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特表2022-543648バイオ侵食性架橋ハイドロゲルインプラント及び関連使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(54)【発明の名称】バイオ侵食性架橋ハイドロゲルインプラント及び関連使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/06 20060101AFI20221005BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20221005BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20221005BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221005BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221005BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61L31/06
A61L31/14 300
A61L31/14 400
A61L31/02
A61L31/16
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K38/16
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507540
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020044975
(87)【国際公開番号】W WO2021026214
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/883,493
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】511280858
【氏名又は名称】ドーズ メディカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Dose Medical Corporation
【住所又は居所原語表記】229 Avenida Fabricante,San Clemente,CA 92672,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マイケル ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】イナ ムスタファイ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081BA16
4C081BB06
4C081CA181
4C081CE02
4C081CF131
4C081DA01
4C081DB03
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA44
4C084DC50
4C084MA34
4C084MA58
4C084MA67
4C084NA10
4C084ZA011
4C084ZA331
4C084ZB111
4C084ZB351
4C084ZC081
4C084ZC121
4C084ZC201
4C084ZC221
4C084ZC411
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG10
(57)【要約】
本開示は、ハイドロゲルマトリックスからの治療剤の持続放出のための複合インプラントに関する。ハイドロゲルマトリックスは、架橋バイオ侵食性PEGハイドロゲル中に分散された治療用複合体を有する架橋バイオ侵食性ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲルでありうる。治療用複合体は、メソ多孔性シリカ粒子に関連付けられた治療剤を含みうる。複合インプラントは、対象又は患者の眼に送達又は植え込まれるように構成される。複合インプラントは、対象又は患者において眼疾患を治療するために使用されうる。眼疾患は、新生血管加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫、又は網膜静脈閉塞後黄斑浮腫の少なくとも1つから選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルと、
以下:
治療剤と、
メソ多孔性シリカ粒子と、
を含む治療用複合体と、
を含む複合インプラントであって、
前記治療用複合体が前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲル中に分散されている、複合インプラント。
【請求項2】
前記複合インプラントが、対象の眼に送達又は植え込まれるように構成される、請求項1に記載の複合インプラント。
【請求項3】
前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルが、求電子性末端基を有するポリエチレングリコールと求核性末端基を有するポリエチレングリコールとの反応により形成されるポリエチレングリコールのネットワークを含む、請求項1又は請求項2に記載の複合インプラント。
【請求項4】
前記求電子性末端基が、ヒドロキシスクシンイミジルグルタレート(SG)、N-ヒドロキシスクシンイミジルアジペート(SAP)、又はN-ヒドロキシスクシンイミジルアゼレート(SAZ)を含む、請求項3に記載の複合インプラント。
【請求項5】
前記複合インプラントからの前記治療剤のバースト放出が、対象の眼への植込みから最初の24時間の期間にわたり約10パーセント未満(w/w)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項6】
前記複合インプラントからの前記治療剤のバースト放出が、対象の眼への植込みから最初の24時間の期間にわたり約0~約5パーセント(w/w)の範囲内である、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項7】
前記複合インプラントからの前記治療剤の放出速度が、前記バースト放出又は遅滞期の終わりから始めて(ただし、植込み後14日間以内)、最初の3ヵ月間の期間にわたり実質的に一定である、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項8】
前記複合インプラントからの前記治療剤の放出速度が、前記バースト放出又は遅滞期の終わりから始めて(ただし、植込み後14日間以内)、植込みから最初の3ヵ月間の期間にわたりほぼゼロ次又は偽ゼロ次である、請求項7に記載の複合インプラント。
【請求項9】
前記複合インプラントが、対象の眼への植込みから少なくとも6ヵ月間の期間にわたり前記治療剤を放出する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項10】
前記治療用複合体が、前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルの不在下で28日間未満の期間にわたり前記治療剤を放出する、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項11】
前記メソ多孔性シリカ粒子が6~15nmの範囲内の細孔サイズを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項12】
前記メソ多孔性シリカ粒子が1~25ミクロンの範囲内の粒子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項13】
前記メソ多孔性シリカ粒子の表面が電荷を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項14】
