(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】内視鏡的粘膜下層剥離術のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20221005BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/94
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506126
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2020044157
(87)【国際公開番号】W WO2021021987
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】カミーサ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フサール, ヒラリー ケー.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG24
(57)【要約】
組織クリップは、外科用器具のシャフトに取り外し可能に結合されるように構成された細長い本体と、細長い本体に受容された一対のジョー部材と、外科手術部位で組織クリップを展開すると細長い本体から外方向にたわむように構成された弾性部材とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位本体部と、
前記近位本体部に連結された第1のジョー部材及び第2のジョー部材であって、開放構成と閉鎖構成との間で移動し、それらの間に組織を把持するように構成された第1のジョー部材及び第2のジョー部材と、
前記近位本体部又は前記第1のジョー部材若しくは前記第2のジョー部材のうちの一方に連結された弾性部材であって、前記弾性部材が展開状態にあるときに前記近位本体部から横方向に離間されたセグメントを含む弾性部材と、
を備える組織クリップ。
【請求項2】
前記弾性部材が、格納状態と前記展開状態との間で移行可能である、請求項1に記載の組織クリップ。
【請求項3】
前記弾性部材が前記格納状態にあるときに、前記弾性部材の前記セグメントが線形形状をとり、前記弾性部材が前記展開状態にあるときに、前記弾性部材の前記セグメントが弓形形状をとる、請求項2に記載の組織クリップ。
【請求項4】
前記弾性部材が前記展開状態にあるとき、前記弾性部材の前記セグメントが、前記近位本体部から外方向にたわむ、請求項2に記載の組織クリップ。
【請求項5】
前記弾性部材が、
前記近位本体部に連結され、かつ前記近位本体部から遠位方向に延出する第1の端部であって、そこから前記セグメントが近位方向及び横方向に湾曲する第1の端部と、
前記セグメントから延出する第2の端部と、
を含む、請求項1に記載の組織クリップ。
【請求項6】
前記第2の端部が、前記近位本体部に向かって湾曲する、請求項5に記載の組織クリップ。
【請求項7】
前記第2の端部が、前記第1の端部の近位側に配設されている、請求項6に記載の組織クリップ。
【請求項8】
前記弾性部材が、前記展開状態にあるときにループ状構成をとるように構成されている、請求項1に記載の組織クリップ。
【請求項9】
前記弾性部材が、事前定義された形状を有するワイヤを含む、請求項1に記載の組織クリップ。
【請求項10】
前記弾性部材が、前記近位本体部に回転可能に連結された第1の端部と、第2の端部とを有し、前記弾性部材は、前記第2の端部が前記近位本体部の第1の側に配設されている第1の位置と、前記第2の端部が前記近位本体部の第2の側に配設されている少なくとも1つの第2の位置との間で回転可能である、請求項1に記載の組織クリップ。
【請求項11】
前記近位本体部が、環状凹部を画定し、前記環状凹部が、前記弾性部材の前記第1の端部を前記環状凹部の中に摺動可能に受容させる、請求項10に記載の組織クリップ。
【請求項12】
前記第1のジョー部材が、前記第1のジョー部材を貫通する一対の穴を画定し、前記弾性部材が、前記一対の穴を介して前記第1のジョー部材に取り付けられている、請求項1に記載の組織クリップ。
【請求項13】
前記弾性部材が、第1のワイヤ及び第2のワイヤを含み、前記第1のワイヤ及び前記第2のワイヤが、それらの間に間隙を画定する、請求項1に記載の組織クリップ。
【請求項14】
前記間隙が、前記近位本体部の直径よりも大きい、請求項13に記載の組織クリップ。
【請求項15】
内視鏡的粘膜下層剥離術を行う方法であって、
組織クリップを展開することと、
前記組織クリップの一対のジョー部材を、組織の周囲に接近させることと、
前記組織クリップの弾性部材を展開し、それによって、前記弾性部材が、前記組織クリップの近位本体部から外方向にたわんで、把持された前記組織を胃壁から離間させることと、
を含む方法。
【請求項16】
