(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】向上した安定性を有する燃料組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 1/19 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
C10L1/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506108
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020071281
(87)【国際公開番号】W WO2021018895
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】デ・ブルーム,キャセリーネ・アンネローゼ
(72)【発明者】
【氏名】カイアッツォ,アルド
(72)【発明者】
【氏名】サロモンズ,クローデット
(72)【発明者】
【氏名】ヤンクロフ,プラメン
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013CE03
(57)【要約】
残留炭化水素燃料の安定性および/もしくは相溶性を改善もしくは維持する方法であって、(a)少なくとも5~95%m/mの残留炭化水素成分を、少なくとも5~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドすること、または、(b)少なくとも5~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を、(i)少なくとも5%m/m~95%m/mの残留炭化水素成分、および(ii)最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む安定残留燃料組成物とブレンドすることであって、前記脂肪酸アルキルエステル成分が、前記残留燃料組成物のアスファルテン溶解力を低下させる少なくとも1つの他の燃料組成物がそれに添加される前に、前記安定残留燃料組成物とブレンドされる、ブレンドすること、を含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留炭化水素成分もしくは残留燃料組成物の安定性および/もしくは相溶性を改善もしくは維持するための脂肪酸アルキルエステル成分の使用であって、前記使用が、
(a)少なくとも5%m/m~95%m/mの、大気塔底部(ATB)残留物、真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分を、少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドすることであって、前記脂肪酸アルキルエステル成分が、前記残留炭化水素成分のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分がそれに添加される前に、前記残留炭化水素成分とブレンドされ、少なくとも、前記別の成分が添加される前の前記脂肪酸アルキルエステル成分の前記ブレンドが、前記残留炭化水素成分のアスファルテン安定性予備力(stability reserve)および/もしくは安定性を増加させ、前記安定性予備力および/もしくは安定性の増加が、(i)前記脂肪酸アルキルエステル成分を含まないか、もしくは(ii)前記別の成分が添加された後にブレンドされた前記脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じ残留炭化水素成分中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、前記残留炭化水素成分もしくは前記残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、または
(b)少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を、(i)少なくとも5%m/m~95%m/mの、大気塔底部(ATB)残留物、真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分、ならびに(ii)最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む安定残留燃料組成物とブレンドすることであって、前記脂肪酸アルキルエステル成分が、前記残留燃料組成物のアスファルテン溶解力を低下させる少なくとも1つの他の燃料組成物がそれに添加される前に、前記安定残留燃料組成物とブレンドされ、少なくとも、前記脂肪酸アルキルエステル成分の前記ブレンドが、前記残留炭化水素成分の安定性予備力および/もしくは安定性を増加させ、かつ/または前記安定残留燃料組成物と前記少なくとも1つの他の燃料組成物との組み合わせが、ブレンド残留燃料組成物を形成し、少なくとも、前記少なくとも1つの他の燃料組成物が添加される前の前記脂肪酸アルキルエステル成分の前記ブレンドが、他の海洋燃料との前記安定残留燃料組成物の相溶性および/もしくは前記ブレンド残留燃料組成物の安定性を増加させ、前記安定残留燃料組成物の相溶性および/もしくは前記ブレンド残留燃料組成物の安定性の前記増加が、(i)前記脂肪酸アルキルエステル成分を含まないかもしくは(ii)少なくとも1つの他の残留海洋燃料組成物が安定残留海洋燃料組成物に添加された後にブレンドされる前記脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、前記ブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、を含む、使用。
【請求項2】
(i)前記別の成分が添加される前に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた前記残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(ii)前記脂肪酸アルキルエステル成分を含まない前記残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(iii)前記別の成分が添加された後に前記脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた前記残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、前記(i)のアスファルテン溶解度レベルが、前記(ii)もしくは(iii)のいずれかのアスファルテン溶解度レベルよりも大きく、
(i)前記少なくとも1つの他の燃料組成物が添加される前に前記脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた前記安定残留燃料組成物を含む前記ブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(ii)前記脂肪酸アルキルエステル成分を含まない前記安定残留燃料組成物を含む前記ブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(iii)前記少なくとも1つの他の燃料組成物が添加された後に前記脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた前記安定残留燃料組成物を含む前記ブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、前記(i)のアスファルテン溶解度レベルが、前記(ii)もしくは(iii)のいずれかのアスファルテン溶解度レベルよりも大きい、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記アスファルテンの溶解度が、ASTM D4740によって決定される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
安定性が、ASTM D7060法を使用して決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記非ハイドロプロセス成分が、軽質サイクル油(LCO)、重質サイクル油(HCO)、流動接触分解(FCC)サイクル油、FCCスラリー油、パイロリシスガス油、分解軽質ガス油(CLGO)、分解重質ガス油(CHGO)、パイロリシス軽質ガス油(PLGO)、パイロリシス重質ガス油(PHGO)、パイロリシス残留物(ECR)、熱分解残留物、熱分解重質留分、コーカー重質留分、真空ガス油(VGO)、コーカーディーゼル、コーカーガス油、コーカーVGO、熱分解VGO、熱分解ディーゼル、熱分解ガス油、グループIスラックワックス、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト油(DAO)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記ハイドロプロセス成分が、500ppmw未満の硫黄含有量を有する低硫黄ディーゼル(LSD)、15ppmw未満の硫黄含有量を有する超低硫黄ディーゼル(ULSD)、水素化処理LCO、水素化処理HCO、水素化処理FCCサイクル油、水素化処理パイロリシスガス油、水素化処理PLGO、水素化処理PHGO、水素化処理CLGO、水素化処理CHGO、水素化処理コーカー重質留分、水素化処理熱分解重質留分、水素化処理コーカーディーゼル、水素化処理コーカーガス油、水素化処理熱分解ディーゼル、水素化処理熱分解ガス油、水素化処理VGO、水素化処理コーカーVGO、水素化処理残留物、水素化分解底部物、水素化処理熱分解VGO、およびハイドロプロセスDAO(水素化処理水素化分解DAOを含む)、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記脂肪酸アルキルエステル成分が、植物油および/もしくは動物脂肪とアルコールとの、または天然に存在する油および脂肪に由来する脂肪酸のエステルとアルコールとのエステル交換の生成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記油および/または脂肪が、大豆油、パーム油、菜種油、亜麻仁油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿油、調理油(使用済み調理油を含む)、廃棄調理油、ヒマワリ油、サフラワー油、藻油、獣脂、ラード、イエローグリース、ブラウングリース、魚油、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記アルコールが、直鎖状、分枝状、アルキル、芳香族、一級、二級、三級、およびポリオールからなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記残留燃料組成物が、約0.05~約3.5%m/mの範囲内の硫黄含有量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記残留燃料組成物が、
最大2.0mg/kgの硫化水素含有量、1グラムあたり最大2.5mgKOHの酸価、最大0.1%m/mの堆積物含有量、最大0.5%v/vの含水量、最大0.15%m/mの灰分含有量、0.870~1.010g/cm
3の範囲内の15℃での密度、1~700cStの範囲内の50℃での動粘度、-30~35℃の範囲内の流動点、および60℃~130℃の範囲内の引火点、のうちの少なくとも1つを示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記大気塔底部(ATB)残留物が、-19.0~64℃の範囲内の流動点、80~213℃の範囲内の引火点、最大8.00mgKOH/gの酸価、最大約1.0g/ccの約15℃での密度、および1.75~15000cStの範囲内の約50℃での動粘度のうちの少なくとも1つを示し、
前記VTB残留物が、0.8~1.1g/ccの範囲内の15℃での密度、-15.0~95℃の範囲内の流動点、220~335℃の範囲内の引火点、最大8.00mgKOH/gの酸価、および3.75~15000cStの範囲内の50℃での動粘度のうちの少なくとも1つを示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ATB残留物が、70%m/mより多い、80%m/mより多い、または90%m/mより多い、C20より大きい炭素数を有する炭化水素を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
向上した安定性もしくは相溶性を有する燃料組成物であって、
少なくとも5%m/m~95%m/mの、大気塔底部(ATB)残留物、真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分と、
少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分と、
最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、またはそれらの任意の組み合わせと、を含み、
前記脂肪酸アルキルエステル成分が、前記残留炭化水素成分のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分がそれに添加される前に、前記残留炭化水素成分とブレンドされ、
前記非ハイドロプロセス成分が、軽質サイクル油(LCO)、重質サイクル油(HCO)、流動接触分解(FCC)サイクル油、FCCスラリー油、パイロリシスガス油、分解軽質ガス油(CLGO)、分解重質ガス油(CHGO)、パイロリシス軽質ガス油(PLGO)、パイロリシス重質ガス油(PHGO)、パイロリシス残留物(ECR)、熱分解残留物、熱分解重質留分、コーカー重質留分、真空ガス油(VGO)、コーカーディーゼル、コーカーガス油、コーカーVGO、熱分解VGO、熱分解ディーゼル、熱分解ガス油、グループIスラックワックス、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト油(DAO)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記ハイドロプロセス成分が、500ppmw未満の硫黄含有量を有する低硫黄ディーゼル(LSD)、15ppmw未満の硫黄含有量を有する超低硫黄ディーゼル(ULSD)、水素化処理LCO、水素化処理HCO、水素化処理FCCサイクル油、水素化処理パイロリシスガス油、水素化処理PLGO、水素化処理PHGO、水素化処理CLGO、水素化処理CHGO、水素化処理コーカー重質留分、水素化処理熱分解重質留分、水素化処理コーカーディーゼル、水素化処理コーカーガス油、水素化処理熱分解ディーゼル、水素化処理熱分解ガス油、水素化処理VGO、水素化処理コーカーVGO、水素化処理残留物、水素化分解底部物、水素化処理熱分解VGO、およびハイドロプロセスDAO(水素化処理水素化分解DAOを含む)、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、燃料組成物。