前記治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、RNA、siRNA、アプタマー、又は低分子の少なくとも1つから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項15】
前記治療剤が、プロスタグランジン、神経保護剤、レチノイド、スクアラミン、ステロイド、アルファアドレナリン作動剤、遺伝子、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、カルシニューリン阻害剤、アデノ随伴ウイルスベクター、チロシンキナーゼ阻害剤、又はローキナーゼ阻害剤の少なくとも1つから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項16】
前記治療剤が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、コンバーセプト、アンキリンリピートタンパク質、アダリムマブ、抗TNF-アルファ剤、バイオシミラー、又はそれらの塩、エステル、溶媒和物、異性体、複合体、若しくはコンジュゲートの少なくとも1つから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項17】
前記治療剤が、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、又はコンバーセプトの少なくとも1つから選択される、請求項16に記載の複合インプラント。
【請求項18】
前記治療剤が前記メソ多孔性シリカ粒子に吸着されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項19】
対象の眼に治療剤を導入する方法であって、前記方法が、
対象の眼に複合インプラントを送達すること、
を含み、前記複合インプラントが、
バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルと、
以下:
前記治療剤と、
メソ多孔性シリカ粒子と、
を含む治療用複合体と、
を含み、
前記治療用複合体が前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲル中に分散されている、方法。
【請求項20】
対象の眼に複合インプラントを送達することが、前記対象の眼の硝子体又は後房に毛様体扁平部注射を介して前記複合インプラントを注射することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
対象において眼疾患を治療する方法であって、前記方法が、
対象の眼に複合インプラントを送達すること、
を含み、前記複合インプラントが、
バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルと、
以下:
治療剤と、
メソ多孔性シリカ粒子と、
を含む治療用複合体と、
を含み、
前記治療用複合体が前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲル中に分散されており、且つ
前記眼疾患が、新生血管加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、又は網膜静脈閉塞後黄斑浮腫の少なくとも1つから選択される、方法。
【請求項22】
対象の眼に複合インプラントを送達することが、前記対象の眼の硝子体又は後房に毛様体扁平部注射を介して前記複合インプラントを注射することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記メソ多孔性シリカ粒子が6~15nmの範囲内の細孔サイズを含む、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記メソ多孔性シリカ粒子が1~25ミクロンの範囲内の粒子を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記メソ多孔性シリカ粒子の表面が電荷を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、RNA、siRNA、アプタマー、又は低分子の少なくとも1つから選択される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療剤が、プロスタグランジン、神経保護剤、レチノイド、スクアラミン、ステロイド、アルファアドレナリン作動剤、遺伝子、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、カルシニューリン阻害剤、アデノ随伴ウイルスベクター、チロシンキナーゼ阻害剤、又はローキナーゼ阻害剤の少なくとも1つから選択される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療剤が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、コンバーセプト、アンキリンリピートタンパク質、アダリムマブ、抗TNF-アルファ剤、バイオシミラー、又はそれらの塩、エステル、溶媒和物、異性体、複合体、若しくはコンジュゲートの少なくとも1つから選択される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記治療剤が、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、又はコンバーセプトの少なくとも1つから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記治療剤が前記メソ多孔性シリカ粒子に吸着されている、請求項21~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルと、
以下:
治療剤と、
メソ多孔性シリカ粒子と、
を含む治療用複合体と、
を含む、必要とされる対象における眼疾患の治療に使用するための複合インプラントであって、
前記治療用複合体が前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲル中に分散されており、且つ
前記複合インプラントが前記対象の眼に送達される、複合インプラント。
【請求項32】
前記複合インプラントが前記対象の眼に注射される、請求項31に記載の複合インプラント。
【請求項33】
前記メソ多孔性シリカ粒子が6~15nmの範囲内の細孔サイズを含む、請求項31又は請求項32に記載の複合インプラント。
【請求項34】
前記メソ多孔性シリカ粒子が1~25ミクロンの範囲内の粒子を含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項35】
前記メソ多孔性シリカ粒子の表面が電荷を含む、請求項31~34のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項36】
前記治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、RNA、siRNA、アプタマー、又は低分子の少なくとも1つから選択される、請求項31~35のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項37】
前記治療剤が、プロスタグランジン、神経保護剤、レチノイド、スクアラミン、ステロイド、アルファアドレナリン作動剤、遺伝子、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、カルシニューリン阻害剤、アデノ随伴ウイルスベクター、チロシンキナーゼ阻害剤、又はローキナーゼ阻害剤の少なくとも1つから選択される、請求項31~35のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項38】
前記治療剤が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、コンバーセプト、アンキリンリピートタンパク質、アダリムマブ、抗TNF-アルファ剤、バイオシミラー、又はそれらの塩、エステル、溶媒和物、異性体、複合体、若しくはコンジュゲートの少なくとも1つから選択される、請求項31~35のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項39】
