(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】GPRC5Dに結合する抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221005BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221005BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221005BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221005BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221005BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221005BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221005BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221005BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221005BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221005BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221005BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221005BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K45/00 101
A61P35/00
A61P37/06
A61K47/68
A61P43/00 121
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505412
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071325
(87)【国際公開番号】W WO2021018925
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベルナスコーニ, マリー-ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】フェルティヒ, ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ, ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
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4B065AA90Y
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4C084AA19
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB081
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、全般的に、例えば、T細胞を活性化するための、二重特異性抗原結合分子を含む、GPRC5Dに結合する抗体に関する。加えて、本発明は、そのような抗体をコードするポリヌクレオチド、並びにそのようなポリヌクレオチドを含むベクター及び宿主細胞に関する。本発明は、さらに、同抗体を生成するための方法、及び同抗体を疾患の治療に使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPRC5Dに結合する抗体であって、
(A)(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(B)(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、抗体。
【請求項2】
(A)(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は
(B)(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
GPRC5Dに結合する抗体断片である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
(A)配列番号13の重鎖可変ドメインフレームワーク配列及び/又は配列番号14の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列;又は
(B)配列番号15の重鎖可変ドメインフレームワーク配列及び/又は配列番号16の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
(a)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、及び(c)(a)に定義されるVH配列及び(b)に定義されるVL配列からなる群より選択される配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
(a)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、及び(c)(a)に定義されるVH配列及び(b)に定義されるVL配列からなる群より選択される配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号13のVH配列及び配列番号14のVL配列を含むか、又は配列番号15のVH配列及び配列番号16のVL配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
配列番号13のVH配列及び配列番号14のVL配列を含むか、又は配列番号15のVH配列及び配列番号16のVL配列を含む、GPRC5Dに特異的に結合する、抗体。
【請求項9】
前記抗体がIgG抗体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体がIgG1抗体である、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が完全長抗体である、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が多重特異性抗体である、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
配列番号98の軽鎖及び配列番号99の重鎖を含むか、又は配列番号100の軽鎖及び配列番号101の重鎖を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体及び細胞傷害性薬剤を含む、イムノコンジュゲート。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体又はイムノコンジュゲートをコードする、1又は複数の単離された核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の1又は複数の核酸を含む宿主細胞。
【請求項17】
GPRC5Dに結合する抗体又はイムノコンジュゲートを産生する方法であって、請求項16に記載の宿主細胞を、前記抗体の発現に適した条件下で培養することを含む、方法。
【請求項18】
前記抗体又はイムノコンジュゲートを前記宿主細胞から回収することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって産生される、抗体又はイムノコンジュゲート。
【請求項20】
請求項1から14、又は19のいずれか一項に記載の抗体又はイムノコンジュゲートと、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物。
【請求項21】
追加の治療剤をさらに含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
医薬としての使用のための、請求項1から14、若しくは19のいずれか一項に記載の抗体又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
疾患の治療における使用のための、請求項1から14、若しくは19のいずれか一項に記載の抗体又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
疾患の治療における使用のための、請求項1から14、若しくは19のいずれか一項に記載の抗体又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物であって、前記疾患ががん又は自己免疫疾患である、抗体又は医薬組成物。
【請求項25】
がんの治療における使用のための、請求項1から14、若しくは19のいずれか一項に記載の抗体又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物であって、前記がんが多発性骨髄腫である、抗体又は医薬組成物。
【請求項26】
疾患、特にがん又は自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
GPRC5D陽性細胞のADCC/ADCP媒介性枯渇を誘導するための医薬の製造における、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
がん又は自己免疫疾患を有する個体を治療する方法であって、前記個体に、有効量の請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
個体におけるGPRC5D陽性細胞のADCC/ADCP媒介性枯渇の方法であって、前記個体に、有効量の請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は請求項20若しくは21に記載の医薬組成物を投与して、GPRC5D陽性細胞のADCC/ADCP媒介性枯渇を誘導することを含む、方法。
【請求項30】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、強力な抗体依存性細胞傷害(ADCC)/抗体依存性細胞食作用(ADCP)を媒介するように糖鎖工学Fc部分を有するIgG分子を含む、GPRC5Dに結合する抗体に関する。加えて、本発明は、そのような抗体をコードするポリヌクレオチド、並びにそのようなポリヌクレオチドを含むベクター及び宿主細胞に関する。本発明は、更に、同抗体を産生するための方法、及び同抗体を疾患の治療に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
自己免疫疾患は、形質細胞によって分泌される自己抗体を特徴とする。自己抗体は、診断基準及び予後基準を提供し、疾患の病因において必要な役割を果たし、疾患活性の代理マーカーとして役立つ(Martin and Chan,Immunity,2004,20(5))。したがって、自己反応性形質細胞の効果的な枯渇は、これらの疾患の治癒的治療の鍵となり得る。
【0003】
GPRC5D(Gタンパク質共役受容体、クラスCグループ5メンバーD)は、多発性骨髄腫の形質細胞によって発現される特異的表面タンパク質であり、自己免疫における形質細胞上の関連標的でもあり得る。GPRC5Dは、多発性骨髄腫患者の予後及び腫瘍量に関連することが報告されている(Atamaniuk,J.et al.,Overexpression of G protein-coupled receptor 5D in the bone marrow is associated with poor prognosis in patients with multiple myeloma.Eur J Clin Invest,2012.42(9):p.953-60;及びCohen,Y.et al.,GPRC5D is a promising marker for monitoring the tumor load and to target multiple myeloma cells.Hematology,2013.18(6):p.348-51)。
【0004】
GPRC5Dは、ヒト及びヒトのがんにおいて既知のリガンド又は機能を有しないオーファン受容体である。染色体12p13.3にマッピングされるGPRC5Dコード遺伝子は、3つのエクソンを含み、約9.6kbに及ぶ(Brauner-Osborne,H.et al.,Cloning and characterization of a human orphan family C G-protein coupled receptor GPRC5D.Biochim Biophys Acta,2001.1518(3):p.237-48)。大きな第1のエクソンは、7回膜貫通ドメインをコードする。しかし、GPRC5Dの生物学はほとんど知られていない。GPRC5Dは、動物の毛包のケラチン形成に関与することが示されている(Gao,Y.et al.,Comparative Transcriptome Analysis of Fetal Skin Reveals Key Genes Related to Hair Follicle Morphogenesis in Cashmere Goats.PLoS One,2016.11(3):p.e0151118;及びInoue,S.,T.Nambu,and T.Shimomura,The RAIG family member,GPRC5D,is associated with hard-keratinized structures.J Invest Dermatol,2004.122(3):p.565-73)。国際公開第2018/017786号A2は、GPRC5D特異的抗体又は抗原結合断片を開示している。
【0005】
がん、特に多発性骨髄腫及び自己免疫疾患を治療するための更なる薬物が必要とされている。この目的のために特に有用な薬物には、GPRC5Dに結合する抗体が含まれる。本発明は、ヒトGPRC5Dに特異的に結合し、自己免疫疾患に関連してGPRC5D陽性(形質又はB)細胞及びがんに関連してGPRC5D発現悪性多発性骨髄腫形質細胞のADCC/ADCP媒介性枯渇を誘導することができる新規抗体を提供する。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明者らは、GPRC5Dに結合する予想外の改善された特性を有する新規抗体を開発した。更に、本発明者らは、GPRC5Dに結合する糖鎖工学抗体を開発した。
【0007】
第1の態様において、本発明は、GPRC5Dに結合する抗体であって、(i)(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は、(ii)(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体を提供する。
【0008】
一実施形態では、抗体は、(i)(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL);又は、(ii)(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに(d)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(e)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0009】
別の実施形態では、抗体は、GPRC5Dに結合する抗体断片である。
【0010】
別の実施形態では、抗体は、(i)配列番号13の重鎖可変ドメインフレームワーク配列及び/若しくは配列番号14の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列;又は、(ii)配列番号15の重鎖可変ドメインフレームワーク配列及び/若しくは配列番号16の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列を更に含む。
【0011】
別の実施形態では、抗体は、(a)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、並びに(c)(a)に定義されるVH配列及び(b)に定義されるVL配列からなる群から選択される配列を含む。
【0012】
別の実施形態では、抗体は、(a)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、並びに(c)(a)に定義されるVH配列及び(b)に定義されるVL配列からなる群から選択される配列を含む。
【0013】
別の実施形態では、抗体は、配列番号13のVH配列及び配列番号14のVL配列;又は配列番号15のVH配列及び配列番号16のVL配列を含む。
【0014】
更なる態様において、本発明は、配列番号13のVH配列及び配列番号14のVL配列を含むか、又は配列番号15のVH配列及び配列番号16のVL配列を含む、GPRC5Dに特異的に結合する抗体を提供する。
【0015】
別の実施形態では、抗体は、IgG抗体である。別の実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。別の実施形態では、抗体は、全長抗体である。別の実施形態では、抗体は、多重特異性抗体である。
【0016】
別の実施形態では、抗体は、配列番号98の軽鎖及び配列番号99の重鎖を含むか、又は配列番号100の軽鎖及び配列番号101の重鎖を含む。
【0017】
更なる態様では、本発明は、本明細書に開示される抗体と、細胞傷害剤とを含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0018】
更なる態様では、本発明は、本明細書に開示される抗体又はイムノコンジュゲートをコードする1つ又は複数の単離された核酸を提供する。更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の1つ又は複数の核酸を含む宿主細胞を提供する。別の態様では、本発明は、GPRC5Dに結合する抗体又はイムノコンジュゲートを産生する方法であって、抗体の発現に適した条件下で本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法を提供する。別の実施形態では、本方法は、抗体又はイムノコンジュゲートを宿主細胞から回収することを更に含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される方法によって産生される抗体又はイムノコンジュゲートを提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体又はイムノコンジュゲート及び薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
別の実施形態では、医薬組成物は、追加の治療剤を更に含む。別の態様では、本発明は、医薬としての使用のための本明細書に記載の抗体又は医薬組成物を提供する。別の態様では、本発明は、疾患の治療での使用のための本明細書に記載の抗体又は医薬組成物を提供する。疾患はがんであり得る。がんは多発性骨髄腫であり得る。疾患は自己免疫疾患であり得る。自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス及び/又は関節リウマチなどの自己免疫疾患及びその他であり得る。
【0022】
更なる態様では、本発明は、疾患、特にがん又は自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における本明細書に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は医薬組成物の使用を提供する。がんは多発性骨髄腫であり得る。自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス及び/又は関節リウマチ及びその他によって起こり得る。
【0023】
更なる態様では、本発明は、GPRC5D陽性細胞のADCC/ADCP媒介性枯渇を誘導するための医薬の製造における本明細書に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は医薬組成物の使用を提供する。
【0024】
更なる態様では、本発明は、がん又は自己免疫疾患を有する個体を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は医薬組成物を個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0025】
更なる態様では、本発明は、個体におけるGPRC5D陽性細胞のADCC/ADCP媒介性枯渇の方法であって、有効量の本明細書に記載の抗体若しくはイムノコンジュゲート又は医薬組成物を個体に投与して、GPRC5D陽性細胞のADCC/ADCP媒介性枯渇を誘導することを含む、方法を提供する。
【0026】
上記の態様及び実施形態のいずれかにおいて、個体は、好ましくは哺乳動物であり、特にヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A-Z】本発明の二重特異性抗原結合分子の例示的構成。(
図1A、
図2D)「1+1 CrossMab」分子の図である。(
図1B、
図1E)Crossfab成分とFab成分の順序が異なる(「反転型」)「2+1 IgG Crossfab」分子の図である。(
図1C、
図1F)「2+1 IgG Crossfab」分子の図である。(
図1G、
図1K)Crossfab成分とFab成分の順序が異なる(「反転型」)「1+1 IgG Crossfab」分子の図である。(
図1H、
図1L)「1+1 IgG Crossfab」分子の図である。(
図1I、
図1M)2個のCrossFabを有する「2+1 IgG Crossfab」分子の図である。(
図1J、
図1N)2個のCrossFab並びに順序が異なるCrossfab成分及びFab成分(「反転型」)を有する「2+1 IgG Crossfab」分子の図である。(
図1O、
図1S)「Fab-Crossfab」分子の図である。(
図1P、
図1T)「Crossfab-Fab」分子の図である。(
図1Q、
図1U)「(Fab)
2-Crossfab」分子の図である。(
図1R、
図1V)「Crossfab-(Fab)
2」分子の図である。(
図1W、
図1Y)「Fab-(Crossfab)
2」分子の図である。(
図1X、
図1Z)「(Crossfab)
2-Fab」分子の図である。黒点:ヘテロ二量体化を促進するFcドメインにおける任意の修飾。++、--:CH1及びCLドメインにおいて任意に導入される反対の電荷のアミノ酸。Crossfab分子は、VH領域とVL領域の交換を含むものとして示されるが、CH1ドメイン及びCLドメインに電荷修飾が導入されていない実施形態では、代替的にCH1ドメインとCLドメインの交換を含む。
【
図2】RNAseqによる形質細胞及びB細胞上の腫瘍標的の遺伝子発現の分析。
【
図3】本発明の5E11二重特異性抗原結合分子の例示的構成。黒点:ヘテロ二量体化を促進するFcドメインにおける任意の修飾。++、--:CH1及びCLドメインにおいて任意に導入される反対の電荷のアミノ酸。
【
図4A-C】GPRC5D発現多発性骨髄腫細胞株AMO-1、L636、NCI-H929、RPMI-8226、OPM-2及び対照細胞WSU-DLCL2に対する二重特異性抗原結合分子5F11-TCB(
図4A)及び5E11-TCB(
図4B)及び対照抗体ET150-5-TCB(
図4C)の結合分析。
【
図5A-E】多発性骨髄腫細胞株AMO-1(
図5A)、NCI-H929(
図5B)、RPMI-8226(
図5C)及びL363(
図5D)に対するGPRC5D-TCB媒介T細胞細胞傷害性の分析。対照細胞株は、WSU-DL CL2(
図5E)である。試験分子:5E11-TCB、5F11-TCB。対照分子:DP47-TCB(非標的化)及びET150-5-TCB。
【
図6】GPRC5D-TCB活性化T細胞の、CD25及びCD69を上方制御する多発性骨髄腫細胞株NCI-H929及び陰性対照細胞株WSU-DLCL2との結合の分析。
【
図7A-J】T細胞活性化は、AMO-1(
図7A)、NCI-H929(
図7B)、RPMI-8226(
図7C)、L363(
図7D)及びWSU-DLCL2(
図7E)の存在下でのT細胞の漸増濃度のGPRC5D-TCB又は陰性対照DP47-TCBとのインキュベーション時に、CD8+T細胞上のCD25の上方制御によって決定され、AMO-1(
図7F)、NCI-H929(
図7G)、RPMI-8226(
図7H)、L363(
図7I)及びWSU-DLCL2(
図7J)のいずれかの存在下での漸増濃度のGPRC5D-TCB又は陰性対照DP47-TCBとのT細胞のインキュベーション時に、CD8+T細胞上のCD69の上方制御によって決定される。
【
図8A-B】蛍光共焦点顕微鏡法(
図8A)による抗体局在化及び内在化の可視化並びに膜対細胞質のシグナル強度の分析(
図8B)。
【
図9】ヒトGPRC5D(クローン12)又はカニクイザルGPRC5D(クローン13)、マウスGPRC5D(クローン4)又はヒトGPRC5A(クローン30)のいずれかを発現する安定にトランスフェクトされたCHOクローンを使用して、ヒト、カニクイザル及びマウスGPRC5Dに対する異なる抗GPRC5D抗体の結合をELISAによって評価した。
【
図10A-G】20時間のコインキュベーション中に異なるGPRC5D又はBCMA標的化T細胞二重特異性分子によって誘導された様々な多発性骨髄腫(MM)細胞株のT細胞媒介性溶解(E:T=10:1、ヒトpan T細胞)。SDと共に二連が示されている。
【
図11A-F】同種異系panヒトT細胞と健常ドナー由来の未処理骨髄細胞(E:T=10:1、ヒトpan T細胞)との約20時間の共インキュベーション中に、異なるGPRC5D又はBCMA標的化T細胞二重特異性分子(
図11Aの5E11-TCB;
図11Bの5F11-TCB;
図11Cの10B10-TCB;
図11DのBCMA-TCB;
図11EのB72-TCB;
図11FのDP47-TCB)によって誘導されるT細胞活性化。CD4 T細胞(上段)又はCD8 T細胞(下段)上の活性化マーカーCD69の上方制御を、全てのCD4それぞれのCD8 T細胞の中の陽性細胞のパーセントとして示す、1人の代表的なドナーからのFACSドットプロットが示されている。
【
図12A-B】同種異系panヒトT細胞と健常ドナー由来の未処理骨髄細胞(E:T=10:1、ヒトpan T細胞)との約20時間の共インキュベーション中に、異なるGPRC5D又はBCMA標的化T細胞二重特異性分子によって誘導されるT細胞活性化。50nMのTCB(
図12A)又は5nM(
図12B)のいずれかの選択された固定用量でCD8 T細胞上の活性化マーカーCD69の上方制御を示す、4人の評価されたドナー全ての要約が示されている。
【
図13A-D】NCI-H929腫瘍細胞を移植したヒト化NSGマウスのモデルにおける経時的な腫瘍増殖速度論によって示されるように、異なるGPRC5D標的化T細胞二重特異性分子(
図13Aの5F11-TCB;
図13BのBCMA-TCB;
図13CのB72-TCB;
図13Dのビヒクル)によって誘導されるインビボ有効性。スパイダーグラフがプロットされ、各線は1匹のマウスを指している。
【
図14A-D】OPM-2腫瘍細胞を移植したヒト化NSGマウスのモデルにおける経時的な腫瘍増殖速度論によって示されるように、異なるGPRC5D標的化T細胞二重特異性分子(
図14Aの5F11-TCB;
図14Bの5E11-TCB;
図14CのB72-TCB;
図14Dのビヒクル)によって誘導されるインビボ有効性。スパイダーグラフがプロットされ、各線は1匹のマウスを指している。
【
図15A-B】発光によって決定される、約16時間のインキュベーション後のPGLALA-CAR-J活性化。後者は、GPRC5D発現多発性骨髄腫細胞株L-363へのGPRC5D IgG(
図15Aの5F11-IgG;
図15Bの5E11-IgG)、及びJurkat-NFATレポーター細胞へのPGLALA修飾Fcドメインの同時結合時に誘導され、これらは、これらのIgG分子のFc部分におけるPGLALA突然変異に対するTCRを発現するように遺伝子操作された。SDと共に二連が示されている。
【
図16】NCI-H929腫瘍細胞上に発現されたヒトGPRC5Dに対する異なるGPRC5D IgG分子の結合。SDと共に技術的三連からの相対蛍光中央値(MFI)を示す。結合のEC50値をGraph Pad Prismによって計算し、表14に含めた。
【
図17A-B】腫瘍細胞(
図17A:AMO-1細胞、
図17B:NCI-H929細胞)が、示される糖鎖工学GPRC5D標的化IgGとPBMCエフェクタ及び腫瘍標的細胞とを25:1のエフェクタ対標的細胞比で4時間共インキュベートしたときに決定された場合のADCC媒介性溶解。壊死細胞又はアポトーシス細胞から上清に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の検出に基づく腫瘍細胞溶解の割合を示す。SDと共に技術的三連が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
定義
用語は、以下に他の意味であると定義されていない限り、当該技術分野で一般的に使用されるように本明細書で使用される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「抗原結合分子」との用語は、最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、免疫グロブリン及びその誘導体(例えば断片)である。
【0030】
「二重特異性」との用語は、抗原結合分子が、少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。典型的には、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原結合部位を含み、それぞれが異なる抗原決定基に対して特異的である。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原決定基(特に、2つの別個の細胞で発現する2つの抗原決定基)に同時に結合することができる。
【0031】
用語「価数」は、本明細書で使用される場合、抗原結合分子内の特定数の抗原結合部位の存在を示す。したがって、用語「抗原に対する一価の結合」は、抗原結合分子内の抗原に特異的な1つ(及び1つを超えない)抗原結合部位の存在を示す。
【0032】
「抗原結合部位」は、抗原との相互作用を与える抗原結合分子の部位、すなわち1つ又は複数のアミノ酸残基を指す。例えば、抗体の抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を含む。ネイティブ免疫グロブリン分子は、典型的には、2つの抗原結合部位を含み;Fab分子は、典型的には、1つの抗原結合部位を有する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部分」との用語は、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。一実施形態では、抗原結合部分は、標的部位に、例えば、抗原決定基を有する特定の種類の腫瘍細胞に結合する部分(例えば、第2の抗原結合部分)に指向することができる。別の実施形態では、抗原結合部分は、その標的抗原、例えばT細胞受容体複合抗原を通してシグナル伝達を活性化することができる。抗原結合部分は、本明細書に更に定義される抗体及びその断片を含む。特定の抗原結合部分は、抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域とを含む、抗体の抗原結合ドメインを含む。特定の実施形態では、抗原結合部分は、本明細書で更に定義され、当該技術分野で知られているような抗体定常領域を含んでいてもよい。有用な重鎖定常領域は、α、δ、ε、γ又はμの5つのアイソタイプのいずれかを含む。有用な軽鎖定常領域は、κ及びλの2つのアイソタイプのいずれかを含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」との用語は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分-抗原複合体を形成する、抗原結合部分が結合するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続伸長部又は異なる領域の非連続アミノ酸から構成される配座構成)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上に、ウイルス感染した細胞の表面上に、他の罹患した細胞の表面上に、免疫細胞の表面上に、血清中で遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)内に認めることができる。本明細書で抗原と呼ばれるタンパク質(例えば、GPRC5D、CD3)は、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物供給源からのタンパク質の任意の天然形態であり得る。特定の実施形態では、抗原は、ヒトタンパク質である。本発明の特定のタンパク質について言及される場合、この用語は、「全長」の未処理のタンパク質、及び細胞の処理から得られるタンパク質の任意の形態を包含する。この用語は、タンパク質の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。抗原として有用な例示的なヒトタンパク質は、CD3、特にCD3のイプシロンサブユニット(ヒト配列についてはUniProt番号P07766(バージョン185)、NCBI RefSeq番号NP_000724.1、配列番号40;又は、カニクイザル[Macaca fascicularis]配列についてはUniProt番号Q95LI5(バージョン69)、NCBI GenBank番号BAB71849.1、配列番号41を参照)、又はGPRC5D(ヒト配列についてはUniProt番号Q9NZD1(バージョン115);NCBI RefSeq番号NP_061124.1、配列番号45を参照)である。特定の実施形態では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、異なる種由来のCD3又はGPRC5D抗原の間で保存されているCD3又はGPRC5Dのエピトープに結合する。特定の実施形態では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、ヒトGPRC5Dに結合する。
【0035】
「特異的に結合する」とは、その結合が抗原選択性であり、望ましくない相互作用又は非特異的な相互作用とは判別することができることを意味する。抗原結合部分が特定の抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又は当業者には知られている他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore機器で分析される)(Liljeblad et al.,Glyco J 17,323-329(2000))、及び従来の結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))のいずれかによって測定することができる。一実施形態では、無関係なタンパク質に対する抗原結合部分の結合度は、例えばSPRによって測定される抗原に対する抗原結合部分の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、抗原に結合する抗原結合部分、又はこの抗原結合部分を含む抗原結合分子は、解離定数(KD)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。
【0036】
「親和性」は、分子の単一の結合部位(例えば、受容体)と、その結合対(例えば、リガンド)との間の非共有結合性相互作用の合計強度を指す。特に示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗原結合部分と抗原、又は受容体とそのリガンド)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの結合対Yに対する分子Xの親和性は概して、解離定数(KD)によって表すことができ、解離速度定数と結合速度定数(それぞれkoff及びkon)の比である。したがって、速度定数の比率が同じままである限り、等価の親和性は、異なる速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に説明するものを含め、当該技術分野で公知の十分に確立された方法によって測定することができる。親和性を測定する特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0037】
「結合の低減」、例えば、Fc受容体に対する結合の低減は、例えば、SPRによって測定される場合、それぞれの相互作用についての親和性の低下を指す。明確性のために、この用語は、親和性がゼロまで低下する(又は分析方法の検出限界未満になる)こと、すなわち、相互作用が完全に失われることも含む。逆に、「結合上昇」は、個々の相互作用に対する結合親和性における上昇を指す。
【0038】
本明細書で使用される「T細胞活性化抗原」は、抗原結合分子との相互作用によりT細胞の活性化を誘導することのできる、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面上に発現される抗原決定基を指す。具体的には、抗原結合分子のT細胞活性化抗原との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達のカスケードをトリガーすることによりT細胞活性化を誘導することができる。特定の実施形態では、活性化T細胞抗原は、CD3、特にCD3のイプシロンサブユニット(ヒト配列についてはUniProt番号P07766(バージョン144)、NCBI RefSeq番号NP_000724.1、配列番号40;又は、カニクイザル)[Macaca fascicularis]配列についてはUniProt番号Q95LI5(バージョン49)、NCBI GenBank番号BAB71849.1、配列番号41を参照)である。
【0039】
本明細書で使用する「T細胞活性化」は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクタ分子の放出、細胞傷害性活性、及び活性化マーカーの発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の1つ又は複数の細胞応答を指す。T細胞活性化を測定するために適したアッセイは、本技術分野で既知であり、本明細書に記載されている。
【0040】
「標的細胞抗原」とは、本明細書で使用する場合、標的細胞、例えばがん細胞又は腫瘍間質細胞等の腫瘍内の細胞の表面に提示された抗原決定基を意味する。特定の実施形態では、標的細胞抗原は、GPRC5D、特に配列番号45によるヒトGPRC5Dである。
【0041】
本明細書で使用される場合、Fab分子などに関する「第1」、「第2」又は「第3」という用語は、各タイプの部分が2つ以上存在する場合の区別の便宜のために使用される。これらの用語の使用は、そのように明示的に示されていない限り、二重特異性抗原結合分子の特定の順序又は向きを与えることを意図していない。
【0042】
「融合した」が意味するのは、構成要素(例えばFab分子及びFcドメインサブユニット)が、ペプチド結合によって直接的に又は1つ若しくは複数のペプチドリンカーを介して連結されていることである。
【0043】
「Fab分子」は、免疫グロブリンの重鎖(「Fab重鎖」)のVHドメイン及びCH1ドメインと、免疫グロブリンの軽鎖(「Fab軽鎖」)のVLドメイン及びCLドメインとからなるタンパク質を指す。
【0044】
「クロスオーバー」Fab分子(「Crossfab」とも呼ばれる)は、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換された(すなわち、互いに置き換わった)Fab分子を意味し、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変ドメインVL及び重鎖定常ドメイン1 CH1(VL-CH1、N末端からC末端方向に)で構成されるペプチド鎖と、重鎖可変ドメインVH及び軽鎖定常ドメインCL(VH-CL、N末端からC末端方向に)で構成されるペプチド鎖とを含む。明確性のために、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖定常ドメイン1 CH1を含むペプチド鎖は、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。逆に、Fab軽鎖とFab重鎖の定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖可変ドメインVHを含むペプチド鎖は、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。
【0045】
これとは対照的に、「従来の」Fab分子は、その天然のフォーマットのFab分子、すなわち、重鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される重鎖(VH-CH1、N末端からC末端方向に)と、軽鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される軽鎖(VL-CL、N末端からC末端方向に)とを含むFab分子を意味する。
【0046】
「免疫グロブリン分子」という用語は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの軽鎖と2つの重鎖で構成される。N末端からC末端に向かって、それぞれの重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VH)と、その後に重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)と、を有する。同様に、N末端からC末端に向かって、それぞれの軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VL)と、その後に軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインと、を有する。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類の1つに割り当てられてもよく、このいくつかは、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)等の更なるサブタイプに分けられてもよい。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類のうちの1つに割り当てられてもよい。免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域を介して接続する、2つのFab分子とFcドメインとから本質的になる。
【0047】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、限定されるものではないが、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めた、様々な抗体構造を包含する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指し、すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一である、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する突然変異又はモノクローナル抗体調製物の製造中に生じる突然変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。かかるバリアントは、一般的に、少量存在する。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含めた(これらに限定されない)多様な技法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