【請求項14】
残留炭化水素成分もしくは残留燃料組成物の安定性および/もしくは相溶性を改善もしくは維持するための方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも5%m/m~95%m/mの、大気塔底部(ATB)残留物、真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分を、少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドすることであって、前記脂肪酸アルキルエステル成分が、前記残留炭化水素成分のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分がそれに添加される前に、前記残留炭化水素成分とブレンドされ、少なくとも、前記別の成分が添加される前の前記脂肪酸アルキルエステル成分の前記ブレンドが、前記残留炭化水素成分のアスファルテン安定性予備力および/もしくは安定性を増加させ、前記安定性予備力および/もしくは安定性の増加が、(i)前記脂肪酸アルキルエステル成分を含まないかもしくは(ii)前記別の成分が添加された後にブレンドされた前記脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じ残留炭化水素成分中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、前記残留炭化水素成分もしくは前記残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、または
(b)少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を、(i)少なくとも5%m/m~95%m/mの、大気塔底部(ATB)残留物、真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分、ならびに(ii)最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む安定残留燃料組成物とブレンドすることであって、前記脂肪酸アルキルエステル成分が、前記残留燃料組成物のアスファルテン溶解力を低下させる少なくとも1つの他の燃料組成物がそれに添加される前に、前記安定残留燃料組成物とブレンドされ、前記安定残留燃料組成物と前記少なくとも1つの他の燃料組成物との組み合わせが、ブレンド残留燃料組成物を形成し、少なくとも、前記少なくとも1つの他の燃料組成物が添加される前に前記脂肪酸アルキルエステルとの前記ブレンドが、前記安定残留燃料組成物の前記相溶性および/もしくはブレンド残留燃料組成物の前記安定性を増加させ、前記安定残留燃料組成物の相溶性および/もしくは前記ブレンド残留燃料組成物の前記安定性の前記増加が、(i)前記脂肪酸アルキルエステル成分を含まないかもしくは(ii)少なくとも1つの他の残留海洋燃料組成物が安定残留海洋燃料組成物に添加された後にブレンドされた前記脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、前記ブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本章は、本発明の例示的な実施形態に関連し得る当該技術分野の様々な態様を紹介することを意図する。本議論は、本発明の特定の態様のより良い理解を容易にするためのフレームワークを提供するのに役立つと考えられる。したがって、この観点から本章を読む必要があり、必ずしも先行技術を承認するものではないことを理解する必要がある。
【0002】
本開示は、一般に、海洋燃料組成物、特に、少なくとも1つの残留炭化水素成分および少なくとも1つの脂肪酸アルキルエステル成分を含む、向上した安定性を有する海洋燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
世界的な輸送で使用される船舶は、代表的には、バンカー燃料または燃料油と呼ばれることもあり得る海洋燃料で運航される。残留物ベース(「残留物ベース」または残留物)または残留炭化水素成分を含む海洋燃料は、他の方法では有益な用途に転向することが困難なおよび/または高価な重油画分を含み得る。
【0004】
より少ない硫黄含有量を有する海洋燃料に関する最近の仕様は、必要な仕様を満たす完成燃料のブレンド成分として、異なる性質の炭化水素ストリームの使用をもたらす可能性がある。このような状況では、非相溶性の異なる組成の原料をブレンドすることが、アスファルテンを溶液から出させて問題を引き起こし得、燃料自体の不安定性を引き起こし得るので、望ましい燃料安定性を達成することは困難であり得る。さらに、2つの安定燃料を混合すると、アスファルテンの凝集と沈殿が発生する不安定なブレンドが生じ、これらの燃料を使用する装置の操作上の問題を引き起こし得る。
【0005】
米国特許第9803152号は、様々なグレードの燃料油の相溶性を決定する方法、ならびに相溶性を改善するために燃料油を改変する方法および相溶性が改善した組成物を開示する。また、燃料油のブレンドのトルエン当量溶媒和力は、個々のブレンド成分のトルエン当量溶媒和力に関して単純な様式で変化しないことも開示する。
【0006】
米国特許第9845434号は、藻油などの生物源油が、原油などの石油原料中のアスファルテンの存在を安定させ、石油原料の生産、移送および処理における汚染および/または腐食を回避または防止するのに役立つことを開示する。
【0007】
米国特許出願公開第2009/0300974号は、再生可能燃料原料(バイオディーゼルなど)または石油ベース燃料と再生可能燃料とのブレンドの安定性を高めるための種々の添加剤安定剤を開示し、バイオ由来燃料は石油ベース燃料と比較して本質的に酸化的に不安定であること、およびバイオディーゼル/石油ディーゼルブレンドの空気への曝露は、燃料の酸化を引き起こすと述べている。
【発明の概要】
【0008】
したがって、向上した安定性を有する燃料組成物およびそれを製造する方法を開発することが望ましいであろう。
【0009】
残留炭化水素成分もしくは残留燃料組成物の安定性および/もしくは相溶性を改善もしくは維持するための脂肪酸アルキルエステル成分もしくは方法の使用であって、該使用が、(a)少なくとも5%m/m~95%m/mの、必要に応じて80~213℃の範囲内の引火点を有する大気塔底部(ATB)残留物、必要に応じて220~335℃の範囲内の引火点を有する真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分を、少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドすることであって、脂肪酸アルキルエステル成分が、残留炭化水素成分のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分がそれに添加される前に、残留炭化水素成分とブレンドされ、少なくとも、該別の成分が添加される前の脂肪酸アルキルエステル成分のブレンドが、残留炭化水素成分のアスファルテン安定性予備力(stability reserve)および/もしくは安定性を増加させ、安定性予備力および/もしくは安定性の増加が、(i)脂肪酸アルキルエステル成分を含まないかもしくは(ii)該別の成分が添加された後にブレンドされた脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じ残留炭化水素成分中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、残留炭化水素成分もしくは残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、または(b)少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を、(i)少なくとも5%m/m~95%m/mの、必要に応じて80~213℃の範囲内の引火点を有する大気塔底部(ATB)残留物、必要に応じて220~335℃の範囲内の引火点を有する真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分、ならびに(ii)最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む安定残留燃料組成物とブレンドすることであって、脂肪酸アルキルエステル成分が、残留燃料組成物のアスファルテン溶解力を低下させる少なくとも1つの他の燃料組成物がそれに添加される前に、安定残留燃料組成物とブレンドされ、少なくとも、脂肪酸アルキルエステル成分のブレンドが、残留炭化水素成分の安定性予備力および/もしくは安定性を増加させ、かつ、安定残留燃料組成物と少なくとも1つの他の燃料組成物との組み合わせが、ブレンド残留燃料組成物を形成し、少なくとも、少なくとも1つの他の燃料組成物が添加される前の脂肪酸アルキルエステル成分のブレンドが、他の海洋燃料との該安定残留燃料組成物の相溶性および/もしくはブレンド残留燃料組成物の安定性を増加させ、安定残留燃料組成物の相溶性および/もしくはブレンド残留燃料組成物の安定性の増加が、(i)脂肪酸アルキルエステル成分を含まないかもしくは(ii)少なくとも1つの他の残留海洋燃料組成物が安定残留海洋燃料組成物に添加された後にブレンドされる脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、ブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、を含む、使用。
【0010】
必要に応じて、(i)該別の成分が添加される前に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(ii)脂肪酸アルキルエステル成分を含まない残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(iii)該別の成分が添加された後に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(i)のアスファルテン溶解度レベルが、(ii)または(iii)のいずれかのアスファルテン溶解度レベルよりも大きく、
【0011】
必要に応じて、(i)少なくとも1つの他の燃料組成物が添加される前に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた安定残留燃料組成物を含むブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(ii)脂肪酸アルキルエステル成分を含まない安定残留燃料組成物を含むブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(iii)少なくとも1つの他の燃料組成物が添加された後に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた安定残留燃料組成物を含むブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(i)のアスファルテン溶解度レベルが、(ii)または(iii)のいずれかのアスファルテン溶解度レベルよりも大きい。
【0012】
必要に応じて、アスファルテンの溶解度は、ASTM D4740によって決定され、かつ/または安定性は、ASTM D7060法を使用して決定される。必要に応じて、本明細書に記載の使用および/または方法による、残留炭化水素成分および/または残留燃料組成物または2つの異なる燃料組成物の最終ブレンドの安定性予備力、安定性、および/または相溶性の増加は、特に、残留炭化水素成分または残留燃料組成物のアスファルテン溶解力をそれぞれ低下させ得る別の成分を添加する前に添加した場合、脂肪酸アルキルエステル成分とのブレンドおよび/または成分中のアスファルテンの凝集および/または沈殿の量の減少によって、少なくとも測定または決定され得る。アスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少は、少なくとも、少なくとも本明細書の100倍の倍率下のような顕微鏡下での観察、または本開示で言及されるような、例えば、ASTM D7060を含む、当業者に公知の他の適切な方法によって測定または決定され得る。
【0013】
本開示はまた、向上した安定性または相溶性を有する燃料組成物であって、少なくとも5%m/m~95%m/mの、必要に応じて80~213℃の範囲内の引火点を有する大気塔底部(ATB)残留物、必要に応じて220~335℃の範囲内の引火点を有する真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分、少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分、および最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、またはそれらの任意の組み合わせを含み、脂肪酸アルキルエステル成分が、残留炭化水素成分のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分がそれに添加される前に、残留炭化水素成分とブレンドされる、燃料組成物を提供する。
【0014】