前記治療剤が、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、又はコンバーセプトの少なくとも1つから選択される、請求項38に記載の複合インプラント。
【請求項40】
前記治療剤が前記メソ多孔性シリカ粒子に吸着されている、請求項31~39のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項41】
前記眼疾患が、新生血管加齢性黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、又は網膜静脈閉塞後黄斑浮腫の少なくとも1つから選択される、請求項31~40のいずれか一項に記載の複合インプラント。
【請求項42】
それを必要とする対象の治療のための複合インプラントの製造における治療剤の使用であって、前記複合インプラントが、
バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルと、
以下:
治療剤と、
メソ多孔性シリカ粒子と、
を含む治療用複合体と、
を含み、
前記治療用複合体が前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲル中に分散されている、使用。
【請求項43】
前記複合インプラントが前記対象の眼の硝子体又は後房に毛様体扁平部注射を介して送達される、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記メソ多孔性シリカ粒子が6~15nmの範囲内の細孔サイズを含む、請求項42又は請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記メソ多孔性シリカ粒子が1~25ミクロンの範囲内の粒子を含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
前記メソ多孔性シリカ粒子の表面が電荷を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
前記治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、RNA、siRNA、アプタマー、又は低分子の少なくとも1つから選択される、請求項42~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
前記治療剤が、プロスタグランジン、神経保護剤、レチノイド、スクアラミン、ステロイド、アルファアドレナリン作動剤、遺伝子、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、カルシニューリン阻害剤、アデノ随伴ウイルスベクター、チロシンキナーゼ阻害剤、又はローキナーゼ阻害剤の少なくとも1つから選択される、請求項42~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
前記治療剤が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、コンバーセプト、アンキリンリピートタンパク質、アダリムマブ、抗TNF-アルファ剤、バイオシミラー、又はそれらの塩、エステル、溶媒和物、異性体、複合体、若しくはコンジュゲートの少なくとも1つから選択される、請求項42~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
前記治療剤が、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、又はコンバーセプトの少なくとも1つから選択される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記治療剤が前記メソ多孔性シリカ粒子に吸着されている、請求項42~50のいずれか一項に記載の使用。
【請求項52】
針と、
以下:
バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルと、
以下:
治療剤と、
メソ多孔性シリカ粒子と、
を含む治療用複合体と、
を含む複合インプラントと、
を含むプレロードインジェクターアセンブリーであって、
前記複合体が前記バイオ侵食性架橋ポリエチレングリコールハイドロゲルに分散されており、且つ
前記複合インプラントが針にロードされている、プレロードインジェクターアセンブリー。
【請求項53】
前記針が小直径針である、請求項52に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項54】
前記針が21ゲージ以下の直径の針である、請求項52に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項55】
前記複合インプラントが、対象の眼に送達又は植え込まれるように構成される、請求項52~54のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項56】
前記メソ多孔性シリカ粒子が6~15nmの範囲内の細孔サイズを含む、請求項52~55のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項57】
前記メソ多孔性シリカ粒子が1~25ミクロンの範囲内の粒子を含む、請求項52~56のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項58】
前記メソ多孔性シリカ粒子の表面が電荷を含む、請求項52~57のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項59】
前記治療剤が、タンパク質、ペプチド、核酸、RNA、siRNA、アプタマー、又は低分子の少なくとも1つから選択される、請求項52~58のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項60】
前記治療剤が、プロスタグランジン、神経保護剤、レチノイド、スクアラミン、ステロイド、アルファアドレナリン作動剤、遺伝子、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、カルシニューリン阻害剤、アデノ随伴ウイルスベクター、チロシンキナーゼ阻害剤、又はローキナーゼ阻害剤の少なくとも1つから選択される、請求項52~58のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項61】
前記治療剤が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、コンバーセプト、アンキリンリピートタンパク質、アダリムマブ、抗TNF-アルファ剤、バイオシミラー、又はそれらの塩、エステル、溶媒和物、異性体、複合体、若しくはコンジュゲートの少なくとも1つから選択される、請求項52~58のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項62】
前記治療剤が、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、又はコンバーセプトの少なくとも1つから選択される、請求項52~58のいずれか一項に記載のインジェクターアセンブリー。
【請求項63】
