(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】調節可能なアクチュエータを有する投与システム
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20221005BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506541
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2020070975
(87)【国際公開番号】W WO2021028197
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】102019121679.6
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514024918
【氏名又は名称】フェルメス マイクロディスペンシング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリース、マリオ
(72)【発明者】
【氏名】メールレ、クラウス
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA02
4F041BA34
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB03
4F042CB10
4F042DH09
(57)【要約】
本発明は、投与物質用投与システムであって、投与システムが、ノズルと投与物質用供給路とを有するハウジングと、ノズルからの投与物質を吐出するためにハウジング内に配置された吐出要素と、吐出要素および/またはノズルに結合された少なくとも1つの第1のアクチュエータ、好ましくはピエゾアクチュエータと、第1のアクチュエータに結合された少なくとも1つの第2のアクチュエータ、好ましくは膨張材料要素とを備える投与システムに関する。第2のアクチュエータは、ハウジングに対する、特に吐出要素および/またはノズルに対する、少なくとも1つの第1のアクチュエータの位置を設定するように設計される。本発明は、そうした投与システムを制御する方法にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投与物質用投与システム(1)であって、前記投与システム(1)が、ノズル(60)と投与物質用供給路(64)とを有するハウジング(11)と、前記ノズル(60)からの投与物質を吐出するために前記ハウジング(11)内に配置された吐出要素(51)と、前記吐出要素(51)および/または前記ノズル(60)に結合された少なくとも1つの第1のアクチュエータ(20)、好ましくはピエゾアクチュエータ(20)と、前記第1のアクチュエータ(20)に結合された少なくとも1つの第2のアクチュエータ(30)、好ましくは膨張材料要素(30)とを備え、
前記第2のアクチュエータ(30)が、前記ハウジング(11)に対する、特に前記吐出要素(51)および/または前記ノズル(60)に対する、前記少なくとも1つの第1のアクチュエータ(20)の位置を設定するように設計された投与物質用投与システム(1)。
【請求項2】
前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)が、前記投与システム(1)の前記ノズル(60)に対する、前記吐出要素(51)の位置、特に、前記吐出要素(51)の吐出先端(52)と前記ノズル(60)のノズル開口(61)との間の距離(a)を設定するために前記ハウジング(11)内に設計され、および配置された、請求項1に記載の投与システム。
【請求項3】
前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)と関連付けられた少なくとも1つの加熱装置(33)および/または前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)と関連付けられた少なくとも1つの冷却装置(40)を有し、前記加熱装置(33)および/もしくは前記冷却装置(40)を制御し、ならびに/または調整するための制御ユニット(80)を有する、請求項1または2に記載の投与システム。
【請求項4】
前記投与システム(1)が、以下のセンサ:
前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)と関連付けられた温度センサ(83)、
前記第1のアクチュエータ(20)と関連付けられた温度センサ、
前記ハウジング(11)と関連付けられた温度センサ、
前記吐出要素(51)の移動を判定するための移動センサ(84)、
前記吐出要素(51)の位置を判定するための位置センサ(84)
の少なくとも1つを有するセンサ装置(83、84)を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の投与システム。
【請求項5】
前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)が、膨張体(32)および、好ましくは前記膨張体に結合されたトランスミッタ(35)を備え、ならびに/または、前記第2のアクチュエータ(30)が、前記第1のアクチュエータ(20)を位置決めするために軸方向において前記第1のアクチュエータ(20)に、好ましくは前記トランスミッタ(35)により、結合された、請求項1~4のいずれか1項に記載の投与システム。
【請求項6】
前記投与システム(1)は、前記第1のアクチュエータ(20)に対して、特に前記第2のアクチュエータ(30)により、特に好ましくは前記膨張材料要素(30)により、作用させられる力を判定するために、好ましくは前記力に基づいて前記吐出要素(51)の封止力を捕捉するために少なくとも1つの力センサを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の投与システム。
【請求項7】
投与物質用投与システム(1)を制御する方法であって、前記投与システム(1)が、ノズル(60)と投与物質用供給路(64)とを有するハウジング(11)と、前記ノズル(60)からの投与物質を吐出するために前記ハウジング(11)内に配置された吐出要素(51)と、前記吐出要素(51)および/または前記ノズル(60)に結合された少なくとも1つの第1のアクチュエータ(20)、好ましくはピエゾアクチュエータ(20)と、前記第1のアクチュエータ(20)に結合された少なくとも1つの第2のアクチュエータ(30)、好ましくは膨張材料要素(30)とを備え、前記第2のアクチュエータ(30)が、前記ハウジング(11)に対する、特に前記吐出要素(51)および/または前記ノズル(60)に対する、前記少なくとも1つの第1のアクチュエータ(20)の位置を設定するために制御され、および/または調整される、投与物質用投与システム(1)を制御する方法。
【請求項8】
前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)を制御し、および/または調整するために、前記第2のアクチュエータ(30)の温度、特に前記膨張材料要素(30)の温度が、好ましくは、前記第2のアクチュエータ(30)と関連付けられた少なくとも1つの加熱装置(33)により、および/もしくは、前記第2のアクチュエータ(30)と関連付けられた少なくとも1つの冷却装置(40)により、制御され、ならびに/または調整される、請求項7に記載の、投与システムを制御する方法。
【請求項9】
前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)は、定義された動作状態であって、好ましくは、前記吐出要素(51)の吐出先端(52)が前記ノズル(60)内への特定の押圧力を有する定義された動作状態中に、前記吐出要素(51)の調節位置(S
2、S
2’)に前記吐出要素(51)が導かれるように制御され、および/または調整される、請求項7または8に記載の、投与システムを制御する方法。
【請求項10】
特に調節位置(S
2、S
2’)を設定するために、前記第2のアクチュエータ(30)を制御し、および/または調整するために、好ましくは前記膨張材料要素(30)を制御し、および/または調整するために、前記投与システム(1)の以下の動作パラメータ:
前記第2のアクチュエータ(30)の温度、特に前記膨張材料要素(30)の温度、特に好ましくは膨張体(32)の温度、
前記投与システム(1)内の前記吐出要素(51)の位置、特に、前記吐出要素(51)に結合されたレバー(16)の位置、
前記第1のアクチュエータ(20)、好ましくは前記アクチュエータ(20)の起動信号の偏向、
前記第1のアクチュエータ(20)の温度、
前記ハウジング(11)の温度、
かかる吐出プロセス中に前記投与システム(1)から分配されるべき前記投与物質の量および/または重量、
投与物質用フローセンサからの信号、
前記投与システム(1)の校正データ、
封止力
の少なくとも1つが考慮に入れられる、請求項7~9のいずれか1項に記載の、投与システムを制御する方法。
【請求項11】
前記第2のアクチュエータ(30)、特に前記膨張材料要素(30)は、前記投与システム(1)の動作中の、前記吐出要素(51)の吐出端位置(S
3)が、先行して行われた調節プロセスにおいて判定された前記調節位置(S
2、S
2’)に対応するように制御され、および/または調整される、請求項9または10に記載の、投与システムを制御する方法。
【請求項12】
前記吐出要素(51)の前記調節位置(S
2、S
2’)を設定するための前記調節プロセスにおいて、少なくとも以下のステップ:
前記第1のアクチュエータ(20)の最大の偏向を設定するステップ、
前記第2のアクチュエータの調節開始温度、特に前記膨張材料要素(30)の調節開始温度を、好ましくは、前記膨張材料要素(30)を冷却することにより、設定するステップ、
前記吐出要素(51)と前記ノズル(50)との間で完全接触が検出され、前記吐出要素(51)の完全接触位置(S
1、S
1’)および/もしくは前記完全接触位置(S
1、S
1’)に関連付けられた完全接触温度(T
1)が判定されるまで、前記第2のアクチュエータ(30)を加熱し、特に前記膨張材料要素(30)を加熱し、
ならびに/または、前記第1のアクチュエータ(20)と前記第2のアクチュエータ(30)との最大のシステム偏向に達し、前記吐出要素(51)のシステム端接触位置および/もしくは前記システム端接触位置に関連付けられたシステム端接触温度が判定されるまで、前記第2のアクチュエータ(30)を加熱する、特に前記膨張材料要素(30)を加熱するステップ、
前記吐出要素の調節位置(S
2、S
2’)および/または前記調節位置(S
2、S
2’)に関連付けられた調節温度(T
2)を判定するステップであって、
前記調節位置(S
2、S
2’)および/または前記調節温度(T
2)を判定するために、前記吐出要素(51)の前記完全接触位置(S
1、S
1’)、および/または、前記吐出要素(51)の前記完全接触温度(T
1)もしくは前記システム端接触位置、ならびに/または、前記システム端接触温度、および、任意的には、少なくとも1つの調節パラメータが考慮に入れられるステップ、
前記吐出要素(51)を前記調節位置(S
2、S
2’)に任意的に伝達するステップ
を有する調整アルゴリズムが実行される、請求項11に記載の、投与システムを制御する方法。
【請求項13】
少なくとも以下のステップ:
前記吐出要素(51)の吐出端位置(S
3)を設定するステップ、
前記吐出要素(51)の後退移動中の前記第1のアクチュエータ(20)の偏向の関数として、特に、前記第1のアクチュエータ(20)に印加される電気的制御電圧(U)の関数として前記吐出要素(51)の位置を判定するステップ、
封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値(ΔU)を判定するステップであって、前記封止位置アクチュエータ偏向における前記吐出要素(51)が、前記ノズル(60)の封止座(63)に、前記吐出要素(51)と前記ノズル(60)との間の完全接触を超える特定の最小値だけ、圧入されるステップ、
特に前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記実際値(ΔU)と前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の目標値との間の差の関数として、前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記目標値を設定するために、前記第2のアクチュエータ(30)を制御し、および/または調整する、好ましくは、前記膨張材料要素(30)を制御し、および/または調整するステップであって、前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記目標値が前記吐出要素(51)の前記調節位置(S
2、S
2’)と関連付けられたステップ
を有する調整アルゴリズムが、動作中に前記吐出端位置(S
3)を調整するために実行される、請求項11または12に記載の、投与システムを制御する方法。
【請求項14】
前記第2のアクチュエータ(30)の温度、特に前記膨張材料要素(30)の温度が、前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記目標値からの、前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記実際値(ΔU)の正の偏差の場合に低減させられ、および/または、前記第2のアクチュエータ(30)の前記温度、特に前記膨張材料要素(30)の前記温度が、前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記目標値からの、前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記実際値(ΔU)の負の偏差の場合に増加させられる、請求項13に記載の、投与システムを制御する方法。
【請求項15】
等間隔での、好ましくは前記吐出要素(51)の各吐出プロセスでの、前記投与システム(1)の動作中、前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記実際値(ΔU)と前記封止位置アクチュエータ偏向を表す前記値の前記目標値との間の差が判定される、請求項13または14に記載の、投与システムを制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投与物質用投与システムであって、投与システムが、ノズルと投与物質用供給路とを有するハウジングと、ノズルからの投与物質を吐出するためにハウジング内に配置された吐出要素と、吐出要素および/またはノズルに結合された少なくとも1つの第1のアクチュエータ、好ましくはピエゾアクチュエータと、第1のアクチュエータに結合された少なくとも1つの第2のアクチュエータ、好ましくは膨張材料要素とを備えた投与物質用投与システムに関する。本発明は、さらに、そうした投与システムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べたタイプの投与システムは通常、標的化された方式で、すなわち、適切な時点で適切な場所において、および正確に投与された量で、投与すべき媒体を標的表面に付けるために使用される。これは、たとえば、投与システムのノズルを介して一滴ずつ投与物質を分配することにより、行われ得る。いわゆる「マイクロドージング技術」の文脈においては、ピンポイントの精度で、および接触なしで、すなわち、投与システムと標的表面との直接接触なしで極微量の投与物質が配置されることが必要であることが多い。これの典型例は、回路基板または他の電子素子を組立てる際のグルードット、はんだペースト等の投与、またはLED用のコンバータ材料を付けることである。
【0003】
そうした非接触プロセスは多くの場合、「ジェットプロセス」として表される。ジェットプロセスによって機能する投与バルブは通常、「ジェットバルブ」または「ジェッティングバルブ」として表される。同様に、少なくとも1つのそうしたジェットバルブを、および、場合によっては、さらなる構成要素も有する投与システムは、「ジェッティング投与システム」として表され得る。ジェッティング投与システムまたはジェットバルブからの媒体を分配するために、移動可能な吐出要素(たとえばプランジャ)が、投与システムのノズル内に配置され得る。投与物質を吐出するために、ノズル内の吐出要素は、ノズル開口の方向において比較的高速で吐出方向に押し出され、それにより、媒体の単一の液滴がノズルから吐出され得る。このプロセスは一般に、以下では吐出プロセスとして表される。吐出要素は次いで、反対の後退方向において再び取り外され得る。液滴のサイズまたは液滴毎の媒体量は、構造および起動、ならびにそれによって実現されるノズルの効果により、予め、できる限り正確に決定され得る。
【0004】
特徴的には、および、好ましくは本発明の範囲内でも、ジェッティング投与システムまたはジェットバルブにおいて、投与物質が、ノズルに対する、吐出要素の(吐出)移動により、ノズルから「能動的に」吐出される。吐出プロセス中、吐出要素の吐出先端は特に、分配されるべき投与物質と接触し、ならびに、吐出要素および/またはノズルの(吐出)移動により、投与システムのノズルから投与物質を「押し」出す。このようにして、ジェッティング投与システムは、閉鎖要素の移動がノズルの開口につながるに過ぎない他のディスペンサシステムであって、加圧された投与物質がその場合、それ自体でノズルを出る他のディスペンサシステムと異なる。これはたとえば、内燃エンジンの吐出バルブの場合にあてはまる。
【0005】
移動可能な吐出要素の代わりに、または移動可能な吐出要素に加えて、投与システムのノズル、たとえば、ジェットバルブ自体のノズルは、投与物質を分配するために吐出または後退方向に移動させられ得る。投与物質を分配するために、ノズル、およびノズル内に配置された吐出要素は、相対移動において互いに対して向かう、または離れる方向に移動させられる場合があり、相対移動は、ノズルの移動によってのみ、または、少なくとも部分的に、吐出要素の対応する移動によっても行われる場合がある。
【0006】