必要に応じて、本明細書中で提供される用途、方法、および組成物について、非ハイドロプロセス成分は、軽質サイクル油(LCO)、重質サイクル油(HCO)、流動接触分解(FCC)サイクル油、FCCスラリー油、パイロリシスガス油、分解軽質ガス油(CLGO)、分解重質ガス油(CHGO)、パイロリシス軽質ガス油(PLGO)、パイロリシス重質ガス油(PHGO)、パイロリシス残留物(ECR)、熱分解残留物、熱分解重質留分、コーカー重質留分、真空ガス油(VGO)、コーカーディーゼル、コーカーガス油、コーカーVGO、熱分解VGO、熱分解ディーゼル、熱分解ガス油、グループIスラックワックス、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト油(DAO)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。必要に応じて、ハイドロプロセス成分は、500ppmw未満の硫黄含有量を有する低硫黄ディーゼル(LSD)、15ppmw未満の硫黄含有量を有する超低硫黄ディーゼル(ULSD)、水素化処理LCO、水素化処理HCO、水素化処理FCCサイクル油、水素化処理パイロリシスガス油、水素化処理PLGO、水素化処理PHGO、水素化処理CLGO、水素化処理CHGO、水素化処理コーカー重質留分、水素化処理熱分解重質留分、水素化処理コーカーディーゼル、水素化処理コーカーガス油、水素化処理熱分解ディーゼル、水素化処理熱分解ガス油、水素化処理VGO、水素化処理コーカーVGO、水素化処理残留物、水素化分解底部物、水素化処理熱分解VGO、およびハイドロプロセスDAO(水素化処理水素化分解DAOを含む)、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および組成物について、脂肪酸アルキルエステル成分は、植物油および/もしくは動物脂肪とアルコールとの、または天然に存在する油および脂肪に由来する脂肪酸のエステルとアルコールとのエステル交換の生成物である。必要に応じて、油および/または脂肪は、大豆油、パーム油、菜種油、亜麻仁油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿油、調理油(使用済み調理油を含む)、廃棄調理油、ヒマワリ油、サフラワー油、藻油、獣脂、ラード、イエローグリース、ブラウングリース、魚油、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。必要に応じて、アルコールは、直鎖状、分枝状、アルキル、芳香族、一級、二級、三級、およびポリオールからなる群から選択される。
【0016】
必要に応じて、本明細書で提供される使用、方法、および組成物について、残留燃料組成物は、約0.05~約3.5%m/mの範囲内の硫黄含有量を有する。必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および組成物について、残留燃料組成物は、以下の少なくとも1つまたは全てを示す:最大2.0mg/kgの硫化水素含有量、1グラムあたり最大2.5mgKOHの酸価、最大0.1%m/mの堆積物含有量、最大0.5%v/vの含水量、最大0.15%m/mの灰分含有量、15℃で0.870~1.010g/cm3の範囲内の密度、50℃で1~700cStの範囲内の動粘度、-30~35℃の範囲内の流動点、および60℃~130℃の範囲内の引火点。必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および組成物について、大気塔底部(ATB)残留物は、以下のうちの少なくとも1つまたは全てを示し:-19.0~64℃の範囲内の流動点、80~213℃の範囲内の引火点、8.00mgKOH/gまでの酸価、最大約1.0g/ccの約15℃での密度、および1.75~15000cStの範囲内の約50℃での動粘度、真空塔底部(VTB)残留物は、以下のうちの少なくとも1つを示す:0.8~1.1g/ccの範囲内の15℃での密度、-15.0~95℃の範囲内の流動点、220~335℃の範囲内の引火点、8.00mgKOH/gまでの酸価、および3.75~15000cStの範囲内の50℃での動粘度。必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および組成物について、ATB残留物は、70%m/mより多い、80%m/mより多い、または90%m/mより多い、C20より大きい炭素数を有する炭化水素を含む。
【0017】
本発明の実施形態の利点および他の特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、例示としてのみ与えられていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下の図面は、本発明の実施形態のうちのいくつかの特定の態様を図示するものであり、本発明を限定または定義するために使用されるべきではない。
【0019】
【
図1】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、実施例1の不安定なVTB残留炭化水素成分を示す。
【
図2】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、脂肪酸アルキルエステル成分を添加した
図1のVTB残留炭化水素成分を示す。
【
図3】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、3日間の保管後の
図2のVTB残留炭化水素成分を示す。
【
図4】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、4週間の保管後の
図2のVTB残留炭化水素成分を示す。
【
図5】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、実施例2の海洋燃料組成物と海洋軽油(MGO)とのブレンドを示す。
【
図6】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、MGOの代わりに脂肪酸アルキルエステルを有する
図5の海洋燃料組成物のブレンドを示す。
【
図7】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、実施例3からの安定残留燃料組成物を示す。
【
図8】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、
図7の残留燃料油およびセタンのブレンドを示す。
【
図9】100倍の顕微鏡倍率下で観察される、(i)脂肪酸アルキルエステル成分をブレンドした
図7の残留燃料油および(ii)セタンから得られるブレンドを示す。
【
図10】脂肪酸アルキルエステルを添加した
図8のブレンドを示し、このブレンドは、100倍の顕微鏡倍率下で観察される。
【
図11】実施例4の2つの非相溶性の残留燃料組成物である燃料組成物Aおよび燃料組成物Bのブレンドを示し、これは、100倍の顕微鏡倍率下で観察される。
【
図12】
図11の燃料組成物Aの、
図11の燃料組成物Bを添加する前に添加した脂肪酸アルキルエステル成分とのブレンドを示し、得られたブレンドは、100倍の顕微鏡倍率下で観察される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、一般に、海洋燃料、特に、少なくとも1つの残留成分(または残留炭化水素成分)および少なくとも1つの脂肪酸アルキルエステルを含む向上した安定性を有する海洋残留燃料、ならびに少なくとも1つの残留炭化水素成分を含む海洋燃料を安定化するための脂肪酸アルキルエステルの使用に関する。残留炭化水素成分、および必要に応じてさらにハイドロプロセスまたは非ハイドロプロセス炭化水素成分に、脂肪酸アルキルエステルを添加すると、脂肪酸アルキルエステルを含まない以外は同じ燃料と比較して、改善されたアスファルテンの溶解性を有し、それに対応して向上した燃料安定性を有する燃料組成物が得られることが発見された。
【0021】
残留海洋燃料の安定性は、燃料が、保管中に、目的へのその適合性に悪影響を及ぼす変化を受けない、特に、不溶性物質(スラッジ)の形成/分離を引き起こさない能力として定義され得る。海洋燃料中でのスラッジ形成は、詰まったフィルターおよび過負荷がかかった燃料ポンプから、ピストン、リングおよびライナーなどの損傷したエンジン部品まで至り得る、船舶/船主にとっての運用上の課題の原因である。スラッジは、海洋燃料の保管中に起こる化学的、物理的および/または生物学的プロセスの結果として生じ得る、アスファルテンと、樹脂、ワックス、酸化または重合した物質、堆積物、水、バクテリアにより生成されたバイオマスなどを含む多くの他の材料との組み合わせであり得る。
【0022】
少なくとも残留炭化水素成分を生成するプロセスのために、これらの成分は、代表的には、原油中で一般的に見出される最高分子量の分子であるアスファルテンを含む。アスファルテンは、代表的には、複雑な構造および比較的高い分子量を有し、他の原油成分と比較してその起源に応じて変動する極性の程度を有する、暗褐色から黒色のアモルファス固体である。それらは、n-ヘプタンには不溶であるがトルエンには可溶である画分として定義される。アスファルテンは、主に芳香族(縮合芳香環)構造を有する極性分子である。
【0023】
少なくとも、アスファルテンの極性でほとんど芳香族性の性質および高分子量は、非極性(パラフィン系など)の液体炭化水素マトリックス(または相)へのそれらの比較的低い溶解度および芳香族液体炭化水素マトリックス(または相)へのそれらの比較的高い溶解度をもたらす。残留海洋燃料中のアスファルテンの凝集は、アスファルテン分子が凝集し始めるときに発生し得、これは、最終的に、十分な量のアスファルテンが凝集して溶液から出てくるときに、暗色の固体画分としてのアスファルテンの沈殿をもたらす。アスファルテンの凝集および/または沈殿のいずれも、凝集および/または沈殿したアスファルテンが(溶液中にとどまるのではなく)スラッジ形成を引き起こす可能性がある不安定な燃料組成につながり得る。
【0024】
一定量のアスファルテンを含む燃料組成物におけるアスファルテンの凝集または沈殿につながる少なくとも1つの要因は、溶解力(例えば、それらが溶解する液相の芳香族性)が低下する場合である。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、アスファルテンの溶解度を改善するためのまたは液体燃料マトリックスの溶解度を高めるための脂肪酸アルキルエステルの使用が、改善された燃料安定性を提供し得、そのような異なる燃料および/または成分を組み合わせることによるアスファルテン沈殿が減少する異なる特性の燃料または成分の相溶性を潜在的に提供し得ることをここに示した。
【0025】
脂肪酸メチルエステル(FAME)などの脂肪酸アルキルエステルは、ガス油燃料と同様の燃焼特性を有する生物学的起源の酸素含有極性化合物である。脂肪酸アルキルエステルは、石油ベースの燃料成分とブレンドされると、輸送からの温室効果ガス(CO2)排出量の削減、およびブレンドされた組成物のアスファルテンの改善された溶解性をもたらし、それによって、本明細書に記載されるように得られる燃料組成物の安定性および相溶性を改善し得る。上記のように、理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、残留炭化水素成分とのブレンド成分としての脂肪酸アルキルエステル成分の使用により、アスファルテンまたは限られた溶解度を有する他の成分、例えば、樹脂等に対する得られるブレンドの溶解力を向上させ、それによって向上した安定性(例えば、脂肪酸アルキルエステル成分を有しない以外は同じブレンドと比べて、液体マトリックスに溶解したまたは溶液中に存在するより大量のアスファルテンを有し得る)を有する燃料組成物を提供し得ることを示した。
【0026】
加えて、本発明者らは、脂肪酸アルキルエステル成分の使用が、粘度低下剤として作用し得るパラフィン系成分(セタンなど)の添加に対する残留燃料組成物の相溶性耐性または安定性予備力を増加させ得ることを示した。上記のように、アスファルテンは非極性(パラフィン系など)の液体炭化水素マトリックス(または相)中で比較的低い溶解度を有する。燃料組成物の液相などの液体炭化水素マトリックスの非極性内容物の増加は、燃料組成物中のアスファルテンの溶解度を低下させ得るかまたはアスファルテンに対する燃料組成物の溶解度を低下させ得るが、これは、その燃料組成物の非極性内容物の添加に対する耐性が比較的少ないことを意味する。しかしながら、脂肪酸アルキルエステル成分を安定燃料組成物または安定残留炭化水素成分に添加することにより、安定燃料組成物または残留炭化水素成分が非極性成分(例えば、パラフィン系成分)を添加しても安定なままで存在する能力を高め得る。燃料組成物または成分の安定性または不安定性は、一般に、完全に溶液中ではない、例えば、凝集または沈殿したアスファルテンの量と相関する公知の方法によって決定され得る。
【0027】
さらに、本発明者らは、脂肪酸アルキルエステル成分の残留炭化水素成分を含む安定燃料組成との使用が、脂肪酸アルキルエステル成分を含まない同じ燃料組成物と比較して、そのような燃料組成物の安定性予備力を増加させ得ることもまた示した。安定燃料組成物は、組み合わせたときにアスファルテンの凝集および/または沈殿が引き起こされる閾値量を超える別の安定燃料組成物と非相溶性であると考えられ得る。本明細書に記載の脂肪酸アルキルエステル成分の使用は、アスファルテン凝集および/または沈殿(スラッジ形成)を引き起こすことなく、より大量のそのような非相溶性燃料組成物を互いに組み合わせることを許容し、それによって、改善された相溶性を有する燃料組成物を提供する。
【0028】
