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特表2022-543637多孔質コーティングを有する触媒体基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】多孔質コーティングを有する触媒体基材
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20221005BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221005BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221005BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221005BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 129/02 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 139/06 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 125/06 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B01J37/02 301D
B01J37/08
F01N3/28 301Z
F01N3/022 B
C09D7/61
C09D133/04
C09D129/02
C09D139/06
C09D125/06
C09D5/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507475
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020071661
(87)【国際公開番号】W WO2021023659
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】102019121084.4
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・コッホ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・フェルスター
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ギライル
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル・ファン・ヘネヒテン
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4G169
4J038
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB02
3G091AB04
3G091AB13
3G091BA07
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091GA06
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB10W
3G091GB17X
3G091GB19W
3G190AA02
3G190BA02
3G190CA03
3G190CA13
3G190EA33
3G190EA36
3G190EA37
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA13A
4G169BA22C
4G169BA29C
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC44A
4G169BC52A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169CA03
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169FA03
4G169FB29
4G169FB36
4G169FB78
4G169FC03
4J038BA001
4J038CC031
4J038CE021
4J038CG141
4J038CK031
4J038HA061
4J038HA161
4J038MA10
4J038NA08
4J038NA27
4J038PB07
4J038PC03
(57)【要約】
本発明は、触媒を製造するためのコーティング懸濁液、対応する方法、及び触媒自体に関する。特に、コーティング懸濁液は触媒の製造中に使用され、それにより多孔質触媒コーティングが得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの無機コーティング材料と、少なくとも1つのポリマー有機気孔形成剤と、を有する担体基材をコーティングするためのコーティング懸濁液であって、
前記ポリマー気孔形成剤が、40重量%~99.5重量%の含水量を有する水不溶性の膨潤粒子で構成されることを特徴とする、コーティング懸濁液。
【請求項2】
前記ポリマー気孔形成剤が、天然ポリマーであるアルギン酸塩、カラギーナン、キサンタン、デキストラン、ペクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、キトサンの群、又は合成ポリマーであるポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールアクリレート/メタクリレート(PEGA/PEGMA)、及びポリスチレンの群に由来するヒドロゲルであることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング懸濁液。
