(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】アルデヒド放出を低減したポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20221005BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20221005BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20221005BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/76
C08G18/32 028
C08G18/28 065
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505564
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2019043839
(87)【国際公開番号】W WO2021021098
(87)【国際公開日】2021-02-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジー,レンジエ
(72)【発明者】
【氏名】リアン,イードー
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA13
4J034CA14
4J034CB01
4J034CB02
4J034CB07
4J034CD01
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF12
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4J034DQ16
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4J034HB07
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4J034HB09
4J034HC03
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4J034HC52
4J034HC54
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4J034KB03
4J034KD03
4J034KD07
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4J034KE02
4J034MA14
4J034NA03
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
本開示は、一般的に、アルデヒド放出を低減した組成物を提供し、より具体的には、自動車の内装部品などの輸送手段に有用なポリウレタン組成物を提供する。前記ポリウレタン組成物は、(a)多官能イソシアネートと、(b)イソシアネート反応性組成物と、(c)式(I)の化合物と、(d)第一級アミン含有化合物と、触媒とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多官能イソシアネートと、
(b)イソシアネート反応性組成物と、
(c)式(I)
【化1】
式(I)中、
R
1およびR
2は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、
R
3およびR
4は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、但し、R
3およびR
4の少なくとも1つは、水素であり、
Xは、SまたはOである、
の化合物と、
(d)第一級アミン含有化合物と、
(e)触媒、
を含むポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン組成物が、約0.8~約4、好ましくは約0.8~約1.3、の範囲のNCO指数を有する、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記多官能イソシアネートが、ポリメリックメチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート異性体混合物、トルエンジイソシアネート異性体混合物およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート反応性組成物は、多官能ポリオールまたは多官能アミン、好ましくは多官能ポリオール、より好ましくはポリエーテルポリオールである、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記化合物(c)は、バルビツール酸およびチオバルビツール酸のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記第一級アミン含有化合物は、式(II)
【化2】
式(II)中、
R
5およびR
6は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、
mは2または3であり、nは2であり、qは、0~3である、