したがって、一般に、本開示は、残留炭化水素成分もしくは残留燃料組成物の安定性および/もしくは相溶性を改善もしくは維持するための脂肪酸アルキルエステル成分もしくは方法の使用であって、該使用が、(a)少なくとも5%m/m~95%m/mの、必要に応じて80~213℃の範囲内の引火点を有する大気塔底部(ATB)残留物、必要に応じて220~335℃の範囲内の引火点を有する真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分を、少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドすることであって、脂肪酸アルキルエステル成分が、残留炭化水素成分のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分がそれに添加される前に、残留炭化水素成分とブレンドされ、少なくとも、該別の成分が添加される前の脂肪酸アルキルエステル成分のブレンドが、残留炭化水素成分のアスファルテン安定性予備力および/もしくは安定性を増加させ、安定性予備力および/もしくは安定性の増加が、(i)脂肪酸アルキルエステル成分を含まないかもしくは(ii)該別の成分が添加された後にブレンドされた脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じ残留炭化水素成分中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、残留炭化水素成分もしくは残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、または(b)少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を、(i)少なくとも5%m/m~95%m/mの、必要に応じて80~213℃の範囲内の引火点を有する大気塔底部(ATB)残留物、必要に応じて220~335℃の範囲内の引火点を有する真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分、ならびに(ii)最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、もしくはそれらの任意の組み合わせを含むかもしくはそれらから本質的になる安定残留燃料組成物とブレンドすることであって、脂肪酸アルキルエステル成分が、残留燃料組成物のアスファルテン溶解力を低下させる少なくとも1つの他の燃料組成物がそれに添加される前に、安定残留燃料組成物とブレンドされ、安定残留燃料組成物と少なくとも1つの他の燃料組成物との組み合わせが、ブレンド残留燃料組成物を形成し、少なくとも、少なくとも1つの他の燃料組成物が添加される前の脂肪酸アルキルエステル成分のブレンドが、他の海洋燃料との安定残留燃料組成物の相溶性および/もしくはブレンド残留燃料組成物の安定性を増加させ、安定残留燃料組成物の相溶性および/もしくはブレンド残留燃料組成物の安定性の増加が、(i)脂肪酸アルキルエステル成分を含まないかもしくは(ii)少なくとも1つの他の残留海洋燃料組成物が安定残留海洋燃料組成物に添加された後にブレンドされる脂肪酸アルキルエステル成分を含む同じブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量に対する、ブレンド残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少によって少なくとも測定される、ブレンドすること、を含む、使用を提供する。
【0029】
本開示はまた、向上した安定性または相溶性を有する燃料組成物であって、少なくとも5%m/m~95%m/mの、必要に応じて80~213℃の範囲内の引火点を有する大気塔底部(ATB)残留物、必要に応じて220~335℃の範囲内の引火点を有する真空塔底部残留物(VTB)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残留炭化水素成分、少なくとも5%m/m~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分、および最大90%m/mの、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、またはそれらの任意の組み合わせを含むかもしくはそれらから本質的になり、脂肪酸アルキルエステル成分が、残留炭化水素成分のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分がそれに添加される前に、残留炭化水素成分とブレンドされる、燃料組成物を提供する。
【0030】
本明細書中で提供される用途、方法、および/または燃料組成物の成分および特性
【0031】
残留炭化水素成分
改善された安定性を有する燃料組成物は、約5~95%m/mの残留炭化水素成分を含み得る。例えば、海洋燃料組成物は、少なくとも5%m/m、少なくとも10%m/m、少なくとも15%m/m、少なくとも20%m/m、少なくとも25%m/m、少なくとも30%m/m、少なくとも35%m/m、少なくとも40%m/m、少なくとも45%m/m、少なくとも50%m/m、少なくとも55%m/m、少なくとも60%m/m、少なくとも65%m/m、少なくとも70%m/m、少なくとも75%m/m、少なくとも80%m/m、少なくとも85%m/m、少なくとも90%m/mおよび少なくとも95%m/mの、残留炭化水素成分を含み得る。海洋燃料組成物は、最大約95%m/m、例えば、最大90%m/m、最大85%m/m、最大80%m/m、最大75%m/m、最大70%m/m、最大65%m/m、最大60%m/m、最大55%m/m、最大50%m/m、最大45%m/m、最大40%m/m、最大35%m/m、最大30%m/m、最大25%m/m、最大20%m/m、最大15%m/m、最大10%m/m、または最大5%m/mの残留炭化水素成分を含み得る。
【0032】
残留炭化水素成分は、長残留物、短残留物、またはそれらの組み合わせを含む、任意の適切な残留炭化水素成分を含み得る。例えば、残留炭化水素成分は蒸留プロセスの残留物であり得、大気圧下での粗鉱物油の蒸留における残留物として得られ得、直流留分および「長残留物」(または大気塔底部(ATB))と呼ばれる最初の残留油を生成する。長残留物は、通常、大気圧未満の圧力で蒸留されて、1つ以上のいわゆる「真空留分」および「短残留物」(または真空塔底部(VTB))と呼ばれる2番目の残留油を生成する。
【0033】
特に、ATB残留物は、原油の大気圧蒸留からの残留物である(すなわち、原油の大気圧蒸留プロセス後の大気圧蒸留塔の底にある残りの成分)。ATB残留物は、一般に、(例えば、70%m/m超、80%m/m超、または90%m/m超の)大部分がC20を超える炭素数を有し、かつ約350℃(華氏662度)超で沸騰する炭化水素から主になる。必要に応じて、ATB残留物は、5%m/m以上の4~6員縮合環芳香族炭化水素を含む。
【0034】
特に、VTB残留物は、原油の大気圧蒸留からの残留物である(すなわち、原油の大気圧蒸留プロセス後の大気圧蒸留塔の底にある残りの成分)。VTB残留物は、一般に、(例えば、70%m/m超、80%m/m超、または90%m/m超の)大部分がC40を超える炭素数を有し、かつ約550℃(華氏1022度)超で沸騰する炭化水素から主になる。必要に応じて、VTB残基は、10%m/m以上の4~6員の縮合環芳香族炭化水素を含む。
【0035】
残留炭化水素成分は、長残留物(ATB)、短残留物(VTB)、およびそれらの組み合わせから選択され得る。長残留物(ATB)は、次の全ての特性を含む、1つ以上を示し得る:最大約1.0g/cc(またはg/cm3)、例えば、最大0.95g/cc、最大0.90g/cc、最大0.85g/cc、最大0.80g/cc、最大0.75g/cc、または最大0.70g/ccの約15℃での密度、少なくとも約0.70g/cc、例えば、少なくとも0.75g/cc、少なくとも0.80g/cc、少なくとも0.85g/cc、少なくとも0.90g/cc、少なくとも0.95g/cc、または少なくとも1.0g/ccの約15℃での密度、必要に応じて、約最大4%m/m、最大3.5%m/m、最大3.0%m/m、最大2.5%m/m、最大2.0%m/m、最大1.5%m/m、最大1.0%m/m、最大0.5%m/m、最大0.45%m/m、最大0.40%m/m、最大0.35%m/m、最大0.30%m/m、最大0.25%m/m、最大0.20%m/m、最大0.15%m/m、最大0.10%m/m、最大0.05%m/m、または最大0.01%m/mの硫黄含有量、約0.01%m/m、少なくとも0.05%m/m、少なくとも0.10%m/m、少なくとも0.15%m/m、少なくとも0.20%m/m、少なくとも0.25%m/m、少なくとも0.30%m/m、少なくとも0.35%m/m、少なくとも0.40%m/m、少なくとも0.45%m/m、少なくとも0.50%m/m、少なくとも1.0%m/m、少なくとも1.5%m/m、少なくとも2.0%m/m、少なくとも2.5%m/m、少なくとも3.0%m/m、少なくとも3.5%m/m、または少なくとも4.0%m/mの硫黄含有量、約少なくとも-20.0℃、例えば-19.0℃、例えば、少なくとも-15.0℃、少なくとも-10.0℃、少なくとも-5.0℃、少なくとも0.0℃、少なくとも5.0℃、少なくとも10.0℃、少なくとも15.0℃、少なくとも20.0℃、少なくとも25.0℃、少なくとも30.0℃、少なくとも35.0℃、少なくとも40.0℃、少なくとも45.0℃、少なくとも50.0℃、少なくとも55.0℃、または64.0℃などの少なくとも60.0℃、または少なくとも65.0℃の流動点、最大約65.0℃、例えば、64.0℃、最大60.0℃、最大55.0℃、最大50.0℃、最大45.0℃、最大40.0℃、最大35.0℃、最大30.0℃、最大25.0℃、最大20.0℃、最大15.0℃、最大10.0℃、最大5.0℃、最大0.0℃、最大-5.0℃、最大-10.0℃、最大-15.0℃、-19.0℃、または最大-20.0℃の流動点、少なくとも約80℃、例えば、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、少なくとも145℃、少なくとも150℃、少なくとも155℃、少なくとも160℃、少なくとも165℃、少なくとも170℃、少なくとも175℃、少なくとも180℃、少なくとも185℃、少なくとも190℃、少なくとも195℃、少なくとも200℃、少なくとも205℃、または少なくとも210℃、例えば213℃の引火点、例えば、最大約213℃、最大210℃、最大205℃、最大200℃、最大195℃、最大190℃、最大185℃、最大180℃、最大175℃、最大170℃、最大165℃、最大160℃、最大155℃、最大150℃、最大145℃、最大140℃、最大135℃、最大130℃、最大125℃、最大120℃、最大115℃、最大110℃、最大105℃、最大100℃、最大95℃、最大90℃、最大85℃、または最大80℃の引火点、最大約8.00mgKOH/gの、例えば最大約7.50mgKOH/g、最大7.00mgKOH/g、最大6.50mgKOH/g、最大6.00mgKOH/g、最大5.50mgKOH/g、最大5.00mgKOH/g、最大4.50mgKOH/g、最大4.00mgKOH/g、最大3.50mgKOH/g、最大3.00mgKOH/g、最大2.50mgKOH/g、最大2.00mgKOH/g、最大1.50mgKOH/g、最大1.00mgKOH/g、最大0.50mgKOH/g、最大0.10mgKOH/g、または最大0.05mgKOH/gの総酸価(TAN)、少なくとも約0.05mgKOH/g、例えば、少なくとも0.10mgKOH/g、少なくとも0.50mgKOH/g、少なくとも1.00mgKOH/g、少なくとも1.50mgOH/g、少なくとも2.00mgKOH/g、少なくとも2.50mgKOH/g、少なくとも3.00mgKOH/g、少なくとも3.50mgKOH/g、少なくとも4.00mgKOH/g、少なくとも4.50mgKOH/g、少なくとも5.00mgKOH/g、少なくとも5.50mgKOH/g、少なくとも6.00mgKOH/g、少なくとも6.50mgKOH/g、少なくとも7.00mgKOH/g、少なくとも7.50mgKOH/g、または少なくとも8.00mgKOH/gの総酸価(TAN)、少なくとも約1.75cSt、例えば、少なくとも100cSt、少なくとも500cSt、少なくとも1000cSt、少なくとも1500cSt、少なくとも2000cSt、少なくとも2500cSt、少なくとも3000、少なくとも3500cSt、少なくとも4000cSt、少なくとも4500cSt、少なくとも5000cSt、少なくとも5500cSt、少なくとも6000cSt、少なくとも6500cSt、少なくとも7000cSt、少なくとも7500cSt、少なくとも8000cSt、少なくとも8500cSt、少なくとも9000cSt、少なくとも9500cSt、少なくとも10000cSt、少なくとも10500cSt、少なくとも11000cSt、少なくとも11500cSt、少なくとも12000cSt、少なくとも12500cSt、少なくとも13000cSt、少なくとも13500cSt、少なくとも14000cSt、少なくとも14500cSt、または少なくとも15000cStの約50℃での動粘度cSt、最大約15000cSt、例えば最大14500cSt、最大14000cSt、最大13500cSt、最大13000cSt、最大12500cSt、最大12000cSt、最大11500cSt、最大11000cSt、最大10500cSt、最大9500cSt、最大9000cSt、最大8500cSt、最大8000cSt、最大7500cSt、最大7000cSt、最大6500cSt、最大6000cSt、最大5500cSt、最大5000cSt、最大4500cSt、最大4000cSt、最大3500cSt、最大3000cSt、最大2500cSt、最大2000cSt、最大1500cSt、最大1000cSt、最大500cSt、最大100cSt、または最大1.75cStの約50℃での動粘度cSt。
【0036】
