特定の態様及び実施形態は、GCSFを高く且つ安定した収率で得ることを目的として、低温条件下で実施されるAEX手順を用いてGCSFタンパク質の精製を最適化する新規な手法に関する。本開示の幾つかの実施形態は、結合/溶出操作及び温度制御下で操作を行うために適切に取り付けられた、温度制御された囲いの中に配置されたクロマトグラフィー用容器を用いてGCSFを精製するための方法に関する。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、(i)試料中のGCSFに結合することができるAEX材料を含むクロマトグラフィー用容器にGCSF含有試料を負荷することであって、クロマトグラフィー用容器は温度制御された囲いに覆われており、且つクロマトグラフィー用容器の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されていること、及び(ii)GCSFを溶出緩衝液でAEX材料から溶出すること、を含む。幾つかの実施形態において、試料中に存在するGCSFは、AEX材料に可逆的に結合する。当業者は、対象分子(例えば、GCSF)をクロマトグラフィー材料に結合させるとは、分子がクロマトグラフィー材料の内部又は表面にリガンド-タンパク質相互作用によって可逆的に固定化されるように、分子をクロマトグラフィー材料に適切な条件(例えば、pH及び/又は電気伝導率)下で曝露することであると理解するであろう。非限定的な例として、分子とイオン交換材料の1個又は複数個の帯電した基とのイオン的相互作用が挙げられる。
【0039】
本出願における精製という用語は、GCSF含有試料中の1種又は複数種の望ましくない夾雑物(contaminant compound)(例えば、任意の外来の又は望ましくない不純物)の濃度を、GCSFタンパク質の濃度に対し低下させることにより、GCSFタンパク質の純度の程度を高める手順を指す。GCSF含有試料という用語は、1種又は複数種の夾雑物(不純物)が存在する、GCSFタンパク質を含む混合物を指す。後により詳細に説明するが、本明細書に記載する方法を用いて精製されるGCSFタンパク質は、概して、組換え技法を用いて、真核生物(例えば、酵母及び哺乳動物細胞株)内で又は細菌等の原核生物(例えば、大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli)))内で産生されたものであり得る。GCSF含有試料中に存在する夾雑物は、標的タンパク質(例えば、GCSF)の凝集体、断片及び不活性変異体等の、製品関連の夾雑物であり得る。夾雑物はまた、浸出したクロマトグラフィー樹脂、培養培地成分、細胞残屑、宿主細胞由来タンパク質、塩、脂質、糖質、核酸、混入ウイルス及び内毒素等のプロセス関連の夾雑物の可能性もある。
【0040】
プロセスの出発材料に応じて、望ましくない夾雑物をGCSF製品から完全に又は部分的に除去することができる。後により詳細に説明するように、ジャケット付きクロマトグラフィー用容器等の温度制御されたクロマトグラフィー用容器を含む、結合/溶出AEX操作を組み入れ、容器のジャケット温度を約7℃~約13℃の範囲内の特定の温度に設定することにより、GCSF製品を高い及び/又は安定した収率で得ることが可能になり、これは、GCSFの工業的製造に好適に使用することができる。
【0041】
陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)
本開示の方法の非限定的な好ましい実施形態は、低温条件下で実施される結合/溶出AEX操作を組み入れることを含む。AEXは、高pH下で負電荷を有する、タンパク質、アミノ酸、糖/糖質及び他の酸性物質等の生体分子を、単離及び/又は精製するために広く慣用されている分離技法である。AEXは、正電荷を有する基を含む固定相イオン交換材料(例えば,マトリックス、媒体又は樹脂)を使用して、物質をその電荷に基づき分離するものである。この電荷は、1種又は複数種のイオン交換基、例えばジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルヒドロキシプロピル(QA)、4級アミノエチル(QAE)、4級アミノメチル(Q)、ジエチル-(2-ヒドロキシプロピル)-アミノエチル、トリエチルアミノメチル(TEAE)、トリエチルアミノプロピル(TEAP)、ポリエチレンイミン(PEI)を固定相に、例えば、共有結合によって結合させることにより付与することができる。これに替えて又はこれに加えて、電荷は固定相の固有の性質であってもよい(例えば、全体として正電荷を有するシリカの場合のように)。溶液中では、AEX材料は正に帯電した対イオン(陽イオン)で覆われている。AEX材料は、負に帯電した分子と、その対イオンを置き換えることにより結合する。この物質と樹脂との結合の強さは、物質の負電荷の強度に基づく。
【0042】
一般に、本開示の方法に使用するためのAEX材料は、タンパク質のAEXクロマトグラフィーに適した官能基(例えば、陰イオン交換体)を含む任意のAEX材料とすることができる。本開示の方法に適したAEX官能基の非限定的な例としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルヒドロキシプロピル(QA)、4級アミノエチル(QAE)、4級アミノメチル(Q)、ジエチル-(2-ヒドロキシプロピル)-アミノエチル、トリエチルアミノメチル(TEAE)、トリエチルアミノプロピル(TEAP)、ポリエチレンイミン(PEI)が挙げられる。商業的に入手可能な好適な製品の例としては、これらに限定されるものではないが、DEAE-セファロース(Sepharose)FF、DEAE-セファロース CL-4B、Q-セファロース FF、Q-セファロース CL-4B、Q-セファロース HP、Q-セファロース XL、Q-セファロース Big Beads、QAE-セファデックス(Sephadex)、DEAE-セファデックス、Capto DEAE、Capto Q、Capto Q ImpRes、Source 15Q、Source 30Q、DEAEセファセル(Sephacel)、Macro-Prep High Q、Macro-Prep DEAE、Nuvia Q、トヨパール(TOYOPEARL)DEAE-650、トヨパールSuperQ-650、トヨパールQAE-550、フラクトゲル(Fractogel)EMD DEAE、フラクトゲルEMD TMAE、バイオセプラ(Biosepra)Q Ceramic HyperD及びバイオセプラDEAE Ceramic HyperDが挙げられる。当該技術分野において知られている好適なAEX材料の他の例としては、これらに限定されるものではないが、Poros HQ 50、Poros PI 50、Poros D、Sartobind Q及びMustang Qが挙げられる。
【0043】
本開示の方法に使用するためのAEX材料の選択は、所望の分離性能、プロセス時間、洗浄に対する頑健性(cleaning robustness)、再現性、結合容量、ロット間の一貫性及び全体的な経済性等に基づき行うことができる。当業者は、AEX官能基に加えて、AEX樹脂の骨格の性質及びビーズのサイズも考慮する必要があることを理解するであろう。幾つかの実施形態においては、メタクリレート誘導体をベースとするマトリックス、例えば、マクロプレップ(Macro-Prep)(登録商標)及びトヨパール(登録商標)等を使用することができる。この種のマトリックスは、特に良好な分解能及び再現性を有すると報告されている。幾つかの実施形態においては、架橋されたアガロースマトリックス、例えば、セファロース(登録商標)等を使用することができる。AEXクロマトグラフィーは結合/溶出操作に使用するので、選択的な溶出条件を用いることができ、この条件は、塩濃度を段階的に若しくは勾配をかけて増加させることによるか、又は溶出緩衝液のpHを段階的に若しくは勾配をかけて低下させることのいずれかにより与えることができる。
【0044】
幾つかの実施形態において、AEX材料は、例えば、DEAE官能基等の弱陰イオン交換体を含む。DEAEは古典的な弱陰イオン交換基であり、後述する実験において良好な分解能及び短時間で平衡化する特性を示した。幾つかの実施形態においては、DEAEセファロースFFを用いたAEXクロマトグラフィーを実施することにより、高い流速及び良好な製品回収率が可能になる。
【0045】
幾つかの実施形態において、AEX材料は、DEAEイオン交換クロマトグラフィーを含む。幾つかの実施形態において、陰イオン交換材料は、DEAEセファロース(登録商標)樹脂を含む。幾つかの実施形態において、DEAEセファロース(登録商標)樹脂は、DEAEセファロース(登録商標)ファストフロー樹脂を含む。
【0046】
本明細書に開示する方法に使用するのに適したAEX材料は、一般に、被分析物(例えば、GCSFポリペプチド)を混合物中に存在する他の分子から分離することができる任意の形態の固定相とすることができる。一般に、移動相の影響下において、混合物の個々の分子が固定された固定相中を移動する速度に差が生じる結果として、被分析物を他の分子から分離することができる。別法として、被分析物を他の分子から、結合/溶出操作で分離することができる。幾つかの実施形態において、AEX操作は結合/溶出モードで実施され、その場合、GCSF(即ち、被分析物)のAEX材料への結合は、GCSFがGCSFとAEX材料の1個又は複数個の電荷を有する基との間のイオン性相互作用によってクロマトグラフィー材料の内部又は表面に可逆的に固定化されるように、GCSFを適切な条件(例えば、pH、温度及び/又は電気伝導率)下でAEX材料と接触させることを含む。
【0047】
一般に、次いでフロースルーで、及び/又は後続の緩衝液洗浄により、未結合不純物を回収することができる。GCSF分子は正電荷を有するAEX材料に結合して保持され、その後、一般に用いられている2種の技法のうちの少なくとも1種により溶出することができる。1つの技法における幾つかの実施形態においては、溶出緩衝液の塩濃度を徐々に増加させることにより、AEX材料に結合しているGCSF分子を溶出することができる。この場合、塩溶液中の陰イオン(例えば、Cl-)は、AEX材料への結合においてタンパク質と競合する。第2の技法における他の実施形態においては、AEX材料に結合しているGCSF分子は、溶液のpHを徐々に低下させ、その結果としてGCSF上の正電荷をより高くし、AEX材料から遊離させることにより溶出することができる。これらの技法はいずれも負に帯電したGCSFを追い出すことができ、次いでGCSFは試験管の画分中へ溶出緩衝液と一緒に溶出する。
【0048】
本開示の方法に適したAEX材料の非限定的な例として、AEX樹脂、AEXマトリックス、AEX媒体及びAEX膜が挙げられる。幾つかの実施形態において、本開示の方法に使用されるAEX材料は、樹脂とすることができる。幾つかの実施形態において、本開示の方法に使用されるAEX材料は、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウムイオン官能基、ポリアミン官能基及びジエチルアミノエチル官能基のうちの1種又は複数種を含むことができる。幾つかの実施形態において、本開示の方法に使用されるAEX材料は、クロマトグラフィー用容器(例えば、カラム)に充填される。幾つかの実施形態において、AEX材料はAEX膜である。
【0049】
AEX材料の体積、使用されるクロマトグラフィー用容器(例えば、カラム)の長さ及び直径に加えて、動的容量及び流速は、被処理流体の体積及び本開示の精製方法に付される試料中のGCSFタンパク質の濃度等の幾つかのパラメータに依存することになることを当業者は理解するであろう。これらのパラメータの決定は当業者の平均的な技術範囲に充分に収まる。
【0050】
温度制御された容器
上に記載したように、本開示の幾つかの実施形態は、温度制御下で操作を行うために適切に取り付けられたAEXクロマトグラフィーシステムを使用してGCSFを精製するための方法に関する。開示された方法において、クロマトグラフィー用容器は、一般に、AEX材料(例えば、樹脂、媒体又はマトリックス)を収容することが可能な任意の好適なクロマトグラフィー用器具とすることができる。本開示の方法に使用するのに適したクロマトグラフィー用容器の非限定的な例として、クロマトグラフィーカラム、槽、充填床、流動床、貯留器、チャンバ、コンテナ及び混合槽が挙げられる。使用に適した更なるクロマトグラフィー用容器として、これらに限定されるものではないが、例えば、内封された膜等のクロマトグラフィーカートリッジが挙げられる。一般に、本開示のクロマトグラフィー用容器は、円筒形状を有することができる。本開示の幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器は、AEX材料を収容するのに適した他の形状、例えば、円筒形状、楕円形状、円錐形状、他の丸みを帯びた形状、より丸みの少ない壁部を有する形状、より直線的な壁部を有する形状、立方体形状、他の平たい形状又はこれらの組合せ等を有することができる。幾つかの実施形態において、本開示のクロマトグラフィー用容器は、円筒形のクロマトグラフィーカラム又は槽とすることができる。
【0051】
一般に、クロマトグラフィー用容器の容積は特に制限されない。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の容積は、約1mL超、約2mL超、約3mL超約4mL超、約5mL超、約6mL超、約7mL超、約8mL超、約9mL超、約10mL超、約15mL超、約20mL超、約25mL超、約30mL超、約40mL超、約50mL超、約75mL超、約100mL超、約200mL超、約300mL超、約400mL超、約500mL超、約600mL超、約700mL超、約800mL超、約900mL超、約1L超、2L超、3L超、4L超、5L超、6L超、7L超、8L超、9L超、10L超、25L超、50L超、100L超、200L超、300L超、400L超、500L超、600L超、700L超、800L超、900L超又は1000L超とすることができ、これらの容積に含まれる全ての値及び範囲を包含する。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の容積は、約1mL~約10mL、約15mL~約50mL、約75mL~約300mL、約400mL~約900mL、約1L~約5L、約6L~約50L、約100L~約600L又は約700L~約1000Lの範囲にある。
【0052】
幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の周囲環境は、約7℃~約13℃の範囲の温度に維持(例えば、安定化)される。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の周囲環境は、約7℃~約13℃、約8℃~約12℃、約9℃~約11℃、約7℃~約12℃、約8℃~約11℃又は約9℃~約10℃の範囲の温度に維持される。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の周囲環境は、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃又は約13℃の温度に維持される。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の周囲環境は10℃に維持される。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の周囲環境に温度勾配を使用することができる。例えば、クロマトグラフィー用容器に沿って、容器の出口端が容器の入口端よりも低温となるように、負の温度勾配を確立することができる。別法として、クロマトグラフィー用容器に沿って、容器の出口端が容器の入口端よりも高温となるように、正の温度勾配を確立することができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の周囲環境の温度を、冷媒供給(cooling supply)又は冷却装置に熱的に結合された温度制御された囲いを使用することにより、所望の温度に維持することができる。例示的な温度制御された囲いとしては、これらに限定されるものではないが、冷媒供給又は冷却装置に熱的に結合された、ジャケット、冷却ブロック、水浴、冷却用隔室(compartment)又はチャンバ及び冷却用配管(cooling tubing)が挙げられる。例えば、幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは、循環する冷却用気体又は流体(例えば、水)と共に配置することができる。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器は、ウォータージャケット又はガスジャケットとすることができる温度制御されたジャケットで覆われている。幾つかの実施形態において、温度制御されたクロマトグラフィー用容器は、ウォータージャケット付きクロマトグラフィー用容器である。幾つかの実施形態において、温度制御されたクロマトグラフィー用容器は、ガスジャケット付きクロマトグラフィー用容器である。幾つかの実施形態において、温度制御されたクロマトグラフィー用容器は、断熱用真空ジャケット付きである。
