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特表2022-543628カリウム-メリノイトゼオライト、その合成及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】カリウム-メリノイトゼオライト、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/04 20060101AFI20221005BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20221005BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20221005BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20221005BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20221005BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C01B39/04
B01D53/047 ZAB
B01J20/18 D
B01D53/62
B01D53/82
B01D53/04 230
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J20/34 H
B01J20/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507446
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2020053006
(87)【国際公開番号】W WO2021024045
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/883,835
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、ジョシュア アレン
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ダン
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA45
4D002EA07
4D002EA08
4D002GA01
4D002GB03
4D002GB04
4D012BA02
4D012CA03
4D012CD01
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF04
4D012CG01
4D012CG02
4D012CG05
4G066AA61A
4G066AA61B
4G066AA62B
4G066BA01
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA35
4G066DA02
4G066DA04
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA34
4G066FA37
4G066GA01
4G066GA14
4G066GA16
4G073BA05
4G073BA63
4G073CZ41
4G073DZ02
4G073FA30
4G073FB30
4G073FB36
4G073FC03
4G073FC25
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA19
4G073UA06
4G073UB60
(57)【要約】
本開示は、MERフレームワーク型ゼオライトを製造するための方法、棒状の形態を有するMERフレームワーク型ゼオライト、及び二酸化炭素(CO)を含む多成分フィードストリームからゼオライトを使用してCOを選択的に分離するためのプロセスに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MERフレームワーク型ゼオライトを合成する方法であって、
(a)
(1)FAUフレームワーク型ゼオライトと、
(2)カリウムカチオンの供給源と、
(3)水酸化物イオンの供給源と、
(4)水と、を含む反応混合物を与えることと、
(b)前記反応混合物を、前記FAUフレームワーク型ゼオライトをMERフレームワーク型ゼオライトに変換するのに十分な結晶化条件に曝すことと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記反応混合物が、モル比で、以下の組成:
【表1】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物が、モル比で、以下の組成:
【表2】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶化条件が、125℃~200℃の温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
棒状の形態を有するカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトであって、前記カリウムがフレームワーク外の位置にKとして存在し、前記ゼオライトが、カリウム以外のフレームワーク外カチオンを本質的に含まない、前記カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライト。
【請求項6】
SiO/Alのモル比が、4~10の範囲である、請求項5に記載のカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライト。
【請求項7】
カリウムが、前記ゼオライトの重量に基づき、無水ベースで0.1~5重量%の量で存在する、請求項5に記載のカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライト。
【請求項8】
前記カリウム以外のフレームワーク外カチオンが、前記ゼオライトの重量に基づき、無水ベースで0.1重量%未満の量で存在する、請求項6に記載のカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライト。
【請求項9】
平均結晶サイズが1~10μmである、請求項5に記載のカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライト。