短残留物またはVTB残留物は、次の全ての特性を含む、1つ以上を示し得る:最大約1.2g/cc、例えば最大1.05g/cc、最大1.00g/cc、最大0.95g/cc、最大0.90g/cc、最大0.85g/cc、または最大0.70g/ccの約15℃での密度、少なくとも約0.70g/cc、例えば、少なくとも0.75g/cc、少なくとも0.80g/cc、少なくとも0.85g/cc、少なくとも0.90g/cc、少なくとも0.95g/cc、少なくとも1.0g/cc、少なくとも1.05g/cc、少なくとも1.1g/cc、少なくとも1.15g/cc、または少なくとも1.20g/ccの約15℃での密度、少なくとも-15.0℃、例えば、少なくとも-15.0℃、少なくとも-10℃、少なくとも-5℃、少なくとも0.0℃、少なくとも5.0℃、少なくとも10.0℃、少なくとも15.0℃、少なくとも20.0℃、少なくとも25.0℃、少なくとも30.0℃、少なくとも35.0℃、少なくとも40.0℃、少なくとも45.0℃、少なくとも50.0℃、少なくとも55.0℃、少なくとも60.0℃、少なくとも65.0℃、少なくとも70.0℃、少なくとも75.0℃、少なくとも80.0℃、少なくとも85.0℃、少なくとも90.0℃、または少なくとも95.0℃の範囲内の流動点、最大約95.0℃、例えば、最大90.0℃、最大85.0℃、最大80.0℃、最大75.0℃、最大70.0℃、最大65.0℃、最大60.0℃、最大55.0℃、最大50.0℃、最大45.0℃、最大40.0℃、最大35.0℃、最大30.0℃、最大25.0℃、最大20.0℃、最大15.0℃、最大10.0℃、最大5.0℃、最大0.0℃、最大-5.0℃、最大-10℃、最大-15.0℃の流動点、少なくとも約220℃、例えば、少なくとも225℃、少なくとも230℃、少なくとも235℃、少なくとも240℃、少なくとも245℃、少なくとも250℃、少なくとも255℃、少なくとも260℃、少なくとも265℃、少なくとも270℃、少なくとも275℃、少なくとも280℃、少なくとも285℃、少なくとも290℃、少なくとも295℃、少なくとも300℃、少なくとも305℃、少なくとも310℃、少なくとも315℃、少なくとも320℃、少なくとも325℃、少なくとも330℃、または少なくとも335℃の引火点、最大約335℃、例えば、最大330℃、最大325℃、最大320℃、最大315℃、最大310℃、最大305℃、最大300℃、最大295℃、最大290℃、最大285℃、最大280℃、最大275℃、最大270℃、最大265℃、最大260℃、最大255℃、最大250℃、最大245℃、最大240℃、最大235℃、最大230℃、最大225℃、または最大220℃の引火点、最大約8.00mgKOH/g、例えば最大約7.50mgKOH/g、最大7.00mgKOH/g、最大約6.50mgKOH/g、最大6.00mgKOH/g、最大5.50mgKOH/g、最大5.00mgKOH/g、最大4.50mgKOH/g、最大4.00mgKOH/g、最大3.50mgKOH/g、最大3.00mgKOH/g、最大2.50mgKOH/g、最大2.00mgKOH/g、最大1.50mgKOH/g、最大1.00mgKOH/g、最大0.50mgKOH/g、最大0.10mgKOH/g、または最大0.05mgKOH/gの総酸価(TAN)、少なくとも約0.05mgKOH/g、例えば、少なくとも0.10mgKOH/g、少なくとも0.50mgKOH/g、少なくとも1.00mgKOH/g、少なくとも1.50mgKOH/g、少なくとも2.00mgKOH/g、少なくとも2.50mgKOH/g、少なくとも3.00mgKOH/g、少なくとも3.50mgKOH/g、少なくとも4.00mgKOH/g、少なくとも4.50mgKOH/g、少なくとも5.00mgKOH/g、少なくとも5.50mgKOH/g、少なくとも6.00mgKOH/g、少なくとも6.50mgKOH/g、少なくとも7.00mgKOH/g、少なくとも7.50mgKOH/g、または少なくとも8.00mgKOH/gの総酸価(TAN)、少なくとも約3.75cSt、例えば、少なくとも100cSt、少なくとも500cSt、少なくとも1000cSt、少なくとも1500cSt、少なくとも2000cSt、少なくとも2500cSt、少なくとも3000cSt、少なくとも3500cSt、少なくとも4000cSt、少なくとも4500cSt、少なくとも5000cSt、少なくとも5500cSt、少なくとも6000cSt、少なくとも6500cSt、少なくとも7000cSt、少なくとも7500cSt、少なくとも8000cSt、少なくとも8500cSt、少なくとも9000cSt、少なくとも9500cSt、少なくとも10000cSt、少なくとも10500cSt、少なくとも11000cSt、少なくとも11500cSt、少なくとも12000cSt、少なくとも12500cSt、少なくとも13000cSt、少なくとも13500cSt、少なくとも14000cSt、少なくとも14500cSt、または最大15000cStの約50℃での動粘度、最大約15000cSt、例えば最大14500cSt、最大14000cSt、最大13500cSt、最大13000cSt、最大12500cSt、最大12000cSt、最大11500cSt、最大11000cSt、最大10500cSt、最大9500cSt、最大9000cSt、最大8500cSt、最大8000cSt、最大7500cSt、最大7000cSt、最大6500cSt、最大6000cSt、最大5500cSt、最大5000cSt、最大4500cSt、最大4000cSt、最大3500cSt、最大3000cSt、最大2500cSt、最大2000cSt、最大1500cSt、最大1000cSt、最大500cSt、または最大3.75cStの約50℃での動粘度。特性は、粘度用のASTM D445、硫黄含有量用のASTM D4294、引火点用のASTM D9、流動点用のASTM D97など、適切な標準化された試験方法を使用して決定し得る。加えてまたは代わりに、VTB残留物はさらに、約最大4%m/m、最大3.5%m/m、最大3.0%m/m、最大2.5%m/m、最大2.0%m/m、最大1.5%m/m、最大1.0%m/m、最大0.5%m/m、最大0.45%m/m、最大0.40%m/m、最大0.35%m/m、最大0.30%m/m、最大0.25%m/m、最大0.20%m/m、最大0.15%m/m、最大0.10%m/m、最大0.05%m/m、または最大0.01%m/mの硫黄含有量、約少なくとも0.01%m/m、少なくとも0.05%m/m、少なくとも0.10%m/m、少なくとも0.15%m/m、少なくとも0.20%m/m、少なくとも0.25%m/m、少なくとも0.30%m/m、少なくとも0.35%m/m、少なくとも0.40%m/m、少なくとも0.45%m/m、少なくとも0.50%m/m、少なくとも1.0%m/m、少なくとも1.5%m/m、少なくとも2.0%m/m、少なくとも2.5%m/m、少なくとも3.0%m/m、少なくとも3.5%m/m、または少なくとも4.0%m/mの硫黄含有量を有し得る。
【0037】
特定の実施形態において、残留炭化水素成分は、長残基(ATB)、短残基(VTB)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得、ATB残基は、以下の特性の全てを含む1つ以上を示し得る:約0.7~1.0g/ccの範囲の約15℃での密度、約-19.0~65.0℃の範囲内の流動点、約80~213℃の範囲内の引火点、最大約8.00mgKOH/gの総酸価(TAN)、および約1.75~15000cStの範囲の約50℃での動粘度。また、短残留物(VTB)は、以下の特性の全てを含む1つ以上を示し得る:約0.7~1.2g/ccの範囲内の約15℃での密度、約-15.0から95℃の範囲内の流動点、約220~335℃の範囲内の引火点、最大約8.00mgKOH/gの総酸価(TAN)、および約3.75~15000cStの範囲の約50℃での動粘度。互いに類似または異なり得る上記のような様々な特性を示す、異なる種類の長残留物および短残留物が存在し得ることが理解される。上記の1つ以上の特性を示す1つ以上の種類の長および/または短(ATBおよび/またはVTB)残留物を使用して、残留炭化水素成分を、所望の量、例えば全海洋燃料組成物の5~95%m/mの範囲内で提供し得る。
【0038】
非ハイドロプロセスおよび/またはハイドロプロセス炭化水素成分
改善された安定性を有する燃料組成物は、最大90%m/mの、残留炭化水素成分以外の1つ以上の炭化水素成分を含み得、1つ以上の炭化水素成分は、非ハイドロプロセス炭化水素成分、ハイドロプロセス炭化水素成分、およびそれらの組み合わせから選択される。例えば、海洋燃料組成物は、非ハイドロプロセス炭化水素成分を最大90%m/mの量で含み得る。海洋燃料組成物は、非ハイドロプロセス炭化水素成分を、最大90%m/m、最大85%m/m、最大80%m/m、最大75%m/m、最大70%m/m、最大65%m/m、最大60%m/m、最大55%m/m、最大50%m/m、最大45%m/m、最大40%m/m、最大35%m/m、最大30%m/m、最大25%m/m、最大20%m/m、最大15%m/m、最大10%m/m、最大5%m/m、またはなしの量で含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、非ハイドロプロセス炭化水素は、水素化処理またはハイドロプロセシング(HT)に供していない石油カットまたは石油化学起源のカットに由来する炭化水素生成物を含む。水素化処理またはハイドロプロセシングの非限定的な例には、水素化分解、水素化脱酸素、水素化脱硫、水素化脱窒素および/または水素化異性化が含まれる。特定の実施形態において、非ハイドロプロセス炭化水素成分は、軽質サイクル油(LCO)、重質サイクル油(HCO)、流動接触分解(FCC)サイクル油、FCCスラリー油、パイロリシスガス油、分解軽質ガス油(CLGO)、分解重質ガス油(CHGO)、パイロリシス軽質ガス油(PLGO)、パイロリシス重質ガス油(PHGO)、パイロリシス残留物(ECR)、熱分解残留物(タールまたは熱タールとも呼ばれる)、熱分解重質留分、コーカー重質留分(これはディーゼルより重い)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。他の実施形態では、非ハイドロプロセス炭化水素成分は、真空軽油(VGO)、コーカーディーゼル、コーカー軽油、コーカーVGO、熱分解VGO、熱分解ディーゼル、熱分解軽油、グループIスラックワックス、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト油(DAO)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、加えてまたは代わりに、非ハイドロプロセス炭化水素成分は、コーカー灯油、熱分解灯油、ガスツーリキッド(GTL)ワックス、GTL炭化水素、直留ディーゼル、直留灯油、直留軽油(SRGO)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、非ハイドロプロセス炭化水素成分は、特に残留炭化水素成分およびハイドロプロセス炭化水素成分が海洋燃料組成物に必要なまたは所望の特性を提供し得る場合、本明細書に記載の海洋燃料組成物に必要とされない。また、1つ以上の種類の非ハイドロプロセス炭化水素成分を使用して、所望の特性を有する海洋燃料組成物を提供することがし得る。
【0040】
上記に列挙した材料は、当業者によって理解されるような通常の意味を有する。例えば、LCOは、本明細書において、好ましくは、少なくとも80%m/m、より好ましくは少なくとも90%m/mが、221℃以上~370℃未満の範囲で(0.1メガパスカルの圧力で)沸騰する、流動接触分解(FCC)生成物の画分を指す。本明細書において、HCOは、好ましくは、少なくとも80%m/m、より好ましくは少なくとも90%m/mが、370℃以上~425℃未満の範囲で(0.1メガパスカルの圧力で)沸騰する、FCC生成物の画分を指す。本明細書において、スラリー油は、好ましくは、少なくとも80%m/m、より好ましくは少なくとも90%m/mが、425℃以上で(0.1メガパスカルの圧力で)沸騰する、FCC生成物の画分を指す。
【0041】
加えて、または代わりに、海洋燃料組成物は、ハイドロプロセス炭化水素成分を含み得る。例えば、海洋燃料組成物は、ハイドロプロセス炭化水素成分を最大90%m/mの量で含み得る。海洋燃料組成物は、ハイドロプロセス炭化水素成分を、最大90%m/m、最大85%m/m、最大80%m/m、最大75%m/m、最大70%m/m、最大65%m/m、最大60%m/m、最大55%m/m、最大50%m/m、最大45%m/m、最大40%m/m、最大35%m/m、最大30%m/m、最大25%m/m、最大20%m/m、最大15%m/m、最大10%m/m、最大5%m/m、またはなしの量で含み得る。ハイドロプロセス炭化水素成分は、水素化処理またはハイドロプロセシングに供された(水素化処理されたということができる)石油カットまたは石油化学起源のカットから誘導され得る。水素化処理またはハイドロプロセシングの非限定的な例には、水素化分解、水素化脱酸素、水素化脱硫、水素化脱窒素および/または水素化異性化が含まれる。
【0042】
特定の実施形態では、ハイドロプロセス炭化水素成分は、500ppmw未満の硫黄含有量を有する低硫黄ディーゼル(LSD)、特に、15または10ppmw未満の硫黄含有量を有する超低硫黄ディーゼル(ULSD)、水素化処理LCO、水素化処理HCO、水素化処理FCCサイクル油、水素化処理パイロリシスガス油、水素化処理PLGO、水素化処理PHGO、水素化処理CLGO、水素化処理CHGO、水素化処理コーカー重質留分のうちの少なくとも1つを含み得る。別の実施形態では、それに加えてまたは代わりに、ハイドロプロセス炭化水素成分は、水素化処理コーカーディーゼル、水素化処理コーカーガス油、水素化処理熱分解ディーゼル、水素化処理熱分解軽油、水素化処理VGO、水素化処理コーカーVGO、水素化処理残留物、水素化分解底部物(水素化分解水素化ワックスとしても知られる)、水素化処理熱分解VGO、および水素化処理水素化分解DAOのうちの少なくとも1つを含み得る。さらに別の実施形態では、それに加えてまたは代わりに、ハイドロプロセス炭化水素成分は、超低硫黄灯油(ULSK)、水素化処理ジェット燃料、水素化処理灯油、水素化処理コーカー灯油、水素化分解ディーゼル、水素化分解灯油、水素化処理熱分解灯油のうちの少なくとも1つを含み得る。好ましい場合、特に、残留炭化水素成分および非ハイドロプロセス炭化水素成分が必要なまたは所望の特性を海洋燃料組成物に提供し得る場合、本明細書に記載の海洋燃料組成物においてハイドロプロセス炭化水素成分は必要とされない。また、1つ以上の種類のハイドロプロセス炭化水素成分を使用して、所望の特性を有する海洋燃料組成物を提供し得る。
【0043】
脂肪酸アルキルエステル成分
改善された安定性を有する燃料組成物は、約5~80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を含み得る。例えば、燃料組成物は、少なくとも5%m/m、少なくとも10%m/m、少なくとも15%m/m、少なくとも20%m/m、少なくとも25%m/m、少なくとも30%m/m、少なくとも35%m/m、少なくとも40%m/m、少なくとも45%m/m、少なくとも50%m/m、少なくとも55%m/m、少なくとも60%m/m、少なくとも65%m/m、少なくとも70%m/m、少なくとも75%m/m、または少なくとも80%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を含み得る。燃料組成物は、最大約80%m/m、例えば、最大80%m/m、最大75%m/m、最大70%m/m、最大65%m/mを含み得る。最大60%m/m、最大55%m/m、最大50%m/m、最大45%m/m、最大40%m/m、最大35%m/m、最大30%m/m、最大25%m/m、最大20%m/m、最大15%m/m、または最大10%m/m、または最大5%m/mの脂肪酸アルキルエステル成分を含み得る。
【0044】
脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼルとしても公知であり得る。脂肪酸アルキルエステルは、一般に、適切な触媒の存在下での、種々の植物油および/または動物脂肪とアルコールとの反応によって生成される。脂肪酸エステルおよびグリセリンを生成するための油のアルコールとの反応は、一般にエステル交換と呼ばれる。あるいは、脂肪酸アルキルエステルは、脂肪酸のアルコールとの反応(一般にエステル化と呼ばれる)によって脂肪酸エステルを形成することにより生成され得る。