の化合物である請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記ポリウレタン組成物中の重量%で示される、化合物(c)の化合物(d)に対する比は、約0.01:1~約5:1、好ましくは、約0.1:1~約3:1、より好ましくは約0.2:1~約2:1である、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記触媒はアミン触媒を含む、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項9】
前記発泡体組成物は、さらに少なくとも1つの鎖伸長剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項10】
化合物(b)、(c)、(d)および(e)を混合して混合物を形成する工程と、
前記混合物を化合物(a)に添加する工程と、
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリウレタン組成物の製造プロセス。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリウレタン組成物を使用して、輸送手段の内装部品を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アルデヒド放出を低減したポリウレタン組成物に関し、特に、自動車の内装部品等の輸送手段に有用なポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの放出は、不快な臭いや健康上の問題を引き起こす可能性がある。捕捉剤添加物を用いてポリウレタンまたはポリウレア(PU)組成物中のホルムアルデヒドの放出を低減する方法は、当該技術分で既に知られている。
【0003】
特許文献1には、アルデヒド捕捉剤としての酸性化合物のポリウレタン中での使用が開示されている。しかし、これらの化合物は、ホルムアルデヒド放出を低減する機能しか持っていない。
【0004】
特許文献2には、アルデヒド捕捉剤(アミン化合物)を使用してPU発泡体中のアルデヒド放出を低減することが開示されている。しかし、これれの化合物は、アセトアルデヒド放出を低減する効果はあまりない。
【0005】
特許文献3には、アルデヒド捕捉剤としてのヒドラジン化合物のポリウレタン中での使用が開示されている。しかし、これらの組成物の粘度はとても高い。
【0006】
特許文献4には、ポリヒドラゾジカルボンアミドを使用して、ポリウレタン発泡体中のアルデヒドの放出を低減することが開示されている。しかし、これは、多量のポリヒドラゾジカルボンアミドを添加した場合にのみ効果があり、これはPU発泡体の機械的特性に影響を与える。
【0007】
特許文献5は、アルデヒド捕捉剤として使用できるいくつかの添加剤を開示している。しかし、そのような添加剤はPU発泡プロセスに適していない。
【0008】
既知の解決策では、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド放出の両方を著しく低減できるPU発泡体組成物を提供することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0304686号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/026802号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0141236号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0203880号明細書
【特許文献5】特開2005-154599号公報
【発明の概要】
【0010】
本開示の組成物およびプロセスが、上記問題に対処することができることを見出した。本開示の効果には、以下が含まれる。(1)アルデヒドの放出、特にホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド放出の低減;(2)低価格;(3)発泡体の機械的特性に明らかな影響を与えないこと。
【0011】
本開示は、アルデヒド放出を低減した組成物およびこれらの組成物を調製するプロセスに関する。一実施形態では、本開示は、(a)多官能イソシアネートと、(b)イソシア
ネート反応性組成物と、(c)式(I)
【0012】
【0013】
R1およびR2は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、
R3およびR4は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、但し、R3およびR4の少なくとも1つは、水素であり、
XはSまたはOである
の化合物と、(d)第一級アミン含有化合物と、(e)触媒とを含むポリウレタン組成物を提供する。
【0014】
他の実施形態において、本開示は、前記ポリウレタン組成物の調製プロセスを提供する。
【0015】