吐出要素とノズルとの間の絶え間ない相対移動が、たとえば、考えられる最高投与精度を実現するためにジェッティング投与システムにおいて、投与システムを動作させるために必要である。かかる吐出プロセス中にノズルから分配される投与物質の量は、特に、吐出要素および/またはノズルの、すなわち、たとえば、吐出要素が、かかる吐出移動により、ノズルに対して移動する距離の、(油圧的に)有効なストロークに依存する。
【0007】
投与システムの(油圧的に)有効なストロークが小さいほど、吐出要素およびノズルを、投与システムにおいて互いに対してできる限り正確に配置することが、より重要である。特に、圧電的に動作させられた投与システムでは、吐出要素および/またはノズルの有効ストロークは比較的、たとえば、空気圧アクチュエータを有する投与システムと比較して小さい。この理由で、特にピエゾアクチュエータを有する投与システムにおける最も重要な作業の1つは、全体システムの正確な設定、すなわち、吐出要素とノズルとの間の位置の設定である。
【0008】
圧電的に動作させられた投与システムは、顧客への納入前に初めて設定され、または調節され得る。たとえば、ピエゾアクチュエータおよび吐出要素、ならびにいずれかのさらなる構成要素が、吐出移動中に所望量の投与物質を吐出するために、ピエゾアクチュエータの偏向により、ノズルに対する吐出要素の特定の相対移動が行われるように、工場において投与システム内で配置され、および調節され得る。
【0009】
しかし、投与システムのこの1回限りの調節が多くの場合、投与システムの連続動作においても、一貫して高いレベルの投与精度を実現するのに十分でないことが示されている。投与システムの動作状況に応じて、したがって、特定の状況下では、所望の目標量と、吐出される実際量との間にかなりの偏差が存在し得る。
【0010】
一方で、これは、投与物質を分配する頻度、すなわち、アクチュエータ頻度が、動作中の吐出要件に応じて大きく変動し得ることによるものであり得る。アクチュエータの異なる装填状況は、特にピエゾアクチュエータの場合に、異なる動力損失につながる場合があり、ピエゾアクチュエータのかかる温度が変動する場合がある。これは、ピエゾアクチュエータ、および、場合によっては、投与システムのさらなる構成要素の熱伸長にさらにつながり得る。ピエゾアクチュエータの長手方向の熱膨張はさらに、吐出要素の(油圧的に)有効なストロークを不必要に変え、および、ピエゾアクチュエータと吐出要素との間の結合により、投与精度に影響をおよぼし得る。
【0011】
他方で、投与システムの移動可能な構成要素は、動作中、摩耗を受け得る。たとえば、ノズルとの頻繁な接触により、吐出要素の吐出先端は、吐出要素の所望の、(油圧的に)有効なストロークがもう確実に実現されないように少なくとも一部の領域内で摩耗し得る。これはさらに、各ケースにおいて分配される投与物質の量を変え得る。
【0012】
さらに、投与システムの摩耗した構成要素、たとえば摩耗した吐出要素を時々交換することが必要であり得る。交換後も、高いレベルの投与精度を実現するために投与システムを再調節する必要がある。この比較的複雑なプロセスは多くの場合、投与システムのユーザにより、必要な精度で行われないことがあり得るので、必要な投与プロセスにおける不必要な切替が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、冒頭で述べたように、投与物質の高精度の分配が、特にマイクロドージング技術において望ましい。したがって、本発明の目的は、上述した悪影響を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1に記載の投与システムにより、および請求項7に記載の、そうした投与システムを制御する方法により、実現される。
【0015】
液体ないし粘性投与物質用の、本発明による投与システムは、ハウジングであって、ハウジングが、ノズル開口を有するノズル、および投与物質をノズル内に供給するための供給路を有するハウジングを備える。ノズルからの投与物質を吐出するための吐出要素と、吐出要素および/またはノズルに結合された少なくとも1つの第1のアクチュエータが、投与システムのハウジング内に配置される。第1のアクチュエータは好ましくは、基本的に他のタイプのアクチュエータも考えられる場合でも、ピエゾアクチュエータ、特に制御可能なピエゾスタックであり得る。第1のアクチュエータは特に好ましくは、アクチュエータハウジング内に密封された、カプセル化されたピエゾスタックであり得る。以下では、より良い理解のために、本発明は、圧電的に動作させられた投与システムであって、それ、すなわち、第1のアクチュエータがピエゾアクチュエータであることに限定されることなく、圧電的に動作させられた投与システムを使用して説明される。
【0016】
本発明による、投与システムからの投与物質の分配は、冒頭で説明された原理の1つにより、行われ得る。同様に、通常、該当するように、ノズルからの投与物質を吐出するために比較的高速で移動可能な吐出要素は、投与システムのノズル内に(特に、ノズルの領域内に、たとえば、出口開口の少し手前に)配置され得る。あるいは、またはさらに、出口開口、よって、たとえば、投与システムのノズルは、移動可能であるように設計され得る。以下では、投与物質が移動可能な吐出要素により(好ましいものでは、たとえば、プランジャにより)、分配されると仮定する。しかし、本発明はそれに限定されるものでない。
【0017】
本発明による投与システムは特に好ましくは「ジェットプロセス」により、動作させられ得る。特に、投与システムはしたがって、少なくとも1つのジェットバルブを備え得る。この点で冒頭に表した定義を参照する。
【0018】
投与システムの第1のアクチュエータは、吐出要素またはノズルに少なくとも時々、機能的に結合される。結合は、第1のアクチュエータにより、作用させられる力および移動が、吐出要素(またはノズル)に、吐出要素および/もしくはノズルの、ノズルからの投与物質を分配するための所望の、好ましくは垂直の移動がそこから生じるように伝達されるように行われる。第1のアクチュエータは、直接、すなわち、さらなる移動付与構成要素なしで吐出要素に作用し得る。しかし、投与システムが、特定の距離にわたり(すなわち、間接的に)、第1のアクチュエータの偏向を吐出要素に伝達するために移動機構を備えていることが好ましい。これは後述する。
【0019】
本発明によれば、少なくとも1つのさらなる第2のアクチュエータであって、第2のアクチュエータが第1のアクチュエータに、特にピエゾアクチュエータに結合された少なくとも1つのさらなる第2のアクチュエータは、投与システムのハウジング内に配置される。第2のアクチュエータは、ハウジングに対する、特に、吐出要素および/またはノズルに対する、第1のアクチュエータ、たとえば、アクチュエータハウジング内にカプセル化されたピエゾスタックの位置を設定するように設計される。第1のアクチュエータおよび第2のアクチュエータは、この目的で別個に起動させられ得る。第2のアクチュエータはしたがって、吐出要素および/またはノズルに結合された第1のアクチュエータを位置決めするための位置決めアクチュエータとしても表され得る。結合は、位置決めアクチュエータが、第1のアクチュエータにもたれかかっており、および/または掛かっているに過ぎないように行われ得る。これは、位置決めアクチュエータが第1のアクチュエータと作動接触状態にあるが、しかし、2つの構成要素間の固定された接続が絶対的に必要である訳でないことを意味する。位置決めアクチュエータは基本的に、いずれかのタイプのアクチュエータ、たとえば制御可能なピエゾアクチュエータ、たとえば、この場合もまた、ピエゾスタックであって、それ自身のアクチュエータハウジング内にカプセル化されたピエゾスタック、形状記憶アクチュエータ、磁歪アクチュエータ等であり得る。第2のアクチュエータは好ましくは、第1のアクチュエータと異なるタイプのアクチュエータであるが、それは、第2のアクチュエータが基本的には、第1のアクチュエータほど高い膨張速度で機能しなくてもよいからである。
【0020】
位置決めアクチュエータは好ましくは、少なくとも1つの膨張材料要素を備え得る。第2のアクチュエータは特に好ましくは、膨張材料要素により、実現され得る。同様に、膨張材料要素は、ハウジングに対する、特に、吐出要素および/またはノズルに対する、少なくとも1つの第1のアクチュエータの位置を設定するように設計され得る。そうした膨張材料要素の利点は、全体の高さ(および、さらに体積)と、同等の動作力での、使用可能な最大ストロークとの間のより良好な比率である。本発明は、それに限定されることなく、膨張材料要素により、実現された第2のアクチュエータに基づいて以下に説明する。すなわち、別途明記しない限り、(プランジャおよび/またはノズルを移動させるための)第1のアクチュエータは、本出願の文脈においては、簡潔に、「アクチュエータ」または「ピエゾアクチュエータ」として表されるに過ぎず、第2の(位置決め)アクチュエータは、一般性を失うことなく、「膨張材料要素」として表される。
【0021】
一般的な定義による、膨張材料要素または膨張材料作用要素は、「熱膨張アクチュエータ」とも表され得る、膨張材料の、能動的に膨張可能な要素を有する、たとえば上記膨張材料の、能動的に膨張可能な要素で充填された膨張材料であると理解される。膨張材料要素は、膨張材料に加えてさらなる構成要素、たとえば、以下に説明するように、膨張材料を囲むハウジング、および動作ピストンを備え得る。一般的に慣例的であるように、膨張材料は好ましくは、膨張材料の温度における変化が膨張材料の体積における変化につながるように設計される。特定の、または方向性がある移動(ストローク)は、膨張材料の体積における変化を介して、膨張材料要素の対応する設計により、引き起こされ得る。(通常のように、)引き起こされる移動の範囲は、膨張材料の体積における変化に対しておおよそ比例している場合がある。
【0022】
膨張材料要素により、特定のストロークを引き起こすために、膨張材料要素は、投与システムの制御ユニットを介して制御され、および/または調整され得る。膨張材料要素の温度は、特に、膨張材料要素を制御し、および/または調整するために、本発明の範囲内で制御され、および/または、調整される。膨張材料要素および制御ユニットに関するさらなる詳細は以降で表す。
【0023】
本発明によれば、膨張材料要素は、この目的で設計され、および、(第1の)アクチュエータの特定の位置が投与システムのハウジングに対して設定され得るように投与システム内に配置される。これは、ハウジング内のアクチュエータ、特にピエゾアクチュエータの所望の空間的配置が、膨張材料要素により、実現され得ることを意味する。特に、ハウジング内のアクチュエータの位置は、動作中に、たとえば、吐出要素のかかる吐出移動および/またはかかる後退移動中に、膨張材料要素により、能動的に変えられ得る。すなわち、アクチュエータは、少なくとも小さな範囲まで、膨張材料要素により、ハウジング内で移動させられ得る。
【0024】
膨張材料要素はよって、膨張材料要素によって引き起こされるストロークが主に、アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータに完全に伝達される場合があり、およびアクチュエータを位置決めするために使用される場合があるように投与システム内に配置される。
【0025】
膨張材料要素は、投与システムの吐出要素および/またはノズルに対する、(第1の)アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータの位置を設定するために投与システム内に、特に設計され、および配置される。特に好ましくは、アクチュエータの圧力片であって、圧力片が、アクチュエータによって引き起こされた力を(直接または間接的に)吐出要素および/またはノズルに伝達する圧力片の位置は、膨張材料要素により、吐出要素および/もしくはノズルに対して設定され、ならびに/または変えられ得る。たとえば、投与システムの具体的な構造に応じて、アクチュエータの圧力片とノズルのノズル開口との間の特定の距離が、膨張材料要素により、設定され得る。アクチュエータの圧力片と吐出要素との間の距離も同様に設定され得る。
【0026】
有利には、(第1の)アクチュエータと、吐出要素またはノズルとの間の具体的な標的配置は、正確な量の投与物質が、アクチュエータのかかる偏向により、ノズルから吐出されるように膨張材料要素により、設定され得る。本発明による投与システムはよって、ピエゾアクチュエータのハイダイナミクスが投与システムの実際の投与機能のためにほとんど完全に使用され得るように、ハウジング内のアクチュエータの「ピンポイント精度の」位置決めのためのさらなるアクチュエータを、膨張材料要素とともに備える。
【0027】
特定の利点は、投与システムが動作中でもアクチュエータのそうした標的配置または標的位置がほとんど一定に保たれ得るということである。一方で、膨張材料要素は、「熱補償」とも表される熱補償機能を満たすために用いられ得る。たとえば、動作中に生じる、アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータの長さにおける熱変化は、吐出要素および/またはノズルに対する、アクチュエータの位置が動作中に一定に保たれ得るように反対方向に膨張材料要素を動作させることにより、補償され得る。
【0028】
他方で、膨張材料要素は、たとえば投与システムの構成要素の動作上摩耗を補償するための機械的補償機能も満たし得る。たとえば、アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータは、特に、(吐出要素などの)移動構成要素上の摩耗の兆候にもかかわらず、標的配置が動作中にほとんど一定に留まるように、動作中、膨張材料要素により、ハウジング内で定期的に(再)位置決めされ得る。
【0029】
膨張材料要素は有利には、投与動作の一時的な中断後に、全体システムを正しく(再)設定するためにも使用され得る。これは、たとえば、必要な場合、必要な、投与システムの摩耗した1つの構成要素のみ、たとえば、嵌合させられた組立体の代わりのプランジャが交換されることを可能にする。標的配置はその場合、膨張材料要素により、元に戻され得る。摩耗関連費用はしたがって、本発明による投与システムを使用すれば、既知の投与システムと比較して削減され得る。
【0030】
本発明による投与システムにおける投与精度は、上述した有利な効果により、既知の投与システムと比較してかなり改善され得る。
【0031】
液体ないし粘性投与物質用投与システムを制御する、本発明による方法において、投与システムは、ハウジングであって、ハウジングが、ノズルと、投与物質用供給路とを有するハウジングを備える。投与システムは、ノズルからの投与物質を吐出するためにハウジング内に配置された吐出要素と、吐出要素および/またはノズルに結合された少なくとも1つの第1のアクチュエータ(好ましくはピエゾアクチュエータ)と、第1のアクチュエータに結合された少なくとも1つの第2のアクチュエータ(好ましくは膨張材料要素)とをさらに備える。第2のアクチュエータは、ハウジングに対する、特に吐出要素および/またはノズルに対する、少なくとも1つの第1のアクチュエータの位置が設定されるように制御ユニットにより、制御され、および/または調整される。
【0032】
膨張材料要素の膨張長または膨張は、ハウジング内の(第1の)アクチュエータを位置決めするために少なくとも1つの方向において制御され、および/または調整され得る。膨張材料要素の膨張長は、特に好ましくは、膨張材料要素の温度により、制御され、および/または調整され得る。これは、以降、詳細に説明する。
【0033】
さらに、本発明の特に有利な構成および展開例は従属請求項および以下の説明から明らかになり、一請求項カテゴリの独立請求項はさらに、従属請求項と同様にさらに展開させられる場合があり、ならびに、別の請求項カテゴリの実施形態および、特に、さらに、種々の実施形態または変形例の個々の特徴が、新たな実施形態または変形例に組み合わせられる場合がある。
【0034】
第2のアクチュエータ(特に膨張材料要素)は、好ましくは、(第1の)アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータの位置を介して、投与システムのノズルに対する、吐出要素の位置を設定するためにハウジング内に設計され、および配置される。特に、吐出要素の吐出先端とノズルのノズル開口との間の距離は、(第1の)アクチュエータの位置を介して、膨張材料要素により、設定され得る。
【0035】
投与システムを制御する、対応する方法では、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素は、したがって、投与システムのノズルに対して、吐出要素の位置が設定されるように制御され、および/または調整され得る。膨張材料要素は好ましくは、吐出要素の吐出先端とノズルのノズル開口との間の特定の距離が(第1の)アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータの位置を介して設定されるように制御され、および/または調整され得る。
【0036】
投与システムを制御する好ましい方法では、第2のアクチュエータ(特に膨張材料要素)の制御および/または調整は、第2のアクチュエータ(好ましくは膨張材料要素)の温度、特に膨張材料の温度が制御され、および/または調整されるように行われ得る。この目的で、膨張材料要素と関連付けられた少なくとも1つの加熱装置、および/または膨張材料要素と関連付けられた少なくとも1つの冷却装置は好ましくは、後述するように、制御され、および/または調整され得る。特に好ましくは、膨張材料要素の温度は、膨張材料要素の特定のストロークが、ハウジング内の特定の位置においてアクチュエータ、特にピエゾアクチュエータ、および/または吐出要素を配置するために引き起こされるように設定され得る。
【0037】
上述したように、吐出要素は好ましくは、(第1の)アクチュエータに、特にピエゾアクチュエータに、移動機構により、結合され得る。吐出要素は、同義でプランジャとしても表される。本発明は、それに限定されることなく、移動機構を有する投与システムに基づいて説明する。移動機構は、アクチュエータの移動を吐出要素に伝達するために結合要素を備え得る。アクチュエータもしくはピエゾアクチュエータ、特にその圧力片と、移動機構との間の、および/または、移動機構と吐出要素との間の結合は好ましくは、固定された結合でない、すなわち、それぞれの構成要素は好ましくは、結合するために互いに対して、ねじ止め、溶接、糊付け等される訳でない。