【請求項3】
膨潤粒子で作製されたポリマー気孔形成剤が、d50平均を使用して1μm~100μmの直径を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティング懸濁液。
【請求項4】
前記コーティング懸濁液の固形分含有量に対する膨潤粒子で作製された前記ポリマー気孔形成剤の重量比が、前記コーティング懸濁液中で1:40~1:0.7であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング懸濁液。
【請求項5】
前記無機コーティング材料が、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、ネオジム、プラセオジム、及びそれらの混合物の群に由来する金属酸化物、混合酸化物及び/又はゼオライトを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング懸濁液。
【請求項6】
前記コーティング材料が、白金、パラジウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、金及び銀、並びに/又はそれらの混合物の群に由来する触媒活性金属を、塩、酸化物、又は金属の形態で更に含有することを特徴とする、請求項5に記載のコーティング懸濁液。
【請求項7】
前記コーティング懸濁液が、膨潤気孔形成剤に加えて、1~10重量%の更なる充填剤を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング懸濁液。
【請求項8】
前記ポリマー気孔形成剤が、更なる充填剤を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング懸濁液。
【請求項9】
前記ポリマー気孔形成剤が、触媒活性金属又は触媒活性金属のための前駆体を含有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング懸濁液。
【請求項10】
少なくとも1つの無機コーティング材料と、少なくとも1つのポリマー有機気孔形成剤と、を有するコーティング懸濁液を提供することによって、担体基材上に多孔質コーティングを製造する方法であって、
前記ポリマー気孔形成剤が、40重量%~99.5重量%の含水量を有する水不溶性の膨潤粒子で構成され、前記担体基材を前記コーティング懸濁液でコーティングし、前記コーティングされた担体基材を乾燥させ焼成することを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10の記載に従って製造される、担体基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒基材をコーティングするためのコーティング懸濁液、触媒基材をコーティングする方法、及び本発明に従ってコーティングされた触媒基材に関する。特に、それを用いて多孔質層を作成することができるコーティング懸濁液が、コーティングされた触媒基材の製造に使用される。
【0002】
自動車における内燃機関の排気ガスは一般に、有害ガスである一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)及び場合によっては硫黄酸化物(SOx)、並びに、ナノメートルスケールの煤粒子と、おそらくは粘着性の有機凝集物及び灰残留物とから主になる粒子を含有する。これらは、一次排出物と呼ばれる。CO、HC、及び粒子は、エンジンの燃焼室内の燃料の不完全な燃焼の産物である。窒素酸化物は、燃焼温度が局所的に1400℃を超えるときに、吸気中の窒素と酸素からシリンダー内で形成される。硫黄酸化物は、有機硫黄化合物の燃焼に起因し、その少量は非合成燃料中に常に存在する。自動車の排気ガスから、健康及び環境にとって有害なこれらの排出物を除去するため、排気ガスを浄化するための様々な触媒技術が開発されており、その基本原理は、通常、浄化すべき排気ガスを、触媒活性コーティングが塗布されたフロースルー型又はウォールフロー型のハニカム体又はモノリスを通して案内することに基づいている。
【0003】
コーティング中の触媒は、様々な排気ガス成分の化学反応を促進して二酸化炭素や水などの無害な産物を形成し、ここでウォールフローフィルターは更に、排気ガス流がフィルターの多孔質壁を通過するときに、有害な煤や灰粒子を排気ガスから除去する。特に、コーティングされたフロースルー基材の場合だけでなく、チャネル壁上にコーティングを有するウォールフローフィルター基材の場合も、触媒コーティングには通って流れることができる開気孔を含むある種の気孔率を有し、したがってガス透過性が良好であることが必要である。多孔質層の気孔率、及びしたがってより大きな自由表面積は、一方で、層内の触媒活性成分への排気ガスのより良好なアクセスを可能にし、他方では、ガスのみの多孔質フィルター壁への自由なアクセスと通過を可能にする。多孔質フィルター壁上のコーティングがほとんど閉じて不透過性である場合、排気ガスの背圧が許容できないほど大きく増加し、したがって、エンジンのトルクの低下、また場合によっては燃料消費の増加につながる。したがって、特にフィルター用途においては、触媒コーティングが良好なガス透過性を有し、排気ガスの背圧を実質的に増加させない多孔質構造を有することが望ましい。
【0004】