前記弾性部材を前記近位本体部の周りで回転させて、前記弾性部材を、前記把持された組織に対して位置決めし直すことを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記弾性部材を展開することが、前記弾性部材を直線形状から弓形形状に移行させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組織が前記弾性部材によって前記筋肉層から離間されて保持されている間に、前記把持された組織を前記筋肉層から剥離することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組織と前記筋肉層との間に、前記弾性部材を位置決めすることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記弾性部材が、展開された後にループ状構成をとる、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年7月30日に出願された米国特許仮出願第62/880,287号の利益と優先権とを主張し、当該仮出願の内容全体が、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本技術は、一般的に、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で使用される組織クリップに関連する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡的切除術は、低侵襲性であること及びコストがより低いことにより、早期の消化管(GI)がんの治療のための第1の選択肢として受け入れられてきた。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、サイズ、粘膜下層における重篤な線維症の存在、及び病変の位置にかかわらず、一括切除及び正確な組織病理学的診断を可能にする。ESDの利点のうちの1つは、内視鏡粘膜切除と比較して、より低い再発率である。一部のESD手術ではその施術中、組織クリップのジョー部材が、組織に係合される。剥離を実施した後、ジョー部材は、組織から分離される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本開示は組織クリップを提供し、その組織クリップは、近位本体部と、ともにその近位本体部に連結された第1のジョー部材及び第2のジョー部材と、弾性部材とを含む。ジョー部材は、開放構成と閉鎖構成との間で移動して、それらの間に組織を把持するように構成されている。弾性部材は、近位本体部か、又は第1のジョー部材若しくは第2のジョー部材のうちの一方かに連結されている。弾性部材は、弾性部材が展開状態にあるときに、近位本体部から横方向に離間されたセグメントを含む。
【0005】
諸態様では、弾性部材は、格納状態と展開状態との間で移行可能であり得る。
【0006】
諸態様では、弾性部材が格納状態にあるときに、弾性部材のセグメントは線形形状をとり得るが、弾性部材が展開状態にあるときに、弾性部材のセグメントは弓形形状をとり得る。
【0007】
諸態様では、弾性部材が展開状態にあるとき、弾性部材のセグメントは、近位本体部から外方向にたわみ得る。
【0008】
諸態様では、弾性部材は、第1の端部と、第2の端部とを含み得るが、その第1の端部は、近位本体部に連結されるものであり、かつそこから遠位方向に延出し、第2の端部は、セグメントから延出するものである。セグメントは、第1の端部から近位方向かつ横方向に湾曲し得る。
【0009】
諸態様では、第2の端部は、近位本体部に向かって湾曲し得る。
【0010】
諸態様では、第2の端部は、第1の端部の近位側に配設され得る。
【0011】
諸態様では、弾性部材は、展開状態にあるときにループ構成をとるように構成され得る。
【0012】
諸態様では、弾性部材は、事前定義された形状を有するワイヤを含み得る。
【0013】
諸態様では、弾性部材は、第1の端部と、第2の端部とを有し得るが、その第1の端部は、近位本体部に回転可能に連結されている。弾性部材は、第2の端部が近位本体部の第1の側に配設されている第1の位置と、第2の端部が近位本体部の第2の側に配設されている少なくとも1つの第2の位置との間で回転可能であり得る。
【0014】
諸態様では、近位本体部は、環状凹部を画定し得るが、その環状凹部中には、弾性部材の第1の端部が摺動可能に受容される。
【0015】
諸態様では、弾性部材は、近位本体部の周りに巻き付けられたワイヤを含み得る。
【0016】
諸態様では、第1のジョー部材は、自身を貫通する一対の穴を画定し得るが、弾性部材は、それらの一対の穴を介して第1のジョー部材に取り付けられ得る。
【0017】
諸態様では、弾性部材は、第1のワイヤと第2のワイヤとを含み得るが、それらの間には間隙が画定されている。
【0018】
諸態様では、間隙は、近位本体部の直径よりも大きくてもよい。
