(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】特定のN置換イミダゾリジノンペンダント官能基を有するポリマー
(51)【国際特許分類】
C08C 19/22 20060101AFI20221005BHJP
C07D 233/34 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08C19/22
C07D233/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507467
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 FR2020051439
(87)【国際公開番号】W WO2021023948
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト-ディ-ドミニク フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ガンダー ソフィー
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100BA02H
4J100BA27H
4J100BA37H
4J100CA31
4J100HB06
4J100HB09
4J100HB36
4J100HB61
4J100HC27
4J100HC59
4J100HC78
4J100HD08
4J100HE17
4J100HG31
4J100JA29
(57)【要約】
本発明は、初期ポリマーの少なくとも1つの不飽和鎖に、少なくとも1つの式(I)の化合物をグラフトすることにより得られる、変性ポリマーに関する:
[式中、
Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
Eは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期ポリマーの少なくとも1つの不飽和鎖に、少なくとも1つの式(I)の化合物をグラフトすることにより得られる、変性ポリマー:
【化1】
[式中、
Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
Eは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表す。]
【請求項2】
前記初期ポリマーがエラストマー、好ましくはジエンエラストマーである、請求項1に記載の変性ポリマー。
【請求項3】
前記初期ポリマーが、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の変性ポリマー。
【請求項4】
前記基Aが、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたC
6~C
14アレーンジイル環である、請求項1~3のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、式(Ia)及び(Ib)の化合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の変性ポリマー:
【化2】
[式中、
式(Ia)のR
1~R
5から選択される基及び式(Ib)のR
1~R
7から選択される基は、以下の式(II)の基を表し、
【化3】
(II)
[式中、E及びXは請求項1で定義したとおりである。]
同一の又は異なった、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
5から選択される式(Ia)の4つの基及び式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
7から選択される式(Ib)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖を表す。]
【請求項6】
前記基Eが、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素原子により任意に中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C
1~C
24、好ましくはC
1~C
10、より優先的にはC
1~C
6炭化水素鎖である、請求項1~5のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が、前記式(Ib)の化合物である、請求項5及び6のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【請求項8】
前記式(I)の化合物が、以下の式(III)の化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【化4】
(III)
【請求項9】
前記初期ポリマーの少なくとも1つの他の不飽和鎖に、少なくとも1つの式(V)の化合物をグラフトすることにより更に得られることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の変性ポリマー:
【化5】
(V)
[式中、
A
1は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
E
1は、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表す。]
【請求項10】
前記式(V)の化合物の前記基A
1が、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたC
6~C
14アレーンジイル環である、請求項9に記載の変性ポリマー。
【請求項11】
前記式(V)の化合物が、式(Va)及び(Vb)の化合物から選択される、請求項9及び10のいずれか一項に記載の変性ポリマー:
【化6】
[式中、
式(Va)のR
8~R
12から選択される基、及び、式(Vb)のR
8~R
14から選択される基は、以下の式(VI)の基を表し、
【化7】
(VI)
[式中、E
1は請求項9で定義したとおりである。]
同一の又は異なった、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
12から選択される式(Va)の4つの基、及び、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
14から選択される式(Vb)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖を表す。]
【請求項12】
前記式(V)の化合物の前記基E
1が、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素原子により任意に中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C
1~C
24、好ましくはC
1~C
10、より優先的にはC
1~C
6炭化水素鎖である、請求項9~11のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
【請求項13】
前記式(V)の化合物が前記式(Vb)の化合物である、請求項11及び12のいずれか一項に記載の変性ポリマー。
【請求項14】
前記式(V)の化合物が、以下の式(VII)の化合物である、請求項9~13のいずれか一項に記載の変性ポリマー:
【化8】
(VII)
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの変性ポリマーと、少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非結合窒素含有基により変性された新規のポリマー、特にジエンエラストマーに関する。上記新規の変性ポリマーは、具体的には、特に、タイヤ製造用のゴム組成物で用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物から製造される物体、特にタイヤの工業分野において、ポリマーと補強充填剤との混合物が多くの場合用いられる。このような組成物が良好な特性を示すようにするために、これらのポリマー内での、補強充填剤の分散の改善手段が引き続き調査されている。これは、これらのポリマー内での、これらの充填剤の良好な分散が多くの場合、低ヒステレシスと同義であり、故に、これらのゴム組成物がタイヤで用いられる場合における、転がり抵抗の改善と同義であるためである。
しかし、燃料の節約、及び、環境保護の必要性が優先となっているため、転がり抵抗の改善は、タイヤ製造における、現在進行中の課題である。
ヒステレシスを低下させる目標を達成するために、多くの解決策が提案されてきた。
特に、重合終了時における、ポリマー、特にジエンエラストマーにおける、変性剤による構造の改変への言及を行うことができ、この目的は、このように変性されたポリマーと補強充填剤(カーボンブラックであるか、又は、シリカなどの補強無機充填剤であるかを問わない。)との良好な相互作用を達成することである。例えば、鎖末端においてシラノール基により官能化された、ジエンポリマーの使用について記載している、欧州特許第0 778 311 B1号明細書への言及を行うことができる。より最近では、特許出願第2009/077837A1号明細書が、一方の鎖末端がシラノール基により、他の鎖末端がアミノ基により官能化されたエラストマーについて記載している。これらの変性ポリマーは、ヒステリシスの低下に効果的である。
しかし、タイヤ製造では依然として、ゴム組成物のヒステリシスを低下させることが追求されている。
この理由のために、ヒステリシスが低下したゴム組成物を得るための、ポリマー、特にジエンエラストマーを変性させるための他の反応についての調査研究が実施されている。これに関し、窒素含有結合基を有する化合物であって、当該窒素含有結合基が、ゴム組成物で使用するポリマーを変性するために、水素結合を介して互いに結合可能とすることができる、少なくとも1つの単位を含む、化合物の使用についての言及をすることができる。非置換のイミダゾリジノン官能基を有するこれらの変性ポリマーは、国際出願第2019/007884A1号明細書の文書に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
しかし、タイヤメーカーの間では、ゴム組成物のヒステリシスを、依然として更に低下させ続けることが現在必要とされており、これが本発明の目的となっている。
この目標は、驚くべきことに、出願企業が、調査研究の間に、N置換イミダゾリジノン型の、非連結窒素含有基を含む変性剤により変性されたポリマー、特にジエンエラストマーが、当該ポリマーを含有する組成物に、ヒステリシスの予想外の低下を付与することを発見したという点で達成される。
【0004】
本発明の主題は、初期ポリマーの少なくとも1つの不飽和鎖に、少なくとも1つの式(I)の化合物をグラフトすることにより得られる、変性ポリマーである:
【化1】
式中、
Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
Eは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表す。
本発明の変性ポリマーは、当該ポリマーの鎖に沿ってペンダントな、少なくとも1つのN置換イミダゾリジノン基、即ち、非連結窒素含有基を含む。本発明の変性ポリマーは、当該ポリマーを含有する組成物に、ヒステリシスの著しい低下、即ち、転がり抵抗性能の改善を付与する利点を示す。
【0005】
本発明の別の主題は、上述した変性ポリマーと、少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物に関する。
本発明の別の主題は、上記初期ポリマーの少なくとも1つの他の不飽和鎖に、少なくとも1つの式(V)の化合物をグラフトすることにより更に得られることを特徴とする、上述した変性ポリマーに関する:
【化2】
(V)
式中、
A
1は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
E
1は、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表す。
本発明の本変性ポリマーは、当該ポリマーの鎖に沿ってペンダントな、少なくとも1つのN置換イミダゾリジノン基、即ち、非連結窒素含有基、及び、当該ポリマーの鎖に沿ってペンダントな、少なくとも1つの非置換イミダゾリジノン基、即ち、連結窒素含有基を含む。本発明の変性ポリマーは、驚くべきことに、当該ポリマーを含有する組成物に、そのままの剛性/ヒステリシス妥協の改善を付与する利点を示す。
本発明の別の主題は、上述した少なくとも1つの変性ポリマーと、少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物に関する。
【0006】
本発明の第1の主題は、初期ポリマーの少なくとも1つの不飽和鎖に、少なくとも1つの式(I)の化合物をグラフトすることにより得られる、変性ポリマーに関する:
【化3】
式中、
Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
Eは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表す。
本発明の変性ポリマーは、当該ポリマーの鎖に沿ってペンダントな、少なくとも1つのN置換イミダゾリジノン基、即ち、非連結窒素含有基を含む。本変性ポリマーは、当該ポリマーを含む組成物に、ヒステリシスの低下、即ち、転がり抵抗性能の改善を付与する利点を示す。
【0007】
本文書では、明示的に別の方法で示されない限り、表示する百分率(%)は全て、重量百分率(%)である。
更に、「aとbとの間」という表現により表される値のあらゆる間隔は、aより大きく、bより小さい(即ち、範囲a及びbは除外される)にまたがる値の範囲を表す一方で、「a~b」という表現により表される値のあらゆる間隔は、aからbまで(即ち、厳密な範囲a及びbを含む)にまたがる値の範囲を意味する。
明細書で言及する化合物は、石油由来であるか、又は生物由来であることができる。後者の場合、化合物は、部分的に又は完全に、バイオマスに由来することができるか、又は、バイオマスに由来する再生可能な出発材料から入手することができる。