【0054】
幾つかの実施形態によれば、クロマトグラフィー用容器の温度を所望の温度(約7℃~約13℃の範囲)に維持するために、適切な熱移動を確保するべく、温度制御された囲い(例えば、ジャケット)をクロマトグラフィー用容器の表面積の少なくとも一部、例えば、クロマトグラフィー用容器の表面積の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%を覆うように構成することができる。幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは、クロマトグラフィー用容器全体を覆っているが、他の幾つかの実施形態においては、温度制御された囲いは、適切な熱移動を確保するように、及び/又はクロマトグラフィー用容器全体の温度が均一になるように、クロマトグラフィー用容器の表面積のかなりの(substantial)部分、例えば、その表面積の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%を覆っている。温度制御された囲いは、その設計及び製造が単純(straightforward)なものとなり得ることから、一般に、均一な厚みを有するものとなり得るが、温度制御された囲いは、不均一な厚みを有するように構成することもできる。例えば、幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは、頂部よりも底部の方がより多い量の気体又は流体(例えば、水)を収容し得る。別法として、幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは、頂部よりも底部の方がより少ない量の気体又は流体(例えば、水)を収容し得る。これに加えて、又は任意選択的に、温度制御された囲い及びクロマトグラフィー用容器は、単一構成部品の器具(single-component device)として製造する(例えば、組み立てる(fabricated))ことができる。
【0055】
温度制御された流路
幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は、流路を介してクロマトグラフィー用容器に負荷され、この流路は、温度制御された囲いの中に配置されているか、又はそれ以外の形で温度制御下で操作するために適切に取り付けられている。幾つかの実施形態において、流路の周囲環境は所望の温度に維持される。幾つかの実施形態において、流路の周囲環境は、約7℃~約13℃の範囲の温度に維持される。幾つかの実施形態において、流路の周囲環境は、約7℃~約13℃、約8℃~約12℃、約9℃~約11℃、約7℃~約12℃、約8℃~約11℃又は約9℃~約10℃の範囲の温度に維持される。幾つかの実施形態において、流路の周囲環境は、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃又は約13℃の温度に維持される。幾つかの実施形態において、流路の周囲環境は10℃に維持される。幾つかの実施形態において、流路の周囲環境に温度勾配を用いることができる。例えば、流路に沿って、容器の出口端が流路の入口端よりも低温となるように、負の温度勾配を確立することができる。別法として、流路に沿って、流路の出口端が流路の入口端よりも高温となるように、正の温度勾配を確立することができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、流路の温度は、温度制御された囲い、例えば、冷媒供給又は冷却装置に熱的に結合された、ジャケット、冷却ブロック、水浴、冷却用隔室又はチャンバ及び冷却用配管等を使用することにより所望の温度に維持される。幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは、循環する冷却用気体又は流体(水)と共に配置することができる。幾つかの実施形態において、流路は、温度制御されたジャケットで覆われている。幾つかの実施形態において、温度制御された流路は、ウォータージャケット付き流路である。幾つかの実施形態において、温度制御された流路は、ガスジャケット付き流路である。幾つかの実施形態において、温度制御された流路は、断熱用真空ジャケット付きである。
【0057】
幾つかの実施形態によれば、流路の温度を所望の温度に維持するために、温度制御された囲い(例えば、ジャケット)は、適切な熱移動を確保するべく、流路の表面積の少なくとも一部、例えば、流路の表面積の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%を覆うように構成することができる。幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは流路全体を覆っているが、他の幾つかの実施形態においては、温度制御された囲いは、適切な熱移動を確保するように、及び/又はクロマトグラフィー用容器全体の温度が均一になるように、流路の表面積のかなりの部分、例えば、その表面積の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%を覆っている。この囲いは、その設計及び製造が単純なものとなり得ることから、一般に、均一な厚みを有するものとなり得るが、温度制御された囲いは、不均一な厚みを有するように構成することもできる。例えば、幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは、頂部よりも底部の方がより多い量の気体又は流体(例えば、水)を収容し得る。別法として、幾つかの実施形態において、温度制御された囲いは、頂部よりも底部の方がより少ない量の気体又は流体(例えば、水)を収容し得る。これに加えて、又は任意選択的に、温度制御された囲い及びクロマトグラフィー用容器は、単一構成部品の器具として製造する(例えば、組み立てる)ことができる。幾つかの実施形態において、流路の少なくとも一部は約7℃~約13℃の温度に設定される。
【0058】
幾つかの実施形態において、容器の囲い及び流路の囲いの設定温度は等しい。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路ジャケットの囲いの設定温度は異なる。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路の囲いの少なくとも1つの温度は約7℃~約13℃に設定されている。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路の囲いの少なくとも1つの温度は約10℃に設定されている。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲いの温度は約7℃~約13℃に設定され、流路の囲いの温度は室温(例えば、約15℃~約25℃)に設定されている。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲いの温度は約10℃に設定され、流路の囲いの温度は室温(例えば、約15℃~約25℃)に設定されている。
【0059】
幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器及び流路は同一の温度制御された囲いの中に配置されている。他の実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路の囲いを、所望により異なる温度に設定できるように、クロマトグラフィー用容器及び流路は、別々の温度制御された囲いの中に配置されている。
【0060】
本明細書に開示する方法において、流路は、流体がその中を流動することが可能な寸法を有する任意の好適な流体流路とすることができる。概して、流路は、温度制御下で操作するために適切に取り付けられた可撓性チューブ又はキャピラリーチューブ等のチューブとすることができる。幾つかの実施形態において、流路は、温度制御下で操作するために適切に取り付けられた、チューブ、パイプ、バッグ、コンテナ、貯蔵タンク、撹拌槽(stirred-tank)、混合槽又は他の流体案内手段とすることができる。幾つかの実施形態において、流路は、GSCF含有試料を、負荷する前及び/又は途中に混合するためのスタティックミキサー又は超音波ミキサー等の混合機構を含むように構成された、温度制御されたコンテナを含む。幾つかの実施形態において、流路は、温度制御されたウォータージャケットを含む。幾つかの実施形態において、流路は、温度制御されたガスジャケットを含む。幾つかの実施形態において、流路は、温度制御された断熱用真空ジャケットを含む。
【0061】
後により詳細に説明するように、本明細書に開示する方法の実施形態は、1種又は複数種の緩衝液を使用することを含む。当業者は、緩衝液という用語が、一般に、その共役酸-共役塩基成分の作用により、pH変化に抵抗する溶液を指すことを理解するであろう。例えば、緩衝液に所望されるpH、緩衝液に所望される電気伝導率、精製すべきGCSFタンパク質の特性及びAEX材料に応じて、様々な緩衝液を採用することができる。これらのパラメータの決定は充分に当業者の平均的な技術範囲内である。この点に関する追加の情報は、例えば、“Buffers A guide for the preparation and use of buffers in biological systems” Mohan C.,Calbiochem(登録商標)Corp.,2006に記載されている。本開示の方法に有用な緩衝液の例として、負荷緩衝液、平衡化緩衝液、溶出緩衝液及び洗浄緩衝液が挙げられる。本開示の幾つかの実施形態において、精製プロセスの最中に使用される負荷緩衝液、平衡化緩衝液、溶出緩衝液及び/又は洗浄緩衝液のうちの1種又は複数種は同一である。本開示の幾つかの実施形態において、精製プロセスの最中に使用される負荷緩衝液、平衡化緩衝液、溶出緩衝液及び/又は洗浄緩衝液は全て同一である。幾つかの実施形態において、精製プロセスの最中に使用される負荷緩衝液、平衡化緩衝液、溶出緩衝液及び/又は洗浄緩衝液は互いに異なる。
【0062】
幾つかの実施形態において、本方法は、精製すべきGCSF試料を負荷する前に、陰イオン交換材料を平衡化緩衝液で平衡化することを更に含む。本開示の平衡化緩衝液に好適な緩衝液系の非限定的な例としては、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、Tris、HEPES、MOPS、HEPPS、EPFS、CAPS、CAPSO、CHES、TES、BES、TAPS、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリシン、ビシン、アセトアミドグリシン、グリシンアミド又はpKaが7を超える生体適合性を有する他の緩衝物質をベースとするものが挙げられる。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約30mM~50mMの範囲、例えば、約30mM~40mM、約35mM~45mM、約40mM~50mM、約45mM~50mM、約30mM~45mM又は約35mM~50mM等の範囲のモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約30mM、35mM、40mM、45mM又は50mMのモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約40mMのモル濃度のTrisを含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液に好適なpHは、約7.0~8.0の範囲、例えば、約7.0~7.5、約7.1~7.6、約7.2~7.7、約7.3~7.8、約7.4~7.9又は約7.5~7.8の範囲等にある。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液のpHは、約7.4~7.8又は約7.5~7.7の範囲にある。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液のpHは、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9又は8.0である。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液のpHは約7.5である。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液のpHは約7.6である。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液のpHは約7.7である。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液のpHは約7.8である。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は40mMのTrisを含み、pHは7.6である。
【0064】
当業者は、AEX材料を使用前に適切に状態調整することが必要であり、及びGCSF含有試料を負荷する前に充分に平衡化することも必要であることを理解するであろう。本明細書に開示する方法のために、AEX材料は、少なくとも1カラム体積(CV)の平衡化緩衝液で平衡化され得る。幾つかの実施形態において、AEX材料は、少なくとも1CV、2CV、3CV、4CV、5CV、6CV、7CV又は8CVの平衡化緩衝液で平衡化される。幾つかの実施形態において、AEX材料は、6CVの平衡化緩衝液で平衡化される。
【0065】
樹脂に結合しているGCSFを溶出する前に、本明細書に開示する幾つかの実施形態による方法は、GCSFを溶出する前に、クロマトグラフィー材料の洗浄に使用される緩衝液である洗浄緩衝液で陰イオン交換樹脂を洗浄することを更に含む。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液は、未結合又は弱く結合している夾雑物を除去するために使用される。洗浄緩衝液に使用するのに適した緩衝剤の例として、これらに限定されるものではないが、Tris、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、MOPS、HEPES、イミダゾール及びその塩又は誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液は、緩衝剤としてTrisを含む。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液は、約30mM~50mMの範囲、例えば、約30mM~40mM、約35mM~45mM、約40mM~50mM、約45mM~50mM、約30mM~45mM又は約35mM~50mM等の範囲のモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液は、約30mM、35mM、40mM、45mM又は50mMのモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液は、約40mMのモル濃度のTrisを含む。