金属又はセラミックで作製された温度に安定なハニカム体からなるコーティングされた触媒基材は、基材をコーティング懸濁液(ウォッシュコート)と接触させることによって製造される。コーティング懸濁液は、無機コーティング材料(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン)、白金、パラジウム、又はロジウムなどの触媒活性貴金属、並びに場合によって、酸素吸蔵材料又はゼオライトのような他の触媒活性物質などの他の成分のスラリーからなる。懸濁液の粘度及び更にはレオロジー特性を調整するために、それらはまた、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、又は沈降抑制剤を含有する場合もある。基材を液体ウォッシュコートでコーティングした後、それらを乾燥させ、500℃~700℃の温度で焼成することによって、触媒活性元素が埋め込まれた強固に付着した酸化物層を形成する。
【0005】
フィルター又はフロースルー基材上のこれらの触媒活性コーティングの気孔率を高めるために、過去に多くの努力がなされてきた。気孔率とは一般に、気孔の空隙体積と実体又は本体の総体積との比を意味すると理解される。自由表面のアクセス性とコーティングのガス透過性を高めるためには、流れて通ることができ、互いに接続され、また環境に接続されている開気孔が特に重要である。閉気孔によって決定される気孔率の割合は、ガス透過性及び触媒活性中心へのアクセス性とは関連しない。
【0006】
国際公開第2009049795号には、無機担体材料と、0.5μm~2μmの直径を有し、最大8重量%でコーティング懸濁液中に存在する凝集ポリマーの一次粒子からなるポリマー気孔形成剤とを含有するコーティング懸濁液及びそのコーティング懸濁液で触媒基材をコーティングする方法が開示されている。ここでは、ポリマー気孔形成剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、又はポリスチレンなどの合成ポリマーの群から選択されている。コーティング懸濁液を適用して120℃で乾燥させた後、層中の有機ポリマー気孔形成剤を550℃の温度処理によって燃焼させて気孔を形成する。その特許明細書では、気孔形成剤の添加によるコーティングの気孔率の増加の程度に関するいかなる情報も示されていない。
【0007】
同じ原理でのより高い温度で燃焼させる有機気孔形成剤を使用した触媒コーティング中の気孔の生成が、国際公開第2017209083(A1)号に記載されている。この出願では、排気ガスを浄化するためのフィルター壁上の多孔質の触媒活性層をクレームしている。多孔質層は定義された気孔率と気孔径分布を有し、触媒活性担体材料と有機気孔形成剤とを含有するコーティング懸濁液を用いて生成されている。デンプン、炭素又は活性炭粉末及びポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン、又はポリメチルメタクリレート樹脂のような有機ポリマーなどの2μm~20μmの粒径を有する物質が、可能な気孔形成剤として提案されている。担体材料の体積に対する気孔形成剤の体積の比は、3:1から最大で15:1の範囲である。層の気孔構造は、500℃で有機気孔形成剤を燃焼させることによって生成される。国際公開第08153828(A2)号にはまた、無機粒子から多孔質層を生成する方法が開示されている。この文献では、タンパク質、デンプン、又はポリマー粒子などの熱分解性粉末が無機膜の気孔形成剤として使用されている。
【0008】
これらの解決策は全て、層の十分に高い気孔率を生成するために、懸濁液の固形分含有量に対してかなりの体積割合で有機粒子から作製された気孔形成剤を含有するという共通した特徴を有している。約50vol%の気孔率(フィルター基材のチャネル壁の気孔率に相当)を有する層を生成するためには、純粋に例示的な計算として、酸化アルミニウムの純粋な密度(3.95g/cm)と有機気孔形成剤としてのポリエチレン樹脂の純粋な密度(0.9g/cm)から約20重量%の気孔形成剤含有量が得られる。コーティング懸濁液中のこの高い割合の有機物は、層の焼成中にかなりの量の有機分解生成物を生成する。使用されるポリマー応じて、当該有機分解生成物は、焼成炉内で爆発する危険性のある雰囲気につながる可能性があり、また健康にも有害であり得る。したがって、それらを高価で複雑な熱的後燃焼によって排気ガスから除去しなければならない。更に、熱分解が不完全なことによる有機添加剤の含有量が高いために、多量の望ましくない残留物が層に残り、それによって触媒の効果が低下するリスクがある。
【0009】
したがって、焼成中にかなりの量の有機分解生成物が生成されることのなく、気孔形成剤を用いて触媒基材上に多孔質の触媒活性コーティングを生成する前述の問題の解決策が依然として必要とされている。したがって、本発明は、コーティングが高い気孔率と自由表面積を有し、製造中に生じる有機物の排出が少ないコーティング懸濁液、及び触媒基材上に多孔質の触媒活性コーティングを生成する方法を提供するという目的に基くものである。更に、本発明の目的は、多孔質コーティングを有する触媒基材を含む触媒を提供することである。
【0010】