【請求項10】
平均アスペクト比が2~6である、請求項5に記載のカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライト。
【請求項11】
請求項5に記載のカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライト、及びその合成された状態の形態。
【請求項12】
プロセスフィードストリームからCOを分離するためのプロセスであって、
(a)カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトを含む吸着床を、COと、CH及びNの少なくとも一方を含む第2の成分とを含むプロセスフィードストリームと、第1の圧力及び第1の温度で接触させることと、
(b)前記吸着床に前記COの少なくとも一部を吸着させることと、
(c)前記プロセスフィードストリームよりも体積%で低い濃度のCOを有するCO低下生成物ストリームを生成することと、
(d)前記プロセスフィードストリームよりも体積%で高い濃度のCOを有するCO増加生成物ストリームを第2の圧力及び第2の温度で生成することと、を含み
前記カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトが棒状の形態を有し、前記カリウムがフレームワーク外の位置にKとして存在し、前記ゼオライトが、カリウム以外のフレームワーク外カチオンを本質的に含まない、前記プロセス。
【請求項13】
プロセスフィードストリームからCOを分離するためのプロセスであって、
(a)カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトで構成される膜の第1の面を、COと、CH及びNの少なくとも一方を含む第2の成分とを含むプロセスフィードストリームと、第1の圧力及び第1の温度で接触させることと、
(b)前記膜を選択的に透過する成分からなり、前記プロセスフィードストリームよりも体積%でより高い濃度のCOを有する第1の透過物ストリームを、第2の圧力及び第2の温度で前記膜の第2の面から回収することと、
(c)前記プロセスフィードストリームよりも体積%で低い濃度のCOを有する第1の保持物ストリームを回収することと、を含み
前記カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトが棒状の形態を有し、前記カリウムがフレームワーク外の位置にKとして存在し、前記ゼオライトが、カリウム以外のフレームワーク外カチオンを本質的に含まない、前記プロセス。
【請求項14】
前記プロセスフィードストリームが、天然ガス、煙道ガス、またはバイオガスである、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記合成された状態のMERゼオライトが、少なくとも150℃の温度で少なくとも部分的に脱水されている、請求項12または13に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年8月7日出願の米国特許仮出願第62/883,835号に基づく優先権及び同出願の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、形態が改善されたMERフレームワーク型ゼオライト、その合成、及びメタンからの二酸化炭素の選択的分離などの収着分離におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ゼオライトは、すべての頂点を共有して、分子寸法のチャネル及び/またはキャビティを含む3次元構造を与えるTO四面体のマトリックスによって形成されたミクロ多孔性の結晶材料である。ゼオライトの組成はさまざまであり、Tは、Si、Ge、Ti、B、Al、またはGaなどの正式な酸化状態が+3または+4の原子を一般的に表す。一部のT原子の酸化状態が+4未満である場合、形成される結晶性マトリックスは負の電荷を示すが、これはチャネルまたはキャビティ内に存在する有機または無機カチオンによって相殺される。
【0004】
ゼオライトは、製油所プロセス及び石油ストリームを操作するための他のプロセスにおいて幅広い用途で用いられてきた。一部のゼオライトの用途が本質的に触媒作用を利用したものであるのに対して、他の用途は、気体流中の分子を選択的に吸着するゼオライトの能力に着目したものである。
【0005】
気相流からの分子の選択的吸着の1つの例では、ゼオライトまたは別のミクロ多孔性材料を使用して、炭化水素または他の小さな気相有機分子を含むストリームから汚染物質を除去する。例えば、多くの天然ガスストリームには、目的のCH以外に少なくともいくらかのCOが含まれている。さらに、多くの製油所プロセスでは、標準温度及び圧力で気体であるCH及びCOなどのさまざまな種を含む気相出力が発生する。CHを含む気相ストリームに分離を行うことで、制御された条件下で不純物及びCOなどの希釈剤を除去することができる。その後、そのような不純物または希釈剤を、環境への温室効果ガスの損失を減らす別の用途に導くなど、他のプロセスに導くことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
COを含む多成分プロセスストリームからのCOの効果的な捕捉を可能とするゼオライト材料が当該技術分野で依然求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
一態様では、MERフレームワーク型ゼオライトを合成する方法であって、(a)(1)FAUフレームワーク型ゼオライトと、(2)カリウムカチオンの供給源と、(3)水酸化物イオンの供給源と、(4)水と、を含む反応混合物を与えることと、(b)FAUフレームワーク型ゼオライトをMERフレームワーク型ゼオライトに変換するのに十分な結晶化条件に反応混合物を曝すことと、を含む、方法が提供される。
【0008】
別の態様では、棒状の形態を有するカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトであって、カリウムがフレームワーク外の位置にKとして存在し、ゼオライトが、カリウム以外のフレームワーク外カチオンを本質的に含まない、MERフレームワーク型ゼオライトが提供される。
【0009】