【0038】
特に好ましくは、結合要素は、伝達要素、たとえば、特定の倍数だけ、アクチュエータの偏向を増加させるために、傾斜可能に取り付けられたレバー等を有するレバーシステムを有し得る。特に、伝達要素は、アクチュエータの偏向またはストロークと、それから生じる、プランジャの移動またはストロークとの間の具体的な伝達比を引き起こすように設計され得る。一方で、これは、(第1の)アクチュエータの偏向が、伝達要素により、プランジャの具体的な所望のストロークに変換され得ることを意味する。
【0039】
他方で、伝達要素は有利には、好ましくは膨張材料要素によってもたらされる、(第1の)アクチュエータの位置における変化を、より大きな範囲で吐出要素に伝達するためにも使用され得る。これは、吐出要素の位置における比較的大きな変化が、膨張材料要素による、アクチュエータの位置における比較的小さな変化により、もたらされ得ることを意味している。
【0040】
第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素は好ましくは、投与システムの定義された動作状態中に、吐出要素の好適に定義された「調節位置」に吐出要素を移動させるためにハウジング内に設計され、および配置される。上記動作状態は好ましくは、動作中に与えられる、(第1の)アクチュエータの、特にピエゾアクチュエータの考えられる最大の偏向に対応する。(第1の)アクチュエータの位置における変化は好ましくは、「調節位置」を設定するために、移動機構により吐出要素に伝達され得る。
【0041】
「調節位置」は好ましくは、ここでは、吐出要素、特に、プランジャの吐出先端が、特定の力により、ノズルに圧入されることで特徴付けられ、または定義される。調節位置におけるノズルに対して、プランジャにより、作用させられる力は、押込み力または封止力として表される。調節位置では、プランジャは、ノズルの封止領域が好ましくは、プランジャにより、完全に充填されるようにノズルの封止座に圧入され得る。上記封止領域は、ノズル(ノズルチャンバ)内のノズル開口に直接隣接した、ノズルの封止座内の領域であると理解される。プランジャおよびノズルは、特にプランジャを封止座に押圧することにより、封止領域内で、封止方式で相互作用し得る。
【0042】
プランジャは好ましくは、調節位置におけるノズルに対する特定の封止力を増大させる。たとえば、吐出要素の封止力は、少なくとも1mN、好ましくは少なくとも1N、より好ましくは少なくとも10Nであり得る。
【0043】
投与システムを制御する、好ましい方法では、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素はしたがって、投与システムの定義された動作状態中に吐出要素が吐出要素の調節位置に導かれるように制御され、および/または調整され得る。膨張材料要素は好ましくは、吐出要素の吐出先端が、動作中に与えられる特定の封止力により、ピエゾアクチュエータの最大の偏向をともなってノズルに押圧されるように制御され、および/または調整され得る。
【0044】
プランジャの「(油圧的に)有効なストローク」は有利には、吐出要素の調節位置を介して正確に設定され、および維持される場合があり、投与システムの投与精度はさらに改善される場合がある。これは以下に説明する。
【0045】
投与システムを制御する、好ましい方法では、(第1の)アクチュエータの偏向(アクチュエータ偏向)、特にピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧は、吐出開始位置からプランジャを、それがノズルの方向において「完全接触」に達するまで移動させるために、かかる吐出プロセス中に使用され得る。完全接触は、プランジャの吐出先端がノズルと、好ましくは全周にわたり、作動接触状態になることによって定義される。特に、完全接触が存在している場合、プランジャは、ノズル開口が閉鎖しているようにノズルの封止座に載せられ得る。
【0046】
ノズルに対する、完全接触までの各吐出プロセス中にプランジャが実行するストローク移動(対象距離)は、プランジャの「(油圧的に)有効なストローク」として表される。(油圧的に)有効なストロークはしたがって、動作中に与えられる最大アクチュエータ偏向の一部分、または動作中にピエゾアクチュエータに印加される最大電気的制御電圧の一部分であり、これは、投与物質を吐出するために使用される場合があり、および、したがって、投与物質の分配に対して影響をおよぼす。
【0047】
他方で、アクチュエータ偏向は少なくとも部分的に、さらに、完全接触を超えてノズルの方向においてプランジャを押すためにも使用され得る。合計アクチュエータ偏向のこの定義された部分、または、ピエゾアクチュエータの与えられる最大電気的制御電圧の部分であって、それにより、プランジャが、完全接触から開始してノズルの方向においてさらに特定の最小値だけ押される部分は、以降説明されるように封止位置アクチュエータ偏向として表される。プランジャの特定の封止力は好ましくは、封止位置アクチュエータ偏向により、増大させられ得る。
【0048】
「理想的な」高剛性投与システムでは、完全接触後のプランジャの位置は、漸進的アクチュエータ偏向、またはピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧(ピエゾアクチュエータ制御電圧)におけるさらなる増加の場合にほとんど一定に留まり得る。すなわち、プランジャが、封止位置アクチュエータ偏向による、増加する力により、ノズルに押圧され、プランジャの特定の封止力が増大させられ得る。
【0049】
投与システムの構成に応じて、たとえば、使用される材料の性質に応じて、封止位置アクチュエータ偏向はしかし、投与システムの構成要素のわずかな弾性変形にもつがなり得る。たとえば、ノズルインサート、プランジャ、レバーなどの、流体ユニットの接続要素、またはこれらもしくはさらなる構成要素の組み合わせが弾性的に変形させられ得る。同様に、完全に剛性を有している訳でない「理想的な」投与システムでは、プランジャの位置はなお、漸進的アクチュエータ偏向、または特にナノまたはマイクロメートルの範囲内での、ピエゾアクチュエータ制御電圧における増加により、完全接触後にわずかに変わり得る。しかし、そうした非剛性投与システムでも、封止位置アクチュエータ偏向の大部分は好ましくは、プランジャに伝達され、および、プランジャの封止力を設定するために使用され得る。
【0050】
投与システムの具体的な構成にかかわらず、動作中に与えられる、アクチュエータの最大の偏向、特に、動作中にピエゾアクチュエータに印加される最大制御電圧は、一方で、プランジャの(油圧的に)有効なストロークと、他方で、特に、膨張材料要素の対応する起動による、プランジャの封止力の増大との間で比例的に「分配され」得る。
【0051】
プランジャの調節位置は有利には、プランジャが調節位置におけるノズルに対して特定の封止力を作用させるように膨張材料要素および(第1の)アクチュエータの相互作用により、設定され得る。以下、すなわち、調節位置におけるプランジャの封止力が大きいほど、動作中に与えられる最大アクチュエータ偏向において、または意図された最大ピエゾアクチュエータ制御電圧においてそのために必要な封止位置アクチュエータ偏向の割合が大きいことが該当する。プランジャの(油圧的に)有効なストロークに使用され得るアクチュエータ偏向またはピエゾアクチュエータ制御電圧の部分は対応して減少する。プランジャの(油圧的に)有効なストロークはしたがって、プランジャの調節位置を設定することにより、特に、封止力を設定することにより、正確に設定され得る。さらに改善された投与精度がそれにより、有利に実現され得る。
【0052】
吐出要素を調節位置に移動させることができるために、投与システムは、上述したように、好ましくは、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素と関連付けられた少なくとも1つの加熱装置、および/または第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素と関連付けられた少なくとも1つの冷却装置を備える。投与システムは特に好ましくは、加熱装置および/もしくは冷却装置を制御し、ならびに/または調整するための制御ユニットをさらに備える。
【0053】
加熱装置は好ましくは、膨張材料または膨張材料要素を加熱するために電気エネルギーを使用し得る。たとえば、加熱箔の形態における少なくとも1つの抵抗加熱要素は、膨張材料要素の外面上(外側)に、たとえば、膨張材料要素のハウジング上に配置され得る。あるいは、またはさらに、少なくとも1つの抵抗加熱要素が、膨張材料自体内に配置され得る。加熱装置は好ましくは、膨張材料要素の膨張材料全体を具体的な目標温度に一様に加熱するように設計される。
【0054】
冷却装置は好ましくは、膨張材料要素または膨張材料を冷却するための少なくとも1つの気体および/または液体流体を備え得る。冷却媒体は好ましくは、少なくとも一部の領域内の膨張材料要素の外側に、たとえば、膨張材料要素のハウジングに、冷却媒体が直接、流され、または吹き付けられることで施される場合がある。この目的で、投与システム内の冷却装置は、膨張材料要素を囲み、および冷却媒体であふれさせられ得るキャビティ(冷却領域)を備え得る。さらに、冷却装置は、膨張材料要素の個々のサブ領域に冷却流体を具体的に施すために流れ誘導要素を備え得る。しかし、基本的には、膨張材料要素の外側全体も能動的に冷却され得る。冷却装置は、冷却媒体を投与システム内に、特に冷却領域内に導入し、またはそれを再びそこから取り除くために供給および吐出装置をさらに備え得る。
【0055】
冷却媒体は好ましくは、できる限りすばやく特定の温度値に膨張材料要素を冷却することができるように設計される。この温度値は、室温を上回り、および/または、圧電アクチュエータによる、膨張材料要素の「寄生」加熱を上回る場合もある。しかし、そうした温度値は好ましくは、45℃未満、より好ましくは30℃未満、特に好ましくは18℃未満である。
【0056】
空気、特に圧縮空気は、少なくとも温度値が室温を上回る場合における冷却媒体としても使用され得る。部屋の非冷却圧縮空気は、それが、比較的安価で、および十分に大きな体積流量で供給され得るという利点を有している。
【0057】
あるいは、冷却された空気、特に、冷却された圧縮空気は、冷却媒体としても使用され得る。たとえば、冷却媒体は、冷却装置と関連付けられた冷熱源、たとえば、冷凍機および/またはボルテックスチューブにより、特定の目標温度に「能動的に」冷却され得る。冷却媒体はその場合、投与システムの周囲温度未満の温度に膨張材料要素を冷却するように設計され得る。
【0058】
膨張材料要素と関連付けられた冷却装置の冷却能力は好ましくは、別個に制御され、および/または調整され得る。別個に起動させることができることは、投与システムの他の構成要素の温度制御に投与システムの冷却装置がさらに備えられる場合に特に有用である。たとえば、冷却装置は、動作中に作動温度に冷却するためにアクチュエータ、特にピエゾアクチュエータの温度を制御するようにも設計され得る。この場合には、膨張材料要素と関連付けられた冷却装置は、投与システムの共用の全冷却装置の別個のサブ冷却装置として設計され得る。さらなるサブ冷却装置は、対応して、アクチュエータと関連付けられ得る。全冷却装置はその場合、好ましくは、冷却流体を膨張材料要素またはアクチュエータに個々に供給するために、別個に制御可能な2つの比例バルブを備え得る。
【0059】
膨張材料要素と関連付けられた冷却装置、および加熱装置は好ましくは、別個に起動可能であるように設計される。その結果、投与システムの他の構成要素からの、膨張材料要素の熱的な切り離しは、考えられる最大の範囲まで実現され得る。特に好ましくは、冷却装置および加熱装置は同時に動作させられる場合もある。その結果、膨張材料要素の特定の目標温度は特に時間的に効率よく設定される場合があり、および、温度のオーバーシュートが防止され得る。さらに、加熱装置および冷却装置の、わずかな、制御された「互いに反する作動」は、たとえば外部の介入に対する、膨張材料要素の温度の「剛性」の増加、または一定性に寄与し得る。
【0060】
投与システムは好ましくは、加熱装置および/もしくは冷却装置を制御し、ならびに/または調整するための少なくとも1つの制御または調整ユニットを備える。投与システムは一方で、外部の制御または調整ユニット、たとえば、複数の投与システムの別個の起動のための中央制御ユニットに結合され得る。そうした中央制御または調整ユニットは、考えられる最大の範囲までソフトウェアとして、好ましくは好適なソフトウェアを使用したコンピュータユニットの形態において実現され得る。コンピュータユニットはたとえば、1つまたは複数の協働するマイクロプロセッサ等を有し得る。
【0061】
しかし、投与システムは、別個の「投与システム固有の」制御ユニットとも関連付けられ得る。これはたとえば、ハウジング内の回路基板により、実現され得る。一方で、「投与システム固有の」制御ユニットは、投与プロセス全体を別個に制御するように設計され得る。中央制御または調整ユニットはその場合、なくし得る。
【0062】
他方で、「投与システム固有の」制御ユニットは、投与プロセスの個々のプロセスのみを制御するように設計される場合もある。「投与システム固有の」制御ユニットはその場合、好ましくは、中央制御ユニットのサブ制御ユニットとして設計され、およびシグナリング目的でそれに結合され得る。たとえば、「投与システム固有の」制御ユニットは、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素の制御および/または調整に、すなわち、特に、調節プロセスの実行に、ならびに、熱、および/または機械的補償機能に備えられ得る。対照的に、中央制御ユニットは、投与プロセスの残りのプロセス、たとえば、ピエゾアクチュエータの電気配線を制御し得る。以下では、第2の変形例による、「投与システム固有の」制御ユニットは、それに限定されることなく説明される。制御ユニットは、複数のサブ制御ユニットであって、その場合、制御ユニットを共同で形成し得る複数のサブ制御ユニットも備え得る。
【0063】
制御との語は、本出願の文脈においては、制御および/または調整の同義語として使用される。これは、コントローラについて語る場合にも、コントローラが少なくとも1つの調整プロセスを備え得ることを意味する。調整の場合には、(実際値としての、)調整された変数が概して、連続して捕捉され、および、(目標値としての)参照変数と比較される。調整は通常、調整された変数が参照変数と突き合わせられるように行われる。これは、調整された変数(実際値)が制御ループのアクションパスにおいてそれ自身に、連続して影響をおよぼすことを意味する。
【0064】
投与システムを制御する好ましい方法では、好ましくは、膨張材料要素の温度を設定するために、好ましくは、膨張材料要素を制御し、ならびに/または調整するために、第2のアクチュエータを制御し、および/もしくは調整する場合に、投与システムのいくつかの動作パラメータを考慮に入れ得る。以下の動作パラメータの少なくとも1つを、特に、調整位置を、設定するために、すなわち調整位置を判定し、および/または調整位置に達するために考慮に入れ得る:
【0065】
第1の動作パラメータは、第2のアクチュエータの温度、特に、膨張材料要素の温度、特に好ましくは、膨張材料、または膨張材料要素の膨張体の温度であり得る。膨張体および膨張材料要素はさらに詳細に後述する。(第1の)アクチュエータの温度、および/または、1つまたは複数のハウジング領域内のハウジングの温度は、動作パラメータとしても考慮に入れられ得る。
【0066】
投与システムは、温度およびさらなる動作パラメータを判定するために、制御ユニットに結合され、および、いくつかのセンサを有するセンサ装置を備え得る。それぞれのセンサの測定値は、(測定)信号として制御ユニットに供給され得る。
【0067】
好ましくは、センサ装置は、好ましくは膨張材料の温度を判定するために、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素と関連付けられた少なくとも1つの温度センサを備える。好ましくは、投与システムは、(第1の)アクチュエータと関連付けられた少なくとも(それぞれの)1つの温度センサ、および/またはハウジングと関連付けられた1つの温度センサをさらに備え得る。
【0068】
膨張材料要素の制御において含まれ得るさらなる動作パラメータは、投与システムにおける吐出要素の位置である。吐出要素の位置は好ましくは、(移動機構の一部として、)吐出要素に結合されたレバーの位置により、判定され得る。
【0069】
この動作パラメータを捕捉するために、センサ装置は好ましくは、吐出要素の位置を判定するための少なくとも1つの位置センサを備える。そうした位置センサはたとえば、ホールセンサにより、実現され得る。プランジャの移動は好ましくは、ホールセンサの(測定)信号によって算出される場合もある。あるいはまたはさらに、センサ装置は、吐出要素の移動を判定するための少なくとも1つの移動センサを備え得る。移動センサは、たとえば、加速度センサにより、実現され得る。センサの位置に対する、プランジャの移動または位置は、好ましくは、移動および/または位置センサにより、判定され得る。
【0070】
好ましくは、熱補償された少なくとも1つのホールセンサは、かかる吐出プロセスによる、および/または、かかる後退移動による、プランジャのストローク移動を捕捉(たとえば、垂直距離測定)するために、センサが、プランジャの領域内の、および/または、レバーの領域内の磁石と相互作用し得るようにハウジングの領域内に配置され得る。ホールセンサは好ましくは、プランジャとともに、(その長手方向延在部に対応する)仮想垂直軸上に配置され得る。好ましくは、プランジャの(油圧的に)有効なストロークに関する測定データは、ホールセンサにより、得られ得る。
【0071】
さらなる動作パラメータは、アクチュエータのアクチュエータ位置、たとえば、アクチュエータのかかる偏向であり得る。ピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧は好ましくは、動作パラメータであり得る。
【0072】