前記治療剤が前記メソ多孔性シリカ粒子に吸着されている、請求項52に記載のインジェクターアセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年8月6日出願の「BIOERODIBLE CROSS-LINKED HYDROGEL IMPLANTS AND RELATED METHODS OF USE」という名称の米国仮特許出願第62/883,493号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に基づく優先権を主張する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本開示は、新生血管加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞後黄斑浮腫などの眼疾患を治療するための複合インプラントに関する。特定的には、複合インプラントは、複合メソ多孔性シリカ及びバイオ侵食性ハイドロゲルマトリックスからの治療用複合体の持続放出を提供する組成物を含む。本開示はさらに、バイオ侵食性架橋ハイドロゲルインプラントの作製及び製造方法、並びにバイオ侵食性架橋ハイドロゲルインプラントの関連使用方法に関する。
【0003】
本明細書の書面による開示には、非限定的且つ非網羅的な例示的実施形態が記載されている。図に描かれるかかる例示的実施形態のいくつかを参照する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】一実施形態による、分解性連結を有する架橋ポリマーと治療用複合体とを有する架橋複合インプラントの模式図を示す。
図2】一実施形態による、架橋ハイドロゲルの成分を構成する8アームポリエチレングリコール-スクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)を示す。
図3】一実施形態による、架橋ハイドロゲルの成分を構成するPEG-SGのR基を示す。
図4】一実施形態による、架橋ハイドロゲルの成分を構成するポリエチレングリコール-スクシンイミジルアジペート(PEG-SAP)のR基を示す。
図5】一実施形態による、架橋ハイドロゲルの成分を構成する8アームポリエチレングリコール求電子性末端基(PEG-NH2)を示す。
図6A】一実施形態による、図示されたメカニズムを介する架橋反応を示す。
図6B】一実施形態による、図示されたメカニズムを介する架橋反応を示す。
図7】一実施形態による、37℃及び40℃の等張リン酸緩衝生理食塩水pH7.4中PEG-SGからのアフリベルセプトのin vitro放出を示すグラフである。
図8】一実施形態による、P407とともに凍結乾燥されたメソ多孔性シリカ粒子の拡大図を示す。
図9】一実施形態による、37℃でのロードメソ多孔性シリカ粒子からのアフリベルセプトのin vitro放出のグラフである。
図10】一実施形態による、37℃でのロードメソ多孔性シリカ粒子からのアフリベルセプトのin vitro放出のグラフである。
図11】一実施形態による、メソ多孔性シリカ粒子の小角X線回折(SAX)ディフラクトグラムである。
図12】一実施形態による、さまざまなロードメソ多孔性シリカ複合ハイドロゲル製剤からのアフリベルセプトのin vitro放出のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
タンパク質は、その特異性及び効力に起因して魅力的な治療目標である。タンパク質などの生物製剤は、医療でますます重要になってきている。眼科では、いくつかの生物製剤は、飛躍的な治療効果をもたらしてきた。ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプトは、新生血管AMD及び糖尿病性黄斑浮腫などの疾患を有する対象において大きな臨床的利益を提供することが示されたタンパク質の例である。
【0006】
タンパク質は、不十分な膜透過性を有する親水性水溶性マクロ分子である。このため、経口投与又は局所投与によるタンパク質の生物学的利用能は不十分である。タンパク質に対する吸収バリアを回避するために、通常、眼内投与などの所望の生物学的区画内への非経口投与又は直接注射により投与される。眼内への治療用タンパク質の生産的吸収には、いくつかの制約が存在する。局所的には、タンパク質などのマクロ分子は、角膜上皮への限られた透過性及び局所投与からの迅速な角膜前クリアランスを有するであろう。典型的には、局所投与低分子点眼剤のわずか1%~5%が房水への生物学的利用能があるにすぎない。タンパク質の局所生物学的利用能はかなり低い。後眼部へのさらなる移動は、虹彩水晶体隔膜及び硝子体により提示される拡散バリアにより制限される。そのため、局所適用薬剤はほとんど又はまったく、黄斑近傍の後眼部に達することができない。血液網膜関門及び血液房水関門は、全身投与からのタンパク質の眼内取込みをさらに妨害する。投与されるタンパク質は、後眼部での治療濃度を達成するために硝子体内注射を必要とする。
【0007】
タンパク質はまた、体循環からの迅速なクリアランスを受ける。硝子体からのタンパク質のクリアランスは、何日か程度の半減期を有してより緩徐であるが、治療継続期間と比べて依然として迅速にクリアランスされる。このため、治療効果を遷延するようにタンパク質を高濃度で且つ頻繁な毎月又は隔月の注射により眼内注射することが必要になる。この結果、タンパク質の初期眼内濃度が一過的に高くなるので意図せぬ副作用をもたらす可能性があるとともに、頻繁な硝子体内注射により眼内炎、白内障、網膜剥離、及び他の有害な後遺症のリスクが増加する。
【0008】
したがって、眼内空間へのタンパク質の直接持続送達を行えば、患者への治療的利益が大幅に改善されるであろう。眼への持続タンパク質送達システムの医学的価値が高いにもかかわらず、システムの開発は成功していない。タンパク質の持続送達は、いくつかのユニークな課題を提供する。タンパク質は、凝集及び潜在的免疫原性問題、変性、並びに活性喪失及び分解に敏感である。これは、製造時に遭遇する剪断応力及び熱応力、水性環境中での凝集及び分解、3次構造及び4次構造及び活性の喪失、並びに界面の損失により引き起こされる可能性がある。ほとんどのタンパク質は、極端なpHに敏感である。ポリ-ラクチド-co-グリコリド、ポリカプロラクトン、及び他のポリエステルのバイオ侵食性ポリマーは、持続放出送達システムを構築するために通常使用される。残念ながら、タンパク質は、送達システムの製造時に疎水性界面で、送達システムの水和時及びタンパク質放出時に、又はこれらのポリマーがin vivoで分解して生成される酸性マイクロ環境中で、分解、凝集、又は活性喪失する可能性がある。
【0009】
ハイドロゲルは、タンパク質に有利な環境を生成するとともに、タンパク質に影響を及ぼす前に酸性分解生成物を拡散除去可能であるので、ポリエステルに対する魅力的な代替物を提供する。しかしながら、ハイドロゲルは、タンパク質の分解及び凝集を引き起こす可能性のある高含水率を有する。また、ハイドロゲルは、比較的多孔性であるので、タンパク質放出の制御が困難である。我々の研究では、架橋PEGハイドロゲル自体は数ヵ月を超えて持続タンパク質放出を提供することがなく、タンパク質は水性環境中で30日以内に凝集及び分解することが示された。
【0010】
数ヵ月間にわたる持続放出を可能にするとともに放出タンパク質の安定性を維持する、架橋バイオ侵食性PEGハイドロゲルとアフリベルセプトロードメソ多孔性シリカ粒子との複合システムが、本明細書に記載される。しかしながら、本開示は、そのように限定されるものではなく、タンパク質をロードするために他のメソ多孔性材料を使用しうる。
【0011】
治療用タンパク質がロードされたメソ多孔性シリカ粒子を架橋ハイドロゲルマトリックス中に閉じ込めることにより、数週間~数ヵ月の期間にわたり活性タンパク質を放出させることが可能である。ハイドロゲルを形成することは、PEG-アミンとPEG-SG、PEG-SAP、及び/又はPEG-SAZモノマーとを反応させて架橋を形成することが関与する。各化学はそれ自体の架橋密度及び後続分解速度を有するので、反応性PEGの組成を選択することにより、数週間~数ヵ月にわたりハイドロゲルのバイオ分解及びその内容物の放出を調整することが可能である。また、初期放出速度に影響を及ぼすのは、PEGモノマーの分子量及び架橋密度である。5kDa又は10kDaの分子量を有する4アーム及び8アームPEGモノマーが使用されうる。
【0012】