さらなる態様では、プロセスフィードストリームからCOを分離するためのプロセスであって、(a)カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトを含む吸着床を、COと、CH及びNの少なくとも一方を含む第2の成分とを含むプロセスフィードストリームと、第1の圧力及び第1の温度で接触させることと、(b)吸着床に前記COの少なくとも一部を吸着させることと、(c)プロセスフィードストリームよりも体積%で低い濃度のCOを有するCO低下生成物ストリームを生成することと、(d)プロセスフィードストリームよりも体積%で高い濃度のCOを有するCO増加生成物ストリームを第2の圧力及び第2の温度で生成することと、を含みカリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトが棒状の形態を有し、カリウムがフレームワーク外の位置にKとして存在し、ゼオライトが、カリウム以外のフレームワーク外カチオンを本質的に含まない、プロセスが提供される。
【0010】
いっそうさらなる態様では、ガス状のプロセスフィードストリームからCOを分離するためのプロセスであって、(a)カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトで構成される膜の第1の面を、COと、CH及びNの少なくとも一方を含む第2の成分とを含むガス状のプロセスフィードストリームと、第1の圧力及び第1の温度で接触させることと、(b)膜を選択的に透過する成分からなり、プロセスフィードストリームよりも体積%でより高い濃度のCOを有する第1の透過物ストリームを、第2の圧力及び第2の温度で前記膜の第2の面から回収することと、(c)プロセスフィードストリームよりも体積%で低い濃度のCOを有する第1の保持物ストリームを回収することと、カリウム形態のMERフレームワーク型ゼオライトが棒状の形態を有し、カリウムがフレームワーク外の位置にKとして存在し、ゼオライトが、カリウム以外のフレームワーク外カチオンを本質的に含まない、プロセスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の生成物の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
図2】実施例1の生成物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
図3】異なる温度で得られた実施例1のMERフレームワーク型ゼオライト生成物のインサイチューの粉末XRDパターンを示す。
図4】100℃及び150℃でゼオライトを活性化させた実施例1のMERフレームワーク型ゼオライト生成物について303KでのCO、CH及びNの吸着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書で使用される「フレームワーク型」という用語は、Atlas of Zeolite Framework Types” by Ch. Baerlocher,L.B.McCusker and D.H.Olson(Elsevier,Sixth Revised Edition,2007)に記載される意味を有する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「MER型ゼオライト」という用語は、「MERフレームワーク型ゼオライト」という用語を包含し、これと同義であり、互換可能である。
【0014】
「合成された状態の」という用語は、任意選択の単離及び任意選択の精製及び任意選択の脱水の後、ゼオライトにその後のイオン交換または含浸法などの金属ドーピング処理が行われていない、その結晶化直後の形態にあるゼオライトを指す。
【0015】
「一次結晶」という用語は、凝集体と対照的に、単一の分割できない結晶を意味する。一次結晶は、(化学結合ではなく)弱い物理的相互作用を介して互いに付着して凝集体を形成することができる。「結晶」及び「微結晶」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0016】
「アスペクト比」という用語は、最大の微結晶寸法を最小の微結晶寸法で割った比として定義される。
【0017】
ゼオライトの合成
MERフレームワーク型ゼオライトは、一態様では、MERフレームワーク型ゼオライトを合成する方法であって、(a(1)FAUフレームワーク型ゼオライトと、(2)カリウムカチオンの供給源と、(3)水酸化物イオンの供給源と、(4)水と、を含む反応混合物を与えることと、(b)FAUフレームワーク型ゼオライトをMERフレームワーク型ゼオライトに変換するのに十分な結晶化条件に反応混合物を曝すことと、によって合成することができる。
【0018】
反応混合物は、モル比に関して、表1に示される範囲内の組成を有することができる。
【表1】
【0019】
FAUフレームワーク型ゼオライトは、ゼオライトYであってよい。ゼオライトは、そのアンモニウム形態、水素形態、またはアルカリ金属形態(例えば、NH -ゼオライトY、H-ゼオライトY、Na-ゼオライトY)であってよい)。FAUフレームワーク型ゼオライトは、2種以上のゼオライトを含むことができる。2種以上のゼオライトは、異なるシリカ対アルミナ比を有することができる。FAUフレームワーク型ゼオライトは、MERフレームワーク型ゼオライトを形成するための反応混合物中の唯一のシリカ及びアルミニウム源であってよい。
【0020】
カリウムカチオンには、通常、ゼオライトの形成にとって有害ではない任意のアニオンであってよいアニオンが会合している。代表的な陰イオンとしては、水酸化物、ハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物)、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩)などが含まれる。いくつかの態様において、カリウムカチオンの供給源は、水酸化カリウムを含むか、または水酸化カリウムである。
【0021】
反応混合物は、ゼオライトWなどのMERフレームワーク型ゼオライトのシードを、反応混合物の0.01~10,000重量ppm(例えば、100~5000重量ppm)の量で含むことができる。シード添加は、完全な結晶化が起こるために必要な時間を短縮するうえで有利となりうる。さらに、シード添加は、核形成及び/または任意の望ましくない相上の所望のモレキュラーシーブ相の形成を促進することによって得られる生成物の純度を高めることができる。
【0022】