【0045】
トリグリセリドの脂肪酸セグメントは、代表的には、C10-C24脂肪酸から構成され、脂肪酸組成物は、均一であるかまたは種々の鎖長の混合物であり得る。適切な油および/または脂肪は、大豆油、パーム油、菜種油、亜麻仁油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿油、藻油、調理油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマシ油、獣脂、ラード、イエローグリース、ブラウングリース、魚油、使用済み調理油、廃棄調理油、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0046】
エステル化プロセスのいずれかで使用される適切なアルコールは、脂肪族または芳香族の、飽和または不飽和の、分岐または直鎖状の、一級、二級または三級アルコールであり得、約1~22の炭素原子(C-1~約C-22)の長さを有する任意の炭化水素鎖を有し得る。工業および通常の選択肢は、メタノールおよびエタノールとして識別される。
【0047】
脂肪酸アルキルエステルは、ASTM D6751および/またはEN 14214などのバイオディーゼルについて記載された特定の仕様パラメータを満たすことができ、その教示全体は、参照することにより本明細書中で援用される。ASTM D6751およびEN 14214仕様は、炭化水素燃料用の適切なブレンドストックと考えられるバイオディーゼル(B100)の要件の概要を示す。
【0048】
任意の添加剤
加えて、または代わりに、特定の実施形態では、海洋燃料組成物は、成分(i)残留炭化水素、(ii)脂肪酸アルキルエステル、および必要に応じて(iii)ハイドロプロセス炭化水素、および/または(iv)非ハイドロプロセス炭化水素以外の他の成分を含み得る。そのような他の成分は、代表的には、燃料添加剤として燃料組成物中に存在し得る。このような他の成分の例には、洗浄剤、粘度調整剤、流動点降下剤、潤滑性調整剤、曇り除去剤、例えば、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー、消泡剤(例えば、市販のポリエーテル変性ポリシロキサン)、着火性向上剤(セタン価向上剤)(例えば、硝酸2-エチルヘキシル(EHN)、硝酸シクロヘキシル、過酸化ジ-tert-ブチルおよび米国特許第4208190号の2欄27行~3欄21行に開示されたもの)、防錆剤(例えば、テトラプロペニルコハク酸のプロパン-1,2-ジオールセミエステル、またはそのアルファ炭素原子の少なくとも1つ上に20~500個の炭素原子を含む非置換または置換脂肪族炭化水素基を有するコハク酸誘導体の多価アルコールエステル、例えば、ポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル)、腐食防止剤、消臭剤、耐摩耗添加剤、抗酸化剤(例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールなどのフェノール類、またはN、N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン類)、金属不活性化剤、静電気拡散剤添加物、燃焼改良剤およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
燃料添加剤における使用に適した洗浄剤の例としては、ポリオレフィン置換スクシンイミドまたはポリアミンのスクシンアミド、例えばポリイソブチレンスクシンイミドまたはポリイソブチレンアミンスクシンアミド、脂肪族アミン、マンニッヒ塩基またはアミンおよびポリオレフィン(例えばポリイソブチレン)無水マレイン酸が挙げられる。スクシンイミド分散剤添加剤は、例えば、GB-A-960493、EP-A-0147240、EP-A-0482253、EP-A-0613938、EP-A-0557516およびWO-A-98/42808に記載されている。
【0050】
一実施形態では、潤滑性調整剤向上剤は、存在する場合、1000ppmw未満、好ましくは50~1000または100~10000ppmw、より好ましくは50~500ppmwの濃度で便利に使用され得る。好適な市販の潤滑性向上剤としては、エステル系および酸系添加剤が挙げられる。また、燃料組成物は、消泡剤を含有することが好ましくあり得、より好ましくは防錆剤および/または腐食防止剤および/または潤滑性向上添加剤と組み合わせて含有する。特段の記載がない限り、燃料組成物中のそれぞれのこのような追加の成分の濃度は、好ましくは最大10000ppmwであり、より好ましくは0.1~1000ppmwの範囲内、有利には0.1~300ppmw、例えば、0.1~150ppmwの範囲内である(本明細書中で引用する全ての添加剤濃度は、特段の記載がない限り、重量基準の活性物質の濃度をいう)。燃料組成物中のいずれかの曇り防止剤の濃度は、好ましくは、0.1~20ppmw、より好ましくは、1~15ppmw、さらにより好ましくは、1~10ppmw、および有利には、1~5ppmwの範囲内であろう。存在するいずれかの着火性向上剤の濃度は、好ましくは、2600ppmw以下、より好ましくは、2000ppmw以下、好都合には、300~1500ppmwであろう。
【0051】
所望であれば、上記に列挙したような1つ以上の添加剤成分を、添加剤濃縮物中で(好ましくは適切な希釈剤と一緒に)混合し、添加剤濃縮物を、次いで、本発明による燃料組成物を調製するため、ベース燃料中に、またはベース燃料/ワックスブレンド中に、分散させ得る。
【0052】
燃料組成物の特性
燃料組成物は、好ましくは、ASTM D4530またはISO 10370などの当業者に公知の適切な標準的な方法によって測定されるように、0.30%m/mを超えるマイクロカーボン残留物を有する。特に、海洋燃料は、少なくとも0.50%m/m、少なくとも1.00%m/m、少なくとも1.50%m/m、少なくとも2.00%m/m、少なくとも2.50%m/m、少なくとも3.00%m/m、少なくとも3.50%m/m、少なくとも4.00%m/m、少なくとも4.50%m/m、少なくとも5.00%m/m、少なくとも5.50%m/m、少なくとも6.00%m/m、少なくとも6.50%m/m、少なくとも7.00%m/m、少なくとも7.50%m/m、少なくとも8.00%m/m、少なくとも8.50%m/m、少なくとも9.00%m/m、少なくとも9.50%m/m、少なくとも10.00%m/m、少なくとも10.50%m/m、少なくとも11.00%m/m、少なくとも11.50%m/m、少なくとも12.00%m/m、少なくとも12.50%m/m、少なくとも13.00%m/m、少なくとも13.50%m/m、少なくとも14.00%m/m、少なくとも14.50%m/m、少なくとも15.00%m/m、少なくとも15.50%m/m、少なくとも16.00%m/m、少なくとも16.50%m/m、少なくとも17.00%m/m、少なくとも17.50%m/m、少なくとも18.00%m/m、少なくとも18.50%m/m、少なくとも19.00%m/m、少なくとも19.50%m/m、または少なくとも20.00%m/mのマイクロカーボン残留物を有する。別の例では、海洋燃料は、最大0.30%m/m、最大0.50%m/m、2.50%m/m、最大1.00%m/m、最大1.50%m/m、最大2.00%m/m、最大2.50%m/m、最大3.00%m/m、最大3.50%m/m、最大4.00%m/m、最大4.50%m/m、最大5.00%m/m、最大5.50%m/m、最大6.00%m/m、最大6.50%m/m、最大7.00%m/m、最大7.50%m/m、最大8.00%m/m、最大8.50%m/m、最大9.00%m/m、最大9.50%m/m、最大10.00%m/m、最大10.50%m/m、最大11.00%m/m、最大11.50%m/m、最大12.00%m/m、最大12.50%m/m、最大13.00%m/m、最大13.50%m/m、最大14.00%m/m、最大14.50%m/m、最大15.00%m/m、最大15.50%m/m、最大16.00%m/m、最大16.50%m/m、最大17.00%m/m、最大17.50%m/m、最大18.00%m/m、最大18.50%m/m、最大19.00%m/m、最大19.50%m/m、または最大20.00%m/mのマイクロカーボン残留物を有する。好ましくは、海洋燃料は、0.30%m/mを超えかつ20.00%m/mの範囲、特に本明細書中でまたは他の方法で指定されるようなその間の任意の量または範囲内のマイクロ炭素数を有し得る。
【0053】
マイクロカーボン残留物(MCR)試験(ASTM D4530)またはコンラッドソンカーボン残留物(CCR)のASTM D189試験などのカーボン残留物試験は、他の点で満足する留出燃料が大量の炭素残留物を有しないので、主に残留燃料に使用される。留出燃料が特定のレベル未満の許容量の炭素残留物内容物を含むことを確認ために、MCRおよびCCR試験はまた留出燃料にも用いられることが理解される。このことは、海洋留出燃料についてマイクロカーボン残留物の量を最大0.30%m/mに制限するISO8217に反映されている。留出燃料および残留燃料のMCRおよびCCRの結果の相違のため、MCRおよびCCRの試験は、残留燃料による留出燃料の汚染の指標として使用され得る。
【0054】
燃料組成物は、約0.08%m/m~約3.5%m/m、例えば、約0.1%m/m~約3.5%m/m、例えば、約0.3%m/m~約3.5%m/m、約0.5%m/m~約3.5%m/m、約1.0%m/m~約3.5%m/m、約1.5%m/m~約3.5%m/m、約2.0%m/m~約3.5%m/m、約0.1%m/m~約3.0%m/m、約0.3%m/m~約3.0%m/m、約0.5%m/m~約3.0%m/m、約1.0%m/m~約3.0%m/m、約1.5%m/m~約3.0%m/m、約2.0%m/m~約3.0%m/m、約0.1%m/m~約2.5%m/m、約0.3%m/m~約2.5%m/m、約0.5%m/m~約2.5%m/m、約1.0%m/m~約2.5%m/m、または約1.5%m/m~約2.5%m/mの硫黄含有量を有し得る。約0.0001%m/m(約1ppmw)~0.05%m/m(約500ppmw)、例えば、約0.0001%m/m~約0.03%m/m、約0.001%m/m~約0.05%m/m、約0.001%m/m~約0.03%m/m、約0.005%m/m~約0.05%m/m、約0.005%m/m~約0.03%m/m、約0.01%m/m~約0.05%m/m、または約0.01%m/m~約0.03%m/mの含有量の最低硫黄層を有する、燃料組成物のための「低」硫黄の様々な段階が存在し得る。次の硫黄含有段階は、0.01%m/m(約100重量ppmw)~約0.1%m/m(約1000ppmw)、例えば約0.01%m/m~約0.05%m/m、約0.02%m/m~約0.1%m/m、約0.02%m/m~約0.05%m/m、または約0.05%m/m~約0.1%m/mであり得る。次の段階は、約0.05%m/m(約500ppmw)~約0.5%m/m(約5000ppmw)、例えば、約0.1%m/m~約0.5~約%m/m、約0.05%m/m~約0.3%m/m、または約0.1%m/m~約0.3%m/mの硫黄含有量であり得る。
【0055】
残留炭化水素成分、非ハイドロプロセス炭化水素成分、および/またはハイドロプロセス炭化水素成分の硫黄含有量は、海洋燃料組成が全体として特定の実施形態についての硫黄目標含有量の要件を満たす限り、個々に変動し得ることが理解される。同様に、一実施形態では、残留炭化水素成分、非ハイドロプロセス炭化水素成分、および/またはハイドロプロセス炭化水素成分の他の特性は、海洋燃料組成物がISO8217などの標準化の要件を満たす限り、個々に変動し得ることが理解される。したがって、特定の実施形態は、例えば、25%m/m以上の分解材料のより多くの使用を許容し得る。
【0056】
さらに、加えてまたは代わりに、いくつかの実施形態では、海洋燃料組成物は、以下の特性の全てを含む1つ以上を示し得る:最大約700cSt、例えば最大500cSt、最大380cSt、最大180cSt、最大80cSt、最大55cSt、最大50cSt、最大45cSt、最大40cSt、最大35cSt、最大30cSt、最大25cSt、最大20cSt、最大15cSt、最大10cSt、または最大5cSt、例えば、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21cStの約50℃での動粘度(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D445による)、例えば、ASTM D445による)、少なくとも5cSt、例えば、少なくとも10cSt、少なくとも15cSt、少なくとも20cSt、少なくとも25cSt、少なくとも30cSt、少なくとも35cSt、少なくとも40cSt、少なくとも45cSt、少なくとも50cSt、少なくとも55cSt、少なくとも80cSt、少なくとも180cSt、少なくとも380cSt、少なくとも500cSt、または少なくとも700cStの、約50℃での動粘度(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D445による)、最大1.010g/cm3、例えば最大1.005、最大1.000、最大0.995、例えば0.991g/cm3、最大0.990g/cm3、最大0.985g/cm3、最大0.980g/cm3、最大0.975g/cm3、最大0.970g/cm3、最大0.965g/cm3、最大0.960g/cm3、最大0.955g/cm3、最大0.950g/cm3、最大0.945g/cm3、最大0.940g/cm3、最大0.935g/cm3、最大0.930g/cm3、最大0.925g/cm3、最大0.920g/cm3、最大0.915g/cm3、最大0.910g/cm3、最大0.905g/cm3、最大0.900g/cm3、最大0.895g/cm3、最大0.890g/cm3、最大0.885g/cm3、または最大0.880g/cm3の、約15℃での密度(適切な標準化された試験方法、例えばASTM