さらに別の実施形態において、本開示は、前記ポリウレタン組成物を使用して、輸送手段の内装部品を形成する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中、「を含む(comprising)」という用語およびその派生語は、本明細書に開示されているか否かに関わらず、追加の成分、ステップまたまたは手順の存在を除外することを意図するものではない。一切の懸念を避けるため、「を含む(comprising)」という用語を使用して本明細書に記載されているすべての組成物は、特に断りのない限り、任意に追加の添加剤、アジュバントまたは化合物を含んでもよい。一方、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は実施可能性に必須でないものを除き、後述の範囲から、いかなる他の成分、ステップまたは手順も除外し、「~からなる(consisting of)」という用語は、使用された場合、具体的に定義または記載されていないいかなる成分、ステップまたは手順も除外する。特に断りのない限り、「または(or)」という用語は、列挙された部材のそれぞれ、またはその任意の組み合わせを意味する。
【0017】
本明細書における、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を示すために使用される。例として、「樹脂(a resin)」は、1つの樹脂または2つ以上の樹脂を意味する。
【0018】
「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態によると(according to one embodiment)」等の表現は、一般的に、その表現に続く特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、本発明の複数の実施形態に含まれる場合もあり得る。このような表現は必ずしも同じ実施形態を指すものではないということに留意すべきである。
【0019】
明細書中、ある成分や機能が含まれていること或いは特徴を有することが、「may」、「can」、「could」、「might」で規定されている場合、その特定の成分
や機能を、含んでいるまたは特徴を有していることが、必須ではない。
【0020】
本開示は、一般に、(a)多官能イソシアネート、(b)イソシアネート反応性組成物、(c)式(I)
【0021】
【0022】
式(I)中、R1およびR2は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、R3およびR4は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、但し、R3およびR4の少なくとも1つは、水素であり、XはSまたはOである
の化合物、(d)第一級アミン含有化合物および(e)触媒を含む。
【0023】
一実施形態によると、多官能イソシアネートは、式Q(NCO)nで示されるものを含み、nは、2~5、好ましくは2~3の数字であり、Qは、2~18の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基、5~10の炭素原子を含む脂環式炭化水素基、8~13の炭素原子を含むアリール脂肪族炭化水素基または炭素数6~15の芳香族炭化水素基であり、一般的には、芳香族炭化水素基が好ましい。
【0024】
多官能イソシアネートの例は、限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート;1,4-テトラメチレンジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3および-1,4-ジイソシアネート、およびこれら異性体の混合物;イソホロンジイソシアネート;2,4-および2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、およびこれら異性体の混合物;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水素化MDIまたはHMDI);1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート;2,4-および2,6-トルエンジイソシアネート、およびこれら異性体(TDI)の混合物;ジフェニルメタン-2,4’-および/または-4,4’-ジイソシアネート(MDI);ナフチレン-1,5-ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’、4’’-トリイソシアネート;アニリンをホルムアルデヒドで縮合した後、ホスゲン化して得られうる型のポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアネート(ポリメリックMDI);ノルボルナンジイソシアネート、m-およびp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;過塩素化アリールポリイソシアネート;カルボジイミド基、ウレタン基、アロホネート基、イソシアヌレート基、ウレア基またはビウレット基を有する変性多官能イソシアネート;テロメル化反応により得られる多官能イソシアネート;エステル基を有する多官能イソシアネート;およびポリメリック脂肪酸基を有する多官能イソシアネートが挙げられる。当業者であれば、上述の多官能イソシアネートの混合物を使用することも可能であり、好ましくはポリメリックMDIの混合物、MDI異性体の混合物およびTDIの混合物を使用できることが分かるであろう。
【0025】
別の実施形態では、MDIまたはTDIのプレポリマーをMDIまたはTDIの代替として使用することもできる。MDIまたはTDIのプレポリマーは、MDIまたはTDIと多官能ポリオールとの反応で調製される。MDIまたはTDIのプレポリマーの合成プ