用語「連結基」とは、水素、イオン、及び/又は疎水性結合を介して、特に互いに連結可能な基を意味することが理解される。本発明の好ましい形態に従うと、連結基は、水素結合により連結可能な基である。連結基が、水素結合を介して連結可能である場合、各連結基は、少なくとも1つのドナー部位と、水素結合を受け入れる1つの部位とを含むのが好ましく、これにより、2つの同一の連結基が自己相補的であり、少なくとも2つの水素結合の形成により、連結することができる。本発明に従った連結基はまた、水素、イオン、及び/又は疎水性結合を介して、充填剤、具体的には補強充填剤、及び特に、シリカなどの補強無機充填剤に存在する官能基とも連結可能である。
用語「非連結基」とは、水素、イオン、及び/又は疎水性結合を介して、特に互いに連結不可能な基を意味することが理解される。好ましくは、非連結基は、水素結合により連結不可能な基である。これらの基は、ドナー部位、及び、水素結合を受け入れる部位を含まないため、これらの同一の基はいずれも、自己相補的ではない。これらの基は、少なくとも2つの水素結合の形成により、連結することができない。
別で言及しない限り、用語「へテロ原子」とは、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子からなる群から選択される原子を意味することが理解される。
「をグラフトすることにより得られる変性ポリマー」、又は、「をグラフトすることにより変性されるポリマー」という用語は、ポリマーの鎖に導入されている官能基、特に、N置換イミダゾリジノン官能基を含むポリマーを意味することが理解される。実際に、変性ポリマーは、置換Nイミダゾリジノン官能基を有し、かつ、共有結合を形成可能な官能基を有する少なくとも1つの化合物を、ポリマーの不飽和鎖とグラフト反応させること(この官能基はニトリルオキシドである。)により得られる。グラフト反応の間に、グラフトされる化合物のニトリルオキシド官能基(複数可)は、ポリマーの不飽和鎖(複数可)と、共有結合を形成する。
既知の方法では、ポリマーは一般的に、少なくとも1つの主たるポリマー鎖を含む。このポリマー鎖は、文書“Glossary of Basic Terms in Polymer Science” (IUPAC Recommendations 1996), PAC, 1996, 68, 2287, p. 2294で言及されているように、ポリマーの他の鎖全てがペンダント鎖とみなされるときに、主たるものと説明されることができる。
【0008】
用語「不飽和」とは、2つの炭素原子間での複数の共有結合を意味することが理解され、この複数の共有結合は、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合、好ましくは炭素-炭素二重結合であることができる。
本発明の意味の中では、用語「初期ポリマー鎖」とは、グラフト反応前のポリマー鎖を意味することが理解され、この鎖は、以下に説明するようなニトリルオキシド官能基を有する化合物と反応することができる、少なくとも1つの不飽和、より優先的には、少なくとも2つの不飽和を含む。初期ポリマーは故に、グラフト反応の間に出発反応物質として作用するポリマーである。グラフト反応により、初期ポリマーから出発して、変性ポリマーを得ることが可能となる。
【0009】
好ましくは、この初期ポリマーはエラストマーであり、より優先的には依然として、ジエンエラストマーである。
「ジエン」エラストマー(又は区別なく、ゴム)は、天然であるか自然であるかにかかわらず、既知の方法で、少なくとも部分的には、ジエンモノマー単位(2つの共役、又は非共役炭素-炭素二重結合を有するモノマー)からなるエラストマー(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味するものとして理解されなければならない。
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー:「本質的に不飽和」、又は「本質的に飽和」に分類することができる。「本質的に不飽和」とは一般に、ジエン由来(共役ジエン)の単位の含有量が15%(mol%)より大きい、共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られる、ジエンエラストマーを意味することが理解され、故にこれは、ブチルゴムなどのジエンエラストマー、又は、ジエンとEPDM型のα-オレフィンとのコポリマーは、上述の定義に含まれず、具体的には、「本質的に飽和した」ジエンエラストマー(常に15%未満の、低い、又は非常に低い、ジエン由来の単位の含有量)と説明可能であるということである。
本発明の文脈で使用可能なジエンエラストマーは、具体的には、
4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンモノマーの、任意のホモポリマー;
4~18個の炭素原子を有する、共役又は非共役ジエンと、少なくとも1つの他のモノマーとの、任意のコポリマー
を意味するものと理解される。
【0010】
他のモノマーは、エチレン、オレフィン、又は、共役若しくは非共役ジエンであることができる。
4~12個の炭素原子を有する共役ジエン、特に1,3-ジエン、具体的には、1,3-ブタジエン及びイソプレンなどが、共役ジエンとして好適である。
1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、又はジシクロペンタジエンなどの、6個~12個の炭素原子を有する非共役ジエンが、非共役ジエンとして好適である。
8~20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、及び、3~12個の炭素原子を有する脂肪族α-モノオレフィンが、オレフィンとして好適である。
例えば、スチレン、オルト-、メタ-、又はパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」商用混合物又はパラ-(tert-ブチル)スチレンが、ビニル芳香族化合物として好適である。
特に、3~18個の炭素原子を有する、非環式脂肪族α-モノオレフィンが、脂肪族α-モノオレフィンとして好適である。
【0011】
より具体的には、ジエンエラストマーは、
共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、具体的には、4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合により得られる、任意のホモポリマー;
1つ以上の共役ジエンの互いの共重合、又は、1つ以上の共役ジエンの、8~20個の炭素原子を有する1つ以上のビニル芳香族化合物との共重合により得られる、任意のコポリマー;
イソブテン、及びイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、及びまた、この種のコポリマーのハロゲン化版、具体的には、塩素化又は臭素化版;
1つ以上の共役又は非共役ジエンのエチレン、α-モノオレフィン、又はそれらの混合物、例えば、エチレン、上述の種の共役ジエンモノマーを含むプロピレンから得られる、エラストマーなどとの共重合により得られる、任意のコポリマー
であることができる。
【0012】
優先的には、初期ポリマーは好ましくは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及び、これらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。
優先的には、初期ポリマーは好ましくは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、エチレン/ブタジエンコポリマー(EBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)又はイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム-IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、及び、これらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。
優先的には、初期ポリマーは好ましくは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、及びこれらのゴムの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。
優先的には、初期ポリマーは好ましくは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。
より優先的には、初期ポリマーは好ましくは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及び、これらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。
優先的には、初期ポリマーは好ましくは、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。
より優先的には、初期ポリマーは、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及び、これらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。
【0013】
好適なのは、ポリブタジエン、具体的には、4%と80%との間の1,2-単位の含有量(mol%)を有するもの、又は、80%を超えるcis-1,4-単位の含有量(mol%)を有するもの;ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、及び具体的には、0℃と-90℃との間、より具体的には-10℃と-70℃との間のTg(ガラス転移温度(Tg、ASTM D3418-08に従い測定)、1重量%と60重量%、より具体的には20重量%と50重量%との間のスチレン含有量、4%と75%との間のブタジエン部の1,2-結合の含有量(mol%)、及び、10%と80%との間のtrans-1,4-結合の含有量(mol%)を有するもの;ブタジエン/イソプレンコポリマー、及び特に、5重量%と90重量%との間のイソプレン含有量、及び-40℃と-80℃との間のTgを有するもの;又は、イソプレン/スチレンコポリマー、及び特に、5重量%と50重量%との間のスチレン含有量、及び-5℃と-50℃との間のTgを有するものである。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、5重量%と50重量%との間、より具体的には、10%と40%との間のスチレン含有量、15重量%と60重量%、より具体的には20重量%と50重量%との間のイソプレン含有量、5重量%と50重量%との間、より具体的には、20%と40%との間のブタジエン含有量、4%と85%との間のブタジエン部の1,2-単位の含有量(mol%)、6%と80%との間のブタジエン部のtrans-1,4-単位の含有量(mol%)、5%と70%との間のイソプレン部の1,2-単位及び3,4-単位の含有量(mol%)、並びに、10%と50%との間のイソプレン部のtrans-1,4-単位の含有量(mol%)を有するもの、並びに、より一般には、-5℃と-70℃との間のTgを有する、任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に好適である。
本発明との関係において使用可能な初期ポリマー、好ましくはエラストマー、より優先的にはジエンエラストマーは、使用する重合条件に応じて、任意の微細構造を有することができる。これらのポリマーは例えば、ブロック、ランダム、連続、又は微細連続ポリマーであることができ、分散液、エマルション、又は溶液中で調製することができる。これらは、例えば、ポリマー鎖を互いに接続するケイ素又はスズ原子により、結合及び/又は星状分岐することができる。
【0014】
上で見たように、初期ポリマー、好ましくはエラストマー、より優先的には、依然としてジエンエラストマーは、変性剤とも呼ばれる式(I)の化合物をグラフトすることにより、変性される:
【化4】
式中、
Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
Eは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表す。
Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表す。
本発明の意味の中では、用語「アレーンジイル環」とは、2つの水素原子が取り除かれているアレーンに由来する、単環式又は多環式芳香族炭化水素基を意味することが理解される。アレーンジイル環は故に、二価の基である。
本発明の意味の中では、用語「単環式又は多環式芳香族炭化水素基」とは、主鎖が炭素原子からなる、1つ以上の芳香環を意味することが理解される。言い換えれば、環の主鎖の中にヘテロ原子は存在しない。アレーンジイル環は単環式である、即ち、単環からなるか、又は多環である、即ち、いくつかの縮合した芳香族炭化水素環からなることができ、このような縮合環は次いで、少なくとも2つの連続した炭素原子を共有する。これらの環は、オルト縮合、又はオルト及びペリ縮合であることができる。
好ましくは、アレーンジイル環は、6~14個の炭素原子を含む。
【0015】
アレーンジイル環は非置換であるか、部分的に置換されているか、又は完全に置換されていることができる。1つ又は2つ又はそれ以上の水素原子(ただし、全ての原子ではない)が、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換された、1つ又は2つ又はそれ以上の、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により置換されている場合に、アレーンジイル環は部分的に置換される。上記鎖は、置換基ともまた呼ばれる。水素原子全てが上記鎖で置換されている場合、アレーンジイル環は完全に置換される。アレーンジイル環の置換基は、同一であるか、互いに異なっていることができる。
好ましくは、アレーンジイル環が、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されている場合、この鎖、又はこれらの鎖は、N置換イミダゾリジノン官能基、及びニトリルオキシドに対して不活性であることができる。
【0016】