D4052による)、少なくとも0.870g/cm3、少なくとも0.875g/cm3、少なくとも0.880g/cm、少なくとも0.885g/cm3、少なくとも0.890g/cm3、少なくとも0.895g/cm3、少なくとも0.900g/cm3、少なくとも0.905g/cm3、少なくとも0.910g/cm3、少なくとも0.915g/cm3、少なくとも0.920g/cm3、少なくとも0.925g/cm3、少なくとも0.930g/cm3、少なくとも0.935g/cm3、少なくとも0.940g/cm3、少なくとも0.945g/cm3、少なくとも0.950g/cm3、少なくとも0.955g/cm3、少なくとも0.960g/cm3、少なくとも0.965g/cm3、少なくとも0.970g/cm3、少なくとも0.975g/cm3、少なくとも0.980g/cm3、少なくとも0.985g/cm3、少なくとも0.990g/cm3、例えば0.991g/cm3、少なくとも0.995g/cm3、少なくとも1.000g/cm3、少なくとも1.005g/cm3、または少なくとも1.010g/cm3の約15℃での密度(適切な標準化された試験方法、例えばASTM D4052による)、最大35℃、最大30℃、例えば、最大28℃、最大25℃、最大20℃、最大15℃、最大10℃、例えば6℃、最大5℃、最大5℃、最大-5℃、最大-10℃、最大-15℃、最大-20℃、最大-25℃、-27℃、または最大-30℃の流動点(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D97による)、少なくとも-30℃、例えば、-27℃、例えば、少なくとも-25℃、少なくとも-20℃、少なくとも-15℃、少なくとも-10℃、少なくとも-5℃、少なくとも0℃、少なくとも5℃、少なくとも7℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、または少なくとも35℃の流動点(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D97による)、および少なくとも約60℃、例えば、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、または少なくとも130℃の引火点(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D93 Proc.9(自動)による)、および最大2.5mgKOH/g、例えば最大2.0mgKOH/g、最大1.5mgKOH/g、最大1.0mgKOH/g、または最大0.5mgKOH/g、少なくとも0.5mgKOH/g、少なくとも1.0mgKOH/g、少なくとも1.5mgKOH/g、少なくとも2.0mgKOH/g、または少なくとも2.5mgKOH/gの酸価(総酸価またはTANとしても知られる)。
【0057】
一実施形態では、海洋燃料組成物は、以下の特性の全てを含む、1つ以上を示し得る:約5から700の範囲cSt、例えば、最大700.0cSt、最大500.0cSt、最大380.0cSt、最大180.0cSt、最大80.00cSt、最大30.00cSt、または最大10.00cStの約50℃での動粘度(適切な標準試験方法、例えば、ASTMのD445による)、約0.870~1.010g/cm3の範囲内、例えば、最大0.920g/cm3、最大0.960g/cm3、最大0.975g/cm3、最大0.991g/cm3、または最大1.010g/cm3、特に少なくとも0.890g/cm3の約15℃での密度(適切な標準試験方法、例えば、ASTMのD4052による)密度、約-30~35℃、例えば、-27~30℃、例えば、最大6~30℃、または最大0~30℃の流動点(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D97による)、約60~130℃の範囲内、例えば、少なくとも60℃である引火点(例えば、ASTM D93 Proc.9(自動)による)、約0.0~2.5mgKOH/g、例えば、最大約2.5mgKOH/gの範囲内の酸価。
【0058】
さらに、加えてまたは代わりに、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された海洋および/またはバンカー燃料は、以下の特性の全てを含む、少なくとも1つ以上を示し得る:最大約2.0mg/kgの硫化水素含有量(適切な標準化された試験方法、例えば、IP 570による)、グラムあたり最大約2.5mgKOHの酸価(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D-664による)、最大約0.1%m/mの堆積物含有量(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D4870 Proc.Bによる)、最大約0.5%v/v、例えば約0.3%v/vの含水量(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D95による)、および最大約0.15%m/m、例えば、約0.10%m/m、0.07%m/m、または0.04%m/mの灰分含有量(適切な標準化された試験方法、例えば、ASTM D482による)。
【0059】
本発明のより良い理解を促すために、以下好ましいまたは代表的な実施形態の例を示す。以下の実施例は、決して、本発明の範囲を制限するか、または定義すると読み取られるべきではない。
【実施例】
【0060】
以下は、本明細書に記載の海洋燃料組成物の例示的な実施形態の非限定的な実施例である。
【0061】
実施例1
図1を参照すると、不安定なVTB残留炭化水素成分のサンプルが、100倍の顕微鏡倍率下で観察された。VTB残留炭化水素成分は、0.9092kg/lの密度、519cStの50℃での動粘度、0.08%m/mの硫黄含有量、および42.2℃の流動点を有する。
図1は、全体により暗い領域が広がった「粗い」テクスチャを示し、不均一性または粗さの外観を示すが、これは、VTB残留炭化水素成分が凝集および沈殿したアスファルテン(より暗い領域)を含むことを示す。アスファルテン凝集は、凝集が溶液から沈殿する特定の閾値に達するまでアスファルテンが互いに凝集し始めるときとして、当該技術分野で一般に公知である。VTB残留炭化水素成分は、観察し得る量の凝集アスファルテンのため、「不安定」と見なされ得る。
【0062】
この不安定なVTB残留炭化水素成分サンプルを、使用済み調理油または「使用済み調理油メチルエステル」(UCOME)のエステル交換によって生成された脂肪酸アルキルエステルとブレンドした。脂肪酸アルキルエステル成分は、0.879kg/lの密度、4.361cStの50℃での動粘度、および158.5℃の引火点を有した。VTB残留炭化水素成分およびUCOMEを1:1の比率(体積)でブレンドし、100℃で30分間撹拌した。
【0063】
図2を参照すると、得られたブレンドは、100倍の同じ顕微鏡倍率で観察された。
図2は、より暗い領域がより少ない、
図1と比べて「より滑らかな」テクスチャを示すが、
図1で見られるUCOMEなしのVTB残留炭化水素成分と比較して、凝集した(「粗い」テクスチャ領域)および沈殿したアスファルテン(黒い断片)の量が減少していることを示す。顕微鏡観察下で見られるような凝集および沈殿したアスファルテンの量の減少は、UCOMEなし(
図1)と比較して、UCOMEの存在下(
図2)でアスファルテンがより高いレベルまで溶解し、その結果、残留炭化水素成分の改善された安定性および潜在的な相溶性が生じることを示す。保管中のブレンド中でのアスファルテンの溶解度もまた観察された。
図3および
図4を参照すると、VTB残留炭化水素成分および
図2のUCOMEのブレンドが、3日後(
図3)および4週間後(
図4)に同じ顕微鏡倍率下で再び観察された。理解され得るように、
図3および4の両方は、
図2と同様の「滑らかさ」を示し、
図1と同様のより暗い領域の増加を示さないが、このことは、ブレンドを1か月間保管した後もなおアスファルテンが再凝集および再沈殿しなかったことを示し、このことは、燃料を1か月間保管した後もなお、脂肪酸アルキルエステルの安定化効果が残ることを示す。
【0064】
少なくとも脂肪酸アルキルエステルの使用による残留炭化水素成分の安定性予備力および/または安定性の増加は、脂肪酸アルキルエステル成分を含まないことを除いて同じ残留燃料成分におけるアスファルテン凝集および/または沈殿の量と比較した場合(
図1)の、残留炭化水素成分中のアスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少によって、少なくとも測定され得る(
図2~4)。アスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少は、少なくとも、本明細書の100倍の倍率でのような顕微鏡下での観察、または本開示で言及される方法、例えば、ASTM D7060のような、当業者に公知の他の適切な方法によって、測定または決定され得る。
【0065】
実施例2
比較の目的で、海洋ガス油(0.5%m/m硫黄を含むMGO)を使用したが、これは、脂肪酸アルキルエステルの特定の特性(例えば、密度、粘度、燃焼特性など)はMGOの特性と類似しているが、それでもなお、それらは、それぞれが生成されるプロセスに基づき、および脂肪酸アルキルエステルがエステル官能基を含むのに対してMGOは含まないという分子レベルにも基づき、異なる成分であるからである。以下の成分:75%m/mVTB、15%m/mのひび割れ残留物、および10%m/mのスラリー油を含む海洋燃料組成物(0.976kg/lの密度、195cStの50℃での動粘度、0.47%m/mの硫黄含有量、および-12℃の流動点を有する)のサンプルを、MGO(これは、0.8272g/ccの密度、1.949cStの動粘度、0.5%m/mの硫黄含有量および-18℃の流動点を有する)と、1:1の比率(体積)でブレンドした。
図5を参照すると、燃料組成物およびMGOの得られたブレンドは、100倍の顕微鏡倍率下で観察された。
【0066】
同じ燃料組成物を、同じ1:1の比率(体積)でUCOMEとブレンドした。
図6を参照すると、比較の目的で、燃料組成物およびUCOMEの得られたブレンドが、100倍の顕微鏡倍率下で観察された。理解され得るように、
図5は、
図6の黒色フラグメントよりも大きい黒色フラグメントを示し、これは、燃料組成物にMGOを添加すると、同量の脂肪酸アルキルエステルの添加と比較して、より多量の凝集および沈殿したアスファルテンが生じることを示す。
図5および6のブレンドの安定性比は、ASTM D7060法に従って決定された。
図5のMGO含有ブレンドの安定性比は0.77であり、
図6のUCOME含有ブレンドの安定性比は1.03である。ASTM D7060によると、安定率が1より大きいブレンドは安定していると見なされ、一方、安定率が1未満のブレンドは不安定であると見なされる。したがって、ASTM D7060安定性比は、
図6のUCOMEを有するより安定したブレンドと比較した、
図5におけるMGOでの不安定性の観察を支持する。
【0067】
同様の特性(MGOなど)を有し得る別の成分の代わりに脂肪酸アルキルエステル成分を少なくとも使用することによる残留燃料組成物の安定性予備力および/または安定性の増加は、代わりにMGOを含むことを除いて同じ残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/または沈殿の量と比較した場合(
図5)の、脂肪酸アルキルエステル成分を含む残留燃料組成物中のアスファルテンの凝集および/または沈殿の量の減少によって、少なくとも測定され得る(
図6)。アスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少は、少なくとも、本明細書の100倍の倍率でのような顕微鏡下での観察、または本開示で言及される方法、例えば、ASTM D7060のような、当業者に公知の他の適切な方法によって、測定または決定され得る。
【0068】
実施例3
また、比較のために、パラフィン系炭化水素-セタン(C16H34)を、アスファルテンの凝集および沈殿を引き起こすのに十分な量(セタン30%m/mの量など)の残留(VTB)炭化水素成分の安定サンプルに添加した。これは、セタン(C16H34)などのパラフィン系炭化水素を安定残留炭化水素成分または残留海洋燃料組成物にブレンドすると、ストリームの安定性が悪化し、セタン濃度が特定の閾値を超えると、アスファルテンの凝集および沈殿が発生することが公知であるためである。
【0069】
この実施例3における残留炭化水素成分のサンプルは、セタンを添加する前に顕微鏡(100倍倍率)で観察されたが、これを
図7に示す。理解され得るように、
図7は、最小限のより暗い領域または黒い断片を有する「滑らかな」テクスチャを示すが、このことは、成分が安定であることを示す。セタン(30%m/m)が添加された後、残留炭化水素成分およびセタンのブレンドは、顕微鏡(100倍倍率)で観察されたが、これを
図8に示す。理解され得るように、
図8は、
図1(別の不安定なサンプル)とより類似して、増加したより暗い領域が全体に広がる「より粗い」テクスチャを示すが、このことは、増加したアスファルテンの凝集および沈殿を示し、それによってセタンを含むブレンドの不安定性を反映する。
【0070】
一方、
図9を参照すると、すでに20%m/mのUCOMEを含有する残留炭化水素成分(VTB)のブレンドに同じ割合でセタンを添加しても、アスファルテンの凝集および沈殿は起こらない。セタンを添加した残留炭化水素成分および20%m/mのUCOMEのこの最終ブレンドは、顕微鏡(100倍倍率)で観察されたが、これを
図9に示す。理解され得るように、ブレンドは、
図7と同様の「より滑らかな」外観を有し、このことは、
図8と比較して同様の最小量の凝集アスファルテンを反映し、同じ割合のセタンを加えても、脂肪酸アルキルエステルの添加により燃料の安定性が増加することを示す。
【0071】
しかしながら、脂肪酸アルキルエステルは、アスファルテンの凝集および沈殿がすでに起こった後に添加される場合、
図9で観察されたのと同じ安定化効果を示さないことに留意されたい。脂肪酸アルキルエステル(0.879kg/lの密度、4.361cStの50℃動粘度、および158.5℃での引火点)を、20%m/mの量で
図8のブレンド(残留炭化水素成分(VTB)およびセタンを含む)に添加した。この最終ブレンドは、顕微鏡(100倍倍率)で観察されたが、これを
図10に示す。
図10の脂肪酸アルキルエステル、残留炭化水素成分およびセタンのこのブレンドは、
図9のブレンドと同様の割合で同様の成分を含む。しかしながら、理解され得るように、
図10のブレンドは、
図8で見られるものと同様の「より粗い」テクスチャを有し、このことは、アスファルテンが一旦凝集および沈殿すると(
図8の場合のように)、FAMEを添加しても、すでに凝集および沈殿したアスファルテンは元通りに溶解しないことを示す。
【0072】