この目的は、少なくとも1つの無機コーティング材料と、少なくとも1つのポリマー有機気孔形成剤と、を有する担体基材をコーティングするためのコーティング懸濁液によって達成され、ここでポリマー気孔形成剤は、40重量%~99.5重量%の含水量を有する水不溶性の膨潤粒子で構成される。全く驚くべきことに、これらの膨潤ポリマー気孔形成剤は、乾燥プロセス中に適用された触媒コーティング懸濁液中で高い含水量を保ち、わずかに収縮するだけである。それらは、乾燥中にそれらの形状と大きさを実質的に維持し、したがって、粉末状コーティング材料が閉じた不透過層を形成することを防止する。それは、熱分解の結果として最後の焼成中でのみ消失するが、そのときに自然に対応する気孔を残す。膨潤ポリマー気孔形成剤は、40~99.5%、好ましくは70~98%、非常に好ましくは80~95%の高い含水量を有するため、それらを形成するポリマーに由来する有機分解生成物の量は、一般に使用される有機気孔形成剤と比較して非常に少ない。炭素(グラファイト、活性炭、石油コークス、及びカーボンブラック)、デンプン(例えば、トウモロコシ、大麦、豆、ジャガイモ、米、タピオカ、エンドウ、ソテツ、小麦、カンナ)、米及びクルミの殻の粉並びにポリマー(ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ABS、アクリレート、及びポリエステル)などの気孔形成剤は既に先行技術に属するものである。
【0011】
ヒドロゲルと呼ばれるものを、水不溶性の膨潤粒子として使用することが優先される。ヒドロゲルとは一般に、水を含有するが水不溶性のポリマーを意味すると理解され、その分子は、例えば共有結合又はイオン結合によって化学的に結合されるか、若しくは、例えばポリマー鎖が絡み合うなど物理的に連結されて、三次元ネットワークを形成する。組み込まれた親水性ポリマー成分のために、それらは、水中で膨潤して体積がかなり増加するが、それらの材料の凝集性を失うことはない(Wikipediaの「Hydrogel」の項、Flee Encyclopedia;2018年11月18日、03:24UTCの有効バージョン;URL:https://de.wikipedia.org./w/index.php?title=Hydrogel&oldid=182851302;Enas M.Ahmed,Hydrogel:Preparation,chracterization,and applications:A review,Journal of Advanced Research(2015)6,105~121)。好ましくは、ヒドロゲルを形成するポリマーは、天然ポリマーであるアルギン酸塩、カラギーナン、キサンタン、デキストラン、ペクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、キトサンの群、又は合成ポリマーであるポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールアクリレート/メタクリレート(PEGA/PEGMA)、及びポリスチレン、又はこれらのポリマーの混合物の群から選択されるポリマーを含む。アルギン酸塩、カラギーナン、ゼラチン、及びポリアクリレートをベースとした膨潤ヒドロゲルが、気孔形成剤として特に好適である。ポリマー気孔形成剤は、1μm~100μm、好ましくは10μm~50μm、非常に好ましくは10μm~30μmの平均直径d50(申請日に有効な最新版のISO13320-1に従ったレーザー回折法を使用して測定される)の球形ヒドロゲル粒子から好ましくはなる。
【0012】
ヒドロゲル粒子の形状はまた、不規則であっても、又は円筒形及び繊維状であってもよい。繊維状又は円筒形ヒドロゲル粒子の場合、レーザー回折によって測定される平均直径d50もまた、1μm~100μm、好ましくは5μm~50μmであり、粒子は、好ましくは50:1~2:1、好ましくは20:1~5:1の長さ対直径のアスペクト比を有する。当然のことながら、ヒドロゲル粒子の不規則な形状及び他の幾何学的形状も、本発明の範囲内で使用することができる。
【0013】
コーティング懸濁液の固形分含有量に対する膨潤粒子で作製されたポリマー気孔形成剤の重量比は、コーティング懸濁液中で1:40~1:0.7である。好ましい実施形態では、これは1:20~1:2であり、非常に特に好ましくは1:10~1:3である。懸濁液中の固体に対するヒドロゲルの重量比が0.025未満である場合、プラスの効果を得るためには層内の追加の気孔率が低すぎる。一方、1:0.7の比より高いより大量のヒドロゲル粒子は気孔率を更に増大させるが、しかしながら最終的には、触媒基材の担持量が全体的に過度に低くなり、及びコーティングの接着性及び耐摩耗性を過度に低くする。当業者は、根底にあるコーティングの問題に対して正しい値を見つけることができる。
【0014】
気孔形成剤に加えて、本発明のコーティング懸濁液は少なくとも1つの無機コーティング材料を有する。これは、本目的に適した材料に応じて当業者によって設計することができる。一般にこれらは、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、セリウム、ランタン、イットリウム、ネオジム、プラセオジム、及びそれらの混合物の群に由来する金属酸化物、混合酸化物及び/又はゼオライトで作製された材料である。材料は、特に好ましくは、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、又はセリウム-ジルコニウムの酸化物を含む。これらは、バリウム、ランタン、イットリウム、プラセオジム、ネオジムの群に由来する安定剤と共に少量(1~10重量%)で提供される。一般に、これらは高表面化合物(出願日の最新版のDIN66132に従って測定された10m/g超~400m/gのBET表面積)であり、対応して高い熱負荷に耐える。
【0015】