上記の反応混合物からの所望のゼオライトの結晶化は、ポリプロピレン製ジャー、またはテフロン(登録商標)ライニングを有する、またはステンレス鋼製のオートクレーブなどの適当な反応容器中、静的、タンブルまたは撹拌条件下で、所定の温度(例えば、125℃~200℃、130℃~170℃、または140℃~160℃)で、使用温度で結晶化が起こるのに十分な時間(例えば、36~96時間、または36~72時間、または36~60時間まで)にわたって行うことができる。結晶化は通常オートクレーブ内で行われるため、反応混合物は自生圧力下に置かれる。
【0023】
所望のゼオライト結晶が形成された後、遠心分離または濾過などの標準的な機械的分離技術によって、反応混合物から固体生成物を回収することができる。回収された結晶は、水洗した後、乾燥し、合成された状態のゼオライト結晶を得ることができる。ゼオライト結晶は、高温(例えば、75℃~150℃)で数時間(例えば、約4~24時間)乾燥させることができる。乾燥ステップは、真空下または大気圧下で行うことができる。
【0024】
本発明のMERフレームワーク型ゼオライトは、吸着剤として使用される場合、少なくとも部分的に脱水(活性化)されなければならない。脱水は、ゼオライトを酸化的または不活性雰囲気(それぞれ空気または窒素など)中、大気圧、亜大気圧または超大気圧で、150℃~370℃の範囲の温度に30分から48時間加熱することによって行うことができる。脱水は、ゼオライト結晶を真空中に置くことにより、室温(例えば、20℃~25℃)で行うこともできるが、十分な量の脱水を得るにはより長い時間が必要とされる。
【0025】
場合により、結晶は、400℃~900℃(例えば、400℃~650℃)の温度で、約0.1~8時間(例えば、1~4時間)、か焼することができる。か焼温度に達するには、結晶を加熱するためのオーブンまたは他の装置の温度を、50℃、100℃、または別の便宜よい増分刻みで昇温することができる。結晶は、温度を所望の最終か焼温度に継続的に昇温させる前に、一定時間、各刻み温度で保持することができる。このような漸進的加熱は、結晶の損傷及び/または形態変化を低減/最小化しながら、水蒸気が結晶構造を出ることを可能とすることができる。
【0026】
ゼオライトは、か焼を行わずに本開示のプロセスで使用することもできる。
【0027】
ゼオライトの特性評価
本発明のMERフレームワーク型ゼオライトのSiO/Alのモル比は、4~10の範囲(例えば、4~7)であってよい。
【0028】
MERフレームワーク型ゼオライトは、その合成された状態の形態で、ゼオライト中にフレームワーク外金属として配置されたカリウムカチオンを含む。「フレームワーク外金属」とは、ゼオライト内部及び/またはゼオライト表面の少なくとも一部に位置し、ゼオライトのフレームワークを構成する原子を含まないものである。フレームワーク外カリウムカチオンの量は、反応混合物の組成及びゼオライトのフレームワークアルミニウム含有量を含む多くの因子に依存しうるが、ゼオライトの重量に基づいて無水物ベースで約5重量%以下(例えば、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、または約1重量%以下)であってよい。フレームワーク外カリウムカチオンの含有量は、ゼオライトの重量に対して、無水物ベースで少なくとも0.1重量%(例えば、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、または少なくとも約0.5重量%)とすることができる。
【0029】
MERフレームワーク型のゼオライトは、カリウム以外のフレームワーク外カチオン(例えば、有機カチオン、リチウム、ナトリウム及びルビジウムなどの非カリウムアルカリ金属カチオン、ならびにマグネシウム、カルシウム及びストロンチウムなどのアルカリ土類金属カチオン)を含まないか、または本質的に含まずともよい。本明細書で使用される場合、陽イオンに関して「本質的に含まない」という用語は、材料が検知できる量の特定のカチオンを有さないことを意味する。すなわち、特定のカチオンが、特に二酸化炭素を選択的に吸着する材料の能力に関して、材料の基本的な物理的及び/または化学的特性に影響を与える量で存在しないということである。例えば、ゼオライトは、ゼオライトの重量に基づいて、無水ベースで約0.1重量%未満(例えば、0.08重量%未満、0.05重量%未満、0.03重量%以下、0.01重量%未満、または検出可能な量なし)のフレームワーク外カリウムカチオンを含むことができる。
【0030】
本発明のMERフレームワーク型ゼオライトは、カリウムカチオンの他のカチオンへの合成後金属交換(例えば、イオン交換、含浸)を行うことなく使用することができる。
【0031】
本明細書に記載の方法に従って調製されたゼオライトの粉末XRDパターンは、MERフレームワーク型のゼオライトが示す粉末XRDパターンと一致する(すなわち、d間隔及び相対強度が、実質的に純粋なMERフレームワーク型ゼオライトのものに一致する)。MERフレームワーク型のゼオライトを表す粉末XRDパターンは、M.M.J.Treacy及びJ.B.Higginsによる“Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites”(Elsevier,Fifth Revised Edition,2007)で参照することができる。本明細書に示される粉末XRDパターンは、標準的な技術によって収集されたものである。放射線はCuKα放射線であった。θがブラッグ角度であるものとして、2θの関数としてのピークの高さ及び位置は、ピークの相対強度(バックグラウンドについて調整する)から読み取られ、記録された線に対応する平面間間隔であるdを計算することができる。
【0032】
粉末XRDは、特定のゼオライトの種類を確立するために使用することができるが、これは通常、特定の形態を区別するために使用することはできない。異なる形態を区別するために、異なる形態の結晶を識別するために使用できる顕微鏡写真法である走査型電子顕微鏡(SEM)などのより高い分解能を有する分析ツールを使用する必要が生じる場合がある。
【0033】