【0049】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から分離された(すなわち、その天然環境にはない)ものである。特定のレベルの精製は、必要とされない。例えば、単離された抗体は、そのネイティブ環境又は天然環境から取り出すことができる。宿主細胞内で発現する組換え産生された抗体は、任意の適切な技術によって、分離され、分画され、又は部分的に若しくは実質的に精製された、ネイティブ又は組換え抗体と同様に、本発明の目的のために単離されると考えられる。したがって、本発明の抗体及び二重特異性抗原結合分子が単離される。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィ(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)法によって決定される場合、純度が95%より大きく、又は99%より大きくなるまで精製される。抗体精製の試験方法の総説としては、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0050】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」との用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。
【0051】
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原を結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、及びシングルドメイン抗体が挙げられる。ある特定の抗体断片の総説としては、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の総説としては、例えば、Plueckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。また、国際公開第93/16185号及び米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が長くなったFab及びF(ab’)2断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照のこと。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に説明されている。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片である。特定の実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照されたい)。抗体断片は、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による産生を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0052】
「抗原結合ドメイン」という用語は、ある抗原の一部又は全てに特異的に結合し、ある抗原の一部又は全てに対して相補的な抗体の一部を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって与えられてもよい。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と、抗体重鎖可変ドメイン(VH)とを含む。
【0053】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原に対する抗体の結合に関与する抗体重鎖又は抗体軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.、91頁(2007)を参照されたい。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために充分であり得る。可変領域配列と組み合わせて本明細書で使用される場合、「Kabatナンバリング」は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)によって記載されるナンバリングシステムを指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されるKabatナンバリングシステムに従ってナンバリングされ、本明細書では「Kabatによるナンバリング」又は「Kabatナンバリング」と呼ばれる。特定的には、Kabatナンバリングシステム(Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)の647~660頁を参照されたい)を、κ及びλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(661~723頁を参照されたい)を、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)に使用し、この場合には、「Kabat EUインデックスによるナンバリング」と言及することによって更に明確にしている。
【0055】
本明細書で使用される「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列が超可変である(「相補性決定領域」又は「CDR」;重鎖可変領域/ドメインのCDRは、例えばHCDR1、HCDR2及びHCDR3と略され、軽鎖可変領域/ドメインのCDRは、例えばLCDR1、LCDR2及びLCDR3と略される)及び/又は構造的に明確なループを形成する(「超可変ループ」)及び/又は抗原接触残基を含む(「抗原接触」)抗体可変ドメインの各領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。本発明の例示的なHVRとして、以下のものが挙げられる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50-65(H2)及び95~102(H3)で生じるCDR(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));並びに、
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)及び/又は(c)の組合せ。
【0056】
別段の指示がない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、上記のKabatらに従ってナンバリングされている。
【0057】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、HVR配列及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)中で以下の順序で現れる。FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0058】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体に対応する。かかる可変ドメインは、本明細書では「ヒト化可変領域」と呼ばれる。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復するか、又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。ある抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明に包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特に、C1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合という観点で、本発明に係る特性を作り出すために、定常領域が、元々の抗体の定常領域から更に修飾されるか、又は変更されているものである。
【0059】
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体、又はヒト抗体レパートリーなどのヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト由来の抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。特定の実施形態では、ヒト抗体は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物、例えば、マウス、ラット又はウサギに由来する。特定の実施形態では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞株に由来する。ヒト抗体ライブラリから単離された抗体又は抗体断片もまた、本発明のヒト抗体又はヒト抗体断片であると考えられる。
【0060】
抗体又は免疫グロブリンの「クラス」は、抗体又は免疫グロブリンの重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には、次の5種類の主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、これらのいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分かれてもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0061】
「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界は、わずかに変動してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシ末端まで伸長するよう規定されている。しかしながら、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ又は複数、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後開裂を受けてもよい。したがって、全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞によって産生する抗体は、全長重鎖を含んでいてもよく、又は全長重鎖の開裂したバリアントを含んでいてもよい(本明細書で「開裂したバリアント重鎖」とも呼ばれる)。これは、重鎖の最終的な2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447、Kabat EUインデックスによるナンバリング)である場合であってもよい。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(K447)が存在してもよく、又は存在していなくてもよい。Fcドメイン(又は本明細書に定義されるFcドメインのサブユニット)を含む重鎖のアミノ酸配列は、特に示されていない場合には、本明細書では、C末端グリシン-リジンジペプチドを含まずに示される。本発明の一実施形態では、本発明に係る抗体又は二重特異性抗原結合分子に含まれる本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、更なるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによるナンバリング)を含む。本発明の一実施形態では、本発明に係る抗体又は二重特異性抗原結合分子に含まれる本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、更なるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによるナンバリング)を含む。本発明の組成物、例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の集合を含む。抗体又は二重特異性抗原結合分子の集合は、全長重鎖を含む分子と、開裂したバリアント重鎖を含む分子とを含んでいてもよい。抗体又は二重特異性抗原結合分子の集合は、全長重鎖を有する分子と、開裂したバリアント重鎖を有する分子との混合物からなっていてもよく、抗体又は二重特異性抗原結合分子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%は、開裂したバリアント重鎖を有する。本発明の一実施形態では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の集合を含む組成物は、更なるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによるナンバリング)を含む、本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む。本発明の一実施形態では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の集合を含む組成物は、更なるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによるナンバリング)を含む、本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む。本発明の一実施形態では、かかる組成物は、本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子、更なるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによるナンバリング)を含む本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子、更なるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによるナンバリング)を含む本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子で構成される抗体又は二重特異性抗原結合分子の集合を含む。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991(上も参照されたい)に記載されるような、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。本明細書で使用される場合、Fcドメインの「サブユニット」とは、二量体のFcドメインを形成する2つのポリペプチドの1つ、すなわち、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含み、安定した自己会合が可能なポリペプチドを意味する。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
【0062】
「Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾」は、ホモ二量体を形成するためのFcドメインサブユニットを含むペプチドと同一のポリペプチドとの会合を減らすか又は防ぐ、ペプチド骨格の操作又はFcドメインサブユニットの翻訳後修飾である。会合を促進する修飾は、本明細書で使用される場合、特に、会合することが望ましい2つのFcドメインサブユニット(すなわち、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニット)それぞれに対し、別個の修飾を含み、修飾は、2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するように、互いに相補性である。例えば、会合を促進する修飾は、それぞれ立体的又は静電的に望ましい会合を行うように、Fcドメインサブユニットの片方又は両方の構造又は電荷を変えてもよい。したがって、(ヘテロ)二量化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で起こり、それぞれのサブユニットに融合する更なる構成要素(例えば、抗原結合部分)が同じではないという意味で、同一ではない場合がある。いくつかの実施形態では、会合を促進する修飾は、Fcドメイン内のアミノ酸突然変異、具体的には、アミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、会合を促進する修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、別個のアミノ酸突然変異、特定的にはアミノ酸置換を含む。
【0063】
「エフェクタ機能」という用語は、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクタ機能の例としては、以下のものが挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞によるイムノコンジュゲート媒介性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化。
【0064】
本明細書で使用される場合、「操作する、操作される、操作すること」という用語は、天然に存在するか、又は組換えポリペプチド又はこれらの断片のペプチド骨格の任意の操作又は翻訳後修飾を含むと考えられる。操作することは、アミノ酸配列の修飾、グリコシル化パターンの修飾、又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾、及びこれらのアプローチの組合せを含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸突然変異」という用語は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、及び修飾を包含することを意味する。置換、欠失、挿入及び修飾の任意の組み合わせは、最終構築物が、所望の特徴、例えば、Fc受容体に対する結合の低減、又は別のペプチドとの会合の増加を有する限り、最終構築物に到達するように行うことができる。アミノ酸配列の欠失及び挿入は、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端のアミノ酸の欠失及び挿入を含む。特定のアミノ酸突然変異は、アミノ酸の置換である。例えば、Fc領域の結合特性を変更する目的のために、非保存的アミノ酸置換、すなわち、1つのアミノ酸を、構造特性及び/又は化学特性が異なる別のアミノ酸と置き換えることが特に好ましい。アミノ酸の置換には、非天然アミノ酸による置き換え、又は20種類の標準的なアミノ酸の天然アミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置き換えが含まれる。アミノ酸突然変異は、当該技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用いて生じさせることができる。遺伝的方法には、特定部位の突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等が含まれ得る。遺伝子工学以外の方法によってアミノ酸の側鎖基を変える方法、例えば、化学修飾も有用な場合があることが想定される。同じアミノ酸突然変異を示すために、本明細書で様々な名称を使用することができる。例えば、Fcドメインの位置329のプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G又はPro329Glyと示すことができる。
【0066】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列の同一性パーセント(%)」は、配列をアラインメントし、最大の配列同一性パーセントを達成するために、必要ならばギャップを導入した後、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合であると定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージを用いて達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本発明の目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8cのggsearchプログラム用い、又はその後のBLOSUM50比較マトリックスを用いて作成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.Pearson and D.J.Lipman(1988)、「Improved Tools for Biological Sequence Analysis」、PNAS 85:2444-2448;W.R.Pearson(1996)「Effective protein sequence comparison」Meth.Enzymol.266:227-258;及びPearson et.al.(1997)Genomics 46:24-36)によるものであり、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtmlから公的に入手可能である。或いは、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公開サーバを使用して、ggsearch(グローバル・タンパク質:タンパク質)プログラム及びデフォルト・オプション(BLOSUM50;open:-10;ext:-2;Ktup=2)を使用して配列を比較し、ローカルではなくグローバルなアライメントを確実に実行することができる。アミノ酸同一性パーセントは、アウトプットアラインメントヘッダーで与えられる。
【0067】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単離された核酸分子又は構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来のRNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合又は従来の結合以外の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)中に見出されるもの)を含んでいてもよい。「核酸分子」という用語は、任意の1つ又は複数の核酸セグメント、例えば、ポリヌクレオチド中に存在するDNA又はRNA断片を指す。
【0068】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出された、核酸分子、DNA又はRNAを意図している。例えば、ベクターにおいて含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドの更なる例としては、異種性宿主細胞において維持された組換えポリヌクレオチド、又は溶液中の精製された(部分的に又は実質的に)、ポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、元々ポリヌクレオチド分子を含有する細胞において含有されているポリヌクレオチド分子を含むが、ポリヌクレオチド分子は、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。単離されたRNA分子は、本発明のインビボ又はインビトロRNA転写産物と、陽性及び陰性の鎖形態と、二本鎖形態とを含む。本発明による単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、合成によって産生されるかかる分子を更に含む。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーター等の調節要素であってもよく、又は調節要素を含んでいてもよい。
【0069】
「[例えば、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子]をコードする単離されたポリヌクレオチド(又は核酸)」は、抗体重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド分子を指し、単一のベクター又は別個のベクターにおいて、かかる核酸分子(単数又は複数)が宿主細胞の1つ又は複数の位置に存在するかかるポリヌクレオチド分子(単数又は複数)を含む。
【0070】
「発現カセット」という用語は、組換えによって、又は合成によって作られるポリヌクレオチドを指し、標的細胞内の特定の核酸の転写が可能な特定の一連の核酸要素を含む。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、又は核酸断片へと組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、配列の中でも特に、転写される核酸配列と、プロモーターとを含む。特定の実施形態では、発現カセットは、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。
【0071】
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、細胞に作動可能に会合する特定の遺伝子の発現を導入し、指令するために使用されるDNA分子を指す。この用語には、自己複製する核酸構造としてのベクターだけでなく、ベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターも含まれる。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターによって、安定したmRNAの多量の転写が可能となる。発現ベクターが細胞内に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質は、細胞内転写及び/又は翻訳機構によって産生される。一実施形態において、本発明の発現ベクターは、本発明の抗体若しくは二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む発現カセットを含む。
【0072】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、これらは、継代数にかかわらず、初代の形質転換された細胞と、初代の形質転換された細胞から誘導された子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一でない場合があるが、突然変異を含んでもよい。本明細書では、最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体の子孫が、含まれる。宿主細胞は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を生成するために使用可能な任意の種類の細胞系である。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、HEK細胞、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物若しくは培養植物、又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。
【0073】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインによる連結の後に、エフェクタ機能を発揮するために受容体を含む細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体としては、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が挙げられる。
【0074】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクタ細胞による、抗体で被覆された標的細胞の溶解を引き起こす免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体又はその誘導体が、一般的にFc領域に対してN末端であるタンパク質部分を介して、特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される場合、「減少したADCC」という用語は、上記で定義されたADCCの機構による、標的細胞を取り囲む培地中の所与の濃度の抗体で所与の時間に溶解される標的細胞の数の減少、及び/又はADCCの機構による、所与の時間に所与の数の標的細胞の溶解を達成するために必要な、標的細胞を取り囲む培地中の抗体の濃度の増加のいずれかとして定義される。ADCCの減少は、同じ標準的な産生、精製、製剤化及び保存方法(当業者に知られている)を使用して、同じ種類の宿主細胞によって産生される同じ抗体によって媒介されるが、操作されていないADCCと比較している。例えば、そのFcドメインに、ADCCを低下させるアミノ酸置換を含む抗体によって媒介されるADCCの低下は、Fcドメイン中にこのアミノ酸置換を含まない同じ抗体によって媒介されるADCCに対するものである。ADCCを測定するのに適したアッセイは、当該技術分野で周知である(例えば、PCT国際公開第2006/082515号又は同第2012/130831号を参照されたい)。
【0075】
ある薬剤の「有効量」は、その薬剤が投与される細胞又は組織において、ある生理学的変化を引き起こすのに必要な量を指す。
【0076】
ある薬剤(例えば、医薬組成物)の「治療有効量」は、所望な治療結果又は予防結果を達成するのに有効な量、必要な投薬量及び必要な期間を指す。薬剤の治療有効量は、例えば、疾患の副作用を除去し、低下させ、遅延させ、最小限にし、又は予防する。
【0077】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、齧歯(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。特に、個体又は対象は、ヒトである。
【0078】
「医薬組成物」という用語は、その中に含まれる有効成分の生体活性を有効にし、組成物が投与される対象に対して受け入れられないほど毒性である更なる構成要素を含まないような形態での調製物を指す。
【0079】
「薬学的に許容され得る担体」は、医薬組成物中の成分であって、有効成分以外であり、対象にとって毒性ではない成分を指す。薬学的に許容され得る担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」(及びその文法的な変化形、例えば、「治療(treat)する」又は「治療(treating)すること」)は、治療される個体において疾患の本来の経過を変える試行における臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。治療の所望の効果としては、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行率を低下させること、病状の寛解又は緩和、及び回復又は改良された予後が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、疾患の発症を遅延させるために、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0081】
「パッケージ添付文書」という用語は、そのような治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、及び/又はその使用に関する警告についての情報を含有する、治療製品の商業用パッケージに通例含まれる指示書を指すために使用される。
【0082】
実施形態の詳細な説明
本発明は、GPRC5D、特にヒトGPRC5Dに結合する抗体及び二重特異性抗原結合分子を提供する。更に、分子は、例えば有効性及び/又は安全性並びに生産性に関して、治療用途にとって他の好ましい特性を有する。
【0083】
GPRC5D抗体
第1の態様では、本発明は、GPRC5Dに結合する抗体であって、(i)配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、及び、配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);(ii)配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、及び、配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);(iii)配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、及び、配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);(iv)配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、及び、配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);(v)配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、及び、配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);(vi)配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、及び、配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);又は、(vii)配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、及び、配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。一実施形態では、VHは、ヒト化VHであり、及び/又はVLは、ヒト化VLである。一実施形態では、抗体は、上述の実施形態のうちのいずれかにあるようなCDRを含み、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを更に含む。
【0085】
特定の実施形態では、(i)VHは、配列番号13の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む;又は、(ii)VHは、配列番号15の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む;又は、(iii)VHは、配列番号48の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む;又は、(iv)VHは、配列番号49の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む;又は、(v)VHは、配列番号57の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む;又は、(vi)VHは、配列番号58の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0086】
特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるVH、及び配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるVL;又は、(ii)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるVH、及び配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるVL;又は、(iii)配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であるVH、及びVLが配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である;又は、(iv)VHが配列番号49の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であり、VLが配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である;又は、(v)VHが配列番号57の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であり、VLが配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である;又は、(vi)VHが配列番号58の配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一であり、VLが配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である、を含む。
【0087】
別の実施形態では、抗体はIgG、特にIgG1抗体である。一実施形態では、抗体は全長抗体である。別の実施形態では、抗体は、Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片である。一実施形態では、抗体は多重特異性抗体である。
【0088】
特定の実施形態において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVH又はVL配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はGPRC5Dに結合する能力を保持する。特定の実施形態では、配列番号13において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号14において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号15において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号16において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号48において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号53において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号49において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号52において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号57において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号64において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号58において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されており、並びに/又は配列番号63において合計1~10個のアミノ酸が置換、挿入及び/若しくは欠失されている。
【0089】
特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。任意に、抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号13のVH配列及び/又は配列番号14のVL配列を含む。任意に、抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号15のVH配列及び/又は配列番号16のVL配列を含む。任意に、抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号448のVH配列及び/又は配列番号53のVL配列を含む。任意に、抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号49のVH配列及び/又は配列番号52のVL配列を含む。任意に、抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号57のVH配列及び/又は配列番号64のVL配列を含む。任意に、抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号58のVH配列及び/又は配列番号63のVL配列を含む。
【0090】
一実施形態では、抗体は、配列番号13及び配列番号15の群から選択されるアミノ酸配列を含むVH、並びに配列番号14のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0091】
一実施形態では、抗体は、配列番号13及び配列番号15の群から選択されるVH配列、並びに配列番号16のVL配列を含む。
【0092】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号13のVH配列、及び配列番号14のVL配列を含む。
【0093】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号15のVH配列、及び配列番号16のVL配列を含む。
【0094】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号48のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号53のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号48のVH配列、及び配列番号53のVL配列を含む。
【0095】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号49のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号52のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号49のVH配列、及び配列番号52のVL配列を含む。
【0096】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号57のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号57のVH配列、及び配列番号64のVL配列を含む。
【0097】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号58のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号63のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号58のVH配列、及び配列番号63のVL配列を含む。
【0098】
一実施形態では、抗体はヒト定常領域を含む。一実施形態では、抗体は、ヒト定常領域を含む免疫グロブリン分子、特にヒトCH1、CH2、CH3及び/又はCLドメインを含むIgGクラス免疫グロブリン分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号37及び38(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号39(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号37又は配列番号39のアミノ酸配列、特に配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域は、本明細書に記載されたようなFcドメインにおけるアミノ酸突然変異を含んでもよい。
【0099】
一実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0100】
一実施形態では、抗体はIgG、特にIgG1抗体である。一実施形態では、抗体は全長抗体である。
【0101】
一実施形態では、抗体は、Fcドメイン、特にIgG Fcドメイン、更に詳細にはIgG1 Fcドメインを含む。一実施形態では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。抗体のFcドメインは、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインに関して本明細書に記載される特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0102】
別の実施形態では、抗体は、Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片、特にFab分子である。別の実施形態では、抗体断片は、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディである。