上で言及したコーティング材料は、しばしば、排気ガスの浄化において触媒活性を有する金属と共に提供される。したがって、コーティング材料は、鉄、銅、白金、パラジウム、ロジウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、金及び銀、並びに/又はそれらの混合物の群に由来する触媒活性金属を、塩、酸化物、若しくは金属の形態の形態で更に含有してもよい。
【0016】
本文脈において、鉄又は銅イオン交換ゼオライト、特にCHA、AEI又はERI型のものが特に好ましい。更には、パラジウム及び/又はロジウムと共に提供されるアルミニウム、セリウム、及びジルコニウムをベースとした混合物又は混合酸化物が好ましい。白金及び/又はパラジウムと共に提供されるアルミニウムをベースとした触媒活性コーティング材料もまた、好ましく使用することができる。当業者はまた、好適な触媒活性コーティングを、次の文書、国際公開第2011151711(A1)号にも見出すこともできる。
【0017】
当業者は、本発明のコーティング懸濁液の固形分含有量を決定することができる。無機コーティング材料(例えば、酸化物、ゼオライト、貴金属を含む酸化物など)はまた、コーティング懸濁液に応じて、更なる固体添加剤(例えば、酸素吸蔵材料、混合酸化物、安定剤など)の形態で変化し、一般に、懸濁液に対して20重量%~55重量%、好ましくは25重量%~50重量%、及び非常に好ましくは30重量%~45重量%である。
【0018】
本発明のコーティング懸濁液でコーティングされる担体基材は、フロースルー基材又はウォールフローフィルター基材のいずれかである。担体基材は一般に、触媒基材、触媒担体、ハニカム体、基材又はモノリスとも呼ばれる。フロースルーモノリスは、従来技術における通常の触媒基材であり、それは、金属(波形担体、例えば国際公開第17153239(A1)号、国際公開第16057285(A1)号、国際公開第15121910(A1)号、及びその中に引用される文献)又はセラミック材料からなる。好ましくは、コージライト、炭化ケイ素、又はチタン酸アルミニウムなどの耐火セラミックが好ましく使用される。面積あたりのチャネルの数はセル密度によって特徴付けられ、一般に平方インチあたり300~900セル(cpsi)である。セラミック内のチャネル壁の壁厚は0.5~0.05mmである。
【0019】
従来技術で一般的なすべてのセラミック材料をウォールフローモノリス又はウォールフローフィルターとして使用することができる。好ましくは、コージライト、炭化ケイ素、又はチタン酸アルミニウム製の多孔質ウォールフローフィルター基材が使用される。これらのウォールフローフィルター基材は流入チャネルと流出チャネルを有し、流入チャネルの下流端部と流出チャネルの上流端部はそれぞれ交互に気密「プラグ」によって塞がれる。この場合、このフィルター基材を通って流れて浄化される排気ガスは、流入チャネルと流出チャネルとの間の多孔質壁を強制的に通過させられ、それにより優れた微粒子フィルタリング効果が得られる。微粒子に関する濾過特性は、気孔率、気孔/半径分布、及び壁部の厚さによって設計することができる。本発明のコーティング懸濁液の形態で触媒材料を入口チャネル及び出口チャネルの多孔質壁に適用することができる。ウォールフローフィルターの気孔率は一般に、40%超、一般的には40%~75%、特に45%~70%である[申請日における最新版のDIN66133に従って測定して]。平均の気孔径(直径)は、少なくとも7μm、例えば7μm~34μm、好ましくは10μm超、特には10μm~20μm、又は21μm~33μmである[出願日における最新版のDIN66134に従って測定して]。
【0020】
ヒドロゲル粒子の十分に小さい粒子サイズ及びコーティング懸濁液の残りの固体成分によって(約15μm~20μm、一般的には<5μmの平均気孔径の標準フィルターの場合)、その後に多孔質コーティングがチャネル壁の気孔の表面上に形成される壁内コーティングと呼ばれるものもまた、本発明のコーティング懸濁液を用いて製造することができる。この場合、壁に可能な限り多くの触媒活性物質が存在することが多いため、ウォールフローフィルターにとって特に重要である。その結果、排気ガスの背圧は、触媒活性を損なうことなく、更にプラスの影響を受ける可能性がある。
【0021】
また、フロースルー基材をコーティングするために本発明の懸濁液を使用することもできる。チャネル壁上のコーティングの多孔質構造は自由にアクセスできる表面積を増加させ、排気ガスの乱流はより良好な交換をもたらし、したがって触媒反応を改善する。気孔形成剤としてのヒドロゲル粒子によって生成されたフロースルー基材の壁上のコーティングを図2に示す。
【0022】
本発明のコーティング懸濁液に使用される膨潤気孔形成剤に加えて、更なる充填剤が、コーティング懸濁液の量に対して1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、非常に好ましくは4重量%~6重量%の量で存在してもよい。例えば、更なる気孔形成剤、特に繊維状に設計されたものを使用することができる。この混合物では、個々の繊維がコーティング懸濁液の異なる膨潤気孔形成剤と接触することができ、したがって、燃焼させた後に、固体コーティング懸濁液中の膨潤気孔形成剤によって生じた個々の気孔は、トンネルを介して互いに架橋する(図4)。その結果、排気ガスが規定された通路を通過する確率が高くなるため、多孔質コーティングを通り抜けるガスの通過を更に最小限に抑えることができる。そのような気孔形成剤は、当業者によって任意に選択することができる。それらは一般に、50:1~2:1、好ましくは20:1~5:1の長さ対幅の比を有する。
【0023】