【0066】
幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液に適したpHは、約7.0~8.0の範囲、例えば、約7.0~7.5、約7.1~7.6、約7.2~7.7、約7.3~7.8、約7.4~7.9又は約7.5~7.8の範囲等にある。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液のpHは、約7.4~7.8又は約7.5~7.7の範囲にある。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液のpHは、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9又は8.0である。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液のpHは約7.5である。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液のpHは約7.6である。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液のpHは約7.7である。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液のpHは約7.8である。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液は40mMのTrisを含み、pHは7.6である。
【0067】
当業者は、洗浄緩衝液及び平衡化緩衝液が異なる緩衝液組成を有していても、又は同一の緩衝液組成を有していてもよいことを理解するであろう。したがって、幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液及び平衡化緩衝液は同一の緩衝液組成を有する。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液及び平衡化緩衝液は異なる緩衝液組成を有する。
【0068】
負荷
GCSF試料を好適なAEX材料を含むクロマトグラフィー用容器に負荷する場合、GCSF及び1種又は複数種の不純物を含む試料をクロマトグラフィー用容器に負荷するために、負荷緩衝液が使用される。結合/溶出モードにおいて、負荷緩衝液の電気伝導率及び/又はpHは、GCSFがAEXクロマトグラフィー材料に可逆的に結合する一方で、大部分の又は理想的には全ての不純物が結合せずに容器を素通りするように調整することができる。
【0069】
負荷緩衝液に使用するのに適した緩衝剤の非限定的な例として、Tris、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、MOPS、HEPES、イミダゾール及びその塩又は誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液は、緩衝剤としてTrisを含む。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液は、約30mM~50mMの範囲、例えば、約30mM~40mM、約35mM~45mM、約40mM~50mM、約45mM~50mM、約30mM~45mM又は約35mM~50mM等の範囲のモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液は、約30mM、35mM、40mM、45mM又は50mMのモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液は、約40mMのモル濃度のTrisを含む。
【0070】
負荷緩衝液に好適なpHは、約7.4~8.0の範囲、例えば、約7.4~7.6、約7.5~7.7、約7.6~7.8、約7.7~7.9又は約7.8~8.0等の範囲にある。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは、約7.4~7.8又は約7.5~7.7の範囲にある。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは、約7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9又は8.0である。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは約7.5である。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは約7.6である。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液のpHは約7.7である。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは約7.8である。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液は40mMのTrisを含み、pHは7.6である。
【0071】
幾つかの実施形態において、負荷緩衝液及び平衡化緩衝液は同一の緩衝液組成を有する。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液及び平衡化緩衝液は異なる緩衝液組成を有する。負荷緩衝液及び平衡化緩衝液が異なる緩衝液組成を有する例においては、クロマトグラフィー用容器に負荷する前に、GCSF含有試料の緩衝液を、平衡化緩衝液と類似の組成を有する緩衝液に交換することができる。
【0072】
負荷緩衝液のpHに加えて、電気伝導率も、GCSFがAEXクロマトグラフィー材料に可逆的に結合する一方で、大部分の又は理想的には全ての不純物が結合せずに容器を素通りするように調整することができる。電気伝導率とは、水溶液が2つの電極間に電流を流す能力を指す。溶液中では、イオンが輸送されることにより電流が流れる。したがって、水溶液中のイオンの量が増加するに従い、溶液の電気伝導率が高くなることになる。電気伝導率の測定値の基本単位はジーメンス(又はモー)、mho(mS/cm)であり、Orion電気伝導率計の各種モデル等の電気伝導率計を用いて測定することができる。電気伝導率は溶液中でイオンが電流を運ぶ能力であり、溶液の電気伝導率はその中のイオンの濃度を変化させることにより変化させることができる。例えば、所望の電気伝導率を達成するために、溶液中の緩衝剤の濃度及び/又は塩の濃度(例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム又は塩化カリウム)を変化させることができる。幾つかの実施形態において、所望の電気伝導率を達成するために、負荷緩衝液の塩濃度が修正される。
【0073】
幾つかの実施形態において、GCSF試料のクロマトグラフィー用容器への負荷は、3.0mS/cm未満、例えば、2.5mS/cm未満、2.0mS/cm未満、1.5.0mS/cm未満又は1.0mS/cm未満の電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、GCSF試料のクロマトグラフィー用容器への負荷は、約1.0~2.0mS/cm、約1.5~2.5mS/cm、約2.0~3.0mS/cm、約1.0~3.0mS/cm、約1.5~3.0mS/cm又は約1.0~2.5mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、GCSF試料のクロマトグラフィー用容器への負荷は、約0.5mS/cm、1.0mS/cm、1.5mS/cm、2.0mS/cm、2.5mS/cm又は3.0mS/cmの電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、GCSF試料のクロマトグラフィー用容器への負荷は、約2.5mS/cmの電気伝導率で実施される。
【0074】
本明細書に開示する精製方法は、ある範囲のタンパク質負荷濃度を有するGCSF含有試料と一緒に用いることができ、タンパク質負荷濃度とは、ある体積のクロマトグラフィー材料(例えば、AEX樹脂)と接触するタンパク質の量を指す。一般に、負荷濃度は、g/L単位で表される。幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は、クロマトグラフィー用容器に、GCSFの負荷濃度が、約1g/L AEX材料~10g/L AEX材料、約5g/L AEX材料~15g/L AEX材料、約10g/L AEX材料~20g/L AEX材料、約15g/L AEX材料~25g/L AEX材料又は約20g/L AEX材料~30g/L AEX材料の範囲になるように負荷される。幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は、クロマトグラフィー用容器に、GCSFの負荷濃度が、約5g/L AEX材料未満、10g/L AEX材料未満、15g/L AEX材料未満、20g/L AEX材料未満、25g/L AEX材料未満、30g/L AEX材料未満、35g/L AEX材料未満、40g/L AEX材料未満、45g/L AEX材料未満又は50g/L AEX材料未満のいずれかとなるように負荷される。幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は、クロマトグラフィー用容器に、GCSFの負荷濃度が、約1g/L AEX材料未満、約2g/L AEX材料未満、約3g/L AEX材料未満、約4g/L AEX材料未満、約5g/L AEX材料未満、約6g/L AEX材料未満、約7g/L AEX材料未満、約8g/L AEX材料未満、約9g/L AEX材料未満、約10g/L AEX材料未満、約11g/L AEX材料未満、約12g/L AEX材料未満、約13g/L AEX材料未満、約14g/L AEX材料未満、約15g/L AEX材料未満のいずれかとなるように負荷される。幾つかの実施形態において、最大負荷濃度は、AEX樹脂1リットル当たりGCSF15グラムである。
【0075】
溶出
AEXクロマトグラフィー材料への試料の負荷が完了したら、次いでAEXクロマトグラフィー材料からGCSF製品を溶出(例えば、除去)させることができる。この目的のために、GCSF製品を固定相、例えば、AEXクロマトグラフィー材料から溶出するための溶出緩衝液を使用することができる。多くの場合、溶出緩衝液は、負荷緩衝液及び/又は洗浄緩衝液とは異なる物理的特性を有する。溶出緩衝液の電気伝導率及び/又はpHを、AEXクロマトグラフィー材料からGCSF製品が溶出するように調整することができる。幾つかの実施形態において、溶出ステップは、移動相の組成が溶出プロセス全体を通して変化しないアイソクラティック溶出条件下で実施される。幾つかの実施形態において、溶出ステップは、溶出プロセスを行う間、移動相の電気伝導率又はpHが上昇/低下するグラジエント溶出(例えば、線形グラジエント溶出)条件下で実施される。幾つかの実施形態において、溶出ステップは、グラジエント溶出を行う間、2つ以上の条件が変更される疑似グラジエント(pseudo-gradient)溶出条件下で実施される。疑似グラジエント方法の例として、これらに限定されるものではないが、溶出プロセスを行う間、移動相の電気伝導率を上昇させながら、それと並行して移動相のpHを低下させるものが挙げられ、それにより、アイソクラティック溶出又は移動相の条件を1つだけ変化させるグラジエントを実施する場合と比較して、より高い純度水準が達成される。疑似グラジエント溶出の他の例は、イオン交換溶出中にpH及び塩濃度を並行して変化させることにより複合的効果を得るものがある。
【0076】
原則として、溶出緩衝液は、負荷緩衝液及び/又は洗浄緩衝液と比較して、より高い又はより低い電気伝導率及びより高い又はより低いpHの任意の組合せを有し得る。例えば、溶出緩衝液は、負荷緩衝液とは異なる電気伝導率又は負荷緩衝液とは異なるpHを有し得る。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、負荷緩衝液よりも低い電気伝導率を有する。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、負荷緩衝液よりも高い電気伝導率を有する。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液の電気伝導率は、負荷緩衝液及び/又は洗浄緩衝液の電気伝導率から、ステップグラジエント又は線形グラジエントにより変化する。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は負荷緩衝液よりも低いpHを有する。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は負荷緩衝液よりも高いpHを有する。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、負荷緩衝液とは異なる電気伝導率及び異なるpHを有する。
【0077】
これに加えて、クロマトグラフィー材料からのGCSF製品の結合/溶出モードでの溶出を、夾雑物を最小限にし、且つプール体積を最小限にして製品を得るために最適化することができる。例えば、GCSF含有試料を、負荷緩衝液中で、AEX材料、例えば、クロマトグラフィーカラムに負荷することができる。負荷が完了したら、GCSF製品を、溶出緩衝液の電気伝導率は一定のまま、幾つかの異なるpHを有する緩衝液を用いて溶出することができる。別法として、GCSF製品を、溶出緩衝液のpHは一定のまま、幾つかの異なる電気伝導率を有する溶出緩衝液を用いてクロマトグラフィー材料から溶出することができる。クロマトグラフィー材料からのGCSF製品の溶出後に得られるプール画分に含まれる夾雑物の量は、所与のpH又は電気伝導率ごとの、夾雑物からの製品の分離に関する情報となる。
【0078】
溶出緩衝液をGCSFを固定相、即ち、AEXクロマトグラフィー材料から溶出するために使用する。溶出緩衝液の電気伝導率及び/又はpHを、AEX材料に結合しているGCSFを確実に適切に溶出するために監視及び/又は調整することができる。本開示の溶出緩衝液に好適な緩衝液系の非限定的な例としては、リン酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、Tris、HEPES、MOPS、HEPPS、EPFS、CAPS、CAPSO、CHES、TES、BES、TAPS、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリシン、ビシン、アセトアミドグリシン、グリシンアミド又はpKaが7を超える生体適合性を有する他の緩衝物質をベースとするものが挙げられる。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、約20mM~60mMの範囲、例えば、約20mM~40mM、約25mM~45mM、約30mM~50mM、約35mM~55mM、約40mM~60mM、約20mM~50mM、約30mM~60mM又は約40mM~60mM等の範囲のモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM又は60mMのモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約30mM~60mMのモル濃度のTrisを含む。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は40mMのTrisを含む。