【0103】
更なる態様では、上記実施形態のうちのいずれかによる抗体は、以下のセクションに記載される特徴のうちのいずれかを、単独で又は組み合わせで組み込んでもよい。
【0104】
グリコシル化バリアント
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化されている程度を増加又は減少させるように変化する。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が作り出されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0105】
抗体がFc領域を含む場合、抗体に付着しているオリゴ糖を変更してもよい。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体中のオリゴ糖の改変は、特定の改良された特性を有する抗体バリアントを作成するために行われてもよい。
【0106】
一実施形態では、非フコシル化オリゴ糖、すなわちFc領域へのフコース結合(直接又は間接)を欠くオリゴ糖構造を有する抗体バリアントが提供される。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖とも呼ばれる)は特に、二分岐オリゴ糖構造の幹に第1のGlcNAcが結合したフコース残基を欠く、N結合オリゴ糖である。一実施形態では、内在性又は親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の比率が増加した抗体バリアントを提供する。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は場合によっては約100%(すなわち、フコシル化オリゴ糖が存在しない)であってもよい。非フコシル化オリゴ糖の割合は、例えば、国際公開第2006/082515号に記載のMALDI-TOF質量分析法により測定した、Asn297に結合した全てのオリゴ糖の合計(例えば、複合体、ハイブリッド、及びハイマンノース構造)に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEUナンバリング);しかしながら、Asn297は、抗体のマイナーな配列変化のために、位置297の上流又は下流、すなわち位置294と300の間の約±3個のアミノ酸に位置していてもよい。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加したこのような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合、及び/又は改善されたエフェクタ機能、特に改善されたADCC機能を有することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照されたい。
【0107】
フコシル化が低下した抗体を産生可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が不足しているLec13CHO細胞(Ripkaら Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子のFUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnukiら Biotech.Bioeng.87:614-622(2004);Kanda,Y.ら,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)、又はGDP-フコース合成若しくはトランスポータータンパク質の活性が低下若しくは消滅した細胞(例えば、米国特許出願公開第2004259150号、同第2005031613号、同第2004132140号、同第2004110282号を参照されたい)が挙げられる。
【0108】
更なる実施形態では、抗体バリアントは、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている二分されたオリゴ糖と共に提供される。そのような抗体バリアントは、上述のように、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有してもよい。そのような抗体バリアントの例は、例えば、Umana et al.,Nat Biotechnol 17,176-180(1999);Ferrara et al.,Biotechn Bioeng 93,851-861(2006);国際公開第99/54342号;同第2004/065540号、同第2003/011878号に記載されている。
【0109】
Fc領域に付着したオリゴ糖の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号、同第1998/58964号、及び同第1999/22764号に記載されている。
【0110】
一実施形態において、第2の抗体は、Fc領域における1つ又は複数のアミノ酸突然変異の導入によって改変される。具体的な実施形態では、アミノ酸突然変異はアミノ酸置換である。一実施形態において、第2の抗体は、Fc領域におけるグリコシル化の修飾によって改変される。具体的な実施形態では、Fc領域におけるグリコシル化の修飾は、非改変抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合の増加である。更により具体的な実施形態では、Fc領域中の非フコシル化オリゴ糖の増加した割合は、Fc領域中の非フコシル化オリゴ糖の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%である。別の具体的な実施形態では、Fc領域におけるグリコシル化の修飾は、非改変抗体と比較して、Fc領域における二分化されたオリゴ糖の割合の増加である。更により具体的な実施形態では、Fc領域中の二分化されたオリゴ糖の増加した割合は、Fc領域中の二分化されたオリゴ糖の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%である。更に別の具体的な実施形態では、Fc領域におけるグリコシル化の修飾は、非改変抗体と比較して、Fc領域における二分化された非フコシル化オリゴ糖の割合の増加である。好ましくは、第2の抗体は、Fc領域中に少なくとも約25%、少なくとも約35%、又は少なくとも約50%の二分化された非フコシル化オリゴ糖を有する。特定の実施形態では、第2の抗体は、非改変抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように改変される。抗体のFc領域中の非フコシル化オリゴ糖の割合の増加は、エフェクタ機能の増加、特にADCCの増加を有する抗体をもたらす。特定の実施形態では、非フコシル化オリゴ糖は、二分化された非フコシル化オリゴ糖である。
【0111】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号98の配列を含む軽鎖と、配列番号99の配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号98の軽鎖と、配列番号99の重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号100の配列を含む軽鎖と、配列番号101の配列を含む重鎖とを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列番号100の軽鎖と、配列番号101の重鎖とを含む。
【0112】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号98の配列を含む軽鎖と、配列番号99の配列を含む重鎖とを含み、抗体は糖鎖工学抗体である。特定の実施形態では、抗体は、配列番号98の軽鎖と、配列番号99の重鎖とを含み、抗体は糖鎖工学抗体である。特定の実施形態では、抗体は、配列番号100の配列を含む軽鎖と、配列番号101の配列を含む重鎖とを含み、抗体は糖鎖工学抗体である。特定の実施形態では、抗体は、配列番号100の軽鎖と、配列番号101の重鎖とを含み、抗体は糖鎖工学抗体である。
【0113】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号98の配列を含む軽鎖と、配列番号99の配列を含む重鎖とを含み、抗体は、非改変抗体と比較して、Fc領域中に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するように改変されている。特定の実施形態では、抗体は、配列番号98の軽鎖と、配列番号99の重鎖とを含み、抗体は、非改変抗体と比較して、Fc領域中に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するように改変されている。特定の実施形態では、抗体は、配列番号100の配列を含む軽鎖と、配列番号101の配列を含む重鎖とを含み、抗体は、非改変抗体と比較して、Fc領域中に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するように改変されている。特定の実施形態では、抗体は、配列番号100の軽鎖と、配列番号101の重鎖とを含み、抗体は、非改変抗体と比較して、Fc領域中に増加した割合の非フコシル化オリゴ糖を有するように改変されている。
【0114】
システイン改変抗体バリアント
ある特定の実施形態では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン改変抗体、例えば、「チオマブ(thioMAb)」を作成することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書に更に記載されるように、抗体を薬物部位又はリンカー薬物部位等のような他の部位に複合してイムノコンジュゲートを作成するために使用することができる。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号、同第8,30,930号、同第7,855,275号、同第9,000,130号、又は国際公開第2016040856号に記載のように生成することができる。
【0115】
抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で公知であり、容易に入手可能な更なる非タンパク質性部分を含有するように更に改変され得る。抗体の誘導体化に適した部位としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に接続するポリマーの数は、様々であってもよく、1つより多いポリマーが接続する場合、ポリマーは、同じ分子であってもよく、又は異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定するものではないが、改良される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義された条件下で治療に使用されるかどうか等の考慮事項に基づいて決定することができる。
【0116】
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非保護性部位の複合体が提供される。一実施形態では、非保護性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、任意の波長であってもよく、通常の細胞に害を与えないが、抗体非保護性部位に近位の細胞が死滅する温度まで非保護性部位を加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
【0117】
イムノコンジュゲート
本発明はまた、細胞傷害剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体などの1つ又は複数の治療剤と複合された本明細書中に記載の抗GPRC5D抗体を含む、イムノコンジュゲートを提供する。
【0118】
一実施形態では、イムノコンジュゲートは、抗体が、前述の治療剤の1つ又は複数にコンジュゲートしている、抗体薬物複合体(ADC)である。抗体は、典型的には、リンカーを使用して、治療剤の1つ又は複数に接続される。治療剤及び治療薬及びリンカーの例を含む、ADC技術の概説は、Pharmacol Review 68:3-19(2016)に記載されている。
【0119】
別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、並びにトリコテセン(tricothecene)を含むがこれらに限定されない酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載される抗体を含む。
【0120】
別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性複合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性複合体の産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位元素が挙げられる。放射性複合体が検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィ研究のための放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)イメージング(別名、磁気共鳴イメージング、MRI)のためのスピンラベル、例えば再びヨウ素123、ヨウ素131、インジウム111、フッ素19、炭素13、窒素15、酸素17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含んでいてもよい。
【0121】
抗体と細胞傷害剤との複合体は、例えば、各種の二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製することができる:N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCl等)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジル等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネート等)、及び二活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)。例えば、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているように、リシン免疫毒素を調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
【0122】
本明細書のイムノコンジュゲート又はADCは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.、Rockford、IL.、U.S.Aから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製される、このような複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0123】
多重特異性抗体
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位、すなわち、異なる抗原上の異なるエピトープ又は同じ抗原上の異なるエピトープに対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、多重特異性抗体は、3つ又はそれより多くの結合特異性を有する。特定の実施形態では、結合特異性の1つはGPRC5Dに対するものであり、他の(2つ又はそれより多くの)特異性は他の任意の抗原に対するものである。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、GPRC5Dの2つ(又はそれより多く)の異なるエピトープに結合し得る。多重特異性(例えば、二重特異性)抗体は、細胞傷害剤又は細胞を、GPRC5Dを発現する細胞に局在化するために使用することもできる。多重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製できる。
【0124】
多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)参照)及び「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号及びAtwell et al.,J.Mol.Biol.270:26(1997)参照)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果の操作(例えば、国際公開第2009/089004号参照);2つ又はそれより多くの抗体若しくは断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennanら、Science,229:81(1985)参照);ロイシンジッパーを使用した二重特異性抗体の産生(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)及び国際公開第2011/034605号参照);軽鎖の誤対合問題を回避するための一般的な軽鎖技術の使用(例えば、国際公開第98/50431号参照);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)参照);及び一本鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruberら、J.Immunol.,152:5368(1994)参照);並びに例えばTutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されている三重特異性抗体の調製によって作製することができる。
【0125】
例えば、「オクトパス抗体」を含め、3つ又はそれより多くの抗原結合部位を有する操作抗体、又はDVD-Igもまたここに含まれる(例えば、国際公開第2001/77342号及び国際公開第2008/024715号を参照)。3つ又はそれより多くの抗原結合部位を有する多重特異性抗体の他の例は、国際公開第2010/115589号、国際公開第2010/112193号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号、及び国際公開第2013/026831号に見出され得る。二重特異性抗体又はその抗原結合断片には、GPRC5Dと別の異なる抗原、又はGPRC5Dの2つの異なるエピトープに結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」又は「DAF」も含まれる(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号明細書及び国際公開第2015/095539号を参照)。
【0126】
多重特異性抗体はまた、同じ抗原特異性の1つ又は複数の結合アームにドメインクロスオーバーを持つ非対称の形で、すなわちVH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号及び国際公開第2015/150447号を参照)、CH1/CLドメイン(国際公開第2009/080253号を参照)又は完全なFabアーム(国際公開第2009/080251号、国際公開第2016/016299号を参照、Schaefer等のPNAS,108(2011)1187-1191、及びKlein et al.,MAbs 8(2016)1010-20も参照)を交換することによっても提供され得る。非対称Fabアームは、荷電又は非荷電アミノ酸突然変異をドメインインターフェースに導入して正しいFabペアリングを指示することによって操作することもできる。例えば、国際公開第2016/172485号を参照。
【0127】
多重特異性抗体の様々な更なる分子フォーマットが当該技術分野で知られており、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al.,Mol Immunol 67(2015)95-106参照)。
【0128】
本明細書に同様に含まれる特定の種類の多重特異性抗体は、標的細胞、例えば腫瘍細胞上の表面抗原、及びT細胞受容体(TCR)複合体の活性化インバリアント構成成分、例えばT細胞を再標的化して標的細胞を死滅させるためのCD3に同時に結合するように設計された二重特異性抗体である。したがって、特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、結合特異性のうちの一方がGPRC5Dへのものであり、他方がCD3へのものである多重特異性抗体、特に二重特異性抗体である。
【0129】
この目的に役立ち得る二重特異性抗体フォーマットの例として、限定されないが、2つのscFv分子が柔軟なリンカーによって融合されている、いわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージャー)分子(例えば、国際公開第2004/106381号、国際公開第2005/061547号、国際公開第2007/042261号、及び国際公開第2008/119567号、Nagorsen and Baeuerle,Exp Cell Res 317,1255-1260(2011)を参照);ダイアボディ(Holliger et al.,Prot Eng 9,299-305(1996))及びその誘導体、例えばタンデムダイアボディ(「TandAb」;Kipriyanov et al.,J Mol Biol 293,41-56(1999));ダイアボディフォーマットに基づくが、更なる安定化のためにC末端ジスルフィド架橋を特徴とする「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnson et al.,J Mol Biol 399,436-449(2010))、並びにいわゆるトリオマブ(これはマウス/ラットIgGハイブリッド分子全体である(Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36,458-467(2010)に概説)が挙げられる。本明細書に含まれる特定のT細胞二重特異性抗体フォーマットは、国際公開第2013/026833号、国際公開第2013/026839号、国際公開第2016/020309号;Bacac et al.,Oncoimmunology 5(8)(2016)e1203498に記載されている。
【0130】
GPRC5D及び第2の抗原に結合する二重特異性抗原結合分子
本発明はまた、二重特異性抗原結合分子、すなわち、2つの別個の抗原決定基(第1及び第2の抗原)に対して特異的に結合可能な少なくとも2つの抗原結合部分を含む抗原結合分子を提供する。
【0131】
本発明の特定の実施形態によれば、二重特異性抗原結合分子に含まれる抗原結合部分は、Fab分子である(すなわち、重鎖及び軽鎖で構成される抗原結合ドメイン、それぞれが可変ドメインと定常ドメインを含む)。一実施形態では、第1及び/又は第2の抗原結合部分は、Fab分子である。一実施形態では、上記Fab分子は、ヒトである。特定の実施形態では、上記Fab分子は、ヒト化されている。更に別の実施形態では、上記Fab分子は、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインを含む。
【0132】
好ましくは、抗原結合部分の少なくとも1つは、クロスオーバーFab分子である。このような改変は、異なるFab分子からの重鎖と軽鎖のミスマッチを減らし、それによって、組換え産生における本発明の二重特異性抗原結合分子の収率及び純度を高める。本発明の二重特異性抗原結合分子にとって有用な特定のクロスオーバーFab分子では、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメイン(それぞれVLとVH)が置き換わっている。しかし、このドメイン交換を用いても、二重特異性抗原結合分子の調製は、うまく対にならなかった重鎖と軽鎖との間のいわゆるBence Jones型の相互作用に起因して特定の副生成物を含む場合がある(Schaefer et al,PNAS、108(2011)11187-11191を参照)。異なるFab分子の重鎖及び軽鎖の誤対合を更に減少し、これにより望ましい二重特異性抗原結合分子の純度及び収率を増加するため、反対の電荷を有する荷電アミノ酸を、第1の抗原(GPRC5D)に結合するFab分子又は第2の抗原(例えば、CD3などの活性化T細胞抗原)に結合するFab分子のいずれかのCH1及びCLドメインにおける特定のアミノ酸位置に導入することができ、本明細書に更に記載される。電荷修飾は、二重特異性抗原結合分子 に含まれる従来のFab分子(例えば、
図1A~C、G~Jに示されるもの)、又は二重特異性抗原結合分子に含まれるVH/VLクロスオーバーFab分子(例えば、
図1D~F、K~Nに示されるもの)のいずれかでなされる(しかし、両方ではない)。特定の実施形態では、電荷修飾は、二重特異性抗原結合分子(特定の実施形態では、第1の抗原、すなわちGPRC5Dに結合する)に含まれる従来のFab分子においてなされる。
【0133】
本発明による特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1の抗原(すなわちGPRC5D)及び第2の抗原(例えば、活性化T細胞抗原、特にCD3)に同時に結合することができる。一実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、GPRC5Dと活性化T細胞抗原とを同時に結合させることによって、T細胞と標的細胞とを架橋することができる。更により特定の実施形態では、そのような同時結合は、標的細胞、特にGPRC5D発現腫瘍細胞の溶解をもたらす。一実施形態では、そのような同時結合はT細胞の活性化を生じる。別の実施形態では、そのような同時結合は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクタ分子の放出、細胞傷害活性及び活性化マーカーの発現の群から選択されるTリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の細胞応答を生じる。一実施形態において、GPRC5Dへの同時結合を伴わない、活性化T細胞抗原、特にCD3への二重特異性抗原結合分子の結合は、T細胞活性化をもたらさない。
【0134】
一実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、T細胞の細胞傷害活性を標的細胞に向け直すことができる。特定の実施形態では、前記向け直しは、標的細胞によるMHC媒介ペプチド抗原提示及び/又はT細胞の特異性と無関係である。
【0135】
特に、本発明のいずれかの実施形態によるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4+又はCD8+T細胞、特にCD8+T細胞である。
【0136】
第1の抗原結合部分
本発明の二重特異性抗原結合分子は、GPRC5D(第1の抗原)に結合する少なくとも1つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、GPRC5Dに結合する2つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。特定のそのような実施形態において、これらの抗原結合部分の各々は、同じ抗原決定基に結合する。更により特定の実施形態では、これらの抗原結合部分の全ては、同一であり、すなわち、(存在する場合)本明細書に記載されるCH1及びCLドメインに同じアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、GPRC5Dに結合する2個以下の抗原結合部分、特にFab分子を含む。
【0137】
特定の実施形態では、GPRC5Dに結合する抗原結合部分(単数又は複数)は、従来のFab分子である。そのような実施形態では、第2の抗原に結合する抗原結合部分(単数又は複数)は、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。
【0138】
代替的な実施形態では、GPRC5Dに結合する抗原結合部分(単数又は複数)は、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。そのような実施形態では、第2の抗原に結合する抗原結合部分(単数又は複数)は、従来のFab分子である。
【0139】
GPRC5D結合部分は、二重特異性抗原結合分子を標的部位、例えばGPRC5Dを発現する特定のタイプの腫瘍細胞に向けることができる。
【0140】
二重特異性抗原結合分子の第1の抗原結合部分は、科学的に明らかに不合理又は不可能でない限り、GPRC5Dに結合する抗体に関して本明細書に記載される特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0141】
したがって、一態様において、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分と、を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様では、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分と、を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様では、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分と、を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様では、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分と、を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様では、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分と、を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様では、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分、とを含む二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様では、本発明は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合部分と、(b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分と、を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0142】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト化抗体である(ヒト化抗体から誘導される)。一実施形態では、VHは、ヒト化VHであり、及び/又はVLは、ヒト化VLである。一実施形態では、第1の抗原結合部分は、上のいずれかの実施形態と同じCDRを含み、更に、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0143】
一実施形態では、第1の抗原結合部分のVHは、配列番号13、配列番号15、配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第1の抗原結合部分のVLは、配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0144】
一実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号13、配列番号15配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列、並びに、配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列を含む。
【0145】
一実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号13、配列番号15、配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるアミノ酸配列を含むVH、並びに配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0146】
一実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号13、配列番号15、配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるVH配列、並びに配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるVL配列を含む。
【0147】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号13のVH配列、及び配列番号14のVL配列を含む。
【0148】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号15のVH配列、及び配列番号16のVL配列を含む。
【0149】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号48のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号53のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号48のVH配列、及び配列番号53のVL配列を含む。
【0150】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号49のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号52のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号49のVH配列、及び配列番号52のVL配列を含む。
【0151】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号57のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号57のVH配列、及び配列番号64のVL配列を含む。
【0152】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号58のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号63のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号58のVH配列、及び配列番号63のVL配列を含む。一実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特に、ヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号37及び38(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号39(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号37又は配列番号38のアミノ酸配列、特に配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷修飾」の状態で本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい、及び/又は、クロスオーバーFab分子での場合、1つ又は複数の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号39のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(具体的にはCH1ドメイン)は、「電荷修飾」状態において本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい。
【0153】
第2の抗原結合部分
本発明の二重特異性抗原結合分子は、少なくとも1つの抗原結合部分、特に第2の抗原(GPRC5Dとは異なる)に結合するFab分子を含む。
【0154】
特定の実施形態では、第2の抗原に結合する抗原結合部分は、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。そのような実施形態では、第1の抗原(すなわちGPRC5D)に結合する抗原結合部分は、好ましくは従来のFab分子である。二重特異性抗原結合分子に含まれるGPRC5Dに結合する2つ以上の抗原結合部分、特にFab分子が存在する実施形態では、第2の抗原に結合する抗原結合部分は、好ましくはクロスオーバーFab分子であり、GPRC5Dに結合する抗原結合部分は従来のFab分子である。
【0155】
代替的な実施形態では、第2の抗原に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である。そのような実施形態では、第1の抗原(すなわちGPRC5D)に結合する抗原結合部分(単数又は複数)は、本明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。二重特異性抗原結合分子に含まれる第2の抗原に結合する2つ以上の抗原結合部分、特にFab分子が存在する実施形態では、GPRC5Dに結合する抗原結合部分は、好ましくはクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原に結合する抗原結合部分は従来のFab分子である。
【0156】
いくつかの実施形態において、第2の抗原は活性化T細胞抗原(本明細書では「活性化T細胞抗原結合部分、又は活性化T細胞抗原結合Fab分子」とも呼ばれる)である。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、活性化T細胞抗原への特異的結合能を有する1つ以下の抗原結合部分を含む。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は活性化T細胞抗原への一価結合を提供する。
【0157】
特定の実施形態では、第2の抗原は、CD3、特にヒトCD3(配列番号40)又はカニクイザルCD3(配列番号41)であり、最も具体的にはヒトCD3である。一実施形態では、第2の抗原結合部分は、ヒト及びカニクイザルCD3と交差反応性である(すなわち、それらに特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、第2の抗原はCD3のイプシロンサブユニット(CD3イプシロン)である。
【0158】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は配列番号29のHCDR1、配列番号30のHCDR2、配列番号31のHCDR3、配列番号32のLCDR1、配列番号33のLCDR2及び配列番号34のLCDR3を含む。
【0159】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は配列番号29のHCDR1、配列番号30のHCDR2、配列番号31のHCDR3を含むVHと、配列番号32のLCDR1、配列番号33のLCDR2及び配列番号34のLCDR3を含むVLとを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、ヒト化抗体である(ヒト化抗体から誘導される)。一実施形態では、VHは、ヒト化VHであり、及び/又はVLは、ヒト化VLである。一実施形態では、第2の抗原結合部分は、上のいずれかの実施形態と同じCDRを含み、更に、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0161】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列を含む。一実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列を含む。
【0162】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVH配列、及び配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のVL配列を含む。
【0163】
一実施形態では、第2の抗原結合部分のVHは、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合部分のVLは、配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0164】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号35のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0165】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号35のVH配列、及び配列番号36のVL配列を含む。
【0166】
一実施形態では、第2の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施形態では、第2の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特に、ヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号37及び38(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号39(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号37又は配列番号38のアミノ酸配列、特に配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷修飾」の状態で本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい、及び/又は、クロスオーバーFab分子での場合、1つ又は複数の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、配列番号39のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(具体的にはCH1ドメイン)は、「電荷修飾」状態において本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH又は定常ドメインCLとCH1、特に可変ドメインVLとVHが、互いに置き換わっているFab分子である(すなわち、そのような実施形態によれば、第2の抗原結合部分は、Fab軽鎖とFab重鎖の可変又は定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子である)。1つのそのような実施形態では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合部分は、従来のFab分子である。
【0168】
一実施形態では、第2の抗原(例えば、CD3などの活性化T細胞抗原)に結合する1つ以下の抗原結合部分は、二重特異性抗原結合分子中に存在する(すなわち、二重特異性抗原結合分子は、第2の抗原に対する一価の結合を提供する)。
【0169】
電荷修飾
本発明の二重特異性抗原結合分子は、それに含まれるFab分子に、1つ(又は2つより多い抗原結合Fab分子を含む分子の場合には更に多い)結合アーム中にVH/VL交換を有するFab由来の二重/多重特異性抗原結合分子の産生で生じ得るマッチしない重鎖との軽鎖の間違った対形成(Bence-Jones型副生成物)を減らすのに特に効果的であるアミノ酸置換を含んでいてもよい。(その全体が本明細書に参考として組み込まれるPCT国際公開第2015/150447号、特に、その中の実施例も参照)。所望ではない副生成物(特に、結合アームの1つにあるVH/VLドメインの交換を伴う二重特異性抗原結合分子中に存在するBence Jones型副生成物)と比較した場合の、所望な二重特異性抗原結合分子の比率は、帯電したアミノ酸に、CH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置に反対の電荷を導入することによって向上させることができる(本明細書では、「電荷修飾」と呼ばれることがある)。