コーティング懸濁液中の気孔の形成に使用される水不溶性の膨潤気孔形成剤、例えばヒドロゲル粒子は、水と有機ゲル形成ポリマーのみからなっていてもよく、又は、それらはまた更なる充填剤を含有するか、化学的に修飾されてもよい。例えば、膨潤ヒドロゲル粒子は、繊維状充填剤又はゲル粒子中で高い表面積を有する充填剤を更に含有してもよく、それは、ヒドロゲル粒子を乾燥させ燃焼させた後に形成される気孔内に残り、したがって、粒子の濾過効率が高くなる。
【0024】
非常に好ましくは、ポリマー気孔形成剤は、例えば、ヒドロゲルの形態の中に、触媒活性金属又は触媒活性金属のための前駆体を含有する。例えば、ヒドロゲル粒子から作製された気孔形成剤は、すでに上述したように、例えば充填剤として酸化物を含まない貴金属又は貴金属を含有する酸化物を同様に含有してもよく、それらは、好ましく使用されるヒドロゲル粒子を燃焼させた後に生じる気孔を部分的に充填し、例えば煤の燃焼又は最終コーティングの酸化効果などの触媒活性を改善する。膨潤粒子、好ましくはヒドロゲル粒子中の充填剤の割合は、ヒドロゲルの分解後に、気孔の緩い、ガス透過性の充填が得られるように選択されなければならない。酸化セリウム、酸化ジルコニウム又は酸化バリウム若しくは混合酸化物あるいはイオン交換ゼオライトなどの酸素、窒素酸化物、又は有機化合物の吸蔵機能を有する物質もまた、膨潤ヒドロゲル粒子中の充填剤として考えられる。原則として、当業者に知られている排気ガスの浄化のための全ての活性物質をここで使用することができる。有益なことに、好ましく使用されるヒドロゲルの分解後に、したがって、排気ガス中で活性な成分は特に、流れ、物質の移動又は拡散が好ましく起こる場所に位置する。したがって、それらは最大の物質流と密に接触する。一般的には、この更なる充填剤は、コーティング懸濁液の量に対して1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、特に好ましくは4重量%~6重量%の量で存在する。
【0025】
図3に、緩く充填された気孔を有するフィルター壁の壁上のコーティングの概略を示す。あるいは、例えば、その製造後に続いて膨潤した水不溶性ヒドロゲル粒子の上又は中に貴金属を吸収させることによって、気孔形成剤の化学修飾を行うこともできる(実施例1~3を参照)(Journal of Molecular Liquids Volume 276、2019年2月15日、927~935頁)。表面に近い領域のみを化学的に修飾することによって、シェル形状の構造を有するヒドロゲル粒子もまた可能である。例えば、ヒドロゲル粒子を貴金属溶液に短時間入れることによって、表面に近い粒子の領域内にのみ貴金属を吸収させることができ、それは、好ましいヒドロゲルの熱分解後に形成された気孔の壁上に残る。非常に好ましくは、ヒドロゲルは、上記の範囲で充填剤として前述の潜在的に触媒活性化されたコーティング材料を有することができる。
【0026】
好ましくは、コーティングプロセスと呼ばれる工程において、コーティング懸濁液は触媒担体に適用される。この意味での多くのそのようなプロセスが、自動車の排気ガス触媒の製造業者によって過去に公開されている(欧州特許第1064094(B1)号、欧州特許第2521618(B1)号、国際公開第10015573(A2)号、欧州特許第1136462(B1)号、米国特許第6478874号、米国特許第4609563号、国際公開第9947260(A1)号、日本国特許第5378659(B2)号、欧州特許第2415522(A1)号、日本国公開第2014205108(A2)号)。
【0027】
米国特許第6478874号は、ウォッシュコート懸濁液を基材モノリスのチャネルを通じて上方に引き上げるために真空を使用することについて述べている。米国特許第4609563号には、基材の触媒コーティングのために計量された充填システムを使用したプロセスが記載されている。このシステムは、真空を使用して、正確に制御された所定量のウォッシュコート懸濁液によってセラミックのモノリシック基材をコーティングする方法(以下、「計量された充填」)を含む。モノリシック基材は、定量的に決定された分量のウォッシュコート懸濁液に浸漬される。次いで、ウォッシュコート懸濁液が基材モノリスに真空を使用して引き込まれる。しかしながら、この場合、モノリシック基材内のチャネルのコーティングプロファイルが一様となるようにモノリシック基材をコーティングすることは困難である。
【0028】
これに対して、直立した基材モノリスの上面に特定量(計量された充填)のウォッシュコート懸濁液を塗布するプロセスもまた確立され、ここで、この量は、提供されたモノリス内に実質的に完全に保持されるような量である(米国特許第6599570号)。真空/圧力装置がモノリスの端部のうちの1つに作用することによって、ウォッシュコート懸濁液は、過剰な懸濁液がモノリスの下端部で漏れ出すことなく、すべてがモノリス内に吸い込まれる/押し込まれる(国際公開第9947260(A1)号)。これに関連しては、Cataler社の日本国特許第5378659(B2)号、欧州特許第2415522(A1)号、及び日本国公開第2014-205108(A2)号も参照されたい。
【0029】
特に非常に好ましくは、本発明の懸濁液を使用するための触媒基材は、ウォールフローフィルターである。当該ウォールフローフィルターは、乾燥したコーティング懸濁液で30~200g/l、好ましくは50~160g/l、最も特に好ましくは60~145g/lの担持量を有する。ガス透過性、したがって触媒層の気孔率は、機能的能力にとって重要であり、またコーティングされたウォールフローフィルターの可能な限り低い排気ガスの背圧を実現するために重要である。
【0030】