【0019】
本開示の更に別の一態様では、内視鏡的粘膜下層剥離術を行うための方法が提供される。本方法は、組織クリップを展開することと、組織の周りに組織クリップの一対のジョー部材を接近させることと、組織クリップの弾性部材を展開させ、弾性部材を組織クリップの近位本体部から外方向にたわませて、把持された組織を胃壁から離間させることと、を含む。
【0020】
諸態様では、本方法は、弾性部材を近位本体部の周りで回転させて、弾性部材を把持された組織に対して位置決めし直すことを含み得る。
【0021】
諸態様では、弾性部材を展開することは、弾性部材を直線形状から弓形形状に移行させることを含み得る。
【0022】
諸態様では、本方法は、組織が弾性部材によって、筋肉層から離間されて保持されている間に、把持された組織を筋肉層から剥離させることを含み得る。
【0023】
諸態様では、本方法は、組織と筋肉層との間に、弾性部材を位置決めすることを含み得る。
【0024】
諸態様では、弾性部材は、展開された後にループ構成をとり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の組織クリップの目的及び特徴は、添付の図面を参照して様々な実施形態の説明を読むことにより、当業者には明白になるであろう。
【0026】
【
図1】手持ち式外科用器具の例示的な一実施形態を示す上面図である。
【0027】
【
図2】
図1の外科用器具による手術用組織クリップを示す斜視側面図である。
【0028】
【
図3】
図1の外科用器具のシース内に格納された状態で示されている、組織クリップの別の一実施形態の上面図である。
【0029】
【
図4】展開された状態で示されている、
図3の組織クリップの斜視側面図である。
【0030】
【
図5】弾性部材なしで示されている、外科用組織クリップの更に別の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、一般的には、組織クリップを対象とし、その組織クリップは、細長い本体と、細長い本体に受容され、かつそこから展開可能な一対のジョー部材と、ジョー部材又は細長い本体に連結された弾性部材とを含むものである。弾性部材は、外科手術部位で組織クリップの展開時に事前定義された湾曲形状をとるように構成されている。使用中、標的組織(例えば、病変部)は、ジョー部材どうしの間に把持され、弾性部材はその展開状態において、胃壁に係合して病変部を胃壁から離間させる。弾性部材が病変部を、胃壁から離間させて保持した状態で、その病変部が剥離され得る。諸態様では、弾性部材は、細長い本体の周りで旋回可能であり、その位置を調整することができる。本開示の上記及び他の態様を本明細書において以下でより詳細に説明する。
【0032】
図1は、組織クリップ100(
図2)を展開するための手持ち式外科用器具10を示す。外科用器具10は、一般的には、ハンドル11と、ハンドル11から遠位方向に延出するシャフト12と、シャフト12の遠位端部14に取り外し可能に連結された組織クリップ100とを含む。一部の態様では、クリップ100が手持ち式器具から展開可能である代わりに、クリップ100は外科用ロボットアームから展開され得る。
【0033】
外科用器具10は、例えば、シャフト12内で軸方向に移動可能な牽引具(図示せず)などの作動機構を含む。牽引具は、ハンドル11のトリガ16に動作可能に連結された近位端を有し得るが、これによりトリガ16の作動が牽引具を近位方向に並進させる。牽引具は、組織クリップ100に取り外し可能に連結された遠位端を有し得るが、それにより、牽引具の近位方向への並進は、後で説明するように、組織クリップ100を開放構成から閉鎖構成に移動させる。外科用器具10は、組織クリップ100を展開するための任意の好適な作動機構を含み得ることが想定されている。
【0034】
図2を参照すると、組織クリップ100は、近位本体部102、例えば管状本体と、近位本体部102に受容された第1のジョー部材104及び第2のジョー部材106と、近位本体部102に連結された弾性部材108とを有する。近位本体部102は、シャフト12の遠位端14に取り外し可能に連結されるように構成されている。諸態様では、シャフト12は、近位本体部102に連結された解放ラッチ(図示せず)と、解放ラッチを作動させてシャフト12から組織クリップ100を展開するための作動機構(例えば、牽引ロッド、図示せず)とを有し得る。
【0035】
第1のジョー部材104及び第2のジョー部材106は各々、近位本体部102に結合されている。第1のジョー部材104及び第2のジョー部材106の各々は、近位本体部102の中空の内部に摺動可能に受容された近位端部と、近位本体部102の遠位側に配設された遠位端部とを有する。ジョー部材104、106の遠位端部は、ジョー部材104、106の間に組織を把持するのを支援するための歯を画定し得る。ジョー部材104、106は、付勢部材(図示せず)によって、開放構成に向かって弾性的に付勢され得る。あるいは、ジョー部材104、106は、弾性付勢を有しない場合がある。ジョー部材104、106は、ジョー部材104、106の遠位端部どうしが互いに接近している近位位置と、ジョー部材104、106の遠位端部どうしが互いに離間している遠位位置とから、近位本体部102に対して軸方向に移動可能である。