本発明の意味の中では、「N置換イミダゾリジノン官能基、及びニトリルオキシドに対して不活性である炭化水素鎖」という用語は、上記N置換イミダゾリジノン官能基とも、上記ニトリルオキシドとも反応しない炭化水素鎖を意味することが理解される。故に、上記N置換イミダゾリジノン官能基、及び上記ニトリルオキシドに対して不活性である上記炭化水素鎖は、好ましくは、上記官能基又は上記基と反応可能なアルケニル又はアルキニル官能基を示さない、脂肪族炭化水素鎖、即ち、1つ以上のヘテロ原子で任意に置換又は中断され、優先的に1~24個の炭素原子を含む、飽和した直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖である。
好ましくは、基Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたC6~C14アレーンジイル環である。より優先的には、基Aは、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素ヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、飽和直鎖又は分枝鎖C1~C24炭化水素鎖により任意に置換されたC6~C14アレーンジイル環である。依然としてより優先的には、基Aは、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキル基である。]からなる群から選択される1つ以上の同一の又は異なった置換基により任意に置換された、C6~C14アレーンジイル環である。
【0017】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(Ia)及び(Ib)の化合物から選択される:
【化5】
式中、
式(Ia)のR
1~R
5から選択される基、及び、式(Ib)のR
1~R
7から選択される基は、以下の式(II)の基を表し、
【化6】
(II)
式中、E及びXは上で定義したとおりである。
同一の又は異なった、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
5から選択される式(Ia)の4つの基、及び、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
7から選択される式(Ib)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖を表す。
好ましくは、式(Ia)及び(Ib)の化合物において、同一の又は異なった、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
5から選択される式(Ia)の4つの基、及び、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
7から選択される式(Ib)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、飽和した直鎖又は分枝鎖C
1~C
24脂肪族炭化水素鎖を表す。
依然としてより優先的には、式(Ia)及び(Ib)の化合物において、同一の又は異なった、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
5から選択される式(Ia)の4つの基、及び、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
7から選択される式(Ib)の6つの基は、水素原子、C
1~C
12(より優先的にはC
1~C
6、依然としてより優先的にはC
1~C
4)アルキル、OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC
1~C
12、より優先的にはC
1~C
6、依然としてより優先的にはC
1~C
4アルキルにより形成される基から選択される]。
【0018】
本発明の好ましい実施形態に従うと、式(Ia)において、R2は、上で定義した式(II)の基を表し、同一の又は異なったR1、R3、R4、及びR5は、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。より優先的には、R2は、上で定義した式(II)の基を表し、同一の又は異なったR1、R3、R4、及びR5は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される]。
本実施形態において依然としてより優先的には、R2は、上で定義した式(II)の基を表し、R4は水素原子を表し、R1、R3、及びR5は、好ましくは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、飽和した直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。依然としてより優先的には、R2は、上で定義した式(II)の基を表し、R4は水素原子を表し、同一の又は異なったR1、R3、及びR5は、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される]。
本発明の別の好ましい実施形態に従うと、式(Ib)において、R1は、上で定義した式(II)の基を表し、同一の又は異なったR2~R7は、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。より優先的には、R1は、上で定義した式(II)の基を表し、同一の又は異なったR2~R7は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される]。本実施形態において依然としてより優先的には、R1は、上で定義した式(II)の基を表し、同一であるR2~R7は、水素原子を表す。
【0019】
式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは、1つ以上のへテロ原子を任意に含有する二価の炭化水素基である。本発明の意味の中では、用語「二価の炭化水素基」とは、基AとN置換イミダゾリジノン基との間にブリッジを形成するスペーサー基(又は、結合基)を意味することが理解され、このスペーサー基は、1つ以上のへテロ原子、例えばN、O、及びSなどを任意に含有することができる、飽和又は不飽和、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24炭化水素鎖である。置換基が、ニトリルオキシド、及び、上で定義したN置換イミダゾリジノン基と反応しないのであれば、上記炭化水素鎖は任意に置換されることができる。
優先的には、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素原子で任意に中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24、より優先的にはC1~C10、依然としてより優先的にはC1~C6である。
好ましくは、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは、-R-、-NH-R-、-O-R-、及び-S-R-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択される。
依然として更に優先的には、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択される。
依然として更に優先的には、式(I)、(Ia)、及び(Ib)の化合物において、基Eは、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、O-CH2-CH2-CH2-、及びO-CH2-CH2-CH2-CH2-から選択される。
好ましい実施形態に従うと、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物である。
この好ましい実施形態に従うと、基Eが-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択され、基Xが塩素原子である、上で定義した式(Ib)の化合物が、特に好ましい。
【0020】
本実施形態に従うと、依然としてより優先的には、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物であり、
R1は式(II)の基を表し、式中、基Eは、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択され、基Xは塩素原子を表し、
同一の又は異なったR2~R7は、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。
【0021】
本実施形態に従うと、依然としてより優先的には、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物であり、
R1は式(II)の基を表し、式中、基Eは、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択され、基Xは塩素原子を表し、
同一の又は異なったR2~R7は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される]。
本実施形態に従うと、依然としてより優先的には、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物であり、
R1は式(II)の基を表し、式中、基Eは、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択され、基Xは塩素原子を表し、
同一であるR2~R7は、水素原子を表す。
【0022】
特定の実施形態に従うと、式(I)の化合物は、式(III)及び式(IV)の化合物からなる群から選択され、より優先的には、式(III)の化合物である:
【化7】
【0023】
式(I)の化合物、特に、式(Ia)、(Ib)、(III)、及び(IV)の化合物は、以下の連続段階:
(b1)以下の式(IX)の化合物を、
【化8】
(IX)
[式中Aは上で定義したとおりであり、Yは求核基を表す。]
以下の式(X)の化合物:
【化9】
(X)
[式中、Eは上で定義したとおりであり、Zは離核性基を表す。]
と反応させ、少なくとも1種の極性溶媒S1、少なくとも1つの塩基の存在下で、70~150℃の範囲の温度T1で、以下の式(XI)の化合物を形成することと、
【化10】
(XI)
(b2)式(XI)の上記化合物を、水性ヒドロキシルアミン溶液と、30~70℃の範囲の温度T
2で反応させ、以下の式(XII)のオキシム化合物を得ることと、
【化11】
(XII)
(c)式(XII)の上記オキシム化合物の回収段階と、
(d)少なくとも1種の有機溶媒S2の存在下で、式(XII)のオキシム化合物を酸化剤(酸化剤の含有量は、式(XII)のオキシム化合物のモル量に対して、少なくとも6モル当量である。)により酸化させる段階と、を含む合成プロセスから入手することができる。
【0024】
本特許出願の意味の中では、用語「極性溶媒」とは、2.2より大きい誘電定数を示す溶媒を意味することが理解される。
本特許出願の意味の中では、用語「離核性基」とは、その結合対を奪う脱離基を意味することが理解される。
本特許出願の意味の中では、用語「求核基」とは、1つの遊離対、又は、負電荷を帯びた1つの原子を有する、少なくとも1つの原子を含む化合物を意味することが理解される。
【0025】
上で説明したとおり、式(I)の化合物の合成のためのプロセスは、具体的には、連続段階(b1)及び(b2)を含む。
特定の実施形態に従うと、2つの段階(b1)及び(b2)は、式(XI)の化合物の、単離段階と精製段階とにより分けられる。
【0026】
別の実施形態によれば、2つの段階(b1)及び(b2)は、ワンスポット合成により実施される、即ち、段階(b1)及び(b2)は、「ワンスポット」(2段階ワンスポット合成プロセス)である、即ち、式(XI)の中間化合物の単離を伴わない。
本プロセスは、上述した、基Yを有する式(IX)の化合物の、上述した、基Zを有する式(X)の化合物との、反応段階(b1)を含む。
基Yは、ヒドロキシル、チオール、及び、一級又は二級アミン官能基から選択されるのが好ましい。
【0027】
基Zは、塩素、臭素、ヨウ素、メシラート基、トシレート基、アセテート基、及びトリフルオロメチルスルホネート基から選択されることができる。
【0028】
本プロセスの上記段階(b1)は、70~150℃の範囲の温度T1にて、少なくとも1種の極性溶媒S1、及び、少なくとも1種の塩基の存在下において実施される。
本プロセスの特定の実施形態に従うと、極性溶媒S1は、水混和性極性溶媒、優先的にはプロトン性溶媒である。
ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノール、n-ブタノール、及びn-プロパノールが、本プロセスで使用可能な溶媒S1の例である。
プロトン性溶媒はアルコール溶媒であるのが好ましい。
有利には、式(IX)の化合物は、溶媒の重量に対して、5重量%~40重量%、好ましくは、10重量%~30重量%を表す。
塩基は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属カーボネート、アルカリ土類金属カーボネート、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0029】
有利には、
銀(I)塩型の触媒、四級アンモニウム型の相間移動触媒、及びこれらの混合物から選択される、1つ以上の触媒;
1種以上のイオン性液体
を添加することが可能である。
優先的には、塩基はナトリウムメトキシド、炭酸カリウム、及び水酸化ナトリウム、より優先的には炭酸カリウムから選択される。
本プロセスの特定の実施形態に従うと、塩基のモル量は、式(IX)の化合物のモル量に対して、1.5~8モル当量、好ましくは、2~6モル当量である。
上で説明したとおり、本プロセスの段階(b1)は、70~150℃の範囲の温度T1で実施される。
温度T1は、70~120℃、より優先的には、80~110℃の範囲の温度であるのが好ましい。
【0030】
上で説明したとおり、本プロセスの段階(b1)の後には、30~70℃の範囲の温度T2で、式(XI)の化合物を含有する反応媒体に、ヒドロキシルアミン水溶液を添加する段階(b2)が続く。
優先的には、ヒドロキシルアミン水溶液の添加は、式(IX)の化合物の転換が少なくとも70重量%であるときに行われる。
有利には、温度T2は、40~60℃で変化する。