前述の合成法は、比較的凝集が少ない均一なサイズ及び形状のゼオライト結晶を生じることができる。一次結晶は、棒状または細長い形状を有することができる。一次結晶は、通常、少なくとも2(例えば、2~6)の平均アスペクト比を有する。平均アスペクト比は、下記に述べる顕微鏡法を使用して決定することができる。ゼオライト結晶は主として一次結晶(すなわち、凝集していない一次結晶)の形態であり、すなわち、ゼオライト結晶の少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも99%)は一次結晶の形態である。凝集していない一次結晶の割合(%)は下記に述べる顕微鏡法を使用して決定することができる。
【0034】
合成法は、平均結晶サイズが少なくとも1μm(例えば、1~10μm、1~9μm、1~8μm、1~7μm、1~6μm、1~5μm、2~10μm、2~9μm、2~8μm、2~7μm、2~6μm、または2~5μm)であるゼオライト一次結晶を生じることができる。結晶サイズは3次元結晶の最長の対角線の長さである。一次結晶の最小結晶寸法の平均サイズは、0.8~1.2μmの範囲(例えば、0.9~1.1μm)であってよい。
【0035】
結晶サイズの直接測定は、SEM及びTEMなどの顕微鏡法を使用して行うことができる。例えば、SEMによる測定では、材料の形態を高倍率(例えば、1000倍から10000倍)で調べることを行う。SEM法は、個々の粒子が1000倍~10,000倍の倍率で視野全体に適度に均一に広がるように、ゼオライト粉末の代表的な部分を適当なマウント上に分配することによって行うことができる。この母集団から、ランダムな個々の結晶の統計的に有意な試料(例えば、50~200個)を調べ、真っ直ぐな縁部の水平線に平行な個々の結晶の最長の寸法を測定して記録する(明らかに大きな多結晶凝集体である粒子は測定値に含めるべきではない)。これらの測定値に基づいて、試料の結晶サイズの算術平均を計算する。
【0036】
さらに、ゼオライト結晶は、例えば、一次結晶の少なくとも80%(少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)が棒状または細長い形態を有する実質的に棒状または細長い形態を有することができる。特定の形態を有する一次結晶の割合(%)は、例えばSEM顕微鏡写真に基づいてカウントすることにより決定することができる。
【0037】
本方法によって生成されるMERフレームワーク型ゼオライト結晶は、それらの大きくて均一なサイズのため、例えば、二酸化炭素とメタンなどの炭化水素との混合物から二酸化炭素を選択的に除去するための吸着剤として特に有用となりうる。
【0038】
プロセスフィードストリームからのCO の分離
MER型ゼオライトは、二酸化炭素(CO)及び第2のガス成分を含むガス状プロセスフィードストリーム中の第2の成分からCOを分離するために使用することができる。第2の成分は、メタン(CH)及び窒素(N)の少なくとも一方を含むことができる。
【0039】
適当なプロセスフィードストリームの一例として、石油生産現場で生産される天然ガスフィードなどの天然ガスフィードもしくは天然ガスストリーム、またはガス田もしくはシェールガス層からの天然ガスフィードもしくは天然ガスストリームがある。天然ガスフィードは、通常、メタン、場合によりC~C炭化水素などのいくらかのより大きな炭化水素、CO、及び場合によりN、HS、HO、及びメルカプタンなどの1つ以上のさらなる成分を含む。天然ガスフィードはまた、生産現場で天然ガスを抽出するためのプロセスの一環として導入される1つ以上の物質を含む場合もある。かかる物質の例としては、エチレングリコールなどのグリコール類、メチルジエチルアミンなどのアミン類、ジメチルジスルフィド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
適切なプロセスフィードストリームの別の例として、煙道ガスを挙げることができる。煙道ガスは、本明細書では、燃料(例えば、石炭、石油、天然ガス、バイオ燃料)の燃焼の結果として生成される燃焼生成物であると理解される。さまざまなプロセスが、COと、CHなどの小さな炭化水素とを含む煙道ガスを生成しうる。煙道ガスの供給源によっては、HS、H、N、HO、及び/または標準状態で気相である他の成分も含まれる場合がある。CO及びNなどの成分は、煙道ガスストリームの価値を下げる希釈剤として働く場合がある。
【0041】
適当なプロセスフィードストリームのさらに別の例として、バイオガスがある。有機物の分解によって生成するCO/CH混合物であるバイオガスは、従来の化石燃料源に取って代わる可能性のある再生可能な燃料源である。粗バイオガス混合物からのCOの除去は、この有望な燃料源をパイプライン品質のメタンにアップグレードする上で最も困難な側面の1つである。したがって、高い作業能力と最小限の再生エネルギーで高圧のCO/CH混合物からCOを選択的に除去する吸着剤の使用は、エネルギー分野における用途でバイオガスを天然ガスに代用するコストを大幅に削減する可能性を有する。
【0042】
いくつかの態様では、CO及び第2の成分(例えば、CH、N)の両方を含むストリーム中の少なくとも1つの他のガス成分から、スイング吸着プロセスでMER型ゼオライトを含む吸着剤を用いてCOを分離するためのプロセスが提供される。本明細書で使用される「スイング吸着プロセス」という一般的な用語は、圧力スイング吸着(PSA)プロセス、温度スイング吸着(TSA)プロセス、圧力パージ置換プロセス(PPSA)、急速サイクル圧力スイング吸着(RCPSA)プロセス、急速サイクル温度スイング吸着(RCTSA)プロセス、急速サイクル圧力パージ置換プロセス(RCPPSA)、及びこれらのスイング吸着プロセスの組み合わせを含むものとして解釈される。分離を行うためのストリームは、実質的にガス状の状態でプロセスに供給することができる。
【0043】
非常に大きい吸着量比を示すMER型ゼオライトをスイング吸着プロセスで使用することで、両方の成分を含むストリーム中の2番目の成分(CH、Nなど)からCOを効果的かつ経済的に分離することができる。これらのスイング吸着プロセスのそれぞれは、さまざまな吸着及び脱着ステップを含む数多くの「ステップ」で構成されており、これらのステップを組み合わせることで完全なスイング吸着「サイクル」が与えられ、このサイクルが周期的に繰り返される。通常は複数の吸着床が使用されるため、これらを適宜、時間的に同期させることで製品の連続生産が行われる。したがって、特定の吸着剤床での完全なスイング吸着サイクルは、供給ガス混合物を、吸着物を含まない、または実質的に吸着物を含まない吸着剤と最初に接触させることから始まり、吸着剤を、吸着物を含まない、または実質的に吸着物を含まない状態に再生する最後の脱着段階にまで続き、さらに、「サイクル」を開始した、フィードガス混合物と、吸着物を含まない、または実質的に吸着物を含まない吸着剤との最初の接触に「サイクル」を戻すためにその後に行うことができる任意のさらなる再加圧及び/またはパージステップを含む、行われる吸着及び脱着ステップのすべてを含む。この時点で、次のスイング吸着「サイクル」が開始され、その後このサイクルが繰り返される。