さらなる動作パラメータは、投与物質であって、投与物質が、投与システムのノズルからかかる吐出プロセス中に分配されるべきである、または分配されはずである量および/もしくは重量であり得る。分配される投与物質の量および/または重量を表すそうした測定値はたとえば、計量プロセスにおいて判定され得る。あるいは、またはさらに、分配される投与物質の「投与体積依存」信号はたとえば、センサ装置の光学評価ユニットによっても判定され得る。好ましくは、信号、たとえば投与物質用フローセンサの測定値が動作パラメータとして使用され得る。測定値はたとえば、ノズル開口の領域内の体積流量により、判定され得る。
【0073】
投与システムの閉鎖状態において印加される、吐出要素の封止力は、さらなる動作パラメータを表す場合もある。対応する測定値は、プランジャ内の、もしくは、ノズル内の力センサにより、または、あるいは、第1の、もしくは第2のアクチュエータの軸受力を判定するための力センサにより、得られ得る。
【0074】
投与システムの校正データであって、校正データが好ましくは、投与システムに記憶され、かかる制御ユニットにより読み出されることができる校正データは、さらなる動作パラメータとして使用され得る。
【0075】
特に、校正データはホールセンサおよびその信号を正規化し、ならびに、動作点における、すなわち、レバーシステムの調節された状態における、かかるプランジャ位置に対する、ピエゾアクチュエータの電気的制御電圧の伝達関数を正規化し得る。
【0076】
さらに、校正データは、投与システムの異なる加熱ゾーンに関係し得る。たとえば、かかる加熱ゾーン内の投与物質の温度を、好ましくは各様に制御するために、第1の加熱ゾーンが投与物質カートリッジと関連付けられる場合があり、第2の加熱ゾーンが流体ユニット、たとえば供給路と関連付けられる場合があり、および、第3の加熱ゾーンがノズルと関連付けられる場合がある。
【0077】
さらに、校正データは、所定の圧力での、上記比例バルブの起動電圧に対する、かかる比例バルブの体積流量に関係があり得る。
【0078】
膨張材料要素は有利には、プランジャ位置、および/またはプランジャの(油圧的に)有効なストロークに影響をおよぼし得る、投与システムの少なくとも不可欠な、好ましくはすべての動作パラメータが考慮に入れられるように制御され得る。その結果、膨張材料要素は、吐出要素の調節位置が特に、動作中に確実に設定され得るような標的化された方式で制御され得る。制御における複数の動作パラメータを算出することにより、より失敗しにくい、またはよりロバストな起動が実現される場合があり、投与精度がさらに改善される場合がある。
【0079】
できる限り正確に、プランジャの調節位置を判定し、および/または実現することができるために、マルチステップの調整アルゴリズムを有する調節プロセス(調節(adjust)プロセス)が好ましくは、実行され得る。調整アルゴリズムの個々のステップは好ましくは、少なくとも部分的に自動的に、好ましくは完全に自動的に制御ユニットにより、処理され得る。
【0080】
第1のステップでは、投与システムの動作中に与えられる、(第1の)アクチュエータの最大の偏向が設定され得る。したがって、投与バルブの「閉鎖位置」が、設定され、プランジャの吐出先端がノズルの方向に移動させられ得る。ノズルからの投与物質の定期的な分配は好ましくは、たとえば、分配プロセスを開始するためのトリガを一時的に阻止することにより、全体調節プロセス中に可能でない。
【0081】
第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素、特に好ましくは膨張材料の「調節開始温度」は第2のステップにおいて設定され得る。これは、アクチュエータが既に膨張させられているにもかかわらず、プランジャの吐出先端がこの時点でノズルと(まだ)接触していないことを確実にする。膨張材料要素は好ましくは、この目的で冷却され得る。調節開始温度は、たとえば、投与システムの周囲温度に対応し得る。調節開始温度は好ましくは、予想の(以下で定義する)「調節温度」未満であり得る。
【0082】
さらなるステップでは、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素、特に好ましくは、膨張材料は、プランジャの吐出先端と、ノズルとの間に完全接触が存在している状態になるまで、調節開始温度から始めて、加熱され得る。これは、プランジャがノズルの方向において押され、および、最終的に、それと接触するような範囲までの温度を介して膨張材料要素が膨張させられることを意味する。既に述べたように、完全接触は、プランジャの吐出先端が、実質的にノズルの封止座の全周にわたり、載っており、ノズル開口が環状に封止されている場合に実現される。
【0083】
この完全接触点を判定するために、膨張材料要素のかかる温度と、吐出要素の対応する位置との間の(調節)比が好ましくは、膨張材料要素の加熱中に判定され得る。プランジャの位置におけるこの変化は好ましくは、制御ユニットにより、温度における変化に対して判定され得る。この目的で、制御ユニットは、たとえば、膨張材料要素の温度センサ、および、プランジャに結合されたレバーの位置センサにアクセスし、ならびに、対応する「温度-位置」値対を形成し、または保存し得る。対応する「温度-位置」値対は好ましくは、全体調節プロセス中に形成され得る。前述したように、プランジャの位置は好ましくは、ホールセンサに対して判定され得る、たとえば、ホールセンサに対する距離が判定され得る。
【0084】
完全接触が実現されるまで、膨張材料要素の温度と、かかるプランジャ位置(「理想的な」投与システム)との間の、ほとんど線形の(第1の)(調節)比が確立される。上記(調節)比は、たとえば、上述した値対に基づいた関数グラフの傾斜に対応する。「完全接触点」に達した後、プランジャ先端は、膨張材料要素が連続して加熱されている間に、ノズルの封止座にさらに押圧される。
【0085】
「理想的な」高剛性投与システムでは、膨張材料要素のさらなる膨張は基本的には、ノズルに対する、プランジャの封止力における増大または増加につながるに過ぎない。よって、プランジャの位置は、もう変化せず、または、もう測定可能に変化せず、膨張材料の温度はさらに上昇する。新たな(第2の)、ほとんど線形の(調節)比であって、好ましくは第1の(調節)比と異なる、新たな(第2の)、ほとんど線形の(調節)比がしたがって確立される。第2の(調節)比は好ましくは、第1の(調節)比の傾斜と異なる傾斜に対応する。ここで検討される「理想的な」高剛性投与システムでは、第2の(調節)比の傾斜は約ゼロである。第1から第2への(調節)比の遷移が生じるプランジャ位置は、プランジャの完全接触位置に対応する。
【0086】
「理想的な」非剛性投与システムでは、完全接触後の、膨張材料要素のさらなる膨張は、投与システムの構成要素の弾性変形につながり得る。プランジャの位置はよって、完全接触後にわずかに変化し得る。しかし、膨張材料要素の温度上昇に対する、プランジャの位置における変化は好ましくは、非常に小さいに過ぎず、特に、完全接触前よりも小さい。したがって、「理想的な」非剛性投与システムでも、新たな(第2の)、ほとんど線形の(調節)比が確立される。そうした「理想的な」非剛性投与システムでは、第2の(調節)比と関連付けられた傾斜は、第1の(調節)比と関連付けられた傾斜よりもかなり小さいか、または平坦であり得る。「理想的な」高剛性投与システムと対照的に、第2の傾斜は当然、ここでは約ゼロになる訳でない。第1から第2への(調節)比の遷移が生じるプランジャ位置は、プランジャの完全接触位置に対応する。
【0087】
「理想的でない」または「実際の」投与システムでは、プランジャの吐出先端が当初、ノズル内の円錐状封止座に片側で、または特定の領域内でのみ、当たることが考えられる。これはたとえば、プランジャがノズルのちょうど中央に配置されている訳でないか、またはノズル開口と位置合わせされていない場合に該当し得る。そうした接触であって、プランジャ先端の領域のみ、または一部のみがノズルと接触している接触は、「初期接触」または「部分接触」と表される。同様に、「実際の」投与システムでは、調節開始温度から開始する、膨張材料要素の加熱は当初、完全接触と区別されるべき部分接触につながり得る。
【0088】
膨張材料要素の温度と、かかるプランジャ位置との間のほとんど線形の(第1の)(調節)比は、部分接触まで確立され得る。
【0089】
調節プロセスの一部として、膨張材料要素は、膨張材料要素の漸進的膨張により、プランジャが最終的にノズル内に「滑り込む」まで加熱され、プランジャとノズルとの間の上述した完全接触が実現され得る。プランジャがノズル内に「滑り込む」、このプロセスは、「シフトプロセス」としても知られている。さらに、「温度-位置」値対であって、膨張材料要素のかかる温度と、かかる対応するプランジャ位置が関連付けられた「温度-位置」値対が好ましくは、形成され得る。
【0090】
プランジャが、ノズルの特定の抵抗に対する初期接触後に完全接触位置に圧入されるので、プランジャの位置は、初期接触前よりも、膨張材料要素の温度上昇に対して、よりゆっくりと変化し得る。好ましくは第1の(調節)比と異なる、新たな(第2の)、ほとんど線形の(調節)比がしたがって、確立される。第1から第2への(調節)比の遷移が生じるプランジャ位置は、プランジャの初期接触位置に対応する。吐出要素の初期接触位置が、判定され、および、任意的には、任意のステップにおいて記憶され得る。この値は、完全接触位置とともに、システムの機械的品質に関する情報を提供する場合があり、および、したがって、システム評価の文脈において有用である場合がある。さらに、膨張材料要素の「初期接触温度」、すなわち、初期接触時に膨張材料要素が有している温度が判定され、および、場合によっては、記憶され得る。
【0091】
「実際の」投与システムでは、「理想的な」投与システムと同様に、完全接触が、(やはり、)(調節)比における変化が存在していることによって定義される。膨張材料要素は好ましくは、初期接触後、新たな(第3の)(調節)比が確立されるまでさらに加熱され得る。第2から第3への(調節)比の変化が生じるプランジャ位置は、「実際の」投与システムにおけるプランジャの完全接触位置に対応する。
【0092】
「実際の」投与システムの具体的な設計に応じて、完全接触に達した後のプランジャの位置は、それぞれの「理想的な」システムについて前述したように、膨張材料要素の連続した加熱で、基本的に一定に留まり(高剛性システム)、または、ごくわずかに変化する(非剛性システム)場合がある。
【0093】
次のステップでは、吐出要素の完全接触位置が次いで、判定され、および、任意的には、記憶され得る。さらに、膨張材料要素の「完全接触温度」、すなわち、完全接触時に膨張材料要素が有する温度が、判定され、および、場合によっては、記憶され得る。
【0094】
調節プロセスのさらなるステップでは、吐出要素の調節位置が次いで、好ましくは、先行して判定された「温度/プランジャ位置」値対に基づいて判定され、および、任意的には、記憶される。さらに、膨張材料要素の「調節温度」、すなわち、所望の調節点において膨張材料要素が有する温度が、判定され、および、任意的には、記憶され得る。上述したように、調節位置は、たとえば、十分高いに過ぎない封止力が、動作中のシステムの確実な封止を保証するために、プランジャとノズルとの間で増大させられる、経験的に定められる値である。
【0095】
調節位置および/または調節温度は、好ましくは、少なくとも、吐出要素の完全接触位置の関数として、および/または、膨張材料要素の完全接触温度の関数として判定され得る。
【0096】
吐出要素の調節位置は、好ましくは、少なくとも、プランジャの完全接触位置および(調節)比の傾斜の関数として判定され、(調節)比は、特に、初期接触に対するまで、または完全接触が実現されるまでの、膨張要素の温度における変化に対する、プランジャの位置における変化により、生じ得る。
【0097】
吐出要素の調節位置は特に好ましくは、以下の等式:
s(AP)=s(VP)+m・T(DS,FS,m) (1)
を用いて算出され得る。
【0098】
これらは:
s(AP)=調節位置における吐出要素の位置。膨張材料要素の対応する調節温度が、この目的で、好ましくは、先行して捕捉された「温度-位置」値対に基づいて判定される。
s(VP)=完全接触における吐出要素の位置、およびそこから判定される膨張ユニットの対応する完全接触温度
m=(Δs/ΔT)=(どちらの接触に先に達したかに応じて、)初期接触に達するまでの(「実際の」システム)、または完全接触に達するまでの(「理想的な」システム)、「プランジャ位置-温度」値対に基づいた関数グラフの傾斜
T=プランジャの所望の封止力を実現するための、完全接触に基づいた、膨張材料要素の必要な温度差である。好ましくは、アクチュエータシステムの総ばね剛性FSの関数としての、所望の封止力DSの関数としての温度差値Tは、たとえば、投与システムのファームウェアに記憶され、および、各ケースにおいて判定される傾斜mに応じて算出され得る。総ばね剛性FSは、投与システムの一種の平均ばね剛性を意味するものと理解され、ばね剛性は、たとえば、投与システムのいくつかの複製に対して測定され、および、任意的には、いくつかの複製にわたり、平均化され得る。
【0099】
さらに、調節位置は、判定プロセスに含まれる、アプリケーション固有のパラメータに依存し得る。たとえば、投与すべき媒体の供給圧力が特に高い場合、プランジャに作用する力が、当初、より高い封止力によって補償され、および、よって、供給圧力がアプリケーション固有のパラメータとして含められることが有利であり得る。
【0100】
高剛性投与システムの場合、プランジャのかかる位置は基本的には、完全接触後、もう変化しないはずである。したがって、s(AP)は基本的に、s(VP)に等しく、項m・Tによる差は、位置におけるさらなる変化ではなく、プランジャによる、封止力の必要な増大のみにつながる。
【0101】
したがって、調節位置におけるプランジャの位置は、好ましくは、より詳細に後述するように、完全接触位置におけるプランジャの位置と基本的に同じであり、および/または、吐出端位置におけるプランジャの位置と基本的に同じであり得る。
【0102】
完全に剛性を有している訳でない投与システムでは、弾性変形が補償される場合があり、および、所望の封止力が調節位置において増大させられる場合があるように、項m・Tにより、s(AP)を判定する場合に、具体的な総ばね剛性FSが考慮に入れられ得る。非剛性投与システムにおいても、調節位置におけるプランジャの位置は好ましくは、吐出端位置におけるプランジャの位置と基本的に同じであり得る。調節位置におけるプランジャの位置は好ましくは、完全接触位置におけるプランジャの位置にほぼ対応し得る。
【0103】
要するに、所望の封止力を設定するための、プランジャの調節位置は、好ましくは、少なくとも、(先行して判定された、)プランジャの完全接触位置、なお自由に移動可能なプランジャの(温度を介した)(第1の)傾斜、およびシステムに記憶された、投与システムの総ばね剛性を考慮に入れて判定され得る。あるいは、所望の封止力(調節力)、および、よって、さらに、調節温度は、(以降、説明する)力センサにより、直接、調整され得る。
【0104】
吐出要素の調節位置s(AP)は好ましくは、膨張材料要素により、設定され得る。特に好ましくは、調節温度は、吐出要素を調節位置に導くために膨張材料要素において設定され得る。したがって、調節プロセスの最後の任意的なステップでは、吐出要素は、好ましくは、調節点について判定された温度への、膨張材料要素の適切な温度制御により、調節位置に導かれ得る。この目的で、膨張材料要素は、好ましくは、吐出要素の調節位置に達するまで、完全接触温度をさらに超えて加熱され得る。
【0105】
かかる調節位置に達すること、またはかかる調節位置を設定することは、以下に説明するように、投与システムの具体的な構成に依存する。
【0106】
完全接触は、「理想的な」高剛性投与システムにおけるプランジャの調節位置に既に対応し得る。上述したように、完全接触温度を上回る、膨張材料要素の加熱は、プランジャの封止力が増大させられることにつながる。プランジャの位置はしかし、基本的には一定に留まる。プランジャの完全接触位置はしたがって、好ましくは、プランジャの調節位置に対応する。
【0107】
上述したような、「理想的な」非剛性の、すなわち、少なくとも部分的に弾性の投与システムでは、プランジャの位置は、完全接触後の投与システムの構成要素の弾性変形により、わずかに変化し得る。(第2の)、ほとんど線形の(調節)比は、したがって、好ましくは、ごくわずかな傾斜を有しているに過ぎない完全接触から確立され得る。調節位置には、所望の封止力が実現された場合に達する。
【0108】
「実際の」投与システムの場合、第2から第3への(調節)比の変化は、プランジャの完全接触位置を規定しているに過ぎない。同様に、高剛性の「実際の」投与システムでは、第2から第3への(調節)比の遷移が生じるプランジャ位置はプランジャの調節位置に対応し得る。第3の(調節)比と関連付けられた傾斜は、その場合、約ゼロであり得る。
【0109】
対照的に、非剛性の「実際の」投与システムでは、プランジャはなお、第3の(調節)比に応じて、または、関連付けられた第3の傾斜に応じて、わずかに調節位置に移動させられ、調節位置に達した後、上記位置はもう変えられないが、それは、膨張材料要素がもうこれ以上、膨張させられないからである。
【0110】
既に説明したように、非剛性投与システムでは、プランジャはなお、完全接触後、わずかに移動させられる場合があり、ここでも、膨張材料要素のさらなる膨張の大部分が、完全接触後のプランジャの封止力を設定するために使用され得る。
【0111】
あるいは、またはさらに、それは、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素が、動作中に最大「システム偏向」に達するまで完全接触温度を超えて加熱されることが調節プロセスにおいて規定され得る。最大「システム偏向」は、動作中に与えられる、(第1の)アクチュエータの最大の偏向、および、動作中の膨張材料要素の、与えられる最大の膨張に対応する。
【0112】
同様に、吐出要素の「システム端接触」位置、すなわち、動作中に、システムがその最大値で偏向する場合に吐出要素が有する位置が次いで判定され、および、任意的には、調節プロセスにおいて記憶され得る。さらに、膨張材料要素の「システム端接触」温度、すなわち、動作中に与えられる最大システム偏向を膨張材料要素が有する温度が判定され、および、任意的には、記憶され得る。「システム端接触」位置または「システム端接触」温度は好ましくは、「温度-プランジャ位置」値対に基づいて判定される場合もある。