ロセスは、当該技術分野で知られている(例えば、Polyurethanes Handbook、第2版,G.Oertel,1994を参照)。
【0026】
本開示で好適に使用されるイソシアネート反応性組成物は、多官能ポリオールまたは多官能アミンを含みうる。
【0027】
本開示で使用する多官能ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、生物再生可能ポリオール、ポリマーポリオール、リン含有ポリオールやハロゲン含有ポリオールなどの不燃性ポリオールを含み得るが、これらに限定されない。このようなポリオールは、単独で使用してもよく、好適に組み合わせた混合物として使用してもよい。
【0028】
本開示で使用する多官能ポリオールの一般官能性は、2~6である。ポリオールの分子量は、200~10000、好ましくは400~7000であり得る。
【0029】
分子量(MW)は、ポリスチレンを基準としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(GPC)で定義される重量平均分子量である。
【0030】
前記多官能ポリオールの割合は、ポリウレタン組成物を基準に、一般に10重量%~90重量%、好ましくは30重量%~80重量%である。
【0031】
本開示で使用するポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシドポリエーテルポリオール、プロピレンオキシドポリエーテルポリオール、ジオールおよびトリオールを含む多価アルコール化合物由来の末端水酸基を有するエチレンとプロピレンオキシドの共重合体、等のアルキレンオキシドポリエーテルポリオールを含み、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパンおよび同様の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0032】
本開示で使用するポリエステルポリオールには、ジカルボン酸と過剰のジオール、例えばアジピン酸とエチレングリコールまたはブタンジオール、の反応、またはラクトンと過剰のジオール、例えばカプロラクトンとプロピレングリコール、の反応によって生成されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、本開示で使用するポリエステルポリオールは、末端水酸基を有する、直鎖または軽度に分岐した脂肪族(主に、アジピン酸エステル)ポリオール、低分子量芳香族ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートポリオールも含みうる。これらの末端水酸基を有する、直鎖または軽度に分岐した脂肪族(主に、アジピン酸エステル)ポリオールは、ジカルボン酸を過剰のジオール、トリオールおよびそれらの混合物と反応させることによって生成される。前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、AGS混合酸等が挙げられるが、これらに限定されない。前記ジオールおよびトリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが挙げられるが、これらに限定されない。前記低分子量芳香族ポリエステルとしては、一般的にDMTスチルボトムと呼ばれる、ジメチルテレフタレート(DMT)を製造する際のプロセス残渣から得られる生成物、リサイクルされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ボトルや磁気テープを解糖した後、二塩基酸による再エステル化またはアルキレンオキシドと反応させて得られる生成物、および無水フタル酸の直接エステル化によって得られる製品が挙げられる。ポリカプロラクトンは、開始剤と触媒の存在下でカプロラクトンを開環させることで生成される。前記開始剤としては、エチレン
グリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールを含む。ポリカーボネートポリオールは、ジオール(一般的には、ヘキサンジオール)とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとのエステル交換にも関わらず、ジオールとホスゲンの重縮合によって製造される炭酸-に由来する。
【0033】
本開示で好適に使用される生物再生可能ポリオールとしては、ヒマシ油、ひまわり油、パーム核油、パーム油、キャノーラ油、菜種油、大豆油、コーンオイル、落花生油、オリーブ油、藻類油およびその混合物が挙げられる。
【0034】
多官能ポリオールはまた、グラフトポリオールまたはポリウレア変性ポリオールを含むが、これらに限定されない。グラフトポリオールは、ビニルモノマーをグラフト共重合させたトリオールを含む。好適なビニルモノマーは、例えば、スチレンまたはアクリロニトリルを含む。ポリウレア変性ポリオールは、ポリオールの存在下でジアミンとジイソシアネートを反応させて形成されたポリウレア分散液を含有するポリオールである。ポリウレア変性ポリオールの変異型は、ポリイソシアネートポリ付加(PIPA)ポリオールであり、イソシアネートとアルカノールアミンの現場反応によって形成される。
【0035】
不燃性ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオールが挙げられる。ハロゲン含有ポリオールは、例えば、エピクロルヒドリンまたはトリクロロブチレンオキシドの開環重合により得られるものが挙げられる。