メソ多孔性シリカ粒子は、タンパク質を安定化させてPEGハイドロゲル内で持続放出を引き起こすことが可能である。メソ多孔性シリカ粒子は、可動性を低減させて凝集を最小限に抑えるために、メソ細孔内にタンパク質分子を閉じ込めるか又は外表面にタンパク質を吸着させる。それは、その大きな表面積及び明確に定義された表面性に起因して高い薬剤ローディング容量を有するので、薬剤放出を制御するためにシラノール含有表面の官能化が可能である。メソ多孔性シリカ粒子は、シリコンウエハの電気化学的エッチングを介して作製可能であるか、又は界面活性剤鋳型法などのゾルゲル法を用いて合成可能である。粒子サイズ、形状、細孔サイズ、及び多孔度は、ロード薬剤のモルフォロジー及びサイズに合わせて調整可能である。
【0013】
メソ多孔性シリカ粒子は、最終アモルファス材料のモルフォロジーを指定する鋳型として作用する界面活性剤の存在下で合成可能である。界面活性剤は、臨界ミセル濃度を超える濃度で極性溶媒に溶解され、分子がミセルにセルフアセンブルされる。ミセルが形成されたら、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)などのシリカ前駆体が懸濁液に添加され、その後、ゾルゲル反応が行われる。次いで、界面活性剤は、仮焼又は抽出により除去される。メソ多孔性シリカ粒子の構造サイズ及びモルフォロジーは、触媒の選択、pH、水対シリカ前駆体比、溶媒タイプ、溶媒対水比、シリコン前駆体タイプ、並びに合成及びエージングの温度に依存する。Mobile Composition of Matter 41(MCM-41)及びSanta Barbara Amorphous 15(SBA-15)は、円柱状細孔の秩序六角形配置からなる通常タイプのメソ多孔性シリカ粒子である。MCM-41では、界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)が使用され、SBA-15では、典型的にはP123などのプルロニックが利用される。
【0014】
一般的に説明され本明細書の図に例示される実施形態の成分は、多種多様な異なる構成で配置及び設計が可能である。そのため、図に提示される各種実施形態の下記のより詳細な説明は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、単に各種実施形態の代表にすぎない。実施形態の各種態様が図面に提示されるが、具体的に指定がない限り、図面は必ずしも原寸通りとは限らない。
【0015】
図1は、ハイドロゲルマトリックス300からの治療剤200の持続放出のための複合インプラント100の一部分の模式図を提供する。ハイドロゲルマトリックス300は、ハイドロゲルマトリックス300からの治療剤200の経時的放出を可能にする分解性連結400を含みうる。いくつかの実施形態では、ハイドロゲルマトリックス300は、架橋バイオ侵食性PEGハイドロゲル中に分散された治療用複合体を有する架橋バイオ侵食性ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲルでありうる。治療用複合体は、メソ多孔性シリカ及び/又はいずれかの他の賦形剤、ペプチド又は核酸に関連付けられた治療剤200を含みうる。複合インプラント100は、対象又は患者の眼に送達又は植え込まれるように構成されうる。複合インプラント100は、ロッド形状又は所望により他の形状を含みうる。
【0016】
複合インプラントは、対象又は患者において眼疾患を治療するために使用されうる。眼疾患は、新生血管AMD、糖尿病性黄斑浮腫、及び網膜静脈閉塞後黄斑浮腫の少なくとも1つから選択されうる。複合インプラントにより治療されうる他の眼疾患としては、限定されるものではないが、増殖性硝子体レチノパチー、ドライAMD、緑内障(神経保護)、ブドウ膜炎、硝子体炎、眼内炎、感染、炎症、白内障、網膜色素変性、脈絡網膜炎、脈絡膜炎、及び自己免疫性障害が挙げられる。
【0017】
治療用複合体は、メソ多孔性シリカに関連付けられた治療剤を含みうる。特定の実施形態では、治療用複合体中の治療剤とメソ多孔性シリカ粒子との関連付けは、各種手段、たとえば、ホットメルト押出し、ブレンディング、圧縮、グラニュレーション、ローラーコンパクション、スプレードライイング、共凍結乾燥、スプレーフリーズドライイング、マイクロカプセル化、溶融カプセル化、コアセルベーション、溶媒キャスティング、マイクロフルイディクス、射出成型、及び/又は他のマイクロ粒子作製方法などにより達成可能である。ある特定の実施形態では、治療用複合体は、メソ多孔性シリカ粒子内に分散された、それにより被覆された、及び/又はそれに吸着された治療剤で構成されうる。治療剤は、タンパク質、ペプチド、核酸、RNA、siRNA、アプタマー、たとえばペガプタニブ、又は低分子の少なくとも1つでありうる。治療剤は、プロスタグランジン、神経保護剤、レチノイド、スクアラミン、ステロイド、アルファアドレナリン作動剤、遺伝子、抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤、カルシニューリン阻害剤、たとえばシクロスポリン、アデノ随伴ウイルスベクター、チロシンキナーゼ阻害剤、又はローキナーゼ阻害剤の少なくとも1つを含みうる。
【0018】
治療用タンパク質/ペプチドとしては、限定されるものではないが、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、コンバーセプト(組換え抗VEGF融合タンパク質)、アンキリンリピートタンパク質、たとえばアビシパルペゴル、アダリムマブ、及び他の抗TNF-アルファ剤、バイオシミラー、それらのそれぞれの塩、エステル、溶媒和物、異性体、又は複合体、及びコンジュゲート、たとえばペグ化が挙げられうる。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質/ペプチドとしては、限定されるものではないが、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブ、及びコンバーセプトが挙げられうる。
【0019】
ハイドロゲルは、治療用複合体を捕捉して組成物からのタンパク質の放出をモジュレートする働きをする。治療用複合体は、タンパク質がロードされたメソ多孔性マイクロ粒子を含む。ハイドロゲルはさらに、生体の免疫反応及び酵素からタンパク質ロードメソ多孔性シリカ粒子をシールドする。メソ多孔性シリカ粒子は、製造プロセス及び放出時のin vivo水性環境に対してタンパク質を安定化させるとともに、治療用タンパク質の持続放出又は制御放出を提供する。作用剤、たとえば、とくに、賦形剤、放出調節剤、界面活性剤は、組成物に組込み可能である。
【0020】
メソ多孔性シリカ粒子は、界面活性剤鋳型法及びシリコンウエハの酸エッチングをはじめとする数多くの異なるプロセスにより生成可能である。メソ多孔性シリカ粒子を生成する他の方法は、フッ化水素酸電解質溶液中でのシリコンウエハの電気化学的陽極酸化である。1nm~数マイクロメートルの範囲内の細孔を有するメソ多孔性シリカ粒子は、この方法により生成可能である。メソ多孔性シリカ粒子に影響を及ぼすプロセスパラメーターとしては、電流密度、ドーパントのタイプ及び量、並びに電解質濃度が挙げられる。
【0021】
メソ多孔性シリカはまた、界面活性剤鋳型法技術により生成可能である。界面活性剤ミセルは、陽イオン性アルキルアンモニウム界面活性剤、たとえばセトリニウムブロマイド(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、CTAB)又はブロックコポリマー、たとえばプルロニック界面活性剤、ポリ(エチレンオキサイド)-ポリ(プロピレンオキサイド)-ポリ(エチレンオキサイド)(PEO-PPO-PEO)ブロックコポリマーを用いて極性媒体中に生成可能である。ミセルが形成されたら、メソ多孔性シリカ粒子は、界面活性剤鋳型の周りでのシリカ前駆体の縮合により生成される。オルトケイ酸のエステルは、テトラエトキシシラン(TEOS)などの通常のシリカ源である。縮合反応は、酸性及び塩基性の条件、さらにはフッ化アンモニウムの添加により触媒可能である。反応が終了したら、界面活性剤、さらにはいずれの共界面活性剤又は膨張剤も、抽出又は高温仮焼により除去可能である。2つのタイプの界面活性剤鋳型生成メソ多孔性シリカ粒子は、Mobile Composition of Matter-41(MCM-41)及びSanta Barbara Amorphous-15(SBA-15)である。