【0079】
幾つかの実施形態においては、AEX材料に結合しているGCSF分子を、溶出緩衝液の塩濃度を増加することにより溶出することができる。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、塩化ナトリウム(NaCl)を、AEX材料に結合しているGCSFが確実に適切に溶出するように調整することができるモル濃度で含む。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、NaClを、約30mM~80mMの範囲、例えば、約30mM~60mM、約35mM~65mM、約40mM~70mM、約45mM~75mM、約50mM~80mM、約30mM~50mM、約40mM~60mM又は約50mM~80mM等の範囲のモル濃度で含む。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、NaClを、約40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM又は80mMのモル濃度で含む。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、NaClを、約60mM~70mM NaClのモル濃度で含む。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、50mMのNaClを含む。
【0080】
溶出緩衝液に好適なpHは、約7.4~8.0の範囲、例えば、約7.4~7.6、約7.5~7.7、約7.6~7.8、約7.7~7.9又は約7.8~8.0等の範囲にある。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液のpHは、約7.4~7.8又は約7.5~7.7の範囲にある。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液のpHは、約7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9又は8.0である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液のpHは約7.5である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液のpHは約7.6である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液のpHは約7.7である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液のpHは約7.8である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液のpHは7.6である。
【0081】
幾つかの実施形態において、AEX材料からのGCSFの溶出は、約7.4~8.2mS/cmの範囲、例えば、約7.4~8.0mS/cm、約7.5~8.1mS/cm又は約7.6~8.2mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、AEX材料からのGCSFの溶出は、約7.4mS/cm、7.5mS/cm、7.6mS/cm、7.7mS/cm、7.8mS/cm、7.9mS/cm、8.0mS/cm、8.1mS/cm又は8.2mS/cmの電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、AEX材料からのGCSFの溶出は、約7.8mS/cmの電気伝導率で実施される。
【0082】
本開示の方法の幾つかの実施形態において、溶出された製品のクロマトグラフィー画分(例えば、溶出液(eluate))を回収することができる。幾つかの実施形態において、回収されるクロマトグラフィー画分は、約0.01CV(カラム体積)超、0.02CV超、0.03CV超、0.04CV超、0.05CV超、0.06CV超、0.07CV超、0.08CV超、0.09CV超、0.1CV超、0.2CV超、0.3CV超、0.4CV超、0.5CV超、0.6CV超、0.7CV超、0.8CV超、0.9CV超、1.0CV超、2.0CV超、3.0CV、超4.0CV超、5.0CV超、6.0CV超、7.0CV超、8.0CV超、9.0CV超又は10.0CV超である。幾つかの実施形態において、回収されるクロマトグラフィー画分の体積は0.5CVである。幾つかの実施形態において、製品、例えば、GCSFを含むクロマトグラフィー画分はプールされる。幾つかの実施形態において、負荷画分から及び溶出画分から得られるGCSFを含む画分がプールされる。クロマトグラフィー画分中のGCSFの量は、当業者が測定することができ、例えば、クロマトグラフィー画分中のGCSFの量は、UV分光分析により280nmの吸光度を用いて、又はCoomassie dyeにより決定することができる。幾つかの実施形態においては、検出可能な量のGCSFを含む画分がプールされる。幾つかの実施形態においては、AEX材料を、例えば溶出後に、高い塩濃度(例えば、5CVの2M NaCl)でストリッピングすることができる。幾つかの実施形態において、この方法は、AEX材料を、例えば、5CVの0.5N水酸化ナトリウムで、又は2M NaCl、0.5N NaOHで殺菌するステップを更に含む。
【0083】
幾つかの実施形態において、DEAEクロマトグラフィーは、全ての段階のための直線流速で操作される。幾つかの実施形態において、直線流速は、約50CV/hr未満、40CV/hr未満又は30CV/hr未満のいずれかである。この流速は、約5CV/hr~約50CV/hrの間、約10CV/hr~約40CV/hrの間又は約18CV/hr~約36CV/hrの間のいずれかとすることができる。幾つかの実施形態において、流速は、約9CV/hr、18CV/hr、25CV/hr、30CV/hr、36CV/hr又は40CV/hrのいずれかである。幾つかの実施形態において、流速は、約200cm/hr未満、175cm/hr未満、150cm/hr未満、125cm/hr未満、100cm/hr未満、75cm/hr未満、50cm/hr未満又は25cm/hr未満のいずれかである。流速は、約25cm/hr~200cm/hrの間、50cm/hr~150cm/hrの間、100cm/hr~175cm/hrの間、50cm/hr~100cm/hrの間、125cm/hr~175cm/hrの間、100cm/hr~200cm/hrの間又は250cm/hr~200cm/hrの間のいずれかとすることができる。幾つかの実施形態において、直線流速は約150cm/hrである。幾つかの実施形態において、ストリッピング及びサニテーション段階の少なくとも1つは、25cm/hr、50cm/hr又は75cm/hrで実施される。幾つかの実施形態において、ストリッピング及びサニテーション段階の少なくとも1つは50cm/hrで実施される。幾つかの実施形態において、ストリッピング及びサニテーション段階は異なる流速で実施される。幾つかの実施形態において、ストリッピング及びサニテーション段階は同一の低速で実施される。
【0084】
GCSF供給源
上に述べたように、本明細書に記載する方法を用いて精製されるGCSFタンパク質、例えば、ヒトGCSFは、一般に、組換え技法を用いて、真核生物(例えば、酵母及び哺乳動物細胞株)内で又は細菌等の原核生物(例えば、大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli)))内で産生される。組換え技法を用いる場合、GCSFタンパク質は、細胞内で産生させるか、ペリプラズム間隙内で産生させるか又は培地に直接分泌させることができる。産生される組換えGCSFの形態は、発現に使用する宿主生物の種類に依存する。組換えGCSFを真核細胞内で発現させる場合は、一般に、可溶性形態で産生及び分泌される。他方、組換えGCSFを原核細胞、例えば、大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli))内で発現させると、封入体(IB)と呼ばれる不活性且つ不溶性の凝集体が形成されることが多く、これは一般に、二次構造を有し、且つ密に凝集している。一般に、既存の精製プロセスでは、こうした不溶性凝集体は、変性剤を含む緩衝液中で可溶化した後、変性された形態を再生ステップによって適切な三次元構造を有する生物活性形態に変換する。したがって、幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は、GCSFを発現する組換え細胞から得られたIBを含み、発現したGCSFは組換え細胞内でIBを形成する。幾つかの実施形態において、組換え細胞は原核細胞である。幾つかの実施形態において、原核細胞は大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli))細胞である。幾つかの実施形態において、組換え細胞は真核細胞である。幾つかの実施形態において、組換え真核細胞は、真菌細胞(例えば、糸状真菌又は酵母)、SF9細胞等の昆虫細胞又は動物細胞である。幾つかの実施形態において、動物細胞は、CHO細胞、BHK細胞、HEK細胞、例えば、HEK293細胞等の組換え哺乳動物細胞である。幾つかの実施形態において、組換え真菌細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞である。
【0085】
組換えにより産生されたGCSFタンパク質は、培養培地から又は宿主細胞溶解物から回収することができる。ポリペプチドの発現に用いた細胞は、凍結融解の繰り返し、超音波処理、機械的破壊又は細胞溶解剤等の様々な物理的又は化学的手段により破壊することができる。ポリペプチドを細胞内で産生した場合、第1ステップとして、宿主細胞又は溶解した断片のいずれかである粒子状の残屑を、遠心分離又は限外濾過によって除去する。残屑細胞は遠心分離によって除去することができる。GCSFが培地に分泌される場合は、一般に、そのような発現系の上清を、まず市販のポリペプチド濃縮フィルタ、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮する。タンパク質分解を阻害するために、上述のステップのいずれかにおいてPMSF等のプロテアーゼ阻害剤を含有させることができ、及び外来性夾雑物の増殖を防止するために抗生物質を含有させることができる。
【0086】
したがって、幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は、ヒトGCSF(hGCSF)ポリペプチドを含むことができる。幾つかの実施形態において、GCSFポリペプチドは、配列番号1に示すヒト顆粒球コロニー刺激因子(hGCSF)の配列を有するポリペプチド又はGCSF活性を示すhGCSFの変異体とすることができる。
【0087】
MTPLGPASSLPQSFLLKCLEQVRKIQGDGAALQEKLCATYKLCHPEELVLLGHSLGIPWAPLSSCPSQALQLAGCLSQLHSGLFLYQGLLQALEGISPELGPTLDTLQLDVADFATTIWQQMEELGMAPALQPTQGAMPAFASAFQRRAGGVLVASHLQSFLEVSYRVLRHLAQP(配列番号1)。
【0088】
GCSF活性は、GCSFポリペプチドがGCSF受容体にin vivo又はex vivoで結合する能力によって評価することができる。GCSF活性は、その細胞増殖活性とすることもでき、これは、例えば、マウス細胞株NFS-60(ATCC CRL-1838)を用いたin vitro活性試験により測定することができる。NFS-60細胞株を使用するGCSF活性に適したin vitro試験は、Hammerling らによるJ. Pharm.Biomed.Anal.13(1):9-20,1995に記載されている。GCSF活性を示すポリペプチドは、測定可能な作用、例えば、in vitro試験で測定可能な増殖活性を示した場合に、そのような活性を有すると見なされる。GCSFの機能的活性はまた、その(i)内皮細胞の増殖及び遊走、(ii)ノルエピネフリン再取り込みの減少、(iii)破骨細胞活性の上昇並びに(iv)骨芽細胞活性の低下のうちの1種又は複数種の効果を評価することにより決定することもできる。GCSFの機能的活性はまた、その造血前駆細胞の分化及び増殖並びに/又は造血系の成熟細胞の活性化を促進する能力により決定することもできる。
【0089】
幾つかの実施形態において、「GCSF変異体」という用語は、一般に、hGCSFポリペプチドとは異なるが、その本質的な性質を保持しているポリヌクレオチドを指す。一般に、GCSF変異体は、hGCSFポリペプチドと、全体として密接に類似しており、且つ多くの領域において同一である。したがって、GCSF変異体という用語は、ヒトGCSFのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%が同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。幾つかの実施形態において、変異体とは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%が同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。
【0090】
「機能性変異体」という用語は、hGCSFと比較して完全に機能するか;又はhGCSFの生物活性の少なくとも一部、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%を保持しているポリペプチド変異体を指す。幾つかの実施形態において、機能性変異体とは、配列番号1のポリペプチドと比較して完全に機能するポリペプチド変異体を指す。したがって、機能性変異体は、機能性断片、誘導体(例えば、hGCSFと構造的及び機能的に類似しているもの)を包含する。幾つかの実施形態において、機能性変異体は、その融合分子又は融合タンパク質であり得る。ポリペプチド、融合タンパク質、融合分子及びポリペプチド又は機能性ポリペプチド変異体と結合しているタンパク質複合体も、「機能性変異体」という用語に包含されることが理解される。幾つかの実施形態において、本開示のhGCSF機能性変異体は、造血前駆細胞の分化及び増殖並びに/又は造血系の成熟細胞の活性化を促進することができる。
【0091】
本明細書に開示する方法の幾つかの実施形態において、負荷試料は、昆虫細胞又はCHO細胞等の組換え真核細胞により産生され、次いで培養培地に分泌されたGCSFを含む。幾つかの実施形態において、負荷試料は、不溶性IBから得られたGCSFを含む。更なる幾つかの実施形態において、負荷試料は、両方の供給源から得られたGCSF、即ち、分泌されたGCSF及び不溶性IBから得られたGCSFを含む。
【0092】
追加の精製技法