【0036】
本開示で使用する多官能アミンは、ポリエーテルポリアミンまたはポリエステルポリアミンを含みうる。
【0037】
好適な実施形態において、前記イソシアネート反応性組成物は、ポリエーテルポリオールである。
【0038】
本開示のポリウレタン組成物において、化合物(c)および(d)を添加することで、アルデヒド放出を低減できることが分かった。
【0039】
化合物(c)は、本開示のアルデヒド捕捉剤として使用される。化合物(c)としては、例えば、バルビツール酸(CAS登録番号:67-52-7)およびチオバルビツール酸(CAS登録番号:504-17-6)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
化合物(c)は、ポリウレタン組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約10重量%、好ましくは約0.01重量%~約5重量%、より好ましくは約0.05重量%~約2重量%の範囲の量で、ポリウレタン組成物中に存在する。
【0041】
第一級アミンは、アンモニアに含まれる3つの水素原子のうち1つがアルキル基または芳香族基で置換されることで生じる。本開示で好適に使用される第一級アミン含有化合物は、式(II)の化合物を含みうる。
【0042】
【0043】
式(II)中、R5およびR6は、それぞれ、水素または非置換または置換アルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールもしくはアルコキシ基から選択され、mは2または3であり、nは2であり、qは、0~3である。
【0044】
本開示の実施形態において、第一級アミン含有化合物は、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)、またはそれらの組み合わせであってもよい。当業者であれば、本開示の恩恵を受け、本開示の実施形態で使用する他の好適な第一級アミン含有化合物、例えば、トリエチレンテトラミン(TETA);ペンタエチレンヘキサミン(PEHA);ヘキサエチレンヘプタミン(HEHA);ヘプタエチレンオクタミン(HEOA);オクタエチレンノナミン(OENO);ジェファミン(Jeffamine(登録商標))D230アミン、ジェファミン(Jeffamine(登録商標))D400アミン、ジェファミン(Jeffamine(登録商標))D2000アミン、ジェファミン(Jeffamine(登録商標))EDR148アミン、ジェファミン(Jeffamine(登録商標))EDR176アミン、ジェファミン(Jeffamine(登録商標))ED600アミン、ジェファミン(Jeffamine(登録商標))ED900アミンおよびジェファミン(Jeffamine(登録商標))ED2003アミン等のハンツマン社製のポリエーテルアミン製品;グアニジンをTETAと反応させて得られるアミン等の、ポリエーテルアミンまたはポリエチレンアミンを尿素またはグアニジン化合物と付加して得られるアミン;およびDMAPAをアクリロニトリルと反応させた後水素添加して得られるアミン、DMEA(ジメチルアミノエタノール)をアクリロニトリルと反応させた後水素添加して得られるアミン等の、アルコール含有またはアミノ含有第三級アミンのマイケル付加反応後に水素添加して得られたアミン類、を認識するであろう。
【0045】
ポリウレタン組成物中の重量%で示される化合物(c)の化合物(d)に対する比率は、一般に、約0.01:1~約5:1、好ましくは約0.1:1~約3:1、より好ましくは約0.2:1~約2:1の範囲である。
【0046】
本開示において、前記組成物は、例えば、多官能性イソシアネートと多官能ポリオールとの間の反応を速めるために、1つまたは複数の触媒、例えば、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-1,3-プロパンジアミン、2-((2-(2-ジメチルアミノ)エトキシ)エチル)メチルアミノ)エタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン等のアミン触媒を含む。
【0047】
一実施形態において、前記組成物中の前記触媒の割合は、0.001wt%~10wt%、好ましくは0.1wt%~5wt%の範囲の量である。
【0048】
一実施形態によると、前記ポリウレタン組成物のNCO指数は、0.8~約4、好ましくは約0.8~1.3の範囲内である。
【0049】
イソシアネート指数またはNCO指数またはインデックスは、式
[NCO]/[活性水素]
に示す製剤中に存在するイソシアネート反応性水素原子に対するNCO基の比率である。
【0050】
つまり、NCO指数は、製剤中に使用される、イソシアネート反応性水素の量と反応させるために理論的に必要なイソシアネートの量に対する、製剤中に実際に使用されるイソシアネートの量を表す。
【0051】
別の実施形態において、前記発泡体組成物は、さらに任意に、難燃剤、酸化防止剤、界面活性剤、物理的または化学的発泡剤、鎖延長剤、架橋剤、発泡体安定化剤、充填剤、顔料、またはPU材料に使用されるその他の典型的な添加剤を含んでもよい。
【0052】
開示の組成物の効果には、以下が含まれうる。(1)アルデヒドの放出、特にホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド放出の低減;(2)低価格;(3)発泡体の機械的特性に明らかな影響を与えないこと。