【0170】
したがって、二重特異性抗原結合分子の第1及び第2の抗原結合部分が両方ともFab分子であり、抗原結合部分の1つ(特に、第2の抗原結合部分)において、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、いくつかの実施形態では、
i)第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、正に帯電したアミノ酸によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸によって置換されているか(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、又は
ii)第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、正に帯電したアミノ酸によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0171】
二重特異性抗原結合分子は、(i)及び(ii)で述べられる両方の改変を含まない。VH/VLが置き換わっている抗原結合部分の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換わっていない(すなわち、交換されていないままである)。
【0172】
より具体的な実施形態では、
i)第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されているか(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、又は
ii)第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されているか(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0173】
そのような一実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されているか(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0174】
更なる実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0175】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0176】
更に特定の実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0177】
更に特定の実施形態では、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、アルギニン(R)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0178】
特定の実施形態では、上の実施形態に係るアミノ酸置換が、第1の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1でなされる場合、第1の抗原結合部分の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
【0179】
又は、上の実施形態に係るアミノ酸置換が、第1の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1の代わりに、第2の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1でなされていてもよい。特定のこのような実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
【0180】
したがって、一実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0181】
更なる実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0182】
更に別の実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0183】
一実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0184】
別の実施形態では、第2の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、アルギニン(R)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、第2の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0185】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)第2の抗原に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0186】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)第2の抗原に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0187】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)第2の抗原に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0188】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)第2の抗原に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0189】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)第2の抗原に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0190】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)第2の抗原に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0191】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
(b)第2の抗原に結合し、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わったFab分子である、第2の抗原結合部分と
を含み;
第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって(特定の実施形態では、独立して、リジン(K)又はアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0192】
二重特異性抗原結合分子フォーマット
本発明に係る二重特異性抗原結合分子の構成要素は、種々の構成で互いに融合していてもよい。例示的な構造が
図1A-Zに描写されている。
【0193】
特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子に含まれる抗原結合部分は、Fab分子である。このような実施形態では、第1、第2、第3などの抗原結合部分は、それぞれ、本明細書では、第1、第2、第3などのFab分子と呼ばれる場合がある。
【0194】
一実施形態において、二重特異性抗原結合分子の第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分は、任意にペプチドリンカーを介して、互いに融合される。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分はそれぞれFab分子である。1つのそのような実施形態において、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。別のそのような実施形態において、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。(i)第2の抗原結合部分がFab重鎖のC末端で第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しているか、又は(ii)第1の抗原結合部分がFab重鎖のC末端で第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している実施形態では、追加的に、第1の抗原結合部分のFab軽鎖及び第2の抗原結合部分のFab軽鎖は、任意にペプチドリンカーを介して、互いに融合していてもよい。
【0195】
GPRC5Dなどの標的細胞抗原に特異的に結合することができる単一の抗原結合部分(Fab分子など)を有する二重特異性抗原結合分子(例えば、
図1A、
図1D、
図1G、
図1H、
図1K、
図1Lに示される)は、特に高親和性抗原結合部分の結合後に標的細胞抗原の内在化が予想される場合に有用である。そのような場合、標的細胞抗原に特異的な1つより多い抗原結合部分の存在は、標的細胞抗原の内部移行を増強し、それによって第2の抗原の利用能を低減し得る。
【0196】
しかし他の場合において、標的細胞抗原に特異的な2つ又はそれより多くの抗原結合部分(例えば、Fab分子)を、例えば、標的部位への標的化を最適化するため又は標的細胞抗原の架橋を可能にするために含むに二重特異性抗原結合分子(例えば、
図1B、1C、1E、1F、1I、1J,1M又は1Nに示されているものを参照されたい)を有することが有利である。
【0197】
したがって、特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3の抗原結合部分を含む。
【0198】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、第1の抗原すなわちGPRC5Dに結合する。一実施形態において、第3の抗原結合部分はFab分子である。
【0199】
一実施形態において、第3の抗原部分は第1の抗原結合部分と同一である。
【0200】
二重特異性抗原結合分子の第3の抗原結合部分は、科学的に明らかに不合理又は不可能でない限り、第1の抗原結合部分及び/又はGPRC5Dに結合する抗体に関して本明細書に記載される特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0201】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0202】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0203】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0204】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0205】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0206】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2及び配列番号4のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号5の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号6のLCDR2及び配列番号7のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0207】
一実施形態において、第3の抗原結合部分は、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、第3の抗原結合部分は、ヒト化抗体である(ヒト化抗体から誘導される)。一実施形態では、VHは、ヒト化VHであり、及び/又はVLは、ヒト化VLである。一実施形態では、第3の抗原結合部分は、上のいずれかの実施形態と同じCDRを含み、更に、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0209】
一実施形態では、第3の抗原結合部分のVHは、配列番号13、配列番号15、配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、第3の抗原結合部分のVLは、配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0210】
一実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号13、配列番号15、配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH配列、並びに配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVL配列を含む。
【0211】
一実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号13、配列番号15、配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるアミノ酸配列を含むVH、並びに配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0212】
一実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号13、配列番号15、配列番号48、配列番号49、配列番号57及び配列番号58の群から選択されるVH配列、並びに配列番号14、配列番号16、配列番号52、配列番号53、配列番号63及び配列番号64の群から選択されるVL配列を含む。
【0213】
特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号13のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号13のVH配列、及び配列番号14のVL配列を含む。
【0214】
特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号15のVH配列、及び配列番号16のVL配列を含む。
【0215】
特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号48のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号53のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号48のVH配列、及び配列番号53のVL配列を含む。
【0216】
特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号49のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号52のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号49のVH配列、及び配列番号52のVL配列を含む。
【0217】
特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号57のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号64のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号57のVH配列、及び配列番号64のVL配列を含む。
【0218】
特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号58のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号63のアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号58のVH配列、及び配列番号63のVL配列を含む。
【0219】
一実施形態では、第3の抗原結合部分は、ヒト定常領域を含む。一実施形態では、第3の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特に、ヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号37及び38(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号39(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。いくつかの実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号37又は配列番号38のアミノ酸配列、特に配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷修飾」の状態で本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい、及び/又は、クロスオーバーFab分子での場合、1つ又は複数の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第3の抗原結合部分は、配列番号39のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(具体的にはCH1ドメイン)は、「電荷修飾」状態において本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい。
【0220】
特定の実施形態では、第3の抗原結合部分及び第1の抗原結合部分はそれぞれFab分子であり、第3の抗原結合部分は第1の抗原結合部分と同一である。したがって、これらの実施形態では、第1及び第3の抗原結合部分は、同じ重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含み、同じドメイン配置(すなわち、従来の又はクロスオーバーの)を有する。更に、これらの実施形態において、第3の抗原結合部分は、存在する場合、第1の抗原結合部分と同じアミノ酸置換を含む。例えば、本明細書において「電荷修飾」と記載されるアミノ酸置換は、第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分の各々の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われる。代替的に、前記アミノ酸置換は、第2の抗原結合部分(特定の実施形態ではFab分子でもある)の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われてもよく、第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1では行われない。
【0221】
第1の抗原結合部分と同様に、第3の抗原結合部分は、特に、従来のFab分子である。しかしながら、第1及び第3の抗原結合部分がクロスオーバーFab分子である(且つ第2の抗原結合部分が従来のFab分子である)実施形態も考慮される。したがって、特定の実施形態では、第1及び第3の抗原結合部分は、各々が従来のFab分子であり、第2の抗原結合部分は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。他の実施形態では、第1及び第3の抗原結合部分は、各々がクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合部分は従来のFab分子である。
【0222】
第3の抗原結合部分が存在する場合、特定の実施形態では、第1及び第3の抗原部分はGPRC5Dに結合し、第2の抗原結合部分は第2の抗原、特に活性化T細胞抗原、より具体的にはCD3、最も具体的にはCD3イプシロンに結合する。
【0223】
特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。Fcドメインの第1及び第2のサブユニットは、安定な会合が可能である。
【0224】
本発明による二重特異性抗原結合分子抗体は、異なる構造を有することができ、すなわち、第1、第2(及び任意に第3)の抗原結合部分は、互いに、異なる様式でFcドメインに融合していてもよい。構成要素は、直接的に、又は好ましくは1つ又は複数の適切なペプチドリンカーを介して、互いに融合していてもよい。Fab分子の融合が、FcドメインのサブユニットのN末端へのものである場合、それは典型的には免疫グロブリンヒンジ領域を介するものである。
【0225】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の抗原結合部分は、各々がFab分子であり、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような実施形態では、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で、第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端又はFcドメインの他方のサブユニットのN末端に融合していてもよい。特定のこのような実施形態では、上記第1の抗原結合部分は、従来のFab分子であり、第2の抗原結合部分は、明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。他のこのような実施形態では、上記第1のFab分子が、クロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は、従来のFab分子である。
【0226】
一実施形態において、第1及び第2の抗原結合部分は、各々がFab分子であり、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、
図1G及び1Kに概略的に描写されている(これらの実施例における第2の抗原結合ドメインは、VH/VLクロスオーバーFab分子である)。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
【0227】
別の実施形態において、第1及び第2の抗原結合部分は、各々がFab分子であり、第1及び第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のFab分子から本質的になり、Fcドメインは、第1及び第2のサブユニットと、任意に1つ又は複数のペプチドリンカーで構成され、第1及び第2のFab分子は、それぞれ、Fab重鎖のC末端をFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合する。そのような構造は、
図1A及び1Dに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分は従来のFab分子である)。第1及び第2のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。特定の実施形態では、第1及び第2のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。具体的な実施形態では、免疫グロブリンヒンジ領域は、ヒトIgG
1ヒンジ領域であり、特に、Fcドメインは、IgG
1Fcドメインである。
【0228】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の抗原結合部分は、各々がFab分子であり、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような実施形態では、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で、第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端又は(上述のように)Fcドメインの他方のサブユニットのN末端に融合していてもよい。特定のこのような実施形態では、上記第1の抗原結合部分は、従来のFab分子であり、第2の抗原結合部分は、明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。他のこのような実施形態では、上記第1のFab分子が、クロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は、従来のFab分子である。
【0229】
一実施形態において、第1及び第2の抗原結合部分は、各々がFab分子であり、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。このような構造は、
図1H及び1Lに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合部分はVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
【0230】
いくつかの実施形態において、第3の抗原結合部分、特に第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。特定のこのような実施形態では、上記第1及び第3のFab分子はそれぞれ従来のFab分子であり、第2のFab分子は、明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。他のこのような実施形態では、上記第1及び第3のFab分子はそれぞれクロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は、従来のFab分子である。
【0231】
特定のこのような実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分は、それぞれFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しており、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1、第2及び第3のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、
図1B及び1E(これらの実施例において、第2の抗原結合部分はVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分は従来のFab分子である)と、
図1J及び1N(これらの実施例において、第2の抗原結合部分は従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。第2及び第3のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。特定の実施形態では、第2及び第3のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域を介して、それぞれFcドメインに融合している。具体的な実施形態では、免疫グロブリンヒンジ領域は、ヒトIgG
1ヒンジ領域であり、特に、Fcドメインは、IgG
1Fcドメインである。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
【0232】
別のこのような実施形態では、第1及び第3の抗原結合部分は、それぞれFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しており、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第1、第2及び第3のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意に、1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、
図1C及び1F(これらの実施例において、第2の抗原結合部分はVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分は従来のFab分子である)と、
図1I及び1M(これらの実施例において、第2の抗原結合部分は従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。第1及び第3のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。特定の実施形態では、第1及び第3のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域によって、それぞれFcドメインに融合する。具体的な実施形態では、免疫グロブリンヒンジ領域は、ヒトIgG
1ヒンジ領域であり、特に、Fcドメインは、IgG
1Fcドメインである。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
【0233】
Fab分子が、免疫グロブリンヒンジ領域を介してFab重鎖のC末端をFcドメインのそれぞれのサブユニットのN末端に融合する二重特異性抗原結合分子の構成において、2つのFab分子、ヒンジ領域及びFcドメインは、本質的に免疫グロブリン分子を形成する。特定の実施形態では、免疫グロブリン分子は、IgGクラス免疫グロブリンである。なお更なる特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG1サブクラス免疫グロブリンである。別の実施形態では、免疫グロブリンは、IgG4サブクラス免疫グロブリンである。更に特定の実施形態では、免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。他の実施形態では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。一実施形態では、免疫グロブリンは、ヒト定常領域、特に、ヒトFc領域を含む。
【0234】
本発明の二重特異性抗原結合分子のいくつかにおいて、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、任意にペプチドリンカーを介して、互いに融合している。第1及び第2のFab分子の構造に応じて、第1のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端で第2のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合していてもよく、又は第2のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端で第1のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合していてもよい。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖の融合は、適合しないFab重鎖及び軽鎖の誤対合をさらに低減し、本発明の二重特異性抗原結合分子の一部の発現に必要なプラスミドの数も低減する。
【0235】
抗原結合部分は、Fcドメインに又は互いに、直接的に又は1個又は複数個のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合していてもよい。ペプチドリンカーは、当該技術分野に知られており、本明細書に説明されている。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーが挙げられる。「n」は、一般的に、1~10、典型的には2~4の整数である。一実施形態では、上記ペプチドリンカーは、少なくとも5アミノ酸長を有し、一実施形態では、5~100アミノ酸長、更なる実施形態では、10~50アミノ酸長を有する。一実施形態では、前記リンカーペプチドは、(GxS)n又は(GxS)nGmであり、G=グリシン、S=セリン、及び(x=3、n=3、4、5又は6、m=0、1、2又は3)、又は(x=4、n=2、3、4又は5、m=0、1、2又は3)であり、一実施形態では、x=4、n=2又は3、更なる実施形態では、x=4、n=2である。一実施形態では、前記ペプチドリンカーは(G4S)2である。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖を互いに融合するのに特に適したペプチドリンカーは、(G4S)2である。第1及び第2のFab断片のFab重鎖を接続するために適した例示的なペプチドリンカーは、配列(D)-(G4S)2(配列番号43及び44)を含む。別の適切なそのようなリンカーは、配列(G4S)4を含む。加えて、リンカーは、免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含んでいてもよい。特に、Fab分子がFcドメインサブユニットのN末端に融合する場合、免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を介して、さらなるペプチドリンカーを伴い又は伴うことなく融合していてもよい。
【0236】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、Fcドメインサブユニット(VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドと、第1のFab分子のFab重鎖が、Fcドメインサブユニット(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab重鎖可変領域は、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。
【0237】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、Fcドメインサブユニット(VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドと、第1のFab分子のFab重鎖が、Fcドメインサブユニット(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第2のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(2)-CH1(2)))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。
【0238】
いくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。
【0239】
これらの実施形態のいくつかにおいて、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。これらの実施形態の他のいくつかにおいて、適切であれば、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドと共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VL(1)-CL(1))、又は第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CL(1)-VH(2)-CL(2))をさらに含む。
【0240】
これらの実施形態による二重特異性抗原結合分子は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖がカルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含むことができる。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。
【0241】
いくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。
【0242】
これらの実施形態のいくつかにおいて、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。これらの実施形態の他のいくつかにおいて、適切であれば、二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドと共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VL(1)-CL(1))、又は第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CL(1)-VL(2)-CH1(2))をさらに含む。
【0243】
これらの実施形態による二重特異性抗原結合分子は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖がカルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含むことができる。特定の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合によって共有結合している。
【0244】
特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子はFcドメインを含まない。特定のこのような実施形態では、上記第1及び存在する場合は第3のFab分子はそれぞれ従来のFab分子であり、第2のFab分子は、明細書に記載するクロスオーバーFab分子(すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子)である。他のこのような実施形態では、上記第1及び存在する場合は第3のFab分子はそれぞれクロスオーバーFab分子であり、第2のFab分子は、従来のFab分子である。
【0245】
1つのそのような実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2の抗原結合部分、並びに任意に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1及び第2の抗原結合部分は、両方ともFab分子であり、第1の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、
図1O及び1Sに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分は従来のFab分子である)。
【0246】
別のそのような実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2の抗原結合部分、並びに任意に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1及び第2の抗原結合部分は、両方ともFab分子であり、第2の抗原結合部分は、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、
図1P及び1Tに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合部分は従来のFab分子である)。
【0247】
いくつかの実施形態において、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、二重特異性抗原結合分子は、第3の抗原結合部分、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。特定のそのような実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第1、第2及び第3のFab分子、並びに任意に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、
図1Q及び1U(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び抗原結合部分は各々が従来のFab分子である)、又は
図1X及び1Z(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分は各々がVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。
【0248】
いくつかの実施形態において、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、二重特異性抗原結合分子は、第3の抗原結合部分、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。特定のそのような実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第1、第2及び第3のFab分子、並びに任意に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。そのような構造は、
図1R及び1V(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び抗原結合部分は各々が従来のFab分子である)、又は
図1W及び1Y(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合部分は各々がVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。
【0249】
特定の実施形態において、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab重鎖可変領域は、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。
【0250】
特定の実施形態において、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab重鎖可変領域は、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。
【0251】
特定の実施形態において、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第2のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(2)-CH1(2)))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。
【0252】
特定の実施形態において、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab重鎖可変領域は、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。
【0253】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab重鎖可変領域は、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
【0254】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第2のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(2)-CH1(2)))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
【0255】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が、軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab重鎖可変領域は、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
【0256】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第2のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(2)-CH1(2)))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