残留燃料組成物(セタンなど)のアスファルテン溶解力を低下させる別の成分を添加する前に、脂肪酸アルキルエステル成分を使用または少なくともブレンドすることによる残留炭化水素成分の安定性予備力および/もしくは安定性の増加は、脂肪酸アルキルを含まないことを除いて同じ残留炭化水素成分におけるアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量と比較した場合(
図8)または脂肪酸アルキルエステル成分がセタンの後に添加された場合と比較した場合(
図10)の、残留燃料組成物中のアスファルテン凝集および/もしくは沈殿の量の減少(
図9)によって、少なくとも測定され得る。アスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少は、少なくとも、本明細書の100倍の倍率でのような顕微鏡下での観察、または本開示で言及される方法、例えば、ASTM D7060のような、当業者に公知の他の適切な方法によって、測定または決定され得る。
【0073】
実施例4:
図11は、以下の2つの非相溶性の残留燃料組成物の1:1ブレンド(体積)を示す:67%m/mの短残留物(VTB)および33%m/mのエチレンクラッカーガス油を含む燃料組成物A、燃料組成物Aは、0.910kg/lの密度、7.390cStの50℃での動粘度、0.46%m/mの硫黄含有量、27℃の流動点を有し、45%m/mのVTB、20%m/mの真空ガス油(VGO)および35%m/mの超低硫黄ディーゼル(ULSD)を含む燃料組成物B、燃料組成物Bは、0.878kg/lの密度、9.344cStの50℃での動粘度、0.46%m/mの硫黄含有量および-15℃の流動点を有する。このブレンドは、100倍の顕微鏡倍率下で観察される。この実施例4は、より多量の可能性のある非相溶性残留燃料組成物が互いに組み合わせられ得るように、燃料油組成物の安定性予備力(または耐性)または安定性または相溶性を改善するための脂肪酸アルキルエステル成分の使用を示す。
【0074】
燃料組成物AおよびBは、互いに組み合わせられる前に安定であった。しかしながら、
図11中で理解され得るように、燃料組成物AおよびBのブレンドは、100倍の倍率下での可視のアスファルテン凝集および沈殿(暗い断片または領域)により示されるように不安定になったが、このことは、凝集および/または沈殿したアスファルテンがスラッジ形成につながり得るために不安定性を示す。
【0075】
図12を参照すると、燃料組成物Bが燃料組成物Aおよび脂肪酸アルキルエステルの組み合わせに添加される前に、20%v/vの脂肪酸アルキルエステル成分が燃料組成物Aに添加され、(i)燃料Aおよび脂肪酸アルキルエステルの組み合わせと(ii)燃料Bとの比率は、体積で1:1であった。
図12は、得られたブレンドを100倍の倍率下で示す。
図12中で理解され得るように、
図12の凝集および/または沈殿したアスファルテンの量は、
図11で見られ得る量よりも少ないが、このことは、非相溶性の燃料組成物を添加する前に脂肪酸アルキルエステル成分を安定燃料組成物に添加すると、示している。脂肪酸アルキルエステルがない場合よりも安定したブレンドを生じることを示す。すなわち、残留燃料Aの安定性予備力は、脂肪酸アルキルエステルの添加によって増加したか、または燃料組成物Aおよび燃料組成物Bの最終ブレンドの安定性が増加したことによって増加した。
【0076】
少なくとも1つの、残留燃料組成物のアスファルテン溶解力を低下させる他の燃料を添加する前に、脂肪酸アルキルエステル成分を安定残留燃料組成物と使用または少なくともブレンドすることによる、2つの異なる燃料組成物の残留燃料組成物または最終ブレンドの安定性予備力、安定性、および/または相溶性の増加は、脂肪酸アルキルエステル成分を含まない2つの燃料組成物をブレンドした後に脂肪酸アルキルエステル成分を添加したこと以外は同じ最終ブレンドまたはブレンド残留燃料組成物におけるアスファルテン凝集および/または沈殿の量と比較した場合(
図11)の、最終ブレンドまたはブレンド残留組成物中のアスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少(
図12)によって、少なくとも測定され得る。アスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少は、少なくとも、本明細書の100倍の倍率でのような顕微鏡下での観察、または本開示で言及される方法、例えば、ASTM D7060のような、当業者に公知の他の適切な方法によって、測定または決定され得る。
【0077】
したがって、必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および/または組成物について、(i)該別の成分が添加される前に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(ii)脂肪酸アルキルエステル成分を含まない残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(iii)該別の成分が添加された後に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた残留炭化水素成分が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(i)のアスファルテン溶解度レベルが、(ii)もしくは(iii)のいずれかのアスファルテン溶解度レベルよりも大きく、
【0078】
必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および/または組成物について、(i)少なくとも1つの他の燃料組成物が添加される前に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた安定残留燃料組成物を含むブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(ii)脂肪酸アルキルエステル成分を含まない安定残留燃料組成物を含むブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(iii)少なくとも1つの他の燃料組成物が添加された後に脂肪酸アルキルエステル成分とブレンドされた安定残留燃料組成物を含むブレンド残留燃料組成物が、アスファルテン溶解度レベルを有し、(i)のアスファルテン溶解度レベルが、(ii)もしくは(iii)のいずれかのアスファルテン溶解度レベルよりも大きい。
【0079】
必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および/または組成物について、アスファルテンの溶解度は、ASTM D4740によって決定され、かつ/または安定性は、ASTM D7060法を使用して決定される。必要に応じて、本明細書中で提供される用途、方法、および/または組成物について、本明細書に記載の使用および/もしくは方法による残留炭化水素成分および/もしくは残留燃料組成物または2つの異なる燃料組成物の最終ブレンドの安定性予備力、安定性、および/もしくは相溶性の増加は、特に、残留炭化水素成分もしくは残留燃料組成のアスファルテン溶解力をそれぞれ減少させ得る他の成分を添加する前に添加した場合の、脂肪酸アルキルエステル成分とのブレンドおよび/もしくは成分におけるアスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少によって、少なくとも測定され得る。アスファルテン凝集および/または沈殿の量の減少は、少なくとも、本明細書の100倍の倍率でのような顕微鏡下での観察、または本開示で言及される方法、例えば、ASTM D7060のような、当業者に公知の他の適切な方法によって、測定または決定され得る。
【0080】
必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および/または組成物について、非ハイドロプロセス成分は、軽質サイクル油(LCO)、重質サイクル油(HCO)、流動接触分解(FCC)サイクル油、FCCスラリー油、パイロリシスガス油、分解軽質ガス油(CLGO)、分解重質ガス油(CHGO)、パイロリシス軽質ガス油(PLGO)、パイロリシス重質ガス油(PHGO)、パイロリシス残留物(ECR)、熱分解残留物、熱分解重留分、コーカー重留分、真空ガス油(VGO)、コーカーディーゼル、コーカーガス油、コーカーVGO、熱分解VGO、熱分解ディーゼル、熱分解ガス油、グループIスラックワックス、潤滑油芳香族抽出物、脱アスファルト油(DAO)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。必要に応じて、ハイドロプロセス成分は、500ppmw未満の硫黄含有量を有する低硫黄ディーゼル(LSD)、15ppmw未満の硫黄含有量を有する超低硫黄ディーゼル(ULSD)、水素化処理LCO、水素化処理HCO、水素化処理FCCサイクル油、水素化処理パイロリシスガス油、水素化処理PLGO、水素化処理PHGO、水素化処理CLGO、水素化処理CHGO、水素化処理コーカー重質留分、水素化処理熱分解重質留分、水素化処理コーカーディーゼル、水素化処理コーカーガス油、水素化処理熱分解ディーゼル、水素化処理熱分解ガス油、水素化処理VGO、水素化処理コーカーVGO、水素化処理残留物、水素化分解底部物、水素化処理熱分解VGO、およびハイドロプロセスDAO(水素化処理水素化分解DAOを含む)、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0081】
必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および/または組成物について、脂肪酸アルキルエステル成分は、植物油および/もしくは動物脂肪とアルコールとの、または天然に存在する油および脂肪に由来する脂肪酸のエステルとアルコールとのエステル交換の生成物である。必要に応じて、油および/または脂肪は、大豆油、パーム油、菜種油、亜麻仁油、ココナッツ油、トウモロコシ油、綿油、調理油(使用済み調理油を含む)、廃棄調理油、ヒマワリ油、サフラワー油、藻油、獣脂、ラード、イエローグリース、ブラウングリース、魚油、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。必要に応じて、アルコールは、直鎖状、分枝状、アルキル、芳香族、一級、二級、三級、およびポリオールからなる群から選択される。
【0082】
必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および/または組成物について、残留燃料組成物は、約0.05~約3.5%m/mの範囲内の硫黄含有量を有する。必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および組成物について、残留燃料組成物は、以下のうちの少なくとも1つまたは全てを示す:最大2.0mg/kgの硫化水素含有量、1グラムあたり最大2.5mgKOHの酸価、最大0.1%m/mの堆積物含有量、最大0.5%v/vの含水量、最大0.15%m/mの灰分含有量、0.870~1.010g/cm3の範囲内の15℃での密度、1~700cStの範囲内の50℃での動粘度、-30~35℃の範囲内の流動点、および60℃~130Vの範囲内の引火点。必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および組成について、大気塔底部(ATB)残留物は、以下のうちの少なくとも1つまたは全てを示し:-19.0~64Vの範囲内の流動点、80~213℃の範囲内の引火点、8.00mgKOH/gまでの酸価、最大約1.0g/ccの約15℃での密度、および1.75~15000cStの範囲内の約50℃での動粘度、VTB残留物は、以下のうちの少なくとも1つを示す:0.8~1.1g/ccの範囲内の15℃での密度、-15.0~95℃の範囲内の流動点、220~335℃の範囲内の引火点、8.00mgKOH/gまでの酸価、および3.75~15000cStの範囲内の50℃での動粘度。必要に応じて、本明細書中で提供される使用、方法、および組成物について、ATB残留物は、70%m/mより多い、80%m/mより多い、または90%m/mより多い、C20より大きい炭素数を有する炭化水素を含む。
【0083】
したがって、本発明の実施形態は、言及された目的および利点、ならびにそれらの実施形態に固有の目的および利点を達成するために、十分に適している。本発明は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな、異なるが同等の様式で改変および実施され得るので、上記に開示された特定の実施形態は、例示にすぎない。さらに、以下の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、本明細書に示される構造または設計の詳細に制限は意図されていない。したがって、上記に開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、置換、または修正され得、全てのそのような変形は、本発明の範囲および趣旨の範囲内にあると考えられることが明らかである。本明細書に例示的に開示されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素および/または本明細書に開示されている任意の要素の非存在下で、適切に実施され得る。組成物および方法は、様々な構成要素または工程を「含む(comprising)」、「含む(containing)」、または「含む(including)」という観点から説明されるが、組成物および方法はまた、様々な構成要素および工程「から本質的になる(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」こともし得る。上記に開示された全ての数および範囲は、「約」という用語を伴うかどうかにかかわらず、ある程度変動し得る。特に、「約aから約bまで」という句は、「ほぼaからbまで」という句、またはその類似の形態と同等である。また、特許権者によって明示的かつ明確に定義されない限り、特許請求の範囲における用語は、それらの明白な通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」または「an」は、本明細書中で、それが導入する要素の1つ以上を意味するように定義される。本明細書の単語または用語の使用法および参照により本明細書に援用され得る1つ以上の特許または他の文書に矛盾がある場合は、本明細書と一致する定義を採用すべきである。
【国際調査報告】