【0036】
組織クリップ100の弾性部材108は、例えば、銅-アルミニウム-ニッケル又はニッケル-チタンなどの、形状記憶材料から製造される。一部の態様では、弾性部材108は、所定の形状を維持するように構成された、任意の好適な材料から製造され得る。弾性部材108は、折り畳まれたワイヤから製造され、折り畳まれた端部114がループに形成されて、弾性部材108の第1端部108aを形成し、ワイヤの連結されていない端部116どうしが一体に圧着されて、弾性部材108の第2の端部108bを形成する。ワイヤの2つの折り畳まれた部分は、それらの間に間隙又は開口118を画定し得る。ワイヤの2つの折り畳まれた部分を離間させることによって、弾性部材108の中間セグメント108cは、その上に組織を支持するのにより好適となる。一部の態様では、弾性部材108を折り畳まれたワイヤから製造する代わりに、弾性部材108は、弾性材料の薄い細長いシートであってもよい。弾性部材108には、他の構成もまた考えられる。
【0037】
弾性部材108の第1の端部108aは、近位本体部102上に回転可能に支持されている。具体的には、近位本体部102は、環状凹部110を画定し、環状凹部110の中には、弾性部材108の第1の端部108aが摺動可能に受容されている。弾性部材108の第1の端部108aは、近位本体部102の周りに巻き付けられ、環状凹部110内に摺動可能に受容される。したがって、弾性部材108の第1の端部108aが環状凹部110内に摺動可能に受容された状態では、第1の端部108aは、軸方向では近位本体部102に拘束されている一方で、近位本体部102によって画定される長手方向軸線「X」を中心に、自由に回転する。
【0038】
弾性部材108は、展開状態にあるときにループ状構成をとる。特に、弾性部材108の第1の端部108aは、近位本体部102の環状凹部110から遠位方向に延出し、概ね上向きに湾曲した構成を有する。諸態様では、組織クリップ100は、近位本体部102の上に、かつ弾性部材108の第1の端部108aを上から覆うようにクリップ留めされて、第1の端部108aを近位本体部102と密接させて保持するカラー112を有し得る。弾性部材108の中間セグメント108cは、第1の端部108aから延出し、近位本体部102の長手方向軸線「X」から横方向に離れるように、概ね近位方向に湾曲し、その結果展開状態では、中間セグメント108cは、弓形形状をとるようになっている。弾性部材108の第2の端部108bは、中間セグメント108cから延出し、近位本体部102の長手方向軸線「X」に向かって下方に湾曲している。
【0039】
使用中、組織クリップ100がシャフト12に連結され、かつジョー部材104、106が開放構成である状態で、組織クリップ100は、組織(例えば病変部)に隣接して位置決めされる。組織は、ジョー部材104、106の間に位置決めされ、その後、外科器具10の牽引具が、ジョー部材104、106を近位方向に近位本体部102を通して後退させる。近位本体部102の内壁が、ジョー部材104、106に作用して、ジョー部材104、106を組織の周りで閉鎖構成になるように移動させる。組織がジョー部材104、106の間に把持された状態で、牽引具を更に後退させると、ジョー部材104、106から牽引具が外れて、組織クリップ100の近位本体部102をシャフト12から解放させ、組織クリップ100を手術部位に残す。シャフト12から組織クリップ100を解放するための他の機構も考えられる。
【0040】
組織クリップ100をシャフト12から解放すると、組織クリップ100の弾性部材108は、弾性部材108がシャフト12内に拘束される格納状態から、展開状態に移行することが可能になる。格納状態では、弾性部材108は、概ね直線状の形状をとり、展開状態では、弾性部材108は、その事前定義された弓形の形状になるように移動して、弾性部材108が、近位本体部102から外方向にたわむ。
【0041】
ジョー部材104、106で組織を把持した後、把持している間、又は把持する前に、弾性部材108は、組織と胃壁の筋肉層との間に位置決めされ、それにより、弾性部材108が外向きに弾性的に付勢されると、把持された組織が胃壁から離間される。弾性部材108の向きを変更して、把持された組織と胃壁との間で弾性部材108をより良好に位置決めするために、弾性部材108の第1の端部108aを、近位本体部102の周りで回転させることができる。第1の端部108aの回転中、中間セグメント108c及び第2の端部108bは、所望の配向が達成されるまで、近位本体部102の異なる側に移動される。組織が弾性部材108によって筋肉層から離間されて保持されると、把持された組織が筋肉層から剥離され得る。