【0044】
一般的には、スイング吸着プロセスには、プロセスフィードストリームが吸着剤材料と接触させられる少なくとも1つの吸着ステップが存在する。本発明のスイング吸着の実施形態において本明細書で使用される同等の用語「プロセスフィードストリーム」または「インレットストリーム」とは、吸着サイクルにおいて吸着剤と接触させられる、分離しようとする少なくとも2つの成分を含む混合成分ストリームである。プロセスのこのステップにおいて、プロセスフィードストリームは特定のプロセス温度及び圧力条件下で吸着材料と接触し、プロセスフィードストリームが吸着材料を通じて流れる際にプロセスフィードストリームの「第1の成分」(または「強く吸着される成分」)の少なくとも一部が、「第2の成分」(または「弱く吸着される成分」)に対して選択的に吸着剤によって吸着される。このステップでは、スイング吸着プロセスに入る第1の成分の総モル数がスイング吸着プロセスから出る第1の成分の総モル数よりも多くなるような「流出物ストリーム」(または本明細書では「CO低下生成物ストリーム」)がスイング吸着プロセスから流出する。必須ではないが、プロセスフィードストリーム中の第1の成分のモル濃度は、流出物ストリーム中の第1の成分のモル濃度よりも高いことが好ましい。
【0045】
スイング吸着プロセスはまた、吸着剤によって選択的に吸着された第1の成分の少なくとも一部が、本明細書で「脱着ストリーム」(または「CO増加生成物ストリーム」)と称されるものに回収される少なくとも1つの脱着ステップも含む。このステップでは、スイング吸着プロセスのプロセス条件を変更することで第1の成分の少なくとも一部を吸着剤材料から脱着させ、「脱着ストリーム」として回収する。この脱着は、圧力スイング、温度スイング、分圧パージ置換ストリームの導入、またはそれらの組み合わせによって引き起こすことができる。好ましい実施形態では、脱着ストリーム中の第1の成分のモル濃度は、プロセスフィードストリーム中の第1の成分のモル濃度よりも高い。別の好ましい実施形態では、脱着ストリーム中の第1の成分のモル濃度は、流出物ストリーム中の第1の成分のモル濃度よりも高い。
【0046】
本開示のスイング吸着プロセスでは少なくともこれらの2つのステップ(すなわち、吸着及び脱着)が必要であるが、さらなるステップをスイング吸着プロセスで用いることができる。これらのステップは、同時パージステップ、向流パージステップ、及び/または複数の部分加圧または減圧ステップを含むことができる。これらのさらなるステップを用いて、第1及び/または第2の成分の回収率を高め、第1または第2の成分の純度を高め、及び/または上記の流出物ストリーム及び脱着ストリーム以外の複数の生成物ストリームを得ることができる。
【0047】
スイング吸着プロセスは、吸着剤材料がMER型ゼオライトで構成され、上記の「第1の成分」がCOであり、上記の「第2の成分」がCH及びNの少なくとも一方であるようなPSAプロセスとすることができる。このPSAプロセスでは、吸着ステップにおける第1の成分の分圧は、脱着ステップにおける第1の成分の分圧よりも高く、これにより、吸着された第1の成分の少なくとも一部が脱着ステップで回収され、吸着された成分が除去されることによって吸着剤材料が再生され、後続の吸着ステップで再利用される。これは、吸着剤材料を、脱着ステップで吸着ステップの分圧条件よりも低い分圧条件に曝すことによって一部実現される。この脱着は、上記に述べた脱着ステップ、パージステップ、部分加圧ステップ、または部分減圧ステップにおいてパージガスを用いて第1の成分の分圧を下げることによってさらに支援することができる。
【0048】
スイング吸着プロセスは、吸着剤材料がMER型ゼオライトで構成され、上記の「第1の成分」がCOであり、上記の「第2の成分」がCH及びNの少なくとも一方を含むようなTSAプロセスとすることもできる。TSAプロセスは、上記のPSAプロセスと同様に機能し、吸着ステップにおける第1の成分の分圧が、脱着ステップにおける第1の成分の分圧よりも高く、これにより、吸着された第1の成分の少なくとも一部が脱着ステップで回収され、吸着された成分が除去されることによって吸着剤材料が再生され、後続の吸着ステップで再利用される。しかしながら、TSAプロセスでは、これは、吸着剤材料を、脱着ステップで、吸着ステップの温度条件よりも高い温度条件に曝すことによって一部実現される。この脱着は、上記に述べた脱着ステップ、パージステップ、部分加圧ステップ、または部分減圧ステップにおいてパージガスを用いて第1の成分の分圧を下げ、及び/または吸着剤材料の加熱を与えることによってさらに支援することができる。
【0049】
また、PSAプロセスとTSAプロセスの各ステップを組み合わせることができる点にも留意されたい。これらの複合プロセスでは、圧力及び温度の両方の変化、すなわち「スイング」がプロセスの吸着ステップと脱着ステップの間に行われ、PSA/TSAプロセスの入口に供給される混合成分フィードストリームの第2の成分から第1の成分の少なくとも一部が望ましく分離される。
【0050】
MER型ゼオライトは、多くの構造形態で、及び/または追加成分と組み合わせて、吸着スイングプロセスに組み込むことができる。MER型ゼオライトは、実質的に均一な寸法の好ましいサイズ及び形状の微結晶として、または好ましい分布に従った適当な分布を有する寸法で組み込むことができる。微結晶は、合成ステップで生成された状態で直接使用するか、またはより好ましくはより大きな凝集体に配合するか、構造化されたもしくはマトリックス材料中に組み込むことで形態、安定性を与えることができ、及び/またはプロセス全体に対する他のさまざまな他の有益な機能を満たすことができる他の相補的な共吸着材料と組み合わせて使用することができる。例としては、MER型ゼオライトをバインダー材料とともに配合することで、結晶性ポリマー、非結晶性ポリマー、エポキシ、熱可塑性樹脂、粘土、シリカ含有材料、アルミナ含有材料、及びチタニア含有材料から選択される結合剤材料を含むマトリックスを形成することが含まれる。バインダー材料はまた、ミクロ多孔性またはメソ多孔性構造のいずれかを呈してもよい。さらに、このバインダー材料に適当に選択された添加剤を加えることが有利な場合もある。これらの添加剤は、ZIF材料中の選択された成分の吸着/脱着及び輸送特性を改善するために用いることができる。これらのさらなる添加剤の例としては、ゼオライト、ならびに純粋なケイ酸塩、シリコアルミノホスフェート、及びアルミノホスフェートなどのミクロ多孔性結晶材料が含まれる。金属または他の高熱容量及び高熱伝導性材料などの他の添加剤をマトリックスに組み込むことで、スイング吸着プロセスの発熱吸着ステップ(複数可)で発生する熱の少なくとも一部の捕捉及び伝達を助け、それにより、サイクリングプロセスの時間を短縮し、スループットを増大させ、選択した1つ以上の成分(複数可)を吸着するMER型ゼオライトの全体的な効率をさらに向上させることができる。