バイオ医薬品の安全性を確保するため、規制当局は、ヒトに投与することが意図された組換えタンパク質に対し厳しい精製基準及び関連する品質特性(例えば、本質、純度及び生物活性)を課している。高品質のGCSF製品を得るために、本方法の幾つかの実施形態は、本明細書に記載するいずれかのAEXクロマトグラフィーの前又は後のいずれかに1又は複数の精製ステップを更に含むことができる。一般に、当該技術分野において知られている任意のタンパク質精製技法を、本明細書に開示する精製方法と組み合わせて使用することができる。本開示の方法に使用するのに適したタンパク質精製技法の例として、これらに限定されるものではないが、AEX及び陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)等のイオン交換クロマトグラフィー、プロテインAクロマトグラフィー及びプロテインGクロマトグラフィー等のアフィニティークロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿並びにGCSFのエピトープタグを有する形態に結合する金属キレートカラムが挙げられる。幾つかの実施形態において、本明細書に開示する方法は、アフィニティークロマトグラフィー、CEXクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー及びMMCクロマトグラフィーから選択される1又は複数の精製ステップを更に含むことができる。塩、酸又はポリマーPEGによる沈殿等の、クロマトグラフィー分離以外の技法も考えられ得る。本開示の方法に使用するのに適したクロマトグラフィー以外の追加のタンパク質精製技法としては、これらに限定されるものではないが、遠心分離、抽出、ダイアフィルトレーション及び限外濾過が挙げられる。
【0093】
幾つかの実施形態において、1種又は複数種のタンパク質精製技法は、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、特に高い流速及び良好な製品回収を可能にする、選択された材料(例えば、CMセファロース(登録商標)FF)を用いて実施される更なるCEXステップを含む。これらの例において、GCSFは酸性環境下で正に帯電するので強力な結合体となり、そして酸性化されたpHで塩化ナトリウムの線形グラジエントを用いることによって、少量の所望の緩衝液中に高濃度で溶出することができる。陽イオン交換クロマトグラフィーを実施するシステム及び方法は当業者によく知られている。一般に、GCSFは、特定のpH範囲内で、その正味電荷が正であることに起因して陽イオン交換マトリックスに結合するが、その一方で、核酸、リポ多糖及びタンパク質等の宿主細胞に由来する夾雑物の大部分並びに異なるpH値を有するGCSFのイオン性異性体及びGCSFの改変形態は結合することができず、そしてフロースルー中に現れるか又は洗浄により除去される。
【0094】
CEX樹脂に使用するのに適した官能基としては、これらに限定されるものではないが、カルボキシメチル(CM)、スルホネート(S)、スルホプロピル(SP)及びスルホエチル(SE)が挙げられる。これらはバイオクロマトグラフィープロセスに慣用されている陽イオン交換官能基である。好適な市販の製品としては、これらに限定されるものではないが、カルボキシメチル(CM)セルロース、AG 50 W、Bio-Rex 70、カルボキシメチル(CM)セファデックス、スルホプロピル(SP)セファデックス、カルボキシメチル(CM)セファロースCL-6B、CMセファロースHP、Hyper D-S ceramic(バイオセプラ)及びスルホネート(S)セファロース、SP セファロースFF、SPセファロースHP、SPセファロース15 XL、CMセファロースFF、TSK gel SP 5PW、TSK gel SP-5PW-HR、トヨパールSP-650M、トヨパールSP-650S、トヨパールSP-650C、トヨパールCM-650M、トヨパールCM-650S等、スルホプロピルマトリックス、特に、製品であるSPセファロースXL及びSPセファロースFF(ファストフロー)及びS-セファロースFFが挙げられる。幾つかの実施形態において、陽イオン交換材料は、スルホプロピル陽イオン交換材料である。幾つかの特定の実施形態において、CEXは、CM-セファロースFFを用いて実施される。
【0095】
幾つかの実施形態において、1種又は複数種のタンパク質精製技法は、細胞残屑、不溶性夾雑タンパク質及び核酸沈殿物等の夾雑物を除去するための、限外濾過、精密濾過又はダイアフィルトレーション操作を含む。この濾過操作は、細胞残屑、夾雑タンパク質及び沈殿物を経済的に除去するための好都合な手段を提供するものである。当業者は、フィルタ又は濾過方式(filter scheme)の選択に当たり、上流の事象の変化又は変動の発生においても性能の頑健性を確保することが重要であることを理解するであろう。良好な清澄化性能と工程収率との間のバランスを維持するためには、様々な濾材を有する多種多様なタイプのフィルタを検討することが必要である。好適なフィルタのタイプとしては、セルロースフィルタ、再生セルロース繊維、無機濾過助剤(例えば、珪藻土、パーライト、フュームドシリカ)を組み合わせたセルロース繊維、無機濾過助剤及び有機樹脂を組み合わせたセルロース繊維又はこれらの任意の組合せ並びに効果的な除去を達成するための高分子フィルタを挙げることができる。高分子フィルタの好適な例としては、これらに限定されるものではないが、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホンが挙げられる。幾つかの実施形態において、濾過操作、例えば、ダイアフィルトレーション及び/又は限外濾過ステップは、ポリエーテルスルホン膜を用いて実施される。幾つかの実施形態において、ダイアフィルトレーション及び/又は限外濾過ステップは、サイウス・ハイストリーム(Sius Hystream)(登録商標)膜を用いて実施される。
【0096】
更に、本明細書に開示する幾つかの実施形態において、GCSF調製物中の製品濃度をより高くするために、GCSFタンパク質を、透析、限外濾過又はダイアフィルトレーションに付すことにより、不要な緩衝液成分等の夾雑物を除去することができる。特に、ダイアフィルトレーションは、より小さい分子は膜を通過させて洗い流し、より大きな対象分子を保持液(retentate)中に残留させる分画プロセスである。これは、塩の除去若しくは交換、洗剤の除去、結合分子からの遊離分子の分離、低分子量物質の除去又はイオン性若しくはpH環境を速やかに変化させるための簡便且つ効率的な技法であると広く認識されている。ダイアフィルトレーションプロセスは、一般に、対象の製品をスラリーから取り出しながら、スラリー濃度を一定に維持するために、精密濾過又は限外濾過膜を使用する。
【0097】
幾つかの実施形態において、上に記載した少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの前に実施することができる。幾つかの実施形態において、上に記載した少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの後に実施することができる。
【0098】
本出願の他の態様は、GCSFに結合することができるAEX材料を含むクロマトグラフィー用容器を含む、GCSFを製造するためのシステムであって、クロマトグラフィー用容器は、温度制御された囲いに覆われており、クロマトグラフィー用容器の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されている、システムに関する。幾つかの実施形態において、このシステムは、温度制御された囲いの中に配置された流路を更に含み、流路の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されている。
【0099】
本開示の組成物
本開示はまた、本明細書に開示する方法により精製されるGCSF分子に加えて、それを含む医薬組成物も提供する。幾つかの実施形態において、この種の方法により得られる精製されたGCSFは、純度及び/又は機能的活性が向上している、生物活性を有するGCSFとなり得、特に治療用途に適したものとなり得る。
【0100】
幾つかの実施形態において、精製されたGCSFは、生物活性を有するGCSFを80%を超える純度で含む。幾つかの実施形態において、精製されたGCSFは、生物活性を有するGCSFを、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%を超える純度で含む。精製されたGCSFの精製の程度を定量化するための様々な方法が当業者に知られている。そのようなものとして、例えば、活性GCSFの比活性の測定又は最終製品中のGCSFの量のSDS-PAGE分析による評価が挙げられる。本開示の方法により得られるGCSFの純度を評価する例示的な方法は、得られたGCSFの比活性を算出し、そしてそれを初期抽出物の比活性と比較し、そしてそれにより純度の程度を算出するものである。
【0101】
本開示に従い得られたGCSFの生物活性は、当該技術分野において知られている多くの技法により、例えば、当該技術分野において知られているバイオアッセイを用いて測定することができ、そしてそれを標準的な市販のGCSFの活性と比較する。例えば、本明細書に記載する方法により得られるGCSFの生物活性を、細胞増殖(NFS-60細胞)の刺激に基づく試験により、Hammerlingら(1995、上記参照))により記載されている方法及び国際標準品のヒト組換えGCSFを使用して測定することができる。
【0102】
こうすることにより、本明細書に記載するように精製されたGCSFで処理された細胞が、標準品で処理されたものと全く同じように又はそれよりも良好に増殖することを示すことができる。特に、本開示の方法に従い得られる精製されたGCSFは、NFS-60増殖試験において、WHOの参照標準品を基準とする生物活性が80~100%であるという特徴を示すことができる。
【0103】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載するように精製されたGCSFは、純度及び/又は機能的活性が向上しているGCSFである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載するGCSFは、純度が80%を超え、例えば、純度が85%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超又は99%超等である。幾つかの実施形態において、得られたGCSFは、比活性が大幅に増大しており、例えば、比活性は少なくとも1×105IU/mgである。幾つかの実施形態において、得られたGCSFは、比活性が少なくとも1×106IU/mgであり、好ましくは、少なくとも1×107IU/mgであり、より好ましくは、比活性は2~9×107IU/mgの範囲にあり、最も好ましくは、比活性は約1×108IU/mgであり、この比活性は、細胞増殖刺激に基づく方法により測定される。
【0104】
本開示の関連する態様において、本明細書に開示する幾つかの実施形態は、本明細書に開示する治療有効量の生物活性を有するGCSFを含み、且つ治療用及び臨床用として使用するのに適した医薬組成物に関する。
【0105】
本開示による医薬組成物は、ヒト及び獣医学用として使用される組成物及び製剤を含む。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書に開示する生物活性を有するGCSFと医薬的に許容される補助物質との混合物を含む。好適な医薬的に許容可能な補助物質としては、GCSF療法に有用な、好適な希釈剤、アジュバント(adjuvant)及び/又は担体が挙げられる。医薬的に許容される補助物質の非限定的な例として、これらに限定されるものではないが、薬剤投与に適合性を有する生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤並びに吸収遅延剤及び同種のものが挙げられる。補助的な活性物質も組成物に組み込むことができる。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、緩衝剤、塩及び安定剤等の医薬的に許容される添加剤を更に含む。本開示に従い得られるGCSF及び医薬組成物は、(i)そのまま使用するか又は(ii)更に処理する、例えば、後により詳細に説明するように、若しくは例えば、国際公開第2008/124406号パンフレットに記載されているようにPEG化した後、粉末形態若しくは凍結乾燥物若しくは液体形態で保存するかのいずれかとすることができる。幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は液体組成物である。幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は凍結乾燥物又は粉末である。
【0106】
医薬組成物の活性成分としてのGCSFは、典型的な方法で、静脈内、動脈内、腹腔内、胸骨内(intrastemal)、経皮、経鼻、吸入、局所、直腸、経口、眼内又は皮下経路で投与することができる。投与方法は特に限定されないが、非経口投与が好ましく、そして皮下又は静脈内投与がより好ましい。
【0107】
幾つかの実施形態において、注射用途に好適な医薬組成物は、無菌注射用溶液又は分散液を用時調製するための、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液と、無菌粉末とを含む。静脈内投与の場合、好適な補助物質としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。場合によっては、組成物は無菌とすべきであり、且つ容易に通針する範囲の流体とすべきである。これは、製造及び保管条件下で安定であるべきであり、且つ細菌及び真菌等の微生物による汚染作用に対し防腐を行わなければならない。補助物質は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコール及び同種のもの)及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングを使用することにより、分散液の場合は要求される粒子径を維持することにより、及び界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムを使用することにより、維持することができる。微生物による作用は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール及び同種のものによって防止することができる。多くの場合、組成物中に等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウムを含有させることが好ましいであろう。組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有させることにより、注射可能な組成物を長時間かけて吸収させることが可能である。
【0108】
本明細書に開示するGCSFを含む医薬組成物に好適な補助剤の追加の例としては、これらに限定されるものではないが、糖及び糖アルコール、アミノ酸並びに界面活性剤、例えば、ポリソルベート-20、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80等に加えて、好適な緩衝物質が挙げられる。本開示の方法による幾つかの実施形態において、精製されたGCSFは、pH4.0の10mMの酢酸、0.0025%のポリソルベート80及び50g/Lのソルビトール中で製剤化される。
【0109】
無菌注射用溶液は、活性化合物を所要量の適切な溶媒に、必要に応じて、上に列挙した1種の成分又は成分の組合せと一緒に混合した後、濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒及び上に列挙したものからの他の必要な成分を含む無菌媒体(vehicle)に、活性化合物を添加することにより調製される。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製に慣用されている方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、この方法を用いることにより、活性化合物に任意の追加の所望の成分を加えた溶液を予め濾過滅菌することにより得られた溶液から、粉末が生成する。
【0110】