【0042】
図3及び
図4は、外科用器具10から展開可能な組織クリップ200の、別の一実施形態を示している。組織クリップ200は、組織クリップ100と同様であり、2つのクリップ間の違いを明らかする目的でのみ詳細に説明される。組織クリップ200は、例えば、管状本体202などの近位本体部と、近位本体部202に受容された第1のジョー部材204及び第2のジョー部材206と、及び弾性部材208とを含む。近位本体部202は、シャフト12の遠位端14に、取り外し可能に連結されるように構成されている。
図3に示すように、外科用器具10は、シース20を有し得るが、そのシース20は、シャフト14に取り外し可能に結合され、弾性部材208をさやにしまった状態にして、弾性部材208を格納された、直線状態に選択的に維持するように構成されたものである。組織クリップ200は、弾性部材208がジョー部材204に直接取り付けられているという点で、組織クリップ100とは異なる。諸態様では、弾性部材208は、折り畳まれたワイヤから形成されてもよく、又は一部の態様では、2本の別々のワイヤから形成され、折り畳まれた端部210がジョー部材204に回転不能に固定されていてもよい。
【0043】
諸態様では、弾性部材208は、単一のワイヤからなり、そのワイヤは、クリンプ212で互いに対して取り付けられた2つの端部208a、208bを有する。ジョー部材204は、その厚さ方向を貫通して延びる一対の穴214a、214bを有する。穴214a、214bの各々は、ジョー部材204の幅に沿って延びる、選択された距離だけ、互いに離間している。ジョー部材204内の穴214aと穴214bとの間の距離は、展開時に、単一のワイヤ208の2つのセクション209a、209bが管状本体202の直径よりも長い距離だけ互いに離間するように選択されるということが考えられる。このようにして、弾性部材208が組織に係合すると、弾性部材208は、組織クリップ200と平衡し、それによって組織クリップ200が組織との係合から外れて回転するのを防止する。
【0044】
組織クリップ200の製造及び/又は組み立て中に、単一ワイヤ208の2つの端部208a、208bは、ジョー部材204内のそれぞれ対応する穴214a、214bを上向きに通って、ワイヤ208の折り畳まれた端部210とジョー部材204との間で摩擦ばめによる係合を確立する。単一のワイヤ/弾性部材208をジョー部材204の穴214a、214bに通した後、ワイヤ208の2つの端部208a、208bは、一体に圧着され、それによって弾性部材208を囲まれたループ形状にする。穴214a、214bを介してジョー部材204に弾性部材208を取り付けることは、弾性部材208を組織クリップ200の残りの部分に連結する、比較的安価で、容易で、しかも効果的な手段である。
【0045】
図5を参照すると、組織クリップ300の別の一実施形態が示されている。組織クリップ300は、外科用器具10(
図1)から展開されるように構成され、かつ組織クリップ200と類似したものである。組織クリップ300は、一対のジョー部材302、304と、それらのジョー部材302、304のうちの1つに固定されるように構成されている弾性部材又はワイヤ208(
図4)とを含む。ジョー部材302、304の各々は、本体部材306を有し、その本体部材306は、その長さに沿って略半球形状を有し、かつ遠位先端308を有する。遠位先端308どうしは、互いに他方に向かって内側方向に湾曲している。ジョー部材302、304の各々は、組織を把持するのを支援するために、ジョー部材302、304の外周縁全体に沿って鋸歯310を有する。ジョー部材302のうちの少なくとも1つの本体部材306は、切り欠き312を有し、その切り欠き312は、弾性部材208(
図4)を受容するためのタブ314及び一対の穴312a、312bを形成している。
【0046】
外科用組織クリップ300の製造及び/又は組み立て中に、タブ314が外向きに曲げられ、弾性ワイヤ208の折り畳まれた端部210はタブ314を上から覆うように通過して、穴312a、312bに挿入される。次いで、タブ314が折り畳まれて、穴312a、312b内の弾性部材208の折り畳まれた端部210が捕捉される。このようにして、弾性部材208をジョー部材302に取り付ける前に、弾性部材208の互いに対向する端部208a、208b(
図4)を圧着してもよい。
【0047】
本明細書に開示される様々な態様は、説明及び添付図面に具体的に提示される組み合わせとは異なる組み合わせで組み合わせ得ることを理解されたい。また、実施例に応じて、本明細書に記載された任意のプロセス又は方法の特定の行為又は事象は、異なる順序で実行され得、追加、結合、又は完全に省略され得ることも理解されたい(例えば、全ての記載された行為又は事象が、技術を実行するために必要でない場合がある)。
【国際調査報告】