【0051】
MER型ゼオライトがバインダーとともに配合される場合、吸着剤材料を最適な幾何学的形状に配合するか、または支持基材に塗布することができ、それにより、吸着剤の耐久性及び選択した吸着成分とMER型ゼオライトの吸着部位との接触速度をさらに向上させることができる。例としては、ビーズ、押出成形物、形成されたペレット、構造化床、モノリス及び中空繊維、ならびにプレートまたはモノリシック構造繊維もしくは中空繊維に塗布されたコーティングが挙げられる。特定の状況、インレットストリームの組成、ならびに生成物ストリームの組成、プロセス条件、及び装置の設計に応じて、特定の構造及び/またはマトリックスの組成によって、プロセス全体の分離効率及び/または選択性を向上させることができる。
【0052】
MER型ゼオライトは、0.03~35MPaの範囲のガス供給圧力(例えば、0.69~14MPa、または1.7~10MPa)のPSA、PPSA、RCPSA、RCPPSA、TSA、または複合サイクル条件において使用することができる。作動ガス供給温度は、-18℃から399℃の範囲(例えば、38℃~316℃、または66℃~260℃)とすることができる。
【0053】
他の態様では、MER型ゼオライトは、COを第2の成分(例えば、CH、N)から選択的に分離するための膜プロセスに、これらの成分の混合物を含むストリーム中で組み込むことができる。MER型ゼオライトは、無機基材またはポリマー材料に組み込むか、またはその表面にコーティングして、膜分離プロセスで用いることができ、それにより、「MER含有膜」が与えられる。膜のMER型ゼオライトは、第2の成分よりもCOに対して正味の透過親和性を有している。浸透速度は、通常、1つはMER型ゼオライトへの混合物の各成分の拡散速度に関連し、もう1つはMER型ゼオライトへの混合物の各成分の吸着量に関連する2つの相乗的係数によって説明することができる。この後者の係数に関して、第2の成分よりもCOに対してより高い吸着量比を有する膜に組み込まれたMER型ゼオライトは、膜表面(膜表面にコーティングされる場合)及び/または膜内(膜マトリックスに組み込まれる場合)のいずれかでCOの濃度勾配を改善する。この改善された濃度勾配は、第2の成分CHと比較して膜を通じたCOの選択的浸透性を高め、膜透過物ストリーム中へのCOの回収率の向上をもたらす。
【0054】
この実施形態では、COと第2の成分を含むプロセスフィードストリームは、MER型ゼオライト膜の第1の面に接触し、プロセスフィードストリームの少なくとも一部は膜を透過して膜材料の第2の面から透過物ストリームとして回収される。透過物ストリームは膜の第2の面から得られ、そのようにして得られた透過物ストリームは、プロセスフィードストリームよりも高い体積%のCOを有する。本発明の膜プロセスの実施形態において本明細書で使用される同等の用語「プロセスフィードストリーム」または「インレットストリーム」とは、MER含有膜の第1の面と接触させられる、分離しようとする少なくとも2つの成分を含む混合成分ストリームである。いくつかの実施形態において、本開示の膜分離プロセスにおいて、「掃引ストリーム」を、MER含有膜の透過面に用いることができる点に留意されたい。本明細書で使用される「透過物ストリーム」という用語及びその組成特性は、MER含有膜を透過するストリームの組成のみに基づいて測定される点にも留意されたい。掃引ストリームなどのさらなるストリームが膜プロセスの透過面に加えられる場合、この掃引ストリームの組成を透過物ストリームの組成分析から除外する必要がある。
【0055】
最初に膜に接触するプロセスフィードストリームよりも低い体積%のCOを有する、少なくとも1つの保持物ストリームも膜の第1の面から得られる。このようにして、各成分の分離が行われ、膜分離プロセスに供給される元の混合ストリームよりも、2つの分離されたストリーム(すなわち、保持物ストリーム及び透過物ストリーム)の価値が高くなる。好ましい実施形態では、膜プロセスで用いられるMER型ゼオライトは、第2の成分に対するCOの吸着量比が、少なくとも約10(例えば、少なくとも20、または少なくとも約25)である。
【0056】
膜は非対称とすることができ、異なる材料のいくつかの層で構成することができる。これらの非対称膜構造の物質移動特性を改善するために、これらの層のうちの1つ以上を多孔性材料とすることができる。薄い選択層が非対称膜構造における分子選択性の大部分を与えるが、この選択層はMER型ゼオライトを含有することができる。供給側では分子が選択層に選択的に吸着され、透過側では分子が脱着される。選択的MER含有層は、場合により他の材料を含むことができる。MER含有層中に存在しうる材料の1つにポリマーがある。MER含有層が10体積%超の別の材料を含む場合、選択層は混合マトリックスと呼ばれる。選択層の欠陥またはピンホールの影響を軽減するため、修復コーティングまたは修復層を膜構造に組み込むことができる。
【0057】
MER含有膜は、圧力ハウジングを含む膜モジュールの一部とすることができる。膜モジュールに組み込むことができるMER含有膜構造の例としては、中空糸膜構造、フラットシート膜構造、及びモノリシック膜構造がある。膜モジュールは、モジュールの保持物区画と透過物区画とを隔離し、フローバイパスまたは透過物ストリーム(複数可)への保持液ストリーム(複数可)の交差汚染を防止するためのシールを含むことができる。シールはまた、膜モジュール内の所定の位置に膜を保持するための装置としても機能しうる。
【0058】
ガス精製は、ガス混合物を25℃~200℃の温度及び345kPa~34.5MPaの圧力で膜に通すことによって行うことができる。
【0059】