【0257】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が、軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(すなわち、第3のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(2)-CH1(2)-VL(1)-CH1(1)-VL(3)-CH1(3))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第1のFab分子のFab重鎖可変領域は、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
【0258】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(すなわち、第3のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽鎖定常領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(2)-CH1(2)-VH(1)-CL(1)-VH(3)-CL(3))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第1のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))をさらに含む。
【0259】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第3のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が、軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第3のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3)-VL(1)-CH1(1)-VH(2)-CH1(2))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第1のFab分子のFab重鎖可変領域は、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
【0260】
特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第3のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域に置き換えられている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3)-VH(1)-CL(1)-VH(2)-CH1(2))を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、更に、ポリペプチドを含み、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域は、第1のFab分子のFab重鎖定常領域(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))をさらに含む。
【0261】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0262】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0263】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0264】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0265】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0266】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0267】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0268】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0269】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0270】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0271】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0272】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0273】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0274】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
(i)(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0275】
本発明による二重特異性抗原結合分子の異なる構成の全てにおいて、本明細書に記載するアミノ酸置換は、存在する場合、第1及び(存在する場合は)第3の抗原結合部分/Fab分子のCH1及びCLドメイン、又は第2の抗原結合部分/Fab分子のCH1又はCLドメインのいずれかにあってもよい。好ましくは、それらは、第1及び(存在する場合)第3の抗原結合部分/Fab分子のCH1ドメイン及びCLドメインにおけるものである。本発明の概念によれば、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合部分/Fab分子において行われる場合、このようなアミノ酸置換は、第2の抗原結合部分/Fab分子において行われない。逆に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第2の抗原結合部分/Fab分子において行われる場合、このようなアミノ酸置換は、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合部分/Fab分子において行われない。アミノ酸置換は、特定的には、Fab分子を含む二重特異性抗原結合分子でなされ、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH1が互いに置き換わっている。
【0276】
本発明による二重特異性抗原結合分子の特定の実施形態において、特に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合部分/Fab分子において行われる場合、第1(及び存在する場合、第3)のFab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプのものである。本発明による二重特異性抗原結合分子の他の実施形態では、特に、本明細書に記載のアミノ酸置換が、第2の抗原結合部分/Fab分子内で行われる実施形態では、第2の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。いくつかの実施形態では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLと、第2の抗原結合部分/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
【0277】
一実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(a)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、(a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0278】
一実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(a)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、(a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0279】
一実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(a)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、(a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0280】
一実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(a)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、(a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0281】
一実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(a)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、(a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0282】
一実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(a)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、(a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0283】
一実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(a)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、(a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0284】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0285】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0286】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0287】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0288】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0289】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0290】
特定の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1の抗原に結合し、第1の抗原結合部分と同一である第3の抗原結合部分と、
d)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分及びc)での第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(i)a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びC)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)b)の第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合部分及びc)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0291】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号84のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0292】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号83の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号85のHCDR2、及び配列番号86のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号87の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号88のLCDR2、及び配列番号89のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0293】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0294】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号91のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号96のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0295】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号90の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号92のHCDR2、及び配列番号93のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号94の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号95のLCDR2、及び配列番号97のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0296】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号1の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号4の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0297】
別の実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分であって、該第1の抗原がGPRC5Dであり、該第1の抗原結合部分が、配列番号7の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号8のHCDR2、及び配列番号9のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号10の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むFab分子である、第1の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、該第2の抗原が活性化T細胞抗原、特にCD3、より具体的にはCD3イプシロンであり、該第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
(a)の第1の抗原結合部分及び(b)の第2の抗原結合部分は、各々がFab重鎖のC末端で(c)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0298】
上記の実施形態のいずれかによると、二重特異性抗原結合分子の構成要素(例えば、Fab分子、Fcドメイン)は、直接的に又は様々なリンカーを介して、特に本明細書に記載される又は当該技術分野において知られている、1個又は複数個のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されていてもよい。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれ、「n」は通常1~10、典型的には2~4の整数である。
【0299】
特定の態様において、本発明は、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分であって、第1の抗原がGPRC5Dであり、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分がそれぞれ、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む(従来の)Fab分子である、第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、第2の抗原がCD3であり、第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっており、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
さらに、
a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びa)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0300】
特定の態様において、本発明は、二重特異性抗原結合分子であって、
a)第1の抗原に結合する第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分であって、第1の抗原がGPRC5Dであり、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分がそれぞれ、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む(従来の)Fab分子である、第1の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分と、
b)第2の抗原に結合する第2の抗原結合部分であって、第2の抗原がCD3であり、第2の抗原結合部分がFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっており、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、第2の抗原結合部分と、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し;
a)での第1及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)によって置換されており(Kabatによるナンバリング)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も特定的にはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによるナンバリング)、a)での第1及び第3の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによるナンバリング)、
さらに、
a)の第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でb)の第2の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合し、b)の第2の抗原結合部分及びa)の第3の抗原結合部分が、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0301】
本発明のこの態様による一実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、位置366のトレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、位置407のチロシン残基がバリン残基で置き換えられており(Y407V)、任意に位置366のトレオニン残基がセリン残基で置き換えられており(T366S)、位置368のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0302】
本発明のこの態様によるさらなる実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、位置354のセリン残基がシステイン残基で置き換えられている(S354C)か又は位置356のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられており(E356C)(特に、位置354のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、位置349のチロシン残基がシステイン残基と置により置き換えられて(Y349C)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0303】
本発明のこの態様によるさらなる実施形態では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの各々において、位置234のロイシン残基がアラニン残基(L234A)と置き換わっており、位置235のロイシン残基がアラニン残基と置き換わっており(L235A)、位置329のプロリン残基がグリシン残基により置き換えられている(P329G)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0304】
本発明のこの態様によるさらなる実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。
【0305】
特定の具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号17の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号18の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号19の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号20の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。更に特定の具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号17のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号18のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号19のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号20のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0306】
別の具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号21の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号22の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号23の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号24の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。更に具体的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号21のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号23のアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0307】
Fcドメイン
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、第1及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。二重特異性抗原結合分子に関連して本明細書中に記載されるFcドメインの特徴は、本発明の抗体に含まれるFcドメインに等しく適用され得ることが理解される。
【0308】
二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、ダイマーであり、それぞれのサブユニットは、CH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。一実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、1つを超えないFc分子を含む。
【0309】
一実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgG Fcドメインである。特定の実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。別の実施形態では、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである(Kabat EUインデックスナンバリング)。このアミノ酸置換は、インビボでのIgG4抗体のFabアーム交換を低減する(Stubenrauch et al.,Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照されたい)。更に特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。更により特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。ヒトIgG1Fc領域の例示的な配列は、配列番号42で与えられる。
【0310】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
本発明による二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合し得る異なる抗原結合部分を含み、したがってFcドメインの2つのサブユニットは、典型的には2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれる。これらのポリペプチドの組換え同時発現及びその後の二量体化が、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組合せをもたらす。組換え産生における二重特異性抗原結合分子の収率及び純度を高めるために、二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、所望なポリペプチドの会合を促進する改変を導入することが有利である。
【0311】
したがって、特定の実施形態では、本発明に係る二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も長いタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、一実施形態では、当該修飾は、FcドメインのCH3ドメインの中にある。
【0312】
ヘテロ二量体化を強化するために、FcドメインのCH3ドメイン中の修飾にいくつかの手法が存在し、例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012058768号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号に十分に記載されている。典型的には、全てのかかる手法において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインと、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインが、両方とも、各CH3ドメイン(又はそれを含む重鎖)が、自身とホモ二量化せず、相補的に操作された他のCH3ドメインとヘテロ二量化するように仕向けられている相補的な様式で操作されている(その結果、第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインがヘテロ二量化し、2つの第1のCH3ドメイン又は2つの第2のCH3ドメインの間のホモ二量体は形成されない)。改良された重鎖ヘテロ二量化のためのこれらの異なる手法は、重鎖/軽鎖の誤った対形成と、Bence Jones型副生成物が低下した二重特異性抗原結合分子において、重鎖-軽鎖改変と組み合わせた異なる代替例として想定される(例えば、1つの結合アームでのVH及びVLの交換/置き換えと、CH1/CL界面で、帯電したアミノ酸を反対の電荷で置換したものの導入)。
【0313】
具体的な実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」修飾であり、Fcドメインの2つのサブユニットの1つに「ノブ」修飾と、Fcドメインの2つのサブユニットの他の1つに「ホール」修飾とを含む。
【0314】
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある対応する空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と交換することによって構築される。突起と同一又は同様のサイズの代償的空洞が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作られる。
【0315】
したがって、特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置換え可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置換え可能である。
【0316】
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する当該アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)からなる群から選択される。
【0317】
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する当該アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)及びバリン(V)からなる群から選択される。
【0318】
突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的突然変異誘発によって、又はペプチド合成によって作成することができる。
【0319】
具体的な実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)(のCH3ドメイン)において、位置366のトレオニン残基が、トリプトファン残基と置き換わっており(T366W)、Fcドメイン(「ホール」サブユニット)の第2のサブユニット(のCH3ドメイン)において、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換わっている(Y407V)。一実施形態では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置366のトレオニン残基が、セリン残基と置き換わっており(T366S)、位置368のロイシン残基が、アラニン残基と置き換わっている(L368A)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0320】
なお更なる実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換わっている(S354C)か、又は位置356のグルタミン酸残基が、システイン残基と置き換わっており(E356C)(特に、位置354のセリン残基がシステイン残基と置き換わっており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換わっている(Y349C)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fcドメインの2つのサブユニットの間にジスルフィド架橋の形成を生じ、二量体を更に安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
【0321】
特定の実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0322】
特定の実施形態では、第2の抗原(例えば、活性化T細胞抗原)に結合する抗原結合部分は、(任意に、GPRC5Dに結合する第1の抗原結合部分及び/又はペプチドリンカーを介して)Fcドメインの第1サブユニット(「ノブ」修飾を含む)に融合される。理論に拘束されることを望まないが、第2の抗原(例えば、活性化T細胞抗原)に結合する抗原結合部分の、Fcドメインのノブ含有サブユニットへの融合は、活性化T細胞抗原に結合する2つの抗原結合部分を含む抗原結合分子の生成(2つのノブ含有ポリペプチドの立体衝突)を(更に)最小限に抑える。
【0323】
ヘテロ二量体化を強化するCH3修飾についての他の技術が本発明の代替例として考慮され、例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号、国際公開第2013/096291号に記載されている。
【0324】
一実施形態では、欧州特許第1870459号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。この手法は、Fcドメインの2つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置への反対の電荷を有する荷電アミノ酸の導入に基づく。本発明の二重特異性抗原結合分子の1つの好ましい実施形態は、アミノ酸突然変異R409D;(Fcドメインの)2つのCH3ドメインの1つにおけるK370E及びアミノ酸突然変異D399K;FcドメインのCH3ドメインの他の1つにおけるE357K(Kabat EUインデックスによるナンバリング)である。
【0325】
別の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異T366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異T366S、L368A、Y407Vを含み、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインに更なるアミノ酸突然変異R409D;K370E、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異D399K;E357Kを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0326】
別の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異S354C、T366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含むか、又は前記二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異Y349C、T366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異S354C、T366S、L368A、Y407Vを含み、更に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異R409D;K370Eを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異D399K;E357Kを含む(全てKabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0327】
一実施形態では、国際公開第2013/157953号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異L351Dを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、更なるアミノ酸突然変異L351Kを含む。更なる実施形態では、第2のCH3ドメインは、更に、Y349E、Y349D及びL368E(好ましくはL368E)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)から選択されるアミノ酸突然変異を含む。
【0328】
一実施形態では、国際公開第2012/058768号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366A、K409Fを含む。更なる実施形態では、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390又はK392にある更なるアミノ酸突然変異、例えば、(a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、(b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、(c)S400E、S400D、S400R又はS400K、(d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、(e)N390R、N390K又はN390D、(f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392E(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366V、K409Fを含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366A、K409Fを含む。更なる実施形態では、第2のCH3ドメインは、更に、アミノ酸突然変異K392E、T411E、D399R及びS400Rを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0329】
一実施形態では、国際公開第2011/143545号に記載されるヘテロ二量化手法が代わりに使用され、例えば、368及び409からなる群から選択される位置にアミノ酸改変を有する(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0330】
一実施形態では、上に記載するホールにノブを入れる技術も使用する、国際公開第2011/090762号に記載されるヘテロ二量化手法が、代わりに使用される。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異Y407Aを含む。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異Y407Tを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0331】
一実施形態では、二重特異性抗原結合分子又はそのFcドメインは、IgG2サブクラスであり、国際公開第2010/129304号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。
【0332】
代替的な実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、例えば、PCT国際公開第2009/089004号に記載されるように、静電操縦効果に介在する修飾を含む。一般に、この方法は、ホモ二量体形成が静電的に望ましくないが、ヘテロ二量化が静電的に望ましくなるように、荷電アミノ酸残基による2つのFcドメインサブユニットの界面での1つ又は複数のアミノ酸残基の置き換えを伴う。かかる一実施形態では、第1のCH3ドメインは、K392又はN392の負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK392D又はN392D)によるアミノ酸置換を含み、第2のCH3ドメインは、D399、E356、D356又はE357の正に帯電したアミノ酸によるアミノ酸置換(例えば、リジン(K)又はアルギニン(R)、好ましくはD399K、E356K、D356K又はE357K、より好ましくはD399K及びE356K)を含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、更に、K409又はR409の負に帯電したアミノ酸によるアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK409D又はR409D)を含む。更なる実施形態では、第1のCH3ドメインは、更に、又はこれに代えて、K439及び/又はK370の負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))(全てKabat EUインデックスによるナンバリング)によるアミノ酸置換を含む。
【0333】
なお更なる実施形態では、国際公開第2007/147901号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異K253E、D282K及びK322Dを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異D239K、E240K及びK292Dを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0334】
更に別の実施形態では、国際公開第2007/110205号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用してもよい。
【0335】
一実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392D及びK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356K及びD399Kを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0336】
Fc受容体結合及び/又はエフェクタ機能を低下させるFcドメイン修飾
Fcドメインは、二重特異性抗原結合分子(又は抗体)に、標的組織への良好な蓄積に寄与する長い血清半減期、望ましい組織-血液分布比を含め、望ましい薬物動態特性を与える。しかし、同時に、好ましい抗原を含む細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する二重特異性抗原結合分子(又は抗体)の望ましくない標的化を引き起こす場合がある。更に、Fc受容体シグナル伝達経路の共活性化は、T細胞活性化特性(例えば、第2の抗原結合部分が活性化T細胞抗原に結合する二重特異性抗原結合分子の実施形態において)及び二重特異性抗原結合分子の長い半減期と組み合わせて、全身投与時にサイトカイン受容体の過剰活性化及び重度の副作用をもたらすサイトカイン放出をもたらし得る。T細胞以外の(Fc受容体を有する)免疫細胞の活性化は、例えばNK細胞によるT細胞の潜在的破壊に起因して、二重特異性抗原結合分子(特に、第2の抗原結合部分が活性化T細胞抗原に結合する二重特異性抗原結合分子)の有効性を低下させることさえある。
【0337】