経口用組成物を使用する場合は、一般に、不活性希釈剤または可食性担体を含む。経口による治療的投与を目的とする場合、活性化合物(例えば、本明細書に開示するGCSF及び/又はそれを含む医薬組成物)を賦形剤と混合し、そして錠剤、トローチ剤又はカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口用組成物はまた、洗口液として使用するための流体担体を用いて調製することもできる。薬学的な適合性を有する結合剤及び/又は補助物質を、組成物の一部として含有させることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤及び同種のものは、以下に示す成分又は類似の性質を有する化合物のいずれかを含むことができる:結合剤、例えば、微結晶セルロース、トラガカントガム若しくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン若しくはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)(商標)若しくはコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はステロテス(Sterotes)(商標);流動化剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロース若しくはサッカリン;又は矯味剤、例えば、ハッカ、サリチル酸メチル若しくはオレンジ風味剤。
【0111】
吸入により投与を行う場合、本開示の本明細書に開示する対象のGCSF及び/又は医薬組成物を、二酸化炭素等の好適な噴射剤を含む加圧容器若しくはディスペンサーからエアゾールスプレー形態で、又は噴霧器で送達する。この種の方法は米国特許第6,468,798号明細書に記載されている。
【0112】
本明細書に開示する対象のGCSF及び/又は医薬組成物の全身投与は、経粘膜又は経皮手段により行うこともできる。経粘膜又は経皮投与の場合、浸透させるべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。この種の浸透剤は当該技術分野において一般に知られており、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、点鼻スプレー又は坐剤を用いて実施することができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当該技術分野において一般に知られている軟膏剤(ointment)、ザルベ軟膏剤(salve)、ゲル剤又はクリーム剤に配合される。
【0113】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示する対象のGCSF及び/又は医薬組成物は、直腸送達用の坐剤(例えば、カカオ脂及び他のグリセリド等の従来の坐剤基剤を含む)又は停留浣腸の形態で調製することもできる。幾つかの実施形態において、本開示のGCSF及び/又は医薬組成物は、当該技術分野において知られている方法を用いてトランスフェクション又は感染により投与することもできる。
【0114】
一実施形態において、本開示の医薬組成物は、組換えGCSFが体内から急速に排出されることを防ぐであろう担体と一緒に、例えば、植え込み注射剤及びマイクロカプセル化送達系を含む徐放製剤等として調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。この種の製剤は標準的な技法を用いて調製することができる。材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する、感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、医薬的に許容される担体として使用することができる。これらは当業者に知られている方法、例えば、米国特許第4,522,811号明細書に記載されている方法に従い調製することができる。
【0115】
幾つかの実施形態において、本開示の組換えGCSFは、そのin vivo及び/又はex vivoにおける半減期を延ばすために更に修飾することができる。本開示の組換えGCSFの修飾に適した公知の戦略及び方法論の非限定的な例として、(1)ポリペプチドがプロテアーゼと接触することを防ぐ、ポリエチレングリコール(「PEG」)等の溶解性の高い高分子による本明細書に記載するポリペプチドの化学的修飾;及び(2)本明細書に記載するポリペプチドを、例えば、アルブミン等の安定なタンパク質に共有結合させるか又は共役させることが挙げられる。したがって、幾つかの実施形態において、本開示の組換えGCSFは、アルブミン等の安定なタンパク質に融合させることができる。例えば、ヒトアルブミンは、そこに融合したポリペプチドの安定性を高めるのに最も有効なタンパク質の1種として知られており、且つ多くのこの種の融合タンパク質が報告されている。
【0116】
幾つかの実施形態において、本開示の組換えGCSFは、1又は複数のポリエチレングリコール部分で化学的に修飾されている、例えば、PEG化されているか;又は類似の修飾が施されている、例えば、PAS化されている。幾つかの実施形態において、PEG分子又はPAS分子は、インターフェロンの1又は複数のアミノ酸側鎖と共役している。幾つかの実施形態において、PEG化又はPAS化されたGCSFポリペプチドは、1個のアミノ酸のみがPEG又はPAS部分を含む。他の実施形態において、PEG化又はPAS化されたGCSFポリペプチドは、PEG又はPAS部分を、2個以上のアミノ酸上に含み、例えば、2個以上、5個以上、10個以上、15個以上又は20個以上の異なるアミノ酸残基に結合している。幾つかの実施形態において、PEG又はPAS鎖は、2000、2000超、5000、5,000超、10,000、10,000超、10,000超、20,000、20,000超及び30,000Daである。PAS化されたGCSFポリペプチドは、PEG又はPASに(例えば、連結基なしで)、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を介して直接結合させることができる。幾つかの実施形態において、本開示の組換えGCSFは、平均分子量が20,000ダルトンであるポリエチレングリコールに共有結合している。
【0117】
幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、1種又は複数種のPEG化試薬を含む。本明細書において使用する「PEG化」という用語は、ポリエチレングリコール(PEG)をタンパク質に共有結合させることによりタンパク質を修飾することを指し、「PEG化された」は、タンパク質にPEGが結合されたことを指す。約10,000ダルトン~約40,000ダルトンの任意選択的な範囲のサイズを有する様々なPEG又はPEG誘導体を、様々な化学反応を利用して、本開示の組換えポリペプチドに結合させることができる。本開示の方法及び組成物に好適なPEG化試薬の例として、これらに限定されるものではないが、メトキシポリエチレングリコール-プロピオン酸スクシンイミジル(mPEG-SPA)、mPEG-酪酸スクシンイミジル(mPEG-SBA)、mPEG-コハク酸スクシンイミジル(mPEG-SS)、mPEG-炭酸スクシンイミジル(mPEG-SC)、mPEG-グルタル酸スクシンイミジル(mPEG-SG)、mPEG-N-ヒドロキシル-コハク酸イミド(mPEG-NHS)、mPEG-トレシレート(tresylate)及びmPEG-アルデヒドが挙げられる。幾つかの実施形態において、PEG化試薬はポリエチレングリコールである。幾つかの実施形態において、PEG化試薬は、タンパク質のN-末端メチオニン残基に共有結合している、平均分子量が20,000ダルトンであるポリエチレングリコールである。
【0118】
治療方法
本開示の方法に従い得られる、精製されたGCSF、及び、特にこの種の方法により得られる生物活性を有するGCSFは、治療用途に特に適している。したがって、本開示の幾つかの実施形態において、疾患又は健康状態の治療又は予防を必要とする対象の疾患又は健康状態を治療又は予防するための方法であって、対象に治療有効量の本明細書に開示するGCSF及び/又は本明細書に開示する医薬組成物を投与することを含む、方法も提供する。
【0119】
本明細書において使用する「投与(administration)」及び「投与すること(administering)」という用語は、生物活性を有する組成物又は製剤を、これらに限定されるものではないが、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内及び局所又はこれらの組合せを含む投与経路により送達することを指す。この用語は、これらに限定されるものではないが、医療の専門家による投与及び自己投与を含む。本明細書において使用する「治療有効量」という用語は、本明細書に開示する方法により得られる生物活性を有するGCSFの量であって、生物活性を有するGCSFが治療効果を示す量を指す。
【0120】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示するGCSF及び/又は医薬組成物は、それに意図された投与経路に適合するように製剤化される。本開示のGCSF及び/又は医薬組成物は、経口又は吸入により与えることができるが、非経口経路を介して投与される傾向が高い。非経口投与経路の例として、例えば、静脈内、皮内、皮下、経皮(局所)、経粘膜及び直腸投与が挙げられる。非経口用途に使用するための溶液又は懸濁液は、次に示す成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の無菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗細菌剤;アスコルビン酸又は硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤;EDTA等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の張度を調整するための薬剤。pHは、一-及び/若しくは二塩基性のリン酸ナトリウム、塩酸又は水酸化ナトリウム等の酸又は塩基で(例えば、pH約7.2~7.8、例えば、7.5に)調整することができる。経口用製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0121】
本開示のこの種の対象のGCSF及び/又は医薬組成物の用量、毒性及び治療効果は、例えば、LD50(集団の50%を死亡させる用量)及びED50(集団の50%に治療効果が表れる用量)を決定するための標準的な薬学的手順を用いて、細胞培養又は実験動物により決定することができる。毒性作用を示す用量及び治療効果を示す用量の比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。一般に、高い治療指数を示す化合物が使用され得る。有毒な副作用を示す化合物を使用することもできるが、非感染細胞が損傷を受ける可能性を最小限に抑え、それにより副作用を低減するために、この種の化合物を患部組織の部位に標的化する送達系の設計に注意を払うべきである。
【0122】
細胞培養試験及び動物実験から得られたデータを、哺乳動物、例えば、ヒトに使用するための様々な投与量を製剤化するために使用することができる。この種の化合物の投与量は、血中濃度が、一般に、ED50を含み、毒性を殆ど又は全く示さない範囲にある。投与量は、採用される剤形及び用いられる投与経路に応じて、この範囲内で変化させることができる。本開示の治療方法に使用される任意の医薬組成物に関する治療有効用量(therapeutically effective dose)は、まず細胞培養試験から推定することができる。動物モデルには、循環血漿中濃度が、細胞培養で測定されたIC50(例えば、試験化合物が症状の最大値の半数を阻害する濃度)を含む範囲になるように、用量を処方することができる。この情報を、ヒトに有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーで測定することができる。
【0123】
幾つかの実施形態において、本開示の方法は、好中球減少症及び好中球減少が関連する臨床的後遺症、慢性好中球減少症、好中球減少性及び非好中球減少性感染症、細胞障害性化学療法後の発熱性好中球減少症による入院の低減及び骨髄破壊的療法後に骨髄移植を受けた、重篤な好中球減少症が長期に亘るリスクが高いと考えられる患者の好中球減少症の期間の短縮からなる群から選択される1種又は複数種の適応症に関連する疾患又は健康状態の治療及び/又は予防に適している。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、末梢血幹細胞(PBPC)の動員及び慢性炎症状態に関連する疾患又は健康状態の治療及び/又は予防に適している。
【0124】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示するGCSF及び/又はそれを含む医薬組成物の長期投与は、好中球数を増加させると共に、感染関連事象の発生率及び期間を低減し、HIV感染進行期の患者の細菌感染のリスクを低下させるための持続性好中球減少症の治療に適応する。幾つかの実施形態において、本明細書に開示するGCSF及び/又はそれを含む医薬組成物は、集中治療室患者及び危篤状態の患者に対する臨床的成果の改善、創傷/皮膚潰瘍/火傷の治癒及び治療、化学療法及び/又は放射線療法の強化、抗炎症性サイトカインの増加、光線力学的療法の抗腫瘍効果の増強に適応する。幾つかの実施形態において、本明細書に開示するGCSF及び/又はそれを含む医薬組成物は、様々な脳機能障害により引き起こされる病気の予防及び治療、血栓ができる病気及びその合併症の治療並びに放射線照射後の赤血球形成の回復に適応する。これはまた、GCSFの適応症として報告されている他のあらゆる病気の治療にも使用することができる。
【0125】
したがって、本明細書に開示する方法により得られる生物活性を有するGCSFを含む医薬組成物は、患者、小児又は成人に、上に述べた疾患又は健康状態の1種又は複数種の治療又は予防に有効な治療量で投与することができる。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、好中球減少症の治療及び/又は予防に適している。
【0126】
上に述べたように、本明細書に開示する組成物のいずれか1種、例えば、精製されたGCSF及び医薬組成物を、単独療法(例えば、単剤療法)としてそれを必要とする患者に投与することができる。これに加えて又はこれに替えて、本開示の幾つかの実施形態において、本明細書に開示する精製されたGCSF及び医薬組成物の1種又は複数種を、第1療法として、第2療法と組み合わせて患者に投与することができる。幾つかの実施形態において、第2療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法及び手術からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1療法及び第2療法は併用して(concomitantly)施される。幾つかの実施形態において、第1療法は第2療法と同時に施される。幾つかの実施形態において、第1療法及び第2療法は順次施される。幾つかの実施形態において、第1療法は第2療法の前に施される。幾つかの実施形態において、第1療法は第2療法の後に施される。幾つかの実施形態において、第1療法は第2療法の前及び/又は後に施される。幾つかの実施形態において、第1療法及び第2療法は交互に施される。幾つかの実施形態において、第1療法及び第2療法は単一の製剤で一緒に投与される。
【0127】
システム