【0113】
よって判定された、吐出要素の「システム端接触」位置および/または膨張材料要素の「システム端接触」温度は、調節位置および/または調節温度を判定する場合に、完全接触位置または完全接触温度の代わりに、または完全接触位置または完全接触温度に加えて考慮に入れられ得る。
【0114】
吐出要素を「システム端接触」位置から具体的調節位置に導くために、膨張材料要素は、任意的には、調節位置と関連付けられた調節温度に、好ましくは冷却により、導かれる場合もある。
【0115】
さらに、このようにして定義された「システム端接触」位置は、動作中の最大制御範囲の尺度も表す。考えられる最大封止力は、動作中、「システム端接触」位置において実現され得る。有利には、特定の調節位置と、「システム端接触」位置との間の差は、制御予備力に関する、および、よって、場合によっては、さらに、投与システムの既存の摩耗に関する情報を得るために使用され得る。
【0116】
一方で、上述した調節プロセスは、たとえば、初期調節位置を決定するために、投与システムの初回の起動前に行われ得る。しかし、調節プロセスは、投与動作の一時的な中断後に、たとえば、プランジャの交換後に(再び)行われる場合もある。投与システムの定期的な調節も考えられる。
【0117】
プランジャの調節位置の特に正確であり同時に単純な設定が、有利には、調節プロセスにおいて、膨張材料要素により行われ得る。このプロセスは、膨張材料要素による「熱調節」としても表される。調節位置は投与システム毎に別個に判定され得るので、個々の投与システムそれぞれのいずれの製造公差も制御ユニット自体により、補償され得る。その結果、基本的に同一の(油圧的に)有効なストロークが、複数の投与システムを備えた投与アプリケーションにおいて設定され得る、すなわち、投与システムは特に同等に投与し得る。
【0118】
調節プロセスはさらに有利には、同等に単純に行われ得る。投与システムはたとえば好ましくは、調節プロセスがユーザによる、制御ユニットに対する入力により、開始され、調節全体がその場合、自動的に実行されるように設計され得る。一方で、投与システムの運用コストはこのようにして削減され得るが、それは、調節がこの際、ユーザ自身によって、特に、訓練されていない要員によっても行われ得るからである。しかし、同時に、調節プロセスはさらに、高精度を有しているが、それは、人間の介入、および対応する、エラーの要因がたいてい避けられ得るからである。かかる投与システムの投与精度、および、とりわけ、複数の投与システムの投与の同等性がこのようにしてさらに改善され得る。
【0119】
投与中に調節プロセスの前述した利点を有益に使用することができるために、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素は好ましくは、投与システムの動作中に、特に、各吐出プロセス中に吐出要素の吐出端位置が正確に、先行して行われた調節プロセスにおいて判定された調節位置に対応するように制御され、および/または調整される。膨張材料要素の制御および/または調整は好ましくは、かかる吐出プロセス中のプランジャの実際の吐出端位置の関数として、同じ吐出プロセス中のピエゾアクチュエータ制御電圧における変化を考慮に入れて判定され得る。「吐出端位置」は、かかる吐出プロセスの終了時に、すなわち、動作中に与えられる、(第1の)アクチュエータの最大の偏向においてプランジャが実際に有する、プランジャの位置を意味するものと理解される。吐出端位置におけるプランジャの位置は好ましくは、調節位置におけるプランジャの位置と基本的に同じであり得る。
【0120】
調整プロセスは好ましくは、吐出端位置が、動作中、一定値に、特に、調節位置に調整されるように行われ得る。この目的で、膨張材料要素は、上述したように、先行して判定された調節位置と関連付けられた調節温度に達し、および/または、上記調節温度が膨張材料要素において一定に保たれるように調整され得る。制御ユニットに結合されたPIDコントローラまたはファジーコントローラは好ましくは、調節温度を設定するように、膨張材料要素の加熱装置および/または冷却装置を起動させ得る。
【0121】
有利には、調整プロセスは、プランジャの所望の(油圧的に)有効なストロークが、動作中、正確に実現され、および、さらに、より長い期間にわたり、一定に維持され得ることを確実にするために使用される場合もある。
【0122】
しかし、膨張材料要素において調節温度を一定に設定し、または保つことは、たとえば投与システムが一時的にスタンバイモード(ホールドモード)にある際に、投与物質の分配が一時的に存在していない場合に有用である場合もある。膨張材料要素における調節温度は好ましくは、投与システムが停止状態にある場合にも、PIDコントローラにより、一定に維持され得る。その結果、知らせを受けてからすぐに投与プロセスが再開されても、高いレベルの投与精度が直ちに保証され得る。
【0123】
投与システムの特に安定した動作を確実にするために、投与システムは、好ましくはシグナリング目的で制御ユニットに結合された少なくとも1つの力センサを備え得る。力センサの測定値は好ましくは、膨張材料要素を調整する場合に考慮に入れられ得る。
【0124】
力センサは好ましくは、(第1の)(ピエゾ)アクチュエータに対して、第2のアクチュエータにより、特に、膨張材料要素により、作用させられる力を判定するように設計される。特に、力センサは、力センサの測定値に基づいて、たとえば、(制御ユニットの一部でもあり得る)評価ユニットを利用して、ノズルに対する、プランジャの封止力を判定するように設計される場合もある。力センサは好ましくは、膨張材料要素およびピエゾアクチュエータに合わせた「力線」において配置され得る。たとえば、力センサは、ピエゾアクチュエータの反対側の、膨張材料要素の支持点または接触点において配置され得る。
【0125】
有利には、力センサは、一定の力に直接、調整するために使用され得る。特に、プランジャの封止力は、力センサにより、一定になるように調節され得る。全体システムのばね剛性は動作中に変わるべきでないので、シームレスな調整がその場合、すべての動作モードにおいて、たとえば、ホールドモードにおいても可能である。
【0126】
投与精度を、特に、変動する動作または環境条件下で、さらに改善するために、マルチステップ調整アルゴリズムが、特に、たとえば上述したように、厳密に、先行して判定された所望の調節位置に、または、間接的に具体的な封止力に、プランジャの吐出端位置を調整するために、投与システムの好ましい制御方法において実行され得る。調整アルゴリズムの個々のステップは好ましくは、制御ユニットにより、特に完全に自動的に処理され得る。この修正アルゴリズムは好ましくは、常時の(定期的な)投与動作において実行され得る。
【0127】
調整アルゴリズムは基本的には、かかる「閉鎖」勾配中に、および/またはかかる「開放」勾配中に、すなわち、投与物質の吐出プロセス中に、またはプランジャの後退移動中に実行され得る。投与要件に応じて、「開放」勾配は、「開放」勾配毎の所定のサンプリングレートで、より多くの値対が捕捉される場合があり、評価がより正確である場合があるように、「閉鎖」勾配よりもわずかに遅い速度で実行され得る。したがって、「開放」勾配の使用は、なお好ましい場合がある。調整プロセスのより良い明確化のために、別途言及しない限り、個々のステップは以下では、「閉鎖」勾配に基づいて、それに限定されることなく、説明する。
【0128】
第1のステップでは、吐出要素の吐出開始位置が設定され得る。吐出開始位置は、(第1の)アクチュエータが偏向されない、すなわち、(第1の)アクチュエータが静止位置にあることを特徴とする。よって、プランジャの吐出先端は、動作中に、できるだけノズルと隔てられる。調整アルゴリズムはしたがって、好ましくは、プランジャの後退移動が全部完了するとすぐ、または新たな吐出移動が開始する直前に開始する。吐出開始位置は、たとえば、ホールセンサ、および/または、(第1の)アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータの電気的制御電圧により、判定され得る。
【0129】
第2のステップでは、(第1の)アクチュエータの偏向、および/または、時間の関数としての、(第1の)アクチュエータの電気的制御電圧における変化は、単一の吐出プロセス中に捕捉され得る。(第1の)アクチュエータの偏向速度は好ましくは、このようにして、厳密に言えば、アクチュエータの静止位置から開始して、(動作中に与えられる、)アクチュエータの最大の偏向まで判定され得る。(第1の)アクチュエータに、特に、ピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧における変化は好ましくは、経時的に捕捉され得る(制御電圧の変化率)。
【0130】
プランジャ位置は好ましくは、同じ吐出プロセス中に時間の関数としても捕捉される場合もある。プランジャ速度は好ましくは、このようにして、厳密に言えば、吐出開始位置から開始して、プランジャの吐出端位置の到達まで、判定され得る。上述したように、プランジャ位置は、ホールセンサにより、捕捉され得る。
【0131】
ピエゾアクチュエータの制御電圧の変化率、および、よって、対応するプランジャ速度は、好ましくは、基本的には同じ時点で繰り返し判定される。好ましくは、吐出プロセスの時間にわたる、値対(「制御電圧-プランジャ位置」値対)はしたがって、好ましくは、制御ユニットにより、定期的に捕捉され、値対は、かかるアクチュエータ制御電圧(第1のアクチュエータ)および対応する(関連付けられた)プランジャ位置を備え得る。
【0132】
調整アルゴリズムのさらなるステップでは、封止位置アクチュエータを表す値の実際値が次いで判定され得る。上述したように、封止位置アクチュエータ偏向は、動作中に与えられる、第1のアクチュエータの最大の偏向の割合であり得る。封止位置アクチュエータ偏向は好ましくは、動作中に、せいぜい、(第1のアクチュエータとしての)ピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧の一部分であり得る。封止位置アクチュエータ偏向は、吐出要素とノズルとの間の完全接触を超える特定の最小量だけ、ノズルの封止座に圧入されることによって定義される。封止位置アクチュエータ偏向はしたがって、具体的には、プランジャを、封止領域内に導き、および、よって、所望の封止力を増大させる、アクチュエータ偏向の部分である。
【0133】
封止位置アクチュエータ偏向を表す値は好ましくは、プランジャの具体的な封止力を設定するために、動作中に(第1のアクチュエータとしての)ピエゾアクチュエータに印加される最大電気的制御電圧の成分(部分電圧)であり得る。空気圧アクチュエータでは、たとえば、かかる対応するプランジャ位置に対する段階的な圧力増大が捕捉され得る。封止位置アクチュエータ偏向はその場合、完全接触に基づけば、封止力を増大させるのになお必要な、圧力における具体的な増加に対応し得る。
【0134】
これは、封止位置アクチュエータ偏向、特にその範囲を判定することにより、プランジャが所望の調節位置に移動させられるか、または吐出移動が別の吐出位置において、たとえば、「より早い」点または「より遅い」点において終了するかが判定され得ることを意味する。
【0135】
封止位置アクチュエータ偏向を表す値の判定は好ましくは、先行して判定された「制御電圧-プランジャ位置」値対に基づいて行われる。(第1のアクチュエータとしての)ピエゾアクチュエータの制御電圧の変化率は好ましくは、対応するプランジャ速度と、特に吐出プロセス全体にわたり、比較され得る。制御電圧の変化率と、プランジャ速度との間の比が好ましくは判定され得る。
【0136】
ピエゾアクチュエータの電気的制御電圧の変化率は、吐出プロセス全体の間、基本的には一定であり得る。しかし、より複雑な起動電圧関数も考えられる、すなわち、制御電圧は吐出プロセス中に変動し得る。ピエゾアクチュエータの電気的制御電圧の一定の変化率の場合、ピエゾアクチュエータの偏向速度は、吐出プロセスの異なる段階中に変動し得る。上記2つの構成要素は、(ピエゾ)アクチュエータと吐出要素との間の結合による「移動ユニット」をたとえばレバーにより、形成する。同様に、プランジャ速度は、以下に説明するように、かかる吐出プロセス中に異なる場合もある。
【0137】
かかる吐出プロセスの開始時には、(ピエゾ)アクチュエータの偏向は、ノズルの方向において、第1のほとんど一定の速度でプランジャを移動させ得る。第1の(速度)比がしたがって、ピエゾアクチュエータ制御電圧の変化率と、プランジャ速度との間で確立され得る。
【0138】
「理想的な」高剛性投与システムでは、プランジャ速度は、完全接触後、かなり、特にゼロに減速し、プランジャがノズルにさらに圧入され得る。ピエゾアクチュエータの場合、これは、電気的制御電圧が基本的に一定に増加し、プランジャがもう、測定可能に移動しないことを意味する。ピエゾアクチュエータの長手方向延在部は、ピエゾアクチュエータおよびプランジャの結合により、もうほとんど変わらない。これは、電気的制御電圧における増加が、圧力における、ほとんど一定の増加に、または、ピエゾアクチュエータ内の張力の(機械的)増大につながり、それにより、プランジャの封止力がその場合、増大させられ得ることを意味する。
【0139】
完全接触後、第2の(速度)比はしたがって、制御電圧の変化率とプランジャ速度との間に設定され、この比は好ましくは、第1の比と異なり得る。プランジャの完全接触位置には、第1から第2への(速度)比の変化が生じる瞬間またはプランジャ位置において達する。既に説明したように、「理想的な」高剛性投与システムでは、プランジャの完全接触位置は好ましくは、プランジャの吐出端位置と基本的に同じであり、動作中に与えられる最大制御電圧がピエゾアクチュエータに印加され得る。
【0140】
「理想的な」非剛性投与システムでは、プランジャ速度がさらに、完全接触後、かなり減速し、第2の(速度)比がさらに、ここで確立され得る。第1から第2への(速度)比の遷移が生じるプランジャ位置は、プランジャの完全接触位置に対応する。第2の(速度)比はここでは、投与システムの構成要素の弾性変形による、プランジャの位置におけるわずかな変化に対応する。プランジャはさらに、動作中に与えられる最大制御電圧がピエゾアクチュエータに印加されるまでわずかに移動させられ、プランジャの吐出端位置に達し得る。これは、非剛性システムの場合、剛性システムと違って、完全接触後、ピエゾアクチュエータの電気的電圧変化のわずかな部分がなお、プランジャの移動量における変化であって、その大部分が、力における変化になる変化に変換され得ることを意味する。
【0141】
「実際の」投与システムでは、第1の(速度)比は、初期接触まで確立される場合があり、プランジャ速度は、「シフトプロセス」により、初期接触後に減速する場合がある。第1から第2への(速度)比の変化が存在しているプランジャ位置はその場合、プランジャの初期接触位置に対応する。プランジャが、アクチュエータ偏向により、完全接触位置に「滑り込む」とすぐ、プランジャ速度は、かなり減速し、第3の(速度)比が確立され得る。第2から第3への(速度)比の変化が生じるプランジャ位置はその場合、プランジャの完全接触位置に対応する。
【0142】
投与システムの構成に応じて、完全接触位置は、吐出端位置に対応し得る(剛性システム)。さもなければ、第3の(速度)比によれば、プランジャはなお、以上に定義された吐出端位置になお移動させられ得る。
【0143】
理想的には、吐出端位置は、意図された調節位置に対応し得る。上述したように、調節位置は好ましくは、所望の封止力、および投与システムのばね剛性を考慮に入れて設定され得る。しかし、プランジャの実際の吐出端位置は、投与システムの動作中に、先行して判定された調節位置から逸脱し得る。これは、たとえば、ピエゾアクチュエータの長さ、および/もしくは移動構成要素の摩耗における熱誘起変化、ならびに/または、投与システムのハウジングの温度における変化、および/もしくは、投与システムの周囲温度における変化によってもたらされ得る。同様に、(実際値としての)実際の封止位置アクチュエータ偏向は、(調節位置に達するための)封止位置アクチュエータ偏向の「目標値」から逸脱する場合もある。
【0144】
封止位置アクチュエータ偏向を表す実際値を判定するために、(第1のアクチュエータの)アクチュエータ偏向の実際の部分であって、その部分が、完全接触位置から開始して吐出端位置までプランジャをノズルに圧入する、(第1のアクチュエータの)アクチュエータ偏向の実際の部分が判定され得る。封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値は、動作中の最大アクチュエータ偏向と、完全接触に達するまでのアクチュエータ偏向との間の差によって生じ得る。現在の封止位置アクチュエータ偏向の実際値は好ましくは、動作中に、(第1のアクチュエータとしての)ピエゾアクチュエータに印加される最大電気的制御電圧と、プランジャを完全接触位置に導くのに必要な電気的制御電圧との間の電圧差であり得る。
【0145】
具体的な調節位置に、動作中に吐出端位置を調整するために、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値と、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値との間の差が、調整アルゴリズムのさらなるステップにおいて判定され得る。特に好ましくは、膨張材料要素は、動作中に、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値に達するように、判定された差の関数として調整され得る。
【0146】
封止位置アクチュエータ偏向を表す値のこの目標値は好ましくは、具体的な調節位置と関連付けられる。これは、プランジャが、この目標値(「目標封止位置アクチュエータ偏向」)を調整することにより、所望の調節位置に移動させられ得ることを意味する。目標値は好ましくは、完全接触位置に達するための制御電圧と、動作中に(第1の)アクチュエータに印加される最大電気的制御電圧との電圧差であり得る。封止位置アクチュエータ偏向の目標値は、工場において予め設定される場合があり、および、好ましくは、制御ユニットに、たとえば、EEPROMに記憶される。あるいはまたはさらに、封止位置アクチュエータ偏向の目標値は、投与システムの別個のメモリ、好ましくはEEPROMに記憶され、およびすぐに取り出せる状態になっている場合もある。目標値はたとえば、(第1の)アクチュエータの考えられる最大ストローク移動のパーセンテージ値、または動作中の校正された(第1の)アクチュエータの長さにおける変化であり得る。さらに、目標値は、力値によっても実現され得る。