本プロセスは、上述した、式(XII)のオキシム化合物の回収段階(c)もまた含む。
式(XII)のオキシム化合物は、水による沈殿、任意に続いて、水による洗浄により回収されるのが好ましい。
本プロセスは、少なくとも1種の有機溶媒S2の存在下で式(XII)のオキシム化合物を酸化剤で酸化し、式(I)の化合物、特に、好ましい化合物を得る段階(d)もまた含み、酸化剤の量は、式(XII)のオキシム化合物のモル量に対して少なくとも6モル当量、好ましくは6.5~15モル当量である。
この量の酸化剤を、段階(d)の間に全て1回で、又は複数回にわたり、好ましくは、段階(d)の間に2回に分けて添加することができる。
【0031】
上記酸化剤は、塩基の存在下においては次亜塩素酸ナトリウム、N-ブロモスクシンイミドから、塩基の存在下においてはN-クロロコハク酸イミドから選択されるのが好ましく、上記酸化剤は次亜塩素酸ナトリウムであるのが好ましい。
優先的には、有機溶媒S2は、塩基系溶媒、並びにエステル、エーテル、及びアルコール型の溶媒から選択される、より優先的にはジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、イソプロパノール、及びエタノールから選択される、依然としてより優先的には酢酸エチル及び酢酸ブチルから選択される、有機溶媒である。
好ましくは、式(XII)のオキシム化合物は、上記式(XII)のオキシム化合物、上記有機溶媒S2、及び上記酸化剤を含む組合せの総重量に対して、1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%を表す。優先的には、本プロセスは、段階(d)の後に、式(I)の化合物の回収段階(e)を含む。
【0032】
特定の実施形態に従うと、本プロセスは、段階(b1)の前に、以下の式(XIII)の化合物を、
【化12】
(XIII)
[式中、
Eは上で定義したとおりである。]
離核性基Zの形成を可能にする剤と反応させることによる、式(X)の化合物の製造段階(a2)を含むことができる:
上記剤は塩化チオニルであるのが好ましい。
段階(a2)は、少なくとも1種の溶媒S4、優先的には塩素系溶媒、より優先的にはジクロロメタンの不存在下、又は存在下で行われるのが好ましい。
有利には、段階(a2)の直後には、優先的にはトルエンによる精製、より優先的には、トルエンからの式(X)の化合物の結晶化による、式(X)の化合物の回収段階(a3)が続く。
【0033】
変性したポリマー、好ましくはエラストマー、より優先的にはジエンエラストマーは、少なくとも1種の式(I)の化合物、好ましくは、少なくとも1種の式(Ib)の化合物、より優先的には、少なくとも1種の式(III)の化合物を、上記初期ポリマー、好ましくは上記エラストマー、より優先的には上記ジエンエラストマーの、少なくとも1つの不飽和鎖にグラフトすることにより得られる。
ポリマーのグラフトは、上記初期ポリマーの、式(I)の化合物の、好ましくは式(Ib)の化合物の、より優先的には、式(III)の化合物のニトリルオキシドとの反応により行われる。本反応の間、このニトリルオキシド基は、ポリマー鎖と共有結合を形成する。式(I)の化合物の、好ましくは式(Ib)の化合物の、より優先的には、式(III)の化合物のグラフトは、ニトリルオキシドと、初期ポリマーの不飽和鎖との[3+2]付加環化により行われる。[3+2]付加環化のメカニズムは、国際出願第2012/007441号明細書の文書に示されている。
本発明に従うと、ポリマーは、ポリマー主鎖に沿って、上で定義したように、式(I)の化合物の、好ましくは式(Ib)の化合物の、より優先的には、式(III)の化合物のグラフト反応により得られる、1つ以上のペンダント基を有する。有利には、これらのペンダント基は、ポリマー主鎖に沿ってランダムに分布している。
好ましい実施形態に従うと、式(I)の化合物の、好ましくは式(Ib)の化合物の、より優先的には、式(III)の化合物のグラフトのモル度は、0.01%~5%、好ましくは0.01%~1%、より優先的には0.1%~1%の範囲内にある。
用語「グラフトのモル度」とは、ポリマーを構成するモノマー単位100mol当たりで、ポリマーにグラフトした、式(I)の化合物の、好ましくは式(Ib)の化合物の、より優先的には、式(III)の化合物のモル数を意味することが理解される。グラフトのモル度は、例えば1H NMR分析などの、従来のポリマーの分析方法により測定可能である。
【0034】
式(I)の化合物の、好ましくは式(Ib)の化合物の、より優先的には、式(III)の化合物の、初期ポリマーへのグラフトは、例えば押出機内、密閉式混合機内、又は開放式混合機(オープンミルなど)内で、バルクで行うことができる。グラフトは溶液中で、連続して、又はバッチ毎に行うことも可能である。このように変性したポリマーは、その溶液から、当業者に既知の任意の種類の方法により、及び特に、水蒸気ストリッピング操作により、分離することができる。
好ましくは、上述したプロセスにおいて、上述したように、初期ポリマーはエラストマーであり、依然としてより優先的にはジエンエラストマーである。
簡潔性のために、説明の続きにおいて、式(I)の化合物と、好ましくは式(Ib)の化合物と、より優先的には式(III)の化合物と、のグラフトにより変性したポリマー、好ましくはエラストマー、より優先的にはジエンエラストマーは、ポリマーP1と呼ばれる。
【0035】
本発明の別の主題は、上述した少なくとも1つの変性ポリマー(ポリマーP1)と、少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物である。
本発明に従った組成物中で使用可能な添加剤は、可塑剤(可塑化油及び/又は可塑化樹脂など)、充填剤(補強又は非補強)、顔料、保護剤(抗オゾンワックスなど)、化学的オゾン劣化防止剤又は酸化防止剤、抗疲労剤、補強樹脂(例えば、国際出願第02/10269号明細書に記載されているものなど)、架橋系(例えば、硫黄及び他の加硫剤、及び/又はペルオキシド、及び/又はビスマレイミドに基づくもの)であることができる。好ましくは、本添加剤は補強充填剤であり、より優先的には、本添加剤は補強無機充填剤であり、依然としてより優先的には、本添加剤はシリカである。
【0036】
本発明の別の主題は、上述した少なくとも1種の式(I)の化合物、好ましくは、少なくとも1種の式(Ib)の化合物、より優先的には、少なくとも1種の式(III)の化合物を、初期ポリマー及び少なくとも1種の式(V)の化合物の、少なくとも1つの不飽和鎖、初期ポリマーの別の不飽和鎖にグラフトすることにより得られる、変性ポリマー(本明細書の続きにおいて、更なる明確性のための、本ポリマーはポリマーP2と呼ばれる。)である:
【化13】
(V)
式中、
A
1は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
E
1は、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表す。
好ましくは、ポリマーP2はエラストマーであり、より優先的にはジエンエラストマーである。
本発明の変性ポリマーP2は、当該ポリマーの鎖に沿ってペンダントな、少なくとも1つのN置換イミダゾリジノン基、即ち、非連結窒素含有基、及び、当該ポリマーの鎖に沿ってペンダントな、少なくとも1つの非置換イミダゾリジノン基、即ち、連結窒素含有基を含む。本変性ポリマーP2は、驚くべきことに、当該ポリマーを含有する組成物に、そのままの剛性/ヒステリシス妥協の改善を付与する利点を示す。
【0037】
好ましくは、式(V)の化合物の基A1は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたC6~C14アレーンジイル環である。より優先的には、この基A1は、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素ヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、飽和直鎖又は分枝鎖C1~C24炭化水素鎖により任意に置換されたC6~C14アレーンジイル環である。依然としてより優先的には、この基A1は、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキル基である。]からなる群から選択される1つ以上の同一の又は異なった置換基により任意に置換された、C6~C14アレーンジイル環である。
【0038】
好ましくは式(V)の化合物は、式(Va)及び(Vb)の化合物から選択される:
【化14】
[式中、
式(Va)のR
8~R
12から選択される基、及び、式(Vb)のR
8~R
14から選択される基は、以下の式(VI)の基を表し、
【化15】
(VI)
式中、E
1は上で定義したとおりである。
同一の又は異なった、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
12から選択される式(Va)の4つの基、及び、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
14から選択される式(Vb)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖を表す。]
【0039】
好ましくは、式(Va)及び(Vb)の化合物において、同一の又は異なった、式(VI)の基を表すもの以外の、R1~R5から選択される式(Va)の4つの基、及び、式(VI)の基を表すもの以外の、R1~R7から選択される式(Vb)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、飽和した直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。
依然としてより優先的には、式(Va)及び(Vb)の化合物において、同一の又は異なった、式(VI)の基を表すもの以外の、R1~R5から選択される式(Va)の4つの基、及び、式(VI)の基を表すもの以外の、R1~R7から選択される式(Vb)の6つの基は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルにより形成される基から選択される]。
【0040】
本発明の好ましい実施形態に従うと、式(Va)において、R9は、上で定義した式(VI)の基を表し、同一の又は異なったR8、R10、R11、及びR12は、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。より優先的には、R9は、上で定義した式(VI)の基を表し、同一の又は異なったR8、R10、R11、及びR12は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される。
本実施形態において依然としてより優先的には、式(Va)において、R9は、上で定義した式(VI)の基を表し、R11は水素原子を表し、R8、R10、及びR12は、好ましくは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、飽和した直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。依然としてより優先的には、R9は、上で定義した式(VI)の基を表し、R11は水素原子を表し、同一の又は異なったR8、R10、及びR12は、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される]。
本発明の別の好ましい実施形態に従うと、式(Vb)において、R8は、上で定義した式(VI)の基を表し、同一の又は異なったR9~R14は、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。より優先的には、R8は、上で定義した式(VI)の基を表し、同一の又は異なったR9~R14は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される。本実施形態において依然としてより優先的には、R8は、上で定義した式(VI)の基を表し、同一であるR9~R14は、水素原子を表す。
【0041】
式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は、1つ以上のへテロ原子を任意に含有する二価の炭化水素基である。本発明の意味の中では、用語「二価の炭化水素基」とは、基A1とイミダゾリジノン基との間にブリッジを形成するスペーサー基(又は、結合基)を意味することが理解され、このスペーサー基は、1つ以上のへテロ原子、例えばN、O、及びSなどを任意に含有することができる、飽和又は不飽和、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24炭化水素鎖である。置換基が、ニトリルオキシド、及び、上で定義したイミダゾリジノン基と反応しないのであれば、上記炭化水素鎖は任意に置換されることができる。
優先的には、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素原子で任意に中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24、より優先的にはC1~C10、依然としてより優先的にはC1~C6である。
好ましくは、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は、-R-、-NH-R-、-O-R-、及び-S-R-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択される。
【0042】
依然として更に優先的には、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は、-R-、及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択される。
依然として更に優先的には、式(V)、(Va)、及び(Vb)の化合物において、基E1は、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、O-CH2-CH2-CH2-、及びO-CH2-CH2-CH2-CH2-から選択される。
【0043】
好ましい実施形態に従うと、式(V)の化合物は、式(Vb)の化合物である。
好ましい本実施形態では、基E1が-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択される、上で定義した式(Vb)の化合物が、特に好ましい。