本発明のコーティング懸濁液で触媒担体をコーティングした後、乾燥させる。層は、室温で、又はバッチ又は連続炉において温度を80℃~180℃に上昇させて乾燥させることができる。この場合、水は最初に層から、またある程度はヒドロゲル粒子から蒸発するが、ヒドロゲル粒子はほとんどそれらの大きさを保持する。次いで、触媒担体を500℃~700℃の温度に加熱して焼成し、ここで、コーティングに含有される気孔形成剤の有機画分は水不溶性の膨潤粒子から燃焼する。燃焼後の気孔の直径はヒドロゲル粒子の最初の直径に依存し、ヒドロゲル粒子の好適な粒径分布を選択することによって設定することができる。このようにしてウォールフローフィルターをコーティングすることにより、排気ガスの背圧の過度の増加を防止する十分に高いガス透過性を確保することができる。これによって、基材の表面上に多孔質の触媒活性層が得られ、その1μm~100μm、好ましくは10μm~50μm、非常に特に好ましくは10μm~30μmの直径(例えば、層の複数の断面(例えば10)のSEM又は顕微鏡画像における気孔の直径の光学的な長さ分析によって決定して、平均値を計算する)の気孔の数が増加する。
【0031】
多孔質セラミック基材上のコーティングの典型的な設計及び構造を、図5の走査型電子顕微鏡写真(SEM)に示す。ここでは、本発明のコーティングの有意に増加した気孔率を、気孔形成剤なしで生成された層との比較で、気孔形成剤として水不溶性の膨潤粒子を含有する懸濁液と比べて見ることができる。セル壁上にコーティング層を有するフィルターの場合、これにより、排気ガスを可能な限り低い圧力損失でコーティング層に流すことができるという目的が実現される。これは、分解されたヒドロゲルによって残された空洞(図1)によってより良好に実現される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、出発材料に応じて、気孔率は、膨潤ポリマーの添加によって、少なくとも30%、より好ましくは40%、及び非常に好ましくは50%増加する(相対気孔率の増加)。ここで、気孔率が増加するにつれて、触媒活性材料の量が減少するか、又は層の接着が損なわれる可能性があるという事実によって上限が生じる。用途に応じて、気孔形成剤としてのヒドロゲル粒子の使用によって生成されるコーティングの気孔率は、5%~75%(絶対気孔率)の値まで増加させるべきである。適用されたコーティングの気孔率は、例えば、(既に上に示したように)焼成層の1つ以上の断面で切断したSEM画像の画像解析によって決定することができる。
【0033】
例えば、気孔形成剤としてヒドロゲル粒子を含む本発明のコーティング懸濁液を使用することにより、良好なガス透過性を有する多孔質コーティングを、フィルター基材(ウォールフロー)及びフロースルー基材のチャネル壁の上及び/又は中に生成することができる。そのようなコーティングを有するフィルターの排気ガスの背圧は、気孔形成剤を含まない従来のコーティング懸濁液を使用して生成されるフィルターよりも低い。図1に、層内のヒドロゲル粒子の分解から生じた空洞を通るガス流を概略的に示す。
【0034】
本発明はまた、少なくとも1つの無機コーティング材料と、少なくとも1つのポリマー有機気孔形成剤と、を有するコーティング懸濁液を提供することによって、担体基材上に多孔質コーティングを製造する方法であって、ポリマー気孔形成剤が、ヒドロゲル粒子に対して40重量%~99.5重量%の含水量を有する水不溶性の膨潤粒子で構成され、担体基材をコーティング懸濁液でコーティングし、コーティングされた担体基材を乾燥させ焼成することを特徴とする、方法に関する。コーティング懸濁液の好ましい実施形態はまた、必要な変更を加えて、本明細書で取り上げている方法にも適用される。
【0035】
対応する製造された担体基材は、車のエンジンからの排気ガスの後処理に良好に使用することができる。原則として、この目的のために当業者にとって好適な全ての排気ガスの後処理は、そのように使用することができる。上述のように、ゼオライトは、とりわけ、TWC(三元触媒)、DOC(ディーゼル酸化触媒)、PNA(受動的NOx吸着剤)、LNT(窒素酸化物吸蔵触媒)、特にSCR触媒コンバータ中に存在する。本発明の方法を使用して生成された触媒はこれらのすべての用途に適する。車のリーンバーンエンジンの排気ガスの処理のためにこれらの触媒コンバータを使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図面の説明
【0037】
図1】ウォールフローフィルターの本発明のコーティングの概略図。
【0038】
図2】フロースルー基材の本発明のコーティングの概略図。
【0039】
図3】気孔内に充填剤を含むウォールフローフィルターの本発明のコーティングの概略図。
【0040】
図4】追加の気孔形成剤による気孔のチャネル様接続を有するウォールフローフィルターの本発明のコーティングの概略図。
【0041】
図5】気孔形成剤を含む(下)及び気孔形成剤を含まない(上)コーティングの気孔率の比較。
【0042】
図6】アルギン酸塩ヒドロゲル粒子の光学顕微鏡写真
【0043】
図7】アルギン酸塩ヒドロゲル粒子の粒径分布(D50:30μm;D90:53μm);ISO13320-1の粒径分析-レーザー回折法に準拠したレーザー回折法に従って測定 図の凡例 500 排気ガス 570 基材のセル壁 580 ウォッシュコート 590 トンネル形状の接続孔 600 フィルター基材のセル壁 610 充填剤又は分解したヒドロゲルで作製された濃縮された機能性材料
【実施例
【0044】