【0147】
封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値は好ましくは、膨張材料要素の温度により、設定され得る。特に好ましくは、膨張材料要素の温度は、(目標値としての)ピエゾアクチュエータ制御電圧の具体的な電圧差に、一定になるように調整され得る。
【0148】
第2のアクチュエータ(特に膨張材料要素)は好ましくは、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値からの、実際値の負の偏差の場合に、第2のアクチュエータ(特に膨張材料要素)の温度が、封止位置アクチュエータ偏向の目標値を設定するために増加させられるように制御され得る。同様に、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値からの、実際値の正の偏差の場合、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素の温度は、封止位置アクチュエータ偏向の目標値を設定するために低減され得る。
【0149】
膨張材料要素の現在必要な温度は好ましくは、先行して導入された式(1)により、判定され得る。
【0150】
既に説明したように、調整プロセスは、かかる「開放」勾配中に実行される場合もある。同様に、吐出要素の吐出端位置はその場合、吐出端位置を調整するために第1のステップにおいて設定され得る。次のステップでは、吐出要素の位置は、吐出要素の後退移動中に第1のアクチュエータの偏向の関数として判定され得る。吐出要素の位置は特に好ましくは、第1のアクチュエータに、またはピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧の関数として判定され得る。この目的で、「制御電圧-プランジャ位置」値対がこの場合もまた、上述したように捕捉され得る。
【0151】
さらなるステップでは、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値が次いで判定され得る。(第1のアクチュエータの)封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値および目標値は、よって、「閉鎖」勾配について前述したように定義される。
【0152】
後続ステップでは、第2のアクチュエータ、好ましくは、膨張材料要素は、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値が設定されるように、特に、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値と、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値との間の差の関数として制御され、および/または調整され得る。第2のアクチュエータの制御および/または調整は同様に、好ましくは、「閉鎖」勾配について上述したように行われる。
【0153】
上述された調整プロセス(目標封止位置アクチュエータ偏向に対する調整)は好ましくは、投与システムの動作中に等間隔で、たとえば、プランジャの各吐出中に実行され得る。しかし、たとえばいずれかの測定誤差を補償するために、吐出プロセス毎に捕捉された、封止位置アクチュエータ偏向の実際値をまず、「フィルタリング」することが好ましい。いくつかの個々に測定された値からの平均値および/または中央値が好ましくは形成される場合があり、この中央または平均値は次いで、かかる、現在の参照変数(封止位置アクチュエータ偏向の目標値)として調整プロセスに戻される場合がある。
【0154】
封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値および目標値間の差が好ましくは、第1の吐出プロセスにおいて判定され、「新たな」調節温度が、現在の動作条件下で調節位置を設定するために差の関数として判定され得る。
【0155】
(第1の)吐出プロセス中に判定された「新たな」調節温度は好ましくは、後続の(第2の)吐出プロセス中に、膨張材料要素を調整するために考慮に入れられ得る。これは、調節温度が動作中に連続して再判定され得ることを意味する。
【0156】
特に好ましくは、調節温度は、直前に、特に、個々の値を「フィルタリングした」後に、判定された封止位置アクチュエータ偏向のいくつかの実際値の関数として連続して再判定され得る。
【0157】
膨張材料要素の特に動的な調整は、有利には、現在封止位置アクチュエータ偏向を判定することにより、行われ得る。特に、膨張材料要素は、吐出要素が吐出移動毎に、調節位置に導かれるように調整され得る。ピエゾアクチュエータの熱膨張効果、プランジャおよび/またはノズル等の摩耗などの種々の外乱変数が、それにより、有利に補償され得る。特に、膨張材料要素が一方で、投与物質の分配中に漏れが回避され得るように調整され得る。他方で、目標封止位置アクチュエータ偏向または調節温度を連続して再調節することにより、投与精度が、連続動作において、特に、変動する投与要件により、および/または、大きく変動する周囲条件下で、さらに改善される場合もある。
【0158】
プランジャの調節位置を特に効率的に設定することができるために、第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素は、上述したように、膨張体、および、好ましくは、それに結合された変位可能に取付られたトランスミッタ、たとえば、移動可能なピストンを備える。
【0159】
膨張材料要素の膨張材料を形成する膨張体は好ましくは固体であり得る。特に、膨張体は、通常、投与システムの動作中に生じる調節温度において固形物として存在し得る。たとえば、膨張体は、最大250℃、好ましくは最大260℃、より好ましくは最大350℃の温度で固体として存在し得る。膨張体は好ましくは、熱誘起された高い膨張係数、特に、膨張材料要素のハウジングの金属またはセラミックよりも高い膨張係数を有する。たとえば、膨張体の膨張係数は、少なくとも23・10-6/K、好ましくは少なくとも45・10-6/K、より好ましくは少なくとも100・10-6/Kであり得る。膨張体の好適な材料はポリマー、たとえば、PEEK、PFA、またはポリテトラフルオロエチレンであり得る。
【0160】
膨張体は好ましくは、膨張材料要素のハウジングまたはチャンバ内に、たとえば、ステインレススチール製ハウジング内に配置され得る。ハウジングは好ましくは、密封可能なチャンバの方式で設計され得る。これは、膨張材料が、液体状でチャンバ内に導入され、そこで固体に、特に気泡なしで硬化することができるという利点を提供する。
【0161】
第2のアクチュエータ、特に膨張材料要素は好ましくは、軸方向において(第1の)アクチュエータに、たとえば、ハウジング内に(第1の)アクチュエータを位置決めするためにピエゾアクチュエータの長手方向延在部に応じて結合され得る。投与システムのハウジング内の膨張材料要素は好ましくは、ピエゾアクチュエータと直列に、機械的に接続され得る。膨張材料要素は好ましくは、少なくとも1つの側、好ましくは、(第1の)アクチュエータから離れる方向に面する1つの側により、投与システムのハウジング上に支持され得る。
【0162】
膨張材料要素は好ましくは、アクチュエータの方向を指し示す、膨張材料要素の一圧力側のみが変位可能であるように設計されるようにハウジング内に設計され、および配置される。圧力側は好ましくは、アクチュエータの、特にピエゾアクチュエータの長手方向軸の方向において変位させられ得る。これは、膨張体の体積が変化すると、膨張材料要素の寸法が、基本的には、アクチュエータの長手方向軸の方向においてのみ、変化し、膨張材料要素の横方向寸法がほとんど一定に留まる(「強制膨張方向」)ことを意味する。膨張材料の体積における変化はしたがって、アクチュエータ、特にピエゾアクチュエータを、好ましくはその長手方向延在部に応じて変位させるために、方向性を有するストローク移動に変換され得る。
【0163】
アクチュエータを位置決めするために、膨張材料要素、特にその圧力側が、トランスミッタにより、アクチュエータに結合され得る。膨張材料要素のストローク移動は好ましくは、トランスミッタにより、アクチュエータにほとんど完全に、それをハウジング内で移動させるために伝達され得る。冒頭で述べたように、膨張材料要素(トランスミッタ)と、(第1の)アクチュエータとの間の結合は固定された接続でなくてよい。結合は好ましくは、膨張材料要素およびアクチュエータで構成された能動ユニットが、動作中、特に、(第1の)アクチュエータが非偏向状態にある場合にも、一定の予張力下に保たれるように行われ得る。たとえば、アクチュエータから離れる方向を指し示す、膨張材料要素の側部が、投与システムのハウジングの反対側の調節可能な球状キャップにより、調節可能に取り付けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0164】
本発明は、実施形態に基づいて、添付の図を参照して以下にさらに詳細に説明する。同じ構成要素には、種々の図において同一の参照番号を与えている。複数の図は通常、縮尺通りに描いている訳でない。それらは以下を概略的に示している:
【0165】
【
図1】本発明の実施形態による投与システムのセクションにおいて示す図である。
【
図2】拡大図における、
図1の投与システムの部分である。
【
図3】拡大図における、
図1の投与システムの部分である。
【
図4】さらに拡大され、および大いに簡略化された図における、
図1の投与システムの部分である。
【
図5】さらに拡大され、および大いに簡略化された図における、
図1の投与システムの部分である。
【
図6】さらに拡大され、および大いに簡略化された図における、
図1の投与システムの部分である。
【
図7a】本発明の実施形態による、投与システムを制御する方法のセクションのフローチャートである。
【
図7b】本発明の実施形態による、投与システムを制御する方法のセクションのフローチャートである。
【
図7c】本発明の実施形態による、投与システムを制御する方法のセクションのフローチャートである。
【
図8】投与システムを制御する、
図7a~
図7cによる方法のサブセクションを示すための関数グラフの図である。
【
図9】投与システムを制御する、
図7a~
図7cによる方法のサブセクションを示すための関数グラフの図である。
【
図10】投与システムを制御する、
図7a~
図7cによる方法のサブセクションを示すための関数グラフの図である。
【
図11】投与システムを制御する、
図7a~
図7cによる方法のサブセクションを示すための関数グラフの図である。
【
図12】投与システムを制御する、
図7a~
図7cによる方法のサブセクションを示すための関数グラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0166】
本発明による、投与システム1の具体的な実施形態を次に、
図1を参照して説明する。投与システム1はここでは、たとえば投与システム1の動作中の、通常の意図された姿勢において示す。ノズル60は、媒体の液滴がノズル60を介して下方に吐出方向Rに吐出されるように投与システム1の下方領域内に配置される。「下」および「上」の語が以下で使用される限り、この情報はしたがって、常に、投与システム1のそうした通常慣例的な位置に関する。しかし、これは、投与システム1が特殊な応用分野における別の位置においても使用される場合もあり、および、液滴がたとえば、横方向に吐出されることを排除するものでない。媒体、圧力、ならびに、吐出システム全体の厳密な構成および起動に応じて、これも基本的に考えられる。投与システムの基本構造が既知であるので、話を明確にするために、ここに示しているのは、主に、本発明に少なくとも間接的に関係する構成要素である。
【0167】
投与システム1は、アクチュエータユニット10および、それに結合された流体ユニット50を不可欠な構成要素として備える。ここに示す投与システム1は、流体ユニット50に結合された投与物質カートリッジ66をさらに備える。
【0168】
ここに示す実施形態では、アクチュエータユニット10および流体ユニット50は、クイックリリースカップリングを形成するために互いに結合され得るプラグイン結合部の方式で実現される。有利には、アクチュエータユニット10および流体ユニット50はよって、投与システム1を形成するために工具なしで互いに結合され得る。クイックリリースカップリングは、一定の予張力下で球体72を保つ結合ばね71を有する結合機構70を備える。結合ばね71および球体72は、ここでは、(第1の)ハウジングブロック11aにより、取り囲まれ、および、第1のプラグイン結合部を形成する。第1のプラグイン結合部は、ノズル60内の投与物質を加熱するための加熱装置75をさらに備える。
【0169】
結合機構70は、いくつかの球状キャップ74(ここでは1つのみ示す)であって、結合するために球体72がそれに嵌合し得る、いくつかの球状キャップ74を有する。球状キャップ74は、流体ユニット50の第2のプラグイン結合部73内に配置され、流体ユニット50は、(第2の)ハウジングブロック11bにより、取り囲まれる。結合するために、第1のプラグイン結合部および第2のプラグイン結合部は、(仮想)差込み軸に沿って互いに差し込まれ、および、それにより、互いに結合され得る。たとえば、流体ユニット50は、アクチュエータユニット10に、方向Rとは逆の方向に差し込まれ、および、好適な回転位置においてアクチュエータユニット10に結合され得る。
【0170】
球体キャップ74は、異なるラッチ位置が可能である、すなわち、差込み軸を中心とした、流体ユニット50の異なる回転位置が可能であるように、流体ユニット50の第2のプラグイン結合部73内に配置される。弾性的に予張力が付与された球体72により、プラグイン結合部73は、投与システム1を形成するために、考えられるいくつかのラッチ位置の1つに嵌合する。しかし、それぞれの組立体10、50が、2つのハウジングブロック11a、11bにより、ハウジング11を形成するように、たとえば固定ねじにより、互いに固定的に接続される場合もあることに留意すべきである。
【0171】
ここに示す実施形態では、アクチュエータユニット10は2つの内部チャンバ、すなわち、一方で、アクチュエータチャンバ12であって、その中に配置されたピエゾアクチュエータ20を有するアクチュエータチャンバ12、および、他方で、作用チャンバ13であって、その中に、流体ユニット50の移動可能な吐出要素51、ここではプランジャ51が突出している作用チャンバ13を備える。作用チャンバ13内にアクチュエータチャンバ12から突出しているレバー16を有する移動機能14を介して、プランジャ51は、所望の時点において所望の量で投与されるべき媒体を流体ユニット50が吐出するようにピエゾアクチュエータ20により、駆動される。
【0172】
ピエゾアクチュエータ20は、起動させられるために、外部制御ユニット(図示せず)に電気的に、または信号技術により、接続される。ピエゾアクチュエータ20はここでは、アクチュエータハウジング22と、環境に対してその中に密封されたピエゾスタック21とを備える。ピエゾアクチュエータ20は、制御ユニットによる回路により、アクチュエータチャンバ12の長手方向において伸長し、および再び収縮し得る。ピエゾアクチュエータの基本機能および起動は既知であるので、これについてはさらに説明するものでない。
【0173】
ピエゾアクチュエータ20の、(ノズル60から離れる方向を指し示す)上端では、(第1のアクチュエータ20としての)ピエゾアクチュエータ20は間接的に、(第2のアクチュエータ30としての)膨張材料要素30と作動接触状態にある。膨張材料要素30はここでは、5つの側から(断面では3つの側から)円筒状膨張体32を囲むハウジング31を備える。ハウジング31は、膨張体32の熱膨張移動が主に、ピエゾアクチュエータ20の方向に向けられるように設計される。
【0174】
膨張体32は、膨張体32がチャンバ31により、境界が定められていない側でトランスミッタ35に隣接している。トランスミッタ35は、膨張材料要素30のハウジング31内に、移動可能に取り付けられており、および、ピエゾアクチュエータ20の長手方向延在部の方向に変位させられ得る。ここでは下方であるトランスミッタピストン35側では、これは、ピエゾアクチュエータ20に隣接しており、または、直接、アクチュエータハウジング22外側に載っている。これは、膨張体32のストロークが主に、ピエゾアクチュエータ20を位置決めするために完全に使用され得るように膨張体32、トランスミッタ35、およびピエゾアクチュエータ20が互いと作動接触状態にあることを意味する。ピエゾアクチュエータ20はしたがって、膨張材料要素30により、「上方に」または「下方に」移動させられ、これは基本的には、ノズルからの投与物質の吐出方向Rに対応し得る。
【0175】
そうした装置のわずかなストローク、すなわち、ピエゾアクチュエータ20の考えられる変位の範囲は特に、使用される膨張材料要素30の径、およびその中に囲まれた膨張材料の体積、ならびに、たとえば、金属またはセラミックでできている場合がある周囲のハウジング31および膨張材料要素30の使用可能な温度範囲およびかかる膨張係数に依存する。熱補償方策については、数マイクロメートル~数百分の1ミリメートル以下の、ピエゾアクチュエータのわずかなストロークに対応し得る範囲内のわずかなストロークの設計が理にかなっている。少なくとも10μmの、好ましくは少なくとも50μmの、および、特に好ましくは少なくとも100μmの、膨張材料要素30のわずかなストロークが、ここに記載する調節および熱補償の組み合わせに備えられている。
【0176】
膨張材料要素30は、膨張体32の膨張長を制御するための加熱装置33を備える。これは
図2において特に明確である。加熱装置33はここでは、膨張材料要素30のハウジング31外側に載っている加熱箔33である。膨張材料要素30の温度を判定するための温度センサ83が、ハウジング31外側にさらに配置される。膨張材料要素30、特に加熱装置33は、起動のために、「投与システム固有の」制御ユニット80(