本実施形態に従うと、依然としてより優先的には、式(V)の化合物は、式(Vb)の化合物であり、
R8は式(VI)の基を表し、式中、基E1は、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択され、
同一の又は異なったR9~R14は、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素鎖を表す。
本実施形態に従うと、依然としてより優先的には、式(V)の化合物は、式(Vb)の化合物であり、
R8は式(VI)の基を表し、式中、基E1は、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択され、
同一の又は異なったR9~R14は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルで形成される群から選択される。
本実施形態に従うと、依然としてより優先的には、式(V)の化合物は、式(Vb)の化合物であり、
R8は式(VI)の基を表し、式中、基E1は、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンである。]からなる群から選択され、
同一であるR9~R14は、水素原子を表す。
【0044】
好ましい実施形態に従うと、式(V)の化合物は、式(VII)及び式(VIII)の化合物からなる群から選択され、依然としてより優先的には、式(VIII)の化合物である:
【化16】
【0045】
式(V)の化合物、特に式(Vb)及び(VII)の化合物は、例えば、国際出願第2019007881A1号明細書の文書に記載されているプロセスにより、合成することができる。
【0046】
ポリマーP2は、初期ポリマーを、上述した式(I)の化合物のニトリルオキシド、及び、上述した式(V)の化合物のニトリルオキシドとグラフトすることにより得られる。本反応の間に、式(I)及び式(V)の化合物のニトリルオキシドはそれぞれ、ポリマーの不飽和鎖と共有結合を形成する。式(I)及び(V)の化合物のグラフトは、ニトリルオキシドと、初期ポリマーの不飽和鎖との[3+2]付加環化により行われる。[3+2]付加環化のメカニズムは、国際出願第2012/007441号明細書の文書に見出すことができる。
本発明に従うと、ポリマーP2は、ポリマー主鎖に沿って、上述した、式(I)及び(V)の化合物のグラフト反応から得られる、1つ以上のペンダント基を有する。有利には、これらのペンダント基は、ポリマー主鎖に沿ってランダムに分布している。
好ましい実施形態に従うと、ポリマーP2は、ポリマー主鎖に沿って、上述した、式(Ib)及び(Vb)の化合物のグラフト反応から得られる、1つ以上のペンダント基を有する。有利には、これらのペンダント基は、ポリマー主鎖に沿ってランダムに分布している。
好ましい実施形態に従うと、ポリマーP2は、ポリマー主鎖に沿って、
式(Ib)の化合物[R1は式(II)の基を表し、式中、基Eは、-R-及び-OR-からなる群から選択され、式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンであり、基Xは塩素原子であり、同一の又は異なったR2~R7は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルからなる群から選択される。]
式(Vb)の化合物[R8は式(VI)の基を表し、式中、基E1は、-R-及び-OR-からなる群から選択され、式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C1~C24アルキレン、好ましくはC1~C10アルキレン、より優先的にはC1~C6アルキレンであり、同一の又は異なったR9~R14は、水素原子、C1~C12(より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4)アルキル、-OR’基、-NHR’基、及び-SR’基[式中、R’はC1~C12、より優先的にはC1~C6、依然としてより優先的にはC1~C4アルキルにより形成される群から選択される。]
のグラフト反応から得られる、1つ以上のペンダント基を有する。
有利には、これらのペンダント基は、ポリマー主鎖に沿ってランダムに分布している。
更により好ましい実施形態に従うと、ポリマーP2は、ポリマー主鎖に沿って、上述した式(III)の化合物の、及び、式(VII)の化合物のグラフト反応から得られる、1つ以上のペンダント基を有する。有利には、これらのペンダント基は、ポリマー主鎖に沿ってランダムに分布している。
【0047】
いずれの実施形態においても、ポリマーP2に関して、式(I)の化合物の、好ましくは式(Ib)の化合物の、より優先的には、式(III)の化合物のグラフトのモル度は、0.01%~5%、好ましくは0.01%~1%、より優先的には0.1%~1%の範囲内にあり、式(V)の化合物の、好ましくは式(Vb)の化合物の、より優先的には式(VII)の化合物の、グラフトのモル度は、0.01%~5%、好ましくは0.01%~1%、より優先的には0.1%~1%の範囲内にある。
式(I)及び(V)の化合物の、好ましくは式(Ib)及び(Vb)の化合物の、より優先的には、式(III)及び(VII)の化合物の、初期ポリマーへのグラフトは、例えば押出機内、密閉式混合機内、又は開放式混合機(オープンミルなど)内で、バルクで行うことができる。グラフトは溶液中で、連続して、又はバッチ毎に行うことも可能である。このように変性したポリマーは、その溶液から、当業者に既知の任意の種類の方法により、及び特に、水蒸気ストリッピング操作により、分離することができる。式(I)及び(V)の化合物、好ましくは式(Ib)及び(Vb)の化合物、より優先的には、式(III)及び(VII)の化合物は、密閉式若しくは開放式混合機に同時に、又は、グラフトが溶液中で行われる場合は反応器に同時に、導入することができる。これらは互いに非同時に導入することも可能であり、その順序は、これら化合物の、初期ポリマーの鎖へのグラフトに関しては重要ではない。
【0048】
本発明の別の主題は、上述した少なくとも1つの変性ポリマー、即ちポリマーP2と、上述した少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物である。好ましくは、本添加剤は補強充填剤であり、より優先的には、本添加剤は補強無機充填剤であり、依然としてより優先的には、本添加剤はシリカである。
上述した主題に加えて、本発明は、以下の条項に記載する主題のうちの少なくとも1つに関する:
【0049】
1.初期ポリマーの少なくとも1つの不飽和鎖に、少なくとも1つの式(I)の化合物をグラフトすることにより得られる、変性ポリマー:
【化17】
式中、
Aは、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
Eは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表す。
2.初期ポリマーがエラストマー、好ましくはジエンエラストマーである、条項1に記載の変性ポリマー。
3.初期ポリマーが、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、条項2に記載の変性ポリマー。
4.式(I)の化合物のグラフトのモル度が、0.01%~5%、好ましくは0.01%~1%、より優先的には0.1%~1%の範囲内にある、条項1~3のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
5.基Aが、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたC
6~C
14アレーンジイル環である、条項1~4のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
6.式(I)の化合物が、式(Ia)及び(Ib)の化合物から選択される、条項1~5のいずれか1つに記載の変性ポリマー:
【化18】
[式中、
式(Ia)のR
1~R
5から選択される基、及び、式(Ib)のR
1~R
7から選択される基は、以下の式(II)の基を表し、
【化19】
(II)
[式中、E及びXは条項1で定義したとおりである。]
同一の又は異なった、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
5から選択される式(Ia)の4つの基、及び、式(II)の基を表すもの以外の、R
1~R
7から選択される式(Ib)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖を表す。]
7.基Eが、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素原子により任意に中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C
1~C
24、好ましくはC
1~C
10、より優先的にはC
1~C
6炭化水素鎖である、条項1~6のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
8.基Eが、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C
1~C
24アルキレン、好ましくはC
1~C
10アルキレン、より優先的にはC
1~C
6アルキレンである。]からなる群から選択される、条項1~7のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
9.式(I)の化合物が、式(Ib)の化合物である、条項6~8のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
10.式(I)の化合物が、式(III)の化合物からなる群である、条項1~9のいずれか1つに記載の変性ポリマー:
【化20】
(III)
11.条項1~10のいずれか1つに記載の少なくとも1つの変性ポリマーと、少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物であって、好ましくは、添加剤は充填剤であり、依然としてより優先的には、添加剤は補強充填剤であり、依然としてより優先的には、添加剤は補強無機充填剤であり、より優先的には、添加剤はシリカである、組成物。
12.条項11に記載の少なくとも1つの組成物を含むトレッド。
13.条項11に記載の少なくとも1つの組成物を含むタイヤ。
14.条項12に記載の少なくとも1つのトレッドを含むタイヤ。
15.上記初期ポリマーの少なくとも1つの他の不飽和鎖に、少なくとも1つの式(V)の化合物をグラフトすることにより更に得られることを特徴とする、条項1~10のいずれか1つに記載の変性ポリマー:
【化21】
(V)
[式中、
A
1は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
E
1は、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表す。]
16.式(V)の化合物のグラフトのモル度が、0.01%~5%、好ましくは0.01%~1%、より優先的には0.1%~1%の範囲内にある、条項15に記載の変性ポリマー。
17.式(V)の化合物の基A
1が、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたC
6~C
14アレーンジイル環である、条項15及び15のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
18.式(V)の化合物が、式(Va)及び(Vb)の化合物から選択される、条項15~17のいずれか1つに記載の変性ポリマー:
【化22】
[式中、
式(Va)のR
8~R
12から選択される基、及び、式(Vb)のR
8~R
14から選択される基は、以下の式(II)の基を表し、
【化23】
(VI)
[式中、E
1は条項14で定義したとおりである。]
同一の又は異なった、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
12から選択される式(Va)の4つの基、及び、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
14から選択される式(Vb)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖を表す。]
19.式(V)の、又は式(VI)の化合物の基E
1が、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素原子により任意に中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C
1~C
24、好ましくはC
1~C
10、より優先的にはC
1~C
6炭化水素鎖である、条項15~18のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
20.式(V)の、又は式(VI)の化合物の基E
1が、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C
1~C
24アルキレン、好ましくはC
1~C
10アルキレン、より優先的にはC
1~C
6アルキレンである。]からなる群から選択される、条項15~19のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
21.式(V)の化合物が、式(Vb)の化合物である、条項15~20のいずれか1つに記載の変性ポリマー。
22.式(V)の化合物が、式(VII)の化合物である、条項15~21のいずれか1つに記載の変性ポリマー:
【化24】
(VII)
23.条項15~21のいずれか1つに記載の少なくとも1つの変性ポリマーと、少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物であって、好ましくは、添加剤は充填剤であり、依然としてより優先的には、添加剤は補強充填剤であり、依然としてより優先的には、添加剤は補強無機充填剤であり、より優先的には、添加剤はシリカである、組成物。
24.条項23に記載の少なくとも1つの組成物を含むトレッド。
25.条項23に記載の少なくとも1つの組成物を含むタイヤ。
26.条項24に記載の少なくとも1つのトレッドを含むタイヤ。
27.