【0022】
メソ多孔性シリカ粒子の細孔サイズ、細孔構造及び秩序、並びに粒子モルフォロジーを調節するために調整可能なプロセスパラメーターとしては、縮合反応温度、界面活性剤タイプ、共界面活性剤、膨張剤、エージング温度、水熱膨張及び仮焼の時間及び温度が挙げられる。
【0023】
膨張剤は、シリカ縮合時に界面活性剤ミセルの疎水性コア中に分配してより大きな細孔を作製可能である。トリメチルベンゼン(TMB)は、大細孔メソ多孔性シリカ粒子の生成に使用される通常の膨張剤である。アルカン、環式アルカン、芳香族物質、芳香族アルコール、及びアルカンアルコールもまた、多くの場合、膨張剤として使用される。共界面活性剤は、メソ多孔性シリカ粒子のモルフォロジーを調節するために利用可能である。
【0024】
細孔サイズ、細孔構造及び秩序、並びにメソ多孔性シリカ粒子のサイズ及びモルフォロジーは、その性能に影響を及ぼす可能性がある。メソ多孔性シリカ粒子の平均細孔サイズを計算するために、バレット・ジョイナー・ハレンダー(BJH)ガス収着等温線を使用可能である。細孔サイズ、サイズ分布、細孔構造、及び細孔間隔を決定するために、小角X線回折(SAX)を使用可能である。
【0025】
メソ多孔性シリカ粒子は、多くの手段により活性化合物をロード可能である。初期湿式法は、メソ多孔性シリカ粒子に既知体積の薬剤ロード液体を添加してそれを収着させることが関与する。活性剤はまた、活性剤の溶液中でメソ多孔性シリカ粒子をインキュベートし、次いで濾過し、そしてロード粒子を真空乾燥又はフリーズドライすることによりロード可能である。有機溶媒からの吸着はまた、粒子にロードする通常の方法である。溶融ローディング、スプレードライイング、当技術分野で公知の他のプロセスなどの方法は、メソ多孔性シリカ粒子をロードするために使用可能である。
【0026】
複合インプラントのPEG成分は、求電子性末端基を有するPEG(PEG-NHS)と求核性末端基を有するPEG(PEG-NH2)とを含む。求電子性PEGは、異なる鎖長及び異なるコア(たとえばヘキサグリセロール及びペンタエリトリトール)からなる群から選択可能である。いくつかの実施形態では、PEG-NHS基は、SG(N-ヒドロキシスクシンイミジルグルタレート)、SAP(N-ヒドロキシスクシンイミジルアジペート)、SAZ(N-ヒドロキシスクシンイミジルアゼレート)などの求電子性基を含む。図2は、8アームポリエチレングリコール-スクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)を例示し、図3は、ポリエチレングリコール-スクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)のR基を例示し、そして図4は、ポリエチレングリコール-スクシンイミジルアジペート(PEG-SAP)のR基を例示する。官能基とコアとの間のメチレン単位(スペーサー)の数の差は、分解及び放出に影響を及ぼす可能性がある:SG=3スペーサー、SAP=4スペーサー、及びSAZ=7スペーサー。求電子性及び親水性PEG基は、図1に描かれるように架橋してメッシュ状送達システムを形成する。図5は、8アームPEG-NH2の模範的実施形態を例示する。
【0027】
ハイドロゲルは、メッシュサイズ(架橋開裂)と、治療剤放出速度と、架橋密度(4アーム、6アーム、及び8アームPEG)、リンカー鎖長(より長い鎖=より緩徐な加水分解及びより緩徐な放出)、及びPEG分子量(より高い分子量ほど、細孔サイズは大きく放出は速い)を変動させることによる侵食速度論と、に関して最適化されうる。PEGコアもまた、架橋及び侵食を改変すべく最適化されうる。
【0028】
治療用複合体は、メソ多孔性シリカに関連付けられた治療剤(すなわち治療用タンパク質など)で構成される。治療剤は、たとえば、限定されるものではないが、1)メソ多孔性シリカ内に分散させるか、2)メソ多孔性シリカ上に被覆するか、3)メソ多孔性シリカ上に吸着させるか、又は4)それらのいずれかの組合せによりメソ多孔性シリカに関連付けられうる。治療剤とメソ多孔性シリカとの関連付けは、ホットメルト押出し、ブレンディング、圧縮、グラニュレーション、ローラーコンパクション、スプレードライイング、共凍結乾燥、スプレーフリーズドライイング、マイクロカプセル化、溶融カプセル化、コアセルベーション、溶媒キャスティング、マイクロフルイディクス、射出成型、及びいずれかの他の当技術分野で公知の複合体又はマイクロ粒子の作製技術により達成されうるとともに、治療用複合体は、それらにより作製されうる。複合材料に好適な他の材料としては、ポリアンヒドリド及びポリ(オルトエステル)が挙げられうる。
【0029】
ハイドロゲルは、バイアル内でジクロロメタン(DCM)又は水にPEG-NHSを溶解させることにより製造される。次いで、別のバイアル内でDCM又は水にPEG-NH2を溶解させるとともに、治療剤(たとえば治療用タンパク質)を含む製剤を添加する。2つのバイアルは、タンパク質ロード架橋ハイドロゲルを形成するために、反応を触媒するトリエチルアミンを用いて又は用いずに混合されうる。混合物は、最終送達システムを形成するように成型若しくは押出し可能であるか又はin situ形成可能である。架橋反応は、図6A及び6Bに示される機構を介して進行する。架橋ポリマーハイドロゲルを達成するために、各種他の機構が使用されうる。
【0030】
図6Aは、模範的架橋反応を例示する。反応剤は、ポリエチレンオキサイド-アミン及びポリエチレンオキサイド-スクシンイミジルグルタレートであり、7.4~8のpHで反応して生成物を生成する。生成物は、加水分解反応活性エステル結合を有する架橋ネットワークでありうる。
【0031】
図6Bは、他の模範的架橋反応を例示する。反応剤は、アミン化合物及びNHSエステル誘導体であり、アミド結合化合物及びNHS脱離基を生成する。
【0032】
治療剤を含む製剤は、1種以上の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を用いて当技術分野で周知の標準的技術又は方法により調製されうる。本明細書で用いられる「薬学的に許容可能な」という用語は、活性成分(又は複数の活性成分)の有効性又は生物学的活性に実質的に干渉しない且つ使用量で患者に対して毒性がない物質を意味する。薬学的に許容可能な担体の例としては、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、石油起源、動物起源、植物起源、又は合成起源のものを含めて、水及び油などの無菌液体が挙げられる。水をはじめとする水性担体は、静脈内投与に供すべく調製される医薬組成物用の典型的担体である。さらなる例として、生理食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、とくに注射用溶液剤に対する液状担体として採用可能である。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、穀粉、チョーク、シリカゲル、ナトリウムステアレート、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキム乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、及びエタノールが挙げられる。組成物はまた、所望により、湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤を含有可能である。医薬製剤規範、担体、及び賦形剤は、たとえば、Remington Essentials of Pharmaceutics(L.A.Felton ed.,2012)に記載されている。追加の賦形剤としては、ポリマー、たとえば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、セルロース系ポリマー、たとえば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ブロックコポリマー、たとえばポロキサマー、及びポリアクリル酸、たとえばカルボマーが挙げられうる。
【0033】