したがって、特定の実施形態では、本発明による二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、天然IgG1Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクタ機能の低下を示す。1つのこのような実施形態では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)は、ネイティブIgG1Fcドメイン(又はネイティブIgG1Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の結合親和性を示し、及び/又はネイティブIgG1Fcドメイン(又はネイティブIgG1Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクタ機能を示す。一実施形態では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)は、Fc受容体に実質的に結合せず、及び/又はエフェクタ機能を誘発しない。特定の実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より特定的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も特定的には、ヒトFcγRIIIaである。一実施形態では、エフェクタ機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌の群から選択される1つ又は複数である。特定の実施形態では、エフェクタ機能はADCCである。一実施形態では、Fcドメインは、ネイティブIgG1Fcドメインと比較して、新生児Fc受容体(FcRn)に実質的に同様の結合親和性を示す。FcRnに対する実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)が、ネイティブIgG1Fcドメイン(又はネイティブIgG1Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子と比較して、FcRnに対して約70%より大きく、特に約80%より大きく、より特定的には約90%より大きい結合親和性を示す場合に達成される。
【0338】
特定の実施形態では、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性が低下し、及び/又はエフェクタ機能が低下するように操作される。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクタ機能を下げる1つ又は複数のアミノ酸突然変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、同じ1つ又は複数のアミノ酸突然変異が存在する。一実施形態では、アミノ酸突然変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を下げる。一実施形態では、アミノ酸突然変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に下げる。Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を下げる1つより多いアミノ酸突然変異が存在する実施形態では、これらのアミノ酸突然変異の組合せが、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、又は更に少なくとも50分の1まで下げてもよい。一実施形態では、操作されたFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、操作されていないFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子と比較して、Fc受容体の結合親和性の20%未満、特に10%未満、より特定的には5%未満を示す。特定の実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。いくつかの実施形態では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。いくつかの実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より特定的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も特定的には、ヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの受容体のそれぞれへの結合が低減される。いくつかの実施形態では、相補性構成要素に対する結合親和性(特定的にはC1qに対する結合親和性)も低下する。一実施形態では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は、低下しない。FcRnに対する実質的に同様の結合(すなわち、前記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保護)は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)が、FcRnに対するFcドメインの操作されていない形態(又はFcのこの操作されていない形態を含む二重特異性抗原結合分子)の結合親和性の約70%を超える結合親和性を示す場合に達成される。Fcドメイン、又はFcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、このような親和性の約80%より大きく、更に約90%より大きい親和性を示してもよい。特定の実施形態では、二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、エフェクタ機能が低下するように操作される。エフェクタ機能の低減には、補体依存性細胞傷害(CDC)の低減、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低減、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の低減、サイトカイン分泌の低減、抗原提示細胞によるイムノコンジュゲート媒介性抗原取り込みの低減、NK細胞への結合の低減、マクロファージへの結合の低減、単球への結合の低減、多形核細胞への結合の低減、直接的なシグナル伝達誘導性アポトーシスの低減、標的結合抗体との架橋の低減、樹状細胞成熟の低減、又はT細胞プライミングの低減の1つ又は複数が挙げられ得るが、これらに限定されない。一実施形態では、エフェクタ機能の低下は、CDCの低下、ADCCの低下、ADCPの低下及びサイトカイン分泌の低下の群から選択される1つ又は複数である。特定の実施形態では、低下したエフェクタ機能は低下したADCCである。一実施形態では、ADCCの低下は、操作されていないFcドメイン(又は操作されていないFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子)によって誘発されるADCCの20%未満である。
【0339】
一実施形態では、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクタ機能を下げるアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換である。一実施形態では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、L234、L235及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235A(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含む。かかる一実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。一実施形態では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329G(Kabat EUインデックスによるナンバリング)である。一実施形態では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置に更なるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。より具体的な実施形態では、更なるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施形態では、Fcドメインは、位置P329、L234及びL235のアミノ酸置換(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含む。より特定の実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸突然変異L234A、L235A及びP329Gを含む(「P329G LALA」、「PGLALA」又は「LALAPG」)。特定的には、特定の実施形態では、Fcドメインのそれぞれのサブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスナンバリング)を含み、すなわち、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットそれぞれにおいて、位置234のロイシン残基が、アラニン残基(L234A)と置き換わっており、位置235のロイシン残基が、アラニン残基(L235A)と置き換わっており、位置329のプロリン残基が、グリシン残基(P329G)と置き換わっている(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0340】
かかる一実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組合せは、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2012/130831号に記載されているように、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体(同様に、補体)結合をほとんど完全に消滅させる。国際公開第2012/130831号は、かかる突然変異Fcドメインの調製方法及びその特性、例えばFc受容体結合又はエフェクタ機能の決定方法も記載する。
【0341】
IgG4抗体は、IgG1抗体と比較して、Fc受容体への結合親和性の低減及びエフェクタ機能の低減を示す。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgG4Fcドメイン、特にヒトIgG4Fcドメインである。一実施形態では、IgG4 Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。Fc受容体及び/又はそのエフェクタ機能に対する結合親和性を更に低下させるために、一実施形態では、IgG4Fcドメインは、位置L235にアミノ酸置換を含み、特定的には、アミノ酸置換L235Eを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。別の実施形態では、IgG4Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、特定的には、アミノ酸置換P329Gを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。特定の実施形態では、IgG4Fcドメインは、位置S228、L235及びP329にアミノ酸置換を含み、特異的には、アミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。かかるIgG4 Fcドメイン突然変異体及びこれらのFcγ受容体結合特性は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2012/130831号に記載されている。
【0342】
特定の実施形態では、ネイティブIgG1Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクタ機能の低下を示すFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び任意にP329Gを含むヒトIgG1Fcドメイン、又はアミノ酸置換S228P、L235E及び任意にP329Gを含むヒトIgG4Fcドメインである(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0343】
特定の実施形態では、FcドメインのN-グリコシル化は、除去されている。かかる一実施形態では、Fcドメインは、位置N297にアミノ酸突然変異、特定的には、アスパラギンをアラニンに置き換えるアミノ酸置換(N297A)又はアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換(N297D)を含む(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。
【0344】
本明細書上記及びPCT国際公開第2012/130831号に記載されているFcドメインに加え、Fc受容体結合及び/又はエフェクタ機能が低減されたFcドメインには、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を有するものも挙げられる(米国特許第6,737,056号)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)。このようなFc突然変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ又はそれより多くの位置での置換を有するFc突然変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0345】
突然変異Fcドメインは、当該技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用い、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾によって調製することができる。遺伝的方法は、コードDNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等を含んでいてもよい。正しいヌクレオチド変化は、例えば、スクリーニングによって確認することができる。
【0346】
Fc受容体に対する結合は、例えば、ELISAによって、又はBIAcore装置(GE Healthcare)等の標準的な装置と組換え発現によって得られ得るFc受容体を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって、容易に決定することができる。又は、Fc受容体に対するFcドメイン又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株(例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞)を用いて評価されてもよい。
【0347】
Fcドメイン、又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子のエフェクタ機能は、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5,500,362号、Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,7059-7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al.,J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリ(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA)のためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI))。かかるアッセイに有用なエフェクタ細胞には、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。これに代えて、又は更に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価されてもよい。
【0348】
いくつかの実施形態では、相補性構成要素に対する(特定的にはC1qに対する)Fcドメインの結合が低下する。したがって、Fcドメインが低減されたエフェクタ機能を有するように改変されるいくつかの実施形態では、上記低減されたエフェクタ機能は、低減されたCDCを含む。C1q結合アッセイは、Fcドメイン又はFcドメインを含む二重特異性抗原結合分子がC1qに結合することができ、したがってCDC活性を有するかどうかを決定するために行われ得る。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J Immunol Methods 202、163(1996);Cragg et al.,Blood 101、1045-1052(2003);及びCragg and Glennie、Blood 103、2738-2743(2004)を参照されたい)。
【0349】
FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野に既知の方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006);国際公開第2013/120929号を参照されたい)。
【0350】
ポリヌクレオチド
本発明は更に、本明細書に記載した抗体又は二重特異性抗原結合分子、又はその断片をコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、当該断片は、抗原結合断片である。
【0351】
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドは、完全な抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、又は同時発現される複数の(例えば、2つ又はそれより多くの)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。同時発現するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、例えばジスルフィド結合、又は他の手段により会合し、機能性抗体又は二重特異性抗原結合分子を形成することができる。例えば、抗体又は二重特異性抗原結合分子の軽鎖部分は、抗体又は二重特異性抗原結合分子の重鎖を含む抗体又は二重特異性抗原結合分子の部分とは別個のポリヌクレオチドによってコードされ得る。同時発現する際、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと会合して、抗体又は二重特異性抗原結合分子を形成する。別の例では、2つのFcドメインサブユニットのうち一方と、任意に1つ又は複数のFab分子(の一部)とを含む抗体又は二重特異性抗原結合分子の一部分は、2つのFcドメインサブユニットの他方と、任意にFab分子(の一部)とを含む抗体又は二重特異性抗原結合分子の一部分に由来する別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。同時発現する場合、Fcドメインサブユニットが会合し、Fcドメインを形成する。
【0352】
いくつかの実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、本明細書に記載する本発明に係る抗体又は二重特異性抗原結合分子全体をコードする。他の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子に含まれるポリペプチドをコードする。
【0353】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチド又は核酸は、DNAである。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、RNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。本発明のRNAは、一本鎖又は二本鎖であってもよい。
【0354】
組換え方法
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、例えば、固体状態ペプチド合成(例えば、Merrifield固相合成)又は組換え産生によって得られてもよい。組換え産生のために、抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを、例えば上記のように単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のベクターに挿入する。かかるポリヌクレオチドは、従来の手順を用い、容易に単離され、配列決定されてもよい。一実施形態では、本発明の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むベクター、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者に周知の方法を用いて、適切な転写/翻訳制御シグナルに従い、抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)のコード配列を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、インビトロ組換えDNA技術、合成技術及びインビボ組換え/遺伝子組換えが挙げられる。例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989);及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y(1989)に記載される技術を参照されたい。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部であってもよく、又は核酸断片であってもよい。発現ベクターは、抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)(すなわち、コード領域)をコードするポリヌクレオチドが、プロモーター、及び/又は他の転写若しくは翻訳調節要素と作動可能に会合してクローニングされる発現カセットを含む。本明細書で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「停止コドン」(TAG、TGA又はTAA)は、アミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部であると考えられてもよいが、存在する場合、任意のフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’未翻訳領域等は、コード領域の一部ではない。2つ又はそれより多くのコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、単一のベクター上に、存在していてもよく、又は別個のポリヌクレオチド構築物中に、例えば別個の(異なる)ベクター上に、存在していてもよい。更に、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでいてもよく、又は2つ若しくはそれより多くのコード領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、1つ又は複数のポリペプチドをコードしてもよく、翻訳後又は翻訳と同時に、タンパク質分解による開裂によって、最終的なタンパク質へと分離される。これに加え、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)をコードするポリヌクレオチド、又はそのバリアント若しくは誘導体に融合するか、又は融合しない、異種コード領域をコードしうる。異種コード領域としては、限定されないが、特殊な要素又はモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチド又は異種機能性ドメインが挙げられる。作動可能な会合は、ある遺伝子産物(例えばポリペプチド)のコード領域が、制御配列(複数可)の影響下又は制御下で、遺伝子産物の発現を行うような様式で、1つ又は複数の制御配列と会合する。2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域及びこれに関連するプロモーター)は、プロモーター機能の導入によって、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が起こる場合、2つのDNA断片間の結合の性質が、遺伝子産物の発現を試行する発現制御配列の能力を妨害しないか、又はDNAテンプレートを転写する能力を妨害しない場合、「作動可能に会合する」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターが核酸の転写を行うことが可能な場合、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に会合していてもよい。プロモーターは、所定の細胞内でのDNAの実質的な転写のみに指向する細胞特異的なプロモーターであってもよい。プロモーター以外の他の転写制御要素、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサ、転写停止シグナルは、細胞特異的な転写に指向するために、ポリヌクレオチドに作動可能に会合してもよい。適切なプロモーター及び他の転写制御領域は、本明細書に開示される。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、脊椎動物細胞内で機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えば最初期プロモーター、イントロン-Aと組み合わせる)、シミアンウイルス40(例えば初期プロモーター)及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)が挙げられる。他の転写制御領域としては、脊椎動物遺伝子から誘導されるもの、例えば、アクチン、ヒートショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビン、及び真核細胞において遺伝子発現を制御することが可能な他の配列が挙げられる。更なる適切な転写制御領域としては、組織特異的なプロモーター及びエンハンサー、及び誘発性プロモーター(例えばプロモーター誘発性テトラサイクリン)が挙げられる。同様に、種々の翻訳制御要素は、当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び停止コドン、ウイルス系から誘導される要素(特に、内部リボソーム侵入部位、すなわちIRES、CITE配列とも呼ばれる)が挙げられる。発現カセットは、例えば、複製の起源及び/又は染色体組み込み要素、例えば、レトロウイルスの長い末端反復(LTR)、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)等の他の特徴も含んでいてもよい。
【0355】
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、分泌又はシグナルペプチドをコードする更なるコード領域と会合してもよく、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指向する。例えば、抗体又は二重特異性抗原結合分子の分泌が所望される場合、シグナル配列をコードするDNAを、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子、又はその断片をコードする核酸の上流に配置することができる。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、シグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有しており、これらは、粗い小胞体を通って成長したタンパク質鎖が外に出始めると、成熟タンパク質からは開裂する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、一般的に、ポリペプチドのN末端に融合するシグナルペプチドを有しており、ポリペプチドの分泌した形態又は「成熟」形態を生成するために、翻訳されたポリペプチドから開裂することを知っている。特定の実施形態では、天然シグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又は作動可能に会合するポリペプチドの分裂を指向する能力を保持する配列の機能性誘導体が使用される。或いは、異種哺乳動物シグナルペプチド、又はその機能性誘導体を使用してもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲンアクティベーター(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
【0356】
後の精製を容易にするため又は抗体又は二重特異性抗原結合分子を標識するのに役立てるために使用可能な短いタンパク質配列(例えば、ヒスチジンタグ)をコードするDNAが、ポリヌクレオチドをコードする抗体又は二重特異性抗原結合分子(断片)の中に、又はその末端に含まれていてもよい。
【0357】
更なる実施形態では、本発明の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。特定の実施形態では、本発明の1つ又は複数のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、それぞれポリヌクレオチド及びベクターに関連して本明細書に記載する特徴のいずれかを単独で、又は組み合わせて組み込んでもよい。1つのこのような実施形態では、宿主細胞は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子(の一部)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む1つ又は複数のベクターを含む(例えば、それらで形質転換又はトランスフェクトされている)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の抗体若しくは二重特異性抗原結合分子又はその断片を生成するように操作することが可能な任意の種類の細胞系を指す。抗体又は二重特異性抗原結合分子を複製し、発現を補助するのに適した宿主細胞は、当該技術分野で周知である。かかる細胞は、適切な場合、特定の発現ベクターを用いてトランスフェクトされるか、又は形質導入されてもよく、大規模発酵機に接種するために大量のベクターを含む細胞を成長させ、臨床用途に十分な量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を得ることができる。適切な宿主細胞としては、原核微生物(例えば大腸菌)又は種々の真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞等が挙げられる。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要とされない場合には、細菌内で産生されてもよい。発現後、ポリペプチドは、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されてもよい。原核生物に加え、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、ポリペプチドをコードするベクターに適切なクローニング又は発現の宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドを産生する。Gerngross,Nat Biotech 22,1409-1414(2004)及びLi et al.,Nat Biotech 24,210-215(2006)を参照されたい。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。数多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組合せて使用してもよい。植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を製造するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham et al.,J Gen Virol 36,59(1977)に、記載されるような293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えばMather,Biol Reprod 23、243-251(1980)に、記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頸部癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えばMather et al.,Annals N.Y.Acad Sci 383,44-68(1982)),MRC 5 cells,and FS4 cells。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、dhfr-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc Natl Acad Sci USA 77,4216(1980))、骨髄腫細胞株、例えば、YO、NS0、P3X63及びSp2/0が挙げられる。タンパク質産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も挙げられる。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞であり、好ましくは、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0358】
これらの系において外来遺伝子を発現させる標準的な技術は、当該技術分野で既知である。抗体などの抗原結合ドメインの重鎖又は軽鎖を含むポリペプチドを発現する細胞を操作して他方の抗体鎖も発現させ、発現した産生物が、重鎖及び軽鎖の両方を有する抗体となるようにすることができる。
【0359】
一実施形態では、本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子を産生する方法が提供され、この方法は、抗体又は二重特異性抗原結合分子の発現に適した条件下で、本明細書に提供される抗体又は二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養すること、及び任意に、宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体又は二重特異性抗原結合分子を回収することを含む。
【0360】
本発明の二重特異性抗原結合分子(又は抗体)の成分は、互いに遺伝子的に融合していてよい。二重特異性抗原結合分子は、その構成要素が、互いに直接的に又はリンカー配列を通して間接的に融合されるように設計することができる。リンカーの組成及び長さは、当該技術分野で周知の方法に従って決定されてもよく、有効性について試験されてもよい。二重特異性抗原結合分子の異なる構成要素の間のリンカー配列の例が、本明細書で提供される。また、望ましい場合、更なる配列が、開裂部位を組み込み、融合の個々の構成要素を分離するために含まれていてもよい(例えば、エンドペプチダーゼ認識配列)。
【0361】
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、一般に、抗原決定基に結合することができる少なくとも1つの抗体可変領域を含む。可変領域は、天然又は非天然に存在する抗体及びその断片の一部を形成することができ、それらに由来し得る。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane,「Antibodies,a laboratory manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照されたい)。天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えによって産生することができ(例えば、米国特許第4,186,567号に記載されるように)、又は例えば、可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって(例えば、McCaffertyによる米国特許第5,969,108号を参照)。
【0362】
任意の動物種の抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域を、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子で使用してもよい。本発明で有用な非限定的な抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域は、マウス、霊長類又はヒト由来であってもよい。抗体又は二重特異性抗原結合分子がヒトへの使用を意図したものである場合、抗体の定常領域がヒト由来であるキメラ形態の抗体を使用してもよい。抗体のヒト化形態又は完全なヒト形態は、当該技術分野で周知の方法に従って調製することもできる(例えば、Winterに対する米国特許第5,565,332号を参照されたい)。ヒト化は、限定されないが、(a)重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を維持するのに重要なもの)を保持しつつ、又は保持せずに、非ヒト(例えば、ドナー抗体)のCDRをヒト(例えば、レシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域に接合すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用にとって重要な残基)のみをヒトフレームワーク及び定常領域にグラフト接合すること、又は(c)全非ヒト可変ドメインを翻訳するが、表面残基を置き換えることによって、これらとヒト様部分とを「クローキング」することを含め、種々の方法によって達成されてもよい。ヒト化された抗体及びその作製方法については、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)で総説され、更に以下に記載されている:Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトを記載する);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(リサーフェシングを記載する);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載する);並びにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフルの「ガイド付き選択アプローチを記載する)。ヒト化に用い得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を用いて選択したフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい);重鎖又は軽鎖可変領域の特定の亜型のヒト抗体コンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞突然変異)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい);並びにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)。
【0363】
ヒト抗体は、当該技術分野で公知の様々な技術を使用して作製され得る。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk and van de Winkel、Curr Opin Pharmacol 5、368-74(2001)及びLonberg、Curr Opin Immunol 20、450-459(2008)に記載される。ヒト抗体は、免疫原を、インタクトなヒト抗体又は抗原性チャレンジに応答してヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に投与することによって調製されてもよい。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるか、又は染色体外に存在するか、又は動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号;及び、VelociMouse(登録商標)技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。かかる動物によって産生されたインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に修飾されてもよい。
【0364】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して産生されたヒト抗体もまた、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。更なる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0365】
ヒト抗体はまた、本明細書に記載されるように、ヒト抗体ライブラリからの単離によって作られてもよい。
【0366】
本発明に有用な抗体は、所望の活性を有する抗体に関するコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離されてもよい。コンビナトリアルライブラリをスクリーニングするための方法は、例えば、Nature Reviews 16:498-508(2016)におけるLernerらにおいて総説されている。例えば、ファージディスプレイライブラリを産生し、所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で知られている。かかる方法は、例えば、FrenzelらのmAbs 8:1177-1194(2016);Bazan et al.のHuman Vaccines and Immunotherapeutics 8:1817-1828(2012)、及びZhaoらのCritical Reviews in Biotechnology 36:276-289(2016)、並びに、HoogenboomらのMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)、及びMarks and BradburyのMethods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)に見られる。
【0367】
ある特定のファージディスプレイ法において、VH遺伝子及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって個別にクローニングされ、ファージライブラリにおいて無作為に組換えられており、次いで、Annual Review of Immunology 12:433-455(1994)におけるWinterらにおいて説明されたように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を与える。或いはまた、ナイーブなレパートリーをクローン化し(例えば、ヒトから)、GriffithsらのEMBO Journal12:725-734(1993)に記載されるように、免疫化することなく、非自己から自己抗原までの広範囲に対する単一の抗体源を得ることができる。最終的に、生来のライブラリはまた、Hoogenboom and WinterのJournal of Molecular Biology 227:381-388(1992)によって説明されるように、再整列していないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングすること、及びランダム配列を含有するPCRプライマーを用いて、高度に可変性のCDR3領域をコードし、インビトロ再整列を達成することによって、合成により作成することができる。ヒト抗体ファージライブラリを説明する特許刊行物には、例えば、以下が含まれる:米国特許第5,750,373号、同第7,985,840号、同第7,785,903号及び同第8,679,490号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2007/0117126号、同第2007/0237764号及び同第2007/0292936号。所望の活性又は複数の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングするための当該技術分野で知られている方法の更なる例には、リボソーム及びmRNAディスプレイ、並びに細菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は酵母細胞における抗体ディスプレイ及び選択のための方法が含まれる。酵母表面ディスプレイの方法は、例えば、SchollerらのMethods in Molecular Biology 503:135-56(2012)において、及びCherfらのMethods in Molecular biology 1319:155-175(2015)において、並びにZhaoらのMethods in Molecular Biology 889:73-84(2012)において見られる。リボソームディスプレイのための方法は、例えば、HeらのNucleic Acids Research 25:5132-5134(1997)及びHanesらのPNAS 94:4937-4942(1997)に記載されている。