【0053】
本開示はまた、化合物(b)、(c)、(d)および(e)を混合して混合物を形成する工程と、前記混合物を化合物(a)に添加する工程とを含む、ポリウレタン組成物の製造プロセスを提供する。一実施形態によると、前記ポリウレタン組成物中の重量%で示される、化合物(c)の化合物(d)に対する比は、約0.01:1~約5:1、好ましくは、約0.1:1~約3:1、より好ましくは約0.2:1~約2:1である。
【0054】
さらに、本開示はまた、前記ポリウレタン組成物を使用して、輸送手段の内装部品、好ましくは、屋根被覆材、カーペット裏地発泡体、ドア被覆材、ステアリングリング、調整ノブ、シートクッション材等の自動車の内装材、を形成する方法を提供する。
【0055】
本開示の実施形態は、PU発泡体が使用される他の産業分野にも適用することができる。PU発泡体は、フレキシブルPU発泡体、半硬質PU発泡体、硬質PU発泡体、粘弾性PU発泡体、インテグラルスキンPU発泡体、水耕栽培用PU発泡体等を含む。
【0056】
以下に示す実施例は、本開示の例示であって、いかなる意味でも本開示を限定するものではない。
【0057】
原料
多官能イソシアネート:80重量部のDESMODUR(登録商標)T80 TDI(供給元:Covestro)および20重量部のSUPRASEC(登録商標)5005ポリメリックMDI(供給元:Huntsman Corporation、米国)の混合物
ポリオールA:グリセロール由来の末端水酸基を有する、エチレンとプロピレンオキシドの3官能共重合体。分子量:約6000
ポリオールB:KONIX(登録商標)KE-880Sポリマーポリオール。供給元:KPX、韓国
発泡体安定化剤:TEGOSTAB(登録商標)B8738 LF2ポリマー添加剤(シロキサン系界面活性剤)供給元:Evonik
触媒A:JEFFCAT(登録商標)ZF10触媒(アミン触媒)。供給元:Huntsman Corporation、米国
触媒B:JEFFCAT((R)商標)DPA触媒(アミン触媒)。供給元:Huntsman Corporation、米国
捕捉剤A:バルビツール酸
捕捉剤B:チオバルビツール酸
第一級アミン含有化合物A:テトラエチレンペンタミン
第一級アミン含有化合物B:ジメチルアミノプロピルアミン
鎖伸長剤:ジエタノールアミン
【0058】
例1~9:
A成分として多官能イソシアネートを用いて、例1~9を生成した。例1~9のB成分を表1に示す。表1に記載されている値はすべて、B成分の重量部を示す。表1に示すように、例4および5は、アルデヒド捕捉剤を含まない比較例である。例6および7は、第
一級アミン含有化合物含まない比較例である。例8は、第一級アミン含有化合物の添加量が過剰である、比較例である。最後に、例9は、アルデヒド捕捉剤または第一級アミン含有化合物を含まない比較例である。
【0059】
【0060】
手順
例1~9では、A成分とB成分をA:B=44:100の割合(重量比)で、かつ指数1.05で混合し、ポリエチレン容器内で撹拌し、ポリウレア・ポリウレタン発泡体を生成した。得られた発泡体組成物を、ポリエチレン製の袋に素早く流し込んだ。発泡反応が進み、発泡体は自由に膨らんだ。発泡体を試験前に室温で最低15分間硬化させ、VDA276放出試験のためにハンドミックス発泡の手順で製剤毎に約1kgの発泡体を作った。VDA276(2005年版)はドイツ自動車工業会(Verband der Automobilindustrie、ウェブサイト:https://www.vda.de/de)の試験法で、試験中の試験容器の温度は65°Cとした。
【0061】
結果
ホルムアルデヒド低減
【0062】
【0063】
表2は、VDA276放出試験に従って試験した例1~9のホルムアルデヒド放出量の低減を示す。アルデヒド捕捉剤と第一級アミン含有化合物の両方が存在する場合(例1、2、3および8)、ホルムアルデヒドの放出が大幅に減少した。例4および5(捕捉剤を
含有しない)、例6および7(第一級アミン含有化合物を含有しない)では、ホルムアルデヒド放出の減少が少なかった。最後に、例9(アルデヒド捕捉剤または第一級アミン含有化合物を含有しない)では、ホルムアルデヒド放出の減少は認められなかった。比較例1、2、3および8と例4~7を比較すると、アルデヒド捕捉剤と第一級アミン含有化合物の相乗効果により、アルデヒド捕捉剤の単独使用(例6および7)や第一級アミン含有化合物の単独使用(例4および5)によるそれぞれのホルムアルデヒド放出の減少と比べて、ホルムアルデヒド放出が大きく減少していることがわかる。
【0064】
アセトアルデヒド低減
【0065】
【0066】
表3は、VDA276放出試験に従って試験した、例1、2、3、8および9のアセトアルデヒド放出の減少を示す。本開示の例1~3は、例9(アルデヒド捕捉剤または第一級アミン含有化合物を含有しない)よりもアセトアルデヒドの放出が減少していた。過剰量の第一級アミン含有化合物を組成物中に添加すると(例8)、ホルムアルデヒドの放出は低減するが(表2参照)、アセトアルデヒドの放出は増加した。しかし、例2および3のように、本発明の第一級アミン含有化合物の量と捕捉剤の量を適切な比に調整することで、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの両方の放出量の大幅な減少が認められた。
【国際調査報告】