メソ多孔性シリカ粒子は、眼の水性溶媒への治療剤の暴露を限定するとともにハイドロゲル内でのその分子可動性を制限することにより、治療剤の凝集を最小限に抑えるとともに治療用複合体の安定性を維持する。ハイドロゲルマトリックスは、数週間~数ヵ月の過程にわたり分解して治療剤の放出を持続する。
【0034】
いくつかの実施形態では、メソ多孔性シリカ粒子は、6~15nmの範囲内の細孔サイズを含みうる。いくつかの実施形態では、メソ多孔性シリカ粒子は、1~25ミクロンの範囲内の粒子サイズを含みうる。いくつかの実施形態では、メソ多孔性シリカ粒子は、メソ多孔性シリカ粒子の表面電荷を改変するように表面改質されうる。
【0035】
ハイドロゲルマトリックス中に分散された治療剤及びメソ多孔性シリカを含む治療用複合体は、治療剤の持続放出を増加させうる。バイオ侵食性ハイドロゲルマトリックスの不在下では、治療用複合体は、28日間未満の期間にわたり治療剤を放出しうる。
【0036】
いくつかの実施形態では、複合インプラントは、治療剤活性を維持しつつ、対象の眼への植込みから1週間~12ヵ月の期間にわたり治療剤を放出する。いくつかの実施形態では、複合インプラントは、対象の眼への植込みから少なくとも6ヵ月間の期間にわたり治療剤を放出する。
【0037】
いくつかの実施形態では、複合インプラントは、対象の眼への植込みから最初の24時間の期間にわたり約10%(w/w)未満の治療剤のバースト放出を呈しうる。いくつかの実施形態では、複合インプラントは、対象の眼への植込みから最初の24時間の期間にわたり約5%(w/w)未満の治療剤のバースト放出を呈しうる。
【0038】
複合インプラントからの治療剤の放出速度は、実質的に一定でありうる。たとえば、いくつかの実施形態では、複合インプラントからの治療剤の放出速度は、治療剤のバースト放出又は遅滞期の終わりから開始して(ただし、植込み又はin vitro放出試験の後14日間以内)、最初の3ヵ月間の期間にわたり実質的に一定でありうる。遅滞期とは、植込み直後又はin vitro放出試験開始直後の期間として定義されうるとともに、その間、薬剤は放出されないか、又は薬剤はその後14日間以内に達成される一定速度よりも遅い速度で放出される。
【0039】
複合インプラントからの治療剤の放出速度は、ほぼゼロ次又は偽ゼロ次でありうる。たとえば、いくつかの実施形態では、複合インプラントからの治療剤の放出速度は、治療剤のバースト放出又は遅滞期の終わりから開始して、植込みから最初の3ヵ月間の期間にわたりほぼゼロ次又は偽ゼロ次でありうる。ほぼゼロ次放出及び偽ゼロ次放出の速度論は、in vivo又はin vitro放出試験で複合ハイドロゲルから放出される治療剤の累積量が時間の関数として本質的に線形関係で定義されうる。
【0040】
複合インプラントは、対象又は患者の眼に導入、植込み、注射、又は他の方法で送達されうる。複合インプラントは、針を介して単回使用適用により対象の眼の硝子体又は後房への毛様体扁平部注射を介して複合インプラントを植え込むことにより送達されうる。いくつかの実施形態では、針は、約19ゲージ未満、約20ゲージ未満、約21ゲージ未満、約22ゲージ未満、約25ゲージ未満、又は他の適切な直径でありうる。特定の実施形態では、針は21ゲージ以下の直径の針である。
【0041】
本開示はまた、複合インプラントの使用に関する方法を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、対象の眼に治療剤を導入する方法を提供する。かかる方法は、対象の眼に上述の複合インプラントを送達することを含む。他の実施形態では、本開示は、対象の眼に以上に記載の複合インプラントを送達することを含む、対象における眼疾患の治療方法を提供する。眼疾患は、新生血管AMD、糖尿病性黄斑浮腫、及び網膜静脈閉塞後黄斑浮腫から選択される少なくとも1つでありうる。
【0042】
本開示はまた、眼疾患の治療に使用するための治療剤を提供する。ただし、治療剤は、以上に記載の複合インプラントで提供される。さらに、本開示は、必要とする対象の治療のための以上に記載される複合インプラントの製造における治療剤の使用を提供する。本開示はまた、以上に記載の針及び複合インプラントを含むプレロードインジェクターアセンブリーを提供する。
【実施例
【0043】
これらの実施形態をさらに例示するために、下記実施例を提供する。これらの実施例は、特許請求された本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、その範囲は、添付の請求項のみに基づいて決定されるべきである。
【0044】
実施例1 - 複合コアなしアフリベルセプトPEGハイドロゲルインプラント
この実施例では、表1の処方に従ってDCM中にPEG試薬を溶解させることにより作製された、凍結乾燥アフリベルセプトコアを有する架橋PEGのバイオ分解性ハイドロゲルを記載する。アフリベルセプトコアは、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2、150mM)、ヒスチジン(20mM)、アルギニン(150mM)、メチオニン(5mg/mL)、P407(100mg/mL)、及びPS 20(0.05%)の溶液中で(150mg/mL)のアフリベルセプトを共凍結乾燥させることにより製造された。アフリベルセプトのin vitro放出を評価した。放出媒体としてpH7.4の等張リン酸緩衝生理食塩水(IPBS)を含有する5mLガラスバイアル中にロードハイドロゲルを配置した。次いで、バイアルをシェーカー浴上に配置して37℃で媒体をアジテートした。あらかじめ決められた時点で媒体をサンプリングし、レシーバー媒体全体をフレッシュIPBSで置き換えた。C-18 BEHカラムを有するWaters Alliance e2695システムを用いてHPLCにより、サンプリングされたアリコート中のアフリベルセプト濃度を定量した。アフリベルセプト濃度を用いて、インプラントからのアフリベルセプトの累積in vitro放出、さらには1日のアフリベルセプト放出速度を定義した。アフリベルセプトの累積in vitro放出を時間の関数として図7に描く。第1のグラフ線は37℃で生成され、第2のグラフ線は40℃で生成される。表2に見られるように、アフリベルセプトの有意な凝集は39日目に始まる。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
30~60日間にわたりタンパク質の活性及び放出の損失を伴わないアフリベルセプトハイドロゲルの製造が達成された。しかしながら、アフリベルセプトは、架橋非複合PEGハイドロゲル中で30日後に凝集及び分解を開始した。
【0048】
実施例2 - メソ多孔性シリカ複合コアありアフリベルセプトPEGハイドロゲルインプラント
発明者の第1の試験の球状メソ多孔性シリカ粒子は、粒子サイズ1.7μm、細孔サイズ20nm、及び細孔容積0.74cm3/gを有してGlantreoにより製造された。それは、塩基性触媒作用下で前駆体としてTEOS及び円形細孔のモルフォロジーを指定する界面活性剤としてCTABを用いて合成された。図8は、P407とともに凍結乾燥された粒子を示す。
【0049】
メソ多孔性シリカ粒子内へのアフリベルセプトのローディングを以下のように実施した。アフリベルセプトをその供給源から緩衝液交換し、1mg/mLの濃度でリン酸緩衝液(pH5.8)に溶解させた。メソ多孔性シリカ粒子を緩衝溶液に同一濃度で溶解し、磁気撹拌子を用いて24時間混合した。24時間後、溶液を5mLポリプロピレン遠心分離機チューブに移して遠心分離し、遊離アフリベルセプトを含有する溶液から粒子を分離した。粒子を再懸濁し、濯ぎ、そして再び遠心分離し、緩く吸着されたアフリベルセプトを分離した。遊離アフリベルセプトを含有する溶液をサンプリングした。C-18 BEHカラムを有するWaters Alliance e2695システムを用いてHPLCにより、サンプリングされたアリコート中のアフリベルセプト濃度を定量した。メソ多孔性シリカ粒子上のアフリベルセプトローディングをマスバランスにより決定した。アフリベルセプトロードメソ多孔性シリカ粒子の組成を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