【0368】
本明細書に記載のとおりに調製される抗体又は二重特異性抗原結合分子は、高速液体クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィなどの、当該技術分野にて周知の技術により精製することができる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には、正味の電荷、疎水性、親水性等の因子に依存し、当業者には明らかである。親和性クロマトグラフィ精製のために、抗体又は二重特異性抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体、又は抗原を使用することができる。例えば、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を親和性クロマトグラフィ精製するために、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスを使用することができる。連続したプロテインA又はGの親和性クロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィを用いて、実施例にて本質的に記載しているように、抗体又は二重特異性抗原結合分子を単離することができる。抗体又は二重特異性抗原結合分子の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィ等を含む、多種多様の周知の分析技術のいずれかにより測定することができる。
【0369】
アッセイ
本明細書において提供する抗体又は二重特異性抗原結合分子の物理的/化学的性質、及び/又は生物活性を、当該技術分野において公知の様々なアッセイにより識別、スクリーニング、又は特性決定することができる。
【0370】
親和性アッセイ
Fc受容体又は標的抗原に関する抗体又は二重特異性抗原結合分子の親和性は例えば、BIAcore機器(GE Healthcare)などの標準的な計装、及び、例えば組換え発現により入手可能である、受容体又は標的タンパク質を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定することができる。代替的に、異なる受容体又は標的抗原に関する抗体又は二重特異性抗原結合分子の結合が、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を使用して、例えばフローサイトメトリ(FACS)により、評価されてもよい。結合親和性を測定するための具体的な例証的説明及び例示的な実施形態が以下に記載される。
【0371】
一実施形態によれば、KDは、BIACORE(登録商標)T100機(GE Healthcare)を用い、25℃で表面プラズモン共鳴によって測定される。
【0372】
Fc部分とFc受容体との間の相互作用を分析するために、Hisタグ化組換えFc受容体をCM5チップに固定化した抗Penta His抗体(Qiagen)によって捕捉し、二重特異性構築物を分析物として使用する。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,GE Healthcare)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗ペンタ-His抗体を10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)で40μg/mlに希釈した後、5μl/分の流速で注射して、約6500応答単位(RU)のカップリングされたタンパク質を得る。リガンドの注入後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応基を遮断する。その後、Fc受容体を4nM又は10nMで60秒間捕捉する。速度論的測定のために、抗体又は二重特異性抗原結合分子の4倍連続希釈物(500nM~4000nMの範囲)をHBS-EP(GE Healthcare、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%界面活性剤P20、pH 7.4)に25℃で30μl/分の流速で120秒間注入する。
【0373】
標的抗原に対する親和性を決定するために、抗体又は二重特異性抗原結合分子を、抗Penta-His抗体について記載したとおりに活性化CM5センサーチップ表面に固定化された抗ヒトFab特異的抗体(GE Healthcare)によって捕捉する。結合タンパク質の最終量は約12000RUである。抗体又は二重特異性抗原結合分子を300nMで90秒間捕捉する。標的抗原を、250nM~1000nMの濃度範囲で30μl/分の流速で180秒間フローセルに通過させる。解離を180秒間監視する。
【0374】
バルク屈折率差を、参照フローセルで得られた応答を差し引くことによって補正する。定常状態応答を使用して、ラングミュア結合等温線の非線形曲線フィッティングによって解離定数KDを導出した。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)T100評価ソフトウェアバージョン1.1.1)を使用して、会合及び解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって、計算する。平衡解離定数(KD)は、koff/kon比として算出される。例えば、Chen et al.,J Mol Biol 293,865-881(1999)を参照されたい。
【0375】
活性アッセイ
本発明の二重特異性抗原結合分子(又は抗体)の生物活性は、実施例に記載されるように、様々なアッセイによって測定することができる。生物活性には、例えばT細胞の増殖の誘導、T細胞内のシグナル伝達の誘導、T細胞内の活性化マーカーの発現の誘導、T細胞によるサイトカイン分泌の誘導、腫瘍細胞などの標的細胞の溶解の誘導、並びに腫瘍退縮及び/又は生存の向上の誘導が含まれうる。
【0376】
組成物、製剤及び投与経路
更なる態様では、本発明は、例えば、以下の治療方法のいずれかで使用するための、本明細書において提供する抗体又は二重特異性抗原結合分子のいずれかを含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で与えられるいずれかの抗体又は二重特異性抗原結合分子と、薬学的に許容され得る担体とを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書において提供する抗体又は二重特異性抗原結合分子のいずれか、及び例えば後述する少なくとも1種の追加の治療剤を含む。
【0377】
更には、インビボでの投与に適した形態で本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を産生する方法が提供され、この方法は、(a)本発明による抗体又は二重特異性抗原結合分子を得ること、及び(b)抗体又は二重特異性抗原結合分子と、少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体とを配合し、それによって、抗体又は二重特異性抗原結合分子の調製物を、インビボでの投与のために配合することとを含む。
【0378】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体に溶解又は分散した、治療有効量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む。「薬学的又は薬理学的に許容され得る」との句は、一般的に、使用する投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、すなわち、適切な場合、動物(例えばヒト)に投与したときに、有害なアレルギー反応又は他の不都合な反応を引き起こさない分子部分及び組成物を指す。抗体又は二重特異性抗原結合分子、及び任意に追加の有効成分を含有する医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれているRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990により例示されているように、本開示に照らして当業者に既知であろう。更に、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物が、FDA Office of Biological Standards又は他の国の対応する機関によって必要とされるような滅菌性、発熱原性、一般的安全性及び純度基準を満たすべきであることが理解されるであろう。好ましい組成物は、凍結乾燥された製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」は、当業者には知られているように(例えば、本明細書に参照により組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照されたい)、任意及び全ての溶媒、緩衝液、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、酸化防止剤、タンパク質、薬物、薬物安定化剤、ポリマー、ゲル、バインダ、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、かかる類似の材料及びこれらの組合せを含む。任意の従来の担体が、有効成分と不適合である場合を除き、治療組成物又は医薬組成物における使用が想定される。
【0379】
本発明のイムノコンジュゲート(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、鼻内を含む任意の適切な手段によって投与されてもよく、所望な場合、局所治療では、病変内投与によって投与されてもよい。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が挙げられる。投薬は、投与が短時間であるか、又は慢性的であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路によるもの、例えば、静脈内注射又は皮下注射等の注射によるものであり得る。
【0380】
非経口組成物としては、注射による(例えば、皮下、皮内、病変内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射による)投与のために設計されたものが挙げられる。注射のために、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、水溶液中で配合されてもよく、好ましくは、生理学的に適合するバッファー、例えば、Hanks溶液、Ringer溶液又は生理食塩水バッファー中で配合されてもよい。溶液は、配合剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び分散剤を含有していてもよい。或いは、抗体又は二重特異性抗原結合分子は使用前に、好適なビヒクル、例えば発熱性物質除去水と共に構成するための、粉末形態であることができる。滅菌注射可能溶液は、必要な場合には以下に列挙する種々の他の成分と共に、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を必要な量で、適切な溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成され得る。一般的に、分散物は、種々の滅菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液、懸濁物又は乳化物を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した液体媒体から有効成分と任意の更なる所望な成分の粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要な場合には適切に緩衝化されているべきであり、注射する前に、十分な食塩水又はグルコースで液体希釈剤をまず等張性にする。組成物は、製造条件及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の混入作用から保護されなければならない。エンドトキシン汚染を安全なレベルに最小限に、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満に維持すべきであることが認識されるだろう。適切な薬学的に許容され得る担体としては、限定されないが、緩衝液、例えば、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンを含む);キレート化剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘度を上げる化合物(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストラン等)を含んでいてもよい。任意に、懸濁物は、適切な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める薬剤も含んでいてもよい。更に、活性化合物の懸濁物は、適切な油注射懸濁物として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪族油(例えば、ゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えば、エチルクリート(ethyl cleat)又はトリグリセリド)又はリポソームが挙げられる。
【0381】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.Mack Printing Company,1990)に開示されている。徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセル等の成型物品の形態である。特定の実施形態では、注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組合せ)の組成物での使用によってもたらされてもよい。
【0382】
上述した組成物に加えて、抗体又は二重特異性抗原結合分子をデポー調製物として製剤化することも可能である。かかる長く作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下又は筋肉内)、又は筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、抗体又は二重特異性抗原結合分子は、適切なポリマー又は疎水性材料(例えば、許容され得る油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又はやや難溶性の誘導体として、例えば、やや難溶性の塩として配合されてもよい。
【0383】
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。医薬組成物は、1つ又は複数の生理学的に許容され得る担体、希釈剤、賦形剤又はタンパク質を医薬として使用可能な調製物へと加工するのを容易にする補助剤を用い、従来の様式で配合されてもよい。適切な製剤は、選択する投与経路によって変わる。
【0384】
抗体又は二重特異性抗原結合分子は、遊離酸又は塩基、中性又は塩形態で、組成物に配合されることができる。薬学的に許容され得る塩は、遊離酸又は遊離塩基の生体活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えば、タンパク質組成物の遊離アミノ基と形成されるもの、又は例えば塩酸若しくはリン酸等の無機酸と形成されるか、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸等の有機酸と形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムの水酸化物又は水酸化第2鉄等の無機塩基から誘導されてもよく、又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカイン等の有機塩基から誘導されてもよい。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
【0385】
治療方法及び組成物
本明細書において提供する抗体又は二重特異性抗原結合分子のいずれかを、治療方法にて使用することができる。本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、例えばがんの治療において、免疫治療剤として使用されうる。
【0386】
治療方法で使用するために、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、良好な医事に一致する様式で製剤化、用量化、及び投与される。これに関連して考慮すべき要因としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。
【0387】
一態様において、医薬として使用するための、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。更なる態様では、疾患の治療における使用のための本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子が提供される。特定の実施形態では、治療方法で使用するための、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。一実施形態では、本発明は、疾患の治療を必要とする個体における、疾患の治療で使用するための、本明細書に記載した抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。特定の実施形態では、本発明は、疾患を有する個体の治療方法であって、治療有効量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を個体に投与することを含む方法で使用するための抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。特定の実施形態では、治療される疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、がんである。特定の実施形態では、この方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、治療される疾患ががんである場合、抗がん剤)を投与することを含む。更なる実施形態では、本発明は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するのに使用するための本明細書に記載の抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。特定の実施形態では、本発明は、標的細胞の溶解を誘導するために個体に有効量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を投与することを含む、個体において、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法における使用のための本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を提供する。上のいずれかの実施形態に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。特定の実施形態では、治療される疾患は、自己免疫疾患、特に全身性エリテマトーデス及び/又は関節リウマチである。自己反応性形質細胞による病原性自己抗体の産生は、自己免疫疾患の顕著な特徴である。したがって、GPRC5Dは、自己免疫疾患において自己反応性形質細胞を標的化するために使用することができる。
【0388】
更なる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の使用を提供する。一実施形態では、医薬は、疾患の治療を必要とする個体において、疾患の治療のためのものである。更なる実施形態では、医薬は、疾患を有する個体に、治療有効量の医薬を投与することを含む、疾患を治療する方法で使用するためのものである。特定の実施形態では、治療される疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、がんである。一実施形態では、この方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、治療される疾患ががんである場合、抗がん剤)を投与することを含む。更なる実施形態では、医薬は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するためのものである。また更なる実施形態では、医薬は、標的細胞の溶解を誘導するために個体に対して有効量の医薬を投与することを含む、個体において、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法における使用のためのものである。上のいずれかの実施形態に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。
【0389】
更なる態様において、本発明は、疾患を治療するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、かかる疾患を有する個体に、治療有効量の本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を投与することを含む。一実施形態では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を薬学的に許容され得る形態で含む組成物が上記個体に投与される。特定の実施形態では、治療される疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、がんである。特定の実施形態では、この方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、治療される疾患ががんである場合、抗がん剤)を投与することを含む。上のいずれかの実施形態に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。
【0390】
さらなる態様では、本発明は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、T細胞、特に細胞傷害性T細胞の存在下において、標的細胞を本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子と接触させることを含む。さらなる態様では、個体において、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するための方法が提供される。1つのこのような実施形態では、方法は、個体に対し、標的細胞の溶解を誘導するために、有効量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を投与することを含む。一実施形態では、「個体」は、ヒトである。
【0391】
特定の実施形態では、治療される疾患は、増殖性障害、特にがんである。がんの非限定的な例としては、膀胱がん、脳腫瘍、頭頸部がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平細胞癌腫、骨がん及び腎臓がんが挙げられる。本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を使用して治療され得る、その他の細胞増殖性障害としては、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、脳下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部領域及び泌尿生殖器系に位置する新生物が挙げられるが、これらに限定されない。前がん状態又は病変及びがん転移も含まれる。特定の実施形態では、がんは、腎臓がん、膀胱がん、皮膚がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、脳腫瘍、頭頸部がん及び前立腺がんからなる群から選択される。一実施形態では、がんは前立腺がんである。当業者であれば、いくつかの場合、二重特異性抗原結合分子は、硬化を提供し得ないが、部分的な利益しか提供し得ないことを認識し得る。いくつかの実施形態では、いくつかの利益を有する生理学的変化も、治療利益であると考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、生理学的変化をもたらす抗体又は二重特異性抗原結合分子の量を、「有効量」、又は「治療有効量」とみなす。治療が必要な対象、患者又は個体は、典型的には、哺乳動物であり、より具体的には、ヒトである。
【0392】
いくつかの実施形態では、有効量の本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子が細胞に投与される。他の実施形態では、治療有効量の本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子が、疾患を治療するために個体に投与される。
【0393】
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の適切な投与量(単独で又は1つ又は複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患のタイプ、投与経路、患者の体重、抗体又は二重特異性抗原結合分子のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体又は二重特異性抗原結合分子が予防目的又は治療目的のために投与されるかどうか、以前の又は同時の治療的介入、患者の病歴及び抗体又は二重特異性抗原結合分子に対する応答、並びに主治医の裁量に依存する。投与の責任を担う医師は、いずれにしても、組成物中の有効成分(単数又は複数)の濃度、個々の対象に適切な用量(単数又は複数)を決定する。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス輸注を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
【0394】
抗体又は二重特異性抗原結合分子は、一度に、又は一連の治療にまたがり、患者に好適に投与される。疾患の種類及び重症度に応じ、例えば、1回又は複数回の個別投与、又は連続点滴にかかわらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体又は二重特異性抗原結合分子が、患者への投与への最初の候補投与量となることができる。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はそれより長期にわたる反復投与において、状態に応じ、治療は通常、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。抗体又は二重特異性抗原結合分子の1つの例示的な用量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲である。他の非限定的な例では、用量は、1回の投与当たり、約1μg/kg体重、約5μg/kg体重、約10μg/kg体重、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約350mg/kg体重、約500mg/kg体重から、約1000mg/kg体重、又はそれよりも多く、及びこれらから誘導される任意の範囲を含んでもよい。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の非限定的な例では、約5mg/kg体重~約100mg/kg体重、約5μg/kg体重~約500mg/kg体重などの範囲を、上述の数に基づいて投与することができる。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg若しくは10mg/kg(又はこれらの任意の組合せ)の1つ又は複数の用量を患者に投与してもよい。かかる用量は、断続的に、例えば毎週又は3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、又は例えば約6回の用量の抗体又は二重特異性抗原結合分子を受容するように)投与されてもよい。最初の多めの投与量、それに続く1回又は複数回の量の少ない用量を投与してよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0395】
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は一般に、意図する目的を達成するのに有効な量で使用される。疾患症状を治療又は予防するのに使用するため、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子、又はその医薬組成物は、治療有効量で投与されるか、又は適用される。治療有効量の決定は、特に、本明細書に与えられる詳細な開示の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0396】
全身投与の場合、治療有効投薬量は、インビトロアッセイ、例えば、細胞培養アッセイから最初に概算することができる。次いで、細胞培養物で決定されるようなIC50を含む血中濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルで配合してもよい。かかる情報を使用し、ヒトにおける有用な用量を更に正確に決定することができる。
【0397】
初期投薬量も、インビボデータから、例えば、動物モデルから、当該技術分野で周知の技術を用いて概算することができる。当業者は、動物データに基づき、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0398】
投与量及び感覚を個別に調節して、治療効果を維持するのに十分な、抗体又は二重特異性抗原結合分子の血漿濃度を提供することができる。注射による投与のための通常の患者投薬量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿濃度は、各日に複数回用量を投与することによって達成されてもよい。血漿中のレベルは、例えばHPLCによって測定することができる。
【0399】
局所投与又は選択的取り込みの場合、抗体又は二重特異性抗原結合分子の有効局所濃度は血漿濃度に関連しないことがある。当業者は、過度な実験を行うことなく、治療に有効な局所投薬量を最適化することができる。
【0400】
本明細書で記載される、抗体又は二重特異性抗原結合分子の治療に有効な用量は一般に、実質的な毒性を引き起こすことなく治療効果を提供する。抗体又は二重特異性抗原結合分子の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物実験を使用し、LD50(集団の50%が致死に至る用量)及びED50(集団の50%が治療に有効である用量)を決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す抗体又は二重特異性抗原結合分子が好ましい。一実施形態では、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータを、ヒトでの使用に適した投薬範囲を決定する際に使用することができる。投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、全くない状態で、ED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、例えば、使用される剤形、利用される投与経路、対象の状態等の種々の因子に依存して、この範囲内で変動してもよい。正確な製剤、投与経路及び投薬量は、患者の状態という観点で個々の医師によって選択されてもよい(例えば、その全体が本明細書に参照により組み込まれる、Fingl et al.,1975,The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1,p.1を参照)。
【0401】
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子で治療される患者の主治医は、毒性、臓器不全などに起因して、どのように、いつ投与を中止するか、中断するか、又は調整するかを知っている。逆に、主治医は、臨床応答が十分ではない場合(毒性を生じずに)、治療をより高レベルにするように調整することも知っているであろう。関心のある障害の管理において投与される用量の大きさは、治療される状態の重篤度、投与経路等に伴って変動する。状態の重篤度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価方法によって評価されてもよい。さらに、用量と、おそらく投薬頻度は、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても変わる。
【0402】
他の薬剤及び治療
本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、1種又は複数の他の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。「治療剤」という用語は、かかる治療が必要な個体において、症状又は疾患を治療するために投与される任意の薬剤を包含する。かかる追加の治療剤は、治療される特定の徴候に適した任意の有効成分を含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。特定の実施形態では、追加の治療剤は、免疫制御剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着の阻害剤、細胞傷害剤、細胞アポトーシスの活性化剤、又はアポトーシス誘発因子に対する細胞の感度を高める薬剤である。特定の実施形態では、追加の治療剤は、抗がん剤、例えば、微小管破壊剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン治療、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、又は抗血管形成剤である。
【0403】
かかる他の薬剤は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。有効量のこのような他の薬剤は、使用される抗体又は二重特異性抗原結合分子の量、障害又は治療の種類、上述の他の因子に依存する。抗体又は二重特異性抗原結合分子は、一般的に、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0404】
上記のかかる併用療法は、併用投与(2つ又はそれより多くの治療剤が同じ又は別個の組成物に含まれる場合)、及び別個の投与を含み、その場合、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子の投与は、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与の前、同時、及び/又は後に、起こり得る。本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子は、放射線療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0405】
製造物品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器に挿入されるか、又は容器に付随するラベル又はパッケージ添付文書とを備えている。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、それ自体で、又は別の組成物との組み合わせで、状態の治療、予防、及び/又は診断に有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静注溶液袋又は皮下注射針によって穿孔可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性剤は、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子である。ラベル又はパッケージ添付文書は、その組成物が、選択した条件を治療するために使用されることを示す。更に、製造物品は、(a)製造物品中に含有され、本発明の抗体又は二重特異性抗原結合分子を含む組成物を含む第1の容器、及び、(b)製造物品中に含有され、更なる細胞傷害剤又は別の治療剤を含む組成物を含む第2の容器を含んでよい。製造物品は、本発明のこの実施形態では、その組成物を特定の状態を治療するために使用可能であることを示すパッケージ添付文書を更に備えていてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、製造物品は、薬学的に許容され得るバッファー、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。他のバッファー、希釈剤、フィルタ、ニードル及びシリンジを含め、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【0406】
診断及び検出のための方法及び組成物
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗GPRC5D抗体はいずれも、生体試料中のGPRC5Dの存在の検出に有用である。本明細書で使用される場合、「検出」という用語は、定量的又は定性的な検出を包含する。特定の実施形態において、生体試料は、細胞又は組織、例えば前立腺組織を含む。
【0407】
一実施形態では、診断又は検出方法において使用するための抗GPRC5D抗体が提供される。更なる態様では、生体試料中のGPRC5Dの存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、GPRC5Dへの抗GPRC5D抗体の結合を許容する条件下で、生体試料を本明細書に記載される抗GPRC5D抗体と接触させることと、抗GPRC5D抗体とGPRC5Dとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することと、を含む。このような方法は、インビトロ法又はインビボ法であってもよい。一実施形態では、例えば、GPRC5Dが患者の選択のためのバイオマーカーである場合、抗GPRC5D抗体を使用して、抗GPRC5D抗体での療法に適格な対象を選択する。
【0408】
本発明の抗体を使用して診断され得る例示的な障害には、がん、特に多発性骨髄腫が含まれる。
【0409】
ある特定の実施形態では、標識された抗GPRC5D抗体が提供される。標識としては、限定されないが、直接的に検出される標識又は部分(例えば、蛍光、色素体、電子密度の高い、化学発光及び放射性標識)、及び例えば酵素反応又は分子相互作用によって、間接的に検出される部分(例えば、酵素又はリガンド)が挙げられる。例示的な標識としては、限定されないが、放射性同位体32P、14C、125I、3H及び131I、フルオロフォア、例えば、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘテロ環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼ及び過酸化水素を使用する酵素と連結し、染料前駆体を酸化するキサンチンオキシダーゼ、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はミクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定な遊離ラジカル等が挙げられる。
【0410】
本発明のさらなる態様は、可変重鎖領域(VL)を含むGPRC5Dに結合する抗体(10B10)に関し、VLは、配列番号81の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。抗体は、軽鎖可変領域(VL)を含んでよく、VLは、配列番号82の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。抗体は、VH及びVLを含んでよく、VLは、配列番号81の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含んでよく、VLは、配列番号82の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号82のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0411】
本発明のさらなる態様は、抗体(10B10-TCB)に関する。抗体は、配列番号67の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の軽鎖を含んでよい。抗体は、配列番号68の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含んでよい。抗体は、配列番号69の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む第1の重鎖を含んでよい。抗体は、配列番号70の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む第2の重鎖を含んでよい。好ましい実施形態では、抗体は、配列番号67のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号68のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖と、配列番号69のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号70のアミノ酸配列を含む第2の重鎖とを含む。
[表]
【実施例】
【0412】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。先に提供した一般的な説明を考慮すると、種々の他の実施形態が実施されてもよいことが理解される。
【0413】
実施例1
腫瘍標的の発現
正常な形質細胞よりも多発性骨髄腫によって発現される差次的遺伝子を同定するために、多発性骨髄腫(MM)患者由来の10個の試料及び健康なドナーの骨髄由来の10個の形質細胞(PC)について、RNAseqを行った。RNeasy Microキット(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用してRNAを抽出した。RNA抽出中にRNaseフリーDNaseセット(Qiagen)を使用してゲノムDNAを除去した。抽出されたRNAの品質は、Agilent Eukaryote Total RNA pico chips(Agilent Technologies)で制御した。Illuminaシーケンシング用SMARTer超低RNAキット(Clontech)を使用して、製造者の指示に従って1.6ngの全RNAからcDNAを調製及び増幅した。次いで、1ngの増幅cDNAを製造者の指示に従ってNextera XTライブラリ調製(Illumina)に供した。シーケンシング・ライブラリを、Kapaライブラリ定量キット(Kapa Biosystems)を使用して定量し、高感度チップ(Agilent Technologies)を使用したBioanalyzerでのキャピラリー電気泳動によって品質管理した。ライブラリを、バージョン4のクラスター生成キット及びバージョン4のシーケンシング試薬(Illumina)を使用して、HiSeq2500シーケンサー(Illumina)で2×50サイクルについて配列決定した。