混合物から2つの成分を分離するには、第1の成分の吸着容量(例えば、mol/kgの単位)は、第2の成分の吸着容量(例えば、mol/kgの単位)よりも大きくなければならない。
【0060】
当該技術分野で理解されるように、材料のある成分の別の成分に対する吸着量比、例えば、成分Bに対する成分Aの吸着量比は、成分A及び成分Bについて材料の取り込み容量(例えば、mol/kgの単位)を同様の温度で別々に測定することによって決定することができる。成分Bに対する成分Aの吸着量比=(成分Aの取り込み容量/成分Bの取り込み容量)。MER型ゼオライトは、(i)CHに対するCO、及び/または(ii)Nに対するCOについて、10℃~50℃(例えば、30℃)で少なくとも1(例えば、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、1~50、5~50、10~40、または15~30)の吸着量比を有することができる。
【0061】
例えば、150℃以上の活性化温度で少なくとも部分的に脱水されたものなど、本明細書に記載の方法によって調製されたMER型ゼオライトは、固有のCO収着用量を有しうる。例えば、30℃の温度を含む条件下では、MER型ゼオライトは、(i)1バール(100kPa)のCO分圧でMER型ゼオライト1キログラム当たり少なくとも2.0molのCO(例えば、少なくとも2.1mol/kg)、(ii)2バール(200kPa)のCO分圧でMER型ゼオライト1キログラム当たり少なくとも2.0molのCO(例えば、少なくとも2.1mol/kg、少なくとも2.2mol/kg、または少なくとも2.3mol/kg)、及び/または(iii)3バール(300kPa)のCO分圧でMER型ゼオライト1キログラム当たり少なくとも2.0molのCO(例えば、少なくとも2.1mol/kg、少なくとも2.2mol/kg、または少なくとも2.3mol/kg)を収着することができる。COの収着容量には必ずしも上限はないが、本明細書に記載される分圧では、MER型ゼオライトは通常、最大約3mol/kgのCOを収着することができる。
【0062】
本開示の分離プロセスによって生成されるCO増加ストリームは、少なくとも75体積%(例えば、少なくとも85体積%)のCO含有量を有することができる。CO低下生成物ストリームは、5体積%(例えば、2体積%未満)のCO含有量を有することができるが、これは、CO低下ストリームが排気ストリームとして大気に放出される場合に特に有益となりうる。
【0063】
本開示のプロセスによって生成されたCO増加ストリームは、地下層内で高圧でさらに隔離することができる。「隔離された」という用語は、本明細書では、少なくとも3.45MPaの圧力の地下構造物、または貯蔵所、または深海における少なくとも50体積%のCOを含有する廃棄物ストリームの封じ込めとして定義される。輸送コストを最小限に抑えるため、地下層は、天然ガスの生産現場の近くに配置されることが望ましい。COの隔離に適した地下層には、注入成分、石油備蓄、ガス備蓄、除去済み石油備蓄、及び除去済みガス備蓄の顕著な損失を防ぐトップシールを備えた帯水層が含まれる。
【実施例
【0064】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることを意図したものである。
【0065】
実施例1
2.77gの脱イオン水、1.49gの45%KOH溶液、及び1.80gのCBV300Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International、SiO/Alモル比=5.1)をテフロン(登録商標)ライナー中で混合した。得られたゲルを均一になるまで撹拌した。次に、ライナーに蓋をして、Parr鋼製オートクレーブ反応器内に入れた。次にオートクレーブをオーブンに入れ、150℃で2日間加熱した。固体生成物を遠心分離により回収し、脱イオン水で洗浄し、95℃で乾燥させた。
【0066】
合成された状態の生成物の粉末XRDは、図1に示されるパターンを示し、生成物が純粋なMER型ゼオライトであることを示した。合成された状態の生成物のSEM画像が図2に示され、棒状の形態を呈する結晶の均一な視野を示している。従来のMER型ゼオライト結晶は、通常、針状の形態を示す。
【0067】
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)で測定した生成物のSiO/Alモル比は4.8であった。
【0068】
実施例2
実施例1のMER型モレキュラーシーブ製品についてインサイチューの高温粉末XRDデータを収集した。粉末XRDパターンは最初に30℃で収集し、その後、630℃の温度に達するまで50℃刻みで収集した。試料を630℃から30℃に冷却した後、最終的な粉末XRDパターンを収集した。図3は、異なる温度で得られた実施例1のMER型モレキュラーシーブ製品のインサイチューの粉末XRDパターンを示す。図3に示されるインサイチューの粉末XRDパターンは、温度が130℃を超えると試料が相転移を起こし、相転移が試料の冷却時に可逆的であることを示している。
【0069】
実施例3
CO、CH、及びNに対する実施例1のK-MERモレキュラーシーブの吸着容量を、高圧容積分析装置(HPVA)200-4ポート容積測定システムを使用して試験した。測定に先立って、真空下でモレキュラーシーブを脱気した(例えば、約0.01torr以下)。
【0070】
図4は、100℃及び150℃でゼオライトを活性化させた実施例1のMERフレームワーク型ゼオライト生成物について303KでのCO、CH及びNの吸着等温線を示す。実施例2に記載されるような転移が起こらないと予想される100℃の活性化温度では、COの吸着等温線は、小孔ゼオライトに典型的な吸着容量を示している。実施例に記載のような相転移が起こると予想される150℃の活性化温度では、COの吸着等温線に顕著な変化がみられ、CO吸着の改善を示したが、CH及びNの等温線は大きな変化を示さなかった。
【0071】
本発明のK-MER型モレキュラーシーブで観察された改善されたCO吸着特性を利用して一般的な圧力スイング吸着プロセスでCOをより容易に回収することができる。飽和容量は高いが、低圧の吸着領域が約1桁高い分圧で生じることから、吸着ベースの分離プロセスの再生プロセスにおけるエネルギーコスト(例えば、機械的、熱的な)の節約を実現することが可能である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】