メソ多孔性シリカ粒子からのアフリベルセプトの放出をin vitroで評価した。放出媒体としてpH7.4の等張リン酸緩衝生理食塩水(IPBS)を含有する5mLガラスバイアル中に粒子を秤取した。次いで、バイアルをシェーカー浴上に配置して37℃で媒体をアジテートした。あらかじめ決められた時点で媒体をサンプリングし、レシーバー媒体全体をフレッシュIPBSで置き換えた。C-18 BEHカラムを有するWaters Alliance e2695システムを用いてHPLCにより、サンプリングされたアリコート中のアフリベルセプト濃度を定量した。アフリベルセプト濃度を用いて、インプラントからのアフリベルセプトの累積in vitro放出、さらには1日のアフリベルセプト放出速度を定義した。
【0052】
粒子を捕捉するハイドロゲルなしでは、凍結乾燥又は真空乾燥されたメソ多孔性シリカ粒子は、図9に示されるように、20%バースト放出を呈し、続いてその後はほとんど又はまったく放出がなかった。ハイドロゲルのみのインプラントでは、タンパク質の実質的部分は、図7に示されるように、水性暴露後に製剤から放出された。驚くべきことに、PEGハイドロゲル内にタンパク質ロードメソ多孔性シリカ粒子を閉じ込めることにより、図10に示されるように、観測されるバースト放出が軽減される。ハイドロゲルは、PEGモノマーの分子量(5KD、10KD)、架橋密度、NHSエステル基(SG、SAP、SAZ)、及びアーム数(4アーム、8アーム)に依存して放出速度を軽減する。メソ多孔性シリカ粒子はまた、同様に粒子のサイズ及び形状、細孔構造、細孔サイズ、及び暴露細孔の表面積に依存してタンパク質の放出に影響を及ぼす。
【0053】
メソ多孔性シリカ/ハイドロゲル複合インプラントは、バイアル中でリン酸緩衝液(pH7.4)又は水にPEG-NHSを溶解させることにより製造された。次いで、別のバイアル中でリン酸緩衝液又は水にPEG-NH2を溶解させ、同一バイアルにタンパク質ロードメソ多孔性シリカ粒子を添加する。2つのバイアルを混合して架橋反応を開始する。混合物は、最終送達システムを形成するように成型又は押出し可能である。組成は表4に示される。
【0054】
【表4】
【0055】
メソ多孔性シリカ粒子は、アフリベルセプトバーストを有意に低減し、緩徐な持続放出を実証した。メソ多孔性シリカ粒子の細孔サイズは、所望の放出速度を達成するように最適化可能である。メソ多孔性シリカ粒子組成物のさらなる利点は、水性製造を可能にしうるので刺激性且つ潜在的に不安全な有機溶媒が回避されることである。この複合システムのユニークな属性としては、in vitro及びin vivo放出時のタンパク質の安定化、複合ハイドロゲルからのタンパク質の偽ゼロ次放出速度、最初の日の10%未満のタンパク質バースト放出、並びに6ヵ月間の期間にわたり安定性及び活性を維持しつつ安定タンパク質を放出する能力が挙げられる。
【0056】
この実験に使用されたGlantreoメソ多孔性シリカ粒子は、図11に示されるように、SAXにより非常に不十分な細孔構造を有すると判定された。(100)、(110)、及び(200)のシャープな反射の欠如は、不十分な秩序~無秩序であることを示唆する。実際の細孔サイズは、細孔の高多分散性に起因して決定できなかった。
【0057】
実施例3 - メソ多孔性シリカ複合コアありアフリベルセプトPEGハイドロゲルインプラント
第2のシリーズのメソ多孔性シリカ粒子は、界面活性剤鋳型としてプルロニックP123を利用して生成された。この界面活性剤は、CTABよりも大きな細孔サイズを作製しうる。本方法は、Katiyar et al./J.Chromatogr.A 1122(2006)13-20に記載の手順に従う。本方法は、次のことを含みうる。(1)3グラムのP123を60ml(1.5M)HClに溶解させ、(2)別に0.6グラムのCTAB及びTMB(表5に示される比)を25mL脱イオン水と混合し、(3)20mLのエタノール(100%)を添加して両溶液を十分に混合一体化し、(4)10mLのTEOSを界面活性剤溶液に一滴ずつ添加し、混合物を35℃で45分間にわたり600rpmで撹拌し、(5)次いで混合物をストッパー付きPTFEボトルに移し、75℃の静的条件下で10時間貯蔵し、続いて8時間にわたり115~125℃で水熱膨張させ、(6)こうして形成されたメソ多孔性シリカを濾過し、脱イオン水で濯ぎ、次いで真空下で乾燥させ、そして(7)乾燥メソ多孔性シリカ粒子を1℃/分の加熱速度で500℃で仮焼し、5℃/分で冷却した。
【0058】
アフリベルセプトを仮焼メソ多孔性シリカ粒子上にロードし、以上に記載のハイドロゲルマトリックス中に閉じ込めた。ハイドロゲルマトリックスからのアフリベルセプトのin vitro放出を以上に記載のように行った。最初の4日間の放出プロファイルは図12に描かれる。メソ多孔性シリカ粒子/ハイドロゲルからのアフリベルセプトの緩徐持続放出が最初の4日間にわたり達成されることが分かる。
【0059】
【表5】
【0060】
メソ多孔性シリカ粒子内にタンパク質を閉じ込めて架橋ハイドロゲルマトリックス中にそれを捕捉することにより、放出持続期間が延長され、バーストが軽減され、且つ長期間にわたりタンパク質が安定化される。ハイドロゲル単独では、タンパク質安定性は30日後に失われる。2つのシステムを組み合わせることにより、PEG特性、さらにはメソ多孔性粒子のモルフォロジー及びその細孔に依存して高度に調整可能な放出プロファイルが可能になる。具体的には、ハイドロゲルは、PEGモノマーの分子量(5KD、10KD)、架橋密度、NHSエステル基(SG、SAP、SAZ)、及びアーム数(4アーム、8アーム)に依存して初期放出速度を決定する。メソ多孔性シリカ粒子は、同様に粒子のサイズ及び形状、細孔構造、細孔サイズ、及び暴露細孔の表面積に依存してタンパク質の放出に二次的影響を及ぼす。
【0061】
本明細書に開示されるいずれの方法も、記載の方法を実施するために1つ以上の工程又は動作を含む。方法工程及び/又は動作は互いに交換されうる。言い換えると、工程又は動作の具体的順序が本実施形態の適正操作に必要とされない限り、具体的工程及び/又は動作の順序及び/又は使用は修正されうる。そのうえ、本明細書に記載の方法のサブルーチン又は一部分のみは、本開示の範囲内の個別方法でありうる。言い換えれば、いくつかの方法は、より詳細な方法に記載の工程の一部分のみを含みうる。
【0062】
本明細書全体を通して「ある実施形態」又は「本実施形態」への言及は、その実施形態との関連で記載された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。そのため、本明細書全体を通して列挙される引用語句又はその変化形は、必ずしもすべてが同一の実施形態への言及を意味するとは限らない。
【0063】
同様に、実施形態の以上の説明では、本開示を合理的に行う目的で、各種特徴がときには単一の実施形態、図、又はそれらの説明にまとめられることが、本開示の利益を生かして当業者により認識されるべきである。しかしながら、この開示方法は、いずれかの請求項がその請求項に明示的に列挙されたものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、下記請求項に反映されるように、本発明の態様は、いずれかの単一の上記開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない組合せに依拠する。そのため、詳細な説明に続く請求項は、これをもってこの詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、それ単独で個別の実施形態として有効である。本開示には、独立請求項とその従属請求項のすべての順列が含まれる。
【0064】
特徴又は要素に関する「第1」という用語の請求項での列挙は、必ずしも第2又は追加のかかる特徴又は要素の存在を意味するとは限らない。本開示の根底をなす原理から逸脱することなく以上に記載の実施形態の詳細に変更を加えうることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】