【0414】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、悪性形質細胞上に発現され、したがって多発性骨髄腫標的として認識される細胞表面タンパク質である(Tai YT&Anderson KC,Targeting B-cell maturation antigen in multiple myeloma,Immunotherapy.2015 Nov;7(11):1187-1199)。RNAseq技術を使用して、詳細な分析により、GPRC5Dが多発性骨髄腫患者由来の形質細胞においてBCMAと同じくらい高度に発現されることが示された(
図2)。より重要なことには、多発性骨髄腫患者由来の形質細胞と健康な形質細胞との間のGPRC5Dの差次的発現は、約20倍である。対照的に、多発性骨髄腫患者由来の形質細胞と健康な形質細胞との間のBCMAの差次的発現はわずか2倍である。GPRC5Dの全体的な発現は、SLAM7、CD138及びCD38などの他の既知の多発性骨髄腫標的分子の発現よりもはるかに高い。さらに、GPRC5Dは、健康なナイーブB細胞又はメモリーB細胞によってほとんど発現されない。
【0415】
実施例2
GPRC5D結合剤の作製及びT細胞二重特異性(TCB)抗体の調製
GPRC5D結合剤を、ラットのDNA免疫化、続いてハイブリドーマ作製、ハイブリドーマのスクリーニング及び配列決定によって作製した。特異的結合についてのスクリーニングを、GPRC5D発現トランスフェクタントへのその結合によってELISAによって測定した。以下では、5E11(配列番号13及び14)及び5F11(配列番号15及び16)と呼ばれる2つのGPRC5D結合剤を同定した。特異的結合剤が同定された時点で、IgGはT細胞二重特異性抗体に変換された。結合剤をT細胞二重特異性抗体に変換する原理は、当該技術分野、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2014/131712号A1に例示及び記載されている。T細胞二重特異性抗体は、
図3に示すように、2つのGPRC5D結合部分及び1つのCD3結合部分(抗GPRC5D/抗CD3 T細胞二重特異性抗体)を含む。以下の抗GPRC5D/抗CD3 T細胞二重特異性抗体を調製した:i)5E11-TCB(配列番号17、18、19及び20);ii)5F11-TCB(配列番号21、22、23及び24);iii)ET150-5-TCB(配列番号25、26、27及び28);iv)B72-TCB(配列番号73、74、75及び76);及びv)BCMA-TCB(配列番号77、78、79及び80)。ET150-5 GPRC5D結合部分は、PCT国際公開第2016/090329号A2に記載されている。「ET-150-5」という用語は、本明細書では「ET150-5」という用語と同義に使用され、その逆も同様である。陰性対照として、非標的DP47-TCBを調製した。DP47-TCBは、CD3にのみ結合し、GPRC5Dには結合しない非標的T細胞二重特異性抗体である。DP47-TCBは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2014/131712号A1に記載されている。B72-TCBは、国際公開第2018/0117786号A2の表23に開示されているGCDB72抗体に由来し、GCDB72のGPRC5D結合部分を含む。B72-TCBをcrossmab 1+1フォーマットで生成した(配列番号73、74、75及び76)。BCMA-TCBは、国際公開第2016/166629号A1に由来し、そこに開示されているA02_Rd4_6nM_C01のGPRC5D結合部分を含む。BCMA-TCBは、crossmab 2+1フォーマットで生成された(配列番号77、78、79及び80)。
【0416】
実施例3
多発性骨髄腫細胞株に対するT細胞二重特異性抗体の結合
GPRC5Dへの結合を測定するために、本発明者らは、報告された多発性骨髄腫細胞株(Lombardi et al.,Molecular characterization of human multiple myeloma cell lines by integrative genomics:insights into the biology of the disease;Genes Chromosomes Cancer.2007 Mar;46(3):226-38.)に対してFACSに基づく結合アッセイを行った。細胞株AMO-1、L363及びOPM-2を、20%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS、Gibco)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン100X(Gibco)を補充したRPMI 1640+Glutamax培地(Gibco)中で培養した。細胞株WSU-DLCL2(陰性対照)を、10%のFBSのみを補充した同じ培地で培養した。細胞株NCI-H929及びRPMI-8226もまた、50μMメルカプトエタノール(Gibco)及び1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)を補充した同じ培地で培養した。細胞株を75cm2フラスコ(TPP)中で週に2回継代して培養した。
【0417】
異なる抗ヒトGPRC5D-TCB抗体(5E11-TCB、5F11-TCB及びET150-5 TCB)の結合を、間接染色を使用して評価した。細胞を、10μg/ml~0.00064μg/mlの範囲の抗ヒトGPRC5D-TCB構築物5E11-TCB、5F11-TCB又はET150-5 TCBと共に、0.2倍の段階希釈を使用して、又は構築物なしで、100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Gibco)中、4℃で1時間インキュベートした。細胞を、PBS中に1:800希釈したLive blue色素(Life Technologies)で4℃にて20分間染色した後、フローサイトメトリ染色緩衝液(eBioscience)中に1/300希釈したPEコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的(Jackson Laboratories)で染色し、4℃で30分間インキュベートした。フローサイトメトリ取得を、特注設計のBD Biosciences Fortessaで実施し、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Ashland;OR)及びGraphPad Prismソフトウェアを使用して分析した。
【0418】
図4A~
図4Cは、5E11-TCB及び5F11-TCBの両方が試験した多発性骨髄腫細胞株の全てに用量依存的に結合することを示す。対照的に、ET150-5-TCBは、試験した細胞株に対してはるかに弱く結合する。抗GPRC5D-TCBによって観察されたWSU-DLCL2細胞(非ホジキンリンパ腫のGPRC5D
-細胞株)への結合はなかった。
【0419】
実施例4
抗GPRC5D-TCB媒介T細胞傷害性
抗GPRC5D-TCB抗体の機能性を測定するために、インビトロT細胞細胞傷害性アッセイを行った。簡潔には、AMO-1、L363及びOPM-2細胞株を、20%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS;Gibco)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン100X(Gibco)を補充したRPMI 1640+Glutamax培地(PS;Gibco)中で培養した。細胞株WSU-DLCL2を、10%のFBSのみを補充した同じ培地で培養した。細胞株NCI-H929及びRPMI-8226を、50μMメルカプトエタノール(Gibco)及び1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)を補充した同じ培地で培養した。細胞株を75cm2フラスコ(TPP)中で週に2回継代して培養した。
【0420】
細胞株を、10%FBS(Gibco)+1%PS(Gibco)を補充したIMDM培地(Gibco)中、ヒトPan T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)(Blutspende Schlieren製のBuffy coat)から単離した3.105個の同種異系T細胞と1:10のTarget:Effector比で共培養した。抗ヒトGPRC5D-TCB抗体(5E11-TCB、5F11-TCB、ET150-5 TCB又はDP47-TCB)を、1μg/ml~0.000001μg/mlの範囲の異なる濃度で、0.1倍又は0μg/mlの段階希釈により共培養物に添加した。5%CO2を含む37℃での20時間のインキュベーションの後、ウェルあたり75μlの上清を、ウェルあたり25μlのCytoTox-Glo細胞毒性アッセイ(Promega)を含む96ウェル白色プレート(Greiner bio-one)に移した。室温で15分間インキュベートした後、PerkinElmer EnVisionでルミネセンス取得を行い、GraphPad Prism及びXLフィット・ソフトウェアを使用して分析した。データをLDH放出の発光シグナルとしてプロットする。
【0421】
図5A~
図5Eは、5E11-TCB及び5F11-TCBの両方が、多発性骨髄腫細胞株、特にNCI-H929(
図5B)、RPMI-8226(
図5C)、L363及び(
図5D)AMO-1(
図5A)に対して強いT細胞細胞傷害性を媒介したが、陰性対照株WSU-DLCL2(
図5E)では死滅は観察されなかったことを示す。対照的に、ET150-5-TCBは、試験した多発性骨髄腫細胞株に対して有意に低い死滅を媒介し、又はほとんど媒介しなかった。表1は、
図5A~Eに示されるデータから得られたEC
50値をまとめたものである。EC
50値は、滴定したTCBに対してシグナルの生データをプロットすることによって、ExcelのXLフィット・アドオン機能を使用して計算した。
【表1】
【0422】
実施例5
抗GPRC5D-TCB媒介のT細胞活性化
抗GPRC5D-TCBの作用様式に機構的に対処するために、抗GPRC5D-TCBの存在下で標的多発性骨髄腫細胞株と共培養した後のT細胞の活性化を測定した。実施例4及び
図5A~
図5Eに記載される実験と同様に、細胞株を、10%FBS(Gibco)+1%PS(Gibco)を補充したIMDM培地(Gibco)中、ヒトPan T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、PBMC(Blutspende Schlieren製のBuffy coat)から単離した3.105個の同種異系T細胞と1:10のTarget:Effector比で共培養した。抗ヒトGPRC5D-TCB抗体(5E11-TCB、5F11-TCB、ET150-5-TCB又はDP47-TCB)を、1μg/ml~0.000001μg/mlの範囲の異なる濃度で、0.1倍又は0μg/mlの段階希釈により共培養物に添加した。37℃、5%CO
2で20時間インキュベートした後、細胞を染色してT細胞活性化を評価した。細胞を最初に、PBS(Gibco)中1:800に希釈したLive blue色素(Life Technologies)で4℃にて20分間染色した。その後、細胞を、フローサイトメトリ染色緩衝液(eBioscience)中、AF700抗ヒトCD4(クローンOKT4)、BV711抗ヒトCD8(クローンSK1)、BV605抗ヒトCD25(クローンBC96)、APC-Cy7抗ヒトCD69(クローンFN50)(全てBioLegend)及びPE-Cy5.5抗ヒトCD3(クローンSK7;eBioscience)で4℃で30分間染色した。フローサイトメトリ取得を、特注設計のBD Biosciences Fortessaで実施し、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Ashland;OR)及びGraphPad Prismソフトウェアを使用して分析した。
【0423】
図6は、5F11-TCBが、活性化マーカーCD25及びCD69を上方制御することによって、NCI-H929細胞との共培養物においてT細胞活性化を誘導する一方で、対照、例えば非標的DP47-TCB、及びTCBを含まない対照は、T細胞活性化を誘導しなかったことを示す。別の陰性対照として、5F11-TCB処理T細胞をWSU-DLCL2細胞と共培養し、これもまた、T細胞は活性化されなかった。これらの活性化プロファイルは、本発明者らが研究した複数の細胞株、例えばAMO-1、NCI-H929、RPMI-8226、L363にわたって一貫していた(
図7A~J)。低い死滅化効力と一致して、ET150-5-TCBは、1mg/kgの最高試験濃度を除いて、T細胞活性化を誘導しなかった。
【0424】
実施例6
抗GPRC5D-TCBの局在化及び内在化
NCI-H929細胞をCMFDA(Invitrogen)で染色し、24ウェルプレート中のポリ-L-リジン(Sigma)被覆円形カバースリップ上に播種した。Alexa Fluor 647スクシンイミジルエステル(InVitrogen、カタログ番号A201106)をモル比2.5で抗体(5E11-IgG、5E11-TCB、5F11-IgG、5F11-TCB)を標識した。細胞を37℃で一晩接着させた後、蛍光タグ付き抗体(Alexa Fluor 647標識5E11-IgG、-5E11-TCB、-5F11-IgG、-5F11-TCB)を異なる持続時間及び温度(氷上で30分間、37℃で1時間及び37℃で3時間)で増殖培地に直接添加した。冷PBS(Lonza)を使用して反応を停止させ、各時点後に未結合抗体を洗い流した。次いで、細胞を、Cytofix(BD)を用いて4℃で20分間固定し、PBSで2回洗浄した。次いで、カバースリップを移し、Fluoromount G(eBioscience)を用いてガラススライドに取り付け、イメージングの前に、暗状態で、4℃で一晩保持した。Zeiss製の倒立LSM 700に60倍の油浸対物レンズを取り付け、蛍光共焦点顕微鏡法を実施した。顕微鏡に連結されたZenソフトウェア(Zeiss)を使用して画像を収集し、IMARISソフトウェア(Bitplane)で視覚化した。
図8Aは、全ての抗体が4℃又は37℃で多発性骨髄腫細胞株の表面(原形質膜)を染色したことを示す。抗体が細胞によって内在化される場合、蛍光染色は、37℃で培養したときに細胞質に現れるであろう。GPRC5D結合IgG又はGPRC5D結合TCBのGPRC5D
+細胞株による内部移行は観察されなかった。これは、細胞の膜及び細胞質で定義された関心領域からの強度和を適用することによってさらに確認された(3時間)。IMARISソフトウェアを、膜対細胞質のシグナル比の分析及び定量に使用した。
図8Bは、異なる抗体とのインキュベーションの3時間後、膜対細胞質強度の比が約4で変化しなかったことを示し、これは、蛍光シグナルが細胞質ではなく表面に集中することを意味する。
【0425】
実施例7
GPRC5D結合剤の特性評価:ELISAによる組換え細胞結合
ヒトGPRC5D又はカニクイザルGPRC5D又はマウスGPRC5D又はヒトGPRC5Aのいずれかを発現する安定トランスフェクトCHOクローンを使用して、IgGとしての潜在的なリード候補抗体の結合を分析した。詳細には、104個の細胞(生存率≧98%)を、新鮮な培養培地を使用して384ウェルマイクロタイタープレート(BDポリD-リシン、#356662、容量:25μl/ウェル)に播種した。37℃で一晩インキュベートした後、抗体の25μl/ウェル希釈物を4℃で2時間、細胞に添加した(1×PBS中、15×1:3希釈、アッセイ濃度30μg/mlで開始)。90μl/ウェルのPBST(10×PBS、Roche、#11666789001+0,1%Tween20)を使用する1回の洗浄工程の後、続いて、室温(RT)で10分間、50μl/ウェルの0.05%グルタルアルデヒド(Sigmaカタログ番号:G5882、1xPBS中)の添加によって細胞を固定した。90μl/ウェルのPBSTを使用する3回のさらなる洗浄工程の後、検出のために二次抗体を添加した:ヒト抗体については、ブロッキング緩衝液(1×PBS(Roche#11666789001)+2%BSA(ウシ血清アルブミン画分V、脂肪酸フリー、Roche、#10735086001)+0,05%Tween20)中、1:2000に希釈したヤギ抗ヒトIg κ鎖抗体HRP複合体(Millipore番号AP502P)を使用した(25μl/ウェル)。ラット抗体については、ヤギ抗ラットIgG1抗体HRP複合体(Bethyl#A110-106 P)、ヤギ抗ラットIgG2a抗体HRP複合体(Bethyl#A110-109P)及びヤギ抗ラットIgG2b抗体HRP複合体(Bethyl#A110-111P)の混合物を、ブロッキング緩衝液(25μl/ウェル)中の各抗体の1:10000希釈で使用した。RTで1時間インキュベートし、90μl/ウェルのPBSTを使用して3回のさらなる洗浄工程を行った後、25μl/ウェルのTMB基質を10分間添加し(Roche注文番号11835033001)、370nm/492nmでの測定によって最終ODへの発色を決定した。
【0426】
試験した全ての抗体は、pM範囲のEC
50値(結合活性を反映する)でヒトGPRC5Dへの正の結合を示した。ラットIgG 10B10及び07A04のみが、カニクイザルGPRC5Dを発現するCHO細胞に対して、ヒト型の受容体に匹敵するEC
50値で交差反応性を示した(
図9)。カニクイザル交差反応性は、他の全ての抗体についても検出されたが、10B10及び07A04と比較してより低いレベルであった(
図9)。マウスGPRC5Dを発現するCHO細胞への有意な結合は検出されず、GPRC5Aのヒト型を発現するCHO細胞への結合は検出されなかった(
図9)。結合のEC
50値を表2に要約する。
【表2】
【0427】
実施例8
GPRC5D結合剤:組換えGPRC5D-TCBは、MM細胞株に対するT細胞細胞傷害性を媒介する
GPRC5D-TCB又は他の標的化TCBの機能性を比較するために、本発明者らは、複数のMM細胞株に対してインビトロT細胞細胞傷害性アッセイを行った:MOLP-2(
図10B)、AMO-1(
図10C)、EJM(
図10D)及びNCI-H929(
図10G)。簡潔には、細胞株を、20%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS;Gibco)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン100X(Gibco)を補充したRPMI 1640+Glutamax培地(PS;Gibco)中で培養した。GlutaMax 1X(Gibco)を添加したこの培地でMOLP-2を培養した。OPM-2(
図10A)、RPMI-8226(
図10E)及びL-363(
図10F)細胞株を、10%FBSのみを補充したこの培地で培養した。NCI-H929を、50μMメルカプトエタノール(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)及びGlutaMax 1X(Gibco)を補充したこの培地で培養した。EJMをIMDM(Gibco)+10%FBS(Gibco)及び1%PS(Gibco)中で培養した。全ての細胞株を75cm
2フラスコ(TPP)中で週に2回継代して培養した。
【0428】
細胞株を、10%FBS(Gibco)+1%PS(Gibco)を補充したRPMI培地(Gibco)中ヒトPan T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用してPBMC(Blutspende Schlieren製のBuffyコート)から単離した30万個の同種異系T細胞を使用して、10対1のエフェクタ対標的比で共培養した。抗ヒトGPRC5D TCB構築物(5E11-TCB、5F11-TCB、10B10-TCB、B72-TCB、BCMA-TCB及びDP47-TCB)を、段階希釈1/10で12.5nM~0.0000125nMの異なる濃度で共培養物に添加し、未処理試料と比較した。5%CO
2を含む37℃での20時間のインキュベーションの後、ウェルあたり75μlの上清を、ウェルあたり25μlのCytoTox-Glo細胞毒性アッセイ(Promega)を含む96ウェル白色プレート(Greiner bio-one)に移した。室温で15分間インキュベートした後、PerkinElmer EnVisionでルミネセンス取得を行い、GraphPad Prism及びXLフィット・ソフトウェアを使用して分析した。データをLDH放出の発光シグナルとしてプロットした(
図10)。
図10A~Gは、5E11-TCB及び5F11-TCBの両方が、MM細胞株に対して、BCMA-TCB、10B10-TCB及びB72-TCBよりも強いT細胞傷害性を媒介したことを示すデータをまとめたものである。TCB媒介死滅化のEC
50を表3に示し、異なるドナーT細胞を用いた異なる実験からの平均として計算する(n=2又はn=3)。
【表3】
【0429】
実施例9
健康なヒト骨髄細胞におけるインビトロT細胞活性化
4人の異なる健常ドナー(Lonza#1M-105、ロット0000739254;0000739255;0000739256及び0000734008)の新鮮な未処理骨髄を、サンプリングの1又は2日後に処理した。室温で5分間、BD Pharm Lysis緩衝液(BD#555899;滅菌水中で1X)を用いた迅速な赤血球溶解後;細胞を遠心分離によって2回洗浄し、それぞれ126g及び443gで緩衝液交換した。細胞を計数し、RPMI 1640 Glutamax+20% HIウシ胎児血清+2%ヒト血清+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(全てGibco製)中300 000細胞/mLで再懸濁し、100μLの細胞懸濁液を96ウェルプレート丸底(TPP)にウェルあたり播種した。50μLの培地又は200nM(4X)から20pMまでのB72-TCB、5F11-TCB、5E11-TCB、BCMA-TCB、10B10-TCB若しくはDP47-TCBを1/10段階希釈で補充した培地をウェルあたり添加した。最後に、健常ドナーPBMCからPan T細胞(Miltenyi Biotec,#130-096-535)を使用して単離された50μLの同種異系T細胞を6 Mio/mL(エフェクタT対健康な骨髄標的細胞の比10:1)で添加した。加湿インキュベーター内で37℃で一晩インキュベートした後、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中、1/800希釈した50μLのLive blue(Invitrogen、#L23105)で4℃で20分間染色した。洗浄後、細胞を、FAC緩衝液(PBS 1X、2%ウシ胎仔血清;1%0.5m EDTA PH 8;0.25%NaN3アジ化ナトリウム(20%))で希釈した抗体の以下の混合物と共に4℃で30分間インキュベートした:CD25 BV605、CD69 APC-Cy7、BCMA BV421、CD38 BV510、CD138 FITC、FcRH5 PE希釈1/100及びCD8 BV711、CD3 PE-Cy5及びCD4 AlexaFluor 700希釈1/300(全てBioLegend製)及びGPRC5D AlexaFluor 647(社内、クローン5E11 IgG)。洗浄後、細胞を100μLのFAC緩衝液に再懸濁し、Fortessa(BD Biosciences)で取得した。
【0430】
図11A~Fに示されるデータは、B72-TCBが健康な骨髄においてT細胞の非特異的活性化(CD69の上方制御によって測定される)を誘導したが、他の試験されたTCBのいずれによっても誘導しなかったことを示す。示されるように、B72-TCBによって誘導される非特異的活性化は濃度依存的効果であり、5nmよりも50nmでより顕著であった(
図12A及び
図12B)。
【0431】
実施例10
TCBのインビボ有効性
有効性試験では、異なるTCB構築物(GPRC5D 5F110-TCB、5E11-TCB、BCMA-TCB及びB72-TCB)を、多発性骨髄腫を有する完全ヒト化NSGマウスにおける腫瘍退縮に関して比較した。NCI-H929細胞は最初にATCCから得られ、OPM-2細胞はDSMZから得られた。両方の細胞株を増殖させた。細胞を、10%のFCS及び2mMのL-グルタミン、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウムを含有するRPMI中で培養した。5%CO2で、水飽和した雰囲気中、37℃で細胞を培養した。動物あたり2.5×106個のNCI-H929及び5×106個のOPM-2細胞を、RPMI細胞培養培地(Gibco)及びGFRマトリゲル(1:1、総体積100μl)中で動物の右側腹部に95.0%超の生存率で皮下注射した。
【0432】
実験開始時に4~5週齢の雌NSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)マウス(フランス、リヨンのCharles Riverで飼育)を、特定の病原体のいない条件に維持し、1日のサイクルは、関連するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明状態/12時間暗状態であった。この実験研究プロトコルは、地方政府によってまとめられ、承認された(ROB-55.2-2532.Vet_03-16-10)。到着した後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために1週間維持した。継続的な健康モニタリングは、定期的に行われた。
【0433】
プロトコルに従って、雌NSGマウスに15mg/kgのブスルファンをi.p.(腹腔内)注射し、1日後、臍帯血から単離した1x10
5のヒト造血幹細胞を静脈注射した。幹細胞注入から16~20週後、マウスを出血させ、首尾良いヒト化のために、血液をフローサイトメトリによって分析した。効率的に移植されたマウスを、そのヒトT細胞の頻度に従って、異なる治療群(n=10/群)に無作為に分けた。その時点で、マウスに腫瘍細胞を上記のように皮下注射し、腫瘍サイズが約200mm
3に達したときに化合物又はPBS(ビヒクル)で週に1回治療した。全てのマウスに、異なる用量のTCB分子を静脈内注射した(
図13A~D及び
図14A~Dを参照のこと)。
適切な量の化合物を得るために、ストック溶液をヒスチジン緩衝液(20mMヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0)で希釈した。ノギスを用いて腫瘍増殖を週2回測定し、腫瘍体積を以下のように計算した:
T
v:(W
2/2)×L(W:幅、L:長さ)
【0434】
試験を終了し、化合物の4回の注射後に全てのマウスを屠殺し、腫瘍を外植し、秤量した。
【0435】
図13A~Dは、NCl-H929注射を受けた全ての動物における、治療後の腫瘍成長速度論を示す。5F11-TCBは、1mg/kg又は0.1mg/kgのいずれかで全ての動物において完全な腫瘍寛解を誘導したが(
図13A)、B72-TCBは、1mg/kgで使用した場合にのみ部分的な腫瘍寛解を誘導し、0.1mg/kgでは効果がなかった(
図13C)。BCMA-TCBはまた、1mg/kgで部分的な腫瘍寛解を誘導した(
図13B)。
【0436】
図14A~Dは、OPM-2注射を受けた全ての動物における、治療後の腫瘍成長速度論を示す。5F11-TCB(
図14A、上部パネル)及び5E11-TCB(
図14B、上部パネル)は、0.1mg/kgで大部分の動物において完全な腫瘍寛解を誘導したが、0.1mg/kgのB72-TCB(
図14C、上部パネル)は、腫瘍成長の制御においてそれほど強力ではなかった。0.01mg/kgにおいて、5F11-TCB(
図14A、底部パネル)及び5E11-TCB(
図14B、底部パネル)は、B72-TCB(
図14C、底部パネル)と比較して、腫瘍成長の阻害においてより強力であった。
【0437】
実施例11
抗GPRC5D抗体のヒト化
適切なヒトアクセプターフレームワークは、ヒトV及びJ領域配列のBLASTpデータベースにマウス入力配列(可変部分に植え付けられた)を照会することによって特定された。ヒトアクセプターフレームワークを選択するための選択基準は、配列相同性、同じ又は類似のCDR長、及びヒト生殖系列の推定頻度だったが、VH-VLドメインインターフェースでの特定のアミノ酸の保存でもあった。生殖系列の同定ステップに続いて、マウス入力配列のCDRをヒトアクセプターフレームワーク領域に移植した。これらの最初のCDR移植片と親抗体の間の各アミノ酸の違いは、それぞれの可変領域の構造的完全性への影響の可能性について評価され、親配列に対する「逆突然変異」が適切と思われる場合はいつでも導入された。構造評価は、BIOVIA Discovery Studio Environment、バージョン17R2を使用して実装した、社内で抗体構造相同性モデリングプロトコルにより作製し、親抗体とヒト化バリアントの両方のFv領域相同性モデルに基づいた。いくつかのヒト化バリアントには、「順突然変異」、すなわち、親バインダの所与のCDR位置で発生する元のアミノ酸をヒトアクセプター生殖系列の同等の位置で見られるアミノ酸に変更するアミノ酸交換が含まれていた。目的は、免疫原性のリスクを更に低減するために、(フレームワーク領域を超えて)ヒト化バリアントの全体的な人間性を高めることである。
【0438】
社内で開発されたin silicoツールを使用して、対になったVH及びVLヒト化バリアントのVH-VLドメイン配向を予測した(その全体が参照により組み込まれる国際公開第2016/062734号A1)。結果を親結合剤の予測されたVH-VLドメイン配向と比較して、元の抗体に形状が近いフレームワークの組合せを選択した。理論的根拠は、結合特性に悪影響を与える可能性がある2つのドメインの対合に破壊的な変化をもたらす可能性のあるVH-VLインターフェース領域でのアミノ酸交換の可能性を検出することである。
【0439】
GPRC5D結合剤5E11についてのアクセプターフレームワークの選択及びその適合
アクセプターフレームワークは、以下の表4に従って選択した。
【表4】
【0440】
ポストCDR3フレームワーク領域は、ヒトIGHJ生殖系列IGHJ3*02(DAFDIWGQGTMVTVSS)及びヒトIGKJ生殖系列IGKJ5*01(ITFGQGTRLEIK)から適合された。アクセプターフレームワークに関連する部分は太字で示されている。
【0441】
構造的考察に基づいて、ヒトアクセプターフレームワークから親結合剤中のアミノ酸への逆突然変異を5E11ヒト化バリアントの特定の位置に導入した(表5及び6)。さらに、いくつかの位置は、親結合剤のCDR中のアミノ酸がヒトアクセプター生殖系列に見られるアミノ酸で置換されている、順突然変異の有望な候補として同定された。変更の詳細を以下の表に示す。
【0442】
注:逆突然変異の前にはbが付いており、順突然変異にはfが付いている。例えば、bS49Aは、49位においてセリンからアラニンへの逆突然変異(ヒト生殖系列アミノ酸から親抗体アミノ酸)を指す。全ての残基インデックスをKabatナンバリングで示す。
【表5】
【表6】
【0443】
GPRC5D結合剤5F11についてのアクセプターフレームワークの選択及びその適合
アクセプターフレームワークは、以下の表7に従って選択した。
【表7】
【0444】
ポストCDR3フレームワーク領域は、ヒトIGHJ生殖系列IGHJ3*02(DAFDIWGQGTMVTVSS)及びヒトIGKJ生殖系列IGKJ2*01(YTFGQGTKLEIK)から適合された。アクセプターフレームワークに関連する部分は太字で示されている。
【0445】
構造的考察に基づいて、ヒトアクセプターフレームワークから親結合剤中のアミノ酸への逆突然変異を5F11ヒト化バリアントの特定の位置に導入した(表8及び9)。さらに、いくつかの位置は、親結合剤のCDR中のアミノ酸がヒトアクセプター生殖系列に見られるアミノ酸で置換されている、順突然変異の有望な候補として同定された。変更の詳細を以下の表に示す。
【0446】
注:逆突然変異の前にはbが付いており、順突然変異にはfが付いている。例えば、bA93Tは、93位においてアラニンからトレオニンへの逆突然変異(ヒト生殖系列アミノ酸から親抗体アミノ酸)を指す。全ての残基インデックスをKabatナンバリングで示す。
【表8】
【表9】
【0447】
ELISAによるヒト化バリアントの特徴付け
GPRC5D結合剤のVHドメイン及びVLドメインのヒト化バリアントの特徴付けのために、上記のELISAプロトコルを使用した(実施例7参照)。データを、5E11のヒト化バリアントについては表10に、5F11のヒト化バリアントについては表11に要約する。表12は、親5E11及び親5E11並びに選択されたヒト化バリアントのCDR配列を示す。
【表10】
【表11】
【表12】
【0448】
実施例12
選択された抗GPRC5D IgGの異なるヒト化バリアントの存在下でのCAR-J細胞のインビトロ活性化
異なるヒト化抗GPRC5D IgGのPGLALA-CAR-Jエフェクタ細胞活性化能を、以下に記載のように評価した。GPRC5D発現多発性骨髄腫標的細胞L363(Diehl et al.,Blut 36:331-338(1978))を、PCT出願番号PCT/EP2018/086038及びPCT出願番号PCT/EP2018/086067に開示されているように、IgG分子のFc部分にPGLALA(P329G L234A L235A)突然変異に対するTCRを発現し、NFATプロモーターを含有する抗PGLALA-CAR-Jエフェクタ細胞(Jurkat-NFATヒト急性リンパ性白血病レポーター細胞株)と共培養した。IgG分子がL363細胞及びPGLALA-CAR-J細胞上のGPRC5Dに同時に結合すると、NFATプロモーターが活性化され、活性ホタルルシフェラーゼの発現をもたらす。
【0449】
アッセイのために、ヒト化IgGバリアントをRPMI1640培地(Glutamax、15% HIウシ胎仔血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシン含有;全てGIBCO製)中に希釈し、丸底96ウェルプレートに移した(10μg/ml~0.2 pg/mlの最終濃度範囲)。ウェルあたり20 000個のL363細胞及び抗PGLALA-CAR-Jエフェクタ細胞を添加して、5:1の最終エフェクタ(抗PGLALA-CAR-J)対標的(L363)細胞比及びウェルあたり200μlの最終体積を得た。細胞を、加湿したインキュベーター内において37℃で約16時間インキュベートした。インキュベーション時間の終わりに、100μl/ウェルの上清を白色平底96ウェルプレート(Costar)に移し、別の100μl/ウェルのONE-Gloルシフェラーゼ基質(Promega)と共に5分間インキュベートした後、PerkinElmer Envisionを使用して発光を読み取った。GraphPad Prismを使用してIgG濃度に対する相対発光シグナル(RLU)として生データをプロットし、XL-フィット・ソフトウェアを使用してEC50を計算した。
【0450】
図15A~B及び表13に示されるように、評価された全てのGPRC5D IgGは、GPRC5D発現標的細胞及び抗PGLALA-CAR-J細胞への同時結合時にCAR-J活性化を誘導する。抗GPRC5D結合剤5F11及び5E11の両方について、ヒト化前の親抗体と比較して、類似又はさらに改善されたEC
50値でヒト化バリアントを同定することができた。結合剤5F11については、分子P1AE5741によって最も強い活性化を誘導することができた(
図15A)。結合剤5E11については、分子P1AE5730及びP1AE5723によって最も強い活性化を誘導することができた(
図15B)。
【表13】
【0451】
実施例13
糖鎖工学IgGのクローニング及び産生
対応するcDNAを、従来の(非PCR系)クローニング技術を用いてEvitriaのベクター系にクローニングした。evitriaベクタープラスミドを遺伝子合成した。プラスミドDNAを、陰イオン交換クロマトグラフィに基づく低エンドトキシン条件下で調製した。DNA濃度は、波長260 nmでの吸収を測定することによって決定した。配列の正確さは、サンガーシーケンシング(cDNAのサイズに応じてプラスミドあたり最大2つのシーケンシング反応)で検証した。懸濁液適合CHO K1細胞(元々はATCCから受け取り、Evitriaにおいて懸濁培養での無血清増殖に適合させた)を産生に使用した。種子を、化学的に定義された動物成分を含まない無血清培地であるeviGrow培地中で成長させた。細胞をeviFect(evitriaの特注の独自のトランスフェクション試薬)でトランスフェクトし、トランスフェクション後、動物成分を含まない無血清培地であるeviMake2で細胞を増殖させた。Man II及びGNTiiiに対応する重鎖、軽鎖及び2つのプラスミドのプラスミド比は9:9:1:1(GlycoMab technology)であった。遠心分離、及びその後フィルタにかける(0.2μmフィルタ)ことにより上清を回収した。5E11g2(配列番号98及び99)及び5F11g2(配列番号100及び101)を作製した。
【0452】
抗体を、洗浄緩衝液としてダルベッコPBS(Lonza BE17-512Q)、溶出緩衝液として0.1MグリシンpH3.5及び中和緩衝液として1MトリスHCl(pH9)を用いて、MabSelect(商標)SuRe(商標)を使用して精製した。その後のサイズ排除クロマトグラフィを、最終緩衝液をランニング緩衝液として使用してHiLoad Superdex 200pgカラムで行った。透析(必要な場合)は、2K分子量カットオフでPierce Slide-A-Lyzer(商標)G2 Dialysis Cassettesを用いて行った。抗体濃度(必要な場合)は、30kD分子量カットオフでAmicon(登録商標)Ultra Centrifugal Filterを用いて行った。
濃度は、波長280nmでの吸収を測定することによって決定した。吸光係数は、evitriaでの独自のアルゴリズムを使用して計算した。純度は、Agilent AdvanceBio SECカラム(300A 2.7um 7.8×300mm)及びランニング緩衝液としてDPBSを0.8ml/分で用いた分析用サイズ排除クロマトグラフィによって決定した。内毒素
【0453】
含有量を、Charles River Endosafe PTSシステムを用いて測定した。
【0454】
糖鎖工学抗体の脱フコシル化度を以下のように決定した。20mM Tris pH8.0中、0.005UのPNGase F(QAbio、米国)及びEndoH(QAbio、米国)と、37℃で16時間インキュベートすることによって、N結合型オリゴ糖を精製IgGから切断した。これにより遊離オリゴ糖が得られ、これをPapacら(D.I.Papac,A.Wong,A.J.Jones,Analysis of acidic oligosaccharides and glycopeptides by matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry,Analytical chemistry,68(1996)3215-3223)に従って正イオンモードで質量分析(Autoflex、Bruker Daltonics GmbH)によって分析した。MALDI-TOF-MS法は、精製されたIgG抗体の非フコース含有量の測定に使用されている。糖鎖工学抗体の許容され得るカットオフは、一般に50%に設定され、すなわち、少なくとも50%のフコシル化を有する抗体は、許容され得る糖鎖が改変されたIgG抗体であると考えられる。両方の抗体は、少なくとも50%のフコシル化含有量を有するという閾値を満たした。5E11g2の脱フコシル化度は59.1%であると決定された。5F11g2の脱フコシル化度は50.0%であると決定された。
【0455】
実施例14
GPRC5D IgGの多発性骨髄腫細胞株への結合
GPRC5Dへの結合を測定するために、本発明者らは、報告された多発性骨髄腫細胞株(Lombardi et al.,Molecular characterization of human multiple myeloma cell lines by integrative genomics:insights into the biology of the disease;Genes Chromosomes Cancer.2007 Mar;46(3):226-38.)に対してフローサイトメトリに基づく結合アッセイを行った。細胞株NCI-H929(ATCC(登録商標)CRL-9068)を、10%FBS、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、1×ピルビン酸ナトリウム(Gibco)及び50μMのβ-メルカプトエタノール(Gibco)を補充したGlutamax培地(Gibco)を含むRPMI 1640中で培養した。
【0456】
96丸底ウェルプレートのウェルあたり0.1 Mio細胞を、150nM~15fM(1:10の連続希釈)の示されたGPRC5D IgG構築物5E11g2及び5F11g2と共に、又は構築物なしで、4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液(PBS、2%ウシ胎児血清;1%0.5m EDTA pH8;0.25% NaN3アジ化ナトリウム(20%))で2回洗浄し、FACS緩衝液中に1/100希釈したPEコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的(Jackson Laboratories,109-606-008)を用いて4℃でさらに30分間染色した。2回の最終洗浄工程の後、特注のBD Biosciences Fortessaでフローサイトメトリ取得を行い、BD Divaを用いて分析した。EC50値を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して計算した。
【0457】
図16は、両方のIgGが濃度依存的にヒトGPRC5Dに結合し、5F11g2が5E11g2よりも有意に強い結合を示すことを示す。評価した濃度範囲では、いずれの抗体も飽和に達しない。
【表14】
【0458】
実施例15
異なるGPRC5D IgGによって媒介されるADCC
例えばNK細胞による腫瘍標的の抗体媒介性腫瘍細胞溶解を試験するために、GPRC5D IgGの糖鎖工学バージョンを以下のPBMC共培養アッセイで試験した。アッセイの原理は以下の通りである:
【0459】
NK細胞は、NK細胞の表面上のFcγRIII受容体への抗体のFc部分の結合と、腫瘍標的(この場合、AMO-1又はNCI-H929細胞上で発現されるGPRC5D)への抗体の抗原標的化部分の結合とを同時に行うことによって架橋される。架橋すると、NK細胞が活性化されて脱顆粒し、分泌されたグランザイム、パーフォリン及びプロテアーゼによる付着した腫瘍標的細胞の溶解をもたらす。
【0460】
簡潔には、標準的なヒストパック密度勾配によって健常ドナーの新鮮血液からヒトPBMCを単離し、AIM V培地に再懸濁し、96丸底ウェルプレートのウェルあたり0.75 Mio細胞を播種した。標的懸濁細胞を回収して添加し、25:1の最終PBMCエフェクタ対腫瘍標的比を得た。5E11g2それぞれの5F11g2 IgGを50nM~0.05pMの最終濃度範囲で添加した。最大細胞溶解を決定するための陽性参照として、AIM-V培地中の4%のトリトン-xを添加して、1%のトリトン-x-100の最終濃度を得た。陰性参照として、PBMCエフェクタ及び腫瘍標的細胞を抗体なしでインキュベートした。加湿インキュベーター中37℃で4時間インキュベートした後、LDH細胞毒性アッセイキット(Roche)を使用して、製造者の提案に従ってLDHを定量した。
【0461】
陽性(MR、最大放出)及び陰性(SR、自然放出)の参照値並びに以下の式を参照して、細胞溶解の割合を決定した:%ab依存性の死滅化=((平均Vmaxサンプル-平均Vmax自発放出)/(平均Vmax最大放出-平均Vmax自発放出))*100。偏差は、以下の式に基づいて計算した:%偏差=(ABS(1/(平均MR-SR)*SQRT((平均サンプル-平均MR)^2/(平均MR-SR)^2*標準偏差SR^2+標準偏差サンプル^2+(平均サンプル-平均SR)^2/平均MR^2*標準偏差MR^2)))*100。
図Xは、SDとともに、技術的な三連に基づく溶解のパーセントを示す。EC50値を、GraphPad Prismによって計算した。
【0462】
両分子は濃度依存的様式で効率的な腫瘍細胞溶解を誘導し、5F11g2がより強力な分子である(
図17A及び
図17B、並びに表15を参照)。
【表15】
【0463】
上述の発明を、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によって、ある程度詳細に説明してきたが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】