本明細書においては、GCSFを製造するための様々なシステムも提供する。特に、本開示の幾つかの実施形態は、GCSFに結合することができる陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)材料を含む1又は複数のクロマトグラフィー用容器を含むシステムであって、クロマトグラフィー用容器は温度制御された囲いに覆われており、且つクロマトグラフィー用容器の囲いの少なくとも一部の温度は約7℃~約13℃に設定されている、システムに関する。幾つかの実施形態において、本明細書に開示するシステムは、バイオリアクターを含む上流構成要素と、本明細書に記載する1又は複数のAEXクロマトグラフィー用容器を含む精製モジュールを含む下流構成要素とを含む。幾つかの実施形態において、バイオリアクターは、少なくとも1種の細胞培養培地及びGCSFを発現するように構成された少なくとも1種の組換え細胞を含む懸濁液を収容した増殖槽(growth chamber)を含む。
【0128】
本開示のシステムを例示する非限定的な実施形態は、以下に示す1又は複数の特徴を含む。幾つかの実施形態において、このシステムは、温度制御された囲いの中に配置された流路を更に含み、この流路の囲いの少なくとも一部の温度は7℃~約13℃に設定されている。幾つかの実施形態において、容器の囲い及び流路の囲いの設定温度は等しい。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路ジャケットの囲いの設定温度は異なる。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器の囲い及び流路の囲いの少なくとも1つの温度は約10℃に設定されている。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー用容器は、カラム、槽、充填床、流動床、カートリッジ、内封された膜、貯留器、チャンバ、コンテナ及び混合槽からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、流路は、チューブ、パイプ、バッグ、コンテナ、貯蔵タンク、混合槽又は他の流体案内手段である。
【0129】
幾つかの実施形態において、AEX材料は、GCSF試料を負荷する前に、約30mM~約50mMのTrisを含み、且つpHが約7.0~約8.0である平衡化緩衝液で平衡化される。幾つかの実施形態において、平衡化緩衝液は、約40mMのTrisを含み、且つpHは約7.6である。幾つかの実施形態において、AEX材料は、GCSFを溶出する前に、未結合又は弱く結合している夾雑物を除去するために洗浄緩衝液で洗浄される。幾つかの実施形態において、洗浄緩衝液及び平衡化緩衝液は、同一の緩衝液組成を有する。幾つかの実施形態において、GCSF含有試料は負荷緩衝液を含む。幾つかの実施形態において、負荷緩衝液のpHは約7.4~約8.0である。幾つかの実施形態において、GCSF試料のクロマトグラフィー用容器への負荷は、約1.5~約3.0mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。
【0130】
本開示のシステムの幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、約30mM~60mMのTris、約30mM~80mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.4~約8.0である。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液は、約40mMのTris、約50mMの塩化ナトリウムを含み、且つpHは約7.7である。幾つかの実施形態において、AEX材料からのGCSFの溶出は、約7.4~約8.2mS/cmの範囲の電気伝導率で実施される。幾つかの実施形態において、AEX材料は、ジエチルアミノエチル(DEAE)イオン交換クロマトグラフィーを含む。幾つかの実施形態において、AEX材料は、DEAEセファロース(登録商標)樹脂を含む。幾つかの実施形態において、DEAEセファロース(登録商標)樹脂は、DEAEセファロース(登録商標)ファストフロー樹脂を含む。
【0131】
幾つかの実施形態において、本システムは、AEX材料のストリッピング及び/又はサニテーションの1又は複数の段階を更に含む。幾つかの実施形態において、DEAEクロマトグラフィーは、全ての段階のための直線流速で実施される。幾つかの実施形態において、直線流速は約150cm/hrである。幾つかの実施形態において、ストリッピング及びサニテーション段階の少なくとも1つは50cm/hrで実施される。幾つかの実施形態において、GCSFは、組換えヒトGCSF(hGCSF)又はその変異体である。幾つかの実施形態において、試料は、組換え真核細胞又は組換え原核細胞から得られたGCSFを含む。
【0132】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示するシステムは、少なくとも1つの追加の精製プロセスを更に含む。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、金属アフィニティークロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー(MMC)、遠心分離、ダイアフィルトレーション及び限外濾過からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの前に実施される。幾つかの実施形態において、この少なくとも1つの追加の精製プロセスは、AEXクロマトグラフィープロセスの後に実施される。
【0133】
本開示において言及されている全ての刊行物及び特許出願を参照することにより、個々の刊行物又は特許出願のそれぞれが参照により具体的に且つ個別に援用されることが示されているのと同程度に、本明細書に援用する。
【0134】
本明細書に引用されている参考文献は、これらが先行技術を構成することを認めるものではない。参考文献の解説は、その著者の主張を述べたものであり、本発明者は、引用した文書の正確性及び妥当性に関し異議を唱える権利を有している。本明細書においては、科学雑誌の論文、特許文書及び教科書を含む多くの情報源を参照するが、この参照は、これらの文書が当該技術分野における一般知識の一部を構成することを認めるものではないことが明確に理解されるであろう。
【0135】
本明細書に示す一般的な方法の説明は、例示のみを目的とする。当業者が本開示を再検討することにより、他の代替的な方法及び代替物が明らかとなり、これらは本出願の主旨及び範囲内に包含されるべきである。
【0136】
追加の実施形態を以下の実施例に更に詳細に開示するが、これらは例示を目的として提供するものであって、いかなる形でも本開示又は特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【実施例
【0137】
追加の実施形態を以下の実施例に更に詳細に開示するが、これらは例示を目的として提供するものであって、いかなる形でも本開示又は特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【0138】
実施例1
陰イオン交換クロマトグラフィーパラメータの改良
本実施例においては、(1)AEX操作温度、(2)負荷濃度、(3)分画及び(4)樹脂の寿命を含む幾つかのAEXクロマトグラフィーパラメータがGCSF製品に関連する品質及び収率に与える影響を評価するために実施した実験の結果をまとめる。後により詳細に説明するように、事前にDEAEセファロース(登録商標)ファストフロー樹脂を用いて保持時間の安定性に関する試験を実施したところ、DEAEへの負荷を室温条件で維持した場合、収率が不安定になることが認められた。
【0139】
カラム操作温度
DEAE負荷液は、安定性のために冷却して保存する必要があるので、氷水浴(2~8℃)で冷却した負荷液を用いてDEAEクロマトグラフィー操作を評価した。これに加えて、クロマトグラフィー自体の温度の影響を理解するために、冷却したクロマトグラフィーカラム(氷水浴中、2~8℃)についても評価した。表1にまとめるように、4種の実験条件について試験を行った:(1)低温の負荷液及び低温のカラム;(2)室温の負荷液及び低温のカラム;(3)低温の負荷液及び室温のカラム;並びに(4)室温の負荷液及び室温のカラム。4種の条件には全て同一の供給原料を使用した。必要に応じて、カラム及び負荷液の冷却に氷浴を使用した。表1のデータに基づき、冷却したカラムを用いることにより、収率が最も向上したことが認められた。
【表1】
【0140】
次いで、実験1から得られたGCSF試料を用いてより制御された温度に関する試験を実施した。この材料を、負荷液及びカラムの両方を1つの冷却器で、10℃、15℃及び20℃の等しい設定温度で冷却して、負荷濃度を15g/LとしてDEAEカラムに負荷した。この制御された温度に関する試験の結果をまとめたものを表2に示す。
【表2】
【0141】
温度が低いほど収率が向上することが認められたが、表1及び表2に示したデータを得るために処理した供給原料間で収率が依然として変動することが認められた。特定の理論に束縛されるものではないが、この収率の変動は、供給原料の製品の品質が経時的に(例えば、供給原料の古さ)変化することに起因する可能性が最も高い。表1及び表2に示したデータに基づき、以降のGCSF製造は、GMP規則に準拠し、ジャケット付きのカラム及び負荷液用容器を有する温度制御された設備を組み込んだ。この設備のジャケットの温度設定値を10℃に設定した。
【0142】
負荷濃度
DEAEクロマトグラフィーの負荷濃度の効果を2種の異なる供給原料を用いて評価した。最初の評価においては、GCSF含有試料(試料1)をDEAEカラムに負荷濃度を増加しながら負荷した:10g/L、15g/L、20g/L及び25g/L。この第1試験においては、負荷液を10℃に冷却し、カラムを室温に維持した。これらの負荷濃度条件で得られたGCSF収率を評価し、表3に示した。第2負荷濃度試験においては、他のGCSF含有試料(試料2)を使用した。この第2試験においては、負荷液及びカラムジャケットを冷却器で10℃に制御した。試料2を、負荷濃度を5g/L~17g/Lの範囲で増加させ、DEAEカラムに負荷した。GCSF収率及び製品の品質を評価し、表4に示した。表3及び表4に示したデータに基づき、負荷濃度を8g/L~15g/Lと定めた。
【表3】
【表4】
【0143】
DEAE分画
AEXクロマトグラフィー材料への試料の負荷及びクロマトグラフィー材料からプール画分への製品の溶出が完了した後の、プール画分中の夾雑物(例えば、宿主細胞由来タンパク質、HCP)の量は、pH又は電気伝導率等の所与の溶出条件における製品の夾雑物からの分離に関する有用な情報を提供することができる。
【0144】
表5に示す実験において、ピーク全体に亘る製品の品質の分布を理解することを試みて、溶出した製品全体のピークの分画を実施した。概して、GCSF供給原料を未使用の(naive)DEAEカラムに負荷濃度15g/Lで負荷し、280nmのODが0.5になった時点で、DEAE樹脂から体積0.5CV画分の回収を開始し、ODが0.5に低下した時点で停止した。次いでこれらの画分を逆相(RP)で分析し、そして宿主細胞由来タンパク質含有量に関する分析を行った。結果の概要を図1及び表5に示す。(1)より疎水性の高い化学種(MHS)の比率がピーク全体の画分の中で増加し;(2)タンパク質含有量当たりの宿主細胞由来タンパク質(HCP)はプールの最初及び最後に最大となり、分布がピーク全体に亘り比較的一定していることが観察された。
【表5】
【0145】
DEAEカラムの寿命
DEAE樹脂の寿命を次に示すように評価した。負荷液及びカラムの温度条件を再考し、樹脂の寿命を、2種の異なる供給原料、即ち、Engineering 1材料及びEngineering 2材料を用いて類似の条件で評価した。
【0146】
Engineering 1材料を用いて、負荷濃度を15g/Lとし、負荷液及びカラムジャケット温度の設定値を10℃として、繰返し性(cycling)を評価した。Engineering 1の繰り返し試験から得られたプール液の収率を分析した。結果を表6に示す。
【表6】
【0147】
Engineering 2材料を用いて同様の条件で繰返し性を評価した。Engineering 1及びEngineering 2の差は、供給原料の製品品質の経時変化を調整するために行った負荷材料の取扱いによって発生したものである。Engineering 1を用いた繰返し試験の最初の5サイクルは負荷液を10℃に保持し、残りの2サイクルは解凍直後(fresh thaw)のものを用いた。Engineering 2を用いた繰返し試験は、2サイクルごとに解凍直後の負荷液を使用した。Engineering 2を用いた繰返し試験から得られたプール液の収率及び製品品質を分析した(表7)。1回目のサイクル後から、サイクル数と共に、収率が比例的に僅かに上昇する。これらの試験に基づき推奨される寿命は8サイクルであるが、延長できる可能性もある。最も注目すべき変化は、サイクル数に伴う凝集体の量の増加である。このことが重要であるかどうかを判断するためには、より多くのサイクル数が必要となるであろう。
【表7】
【0148】
上のデータに基づき、GCSFを精製するための改良されたDEAEクロマトグラフィープロセスを決定した。改良されたプロセスの詳細を次の表8及び9に記載する。改良されたプロセスにおいて、AEX操作は、概して、表8に記載するクロマトグラフィーパラメータを使用して実施することができる。緩衝液/溶液及び運転条件を表9にも記載する。
【0149】
改良されたプロセスの最も注目すべき特徴は、負荷液及びカラムを、ジャケットの設定値を10℃として配置することを含む。結合容量を8g/L~15g/Lに設定し、寿命を8サイクルとした。特定の理論に束縛されるものではないが、冷却操作によってカラムを再生する能力が改善されるので、カラムの寿命が延長される可能性がある。
【表8】
【表9】
【0150】
実施例2
温度制御下におけるAEXクロマトグラフィー手順を用いたGCSFの精製
本実施例には、本明細書に開示する方法の幾つかの実施形態に従う、温度制御下におけるAEXクロマトグラフィー手順を用いた組換えヒトGCSF(rhGCSF)の精製を記載する。これらの実験においては、ジャケット付きDEAEセファロース(登録商標)ファストフロー(FF)を使用し、結合/溶出モードにて低温条件下でDEAEクロマトグラフィーを実施した。水冷ジャケット付きカラムにDEAEセファロース(登録商標)FF樹脂を充填し、pH7.6の40mM Trisで平衡化した。カラムのジャケット温度及び負荷液用容器のジャケット温度を両方共10±3℃に設定した。DEAEカラムは、50cm/hrで実施したストリップ及びサニテーションステップ(strip and sanitization steps)を除き、全てのステップを150cm/hrの直線流速で操作した。
【0151】
カラムをまず6カラム体積(CV)の平衡化緩衝液(40mM Tris、pH7.6)で平衡化した後、緩衝液をpH7.6の40mM Trisに交換してリフォールディングしたGCSF試料を、ジャケット付きカラムに、最大タンパク質負荷濃度が樹脂1リットル当たりGCSF15g(15g/L)となるように負荷した。
【0152】
GCSFのDEAEセファロース樹脂への結合が完了したら、結合したGCSFをまず平衡化緩衝液10CVで洗浄し、次いでDEAE樹脂を溶出緩衝液(40mM Tris、50mM塩化ナトリウム、pH7.7)10CVで溶出した。280nmのODが0.5になった時点で、DEAE樹脂から溶出したGCSFプール液の回収を開始し、ODが0.5に低下した時点で停止した。次いでカラムを2Mの塩化ナトリウム5CVを用いてストリッピングし、0.5Nの水酸化ナトリウム5CVを用いて消毒し、0.1Nの水酸化ナトリウム4CVを用いて保管した。
【0153】
実施例3
AEXクロマトグラフィーパラメータの最適化