図1)に接続ケーブル81により、接続される。
【0177】
「投与システム固有の」制御ユニット80はここ(
図1)では、中央外部制御ユニット(図示せず)のサブ制御ユニットとして実現され、および接続ケーブル81により、シグナリング目的でそれに結合される。サブ制御ユニット80はたとえば、投与システム1のハウジング11内の回路基板80により、実現され得る。「投与システム固有の」制御ユニット80は、動作中、制御材料要素30を制御し、すなわち、特に、膨張体32の所望の膨張を設定するために、加熱装置33および冷却装置40に対して、対応する制御信号を印加するように設計される。
【0178】
図1の投与システム1は、冷却装置40であって、冷却装置40が、膨張材料要素30およびピエゾアクチュエータ20を別個に冷却するように設計された冷却装置40をさらに備える。冷却装置40はここでは、膨張材料要素30およびピエゾアクチュエータ20を冷却するために共に使用されるいくつかの構成要素を備える。これは、とりわけ、結合点41(例えば、外部冷却媒体供給用接続)、冷却媒体用の隣接する流入路42、および冷却媒体吐出部46を含む。
【0179】
しかし、冷却装置40は、制御装置80により、別個に起動させられ得る別個の2つの比例バルブ43、44を備える。膨張材料要素30と関連付けられた比例バルブ43は、別個のボア42’により、冷却領域34に接続される。冷却領域34はここでは、リング形状において膨張材料要素30を囲み、および、もっぱら、膨張材料要素30を冷却するために設けられている。冷却領域34は、必要に応じて膨張材料要素30を冷却するために、比例バルブ43およびボア42’を介して、冷却媒体、たとえば、圧縮および/または冷却空気により、あふれさせられ得る。
【0180】
ピエゾアクチュエータ20の冷却は第2の比例バルブ44により、別個に制御される場合があり、アクチュエータチャンバ12には、流入路42”を介して冷却媒体が供給され得る。膨張材料要素30およびピエゾアクチュエータ20の冷却はしたがって、ここでは、ほとんど熱的に切り離されている。冷却媒体は、別個の流出路(ここでは図示せず)を介して冷却領域34から、またはアクチュエータチャンバ12から吐出され、および次いで、もう一度、共に使用される流出路45、および冷却媒体吐出用結合点46を介して流出し得る。
【0181】
動作中、膨張材料要素30により、所望のやり方でピエゾアクチュエータ20を位置決めすることができるために、膨張材料要素30およびピエゾアクチュエータ20を備える能動ユニットは、結合するために一定の予張力下に保たれる。この目的で、膨張材料要素30は、ここでは上方に膨張材料要素30上に支持されたセンタリング要素36を備える(
図1)。センタリング要素36は、投与システム1のハウジング11に対して支持され、ならびに、膨張材料要素30に対して、および、よって、ピエゾアクチュエータ20に対しても特定の圧力を作用させるように設計される。ピエゾアクチュエータ20は、その下端において、移動機構14のレバー16上の圧力片23により、支持される。
【0182】
アクチュエータ移動を吐出要素51に伝達するために使用される、移動機構14のレバー16は、アクチュエータチャンバ12の下端におけるレバーベアリング18に載っており、および、このレバーベアリング18により、傾斜軸Kまわりに傾斜させられ得る。レバー16のレバーアームは、貫通孔15を通って作用チャンバ13内に吐出している。貫通孔15はよって、作用チャンバ13をアクチュエータチャンバ12に接続する。
【0183】
作用チャンバ13では、レバーアームは、プランジャ51の方向を指し示し、および、プランジャヘッド53の接触面54に押し付ける接触面17を有する(
図3)。
図1では、ピエゾアクチュエータ20とレバー16との間の接触が、ベアリング18と、プランジャ51を指し示す、レバー16の接触面17との間の領域内で行われ、アクチュエータ20の小さな移動が、吐出要素51のより大きな移動をもたらす所望の伝達比を実現するためにこの接触点がレバーベアリング18に対して接触面17よりも近くに位置することが明らかになる。
図3に示す実施形態では、プランジャばね55がプランジャヘッド53を下方からレバー16に押圧することで、レバー16の接触面17がプランジャヘッド53の接触面54と永久的に接触していることが定められる。プランジャばね55はここでは、プランジャセンタリング片56上に下方に支持される。
【0184】
レバー16はプランジャ51上に載っている。しかし、2つの構成要素16、51間に、固定された接続は存在するものでない。基本的には、しかし、プランジャばね55については、初期または静止位置において、プランジャ51とレバー16との間に任意の隔たりがあることも考えられる。駆動システム(レバーピエゾアクチュエータ移動システム)のほとんど一定の予張力を可能にするために、レバー16は、それがプランジャ51と接触する端においてアクチュエータばね19により、上方に押される(
図3)。
【0185】
プランジャ51の位置および/または移動を測定するために、磁石85がここでは、プランジャ51から離れる方向を指し示す、レバー16の上側に配置され、および、投与システムのハウジング内のホールセンサ84と相互作用する(
図3)。ホールセンサ84および磁石85はここでは、プランジャ51の長手方向延在部に対応する仮想垂直軸上に配置される。レバー16の主な垂直方向のストローク移動は、この装置84、85により、捕捉され、プランジャ51の位置または移動も判定されることができる場合がある。
【0186】
図1では、プランジャシール58が底部において隣接するプランジャベアリング57上にプランジャばね55が支持されることが明らかになる。プランジャばね55は、上方に軸方向において、プランジャベアリング57から離れる方向にプランジャヘッド53を押す。プランジャ先端52はよって、ノズル60の封止座63から離れる方向にも押される。すなわち、プランジャヘッド53の接触面54に対する、上方からの外部圧力なしで、プランジャ先端52は、プランジャばね55の静止位置におけるノズル60の封止座63から任意の距離をおいて配置される。ノズル開口61はよって、ピエゾアクチュエータ20の静止状態(非膨張状態)においても閉鎖されているものでない。
【0187】
投与物質は、供給路64がそれにつながるそのノズルチャンバ62を介してノズル60に供給される。その他方端では、供給路64は、ここでは第2のハウジング部11b上の結合点65を介してハウジング11に直接、締結される投与物質カートリッジ66内に開放している。投与物質カートリッジ66は、カートリッジホルダ67により、投与システム1に、解放可能に固定され、および、ここでは、たとえば、投与物質カートリッジ66内の投与物質の特定の圧力を設定するために上端において圧縮空気供給部68を有する。
【0188】
流体ユニット50はさらに、流体ユニット50の加熱装置(図示せず)を起動させるために接続ケーブル69を有する。さらに、投与物質は、流体ユニット50内で別個に、たとえば、ノズル60内以外で温度制御され得る。投与システム1は好ましくは、各様に温度制御可能な複数の投与物質用加熱ゾーンを備える場合があり、第1の加熱ゾーンはノズル60と、第2の加熱ゾーンは流体ユニット50と、第3の加熱ゾーンはカートリッジ66と関連付けられる場合がある。
【0189】
プランジャの調節位置を設定するための調節プロセスの不可欠なステップを
図4および6に概略的に示す。図示した投与システムの部分は、
図1のものに対応しているが、大いに簡略化し、および拡大して示している。ここに示す投与システムは、「実際の」システムであり、投与システムの個々の構成要素間の距離、および調節中のそれらの移動は、明確にするために大いに拡大している。
【0190】
調節プロセスの開始を
図4に示す。まず、(第1のアクチュエータ20としての)ピエゾアクチュエータ20は、投与システムの動作中に与えられる最大電気的制御電圧がピエゾアクチュエータ20に印加される、すなわち、ピエゾアクチュエータ20が完全に膨張させられるように起動させられる。既に説明したように、ピエゾアクチュエータ20はレバー16上に載っており、それは、今度は、その他方端においてプランジャ51と接触している。次のステップでは、調節開始温度が、(第2のアクチュエータ30としての)膨張材料要素30内に設定される。この目的で、膨張材料要素30は、それが加熱状態にある場合に少なくともわずかに膨張材料要素30が収縮するように特定の温度に冷却され得る。ピエゾアクチュエータ20はしかし、以前のようになお膨張させられる。ピエゾアクチュエータ20およびプランジャ51は移動ユニットを形成しているので、プランジャ51は、膨張材料要素30の収縮の結果として上方方向RS’においてノズル60からわずかに離れる方向に移動させられる場合があり、このプロセスはここでは、上述したように、明確にするために大いに拡大して示している。よって、プランジャ先端52と封止座63との間の距離aが確立される。
【0191】
後続ステップ(
図5)では、膨張材料要素30が、調節開始温度から開始して加熱される。膨張材料要素30の熱誘起膨張は、ピエゾアクチュエータ20およびレバー16を介してプランジャ51に伝達され、プランジャ51は、ノズル60の方向において下方方向RSに移動させられる。
【0192】
図5では、初期接触の瞬間を具体的に示しており、プランジャ先端52の左領域のみが、初めて、ノズル60の封止座63と接触する。ノズル開口61は未だ、プランジャ51により、閉鎖されていない。ここに示すプランジャ位置に対応するのはしたがって、プランジャ51の初期接触位置であり、および、完全接触でない。「実際の」投与システムを
図4~6に示していることをもう一度、指摘すべきである。これに対して、「理想的な」投与システムの場合、初期接触(
図5)が省略され、プランジャ51が完全接触位置(
図6)に直接、移動させられる場合がある。すなわち、初期接触はその場合、既に完全接触に対応する。
【0193】
最後に、
図6では、プランジャ51は完全接触位置において配置される。この目的で、膨張材料要素30は、プランジャ51がノズル60内に実質的に下方方向RSに「摺動し」、完全接触が実現されるまで、初期接触後、さらに加熱される。初期接触(
図5)から開始して、プランジャ先端52は、プランジャ先端52が最終的に、リング内にノズル開口を封止する(完全接触)まで円錐状封止座63の左部分に沿って「摺動する」。ピエゾアクチュエータ20はなお、以前のように膨張させられる。ここに示すプランジャ51の完全接触位置は、投与システムの構成に応じて、プランジャ51の調節位置に対応しており、特定の封止力がさらに、調節位置における封止座63に対してプランジャにより、作用させられる。
【0194】
調節プロセスのさらなる詳細は、
図7a-c~9においてもみられ得る。
【0195】
図7aは、本発明の実施形態による、投与システムを制御する制御方法の第1のセクションを示す。ここに示す手順ステップ7は、調節プロセスにおいて、プランジャの調節位置を設定するために使用され得る。調節プロセスは好ましくは、初期開始、たとえば、個々の方法ステップが「投与システム固有の」制御ユニットにより処理されることの後に完全に自動的に実行され得る。調節プロセスは以下(
図7~9)に、「理想的な」非剛性投与システムを使用して説明する。これは、プランジャとノズルとの間の完全接触が事前の初期接触なしで実現されることを意味する。
【0196】
手順ステップ7の第1のステップ7-I.では、調節プロセスはたとえば、「投与システム固有の」制御ユニットへの、または中央制御ユニットへの入力により、開始される。ステップ7-II.では、動作中のピエゾアクチュエータの最大の偏向が当初設定され、または動作中に与えられる最大電気的制御電圧がピエゾアクチュエータに印加される。同時に、投与物質を分配するためのトリガが、調整プロセスの持続時間の間、阻止される。ステップ7-III.では、調節開始温度が、膨張材料要素内に、たとえば、冷却により、設定される。ステップ7-IV.では、膨張材料要素が次いで、調節開始温度から開始して、連続して加熱される。
【0197】
膨張材料要素の加熱中に、プランジャ位置が加熱材料要素の温度に対して測定される(ステップ7-V.)。「温度-プランジャ位置」値対が、連続して形成され、および記憶される(ステップ7-VI.)。チェックが値対に基づいて等間隔に行われて、プランジャとノズルとの間の完全接触が既に検出されているか否かが判定される(ステップ7-VII.)。完全接触が未だ検出されていない場合、さらなる値対が反復ステップ7-i.により、捕捉される。反復ステップ7-i.は、完全接触が検出されるまで実行される。
【0198】
完全接触の判定は、手順サブステップ7-Dにおいて行われる。この目的で、膨張材料要素の温度T(単位:℃)における上昇に対する、プランジャ位置S(単位:μm)における変化の関数グラフを
図8に概略的に示す。プランジャ位置Sはたとえば、プランジャヘッドとホールセンサとの間の距離により、判定され得る。(ここでは、座標系の原点における)調節開始温度に基づいて、ほとんど線形の(調節)比が当初、プランジャ位置Sと、膨張材料要素の温度Tとの間で確立されることが分かり得る。上記比はここでは、傾斜m1を有する直線として示しており、直線は、先行して捕捉された「温度-プランジャ位置」値対により、生じる。
【0199】
プランジャとノズルとの間に完全接触が存在している状態になり、およびプランジャがノズルに圧入されるとすぐ、プランジャ位置Sは、連続温度上昇Tにかかわらず、完全接触前よりもゆっくりと変化する。新たな比がしたがって、プランジャSと温度Tとの間で確立され、この比はここでは、より平坦な傾斜m2を有する直線として示す。直線の傾斜がm1からm2に変化するプランジャ位置S1は、プランジャの完全接触位置S1に対応する。平坦な傾斜m2は、投与システムの構成要素の弾性変形による、プランジャのわずかな移動により生じ、傾斜m2はシステムのばね剛性の尺度であり得る。完全接触位置S1は、ここでは、完全接触温度T1と関連付けられる。
【0200】
完全接触に達するまでの持続時間はたとえば、約1分であり得る。完全接触をよりすばやく実現するために膨張材料を動的に加熱することも考えられる。たとえば、膨張材料要素が、異なる段階において異なる度に加熱され、平均傾斜m1がその場合、捕捉されることができる場合がある。この校正は、製造業者によって行われ、および、投与システムに記憶される場合もある。
【0201】
ステップ7-VII.において完全接触が検出されるとすぐ、ステップ7-VIII.においてプランジャの完全接触位置S
1が記憶される(
図7a)。
【0202】
ステップ7-IX.では、傾斜m1(
図8)が次いで、完全接触に達するまでに、好ましくは、先行して判定された「温度-位置」値対の関数として判定され得る。ステップ7-X.では、投与システムのばね剛性が次いで、たとえば、工場において投与システムに記憶された校正データを読み出すことにより、判定され得る。ステップ7-XI.では、プランジャの調節位置は最終的に、特に、完全接触位置(S
1)、傾斜m1(いずれも
図8)、および全体システムのばね剛性を考慮に入れて算出され得る。調節位置の算出はたとえば、先行して導入された式(1)を使用して可能である。さらに、ステップ7-XI.では、調節位置と関連付けられた調節温度が判定され得る。
【0203】
手順サブステップ7-Eにおける、調節位置の判定は、膨張材料要素の温度T(単位:°C)における増加に対する、プランジャ位置S(単位:μm)における変化の関数グラフを使用して
図9中に概略的に示す。プランジャの調節位置(S
2)はここでは、プランジャの完全接触(S
1)とわずかに異なる。この理由は、調節位置(S
2)がここでは非剛性システムについて示されている一方、完全接触(S
1)後、傾斜m2に対応するわずかなプランジャ移動がなお存在しているからである。調節位置(S
2)への、わずかなプランジャ移動にかかわらず、特定の封止力を増大させるために、投与システムのばね剛性を、調節位置(S
2)を算出する際に考慮に入れられ得る。調節位置(S
2)は、膨張材料要素の調節温度(T
2)と関連付けられる。調節位置(S
2)はここでは、プランジャの吐出端位置(S
3)にも対応する。
【0204】
ここに示すものと対照的に、プランジャの調節位置S2は基本的には、高剛性の「理想的な」投与システムにおける完全接触位置S1に対応する、すなわち、完全接触位置(S1)、調節位置(S2)、および吐出端位置(S3)がその場合、基本的に一致する場合がある。
【0205】
調節位置および関連付けられた調節温度が、ステップ7-XII.において記憶される(
図7a)。次いで、調節プロセスが終了したことが制御ユニットに通知される(ステップ7-XIII.)。これにより、投与物質の分配のトリガの阻止が取り除かれ得る。ステップ7-XIV.では、投与システムの動作モードが最終的に照会され、すなわち、投与システムがスタンバイモードに切り替え(ジャンプラベルA)、または投与プロセスに切り替える(ジャンプラベルB)べきであるかについての決定が行われる。
【0206】
図7bは、本発明の実施形態による、投与システムを制御する制御方法のさらなるセクションを示す。ここに示す手順ステップ8は
図7aから直接、ジャンプラベルAに続く。手順ステップ8はしたがって、ステップ7-XIV.(
図7a)における動作モードの照会が、ホールドモードへの、投与システムの切替をもたらした場合に行われる。
【0207】
第1のステップ8-I.(
図7b)では、先行して行われた調節プロセスにおいて判定された調節温度が呼び出される。調節温度が投与システムのPIDコントローラまたはファジーコントローラに伝達される(ステップ8-II.)。膨張材料要素は、膨張材料要素における調節温度を設定する(ステップ8-V.)ためにPIDコントローラにより、冷却され(ステップ8-III.)、または加熱される(ステップ8-IV.)場合がある。ステップ8-VI.では、所望のアクチュエータ位置またはプランジャ位置が、膨張材料要素を介して投与システムにおいて設定される。手順ステップ8はジャンプラベルCにおいて終了する。これには、もう一度、
図7a中の動作モードの照会が続く(ステップ7-XIV.)。
【0208】
投与システムを制御する制御方法のさらなるセクションを
図7cに示す。ここに示す手順ステップ9は
図7aから直接、ジャンプラベルBに続く。手順ステップ9はしたがって、ステップ7-XIV.(