条項1~10のいずれか1つに記載のポリマーP1、
条項15~22のいずれか1つに記載のポリマーP2、
初期ポリマーの少なくとも1つの不飽和鎖に、少なくとも1つの式(V)の化合物をグラフトすることにより得られる、変性ポリマーP3:
【化25】
(V)
[式中、
A
1は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたアレーンジイル環を表し、
E
1は、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む二価の炭化水素基を表す。]
から選択される少なくとも2種のポリマーを含み、
変性ポリマーP1及びP3の初期ポリマーは、同一であるか、又は異なることができ、
ただし、上記混合物は、少なくとも上記ポリマーP1、又は上記ポリマーP2を含む、変性ポリマーの混合物。
28.ポリマーP1及びP3の初期ポリマーがエラストマー、好ましくはジエンエラストマーであり、これらは同一又は異なる、条項27に記載の変性ポリマーの混合物。
29.ジエンエラストマーが、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、特に、エチレンとブタジエンのコポリマー、イソプレンコポリマー、及び、これらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、条項28に記載の変性ポリマーの混合物。
30.式(V)の化合物の、ポリマーP3へのグラフトのモル度が、0.01%~5%、好ましくは0.01%~1%、より優先的には0.1%~1%の範囲内にある、条項27~29のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物。
31.ポリマーP3上の式(V)の化合物の基A
1が、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、1つ以上の同一の又は異なった、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖により任意に置換されたC
6~C
14アレーンジイル環である、条項27~30のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物。
32.ポリマーP3上の式(V)の化合物が、式(Va)及び(Vb)の化合物から選択される、条項27~31のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物:
【化26】
[式中、
式(Va)のR
8~R
12から選択される基、及び、式(Vb)のR
8~R
14から選択される基は、以下の式(VI)の基を表し、
【化27】
(VI)
[式中、E
1は条項27で定義したとおりである。]
同一の又は異なった、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
12から選択される式(Va)の他の基、及び、式(VI)の基を表すもの以外の、R
8~R
14から選択される式(Vb)の6つの基は、互いに独立して、水素原子、又は、1つ以上のヘテロ原子により任意に置換又は中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素鎖を表す。]
33.ポリマーP3の式(V)の、又は式(VI)の化合物の基E
1が、1つ以上の窒素、硫黄、又は酸素原子により任意に中断された、好ましくは飽和した、直鎖又は分枝鎖C
1~C
24、好ましくはC
1~C
10、より優先的にはC
1~C
6炭化水素鎖である、条項27~32のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物。
34.ポリマーP3の式(V)の、又は式(VI)の化合物の基E
1が、-R-及び-OR-[式中、Rは、直鎖又は分岐鎖C
1~C
24アルキレン、好ましくはC
1~C
10アルキレン、より優先的にはC
1~C
6アルキレンである。]からなる群から選択される、条項27~33のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物。
35.式(V)の化合物が、式(VII)の、及び式(VIII)化合物、より優先的には、式(VII)の化合物からなる群から選択される、条項27~34のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物:
【化28】
36.
ポリマーP1が、少なくとも1つの式(Ia)の化合物をグラフトすることにより得られる、上述した変性ポリマーであり、
ポリマーP2が、上述したように、少なくとも1つの式(Ia)の化合物、及び、少なくとも1つの式(Va)の化合物をグラフトすることにより得られ、
ポリマーP3が、少なくとも1つの式(Va)の化合物をグラフトすることにより得られる、上述した変性ポリマーである、
条項27~35のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物。
37.
ポリマーP1が、少なくとも1つの式(Ib)の化合物をグラフトすることにより得られる、上述した変性ポリマーであり、
ポリマーP2が、上述したように、少なくとも1つの式(Ib)の化合物、及び、少なくとも1つの式(Vb)の化合物をグラフトすることにより得られ、
ポリマーP3が、少なくとも1つの式(Vb)の化合物をグラフトすることにより得られる、上述した変性ポリマーである、
条項27~35のいずれか1つに記載の変性ポリマーの混合物。
38.条項27~37のいずれか1つに記載の変性ポリマーの少なくとも1つの混合物と、少なくとも1つの添加剤と、を含む組成物であって、好ましくは、添加剤は充填剤であり、依然としてより優先的には、添加剤は補強充填剤であり、依然としてより優先的には、添加剤は補強無機充填剤であり、より優先的には、添加剤はシリカである、組成物。
39.条項38に記載の少なくとも1つの組成物を含むトレッド。
40.条項38に記載の少なくとも1つの組成物を含むタイヤ。
41.条項39に記載の少なくとも1つのトレッドを含むタイヤ。
【実施例】
【0050】
以下の実施例により、本発明を説明することが可能となる。しかし、本発明は、これらの実施例のみに限定されない。
【0051】
1 使用した試験及び測定
1.1 ガラス転移温度の測定
ポリマーのガラス転移温度Tgは、規格ASTM D3418(2015)に従い、示差熱量計(示差走査熱量計)により測定される。
【0052】
1.2 エラストマーの数平均モル質量(Mn)、重量平均モル質量(Mw)、及び、多分散指数の測定
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用する。SECにより、多孔質ゲルを充填したカラムに沿ってのサイズに従い、溶液中で巨大分子を分離することが可能となる。巨大分子は、その流体力学体積に従って分離され、最も嵩高いものが最初に溶出する。
絶対的な方法に限定されるものではないが、SECにより、エラストマーのモル質量の分布を理解することが可能となる。様々な数平均モル質量(Mn)、及び重量平均モル質量(Mw)を、商業規格から測定することができ、多分散指数(PI=Mw/Mn)を、「ムーア」較正により計算することができる。
【0053】
試験するエラストマーサンプルの調製:
分析前に、エラストマーのサンプルの特定の処理は行わない。後者は、約1g/Lの濃度で、クロロホルム中、又は以下の混合物:テトラヒドロフラン+1vol%のジイソプロピルアミン+1vol%のトリエチルアミン+1vol%の蒸留水(vol%=体積%)中に、簡単に溶解する。次に溶液を、注入前に、0.45μmの多孔性を有するフィルターを通して濾過する。
【0054】
SEC分析:
使用した装置は、Waters Allianceのクロマトグラフである。溶出溶媒は、エラストマーの溶解に使用した溶媒に従った、以下の混合物:テトラヒドロフラン+1vol%のジイソプロピルアミン+1vol%のトリエチルアミン又はクロロホルムである。流速は0.7mL/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragel HMW7、Styragel HMW6E、並びに、うち2つがStyragel HT6Eを有する、連続した4つのWaters製カラムのセットを使用する。
注入したエラストマーのサンプルの溶液の体積は、100μLである。検出器は、810nmの波長を有する、Waters 2410示差屈折計である。クロマトグラフデータを使用するためのソフトウェアは、Waters Empowerシステムである。計算した平均モル質量は、PSS Ready Cal-Kit商用ポリスチレン規格から作製した較正曲線に対応する。
【0055】
1.3 分子の特性決定
合成分子の構造分析、及びまた、モル純度の測定を、NMR分析により行う。スペクトルは、「5mm BBFO Z勾配ブロードバンド」プローブを備えた、「Avance 3 400 MHz Bruker」スペクトロメーターで得る。定量用1H NMR実験では、単純な30°パルス系列、及び、64回の収集のそれぞれの間での、3秒の反復時間を用いる。サンプルは、特に断りのない限り、重水素化溶媒、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解する。重水素化溶媒は、「ロック」シグナルのためにもまた使用する。例えば、較正は、0ppmにおけるTMS参照物質に対して、2.44ppmにおける重水素化DMSOのプロトンのシグナル上で行う。2D 1H/13C HSQC及び1H/13C HMBC実験と繋げた1H NMRスペクトルにより、分子の構造測定が可能となる(割り当て表を参照されたい)。分子の定量化は、定量用1D 1H NMRスペクトルから行う。
質量分析による分析は、直接注入エレクトロスプレーイオン化法(DI/ESI)により行われる。分析は、Bruker HCTスペクトロメーターで行った(流速600μL/分、ネブライザガスの圧力10psi、ネブライザガスの流速4L/分)。
【0056】
1.4 ジエンエラストマーにグラフトした化合物の特性決定
ジエンエラストマーにグラフトした化合物のモル含有量の測定は、NMR分析により行う。スペクトルは、「5mmのBBFOZ-勾配CryoProbe」を備えた、「500MHz Bruker」で得る。定量用1H NMR実験では、単純な30°パルス系列、及び、各収集の間での、5秒の反復時間を用いる。「ロック」シグナルを得るために、サンプルを重水素化クロロホルム(CDCl3)に溶解させる。2D NMR実験により、炭素及びプロトン原子の化学シフトによる、グラフトした単位の性質を確認することが可能となる。
【0057】
1.5 動的特性
動的特性G*及びtan(δ)maxを、規格ASTMD5992-96に従い、粘度分析器(Metravib VA4000)で測定する。10Hzの周波数にて、単純な代替正弦波形状剪断応力に供した、加硫組成物(4mmの厚さ、及び400mm2の断面積を有する、円筒状試験片)のサンプルの応答を、規格ASTMD1349-09に従い、標準温度条件(23℃)で記録する。0.1%~50%のピークピーク(外向きサイクル)、次いで、50%~0.1%のピークピーク(戻りサイクル)で、歪み振幅掃引を行う。