本実施例においては、温度制御下のDEAEクロマトグラフィープロセスにより組換えhGCSFを調製するための様々なパラメータを評価及び最適化するために実施した幾つかの頑健性試験の結果を記載する。このパラメータには、(1)負荷濃度、(2)負荷液のpH、(3)負荷液の電気伝導率、(4)平衡化緩衝液のpH、(5)平衡化緩衝液の電気伝導率、(6)溶出緩衝液のpH、(7)溶出緩衝液の電気伝導率、(8)負荷液ジャケットの温度設定値及び(9)カラムジャケットの温度設定値が含まれる。これらの実験において、DEAEは、酸化性化学種、DNA及び大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli))宿主細胞由来タンパク質(ECP)を低減する潜在能力を有するキャプチャークロマトグラフィーカラムとして機能する。以下に示すこの実験の結果は、特定のパラメータが製品品質又は収率に影響を与えることを示している。これらの試験により、リスクアセスメントから、パラメータの分類を、重要工程パラメータ(CPP)、主要工程パラメータ(KPP)又は非主要工程パラメータ(NKP)として確認するか又はパラメータの分類を変更した。
【0154】
実施例に記載する頑健性試験は全て、適格性のあるDEAEクロマトグラフィー用の1.0cm×10cmのスケールダウンモデルで実施した。
【0155】
試験デザイン
この試験に用いる実験の組を決めるために、D最適計画の拡張(D-optimal augmentation design)を行った。D最適計画は、非線形モデルに適用可能であり、且つ 従来の要因計画と比較して、要因組合せを評価する能力が向上している。D最適計画は、JMP(商標)ソフトウェアを用いた反復探索アルゴリズムにより、パラメータ推定の共分散を最小化しようとするものである。この計画を、2因子間交互作用を最小限に抑え、プロセスに大きく影響する可能性のある因子との交互作用のみになるように更に最適化した。
【0156】
この9個のパラメータを評価するための実験計画法により、様々なパラメータの組合せで48回の実験を行った。評価したパラメータの範囲を表10にまとめる。
【表10】
【0157】
データ解析
ピボタル段階の試験(pivotal phase campaign)から得られたインプロセスデータを使用して、製品関連夾雑物に関するDEAEの頑健性データの妥当性を評価した。逆相(RP)による純度、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び陽イオン交換(CEX)等の製品品質に関する分析のそれぞれに対し、主要成分ピークの平均値±3標準偏差を限界値と定めた(例えば、表11参照)。SECデータはデータセットの変動が小さかったため、主要成分ピークの下限値を99.0%とした。これはDEAEスケールダウンモデルの適格性評価に使用したものと同じ限界値である。
【表11】
【0158】
JMP(商標)ソフトウェアを使用して、この試験に関し得られたデータをモデル化した。標準的な最小二乗法を用いて、選択したプロセスのアウトプット(RPによる純度、SEC、CEX、ECP、DNA及び収率)にプロセスの各インプット(表10参照)が与える影響を評価した。この解析から影響の要約表を作成し、アウトプットに与える統計的影響が大きいものから順にパラメータをランク付けした。p値が<0.01であることは、プロセスのインプットがアウトプットに与える影響が統計的に有意であることを示す。
【0159】
統計的に有意なパラメータを、ソフトウェアの予測プロファイラ(Prediction Profiler)により評価した。この解析から、他のパラメータを固定したままあるパラメータを変化させた場合に予測される応答を視覚化できるプロファイル曲線(profile trace)を作成した。グラフ表示することにより、望ましさをグラフ化(desirability profiling)することができた。この解析により、アウトプットの範囲設定が可能となった。RP Purity、SEC及びCEXの最小値(0)及び最大値(1)の範囲の設定値は、表10に示す平均値±3SDと定義した。望ましさのグラフ(desirability trace)は、所望のアウトプットがその範囲の平均値である場合は、各パラメータの予測応答のグラフと等価である。
【0160】
統計的に有意なパラメータを、ソフトウェアの等高線図プロファイラ(Contour Profiler)でも評価した。この解析により、一度に2因子の応答曲面を作成した。それにより、2つの因子が複合的影響を示す場合の、定義されたアウトプット範囲内での予測応答を視覚化することができる。
【0161】
解析方法
以下に示す測定法を用いて、DEAEクロマトグラフィー精製により得られるGCSF試料の幾つかの品質特性を評価した:(1)製品関連夾雑物をC3逆相HPLCを用いて分析した;(2)GCSF試料の純度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定した;(3)GCSF試料の電荷不均一性をCEX HPLCを用いて測定した;(4)GCSF試料中の大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli))宿主細胞由来タンパク質(ECP)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて測定した;(5)残存大腸菌(エシェリヒア・コリ(E.coli))宿主細胞由来DNAの濃度をQ-PCRを用いて測定した。
【0162】
結果
JMP(登録商標)ソフトウェア(SAS)を使用して、DEAE頑健性実験により得られたデータの統計解析を行った。これらの実験において解析したアウトプットは、RPによる主要成分の純度(RP Purity%main)、SECによる主要成分の比率(SEC%main)、CEXによる主要成分の比率(CEX%main)、ECP及びDNAを含む。以下に示す9個のパラメータが有意に影響する(p値<0.01)ことが分かった(影響が大きいものから順に):(1)平衡化緩衝液のpH、(2)カラム温度の設定値、(3)平衡化緩衝液の電気伝導率、(4)溶出緩衝液の電気伝導率、(5)負荷液の電気伝導率、(6)溶出緩衝液のpH、(7)負荷濃度及び負荷液pHの複合的相互作用、(8)負荷濃度と平衡化緩衝液のpHとの複合的相互作用、並びに(9)平衡化緩衝液の電気伝導率と溶出緩衝液の電気伝導率との複合的相互作用。
【0163】
これらの特定された因子がRP純度の範囲の限界値である90.60~92.91%に与える影響を決定するために更に解析を行った(データは示さず)。この解析から、これらの9個のパラメータはRP Purity%mainに影響を与えるものの、その影響によってRP Purity%mainがその下限値である90.60%を下回ることはないと示された。
【0164】
この特定された因子を等高線プロファイラでも解析し、上限値/下限値(high/low limit)に基づき応答の限界値(response end)を求めた(データは示さず)。これらの解析における等高線のプロットから、RP Purity % mainは、試験を行ったパラメータの範囲(例えば、表10参照)では、指定された範囲内に収まることが確認された。
【0165】
パラメータがSEC%Mainに与える影響
SECの製品品質に統計的に有意に影響する(p値<0.01)プロセスのインプットを特定するための実験も実施した。次に示す4個のパラメータが有意に影響することが分かった(影響が大きいものから順に):溶出緩衝液の電気伝導率、溶出緩衝液のpH、負荷濃度及び平衡化緩衝液の電気伝導率と溶出緩衝液の電気伝導率との複合的相互作用(データは示さず)。
【0166】
これらの特定されたパラメータを更に予測プロファイラで解析することにより、これらがSECの範囲である99.0%に与える影響を決定した(データは示さず)。この解析から、これらの4個のパラメータは、SEC%mainに影響を与えるものの、その影響によってSEC%mainが99.0%を下回ることはないことが確認された。
【0167】
この特定されたパラメータを等高線プロファイラでも解析し、上限値/下限値に基づき応答の限界値を決定した(データは示さず)。これらの解析における等高線のプロットから、SEC%mainは、試験を行ったパラメータの範囲(例えば、表10参照)では、指定された範囲内に入ることが確認された。
【0168】
パラメータがCEX%Mainに与える影響
CEXの製品品質に統計的に有意に影響する(p値<0.01)プロセスのインプットを特定するための追加の実験を実施した。以下に示す4個のパラメータが有意に影響することが分かった(影響が大きいものから順に):溶出緩衝液の電気伝導率、負荷濃度、カラム温度設定値並びにカラム温度設定値と平衡化緩衝液の電気伝導率との複合的相互作用。
【0169】
これらの特定されたパラメータを更に予測プロファイラで解析することにより、これらが95.95%までと定められたCEXの範囲に与える影響を決定した(データは示さず)。この解析から、これらの4個のパラメータは、CEX%mainに影響を与えるものの、その影響によってCEX%mainが92.18~95.95%の範囲を外れることはないと示された。
【0170】
この特定されたパラメータを等高線プロファイラでも解析し、上限値/下限値に基づき応答の限界値を決定した(データは示さず)。これらの等高線のプロットから、CEX % mainは、試験を行ったパラメータの範囲(表10)では、指定された範囲内に収まることが確認された。
【0171】
パラメータがECPに与える影響
ECP夾雑物に統計的に有意に影響する(p値<0.01)プロセスのインプットを特定するための更なる実験を実施した。以下に示す4個のパラメータが有意に影響することが分かった(影響が大きいものから順に):溶出緩衝液のpH、溶出緩衝液の電気伝導率、負荷液の温度設定値と溶出緩衝液のpHとの複合的相互作用並びに負荷液の温度設定値。
【0172】
これらの特定されたパラメータを更に予測プロファイラで解析することにより、これらがECPに与える影響を決定した(データは示さず)。この解析では200~600ppmの範囲を使用した。この解析から、溶出緩衝液のpH及び溶出緩衝液の電気伝導率がECP含有量に僅かに影響することが示された。ECPの除去能についても評価した。
【0173】
この特定されたパラメータを等高線プロファイラでも解析し、上限値/下限値に基づき応答の限界値を求めた(データは示さず)。等高線による視覚化を行うために下限値を0ppmに設定し、上限値を423ppmに設定した。等高線から、DEAEプロセスは、試験を行ったパラメータの範囲(表10)では、プール液中のECPの変動を最小限に抑えられるであろうことを示している。
【0174】
これらを総合して、選択されたパラメータが製品の品質特性に与える影響を理解するために、DEAEクロマトグラフィーカラムに関連するプロセスの特性評価を行った。この頑健性試験で評価する9個のパラメータを特定した。得られたデータをモデル化することにより、製品の品質特性であるRP Purity%main、SEC%main、CEX%main、ECP及びDNAに影響を与えるパラメータを特定した。特定した影響を与えるパラメータの要約表を表12に示す。ピボタル段階の製造試験をもとに定めたRP Purity、SEC及びCEX%mainに関する製品品質の限界値(平均値±3SD)に対し、全てのパラメータが製品品質に与える影響をモデル化した。このモデル化から、本試験で各パラメータに関する評価を行った全ての範囲で、製品品質は許容可能な範囲内に収まることになると予測された。ECP評価では、影響を与えるパラメータによって、評価した範囲から最小限の変動があることが示された。評価したパラメータは、DEAEプール液中のDNA含有量に影響しないことも確認された。評価したパラメータはまた、クロマトグラフィー操作の収率にも影響を与えなかった。
【表12】
【0175】
GCSF下流のリスクアセスメントから決定したパラメータの分類を、本頑健性試験により変更した分類を含め、表13にまとめる。リスクアセスメントによりNKPと決定された4個のパラメータは、本頑健性試験でもNKPのままである。これらのNKPは、平衡化緩衝液のpH、平衡化緩衝液の電気伝導率、溶出緩衝液のpH及び溶出緩衝液の電気伝導率である。これらのパラメータは元々リスクアセスメントでもNKPと評価されていたが、操作範囲に関する知見を高めるために評価を行う目的で選択したものである。これらのパラメータはいずれも、RP Purity%main、SEC%main及びCEX%mainに関する様々な製品品質に影響を与えることが分かっている。これらのpH及び電気伝導率の値は、緩衝液の調製によって充分に制御されるため、これらはNKPに分類されている。緩衝液特性の測定値が操作範囲を外れるものについては、出荷規格(release specification)を満たさないことになり、したがって製造には使用されないであろう。
【表13】
【0176】
カラム及び負荷液のジャケット温度設定値は、両方共、リスクアセスメントにおいてKPPに分類された。カラムジャケット温度は、RP Purity%main及びCEX%mainの両方に影響を与えた。負荷液のジャケット温度はECPに影響を与えることが示された。温度設定値は冷却器のインターフェースで適切に制御することができた。こうした理由から、本試験による設定値の分類を両方共KPPのままとした。両方のパラメータの操作範囲は冷却器によって固定される温度設定値である。試験を行った範囲では、製品品質が許容される範囲を外れなかったので、許容範囲を、この頑健性試験で評価を行った範囲と定めた。
【0177】
タンパク質負荷液のpHは、この頑健性試験ではNKPのままであった。このパラメータは、RP Purity%mainに対してのみ、負荷濃度との複合的相互作用を示し、純度は範囲内のままとなるため、NKPのままである。DEAE負荷液のpHは、UF/DF I操作で使用するダイアフィルトレーション緩衝液のpHにより制御した。この緩衝液と、10ダイアフィルトレーション体積(diavolume)を交換する。
【0178】
この頑健性試験から、タンパク質負荷液の電気伝導率パラメータの分類を変更した。このパラメータはリスクアセスメントではNKPと評価されていた。タンパク質負荷液の電気伝導率をKPPに分類し直した。この電気伝導率は、ダイアフィルトレーション緩衝液を介してある程度制御されるが、DEAE負荷前に行う深層濾過操作もあり、使用前に注射用水(WFI)を流し(flush)、及び使用後に製品を回収するためにWFIを流すことにより、フィルタの滞留物(holdup)を介して負荷液の電気伝導率が低下する。タンパク質負荷液の電気伝導率はRP Purity%mainに影響を与える。操作範囲及び許容範囲を<3mS/cmと定める。本試験では1.5~2.5の範囲について評価した。本実施例に記載する実験データから、RP Purity%mainは、本試験で評価した電気伝導率範囲では、製品品質の範囲内に充分に収まることが確認された。こうした理由から、電気伝導率の操作及び許容範囲を丸めて<3mS/cmとした。
【0179】
タンパク質負荷濃度は、RP Purity%mainに対し、負荷液のpH及び平衡化緩衝液のpHと複合的に影響する。このパラメータはまた、SEC%main及びCEX%mainにも独立に影響を与える。このパラメータは、元々はリスクアセスメントによりNKPと定められていたが、その製品品質に与える影響に基づき、KPPに分類し直した。このパラメータの許容範囲は、本試験において評価した負荷濃度の範囲と定めた。操作範囲は、この許容範囲に対し安全率を与えたものである。
【0180】
本開示の特定の代替を開示してきたが、様々な修正及び組合せが可能であり、且つ添付の特許請求の範囲の真の主旨及び範囲内に含まれることが意図されていると理解すべきである。したがって、本明細書に示す正確な要約及び開示を限定する意図はない。
図1
【配列表】
2022543536000001.app
【国際調査報告】