それ自体では水を含有する膨潤ポリマー気孔形成剤(ヒドロゲル粒子)は市販されていないが、コーティング懸濁液に組み込む前に実施例に記載するように別に調製される。
【0045】
A.アルギン酸塩ヒドロゲル粒子の生成
アルギン酸塩をベースとしたヒドロゲル粒子の生成は、長い間文献に記載されてきた(例えば、Wan-Ping Voo,Europian Polymer Journal 75(2016)343~353;Aurelie Schoubben,Chemical Engineering Journal 160(2010)363~369を参照)。利用可能な文献から、当業者は、5μm~100μmの粒径を有する水不溶性の膨潤アルギン酸塩ヒドロゲル粒子を調製するために最適なプロセスパラメータを容易に特定することができる。
【0046】
例として、1つの実験では、2%のアルギン酸ナトリウム溶液を噴霧ノズルから撹拌しながら5%の塩化カルシウム溶液に噴霧した。カルシウムイオンは、液体表面との衝突時にアルギン酸塩液滴の自発的なゲル化を生じさせる。得られたアルギン酸カルシウムのビーズを溶液中で更に2時間撹拌して膨潤プロセスを完了させ、次いで遠心分離又は濾過によって溶液から分離した。粒子は主に球形であり、平均粒子径d50は29μm(申請日に有効な最新版のISO13320-1に従って測定されたQ3分布の中央値)、含水量は95%であった。図6に、アルギン酸塩ヒドロゲル粒子の光学顕微鏡写真を示す。図7に、粒径分布を示す。
【0047】
塩化カルシウムの代わりに他の水溶性カルシウム塩も使用することができる。本明細書に記載の一般的な方法に従って、アルギン酸塩ヒドロゲル粒子で作製される気孔形成剤はまた、水不溶性の膨潤ヒドロゲル粒子を形成する他の多価カチオンでも生成することができる。例えば、アルギン酸塩ヒドロゲル粒子は、第2族及び第3族の典型元素(例えば、ストロンチウム、バリウム、アルミニウムなど)の多価カチオン、遷移金属(ニッケル、銅、白金、パラジウム、ロジウムなど)の多価カチオン、又はセリウムもしくはランタンなどの希土類金属のカチオンとナトリウムとの交換及び沈殿によって生成することができる。このようにして、気孔形成機能に加えて、触媒活性元素を、ヒドロゲル粒子を介してウォッシュコート層に導入し、ヒドロゲルが燃焼した後にそれらから形成される気孔内に残すこともできる。
【0048】
B.架橋ゼラチンヒドロゲル粒子の生成
20gのゼラチン(Imagel DP(登録商標)、Gelita)を180gの水に懸濁させて、室温で1時間膨潤させる。40℃に加熱して透明な溶液を生成させる。第2の容器において、90℃で撹拌しながら450gの水に50gのポリビニルアルコール(例えば、Mowiol(登録商標)4-98、CAS番号9002-89-5、シグマアルドリッチ)を溶解して、透明な10%PVA溶液を調製する。
【0049】
175gの水と175gのゼラチン溶液(両方とも40℃に加熱)を40℃で撹拌しながら350gのPVA溶液に加えて、40℃で15分間撹拌し、次いで撹拌しながら室温まで冷却する。
【0050】
ゼラチンを架橋するために、350μlの50%水性グルタルアルデヒド溶液(CAS番号:111-30-8、シグマアルドリッチ)をこの溶液に加えて、一晩撹拌する。架橋ゼラチンで作製された沈殿したヒドロゲル粒子を、残りの溶液から遠心分離する。ヒドロゲル粒子は主に球状であり、平均粒子径d50は9μm、含水量は91.3重量%である。
【0051】
C.ポリアクリレートヒドロゲル粒子の生成
市販のポリアクリル酸ナトリウムを使用して、ポリアクリレートヒドロゲル粒子を生成した(例えば、シグマアルドリッチ、CAS番号:9003-04-7)。この物質は、極性液体、例えば水中で、それ自体の重量の数倍を吸収することができ、それによってヒドロゲルを形成するため、当技術分野では超吸収体として知られている。ポリアクリレートで作製された膨潤ヒドロゲル粒子を生成するために、5gのポリアクリル酸ナトリウムを撹拌しながら1リットルの水に添加する。数分後に終了する膨潤プロセスの後、懸濁液をスタンドミキサーで予備粉砕し、次いで、酸化アルミニウム球(1mm)と共にボールミル内で粉砕して50μmの平均粒子径d50にする。
【0052】
本発明のコーティング懸濁液の製造
本発明の気孔形成剤の有効性を実証するために、ゼオライトを含有し、SCR機能を有するウォッシュコートを、表1に示す比率でアルギン酸塩及びゼラチンをベースとしたヒドロゲル粒子(実験A及びB)と混合した。ヒドロゲル粒子を添加する前のウォッシュコート懸濁液の固形分含有量は49.8重量%であった。先ずウォッシュコートを撹拌容器に入れて、対応する量の膨潤ヒドロゲル粒子を撹拌しながら加えた。続いて、得られたコーティング懸濁液を多孔質セラミックプレート上に広げて、乾燥させ、550℃で焼成した。焼成層の層厚は、80μm~150μmであった。気孔率を決定するために、コーティングされたセラミックプレートを合成樹脂に埋め込み、その切片を走査型電子顕微鏡で分析した。次いで、SEM画像を画像解析プログラム(Zeiss Axioソフトウェア)で電子的に調べた。この目的のために、定義されたRGB値を黒及び白色のSEM画像に割り当て、分析ウィンドウにおけるRGB値の面積比を解析し、気孔率を計算で決定した。
【表1】
【0053】
表1から、有機物の割合が5重量%と非常に低い膨潤ヒドロゲル粒子で作製された気孔形成剤を含む本発明の懸濁液を使用することによって、(上記のような画像解析方法によって決定される)層の気孔率が、ヒドロゲル粒子を含まない懸濁液と比較して、乾燥させた層において平均で2倍になることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】