結果では、23℃における複雑な動的剪断弾性係数G*、及び、23℃における動的喪失因子tan(δ)を用いた。外向きの移動に関して、G*50%外向きと表す、50%歪みにおける複雑な動的剪断弾性係数G*の値を、23℃で記録する。戻りに関して、tan(δ)maxと表す、観察される動的喪失因子tan(δ)の最大値を、23℃で記録する。
結果は、基本を100として示し、任意の数100は、異なる試験サンプルの、23℃におけるtan(δ)maxと、23℃におけるG*50%外向きとを比較するために、対照に割り当てられる。
23℃におけるtan(δ)maxに関して、試験用サンプルに対する基本100における値を、操作:(試験用サンプルの23℃におけるtan(δ)max値/対照の23℃におけるtan(δ)max値)×100に従い計算する。このようにして、100未満の結果は、ヒステリシスの低下を示し、これは、転がり抵抗性能の改善に対応する。
23℃におけるG*50%外向きに関して、試験用サンプルに対する基本100における値を、操作:(試験用サンプルの23℃におけるG*50%外向き値/対照の23℃におけるG*50%外向き値)×100に従い計算する。このようにして、100より大きい結果は、23℃における歪みの、複雑な動的剪断弾性係数G*50%外向きの改善を示し、これは、材料の剛性の改善と相関する。
【0058】
2 化合物の合成
2.1-化合物A:2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドの合成
【化29】
2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドを、段階a1、段階a2、段階b1、段階b2、段階c、及び段階dと呼ばれる6つの段階で合成する。
段階a1は手順1に従い、段階a2は手順2に従い、段階b1は手順3に従い行う。段階b2及びcは、手順4に従い行う。段階dは、手順5に従い行う。
【0059】
段階a1:2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドの調製
【化30】
手順1:
この化合物は、Organic Syntheses, 22, 63-4;1942 by Russell, Alfred and Lockhart, Luther B.、若しくはOrganic Reactions (Hoboken, NJ, United States), 28, 1982 by Wynberg, Hans and Meijer, Egbert W.に記載されている、「Reimer-Tiemann」手順に従い、又は、Casiraghi, Giovanni et al. in the Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry (1972-1999), (9), 1862-5, 1980により、若しくは、a Vilsmeier reaction described by Jones, Gurnos and Stanforth, Stephen P. in Organic Reactions (Hoboken, NJ, United States), 49, 1997.によってもまた記載されている手順に従い、ホルミル化反応によるナフトールから入手することができる。
2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドは市販されている。2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドは、例えばAldrichから入手することができる(CAS 708-06-5)。
【0060】
段階a2:1-(2-クロロエチル)イミダゾリジン-2-オンの調製
【化31】
手順2:
本化合物は、特許出願第2012/007684号明細書に記載されている手順に従い、入手することができる。
【0061】
段階b1:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドの調製
【化32】
手順3:
2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド(20.0g、0.116mol)、炭酸カリウム(24.08g、0.174mol)、及び、1-(2-クロロエチル)イミダゾリジン-2-オン(25.9g、0.174mol)の、DMF(20mL)との混合物を、75℃(浴の温度)で3.0~3.5時間加熱する。その後、1-(2-クロロエチル)イミダゾリジン-2-オンの第2の部分(17.26g、0.116mol)を添加し、反応媒体を9~10時間、75℃(浴の温度)で撹拌する。40~45℃に戻した後、反応媒体を、水酸化ナトリウム(10g、0.25mol)の水(700mL)溶液に注ぐ。混合物を、10~15分撹拌する。沈殿物を、フィルターで濾過し、蒸留水により洗浄する(3回、400mL)。
灰色固体(31.51g、95%の収率)が得られる。
モル純度は85%より大きい(
1H NMR)。
【化33】
【表1】
溶媒:CDCl
3
【0062】
工程b2及びc:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシムの調製
【化34】
手順3の最後で単離した生成物を、以下の手順4で使用する。
【0063】
手順4:
エタノール(5mL)中のヒドロキシルアミン溶液(2.05g、31.0mmol、水中に50%、Aldrich)を、45℃(浴の温度)で、2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドエタノール(6.3g、22.2mmol)のエタノール(30mL)溶液に添加する。反応媒体を55℃(浴の温度)で4時間、撹拌する。40℃に戻した後、酢酸エチル(30mL)を15分かけて滴加する。沈殿物をフィルターで濾過し、エタノール/酢酸エチル混合物により洗浄する。
白色固体(4.00g、60%の収率)を得る。
1H NMRにより推定されるモル純度は、95%を上回る。
【化35】
【表2】
溶媒 MeOH
【0064】
段階d:2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドの調製
【化36】
【0065】
手順5:
NaOCl(74.44g/L;98mL;4.0eq.)(eq.=モル当量)の水溶液を、10分かけて、1℃(浴温度=0℃)まで冷却した、前述の2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシムの酢酸エチル(230mL)懸濁液に滴加する。反応媒体を0~2℃(浴温度=0℃)で、8.5時間撹拌する。
NaOCl水溶液(74.44g/L;98mL;4.0eq.)の第2の部分を、5分かけて添加する。反応媒体を0~2℃(浴温度=0℃)で、10~11時間撹拌する。
沈殿物をフィルターで濾過し、水(2回、25mL)、次いで酢酸エチル(2回、10mL)で洗浄する。
次いで、127.0~127.5℃の融点を有する白色固体を得る(6.24g;18.7mmol;収率77%)。
化合物A、即ち2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドを得る。モル純度は92%より高く(
1H NMR)、2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドは6mol%を下回り、残留溶媒不純物は2mol%を下回る。
【化37】
【表3】
溶媒 CDCl
3
【0066】
2.2- 化合物Bの合成:2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド
2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドは、2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシムを得るために2.1章の手順1~4の段階を再現し、続いて、後述する手順6を行うことにより、得られる。
手順6:
NaOCl(78g/L;35mL;1.46eq.)の水溶液を、15分かけて、4℃(浴温度=0℃)に冷却した、2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトアルデヒドオキシム(7.5g;25.06mmol)のジクロロメタン(300mL)溶液に添加する。反応媒体を、4~5℃の温度で60~70分撹拌する。有機相を分離する。水相をジクロロメタン(25mL)で抽出する。合わせた有機溶液を水で洗浄する(25mLで2回)。溶媒を、減圧下にて蒸発させて40~50mLまで減らす。40/60石油エーテル(60mL)を、結晶化のために添加する。得られた沈殿物を濾過し、40/60石油エーテルで洗浄する(30mLで2回)。
白色固体(6.46g、87%の収率)を得る。
生成物Bを得る。
1H NMRにより推定されるモル純度は99%より大きく、残留溶媒不純物は1%未満である。
【化38】
【表4】
溶媒:CDCl
3
【0067】
3 変性ポリマーの実施例
3.1 2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドによりグラフトしたスチレン/ブタジエンコポリマー
章2.1に記載する合成プロセスにより得た化合物A、即ち2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド(0.27g;0.81mmol)を、開放式ミル(23℃の開放式混合機)にて、20gの非官能性スチレン/ブタジエンコポリマー(ポリマー総重量に対して26.5重量%のスチレン、及び、ブタジエン部の重量に対して25重量%の1,2-ブタジエン単位を含有する;Mn=150000g/mol、及びPI=1.84、これらは章1.2に記載の方法で測定)に組み込む。混合物を15回のターンオーバー通過で均質化する。この化合段階の後に、10バールの圧力でのプレスでの、10分間の、120℃での熱処理が続く。
1H NMRによる分析により、0.29%のグラフトのモル度(モルグラフト収率は96%)を示すことが可能となった。
以下のグラフト度の測定を可能にする化学シフト:
7.6~8.2ppm:6個の芳香族H
4.2~4.3ppm:2H CH2-O
3.1~3.8ppm:6H CH2-N
【0068】
3.2 2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシドによりグラフトしたポリイソプレン
章1.2に記載する合成プロセスにより得た化合物A、即ち2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド(0.29g;0.88mmol)を、開放式ミル(23℃の開放式混合機)にて、20gの合成ポリイソプレン(99.35重量%のcis-1,4-イソプレン単位、及び、0.65重量%の3,4-イソプレン単位を含有;Mn=375000g/mol及びPI=3.6、これらは章1.2に記載の方法により測定)を組み込む。混合物を15回のターンオーバー通過で均質化する。この化合段階の後に、10バールの圧力でのプレスでの、10分間の、120℃での熱処理が続く。
1H NMRによる分析により、0.2%のグラフトのモル度(モルグラフト収率は66%)を示すことが可能となった。
以下のグラフト度の測定を可能にする化学シフト:
7.6~8.2ppm:6個の芳香族H
4.2~4.3ppm:2H CH2-O