図7a)における動作モードの照会が、「能動的」投与モードへの、投与システムの切替をもたらした場合に行われる。
【0209】
第1のステップ9-I.(
図7c)では、ピエゾアクチュエータに現在、印加されている電気的制御電圧が判定される。ステップ9-II.では、ピエゾアクチュエータであって、ピエゾアクチュエータが静止位置にある、すなわち、膨張させられていないピエゾアクチュエータの非負荷電圧に現在の制御電圧が対応しているか否かが判定される。現在の制御電圧が開回路電圧に対応するものでない、すなわち、ピエゾアクチュエータが少なくとも部分的に膨張させられる場合、ピエゾアクチュエータの現在の動作電圧がもう一度測定され、これは、反復プロセスステップ9-iii.に対応する。反復プロセスステップ9-iii.は、現在の制御電圧がピエゾアクチュエータの開回路電圧に対応する(ステップ9-II.)、すなわち、プランジャが吐出端位置に導かれるまで実行される。
【0210】
ステップ9-III.では、単一の吐出プロセス中の吐出開始位置から開始して、経時的な、電気的アクチュエータ電圧における変化、およびかかるアクチュエータ電圧に対応するプランジャ位置が測定される。この目的で、「制御電圧-プランジャ位置」値対が好ましくは経時的に形成される。ピエゾアクチュエータに現在印加されている電気的制御電圧がステップ9-IV.において判定される。制御電圧が、動作中に与えられた最大制御電圧(膨張電圧)に未だ対応していない場合、反復ステップ9-iv.により、値対が形成され続ける。ステップ9-iv.は、現在の制御電圧がピエゾアクチュエータの膨張電圧に対応する(ステップ9-IV.)、すなわち、プランジャが吐出位置に導かれるまで実行される。ステップ9-V.では、封止位置アクチュエータ偏向が、たとえば、形成された「制御電圧-プランジャ位置」値対に基づいて判定される。これに関する、または手順サブステップ9-G.に関するさらなる詳細は以下に、
図10~12を参照しながら説明する。
【0211】
あるいはまたはさらに、上記プロセス、特に、経時的な、「制御電圧-プランジャ位置」値対の捕捉を、開放勾配により、行うことも考えられる。これは、開放勾配が、閉鎖勾配よりもゆっくりと進み、さらに高い測定精度が実現され得るという利点を有し得る。この変形例では、動作中に与えられる最大制御電圧(膨張電圧)がピエゾアクチュエータに印加され、ピエゾアクチュエータが、動作中にその、考えられる最大偏向に達する(ステップ 9-II.)まで、反復サブステップ9-iii.が実行され得る。ステップ9-III.では次いで、プランジャの吐出端位置から開始して、経時的な、電気的アクチュエータ電圧における変化、およびかかるアクチュエータ電圧に対応するプランジャ位置が、プランジャの単一の後退移動中に測定される。この目的で、「制御電圧-プランジャ位置」値対は好ましくは、経時的に形成される。ピエゾアクチュエータに現在印加されている電気的制御電圧がステップ9-IV.において判定される。制御電圧が、ピエゾアクチュエータの開回路電圧に未だ対応していない場合、値対が反復ステップ9-iv.によって形成され続ける。反復ステップ9-iv.は、現在の制御電圧が、ピエゾアクチュエータの開回路電圧に対応する(ステップ9-IV.)、すなわち、プランジャが吐出開始位置に導かれるまで実行される。ステップ9-V.では、封止位置アクチュエータ偏向が、たとえば、形成された「制御電圧-プランジャ位置」値対に基づいて判定される。
【0212】
手順サブステップ9-G.について、異なるタイプの投与システムについて以下に別個に説明する。
図10では、手順サブステップ9-G.を、「理想的な」高剛性投与システムについて示す。ここの上部では、ピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧U(単位:V)の時間プロファイルの関数グラフを(任意の単位で)時間tにわたり、概略的に示す。
図10の下部では、制御電圧(U)に対応するプランジャ位置S(単位:μm)を同じ期間について示す。
【0213】
記録の開始時において、電圧U1であって、その電圧がピエゾアクチュエータの膨張電圧に対応する電圧U1が、ピエゾアクチュエータに印加される、すなわち、ピエゾアクチュエータが当初、膨張させられる。対応して、プランジャが、同じ期間中に、吐出端位置S3であって、ここでは同時に、完全接触位置S1’および調節位置S2’に対応する吐出端位置S3において配置される。制御電圧Uにおける低減の結果、プランジャは、時点t0でノズルから離れる方向に移動し、および、よって、ノズル開口を解放する。時点t1では、制御電圧U2はピエゾアクチュエータの開回路電圧に対応する、すなわち、ピエゾアクチュエータはもう膨張させられない。よって、プランジャは一時的に、吐出開始位置S5にある。吐出端位置S3を調節位置S2’に調節するための調整アルゴリズムは、上述したように、かかる開放および/または閉鎖勾配中に行われ得る。閉鎖勾配中の調整プロセスは以下に、すなわち、時点t2において開始して説明される。
【0214】
時点t
2、すなわち、吐出プロセスの開始時では、電気的制御電圧Uがピエゾアクチュエータに印加される。制御電圧Uは、連続して増加させられ、制御電圧Uと時間tとのほとんど線形の比が生じる(
図10の上部;時点t
2~t
4)。制御電圧Uが時点t
2で印加された場合、プランジャは、もう一度、膨張しているピエゾアクチュエータにより、ノズルの方向に偏向させられる。期間t
2~t
3では、(m1’に対応する)第1のほとんど一定のプランジャ速度が当初、確立される。よって、第1の(速度)比が、ピエゾアクチュエータの制御電圧Uにおける変化と、それから生じるプランジャ速度との間で形成される。
【0215】
時点t3では、プランジャ速度が突然減速し、(m4’に対応する)新たなプランジャ速度が確立される。この場合、プランジャ速度はt3後、ゼロに近づく。時点t3では、電圧U3がピエゾアクチュエータに印加される。しかし、ピエゾアクチュエータの制御電圧が、時点t3後も、またはU3を超えても連続して増加し続けるので、新たな(速度)比が、制御電圧における変化と、プランジャ速度との間で確立される。(速度)比における変化が生じる時点t3、またはプランジャ位置S1’、S2’、S3はここでは、プランジャの完全接触位置S1’に対応する。これは「理想的な」および高剛性の投与システムであるので、完全接触位置S1’は既に、プランジャの吐出端位置S3に、および調節位置S2’にも対応する。
【0216】
ピエゾアクチュエータの電気的制御電圧Uは、膨張電圧U1が最終的に、時点t4で、ピエゾアクチュエータにもう一度印加されるまで、U3を超えてさらに増加させられる。
【0217】
封止位置アクチュエータ偏向を表す値の実際値が次いで、よって判定された完全接触位置S1、およびこの位置S1に関連付けられたピエゾアクチュエータの電気的制御電圧U3に基づいて判定され得る。この場合、封止位置アクチュエータ偏向を表す値は、動作中にピエゾアクチュエータに印加される最大電気的制御電圧U1と、プランジャを、完全接触位置S1に導くのに必要な制御電圧U3との間の電圧差ΔU1に対応する。このようにして判定された封止位置アクチュエータ偏向ΔU1、すなわち、ここでは、ピエゾアクチュエータに印加される制御電圧の電圧差ΔU1は、ノズルに対する、プランジャの封止力が、t3から増大することをもたらす。すなわち、電圧差ΔU1はここでは、基本的には、プランジャの封止力に完全に変換される。対照的に、ピエゾアクチュエータに印加される、制御電圧の残りの部分、すなわち、U3とU2との間の差がプランジャの移動に変換され、ここでは、(油圧的に)有効なストロークH1が行われる。
【0218】
図11では、「理想的な」非剛性投与システムについて手順サブステップ9-G.を示す。
図10と同様に、(任意の単位での、)時間tにわたり、(V単位での)ピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧Uの時間プロファイルの関数グラフをここでは上部に概略的に示し、制御電圧(U)に対応するプランジャ位置S(単位:μm)は、同じ期間について下部に示す。
【0219】
図11では、封止位置アクチュエータ偏向の判定を、開放勾配に基づいて表す。膨張電圧U
1がこの場合もまた、記録の開始時にピエゾアクチュエータに印加される。電気的制御電圧は時点t
0で低減され、ピエゾアクチュエータ内で増大させられた圧力は、膨張の結果としてゆっくりと減少し始める。これは、この期間(t
0’~t
1’)中に、当初、ノズルに対してプランジャが作用させる封止力のみが主に低減されることを意味する。この期間(t
0’~t
1’)内に電気的制御電圧UがU
1からU
3に低減され、U
1とU
3との間の差はここでは、封止位置アクチュエータ偏向ΔU
2に対応する。
【0220】
期間t0’~t1’では、封止力における低減に加えて、わずかなプランジャ移動であって、プランジャが、吐出端位置S3または調節位置S2’から完全接触位置S1’にゆっくりと移動するわずかなプランジャ移動も存在している。傾斜m2’に対応するこのわずかなプランジャ移動は、投与システムの構成要素の弾性の(可逆的な)変形により、もたらされる。連続して減少するアクチェータ圧力は、先行する吐出プロセス中に圧縮された構成要素、たとえば流体ユニットが、「緩和」し、または「整えられ」し、および、非圧縮(標的)配置により、もう一度整列し得ることにつながる。同様に、プランジャは、吐出端位置S3から完全接触位置S1’にこの期間中、戻り、U1およびU3の制御電圧Uが低減され得る。
【0221】
これらの2つの電圧値U
1、U
3の差ΔU
2(封止位置アクチュエータ偏向)がしたがって、大部分、そうした非剛性投与システムにおける封止力を増大させるためにも使用され、封止位置アクチュエータ偏向のわずかな部分が、(
図10の完全に剛性の投与システムと違って)投与システムの構成要素の弾性変形に変換され得る。
【0222】
しかしながら、特定の封止力を実現するために、全体システムのばね剛性が、(たとえば、式1により)調節位置S2’を算出する際に、考慮に入れられ、または相応に補償され得る。この目的で、たとえば、封止位置アクチュエータ偏向ΔU2が相応に増加させられる場合があり、(油圧的に)有効なストロークH2が今度は低減される場合がある。
【0223】
期間t1’~t2’では、プランジャはその場合、傾斜m1’に対応して、以前よりも速く変化する。減少するアクチュエータ電圧Uおよび、投与システムのばねシステムが理由で、ピエゾアクチュエータの長手方向延在部が収縮させられ、プランジャが、完全接触位置S1’から吐出開始位置S5に戻される。時点t3’で、ピエゾアクチュエータの制御電圧Uがもう一度、増加させられ、プランジャがもう一度、ノズルの方向に偏向させられ、時点t4’で、まず、完全接触位置S1’に、ならびに、特定の封止力の増加、およびプランジャのわずかな移動により、最終的に、時点t5’で、吐出端位置S3に達し、その吐出端位置は投与システムの調整された状態における、プランジャの調節位置S2’に対応する。
【0224】
図12では、手順サブステップ9-Gを、閉鎖勾配に基づいて「実際の」非剛性投与システムについて明確にするために示し、
図12の基本構造は、
図10および11のそれ(上部の、電気的制御電圧Uの時間プロファイル;下部の、制御電圧Uに対応するプランジャ位置S)に対応する。プランジャの吐出開始位置S
5から開始して、ピエゾアクチュエータに印加される電気的制御電圧Uにおける連続した増加は、プランジャがノズルの方向に、(m1’に対応して)第1の速度で移動させられることをもたらす(期間t
4''~t
5'')。プランジャ速度は、t
5''で、(m3’に対応して)減速し、制御電圧は、連続してさらに増加させられる。同様に、t
5''では、新たな(速度)比が、ピエゾアクチュエータの制御電圧Uにおける変化と、それから生じるプランジャ速度との間で確立される。t
5''での、プランジャの減速の理由は、プランジャとノズルとの間の初期接触であり、S
4は初期接触位置に対応する。
【0225】
プランジャは、プランジャが時点t6''でノズルに完全に「滑り込み」、よって、完全接触(S1’)を実現するまで、ノズルの方向においてさらに、ノズルの特定の抵抗に対してS4を超えて偏向させられる。傾斜m3’はよって、このノズルへの、特に、完全接触位置S1’への、プランジャの「滑り込み」を表す。電気的制御電圧ΔU4が、吐出開始位置S5から完全接触位置S1’にプランジャを移動させるのに必要であり、この電気的制御電圧は、ピエゾアクチュエータのU3およびU2間の差(開回路電圧)により、生じる。
【0226】
制御電圧差ΔU4は、動作中にピエゾアクチュエータに印加される最大制御電圧U1の一部であり、ΔU4は、プランジャの(油圧的に)有効なストロークH3にほとんど完全に変換される(および、したがって、基本的には、封止力の増大につながるものでない)。(油圧的に)有効なストロークH3はここでは、吐出開始位置S5から完全接触位置S1’へのプランジャ移動にも対応する。
【0227】
完全接触(時点t
6'')で、(速度)比はもう一度、変化し、および、プランジャは、吐出端位置S
3(時点t
7'')に、(m2’に対応して)ごくわずかに移動させられるに過ぎない。
図11を参照しながら説明したように、傾斜m2’は、投与システムの構成要素のわずかな弾性変形により、もたらされる。さらに、時点t
6''~t
7''では、プランジャの封止力は主に、封止位置アクチュエータ偏向ΔU
3により、増大させられる。
【0228】
各ケースにおいて判定された実際の封止位置アクチュエータ偏向(実際値ΔU
1、ΔU
2、ΔU
3、以降、ΔUのみ)に基づいて、次いで、現在の封止位置アクチュエータ偏向(ここでは、制御電圧の電圧差ΔU)が目標値よりも少ないか否かが、封止位置アクチュエータ偏向を表す値の目標値との比較により、ステップ9-VI.(
図7c)において判定され得る。目標値がアンダーシュートされたことを照会が示す場合、ステップ9-VII.により、膨張材料要素の温度は増加し、よって、封止位置アクチュエータ偏向の目標値(ここでは、特定の目標電圧差)に達する。
【0229】
目標値がアンダーシュートされなかった場合(ステップ9-VI.)、現在の封止位置アクチュエータ偏向(ここでは、制御電圧の電圧差ΔU)が目標値を超えるか否かがステップ9-VIII.で確認される。任意的には、次いで、ステップ9-IX.において、封止位置アクチュエータ偏向の目標値を設定するために、膨張材料要素の温度が低減される。目標値からの、封止位置アクチュエータ偏向の実際値(ΔU)偏差が検出されなかった場合、膨張材料要素のいかなる調整もなしで、ジャンプラベルCへの切替が直接、行われる。この場合もまた、ジャンプラベルCに、動作モードの照会が続く(
図7A;ステップ7-XIV.)。
【0230】
最後に、詳細に上述された投与システム、または投与システム用制御方法が、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者により、最も多様なやり方で修正され得る実施形態に過ぎないことをもう一度、指摘する。よって、たとえば、説明された制御方法の場合、方法ステップすべてを実行することが常に必要な訳でなく、または、方法ステップは異なる順序でも処理され得る。さらに、調整アルゴリズムは、本出願の文脈において説明されていないかかる他の「開放」または「閉鎖」勾配中にも実行され得る。さらに、不定冠詞「a」または「an」の使用は、適切な特徴が2度以上存在する場合もある可能性を排除するものでない。
【符号の説明】
【0231】
参照符号のリスト
1 投与システム
10 アクチュエータユニット
11 ハウジング
11a、11b ハウジングブロック/ハウジングの構成要素
12 アクチュエータチャンバ
13 作用チャンバ
14 移動機構
15 貫通孔
16 レバー
17 レバー接触面
18 レバーベアリング
19 アクチュエータばね
20 第1のアクチュエータ/ピエゾアクチュエータ
21 ピエゾスタック
22 ピエゾアクチュエータハウジング
23 圧力片
30 第2のアクチュエータ/膨張材料要素
31 ハウジング(膨張材料要素)
32 膨張体
33 加熱装置(膨張材料要素)
34 冷却領域/冷却チャンバ(膨張材料要素)
35 ピストン
36 センタリング要素
40 冷却装置
41 冷却媒体供給用結合点
42、42’、42” 流入路(冷却媒体)
43 比例バルブ(膨張材料要素)
44 比例バルブ(ピエゾアクチュエータ)
45 流出路(冷却媒体)
46 冷却媒体吐出用結合点
50 流体ユニット
51 吐出要素/プランジャ
52 プランジャ先端
53 プランジャヘッド
54 プランジャ接触面
55 プランジャばね
56 プランジャセンタリング片
57 プランジャベアリング
58 プランジャシール
60 ノズル
61 出口開口
62 ノズルチャンバ
63 封止座
64 供給路
65 リザーバの界面
66 媒体カートリッジ
67 カートリッジホルダ
68 圧縮空気供給カートリッジ
69 接続ケーブル
70 結合機構
71 結合ばね
72 球体
73 プラグイン結合部
74 球状キャップ
75 加熱装置(ノズル)
80 制御ユニット(投与システム)
81 制御ユニット接続ケーブル
82 温度センサ(媒体)
83 温度センサ(膨張材料要素)
84 ホールセンサ
85 磁石
7 第1の手順ステップ
7-I.~7-XIV. 方法ステップ(第1の手順ステップ)
7-i. 反復方法ステップ(第1の手順ステップ)
7-D、7-E 手順サブステップ(第1の手順ステップ)
8 第2の手順ステップ
8-I.~8-VI. 方法ステップ(第2の手順ステップ)
9 第3の手順ステップ
9-I.~9-IX. 方法ステップ(第3の手順ステップ)
9-iii.、9-iv. 反復方法ステップ(第3の手順ステップ)
9-G 手順サブステップ(第3の手順ステップ)
a 距離(プランジャ先端:ノズル)
m1、m2 比(プランジャ位置:温度)
m1’、m2’、m3’、m4’ 比(プランジャ位置:時間)
K 傾斜軸
H1、H2、H3 (油圧的に)有効なストローク
R 吐出方向
RS、RS’ プランジャの移動方向
S1、S1’、S2、S2’、S3、S4、S5 プランジャ位置
t0~t4 時点
t0’~t5’ 時点
t0''~t7'' 時点
T1、T2 温度(膨張材料要素)
U1、U2、U3 電圧 (ピエゾアクチュエータ)
ΔU、ΔU1、ΔU2、ΔU3、ΔU4 電圧差/実際値
【国際調査報告】