3.1~3.8ppm:6H CH2-N
【0069】
4 ゴム組成物の実施例
4.1 実施例1
本試験の目的は、変性エラストマーを含有しない、従来の非適格な組成物、及び、変性エラストマーを含む先行技術の組成物と比較しての、本発明の組成物のゴム特性の観点からの性能の改善を示すことである。具体的には、これらの組成物は、以下の方法で定義される:
非適格な組成物C1は、具体的には、非グラフト合成ポリイソプレン、シリカ、及びシランポリスルフィドカップリング剤を含む、タイヤトレッドとして使用する、「従来の」ゴム組成物である;
非適格な組成物C2は、合成ポリイソプレンにグラフトした化合物Bを更に含むことを除いて、組成物C1と同一である;
本発明に従うと、組成物C3は、合成ポリイソプレンにグラフトした化合物Aを更に含むことを除いて、組成物C1と同一である組成物である。
phr(エラストマー100重量部当たりの重量部)で表される、これらの組成物の様々な構成成分の含有量を、表1に表す:
【表5】
組成物C2及びC3は、同じモル数、即ち、0.2mol%の、グラフトした化合物A又はBを含む。
(1)99.35重量%のcis-1,4-イソプレン単位、及び、0.65重量%の3,4-イソプレン単位を含有するポリイソプレン;Mn=375000g/mol及びPI=3.6、これらは章1.2に記載の方法により測定;
(2)化合物B:章2.2に記載のプロセスに従い合成した、2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド;
(3)章2.1に記載のプロセス従い合成した、化合物A:2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド;
(4)Solvayにより販売されているシリカ、Zeosil 1165MP;
(5)参照番号Si69でEvonikにより販売されている、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT);
(6)Cabot Corporationにより販売されている、N234等級のカーボンブラック;
(7)参照番号Santoflex 6-PPDでFlexsysにより販売されている、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-パラ-フェニレンジアミン;
(8)Flexsysにより販売されている、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン;
(9)Umicoreにより販売されている酸化亜鉛(産業用等級);
(10)Uniqemaにより販売されているステアリン、Pristerene 4031;
(11)参照Santocure CBSでFlexsysにより販売されている、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド。
【0070】
組成物C1~C3を、以下の方法で調製する:ジエンエラストマーを、85cm
3のPolylab密閉式混合機に導入し、70%に満たす。この初期容器温度は、約110℃である。化合物A及び化合物Bに関連する組成物に関して、化合物A又は化合物Bを、ジエンエラストマーとして同時に導入する。次に、サーモメカニカル作業を、120℃で1分半行う。
次いで、組成物C1~C3のそれぞれに対して、補強充填剤、充填剤をジエンエラストマーと結合するための剤、及び次いで、1~2分の混練の後、加硫系の例外はあるが、様々な他の成分を導入する。サーモメカニカル作業(非作製段階)を続いて、合計で約5分続く段階で、160℃の最大滴下温度に達するまで行う。
このようにして得た混合物を回収して冷却し、加硫系(硫黄、及びスルフェンアミド型促進剤)を、開放式混合機(ホモフィッシャー)に25℃で添加する。これらの組合せは、約5~6分混合される(作製段階)。
このようにして得た組成物はその後、物理的又は機械的特性を測定するために圧延され、プラーク(2~3mmの厚さ)、又は、薄いゴムシートの形態になる。
これらの組成物のゴム特性は、60分間150℃で硬化した後に測定する。得られた結果を表2に示す。
【表6】
【0071】
予想したように、表2の観点から、非置換のイミダゾリジノン官能基を含む化合物で変性したエラストマーを含む、非適格な組成物C2は、変性エラストマーを含まない非適格な組成物C1と比較して、ヒステリシス(23℃におけるtan(δmax))の低下を示すことが分かる。
驚くべきことに、N置換イミダゾリジノン官能基を含む化合物で変性したエラストマーを含む、本発明に従った組成物C3は、非適格な組成物C1と比較して、ヒステリシスの著しい低下、また、非適格な組成物C1と比較して既に良好なヒステリシスを示した、非適格な組成物C2と比較して、ヒステリシスの著しい低下を示す。
故に、本発明に従った変性エラストマーにより、当該エラストマーを含有する組成物のヒステリシスを低下させることが可能となり、故に、これらの組成物の転がり抵抗性能を改善することが可能となる。
【0072】
4.2 実施例2
本試験の目的は、変性エラストマーを含まない従来の非適格な組成物、及び、変性エラストマーを含む先行技術の非適格な組成物と比較しての、本発明に従ったいくつかの組成物のゴム特性の改善を示すことである。具体的には、これらの組成物は、以下の方法で定義される:
非適格な組成物C4は、具体的には、非グラフトスチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)、シリカ、及びシランポリスルフィドカップリング剤を含む、タイヤトレッドとして使用する、「従来の」ゴム組成物である;
非適格な組成物C5は、SBRにグラフトした化合物Bを更に含むことを除いて、組成物C4と同一である;
本発明に従うと、組成物C6は、SBRにグラフトした化合物A及びBを更に含むことを除いて、組成物C5と同一である組成物である;
非適格な組成物C7は、SBRの代わりに合成ポリイソプレン含むことを除いて、組成物C4と同一である;
非適格な組成物C8は、合成ポリイソプレンにグラフトした化合物Bを更に含むことを除いて、組成物C7と同一である;
本発明に従うと、組成物C9は、合成ポリイソプレンにグラフトした化合物A及びBを更に含むことを除いて、組成物C7と同一である組成物である;
【0073】
phr(エラストマー100重量部当たりの重量部)で表される、組成物の様々な構成成分の含有量を、以下の表3に表す:
【表7】
(1)99.35重量%のcis-1,4-イソプレン単位、及び、0.65重量%の3,4-イソプレン単位を含有するポリイソプレン;Mn=375000g/mol及びPI=3.6、これらは章1.2に記載の方法により測定;
(2)コポリマーの総重量に対して26.5重量%のスチレン、及び、ブタジエン部の重量に対して25重量%の1,2-ブタジエン単位を含有する非官能性スチレン/ブタジエンコポリマー;Mn=150000g/mol及びPI=1.84、これらは章1.2に記載の方法により測定;
(3)化合物B:章2.2に記載のプロセスに従い合成した、2-(2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド;
(4)章2.1に記載のプロセス従い合成した、化合物A:2-(2-(3-クロロ-2-オキシムイミダゾリジン-1-イル)エトキシ)-1-ナフトニトリルオキシド;
(5)Solvayにより販売されているシリカ、Zeosil 1165MP;
(6)参照番号Si69でEvonikにより販売されている、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT);
(7)Cabot Corporationにより販売されている、N234等級のカーボンブラック;
(8)参照番号Santoflex 6-PPDでFlexsysにより販売されている、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-パラ-フェニレンジアミン;
(9)Flexsysにより販売されている、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン;
(10)Umicoreにより販売されている酸化亜鉛(産業用等級);
(11)Uniqemaにより販売されているステアリン、Pristerene 4031;
(12)参照Santocure CBSでFlexsysにより販売されている、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド。
【0074】
組成物を、以下の方法で調製する:ジエンエラストマーを、85cm
3のPolylab密閉式混合機に導入し、70%に満たす。この初期容器温度は、約110℃である。化合物B、又は、化合物A及びBに関する組成物に関して、化合物B、又は、化合物A及びBを、ジエンエラストマーとして同時に導入する。次に、サーモメカニカル作業を、120℃で1分半行う。
次いで、組成物C4~C9のそれぞれに対して、補強充填剤(複数可)、充填剤をジエンエラストマーと結合するための剤、及び次いで、1~2分の混練の後、加硫系の例外はあるが、様々な他の成分を導入する。サーモメカニカル作業(非作製段階)を続いて、合計で約5分続く段階で、160℃の最大滴下温度に達するまで行う。
このようにして得た混合物を回収して冷却し、加硫系(硫黄、及びスルフェンアミド型促進剤)を、開放式混合機(ホモフィッシャー)に25℃で添加する。これらの組合せは、約5~6分混合される(作製段階)。
このようにして得た組成物はその後、物理的又は機械的特性を測定するために圧延され、プラーク(2~3mmの厚さ)、又は、薄いゴムシートの形態になる。これらの組成物のゴム特性は、60分間150℃で硬化した後に測定する。得られた結果を表4に示す。
【表8】
【0075】
予想したように、表4の観点から、非置換イミダゾリジノン官能基を含む化合物でグラフトしたエラストマーを含む、非適格な組成物C5及びC8は、変性エラストマーを含まない、それぞれ非適格な組成物C4及びC7と比較して、同一の剛性(23℃でのG*50%外向き)におけるヒステリシスの低下を示すことが分かる。
驚くべきことに、N置換イミダゾリジノン官能基を有する化合物、及び、非置換イミダゾリジノン官能基を有する化合物で変性したエラストマーを含む、本発明に従った組成物C6は、非適格な組成物C4と比較して低下したヒステリシスを既に示した、非適格な組成物C5と比較して、ヒステリシスの著しい低下を示す。ヒステリシスのこの低下は、硬化した剛性特性の低下を伴わずに生じ、これは驚くべきことである。これは、当業者が、ヒステリシス及び硬化した剛性特性は、ゴム組成物の2つの相反する特性であることを知っているためである。そのままの剛性特性を改善することにより、ヒステリシスの悪化がもたらされ、またその逆も同様であることが知られている。実際のところ、非適格な組成物C4及びC5と比較して、本発明に従った、組成物C6の硬化した剛性/ヒステリシスの妥協の著しい改善が、ここで観察される。この同じ結果は、非適格な組成物C8と比較して、本発明に従った組成物C9で、そのままの剛性の低下が観察された場合であっても、非適格な組成物C7及びC8と比較しての、本発明に従った組成物C9でも得られる。そのままの剛性のこの低下は、本発明に従った組成物C9のヒステリシスの強力な低下を考慮すると、非常に低いままである。
【国際調査報告】